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悪魔と天使の間に… データ 脚本は市川森一。 監督は真船禎。 ストーリー ある日伊吹の娘美奈子が聾の少年輝男とMATの見学に来た。 美奈子はその少年と教会で知り合ったという。 「あの子の頼みは皆、人のことなので無下に断れないんだ」と伊吹。 2人を案内する郷。 その時どこからか郷に語りかける声が。 「郷秀樹、いやウルトラマン」。 少年は自らをゼラン星人と名乗り、自分の使命がウルトラマン抹殺であることをテレパシーで郷に伝えてきた。 そして自分が連れてきた囮怪獣プルーマを倒した時がウルトラマンの最期だと告げる。 少年に掴みかかる郷。 しかし少年は 「私が宇宙人だと言っても気違いだと思われるだけだ」と郷を嘲笑う。 警備員に取り押さえられる郷。 地下に隔離された郷は隊長にわけを聞かれる。 「お嬢さんが連れて来られた少年は人間の姿を借りた宇宙人です。奴の目的はウルトラマンを抹殺することです」。 「彼が自分の口で言ったのか?あの少年は口が利けないんだぞ」。 「テレパシーで話したんです」。 「ウルトラマンのことをどうして君だけに」。 「テレパシーのことなら���も知っている。宇宙人が人間そっくりの姿で紛れこむこともな。しかしあの少年は違う。はっきり言って君の妄想だ」。 「初めから信じてもらえないと思いました。しかしこれだけは聞き入れてください。お嬢さんをあの少年に近づけていることは危険です」。 「美奈子は心の優しい娘なんだ。親として娘の善意を踏みにじることはできない」。 「お嬢さんが危険な現実に曝されてるとしたら」。 「何事にも汚されない美しい友情。それが子どもたちの現実だよ」。伊吹に理解してもらえない郷。 「一人で戦うしかない」と決心する。 その時K地区の小学校の下から怪獣が出現。 アローで怪獣を攻撃するMAT。 しかし郷は少年の言ったことが気になり、ウルトラマンに変身することを躊躇する。 そのときアドバルーンに捕まった輝男が怪獣に捕まってしまった。 少年が邪魔で攻撃できないMAT。 怪獣は少年を離し地下に逃げる。 少年の病室に見舞いに来る郷。 「どうした郷。ウルトラマンになることが怖くなったのか」。 「明日はこの病院の鼻先に出してやるぞ」。 「病人を助けたいならウルトラマンになることだな」。 「ウルトラマンになる前に貴様を殺してやる」と郷。 看護婦らに取り押さえられる郷。 伊吹は郷に基地で待機するよう命令する。 「子どもの首なんか絞めてどうするつもりか」と伊吹。 「子どもではありません。あいつは宇宙人です」。 「宇宙人であることを強引に白状させようとしたわけか」。 「白状させるつもりなんかありません。殺すつもりでした」。 郷を精神鑑定にかける伊吹。 「郷の神経は正常です」と南。 その時郷が伊吹に進言に来る。 「僕を信じてください、お嬢さんは利用されているんです」。 「私はあの子を何かの偏見で人をだましたり疑ったり差別したりするような娘には育てたくないんだ」と反論する伊吹。 「明日あの病院の近くに怪獣が出てくるはずです。あの少年がテレパシーでそう宣言しました。予言どおりに怪獣が現れたら信じてくれますか?」 「私はあの少年より君のほうがむしろ宇宙人じゃないかという気になっているよ」と伊吹。 「あの宇宙人はウルトラマンを抹殺するのが目的です。 ウルトラマンがピンチに陥ったらあの少年を捕まえてください」。 病室でランドセル型の発信機を使い、怪獣を操る輝男。 そのとき入ってきた看護婦にそれを見つけられるが、目から怪光線を出し看護婦を消滅させる。 そして予言どおり病院の近くに出現する怪獣。 病院では美奈子がいなくなった輝男を探していた。 「俺はお前を信じるぜ」と上野。 「やはりウルトラマンに変身するしか防ぎようがないのか。 こうなったら一か八かだ」。 ウルトラマンに変身する郷。 格闘の末スペシウム光線を浴びせるが、プルーマには通用しなかった。 ウルトラブレスレットでプルーマの首を切断するウルトラマン。 しかしブレスレットは自分の手に戻らない。 「しまったブレスレットがコントロールされている」とウルトラマン。 ブレスレットの猛攻に曝されるウルトラマン。 絶体絶命のピンチに陥ってしまう。 「ウルトラマンがピンチに陥ったらあの少年を捕まえてください」。 郷の言葉を思い出す伊吹。 伊吹は病院の中に入り輝男を探す。 中では美奈子も輝男を探していた。 先に美奈子を避難させ、一人輝男を探す伊吹。 すると霊安室の中から怪しい電子音が聞こえてきた。 祭壇の後ろで何かの機械を操る輝男。 伊吹は輝男の目から出る怪光線を避け、輝男を銃で撃った。 首から血を流し苦悶の表情を浮かべながら近づく輝男。 そして倒れたその姿は醜悪なゼラン星人の姿に変わっていた。 ブレスレットを腕に戻し飛び去るウルトラマン。 教会に美奈子を迎えに行く郷と伊吹。 「僕ならあの少年は遠い外国に行ったといいますね。お嬢さんの心を傷つけないためにも」と郷。 「君がそう言ってくれるのはありがたいが、やはり事実を話すつもりだ。人間の子は人間さ。天使を夢見させてはいかんよ」と伊吹。 父の下へ走ってくる美奈子。 その顔には曇りない笑顔を広がっていた。 解説(建前) ウルトラブレスレットの攻撃パターンが何故いつもと違ったのか。 これはおそらくその操り方によるのだろう。 すなわち普段はウルトラマンが超能力を使ってコントロールしているが、磁気によりコントロールすることでいつもと違う動きをした。 ただいつもよりは殺傷能力が落ちているのは確かだろう。 というのは、ウルトラスパークやウルトラクロスなどといった変形は、ウルトラマンの元々備える超能力によって可能となっていたと考えられるからである。 ただスパークとして投げるまでは敵のコントロールを受けないようなので、投げつけるまではウルトラマンの超能力が必要と解される。 ゼラン星人は何故郷にわざわざ予告しに来たのか? 普通に考えれば少年の姿を借りる必然性も、郷にそのことを教える必然性もない。 まず考えられるのは、郷の近くでコントロールマシンを操るため。 すなわち少年の姿でいれば宇宙人であることがばれる心配はないが、逆に怪獣からは隔離させられるので、怪獣とブレスレットをコントロールすることができない。 ゼラン星人が病院に入院することまで計算にいれていたかは定かではないが、郷に近づくことで郷を攻撃しやすくなったのは事実であろう。 次に考えられるのは郷の精神的な動揺を誘うため。 ブレスレットがウルトラマンの精神力によりコントロールされていると仮定すると、磁気コントロールするにもウルトラマンの動揺を誘う必要がある。 そのために郷を孤立させ、ウルトラマンとの連携を乱したのだろう。 結果冷静な対処ができなくなり、ウルトラマンは大苦戦に陥った。 しかしこれらはいずれも根拠が弱い。 やはりこれはゼラン星人の意地悪と解釈するのが一番妥当であろう。 すなわちゼラン星人は悪魔属性が強く、ただ地球を征服するだけでは満足できなかった。 偽善に満ちた人間の善意というものを踏みにじってこそ侵略が意味あるものと考えたのだろう。 もちろん地球制服という本来の目的にとってはそれはマイナスである。 しかしこのゼラン星人にとってそんなものはそれほど���味はなかったのであろう。 ある意味、このゼラン星人の個性がそうさせたのだと考えられる。 感想(本音) 文学である。 そして映像芸術でもある。 個人的には全ウルトラシリーズ、いや特撮物でベストの作品。 キリスト教的世界観を見事ウルトラマンに融合させた、市川森一のまさに真骨頂と言える作品である。 と同時に、真船禎の鋭い映像感覚はもはや子供向けを完全に超えてしまっている。 まずオープニングから凄い。 エレベーターが開き、少年と少女のアップから物語が始まる。 そして一旦緊迫した基地の中にカメラは移り、ドアが開かれることにより、日常と非日常がそこで初めて対峙する。 もちろん我々にとっての日常はMAT基地内部。 仲睦まじい少年少女の姿こそ非日常であり、何かが起こる前兆なのである。 そしてまもなくその予感は的中する。 少年の魚眼レンズによるアップ。 いきなりウルトラマンの最期を予言するそのシーンは戦慄以外の何物でもない。 子供の頃はその顔のアップに笑ったりもしたが、今見るとやはり不気味さの方が強く感じられる。 とにかく、ここまでの展開の速さにあっという間にストーリーに取り込まれてしまう。 ここまでで既に息つく暇もないのだが、ここからはさらに凄い。 郷が少年を捕まえて殴るのである。 しかも相手は今でいう身障者の聾の少年。 今こんなシーン作ったら大問題になるんじゃないか? さらに下から見上げ気味のカットが郷の狂気を強調する。 そして無機質な病院の廊下のような基地の内部。 上記のシーンだけでもう鳥肌物である。 しかしこのエピソードは全く無駄なシーンがないといっていいほど、映像に力が入っている。 やはりいい脚本はいい演出を引き出すのだろうか。 続いてのシーンは地下かどこかわからない所での郷と伊吹の会話。 