#牛柄マスク
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Adamiani
「朝に⻑時間歩くこと」(中野有紗)「あとは寝る前に好きな映画のラストシーンを観ます。ラストだけをみて思い出す作業をしているんです」(柄本時生)「パンデミック以降はうがい⼿洗い、マスク。おかげでずっと⾵邪も引いてないし、健康です」(役所広司)
フォーラム仙台さん、24周年おめでとうございます。
Wim Wenders〝PERFECT DAYS〟の意欲は手の触れ方にもっともよく現れている。トイレのゴミ拾いは素手、昼休憩のサンドウィッチも素手、しかし平山が姪っ子のためにおむすびを握るとしたら、意外とサランラップで握るかもしれない。そういう配慮こそが、この映画の畏れであり、チャームである。
役所広司氏が牛乳をゴクゴクと飲むシーンが印象的だ。
A24
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牛柄ネイル(つくばみらい市からのお客様)
つくばみらい市にあるネイルサロンプリンセスです。 ディズニー100周年記念映画「ウイッシュ」を公開初日で観てきました。 これぞ100周年な作品でした。 福山雅治さんがヴィランズだったので、どんな感じかなと思っていたのですが、歌がとにかく素晴らしかったです。 もちろん生田絵梨花ちゃんの歌も良かったです^^ ハンドジェルでご来店のI様。 今回は牛柄ネイルです。 5か月の娘ちゃんとご来店です。 ダークグリーンがとってもお似合いでした。 お子様連れのお客様はお子様のご機嫌等を考慮しまして、施術時間に余裕をもってご予約をお取りしております。 その為、ご予約時にお子様連れの旨をお伝えくださいね。 ご来店ありがとうございました。 またのご来店を心よりお待ちしております。 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、「5類」に移行されました。これまでお客様にもマスクの着用・検温をお願い…
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中華を振る舞う わたしたちの門出
大学の友人であるすどくんが会いに来てくれた。とても嬉しい。最近仕事を辞めたばかり彼を労おうとお気に入りの中華料理屋へ連れて行く。たにぐちさんも来て、3人で食べる中華は案の定格別なものであった。友人たちと卓を囲んで、やはり中華料理の醍醐味は大皿文化だと思う。誰かの皿が空いたのを見つけては料理をよそい、こちらの皿が空くとよそわれる。八角の鼻に抜ける甘みとごま油の香り、小籠包や餃子がからこぼれる肉汁。これ以上に満足なごはんがあるだろうか。いつも必ず頼む豆苗炒めと角煮まんをふたりに食べてもらう。ふたりともとても美味しそうだったのでよかったが、無論それを食べていちばん喜んでいるのは私であった。すどくんもせっかくだから珍味を食べてみたいと、漢字の羅列された中国語のメニュー表を見つめ、なまこが気になるというが今日の主役は紛れもない君なのだから食べたいものはなんでも頼みよし。ナマコの甘辛煮をみんなでつつくがやはり珍味や珍味。牛の脂身のような舌触り、食べ物らしくない甘み、食感の方は最初のひと噛みすこし跳ね返りがあり、ストンと噛み切れる。想像するにこれは素材本来のかたさというのよりは調理方法によってそのような質感が生まれているような、そんな印象を受けた。なまこはお世辞にもおいしいとは思わなかったが、みんなで珍味を食べているという事態に心躍る。それから良かったのが五目チャーハン。見るだけでもパラパラツヤツヤしている米と今にもはちきれんばかり、ぷっちりとした小エビがあちこちに見える。レンゲいっぱいにすくいあげ、口に運ぶとさまざまな食感が楽しい。私はひとりなら中華料理屋でチャーハンは頼まないから、このみんなで食べる五目チャーハンはとても新鮮で、よりこの夜ごはんを特別なものだと思わせた。ひとしきり食べ終わって店を出ると、中華のお礼に花をくれるという。店の横にある花屋で買おうとするが、あいにくもう閉まっていたのでそのまま家に帰るということにして、駅まで歩きながらこの一年のあることないことについて話しているとあっという間に新宿三丁目駅に着く。地下へのエレベーターを降りる途中、たしか駅の近くに別の花屋があるとかそんな話になり、調べると閉店までまだ4分程度ある。閉店間際の行く行かないの葛藤もせずに三人とも花屋に向かって走り出したのはそのほうがおもしろいと思ったからだと思う。長い信号に捕まる。もうすぐそこに花屋あるのだがこのままでは間に合わない。すぐ電話をかけてあと30秒ほどで着くから待ってほしいという。店に着いて、ただいま電話をかけたものです。と言うと店員さんはほんの少しの早く帰りたそうな表情をして、今からでも買える花を案内してくれた。もらった花束はとても美しく聡明な青色をしている。久しぶりに花をもらってマスク越しにでも分かるくらい笑みが溢れる。こんな夜がとても楽しくて柄でもないのに駅の鏡のところでみんなで写真を撮ったりなどする。よそってはよそわれる夜。みなそれぞれの社会人一年目の終わり。
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総柄Tシャツなど追加
本日も13時〜20時までの営業(電話やSNSなど前日までに連絡頂ければ12時〜営業致します)
マスク&アルコール消毒は任意でご利用下さい
体調の優れない方はご来店をお控え下さい
本日は総柄Tシャツなど
追加しておりますので、ご紹介☆
USPP
日本製
黄緑ボディに黄色で入った牛キャラ総柄に前面に紺で入った牛キャラプリントがPOPな一枚
裾の方に緑と赤で入ったライン&ステッチも洒落てます
メンズMサイズ
是非♪♪
anvil
エルサルバドル(US生地)製
目をひく薄ピンクボディに濃いピンクで入ったぼやけたドット柄がユニークで可愛いTシャツ
アメカジなボトムはもちろん、モードなボトムにも相性良いかと
メンズMサイズ
是非♪♪
COLOURS
おそらくby ALEXANDER JULIAN
感じの良い配色でボーダー状のネイティブ調柄がインパクト抜群なTシャツ
左胸に入ったゴルファーなワンポイント刺繍も良い感じ
メンズLサイズ
是非♪♪
それでは本日も元気に営業致します
明後日木曜日は定休日返上してニクニクルー☆
よろにくです^ ^
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今週の配達。 1本多くびん牛乳を注文。 美容液マスクお試しも届いたし、今週から中晩柑リレーが始まった! 今週はぽんかん。 #生協商品 #今週の配達 #グリーンコープ #greencoop #中晩柑 #ぽんかん #美白美容液マスク艶美肌 #ねこ #猫 #ネコ #cat #catstagram #catstagram_japan #ねこいる #ねこがいる生活 #はちわれ #はちわれ部 #牛柄猫 #ちま #ちまちゃん #ちまねこ https://www.instagram.com/p/CKgyq9HB6oe/?igshid=ac44i48cqhse
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声からの出会い
川崎駅近くのビジネスホテルから駅へ向かいながら、会って最初の一言は「はじめまして」がいいだろうと考えていた。
向こうは俺の顔を知らない。ある有名バンドのボーカルに似ているとは話していたが、顔写真はいらないと断られた。反面、向こうは知り合いの猫の写真を送ってきた時に、その猫を抱いているのを自分と忘れており、思いがけない形で顔を見た。思ったよりも目鼻立ちがはっきりしていて可愛らしく、胸ポケットにマルボロが入っているのがその子らしかった。
駅のエスカレーターを上っているときに、待ちあわせ場所に着いたとLINEが入る。時刻はまだ予定より五分早い。女性と待ち合わせした中で自分が遅いのは初めてだった。
エスカレーターの途中で聴いていたAmazonミュージックから久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」が流れてきて、何だか滑稽だった。
待ち合わせ場所の改札口が見えてきたとき、その子に通話をかけた。数コールして出た声は少し寝起きっぽい低い声だけど、その子らしい少年味のある少し鼻にかかった女の子の声だった。
「改札いるよ。どこいる?」
「俺もう少しで改札。黒い帽子被ってるよ」
「あっ、見つけた」
周りを見渡すと一人の女性が俺に向かってきた。
マスクをしているから写真の印象とは��った。そして思ったよりも背が高かった。
「エリちゃん?」
「うん、えっ、だよね?」
「あっ、よかった。はじめまして」
「はじめまして。じゃあ行こっ」
俺が歩いてきた方へエリは歩き始める。店は任せていた。
歩くスピードは男らしいくらい早かった。
「いつ東京着いたの?」
「今朝の七時くらい」
「はやっなにしてたの?」
「浅草行って船乗ってレインボーブリッジくぐってた」
「面白いことしてんね」
「さっきまで寝とったやろ」
「そう、モンハンやってたら夜遅くなったけど、ちゃんと起きたかんね」
通話なときと同じ会話のテンポで、ほんとにこの子なんだなと思った。
エリと出会ったのは通話アプリの掲示板だった。
五月半ばの初夏の日差しが暑くなってきた頃。
ボーイッシュで鼻にかかった声の音域が何とも魅力的だった。最初、アプリでの名前はシェリーだった。後から聞くのだが、シェリーは実際のあだ名で、本名のエリをもじって友人たちがつけたらしい。
話していくうちに出身が同じ県であること、高校の最寄り路線が同じということ、俺が大学時代に住んでいた市に今住んでいるということで、距離感が一気に縮まった。
バンドをやっていたということで、地元のライブハウスやスタジオの話題で盛り上がる。
歳は四つ下だから、後輩のような妹のようなそんな人懐っこさがどこか可愛らしくて、週に一度は話すようになった。
サバサバした口調や性格だが、アニメの話になると声色が変わり、一緒に「時をかける少女」を見たときは酔っていた事もあるんだろうが、普通の女の子の黄色い声になっていた。そのギャップが可笑しかった。
「来週東京行くから飲もうよ」
「いいよ」
エリの休みに合わせて東京へ着く日を調整した。
そしてその日を迎えた。
エリについていった先は早くからやってる居酒屋だった。
「ここでいい?」
「いいよ」
「ここ煙草吸えっからいいんだよね」
席に座る。
「お腹すいたー、何も食べてない」
「好きなのたくさん食べな。でも飲むときあんま食わんのやろ?」
「そう、だからちょっと食べてあとは飲む!生でいい?」
「いいよ」
俺がオーダーしようとするのよりも先に、エリは大きい声で店員さんを呼んでオーダーした。これもあまりない体験だった。
「嫌いなもんある?」
「ちょこちょこあるけど、エリちゃん好きなの選びなよ」
「しめ鯖は?」
「大好き」
「じゃあしめ鯖」
「紅生姜天いいな」
「あたしも思った」
ビールを持ってきた店員さんに手早くオーダーを言う。牛タンとタコ唐もオーダーした。
乾杯してビールを飲む。美味かった。
「緊���しとるわ俺」
「あたしもだよ」
「慣れてるやろ友達多いだろうし」
「そういうわけでもないよ」
「そうなんか、あっ、そういえば土産持ってきた」
「えっ、なに?」
前にエリと話した地元で有名なかぼちゃのパイとクラフトジンを持ってきていた。
「あー!そのパイ!」
「好きって言ってたからさ」
「ありがとうめっちゃ嬉しい」
「あとこのクラフトジンも飲んでみて」
「ありがとう!」
これで少し緊張が解けた。
「帰りに渡すから持っとくよ」
「うん!」
一気に声色に女性っぽさが出てきた。
あれこれと話した後。
エリがポケットからマルボロを取り出す。
「あっ、ライター忘った」
俺はリュックから同じマルボロとライターを出した。
「好きに使っていいよ」
「ありがと!無くなったら煙草もらうわ」
「いいよ、他のも持ってきとるから」
二人で煙草を吸った。
仕事の話やら最近の休みが変わった話やらをしているうちに互いに酔いもまわってきた。
今の仕事は楽しいらしい。
ウーロンハイと緑茶ハイが好きなのは通話で知っていた。生ビールのあとはずっとウーロンハイだった。
エリは元々楽器屋で働いていたり音楽業界に精通していたから、話題は音楽の話になっていった。
ビートルズではイエローサブマリンが一番好き。
一番好きなバンドはHi-STANDARD。
仕事で横山健と撮った写真を見せてきて羨ましく思った。
「地元には戻ってこないんか?」
「うーん、仕事がなー。それにあたしまだまだやりたいことあるからさ」
「でも子供生みたいんだろ?」
「そうなんよ。今すぐでも欲しい。そしたら実家近いほうがママに頼れるからいいんよね」
「難しいとこやな」
「そうなんよねー」
エリは完全に酔っていて、顔の表情筋がやわやわだった。
俺がスマホを向けるとエリはポーズを取り出した。
「顔隠すポーズやめろー」
「えー、しゃあないなぁ」
おそらく俺は今までで一番いい表情の写真を撮った気がした。
屈託のない、エリの魅力が溢れていた。
「カラオケいくか」
「いく」
店を出てカラオケに行くことにした。
会計で俺が支払っていると、胸ポケットに千円の束を入れてきた。というよりも突っ込んできたという言い方が適当かもしれない。
「いらんよ、俺が誘ったんやから」
「いいって、いいって。ほらいこう」
店の斜め向かいにあるカラオケ館へ。
「なんかさ」
「なに」
「思ったより似てたよ」
「ああ、あのボーカルに?」
「そう!」
また屈託のない笑い顔だった。
部屋に入る。
「はくび歌う」
「はくび?」
「あたしKing Gnuめっちゃ得意だから」
「それさはくじつっていうんだよ」
「嘘、ずっとはくびはくびって言ってたけど」
「周りのやつも知らんかったんかな」
「めっちゃ恥ずい」
バンドでギター・ボーカルをやっていただけあって歌はうまかった。
「声が似てるって言われ大塚愛歌ってよ」
「いいよ」
黒毛和牛���塩タン焼680��を歌った。確かに声質はピッタリだった。本当は俺の好きな桃ノ花ビラを歌ってほしかったが次回に取っておこうと思った。
俺はというと、ワンナイトカーニバルやらミッシェル・ガン・エレファントを歌ったら声が潰れてしばらく歌えなくなった。
エリのオンステージだったけど、楽しそうな姿を見ているだけで幸せな気持ちになった。
煙草を吸いに喫煙室に行ったとき、酔ってフラフラのエリがしゃがみ込んだ。
少し躊躇ったあと、エリの頭を撫でた。
湿気でボサボサになっていた頭を何度も撫でた。
「今朝シャワー浴びてないから」
頭を振った。ポンポンと頭に触れた後に、手を元の場所に戻した。
可愛らしくてしょうがなかった。
