Tumgik
#金鱗湖周辺
kyotomoyou · 2 years
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【大分県】金鱗湖 . 温泉で温かいので 冬の早朝は温度差で湯気がたちます . (2020/02/19撮影) . #金鱗湖 #金鱗湖周辺 #金鱗湖散策 #湯布院 #由布院 #湯布院金鱗湖 #大分県 #大分旅行 #大分観光 #大分県湯布院 (金鱗湖) https://www.instagram.com/p/CmTuMRtv8R4/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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rezagrats · 5 years
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a ford connected to Lake Kinrin. #yufuin #lakekinrin #由布院 #金鱗湖 #金鱗湖周辺 #金鱗湖散策 #茶房天井桟敷 #impressionistic #earlysummergreen #earlysummergreenscenery #earlysummergreenery (at 由布院 金鱗湖) https://www.instagram.com/p/BxL4J6NA-60/?igshid=1oay67t7m6sut
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tadashiura · 4 years
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紅葉が超絶素敵な湯布院で10月31日から1ヶ月間個展します!秋のGOTOはぜひ大分は湯布院へ(^o^)✨ 
 10月31日はのんびりとご観光を楽しみながらライブドローイングもご覧いただけます
✨ お宿の予約はお早めに✨ \(^o^)/✨ 



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浦 正 個展「覚醒」 TADASHI URA solo exhibition 2020 in YUFUIN | AWAKENING 10月31日(土) ~ 11月29日(日) 10時 ~ 17時 入場無料 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 目を閉じて見える景色がある はるか彼方の世界が見える そこは透明で美しく どこかとても懐かしい 秋色に染まる金鱗湖のほとりで 僕も君も目覚めていく ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ CAFE LA RUCHE Gallery & Shop 2F 〒879-5102 大分県由布市湯布院町川上1592-1  TEL 0977-28-8500 定休日:水曜日 駐車場:5台 
cafalaruche.jp #yufuin_cafelaruche ★★★ ★★★★★★★★★
Special Event day 10/31(Sat) Live Drawing with UQiYO ★★★★★★★★★★★★ 個展初日の10月31日土曜日13時よりカフェスペースで浦正とUQiYOによるライブドローイングを開催します。ライブは13時~14時、15時半~16時半の二部構成にて休憩を挟みつつのんびりと開催します。金鱗湖周辺ご散策の途中に、どうぞお気軽にお立ち寄りください。 ◆ご入場ご観覧は無料ですが、マスクのご着用と1ドリンク等のご注文を何卒よろしくお願いいたします。 ◆コロナ禍により急遽開催を中止する際は下記URLの個展告知ページにてお知らせいたします。 → https://tadashiura.com/news <profile> 浦 正:画家、詩人、イラストレーター、奏墨主宰
 長崎県出身、横浜市在住。画家として国内外での展示やライブパフォーマンスを多数行う一方、イラストレーターとしても25年以上に渡り様々なクライアントワークを手掛ける。「sumi-e society 奏墨(そうもく)」主宰。
 more info #tadashiura ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ Special thanks to UQiYO < #uqiyo2010 > Namy& < #namyand.com > spumoni < #spumoni.ma > yufuin wedding < #yufuinwedding > 束の間 < tsukanoma.club > 165 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

#浦正 #個展 #exhibition #awakening #art #illustrations #suibokugapainting #tadashiura #soumoku #japanismlion #奏墨 #水墨画 #yufuin #gallery-jiyugaoka #大分 #湯布院 #yuhuin #由布院 #cafelaruche #束の間 #金鱗湖 #livedrawing #livepainting #uqiyo2010 #namyand_playlist #yufuinwedding #yufuin_cafelaruche #spumoni.ma https://www.instagram.com/p/CFic7CBjr_f/?igshid=1rj0wy63a5x4h
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h-dkk · 3 years
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大分旅行② 今回の宿は湯布院にある、ゆふいん亭です。 落ち着いた雰囲気と気さくで親切な旅館の方々のおかげでリラックスできて癒されました🎶 食事も美味しく、何よりも温泉卵🥚とビールサーバーでのビール🍺が飲み放題との事で夫婦でいただきまくりましたw 温泉からは美しい由布岳が見れて最高でした✨ 嫁様と娘達が喜んでくれてたのがなによりでした😄 明日は金鱗湖周辺の散策です☝️ ☀︎ ☀︎ #大分 #湯布院 #由布岳 #ゆふいん亭 #おもてなし (御宿 ゆふいん亭) https://www.instagram.com/p/CYG0UfSp0n_/?utm_medium=tumblr
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mashiroyami · 4 years
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Page 116 : 空と底
 ブラッキーの牙が、アランの身体に突き刺さった。  激しい飛沫が五感を遮ろうと、栗色の双眸は獣の動きを克明に捉えていた。直前の行動は意志というよりも反射であった。アランは辛うじて身を捩り、それは首ではなく左の肩口を襲った。致命傷こそ避けたが、アランは堪らず痛みに声をあげた。深く、ヤミカラスを食い破ったいくつもの牙が穿たれたまま離れない。ブラッキー自身から溢れるものと合わせて、赤い色水をぶちまけていくように傷からあっという間に赤が広がっていく。  それでもアランは強くブラッキーを頭から抱擁した。しかし、服が水を吸い込み、痛みは一気に体力を奪う。だんだんブラッキー諸共、沈んでいき、辛うじて顔を出すのに精一杯であった。  湖畔から呆然と見つめていたエクトルは水タイプのポケモンを持ち合わせていない。だが、漸く脳内でスイッチが入ったように、背後を見やった。 「ガブリアス、来い!」  背中越しにドラゴンを呼ぶと、逆鱗直後とは考えられぬほど従順に命に従い、涙目で地面にへたり込んだフカマルを置きざりにしてガブリアスはすぐさまエクトルの傍へ来た。一瞬振り返った後にまた湖面に視線を投げると、目を疑った。  平穏な湖に異変が起きている。  彼女らを中心として、湖面にゆるやかに渦が発生している。いわば渦潮である。ほとんど水流の生まれていない今、それも比較的浅い岸辺、自然現象としては起こるはずのない出来事だった。  しかし、エクトルはその光景に対して既視感を抱いた。何故と動揺し判断を失念した間に、初めは細波程度であった勢いが、瞬く間に強くなった。見えない巨大な力で乱暴に掻き回される。上空は不変に広がる蒼穹、照る太陽の光が波間で反射する。まるで湖にだけ嵐が起こり始めたようだった。勇敢なヒノヤコマやピジョンが柵を越えて救助を試みようとするが、水の勢いがあまりに強く近付くことすら叶わない。  二対の声が小さくなって、とぷん、と、中心に吸い込まれるように、不意に掻き消された。  ざわめくのは、渦巻く激流の荒れた音と、空疎な羽ばたきと、錯乱するエーフィの叫び声のみ。  エクトルの脳裏で湖へと引き込まれていく主人の姿が重なった。  浮かんでいた血は荒い白波にほだされて、深い青に沈んでいった。
 *
 湖面が遠ざかっていき、鮮血が煙のように上がっていく。  突如として襲った渦潮に巻き込まれ、激しく突き動かされながら、その流れから漸く手を離された時には、戻りようもないほど深い場所へと彼等は身を沈めていた。  身体を覆う服が重く、浮き上がることは叶わない。  傷つけられた身体は更に渦潮に打ち付けられ、空気を吸いこむ間もなく水中に引き摺り込まれた。少女は獣を離さなかったけれど、最後に苦しげに口から水泡が絞り出されて水面へ浮かんでいった頃には、とうにはっきりとした意識は失われていた。  晴天が放つ陽光が遙か遠くで木漏れ日のように輝いていた。誰も居ない暗闇へと誘われていく。月輪が朧気に光り、暗闇で位置を示しながら、抵抗無く沈みゆく。底に向かう程に冷たくなっていく感覚を、彼等の肌は感じていることだろう。
 *
 きっかけは、地震だった。  吉日と指定されて熱に浮かれた秋季祭の中心地にも、その地響きは僅かに伝わった。静かに一人座り込んでいれば辛うじて感じ取れるかといったような、ほんの少しの違和だった。だから、ザナトアはその不自然な一瞬を自らの足先から電撃のように伝わった直後は、気のせいだと思った。ポッポレースを終えて選手も観客も労いの空気に包まれていて、誰も気付いていなかったからだ。  揺れる直前には、ザナトア率いる野生ポケモン達のチームが参加する自由部門のレースは殆ど終了していた。  ポッポレースが終わってしまえば、ザナトアにとって秋季祭という大イベントは殆ど終わる。  ヒノヤコマを初めとして、群れを牽引する者の不在を、ザナトアは少しも不安に思っていなかった。たとえ群れに馴染めなかったとしても厳しい野生の世界で逞しく生きていくために育成を施してきた子達の、集大成にあたる舞台なのだ。結果的に、誰一匹として離脱することなく、チェックポイントを全て回り、ゴール地点まで還ってきた。順位は下の上といったところだろう。充分な結果だ。遠くないうち、冬が本格的に始まる前に野生に返す準備をしなければならない。彼等にとってのザナトアの役割は終わりを迎えようとしている。喜ばしいことだ。しかし少しだけ寂しい。彼女はおやではないが、おやごころが芽生えるのだ。たまにヒノヤコマのようにそのまま卵屋に棲み着いて離れない者もいるけれど、ザナトアは微妙な胸中に立たされる。複雑なおやごころである。  当初の予定よりずっと少ない面子の乱れた羽毛をブラシで丁寧に梳かしてやり、一匹一匹に声をかけていた最中だった。 「……地震?」  ぽつりと呟いて、周囲を見渡した。  だが、誰も顔色を変えずに歓談している。地面が、一瞬だけ突き上げるような、浮かぶような力が加わったように感じた。視線が上がり、白く塗られた電灯同士を渡る旗の飾りが、揺れているのを発見した。留まっていたポッポが羽ばたいたために大きく揺さぶられていた。  果たして、ブラッキーはどうなっただろうか。水面下での懸念事項がはっきりと浮かび上がる。  ザナトアは、アラン達なら大丈夫だと考えていた。楽観的だととられるかもしれないが、アランは依然未熟なトレーナーであるものの、ポケモン達は彼女を見捨てていなかったからだ。獣が強いほど、弱い人間は嘗められる。だが、エーフィ達は決してトレーナーを見下しているわけではない。  アラン達が寂れた育て屋を訪れた日、ザナトアはかのポケモン達に問いかけた。あのトレーナーのことが好きか、と。アメモースはどっち付かずな反応を見せたが、エーフィとブラッキーはすぐに首肯した。良くも悪くも複雑な思考をする人間より、獣はずっと素直で正直だ。彼等の詳しい経緯をザナトアは知らない。これからも知ることはないかもしれないが、ただ一つ確実なことがあったとすれば、あのトレーナーとポケモン達の間には、ザナトアが一瞥しただけでは理解できなかった繋がりが存在している。  ポッポレースの表彰式を促す放送が周囲に響き、熱気の冷めやらない人集りが移動し始めた。  顰めた面をしたザナトアの手が止まったことに不満を抱いたのか、毛繕いを受けていたムックルが鳴いた。声に弾かれ、ザナトアは我に返る。  不意に気付く。大丈夫だと思い込みたいだけなのだ。  無性に胸が掻き立てられて仕方がなかった。
