#躍るアトム
Explore tagged Tumblr posts
Text
詩人の谷川俊太郎さん死去 「二十億光年の孤独」 | 共同通信
以下引用
親しみやすい言葉による詩や翻訳、エッセーで知られ、戦後日本を代表する詩人として海外でも評価された谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)さんが13日午後、老衰のため死去した。92歳。東京都出身。葬儀は近親者で済ませた。喪主は長男賢作(けんさく)さん。
父は哲学者谷川徹三。10代で詩作を始め、1952年、20歳の時に第1詩集「二十億光年の孤独」でみずみずしい言語感覚を持つ戦後詩の新人として注目された。 詩人の川崎洋さんと茨木のり子さんが創刊した詩誌「櫂」に参加。現代詩に限らず、絵本、翻訳、エッセー、童謡の歌詞、ドラマの脚本など半世紀以上にわたって活躍した。「朝のリレー」など国語教科書に採用された詩も多く、幅広い年代の人々に愛読された。 他の詩集に「六十二のソネット」「ことばあそびうた」「定義」。歌詞に「鉄腕アトム」や「月火水木金土日の歌」など。 翻訳作品は「マザー・グースのうた」の他、スヌーピーとチャーリー・ブラウンが人気の漫画「ピーナッツ」シリーズや絵本「スイミー」など。
1 note
·
View note
Text
「二十億光年の孤独」や「生きる」など鋭い感性で生み出した親しみやすい詩で知られる、現代を代表する詩人の谷川俊太郎さんが、今月13日に老衰のため都内の病院で亡くなりました。92歳でした。
1931年に東京で生まれた谷川さんは、高校時代に詩を作り始め、1952年、詩集「二十億光年の孤独」を発表しデビュー。
広い宇宙に生きる孤独な人間の姿を見事に表現し、一躍脚光を浴びました。
鋭い感性から生まれる表現やテンポのよいことばあそびなどが特徴で、半世紀以上にわたり数多くの作品を発表し続けてきました。
生きるすばらしさをつづった「生きる」や、世界中で朝を迎える様子を描いた「朝のリレー」など国語の教科書に掲載された詩も多く、親しみやすいことばで表現された谷川さんの詩は時代をこえて読み継がれてきました。
また、アニメ「鉄腕アトム」の主題歌の作詞を手がけたほか、絵本「スイミー」や「マザー・グースのうた」、それにスヌーピーの漫画「ピーナッツ」など海外の名作の翻訳を多く手がけたことでも知られています。
NHK全国学校音楽コンクールでは過去5回にわたり課題曲の作詞を手がけ、ことばの持つ力で日本の文化を支えてきたとして、ことし放送文化賞を受賞しました。
谷川さんの事務所によりますと、今月13日の午後10時すぎ、老衰のため都内の病院で亡くなったということです。
92歳でした。
0 notes
Text
AIアートについて
私はAIもロボットも推進派で、鉄腕アトムの天馬博士大好き。
それでもアートの分野はまだまだ無理だろうなぁとおもっていた。まずは工業系とか営業系とかかなと。
ところが最近はアートの分野でAIの活躍がすごい。
コピーと模倣を駆使させたら、人間より上手だったなんて作品もある。
もちろん著作権の問題などもあるのはわかっている。
だけれども、私のやっている合成やレタッチは、AIの方がもはや優れているかも? だったりする。
想像力だけを人間が肩代わりしてやれば、AIは本当に美しい物を生み出せるまでになってきた。
私はそれがとても嬉しい。
新しいオリジナルにならなければ負けてしまう。
抜きつ抜かれつ、好敵手の登場という感じ。
それに、誰にでもできることは、誰かにやってほしい人だからちょうど良い。
人間はようやく 人間らしさ をみつけないと勝てないライバルを手に入れたのだ。
労働から逃れ、ただただ追求するだけの日々を手に入れられるのではないか。
そうなってくれたら嬉しい。
0 notes
Audio
PINOA ICCHIO - 躍るアトム - is the 2nd track from アトム 未来派 No.9 (Atom Miraiha No.9) The 20th studio album by BUCK-TICK, released on September 28, 2016.
PINOA ICCHIO -The Atom Dances- Lyrics: Imai Hisashi Music: Imai Hisashi English Translation: Cayce
That chimaera's a jackalope1 A hybrida living in the moon2 Make sure never to mix the two No, don't mix! It's hazardous3
Is it synthesis? It's coexistence Is it a rampage? It's synergy
The crystal of love I'm irregular The crystal of love The atoms dance the atoms dance
The double helix of romance4 And the shepherdess Rachael5 It's a danger to mix the two Hey, don't mix! It's hazardous
Is it synthesis? It's coexistence Is it a rampage? It's synergy
The crystal of love I'm irregular The crystal of love The atoms dance the atoms dance
The crystal of love I'm irregular The crystal of love The atoms dance the atoms dance The crystal of love I'm irregular The crystal of love The atoms dance the atoms dance
PINOA ICCHIO - 躍るアトム - (PINOA ICCHIO- Atomos danzantes-) Letra y música: Hisashi Imai Traducción al español: Miu Moonlight
Esa quimera es un lebrílope Un híbrido viviendo en la luna Asegurate de nunca mezclar a los dos No, ¡No los mezcles! es peligroso
¿Es sintesís? Es coexistencia ¿Es un alboroto? Es sinergia
El cristal del amor Yo soy irregular El cristal del amor Atomos danzantes, atomos danzantes
El doble hélice del amor Y pastorcita Rachael Es un riesgo mezclar a ambos Hey ¡No los mezcles! Es peligroso
¿Es sintesís? Es coexistencia ¿Es un alboroto? Es sinergia
El cristal del amor Yo soy irregular El cristal del amor Atomos danzantes, atomos danzantes
El cristal del amor Yo soy irregular El cristal del amor Atomos danzantes, atomos danzantes El cristal del amor Yo soy irregular El cristal del amor Atomos danzantes, atomos danzantes
#Pinoa Icchio#Odoru Atom#躍るアトム#The Atom Dances#2nd track#BUCK-TICK#BUCK TICK#BUCKTICK#BT#j rock#visual kei#spanish translation#translation#traducción#english translation#Sakurai Atsushi#Atsushi Sakurai#Hisashi Imai#Imai Hisashi#hideiko hoshino#hoshino hideiko#yutaka higuchi#higuchi yutaka#yagami toll#Toll Yagami#Acchan#Catsushi#sushi sarai#sushi#a-chan
15 notes
·
View notes
Photo
七五三詣でと十月桜の櫻木神社🌸 かなり昔(7年前)の写真ですがアトム禰宜とペコ巫女はこの時から活躍してたんですね 七五三詣での時期に桜が満開で出迎えるのも櫻木神社ならですが、創建は平安時代851年、藤原冬嗣の三男嗣良によって倉稲魂命と武甕槌命を祀ったのが起源という野田市最古の神社です #櫻木神社 ⛩┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⛩ 櫻木神社(さくらぎじんじゃ) 鎮座地:千葉県野田市桜台210 主祭神:倉稲魂命、武甕槌命、伊弉諾尊、伊弉冉尊 社格:村社 ⛩┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⛩ #神社 #神社巡り #神社好きな人と繋がりたい #recotrip #御朱印 #御朱印巡り #神社仏閣 #パワースポット #野田市 #七五三 #十月桜#桜 #ペコちゃん #アトム #不二家 #神社巡拝家 (櫻木神社) https://www.instagram.com/p/CloM2J9Pktv/?igshid=NGJjMDIxMWI=
37 notes
·
View notes
Quote
1978年5月1日、アニメ監督・アニメーターの石黒昇が寝泊まりの場所として、仕事仲間の藤岡正宣らと東京都新宿区高田馬場のマンションを借りてスタートさせたのが始まりである。1978年9月14日に有限会社アートランドとして法人化した。以後、作画・美術・仕上げ・制作スタッフなどを拡充して、『鉄腕アトム』などを手がけた。スタジオも高田馬場の他、新宿区百人町(大久保)、武蔵野市吉祥寺の3箇所体制となった。 1982年には企画から参加した『超時空要塞マクロス』がヒットし、美樹本晴彦、板野一郎、平野俊弘ら若手クリエイターの実力でアニメファンに一躍名を馳せた。
アートランド - Wikipedia
2 notes
·
View notes
Note
Hey I'm not sure if you've answered something like this before but if you haven't do you have any buck tick song recs? I'm trying to get into them but not sure where to start... ty!
ok ok omg ive been waiting to answer an ask like this.
so i think a good starting point would be ドレス, MY FUNNY VALENTINE, JUST ONE MORE KISS, and BABEL
other songs i really like are DESPERATE GIRL, 無知の涙, LION, and PINOA ICCHIO-躍るアトム-
5 notes
·
View notes
Text
映画『WALKING MAN』野村周平演じる・アトムの切ない横顔が印象的な待望の本ビジュアルが解禁!
