#縞板曲げ
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whileiamdying · 7 years ago
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朝の風
 そのあたりには、明治時代から赤煉瓦の高塀がとりまわされていて、独特な東京の町の一隅の空気をかたちづくっていた。
 本郷というと、お七が火をつけた寺などもあるのだが全体の感じは明るい。それが巣鴨となると、つい隣りだのに、からりとした感じは何となく町に薄暗い隈の澱んだところのある気分にかわって、実際家並の灯かげも一層地べたに近いものとなった。兵営ともちがう赤煉瓦のそんな高塀は、折々見かける柿色木綿の筒袖股引の男たちの地下足袋と一緒に、ごたごたした縞や模様ものを着て暮している老若男女の生活に、一種の感じのある存在で、馴れながら馴れきれないその間の空気が、独特の雰囲気を醸してその町すじに漂っていた。
 大震災の後は市中の様子が大���変った。この町のあたりも、新市内に編入されると同時に市区改正がはじまって、池袋から飛鳥山をめぐって日暮里の方へ開通するアスファルト道路やそれと交叉して大塚と板橋間を縦断する十二間道路がついたりして、面目が一新した。
 数日前まではそっちの片側がごったかえされて通行止だったのが、きょうはここが通れなくなっているという塩梅の十幾月かがつづいて、ある年の春の日ざしが、やっと通行のきくようになった真新しいコンクリの歩道を一筋白く光らせた時、人々は胸の奥から息をつくようなおどろきの眼でその歩道から目前にぱーっとうちひらいた広い大きい原っぱを眺めた。昔からあった赤煉瓦の高塀は、跡かたもなくなっていた。トゲのついたざっとした針金の垣根で歩道との間を仕切られて、その垣根から歩道へ雑草の葉っぱを町はずれの景色らしくはみ出させながら、草原は広々と遠くまでひろがっている。いくらかむこう下りの地勢で、遠くの草の間に茶畑のあとらしいものが見えた。ちょいとした畑のようなものも見える。附近の子供らはその空地をすてておく筈がなく、遊ぶ声々はきこえているが姿はよく見えない。原っぱはそんなに広闊である。さえぎるものなく青空も春光を湛えてその上に輝いている。
 この原っぱの眺めの趣はしかしながら単調でなくて、暫く佇んでみているうちにこの原の風景としての面白さには、草原の右手よりの彼方に聳えている一つの小さい古風な、赤煉瓦の塔の緑青色の円屋根が重要なアクセントをなしているのがわかって来るだろう。その塔をかこんで灰色のコンクリートの塀が延びていて、その一廓の近代的な白い反射にひきかえて、そこにつづく原っぱの左手には、ひろい距離をへだてたこちらからもその古びかたや、がたがた工合のかくせない人家が黒くあぶなっかしく連っている。風雨にさらされつくしたせいだろう。晴れている日の遠目にも、それ等の家々の黒い色に変りがない。原っぱの果のそういう二階家の一つで、何のはずみか表から裏まで開けっ放しになったりしていると、黒い四角い生活の切り穴のようなそこから樹の一本もない裏っ側の空までが素どおしに見えて、そこにある空虚の感が眺める人の心に沁みこんだ。
 原一帯に木がないかわり、左手の端れに桜の老樹が幾株か並木のようにあって、大きくひろがった梢の枝に花が咲き開くと、そちらは東だから朝日をうけた満開の様子が何とも云えず新鮮であった。そしてその桜の色が美しく瑞々しければ瑞々しいほど、その奥のあぶなっかしい長屋の黒さが鋭い対照をなして浮立って来て、そこには油絵具でなければうつせないような濃い人の心をうつ荒廃の美があった。何千坪あるのか、その原っぱに大体こういうようにして均衡が破れているために却って変に印象的になって景色がはまっているのであった。
 よくあるとおり、この原っぱを歩道から仕切っている針金の垣根にも、既にいくつかの破れがあった。そこから草の間を縫って、いつの間にやら踏みつけられた小道がある。初めはどれも同じように見えるその細い踏みあとを辿ってだんだんと歩いてゆくと、その一本はやがて次第に左へ左へと、原の端れを三角に走って町から町への近路となっており、中途から岐れた一本は辛うじてそれとわかるほど細まりながら、丁度例の緑青色の円屋根のついた赤煉瓦の塔の下へ出た。下まで来て見上げれば、その塔の中に見張人のいることもわかる。そのあたりの同じように建てられた家の塀は皆同じように赤煉瓦づくりで、それがどれもこれもメジをはがしたあとのそっくり見える古煉瓦でつくられていて、どうしてこんな煉瓦ばっかり集めたのだろうという疑がおのずとおこったとき、初めて人々は深くうなずくのであった。これらの古煉瓦こそ、あの明治時代からあった高塀からとって来られたもので、この一廓はもと占めていた敷地の四分の一ほどのところ迄退いているが、全然この土地から消えているのではなくて、愈々新式に整備されて、あまたの人を養いながら、そこにたっていることを知るのである。
 原っぱの端れあたりからの遠見だと、コンクリートの高さはわからないから何かの大きい工場のように見えるその建物が落成したとき、新聞に記事がかかれた。設備万端が改善されて、人が自由に暮すアパートのようだと語られているのであった。そして近日内部を公開して一般に見せるという記事である。
 とある低い崖の上の小さな家の縁側で、サヨがその新聞記事に目をとめた。
「あら」
 膝をのり出すようにもう一度その記事の上へ視線をあつめた。
「ちょいと、これ……わたし達みられるのかしら。——見たいわ」
 いくらか上気したような頬をあげて、その新聞をわたした対手はこの家にいるべき筈の重吉ではなくて、編ものをもって一人暮しのサヨのところへ遊びに来ている友子であった。
「本当にどうなんだろ……でも行ってみましょうよ、ともかく」
「ねえ」
 サヨは友達の思いやりをよろこぶ表情で、
「私なんかには、ぜひみせてくれたっていいわけなんですもの」
 だって、家族なんですものという心持をあらわして笑った。
 ほんとにサヨはその内を一目みたい気がした。ああこんなところに暮して、こんな廊下も歩くのか。そうわかったら、どんなに重吉の一日も現実的に感じられて、こちらの気が楽になるだろう。
 勤め先の事務所で名簿の整理をしながらも、サヨは子供っぽいような熱心さで時々それを空想した。そのくらいのつつましいうれしいことは、妻である自分の身にあってもよさそうに思えた。
 当日になると、サヨは友子と池袋の駅で待ち合わせて、そこからバスにのった。そのバスも初めてであったし、ある学校の前で降りて呉服屋の角を曲る、その道も、まして原っぱは初めて見るから、サヨは物珍しさの抑えられない面持で歩いた。同じ方角へぞろぞろと人が行っていて、紋付の羽織姿の奥さん風の女も幾人かそこにまじっている。道端に自動車が二三台待っていた。紅白の布をまきつけたアーチが賑やかに立っている。サヨは、
「どこから入るんでしょう」
と、はずむ息をおさえるような顔をして、そのアーチの奥や、ずっと塀に沿った遠くの別な門をのぞいた。雨上りの日で、そこらあたりはサヨの靴が吸いとられそうに赭土が泥濘っているのである。
「何だかわからないわねえ」
 靴をよごして、落胆した様子で戻って来るサヨを、友子が手をあげておいでおいでをした。
「ちょっと、一般に見せるっていうのはここなんですってさ」
「ここ?」
「ええ」
 二人は腑に落ちない顔つきでうしろのテント張の場所を見やった。足元をよくするためにコークスのもえがらを敷いた空地に天幕張があって、そこには共進会のように新しいおはちだの俎板、盥、大笊、小笊、ちり紙、本棚、鏡台などという世帯道具がうずたかく陳列されているのであった。新しい木肌の匂いは天幕の外へあふれている。腕章をつけた男がいて、即売されていた。サヨたちと一緒にバスを降りた紋付羽織の女づれは、それらの品物のやすいのに興奮したような手つきで、何か喋りながらいかにも気やすそうに買物をどっさりよっている。
 すこしわきへのくようにしてサヨと友子は暫くそういう光景を見物していた。ふと気がつくと、その往来の向う側に下駄の歯入れやだの古俵屋だのの並んだ前からこっちを見物している男女があった。そんなにひろい道幅でもないのに、町のひとたちは自分たちの軒下から離れないで、赤白のアーチとの間に動かせない距離を認めているような表情で、あっち側から見ているのであった。
 やがて、サヨが友子の手をそっととった。
「行きましょうか」
 友子は歩き出しながら半ば感服したように、
「よく売れているわねえ」
と云った。
「売れるにこしたことはないんでしょうけれど、……おはちなんかねえ」
 おはちは家庭の団欒のシムボルのようなものだから、何だかあたり前の町の桶屋さんの店にあるものの方が、そこからたべやすいという友子の感じかたは自然で実感があった。
 バスへのってからサヨは、
「ごめんなさい」
と云った。
「無駄足させて」
「いいわよ、そんなこと」
 二人は足を揃えてさも何か用事のところからのかえり路のようにサヨの家まで一気に戻ったが、格子の戸じまりをあけているうちに、サヨは滑稽でたまらなくなったように笑い出した。
「いやあねえ、まったく私何て頓馬なんでしょう」
 重吉にこのことを話したら、重吉は何というだろう。咎めはすまい。ばかだなあ、と少し鼻の頭に皺をよせるような笑いかたをしてサヨを見ることだろう。サヨはおとなしい優しい気になりながら笑いやめて締りをあけるのであった。
 夏になって、原っぱの草はそこを通り抜けて近道をゆく人の腰から下をかくすくらいの高さに繁った。バッタ捕りの子供たちが一日じゅうその草の間をわけて走った。原っぱの右側の遠くに日の丸の旗が風にはためくようになった、そこが自動車練習場になって、幌形のボロ自動車が前進したりバックしたりしているのが遙に見られた。噂さでは、原っぱはこのままにしておいて、やがて飛行公園にするのだということだった。樹木も何もない草地へいきなり飛行機が着陸できるようにしておくのだそうだ。そういう噂さも、戦争のはじまっている時節がら、根のないことばかりとも思われなかった。
 針金のきれめから入って原をつっきってゆくサヨの薄青いパラソルは、かーんと照りあがった夏草の上で上下にゆれながらだんだん小さくなって行った。
 人がとおると、バッタが急に足元から飛び立ったりして、目をとめてみれば赤のまんまの花も咲いている。その夏、原の端れの黒っぽい家々の一軒では、自然のうつりかわりなんぞに気を奪われている暇はないというように殺気だった意気組みで、姉さんかぶりに上っぱり姿の女も交えた数人の男が、トラックのまわりにたかって盛に襤褸のあげおろしをやっていた。
 草がすがれるようになって、やがて霜がおり、冬が来ると原っぱは霜どけがひどくて歩きにくくなった。近道を大きい三角形にぬける通行人の数もずっと減った。
 サヨはその季節になると、もう原は通らず改正通りの方から曲って来た。そして、計らずその通りにある下駄の歯入れやの爺さんと顔馴染になった。というのは、そこのところは道普請の前後で、猛烈なぬかるみが深くて犬でさえ行き悩む様子をみせた。その冬サヨは下駄の緒が切れたのが縁で、その歯入れやの店へよっ��のだが、奥行三四尺ほどの店の片隅を歯入れの仕事場にして、奥はいきなり横丁に沿ってなぞえになった四畳半もあろうかという構えだった。爺さんの顔も手足もかさかさと乾いているとおりその住居のなかも乾きあがって、僅か数本の古蝙蝠傘があるばかりの有様だ。
 東京ではごく生活の逼迫した区域にどうしてめでたいような派手なような名をつけるのだろう。たとえば富ケ谷だとか富川だとか旭とか、日の出町だとか。
 附近の地図でいうと、下駄の歯入れやはそこから斜めうしろに拡っている何百戸かの苦しい世帯の最前列で、真向いに建ったコンクリートの塀の内側へのめり込むことだけはやっと数尺の距離でもちこたえているという風な活計であった。扇の骨のような奥ひろがりの路地へ入ると、傘をさした人一人やっと通れるほどの間隔で、箱のような家々が密集していた。家々の庇合いにはあらゆる種類の洗濯ものと内地人や半島人のかみさんたちと子供たちと病人とが動いているのであった。
 突っ風がひどくその町を吹きまくった。向い風にさからって歩く女たちは云い合わせたように前かがみになって、ショールで口元を覆うた。改正道路まで戻ったとき、急に鋭い汽笛の音で顔をあげると、行き止りが線路の柵で、その下をごとごとと貨車がのろく動いて行った。貨車の屋根に雪が載っていることがあった。ちらりと見える雪のいくらか煤煙によごれた色は、鼠色に乾いた都会へほんとの冬がもたらされたように珍しく懐しくて、サヨはその瞬間激しく生活のよろこびへの郷愁で胸をしめられるのであった。
 ところがその年の暮ちかくなってから、歯入れやの店の様子がどことなく変って来た。世間一般に革草履だの本天の花緒だのが代用品になってゆく頃で、歯入れやの爺さんの店先は益々空っぽになって、がらん洞なガラス戸棚の奥に貼った緑色の模様紙の褪めたのがいきなりむき出しになった。それにもかかわらず客の体がやっと入るぐらいの店頭に何とはなしのうるおいが出来た。奥の方で紅い友禅の布が動いているのが往来から見えた。それをいじっているのは爺さんとはちがって大柄で目鼻のきつい歯入れやの神さんであった。半纏をひっかけた近隣のかみさんがその前に坐って頻りに何か布をいじりながら相談している。奥いっぱいにひろげられた裁ち板の前で歯入れやの神さんは、大柄で体に或る権威を湛えながら、対手をしている。爺さんが軒下に立って冬の陽向で腰をのしているときの顔にも微かに油気がついた。毎日毎日神さんは裁物板に向って坐っていて、これまで何をたべているのか分らなかったような店の奥に人間がものを食う賑いの気配も動いた。
 この町にそうやって紅い友禅の色が見えはじめたということはとりも直さず、それに��づいてもっと大きな変化がおこって来る潮先の徴候であった。
 春になると、改正道路の裏にある腐れかけの四軒長屋の一区画がとりこわされて、そこへ機械工場が新しく建った。タイム・レコーダアをおして職工や女工が事務所口から入って行った。ダットサンがとまって中から役人風の男が出ると、運転していた国防服があわてて事務所口へ案内した。そこらに見ていた事務員たちが、道をよけて一斉に頭を下げた。そんな光景も界隈としては目新しい。
 そこらあたりから屑鉄屋、鋳物工場、機械工場といろんな下請工場がどっさりあって、その金網つきの真黒によごれた窓の下で日中働いている若い男たちの青春を撫でながらむしりとる触手のように、カフェー街が刺戟的な色をぶちまけて並んでいるのであった。
 正午のサイレンが鳴ると同時に、工場の裏口から馳け出して来る女工たちのエプロン姿にも活気があった。互に声をかけ合いながら女工たちはそれぞれ曲りくねった路地の間へ素早く消えた。昼飯には戻って来る亭主がある。そんな急ぎかたの女もいる。
 朝夕に映る町の変化をひきまとめて一本つよい線を引いたように、その町の裏を市電が開通した。
 電車がとおるようになって間もなくの或る日であった。
 サヨは、棒鱈と豆もやしの桶をならべた暗くしめっぽい店だの古綿打直しやの店だのの並んだ横丁をぬけて、開通したばかりの電車通りへ出てみた。ごたごたした狭い通りからそこへ出た目はおどろくほどあたりが閑静で、右手のずっと遠くの終点には商店の赤い幟旗なども見えるが、左は遙かな坂で、今は電車が一台も通っていない真昼の広々とした通りが、しん閑と白雲の浮んだ空へ消えこんでいる。雑木林がすぐそこにあった。雑木林では欅だの楓だののいろんな樹木が、次第に光と熱とをまして来る春の陽の下で芽立っている最中である。尖った緑の珠のような点々がこまかいあみめとなってよりあって、注ぎかかる日光を余念なく吸っている。
