#櫻井よしこのルネッサンス
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見事な岸田演説、覚悟して実現を
櫻井よしこ
日本ルネッサンス 第1095回
国賓としてワシントンを訪れた岸田文雄首相を米国は厚くもてなした。岸田氏は好感のもてる指導者の姿で、日本国の意志を明確に示し、米国と共に世界秩序を作っていくとの意気込みを語った。
一例が4月10日、首脳会談後の合同記者会見だ。岸田氏はバイデン大統領より1.5倍長く語り、日米は今や、人間の尊厳を基にした価値観を地球社会に提示するグローバルパートナーとしての責任を果たすべきだとし、中国の「力による現状変更」を名指しで牽制した。
11日の米議会上下両院合同会議では、「未来に向けて~我々のグローバル・パートナーシップ」と題してユーモアを交えて語った。ブリンケン国務長官は「(恐竜がのし歩いていた石器時代を舞台にした米国のテレビ漫画の)フリントストーン一家の話で上下両院議員を笑わせたのは岸田首相が初めてだ」と、ほめ上げた。
岸田氏の柔らかな表情、満足そうな笑み。国内では余り見られない感情発露で首相が米国人の心の琴線に触れたのは確かだろう。同じことが日本でも出来るとよいのに、とつい思ったものだ。上下両院で岸田氏はまず日本の覚悟に言及した。
「今の私たちは、平和には『理解』以上のものが必要だということを知っています。『覚悟』が必要なのです」
中国の対外的姿勢や軍事動向がこれまでにない最大の戦略的挑戦をもたら��、経済的威圧や「債務の罠」外交で経済を武器化する事例が増えているとの指摘は驚くほど率直だった。ウクライナ支援を渋る米国議会(共和党)に対しても正論を語った。
「ロシアのウクライナに対するいわれのない、不当で残酷な侵略戦争は3年目を迎えました。今日のウクライナは明日の東アジアかもしれません」
岸田氏は米国の支援なしにはウクライナは敗北する、それではいけないのだと訴えたわけだ。
重大な責任 そして、こう語りかけた。
「ほぼ独力で国際秩序を維持してきた米国。そこで孤独感や疲弊を感じている米国の国民の皆様に、私は語りかけたいのです。そのような希望を一人双肩に背負うことがいかなる重荷であるのか、私は理解しています」「世界は米国のリーダーシップを当てにしていますが、米国は、助けもなく、たった一人で、国際秩序を守ることを強いられる理由はありません」「日本国民は、自由の存続を確かなものにするために米国と共にありますそれは日米両国の国民にとどまらず、全ての人々のためにであります」
大きな拍手。当然だろう。
4月10日付けでランド研究所のジェフリー・ホーヌン氏が『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿した内容を思い出す。冷戦時代、米国が最も頼った同盟相手は、北大西洋条約機構(NATO)だった。21世紀の今、最大の脅威、中国に対峙するには日本こそが最重要の同盟相手だという内容だ
日本を、「自由で開かれたインド・太平洋」だけでなく「自由で開かれた国際秩序」を支える国だと評価し、従来の米戦略であるhub-and-spoke system(自転車の車輪の中心軸つまりハブが米国で、車輪を支える1本1本の棒が米国の5つの同盟国、日豪韓比タイ、という意味)の中心軸を、米国一国でなく、日米同盟に置きかえるべき時が来たと提言しているのだ。
安全保障問題において重きをなす保守系シンクタンクのランド研究所の提言とほぼ同じ内容を、岸田氏が語ったことになる。日本国の歩むべき道、方向性としては正しいと私は思う。しかし、それは重大な責任を引き受けることでもある。その責任を果たすには何をしなければならないかは後述するとして、岸田氏はこうも語った。
「私は理想主義者であると同時に、現実主義者です。自由、民主主義、法の支配を守る。これは、日本の国益です」「世界中の民主主義国は、総力を挙げて取り組まなければな��ません。皆様、日本は既に、米国と肩を組んで共に立ち上がっています。米国は独りではありません。日本は米国と共にあります」
広島出身の政治家として核なき世界を目指すと主張してきた岸田氏が、日本は米国と共にあると誓って、さらに発言した。
「日本は長い年月をかけて変わってきました。第二次世界大戦の荒廃から立ち直った控えめな同盟国から、外の世界に目を向け、強く、コミットした同盟国へと自らを変革してきました」「地政学的な状況が変化し、自信を深めるにつれ、日本は米国の最も近い同盟国という枠を超えて、視野を広げてきました。日本はかつて米国の地域パートナーでしたが、今やグローバルなパートナーとなったのです」
新たな中東戦争
岸田演説の二日後、イランがイスラエルを攻撃した。昨年10月7日にテロ組織ハマスがイランの支援の下、イスラエルを攻撃した。その上に今回のイランによる攻撃である。世界はイスラエルの出方を固唾を呑む思いで見詰めている。米国は無論、イランでさえ、全面戦争に突っこみたくないと考えているのは明らかだ。イスラエルにとっても事は容易ではないが、新たな中東戦争が始まらないという保証はどこにもない。