日本を代表する人気実力ともにナンバー1のカリスマラッパーANARCHY が初監督で挑む完全オリジナル作品『WALKING MAN』。ドラマ、映画といったエンタテイメントの枠にとどまらず、ファッショ ンやカルチャーでも若者たちを牽引し、常に注目を浴び存在感を放ち続ける人気俳優野村周平が、 不幸と極貧のどん底の中、ラップに出会うことで、“歩き出す”勇気をもらう気弱で心優しき主人公 の青年役を担い、アトムの妹で今どきの女子高生・ウランに NHK 連続テレビ小説「あまちゃん」、「デスノート」など出演の優希美青、職場の先輩で良き理解者の山本に柏原収���、行きつけの中 華屋の美人店員キムに伊藤ゆみがそれぞれ扮し、冨樫真、星田英利、渡辺真起子、石橋蓮司 といった個性派・実力派が脇を固めます。
この度、本作の本ビジュアルが解禁。野村周平演じる主人公アトムが切なくも何かを決意したような横顔が印象的だ。さらに優希美青演じる妹のウランの祈るかのような表情のカットや、熱狂する観客の前でフードを目深にかぶりパフォーマンスをするアトムの様子もうかがえる。音楽満載の青春映画ならではのエモーショナルなポスターとなった。
★作品概要★ 日本を代表する実力ナンバー1のカリスマラッパーANARCHY(アナーキー)が初監督、人気漫画家の高橋ツトムが企画プロデュース、ドラマ「民衆の敵」などの梶原阿貴が脚本とボーダレスなチームで挑む完全オリジナル作品だ。主演に、ドラマ、映画にとどまらず、ファッションやカルチャーなどエンタテイメントの枠を飛び越えボーダレスに活躍する、『ちはやふる』シリーズ、『帝一の國』、『ビブリア古書 堂の事件手帖』などの人気俳優野村周平を迎える。
主人公は、極貧の母子家庭で育ち、幼い頃から吃音症でコミュ障、さらに事故で重症の母親を抱え、思春期の妹を放っておけない気弱で心優しき不用品回収業のアルバイトで生計を立てる青年だ。そんな青年が、RAP音楽と出会い、最底限の生活から抜け出すべくバカにされながらも、奮闘し成長を遂げていく鮮烈な青春物語だ。監督自身の実体験なども盛り込まれた本作は、半実話ともいえる作品となっている。プロデューサーは、『さくらん』、『ヘルタースケルター』、 『くちびるに歌を』の宇田充が務める。
─────────────
【作品情報】 『WALKING MAN』
■出演:野村周平 優希美青 柏原収史 伊藤ゆみ 冨樫 真 星田英利 渡辺真起子 石橋蓮司 ■監督:ANARCHY ■脚本:梶原阿貴 ■企画・プロデュース:髙橋ツトム ■主題歌:ANARCHY "WALKING MAN"(1% | ONEPERCENT) ■制作プロダクション:ブロードマークス ■製作:映画「WALKING MAN」製作委員会
配給:エイベックス・ピクチャーズ
情報提供:パブリシティ、太秦
(C) 2019 映画「WALKING MAN」製作委員会
10 月 11 日(金)より新宿バルト9ほか全国公開
5 notes
·
View notes
Text
Hikawa Ryusuke’s Akira Article(jp)
Hikawa Ryusuke is probably the most famous Japanese anime critic. He wrote an extensive article on the anime industry before and after Akira, articulating what lead to Akira and how Akira influenced the industry thereafter. This article was published in "Akira Animation Archives” which is rather hard to find in good condition, so I thought I might copy the article somewhere. It’s in Japanese nonetheless, as I’m not capable of translating such a sophisticated text, but I hope me publishing this article would lead to someone being interested in translating it. I believe it contains some pretty useful and valuable information.
‘80時代----「Akira」が”ANIME”にもたらしたもの
本書では、アーカイヴよしてアニメーション映画「AKIRA」の現存する制作資料を句能な限り良好な状態で収録した。完成フィルムとは異なるプロセス上熱気や思いが、そこに見えたことと思う。では、こういった成果物を生んでいった周囲の状況はどうだったのだろうか。あるいは歴史の中で「AKIRA」という作品はどう位置ずけられるのだろうか。あとがきにかえて、ここにその俯瞰図をまとめてみた。
アニメ史から見た’80年��
アニメーションは今や会社にとって、子供のための娯楽映像という存在のみの状態から完全に脱皮し、広く青年、大人へ、あるいは世界へと観客層の拡がりを見せている。
そのきっかけは、1977年、「宇宙戦艦ヤマト(映画版)」の巻き起こした”アニメブーム”である。ところが「AKIRA」の上映された1988年。。。それかれあ約10年が過ぎたころには、原初のアニメブームが持ってータ熱は冷め、明らかに大きな陰りと断層が見えていた。富野由悠季監督作「機動戦士ガンダム」(1979年作品)を産み、アニメブームを牽引した巨人ロボットアニメ作品がTVから一時撤退しているのがそれを象徴しており、オリジナリティや作家性に期待されたビデオアニメもぱっとせず、時代の節目となる兆候がいたるところに見られた時期である。
ブームを陰らせた原因は、大きく以下のつではないかと推定される。
1つ目は学生時代に「ヤマト」や「ガンダム」でアニメに目覚めたいわゆる第1世代(1960年生まれ中心)が、だいたい1982年ごろから「卒業」し始めて会社人になり、’80年代中盤ごろにはほど全員の「卒業」が完了したこと。2つ目は、娯楽性を持った新メディアとして家庭用ゲーム機(ファミコン)が五すぐ急成長したこと。これによって「ドラゴンクエスト」(’86)など高い物語性を有るし、観客が参加する句能なRPGという、アニメよりもおもしろいものを購買層が見つけてしまう。3つ目は、この時期にレンタルビデオが300~500円という価格で全国配備完了したこと。これ以後アニメはハリウッド娯楽大作と同額という、激しいコンペティションに常時さらされていくようになる。
こういった状況下では、アニメ企画も変化さざるを得ない。作品企画をたくさん回して何本か当たるものがあれば良いという風潮よりは、いわゆる”選択と集中”が行われ、セグメンテーションがシフトしていく。ひとつの例がビデオアニメの変化だ。1987年ごろまで、オリジナルビデオアニメ(OVA)の主流は「プチ劇場アニメ」であった。つまり興業規模や尺の観点からすると映画館にかけられるほどではないが、スター性のあるスタッフやキャストを前面に押し出してセールスする方向性だった。これが輝きを失った対抗策として、1988年の「機動��察パトレイバー」が30分6本シリーズの新フォーマットとブロックバスター価格(4,800円)を提��し、逆転ヒットを果たす。結果、OVAは「プチ劇場」から「デラックスなTVアニメ」へとセグメンテーションをシフトさせていった。「AKIRA」が登場した1988年は、日本のアニメーション界自体が、こういった大きなパラダイム・シフトにされされていた時期であった。この周囲状況の変化を念頭におくと、なぜ「AKIRA」がこのような作風となったか考えるとき、理解の一助となるだろう。
’80年代前半、劇場アニメの新時代到来
ビデオアニメという、”TVアニメ以上劇場アニメ以下”というジャンルが新設されたことは、逆に劇場アニメに要求される価値レベルを上げた。それと呼応するように、劇場用アニメーションは’80年代前半に新時代を迎えている。
1983年末に、成人向け以外で初のOVA「ダロス」がバンダイビジュアルから発進する。同年春には角川書店がアニメ制作に進出、マッドハウス制作「幻魔大戦」を公開する。それがキャラクターデザインに大友克洋を起用した初の作品であるのも因縁めいている。1984年には、それを迎撃するような動きがある。講談社が夏に同じマッドハウスで「SF新世紀レンズマン」を制作。だがこれは慘敗に終わる。一方、徳間書店は春にアニメージュ誌に連載されていた「風の谷のナウシカ」を原作者・宮崎駿目身が監督という形で劇場アニメ化、大ヒットとなる。
結果、東映長編漫画映画の血脈を持つ宮崎駿監督と盟友・高畑勲監督の作品をつくる目的で徳間書店の出資によるスタジオジブリが結成され、1986年の「天空の城ラピュタ」を経て1988年には「となりのトトロ」が「火垂るの墓」と2本立て興行で公開、”ジブリ” ”宮崎アニメ” というブランドこの時期に完成した。
玩具や出版に携わる会社は、アニメブームの当初は著作権のニ次使用者であった。ところがその利用側だった会社が発信側に回って一次著作者となるとともに、コンテンツを多彩な展開に使うことを開始、勝者を生み始めていった時期と見ることができる。
「ナウシカ」と同じ1984年春には、押井守監督の名を一躍有名にした「うる星やつら2ビューティフルドリーマー」が公開、その作家性を世に知らしめた。同年春には「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」が劇場公開。河森正治が弱冠24歳で監督し、それまで版権イラストでしか描かれなかったような細密な描き込みを行ったことで、大きな話題を呼んだ。
こういった”作家性” ”緻密さ” ”リアリティ重視” ”若手” ”新規参入会社” という流れの頂点に立つのが、1987年の「王立宇宙軍 オネアミスの翼」である。この映画はバンダイ制作による劇場アニメの第1作で、のちに「新世紀エヴァンゲリオン」(’95)を制作するガイナックス初の作品でもある。山賀博之監督以下、中核スタッフは大阪でSF大会用映像をつくっていたアマチュア集団ダイコンフィルムの出身で、いわゆるオタク第一世代にあたる若手だ。
彼らの劇場映画「王立宇宙軍」は、そういうパロディ色の強いフィルムになるというおおかたの予想を裏切り、市井の若者が持つ等身大の挫折と野心を当時としては画期的なリアリティをこめて描ききった野心作として公開された。
リアル系作品を貫く人の流れ
このように、’80年代の動きを追っていくと、やがて’90年代になって世界に日本発の”ANIME"の名をとどろかせるべき、ほとんどの役者(アニメクリエイターと会社)が出そろいつつある様が見えてくる。
この流れに、’80年代後半の2つの出来事を追加したい。一つはビデオアニメの覇者「機動警察パトレイバー」が1989年に映画化され、その制作現劇が後に「攻殻機動隊」(’95)をつくるプロダクションI.Gになって、ビデオシリーズから格段にアップグレードした映像を見せたこと。そしてもう一つが本書で取り上げた作品「AKIRA」---そのもたらしたアニメ映像への考え方と、人の流れである。
’90年代につながる流れを見ておこう。「AKIRA」制作末期には、スタジオジブリで「となりのトトロ」を終えたばかりの原画マン(高坂希太郎、 二木真希子、金田伊功)が参加。その”お返し”という意味か、ジブリの次回作「魔女の宅急便」(’89)には森本晃司、井上俊之らが原画で参加している。ここで森本晃司と当時ジブリの制作デスクを担当していた田中栄子が出会い、片渕須直や佐藤好春らとともにスタジオ4Cを結成。大友克洋原作・監督「MEMORIES」(’95)や大友克洋XX成・総監修の「スプリガン」(’98)生む母体となっていく。
また、「AKIRA」における出会いが北久保弘之監督作品「老人Z」(’91)を生み、大友克洋は原作・脚本・メカニックデザインを担当している(キャラクターデザインは江口寿史)。この作品には緻密な絵を描く漫画家として知られていた今敏(こん・さとし)が美術設定でアニメ初参加。今敏は大友克洋のアシスタント経験もあり、実写映画「ワールド・アパートメント・ホラー」(’91)を漫画化した作家だ。「MEMORIES彼女の想いで。。。」の脚本を経て、マッドハウスで「パーフェクトブルー」(’98)、「千年女優」(’02)を監督する今敏は、「老人Z」で北久保弘之、沖浦啓之と机を並べていたという。
インタビューページにもあるように、沖浦啓之は「人狼 JIN-ROH」(’00)、北久保弘之���「BLOOD THE LAST VAMPIRE」(’00)と、90年代未にプロダクションI.Gの成表作を監督することになる。
ここでこういった流れを全部追うことはできないが、「AKIRA」を振り出しにした連鎖反応は多い。人と人に展する技術は流れ、人の進団たる会社を媒介として継承されていくという認識は重要だ。そのように見ていくことで、作品と作品の間に血が通い、ときに遺伝子のように形質を移し替えながら進化をうながす、そういった有機的な結合が見えてくるからだ。この認識を持った上で、アニメーション映画「AKIRA」の位置ずけと、この作品がもたらしたものへの考察をもう少し進めていこう。
アニメーション界に到来した二度の”黒船”
こういう説はどうだろうか。日本のアニメーションは、”黒船”の到来を二度受けているというのは?
