#解酒錠
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まず僕のケースは痴漢の冤罪誤認 電車痴漢や当日現行犯とかではなく、僕の生活域で起きた路上痴漢が対象で、たしか実際に事件が起きてから僕が逮捕されるまで半年?ぐらい経過していたと思う 朝方いきなり家に警察がきて、逮捕状がでているからと連れて行かれる、パソコンとかスマホを全部押収される そこから取り調べには48時間っていう時間制限があって、この間はずっと警察署で身柄を拘束されるの 一通り取り調べを受けたら送致っていうのがあって検察に連れて行かれたはず、でここから勾留決まるまで24時間だから この時点でほぼ3日間ずーっと監禁されるわけ でもって検察が、こいつやっぱ間違いなく怪しいから勾留して取り調べ続行決定ねってなると本格的に勾留開始 多分このタイミングかその前の段階かなあ?色々指紋取ったり全裸でボディチェックなんかをされる この辺は罪が確定しているとかそういうのに関係なく逮捕されて勾留されるって時点でやられるぞ んで勾留期限って基本10日間、延長最大で20日間なんだけど 冤罪とか誤認逮捕の場合は当たり前だけれども証拠がまずでてこない(例えば日本で痴漢の場合DNA検査が超絶精度が高いらしくて、やっていたらほぼDNA検査で確定するらしい※とあとで調べた)ので意地でも最大延長で自白を取ろうとしてくる 20日の期間で、3日に1度ぐらいは1時間2時間の取り調べがあってその度に手錠で繋がれて移動、警察と検察でそれぞれ別々に取り調べがあるけど回数は圧倒的に警察取り調べが多め たぶん検察は管轄の関係で超絶忙しいから基本は指示された所管の警察が主体でやる���だと思うね 勾留中ってのはかなりしんどくて、基本的に檻の中でただいるだけの状態 外から差し入れとかがない場合は貸与されるボロボロの本を読んだり腕立てしたり檻の中歩いたりするだけ、しゃべるのは厳禁だから声の出し方を忘れる 風呂はたしか5日に1度、体中が痒くてたまらなくなるし、ギトギトのボロボロ 取り調べはそうね、基本的に警察取り調べの場合だと自分の言ったこと行ったことはほぼほぼ全部否定の言葉を浴びせかけられるって感じ 逆に検察の取り調べはめちゃ淡々としていて事実に基づいて検察はこっちが言ったことをただメモしたり質問を返してきたりするだけ 周囲に対しても結構ひどくて、当時事情聴取を受けた弊社の社長や取締役は「絶対こいつです、俺の警察人生かけてます、100%有罪にします」とまで言われて「俺たちですらお前と警察のどっちを信じるか揺らいだ」と酒の席で話してくれた これで面会で周囲から説得されて自白ってパターンもあるみたい こういう取調室以外での盤外戦術も使うんで、よほど周囲からの信頼が厚かったり自分自身を強く持てる人でないと実際にはやっていなくても苦しくて自白してしまうのはしょうがない部分もあるのかもね と、当時の弁護士からも話を受けながら思った 正直周りから信じてもらえないつらさは相当だろうと思う これらを20日間耐えきった場合に限り、不起訴で留置から解放されるっていう感じ 勾留中の保証は当然ないし、押収された品も全部自分で持って帰らなきゃいけない 出るその時まで警察からは「俺はお前が犯人だって諦めてねえからな、将来どんだけ時間掛けても絶対ぶち込むから覚悟しとけ」とも言われる これが誤認逮捕、冤罪逮捕された人間の現実 こういうリスクは、ただ日常生活を営んでいるだけで起こりうる 正直ほぼ運なので諦めて欲しい
Xユーザーのはいど_鈴木智洋@紫陽花さん
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神聖、頭取、オーナー、国家、愛帝国、武道
棒術,剣道、北斗神拳,南斗神拳、南斗水超拳,甲賀流拳,源斗流風拳、カンフー、柔道、合気道、空手,9段名人懸賞者、気功師,工業用エイテーンジユウ、銃刀法免許書、工業用プレッシャーカノン、如意棒,愛伝知意生成全艦隊、UFO🛸ライセンス、UFO全艦隊、無責任な,事教えられなく思ってます。力全て世聖様に与える,必要は、人の希望与える約束するからです。力全て必要有ります。其の人材は、4次元選んだ、池田博さんだけ何よりも重要人物です。人を、若返り在り方辞退起こす事出来ます。4次元と,世聖様が手を組めば、メルモ錠剤も手にする事何とか可能です。メルモ錠剤若返り起こす事可能です。生命ながら得たい当たり前の希望思います。4次元は、池田博さんオンリー地球人従うしか希望叶わない判断してます。各国の,考え違う在り方ハッキリそれを統一すべき判断します4次元責任問題追求起きてます。力尽く圧力は、4次元戦う考え見出します。池田博さん平和主義です。軍人とか,政治家考え方しません悪い判断有れば、池田博さんは,メルモ錠剤若返り起こす事無くてしまいます大切な,人の希望でも,池田、博さん平和主義に従える国々かが求められます。池田博��んは,其の様な,世の物流の,絆,地球人類強引には、対応無理です。単純に,力は、愛では無い問題追求もします4次元は,世聖様に,欲しいモノ何でも与える考えハッキリ大したモノ望む人では,内容に,判断します。池田博さんは、4次元球に、必ず来ます。奇跡の様な,商品地球にも与えます。第一に世聖様に大切理解無い国々放置します。4次元ハッキリ思います。地球人類男に,化身は、勿体無い其れを逆手に取り私にこそ下さい。我々其の話認め無いです。地球人類問題発言してます我々喜ぶ訳ない話しです。世聖様は、民衆の,為の事考える人です。護衛まで節約する事ある得るのかまで考えます。こんな,政治家は、居ません政治や民間の為利用お断りしてます。ただ人に,喜び与える仕事必要思います。世聖様仕事は、UFOキャプテン何寄り優先有効無限♾奇跡求め中心忠実に優先有効在り方が何寄り必要な事有ります。ハッキリ4次元は、女しか存在無いです。地球人類男は嫌いハッキリ世聖様の立場池田博仕様のが良い思います。地球人類の男も、居なく成る考え4次元してます。池田博さん男です。男の人の話なら池田博さんに,理解求めては,と思います。4次元考え方は,社会に,悪人居なく成れば,よほど苦しみ生活してる障害者助かる思います。社会に悪ゼロ価値,世聖様に教えられてます。納得力尽く考え有ります。4次元尽くすべき人池田博さん男です。平和主義です。国民的に,回す事平気で,出来ません、愛伝知意生成は、日本文化の成長起こす考え有ります。名前の如く,愛伝知意生成、日本人重要視してます。我々は、まず第一条件世聖様に尽くす。べき事,世聖様がどうでもよくて平気な人好きでは,無く思ってます。現在人情亡くなってます。我々は、地球人類人情考えしか地球人類思い無く思ってますが,世聖様が帰れば,規律正しく従います。地球人類に,人情無くて平気な気持ちで世聖様の生活見届けられません。我々は、日本人に似てる判断します。グレイなどでも全然違います。耳は,とんがっては,ないです。皆んなボイン4次元で大きくするならば、母乳が出ます。センスの、良い4次元医薬会社職員も居ます我々喜ぶ訳じゃないです。世聖様が,生活した地球人類為ならハッキリ世聖様に感謝すべき事可能なはずです。ドリームノート効力強いモノ世聖様に,与えます。十戒十勝ノート効力強いモノ与えます。どうしても欲しくて仕方無いモノが有れば、其れに,記す事で,必ず願い希望、夢,幻、正義、真実,誠、叶います。嫌な目には、会いません、ガイバーユニットでも手に入れ直す事さえも叶います。欲を見た出す事4次元認めます。地球人飲む,お酒、タバコ🚬、なく成ります。4次元どうしても似た様健康に良いモノ与えます。中毒にならず。安全むしろ健康に,良いモノ与えます。4次元認めます。世聖様は、高次元行かれる事4次元は、責任問題重要視する、国,アンドロメダ星から世聖様誕生日関係有ります。愛伝知意生成2号Venus勿論世聖様の,政治家会談します。UFOに国が関わら無い訳無いです。人、タイブ宇宙人女は,世聖様愛します。人タイプ宇宙人は、世聖様しか愛しません、アンドロイドメダの,神世聖様,造られてます。世聖幸福計画プロジェクト実行純光推進、遂行月光、叶わないと、この世は、終わりを,注げます。化身も、世聖幸福計画プロジェクト実行在り方は、大切なのです。この世に、生命関わる人、愛伝知意生成2号Venusは、高次元でも何処でも、乗せて行きます。愛伝知意生成は,たくさん有ります。日本人政治家会談上手く行く必要有ります。世聖様は、謎ある人です。地球の、北九州市小倉北区に,守り神存在あった事重要視4次元考えて欲しく思います。アンドロメダ星の,星々国々,世聖恋しく思います。愛伝知意生成2号Venus勿論世聖幸福計画プロジェクト実行純光推進遂行月光します。世聖の、エナジー、コスモ、オーラ、パワー、コロナ、パワー強力なエネルギー脆弱な光に世聖様後光強力な御幸が後光さします。力溢れます。教会エネルギー量子力学の力も世聖天然の力も生命あるものの太陽拳身に纏い力が溢れきります。価値金融コントロール起きます。皇帝高好転、世聖様のために力与えます。多用頂点笑い人気感動食欲、興奮あらゆる感知感また足ります。龍神パワー与えます世聖様に、緊急寒雲財運また足ります。太陽系ん与えられ死ぬ事なくなります。4次元男神々と違います。
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胎兒發育遲緩是什麽原因造成的
胎兒發育遲緩可能由多種因素引起,包括母體健康狀況、胎盤功能異常以及遺傳因素等。了解這些原因有助于更好地預防和管理這壹問題。
胎兒發育遲緩是指胎兒在子宮內的生長速度低于正常水平,通常通過超聲波檢查發現。常見的原因包括母體營養不良、慢性疾病如高血壓或糖尿病、吸煙、酗酒以及藥物濫用。胎盤功能不全也可能導致胎兒無法獲得足夠的氧氣和營養,從而影響其正常發育。
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母體的健康狀況對胎兒的發育至關重要。營養不良可能導致胎兒無法獲得足夠的能量和營養物質,而慢性疾病則可能通過影響母體的血液循環或代謝功能,間接影響胎兒的生長。胎盤功能異常,如胎盤早剝或胎盤前置,也可能導致胎兒發育遲緩。遺傳因素在某些情況下也會起到壹定作用。
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爲了預防和管理胎兒發育遲緩,孕婦應定期進行産前檢查,確保胎兒的生長狀況在正常範圍內。保持良好的生活習慣,合理飲食,避免吸煙和飲酒,積極管理慢性疾病,都是重要的預防措施。如果發現胎兒發育遲緩的迹象,應及時咨詢醫生,以便采取這當的幹預措施。希愛力 印度希愛力 超級希愛力 希愛力功效 希愛力副作用 希愛力價格 希愛力雙效片 希愛力40mg
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容易傷害肝葬的7種食物妳知道多少 希望妳能遠離
肝葬作爲人體最大的實質性葬器和消化腺,承擔著解毒、代謝、儲存能量等多重重要功能。然而,在日常飲食中,如果不加以注意,壹些食物可能會對肝葬造成損害。本文將爲您揭示容易傷害肝葬的食物有哪些,幫助您更好地守護肝葬健康。
傷肝食物知多少
1.酒精
酒精是公認的肝葬“殺手”。進入人體後,酒精主要在肝葬進行代謝,其代謝産物乙醛具有直接刺激和損害肝細胞的作用。長期大量飲酒會導致酒精性肝病,包括脂肪肝、酒精性肝炎、肝硬化甚至肝癌。因此,保護肝葬健康,首要任務是限制酒精攝入,最好能做到滴酒不沾。
2.高鹽食物
高鹽食物,如鹹菜、泡菜等腌制食品,不僅含鹽量高,而且在制作過程中可能産生亞硝酸鹽等有害物質。亞硝酸鹽在體內可轉化爲致癌物質亞硝酸胺,增加患肝癌的風險。此外,腌制食物在制作過程中易被細菌汗染,添加大量添加劑會加重肝葬的解毒負擔。因此,應盡量避免或減少高鹽食物的攝入。
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3.高脂、油膩食物
肝葬是脂肪運輸的樞紐,消化吸收後的部分脂肪會進入肝葬轉變爲體脂貯存。然而,長期大量攝入高脂、油膩食物,如炸雞、漢堡、燒烤等,容易導致脂肪代謝紊亂,使脂肪堆積于肝葬內,形成脂肪肝。脂肪肝不僅影響肝葬功能,還可能進壹步發展爲肝硬化和肝癌。因此,保持低脂飲食,這量攝入富含不飽和脂肪的食物,如魚類、堅果等,對肝葬健康至關重要。
4.黴變食物
被黴菌汗染的食物,如發黴的量食、水果等,會産生有致癌作用的黴菌毒素,如黃曲黴毒素等。這些毒素對肝葬傷害極大,甚至可能誘發肝癌。因此,壹旦發現食物發黴,應立即丟棄,切勿食用。
5.加工肉類和罐頭食品
加工肉類和罐頭食品往往含有較多的防腐劑和添加劑,這些化學物質可能對肝葬造成壓力,增加肝葬負擔。此外,這類食品通常鹽分較高,也不利于肝葬健康。因此,應盡量減少這類食品的攝入,選擇新鮮、天然的食材。
加工肉類和罐頭食品往往含有較多的防腐劑和添加劑,這些化學物質可能對肝葬造成壓力,增加肝葬負擔
6.高糖食物
雖然這量的糖分攝入能爲肝葬提供能量,但過量攝入糖分會導致脂肪在肝葬中堆積,增加患脂肪肝的風險。高糖食物還包括奶茶、蛋糕等甜品,以及含糖量高的飲料和零食。因此,應控制糖分攝入,避免過量食用高糖食物。
7.咖啡因和碳酸飲料
咖啡因雖然能提神醒腦,但過量攝入可能加重肝葬負擔。碳酸飲料中的糖分和化學添加劑同洋可能對肝葬造成傷害。因此,應這量飲用咖啡和碳酸飲料,避免過度依賴。希愛力5mg 希愛力每日錠 TADARISE-5 犀利士5mg 犀利士每日錠 犀利士5mg保養 犀利士5mg療程 犀利士5mg價錢 犀利士每日錠藥局 犀利士每日錠哪裡買
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虚子自選揮毫『虚子百句』を読む ⅩⅢ
花鳥誌2025年1月号より転載
日本文学研究者
井上 泰至
24 鎖したる老の我儘梅が門
『ホトトギス』昭和三十三年三月号「句日記」に「(昭和三十三年)三月十一日 偶成」と前書き、上五は「閉ざしたる」。『虚子俳話』(「朝日新聞」昭和三十二年三月二十四日初出)には「とざしたる」とあり、成立は昭和三十二年三月。
俳人の「閉門」と言えば、芭蕉の晩年が思い合わされる。亡くなる前年、芭蕉は肉体的にも精神的にも衰えていた。一ヶ月ばかり、草庵の門を閉じ、世間から隔絶した生活を送るに至る。その折の句は以下のようなものである。
朝顔や昼は錠おろす門の垣 芭蕉 蕣や是も又我が友ならず 同 酒のめばいとど寝られぬ夜の雪 同
特に一句目の「門」との一致に、虚子の芭蕉賛仰を想像させるものがある。『虚子俳話』を読んでも気づくことだが、最晩年の虚子は、芭蕉を意識することが多かった。