日本周辺では韓国の与党「国民の力」が4月10日の総選挙で大敗した。日本を敵と見做す左翼勢力が大勝し、韓国政治はいつでも親北朝鮮、親中国路線に転換しかねない。
台湾でも親日勢力の民進党は、総統職は確保したが立法院で敗北した。親中国の国民党が第一党となり、政権運営は非常に厳しくなった。
韓国、台湾の政情不安定の中で、日本は米国と共にこの地域の安全保障環境を安定させる役割を買って出たのである。そのためにすべきことが、今回の日米首脳共同声明に記されている。
その中で評価すべき第一点は自衛隊が統合司令部を常設し、米国が在日米軍司令部の作戦機能を強化するとした点だ。日米の緊密な連携に加えて、韓国、豪州、フィリピン、タイ、台湾、インドなどの力をどう結集していくかが重要になる。
第二点として、日米の2+2(外相・防衛相会合)で拡大抑止に関する突っ込んだ議論をするとの合意も非常に大きい。中国が核の増産に走る中、中国の核攻撃をどう抑止するのか、攻撃にどう備えるのかを日米で具体的に話すことほど重要なことはないはずだ。
わが国の軍事力は、弾薬の備蓄ひとつとっても中国に及ばない。足りない��ころを早急に補い、憲法を改正することなしには、米国のグローバルパートナーには到底なれない。首相の発言は日本国としての誓いである。その目標に向けて岸田氏は現実志向で、具体策をひとつひとつ実現していかなければならない。
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米社会の病い、性別違和に苦しむ少女達
櫻井よしこ
日本ルネッサンス 第1094回
今日、4月9日の産経新聞に『トランスジェンダーになりたい少女たち』の広告が掲載されていた。米国人ジャーナリスト、アビゲイル・シュライアー氏の『IRREVERSIBLE DAMAGE』の邦訳で、出版元は産経新聞出版だ。
広告には「あの“焚書”ついに発刊」の字が躍る。「皆様の激励に御礼申し上げます」「Amazon総合1位」の文字が誇らしくも嬉しくも輝く。それはそうだろう。本書の出版に際して産経新聞出版も同書を扱うと推測される大手書店も、放火予告というとんでもない脅迫を受けていたのだから。
同書は当初、大手のKADOKAWAが出版する予定だった。しかしわが国の一部左翼勢力が「トランスジェンダーに対する差別を助長する」として抗議し、KADOKAWA本社前で集会を開くなどと警告した。国際社会に名を馳せる大手出版社でありながら、KADOKAWAはジェンダー思想に染まった左翼勢力の恐喝に屈した。斯(か)くしてその時点で、言論の自由も出版の自由も踏みにじられた。出版界の名門がそんなことを許したのは痛恨の極みだ。
本書の内容は後述するが、ジェンダー思想に染まっている人やWokeの人々にとっては、確かに気に入らないだろう。かと言って、それを出版禁止にせよというのは無茶にも程がある。そんな圧力に屈すれば自由と民主主義を基盤とするわが国の社会の根底が揺さぶられる。出版社の存在意義も吹き飛ぶ。KADOKAWAの情けない姿勢を見て、弱小の産経新聞出版、瀬尾友子氏が名乗り出た。するとそこに先述した放火の脅迫が降りかかったのだ。それでも産経新聞出版は遂に刊行に漕ぎつけた。しかもAmazon総合1位、だ。
日本社会も捨てたものではない。
奇妙なのはいつも言論、表現、思想・信条の自由などを金科玉条の如くに持ち上げる朝日などのリベラルメディアが同件にきわめてよそよそしいことだ。報道もしない。安倍晋三総理に対して行った「報道しない自由」をここでも発揮しているのだ。
ナブラチロワの抗議
シュライアー氏の著書は実に読みごたえがある。取材対象の当事者は200人、50家族に上る。意見を聞いた専門家の数、調べた専門書の幅広さにも感心する。���女は驚いた。思春期に突然「性同一性障害」を発���し、「生物学的には女だけれど実は男だ」と主張する少女たちが急増していることに。2016年から17年にかけて米国では、女性に生まれついた人で性別適合手術を受けた人の数が4倍に増えた。英国ではジェンダー医療を望む10代の少女の数が過去10年で4400%増えた。
シュライアー氏は以下のように分析している。ここ10年でトランスジェンダーが目立つようになり、対照的に女性と少女が目立たなくなった。アメリカ全土の高校で最高水準にある女子選手たちは、女性を自認する生物学上は男子の選手に圧倒されている。その多くは男子チームでは月並みの選手だったのに、である。
文化面でも少女たちは支持を失った。女性専用だった場所は男女共用になり、スポーツの記録は先述のように不公平となり、抗議をすれば偏見だとどなられる。レズビアンを公表しているテニス選手のマルチナ・ナブラチロワは「トランスジェンダーの選手に女子スポーツで競技させるのは生物学上の女子に不公平だ」とサンデー・タイムズ紙に書いた。するとトランス嫌悪(フォビア)だとレッテルを貼られ、スポンサーから放りだされた。