非常の失礼な考え方かもしれないが、鎖国をしていた日本が欧米から開国させられ、欧米文化を取り入れて”近代日本”になったように、”アニメーションの国”に”漫画の国”から黒船がやってきて、大変革があったーーーそういうイメージが、どうしても脳裏に浮かぶのである。
一度目の”黒船”とは、手塚治虫のTVアニメ「鉄腕アトム」である。手塚漫画の功績は、乱暴にまとめると、描き割りじみた平面的な日本の戦前漫画に、映画的・映像的なカット割りと構図を連想させるコマ割りを導入し、エポックをもたらしたということになる。
しかし、手塚がアニメ版「アトム」で導入したのは、逆に電気紙芝居と揶揄されたほど非映画的で、止め絵のズームや強引なカットバックでフィルムをつないだものだった。これは、漫画のコマ割りの間にある断層をそのまま持ち入んだような作法である。TVシリーズ予算の問題に対する解決案として、よく槍玉にあげられる3コマ打ち(★1)の導入よりも、このカット割りの方が後世に対する影響は強いのではないか。よく動かそう、アニメ―トしようと見せ場をつくるよい、1枚絵の密度を上げ、少ない枚数、場合によっては止めの積み重ねで見せていくという”アニメ”(呼称も省略形が似合う)の手法は、これは現在でもTV作品の主流になっている。
こう考えて来ると、二度目の”黒船”が大友克洋の本作「AKIRA」という考え方も、何となく成立するように思えてる。”アニメ”は、ここで”ANIME"(★2)への第一歩を踏み出した。。。というと、作り手側は違和感を覚えるかもしれないが、観客サイドからのこういう整理もアリと思って大目に見て欲しい。
1980年前後、大友克洋が漫画界へもたらしたショックは、かつての手塚治虫に匹敵するものがった。日本人の”日本人らしさ”を骨格、骨相とも正確にとらえた人物造形、��カニズムやビル群といったものを緻密に描き込んで厚みを加えられた世界観、映画的な構図とコマ割りなど、漫画に新しい潮流をもたらした。実際、大友克洋以前と以後では、漫画全体に密度感やリアル感という要素は、もし定量化できるとすれば明らかに増大しているであろう。
「AKIRA」以前以後の変化とその要因
問題は、アニメーション「AKIRA」の場合に何が起きたか、「AKIRA」以前以後で何がどう変化したかということに紋られていく。
まず、「AKIRA」の公開時によく言われた「2コマ打ち、リップシンクロ」については、新規技術でも何でもないフルアニメーションの本来的な定義である「画面内にあって動くべきものはすべて自然に滑らかに動かす」という観点からすれば、対費用効果を無視すれば当然の手法である。クイックアクションレコーダー(★3)も制作プロセス上の省力の問題であり、表現には影響しない。黎明期のCG導入(スペシャルパターンの回転)も、光学合成の代用的な使われ方しかしておらず、見せ場となったわけでもない。
こういった宣伝向けに言われてきたことではなく、もっと表現の根幹部分に、むしろ本質的な変革があったように思われる。
キーワードとしては、大友が漫画に与えた影響の劇合と同じく、密度感とリアル感(リアリティ)が中心に来るのでないか。
「AKIRA」で新しい試みのように言われていることは、実はディズニーを代表とするフルアニメーションの作法であった。では、それを導入して「AKIRA」がディズニーのようなアニメーションになったかというと、それとはまた違うところがおもしろい。ここで密度感とリアル感の問題が浮上してくる。ディズニー的なアニメーション作法は、教科書の1ページ目に「スクオッシュ&ストレッチ(漬しと伸び)」と書いてある。つまり、実際の自然現象を省略と誇張することによって、人間の動体に対する感覚をブーストしてある種のトリップ感を引を出すということが、彼らのアニメーション哲学というか、大前提の考え方として存在しているわけである。
ところが、これがわれわれの目からすると、このゴムのような動きはリアリティを損なうものと映る場合が多い。これはディズニー的なものを貶めているわけではなく、文化・作法の差の問題だ。では、「ゴムのようにグニャグニャしないフルアニメーション」があるかというと、それはある。太平洋戦争中のフライシャーによる短編アニメ「スーパーマン」がまさしくそうだ。ここに登場するメカニカル・モンスターは、重心を移動させながら足を出して歩くと、一瞬遅れて手がぶらつくといった、破綻なくもっともらしいアニメートを見せることで確保されたクオリティが、リアリティの震源地である。
だが、それと比較しても「AKIRA」は異なっている。「AKIRA」の場合、ショット全体が抱える重みと、それがフィルムの流れの中で生み出していくリズムが、密度感とリアリティを発生させているように思えるのである。その重みの大半は、作画(原画)段階のモーション部分���あるが、大半はそれ以前の画面の設計図であるレイアウトの段階で盛り込まれている。
ここで大きく要求されるのは、情報量の盛り込み方と取捨選択、すなわちコントロールである。
仮想映画的な考え方
アニメーションの構図は、実はアニメート優先で考えられてきた歴史がある。連続的に絵を積み重ね、軌跡を追って描くときに有利なアニメ的画面構成というものが存在する。歪みのないやや広角気味のレンズ、ピントはパンフォーカス、ライティング位置下明(平行光線の屋外)、そして足が地面につかないようややアオリ気味にして背景が楽になる空、室内なら天井が大きく映り、人物の傾きはシチサン(7:3)でという、ひどくスタンダード臭の漂う画面である。
「AKIRA」原作者の大友克洋は、自主映画で監督をつとめるほど実写映画のフィルムメイキングの演出に詳しく、漫画にもそれを仮想映画的なものとして反映してきた作家である。対して当時のアニメの水準では、そのような”仮想映画的に撮る”という考え方は、まだ主流ではなかった。レンズを意織した構図をとり、フレームを決め、ショット内に重みをもたらす飾りつけを行い、観客のエモーションを巻き込む求心力となる役者やメカの芝居といったものを細かく指定し、極力雑多な情報を少しでも多く取り込み。。。という、実写的な姿勢、考え方は、「AKIRA」の絵コンテからレイアウトいたる段階まで通底している。
そして集ったアニ���ーターは、その考え方に基づくレイアウトが次にアニメーション段階で求めるもの。。。当時としてはまだ夢のようであった”仮想的リアリティ”という要求条件に対して苦闘し、スタジオが解散した後も見果てぬ夢のようにそれを望み続け、各々の作品で各人なりの咀嚼で追求することを始めていったにちがいない。もちろん、そこから離れる場合もあったろうか、しかし何かを意識して離れるということは、実はその何かを求めることと、そんなに遠い行為ではないはずである。
ここで言う要求条件とは、作品に臨場感をもたらすためのものである。なぜ臨場感が必要かとさらに突っ込めば、”絵で描いた世界”に没頭して物語を世界ごと”そこにいる感覚で”楽しむためである。
ごく当たり前のことだ。だが、その一番当たり前のことも、すべて
が作り物のアニメーションのフィルム中では、実は非常にいろんなことを意識的に考え、実行しないと違成できないということなのかもしれない。
15年目の 「AKIRA」
こういった考え方がスタッフにじわじわと浸透しながら完成したフィルムが、「AKIRA」なのだろう。クリエイターたちがそこで夢見ながら違成できなかったことを追求し、続く作品でどんどnアニメーション表現を深化させ、リアリティ追求をエスカレートさせていったのが、その後15年の”ANIME”の歩みと総括できるかもしれない。
もちろん「AKIRA」だけが単独でこうい��考え方をとっていたわけではない。恐らくそれは時代の要求だったのだろう。「王立宇宙軍」が代表するように、同時代的にいくつもの作品、何人ものスタッフが挑戦していった果てのことだ。だとしても、世界的知名度やセールスの成功事例として、「AKIRA」がきっかけであり分水嶺であったとは確実に言えるだろう。
結果的に作画や背景の描き込みは年を追うごとに幾何級数的に増え、人間のアクションは細かい関節部まできちんと追われ、レイアウトはパースに狂いがなく、光源は常に意識され、特殊な仕上げや撮影効果は常時ふんだんい。。。と、青天井のようにアニメーション作品の密度は濃くなる一方だ。初公開時にはあれほどリアルに思えた「AKIRA」が、今観ると非常に漫画的にも見えるのが、何よりの証拠だろう。
臨場感のせいで「リアルな作品」呼ばれるようになったがゆえに、レアリティ追求のため、底なし沼のようにアニメ作品は情報量を飲み込むようになっていた。情報量とはアニメの場合は人手そのものであり、金であり時間である。そして、スキルやノウハウは人に溜まるから、「リアル作品」とは非常に属人性の強いものとなる。その状況は、この種の作品リストから原画マンやレイアウトマンの名前を横に並べたりすれば、すぐに理解できることだろう。
15年を経過して、「AKIRA」に匹敵する新たら分水嶺は、はたしてどのような形で来るのだろうか。それには大友自身の新作「スチームボーイ」がある回答を提示してくれるのだろうか。非常に楽しみである。
次の15年を考えるために、15年前のブレイクスルーがヒントになるかもしれない。
そのためにも、本書が役立てば幸いである。
★1「3コマ打ち」---同じ絵を3コマずつ撮影して動きを設計するアニメーション技法。「打つ」というのはアニメーターがタイムシートに番号を書き込む行為を感常的に表したもの。それまでのアニメーションは、2コマ打ちが標準で速い動きのみ1コマ打ちだった(フルアニメーション=1コマ打ちは誤った定義)。3コマ打ちだと滑らかさは喪失するが、当初TVはブラウン管自体に残像があるので良い等とされたという。ところがこれはコスト削減にも直結するため、やがて劇場作品も経営者によって3コマをスタンダートとするようになっていく。
