#夢の中でも通話してたんだけど 俺が車でど���か旅してて(運転してる時点で現実味がない)
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ハッ すみちゃんにおはよう+よしよししてもらったと思ったらめっちゃ夢だった
#㊗‼️夢に見ました……☺️#夢の中でも通話してたんだけど 俺が車でどこか旅してて(運転してる時点で現実味がない)#知らない所で泊まって起きたら「れいくんおはよう、8時だよ〜 まだおねむだね〜よしよし」って……言われてました……#何か言おうとしてもウトウトしてて言えなくて、また寝落ちそう……って感じで起きた#昼寝中の夢の中でも寝る男#♡
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ダ-ティ・松本 不健全マンガ家歴30年[-α]史 ●はじめに この文章は同人誌「FUCK OFF!7」において書かれたものをベースにして逐次増補改定を加えていき、いずれ歴史の証言として、[というほど大袈裟なものでは無いが…]一冊の本にまとめたいという意図のもと、近年どんどん脳が劣化していくダ-松の覚え書きとしても使用の予定。事実関係は間違いに気付き次第 訂正。同人誌発表時のものも今回自粛配慮して、実名、エピソード等を削除した箇所有り。有り難い事に某出版社よりすでに出版打診があったがまだまだその時期ではない、マンガを描く事が苦痛になったら活字の方も気分転換にいいかも…。 /*マークは今後書き加える予定のメモと心得たし。 ●前史/修行時代・1970 さいとうプロの短くて濃い日々…… 19��8年に上京。数カ月後東京は戦場に。熱い季節の始まりだった。 2年後親元を飛び出し友人のアパートに転がり込む。場所は渋谷から井の頭線で駒場東大駅下車、徒歩5分。地図で見ると現在の駒場公園あたり。昼間でも裸電球を付けなければ真っ暗という馬小屋のような部屋。数メートル先には当時の建設大臣の豪邸が…。前を通りかかるだびに警備のおまわりがじろり。 いつまでも友人に迷惑もかけられないのでとりあえずアシスタントでも…と手元にあったマンガ誌をひっくり返し募集を探す。幸いさいとうプロと横山まさみち氏のところでアシ募集があり両方応募。どっちか一つ通れば…と思っていたら何と両方受かってしまい、双方に条件を聞く。当時高円寺 のアパート、風呂無し4畳半の部屋で相場12000円の時代。前者一ケ月の給料10000円、後者20000円との事。給料の方がボロアパートの家賃より安いとは…!どう考えても前者は食う方法がないと判断し、後者さいとうプロへ入社。 ここに居たのはたったの半年に過ぎないけれど今思えばこれだけで本が一冊描ける位の濃い半年だった。しかしこのあと2X年分も書かねばならないことを思えば今回はいくつかのエピソードを書くだけに留めよう。 ダー松が入った時は小池一夫氏[クビ?]、神田たけ志氏や神江里見氏、きしもとのり氏[現・松文館社長]等と入れ替わりの時で、きし氏の女遊びの凄さと神江氏の絵のうまさは伝説になっていた。現在「亀有」「ゴルゴ」が歴代単行本の巻数の多いベスト1、2位だが[ともに100巻を越えた]、3位は神江氏の「弐十手物語」[70巻以上]だという事は知ってる人は少ないだろう。 当時の制作部は、さいとうたかを[以下ゴリ]をトップに石川班[ゴルゴ13、影狩り]、甲良班[バロム1]、竹本班[シュガー、どぶ等]の3つに分かれ、それぞれのキャップにサブ・チーフが一人づついて、ヒラが2~6人いるというシステムで総16名。独立し現在も活躍中の叶精作、小山ゆう、やまさき拓味の3名がそれぞれの班のサブ・チーフ。ダー松は石川班で左��1メートル以内に叶氏とゴリにはさまれ、のんびり出来ない状態で、はなはだ窮屈。叶氏はほとんどマンガ家になりたいとも思った事のなかった人で、設計事務所みたいなところで図面を引いていた人がなぜマンガプロダクションに来たのか不思議だった。格別マンガ好きというわけでもなかったせいか現在まで全ての作品が原作もので、オリジナルは一本もないのはそのせい?祭りなどの人がうじゃうじゃ出てくる群集場面が得意。 やまさき氏は大の競馬好き、現在競馬マンガを多く描くのは当時からの趣味が生きたというべきか。もう一つの趣味である風俗についてはここでは書くのは差し控えよう。小山氏は後日ここの事務の女性と結婚するが、当時はつき合っているとは誰も知らず、スタッフの一人がやめる時その女性に交際を申し込んだら、茶店に呼び出されて小山氏からと凄まれたと聞いたが嘘か本当かは不明。 ここでの生活は新入り[ダー松を含めて3名]は朝の9時前に会社に行き、タイムカードを押し、前日のごみをひとまとめして外に出し、トイレ掃除をして、16人分のお茶を2Fで入れて制作部のある3Fへの狭い階段をふらふら昇り、机ごとに置いて歩き、終れば、一息ついて買っておいたパンと牛乳を3分で食べて、やっとそれから仕事。しかし新入りの3名の内1人折茂は常に遅刻なのでいつも佐藤と2人でやっていた。佐藤も遅れる時はダー松1人で。辞めてから10年位、16人分のお茶を持って階段をふらふら歩きお盆をひっくり返す夢をよく見たものだが、実際ひっくり返したのは折茂と佐藤の2人で、よく茶碗を割っていた。 たまには夕方6時には帰れるが、普通は夜10時までで、アパートに帰って銭湯に行けばもう明日にそなえて寝る時刻、このくり返しの日々。週1日は徹夜で明け方に帰り、その時は当日の昼12時出勤。休日は日曜日のみで忙しい時はそれも取り消し。つまり休みは月3日。[これで給料2万円!]そんな日々の繰り返し。 夕方までは皆和気あいあいと仕事していたが、ゴリが夕方6時頃に「おはようさん」と現れると、全員無駄口がたたけなくなり、仕事場はシーンと静まり返り、以下その日が終わるまでは疲れる時間がただひたすら流れるのみ。 当時石川班は「ゴルゴ13」と「影狩り」を描いていたがゴリは主人公の顔と擬音のみ。マジックで最後に入れる擬音はさすがに入れる位置がうまいと感心。ゴルゴの顔��アルバムに大小取り混ぜてコピーがとってあり、忙しい時は叶氏がピンセットで身体に合わせて「これが合うかな~」といった感じで貼り付けていた。 その頃すでに「ゴルゴ」は近々終わると噂されていたが、現在もまだ続いているとは感嘆ものだ。 ゴリと石川氏が「ゴルゴ」の最終回の終わり方を話しているのを聞いたら、何ともつまらない終わり方。しかしあれから20年以上も経つ事だし、きっともっといい終わり方を考えてあるだろうなと思っていたら、先日TVで本人が最初から考えてある終わり方だと言うのを聞き、がっくり。企業秘密だろうから書かないが、作品の最初の方に伏線が数度出ているのでわかる人にはすぐわかる筈。 辞めた小池一夫氏とさいとうプロに何があったかは知らないが、漏れ聞く話では結構もめ事があったみたいだ。 「子連れ狼」で「ゴルゴ13」と同じ設定の回があった時、「小池のガキャー訴えたるー!」とゴリが吠えていたものだが、結局たち消え。さいとうプロ作品で脚本を書いた本人が辞めた後、他の作品で同趣向の作品を書いても著作権は脚本を書いた原作者のものだと思うがどんなものだろう。その回のタイトルは忘れたが、ある場所に居合わせた人々が武器を持った集団の人質となり、その中に素人だと思われていた主人公、実は殺しのプロフェッショナルがいて、次々とその集団を殺していく、といったプロットで、ミッキー・スピレーンの短編に同じような作品があり、本当に訴えていたら恥をかいたと思うが・・・。 そういえば事務の方には山本又一郎という男がいたが、後年映画プロデューサーとして 「ベル薔薇」や「太陽を盗んだ男」等を創る事になるが、この野郎が生意気な男で当時皆に対して10歳は年上、といった感じの振る舞いだったが後日俺と一つしか年が離れてなかった事を知り、そんな若造だったとは、と皆怒ったものだ。以来奴の事を「マタさん」から「クソマタ」と呼ぶようになる。 さて半年後に先輩たちが積もり積もった不満を爆発させる反乱事件が勃発し、2年は居るつもりでいたここでの生活も、辞めるか残るかの選択を迫られる。残ればさいとうプロの現体制を認める事となるので、ダー松も退社。 しかし反乱グループとは別行動をとって一人だけの肉体労働のアルバイター生活へ突入。超ヘビーな労働の製氷工場、人使いの荒い印刷所、命綱もない高所の足場で働く建設現場等々。トラックの助手をしていた時は運ちゃんが「本宮ひろしって知ってるか?うちの息子の友達でさぁ、昔、おっちゃんメシ食わしてくれーなんて言って��たもんだが、今は偉くなっちゃってさー、自分のビル建てたらしいよ。赤木圭一郎みたいにいい男なんだ。」とうれしそうに話してくれたが、運ちゃんには悪いがそいつは今も昔も一番嫌いなマンガ家なんだ。あの権力志向はどうにかならんか。天下を取る話ばかりだもんなぁ。 ところで後日、単行本の解説で高取英が「さいとうたかをのヤローぶっ殺してやる!」とダー松が言ったなどと書いているが、小生はそんな危ない事言った覚えはないのでここできっちり訂正しておきます。 「会社に火ィつけてやる!」位は言ったかも・・・[嘘] 。 悪口は言っても別に怨みなど無い。ところでアシスタントとしてのダー松は無遅刻、無欠勤以外は無能なアシだったと反省しきり。理想的なアシスタントとはどんなものか、それはまた別の機会に。 *入社試験はどん���事を? *さいとうプロには当時ほとんどろくな資料は無かった? *ハイジャックの回の飛行機内部の絵は、映画「大空港」を社内カメラマンが映画館で写してきたものをもとに描く。 *当時のトーンは印刷が裏面にしてあり上からカッターでけずったり出来ない。 *トーンの種類は網トーンが数種、それ以外はほんの3、4種類位しかなかった。 *仕事中のB.G.M.はアシの一人が加山雄三ばかりかけるので大ひんしゅく。好評だったのは広沢虎造の浪曲「次郎長三国志」、初代桂春団次の落語。眠気もふっとぶ位笑えた。 ダ-松が岡林信康の「見る前に跳べ」をかけてるとゴリは「何じゃー!この歌は!」と怒る。名曲「私たちの望むものは」はこの男には理解不能。 ●1 9 7 1 ~ 1 9 7 4 持 ち 込 み & 実 話 雑 誌 時 代 当時は青年劇画誌全盛時代で、もともと望月三起也氏や園田光慶氏のファンで活劇志向が強く、 主にアクションもののマンガを描いて持ち込みに行っていた。今のようにマンガ雑誌が溢れかえって、山のようにマンガ出版社がある時代ではなく、数社廻るともう行くところがない、という状態で大手では「ビッグコミック」があっただけで 「モーニング」も「スピリッツ」も「ヤン・ジャン」も当然まだない。テーマを盛り込んだ作品を持って行くと編集から「君ィ、うちは商売でやっているんだからねぇ」と言われ、アクションに徹した作品を持って行くと「君ぃ、ただおもしろいだけじゃあねぇ」と言われ 「おい、おっさん!どっちなんだ?」とむかつく事多し。この辺の事は山のように書く事があるが、有りすぎるのでパス。 *そのうち書く事にする��� ただ金属バットで頭を��チ割って脳みそをぶちまけてやりたいような奴が何人もいたのは事実。今年[’97]「モーニング」に持ち込みに行って、断られた奴が何万回もいやがらせの電話をかけて逮捕された事件があったが、そのうちトカレフを持って殴り込みに行く奴が出てくるとおもしろい。出版社も武装して大銃撃戦だぁ!などと馬鹿な事書いてどうする!とにかく持ち込みにはいい思い出が何もない。そんな中、数本だけ載った作品は渡哲也の映画「無頼」シリーズの人斬り五郎みたいな主人公がドスで斬り合う現代やくざもの[この頃の渡哲也は最高!]、ドン・シーゲルの「殺人者たち」みたいな二人組の殺し屋を主人公にした『汚れたジャングル』、陽水の「傘がない」が好きだという編集さんの出したテーマで車泥棒とブラックパンサーの闘士とのロード・ムービー風『グッバイ・ブラザー』、拳銃セールスマンを主人公にした『ザ・セールスマン』、等々10本ちょい位。 さてその頃並行してまだエロマンガ専門誌といえるようなものがなかったような時代で、実話雑誌という写真と記事ページからなる雑誌に4~10ページ位を雑誌の味付けとして描かせてもらう。当時、お手本になるようなエロマンガなど皆無で、エロ写真雑誌を古本屋で買ってきてからみのポーズを模写。マンガで裸を描く事はほとんど初めてで、これがなかなか難しいのだがエロシーンを描くのは結構楽しい。当時出版社に原稿持って行き帰りにグラフ誌をどっともらって帰るのが楽しみだった。SM雑誌の写真ページも参考になる。なお当時のペンネームは編集部が適当につけた池田達彦、上高地源太[この名前はいけてます。また使いたい]等。その数年後、逆にマンガが主で記事が味付けというエロマンガ誌が続々と創刊される。 *さいとうプロをやめたあと編集や知人に頼まれて数人のマンガ家の所へ手伝いに行く。秋田書店「漫画ホット」で『ジェノサイド』を連載中の峰岸とおる氏の所へ行き、仕事が終わったあとまだ売れてない頃の榊まさる氏も交え酒を飲む/川崎のぼる大先生のところへ数日だけ/3000円たこ部屋/小山ゆうオリオンププロ *当時のアルバイトは記憶によると時給150~200円位/大日本印刷市ヶ谷駐屯地/坂/ *一食100円/どんなに貧しい漫画家もみかん箱の上で書くやつはいない/TV萩原サムデイ *ろくでなし編集者 ●1 9 7 5 ~ エ ロ マ ン ガ 誌 時 代 に 突 入 実話誌は意外とエロは抑え目で描くように口すっぱく言われていたのだが、以前活劇っぽい作品を描かせてもらってたが潰れてしまった出版社にいた児島さんが編集する「漫画ダイナマイト」で打合せも何にもなしに好きに描かせてもらい、ここでエロマンガ家としての才能[?]が開花する。描いてて実に楽しく眠る時間がもったいない位で、人に睡眠時間が必要な事を恨んだ程。出来る事なら一日中休まず描いていたい気分で完全にはまってしまう。 初の連載作品「屠殺人シリーズ」はこの頃から/『漫画ポポ』。中島史雄氏は大学時代にこの作品を見ていたとの事で、トレンチコートにドクター・ペッパー模様のサイレンサーつきマグナム銃で遊戯人・竜崎一也が犯しまくり殺しまくり、サディスト、マゾヒスト、殺人狂、まともな奴が一人も出てこない性と暴力の祭典。ちなみにタイトルページは描かないでいい、との事でどうするのかと思っていたら編集部が中のワンカットを拡大してタイトルページを創り、1ページぶんの原稿料をけちるというせこいやり方だった。けちるといえば、原稿の1/3にCMを入れる際、原稿料を1/3削った会社もあり。 ●1 9 7 6 ~ 後に発禁仲間となる高取英と出逢い、『長編コミック劇場』で「ウルフガイ」みたいのをやろうと、怒りに震えると黒豹に変身してしまう異常体質の主人公を設定し、獣姦のイメージで「性猟鬼」なるエロマンガをスタート!しかしその号で雑誌が潰れる。この路線は今でもいけそうな気がするがどんなものだろう。 この頃の珍品に「快楽痴態公園」がある。タイガースに11-0とワンサイドで打ちまくられ、怒ったジャイアンツファンのおっさんが公園でデート中の女をずこずこに犯りまくり、その間にジャイアンツは9回裏に12-11とゲームをひっくり返してしまうのである!その時のジャイアンツの監督はもちろんミスター長嶋、先発堀内、打者は柴田、土井、高田、王、張本等々がいる。タイガース監督は吉田、ピッチャー江本、キャッチャーフライを落球する田淵、そしてあの川藤もいる。解説は牧野…… ●1 9 7 7 ~ 上記2作品を含む初の単行本「肉の奴隷人形」が久保書店より発行。後にリングスの会場で逢った佐竹雅昭氏はこの本が一番好きとの事だった。 「闇の淫虐師」もこの年スタート。一話完結でバレリーナ、バトンガール等々、毎回いろんな女たちをダッチワイフのごとくいたぶりまくるフェチマンガとして1979年まで続け、単行本は「堕天使女王」「裂かれた花嫁」「エロスの狂宴」「陶酔への誘い」「終りなき闇の宴」の全5巻。ちなみに今年「闇の淫虐師’97」を『��ミック・ピクシィ』にて発表。いつか『闇の淫虐師・ベスト選集』でも出したいところ。 [’98に実現、’99には続刊が出る] ●1 9 7 8 ~ 久保書店より第2弾の単行本「狂った微惑人形」。収録作品の「犯された白鳥」は持ち込み時代に描いた初のバレリーナもの。結構気に入っていた作品なのに、後年再録の際、印刷所の掃除のおばさんが捨ててしまい、この世にもはや存在しない不幸な子となる。[’99に宝島スピード・ブックに本より直接スキャンして収録] エロ、グロ、ナンセンスの会心作「恍惚下着専科」を発表。サン出版より同名の単行本発行。また同出版より「コミック・ペット/堕天使画集」として今までの作品を続々単行本化。全10巻位。これは今でも古本屋で流通しているとの事で、まだまだ世間様のお役にたっているらしい。 この年、「堕天使たちの狂宴」を描いていた『漫画エロジェニカ』が発禁処分、来年でもう20年目となる事だし、当時の人たちと集まってその大放談を収録し「発禁20周年特集号」でも創ってみようかと計画中。さて当時の秘話としてもう時効だろうから書いてみるけど、前述の『堕天使画集』に「堕天使たちの狂宴」は収録される事となり、当然修正をガンガン入れて出版されるものと覚悟していたら、米国から帰国後出来上がった本を見ると発禁になった状態のまま再録されている!以下桜木編集長との会話 ダ/いや~、いい度胸してますね。 編/だって修正してあるじゃない。 ダ/その修正状態で発禁になったんですよ 編/・・・・・ ダ/・・・・ 以下どんな会話が続いたのか失念…… それにしてもサドの「悪徳の栄え」の翻訳本は発禁後20年以上して復刻されたけれど、「堕天使たちの狂宴」は半年もしない内に単行本になっていたとはエロ本業界とは何といいかげんな世界!しかし作品そのものは、今見るとリメイクする気にもならないどうという事もない可愛い作品で、結局あれもあの時代の姑息な政治のひとかけらに過ぎなかったのだろう。いい点があるとしたら一つだけ、それまでのエロマンガになかった瞳パッチリの少女マンガ的ヒロインを登場させた事位か。今の美少女エロマンガは本家の少女マンガもかくや!という位眼が大きいが当時としては画期的だったかも。 ●1 9 7 9 ~ この年の「淫花蝶の舞踏」は「堕天使たちの狂宴」よりずっといい/『漫画ソフト』。今年出た「別冊宝島/日本一のマンガを探せ!」でベスト2000のマンガがセレクトされているが、ダー松の作品の中ではこの作品が選ばれている。教師と生徒、二人の女たちが様々な男たちの手によってに次々ともてあそばれ、闇の世界を転々として再び巡り会う時、女たちは蝶と化し水平線の彼方に飛び去り、男たちは殺し合い血の海の中で屍と化す。ダー松作品にはこのように男根が女陰の海に飲み込まれてに負けるパターンが多い。[性狩人、遊戯の森の妖精、美少女たちの宴、人魚のたわむれ・・等々] この年からスタートの「性狩人たち」シリーズ[劇画悦楽号]はバレエ、バイオレンス、SEXの三要素がうまくからみあい、それぞれが頂点まで達する幸福な神話的作品だ。ここから派生した路線も多く、美少年路線は’83の「聖少女黙示録」へ。身体障害者路線は’80の「遊戯の森の妖精」、’84からの「美姉妹肉煉獄」へと繋がる。’81の最終話「ハルマゲドンの戦い」ではせりふなしで24ページ全てが大殺戮シーンという回もあり、中でも一度やりたかった見開きで銃撃戦の擬音のみという事も実現。こんな事がエロマンガ誌で許される時代だった。ちなみにこの回は[OKコラルの決闘・100周年記念]だが、何の意味もない。単行本は最初サン出版より、その後久保書店より「白鳥の飛翔」「少女飼育篇」「ヘラクレスを撃て!」「眼球愛」「海の女神」の全5刊。現在入手出来るのは後の3刊のみ。[「海の女神」も最近在庫切れ] この年出た「人魚のたわむれ」の表題作は性器に{たこ}を挿入するカットを見た編集長が「・・・[沈黙]・・・頭おかしいんじゃ・・ブツブツ・・気違い・・・ブツブツ・・・」と呆れてつぶやいていたのを記憶している。たこソーニューは今年出た「夜顔武闘伝」で久しぶりに再現。なおこの作品は’83にマンガと実写を噛み合せたビデオの珍品となる。水中スローモーションファックがなかなかよい。 ●1 9 8 0 ~ なぜか「JUNE」の増刊として作品集「美少女たちの宴」がサン出版より出版され、その短編集をもとに脚本化し日活で映画が創られる事となる。[「花の応援団」を当てたこの映画の企画者・成田氏は日活退社後「桜の園」等を創る。]その際、初めて映画撮影所を見学し、せこいセットがスクリーン上ではきちんとした絵になってるのを見て映画のマジックに感心。タイトルはなぜか「性狩人」で、’96にビデオ化された。監督・池田敏春のデビュー第2作となり現在までコンスタントに作品を発表しているが、出来のいい作品も多いのになぜか代表作がない。初期の「人魚伝説」が一番いいか。 この映画に合わせて「美少女たちの宴」を2~3回のつもりで「漫画ラブラブ」で描き出すがどんどん話がふくらみ、おまけに描いてる出版社が潰れたり、雑誌が潰れたりで雑誌を転々とし条例による警告の嵐がきた「漫画大飯店」を経て、「漫画ハンター」誌上で完結したのは’83になる。この作品でクリトリスを手術してペニスのように巨大化させるという人体改造ものを初めて描く。 この年の「遊戯の森の妖精」���身体障害者いじめ鬼畜路線の第2弾!森の中の別荘に乱入したろくでなしの二人組が精薄の少女の両親達を虐殺し、暴行の限りをつくすむちゃくちゃな作品で、雷鳴の中、少女の性器に男達のペニスが2本同時に挿入されるシーンは圧巻!しかしこのとんでもない男達も少女の性のエネルギーに飲み込まれ、朽ち果てていく・・・。 ●1 9 8 1 ~ 美少女マンガ誌のはしり「レモン・ピープル」誌創刊。そこで描いたのが「白鳥の湖」。虚構の世界のヒロインを犯すというコンセプトは、アニメやゲームのヒロインをずこずこにするという今の同人誌のコンセプトと同じかも。バレエ「白鳥の湖」において悪魔に捕われたオデット姫が白鳥の姿に変えられる前に何にもされてない筈がないというモチーフにより生まれたこの作品は、悪魔に男根を植えつけられたヒロインが命じられるまま���次々と妖精を犯して歩き悪魔の娘となるまでを描くが、あまり成功したとは言えない。ただ人形サイズの妖精をしゃぶりまくり淫核で犯すアイデアは他に「少女破壊幻想」で一回やっただけなのでそろそろもう一度やってみたいところ。「ダーティ松本の白雪姫」はその逆をいき、犯す方を小さくした作品で7人の小人が白雪姫の性器の中にはいり、しゃぶったり、処女膜を食べたり、と乱暴狼藉![ちなみに両者をでかくしたのが同人誌「FUCK YOU!3」の「ゴジラVSジュピター」]この童話シリーズは意外と好評で続いて「ダーティ松本の赤い靴」を上記の単行本に描き下ろして収録。童話は結構残酷なものが多く、この作品も切られた足だけが荒野を踊りながら去って行くラストは原作通り。 *近年童話ブームだがこの頃もっと描いておけば「こんなに危ない童話」として刊行出来たのにとくやまれる。 「2001年快楽の旅」もこの本に収録。快楽マシーンを逆にレイプしてしまう、珍しく映画「2001年宇宙の旅」風のSF作品。 掲載誌を決めずに出来る限り多くのマンガ誌で描こうというコンセプトで始めたのがこの年スタートした「怪人サドラン博士」シリーズ。「不死蝶」シリーズや「美少女たちの宴」シリーズの中にも乱入し、「漫画ハンター」最終号では地球をぶっ壊して[その際地球は絶頂の喘ぎ声をあげ昇天する!]他の惑星へ行ってしまう。今のところ10誌位に登場。いつかこのサドラン・シリーズだけ集めて単行本化したいところ。ちなみに「サド」と「乱歩」を足して「サドラン博士」と命名。作者の分身と言っていい。 [後年、「魔界の怪人」として全作品を収録して刊行、04年現在品切れ中] この年描いて’82の単行本『妖精たちの宴』に収録の「とけていく・・」はレズの女たちが愛戯の果てに、肉体が溶けて一匹の軟体動物と化す、タイトルも内容も奇妙な作品。作者の頭もとけていた? ●1 9 8 2 ~ 1 9 8 3 ’83年��「美少女たちの宴」が完結。全てが無に帰すラストのページは真っ白のままで、このページの原稿料はいりません、と言ったにもかかわらず払ってくれた久保書店、偉い![明文社やCM頁の稿料を削った出版社=某少年画報社なら払わなかっただろうな……と思われる……]この作品以外は短編が多く、加速度をつけてのっていく描き方が得意のダー松としてはのりの悪い時期に突入。また10年近く走ってきてだれてきた頃でもあり第一次落ち込み期と言っていい。マンガがスタンプを押すように描けないものか、などとふとどきな考えまで湧いてくる。思えば一本の作品には、いったい何本の線を引いて出来上がっているものなのか。数えた馬鹿はいないだろうが数千本は引いている筈。一ヵ月に何万本とペンで線を引く日々・・うんざりする筈です。 この頃のめぼしい短編をいくつか書くと、少女マンガ家の家に税務調査にきた税務署員が過小申告をネタにねちねちいたぶるが、アシスタントに発見された署員は撲殺される。そして板橋税務署は焼き討ちにあう、といった作品「[タイトル失念]xx税務調査」。[後日読者よりこのタイトルを「色欲ダニ野郎」と教えていただく。ひどいタイトル *編集者のつけるタイトルはその人のセンスが実によくわかる。しかしサイテ-の題だなこりゃ…。 果てるまで「おまんこして!」と言わせながら処女をやりまくる「美処女/犯す!」はラスト、狂った少女が歩行者天国の通行人を撃ちまくり血の海にする。「嬲る!」はパンチドランカーとなった矢吹ジョーが白木葉子をサンドバッグに縛りつけ、殴って、殴って、殴りまくる。段平おっちゃんの最後のセリフ「・・ブスブスくすぶっちゃいるが・・・」「打てッ!打つんだ!ジョー!」「お前はまだ燃えつきちゃいねえ!」とはエロ・ドランカーの自分自身に向けて発した言葉だったのかも。トビー・フーパーばりの「淫魔のはらわた」は電気ドリルでアナルを広げてのファック!とどめにチェーンソーで尻を切断!いまだに単行本に収録出来ず。[’98の「絶頂伝説」にやっと収録]「からみあい」は夫の愛人の性器を噛みちぎる。「危険な関係」はアルコール浣腸をして火をつけ尻から火を吹かせる。この手は『FUCK YOU!2』の「セーラー・ハルマゲドン」で復元。そういえばこの作品の序章と終章だけ描いて、間の100章位をとばすやりかたはこの頃の「禁断の性獣」より。女性器にとりつき、男性器に変身するエイリアンの侵略により地球は女性器を失い滅亡する、といったストーリーで当時聞いた話では谷山浩子のD.J.でこの作品がリスナーの投書でとりあげられ、ダー松の名はダーティ・杉本と読まれたそうな。ヒロイン��少女がひろ子という名前なのでこのハガキが選ばれたのかもしれないが、作者は薬師丸ひろ子からとったつもりだったのだが・・。[別にファンではない。] 「女教師狩り」は映画館で観客に犯される女教師とスクリーン上の同名のエロ映画の二本が同時進行し、一本で二本分楽しめるお得な作品。 ’83は’80に「漫画エロス」にて描いた「エロスの乱反射」の最終回の原稿が紛失したため単行本が出せないでいたのを、またまた「仏の久保さん」に頼んでラスト近くをふくらませて「漫画ハンター」に3回程描かせてもらい、やっと’85に出版。見られる事に快感を覚えるファッション・モデルが調教される内に、次第に露出狂となっていき、街中で突然裸になって交通事故を起こさせたり、最後はビルの屋上でストリップショー。そしてカメラのフラッシュの中に飛び降りていき、ラスト1ページはその性器のアップでエンド! 本格美少年・ゲイ・マンガ「聖少女黙示録」も’83。