世界でもっとも有名な同性愛者の女子アスリートであるナブラチロワが少女たちのために立ちあがったことで反トランスジェンダーの偏狭な人物だというレッテルを貼られたのなら、無名の女子選手たちが反対することはなおさら不可能だ。
そしてトランスジェンダー活動家は女性の生物学的な独自性を完全に否定しようとする。たとえば妊婦(プレグナント・ウィメン)は次第に“#妊娠中の人(プレグナント・ピープル)”と表現され、“膣(ちつ)”は“#前方の穴(フロント・ホール)”という忌まわしい言葉で表わされてしまう。トランスジェンダーを包括する語彙では、生物学的な女性は“養育者”あるいは“出血がある人”などと表現される。トランスジェンダー活動家はこのほうが繊細な言葉であり、より正確に表現することができると主張するのだという。しかし、とシュライアー氏は問うている。
「ほんとうの少女はどう感じるだろうか」と。
少女たちは女性であることに意味を見出し得なくなり、或いは居心地が悪くなり、自分はトランスジェンダーだと思い始める。そのような傾向をスンナリ受け入れて助長するのが昨今の大学だとして、幾つもの事例が記されている。
「抑うつ、自傷、薬物依存」
たとえばカリフォルニア大学ロサンゼルス校などである。そこでは、両親にはぜったいに知らせずに、キャンパス内だけ、あるいは法律上も名前を変更できるように簡単な説明と申込用紙��提供しているという。アイビーリーグをふくむ百を超える大学でトランスジェンダーのためのホルモン剤に健康保険が適用されているともいう。
こうして少女たちは男性になっていくが、その世界のことを21歳のヘレナ(米シンシナティのポーランド移民の娘)はこう語っている。
「トランスジェンダーのコミュニティにはあまりにも多くの抑うつ、自傷、薬物依存が存在しています」
ネットでトランスジェンダー・アイデンティティについて知った思春期まで性別違和を抱いたことはなかったヘレナは、途中で何とか引き返した。引き返した人をディトランジショナーと言うが、そのほとんどの人々が後悔に苦しんでいると、シュライアー氏は次のように指摘する。
テストステロンは数カ月摂取しただけでも、男性のように驚くほど声が低くなり、それは摂取をやめても元に戻らない。もっと長く摂取した場合は、通常とは異なる秘部を“肥大して小さなペニスに見えるクリトリスを”恥ずかしく思うだろう。夕方になると目立つひげや体毛もいやかもしれない。手術まで行ってしまった場合は胸に走る傷跡と一生つき合わなければならない。
シュライアー氏は、自分が語り合った全員が、自分の人生に関わった大人、とりわけ医療専門家が性別移行を促して助長したことを非難したとも書いている。
多くの少女たちがSNSでトランスジェンダーを知る。暴力的なポルノを見て正常なセックスもできなくなる。新しい傾向をもてはやすメディア、大学医療関係者がトランスジェンダー化への動きを無責任に後押しする。
トランスジェンダー問題はこうした思いやりに欠けた世界で運動家らによって尚も推進される。少女たちは回復不可能な傷を負い、少なからぬ家族が崩壊しているのがシュライアー氏の伝える現実である。この本は多くの貴重な教訓を与えてくれる。是非、わが国の政治家全員、最高裁裁判官たちにも読んでほしいものだ。
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変わる米情報戦略、日本は対応できるか
#櫻井よしこ
『週刊新潮』 2024年4月11日号
日本ルネッサンス 第1093回
今年3・4月号の『フォーリン・アフェアーズ』誌に米中央情報局(CIA)長官のウィリアム・バーンズ氏が「スパイ術と国政術」(Spycraft and Statecraft)の題で寄稿していた。よく見ると1月30日に公表された論文だった。少し古いかもしれないが、大事なことが書かれている。
時代が変わり技術革新が急激に進んでも情報に関しては人間の能力が一番重要だとしたうえで、CIAは年来の秘密主義から転換して情報の「戦略的秘密解除」を志向しているというのだ。世界に一定の情報を公開し、敵の目論見を暴いて、味方を結集させ、政策決定者をより強力に支援する戦略だ。
ちなみに米国家情報長官のアブリル・ヘインズ氏も今年2月に同様の発言をしている。氏はCIA、国家安全保障局(NSA)も含めて全米18の情報���関のトップに立つ人物だ。米インテリジェンス界の方向転換が確かに進みつつあるのだ。このような変化は安全保障政策で米国一国主導から同盟国、同志国と力を合わせる集団体制に移ろうとする米国の戦略と重なる
戦略的秘密解除の具体例として、バーンズ氏はプーチン大統領のウクライナ侵略計画を世界に警告した件を挙げている。
「我々は早い時期からロシアによる侵略意図の情報を(バイデン)大統領に上げていた。結果、大統領は2021年11月に私をモスクワに派遣し、我々が彼らの戦争準備の実態を正確に掴んでいることをロシア側に伝え、思いとどまらせようとした。だが、彼らは全く説得に応じず、侵略計画については悪いとも思っていなかった。ロシアは自らの力を過大評価し、ウクライナの抵抗と西側のウクライナ擁護の意志を過小評価していた」