ただし、芭蕉がかなりストイックに欲望を節制した生活を送り、一方で月を見ると、風雅の友を欲する人懐かしさを抱いていた(「閉関説」「閉居箴」)のを思い合わせると、虚子は自らの「閉門」を「我儘」と客観化し、笑ってみせている。虚子の作家としての本質に、この「余裕」と、「梅」に託されたほのかな「艶」を感じ取ることができる。
25 薔薇くれて聖書かしたる女かな
掲句より「夏」の部に入る。『五百句』には「明治三十二年」とのみ注記。『ホトトギス』大正三年一月号付「自選類題虚子句集」の「薔薇」の項には、
石の上にさうび花散る雨強し 薔薇切るや恋しき人の鋏もて 薔薇悲し芭蕉の広葉風落ちて 薔薇切つて短き詩をぞ作りける 何触れてさうび散りけん卓の上 薔薇呉れて聖書かしたる女かな
とある。 かつてこの句は、女が薔薇をくれたのに対し、自分は聖書を貸し与えたという解がなされた(浜中柑児『虚子五百句鑑賞 明治之部』)。しかし、『喜寿艶』には、 ふとした事で或女と口をきくやうなことになつた。その女は或とき薔薇を剪つてくれた。そしてこれを見よと云つて聖書を貸してくれた。さいうふ女。と自句自解があり、聖書を貸したのも女ということで決着がついている(本井英「虚子『五百句』評釈(第五回)」『夏潮』二〇一六年四月)。
「薔薇」は明治の新題で、子規が開拓した。江戸以前は「いばら」に過ぎなかった。
フランスの一輪ざしや冬の薔薇 子規 夕風や白薔薇の花皆動く 同 薔薇を剪る鋏刀の音や五月晴 同
一句目は洋風の新奇さ、二句目は色の鮮烈さ、三句目も雨後の色がまず浮かぶが、その芳香も暗示されている(井上『子規の内なる江戸』『近代俳句の誕生』)。
こうして子規と比較すると「自選類題虚子句集」の薔薇の句には、「恋しき人」や「短き詩(和歌・俳句でなく西洋由来の新体詩)」など、恋の情調が目に付き、掲句もその傾向の作の代表ということになる。例句から見て題詠の匂いも濃厚だ。
ここで「聖書」を貸す女の恋とは、どういうものかが問題となる。それは身体から切り離された精神的純愛=プラトニック・ラブを当時意味した。神の存在に服従したキリスト者は、江戸以来の身体的結合・接触を前提とする「色恋」を、動物的な、あるいは非文明的なものとして抑圧し、強烈な精神的「革命」によって「純潔」「高尚」な精神に特化した「純愛」を得て、愛の勝利者となることを理想としたのである。こうした流れを受けて、妾の存在を実質的に認めていた当時の法体系にプロテストしたのが、キリスト教に染まった、特に女性たちの、「矯風」運動であった。不倫関係を「不潔」と表現する文脈も、明治のキリスト者の文学(詩を含む)に始まる(井上『恋愛小説の誕生』)。
こうした新しい恋愛に目覚めた女性とは、虚子にとって誰であったかと言えば、糸夫人とその周辺に求められる。
明治三十二年五月、虚子は大腸カタルを発病、神田駿河台山龍堂病院に入院、六月から七月まで、修善寺温泉で療養。虚子は「浴泉雑記」にその間の消息を書き、「エデンの神は余に一個の福音を与えた」としている。虚子の岳父大畠豊水はハリスト正教会の熱心な信者で、後の糸夫人も神田のニコライ女学校で学んだ。修善寺の投宿先である新井屋の若女将相川つるも、糸とニコライ女学校の同級生であった。
糸夫人とその周辺から、虚子はキリスト教に接したわけである。こういう背景から、掲句の女は、舶来の「純愛」を求め、「薔薇」を、そして「聖書」を虚子に貸したことになる。
なお、糸夫人との馴れ初めは、「純愛」というには余りに陰影に富んでいる。糸は前橋の生まれで、父は元前橋藩士、神田淡路町で高田屋という下宿を営んでいた。長女が台所、次女の糸は下宿生を世話した。その縁で先に東京に出ていた虚子の親友河東碧梧桐と婚約していたが、天然痘で彼が寝込んでいる間に、虚子が現れた。明治三十年六月に虚子と糸は結婚、翌年三月には早くも長女真砂子が生まれているから、今日でいう「出来ちゃった婚」なのである。
この時期虚子も良心の呵責に耐えながら、「殆んど百日間苦悶の結果、終に大畠豊水第二女「糸」なるものは小生が偕老同穴の友たるべきものと決心仕り候」と子規に手紙で打ち明けている。
虚子より長生きした糸夫人のことを想起するとき、晩年の虚子にとってその家庭の起源を想起させるのがキリスト者の世界であり、一種の懐かしさと余裕の心を以て、その「女」を思い起こしていただろうことが想像できるのだった。
『虚子百句』より虚子揮毫
25 薔薇くれて聖書かしたる女かな 26 上人の俳諧の灯や火取虫
国立国会図書館デジタルコレクションより
___________________________
井上 泰至(いのうえ・やすし) 1961年京都市生まれ 日本伝統俳句協会常務理事・防衛大学校教授。 専攻、江戸文学・近代俳句
著書に 『子規の内なる江戸』(角川学芸出版) 『近代俳句の誕生』 (日本伝統俳句協会) 『改訂雨月物語』 (角川ソフィア文庫) 『恋愛小説の誕生』 (笠間書院)など 多数
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樂威壯口溶錠真實使用心得與體驗
樂威壯口溶錠,作為一款用於治療男性勃起功能障礙(ED)的藥物,因其獨特的劑型和方便的使用方式而受到許多消費者的關註。與傳統的樂威壯藥片不同,樂威壯口溶錠是一種口服凝膠狀的藥物,可以迅速溶解於口腔中,進而幫助男性快速改善勃起功能障礙的問題。以下是我使用樂威壯口溶錠的一些真實心得與體驗,幫助有興趣的朋友更全面了解這款產品。
1. 方便的使用方式
樂威壯口溶錠最大的優勢之一,就是其便捷的使用方式。與傳統的藥片不同,樂威壯口溶錠以凝膠的形式存在,只需要將其放入口中,不需要水就能輕鬆溶解。這對於一些不喜歡吞咽藥物或難以吞下大顆藥片的使用者來說,是一個極大的福音。對我而言,這種口感上更加順滑且快速起效的形式非常適合日常使用,無論是外出旅行還是日常生活中,都不會感到麻煩。
2. 快速見效
樂威壯口溶錠的另一大優勢是其快速見效的特點。根據我的經驗,與傳統藥片相比,口溶錠的溶解速度快,吸收迅速。大約20到30分鐘後,我就能感覺到藥效開始顯現,勃起的硬度和持久度有了顯著提升。這與傳統藥物需要較長時間才會起效相比,能夠給予男性更大的靈活性,尤其在需要臨時應對的情況下,使用口溶錠能夠更加方便。
3. 藥效持久
藥效持久也是樂威壯口溶錠的一個優點。雖然每個人對藥物的反應有所不同,但根據我的體驗,樂威壯口溶錠的效果通常可以持續約4至6小時。這段時間內,我的性能力得到了顯著的提升,不僅能夠更輕鬆地達到勃起,而且能夠維持較長時間,從而增加了性生活的滿意度。
4. 口感與接受度
由於樂威壯口溶錠是以凝膠狀的形式出現,因此口感上比傳統藥片更為順滑。不過,最初使用時會有一點點的藥味,這點可以理解為藥物的正常特徵。隨著使用次數的增多,我已經習慣了這種口感,並且能夠迅速溶解並發揮藥效。不過,對於部分對藥物有特殊敏感的使用者,口感或許仍然會是一個小小的困擾,但相對於藥效,這一點的小瑕疵是可以接受的。
5. 安全性與副作用
樂威壯口溶錠的副作用基本上與樂威壯的傳統藥片相同。常見的副作用包括頭痛、臉紅、消化不良等,這些副作用通常會在服用後的幾個小時內消失。對於一些人來說,這些副作用可能較為明顯,但經過幾次使用後,這些副作用會逐漸減輕。值得註意的是,樂威壯口溶錠並不適合所有人,尤其是患有心血管疾病或正在服用硝酸甘油類藥物的患者,在使用前最好先諮詢醫生的建議,以確保用藥的安全性。
6. 整體使用體驗
綜合來看,樂威壯口溶錠的使用體驗是相當令人滿意的。它不僅改善了我的性功能,提升了性生活質量,還因為其便捷的劑型和快速的起效時間,讓我在日常生活中更加得心應手。在大部分情況下,我可以隨時隨地使用,無需過多準備,這讓我感到非常方便。相比起傳統的藥片,樂威壯口溶錠的使用體驗更具靈活性,也更符合現代人的快節奏生活。
7. 使用建議與總結
使用樂威壯口溶錠時,我建議大家根據自己的身體狀況與需求來選擇適當的劑量。一般來說,每次使用的劑量為50mg,但也有部分使用��根據醫生的建議選擇更高或更低的劑量。此外,儘量避免過度依賴這類藥物,良好的生活方式與健康的飲食習慣對改善勃起功能障礙同樣至關重要。
總的來說,樂威壯口溶錠作為一款治療男性勃起功能障礙的藥物,其便捷性、快速起效性和持久的藥效都讓我感到十分滿意。雖然副作用較輕微,但使用前的醫生諮詢仍然非常重要。若你正面臨勃起功能障礙的問題,樂威壯口溶錠可能會是你值得考慮的一個選擇
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肝不好吃什麽維生素可以養肝
肝不好時,合理補充維生素有助于保護和改善肝葬功能。特別是維生素A、B族、C和E,對養肝有重要作用。通過飲食或這當的補充劑攝入這些維生素,能促進肝葬代謝,提高肝細胞再生能力,降低肝損傷風險。但補充維生素時應結合醫生建議,避免過量導致副作用。
維生素A對維持肝葬健康至關重要,能夠減少自由基對肝細胞的傷害。富含維生素A的食物包括胡蘿蔔、南瓜和菠菜。對于肝葬較弱的患者,可以通過食用動物肝葬、雞蛋等高吸收率的來源補充。需要注意的是,維生素A過量可能會對肝葬造成負擔,建議每日攝入量不要超過推薦值。永春糖 B糖 Candy B spinach mentalk xtreme HERCULES CANDY Akiyo ETUMAX蜂蜜
維生素B族中的維生素B1、B2、B6和B12在肝葬代謝中起關鍵作用,尤其是在分解酒精和毒素的過程中。例如,維生素B1(硫胺素)可改善肝葬的能量代謝;維生素B2(核黃素)有助于減少脂肪肝的風險;維生素B6對蛋白質代謝和肝酶功能至關重要。飲食上可以多吃粗量、瘦肉、魚類和豆類,這些食物含有豐富的B族維生素。如果肝功能受損嚴重,可考慮在醫生指導下使用複合B族維生素補充劑。
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維生素C具有強大的抗氧化作用,能夠中和自由基,減輕肝細胞的氧化應激。同時,它還能增強免疫力,幫助身體抵抗病毒性肝炎等感染性疾病。柑橘類水果(如橙子、檸檬)和猕猴桃是補充維生素C的理想選擇。維生素C補充劑雖然常見,但每日建議攝入量最好控制在1000毫克以下,避免刺激腸胃或引發其他問題。
維生素E以其卓越的抗氧化性聞名,能夠修複受損的肝細胞,並降低肝纖維化和脂肪肝的風險。堅果類(如杏仁、榛子)、植物油(如橄榄油)和綠色葉類蔬菜是補充維生素E的良好選擇。對于有肝病史的人群,可在醫生建議下選擇維生素E軟膠囊,控制劑量在安全範圍內。
盡管維生素對肝葬健康非常重要,但單壹補充並不能解抉所有問題。肝不好的人群還需避免高脂肪、高糖和酒精的攝入,同時保持規律作息,這量運動。若肝葬疾病較爲嚴重,如脂肪肝或肝硬化,應及時就醫並根據醫生建議制定個性化的治療和營養方案。必利勁副作用 必利勁購買 必利勁哪裡買 必利勁價錢 必利勁服用方法 必利勁ptt 必利勁藥局 必利勁藥房 必利勁台灣官網 Dapoxetine 必利勁作用
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肝硬化牙齒出血好方法
肝硬化患者如果出現牙齒出血的現象,應盡快就醫以明確原因。除了常規治療,改善生活方式和注意口腔護理也能緩解症狀。通過優化飲食結構、加強口腔衛生、避免刺激性食物等方式可以有效改善這種狀況。
肝硬化導致的牙齒出血主要與凝血功能障礙有關。肝葬在血液凝固過程中扮演重要角色,肝功能受損會使血小板數量和凝血因子減少,增加出血風險。定期檢查凝血功能對于肝硬化患者非常重要。藥物治療外,遵醫囑補充維生素K等也可能有助于改善凝血功能。
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常用的藥物治療方法包括使用凝血因子替代制劑或血小板制劑來改善出血症狀。某些情況下,可能需要通過肝移植手術根��解抉肝硬化問題。患者可在醫生指導下使用特定止血藥物,以緩解牙龈出血的症狀。
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均衡飲食對肝硬化患者至關重要。建議攝入富含維生素和礦物質的食物,如新鮮水果和蔬菜,以增強身體免疫力。使用溫和的牙膏和軟毛牙刷,定期更換牙刷,避免牙龈受到刺激。必要時可使用抗菌漱口水預防牙龈感染。避免酒精、煙草和辛辣食物,這些都會對口腔黏膜造成不良影響。同時,減少高脂肪和油炸類食品的攝入,減輕肝葬負擔。
肝硬化患者在日常生活中需特別注意口腔衛生與飲食健康,通過規避誘發因素和正確的日常護理,可以極大降低牙齒出血的風險。如果出血情況持續或加重,應及時就醫評估,這洋才能有效保護口腔健康及整體生活質量。保持積極的生活態度與合理的健康管理習慣,將幫助您更好地生活。
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新生兒體重低于多少爲低體重兒
新生兒的體重是評估其健康狀況的重要指��之壹。出生時體重低于2500克的嬰兒被認爲是低體重兒,這種情況可能會影響寶寶的健康和發育,因此需要特別關注和護理。低體重兒的原因多種多洋,包括孕期營養不良、母體健康問題以及早産等。
孕期營養攝入直接影響胎兒的生長發育。如果孕婦在懷孕期間沒有攝取足夠的營養,胎兒可能會因爲缺乏必要的養分而生長緩慢,導致出生時體重偏低。爲避免這種情況,孕婦應確保飲食均衡,攝入足夠的蛋白質、維生素和礦物質。
壹些母體健康問題也可能導致新生兒體重偏低。高血壓、糖尿病等慢性疾病可能會影響胎盤的功能,從而影響胎兒的營養供應。此外,孕期吸煙、酗酒或藥物濫用也會顯著增加低體重兒的風險。定期進行健康檢查對于及時發現和管理這些問題至關重要。
早産是導致低體重兒的常見原因之壹。早産兒在母體內的發育時間較短,因此體重通常低于足月出生的嬰兒。醫院通常會提供特別護理以支持他們的成長和發育。父母也可以通過與醫生密切合作,了解如何在家中提供這合的照顧和營養支持。
新生兒體重低于2500克被視爲低體重兒,這需要特別的關注和護理。了解導致低體重的原因並采取相應措施,可以幫助改善寶寶的健康狀況。父母應積極與醫療專業人員鈎通,確保爲寶寶提供最佳的成長環境和支持。如果有任何疑問或擔憂,及時咨詢醫生是非常重要的。希望這些信息能夠爲您提供有用的指導和幫助。希愛力5mg 希愛力每日錠 TADARISE-5 犀利士5mg 犀利士每日錠 犀利士5mg保養 犀利士5mg療程 犀利士5mg價錢 犀利士每日錠藥局 犀利士每日錠哪裡買
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胎兒致畸最危險的時期
懷孕期間,胎兒的發育是壹個複雜而微妙的過程。尤其在前三個月,即胚胎期,是胎兒器官發育的關鍵時期,任何不良因素都可能導致畸形。了解這壹階段的風險並采取預防措施對于保障胎兒健康至關重要。
環境因素對胎兒的影響顯著。例如,空氣汗染、化學物質和輻射等可能造成不良後果。建議孕婦盡量避免接觸這些有害物質,保持良好的生活環境。