それは妹を可愛がる兄の気持ちなのか、酔った後輩の面倒を見る先輩の気持ちなのか、それとも本気の気持ちなのかわからなかった。
ただ、その髪を撫でたい。それだけだった。
部屋に戻ってまた歌の時間。
今度はファジーネーブルをエリは飲み始めた。
ELLEGARDENの「make a wish」を一緒に歌った。ELLEは共通の趣味だった。
あっという間に三時間が終わった。
支払いのとき、一万円札をだした俺の上から、エリはクレジットカードを置いた。
「五千円ある」
「あるよ」
エリに渡した。
外は雨が降っていた。
エリは少し派手目な柄の傘を持ってきていて、開いて俺も入れてくれた。
エリから傘を受け取ってエリに雨がかからないように歩いた。
空いた左手でエリの頭をまた撫でた。エリは大人しかった。
「楽しかったよありがとね」
「うん、めっちゃ酔ったー」
「まだまだやなー」
「強いなー」
改札につく。
リュックから土産を取り出して渡した。
「ありがとう」
「また飲もうな」
「うん」
「また休みの日通話しよう」
「あたし連絡まめじゃないから連絡して」
「うん、わかったよ。気をつけてかえってな」
「ありがとう、そっちもね」
またエリの頭を撫でた。嫌がる様子はなかった。
エリは改札をくぐっていった。
足はふらふらだった。
ホテルへ戻りながらエリにLINEを打った。
ベッドでうとうとしてると返信が来た。
どうやらお風呂に入ってベッドに入ったらしい。
吐いてスッキリしたから明日はちゃんと仕事に行けると書いてあった。
飾らない性格ってこういう子を言うんだな。
そう思って眠りについた。
未だに答えはわからない。
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03290220
好き、の、ただ一言が口から出てこないまま、時計の針はもう随分と周ってしまった。こんなご時世じゃ、ゆっくり食事すら出来ないと今更気付いたのは、俺がろくに出歩かず模範囚の如く「自粛生活」を頑張っていたからだろうか。いや、違う。誰かと出掛けよう、なんて気にならなかったから、だ。
街の明かりはいつもと同じように灯っている。高等生物である人類が、叡智を結集しても到底敵わない目に見えないナニカに脅かされてから、もう1年以上が経過した。毎日くだらないことで喚き立てるメディアにも、過敏な人間達にも辟易していたのに、そんな喧騒が嘘みたいにここは、静かだ。
「ねぇ、寒くないの?」
「寒い。」
「だろうね。」
「でもいいんだ。寒さを感じると、生きてるって感じがする。」
「それで風邪引いたら全部台無しなんだけどな。」
「確かに。」
横でパックのコーヒー牛乳を飲んでいる彼女。マスクを外してコーヒー牛乳を飲み、マスクを付け直す不自然さにも目が慣れてきたが、よく考えれば滑稽だ、と思う。感染症対策についての講釈��垂れ流す俺はマスクを顎にかけたまま、飛沫とよろしくやっている。
彼女のことが好きだ。
冬がまだ名残惜しく居座っているせいで、あわよくば肩でも寄せ合えるんじゃないかと思ったのに、結局俺と彼女の間には買ってきたおやつとコーヒー牛乳と、俺の好きないちごオレが並べて置かれている。今流行りのソーシャルディスタンス、だとしたらくそくらえだ。
結局飯屋からも、20時に締め出されてしまった。外で立ち飲みする若者は、朝のニュース番組で晒しあげられていた。結果、適切な距離を保ちながら、小腹を満たそう、ということになった。つくづく、色気がない。
「なぁ、」
「ん?」
「水槽の脳、って知ってる?」
「何それ、新種のペット?」
「だとしたら飼いたいか?お前。」
「え、やだよ。臓器じゃん。」
「だろうな。」
「で、何?」
彼女は最近行ったらしいマツエク屋でつけてもらった控え目な睫毛(俺には十分派手に見える)をぱさぱさと揺らして、誰もいない公園をぼーっと眺めている。横顔から覗く眼が好きだ、目ではなく。と伝えたら、変態じみていると笑って流すんだろう。
「この世界って、実際に、実在してると思う?」
「えーっと…うん、思う。だって今私の足は、土を踏んでるし。」
彼女のお気に入りの白のドクターマーチンが、公園の地面をガリガリと擦って、現金な俺は少しもったいない、と思ってしまった。結構するのに、その靴。でもそれくらいやんちゃな方が、俺は好きだ。
「その、地面を踏んでる感覚も込みで、俺達が体験してるこの世の全てが、一つの水槽に浮かんだ脳が見ている夢だ、っていう仮説があるんだよ。」
「へぇ。それって、世界が10秒前に作られた説、の友達みたいなもの?」
「あー、なのかな?多分。よく知ってんね。原理は似てるかな。」
「世界には、難しいことを考える人もいるんだね。」
全部を疑うなんて、疲れちゃう。彼女はまた律儀に付けていたマスクを外して、甘さ控えめのコーヒー牛乳を飲んだ。
恋愛ってのは酷く億劫なものだと、それなりに生きてきた人生の中で嫌というほど学んでいた。妥協と擦り合わせ。他人と共存していく必要性すら見直しつつあった俺の前に、彼女はふらっと現れ、俺の恋愛においてはまだ幼稚な心を掻っ攫っていった。
彼女のことが好きだ。
不毛だ、と思う。尖る唇は奪えても、彼女の人生を背負う覚悟はない。子供より、親が大事と思いたい。とこぼしたどこかの父親を思い出した。美味しい貴重な桜桃を、不味そうに食べては種を吐く男。色々なしがらみの中でなんとか生きてはいるものの、人生というものに酷く疲れて、加護を得て解き放たれたい、と望む無力で無責任な人間。しかし、人間のあるべき姿でもある。
あのある意味駄作とも呼べる作品がここまで世間に浸透したのは、皆が心の中で同じようなことを思っているから、だ。当然、こうして彼女を前にした俺も。彼女より、俺が大事と思いたい。
しかし同時に、かの人間失格な男のように、この先どんな悲しみが待ち受けていたとしても、今俺の前でけらけらと楽しそうにしている彼女と添い遂げる幸せが欲しい、とも思う。
俺の大して面白くない人生において、生きる、ということは、飲み残した一杯のアブサン、そのもののようだった。焦燥感、漠然とした不安、喪失感、胸に巣食う孤独と虚空。何も得られなかったのに、何か得られたはずだと追い求める不毛さ。不毛な道を、もう数十年ただ歩いてきた。強迫観念に基づく歩行を、続けてきた。
それなのに、彼女と結婚したい。自転車で青葉の滝を見に行って、帰りに古書店にでも寄って、互いの好む本を一冊ずつ買って帰りたい。なんて、我ながら、太宰を読みすぎてしまっている。
「星、全然見えないね。」
「明るいからな。仕方ない。田舎にでも行かなきゃ、あ、でも、あれ、星じゃない?」
「あ、本当だ。星だぁ。光ってんね。」
彼女は小さな手を空に翳して、ポツンと夜闇に空いた白い穴をゆびさした。無邪気な、まるで植物のようだと思う。刈られるとも知らず、蹂躙されるやもしれない道端でも、構わず生き、咲いて、生を謳歌する植物。ごちゃごちゃと思考ばかりを絡めて墓穴を掘り続ける俺とは、対極にいる存在。
「眩しいな。」
「そだね。いっそのことさ、地球停電デー、みたいなの作ってみたらどうだろう。」
「地球停電デー?」
「そ。必要最低限の電気は維持して、あとはぜーんぶ消すの。そしたらきっと、今生きてる人間が、誰も見たことないような星空になるよ。」
喉元まで出かかった、好きだという言葉を飲み込んで、俺は返事の代わりに手に握っていたいちごオレに口を付けた。彼女は何も気にせず、自分の言った「地球停電���ー」の響きが気に入ったのか、くふふ、と笑っている。
元来、理屈でうまく表すことが出来ない事象は苦手だ。感情論も、悲壮感も、恋愛感情も。昔からずっと、説明出来ないことは悪だと思ってきた。しかし今、少し間を空けた隣で笑う彼女を抱き締めたいな、と思った気持ちは説明出来ないし、説明出来ないでいてほしい、と思う。俺が大人になったのか、もしくは彼女が俺を大人にさせたのか。分からない。
「案外、賛成するかもな。」
「残業無くなるよ。君の嫌いなお仕事も、そ��日はぜーんぶ無し。」
「まぁ、1日休んだところで会社は潰れないしなぁ。実現不可能ではない。」
「めちゃくちゃ偉くなったら、私がその日作ってあげる。」
「ちなみにいつ?」
「勿論、今日。」
「なんで?」
「んー、君と星を見つけた日だから。」
彼女のことが好きだ。
不幸を食べて育つ俺の中の太宰かぶれな俺も、すっかり黙り込んでしまった。勝てないんだ。彼女には勝てない。どんな陰鬱も凄惨な記憶も、悲しみも哀しみも、彼女が触れれば忽ち芽を吹き花を咲かせてしまうんじゃないか。
二人の間のおやつはとうに食べ切ったのに、俺は手を膝に置いたまま、無防備に放り出された彼女の手をちらちらと見るだけ。目の前に出された幸福を、どう受け取っていいのかわからない。
「君は、不器用だね。」
「なんで急にディスるんだよ。」
「あ、もうすぐ電車、終わっちゃうよ。」
「え、まだ早いだろ。」
「ほら、今こんな状況だから、終電早まってんの。」
口を挟む間もなくゴミを片付けた彼女がさっさと歩き出したので、その小柄な背中を慌てて追い掛けた。ソーシャルディスタンスが終わらないまま、今日が終わりを告げようとしていた。
「ねぇ、楽しかった。また行こうね。」
「うん、また行こう。」
「ねぇ、美味しいものも食べようね。」
「食べような。お前が好きなパンケーキも。」
「ねぇ。」
「ん?」
「手、繋ぐ?」
差し出された小さな手。無邪気で悪意のない、愛おしい手。あぁ、今日行った水族館で見た、ヒトデみたいだ。誘われるように手を伸ばす。目の前の信号が赤に変わって、二人同時に足を止める。一瞬普通に繋いだ手を、君は恋人繋ぎに直して笑った。
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【新入荷・再入荷】 ・ こんばんは、わざわざスタッフのムラヤマです。 ・ 今週、倉庫の移転が完了しました。明日8/17(火)より商品の発送が再開いたしますので、今しばらくお待ちください。 倉庫移転中にはわざわざオリジナル商品のページがリニューアルされました。ぜひご覧ください。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=896758 さて、今週もバラエティに富んだ新入荷や再入荷を一気にご紹介します!要チェックです。 ・ (新)手ぬぐい あひろ屋 美しく、そしてやんわりと主張する魅力的な柄の手ぬぐいが新入荷!多様な使い方ができる手ぬぐいは使うシーンを選びません。豊富な色柄からお好きなデザインをお選びください。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?pid=152880862 ・ (再)もんぺ無地 薄地 うなぎの寝床 夏はやっぱり薄地のもんぺに限ります。もんぺの心地よい履き心地が癖になります。縦糸と横糸の交差部分がかすれたように表現されたことが語源となった久留米絣において、その語源が消えてしまう「無地」。それでも織りの魅力は変わりません。現代に幅広く受け入れられるために必要だという、うなぎの寝床のチャレンジに溢れたもんぺです。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?pid=115980928 ・ (再)産地コラボもんぺ 備後節織 太節 うなぎの寝床 こちらは少し厚手の生地が特長の備後節織のもんぺ。秋に履けるもんぺをお探しの方におすすめです。糸節の表情や経年変化が楽しめる備後節織を、ぜひもんぺで味わってみてください。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?pid=151480596 ・ (再)タマスク tamaki niime 再入荷すると瞬く間に売り切れてしまうタマスク。今回よりアソートでお届けします。どんな色柄が届くかはお楽しみ。普段自分ではなかなか選ばないようなマスクが届いて新しい発見になるかも。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?pid=150645760 ・ (再)キッチンスポンジ KINOF 間伐材から繊維を抽出し麻と合わせて糸になるKINOF。木からできた糸は強度が自慢です。このスポンジも耐久性に優れているので、毎日使うキッチンスポンジにおすすめ。サイズは2サイズからお好みのものをお選びください。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?pid=151920389 ・ (再)ALDIN 先週に引き続き再入荷がありましたALDIN。今週は大人気のエプロンなども充実。クロスは様々な厚みやデザインの商品が揃っていて狙い目です。ぜひご覧ください。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=1083967 ・ (再)オーガニックエアー イケウチオーガニック 薄手ですぐ乾くエアーは、まだイケウチオーガニックのタオルをお持ちでない方の最初の一枚にぜひおすすめしたい。一度つかえば名前にエアーと付く理由が分かります。軽くてコンパクトな仕様は暑い日の携帯用のタオルにイチオシです。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?pid=145638965 ・ (再)キングパン 鉄のフライパン 中尾アルミ とにかくタフに使える鉄のフライパンが再入荷しました。育てれば育てるほど焦げ付かないフライパンになります。手入れだって慣れてしまえばとっても簡単。みなさんにおすすめしたいフライパンです。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?pid=107691438 ・ (再)マリールゥのパンケーキミックス 暑くてなかなか起きられない休日の朝に、牛乳と卵を使わなくてもおいしくできるパンケーキミックスはいかがでしょう?これぞパンケーキという味が楽しめます。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?pid=139310974 ・ #info #わざわざで買えます #パンと日用品の店わざわざ
