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2018下半期に聴いた音楽と適切に想像力を働かせるということ
下半期聴いた音楽20タイトル。リンクとか貼らない相変わらず不親切な、音楽的知識が皆無だから妄想で書いたレビューと私情。 日々を生きる上でこの分析癖と妄想癖は意外と役に立っているし、自己満足でも文章にするのは自己追求でもあるから大事だと思っている(その割には更新しないブログ)
Years & Years/Palo Santo
Kelelaをもっとバーチャルにした近未来的エレクトロポップでありサウンドの隅々で体温のある”ナマ”を感じる作品。「アンドロイドに支配された惑星を舞台にした」というコンセプト・アルバムだが、現代世界へのアンチテーゼというポーズを取らないところが粋。むしろ怒りを手放すことで固定的な視点からの解放の地を、このディストピアから見ているのだ。尊いはずの現代世界への祈りと救済のソウル。癒されるなー。
ZU93/Mirror Emperor
イタリアのアヴァンジャストリオとカレント93のデビッドチベットの共作。ここで鳴らされるサウンドはチェンバーゴシック風のオーケストラあるが、内省的な独白を究極に突き詰めたチベットの意識を置き換える作業的なものでしかなく、音楽としてはギリギリのサイコドキュメントといった向き。チベットの歌唱は生々しく抉りとるような悲痛な表現を含むが、ある意味オブセッシブな正気に満ちていて詩的ですらありパーソナルなものを超越して訴えかけてくる魔力がある。「Hey, was that the Apocalypse?」知覚で歪曲された真実が全く別の形で迫ってくる1枚。
Laurel Halo/Raw Silk Uncut Wood
聖域と呼ばれる場所に安息を求めることは「崇高」か、あるいは「業」に数えられるか。瞑想ヒーリングとダークアンビエントのあわいで肉体が沈んでいくような感覚は、一抹の居心地の良さに甘えを許したなら最後、得体の知れない深淵がこちらを見ている...そんな感じの示唆に富みすぎるアートワークと音像の豊かさが、トラウマや深層心理まで抉ってきてやべー。1曲目の極上入眠チルアウトでさっさと寝るのが吉!
WET/Still Run
キャロル・キングの影響を感じる私小説的なポップソウル。オーガニックなサウンドと透き通るような歌声が深く印象的。ここ数年、ハイテクノロジーなR&B及びソウルがトレンド化し大量に消費されつつあるが、この作品の持つ普遍性は、歌を聴くという行為の、もっと能動的で原初的な喜びがある。モロThe Cardigansな90年代リヴァイダルの1曲だけが感情を顕にしているのも象徴的で、感傷に浸りたい時に聴くと癒される。意地悪そうな、だけどナイーヴな顔つきの顔ジャケにも愛着が湧く。
Foodie/All You Can Eat
バブルガム・ポップなんて甘くておいしそうな名称で紹介されてるけど、ロシアンルーレットで引き当てたわさび味のシュー���リームみたいな気分屋のバンドの、いつでもにやけてしまう大好きな音楽。そこへさらに憧れのピチカートファイブやシンバルズの熱狂がブワッと眩んじゃって...ずっとヒリヒリしてたくなる。後味を引くという意味で、「おいしい」と「おもしろい」は似ているのかも。
Broken English Club/White Rat
ZOV ZOVと同一人物、Oliver Hoの別名義での作品。ドローンノイズをゴツゴツ煮たような陰気なアンビエントや硬質なビートが淡々と打ち込まれるトラックは現代的なテクノの文脈にあるが、シンセサイザー使いがクラフトワークのニューウェーブみを帯びていてパンクに近い精神性を感じる。かと思えば最後の曲が中東サウンドでZOV ZOVとリンクしたり。3部作の第1作目ということでなんとなく予言めいた作風なのかな。
ASEUL(아슬)/ASOBI
まんまYumi Zoumaな80年代シンセポップの再現度の高さ!そして、そのチルウェイヴな感覚はそのままにトリップポップみたいなダブの派生を思わせる音作りは、まるで緻密に書き込まれたボロボロの教科書から召喚された天使たちがじゃれ合ってるかの様。歌われる韓国語の響きもいっそう神秘を深めるもので、もはや空想でいっぱいになってる自分の頭の中が好き。ドリーム・ポップって誰も手に入れられない桃源郷みたいな、孤高の音楽なのかも。
PIPER MARU/Most of My Friends Died In Space(EP)
捻りひしゃげた爆裂サウンドとブチギレた女性Vo.に神経という神経が全部起き上がるUSハードコア・パンク。なんと言っても、かわいいピンク色の猫ジャケがパーフェクトで、アメリカの郊外に住むローティーンの少女になって衝撃と憧れを噛み締めている気分。G.L.O.S.S.は解散してしまったけど、その炭は何度でも燃やすことができて、“社会のごみの外側で生きる未来からやってきた女の子たち”が、現在の好きな場所で生きられるようにゴミを燃やし続けているのだ。そういうムーブメントを脈々と感じられるシーンの一角。自分も切実にその一部でありたい。
tirzah/devotion
少ない音数と隙間だらけのローファイR&Bをハイファイ環境のもとでサウンド設計し直したようなコアな音楽。古典的なファンク���ジャズのリズム感を研ぎ澄ますことで、エクスペリメンタルを有機的なポップ・ミュージックに昇華していておもしろい。「隙間の美学」というのが世界共通の認識なのかはわからないけど、芸術の意義が共振にあるとするなら、いつの時代も人の心は変わらずシンプルなんだと思う。
Anna Calvi/Hunter
男や女という性別は社会が決めつけたもので、セクシュアリティやジェンダー、それを取り巻く環境は、バラバラに砕いて違う形で積み重ねることができるということ。アンナ・カルビが「自分の中の女性性/男性性との付き合っていくこと」を歌の中で何度も達成していてカタルシスでいっぱい。また音の提示としても隙がなく、随所で光るアンナのギタープレイが格好良すぎて血の涙を流すしかない。”セクシー”ってアイデンティティーやジェンダーやビジュアルを超越した言葉だと思う。本当に最高。
落差草原 WWWW / Prairie WWWW
台湾のエクスペリメンタルフォーク。奇抜な創作意欲が民俗や土地への関心が密接に結びついていて面白い。宗教儀式のような呪術的トライバルサイケ、その呪縛から解かれたロック、クラウト的な酩酊感、さらには中東エスノまで踏み倒した後半のどんちゃん騒ぎから深遠なるアシッドフォークなど、多様な音楽が多様な解釈を持って物語を牽引する。めっちゃ草生えて楽しそうなのに、ガチすぎて全然草生えない...と思ったら、Wは音の周波数の波形だそう。一つ賢くなって草www
Pig Destroyer/Head Cage
ハードコアのアグレッションでデスメタルしてて好み。トラック1〜2の謎すぎるモンドミュージックからのブラストビートとか、グルーヴィーなリフが最早ストーナーみたいとか、突っ込みどころ満載なのにクッソ格好良い。インターネットの虚構をもりもり感じるドイヒーなMVにしてもそうだけど、この無駄の無いサウンドもまたクラストっぽい含みを持った複合アートなのかとか、妄想すると色々腑に落ちるところがある。健康な豚ってカンジでいいね!