 *
 薄暗くなってきた祭の露店に明かりが灯る。自然公園に設営された屋外ステージで行われたポケモンバトルも幕を閉じ、熱い拳握る真昼から一転、涼やかな秋風が人々の蒸気を冷まし、ちらほらと草原に人が集まり始める。子供から老人まで、配布された色とりどりの風船を持つ姿は微笑ましい光景だ。  秋の黄昏はもの悲しさを秘める。生き生きとした夏が過ぎて、豊かな穂先は刈られ、花々は枯れ、沈黙の冬に向けて傾いていく。雨は冷たくなり、やがて雪に変わる。積雪の下には、次の春へ向けた生命がひそやかに眠る。季節は循環する。儚く朽ちてゆく間際、最も天高くなる時期、人々の願いと感謝が込められた風船は夕陽が沈む瞬間を見計らって、高々と空へ昇る。来る瞬間へ向け、準備が個々で進められていた。  その中には、エクトルの友人であるアシザワの姿もある。  幼い子供は沢山貰ったお菓子をリュックに詰めて、同じ年頃の友達と自然公園を無邪気に駆け回っていた。きゃあきゃあと黄色い声が飛び回る。  湖面に迫る夕陽を前にして一人佇んでいると、普段は思い出しもしないことが浮かんでくる。たとえばそれは聞き流していた音楽だったり、記憶だったり、要はノスタルジーに包まれる。思い出といえば、大役を解かれ休暇を貰ったというのだから無愛想なあの男も暇潰しにでも来るかと思ったが、的外れだったようだ。 「何をぼーっとしてるの」  ぼんやりと芝生に座って三つ分の風船を持ち子供達の姿を眺めていたところ、声をかけられて顔を上げた。朱い夕焼けより少しくすんだ、けれど綺麗な赤毛をした女性に、アシザワはおどけた表情を返し、アンナ、と呟いた。 「何も」 「そう? なんだか珍しく寂しそうだった気がしたけど。はい」  と言って、アンナはアシザワに瓶ビールを手渡した。既に王冠は外されている。湖面を渡るポッポの絵が描かれたラベルが貼られた限定品だ。 「ありがと。お、ソーセージ」 「美味しそうでしょ。列凄かったんだから」 「かたじけない」  アシザワが仰々しく頭を下げると、わざとらしさにアンナは吹き出した。 「李国式だ」 「古風のな」  にやりとアシザワは笑む。  彼女は大ぶりのソーセージがいくつも入ったパックを開ける。湯気と共に食欲を刺激する強い香りが漂う。祭で叩き売りされる食事というのは、普段レストランで味わうものとは違った、素朴でジャンクで、不思議な希望が詰められた味がするものだ。子供も大好きな一品。添えられたマスタードをたっぷり絡めるのがアシザワは好きだった。その良さを知るには子供はまだ早いのが残念なくらいである。 「風船持とうか」 「いい、適当にするから」  瓶を傾け、一気に喉にビールを流し込む。まだ明るいうちに喉を通る味は格別だ。これもまた子供には早い。無邪気に遊び回る子供は自由で時折羨ましくなるけれど、不自由なことも多い。やがて適当に流すことを覚え、鬼ごっこやおもちゃとは違う楽しみを覚える。 「手紙、書いた?」  風船に括り付けるもののことである。人によっては、感謝だったり、祈願だったり、愛の告白だったり、様々な思いをしたためる。  昔は、湖に沈んだ町や大洪水に呑まれた魂を悼み、天空へ誘うポケモンを模していたと聞いている。だが、現代になるにつれ外部の観光客も楽しめるポップな様相へと変わっていった。それでいいとアシザワは思う。水神の未来予知だって、現代は科学が発展して天気予報は殆ど当たる。災害予測も技術が進めば可能だろう。宗教を盾に権力を振りかざして胡座をかいているクヴルールは正直気に入らないところがある。若者を中心に、そう考えている人間は少なくはない。時代が変われば文化も考え方も変わる。  瓶ビールを半分ほど一気に流し込んだところで、口を離した。 「そんな恥ずかしいことはやらねえ」 「ええ? 去年は書いたじゃない。家内安全って」  アシザワは苦い表情を浮かべる。 「そうやって覚えられるから嫌なんだよなあ」 「子供みたい」  くすくすと笑う。真新しい薬指に銀の輪が嵌められた左手が夕焼けに煌めいて、金の輝きを放つ。  赤と、青と、黄色、三原色の風船が穏やかな風に揺れている。湖面の方角からやってくる秋風が心地良い。  秋季祭が終わっていく。 「あーっチューしてる!」  目敏く幼い少年が叫んだ。  いつの間にそんな言葉を覚えたんだ、と思いながら、アシザワは振り返った。その先で黒い影法師が二人分ずっと伸びているのを見て、これは風船があってもばれるなと気付いた。まあいいか。ビールを置いて、走っても走ってもなお体力を有り余らせている子供に向けて、誤魔化すようにソーセージを高々と見せた。ご馳走を目にして歓喜の声をあげながらやってくるユウにも、隣で笑うアンナにも、思いがけず強い感情が込み上げる。この瞬間を、幸福と呼ばずしてなんとするだろう。
 *
 長い時を経て、縁の途切れていたエクトルとザナトアが再会したのは、秋季祭が夜に沈んでいこうとする頃。   喚くようにヒノヤコマ達がザナトアを探しに来た。宥めても混乱が収まらず、明らかに様子がおかしかった。彼等に連れられて、老体に鞭打ち、通行規制が解かれた湖畔に足を運んだ。場は騒然としていた。罅の入った道路を早急に隠すように工事準備が進められ、車道は片面通行となっている。エーフィは芝生に座りこみ、憔悴した顔で、鳥ポケモン達の声に気が付き縋るように振り向いた。隣にはアメモースもいる。目玉を模した触角は垂れ下がって動かない。彼女の傍をフカマルも離れないようにしていた。腕白小僧には似つかわしくない気落ちした表情をしている。鮮明なテールランプが夕焼けを切り取って回転している。ザナトアは立ち尽くし、言葉を失った。更に奥で、水ポケモンに指示を終え、救急隊が全身ずぶ濡れになって蒼白になった少女と黒い獣を担架で運んでいる。その様子を、嘗ての愛弟子は、ザナトアが本当の息子のように想っていた男は、至極冷静な表情で見つめていた。  遙か向こう、祈りの風船が群を成して、夕景に昇っていった。 < index >
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groyanderson · 5 years
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ひとみに映る影 第一話「めんそーれ猪苗代湖」
☆プロトタイプ版☆ こちらは無料公開のプロトタイプ版となります。 段落とか誤字とか色々とグッチャグチャなのでご了承下さい。 書籍版では戦闘シーンとかゴアシーンとかマシマシで挿絵も書いたから買ってえええぇぇ!!! →→→☆ここから買おう☆←←← (あらすじ) 私は紅一美。影を操る不思議な力を持った、ちょっと霊感の強いファッションモデルだ。 ある事件で殺された人の霊を探していたら……犯人と私の過去が繋がっていた!? 暗躍する謎の怪異、明らかになっていく真実、失われた記憶。 このままでは地獄の怨霊達が世界に放たれてしまう! 命を弄ぶ邪道を倒すため、いま憤怒の炎が覚醒する! pixiv版 (※内容は一緒です。)  (前作までの「NICシリーズ」につきましてはこちらをご覧下さい。)
 ◆◆◆
 それは私がまだ会津(あいづ)の猪苗代町(いなわしろまち)に住んでいた、中学1年生の時の事だった。
 玲蘭(れいら)ちゃんは、ある日沖縄から私の学校に転校してきた。 東北地方の田舎に県外から転校生が来るのは珍しく、彼女はクラスのちょっとしたアイドルだった。 しかも意外だったのは、彼女は祝女(ノロ)という沖縄の伝統的な巫女さんで、中学生なのに悪霊払いや地鎮祭の仕事をしていた事だ。 電車で石筵(いしむしろ)にある霊山に行って、かわいい巫女服で修行をしたりしていて、まるで本物の魔女っ子みたいと当時の私は憧れていた。 どうして私が、彼女のそんな特別な事情を知っていたかというと…私も昔石筵の観音寺に住んでい事があって、少しだけ他の人にはない力を持っていたからだ。
 私の家は代々、影法師(かげぼうし)という霊能力を継承していた。 念力で光の屈折を歪めて色んな形の影絵を作ったり、自分やものの影に幽霊を取り憑かせて操らせたりする術だ。 霊能力の才能を認められた小さい頃の私は、家族の意向で、小学校に上がるまで石筵の観音寺で修行して過ごしたのだった。 加えてそこの和尚様は、昔チベットで修行をされていて、「タルパ」という人工の魂を作る術も持っていた。私はそれも少しだけ教えて頂いた事がある。
 人間の子供の魂は、周りの幽霊や、幽霊未満の人の想いの名残りを吸収しながら成長していき、やがて自我が芽生える。 タルパはそういった身の回りに漂う魂のかけらを人為的にかき集めて、自分の想像力や念力で魂に成形する技術だ。 だからそれは、人を1人生み出すのと同じくらい重みのある行為だと、和尚様はよく説かれていた。
 とはいえ、幼い頃の私が作る事を許されていた魂は、虫や小鳥とか、古道具に染み付いた気持ちを具現化した小さな神様の影絵だけだった。 それゆえタルパ作りは影法師の修行の一環ぐらいにしか思っていなかったし、山を降りてからはやり方も殆ど忘れていた。 でも中学で出会った玲蘭ちゃんは、かわいい猫の魂を作ってペットにしたり、 漫画のキャラクターにそっくりなイケメンの魂を作ったりしていて、当時の私にとってすごく衝撃的だった。 むやみに魂を作ることは良くないと和尚様から教わっていたにも関わらず、当時の私は遊び感覚で玲蘭ちゃんにリクエストをしてしまった事も度々あった。
 だけど私達は、そういう「人工の命」達の重みを突然思い知らされることになった。 ある日、玲蘭ちゃんが私に相談を持ちかけてきた。 作った魂が暴走して、手のつけられない悪霊になってしまったらしい。
 実は玲蘭ちゃんのお父さんは、福島に赴任してから職場の女性と浮気していた。 お母さんはそれを知っていたけど、玲蘭ちゃんの学費のために離婚できないという。 そこで玲蘭ちゃんは、お父さんがまた別の県に異動になれば浮気をやめてくれると考えた。
 玲蘭ちゃんのお父さんは主に猪苗代をまわる観光バスの運転手だった。 だから玲蘭ちゃんは、猪苗代が観光地として人気がなくなれば、お父さんの福島での仕事が減って異動になると考えた。 そして猪苗代湖(いなわしろこ)に巨大な恐竜の未確認生物が出るという都市伝説を利用して、恐竜の姿の魂を作り出し、暴れさせた。
 その作戦の効果は絶大だった。霊感のある観光客が湖に近寄るのを恐がり、猪苗代を守っていた仏様方は恐竜に怯えて逃げ出した。 すると湖に悪い物が集まってしまい、県内外から入水自殺者までもが引き寄せられるようになった。 当然猪苗代の評判はガタ落ち。ただ、本当の問題はその後に起きた。 集まった悪霊を吸収して力をつけたその恐竜が、湖を出て市街地で暴れだしたんだ。
 DNAを持つ動物から生まれた命と違って、人工の魂の本能は、完全に作り手が創造した通りになる。 肉食の獣という設定の魂を作れば、その魂はたとえ触れられなくても草食動物に付きまとい続けるし、 薬物中毒者という設定にすれば、その魂は消滅するまで永遠に苦しいまま生きる事になる。 玲蘭ちゃんは猪苗代湖の恐竜を作る時、湖に誰かが来たらともかく暴れ回るように作ってしまったらしい。
 ◆◆◆
 恐竜騒動が始まってから数週間後、猪苗代の中学に通っていた私は、石筵の和尚様に呼び出されてこの件について何か知っているか尋ねられた。 友達の引き起こした不始末を告げ口するようで気が引けたが、私は仕方なく恐竜の正体について打ち明けた。
 すると和尚様は私を、山の麓の熱海町(あたみまち)にある、大峯不動尊(おおみねふどうそん)という小さなお寺へ連れて行かれた。 そこで二人で影法師を呼び寄せる真言を唱えると、萩姫(はぎひめ)様が現れた。 不動明王様のお告げで福島に来られた平安時代のお姫様で、死後は影法師にとっての神様のような存在になられたお方だ。 和尚様が萩姫様に事の顛末を説明すると、萩姫様は私にタルパを作って恐竜を止めるように命じられた。
 私は不動尊の近くにある滝のほとりに座って、揺れ続ける水面にタールのような黒々とした影を広げながら、どんなタルパを作ればいいのか考えた。 自分が作れる薄べったい影絵の体で悪霊と戦えるほど強い魂を作るのは相当難しい。 けどそれ以上に、ずっと遊び半分だった1人の命を産むという行為の責任の重さを、私はこの時ようやく理解した。 もしも私がタルパに無責任な本能を与えてしまったら、その子は玲蘭ちゃんの恐竜のように、苦しみながら他の災いを生み出してしまうかもしれない。 恐竜をやっつけるその場しのぎの設定だけじゃ、ぜんぜん済まないんだ…。
 結局その日は何もできないまま帰宅した。 夜、風呂場でぼーっと今まで作ってきた影法師達について考える。 虫みたいな小さな生き物の魂は、近くに卵や赤ちゃんがいれば自然と吸い寄せられて吸収される。 それを転生と呼ぶか消滅と呼ぶかは人それぞれだけど、少なくとも彼らは新しい命の一部になる。 九十九神(つくもがみ)、物に宿る小さな神様は、物が壊れるかゴミとして処理されるまではその物に宿り続ける。 たまに職人さんの子供に宿って、その子の才能の一部になる事もあるらしいけど、基本的に彼らは自分では動かない。 でも、これから私が作ろうとしているのはもっとずっと大きな魂だ。 きっとこの騒動が終わった後も、私と同じくらいか、私以上に長く存在し続けるかもしれない…。
 長風呂でのぼせ始めた頃、浴室に1羽の小鳥の幽霊が飛んできた。 よく見るとそれは、オカメのお面を被っている。というより、人面鳥だ。