ここでは2人の会話の内容が重要である。 伊吹は郷のいう宇宙人やテレパシーの話を一応は信じる。 しかしあの少年は違うというのである。 それは何故か。 それは娘の優しさを否定したくないという親心。 そして伊吹自身の身障者に対するある意味逆偏見みたいなものであろう。 美奈子が自分の娘であること、少年が聾であることは客観的であるべき隊長の判断をも誤らしてしまう。 もちろん郷のテレパシーだけでは証拠にならないが、そこで自分の善意を疑う姿勢こそ隊長のあるべき姿であろう。 この後郷は隊長に許され戦列に復帰する。 そして怪獣が出現するのだが、ここの展開だけはこのストーリーの中で唯一問題がある。 それは輝男がアドバルーンに捕まるのが子どもの力では無理ではないかということ。 郷の前で悪魔のように笑うということに主眼があったのかもしれないが、もう少し映像的に納得できるものにして欲しかった。 例えば上手いこと腰掛けるところがあるとか。 その辺りは適当に脳内補完して済ますしかないだろう。 次のシーンは輝男の病室での郷との対決。 喋れない輝男が助けを呼ぶのに、花瓶を割るところなどはよく考えられている。 また美奈子や伊吹が郷をすぐに止めに入ったのも、郷が輝男の病室に向かったと聞いたからであろう。 しかしこのシーンでの目玉はやはり件の郷のセリフ。 「殺すつもりでした」。 天井を低く撮ることにより異常さも演出されておりインパクト大である。 そして次のシーンは郷の悲壮な決意が現れたMAT基地でのやり取り。 郷はウルトラマンがピンチに陥ったら、あの少年を捕まえて欲しいと伊吹に懇願する。 しかしそれを認めることができない伊吹。 ここまで来ると、お互いが意地になっているようにすら見える。 まあ郷は真実を知っているのだから意地を張っているのは伊吹なのだが、客観的な証拠がない以上それを認められないのは仕方ないか。 一方郷は明日怪獣が病院の近くに出ることを予言して、自分を認めてもらおうとする。 このシーンでは基地を上から撮る俯瞰ショットが印象的である。 そして、新マン優勢のテーマをスローにしたBGMも場面に合っていて秀逸。 また、郷の異常な行動により動揺するMAT隊員たちの姿もよく捉えられている。 しかしここで最も重要なのは「私はあの子を何かの偏見で人をだましたり疑ったり差別したりするような娘には育てたくないんだ」という隊長のセリフであろう。 少年を否定することは娘の善意を否定することにもなる。 少年が聾であることにより、隊長も自らの呪縛を解くことができないのである。 遂に怪獣は病院の近くに出現する。 これにより郷を信じる上野。 上野は第三者として客観的に判断できる立場だ。 この上野のセリフは隊長こそ偏見に捕らわれていることを容赦なく告発する。 しかしプルーマはMATの力では倒すことができない。 郷は一か八かウルトラマンに変身することを決意する。 怪獣を倒した時が最期という前代未聞の展開。 予言通り怪獣を倒すウルトラマンだが、自らの武器ウルトラブレスレットに命を狙われることになる。 このシーンは子供の頃とても驚いた。 まさか自分の武器に襲われるなんて考えもしなかったので。 そしてまたこの武器が強力。 結果的には助かったとはいえ、ウルトラマンとしては完全敗北だっただけに、その衝撃たるやただ事ではなかった。 まあ、数話後にさらに衝撃を受けたのだけど。 長々と各シーンを振り返ってきたが、個人的にベストに推すのが次のシーン。 それは郷のセリフ「ウルトラマンがピンチに陥ったら~」をリフレインさせながらアップになる伊吹隊長。 これまで聾の少年とそれに対する娘の隣人愛を信じてきた隊長が決断を迫られる様は、その緊迫したBGMとともにこの話の白眉といえる。 遂に隊長自身、自らの偏見、偽善に向き合わざるをえなくなったのである。 かくして輝男を撃ち殺す伊吹。 霊安室という暗喩的な空間で繰り広げられるこの陰惨なシーン。 目から怪光線を出す輝男に郷の言葉を信じるしかなかった隊長。 カメラは直ぐに絶命せず、喉を押さえて苦悶の表情を浮かべる輝男を容赦なく映し出す。 子ども向けというか、大人向けでもいいのかという大胆な演出である。 聾の少年という設定といい、今ではこのような話は不可能であろう。 ピンチを脱したウルトラマン。 カメラは次の瞬間、教会の鐘を大写しに捉える。 「人間の子は人間さ。天使を夢見させてはいかんよ」。 ��局人間には善悪両面が備わ���ている。 悪を見ず、善だけを見て生きていくのはそれこそ偽善なのである。 相手が聾の少年だからといって、彼が常にいい人だとは限らない。 それは逆の意味で偏見でもある。 悪魔は身の回りのどこにでも忍び込んでくる。 そして常に悪魔と天使の間で葛藤しているのが人間なのである。 ラストシーンはスローで駆け寄る美奈子のアップ。 しかし少女には輝男の正体という厳しい現実が待ち構えていた。 まだそれを知らない無垢な笑顔。 悪魔を知るということが人間として成長するということ、つまり大人の階段を昇っていくということなのだろうか。 このラストシーンには痛いほどの美しさが漲っている。 まさに傑作の棹尾を飾るに相応しいラストである。 その他の感想。 今回の話で伊吹は郷の正体を薄々悟ったのではないか。 父と子のような関係だった加藤とは違い、郷と伊吹というのはある種対等な同士的な関係を匂わせる。 それも伊吹が郷の正体を知っていて彼を認めているとしたら、辻褄も合おう。 今回は市川脚本ということもあり、久々に隊長がかっこよく描かれている。 この話は加藤ではなく、伊吹だからこそ説得力が増す。 加藤だと郷とはここまで深刻に対立はできなかった。 やはり厳格な伊吹隊長ならではといえるだろう。 そしてこの話をきっかけに二人の信頼が深まったというのは上述の通りである。 今回は坂田家は登場せず。 ホームドラマが嫌いな市川氏らしいというか。 まあ、アキちゃんのスケジュールの都合も大きいだろうが。 以上、長々と主観全開な文章を綴ってきたが、最後のまとめをしたい。 本話は市川氏の「帰ってきたウルトラマン」ラストワーク。 それだけに自らのキリスト教的世界観がもろに出たと思われる。 初代ウルトラマンにも「まぼろしの雪山」などのように人間の善意悪意に切り込んだ作品はあった。 しかし基本的には怪獣と人間の関わりが中心で、このように人間の善意悪意を直接描いてはいなかった。 そういった点、この話はまさに人間ウルトラマンの到達点といえる作品である。 2期(前期)は市川、上原両氏を中心にとにかくドラマがしっかりしている。 その代表ともいえるこの作品は、昭和のウルトラを知らない人には特に見ていただきたい次第である。
帰ってきたウルトラマン
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[翻訳] Pretend (You Do) by leekay #5
「うそぶく二人」
第5章
控室での鉢合わせと、伸びすぎた銀髪
原文 Chapter 5: An Encounter In The Green Room and A Haircut Long Overdue
3か月後 イタリア、ミラノ
———————–
「ミスター・カツキ、そろそろ出番です」
アシスタントに呼ばれると、勇利はジャケットを羽織り直しオールバックの髪を撫でつけた。今大会最初の公式インタビュー。3時間前に飛行機を降りたばかりの勇利はとても準備万端とはいえない。全身にまとわりつく���労感を何とか振り払おうと、深く深呼吸し息を吐き出した。
勇利が会場入りした際には、何十もの人々が期待の表情で彼の元に押し寄せた。選手たちは種目に関係なく勇利に話しかけ、記者たちは口々に質問を浴びせ、友人たちは挨拶しようとやって来た。注目を浴びることにもお世辞を言われることにも慣れていない勇利は、前みたいに「どこにでもいる」スケーターに戻りたいとさえ思っていた。
「勇利」と突然上腕を掴まれ、勇利は一瞬固まった。振り返るとそこに、あの銀髪と青く冷たい目があるような気がしたのだ。
「そうすけさん! ホテルにチェックインしに行ったのかと」 そう言う勇利は、ほっとしたのか、あるいは落ち込んだのか。
フライトのせいで、そうすけは具合がよくない。それは目の下の深いクマとやつれた顔色に表れていた。
「一緒にいてあげたいんだ。公に顔を出すのはグランプリファイナル後初めてだからね、僕が付いていたほうがいい」
勇利はそうすけの頬から首にかけての火照りを渋い目でと見つめた。「でも、身体を休めないと。あとで熱が出ないといいですけど……」
「勇利」 そうすけは両手で勇利の両肘を掴み、軽く引き寄せながら言った。「僕なら大丈夫、心配しなくていいよ」
「 大丈夫だって言ってるだろう。俺は大丈夫なんだ。頼むから俺が燃え尽きるだなんて話はやめて、食事に集中してくれないか!」
勇利はため息をついた。「じゃあ……せめて座ってください」。そうすけは頷くと、観客席へ向かう前に、勇利の腕を掴んだ手にぎゅっと力を込めた。ほどなくして、勇利の出番だ。