レズの姉たちの手によって女装に目覚めた少年がホモのダンサーたちに縛られなぶられ初のポコチンこすり合いの射精シーン。そして性転換して女となった主いるが、その中の’84の「白い肌の湖」はタイトルで解る通りのバレリーナものだがポコチンを焼かれた男が、一緒に暮ら人公が手術で男になった少女と暮らすハッピーエンド。この作品は単行本「美少女ハンター」に収録されてす二人の女と一人の男に復讐するエンディングがすごい!まず男の性器を切り取り、片方の女の性器にねじ込んだあと、その女の性器ごとえぐり取る。そしてその二つの性器をつかんだまま、もう一人の女の性器にフィストファック!のあげく、その二つの性器を入れたままの女性器をナイフでまた切って、ほとんどビックマック状態でまだヒクヒクうごめく血まみれの三つの性器を握りしめるとんでもない終り方!全くダー松はこんな事ばかりやっていたのかとあきれかえる。もう鬼畜としか言い様がない!しかし「ウィンナー」を二枚の「ハム」で包むなんて・・GOODなアイデアだ、又やってみよう。 ●1 9 8 4 ~ 「漫画ハンター」で「闇の宴」前後篇を描き、後日これをビデオ化。雪に包まれた六本木のスタジオで痔に苦しみながらの撮影。特別出演として中島史雄氏が絶妙の指使い、東デの学生時代の萩原一至が二役、取材に来たJITAN氏もスタジオに入ってきた瞬間、即出演で生玉子1000個の海で大乱交。カメラマンが凝り性で照明が気に入るまでカメラを廻さず、たった二日の撮影はやりたい事の半分も出来ず。撮影が終ると痔はすぐに完治。どうもプレッシャーからくる神経性だったみたいでこれに懲りてビデオは一本のみ。 この年の「肉の漂流」は親子丼もので、近所の書店のオヤジからこの本はよく売れたと聞いたが、一時よく描いたこのパターンは最近では「FUCK YOU!3」の「母娘シャワー」のみ。熟女と少女の両方が描けるところが利点。「血の舞踏」は久しぶりの吸血鬼もの。股間を針で刺し、噛んで血を吸うシーン等々いい場面はあるが、うまくストーリーが転がらず3回で止める。短編「果てるまで・・」は核戦争後のシェルターの中で、父が娘とタイトル通り果てるまでやりまくる話。被爆していた父が死んだ後、娘はSEXの相手を捜して黒い雨の中をさまよう。 またリサ・ライオンの写真集を見て筋肉美に目覚め、マッチョ女ものをこの頃から描き出す。しかしなかなか筋肉をエロティックに描くのは難しい。 ●1 9 8 5 ~ くたびれ果ててすっかりダレてきたこの頃、8年間働いてくれたアシスタント女史に代わってパワーのかたまり萩原一至、鶴田洋久等が東京デザイナー学院卒業後加わってダーティ・マーケットも第2期に突入!新旧取り混ぜておもしろいマンガをいろいろ教えて貰って読みまくる。「バリバリ伝説」「ビーバップハイスクール」「ペリカンロード」「めぞん一刻」「わたしは真悟」「Be Free!」「緑山高校」「日出処の天子」「吉祥天女」「純情クレイジー・フルーツ」「アクター」「北斗の拳」「炎の転校生」「アイドルをさがせ」「綿の国星」「いつもポケットにショパン」「バツ&テリー」「六三四の剣」永井豪の絶頂期の作品「バイオレンス・ジャック」「凄之王」「デビルマン」等々100冊以上とても書ききれない位で、う~ん・・マンガってこんなにおもしろかったのか、と感動! そこで眠狂四郎を学園にほうり込んで、今まであまり描かなかった学園マンガをエロマンガに、というコンセプトで始めたのが「斬姦狂死郎」。「六三四の剣」ばりに単行本20巻を目指すものの、少年マンガのノリは今では当たり前だが、当時はまだエロマンガとして評価されず、ほんの少し時代が早すぎたかも。’86に中断、今年’97に「ホリディ・コミック」にて復活!果たしていつまで続けられるか? →後に「斬姦狂死郎・制服狩り」、「斬姦狂死郎・美教師狩り」として刊行完結 前年末から始めた「美姉妹肉煉獄」は身障者いじめの鬼畜路線。盲目の姉とその妹を調教して性風俗店等で働かせ、娼婦に堕していく不健全・不道徳な作品で、肉の快楽にひたっていく盲目の姉に対し妹も「春琴抄」の如く己の眼を突き、自らも暗黒の快楽の世界にはいり、快楽の光に目覚めるラスト。 また、これからは女王様物だ!となぜか突然ひらめき「筋肉女」シリーズの延長としてフィットネス・スタジオを舞台に「メタル・クイーン」シリーズも開始。これは単行本2冊分描いたが、連載途中でヒロインの髪型を歌手ステファニーのヘア・スタイルにチェンジした���、レオタードもたっぷり描けてわりと気に入っている。 10年近く描いた「美蝶」先生シリーズもこの年スタート!こうしてみるとマンガを描く喜びに満ちた大充実の年だったかも。 ●1 9 8 6 ~ この年は前年からの連載ものがほとんどだが、「エレクト・ボーイ」は空中でファックするシーンが描いてみたくて始めた初の超能力エロマンガ。コメディ的要素がうまくいかず2回で止める。この路線は翌年の「堕天使輪舞」で開花。 「夜の彷徨人」は自分の育てた新体操選手が怪我で選手生命を失ったため、その女を馬肉のごとく娼婦として夜の世界に売り渡した主人公という設定。しかし腕を折られ、女にも逆に捨てられ、そして事故によってその女を失ったあげく不能となってしまう。失った快楽を取り戻すため無くした片腕にバイブレーターを取りつけ、夜の街をさすらい次々と女たちをレイプしていくというストーリー。がっちり設定したキャラだったのにまったく話がはずまず、男のポコチンは勃起しないままに作品も不発のまま終る。 「斬姦狂死郎」が不本意のまま終わったため学園エロス・シリーズは「放課後の媚娼女」へと引き継がれる。当時見ていた南野陽子のTV「スケバン刑事・」とS・レオーネの「ウエスタン」風に料理。ラストの「男といっしょじゃ歩けないんだ」のセリフは一番好きな映画、鈴木清順の「東京流れ者」からのもじり。単行本は最初司書房から出て、数年後ミリオン出版から再販、そして’97久保書店より再々販ながら結構売れて今年また再版。この作品は親を助けてくれる有難い孝行息子といったところ。 ●1 9 8 7 ~ さいとうプロOBで那珂川尚という名のマンガ家だった友人の津田が「漫画ダイナマイト」の編集者になっていて、実に久しぶりに同誌で「堕天使輪舞」を描く。超能力エロマンガの第2弾。今回はエロと超能力合戦とがうまくミックスされ一応成功といっていい。この路線は「エレクト・ボーイ」とこの作品、そして’96の「夜顔武闘伝」も含めてもいいかも。一時、この手の作品は数多くあったが最近はめったに見かけない。しかし、まだまだこの路線には鉱脈が眠っているとにらんでいるがどんなものだろう。 ●1 9 8 8 ~ 「放課後の媚娼女」に続いて抜かずの凶一無頼控え「放課後の熱い祭り」を2年がかりで描く。’89に完結し司書房より単行本化。そして今年’97に改定してめでたく完全版として復刊!この頃が一番劇画っぽい絵で、たった2~3人のスタッフでよくこれだけ描き込めたなと改めて感心!エロシーンがちょっと少なめながら中島史雄氏がダー松作品でこの作品が一番好き、とお褒めの言葉を頂戴する。 TVで三流アマゾネス映画を見ている内、むくむくとイメージがふくらみ、昔から描きたかった西部劇と時代劇がこれで描けると、この年スタートさせたのが「不死蝶伝説」なるアマゾネス路線。昔々青年誌の創世期にあのケン月影氏がマカロニ・ウエスタンを描��ていたことを知る人は少ないだろう。俺も��の頃デビューしていたらウエスタンが描けたのに、と思う事もあったが、このシリーズでほんの少しだけその願望がかなう。 この頃、アシスタントやってくれてた格闘技マニアの鶴田洋久に誘われ、近所の空手道場通いの日々。若い頃修行のため新宿でやくざに喧嘩を売って歩いたという寺内師範は、もう鬼のような人で、行けば地獄が待っていると判っててなぜ行く?と不思議な位休まず通う。体育会系はマゾの世界と知る。組手は寸止めではなく顔面以外は当てて可だったので身体中打撲のあざだらけ、ビデオで研究したという鶴田の体重をかけたムエタイ式の蹴りをくらい、右手が饅頭のように腫れ上がる。先輩たちの組手の試合も蹴りがもろにはいってあばら骨が折れたりで、なぜこんなヘビーな事をする?と思うが、闘う事によって身体の奥から何か沸き上がってくるものがある。スリランカの元コマンドと組手をやった時、格闘家の気持ちが少しだけ判るようになった。 ●1 9 8 9 ~ ’94まで続く「美蝶」シリーズでこの年は『ノスフェラトウ篇』を描き、シリーズ中これが一番のお気に入り。同人誌の「王夢」はこれが原点。 短編では「悪夢の中へ」はスプラッタ・エロマンガで久しぶりにチェーンソゥでお尻のぶった切り!はらわた引きずり出し、人肉食いちぎり!顔面叩き割り等々でラストに「ホラービデオの規制をするバカは俺が許さん!」などと書いているので、この年が宮崎事件の年か?世間は彼が日野日出志・作のホラービデオ「ギニーピッグ」を見てあの犯罪をおかした、としてさんざんホラービデオの規制をやっといて、結局見てもいなかったとわかったあとは誰一人日野日出志氏にもホラービデオさんにも謝らす゛知らんぷり。残ったのは規制だけで、馬鹿のやる事には全く困ったもんである。先日の「酒鬼薔薇・14才」の時も犯罪おたくの心理学者が、「これはマンガやビデオの影響です。」などと相も変わらずたわけた寝言をぬかしていたが、馬鹿はいつまでたっても馬鹿のまま。少しは進歩しろよ!お前だよ、お前!短絡的で幼稚な坊や、小田晋!よぅく首を洗っとけ!コラ! 「獣人たちの儀式」は退学者や少年院送りになつた生徒、暴走族、ヤクザ達が集まって酒盛りしながら女教師たちをずこずこにしてOB会をひらく不健全作品。編集長が「また危ない作品を・・・」とこぼしたものだが、岡野さん、田舎で元気にお過しでしょうか。この頃の「漫画エロス」には「ケンペーくん」だとか「アリスのお茶会」だとかおもしろい作品が載っていたものです。「爆走遊戯」は伝説のストーカー・ろくでなしマンガ家の早見純が一番好きな作品と言ってくれたが、なぜだかわからない。人の好みはいろいろです。以上3本は単行本「熱き唇の女神」に収録。 「ふしだらな女獣たち」はフェミニストの女二人が美少年をいじめる話。これは「氷の部屋の女」に収録。 ●1 9 9 0 ~ この年の「美蝶」シリーズは『ダンシング・クイーン篇』。マネキン工場跡でJ・ブラウンの「セックス・マシーン」にのせて5人プレイをするシーンや文化祭でのダンスシーン等々結構好きな場面多し。暗くて硬い作品が多いので、この「美蝶」シリーズは肩肘張らずに、かなり軽いノリでキャラクターの動きに任せて、ストーリーも、そして次のコマさえも先の事は何にも考えず、ほとんどアドリブで描いた時もある。 「不死蝶伝説」に続いてシリーズ第2弾「不死蝶」は2誌にまたがって2年位続ける。これも結構お気に入りの一遍。 ●1 9 9 1 ~ 1 9 9 3 「性狩人たち」の近未来版、といった感じの「夜戦士」は学園物が多くなったので、マグナム銃で脳天をぶっとばすようなものが又描きたくなって始めたミニシリーズ。全5話位。松文館より単行本「黒い夜と夢魔の闇」に収録。 この年から知り合いの編集者がレディス・コミックを始める人が多く、依頼されてどうしたものかと思ったが、エロなら何でもやってみよう精神と何か新しい世界が開けるかも、という事から’94位までやってみたものの結果的に不毛の時代に終わる。与えられた素材が体験告白物という事で、非現実的なものは描けないという事は得意技を封印して戦うようなもので苦戦を強いられ、これって内山亜紀氏がやまさき十三原作の人情話を描いたようなミス・マッチングで不発だったかな。今後、もしやることがあれば美少年SMのレディス・コミックのみ。そんな雑誌が出来れば、の話だが。 いくつかやったレディコミの編集の一人「アイリス」の鈴木さんは同じさいとうプロOBで、マンガ・アシスタント、マンガ家、マンガ誌の編集、そして今はマンガ学校の講師、とこれだけ多くのマンガに関わる仕事をしてきた人はあまりいないだろう。これでマンガ評論でもやれば全て制覇だが・・・。 この頃はいつもと同じ位の30~40本の作品を毎年描いていたが、レディコミは一本30~40枚とページが多く結構身体にガタがきた頃で、右手のひじが腱傷炎になり1年以上苦痛が続く。医者通いではさっぱり痛みがひかず、電気針で針灸治療を半年位続けてやっと完治。その後、住んでいたマンションの理事長を押しつけられ、マンション戦争の渦中に巻き込まれひどい目にあう。攻撃するのは楽だが、話をまとめるなどというのは社会生活不適格のダー松には大の苦手で「お前等!わがままばかり言うのはいいかげんにしろー!」と頭をカチ割りたくなるような事ばかりで、ひたすら我慢の日々で血圧がガンガン上がり、病院通いの日々。確実に寿命が5年は縮まる。あの時はマジで人に殺意を抱いたものだが、今でも金属バット持って押しかけて奴等の脳みそを���ラッシュしたい気分になる時もある。いつかこの時の事をマンガにしようと思っていて、まだ誰も描いてない「マンション・マンガ」というジャンル、タイトルは「我が闘争」。え?誰も読みたくない? この間に出た単行本は「血を吸う夜」、「赤い月の化身」「熱き唇の女神」[以上・久保書店] /「牝猫の花園」「真夜中の人魚たち」[以上久保書店]、「美蝶/放課後篇」「美蝶/ダンシング・クイーン篇」「不死蝶/鋼鉄の女王篇・上巻」[以上ミリオン出版]。 ●1 9 9 4 ~ 1 9 9 5 ろくでもない事が続くのは厄払いをしなかったせいか、このままここにいたら頭がおかしくなる、と15年以上いたマンションから引っ越し。板橋から巣鴨へ移動し気分一新!以前からうちもやりましょうよ、と言われていた同人誌創りをそのうち、そのうちと伸ばしてきたものの遂に申し込んでしまい、創らざるをえなくなる。しかもそれが引っ越しの時期と重なってしまい大いに後悔する。しかしいろんな人にお願いして何とか一冊でっちあげ、ムシ風呂のような夏コミに初参加。これが運命の分岐点。レディコミもこの年で切り上げ、以下同人街道をまっしぐら。現在まで「FUCK OFF!」が9まで、「FUCK YOU!」が4まで計10+&冊創る。 ’95からダーティ松本の名前にも飽きてきたしJr,Sam名でも描き始める。 レディコミ時代は松本美蝶。あと2つ位違うペンネームも考案中。 この間の単行本「氷の部屋の女」「双子座の戯れ」[久保書店]、「黒い夜と夢魔の闇」[松文館]、「危険な女教師/美蝶」[ミリオン] ●1 9 9 6 ~ 美少女路線の絵柄もこの年の「夜顔武闘伝」あたりでほぼ完成、今後また少し変化させる予定。しかしこの作品は超能力、アマゾネス、忍法エロマンガとでも呼ぶべきか。「グラップラー刃牙」みたいに闘技場での勝ち抜き性武道合戦までいきたかったけれど、残念ながらたどり着けず。 「冬の堕天使」は久しぶりの吸血鬼もの。都営住宅で生活保護をうけている吸血鬼母子のイメージが浮かび、そこから漫画家協会・加藤芳郎を撃つ有害図書騒動のマンガへ。吸血鬼少年が光の世界との戦いに旅立つまでを描き、「闇に潜みし者」は時空を越えて近未来での戦い。その間を描く作品を今後創らなければ。 「FUCK CITY 2006」はクソ溜めと化した近未来のTOKYOを舞台に久しぶりにダーティ・バイオレンスが炸裂��ハード・エロ劇画と同人誌風・美少女路線の合体は果たしてうまくいったかどうか?30ページほど描き足して、’97、9月にフランス書院のコミック文庫にて発売。[「少女水中花」] 「放課後の媚娼女」と「人形愛」刊行。[いずれも久保書店刊]前者は以前、上下巻だったのを一冊にまとめて。後者は近作を集めた同人時代を経ての初単行本で、同人誌を知らなかった読者はショックを受ける。メタルフアンから以下のようなお手紙を受け取る。「これはジューダス・プリーストの『ターボ』だ。ラストの『眠れる森の少女』は『レックレス』にあたる。しかしジューダスもその後『ラム・イット・ダウン』や『ペイン・キラー』という傑作を世に出した事だし、今後を期待したい」という意のダー松のようなメタルファン以外は意味不明の激励をうける。 ●1 9 9 7 同人誌「エロス大百科シリーズ」スタート!いろんな項目別に年2刊づつ計100ページ位を別刊シリーズとして出し続ければ10年で1000ページになり、以前「谷岡ヤスジ1000ページ」という枕に最適の本があったが、これも一冊にまとめて枕にして寝れば、目覚める頃は3回夢精しているなんて事に・・・などとまだたった40ページの段階で言っても何の説得力もないか。飽きたら2~3号でSTOPするだろうし・・。[推測通り「毛剃り」「美少年SM」「女装」3号でストップ中]冬にはやおい系にも進出の予定。 今年出した単行本は厚くて濃いエロマンガを集めた久保書店MAXシリーズ第2弾!「放課後の熱い祭り/完全版」と「夜顔武闘伝」オークラ出版。ともに大幅描き足して25周年記念出版として刊行。ティーツー出版よりJr,Sam名で「昼下がりの少女」、9月にはフランス書院より「少女水中花」の文庫本が出る予定で現在、この同人誌と並行して描き足し中。「斬姦狂死郎」第2部も「ホリディ・COMIC」誌にて6月よりスタート!年内創刊予定の『腐肉クラブ』なる死体姦専門のマンガ誌にも執筆予定。 さてさて25年間、旅行の時を除いて、現在まで2日続けてマンガを描かなかった事はほとんどない。これはその昔、伊東元気氏というマンガ家とお会いしたとき「今月何ページ描いた?」との問いに、「今月仕事ないんでぜんぜん描いてません」と答えたら、「そんな事じゃ駄目だ。仕事があろうがなかろうが、毎月100頁は描かなきゃ。」と言われ、以後その教えを守り[描けるページ数は減ったが]、マンガは仕事ではなくなり、朝起きたら顔を洗うのと同じで生活そのものとなり現在に至る。 今は何でも描けそうなハイな状態で、以前はたまには外出しないと煮詰まってしまうので週いち位ガス抜きをしていたものだが、最近はせいぜい月いち休めば十分の「純エロマンガ体」。[純粋にエロマンガを描くためだけの肉体、の意。ダー松の造語] こうしてふり返ると、この路線はまだえぐり足りない、これはあと数回描くべし、なぜこれを一度しか描かない!等々、残り時間にやるべき事、やりたい事の何と多い事! 爆裂昇天のその日まで・・・ 燃 え よ ペ ン ! なお続きは 1997年後期 1998年 INDEX
http://www.rx.sakura.ne.jp/~dirty/gurafty.html
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RDR2:52:変人たちと遊ぼう!1
……本日前半はスクショが……コピーしようとして間違って削除したので……動画撮ってた部分にしかなくて……。゚(゚´ω`゚)゚。 せめてPS4、スリープするまででもいいから、削除した動画とかスクショにアクセスできるゴミ箱フォルダ用意してくれないのかっっ(੭ु ˃̣̣̥᷄⌓˂̣̣̥᷅ )੭ु ちなみに今回・次回で、変な人たちのところをうろうろする予定でいますが、今回の中盤はレニーのプチミッション、駅馬車強盗についても触れています。
さて。 そんなわけで、プレイ中には撮ってなかったスクショでも、動画から撮影しなおして誤魔化し……。 まずは、サンドニで出会った変なおっさんから頼まれてる、密造酒の強盗に行くことにしました。よってこの犯罪用のダッサい格好に着替えたわけです。普段絶対に身につけないイモい格好です。だって、お気に入りのおようふくで指名手配覚えられたくないしぃ( ತಎತ)
……まあ、すまん。御者一人くらいなら、縄で引きずり落として縛っておくんだが、四人もいるとなるとこうせざるをえない(´・ω・`)
ほい、デッドアイ中、一気に四人ヘッドショット。
スパパパーン★(´・ω・`) うまくいったけど、本意じゃないんだ。こんなことするミッションだと知ってたら、そもそも引き受けなかったかもしれないが、引き受けてしまった以上、この道通ると強制的におまえらがやってきて、無視すると強制的に失敗になって、強制的にやり直しさせられるんだ(´・ω・`) だから仕方ないんだ(´・ω・`) あとまあ、変なおっさんがなにしようとしてるのかには、興味あるしな(´・ω・`)
よっこらせと。まあ密造酒なんて違法なものなわけだし、心底真っ当な人たちではないってことで、納得しておくしかあるまい。
だからというわけでもないとは思いますが、名誉レベルは微動だにしませんでした。このへん、たまに謎ですな。無法者とかギャング名の出る相手ならともかく、「見知らぬ人」でも犯罪扱いされないことがけっこうあります。 密造酒を届けると、警察署長に実験の許可をもらってきてくれと言われます。それより報酬どうなってんだよと言い募るアーサーさんですが、答えないという必殺の無敵回答。そしてにも関わ��ず、素直にのこのこと出かけるアーサーさん。お人好し(´ω`*)
このあたりからスクショがないのですが。゚(゚´ω`゚)゚。、行くついでにきちんと着替えていつものブラックガンマンになり、シャルルの展覧会に寄りました。 受付から「見る価値があるかどうか……。私は責任負いませんよ」みたいなこと言われます。 絵は基本的にヌードばかり。これはもらったスケッチから予想してたけど……まあ、上手くはないんじゃないかな(´・ω・`) 俺みたいな下手の横好きっていうか、素人の手慰みとは違うけど。 何故着衣じゃないのか、とか言い出すのはまあ、現代の感覚からするとあまりにも堅苦しい話ですが、「これはうちの旦那の尻じゃないか」と言い出したおばちゃんがおりまして。 そこから、これはうちの妻じゃないかetc...。家人に知らせず勝手に戻るになってる人ばかり、イコール、シャルルと寝てるんだろうと。 そんなわけで案の定乱闘騒ぎになり、シャルルはまたどっかの人妻のところに身を隠しました。
さて、そのまま警察署に行くと……やってもいいけど、100$の費用がかかるだとぉ? ……「交渉する」を選ぶと、どうしたアーサーさん、おばかさんとは思えないくらい流暢に、電気椅子の存在意義について説明するじゃないか!?( ゚д゚) というのはさておき、囚人に苦痛を与えずに処刑する人道的で近代的、画期的な道具だと説明し、50$にまけてもらえました。半額かよ。うあーん、それにしてもこの出費、戻ってくるんだろうかな( ತಎತ) と思いつつアンドリュー3世のところに戻ると、今度はモルモ……被験体が必要だと。手頃なのがいると渡されたのは、殺人、重婚……それから字幕では動物虐待と出ますが、ヒアリングでは獣姦ゆーてるぞおい( ತಎತ) 手配書見てもAnimal husbandryと書かれてますな。報酬は95$。てことは、値切り交渉していれば、こいつの報奨金で黒字になるってこと?(´ω`*)ナラ イイヤ 動物好きなアーサーさんとしては、心置きなく電気椅子に座らせられる相手でしょう。 というわけでとっとこ出掛け……手下か仲間か知らないけど、全滅させると「化物かよ」みたいに言われますな。そんで逃げたのはとっとと縛り上げて、と。 「愛してるから」みたいなことをほざくのは殴って黙らせ、密造酒パクった相手の仲間が来たのはとっとと始末し、そんなことより、道中アーサーが喋る「雷に撃たれた農場なら見たことがある」がめちゃくちゃ人が悪くて楽しかったです(´ω`*) 「電気と雷は違うから安心しろ」と言いつつ、「嵐が来てるのを見てなかったら悪魔の仕業だと思っただろうなぁ」とか、悲惨な現場を��明するという。つまりアーサーさん、電気椅子が人道的で苦痛のない方法だとは微塵にも思ってなくて、雷で死ぬのと同じようなことになると思ってるんだなこれ。 少なくとも、電圧とかいろんな調整がされてないかぎりは、そうでしょうなぁ。しかも実験第一号なんだしこれ。 そうして教授のもとにモルモットを配達。……うーん、ここではまだ報酬もらえないから……処刑会場に運んでいくのについていったけど、ミッションはまだ出ないし。また今度かな。捕まえたのは捕まえたんだから、所長のとこ行ったら後でもらえるのかも?
ともあれすぐには何もないようなので、拠点に戻って一晩明かし……だからそこで顔洗わないでよ:( •ᾥ•): と思いつつ、今日は、レニーの馬車強盗にでも付き合うかなぁ。
「馬車強盗だよ。護衛もいないらしいから俺一人で行こうと思ってる」と言うレニーに、お節介気味についていこうとするアーサーさんw 誰か一緒に来てもらうっていうなら、もちろんあんたに頼むよ、しゃーないなぁ、みたいな感じで二人でお出かけです。……スクショはたまたま二人とも目ぇ閉じてるへっぽこですが、それはそれで面白いのでね。
あんたは屋敷の中で寝てるじゃないか、俺たち若い連中は外だぞ、と言うのに答えてアーサー。レニーってまだ10代だったのか。そのわりにしっかりしてるなぁ(´ω`*) と思いつつ移動中会話など聞いていると、レニーがはぐれたのは、父親を殺した連中を殺してのことだそうで(´・ω・`) 2章で聞いたレニーの夜話、最初から最後まできちんと聞いてたらそのへん語ってたのかな? ともあれ、だったらあの父親からの手紙、受け取った当時はもしかすると「鬱陶しい親父だなぁ、うるさいよ」とか思ったかもしれなくても、今となっては立派な教師だった父の形見、大切なものなのだな。 それにしてもジョンも孤児で12くらいで拾われ、アーサーも15くらいでギャングに。レニーも数年は逃亡生活していたと言ってるので、15くらいでそうなって、半年くらい前に拾われたって感じか。みんな子供のときから苦労してるのね(´・ω・`) ちなみに、馬車の情報ソースについては、大丈夫だ信用できる、としか言わないレニーですが……。
見張りもいない楽勝な馬車だと思ったら、中から出てきたのは法執行官。 つまりこれは、馬車強盗を捕まえるための罠。もちろん情報だって偽物。アーサーは、そういうことがあると知っていればこそ、うますぎる話からピンときて、レニーについていこうとしたわけですな。
そんなこともあるさ。でも生き残ったんだからいい。気にするな。 とだけ言うアーサー。恩着せがましいことも説教くさいことも言わないのは、レニーは自分でこの体験から学ぶと信じてるからでしょう。 んー……せっかくドラマが良いゲームなんだから、これはちょっと……アーサーの日記にも書かれない出来事だし……。アーサーがレニーを一人前にしよう、生き抜けるように後見してやろうと思ってること、その気持ちがきっと以前より強いだろうことは、表現してほしかったなと思います。だってねぇ。アーサーもまだ35くらいですけど、それにしたって、自分より若い弟分や妹分たちが先に死んでいくのは見たくないでしょうよ。 あんまりいつまでもジメジメ引きずってるのも鬱陶しいと思いますけど、”例の件”はその後のドタバタもあって、ありにもあっさりと流れ去った感(´・ω・`)カワイソ だからせめてこういう場面、アーサーの日記の中でだけでも、そんな思いがあること、あの出来事がちゃんと刻まれてることを出してほしかったなと思ったのでありました。
それからのこのことやってきたのはバレンタイン。 やっぱりミッキーいないなぁ。あと、そういえば四人のガンマン倒すだけ倒して、伝記作家のとこ報告にもなんにも行ってないやと脇道の酒場にも寄りたくて。しかしここにあの作家もキャロウェイもいなかったので、オートミール食べて、さて、ストロベリー方面へ向かおうか。 というのは、すっかり放置してる賞金首です。かなりの腕のガンマンで殺し屋。なのに生け捕りにしろっていうなかなかの無茶振りのあれ。寄り道しまくって途中でやめて引き返して、それっきりだもんな。
と思ってたのに、「?」見つけて近寄ってみたら、この双子でした。 今度は……殴れ? 自分のほうがタフだと証明したいわけか。あほだな(´・ω・`)
まあ殴��けど☆∵;.c=(´・ω・` )qウリャ 顔を殴り……腹を殴り……は? 股間を殴れ??