 「…オカメインコ?」 私はその子を見た瞬間、真っ先にそんなオヤジギャグを口走っていた。 するとオカメインコが私をじろりと見上げて言った。
 「ちょっとやめて頂戴、アナタまでサ。 アタシの事忘れたの?アタシよ、アタシ…。」
 そう言うとオカメインコは、黒い影の姿になり、浴室のタイルにビタッと貼り付いてみせた。 壁面にまるで影絵のように浮かび上がる小鳥のシルエットを見て、私は思い出した。 この子は私が修行中に作った小鳥の影法師タルパだ。
 「すごい!どうやって3Dの体になったの?」
 彼女いわく、ある日熱海町の辺りを飛んでいると、源泉神社(げんせんじんじゃ)で深沢(ふかざわ)の名水を守る龍神様に捕まったらしい。 そしてイタズラに知能を与えられ、自分が人間によって作られた偽物の小鳥だと知る。 すると彼女は自分も人間に近付いて人工の魂を作ってみたくなり、龍神様に頼んで人間の顔を付けて貰ったのだという。
 「せっかくだから美人にして頂戴って頼んだの。だから最初はアタシ、自分がゼッセーの美女だと思ってた。 でもいざ人前に出てみたら、酷いのよ!みーんなアタシをオカメインコだって笑うの! あのふざけたドラゴン野郎、わざとやったんだわ!!」
 石筵は和尚様や玲蘭ちゃんのように、式神や生霊、タルパといった人工の魂を作る修行者が多い。 そしてそういう人の中には、文化の継承や土地を守るために、妖怪や神様の魂を作って管理する生業の方々がいる。 不思議な神通力を使う龍神様だなんて一見ファンタジーめいているけど、 石筵の麓にある熱海町の神社でなら、神様の役割を担う魂が祀られていてもおかしくない。私はオカメの話に納得した。
 プリプリと怒っているオカメをあやしながら、私は自分の部屋に戻った。 (廊下ですれ違ったお父さんが「オカチメンコ」と呟いて、メチャクチャにつつかれてた。) その後はお互いに近況を語り合い、恐竜の件の話になった。
 「勝てるかな?影のタルパでも。 だけど…もし戦いが終わったら、その後その魂はどうなるんだろ?」
 するとオカメは、私を小馬鹿にするようにため息を吐いて言った。
 「アナタ、バカね。どうして痛めつけるのを前提に考えてるのよ。 人工だろうが天然だろうが、誰だって生まれつきの本能ぐらい持っているわよ。 でも生き物って、自分の本能を満たすために知恵を絞るから繁栄できるんでしょう? 鳥が巣を作るのも、蟻が食べ物を運ぶのも、生存本能や食欲を満たすため。 人間��あれこれややこしい事をするのも、安全で幸せに暮らしたいからじゃないの?? だったらその恐竜ちゃんにも、やっつける前に正しい本能の満たし方を教えてあげるべきよ。」
 彼女の言葉は目から鱗だった。まだ幼くて何も知らなかった私が作ったただの小鳥の影絵がいつの間にか成長して、 まるで私よりも大人のように立派な事をスラスラ言ってのけた事実が何よりも説得力を帯びていた。 私は思った。一人で無い知恵を絞ろうとするより、この子と協力して玲蘭ちゃんの恐竜を止める事は出来ないかと。 今まで自分にとって「動く影絵」でしかなかったタルパが本物の命だと教えてくれた彼女なら、きっと…。
 「お願い。猪苗代湖の恐竜を止めて欲しいの。 そのために必要な事は何でもするから。」
 オカメは私に二言だけ願いを告げた。
 「この不格好な姿だけでも作り直して頂戴。あと、ちゃんとした名前をつけてよね。」
 ◆◆◆
 翌日の放課後、私は自分の影に1人のタルパを宿して猪苗代湖に向かった。 その魂の名前は「リナ」。空を飛べて、恐竜とお話できるぐらい大きな宇宙人。 彼女の本能は、人工の魂を作る研究をすること。 本人の意向を汲んで、人間に変身できるようにした。 顔は家にあった芸能雑誌の、「今年の美男美女芸能人ベスト10」で1位になった男女両方を贅沢に足して2で割った顔。 (結果ヒゲの生えたオネエさんみたいになったけど、リナは「両方のトップの顔を兼ね備えたアタシこそ最強の美人」だと言い張っていた。) それ以外はぜんぶ自由。私は他に一切手を加えていない。
 猪苗代湖の玄関口、長浜(ながはま)に到着すると、辺りは静まりかえっていた。 この時期はいつもなら白鳥が飛来して、観光客や大きな遊覧船で賑わっているけど、その日は閑古鳥すら鳴かないもぬけの殻だった。 穏やかな湖面にそっと手を入れてみると、海の水とは違う生ぬるい淡水の感触が伝わってくる。
 その時、地鳴りとも汽笛ともいえない「ズーン」と重い唸り声が上がり、湖の中腹から高い波が湖畔に迫ってきた。 私達はコンクリート打ちの道路に駆け上がった。それでも沖に到達した高波は、せり上がって私の膝から下を強く打ちつけた。 湖の水がスニーカーの中に入りこんでいた砂浜の砂と混ざりあって、私はまるで金縛りに遭ったように足が重たくなるのを感じた。
 体勢を立て直して湖面を見ると、遊覧船よりも大きな恐竜の霊が、私達を鋭い眼差しでねめつけていた。 有名なUMAのネッシーにそっくりな、首長竜だ。 親の世代が若かった頃は、ネッシーブームにあやかって世界中の湖でこういう恐竜の目撃情報が多発したらしいけど、 まさか現代の猪苗代湖で恐竜の怨霊が暴れ回る事になるなんて、誰も予想できなかったと思う。
 「へえ。これが沖縄の巫女が作った魂なの。」 リナは私の影から湖面にするすると伸びていき、巨大化しながらカラフルで立体的な姿に変身した。 宇宙人としての彼女の姿は、「でかくて強そうだから」という単純な理由で、アメリカで目撃されたフラットウッズモンスターという宇宙人の姿をモチーフにした。 栗型の頭部にハロゲン電球のように光る2つの目、枯れ枝みたいに硬くとがった腕や鉤爪に、昭和のスケバンのロングスカートめいた円錐状の下半身。 モンスターと名がつくだけあって、恐竜と並んでもなかなかの大迫力だ。 リナが恐竜の近くへ飛んでいくと、恐竜は玲蘭ちゃんが作った本能に従いリナを攻撃しようとする。 でも、リナは小鳥だった時と同じようにひらひらと宙を飛んで攻撃をかわしていた。
 2つの魂の演武に見とれているうち、気がついたら私の周りにも悪霊が集まっていた。 成仏できない動物から、俗世に恨みを持つ人間、それに、これまた誰かが人為的に作ったらしい、呪いの擬人化みたいな怪物まで。 私はむかし和尚様から教わっていた護身術で、それらの悪霊達を1つずつ処理していった。
 淀んだ気配が薄くなってきた頃に再び湖面を見ると、恐竜はすでに目を回しているようだった。 ずっとくるくる飛び回るリナに翻弄されていたみたいだ。 リナは龍神様から学んだらしい方法で、私達と会話ができるように、恐竜の魂を昇華させた。
 「恐竜さーん!どうして暴れるんですかぁー!?」 私は大声で恐竜に問いかけてみた。 恐竜はまだ自分が喋れるようになったと気付いていないで、混乱しているようだった。 しばらくまごついて、やがてしどろもどろに口を開く。
 「わからない…さー…。私は…波…。 湖に風が吹けば…私も暴れるさー…。」 リナの術で辛うじて理性を得ているけど、恐竜はまだ目の焦点も定まっていなかった。 波…。きっと、今までは感情も意識もなくて、自然現象のように暴れていたんだろう。
 「特に理由がないならもうやめてー!あなたが暴れたら、みんな困るんですー!」 私は恐竜に声をかけ続けた。恐竜は困った顔をして応える。
 「それは…難しいさー。誰かが来ると、私…なんだか体がうずいちゃうのさー。」 恐竜は今度ははっきりと、暴れたい欲求があると自認しているようだった。 私に言葉を伝えようとするごとに、恐竜の自意識がだんだんと出来上がっていくのを感じた。
 今度はリナが恐竜に問いかける。「ねえあんた、暴れるのは楽しい?」 恐竜は更にはっきりと答えた。「そうさー…楽しいのさー!」
 するとリナは、急に恐竜の頭の真横で大きく宙返りをした。 スカート状に広がった下半身が恐竜の頭をパーン!と音を立てて打ちつける。 恐竜は豆鉄砲を食った鳩のような顔をして、少しうなだれた。
 「い、痛いさー!何するのさー!?」 リナは意地悪げに目をまたたかせ、恐竜の鼻先を指さして言った。  「あら、ごめんあそばせ。目の前であんたが動いたから、思わず暴れちゃったわ。」
 「恐竜さん、わかった?人前で暴れるのは危ないんだよ。 今みたいにぶつかって怪我をしたり、虫とか小さい子は死んじゃうかもしれないんだよ!」 恐竜は悲しそうな顔をして、大きく2回頷いた。 私達の言いたかった事が伝わったみたいだ。
 「でも、どうしたらいいさー?私、湖に人間さんがいっぱい来たり、お船さんが泳いでるの見ると、どうしても我慢できなくなっちゃうさー…。」恐竜が自信なさげに言った。 確かに、暴れるという本能から生まれて来た子にとって、それを我慢し続けるのは、人間が絶食や徹夜をするのと同じくらい過酷なんだと思う。 私はどう答えればいいかわからなくて、ただ「そうだよね…」と呟いた。
 するとリナが、私の方を向いて尋ねてきた。  「…ねえ。恐竜の出る湖って、そこまでマイナスイメージかしら?」  「え?」
 「UMAブームってやつ?結局この子の元ネタって、人間がいたらいいな!って思って探していた生き物なんでしょ? それなら…人間やここいらの神様方にとって危なくなければ、この子は別に暴れていてもいいんじゃない?」 なるほど、一理あると思った。危なくない暴れ方…。 映画とか遊園地のアトラクションみたいな…。
 「そうだ。ねえ!暴れるとき、人間とか船から少し離れることってできる? 誰にもぶつからない湖のド真ん中なら、暴れても大丈夫だから!」  「え、本当さー?ぶつからなければ、みんなを困らせないで済むのさー?」  「うん!むしろ、どんどん暴れちゃって!その方がみんなも喜ぶと思う!」
 恐竜は子供のように無垢な笑顔になった。  「私が暴れて…みんなが喜ぶ…!」 その表情にはもう、心を知らない悪霊の時の面影は完全に消えていた。
 ◆◆◆
 それから数日後、私はある晩、玲蘭ちゃんの家を尋ねた。 玲蘭ちゃんのお母さんに手土産を渡してから、私達娘2人はリビングのテレビをつける。 その日は、心霊特番で猪苗代湖が取り上げられる日だった。
 恐竜の悪霊を見たという人のインタビューや、入水自殺者の事が放送されて、玲蘭ちゃんは気まずそうにリモコンを手にした。 でも私は、いいから見てみて、とその手を抑えた。 番組の取材班と有名な霊能者が猪苗代湖に行って霊視をする。 霊能者はしばらく湖面を見つめてから、カメラに向かって説明を始めた。
 「確かに恐竜の霊…いえ、精霊のようなものがいます。 ですがそれは、誰かの想いが作り出した生霊のようなものだと思います。」 玲蘭ちゃんは驚いて、「当たってる、あの人インチキじゃないんだ」と意外そうにつぶやいていた。
 「この恐竜は、人に危害を加えようとしているのではありません。 湖にお客さんが来ると、嬉しそうに踊っているんです。 きっと、猪苗代湖を観光地として盛り上げていきたいという、地元の方々の想いから生まれたのでしょう。 ですが、その想いが強すぎて、この辺り一帯の気が乱れて悪い物まで吸い寄せてしまったようですね。」
 その後は霊能者がお祓いをして神様を呼び戻し、そこで猪苗代湖の特集は終了した。 玲蘭ちゃんはしばらく呆然として、ふっと我に返ったように家を飛び出した。
 後を追って玄関を出ると、玲蘭ちゃんは自転車にまたがっていた。 私も急いで自分の自転車のキーを外し、彼女を追いかける。 田んぼや畑ばかりの一本道を突き進み、彼女が自転車を止めたのは、猪苗代湖畔のサイクリングロードだった。
 「ハゼコー!!」 玲蘭ちゃんが湖に向かって叫ぶ。するうち湖面がせり上がって、恐竜があらわれた。 この子の名前はハゼコちゃんというようだ。
 「アンマー」沖縄の言葉で、ハゼコちゃんが玲蘭ちゃんをママと呼んだ。 玲蘭ちゃんはハゼコちゃんに手を伸ばして、長い首を抱き寄せた。
 「ごめんね、ハゼコ…。 私…ただ、お父さんに元に戻って欲しかっただけだったの。 私のお父さん、バスの運転手で…でも、猪苗代に来てから、コソコソよくない事をしてたの。 だから、もうここから出ていかなきゃならなくなればいいんだって思って。 それだけの理由でハゼコを作って、猪苗代湖をめちゃくちゃにして… 大変な事しちゃった。ハゼコにも、すごく苦しい思いをさせちゃったの…。」
 ハゼコちゃんは涙のつたう玲蘭ちゃんの頬を、舌で不器用に拭った。  「そうだったんさー…。アンマーは、オトウサン…アンマーのスー(父親)に悪いことをやめてほしかっただけなのさー。 だったら、もっともっと猪苗代湖を盛り上げていけばいいのさー!」  「え?」
 「猪苗代湖が元気になれば、アンマーのスーも忙しくなって悪い事ができなくなるのさ~。猪っ苗っ代っ湖さ~!」 ハゼコちゃんが朗らかに歌いながらくるくる回ってみせる。 玲蘭ちゃんも、目尻の赤くなった顔を上げて笑顔を見せた。  「猪っ苗っ代っ湖さ~、あいでみ!めんそーれ!」 二人は会津弁と沖縄弁のめちゃくちゃに混ざった言葉で歌った。 猪苗代湖を騒がせた事件はもう大丈夫だと思って、私は楽しそうにはしゃぐ二人を背にそっと自転車にまたがる。 そのまま湖から立ち去ろうとすると、ハゼコちゃんが私を呼び止めた。
 「待ってさー!お姉さんの名前を教えてさー!」 残念、漫画みたいにクールに退場しようという青臭い試みは潰えてしまった。 私の影の中に潜んでいたリナが、それをくすくすと笑う。 私は照れ隠しにはにかみながら振り向いて、ハゼコちゃんに改めて自己紹介をした。
 「私はひとみ。紅一美(くれないひとみ)です。」