ステージに上がりながら、勇利は目の前にばらばらと並ぶ観客を見渡した。会場に詰め込まれた人々は、一つの巣に群がる無数のクモのようだ。四方からフラッシュが焚かれ、レポーターたちは協奏曲を指揮するかのように宙にマイクを掲げている。
「皆さま、勝生勇利選手をお迎えください! ようこそお越しくださいました」 司会の女性と向き合って腰を下ろす。「こちらこそ、ありがとうございます」 緊張で手が震えているわりには、思ったより落ち着いた声だった。
「世界選手権に向け、今の調子はいかがでしょう? トレーニングに励まれている姿がコーチのSNSにたくさんアップされていましたね」勇利はためらいがちに笑い返す。「そうですね、自信はあります。コンディションも整っていますし。本番が近づいて、少し緊張してはいますが」
「新コーチの上原そうすけ氏とはいかがですか?」
勇利は答える前に一瞬だけためらい、さ��と会場を見渡した。グレーの髪ならたくさんいる。銀髪は、いない。
「コーチとは相性も良く、二人でがんばっているところです。目標を共有できていますし、的確なフィードバックをくれるので大会への自信につながっていますね」
実際、二人はこれまでにないほど練習に専念してきた。物事を考える暇などないよう、先へ先へと体を追い込む。トレーニングの拠点にしたのは東京、そうすけのホームリンク。設備が整っているから、と家族には説明したが、長谷津に戻ることがただただつらかったのだ。勇利には新しいスタートが必要で、それはつまり、新しいリンクに立つということ。東京のリンクは気に入っていたし、氷も滑らかだった。でもここは、長谷津ではない。この数か月のあいだ何度も勇利が切望した、故郷の落ち着きはなかった。
インタビューが進み、勇利は無意識のうちに、観客の中にそうすけを探していた。前から数列目に座る彼は、疲れた様子ながらも勇利の話にゆっくり頷き、それを見ると勇利は焦る呼吸を落ち着けることができた。
「今日はお忙しいところありがとうございました。皆さま今一度、勝生選手に大きな拍手をお願いします」
勇利は観客に手を振ると、お辞儀をして退場した。舞台袖で水とタオルを受け取る。明らかに汗をかいていた。司会者の声はまだステージ上で続いている。
「少し休憩を挟みまして、本日最後のゲストの登場です。2018年男子フィギュアスケート世界選手権直前インタビュー、最後にお迎えするのはヴィクトル・ニキフォロフ選手です!」
勇利はぎょっとして、危うく手から水をこぼすところだった。次がヴィクトルなら、つまり彼は今……
ここにいた。
同じ控室、革張りのカウチにもたれかかるヴィクトル。顔を伏せ、目は閉じられたまま。勇利が彼を最後に見たときと同じ、チャコールのスーツに身を包んでいる。お気に入りのあのスーツ。だけど今、目の前にいるヴィクトルは、かつての彼とはまるで違う。怒りかストレスを抱えているときにだけ見せていた、歯を食いしばるような厳しい面持ち。ヴィクトルはいつも美容院の予約を入れ忘れる。今だって何か月もほったらかしなのだろう。伸びすぎた髪は少しだけ若い頃のヴィクトルを思い出させたが、そこに勇利の知っている面影はなかった。
勇利は硬直したまま、どうすることもできず突っ立っていた。ここを立ち去れば、きっとヴィクトルは目を開ける。動機が激しくなる。勇利の荒い息づかいは、ヴィクトルにも聞こえているかもしれない。
年上の彼が頭を上げた。髪が流れて顔がのぞく。勇利は口を開き、何かを言いかけた。そこに立つ勇利に気付いたヴィクトルに、言うべき言葉が見つかるよう願いながら。
ヴィクトルの瞼が動こうとした、ちょうどそのとき。
「勇利! さっきはよかっ……ああ、ヴィクトル���
「上原」
ヴィクトルがカウチから体を起こす。そっけない声だった。朝起きてすぐのときや、言語を切り替えるときなんかに出していた、彼の声。
「また会えて……うれしいよ、ヴィクトル。久しぶりだね」 そうすけが英語で話しかける。こんな時はみんな英語がデフォルトだ。ヴィクトルのほうに歩み寄り、再会の握手に右手を差し出す。そうすけは無理をしている、ヴィクトルも同じようにしてほしい。勇利はただそう思いながら見ていた。
ヴィクトルはジャケットの袖から覗く自分の右手をちらりと見つめ、それからそうすけのほうに視線を戻した。一瞬、勇利はヴィクトルが握手を拒むのかと思った。が、彼の手はゆっくりと差し出され、そこにはさっきは気付かなかった絆創膏が貼られていた。
「ああ、すまない。怪我をしているとは知らなくて」
「いいんだ」 そう言ってヴィクトルは笑顔でそうすけの手を握ったが、目は笑っていなかった。
「あと三分で出番です」と伝えに来たアシスタントが、訳ありげな様子の三人を不思議そうに見つめていた。
「僕たちはもう行かなくちゃ。ヴィクトル、がんばって」 そうすけが軽く会釈をすると、ヴィクトルもそれに応えた。耳に掛けられていた髪がこぼれる。勇利は何か言おうとしたが、二人の間に流れる重苦しい沈黙を破る言葉が見つからない。しかしヴィクトルはこちらに目もくれず、そのままステージの方を向いたので、勇利はあきらめざるを得なかった。
ドアのところで振り返ると、ヴィクトルが手の絆創膏を外しポケットに入れるところが見えた。何度か手を広げ、そのたびに顔をひきつらせている。大会前はいつだって体に気を遣っていたはずなのに、どうしてあんな傷を負ったのだろう? ヴィクトルのプライバシーを覗いたことがばれないうちに、勇利は控室から立ち去った。
「大丈夫?」 二人が部屋から出ると、そうすけは真っ先に聞いた。
「あ……はい。特に話もしていないし……あの人、こっちを見ようとすらしなかった」
「それでよかったんだよ」 落ち着いた声でそうすけは言った。「でもあの手、何があったんだろう」
ヴィクトルの姿を目の当たりにすることは、思っていたよりきつかった。この短い間で、彼は本当に同じ人かと疑いたくなるほど変わってしまった。髪も、目つきも、あの手も。そして、沈黙。勇利はこの数か月間、ヴィクトルがどこで何をしていたのか知るすべがなかった。そうすけがトレーニングの様子をソーシャルメディアに配信し続けるのとは対照的に、ヴィクトルのアカウントは黙ったままだったのだ。
「勇利?」 そうすけの声で我に返る。
「あ……すみません、今、なんて?」
「ヴィクトルのインタビュー、見たいのかって」
勇利は深く息を吐きながら、質問の答えを考えた。世間の人たちと同じように、ヴィクトルがこの数か月間どこで何をしていたかには単純に興味がある。でもそれ以上に、勇利はヴィクトルの声が聞きたかった。かつて、毎朝目覚めるたびにそこにあったあの顔を、勇利はただ見たかったのだ。
「その……はい」
二人は、ついさっき勇利がステージに上がっていた部屋の後方で席に着いた。バンケットでの一件が拡散されて以来沈黙を貫いてきた��ともあって、会場の空気は異常な期待に満ち、勇利もその重みを肩で感じた。大勢の人たちが折り畳み椅子に押し込まれ、互いに肘をぶつけ合うほどに混み合っている。ステージの前には記者たちが海を成し、全員がペンを握りしめ、レコーダーの録音ボタンを押す時を今かと待ち構えていた。
突如、ステージにヴィクトルが現れ、光がスパークしたかのように空気を切り裂いた。勇利にはそれがまるで、静かだった会場を一瞬にして震わせる、明るく、そしてあたたかくもある電気ショックのように見えた。ペンが紙の上を走り、レコーダーのボタンが一斉に押され、何人かが咳ばらいをする。会場中が前のめりになった。
よく見える位置に座って欲しい、と勇利は思った。今なら、振り返ることを恐れずに彼を見ることができるのだ。
「この場に呼んでいただき光栄です、ありがとう」 なめらかな彼の声が、完璧な明快さを持ってスピーカーから滑り出した。
「この数か月間あなたがどう過ごされていたのか、ここにいる全員が知りたくてたまらないはずです。すっかり見違えましたね、日焼けされました?」
ヴィクトルは控えめに笑って脚を組み直した。「ほとんどトレーニングづくしだったよ。グランプリファイナルの後はスイスに長く居たので、そのせいで日焼けしたのかな」 会場に笑いが起こり、かつてのように冗談を言うヴィクトルの姿に勇利もほっとした。
「スイス、ですか?」 勇利が疑問に思ったこと司会者が代弁する。「クリス・ジャコメッティと休暇を過ごされていた、ということでしょうか?」
「ええ、でも休暇なんてものじゃなくて。ほとんどずっとトレーニングしていたから」
なるほどヴィクトルはスイスにいたのか。しかもクリスと。忘れたかったあの夜の記憶を呼び起こすように、嫉妬の炎が勇利の足もとにくすぶった。ヴィクトルの腕を掴んだクリスの手。立ち去る彼を呼び止める心配そうな声。そうしたすべての、忘れていたはずのこと。
「随分お忙しかったようで……でもコーチ業を終えて、今まで以上にご自身のことに集中する時間が持てたのではないでしょうか」
勇利はヴィクトルの口元が固く結ばれたことに気付いたが、それが苛立ちによるものか、あるいは敵意によるものなのかはわからなかった。「ええ。責任が減れば自然とそうなるでしょう」 トゲのある口調に、周囲が少しざわついた。ヴィクトル・ニキフォロフのそうした態度に、人々は慣れていないのだ。