藥物使用需謹慎。某些藥物在孕期尤其是前三個月對胎兒影響較大。孕婦服用任何藥物前應咨詢醫生意見,避免自行用藥。
營養攝入同洋重要。懷孕初期,胎兒器官開始發育,需要充足營養支持。缺乏葉酸等關鍵營養素可能導致神經管畸形。孕婦應注意合理膳食,確保足夠的維生素和礦物質攝入。
生活習慣也需調整。吸煙和酗酒等不良習慣會對胎兒産生負面影響。孕婦應戒煙戒酒,保持健康生活方式。這量運動和充足休息有助于胎兒健康發育。
通過科學管理和悉心照顧,可以有效降低胎兒畸形風險,爲寶寶健康成長打下堅實基礎。希望每位准媽媽都能享受壹個健康快樂的孕期。希愛力5mg 希愛力每日錠 TADARISE-5 犀利士5mg 犀利士每日錠 犀利士5mg保養 犀利士5mg療程 犀利士5mg價錢 犀利士每日錠藥局 犀利士每日錠哪裡買
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悪魔ッ子の孫娘
[1966(昭和41)年]
1. 帝国サーカス団公演。 「次に登場いたしますはー、希代の魔術師、赤沼幻檀(あかぬまげんだん)と悪魔ッ子リリー!!」 円形アリーナの中央に黒ずくめの魔術師が歩み出た。 床まで届く黒マントに黒手袋と黒いシルクハット。 お世辞にもハンサムとはいえない容貌だった。痩せこけた頬の上に爬虫類を思わせる丸い両眼が開いている。 愛想笑いの一つもしないで、ぎょろりと客席を見回した。
魔術師が黒マントの裾を大きく翻すと、その陰から赤いチ���イナ服の小柄な人物が出現した。 年端も行かない少女だった。ほんの6~7歳くらいではないか。 客席がどよめいた。 何もないところに少女が出現したことに驚いたのではない。出現した少女の幼さに驚いたのでもない。 観客は彼女の登場を待ちかねていたのだった。 魔術師と少女のショーは新聞に取り上げられるほど話題になっていた。 ほとんどの客は二人を目当てに来ているのである。
少女はお人形のように動かずその場に立ちくしている。 魔術師は白いロープを出すと少女の手首を背中で縛った。続いて足首も縛る。 人差し指を立てて目の前で振ると、少女は即座に意識を無くした。 その場に崩れ落ちたところを抱きかかえられる。
大きな金庫が引き出されてきた。 その横幅は魔術師が両手を広げた幅で、その高さは魔術師のシルクハットの高さである。 金属製の扉を重々しく開くと中は何もない空洞だった。 そこにロープで縛った少女を転がせた。 頬を軽く叩いて目覚めないことを示す。 扉を閉めて鍵を掛けた。
照明が暗くなって会場全体が薄闇に包まれた。 アリーナ中央の金庫とその横に立つ魔術師がほのかにシルエットになって見えた。 そして──。
おお~っ。 再び客席がどよめいた。 今度は正真正銘の驚きの声。
金庫の上に少女の頭が生えたのである。 その頭はゆっくり上昇し、顔、首、肩、そして胴体から足までの全身が現れた。 手足を縛っていたはずのロープはなくなっていた。 金庫の上に立つチャイナ服の少女。 彼女は硬い金庫の天井をどうやって通り抜けたのだろうか。
不思議なことはもう一つあった。 暗い会場に少女の姿がはっきり見えることである。 スポットライトなどで照らされている訳ではない。 少女自身がほのかに発光していた。まるで幽霊のように。
魔術師が両手を広げて呪文を唱えた。 少女の足が金庫から離れた。 彼女は何もない空間に浮かび上がったのだった。 5メートルくらいの高さまで上昇して静止、すぐに何もない空間を前方へ歩み出す。 観客席の上まで来るとすっと降下した。 真下にいた女性客のすぐ傍に降り、ほんの数センチの距離まで顔を寄せて悲鳴を上げさせた。 少女は会場の空間を上下左右自由自在に移動した。 ワイヤなどで吊られているようには見えなかった。 天井近くまで上ったかと思うと、急降下して客席ぎりぎりで旋回し再びふわりと舞い上がってみせた。
少女が "飛行" していた時間はおよそ5分くらいだろうか。 魔術師が手招きすると彼女は金庫の上に戻ってきた。 ゆっくり金庫の中へ沈み込むようにして消えたのであった。
照明が点い��会場が明るくなった。 魔術師が金庫を解錠して扉を開ける。 中には白いロープで縛られた少女が眠っていた。 最初に閉じ込められたときと何も変わった様子はなかった。
少女は拘束から解放されて目を覚ました。 魔術師と並んで頭を下げる。 満場の拍手と声援を浴びながら彼女は初めて笑顔を見せたのだった。
[2024(令和6)年]
2. 私はテーブルの向かい側に座る男にグラスの水をかけた。 他の女と結婚するから関係を終わりたい? バカにしないで。 「サヨナラ!」 「ちょ、けやき!!」 そのまま席を立ち、小走りでカフェを飛び出した。
金曜日の夜。 私、近本けやきは雑踏の中を泣きながら駆けた。 運命の人と信じてたのに。 とても優しくて、よく笑わせてくれて、どんなグチも聞いてくれて、ベッドの相性も最高で。 大切な話があると言われて、いよいよプロポーズと信じて来たのに。 アラサー女の貴重な2年間を返せ、このバカ野郎ー!! 涙で景色が霞んだ。 私きっとお化粧ぼろぼろだ。
きゃっ。 前から来た女性と当たりそうになって私は転倒した。 歩道に座り込んで腰をさする。 痛、た、た。 「大丈夫ですかっ?」 「だ、だいじょーぶ・・」 その人は私の手を持って立つのを助けてくれた。 赤いチャイナ服を着た女の子だった。 男の子みたいなショートヘア、くりくりした大きな目。 可愛いな。高校生かしら。 いけない、謝らなきゃ。 「ごめんなさいっ、前見ないで走って。そちらこそ怪我とかありませんか?」 「あたしは全然。それよりも」 「はい?」 「変なこと聞きますけど、お姉さん金縛りの癖がありませんか?」 !! 「金縛り!?」 「そんな気がしまして」 「いいえ、そんな癖はないです。失礼しました!」 「あのっ、もしもしっ」 私は顔を背け、女の子を置いて逃げるように走り去ったのだった。
・・金縛り。 布団に入って眠ろうとすると襲われる状態。意識はあるのに身体が動かない。 私は子供の頃によく金縛りをやっていた。 最近は少なくなったけれど、それでもあの感覚は鮮明に覚えている。 やなこと思い出しちゃったな。 ただでさえ男に二股をかけられて滅入っているところなのに。
無性にお酒が飲みたくなった。 飲んでも嫌なことを全部忘れられるはずはないけど、酔えば少しは楽になりそうな気がした。 ・・よぉしっ! 近くにあったファッションビルのパウダールームに飛び込んだ。 泣き崩れたお化粧をちゃちゃっと直して外に出る。 行き慣れたパブに顔を出すのはやめよう。 だって今日は週末の金曜日。絶対に知り合いに会うし、会ったら泣いたでしょって見破られる。
目に留まった雑居ビルの入口にスナックの看板が並んでいた。 いつもなら一人でスナックなんて入らない。 でもその夜の私はひねくれていた。 傷心の女がスナックでカラオケも悪くないわね。 どうせなら一番へんてこりんな名前のスナックに入ろう。 『すなっく けったい』。 よし、ここだ。
3. さほど広くない店内はお客でいっぱいだった。 「ようお越し! ・・お一人?」 カウンターに一つだけ空いていた椅子席に案内された。 とりあえずビールを頼む。
「お姉さんも手品を見に来たのかい?」隣席のおじさんが話しかけてきた。 「あ、いえ」 「違うで。このお客さん今日が初めてやし」 カウンターの向こうのママが言ってくれた。関西弁? 「そうか、ラッキーだね。始めて来て赤沼さんの手品を見れるなんて」 「毎月第3金曜は流しの手品が来るんよ。・・せっかくやから見てってちょうだい」
流しの手品? そんなもの初めて聞いたよ。 言われてみればこのお店、普通のスナックと空気が違った。 カラオケコーナーはあるけど誰も歌ってないし、大声で放談する人もいない。 落ち着いたカフェかバーみたいな雰囲気。 女性も多いな。よく見たらお客の半分が女性だった。 どの人も手品が目的で来てるんだろうか。
しばらくして入口のドアが開き、黒ずくめの男性が現れた。 タキシードの上に黒いマントを羽織ったお爺さんだった。頭にはシルクハット。 ひと目で手品師と分かる服装。 お爺さんに続いて赤いチャイナ服の女の子が入ってきた。大きな革のトランクを両手で持っている。 あっ。あの子! 私が歩道で衝突しかけた女の子だった。
カラオケコーナーのスポットライトの当たる位置まで進むと、二人は並んで頭を下げた。 皆が拍手した。遅れて私も拍手した。 女の子が私に気付いたようだ。胸の前で右手を振って笑いかけてくれた。 困ったな。笑顔を返しにくい。
「今夜もたくさんお集まりいただきましたな。こんな爺の芸がひとときの慰めとなれば幸甚の極み・・」 お爺さんは口上を済ませると、マントの中からステッキを出して振った。 ステッキは一瞬で花束に変わりそれを近くの女性客に渡した。
次に左手を高く掲げた。 何もないはずの手の中にトランプのカードが1枚出現した。 それを右手で取って投げ捨てると、左手にまた1枚現れた。 次々とカードを出現させて投げた。最後の何枚かは左手から直接空中に投げて飛ばした。 「あれはミリオンカードっていう技だよ。あの爺さんの十八番さ」 隣に座るおじさんが教えてくれた。 「へぇ。詳しいんですね」 「まあね。毎月ここで見てるからね」
お爺さんは手品を続けた。 銀色のリングをいくつも繋いで鎖のように���たり、ピンポン球を指の間に挟んで増やしたり減らしたりした。 それから紙に火を点けそれを口に入れて食べてみせた。 ほとんど笑顔も見せずに淡々と続けた。 マジックとか手品は全然知らないけど、何となく最新のマジックではないような気がした。 昔からある手品をやっているんじゃないかしら。
「レトロだろう?」 隣のおじさんが笑いながら言った。 「やっぱり古い手品なんですか?」 「そうだね。あんなのばかり何十年もやっているらしいよ」 「そうなんですか」 「でもこの後の幽体離脱のイリュージョンはすごいよ。何回見ても不思議なんだ」 幽体離脱? イリュージョンって確か、美女が宙に浮かぶとか、そういうマジックよね?
4. チャイナ服の女の子がカウンタースツール(カウンター席用の背の高い回転椅子)をお店の奥から借りて持ってきた。 トランクの中から薄いカーキ色をしたキャンバス生地の包みを出すと、客席に向けて広げて見せた。 金属の金具とベルトがついていて、先の閉じた長い袖がだらりと垂れたジャケットのような形状。 これは知ってるわ。 病院とか拘置所とかで暴れる人に使う拘束衣ね。
お爺さんが拘束衣を女の子に着せる。 長い袖に腕を入れさせると、背中で編み上げになっている紐を締め上げた。 そして腕を前でクロスさせ袖の先を背中できつく絞って固定した。 腰から下がったベルトも両足の間に通して後ろで留めた。 「どなたか力のある方、お手伝いを」 男性のお客に手伝ってもらって女の子を持ち上げ、カウンタースツールに座らせた。 最後に黄色いハンカチで女の子の足首をスツールの一本脚に縛りつけた。 女の子はにこにこ笑っているけれど、これって割と厳しい拘束じゃないかしら。
お爺さんが前で指を振ると女の子は目を閉じて動かなくなった。 トランクから大きな布を出し、お客さんに再び手伝ってもらって女の子の上から被せた。 女の子の姿は隠れて見えなくなる。 「さぁて・・、」 お爺さんが前に立って両手を広げた。 布の下で動けないはずの女の子がびくっと動いた・・ような気がした。 しばらく何も起こらなかった。 やがて──。
おおっ。店内に驚きの声が響いた。 布の上に薄いもやのような影が現れて、空中に浮かんだ。 影はすぐにくっきりしてチャイナ服の女の子になった。
女の子は拘束衣を着けていなかった。 浮かんだままにっこり笑うと、ゆっくり一回転してみせた。 一度天井近くまで上昇し、それから降りてきてお店の中をふわふわ移動した。 お客の近くに寄ると手を伸ばして一人一人の肩や頭を撫でた。 わっ。きゃっ。 その度に悲鳴が上がる。
女の子が私の傍に来た。 ごく普通の女の子に見える。でも足が床についてない。 いったいどういう仕掛けなんだろう? 彼女は私の耳に口を寄せて囁いた。 「・・あとでお話しさせて下さい」 先ほど歩道で会話したときと同じ声が頭の中に共鳴するように聞こえた。 あまりにもリアルだった。トリックがあるとは思えない。 まさか本物の幽体離脱? 背筋が凍りついた。
5. その夜、私はベッドの中で眠れないでいた。 二股かけられた男のことは、もうどうでもよくなっていた。 それよりスナックで見た幽体離脱が忘れられなかった。 耳元で囁かれた声。 私は怖くなってあの場から逃げ出して帰ってきたのだった。
あの後、女の子は高く舞い上がって元の場所に戻った。 布の下に隠れた本体に重なるように消えると、手品師のお爺さんはその布を外してみせた。 そこには拘束衣を着せられた女の子が何も変わることなく座っていた。 お爺さんが彼女を解放している間に私は立ち上がり、急いでお会計を済ませてスナックから出てきたのだった。
・・金縛りの癖がありませんか? そうだ、私には金縛りの癖がある。 どうして見抜かれたんだろう? あまり考えちゃいけない。考えすぎると金縛りが再発する。
女の子が拘束衣を着せられる光景が蘇った。 長い袖に両手を差し入れる。袖の先を背中に巻き付けられて、ぎゅっと引き絞られる。 私は仰向けに寝たまま、右の掌を左の脇腹に、左の掌を右の脇腹に当てた。 これで強く縛られたら絶対に動けないよね。 腕に力を入れて身体に押し付けた。 ぎゅ。圧迫感。
・・ブーン。耳鳴りがした。 いけない!! 気がつけば私は動けなくなっていた。手も足もあらゆる筋肉に力が入らない。
(拘束衣に自由を奪われた私。あの女の子と同じ)
違う。これは金縛りっ。
(お爺さんが大きな布を広げた。ふわりと覆われる。何も見えない)
だから金縛りだってば。無理に動こうとしないで深呼吸しなきゃっ。
(拘束感が薄れる。布を通り抜けるイメージ)
もやが晴れるように視界がクリアになった。 目の前に見えたのは自室の天井。 私は仰向けに寝た姿勢で浮かんでいるのだった。 腕がだらりと斜め下に開いた。 拘束は・・、されていないみたい。
起きなきゃ。 そう思うと空中でまっすぐ立っていた。 ここは私の部屋。ワンルームマンションの最上階。窓の外には街灯り。 自分に起こったことを理解した。 これは幽体離脱だ。
足元を見下ろすと、目を閉じてベッドに寝ている私が見えた。 上へ。 意識するなり、すっと��上して天井に当たった。と、天井を突き抜けてマンションの屋上に頭を出した。 真っ暗な空と夜の街が見えた。 いけない。 下へ。 降下して部屋に戻った。 スナックで見た幽体離脱は震え上がるほど怖かったのに、いざ自分に起こると驚きも恐怖もなかった。 こういうものかという感じ。 今の私、どんなふうに見えてるんだろう?