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◆アルルカンの仮面 Vivienne Westwood◆ Vivienne Westwoodのアルルカンの仮面の帽子が再入荷しました。 価格:27,500円(税込) 素材:ウール100% 付属部:牛革 希少な国内在庫を取り寄せました。他店では全く入手出来ない物と思われます。 御購入御希望の御客様は以下に御連絡頂ければ対応させて頂きます。 弊社は正規取扱店で有り、勿論未使用、新品です。 【PHONE】06-6644-2526 【E-MAIL】[email protected] マルコム マクラーレンには常に先人への強い尊敬とパロディの二面性が存在しました。 彼は進んでキャラクターを演じ、なりきることで魅了しながらも自らをマネごととして卑下しました。 ロシア バレエ団(バレエ リュス)のプロデューサーのセルゲイ ディアギレフはその一人でした。 バレエ リュスの結成前には絵画の展覧会、音楽会等を催していました。 その様な人脈、審美眼でバレエは近代の総合芸術として確立することができました。 彼はオペラまで手がけました。 彼は『最も優れた天才』を見つける天才でした。 劇中の音楽を担当するのはドビュッシー、サティ、ストラヴィンスキー、ラヴェル、レスピーギらでした。 舞台芸術はピカソ、マティス、ローランサン、ミロが筆を揮いました。 舞台衣装、美術のレオン バクスト、バレエダンサーのヴァーツラフ ニジンスキーらの活動は今日のバレエの礎となりました。 その作品は前衛的でエキゾチックでした。 作品『謝肉祭(ル カルナヴァル)』ではニジンスキーはバクストによってデザインされた衣装によりハーレクィンの役を演じました。 ハーレクィンは道化師で仮面を被り、ダイヤ柄の衣装を身に着けています。 演劇では古くから登場し、他者へ辛辣な言葉を投げかけるトリックスターのキャラクターです。 ヴィヴィアン ウェストウッドはコレクションで常々、ハーレクィンを取り上げています。 今回紹介するヴィヴィアン ウェストウッドの帽子はこれに酷似したマスクが帽子に一体��しています。 マスクは顔の上部だけを覆い、目の部分のシャープな形状に刳り抜かれています。 全体はフェルト素材で作られ、こめかみ部分にあるボタンでマスク部分が外れます。 外したマスクは付属のベルトでバイザーへ、帽子はシンプルなキャスケットへ変化します。 セルゲイ ディアギレフは自らはプロデューサーに徹し、時には破産状態に陥りながらも狡猾に立ち振る舞い、芸術的でありながらエンターテイメントとしても優れた作品を多く残しました。 パトロンのスペイン王アルフォンソ二世は彼に劇団での役割を訊きました。 ディアギレフは『王様、私はあなたの様に何もしていません。しかし、私は必要不可欠な存在です。』と言いました。 その言葉どおり、彼の死と共にバレエ リュスは解散し、その元メンバーが各地へ招聘されることにより、この革新的なバレエは全世界のものとなりました。 このユニークな帽子はマルコム マクラーレンとヴィヴィアン ウェストウッドが魅了されたバレエ リュスのディアギレフとその作品、キャラクターへのオマージュです。 是非お手に取り、お確かめ下さい。
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第33話 『旧き世に禍いあれ(1) - "菌の森"』 Catastrophe in the past chapter 1 - “Fungus forest”
森、と呼ぶべきだろうか。
遠くから見れば、その青さは豊かな植生を想像させ、様々な生命をはぐくむ豊かな森に見えるが、その実、その森は『森』以外の命を拒絶している。
木々の代わりに、複雑に組み合って伸びた菌糸が、樹木のように空に向かう。梢である部分も、まるで寄せ木細工よろしく噛み合い、その様から想像するよりも酷く凍てついている。
光の射さない森を、人は畏れ、近づく者はない。
かつて、近づいたふたり組がモンスターに襲われた。からがら逃げた片割れが言うには、馬ほどの大きさのカマキリに襲われて、仲間は頭から食べられたという。その男自身も背中に大きく斬りかかられた痕があり、傷こそ浅かったがその日のうちに死んでしまった。近づけは呪われる、魅入られる、毒にやられる、様々な噂が立った。
近隣に住む人々に場所を尋ねても、露骨に嫌がられる。森への案内人は見つかることない。
菌類は、世界で一番初めに繁殖し、世界を覆い尽くした生命であるとされる。その生命力の強さは人間の想像をはるかに上回る。彼らは何らかに寄生し、共存すること、または乗っ取って成長することで繁殖を遂げた。「菌類が森を形成している」と聞いた時、フィリップは当然のように、実際の木に寄生した菌が、木の表面を覆い尽くしているのだろうとだけ考えていた。
しかし、実際には、木々などを必要とせず、菌だけが独立し、成長しているという異常な環境だった。
足元も完全に苔むし、通常の森の数倍の高さまで伸びた梢までを見上げる。
完全に光を遮った空間には、ところどころに白いふわふわとした胞子が舞っていた。
胞子を防ぐためにつけた顔を覆むマスクを通した、不気味で低く掠れた呼吸音は、そして規則正しく響く。菌糸が絡まり一本の巨木となる、それが真っ直ぐと空へ伸びる柱の間を、ゆっくりとふたつの影が歩いていく。彷徨っているわけではない。その歩みからは向かうべき先へと向かう意思が見受けられるが、広大な森と道を遮るほどの菌の巨木に翻弄され、緩やかに歩く軌道は大きく蛇行していた。
この森の来歴は、古い神代にまで遡るとされていた。
「……仮説通り、本当に神が眠っていると考えてよさそうですね」
「ああ、そうだろうな」
自死を選びこの森に入る者もいるという。それほどに深く、広大だった。
屍術師のフィリップとグレーテルは、無表情で淡々と歩き続けていた。
グレーテルが時折、歩みを止めては自身の側頭部に手をやり、目を細めて集中した後、遠くを指差す。精霊の濃い方角を探って向かうべき先を先導し、フィリップがそれに続く。
「何百年、いいや、何千年の時がここの中では流れたんだろう」
数十メートルもの高さまで伸びた菌で出来た木をグローブ越しに触れてみたが、しっかりと堅い。強く押してもしなることもなく、力強く根付いた感触が返ってくる。
フィリップは傍らのグレーテルを見た。彼女も顔を覆うゴーグルと、分厚い防護服や手袋、安全靴など、肌を一切露出せず、まるで奇妙な人形のように立っている。ゴーグルの奥にある瞳だけは、以前と何ら変わらず、知的な光を宿してこちらを見つめ返してくる。
着ぶくれして奇妙な人形のような姿をしているのは、フィリップ自身も同じだ。
何も身に着けずにここで呼吸をすれば、1分と待たずに肺から蝕まれて死ぬだろう。装備を揃えるために訪れた集落の古道具屋で出会った古老は、皺がれた声でそう告げた。そして、全ての装備を見繕い直す2人を尻目に、白く濁り始めた目で「あの森は捨てておくしかない」とはき捨てるように言って、店を去った。
どれだけ歩いただろう。古老がいた集落から二日歩いて、菌の森の入り口にたどり着いた。森の入り口には当然、柵も、看板も、遊歩道のようなものさえない。獣道と思し��菌木と菌木の間隙を縫うように進み、ようやく分け入った。
不意に、菌糸の枝と枝が擦れるような不自然な音が聞こえた。
フィリップが斜め後ろを振り向くと、グレーテルの背後に、蔓が垂れ落ちている。粘膜で奇妙にてらてらと光る蔓が、ゆっくりと猫の尻尾のように先を揺らす。
フィリップの背中が一瞬で粟立つ。
「グレーテル!」
フィリップの叫びに、グレーテルも弾かれたように振り向き、その手を翳した。一瞬の間の後に青い炎が見え、フィリップは舌打ちをした。
「駄目だ!」
叫びながら、フィリップは手を横に一閃した。
蔓を焼き尽くさんとグレーテルの手から放たれた炎と、その先でグレーテルを襲おうと先端を食虫花の花弁のように広げた蔓が、澄んだ音を立てて凍り付く。
――これが、噂に聞いていた菌の森の怪物か……。
見上げて注視すれば、そこここに蔓が伸びている。全ての蔓が同個体なのか、異なる個体同士が無力化された仲間の様を感じ取ったのか、するすると蜘蛛の子を散らし、逃げていくように去って行った。
あれらは強酸性の粘液を持ち、骨をも溶かすと言われている。
「ここでは炎は使うな。分かるだろう」
フィリップの声に、グレーテルは少しの間立ち尽くしていたが、ふいと顔を背けると、露骨に不機嫌そうな足取りで、フィリップを置いて歩き始めた。
その背中を追いながら、フィリップは深い溜め息をついた。
ここは『森』だ。ましてや梢に当たる部分は組み合わさっている。一旦火が付けば、どこまで延焼するかも分からない。
この先に待ち受けるものが、その炎に焼かれてしまうようなことがあっては、元も子もない。
しばらく進むと、菌糸の種類が増えてきた。相変わらず空を覆う巨木たちは変わらないものの、下から葦のように生えた背の高い草状のものも増え始めた。
はじめは魔物かと警戒していたが、ただの草に似た形状に進化した菌の一種のようだった。
フィリップが大人になってすぐ、世界は一日にして全てを失い、崩壊した。屍者が溢れ、瓦礫に満ちた街を必死で逃げ回るしかなかった。グレーテルと再会したのはそのさなかだった。混乱の中、ふたりでどうにか郊外へと落ち延びた。
覇王の侵攻によって、人々は絶望に追いやられ、細々と終焉に向かって隠れるように生きていた。社会や国など、あってないようなものだ。今までは動いていた陸路や海路も断たれ、物資の運搬もままならなず、世界的であらゆる資源の流通が絶えた。手元にあるもの、そこで作れるものだけが全てとなり、手近に残されたものを奪い合った。人の行き来が絶えた街道で誰かと会うことがあれば、例外なく襲い掛かってきた。
そうして、社会が荒廃していくさまを、指をくわえて見ていることがふたりには出来なかった。
屍術に手を染めたのも、仕様のないことだ。生き延びるため、何よりすべてを取り戻すため、戦うにはそれしか術がなかった。
元々、フィリップとグレーテルは同じような境遇で育っていた。家庭の経済環境も近く、受けた教育もほぼ同じだ。ふたりは幼年から時間を共にし、大学で同期だった。専攻こそ、フィリップは時空間魔術、グレーテルは精霊術と異なったものの、在学中はお互い知己の仲であった。
それでもただお互いに見知っていたというだけで、卒業後は疎遠だった。たまたま、覇王侵攻を契機に2人は再び引き合わせられた。それ以降、ふたりで屍者を用い、戦い抜いてきた。
けれども、それももはや限界を迎えようとしていた。
使役するための屍体が明らかに不足し始めた。これまで騙し騙し活動を続けてきてはいたが、そう長くは保たないだろう。
フィリップの専攻は時間遡行――過去へ戻る術だっ���。彼の前の代にはその基礎理論はすでに出来上がっていた。ただ、そのために必要な魔力は想像を絶するものだった。そして、その消費量は遡行する時間が遠ければ遠いほど、つまり過去を目指すほどに指数関数的に増えると知られていた。
覇王侵攻後、フィリップはずっと考えていた。今まで研究してきた延長線上で過去に干渉して現在の問題が解決する方法があるのではないか、と。数秒程度の過去遡行は実例が既にあった。ただそれも、必要魔力が少ないから出来た最小規模の実験だった。
グレーテルと落ち合ってすぐに、彼女はフィリップの専攻を覚えていたため、「過去に戻って世界を変えることは可能だろうか」と真剣な表情で尋ねたことがあった。
――どうしてそんなことを?
――過去を変えるためです。現状を打破するには、今の努力でカバーできる領域を超えている。
――そうか。……現実的には無理だろうな。魔力が圧倒的に足りない。
フィリップの返答に、グレーテルは怯まず詰める。
――魔石を集めたら? 大量の魔石があれば可能ではありませんか?
――街作りになるぞ。��に魔石を集めるだけでは意味がない、石から魔力を引き出し、一点に集中する構造にすることを考えたら、ふたりじゃ一生かかりでも無理だ。とても現実味がない。
グレーテルは少しだけ、考え込む様子を見せた。
――神の力を借りるのは? それならば可能では?
――そんな量を借りた前例はない、全部寄越せなんて聞き入れられるものか。
――なら、死んだ神から奪うのは?
――死んだ神の力は死んだその場で霧散する。受肉して顕現した個体なら可能かもしれんが、そんな都合のいいものどこにも残っていないぞ。
――でも、仮に受肉して死んだ神の遺骸が現存すれば、できるという事ですか?
――まぁ、そうなるが……
グレーテルと親しい関係であったわけではない。顔見知り程度だ。そんな彼女がはっきりとものを言い、貪欲に食らいついてくる姿は新鮮だったが、同時に恐ろしくもあった。
――あなたの言う受肉した神の遺骸は、歴史上、様々な伝承が残っていますよね。
――それでも、伝承だろう?
――ええ……。ですが、英雄が屠った神を食べ、国を築いた神話もありますし……時間がある時に調べてみます。
この会話で終わったのだとフィリップは思い込んでいたが、グレーテルはそうではなかった。
ある日、彼女はいつもは首から下げている眼鏡をかけ、古びて朽ちかけた郊外の図書館で、一冊の本を読んでいた。よもや殺されたのではないかと探し回っていたフィリップは、安心したと同時に隠しようもない苛立ちに襲われた。
それでも、大きな張り出し窓に腰かけて本を読む姿は、痩せこけた頬さえ見なければ、まるで平和な時代の学生時代のように穏やかだった。
――屍者になっていたらと思ったら、読書か。
――なんのことですか?
よっぽど夢中になって読んでいたのか、彼女は驚いたように顔を上げた。
――いや、僕が屍者を操っている間に、まさかいなくなっているとは思わなかった。僕の体に戻ってみたら、君がいなかった。どこか行くなら、一言くれないと困る。
――ああ、そうですね……すみません。突然思いついて……、あなたの様子も安定していたので、つい抜け出してしまいました。
――何を思い出したのかな?
グレーテルは力強く頷いた。
――菌の森を。
――菌の森……? って、あの谷間にあるって言う?
フィリップの問いに、彼女は大きく頷いた。
――あの森は古代の神の眠る場所。まさかこんなところに、こんな貴書が紛れていたなんて……結末知れずの闘争記録が数多く残されていました。記されているものも古語です。
フィリップも書架をあるけば、複数の関連した図書が見つかった。
――古語で書かれている歴史書でした。ここにあるものは恐らく本当でしょう。
――古き神が眠る……か。
――魔力が残されている前提となる、肉の体に宿した後倒された神が幾つか……けれど、あくまで少数でした。
――ああ、そうだろうな。古い記録の中でも、特に古いものにしか出てこないヤツだ。
――神の顕現��は本来肉体は不要で、なにか特別な理由がなければそうされる事もなかった。肉体を持たずに討たれた神は、その内に秘めた魔力ごと消散し何も残らない。仮説ですが、最も古い時代には、神々も顕現する姿を試行錯誤した時期があったのかもしれません。肉体を持って顕現し、そして討たれた後捨て置かれた神など、そのものの記録はなかったのですが……
これを見て下さい、とグレーテルは古地図を示した。
――神を鎮めに旅立った英雄の行方を知る者はいない……、こういう地に、恐らく討たれて倒れた神の遺骸が現存する可能性があります……その場所さえ分かれば……
――ん、これは……
フィリップはすぐさま、いつも持ち歩いている汚れた地図を広げた。古地図を交互に指さす。
――ここが、同じく城塞……高地……少し違いがあるが、同じところじゃないか……?
