#奇跡の星の植物園
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2024年11月13日に発売予定の翻訳書
11月13日(水)には20点の翻訳書が発売予定です。
アノレクシアの心 : 拒食症の白い闇,精神分析の灯火
マリリン・ロレンス/著 北岡征毅/翻訳 飛谷渉/翻訳
金剛出版
二つの顔を持つ男
コナン・ドイル/著 小林司/翻訳 東山あかね/翻訳 猫野クロ/イラスト
金の星社
賢者の贈り物
O・ヘンリー/ P.J.リンチ/イラスト 齊藤昇/翻訳
いそっぷ社
となりのきょうだい 理科でミラクル 花園ひとりじめ編
となりのきょうだい/企画・原案 アン・チヒョン/著 ユ・ナニ/イラスト イ・ジョンモ/監修 となりのきょうだいカンパニー/監修 ほか
東洋経済新報社
最果ての天使
アイリス・ジョハンセン/著 矢沢聖子/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
聖夜に見つけた奇跡
ペニー・ジョーダン/著 高田ゆう/翻訳 ルーシー・ゴードン
ハーパーコリンズ・ジャパン
誘惑は蜜の味
ダイアナ・ハミルトン/著 三好陽子/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
孔雀宮のロマンス
ヴァイオレット・ウィンズピア/著 安引まゆみ/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
壁の花の白い結婚
サラ・モーガン/著 風戸のぞみ/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
愛をくれないイタリア富豪
ルーシー・モンロー/著 中村美穂/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
スター作家傑作選~聖なる夜に願う恋~
ベティ・ニールズ/著 松本果蓮/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
魅惑のドクター
ベティ・ニールズ/著 庭植奈穂子/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
天使と悪魔の結婚
ジャクリーン・バード/著 東圭子/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
愛なき夫と記憶なき��
ジャッキー・アシェンデン/著 中野恵/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
愛と運命のホワイトクリスマス
リン・グレアム/著 若菜もこ/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
罠にかかったシンデレラ
サラ・モーガン/著 真咲理央/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
富豪と無垢と三つの宝物
キャット・キャントレル/著 堺谷ますみ/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
億万長者の無垢な薔薇
メイシー・イエーツ/著 中由美子/翻訳/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
午前二時からのシンデレラ
ルーシー・キング/著 悠木美桜/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
愛されない花嫁
ケイト・ヒューイット/著 氏家真智子/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
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--深海人形-- 命はゴミだが
霊を侵してはならない
…。
…私は、楽園を、約束の地を、浄土を、神の御国と呼ぶ。
楽園へ行こう。神の御国へ。
…。
※クロスオーバーネタ注意
※全体的に閲覧注意
※雑多にネタをぶち込み
※キャラ崩壊注意
ガンダムは私の人生が終わる所
…最近、ネコトモとディスカバのアルティメットカップTAばっかりやってます。ネコトモ良いっすよ。退屈な位平和だし。
後、ディスカバの話すると、歴代的にもアイスは変態コピーだと思います。あんなのトリデラでもロボボでもスタアラでもWiiDXでも使い熟せる気がし無ぇ……。
…。
…協業する側がしたいのは、墓標を新調して其の墓を守ろうする模範的道徳行と供養では無く盗掘と墓荒らしである事はよーく分かった(遠い目)。
…随分と他所様所有の墓地を墓荒らしをする気満々ですね()。他所では『死体蹴り』呼ばわりされてたけど(呆れ)。
…。
今考えてるシロッコネタ一覧
FA(フルアーマー)シロッコ ※ZZかよ(※呆れ)
シロッコ ヘビーアームズ
忠犬シロ公
(※ソロモンの悪夢っぽい並)狂犬シロ公
ネオジオンシロ公
クラウンドシロッコ(※カービィWiiネタ)
動物と植物の中間生物・歩��類(※早い話がピクミンの様なモン)シロッコ ※凍らせてから倒すと、大量に、大地のエキスかゲキカラエキスを出す
限り無く胞子生物に近い動物 歩菌類 キノッコ(※同上 キノガッサみたいなモン)
シロッコ AGE-1(※実質MS鍛治みたいなモンだし)
※…結論:シロッコはおもちゃじゃ無いんだぞ!(※迫真)。
…。
名人狙击传 名人狙撃伝
相手の額・首・心臓を、正確に弓で狙撃して最低限の矢だけで仕留める。因みに、此の技の使い手は、主に女性を狙う。
…。
機動���士ガンダムAGEの大爆死の冥福を祈る part629
※未だにあるのが凄い(※然も今も大好評絶賛現役)。
…。
Q.ジオン公国の軍人を尊厳破壊するには、如何したら良いですか?(※尊厳破壊が癖の者より)。
A.捕虜にした後、処刑(絞首刑での)をちらつかせながら、ティターンズに編入する(※模範解答)。同胞ハンターの爆誕だよ⭐︎(※外道の所業)。
…。
(※漫画版ゲッターパロです)
エリミーヌ「…良い加減に、此の終末の冬で滅ぶのよ、…は、爬虫類共……!!(※生粋の竜族アンチ)。」
アトス「……嗚呼、…嗚呼!!エリミーヌ、エリミーヌゥ!!!!……莫迦め……(※竜族共和推進派)。」
※…ワイのエリミーヌ像此んな感じ(※キャライメージの間違いが酷い)。
…。
星の夢→宇宙の生命はどいつもこいつも不完全なので全宇宙の生命を滅ぼします
エンデ・ニル→虚無のまま生命も宇宙の全てを破壊し尽くす為その限りを尽くす
エフィリス→世界に我以外の存在は要らない、我以外は皆滅ぼすし、滅んで仕舞えば良い
此奴等の目的って結局同じなんだよなぁ()。
…。
意気揚々とこの世界で侵略活動するぜウェーイwwな加害者かと思ったら、ホントに呆気無くピエロか見せ物にされて被害者だからなぁ、エフィリスの立ち位置複雑過ぎなんよ(※遠い目)。
…。
…『他人と言う存在は、自分(達)が利用する為、搾取する為、踏み躙るために存在する(キアラさん並感)』。…其う考え切れる人間程、偉大で人生は確実に成功するとしか言い様が無い。…実際、其れの究極形であるキアラさんは、末長く語り継がれる位トンでも無い女だった(※…無論、fgoじゃない方のです)。
…。
…最近のカービィは積極的絶滅、破滅主義、エフィリズム支持してる様な存在がラスボス・真ボス務めがち(※其の真意は如何であれ、反出生主義を実質掲げる強大な存在がラスボスか真ボスやって居ると言っても過言では無い)。
…。
…其の上、エフィリス以上にどうかしてるのが、新世界捨てて行った連中と言うのマジで救いが無い(※改めてカービィの裏設定黒過ぎなんよ)。
…。
…原語じゃ『Roper(自らのナワバリを区切る者)』だけど、英語名だと『Doomer(��球規模の問題がこの世の終わりをもたらすと信じている人、ドゥームズディが来るのは近いと考える人、<古> 判決を申し渡す人 ※多分ネーミングとしては真ん中では無いか?)』…と言うの格好良過ぎる(※アナザーディメンジョンのローパー属の話)。
そして、スフィアローパーとグランドローパーは、マスクラか何かが原因で破滅して行った古代ハルカンドラ文明人か故郷を軽率な理由で捨てた新世界の住人が成れ果てた姿じゃないかって言われてる(※…だけど、其の一方で、イカサマタマゴやらハルカンドルディとかにも古代ハルカンドラ文明の末裔説あるけど……)。
…。
ボロロア御面「…クゥ……クゥ……(※可愛い声で鳴く)。」
ワイ「…良い声で鳴くのぉ〜〜ww(※最高だぜ)。」
※…とっても良い声で鳴くので、大歓喜しながらゲラゲラ笑ってた(※悪趣味)。
…後、エフィカスの御面好きよ(※…だけど、ローパー属の御面が一番好きかも)。
…。
Q.…イカタマがろーあの中に、カミーユ監禁する話描くって話はどうなったの?(ろーあ可哀想)
A.其の中に、『ソロモンの悪夢』さんも加わる事になったよ(※満面の笑み)。『異宇宙から来た虚言の旅人〜The Best Friends.』と『ボクは許さない〜The Worst Friends.』の続編みたいな話になるかも(※…だけど、描かない可能性の方が高い)。
…もっと書くと、あの団長達みたいな悪党の所為で、「…ヒトと言う生き物ハ、何でも出来て頭が良いだけの救えない下等生物ノチクショウ(※…でしか無い)。」…だと思う様になった、イカタマが団長達よりも明らかに弱いヒトを誘拐して、売り飛ばそうとする話だよ(※未だ企画段階)。
--……人間とは、本当に、面白イナ。
…、
かの船は乗り込む者を楽園にいざなう船(※公式設定)である。…が、その船の邪悪な船長は、地獄に慣れきった全宇宙一ハイプライスのワンマンアーミーである退屈な男、キリコですら、足を踏み入れる事を躊躇する程の地獄へと、彼等を送り込む……。人は楽園を嘲笑う。そして深い地獄に堕ちて行く。神はもうヒトを愛さない。
次回 原罪
神の御国は人と人の間にある。
…。
日本刀好きには悪い奴しかいない。然し、其の悪い奴には二つの種類がある。『死後天国に行ける程度に悪い奴』と『地獄に行く程に悪い奴』と言う二つの種類が。
…。
ちいかわのセイレーンは、何故か世間では一方的に��者、加害者扱いされてるけど、皆だって、何時も仲良くしてて楽しく一緒の時間過ごして居る友達を、何か(※幾ら小さくて可愛かろうが)訳分からん奴に煮付けとして食われた挙句、其の煮付け奴等が不老不死ロボになって、のうのうと生きてる事(兎に角死なないし厄介)知った途端に「…仇取ったる(※任俠心)!!。」…って思う様になるでしょ?(※…其う言う事です)。
…で、世間の其う言う認識は、『愛の前には強者も弱者も無い(※愛は最強)』…って言う考えから来てるんだろうなぁ(※遠い目)。…でも、あっちはあっちで友情でして……(※友情ですよね?)。
…。
キリストの十字架は、生命の木で作られて居ると言う伝説がある。
WiiDXで彼奴(※某大樹)が追加された事によりクロロ団長(※基督教モチーフ)との関わりが出て来たのは……、…いや、元々あったな……(※思い出した)。
…。
…ショタリョナ・男リョナ嫌いの男塾勢なのに、わざわざ館主様&ふーけつリョナ見に来る、読みに来る達ってドマゾ豚(と孤独死と嫌われ者)の才能あるよ、マジで(※確信)。誇れ、お前は(どドマゾ)豚だ(※すくーな並)。
…因みに、ワイの事を忌嫌いながら、文句言いながら、拙作の格ゲーネタ見に来る人達もドマゾ豚の才能あります(※孤独死の才能も)。…と言う訳で、ワイが責任を持って調教してあげるから、…此れから、一人前のドマゾ豚になろうね(※キモ)。
…此んな自分が嫌いで嫌いで仕方無いな人間に、ジャンル燃料の供給を頼らなくても、今は、ChatGPTとか小説執筆AIなんてのは沢山あるんだから、其れに頼れば良いのに……(※…もしかすると、元々からドマゾ豚だから調教されたいだけなのかなぁ……??)。
…そして、ガソダム&ロボアニメ勢で見に来て、読みに来て下さった方は……。…「…もうすみません(本当に御免なさい)。」…としか言い様がありません。…本当に、すみません(※…昔から此の様な奴です)。
…。
…ごく一部のマイナージャンル民へ。其処迄、粘着する、然もストーカーみたいに、なんて、私の事好きで好きで仕方無いんですね?…ハッキリ言ってキモい、…気持ち悪いです。…今度からは、隣の同類と言う名の同胞か、対話AI(※特にChatGPT)と仲良しになって下さい。…ワイはもっと描きたいジャンルあるので(※…其れと、ストーキングが辞められ無い様なら、ワイが調教して治療しても上げても良いですよ)。…何時迄も執着し続けるなんて、本気で気色悪いですね()。
…。
…桃玉ゆぎおわんぴきめつじゅじゅつメジャーロボアニメみたいなメジャー���ャンルに長年触れて分かったけど、マイナージャンルは、ファン層に多様性と言う物が無くて、基本的に何処行っても孤独で、嫌われ者で、自己中心的で、気持ち悪いヒトしか居ないんだなぁ?(呆れ)。
…。
御互いに人間性も性癖も意見も相性最悪で「…ジャンルと界隈が同じじゃなけりゃ、…此んな奴とは金輪際付き合いたくねぇ〜〜!!(※縁切りてぇ〜〜!!)。」…って奴でも、居るジャンルと界隈が同じだけで(※だって、他に人が居無さ過ぎるので)正に奇跡なレベルだから、必死に空気読んで、其の貴重極まり無い仲間を失わない為に、どんなに、相手へのヘイトとストレス貯めても仲を取り繕ろわなきゃやって行けないマイナージャンル民はスタート地点の時点で不幸だよな(涙を禁じ得ない)。