バーンズ氏は、ロシアが侵略に踏み切った後も米国がロシア軍の動きに関する機微情報を開示し続けたことで、プーチン氏の作戦の多くが失敗に終わったと述べている。
米国最大の敵は…
しかし米国の最大の敵はロシアではなく中国だとバーンズ氏は強調し、CIAは過去2年間、中国に対処するために組織再編に手をつけたことを明かしている。まず第一に中国を対象とするインテリジェンス関連予算を倍増させた。世界規模で情報収集、活動、分析能力を高め、中国語に堪能な人材を大幅にふやすことなどで、ラテンアメリカ、アフリカ、インド・太平洋の全域で中国と競う態勢を整えているというのだ。
21年には中国だけを対象にした「ミッションセンター」を設置したが、特定国に特化したインテリジェンスセンターはこれが初めてだ。CIAはまた、北京のインテリジェンス界とのパイプを静かな形で強化してきたそうだ。米国の情報専門家たちは自分たちの相手である中国の情報専門家たちと意思疎通を深めようとしているわけだ。米中間に誤解が生じるのを防ぎ、その誤解が紛争や戦争につながっていく危険を回避するためだ。
習近平氏やプーチン氏が独裁色を強めているのは容易に見てとれる。両氏の周りから苦言を呈する側近がいなくなり、「イエスマン」ばかりになってしまえば、両氏が現実を正しく把握することも、真実を認識することも難しくなる。その場合、己れを過大評価し、状況を誤解しかねない。事実それがウクライナへの侵略につながった。バーンズ氏ら米国のインテリジェンス界は習氏が同じ過ちを犯す危険性を見てとっているのである。逆に言えば現在の米中両国は十分な意思の疎通がはかれていないということだろう。
バーンズ論文を読むと、CIAの役割が変化を遂げているとの氏の指摘に納得する。氏はバイデン政権下、過去3年間で50回以上大統領の指示を受けて海外に飛んだ。事実上、外交官の役割���果たしてきたのだ。その点について氏は以下のように説明している。どうしても相容れない宿敵と交渉しなければならないとき、外交官が前面に出れば相手を正式に承認するかのような意味合いを帯びてしまう。他方、インテリジェンス要員による接触ならば、その種の懸念はない。氏が21年8月にアフガニスタンの首都カブールを
訪れタリバンの指導者と米軍撤退について交渉したのはそういう理由だったと明かしている。
役割を��えつつあるといってもCIAは基本的に「影」の存在だとも、氏は書いている。誰の目にも見えず、記憶にも残らない存在である。任務の危険性やそれに伴う犠牲について、一般社会はまだ十分には理解していない。だが、知ってほしいのはCIAが非政治的組織であること、忠誠を誓う対象は大統領でも党派でもなく合衆国憲法であることだと、書いている。これは非常に重要な点だ。
わが国は情報をとられ放し
CIAや他のインテリジェンス部門は現在大幅な増員計画を展開中だが、非常にうまくいっているそうだ。たとえば23年、CIAへの志願者数は、米中枢部が攻撃された9.11以降、最高を記録したとのことだ。
わが国の情報コミュニティはどうなっているのか。CIA長官のように外交官張りの活躍をする人材は、日本ならさしずめ国家安全保障局(NSS)の秋葉剛男局長や前局長の北村滋氏らになるのだろうか。それにしても現在のわが国が国際社会を動かし得る情報を持っているとはあまり考えられない。
わが国は逆に情報をとられ放しである。情報発信で世界に貢献できればよいが、その前に情報保全を徹底しなければならない。現時点でのわが国の情報保全法は特定秘密保護法だけである。これは外交、防衛、スパイ行為等の特定有害活動、テロリズムの4分野に関して、政府のもっている秘密を漏洩してはならないというものだ。政府内の情報を入手できるのは官僚であるから、この法律に縛られる(違反した場合に罰せられる)のは主に官僚である。
この特定秘密保護法に関して適格性評価(セキュリティ・クリアランス)を受け、秘密情報にアクセスできるのは約13万2600人に限られている。内97%が国家公務員で、民間人は3800人ほどにとどまる。これを米国と較べてみる。米国では国家秘密に接するための適格性評価を受けている公務員は280万人、民間人は120万人だ。段違いであり、わが国の情報保全力がまだ非常に弱いことが見てとれる。
高市早苗経済安全保障担当大臣が力を入れてきた適格性評価制度はようやく法制化の目途がついてきた。ただ法制化されればわが国の情報保全が万全かといえば、まだやるべきことがある。どの国も整備しているスパイ防止法である。わが国が真っ当な普通の国になり、被害に遭い続けることを避けるために、スパイ防止法こそ必要だと強調したい。
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今も心して読め、前駐豪大使の「遺言」
櫻井よしこ
『週刊新潮』 2024年5月16日号