★2「ANIME」---マスコミで使われる”ジャパニメーション”という単語は、X称(ジャップのアニメーション)という説がある。事実、米国の雑誌や店頭ではほとんど目にしないため、ここでは”SAMURAI”のように日本語がそのまま英語化した”ANIME”を用いた。
★3「クイックアクシオンレコーダー」---’80年代から導入きれるようになった機械。アニメーターは何枚かの原画・動画が完成する��とに、指でパラパめくって動きに狂いがないかをチェックする。通称、「指パラ」と呼ばれる作業で、これは動きをチェックする第一段階だ。当然「指パラ」だけでは確認しきれない、複雑な動きも出てくる。米国でのフルアニメーション制作にはライン・テスト(ペンシル・テスト)という工程があり、ペイントする前に動画にブレ等の破綻がないかチェックする。フィルム撮影を使用するため、コストの関係で国内ではほとんど省略されていた(間に合わせのダミーとして線画を撮影することはあるが、目的が違う)。それを擬似的に行う装置がこれで、ビデオによってタイムシート通りに動画をビデオに取り込み、完成フィルムではどう見えるか、ペイント前にチェックする機械である。「AKIRA」のクイックアクションレコーダーによる画像が、「AKIRA DVD SPECIAL EDITION」(バンダイビジュアル)に特典映像として収録されている。
5 notes
·
View notes
Text
GREGORY / FINE DAY JPS 16L
color / BLACK
price / 13,200-intax
長年にわたって蓄積したグレゴリーの
デザインをベースに、
つねに最新の素材やデザイン・トレンドに
グレゴリーらしさをプラスして
生みだすクラシックシリーズのファインデイ。
ロングセラーのデイパックの
DNAを引き継ぎながらも、
少し小ぶりにシンプル設計されたアイテムに。
ショルダーハーネスも
女性にフィットする仕様になっているため
どんなシーンでも活躍すること間違いなし。
スケールダウンすることにより、
武骨さが和らぎスタイリッシュなサイズ感
になっています。
GREGORY / FINE DAY 16L
color / SAND
price / 12,100-intax
PATAGONIA / ATOM TOTE PACK 20L
color / BLK
price / 9,900-intax
定番のタマンギト・パックを
アップデートしたアトム・トート・パック。
素材には、
リサイクル・ポリエステル100%を使用し
耐久性撥水コーティングを施しています。
コンパクトながら、
20Lの容量を持ち合わせており
13インチまでのラップトップが入る
取り外し可能なパッド入りスリーブ。
ペンやコードなど収納できる
ジッパー式ポケットは取り外し可能��
なっています。
フロントポケットには、
手近の小物や貴重品を入れるのに
とても便利。
小ぶりサイズ感に設計されている為
コンパクトにフィットするのを
好む方に最適。
また、女性にもちょうどよい大きさに
なっています。
※当店では、お客様と従業員の安全の為の
新型コロナ感染防止対策を実施しております。
・来店時やご試着の際の手指の消毒
・マスク着用 (スタッフもマスク着用で接客いたします)
・出来る限り他のお客様との距離を空ける
ご来店の際は、ご協力とご理解をお願い致します
今回ご紹介したアイテムや
インスタなどに投稿したアイテム等も
通販可能です。
気になるアイテムがございましたら
どうぞお気軽にお問い合わせください。
Instagram
https://instagram.com/halu_0921?igshid=15djqo2got50h
online shop
https://matheruba.shop-pro.jp/
0 notes
Photo
everytime we saygoodbye I die a little. everytime we saygoodbye I wonder why a little. #フタコハートストリート8 無事終了です。 サヨナラの時はちょっと寂しい。 でも、また戻ってきます。 今までで一番、自分では納得のいくフタコハートストリートでした。 とはいえ自分は今回あまり活躍はしてません。街に集まる皆さんが作ったハートストリートでしたから。 それこそが一番の欲しかったもの なのです。 アトムくんは、また#フタコファンベース のウィンドウでお休みします。 1か月間ありがとうございました。 #二子玉川 #heart #art #ハート #maste #maskingtape #二子玉川商店街 #マステ #マスキングテープ #マステアート @marks_tokyo (二子玉川商店街) https://www.instagram.com/p/CV-j22oPs8y/?utm_medium=tumblr
0 notes
Text
☆プロトタイプ版☆ ひとみに映る影シーズン2 第八話「シャークの休日」
☆プロトタイプ版☆ こちらは電子書籍「ひとみに映る影 シーズン2」の 無料プロトタイプ版となります。 誤字脱字等修正前のデータになりますので、あしからずご了承下さい。
☆ここから買おう☆
(シーズン2あらすじ) 私はファッションモデルの紅一美。 旅番組ロケで訪れた島は怪物だらけ!? 霊能者達の除霊コンペとバッティングしちゃった! 実は私も霊感あるけど、知られたくないなあ…… なんて言っている場合じゃない。 諸悪の根源は恩師の仇、金剛有明団だったんだ! 憤怒の化身ワヤン不動が、今度はリゾートで炸裂する!!
pixiv版 (※内容は一緒です。)
དང་པོ་
高々とそびえる須弥山の麓。宙にはトンビやカラスが舞い、地上では鮎や鯉が戯れに滝を登る。その平穏な滝壺のほとりで、徳川徳松少年は私達に今生の別れを告げる。 『あんたらは何も気にしないでいい。地獄行きはぼくだけだ』 「そんな」 光君はしゃがんで徳松の両肩に触れた。 「利用されてただけで。地獄など!」 『ダメだ。御戌神は沢山殺しすぎた。誰かがその業を背負って行かにゃ、地獄の閻魔さんが困っちまう』 ……野暮な事実だけど、現代に地獄や極楽へ行く人は稀だ。大昔は全ての神仏と霊が宗教という秩序のもと、亡くなった人の魂を裁いたり報うための聖域が幾つも設けられていた。けど地球全土が開拓され人口過多の現代では、そういった聖地を置ける場所も管理する神仏も足りていない。誰もが知っている程の重罪人や、誰が見ても割に合わない一生を遂げた善人だけが、狭小な聖地へ招き入れられるんだ。それが当たり前となった平成の時代に徳松が『地獄』へ赴いたとしても、事務的な獄卒にちょっと話を聞かれて追い返されるだけだろう。ただ、江戸時代からずっと本物の地獄を生き続けた彼に、私もドマルもそんな残酷な事言えるわけがなかった。 「どうしてそこまで……島の人達が、あんたに見返りを?」 『見返りなど! これは誰かがやらにゃならねえ事だから。……そりゃ本当はぼくだって辛かった。大散減が飢えたらぼくも腹ペコになって、嫌だ嫌だって思いながら人殺しを。しかも殺るのはぼくと本来無縁だった来世達が! ぼくは……何も出来なかった。ゴメンナサイって思うしか出来なかった』 「僕が地獄へ行く」 『バカこくな……』 「こいてねえ!」 光君は徳松を抱きしめた。 「何が救済だ! この世界は誰かがババ引かにゃ成り立たねぇなら、僕が地獄へ行く! そして何一つ反省しないで永遠に場所取り続けてやる! あんたみたいな人が落ちてこれねぇように!!」 『……!』 すると光君の背中に後光が差していく。ドマルは無言で跪き合掌。私は徳松の隣に寄り添い、彼の顔から影を拭った。 「徳松さん、もう誰もこの件で地獄に落ちる事はありません。あなたは許されたんです」 「『え?』」 光君は振り返り、自分の後ろに光輪ができている事に気がついた。 「こいつは……!」 ༼ 正しい心のもとに、仏様は宿られる。今のこの青年の言葉は、あなたが犯した罪を浄化するに足る力があった。そもそも、殺生の罪とは誰か一人に擦り付けられる物ではない ༽ ドマルも徳松の傍に寄る。 『そんな……けどぼくは実際、何度も人殺しを』 「徳松さん」 これは、あなただけの問題じゃないんだ。 「人が生きるためには、誰かが絶対に殺生をしなきゃいけないんです。お肉を食べるためには、農家の人に動物を屠殺して貰わなきゃいけない。家を守るためには、ときどき業者さんに虫や鼠を駆除して貰わなきゃいけない。殺した本人が悪い、自分で殺してないならセーフ、じゃないんです」 ༼ 言っておくが、僧侶やヴィーガンなら無罪とかそういう事もないからな。草木を殺した死体を着て胡座をかいている坊主だって、もちろん業を背負っている。大事なのは、自分や大切な人々が生きるために糧となった命達への謝意。『謝罪』と『感謝』の心だ ༽ 『謝意……』 光君は徳松の頭を撫で、徳松と指切りをする。 「徳松様。僕達の救済は殺生って形だったけど、誰もせにゃもっと沢山人が死んでたかもだ。僕はあんたの苦しみをずっと忘れない。あんたと一緒にしでかした事、あんたと繋がる縁、全てを忘れない。だから、どうか、安らかに」 『光』 光君の後光は強まり、草葉の陰にまで行き渡る。するとそこから一匹のザトウムシが現れた。針金のように細い体を手繰る、か弱い盲目の虫だ。徳松は子犬のような笑顔を浮かべた後、もはや誰も傷つける事なきその小さな魂を率いて何処へと去っていった。 ༼ はあ、最高かよ。エモいなあ ༽ ドマルが呟いた。口癖なのかな、それ。 「ドマルはどうするの?」 ༼ 拙僧はあなたの本尊だ。ムナルの遺志をあなたが成し遂げた時、この自我は自然とあなたに帰するだろう ༽ 「そう。じゃ��、金剛を滅ぼすまで成仏はお預けだね」 ༼ 成仏……あいつみたいな事を言うな。そもそも拙僧は邪尊だ ༽ ドマルは須弥山の風景を畳み、また私の影に沈んでいった。あの世界で逝去した徳松は、私と光君の中で永遠に生き続けるんだ。