 サヨは心持もちあげた白い柔かな顎にこまやかな艶をうかせながら、暫く歩道からその雑木林をうっとり眺めていた。それから、白い裳をふくらませて大股にゆく半島人の婆さんと車道を横ぎって、向い側の小路へ入った。再びごたごたして不潔な通りがはじまった。そして、塵芥籠が高くいくつも積まれている空地の横で、路は三またに岐れている。その角のところで、サヨはどの道を選ぼうかと迷った。一本一本の道がどっちの方角に行っているのかちっともわからないばかりでなく、もしこの時ふと親切心に動かされたひとが現れて、どちらへいらっしゃるのですかと訊かれでもしたら、サヨは我にもなく顔を赧らめて少しまごついたかもしれない。ゆくところがサヨ自身にわか���ていなかった。というより、サヨは家を探す気でこっちの方へ歩いて来ているのであったが、そんな貸家がどこへ向ってどの道を行ったら在るのか、見当がついているわけでもないのであった。
 同じような三本の道筋だが、行手に高く見える欅の梢に心をひかれて、一番左の横丁を行った。
 東京じゅうに家が払底していた。サヨの住んでいる崖の上の小さい家は、重吉と一緒に世帯をもっていた家ではなくて、サヨが一人暮しになってから、友子やなんかと歩いてさがして越した家であった。その家が見つかったとき、
「あら、いいわこの家。寂しくないし、風とおしだっていいし」
とサヨは大変よろこんだ。そして、女主人なのに苦情も云われず借りられるときまったとき、
「ね、ここならいいでしょう? ほんとうによかったわね」
と狭い谷間の町一つへだてただけで、友子の住居に近いことも美点の一つとした。
 いそいそと快活に引越しをすることで、もとの家を去るようになった自分たちの生活の事情に積極の心もちもこめる思いで、サヨは元気よく転居した。
 こういうかたちの生活に、さっぱりとした感情をもって生きてゆくことも、女がそこまでおしすすめられて来ている愛情の姿なのだ。そう思ってサヨは暮した。
 引越した年の冬、或る寒い晩、寝いってほんの暫くしたとき、突然ドドーンと爆発したような音と同時に家じゅうが震えて、サヨは思わず床の上へ起きかえった。そして、スタンドをつけた。その灯をひとりで見守りながら体をかたくしていると、間をおきながら続けてドドーン、ドドーンと二度鳴って、その度にガラス戸がビリリビリリ震えた。見当は王子の方角である。もう爆発なことは明かであった。何処なのだろう。次の轟音を待ったがもうそれはやんで、今度は遠いすりばんが冬の夜らしく鳴り出した。そっちの空で犬の吠え声がおこった。
 急に寝間着一枚の肩にしみとおる寒気に心づくと一緒に、サヨには、自分のところをのぞいてあらゆる附近の屋根屋根の下で、この瞬間夫婦がぱっと床の上におきかえっていて、灯をつけていて、何なんでしょう! おびえたようによりあった気持で顔を見合わせている光景がありありと感じられた。なんなんでしょう! 囁き声はサヨの耳のはたできこえるようで、それは自分の声でもある。
 この時、サヨが身のまわりに感じた一人ぼっちの感じの鮮やかさは、畳の目を照らし出していたスタンドの明るさの孤独なさやけさとともに、実にくっきりとした異様な感銘であった。
 高窓をあけて、ぼんやり焔の色を反射している雲の多い空を見て、床に入って横わっても、サヨは眼を見ひらく心地で、夜のなかにくっきり照らし出されたようなその感銘にいた。何という溢れるばかりな寥しさだろう。いっぱいで、まぎれもなくて、そのまぎれない純粋さから不思議な美しさの感情へまでつきぬけて行くような、何という寥しさであったろう。
 東京のどのくらいのひろさでそのとき人々が目をさましていたかは知らないが、同じ夜の驚駭のなかに自分という女のそんな思いも目ざめて加わっていることを、サヨは現代のいとしさとして愛着するのであった。
 日ごろは、そんな気分で暮している。サヨがその春の昼、棒鱈やの横丁から現れて、開通したばかりの電車通りを眺め、旺盛に芽立つ雑木林に目をひかれ、やがて再びごみごみした横丁へ辿り入ったときの気持は、一種名状しにくい乱れ心であった。
 重吉と暮したい心の激しさがサヨをつきうごかして、落つかせないのだけれど、その方法のない余り、発作のように何とか暮しの形でも極端に変化させたら気が休まりそうな思いがして、サヨはそういう刹那アパート生活などを描くのであった。
 欅の梢の見える横丁を行くと、青々とした樒の葉が何杯も手桶に入れてあって、線香の赤い帯紙が妙なにぎわいを店頭に与えている花屋の角へ出た。そのつき当りは雑司ケ谷の墓地である。墓地といってもここはちっとも陰気でなくて、明るい日が往来ばたの木戸に照っている。花屋の方へ裏の羽目を向けてそこにアパートがあった。偶然そこへ出たサヨは半ば本気なような、半ば自分のそんな気持に抵抗しているような複雑な気持のまま、外の明るみに馴れた目には窖の入口のように思える三和土の玄関を入ってみた。
 もっと薄暗く見える廊下の奥にドアがいくつか並んでいて、バケツを下げたシャツ姿の男がそっちから格別いそぎもしないで出て来た。サヨは空室があるかどうかきいた。
「さあね、ここ当分動く人はありますまいよ」
 元は職人ででもあったような管理人はあっさりした口調で答えた。
「ここはやすいからね。新学期でどうっとふさがりましたからね。やすい代り、台所が共同なんでね」
 すこし笑い顔になって、その不便もみとめている。礼を云ってそこを出て、動揺した切ない心持のままサヨは、元来た三つまたの方に向って歩いた。この界隈に執着してうろうろとあるきまわっているのであったけれど、近くなればなるほど近さが強調して感じさせる重吉との距離の不自然さが生々としてサヨを苦しますのであった。苦痛とたたかって、自分の心と体とをそれから引はがそうとするような気力をあつめて、サヨは省線に乗った。
 竹藪のよこの足場のわるい石ころ坂道をのぼり切ると、更に石段があって、古びた門にかぶさるようにアカシヤの大木が枝をのばしている。その門のなかに友子夫婦の住居があるのであった。八つ手の植った格子をあけようとしたが、建てつけが歪んでしまっていて容易に動かない。幾度かやってみて、遂にサヨは、
「友子さアーん」
と大声で呼んだ。気をつけながらいそいで二階から下りて来る友子の気配がした。この古い家は梯子段の間がなみよりも遠くて、もう何年も棲んでいる友子でも気がゆるせないのであった。
「ほんとに、この家ったら!」
 自分のうちの生きものでも叱るような口調で友子が内から格子をガタガタさせた。
「こないだなんか、わたしが出て、あとをしめたら、もう入れないんだもの」
 まあこの主人の私がよ、というその調子にはこの夫婦の暮しにある独特な諧謔がひとりでに溢れていて、サヨは気分が転換されるのを感じた。
 こんな時刻に現れればサヨがどこからの帰りだということを説明する必要も二人の間にはないのであった。
「お茶いれましょうね」
 湯のわく間、友子は内職の編物をまた膝にとりあげている。この夫婦も、もう久しく家をさがしていた。家が古くなりすぎて、風のきつい夜なんかはおちおち眠っていられない。でも、ここで探しているのはただ家だけであった。家の見つかるまでは、つい足をふみはずして準助が二階からパイプをくわえたままころがり落ちて、ひどく腹を立てたりしながらも二人でやって行っている。自分がこうやって時々瞳の中に小さい火をもやしたような顔つきになってさがしまわるのは何だろう。家ば��りのことでない。それはサヨも知っている。
 友子の編棒からは、一段一段と可愛い桃色の毛糸の赤坊ケープがつくり出されていた。それを眺めながらサヨは、ふとある婦人作家の小説の中に描かれていた一つの情景を思い出した。それは、何年も一緒に暮した良人と愛の破綻からわかれなければならないことになった若い女が、女友達とつれだって、秋の西日のさす丘の上の町を家さがしに歩きまわっている場面であった。一つ角を曲って新しい道へ出たと思うと、やっぱりそこには西日の照る前のつづきの通りがある。散々歩いても一人の若い女が子供をつれて新しい生活を営むべき貸家は見つからないで、夕暮木犀の花の下をくたびれて歩いているとき、その若い女が覚えず洩らした深い歎息は、ああ、こんな思いまでしなくちゃならないものなのかしらという謙遜なひとことであった。しかしそのひとことには、女が生活の中で負ってゆかなければならないすべての意味がこめられているようで、その情景からはサヨの心に刻まれたものが深くあった。女が自分から自分の生活への態度として一軒の家をも持ってゆくようになるその過程で女は実にどれほどのことを学ばなければならないだろう。
 友子が、
「ああそうそう、乙女さん、あなたのところへよりましたか」
ときいた。
「いつ?」
「ゆうべ」
「来なかったわ」
「——あのひと、田舎へ行って来たって、本当かしら……」
 サヨは不安げな表情になった。
「何とか云ってた?」
「云わなさすぎるんですよ、行って来たにしては。勉さんの三周忌だったのに。ひょっとしたら、うっかり忘れてしまったんじゃないのかしら」
 みんなの友達であった勉が、真面目で辛酸な若い生涯を終ったとき、あとにのこされた乙女と小さい娘の生活に対しては、親しかった何人かの友達が、誰からも求められてはいないがぼんやりした責任のようなものを感じて来ていた。
 勉の年とった親たちは、亡くなった息子の代りに、嫁の乙女を一家の稼ぎ手として離すまいとしていた。乙女はそれが重荷で、娘をつれてマージャン倶楽部へ住込みでつとめたりしていた。気のいいコックの男がいて、それが乙女を散歩にさそっては、一緒になりたいと云っているということが乙女の口から友達たちに話されたりした。亡くなった勉は詩人になろうとしていた。だけれども、気のいい男だというのなら、乙女にとってコックという商売はそんな困った職業だったろうか。
 ところがその話はそれなりになって、サヨが今度の家をもったとき、乙女も来て暮したらどうだろうかという案が友子から出された。そのとき乙女は、相変らず小柄な体に派手ななりをして、長い両方の眉毛をつりあげるようにして下唇をなめる昔の癖を出しながら、そりゃ一緒に暮して行ければ、あたいもいいと思う、と云った。そして、もう一度上唇と下唇とを丁寧になめると、けんどね、と力をこめて目を据えるように、もしあたい一人になったりしちゃって、困らないだろうか。サヨ子さんたちは、そういうときでもちゃんと成長してゆけるけど、あたいはやっぱり普通の女で、そうやっていたっていつまでたっても、普通の女としてのこるばっかしだろう。
 野兎のおどろいた時のような素朴な美しい感じの顔をしていた乙女が、いつ友達の女たちと自分の一身との間にそんな区別をおいて身をしさらすことを覚えたのだろう。そう思ってサヨはその時大変悲しかった。
 その時分に、勉が生前知り合いだった画家との間がどうこうという話があった。
「勉さんがあんまりストイックだったから、乙女さんの気持もわかるようなところもあるけれど……でもね」
 その画家を勉がしんからすいていたとはいろいろな事情から考えられなかった。勉が善意に生きて死んだ熱心さが、妻である乙女の躯でどうでもいいものとされているとすれば、それは、死んだひとにとっても生きている自分らにとっても一つのむごたらしいことだとサヨには思えるのであった。
 初夏が来て、新緑の雑木林は、夜も昼も捲きひろがろうとする若葉の勢で幹も黒く軟くひきのばされて揺れているような眺めとなった。
 その夏は、原っぱのトンボ釣りの子供らがずーっと活躍の範囲をせばめられた。飛行公園になるとか云われていた原っぱに梅雨があがると、トタン葺きの大きな作業場が拵えられ、土工の飯場が出来た。一日じゅう掘りかえされたり、木材を満載したトラックがひどい音でエンジンをふかしたりした。
 サヨはもう原っぱを抜けるのはやめた。そこばかりでなく、原っぱへ入る針金のやぶれのそばでも、地割りをしたところに地鎮祭の御幣が白い紙を風にひるがえしていた。釘がない。材木がない。そういう世間をよそに原っぱでは同時にいくつもの建築が着手された。遠くの自動車練習場の日の丸の旗は見えなくなっていた。ガソリンが払底だった。
 秋がすすむにつれて、原っぱの工事場のごったがえした堆積の人間の動きの中から、徐々に建てられているものの輪廓がせり出して来て、きょう作業場の小屋掛けがとり払われたかと思うと、いつか飯場の露天竈も見えなくなって、後に長いコンクリート塀に囲まれた幾棟かの建物が完成した。そこには造幣局が出来たのであった。
 そうなると、改正道路から見る原っぱの眺望も初めの頃とはすっかりちがって来た。左手にあの桜の並木の側に四角く建ったのは小学校である。それから、そのすこし奥に真新しい造幣局が出来て、それは以前そこまであとしさりして行ったもっと長いコンクリートの高塀と、黒い道一筋をへだてているだけである。草っ原は今やひろびろとした一帯の印象を失って、途切れ途切れの空地にすぎないものとなった。それでもそこから秋の更けるまで頻りに虫がすだいた。
 もう一つ夏がめぐって来たとき、界隈の様子はまたこまかくうつりかわっていて、そこの小さな女の児が背負って遊ぶ赤い人形が、おから桶の上に転がっていたりする豆腐屋のガラス戸に、原料不足につき月二回休業のすり紙がはり出された。
 棒鱈屋のさきの米屋に、米の御註文は現金で願いますと刷ったビラと並んだ黒板に、内地米二割、外米八割と書かれていた。マッチ配給イタシマス。そういう貼紙が荒物屋にあった。そして、短い町すじの共同水道をはさんだこっちとあっちとに、町会が建てた二本の建札があって、それにはその前に建札の立った家からの戦死者の名が記されているのであった。
 パッカードとかハドソンとかいう高級車が時々その長い高塀に開いている門の横にとまっていることがあるようになった。
 その年の春ごろから、世の中が愈々鋭い角度で推移しはじめていることがそんな光景にも語られているようであった。
 幾度か苦しい気持になりながら、それでもサヨは一つ住居に住みとおして、時間のゆとりのあるつとめの傍ら少しずつ洋画の修業をやり直しはじめていた。
 重吉に対するサヨの妻としての感情は、云ってみれば純粋でしかあり得ないような条件で、サヨはその感情の純粋な単一さとでもいうようなものにこりかたまることを、重吉の心の成長のためにも自分のゆたかさのためにも警戒した。自分でも気づかないでいたような様々の感情を、自分に向って表現する手だてがあるとすれば、サヨとしては好きな画を描くことによるしかなかった。サヨが自分で自分のいろんな到らなさや鬱屈や感情の上すべりした所を絵のなかでは割合発見してゆけるように、重吉もサヨのそういう実際を、サヨの下手なスケッチ絵ハガキからつかむだろうし、そのことから、重吉自身が自分の心の明暗を濃やかに活々とさせ得ることがあったとしたら、うれしいにちがいなかった。
 絵に表現されてあるものについては、ともかくぐるりの友達が遠慮なく感想を云ってくれる。それもサヨにはよろこびであった。絵をやりはじめてから、いつかの春���雑司ケ谷の墓地のあたりを切なさいっぱいでふらついて歩いた。ああいう衝動も、サヨは情熱の潜勢力のようなものにかえて暮せるようにもなった。
 八月はじめの或る夕方、サヨは妹夫婦の家に行った。ゆき子が初産で、予定の日が来ていた。母親が早くなくなっている姉妹で、そういうときゆき子は姉を心だよりにするのであった。
 重々しく充実した体にちょいと可愛くサロン前かけをつけて、上瞼に薄く雀斑のある顔を傾けながら、ゆき子はいやに断定するように、
「今夜あたり、どうもあぶなっかしいわよ」
と云い出した。進一は縁側にねころんで食後の煙草をつけている。
「またおどかしだろう」
「ずるいわ、御自分はこわいもんだから」
 サヨがあわてたように二人を見くらべながら、
「ねえ、ちょっと。自動車大丈夫なの? 私いやよ」
と云った。
 病院へはサヨがついて行く約束になっているのであった。
 ほんとに夜なかの二時すぎたころ、サヨはひどく甲高な声で何か云っているゆき子の声と格子のあく音とではっと目がさめた。茶の間へおりて行ってみると、ゆき子は煌々とした灯の下で、もうさっぱりした浴衣にきかえて、立ちながら手くびにつけた時計を柱時計と合わせている。
「ああ、めをさまして下すって、よかった!」
 幾分ふだんと変った声で云って、腕時計の面を見守りながらねじをまいている。