実際には蹴りましたけどね? 金にもならん暇つぶしだけど、このあほな双子たちが次はなにを言い出すのか、楽しみにしていようと思います。エスカレートして命にかかわらなきゃいいけどなぁ(´・ω・`)
ちなみにひんなちょっとした荒事でも、すげー逃げてるアラブw これは邪魔にならん場所までってことで、どんな馬でもここに来るのかな。教会の墓地で草食べてました。死体の養分吸って育った草はうまいか?(ㅍ_ㅍ)
そんなことしてたらすっかり夜になってしまっていたので、本日(ゲーム内)はここまで。バレンタインのホテルにお風呂と部屋頼んで、ここ数日の旅の汗と垢を落とします。きれいにしとかないと、メアリーに嫌われちゃうしね(´・ω・`) 夢中になってうろうろしてると、風呂に入ったのかせ何日前だったか忘れるんですよねぇ。転んだりして泥だらけにでもなればすぐその日にとか、次にどこかの町に寄ったらと思うのですが。 そーいや、なんでシェイディベルの屋敷に風呂場がないんでしょうか? 他の2箇所は完全に屋外だったから仕方ないけどさぁ。
次回はストロベリーに賞金首捕まえに行ってのすったもんだですw
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近さの / なかに / はいる
※この記事はnoteに書いたものをそのまままとめて移植したものです
→もとの記事(初回)https://note.com/megata/n/n47f8d146b717
[1]
花になるなら、飾らず、まっすぐに伸びるヒマワリがいい。モードが言う。対してハロルドは、一面に咲くヒナギクを見下ろしながら、自分はこの花がいいと言う。あの花この花の区別なく、たくさん横並びで生えている、どれでも変わりないようななかのひと花でありたい、と。そんなふうにヒナギクを評するハロルドに対し、同じ花なんてないとモードは意見する。それから、こんなこともいう。世の中の不幸のほとんどは、他人と同じように扱われることに不満を持たない人々が生み出している、と。
ところが、「��こにでもいるやつなんて どこにもいない」式のことを述べたてるモードは、とてもとても極端な人物なのだ。名もなき雑草のひと花ひと花に愛情深い態度を示すような、落ち着いた穏やかな人格ではない。独善的で身勝手な狂老女、とみなされても不思議ではない。
ラブコメというジャンルはどのような構造で組み立てられているか、という話のなかで話題にのぼり、紹介された映画『ハロルドとモード』を実際にみてみた。とはいえこの映画は、いわゆるラブコメというジャンル映画ではないように思われる。家人の目につくところで自殺を演じ続ける少年ハロルドだが、ハロルドの母は、息子が首を吊ろうと手首を切ろうと銃で頭を撃ちぬこうと、まったく相手にしない。「いつものいたずらね」ということで軽く流し、かわりに精神科に通わせたり、軍人の叔父に預けようとしたりする。ただし同伴・同席はしない。ハロルドは一人で精神科や、叔父のオフィスに通わされる。 ハロルドはいつものように、知らない人の葬儀に勝手に参列する。そこで知り合った79歳の老女・モードもまた、赤の他人の葬式に参加するシュミがあった。二人は巡りあう。 モードは常に人の車を運転する。公道の街路樹を引き抜き、人の車にのせ、料金を払わず高速道路をぶっ飛ばし、白バイ警官をまいて、山に勝手に植えにいく。シャベルだって当然盗品である。しかしあっけらかんとしていて、罪の意識はない。法を犯していることぐらい理解しているだろうけど、罪を犯している自責はかけらもない。めちゃくちゃである。 惹かれ合った二人が、きちんと一夜を共にする描写(朝になって、裸の少年と老女がおなじベッドで目覚めるシーン)があるのがとてもよかったです。 「ラブコメ」のジャンル映画ではなさそうだったし、それに「恋愛」を描いているようにも思われなかった。おもしろい映画だったけどね。さあ「恋愛」ってなにか。
このごろ読んでいた嘉村磯多の「途上」という自伝小説のなかに、露骨な切れ味の描写があってハッとさせられた。中学校のなか、からかわれたり後輩をいびったり、勉学に励みつつ田舎出身を恥じらい、色が黒いことをバカにされたり先生に気に入られたり、下宿先の家族に気を使いすぎたりして、なんやかんやで学校を中退して、実家に戻ってきた。ぶらぶらしていると、近所にいる年少の少女に目が留まる。いつか一度、話したことがあるきりだが、やたらと彼女が気にかかる。そこにこの一文があらわれる:「これが恋だと自分に判った。」 そんなふうにはっきり書かれてしまうと弱い。「はいそうですか」と飲み込むほかない。 けれど、恋愛を描いている(とされるもの)に、「これが恋���って「判った」だなんて明確に言及・説明を入れ込むことは、どうなんだろう。少なくとも当たり前な、お約束なやり口ではないと思うけど。 世の中には、「恋」「愛」「恋愛」という単語の意味するところがなんであるのか今一度問い直す手続きを踏まえずに、じつにカジュアルに言葉を使っているケースばかりがある。そうすると、その場その場で「恋」の意味が変わっていくことになる。その「恋」が意味しているものは単に一夜のセックスで、「恋多き」という形容詞がその実、「ぱっと見の印象がイケてた人と手当たり次第やりまくってきた」って内容でしかないときも少なくない。 まあけど、それがなんなのかを追究するのはやめましょう。というか、いったんわきに置いておきます。
さて『ハロルドとモード』の紹介された雑談のトピック:「ジャンルとしてのラブコメ」ですが、これは単に、「イニシアチブを奪い合うゲーム」であるらしい。そういう視点で構築されている。要するにラブコメは、恋愛感情の描写とか、恋とは何かを問い直すとかじゃなくて、主導権や発言権を握るのは誰か?というゲームの展開に主眼がある。気持ちの物語ではないのだ。描かれるのは、ボールを奪い合う様子。欲しがらせ、勧誘し、迷い、交渉する。デパートのなかで商品を迷うように。路上の客引きの口車にそれなりになびいたうえで、「ほか見てからだめだったらまた来ます」って断りを入れて、次の客引きに、「さっき別の店の人こういってたんですよね」とこちら側から提示するように。 イニシアチブの奪い合い、というゲームさえ展開できればいいので、気持ちとかいらない。ゲームが展開できるのであれば、主体性もいらない。ラブコメの「ラブ」は心理的な機微や葛藤の「ラブ」ではない。奪い合っているボールの呼び名でしかない。(つまり奪い合い=おっかけっこ、が、「コメ(ディ)」ってワケ)
浮気はドラマを盛り上げる。人が死ぬのも、まさに「劇的」なハプニングだ。雨に濡れて泣きながら走り、ようやく辿りついたアパートの部屋はもぬけの殻、ただテーブルにひとことの書き置き「フランスに行きます」みたいな、そんな派手な出来事で試合はいよいよ白熱する。ところが、心理的な機微や葛藤というのはいつだってモノローグ的だので、気持ちの面での「ラブ」を描きたいなら、このような出来事たちはむしろいらない。うるさすぎる。もっとささやかで、短歌的な味わいのものがふさわしい。ひとりでいるときに、マフラーの巻き方を真似しようと試みて途中でやめたり、チェーンの喫茶店の安コーヒーの味が思い出でおいしくなったり、そういうのでいい。出しっぱなしのゴミ勝手に片づけたの、ちょっとおせっかいすぎたかなってくよくよ悩む、とかでいい。
恋愛の感情・心理がよく描写されているように感じられる物語の登場人物は、内面的な葛藤に閉じ��もらざるを得ないシチュエーションに押し込められている場合が多い気がする。「ひとには秘密にしてないといけない」「誰にも言えない」という制約のある環境。仕組みとして、宗教の違いや人種や年齢の断絶、同性愛など、自分の思いを簡単にひとに打ち明けられないセッティングの話のほうが、「イニシアチブ奪いあいゲーム」からは遠ざかる。(それに、そんなようなセッティングだと、「世間の常識」が要求してくるジェンダーロールを無視して鑑賞しやすい場合も多い。)
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[2]
成功した実業家の息子であるハロルドは、経済的にも肉体的にも不自由なく暮らしている。が、なんだか欠落を抱えている。自殺遊びや他人の葬式への参加など、死に接しているときが最も楽しい。老女モードは、そんなハロルドの世界観を一変させることになる。彼女はかなりアナーキーな存在で、逮捕されるようなことばかり繰り返している。けれど悪びれない。自らの行為を、自分らしい人生を過ごしている実感を与えてくれる刺激として肯定している。
J.G.バラードに『コカイン・ナイト』という小説があって、この頃これを読みました。あ、そもそもこの記事は、最近読んだものや見たものについて、できるだけ網羅的に言及できないかと願いつつ当てずっぽうで書き出した文章です。できることなら人とのやりとりや、自分の過ごした日常についても記したいが、それがうまくできるかどうか。
『コカイン・ナイト』の主人公はチャールズで、世界中を飛び回っている旅行記者です。退屈について、カリスマについて、刺激について。さまざまな切り口から鋭い洞察が重ねられたこの名作の入り口は、ミステリーのかたちをしている。 スペインの南、ハイパーセレブたち��リゾート地で働いているはずの弟が窮地にたたされているから助けにいかなきゃ! という目的で、チャールズは物語の舞台にやってきます。弟の状況はよく知らないけど、あいつのことだし、そこまで深刻じゃないだろう。そう高を括ってやってきました。ところがどっこい、弟、かなりやばい状況でした。 大邸宅が放火により全焼し、五人が焼け死んだ。弟にその容疑がかけられている。捕まって、留置されている。裁判を待っている。けれども、誰も、弟が犯人であるとは信じていない。警察だって例外じゃない。明らかに、弟の犯行ではないのだ。それでも弟は、自分がやったと自白しており、嘘の自白を繰り返すばかりで取り下げない。いったいなにが起こっているのか。どういうことなのか。 地域の人らはすべて疑わしい、なにかを隠しているような気がする。チャールズは素人ながら探偵のまねごとをしはじめ、地域の人々から疎んじられはじめる。チャールズにとって、地域の人々の態度と距離感はますます疑わしいものに思えてくる。そして実際、普通には考えにくい、歪んだ事態を数々目撃することになる。余暇時間を持て余したハイパーセレブたちは、事故を起こして炎上するボートを楽しそうに見つめていた。拍手さえあがる。
『ホット・ファズ~俺たちスーパーポリスメン~』という映画があって、平和な村=表向きには犯罪のない村を舞台にした話でした。「表向きには」犯罪はない、というのはつまり、法に反した行為があったとしても、届け出や検挙がなければ統計にはあらわれない、ということを示しています。
世の中にはあたまのかたい人というのがたくさんいて、俺もその一人なんだが、すべてのルールは事後的に構築されたものなのに、これを絶対の物差しだと勘違いしている場合がある。法律を破ったのだから悪い人だ、みたいな感覚を、まっとうなものだと信じて疑わない人がたくさんいる。身近に悪いやつ、いやなやつ、いませんか。自分のなかにも「悪」はありませんか。それと「被告人」「容疑者」はぜんぜん別のことではないですか。 陰謀論がささやかれている。「悪いやつがいる、たくさんいる、てのひらで人を転がしているやつと、愚かにも転がされているやつがいる、自分はその被害者でもある」そう発想する立場に対し、逆の立場に立たされている不安を訴える声もありえる。「知らず知らずのうちに、自分は、陰謀に加担しているのではないか。なんならむしろ積極的に参加しているのではないか」あんなふうになってしまうなんてこと思いもよらなかった、ってあとで口走っても遅い。
『コカイン・ナイト』の主人公チャールズは旅行記者で、世界中を飛び回っているから定住地はない。 どこかに行くと、「自分にとって、ここが本当の場所だ」と感じられる旅先に巡り合うことがある。けれどその段階を越えたむこうに、「自分にとって、世界はすべて異郷である。どこにいても、自分は単なる旅人以上のものではありえない」その境地がある、というようなことを池澤夏樹が言っていたかもしれない。言ってないかもしれない。ともかくチャールズは定住地がない。
國分功一郎『暇と退屈の倫理学』には、 遊動の暮らしをやめて定住するようになったとき、人類は、財産や文明を手にするようになった。貧富の差が生じ、法が生じ、退屈が生じた。時代が下って便利になればなるほど、退屈は大問題になってくる。 というようなことが書かれていた。遊動の暮らし云々については資料がない話だから、この本がどれほど学問的に厳密なのかはわからないけど、発想としてはおもしろいと思ったので覚えています。記憶だから、読み返すとそんな話してないかもしれないけどね。 けどまあ、ともかく、遊動し続けていたチャールズは、退屈がまさに大問題になっている地域に巻き込まれるかたちで取り込まれていく。はじめは弟の部屋を使っていたチャールズも、その地域を牛耳っているやつが用意してくれた部屋にうつるときがやってくる。その部屋にはじめて足を踏み入れたチャールズに、こういった言葉がかけられる。「チャールズ、君は家に帰ってきたんだ……」 「今の気分を大いに楽しみたまえ。見知らぬ場所という感覚は、自分にとって、常日頃考えているよりも、もっと近しいものなんだよ」
この記事は当てずっぽうで書き出した日記ではあるけれど、記事のタイトルははじめから決めている。「近さの/なかに/はいる」 ようやく、「近さ」というキーワードを登場させられました。よかった。距離についての話を引き続き。
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[3]
いつか「ア・ホロイ」というグループ展で映像作品の発表をしたときに(おれのみヘッポコな)対談イベントの相手として巻き込んだ太田充胤(医師・ダンサー・批評家)が、ちょうどその当時スタートさせていたのが『LOCUST』という雑誌だった。Magazine for travel and criticism|旅と批評のクロスポイント。 執筆者たちはみんなで旅行をしにいく。そしてその場所についての文章を書く。これを集めて雑誌にしている。参加者は批評家だけではないが、肩書は別になんでもよい。いわゆる観光ガイドでもなく、かといって思想ムックでもない。地域と時事に結びついた、批評癖のある人らの旅行界隈記集で、最近、この第三号を買いました。三号の特集地は岐阜県美濃地方。
この本、千葉市美術館で買った。千葉市美術館ではいま、「大・タイガー立石展」が開催されている。立石紘一=立石大河亞=タイガー立石という作家については、これは子供のころ、好きで好きでしかたなかった絵本のひとつの作者として知りました。親近感、懐かしさがある。 60年代、日本のなか美術作家として活動、のちイタリアに渡り、そこで油絵もヒットしますが、同時にデザイナー・イラストレーターとしても、漫画家としても活躍。日本に戻り、絵本の仕事も手掛けるようになります。陶も捏ねます。 ナンセンス、毒々しくも軽妙で、湿度は高いんだけどしつこくない。筆運び色選びモチーフ選び影の黒さははっきりシュールレアリズム由来で、反逆児のフリをしつつジャンルの枠組みは壊さず、荒唐無稽なフリをしつつ不穏当で思わせぶり、祝祭的=黙示録的、派手好みのくせに辛気臭くすら感じられるガロ感がいつまでも抜けない。という印象。個人的には。
懇意にしている友人の家、友人なのかな、友人なんでしょうか。一緒にいる居心地はいいんだけど、話題が狭く、政治的な話も教養的な話もしない。あるのは惰眠と食卓で、生理的で予測可能なよろこびしかない。安心安全で退屈な時間を過ご��人。おれは人のことをバカにして生きてる。まあいいかそれはいま。ともかく、友人、そう友人の家を出て、千葉中央駅に到着すると、急に大雨が降りはじめた。美術館まで徒歩にしてほんの10分の距離ですけど雨はものすごい。駅ビル内のダイソーで傘を買って足を濡らして10分歩くなら値段的にもそう変わらないと判断し、駅前でタクシーに乗り込みました。「市立美術館まで」と注文します。「市立?」聞き返した運転手はメーターをつけずに発車、すぐに着いて、料金として500円を払う。車運転させておきながら500円玉1枚だけ払って降車するのは後ろめたい。ちょっと照れくさくもある。 タイガー立石の絵はいわゆるコピペっぽさというか、表面的なトレースが多い。ピカソの泣く女やゲルニカ、ダリの溶けた時計、ルソーの自画像、タンギーのうねうね、そんなものがはっきり登場する。作品によっては、モチーフらは一枚の画面にただ雑然と並んでいる。ライブハウスのトイレの壁みたく、全体のなかに中心のない、みるべきメインの仕組まれていない羅列面。 ずっと好きではあったけれど、とはいえどっぷりハマりこんだ覚えのある作家でもない。距離感としては「シュークリーム」とか「揚げ出し豆腐」みたいな。それでも、さすが小さなころからの付き合いだけあって、自分のなかに、あるいはタイガー立石をみる自分のなかに、自分自身の制作態度の原型をみるようで居心地が悪く、やはりちょっと照れくさくもあった。
もちろんカタログを買う。そのために美術館併設の書店に立ち寄った。そこで『LOCUST vol.3』を見つけたので一緒に買ったのだった。太田充胤が、「おいしい、と、おいしそう、のあいだにどんなものが横たわっているのかを考えた原稿を vol.3に載せた」と言っていた覚えがあったためだ。なんだそれ、気になる。そう思っていたところだった。 ぜんぶで7つのパートにわかれたその原稿の、はじめの3つを、ざっくばらんに要約する。 1・はじめの話題は日本の食肉史から。肉を食べることは力をつけることと結び付けられもしてきた。禁じられた時代、忌避された時代もあった。食肉への距離感っていろいろある。 2・野生動物の肉を食うことが一種のブームになっている。都市部でもジビエは扱われている。ただ、大義たる「駆除される害獣をせっか��だから食べる」というシステムは、都市部では説得力がうすい。都市部のジビエは「珍しいもの」としてよろこばれている? 舶来品の価値、「遠いものだから」という価値? 3・身近に暮らす野生動物と生活が接しているかどうかで、(動物の)肉というものへの距離感は変わる。都市部の居酒屋で供される鹿の肉と、裏山にかかってたから屠って食卓に登場する鹿の肉は、そりゃ肉としては同じ鹿肉であっても、心理的な距離の質は同じではない。
イモムシが蝶になる手前、さなぎに変態してしばらくじっとしている。さなぎの中身はどろどろで、イモムシがいったんとろけた汁であり、神話の日本の誕生よろしく、ここから形状があらわれ、蝶になるのだと、子供のころ誰に教えられたわけでもないのに「知って」いた。それは間違いだった。イモムシの背中を裂くと、皮膚のすぐ裏側に羽が用意されている。蝶の体つきは、さなぎになるよりずっと前から、体のなかに収納されている。さなぎはただ、大一番な脱皮状態を身構えてるだけの形態で、さなぎの中がどろどろなのは、イモムシや成体の蝶の体内がどろどろなのとまったく同じことだった。日高敏隆の本で知った。大学院生のころ、ひとの自作解説を聞いていたら、「イモムシがいったんその体の形状をナシにして、さなぎの中でイチから再編成しなおして蝶になるように」という言い方をしている人があった。同じ勘違いだ。 この勘違いはどうして起こり、どうして疑いなく信じ続けられるんだろう。だって、イチから再編成されるなんて、めちゃくちゃじゃないか。めちゃくちゃ不思議なことがあっても、それが「生命の神秘」や「昆虫の不思議さ」に結びついて納得されてしまえば、「ね、不思議だよね、すごいよね」で済む話になるのか。<現代人・大人たちが昆虫を嫌うのは、家の中で虫を見なくなってきたからだ>という論文を先日みつけました。隣近所の人とあいさつをするかどうかで生活の心やすさは大きく変わる。知らない人の物音は騒音でも、知っている人の物音はそんなに不愉快じゃなかったりする。「面識」のあるなしは非常に重要だから、背が伸びてもなお、公園や野原で昆虫と親しみ続ける人生を送っていれば、虫嫌いにはなっていかないだろう。けれど、そういう人生を送っていたとしても、いったん誤解した「さなぎ状態への理解」が誤りだったと、自然に気づけるものだろうか。
岐阜で供されたジビエ肉についての原稿をLOCUSTに執筆した太田充胤は高校の同級生で、とはいえ仲良しだったわけではない。今も別に、特別仲良しとかではない。なんかやってんなあ、おもろそうなこと書いてるなあ、と、ぼんやり眺めて、でも別にわざわざ連絡はしない。卒業後10年、やりとりはなかった。数年前、これを引き合わせた人がいて、あわせて三人で再会したのは新宿三丁目にある居酒屋だった。ダチョウやカンガルー、ワニやイノシシの肉を食べた。それこそ高校の頃に手にとって、ブンガクの世界に惹かれる強烈な一打になったモブ・ノリオの作品に『食肉の歴史』というタイトルのものがあったな、と急に思いついたけれどこれはさすがにこじつけがすぎるだろう。あ、 ああ、自分の話を書くことはみっともなく、辛気臭いからしたくないんだった。「強烈な一打」たるモブ・ノリオの『介護入門』なんてまさに「自分の話」なわけだが、他人の私小説のおもしろさはOK けど、自分がまさに自分のことを語るのは自分にゆるせない。それはひとつに、タイガー立石はじめ、幼少時に楽しんだ絵本の世界のナンセンスさ、ドライさへの憧れがこじれているからだ。 まとまりがなく、学のなさ集中力のなさ、蓄積のなさまであからさまな作文を「小説」と称して書き散らかし、それでもしつこくやり続けることでなんとか形をなしてきて、振��返ると10年も経ってしまった。作文活動をしてきた自負だけ育っても、結果も経歴もないに等しい。はじまりの頃に持っていたこだわりのほとんどは忘れてしまった。それでも、いまだに、自分のことについて書くのは、なんだか、情けをひこうとしているようで恥ずかしい気がする。と、このように書くことで、矛盾が生じているわけだけど、それをわかって書けちゃってるのはなぜか。 それは、書き手の目論見は誤読されるものだし、「私小説/私小説的」というものには、ものすごい幅があるということを、この10年、自分にわかってきたからでもある。むしろ自分のことをしっかり素材にして書いてみてもおもろいかもしれない、などと思いはじめてさえいる。(素材はよいほうがそりゃもちろんいいけど)結局のところ、なんであっても、おもしろく書ければおもしろくなるのだ。
こないだ週末、なぜだか急に、笙野頼子作品が読みたくなった。『二百回忌』じゃなきゃだめだった。久しぶりに引っ張り出して、あわてて読んだ。おもしろかった。モブ・ノリオ『介護入門』に接し衝撃を受けた高校生のころ、とりあえず、その時代の日本のブンガクを手あたり次第漁っていた。そのなかで出会い、一番ひっかかっておきながら、一番味わえていない実感のある作家が笙野頼子だった。当時読んだのは『二百回忌』のほか『タイムスリップ・コンビナート』『居場所もなかった』『なにもしてない』『夢の死体』『極楽・大祭』『時ノアゲアシ取リ』。冊数は少なくないが、「ようわからんなあ、歯ごたえだけめっちゃあるけど、噛むのに手一杯になってしまってよう味わわん」とばかり思っていた。 新潮文庫版『二百回忌』に収録されているのは4作品。いずれも、作家自身が作家自身の故郷や家族(など)に対して抱いているものを、フィクションという膜を張ることで可能になる語り方で語っているものだ。
『大地の黴』: 生まれ故郷に帰ってきた主人公が、故郷での暮らしを回想する。かつて墓場で拾い、そして失くしてしまった龍の骨が、いまや巨大に成長し、墓場を取り囲み、そして鳴る。小さなころ、その土地に居ついている、黴のような茶色いふわふわが見えていた。地元の人の足元にまとわりついていた。いま墓の底から見上げる、よく育った龍の骨たちのまわりにもいる。
『二百回忌』: 二百回忌のために帰省する。親とは険悪で、その意味では帰省したくない。しかし、二百回忌は珍しい行事だし、すでに死んだ者もたくさん参加する祝祭時空間らしいから、ぜひとも行ってみたい。肉親はじめ自分の人生と直接のかかわりをもったことのある地元の顔ぶれは嫌だけど二百回忌には出向く。死者もあらわれる行事だから華々しいし、時間はいろんなところでよじれ、ねじれる。
『アケボノの帯』: うんこを漏らした同級生が、うんこを漏らしたことに開き直って恥ずかしがらない。そればかりか、自分の行いを正当化ないし神聖化し、排泄の精霊として育つ。(漏らしたことで精霊になったから、その同級生には苗字がなくなった!)自分のうんこの話をするのははばかられるけれど、精霊が語る排泄は肥料(豊かさ)や循環の象徴であるからリッパである。
『ふるえるふるさと』: 帰省したらふるさとの土地が微動している、どうやら時間もねじれている。いろいろな過去の出来事が出来していく。
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[4]
『LOCUST』の第三号の特集は岐阜で、おれの祖父母の実家は岐阜にある。大垣にあったはずで、いまどうなっているかは知らない。 父方の祖母が一年ほど前に亡くなった。おれの祖父=おれの父からすれば実父は施設で暮らしはじめた。住む者のなくなった、父の実家は取り壊された。父は仏壇や墓のことを考えはじめ、折からの歴史好きも手伝って、寺を巡っては話をきいてまわるようになった。寺の住職はすごい。自分とこにある墓の来歴ならしっかり把握しており、急に訪れた父が「うちの母のはいった墓は、いつ、誰がもってきたもので、誰がはいっているのか」と尋ねればすらすらと教えてくれる。 つい数代前、滋賀の彦根から、京都の寺に運んできたとのことだ。ところが運んだ者がアバウトで、京都の寺は彦根の寺と宗派が違う。それもあって、一族代々の墓ではなくて、数代のうち、そのアバウトさに異を唱えなかった人らが結果的におさまっているらしい。よう知らんけど。 続いて調査に乗り出した、母方、つまり岐阜の大垣にあった家の墓の来歴についても、どうやらごまかしが多い。ひとりの「かわりもの」のために、墓の行き先がなくなる事態があったらしい。 昭和のなかごろ、青年らは単身で都会へと引っ越しはじめ、田舎に残してきた墓をそのままにしてると数十年のちに誰か死ぬ。次は誰の番だろうかと悩むころには、あれこれ調べて動かす余裕がない。嫁ぎ先の墓にはいるとか、別の墓をたてるとか、戦死してうやむやになってるとか、ややこしいからウチは墓を継ぎたくないとか、もはやふるさとはないから墓ごと引っ越したいけど親戚全員への連絡の手立てがないのでできる範囲だけを整理して仕切り直すだとか、そういうごたごたを探査するのがおもしろいらしい。 父から送られてきた、一緒に夕食を食べることを誘うメールには、「うちの墓についての話をしたい」と書いてあって、おれはて��きり、「墓を継げ!」というような説教をくらうのかと身構えていたのだけど、全然そうじゃなかった。墓の来歴からみえてきた、数代前のずさんさ、てきとうさから、果ては戦国時代の仏教戦争まで、わがこととしての眺望が可能になった歴史物語を一席ぶちたかっただけだったみたいだ。よかった。
京都で父は祖父、父からすれば実父と、たまにあそんで暮らしている。祖母なきいま、90近い祖父と話をできるのはあとどれくらいかと思いを馳せるとき、父はふと、戦争の頃のことを聞いておこうと思い立った。いままでぶつけていなかった質問をした。 「お父ちゃん、戦争のときなにしとったん?」 祖父は15歳だった。日本軍はくたびれていた。戦局はひどい。余裕がない。15歳だった祖父は、予科練にはいった。 「軍にはいれば、ご飯が食べられるから」と祖父は笑って話したそうだ。けれど理由の真ん中は本当はそこじゃない。どうせだめになるのだ、負けるのだ。自分の兄、つまり一家の長子を死なすわけにはいかない。兄=長男に家は任そう。長男が無理やり徴収される前に、次男である自分が身を投げうとう。 きっと必要になるから、と考えて、英和辞書を隠し持って予科練にはいった。敵の言葉の辞書を軍に持ち込んでこっそり勉強するなんて、見つかったらえらいことになる。 その頃、12歳だった祖母は、呉の軍需工場で働いていた。 生前の祖母、というか、祖父と出会ったばかりだった祖母は、祖父が、長男に代わって死ぬつもりで、自ら志願して予科練にはいっていたことを聞いて泣いたという。 おれの父親は、おれの祖父からそんなような話を引き出していたそうだ。父としても、はじめて聞く話だった。 90近くなった自分の父親が、目の前で話をする。自分の身に起きたこと、戦争時代の思い出話をする。子供の前で語ってこなかった話を語る。なんだか瀬戸内寂聴みたいな見た目になってきている。極端な福耳で、頭の長さの半分が耳である。 本人は平気な顔をして、ただ、思い出を話しているだけなのである。それでも、「大井川で、戦地へ赴く特攻隊を見送った。最後に飛び立つ隊長機は空でくるりと旋回したあと、見送る人々に敬礼をした。」と、この目で見た、体験した出来事についての記憶を、まさに目の前にいる、親しみ深い人物が回想し話しているのに接して、おれの父は号泣したという。これは「裏山にかかってたから屠って食卓に登場する鹿の肉」なのだ。
戦争への思いのあらわれた涙ではない。あわれみや悲しみでもない。伝え聞いていたという意味では「知って」いたはずの戦争だが、身近な存在たる父親が直接の当事者であったことがふいに示されて、戦争が急激に近くなる。父親が急激に遠くなる。目の前で話されていることと、話している人との距離感が急激に揺さぶられた。このショックが、号泣として反応されたのではないか。食事中、口にする豚肉を「ロースだよ」と教えてくるような調子でふいに、「この豚は雌だよ」とささやかれて受けるショックと同質の、「近さ」についての涙なのではないか。感情の涙ではなくて、刺激への反応としての落涙。 これでひとまず、自分の描く分を切り上げる。思えばいろいろなトピックに立ち寄ったものです。ラブコメにはじまり、犯罪的行為と共同体の紐帯の話、内的な事件「恋」の取り扱い方、ジビエを食べること、故郷についてのマジックリアリズム。 散らかすだけ散らかしておいて、まとめるとか、なにかの主張に収束するということもない。中心がない。さながらライブハウスのトイレの壁みたく、みるべきメインの仕組まれていない羅列面。 この羅列面に対して連想されるもの、付け足したくなったものがあれば、各々が好き勝手に続きを書いてください。うまく繁茂すれば、この世のすべてを素材・引用元とした雑文になるはずです。や、ほんとのことをいえば、すでにテキストというものはそういうものなんですけど。
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パターソンについての考察ー Wednesday
うっすらと目を開けると正面にスティーブの顔があった。バッキーは何度か瞬きをして目の前で眠る男に焦点を合わせる。唇をわずかに開き、穏やかな息の音を吐き出している。起きているときは何かと力を込めがちなその眉間も、今は皺の影もなく存分にリラックスできているようだった。
バッキーはシーツを静かに浮かせて、少しだけスティーブに身を寄せた。向き合った顔と顔の間からシーツの中の空気が漏れ、バッキーの顔を温かくこもった空気が撫でていく。ぼんやりとした頭に、その温度が心地よい。眠っている人間の体温は高く、バッキーの顔を撫でてから霧散したそれからは、焼き立てのパンのような匂いがした。
よくスティーブは起き抜けのバッキーに顔を寄せては「寝起きの匂いがする」なんて言って笑ってくる。恥ずかしいからやめろと言っても一向に聞く気配がない。寝起きの体臭なんて好んで嗅ぐようなものじゃないだろうに、いつの間にそんな癖をつけたのだろう。詳しいことも言わずに、ただ毎回首筋に顔を埋めては少しだけ愉快そうに言うのだ。もう最近は怒る気もしなくなって、好きなようにさせている。
バッキーは霧散した匂いにそんなことを思い出しながら、そっとスティーブに身を寄せる。足を動かしてスウェット生地を辿り、相手の足の甲に親指を触れさせた。案の定スティーブのそれはしっかりと温かく、バッキーを十分に満足させる感触だった。足先、土踏まず、次に踵とぺたぺたと自分の足を押し付けては、柔らかくしかしその中にある骨の感触を肌で確かめる。最後に足裏全体で撫でてやれば、とうとうスティーブの瞼がふるりと震えた。
「……バック」
「うん、おはよう」
バッキーはスティーブに名前を呼ばれることが好きだった。特に、起き抜けでまだ舌ったらずなスティーブが紡ぐそれが。たった一言なのに、どんな言葉より自分を安心させてくれて、吹き出しそうになる程甘い。自然と吊り上がる口元を自覚しながら、額に垂れた前髪を梳いてやる。スティーブはまだ覚醒の途中なのか、むにゃむにゃと口を動かしている。そして目を閉じたまま、ぼやけた声でこう呟いた。
「……夢を見た」
「ん?」
「僕とお前で……ずっとどこかを旅してるんだ。ルート66みたいな、開けた場所を走ってて、でも僕らの乗り物は安っぽい自転車で」
「……へえ」
随分と可愛らしく、夢らしい夢だ。バッキーは愉快さを含んだ声で応えた。