――そうです。そして、ここに菌の森。神の遺骸が、ここに……?
グレーテルの声は興奮して上ずっていた。まだ確定していないものの、どうしても期待が膨らむ。フィリップは大きく頷いた。
――行こう。試す価値はある。
決意は固まった。装備を整えて、ふたりは早速菌の森を目指した。
ふたつのガスマスクを通した呼吸音。梢から垂れた菌糸は、まるですだれのように行く手を次々と塞いでいた。それを押しのけた途端、突然視界が開ける。
フィリップは、はっと息を飲んで足を止めた。
「――……ここだ」
ふたりで作った地図とほとんど同じ場所に、それはあった。
死した神の寝床。
何千年も前に英雄と戦い没したとされる神が横たわっている。
鯨に似ている。がらんとした空間の中に大きな赤黒い鯨の遺骸が打ち捨てられているように見えた。
遺骸の周囲にはまるで丁寧に森をえぐったかのように円形の湿った地面が都市の広場ほどの範囲で広がっており、草一本、菌木一本も生えていない。まるでその遺骸が、あらゆるものが近づくことを拒んでいるかのように。
「……うっ……」
グレーテルは口を抑えてうずくまった。
「大丈夫か?」
「……精霊の気配が……こ、濃すぎる……すみません、少し時間をください……」
弱々しい声で告げたグレーテルが、額につけていたサークレットを外して、座り込んでしまう。
やむをえず、フィリップは少し時間を置くことにした。すぐそばに腰かけて、フィリップも死骸を見つめた。生身で、感覚を増強する道具も身につけていないフィリップは、その遺骸から放たれる魔力の迸りを直に感じずに済んだ。
「あれが神の遺骸か? 鯨のように見えるんだが……」
フィリップは神の遺骸を見ながら首を捻った。
グレーテルはまだ肩で生きをしていたが、答える余裕は出てきていた。
「あなたは鯨を見たことが?」
「祖父は漁師で、幼い頃に鯨を見たことがある」
グレーテルは雑談には反応せず、死した神の遺骸に歩み寄っていった。
肉の大部分が朽ち落ち、元の形は分からない。骨の先から先までの距離から、巨鯨ほどの大きさの存在だったと察することが出来るだけだ。
フィリップも近づいて見れば、それは明らかに鯨とは異なる特徴を有していた。抱え込まれた両の腕と太ももと思しき4本の節が見て取れる。
「……人か?」
「当然人ではありません。ただ、極めて人に近い形をした、大型の何か……でしょうね。人を象って顕現したのでしょうか」
グレーテルは微かに首を傾げていた。
よくよく見ると、手足や頭部の形は残っている。ひとつひとつの大きさが人間と比べ物にならないくらい巨大だ。横向きに膝を抱えるような形で倒れていたため、残った部分がひとかたまりにまとまって丸々とした肉塊に見え、遠目から横たわった鯨に見えたのだ。
グレーテルは躊躇いなく、その肉片に触れた。
「お、おい! 触れて大丈夫なのか?」
「触れないと確認できないでしょう。いまさら躊躇しても仕方ないじゃないですか。」
「それは、そうだが……」
彼女は表情を変えることなく、手袋をしたまま肉片をつまみ上げ、背負った鞄から留め金を外して手にとったモノクルを通してまじまじと観察した。流石にフィリップはまねる気にはなれず、顔を背け代わりに周囲の森を見渡していた。
屍術師として屍体を扱うことには慣れたが、それを当然望んでいるわけもない。ましてや、死した神の肉片なぞ、触れて何が起きるとも知れぬものを、掴む気も起きなかった。
「……やはり。山羊と、おそらくは牛の混合……生贄を触媒に受肉されたものですね」
「数千年も前のものが?それだけ経っててわかるものなのか?」
「受肉した神の記録は数は少ないですが、それを食したものが不滅を得たという伝説は幾つか聞きます。残された肉そのものが不滅だとしても、不思議はないでしょうね」
「まぁ、山羊と牛のミンチなら、味は良さそうだな」
「その冗談は面白くありません」
「はは、誰が食べるものか。触るのもお断りだ」
フィリップは肩を竦める。
ガスマスクをしているから、臭いは分からない。
蠅もたかりもせず、数千年を経ても微生物に分解されている様子もなかった。
「ここで朽ちていっていたということは、この神はひとりで死んだのか?」
「いえ、この辺りの骨が折れています。きっと英雄と戦い、敗れたのでしょう」
グレーテルが示すあたりをしかめ面しながら片目で見やる。左脛と思しき位置��骨が、粉々に粉砕していた。これほどの打撃を神に与える英雄とは…。想像が出来ない。あるいは、Buriedbornesの術を介するならば、可能だろうか。ふと、古の時代からBuriedbornesの術は扱われていたのではないか、という妄想にも似た想像が浮かんだ。
「英雄や魔物は神から力を奪う……けれど、この肉体だけが残ったということは、この谷間には元々、遺骸を喰らえ��ような肉食の魔物や獣がいなかったのでしょう。当の英雄は、恐らく相討ちに」
「その英雄はどこだ?」
グレーテルが指をさす。その先を見れば、遺骸を中心とした空間の縁に、ボロボロに朽ちた剣の柄らしきものだけが落ちていた。刃は完全に失われて、金の装飾部分だけが、堆積物をかぶりながらも劣化せず残っているようだ。
受肉した神の肉体が持つ不滅性が証明されたと言える。あまりにも長い時間を経て、相対した英雄の遺体がほとんど朽ちて消え去った後も、まだこうして肉体を残していたことになる。
木々や草花は育たず、陽の当たらない崖の下で、菌糸類だけがその溢れ出す力の恩恵を受けて菌だけの森を成した。もとより人が住めるような場所ではなかったのだから、手を付けられることもなく歳月が過ぎた事に、疑問の余地はない。
「ここに人間が来たのは、どれくらいぶりなのか」
「……はじめてかもしれませんね。このふたりの他では、はじめての訪問者なのでは? 英雄自身も、はたして人間だったかどうか……」
「好都合だな。予定通りいけそうだ」
「ええ、準備は大丈夫ですか?」
「ああ」
「魔力の計測もそろそろ終わりそうです。正式な数値はまだですが、現時点で必要な魔力を越えています」
グレーテルは研究者らしく、目を輝かせて頷いた。フィリップも頷き返す。
「ここまで近づけば、肌で分かるレベルだな。この魔力量なら、想定通り飛べそうだ」
「ええ、そうですね」
人生でも目にしたことがないほどの、内包された計り知れないほどの魔力量。これほどの力を使うことができれば、確実に過去へ戻ることが可能だろう。
「あーあ。どうせなら、覇王が生まれた頃まで戻って子供のうちに縊り殺せたら、もっと楽なんじゃないかな?」
「…この遺骸と同じものを数万体ご用意する気力がおありなら、どうぞ。一緒に試算したでしょうに…」
時間は巻き戻せる。
有限でも確実でもないが、方法論は確立している。フィリップはそれを扱える。ただ、この世には魔力が絶対的に足りない。
「この遺骸があってこそ、可能になった、それでも、たったの50年か……。だが、その時期であれば屍体も多く集まるだろう。今ではもうお目にかかれないような、名だたる英雄の屍体も手に入るかもしれない。その力で覇王を討ち、人間が人間として生きる時間が取り戻せるはずだ」
「ええ。失敗は許され��せん」
「もし失敗したら、どうする?」
「……そうですね、残された戦力で、覇王相手にはもう勝ち目はないでしょう。手詰まりです。未来に可能性を残すために、あなた��子でも為しましょうか」
「その冗談は面白いよ」
フィリップが笑うと、グレーテルは不満そうに眉を寄せた。
「人間らしい生活を、社会を……取り戻さねば。国や都市が機能し、人々は安全に暮らす、学府にも人がいて、積み重ねられたものが未来に残されていくような……そういったものが、この世界には必要です」
「ああ、その通りだ」
「もし私達に覇王を打破できなければ、より可能性の乏しい後世にすべてを託すしかない。可能性は狭まるばかり。それだけは避けなければ」
「そうならないように、今、やれるだけの事はやろう」
フィリップは杖を荷物から引き抜いた。
「さ、そろそろ行こうか」
戻る場所はたった50年。それでも十分だ。
人類の未来のため、有意義に使わなければ。
フィリップは杖を握る手に力を込めた。思い切り、遺骸に杖の先を突き立てた。肉を貫く感触は、遺骸というのに生々しくぶにぶにと柔らかかった。
杖を差した部分から、光がふわりと零れたと思えば、光の筋が一気に杖を通過し、瞬く間に杖全体が発光する。両手で握っているのに、杖のもたらす衝撃に体が吹き飛ばされそうになる。
杖を中心に、魔力の奔流が竜巻のように徐々に渦を巻き、菌の梢も揺れ、森を包んでいたすべての音が遠ざかって行く。凄まじい轟音が響き、杖自身が悲鳴を上げる。悪路の馬車に乗せたように大きく揺れ振動し、弾け飛ぼうとする。必死でフィリップは縋りついた。
グレーテルは風の中、近くの木にしがみついてフィリップを見守っていた。その表情は落ち着いている。彼女ならば、過去から送り込まれた屍体もきちんと回収し管理してくれるだろう。彼女のような人間に背中を任せられる自分は、こんな時代において、幸せ者ではなかろうかと時々思うが、今はその気持ちが特に強い。
「世界を、救わなくては……!」
遂に杖は、内側からの力に負けるようにたわんだ。咄嗟に手で押さえたが、その瞬間、ガラスのように砕けて、真っ二つに折れた。
そして、世界が揺らいだ。
「フィリップ、お気をつけて」
何も見えない光の中で、グレーテルの最後の言葉は、しっかりと聞こえていた。
~つづく~
原作: ohNussy
著作: 森きいこ
※今回のショートストーリーはohNussyが作成したプロットを元に代筆していただく形を取っております。ご了承ください。
旧き世に禍いあれ(2) - "ブラストフォート城塞"
「ショートストーリー」は、Buriedbornesの本編で語られる事のない物語を補完するためのゲーム外コンテンツです。「ショートストーリー」で、よりBuriedbornesの世界を楽しんでいただけましたら幸いです。
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牛柄ネイル(守谷市からのお客様)
つくばみらい市にあるネイルサロンプリンセスです。 本日の最高気温は午後4時までに全国38地点���11月の観測史上1位の値を更新したそうで、東京都心は26.3℃と11月としては14年ぶりの夏日となり、1977年以降46年ぶりに11月に26℃を超えたそうです。 記録的かつ異例の暑さですね。 ハンドジェルの付け替えでご来店のO様。 今回は牛柄ネイルです。 秋らしくブラウンで。 牛柄も可愛いです。 ご来店ありがとうございました。 またのご来店を心よりお待ちしております。 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、「5類」に移行されました。これまでお客様にもマスクの着用・検温をお願いしておりましたが、今後は任意とさせていただきます。長い間ご協力ありがとうございました。 【11月の定休日】 8日(水)、14日(火)、20日(月)、30日(木) ※換気や消毒の為、ご予約の間隔…
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帯畜FarmDesignで買ったNEWバージョンの牛柄マスクを装置した牛たん一福の店主。さすが牛慣れしているのか、着こなしが違いますねー。 たまにこのマスクを付けてるはず。 #牛たん一福 #farmdesigns (at 牛たん 一福) https://www.instagram.com/p/Cfb1y5VPeIf/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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RDR2:34:西部うろうろ暮らし
そろそろキャンプに帰ろうかなぁと、ローズにまで列車で戻ってきたアーサーです。 しかしなにげなく通りかかった道で、何故か強制スロー。なにかと思ったら、借金取り立ての相手がそこにいたためでした。 おいおい、今日はやるつもりなかったんだけどな。しかしせっかくなので軽く凄んで行くことにしました。 ほう? 今回は案外あっさりと話が進むじゃないか。自分の金はないが、教会? なるほどな、募金の金を盗もうってわけか。よしよし、まあ人生そんなこともあるさ。 と思ったアーサーに、グウィン氏。「いや、墓を掘り返す」。 墓 暴 き か よ !! ギャングの発想を軽く越えてくる一般人、恐るべし。 とはいえ彼がそんなことを思いついたのは、棺桶屋だからでしょうな。葬儀に関わる者として、死者の埋葬品についても知っていて、以前から「あの宝石があれば……だいたい死人と一緒に埋めるなんて勿体無い……」とか思ってたってことか。 アーサーのすることは、彼が墓を掘り返せるように人を追い払ったり、近づいてくる人を追い払ったりすることでした。
ちょっと殴り倒した相手がいたりもしたけど、まあこれっくらいはいいよな。 ちなみに、まずは「丁寧に頼む」で、適当な嘘をついて立ち去ってもらおうとしましたが、通じない相手には「敵対する」=脅す、怒鳴る。それで相手が逃げれば良し、向かってきたら拳でトークです。 そういえば、茶メスタも親密度4になったので、卸しに行こう(´・ω・`)ゲンキデナ(←そしてまたキャンプに帰らない
ローズに馬屋はないので、メドウズかサンドニまで行くしかない感じ。サンドニは町中を進むのがかったるいので、メドウズを選択。 なんか人が集まってるなぁと思ったら、ルモワン・レイダーズどもか。この人数ならここからデッドアイで全員ヘッドショットしてころころできるけど、たとえ相手が誰であれ、犯罪の現場とでもいうのでないかぎり、こんな真っ昼間の人通りのある場所で、こっちから攻撃はしない主義。はいはい、立ち去りますよーだ(´・ω・`) ぼかぁ荒事なんて大嫌いなチキンハートで平和主義、狩りと釣りと馬が趣味の人畜無害な一般小市民ですからね~(´・ω・`) だいたいおまえらなんぞに構ってるほど暇じゃないんだ。馬屋までの道のりはこのアメスタちゃんとの別れの道、よって、この道行を堪能するほうがよっぽど大事。相変わらず神経質で臆病だけど、逆に言えば危険が迫ったときにはすぐに気付いて怯えるからいいサインになる。まあヒョウだかなんだかに出くわしたときには、どんだけ怖かったのか、鳴くより先にいきなり立ち上がって振り落とされ、転がったところを噛みつかれてちんだりもしたが0(:3 )~ =͟͟͞͞(’、3)_ヽ)_、それもまたおまえの個性だからな。俺にはいい思い出だ。買ったばかりの頃ほど水を嫌がったりしなくなったし、足も速いし、いい人に可愛がってもらうんだぞ。゚(゚´ω`゚)゚。 ちなみに名前はアメリちゃんにしてました(←芸がない
メドウズの馬屋で買える馬はどうもブサいので(←)、新しい馬を手に入れるまでは久しぶりにくろたまちゃんに乗ることに。ちなみに虎サラのソラスくんは、速度7+がありがたいので、親密度3にはなったもののまだしばらく手元に置いておく予定。 逃亡が必要なときにくろたまちゃんだと、無事に逃げきれるのかどうかさすがに心許ないもんなぁ。ぎんばくくんならどうにかなると思うけどな。 だがしかし、何度見てもうっとりするこの美しい漆黒の馬体(´ω`*) 他人の馬としては存在しないとしたら、この黒毛シャイヤーを愛馬にできるのはあの一度のチャンスのみだし、……おっと、ここからはネタバレなので黙っておくけど、この馬こそ、アーサーと互いに真の一期一会だよなぁとね。
さて。 やってきたのは―――伝説のコヨーテがいる場所です。ジョンとの羊騒動のとき買ってもらった(?)スナライが、スコフィールドよりもちょっと強かったしね。そろそろ真剣に仕留めてみようかと。 くろたまちゃんは、コヨーテにかじられないよう、ちょっと離れた場所に繋いでおきます。コヨーテって狼とかと違って積極的に襲ってくることはなく、人間に気付くと逃げるほうなんですけどね、やっぱ馬一頭だけにしておくときにはちょっと心配だし。 手がかりはもう知ってる。糞、毛、そして死骸。これを辿れば確定であのへんの茂みにいるのも知ってる。二度失敗してるし:( •ᾥ•): しかしここでちょっと後悔したのは、ローリン��なんとかライフル、スコープを覗かずに撃つことができない? 距離がそこそこ近いので、スコープ画面になるほうが視界が狭くて狙いにくいのです。 それでも無事にヘッドショット! と思いきや……む? レーダーの足跡マークが白い……? なんだろうと思って近づくと、もう動けないようだけど、まだ生きてるのか。すまん、すぐラクにしてやるからな:( •ᾥ•): と、リボルバーで頭もう一発撃ってトドメ。……ほんとすまん。゚(゚´ω`゚)゚。 でもこれでやっと、伝説の動物一匹ゲットです。 牙は、エメラルド牧場のシェイマスにアクセサリーにしてもらって、よし、罠師のところへ行こう! というわけでリッグズ駅に向かいます。
ちなみに列車に乗るとこうしてついてきてくれるのですが、シャイヤーの足でもついてこれるのかこの時代の列車は?w RDR2では馬の品種による個性がちゃんとあるのは周知の事実。荷馬はHPそこそこ、スタミナはけっこうあるけど足が遅いわけですけど、急な坂道とか登らせてもあまり鳴かないので、悪路に強いのかなと思いました。軍馬ほど危険に対して落ち着いてるわけではないけれど、競争馬ほど神経質ではないし、山道や急な斜面などの悪路を走らせても黙々と進んでくれる感じ。それがゲームとして有利なことはありませんけどねw
というわけで、丘の上の罠師のところに到着。 罠師のお店来るの初めてなんだよなぁ。というわけでゆっくり売り物のチェック。
このへんでの最良の皮使うんだな……。なんか、ピアソンに預けてバッグにすることしか考えてなかったけど、余るほど預けるのは勿体無いし、数チェックして罠師に売るようにもしないとな。このジャケットほしいけど……コヨーテの皮は伝説くんのいたありあたりで狩ればいいとして、去勢牛って、家畜だよな……?