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kyama · 5 years
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金鱗湖周辺ぶらぶら #金鱗湖 #温泉旅行 #湯布院 #由布院 #大分県 #九州 #九州旅行 #家族旅行 #2008年 #yufuin #follow #followme #followforfollowback #温泉好きな人と繋がりたい #北海道好きな人と繋がりたい #ディズニー好きと繋がりたい (由布院 金鱗湖) https://www.instagram.com/p/BwZanIsnWC8/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=3xi16wp3cr7h
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mellowtyphoonpaper · 7 years
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シナリオの大まかな設定
世界観
 街並みは中世ヨーロッパ寄り、科学と魔法の融合した世界、人間以外の種族も当たり前のように存在する。(魔族・獣人族・有角族・妖精族・神々etc.)  神々は基本不干渉、魔族と括られている種族は主に"外見が著しく人間と掛け離れている、または人類に対し有害"という括りなので、獣人族にも関わらず魔族刈りの対象になることもある。
 人類は神々を信仰し、悪しき"魔族"との戦いを数千年単位で繰り広げてきた。奪い取った領土も一部あれば、魔族に侵攻され奪い取られた領土もあり、一進一退の攻防に疲弊しきっている。        人類側
 大地を創造した後、単細胞生物の一部に神々が介入、知恵を身に付けた一部の猿が進化した一族。  古来より神を崇め、聖なる恩恵を受けた教団が王政の背後で実権を握り、聖騎士団という軍事力を唯一保持している。
 数千年の間に本来の教義とは掛け離れ、"神こそ正義、神の姿を模した我々人類こそが地上を統べるべき"と声高に主張、他種族への差別意識を民衆に植え付けている。
 教えに反する者、異教徒、異種族に対する弾圧を躊躇せず、絶対の教えを胸に突き進む。
 魔法を使える者はおらず、基本的には神から与えられた"神器"、若しくは科学技術によって創られた武器を手に魔族に立ち向かう。  ただし、神と接触する権利や神器を所有する権利を保有するのは教団であり、聖騎士として貢献した一部の人間しか授かることができない。  一般人でも銃程度の武器所有は許可されているが、火薬類は高価なためなかなか入手できないのが実態である。  学校等の教育機関や医療機関はあるが、貧困の差が激しいため通えない子供も多数存在する。
神々側
 遥か昔に地上を創造したものの、その後何をせずとも発展するようになった文明に"我々の介入は不要"と判断、以降は飢餓が起きようと戦乱が訪れようと静観を保っている。  時折、気紛れに地上への介入を試みる神もいるが、大抵は途中で地上生物の矮小さに失望して天界に戻る。  介入の仕方は様々で、中には地上の生物に憑依する神もいた。当然ながら高位思念体が宿るということは、元の生物にとって著しい負担となり、依代とされた地点で生存は不可能。  堕天という考えはなく、天災を与えるのもまた神の意志として罰されることはなく、神々にとって地上は気紛れに育てられただけの箱庭に過ぎない。
 神と定義付けられているが、その実態は宇宙に誕生した高位思念体であり、基本的な精神構造からして地上の生き物とは全くの別物。           魔族側
 神々によって人類が創られた後、人類を堕落させる試練として創られた存在。  元は"試練を乗り越えることで、人類の種族的な成長を促す"のが目的だったため、魔族もまた神々の教えに従い、神々が命じたままに人類を害してきた。  しかし、とっくに神々の興味が薄れたことで役割を失い、ここ数百年急拵えの魔王を据えての統治を図っている。
 基本的な寿命は人類より長く、中には不老不死の種族も少数存在する。  人類のことは"無知蒙昧な愚かな民"と認識しており、搾取し、略奪し、屠殺するための家畜として大多数が見下している。  魔法が使える以外にも、種族的な身体能力値が高いため、人類との戦いで拮抗している理由は数の不利と統制のなさに尽きる。  神々と直接言葉を交わした上級魔族たちの中には恨みを抱く者もいるが、手出し出来る存在ではないため諦めている者が大半である。
その他の種族
 魔法と自然が混合した結果、人類でも魔族でもない種族が各地で生まれ、それぞれが独自の文化を築き存続してきた。  人類が生まれる以前から存在していた種族もおり、戦乱が訪れる前は人類の善き隣人、ないし知覚外の隣人として共存関係にあった。  しかし、世界が混沌として秩序が乱れ始めたとき、人類は真っ先に他種族を敵として迫害を始めたため、人里以外の山奥でこっそりと隠れ住む他に生き延びる術がなくなった。  魔族からは攻撃されないものの、同族ではないため関与もされることがない。そのため、魔族に下って配下となる種族も少数存在する。
 魔法を使える者、使えない者と多岐に渡るが、生物であることに変わりないため寿命が存在する。  短くて数年、長ければ数百年、種の存続を最も重要な価値基準としている種族が多い。
妖精族・精霊
 地上を創造する際、高位思念体が環境整備のため創り出したインターフェースであり、妖精族には他種族を監視するシステムとしての役割が残されている。  精霊はそれぞれ担当する自然要素を持っており、魔法を発動させるためのプログラムそのもの。
 つまり、魔法とは超常的な力のことではなく、精霊に思念レベルで働き掛け、使役する力のことである。  魔力に当て嵌めて考えるなら、当然のように低位思念体<中位思念体<高位思念体の順に力を持つという構図が出来上がる。
 魔法を使える者には、当然のように精霊や世界を構成する式が見えており、見えない者にはその存在すら知覚することは不可能である。  また、神器と呼ばれる品々は、神々が適当な武器や防具にプログラムを組み込み、一定の条件下でのみ発動するよう設定されているだけの代物。  寿命という概念はなく、個であり全、全であり個の中位思念体が妖精、低位思念体が精霊と分類されている。
人物紹介 (敬称略、登録名表記)
朽木
 混沌を極める地上に、とある神が生み出した悪意の産物。  妖精だった中位思念体の精神体と、少数民族だった有角族の真新しい肉体を組み合わせた生き物。  実験のため生み出される際、全ての同族は神の手により殺され、魔族の管理下に置かれるよう仕組まれていた。
 管理下にあったもののまともな教育はされておらず、善悪の区別もなく、生き物としての本能と地上一の魔力を持つ。  言うならば無垢な子供そのものであり、一部の魔族によって魔王に仕立てられようとしている真っ最中である。
 齢200年を越えた近年反抗期に突入しており、居城から抜け出した森の奥で偶然主人公と出会うこととなった。
ネオン
 魔王を仕立て上げようと企む魔族側の皇族、真っ先に祭り上げられた本来の魔王。  本人は権力に興味がなく、矢面に立たされる不便さを全て新魔王に被せようとしている。  享楽・刹那主義の問題児で、軽薄で残忍な本性を笑みの上に貼り付けているような男。
 派閥としては穏健派に属しており、魔族を統治した後に人類を家畜として隷属させる魂胆がある。  現在、脱走した新魔王の居所を探しているが、各派閥が足を引っ張り合い難航していることが目下の悩み。
沼田
 魔族に降った獣人族の若者、たぬきの姿に变化することが出来る。  主な仕事は魔王城での下働きだが、もっぱら新魔王に悪戯されたり、その被害の後始末のために扱き使われている。
 仕事に対し不満はあるものの、魔族としての暮らしに不満はなく、人間を殺すことに一抹の躊躇もない。  雇い主は魔王だが、新魔王とつるんでくだらない嫌がらせをせっせと繰り返すのが趣味。  現在の主な役割は新魔王の監視��あり、魔王からの命令を忠実に守る、という口実で一緒に城を出てきた。
神夢
 魔族の中でも位の高い貴族、派閥は穏健派の皮を被った混沌派。  神���支配を逃れ、地上の生き物が覇権を争う今の状況こそが最も活気に溢れ、美しい世界であると過信している。  そのため、魔族統治についても反対しているが、表立って争わずに裏から手を回して魔王側の失脚を目論む。
 優雅な物腰と柔らかい物言いで新魔王に近付くも目的は暗殺、既に数百回失敗しているが諦めない、そして目論見もバレていない。
花菱 正樹
 魔族領地にある山奥で隠れ住む、下半身が馬の姿をしている獣人族の青年、属する一派は古来より戦闘部族としてその名を馳せてきた。  嘗ては人類と共に魔族と戦ってきたが、他種族排他の時流によって衰退の一途を辿っていた。  近年になって何度も魔族側からの打診があったものの、遥か昔に人類と交わした約束を今でも一途に守り続けている。
 族長の一人息子にして、一族で最も優れた槍の名手、次期族長としての信頼も非常に厚い。  人類について思うところはあるが、道を違えた"古き友人"を害する気はなく、しかし同時に裏切った人類に手を貸す必要があるとも思っていない。
カルマユウジ
 一般家庭で育った人間の青年、王都の宮廷技術局に若くして配属されたエリートながら、本人の気質は至って不真面目。  言われた仕事は熟すが、言われなかった余計なことをしたりしなかったりするトラブルメーカー。  雇われているのは給金がいいことの他に、最新技術の粋が集まる技術局で一人黙々と研究をするため。
 秘密裏に行っている研究は魔法と、知覚外に在るという神々について。  もちろん教団により禁忌とされているため、見付かればお咎め程度では済まない。  動機は"気になったから"、最終目的は機械を通じてコンタクトを取ること。
 人間によって滅ぼされた有翼族の生き残り、偶然通りがかった魔族の騎士に助けられた。  一族は物珍しさから元々愛玩用の奴隷として狩られていた歴史があり、細々と生き延びていた一族を殺されたことで人間への恨みが烈火の如く燃え上がった。
 助けてくれた魔族の騎士に恋をしており、彼の手足として働けることを何よりの喜びとしている。  歌声によって精神の精霊を操ることが得意で、魅了するも錯乱させるも思いのまま。  目下のところ、脱走した新魔王の探索を任されているが、可能ならば自分の手で誅殺したいと考えているようだ。
波多野玉香
 スラム街に隠れ住む人間の少女、嘗て、自然信仰を続けてきた部族の一人。  他種族の根絶を唱える教団と真っ向から対立し、宗教弾圧を受け散り散りになったものの、独自の情報網を持って王都周辺に潜伏している。  対立当初から数えて、既に世代が幾代も代わってしまった結果、戦友だった部族との繋がりをなくしてしまっていた。
 "古き友人"の存在は親から子に語り継がれ、一族の悲願を達成するために尽力している。  その悲願とは、教団の歪んだ思想を根絶し、いつの日か再び人と自然が手を取り合う世界を創ること。  度々教団員たちから金品を巻き上げては、貧しい暮らしをしている人々に分け与えている。
久原敦
 恵まれない家庭で育った人間の青年、教団の一員として街外れの協会を任されている。  実は神の存在をあまり快く思っておらず、信仰心というものを欠片も持ち合わせていない。
 子供の頃から食べるものにも一苦労する家で育った結果、どうにかして貧乏暮らしから脱却したいと教団に入ることを決意する。  学力や身体能力の他に、人望や学校からの推薦がなくてはならないため、いつでも本心を隠し猫を被って生きている。  最近、スラムに布教に出かけた際、出会った少女の苛烈な眼差しと言葉が忘れられずにいる。
まこと
 スラム近辺に住む人間の青年、物心付いた時から両親はおらず、日頃は靴磨き等の雑用をしながら生計を立てている。  他人に対して必要以上の興味が持てないため、名前と顔を覚えるのが絶望的に苦手だが、仕事ぶりや人当たりが良いので友人はそれなりに多い。
 しかし、本性は他人の目玉を集めるのが好きなシリアルキラー。  子供の頃、街で見掛けた青い瞳の少女に惹かれてからというもの、目玉を瓶に入れて収集するのが楽しくて楽しくて仕方がなくなってしまった。  魔族やその他の種族について興味はないが、出会う機会があれば是非隙を見て目玉を抉りたいと考えている。
しろー
 裕福な貴族の家に生まれた人間の若者、善良な両親と共に熱心な教団員でもある。  根っからの善人で神の存在はもちろんのこと、教団が行っている迫害や糾弾に対しても盲目的に必要なことなのだと信じ切っている。  異教徒はもちろんのこと、教団の行いに異を唱えるものですら認められず、学生時代は絶対的な正義感から悪意なく虐めを先導していた。
 現在、聖騎士団に入るべく鍛錬に励んでおり、悪しき魔族の侵攻から市民を守ることを信条としている。
烏丸 凛太郎
 普通の家庭に生まれた人間の若者、通っていた学校で最も優秀な成績を取ったため、教団側からのオファーが来て入会を決意。  教団の教えに背こうとは思っていないが、心優しい性根から迫害される他種族に対し同情的な視点を持つ。  ただし、過去にそのことが同級生にばれてしまい、一時期クラスの人気者から虐められていた経験がある。