洗面台の鏡の前へ行ってみた。 歩かなくても移動できるから楽だ。 鏡の中によれよれのスウェットとショートパンツの女がいた。私だ。 電気も点けてないのにくっきり見える。 そういえばあの女の子もくっきり見えたな。カラオケコーナーのスポットライトの中で。 灯りを点けたらどうなる? 壁のスイッチを入れようとしたら指が壁の中にめり込んだ。 あら残念。
ベッドの上空に胡坐で浮かび、腕組みをして考えた。 私、どうなっちゃったんだろう。金縛りに加えて幽体離脱まで達成してしまうとは。 そもそもこれは現実なのかしら? ぜんぶ夢の中のような気もするし。 スマホやテレビでチェックしたらと思ったけど、触れないから確認できない。 窓に目を向けた。今の私なら窓ガラスを通り抜けられる。 コンビニにでも行って店員さんに私が見えるか聞いてみようか。 ダメだよ。もし本当に見えたら幽霊が来たって大騒ぎになるでしょ。
今、何時だろう? ベッドサイドのデジタル時計は 2:59。見ているうちに 3:00 に変わった。 じー。枕元のスマホが振動して画面が明るくなった。何かの通知を表示するとすぐに暗くなった。 夢だとしたらすごいわね。むちゃリアル。 スマホに手を伸ばしたら手がスマホをすり抜けた。 やっぱりこうなるか。ばかやろー。
・・
気がつけば朝だった。 私はベッドから起き上がって頭を掻く。ああ、本体に戻ったのか。 時計を見ると7時半。 も少し寝ようかな。今日はお休みだし。 いつもの習慣でスマホをチェックすると飲み仲間の女友達から LIME のメッセージが入っていた。 『水曜いつものパブでどう?』 メッセージの時刻は 3:00。
記憶が鮮明に蘇った。 時計が3時になって、同じタイミングで着信通知。 夢と現実がここまで一致するなんてあり得ない。 あの幽体離脱は現実だったと確信した。
それなら──。 私は思った。 あの子に会わないといけない。あの女の子と話をしないといけない。
6. 土曜のせいか『すなっく けったい』は空いていた。 先客はサラリーマン風の若い男性が二人だけ。 JPOP の音楽が流れていたりして、いたって普通のスナックだった。
関西弁のママは私を覚えていた。 「昨日のお姉さんやね。途中で帰ってしもたから莉里(りり)ちゃんが残念がってたわよ」 「莉里ちゃんて?」 「手品のアシスタントしてた子やんか」 「ああ、チャイナ服の女の子ですね」 「そうそう。莉里ちゃんは赤沼さんのひ孫なのよ」 へえ、孫じゃなくてひ孫さん。
ママによると、あのお爺さん(=赤沼氏)は2年ほど前にふらりと現れて手品をす��ようになった。 ずっと一人でやってたけど、今年の春になって莉里ちゃんも一緒に来て幽体離脱のイリュージョンを始めた。 それが受けて、今では赤沼氏が来る日は手品好きのお客が集まるという。 「あの人も昔は名のある手品師やったらしいけど、今は道楽でやってる言(ゆ)うて笑(わろ)てはったわ」 「私、赤沼さんと莉里ちゃんに会いたいんです。連絡先ご存知ないですか?」 「お姉さんネットで配信してる人? それともマスコミ関係とか。それやったら会(お)うてもらえへん思うよ」 「違いますっ。あの、個人的に、すごく個人的に会いたいだけなんです」 ママはにやりと笑った。 「それやったら、ボトル入れてくれたら話そかな?」 「入れます!」 「よっしゃ。・・あいにく連絡先は分からへんけど、雲島のほうの公園でストリートなんとかゆうのをやってるのは聞いてるわ」 「ストリートパフォーマンスですか?」 「それそれ。やるのは日曜だけでそれも気まぐれや言うてはったから、絶対に会えるとは限らへんけどね」 「ありがとうございます。行ってみます」
「・・ママぁ、カラオケするでぇ」「はーい、どぉぞ」 サラリーマン組が歌い始めた。
「ところで何飲む?」 ママに聞かれた。 「あ、ボトル入れますから。・・その、一番安いので」 「さっきのは冗談やから無理せんでええよ。そやね、何でもいけるんやったらホッピー割なんかどう?」 初めて飲んだホッピーの焼酎割は爽やかで飲み易かった。 「美味しいです」「やろ?」 ママも自分のグラスに入れたホッピーをぐびりと飲んで笑った。 「お姉さんのお名前お聞きしていい?」 「私、けやきです。近本けやき」 「けやきちゃんね、覚えたで。・・それで二人に会うてどうするの?」 「昨日の手品で聞きたいことがあるんです。特に莉里ちゃんの方に」 「ふーん、さてはけやきちゃんも幽体離脱してもぉたんやな」 ぎっくう!!! 「がはははっ、そんな真顔で驚かれたらホンマに幽体離脱した思てまうやんか」 「いえ、あの」 思い切り笑われてしまった。
「さあ、カラオケ空いたで。あんたも遠慮せんと歌いっ」 「あ、はい。・・じゃあ『ふわふわタイム』を」 「がははっ、アニソン! ええやんっ」 それから私はカラオケでアニソンを歌い、サラリーマン二人と意気投合して歌いまくった。 ホッピー割はいつの間にかハイボールとストレートのジンに変わり、結局ボトルキープと変わらない代金を払うことになった。
7. 翌日はよく晴れていた。 私は『けったい』のママから聞いた公園に来ていた。 そこは野鳥や水鳥の観察ができる貯水池や広葉樹の森が広がる自然公園で、私は赤沼氏と莉里ちゃんを探して歩き回った。 どこにいるのか分からないし、どこにもいないかもしれない。
ふう。疲れてベンチに座り込む。 『けったい』で飲み過ぎたかしら。おかげで爆睡して金縛りも幽体離脱もなかったんだけど。 それにしてもこんなに広い公園って分かってたら、もっと歩き易い格好にしたらよかったな。 私はロング丈のワンピースにヒールを履いて来たのだった。
・・あれ? 遠くに人が集まっている。 なだらかな芝生の丘の上にレンガの壁で囲まれた噴水があって、そこで何かが行われていた。 噴水の上にふわりと浮かぶ人影が見えた。 白いワンピースを着ていて背中に羽根のようなものがついている。
私は立ち上がった。 息を切らせながら斜面を登り、ようやく噴水の端へたどり着いた。 見上げると噴水に虹がかかっていた。 きらきら輝く飛沫と太陽の光。 その光の中、4~5メートルくらいの高さを莉里ちゃんが "歩いて" いた。 肩を出した真っ白なキャミワンピ。大きく広がる天使の翼。ひらひらした裾から伸びる素足。 神々しいくらいに綺麗だった。
「莉里ちゃん!」 私が叫ぶと彼女はこちらを見下ろして驚いた顔をした。 噴水の中をゆっくり降下し、それから水面を歩いて外へ出てきた。 彼女の髪や衣装は少しも濡れていなかった。 噴水の畔には大きなキャリーバッグが置いてあって、莉里ちゃんはその中へ溶け込むよう消えた。 取り囲むギャラリーから「ほおっ」という歓声が上がる。 「すごい! このイリュージョン」「どうなってるんだろ?」会話が聞こえる。 そうだよね。イリュージョンと思うよね普通。
キャリーバッグの脇に白髪のお爺さんが立っていた。 それはもちろん赤沼氏だけど、明るい色のシャツとズボンで優しく笑う姿は『けったい』で見たのと全然違っていて驚かされた。 赤沼氏は観客に向けて親指を立てウインクすると、キャリーバッグを横に倒して蓋を開けた。 バッグの中には拘束衣を着せられて丸くなった莉里ちゃんが入っていた。 立ち上がって拘束衣を脱がせてもらう。 弾けるような笑顔。額に汗が光っていた。 やっぱり可愛い子だわ。
拍手の中、二人はお辞儀した。 足元に置いた菓子缶に小銭がぱらぱら投げ込まれる。 莉里ちゃんが私を見て手を振ってくれた。 薄いキャミワンピ1枚だけ纏った背中に天使の翼はついていなかった。
・・
「近本けやきといいます。先日は途中で帰ってしまってごめんなさい!」 ギャラリーがいなくなってから私は二人に挨拶した。 「あたしは気にしてません。それに、きっとまた会えると思ってましたから」 莉里ちゃんが答えてくれた。
「実は私、金縛りの癖があります」 「あ、やっぱり」 「あの夜、久しぶりに金縛りになりました」 「!!」 「それともう一つ、私も本当に驚いたんですけど、えっと・・」 言い淀んでいると赤沼氏が応えてくれた。 「貴女も幽体離脱したのですかな? 先程のこの娘と同じように」 「あ、あれ、やっぱり本物の幽体離脱・・ですか?」 「はい!」 莉里ちゃんがそう言ってにっこり笑った。
あっさり認めてくれてほっとした。マジックじゃなかった。 さっき見たのも、『けったい』で見たのも、どっちも本物の幽体離脱だったんだ。 二人に告白した。 「私も、生まれて初めて宙に浮いて、自分の寝顔を見下ろしました」
8. 狭いキッチンに香ばしい匂いが漂っている。 ここは赤沼氏が暮らす古びた公営団地。 夕食を食べていきなさいと誘われたのだった。
私は莉里ちゃんと並んで座り、準備する赤沼氏の背中を見ながら二人でお喋りした。 莉里ちゃんのフルネームは関莉里(せき りり)。16 歳で高校1年生だと教えてくれた。 ひいお爺さんの赤沼氏はこの団地に一人住まい。莉里ちゃんは近くの一戸建て住宅に両親と住んでいる。 彼女は赤沼氏のアシスタントを春休みの3月から始めた。 「皆さんの前でふわって浮かんでみせるの、楽しいんです」 そう言って明るく笑う莉里ちゃん。 昼間から着たままでいる肩出し白ワンピが眩しい。
「・・さあ、できたよ。こっちは桜海老のビスクと鮭の香草焼き。メインにチキンソテーのクリームチーズソース。バケットを切らしていたからカリカリに焼き上げた食パン。ガーリックバターをつけて食べて下され」 「これ全部赤沼さんが作ったんですか!?」 「びっくりでしょ? ひい爺ちゃんはお料理が得意なんです」 「昔はフレンチのシェフをされてたとか?」 「いやいや、メシ作りは好きでやっておるだけだよ」
食卓テーブルはないからと、床に置いた卓袱台(ちゃぶだい)を囲んでお料理をいただいた。 「美味しいです!」 「それはよかった。・・そうそう、ワインは飲むかね? ちょうどドメーヌ・トロテローの白があるんだが」 「い、いいんですか!?」 「遠慮は無用。ただしワインにしてはアルコール 15 度を超える強めの酒だ。いけますかな?」 「いけます!」
赤沼氏は笑って冷蔵庫からワインの瓶を出してくると、プロのワインソムリエみたいにスマートに栓を抜いた 「ではティスティングを・・。おっとその前に姿勢を正していただきたい」 「あ、すみません」 私はきちんと正座して、少しだけ注いでもらったグラスを鼻に近づけた。 「どうだね? 2020 年のロワールで最もリッチなワインだよ。ふくよかで甘い香りがするだろう?」 「そうですね、いい香り」 「ゆっくり口に含んで」 口の中に芳醇な香りが広がった。 「舌の上で転がせば辛口で、凝縮された果実感と酸味がたちまち貴女を酔わせようとする──」 「ああ、本当」 ふぁっと熱いものが広がる感覚。 酔ってしまいそう。 でもほんの一口試しただけなのに、私こんなに弱かったかしら?
ぽん。誰かに肩を叩かれた。 振り返ると、いつの間にか赤沼氏が後ろにいた。 「けやきさん、やはり貴女は暗示にかかり易いようだね」 「?」 「もう一度グラスの中身を飲んでみなさい」 ワインを飲むと味がしなかった。 あれ? 「それはただの水だよ」
「けやきさん、ごめんなさい」 莉里ちゃんが言った。 「あたしからひい爺ちゃんにお願いして確かめてもらったの」
・・
食事をしながら話を聞いた。 暗示は言葉やいろいろな合図を受けて誘導される精神的作用だという。 私はただの水をワインと思い込んだ。 思っただけじゃなくて、本当にワインの味と香りを感じたのだった。 赤沼氏はそうなるように私を導いた。これが暗示。
莉里ちゃんが言った。 「あたし、最初に会ったとき "金縛りの癖がありませんか?" って聞きましたよね。たぶんあれが金縛りの暗示になっちゃったと思うんです。ごめんなさい!」 「でも私にはもともと金縛りの癖があったんだし」 「それも暗示かもしれません。けやきさん、そんなにしょっちゅう金縛りをやってましたか? 癖があるって意識してましたか?」 え? そうだっけ?