「何にもない一本道なのに、気付いたら周りが昔のブルックリンになってて……人混みがあるからってお前は僕に先に行けって言うんだ……僕はそれに真面目に頷いて、しばらく縦列走行して、でも次の瞬間にはまた荒野を並んで走ってる……」
依然として目を開けないのはまだその風景を瞼の裏に見ているからだろうか。夢なんてシュールであってなんぼだが、きれいに縦列になった自分たちを想像すると少し笑える。空気が揺れたのに気付いたのか、スティーブは今度こそ瞼をあげ、自身も可笑しそうに目を細めた。薄暗い室内で目の青色が濃く見える。
「なあバッキー、」
「どうした?」
「……来年の春になったらバイクを買おう。2人でツーリングするんだ」
スティーブはとっておきの計画を話すかのような声で囁く。起き抜けの無邪気さがバッキーの顔を更に綻ばせた。
「いいぜ、楽しみだな」
バッキーも声を潜めて答える。スティーブが運転するバイクの後部座席も好きだが、風を切って走るこいつを横から見られるならそれも良い。バッキーの返答を聞き、スティーブは笑った。
実際のところ、スーパーソルジャーが揃って数日間も休みを取れることなんて奇跡に等しい。だからきっとルート66を走れる日はずっと先までこないだろう。それでも2人は満足げに笑い合った。今ここで秘密の計画を共有できる楽しさを味わい、そしてそれを存分に満喫してから、日帰りで楽しめるルートを描くのだ。
昼前に基地に出向いた2人はそのままロッカールームへと直行した。昨日までバッキーが取り組んでいた暗号解析は既に情報精査の段階に入っている。それにはバッキーよりも余程適した人材がいるため、バッキーは一度ここでお役御免になるのだ。よって本日は久しぶりにスティーブと手合わせをすることになっていた。
昨日のサムとの演習とは違い、2人がいるのは屋内にあるトレーニングルームである。マシンの一つも置いていない殺風景な場所だが、派手な武器を使わない2人にとってはシンプルな方がありがたい。
「基地を壊すなって、トニーからの伝言だ」
「わかってるよ、サム。手加減はする」
そういうサムは監督役らしく、だだっ広い部屋の隅で腕を組んでいる。
「……へえ、手加減するって、負けた時の言い訳か?」
耳に入った言葉にバッキーは素早く反応した。挑発じみた言葉はからかいの意図が大きいが、気分が高揚しているのは確かだ。それはおそらくスティーブも同じだろう。なんたって純粋な身体能力でいえば、お互いの相手が務まるのは自分たちだけなのだ。全力までとはいかなくとも、マシンや他の相手と手合わせする時とは雲泥の差がある。だからスケジュールに組み込まれたこの日を楽しみにしていたのは、きっと自分だけじゃない。
「お前こそ」
サムに言わせてみれば「いたずらを企んでるガキ」にしか見えない笑みを浮かべつつ、2人の手合わせは始まった。決着がつけば小休止、着かなければ30分で区切って小休止。盾もメタルアームも使用しないステゴロ仕様。お互いが遠慮せずにスピードを出せるのは、いっそ爽快に思えるほどだった。
1時間が過ぎ、2時間が過ぎ、気づけば監督役でもなんでもないギャラリーが増えても、一向にお互いを負かすことができない。何度目かの休憩でバッキーは少し息を荒げながら告げた。
「なあ、ついでに今日の夕飯を賭けよう」
「いいぞ。どうせお前が負ける」
軽口に乗ってくるあたり、スティーブもだいぶ熱が入っているらしい。バッキーは鼻で笑うと、色が変わった相手のウェアを指差して続けた。
「んなこと言って、お前の方が必死に見えるぞ。……じゃあ恥ずかしい秘密を一個。これも付け加えで」
「乗った。ただお前が負けても女の子に振られた話は無しだ。もう聞き飽きてるし見飽きてる」
「お前もデートの前に風邪ひいてぶっ倒れた話は無しだ。そんなの全部知ってる」
サムに言わせてみれば「常人なら死ぬレベルで殴り合ってるのに口喧嘩はガキ」でしかない応酬を繰り広げながら、2人の手合わせはその後も続いた。
正直に言って、楽しくないわけがないのだ。大戦中から数えても、スティーブとバッキーが同等の力で純粋に手合わせができたのは、この現状に落ち着いて初めてできたことの一つだった。敵意のないそれは一種のコミュニケーションでもある。次にどうくるのか、どう動くのかを考えることなんて無意識にだってできる。だからトリッキーに仕掛けた時に相手がうまく対応すると、悔しさより面白さの方が優ってしまう。そして頭も心もより一層高揚するのだ。こんなこと、楽しくないわけがなかった。ナターシャに言わせれば「本気の遣り合いにかこつけたデート」だったらしい2人の手合わせは、大勢のギャラリーを魅了しながらも空が赤く染まるまで終わらなかった。
◇◇◇◇
「恥ずかしい秘密なあ……」
コーヒーの入ったマグカップを抱え、バッキーはいつものソファでリラックスした姿勢をとっていた。スティーブもその隣に腰掛ける。
結局あの後も純粋な勝負では決着がつかず、業を煮やした外野からのたくさんの条件付けによって夕飯はスティーブに、そして秘密の暴露はバッキーに課せられることになった。バッキーは悔しがっていたが、2人の、しかも相当なな運動量をこなした後の超人2人の食事量となると金額的にも馬鹿にならない。そんな予想に違わず、2人は大量のデリとバーガーをテイクアウトし、無言で平らげた。ちゃっかり食後のコーヒーまで準備させて、ようやくバッキーの番というわけだ。
とはいっても、スティーブからしてみれば、この幼なじみの恥ずかしい失敗なんて今更聞いたところで目新しいものがあるとは思えないのだが。
バッキーはしばらくマグカップの中を覗き込んだ後、思い当たることがあったのか小さく笑い声をこぼした。
「……昔さ、お前に小説を借りたことがあったろ」
「本?」
「そう、面白かったからって言って勧めてくれた。主人公の絵がどんどん変わっていくやつ……覚えてるか?」
「ああ、あれか。『ドリアン・グレイの肖像』だろ」
その小説のことは覚えていた。課題図書として読み始めたところ夢中になるほど面白く、その後バッキーにも貸したのだ。
「あれさ、あの後怖くてしばらく眠れなかったんだ」
「え……?」
スティーブは予想外のところから飛んできたバッキーの告白に面食らう。あの頃、怖いものなんて知らないとばかりに堂々としていたバッキーが。女の子に振られてもまたやっちまったよなんて飄々としていたバッキーが。まさか自分が貸した小説を読んで眠れなくなってたなんて。そんな思いが顔に出ていたのか、バッキーはばつが悪そうに身動ぎする。
「俺昔からああいうの苦手なんだよ。ホラーっていうか、ぞわぞわする感じが」
「そうだったのか……」
たしかにホラー小説の括りではなかったが、薄気味の悪さの漂う話ではあった。主人公が恋人を捨て、初めて自分の肖像画が醜く変化していることに気づいたときの衝撃は、描写も相まってスティーブも思わず背筋を震わせた。
「しかもお前、よく俺の絵を描いてただろ。夜になるとそういうのも思い出して」
「うん」
「お前に内緒で、スケッチブック全部盗み見たこともある」
「えっ」
「絵が変わってないか、怖かったんだよ」
そこまで言うとバッキーは非難の色を含んだ目でスティーブを見た。
「それなのにお前は平気で面白かっただろって聞いてくるし。こいつは怖くないんだって思ったらなんかムカついた」
思い出した、恥ずかしいっていうかムカつく話だった、とバッキーはぶつくさと呟く。視線はマグカップに戻り、スティーブからは彼の唇が僅かに突き出されているのが分かった。確か、ハイスクールに入る前の出来事だ。その頃のことを思い出して、当時のような幼い表情をして見せるバッキーに、スティーブは反対に面白さを隠せない。
「あ、笑ったな、クソ野郎」
「だってあの頃のお前の兄貴面を思い出したら。馬鹿だなあって」
「うるさい」
スティーブはとうとう耐えきれなくなって笑い声をあげた。振動で手にしていたコーヒーの水面に波が立つ。しかめっ面をしていたバッキーも、次第にその表情を緩ませると、ついには呆れたように破顔する。大の大人がソファに並んで肩を震わせている。スティーブの頭の中に、恐る恐るスケッチブックをめくるバッキーと、何食わぬ顔で自分に説教をしていたバッキーが交互に浮かんでは消えた。
しばらくそうして笑っていると、息を整えたバッキーが再び口を開いた。
「まあ、でも俺たちも言ってみりゃ、100歳越えでこの身体だもんな」
「どこかに僕らの絵があるのかも」
「やめろよ、ぞっとしねえ」
そう言ってまた小さく笑う。たしかに生まれた年と肉体的な年齢には大きな差があり、加えて血清で強化された身体は彼らの老化を通常よりも緩やかなものにしていた。
しかし、���からと言って完全に時間が止まっているわけではない。スティーブはそっと手を伸ばし、くつくつと笑うバッキーの目元を撫でた。その指の腹に伝わる感触に目を細める。
「大丈夫、僕らはちゃんと老いてる」
バッキーが笑う度、目尻に皺がよるようになったのはいつからだろう。きっとワカンダで過ごしているあたりだろうが、気づいた時には元からそうだったと言わんばかりに、それが彼の笑顔の一部になっていた。ただ一つ確実に言えるのは、それからスティーブは彼の笑顔を更に好きになったということだ。ひなたのように温かくて優しい目。今も、スティーブの言わんとしていることに気付いてその皺を深くしている。
「お前も髭が生えるようになった」
バッキーは穏やかに言い、同じように顎の骨をなぞった。じんわりと体温が伝わってくる。
「あれはもうしばらくいい」
「似合ってたのに」
バッキーの手が動く。彼の頬を覆っていたスティーブの手に重ねられる。
「手も柔らかくなった」
「……普通は逆じゃないのか」
「そうだな、でも昔のお前は骨張ってて冷たかった。今は温かくて柔らかい。肉付きもいい」
「バッキーも早起きできるようになった」
「しかも湖を見るために」
バッキーのこぼした息が掌をかすめる。
「俺ら、もうとっくに年寄りだな」
そう言って笑うバッキーの目元をスティーブはもう一度撫でた。
胸に迫るたくさんの思いがある。辛かったり、優しかったりするそれらは、もうほどくことができないほど深く絡み合い、スティーブの胸を押しつぶす。それは、時折苦しくて息ができないほどに。ただこうしてソファに身を預け、バッキーと笑い合うことができるうちは、スティーブは自分の心に少しだけ優しくな��うと決めていた。なぜならスティーブは、その苦しさの意味を知っていたから。
「……誰かといて満たされてると思ったり」
バッキーは一瞬瞠目し、すぐに目を伏せた。
「……ベッドのテクが上達したり?」
「こら」
「はは、悪い。老いっていうより成長だな、スティーヴィ」
照れ隠しをしてくれるなら、それは彼に正しく伝わった証拠でもある。だからスティーブはそれ以上言葉を重ねることをやめ、バッキーの左手から冷たくなったマグカップをそっと取り除いた。
時計の針は9時を回ったところだった。今すぐに寝ようとでもすれば、また一つ高齢者と言われる理由を作る羽目になる。スティーブは伺いの意味を込めてバッキーと目線を合わせた。バッキーはくすぐったそうに口元を動かすと、やがて囁くようにこう言った。
「……今は? 満たされきってる?」
「……足りない、かも」
2人は顔を見合わせた後、やはり耐えきれなくなって小さく笑った。
おそらく夜はまだ続き、知らない間に日付は変わっているだろう。
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小説家蓮實重彦、一、二、三、四、
人間に機械を操縦する権利があるように、機械にもみずから作動する権利がある。 ーー『オペラ・オペラシオネル』ーー
一、
二朗は三度、射精する。そしてそれはあらかじめ決められていたことだ。 一度目の精の放出は、ハリウッドの恋愛喜劇映画を観た帰りの二朗が、小説の始まりをそのまま引くなら「傾きかけた西日を受けてばふりばふりとまわっている重そうな回転扉を小走りにすり抜け、劇場街の雑踏に背を向けて公園に通じる日陰の歩道を足早に遠ざかって行くのは和服姿の女は、どう見たって伯爵夫人にちがいない」と気づいたそばから当の伯爵夫人にまるで待ち構えていたかのように振り返られ、折角こんな場所で会ったのだしホテルにでも寄って一緒に珈琲を呑もうなどと誘いかけられて、向かう道すがら突然「ねえよく聞いて。向こうからふたり組の男が歩いてきます。二朗さんがこんな女といるところをあの連中に見られたくないから、黙っていう通りにして下さい」と、なかば命令口調で指示されて演じる羽目になる、謎の二人組に顔を視認されまいがための贋の抱擁の最中に起こる。
小鼻のふくらみや耳たぶにさしてくる赤みから女の息遣いの乱れを確かめると、兄貴のお下がりの三つ揃いを着たまま何やらみなぎる気配をみせ始めた自分の下半身が誇らしくてならず、それに呼応するかのように背筋から下腹にかけて疼くものが走りぬけてゆく。ああ、来るぞと思ういとまもなく、腰すら動かさずに心地よく射精してしまう自分にはさすがに驚かされたが、その余韻を確かめながら、二朗は誰にいうとなくこれでよしとつぶやく。
なにが「これでよし」なのか。ここは明らかに笑うべきところだが、それはまあいいとして、二度目の射精は、首尾よく二人組を躱したものの、ホテルに入るとすぐに新聞売り場の脇の電話ボックスに二朗を連れ込んだ伯爵夫人から先ほどの抱擁の際の「にわかには受け入れがたい演技」を叱責され、突然口調もまるで「年増の二流芸者」のようなあけすけさに一変したばかりか「青くせえ魔羅」だの「熟れたまんこ」だの卑猥過ぎる単語を矢継ぎ早に発する彼女に、事もあろうに「金玉」を潰されかけて呆気なく失神し、気がつくと同じ電話ボックスで伯爵夫人は先ほどの変貌が夢幻だったかのように普段の様子に戻っているのだが、しかしそのまま彼女のひどくポルノグラフィックな身の上話が始まって、けっして短くはないその語りが一段落ついてから、そろそろ「お茶室」に移動しようかと告げられた後、以前からあちこちで囁かれていた噂通りの、いや噂をはるかに凌駕する正真正銘の「高等娼婦」であったらしい伯爵夫人の淫蕩な過去に妙に大人ぶった理解を示してみせた二朗が、今度は演技と異なった慎ましくも本物の抱擁を交わしつつ、「ああ、こうして伯爵夫人と和解することができたのだ」と安堵した矢先に勃発する。「あらまあといいながら気配を察して相手は指先を股間にあてがうと、それを機に、亀頭の先端から大量の液体が下着にほとばしる」。 そして三度目は、伯爵夫人と入れ替わりに舞台に登場した「男装の麗人」、二朗への颯爽たる詰問ぶりゆえ警察官ではないにもかかわらず「ボブカットの女刑事」とも呼ばれ、更に「和製ルイーズ・ブルックス」とも呼ばれることになる女に案内されたホテルの奥に位置する「バーをしつらえたサロンのような小さな空間」ーー書棚がしつらえられ、絵が飾られ、���音機が置かれて、シャンデリアも下がっているのだが、しかしその向こうの「ガラス越しには、殺風景な三つのシャワーのついた浴場が白いタイル張りで拡がっており、いっさい窓はない」ことから戦時下の「捕虜の拷問部屋」を思わせもするーーで、この「更衣室」は「変装を好まれたり変装を余儀なくされたりする方々のお役に立つことを主眼として」いるのだと女は言って幾つかの興味深い、俄には信じ難い内容も含む変装にかかわる逸話を披露し、その流れで「金玉潰しのお龍」という「諜報機関の一員」で「かつて満州で、敵味方の見境もなく金玉を潰しまくった懲らしめの達人」の存在が口にされて、ひょっとしてこの「お龍」とは伯爵夫人そのひとなのではないかと訝しみつつ、突如思い立った二朗は目の前の和製ルイーズ・ブルックスをものにして俺は童貞を捨てると宣言するのだが事はそうは進まず、どういうつもりか女は彼に伯爵夫人のあられもない写真を見せたり、伯爵夫人の声だというが二朗の耳には自分の母親のものとしか思われない「ぷへーという低いうめき」が録音されたレコードを聞かせたりして、そして唐突に(といってもこの小説では何もかもが唐突なのだが)「こう見えても、このわたくし、魔羅切りのお仙と呼ばれ、多少は名の知られた女でござんす」と口調を一変させてーーここはもはや明らかに爆笑すべきところだが、それもまあいいとしてーー血塗れの剃刀使いの腕を自慢するのだが、その直後におよそ現実離れした、ほとんど夢幻か映画の中としか思えないアクション場面を契機に両者の力関係が逆転し、言葉責めを思わせる丁寧口調で命じられるがまま和製ルイーズ・ブルックスは身に纏った衣服を一枚一枚脱いでいって最後に残ったズロースに二朗が女から取り上げた剃刀を滑り込ませたところでなぜだか彼は気を失い、目覚めると女は全裸でまだそこに居り、これもまたなぜだか、としか言いようがないが、そもそも脱衣を強いた寸前の記憶が二朗にはなく、なのに女は「あなたさまの若くて美しいおちんちんは、私をいつになく昂らせてくださいました。たしかに、私の中でおはてにはなりませんでしたが、久方ぶりに思いきりのぼりつめさせていただきました」などと言い出して、いまだ勃起し切っている二朗の「魔羅」について「しっかりと責任は取らせていただきます」と告げて背中に乳房が押しつけられるやいなや「間髪を入れず二朗は射精する」。 帝大法科への受験を控えた二朗少年のヰタ・セクスアリスとして読めなくもない『伯爵夫人』は、ポルノグラフィと呼ばれてなんら差し支えないあからさまに助平な挿話とはしたない語彙に満ち満ちているのだが、にもかかわらず、結局のところ最後まで二朗は童貞を捨て去ることはないし、物語上の現在時制においては、いま見たように三度、何かの事故のようにザーメンを虚空にぶっ放すのみである。しかも、これら三度ーーそれもごくわずかな時間のあいだの三度ーーに及ぶ射精は、どうも「金玉潰しのお龍」が駆使するという「南佛でシャネル9番の開発にかかわっていたさる露西亜人の兄弟が、ちょっとした手違いから製造してしまった特殊な媚薬めいた溶液で、ココ・シャネルの厳しい禁止命令にもかかわらず、しかるべき筋にはいまなお流通しているもの」の効果であるらしいのだから、しかるに二朗は、一度として自分の意志や欲望の力によって己の「魔羅」に仕事をさせるわけではないし、彼の勃起や射精は、若く健康な男性の肉体に怪しげな薬物が齎した化学的/生理的な反応に過ぎないことになるわけだ。実際、物語上の時間としては過去に属する他の幾つかの場面では、百戦錬磨の女中頭の小春に技術を尽くして弄られようと、従妹の蓬子に「メロンの汁で手を湿らせてから」初々しくも甲斐甲斐しく握られようと、二朗は精を漏らすことはないし、ほとんど催すことさえないかのようなのだ。 つまりここにあるのは、その見てくれに反して、二朗の性的冒険の物語ではない。彼の三度に及ぶ射精は、詰まるところケミカルな作用でしかない。それでも三度も思い切り大量に放出したあと、二朗を待っているのは、今度は正反対のケミカルな効用、すなわち「インカの土人たちが秘伝として伝える特殊なエキスを配合したサボン」で陰茎を入念に洗うことによって、七十二時間にもわたって勃起を抑止されるという仕打ちである。三度目に出してすぐさま彼は「裸のルイーズ・ブルックス」にその特殊なサボンを塗りたくられ、すると三度も逝ったというのにまだいきりたったままだった「若くて元気なおちんちん」は呆気なく元気を喪い、更には「念には念を入れてとスポイト状のものを尿道にすばやく挿入してから、ちょっと浸みますがと断わって紫色の液体を注入」までされてしまう。サボンの効果は絶大で、二朗の「魔羅」はこの後、小説の終わりまで、一度として射精もしなければ勃起することさえない。物語上の現在は二朗がケミカルな不能に陥って間もなく終了することになるが、それ以後も彼のおちんちんはまだまだずっと使いものにならないだろう。七十二時間、つまり三日後まで。そしてこのことも、ほとんどあらかじめ決められていたことなのだ。 『伯爵夫人』は小説家蓮實重彦の三作目の作品に当たる。一作目の『陥没地帯』は一九七九年に、二作目の『オペラ・オペラシオネル』は一九九四年に、それぞれ発表されている。第一作から最新作までのあいだにはじつに三十七年もの時間が経過しているわけだが、作者は自分にとって「小説」とは「あるとき、向こうからやってくるもの」だと言明しており、その発言を信じる限りにおいて三編の発表のタイミングや間隔は計画的なものではないし如何なる意味でも時期を心得たものではない。最初に『陥没地帯』が書かれた時点では『オペラ・オペラシオネル』の十五年後の到来は想像さえされておらず、更にそれから二十二年も経って『伯爵夫人』がやってくることだって一切予想されてはいなかったことになるだろう。偶然とも僥倖とも、なんなら奇跡とも呼んでしかるべき小説の到来は、因果律も目的意識も欠いた突発的な出来事としてそれぞれ独立しており、少なくとも「作者」の権能や意識の範疇にはない。第一、あの『「ボヴ���リー夫人」論』が遂に上梓され、かねてよりもうひとつのライフワークとして予告されてきた映画作家ジョン・フォードにかんする大部の書物の一刻も早い完成が待たれている状態で、どうして『伯爵夫人』などという破廉恥極まる小説がわざわざ書かれなくてはならなかったのか、これは端的に言って不可解な仕業であり、何かの間違いかはたまた意地悪か、いっそ不条理とさえ言いたくもなってくる。仮に作者の内に何ごとか隠された動機があったにせよ、それは最後まで隠されたままになる可能性が高い。 だがそれでも、どうしてだか書かれてしまった「三」番目の小説である『伯爵夫人』が、「二」番目の『オペラ・オペラシオネル』から「二」十「二」年ぶりだなどと言われると、それを読む者は読み始める前から或る種の身構えを取らされることになる。なぜならば、ここにごく無造作に記された「二」や「三」、或いはそこからごく自然に導き出される「一」或いは「四」といった何の変哲もない数にかかわる、暗合とも数秘学とも、なんなら単に数遊びとでも呼んでしかるべき事どもこそ、小説家蓮實重彦の作品を貫く原理、少なくともそのひとつであったということがにわかに想起され、だとすればこの『伯爵夫人』もまた、その「原理」をほとんどあからさまな仕方で潜在させているのだろうと予感されるからだ。その予感は、すでに『陥没地帯』と『オペラ・オペラシオネル』を読んでしまっている者ならば、実のところ避け難いものとしてあるのだが、こうして『伯爵夫人』を読み終えてしまった者は、いま、読み始める前から或る独特な姿勢に身構えていた自分が、やはり決して間違ってはいなかったことを知っている。二朗が射精するとしたら、三度でなければならない。二朗が不能に陥るとしたら、三日間でなければならないのだ。では、それは一体、どういうことなのか? どういうことなのかを多少とも詳らかにするためには、まずは小説家蓮實重彦の先行する二作品をあらためて読み直してみる必要がある。数遊びは最初の一手からやってみせなければわかられないし、だいいち面白くない。遊びが遊びである以上、そこに意味などないことは百も承知であれば尚更、ともかくも一から順番に数え上げていかなくてはならない。そう、先回りして断わっておくが、ここで云われる「原理」とは、まるっきり無意味なものであるばかりか、おそらく正しくさえない。だが、意味もなければ正しくもない「原理」を敢然と擁護し、意味とも正しさとも無縁のその価値と存在理由を繰り返し強力に証明してきた者こそ、他ならぬ蓮實重彦そのひとではなかったか?
二、
小説家蓮實重彦の第一作『陥没地帯』は、あくまでもそのつもりで読んでみるならば、ということでしかないが、戦後フランスの新しい作家たち、誰よりもまずはクロード・シモンと、だいぶ薄まりはするがアラン・ロブ=グリエ、部分的にはモーリス・ブランショやルイ=ルネ・デ・フォレ、そしてジャン=ポール・サルトルの微かな影さえ感じられなくもない、つまりはいかにも仏文学者���あり文芸批評家でもある人物が書きそうな小説だと言っていいかもしれない。日本語の小説であれば、これはもう疑いもなく、その五年ほど前に出版されていた金井美恵子の『岸辺のない海』へ/からの反響を聴き取るべきだろう。西風の吹きすさぶ砂丘地帯から程近い、こじんまりとした、さほど人気のない観光地でもあるのだろう土地を舞台に、ロマンの破片、ドラマの残骸、事件の痕跡のようなものたちが、ゆっくりと旋回しながらどことも知れぬ場所へと落ちてゆくのを眺めているような、そんな小説。ともあれ、冒頭の一文はこうだ。
遠目には雑草さながらの群生植物の茂みが、いくつも折りかさなるようにしていっせいに茎を傾け、この痩せこけた砂地の斜面にしがみついて、吹きつのる西風を避けている。
誰とも知れぬ語り手は、まずはじめにふと視界に現れた「群生植物」について、「その種類を識別することは何ともむつかしい」のみならず、「この土地の人びとがそれをどんな名前で呼んでいるのかは皆目見当もつかないだろう」と宣言する。結局、この「群生植物」は最後まで名前を明かされないのだが、そればかりか、物語の舞台となる土地も具体的な名称で呼ばれることはなく、登場人物たちも皆が皆、およそ名前というものを欠いている。この徹底した命名の拒否は、そのことによって否応無しに物語の抽象性を際立たせることになるだろう。 もっとも語り手は、すぐさま次のように述べる。
何か人に知られたくない企みでもあって、それを隠そうとするかのように肝心な名前を記憶から遠ざけ、その意図的な空白のまわりに物語を築こうとでもいうのだろうか。しかし、物語はとうの昔に始まっているのだし、事件もまた事件で特定の一日を選んで不意撃ちをくらわせにやってきたのではないのだから、いかにも退屈そうに日々くり返されているこの砂丘でのできごとを語るのに、比喩だの象徴だのはあまりに饒舌な贅沢品というべきだろう。いま必要とされているのは、誰もが知っているごくありふれた草木の名前でもさりげなく口にしておくことに尽きている。
だから実のところ命名は誰にでも許されているのだし、そこで口にされる名はありきたりのもので構わない。実際、わざわざ記すまでもないほどにありふれた名前を、ひとびとは日々、何のこだわりもなくごく普通に発話しているに違いない。そしてそれは特に「群生植物」に限らない話であるのだが、しかし実際には「誰もが知っているごくありふれた」名前さえ一度として記されることはない。凡庸な名前の、凡庸であるがゆえの禁止。ところが、ここで起きている事態はそれだけではない。かなり後の頁には、そこでは弟と呼ばれている誰かの「ここからでは雑草とちっともかわらない群生植物にも、ちゃんと名前があったんだ。土地の人たちがみんなそう呼んでいたごくありきたりな名前があった。でもそれがどうしても思い出せない」という台詞が記されており、もっと後、最後の場面に至ると、弟の前で幾度となくその名前を口にしていた筈の姉と呼ばれる誰かもまた、その「群生植物」の名を自分は忘れてしまったと告白するのだ。つまりここでは、名づけることのたやすさとその恣意性、それゆえのナンセンスとともに、たとえナンセンスだったとしても、かつて何ものかによって命名され、自分自身も確かに知っていた/覚えていた名前が理由もなく記憶から抜け落ちてゆくことのおそろしさとかなしみが同時に語られている。ありとあらゆる「名」の風化と、その忘却。覚えているまでもない名前を永久に思い出せなくなること。そんな二重の無名状態に宙吊りにされたまま、この物語は一切の固有名詞を欠落させたまま展開、いや旋回してゆく。そしてこのことにはまた別種の機能もあると思われるのだが、いま少し迂回しよう。 右の引用中の「物語はとうの昔に始まっているのだし、事件もまた事件で特定の一日を選んで不意撃ちをくらわせにやってきたのではないのだから」という如何にも印象的なフレーズは、語句や語順を微妙に違えながら、この小説のなかで何度となく繰り返されてゆく。これに限らず、幾つかの文章や描写や叙述が反復的に登場することによって、この小説は音楽的ともいうべき緩やかなリズムを獲得しているのだが、それはもう一方で、反復/繰り返しという運動が不可避的に孕み持つ単調さへと繋がり、無為、退屈、倦怠といった感覚を読む者に喚び起こしもするだろう。ともあれ、たとえば今日という一日に、ここで起こることのすべては、どうやら「昨日のそれの反復だし、明日もまた同じように繰り返されるものだろう。だから、始まりといっても、それはあくまでとりあえずのものにすぎない」という達観とも諦念とも呼べるだろう空気が、そもそもの始まりから『陥没地帯』の世界を覆っている。 とはいえ、それは単純な繰り返しとはやはり異なっている。精確な反復とは違い、微細な差異が導入されているからではなく、今日が昨日の反復であり、明日が今日の反復であるという前後関係が、ここでは明らかに混乱を来しているからだ。この小説においては、物語られるほとんどの事件、多くの出来事が、時間的な順序も因果律も曖昧なまましどけなく錯綜し、あたかも何匹ものウロボロスの蛇が互いの尻尾を丸呑みしようとしているかのような、どうにも不気味な、だが優雅にも見える有様を呈してゆく。どちらが先にあってどちらがその反復なのかも確定し難い、起点も終点も穿つことの出来ない、方向性を欠いた反復。あたかもこの小説のありとある反復は「とうの昔に始まって」おり、そして/しかし、いつの間にか「とうの昔」に回帰してでもいくかのようなのだ。反復と循環、しかも両者は歪に、だがどこか整然と絡み合っている。しかも、それでいてこの小説のなかで幾度か、まさに不意撃ちのように書きつけられる「いま」の二語が示しているように、昨日、今日、明日ではなく、今日、今日、今日、いま、いま、いま、とでも言いたげな、現在形の強調が反復=循環と共存してもいる。それはまるで、毎日毎日朝から晩まで同じ演目を倦むことなく繰り返してきたテーマパークが、そのプログラムをいつのまにか失調させていき、遂にはタイマーも自壊させて、いま起きていることがいつ起こるべきことだったのかわからなくなり、かつて起こったことと、これから起こるだろうことの区別もつかなくなって、いまとなってはただ、いまがまだかろうじていまであること、いまだけはいつまでもいまであり続けるだろうことだけを頼りに、ただやみくもに、まだなんとか覚えていると自分では思っている、名も無きものたちによるひと続きの出し物を、不完全かつ不安定に延々と繰り返し上演し続けているかのようなのだ。 二重の、徹底された無名状態と、壊れた/壊れてゆく反復=循環性。『陥没地帯』の舞台となる世界ーーいや、むしろ端的に陥没地帯と呼ぶべきだろうーーは、このふたつの特性に支えられている。陥没地帯の物語を何らかの仕方で丸ごと形式的に整理しようとする者は、あらかじめこの二種の特性によって先回りされ行く手を塞がれるしかない。「名」の廃棄が形式化の作業を露骨な姿態で誘引しており、その先では程よくこんがらがった毛糸玉が、ほら解いてみなさいちゃんと解けるように編んであるからとでも言いたげに薄笑いを浮かべて待ち受けているだけのことだ。そんな見え見えの罠に敢えて嵌まってみせるのも一興かもしれないが、とりあえず物語=世界の構造そのものを相手取ろうとする無邪気にマクロな視点はいったん脇に置き、もっと単純素朴なる細部へと目を向けてみると、そこではこれまた見え見えの様子ではあるものの、相似という要素に目が留まることになるだろう。 たとえば「向かい合った二つの食堂兼ホテルは、外観も、内部の装飾も、料理のメニューも驚くほど似かよって」いる。しかし「ためらうことなくその一つを選んで扉を押しさえすれば、そこで約束の相手と間違いなく落ち合うことができる。目には見えない識別票のようなものが、散歩者たちをあらかじめ二つのグループに分断しており、その二つは決して融合することがない」。つまり「驚くほど似かよって」いるのにもかかわらず、二軒はひとびとの間に必ずしも混同を惹き起こしてはいないということだ。しかし似かよっているのは二つの食堂兼ホテルだけではない。他にも「まったく同じ様式に従って設計されている」せいで「どちらが市役所なのか駅なのはすぐにはわからない」だの、やはり「同じ時期に同じ建築様式に従って設計された」ので「旅行者の誰もが郵便局と取り違えて切手を買いに行ったりする学校」だのといった相似の表象が、これみよがしに登場する。建物だけではない。たとえば物語において謎めいた(この物語に謎めいていない者などただのひとりも存在していないが)役割を演じることになる「大伯父」と「その義理の弟」と呼ばれる「二人の老人」も、しつこいほどに「そっくり」「生き写し」「見分けがつかない」などと書かれる。 ところが、この二人にかんしては、やがて次のようにも語られる。
あの二人が同一人物と見まがうほどに似かよっているのは、永年同じ職場で同じ仕事をしてきたことからくる擬態によってではなく、ただ、話の筋がいきなり思わぬ方向に展開されてしまったとき、いつでも身がわりを演じうるようにと、日頃からその下準備をしておくためなのです。だから、それはまったく装われた類似にすぎず、そのことさえ心得ておけば、いささかも驚くべきことがらではありません。