 現在、神父として役職につけるよう修行中だが、最近庭に迷い込んできた魔族の子供をこっそりと匿っている。  両親とは進学の際に別居しており、王都の外れにある祖父が遺した一軒家で一人暮らし中、家族仲は良好。
甲斐
 全身をフルメイルで包んだ魔族の青年、常に炎を纏った愛馬に跨り、銀槍を手に数多の戦場を蹴散らしてゆく。  元は位も何もないただの傭兵だったが、当時即位していた魔王によって引き立てられ騎士となった。  派閥は強硬派で、魔族を統治し人類を滅ぼすべきだと考えており、新魔王ではなく魔王自身が王位に就くよう何度も進言している。
 身寄りもなく一人で生きていた幼少期に、親代わりとも言える魔族の青年に拾われて大切にされていたが、魔族狩りに来た人間から逃すために犠牲となってしまった。  以来自分の無力さを嘆き、懸命に鍛錬を積みながら恨みを深め、必ずや仇を討つべく、そして二度と悲劇が起こらぬよう愚かな人類を滅ぼすべきだと考えている。
鷹野
 ふらりと繁華街に現れては消える遊び人風の青年、正体は魔族だが人間に紛れて暮らしている。  若く見えるが種族的に歳を取らない種族らしく、既に千年単位で遊び呆けており、外見で判別できる人間との差異は地毛の色くらいしかない。
 当然一つの場所に長居はできず、日銭を稼ぐついでにスリや盗みを働いている。  人間や他種族に対して友好的だが、それは単に見ていて面白く、自分が生きる上で便利に利用したいがため。  魔界の派閥争いに興味はないが、現状を維持したい保守派、混沌派に近い考えを持つ。
蒼龍翔
 体の彼方此方に青い鱗を持つ魔族の青年、原形に戻れば家よりも大きな龍に変身する。  魔族の中でも龍は血族の繋がりを何より重んじ、その習性から卵の段階での刷り込みが可能で、闇市場で高値で取引されてきた。
 そして、例に漏れず奴隷商によって巣から連れ攫われ、従順な奴隷として数百年に渡りとある貴族の家に仕えていた。  しかし、年々取締が厳しくなるにつれ、処遇に困った現代の主人が薬で眠っている間に野山に捨てたため、行く宛もなく家族に会いたい一心で街へと戻ってきた。  奴隷として働く間、ずっと家畜以下の扱いを受けてきたにも関わらず、恨みや怒りといった感情とは無縁の穏やかな気性を持つ。  ただし、餌として常に"生きた人間の雌"を与えられていたため、とある市民に保護されるまでは空腹の度に一人殺していた。
雨咲
 薄く透けた蝶のような羽根を持つ妖精の青年、精霊と違い妖精には個体差があり、自由な自我の形成が許されている。  ただし、神々が作ったシステムとしての役割は残されており、自由意志よりも神の意思が何より優先されるべきだと強くインプットされている。  生物的な欲求や感情が欠如しているため、高位思念体である神への反乱や人間への無意味な介入をする気はなく、次元の違う"妖精界"と呼ばれる住処から人類の進歩を観察している。
 新魔王として取り立てられている新たな生命体について、自分たちと同じ存在ながら生物的欲求を元に進化する姿を興味深く思っているようだ。  最も重要な使命として、地上を星ごと処分するという最終プログラムが組み込まれており、教団の教えにもある"ラグナロク"を静かに待っている。
新田
 国王の甥として生まれた人間の青年、本来なら王位継承権は国王の弟である父が第一位だったはずが、魔族との戦闘に巻き込まれ死去したため第二子として引き取られた。  国政だけでなく剣技の腕前でも名を広め、皇太子を差し置き次期国王へとの呼び声も高い。  人柄が良く人望はあるものの、政治の裏や策略を練れない兄を蹴落としてでも自分が王になるべきだと考えており、教団との癒着に一役買っている人物でもある。
 教団の活動を全面的にサポートする裏で、王族が名実共に実権を握れる社会を創るため画策している。  魔族との相互理解は難しいと考えており、必要ならば種族問わず全ての他種族を殲滅できるよう、技術局に更なる兵器開発を促している。
 絶滅したとされていた有翼族の娘、偶然一族の村が襲われた日に森に出掛けていたため難を免れた。  焼け落ちた村の残骸を見て泣き崩れるも、自分のように生き延びた仲間がいると信じて旅に出たが、奴隷商の度重なる襲撃により傷付き消耗していった。
 遂に羽根の傷が原因で命を落としかけたとき、たまたま通り掛かった薬草売りの青年に保護され治療を受けたが、化膿し腐敗し始めた羽根は切り落とす他なかった。  だがそのことを気にしてはおらず、人里に紛れ込みやすくなったと楽観しており、恩返しがてら仕事の手伝いをしながら各地を回っている。
輝羅 瑠衣斗
 珍しい左右非対称の目を持って生まれた人間の青年、その姿から他種族との混血ではないかと疑われ、差別されてきた。  極平凡な家庭で生まれたにも関わらず、親に捨てられ、友人もできず、居場所もないままずっと孤独を味わった結果、"自分は魔族なのだ"と思い込むに至る。  その一環として欲望のままに盗み、奪い、殺すことに一切の躊躇はなく、自分の悪い行いはすべて魔族が悪であるとした社会のせいだと信じ切っている。
 住処を点々とする内、偶然主人公と行動を共にする新魔王と出会い、その秘密を知ることで何とか利用できまいかと一人画策する。  目的は、自分を救ってくれなかった人類、魔族、その他の全ての生きとし生ける者を滅ぼすこと。  偶然街中で見掛けた、自分と同じ左右非対称の目を持つ猫に懐かれ、餌や寝床の世話をしながら連れ回している。
花市
 普通の猫に憑依した高位思念体、新魔王を創り出した神とは別。  地上が出来上がって進化の終点が見えてきた頃、量子力学における波動係数を操作するプログラムを地上に施した。  これにより物事が何故起こり、どういう結果に結びつくという因果律に左右されず、一つの結果に行き着く未来を設定することが出来る。
 新たな生命体である新魔王が自ら選択し、導き出した"答え"に興味を示しており、試練のせいでどれだけの犠牲が出ようと憂いはない。  現在は自分の目で成り行きを観察すべく、新魔王と接触した一人の青年に飼われているふりをしながら同行している。
水町 奈月
 山奥の内陸湖に住む人魚族の青年、数百年前に群れを離れて一人で暮らしている。湖の水は海水であり、飲水に適さないため他の生き物が寄り付かない。  とても繊細な性格をしており、人間への敵視が強まる同族たちの姿を見ているのが辛く、誰にも行方を告げずに旅立ったのが切っ掛け。  種族的な特徴として、他のどんな種族であろうと異性ならば虜に出来る魅了の力を持ち、水の精霊を使役する魔法が得意である。
 ある日一人の少年とうっかり出会してしまい、咄嗟に「自分は神さまである」と言い張った結果、一人で足繁く通ってくる彼と少しずつ交流を持つようになる。  しかし彼には何一つ本当のことは教えず、あるときからぱったり姿を見せなくなった彼を心配し、嘘ばかりついてしまったことを深く悔やんでいる。
ちま
 山間部の遊牧民として生まれた人間の青年、自然と調和を愛する一族であり、古来より男子は独り立ちして商いをするのが習わし。  教団の教えに従うでもなく、逆らうでもなく、時流を読みながらその時々でもっとも中立的な立場を守ってきた。  選択した商いは薬売りだが、請われれば薬であれ毒であれ構わず商品として扱う。医師と関わる機会が多かったため、多少医術の心得がある。
 救いのない世界で苦しんで生き永らえるより、死にたいと願う者には安らかな死が与えられるべきだと考え、安楽死用の薬を勝手に処方する事もある。  数年前に偶然見掛けた有翼種の少女を助けたが、本人曰く「薬を必要としていたから売っただけ」としており、現在は彼女の労働力を賃金として受け取っている。
鴻 透
 とある魔族によって肉体に定着させられた精霊、年齢や性別という概念は存在しなかったが、作り主の好みが外観として与えられている。  体自体は若くして死んだ女性の物を使用しており、多数の術式で魔法を常に発動しながら辛うじて留まっているだけの人形のような存在。  感情や自我というものはなく、基本的に命じられたことを実行することしかできないが、逆を言えば命じられればどんなことでも実行する。
 元々は冷気を担当する精霊だが、肉体を得たことで神々との接続が断たれており、魔法も使えない普通の人間として魔族に仕えている。
シンヤ
 中流貴族の位にある魔族の青年、同族の中でもまだ若いが、類稀な魔法の才能に恵まれ伸し上がってきた実力者である。  しかし、人類に興味はなく、単に自分の才能である魔法の研究を続ける内に今の地位に就いただけの男。  道徳、倫理観というものを持ち合わせておらず、自分の知的好奇心や探究心、知識欲を満たすためならどんな研究でも喜んで行う。
 特に魔族や他種族で魔法を使える者、使えない者の違いについて大変興味があり、時々攫っては生体実験を繰り返している。  その一環で魔法が使えるようになるかと精霊を人間の体に移してみたが、結果は失敗、しかし消すのは惜しいのでそのまま助手として使役している。  現在は保守派として魔族の統治と、人類や他種族との折り合いを求めているが、統治する王が誰であるかは争点になく、争いのない社会で研究対象を存分に物色したいと考えている。
ケイゴ
 地上に干渉する高位思念体、創世記に関わった神の中の一人。  時間の概念をプログラムした神であり、地上が消滅する際に発生する莫大なエネルギーの消費を防ぐため、現在の地上を存続させたいと考えている。
 とある二人に時間を遡る魔法を授けて成り行きを見守っているが、味方と呼べる存在ではない。  因みに魔法によるタイムトラベルによる被害はなく、使用者以外に巻き戻ったことを自覚する事のできる生命体は地上にいない。  いくらでも過去を改変する事が可能であり、変えられた未来は観測されなかった世界として時空間に生じるのみとなる。
萩原 怜
 先祖代々王家に仕えてきた人間の青年、幼少の頃から城で皇太子たちと一緒に育てられ、彼らのために死ぬ事が義務付けられている。  嘗て城の女中に恋心を抱いていたが、想いを伝える前に第二皇太子の"お手付き"となり、着の身着のまま叩き出されるような形で彼女は解雇されてしまった。
 以降血の滲むような努力で第二皇太子の傍付きとなり、最も信頼できる部下の地位を獲得したが、本心では当時の出来事を微塵も許してはいない。  第二皇太子が王位に付けるよう尽力するも、真の目的は戴冠式の最中、最も達成感に包まれる瞬間の彼を誅殺することにある。
あまみやかなえ
 現国王と王妃の間に生まれた人間の青年、生まれつき体の弱かった王妃は一子を産み落とした直後に死没、国王は後妻を娶ることなく国政に尽くしている。  そのため、皇太子として過大な期待を寄せられていたが、当の本人は母親譲りの美貌と病弱な体で生まれついてしまった。  一方、幼少期に引き取られた従兄弟は非常に優秀であり、自分よりも遥かに国王の座に相応しいと考えている。  高い身分を持ちながらも自尊心が低く、他人への思いやりを忘れない気立ての良い人物、と周囲の人間に認識されている。
 敬愛する兄のような従兄弟の企みも、幼馴染である家臣の恨みも、気の合う友人である研究員の秘密も。  すべてを見抜いた上で何もせず、また気付いていることも悟らせずに、無知で無力なふりをしながら全ての責務や重圧から逃げている。
主人公
 魔族と人間の間に生まれた混血の少年、肉体の成長が遅く見た目は子供のよう、精霊の存在を知覚出来るが魔法は使役できない。  生みの親はおらず、道端で啼いていた赤ん坊を拾った獣人族の夫婦が育ててくれたが、現在では既に老衰でこの世を去っている。  黒目と白目が反転した瞳を持っており、顔を隠すために前髪を鼻先近くまで伸ばし、俯きがちに背を丸めながら世間を渡ってきた。
 陰気そうな外見とは反対に、育ててくれた夫婦の気概を受け継ぎのびのびとした生き様を好み、乱世であってもどこ吹く風と気儘な暮らしを謳歌している。  湖で出会った青年を異種族と見抜くも指摘せず、時の流れに気付かない彼が自分を人間の子供として接するのを面白がっていた。  ある日、人里離れた森の奥で出会った傍若無人な青年と、彼に文字通り振り回されていた喋るたぬきに同情し、仲裁に割って入ったのが事の発端。
 以降、彼らが旅をするための手助けをしていたが、とある神により波動係数を操作され 何 度 回 避 し て も 死 亡 す る 未来が決定している。
死因例
新魔王逃亡の手助けをしたとして、魔族の追手を差し向けられ死亡(ネオン)
逃げずに魔王を説得するよう新魔王に進言、出向いた魔王城で暗殺され死亡(神夢)
新魔王の逃亡を手助けした罪を、魔王に許してもらうため殺害され死亡(沼田)
過去に新魔王の手で仲間を殺された部族と衝突、折れた穂先が偶然突き刺さって死亡(花菱 正樹)
神との通信を試みるべく技術局に向かうも、機材が爆発し研究員諸共死亡(カルマユウジ)
立ち寄った酒場で偶然出会い、油断した隙に殺害され死亡(泰)
偶然教団員との戦闘に巻き込まれ、放たれた銃弾により死亡(波多野玉香)
協会での礼拝を勧められ参加するも、老朽化した協会の天井が崩れ落ち死亡(久原敦)
街中でばったり出会し意気投合、仲良く接する内に異常性に気付くも殺害され死亡(まこと)
新魔王と魔族を匿い、人外の目を持つ異教徒として断罪され死亡(しろー)
青年が匿っている魔族の存在を知り、教団に告げ口されることを恐れた彼に口封じのため殺害され死亡(烏丸 凛太郎)
新魔王を討伐すべく一騎打ちを仕掛けてきた騎士に、近くにいた他の人間共々焼き殺されて死亡(甲斐)
買い出しに出かけた際スリの犯人から身代わりとして悪役に仕立て上げられ、魔族としてその場で暴行を受け死亡(鷹野)