…寧ろ、惨めで不幸な人生を送る為に、限界集落マイナージャンル民人生してる嫌いすらある(※極端な話)。
…。
…自分の縄張りを確保する目的で界隈に居座るマイナージャンル民、マジで底辺企業の無能御局様と同じやな(※…メジャージャンルの一角に、ナワバリ作った方が、圧倒的に楽だろうに……)。
…。
?「…御気持ち文章乙ww(※暇人)。」
ワイ「…ワイの事が、嫌いで嫌いで仕方無い筈のドマゾ豚が、ストーキングめいた行為した上で、何か言ってる(※マジキモ怖い)。」
…。
…皆も生き恥をかく事無く、清廉潔白に御亡くなりになろうね⭐︎(※ガトー御兄さんとの約束だよ⭐︎)。
…。
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FF14地名:3.X ID
自分用、蒼天ID地名の日本語版・英語版まとめ。SSへの文字入れなどにご利用ください。ただし記事の丸々転載はご遠慮下さいませ。間違いなどあればtwitterの方に指摘もらえれば直しておきます。 2023.6.2更新。
●廃砦捜索 ダスクヴィジル Dusk Vigil 外郭中庭 Outer Training Grounds 閲兵ホール Gathering Hall 騎兵詰所 Barracks 作戦会議室 Lord Commander's Seat キープ外壁 Outer Walls キープ内部 Inner Keep 聖ガンリオル礼拝堂 Saint Guenriol's Chapel ●���峰踏破 ソーム・アル Sohm Al Foothills ソーム・アル:南の斜面 The South Face 南の斜面 The South Face 碧の崖 Greenlinn ソーム・アル:霊峰の血管 The Veins 霊峰の血管 The Veins 紅の墓 The Red Crypt 蒼の墓 The Blue Crypt 霊峰の傷 The Wound ソーム・アル:不義の山道 Betrayal 不義の山道 Betrayal ヘス・アファー Hess Afah ●邪竜血戦 ドラゴンズエアリー The Aery エアリー・エクステリア Aery Exterior アク・ファール・ライ Akh Fahl Lye エアリー・インテリア Aery Interior テン・ウール Ten Oohr エアリー・エイペックス Aery Apex エルン・スコール Errn Scorh ニーズヘッグ・アン Nidhogg An ●強硬突入 イシュガルド教皇庁 The Vault 礼拝堂身廊 Chantry Nave 聖トールダン大聖堂 Saint Thordan's Basilica 教皇庁の身廊 Vault Nave 聖歌隊席 The Quire 礼拝堂側廊 Chantry Cloister 礼拝堂の昇降室 Chantry Lift
庁内庭園 Inner Sanctum 庭園東の昇降室 East Sanctum Lift 庭園の小ホール Chapter House 庭園西の昇降室 West Sanctum Lift 氷天宮 Hall of the Spear 氷天宮の昇降室 Spear Lift 氷天宮円堂 Rotunda 氷天宮礼拝堂 The Chancel ●禁書回収 グブラ幻想図書館 The Great Gubal Library 黙想閲覧室 Reading Room 幻想書庫 School of Phantasmagoria 魔書の翼廊 Hall of Magicks エーテル学研究室 Aetherology End 奇想談話室 Convocation House 博物学研究室 Natural History Room 占星学研究室 Astrology and Astromancy Camera 夢想禁書庫 School of Fantastics 狂想禁書庫 Rhapsodies Quadrangle ●蒼天聖戦 魔科学研究所 Aetherochemical Research Facility 機械兵器研究棟 Automachina Research メインゲート Main Portal スフィア・オブ・マーヴィン Marvyn 機械兵器研究棟 Automachina Research 試作機実験庫 Analysis and Proving 物資運搬路 Material Transport 生体兵器研究棟 Bioweapon Research 生体兵器研究棟 Bioweapon Research 物資分配場 Material Distribution 第VII培養層 Incubation Bay VII 第VIII培養層 Incubation Bay VIII 評価試験場 Evaluation and Authentication 特殊警戒通路 Security Passage 昇降機 Autolift 三闘神制御区 Triad Control 三闘神制御区 Triad Control ニューロリンク Neurolink ニューロリンク・ナセル Neurolink Nacelle ●神域浮島 ネバーリープ Neverreap 飛び石の島 The Pebble That Skips 吹き荒れる随神島 The God Who Whispers 木々揺れる参道 The Trees That Sway 風惑う拝殿 The Wind That Summons 水巡る社庭 The Water That Sings 雲産みの社 The Cloud That Laughs ●博物戦艦 フラクタル・コンティニアム The Fractal Continuum 艦首構造群 Forward Complex 博物戦艦総合デッキ Grand Deck 左舷構造群 Larboard Complex 歴史展示デッキ History Gallery 第III展示区 Exhibit Level III 右舷構造群 Starboard Complex 兵器展示デッキ Soldiery Gallery 特級キメラ培養室 High-level Incubation Bay 艦体構造群 Central Complex 博物戦艦防衛デッキ Security Deck バイオレット管制区 Violet Ward エメラルド管制区 Emerald Ward クリムゾン管制区 Crimson Ward 現実拡張室 Reality Augmentation Bay ●草木庭園 聖モシャーヌ植物園 Saint Mocianne's Arboretum 1F First Floor 熱帯展示室 Telmatology 密林の小道 Silvology 揺れる蓮池 Limnology 腐臭の庭 Zymology 乾燥帯展示室 Eremology 女王蜂の玉座 Amber Room B1F The Underworks 聖モシャーヌの研究窟 The Study 芳香の食卓 Last Supper ●制圧巨塔 シリウス大灯台(Hard) Pharos Sirius(Hard) 4F 5F Fifth & Fourth Levels エーテル圧縮室 Aether Compressor 3F Third Level エーテル貯蔵室 Fuel Chamber 2F Second Level 1F First Level 第二塔基部 Second Spire 地下 Weight Chamber コボルド軍地下坑道 Sapper Tunnel 第66号前線培養室 Incubator 66 ●星海観測 逆さの塔 The Antitower 星の渚 Pleroma 空中魔法陣 The Manifest 最上下層 The Lower Reaches 浮遊舞踏場 Where Hearts Leap 最下上層 The Upper Reaches 賢者の研究室 Where Minds Toil 隠者の娯楽室 Where Souls Rest 星海展望室 Where All Witness ●神聖遺跡 古アムダプール市街(Hard) The Lost City of Amdapor (Hard) 腐敗した市街地 Central Amdapor 腐敗した市街地 Central Amdapor 白魔道士の塔 Tower of White 封魔洞 Sanctum of Dreams 封魔洞 The Arrested Darkness 翼獣の縄張 Dark Wings 魔晶堂 The Crystallum 魔晶堂 The Crystallum 守護の聖域 The Protectorate ●天竜宮殿 ソー��・カイ Sohr Khai 悲嘆の前庭 An Answer of Sorrow 嘆きの庭園 Sudden Torment 哀しみの円庭 Unsevered Despair 静寂の宮殿 An Answer of Silence ラタトスクの殿堂 Ratatoskr's Peace 祈りの身廊 Unstifled Prayer 悔恨の正殿 An Answer of Shame 追憶の柱礎 Shattered Remembrance ●黒渦伝説 ハルブレイカー・アイル(Hard) Hullbreaker Isle (Hard) 軍獣訓練区画 Hell of Howls 生存者の海岸 Survivor Spit 行軍訓練区画 Hell of Malms 霧髭一味のアジト Runner's Reel 霧髭の宝物庫 Hidden Cache 海上訓練区画 Hell of Waves 黒渦闘技場 Maelstrom ●峻厳渓谷 ゼルファトル Xelphatol 大渓谷の隘路 The Wishbone 営巣地門前 The Cage タパソリ営巣地 Tapaxoli タパソリ闘技場 The Tlachtli ゼルファトル山麓 The First Mountain 神前祭壇 The Vortex ●稀書回収 グブラ幻想図書館(Hard) The Great Gubal Library (Hard) 中層 Middle Floors 黙想閲覧室 Reading Room 幻想書庫 School of Phantasmagoria 魔書の翼廊 Hall of Magicks エーテル学研究室 Aetherology End 奇想談話室 Convocation House 占星学研究室 Astrology and Astromancy Camera 最上層 Upper Floors 稀覯書庫受付 Rare Tomes Desk 断想閲覧室 School of Nihility 司書長室 The Last Lamp 思想稀覯書庫 Rare Tomes Room ●巨大防壁 バエサルの長城 Baelsar's Wall 長城下部 Lower Reaches カストルム・オリエンス Castrum Oriens ヴィア・プラエトリア Via Praetoria 長城内部1 Outer Reaches 長城内兵器庫 Armory 長城内部2 Inner Reaches 長城内兵器庫 Armory 魔導兵器格納庫 Magitek Installation 長城上部 The Walk 長城胸壁 Parapet 飛空戦艦発着場 Airship Landing ●霊峰浄化 ソーム・アル(Hard) Sohm Al (Hard) ソーム・アル:不義の山道 Betrayal ヘス・アファー Hess Afah 不義の山道 Betrayal ソーム・アル:霊峰の血管 The Veins 霊峰の傷 The Wound 蒼の墓 The Blue Crypt 霊峰の血管 The Veins 炎獣の縄張り The Fever ソーム・アル:霊峰の心臓 The Heart 霊峰の心臓 The Heart 大溶岩窟 Lava Tube
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武井武雄 刊本作品リスト
※参照: Results – Advanced Search Objects – Museum of Fine Arts, Boston | Artist/Maker: Takei Takeo | DATE OLDER FIRST
※参照: 出品目録:所蔵作品展 「武井武雄 刊本作品の世界」(2021年6月22日-9月12日)PDF
※上記PDF目録を元にMFAの該当ページをリンク
※「技法・素材」の()は「原書に記載が無い」意味で記入
※「001 十二支絵本 1935 (一色凸版)」のみMFAには無い
※参照: Takeo Takei#Books_of_various_materials_(Kanpon) - Wikipedia
※参照: TAKEI Takeo : Kampon - Boston Book Company (web archive)
※可憐判No.を追記(一部自己解釈) 20220209
※「Keep reading」以下 139 lines
刊本No. タイトル 刊出年 技法・素材
001 十二支絵本 1935 (一色凸版)
002 雛祭絵本 1936 (凸版筆彩)
003 諸国絵馬集 1937 (二色凸版)
004 善悪読本 1938 (二色凸版)
005 童語帳 1939 (自刻木版可憐判1? )
006 畑の豆本 1940 (スクラッチ版)
007 本朝昔噺 1941 (合羽版)
008 十二時之書 1942 (石版)
009 伊曽保の絵本 1943 (アップリケ原色版)
010 風村三代記 1944 (伝承木版)
011 燈 1945 自刻木版