牛を野生で見かけたことはないのでツレちゃんに聞いてみると、牛、豚、羊はすべて家畜のみ。ただ、見つからないように狩ることはできるので、懸賞金がどうのとかは避けられる、と。でも名誉レベル下がるんじゃ……? ある程度高くなるとなかなか増えにくくなる一方、ちょっとしたことで大きく下がるので、普通にやってたらMAXは果てしない気がしますしねぇ。 このベストもオサレなんだけど、これも牛の皮必要だし、今回は諦めるか……。 ただ、家畜はさすがに世話をされ手入れもされているので、最良か良質が基本。なので、探そうとなれば簡単に見つかるのは利点ですね。
ローズまで戻ってきました。 白シャツっていいなぁと思って撮ったただそれだけのスクショです。 ブラックガンマンが気に入ってますけど、この白シャツベスト系も捨てがたい。袖の白さが暗がりだと一層際立って、スマートなんですよねぇ。 ちなみにこのアーサーは高価なベストにパフタイ合わせ、ズボンも柄物にし、ちょっとリッチめの装いにしてます。 さーて、ほんとそろそろ拠点に戻ろう。 と思ったのに。
(≖ᾥ≖╬) 人助けしかしてないようなアーサーが、何故こんなことを!? 理由は一つ。 俺のくろたまちゃんを盗もうとしたからだ(≖ᾥ≖╬) 馬泥棒に遭遇するのは二度目。一度目は街道からちょっと奥まった場所の岩陰に縛り上げたまま転がしておきましたが、今回は近くに線路があったので(≖ᾥ≖╬) まあ、列車が来るのが早いが誰か親切な人が通りかかるのが早いか、チャンスはやる(≖ᾥ≖╬)ダガ チネ たぶんこの後も、馬泥棒に対してだけは容赦しないアーサーと思われます。助かるチャンスはくれてやるけど、まあ縄抜けできないかぎりちぬ確率のほうが高い処置は譲りません。……豚って、死体じゃなくても食うのかな……(← なおくろたまちゃんは、口笛吹かなくても振り落としてくれました。親密度MAXだと、「ご主人以外ダメ!!」て感じなのかなぁ(´ω`*) そういや蹄鉄の土落としてるところでアーサーが声かけたら逃げちゃったノコタも、アーサーが乗ろうとしたら竿立ちになりましてね? だからきっとあの子も、アーサーの声に驚いて逃げ出したけど、ご主人のことが大好きだったんだろうなぁ(´ω`*)オトサレテモ オコラナイヨ
さてキャンプの朝。チャールズがシチュー用のおなべ運んでます。キーランはよく馬関係の仕事してたりテーブル拭いてたりするし、チャールズもこの間は薪を割っているとこ見てますし、たまたまなのかな。それとも、拠点内で積極的に雑用をする人と、見張りとかには立つけどこういうこまごましたことはやらない人とがいるのか。
朝の川辺も良いですな。今日はいい天気になるかなぁ。 そんなことを思いつつ、馬をつなぎにいくたびに「アーサー、ちょっと話せる?」とおろおろした声でモリーに言われるのもウザ……もとい、可哀想なので、そろそろ話聞いてるとするか。 と思ったのに。 最近のダッチはどう? 彼のことは愛しているわ。でも彼って忠誠を大切にするでしょ。―――みたいなところまで話したところで、おじさんが「いい話があるぞ!」と割って入ってきてしまい、お流れに。 あー、でもなんとなく察したなぁ。おまえ、他の男とヤッたろ?(ㅍ_ㅍ) つーかダッチがそれ知ったら、忠誠がどうのとかじゃなく自分のプライドが傷つけられた感じで激怒すんじゃないかなぁ(ㅍ_ㅍ)ドウデモ イイケドー
それはさておき、いつも怠けてるおじさんの持ち込んできた”いい仕事”なんてアテにならないので、乗り気じゃないアーサー。そしたらおじさん、ビルとチャールズを呼び止めてこんなことをw そりゃ働きたくないさ!! 狩りして釣りして馬の世話して探検して暮らしてたい!!
という本音はさておき、チャールズが手を貸すっていうならやってもいいかなぁ。ビル? ビルは……一所懸命なんだろうとは思うけど、最初の列車強盗の不発とか、酒場での乱闘とか……面白い奴だけど仕事の相棒として頼りになるってタイプじゃないよなぁ。嫌いじゃないけどな(´ω`*)
そんなわけで、四人で馬車強盗に行くことになりました。
給料の運搬馬車が毎週決まったときにここを通り、しかもちょっと手前で見張りが交代した後、ローズまでは護衛がいない。そんなウマい話、何事もなくものにできるならそれに越したことはないけれど、絶対なにかありますよねー? たまにはそういうメタ視点を封印するウマウマな展開があって、拍子抜けしてもいいんですよ?
犯罪行為はダサい格好で、が信念のアーサー。バンダナでかっちょよく口元を隠すよりむしろ、ずだ袋式のマスクで髪型も髭も隠すのが正しい悪事ファッション。 チャールズは相変わらずいい奴ですな。ギャングに身を置いてはいても、殺さなくていいなら殺さずに済ませよう、という。
そしてみんなで馬車を取り囲み、―――おいおいコーンウォールの馬車かよ! まーた面倒なのを襲ったもんだ。
しかも運悪く馬車で通りかかる、というか、遅れて追ってきたっぽい護衛?
ニーゲーロー!!('ω')三( ε:)三(,ω,)三(:3 ) つーかこんな展開ならシャイヤーじゃなくせめてトルコマンで来るんだったっ。 しかしどうもこれ、一定の場所に逃げこむっていうだけの展開ですな。馬の速度関係なし。
森の中の崩れかけた納屋に隠れ、夜を待ち、そろそろ脱出しようかと思ったところへやってきた追っ手。つーか、少し様子見てとっとと逃げてれば良かったんじゃないのか……?
これで人がいることに気づかないとは、どんな間抜け。 そして、「ここはOKだ」と言ってるそこでバケツだか蹴っ飛ばして音を建てたおばかなビル( ・ὢ・ )
わーい銃撃戦だーい( ・ὢ・ )フンマニモウ 結局撃ちまくって納屋を脱出して森の中へ逃げ、更に追っ手をころころして逃げるという有り様。あーあ。金は手に入ったけど、これでまたコーンウォールの恨み買ったわけだ。 こうして、銃の力よりも、それを買うことのできる金の力で追い込まれているのだろうなぁ(´・ω・`)
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中華を振る舞う わたしたちの門出
大学の友人であるすどくんが会いに来てくれた。とても嬉しい。最近仕事を辞めたばかり彼を労おうとお気に入りの中華料理屋へ連れて行く。たにぐちさんも来て、3人で食べる中華は案の定格別なものであった。友人たちと卓を囲んで、やはり中華料理の醍醐味は大皿文化だと思う。誰かの皿が空いたのを見つけては料理をよそい、こちらの皿が空くとよそわれる。八角の鼻に抜ける甘みとごま油の香り、小籠包や餃子がからこぼれる肉汁。これ以上に満足なごはんがあるだろうか。いつも必ず頼む豆苗炒めと角煮まんをふたりに食べてもらう。ふたりともとても美味しそうだったのでよかったが、無論それを食べていちばん喜んでいるのは私であった。すどくんもせっかくだから珍味を食べてみたいと、漢字の羅列された中国語のメニュー表を見つめ、なまこが気になるというが今日の主役は紛れもない君なのだから食べたいものはなんでも頼みよし。ナマコの甘辛煮をみんなでつつくがやはり珍味や珍味。牛の脂身のような舌触り、食べ物らしくない甘み、食感の方は最初のひと噛みすこし跳ね返りがあり、ストンと噛み切れる。想像するにこれは素材本来のかたさというのよりは調理方法によってそのような質感が生まれているような、そんな印象を受けた。なまこはお世辞にもおいしいとは思わなかったが、みんなで珍味を食べているという事態に心躍る。それから良かったのが五目チャーハン。見るだけでもパラパラツヤツヤしている米と今にもはちきれんばかり、ぷっちりとした小エビがあちこちに見える。レンゲいっぱいにすくいあげ、口に運ぶとさまざまな食感が楽しい。私はひとりなら中華料理屋でチャーハンは頼まないから、このみんなで食べる五目チャーハンはとても新鮮で、よりこの夜ごはんを特別なものだと思わせた。ひとしきり食べ終わって店を出ると、中華のお礼に花をくれるという。店の横にある花屋で買おうとするが、あいにくもう閉まっていたのでそのまま家に帰るということにして、駅まで歩きながらこの一年のあることないことについて話しているとあっという間に新宿三丁目駅に着く。地下へのエレベーターを降りる途中、たしか駅の近くに別の花屋があるとかそんな話になり、調べると閉店までまだ4分程度ある。閉店間際の行く行かないの葛藤もせずに三人とも花屋に向かって走り出したのはそのほうがおもしろいと思ったからだと思う。長い信号に捕まる。もうすぐそこに花屋あるのだがこのままでは間に合わない。すぐ電話をかけてあと30秒ほどで着くから待ってほしいという。店に着いて、ただいま電話をかけたものです。と言うと店員さんはほんの少しの早く帰りたそうな表情をして、今からでも買える花を案内してくれた。もらった花束はとても美しく聡明な青色をしている。久しぶりに花をもらってマスク越しにでも分かるくらい笑みが溢れる。こんな夜がとても楽しくて柄でもないのに駅の鏡のところでみんなで写真を撮ったりなどする。よそってはよそわれる夜。みなそれぞれの社会人一年目の終わり。
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Ninja
上下黒の大きなジャージに豹柄のトートバックの背の小さな女。白のショーツに白のロンティーの背の高い男のマスクは黒。何か話しながら歩いているのは、電話しているのだろう。シマトネリコの薄緑の細長いサヤの集まりが夜に白々と揺れている。薄紫の大きなロンティー、金髪アッシュの人がスマホを持った手を上げてタクシーを止める。ケヤキの葉は雨を受けても乾きが目につく、握りしめればもうぱりぱり音を立てそうだ。オーケーで牛乳だけ三本買う。路肩にどっしり腰を下ろしてタバコを吸っている長髪で美形の男。忍者のように機敏に動きながら歩く若い男たち。もうすぐお彼岸である。
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☆プロトタイプ版☆ ひとみに映る影シーズン2 第七話「復活、ワヤン不動」
☆プロトタイプ版☆ こちらは電子書籍「ひとみに映る影 シーズン2」の 無料プロトタイプ版となります。 誤字脱字等修正前のデータになりますので、あしからずご了承下さい。
☆ここから買おう☆
(シーズン2あらすじ) 私はファッションモデルの紅一美。 旅番組ロケで訪れた島は怪物だらけ!? 霊能者達の除霊コンペとバッティングしちゃった! 実は私も霊感あるけど、知られたくないなあ…… なんて言っている場合じゃない。 諸悪の根源は恩師の仇、金剛有明団だったんだ! 憤怒の化身ワヤン不動が、今度はリゾートで炸裂する!!