 サヨはいそいで着物をきかえ、進一が運転台にのって来た自動車にゆき子をのせた。ゆき子はサヨの手を握っていて、痛みがよせて来るたびに握っている手に力をこめて息をつめるのであった。
「大丈夫? もつ?」
 そう云いながらサヨも我知らず人気ない街を疾走している自動車の中で草履の爪先に力をこめた。痛みの間がだんだん短くなって、サヨの心配が絶頂になった時、車はやっと病院に着いて、ゆき子はすぐ産室につれられた。
 二階の室で、閉めてあった窓をすっかり開け、サヨはそこにあった籐椅子を二つ並べてその上へ脚をのばした。生れるのは早くて朝になるということであった。風のない蒸し暑い夜で、廊下の向い側のドアをあけたままの部屋部屋にぼんやりした灯かげと産婦たちの寝息がみちている。その人達の目をさまさせないように椅子のきしみにも気をかねて、落つかない窮屈な気持でサヨは団扇をつかっていた。
 やっぱり籐で作った円テーブルがその室の隅にあって、下の棚に何か雑誌のようなものがおいてある。サヨは片脚ずつ椅子からおろして、立って行ってそれをもって来た。一冊は映画雑誌であった。もう一冊は大阪の方から出ている半社交娯楽の雑誌で、カットなどに力をいれた編輯がされていた。知っている婦人画家の描いたのもあったりするので、暇つぶしに頁をくってゆくうち、サヨは我が目を信じかねる表情になって一つのカットを見直した。そこに描かれている女は乙女であった。乙女でなくて、ほかの誰が、こんなに特徴のある弓形の眉だの、黒子があってすこし尖ったような上唇の表情だのをもっていよう。二字の頭文字は、昔乙女の良人が知りあいだった例の画家の姓と名とを示していた。絵の乙女は、その体に何一つつけていないはだかであった。粗い墨の線で、やせて小さくそびえた肩が描かれていて、その肩つきはまぎれもなく乙女の肩であった。はだかの乙女は生真面目に真正面を向いて、骨ばった片膝を立てた姿勢で坐り、両腕はそのまんまだらりと垂して、二つの眉をつりあげて今にも唇をなめたいところをやっと堪えていると云いたげな表情であった。そのまるむきな小さい女を画家は荒い筆触で、二つの目の見開かれた大の腕のつけ根や腹の暗翳だのを誇張して表現しているのである。
 乙女。乙女。サヨは計らず再会したこのいじらしい昔馴染の名を心で切なく呼んだ。はだかになったところをこの画家が描いている。いかにも乙女らしく媚びることも知らず描かれているが、そこに語られている意味が何をあらわしているか、乙女は思って見たのだろうか。画家が何を現わそうとしているにしろ、乙女がそこにそうやっているそのことに、切ないものがある。それを知っているのだろうか。
 雑誌をとじて、サヨは椅子の背に頭をよせかけていた。
 蒸し暑いまま夜が明けはなれて来た。窓のすぐ外のプラタナスの街路樹がだんだん緑の葉色を鮮やかに見せて、朝日の条がその上に燦き出した。
 突然どこか階下の方で、一声高く赤坊のなき声がした。サヨは反射的に椅子から立ち上ったが、割合しっ���りした男の子の声だったように思えて躊躇していると、看護婦が廊下を走って二階の階段をこっちへのぼって来たのがわかった。急に動悸しはじめたのを感じながら、サヨは丁度看護婦が階段をのぼり切ったところへ出会い頭に出て行った。
「生れました?」
「おめでとうございます。立派なお嬢ちゃんです」
 サヨは膝の力が抜けてゆくようなよろこびの感じを、初めてこの時経験した。階下へおりるまでに、こんどは続けて赤坊のなき声がして、それはまだ見ない自分たちの赤坊の精一杯の生への呼びかけで、サヨは可愛さがほとばしって喉へこみあげた。
 傍の電話室へ入って、進一を呼び出した。サヨは興奮した声で、
「いま、安産よ」
と告げた。
「女の児よ。盛にないているの、きこえますか?」
 進一は曖昧な返事をした。サヨは、
「ちょっとお待ちなさい、きかしてあげるから」
 そう云って電話室のガラス戸をあけて、受話器を紐の長さいっぱいに廊下へ向けて引っぱった。
「ほら! ないている。いい声でしょう?」
 しかし、電話でいま生れたばかりの赤坊の声をきかせるのは無理なことだった。すぐ進一が来るということで、切った。
 そこは産室につづいた廊下の端れで、二枚のドアが市内らしく狭い内庭に向ってあいていた。朝露に濡れた平石の上に石菖の大きな鉢がおいてあって、細く茂りあった葉もまだ露を含んでいる。綺麗にしめりけを帯びた青い細葉の色が夜じゅう眠らなかったサヨ��瞳にしみ入った。
 非常に深い安らかなよろこびがサヨの心を満していた。そんなよろこびと安心の感情は予想していなかった。それほど大きかった。そのうれしさや安心とはまた別に、さっき雑誌の頁の中に見た乙女の姿がサヨの心の裡にある。
 雀の囀りが活々と塀のところに聞えたと思うとやがて、ラジオ体操のレコードがどこかで鳴り出した。ピアノの単純なメロディにつれて「ヨオーイ、始メッ」というあの在り来りのレコードだが、擡げた顔に朝日をうけて凝っとそのピアノのメロディを聴いているうちに、サヨの体は小刻みに震えて、忍びやかな嗚咽がこみあげて来た。
 このメロディは、重吉とサヨが結婚して間もなかったころの初々しい朝の目覚めの中へ、どこか遠くから響いて来た単純なメロディであった。
 メロディとともにその部屋をふきぬけて、二人の体の上をわたった夏の朝の風の思い出で、サヨは泣けて来るのであった。
 今のよろこびに通じるまじりけのないよろこびの思い出のため、サヨは涙をおとした。
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tojima-a · 8 years ago
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BEACH  HOUSE  螺旋階段
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久しぶりに螺旋階段を設計しました。今回の踏板はチェッカープレート(縞鋼板)を折り曲げました。残工事が終わったら、このBEACH HOUSE の竣工写真を撮影したいと思っています。
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bingluyica · 5 years ago
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エレガントであるために十分に後退するのに十分大きいです
ダイヤルの上に動くことと腕時計の私のお気に入りの部分:それは首尾一貫しています。これは、古典的な製造Moonphaseの単一の下位ダイヤル表示を分割する欲求から生じますつの別々のディスプレイに。そして、そのために、それは単に私が感じている美しいデザインです。 ダイヤルのために、フレデリック定数は、前のモデルで働いたデザイン機能を結合しました。一つについては、細長い白いローマ数字は、目で読みやすくて審美的に簡単です。彼らはSunburst青いダイヤルに対してポップして、残りの時計の特徴セットから気を散らすことはありません。9時の日付下位ダイヤルは、ちょうど効果的で、エレガントであるために十分に後退するのに十分大きいです。3時のムーンフェイズはダイヤルとよく合います、そして、このモデルでは、月は全体的な青くて白い色計画から気を散らさないように白くされました-私が本当に感謝する特徴。 ロレックス スーパーコピー ムーンフェイズの仕上げは滑らか��あるが、マットの星と月を持って、実際には、そのマッチングの下位ダイヤルから“ポップ”表示を支援します。 携帯電話は、光沢がある白い終わりで単純な剣手できれいです。彼らはダイヤルで失うのは難しいし、ローマ数字に対してきれいに対照的です。私は一目で時間を選ぶのが難しい。全体的に、複数の合併症でドレス時計を作るとき、エラーの大きなマージンがあります、そして、フレデリック定数がダイヤルを釘づけにしたように感じます。 時計をひっくり返して、あなたは豪華なFC - 712を見つけます。これはフレデリック定数の29番目の社内キャリバー、および重大な値です。装飾は素晴らしいです。中心のプレートは、私が私が扱った多くの運動より顕著であるとわかる円形のジュネーブストライプを特徴とします。縞模様は深く、光をうまくキャッチします。下で、Perlageは主な板の全長をカバーします。空洞化された金メッキのローターは、運動の視点を妨げません-私が大いに評価する特徴。 FC - 700シリーズのまわりで設計されて、FC - 712は、2つの別々の複雑化に日付とMoonphaseを分割します。これは、2年を達成するためにブランドを取った。自動移動は、滑らかな28800 Vphで38時間と刻みの予備力を特徴とします。 フレデリックコンスタントクラシックムーンフェーズの製造は、単純な展開クラスプ(私が来た)とブルーアリゲーターレザーストラップに付属しています。私は、プレスイメージから、青が少し多くであると心配しました、しかし、それはそうでした。ストラップは、信じられないほど快適だった完全な腹の裏地を備えています、しかし、長い間スーツの中で、私はそれが汗からの湿気が入ったとき、それが屈曲したのに気付きました。これは普通の現象ですが、厚みとペアを組んだとき、袖の下では不快になることがありました。 注意するのが重要である1つのものは、私のひもがかなりしばしばラグをクリックしたということです-通常、春バーに引っ張って、ラグに対して粉砕することのために。私のケースでは、ストラップはスプリングバーにあまりにもゆったりと座り、手首を曲げたりねじったりするときに、ケースに反抗していたと思います。おそらくフルークや古い、延伸ストラップが、重要なときには、ブティックでそれを検討する注意してください。 全体的に、私は古典的なムーンフェイズ製造で私の時間を楽しんだ。 ロレックス ROLEX (新品) |腕時計の販売・通販残念なことに、この腕時計は、私がそれが欲しかったほど、腕時計のための私の基準に合いませんでした。私はその時計がよくじっくりと見つめられていた。しかし、それは単に服装服で着るにはあまりにかさばるです。この2 - 3 mmをより小さくして、より少しのミリメーターを薄くすることは、逃した機会のようです。私は、それが腕時計で非常によりウェアラブルになると感じます。私は箱の外で何かをしようとするブランドを非難しません、そして、私はこの時計が足跡を気にしない買い手を見つけることを疑いません。フレデリック定数古典的なMoonphaseのための価格は、ステンレス鋼の2595ドルです。彼らは、300ドル以上で利用できるバラの金メッキのオプションを持っています。
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oriori-ki · 6 years ago
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第38回 『野生の王国 群馬サファリパーク』
●ダチョウとカメラ
 あっという間でした。手にしたカメラをひったくられたのは。いや、その瞬間は何がおこったのか、皆目わかりませんでした。
 それは、ダチョウを撮影していたときのことでした。人慣れしているのか、あるいはエサをくれると思ったのでしょうか。柵の中で1羽だけ展示されているダチョウが歩み寄ってきて、柵の上から長い首を折り曲げ、ギョロリとした目をむきだしにしたまま私に顔を近づけてきたのです。
「これはいいチャンスだ、ダチョウの顔の大アップ写真を撮ってやろう」
 少しでも間近な顔を撮影しようと両手を前に突き出してカメラを構えました。そのときです、突然、ダチョウがカメラにぶらさがっていた20cmほどのストラップを大きなくちばしで咥えてカメラごとひったくり、そのまま後ろ向きにブーンと振ったのです。そして数回大きく首を回すと、咥えていたカメラを放り投げました。
 ガシャ、カラッ、カラッン
無情にもカメラは地面を転がっていきました。柵の中です。
「ああっ、カメラが」、近くにいたお子さん連れの若いお母さんが悲痛な声をあげました。私は、あっと言う間のできごとにあっけにとられ、声もでません。         
 やっと我にかえった私は近くにあったホウキでカメラを柵の中から掻き出しました。慌てて液晶モニターを見ると、「SDメモリーカードが損傷しました」と、埃と傷だらけになった画面に表示が出ています。
「今朝から撮影した写真が全部だめになったか、今からの撮影もできないのか」と、目の前が真っ暗になりました。
「壊れちゃったんですか」、若いお母さんものぞき込みながら心配してくれています。
「……はぁー、どうもそうらしいです」
 しかし、奇跡的にカメラは大丈夫でした。「念のため」といったん電源をオフにして再起動し、撮影データを再生してみると、すぐ目の前に迫ったダチョウの大きな顔は映っていませんが、それまでのデータは無事でした。自動的に閉まるレンズキャップが痛んでいてきちんと作動しませんが、新たな撮影もできます。そのまま取材が続けられます。
 改めてダチョウに目をやると、柵のすぐ側に「ダチョウは好奇心が強く、なんでもエサと思ってくわえる習性がありますので、手にもったタオルや小物、ヘア用品など、物を取られないようにご注意下さい」と注意書きが掲げられていました。
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この直後に私のカメラを奪い取ったダチョウ
●群馬サファリパーク
 富岡製糸場といえば、多くの人が中学校や高等学校の歴史で教わった記憶があるでしょう。明治のはじめ、西洋諸国に追いつこうと時の政府が殖産興業の一環として建設した国営の製糸工場です。2014年に世界遺産に登録されたことは記憶に新しいと思います。その製糸場のある群馬県富岡市の郊外の山に36万平方メートルもの広大な面積を占めて1979年に開園したのが、民営の群馬サファリパークです。全国で5番目、東日本では初めての開園でした。
 群馬サファリパークは大きく二つのエリアに分かれます。いうまでもなく一つは動物園の「サファリ・エリア」、もう一つは「アミューズメント・エリア」と名付けられた子供用の遊園地です。ミニのジェットコースター、「サファリ列車」と名付けられたミニ鉄道、メリーゴーランド、大観覧車などがあります。今回の取材目的は動物園ですので、ここでは紹介だけにとどめておきます。
 サファリ・エリアでは山の起伏や傾斜を利用して、約100種の哺乳動物や鳥類が1000頭羽も飼われています。その全てではありませんが、たくさんの哺乳動物や鳥類が自然のままに放し飼いにされているのが特色です。このエリアは、アジアゾーン・アフリカゾーン・アメリカゾーンなどのように大陸・地域別に動物が展示されている区域のほかに、おそらく当園の最大の目玉である、トラゾーン・ライオンゾーンが独立して設けられています。
 訪れた日にちは5月26日、初夏の快晴の土曜日でした。そのためか、動物園入口前にある第一駐車場にはたくさんの乗用車がおかれ、大型観光バスもひっきりなしに到着します。駐車場は第三まであります。サファリパークの入園料金は大人一人(高校生以上)2,700円、子ども一人(3歳から中学生)1,400円ですが、それに見学コースによって異なる乗車料金が加わります。園の運行するコースのうち、シマウマの柄を施した大型バスに乗って定められた道から見学する「サファリバス」コースは一人500円、トラやライオンなどの形をした中型のバスに乗って草食・肉食動物にエサを与える「エサバス」コースはエサ付きで一人1,300円、オフロードカーで時には道から外れて動物に大接近する「レンジャーツアー」は、草食動物用のエサも付いて一人1,300円となっています。
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エサバスコースのライオンバス