先の建築物にしたって、後になると「二軒並んだ食堂兼ホテルは、いま、人を惑わすほどには似かよってはおらず、さりとてまったくきわだった違いを示しているわけでもない」だとか「学校とも郵便局とも判別しがたく、ことによったらそのどちらでもないかもしれぬたてもの」などといった書かれぶりなのだから、ここでの相似とは要するに、なんともあやふやなものでしかない。にしても、二つのものが似かよっている、という描写が、この物語のあちこちにちりばめられていることは事実であり、ならばそこにはどんな機能が託されているのかと問うてみたくなるのも無理からぬことだと思われる。 が、ここで読む者ははたと思い至る。相似する二つのものという要素は、どうしたって「似ていること」をめぐる思考へとこちらを誘っていこうとするのだが、それ自体がまたもや罠なのではないか。そうではなくて、ここで重要なのは、むしろただ単に「二」という数字なのではあるまいか。だってこれらの相似は難なく区別されているのだし、相似の度合いも可変的であったり、そうでなくても結局のところ「装われた類似にすぎず、そのことさえ心得ておけば、いささかも驚くべきことがらでは」ないというのだから。騙されてはならない。問題とすべきなのは相似の表象に伴って書きつけられる「二」という数の方なのだ。そう思って頁に目を向け直してみると、そこには確かに「二」という文字が意味ありげに幾つも転がっている。「二」つ並んだ食堂兼ホテルには「二」階があるしーーしかもこの「二階」は物語の重要な「事件の現場」となるーー、市役所前から砂丘地帯までを走る路面電車は「二」輛連結であり、一時間に「二」本しかない。とりわけ路面電車にかかわる二つの「二」は、ほぼ省略されることなく常にしつこく記されており、そこには奇妙な執着のようなものさえ感じられる。陥没地帯は、どうしてかはともかく、ひたすら「二」を召喚したいがゆえに、ただそれだけのために、相似という意匠を身に纏ってみせているのではないか。 「二」であることには複数の様態がある(「複数」というのは二つ以上ということだ)。まず、順序の「二」。二番目の二、一の次で三の前であるところの「二」がある。次に、反復の「二」。二度目の二、ある出来事が(あるいはほとんど同じ出来事が)もう一度繰り返される、という「二」がある。そして、ペアの「二」。二対の二、対立的(敵味方/ライバル)か相補的(バディ)か、その両方かはともかく、二つで一組を成す、という「二」がある。それからダブルの「二」、二重の二があるが、これ自体が二つに分かれる。一つの存在が内包/表出する二、二面性とか二重人格とかドッペルゲンガーの「二」と、二つの存在が一つであるかに誤認/錯覚される二、双児や他人の空似や成り澄ましなどといった、つまり相似の「二」。オーダー、リピート、ペア、ダブル、これらの「二」どもが、この小説にはあまねくふんだんに取り込まれている。オーダーとリピートが分かち難く絡み合って一緒くたになってしまっているさまこそ、前に見た「反復=循環性」ということだった。それは「一」と「二」の区別がつかなくなること、すなわち「一」が「二」でもあり「二」が「一」でもあり得るという事態だ。しかしそれだって、まず「二」度目とされる何ごとかが召喚されたからこそ起こり得る現象だと言える。 また、この物語には「大伯父とその義理の弟」以外にも幾組ものペアやダブルが、これまたこれみよがしに配されている。あの「二人の老人」は二人一役のために互いを似せていたというのだが、他にも「船長」や「女将」や「姉」や「弟」、或いは「男」や「女」といった普通名詞で呼ばれる登場人物たちが、その時々の「いま」において複雑極まる一人二役/二人一役を演じさせられている。この人物とあの人物が、実は時を隔てた同一人物なのではないか、いやそうではなく両者はやはりまったくの別の存在なのか、つまり真に存在しているのは「一」なのか「二」なのか、という設問が、決して真実を確定され得ないまま、切りもなく無数に生じてくるように書かれてあり、しかしそれもやはりまず「二」つのものが召喚されたからこそ起こり得た現象であり、もちろんこのこと自体が「反復=循環性」によって強化されてもいるわけだ。 こう考えてみると、もうひとつの特性である「無名状態」にも、抽象化とはまた別の実践的な理由があるのではないかと思えてくる。ひどく似ているとされる二者は、しかしそれぞれ別個の名前が与えられていれば、当然のことながら区別がついてしまい、相似の「二」が成立しなくなってしまうからだ。だから「二軒並んだ食堂兼ホテル」が名前で呼ばれることはあってはならないし、「女将」や「船長」の名が明かされてはならない。無名もまた「二」のために要請されているのだ。 陥没地帯は夥しい「二」という数によって統べられていると言っても過言ではない。それは文章=文字の表面に穿たれた数字=記号としての「二」から、物語内に盛んに導入された二番二度二対二重などのさまざまな「二」性にまで及んでいる。二、二、二、この小説に顕在/潜在する「二」を数え上げていったらほとんど果てしがないほどだ。とすれば、すぐに浮かぶ疑問は当然、それはどういうことなのか、ということになるだろう。なぜ「二」なのか。どうしてこの小説は、こうもひたぶるに「二」であろうとしているのか。 ここでひとつの仮説を提出しよう。なぜ陥没地帯は「二」を欲望するのか。その答えは『陥没地帯』が小説家蓮實重彦の一作目であるからだ。自らが「一」であることを嫌悪、いや憎悪し、どうにかして「一」に抗い「一」であることから逃れようとするためにこそ、この小説は無数の「二」を身に纏おうと、「二」を擬態しようと、つまり「二」になろうとしているのだ。 すぐさまこう問われるに違いない。それでは答えになっていない。どうして「一」から逃れなくてはならないのか。「一」が「一」を憎悪する理由は何だというのか。その理由の説明が求められているのだ。そんなことはわたしにはわからない。ただ、それは『陥没地帯』が「一」番目の小説だから、としか言いようがない。生まれつき、ただ理由もなく運命的に「一」であるしかない自らの存在のありようがあまりにも堪え難いがゆえに、陥没地帯は「二」を志向しているのだ。そうとしか言えない。 しかしそれは逆にいえば、どれだけ策を尽くして「二」を擬態したとしても、所詮は「一」は「一」でしかあり得ない、ということでもある。「二」になろう「二」であろうと手を替え品を替えて必死で演技する、そしてそんな演技にさえ敢えなく失敗する「一」の物語、それが『陥没地帯』なのだ。そしてこのことも、この小説自体に書いてある。
つまり、錯綜したパズルを思わせる線路をひもに譬えれば、その両端を指ではさんでぴーんと引っぱってみる。すると、贋の結ぼれがするするとほぐれ、一本の線に還元されてしまう。鋭角も鈍角も、それから曲線も弧も螺旋形も、そっくり素直な直線になってしまうのです。だから、橋なんていっちゃあいけない。それは人目をあざむく手品の種にすぎません。
そう、複雑に縒り合わされた結ぼれは、だが結局のところ贋ものでしかなく、ほんとうはただの「一本の線」に過ぎない。ここで「二」に見えているすべての正体は「一」でしかない。あの「向かい合った二つの食堂兼ホテル」が「驚くほど似かよって」いるのに「ためらうことなくその一つを選んで扉を押しさえすれば」決して間違えることがなかったのは、実はどちらを選んでも同じことだったからに他ならない。このこともまた繰り返しこの物語では描かれる。河を挟んだ片方の側からもう片側に行くためには、どうしても小さな架橋を使わなくてはならない筈なのに、橋を渡った覚えなどないのに、いつのまにか河の向こう側に抜けていることがある。そもそもこの河自体、いつも褐色に淀んでいて、水面を見るだけではどちらからどちらに向かって流れているのか、どちらが上流でどちらが下流なのかさえ判然としないのだが、そんなまたもやあからさまな方向感覚の惑乱ぶりに対して、ではどうすればいいのかといえば、ただ迷うことなど一切考えずに歩いていけばいいだけのことだ。「彼が執拗に強調しているのは、橋の必然性を信頼してはならぬということである」。二つの領域を繋ぐ橋など要らない、そんなものはないと思い込みさえすればもう橋はない。二つのものがあると思うからどちらかを選ばなくてはならなくなる。一番目と二番目、一度目と二度目、一つともう一つをちゃんと別にしなくてはならなくなる。そんな面倒は金輪際やめて、ここにはたった一つのものしかないと思えばいいのだ。実際そうなのだから。 それがいつであり、そこがどこであり、そして誰と誰の話なのかも最早述べることは出来ないが、物語の後半に、こんな場面がある。
よろしゅうございますね、むこう側の部屋でございますよ。(略)女は、そうささやくように念をおす。こちら側ではなく、むこう側の部屋。だが、向かい合った二つの扉のいったいどちらの把手に手をかければよいのか。事態はしかし、すべてを心得たといった按配で、躊躇も逡巡もなく円滑に展開されねばならない。それには、風に追われる砂の流れの要領でさからわずに大気に身をゆだねること。むこう側の扉の奥で待ちうけている女と向かいあうにあたって必要とされるのも、そんなこだわりのない姿勢だろう。
躊躇も逡巡もすることはない。なぜなら「こちら側」と「むこう側」という「二つの扉」自体が下手な偽装工作でしかなく、そこにはもともと「一」つの空間しかありはしないのだから。そしてそれは、はじめから誰もが知っていたことだ。だってこれは正真正銘の「一」番目なのだから。こうして「一」であり「一」であるしかない『陥没地帯』の、「一」からの逃亡としての「二」への変身、「二」への離脱の試みは失敗に終わる。いや、むしろ失敗することがわかっていたからこそ、どうにかして「一」は「二」のふりをしようとしたのだ。不可能と知りつつ「一」に全力で抗おうとした自らの闘いを、せめても読む者の記憶へと刻みつけるために。
三、
小説家蓮實重彦の第二作『オペラ・オペラシオネル』は、直截的にはジャン=リュック・ゴダールの『新ドイツ零年』及び、その前日譚である『アルファヴィル』との関連性を指摘できるだろう。小説が発表されたのは一九九四年の春だが、『新ドイツ零年』は一九九一年秋のヴェネツィア国際映画祭に出品後、一九九三年末に日本公開されている。同じくゴダール監督による一九六五年発表の『アルファヴィル』は、六〇年代にフランスでシリーズ化されて人気を博した「レミー・コーションもの」で主役を演じた俳優エディ・コンスタンティーヌを役柄ごと「引用」した一種のパスティーシュだが、独裁国家の恐怖と愛と自由の価値を謳った軽快でロマンチックなSF映画でもある。『新ドイツ零年』は、レミー・コーション=エディ・コンスタンチーヌを四半世紀ぶりに主演として迎えた続編であり、ベルリンの壁崩壊の翌年にあたる一九九〇年に、老いたる往年の大物スパイがドイツを孤独に彷徨する。 『オペラ・オペラシオネル』の名もなき主人公もまた、レミー・コーションと同じく、若かりし頃は派手な活躍ぶりでその筋では国際的に名を成したものの、ずいぶんと年を取った最近では知力にも体力にも精神力にもかつてのような自信がなくなり、そろそろほんとうに、思えばやや遅過ぎたのかもしれない引退の時期がやってきたのだと自ら考えつつある秘密諜報員であり、そんな彼は現在、長年勤めた組織へのおそらくは最後の奉公として引き受けた任務に赴こうとしている。「とはいえ、この年まで、非合法的な権力の奪取による対外政策の変化といった計算外の事件に出会っても意気沮喪することなく組織につくし、新政権の転覆を目論む不穏な動きをいたるところで阻止しながらそのつど難局を切り抜け、これといった致命的な失敗も犯さずにやってこられたのだし、分相応の役割を担って組織にもそれなりに貢献してきたのだという自負の念も捨てきれずにいるのだから、いまは、最後のものとなるかもしれないこの任務をぬかりなくやりとげることに専念すべきなのだろう」。つまりこれはスパイ小説であり、アクション小説でさえある。 前章で提示しておいた無根拠な仮説を思い出そう。『陥没地帯』は「一」作目であるがゆえに「一」から逃れようとして「二」を志向していた。これを踏まえるならば、「二」作目に当たる『オペラ・オペラシオネル』は、まずは「二」から逃走するべく「三」を擬態することになる筈だが、実際、この小説は「三」章立てであり、作中に登場するオペラ「オペラ・オペラシオネル」も「三」幕構成であり、しかも「三」時間の上演時間を要するのだという。これらだけではない。第一章で主人公は、豪雨が齎した交通機関の麻痺によって他の旅客ともども旅行会社が用意した巨大なホールで足止めを食っているのだが、どういうわけかこの空間に定期的にやってきている謎の横揺れを訝しみつつ、ふと気づくと、「いま、くたびれはてた鼓膜の奥にまぎれこんでくるのは、さっきから何やら低くつぶやいている聞きとりにくい女の声ばかりである」。
いまここにはいない誰かをしきりになじっているようにも聞こえるそのつぶやきには、どうやら操縦と聞きとれそうな単語がしばしばくりかえされており、それとほぼ同じぐらいの頻度で、やれ回避だのやれ抹殺だのといった音のつらなりとして聞きわけられる単語もまぎれこんでいる。だが、誰が何を操縦し、どんな事態を回避し、いかなる人物を抹殺するのかということまでははっきりしないので、かろうじて識別できたと思えるたった三つの単語から、聞きとりにくい声がおさまるはずの構文はいうまでもなく、そのおよその文意を推測することなどとてもできはしない。
むろんここで重要なのは、間違っても「誰が何を操縦し、どんな事態を回避し、いかなる人物を抹殺するのか」ということではない。この意味ありげな描写にごくさりげなく埋め込まれた「たった三つの単語」の「三」という数である。まだある。主人公が実際に任務を果たすのは「ここから鉄道でたっぷり三時間はかかる地方都市」だし、このあと先ほどの女の突然の接触ーー「かたわらの椅子に身を埋めていた女の腕が生きもののようなしなやかさで左の肘にからみつき、しっかりとかかえこむように組みあわされてしまう」ーーが呼び水となって主人公は「最後の戦争が起こったばかりだったから、こんな仕事に誘いこまれるより遥か以前」に「この国の転覆を目論む敵側の間諜がわがもの顔で闊歩しているという繁華街の地下鉄のホームでこれに似た体験をしていたこと」をふと思い出すのだが、そのときちょうどいまのようにいきなり腕をからませてきた女と同じ地下鉄のホームで再会したのは「それから三日後」のことなのだ。 「三」への擬態以前に、この小説の「二」に対する嫌悪、憎悪は、第三章で登場する女スパイが、いままさにオペラ「オペラ・オペラシオネル」を上演中の市立劇場の客席で、隣に座った主人公に「あなたを抹殺する目的で開幕直前に桟敷に滑りこもうとしていた女をぬかりなく始末しておいた」と告げたあとに続く台詞にも、さりげなく示されている。
もちろん、と女は言葉をつぎ、刺客をひとり始末したからといって、いま、この劇場の客席には、三人目、四人目、ことによったら五人目となるかもしれない刺客たちが、この地方都市の正装した聴衆にまぎれて、首都に帰らせてはならないあなたの動向をじっとうかがっている。
なぜ、女は「二人目」を省いたのか。どうしてか彼女は「二」と言いたくない、いや、「二」と言えないのだ。何らかの不思議な力が彼女から「二」という数の発話を無意味に奪っている。実際『陥没地帯』にはあれほど頻出していた「二」が、一見したところ『オペラ・オペラシオネル』では目に見えて減っている。代わりに振り撒かれているのは「三」だ。三、三、三。 だが、これも前作と同様に、ここでの「二」への抵抗と「三」への擬態は、そもそもの逃れ難い本性であるところの「二」によってすぐさま逆襲されることになる。たとえばそれは、やはり『陥没地帯』に引き続いて披露される、相似をめぐる認識において示される。どうやら記憶のあちこちがショートしかかっているらしい主人公は、第一章の巨大ホールで突然左肘に腕を絡ませてきた女が「それが誰なのかにわかには思い出せない旧知の女性に似ているような気もする」と思ってしまうのだがーー同様の叙述はこの先何度も繰り返されるーー、しかしそのとき彼は「経験豊かな仲間たち」からよく聞かされていた言葉をふと思い出す。
もちろん、それがどれほどとらえがたいものであれ類似の印象を与えるというかぎりにおいて、二人が同一人物であろうはずもない。似ていることは異なる存在であることの証左にほかならぬという原則を見失わずにおき、みだりな混同に陥ることだけは避けねばならない。
この「似ていることは異なる存在であることの証左にほかならぬという原則」は、もちろん『陥没地帯』の数々の相似にかんして暗に言われていたことであり、それは「一」に思えるが実は「二」、つまり「一ではなく二」ということだった。しかし、いまここで離反すべき対象は「二」なのだから、前作では「一」からの逃走の方策として導入されていた相似という装置は、こちらの世界では「二」から発される悪しき強力な磁場へと反転してしまうのだ。なるほどこの小説には、前作『陥没地帯』よりも更にあっけらかんとした、そう、まるでやたらと謎めかした、であるがゆえに適当な筋立てのご都合主義的なスパイ映画のような仕方で、相似の表象が次々と登場してくる。女という女は「旧知の女性に似ているような」気がするし、巨大ホールの女の亡くなったパイロットの夫は、第二章で主人公が泊まるホテルの部屋にノックの音とともに忍び込んでくる女、やはり亡くなっている夫は、売れない音楽家だったという自称娼婦の忌まわしくもエロチックな回想の中に奇妙に曖昧なすがたで再登場するし、その音楽家が妻に書き送ってくる手紙には、第一章の主人公の境遇に酷似する体験が綴られている。数え出したら枚挙にいとまのないこうした相似の仄めかしと手がかりは、本来はまったく異なる存在である筈の誰かと誰かを無理繰り繋いであたかもペア=ダブルであるかのように見せかけるためのブリッジ、橋の機能を有している。どれだけ「三」という数字をあたり一面に撒布しようとも、思いつくまま幾らでも橋を架けられる「二」の繁茂には到底対抗出来そうにない。 では、どうすればいいのか。「二」から逃れるために「三」が有効ではないのなら、いっそ「一」へと戻ってしまえばいい。ともかく「二」でありさえしなければいいのだし、ベクトルが一方向でなくともよいことはすでに確認済みなのだから。 というわけで、第三章の女スパイは、こんなことを言う。
ただ、誤解のないようにいいそえておくが、これから舞台で演じられようとしている物語を、ことによったらあなたや私の身に起こっていたのかもしれないできごとをそっくり再現したものだなどと勘違いしてはならない。この市立劇場であなたが立ち会おうとしているのは、上演を目的として書かれた粗筋を旧知の顔触れがいかにもそれらしくなぞってみせたりするものではないし、それぞれの登場人物にしても、見るものの解釈しだいでどんな輪郭にもおさまりかねぬといった融通無碍なものでもなく、いま、この瞬間に鮮やかな現実となろうとしている生のできごとにほかならない。もはや、くりかえしもおきかえもきかない一回かぎりのものなのだから、これはよくあることだと高を括ったりしていると、彼らにとってよくある些細なできごとのひとつとして、あなたの世代の同僚の多くが人知れず消されていったように、あなた自身もあっさり抹殺されてしまうだろう。
そもそも三章立ての小説『オペラ・オペラシオネル』が、作中にたびたびその題名が記され、第三章で遂に上演されることになる三幕もののオペラ「オペラ・オペラシオネル」と一種のダブルの関係に置かれているらしいことは、誰の目にも歴然としている。しかしここでいみじくも女スパイが言っているのは、如何なる意味でもここに「二」を読み取ってはならない、これは「一」なのだ、ということだ。たとえ巧妙に「二」のふりをしているように見えたとしても、これは確かに「くりかえしもおきかえもきかない一回かぎりのもの���なのだと彼女は無根拠に断言する。それはつまり「二ではなく一」ということだ。そんなにも「二」を増殖させようとするのなら、その化けの皮を剥がして、それらの実体がことごとく「一」でしかないという事実を露わにしてやろうではないか(言うまでもなく、これは『陥没地帯』で起こっていたことだ)。いや、たとえほんとうはやはりそうではなかったのだとしても、ともかくも「二ではなく一」と信じることが何よりも重要なのだ。 「二」を「一」に変容せしめようとする力動は、また別のかたちでも確認することが出来る。この物語において主人公は何度か、それぞれ別の、だが互いに似かよってもいるのだろう女たちと「ベッドがひとつしかない部屋」で対峙する、もしくはそこへと誘われる。最後の場面で女スパイも言う。私たちが「ベッドがひとつしかない部屋で向かい合ったりすればどんなことになるか、あなたには十分すぎるほどわかっているはずだ」。「二」人の男女と「一」つのベッド。だが主人公は、一つきりのベッドをそのような用途に使うことは一度としてない。そしてそれは何度か話題にされる如何にも女性の扱いに長けたヴェテランの間諜らしい(らしからぬ?)禁欲というよりも、まるで「一」に対する斥力でも働いているかのようだ。 こうして『オペラ・オペラシオネル』は後半、あたかも「一」と「二」の闘争の様相を帯びることになる。第三章の先ほどの続きの場面で、女スパイは主人公に「私たちふたりは驚くほど似ているといってよい」と言ってから、こう続ける。「しかし、類似とは、よく似たもの同士が決定的に異なる存在だという事実の否定しがたい証言としてしか意味をもたないものなのだ」。これだけならば「一ではなく二」でしかない。だがまだその先がある。「しかも、決定的に異なるものたちが、たがいの類似に脅えながらもこうして身近に相手の存在を確かめあっているという状況そのものが、これまでに起こったどんなできごととも違っているのである」。こうして「二」は再び「一」へと逆流する。まるで自らに念を押すように彼女は言う。いま起こっていることは「かつて一度としてありはしなかった」のだと。このあとの一文は、この小説の複雑な闘いの構図を、複雑なまま見事に表している。
だから、あたりに刻まれている時間は、そのふたりがともに死ぬことを選ぶか、ともに生きることを選ぶしかない一瞬へと向けてまっしぐらに流れ始めているのだと女が言うとき、そらんじるほど熟読していたはずの楽譜の中に、たしかにそんな台詞が書き込まれていたはずだと思いあたりはするのだが、疲労のあまりものごとへの執着が薄れ始めている頭脳は、それが何幕のことだったのかと思い出そうとする気力をすっかり失っている。
かくのごとく「二」は手強い。当たり前だ。これはもともと「二」なのだから。しかしそれでも、彼女は繰り返す。「どこかしら似たところのある私たちふたりの出会いは、この別れが成就して以後、二度とくりかえされてはならない。そうすることがあなたと私とに許された誇らしい権利なのであり、それが無視されてこの筋書きにわずかな狂いでもまぎれこめば、とても脱出に成功することなどありはしまい」。『オペラ・オペラシオネル』のクライマックス場面における、この「一」対「二」の激しい争いは、読む者を興奮させる。「実際、あなたと私とがともに亡命の権利を認められ、頻繁に発着するジェット機の騒音などには耳もかさずに、空港の別のゲートをめざしてふりかえりもせずに遠ざかってゆくとき、ふたり一組で行動するという権利が初めて確立することになり、それにはおきかえもくりかえしもききはしないだろう」。「二」人組による、置換も反復も欠いた、ただ「一」度きりの逃避行。ここには明らかに、あの『アルファヴィル』のラストシーンが重ね合わされている。レミー・コーションはアンナ・カリーナが演じるナターシャ・フォン・ブラウンを連れて、遂に発狂した都市アルファヴィルを脱出する。彼らは「二人」になり、そのことによってこれから幸福になるのだ。『ドイツ零年』の終わり近くで、老いたるレミー・コーションの声が言う。「国家の夢は1つであること。個人の夢は2人でいること」。それはつまり「ふたり一組で行動するという権利」のことだ。 かくのごとく「二」は手強い。当たり前だ。これはもともと「二」なのだから。しかも、もはや夢幻なのか現実なのかも判然としない最後の最後で、主人公と女スパイが乗り込むのは「これまでハンドルさえ握ったためしのないサイドカー」だというのだから(これが「ベッドがひとつしかない部屋」と対になっていることは疑いない)、結局のところ「二」は、やはり勝利してしまったのではあるまいか。「二」が「二」であり「二」であるしかないという残酷な運命に対して、結局のところ「三」も「一」も歯が立たなかったのではないのか。小説家蓮實重彦の一作目『陥没地帯』が「一の物語」であったように、小説家蓮實重彦の第二作は「二の物語」としての自らをまっとうする。そして考えてみれば、いや考えてみるまでもなく、このことは最初からわかりきっていたことだ。だってこの小説の題名は『オペラ・オペラシオネル』、そこには「オペラ」という単語が続けざまに「二」度、あからさまに書き込まれているのだから。
四、
さて、遂にようやく「一、」の末尾に戻ってきた。では、小説家蓮實重彦の第三作『伯爵夫人』はどうなのか。この小説は「三」なのだから、仮説に従えば「四」もしくは「二」を志向せねばならない。もちろん、ここで誰もが第一に思い当たるのは、主人公の名前である「二朗」だろう。たびたび話題に上るように、二朗には亡くなった兄がいる。すなわち彼は二男である。おそらくだから「二」朗と名づけられているのだが、しかし死んだ兄が「一朗」という名前だったという記述はどこにもない、というか一朗はまた別に居る。だがそれはもっと後の話だ。ともあれ生まれついての「二」である二朗は、この小説の「三」としての運命から、あらかじめ逃れ出ようとしてい���かに見える。そう思ってみると、彼の親しい友人である濱尾も「二」男のようだし、従妹の蓬子も「二」女なのだ。まるで二朗は自らの周りに「二」の結界を張って「三」の侵入を防ごうとしているようにも思えてくる。 だが、当然の成り行きとして「三」は容赦なく襲いかかる。何より第一に、この作品の題名そのものであり、二朗にははっきりとした関係や事情もよくわからぬまま同じ屋敷に寝起きしている、小説の最初から最後まで名前で呼ばれることのない伯爵夫人の、その呼称の所以である、とうに亡くなっているという、しかしそもそも実在したかどうかも定かではない「伯爵」が、爵位の第三位ーー侯爵の下で子爵の上ーーであるという事実が、彼女がどうやら「三」の化身であるらしいことを予感させる。『オペラ・オペラシオネル』の「二」と同じく、『伯爵夫人』も題名に「三」をあらかじめ埋め込まれているわけだ。確かに「三」はこの小説のあちこちにさりげなく記されている。たとえば濱尾は、伯爵夫人の怪しげな素性にかかわる噂話として「れっきとした伯爵とその奥方を少なくとも三組は見かけた例のお茶会」でのエピソードを語る。また、やはり濱尾が二朗と蓬子に自慢げにしてみせる「昨日まで友軍だと気を許していた勇猛果敢な騎馬の連中がふと姿を消したかと思うと、三日後には凶暴な馬賊の群れとなって奇声を上げてわが装甲車舞台に襲いかかり、機関銃を乱射しながら何頭もの馬につないだ太い綱でこれを三つか四つひっくり返したかと思うと、あとには味方の特殊工作員の死骸が三つも転がっていた」という「どこかで聞いた話」もーー「四」も入っているとはいえーーごく短い記述の間に「三」が何食わぬ顔で幾つも紛れ込んでいる。 しかし、何と言っても決定的に重要なのは、すでに触れておいた、二朗と伯爵夫人が最初の、贋の抱擁に至る場面だ。謎の「ふたり組の男」に「二朗さんがこんな女といるところをあの連中に見られたくないから、黙っていう通りにして下さい」と言って伯爵夫人が舞台に選ぶのは「あの三つ目の街路樹の瓦斯燈の灯りも届かぬ影になった幹」なのだが、演出の指示の最後に、彼女はこう付け加える。
連中が遠ざかっても、油断してからだを離してはならない。誰かが必ずあの二人の跡をつけてきますから、その三人目が通りすぎ、草履の先であなたの足首をとんとんとたたくまで抱擁をやめてはなりません、よござんすね。
そう、贋の抱擁の観客は「二」人ではなかった。「三」人だったのだ。しかし二朗は本番では演技に夢中でーー射精という事故はあったもののーー場面が無事に済んでも「あの連中とは、いったいどの連中だというのか」などと訝るばかり、ことに「三人目」については、その実在さえ確認出来ないまま終わる。つまり追っ手(?)が全部で「三」人居たというのは、あくまでも伯爵夫人の言葉を信じる限りにおいてのことなのだ。 まだある。一度目の射精の後、これも先に述べておいたが伯爵夫人は二朗に自らの性的遍歴を語り出す。自分はあなたの「お祖父さま」ーー二朗の母方の祖父ーーの「めかけばら」だなどと噂されているらしいが、それは根も葉もない言いがかりであって、何を隠そう、お祖父さまこそ「信州の山奥に住む甲斐性もない百姓の娘で、さる理由から母と東京に移り住むことになったわたくし」の処女を奪ったばかりか、のちに「高等娼婦」として活躍出来るだけの性技の訓練を施した張本人なのだと、彼女は告白する。まだ処女喪失から二週間ほどしか経っていないというのに、お祖父さまに「そろそろ使い勝手もよくなったろう」と呼ばれて参上すると、そこには「三」人の男ーーいずれも真っ裸で、見あげるように背の高い黒ん坊、ターバンを捲いた浅黒い肌の中年男、それにずんぐりと腹のでた小柄な初老の東洋人ーーがやってきて、したい放題をされてしまう。とりわけ「三」人目の男による見かけによらない濃厚な変態プレイは、破廉恥な描写には事欠かないこの小説の中でも屈指のポルノ場面と言ってよい。 まだまだある。二朗の「三」度目の射精の前、和製ルイーズ・ブルックスに案内された「更衣室」には、「野獣派風の筆遣いで描かれたあまり感心できない裸婦像が三つ」と「殺風景な三つのシャワーのついた浴場」がある。伯爵夫人が物語る、先の戦時中の、ハルピンにおける「高麗上等兵」のエピソードも「三」に満ちている。軍の都合によって無念の自決を強い���れた高麗の上官「森戸少尉」の仇である性豪の「大佐」に、山田風太郎の忍法帖さながらの淫技で立ち向かい、森戸少尉の復讐として大佐の「金玉」を潰すという計画を、のちの伯爵夫人と高麗は練るのだが、それはいつも大佐が「高等娼婦」の彼女を思うさまいたぶるホテルの「三階の部屋」の「三つ先の部屋」でぼやを起こし、大佐の隙を突いて「金玉」を粉砕せしめたらすぐさま火事のどさくさに紛れて現場から立ち去るというものであり、いざ決行直後、彼女は「雑踏を避け、高麗に抱えられて裏道に入り、騎馬の群れに囲まれて停車していた三台のサイドカー」に乗せられて無事に逃亡する。 このように「三」は幾らも数え上げられるのだが、かといって「二」や「四」も皆無というわけではないーー特に「二」は後で述べるように伯爵夫人の一時期と切っても切り離せない関係にあるーーのだから、伯爵夫人が「三」の化身であるという予感を完全に証明し得るものとは言えないかもしれない。では、次の挿話はどうか? 三度目の射精の直後に例の「サボン」を投与されてしまった二朗は、今度は「黒い丸眼鏡をかけた冴えない小男」の先導で、さながら迷宮のようなホテル内を経巡って、伯爵夫人の待つ「お茶室」ーー彼女はあとで、その空間を「どこでもない場所」と呼ぶーーに辿り着く。そこで伯爵夫人はふと「二朗さん、さっきホテルに入ったとき、気がつかれましたか」と問いかける。「何ですか」「百二十度のことですよ」。今しがた和製ルイーズ・ブルックスと自らの「魔羅」の隆隆たる百二十度のそそり立ちについて語り合ったばかりなので、二朗は思わずたじろぐが、伯爵夫人は平然と「わたくしは回転扉の角度のお話をしているの。あそこにいったいいくつ扉があったのか、お気づきになりましたか」と訊ねる。もちろんそれは、小説の始まりに記されていた「傾きかけた西日を受けてばふりばふりとまわっている重そうな回転扉」のことだ。
四つあるのが普通じゃなかろうかという言葉に、二朗さん、まだまだお若いのね。あそこの回転扉に扉の板は三つしかありません。その違いに気づかないと、とてもホテルをお楽しみになることなどできませんことよと、伯爵夫人は艶然と微笑む。四つの扉があると、客の男女が滑りこむ空間は必然的に九十度と手狭なものとなり、扉もせわしげにぐるぐるとまわるばかり。ところが、北普魯西の依怙地な家具職人が前世紀末に発明したという三つ扉の回転扉の場合は、スーツケースを持った少女が大きな丸い帽子箱をかかえて入っても扉に触れぬだけの余裕があり、一度に一・三倍ほどの空気をとりこむかたちになるので、ぐるぐるではなく、ばふりばふりとのどかなまわり方をしてくれる。