pixiv版 (※内容は一緒です。)
དང་པོ་
ニライカナイから帰還した私達はその後、魔耶さんに呼ばれて食堂へ向かう。食堂内では五寸釘愚連隊と生き残った河童信者が集合していた。更に最奥のテーブルには、全身ボッコボコにされたスーツ姿の男。バリカンか何かで雑に剃り上げられた頭頂部を両手で抑えながら、傍らでふんぞり返る禍耶さんに怯えて震えている。 「えーと……お名前、誰さんでしたっけ」 この人は確か、河童の家をリムジンに案内していたアトム社員だ。特徴的な名前だった気はするんだけど、思い出せない。 「あっ……あっ……」 「名乗れ!」 「はひいぃぃ! アトムツアー営業部の五間擦平雄(ごますり ひらお)と申します!」 禍耶さんに凄まれ、五間擦氏は半泣きで名乗った。少なくともモノホンかチョットの方なんだろう。すると河童信者の中で一番上等そうなバッジを付けた男が席を立ち、机に手をついて私達に深々と頭を下げた。 「紅さん、志多田さん。先程は家のアホ大師が大っっっ変ご迷惑をおかけ致しました! この落とし前は我々河童の家が後日必ず付けさせて頂きます!」 「い、いえそんな……って、その声まさか、昨年のお笑いオリンピックで金メダルを総ナメしたマスク・ド・あんこう鍋さんじゃないですか! お久しぶりですね!?」 さすがお笑い界のトップ組織、河童の家だ。ていうか仕事で何度か会ったことあるのに素顔初めて見た。 「あお久しぶりっす! ただこちらの謝罪の前に、お二人に話さなきゃいけない事があるんです。ほら説明しろボケナスがッ!!」 あんこう鍋さんが五間擦氏の椅子を蹴飛ばす。 「ぎゃひぃ! ごご、ご説明さひぇて頂きますぅぅぅ!!」 五間擦氏は観念して、千里が島とこの除霊コンペに関する驚愕の事実を私達に洗いざらい暴露した。その全貌はこうだ。 千里が島では散減に縁を奪われた人間が死ぬと、『金剛の楽園』と呼ばれる何処かに飛び去ってしまうと言い伝えられている。そうなれば千里が島には人間が生きていくために必要な魂の素が枯渇し、乳幼児の生存率が激減してしまうんだ。そのため島民達は縁切り神社を建て、島外の人々を呼びこみ縁を奪って生き延びてきたのだという。 アトムグループが最初に派遣した建設会社社員も伝説に違わず祟られ、全���。その後も幾つかの建設会社が犠牲になり、ようやく事態を重く受け止めたアトムが再開発中断を検討し始めた頃。アトムツアー社屋に幽霊が現れるという噂が囁かれ始めた。その霊は『日本で名のある霊能者達の縁を散減に献上すれば千里が島を安全に開発させて���ろう』と宣うらしい。そんな奇妙な話に最初は半信半疑だった重役達も、『その霊がグループ重役会議に突如現れアトムツアーの筆頭株主を目の前で肉襦袢に変えた』事で霊の要求を承認。除霊コンペティションを行うと嘘の依頼をして、日本中から霊能者を集めたのだった。 ところが行きの飛行機で、牛久大師は袋の鼠だったにも関わらず中級サイズの散減をあっさり撃墜してしまう。その上業界ではインチキ疑惑すら噂されていた加賀繍へし子の取り巻きに散減をけしかけても、突然謎のレディース暴走族幽霊が現れて返り討ちにされてしまった。度重なる大失態に激怒した幽霊はアトムツアーイケメンライダーズを全員肉襦袢に変えて楽園へ持ち帰ってしまい、メタボ体型のため唯一見逃された五間擦氏はついに牛久大師に命乞いをする。かくして大師は大散減を退治すべく、祠の封印を剥がしたのだった。以上の話が終わると、私は五間擦氏に馬乗りになって彼の残り少ない髪の毛を引っこ抜き始めた。 「それじゃあ、大師は初めから封印を解くつもりじゃなかったんですか?」 「ぎゃあああ! 毛が毛が毛がああぁぁ!!」 あんこう鍋さんは首を横に振る。 「とんでもない。あの人は力がどうとか言うタイプじゃありません。地上波で音波芸やろうとしてNICを追放されたアホですよ? 我々はただの笑いと金が大好きなぼったくりカルトです」 「ほぎゃああぁぁ! 俺の貴重な縁があぁぁ、抜けるウゥゥーーーッ!!」 「そうだったんですね。だから『ただの関係者』って言ってたんだ……」 そういう事だったのか。全ては千里が島、アトムグループ、ひいては金剛有明団までもがグルになって仕掛けた壮大なドッキリ……いや、大量殺人計画だったんだ! 大師も斉二さんもこいつらの手の上で踊らされた挙句逝去したとわかった以上、大散減は尚更許してはおけない。 魔耶さんと禍耶さんは食堂のカウンターに登り、ハンマーを掲げる。 「あなた達。ここまでコケにされて、大散減を許せるの? 許せないわよねぇ?」 「ここにいる全員で謀反を起こしてやるわ。そこの祝女と影法師使いも協力しなさい」 禍耶さんが私達を見る。玲蘭ちゃんは数珠を持ち上げ、神人に変身した。 「全員で魔物(マジムン)退治とか……マジウケる。てか、絶対行くし」 「その肉襦袢野郎とは個人的な因縁もあるんです。是非一緒に滅ぼさせて下さい!」 「私も! さ、さすがに戦うのは無理だけど……でもでも、出来ることはいっぱい手伝うよ!」 佳奈さんもやる気満々のようだ。 「決まりね! そうしたら……」 「その作戦、私達も参加させて頂けませんか?」 食堂入口から突然割り込む声。そこに立っていたのは…… 「斉一さん!」「狸おじさん!」 死の淵から復活した後女津親子だ! 斉一さんは傷だらけで万狸ちゃんに肩を借りながらも、極彩色の細かい糸を纏い力強く微笑んでいる。入口近くの席に座り、経緯を語りだした。 「遅くなって申し訳ない。魂の三分の一が奪われたので、万狸に体を任せて、斉三と共にこの地に住まう魂を幾つか分けて貰っていました」 すると斉一さんの肩に斉三さんも現れる。 「診療所も結界を張り終え、とりあえず負傷者の安全は確保した。それと、島の魂達から一つ興味深い情報を得ました」 「聞かせて、狸ちゃん」 魔耶さんが促す。 「御戌神に関する、正しい歴史についてです」 時は遡り江戸時代。そもそも江戸幕府征服を目論んだ物の怪とは、他ならぬ金剛有明団の事だった。生まれた直後に悪霊を埋め込まれた徳松は、ゆくゆくは金剛の意のままに動く将軍に成長するよう運命付けられていたんだ。しかし将軍の息子であった彼は神職者に早急に保護され、七五三の儀式が行われる。そこから先の歴史は青木さんが説明してくれた通り。けど、この話には続きがあるらしい。 「大散減の祠などに、星型に似たシンボルを見ませんでしたか? あれは大散減の膨大な力の一部を取り込み霊能力を得るための、給電装置みたいな物です。もちろんその力を得た者は縁が失せて怪物になるのですが、当時の愚か者共はそうとは知らず、大散減を『徳川の埋蔵金』と称し挙って島に移住しました」 私達したたびが探していた徳川埋蔵金とはなんと、金剛の膨大な霊力と衆生の縁の塊、大散減の事だったんだ。ただ勿論、霊能者を志し島に近付いた者達はまんまと金剛に魂を奪われた。そこで彼らの遺族は風前の灯火だった御戌神に星型の霊符を貼り、自分達の代わりに島外の人間から縁を狩る猟犬に仕立て上げたんだ。こうして御戌神社ができ、御戌神は地中で飢え続ける大散減の手足となってせっせと人の縁を奪い続けているのだという。 「千里が島の民は元々霊能者やそれを志した者の子孫です。多少なりとも力を持つ者は多く、彼らは代々『御戌神の器』を選出し、『人工転生』を行ってきました」 斉一さんが若干小声で言う。人工転生。まだ魂が未発達の赤子に、ある特定の幽霊やそれに纏わる因子を宛てがって純度の高い『生まれ変わり』を作る事。つまり金剛が徳松に行おうとしたのと同じ所業だ。 「じゃあ、今もこの島のどこかに御戌様の生まれ変わりがいるんですか?」 佳奈さんは飲み込みが早い。 「ええ。そして御戌神は、私達が大散減に歯向かえば再び襲ってきます。だからこの戦いでは、誰かが対御戌神を引き受け……最悪、殺生しなければなりません」 「殺生……」 生きている人間を、殺す。死者を成仏させるのとは訳が違う話だ。魔耶さんは胸の釘を握りしめた。 「そのワンちゃん、なんて可哀想なの……可哀想すぎる。攻撃なんて、とてもできない」 「魔耶、今更甘えた事言ってんじゃないわよ。いくら生きてるからって、中身は三百年前に死んだバケモノよ! いい加減ラクにしてやるべきだわ」 「でもぉ禍耶、あんまりじゃない! 生まれた時から不幸な運命を課せられて、それでも人々のために戦ったのに。結局愚かな連中の道具にされて、利用され続けているのよ!」 (……!) 道具。その言葉を聞いた途端、私は心臓を握り潰されるような恐怖を覚えた。本来は衆生を救うために手に入れた力を、正反対の悪事に利用されてしまう。そして余所者から邪尊(バケモノ)と呼ばれ、恐れられるようになる……。 ―テロリストですよ。ドマル・イダムという邪尊の力を操ってチベットを支配していた、最悪の独裁宗派です― 自分の言った言葉が心に反響する。御戌神が戦いの中で見せた悲しそうな目と、ニライカナイで見たドマルの絶望的な目が日蝕のように重なる。瞳に映ったあの目は……私自身が前世で経験した地獄の、合わせ鏡だったんだ。 「……魔耶さん、禍耶さん。御戌神は、私が相手をします」 「え!?」 「正気なの!? 殺生なんて私達死者に任せておけばいいのよ! でないとあんた、殺人罪に問われるかもしれないのに……」 圧。 「ッ!?」 私は無意識に、前世から受け継がれた眼圧で総長姉妹を萎縮させた。 「……悪魔の心臓は御仏を産み、悪人の遺骨は鎮魂歌を奏でる。悪縁に操られた御戌神も、必ず菩提に転じる事が出来るはずです」 私は御戌神が誰なのか、確証を持っている。本当の『彼』は優しくて、これ以上金剛なんかの為に罪を重ねてはいけない人。たとえ孤独な境遇でも人との縁を大切にする、子犬のようにまっすぐな人なんだ。 「……そう。殺さずに解決するつもりなのね、影法師使いさん。いいわ。あなたに任せます」 魔耶さんがスレッジハンマーの先を私に突きつける。 「失敗したら承知しない。私、絶対に承知しないわよ」 私はそこに拳を当て、無言で頷いた。 こうして話し合いの結果、対大散減戦における役割分担が決定した。五寸釘愚連隊と河童の家、玲蘭ちゃんは神社で大散減本体を引きずり出し叩く。私は御戌神を探し、神社に行かれる前に説得か足止めを試みる。そして後女津家は私達が解読した暗号に沿って星型の大結界を巡り、大散減の力を放出して弱体化を図る事になった。 「志多田さん。宜しければ、お手伝いして頂けませんか?」 斉一さんが立ち上がり、佳奈さんを見る。一方佳奈さんは申し訳なさそうに目を伏せた。 「で……でも、私は……」 すると万狸ちゃんが佳奈さんの前に行く。 「……あのね。私のママね、災害で植物状態になったの。大雨で津波の警報が出て、パパが車で一生懸命高台に移動したんだけど、そこで土砂崩れに遭っちゃって」 「え、そ���な……!」 「ね、普通は不幸な事故だと思うよね。でもママの両親、私のおじいちゃんとおばあちゃん……パパの事すっごく責めたんだって。『お前のせいで娘は』『お前が代わりに死ねば良かったのに』みたいに。パパの魂がバラバラに引き裂かれるぐらい、いっぱいいっぱい責めたの」 昨晩斉三さんから聞いた事故の話だ。奥さんを守れなかった上にそんな言葉をかけられた斉一さんの気持ちを想うと、自分まで胸が張り裂けそうだ。けど、奥さんのご両親が取り乱す気持ちもまたわかる。だって奥さんのお腹には、万狸ちゃんもいたのだから……。 「三つに裂けたパパ……斉一さんは、生きる屍みたいにママの為に無我夢中で働いた。斉三さんは病院のママに取り憑いたまま、何年も命を留めてた。それから、斉二さんは……一人だけ狸の里(あの世)に行って、水子になっちゃったママの娘を育て続けた」 「!」 「斉二さんはいつも言ってたの。俺は分裂した魂の、『後悔』の側面だ。天災なんて誰も悪くないのに、目を覚まさない妻を恨んでしまった。妻の両親を憎んでしまった。だからこんなダメな狸親父に万狸が似ないよう、お前をこっちで育てる事にしたんだ。って」 万狸ちゃんが背筋をシャンと伸ばし、顔を上げた。それは勇気に満ちた笑顔だった。 「だから私知ってる。佳奈ちゃんは一美ちゃんを助けようとしただけだし、ぜんぜん悪いだなんて思えない。斉二さんの役割は、完璧に成功してたんだよ」 「万狸ちゃん……」 「あっでもでも、今回は天災じゃなくて人災なんだよね? それなら金剛有明団をコッテンパンパンにしないと! 佳奈ちゃんもいっぱい悲しい思いした被害者でしょ?」 万狸ちゃんは右手を佳奈さんに差し出す。佳奈さんも顔を上げ、その手を強く握った。 「うん。金剛ぜったい許せない! 大散減の埋蔵金、一緒にばら撒いちゃお!」 その時、ホテルロビーのからくり時計から音楽が鳴り始めた。曲は民謡『ザトウムシ』。日没と大散減との対決を告げるファンファーレだ。魔耶さんは裁判官が木槌を振り下ろすように、机にハンマーを叩きつけた! 「行ぃぃくぞおおおぉぉお前らああぁぁぁ!!!」 「「「うおおぉぉーーーっ!!」」」 総員出撃! ザトウムシが鳴り響く逢魔が時の千里が島で今、日本最大の除霊戦争が勃発する!