SHOOK ONES/Body Feel
LIFETIME直系の格好良いメロディックハードコア。メロコアっていうとなんだか青春の感傷みたいだけど、メロディックハードコアとはパンクでありハードコアなんだな。心の奥にしまい込んでいたものを高らかに掲げるぶっちぎりの青春。キッダイが「ハードコアにメタルを持ち込んだ奴は最悪」って豪語してたけど、めちゃくちゃわかる気分。 なんせbodyでfeelなんだ。ジャス���求めていたサウンドで最高。
Current 93/The Light Is Leaving Us All
8ミリフィルムの白黒映画を見ているかのような現実と虚像の狭間で揺れ動くアシッド・フォーク。ハーディーガーディーやバグパイプといった民族楽器の彩りがクラシック調で、ピアノやヴァイオリンのオーケストラと溶け込んでいて素敵。オケがクレッシェンドしていくと、呼応するようにチベットが壮絶に歌い上げる。孤高の雰囲気さえ纏っているが、それは常に芝居の中で「表現」として語りかけるものであり、必ず対話がある。色んな国からやってきた人達と酒場で飲み交わしてるかのような多国籍で無国籍感が心地良い。
Julia Holter/Aviary
ソングオリエンテッドな方向性と実験的アプローチを分断した構成が、まるで荘厳なバロックオペラと昔のディズニーアニメを交互に見ているみたいだ...。あんまりにもブッ飛んだ調子に、LSDキメてるんか?なんて勘ぐったりもするが、この90分越えの1本のフィルムはめちゃくちゃフィジカルにサイケデリアを描こうとしていて、わたしはそこに同時代性を感じたりもする。光の強さに溺れず、弱い光や小さな光を見逃さない音像。『知覚の扉』が開かずとも本質をみることができるのだな。
SHXCXCHCXSH/OUFOUFOF
執拗に銃乱射するマシンビートの応酬は、インダストリアルと呼ぶには無味乾燥で、むしろ電車に揺られてるみたいな馴染みあるミニマルテクノ。存在や音楽をいくら記号化したところで「踊れないけど貧乏揺すりしちゃう」みたいな心理がこぼれ落ちているところがリアル。こういう地下テクノって音楽的にはかなり閉ざされているけど目の前の世界が広がってみえるのが不思議。わかんないけど別に知りたくないし知らないぐらいが多分おもしろいんだろうな。
DAUGHTERS/You Won't Get What You Want
4ADのDaughterの新作だと勘違いして聴くと心肺停止するやつ。マスコアばりの転調につぐ転調とともに劇的な頂点へと盛り上がっていく荘厳なサウンド。それをグラインドコアの直線的なアグレッションで繰りだしているんだから、格好良くないわけないのだが、オーケストレーションが軽すぎて多彩な音で塗りつぶされたサウンドが詰め物的に聴こえる。タイトルがタイトルなだけにガスで膨らんだ死体を見て欲を抑え込む的な迷走修行を思い出して落ち込むなど。まぁ、それは仏教の話なんだ��ど、トレント・レズナーが悪魔に魂を差し出したみたいなダークファンタジーとして妄想するとけっこう良い。
Reinier Van Houdt/Igitur Carbon Copies (feat. David Tibet)
Reinierの前作「PATHS OF THE ERRANT GAZE」の断片が散りばめられたコラージュ。以前扱った内容をマテリアルとして捉えた音像は、自分の認識の外に存在する空間や時間、場所、過去未来を自由に行き来するほどの膨らみがあり、デビッドチベットの朗読が唯一、現実との接点のように思えてくる。ラジオ放送に混ざってくる雑音と混信の波を掻き分けながら一生懸命傍聴するかのように、禍々しくも引きつけられながら、チベットが提唱する「黙示録」というものは、例えば、権力者が作り出した社会で誰の声が抑圧されているのかを考えるようなことで、沢山の事実から真実を知る啓示なんでは、と解釈。
Ex:Re/Ex:Re
Daughterのエレーナ・トンラのソロデビュー作。exってバンドのことかと思いきや、元カレについてのことらしく、知らんがな...としか言いようがないわけだけど、こんな私的な内容でも4ADから出しちゃうだけあって、才能ある女性だと思う。乾いた空気を夜露が濡らすような音像に恋の死骸を抱き寄せて歌うエレーナ。それだけで鑑賞するのに十分な作品に違いないが、後半で明らかに違う音の変化には、まるで自分のことみたいにガッツポーズしてしまう。音の骨組みが剥き出しになったソリッドなビートとファズ・トーンがちょっとPJ Harveyみたいでどちゃくそ格好良い。明確に意図する音を持って、失恋の痛みを「景色」として昇華する華麗さに、すっかりエレーナの手の中という感じ。
Killerpass/delayed youth e.p
MILKやTHE ACT WE ACTと並んで名前をよく見かける気になるバンド。青春の感傷の方のメロコアなイントロの爽やかさにああ...と思ったのも束の間、ドラムがyouthcrewスタイルをストロングに決めてて大ショック。ドラムが前のめりでヤバいんだけど、ドラムについて行けるベースもヤバいし、ひたすら青いギターボーカルもヤバいし、音の構造が異様すぎるおかげで歌の内容が全く入ってこない。でも完璧に打ちのめされてしまった。とにかく熱くてめっちゃ良い。こういう音楽をメロコアって呼びたい。
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(以下個人的な記録です)
「個性を尊重しましょう」と言いながら出る釘は打たれる社会において、多様性という考え方が特定の人に対して向��られた時、その言葉の善意は悪意となる
3歳半になる息子は今年も喋らなかった 療育手帳を更新するとB1からB2へ、より障害が重いものとして認定された