「もっとも、最近になって、世の殿方の間では、百二十度の回転扉を通った方が、九十度のものをすり抜けるより男性としての機能が高まるといった迷信めいたものがささやかれていますが、愚かとしかいいようがありません。だって、百二十度でそそりたっていようが、九十度で佇立していようが、あんなもの、いったん女がからだの芯で受け入れてしまえば、どれもこれも同じですもの」と,いつの間にか伯爵夫人の語りは、またもや「魔羅」の話題に変わってしまっていて、これも笑うべきところなのかもしれないが、それはいいとして、ここで「四ではなく三」が主張されていることは明白だろう。とすると「ぐるぐるではなく、ばふりばふり」が好ましいとされているのも、「ぐるぐる」も「ばふりばふり」も言葉を「二」つ重ねている点では同じだが、「ぐる」は「二」文字で「ばふり」は「三」文字であるということがおそらくは重要なのだ。 そして更に決定的なのは、伯爵夫人がその後に二朗にする告白だ。あの贋の抱擁における二朗の演技に彼女は憤ってみせたのだが、実はそれは本意ではなかった。「あなたの手は、ことのほか念入りにわたくしのからだに触れておられました。どこで、あんなに繊細にして大胆な技術を習得されたのか、これはこの道の達人だわと思わず感嘆せずにはいられませんでした」と彼女は言う。だが二朗は正真正銘の童貞であって、あの時はただ先ほど観たばかりの「聖林製の活動写真」を真似て演じてみたに過ぎない。だが伯爵夫人はこう続けるのだ。「あのとき、わたくしは、まるで自分が真っ裸にされてしまったような気持ちになり、これではいけないとむなしく攻勢にでてしまった」。そして「そんな気分にさせたのは、これまで二人しかおりません」。すなわち二朗こそ「どうやら三人目らしい」と、伯爵夫人は宣告する。二朗は気づいていないが、この時、彼は「二」から「三」への変容を強いられているのだ。 ところで伯爵夫人には、かつて「蝶々夫人」と呼ばれていた一時代があった。それは他でもない、彼女がやがて「高等娼婦」と称されるに至る売春行為を初めて行ったロンドンでのことだ。「二朗さんだけに「蝶々夫人」の冒険譚を話してさしあげます」と言って彼女が語り出すのは、先の戦争が始まってまもない頃の、キャサリンと呼ばれていた赤毛の女との思い出だ。キャサリンに誘われて、まだ伯爵夫人とも蝶々夫人とも呼ばれてはいなかった若い女は「聖ジェームズ公園近くの小さな隠れ家のようなホテル」に赴く。「お待ちしておりましたというボーイに狭くて薄暗い廊下をぐるぐると回りながら案内されてたどりついた二階のお部屋はびっくりするほど広くて明るく、高いアルコーヴつきのベッドが二つ並んでおかれている」。こうなれば当然のごとく、そこに「目に見えて動作が鈍いふたりの将校をつれたキャサリンが入ってきて、わたくしのことを「蝶々夫人」と紹介する」。阿吽の呼吸で自分に求められていることを了解して彼女が裸になると、キャサリンも服を脱ぎ、そして「二」人の女と「二」人の男のプレイが開始される。彼女はこうして「高等娼婦」への道を歩み始めるのだが、全体の趨勢からすると例外的と言ってよい、この挿話における「二」の集中は、おそらくはなにゆえかキャサリンが彼女を「蝶々夫人」と呼んでみせたことに発している。「蝶」を「二」度。だからむしろこのまま進んでいたら彼女は「二」の化身になっていたかもしれない。だが、そうはならなかった。のちの「伯爵」との出会いによって「蝶々夫人」は「伯爵夫人」に変身してしまったからだ。ともあれ伯爵夫人が事によると「二」でもあり得たという事実は頭に留めておく必要があるだろう。そういえば彼女は幾度か「年増の二流芸者」とも呼ばれるし、得意技である「金玉潰し」もーーなにしろ睾丸は通常「二」つあるのだからーー失われた「二」の時代の片鱗を残しているというべきかもしれない。 「二」から「三」への転位。このことに較べれば、回想のはじめに伯爵夫人が言及する、この小説に何度もさも意味ありげに登場するオランダ製のココアの缶詰、その表面に描かれた絵柄ーー「誰もが知っているように、その尼僧が手にしている盆の上のココア缶にも同じ角張った白いコルネット姿の尼僧が描かれているので、その図柄はひとまわりずつ小さくなりながらどこまでも切れ目なく続くかと思われがちです」ーーのことなど、その「尼僧」のモデルが他でもない赤毛のキャサリンなのだという理由こそあれ、読む者をいたずらに幻惑する無意味なブラフ程度のものでしかない。ただし「それは無に向けての無限連鎖ではない。なぜなら、あの尼僧が見すえているものは、無限に連鎖するどころか、画面の外に向ける視線によって、その動きをきっぱりと断ち切っているからです」という伯爵夫人の確信に満ちた台詞は、あの『陥没地帯』が世界そのもののあり方として体現していた「反復=循環性」へのアンビヴァレントな認識と通底していると思われる。 「このあたくしの正体を本気で探ろうとなさったりすると、かろうじて保たれているあぶなっかしいこの世界の均衡がどこかでぐらりと崩れかねませんから、いまはひとまずひかえておかれるのがよろしかろう」。これは伯爵夫人の台詞ではない。このような物言いのヴァリエーションは、この小説に何度もさも意味ありげに登場するのだが、伯爵夫人という存在がその場に漂わせる「婉曲な禁止の気配」だとして、こんな途方もない言葉を勝手に脳内再生しているのは二朗であって、しかも彼はこの先で本人を前に朗々と同じ内容を語ってみせる。一度目の射精の後、まもなく二度目の射精の現場となる電話ボックスにおける長い会話の中で二朗は言う。「あなたがさっき「あたいの熟れたまんこ」と呼ばれたものは、それをまさぐることを触覚的にも視覚的にも自分に禁じており、想像の領域においてさえ想い描くことを自粛しているわたくしにとって、とうてい世界の一部におさまったりするものではない。あからさまに露呈されてはいなくとも、���るいは露呈されていないからこそ、かろうじて保たれているこのあぶなっかしい世界の均衡を崩すまいと息づいている貴重な中心なのです」。これに続けて「あたくしの正体を本気で探ろうとなさったりすると、かろうじて維持されているこの世界の均衡がどこかでぐらりと崩れかねないから、わたくしが誰なのかを詮索するのはひかえておかれるのがよろしかろうという婉曲な禁止の気配を、あなたの存在そのものが、あたりに行きわたらせていはしなかったでしょうか」と、小説家蓮實重彦の前二作と同様に、先ほどの台詞が微細な差異混じりにリピートされる。こんな二朗のほとんど意味不明なまでに大仰な言いがかりに対して、しかし伯爵夫人はこう応じてみせるのだ。
でもね、二朗さん、この世界の均衡なんて、ほんのちょっとしたことで崩れてしまうものなのです。あるいは、崩れていながらも均衡が保たれているような錯覚をあたりに行きわたらせてしまうのが、この世界なのかもしれません。そんな世界に戦争が起きたって、何の不思議もありませんよね。
いったいこの二人は何の話をしているのか。ここであたかも了解事項のごとく語られている「世界の均衡」というひどく観念的な言葉と、あくまでも具体的現実的な出来事としてある筈の「戦争」に、どのような関係が隠されているというのか。そもそも「戦争」は、前二作においても物語の背景に隠然と見え隠れしていた。『陥没地帯』においては、如何にもこの作品らしく「なぜもっと戦争がながびいてくれなかったのか」とか「明日にも終るといわれていた戦争が日々混沌として終りそびれていた」とか「戦争が始まったことさえまだ知らずにいたあの少年」とか「戦争の真の終りは、どこまでも引きのばされていくほかはないだろう」などと、要するに戦争がいつ始まっていつ終わったのか、そもそもほんとうに終わったのかどうかさえあやふやに思えてくるような証言がちりばめられていたし、『オペラ・オペラシオネル』の老スパイは「最後の戦争が起こったばかりだったから、こんな仕事に誘いこまれるより遥か以前」の思い出に耽りつつも、知らず知らずの内にいままさに勃発の危機にあった新たな戦争の回避と隠蔽に加担させられていた。そして『伯爵夫人』は、すでに見てきたようにひとつ前の大戦時の挿話が複数語られるのみならず、二朗の冒険(?)は「十二月七日」の夕方から夜にかけて起こっており、一夜明けた次の日の夕刊の一面には「帝國・米英に宣戦を布告す」という見出しが躍っている。つまりこれは大戦前夜の物語であるわけだが、ということは「世界の均衡」が崩れてしまったから、或いはすでに「崩れていながらも均衡が保たれているような錯覚」に陥っていただけだという事実に気づいてしまったから、その必然的な帰結として「戦争」が始まったとでも言うのだろうか? 伯爵夫人は、二朗を迎え入れた「お茶室」を「どこでもない場所」と呼ぶ。「何が起ころうと、あたかも何ごとも起こりはしなかったかのように事態が推移してしまうのがこの場所なのです。(中略)だから、わたくしは、いま、あなたとここで会ってなどいないし、あなたもまた、わたくしとここで会ってなどいない。だって、わたくしたちがいまここにいることを証明するものなんて、何ひとつ存在しておりませんからね。明日のあなたにとって、今日ここでわたくしがお話ししたことなど何の意味も持ちえないというかのように、すべてががらがらと潰えさってしまうという、いわば存在することのない場所がここなのです」。だからあなたがわたくしを本気で犯したとしても「そんなことなど起こりはしなかったかのようにすべてが雲散霧消してしまうような場所がここだといってもかまいません。さあ、どうされますか」と伯爵夫人は二朗を試すように問うのだが、このとき彼はすでに「サボン」の効用で七十二時間=三日間の不能状態にある。 そしてこの後、彼女はこの物語において何度となく繰り返されてきた秘密の告白の中でも、最も驚くべき告白を始める。そもそも先に触れておいた、二朗こそ自分にとっての「三人目らしい」という宣告の後、伯爵夫人は「お祖父さま」にかんする或る重要な情報を話していた。自分も含め「数えきれないほどの女性を冷静に組みしいて」きた「お祖父さま」は、にもかかわらず「あなたのお母さまとよもぎさんのお母さまという二人のお嬢さましかお残しにならなかった」。事実、隠し子などどこにもいはしない。なぜなら「それは、あの方が、ふたりのお嬢様をもうけられて以後、女のからだの中ではーーたとえ奥様であろうとーー絶対におはてにならなかったから。間違っても射精などなさらず、女を狂喜させることだけに生涯をかけてこられた。妊娠をさけるための器具も存在し始めておりましたが、そんなものはおれは装着せぬとおっしゃり、洩らすことの快感と生殖そのものをご自分に禁じておられた」。ならばなぜ、そのような奇妙な禁欲を自ら決意し守り抜こうとしたのか。二朗の死んだ兄は「「近代」への絶望がそうさせたのだろう」と言っていたというのだが、それ以上の説明がなされることはない。 だが実は、そうはならなかった、というのが伯爵夫人の最後の告白の中身なのだ。「ところが、その晩、そのどこでもない場所で、たったひとつだけ本当のできごとが起こった。ここで、わたくしが、お祖父さまの子供を妊ってしまったのです」。どういうわけか「お祖父さま」は伯爵夫人の膣に大量に放出してしまう。それが不測の事態であったことは間違いないだろう。だがやがて妊娠は確定する。当然ながら彼女は堕胎を考えるのだが、「ところが、お祖父さまのところからお使いのものが来て,かりに男の子が生まれたら一郎と名付け、ひそかに育て上げ、成年に達したら正式に籍に入れようという話を聞かされました」。こうして伯爵夫人は「一郎」を産んだのだった。しかもそれは二朗が誕生する三日前のことだったと彼女は言う。やはり隠し子はいたのだ。一郎はその後、伯爵夫人の母親の子として育てられ、いまは二朗と同じく来年の帝大入学を目指している。「しかし、その子とは何年に一度しか会ってはならず、わたくしのことを母親とも思っていない。ですから、ほぼ同じ時期に生まれたあなたのことを、わたくしはまるで自分の子供のようにいたわしく思い、その成長を陰ながら見守っておりました」。この「女」から「母」への突然の変身に、むろん二朗は衝撃と困惑を隠すことが出来ない。それに伯爵夫人のこのような告白を信じるにたる理由などどこにもありはしない。むしろ全面的に疑ってかかる方がまともというものだろう。二朗は自分こそが「一郎」なのではないかと思いつく。そういえば何度も自分は祖父にそっくりだと言われてきた。容貌のみならず「おちんちん」まで。それについ今しがた、伯爵夫人はここが「どこでもない場所」であり、それゆえ「明日のあなたにとって、今日ここでわたくしがお話ししたことなど何の意味も持ちえないというかのように、すべてががらがらと潰えさってしまう」と言ってのけたばかりではないか。その舌の根も乾かぬうちにこんな話をされて、いったい何を信じろというのか。 ことの真偽はともかくとして、ここで考えておくべきことが幾つかある。まず「一郎」が伯爵夫人と「お祖父さま」の間の秘密の息子の名前だというのなら、二朗の死んだ兄の名前は何だったのか、ということだ。そもそもこの兄については、曰くありげに何度も話題にされるものの、小説の最初から最後まで一度として名前で呼ばれることはなく、そればかりか死んだ理由さえ明らかにされることはない。幾つかの記述から、亡くなったのはさほど遠い昔ではなかったらしいことは知れるのだが、それだけなのだ。まさかこちらの名前も「一郎」だったわけはない。一郎が生まれた時には二朗の兄は生きていたのだから……書かれていないのだから何もかもが憶測でしかあり得ないが、結局のところ、兄は二朗を「二」朗にするために、ただそれだけのために物語に召喚されたのだとしか考えられない。そして別に「一郎」が存在している以上は、兄には何か別の名前があったのだろう。いや、いっそ彼は「無名」なのだと考えるべきかもしれない。実在するのかどうかも定かではない「お祖父さま」と伯爵夫人の息子には名前があり、確かにかつては実在していた筈の二朗の兄には名前が無い。「どこでもない場所」での伯爵夫人の最後の告白を聞くまで、読む者は二朗の兄こそ「一郎」という名前だったのだろうと漫然と決め込んでいる。だからそこに少なからぬ驚きが生じるのだが、つまりそれは「二」の前に置かれている「一」がずらされるということだ。その結果、二朗の「二」はにわかに曖昧な数へと変貌してしまう。それどころか彼には自分が「二」ではなく「一」なのかもしれぬという疑いさえ生じているのだから、このとき「一」と「二」の関係性は急激に解け出し、文字通り「どこでもない場所」に溶け去ってしまうかのようだ。 もうひとつ、このことにかかわって、なぜ「お祖父さま」は「一郎」の誕生を許したのかという問題がある。彼にはすでに「二」人の娘がいる。その後に奇妙な禁欲を自らに強いたのは、すなわち「三」人目を拒んだということだろう。「二」に踏み留まって「三」には行かないことが、二朗の兄言うところの「「近代」への絶望」のなせる業なのだ。つまり「三」の禁止こそ「世界の均衡」を保つ行為なのであって、このことは「お祖父さま」の爵位が子爵=爵位の第四位だったことにも暗に示されている。ということは、彼はひとつの賭けに出たのだと考えられないか。確かに次は自分にとって「三」人目の子供になってしまう。それだけは避けられない。しかし、もしも伯爵夫人との間に生まれてくるのが男だったなら、それは「一」人目の息子ということになる。だから彼はおそらく祈るような気持ちで「一郎」という名前をあらかじめ命名したのだ。逆に、もしも生まれてきたのが女だったなら、その娘が果たしてどうなっていたか、考えるのもおそろしい気がしてくる。 「三」の禁止。仮説によるならば、それは『伯爵夫人』の原理的なプログラムの筈だった。「一郎」をめぐる思弁は、そのことを多少とも裏づけてくれる。だがそれでも、紛れもない「三」の化身である伯爵夫人の振る舞いは、この世界を「三」に変容せしめようとすることを止めはしない。彼女は二朗を「三」人目」だと言い、たとえ「一郎」という命名によって何とか抗おうとしていたとしても、彼女が「お祖父さま」の「三」人目の子を孕み、この世に産み落としたことには変わりはない。「一」郎の誕生を「二」朗が生まれる「三」日前にしたのも彼女の仕業だろう。やはり「三」の優位は揺るぎそうにない。だから二朗が射精するのは「三」度でなければならないし、二朗が不能に陥るのは「三」日間でなければならない。考えてみれば、いや考えてみるまでもなく、このことは最初からわかりきっていたことだ。なぜならこれは小説家蓮實重彦の第三作、すなわち「三の物語」なのだから。 そして、かろうじて保たれていた「世界の均衡」が崩れ去った、或いはすでにとっくに崩れてしまっていた事実が晒け出されたのが、「ばふりばふりとまわっている重そうな回転扉」から「どこでもない場所」へと至るめくるめく経験と、その過程で次から次へと物語られる性的な逸話を二朗に齎した自らの奸計の結果であったとでも言うように、伯爵夫人は物語の末尾近くに不意に姿を消してしまう。どうやら開戦の情報を知って急遽大陸に発ったらしい彼女からの言づてには、「さる事情からしばらく本土には住みづらくなりそうだから」としか急な出奔の理由は記されていない。かくして「三」は勝利してしまったのか。本当にそうか。実をいえばここには、もうひとつだけ別の可能性が覗いている。すなわち「四」。ここまでの話に、ほぼ全く「四」は出てきていない。しかし「三」であることから逃れるために、いまや「二」の方向が有効でないのなら、あとは「四」に向かうしかない。では「四」はいったいどこにあるのか。 伯爵夫人が「伯爵」と出会ったのは、バーデンバーデンでのことだ。「あと数週間で戦争も終わろうとしていた時期に、味方の不始末から下半身に深い傷を追った」せいで性的機能を喪失してしまったという、絶体絶命の危機にあっても決して平静を失わないことから部下たちから「素顔の伯爵」と呼ばれていたドイツ軍将校と、のちの伯爵夫人は恋に落ち、彼が若くして亡くなるまでヨーロッパ各地で生活を共にしたのだった。バーデンバーデンは、他の土地の名称と同じく、この小説の中では漢字で表記される。巴丁巴丁。巴は「三」、丁は「四」のことだ。すなわち「三四三四」。ここに「四」へのベクトルが隠されている。だが、もっと明白な、もっと重大な「四」が、意外にも二朗の身近に存在する。 二朗が真に執着している���が、伯爵夫人でも和製ルイーズ・ブルックスでもなく、従妹の蓬子であるということは、ほぼ間違いない。このことは、ポルノグラフィックな描写やセンセーショナルな叙述に囚われず、この小説を虚心で読んでみれば、誰の目にも明らかだ。この場合の執着とは、まず第一に性的なものであり、と同時に、愛と���んでも差し支えのないものだ。確かに二朗は蓬子に触れられてもしごかれてもぴくりともしないし、小春などから何度も従妹に手をつけただろうと問われても事実そのものとしてそんなことはないと否定して内心においてもそう思っているのだが、にもかかわらず、彼が求めているのは本当は蓬子なのだ。それは読めばわかる。そして小説が始まってまもなく、蓬子が伯爵夫人についてこともなげに言う「あの方はお祖父ちゃまの妾腹に決まっているじゃないの」という台詞が呼び水となって、二朗は「一色海岸の別荘」の納戸で蓬子に陰部を見せてもらったことを思い出すのだが、二人の幼い性的遊戯の終わりを告げたのは「離れた茶の間の柱時計がのんびりと四時」を打つ音だった。この「四」時は、二朗のヰタ・セクスアリスの抑圧された最初の記憶として、彼の性的ファンタズムを底支えしている。それに蓬子は「ルイーズ・ブルックスまがいの短い髪型」をしているのだ。二朗は気づいていないが、あの「和製ルイーズ・ブルックス」は、結局のところ蓬子の身代わりに過ぎない。そして何よりも決定的なのは、蓬子という名前だ。なぜなら蓬=よもぎは「四方木」とも書くのだから。そう、彼女こそ「四」の化身だったのだ。 小説の終わりがけ、ようやく帰宅した二朗は、蓬子からの封書を受け取る。彼女は伯爵夫人の紹介によって、物語の最初から「帝大を出て横浜正金銀行に勤め始めた七歳も年上の生真面目な男の許嫁」の立場にあるのだが、未だ貞節は守っており、それどころか性的には甚だ未熟な天真爛漫なおぼこ娘ぶりを随所で発揮していた。だが手紙には、緊急に招集された婚約者と小田原のホテルで落ち合って、一夜を共にしたとある。婚約者は誠実にも、自分が戦死する可能性がある以上、よもぎさんを未婚の母にするわけにはいかないから、情交には及べないーーだがアナル・セックスはしようとする、ここは明らかに笑うところだーーと言うのだが、蓬子は「わたくしが今晩あなたとまぐわって妊娠し、あなたにもしものことがあれば、生まれてくる子の父親は二朗兄さまということにいたしましょう」と驚くべきことを提案し、それでようやっと二人は結ばれたのだという。それに続く文面には、赤裸々に処女喪失の場面が綴られており、その中には「細めに開いた唐紙の隙間から二つの男の顔が、暗がりからじっとこちらの狂態を窺っている」だの「あのひとは三度も精を洩らした」だのといった気になる記述もありはするのだが、ともあれ二朗はどうしてか蓬子のとんでもない頼みを受け入れることにする。彼は小春を相手に現実には起こっていない蓬子とのふしだらな性事を語ってみせさえするだろう。それは「二」として生まれた自分が「三」からの誘惑を振り切って「四」へと離脱するための、遂に歴然とその生々しい姿を現した「世界の均衡」の崩壊そのものである「戦争」に対抗し得るための、おそらく唯一の方法であり、と同時に、あるとき突然向こうからやってきた、偶然とも僥倖とも、なんなら奇跡とも呼んでしかるべき、因果律も目的意識も欠いた突発的な出来事としての「小説」の、意味もなければ正しくもない「原理」、そのとりあえずの作動の終幕でもある。
(初出:新潮2016年8月号)
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未知なるアロンを悪夢に求めて
4月26~28日 インド ダポリジョ~アロン
ジロからさらにアルナーチャルの奥へと進んだ先に”アロン(Along、またはアーロAalo)”という名の街がある、ということは、アジア辺境地域のツアーアレンジで有名な西遊旅行社のホームページで短文で辛うじて紹介されていた程度で、その地の実態を伝える旅行記などの情報源は少なかったし、そのアクセス方法についてはまったくと云ってよいほど調べようがなかった。「ネットやガイドブックへの依拠が不可能な旅行」という人生はじめての経験をこうして3週間も続けていると、まあ現地で訊けばなんとかなるだろ、という腹の括り方くらいはできるようになる。別に特別なスキルを身に付けたわけではなく、単に日程に余裕があり、現地で調べてもわからなければ諦めて別の街を目指す、というだけのことに過ぎない。いまや旅行記や僅かな伝聞で辛うじて知ることのできる、古式ゆかしい「バックパッカー」の旅行スタイルに多少は近いといえるだろう。いい加減社会人というものを暫くやると、こうした計画上のリスクを抱えた状態にはできるだけ身を置くべきではない、という感覚が多かれ少なかれ本能的に身に染み付いてくるものだが、それでも、あるいはそれゆえにか、この旅がなんかこう、バックパッカー的だなぁ、旅人って感じだなぁ、という開放と充足、いささか自己憐憫的な感傷とに浸れることは間違いない。
そもそもこの40yotb第四部を計画するにあたっては、”今度はなんかこう、秘境っぽいところへ行きたい”という、いささか曖昧な動機が出発点にあった。前も述べたがここでの「秘境」とは本来的な意味ではなく旅行情報の希少さ、ネット環境の乏しさという意味においてだ。旅行者としての経験も多少は積み上がってきたことだし、すこし歯応えのある旅をしたほうがかえって愉しめるのではなかろうか。「脱力」から「旅」へと、針をこれまでになく大きく振ってみるのだ。そして選んだ先のインド北東部は、まさに上述の意味における秘境そのものであり、いままでの旅では味わったことのない苦労と面白さがあった。つまり現在の自分は、この地域を移動して回っているだけで一定の達成感を得られる状態になっており、街から街へのアクセス手段を自分の足で開拓していくことに熱中しはじめていた。
ジロからアロンの街へ向かう道は一本道だが、直通のスモーが出ていない。悪路が続くので時間がかかり、途中の街で一泊する必要があるようだ。一方、一旦イタナガルへと戻り、道路状況のよいアッサム州を経由するルートを取る方法もあったが、結局イタナガルで一泊する必要があるし、だいいちそれでは面白くない。まるで後退しているようではないか。前者を採��した。
スモーのチケット・ブースにいたネパール出身の親父がいろいろと親切に教えてくれたところによると、ジロからアロン方面へは、ダポリジョという街までスモーが出ているとのこと。ダポリジョで一泊して、そこでアロン行のスモーかバスを探せばいいわけだな、と安易に判断する。
翌朝9時、またしても苦難の行軍が始まる。アルナーチャルの道はあいかわらず酷く、全面未舗装で路面は激しい凹凸を伴い、あちこちで崖が崩落し、狭い道幅が更に狭くなっている。そんな心細い山道が峠と峠をつなぎ、延々とつづら折りを描いている。トラックや軍用車など大型車の往来も多く、一台すれ違うごとに車輪は今にも崩壊しそうな崖をギリギリまで攻めながら互いにそろりそろりと前進する一大イベントが発生し、遅々として目的地にたどり着かない。計測したところ、アルナーチャルでの平均移動速度は20km/hを切っていた。いかに山間部でも政府軍を大規模に駐留させている土地なのだから、もう少し整備されてしかるべきではなかろうか。同じ山奥の道でもここが中国なら、谷沿いに高架を建設しトンネルを何本も掘って、景観や環境への配慮その他はともかく快適ではある幹線道路で都市間をつなげてしまうだろう。インドにもそうした技術があるにはあるが、それを展開する能力はかなり限定的と云わざるをえない。いまやIT先進国といわれるインドは、途上国が通常通過するはずの多くの技術分野を事実上棚上げし、特定の先端技術に投資を集中して数ある新興国から頭一つ抜け出しつつある。この国のテクノロジー・ツリーの歪さをアルナーチャルの山奥に見た思いがした。
日が暮れるころ、ダポリジョ到着。途中タイヤのパンクなどもあって1時間ほど遅れただろうか。ダポリジョは観光の街ではないので見どころもなく、宿事情も悪い。適当に泊まるところを決めて早速アロン行の足を探すも、ここで暗礁に乗り上げた。アロン行の公営バスがどうやら現在は運行していないようだった。直通のスモーもなく、完全に宛がはずれてしまう。翌朝、必死に訊き回ると、”わたし日本人と話すのはじめて!”というスモー・チケット売りのお姉さんが、”バサールの街を経由すればいいと思う”と教えてくれた。
そのプランは、15時発バサール行の私営バスに乗り、夜半前バサール着、イタナガルから来るアロン直通バスに乗換えてアロンに深夜着という、ややアクロバティックな行程だった。どうせバスは遅れるだろうし、乗り換えできなかったらどうしよう、アロンに着けたとして宿はどうする?といくつもの不安がよぎったが、やけに陽気なバスの運転手が僕の席近くに座った二人組のおばちゃんを指して、”このひとたちもアロン行きだから安心しな!”と笑っているので、まぁなんとかなりそうだ、と思うことにする。皆ほとんど英語を解さないが、ひとりだけ英語の堪能な看護師さんが乗り合わせていた。彼女は、あの運転手が陽気なのはどうやら酒を飲んでいるからだ、と、さらりと言ってのけた。”運転が荒っぽくなければよいのですが...”
そしてこの行軍は、おそらく運転手のメートルの上がり様に関わりなく、アルナーチャルでもっとも凶悪であったと思う。悪路ここに極まり、あまりの揺れに僕はとうとう首を痛めてしまい、向こう1週間以上、寝違えのような症状と酷い肩こりに悩まされることになる。アルナーチャルの山道は、ただ座っているだけでむち打ち症になるのだ。しかしまあ、それはまだよい。トラックとすれ違う度に嫌な想像が頭をよぎった。”インドでバス転落、邦人一名巻き添え。原因は運転手の飲酒”なるニュースの見出しが、アイデア・ロールをおこなうまでもなく容易に想像できる...しかしまあ、それも今更逃げようもない。腹を括ってこの行軍に耐え、うまくバスを乗り換えれば、まだ見ぬアロンへと辿り着くことができるのだ。
満足な夕食休憩もないままバスはなおものろのろと山路を走り続け、そして戦慄の夜が訪れた。何度目かの峠で唐突に降ろされる。運転手曰くここで乗換であるという。時間は深夜零時をまわろうとしていた。街なかで乗換ではなかったのか。一緒にアロンまで行くはずの二人組のおばちゃんたちは平気な顔で降りていくので慌てて従ったものの、バスが去ったあとの峠道は、しんと静まり返った山奥の小径であり、人知及ばぬアルナーチャルの深い闇が支配するばかりである。気温もぐっと下がり、荷物からダウンジャケットを取り出して羽織っても震えが止まらなかった。これはいよいよ、今晩中にアロンまで辿り着かないことには事だな。頼みの綱の乗換バスは、いくら待てども来る気配すらない。そもそも既に行ってしまった後かもしれない。もはや抜き差しならない状況となり、1時���近く待ってやっと通った1台目の車両である小型トラックをおばちゃん二人組が必死に停めてヒッチハイクを敢行。なんとかアロンへの足を確保した。ホッとはしたが、トラックの荷台でさらに2時間近く、悪路と寒さに耐えなければならなかったのは、40yotb史上最も過酷な移動であったと云って間違いない。
そして、暗闇のなかアロンの村へ到着。ありがたいことにトラックに乗せてくれた兄貴が適当な宿を見つけてくれ、宿の親父を叩き起こしてくれた。ああ、これで暖かいベッドに横になれる。そう思って、この長い長い移動を耐え抜いて本日の戦術目標を辛くも達成した自分を心のなかで労っていると、急に起こされて文句のひとつも言わないこの親切な宿の親父は、僕を彼の狭い事務所兼寝室に案内してこう言った。”今夜は空き部屋がない。このベッドで俺と二人で寝ろ。”
混雑する夜行列車を見れば判るとおり、インド人は同性で寝床を共にすることに抵抗がない。憔悴しきって他に宛もない僕に選択権はないに等しかった。促されるまま、どうみてもサイズはシングルであろうそのベッドに横たわる。首筋にシーツの湿気を感じ、じっとりと汗ばんだ互いの肩が触れた...。
悪夢のような夜は未だ明けない。
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詩集「Gemini -Evergreen Story-」
詩集「Gemini -Evergreen Story-」
1.ジェミニは風の中 2.太陽の踊り子 3.雨やどり 4.アイビー・ボーイも恋をしたい 5.嵐の夜に 6.時違い 7.21 8.心唄 9.愛のバラッド 10.サマーシャワー 11.ピュラスの独唱 12.Evergreen Story
(セクション表記:A〜G=Aメロ,Bメロetc…, S=サビ, I=導入, +=応用 )
ジェミニは風の中
街角ですれ違う 麗しき人よ その名はジェミニ
時を越える記憶 涙を駆ける愛 いくつもの日々を越えて 君に風が吹くのさ
ピントを合わすまで 気付かぬ世界よ 君を知るまで すべてはモノクロだった
ジェミニは風の中 永遠(とわ)に輝く 後悔よ 憂鬱よ 昨日に置いてゆけ
まだ見ぬ未来へ…… アクセル
刹那に星は流れて 突然愛が終わる 時の魔法 消えぬうちに 風に乗り絆繋げ
視線を合わすまで 交わらぬ世界よ 君に逢うまで すべてはモノクロだった
ジェミニに恋をして いつしか別れた セピア色 問いかける 恋の行方は
どんなに辛くても…… アクセル
既読が付かぬまま 言葉は闇へ消えてく 青春色のセンチメンタル 衝動を塗り替えよ
涙を交わすまで 見えない真意よ 君と離れて すべてはモノクロになった
ジェミニが置いてった 解けないパズル まるで解れた後の愛みたいさ
悲しい時こそ…… アクセル
①【I・A・B・S・SⅡ】 - ②【A・B・S・SⅡ】-③【C・B・S・SⅡ】
太陽の踊り子
太陽の踊り子 麗しき若者 真夏に照らされて 最初の恋をした
チェリオの自販機 貝殻に頬赤らめた 幼少の僕が 今や懐かしい
突然の通り雨 家路へ急ぐ君が なんだか眩しくて 自然に追いかける眼
太陽の踊り子 麗しき若者 真夏に照らされて 最初の恋をした
でも届かぬ想いよ ふと我に帰る時 遥かなる愛の果てに 僕は大人になった
ウィンナコーヒー ココアシガレット…… 涙に暮れた夜こそ 生まれ変わるチャンスさ
太陽の踊り子 麗しき若者 真夏に照らされて 最初の恋をした
部活の仲間と 一緒に笑い合ってた 何も疑わず 好奇の対象だった
でも気づいたら独り 子供に取り残された 過ぎ去りし時の中で 繋がらない記憶の渦
愛なき抱擁に 何も感じない 夢なき接吻に 明日は見えない
過去から未来へ 太陽が昇るとき 永遠の詩口遊み 大人であること 放棄する
太陽の踊り子 麗しき若者 真夏に照らされて 最初の恋をした
僕らは大人になり ふと我に帰る時
あの時の僕は 何をしてたのかと 後悔の渦に襲われたなら 子供時代を振り切った証さ
未知との遭遇に 不安を覚えた夕立ち 出逢いと別れを重ねながら この人生をまっすぐに往くのさ
太陽の踊り子 麗しき若者 真夏に照らされて 最初の恋をした
でも届かぬ想いよ ふと我に帰る時 遥かなる愛の果てに 僕は大人になった
①【S・A・B・S・SⅡ】 - ②【A+・S・SⅢ・SⅡ】-③【C・D・S・E・SⅢ・SⅡ・S・SⅡ】
雨やどり
傘を忘れた 気持ちは憂鬱 走って帰る 道の途中で
いつも君に逢う 何故なのか?
声を交わす non no no no 同じクラス non no no no 別の世界で生きてくはずの 二人の運命が繋がって Uh…
雨やどり 命取り 君モドリ ハッピー・モード
雲の隙間に虹が見え 手を振り別れた瞬間 恋が芽生えた さよならの影に疼く青春
傘を忘れた 予報は雨模様 肩で息をして 君に逢いにゆく
もうここにいない わかってても
雨が運ぶ non no no no 時弄ぶ non no no no 同じ世界になった瞬間 二人の運命は離れ離れ Uh…
雨やどり 渡り鳥 君は去り アンハッピー・モード
晴れ渡る空が切なく眩しく 君を思い出す度 止まらない涙 言葉なき別れに嘆く青春
雨やどり 記憶辿り 君愛し マイユース
青空に再び雨雲を架け 虹の彼方へ 君を呼ぶ 人生は別れるために…… あるのだろうか?