གཉིས་པ་
大散減討伐軍は御戌神社へ、後女津親子と佳奈さんはホテルから最寄りの結界である石見沼へと向かった。さて、私も御戌神の居場所には当てがある。御戌神は日蝕の目を持つ獣。それに因んだ地名は『食虫洞』。つまり、行先は新千里が島トンネル方面だ。 薄暗いトンネル内を歩いていると、電灯に照らされた私の影が勝手に絵を描き始めた。空で輝く太陽に向かって無数の虫が冒涜的に母乳を吐く。太陽は穢れに覆われ、光を失った日蝕状態になる。闇の緞帳(どんちょう)に包まれた空は奇妙な星を孕み、大きな獣となって大地に災いをもたらす。すると地平線から血のように赤い月が昇り、星や虫を焼き殺しながら太陽に到達。太陽と重なり合うやいなや、天上天下を焼き尽くすほどの輝きを放つのだった……。 幻のような影絵劇が終わると、私はトンネルを抜けていた。目の前のコンビニは既に電気が消えている。その店舗全体に、腐ったミルクのような色のペンキで星型に線を一本足した記号が描かれている。更に接近すると、デッキブラシを持った白髪の偉丈夫が記号を消そうと悪戦苦闘しているのが見えた。 「あ、紅さん」 私に気がつき振り返った青木さんは、足下のバケツを倒して水をこぼしてしまった。彼は慌ててバケツを立て直す。 「見て下さい。誰がこんな酷い事を? こいつはコトだ」 青木さんはデッキブラシで星型の記号を擦る。でもそれは掠れすらしない。 「ブラシで擦っても? ケッタイな落書きを……っ!?」 指で直接記号に触れようとした青木さんは、直後謎の力に弾き飛ばされた。 「……」 青木さんは何かを思い出したようだ。 「紅さん。そういえば僕も、ケッタイな体験をした事が」 夕日が沈んでいき、島中の店や防災無線からはザトウムシが鳴り続ける。 「犬に吠えられ、夜中に目を覚まして。永遠に飢え続ける犬は、僕のおつむの中で、ひどく悲しい声で鳴く。それならこれは幻聴か? 犬でないなら幽霊かもだ……」 青木さんは私に背を向け、沈む夕日に引き寄せられるように歩きだした。 「早くなんとかせにゃ。犬を助けてあげなきゃ、僕までどうにかなっちまうかもだ。するとどこからか、目ん玉が潰れた双頭の毛虫がやって来て、口からミルク��吐き出した。僕はたまらず、それにむしゃぶりつく」 デッキブラシから滴った水が地面に線を引き、一緒に夕日を浴びた青木さんの影も伸びていく。 「嫌だ。もう犬にはなりたくない。きっとおっとろしい事が起きるに違いない。満月が男を狼にするみたいに、毛虫の親玉を解き放つなど……」 「青木さん」 私はその影を呼び止めた。 「この落書きは、デッキブラシじゃ落とせません」 「え?」 「これは散減に穢された縁の母乳、普通の人には見えない液体なんです」 カターン。青木さんの手からデッキブラシが落ちた途端、全てのザトウムシが鳴り止んだ。青木さんはゆっくりとこちらへ振り向く。重たい目隠れ前髪が狛犬のたてがみのように逆立ち、子犬のように輝く目は濁った穢れに覆われていく。 「グルルルル……救、済、ヲ……!」 私も胸のペンダントに取り付けたカンリンを吹いた。パゥーーー……空虚な悲鳴のような音が響く。私の体は神経線維で編まれた深紅の僧衣に包まれ、激痛と共に影が天高く燃え上がった。 「青木さん。いや、御戌神よ。私は紅の守護尊、ワヤン不動。しかし出来れば、お前とは戦いたくない」 夕日を浴びて陰る日蝕の戌神と、そこから伸びた赤い神影(ワヤン)が対峙する。 「救済セニャアアァ!」 「そうか。……ならば神影繰り(ワヤン・クリ)の時間だ!」 空の月と太陽が見下ろす今この時、地上で激突する光の神と影の明王! 穢れた色に輝く御戌神が突撃! 「グルアアァァ!」 私はティグクでそれをいなし、黒々と地面に伸びた自らの影を滑りながら後退。駐車場の車止めをバネに跳躍、傍らに描かれた邪悪な星目掛けてキョンジャクを振るった。二〇%浄化! 分解霧散した星の一片から大量の散減が噴出! 「マバアアアァァ!!」「ウバアァァァ!」 すると御戌神の首に巻かれた幾つもの頭蓋骨が共鳴。ケタケタと震えるように笑い、それに伴い御戌神も悶絶する。 「グルアァァ……ガルァァーーーッ!!」 咆哮と共に全骨射出! 頭蓋骨は穢れた光の尾を引き宙を旋回、地を這う散減共とドッキングし牙を剥く! 「がッは!」 毛虫の体を得た頭蓋骨が飛び回り、私の血肉を穿つ。しかし反撃に転じる寸前、彼らの正体を閃いた。 「さては歴代の『器』か」 この頭蓋骨らは御戌神転生の為に生贄となった、どこの誰が産んだかもわからない島民達の残滓だ。なら速やかに解放せねばなるまい! 人頭毛虫の猛攻をティグクの柄やキョンジャクで防ぎながら、ティグクに付随する旗に影炎を着火! 「お前達の悔恨を我が炎の糧とする! どおぉりゃああぁーーーーっ!!」 ティグク猛回転、憤怒の地獄大車輪だ! 飛んで火に入る人頭毛虫らはたちどころに分解霧散、私の影体に無数の苦痛と絶望と飢えを施す! 「クハァ……ッ! そうだ……それでいい。私達は仲間だ、この痛みを以て金剛に汚された因果を必ずや断ち切ってやろう! かはあぁーーーっはーーっはっはっはっはァァーーッ!!!」 苦痛が無上の瑜伽へと昇華しワヤン不動は呵呵大笑! ティグクから神経線維の熱線が伸び大車輪の火力を増強、星型記号を更に焼却する! 記号は大文字焼きの如く燃え上がり穢れ母乳と散減を大放出! 「ガウルル、グルルルル!」 押し寄せる母乳と毛虫の洪水に突っ込み喰らおうと飢えた御戌神が足掻く。だがそうはさせるものか、私の使命は彼を穢れの悪循環から救い出す事だ。 「徳川徳松ゥ!」 「!」 人の縁を奪われ、畜生道に堕ちた哀しき少年の名を呼ぶ。そして丁度目の前に飛んできた散減を灼熱の手で掴むと、轟々と燃え上がるそれを遠くへ放り投げた! 「取ってこい!」 「ガルアァァ!!」 犬の本能が刺激された御戌神は我を忘れ散減を追う! 街路樹よりも高く跳躍し口で見事キャッチ、私目掛けて猪突猛進。だがその時! 彼の本体である衆生が、青木光が意識を取り戻した! (戦いはダメだ……穢れなど!) 日蝕の目が僅かに輝きを増す。御戌神は空中で停止、咥えている散減を噛み砕いて破壊した! 「かぁははは、いい子だ徳松よ! ならば次はこれだあぁぁ!!」 私はフリスビーに見立ててキョンジャクを投擲。御戌神が尻尾を振ってハッハとそれを追いかける。キョンジャクは散減共の間をジグザグと縫い進み、その軌跡を乱暴になぞる御戌神が散減大量蹂躙! 薄汚い死屍累々で染まった軌跡はまさに彼が歩んできた畜生道の具現化だ!! 「衆生ぉぉ……済度ぉおおおぉぉぉーーーーっ!!!」 ゴシャアァン!!! ティグクを振りかぶって地面に叩きつける! 視神経色の亀裂が畜生道へと広がり御戌神の背後に到達。その瞬間ガバッと大地が割れ、那由多度に煮え滾る業火を地獄から吹き上げた! ズゴゴゴゴガガ……マグマが滾ったまま連立する巨大灯篭の如く隆起し散減大量焼却! 振り返った御戌神の目に陰る穢れも、紅の影で焼き溶かされていく。 「……クゥン……」 小さく子犬のような声を発する御戌神。私は憤怒相を収め、その隣に立つ。彼の両眼からは止めどなく饐えた涙が零れ、その度に日蝕が晴れていく。気がつけば空は殆ど薄暗い黄昏時になっていた。闇夜を迎える空、赤く燃える月と青く輝く太陽が並ぶ大地。天と地の光彩が逆転したこの瞬間、私達は互いが互いの前世の声を聞いた。 『不思議だ。あの火柱見てると、ぼくの飢えが消えてく。お不動様はどんな法力を?』 ༼ なに、特別な力ではない。あれは慈悲というものだ ༽ 『じひ』 徳松がドマルの手を握った。ドマルの目の奥に、憎しみや悲しみとは異なる熱が込み上がる。 『救済の事で?』 ༼ ……ま、その類いといえばそうか。童よ、あなたは自分を生贄にした衆生が憎いか? ༽ 徳松は首を横に振る。 『ううん、これっぽっちも。だってぼく、みんなを救済した神様なんだから』 すると今度はドマルが両手で徳松の手を包み、そのまま深々と合掌した。 ༼ なら、あなたはもう大丈夫だ。衆生との縁に飢える事は、今後二度とあるまい ༽
གསུམ་པ་
時刻は……わからないけど、日は完全に沈んだ。私も青木さんも地面に大の字で倒れ、炎上するコンビニや隆起した柱状節理まみれの駐車場を呆然と眺めている。 「……アーーー……」 ふと青木さんが、ずっと咥えっ放しだったキョンジャクを口から取り出した。それを泥まみれの白ニットで拭い、私に返そうとして……止めた。 「……洗ってからせにゃ」 「いいですよ。この後まだいっぱい戦うもん」 「大散減とも? おったまげ」 青木さんにキョンジャクを返してもらった。 「実は、まだ学生の時……友達が僕に、『彼女にしたい芸能人は?』って質問を。けど特に思いつかなくて、その時期『非常勤刑事』やってたので紅一美ちゃんと。そしたら今回、本当にしたたびさんが……これが縁ってやつなら、ちぃと申し訳ないかもだ」 「青木さんもですか」 「え?」 「私も実は、この間雑誌で『好きな男性のタイプは何ですか』って聞かれて、なんか適当に答えたんですけど……『高身長でわんこ顔な方言男子』とかそんなの」 「そりゃ……ふふっ。いやけど、僕とは全然違うイメージだったかもでしょ?」 「そうなんですよ。だから青木さんの素顔初めて見た時、キュンときたっていうより『あ、実在するとこんな感じなの!?』って思っちゃったです。……なんかすいません」 その時、遠くでズーンと地鳴りのような音がした。蜃気楼の向こうに耳をそばだてると、怒号や悲鳴のような声。どうやら敵の大将が地上に現れたようだ。 「行くので?」 「大丈夫。必ず戻ってきます」 私は重い体を立ち上げ、ティグクとキョンジャクに再び炎を纏った。そして山頂の御戌神社へ出発…… 「きゃっ!」 しようとした瞬間、何かに服の裾を掴まれたかのような感覚。転びそうになって咄嗟にティグクの柄をつく。足下を見ると、小さなエネルギー眼がピンのように私の影を地面と縫いつけている。 ༼ そうはならんだろ、小心者娘 ༽ 「ちょ、ドマル!?」 一方青木さんの方も、徳松に体を勝手に動かされ始めた。輝く両目から声がする。 『バカ! あそこまで話しといて告白しねえなど!? このボボ知らず!』 「ぼっ、ぼっ、ボボ知らずでねえ! 嘘こくなぁぁ!」 民謡の『お空で見下ろす出しゃばりな月と太陽』って、ひょっとしたら私達じゃなくてこの前世二人の方を予言してたのかも。それにしてもボボってなんだろ、南地語かな。 ༼ これだよ ༽ ドマルのエネルギー眼が炸裂し、私は何故かまた玲蘭ちゃんの童貞を殺す服に身を包んでいた。すると何故か青木さんが悶絶し始めた。 「あややっ……ちょっと、ダメ! 紅さん! そんなオチチがピチピチな……こいつはコトだ!!」 ああ、成程。ボボ知らずってそういう…… 「ってだから、私の体で検証すなーっ! ていうか、こんな事している間にも上で死闘が繰り広げられているんだ!」 ༼ だからぁ……ああもう! 何故わからないのか! ヤブユムして行けと言っているんだ、その方が生存率上がるしスマートだろ! ༽ 「あ、そういう事?」 ヤブユム。確か、固い絆で結ばれた男女の仏が合体して雌雄一体となる事で色々と超越できる、みたいな意味の仏教用語……だったはず。どうすればできるのかまではサッパリわかんないけど。 「え、えと、えと、紅さん……一美ちゃん!」 「はい……う、うん、光君!」 両前世からプレッシャーを受け、私と光君は赤面しながら唇を近付ける。 『あーもー違う! ヤブユムっていうのは……』 ༼ まーまー待て。ここは現世を生きる衆生の好きにさせてみようじゃないか ༽ そんな事言われても困る……それでも、今私と光君の想いは一つ、大散減討伐だ。うん、多分……なんとかなる! はずだ!