たまたま入った路地裏で、空腹に苦しむ青年を助けようとしたが食い殺され死亡(蒼龍翔)
新魔王誕生後も地上はろくな動きを見せず、管理に飽きた神々の審判が下され死亡(雨咲)
新魔王を亡き者にしようと企む王族の青年に嵌められ、誰より罪深い咎人として処刑され死亡(新田)
異種族であることがばれた少女を逃す手伝いをするも、暴徒たちの手によって敢えなく死亡(築)
新魔王と最も親しい友として、友人だと思っていた青年に殺害され死亡(輝羅 瑠衣斗)
久しぶりに会った友人が苦しんでいるのを知り救おうとするも、水中に引き摺り込まれそのまま死亡(水町 奈月)
旅先で落ち込んでいた際、「死にたい」と愚痴を溢したことにより毒殺され死亡(ちま)
主人に命じられた少女に攫われかけるも、必死に抵抗した結果力加減を間違えた彼女の手により殺害され死亡(鴻 透)
魔族と人間の混血という大変珍しい血筋を狙われ、研究材料として数多の残虐行為を受け死亡(シンヤ)
王都で国を挙げての戴冠式の真っ最中、復讐を目論む逆徒が仕掛けた時限爆弾に巻き込まれ死亡(萩原 怜)
魔族と人間の王族によるの和平交渉にまで漕ぎ着けるも、発狂寸前だった皇太子の自爆により巻き込まれて死亡(あまみやかなえ)
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mashiroyami · 4 years
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Page 114 : 月影を追いかけて
 静かな空間では、時に、些細な音も雷鳴のごとく響く。ポケギアが鳴り、アランの表情は瞬時に緊迫した。  たった一人登録された、限られた人物からだと画面で確かめ、すぐに回線を繋ぐ。 「もしもし」 『手がかりがありました』  前置きも無く、開口一番端的に告げられたため、アランは一瞬耳を疑ったが、聞き違いではない。息を詰め、耳を傾ける。  次のように続く。  クヴルールの伝を使い町のいたる地点に設置された防犯カメラを確認したところ、キリの中心市街地にて何度か光の輪の残像が発見された。夜間照明に照らされた黒い肢体はまさにブラッキーのものであったという。とはいえ、町をあげた祭ともあり前日から外部から多数の観光客が足を運んでいるため、かのブラッキーであるという確証は無い。しかしそもそも希少価値の高い種族であり、誰も彼もトレーナーの傍を離れて夜の町を疾走しているとは考えづらい。野生である可能性も低い。となれば、あのブラッキーである可能性は自然と高くなる。  問題は現在地である。 『現在作動しているカメラにはどこにも姿が見えません。記録を元に足取りを追うと可能性が高いのは中心街付近となりますが』 「昨日もその辺りは行ったんですが」 『歓楽街の方面は?』  アランは口を噤んだ。  日が沈んで代わりに起き上がる場所、夜の店で煌めき、ネオン色が明滅し、色香が漂い酔い狂う歓楽街はキリにも存在する。特に昨夜は祭の前日ともありとりわけ人通りが多かった。エーフィを従えていたとはいえど、土地勘が無く気圧されたアランは踏み込めなかった。鮮やかな嬌声の纏わり付く賑やかな場所にブラッキーが潜り込むとも考えづらかったということもあっただろう。回り込んで他の場所をあたってい��。  しかし、夜の街は朝に眠る。夜が明けた今ならば、人通りはあっても夜間に比べれば安全だろう。エクトルが傍らに居れば尚更である。 『その付近に居た形跡も残っています。とはいえ、遠く移動している可能性も否定できません』 「勝手な予想ですけど、そう遠くまでは行っていない……行けないと思います」 『何故?』 「むしろ、動き回る姿の方が想像できません、最近の元気の無さを思い返すと。今は例外なんですけど」  エクトルは沈黙した。 「考えが甘いですかね」 『いえ。……いや、甘いといえばそうかもしれませんが、ブラッキーを一番理解しているのは、貴方でしょう』 「そんなことは、ないです」  一つ一つの音に力を込めて弾き出すように、語気を強くした。 『……とにかく、行ってみる価値はあるかと。ネイティオには引き続き未来予知で探らせます』 「分かりました」  まだ部屋にいることを伝え回線を切断すると、アランは身支度をする。身支度といっても、改まってするといえば、うなじを完全に覆うように伸びた髪を小さな尻尾のように括るだけだ。  エーフィと共に部屋を出る。急ぎ足で外へ向かうと、部屋に居ては気付けなかった町の賑わいに足を止めた。  雲一つ無い爽快な空から降り注ぐ白い朝日が町を照らし、白壁は眩しく反射する。大通りの方面から薄らと明るい笑声や音楽が流れてきて、陽光と混じって白壁を反射し町へ浸透している。早朝は誰一人見かけなかったホテル前も、ずらずらと人波が出来ていた。道行く人々は揃って湖へと向かっている。それぞれの傍で種類豊富な羽ばたきが行き交った。もうじき祭の目玉の一つであるポッポレースが開催される。  エーフィに気が付いた人はさり気なく若紫の柔らかな肢体に目配せする。注目自体は既に幾度も経験している。首都の人口密度に比べてしまえば空いているものの、好奇を寄せられる数が、明らかに多い。アランは小さな両の拳を固く握った。 「ブラッキーを、早く見つけなきゃ」  焦燥は滲んでいない。締まった顔つきで呟くと、エーフィも肯いた。  栗色の視線が上がる。エクトルは道路を挟んで向こう側、建物の屋根の下にいた。 「エクトルさん」  器用に立ったままノートパソコンを操作しているエクトルに声をかけると、彼は画面から目を離した。 「ああ。少しは休まれましたか」 「はい、ちょっとだけ」  病的なまでに青白かった頬は僅かに血色を取り戻し、声にも張りがある。頷いたエクトルは、パソコンをひっくり返し、アランに画面を見せる。  画質は悪いが防犯カメラの映像が敷き詰められており、それぞれ蠢く人影がリアルタイムで映し出されていた。アランは目を丸くする。 「こんなの、ここで見ていいんですか」 「さて」  濁した横で絶句するアランをよそに、欠片も悪気を感じていないようにエクトルは淡々と操作し、無数にあるうちの一つの映像を拡大する。 「この時間帯に」  昨晩、二十時十一分。  電灯に設置されているものか、僅かに上空から映した道路を一瞬、黒と黄色の残像が横切って、すぐに停止する。時間を調節して、まさに横切ろうとした瞬間で止めると、その姿形は街灯の下に明らかとなる。  探し求めている姿を画面越しに発見し、アランは息を止めた。 「……良かった」  ぽつんと零して、エクトルは彼女を見た。  顔が綻ぶと思いきや、安堵を示す言葉とは裏腹に緊張は保たれている。 「少しは、安心されましたか」 「はい」アランは言う。「どこかで動けなくなってるんじゃないかとか、誰かに捕まっていないかとか、そういうことにはなっていなさそうで、良かったです」  エクトルは小さく頷く。  確かに、ブラッキーは稀少なポケモンであるが故、野生と勘違いされれば、血気盛んなポケモントレーナーの前に現れれば捕獲に傾くのも可能性としてはある。小規模とはいえ、ポケモンバトルの大会もイベントとして行われるのだから、腕自慢のトレーナーがいてもおかしくはない。だが、捕獲用のボールに入れられ「おや」が認証されているポケモンは、基本的には捕獲できない。ポケモンについて少しでも知識を囓っていれば誰もが知る常識事項である。  一方、例外もある。  トレーナーのいるポケモンが犯罪行為に及んでいる際、現場を抑え込むために特殊なボールを使って強制的に「おや」を上書きし捕獲に踏み込む場合がある。倫理規定の側面からすれば黒寄りのグレーゾーンだが、小さくはない抑止力を持つ。一歩間違えれば犯罪に使われかねないため、普段は首都アレイシアリス・ヴェリントン中央区にある警察庁にて厳重に管理されているとエクトルは噂に聞いている。必要時にはテレポートで各地に飛んでいけるだろうが、今回のような片田舎のたった一匹の脱走劇に使用されるとは考えにくい。  制止し難い行為、たとえば、無差別な殺戮さえしなければ。最も、そのような事態に至れば捕獲というレベルに収まらない場合もある。  幸い、ブラッキーが攻撃行為に及んでいる話は流れてきていない。恐らくは、彼はただ逃げて、どこかに身を隠している。既に理性を取り戻していれば、ひとまずは穏便にアランの元へ帰ってこられるだろう。だが、ブラッキーに会わなければ話は進まない。 「比較的人通りの少ない細い道を選んでいるように見えますね。稀少なポケモンですから、近辺に聞き込みをすれば、目撃情報も得られるかもしれません」  エクトルはパソコンを操作し、今度は画面に地図を広げる。色素の薄い画像はキリの中心街を示しており、目を引きつける赤のマーキングが点々とつけられている。ブラッキーの姿を確認した地点である。彼の辿った道筋が浮き上がってくる。  まっすぐ道を疾走しているのではなく、迷うように右往左往としていた。同じ場所を数回通過している様子が窺えるが、二十二時頃を境に足取りが忽然と消えている。既に半日近く経過している。遠方に逃げ去っている可能性も捨てきれないが、中心街を彷徨っている様を汲み取れば、まだ希望は捨てきれない。 「隠れているんでしょうか」 「その可能性もあります」 「行きましょう」  アランが即座に言う。エクトルは頷いた。  場所としては遠くない。徒歩で中心街の方面へ向かう。  大通りに出て彼女達の視界を埋め尽くすのは、朝から活力を漲らせている祭の光景であった。  各地から町を繋ぐ駅を要し活発に人が行き交うそこは、湖畔とは別に、花々の飾り付けは勿論のこと、食事や雑貨の並ぶ出店が立ち並び、香ばしい匂いが漂う。大道芸人が道端でパフォーマンスを披露して歓声が飛び、青空に相応しい金管楽器の華やかな音声が突き抜ける。クラシックギターを使った弾き語りに観衆が聴き入っている横で、人慣れしているのであろうピジョットのような大きな体格の鳥ポケモンが注目を浴びていた。上空の旗には小型の鳥ポケモンが並んで毛繕いに勤しんでいる。駅前から湖畔へ伸びる大通りは朝から歩行者天国となっており、浮かれた子供達が走り回る声に、忙しなく湖畔へ足を向ける町民や観光客の期待を込めた声に、彩色豊かにごった返していた。  仮にあのフカマルがいれば、喧噪に煽られ盛り上がる姿が見られたことだろう。もしかしたらザナトアと共に今頃湖畔��楽しんでいるかもしれない。  晴天の���日、白い輝きに満ちた町は、アラン達との温度差を明確にする。  活気を膨らませた空気に馴染むことなくアランは周囲を見渡す。首都に負けるとも劣らない熱気ある人混みの中では、ブラッキーの姿は当然のように無い。エーフィに目を配るが、彼女も首を横に振った。  途中、以前エクトルと共に訪れた、アシザワの経営する喫茶店の前を通った。扉には閉店を示す看板がかけられている。赤いレインコートで雨中を踊っていた少年と赤毛の上品な女性を引き連れて、どこかに出かけているのだろうか。  場所を変える。  エクトルに連れられ、アラン達は出店の並ぶ大通りを外れて歓楽街の方面へ足を向ける。人の少ない路地を進み、奥まった建物の入り口や看板の足下、屋根の方までそれぞれ目配せする。壁の隅で蹲り顔を伏せている男の前を通り抜ける。表だった華やかな空気は少しずつ変容する。  夜こそスポットライトが盛大に当てられ多くの人間で賑わう歓楽街は、朝を迎えてしまうと夢であったように静かになる。闇夜に輝くライトは全て消灯し、競うようにひしめきあっている看板はいずれも沈黙している。昨夜は大いに盛り上がったのか、空いた酒の瓶や踏みつぶされた花飾りが道路の端に転がり、ところ構わずといったような吐瀉物を見つけて思わずアランは眉を顰めた。  閉めた店ばかりだが、独特の残滓が漂っている。それは、薄らぎながらも、濃厚な空気感だった。人通りが全く無いわけではないが、通り道に使うのみだったり、帰り際であったり、気怠げに壁に寄りかかって煙草の煙を燻らせている男女がいたり、まばらに気配は佇んでいる。頭上を飛ぶポッポは、巷の賑わいに一役買っていた姿とは裏腹に、閑古鳥の役割を担っていた。  途中、シャッターを閉めかけた夜の店の前、道を陣取るように止まっているトラックの横で二人の男性が話し込んでいる。扉が開けられた荷台には段ボールや瓶のような物体が窺える。店で使う酒を仕入れている最中のようだった。 「失礼」  目を付けたエクトルが、二人の間に割って入る。不審な視線が彼にぶつかったところで、胸ポケットからカードを取り出した。 「クヴルールの者ですが、お聞きしたいことがあります。お時間いただいても構いませんか」  差し出された身分証に目を通して、少ししてから、店員とおぼしき男性の方が顔色を変えたのを、アランの目も捉えた。 「この辺でなんかあったんすか」 「いえ。ただ、何か変わったことが無かったか確認している所です。本日は秋季祭ですので」  はあ、と怪訝に返しながら、男性は出しかけていた煙草をしまう。エクトルも身分証を戻した。 「昨晩、この周辺で不審なポケモンを見かけませんでしたか」 「不審なポケモン?」 「コラッタならいくらでも居ますよ。店の裏でゴミ食って、邪魔なんすよね。なんとかなりませんか、ああいうの」  店の責任でやってくれ、と返したくなるところを抑え、無視する。 「コラッタ以外では?」 「あとはヤミカラスも困ったもんすけど。他は、でも鳥ポケモンは夜は大体いませんし」視線を横に移す。「そんな変わったことあったか」 「知らんよ」  店員に話を振られた傍らの男性はむすっと首を振る。