012 KOKESHI 1946 伝承木版
013 僕の哥留多 1946 自刻木版
014 お猫様 1947 (自刻木版 活版)
015 牡丹妖記 1948 木刻拓本摺
016 のえる之書 1949 自版糊染本
017 乞食の本 1950 自刻木版
018 聖AGNES之書 1951 木口木版
019 もりどんの話 1951 自刻木版(可憐判2)
020 あいそぽす・ふあぶら 1952 VARI-TYPE・木版
021 菊妖記 1953 レリーフ 拓本
022 秒間の符 1953 CHORD PRINT 條版
023 天竺の花 1953 陶版
024 ARIA 1954 層版・紙拓
025 折鶴物語 1955 瓦版
026 胡蝶散策 1955 三色凸版 胡蝶型
027 姫の尺牘 1955 友禅
028 霊長異聞 1956 WOVEN LABEL
029 第五の世界 1956 HELIOGRAVURE
030 誕生譜 1957 eau-forte
031 木魂の伝記 1957 寄せ木
032 極秘亭探訪 1958 cello-slide
033 六之助行状 1958 鑢孔版
034 雪の讃頌 1958 TANDEM PRINT
035 近くの世界 1958 原色版
036 太陽と孔雀 1959 蝕彩金工
037 えでんの異変 1959 Collotype
038 Sphère 1959 写真による詩集
039 かなりやABC 1959 グランド孔版
040 お化け退場 1959 Colour gravure
041 ストロ王 1960 STRAW MOSAIC
042 Q子の奇跡 1960 ドライポイント電鋳
043 七重と八重 1960 彫紙 漆摺
044 四十四番館 絵入物語 1960 (木版)
045 林檎と人間 1961 石膏版
046 神々の旗 1961 アルミ詩書
047 運のわるい男 1961 木刻乾拓摺
048 宇宙裁縫師 1961 伝承西洋木版
049 HAREM 1961 Applique
050 独楽が来た 1962 日本伝承木版
051 天国と地獄 1963 自刻木版(可憐判3)
052 卵から卵 1963 木綿型染
053 鬼の郷衛門 1963 Wonder view
054 紫の眼鏡 1963 自刻木版(可憐判4)
055 ラムラム王 童話 1964
056 真珠の池 1964 polystyrene paper edition
057 河童河太郎 1964 自刻木版(可憐判5)
058 新しい地球 1965 TOP-STEREO
059 人魚と嫦娥 1966 高岡螺鈿
060 Leoの魔法 1965 relief print
061 造物主失踪 1965 自刻木版
062 侏儒の饗宴 1966 ろうらっくす詩書
063 祈祷の書 1966 Sベランの本
064 二十世紀の虎 1966 自刻木版可憐判(6)
065 人生切手 1966 彫刻凹版
066 さもいや伝 1966 印伝
067 風・水・火・星 1966 Technamation
068 逆立勘九郎 1967 自刻木版可憐判 (7)
069 六つの窓 1967 Qper本
070 悪魔の旗 1967 EMBOSSOGRAPH MOSAIC
071 湖のひと 1967 Miracle tower
072 KAGEYA 1967 木口木版
073 鳩と奇術師 1967 静電印刷
074 ���を吹く城 1968 Sベラン��よるゴブラン織
075 けちな神様 1968 自刻木版可憐判 (8)
076 あるくJACK 1968 現代ガラス絵
077 眼球異聞 1969 RAINBOW PRINT
078 モスクワの月夜 1969 自刻木版可憐判 (9)
079 Л子の船出 1969 TRANCEART
080 迅四郎の窓 1969 APR・STAINED GLASS
081 世界は渦巻 1969 (凸版)
082 花園の気流 1970 植毛印刷
083 世界革命 1970 自刻木版可憐判 (10)
084 平和白書 1970 THERMOPRINTEX
085 女人禁制 1971 自刻木版可憐判11
086 天とは何か 1971 凸版可憐判 (12)
087 呂宋お菊 1972 拓摺
088 瓢箪作家 1972 COUPAGE
089 面倒無用党 1972 RELIEF
090 現代の神々 1972 伝承木版可憐判 (13)
091 虹を作る男 1972 自刻木版可憐判14
092 小萩抄 1973 折本上下二冊(凸版)
093 おかしな象の話 1973 (凸版)
094 高杉晋作 1973 (多色オフセット)
095 造物主御帰還 1973 自刻木版可憐判15
096 双青の夢 1974 自刻木版可憐判16
097 RomとRam 1974 皮革印刷
098 金色の森 1974 miniature d’or (金線印刷)
099 どん・きほうて 1974 coupage
100 雄鶏ルコック 1975 エンボス
101 小さな雪女 1975 賦形 SNOW VIEW
102 狗猴考 1975 自刻木版可憐判17
103 洗脳奉行 1975 四色凸版
104 天狗天八郎 1975 孔版
105 珍和名抄 1975 自刻木版可憐判18
106 半介の神様 1976 凸版
107 アイウエ王物語 1976 (オフセット 凸版)
108 ナイルの葦 1980 パピルス造本
109 王様の馬車と乞食の馬車 1976 自刻木版可憐判19
110 京之介と千草 EXLIBRIS 1977 (木版 凸版)
111 提灯の詩 1977 ヴィベール造本
112 鼡小僧下呂吉 1977 (凸版 孔版)
113 雷おさん 1977 自刻木版可憐判20
114 紺次とお丹 1977 SEALING PRINT
115 人生の門 1978 (凸版)
116 靉蘭の鯉 1978 剪紙 倪瑞良 (金箔)
117 ルイとカンナ 1978 puf-bord版
118 袖の下 1979 自刻木版可憐判21
119 エリアナ姫と蝶 1979 アルミナ磁器
120 花竜と狸 1979 (三色凸版)
121 車夫萬五郎 1979 (二色凸版)
122 珍竹林之命 1979 (二色凸版)
123 番傘奇譚 1979 Puf-bord版
124 可平と猫 1979 (二色凸版)
125 シンの魔法 1979 自刻木版可憐判22
126 べら棒物語 1980 賦形熱版
127 加藤清正 1980 (三色凸版)
128 百済の仙人 1981 (一色凸版)
129 裸女ネサイ 1980 自刻木版可憐判24
130 月から来た子 1981 凹式金線版
131 千手観音 1981 笹画仙(墨絵オフセット)
132 陶工栗衛門の妻 1981 自刻木版可憐判
133 風神と雷神 1982 蒲葉抄紙 (凸版)
134 赫夜姫後日譚 1982 (三色凸版)
135 釣鐘異聞 1982 彩雲紙 (凸版)
136 いそなげき 1982 STAMPING
137 ABC夜話 1982 可憐判 (自刻木版と凸版併用)
138 鳥遣いの乙女 1983 LASER光線CUT
139 天竺の鳥 1983 印度更紗 印度手漉紙 (二色凸版)
以上
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青と金色
■サイレンス
この部屋のインターフォンも灰色のボタンも、だいぶ見慣れてきた。指で押し込めて戻すと、ピーンポーンと内側に引っ込んだような軽い電子音が鳴る。まだこの地に来た頃はこうやって部屋主を呼び出して待つのが不思議な気分だった。鍵は開かれていたし、裏口だって知っていたから。 「…さむっ」 ひゅうう、と冷たい風が横から吹き込んで、思わずそう呟いて肩を縮めた。今週十二月に入ったばかりなのに、日が落ちると驚くほど冷え込む。今日に限って天気予報を観ていなかったけれど、今夜はいつもと比べても一段と寒いらしい。 近いし、どうせすぐだからと、ろくに防寒のことを考えずに部屋を出てきたのは失敗だった。目についた適当なトレーナーとパンツに着替え、いつものモッズコートを羽織った。おかげで厚みは足りないし、むき出しの両手は指先が赤くなるほど冷えてしまっている。こんなに寒いのならもっとしっかりと重ね着してこれば良かった。口元が埋まるくらいマフラーをぐるぐるに巻いてきたのは正解だったけれど。 いつもどおりインターフォンが繋がる気配はないけれど、その代わりに扉の奥からかすかに足音が近付く。カシャリ、と内側から錠の回る音がして目の前の扉が開かれた。 「おつかれ、ハル」 部屋の主は片手で押すように扉を開いたまま、咎めることも大仰に出迎えることもなく、あたたかい灯りを背にして、ただ静かにそこに佇んでいた。 「やっと来たか」 「はは、レポートなかなか終わらなくって…。遅くなっちゃってごめんね」 マフラー越しに笑いかけると、遙は小さく息をついたみたいだった。一歩進んで内側に入り、重たく閉じかける扉を押さえてゆっくりと閉める。 「あ、ここで渡しちゃうからいいよ」 そのまま部屋の奥に進もうとする遙を呼び止めて、玄関のたたきでリュックサックを開けようと背から下ろした。 遙に借りていたのはスポーツ心理学に関する本とテキストだった。レポート課題を進めるのに内容がちょうど良かったものの自分の大学の図書館では既に貸し出し中で、書店で買うにも版元から取り寄せるのに時間がかかるとのことだった。週明けの午後の講義で遙が使うからそれまでには返す、お互いの都合がつく日曜日の夕方頃に部屋に渡しに行く、と約束していたのだ。行きつけのラーメン屋で並んで麺を啜っていた、週の頭のことだった。 「いいから上がれよ」遙は小さく振り返りながら促した。奥からほわんとあたたかい空気が流れてくる。そこには食べ物やひとの生活の匂いが確かに混じっていて、色に例えるなら、まろやかなクリーム色とか、ちょうど先日食べたラーメンのスープみたいなあたたかい黄金色をしている。それにひとたび触れてしまうと、またすぐに冷えた屋外を出て歩くために膨らませていた気力が、しるしるとしぼんでしまうのだ。 雪のたくさん降る場所に生まれ育ったくせに、寒いのは昔から得意じゃない。遙だってそのことはよく知っている。もちろん、帰ってやるべきことはまだ残っている。けれどここは少しだけ優しさに甘えようと決めた。 「…うん、そうだね。ありがと、ハル」 お邪魔しまーす。そう小さく呟いて、脱いだ靴を揃える。脇には見慣れたスニーカーと、濃い色の革のショートブーツが並んでいた。首に巻いたマフラーを緩めながら短い廊下を歩き進むうちに、程よくあたためられた空気に撫ぜられ、冷えきった指先や頬がぴりぴりと痺れて少しだけ痒くなる。 キッチンの前を通るときに、流しに置かれた洗いかけの食器や小鍋が目に入った。どうやら夕食はもう食べ終えたらしい。家を出てくる前までは課題に夢中だったけれど、意識すると、空っぽの胃袋が悲しげにきゅうと鳴った。昼は簡単な麺類で済ませてしまったから、帰りにがっつり肉の入ったお弁当でも買って帰ろう。しぼんだ胃袋をなぐさめるようにそう心に決めた。 「外、風出てきたから結構寒くってさ。ちょっと歩いてきただけなのに冷えちゃった」 「下旬並だってテレビで言ってた。わざわざ来させて悪かったな」 「ううん、これ貸してもらって助かったよ。レポートもあと少しで終わるから、今日はちゃんと寝られそう……」 遙に続いてリビングに足を踏み入れ、そこまで口にしたところで言葉が詰まってしまった。ぱちり、ぱちりと大きく瞬きをして眼下の光景を捉え直す。 部屋の真ん中に陣取って置かれているのは、彼の実���のものより一回り以上小さいサイズの炬燵だ。遙らしい大人しい色合いの炬燵布団と毛布が二重にして掛けられていて、丸みがかった正方形の天板が上に乗っている。その上にはカバーに入ったティッシュ箱だけがちょんとひとつ置かれていた。前回部屋に訪れたときにはなかったものだ。去年は持っていなくて、今年は買いたいと言っていたことを思い出す。けれど、それはさして驚くようなことでもない。 目を奪われたのは、その場所に半分身を埋めて横になり、座布団を枕にして寝息を立てている人物のことだった。 「…えっ、ええっ? 凛!?」 目の前で眠っているのは、紛れもなく、あの松岡凛だった。普段はオーストラリアにいるはずの、同郷の大切な仲間。凛とはこの夏、日本国内の大会に出ていた時期に会って以来、メールやメディア越しにしか会えていなかった。 「でかい声出すな、凛が起きる」 しいっと遙が小声で咎めてくる。あっ、と慌てたけれど、当の凛は起きるどころか身じろぐこともなく、ぐっすりと深く眠ってしまっているようだった。ほっと胸を撫で下ろす。 「ああ、ご、ごめんね…」 口をついて出たものの、誰に、何に対してのごめんなのか自分でもよく分からない。凛がここにいるとは予想だにしていなかったから、ひどく驚いてしまった。 凛は今までも、自分を含め東京に住んでいる友達の部屋に泊まっていくことがあった。凛は東京に住まいを持たない。合宿や招待されたものならば宿が用意されるらしいけれど、そうでない用事で東京に訪れることもしばしばあるのだそうだ。その際には、自費で安いビジネスホテルを使うことになる。一泊や二泊ならともかく、それ以上連泊になると財布への負担も大きいことは想像に難くない。 東京には少なくとも同級生だけで遙と貴澄と自分が住んでいる。貴澄は一人暮らしでないからきっと勝手も違うのだろうが、遙と自分はその点都合が良い。特に遙は同じ道を歩む選手同士だ。凛自身はよく遠慮もするけれど、彼の夢のために、できるだけの協力はしてやりたい。それはきっと、隣に並ぶ遙も同じ気持ちなのだと思う。 