བཞི་པ་
所変わって御戌神社。姿を現した大散減は地中で回復してきたらしく、幾つか継ぎ目が見えるも八本足の完全体だ。十五メートルの巨体で暴れ回り、周囲一帯を蹂躙している。鳥居は倒壊、御戌塚も跡形もなく粉々に。島民達が保身の為に作り上げた生贄の祭壇は、もはや何の意味も為さない平地と化したんだ。 そんな絶望的状況にも関わらず、大散減討伐軍は果敢に戦い続ける。五寸釘愚連隊がバイクで特攻し、河童信者はカルトで培った統率力で彼女達をサポート。玲蘭ちゃんも一枚隔てた異次元から大散減を構成する無数の霊魂を解析し、虱潰しに破壊していく。ところが、 「あグッ!」 バゴォッ!! 大散減から三メガパスカル級の水圧で射出された穢れ母乳が、河童信者の一人に直撃。信者の左半身を粉砕! 禍耶さんがキュウリの改造バイクで駆けつける。 「河童信者!」 「あ、か……禍耶の姐御……。俺の、魂を……吸収……し……」 「何言ってるの、そんな事できるわけないでしょ!?」 「……大散、ぃに、縁……取られ、嫌、……。か、っぱは……キュウリ……好き……っか……ら…………」 河童信者の瞳孔が開いた。禍耶さんの唇がわなわなと痙攣する。 「河童って馬鹿ね……最後まで馬鹿だった……。貴方の命、必ず無駄にはしないわ!」 ガバッ、キュイイィィ! 息絶えて間もない河童信者の霊魂が分解霧散する前に、キュウリバイクの給油口に吸収される。ところが魔耶さんの悲鳴! 「禍耶、上ぇっ!!」 「!」 見上げると空気を読まず飛びかかってきた大散減! 咄嗟にバイクを発進できず為す術もない禍耶さんが絶望に目を瞑った、その時。 「……え?」 ……何も起こらない。禍耶さんはそっと目を開けようとする。が、直後すぐに顔を覆った。 「眩しっ! この光は……あああっ!」 頭上には朝日のように輝く青白い戌神。そしてその光の中、轟々と燃える紅の不動明王。光と影、男と女が一つになったその究極仏は、大散減を遥か彼方に吹き飛ばし悠然と口を開いた。 「月と太陽が同時に出ている、今この時……」 「瞳に映る醜き影を、憤怒の炎で滅却する」 「「救済の時間だ!!!」」 カッ! 眩い光と底知れぬ深い影が炸裂、落下中の大散減を再びスマッシュ! 「遅くなって本当にすみません。合体に手間取っちゃって……」 御戌神が放つ輝きの中で、燃える影体の私は揺らめく。するとキュウリバイクが言葉を発した。 <問題なし! だぶか登場早すぎっすよ、くたばったのはまだ俺だけです。やっちまいましょう、姐さん!> 「そうね。行くわよ河童!」 ドルルン! 輩悪苦満誕(ハイオクまんたん)のキュウリバイクが発進! 私達も共に駆け出す。 「一美ちゃん、火の準備を!」 「もう出来ているぞぉ、カハァーーーッハハハハハハァーーー!!」 ティグクが炎を噴く! 火の輪をくぐり青白い肉弾が繰り出す! 巨大サンドバッグと化した大散減にバイクの大軍が突撃するゥゥゥ!!! 「「「ボァガギャバアアアアァァアアア!!!」」」 八本足にそれぞれ付いた顔が一斉絶叫! 中空で巻き散らかされた大散減��肉片を無数の散減に変えた! 「灰燼に帰すがいい!」 シャゴン、シャゴン、バゴホオォン!! 御戌神から波状に繰り出される光と光の合間に那由多度の影炎を込め雑魚を一掃! やはりヤブユムは強い。光源がないと力を発揮出来ない私と、偽りの闇に遮られてしまっていた光君。二人が一つになる事で、永久機関にも似た法力を得る事が出来る! 大散減は地に叩きつけられるかと思いきや、まるで地盤沈下のように地中へ潜って行ってしまった。後を追えず停車した五寸釘愚連隊が舌打ちする。 「逃げやがったわ、あの毛グモ野郎」 しかし玲蘭ちゃんは不敵な笑みを浮かべた。 「大丈夫です。大散減は結界に分散した力を補充しに行ったはず。なら、今頃……」 ズドガアアァァァアン!!! 遠くで吹き上がる火柱、そして大散減のシルエット! 「イェーイ!」 呆然と見とれていた私達の後方、数分前まで鳥居があった瓦礫の上に後女津親子と佳奈さんが立っている。 「「ドッキリ��成功ー! ぽーんぽっこぽーん!」」 ぽこぽん、シャララン! 佳奈さんと万狸ちゃんが腹鼓を打ち、斉一さんが弦を爪弾く。瞬間、ドゴーーン!! 今度は彼女らの背後でも火柱が上がった! 「あのねあのね! 地図に書いてあった星の地点をよーく探したら、やっぱり御札の貼ってある祠があったの。それで佳奈ちゃんが凄いこと閃いたんだよ!」 「その名も『ショート回路作戦』! 紙に御札とぴったり同じ絵を写して、それを鏡合わせに貼り付ける。その上に私の霊力京友禅で薄く蓋をして、その上から斉一さんが大散減から力を吸収しようとする。だけど吸い上げられた大散減のエネルギーは二枚の御札の間で行ったり来たりしながら段々滞る。そうとは知らない大散減が内側から急に突進すれば……」 ドォーーン! 万狸ちゃんと佳奈さんの超常理論を実証する火柱! 「さすがです佳奈さん! ちなみに最終学歴は?」 「だからいちご保育園だってば~、この小心者ぉ!」 こんなやり取りも随分と久しぶりな気がする。さて、この後大散減は立て続けに二度爆発した。計五回爆ぜた事になる。地図上で星のシンボルを描く地点は合計六つ、そのうち一つである食虫洞のシンボルは私がコンビニで焼却したアレだろう。 「シンボルが全滅すると、奴は何処へ行くだろうか」 斉三さんが地図を睨む。すると突如地図上に青白く輝く道順が描かれた。御戌神だ。 「でっかい大散減はなるべく広い場所へ逃走を。となると、海岸沿いかもだ。東の『いねとしサンライズビーチ』はサイクリングロードで狭いから、石見沼の下にある『石見海岸』ので」 「成程……って、君はまさか!?」 「青木君!?」 そうか、みんな知らなかったんだっけ。御戌神は遠慮がちに会釈し、かき上がったたてがみの一部を下ろして目隠れ前髪を作ってみせた。光君の面影を認識して皆は納得の表情を浮かべた。 「と……ともかく! ずっと地中でオネンネしてた大散減と違って、地の利はこちらにある。案内するので先回りを!」 御戌神が駆け出す! 私は彼が放つ輝きの中で水上スキーみたいに引っ張られ、五寸釘愚連隊や他の霊能者達も続く。いざ、石見海岸へ!
ལྔ་པ་
御戌神の太陽の両眼は、前髪によるランプシェード効果が付与されて更に広範囲を照らせるようになった。石見沼に到着した時点で海岸の様子がはっきり見える。まずいことに、こんな時に限って海岸に島民が集まっている!? 「おいガキ共、ボートを降りろ! 早く避難所へ!」 「黙れ! こんな島のどこに安全が!? 俺達は内地へおさらばだ!」 会話から察するに、中学生位の子達が島を脱出しようと試みるのを大人達が引き止めているようだ。ところが間髪入れず陸側から迫る地響き! 危ない! 「救済せにゃ!」 石見の崖を御戌神が飛んだ! 私は光の中で身構える。着地すると同時に目の前の砂が隆起、ザボオオォォン!! 大散減出現! 「かははは、一足遅いわ!」 ズカアァァン!!! 出会い頭に強烈なティグクの一撃! 吹き飛んだ大散減は沿岸道路を破壊し民家二棟に叩きつけられた。建造物損壊と追い越し禁止線通過でダブル罪業加点! 間一髪巻き込まれずに済んだ島民達がどよめく。 「御戌様?」 「御戌様が子供達を救済したので!?」 「それより御戌様の影に映ってる火ダルマは一体!?」 その問いに、陸側から聞き覚えのある声が答える。 「ご先祖様さ!」 ブオォォン! 高級バイクに似つかわしくない凶悪なエンジン音を吹かして現れたのは加賀繍さんだ! 何故かアサッテの方向に数珠を投げ、私の正体を堂々と宣言する。 「御戌神がいくら縁切りの神だって、家族の縁は簡単に切れやしないんだ。徳川徳松を一番気にかけてたご先祖様が仏様になって、祟りを鎮めるんだよ!」 「徳松様を気にかけてた、ご先祖様……」 「まさか、将軍様など!?」 「「「徳川綱吉将軍!!」」」 私は暴れん坊な将軍様の幽霊という事になってしまった。だぶか吉宗さんじゃないけど。すると加賀繍さんの紙一重隣で大散減が復帰! 「マバゥウゥゥゥゥウウウ!!!」 神社にいた時よりも甲高い大散減の鳴き声。消耗している証拠だろう。脚も既に残り五本、ラストスパートだ! 「畳み掛けるぞ夜露死苦ッ!」 スクラムを組むように愚連隊が全方位から大散減へ突進、総長姉妹のハンマーで右前脚破壊! 「ぽんぽこぉーーー……ドロップ!!」 身動きの取れなくなった大散減に大かむろが垂直落下、左中央二脚粉砕! 「「「大師の敵ーーーっ!」」」 微弱ながら霊力を持つ河童信者達が集団投石、既に千切れかけていた左後脚切断! 「くすけー、マジムン!」 大散減の内側から玲蘭ちゃんの声。するうち黄色い閃光を放って大散減はメルトダウン! 全ての脚が落ち、最後の本体が不格好な蓮根と化した直後……地面に散らばる脚の一本の顔に、ギョロギョロと蠢く目が現れた。光君の話を思い出す。 ―八本足にそれぞれ顔がついてて、そのうち本物の顔を見つけて潰さないと死なない怪物で!― 「そうか、あっちが真の本体!」 私と光君が同時に動く! また地中に逃げようと飛び上がった大散減本体に光と影は先回りし、メロン格子状の包囲網を組んだ! 絶縁怪虫大散減、今こそお前をこの世からエンガチョしてくれるわあああああああ!! 「そこだーーーッ!! ワヤン不動ーーー!!」 「やっちゃえーーーッ!」「御戌様ーーーッ!」 「「「ワヤン不動オォーーーーーッ!!!」」」 「どおおぉぉるあぁああぁぁぁーーーーーー!!!!」 シャガンッ! 突如大量のハロゲンランプを一斉に焚いたかのように、世界が白一色の静寂に染まる。存在するものは影である私と、光に拒絶された大散減のみ。ティグクを掲げた私の両腕が夕陽を浴びた影の如く伸び、背中で燃える炎に怒れる恩師の馬頭観音相が浮かんだ時……大散減は断罪される! 「世尊妙相具我今重問彼仏子何因縁名為観世音具足妙相尊偈答無盡意汝聴観音行善応諸方所弘誓深如海歴劫不思議侍多千億仏発大清浄願我為汝略説聞名及見身心念不空過能滅諸有苦!」 仏道とは無縁の怪獣よ、己の業に叩き斬られながら私の観音行を聞け! 燃える馬頭観音と彼の骨であるティグクを仰げ! その苦痛から解放されたくば、海よりも深き意志で清浄を願う聖人の名を私がお前に文字通り刻みつけてやる! 「仮使興害意推落大火坑念彼観音力火坑変成池或漂流巨海龍魚諸鬼難念彼観音力波浪不能没或在須弥峰為人所推堕念彼観音力如日虚空住或被悪人逐堕落金剛山念彼観音力不能損一毛!!」 たとえ金剛の悪意により火口へ落とされようと、心に観音力を念ずれば火もまた涼し。苦難の海でどんな怪物と対峙しても決して沈むものか! 須弥山から突き落とされようが、金剛を邪道に蹴落とされようが、観音力は不屈だ! 「或値怨賊繞各執刀加害念彼観音力咸即起慈心或遭王難苦臨刑欲寿終念彼観音力刀尋段段壊或囚禁枷鎖手足被杻械念彼観音力釈然得解脱呪詛諸毒薬所欲害身者念彼観音力還著於本人或遇悪羅刹毒龍諸鬼等念彼観音力時悉不敢害!!」 お前達に歪められた衆生の理は全て正してくれる! 金剛有明団がどんなに強大でも、和尚様や私の魂は決して滅びぬ。磔にされていた抜苦与楽の化身は解放され、悪鬼羅刹四苦八苦を燃やす憤怒の化身として生まれ変わったんだ! 「若悪獣囲繞利牙爪可怖念彼観音力疾走無辺方蚖蛇及蝮���気毒煙火燃念彼観音力尋声自回去雲雷鼓掣電降雹澍大雨念彼観音力応時得消散衆生被困厄無量苦逼身観音妙智力能救世間苦!!!」 獣よ、この力を畏れろ。毒煙を吐く外道よ霧散しろ! 雷や雹が如く降り注ぐお前達の呪いから全ての衆生を救済してみせよう! 「具足神通力廣修智方便十方諸国土無刹不現身種種諸悪趣地獄鬼畜生生老病死苦以漸悉令滅真観清浄観広大智慧観悲観及慈観常願常瞻仰無垢清浄光慧日破諸闇能伏災風火普明照世間ッ!!!」 どこへ逃げても無駄だ、何度生まれ変わってでも憤怒の化身は蘇るだろう! お前達のいかなる鬼畜的所業も潰えるんだ。瞳に映る慈悲深き菩薩、そして汚れなき聖なる光と共に偽りの闇を葬り去る! 「悲体戒雷震慈意妙大雲澍甘露法雨滅除煩悩燄諍訟経官処怖畏軍陣中念彼観音力衆怨悉退散妙音観世音梵音海潮音勝彼世間音是故須常念念念勿生疑観世音浄聖於苦悩死厄能為作依怙具一切功徳慈眼視衆生福聚海無量是故応頂……」 雷雲の如き慈悲が君臨し、雑音をかき消す潮騒の如き観音力で全てを救うんだ。目の前で粉微塵と化した大散減よ、盲目の哀れな座頭虫よ、私はお前をも苦しみなく逝去させてみせる。 「……礼ィィィーーーーーッ!!!」 ダカアアアアァァアアン!!!! 光が飛散した夜空の下。呪われた気枯地、千里が島を大いなる光と影の化身が無量の炎で叩き割った。その背後で滅んだ醜き怪獣は、業一つない純粋な粒子となって分解霧散。それはこの地に新たな魂が生まれるための糧となり、やがて衆生に縁を育むだろう。 時は亥の刻、石見海岸。ここ千里が島で縁が結ばれた全ての仲間達が勝利に湧き、歓喜と安堵に包まれた。その騒ぎに乗じて私と光君は、今度こそ人目も憚らず唇を重ね合った。
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