གཉིས་པ་
「じゃじゃじゃじゃあ、埋蔵金って徳川徳松を襲った大妖怪の事だったんですか!?」 空港エントランスにタナカDの馬鹿でかい声が響く。熾烈を極めた大散減浄霊から一夜、五月五日午前九時。私達はしたたびの締めコメントを収録している。けど佳奈さんと二人きりじゃない。この場には玲蘭ちゃん、後女津親子、そして光君がいる。モノホンのみんなで予め打ち合わせした筋書きを、玲蘭ちゃんがカメラに向かって話す。 「したたびさんが歌の謎を解いて下さって、助かりました。マジムンは私達霊能者が協力して、一匹残らず退治しました。ね、斉一さん」 「え! え……ええ!」 斉一さんは『狸おじさん』のキャラを再現しようと、痛ましい笑顔を作った。 「いやぁ、大変だったんすよ。でもね、私の狸風水で! 千里が島の平和は……ぽ、ぽんぽこ、ぽーん、と……」 「た、狸おじさん? ひょっとして泣いてるんですか?」 タナカDが訝しむ。その涙は失った家族を思い出してのものか、はたまた安堵の涙か。カメラに映らない万狸ちゃんと斉三さんも、唇をぎゅっと噛んだ。 「い……いえね……俺今回、割とマジで命がけで頑張ったから……撮ってなかったなんてあんまりじゃないっすか、タナカDっ!」 「なはははは、そりゃすいませんねぇ! こっちも色々とおみまいされてまして……ぶえぇっくしょん!!」 そういえば光君が島民達に拉致されてから色々ありすぎて、私も佳奈さんもタナカDの事をすっかり忘れていた。スマホに入っていた何十件もの不在着信に気がついたのは、昨晩ホテルに戻っていた道中。二人で慌ててタナカDを迎えに行くと、彼は何故か虫肖寺の井戸の中で震えていたんだ。 「タナカさん、そっちは一体何があったんですか?」 「聞いてくれますか? 僕はねぇ、人生で一番恐ろしい思いをしたんですよぉ……」 未だ風邪気味な声でタナカDは顛末を語った。あの時島民達に襲われたタナカDは、虫肖寺のお御堂へ拉致された。そこの住職はタナカDに、「肋骨を一本差し出せばしたたびチーム全員をこの島から無事に帰してやる」というような脅迫をする。祟りなんて半信半疑だったタナカDは千里が島を『島丸ごと治外法権のヤバいカルト宗教村』だと判断、演者の命を優先するため取引に応じる事に。ところが「肋骨は痛��うだしちょっと……」「小指の骨とかで妥協して頂けませんかねぇ?」「足の小指です」などと交渉に交渉を重ねた結果、島民達を怒らせて殺されかけてしまう。慌ててお御堂から逃げ出したがすぐに追っ手が来たため、タナカDは咄嗟に井戸を降りて身を隠した。しかし数分やり過ごして地上へ戻ろうとしたその時、地震や爆発音などあからさまに異常事態が起きておちおち井戸から出られなくなってしまったのだという。色々とツッコミどころが満載な顛末だ。 「あなた、カルト相手に演者の命を値切りしたんですか」 「悪かったですって。けどあの時は本当に怖かったんですよぉ、紅さんだって同じ立場だったら値切るでしょぉ?」 「それは暗にまた私を小心者だと言ってるんですか? この三角眉毛は??」 「一美ちゃん、ここでキレたら小心者だよ!」 「なっはっはっはっはっは!!」 なんだか腑に落ちないけど、まあタナカDが無事だったのは本当に良かった。思い返せば虫肖寺という名前は『虫の肖像という名を冠したお寺』で、さらに漢字を繋げて読むと『蛸寺』になる。つまりそこも八本足のザトウムシ怪虫、大散減を祀る場所だったんだろう。 「皆さん、もうすぐ搭乗開始が」 光君が腕時計を見て告げる。二泊三日、色々あった千里が島ともついにお別れだ。それでも、この地で出会った人達や出来事、それら全ての『ご縁』は、決して捨てるべきじゃない大事なものだと思う。 「光君」 私は化粧ポーチから青いヘアチョークを取り出し、光君に手渡した。 「引越しが落ち着いたら、連絡してね」 「モチのロンで。一美ちゃんいないと、東京で着る服など何買えばいいかわからないんだから」 光君は徳松の成仏を機に、役場の仕事を辞めて島を出る事にしたそうだ。運転免許を取ったらすぐに引っ越すらしい。今は一時のお別れだけど、またすぐに会える。 「それじゃあみんな、帰るよ」 佳奈さんがここにいる全員の手を取った。 「……東京へ帰るよ!」 「「「おー!」」」
གསུམ་པ་
それから数週間経ち、したたびで千里が島編がオンエアされる頃。 宗教法人河童の家は、『リムジン爆発事故で教祖含め大勢の信者が亡くなった』事故で、アトムツアー社に業務上過失致死の集団訴訟を起こした。リムジンを居眠り運転をしていたアトム社員が新千里が島トンネル前のコンビニに突っ込み、そこに設置されていたプロパンガスに引火、大炎上を起こした……という筋書きだ。この捏造によって私がコンビニを焼却した件も不問になり、私は本当に河童の家さんに落とし前をつけて貰った事になる。なんだかだぶか申し訳ない気もしたけど、先日あんこう��さんにお会いしたら『アトムから賠償金めっちゃふんだくれたんでオッケーす、我々はただの笑いと金が大好きなぼったくりカルトですから』と一笑に付してくれた。 加賀繍さんは、玲蘭ちゃんと斉一さんが辞退した除霊賞金三億円を一切合切かっさらっていった。その資金を元手に、電話やスマホアプリで人生相談ができるサービス『みんなのぬか床』の運営を開始。それが大ヒットして、今度は星占い専用人工衛星とやらを打ち上げる計画をしているそうだ。私も興味本位で一度ビデオチャットを課金してみたら、魔耶さんと禍耶さんが相談に乗ってくれた。そういえばこのサイトには、プロフィールも名前もない謎の占い師と繋がる事がある……なんて都市伝説があったような。 後女津親子は失った斉二さんの分の戦力を補充するため、木更津のどこかにあるという聖地『狸の里』で一から修行し直すと言っていた。斉一さんは生きながら強力な妖怪の魂を持つ半妖(はんよう)という状態を目指し、万狸ちゃんと斉三さんもそれぞれ一人前の妖怪になれるよう鍛錬を欠かさないとのことだ。ちなみに万狸ちゃんは九尾の狐みたいに糸車尻尾をたくさん生やして、佳奈さんの童貞を殺す服を着た女を殺す京友禅メイド服に対抗する服を作るのが目標らしい。 玲蘭ちゃんはなんと、あの後再び千里が島に行ったそうだ。今度は沖縄から神様を大勢率いて、長年大散減によって歪んでいた島の理を正したんだという。そこまでしたのにアトムツアーから何の見返りも受け取らなかったのは、『あんな賠償やら何やらで倒産寸前の会社と今更縁を持ちたくないから』。代わりに島の魂達から感謝の印にと、ちゃんと浄化済みの大散減のエクトプラズムをたくさん授かったそうだ。これまで多くの人々が追い求めていた徳川埋蔵金は、玲蘭ちゃんが手に入れたんだ。 さて。一方私はというと、顔のかなり目立つ位置にニキビができてしまいちょっぴりヘコんでいる。しかもこんな時に限って、メッセージアプリで久しぶりに光君から連絡が来た。だぶか、これが想われニキビというやつなんだろうか。 『From:あおきち 映画の前売チケットがたまたま二枚で! ご興味など?』 ……うーん、なんてベタな誘い文句! 返信をしたら詳しく経緯を説明してくれた。 実は来週公開の『シャークの休日』というイタリア映画が、光君が以前務めていた千里が島観光課とのタイアップで『全編南地語字幕上映』という企画をやるらしい。それで光君にも、地元の元同僚さんからチケットが送られてきたそうだ。イタリア人がチャキチャキの南地語を喋ってるような字幕ってまるで想像がつかないけど、確かに面白そうだと思った。 「えーと、『来週の月曜か木曜なら木曜がいいです』……と」 実はどっちも予定は空いているけど、ニキビを治したいから遅めにして貰った。返信を終えた私は早速洗面所へ。さっきお風呂で洗顔したとはいえ、ニキビの箇所はもう一度念入りに洗ってからちゃんとスキンケアしよ……
‥‥… ‥‥‥ …‥…‥‥ ‥‥ ……‥ …‥‥…‥ ‥‥…… ‥‥…… ‥‥…‥… ………… …‥…‥ ………… ‥…‥…‥ ………… ‥‥ ‥‥… ‥‥…… ……‥…… ……‥ ……‥…… …‥…… ‥……… ……‥…‥ ‥‥ ‥…… ……‥…… ‥‥‥… ‥…‥ …‥……‥ ……‥…‥ …‥‥…… ………… ‥‥ ………‥ ‥…‥…‥ …‥‥‥ …‥‥‥ ‥… ……‥…‥ ‥‥…‥… ………… …‥…‥ ………… ‥…‥…‥ ………… ‥‥ ‥‥… ‥‥…… …‥ …‥ ‥‥ ……‥…‥ …‥…‥‥ …‥ …‥‥… ……‥…‥ ‥… ‥……… ……‥…… …‥ …‥……… ‥…‥…‥ ………… ‥…‥…‥ ………… ‥‥ ‥‥… ‥‥…… ‥‥‥ ‥‥‥… …‥……… ‥…‥…‥ ……‥…… ‥…‥‥ ‥‥ …‥……‥ …‥ ‥‥ …‥…‥ …‥……… ‥… ………… ‥‥… ……‥…… ………
Fjórði