とはいえ、凛が来ているのだと知っていれば、もう少し訪問の日時も考えたのに。休日の夜の、一番くつろげる時間帯。遙ひとりだと思っていたから、あまり気も遣わず来てしまったのに。 「ハル、一言くらい言ってくれればいいのに」 強く非難する気はなかったけれど、つい口をついて本音が出てしまった。あえて黙っていた遙にじとりと視線を向ける。遙はぱちり、ぱちりと目を瞬かせると、きゅっと小さく眉根を寄せ、唇を引き結んだ。 「別に…それが断わる理由にはならないだろ」 そう答えて視線を���す遙の表情には少し苦い色が含まれていて、それでまた一歩、確信に近付いたような気がした。近くで、このごろはちょっと離れて、ずっと見てきたふたりのこと。けれど今はそっと閉じて黙っておく。決してふたりを責めたてたいわけではないのだ。 「…ん、そうだね」 漂う空気を曖昧にぼかして脇にやり、「でも、びっくりしたなぁ」と声のトーンを上げた。遙は少しばつが悪そうにしていたけれど、ちらりと視線を戻してくる。困らせたかな、ごめんね、と心の中で語りかけた。 「凛がこの時期に帰ってくるなんて珍しいよね。前に連絡取り合ったときには言ってなかったのに」 「ああ…俺も、数日前に聞いた。こっちで雑誌だかテレビだかの取材を受けるとかで呼ばれたらしい」 なんでも、その取材自体は週明けに予定されていて、主催側で宿も用意してくれているらしい。凛はその予定の数日前、週の終わり際に東京にやって来て、この週末は遙の部屋に泊まっているのだそうだ。今は確かオフシーズンだけれど、かといってあちこち遊びに行けるほど暇な立場ではないのだろうし、凛自身の性格からしても、基本的に空いた時間は練習に費やそうとするはずだ。メインは公的な用事とはいえ、今回の東京訪問は彼にとってちょっとした息抜きも兼ねているのだろう。 「次に帰ってくるとしたら年末だもんね。早めの休みでハルにも会えて、ちょうど良かったんじゃない」 「それは、そうだろうけど…」 遙は炬燵の傍にしゃがみこんで、凛に視線を向けた。 「ろくに連絡せずに急に押しかけてきて…本当に勝手なやつ」 すうすうと寝息を立てる凛を見やって、遙は小さく溜め息をついた。それでも、見つめるその眼差しはやわらかい。そっと細められた瞳が何もかもを物語っている気がする。凛は、見ている限り相変わらずみたいだけれど。ふたりのそんな姿を見ていると自然と笑みがこぼれた。 ハル、あのね。心の中でこっそり語りかけながら、胸の内側にほこほことあたたかい感情が沸き上がり広がっていくのが分かった。 凛って、どんなに急でもかならず前もって連絡を取って、ちゃんと予定を確認してくるんだよ。押しかけてくるなんて、きっとそんなのハルにだけじゃないかなぁ。 なんて考えながら、それを遙に伝えるのはやめておく。凛の名誉のためだった。 視線に気付いた遙が顔を上げて、お返しとばかりにじとりとした視線を向けた。 「真琴、なんかニヤニヤしてないか」 「そんなことないよ」 つい嬉しくなって口元がほころんでいたらしい。 凛と、遙。そっと順番に視線を移して、少しだけ目を伏せる。 「ふたりとも相変わらずで本当、良かったなぁと思って」 「…なんだそれ」 遙は怪訝そうに言って、また浅く息をついた。
しばらくしておもむろに立ち上がった遙はキッチンに移動して、何か飲むか、と視線を寄こした。 「ついでに夕飯も食っていくか? さっきの余りなら出せる」 夕飯、と聞いて胃が声を上げそうになる。けれど、ここは早めにお暇��なければ。軽く手を振って遠慮のポーズをとった。 「あ、いいよいいよ。まだレポート途中だし、すぐに帰るからさ。飲み物だけもらっていい?」 遙は少し不満そうに唇をへの字に曲げてみせたけれど、「分かった、ちょっと待ってろ」と冷蔵庫を開け始めた。 逆に気を遣わせただろうか。なんだか申し訳ない気持ちを抱きながら、炬燵のほうを見やる。凛はいまだによく眠ったままだった。半分に折り畳んだ座布団を枕にして横向きに背を縮めていて、呼吸に合わせて規則正しく肩が上下している。力の抜けた唇は薄く開いていて、その無防備な寝顔はいつもよりずっと幼く、あどけないとさえ感じられた。いつもあんなにしゃんとしていて、周りを惹きつけて格好いいのに。目の前にいるのはまるで小さな子供みたいで、眺めていると思わず顔がほころんでしまう。 「凛、よく寝てるね」 「一日連れ回したから疲れたんだろ。あんまりじっと見てやるな」 あ、また。遙は何げなく言ったつもりなのだろう。けれど、やっぱり見つけてしまった。「そうだね」と笑って、また触れずに黙っておくけれど。 仕切り直すように、努めて明るく、遙に投げかけた。 「でも、取材を受けに来日するなんて、なんか凛、すっかり芸能人みたいだね」 凄いなぁ。大仰にそう言って視線を送ると、遙は、うん、と喉だけで小さく返事をした。視線は手元に落とされていながら、その瞳はどこか遠くを見つめていた。コンロのツマミを捻り、カチチ、ボッと青い火のつく音がする。静かなその横顔は、きっと凛のことを考えている。岩鳶の家で居間からよく見つめた、少し懐かしい顔だった。 こんなとき、いまここに、目の前にいるのに、とそんな野暮なことはとても言えない。近くにいるのにずっと遠くに沈んでいた頃の遙は、まだ完全には色褪せない。簡単に遠い過去に押しやって忘れることはできなかった。 しばらく黙って待っていると遙はリビングに戻って来て、手に持ったマグカップをひとつ差し出した。淹れたてのコーヒーに牛乳を混ぜたもので、あたたかく優しい色合いをしていた。 「ありがとう」 「あとこれも、良かったら食え」 貰いものだ、と小さく個包装されたバウムクーヘンを二切れ分、炬燵の上に置いた。背の部分にホワイトチョコがコーティングしてあって、コーヒーによく合いそうだった。 「ハルは優しいね」 そう言って微笑むと、遙は「余らせてただけだ」と視線を逸らした。 冷えきった両の手のひらをあたためながらマグカップを傾ける。冷たい牛乳を入れたおかげで飲みやすい温度になっていて、すぐに口をつけることができた。遙は座布団を移動させて、眠っている凛の横に座った。そうして湯気を立てるブラックのコーヒーを少しずつ傾けていた。 「この休みはふたりでどこか行ってきたの?」 遙はこくんと頷いて、手元の黒い水面を見つめながらぽつぽつと語り始めた。 「公園に連れて行って…買い物��、あと、昨日は凛が何か観たいって言うから、映画に」 タイトルを訊いたけれど、遙の記憶が曖昧で何だかよく分からなかったから半券を見せてもらった。CM予告だけ見かけたことのある洋画で、話を聞くに、実在した人物の波乱万丈な人生を追ったサクセスストーリーのようだった。 「終盤ずっと隣で泣かれたから、どうしようかと思った」 遙はそう言って溜め息をついていたけれど、きっとそのときは気が気ではなかったはずだ。声を押し殺して感動の涙を流す凛と、その隣で映画の内容どころではなくハラハラと様子を見守る遙。その光景がありありと眼前に浮かんで思わず吹き出してしまった。 「散々泣いてたくせに、終わった後は強がっているし」 「あはは、凛らしいね」 俺が泣かせたみたいで困った、と呆れた顔をしてコーヒーを口に運ぶ遙に、あらためて笑みを向けた。 「よかったね、ハル」 「…何がだ」 ふいっと背けられた顔は、やっぱり少し赤らんでいた。
そうやってしばらく話しているうちにコーヒーは底をつき、バウムクーヘンもあっという間に胃袋に消えてしまった。空になったマグカップを遙に預け、さて、と膝を立てる。 「おれ、そろそろ帰るね。コーヒーごちそうさま」 「ああ」 遙は玄関まで見送ってくれた。振り返って最後にもう一度奥を見やる。やはり、凛はまだ起きていないようだった。 「凛、ほんとにぐっすりだね。なんか珍しい」 「ああ。でも風呂がまだだから、そろそろ起こさないと」 遙はそう言って小さく息をついたけれど、あんまり困っているふうには見えなかった。 「あ、凛には来てたこと内緒にしておいてね」 念のため、そう言い添えておいた。隠すようなことではないけれど、きっと多分、凛は困るだろうから。遙は小さく首を傾げたけれど、「分かった」と一言だけ答えた。 「真琴、ちょっと待て」 錠を開けようとすると、思い出したみたいに遙はそう言って踵を返し、そうしてすぐに赤いパッケージを手にリビングから戻ってきた。 「貼るカイロ」 大きく書かれた商品名をそのまま口にする。その場で袋を開けて中身を取り出したので、貼っていけ、ということらしい。貼らずにポケットに入れるものよりも少し大きめのサイズだった。 「寒がりなんだから、もっと厚着しろよ」 確かに、今日のことに関しては反論のしようがない。完全に油断だったのだから。 「でも、ハルも結構薄着だし、人のこと言えないだろ」 着ぶくれするのが煩わしいのか、遙は昔からあまり着こまない。大して寒がる様子も見せないけれど、かつては年に一度くらい、盛大に風邪を引いていたのも知っている。 「年末に向けて風邪引かないように気を付けなよ」 「俺は大丈夫だ、こっちでもちゃんと鯖を食べてるから」 「どういう理屈だよ…って、わあっ」 「いいから。何枚着てるんだ」 言い合っているうちに遙が手荒く背中をめくってくる。「ここに貼っとくぞ」とインナーの上から腰の上あたりに、平手でぐっと押すように貼り付けられた。気が置けないと��えばそうだし、扱いに変な遠慮がないというか何というか。すぐ傍で、それこそ兄弟みたいに一緒に育ってきたのだから。きっと凛には、こんな風にはしないんだろうなぁ。ふとそんな考えが頭をもたげた。 遙はなんだか満足げな顔をしていた。まぁ、きっとお互い様なんだな。そう考えながら、また少し笑ってしまった。 「じゃあまたね、おやすみ」 「ああ。気を付けて」
急にひとりになると、より強く冷たく風が吹きつける気がする。けれど、次々沸き上がるように笑みが浮かんで、足取りは来る前よりずっと軽かった。 空を仰ぐと、小さく星が見えた。深く吐いた息は霧のように白く広がった。 ほくほく、ほろほろ、それがじわじわと身体中に広がっていくみたいに。先ほど貼ってもらったカイロのせいだろうか。それもあるけれど、胸の内側、全体があたたかい。やわらかくて、ちょっと苦さもあるけれど、うんとあたたかい。ハルが、ハルちゃんが嬉しそうで、良かった。こちらまで笑みがこぼれてしまうくらいに。東京の冬の夜を、そうやってひとり歩き渡っていた。
■ハレーション
キンとどこかで音がするくらいに空気は冷えきっていた。昨日より一段と寒い、冬の早い朝のこと。 日陰になった裏道を通ると、浅く吐く息さえも白いことに気が付く。凛は相変わらず少し先を歩いて、ときどき振り返っては「はやく来いよ」と軽く急かすように先を促した。別に急ぐような用事ではないのに。ためらいのない足取りでぐんぐんと歩き進んで、凛はいつもそう言う。こちらに来いと。心のどこかでは、勝手なやつだと溜め息をついているのに、それでも身体はするすると引き寄せられていく。自然と足が前へと歩を進めていく。 たとえばブラックホールや磁石みたいな、抗いようのないものなのだと思うのは容易いことだった。手繰り寄せられるのを振りほどかない、そもそもほどけないものなのだと。そんな風に考えていたこともあった気がする。けれど、あの頃から見える世界がぐんと広がって、凛とこうやって過ごすうちに、それだけではないのかもしれないと感じ始めた。 あの場所で、凛は行こうと言った。数年も前の夏のことだ。 深い色をした長いコートの裾を揺らして、小さく靴音を鳴らして、凛は眩い光の中を歩いていく。 格好が良いな、と思う。手放しに褒めるのはなんだか恥ずかしいし、悔しいから言わないけれど。それにあまり面と向かって言葉にするのも得意ではない。 それでもどうしても、たとえばこういうとき、波のように胸に押し寄せる。海辺みたいだ。ざっと寄せて引くと濡れた跡が残って、繰り返し繰り返し、どうしようもなくそこにあるものに気付かされる。そうやって確かに、この生きものに惚れているのだと気付かされる。