芸能人のカミングアウトによって、メディアでも発達障害の特集が格段に増えている 社会的に関心が増えているのは良いことだし、発達障害を「個性」と捉える考えにはわたしも賛成だけど、これを他人から言われると、他意はないのだろうが、めちゃくちゃもやもやする 本人や両親がものすごく努力した結果、驚くべき才能を発揮して社会的成功を収めたというようなサクセスストーリーは確かに希望がある けれども、結局、そのような成功者はごく一部でしかなく、「発達障害は努力次第で治る」というようなバイアス掛かった見方の影で、余計に生きづらくなってしまう人が誰なのかについては、想像が及んでいない
実際、そういった発達障害の取り上げ方に感化された実母からは、「普通の子よりも天才なんだから」「野菜を食べると障害が治る」「普通学級じゃなきゃ幸せになれない」と毎日のように言われるわけで、普段の育児の苦労に加えトドメを刺すように追い詰められ疲弊している
障害ゆえの特性はなんなのか? 何に困っているのか? どういった支援が必要なのか? 「個性」と片してしまうことで目を閉じて見ないようにしていないか 発達障害とは適切な支援が必要な尊重されるべき個性で、その背後にある環境が大事だということ、どうしたら正しく伝わるのだろう 理解を得るよりも、まず、誤解を解くのにものすごい労力の必要性を感じて、途方にくれるしかない
3歳半で1歳9ヶ月相当の成長と診断された息子は、障害があろうが無かろうがとてつもなく可愛い。遅くても成長しているし、今はそれがなによりも嬉しい。もちろん息子の特性も「個性」として集団に溶け込ませてあげたい。だけど息子にとって無理のない環境においてあげることを優先したいと思う。息子にとっての幸せは息子の心が決めることであって、他の子と比べるものじゃないから
他者は自分を映す鏡というけれど見ている世界もまた同じようにその人の映し鏡だと思う。障害の有無に関係なく、見え方、聞こえ方、感じ方、人それぞれ違う個性を尊重したい 多様性って、そもそも考え方だし、みんな同じが大好きな日本で個人が使うには持て余しちゃうと思う。そんな難しい言葉は捨てて、シンプルに他者への想像力を、でいいんじゃないかなぁ
わたしは、目を開いて、ちゃんとその人を見たい。適切に想像を働かせること��意思や主張を持つことをやっていかねばと思う
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"And I am not ashamed of my mental state And I am not ashamed of my body weight And I am not ashamed of my rage And I am not ashamed of my age And I am not ashamed of my sex life Although I wish it were better I am not ashamed I am no one's wife Although the idea does sound kind of nice"
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2018上半期聴いた音楽とラーメン食べて自転車乗って事故ってもラーメン食べるし自転車乗るよっていう話
ライトノベルのタイトルみたいになってしまったが、安心と信頼を笑顔ですっとぼける音楽リスナーkittyknifeちゃんによる上半期に聴いた音楽20タイトルの記録だ。順位なし。発売日順。
GOFISH/燐光
ボサ・ノヴァとジャズで彩られたアコースティックサウンド。お洒落だしテンポよく転がっていくから何度も聴いちゃうんだけど、全然大したこと歌ってないんだよなあ。で、聴けば聴くほど、なにか様子がおかしい。テニスコーツの『光輪』を分かりやすく整えたようなキワを感じたり(タイトル似てるし!)、テライさんってキザだけど天然よねとか、なんてエッチなんだとか、あれこれ想像をめぐらすのが楽しい作品でもあるのかも。とはいえ、胸いっぱいにカタルシスが広がる極上のメロディーは魔法としか言えない。名盤!
ZOV ZOV/Fata Morgana
中東の宗教音楽、インドの民族音楽、西洋のテクノが同義で鳴らされる擬似エスノ。テクノマンによる土着的サウンドの解釈という、作り手の人物像や意図が明確で親しみやすく共感するし、なにより巧妙に作られた作品の、表現者としての鋭さが光る1枚。身体が踊っているうちに精神がじんわりと侵食されていくような錯覚は、けっこうガチ!
Kira Kira/Alchemy & Friends
瞑想ヒーリングにも似通った静謐な音世界。何億光年も向こうから時間をかけてゆっくりと物語が動き出す、そんな気配を感じる濃密なアンビエント。『37人の友人たちと6年に渡って録音』というひとつのドラマに想いを馳せながら聴くととってもわくわくする。シガーロスやムームの楽曲に携わる北欧音楽の重鎮だけではなく、ジャスティン・オハロランとかアメリカ勢も参加しているところが興味深いし、似非エスノみたいに似非北欧音楽をやる人がそろそろ出てきそうとか、そういう予感もうれしい。つまりこの作品を聴いてる時の時間がとてつもなく好き。
Aalko/No Man Is An island
音へのフェティシズムだけが幅をきかす最高に冴えた環境音楽。テクノから中毒性のみを抽出したようなその音は連綿と流れる水のように時間的な配置がなされていて、無常に変化する音の快楽に思考を閉ざしたまま存分に浸れる。自然に対する敬意みたいなのを感じる作風だけに、なんともいえない背徳感でいっぱい。
Half Japanese/Why not?
相変わらずズチャメチャだけど、インストの曲なんかを聴くとフリージャズや現代音楽的な趣向が垣間見れるし(まぁ胡散臭さはあるが)、成熟しなくとも自然の流れで次のフェーズに進んで入っていけるのがすごい。だから音楽的な文脈が勝手についてくる��説得力がある。ジャドおじいちゃんが初っ端から「The Future Is Ours」なんて言っててのけぞったけど。ハーフ・ジャパニーズは確かに時流のたまものであり、たまにきず、いや、きずものでありつづけるパンクだ。あっぱれ!