日本ルネッサンス 第1097回
前駐豪大使の山上信吾氏が『日本外交の劣化』(文藝春秋)を上梓した。「本書は、外交官としての私の遺言である」と後書きにある。気骨ある外交官が40年にわたる外務省勤務を経て、腹を括って書いた「遺言」はまさに本音で貫かれている。
実名を挙げての外務省批判であるからには、同僚、先輩らの厳しい批判を受けるだろう。だとしても、山上氏の声には真摯に耳を傾けるべきだ。なぜなら、氏の本音から生まれた本書には日本外交を担う外務省の根本的欠陥が明確に示されており、���こを理解することが日本外交再生に欠かせないからだ。
外務省の役割は日本を代表し、外交を通して国益を守り増進することだ。だが山上氏が豪州に赴任する前、大使としての心構えについて、歴史問題で日本の立場を訴えるときは「プロパガンダ」と受けとられないよう注意すべきだと再三講義されたという。
安倍晋三氏の総理在任中にこんな講義が外務省で行われていたとは驚きだ。なぜなら安倍氏は、外交官は歴史戦の前線に立つべきだと考えており、大使赴任に当たっては国益を体現すべく果敢に論じ、反論せよと訓話していたからだ。
外務省が本質的に歴史戦に弱く、戦おうとしない役所であることは山上氏の指摘を待つまでもない。慰安婦や徴用工の「強制連行」「南京大虐殺」など、日本国にとっての濡れ衣事件を中国や韓国から言い立てられたとき、最も大事なことはわが国の歴史や政策を頭に入れて、事実を特定して、説明し、わが国の名誉を守り通すことだ。しかし外務省のエリートたちにはその気概が、少なくともかつては、著しく欠けていた。
山上氏は外務省が歴史戦において、度々村山談話に逃げ込むと指摘する。戦後50年の節目に当時の村山富市首相が日本の植民地支配と侵略を認めて「痛切な反省と心からのお詫び」を表明したあの談話である。同談話の下ごしらえをしたのは主として谷野作太郎内閣外政審議室長や古川貞二郎官房副長官だった。
「まっ白いサラのキャンバス」
社会党委員長時代、村山氏は自衛隊を憲法違反だと非難していたが、首相に就任するや合憲説に立場を変え、自衛隊の観閲式にはモーニングにシルクハットで臨んだ。氏はしかし、首相を辞めるとまたもや自衛隊違憲論に立ち戻った。
この人物に官僚たちは戦後50年談話を出させた。歴史問題が問われる度、外務省は日本はもう謝ったとして談話に逃げ込む。山上氏はそのような姿勢を、眼前の追及を躱(かわ)すためとしている。しかし、さらにこう考えられないか。外務官僚らは自分たちの歴史観に基づいた日本外交を、自民党と社会党が手を結んだ異常な政局下でたまたま首相となった村山富市氏という社会党議員に振りつけた、と。
当時首相秘書官を務めた外務省のチャイナスクール、槙田邦彦氏に取材したときのことだ。氏が村山氏を高く評価したために、私は理由を尋ねた。氏は以下のように答えた。
「キャンバスにたとえれば村山氏はまっ白いサラのキャンバスです。我々はそこに自由に絵を描ける」
無知蒙昧ゆえに使い易いと言っているのだ。ちなみに、槙田氏は村山談話に「お詫びという言葉を入れるかどう��」が議論されたとき、「世界が注目している。入れるべきだ」と進言した(論文「戦後70年の『安倍談話』について・発表に至る政治過程・」丹羽文生・拓殖大学海外事情研究所准教授)。
戦争した日本がおよそ全て悪いと言うような外務省の「国を想わない」精神はどこから来るのか。山上氏は、多くの外務官僚が「負ける戦をした当時の日本の為政者と軍人が悪いのだ。負け戦をしておいて外交の場で反論しろと言われても、土台無理」という認識だと書いた。だが、負け戦はどの国にもある。敗れても祖国の国柄を大事にして再び立ち上がるのが普通の国の精神構造だ。
外務省のエリートたちは、歴史と自分をどこかで切り離しているのではないか。朝日新聞が主導して慰安婦問題に火がついたとき、本書にも登場する齋木昭隆氏(元外務次官)がこう語ったのを記憶している。
「米欧とは慰安婦問題では到底、議論できない。どんな説明も聞き入れられない。絶望的になる」
たしかにどれほど親日的な人でも、慰安婦問題になると、日本の主張を聞こうとはしなかった。事実について説明しようとすると、偏見で凝り固まった右翼のように見られた。私にも苦い経験がある。しかし、普通の日本人はこう考えるのではないか。
「自分の父や祖父はとり立てて優れた人ではなかったかもしれないが、基本的に正直で誠実だった。そんな日本人達が戦地に赴いたら、人間が変わったように女性達を強制連行し、乱暴し、あげくの果てに終戦間際に30万人も殺したと中国などは言う。そんなことはあり得ない」
歴史戦を戦い抜く底力
慰安婦強制連行、性奴隷説への私の疑問はまさにここから始まっている。不器用ではあっても凶暴ではない。貧しくとも盗みはしない。むしろ人が好く、心根は基本的に寛容で優しい人々だ。それは祖父や父たちだけでなく、祖母や母たちも全く同じだった。そんな人たちが一挙に変身するとは、到底、思えなかった。