目的地の公園は、住んでいるアパートから歩いて十分ほどのところにある。出入りのできる開けた場所には等間隔で二本、石造りの太い車止めが植わるように並んでいて、それを凛はするりと避けて入っていった。しなやかな動きはまるで猫のようで、見えない尻尾や耳がそこにあるみたいだった。「なんか面白いもんでもあったか?」「いや、別に」口元がゆるみかけたのをごま��すためにとっさに顔ごと、視線を脇に逸らす。「なんだよ」凛は怪訝そうな、何か言いたげな表情をしたけれど、それ以上追及することはなくふたたび前を向いた。 道を歩き進むと広場に出た。ここは小さな公園やグラウンドのような一面砂色をした地面ではなく、芝生の広場になっている。遊具がない代わりにこの辺りでは一番広い敷地なので、思う存分ボール投げをしたり走り回ったりすることができる。子供たちやペットを連れた人たちが多く訪れる場所だった。 芝生といっても人工芝のように一面青々としたものではなく、薄い色をした芝生と土がまだらになっているつくりだった。見渡すと、地面がところどころ波打ったようにでこぼこしている。区によって管理され定期的に整備されているけれど、ここはずいぶん古くからある場所なのだそうだ。どこもかしこもよく使い込まれていて、人工物でさえも経年のせいでくすんで景観に馴染んでいる。 まだらで色褪せた地面も、長い時間をかけて踏み固められていると考えれば、落ち着いてもの静かな印象を受ける。手つかずの新品のものよりかは、自分にとって居心地が良くて好ましいと思えた。 広場を囲んで手前から奥に向かい、大きく輪になるようにイチョウの木々が連なって並んでいる。凛は傍近くの木の前に足を止め、見上げるなり、すげぇなと感嘆の声を漏らした。 「一面、金色だ」 立ち止まった凛の隣に並び、倣って顔を上げる。そこには確かに、すっかり金に色付いたイチョウの葉が広がっていた。冬の薄い青空の真下に、まだ真南に昇りきらない眩い光をたっぷりと受けてきらきらと、存在を主張している。 きんいろ、と凛の言葉を小さく繰り返した。心の中でもう一度唱えてみる。なんだか自分よりも凛が口にするほうが似つかわしいように思えた。 周囲に視線を巡らせると、少し離れた木々の元で、幼い子供ふたりが高い声を上げて追いかけっこをしていた。まだ幼稚園児くらいの年の頃だろうか、頭一個分くらい身の丈の異なる男の子ふたりだった。少し離れて、その父親と母親と思しき大人が並んでその様子を見守っている。だとすると、あのふたりは兄弟だろうか。大人たちの向ける眼差しはあたたかく優しげで、眩しいものを見るみたいに細められていた。 「な、あっち歩こうぜ」 凛が視線で合図して、広場を囲む遊歩道へと促した。舗装されて整備されているそこは木々に囲まれて日陰になっているところが多い。ここはいつも湿った匂いがして、鳥の鳴き声もすぐ近くから降りそそぐように聞こえてくる。よく晴れた今日はところどころ木漏れ日が差し込み、コンクリートの地面を点々と照らしていた。 休日の朝ということもあって、犬の散歩やジャージ姿でランニングに励む人も少なくなかった。向かいから来てすれ違ったり後ろから追い越されたり。そしてその度に凛に一瞥をくれる人が少なくないことにも気付かされる。 決して目立つ服を着ている���けでもなく、髪型や風貌が特に奇抜なわけでもないのに、凛はよく人目を惹く。それは地元にいたときにも薄っすらと浮かんでいた考えだけれど、一緒に人通りの多い街を歩いたときに確信した。凛はいつだって際立っていて、埋没しない。それは自分以外の誰にとってもきっとそうなのだろう。 いい場所だなぁ。凛は何でもないみたいにそう口にして、ゆったりとした足取りで隣を歩いている。木々の向こう側、走り回る子供たちを遠く見つめていたかと思えば、すぐ脇に設けられている木のベンチに視線を巡らせ、散歩中の犬を見て顔をほころばせては楽しそうに視線で追っている。公園までの道中は「はやく」と振り返って急かしたくせに、今の凛はのんびりとしていて、景色を眺めているうちに気が付けば足を止めている。こっそり振り返りながらも小さく先を歩いていると、ぽつぽつとついてきて、すうと寄せるようにしてまた隣に並ぶ。 その横顔をちらりと伺い見る。まるで何かを確かめるかのように視線をあちらこちらに向けてはいるものの、特にこれといって変わったところもなく、そこにいるのはいつも通りの凛そのものだった。 見られるという行為は、意識してしまえば、少なくとも自分にとってはあまり居心地が良いものではない。時にそれは煩わしさが伴う。凛にとってはどうなのだろう。改まって尋ねたことはないけれど、良くも悪くも凛はそれに慣れているような気がする。誰にとっても、誰に対しても。凛はいつだって中心にいるから。そう考えると苦い水を飲み下したような気持ちになって、なんだか少し面白くなかった。
遊歩道の脇につくられた水飲み場は、衛生のためだろう、周りのものよりずっと真新しかった。そこだけ浮き上がったみたいに、綺麗に背を伸ばしてそこに佇んでいた。 凛はそれを一瞥するなり近付いて、側面の蛇口を捻った。ゆるくふき出した水を見て、「お、出た」と呟いたけれど、すぐに絞って口にはしなかった。 「もっと寒くなったら、凍っちまうのかな」 「どうだろうな」 東京も、うんと冷えた朝には水溜まりが凍るし、年によっては積もるほど雪が降ることだってある。水道管だって凍る日もあるかもしれない。さすがに冬ごとに凍って壊れるようなつくりにはしていないと思うけれど。そう答えると凛は、「なるほどなぁ」と頷いて小さく笑った。 それからしばらくの間、言葉を交わすことなく歩いた。凛がまた少し先を歩いて、付かず離れずその後ろを追った。ときどき距離がひらいたことに気付くと、凛はコートの裾を揺らして振り返り、静かにそこに佇んで待っていた。 秋の頃までは天を覆うほど生い茂っていた木々の葉は、しなびた色をしてはらはらと散り始めていた。きっとあの金色のイチョウの葉も、程なくして散り落ちて枝木ばかりになってしまうのだろう。 「だいぶ日が高くなってきたな」 木々の間から大きく陽が差し込んで、少し離れたその横顔を明るく照らしている。 「あっちのほうまできらきらしてる」 中央の広場の方を指し示しながら、凛が楽しげに声を上げた。示す先に、冷えた空気が陽を受け、乱反射して光っている。 「すげぇ、綺麗」 そう言って目を細めた。 綺麗だった。息を呑んで見惚れてしまうほどに。いっぱいに注がれて満ちる光の中で、すらりと伸びる立ち姿が綺麗だった。 時折見せる熱っぽい顔とは縁遠い、冴えた空気の中で照らされた頬が白く光っていた。横顔を見ていると、なめらかで美しい線なのだとあらためて気付かされる。額から眉頭への曲線、薄く開いた唇のかたち。その鼻筋をなぞってみたい。光に溶け込むと輪郭が白くぼやけて曖昧になる。眩しそうに細めた目を瞬かせて、長い睫毛がしぱしぱ、と上下した。粒が散って、これも金色なのだと思った。 そうしているうちに、やがて凛のほうからおもむろに振り返って、近付いた。 「なぁ、ハル」少し咎めるような口調だった。「さっきからなんだよ」 ぴん、と少しだけ背筋が伸びる。身構えながらも努めて平静を装い、「なにって、何だ」と問い返した。心当たりは半分あるけれど、半分ない。 そんな態度に呆れたのか凛は小さく息をついて、言った。じっと瞳の奥を見つめながら、唇で軽く転がすみたいな声色で。 「おれのこと、ずっと見てんじゃん」 どきっと心臓が跳ねた。思わず息を呑んでしまう。目を盗んでこっそり伺い見ていたのに、気付かれていないと思っていたのに、気付かれていた。ずっと、という一言にすべてを暴かれてしまったみたいで、ひどく心を乱される。崩れかけた表情を必死で繕いながら、顔ごと大きく視線を逸らした。 「み、見てない」 「見てる」 「見てない」 「おい逃げんな。見てんだろ」 「見てないって、言ってる」 押し問答に焦れたらしく凛は、「ホントかぁ?」と疑り深く呟いて眉根を寄せてみせる。探るような眼差しが心地悪い。ずい、と覗き込むようにいっそう顔を近付けられて、身体の温度が上がったのを感じた。あからさまに視線を泳がせてしまったのが自分でも分かって、舌打ちしたくなる。 「別に何でもない。普段ここへは一人で来るから、今日は凛がいるって、思って」 だから気になって、それだけだ。言い訳にもならなかったけれど、無理矢理にそう結んでこれ以上の追及を免れようとした。 ふうん、と唇を尖らせて、凛はじとりとした視線を向け続ける。 しかしやがて諦めたのか、「ま、いいけどさ」と浅くため息をついて身を翻した。 顔が熱い。心臓がはやい。上がってしまった熱を冷まそうと、マフラーを緩めて首筋に冷気を送り込んだ。
それからしばらく歩いていくうちに遊歩道を一周して、最初の出入り口に戻ってきた。凛は足を止めると振り返り、ゆっくりと、ふたたび口を開いた。 「なぁ、ハル」今度は歩きながら歌を紡ぐみたいな、そんな調子で。 「さっきは良いっつったけどさ、おれ」 そう前置きするなり、凛はくすぐったそうに笑った。小さく喉を鳴らして、凛にしては珍しく、照れてはにかんだみたいに。 「ハルにじっと見つめられると、やっぱちょっと恥ずかしいんだよな」 なんかさ、ドキドキしちまう。 なんだよ、それ。心の中で悪態をつきながらも、瞬間、胸の内側が���摑みされたみたいにきゅうとしぼられた。そして少しだけ、ちくちくした。それは時にくるしいとさえ感じられるのに、その笑顔はずっと見ていたかった。目が離せずに、そのひとときだけ、時が止まったみたいだった。この生きものに、どうしようもなく惚れてしまっているのだった。 「あー…えっと、腹減ったなぁ。一旦家帰ろうぜ」 凛はわざとらしく声のトーンを上げ、くるりと背を向けた。 「…ああ」 少し早められた足取り、その後ろ姿に続いて歩いていく。 コンクリートの上でコートの裾が揺れている。陽がかかった部分の髪の色が明るい。視界の端にはイチョウの木々が並んできらめいていた。 「朝飯、やっぱ鯖?」 隣に並ぶなり凛がそっと訊ねてきた。 「ロースハム、ベーコン、粗挽きソーセージ」 冷蔵庫の中身を次々と列挙すると、凛はこぼれるように声を立てて笑ってみせた。整った顔をくしゃりとくずして、とても楽しそうに。つられて口元がほころんだ。 笑うと金色が弾けて眩しい。くすみのない、透明で、綺麗な色。まばたきの度に眼前に散って、瞼の裏にまで届いた。 やっぱり凛によく似ている。きっとそれは、凛そのものに似つかわしいのだった。
(2017/12/30)
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奇跡の星植物館を出発し淡路島からの海は格別です。淡路島の遊園地「淡路ワールドパークONOKORO」が見え次に向かったのは「シーアイガ海月」です。昼食にバーベキューとなります。 (淡路島海鮮浜焼��レストラン シーアイガ海月) https://www.instagram.com/p/B6K7wSsAbsq/?igshid=c5fbhxjqya27
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#hangingplants#orchid#japanesegardendesign #japaneseplantsgarden#awagishima#orchidgarden #奇跡の星の植物園#淡路島夢舞台温室 https://www.instagram.com/p/BouwxuBASI0/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=qa9nunt9nkwq
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ファンクラブ・ツアー「NO NAME? PRIVATES? #33」SPECIAL LIVEをご紹介!
ファンクラブ・ツアー「NO NAME? PRIVATES? #33」SPECIAL LIVEをご紹介! 来週金曜に受付締切が近づいてきたファンクラブ・ツアー「NO NAME? PRIVATES? #33」。 前回から引き続き、Westin淡路での開催となるFCツアーですが、今回の目玉のひとつは、なんと言っても、スペシャル・ライヴ!!! 本日は、その内容を詳しくご紹介いたします! 今回は、ツアーメンバーとしてお馴染み、Yukio Murataさんをお迎えしての、アコースティック・ライヴ! ご存知の方も多いと思いますが、Murataさんはご自身で、「Yukio’s Bar」という弾き語りのイベントを開催しており、今回は、その「Yukio’s Bar」と「Bar INORAN」の一夜限りのコラボとなっております。 それだけでも貴重なのですが… ライヴを行う会場が、またスペシャルなんです…!!! ホテルに隣接する「奇跡の星の植物館」という植物園を閉館後に貸し切り、大きな温室でライヴを行います。 実はこちら、FCスタッフが初めてWestinへ下見に行った時から、「ここでライヴが出来たら素敵だなぁ」と目論んでいた場所。 2回目にして、ようやくライヴの実現へとこぎつけました! 東京近郊にあったら、人気スポットになっていること間違いなしの大型の植物園。 上の写真が、その会場となる温室です。 おそらく今までに見たことのない雰囲気のライヴになるはずですので、絶対に見逃さないでくださいね…! ファンクラブ・ツアーお申込み締切は、来週3月29日15:00となっております。 これからご入会の方もまだまだ間に合いますので、どうぞ見逃しなく! ▼奇跡の星の植物館 http://www.kisekinohoshi.jp/ ※写真は公式Facebookより。 * * * * * * * NO NAME? PRIVATES? #33 in Awajishima 2019年5月11日(土)~12日(日) The Westin Awaji Island Resort & Conference Center https://www.westin-awaji.com/ * * * * * * * ★現在会員でない方も下記期日までのご入会・ご継続でお申込み可能です。 クレジット・コンビニ決済:3月26日(火)23:59決済完了 郵便振替:3月22日(金)消印 ご入会はこちら→ http://inoran.org/no-name/
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奇跡の星の植物園 https://www.instagram.com/p/CabQaohvV_G/?utm_medium=tumblr
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☆プロトタイプ版☆ ひとみに映る影シーズン2 第七話「復活、ワヤン不動」
☆プロトタイプ版☆ こちらは電子書籍「ひとみに映る影 シーズン2」の 無料プロトタイプ版となります。 誤字脱字等修正前のデータになりますので、あしからずご了承下さい。
���ここから買おう☆
(シーズン2あらすじ) 私はファッションモデルの紅一美。 旅番組ロケで訪れた島は怪物だらけ!? 霊能者達の除霊コンペとバッティングしちゃった! 実は私も霊感あるけど、知られたくないなあ…… なんて言っている場合じゃない。 諸悪の根源は恩師の仇、金剛有明団だったんだ! 憤怒の化身ワヤン不動が、今度はリゾートで炸裂する!!