THE 人生ズ/ライブ ~人生の35分間~
ちんどん屋的ノリで、歩き出せば仲間が増える!?誰のところにも訪れるハッピーサプライズ。あまりのエネルギーの漲りっぷりにガハハ!と笑ってしまう作風だが、強引すぎるところにわたしなんかはちょっと戸惑ったりもする。ライブはすごく見てみたいけど音源だと疲れるというか、ダニエル・ジョンストンのドキュメンタリー映画のほうがよっぽど寄り添える内容だと思う。この世の中にはど〜おしても、「障がい者が頑張ってる」のに感動したい輩がいるので、バリバラ的痛快な視線がほしかった。人生ズと名乗るならば。
Pinky Pinky/Hot Tears
ハードロックからプログレ、パンクと70年代以降の音楽史をなぞるような流れがきて、しっぶう!激渋!となったところで突然ドゥーワップで調子づいてみたりと時代が逆行するかんじをみると、単に懐古趣味なんじゃなく彼女らにとっては「新しい音楽」でしかないというスタンスがピュアでいいな〜。そしてその音楽がめちゃくちゃ好きなんだろうなという超クオリティ。年代モノ風ダサジャケも愛おしい。
POLIÇA + s t a r g a z e /MUSIC FOR THE LONG EMERGENCY
ポストクラシカルな美しさと行き場の無い鬱屈した感情とが対立する構成の妙。大統領選挙真っ只中という時期に生み出された楽曲の不穏な響きが重く視界不良であるが、このオーケストレーションには知覚をこじ開ける力強さがある。前向きな美しさに懸けたい。
U.S. Girls/In a Poem Unlimited
『ブルースをサイケデリックにジャムった60年代ライクなヴィンテージサウンド』は、格好良いけど、同時に、その抑制のもとでメーガン・レミーという女の子の人格がこっそり破綻している、わたしの中ではめちゃめちゃショッキングな作品。フリージャズに絡めることでその疑わしい雰囲気はぼかされてるけど、戦中のサロンとかキャバレーの踊り子みたいな屈した虚無感が、わたしは女の子だからわかる。ニヤニヤしながら聴いてる男どはみんな毒が回って死んじゃえばいい。
佐藤幸雄とわたしたち/わたしたち
文字が重なるトレース仕様のアートワークが象徴的。NWパンク時代の遊びを「歌と演奏」のあちこちに仕掛けることによって、ことばが���がれるときの心理がこちらに「みえる」作品となっている。柴草玲さんのピアノが入った新しい「わたしたち」は聞き様によってはジャズでもあり、しかし激しく聴き手の感情を揺すぶる。アルケミーレコードからリリースも納得の一枚。
四万十川友美/GAIA
四万十川さんといえばしつこい清志郎オマージュだけど、この作品は、ハードコアあり、ジョナサン・リッチマンのようなポップネスあり、単純に聴きやすい。四万十川友美という人に俄然興味が沸く仕様となっている。惜しむべきところは、つーか、けっこう致命的なんだけど、中村宗一郎や小田島等が関わっていながら力の入れどころがイマイチつかめないところかな。次回作は曽我部恵一プロデュースとかでとことんスベってほしい。
oddeyes/SELF PORTRAIT
時代の過渡期に電撃が走る1枚。ジャキジャキに鋭く切りつけるギターの音が音圧じゃなくもっと切実なところで鳴ってるのに心打たれる。岡村くんが目隠しをしながらライブを鑑賞しているところをよく見かけるけど、その意味が突として繋がってきてゾクゾクきてしまった。彼らを『関西のファイナル・ジャスティス』なんて称えたことがあったが、今やイースタン・ユースと並ぶぐらい重要なバンドだろう。音楽的な文脈を、政治的なムーブメントへとつなげる現代ならではの武器となる音楽。リリックの一言一句は手帳に書き写すべし。
People You May Know/One Hand Clap
疑問と好奇心でトリップキメれる好きなやつ。拍のズレといいよくわからないリズム感とミニマルミュージックっぽい音の循環。よくわかりません。広義のテクノって追求するとキリがないし自己責任な感じがいいっすね
TT/LoveLaws
ダークなサウンドながらリズムが開放的ですごく印象に残る作品。音響の処理が良いのかな?好みのサウンド!WARPAINTは羽化し続ける蝶のようにしたたかでミステリアスなイメージだけど、本作はテレサ個人のパーソナルな作品であり全ての女性の中に存在する葛藤や弱さを肯定しながらも自由に生きる女性像を描いていて非常に共感する。WARPAINTの格好良さにも説得力を持たす力強い作品だと思う。
STRUGGLE FOR PRIDE/WE STRUGGLE FOR OUR PRIDE
1曲目『CHANGE THE MOOD』から時代の流れに沿って新しいフェイズに移行せざるを得ない寂しさに猛烈に襲われたが、2曲目の『すべての価値はお前の前を通り過ぎる』の小西康陽の語りで目の前にある情勢が猛スピードで回りだしてハッとした。そういえば小西さんがエッセイで「人が人��しての生きる喜びを享受できるところが都市だ」と言ってたけど、作品に参加しているカヒミ・カリィや中納良恵にしてもバチっと繋がってくるなあ。憎しみの中にも祝福が共存していてすごく温かい。これが一環してSFPの音楽であるという必然には、ハードコアってこういうことなんだって丁寧にぶん殴られた気分!
CHVRCHES/Love Is Dead
緻密に洗練された楽曲はライブ会場でシンガロングしたら気持ちよさそうな、スタンダードでポピュラーな向きこそあるが、ローレンちゃんのボーカルからは「可愛いヒロイン」ではなくて「個」でありたいという意志表明がはっきり伝わってくる。聴く者の態度を正すような歌声の力強さが、チャーチズの描く世界をより鮮明に押し拡げていて格好良いな。可愛いジャケットも超お気に入り。
NATALIE PRASS/The Future and The Post
ジャジーなR&Bテイストがお洒落!さすがブラッドオレンジやソランジュのエンジニアが参加しているだけあって軽やかな足取りで駆け抜けていくが、ナタリー自体がSt.Vincentと同じぐらい奇抜なフィーリングを持っているところを、わたしは全然無視できない。それでこの音なんだから恐ろしくイケてるわ。
Oneohtrix Point Never/Age Of
生音または肉声とデジタル音をあえて線引きすることで音が垂直に立つ。こういう鑑賞する構築美の完ぺきなプロダクションってわたしはつまらないと思ってるけど、OPNの意図するところはめちゃくちゃ鋭くて興味深い。生音とデジタル音、現実と虚構、心と体。ふたつの波間を行ったり来たり押しては返す、この自由な知覚の働きは生身の生ならでは。音楽のもたらす幸せな体験を思い出させる音楽がこの時代に産み落とされた意味を考えたい。
VEIN/ERRORZONE
90年代の広義のハードコアを網羅した展開の目まぐるしさに引きずり回されながらも、自分の感覚が鋭敏にキレてくのをリアルに感じる。真新しさは無いが、メタルのオタク感にヤキ入れました的な尖りっぷりが最高。先祖帰って先祖に置いとけぼりをくらわすエラーゾーンとか格好良すぎるだろ。ガンガン突き詰めて突破口をみつけてくれ!