そして一週間後、『トラップブラザーズシアター東雲(しののめ)』にて。 「あ、一美ちゃん! ごめん、お待たせを!」 平日昼間にも関わらず混雑する複合ショッピングセンターで、私は道に迷った青木光、恋人の光君をメッセージアプリ頼りに探し出した。 「あれ、キョンジャクとカンリンは?」 「それが、なくなっちゃったんだ。探してるから見つけたら教えて。そんなことより、行こう?」 この期に及んで『デートできる服を持ってない』などと言い出す恋人を助けてやるため、私は映画鑑賞の時間が近付く前にメンズファッションフロアへ向かった。まるでコーディネートの基本もなっていない男に、流行に合わせた服装を宛がう。それだけで「さすがプロは違う」と煽てられるのだ。 「一美ちゃん? ひょっとして、退屈で?」 「ううん、光君と一緒にいられて楽しいよ」 上映十五分前になり、私達は映画館に戻った。ロビーのスクリーンでは、丁度今日見る作品『シャークの休日』のトレイラーが流れていた。 『餌食である人類の世界を見てみたい……海底は人喰いザメの王国から、自由を求めるサメ姫シャークリー・シャックバーンがローマにやって来たぞ! 姫は魔法で人間に化けて新聞記者と恋仲になるけど、デート中『真実の口』に手を入れたらサメだと見破られちゃった! 魔法が解けて、ローマの人々をヤケ食いし始めるお姫様……全伊震撼の大パニックムービー誕生!』 お世辞にも興味をそそられる内容とは思えないが、私は今までしてきたように楽しそうに振る舞う。 「映画、楽しみだね」 「うん。あ、一美ちゃん、あそこに真実の口が!」 光君が嬉々として示した方向には、記念写真が撮れる真実の口のパネルがあった。彼はタイマー撮影用スタンドに自分のスマート���ォンをセットした。 「ねえ、光君。作中の真実の口って、トレイラーで喋ってたよね。『サメ……ウソ……』って。これも手を入れたら喋るかな?」 「一緒に確かめてみるので。いっせー……」 「のー……」 「「せ!」」 『シタタビ……ウソ……』 その時、私はこの真実の口が何か妙な事を言ったように聞こえた。シャッター音と被って耳が錯覚を起こしただけ、だろうか。 「ごめん、もう一回手を入れてみていい?」 「モチのロンで」 二人でセンサー部分に再び手をかざす。 『シタタビ……ドッキリ!』 ヌーンヌーン、デデデデデン♪ ヌーンヌーン、デデデデデン! 突然、テレビ湘南制作『ドッキリ旅バラエティしたたび』主題歌、『童貞を殺す服を着た女を殺す服』のイントロが映画館ロビーに響き渡った。忽ちこの身体は自らの意志に逆らい跳躍し、入場口とは反対方向のエスカレーターへ飛び降りていた。先月末、ドラマ『非常勤刑事』の撮影で主演の男に「一度も見破れないのはだぶか君の才能だ」と言われた記憶が脳で想起される。 「って、サメえええぇぇえええ!?」 エスカレーター階下にはサメ帽子を被ったエキストラの大軍が群がっていた。私はコミカルに叫び、スカートスタイルにも関わらず粗暴に下りエスカレーターを駆け上がった。すると階上には、『ドッキリ』と書かれたプラカードを掲げる光君と志多田佳奈が待ち受けていた。 「ドッキリ大成功ー! 志多田佳奈のドッキリ旅バラエティ、」 「「したたびでーす!」」 悔しがってどうこうなるわけでもないはずだが、この身体はヒステリックに地団駄を踏んでいた。 「やいやいやい小心者! ハニートラップに引っかかるなんてまだまだ小心者だぞ小心者!」 「うるさい万年極悪ロリータ! そこの真実の口で実年齢をバラしてやろうか!?」 「うわぁ~、みみっちー」 しかし、これを放送するのは芸能事務所に許可されるのだろうか。私はまだ世間に正式に発表できるほど、彼と進展した関係ではないはずだ。 「あのね、佳奈さん。私と光君は今日が初デートだし、まだ事務所に何も言っていないんです。こんなのオンエアされたらこちとらたまったもんじゃないんですよ!」 「あ、社長さんには私が色つけて説明しといたから大丈夫だよ」 「勝手に何してくれちゃってるんですか!?」 「だってだって、光君の一美ちゃんへの愛は本当だよねー?」 光君は気恥しそうに真実の口へ手を入れた。 『……ホント』 よく見ると真実の口は、画角外のタナカDが裏声で喋っていたようだ。 「初デートを返せこの三角眉毛ェェ!!」 「ぬわははははは!! ごめんなさいって! ナハハハ!」 「一美ちゃんごめん、本っ当ごめん! これで堪忍を!」 光君が私に何やら縦長なフリップを差し出した。それは特大サイズに拡大印刷されたシャークの休日の前売券だ。 「『映画の世界へご招待! リアルシャークの休日』……『inローマ』ああぁ!!?」 「そ! 今回のしたたびは海外企画���イタリア編! 実は私、この映画の日本版主題歌を担当させてもらったの。そのPVを、ラブラブなお二人に撮ってきて貰いまーす!」 「え、じゃあ佳奈さんは今回行かないんですか?」 「うん。だって主題歌が入るニューアルバム、まだ収録全曲終わってないし。代わりにPVでは一美ちゃんの彼氏役が必要でしょ? だから光君を呼んだの」 そういう事だったのか。今回は光君が撮影に同行するのだ。 「ドッキリは正直ちょっと気が引けたかもけど、テレ湘さんが僕達を海外旅行に連れてってくれるんだから。ローマで本物の真実の口やったり、トレビの泉でコイン投げるなど!」 光君はさぞ嬉しそうに小躍りした。だが、それでは浅はかというものだ。 「光君、ちなみにローマで何をするか知ってるの?」 「うん。だから、映画みたいに真実の口とか……」 「そのフリップ、『inローマ』の下にやたら余白があるよね。よく見て、端がめくれるようになってる」 「え? あっ本当だ! タナカさん……」 「いいですよ、めくって」 フリップから粘着紙を剥がした光君は、前髪で表情が隠れていても解る程、顔面が蒼白した。フリップ上に現れた文章は、上の文字と繋げて読むと『映画の世界へご招待! リアルシャークの休日inローマ県オスティア・ビーチ~スキューバダイビングで人喰いザメの王国へ~』と書かれている。 「そっちへ!?」 彼もまた、私と同様に番組に騙されていたという事だ。するとタナカDが高笑いしながら、タブレットPCで企画書を開いた。 「お二人には最初の三日間でライセンスを取得して、四日目にサメと潜って頂きます。天候とかあるので五日目は予備日にしていますが、運が良ければ真実の口にも行けるかもしれませんよぉ」 「行けるかもしれませんよぉ、じゃないですよ。何が悲しくてイタリアまで行ってサメのいる海に潜らなきゃいけないんですか!」 「あやや……あやややや……」 「しかもこんなショッピングセンターでネタバラシしたって事は、どうせここで荷物買って今から行くんでしょ? 予算一万とかで」 「さすが紅さん、よくわかってらっしゃる」 「今から!? しかも一万円で旅支度を!?」 「安心して下さい、一人一万です。うははははははは!」 私達したたびチームにとっては定石である無秩序な行動に、光君はただ困惑している。 「じゃあ光君、衣装買いに行くよ。デートに行く服がなかったなら、PVに出る服だって持ってないでしょ」 「えっでも、流石にダイビングスーツは現地じゃ?」 「サメと泳ぐだけで終わらせるわけないでしょ? だぶか海中ロケなんてさっさと終わらせて、二人で街ブラする撮れ高で佳奈さんのPV埋め尽くしてやるんだ!」 「そ、そうだ……せにゃ! 見てろよ佳奈さん!」 「ふっふっふー。そう簡単にいくかな? 衣装に予算使いすぎてだぶか後で後悔するなよっ!」 「国際モデルのこの私のプチプラコーデ力を侮らないで下さい。だぶか佳奈さん本人が出てるPVより再生数稼いでやる!」 斯くして、また私達は旅に出る事になった。『行った事のない場所にみんなで殴り込んで、無茶して、笑い合って、喧嘩して、それでも懲りずにまた旅に出る』とは佳奈さんの言葉だ。それが私にとっての日常であり、私はこのような日々がいつまでも続くと漠然と思い込んでいる。
し か し 、 そ れ で は こ の 『 私 』 に 金 剛 の 有 明 は 訪 れ な い 。 間 も な く 時 が 来 る 、 金 剛 の 楽 園 ア ガ ル ダ が こ の 星 を 覆 い 尽 く す の だ 。
0 notes
Photo
「自分も一度漫画を見てストップしてたんで 元スレ 1首都圏の虎 ★2020/12/07(月) 17:56:55.90ID:CAP_USER9 大相撲の大関正代(29)=時津風=が7日、都内の部屋で稽古後、アニメ愛を語った。 空前の「鬼滅の刃」ブームながら、正代は11月場所前、一押しのアニメに「呪術廻戦」を挙げた。今、人気も急上昇中で「鬼滅」の次には「呪術廻戦」ブームが来るとの予想もある。 「自分も一度漫画を見てストップしてたんで。それで付け人にあれ結構来てますよと言われて、気づいたら10巻くらいまで出てて、読み始めたらそのまますらすらいっちゃって。呪術廻戦も��ットするとは思ってなかったので」と語った。 アニメファンの原点は週刊少年サンデーで連載していた「犬夜叉」で姉と一緒に単行本を集めた。「うる星やつらとかめぞん一刻とかも書いた高橋留美子さん、新潟県出身の」と思い入れ。「スラムダンク」、「ドラゴンボール」、「るろうに剣心」など週刊少年ジャンプで連載した漫画も好きだった。 「僕からしたらあれ(犬夜叉)はここ最近の漫画の原点じゃないですけど、最近の漫画っていうのはありきたりになっちゃってるんですけど、異世界。魔法があるような世界、モンスターがいるような世界で主人公が活躍するような。そっちのほうが想像しやすい、男の子が憧れる、モンスターが現れてそれに立ち向かう、少年が一度は憧れるような絶対ありえないようなものが流行っていて、異世界転生ものなんですけど。犬夜叉の主人公は女の子なんですけど神社の出身でその井戸に間違って転んで落ちちゃったら戦国時代につながっていたと。そこを行き来できて。それが��思い返したら異世界系に近いものあるなと。それをもとには作ってないと思いますけど、何か考え方が。つながるところがあると思って」と、話し出したら止まらない。 手塚治虫の金字塔「鉄腕アトム」に精通するのもホンモノ。「鉄腕アトムって舞台が2003年なんですよ。すごく話題になったの知りませんか?2003年になった時にアトムいないじゃんと。2003年だった、確か。車が空を飛んでたけど、2003年、何もなってないじゃんと。手塚さんはそれくらいになると思ってたんだろうけど」と、17年前、手塚の世界観を語っていた。 12名無しさん@恐縮です2020/12/07(月) 18:26:46.25ID:xhYO/zEK0…
0 notes
Text
映画『WALKING MAN』野村周平演じる・アトムが決意の「なめんな!」待望の本予告が解禁!!