pixiv版 (※内容は一緒です。)
དང་པོ་
ニライカナイから帰還した私達はその後、魔耶さんに呼ばれて食堂へ向かう。食堂内では五寸釘愚連隊と生き残った河童信者が集合していた。更に最奥のテーブルには、全身ボッコボコにされたスーツ姿の男。バリカンか何かで雑に剃り上げられた頭頂部を両手で抑えながら、傍らでふんぞり返る禍耶さんに怯えて震えている。 「えーと……お名前、誰さんでしたっけ」 この人は確か、河童の家をリムジンに案内していたアトム社員だ。特徴的な名前だった気はするんだけど、思い出せない。 「あっ……あっ……」 「名乗れ!」 「はひいぃぃ! アトムツアー営業部の五間擦平雄(ごますり ひらお)と申します!」 禍耶さんに凄まれ、五間擦氏は半泣きで名乗った。少なくともモノホンかチョットの方なんだろう。すると河童信者の中で一番上等そうなバッジを付けた男が席を立ち、机に手をついて私達に深々と頭を下げた。 「紅さん、志多田さん。先程は家のアホ大師が大っっっ変ご迷惑をおかけ致しました! この落とし前は我々河童の家が後日必ず付けさせて頂きます!」 「い、いえそんな……って、その声まさか、昨年のお笑いオリンピックで金メダルを総ナメしたマスク・ド・あんこう鍋さんじゃないですか! お久しぶりですね!?」 さすがお笑い界のトップ組織、河童の家だ。ていうか仕事で何度か会ったことあるのに素顔初めて見た。 「あお久しぶりっす! ただこちらの謝罪の前に、お二人に話さなきゃいけない事があるんです。ほら説明しろボケナスがッ!!」 あんこう鍋さんが五間擦氏の椅子を蹴飛ばす。 「ぎゃひぃ! ごご、ご説明さひぇて頂きますぅぅぅ!!」 五間擦氏は観念して、千里が島とこの除霊コンペに関する驚愕の事実を私達に洗いざらい暴露した。その全貌はこうだ。 千里が島では散減に縁を奪われた人間が死ぬと、『金剛の楽園』と呼ばれる何処かに飛び去ってしまうと言い伝えられている。そうなれば千里が島には人間が生きていくために必要な魂の素が枯渇し、乳幼児の生存率が激減してしまうんだ。そのため島民達は縁切り神社を建て、島外の人々を呼びこみ縁を奪って生き延びてきたのだという。 アトムグループが最初に派遣した建設会社社員も伝説に違わず祟られ、全滅。その後も幾つかの建設会社が犠牲になり、ようやく事態を重く受け止めたアトムが再開発中断を検討し始めた頃。アトムツアー社屋に幽霊が現れるという噂が囁かれ始めた。その霊は『日本で名のある霊能者達の縁を散減に献上すれば千里が島を安全に開発させてやろう』と宣うらしい。そんな奇妙な話に最初は半信半疑だった重役達も、『その霊がグループ重役会議に突如現れアトムツアーの筆頭株主を目の前で肉襦袢に変えた』事で霊の要求を承認。除霊コンペティションを行うと嘘の依頼をして、日本中から霊能者を集めたのだった。 ところが行きの飛行機で、牛久大師は袋の鼠だったにも関わらず中級サイズの散減をあっさり撃墜してしまう。その上業界ではインチキ疑惑すら噂されていた加賀繍へし子の取り巻きに散減をけしかけても、突然謎のレディース暴走族幽霊が現れて返り討ちにされてしまった。度重なる大失態に激怒した幽霊はアトムツアーイケメンライダーズを全員肉襦袢に変えて楽園へ持ち帰ってしまい、メタボ体型のため唯一見逃された五間擦氏はついに牛久大師に命乞いをする。かくして大師は大散減を退治すべく、祠の封印を剥がしたのだった。以上の話が終わると、私は五間擦氏に馬乗りになって彼の残り少ない髪の毛を引っこ抜き始めた。 「それじゃあ、大師は初めから封印を解くつもりじゃなかったんですか?」 「ぎゃあああ! 毛が毛が毛がああぁぁ!!」 あんこう鍋さんは首を横に振る。 「とんでもない。あの人は力がどうとか言うタイプじゃありません。地上波で音波芸やろうとしてNICを追放されたアホですよ? 我々はただの笑いと金が大好きなぼったくりカルトです」 「ほぎゃああぁぁ! 俺の貴重な縁があぁぁ、抜けるウゥゥーーーッ!!」 「そうだったんですね。だから『ただの関係者』って言ってたんだ……」 そういう事だったのか。全ては千里が島、アトムグループ、ひいては金剛有明団までもがグルになって仕掛けた壮大なドッキリ……いや、大量殺人計画だったんだ! 大師も斉二さんもこいつらの手の上で踊らされた挙句逝去したとわかった以上、大散減は尚更許してはおけない。 魔耶さんと禍耶さんは食堂のカウンターに登り、ハンマーを掲げる。 「あなた達。ここまでコケにされて、大散減を許せるの? 許せないわよねぇ?」 「ここにいる全員で謀反を起こしてやるわ。そこの祝女と影法師使いも協力しなさい」 禍耶さんが私達を見る。玲蘭ちゃんは数珠を持ち上げ、神人に変身した。 「全員で魔物(マジムン)退治とか……マジウケる。てか、絶対行くし」 「その肉襦袢野郎とは個人的な因縁もあるんです。是非一緒に滅ぼさせて下さい!」 「私も! さ、さすがに戦うのは無理だけど……でもでも、出来ることはいっぱい手伝うよ!」 佳奈さんもやる気満々のようだ。 「決まりね! そうしたら……」 「その作戦、私達も参加させて頂けませんか?」 食堂入口から突然割り込む声。そこに立っていたのは…… 「斉一さん!」「狸おじさん!」 死の淵から復活した後女津親子だ! 斉一さんは傷だらけで万狸ちゃんに肩を借りながらも、極彩色の細かい糸を纏い力強く微笑んでいる。入口近くの席に座り、経緯を語りだした。 「遅くなって申し訳ない。魂の三分の一が奪われたので、万狸に体を任せて、斉三と共にこの地に住まう魂を幾つか分けて貰っていました」 すると斉一さんの肩に斉三さんも現れる。 「診療所も結界を張り終え、とりあえず負傷者の安全は確保した。それと、島の魂達から一つ興味深い情報を得ました」 「聞かせて、狸ちゃん」 魔耶さんが促す。 「御戌神に関する、正しい歴史についてです」 時は遡り江戸時代。そもそも江戸幕府征服を目論んだ物の怪とは、他ならぬ金剛有明団の事だった。生まれた直後に悪霊を埋め込まれた徳松は、ゆくゆくは金剛の意のままに動く将軍に成長するよう運命付けられていたんだ。しかし将軍の息子であった彼は神職者に早急に保護され、七五三の儀式が行われる。そこから先の歴史は青木さんが説明してくれた通り。けど、この話には続きがあるらしい。 「大散減の祠などに、星型に似たシンボルを見ませんでしたか? あれは大散減の膨大な力の一部を取り込み霊能力を得るための、給電装置みたいな物です。もちろんその力を得た者は縁が失せて怪物になるのですが、当時の愚か者共はそうとは知らず、大散減を『徳川の埋蔵金』と称し挙って島に移住しました」 私達したたびが探していた徳川埋蔵金とはなんと、金剛の膨大な霊力と衆生の縁の塊、大散減の事だったんだ。ただ勿論、霊能者を志し島に近付いた者達はまんまと金剛に魂を奪われた。そこで彼らの遺族は風前の灯火だった御戌神に星型の霊符を貼り、自分達の代わりに島外の人間から縁を狩る猟犬に仕立て上げたんだ。こうして御戌神社ができ、御戌神は地中で飢え続ける大散減の手足となってせっせと人の縁を奪い続けているのだという。 「千里が島の民は元々霊能者やそれを志した者の子孫です。多少なりとも力を持つ者は多く、彼らは代々『御戌神の器』を選出し、『人工転生』を行ってきました」 斉一さんが若干小声で言う。人工転生。まだ魂が未発達の赤子に、ある特定の幽霊やそれに纏わる因子を宛てがって純度の高い『生まれ変わり』を作る事。つまり金剛が徳松に行おうとしたのと同じ所業だ。 「じゃあ、今もこの島のどこかに御戌様の生まれ変わりがいるんですか?」 佳奈さんは飲み込みが早い。 「ええ。そして御戌神は、私達が大散減に歯向かえば再び襲ってきます。だからこの戦いでは、誰かが対御戌神を引き受け……最悪、殺生しなければなりません」 「殺生……」 生きている人間を、殺す。死者を成仏させるのとは訳が違う話だ。魔耶さんは胸の釘を握りしめた。 「そのワンちゃん、なんて可哀想なの……可哀想すぎる。攻撃なんて、とてもできない」 「魔耶、今更甘えた事言ってんじゃないわよ。いくら生きてるからって、中身は三百年前に死んだバケモノよ! いい加減ラクにしてやるべきだわ」 「でもぉ禍耶、あんまりじゃない! 生まれた時から不幸な運命を課せられて、それでも人々のために戦ったのに。結局愚かな連中の道具にされて、利用され続けているのよ!」 (……!) 道具。その言葉を聞いた途端、私は心臓を握り潰されるような恐怖を覚えた。本来は衆生を救うために手に入れた力を、正反対の悪事に利用されてしまう。そして余所者から邪尊(バケモノ)と呼ばれ、恐れられるようになる……。 ―テロリストですよ。ドマル・イダムという邪尊の力を操ってチベットを支配していた、最悪の独裁宗派です― 自分の言った言葉が心に反響する。御戌神が戦いの中で見せた悲しそうな目と、ニライカナイで見たドマルの絶望的な目が日蝕のように重なる。瞳に映ったあの目は……私自身が前世で経験した地獄の、合わせ鏡だったんだ。 「……魔耶さん、禍耶さん。御戌神は、私が相手をします」 「え!?」 「正気なの!? 殺生なんて私達死者に任せておけばいいのよ! でないとあんた、殺人罪に問われるかもしれないのに……」 圧。 「ッ!?」 私は無意識に、前世から受け継がれた眼圧で総長姉妹を萎縮させた。 「……悪魔の心臓は御仏を産み、悪人の遺骨は鎮魂歌を奏でる。悪縁に操られた御戌神も、必ず菩提に転じる事が出来るはずです」 私は御戌神が誰なのか、確証を持っている。本当の『彼』は優しくて、これ以上金剛なんかの為に罪を重ねてはいけない人。たとえ孤独な境遇でも人との縁を大切にする、子犬のようにまっすぐな人なんだ。 「……そう。殺さずに解決するつもりなのね、影法師使いさん。いいわ。あなたに任せます」 魔耶さんがスレッジハンマーの先を私に突きつける。 「失敗したら承知しない。私、絶対に承知しないわよ」 私はそこに拳を当て、無言で頷いた。 こうして話し合いの結果、対大散減戦における役割分担が決定した。五寸釘愚連隊と河童の家、玲蘭ちゃんは神社で大散減本体を引きずり出し叩く。私は御戌神を探し、神社に行かれる前に説得か足止めを試みる。そして後女津家は私達が解読した暗号に沿って星型の大結界を巡り、大散減の力を放出して弱体化を図る事になった。 「志多田さん。宜しければ、お手伝いして頂けませんか?」 斉一さんが立ち上がり、佳奈さんを見る。一方佳奈さんは申し訳なさそうに目を伏せた。 「で……でも、私は……」 すると万狸ちゃんが佳奈さんの前に行く。 「……あのね。私のママね、災害で植物状態になったの。大雨で津波の警報が出て、パパが車で一生懸命高台に移動したんだけど、そこで土砂崩れに遭っちゃって」 「え、そんな……!」 「ね、普通は不幸な事故だと思うよね。でもママの両親、私のおじいちゃんとおばあちゃん……パパの事すっごく責めたんだって。『お前のせいで娘は』『お前が代わりに死ねば良かったのに』みたいに。パパの魂がバラバラに引き裂かれるぐらい、いっぱいいっぱい責めたの」 昨晩斉三さんから聞いた事故の話だ。奥さんを守れなかった上にそんな言葉をかけられた斉一さんの気持ちを想うと、自分まで胸が張り裂けそうだ。けど、奥さんのご両親が取り乱す気持ちもまたわかる。だって奥さんのお腹には、万狸ちゃんもいたのだから……。 「三つに裂けたパパ……斉一さんは、生きる屍みたいにママの為に無我夢中で働いた。斉三さんは病院のママに取り憑いたまま、何年も命を留めてた。それから、斉二さんは……一人だけ狸の里(あの世)に行って、水子になっちゃったママの娘を育て続けた」 「!」 「斉二さんはいつも言ってたの。俺は分裂した魂の、『後悔』の側面だ。天災なんて誰も悪くないのに、目を覚まさない妻を恨んでしまった。妻の両親を憎んでしまった。だからこんなダメな狸親父に万狸が似ないよう、お前をこっちで育てる事にしたんだ。って」 万狸ちゃんが背筋をシャンと伸ばし、顔を上げた。それは勇気に満ちた笑顔だった。 「だから私知ってる。佳奈ちゃんは一美ちゃんを助けようとしただけだし、ぜんぜん悪いだなんて思えない。斉二さんの役割は、完璧に成功してたんだよ」 「万狸ちゃん……」 「あっでもでも、今回は天災じゃなくて人災なんだよね? それなら金剛有明団をコッテンパンパンにしないと! 佳奈ちゃんもいっぱい悲しい思いした被害者でしょ?」 万狸ちゃんは右手を佳奈さんに差し出す。佳奈さんも顔を上げ、その手を強く握った。 「うん。金剛ぜったい許せない! 大散減の埋蔵金、一緒にばら撒いちゃお!」 その時、ホテルロビーのからくり時計から音楽が鳴り始めた。曲は民謡『ザトウムシ』。日没と大散減との対決を告げるファンファーレだ。魔耶さんは裁判官が木槌を振り下ろすように、机にハンマーを叩きつけた! 「行ぃぃくぞおおおぉぉお前らああぁぁぁ!!!」 「「「うおおぉぉーーーっ!!」」」 総員出撃! ザトウムシが鳴り響く逢魔が時の千里が島で今、日本最大の除霊戦争が勃発する!