FIGHT CLUB/TEAM PLAY
燃費の悪いデブは幸せなのか最近よく考える。カロリーをチャージしろー。敵をあざ笑えー。自分をあざ笑えー。おまえの戦いはおのれの戦いだ。この人らのことは何も知らないけど全力で肯定します。共に拳を挙げたい
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(以下個人的な記録です)
上半期はラーメン食べて自転車に乗って車に轢かれたけど下半期もラーメン食べて自転車に乗ってるにきまってる。
音が鳴ってる場所とそこにあつまる人に興味がある。先日、京都大学吉田寮の寮祭ライブをみてきて多くを得ることができた。立看板の撤去と吉田寮が廃寮になるのを阻止するために学生たちが面白いことを企て同士を募る。音楽もそのひとつだ。
家ではみんなが寝静まったあとにこっそり音楽を聴くし、ライブハウスにいても孤立してたいけど、こういう活気のある場所は遠くても出向きたくなるし、そのカルチャーの一部でありたいと思う。
6月17日の「わたしたちと『わたしたち』」という自主企画も、ほんとうは「カルチャーという力を借りて色んな世代の人たちが同じ社会でつながっていける空間」を提供したかった。(来場者を呼べなさすぎ、というか、届くべき人に届けることができず撃沈してしまったわけだが...)
その日の佐藤幸雄とわたしたちによる「読んでた本が/聴いてる音楽がつまらないなら自分で書けばいい」というアドリブがいまもずっと刺さっている。これは単純にベアーズ本や日の丸の歌のことを連想するけど、突き詰めていけば、奥田愛基が提唱する「だったらすべて新しくMAKEしちゃえば?」の同義だとも思う。(わたし、試されてるな!)
馴れ合いの場は絶対にいやだから友達はいらないけど仲間はほしい
ライブハウスをアングラおじいさんがおしゃべりに来る場所にしたくないけど若い人がそもそもライブハウスにいない
名と経歴にものいわすじじいに負けたくない
遊んでばっかりいたいけど社会からは取り残されたくない
痩せたいけどラーメン食べたい
どうしたら矛盾と葛藤を超えられるかって、
やるしかないって知ってるけど、やっぱりビビってたんじゃないかな。
自分から反射的に弱い立場に立ってしまってよく損をするのはこれまでさんざん嫌な目に遭ってきたからだからそれは自力では変われない
事故って相手にめちゃくちゃに謝ったのも逆ギレされたら傷つくから。
でも、だれかに自分の怪我を指摘されても、事故りましたねん〜アハハってそこで会話が終わってくれないし
何かのせいにして報われるならいいけどそうじゃない
人は車に轢かれたら軽傷だとしても心身ともにまあまあな怪我をするということを知るまでに、26年もかかってしまった
でも、わたしは学ばないような姿勢で学ぶことができる。
そこに自信を持って、
磨きをかけて、
保険を見直して、
出直すわ。
あばよ☆
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2017下半期
下半期聴いた音楽22タイトル。順位なし。発売日順。思い入れのある人やバンドの新作が多くて、思いの丈が長くなってしまった。
Chastity Belt/I Used to Spend So Much Time Alone
退廃的でスモーキーなサウンドからクッキリ浮かび上がってくるパンク・スピリッツ。だけどそのマインド自体は強く無ければ繊細でも無く、ただただ『しぶといんだなぁ!』と唸らせる迫力があって超好き。たとえるなら殻に籠りながらスリーターキニーばりの攻勢かましてるみたいな。内弁慶な自分は拳を握ってしまうところ!
Chara/Sympathy
Charaの歌にはもう10年以上シンパシー感じてるつもりだったけど、本作は、Charaの歌に自分の恋愛を投影するよりも先に、シンプルに言葉でハッとさせられた。そして言葉が届くには音楽が肝で、一緒にやる人をちゃんと選んでるんだろうな。ほとんどの楽曲が共作なんだけれど、Charaの世界から距離を置くことでCharaらしさが全方位で広がる神秘は、まるで広く深いプールの中で宝探しするようなたのしい探��のよう。わたしCharaがずっと好きでよかった !
Kacey Jhohansing/The Hiding
ソフトロックみたいな浮遊感に包まれた眩いサウンドながら、ギターのコード進行が少なくクラウト的な酩酊感があるのが面白い。来日公演では弾き語りだったんだけど、伸びやかな歌声はよっぽど色んな表情を見せて煌びやかだった��、アンプをしきりにいじりながらその場・空間の中で音を作っているのを実際に見ると本質はアコースティックなのかなと思ったり。
Carmen Villain/Infinite Avenue
世界の車窓からで流れてそうな異国情緒を映像的に運んでくメロディーが素晴らしくうっとり聴き進めていたところ、3曲目以降ダークなアンビエント世界に暗転。強迫的展開に失禁レベルでビビりつつ、歌い方がジム・モリソンを彷彿させる切迫感というか際どさを孕んでいてちょっと衝撃的に格好良い。後半のエレクトロニカもアンビエントな趣があって美メロなんだけど、ど〜してもいきなり精神世界に堕とされる陰陽の強さを引きずってしまう。
Deerhoof/Mountain Moves
オークワフィーナやセニア・ルビーノスなどクセの強いゲスト陣が参加していて、さて彼女らがDeerhoofと共にどんな無秩序を奏でるのだろうと思ったら、なんと見事な調和で面食らう。Deerhoofと言われなければわからないかもしれない、"!?"が飛び出す楽曲たちはDJミックスのようにスリリングでたのしい。Deerhoofというバンドのフォーマットの無さに今さら驚くことはないけど、Deerhoofが調和を取れるバンドだという事実を持って逆にカウンターとなる痛快な作品。恐るべし。そりゃ山も動くし海も動いちゃうわ!!