日本国の歴史を、自分及び家族の生きてきた姿と重ねることで、日本人は日本民族の一員になる。歴史と個々人、個々の家族が重なっていく。歴史問題について外務省エリートたちが絶望を抱いたのは、日本人一人一人の歴史との重なり、この感覚の欠落ゆえではないか。
慰安婦問題の嵐が吹いていた頃、国家基本問題研究所の企画委員、島田洋一氏らが訪米し、政治学者のマイケル・グリーン氏に会った。知日派で知られるグリーン氏も慰安婦問題については厳しく、日本は主張しない方がよいとの考えを示した。そのときに島田氏が言った。
「貴方の父上が同じように非難されたとする。子息として貴方は父上を信じていても、沈黙を守るのか。自分の父の不名誉を晴らすために、事実を示して誰が何を言おうと、反論するのではないか」
グリーン氏の返答はなかった。
こうした一人一人の想いや信念、発言が大事だ。外務省はほとんど協力してくれたとは思わないが、それでも何十年もかけて私たちは慰安婦の強制連行はなかった、朝日新聞の罪は限りなく重いという事実を明らかにすることができた。
歴史戦を戦い抜く底力は歴史を自身のこととして受けとめることから生まれる。それは自身と祖国の深いつながり、祖国を築き守って下さった先人たちへの感謝と愛国の想いそのものだ。そうした心情が外務省エリートには、少なくともかつて、決定的に欠けていたのだろう。
駐豪大使として目覚ましい活躍をした山上氏の警告を真摯に受けとめることが外務省に問われている
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自衛隊法改正が危機対応の前提だ
櫻井よしこ
日本ルネッサンス 第1015回
ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問を機に、台湾を巡る軍事情勢が大 きく変化した。中国軍機はほぼ連日、台湾海峡の中間線を越えて飛行し威 嚇を続ける。中国に近い台湾の離島、金門島と馬祖島には中国軍の無人機 (ドローン)が侵入を続ける。台湾側は遂に9月1日、中国の無人機を撃ち 落とした。台湾情勢は確実に緊張激化の方向に進んでいる。
また、ロシアが極東で行う4年に一度の軍事訓練、「ボストーク2022」で は中露両軍が北海道沖の日本海で実射訓練をした。台湾有事のとき、ロシ アは北方領土や北海道周辺で軍事行動を展開し、日本が南西諸島と台湾に 集中できないように、力を分散させる戦略が見てとれる。
危機が迫るいま、有事で押し潰されないように自衛力を強め、理に適った 軍事行動をとれるように自衛隊法の欠陥を正して部隊行動基準(ROE) を定めることが急がれる。元空将の織田邦男氏が、空における軍事的緊張 の危険性について次のように警告した。
日本も中国もどの国の空軍も戦闘機にはミサイルを搭載し、機関砲を装備 して飛ぶ。フル装備の戦闘機同士がミサイルの射程圏内で遭遇する場合、 明確なルールに従って行動しなければ空中衝突やミサイル発射という重大 事に至りかねない。地上や海上とは異なり、戦闘機の動きは超高速で、危 機は瞬時に有事に発展する。あらゆる意味で一触即発の危機に満ちている のが空だという。
にもかかわらず、日本には危機をエスカレートさせないための法的整備が ない、つまりROEがないと、織田氏は憂える。
陸も海も同様の不備に直面している。法律の土台になっている憲法が、日 本国は軍事力(戦力)を持ってはならないと規定し、自衛隊を軍隊ではな く警察権の範疇にいれていることが元凶である。憲法は、国民、国土、領 海、領空を守るにしても、力の行使は最小限にとどめ、最後の最後になっ ても軍事的手段はとらないとする考え方で作られている。それゆえに有事 対応の法律が整備されていないのは当然であろう。
軍と警察の大きな違い
その結果、台湾・日本有事のとき、与那国、宮古、下地、石垣などの沖縄 の島々の住民避難は「武力攻撃事態」が認定されてからようやく指示が出 せる状況だ。それでは遅すぎて住民は命の危険に晒される。
なぜもっと早め���武力攻撃事態を宣言できないのかという疑問は当然だ。 元陸上幕僚長の岩田清文氏は、これを国レベルで考えると全く別の様相が 見えてくると語る。
「もし日本政府が沖縄・台湾を巡る情勢が武力攻撃事態に至ったと認定す れば、中国はこれを敵対的宣言と受けとめ事態がエスカレートしかねませ ん。その場合、中国在住の邦人10万人は人質にされ、日本企業の資産も凍 結されかねない。国民と企業を守るために武力攻撃事態の認定が出来ない という矛盾に陥るのです」
ならば、宣戦布告ととられるような宣言を出さずとも、眼前の状況判断に 基づいて住民避難を指示できるようにするのが政治であり、通常の軍の法 体系であろう。しかし、日本国の法律はこのような臨機応変の判断を自衛 隊には許していない。
これは軍のおよそ全てを否定する憲法の精神から生まれた悪しき結果であ る。前述のように反軍思想に貫かれている憲法で自衛隊は軍隊でなく警察 法の