①【A・B・C・S・SⅡ】-②【A・B・C・S・SⅡ】-③【S・SⅡ+】
アイビー・ボーイも恋をしたい
東京へ出た時 皆が大人に見えた 同じ学部の仲間も ひとつ先輩に見えた
お洒落なんか興味ないけど 今のままではダメだ なんとなく街へ出かけて 服と靴を選んでみた
悲しいほどに似合わない その姿に驚いた お洒落って難しいんだと 俺は俺なりに知った
アイビー・ボーイも恋したい 今は見習いでも
地元へ帰った時 「少し垢抜けたね」と言われた クラスメイトに会う度 並ぶのは似たような言葉
若すぎたから気付けなかったけど その言葉に秘められた意味 何度思い出しても 頬が赤く染まる
まるで熱に浮かされたみたく ふと我に帰った この街は人を変える そんな力があるんだと
東京生まれの君は気付かない 魔性の大東京
人の目なんか気にしたことない そんな僕だけど いつの間にか人の目気にして 大切なもの忘れてた
自分に合う姿 いちばん良い自分 お洒落って難しいんだと 俺は俺なりに知った
どんな街でも自分らしさ 忘れちゃいけないよね 恋をするならまず自分から 愛せる人になるのさ
アイビー・ボーイも恋したい 今は見習いでも
①【A・B・S・SⅡ】-②【A・B・S・SⅡ】-③【C・D・S・SⅡ】
嵐の夜に
ふたりきりガールズトーク 抱き枕 Hold me tight!! 雷鳴に怯えて眠れぬ夜は 秘密の話をしようよ
気になるあの人 あいつの点数 好きなアイドル ほしいものリスト
もちろん自分のこと 悩みも打ち明けよう 秘密基地みたいだ ドキドキが止まらない
嵐の夜に 朝まで喋ろう 眠気が来るまで 話し尽くそう ……プチョヘンザ!
何気ない会話が 今夜の主役になる 芝居は要らない ありのままでいい
もちろん眠くなる でも聞き逃したくない 身体には悪いけどさ 始まったら終われない
嵐の夜に 朝まで喋ろう 寝坊してもいい 話し尽くそう ……プチョヘンザ!
修学旅行の夜を思い出してほしい 今しか出来ないこと 全部やろうよ
嵐の夜に 朝まで喋ろう 眠気が来る前に 話し尽くそう ……プチョヘンザ!
夜明けまで待つから ふたりきりガールズトーク
①【A・B・C・S】-②【B・C・S】-③【D・S・E】
時違い
若葉が色づく頃 君はまだ若かった 冬服の袖を捲り 街を歩く五月の朝
いつものバス停で 偶然隣になった 毎日見かけていたから 顔を覚えていた
どうして話をしたか 今も思い出せない ひとつだけ確実なのは きっかけが僕からじゃないこと
時は流れて 季節も移ろい この街に君はいないよ それぞれの人生 君の行方は知らない
夏服に着替えた頃 少しだけ近づく距離 お互いの話をして たまに寄り道もした それが倖せだった……
夏休みが始まる前に 一度だけ遅刻した時 明日も逢えると信じていたけど 次の日は逢えなかった
想い溢れて 涙流れる この街に君はいないよ 男と女の友情 君の行方は知らない
永遠なんてないこと 僕は学んだよ 誓いの明日繋ぐために 今を生きてる
時は流れて 季節も移ろい この街に君はいないよ それぞれの人生 君の行方は知らない
忘れられぬ青春 ふたりの時違い
①【A・B・C・S】-②【A+・C・S】-③【C・S・D】
21
もうすぐ五年になるよね 君と出逢ってから 恋もした ケンカもした
いまの僕らなら いちばん合う気がする
共に歩いてるだけで 僕は倖せだった 愛を確かめなくとも 未来は輝いてた
今でも思い出す度 君が恋しくなる よく話した 夜も明かした
いまの僕で もう一度巡り逢えるなら
共に夢を見ていた 日々が倖せだった 息を確かめなくとも 明日に時めいてた
いまなら僕も 君の言葉がわかる 共に風に吹かれた 僕らは倖せだった
波に追われなくとも 青春を感じてた 共に明日を追いかけた 時代が倖せだった
嘘を確かめなくとも その言葉が総てだった
��まの僕で もう一度巡り逢えるなら
①【A・B・C】-②【A・B・C】-③【B・C・C+・B】
心唄
君と僕の関係 もう長い関係 不思議な関係 どうでもいい関係
ほどほどの関係 恋する関係 ケンカした関係 泣き明かした関係
腐れ縁の関係 最高の関係 一生続く関係 大切な関係
凹凸関係 おしゃれな関係 羨む関係 みんなが知ってる関係
昨日出逢った関係 今日知り合った関係 最近友達になった関係 生まれて初めて恋をした関係
関係ない関係 関係ある関係 これからもよろしくの関係 ありがとうの関係
All【A・A・A・A・A・A+】
愛のバラッド
悲しみの夜が 今日もやって来た 君との時間だけは 終わらないと信じてた
あの頃の俺達は ずっと若かったね 君が傍にいる 意味もわからなかった
夕陽に照らされて 自転車を押して帰った日 アヤメの花を握ってさ 約束したこと
今も覚えてるよ 忘れたフリをしたけど 些細なすれ違いが いつしか大きな傷になった
今だから言える 後悔してると 別れてもいいと言って ごめんね
安らぎの夜が 今宵も明けてゆく 君と共に過ごした日々が 無性に恋しくなる
思い出話に 浸りたくはないが 夜が深くなる程に 後悔が止まらないよ
泣き明かした夜は ずっと電話したよね アヤメの花は枯れたまま 月の光を浴びて
今も覚えてるよ 無かったことにしたけど 些細な嘘が 心のかさぶたを開く
今だから言える あの言葉の意味を 別れてもいいと言って ごめんね
君のことだから 新たな恋を育むだろう 俺なんかよりずっと立派な恋人 でも忘れられない 忘れてはいけないんだ 忘れてはいけない気がする 過去に縋るなんて こんなの俺じゃないけど 自尊心……
今も覚えてるよ 忘れたフリをしたけど 些細なすれ違いが いつしか大きな傷になった
今だから言える 後悔してると 別れてもいいと言って ごめんね
今だから言える あの言葉の意味を 別れてもいいと言って ごめんね 愛のバラッド
①【A・B・C・S・SⅡ】-②【A+・B・C・S・SⅡ】-③【D・S・SⅡ・SⅡ+】
サマーシャワー
Summer Shower…… Summer Shower……
今年の夏はやけに寒い どうしたものかと考えたら 別れたばかりの君の顔が浮かぶ
その場凌ぎの言い訳がバレた 君の髪に光る赤いバレッタ
気付かれなきゃいいだろ 軽い気持ちで I Love You…… 感じなきゃいいだろ 週末ホテルで rendez-vous……
すべてが甘すぎた 恋の終わり
Summer Shower…… Summer Shower…… 頬の傷が沁みる
今日はなぜだか胸が火照るぜ 君と別れて一年 今夜も知らぬ女(ひと)を抱く
仲間は「やめとけ」と言うけど 棄てられたままの理性
恋にならなきゃいいだろ 朝になればサヨナラ 見つめなきゃいいだろ その日だけ Instant Love
すべてが甘すぎた 若き日の過ち
Summer Shower…… Summer Shower…… 自暴自棄になる
愛の尊さも知らぬまま 知ってしまった別れの傷
気付かれなきゃいいだろ 軽い気持ちで I Love You…… 感じなきゃいいだろ 週末ホテルで rendez-vous……
恋にならなきゃいいだろ 朝になればサヨナラ 見つめなきゃいいだろ その日だけ Instant Love
すべてが稚すぎて すべてが未熟だった 最初で最後の恋夏(コイナツ)
①【I・A・B・S・SⅡ】-②【I+・A・B・S・SⅡ】-③【I+・B+・S・SⅡ・C】
ピュラスの独唱
何も知らない子供達 その夢は純粋無垢 世を知り尽くした大人達 醒めないでと祈る
真夜中のエチュード 無題のドラマ 悲しいほどの静寂が 涙の矢を撃つ
本当にやりたいことはなんだろう? 一体なんのために生きるんだろう??
そこに憂いはなく もっとも優雅なメディテーション
嗚呼 夜明けまで待っておくれ 嗚呼 目を覚ますな 涙を流すな
あなたは僕らの愛しい天使だ だから小悪魔のように笑わないでおくれ
蒼い星に生まれし希望よ 時代に抗う勇気はあるか あなたが大人になる頃に まだ希望を胸に抱けるか
嗚呼 夜明けまで待っておくれ 嗚呼 目を覚ますな 涙を流すな
純白の雨が降る 汚れなき命の息吹 何かを愛することも知らぬまま ぐっすり眠れよ
あなたは僕らの愛しい天使だ だから小悪魔のように笑わないでおくれ
地球が産まれた時 誰に想像できたか 七十七億人の星屑 今壊れ逝く運命を
嗚呼 夜明けまで待っておくれ 嗚呼 目を覚ますな 涙を流すな
神よ時を止めろ! あなたには見えるだろう 淀みなきユートピア さあ現実を見る前に 眠れよ 眠れよ 眠れよ 眠れよ
①【A・B・C・D・S・SⅡ】-②【E・S・F・SⅡ】-③【A・S・SⅢ】
Evergreen Story
Baby, Green…… いつまでも色褪せぬ恋 最初で最後のロマンスさ
織姫と彦星が 七夕を待つように セレネの恋に 応える男(ひと)のように
何にもなかった十代 二十代は星に消えた
明日なき青春の日々は とうに過ぎ去り 自由の旗を掲げて ようやく掴んだ平穏
そんな日に君を見つけてしまったのだ これが一目惚れなんだと 気付いた瞬間 戸惑いの嵐……
遅れてきた夢 僕のEvergreen Story 君に届け!
太陽と月が 重ならぬように 王妃と青年が 巡り逢わぬように
風を追いかけた三十代 四十代は何処へ消えた?
誰かに追われ続けて 忘れかけた純情 自由の日々を手にして ようやく気付いた恋情
忘れかけてたことを今日から取り戻す 今からだって跳べるのだ 気付いた瞬間 戸惑いの嵐……
遅れてきた夢 僕のEvergreen Story 恋よ叶え!
宇宙の法則に従うならば もう長くはない僕の人生
誰かに流されたまま 終わりたくはないよ 誰も守れぬまま 終わりたくはないよ
誠実に生きてきた 不器用に生きてきた この人生の最後に やっと夢を見たのだ ……完全燃焼!
涙も愛も知らずに ここまで来てしまった だから今こそ僕は 全力で恋をする
六十になった頃から 身体が軽くなった 恋するウキウキも やっとわかってきた
かつて軽蔑したコトの 魅力に気付いた瞬間
遅れてきた夢 僕のEvergreen Story 君に届け!
遅れてきた夢 僕のEvergreen Story 明日を繋げ!
Baby, Green…… 永遠に色褪せぬ恋 一度きりの青春 最初で最後のロマンスさ
①【I・A・B・S・SⅡ・SⅢ】・②【A・B・S・SⅡ・SⅢ】・③【C・S・SⅡ+・D・B+・C・SⅢ・SⅢ・I+】
Bonus1:モノレール
夢の痕が今も 淋しく微笑む 愛を知らぬ人が それを見て微笑む
黄金色の未来を 思い描いてた かつてこの国が 豊かだった頃
埃を被れど まだ走れると こちらを見ている 君が切ない
役目を終えても まだやれると こちらを見ている 君が悲しい
夢の痕が今にも 消え去りそうだ 愛も消え失せて 終りを待つのみ
今日も人目付かず 静かに生きている 最期を待つだけの 君でいいのか
Bonus 2:期末テスト
まずは名前を書きましょう クラスと名前 忘れずに
つぎは問題 見渡そう 出来る出来ない 見分けよう
最初の問題 解けたなら テストの傾向 見えてくる
出来ない問題 気にしない 出来る問題 確実に
これが私の必勝法 よければみんな真似してね♪
まずは答案見渡そう イージーミス 誤字ってない?
つぎは躓いた場所を まだ行ける 大丈夫
最初に上手く行かずとも まだ諦めちゃダメさ
残り十分 ケアレスミス 残り五分 総仕上げ
これが私の必勝法 よければみんな真似してね♪
最後に答案ズレてない? 不安 出来ない チェックしよう
チャイムがなったら伸びてみて おつかれ おつかれ ごくろうさま
これが私の必勝法 よければみんな真似してね♪ ……って、みんなやってるか!笑
Bonus3:I'm a Creater
あなたが生まれる少し前に ひとつ跨いだ Century 生まれてすぐで知らないが みんな騒いだ Millennium
時は緩やかに流れ 色々あった 2001 やっと私が歩き始めて 言葉を喋った 2002
青色の星が流れ 最後に夢を見た 2003 手のひらを太陽に掲げ 友と橋を渡った 2004
ひらがなを書き始め 言葉がわかった 2005 看板の漢字を読�� 友に自慢した 2006
いついつまでも夢を見る 青春と怪獣の表現者 私だけの世界創るのさ
とにかく落ち着きがなく 走り回った 2007 ピアノと水泳で 水泳を選んだ 2008
野球に出逢い とにかく遊んだ 2009 野球を始め 沈黙を知った 2010
信じられない光景 友よ生きろ 2011 明日はどこだ 人生考える 2012
いついつまでも夢を見る 青春と怪獣の表現者 私だけの世界創るのさ
まだ見ぬ世界 夜明けを求めた 2013 アルフィー出逢う きっかけはウルトラの風 2014
小説家になる 道はここだ 2015 詩を描き始める 未来が見えない 2016
青春の味 永遠信じた 2017 夢破れ 風が変わった 2018
いついつまでも夢を見る 青春と怪獣の表現者 私だけの世界創るのさ
すべてが壊れた 何もわからぬ 2019 すべてが変わった 何をしようか 2020
さあここからだ 強くあれ 2021 いくつになっても まっすぐ生きたい 20XX
風に吹かれても 時に流されても この根だけは絶やさずに
いついつまでも夢を見る 青春と怪獣の表現者 私だけの世界創るのさ
私は創作家 言葉と共に生きるひと
詩集「Gemini -Evergreen Story-」
(Yuu Sakaoka Project / YSSP-006)
All Produced / Written by Yuu Sakaoka Respect to 浜田省吾, ラッツ&スター, BEAT BOYS, 鈴木雅之, チェッカーズ, 高橋みなみ, 八木莉可子, ENNE, 爆風スランプ, 沢田研二, 高見沢俊彦, 井上陽水, 雪見撫子, 小坂菜緒, グレゴリオ聖歌, PINK FLOYD, ボブ・ディラン, 加山雄三(永遠の若大将), 姫路市営モノレール, スバル・ワールドラリーチーム, ウルトラマン, 北島���介, すべてのチブル星人, クレイグ・ブラゼル, すべての創作者のみなさま, 大滝詠一 with All My Loving. Designed, Directed, Commercial by Yuu Sakaoka
Special Thanks to My Family, my friends and all my fans!!
2021.6.18 Yuu Sakaoka
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「すべての人たちが、人生に意義を感じられる目的感を持てる世界を作ろう」
今朝ツイッターを眺めていたら、フェイスブック創業者マーク・ザッカーバーグが母校ハーバード大学の卒業式に呼ばれてスピーチしてる動画のリンクが流れてきて、軽い気持ちで再生しはじめたら凄い迫力で、30分以上のスピーチ最後まで全部見てしまったってことがあった。
結構笑えるジョーク(窓ガラスに数式書いたりしないよ!・・・とかいう映画"ソーシャルネットワーク"を根に持ってるようなジョークとか)やハーバード内輪ネタ(と思われる・・・ちょっとググると出て来るのが今の時代の救いですが)も交えつつ、卒業生と10歳も離れてない立場から"僕ら世代の責任"という切り口で語る話は非常にグイグイ来る迫力がありました。
「すべての人たちが、人生に意義を感じられる目的感を持てる世界を作ろう」というテーマです。
僕らミレニアル世代なんだから、昔の世代の卒業式スピーチみたいに「自分の人生の目的を見つけよう」なんてそんなことは言われなくたって本能的にやってるでしょう? そうじゃなくて「みんながその気持を持てるようにすること」が重要なんだ・・・っていうのはなかなかパワーある話。
ケネディ大統領がNASAの清掃員さんに何やってるの?って聞いたら「人類を月に送る手伝いをしてるんです」って答えた話が好きで、そうやって「あらゆる人に"俺達はやれるんだという感覚"を持ってもらうこと」が今必要なことだ・・・っていうのは、あらゆる分断が社会を引き裂いていくこの時代に凄く重要なメッセージだと思いました。
(最近、凄いのは"日本"じゃなくて単にその技術の発明者個人であって、ネットでこの記事読んでるお前じゃねーよ!とかそういう言わずもがなのことをいちいち言ってタフぶってる人がいますが、そういう人は社会というのが色んな人のサポートしあいによって成立しているってことを軽視しすぎてると思います)
他にも、最初にフェイスブックをハーバードの寮で立ち上げた夜に、今日は自分がハーバードのメンバーを繋いだが、そのうち誰かが世界中を繋ぐだろうと思ったとか。そこで「自分じゃないだろうが誰かが」と思ってちゃダメでそれ「自分が」やるんだよ!というメッセージとか。最初期のマネジメントチームと、会社を売るか売らないかで大モメにモメて、その結果、共有できる大きな目的がなかったからああなったんだと気づいたという話など、なかなかドラマチックな話が満載で飽きさせません。
なんにせよ徹底的にアメリカンに理想主義的だから、骨絡みの懐疑主義者の日本人からすると具体案に近づけば近づくほど「え、さっきの超凄い話の具体例がそれ?」って感じもあるんだけど(笑)でもそんな疑問が沸いた時点でこっちが「俺って小せえ人間かも」ぐらいになってしまうほどの徹底的理想主義の迫力みたいなのがあって圧倒されて最後まで見てしまいました。
あなたの立場によってはこれはひょっとすると偽善そのものに見えるかもしれん・・・が、「超弩級に徹底した揺るぎない偽善」は、それ自体を多くの人が「善なるもの」として必要としているメカニズムというのもあるだろうというぐらいの迫力でした。
正直この前の大統領選の候補者のどれをとってもこんなスピーチの力はなかったし、オバマ大統領のスピーチは確かに「うまい」かもしれないけど、でもこんな迫力はない気がします。
個人的には、例のスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式スピーチ(いわゆる"stay hungry, stay foolish"演説)に匹敵する何かなんじゃないかと思って、今日は自分の本の執筆にあてるはずの日だったんですが、脳が占拠されてしまって仕事にならないので、ボランティアで日本語訳をすることにしました。
(このスピーチとは別に、ザッカーバーグの理想主義すぎるプロジェクトが若い頃有名な大コケした事件があって、それについて語りながら、アメリカだからできることと、それに対抗するために日本だからできること・・・というブログを昔書いてかなり評判だったので、よかったらあとで読んでください。→こちら)
では以下、30分ほどのスピーチの日本語訳です。動画リンクはコチラ↓
https://www.youtube.com/watch?v=BmYv8XGl-YU
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ここに立てて嬉しいです。こんな土砂降りの中集まってくれて皆さんありがとう!皆さんにとって価値のあるものにしましょう!ファウスト大学総長、監督委員会のみなさま、教授陣、卒業生、友人たち、そして誇らしく思っているご両親、顧問委員会のみなさま、そして、”世界で最も偉大な大学の卒業生”のみなさん!
私は今日ここにいられることを誇りに思っています。なぜって、あなたがたは僕ができなかったことを成し遂げた(中退したザッカーバーグと違って卒業したこと)んですからね!・・・このスピーチをちゃんとやりとげたなら、これがハーバードで僕がちゃんと最後までやりとげた最初の何かってことになるでしょう。
2017年クラスの皆さん、おめでとうございます!
僕はちょっと珍しいスピーカーかもしれません。いや中退したってことだけじゃなくて、僕は皆さんとだいたい同じ世代の人間ですからね。僕とみなさんは、10年も離れていない時期に同じこのキャンパスを歩き、同じ概念を学び、同じEC10の講義で居眠りした仲というわけです。
確かに違う経路を辿ってここまで来ました。もしあなたが、遠路はるばるthe Quadエリア��ら歩いて来た人だったりすると特にね。しかし、今日僕は「同じ僕らの世代」から学んだことについて、そして僕らが一緒に作っていくべき未来についてお話するつもりです。
でもその前に、ここ数日の出来事は色んなことを思い出させてくれました。
みなさんの中でどれくらいの人が、ハーバードからの合格通知のEメールを受け取った時にまさにどこで何をしていたか覚えていますか?
僕は、テレビゲームのシヴィライゼーションをやってて、階段を降りていくと、父親に会ったんですが、どういうことか彼がやったことは、僕がEメールを開くところをビデオに撮ることでした。そんなことして落ちてたらどうするつもりだったんでしょうね。
誓って言いますが、ハーバードに入ったことは両親が僕について最も誇りに思っていることだと思います。ほら、ウチの母親が頷いてます。でもみんな、私の言ってることがわかるでしょう?ここを出てからだと、これ以上のことをするのが難しいってわかるよ!
ハーバードでの最初の講義についてはどうでしょう?僕の場合は素晴らしいハリー・ルイス教授によるコンピュータ・サイエンス121のクラスで、遅れて大急ぎだったのでTシャツを逆に着ていて、背中のタグが前にあるのにも気づいてませんでした。
そのことは後で気づくのですが、なんで周りの人たちは僕に話しかけてくれないのかな?と不思議に思っていたんです。でも、KX・ジンってヤツが唯一話しかけてきてくれて、一緒に問題集を解き始めることができました。今彼はフェイスブック社の重要な部分を担ってくれています。
そう、だからね2017年卒のみなさん、周りの人には優しくしておいたほうがいいよ。
しかし、僕のハーバードでの最高の思い出は、プリシラ(・チャン。ザッカーバーグの奥さん)に会ったことです。
その時僕はちょうどイタズラで作ったウェブサイトのフェイスマッシュを立ち上げたところでした。そのイタズラについて、大学の顧問委員会が僕に”会いたい”と言って来て・・・まわりのみんなが僕はもう大学を追い出されると思っていました。私の両親なんかは僕の荷造りを手伝いにわざわざやってきたぐらいで。友人たちはサヨナラパーティを開いてくれたりしました。そこまでするか?て話ですよね。
幸運なことに、プリシラはそのパーティに友達と来ていたんです。僕とプリシラはPfoho Belltower寮のバスルームで出会いました。そこでこれ以上ないくらいロマンティックな台詞を僕は言ったんです。
「ここ数日中に大学を追い出されちゃうからさ、できるだけはやくデートしよう」
みんな、この台詞、使っていいよ。
ともあれその時は退学にはならなかったんですが・・・まあ結局はあとで自分から退学することになったんだけど!
そしてプリシラと僕はつきあいはじめました。そう、あの映画”ソーシャルネットワーク”ではフェイスマッシュはフェイスブックを作る上で物凄く重要なステップだったように描かれてたけど、実際はそうでもなかったんですよ。でも、フェイスマッシュを作ってなかったらプリシラには出会えてなかっただろうと思います。そして彼女は僕の人生で最も大事な人だ。つまり、フェイスマッシュは僕がハーバードで作ったものの中でもっとも重要だったと言ってもいいかもしれないね。
私たちは、この大学で、一生モノの友達を得ます。そしてその中には家族となる者もいるでしょう。だから僕はこの場所に感謝してるんです。ハーバード、ありがとう。
・
さて。
今日、僕は「目的」について話します。しかし「あなたの人生の目的を見つけなさい的なよくある卒業式スピーチ」をしたいわけではありません。僕らはミレニアル世代なんだから、そんなことは本能的にやっているはずです。だからそうじゃなくて、今日僕が話したいことは、「自分の人生の目標を見つけるだけでは不十分だ」という話をします。僕らの世代にとっての課題は、「”誰もが”目的感を人生の中で持てる世界を創り出すこと」なのです。
ジョン・F・ケネディがNASA宇宙センターを訪れた時のエピソードで僕の大好きなものがあります。ホウキを持ってる清掃員さんにケネディが何をしてるのかと訪ねたら彼はこう答えました。「大統領、私は人類を月に送る手伝いをしているのです」。
「目的」というのは、僕ら一人ひとりが、小さな自分以上の何かの一部だと感じられる感覚のことです。自分が必要とされ、そしてより良い未来のために日々頑張っていると感じられる感覚のことなのです。「目的」こそが本当の幸福感をつくるものなのです。
あなたがたは、このことが特に重要な時代に生きています。僕らの両親が卒業した時には、「目的感」は仕事や、教会や、コミュニティがたしかに与えてくれました。しかし今は、テクノロジーと自動化技術が沢山の仕事を消し去っていっています。コミュニティへの所属感も消えてきている。多くの人が取り残され、抑圧されていると感じ、その空白感をなんとか埋めたいとあがいている。
私は色々と旅をする中で、少年院や薬物中毒者の子供達の隣に座って、彼らが「もし自分の人生に何かするべきことがあったなら、学校帰りにどこかでとか・・・そしたらもっと違う人生になっていたかも」と語るのを聞きました。また、元の仕事が無くなって行くのを知って、自分の居場所を探している工場労働者の人たちにも出会いました。
この社会を前に進めること、それが僕ら世代の課題です。新しい仕事を作るだけじゃなくて、あたらしい「目的感」をも作り出さなくちゃいけない。
カークランド寮の自室でフェイスブックを立ち上げた夜のことを思い出します。Noch’s ピザ・レストランに友達のKXと一緒に行きました。僕はこう言ったことを覚えています。「今日僕がハーバードのコミュニティを繋いだってことには凄い興奮してるけど、でもそのうち誰かが世界中の人を繋ぐだろう」。
ここで重要なことは、「自分じゃないかもしれないが、誰かがやるだろう」というこの感じです。僕らはただの大学生のガキで、業界のことは何も知らなかった。大きなリソースのある色んなデカイIT企業がいくつもあってそれぞれが色々やってる。そのうちのどこかがやるだろうと思った。しかしこのことだけは物凄く確かにわかっていたんです・・・”人々は繋がりたがってる”ということだけは。だから僕らは毎日やることをやって前に進むだけなんです。
あなたがたの多くにも、似たような話があるはずです。「誰かが起こすであろう”ある変化”」があって、そのことが自分には明確に見えているという感じが。
しかし「誰か」がやるんじゃないんです。”あなたが”やるんです。
ただ、自分の人生の目標をそこで見つけるだけでは十分ではありません。あなたは、誰か他の人にもその「人生の目標」が持てるようにしてあげなくてはいけない。
それはとても大変なことでした。
実際、僕の望みは大きな会社を作るってことじゃなくて、社会にインパクトを与えることなんです。しかし、初期から一緒にやってくれてる人たちはそのことを当然わかってくれていると思っていたので一々説明はしませんでした。
でも数年たって、ある大きな会社が僕らを買いたいと言ってきた。僕は売りたくなかった。僕はもっと多くの人を繋げたいということだけを考えていた。その時は初期の「ニュースフィード機能」を作っていたところでした。そしてこの機能を公開できたら、人々が世界を知る方法を変えることができるだろうと思っていた。
でも、初期メンバーのほとんど全員が売りたがっていました。「より大きな目的感」がないなら、会社を売り抜けることはスタートアップの夢そのものだからです。このことで会社は分裂してしまいました。ある激論の後で、ある顧問が僕に「もし今売らなかったら、一生後悔するぞ」とまで言いました。人間関係はズタズタになり、一年ほどで経営陣チームの全員が会社を去りました。
その時が、フェイスブックを経営していて一番大変な時期でした。僕は自分たちがやっていることの価値を信じていたけど、でも孤独でした。しかも悪いことに、それは僕の過ちでした。自分は間違っていたのか?詐欺師なのか?それとも世間を知らない22歳のガキなのか?と悩んでいました。
そして今、何年もたって、私は、それは「より大きな目的意識」がない時に起きる自然なことなんだということがわかりました。そういう「目的感」を作れるかどうかは自分たち次第なんです。それがあればみんな一緒に前に進んでいくことができる。
今日、僕は世界に「目的感」を持ってもらうための3つの方法についてお話します。
その1・一緒に大きくて意味のあるプロジェクトについて語ること
その2・”平等性”を再定義して誰もがその目的に参加する自由を持てるようにすること
その3・世界規模のコミュニティを創り出すこと
です。
まず、「大きくて意味のあるプロジェクト」についてお話しましょう。
僕らの世代は、数千、数百万の仕事が自動運転車や自動トラックのような自動化技術によって置き換えられていく事態に対処しなくてはいけません。しかし、私たちはもっとそれ以上のことができるはずなのです。
どんな世代にも、その世代を特徴づける課題があります。30万人以上の人が、一人の人間を月に送るために働きました・・・清掃員さんも含めてね。百万人以上のボランティアの手によってポリオへの免疫を子供たちに獲得させることができた。百万人以上の人がフーバーダムを作った・・・などなど。
これらのプロジェクトは、その仕事をやった人たちに生きる目的を与えただけではありません。国全体に、「俺達は偉大なことができるんだ」というプライドを与えたのです。
次は僕ら世代の番です。あなたは「ダムの作り方なんて知らないし、百万人を動員する方法なんてわかんないよ」って思ってるでしょう?
しかし、秘訣をお教えしましょう。誰もそれを始めたときは知らないんです。アイデアはいきなり完成形でやってきたりしない。それについて取り組んでいるうちにだんだんクリアになってくるんです。とにかくまずは始めなくては。人と人を繋ぐ方法が全部わかるまで始められないのだとしたら、僕はフェイスブックを始められなかったでしょう。
映画やポップカルチャーは、ここのところがわかってません。「そうかわかったぞ!(エウレカ!)」と叫ぶ奇跡の一瞬があるというのはキケンな嘘です。自分にはそんな瞬間なかったぞ・・・と居心地の悪い思いをさせてきます。その嘘によって、「将来大きくなるはずのアイデアのタネ」を持っている人がとにかくそれを始めることを���めてしまうかもしれない。あ、そうそう、イノベーションについて映画が間違ってることがもう1つあった・・・「誰も数学の方程式を窓ガラスに書いたりしません」。
理想主義的であること自体は良いんです。しかし、誤解しないようにしなくてはいけません。大きな目標に向かっているすべての人は狂人扱いされます。たとえ最後には正しかったとわかる場合でもね。複雑すぎる課題に向かっているすべての人が、自分がやっていることを十分に理解してないとか言って責められます。事前に全部わかってるなんてことが全く不可能な場合であってもです。
イニシアティブを取るすべての人が、急ぎすぎだと非難されます。いつだってもっとゆっくりさせたい人たちがいるからです。
僕らの社会では、あまりにミスを恐れるあまり、もし何もせずにいたらそもそも全てがダメになってしまうということを忘れてしまって、結局何もせずにいてしまうことがよくあります。そりゃ何をやっていても、それなりに未来に課題はうまれますが、しかしだからといって、「それを始める」ことから逃れることはできません。
じゃあ僕らは何を待ってるんですか?「僕らの世代の課題」に取り組むべき時です。僕らが地球を壊してしまう前に、数百万人の人々をソーラーパネルの製造と設置に巻き込んで、気候変動問題を止めるというのはどうでしょう?すべての病気についてボランティアを募って彼らのヘルスデータと遺伝子データを集めるというのは?今日僕らは病気にならない予防法を見つけることよりも50倍以上もの費用を既に病気になった人の治療に費やしています。そんなことは馬鹿げていますね。なんとかしましょう。
オンラインで投票できるようにして民主主義を現代化するというのは?あるいは教育を個人化してすべての人が学べるようにするのは?