གཉིས་པ་
大散減討伐軍は御戌神社へ、後女津親子と佳奈さんはホテルから最寄りの結界である石見沼へと向かった。さて、私も御戌神の居場所には当てがある。御戌神は日蝕の目を持つ獣。それに因んだ地名は『食虫洞』。つまり、行先は新千里が島トンネル方面だ。 薄暗いトンネル内を歩いていると、電灯に照らされた私の影が勝手に絵を描き始めた。空で輝く太陽に向かって無数の虫が冒涜的に母乳を吐く。太陽は穢れに覆われ、光を失った日蝕状態になる。闇の緞帳(どんちょう)に包まれた空は奇妙な星を孕み、大きな獣となって大地に災いをもたらす。すると地平線から血のように赤い月が昇り、星や虫を焼き殺しながら太陽に到達。太陽と重なり合うやいなや、天上天下を焼き尽くすほどの輝きを放つのだった……。 幻のような影絵劇が終わると、私はトンネルを抜けていた。目の前のコンビニは既に電気が消えている。その店舗全体に、腐ったミルクのような色のペンキで星型に線を一本足した記号が描かれている。更に接近すると、デッキブラシを持った白髪の偉丈夫が記号を消そうと悪戦苦闘しているのが見えた。 「あ、紅さん」 私に気がつき振り返った青木さんは、足下のバケツを倒して水をこぼしてしまった。彼は慌ててバケツを立て直す。 「見て下さい。誰がこんな酷い事を? こいつはコトだ」 青木さんはデッキブラシで星型の記号を擦る。でもそれは掠れすらしない。 「ブラシで擦っても? ケッタイな落書きを……っ!?」 指で直接記号に触れようとした青木さんは、直後謎の力に弾き飛ばされた。 「……」 青木さんは何かを思い出したようだ。 「紅さん。そういえば僕も、ケッタイな体験をした事が」 夕日が沈んでいき、島中の店や防災無線からはザトウムシが鳴り続ける。 「犬に吠えられ、夜中に目を覚まして。永遠に飢え続ける犬は、僕のおつむの中で、ひどく悲しい声で鳴く。それならこれは幻聴か? 犬でないなら幽霊かもだ……」 青木さんは私に背を向け、沈む夕日に引き寄せられるように歩きだした。 「早くなんとかせにゃ。犬を助けてあげなきゃ、僕までどうにかなっちまうかもだ。するとどこからか、目ん玉が潰れた双頭の毛虫がやって来て、口からミルクを吐き出した。僕はたまらず、それにむしゃぶりつく」 デッキブラシから滴った水が地面に線を引き、一緒に夕日を浴びた青木さんの影も伸びていく。 「嫌だ。もう犬にはなりたくない。きっとおっとろしい事が起きるに違いない。満月が男を狼にするみたいに、毛虫の親玉を解き放つなど……」 「青木さん」 私はその影を呼び止めた。 「この落書きは、デッキブラシじゃ落とせません」 「え?」 「これは散減に穢された縁の母乳、普通の人には見えない液体なんです」 カターン。青木さんの手からデッキブラシが落ちた途端、全てのザトウムシが鳴り止んだ。青木さんはゆっくりとこちらへ振り向く。重たい目隠れ前髪が狛犬のたてがみのように逆立ち、子犬のように輝く目は濁った穢れに覆われていく。 「グルルルル……救、済、ヲ……!」 私も胸のペンダントに取り付けたカンリンを吹いた。パゥーーー……空虚な悲鳴のような音が響く。私の体は神経線維で編まれた深紅の僧衣に包まれ、激痛と共に影が天高く燃え上がった。 「青木さん。いや、御戌神よ。私は紅の守護尊、ワヤン不動。しかし出来れば、お前とは戦いたくない」 夕日を浴びて陰る日蝕の戌神と、そこから伸びた赤い神影(ワヤン)が対峙する。 「救済セニャアアァ!」 「そうか。……ならば神影繰り(ワヤン・クリ)の時間だ!」 空の月と太陽が見下ろす今この時、地上で激突する光の神と影の明王! 穢れた色に輝く御戌神が突撃! 「グルアアァァ!」 私はティグクでそれをいなし、黒々と地面に伸びた自らの影を滑りながら後退。駐車場の車止めをバネに跳躍、傍らに描かれた邪悪な星目掛けてキョンジャクを振るった。二〇%浄化! 分解霧散した星の一片から大量の散減が噴出! 「マバアアアァァ!!」「ウバアァァァ!」 すると御戌神の首に巻かれた幾つもの頭蓋骨が共鳴。ケタケタと震えるように笑い、それに伴い御戌神も悶絶する。 「グルアァァ……ガルァァーーーッ!!」 咆哮と共に全骨射出! 頭蓋骨は穢れた光の尾を引き宙を旋回、地を這う散減共とドッキングし牙を剥く! 「がッは!」 毛虫の体を得た頭蓋骨が飛び回り、私の血肉を穿つ。しかし反撃に転じる寸前、彼らの正体を閃いた。 「さては歴代の『器』か」 この頭蓋骨らは御戌神転生の為に生贄となった、どこの誰が産んだかもわからない島民達の残滓だ。なら速やかに解放せねばなる��い! 人頭毛虫の猛攻をティグクの柄やキョンジャクで防ぎながら、ティグクに付随する旗に影炎を着火! 「お前達の悔恨を我が炎の糧とする! どおぉりゃああぁーーーーっ!!」 ティグク猛回転、憤怒の地獄大車輪だ! 飛んで火に入る人頭毛虫らはたちどころに分解霧散、私の影体に無数の苦痛と絶望と飢えを施す! 「クハァ……ッ! そうだ……それでいい。私達は仲間だ、この痛みを以て金剛に汚された因果を必ずや断ち切ってやろう! かはあぁーーーっはーーっはっはっはっはァァーーッ!!!」 苦痛が無上の瑜伽へと昇華しワヤン不動は呵呵大笑! ティグクから神経線維の熱線が伸び大車輪の火力を増強、星型記号を更に焼却する! 記号は大文字焼きの如く燃え上がり穢れ母乳と散減を大放出! 「ガウルル、グルルルル!」 押し寄せる母乳と毛虫の洪水に突っ込み喰らおうと飢えた御戌神が足掻く。だがそうはさせるものか、私の使命は彼を穢れの悪循環から救い出す事だ。 「徳川徳松ゥ!」 「!」 人の縁を奪われ、畜生道に堕ちた哀しき少年の名を呼ぶ。そして丁度目の前に飛んできた散減を灼熱の手で掴むと、轟々と燃え上がるそれを遠くへ放り投げた! 「取ってこい!」 「ガルアァァ!!」 犬の本能が刺激された御戌神は我を忘れ散減を追う! 街路樹よりも高く跳躍し口で見事キャッチ、私目掛けて猪突猛進。だがその時! 彼の本体である衆生が、青木光が意識を取り戻した! (戦いはダメだ……穢れなど!) 日蝕の目が僅かに輝きを増す。御戌神は空中で停止、咥えている散減を噛み砕いて破壊した! 「かぁははは、いい子だ徳松よ! ならば次はこれだあぁぁ!!」 私はフリスビーに見立ててキョンジャクを投擲。御戌神が尻尾を振ってハッハとそれを追いかける。キョンジャクは散減共の間をジグザグと縫い進み、その軌跡を乱暴になぞる御戌神が散減大量蹂躙! 薄汚い死屍累々で染まった軌跡はまさに彼が歩んできた畜生道の具現化だ!! 「衆生ぉぉ……済度ぉおおおぉぉぉーーーーっ!!!」 ゴシャアァン!!! ティグクを振りかぶって地面に叩きつける! 視神経色の亀裂が畜生道へと広がり御戌神の背後に到達。その瞬間ガバッと大地が割れ、那由多度に煮え滾る業火を地獄から吹き上げた! ズゴゴゴゴガガ……マグマが滾ったまま連立する巨大灯篭の如く隆起し散減大量焼却! 振り返った御戌神の目に陰る穢れも、紅の影で焼き溶かされていく。 「……クゥン……」 小さく子犬のような声を発する御戌神。私は憤怒相を収め、その隣に立つ。彼の両眼からは止めどなく饐えた涙が零れ、その度に日蝕が晴れていく。気がつけば空は殆ど薄暗い黄昏時になっていた。闇夜を迎える空、赤く燃える月と青く輝く太陽が並ぶ大地。天と地の光彩が逆転したこの瞬間、私達は互いが互いの前世の声を聞いた。 『不思議だ。あの火柱見てると、ぼくの飢えが消えてく。お不動様はどんな法力を?』 ༼ なに、特別な力ではない。あれは慈悲というものだ ༽ 『じひ』 徳松がドマルの手を握った。ドマルの目の奥に、憎しみや悲しみとは異なる熱が込み上がる。 『救済の事で?』 ༼ ……ま、その類いといえばそうか。童よ、あなたは自分を生贄にした衆生が憎いか? ༽ 徳松は首を横に振る。 『ううん、これっぽっちも。だってぼく、みんなを救済した神様なんだから』 すると今度はドマルが両手で徳松の手を包み、そのまま深々と合掌した。 ༼ なら、あなたはもう大丈夫だ。衆生との縁に飢える事は、今後二度とあるまい ༽
གསུམ་པ་
時刻は……わからないけど、日は完全に沈んだ。私も青木さんも地面に大の字で倒れ、炎上するコンビニや隆起した柱状節理まみれの駐車場を呆然と眺めている。 「……アーーー……」 ふと青木さん��、ずっと咥えっ放しだったキョンジャクを口から取り出した。それを泥まみれの白ニットで拭い、私に返そうとして……止めた。 「……洗ってからせにゃ」 「いいですよ。この後まだいっぱい戦うもん」 「大散減とも? おったまげ」 青木さんにキョンジャクを返してもらった。 「実は、まだ学生の時……友達が僕に、『彼女にしたい芸能人は?』って質問を。けど特に思いつかなくて、その時期『非常勤刑事』やってたので紅一美ちゃんと。そしたら今回、本当にしたたびさんが……これが縁ってやつなら、ちぃと申し訳ないかもだ」 「青木さんもですか」 「え?」 「私も実は、この間雑誌で『好きな男性のタイプは何ですか』って聞かれて、なんか適当に答えたんですけど……『高身長でわんこ顔な方言男子』とかそんなの」 「そりゃ……ふふっ。いやけど、僕とは全然違うイメージだったかもでしょ?」 「そうなんですよ。だから青木さんの素顔初めて見た時、キュンときたっていうより『あ、実在するとこんな感じなの!?』って思っちゃったです。……なんかすいません」 その時、遠くでズーンと地鳴りのような音がした。蜃気楼の向こうに耳をそばだてると、怒号や悲鳴のような声。どうやら敵の大将が地上に現れたようだ。 「行くので?」 「大丈夫。必ず戻ってきます」 私は重い体を立ち上げ、ティグクとキョンジャクに再び炎を纏った。そして山頂の御戌神社へ出発…… 「きゃっ!」 しようとした瞬間、何かに服の裾を掴まれたかのような感覚。転びそうになって咄嗟にティグクの柄をつく。足下を見ると、小さなエネルギー眼がピンのように私の影を地面と縫いつけている。 ༼ そうはならんだろ、小心者娘 ༽ 「ちょ、ドマル!?」 一方青木さんの方も、徳松に体を勝手に動かされ始めた。輝く両目から声がする。 『バカ! あそこまで話しといて告白しねえなど!? このボボ知らず!』 「ぼっ、ぼっ、ボボ知らずでねえ! 嘘こくなぁぁ!」 民謡の『お空で見下ろす出しゃばりな月と太陽』って、ひょっとしたら私達じゃなくてこの前世二人の方を予言してたのかも。それにしてもボボってなんだろ、南地語かな。 ༼ これだよ ༽ ドマルのエネルギー眼が炸裂し、私は何故かまた玲蘭ちゃんの童貞を殺す服に身を包んでいた。すると何故か青木さんが悶絶し始めた。 「あややっ……ちょっと、ダメ! 紅さん! そんなオチチがピチピチな……こいつはコトだ!!」 ああ、成程。ボボ知らずってそういう…… 「ってだから、私の体で検証すなーっ! ていうか、こんな事している間にも上で死闘が繰り広げられているんだ!」 ༼ だからぁ……ああもう! 何故わからないのか! ヤブユムして行けと言っているんだ、その方が生存率上がるしスマートだろ! ༽ 「あ、そういう事?」 ヤブユム。確か、固い絆で結ばれた男女の仏が合体して雌雄一体となる事で色々と超越できる、みたいな意味の仏教用語……だったはず。どうすればできるのかまではサッパリわかんないけど。 「え、えと、えと、紅さん……一美ちゃん!」 「はい……う、うん、光君!」 両前世からプレッシャーを受け、私と光君は赤面しながら唇を近付ける。 『あーもー違う! ヤブユムっていうのは……』 ༼ まーまー待て。ここは現世を生きる衆生の好きにさせてみようじゃないか ༽ そんな事言われても困る……それでも、今私と光君の想いは一つ、大散減討伐だ。うん、多分……なんとかなる! はずだ!