無理も無いが、警戒心を顕わにして隠そうとしていない。 「ま、夕べは祭の前日ですし、見慣れないお客さんも他から来るから、外部のトレーナーが自慢げにポケモン見せるってことはありますよ」 「たとえば、ブラッキーは?」  背後にいるアランがさり気なく視線をエクトルの背に向ける。 「ブラッキー?」  男は眉を潜める。  見覚えが無いというよりも、種族名自体を知らないのだろう。ぴんとも引っかからない表情を浮かべ、隣を見やるが、視線を受けた方も微妙な顔つきをしていた。 「イーブイの進化形ですが」 「イーブイなら解るけどなあ」  稀少ではあるが、愛くるしい外見から愛玩用としてたびたびメディアでも取り上げられる。その進化形も他のポケモンと比較すれば知名度の高い部類に入るが、彼等は興味を持っていないのか、曖昧な返答である。  エクトルは溜息を呑み込み、手に提げていた黒革の鞄から一枚の写真を取り出す。アランのブラッキーかどうかは定かではないが、くっきりと全身が写された画像が印刷されている。  差し出されたものを確認して、二人して声をあげた。 「見覚えがありますか?」 「あ、いや」慌てて店員は首を振る。「こいつがブラッキーかって思っただけで。これならテレビで見た覚えがある」 「俺も。……こんな場所で見るか? 結構珍しいんでしょ」  記憶には引っかからないようだ。エクトルは早々に諦め、二人に礼を告げて別れた。下手に詮索して勘付かれては困る。 「……なんか、おっかなかったな」  遠のいていく背中が、声の届かない範囲まで歩いて行った頃を見計らい、運転手は肩の力を抜いてぽつりと呟いた。 「クヴルールサマってやつだよ。余計なことを言ったら締められる」 「なんだそれ」  真面目な顔で言う店の男をせせら笑ったが、冗談ではないようで、笑うに笑えないような居心地の悪い空気が漂った。 「あの大男もそうだけど、俺はあの後ろの子供もなんか変な感じがして、厭だったな」 「ああ」  図体が大きく、佇まいのみで威圧するエクトルの背後。  大人同士のやりとりを、一歩下がってアランは静かに睨むように見つめていた。殆ど瞬きもせずに、顔の皺の動き一つすら逃さずに記憶に留めておこうとするような小さな迫力があった。ただの子供だというのに、見張られている感覚には、大の男であっても脅迫的なイメージすら持たせた。 「というか、何、知らないのか」 「何が」 「何がって。あのカード見てなんも思わなかったわけ」 「そんな大層な輩だったのか?」 「大層というか」  面倒臭げに頭を掻いてから、店の男は苦い顔で呟いた。 「自警団ってやつ? クヴルール家に害ありと判断したら、誰であろうと容赦無くこう、らしい」  と言って、片手で首を横に切る仕草をしてみせた。
 エクトル自身ははなから大��た期待はしていなかったが、初発は空振りに終わった。その後も注意深く周囲を確認しながら、ブラッキーが映っていた防犯カメラの付近に向かう。どれほど理性的に行動しているか不明な相手に対して、地道に足取りを辿る行為に意味があるかは解らないが、現場の確認はしておくに越したことはない。 「ここですね」  エクトルはそう言って、立ち止まる。三叉路にあたり、左右に分岐する地点に向けて防犯カメラが電柱に設置されている。アランは現場に立ち、ブラッキーが一瞬映った場所に立つ。彼は突き当たりとなっている部分を左側へと走って、画面外へ消えた。  雪道でも泥道でもないのだから、足跡は残っていない。僅かな痕跡を探るように、エーフィは周囲を嗅ぎ回る。  左へ曲がって道を辿ると、両脇を雑居ビルが立ち並び、細い隙間のような路地が通っている。朝の日差しを浴びながらも、昨日の水溜まりが乾ききらない、閉塞感を抱かせる湿り気がある。 「ああいう外付けの階段とか、簡単に昇れそうですよね」  アランはビルの壁に沿うように設置された階段を見ながら呟く。 「屋上の可能性ですか」  エクトルが上空を仰ぐと、アランは肯く。 「上の方も探していないので。ブラッキーの身軽さだったら、屋上を跳んで渡るのもできそうな気がします」 「このくらいの距離なら、可能でしょうね」  隣接したビルならば遠くてもせいぜい二、三メートルの距離だ。建物の間を繋いでいるケーブルや、旗の紐を足場にすればより容易なように見える。 「ただ、ビルの高低差がありますから。ブラッキーの体調が万全でないのならそう簡単なことでもないかもしれません」  と、彼方から小さな花火の音が聞こえてきた。  ぽん、ぽん、と、軽快な響きに、アランは自然と音のした方に顔を向けた。 「ポッポレースが始まりますね」  腕時計を確認しながら、エクトルは呟く。 「ポッポレース……」 「出場する予定でしたか?」  すぐにアランは首を振る。ザナトアが出場することは噤んだ。 「エクトルさんは、大丈夫でしたか」 「何が、でしょうか」  彼にとっては何気ない一言だったが、些細な言動にどこか棘のあるような色が含まれる。尋ね返されて、アランは一度閉口した。 「その、お祭りに、行かなくて」  エクトルは僅かに目を丸くした。苦笑いを浮かべる気にもなれず、静かに首を振る。 「祭に浮かれるような人間ではありません」 「お祭りの仕事もありませんか」 「今は休んでると言ったでしょう。やることも無いんです。お気になさらず」  人の様子を必死に嗅ぎ取ろうとしている、とエクトルは思う。ただ顔色を覗うだけではなく、その奥にある真意も探ろうとしているような目つき。  アランが探りを入れても、エクトルにとって祭に対する思い入れは薄い。  祭もポッポレースも、エクトルに参加した記憶があるのはかすかな少年期のみだった。クラリスに仕えるようになってからは、祭日は屋敷から出ずに、クラリスと共に、窓から遠景に見える鳥ポケモン達の羽ばたきや、花火を眺めるぐらいのものだった。普段は立ち入ることのできないクヴルール家の屋敷の面した湖畔だが、祭日は例外で、かなり接近することができる。それは外敵の侵入を比較的容易にする時間帯でもある。クヴルールはキリで随一の権力を持つが敵も多い。のんびりと目を輝かせているクラリスの傍で、彼女とは異なる意味で目を光らせていた。癖は簡単に抜けるものでも無く、エクトルには秋季祭も気を張り詰める日である認識が強い。その役割が終わってもなお、結局祭の賑わいからは縁遠い立ち位置にいるとは、笑い話にもならない。 「ブラッキーに集中しましょう」  逸れた気を戻すようエクトルが促す。自らに言い聞かせる言葉でもあった。  暫く道なりに進めば、やがてブラッキーが最後に防犯カメラに映った地点に近付いていく。歩いてみれば、先ほどの地点からそう遠くはない。迷うように道を行き来していたのか、休息をとりながら移動していたように予想される。  その途中、ふとアランは足を止めて、左手の方へ視線を向けた。  薄汚れた白壁が立ち並んでいた中、石造の、他より幾分古びた建物が現れる。町の中に追い込まれたようだが、しかし屋根の高い建造物。天に向けて高く伸びていた。緑青色の屋根は長く酸化し続けて変容させてきたような、独特の色合いをしている。 「教会ですね」  見とれていたアランの隣で、エクトルが言う。 「水神様の、ですか」 「はい」  祭日を祝ってであろうか、町に並んでいるような花を模したカンテラが巨大な扉を挟むようにこじんまりと飾られ、硝子に囲まれた炎がちらちらと揺らいでいる。その下には吊り下げられるように青い花が飾られていた。  祭日とはいえ、人は湖畔や大通り沿いの方面に偏っているためだろう、人気は無かった。 「……中に入ってみてもいいですか?」  アランが尋ねると、エクトルは目を瞬かせた。 「ブラッキーが中にいるかもしれない、と?」 「はい……居なくても、何か手がかりがあるかもしれません」  エクトルは小さな教会を改めて見やる。少なくとも、昨夜、この周辺にいたのは間違いない。深夜帯以外は自由に出入りが出来るようになっているが、逆に夜間に隠れるには絶好の場所になる。目の付け所としては悪くないか。水神を信仰する教会は基本的にクヴルールの管轄であり、エクトルの顔も効きやすい。彼は頷いた。  開かれた小さな門を潜り、入り口を隠すような形になっている壁の横をすり抜ければ、すぐに中へと続く玄関がある。冷えた印象を持たせる灰色の床を踏み抜いて、中へ入ると、高い屋根の印象を裏切らない空間が目前に広がった。  古びているとはいえどちらかといえば白の印象を持たせる外観だったが、天井には群青をベースに、人や、鳥ポケモンや湖のポケモンと見受けられる生き物達が躍動的に描かれていた。両脇の巨大な磨り硝子は無色だが、正面のステンドグラスは薄い青の硝子を張っており、入り口から見ると白い陽光と青い陽光が混ざり合うようだった。  建物を支える柱には翼を持つ獣や人の巨大な石造が並び、天井まで意匠は凝らされている。  地上にはいくつもの石造のベンチが整然と並べられ、一番奥は一段高くなっている。目を引くのはその中央を陣取る、獣とも、人間ともとれるような、不思議な石造だった。天を仰ぐ右腕は人のもの、左腕は獣のもので、布を纏った身体には鱗のような模様も窺える。その周囲を鳥ポケモンの石造が豊かに舞い、今にも動き出しそうな実に躍動的な姿が彫られていた。  入り口に立ったまま動かないアランをエクトルは急かそうとはしなかった。軽く内部を視線で探ってみるが、ブラッキーはひとまず見当たらない。 「……水底にいるみたい」  ぽつんと呟いたアランを、エクトルは横目で見やる。 「……昔、水神様と人間は、同じ空間で生活を共にしていたと言われています」  アランは隣に立つエクトルを見上げた。 「しかし、嘗て町を沈めるほどの巨大な豪雨が訪れました。水神様は人間とポケモン達を助けるため、彼等に遠くへ逃げるよう指示し、町を深く巨大な穴のように沈め、そこに大量の雨が流れるように仕向けました。そうして雨水は全て穴に流れ込み、現在の湖になり、水神様はかつての町と共に水底に沈まれたと伝えられています」 「……」 「以来、水神様はいずれやってくる大きな災害を予兆し、民の生活を救おうとされている……そのために、水底から町の未来を視て、地上の民に伝える。その伝達を担うのが、人間と水神様を繋ぐ、噺人」 「それが、クラリス」 「ええ」  アランは、正面の奥に佇む、半獣半人の石造を見つめる。 「あれは……水神様ではなく、噺人を模しているんでしょうか」 「真正面の石造ですか」 「はい」 「水神様ではなく?」  言うまでも無く、信仰対象は水神であり、噺人ではない。 「はい。……水神様は、ポケモンだと、クラリスが言っていました」  するりと出てきた言葉にエクトルは眉を潜め、反射的に周囲に目配せしたが、近くに人は居ない。しかし人が居ないが故に声は通りやすい。 「言葉には気をつけてください」  わざと語調を強めると、アランは俯いた。 「すいません」強制的に話を終わらせるように、アランは不器用に微笑みを浮かべた。「ブラッキーを探しましょう」  微妙な距離感を保ち、二人は奥へと進む。石の床を叩く足音が上へと抜けていく。  エーフィは軽快な身のこなしで動き回り、長椅子に跳び乗ってそれぞれ確認する。  最奥にある一段高い敷居の手前には腰の高さの鉄製の柵が設置されている。明確な区画だが、ブラッキーにとってはあってないような柵だろう。巨大な半獣の石造を中心として、柵の向こうはゆとりのある空間がとられている。アランは青い逆光に照らされている石造を再度見上げてから、柵の前に立ち、装飾の隙間に彼の影が無いか目を凝らすが音も気配も感じ取れない。冷たく整然としていて、虫一匹紛れ込む隙の無いような雰囲気すらある。  ここにもいないのだと、彼等の間を諦念が流れ出す。  と、背後、入り口の方から足音がした。氷のように冴えた沈黙では、音の一つ一つが響く。  弾かれアラン達が振り返ると、月の獣ではなく、漆黒のコートのような、足下まで裾が伸びた服を身につけて玄関口に立つ女性がいた。ザナトアほど老いてはいないが、エクトルよりも年齢は上に見える。深くなろうとしている皺に柔らかな印象を持たせながら、彼女はゆっくりと会釈した。その手には白い綿を実らせている芒のような植物をたっぷりと生けた花瓶を抱いていた。  奥の石造へまっすぐ繋がる群青のカーペットを通らずに、壁に沿って奥までやってきて、柵の手前、端に鎮座する台にその花瓶を置いた。表通りを彩る花々よりも随分と質素だが、静粛な空間に似つかわしい趣深さがある。 「……何か、ご入り用ですか?」  観察するように眺めていたアランに彼女は声をかける。優しく撫でる声をしていて、表情も同じように柔らかい。  それから、既によく知っているのか、エクトルに向けて深々と礼をした。それは目上の者に向けて礼儀を以て対応する姿であった。しかし、頭を下げられたエクトルも深く一礼し、口を開く。 「少し、探しものを。勝手に入り、荒らして申し訳ございません」 「とんでもない。ここは誰にでも門戸を開いていますから。私の目には、何か隈無く目を配っているようにしか見えませんでしたよ」  女性はゆったりと微笑んだ。  彼女はこの教会に常在している司祭であり、サリア・クヴルールと名乗った。秋季祭の間もここに携わり、祈りを捧げているという話だった。床にぎりぎり届かない長さの黒い服装は彼女達の正装なのだろう。  つられるようにアランとエクトルもそれぞれ名乗れば、彼女はエクトルの名はやはり知っている様子であり、存じ上げております、とただ一言穏やかに言った。 「しかし、秋季祭だというのに、湖畔ではなく何故ここに。お手伝いできることであれば、私もお探し致しますよ」  アランとエクトルは一瞬視線を交わし、アランの方から歩み出た。 「ブラッキーを……ポケモンの、ブラッキーを探しているんです。夕べ、この辺りにいたことは解っているんです。もしかして、見かけていませんか」 「ブラッキー……?」  サリアは口許に手を当て、蒼く透いた瞳を丸くした。  手応えを感じ、アランは思わず身を乗り出した。 「知っているんですか?」 「その……はい。皆様が探しているブラッキーかどうかまでは解りませんが、確かに昨晩、ここにおりました」  アランはエクトルを振り返る。エクトルは驚きを顔には出さなかったが、促すようにアランを見て頷いた。  ここにいた、ということは、今はここにいない、という裏返しでもある。しかし、確かな証拠を明らかにすれば、彼へ至る道筋が一つ見えてくる。 「詳しく聞かせてもらっていいですか」  エクトルが言うと、サリアはすぐに了承した。