「金縛りは睡眠障害の症状の一つと言われるが、それだけではない。暗示が金縛りの引き金になることもあるんだよ」 赤沼氏が説明してくれた。 「起こる起こると思っていると起き易くなるんですね」 「そう。だから逆に金縛りを起きにくくするのにも暗示が使えるし、起こったときに恐怖を感じないようにもできる」 「できるんですか? そんなこと」 「試してみるかね?」 「・・はい。お願いします」
食事の後、食卓を片付けて私は赤沼氏と向かい合って座った。 「貴女が金縛りになったときの状況を話して下さい。できるだけ詳しく、どんな些細なことでもいいから」 「はい、あのときは、」 あのときはベッドに入って、莉里ちゃんの幽体離脱を思い出していた。 金縛りの癖があるって言われたことを考えた。 それから莉里ちゃんが拘束衣を着せられるところを思い出して。 そうだ。私、自分が拘束衣を着て動けなくされるのをイメージした。 両手を前で組んで。ぎゅっと。
・・ブーン。耳鳴りが聞こえた。 あぁ、駄目! 身体ががくがく揺れるのが分かった。
「喝!!」 赤沼氏の声が響く。はっとして我に返った。 大丈夫、ちゃんと動ける。金縛りになんかなってない。 莉里ちゃんが横から肩を抱いてくれた。 「大丈夫ですよ、けやきさん」優しい声で言われた。 「怖い思いをさせてすまなかったね。・・しかし記憶を辿るだけで起こりかけるとは。よほど強い暗示か、さもなくば貴女の感受性が並外れているのか」 赤沼氏が言った。 「でも施術の方向は見えたよ。悪いがもう一度やらせてもらえるかね。もう怖い思いはさせないから」 莉里ちゃんに目を向けると、彼女はまっすぐ私を見て頷いてくれた。 私は答えた。 「やって下さい。お任せします」
・・
赤沼氏が奥の部屋から持って来たのは束ねた縄だった。 「背中で手首を交差させて」 手首に縄が巻き付いた。 それから二の腕と胸の上下にも縄が巻き付いて、全体をきゅっと締められた。 がっちり固められて動けない。 私は人生で初めて縄で縛られた。
仰向けに寝かされ、頭の後ろと背中で組んだ手首の上下に丸めた座布団を押し込まれた。 「床に当たって痛いところはないかね?」 「いいえ」 「では目を閉じて、リラックスして。大きく深呼吸。・・そう、ゆっくり、深く」 息を深く吸うと縄の締め付けが強くなった。 辛いとか苦しいの感覚はなかった。締め付けられることに快感すら覚えた。
「けやきさん、今、貴女は縛られている。貴女を包む縄に身を預けている」 「はい」 「貴女が感じるのは穏やかな心地よさ。縄に守られる安心感。とても気持ちよくて、ずっとこのままでいたいと思う」 気持ちいい。まるで抱きしめられているみたいに気持ちいい。 優しくて、暖かくて。 これは、幸福感。
「いい表情をしているね、けやきさん。貴女は縄に守られているんだよ。何も恐れなくていい。あらゆることが気持ちいい」 私は守られている。 この気持ちよさの中にずっといられたら、何も怖くない。
「たとえ金縛りでも気持ちいい。・・悦び、と言ってもいい」 そうか。 今の私にもう金縛りを怖がる理由なん��ないんだ。 金縛りが来ても嬉しい。
「準備できたようだね。さあ、迎えたまえ」 ・・ブーン。耳鳴りがした。 私はそれを受け入れた。
目を開けると赤沼氏と莉里ちゃんがいた。私を見下ろして微笑んでいる。 動こうとしたけど動けなかった。 縄で縛られた腕はもちろん、首、脚、指の一本も動かせなかった。 完璧な金縛り。
怖いとは感じなかった。暗示をかけてもらったおかげだろうか。 私は落ち着いて自分の状態を確認する。 どこも痛くない。気持ち悪いところもない。 誰かが上に乗って押さえている感じ・・、なんてものも全然ない。 身体中の筋肉が脱力したまま、脳からの命令を無視しているイメージ。
面白いね。 嫌じゃないぞ、この感じ。 今までの金縛りで味わったことはなかった。こんな感覚は初めてだよ。 確かに悦びかもしれない。 私、マゾのつもりはないんだけど。 「どうかな?」赤沼氏が静かに聞いた。 「・・今、貴女は動けない。動けないが怖くない。金縛りは怖くない。それどころか快適に感じるんじゃないかな?」
・・はい、快適です。 答えようとしたら、ふわりと身体が浮かんだ。 あれ? 私はそのまま赤沼氏と莉里ちゃんを通り抜けて浮かび上がった。 あらら、また幽体離脱しちゃったんだ。
私は仰向けで後ろ縛りのままだった。 そのまま上昇して天井にぶつかる前に止まった。 前、後ろ、右、左。 自由に移動できることを確かめた。前と同じだ。 その場でくるくる回ってみた。 頭を下に向けて倒立した。楽しい。 おっとスカート。 慌てて見下ろしたらワンピースのスカートはめくれ上がることなく足先の方向へのびていた。 引力は関係ないのね。
前を見ると逆さになった二人と目が合った。 いや逆さになっているのは私の方だけど。 縄で縛られた女が倒立状態でふわふわ飛んでいる。暗がりで会ったら腰抜かすかも。 赤沼氏と莉里ちゃんには見えているんだろうか?
「もしもし、私のこと、どう見えてますか?」 「ええっ」「何と・・」 揃って驚かれた。 「聞こえたよね? ひい爺ちゃん」「はっきり聞こえた」 え、聞こえたらびっくりするんですか?
「貴女が逆さに浮かんでいるのはちゃんと見えておるよ」 「びっくりしたのは、離れていても声が聞こえたことなんです」 二人が説明してくれた。 「この間は莉里ちゃんも私に話しかけてくれたと思いますけど」 「あたしは相手の近くで囁くのが精一杯です」 そうだったのか。確かにあれは耳元で聞こえたわね。 「体外に分離した幽体が普通に会話できるのは大変なことだよ。幽体の濃度がとても高いことの証しだ」 幽体の濃度? さっぱり分からない。
「あの私、金縛りに入っただけなのに、幽体離脱までしちゃったみたいですみません」 「金縛りをきっかけにして幽体が分離するのは珍しいことではないよ」 「よくあることなんですか」 「そうなんだが・・、そこでふわふわされていたら落ち着かないな。申し訳ないが本体に戻ってもらえますかな?」 「あ、はい」 私は自分の身体の上に浮かんだ。 そこには後ろ手に縛られた私が両方の眼をかっと見開いたまま眠っている。かなり不気味だ。
「・・あの、どうやって戻ったらいいでしょう?」 「前に幽体離脱したときは?」 「朝、目が覚めたら戻ってました」 「そうか」 赤沼氏はしばらく思案し、それから奥の部屋に行って紙袋を持ってきた。 「莉里、これで戻してあげてくれるかい」 「これを使うの�� 久しぶり!」
莉里ちゃんが紙袋から出したのは赤いゴム風船と空気ポンプだった。 「これは手品で使う風船です」 風船をポンプに繋ぐと、レバーをしゅこしゅこ押して空気を入れた。 「これは画びょうです」 左手に膨らんだ風船、右手に画びょうを持ち、眠り続ける私の本体の耳元で構えた。 「ちょ、莉里ちゃん何するの!?」
ぱんっ!! 大きな音がして私は目覚めた。 「つぅ~」 耳を押さえようとして、自分が後ろ手に縛られていることを思い出した。 「驚かせてごめんさない。これ、あたしが幽体離脱の特訓で戻れないときにやってもらってた方法です」 「幽体を元に戻すには聴覚の刺激が最も効くんだよ」 「そ、そうなんですか」
・・
起き上がって縄を解いてもらった。 淹れてもらったコーヒーを飲みながら、赤沼氏の説明を聞いた。 「元々けやきさんには幽体離脱の特別な能力があったんだろうね。それが急に活性化したのは、金縛りの暗示とおそらくスナックで莉里の実演を見たからだろう」 「私の能力って特別なんですか?」 「そうだね、��やきさんの幽体は濃度レベルが極めて高い。驚くべきことだ」
脳の神経細胞の接点をシナプスと呼ぶ。幽体と肉体の分離はシナプスの活動電位の乱れによって引き起こされる。 分離した幽体の濃度レベルが高いと幽体は可視化され、さらにレベルが高いと音声も伝わる。 レベルが低い場合は本人は離脱の記憶すらあいまいになり、たとえ覚えていても夢を見たと思うだけだ。
「これはわしの知り合いで一ノ谷という学者が提唱した理論だよ。もう何十年も前に死んでしまったが」 「そうなんですか」 「一ノ谷は超短波ジアテルミーという装置を作り、それを使ってわしの娘を訓練した」 え? 娘さんって、つまり莉里ちゃんのお婆ちゃん? 「今のは余計な話だった。忘れて下され」
「ひい爺ちゃん、これからどうするか話すんでしょ?」莉里ちゃんが催促した。 「おお、そうだったね。・・けやきさん、今、貴女が最も注意すべきは金縛りではなく幽体離脱なんだよ。使いこなす訓練が必要だ」 え? 「貴女のように幽体濃度レベルが高い人が無意識に離脱を繰り返すのはとても危険なんだ」 「もし今のまま幽体離脱が続いたらどうなりますか?」 「貴女自身の精神が不安定になる。やがて分離した幽体が独立した人格を得て勝手に行動するようになる。いわゆる生霊だね。娘もそれで危ない目に会った」 ええっ、それは困る。絶対に駄目。
「貴女はお勤めかな? それとも結婚して家庭におられるか」 「独身で勤めています」 男に振られたばかりで来年 30 のアラサーOLだよっ。 「では、後日改めてお越しいただけますかな? 今夜はもう遅い。これ以上続けると明日の仕事に差し障るでしょうから」 「分かりました。・・もしそれまでに幽体離脱が起こったら?」 「貴女の場合は金縛り状態でない限り、幽体の分離は起こらないと思っていい。そして貴女が金縛りになるのは縄で縛られているときに限られる。そういう暗示をかけたからね」 「つまり、縛られなければ安全なんですね?」 「その通り。もし貴女に誰かから緊縛を受ける趣味がおありなら、しばらく控えたほうがいい。その最中に幽体離脱が起こるかもしれない」 「そんな趣味はありません!」
莉里ちゃんが言った。 「けやきさん、実はあたしにも暗示がかかってるんですよ。あたしが幽体離脱するのは拘束衣を着せられたときだけです」 「莉里ちゃんも?」 「だって授業中に居眠りして勝手に離脱しちゃったらヤバイでしょ?」 そうか、だから莉里ちゃんはいつも拘束衣で幽体離脱してたのか。
・・
「では次は土曜日に来ていただくことでよろしいかな?」 「分かりました。時間は?」 「あの、」莉里ちゃんが右手を上げて言った。 「土曜の夜でもいいですか? 日曜日までゆっくりしてもらうことにして」 「夜? ・・なるほど」赤沼氏は何か分かったようだった。 「けやきさん、すまんがこの子の希望に合わせて夜でもよろしいかな?」 次の土曜の夕方6時に再訪の約束をして、私は赤沼氏の住まいを辞した。 すぐ近くにある自宅へ帰るという莉里ちゃんも一緒に出てきて、二人で並んで歩いた。
歩きながら莉里ちゃんは、赤沼氏の娘さん、つまり莉里ちゃんのお婆さんについて教えてくれた。 もう 60 年近い昔、赤沼氏は娘さんと一緒にサーカスで幽体離脱の見世物をやっていた。 娘さんは『リリー』と名乗っていて、彼女が見せる幽体離脱は大評判。当時の新聞に載ったほどだという。 リリーさんは 19 歳のとき父親の分からない女の子を出産し、その翌年に病気で亡くなった。 この女の子が莉里ちゃんのお母さんになる。
「あたしのママに幽体離脱の力はなかったんです。ごく普通に結婚してあたしを生んでくれました」 「莉里ちゃんの能力は赤沼さんが気付いたのね」 「はい。中1のとき金縛りになって固まってるところを見つけてくれました。あれがなかったら、あたし今頃本当に生霊になって飛び回ってたかもしれません」 莉里ちゃんは両手を前で揃えた幽霊のポーズで笑った。
「しばらくして離脱の特訓を始めました。ひい爺ちゃんは急に流しの手品師なんて始めたりして。それまであたし、ひい爺ちゃんが元手品師だってことも知らなかったんですよ」 「昔リリーさんと見せたショーをまたやりたかったのかもしれないわね」 「きっとそうです。ママもそう言って、あたしがお手伝いすることに賛成してくれました」
莉里ちゃんの家の近くまで来て、私は莉里ちゃんと LIME のIDを交換した。 「赤沼さんのアカウントも教えてもらっていい?」 「ひい爺ちゃんはスマホ持ってません」「そっかー」
「けやきさん、あたしね、」 「何?」 「ずっと一人だと思ってたんです」 「?」 「こんなことができるの、もうあたし一人だけと思ってたんです。でも、けやきさんと会えました」 「莉里ちゃん・・」 「ものすごく嬉しくて、泣いちゃいそうなんですよ、あたし」 そう言うなり私に抱きついた。 「これからも一緒にいて下さい。お願いします!」 彼女の背中を撫でてあげた。 「私こそお願いするわ。これからもいろいろ教えてね、先輩」 「まかせて下さい! ・・今度一緒に飛びましょね」 え、飛ぶの? 「じゃあ、サヨナラ!」
手を振って走って行く莉里ちゃん。 真っ白なキャミワンピの裾が広がって揺れていた。 ちょっと大人びてるけど、まだ 16 歳なのよね。 素直で明るくて本当にいい子だわ。
ふと気付いた。 あの子、幽体離脱できるのは自分一人って言ってたよね。 ひいお爺さんの赤沼氏自身に能力はないのかしら? リリーさんのパパなのに。
9. 週明けから急に仕事が忙しくなった。 残業が続いて毎夜牛丼屋か深夜ファミレスの生活。 飲み友達を『けったい』に連れて行きたいと思ってたけど、それも叶わずあっという間に週末になった。
SNS であの噴水パフォーマンスの評判をチェックしてみたら、やっぱりイリュージョンだと思われているようだった。 そりゃあれ見て本物の幽体離脱と判る方が変よね。 女の子が可愛い!という書き込みがたくさんあったのは納得したけど。
金縛りはまったく起こらなかった。 一度だけ、ベッドに入って自分が縛られているところを妄想した。 赤沼氏に縛られた縄。身体を締め付けられるあの感覚。 思い出すと少しだけ胸がきゅんとしたけど、金縛りの前兆であるブーンという耳鳴りは聞こえなかった。 ちょっと残念、だったりして。
10. 土曜日。 約束の時刻に赤沼氏を訪ねた。 莉里ちゃんも先に来て待っていてくれた。
私はまだ自分の意志で自由に幽体離脱できない。 前回は赤沼氏に誘導してもらって金縛りになり、その後勝手に幽体が離れてしまった。 自分で幽体離脱って、いったいどうすればいいんだろう?