བཞི་པ་
所変わって御戌神社。姿を現した大散減は地中で回復してきたらしく、幾つか継ぎ目が見えるも八本足の完全体だ。十五メートルの巨体で暴れ回り、周囲一帯を蹂躙している。鳥居は倒壊、御戌塚も跡形もなく粉々に。島民達が保身の為に作り上げた生贄の祭壇は、もはや何の意味も為さない平地と化したんだ。 そんな絶望的状況にも関わらず、大散減討伐軍は果敢に戦い続ける。五寸釘愚連隊がバイクで特攻し、河童信者はカルトで培った統率力で彼女達をサポート。玲蘭ちゃんも一枚隔てた異次元から大散減を構成する無数の霊魂を解析し、虱潰しに破壊していく。ところが、 「あグッ!」 バゴォッ!! 大散減から三メガパスカル級の水圧で射出された穢れ母乳が、河童信者の一人に直撃。信者の左半身を粉砕! 禍耶さんがキュウリの改造バイクで駆けつける。 「河童信者!」 「あ、か……禍耶の姐御……。俺の、魂を……吸収……し……」 「何言ってるの、そんな事できるわけないでしょ!?」 「……大散、ぃに、縁……取られ、嫌、……。か、っぱは……キュウリ……好き……っか……ら…………」 河童信者の瞳孔が開いた。禍耶さんの唇がわなわなと痙攣する。 「河童って馬鹿ね……最後まで馬鹿だった……。貴方の命、必ず無駄にはしないわ!」 ガバッ、キュイイィィ! 息絶えて間もない河童信者の霊魂が分解霧散する前に、キュウリバイクの給油口に吸収される。ところが魔耶さんの悲鳴! 「禍耶、上ぇっ!!」 「!」 見上げると空気を読まず飛びかかってきた大散減! 咄嗟にバイクを発進できず為す術もない禍耶さんが絶望に目を瞑った、その時。 「……え?」 ……何も起こらない。禍耶さんはそっと目を開けようとする。が、直後すぐに顔を覆った。 「眩しっ! この光は……あああっ!」 頭上には朝日のように輝く青白い戌神。そしてその光の中、轟々と燃える紅の不動明王。光と影、男と女が一つになったその究極仏は、大散減を遥か彼方に吹き飛ばし悠然と口を開いた。 「月と太陽が同時に出ている、今この時……」 「瞳に映る醜き影を、憤怒の炎で滅却する」 「「救済の時間だ!!!」」 カッ! 眩い光と底知れぬ深い影が炸裂、落下中の大散減を再びスマッシュ! 「遅くなって本当にすみません。合体に手間取っちゃって……」 御戌神が放つ輝きの中で、燃える影体の私は揺らめく。するとキュウリバイクが言葉を発した。 <問題なし! だぶか登場早すぎっすよ、くたばったのはまだ俺だけです。やっちまいましょう、姐さん!> 「そうね。行くわよ河童!」 ドルルン! 輩悪苦満誕(ハイオクまんたん)のキュウリバイクが発進! 私達も共に駆け出す。 「一美ちゃん、火の準備を!」 「もう出来ているぞぉ、カハァーーーッハハハハハハァーーー!!」 ティグクが炎を噴く! 火の輪をくぐり青白い肉弾が繰り出す! 巨大サンドバッグと化した大散減にバイクの大軍が突撃するゥゥゥ!!! 「「「ボァガギャバアアアアァァアアア!!!」」」 八本足にそれぞれ付いた顔が一斉絶叫! 中空で巻き散らかされた大散減の肉片を無数の散減に変えた! 「灰燼に帰すがいい!」 シャゴン、シャゴン、バゴホオォン!! 御戌神から波状に繰り出される光と光の合間に那由多度の影炎を込め雑魚を一掃! やはりヤブユムは強い。光源がないと力を発揮出来ない私と、偽りの闇に遮られてしまっていた光君。二人が一つになる事で、永久機関にも似た法力を得る事が出来る! 大散減は地に叩きつけられるかと思いきや、まるで地盤沈下のように地中へ潜って行ってしまった。後を追えず停車した五寸釘愚連隊が舌打ちする。 「逃げやがったわ、あの毛グモ野郎」 しかし玲蘭ちゃんは不敵な笑みを浮かべた。 「大丈夫です。大散減は結界に分散した力を補充しに行ったはず。なら、今頃……」 ズドガアアァァァアン!!! 遠くで吹き上がる火柱、そして大散減のシルエット! 「イェーイ!」 呆然と見とれていた私達の後方、数分前まで鳥居があった瓦礫の上に後女津親子と佳奈さんが立っている。 「「ドッキリ大成功ー! ぽーんぽっこぽーん!」」 ぽこぽん、シャララン! 佳奈さんと万狸ちゃんが腹鼓を打ち、斉一さんが弦を爪弾く。瞬間、ドゴーーン!! 今度は彼女らの背後でも火柱が上がった! 「あのねあのね! 地図に書いてあった星の地点をよーく探したら、やっぱり御札の貼ってある祠があったの。それで佳奈ちゃんが凄いこと閃いたんだよ!」 「その名も『ショート回路作戦』! 紙に御札とぴったり同じ絵を写して、それを鏡合わせに貼り付ける。その上に私の霊力京友禅で薄く蓋をして、その上から斉一さんが大散減から力を吸収しようとする。だけど吸い上げられた大散減のエネルギーは二枚の御札の間で行ったり来たりしながら段々滞る。そうとは知らない大散減が内側から急に突進すれば……」 ドォーーン! 万狸ちゃんと佳奈さんの超常理論を実証する火柱! 「さすがです佳奈さん! ちなみに最終学歴は?」 「だからいちご保育園だってば~、この小心者ぉ!」 こんなやり取りも随分と久しぶりな気がする。さて、この後大散減は立て続けに二度爆発した。計五回爆ぜた事になる。地図上で星のシンボルを描く地点は合計六つ、そのうち一つである食虫洞のシンボルは私がコンビニで焼却したアレだろう。 「シンボルが全滅すると、奴は何処へ行くだろうか」 斉三さんが地図を睨む。すると突如地図上に青白く輝く道順が描かれた。御戌神だ。 「でっかい大散減はなるべく広い場所へ逃走を。となると、海岸沿いかもだ。東の『いねとしサンライズビーチ』はサイクリングロードで狭いから、石見沼の下にある『石見海岸』ので」 「成程……って、君はまさか!?」 「青木君!?」 そうか、みんな知らなかったんだっけ。御戌神は遠慮がちに会釈し、かき上がったたてがみの一部を下ろして目隠��前髪を作ってみせた。光君の面影を認識して皆は納得の表情を浮かべた。 「と……ともかく! ずっと地中でオネンネしてた大散減と違って、地の利はこちらにある。案内するので先回りを!」 御戌神が駆け出す! 私は彼が放つ輝きの中で水上スキーみたいに引っ張られ、五寸釘愚連隊や他の霊能者達も続く。いざ、石見海岸へ!
ལྔ་པ་
御戌神の太陽の両眼は、前髪によるランプシェード効果が付与されて更に広範囲を照らせるようになった。石見沼に到着した時点で海岸の様子がはっきり見える。まずいことに、こんな時に限って海岸に島民が集まっている!? 「おいガキ共、ボートを降りろ! 早く避難所へ!」 「黙れ! こんな島のどこに安全が!? 俺達は内地へおさらばだ!」 会話から察するに、中学生位の子達が島を脱出しようと試みるのを大人達が引き止めているようだ。ところが間髪入れず陸側から迫る地響き! 危ない! 「救済せにゃ!」 石見の崖を御戌神が飛んだ! 私は光の中で身構える。着地すると同時に目の前の���が隆起、ザボオオォォン!! 大散減出現! 「かははは、一足遅いわ!」 ズカアァァン!!! 出会い頭に強烈なティグクの一撃! 吹き飛んだ大散減は沿岸道路を破壊し民家二棟に叩きつけられた。建造物損壊と追い越し禁止線通過でダブル罪業加点! 間一髪巻き込まれずに済んだ島民達がどよめく。 「御戌様?」 「御戌様が子供達を救済したので!?」 「それより御戌様の影に映ってる火ダルマは一体!?」 その問いに、陸側から聞き覚えのある声が答える。 「ご先祖様さ!」 ブオォォン! 高級バイクに似つかわしくない凶悪なエンジン音を吹かして現れたのは加賀繍さんだ! 何故かアサッテの方向に数珠を投げ、私の正体を堂々と宣言する。 「御戌神がいくら縁切りの神だって、家族の縁は簡単に切れやしないんだ。徳川徳松を一番気にかけてたご先祖様が仏様になって、祟りを鎮めるんだよ!」 「徳松様を気にかけてた、ご先祖様……」 「まさか、将軍様など!?」 「「「徳川綱吉将軍!!」」」 私は暴れん坊な将軍様の幽霊という事になってしまった。だぶか吉宗さんじゃないけど。すると加賀繍さんの紙一重隣で大散減が復帰! 「マバゥウゥゥゥゥウウウ!!!」 神社にいた時よりも甲高い大散減の鳴き声。消耗している証拠だろう。脚も既に残り五本、ラストスパートだ! 「畳み掛けるぞ夜露死苦ッ!」 スクラムを組むように愚連隊が全方位から大散減へ突進、総長姉妹のハンマーで右前脚破壊! 「ぽんぽこぉーーー……ドロップ!!」 身動きの取れなくなった大散減に大かむろが垂直落下、左中央二脚粉砕! 「「「大師の敵ーーーっ!」」」 微弱ながら霊力を持つ河童信者達が集団投石、既に千切れかけていた左後脚切断! 「くすけー、マジムン!」 大散減の内側から玲蘭ちゃんの声。するうち黄色い閃光を放って大散減はメルトダウン! 全ての脚が落ち、最後の本体が不格好な蓮根と化した直後……地面に散らばる脚の一本の顔に、ギョロギョロと蠢く目が現れた。光君の話を思い出す。 ―八本足にそれぞれ顔がついてて、そのうち本物の顔を見つけて潰さないと死なない怪物で!― 「そうか、あっちが真の本体!」 私と光君が同時に動く! また地中に逃げようと飛び上がった大散減本体に光と影は先回りし、メロン格子状の包囲網を組んだ! 絶縁怪虫大散減、今こそお前をこの世からエンガチョしてくれるわあああああああ!! 「そこだーーーッ!! ワヤン不動ーーー!!」 「やっちゃえーーーッ!」「御戌様ーーーッ!」 「「「ワヤン不動オォーーーーーッ!!!」」」 「どおおぉぉるあぁああぁぁぁーーーーーー!!!!」 シャガンッ! 突如大量のハロゲンランプを一斉に焚いたかのように、世界が白一色の静寂に染まる。存在するものは影である私と、光に拒絶された大散減のみ。ティグクを掲げた私の両腕が夕陽を浴びた影の如く伸び、背中で燃える炎に怒れる恩師の馬頭観音相が浮かんだ時……大散減は断罪される! 「世尊妙相具我今重問彼仏子何因縁名為観世音具足妙相尊偈答無盡意汝聴観音行善応諸方所弘誓深如海歴劫不思議侍多千億仏発大清浄願我為汝略説聞名及見身心念不空過能滅諸有苦!」 仏道とは無縁の怪獣よ、己の業に叩き斬られながら私の観音行を聞け! 燃える馬頭観音と彼の骨であるティグクを仰げ! その苦痛から解放されたくば、海よりも深き意志で清浄を願う聖人の名を私がお前に文字通り刻みつけてやる! 「仮使興害意推落大火坑念彼観音力火坑変成池或漂流巨海龍魚諸鬼難念彼観音力波浪不能没或在須弥峰為人所推堕念彼観音力如日虚空住或被悪人逐堕落金剛山念彼観音力不能損一毛!!」 たとえ金剛の悪意により火口へ落とされようと、心に観音力を念ずれば火もまた涼し。苦難の海でどんな怪物と対峙しても決して沈むものか! 須弥山から突き落とされようが、金剛を邪道に蹴落とされようが、観音力は不屈だ! 「或値怨賊繞各執刀加害念彼観音力咸即起慈心或遭王難苦臨刑欲寿終念彼観音力刀尋段段壊或囚禁枷鎖手足被杻械念彼観音力釈然得解脱呪詛諸毒薬所欲害身者念彼観音力還著於本人或遇悪羅刹毒龍諸鬼等念彼観音力時悉不敢害!!」 お前達に歪められた衆生の理は全て正してくれる! 金剛有明団がどんなに強大でも、和尚様や私の魂は決して滅びぬ。磔にされていた抜苦与楽の化身は解放され、悪鬼羅刹四苦八苦を燃やす憤怒の化身として生まれ変わったんだ! 「若悪獣囲繞利牙爪可怖念彼観音力疾走無辺方蚖蛇及蝮蝎気毒煙火燃念彼観音力尋声自回去雲雷鼓掣電降雹澍大雨念彼観音力応時得消散衆生被困厄無量苦逼身観音妙智力能救世間苦!!!」 獣よ、この力を畏れろ。毒煙を吐く外道よ霧散しろ! 雷や雹が如く降り注ぐお前達の呪いから全ての衆生を救済してみせよう! 「具足神通力廣修智方便十方諸国土無刹不現身種種諸悪趣地獄鬼畜生生老病死苦以漸悉令滅真観清浄観広大智慧観悲観及慈観常願常瞻仰無垢清浄光慧日破諸闇能伏災風火普明照世間ッ!!!」 どこへ逃げても無駄だ、何度生まれ変わってでも憤怒の化身は蘇るだろう! お前達のいかなる鬼畜的所業も潰えるんだ。瞳に映る慈悲深き菩薩、そして汚れなき聖なる光と共に偽りの闇を葬り去る! 「悲体戒雷震慈意妙大雲澍甘露法雨滅除煩悩燄諍訟経官処怖畏軍陣中念彼観音力衆怨悉退散妙音観世音梵音海潮音勝彼世間音是故須常念念念勿生疑観世音浄聖於苦悩死厄能為作依怙具一切功徳慈眼視衆生福聚海無量是故応頂……」 雷雲の如き慈悲が君臨し、雑音をかき消す潮騒の如き観音力で全てを救うんだ。目の前で粉微塵と化した大散減よ、盲目の哀れな座頭虫よ、私はお前をも苦しみなく逝去させてみせる。 「……礼ィィィーーーーーッ!!!」 ダカアアアアァァアアン!!!! 光が飛散した夜空の下。呪われた気枯地、千里が島を大いなる光と影の化身が無量の炎で叩き割った。その背後で滅んだ醜き怪獣は、業一つない純粋な粒子となって分解霧散。それはこの地に新たな魂が生まれるための糧となり、やがて衆生に縁を育むだろう。 時は亥の刻、石見海岸。ここ千里が島で縁が結ばれた全ての仲間達が勝利に湧き、歓喜と安堵に包まれた。その騒ぎに乗じて私と光君は、今度こそ人目も憚らず唇を重ね合った。
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土産物店に入りました。淡路島は玉葱が有名で玉葱のスープを試飲しました。 (奇跡の星の植物園) https://www.instagram.com/p/B6KzVxaAo1K/?igshid=yciz8efmn3aa
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