The National/Sleep Well Beast
原点回帰とも成熟とも違うアグレッシブな本作はライブバンドとしてのアティチュードが冴えまくっていて最高。4ADらしいスケール感への挑発ともとれるエッジの立ったサウンドとマットの咆哮に激情揺さぶられっぱなし。そしてこれまで以上に重層的に、抒情的な旋律の上を生楽器が昂りながら呼び合っていて胸いっぱいにカタルシスが雪崩込む。ブルーヴァイナルを購入したんだけどアートワークまで格好良すぎてもう血の涙を流すしかない。
JASSS/Weightless
ノイジーなサウンドから(同郷ということもあり)エスプレンドー・ジオメトリコと並べられがちだが、インダストリアルなビートを執拗に律動するバイブスは、pan sonicに近い偏執っぷりを感じる。そしてそれに加えJASSSの凄いところは、良い意味で女性的で母性があるところだと思う。ミニマルなんだけど、布を縫い上げるミシンとか野菜を千切りにするみたいな、リズミカルなテンポがあって妙な安心���がある。ただ、暴力的でないぶん危険度が高いのは確実。
eastern youth/SONGentoJIYU
『ソンゲントジユウ』のMVに心を打たれ購入。抑圧の中で生きている人の方が多いこんな世の中だからこそ必要なアンチテーゼ。そうだ、こういう音楽で自分を取り戻すために生きてきたところある。そしてこれは村岡ゆかさんの加入によるところかわからないけど、eastern youthという城が壊れて見通しが良くなったような、聴き手に対してよりオープンな感じがした。気軽に聴けない雰囲気があったけど親しみやすいというか。ギターのフレーズとかはやっぱり古くてオッサン層マストなんだけど(笑)。でもGEZANとか若いファンの多いバンドと対バンがあるのがたのしみで仕方ないし嬉しいな。
Ibeyi/Ash
双子の顔が重なるアートワークが象徴的で、2人で1つの"霊"(生命的な意味で魂よりもしっくりくる)から漲るパワーが圧倒的。特に『Deathless』という楽曲は、プリンスみたいなわかりやすいソウルサウンド且つシンプルな英語で綴られており、誇りに満ちているし覚悟がある。その力強い声明は、ビヨンセほど声は大きくなくとも、"霊"を集め、大きなエネルギーとなってエンパワメントできることだけを確信している。切実に、わたしもその一部でありたい。
Yumi Zouma/willowbank
内省的なサイレントディスコ感はそのままにバンド感が増してきて申し訳程度に壮大なサウンドがたまらんのだが、描かれていないところで勝手にグッときてて。わたしは直感的に"親密"というワードを思い強く惹かれるものがあったので来日公演へ行ったのだが、クールなサウンドからは想像もつかないほど、メンバー全員がフロントマンとしてハートでフロアと共鳴していて、カンペキに"親密"という抽象が確信へと変わるアクトだった。揺るがない灯火のようなバンドだと思っていたけどもっと熱いバンドなのかもしれない。思い出すたび心が燃え続ける大切なアルバムのひとつ。
King Krule/THE OOZ
厭世観がこじれていて今年一衝撃を受けた。倦怠と激情が分裂症気味に交錯する歌唱は、オジー・オズボーンのように這いずり回っててヤバい。しかし不思議と閉塞感は無く、ロマンチックな音作りには魅了されるものがある。リアルな葛藤はもちろんもりもり伝わるのだけど、演劇的なヴォルテージで過剰に演出している部分もありそう。むしろクルールのインナーワールドを旅するプロダクションであってほしい。フィクションか否かは分からないけど、どっちにしろ、苦しみを表現として昇華しようとする試みは、すごく成長を感じるし、人間的な美しさが表れてる作品だと思う。名(迷)盤!
Still/I
音数の少ないトライバルなビートの上を暴れ回る脳筋ヴォイスサンプリング。で、そーゆー仕様なのでエスノ感は確かにあるが、SUBLIME FREQUENCIESみたいな伝統芸能的手腕ではなく、パーリーピーポー的な精神が生命力に直結したような若さがフィジカルに炸裂していてエモい。なんつっても底抜けにバカっぽいのが良い。
FEEL THE BURN/PROGRESSION
インドネシア産メタルコア。近年インドネシアではハードコアシーンが盛り上がってるらしい。経済成長の陰で広がる貧困、格差、抑圧的な政治への怒りが若者をそうさせてるとか。アングラヒップホップからはじまるこのアルバムもそういう叫びを含んでいるのは間違いないだろうが、そういうコンテクスト抜きに、単純に曲が良くて刺さった。暑苦しいリフとは裏腹にボーカルが透き通っているから聴きやすいし、決して怒りを散らすだけではなく、人々の心にも風穴を開ける爽やかさがあって痛快だ。大手レコード会社にはさっさとこのムーブメントに目を向けてもらいたいな。
日暮愛葉/YOUTH
「9割が打ち込み」っていう紹介文があったけど言葉足らずすぎなのでは。重心の低いエレクトロサウンドはエクスペリメンタルな音響処理がなされており、まるで歪みの果てのようにさびしい。それでその空間さえも愛葉さんの声でずたずたに裂かれる感触があって、すごく痛い。己と向き合う時はいつも孤独であるように、強さとは異なるストイックさを請け負っていて、紛れもなくロックな響き。感傷に浸りながら独りで聴きたい。
folamour/umami
ブラック・ミュージックをベースにひたすら陶酔へ向かう至高のハウス・ミュージック。1曲目の冒頭にサトウハチローさんの詩が朗読されているのだけど詩のチョイスが最高で。その詩が音楽的であることに気づくと音楽もまた詩的に響いてくる。そういうマジカルな聞き心地が、『うまみ』というタイトルに収束されているとおもう。わたし的にはピチカート・ファイヴみたいな存在の音楽。こういう音楽に出会えるとうれしいな!
Petit Biscuit/Presense
「フレンチ・エレクトロ界の星の王子さま」こと弱冠18歳のトラックメーカーのデビューアルバム。ハウス〜R&B〜ダブステップ〜ドラムンベースなど現行シーンを丁寧に消化しつつ、その世界基準のサウンドスケールがアンビエント/ニューエイジ的な色彩のタッチで描かれていて、極上の心地良さ。先端を行くサウンドなのに神秘的なまでにポップで、まるで今そこにある祈りと希望だけを見据えているかのような深みのある美しい音楽。ルーツが見えないオリジナル性といい、そのセンシティブな感性は、本当にホープだ。ポピュラーミュージックのネクスト・スタンダードの予感!
OBEDIENCIA/Erosión
マドリード出身のスリーピースガールズバンドのデビューEP。Limp Wristなどを排出しているガチムチハードコアレーベルLA VIDA ES UN MUS DISCOSからは意外なナード系パンク。これもローファイなのかな、オケっぽい質感の音で多重録音の一人バンドかと思ったw メロディックなサウンドは時代錯誤しつつも弱々しいエモ寄りのボーカルが乗るとフレッシュでけっこうグッとくる。このバンドの今後もだけど、こういうバンドに目をつけるレーベルは個人的に信頼におけるので要チェックだ。
GUAYS/After my vacant
革ジャンモヒカンのイメージが強いグアイズが、まさかGEZANやB玉よりもピュアで聴いていて恥ずかしくなるくらいユースのためのロックンロールを鳴らしているのにグッとこないわけない。正直アラサーにはもう響かないサウンドではあるものの、次のステージへの予感を漂わせながら"まだまだ転がっていくぞ!"という決意とともに未来への展望がサーっと広がっていくラストは、1stアルバムに相応しく本当にわくわくする。青春って終わりがあるから美しいんだよなぁ。音楽を聴き始めたティーンがグアイズのライブをみて衝撃を受けるまでのドラマがもう約束されているようで夢がある。
ERRORSMITH/Super Fatigue
キックの強さで一応テクノの体裁を取りつつ、その上をヴォイス・フレーズがサイキックに伸びたり縮んだり引っ張られたりしているザマは、なんだか脱線パンク的なノリでコミカルだ。アフロEDMなんて紹介されてるのをみて超胡散臭い...と思ったけれど、たとえばオマール・スレイマンの高速ダブケみたいな民族臭もしないし素面で作ってるとしたらイルな恐さがある。音数は超少なくても確実にフロアがドープに揺れる音/空間使いは彫刻のように確信的で、なんだかんだスキルがないと成り立たないセンスを感じる。
MILK/ALL ABOUT MILK
キター!MILKの1stアルバム!!ハードコアへの愛情とバンドの信念が一緒くたに転がっていて最高だ!衝動に満ちたサウンドは歪なようでバンドのアンサンブルが超キマッてて最強その生真面目さにバンドの本質を見るような思い。アンプ繋いでるのかと思うくらい音はペナッペナなんだけどガッツガッツきてて泣きそう。そしてそのどうしようもないぐらいのハードコアが、ライブレコーディングのようなこんもりとした録音に閉じ込められていて...もう爆音で開放してあげるしかないっしょ!早く遊びたい!