「それでは、今大会での演技についてお聞きしたいのですが。最近はどういったところからインスピレーションを得ていますか?」 レポーターはすばやく話題を変えた。
ヴィクトルは手元を見つめたあと唇に指を当てた。慎重に言葉を選んでいるらしい。
「いつも通り、そんなに大そうなことはしていないよ。自分の演技で観客のみんなを喜ばせたいってだけ。でも今回のテーマは……再出発。大きな喪失からの再出発、だね」
勇利は思わずびくっと震え、頬は熱を持った。体の内側に罪悪感の渦が起こり、手のひらに汗がにじむ。
「それは感情のコントロールがむずかしそうなテーマですね���そうした演技に臨むとき、競技と感情をどう切り分けているのでしょう?」
「プロのスケーターとしては、私情と競技のバランスをちゃんと取らないといけない。だけどアーティストとしては、作品の美しさや破壊的魅力のために人生を犠牲にすることも必要だ。正直……まだそこは悩み中だから、答えるのにもう少し時間をもらえないかな」
観客はヴィクトルの話にすっかり夢中になっていた。彼が本来こうしたチャーミングな人間であることを、勇利もすっかり忘れていた。
「かつて親密な関係をお持ちだった……勝生勇利選手の新コーチについては何か?」 突然、司会者が試すような質問を投げつけた。あからさまに体をこわばらせるヴィクトル。この件については触れないように、あらかじめ言っておかなかったのだろうか。
「信じられない」そうすけがささやいた。「聞くのが嫌なら出ようか?」
勇利は首を振った。そうすけの質問に答える余裕がない。同じことを、勇利もヴィクトルに聞きたかった。地球の反対側で3ヶ月も過ごす代わりに、二人には交わすべき会話があったのだ。あの夜、ヴィクトルが走り去りさえしなければ、二人が持てたはずの会話が。
怒りと罪の意識が勇利の中でぶつかり合っている。確かに勇利はこの結果に至る原因をつくった。だけど、去ったのはヴィクトルの方だ。彼は理解しようとすらしなかったじゃないか。
ヴィクトルの視線は再び下へと向けられ、勇利は呼吸で波打つその胸元を不安げに見つめた。
「彼にとっては……幸せなことだと思うよ。選手としてのキャリアを積み上げるためにはベストな選択だし、また一緒に戦えるなんて光栄だ」
刺すような痛みとともに、勇利の目から涙がこぼれた。プロとしての仮面を被ったそのいい加減な言葉からは、本心が透けて見えてしまう。そうすけは勇利の膝に手を置くと、ヴィクトルが最後の挨拶をして盛大な拍手とともに姿を消すまで、そのままにしていた。
二人が会場を出ようとすると、周囲から重たい視線が向けられた。勇利が見返すと彼らは視線をそらし、さっと道を空けた。これこそまさに、あのバンケットでの茶番を提案したヴィクトルが、避けようとしていた結末なのだ。
「勇利、大丈夫?」 そうすけが言いにくそうに声をかける。もうずっと、二人はヴィクトルのことやつらい感情について、話をしていなかった。
「平気です」 勇利だって、もうヴィクトルのことには触れたくない。「そうすけさんこそ、もう具合は良くなりました?」 顔色は随分回復していたけれど、目の下はまだやつれている。
「だいぶよくなったよ。とりあえず無事到着したお祝いに、軽く乾杯でもしようって考えていたくらいなんだ」
「え、ああ、もちろん」 勇利はそうすけからの誘いに驚いた。練習中はコーチと選手との関係だけで、それ以外ではほとんど一緒に過ごしたことがなかったからだ。
「どこかにお店のあてが?」
「うん、一件��けなら」
***
そのバーは、柔らかな暖色系の照明に照らされていた。テーブルに置かれたキャンドルと、重厚な木のデコレーション。店の隅では女性シンガーが、英語のバラードをイタリア語で弾き語りしている。
二杯目を飲む勇利は少しとろんとした目をして、頬もほんのり色づいている。向かい側に座るそうすけは、深紅のワイングラスをゆっくり揺らしていた。
「良い雰囲気のお店ですね。前にも来たことがあるんですか?」
そうすけは部屋を一瞥すると、小さく笑って頷いた。
「何度もね。前の恋人と出会ったのがここなんだ」
「えっ」 勇利はもともと他人のプライベートを詮索するタイプの人間ではないが、そうすけは特にそういったことを自分から話さなかったのでなおさらだった。ヴィクトルと2週間過ごして知ったことよりも、そうすけと3か月間過ごして知ったことの方がはるかに少ない。一緒に居るようになってから、勇利はそうすけの人となりを知るヒントを探してきた。好きなコーヒーの飲み方や、じっくり考えてから話すところ、スケート靴を履くとキャラが際立つことなんかを。だけど勇利にとってそうすけは、答えの見つからない謎のような存在だった。
「もうずっと昔のことだけどね。スケートを辞めた直後くらい」 そう話す彼の声に、メランコリックな響きは皆無で、勇利が予想した通りの冷ややかで無頓着な言い方だった。気分をふわふわさせるシャンパンと、コーチが飲んだ3杯のワインに気を強くした勇利は、そうすけの過去につま先を突っ込んでみた。「スケートを辞めた後は……何をしていたんですか?」
そうすけはしばらく間を置いた。「嘘をつくつもりはないし、何事もなかったように人生を送っていた、なんて言うつもりもないよ。トラウマだったからね、身体的にも、精神的にも。ああいった経験をした人間がやりがちな、最低なことをいろいろ経験した。でも、最終的にはちゃんと抜け出したけど」
勇利はそうすけが話すあいだ、だまって静かに聞いていた。「ほとんどはアメリカで過ごしてた。母がアメリカ出身なんだ」 それで彼は緑色の瞳を持っている。「恋をしては終わらせて、若いスケーターのコーチをしたり、旅に出たり、またコーチ業に戻ったりして、そんなこんなで今ここにいる」 残りのワインを飲み干すと、そうすけはウェイターを呼んでほとんど完璧なイタリア語で自分と勇利にお代わりを注文した。
「イタリア語はいつ?」 目の前にある謎の塊をもっと掘り下げてみたくて、勇利は質問を重ねた。
「さっき話した、元恋人と一緒のときにね。最初は大変だったよ、こっちの人たちは英語なんて少ししか話さないし、僕は僕で日本語と英語しかできない。でもよく教えてくれた。結局言葉のコミュニケーションなんて、最初はさほど重要じゃないんだ」 そう言ってグラスを見つめ笑う彼は、まだ深���いしてはいない。
勇利はそうした話にどう反応すればいいのかわからなかった。そうすけがほろ酔い気味に過去を明かすにつれ、勇利の戸惑いは増すばかりだ。今まで勇利はそうすけのことを、過去を閉ざしたストイックな人間だと思っていた。
少し間を置きすぎたことに気付いて、勇利はさらに聞いてみた。「それじゃ、お母さんはアメリカ人? お父さんが日本人なんですか?」
「うん、両親は母がまだ大学生のときに出会ったんだ。日本の文化が大好きで、東京に留学して父と知り合った。でも今は離婚して別々に暮らしているから、クリスマスがちょっと面倒」 そう言って彼は口調を緩ませた。勇利が初めて見るそうすけがそこにいた。
「勇利はイタリアに来たことはあるの?」聞き返すそうすけの口元には、まだ笑みが残っている。
「ねえ勇利。春に長谷津で、小さな式を挙げようよ」
「一度。ローマだけですけど、去年の初めごろに。近くで大会があったので、終わったら寄ってみようってことになって」 そこまで言うと、勇利は言葉に詰まった。もうすぐ日本に、桜の季節がやって来るのだ。
そうすけは、まるでフラッシュバックする勇利の記憶を見透かしたかのように、緩んでいた表情をもとに戻した。そしてちょうど数か月前のあの時みたいに、テーブルの上に手を伸ばすと、勇利の手を握った。親指が勇利の関節をなぞる。その確かな触れ方に、勇利はどきどきと、そして戸惑った。見上げた先にあるそうすけの目は、溶けたハチミツのようにあたたかい。
そうすけの声が、ゆっくりと深く響く。「勇利、彼のことを話したいなら、話せばいいんだよ。こんな状況でもプロらしく振る舞おうなんて、間違ってた。勇利とは友人同士のような関係でありたいし、勇利が幸せであることが何より大事なんだ。だから、もし話したくなったら、僕がいつでも聞く」
「そうすけさん……?」 勇利は急に近づいた二人の距離に驚いていた。手を離すべきだと思いながらも、握りしめるそうすけの力は強く、勇利の頭はアルコールでぼんやりしている。
と、二人の真横で突然咳払いが起こった。勇利がさっと体を引き驚いて視線を上げると、そこには彼の友人たちでもある、世界的フィギュアスケーターの一群がいたのだ。ピチット、クリス、ユーリ、オタベック、JJ,エミル、ミケーレ、それにスンギルまでいる。
そして集団から2メートルほど離れた後ろには、ヴィクトルの姿。ただ勇利を、じっと見つめていた。
※作者の了承を得て翻訳・掲載しています。
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【チューニング時代を築いた名車たち -1980年代-】ターボエンジン黎明期! 250km/hオーバーが現実に【スカイラインRSターボ × ソアラ】