「秋季祭の前日ということもあり、昨日はこの場所も一日中頻繁に人が出入りしておりました。水神様への感謝と祈りを込め、昨晩は小さなコンサートを催しておりました。キリの皆様は勿論、他所からの方々も来られ、音色に耳を傾けておりました」  弦楽四重奏に独唱を重ねた、こじんまりとした演奏ではあったが、教会全体のすみずみまで音が沁みていく素晴らしい時間であったという。  人々がそれぞれ長椅子に腰掛け、サリアは教会の入り口近くの壁に控えて、演奏を傾聴していた。定期的にこの場に呼ぶ顔なじみの演奏者達が幾重と重ねる音の層は、聴く者を癒やし、そしてどこか哀しみも湛えながら、自然と心に浸透していく。  そうして演奏をしている最中、小さなお客が教会の入り口に立った。誰もが演奏に集中している中、音も無く入ってきたという、美しい身体の獣。  それが、ブラッキーだった。 「はじめは声をあげそうになりました。しかし演奏中でしたので、物音一つ立てるのも憚られて」 「……ブラッキーは、どんな様子でしたか」  アランは尋ねる。 「特に、何もする様子はありませんでしたよ。引き寄せられてきたようにここに入ってきて、……あの辺りですね、私の居た場所の、反対側の、一番端にある柱の物陰に座り込んで、それからは暫く音楽を聴いているよ��に見えました」  サリアは教会の最後方、今アラン達の立つ奥の位置から見て、左側を指した。壁に沿うような柱がいくつか立っており、鳥ポケモンを模したような石造が彫られているが、そのうち、建物のほとんど角にあたる部分にブラッキーは居たのだと言う。  演奏中は奏者の付近のみが照らされ、客席の後ろに向かうほど暗闇は濃くなる。隠れているようで、ブラッキーの放つ小さな光は、よく映えたと言い、些細な動きもよく解ったらしい。しかし、彼は殆ど身じろぎすることなく、静かに長座した。サリアは、きっとあの獣も音楽を聴いているのだと思った。  演奏が終わり教会内全体が点灯すると、ずらずらと人々は教会を後にし始めた。興奮の色濃い中で、隅で黙って蹲る獣に気付く者は誰もいなかった。サリア自身も、教会を訪れた人々に声をかけられたり、演奏者にお礼をしに行っている間は、すっかりブラッキーのことを忘れていた。  演奏者を見送り、教会から人がさっぱり消えて、演奏に震えた心地良さの最中でほっと肩の荷が下りたところ、さてそろそろ教会を閉めようかと見回して、はっと気付いた。あのブラッキーは、どうなったのだろう。 「慌てて見に行ったら、まだ同じところに居たんです」  床に身体を倒し、寛いでいるようにも見えた。眠っているかと思ったが、近付くと、赤い目が動いてサリアを捉えた。無意識に足を止めるような強い視線だった。  その場には、サリアとブラッキーしかおらず、沈黙が続いた。  ブラッキーが野生なのか、人のポケモンなのかは解らない。しかし、サリアは追い出すことも、声をかけることもせず、そっとしておくことにした。どんな獣であれ、ポケモンを労ることは、水神様に祈りを捧げる者として迷いのない行為であった。サリアは裏手に戻り、キリの住民から分け与えられた木の実を持って、ブラッキーから少し離れた地点に置いた。もしかしたら寄ってくるかもしれないと希望を抱いたが、彼はちらと視線を寄越しただけで、やはり動かなかった。  誰も寄せ付けようとせず、ひたすらにその場から動かずにいる姿は、身体を休めているというよりも誰かを待っているかのように見えたと言う。 「ブラッキーは、貴方を待っていたのかもしれません」  おやであるアランを見て、ぽつりとサリアは言った。  アランは甘い言葉に揺れることなく、顔を俯かせ、静かに首を振った。 「解りません。……自信はありません」  その理由を彼女は続けなかったし、サリアやエクトルも深く掘り下げようとはしなかった。アランの言葉に滲む、強い拒絶のような意志を静かに感じ取ったからだった。 「でも、結局その後、ブラッキーはどこかに行ったんですね」 「はい。普段、夜中は閉めるんですが、昨晩は結局一晩中開けていました。夜明け近くになって見に行ってみたら、既に姿は無く」  でも、と続ける。 「置いていた木の実を、一つ食べてましたよ」  サリアは嬉しそうに笑んだ。 「……そうですか」  アランは、優しげな声でただ一言ぽつんと呟いた。  ヤミカラスを襲撃してから、他のポケモンや人を襲うこともなく、完全な拒絶をすることもなく、彼は彷徨っている。たった一匹、慣れぬ土地を渡り、この教会は彼にとってひとときの微睡みの空間となったのかもしれない。  エクトルは沈黙するアランを横目にしながら、考える。仮にサリアの言うように、ブラッキーもアランを求めているのだとすれば、今は擦れ違いを起こしているに過ぎない。会うことさえできれば、元の鞘に収まり、何故今回のような衝動的な事件を起こしたのか、その疑問への追求に集中できるだろう。だが、浮かび上がる懸念事項への警戒を続けるに越したことはない。 「ただ、その後どこに行ったかは解りません。お役に立てず、申し訳ございません」 「そんなことないです。ありがとうございます」  慌てて頭を下げるアランに、サリアは微笑ましさを覚えたようで、にこやかに笑う。 「私はポケモンに詳しくありませんが、草臥れたような様子だったので、時間が経っているとはいえまだこの辺りにいる可能性はあるかと思います。見つかるといいですね」 「はい」  サリアに礼を言い、彼等は教会を後にしたところで、エクトルは不意に呼び止められた。 「……何か?」 「一つだけ。……クラリス様は、ご健勝でいらっしゃいますか」  エクトルは表情を変えず、暫し言葉を選ぶように沈黙してから、顔を上げる。 「元気でいらっしゃいます。先日成人の儀をつつがなく終え、噺人としての責務を全うされておられます」 「ああ、そうですか。安心致しました」  サリアはぱっと喜びを素直に顔に出した。  彼女はエクトルがクラリスの付き人であることを知っているのだ。クラリスの現状を知る者は、クヴルールの中でも限られている。教会を預かる身であるサリアも、大きな枠からすれば末端の身なのだろう。  水神様のご加護を、と手を合わせた彼女の別れの挨拶を受け、外に出れば、天頂に迫ろうとする太陽の光が目を突いた。 「クラリスが、噺人として生きていく。それで、本当に良かったのか、私には解らないんです」  玄関から数歩離れ、サリアを含め周囲に人の気配が無くなったところで、アランは呟いた。独り言のように小さな声だが、エクトルへ向けた言葉でもあった。エクトルはゆっくりとアランを振り返る。 「キリの外に出ることを願っていて、自由を求めていて……最後、クラリスは手紙で、受け入れているように書いていましたけど、それは本当のクラリスの思いだったんでしょうか。私にはそう思えなくて」 「……良い悪いではありません。お嬢様の意志も関係ありません。噺人として水神様に選ばれた、そうと判明した時から、全ては決まっていました」 「でも、何も閉じ込めなくたって。一番大切なのが季節の変わり目なら、それは一年に四回。その間くらい、自由にさせてあげたって、いいじゃないですか」 「噺人は、時と心を水神様に捧げます」  アランはエクトルを見上げる。 「時と心?」 「ええ。生きているその時間。心は、清純でなければ水神様をお言葉を頂くどころか、水神様に辿り着くことすらできないと言われています。だから、噺人は日がな一日、水神様に祈りを捧げ、心を手向ける。そこに余計な感情は要らない、と」 「余計な感情……クラリスが自由を望んだことが、ですか。他の町へ行ったり、誰かを好きになったり、友達を作ったり、キャンプをしたり、ああいうなんでないことを望むのは、余計なんでしょうか」  エクトルの内心にそっと棘が立つ。 「あくまでも、噺人としては、です」 「でも、クラリスにその自由を望ませたのは、エクトルさんじゃないんですか」  エクトルの表情が僅かに歪んだ。 「私が?」  鈍い低音に気圧されるように、アランの目が揺らいだ。 「……はい。クラリスは、外の世界に強い憧れを持っていた。旅の話をよく聞きたがった。旅の話を聞くのが、好きだって。それは、エクトルさんの旅の話を聞いていたから、でしょう?」  流石に強い威圧に怖じ気づいたのか、慎重に言葉を吐いた。対し、エクトルは厳しい視線をアランに刺す。  彼女はエクトルの過去を知っている。ザナトアから聞いたのだろう。どの程度か彼には不明だが、少なくとも、嘗てアーレイスをポケモントレーナーとして旅をしていた事実を知っている。エクトルにとってはとうに遙か昔に追いやって薄ぼやけた記憶。キリに籠っていては感じられない他地方の空気、町、人々、文化。自ら足を運んで見聞が広がる喜び、育成の楽しさ、勝利の達成感、どうしても勝てない苦しみ。縁を切ったはずの家に連れ戻され、顔を突き合わせた、腐敗した狭小な世界に閉じ込められる運命にある憐れで美しい少女。 「エクトルさんだって、できるだけ、クラリスの好きなようにいさせてあげようと」 「クレアライト様」  早口で制す。敢えて呼んだのは、彼女のまことの名だった。アランは眉間を歪める。 「憶測だけで物事をはかるのはおやめください。……お嬢様に旅の話を聞かせたとは、仰る通りです。しかし、私に語るものがそれしかなかっただけ。悩まれた末、お嬢様は自らクヴルール家に戻ることを選ばれました。そうする他なかった」  努めて静閑たる語調ながら、一言一句が刃であった。息を呑むアランの前で、大きな息を吐く。 「それだけが事実です」  ぽつりと、突き放した。  アランは何か言いたげに口を開いたが、すんでで留めた。二の句を告がせるだけの余裕すら潰すエクトルの重圧に、圧し負けた。  と、エクトルは微細な振動を感じ、上着の裾を上げた。ふっと緊張の糸が緩む。モンスターボールを装着できるように設計されたベルトの、最も一番手前に位置したモンスターボールを取り出す。小刻みに震える捕獲器を開放すると、中からネイティオが姿を現した。 「視えたか」  静かに尋ねると、ネイティオは頷いた。 「ネイティオがブラッキーの出現地を視たようです。今は、こちらに集中を」  アランを振り返って言うと、彼女は驚くわけでも喜ぶわけでもなく、覚悟を固めるように首肯した。  常に閉じられた翼が突如開き、ネイティオがゆったりとした動きで飛び上がる。予知した地点へ誘おうというのだろう。天を仰いだところで、アランは目を大きく見開いた。  一陣の冷たい風が吹く。 「待ってください」  向かおうとした一同を制する。驚愕を秘めた栗色の瞳の向いた先に視線が集まる。  上空、正面の屋根の付近を飛んで現れた鳥ポケモンの群れ。白壁に朱色が鮮やかな、ヒノヤコマがぱっと気が付いたように甲高い声を上げ、下降してくる。連れ立つのはピジョンやムックルといった同じ鳥ポケモンで、既に彼女にとっては見慣れた姿であった。ヒノヤコマの背には、なんとフカマルが跨がって手を振っている。則ち、ザナトアの育て屋に集うポケモン達である。 「どうして」  アランの声は明らかに動揺していた。既にポッポレースは始まっているはずだ。レース本番に挑んでいれば、今頃湖畔の上空を疾走しているはずである。特に、ヒノヤコマやピジョンといった進化組はチームを統率する要にあたる。はなから彼等が欠けた状態で出場しているのか、なんらかのアクシデントがあったのか、この場では判別がつかない。  一同がアラン達の正面に集まり、スイッチが入ったかのようにその場は賑やかになる。緊張は嘘だったかのようだ。羽音や鳴き声が彼女達を鼓舞��る。エーフィは柔らかく笑んで、アランを見た。  喉がこくりと動き、彼女は唾を呑む。 「手伝ってくれるの?」  信じられないでいるのか、まず問いかけたが、はじめ反応しなかった。しかし、エーフィが通訳をしたように鳴き声を発すると、一様に頷き、頼もしい歓声をあげた。  フカマルがアランの前に出る。ぎゃ、といつもの声を上げて、手を上げた。無邪気な彼を凝視している脇の視線には気付かないで、アランは毒気を抜かれたように微笑んだ。しゃがみこんで小さな青い手を握り、両手で優しく包む。細かな竜の鱗が肌に食い込んでも構わないように、握る手に力が籠る。そして聞き慣れた賑わいを見回した。 「ありがとう、皆」  噛み締めた言葉を絞り出し、アランは立ち上がった。 「行こう。ブラッキーを迎えに」  一斉に翼が広がった。今も行われているであろう、無数の翼を持つ者達が発つ湖畔でのレースに比べればずっと小規模だが、力強い羽ばたきは太陽に向けアラン達を先導する。引力に導かれるまま、彼等は走り出した。 < index >
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