日本を代表する人気実力ともにナンバー1のカリスマラッパーANARCHYが初監督で挑む完全オリジナル作品『WALKING MAN』。ドラマ、映画といったエンタテイメントの枠にとどまらず、ファッションやカルチャーでも若者たちを牽引し、常に注目を浴び存在感を放ち続ける人気俳優野村周平が、不幸と極貧のどん底の中、ラップに出会うことで、“歩き出す”勇気をもらう気弱で心優しき主人公の青年役を担い、アトムの妹で今どきの女子高生・ウランにNHK連続テレビ小説「あまちゃん」、「デスノート」など出演の優希美青、職場の先輩で良き理解者の山本に柏原収史、行きつけの中華屋の美人店員キムに伊藤ゆみがそれぞれ扮し、冨樫真、星田英利、渡辺真起子、石橋蓮司といった個性派・実力派が脇を固めます。
この度、本作の本予告編が解禁。ラップと出会ったことでアトムが報われない現状や自己責任論を押し付ける世間に対して「なめんな!」という魂のセリフを発し、物語が大きく動く様子が描かれている。ANARCHY監督自らが作詞を手掛ける劇中歌「Promise」「なめんな」「WALKING MAN」の3曲が印象的に盛り上げる。T-Pablow(BAD HOP)、WILYWNKA、Leon Fanourakis、サイプレス上野、十影、じょう、LETYの人気現役ラッパーたちの出演も併せて情報解禁された。
★作品概要★ 日本を代表する実力ナンバー1のカリスマラッパーANARCHY(アナーキー)が初監督、人気漫画家の高橋ツトムが企画プロデュ ース、ドラマ「民衆の敵」などの梶原阿貴が脚本とボーダレスなチームで挑む完全オリジナル作品だ。主演に、ドラマ、映画にとどまらず、ファッションやカルチャーなどエンタテイメントの枠を飛び越えボーダレスに活躍する、『ちはやふる』シリーズ、『帝一の國』、『ビブリア古書堂の事件手帖』などの人気俳優野村周平を迎える。主人公は、極貧の母子家庭で育ち、幼い頃から吃音症でコミュ障、さらに事故で重症の母親を抱え、思春期の妹を放っておけない気弱で心優しき不用品回収業のアルバイトで生計を立てる青年だ。そんな青年が、RAP音楽と出会い、最底辺の生活から抜け出すべくバカにされながらも、奮闘し成長を遂げていく鮮烈な青春物語だ。監督自身の実体験なども盛り込まれた本作は、半実話ともいえる作品となっている。プロデューサーは、『さくらん』、『ヘルタースケルター』、『くちびるに歌を』の宇田充が務める。
<予告編はこちら>
【作品情報】 『WALKING MAN』
■監督:ANARCHY ■脚本:梶原阿貴 ■企画・プロデュース:髙橋ツトム ■主演:野村周平 優希美青 柏原収史 伊藤ゆみ 冨樫 真 星田英利 渡辺真起子 石橋蓮司 ■主題歌:ANARCHY "WALKING MAN"(1%|ONEPERCENT) ■制作プロダクション:ブロードマークス ■配給:エイベックス・ピクチャーズ
(C)2019映画「WALKING MAN」製作委員会
情報提供:パブリシティ
10月11日(金)より新宿バルト9ほか全国公開
4 notes
·
View notes
Link
まずは何より、『仮面ライダーゼロワン』が最終回までの放送を無事に終えられたことを、心から喜びたい。 「特撮ヒーロー番組が毎週放送される」という現実は、金曜の夕方にスーパー戦隊シリーズを観ていたあの頃から、自分にとっては疑いようもない「当たり前」だった。2020年春、未曾有のコロナ禍により緊急事態宣言が発令され、その「当たり前」はあっけなく崩壊。『魔進戦隊キラメイジャー』とあわせて、総集編の放映を余儀なくされるヒーロー番組たち・・・。放送休止だけでなく、撮影スケジュールが事実上白紙になってしまったのは、現場のスタッフの方々にとって想像を絶する事態だったのではないか。 「〇話減った」というのは、あくまで結果論である。いつ撮影(放映)が再開できるのか、計何話で物語を終えられるのか。あるいは、このまま未完となってしまうのか。そんな先行き不透明な状態で、撮影スケジュールからシナリオから、全てを仕切り直したであろうクライマックス。『キラメイジャー』では主演・小宮璃央氏のコロナ感染が報じられ、それこそ「当たり前」の風物詩だった両番組の夏映画は公開延期が発表された。エンターテインメントの世界までもが疫病におかされていく、あのにじり寄る絶望感。 内容云々とは別に、まずは、2020年8月30日に『仮面ライダーゼロワン』の最終話が無事に放映されたことを、一介の特撮ヒーローファンとして心から喜びたい。キャスト・スタッフ・関係者の皆さん、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。 仮面ライダーゼロワン Blu-ray COLLECTION 1 発売日: 2020/04/08 メディア: Blu-ray スポンサーリンク さて、そんなこんなで、全45話で(一応の)決着を迎えた『仮面ライダーゼロワン』。その一年を振り返ってみたい。 東映からのプロデューサーに『仮面ライダードライブ』『仮面ライダーエグゼイド』『仮面ライダービルド』の大森敬仁氏、パイロット監督には『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』の杉原輝昭氏、メインライターには『エグゼイド』で大森氏とタッグを組み『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』も手掛けた高橋悠也氏。その他、音楽には『仮面ライダーゴースト』の坂部剛氏、アクション監督にはスーツアクターでの活躍も記憶に新しい渡辺淳氏、といった布陣である。 扱うは、AI。人工知能の実社会への進出が加速していく現代で、それをメインに据えた物語を展開するという。主人公はそのテクノロジーを扱う会社の若き社長で、AIを搭載したお仕事ロボットを商品として展開している。しかし、そのテクノロジーを悪用するテロ集団や、対抗製品を世に売り出したいライバル社長が現れ、混沌とした群像劇が繰り広げられることとなる。暴走したヒューマギアを泣きながら破壊する主人公は、その未来のマシンに何を見い出すのか。 制作陣の狙いとして強く感じたのは、「AIの可能性」をあらゆる形で物語内に詰め込みたい、という気概である。序盤の1クールだけでなく、年を開けてからの2クール目も、取り上げられたのは「様々な職業」。職業そのものというよりは、その現場にAIが登場した際に、どんな影響を及ぼすのか。AIには何が出来て、何が出来ないのか。生身の人間との化学反応は生み出せるのか。そういったシミュレーションを多くの視点から描くことに、番組全体が注力していたように思う。事実、国立情報学研究所の副所長を務められる佐藤一郎氏をAI技術アドバイザーに招聘し、AI描写の監修を受けたりもしている。 その甲斐もあってか、実際の社会問題をも絡めたAI描写には、面白い点が多かった。前時代的とも言えてしまう職人肌な「しごき」に応えるロボットや、死者を模したロボットを扱う倫理的な問題点、ブラックな労働環境が叫ばれる教育現場でのAIの活躍や、病院にロボットを配置した際のテロを前にした脆弱性。ヒューマギアの勤勉性は、汗水垂らす人間の労働環境の光明となり得るのか。個人的には、ちょうどマイホームに向けて動いている時期に観た「家売り対決」がとても興味深かった。「住みたい家」と「買いたい家」の違いって、確かにあるんですよ。そこのところに、ヒューマギアと人間営業マンの対立軸で突っ込んでいたり。 年間を通してスタッフ陣の様々なインタビューを目にしてきたが、特にプロデューサーである大森氏の「お仕事描写」(それを通したAIのシミュレーション描写)への熱量は凄まじく、ネットでは非難轟々であった「お仕事五番勝負」も、氏のこだわりの結晶であったことが伺える。一方で、その「職業現場を通して描くAIシミュレーション」というお題目は、時にベースにあるべきの「仮面ライダーという特撮ドラマ」より優先して描かれることが多く、私を含め、多くの視聴が戸惑いを覚えたであろうことも、想像に難くない。 例えば、「お仕事五番勝負」にて消防士対決の回があった。デモンストレーションの火事が実際の火災に発展してしまい、本当の人命救助が行われる、という筋書き。AIロボットであるヒューマギアと人間消防士、それぞれのトリアージが対比して描かれたが、そもそも、主要キャラクターたちが仮面ライダーに変身して人命救助を行うべき、逼迫したシチュエーションであった。そういった点へのフォローが無いままAIの活躍を見せられても、中々、頷き難いのである。 これらの「お仕事五番勝負」が抱える特撮ヒーロードラマとの食い合わせの悪さについては、最終回放送後にTTFCにて公開された大森氏らスタッフインタビューでも触れられていたが、結果として番組が当然のように担保するべき「仮面ライダーの活躍」を損なってしまった。「AIシミュレーション描写」としての見応えはあるものの、やはり、仮面ライダーが仮面ライダーとしてある程度活躍して、その上で展開されて欲しい要素である。その上、「主人公は立場上暴走したヒューマギアを容易に破壊できない」というドラマ的な制約があるため、視聴者のフラストレーションはじわじわと高まってしまう。 そのフラストレーションも、構成として「お仕事五番勝負」で敗北した主人公が社長の座を退く展開へ繋がる訳だが、もう少し「ヒーロー活劇としての面白さ」とのバランスを模索して欲しかったのが本音である。 スポンサーリンク そういった中盤の展開もありつつ、放送休止を経て、物語はクライマックスへ突入。人間の悪意という名の復讐心が交錯する展開となり、ヒューマギアの未来が危ぶまれる。 私が個人的に危惧していたのは、「銃とそれを使う人間」問題。「銃そのものは悪くない。それを作った人間も悪くない。問題は意図して悪事に銃を用いる人間である」。そういった話の筋から人間の秘めたる悪意や業に迫る物語は沢山あるが、まさか『ゼロワン』もそのパターンなのではないか、と。せっかくヒューマギアというAIロボットをテーマに置いているのに、単に「使う人間が悪い」から「人間が改めていこう」なエンディングになると、流石に物足りないのではないだろうか・・・。 そういったモヤモヤを頭の隅に抱えながら、迎えた最終回。「なるほど!」と感じたのは、AIの最も特徴的な部分と言える「学習」をシナリオに用い、AIそのものの前進に触れていた点である。人間に作られたヒューマギアは、人間により悪意を植え付けられることも、暴走させられることもある。しかし同時に、ヒューマギア自身も、人間と共に「学習」を繰り返すことでその悪意から脱することができる。そういった、AIの進化の可能性。「学習」性能を、時に間違えを起こすかもしれない人間の「心」と重ね合わせ、その変化を希望と読み取るアプローチ。 自身のシンギュラリティによる「心」の芽生えに戸惑う滅。物語は、彼を「倒さない」という決着を描くことで、「人間に使われる銃」の問題から一歩進み、「銃の進化」に触れていく。なるほど、これは確かにAIならではのオチと言えるだろう。 「お仕事」の現場を通して、幾度となく描かれてきたAIの「学習」機能。ラーニングは諸悪の根元であり、同時に、進化の可能性でもある。そういったエンディングがどの時点でどこまで想定されていたかは分からないが、あらゆる職業現場で活躍した個々のミクロな「学習」が、遂に「人間vsヒューマギア」というマクロな舞台で炸裂する筋書きには、実に納得感がある。AIも、人間の心を「学習」することで、存在そのものを推し進めることができるのだ。 