ターボパワー炸裂! パワー系チューニングの台頭 SKYLINE RS TURBO【DR30】 × SOARER【MZ20】 70年代はL型エンジンを始めとして同じくの日産のA型、トヨタの18R-Gや2TG型など、NAメカチューン全盛期の時代だった。 メカチューンはレスポンスこそ鋭かったが、パワー的にはNAということもあって、トップチューナーが丹精込めてチューニングをしても小排気量車ならば150ps前後、L型の3.1L仕様でも300psに達するかどうか。つまりはリッターあたり100ps付近がチューニングにおけるハイエンドパワーであった。 そして80年代に入ると、ターボエンジンを搭載したクルマが続々と発売されることとなる。2LターボのFJ20を積むDR30スカイライン、後期型となる“鉄仮面”はノーマルで205ps。3Lターボの7Mを搭載するMZ20ソアラでは240psと、軒並み200psオーバーとなるベースマシンの登場だ。 NAエンジンとは比較にならないほど容易に、そして大幅なパワーアップできるということで、チューニング業界にも“ターボチューン旋風”が巻き起こる。 メカチューンでは当時「1psパワーアップするのに1万円」と例えられていた指標も、ターボエンジンとなると「1ps5000円」や「1ps3000円」などといったイメージで、パワーアップに対しての費用対効果もすこぶる高かった。当然パーツメーカーやショップだけでなく、ユーザーまでもがその魅力に引き込まれていった。 ターボチューン黎明期には様々なスクラップ&ビルドが繰り返され、その信頼性を徐々に高めていくこととなる。そうして得た300~500psという途方もないエンジンパワーは、ユーザーカーであっても最高速280km/hオーバー、ゼロヨン11秒台などといった、一世代前のレーシングカーを凌駕するほどのポテンシャルを身に付けた。 当時の血気盛んな若者は、愛車をこぞってチューニングし、街に繰り出せばシグナルグランプリ。高速に行けば超高速バトルといったシチュエーションで毎週のように大パワーに酔いしれた。 現在と比べれば、当時のターボチューンは可変バルタイもなく、高性能な電子デバイスが少なかったことや、点火系&エンジン制御系も万全ではなかったことから、ハイパワー化を目指すと「ドッカンターボ」となってしまう傾向にあったが、当時はそれで楽しかった。 あれから30年。現代の技術&パーツを盛り込んだ80’sマシン2台の勇姿をとくとご覧いただきたい。 チューニング時代を築いた名車たち -1980年代- MODEL YEAR 1981〜1990 SKYLINE RS TURBO【DR30】 Tuned by エスコート 最新モノのパーツを使いこなして上質な走りを手に入れる 当時からゼロヨンや最高速仕様のベース車として人気があったDR30スカイライン、通称“鉄仮面”。そんな素材をエスコートは「乗りやすくて速い」というマシンコンセプトでチューニング。 まず点火系だが、ダイレクトイグニッション化することで、ギクシャクしてしまうA/Fが落ち着き、4速や5速で街中をゆっくり走っていてもスムーズな挙動になるという。あわせてF-CON Vプロ制御や550ccの12ホールメインインジェクターなどをチョイスすることで、全域でのレスポンスアップだけでなくアイドリング時の不安定さも解消した。 ミッションには1、2速がダブルコーンシンクロとなるR32用を流用し、街乗りでのイージーさも向上。心臓部のFJ20エンジンはGT-SSタービンを使った350ps仕様だが、ピー��パワーは狙わずあえてノーマルカムで回すことで、全域トルクフルに仕上げたという大人の仕様に仕上がっている。 搭載エンジンが4気筒ということでGT-Rという称号は与えられなかったがDR30だが、レースシーンではグループ5で大活躍。西部警察、大門軍団のエースカーに採用されたこともあって、その人気は国民的なものだった。 HKSのGT-SSタービンを使い、ブースト圧1.2キロ時に350psを発生するFJ20エンジン。80年代当時にはTO4Eタービンを使った400ps仕様というクルマも多く見たが、このクルマはパワーではなく、乗りやすさを重視した大人の仕様として製作されている。 このエンジンのポイントとも言える点火系の強化。ダイレクトイグニッション化することで、点火時のスパークを強力なものにしている。混合気へ確実な火炎核を提供することで、失火によるギクシャク感を完全に排除。スムーズな走りへとグレードアップさせている。コイルをマウントするのはエスコートオリジナルの「ダイレクトコイルプレート」だ。 無論、30年前の電子制御とは比べ物にならないほどのスペックとなったコンピューター。HKSのF-CON Vプロ制御によって、きめ細やかなセッティングが取られる。パワー&レスポンスはもちろん、シームレスでシルキーな加速感を得られるようになった。 当時の雰囲気を偲ばせるスクエアデザインのインパネ周り。追加メーターやEVCもシンプルに装着。これらアイテムをゴチャゴチャさせないで綺麗にレイアウトするのが、現在のインテリアの主流となっている。 乗車定員の快適性を保持しつつ、ボディ剛性を高める補強バーを装着。パワーアップだけでなく、剛性や制動系の強化なども含めた、トータルバランスを高めることで現行車と比べても遜色のない使い勝手となる。 MODEL YEAR 1986〜1991 SOARER【MZ20】 Tuned by マテリアルオートファクトリー チューン次第で300km/h超えも可能な高級グランドツーリング! ソアラと言えば、当時は国産高級スポーツカーの代名詞で、洗練されたボディデザインとラグジュアリーなインテリアで誰もが憧れたクルマだ。 この取材車両は当時にタイムスリップしたかのようなコンディションで、内装のバックスキンなども完璧な状態で維持されていた。 綺麗なだけではなく、フルチューンの7Mエンジンが搭載されているのもトピック。以前はT78タービンを使い700psもの大パワーを出せる仕様だったが、7Mエンジンを長く使っていくことを考えると600ps超えではエンジン本体へのリスクが大きい。 そこでタービンをTD05ツインに変更し、ピークパワーを600psに設定。ふだんはブースト圧1.3キロで500psまで抑えて使うことによって、エンジンへの負担を低減している。それでもピークパワーを落とした分は、しっかりとレスポンス側に振ることで、加速バトルでは不足の無い戦闘力を確保している。 ドアやフ��ンダーなどの建付け���見ても、チリひとつ狂っていないシャンとした出で立ちが美しいミントコンディションのMZ20ソアラ。見た目には低く構えた車高とBBS LMの19インチホイール、メイン100φのオリジナルマフラーに変更されている程度だが、中身はモンスターだ。 ツインターボから押し込まれる圧縮空気は、ワンオフのサージタンクを介して6連スロットルへと導かれる。各種パイピング類も強固にフィッティングされ、常用500psでもトラブルフリーの使い勝手を実現している。 以前はT78のシングルターボで仕様あったが、600~700psまで及ぶ出力は7Mエンジンにとってリスクの高まる領域。そこでTD05ツインに変更し、500~600psというパワーレンジにリメイクした。パワーと引き換えに得られた鋭いレスポンスがあるためストレスは感じられない。 バー式タコメーターとデジタルスピードメーターが当時のトヨタ車の象徴。バックスキンで覆われたインパネ周りや毛足の長いカーペット類による吸音もあって、走行中の室内音も静寂なものだ。 足元を飾るゴールドのBBS LMはF8J-19、R9J-19。いつでも全開で走れるようにタイヤは前後ネオバ(F225/30-19、R255/30-19)をチョイス。 MZ20ソアラをよく知っている人でも、ジックリ見ないとわからない5mmだけ叩き出したフェンダー。なぜ5mmかと言うと、純正のフェンダーモール装着へのこだわりを貫くため。このような細かな積み重ねが、目利きの走り屋をも唸らせるオーラとなるのだ。 関連記事 ●【チューニング時代を築いた名車たち -1960年代-】 ●【チューニング時代を築いた名車たち -1970年代-】 (web option編集部) あわせて読みたい * 【チューニング時代を築いた名車たち -1970年代-】市販車レースの興隆と共に改造が激化、メカチューン全盛期の到来【フェアレディZ × サバンナ】 * 【チューニング時代を築いた名車たち -1960年代-】モータリゼーションの発達と共に走り屋によるチューニングが幕を開ける【スカイラインS54B × ポルシェカレラ904GTS】 * 【ずんだ RX-7】エッセ純正リーフグリーンとエアロミックスで独自路線を突き進むFD3S * 【RE雨宮スーパーシャンテ13B NA】時空を超えて蘇った伝説のチューニングコンパクト! * 【SCOOT 26B(RE) × S30】L型エンジンを撤去して4ローターNAユニットを搭載したフェアレディZに試乗! http://dlvr.it/Qrzc9z