SUGIZO/ONENESS M
ヴォーカリストを迎えた���作は、ギターワークもといもっと根元的な、SUGIZOの美意識が宿る作品となっている。特にK DUB SHINEの『levelmusic』が異質で最高。この曲目当てで購入したのだが、他のどの曲もSUGIZOのルーツや飽くなき探究心がボキャブラリーとして散りばめられており、思いのほか良かった。わたしはSUGIZOをマイルス・デイヴィスやデヴィッド・ボウイと同じぐらい自由に音楽へアプローチする人だと思ってる。わたし2017年にもなってSUGIZO様♡♡♡言ってるからね。
LAU NAU/Poseidon
箱庭的であるが、ピアノ+ストリングスのレイヤーサウンドあるいはエレクトロニクスの融合は、壮大なスケールをもってどんどん広がってく感じがあり普遍的だ。『心象スケッチ』ということばを思い出したけど、まさにわたしにとってはそういう音楽。布団にもぐって鬱屈した心が宇宙につながっていくまでを丁寧になぞりながら聴くのが好きだな。解き放たれるというよりは同化してしまって無になれる愛しい時間。
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日々の子育てに疲弊し生活に音楽が全く必要ないことを知ってしまったここ数年だったが、音源を購入したりライブ通いを再開してみて圧倒的にたのしい1年だった。物理的に音楽を聴く時間が増えたのもあるが、家庭・育児と趣味が対立せず共存できたこと、わたしはわたしを評価してあげたい。
(以下個人的な記録です)
今年4月から息子を平日毎日9時半〜13時半まで児童発達支援に預けてるんだけど、現在進行形で超救われてる。 知らない土地でのひとりぼっち育児はほんとにヤバい。日中ただでさえ子どもの身の回りの世話や苦手な家事に追われ疲れてるのに、毎晩急に起きたと思ったら笑いながら朝まで走り回ってた時期があって、その時わたしほんとに病気だったと思う。夜中泣きながら子ども置いて家を出たこともあるし子ども虐待のニュースを見る度いつか自分もそうなる気がして怖かった。お母さんだから大丈夫って、全部背負って差し出された手も払って壊れて失望してって・・・。
児童発達支援に通わせ始めたのは発達不安があったからなんけど、いざ昼間ちょっとのあいだ子どもと離れてみると、なんでも出来ちゃう気がしたのね。ランチも食べに行けるし音楽もたくさん聴ける。お母さんだってひとりの人間なんだって実感出来たし、そこでやっと息子とちゃんと向き合えるようにもなった。
好きなことってほんっっと心を豊かにする。 生活するのに音楽は必要なかったけど、これまでの人生で当たり前のように聴いた音楽が、いかに支えとなっていたか、自分にとってはどれほど必要なことか、ぜんぶ意味を持って返ってきた。 ぶっちゃけ、月3回ライブに行ったところで、慢性的な子育てのしんどさはまだとれない。それでもだましだましやるっきゃなくて、それくらいの余裕は今のわたしにはある。わたしの日々は充実している。
「お母さん」という肩書きの呪いを破り、自分の「個」を取り戻した2017。2018はもっと自分を��みにいくために外側から音楽と関わっていきたい。音楽への探究はやめない!
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2017上半期
上半期聴いた音楽まとめ。
聴いてるようであまり聴けてない15タイトル。発売日順。順位無し。印象に残らなかった作品含む。
AUSTRA/Future Politics
エレクトロの強度が増しkatie嬢のオペラ歌唱が存分に発揮された今作、サイバーパンク感もりもりでぶったまげた。そしてそれが決してレトロフューチャーなんかではなく、『地球防衛軍』や『火の鳥未来編』みたいな現代社会へのアンチテーゼだというところ。2013年度のホステスでこのバンドを見て、ゴスで煌びやかな集団というイメージを持っているが、不穏に侵食するこの『Future Politics』が、明るく響く未来はあるのだろうか?
NEON BUNNY/Stay Gold
夢みたいなメランコリーにうっとりしていたら、魔界からのラジオを誤受信ちゃったみたいな電子回路のバグあり。思わぬアンダーグラウンドな広がりに心存分かき乱れたなら、今度は、NEON BUNNYの絡みつくスイートな声に誰もが結婚したいと思うはず。塩で甘みが引き立つ的な作用がはたらく、この魔力にはどうだって逆らえない。
Sleater-Kinney/Live in Paris
タメがめちゃくちゃ効いていて最高。緻密に構成されたパンクとでもいうか、でも、そういう計算を微塵も感じさせない、イカツイ女たちのフォーメーション。格好よすぎ!