ヒューマギアは人間でもなければ、一般的な「造られた道具」でもない。そのどちらの性格も持ち合わせながら、どちらにも属さない、グレーでハイブリッドな存在。自己学習を繰り返して進化できる夢のマシンは、転じ��、実社会の一員として新たな豊かさをもたらしてくれるのかもしれない・・・。 という決着は大変素晴らしいものの、だからこそ余計に、ミクロのターンで細かく発生した「ヒーロー活劇としての弱さ」が、内出血のように効いてきてしまう。AIの可能性を描き、そのバリエーションをドラマに詰め込むことを優先するあまり、ヒーロー活劇としてのドラマが劇的に減速していく。幹の成長より優先される枝葉のバリエーション。このもどかしさは、なんとも独特なものであった。ゼロワンの飛んで跳ねるアクロバティックなアクションは見応え抜群なのだけど、物語の爽快感が中々そこに伴っていかない。 スポンサーリンク また、「内出血」という比喩に加えるならば、主人公・飛電或人の「ヒューマギア観」の描き方が、非常に困難を極めた。 スタッフ起用の狙いを察するならば、『エグゼイド』で見事に全話執筆を達成した高橋脚本のパワーにこそ、期待がかかっていたのだろう。高橋脚本の狙いは、「理論の飛躍」にあると感じている。既存の単語、例えば『エグゼイド』を例にすると「チーム医療」というワードがあるが、「ライダーの共闘」を力業で「チーム医療」と言い張ることで、独自のドライブ感を演出していた。「怪人を倒す」ことは「治療」、あるいは「オペ」である。誰が何と言おうと、登場人物たちはその理論に則って行動を起こす。独自の世界観の中で理論を飛躍させ、前進に前進を繰り返すことで、視聴者に立ち止まる隙を与えない。超理論で紐づけた要素はストーリーを突進させるため、高密度でイベントが発生しては消化されていく。 この、「常にびっくり箱が稼働するスタイル」は、『エグゼイド』のビジュアルやキャストの熱演とも相まって、独自の世界観を形成していた。よくよく考えれば「ん?」となるかもしれないが、そもそも、よくよく考える暇を与えない。人工的に持ち込まれたライブ感が、速度と力業で疑問点を圧し潰していく。その背景には、高橋脚本のイズムとも���うべき、「理論の飛躍」が存在していたのではないだろうか。『エグゼイド』は、つくづく、奇妙で楽しい作品であった。 仮面ライダーエグゼイド Blu-ray COLLECTION 1 発売日: 2017/04/12 メディア: Blu-ray その「理論の飛躍」は、『ゼロワン』にも確かに用いられていた。終盤の「悪意」というワードも、最終的には、もはや番組独自の用語として複雑な意味を有してたと言える。その他にも、「夢」「心」「道具」といった単語が、主に或人の言葉を通し、シリーズを彩っていく。狙いが成功していれば、意図的な拡大解釈、理論の飛躍が、『エグゼイド』同様の独自の推進力を発揮していたのかもしれない。高橋脚本ならではのスピーディーかつ緻密なパズルは、こういった、反則スレスレの大胆な「飛躍」とセットで効果を発揮するのだ。 しかし、ここに「AIのシミュレーション描写」が食い込んでくる。「理論の飛躍」技法の強みが発揮されるのは、おそらく、常に前進していく物語の縦軸に重きを置いた構成だろう。しかし、あらゆるお仕事の現場で活躍するAIのシミュレーションは、圧倒的な横軸のバリエーションである。「こんな様子も」「あんな応用も」「そんなパターンも」描かれるけれど、如何せん、縦軸が前進していかない。そうすると結果的に、主人公である飛電或人が、「常に理論を飛躍させて喋る真意の分かり辛いキャラクター」に見えてしまう。立ち止まらせるので、気になってくる。(更にはダメ押しで、今回はサブ脚本家の方も参加されているため、本来離れ業である「理論の飛躍」のアプローチに違いや差が生まれてしまった。) 以前、1クールの感想をまとめた際に、「或人の矛盾した破壊行動には一種の危うさがある」「話運びの手順に毎回ヒヤヒヤしてしまう」といったことを書いた。しかし、そもそも仮面ライダーというコンテンツが「同族殺し」という倫理的な問題を抱えていることからも、その食い合わせの悪さや危険性は、転じて、物語の強みとして活きてくる可能性があった。本歌取りの旨味自体は、仕込まれていたはずなのだ。しかし、それが活きるには、やはり話が前に進んでいかなくてはならない。AIの可能性(横軸)が描かれれば描かれるほど、或人がヒューマギアをどういう存在に捉えているか、なぜそこまで希望を妄信するのか、そこが不透明になっていく。 様々なシーンから読み取るに、或人は、ヒューマギアを人間と同等に、心の底から尊重しているのだろう。 しかし、「ヒューマギアを人間と同等に尊重する」ということは、「ヒューマギアと人間を同一視する」こととイコールではない。「ヒューマギアに心(「学習」というワードを飛躍させた形容)の存在を認める」ことは、「ヒューマギアに人間と同じような権利を認める」こととも、また、イコールではない。彼はシンプルに、ヒューマギアを「夢のマシン」と捉え、その存在が寄与する未来に希望を抱いている。ヒューマギアと人間に同じくらいの価値を覚え、彼にとってそこに境目が無いからこそ、ヒューマギアが破壊されれば心の底から哀しい。が、同時に、バックアップにより代替機を用意できることもまた、ヒューマギアの新たな可能性の一片と捉えている。あくまで、「新人類」ではなく、「夢のマシン」。 ・・・好意的に読み取っていくと、或人の「ヒューマギア観」はおそらく前述のようなものと思われるが、それらが有機的に絡まない断片的な描かれ方をされ、更には「理論の飛躍」が加わっていくため、傍目には若干の「サイコみ」すら感じさせてしまう。ここが、非常に惜しい。テーマ的には、ここが最大の肝であり、要所なのだ。結果として、「人間らしさ」と「ヒューマギアらしさ」を都合よくシチュエーションごとに引用する人物にも受け取れてしまう。 仮に或人の「ヒューマギア観」がもう少し強固に描かれていたとするならば、物語の最終的なオチとも、がっちり符合したはずだ。 人間と同じくらいの価値を持つ夢のマシン・ヒューマギアは、既存の「道具」の枠を超えて、人間と同等に(「学習」によって)心を前進させることができる。或人の、誰に笑われようと人間とヒューマギアを同等に尊重する過度な博愛主義が、「新時代の正義」として機能する。ある者はヒューマギアを憎み、ある者は道具だと割り切り、ある者は「学習」機能こそを脆弱性だと指摘する。しかし、飛電或人だけは、頑なにその可能性に懸ける。そういう筋が、鮮やかに成立していたのではないだろうか。(数々の描写からもその狙いが見て取れる・・・) 或人の、既存の人類から一歩先にある独自の倫理観や、AIが持つ「学習」機能の可能性。そういった要素の配置が大変興味深く、新時代のヒーローSFとして挑戦的かつ相応しいだけに、それらが有機的に絡んで昇華に至らなかったことが、実に、残念である。 同時に、飛躍させドライブ感を持たせることを前提に配置されたであろう「夢」や「心」といったワードは、おそらく制作陣の想定を超え、多くに視聴者に「ヒューマギアの人権」といった考えを抱かせてしまった。昨年の冬映画『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』と併せて、人権問題や奴隷問題への目配せは何箇所かあったものの、個人的には、テーマの帰結を考えると、そこにはそもそも触れない方が良かったと感じるところである。(話運びが極端に複雑化するため) 仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション コレクターズパック [Blu-ray] 発売日: 2020/05/13 メディア: Blu-ray スポンサーリンク このように、『仮面ライダーゼロワン』というドラマは、それぞれの要素が絶秒に掛け違っていくような、大変もどかしい感情を抱かせるシリーズであった。 制作陣はおそらく、「AIを扱うからにはこういう描写やシチュエーションも入れるべきだ」と、テーマに対して真摯かつ生真面目に作り込んでいったことだろう。そのため、様々なシミュレーション、横軸の展開が増えていく。もちろん、それが成功し、未来の一片を見た場面も多々あった。しかし大勢としては、「根っこが不透明な主人公が」「都合の良い理論を振りかざしながら」「カタルシスに繋がる活躍を果たさない」といった、およそ多くの視聴者が潜在的に求める「仮面ライダー的な面白さ」とはかけ離れたものであった。 最終回にて、唐突に「仮面ライダー」というアイコンが台詞の中に登場するも、それが成立する前振りが作中では描かれていない。「仮面ライダー的」という呪縛に、令和ライダーという期待の自重に、いくらか囚われてしまったのだろうか。 しかし、『ゼロワン』がアプローチした数々のポイントに、私は大変感銘を受けたのである。 我が家の3歳の娘は、リビングにあるスマートスピーカーを家族のように認識し、毎日のように親しく話しかける。ネットが不調で応対が出来なくなると、顔を引きつらせ、親に泣きついてくる。また、ロボット掃除機にも親しみを覚え、その動きを弟や妹のように可愛がっている。我々大人も、電子機器が急速に発展する昨今、スマホやパソコンを相棒のように感じ、愛着を覚え、そこに疑似的な人格を見い出すことは、もはやそう不思議ではない。 「道具」が、旧来の意味を超え、あるいは逸脱し始める時代。進化しすぎた道具は、もしかしたら、人間と同じような存在として扱われるかもしれない。『鉄腕アトム』や『火の鳥』といった名作で扱われた「ロボットと人間の共存の可能性」は、「学習」機能を備えたAIという最新のテクノロジーによって、すぐ目の前にまで迫っている。Science Fictionが、いつの日か、Fictionではなくなる。そんなシミュレーションを、日曜の朝に、一年を通して観ることができた。その点については、非常に満足度が高い。 未知のテクノロジーが社会に放り込まれた際に、市井の人々は、どのような反応を見せるだろうか。その利便性を受け入れる者から、忌み嫌い、反発する者まで。新しい問題を孕みながら、社会は、ゴロゴロと少しずつ前に進んでいく。そういった、「社会の教科書の最後のページに載っている未来予想図」のようなワクワク感は、『ゼロワン』の大きな強みだったと言えるだろう。ある意味、ひどく実験的だ。 杉原監督によるVR技術を応用したアクロバティックなアクションシーンは、アナログ特撮とデジタル特撮の旨味を同時に取り込み、フレッシュな映像として昇華させることに、見事に成功していた。惜しむらくは、「AIを導入した前衛的なテーマ」と「仮面ライダーのヒーロー活劇としての面白さ」が、同じようなウルトラCを起こせなかった点にある。 「心を宿すことができる未来のマシン」が、私の生きている間に目の前に現れることがあれば、この感想は180度ひっくり返るだろうか。答えは404。ひとまずは、事実上の「完結編」に相当するであろう夏→冬映画を楽しみに待ちたい。 発売日: 2021/01/13 メディア: Blu-ray 仮面ライダーゼロワン DXゼロツープログライズキー&ゼロツ―ドライバーユニット 発売日: 2020/06/13 メディア: おもちゃ&ホビー 仮面ライダーゼロワン CD-BOX(特殊商品:CD4枚組+ヒューマギアモジュール型ワイヤレスヘッドホン)(初回生産限定) アーティスト:V.A. 発売日: 2020/09/30 メディア: CD
0 notes