体系下に置かれている。軍と警察の大きな違いはネガティブ・リスト とポジティブ・リストである。日本を除く国々では軍はネガティブ・リス トに基づいて行動する。これはしてはならないことのリストだ。非戦闘員 を殺してはならない、学校や病院を攻撃してはならない、捕虜を虐待して はならないなどがその典型例だ。軍隊はこのネガティブ・リストを守った うえで、状況に応じて司令官の判断で最善の方法をとって使命を達成する。
一方、警察はポジティブ・リストにあたる警察官職務執行法によって、し てよいことを法律として明記している。逆に言えば、リストにないことは 一切してはならないのだ。
有事が迫ったとしても現場判断で住民に避難指示ができないのはこのポジ ティブ・リスト、つまり警察ルールゆえだ。政府が武力攻撃を認定して初 めて、法制化されたルールに従って住民への退避の指示が許されるという わけだ。自衛隊も国際社会の軍と同様、ネガティブ・リストを行動基準と するのがよいのだが、それができていない。繰り返すが元凶は憲法だ。織 田氏が語る。
「どの国のどの軍隊も、いつでも命令一下、自衛権行使の権限を与えられ ています。ただ、軍がやたらに軍事行動に走らないように制御するROE があり、ROEが厳守されているかを監視するのが政治の役割です。日本 は命令を下すための法律論議が複雑で、命令が下ってからはROEのかわ りに、警察法に基づくポジティブ・リストで自衛隊を縛っているのです」
ひたすら逃げるしか
全てが流動的になる有事のとき、現場でとるべき最善の行動を、永田町で 作った法律で時々刻々に、的確に把握し対応するのは困難だ。いま迫りつ つある危機に現行法のままの体制で対応すれば、すでに述べたように住民 避難のための宣言が事態を逆にエスカレートさせかねない。
この本末転倒を避けるためのルールがROEなのである。ROEの設定に よって、実は自衛隊員の直面する危機はより適切に管理され、結果として 隊員の命も守られることになる。織田氏が2016年に、東シナ海上空で発生 した危機について語った。
「当時、海上では日米印の共同軍事訓練が進行中で、海上の動きに呼応す るように中国人民解放軍(PLA)の戦闘機が南下してきたのです。当 然、航空自衛隊はスクランブルをかけました。それに対して中国機が突然 挑発行動を取った。空自機をミサイル標的としてロックオンし、空自機は 撃墜されかねない危機に陥りました」
他国の空軍ならROEに基づいて空中戦(ドッグファイト)で逆転し相手 の戦闘機にミサイルをロックオンできる位置をとることなどが可能だ。し かし、日本国にはそれがない。結果として空自機はひたすら逃げるしかな かった。
「ミサイルの目眩ましになるフレアを出しながら、一挙に何万フィートも 降下するという命がけの危機回避行動でベテランの空自パイロットはよう やく逃げきりました。けれど状況をふりかえれば、撃墜され、危機がエス カレートして日中紛争が起きてもおかしくなかったと思います」
緊張が高まる今だからこそ、危機対応は現場の状況を踏まえなければなら ない。現行の法の隙間を埋めるために、どの国の軍にもあるROEの設定 が急がれる。諸悪の根源である憲法改正の実現は言うまでもない
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▪️自民安保調査会、国民を裏切るな
櫻井よしこ
日本ルネッサンス 第993回
自民党安全保障調査会(以下、安保調査会)は視野狭窄症か。小野寺五典 元防衛相が会長を務める同調査会に、現実を踏まえた議論を期待するのは 無理なのか。
3月16日、安保調査会は「有識者」3人を招いて「拡大抑止」や「核共有 (ニュークリア・シェアリング)」について意見をきいた。
拡大抑止とは、日本が核攻撃を受けた場合、米国が自国への攻撃と見做 し、核戦力で反撃する姿勢を明らかにして抑止力を強めるという考え方 だ。核共有とは、北大西洋条約機構(NATO)と米軍が、米軍の小型戦 術核弾頭を共有し、ロシアに対する抑止力を高める戦略としているのに 倣って、日本も米軍と同じような協定を結び、たとえば中国に対しての牽 制とする戦略である。
核共有戦略に基づいて自国内に米軍の核を配備しているNATO諸国には ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、トルコがある。有事の際、 NATOと米国が話し合い、核攻撃はNATO側が行う。
一連の議論は当然、わが国の非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち こませず)は今のままでよいのかという問いにつながる。核共有に踏み切 れば「持ちこませず」を外し、二原則にする必要があるからだ。
会合を受けて、安保調査会の宮沢博行幹事長代理が語っている。それを報 じた「産経」「毎日」「東京」「日経」の四紙における宮沢発言は一貫し ているところから、各紙ともに歪曲することなく報じたと考えてよいだろ う。氏が明らかにした結論には問題点が少なくないが、その中で最も深刻 なのは以下の点である。