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【8月より大阪で、あなたの美がスパークするアカデミーを開講しちゃいます♡】 PEACE NAMBA店初来店とは思えないリラックススタイルでの写真ですが、私の師匠である、モテ髪師大悟先生にとある報告に行って来ました! 実は美人髪コンサルタントとしてデビューしてまもなく、先輩コンサルタントである、泉有華子さんからお仕事のオファーをいただきました。 私にとっても新たなチャレンジでもあり、信頼してタッグを組みたいと言ってくれたことが凄く嬉しくて♡ そんな報告に行って参りました〜 私もオネェだとカミングアウトできて、自己肯定の塊と思ってましたが、実は違った… それを美人髪コンサルタントとなって、毎日髪のケアをしっかりしたり、髪を巻いたりすることで、よりまろやかに、よりしなやかになっていきました。 だからこそ、あなたの美をスパークさせたい! そんな想いで、こっそり密室で限定数の方にお伝えするアカデミー。 ワクワクが止まりません〜 8月から大阪に定期的に通い出すので、週末の予約が取りづらくなるかもしれないので、皆様、そこを把握してから予約は待ってますわよ♡ #キッチュ #北九州 #オネェ #kitschb #ファッション #お買い物同行 #パーソナルカラー診断 #美容 #エステ #メイク #メイクレッスン #メンタルケア #数秘術カラーセラピー #SS健康法 #美人髪コンサル#巻き髪 #アイロン #アイロンテクニック#モテ髪師大悟 #モテ髪師大悟式美人髪コンサル #復元ドライヤー #コーディネート #お洒落さんと繋がりたい #泉有華子 (PEACE NAMBA)
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【blog】今一度、小室哲哉について考える
ま、本当に小室哲哉が引退するかはともかく、例のニュースをいくつか見ていくうちに、どうも書きたいことが出てきまして。あ、文春ではなく小室哲哉のことをね。 1990年代、いわゆる小室サウンド全盛期においてね、実際ちょっとでも音楽を齧っている、もしくは自称音楽にうるさい連中から小室哲哉の評価はけして高いとは言えなかったと思います。 ではアタシは、というと、アタシなんか、もうマジで音楽をやってたなんておこがましいレベルですが、積極的に聴くことはなかったものの認めてはいた。認めてるなんていうとえらく上から目線になっちゃうけど、少なくともビーイング系よりははるかにちゃんと「音」を作っているな、とは思っていたんです。 しかし、評判が悪い理由も何となくはわかってた。つまりは「あまりにも売れすぎたが故」なんですよ結局。 というのも、人間ってやっぱ「やっかみ」みたいなものって消せないですから。自分たちだって頑張ってクオリティの高いものを作ってるつもりなのに、たいして小難しいことをしてない小室サウンドがあれだけ売れるってのが許せなかったんでしょう。 小難しいことをしてない→次から次へ似たような曲をリリース=工場で作られるような大量生産システムで作られたもの=そんなことをするのは「音楽家」ではなく「商売人」なのだ、みたいな。 「そもそもコムロは作ってないだろ」とか「パクリでいいのなら、そりゃいくらでも作れるわな」と平気で言う口さがない人までいたくらいだし。 だけれどもアタシは、どうもそうした意見に違和感があった。 もちろん、あれだけヒット曲を量産していたんだからシステムの構築はしていたと思うし、クレジットがどうなってようが端から端まで小室哲哉が作っていたと���思っていない。 しかし、どうも、小室哲哉イコール商売人、というのは、何となく違うんじゃないかと思っていたんです。これって理由はないけど、売れるのはコムロの感覚と世間のニーズがスパークしただけで、どうしても金儲けのためだけに音楽をやってるようには見えなかったっつーか。 これが秋元康なら話が早い。秋元康のやることなすこと「そろばんずく」、もといすべて商売人の計算としてやってるとは言わないけど、良い言い方をすれば、クリエイターと商売人との能力のバランスが取れているな、と思う。つまりどちらもそれなりの能力があるわけで、仮にクリエイターとして足りなかったとしたても、そこは商売人の能力で補ってやる、みたいな。 ま、もっと下衆な言い方をするなら、秋元康はゼニの計算が出来る人ってことになる。ゼニの計算が出来るから一気に凋落することなく、そして仕事内容がクリエイティブなことかどうか関係なく、ゼニを稼げる仕事を続けることが出来たんだと思うんですね。 それはけして悪いことではない。むしろ羨ましいとさえ思ってしまいます。 ところがどうも小室哲哉にはそんな感じが見えなかった。たしかに楽曲を量産するシステムの構築は出来たのかもしれないし、売れるものを作ることが使命でありアイデンティティだと自覚していたと思うけど、ゼニを稼ぐシステムの構築は出来ない人に思えた。 そう感じるようになったのは、例の詐欺事件のはるか前、2000年に入ったくらいの頃です。 二十一世紀に入る寸前くらいから、徐々に小室サウンドは飽きられだしていた。しかしそのことにたいして小室哲哉が何も抵抗出来ないように感じたんです。 本当の商売人ならゼニが稼げている間に「次の手」を用意しておくものです。もちろん小室哲哉も海外への展開などを考えていたのでしょうが、すごいギャンブル的なやり方に見えたんですね、アタシには。 ま、それも結果論と言われればそれまでなんだけど、実際に小室哲哉がとった「次の手」もゼニのためではなく、むしろもうゼニ稼ぎはいい、それよりも世界的な、もしくは恒久的な名声が欲しい、みたいに見えたっつーか。たぶんそれだって、己の才能が枯渇していってるのがわかってたからだと思うし。 小室哲哉の凋落の原因は、才能の枯渇とゼニの計算が出来ない人だった、ですべての話が終わってしまう。しかし逆に言うなら、ゼニ勘定優先だと信じていた反小室サウンドの人の見立ては間違ってたってことになる。 さすがに当時はわからなかったけど、今思うに小室哲哉って人は、商売っ気の薄い、かなり純度の高いアーティストだったと思う。プロデューサーとしてあれだけの数の楽曲をあれだけの枚数を売ったのだから商才がありそうに思えるし、一気に凋落ってところだけを取り出せば山師に見えなくもない。 売れるイコール優れたミュージシャンでないし、アーティストとしての才能とセールスはまるで比例しないのは当たり前の話です。だから小室哲哉が突出した才能があったかというと、所詮素人のアタシなんかにはわからないです。 だけれども、仮に突出した才能がなくても、突出した才能がな��のに売れたのは商売上手だったからとも思わない。確実なのは小室哲哉のセンスが恐ろしく1990年代という時代にマッチしていたことに加えて、良い時代に才能が開放状態になっただけだと思う。 篠山紀信が山口百恵を「時代と寝た女」と評したのは有名ですが、小室哲哉もまさしく「時代と寝た」男だったと思う。ただ山口百恵と違うのは、山口百恵は己が「寝た」時代が終わる前にあっさり芸能界から身を引き、小室哲哉は引き際を見失ったまま20年近く活動を続けてしまったことでしょう。(ま、借金問題で辞めるに辞められなかったってことなんだろうけど) もし、そんな仮定はおかしいのを承知で書けば、2000年の九州・沖縄サミットのイメージソングになった安室奈美恵の「NEVER END」あたりでプロデュース業を辞めて半引退状態に入っていれば、と思うけど、そんな計算が出来る人ならあんな事件も起こしてないわけでね。
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Les Liaisons ambiguës「曖昧な関係」展
レンゾ・ピアノの繊細で大胆な建築に迎えられる本展。結果的には、三者のバリエーションは豊かであったのかもしれない。しかし、エルメスの店内のお高い雰囲気もあって、どうにも馴染めなかった。
エルメス財団は世代や国籍、表現方法の異なる3人のアーティストの作品を通して、作品と身体の間に生まれる関係性について考察するグループ展を開催します。 スイスのジュエリー作家ベルンハルト・ショービンガーは、身につけることを前提とするジュエリー制作を通じて、身体の物質性、その強さと弱さと欲望を忠実に描き出します。割れたガラスなどのファウンド・オブジェを使ったジュエリーは、自由で大胆不敵なフォルムで我々を誘惑します。愛や権力に結び付けられ、欲望の対象であり続けた装飾品が、身体の不在によって初めてその有用性を謳歌するように、そこには主従の曖昧な反転がみられます。