 これらのコース以外に自分の乗ってきた自動車でそのまま園内に入って見学するマイカーコースもあり、その場合、「ガイドラジオ料金」として1台につき500円が加算されます。もちろん、オープンカーやトラックなど、安全でない車は園内に入れませんし、園内で車の窓を開けたり、車外に出ることは禁止されています。以前、車外に出て動物に襲われたケースもあります。これらは絶対に守らなくてはならないルールであることは言うまでもありません。「群馬サファリパーク入園のご案内」には、こうした注意事項のほかに「如何なる場合も動物による車の被害には、当園は一切の責任を負いません」とも明記されています。あとで飼育員さんに聞いた話では、こうした実例は「動物のほうが慣れていて」めったにないそうですが、相手は野性をもつ動物であることを忘れてはならないでしょう。  
           ●オフロードカーに乗って見学
 どのコースにするか、一思案後、私は「レンジャーツアー」で見学することにしました。このコースは、土・日・祝日のみの運行です。他のコースはおよそ20分ごとに運行されていますが、この「レンジャーツアー」は、30分あるいは時間帯によっては60分ごとの出発で、コースを90分ほどかけて一回りします。
 オフロー��カーには5,6人の見学者が乗り込めますが、10時30分発には、ご夫婦の二人連れ、私のつごう3人が乗車し、運転手兼ガイド役として若い女性の大槻さんが乗り込んできました。
「サファリーバス」や「エサバス」のコースは山の起伏をくねくねと縫うように舗装された道に沿って運行されます。一方、「レンジャーツアー」のコースは、オフロードカーで舗装された道から外れ、動物の放し飼いにされたエリアにも入り込んで行き、上下左右に激しく揺れることもあります。しかし、すぐ目の前でみる迫力のある動物の姿態は格別でしょう。
 入園ゲートをくぐると、すぐにキリン、エランド(ウシの一種)などの草食動物がいます。車が近づくと、彼らは慣れていて、一直線に駆け寄ってきて車の窓にはられた金網の隙間から口を差し込んできます。金網の幅は数センチ四方なので口といっても唇だけですが。彼らは見学者の持つエサが目当てです。「レンジャーツアー」にも2束の草がエサとして付いてくるのです。エサを隙間から差し出すとすぐに食いちぎります。金網があるとはいえ、人の顔と動物の顔がくっつくほどの至近距離です。ものすごい鼻息と唾が私の顔に飛んできます。
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オフロードカーに近づいてくるエランド
 しきりにエサをねだって車に近づいてくる彼らを見送り、お尻の縞柄色の薄いチャップマンシマウマや2.5トンも体重があるシロサイを間近に眺めながら、��フロードカーはつぎのエリアへと進みます。左側の急な崖のような斜面の端にバイソンの群れがいます。かつてよく観たアメリカの西部劇映画(最近はすっかり制作されなくなりました)には、草原を馬で疾駆するカウボーイの背景によく映っていましたから、バイソンには見覚えがあります。間近でみると、その大きさに圧倒されます。大槻さんの説明によると1トンくらいにもなるとか。でも映画とは違い、ここのバイソン、どれもがよれよれに破れかかった衣服を着ているかのように、体の半分ほどは長い毛が抜け始めてボロボロに垂れ下がった情けない格好です。
「ちょうど今、毛が冬用から夏用に生え代わるときなんです。今日は快晴でまだいいんですが、梅雨の時期になると、抜け切らない毛が雨と泥に濡れて体にへばりつき、もっとみすぼらしくなります」
「彼らは繁殖期になるとオスを中心にハーレムをつくり、オスの周りにメスを侍らせます。しかし、子育て中はメスが強くなります。『あなたはあっちに行ってて』と。人間とおなじですよ」
と大槻さん。
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エサに釣られてきた毛の生え代わり最中のアメリカバイソン、鼻息が私の顔にかかる距離
●ニホンゾーン
 次の日本ゾーンへと入っていくと、ニホンジカが数頭ゆったりとエサや草を食んでいます。シカそのものはそんなに珍しくはありません。そのすぐ側にあるニホンザルのゾーンに目が行きます。岩の上や樹下にサルたちが思い思いに毛繕いし、追いかけっこしてはしゃぎ合っております。でも、得意なはずの木登りをするサルは見当たりません。よく見ると、植えられている樹木のそれぞれの根元にはなにやらコードが巻き付けられています。
「あのコードには電気が流れています。放し飼いにしてあるので、冬に食料が不足すると木の皮を食べてしまうので、その防止のためです。もっとも今はたんなる脅しで電気は流れていません。彼らは学習能力が高いので同じような痛い目には二度とあわないのです」
 この案内役兼運転手の大槻さん、説明する動物たちのあたかも姉か母親のような口ぶりで、「彼ら」とか「あの子たち」などと丁寧にわかりやすく、しかも人さまの在りようを例えにしてユーモアをもって説明してくれます。その口ぶりの後ろには動物に対する深い愛情や尊敬さえも持ち合わせているのだと感じます。本当に動物たちが好きなのでしょう。
 なお、ニホンザルの放たれている周囲には高い板囲いが作られています。ただ高いだけではありません。なんせ身の軽いサル君たちですので、彼らが勝手に園外に遊びにいけないようにと、その一番高いところには彼らでも手がかりのないツルツルのブリキやアクリル板が内側に向けて斜めに取り付けられています。
 ニホンザルの反対側にはツキノワグマが2頭、岩の上に寝そべっています。その一画は針金の柵で囲まれていますが、柵はわずか2,3本の針金で張られており、高いものではなく、その間隔も広く、しかも簡単です。とてもクマを囲い込んでいる柵とは思えません。これには都会人は気づかず、あるいは気にもとめないでしょう。実はこれは電気柵なのです。この電気柵、昨今の農山村では秋に普通に見られます。農山村では、人口減少にともない、人の住む領域と山の領域を併せ持っていた里山が消滅した結果、本来は山深く棲息していたイノシシやシカなどが人間の領域まで侵入し、畑や水田を荒らすようになってきました。その防御のために、各地の農山村で山と田畑の境目に設置されているのです。このサファリパークでは、2年ほど前にツキノワグマによって従業員が不慮の事故に遭っていますので、念を入れて設置されたのでしょう。
●ウォーキングサファリゾーン
 ニホンゾーンを過ぎると、10m以上はある高い鉄の柵で囲まれた一画に出ます。その出入り口には、バスも通れる高さの大きな鉄柵のドアがあり、それも二重になっています。見学者はこの前で車から降り、係員の指示に従って中に入ります。車の中から放し飼いの動物を観察するサファリですが、このゾーンだけは普通の動物園のように檻に入った動物を見て回ります。
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ウォーキングサファリゾーンでの動物とのふれあいコーナー
 このゾーンには、チリーフラミンゴなど鳥類、ミーアキャットなどの小動物、アカテタマリンなどサルの仲間、ラマ・シカ・ヤギなどの草食動物がたくさん展示されています。テンジクネズミなどの愛玩動物と子どもたちが触れあえるコーナーもあります。
 しかし、何と言っても、子どもたちの人気が高いのは、ライオンやホワイトタイガーのエサやりでしょう。3cmほどの大きさにカットした肉片が5,6個入ったエサが販売されており、それを長い鉄製の火ばさみのような器具に挟んで檻に設けられた専用の窓から中に差し入れるしくみです。窓は1mほどの高さにありますので、ライオンたちは二本足で立って窓に取り付きます。エサをやる人のすぐ目の前に、大きな鋭い牙をもつライオンやホワイトタイガーの口が迫り、グォッ、ヴォーッと鼻を鳴らし唾を飛ばしながら肉に齧りつく迫力は相当なものです。大勢の子どもたちが火ばさみを持って、「ライオンさーん」「トラさーん」と黄色い声で呼びかけたり、「怖ーい」とお母さんの後ろに隠れいったりしています。
 そうそう、冒頭に紹介した��カメラをダチョウに奪われた話もこのゾーンでのことでした。
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エサに齧りつくホワイトタイガー(ウォーキングサファリゾーン)
●アジアゾーン
 ウォーキングサファリゾーンで30分ほどを過ごして、再び車に乗り込み、アジアゾーンへと向かいます。そこにも、ニホンジカが群れている一画があります。シカたちは勝手にテンでバラバラにいるように見えますが、よく観察すると、数頭で小さなグループをつくっており、グループごとに一定の方向に頭をそろえて並んだり円陣を組んだりしています。あるグループはずらりとこちらにお尻を向けて、同じリズムでしきりに尻尾を振っていました。
「オスのニホンジカにある角は年に一度生え代わります。この角は堅くて鋭く危険なので、奈良公園では人為的に年に一度切り落としています。角のある間のオスは気が強く、時にツキノワグマさえ攻撃します。でも角が落ちると、とたんに落ち込んでしまい、しょんぼりとして気の毒です。今のシーズンには赤ちゃんジカがたくさんいるんですが、見当たりませんね。実は、シカには赤ちゃんを藪の中などに隠す習性があります。ここでもあのU字抗や岩陰にいますので、よく見て下さい」
と、ガイドさん。
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人工的な木のほこらにジッと座っている赤ちゃんジカ
 なるほど、岩の隙間やU字抗などの薄暗い中に小さなシカたちがじっと座っています。「藪などに潜んだ赤ちゃんジカはお母さんが呼びにこなければ絶対に出てきません。そのため、お母さんが事故にあって来られないときなど、潜んだまま餓死したり、雨に濡れて体温を奪われて命を落としたりする赤ちゃんもいます」。赤ちゃんがそれほどまでに産んでくれた母親を頼りとし、母親がそれに必死で応えるのは動物の本能であろう。が、顧みる人間世界では、自己の欲望やわがままのために我が子でさえも虐待し、時には死に至らしめるニュースのなんと多いことか。自然のなかで培われてきた"動物としての本性"を捨て去って、己の欲望だけに生きようとする"人間の不条理"を嘆かわしく思う。動物園は動物の姿に仮託した己自身を見つめ直す場所でもあるのです。
 ヒトコブラクダやスリランカゾウを見やりながら、「ラクダのコブには水が入っているわけではありません。脂肪の塊で、この栄養分を使って砂漠でも一ヶ月は生きられます。そんなに知られてはいませんが、足の裏もぷにょぷにょしていて柔らかいんです。ゾウの妊娠期間は二���二ヶ月です」などと、相変わらずサービス精神旺盛な大槻さん���ガイドに耳をかたむけながら、車は進みます。車の左方にたくさんのバイソンがいます。先ほどは崖の上の方から見たアメリカゾーンを今度は下方から見上げるのです。バイソンたちは、先日の雨でぬかるんだ泥を気にもせず、そこかしこにたたずみ、寝転び、思い思いに過ごしています。その中に今年春に生まれた赤ちゃんが2頭ほど親の陰に見え隠れしていました。
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群れ集うアメリカバイソンたち
  ●猛獣ゾーン
 車は猛獣のトラゾーン・ライオンゾーンへと進んで行きます。トラゾーンでは、大岩の上に夫婦でしょうか、2頭のホワイトタイガーが大きな肢体を投げ出したまま首だけをもたげてこちらに鋭い視線を向けてきます。ホワイトといっても真っ白ではなく、薄い墨茶色のトラ模様があります。
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放し飼いのホワイトタイガー
 車が左方向にハンドルを切ります。すると、木の下に、岩陰に、木組みの台の上にと、あちこちにライオンがたむろしています。そのほとんどが立派なたてがみを持つオスライオンです。
「自然界では、普通、ライオンは一頭のオスライオンと数頭から十数頭にもなるメスライオンたちとで一つの家族を構成しています。これをプライドといいます。狩りをするのはメスライオンの仕事です。でも、ここでは狩りの必要がないので縄張りを争うこともなく、ああして複数のオスライオンが一緒にいます。あっ、ちょうど今、エサバスがこちらに来ましたので、エサをたべるシーンが見られると思います」
と、ガイド兼運転手の大槻さん、ガタンと舗装道路を外れて、木の下や岩陰、台上のライオンにと車を急接近させます。窓ガラスに自分のたてがみが触れるほどに車に近づかれても、ライオンは意に介しません。
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オフロードカーの窓に体毛がくっつくほどの距離
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樹下にくつろぐオスライオンたち
 やがてエサバスが停車します。もちろん舗装された道路上です。するとライオンたちが一斉にバスに向かいます。
「わーっ」
「きゃぁー」
 バスの乗客から興奮に満ちた歓声があがります。窓に付けられた金網の間からエサの肉片を挟んだ金ばさみが突き出されていて、ライオンが、オスもメスもが折り重なってそれに食らいついているのです。グヴォー、ヴォーッと腹に響くような低く力強い唸り声をあげながら、バスのエサやり用の小窓に群がり集うライオンたちの迫力の凄まじさ、これがサファリ���ーク形式の動物園の真骨頂でしょう。
 ガイドの大槻さん、巧みにハンドルを操ってオフロードカーをライオンの鼻先にくっつけるようにして、ライオンの行き先もコントロールしています。「運転が上手くないと彼らにばかにされるのです」。こうした運転技術は、ライオンの群れ全体を管理するうえで必須で、新入社員の研修、訓練でも義務づけられているそうです。
 ところで、放し飼いのトラとライオンを分ける柵らしきものは見当たりません。
「実はトラもライオンも水がにがてなのです。わざわざ水に入ることはしないそうです。そこで水たまりを設け、それで区分けできるのです」
●アフリカゾーン
 起伏では上下に大きく揺れ、急カーブでは左右に激しく振られて、車は最後のアフリカゾーンに入って行きます。ここには、アフリカ水牛、チャップマンシマウマ、エランドなどの草食動物が水辺や小高い岩山などにかたまりになって飼育されています。
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アフリカゾーンにいるアフリカ水牛
 そのなかに数羽のダチョウが頭をツンツンと小刻みに動かして群れています。その大半が、お尻の羽が抜け落ちて地肌が丸出しです。
「気の毒ですが、ダチョウの羽は根元から抜けるとすぐに新しい羽が生えてくるんですが、途中から折れたようになって根元が残ると、すぐ生えてこず、ああした姿のようにお尻丸出しの恥ずかしい格好になるんです。他の鳥のように番で子どもを産み育てるのではなく、メスは何匹もが同じ巣に卵を産みます。で、あとは知らんぷり、オスが卵を温めるのです」
 このようにガイドの大槻さんの動物への愛情たっぷりの、そしてユーモアのある解説と巧みな運転に魅せられて、レンジャーツアーのコースはあっという間に終了したのでした。
 このサファリパークで観察できた動物たちは、どれもがその魅力と愛らしさを振りまいていました。四季それぞれに異なった姿もみせてくれることでしょう。とてもそのすべてをここで語り尽くすことはできません。あなたも足を運んでみてはいかがでしょうか。
(緒方三郎)
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kasuyarou · 7 years ago
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プリパラのコスプレAVを見た話
ノエルお兄様!プリパラのコスプレAVが発売されたわ!