1拡大抑止及び核共有に関して「議論は以上だと認識している」とし、こ れ以上議論しないと結論づけた。
2拡大抑止、核共有、非核三原則の見直しについて、「出席議員から導入 に前向きな発言は一切なく、日本にそぐわない政策だと納得した」
3「核を使用すれば核による報復が当然あり、核の配備先になれば真っ先 に相手国��ら狙われるなど、実益が全くないことがはっきりした」
4「唯一の戦争被爆国として、世界平和に貢献するわが国の立場(非核三 原則)は絶対に崩すべきでない。『国是』とは大変適切な言葉だ」
自己の権力への過大評価
安保調査会は5月に党提言をまとめる方針だが、宮沢氏は、「核共有とい う言葉は私の権限で提言には盛り込まない非核三原則の見直しも盛り込 まない」と語っている。
「これ以上の議論をせずに」「私の権限で」決めるという宮沢氏は、国民 が議論を望んでいることをどう考えるのか。左系の意見が強く打ち出され がちなTBSの世論調査では「核共有に向けて議論すべきだ」が18%、 「核共有はすべきではないが、議論すべきだ」が60%と、「議論せよ」が 計78%の圧倒的多数を占めた。
保守系メディアの産経とフジニュースネットワークの調査では、「核共有 に向けて議論すべきだ」が20.3%、「核共有はすべきでないが、議論はす べきだ」が62.8%、計83.1%。これまた圧倒的多数だ。
左右両メディアの調査が巧まずして明らかにしたのは、国民は議論を望ん でいるという事実だ。ロシアに侵略されているウクライナの現状を見て、
多くの日本国民は中国による日本、台湾への侵略もあり得ると直感してい る。だからこそ、日本を守る手段や戦略に何があり得るのかを真剣に考え ようとしている。日本国も日本国民もこれまで核や核共有について全く議 論しないできた。結果、拡大抑止や核共有についての理解は全く不十分 だ。非核三原則は美しい考えだが、それで日本を守り通せるのかという至 極真っ当な疑問も感じ始めている。だからこの際議論し考えようと、国民 は言っている。
前述したように宮沢氏は、5月予定の自民党提言に「核共有」も「非核三 原則の見直し」も「私の権限で盛り込まない」と決めた。氏は安保調査会
幹事長代理で自民党国防部会長だ。自民党は国会で絶対安定多数を擁する 大政党だ。その意味で宮沢氏はたしかに「権限」を有している。しかし、 厳しく問いたい。大政党の「権限」ある人物だとしても、氏に国民の約 80%が望む核共有及び非核三原則見直しの議論を封じ込める正当な「権 限」があるのか。党提言に盛り込まないと決定する正当な「権限」がある のか。宮沢氏の言う「私の権限」にそこまで重いものがあるとは、私は断 じて思わない。氏の気負いは空回りであり、自己の権力への過大評価にす ぎない。
アリバイづくり
宮沢氏はこうも語っている。
「タブー視せずに議論すべきだという先輩議員の言葉を受け止めて議論し た。どんな結論を出すにせよ、議論すること自体は自民党らしさだ」
そこまで言うなら、もっとまともな議論をしてみせるべきだ。宮沢氏の発 言は、安倍晋三元首相や高市早苗政調会長が非核三原則見直し、核共有の 議論を提起したことを意識してのものだろう。安保調査会に招いた専門家 は皆、核共有は日本には適さず、効果もないと説いた。安保調査会も「日 本にそぐわない政策だと納得した雰囲気」になったと宮沢氏は語っている。
ならば答えてほしい。非核三原則の見直しも核共有も必要で前向きに取り 組むべしという意見の専門家は招いたのか。私の周りには安保調査会で招 いた人物らと異なる考えの人々は少なくない。一方の意見の専門家ばかり 招いて、それを以て十分とするのは、一応議論はしたというアリバイづく りにすぎない。
今回の安保調査会の在り方は、弁明ばかりの自民党の典型事例ではないの か。岸田自民党は言うべきことを言わず、問題提起もできない政党になっ たのか。ウイグル問題について、中国に対するまともな非難決議さえもで きなかった自民党の卑怯さを、私は忘れていない。
3月18日の「言論テレビ」で高市氏が重要なことを指摘した。日本防衛の ために第一列島線に中距離弾道ミサイルを配備する必要について、全く議 論が進んでいないというのだ。理由は「アメリカ側の提案がない」からだ そうだ。
第一列島線の中距離ミサイル配備は米国側が提案し、日本側が受けるか否 かの議論ではないということだ。日本の国防は日本が考え、主導し、実行 しなければならないという当たり前の現実を直視することだ。いまはあら ゆる選択肢を議論すべき時なのだが、小野寺氏や歴代防衛相、宮沢氏らは 議論もしないという。
彼らはまた、非核三原則は日本の「国是」だという間違った主張を展開す る。非核三原則はいつから「国是」になったのか。この種の好い加減な議 論は即刻止めるべきだ。自民党安保調査会よ、これ以上国民を失望させて はならない。
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