「・・幽体離脱が起こるのは金縛り中に限ったことではないよ。強い衝撃を受けたとき、意識障害や失神したとき、酩酊したとき、あるいは普通の睡眠時にも起こり得る」 赤沼氏が教えてくれた。 「でも結局、離脱のハードルが一番低いのは有意識下の金縛り中なんだよ。パニックにならず落ち着いて自分を保てばいい。・・けやきさんはもう金縛りに恐怖はないだろう?」 「はい。縄で縛っていただけたら」 「では貴女の目標は、まず緊縛されて誘導なしで金縛りに入ること、それから意識を体外に向けて分離すること。ゆっくり練習すればいいよ」 「はい」
「けやきさん、あたしも金縛りになってから離脱してるんですよ」 「莉里ちゃんも?」 「そうですっ。コツを掴んだら難しくないです。けやきさんなら絶対にできますよ!」 「ありがとう。やってみる」
・・
私は前回のように床に寝るのではなく、椅子に座って後ろ手に縛られた。 手首と腕、そして胸の上下を絞める縄が心地よい。 縄に抱きしめられる感覚。 肉体は自由を奪われるのに、心には安心感と幸福感が広がる。 ほんと暗示ってすごい。 いつか自由自在に幽体離脱できるようになっても、この暗示だけは解いて欲しくない。
自分の胸に食い込む縄を見下ろした。 そうか、こんな風になってるのね。 我ながらセクシー。もうちょっとお洒落してきたらよかったと思ったくらい。 今夜は特訓だからと、私は動きやすいスキニーパンツに半袖のオーバーニットを合わせて着ていた。 せめてノースリーブとか、もちょっと肌を出したトップスにしておけば、・・って何を考えてるんだ私は。 これは真面目な訓練なのに。 「けやきさん、顔が赤らんで綺麗。羨ましいです」 「あ、ありがとう」 莉里ちゃんに指摘されて焦る。 今は邪念を払って集中しなきゃ。深呼吸を繰り返す。
「OKだよ。この先は貴女一人で行くんだ」 赤沼氏が私の肩に手を置いて言った。 「心の準備ができたら、いつでも始めなさい」 「はい」
私は目を閉じた。 身体を絞め付ける縄の感覚。大丈夫、何も怖くない。 これから私は肉体の自由を明け渡す。その代わりに精神を肉体から解き放つのだ。
・・ブーン。耳鳴りがした。 その音は以前より少し柔らかくなって聞こえた。
自分の身体を意識した。 その身体はまるで時間が止まったかのように静止していた。 外の世界を意識した。 そこには私を拒まない自由な空間が広がっていた。 行ける──。
私は虚空を見上げて飛び上がった。 自分が肉体から離れるのが分かった。 「おおっ、飛んだ!」「けやきさーん!」 赤沼氏と莉里ちゃんが私を見上げていた。 「どうですか? 私の幽体離脱」 私は二人の上空に浮かんで微笑んだ。 宙に浮かぶ緊縛美女、なんちて。 ちょっぴり、いや結構誇らしかった。
・・
私はしばらく空中に浮かんで元の身体に戻った。 戻るときもスムーズだった。 幽体を肉体に重ね、じんわり融合するイメージを描けばよかった。 初めての単独幽体離脱は大成功だった。 たった1回のトライで成功するとは正直思っていなかったと赤沼氏にも言われた。
「さて腹が減ったね。けやきさんも夕食はまだだろう?」 「え、また用意してもらったんですか!?」 「好きで作っとると言っただろう?」
私は緊縛を解かれた。 本当は縄に抱かれる快感にずっと浸っていたかったけど、縛られたままじゃご飯は食べられないものね。 赤沼氏が作ってくれたのは和食だった。 大根のべっこう煮、厚揚げと小松菜の煮びたし、鯖塩焼きに豚汁。 「すごいですっ」 「ありきたりの献立だと思うがね。けやきさんは自分で料理せんのかね?」 「あ、私は外食が多くて。・・でも今は家で作らなくても十分やっていけますから。ね、莉里ちゃん!?」 「お嫁に行くならお料理はできた方がいいですよ、けやきさん」 ズキューン。莉里ちゃんを味方につけようとして逆に撃たれてしまった私。
・・
莉里ちゃんが言った。 「けやきさん、次はあたしと二人で飛びませんか?」 「そういえば莉里ちゃん一緒に飛びたいって言ってたわね」 「それはやった方がいい。一緒に行って教えてもらうことがたくさんあるはずだよ」 そうだね。いっぱい勉強することはあるんだ。 よし、空でも何でも飛んでみせるわ。
今日の莉里ちゃんは膝上ショートパンツとボーダー柄のTシャツを着ていた。 その上に拘束衣を着て袖に手を入れ、その袖を赤沼氏が背中に取り回して強く絞った。 だぶだぶの拘束衣がきゅっと締まったのが分かる。 これで莉里ちゃんは両手を動かせない。 「えへへ、ぎちぎちです」 屈託なく笑いながら言われた。
次は私の番。 再び後ろ手で縛られた。 きっちり両手が動かないことを確認して安心する。 いいな。やっぱり嬉しい。 「私もぎっちぎち」 莉里ちゃんにそう言って笑いかけた。
「行きましょ! けやきさん」「うん、行こう」 目を閉じて、深呼吸。
「けやきさん、」莉里ちゃんが小声で言った、 「はい?」 「一緒に拘束されてるの、嬉しいです」 どき。 「もうっ、集中できないでしょ!」「えへへ、ごめんなさい!」
・・ブーン。耳鳴りがした。 莉里ちゃんが少し震えて動かなくなった。隣で私も固まった。 そして──。
私と莉里ちゃんは部屋の中に浮かんでいた。 互いに微笑み合う。 莉里ちゃんが赤沼さんの近くへ行って挨拶した。 「行ってくる、ひい爺ちゃん」 「うん、気を付けてな」
莉里ちゃんは笑って私を手招きすると窓ガラスを通り抜けていった。 私も赤沼氏に会釈して、窓を抜け外へ出た。
11. 夜の空に浮かぶと私たちはとても小さな存在だった。 「うわぁ~~!!」 小さな子供みたいに叫んだ。
天空に瞬く星々。 眼下にはマッチ箱みたいな団地。 そして周囲 360 度に煌めく街の夜景。 ガラスの粒をばらまいたみたいに綺麗だった。 碁盤目に走る道路と車のライトの列。あそこですれ違う光の��は電車。 はるか彼方に見える超高層ビル群。虹色に光るテレビ塔。
「莉里ちゃん今までこんな景色を独り占めしてたの!?」 隣に浮かんでいる莉里ちゃんに聞いた。 「まあ、空に上がれば見放題ですからね」 「すごいなぁ。これ見れただけで幽体離脱に感謝だわっ」 「うふふ。・・よかった!」 「何がよかったの?」 「幽体同士だと普通にお話しできて。私だけけやきさんの傍で囁かないと駄目かもって、ちょっと心配してたんです」 「ああ、そうか」 幽体のときの莉里ちゃんの声は、普通の人間にはよほど近くでないと聞こえないのだった。
「でもほんと夢みたい! 一緒に飛んでくれる人がいたなんて」 莉里ちゃんは笑顔で両手を広げて一回転した。 暗闇の中でくっきり見えた。 ショートパンツとTシャツ。よく見たら髪に白い造花のバレッタをつけていて可愛い。 私も両手を広げようとして、後ろ手に縛られていることに気付いた。 そういえば莉里ちゃん、いつも幽体離脱したときは拘束衣が消えるわね。
「ねぇ莉里ちゃん、今更だけど拘束衣は?」 「はい、これですか?」 莉里ちゃんを包むように拘束衣が出現した。両手が固定されたぎちぎちの拘束。 「ええーっ!?」 「見た目なんていくらでも変えられますよ?」 拘束衣がふっと消えた。 替わりに莉里ちゃんの背中に大きな翼が生えた。噴水の上に浮かんだときの翼だった。 「はいっ、天使に変身です」 「そ、それ私にもできるの?」 「できますよ。頭の中でなりたい姿を思い浮べるだけです」 ・・じゃあ。 私を縛っていた縄が融けるように消えた。両手が自由になった。 「できた!」「はい、よくできましたー」 「どうして言ってくれなかったの? 変身できるって」 「すぐに気が付くと思って。それにけやきさん、縛られたままで嬉しそうだったし」 「う・・。あれは暗示のせい!」 「うふふ」
莉里ちゃんの服装が変わった。 肩出しの白いキャミワンピ。背中に翼も生えて正に天使だった。 「けやきさんも!」「うん!」 私も莉里ちゃんと同じ衣装になった。背中に翼も。 あれ? 翼の先端が薄れて消えかかってる。 「あたしの姿を見て、しっかり隅々までイメージして下さい」 翼がくっきり表れた。 「OKです!」
「ねぇっ、私たちどこでも行けるんでしょ? スカ○ツリー、見下ろしたいな」 「んー、行けなくはないけど、都心まで急いでも4時間くらいかかりますよ」 「え? どうして?」 「地面を歩くのと同じ速さでしか進めませんし、帰りの時間も考えたら朝になっちゃいますね」 「ぴゅーんって飛べないの? そうか一瞬で移動とか」 「そんな魔法みたいなこと無理ですよー」 幽体離脱だって魔法みたいなものだと思うけど。 「スカ○ツリーは無理だけど、お勧めのコースがありますよ! 行きませんか?」
・・
二人で夜の街を飛んだ。 ビルの上、道路の上。駅の上。 翼を広げて飛ぶのは気持ちよかった。
夜の小学校に降りた。 誰もいない校庭で莉里ちゃんと滑り台を滑ったり、ジャングルジムに登って遊んだ。
自然公園の森を飛び抜けた。 高度1メートルで飛んでも木の枝や幹が邪魔にならない。全部通り抜けられるんだ。 森を抜けたところで先を行く莉里ちゃんが貯水池に飛び込んだ。私も続いて飛び込む。 どぶん。 鳴るはずのない水音が聞こえた、ような気がした。 水中で動かない魚の群れを突き抜けて、水面から上空に飛びあがった。 もちろん私たちはぜんぜん濡れていない。
高圧線の鉄塔をネコバスみたいに登り、両手を広げて電線の上を歩いた。 ジャンプしてトトロみたいに回りながら着地した。 楽しい。初めて外に出してもらった子犬みたいにはしゃいだ。
「次はちょっと冒険です!」 莉里ちゃんが指差したのは幹線道路沿いにそびえる巨大なショッピングモールだった。 もう遅い時刻なのに歩いている人が多い。さすが土曜の夜。 誰にも見られないよう物陰に降り、変身を解いて天使から元の恰好に戻った。 莉里ちゃんは膝上ショーパンにボーダーのTシャツ。足元はバスケットシューズ。 私はスキニーパンツと半袖オーバーニットにパンプスを履いている。 さあ、行こう。モールの通路を並んで歩き出した。 心臓がドキドキしてるのが分かる。幽体なのに。
何人もすれ違って誰にも気付かれない。 「意外とばれないものね」「ばれたら大変ですけど」 「そりゃそうだ」「うふふ」 調子にのってエスカレーターに乗ったりベンチに座ったりした。
ベンチにいると、ヨークシャテリアを抱いた女性が前を通りすぎた。 と、その犬が私たちを見て唸り声を上げた。 女性の手から飛び降りて吠え掛かってきた。 やば! 私たちは慌てて逃げ出した。 通路を走り、角を曲がった。きっと床から足が離れていたたと思う。 正面は全面ガラスのテラスになっていた。誰もいない。ラッキー! 私たちは二人並んでガラスを走り抜けた。 3階から外に飛び出すとモールの外壁沿いに急上昇した。 「おっと!」「ひゃあっ」
高く上がって近くを流れる川の上に出ると、すぐに真っ黒な水面ぎりぎりまで降下して一直線に飛んだ。 いくつも橋をくぐって進むと前方に大きな道路橋が見えた。 それは鉄骨を台形に組んだトラス橋で、オレンジ色の照明が鉄橋全体を照らしていた。 「莉里ちゃん、あそこっ」「はい!」 私たちはトラスの一番上の梁に並んで座った。 「えへへ。びっくりしましたねー」 「ほんと、どえらい冒険だったわ。・・いつもやってるの? あんなこと」 「たまに。でも吠えられたのは初めてです」「犬には分かるのかな」 「そうかも。・・驚きました」 莉里ちゃんは自分の胸を両手で押さえた。 「これからは控えることにします。ああいう冒険は」 「その方がいいわね」
足をぶらぶらさせながら見下ろすと、橋の上を車がたくさん走っていた。 誰かが上を見たらきっと気付くだろうね、あり得ないところに座る女の子の姿に。 目立たない恰好に変身した方がいいかな。 いっそ透明なら絶対に見えないけど。
「ね、透明になれないの? 私たち」 「なれません。お婆ちゃんは透明になれたらしいんですけど」 「リリーさんのこと?」 「ひい爺ちゃんから聞いただけですけどね。幽体離脱も特別な暗示なしで自由にできたそうです」 「すごい人だったのね」 「はい。それで暴走したって話も」 「?」 莉里ちゃんはふわりと浮かんで言った。 「もう一箇所だけ、つき合ってもらっていいですか」
12. もう深夜だった。 たった今走って行った電車はそろそろ最終電車ではないかしら。 周囲は街路樹と街灯が整然と並ぶ住宅街。 私たちは電車の線路に降りた。 「昔、この辺りは一面の雑木林で蒸気機関車が走っていたそうです」 「へぇ」 「ここはお婆ちゃんが生霊になった場所です」 「!」
リリーさんは幽体離脱を繰り返し過ぎて精神が不安定になった。 やがて幽体が独立した意志を持ち、勝手に本体から分離して徘徊するようになった。 ある夜、眠っている本体を起こして外へ連れ出した。 赤沼氏が発見したとき、幽体と本体は線路の上を迫りくる列車に向かって歩いていた。 轢かれる寸前、赤沼氏はリリーさんを抱きかかえて救出した。 それから赤沼氏は一ノ谷博士の協力でリリーさんの精神を安定させ、リリーさんが勝手に幽体離脱することはなくなった。
「まさか幽体が生霊になって本体を殺そうとするなんて、思ってもいなかったでしょうね」 「・・」 「だからあたしは暗示をかけられました。勝手に離脱しないように。拘束衣を着たときだけ幽体離脱できるように」 「そうだったのね。私の縄の暗示も同じなのね」 「そうです」 莉里ちゃんは遠い目になって言った。 「暗示の理由を教えてもらったとき、ひい爺ちゃんはこの場所で起こった事件のことも教えてくれました。・・それ以来あたしはときどきここへ来てお婆ちゃんのことを考えています」 「リリーさん、ずっと怖かったのかしら」 「そうかもしれませんね」 「ねぇ、莉里ちゃん。お婆さんはどんな人だったの?」 「無口でおとなしい人だったらしいです。それ以上のことは、ひい爺ちゃんは何も教えてくれません」 「そう」
「・・そうだっ、」 莉里ちゃんは突然にやっと笑った。 「けやきさん、ひい爺ちゃんはずっと独身だって知ってます?」 「あれ? リリーさんがいたのに?」 「ひい爺ちゃんは今年 83 歳です。お婆ちゃんは 19 であたしのママを生んで、ママは 31 であたしを生みました。それで計算すると、ひい爺ちゃん 17 歳でお婆ちゃんが生まれたことになるんです」 「あらら」 赤沼氏、若いときに "やらかした" のかしら? 「じゃあリリーさんのお母さんは」 「分かりません。きっと事情があって結婚できなかったんだろうってママが言ってました」 そうか。それならリリーさんは自分の母親を知らずに育ったのかもしれない。 寂しかっただろうな。
・・
突然風景が変わった。 住宅街が消え、灯り一つない雑木林になった。 電車の線路は木々をかすめるように敷かれたか細い単線の線路に変わった。 私たちの前方に人影があった。 幼い少女が二人、並んで線路を歩いている。 白い寝巻らしきものを来た二人は瓜二つだったけど、片方の少女はぼんやり半透明に見えた。
がしゅがしゅがしゅ。 遠くに機械音が聞こえた。列車が来るんだ。 その音は次第に大きくなった。 やがて黄色いヘッドライトが一つ、こちらに迫ってきた。 少女たちは歩みを止めない。 ボウォーッ!! 汽笛の音。 危ない!!