フランス人の画家、アンヌ・ロール・サクリストは、絵画表現の領域を問い続けています。ルネッサンスの頃、遠近法というテクノロジーを手に入れた絵画は、作者の視点を観客側へと移行させました。その後、カメラの発明や映像表現を経ても、私たちは未だ物理的に画面の中に入ることはできません。カンヴァスの消失点に導かれ佇む両義的で曖昧な場所にこそ、私たちは魅了されつづけているのでしょうか。本展でサクリストは、15世紀にパオロ・ウッチェロが描いた『サン・ロマーノの戦い』に見られる詩的で幾何学的な抽象性を京都の石庭に重ね合わせ、室内と外や部分と全体の移ろいやすく相対的な関係を浮かび上がらせます。
ベルリン在住のアーティスト、ナイル・ケティングは光波や音波といった不可視のマテリアルをベースに、シグナルや香りといった現象を新しい物質性の感知やコミュニケーションへと��き換えてゆく試みを行います。イタリアの思想家マリオ・ペルニオーラの「エニグマ」を引用しながら、「モノ」化��てゆく人間を貫く態度としてパンクカルチャーの「未来のなさ」や「何も感じないこと」に共鳴します。極めて私的なインスタレーションでは、近未来的な身体と物性、そして新たな公共性の知覚を提案します。
作品制作において結ばれる無数の素材とアーティストとの身体的関係は、私的な対話や束縛や支配など、我々の日常生活におけるやり取りとも共通しています。しかし、造形表現において、物質性(マテリアリティ)は作家によって選ばれ、物性(フィジカリティ)として再発見され、制作の過程で相互に刺激しあい、やがて自律し拡張してゆく越境的な関係を紡いでいます。作品と身体の対峙を、独自に生成させる3人のアーティストの表現を通じて、オブジェと身体と空間の曖昧な共犯関係をお楽しみ下さい。
ーー展覧会HPより
◆ アンヌ・ロール・サクリスト / Anne Laure Sacriste 1970年、フランス・パリ生まれ。米国及びフランスでデザインや美術を修めたのち、1996年にパリ国立高等美術学校を卒業。現在パリ在住。新古典主義などの歴史的な絵画を参照しつつ、現代の「絵画」の在り方を模索している。1999年に山梨県清春にて滞在制作、ニュイ・ブランシュKYOTO2015に参加。主な個展に「Tableaux: Nature Morte, Still Life」(ギャラリー・フリオ・ゴンザレス、アルクイユ、2016年)、「Rideau(x)」(サンマルセル・ド・フェリーヌ城、2014年)、「Reverse Island」(サンテティエンヌ近代美術館、2011年)など。
サクリスト、サンロマーノを引き合いに出すだけあって、消失点を物理的に抹消する、逆説的な試みがなされている。しかし、これは明らかなイリュージョンだ。鏡絵画に飲み込まれることと同様であるのでは?
◆ ベルンハルト・ショービンガー / Bernhard Schobinger 1946年、スイス・チューリヒ生まれ。12歳のときにジュエリーアーティストになることを決意。1963年チューリヒ芸術大学を卒業後、金細工職人としての修業を経て、アーティストとしての活動を始める。現在、チューリヒ郊外のリヒタースヴィール在住。技術を誇る工芸としてのジュエリーではなく、記憶やストーリーを持ち、身体的感覚を喚起する、所有者との関係性をつくるジュエリーを制作している。2014〜2015年、個展「Bernhard Schobinger: the Rings of Saturn」が英国、オランダを巡回。日本文化にも造詣が深い。
ショービンガーの装飾性。様々な歴史の残骸をジュエリーとして、身に纏うものとして、身体化されたモニュメントへ変身させる。一方で、その、ジュエリーのために集められた様々なゴミは、明らかなポエットを企図する余白だ。キオグリフィスの作品に訪れる、心地よい断絶ではない、より人工的な断絶、つまりそれは脚本のように感じた。
ショービンガーの、ポエットを語ろうとしすぎているジュエリー群。叔父が昔口にしていた、作者の中で作品が構築されていないという言葉が、頭の中で反芻していた。作品に潜在する何がしかの確信を感じないことが、これほどわかりやすく違和感となって現れるとは思わなかった。マームやオリザはすなわちこういった演出をしていたはずだが、それは、私たちが流れ込むための余白だった。なぜ彼女の作品の戯曲性には感動できないのか。
◆ ナイル・ケティング / Nile Koetting 1989年、神奈川県生まれ。2012年多摩美術大学を卒業し、現在、ドイツ・ベルリン在住。「無機的なもの」と「身体」を水平線上に見る視点から、映像、インスタレーション、サウンドアート、パフォーマンスなどを通して、世界と人間の関係性を問い直すアーティスト。近年の主な展覧会に「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」(森美術館、東京、2016年)、「ホイッスラー」(山本現代、東京、2016年)、「GLOBALE: New Sensorium」(ZKM、カールスルーエ、2016年)。パフォーマーとしてコンスタンツァ・マクラス|ドーキーパークなどのシアター、ダンスカンパニーの作品にも携わる。
ナイルケティング、彼の作品をこれで三度(tokyo 見えない都市を見せる、六本木クロッシング)見ているというから驚きだ。しかし、やはり相変わらず印象に残らない。様々なテクノロジーのガジェットが、空間の中で無作為に動作する。その関係の断章性を、曖昧であるとトートロジカルに自己肯定する展覧会タイトルは如何なものか。ケティングの作品は私には難解だ。それは、彼の作品が緻密な回路によって構成されているからだろう。彼の作品は、いわば、電子的な製図に基づいており、ここのマテリアルはその地図が動的に反映されている。だからこそ、ダウン��ードというキータームを掲げるのでは。観客は一種のバグであり、その回路に乱れを起こすものであるはずだ。しかし、その場にはプロテクトウォールはなく、観客は新たな回路を拓く役割を担う。六本木クロッシングでの彼の異質な作品を思い起こすと、やはり電気的な信号によるコミュニケーションの在り方を模索している作家なのかもしれない。かの作品では人物と鳥が、互いの発するスパークを受診するというような内容の映像と、電気的な発明の数々の資料が展示されたインスタレーションだったが、我々の新たな言語として電気信号を扱っていたのかもしれない。であれば、本作における物理的なガジェットの出会い以上に、それぞれの発する音、風、光、動きといった空間を満たす起伏が、拡張された発話の一形態だったのだろうか。ナイルの作品は、私に様々な思考を促す。しかし、そのアウトプットで出てくる言葉は、個人的な印象では作品から離れすぎてしまっており、"作品が見えない"という感覚が強い。上妻さんが彼の作品を推すのは、その観客の能動性が高まる、創造性の啓発の部分にあるのだろうか。ナイルとキオグリフィスの決定的な違いとは何なのだろうか…?作品の場が、キオグリフィスやショービンガーの場合は、対象化され、作品の内に落とし込まれているが、ナイルの場合は、観客の側に落とし込まれている?観客から見ればダウンロードであり、作者から見ればインストールである。一方で、あなたの物語というほど、観客の主観にも委ねられていない。ブロックチェーン的な、主体からの離散という、リアリティの反映なのかもしれない。今一度、鑑賞時の実感に戻ると、彼の作品は、観て聴いて面白いものではない。考えることが面白いのだ。私はなんだかんだ思考性以上に、作品の単純な視覚的な快を求めている。
ナイル作品は、かなり言語による対話を拡張している。場にインストール/ダウンロードされている、回路を観客は無意識のうちにインストール/ダウンロードされてゆく。しかし、それは指示書や台本などとは異なる。アフォーダンスに近いものかもしれない。モノと私のコミュニケーション、現前する他者と私のフィードバックループ。実は、コミュニケーションのフォルムを最もラディカルに差し出す作品なのかもしれない。
ーー関連Link
モノと身体、世界のはざまで ナイル・ケティング インタビュー
Nile Koetting “Sustainable Hours” | MASSAGE
モノとディスプレイとの重なり 第8回 | MASSAGE
10+1 web site|「オブジェクト」はわれわれが思う以上に面白い
10+1 web site|特集 建築とオブジェクト|201612
10+1 web site|特集:2017年の建築・都市を読むためのキーワード|201701
ものから見る世界 ― 博物��から考える
中沢新一『はじまりのレーニン』
落合陽一と考える、インターネットが実現する未来 | PreBell
客観することによる関係性
無数の異なる身体のためのブリコラージュ
東京アートミーティングⅥ "TOKYO"-見えない都市を見せる
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六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声 | 森美術館