ノエル「よし!(チャキ」
ボクオーン「行くのか?」
ワグナス「……死ぬなよ」
ノエル「クソAVなど何万つかんだか知れないよ」
……すみません、コスAVはろくすっぽ見たことないです。
今回のAV
コスピュア!01
ほろ酔い彼女と濃密××× 04 『酔うと 甘えちゃうんです』
ダブルピンクである。この人たちがセックスすればいいのに。
コスピュア!01
チャプター1:【とびっこ気持ちぃ】
ワグナス!このピアノ何!
遠隔ローターで感じるという触れ込みだよ。ローターが動いてるかどうかは知らねーけど。
フォーチュンパーティーサイリウムRを着た女優のエントリーだ。泣きボクロは忘れていないがカラコン入れるまではしてないか。立ってるときはまあいいとしてもM字開脚で局部にローター当ててるのを下着越しに見せるシーンだと無ければならないはずのふくらみが存在しないのでいまいち乗り切れないが忘れろ。ローター入れて気持ちいいのはそこじゃないんじゃないんですかね……という疑問も捨てろ。バックからのアングルだとローターがそーいうもっこりに見える説も一部には存在するが……まあ床オナに見えなくもない。こすりつけてんのはソファだけど。
曲はいい。
チャプター2:【穴が丸見え……】
穴である。本邦の規制状況で無修正で見られる穴はつまりそーいうことである。
モザイク先輩の初登板だが、どうも初回盤にはなかったらしい。前張りがあっても許されないんすねえ……と思ったら途中から消えやがんの。同じカメラアングルなのにいいのかよ!脚閉じ開脚うつ伏せと長時間にわたり前張りとケツの穴を見続けるコンテンツと化すが別にアナルにおもちゃを入れるタイプの遊びはしない。レオナ君はオナニーするときに棒を使うか穴を使うかという点については学会でも決着がついていないがAVだしいいんじゃないんですかね……元々はR-15だったそうなので不可能だったのだろうが。
また曲はいい。
チャプター3:【なぞらないでぇ……】
パンツの上からスジをすりすり、すりすり……。
販売サイトの売り文句にもある通りレオナ君がスジをいじるわけです。誰の?自分の。ナンデ?知るかよ。
ところ変わって天蓋ベッドである。天蓋ベッドがあるのだからここは北条家に決まっている。なんだ実質そふレオAVであったか。
まずはレオナ君が下着越しオナニーする展開である。そこをこすって気持ちいいんですかね……?という疑問はもう忘れるべきだ。終始この展開……と思いきや途中からなんと第三者の手が出てくる。北条そふぃか?爪はきちんと切ってあって、さすがニュースで深爪を報道されるほどタチの義務に敏感な彼女らしい。画質の都合でよく見えないだけかも知らんが。
やっぱり曲はいい。
チャプター4:【外は気持ちいいね】
露天風呂である。つまりここでフォーチュンパーティーサイリウムワンピR先輩とフォーチュンパーティーサイリウムシューズR先輩はログアウト。お疲れっす。
Tシャツとビキニのボトムスとオーバーニー。縞で紐でローライズだ。トップスはない。オーバーニー履いたまま風呂に入るが心配するな。
途中から洗い場に入る。Tシャツ脱いでおっぱいいじるわけですよ。ずいぶん脂肪分多くないですかねって疑問は繰り返しになるが捨てろ。ボディソープ付けて乳首を隠す……というわけでもなく普通にこすって見えるようになる。だからなんだ度は高いが。最終的にボトムスも外すけど。まあこのあたりはグラビア的というか。
それはそれとして曲はいい。
チャプター5:【毎日シてるの】
毎日オナニーしてらっしゃるという。まあ男子中学生の猿性欲ならそんなもんであろ。
ここでついにフォーチュンパーティーサイリウムヘアアクセR先輩もログアウト。まあベッドに寝っ転がるにはジャマだろうしな。ウィッグと泣きボクロもログアウトするけど。既にコスAVの体を成していない。Tシャツにはなんか赤アンダーフレームメガネの女が描かれている。赤井めが姉ぇか?システムだから仕方がないのか?
チャプター3と違うのは下着越しでなく直接触ることくらいである。元々R-15だったこともあって下着に手を突っ込む形だが。モザイクも追加されたようなのでだいたいこのへんが原因だったんだろーな。
BGM先輩もログアウトするので、飽きたときに環境音楽として垂れ流しにする場合はここで切らないといけない。そんな使い方するやつがいるのかどうかは知らんが。
チャプター6:【見えないと……あっ】
正直もうコスプレしてねーから書かなくてもいい気がするが……
アイマスクされた状態で筆と電マで責められる。Tシャツに書いてある思春期ナントカってのがなんか気になる。以上。
総論
まあ女優である。男性向けであろう性質上どーしよーもないんだろうが、少年としてのレオナ像を出せなかったものか。無理か?無理だわな。みちるも無理無理言うとるわ。ディルドやペニパン持ち出す手もあるかもしれないがハイコンテクストになりすぎるか?おれは見たいけどね。実質そふレオみを感じながら見られるようなプロ向けという考え方もあるかもしれない。
ほろ酔い彼女と濃密××× 04 『酔うと 甘えちゃうんです』
飲酒パート
ホリックトリックサイリウムコーデでエントリーだ。羽根も何もついてない初期仕様。
別にキャラ付けはない。ぷしゅーとか言わない。ふっつーに酒飲んでだべってるだけである。トークの内容もまあ他愛もない話である。にしても鶴光は古すぎるだろ!
なお途中から肩ひもが外れる。最後に梅酒も飲む。原作再現か? まあ関係ないだろーけど。
本番
まあふつーに本番である。互いの愛撫から入り69を経て体位も一通り変えるし。特にキャラ付けをしないのは変わらない。コスは最後まで脱がないのでその点は心配いらない。つまりこれといって書くことがない。まあぷしゅーぷしゅー言いまくるとか男友達の名前を呼ぶとかむしろ男優がコスしてるとかそういうことされてもかえって困るのかもしれないが。
総論
まあ折り目正しくAVなので何も考えずに見る分には困らないと思う。歪んだ目線を向けない限りはな。
わかっていただろうにのう ワグナス
推しのコスプレAVを見るというほとんど自傷行為みて―なことをやったわけだが、鑑賞したという人を見た覚えがほとんどない(いるはいるのだが少ない)し、まあせっかくだから見てみようかという軽い気持ちで3300円通算3時間を費やしたわけだ。まあ女優がおっぴろげてアンアン言ってるんだから素直な気持ちで使えという話なんだろうが、���品のオタク的には鑑賞会でも開いて酒飲みながらゲラゲラ笑いながら見るのが正しいのかもしれん。
他にも色々出てるようなのだが、そふぃ率が高いような。やっぱ初見だと一番それっぽいからなんすかね。実際エロ同人も1年目まではそこそこ出てたよな。2期あたりからピンだとさっぱり出なくなっちゃったけど。
ところでドロシーのやつも同じところから出てるようなんで、おれの代わりに誰か見てください。おれはオリる。
それはそれとして、今回取り上げた二人がセックスするタイプのAV出ませんかね。どうっすかね。(自傷)
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scalysnail · 7 years ago
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白騎士の冒険 夢幻の闘技場 三
 ヴェルカン��誤解していたことだったが、闘士はそう毎日試合に駆り出されるわけではない。劇場はその名の通り演劇や大道芸の見世物の用途で用いられることが大半であり、一日に行われる剣闘試合は一度か、多くても三度。全く行われない日もある。  また人間同士の戦いだけでなく、人間と猛獣、あるいは猛獣同士の戦いが組まれることもある。ヴェルカンたち新入りが初日に行った連戦は、減った闘士を補充する際に適正検査を兼ねて行われる特別なものであったらしい。
 だが、試合のたびに誰か、もしくは何かが死ぬのは変わらない、と雄牛の血で汚れた腕を洗い流しながら思う。  鋭い角を振りかざし、地響きを引き連れて迫ってくる、人とはまるで勝手の異なる巨体は、それだけで身を竦ませるに足るものだった。とっさに槍の石突を地面に立てかけて全力で踏ん張らなければ、貫かれていたのは自分の方だったろう。  この地に来てから幾らかの日が過ぎていた。が、ヴェルカンたち新米闘士が駆り出されることは思いのほか多い。興行師は有名で観客の受けも良い古参の闘士を極力温存したがり、危険な試合、地味な試合には新米を優先して送り出す。時には他の闘士団の強豪闘士に倒させるために新人をあてがうこともある。  そういうわけであるから、同時期に入った者もすでに幾人かが姿を消した中、いまだに健在である己はやはり運が良いのだろうか、とも思う。
 だがそれよりも、当初の吐き気を催すような嫌悪感が次第に薄れつつあるのをヴェルカンは感じていた。  この慣れとも適応とも呼べる事態を喜ぶべきなのか、恥じるべきなのか。  己のために他者を弑することが日常となった時、己はどうなってしまうのか。
 そして思うのは故郷のこと。領主がいなくなり、封土はどうなったのか。衛兵隊長やみんなは大騒ぎしているのではないだろうか。  いつか家に帰るその日まで、運が続けばよいと思う。  しかし、いつ?  幾日?幾月?もしくは幾年?いつか終わるその日まで、何人の命と引き換えに?
 剣奴として買われてから幾度となく重ねた思案は、決まってそこで停止する。  そこから先に踏み出してはいけないという予感があった。  だから、考えない。代わりに明日をどう生き延びるか、興行師の目を盗んで逃げだすには、と夢想じみた思索にただ逃げ込む。  今日も、明日も。その先も。おそらくはここでの暮らしが終わる、その日まで。
 客席の地下、闘士控え室に隣接する訓練場で���山子相手に稽古に励んでいたヴェルカンは、その闘士が入って来たとき、目を丸くした。
「戦う格好ではないな」
 腹や肩を大きく露出した防具が、着用者の性別を如実に語る。おまけにまだ若い女ではないか――思わず無遠慮な視線を向けたヴェルカンを険のある目で見上げながら、艶やかな黒髪を後ろで束ねた女闘士はずかずかと近づいてきた。
「あなた新入りでしょ。甘く見てると怖いわよ」
 脅す女の肌は抜けるように白い。整った顔立ちと合わせて、よくできた人形のようだった。
「北方民族か」
 遥か北の地に絹のごとき肌を持つ民がいると聞く。書物で得た知識を頼りに訊いてみれば「当たり」と思いのほか嬉しそうな返事。
「そちらは白の帝国の人間に見えるわね」
 正体を明かしてはならないという命題が脳裏を埋め、咄嗟の返答を鈍らせる。寸の間の沈黙をどう捉えたか「図星ね」と女がいたずらっぽいにやにや笑いを浮かべた。
「外国人は別に珍しくもないからね。むしろこの国の奴のほうが珍しいくらい」
 名声や金銭目当てで自ら戦奴になるのは少数派で、囚人や外から奴隷として売られてきた者が大半であるという。
「あなたも売られた口でしょう。でも腕は立つんだって評判よ」 「あなたも、ということは、そちらもそうなのか?」
 女は答えずにヴェルカンの前を通り過ぎ、壁際に設えられた武器の棚に手を伸ばした。取り出したのは先端に巻き付けた布を槍の穂に見立てた棒。さほど高くない女の背を超える長大なものだったが、手の中でくるりと半回転させ、そのまま小脇に抱えるように構える姿は思いのほか様になっている。  だしぬけに飛んできた棒の穂先がヴェルカンの右手の木剣を打ち、くぐもった音を立てた。
「出番までは間があるの。一本どうかしら?」
 どこか見下ろすような挑戦的な目つきに、思わず眉が動いた。無言で棚に歩み寄り、手に取ったのは女と同じく穂の代わりに布を巻いた棒。ただしこちらは幾分短く、ちょうど帝国の兵士が使う片手槍に近い感触だ。  訓練場の中央、模擬戦用に砂が敷かれた一画に場所を移したふたりは向かい合った。片やヴェルカンは左手の盾を突き出し、右手の棒を高く掲げ、対する女闘士は両手で支えた棒を低く落とし、やや地面に向けた穂先を揺らめかせる。
「面白い型ね」 「そちらこそ」
 短いやり取りの終わりは斜めにすくい上げる棒の穂先。ほぼ反射的に盾で払いのけざま、お返しと放った突きを、女闘士は半歩退きながら傾けた棒で受け流した。  素早く引こうとした棒はしかし、円を描くように動く穂先に絡め取られた。そのまま巻きつくように延びてくる突きは枝を這う毒蛇を思わせた。  咄嗟に棒を手放し、入れ違いに突きだした盾で受け止めた毒牙は思ったよりも軽い。  武器を捨てたヴェルカンに向かって次々と飛んでくる突きは変幻自在、右から薙ぐように迫る攻撃に向かって盾をかざせば隙間の空いた足元を狙われ、慌てて盾を向けた時には既に引かれていた穂先が肩めがけて飛んでくる。  いずれも挑発するような連撃は誘いだ、とヴェルカンは分析した。おそらくどこかで力を込めた本命の一撃が飛んでくるはず。それを躱し、隙をついて優勢に持ち込む。  右から飛んできた攻撃を最小限の力で受け流す。盾の表面を撫でた穂先が弧を描いて女の右肩の後ろに流れた。  細い肩の筋肉がわずかに動くのが見て取れ、来る、と直感する。  毒蛇のごとくよじらせた華奢な体全体に満たされた力の奔流が、肩から腕へと流れ込むのが目に見えるようだった。  顔を狙って空を切る穂先を盾で受けるのではなく、身を退いてぎりぎりの間合いで躱した、はずだった。  目の前を流れていくはずの穂先が、突如するりと伸びてきた。  驚く間もなく顔面に衝撃が走り、視界に火花が散る。目元に溢れた熱が鼻の奥を伝い落ちる感触に慌てて手をやると、掌全体がべったりと赤く濡れた。