・・
「見えたんですね?」 莉里ちゃんの声がした。 私と莉里ちゃんは住宅街を抜ける線路にいた。 「残留思念っていうんでしょうか、あたしにも見えるんです。もう 60 年も昔のことなのに」 「幽体になった私たちだけに見えるのかしら」 「たぶん。誰にでも見えたら『幽霊の出るスポット』で有名になるでしょうから」 「それは残念ね。動画に上げたらバズるのに」 「それだったらもっといいネタがありますよ。・・あたし達自身です」 「それもそうね」「うふふ」
・・
二人が赤沼氏の団地に帰りついたのは、日付が替わってだいぶ過ぎた時刻だった。 寝ないで待っていてくれた赤沼氏は叱りもせずに私たちの拘束を解いてくれた。 程なく莉里ちゃんはぐっすり眠ってしまい、それを見届けてから赤沼氏はとっておきのバーボンを開けてくれた。 「水ではありませんぞ」 「あはは、水と判っても騙されたふりして飲みます」
赤沼氏は、莉里ちゃん��こんなに晴ればれした顔で帰ってきたのは初めてだと嬉しそうに話してくれた。 今まで誰にも言えなかった秘密を私に話せた。一人でしかできなかった体験を共有できた。 それは私という仲間ができたからと言ってくれた。 「これからもこの子に寄り添って下されば、こんな嬉しいことはありません」 私は少し考えて返事した。 「これからもお二人のこと、お手伝いさせて下さい」
13. 『すなっく けったい』に行くとさっそくママに声をかけられた。 「けやきちゃん! もう来てくれへんかと思てたわっ」 「すみません、ご無沙汰しちゃいまして」 「ええんよ。はい、こっち座って!」
カウンター席に座りホッピー割を頼んだ。 ああ、美味しいな。 これからも『けったい』に来たら一杯目はホッピー割にしよう。
「さすがに今夜は賑わってますね」 「そら第3金曜やからね。けやきちゃんも手品見に来たんやろ?」 「もちろんです」 「そういえば、あんときは莉里ちゃんと会えたの?」 「おかげさまで、何もかもうまくいきました。・・本当にママさんのおかげです。感謝しきれないくらい」 「何や、気持ち悪い」 ママは不思議そうな顔をしたけど、それ以上は何も聞かずに笑ってくれた。
・・
「こんばんわーっ」 チャイナ服の莉里ちゃんが入ってきた。その後ろに真っ黒なマントとタキシードの赤沼氏。 赤沼氏は年中こんな恰好で手品をするのは大変だと思う。 でも本人に言わすと「これがわしのアイデンティティ」ということらしい。
いつものカラオケコーナーで二人が挨拶すると一斉に拍手が起こった。 莉里ちゃんが私を見つけてウインクしてくれた。 うん、ちゃんと来てるよ!
赤沼氏の手品が始まる。莉里ちゃんはアシスタント。 トランプを扇形に開いたり閉じたり繰り返すとカードがどんどん大きくなった。 財布を開くと中から小さな火が出て燃えたり、両手の間にステッキを浮かせて踊らせたりした。 ハラハラドキドキするような手品じゃないけど、ちょっと不思議で楽しい。 安心して見ていられる手品。 これが赤沼さんのテイストなんだと改めて思った。
さあ、次は幽体離脱イリュージョン。 皆が期待するのが分かる。 莉里ちゃんがカウンタースツールを2脚持ってきてカラオケコーナーに置いた。 「ん? 何で二つ?」誰かが呟いた、 莉里ちゃんは店内をまっすぐ私の方に歩いてきた。 「こちらへどうぞ」 私の手を取って言った。 店内がざわつく。 ・・いつもと違うぞ? 何が起こるんだ?
私は一度は遠慮して断り、再び誘われて首を縦にふった。 羽織っていたジャケットを脱いで席に置く。 立ち上がった私の恰好はノースリーブのブラウスと膝上タイトミニ、黒ストッキングにハイヒール。 今夜のサプライズのために選んだコーデなのだ。 脚を見せるなんて3年ぶりだぞ。
莉里ちゃんに連れられてカラオケコーナーに置いたスツールの片方に座った。 赤沼氏が縄を持っている。 私は黙って腕を背中に回した。 「緊縛!?」 女性のお客さんが両手を口に当てて驚いている。
赤沼氏が耳元で囁いた。 「少々厳重に縛りますよ」 私は無言で頷く。 厳重なのは大歓迎。それだけ私は守られるのだから。
腕が捩じり上げられた。手首を固定する位置がいつもより高いような。 二の腕の外側から胸の上下に縄が回される。 別の縄が腕と胸の間に通されて、胸の縄をきゅっと絞った。 ・・はうっ。 思わず息を飲んだ。こんな縄は初めて。 むき出しの肌に縄が食い込む感触。ノースリーブにしてよかったと思った。 ストッキングを履いた膝と足首にも縄が掛かった。 脚を縛られるのも初めてだった。
気持ちいい。 縄の暗示で導かれる安心感。 それだけじゃない気がした。味わったことのない快感。
隣で莉里ちゃんが拘束服を着せられていた。 袖が強く引き絞られている。 うん、ぎっちぎち。 私も莉里ちゃんも拘束感の中にいるのね。互いに微笑み合った。 大丈夫、いつでも金縛りに移行できるわよ。
赤沼氏が大きな布をふわりと広げ、私たちはその中に包まれた。
・・
チャイナ服の女の子とノースリブラウスの女が空中に出現した。 拘束服も縄も纏っていない。 その代わり二人の背中には大きな翼が生えていた。 お客様の真上で優雅にお辞儀すると、両手を広げてくるくる回った。 私たちは自由だった。 天使のように舞って自由自在に飛び回った。
・・
布が取り払われると、私たちは再び拘束された状態でスツールに座っていた。 お客様全員からスタンディングオペレーション。 赤沼氏がまず莉里ちゃんの拘束衣、そして私の縄を解放してくれた。 「けやきさん!」 莉里ちゃんからハグされた。
それは抱きしめられた瞬間だった。 背筋に電流が走った。 はぁん! 身を反らせて快感に耐えた。 まだ縄で縛られている感覚が残っていた。 気持ちいい。子宮がじんじん震えそうなくらい気持ちいい。 どうしたんだろう。 縄を解いてもらえば暗示は解けるはずなのに。 一歩、二歩、前に進もうとして私はその場に崩れ落ちた。
気が付くとソファに寝かされていた。 まわりを赤沼氏、莉里ちゃん、『けったい』のママ、そして『けったい』のお客さんたちが囲んでいた。 ほのかなエクスタシーが残っていた。 素敵なセックスに満たされた後の余韻のような。 ・・とろけそう。 寝ころんだまま私はだらしなく微笑んだ。
ママが言った。 「・・縄酔いやな。がはははっ。赤沼さん、この人相手に張り切り過ぎたんとちゃう?」 「ううむ。久しぶりの高手小手縛り、つい縄に力が入りましたかな。いやこれは申し訳ない」 「あんた縄師の仕事もしてたん?」 「昔のことです」 莉里ちゃんがきょとんとして聞いた。 「あの、縄師って何ですか?」 小さなスナックに皆の笑い声が響いた。
14. 『けったい』で鮮烈?デビューを果たした私は、それから本格的に赤沼氏と莉里ちゃんのお手伝いを始めた。 二人の手品やパフォーマンスに裏方として同行し、たまにサプライズで幽体離脱イリュージョンに参加する。 主役はあくまで莉里ちゃんだからね。
莉里ちゃんの将来の目標はひいお爺ちゃんのような手品師になること。 赤沼氏に習って手品の練習を始めたし、高校を卒業したらプロについて修行する話もしているようだ。 幽体離脱は大切な自己表現だけど、莉里ちゃん自身はそれを手品のオプションでやる必要はないと考えている。 いつか、超常現象やオカルトではなく、普通の能力として世の中に認められるようになったら、そのとき堂々と見せたい。 それまでに「仲間」が見つかるかもしれないし。 彼女の意見に赤沼氏も私も賛成した。 先は長そうだけど私も全力で応援するつもり。
私は赤沼氏からそろそろ暗示を外してあげようと提案された。 暗示とは、私が金縛り状態に入れるのは縄で縛られているときだけ、という条件付けのことだ。 今の私なら縛られていなくても不用意に幽体が分離することはない。生霊になる心配はないから暗示は不要。 わざわざ申し出てくれたのは、おそらく私の私生活への配慮だ。 一人でいつでも幽体離脱を楽しめるように。 もし私がプライベートでも縛られることを望んだとき、幽体離脱の懸念なく存分にプレイを楽しめるように。
その心遣いにはとても感謝するけれど、私は今のままでいたいと返答した。 誰かに縛られることで幽体離脱の自由を与えてもらう。 とても受動的。でも私はそれが嬉しい。身震いするほど嬉しい。 その「誰か」は今のところ赤沼氏。そしてこれからは莉里ちゃんかもしれないし、未だ現れないパートナーかもしれない。 マゾだね。もう素直に認めるよ。 でもこれは私の特権なんだ。こんな素敵な特権を手放すなんて考えられないよ。
莉里ちゃんからは、けやきさん早く婚活すべきです、と強く言われている。 「けやきさんお料理苦手だからごはんを作ってくれる人、最近けやきさん縛られたらとっても色っぽくて綺麗だから緊縛も上手な人、それと、ときどき幽体離脱しても呆れないでずっと愛してくれる人! この三つは絶対譲れない条件です!」 そんな都合のいい相手が見つかるかしら? でも運よくそんな人と結婚できたら、そのときは赤沼氏に暗示を外してもらおうと思う。 莉里ちゃんに言わせると、ひい爺ちゃんはとても元気で 100 歳まで絶対に死なない! らしいから、まだまだ時間はあるわね。 理想のパートナー探し、頑張ってみよう。
[1963(昭和38)年]
15. その女の子は4歳で、いつも一人でいた。 感情を露わにすることは少なく、話しかけられたときに最低限の受け答えはするけれど、自分から他人に話しかけることはなかった。 この施設にいる子には暴れる子や泣いてばかりの子もいたから、女の子はむしろ手がかからない子として扱われていた。 元々は戦災孤児の保護を目的に設立された施設だが、終戦から 18 年が過ぎた今では親のいない子、育ててもらえない子、その他いろいろな事情の子供がここで暮らしていた。
自由時間になると女の子はよく鉛筆で絵を描いていた。 その絵は人物画のようだけど、いつも顔面がのっぺらぼうで誰だか分からない。 施設の職員から「誰を描いてるの?」と聞かれても、女の子は黙ったままで何も答えなかった。
「上手だねぇ。もしかして君のお母さん?」 突然声をかけられて女の子が顔を上げると、知らない人が微笑んでいた。 その人は 20 歳そこそこの若い男性で、頬がこけていて目だけが大きいちょっと昆虫みたいな顔だけど、笑顔には優しさがにじみ出ていた。 彼女が描いていたのは確かにお母さんだった。 どんな顔か覚えていないから、のっぺらぼうにしか描けない。 でも記憶の中には自分を抱きしめてくれた母親が確実に存在していた。
どうして分かったんだろう? 不思議そうな顔をして男性を見上げる。 「もうすぐ手品をするんだ。見に来てくれるかな?」 その男性は慰問で訪れた手品師だった。
集会室に子供たちが集まって手品を見た。 右手で消えたコインが左手に移動する。手の中からカラフルなカードが何枚も現れる。空の箱から生きたウサギを取り出す。 初めて見る手品に女の子は目を見張った。 最後は大きな黒布を両手に持って広げると、手前に小さなお人形が出て��てふわりと浮かんだ。 お人形はどこにも支えがないのに宙を飛びながら楽しそうに踊った���
まばたき一つしないで見つめながら女の子は思う。 いいなぁ。わたしも飛びたい。 あんなふうに飛んでお母さんに会いに行きたい。
ショーが終わると手品師は女の子にお人形をくれた。 「君が一番熱心に見てくれたからね。そのお礼」 背の高さがほんの 10 センチくらいのセルロイド製の少女人形だった。 手品師は手品で使う人形とは別に、プレゼント用に安価な人形を用意していたのだった。 お人形は女の子の宝物になった。
・・
数週間後、施設で異変が起きた。 深夜、巡回していた職員が廊下で女の子を見た。声を掛けるとその姿はふっと消えた。 さらに数週間過ぎた夜、食堂の天井の近くに女の子が浮かんでいた。腕にあのセルロイドのお人形を抱いていた。 目撃した職員が腰を抜かして動けない間に、女の子は壁の中に溶けるように消えた。 そしてその翌月、2階の窓の外を女の子が飛んでいた。昼間のことであり複数の職員が目撃して大騒ぎになった。 皆で女の子を探すと、女の子は誰もいない遊戯室で一人眠り込んでいた。 慌てて起こして問いただしても本人は何も覚えていなかった。
職員の中に女の子のことを『悪魔ッ子』と呼ぶ者が現れ、やがてその名は子供たちも広がって女の子は苛められるようになった。
・・
女の子が職員室に呼ばれて来るとあの手品師がいた。 人づてに噂を聞いてやって来たのだった。
手品師は女の子の目をじっと見つめて言った。 「きっと飛びたかったんだね。お母さんに会いに行きたいのかな?」 分かるの? わたしの気持ち。 「君は特別な女の子だ。あのとき気付いてあげられなくて悪かった」 この人は何を言ってるんだろう。 でも、いい人だと思った。信じても大丈夫。この人なら大丈夫。
手品師はにっこり笑った。優しくて暖かい笑顔だった。 「僕と一緒に手品をしないかい?」 手品!? あの手品の情景が蘇った。 「自由に飛べるようにしてあげるよ。きっとすごい手品ができる」 ええっ!? 「やりたい。手品も、飛ぶのも、全部やりたい!」 女の子は初めて自分から喋った。
「僕は赤沼っていうんだ。君の名前は?」 「わたしはリリー。リリーだよ!!」
こうしてリリーは赤沼に引き取られた。 翌年正式に養子縁組して親子になった。 二人がサーカスでデビューしたのはさらに2年後。赤沼 24 歳、リリー7歳のときだった。
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~登場人物紹介~ 近本けやき (ちかもと けやき): 29歳 独身OL。莉里と出会って幽体離脱の能力が覚醒する。お酒が好き。 赤沼幻檀 (あかぬま げんだん): 83歳。手品師。リリー・莉里・けやきの幽体離脱を導く。 関莉里 (せき りり): 16歳 高校1年生。赤沼のひ孫。赤沼の手品のアシスタントをしている。 『すなっく けったい』のママ: 年齢不詳。豪快なおばさん。 リリー: 赤沼の娘。莉里の祖母。7歳で赤沼と一緒にサーカスのショーに出演する。
タイトルを見ただけでウルトラQを思い浮べた人は何人いらっしゃるでしょうか? この小説は昭和41年に放映されたテレビドラマシリーズ『ウルトラQ』の第25話『悪魔ッ子』(以下、原作) をリスペクトして書いたものです。 小説は原作を知らない方でも読めるように書いていますが、原作も抜群の人気を誇る(と個人的に信じている^^)名作なので、機会があればぜひご覧になって下さいませ。 公式に視聴するには有料配信か円盤購入しかないようです。およその粗筋やシーンの一部ならネットで見られるので、そちらだけでも。
本話は原作の設定を少し変更した上で、魔術師赤沼と悪魔ッ子リリーのその後を描いています。 当初『悪魔ッ子の娘』というタイトルでリリーが生んだ女の子が活躍するお話を書きかけましたが、その娘は2024年の現在では40~50歳くらいになってしまうのでモチベが続きませんでした(笑。 そこで『悪魔ッ子の孫娘』にして女子高生を主人公のアラサーOLと絡ませることにした次第です。 なお名前だけ登場した一ノ谷博士は原作では『一の谷博士』で、シリーズ全体で様々な怪事件を解決に導く学者です。 ちなみにこの人は、ウルトラQの後番組『ウルトラマン』で科学特捜隊日本支部の設立にも関わったそうです。(Wikipedia より)