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暖かくなったり蒸し蒸ししたり寒くなったり変化しすぎ!! 夏の終わり?? 秋の始まり?? 移り変わり?? 体調に気をつけましょ👐🏾 僕は好調っ👍🏾 今日は大人気のボブ! 思いきって切る!!のもたまには👌🏾 > >> >>> LINE ID→「ta.ara」 LINEからは《アラタカトシ指名予約》&《出張美容師》のみ受け付けております! お気軽に問い合わせください(^^) #ヘアスタイル #ヘアカラー #ヘアカタログ #ヘアセット #ヘアアレンジ #苫小牧 #tomakomai #北海道 #札幌 #美容師 #美容室 #美容室スパーク #ファインダー越しの私の世界 #endofsummer #summer #ボブ #photography #hair #アッシュ #アッシュベージュ #夏休み #グレージュ #ネイル #グラデーションカラー #外国人風カラー #パーマ #秋ヘア #ハイライト #大人かわいい #切りっぱなしボブ (美容室 SPARK 苫小牧)
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続けてきたアメブロもラスト。 ブログをこっちにも載せときます。 ただ、ただ14年美容室に勤めた美容師が、ただ辞めるだけの話 であって、別に大したことではなくて、、 誰かに褒めてもらおう、誰かに慰めてもらおう、誰かに励ましてもらおう、そんな話ではなくて、、、 ただ、ただ唯一できなかったことをしただけと言ったほうが自分にはしっくりくる。 退社する。職場を去る。辞める。 今まで14年間 美容室SPARKにお世話になりました。 振り返ると、、、 自分的には、『色々あったな〜』で済まされる年月、月日ではないです。 美容の技術、人に対しての振る舞い、羽目を外す度胸、限界まで引っ張る努力、時間を割いて人を綺麗にする。 直接教えられたことはあまりない方なのかな〜とも思いますが、 『見て学ぶ』『見て盗む』『自分の技術の確立=自立』 そういったことに関してはきっと群を抜いて鍛えられたと思っています。 オーナー兼店長の 中川さん。 長〜く一緒に働けた あきぽん。 僕はこの2人に大分鍛えられましたね。 今思うと、自分がアシスタントの時が1番忙しかったです。10年以上前、まだ入社したての僕がアシスタントだったあの時が最強でした。 あの2年間を越えられるようになることもひとつの目標だったのですが、達成できた気がしないです。 それくらいに眩しかったし憧れた時期だしとにかくカッコよかった。 小西さん、まーしゃさん、らむちゃん、さばちゃん、りえちゃん (他にいたらごめん) あらゆるスタッフと関わり、一人でも欠けていたら確実に今の自分にはなれていないはずです。 本当にありがとうございました。 良いことも悪いことも、一時的に興奮したり一時的に憤慨したり感情は様々ですが、全ては教訓になるし、色々な所から学んだりできる。 それを知れた14年は自分にとってとても価値のある年月です。 先ほども言ったとおり、そこに関わる全ての人が自分を作ってくれているし、またそこから周りに影響を与えたりもするし、全て糧になるんですね。 人生ってすごいね。 考え方ひとつでどんなふうにもなれそう。 すごいね〜。 今後はこれまでの学びを活かし、さらに昇華させ、人として、美容師として、自分が納得いくまで、そしてお客様に満足いただけるように、そして家族、友達、関わる全ての害のない人達と幸せになれるように切磋琢磨ックスしていきまックス松浦。え?。。。 美容室SPARKに関わる全ての方々 14年本当にありがとうございました。 そしてそして、、、 このブログをもって、アメブロは辞めてお引越しします!!  【hair salon✂︎MY STANDARD】苫小牧市本町1-4-11 【マイスタ☺︎】 あなたの"スタンダード"に...苫小牧市本町のカラーが得意な美容室《マイスタ》こと≪MY STANDARD≫ホームページ兼オーナー荒 貴俊の美容師なのかもしれないブログ hair salon MY STANDARD ↑こちらが新しいお引越し先のブログ兼ホームページ 2019.4/15㈪ 10:00 【hair salon MY STANDARD】を始めます。 そうです、美容室やります。独立ってやつですね。 今後とも何卒よろしくお願いします。 詳しくはホームページをご覧下さい。  【hair salon✂︎MY STANDARD】苫小牧市本町1-4-11 【マイスタ☺︎】 あなたの"スタンダード"に...苫小牧市本町のカラーが得意な美容室《マイスタ》こと≪MY STANDARD≫ホームページ兼オーナー荒 貴俊の美容師なのかもしれないブログ hair salon MY STANDARD ご予約は相変わらず、LINEからお受けします!! どしどしお待ちしておりますw 4/1 8:00 より、 オープン日 4/15以降 のご予約受付開始致します。 先着順になりますので何卒よろしくお願いします。 たくさん来てくれるといいな〜‹‹(´ω` )/›› 荒 貴俊は美容師なのかもしれない amebloVer. はこれをもちまして、終わりです〜。 1度でも読んでくれたあなた!!! ありがとうございます!!! 変なブログばっかでごめんなさいw 引き続き、変わらずやってますんで、そっちもよろしくお願いします‹‹(´ω` )/›› ではでは、、、 なんて言いながら、最後はやっぱりウルっとしてしまいました。 お花頂いたり、お酒頂いたりと。 ありがたいですね。てへへ。 頑張ろう。 (´・∀・`) #美容室スパーク #美容室SPARK (Tomakomai, Hokkaido) https://www.instagram.com/p/BvrHGfuAeMP/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=qj6w9pucvl4r
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最近はこういうミルキーな感じーいぇーいぴーすぴーす🖖🖖🖖 > >> >>> LINE ID→「ta.ara」 LINEからは《アラタカトシ指名予約》&《出張美容師》のみ受け付けております! お気軽に問い合わせください(^^) #ヘアスタイル #ヘアカラー #ヘアカタログ #ヘアセット #ヘアアレンジ #苫小牧 #tomakomai #北海道 #札幌 #美容師 #美容室 #美容室スパーク #ホワイトカラー #ファインダー越しの私の世界 #instapic #followme #yolo #photography #hair #アッシュ #アッシュベージュ #ベージュ #グレージュ #ネイル #グラデーションカラー #外国人風カラー #パーマ #ロングヘア #ミルクベージュ #ダブルカラー (美容室 SPARK 苫小牧)
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暖かくなってきたからショート×パーマ がgood👍👍👍 > >> >>> LINE ID→「ta.ara」 LINEからアラタカトシ指名予約のみ受け付けております! お気軽に問い合わせください(^^) #ヘアスタイル #ヘアカラー #ヘアカタログ #ヘアセット #ヘアアレンジ #苫小牧 #tomakomai #北海道 #札幌 #美容師 #美容室 #美容室スパーク #カメラ男子 #ファインダー越しの私の世界 #instapic #followme #yolo #photography #hair #アッシュ #アッシュベージュ #ベージュ #グレージュ #ネイル #グラデーションカラー #外国人風カラー #パーマ #ショート #アニメ #かわいい (美容室 SPARK 苫小牧)
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そ!う!い!え!ば! 《5月は縮毛矯正キャンペーン🙌》です。 お安くできますので、必要な方はぜひ。 『自然に、柔らかく、まっすぐに。』 > >> >>> LINE ID→「ta.ara」 LINEからアラタカトシ指名予約のみ受け付けております! お気軽に問い合わせください(^^) #ヘアスタイル #ヘアカラー #ヘアカタログ #ヘアセット #ヘアアレンジ #苫小牧 #tomakomai #北海道 #札幌 #美容師 #美容室 #美容室スパーク #カメラ男子 #ファインダー越しの私の世界 #instapic #followme #yolo #photography #hair #アッシュ #アッシュベージュ #ベージュ #ストレート #縮毛矯正 #グラデーションカラー #外国人風カラー #パーマ #ロングヘア #アニメ #キャンペーン (美容室 SPARK 苫小牧)
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