JUANA MOLINA/Halo
ジャケットの骨(ジェイ・ボーンという名前らしい)が、音像から立ち上がる摩訶不思議なお話の中で踊る奇妙なファンタジー仕立て。コンセプトアルバムなのかな。複雑さこそ削ぎ落とされたが、音数が少なくなった分かなりヘヴィでゴシックぽい。オジー・オズボーンみたいなファナの最新ルックに驚いたが、音源も遠からずでひっくり返る。
Julia Holter/In The Same Room
シェイクスピアは人生を舞台に例えたが、このライブアルバムもまたヒトの生き様を起承転結で要約したかのような構成の妙で潔さがある。完ペキすぎるパフォーマンスの場ゆえ、”瞬間”においては、思わず客席に同情したくなるほどの静謐が求められているが、この”記録”には、喧騒もあるし怠惰もある。もっと言うと主婦が買い物に行くとか惰性で夜更かししてるみたいな、なんの感情も湧かないコマでさえ、ひとつのシークエンスとして映えるのだ。人生ドラマに粋な演出をもたらす、何を聴くか悩んだらとりあえず「適当」な1枚。
クリトリック・リス/HAGECORE
ライブパフォーマンスありきのクリトリック・リスがメジャーデビューするということ/音源を出すということの意味について、このアルバムを聴いても繋がらなかった。調子乗ってんな!って思うけどこのまま調子乗ってないとやばいのでは。フリマアプリで1300円で売れた
Feist/Pleasure
変幻する声色とソリッドに刻まれるギターの音色が、エモーショナル全開に解放/開放されいて圧倒される。その場をダイレクトに伝えるアコースティックな質感がそうさせるのか、とても良い。音数はグッと絞られているが、そのぶん様々な呪縛から放たれる歓びと豊かさがなんともエレガンスに溢れており、花束もといガッツポーズを贈りたくなる瞬間が幾度も。すてき!
Mac DeMarco/This Old Dog
クイーンズの最果ての田舎からロスに引っ越したそうだが、これまでのトゥーマッチ感よりも、大都会でこういうゆるいサイケデリアが浮遊していると思うと愛しさしかない。痛みを伴いながらも慈愛に満ちた傑作。
Forest Swords/Compassion
ダークな作風でありながらシリアスさや崇高さは皆無で、むしろ多種多様な音やジャンルが躍動的に交錯しているが、このメルティングポットはどろどろと煮込まれ、最早R&Bやアンビエントな趣すらある。そして、ジャケットの膝小僧に石乗っけて恍惚そうな男について、変態だと安置に片付けてしまうには音とフィットしすぎだし、なぜこんなに惹かれるのか。ナゾ解きをするように何度も聴いてしまって今や愛聴の1枚(なんかわからんが良い)。
Taiwan Housing Ploject/Veblen Death Mask
フィードバッグノイズと荒々しくサックスが入り乱れる様はゴージャスな猥雑さがあるが、バンド自体はスカスカのB級パンクで、皮肉にもどこかポップに聴こえる可笑しみ。バンド名とジャケットのせいで、色々ぼやけまくってるけど、ネタ的には面白いので無問題。
柴田聡子/愛の休日
あえて『DO YOU WANT TO REST FROM LOVE?』っていう英タイトルにメッセージを託すところがおしゃれ。そこには自然と社会性が乗っかって��るけど、その危うさはバンドアンサブルの魔法によって良い意味でぼやかされており、個の自由には侵食しないさせない懐の深さがある。シティポップを「現象」として上手く時代に取り入れた、本当の意味のグッドミュージック。
DJ tenniscoats/ヒップホップ・テニス
ぶよぶよのビートにアメリカンブルースの亡霊が宿ったフォーク。ハイブリッドなリズムの冒険はもちろん無く、AMラジオで流れるようなDJリミックスに歌心がぼんやり滲んでいるだけ。そのアシッド感の強烈たるや、リゾート地外れのチャイナタウンや天王寺の青空カラオケのようなヤバイ治安を感じるが、このドキュメントは、チンドン屋的なノリで、気負うことなくストリートと人を巻き込み繰り広げられる。極めてピースフルでラブなのだ。テニスコーツらしいヒップホップ解釈にはあったりまえのにんまり!
HYUKOH/23
革ジャン、煙草、バイク、逆立てた髪の毛・・・音に投影された憧れの形と分かりやすい佇まいが格好良い。ほどよいアシッドをもたらす韓国語の響きと音の彩度のせいで、サチモスと比べられているようだが、エルヴィス・プレスリーやミッシェルガンエレファントのようなベタなロックと並べられるべきエッジの立った音楽だと思う。
CAR10/CAR10
自分の煮え切らないケツを叩くようにどんづまりのようなところから楽園へと誘う。嘘のない姿勢にみんな着いて行く。歌心って歌の上手い下手ではないんだろうな。ボーカルはうだつの上がらなさそうにヘロヘロしているけど絶対イイ奴だし、演奏も上手いのに格好つけないばかりか、等身大よりもハードルを下げることを大切にしていて、確かな求心力がある。最新のCAR10が最高なので、今ノッてるバンド!というのは間違いないけど、一番気楽で楽しいスタンスを知ってるこのバンドは、もっとノらせておくべきだし、わたしはこのバンドとはこれからも多くを共有しながら人生遊ぶって直感してる。
Nene Hatun/Metacommunication(EP)
怪しく蠢くビートに銃声のような破裂音の乱射。ショッキングな音像そのものより、Nene Hatunという人物がベルリン在住トルコ人女性であるという背景から勘ぐってしまう他所者としての卑しさ、そしてそこから示唆されるリアルに、聴いてはイケナイ気持ちにさせられるが、そこに向き合わされるリアルさも当然あるわけで、一音一音が持つ強度や唸るような声のサンプルからは、音以上にド迫力でリアルな声明を読み取ることができる。破壊的なようで一本スジの通った美意識が貫かれており、畏怖の念が払拭される瞬間、なにか解き放たれるような快さがある。Metacommunicationという言葉も興味深い。
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上半期ベストアルバムと題したリスナー個人のラン��ングをよく見かけるが、どういう聴き方をしたら上半期だけで50枚も聴けるのか。
いざ、こうして自分の聴いたものを並べてみると答えは明確で、ああ偏ってるなぁと思う。
反メジャーとか思ったことないのに結局そうなっちゃうし、自分の好きなシーンですら生理的に受け付けない場合もある。コーネリアスはどんなに音楽が良くたって響かないし、曽我部恵一は好きなのにサニーデイ・サービスは好きになれない。どついたるねん、have a nice day!にしても、集団としてはかなり強力だし、この時代のリアルを含ませようとしているところにはちゃんと共感できたりする。でも肝心の音楽がどうしても面白くない。
中原昌也が、嫌いそうな映画は無理して観なくていい、みたいなことを言っていたが、音楽も同じだと思う。わたしは、「わたしの根底を流れるアナーキーには誰も邪魔させない」って、そういうスタンスでわたしが聴くべき音楽だけを選択してきた。みんな良いって言ってるのに良いと思えないことに恥じたくないし、良いと思えない音楽のために、コンプレックスを刺激されてたまるかよ。 これも好きでしょって言われたらたぶん好きだし、極端なのがやっぱり好きだ。そして、そういう自分が唯一良いと思えるから、自信を持っていたい。わたしの理想はいつだってわたしの中にあるから。
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