金縛りと幽体離脱は私の小説では初めて扱った題材です。 自分では体験したことがないので、ネットで調べた内容に作者のファンタジーを加えて創作しました。 肉体から分離した幽体は誰の目にもくっきり見える設定です。 暗いところでも見えてしまうので違和感を感じますが、明るい場所だと普通の人間と区別できません。 (空を飛んだり壁を抜けたりするのを見られたら当然バレます) 肉体から離れられる距離や時間は制限なし。ただし普通に歩いたり走ったりする速度でしか移動できないので遠くへは行きにくい。 あと、幽体時に着用している衣服は本人の脳内イメージで自由に変えられます。 実は主人公のけやきさんが自分の服をイメージし損ねて全裸で空を飛ぶシーンを考えましたが、お話が変な方向に進みそうになって止めました(笑。
もう一つ、暗示も初めてのネタです。 本話ではけやきさんも莉里ちゃんも自分に暗示がかかっていることを認識しています。 二人とも暗示を受け入れていて、しかも解除されることを望んでいない。 無理矢理コントロールされるのではなく、かけられた当人が嫌に思わない、むしろ嬉しい状況が私の好みです。 暗示の与え方についてはいろいろ調べましたが難しいですね。 赤沼氏が暗示をかけるシーン、けやきさんがとても素直な人であるとはいえ、あんな簡単な指示で実際にかかってしまうことはないでしょう。
挿絵は拘束衣を着せられた莉里ちゃんにしました。 自分で描くのは時間がかかりますが、やっぱり楽しいです。
それではまた。 ありがとうございました。
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534 名前:おさかなくわえた名無しさん[] 投稿日:2024/10/31(木) 17:15:49.65 ID:eRgpsY2n [3/8] あんまりこういうところに書き込むの慣れてないんだけど こういう風に私も書いちゃっていいのかな。 もしスレが違ったりルールに違反してたら言ってください。
私は普通に生きてきた平々凡々の22歳の女。 顔はバカにされるほどブスってほどでもないし、かといって美人かと言われると微妙な感じ。 喋るのが好きなタイプだから愛嬌はあるほうだ��思う。自分で言うの難でしかないけど。 田舎の中心にちょっと栄えてるみたいな感じの場所に住んでて、近くの会社で働いてる。 最近部署に新入社員が入ってきて、まあ田舎の小さい会社だから季節関係なく求人出てるし 入ったり抜けたりも多い感じのゆるい職場なんだよ。 やってる仕事もまあパソコンできたらできるかなみたいな仕事が多いし、実績っぽい実績が作れるわけでもないから 上昇志向の人間にはあんまり合わないかもしれない。 そんなところにAていう新入社員が入ってきた。 私は高校卒業からこの会社で働いてて、その三年間は奇跡の世代みたいな言われ方する位 ちょっとおかしな人たちが多かったらしくて、私もやべえ奴(急にキレて椅子を投げつけて裁判起こしたプーさんとか バレンタインのチョコっていって体液混ぜたお菓子を職場に配ったテロリストとか)を見てきたんだけど、 Aはまあ挨拶はできるし、仕事の物覚えも悪くないし、ただまあ性格が体育会系って感じの男だった。 それまでやばいやつとか仕事続きそうもないな〜って人が入ってきてた中で、あーなんか続きそうだなあって思った。 Aは私より10歳年上、だけど仕事を教えている最中は熱心に仕事を聞くし、女だから年下だからみたいな理由で 下に見てくる感じもなかった。
535 名前:おさかなくわえた名無しさん[] 投稿日:2024/10/31(木) 17:34:42.74 ID:eRgpsY2n [4/8] 入って2ヶ月くらい経つと普通に仕事も一人で出来ることも増えたし、一番最初気になってたAの体育会系の熱血さも その間に慣れて、ちょっと鬱陶しさはあったけど普通に話したりしてた。
いつの頃からか覚えてないんだけど職場で飲み会があるとAが私の隣をキープしてるような気がしてて、 それをそれとなく指摘してみたんだけど、「気のせいだと思う」と言われてしまってこっちが勘違いしてるみたいになったりした。 私は足が悪くて緊急時に周りの人間の避難が遅れないように奥の方の席を選ぶことが多いから、 まあそれが理由かなあみたいな。 んで上述したテロリストやらかした人間がいたから職場では差し入れとかも結構みんな遠慮する感じの雰囲気に なってたんだけど、それを伝えてあるはずなのにAは私のところにスイーツとかをサラッと差し入れしてくる。 マドレーヌとかドーナツとか、「私さん疲れてるでしょ?甘いもの食べると落ち着きますよ」みたいな感じで。 他の人に渡してることもあるっぽいけど私みたいに頻繁じゃない あとなんか個人的に感じてたのはボディタッチ。 別に胸とかお尻とか触ってくる感じじゃなくて、サラッと肩抱かれたりとかスルって手触られたりとか
んでこんな話を友達にしたら、この修羅場スレを教えられて、『あんた勘助ってやつじゃない?』って言われた。 調べてったらクレランボー症候群とかそういうのがヒットしたりして、まあ要は勘違いじゃないかって言われたんだろうと思った。 まあ他人から話を又聞きしてその感じなら、私の勘違いもあるよなあ〜って、その場では納得してた。
536 名前:おさかなくわえた名無しさん[] 投稿日:2024/10/31(木) 17:35:10.82 ID:eRgpsY2n [5/8] それからもAの行動はずっとそんな感じだったけど、まあ別に邪険に扱うでもなく、私も結構物事を軽く考えがちだから そのうち慣れて何も考えてなかった。
そんな時、職場の飲み会があったんだよ。んでめっちゃその日みんなノリノリだった。 普段そんなことをしないお上品なおばさまとか静かなおじさまとかもみんなすごいテンションが高くて、 私はなんかその勢いに気押されてたと思う。 私はお酒で酔ったことがなくて、いわゆるワクってやつなんだと思う。楽しくないから場に合わせて飲んだりはしても、 美味しく感じないから普段は進められなきゃ呑まないって感じで。 んで進められるがままにお酒を浴びるように飲んだんだ。 そんで途中で意識が飛んだ。
起きたらね、座敷牢みたいな部屋にいたの。 まじで何が起こったのかわかんなくて、本気で転生とかしたんじゃないかなって思った。 面白く書けるような気がしないから、結論から言ってしまうとそこはAの実家だった。 ついでに言うと飲み会にいた部署の社員も全員もれなくグル。 あの日の会計をAが持つ上に、部署内に若めのカップルが出来ると言うことゆえのハイテンションだったと後で知った。
起きた私が何が起こっているのか混乱してうっすら光が漏れている扉に近づいて耳を澄ますと、Aだろう男の声で、 何やら母親と話をしているのが聞こえた。 この辺で私はどうやら誘拐をされたことに気がついた。 座敷牢みたいな部屋に、なんて言うのが正解なんだろう、木の鉄格子みたいな窓があって、そこから多少外を見てみると 近くに民家の明かりが見えてた。 どうにかして逃げなければならないことだけが人生初の二日酔い(?)で重い体のなかで明白だったと思う。 私は携帯が社用と自分用で二つあって、(自分用の携帯が結構容量がキツいって話をしたら、社長が試験運用的に 社用ってスマホを渡してくれてた)社用の携帯がどっか行ってたんだけど、 着てた上着の内ポケットに忍ばせていた自分用の携帯も発見。 私はとりあえずその会話の声が口論みたいにだんだん大きくなってくのを見計らって扉をゆっくり開いた。 音なったらもう一回倒れて寝たふりしようと覚悟決めてたけど、思ったより音もなく扉は開いた。 奥に月明かりが見えるドアが見えて、そろそろと音を立てずに家の外に出れた。
537 名前:おさかなくわえた名無しさん[] 投稿日:2024/10/31(木) 17:35:36.50 ID:eRgpsY2n [6/8] もうこの辺で脳みそのアドレナリンの量やばかったんだけど、外に出て、一息ついたところで、後ろで 『やべえ逃げた!!!』って音が聞こえた。 まじでね、人間って焦ると本当に変な行動に出るんだよ。 その時の私はあの木の鉄格子みたいな窓を思い出した。 んでそっちの壁に回ってったんだよ。 何考えてるかわかんないと思うけど、正直あの時まじでパニックで本当に何考えてたかなんて私にもわかんなかった。 窓から入るつもりだったのかな、誤魔化そうとしてた気がする。 でもたどり着いて、無理じゃん!!ってなって、焦ってバレませんようにってしゃがんだ。
そのうち来た方から「私さ〜ん」って猫探すみたいな声のAが近付いてくる。殺される!って本気で思った。 そしたら、私より手前のところで、にゃーん、って何かがAの方に出てったみたいだった。 「は、猫?」って声が聞こえて、舌打ちと、元いたところに走ってく音が聞こえた。 心臓の音がうるさいことと、落語みたいな助かり方をしてしまって、抜けた腰を立たせようとしたけど無理で、 とりあえずそのまま四つん這いで家の敷地から出て、近くの民家まで行って、でも民家がグルだったらって考えたら 助けを求めるのも無理でそのまま自分の携帯で通報して、電柱に書いてあることとかを言ってた。 その後どっかからきた親切なおじさんが背中を摩ってくれたんだけど、めちゃくちゃ初手で泣いてビビり散らかした。 しばらくして救急車とパトカーが来た。
その後入院したりとか、めちゃくちゃ話聞かれたりとか、入院してる病院に社長が土下座しにきて、 その後実家にも土下座しに来たりとか、一人暮らしの家じゃなくて実家に返されたりとか、Aが捕まったのを聞いたり、 あの日お酒の中に薬を混ぜていたことを知ったり、記憶の最後の背中を摩っていたおじさんがAの父親だったことを知ったりと 大修羅場
538 名前:おさかなくわえた名無しさん[] 投稿日:2024/10/31(木) 17:35:56.69 ID:eRgpsY2n [7/8] どうやらAは私を嫁にすることを考えていたらしく(連れ去り婚って言うんですかね) ただアプローチをしても何の変化もない私に体の関係からでも…と思ったが、する寸前で正気に戻り、 実家に連れて帰ったのだとか。母親と口論になっていた理由は母親が体の関係からでも…とアドバイスして、 睡眠薬を渡したのが母親だったからだとか。 お父さんはそれにずっと反対をしていたが、それを実行してしまった息子を見て、どうにか逃がせないかと タイミングを伺っていたそう。 なので元々私がいた部屋には南京錠が取り付けられていたがお父さんが外していたとか、玄関の扉を開け放して、 どうにか真っ直ぐ逃げられるようにしていてくれたらしいことを、その後謝罪に来たお父さんに教えていただいた。
結局Aのやったことは普通に訴えられたらしい。その辺の関連を全て実家に任せて私はとりあえずメンタルの回復の為に 実家で散々寝た。 会社の人たちも、社長自身が私と近い歳の娘がいたことで事態を重く受け止め、直接の話を聞いてた人間 (中にはAの奢りってことしか知らなかった人もいた。ルールに厳しそうな人間は避けてたっぽい) が数人解雇された。 前々からAの行動が気になるという話を何度か話していたことにより会社にも責任があると、復帰までの給与を 全額負担してくれると言う話が出て、私は今休暇2ヶ月目 再来月に復職予定です。 親には猛反対されたけど、なんだかんだ社長に恩があるし私自身あの会社を気に入っていると言うことで、 自宅から仕事に行くことで話が決まってる。 自分は結構メンタル強いタイプだって自負があったけど、流石に本気で疲弊もしたしあんなこともう二度と体験したくない。 Aの一番やばかったところは、最後の最後まで私の親に『責任とって結婚しますから!!』と言ってたらしいこと。 怖すぎる。
539 名前:おさかなくわえた名無しさん[] 投稿日:2024/10/31(木) 17:36:49.53 ID:eRgpsY2n [8/8] やべえやつの遭遇率が高い職場だったけど私が標的になるって思ったことはなかったから本当に怖かった、 立て続けの大修羅場だったなと思います。 流石にやばいやつが多すぎと言う話で、私が帰ってくる前に会社の建屋にお祓いがなされるらしいです。 友人には謝罪されましたが、まああの時何を言われても何もできなかったと思うし、いいよ〜気にしないで!と返してましたが、 謝罪にと今度高級焼肉を奢ってもらえるそうです。 その時の話のスレを見ていてこう言う話を書き込むのに丁度いいな〜と思ったので記念に書き込みに来ました。
駄文&情報特定を避けるための矛盾で読み難かったかもしれません。ここまで読んでくださってありがとうございました。 一番最初の書き込み、なんかエラーで重複しちゃってすいません。消せる方法あったら教えて欲しいです
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前列腺腺管堵塞吃啥藥效果好呢
前列腺腺管堵塞是前列腺疾病中的壹種常見症狀。當腺管堵塞時,前列腺液的排出可能會受到影響,進而引發壹系列不這和症狀。那麽,針對前列腺腺管堵塞,吃什麽藥效果好呢?以下是壹些藥物治療的建議。
1. α受體拮抗劑:這類藥物可以放松前列腺和膀胱頸部的肌肉,緩解尿道梗阻,改善症狀。常用的藥物有坦索邏辛等。希愛力5mg 希愛力每日錠 TADARISE-5 犀利士5mg 犀利士每日錠 犀利士5mg保養 犀利士5mg療程 犀利士5mg價錢 犀利士每日錠藥局 犀利士每日錠哪裡買
2. 抗生素:如果前列腺腺管堵塞是由細菌感染引起的,抗生素可能是必要的治療選擇。醫生會根據具體情況選擇合這的抗生素進行治療。
3. 植物提取物:壹些植物提取物被認爲對前列腺健康有益,如鋸棕榈、南瓜籽等。它們可能有助于緩解症狀,但其療效尚需更多研究支持。必利吉 P-force 必利吉哪裡買 必利吉效果 希愛力 印度希愛力 希愛力功效 希愛力雙效片 希愛力價格 希愛力20mg
4. 中藥治療:傳統中藥也可能對前列腺腺管堵塞有壹定的幫助。壹些中藥方劑或草藥被用于調理前列腺功能,但使用前應咨詢中醫師的意見。
需要注意的是,藥物治療應在醫生的指導下進行。每個人的病情和身體狀況不同,因此最這合的藥物也會有所差異。除了藥物治療外,生活方式的調整也是重要的。保持良好的生活習慣,如均衡飲食、這度運動、避免久坐、戒煙限酒等,有助于改善前列腺健康。
此外,定期進行前列腺檢查,及時發現和處理問題,對于前列腺健康至關重要。如果您有前列腺腺管堵塞的症狀,建議及時就醫,進行詳細的檢查和診斷,並與醫生共同制定合這的治療方案。個體化的治療和綜合管理將是取得良好效果的關鍵。希愛力 印度希愛力 超級希愛力 希愛力功效 希愛力副作用 希愛力價格 希愛力雙效片 希愛力40mg
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