「あら男前」
 目を細める北方人の右手、力なくぶら下げた棒が先ほどより長く握られていることに気付く。命中の直前に握る手の力を抜き、遠心力を利して棒の間合いを長く押し出したのだ。まさに一瞬の早業だった。
「女だからって手加減してるから怪我するのよ。新入りさん」
 図星を刺された羞恥と小馬鹿にするような眼差しがないまぜとなり、生臭い息苦しさも手伝って頭に血が上った。伝い落ちる鼻血を舐め拭き、足元に転がる棒を拾って立ち上がるや否や、ヴェルカンは攻勢に転じた。  顔を狙って右手から薙ぐように放った突きを、女は上半身を大きく左に倒してやすやすと躱した。だがそれは形ばかりの一撃、素早く引いたそれと入れ違いに、女の頭を迎え撃つ形で盾の縁を繰り出す。  女の目が初めて驚きに見開かれた。それでも歪んだ姿勢のまま棒をかざして受け止め、その反動で体勢を立て直してみせる。  くるりと身を翻しざま一歩退き、再び踏み出す爪先が、砂に円弧の軌跡を描いた。だが叩き込まれる棒の先、そしてヴェルカンを見据える切れ長の目にはこれまでにない力が込められている。  再び退いた女が棒を大上段に掲げた。対するヴェルカンは突き出した盾の後ろに丸めた背を隠す。向かい合って構えたまま、互いに回り込むように足を滑らせる。  膠着したかに思えた状況は突然動いた。ヴェルカンが盾の上辺からわずかに顔を覗かせた瞬間を見逃さず、棒が振り下ろされた。  だが次の瞬間、もたげられた盾に女の棒が弾かれた。そのまま���子を被るがごとく盾を掲げたヴェルカンは大きく足を開いて砂を蹴った。  ちょうど女の足元に跪くような形になったヴェルカンは、煌びやかな前垂から覗く白く長い脚を間近に、被ったままの盾の下から女の顔目がけて棒を突き上げた。  相手の息遣いが激しく乱れた。手応えを感じる間もなく細い足が空を掻き、砂場の外に降り立つ。
 顔を背け、口元を押さえる女の目は驚きのあまりこぼれ落ちそうなほど。しきりに口元や鼻に手をやり、怪我がないことを確かめる仕草がどこか新鮮で、思わず笑みが浮かぶ。  次に振り向いた女の顔に浮かんでいたのは敵意と闘志。どうやら本気で怒らせてしまったらしいと気づき、盾を持ち上げ、再び身構える。  ところが、女は不意に踵を返した。背を向けたまま、手をひらりと振って見せる。
「もうすぐ試合なの」
 つい今しがたまでの燃え盛る闘志はどこへやら、後でね、と言い残した声音は朗らかそのもの。棒を掲げた間抜けな姿のまま、ヴェルカンはその背中が扉の向こうに消えるのを見送ることしかできなかった。
 北方人の闘士が再び姿を見せたのは日没間近、夕食の刻限。厨房から麦粥の椀を受け取り、後続の邪魔にならぬよう足を運んだ控え室は、予想どおり誰もいない。静かに食事を楽しめそうだと長椅子の端に腰かけた時だった。  無人の控室に、戸を開く音は意外と大きく響いた。  目を向けた先で、ヴェルカンと同じく椀を抱えた女闘士が手を振っていた。
「座っても?」
 訊くや、答えも待たずに隣に腰を下ろす。
「あなた結構強いのね。見直した」 「そちらこそ」
 今夕食を共にしているということは、あの後の試合で勝利したということ。言外に褒めると女はくすぐったそうに笑った。
「素人には見えないわね。戦士か何かだったの?」
 気をよくしたか、続けざまに尋ねてくる。どう答えたものか考えあぐねていると、女はふと黙り込んだ。
「私もあなたと同じ。ここには売られてきたの」
 突然変わった話題が、昼間ヴェルカンが放った質問に対する答えだと気づくのにいささかの間を要した。
「お察しの通り、あたしは北の方の村にいたんだけどね。人買いに襲われて連れ去られたってわけ」
 彼女と数人の友人は故郷を遠く離れたこの地の闘士団に売り飛ばされた。  右も左も分からぬ少女たちは、いきなり闘技場に立たされることになった。触ったこともない武器は細腕に重くのしかかり、剥き出しの肩や腰がやけに寒かった。
「女子供に戦わせるのか!?」
 闘技試合といえば腕自慢、少なくとも大の男が互いに優劣を競い合うものと決めてかかっていたヴェルカンは思わず唸った。
「世の中には可愛い女の子が血だるまになって苦しむ姿を見るのが好きな変態がごまんといるのよ」
 自らを可愛い女の子と言ってのけ��ことをからかえる空気ではない。  相槌すら忘れたヴェルカンの事など意にも介さず、女は続ける。
 闘技場には飢えた肉食獣が放たれていた。
「虎って知ってる?」 「聞いたことがある。縞模様のある金色の猫だろう」 「……まあ、あながち間違いでもないかな」
 牛よりも大きく、猫がネズミを狩るように人間を食い殺す怪獣だと聞き、ヴェルカンは慄然とした。
 真っ先に虎の餌食になったのは女闘士の親友だった。
「確かにおっぱいもお尻も大きくてよくモテたけど、獣の目にも美味しそうだったのね……でも頭を砕かれちゃ美人も形無しだわ」
 熱に浮かされたように話す口調こそ軽いものだったが、その目はどこでもない一点を凝視し、動かない。ヴェルカンもまた、その硬く凍てついた横顔から目が離せなかった。
「まん丸な目ン玉がこう、ぽろっと飛び出しちゃっててさ。残った下の顎に舌がくっついてるのよ」
 暴力を知らずに育ったいたいけな娘たちにはあまりに凄惨な光景だった。ある者は脇目も振らずに逃げ惑い、またある者は腰を抜かして声にならぬ悲鳴を漏らし。残虐な見世物に観客は嫌悪と興奮の声を上げた。
「で、そこで助けてくれたのが先生――先輩の闘士なんだけどね」
 突如、馬に跨った闘士が現れ、食事に夢中になっていた虎に槍を投げつけた。虎は怒り狂い、暴れまわったが、闘士はその周りをぐるぐる回りながら次々に槍を投じ、ついに獣は沈黙、場内は熱狂にどよめいた。
「でもね、槍を何本も突き刺されて、真っ赤な血を流して苦しむ虎を見て思ったの。こいつも、あたし達と同じなんだなって」
 おそらくは訳も分からず捕らえられ、故郷から遠く離れた地で見世物の種として殺さ��た哀れな怪獣。友人の仇のはずなのに目が離せないでいる彼女のもとに悠然と歩み寄ると、煌びやかな鎧を身に着けた闘士は静かに手を差し伸べた。  乙女の危機に駆けつける正義の戦士。そんな筋書きの試合だったことを知ったのはずっと後のことだ。
 その先輩闘士は生き残った少女たちに武器の扱い方、戦うすべを教えた。少女たちは自然と彼を先生と呼び、敬うようになっていった。  しかし闘士は死ぬのも仕事のうち。少女たちの未来は決して明るいものではなかった。
「いちばん運のいい子は余所に買われて抜け出した。次に運の良かった子は怪我で使い物にならなくなって放り出された。いちばん運の無かった子は死んじゃった」
 そして、同様の運命は“先生”にも。
「なんでだろうな、あんなに強かったのに、牛に踏み潰されちゃうなんて」
 体調は万全、装備もよく手入れされていたはずだった。当時最強と���われた闘士の、あまりにあっけない最期。  しばしば闘士は兵士に似ている、と言われることもある。兵士は勝つために戦い、闘士は相手を倒すために戦う。  一見��じに見えて、そのふたつには大きな隔たりがある。闘士には逃げることも、戦い以外の道を選ぶことも許されない。一旦闘技場の砂を踏み、相手と向かい合えば、外に出るにはふたつにひとつ。相手を殺すか、もしくは相手に殺されるか。新米も古兵も変わらぬ宿命。
「いつの間にか残ってるのはあたしひとり。これは運がいいのかな。それとも悪いのかな」
 誰に向けて放った問いかけだったのか。ひとり考え込む女の姿にどこか親近感を覚える。目を向けた横顔、形の良い鼻筋に小窓から差し込む残照が赤い線となって浮かび、思わず見とれる。
 と、女がだしぬけに振り返った。真っ黒な目に真っ向から覗きこまれ、訳もなくどぎまぎする。
「はい、あたしの話はこれでおしまい。次はあなたの番」
 なんともあっけらかんとした口調に、いささか興を削がれた思いで眉をひそめる。  だがほぼ一方的とはいえ、ここまで話させたのだ。だんまりを決め込むのも品がないだろう。  しかし、どこまで話していいものやら。ヴェルカンは腕組みして唸った。己を捕えさせる方便だったのだとしたら、いまさら身分を隠しても仕方ないかもしれない。  が、宝石泥棒の罪で捕まった奴隷が本当は皇帝に仕える騎士だなどと、誰が信じる?
「……君の読み通り、私は白の帝国から来た。さる領地で兵士をしていた」
 嘘ではない。騎士に叙される前は西の湿地領の衛兵隊に属していたのだ。  衛兵として長年勤めた功績が認められ、休暇を許可されたこと。そうして物見遊山に訪れたこの町でひょんなことから無実の罪を着せられ、捕縛されたこと。
 事実を微妙に捻じ曲げ、脚色して話しながら、ふと、女もまた作り話をしていたのではないかという疑念が浮かぶ。  しかし、やはり嘘をつくのはあまり心地の良いものではない。露見に対する恐れや、相手を裏切ることへの罪悪感がないまぜとなり、胸がざわつくような心地がする。  内心の動揺を押し隠して話すヴェルカンを、女は興味津々のていで見つめていたが、捕縛された後にそのまま奴隷市場行きとなったくだりで気の毒そうにため息をついた。
「役人のやつら、囚人を売りとばした上前で小遣い稼ぎしてるのよ。ついてないね」
 そのため、本来なら釈放されるような微罪、あるいはまったくの無実であっても強引に罪状をでっち上げ、奴隷市場送りにされることすらあるのだという。  それもこれも、闘技場を中心にした巨大な需要があるためだ。
「この町のすべてが劇場を中心に回ってる」
 毎日、国内外から多くの人間が劇場を訪れる。そうして注ぎ込まれた金貨は水が低いところへ流れ落ちるがごとく溢れ出し、町全体を潤す。  だが同時に、おびただしい量の血も流れている、と女闘士は語る。
「町を流れる金貨はどれも、あたしたち闘士の血にまみれているの」
 訓練場は静かだった。いつしか窓から差し込��でいた夕日の最後の一筋も消え失せ、代わりにどこかで灯されたかがり火の光がわずかに差し込む薄暗がりの中、女の白い肌だけがうっすらと浮かび上がるようだった。  目を落とした先、冷めた麦粥の面が揺れた。匙を差し込んで口に運んでみれば、熱を失った粘りが味気なく舌に絡みついた。
 とりとめのない話をしながら食事を終えた頃には、すっかり日が落ちていた。訓練場を出たふたりは、そこで興行師に出くわした。
「こんな時間に何をしている」
 ヴェルカンを険のある目で見上げる興行師の手には鍵束。夜間の施錠のために来たのだろう。  素直に従うのが癪で沈黙を返事にすると、舌打ちがひとつ飛んでくる。
「奴隷、明日は試合だぞ。とっとと寝て備えろ」
 言い捨て、踵を返して去っていく興行師の背中に向かって、それまで黙っていた女闘士が舌を出した。
「すっかり嫌われてるわね」
 初日の口喧嘩がいまだに響いているのかと思ったが、どうやらそれだけではないらしい。
「白騎士ヴェルカンの事をこき下ろしたりするからよ」
 思わず眉をひそめると、女は鼻を鳴らした。  聞けば、興行師は白の帝国のヴェルカンなる騎士を題材にした詩を収集しており、彼の話となると目の色が変わるのだという。
「いい歳して物語読みなんて、笑っちゃうよね」 「ヴェルカンの詩だと?」
 自分がそのヴェルカンだなどとは言い出せず、何ともむず痒い心地に耐えながら問うてみる。
「そ。『巨人殺し』の異名をとる若き騎士。その強さと知略でもって未踏の秘境を難なく乗り越え、その勇気は世にも恐ろしい怪物すら屠り、その美貌でもって数多の美女と浮名を流し……どうかしたの?気分でも悪いの」
 己が詩歌に語られているらしいことは噂で聞いてはいたが、どうもかなりの脚色が加えられているようだ。  それにしても、己の風聞を赤の他人として聞くというのは、なんとも妙な気分だ。
「ほんと、すごい人間もいたものね」 「どうせ子供だましのでたらめなんだろう」 「これで意外と面白いんだよ。うちの団にも持ってる人がいたから、貸してもらいなさいな」
 ふと、帝都の宴で会った黒岩領の令嬢を思い出す。彼女が憧れたという騎士ヴェルカンは、果たして宴に参加していたヴェルカンと同一だったのか。
 どちらにせよ、このままではヴェルカンの詩も打ち止めだな。
 そんなことを自嘲的に思い浮かべた直後、まったく別の考えにとらわれる。  己がこの町に閉じ込められていようと、さらには名もなき闘士として死んでいたとしても、お構いなしにヴェルカンの詩だけが新たに紡がれていくとしたら?
 それはとても恐ろしく、また同時にどこか寂しいことのようにヴェルカンは感じた。
 今日の闘技試合は出来試合になる。
 そんな噂を小耳に挟んだのは、翌朝の厨房でのことだった。
「なんでも相手方が大物を繰り出して来るらしい。それに先んじてうちの団長にいくらか包んだって話だ」
 椀を受け取��た時、そんな声に思わず振り向けば、古参の闘士たちが額を突き合わせてひそひそとやっているところだった。
「で、今日死ぬ気の毒な新入りは誰なんだ?」 「さてな。ひょっとしたらお前かもしれんぞお」
 冗談に肩を震わせる闘士たちとは対照に、ヴェルカンは腹の底が冷えていくのを感じた。昨夜の団長こと興行師の言葉を思い出したからだ。
 つまり、今日死ぬことになっているのは私か。
 出来試合というからには相手を勝たせるためにヴェルカンに対してなんらかの妨害が加えられることも考えられる。何も試合中ばかりではない。試合前に事故に遭う、何者かに襲われて怪我をする、食事に毒を盛られる――  そこまで考えたところで、ふと手元の椀に目を落とす。
「後がつかえてるんだ、さっさと行きな」
 確かめる間もなく促され、慌ててその場を後にする。むろん、朝食は後でこっそり捨てるつもりだ。
 問題の試合は午後一番に行われることになった。一食抜いたところでどうということはないが、不慮の“事故”を避けるため、無人の宿舎の寝台で何もせずにじっとしているのはさすがに少しばかり堪えた。  雑用係に手渡された防具の裏地や剣の柄に毒針でも仕込まれてはいまいかと確かめ、そこでようやく妨害工作など杞憂だったかと胸をなでおろす。
 が、だからといって安心はできない。試合前は安全でも、試合中に何が起こらぬとも限らない。何より相手は出来試合を望まれるほどの古参闘士、その人気は腕前に裏打ちされたものだろう。  となれば小手先の通用しない相手とみるべきだ。
「さあさ、皆さまお待ちかね!闘技試合の時間にございます!!」
 陽光を照り返して焼けた砂、そびえる客席、取り巻く観客と歓声。もはやすっかりおなじみの光景の中、すっかりおなじみとなった司会の口上を、馬上のヴェルカンはひとり、砂地の真ん中で聞いていた。対戦相手の姿はなく、控室に通じる大扉も閉ざされたまま。
「本日命を賭けて戦うはこの男!日は浅くともその堅実な戦いぶりで着実に勝利を重ねる、『白刃団』期待の新人!」
 わっ、と強くなる歓声に両手を挙げて応える。だがいつもよりもいささか弱い。彼らの本当の目当てはこの後に来るからだ。
「対するは、かつては貴族でありながら五年前に闘技場の砂を踏んで以来、常勝無敗を誇る生ける伝説!『赤羽組合』が誇る『血塗れ卿』!」
 同時、ラッパと鼓の音、そして割れんばかりの歓声を引き連れて大扉がゆっくりと持ち上げられた。  色とりどりの布で飾られた馬の背に跨って悠然と進み出たのは、斧を提げ、盾に投槍を挟んだ壮年の闘士。流麗な浮き彫りを施された青銅の板金鎧は黄金色の光を放ち、兜に挿した色とりどりの羽根飾りが映える。
 これでは道化だな。ヴェルカンは兜の下で自嘲の笑み��浮かべた。かろうじて胴を覆う鎖帷子も、古びた無地の円盾も、豪奢を具現化したような相手と並べばいかにもお粗末。跨る馬もどこか毛並みの悪い痩せ馬だ。  それもそのはず、ヴェルカンは無様に負けるためにこの場に引き出されたのだ。これ以上の道化ぶりがあろうか。
 だが、無論むざむざ殺されてやるつもりはない。
 決意は口にはしない。ただ視線に乗せ、相手に叩きつける。
 やがて司会が開戦を告げ、血塗れ卿の馬がゆっくりと進みだした。合わせてヴェルカンも馬の腹を蹴る。相手が右手に向かって進めば、ヴェルカンは内壁沿いを反対方向に走る。最初は緩やかだった馬脚が次第に速まり、互いに追いかけるように円を描く軌道は次第に狭く。ついに真っ向から向き合った彼我の距離が急速に縮まる。  血塗れ卿が投槍に手をかけた。素早く丸めた背中のすぐ上を槍が唸りを上げて飛び越していく。体勢を整える前に相手がさらにもう一本を手に取るのが見え、盾を目一杯突き出す。  激しい衝撃を伴って盾を貫通した穂先が把手を握る親指のすぐそばに飛び出し、木屑を浴びせた。長い槍が突き刺さったままの盾がにわかに重みを増し、引きずられる前に投げ捨てる。その間に血塗れ卿は斧を抜き放ち、振りかぶっていた。
 すれ違いざまに斧と剣がぶつかり合った金属音と火花は瞬く間に背後に流れ去った。咄嗟に力を抜いても腕ごともぎ取られそうな衝撃が肩を苛む。  思わず顔をしかめながらも馬首を巡らせて、血塗れ卿と再び相対しようとした時だった。  手綱を引いて制動をかけた瞬間、体が前のめりにつんのめった。正確には足腰を支える鞍が突然跳ね上がったのだ。  何が起きたのか理解できず、暴れる馬をどうにか御しながら見下ろせば、馬具の留め紐が何本かちぎれ、馬の動きに合わせてはためいている。  体を支えきれなくなる前に身を投げ出す。飛び降りるというよりは半ば転げ落ちる形で背中を地面に打ちつけ、柔らかい砂地ではあっても一瞬、息が詰まった。  垂れ下がったままの馬具を引きずって駆けていく馬を見やりながら立ち上がろうとしたところで、杖代わりにしようとした剣が根元から無残に折れていることを知る。  たかがいちど打ち合っただけで……不格好な切断面を呆然と見つめることしばし、ようやくこれこそが妨害工作だと気付く。おそらくは馬具��同様、すぐに壊れるよう細工が施されていたのだろう。血塗れ卿の勝利を確実なものとするために。  舌打ちひとつ、問題の血塗れ卿に目を向ける。悠々と馬首を巡らせ、歓声に応えるように斧を振り上げる。そのまま馬の腹を蹴り、ヴェルカン目がけてまっすぐに突進してくる。  馬に乗った人間があれほど大きく見えるなど、初めて知った。横っ飛びに身を躱し、頭を覆って倒れ込んだ直後、目と鼻の先を巨大な蹄が踏みしだいていく。  勢いをつけるため、相手がいったん離れていく隙にあたりを見回し、��えるものがないか探す。
 乗り捨てた馬は?遠すぎる。血塗れ卿が最初に投げた槍は?同様。  あとは己が投げ捨てた盾。だが刺さった槍の柄が邪魔で防具としては役に立たない。ならば……
 迷っている暇はない。即座に飛び起き、走り出す。背後で蹄の音が少しずつ速く、そして近づいてくる。  人間の脚で馬と張り合うなど、どだい無理な話だ。だが一瞬でも長く、一歩でも遠くを目指し、必死で足を動かす。  さほど長くないはずの距離が限りなく遠く感じた。一歩ごとに近づいてくる馬蹄の音に合わせて斧の刃が食い込む幻視が何度も脳裏をかすめ、背中にちりちりと痛みにも似た感覚が走る。
 投槍に飛びつきざま、体を丸めて転がった勢いで身を起こし、相手と向かい合う。既にすぐそばまで迫っていた馬と血塗れ卿は逆光となり、さながら黒々とそびえ立つ塔のよう。砂埃を蹴立てる地響きが足元から伝わり、早鐘を打つ鼓動をかき乱す。手は汗で濡れ、槍が落ちぬよう握り直す。  振り上げられた斧が陽光にぎらりと輝く。筋を浮かべた馬の筋肉が捩れ、躍動するのが異様にゆっくりと見て取れる。  少し傾いた太陽が馬の鼻面に隠され、その輪郭が明々と浮かび上がった瞬間、ヴェルカンは槍を力の限り振り抜いた。
 突然目の前に現れた盾の縁に横っ面を強打された馬が驚いて嘶き、後脚で立ち上がって激しくもがいた。その拍子に血塗れ卿が体勢を崩し、大きくのけ反る。  この機を逃すヴェルカンではない。間髪入れずに槍を再び振り上げる。  穴の開いた円盾と斧が同時に落ち、続く一撃を胸に受けた血塗れ卿の尻が鞍から離れた。  直後上がったどよめきは驚愕。
 伝説の血塗れ卿が背中を地につけた。それも相手はどこの馬の骨ともつかぬ新米闘士。
 戸惑いと驚きがないまぜになったざわめきだけが不思議と耳につく中、ヴェルカンは素早く拾った斧を振り上げた。  打ち下ろした斧の刃は、血塗れ卿が咄嗟にもたげた盾の面に深々と突き刺さった。引き抜こうとするより早く盾もろとも激しく揺さぶられ、奪い取られる。  お返しとばかりに倒れたままの血塗れ卿を盾の上から何度も蹴りつけ、五度目で盾をもぎ取ることに成功する。だが喜ぶ間もなく、今度は血塗れ卿の蹴りに足を絡め取られ、たまらず倒れ込んでしまう。  入れ違いに起き上がった血塗れ卿がヴェルカンに馬乗りになった。青銅の手甲に覆われた拳が鎖帷子越しの腹に食い込み、声すら上げられないほどの衝撃と激痛が走る。  さらに追い打ちをかけてこようとする拳を痛みをこらえつつ押しのけ、開いた右手で相手の兜を掴んで上半身を跳ね上げ、頭突きを食らわせる。
 兜同士が金属の悲鳴を上げ、残響が頭蓋を揺さぶった。相手も同様だったらしく、頭を押さえて唸りがらヴェルカンから離れようとする。そこを逃さず、掴んだままの兜を力任せに引き抜き、現れた髭面に向かって思い切り叩きつける。  立ち上がろうとすると殴られた腹にひきつったような痛みが走った。前かがみになり、腹を庇いながら肩で息をするヴェルカンの前で、血塗れ卿がゆっくりと身を起こした。
「いい顔になったな」
 顔の上半分を青筋で、豊かな髭に覆われた下半分を血で飾った血塗れ卿はヴェルカンの挑発に凄まじい形相を浮かべた。
「……殺す」
 折れた歯とおびただしい血に混じって、そんな言葉が吐き出される。冷徹な闘士の顔が剥がれ落ち、怒りと殺意が剥き出しになった瞬間だった。  血塗れ卿は四足獣のごとく飛びかかってきた。押し倒されながら、その顔面に爪を立てる。  そこからはお互いにがむしゃらだった。互いに殴り、蹴りつけ、上になり下になり、髪を掴み髭を引っ張り。もはや試合などと呼べるようなものではなく、さながら子供の喧嘩のごとき戦いを、観覧席を埋め尽くす観客たちが声援も忘れて見つめる。  そしてとうとう、ヴェルカンの体重を乗せた肘打ちを横っ面に受けた血塗れ卿が仰向けに倒れ込んだきり、動かなくなった。顔を歪め、激しく肩を上下させるだけとなった相手を見下ろしているうちに、麻痺していた痛覚が次第に戻ってきて全身を苛む。だが、まだ膝はつかない。それが許されるのは己の勝利が確たるものとなってから――
 客席から上がるは賞賛の歓声ではなく、困惑のざわめき。司会すら言葉を忘れ、ただ嫌なざわめきだけが増幅されていく。  ふと、古い記憶が蘇った。騎士に叙される前、帝都で行われた闘技試合に参加した時のことだ。己が優勝を手にした時、多くの貴族が異を唱えた。
 曰く、奴隷上がりの下男に優勝はふさわしくないという。
 あの時は帝都や闘技試合の威容にすっかり飲まれて分からなかったが、今、当時の光景が蘇るにつれ、ふつふつとわき上がってくるものがあるのをヴェルカンは感じていた。  血塗れ卿のもとに歩み寄ったヴェルカンは、感情の赴くままに青銅の胸当てに足をかけ、踏みにじった。血塗れ卿が苦しげに呻き、美しい浮彫がみるみる砂で薄汚れていく。  なるほど、確かに血塗れ卿は歴戦の闘士であり、また自分はこの男を勝利させるために砂場に上がったかもしれない。だが数多の妨害をくぐりぬけてなお己は勝った。実力にせよ運にせよ、この男より強く、より勝利に足る存在だったのだ。だがなぜ誰も認めようとしない?新入りの自分には分不相応だとでもいうのか?  血塗れ卿を足蹴にしたまま、誇示するように客席を見上げ、睨みつける。
 こちらの勝利を認められないというならそれでいい。代わりに相手を徹底的に無様に、惨めったらしく敗北させてやるまでだ。
 その意志が伝わったわけでもないだろうが、司会がようやくヴェルカンの勝利を告げた。だが称える口上にいつものきれの良さはなく、それに合わせて上がる喝采にもどこか勢いがない。  これ以上この場にいても余計気分がささくれるだけだ。もはや相手にとどめを刺すのも馬鹿馬鹿しく、最後に軽く頭を蹴りつけてその場を後にする。  ふと振り返り、頭を抱えて呻く血塗れ卿の姿に僅かに溜飲を下げ、直後、そんな己にどうしようもない嫌悪感を覚えた。
 控室では興行師が待っていた。勝ってしまったことで叱責されるようならどうやり返してやろうかと考えていたヴェルカンだったが、出迎えたのは満面の笑みだった。
「やったな新人。あの貴族崩れをやっつけるとは、見直したぞ」
 予想外の言葉に鼻白むヴェルカンに構わず、興行師は雑用係を呼びつけた。てきぱきと鎧が外され、手拭いが渡される。  そこらじゅうに痣や擦り傷をこさえた体が露わになると、興行師は顔をしかめた。
「こいつは派手にやられたな。どれ、見せてみろ」
 近くの椅子にヴェルカンを座らせ、傷痕に膏薬を塗り、包帯を巻いていく。手慣れた手つきを意外な思いで見つめていると、盃が手渡された。満たされていた黄色い半透明の液体を飲み下すと、むせ返るような強烈な甘味が喉を焼き、その熱が全身に広がって暖めていくような感覚があった。
「みんな驚きのあまり声も出ないって感じだったな。だが明日になりゃ、町はお前の話でもちきりのはずさ」
 淀みなく動く手をぼんやりと眺めていたヴェルカンだったが、ついに意を決して顔を上げた。
「私を死なせるつもりだったのか」
 問うや、興行師の手がふと止まり、ほどなく再び膏薬を塗り広げ始める。
「どこでそれを……いや、やっぱりいい」
 折よく処置が終わったとみえ、薬入れを懐にしまうと、腰に手を当ててため息ひとつ。
「まあ、そうだな。確かに武器と馬具に細工をした。歴戦の血塗れ卿の相手に新入りのお前をあてがった」 「なぜ」 「赤羽から勝たせて欲しいと要請があったからな。金も受け取ったし」 「なぜ私だったんだ?」 「別にお前でなくてはならん訳もない。新米や弱いやつなら誰でも選ばれる可能性があり、今回はたまたまお前だったってだけだ」
 あっけらかんとした口調とは裏腹に、興行師の表情がみるみる変化していくことに気づく。ご機嫌の皮の下で苛立ちが蠢き、次第に露わになっていく。
「勘違いするなよ。確かに俺は相手が勝ちやすいように仕組んだが、お前が勝つこと自体まで禁じた訳じゃねえ。現にこうやってお前が戻って来ても、小言ひとつ言わなかっただろうが」
 お前の無駄口のせいでそうもいかなくなったがな、と嫌味たっぷりに付け加えてから、興行師はぐいと顔を近づけてきた。
「確かにお前のことは気に入らんが、何も死んでほしいと思ってる訳じゃねえ。奴隷ってな安い買い物じゃないんでな」
 意外といえば意外な言葉に思わず口をつぐむと、相手はさらにたたみかけてきた。
「不当な扱いが嫌ならもっと敵を殺し、名を上げろ。最初に言った通り、砂場の上では何をしようがお前たちの自由だ。  貴族だろうが罪人だろうが関係ない。強い者、長く生き残った者が実力に見合った扱いを受ける平等な世界、それがこの闘技場だ」
 ひと息に言い切ると、反論の暇も与えずに立ち上がった。
 無人となった控室でひとり取り残されたヴェルカンは、ややあってため息をついた。  力が欲しい。最後にそう思ったのはいつのことだったろうか。  そして今再び思う。腕力が、富が、名声が欲しいと。  この地で生き延びるために。いつか帰る日のために。
 そしてはたと気づく。己ひとりのために力を願ったのは初めてだと。
 立ち上がろうとした瞬間、治まりかけていた痛みがぶり返し、顔をしかめて腰を下ろす。  もう少し休んでから……宿舎に帰って寝るとしよう。
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stem115 · 8 years ago
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Discovery
事変大好き仲間からの突然のライン。
“やばい、久しぶりにdiscoveryのライブ見てしまった。やばい”
落ち着けよ。笑と思いつつ、わたしも久しぶりにみて観たのだが、 やばい。 これから約1時間55分32��をかけて、ブログの生演奏を行う。
1.天国へようこそfor The Disc 開幕前のスクリーンは半透明。 そこに上から煙の塊のようなものが墜落してははじけ墜落しては弾け、墜落してはまた弾け。 イントロが始まるとメンバーがぼんやりとスクリーンの後ろに浮かぶ。 曲の間中この透けたスクリーンは下がりっぱなしだ。 煙の塊は降り続ける。 終盤に映し出されたレーザーの幾何学模様は徐々に形を崩し、 HERE’S HEAVEN(天国へようこそ)という文字に再構築される。ぞくっ
2.空が鳴っている スクリーン上の一面の銀河とともにドラマチックなイントロが流れ開幕。 メンバーの衣装はオールホワイト。 林檎ちゃまはネバーエンディングストーリーのドラゴンを思い起こすような2本の角がアシンメトリに生えた獣のような被り物、 角度によって獣の瞳がきらりと光る。 バックはウェディングドレスの様に長くボリューミーなオーガンジー、 ぴったりとした短めのワンピースから覗く太ももには毎度おなじみガーターベルトで固定されたデバイス、 目尻にすっと赤色のアイライン、そこだけに色が灯る。
3.風に肖って行け これはアルバムで初めて聴いた時、すごくロックな曲で ライブでぜひ聴きたいと思っていた。 予想通りめちゃくちゃにかっこいい。
4.カーネーション CD音源とは雰囲気が違うアコースティックバージョン。 メインは林檎ちゃまのアコギ、 伊澤さんの鍵盤ハーモニカ(ウインドシンセ?)がしっとりと響く。 椎名林檎名義の曲だけどMVでは事変メンバーが見られるので、公開当時は泣いたよね。
5.海底に巣食う男 林檎ちゃまはタンバリン。 いつもは大体客席から見て左に身体を向ける姿勢だが、今回はとしちゃんサイド。 間奏で笑い合いながらパーカッションを楽しむ2人にわたしも思わず笑みがこぼれます。 ラストでぴょんぴょん跳ねる林檎ちゃま、はあ可愛い。 こういうのが事変の好きなところのひとつです。 その場で音楽を作り上げていくことを心から楽しんでいる感じがする。
6.カリソメ乙女 伊澤一葉ブランドのジャジーな伴奏。 椎名林檎ファンには嬉しい1曲。 サビで飛び跳ねたくなるうらうらとしたピアノの音。
7.禁じられた遊び ここまでが第一幕。 アウトロとともに再びスクリーンが降りる。 メンバーの演奏するシルエットと降り注ぐ雨が映像として映し出される。 やがてそれらがフェードアウトしていくのと同時に 海に潜っていく錯覚を起こすような深い水の映像がフェードイン。 どんどん深く、暗く、黒く。
8.恐るべき大人たち You roam the city,free(お前は都市を徘徊する) with a bigger dream(大きなゆめを携えて) の字幕歌詞が映し出され開幕。 全員黒に白いラインがアクセントの衣装にお召し替え。 林檎ちゃまの髪型は薄いピンク寄りの金色マッシュ。 背後のスクリーンにはお馴染み事変フォント(とわたしは呼んでいる)で字幕が映る。 終盤はRejoice,be grad.というフレーズが タイプライターを叩くような音と合わせて表示されるのがまたかっこいい。 この曲は歌詞を全てここに載せたいくらいにかっこいい。 祝いなさい、喜びなさい。
9.かつては男と女 先ほどの字幕が溶けるように広がって消え、被せてイントロが始まる。 浮雲のわうわうした音がまさに浮雲の曲!といった感じ。 ラストはわっちのハモンドオルガンソロ。
10.ハンサム過ぎて こういう曲になるととしちゃんがめちゃくちゃ楽しそうですよね。 林檎ちゃまはタンバリンです。今曲も右向き。 ハンサム過ぎる。
11.秘密 としちゃんの「よろしくおねがいしまーーーーす!」 ここからしばらくはわたしの表情筋が緩みっぱなしになる。 4ビート箇所で丸サディステップ。 林檎ちゃまが間奏の、ジャ、ジャン!の音に合わせて 小さく拳をふるところが好き。 そして一番の見せ所はやはり浮雲&わっちラップからの浮雲ソロ。 ジャジーあんどアダルトな雰囲気をぶち壊し、2人が始めるかっこよすぎるラップ、 それに続いてとしちゃんと師匠のセッション、 そこからの浮雲がステージ後方の階段を駆け上がりギターソロ。 その階段が巨大電光掲示板になり”UKIGUMO”の文字を作る。 こんなの笑う。浮雲ファンはたまらないだろう。 にやっとする林檎ちゃま、彼女の合いの手セリフもカッコいい。 これ以降この電飾が効果的に使用される。 曲のラストはくるっとこちらを向いて両手を広げ、 どう?かっこよかったでしょ!とでも言いたげな笑顔の林檎ちゃま、はあ可愛い。
12.某都民 としちゃんのドラムソロからスタート。 「ドラムス刄田綴色。…ドラ息子。」という林檎ちゃまのセリフに 思わず笑うとしちゃん。 この曲は事変の中でも事変らしい。これぞ事変。 わたしもいつかまたライブに行って「そう此処東京!」を大合唱したい。 そして林檎ちゃまに「Yes(よろしい)」と言われたい。 ラストはライブお馴染み歌舞伎アレンジ。 本番の前触れでわくわくする。くるかくるか?
13.ドーパミント!(BPM103) この曲も電光掲示板がかなり演出に使われる。 心電図の波形が表示されるのが印象的。 ジャズには疎いんだけどこれはジャズだよね?ひねりまくり。好き。 こんな曲他にないよ。
14.女の子は誰でも 全曲から途切れることなく流れるようにスタート。 と同時に、林檎ちゃんが一瞬で黒のロングコートを脱ぎ捨て ピンクのふりふりドレスへ。はあ可愛い。 メロディカルでムーディーそれでいてキュートな雰囲気。 林檎ちゃまはベルリラ。魔法のステッキを思わすような仕草、 シャララランという音が魔法の効果音みたい。 ライブ序盤よりも太ももが露わになり、ベルトがさらに色っぽい。 ラスト大サビ前ではメロディーを1音ずつベルリラで奏でつつ、口笛で同じノートを吹く。 そして大サビ。ここがもう最高。誰だよこのライティング演出。 And if I could be the one in your heat(もしも貴方が私の最期の恋人だったなら) Just two people till death do us part(いずれ結ばれる運命のふたりだったなら) の後、転調するパート直前の、じゃ、じゃーん!の音に合わせて 林檎ちゃまがステッキを右、左と振る。 そして降り注ぐ銀テープ、一気にライトアップする会場、わたしの顔はゆるみっぱなしだ。 give you kiss to me now(いますぐここでキスして) で降下するスポットライト。周りは暗く林檎ちゃまにだけ灯りが落とされる。 そこから Would you fly me to heaven?(天国へ連れて行って戴ける?) で再び明転する会場。どうですか!これは! まさに大円団というかたちで第二幕は終了する。 相変わらず林檎ちゃまのバレリーナならではのお辞儀が美しい。 全員がステージから捌けると階段の電光掲示板がノイズに合わせ テレビ放送終了後の5色の縦縞になる。 事変のラストアルバム、カラーバーズだ。 そこからしばらくは映像作品。 砂嵐とテストパターン、ノイズが繰り返し流れる。 運動する猿のアニメーション、 孔雀の羽(事変だ!)、 スペースシャトルDiscoveryの打ち上げ、 2進数の数列、 女の子は誰でものMV、 などが一瞬一瞬混ざりつつ、まるでテレビの周波数がうまく合わないかのようにまたノイズ+砂嵐に切り替わる。 と、段々とノイズがテクノ系の音に変わり、 カラーバーズが鮮明になり映像を作り出す。 小さな箱でやる音楽イベントで、バックでVJが見せるようなタイプのシンプルな映像。 ここの演出がかっこよすぎて何度見ても鳥肌が立つ。 しばらくすると、このシンセの音のパターンがとある曲のイントロであること気がつく…。ああ…。きた…。
15.歌舞伎 電光掲示板の真ん中が開き、そこに立つは拡声器を持った林檎ちゃま。 曲中のジト目が最高です。 この歌舞伎という曲の振る舞いこそが、事変における椎名林檎のかたちだと思っている。 上からメンバーひとりひとりに演奏をさせ、見下す様な、それでいて見守る様な椎名林檎、 よろしい、という感じに一瞬にこっとする椎名林檎、 としちゃんのことをここで「my drams」と紹介するのも二人の関係そのものだ。 刄田綴色という人物は椎名林檎の元で以外は存在し得ないのだから。 メンバーは2001年宇宙の旅を彷彿とさせる衣装にお着替え。 身体の中心にあるロゴのようなアイコンがかっこいい。 序盤はアクセントになっていた赤色のアイラインが、ここで一気に馴染む。
16.ミラーボール いつもとアレンジが異なっていて、歌い出しまで何の曲かはわからなかった。 師匠のスラップベースで始まる。リズムがきまりまくり。 この作品はカメラワークが神がかっていて、位置、ぼかし、焦点の変動がぐっとくる。 ファンのこと分かってんな〜曲の終盤から電光掲示板にデジタル時計が表示されてて、「くるぞくるぞー」感が胸熱だ。
18.能動的三分間 からの、きたー!完璧です。 ウルトラCではギター放棄で歌っていた浮雲も今回はちゃんと演奏している。 解散したいま、この曲の英語部分を聞くと感慨深い、泣ける。 何度でも再生させるよ、わたしは。
19.OSCA 能動的三分間のラストに電光掲示板にO、S、C、Aが一文字ずつ表示される。 観客を煽る煽る。わーここでOSCAを持ってくるのか。 拡声器を持った時の林檎ちゃまのエレキギターみたいな声が好き。 歌声じゃない、あれは楽器だと思う。 師匠は相変わらず遊びます。手が痛々しいけれども…。 男4人の雄叫びでわたしまたにやける。
19.絶対値対相対値 さっきまで歌っていた人と本当に同じ方ですか?はあ可愛い。 ばきゅん殺られる。
20.電波通信 事変のライブ演出の中で一番かっこいいと思うのはこの曲。 音に加えてライティングと林檎ちゃまの振る舞いが最高にクールだ。 としちゃんのドラムが良すぎる、会場にいたら何度も名前を呼んでしまいそうだ。 照明はいつもどおりステージ後方から客席側に照らされる筋状のスポットライトが下から上へ、上から下へ会場を舐めていく感じ、 それに加えて激しいフラッシュ。 林檎ちゃまがピックを前に突き出すポーズも相変わらずきまってる。 これを見て痺れない人っているの。
21.電気のない都市 この曲順、転調が半端じゃない。 久しぶりに聞くと、なんとなく昔の椎名林檎をそこに見た気がした。 ここでキスして。や罪と罰の頃の、切実でストレートな歌詞、苦しい絞り出したような感情、 そういうものがこの歌にはあるような気がした。 林檎ちゃまの一本足奏法は癖なのだろうか…。 立ってギター弾くのはバランス難しいもんね、前日こけちゃったし。はあ可愛い。 ここでMCが入る。 浮雲、ゆる。ゆるゆる笑 東京事変はいつも適当でかなりふざけていると思う。 ジャケット見てたら分かるでしょう。それなのにかっこいいんだよな。
22.21世紀宇宙の子 電気のない都市は3.11の震災のことを思って書かれた曲だと、以前雑誌のインタビュ��で読んだ。 それに対してこの曲は未来に希望を託すような曲だ。 だからと言って2つが両極端にあるわけでもない。 だってこの曲は、悲しみも携えて生きていこう、で終わるのだから。 この2つをエンディングに持ってきてしまったか。
23.閃光少女 観客からの悲鳴。わたしも悲鳴!(何回目だ) 師匠のテンションも最高潮。わたしも最高潮! 曲の終盤電光掲示板が開き林檎ちゃまは旗をおいて大きく手を振りながら颯爽とはけていきます。 締めはせーのっの4人の笑顔がたまらない。楽しんでるな〜。
アンコール
インディアンのようなヘッドドレスの林檎ちゃま、4人の衣装のテキスタイルがそれぞれ異なっていてそれでいてまとまっている。 MCはとしちゃん。カンペガン見かつわざとらしいトーク。 曲中はあんなにもはしゃいでいる癖にシャイ。
24.今夜はからさわぎ そうか、このライブ初披露だったんですね。 事変のラストシングル曲でいいのかな? ぴん、りゃん、げた、だり! ここでも林檎ちゃまととしちゃんのパーカセッションが最高。 遊んでるな〜笑
25.群青日和 観客からの悲鳴part2。 やっぱりジャズも素敵だけど事変はロックがかっこいい。最高。 ここでも一本足奏法、足が素敵。 後サビ前、林檎ちゃまの「ギター!」からの浮雲&わっちが最高。 交互に弾くアレンジがださかっこいい。 にやっとする林檎ちゃま。 “あなたを思い出す体感温度”の”あ”の音が椎名林檎なんだよね。 最近はめっきり優しい歌い方が多いけれども。 ここでMCが入る。 林檎の照れMCやばくない?毎度毎度。腹立たしい可愛さ。 くるってしたの見た?はあ、可愛い。
26.新しい文明開化 ステージの電光掲示板は大きくNIPPONの文字、その下に東京事変のシンボルマーク。 フィナーレにふさわしい。 わたしは誰がなんと言おうと東京オリンピックの開会式でこの曲を聴くよ。旗を振りながら。 ラストに向けて降り注ぐ色とりどりの紙吹雪。 これにてDiscoveryは閉幕。
エンドロールがグノシェンヌなんですよね。堪らない。 林檎ちゃまはサティファンとみた。 東京事変の数あるライブの中でわたしはオケが入っていないタイプのものが 素材の味を楽しめる的感覚があって好きなんだけれども 中でもDiscoveryはずば抜けてお気に入りだ。 映像と照明、衣装、総合的に完璧でかっこいい。 ひとつ残念なのはセットリスト。勝ち戦が入っていないこと。 昔向井秀徳と一緒に歌っている時のめちゃくちゃ緊張している椎名林檎をみて、惚れた。 向かい合って歌っているのに、照れて目を合わせられない林檎ちゃま可愛いし、 黒いワンピースを着てる林檎ちゃま可愛いし、 最後に「本日のゲストは…椎名林檎ちゃま!」と向井に言われて照れている林檎ちゃま可愛いし、 とにかく可愛い。林檎ちゃま。 普段はこんな呼び方しません。
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kawasakiworks · 4 years ago
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nv350 スライドドアステップ 道具落下防止 縞板カバー製作 短いアングルがズレ止めで付いてたんですが、道具が多くなり雪崩が… 縞板の曲げをやるついでにササっと製作。 続いて20年近くある小松30tプレス 切り欠きの型が切れないので入れ替え 一度も交換してないので20年ぶりの交換でしょうか😅 これで薄板もちゃんと切れるようになりました。 t6、t4.5などの鉄ばっかり切るのに使ってて薄板はまた型を別のものを使ってました。 @lamer.welding さんにもらったステッカーは工場とトラックとトレーラーに貼らせてもらいました✌️ 地元のよく買い物に行くほかのスーパーにも弊社アルコールディスペンサーが設置されていました🔥 一般のお客様にも販売していますのでお気軽にお問い合わせ下さい。 #有限会社川﨑製作所#三鷹市#精密板金#アルミ縞板曲げ#アルミ縞板#アルミ輸入縞板#小松プレス#プレス#切り欠き加工 #刃交換#タケダ#カーゴトレーラー#nv350#silverado#stackexhaust#caravan#スライドドアステップ#スライドドアステップカバー#カーゴトレーラー#トレーラー#lamerwelding#町工場#製作所#cargotrailer (野川公園) https://www.instagram.com/p/CIQMUe7gRQF/?igshid=kydvi4b3k7fd
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kawasakiworks · 4 years ago
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グレーチング蓋製作!!! 3.2でグレーチング蓋の製作。 ハンドルから製作しています。 対角はプラマイ0です。 これからドブメッキに出します。 #有限会社川﨑製作所#グレーチング蓋製作#ドブメッキ#溶融亜鉛メッキ#丸棒曲げ#縞板#ワンオフ#グリストラップ蓋製作#グレーチング#グリストラップ#アングル枠 溶接は無駄にしません。 反ってくるので最低限の溶接のみです。 (有限会社川﨑製作所 kawasaki works co.Ltd) https://www.instagram.com/p/CGXN_wjAkvz/?igshid=bg7lxa2080sl
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kawasakiworks · 4 years ago
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精密板金 各種部品製作! マンション 排水トラップ蓋製作依頼 現調!!! #精密板金#有限会社川﨑製作所#ss400#sphc#spcc#sheetmetalfab#r曲げ#箱曲げ#ボンデ#レーザー#アマダ#排水トラップ#マンション#縞板#現調 (有限会社川﨑製作所 kawasaki works co.Ltd) https://www.instagram.com/p/CAh-Gn7gOMZ/?igshid=gcuakghm1r2m
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kawasakiworks · 5 years ago
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本日も大忙しでした。 nv350 5万キロ エアフィルター交換、結構真っ黒で交換したらパワーが上がったのと音もかわりました。 ヒッチレシーバーのヒッチボール取り付け2本 アルミ縞板の曲げ 各種板金曲げ 加工依頼の軽トレーラー引き取り サインの常温亜鉛メッキ塗装 ゴミステーション部品製作 アルミ板金物製作など! #nv350#エアクリーナー交換#エアフィルター交換#yd25ddti#nissan#ディーゼル#キャラバン#アルミ縞板#アルミ輸入縞板#縞板#曲げ#amada#アマダ#トレーラー加工 #軽トレーラー#trailerfab#ヒッチレシーバー#ヒッチメンバー#ヒッチボール#サイン#ss400#sus304#sus430#5052#6063#アルミパンチング#ゴミステーション#有限会社川﨑製作所#精密板金#三鷹市 (有限会社川﨑製作所 kawasaki works co.Ltd) https://www.instagram.com/p/B0Yp46FgJi8/?igshid=11hcc70zjykiz
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