これらの課題はもうすぐ手が届くところにあります。すべての人に役割を与えるプロセスの中で、キッチリ全部実現させてしまいましょう。ただ「進歩」を実現するためだけでなく、多くの人のための「目的」を創り出すために。
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さて、「大きくて意味のあるプロジェクト」の話が、あらゆる人が人生に目的を持てる世界を作るための一つ目だったとして、二つ目は、”平等性”を再定義して誰もがその目的に参加する自由を持てるようにすること・・・です。
僕らの両親の世代の多くの人は、そのキャリア全体において安定した仕事がありました。しかし今はすべての人が”起業家的”です。何かスタートアップをやってる人にしろ、組織にポジションを得てる人にしてもね。それは凄いことです。企業家精神の文化とはつまり、沢山の進歩を創り出す方法ですから。
起業家文化は、多くの新しいアイデアを簡単に試せるようになっている時に栄えます。フェイスブックは僕が最初に作ったプロジェクトではありません。僕はゲームも作ったし、チャットシステムも作ったし、スタディツールも、音楽プレイヤーも作りました。こういうのは僕だけの話じゃないです。JKローリングはハリーポッターを出版できるまでに12回も断られました。ビヨンセですら!”Halo”を作るまでに何百曲と作ったんです。大きな成功は「失敗する自由」によって生まれます。
しかし今日、僕らの社会はどんな人にとっても問題であるほどの富の格差問題を抱えています。もし”ある人”がそのアイデアを実行に移す自由がなかったら、それは”僕ら全員にとっての”損失です。
今の僕らの社会は既に実現した成功に報いることを過剰に評価しすぎる一方、あらゆる人が十分にチャレンジできる余地を与えることはできていません。
そのことを直視しましょう。僕がこのキャンパスを去って10年以内に何十億ドルと稼げた一方で、何百万もの学生がその学資ローンの支払いにも困っていて、彼らのビジネスを始めることすらできていていない。そんな社会は、どこかが間違っている。
僕は色んな起業家を見てきて、その仕事じゃあ十分稼げないだろうから始めなかったっていう人は一人も知りません。しかし、それが失敗した時に致命的なことにならないようにする緩衝材としての経済的余裕がないために夢を追うこと自体をそもそも諦めてしまう人は沢山見てきました。
良いアイデアと、ハードワークがあれば必ず成功するわけではないことはみんな知っています。それだけじゃなくて運も必要です。もし僕がコードを書くかわりに家族を支えなくてはならなかったら、そしてもしフェイスブックがうまくいかなくっても死ぬわけじゃないってことがわかってなかったら、今日僕はここにいないでしょう。実際の話、今ここにいる人はそれだけで既に相当ラッキーな生い立ちなのです。
すべての世代が、「平等」という言葉の定義を押し広げてきました。上の世代は、投票権と公民権について戦った。それらはニューディール政策とグレイトソサエティ政策に結実しました。今、僕らの世代が僕らの世代の新しい社会契約を結ぶべき時なのです。
これからは、GDPのような経済的指標だけでなく、どれだけ多くの人間が、意味のあると感じられる人生を送れているか・・といった指標で社会の進歩を測っていくべきです。だれもが自分の新しい挑戦ができる余地が与えられるような、ユニバーサルベーシック・インカムのような制度が検討されるべきだ。
一生のキャリアの中で働く会社を何度も変えなくてはいけない時代だから、1つの会社に紐付けられていない形の、多くの人にとって手の届く育児とヘルスケアの仕組みが必要です。
誰しもがミスをします。だからこそ僕らには失敗者が身動きできなくなったり、汚名を着せられて社会的に抹殺されたりしない社会が必要です。そしてテクノロジーが変化し続ける時代ですから、(若い頃に一度だけの教育でなく)生涯に渡って継続的に教育を受けることにもっと目を向ける必要があります。
そして、そう、あらゆる人にその目的を追う自由を与えることはタダではできません。僕のような人間がそのコストを支払わなくてはならない。そして多くは富を得ることになるだろうあなたがたも、そうすべきです。
だからプリシラと僕は、チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブを始めて、僕らの財産を機会均等の推進のために使っています。これが僕らの世代の価値観です。僕らはこれをやるかどうかについては、一度も疑ったことがありません。問題は”いつ”やるかだけでした。
ミレニアル世代は、最もチャリティに前向きな世代の1つです。アメリカでは、1年の間に4人中3人のミレニアル世代が何らかの寄付をし、10人中7人が何らかのチャリティ基金を呼びかけています。
しかし問題はお金のことだけではないのです。時間のこともある。週に1時間か2時間あれば、誰かに手を差し伸べることはできます。その人がその人の潜在的可能性に到達できる手助けができるのです。
そんなに時間取れないよ・・・と思うかもしれない。プリシラがハーバードを卒業した後彼女は教師になりました。そして彼女と教育関係の仕事を始める前に、彼女は僕に一度クラスを持ってみるべきだと言いました。僕は文句を言いましたよ・・・いや、っていうかね、僕も結構忙しいんだよ。この会社経営してるんだし・・・ってね。
でも彼女がどうしてもというので、地元の少年少女クラブでの中学生の起業についてのクラスを教えました。
僕はそこで製品開発やマーケティングについて教えて、彼らは僕に、自分の人種が社会から目の敵にされることや家族の一員が刑務所にいるってことがどういう感じなのかを教えてくれました。
僕は自分の学校時代のことを話しました。そして彼らも、いつか大学に行ってみたいという希望について語ってくれました。それから5年たちますが、僕は彼らと毎月食事をしています。彼らのうちの一人は、僕とプリシラにとってのはじめてのベイビーシャワーパーティを開いてくれました。そして次の年、彼らは大学へ行きました。一人残らず全員がです。彼らの家族でははじめてのことです。
僕らは誰しも、誰かに手を差し伸べる時間を作れます。すべての人に、自分の目的を追える自由を与えましょう。それはそうすることが正しいことだからというだけではありません。そうすることで、より多くの人がそれぞれの目的を追求できたら、僕らの社会全体がよくなるから、そのためにやるのです。それが理由なんです。
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さて、目的感は仕事からのみ来るものではありません。3つめの話は、コミュニティを作ることでみんなに「目的感」を与えることができるという方法です。そして僕らミレニアル世代が「everyone」という時、それは「(アメリカ国内だけでなく)世界中のみんな」のことです。
外国から来た人、手を上げてもらえますか?じゃあ、彼らと友達になっている人はどれだけいますか?・・・この通り僕らは「繋がっている時代」に育ってきたんです。
ミレニアル世代に、自分たちのアイデンティティを問うと、最も多い回答は「国籍」ではなく「宗教」でもなく「民族」でもなく、「世界市民」だという調査結果があるそうです。これは凄いことだ。
すべての世代が、「ぼくたち・わたしたち」という概念を押し広げてきました。僕らにとっては、ついにそれが世界中に広がることを目指しているわけです。
人類の歴史は、小さい集団からより大きな集団へ、部族から都市へ、そして国へ・・・と多くの人間が寄り集まり、協力しあうことで今までできなかったことを可能にしてきた物語であることを、僕たちは知っています。
そしてその最も大きなチャレンジが、今まさにグローバルに展開していて、僕らはまさに貧困や病気を終わらせることができる世代でもあるのです。そのためには世界中からの協力を得ることも必要です。気候変動問題や世界的な感染症の拡散問題について、どの国も一国だけで対処はできません。今目前にある問題は、都市単位や国単位でなく、グローバルコミュニティレベルでの協力関係が必要な課題なのです。
しかし、僕らは不安定な時代に生きています。世界中にグローバリズムに取り残されたと感じている人たちがいる。もし自分が暮らしているホームグラウンドでの人生に満足を感じられていない時、世界のどこか他の場所の人たちのことまで考えるのは難しいです。そういう時には内向き志向の圧力が高まります。
これは僕らの時代の課題です。自由と開かれたグローバルコミュニティに対する、権威主義や孤立主義、そして国家主義との争い。知と交易、移住する人の流れを促進していく力と、それをスローダウンさせ���うとする力とのぶつかりあい。これは国同士の争いではなく、考え方同士の争いなのです。どんな国にもグローバルな繋がりに賛同する人がいるし、またそれに反対する「良い人たち」もいます。
これは国連で何か決めたりできるような問題ではありません。もっとローカルなレベルで起きていることです。もし十分な数の人間が自分自身の人生に目的と安定を感じて生きられているとしたら、その時人類は「他の地域の人たちの問題」についてケアしあうことも可能になるのです。
だからこそ最善の対処法は、今ここで、ローカルなコミュニティを立て直すことなのです。
人間は人生の意味をコミュニティから得ています。エリオットハウスの人?ロウェルハウスは?あなたたちはコミュニティを見つけたんですね。文字通りその集団の上で生きている。
それがどんなものでも家だったり、スポーツチームだったり、教会だったりアカペラグループだったり、それらは自分がより大きな何かの一員であることを、そして一人じゃないってことを教えてくれます。それによって僕らは自分の可能性を押し広げる強さを得ることができる。
だからこそ、この10年であらゆる社会グループが4分の1も減少したことが致命的なことなのです。世界にはそれ以外のところで何とか人生の目的を見出さなくてはいけない人たちで溢れている。
しかし、人間はもう一度コミュニティを立て直すことができるし、多くの人はすでにそうしています。
僕はアグネス・イゴイェに出会いました。今日の卒業生です。アグネス、どこにいます?アグネスは子供時代を、人身売買の横行するウガンダの紛争地帯で過ごしました。そして今彼女は、ローカルコミュニティの安定に寄与する数千もの法律家のトレーニングをしています。
また、ケイア・オークリーとニハ・ジェインにも会いました。二人も今日の卒業生です。ほら、立って。ケイアとニハは慢性病に苦しんでいる人たちの、コミュニティ内部での助け合いの関係を繋ぐ非営利団体を立ち上げました。
そしてデイヴィッド・ラズ・アザール、ケネディスクール(政策大学院)を今日卒業した・・にも会いました。ほら、デイヴィッド、立って!彼は元市議会議員で、メキシコシティをラテンアメリカで最初の「婚姻の平等」を実現した都市に・・・サンフランシスコよりもはやく!導きました。
そしてこれは僕の物語でもあります。寮の部屋のある学生が、まずある1つのコミュニティを繋ぎ、そしてそれが世界中に広がっていったのです。
変化はローカルに始まります。グローバルな変化も最初は小さく始まる。僕らのような、僕らの世代において、もっと多くの人を繋ぐことができるかどうか、僕らの最大の課題が実現できるかどうかは、全てこのことにかかっているんです・・・あなたがコミュニティを創り出し、そしてありとあらゆる人が、自分の人生に目的感を感じられる世界を創り出すことができるかどうかにね。
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2017年クラスのみなさん、あなたがたは、「目的」を必要としている世界へと飛び込んでいきます。それが創り出せるかどうかはあなた方次第なんです。
そんなこと本当にできるかなあ!?って思っていますか?
僕が少年少女クラブで教えたクラスの話を思い出して下さい。ある日授業の後で、僕は彼らに大学の話をしました。そして彼らのうち最も優秀な一人が手を上げて、自分は不法移民だから大学に行けるかどうかわからないと言いました。彼が大学に行けるかどうか彼にはわからなかった。
去年僕は彼を誕生日に朝食に誘いました。何かプレゼントをあげたかったので何がいいか聞きました。そしたら彼は苦労している学生たちのことを話し始め、社会正義に関する本が欲しいかな・・・と言ったんです。
僕はびっくりました。彼は人生についてシニカルになってしまっても当然な状況にいるんですよ。彼のことを唯一知っている故郷であるまさにその国が、自宅に電話かけてきて、彼の大学への夢を断ってしまうかもしれない状況にいる。でも彼は自分を悲観したりしません。彼は自分のことを考えてすらいない。より大きな目的感の中で生きていて、人々を巻き込んで行くのでしょう。
彼の未来を危険にさらすことになるのでここで彼の名前すら言うわけにはいかないような社会状況ではありますが、しかし将来どうなるかも知らない高校三年生が世界を前に進めるために自分の責任を果たしているなら、我々にだって、我々の責任を果たすことでその世界に対して借りを返す義務があるのですはないでしょうか?
皆さんがこのゲートを出ていく前に、メモリアルチャーチの前に座って、僕はミ・シャベイラの祈りを思い出していました。それは僕が困難に直面した時にいつも唱える祈りです。自分の娘をベッドに連れていく時に彼女の未来を思っていつも歌っている祈りです。それはこう続きます。
「私たちに先立つ者たちに祝福を与えてきた力の源よ、私たち自身の人生に祝福を与える勇気を見いだせるよう助けてください。」
みなさんがそれぞれの人生を祝福する方法を見いだせることを願っています。
2017年クラスの皆さん、おめでとうございます!グッドラック!
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(スピーチは以上です)
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・・・いかがでしたでしょうか。
「正しいことだからやるんじゃなくて、自分の可能性を追求できずにいる人が一人でもいたらそれは社会の損失だし、その人がそれを実現できたら社会全員が助かるからこそやるんだ」というメッセージ・・・この論法はついつい縮小均衡的な自己規制に走ってしまいがちな日本人・日本社会にとって、非常に眩しく映る「アメリカならではの価値」だと思いました。
それにザッカーバーグは本当に良い人感があって・・・最後の方で不法移民の生徒が大学に行けるかわからずにいる状況でも未来を信じている話で、彼が彼の可能性を追求できないなら、社会全員がその分をなんとか頑張って埋め合わせる責任があるってことじゃないでしょうか!!って言うシーンではもう本当に涙目で、感情を抑えきれなくなっています。聴衆もアツくなって歓声を上げている。
ただなんというか、懐疑主義な日本人からすると全体としてナイーヴすぎる感じが、特に細部の具体的な話に近づいてくると散見されるという感じは、どうしてもあるかもしれません。自分は大学中退しておいて、大学教育ってものに夢持ちすぎじゃないか?とも思いますし、非常に恵まれた立場の人間が、非常に困難な状況にある数少ない人たちとの交流の中で、「これをもっと横展開していけば世界は変えられる!」と無邪気に思い込んでいる感じ・・・に、危ういものを感じる人もいるかもしれない。
物凄くシニカルに言えば、「古代の王様の道楽で身の回りの奴隷に情けをかけてやっているが、それは絶対王と"ほんの少数の身の回りの人たち"というスケール感だからできていることで、圧倒的に大きな数の社会的な構造問題には無力なんだ」という批判は可能かもしれません。
しかし、だからといってその「夢か偽善か知らんがそれすらなくなった社会よりはあった方が当然いい」というところに、現代の、世界中から非難されながらもなんとか世界のリーダーの地位から滑り落ちずにいるアメリカの存在意義というものもあるのだろうと思います。
そして、ソレに対してシニカルにならざるを得ない社会にいる私たち日本人は、「その足りないところを補い、自分たちなりの貢献」ってものができればいいなと、私はいつもそういうことを考えて生きています。
この記事の冒頭にも書きましたが、ザッカーバーグのこの「物凄い理想主義」がどういう時にすっ転んでしまうのか、それを掛け声倒れに終わらせずに本当に「具現化する」ために日本社会ならではの提供出来る価値とは何か・・・ということについて昔書いた記事があって、相当評価を頂いたものがあるので、もしよければ多少長いですが、お読みいただければと思います↓
我々が起こすべき「静かなる革命」について・・・または「知性とは文脈力・空気を読む力」という時代の終焉)
ただ正直言って、このリンク先↑の話のレベルまで「アメリカ人」は決して理解できないだろうとすら思っていたのに、ザッカーバーグは彼なりのビジョンを透徹しながら同じ問題について切り込もうとしているのを感じて、今回本当に「単なるやり手経営者」ってだけじゃない凄い人なんだなって思いました。よもやユーチューブを再生しはじめた時には、最後までスマホにかじりついて見ちゃうなんて思ってもいなかったんだけど。まさに、例のジョブズの演説を超える、今の時代の決定版スピーチみたいな何かを個人的には感じました。
あなたはどうお感じになりましたでしょうか? よかったら、私のツイッターに話しかけていただくか、私のウェブサイトのコンタクト欄などから、感想・その他アンタ翻訳間違ってるぜというご指摘等(最後に近づくほど集中力が消えてきてて、結構ミスもあるように思います)、いただければ幸いです。
・
それでは、また次回お会いしましょう。ブログ更新は不定期なのでツイッターをフォローいただくか、ブログのトップページを時々チェックしていただければと思います。
倉本圭造
経済思想家・経営コンサルタント
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穏やかな高原の山のロッジのような木造の建物、オープンキッチンのような空間でくつろぐ人たちと会話し、は?え?嘘だろ!?空に大地が逆さに見えるんですけど!?Σ(・ω・ノ)ノ!という世界に行った明晰夢のお話
明晰夢第一段階:夜明け前の空間で光の渦に飲まれる
気が付くと私は夜明け前の朝方3~4時くらいの暗さの家の玄関の前にいた
なぜか私はそんな暗闇にも関わらず、ドローンを飛ばしていた おそらくMAVIC miniが届いたので動作テスト飛行をさせていたのだろう
そこで、まずひとつの違和感に気づく そもそも俺はなぜここで広々とドローンを飛ばしていられるのか?
いつもは2台止めているはずの車がないし、出社するにしても時間が早すぎるし もう一台は軽トラだぞ?親父がこんな時間に畑に行く訳もない
そんな事を考えながら周りを見渡すと、車庫の横にレンガのような壁があった おかしい・・うちの車庫にそんなものはないと家を振り返ると、どこか形が少し違う事に気づく
そうこうしていると、見覚えのない近所の人が話しかけてきた。私の顔を見るなり、え?(゚Д゚;)という感じの表情を見せたが、かまわず私は「ここどこ?」と質問したが答えてくれない
この時点で、自分が夢の中で考えて行動できている事から明晰夢か幽体離脱だろうと理解する。それも、薄暗い夜明け前という事から、おそらく以前見た低層アストラル界と呼ばれる所と似た印象を感じる
その後、徐々に明かりがさしこんできたのか周りの景色が見えるようになったので、ドローンを少し上空に上げながら近所をぐるりと歩いて撮影しだした次の瞬間
道の中央につむじ風のように風の渦が出来上がり、徐々に大きくなっていくのが見えた。本能的にあれは近づいたらやばいな・・と家の方に戻ると、今度はそっちのほうにも渦が出現
一軒隣の家の門の影に隠れ渦をやり過ごそうとしたら、なぜか背後に新しい渦が出現したので、どうやら、この渦は私に向かってきていると確信
逃げながら周りをみると、私以外の人は誰もおらず無人の空間に一人だけいる印象で、よく見ると、その渦が巻きあげているのは、葉っぱや塵などではなく、地面や壁、景色など空間が吸い込まれている状態で、あっという間に光の渦に吸い込まれてしまった
明晰夢第二段階:上空に大地が反転している地底世界
光の渦で視界がホワイトアウトした世界から意識が戻った時、どこかの高原のコテージ?ロッジだろうか、広い木造の空間でオープンキッチンがあり、バイキング形式なのか、子供連れの家族などが料理を盛っている前の椅子に座っていた
目の前の主婦が私に何かを話しかけているが・・何を言っているのかわからない ただ、その主婦の背後の窓から見えた景色を見て急に意識が覚醒する
上空に反転した大地が見える!?(゚Д゚;)
私は口を開いたままこう思った(ここは・・どこなんだ!?)
すると目の前の主婦が言葉を発せずに私の頭の中に直接話しかけてきた
(あなたはここの人じゃないね、どこからきたの?)
(え?何これ!この人、口動いてないけど、直接頭のなかに!)Σ(・ω・ノ)ノ!
すると(もしかして、あなたは違う所からきたの?)とまた聞こえたので なんとなく(そうです、なんで会話できてんすか?)みたいな返しをしたら
こっちにおいでと私を誘導して、丸テーブルに座らせて料理を運んできた。すると、その周りにその女性のママ友?母親くらいの年齢のおばちゃんたちがぞろぞろと集まってきて一緒のテーブルに座った
今度は普通に声に出して色々質問してきたので、なぜか聞き取れるしコミュニケーションが取れるし、何より明晰夢で意識がはっきりとしているため、その瞬間疑問に思った事はだいたい聞いてみた
基本どの言語でも通じる世界らしく、今相手が話しているのはイラン語がベースと言っていた 日本語は何か知ってる?と聞くと、日本語?・・・あぁ、ヤマネ語ね!と言っていた
なぜ日本語がヤマネ語?なのかはわからないが、聞いてみたがどこの言葉なのか何を言ってるかわからなかった
食べた料理が辛い(ノД`)の流れから、そっちでは辛い料理って何があるの?と聞かれたので、中国の四川料理とか中華料理は辛い系が多いよと伝えると
中国?まだあるの?と返され、こっち側の歴史では、とっくに滅びていると習ったらしい事を聞いた
え?(゚д゚)!なんで?どうやって滅びたの!?と聞いてみると 中国は権力欲から離れられずに徐々に衰退していってなくなった との事(意味深)
もうひとつ気になったのが、声を出さないテレパシー通信が可能との事だったので、テレパシーにについて質問しようとした際に、ちょっとおもしろい事故があったのでイラストにしよう
その場にいる全員に「ちなみに・・」と伝えたつもりが、顔を見回しながらだったからか、一人に1語ずつしか伝わっていなかったようで、使い方を間違えているwと笑われてしまった
一斉にみんなに伝えるためにはどうやればいいの?と聞くと、それは目の前にいるんだから声だそうよと言われ納得( ̄▽ ̄) (゚Д゚;)そりゃそーだ
テレパシーは伝えようと意識した相手にのみ聞こえてプライバシーは守られる、複数とまとめて話す時は、基本的に声を出してコミュニケーションをとるらしい
とても穏やかな空間で、隣では小さな赤ちゃんにご飯を食べさせている旦那さんがいて、目があったら会釈してくれた
ただ、何度見ても上空に逆さの大地が見える景色は異様ではあるな~なんて思って眺めてたら、(゚д゚)!あ、これは夢から覚める感覚だ!とお別れが近づいてるのを感じたので
もし、また来れる事があれば、いろんな話を聞かせてくださいね!と挨拶して目が覚めた
もちろん、目が覚めたと言っても、目を開けると記憶がリセットされてしまうので、目を瞑ったまま、何度も体験を反復して思い出し、読めば理解できるように順序や出来事を箇条書き用にキーワードを決めて
目を開けて速攻携帯のメモにオラララララ!(# ゚Д゚)ノとトランス状態で書きこんだけど
読み返して、夢での体験記憶と映像が���しずつ鮮明になってきて ・・・いやいやいや(;・∀・)え?え?ってなるほど異常な体験だった
ただ逆さの大地に関しては、これが大きく影響したんじゃないかなと思う
天の海を見上げ地の雲を見下ろす魅惑の背面フライトVR #psvr #エースコンバット7 #フライトスティック #PS4share pic.twitter.com/Ql7BaXGtIA
— TGAME-たぬちきん (@TGAMEtanuchikin) November 23, 2019
そして、明晰夢のきっかけは三半規管を駆使するVRを久しぶりにプレイして脳を駆使してから眠ったからだろう(眉間の当たりがぴくぴくするんよねw)
自然に黄金螺旋を描くバレルロール睡眠法爆誕(笑)
でも実は、上空に大地がある夢の世界は二度目なので、飛行機の反転フライトは関係ないかもしれない
一度目は、スイス?アルプス?のような場所でドイツの酒場の踊り子が着るような服の人がいっぱいいて、野外のパーティ会場みたいな所に紛れ込んだけど・・
いかんせん、その夢をみた当時の私はビンビンの若者なんで明晰夢だとただの野獣だったからね オラジユウダ(;゚∀゚)=3ハァハァ(すぐ目覚めたのは興奮しすぎたのか?(笑))
しかし、夢の中から別の夢に繋がるのは本当に特殊なケース・・それも明晰夢から明晰夢は2度目。前にもうひとりの自分と出会った後に謎の黒づくめの存在に脅された時以来
しかし、とても興味深いのが今回の体験と会話の内容
どんな言語でも共通で通じる&テレパシーと声を使い分けている
出会ったのはイラン語の人たち
中国は権力欲を手放せずに衰退して消滅(あっちでは過去の歴史)
日本語はヤマネ語
テレパシーって本当にただ思った事が伝わって頭の中で会話が成り立つ感覚で斬新だった(笑) テレパシーできるほうが「こうやってやるんだよ?」と誘導してくれれば誰でもできる感じ
あと、公用語がイラン語って言ってて、イランってどんな感じ?ってググったら、まさにアルメニア高原の雰囲気ドンピシャだった事に驚く(見た事も聞いた事もなかった)
建物の外観は知らないけど、建物の窓から見た景色はこんな感じで、ずっと上の空には逆さ富士のように山が見えるという幻想的な景色だった(そのため、地底世界と判断)
ただの見せられるだけで、自分の意思で行動ができない夢だったら、変な夢みたな~だけの話なんだけど、明晰夢で自分の意思で質問と会話できてたから旅の実体験感が凄い!
やっぱ、VRは脳の感覚の開発にいいかもしれないね
それと、周波数が与える影響について興味を持ち出した事も関係あるかもしれない。一定の周波数が体(脳)にどう影響するかを調べたくて色々(楽器・音響機材等)用意したんだ(ΦωΦ)ふふふ・Σ(・ω・ノ)ノ!
ちなみに、Youtubeとかで再生数稼ぎでアップされている特定周波数を含む癒しリラックス音源とかは注意です。実際に周波数をチェックしたら・・ぜんぜん違う周波数が強烈に出てたりするからね(効果不明)
あと、天使の周波数とか高次元と繋がる周波数とかを出せると噂の音叉を買って、適当にキーン!キーン!ってならしまくってたのも関係あるかも?
実は特定の周波数どうしを同時に慣らすと、共鳴で第三の謎のブーン!っていう音階ではない周波数が出現するってわかったんだけど、それ、めっちゃ脳を揺さぶられるのよね(笑)
それが脳に新たな変化を与えたかもしれないし、同時に、別次元開いちゃったからあんな悲劇が?・・(笑)
物が見つからないのは妖怪のせいだ!という不思議な解釈
ま、ただの夢の話なんだけどね(゚∀゚)ソウイウコトニシトコ (゚Д゚;)
夢診断日記
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Page 67 : 点と点
真新しい服に所々傷付いた身体を通す。ふうと彼は細い息を吐き、鼓舞するように自身の顔を何度か叩いてから、ゆっくりと視線を正面へ向ける。鏡に映るのは自分の顔。獣のように尖った金色の瞳。同じく金色だった髪は真っ黒に染められ、雑ながらも短く切った。これで少しは黒の団の目を欺くことができるだろう、と希望的観測を立てる。髪の下には最早巻かれていることが当然となった包帯。黒髪と真逆の色の差で少々目立っているが、仕方が無い。 大丈夫だ。 きっと、大丈夫なのだ。 自身を落ち着かせるために何度も彼は心の中で繰り返した。依然高鳴る心臓を押さえつけるように、もう一度深呼吸をする。今緊張していてどうする。これでは肝心な時に足が竦んで動けなくなってしまう。 「行くの?」 背後から声がかけられ、自分の世界に沈んでいた彼は肩を跳び上がらせた。咄嗟に鋭い視線を走らせたが、すぐにその警戒心は解かれた。 彼がいる洗面所の出入り口に立つ背が高く足の長いその若い女性は、朝起きたばかりなせいか、普段は高い位置で大きな団子髪を作っている長い髪をまだ下ろした状態にしている。それだけで随分雰囲気が変わるのだが、彼にとってはもう既に見慣れた姿だった。 彼は彼女から投げかけられた言葉を反芻し、僅かに頷く。 「そう」 つまらなさそうに彼女は呟き、踵を返す。古いこの建物は歩くたびに床が軋む。彼は彼女を追いかけて就寝スペースへと場を移す。出入り口の傍にあるローテーブルに置かれたペットボトルに入ったお茶を彼女はゆっくりと飲む。筋肉が引き締まっている彼女の挙動は一つ一つが逞しくどこか美しく、目を奪われるものがある。 「どこに行くの」 ペットボトルから唇を離して、彼女は彼に尋ねる。 「……首都に、行こうかと」 「セントラルね」 「はい」 彼女は長い息を吐いた。煙草の煙を味わうように吐く、その行為に似た息だ。 「あの辺りに黒の団の根があるって言ってなかったっけ。それに真弥もいる……あなたには危険だよ」 「でも……白さんはきっといつかはあそこに行きます。あそこはこの国の中心地。避けて通れない道だと、思うんです」 そうかもね。彼女はそっと独り言を漏らし、視線を虚空へと向けた。細くなった瞳は懐古に浸っていることを物語る。 「白、懐かしいなあ」 ふと口から出てきた言葉に、彼は目をゆっくりと細めた。 「ココさんは、会いたいと思わないんですか?」 「そうね。まあ、今何してるのかは気になる。でも、元々もう二度と会わないだろうってつもりだったから。君ほど拘りは無いよ」 「そうですか……」 彼女――ココは手に持っていたペットボトルを彼に向かって投げる。緩やかな放物線を描いて彼はそれを難なく受けとった。 「飲みなよ」 「……いただきます」 得意気にココは笑う。 彼女は彼より少し年上だ。その割に見た目こそ大人びているが、中身はさっぱりとしていて女性というよりは男性らしいという印象を彼は受け取っていた。言葉にするならば姉御肌といったところ。頼りになる先輩、というのはこういうものをいうのだろうかと彼はぼんやり考える。先輩どころか、彼にとっては命の恩人なのだが。 蓋を開けて、遠慮なくお茶を喉に通す。さっぱりとした潤いに満たされていく。 「あたしも行こうかな」 呟いた言葉を彼は逃さなかった。驚いたあまりお茶が気管に入り、直後むせこんでしまう。静かな部屋に彼の乾いた咳が弾け、同時にココの大きな笑い声が響いた。湿り淀んだ空気を一気に吹き飛ばすような明るい声だった。 「そんなに驚かなくてもいいでしょ!」 「だ、だってなんでわざわざ……どれだけ危険かなんて重々承知してるでしょう?」 「分かってるよ、だから心配なんだ。それにあたしもこれからどうしようかなって思ってたから。白に会えるかは分からないけど、あそこには真弥がいるのはほぼ確実でしょう?」 ココが覗き込むように彼の目を見る。大きく強い視線からは、逃れられない。蛇に睨まれたように動けなくなるのだ。 「……はい、十中八九」 「たまにはさ、会いたくなるんだ。さっきは、二度と会わないつもりだった、なんて言ったけどさ」 渇いた微笑を漏らした後、ココは窓辺へと歩いていき、染みが残ったカーテンを一気に開け放った。東の空を昇っていく太陽の光が一気に部屋に差し込み、彼女の茶色の長い髪がきらきらと光る。埃っぽい部屋に差し込んだ光が、何か新しいことの始まりを予感させるように彼には感じられた。何故だろう、つい先程までの心臓が痛くなるほどの緊張と恐怖が和らいでいく。むしろ、希望すら感じられる。期待が膨らんでいく。勇気が湧いてくるようだった。 右手首にかけていた黒いヘアゴムを彼女は唇に挟み、慣れた手つきで髪を束ねる。随分と高い位置でつくられるポニーテール。この後垂れた髪もまとめられる。いつものパターンだ。少しずつ、いつものココ・ロンドへと変化していく。 「行こう、ブレット。首都へ」 髪を振り、ココは決意の目をしてはっきりと言った。 彼女は強い。精神も身体も。ずっと一人で黒の団から逃げ続け、生き抜いてきた彼女を支えるのは揺るがぬ自信。自分を信じている彼女の体を貫く太い芯。何故“出来損ない”の自分にここまで付き合ってくれるのかは謎めいたままだが、心強いことに変わりはない。過ごしてきた日々が、ココへ対する懐疑の心を既に溶かしきっていた。 大丈夫だ。 大丈夫なのだ。 彼――ブレット・クラークはココの強い目を正面から見据え、深く頷いた。
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「首都へ向かっていますね」 白衣に身を包み立つ女は呟いた。緩くウェーブのかかった茶色の髪のその女は、ホクシアでクロが出会った黒の団の女性だった。そのすぐ傍に座っている男は素直に肯定する。彼も白衣を着ており、黒い眼鏡をかけている。モニターの光を反射して、レンズが光る。 飾り気のない立方体の部屋の壁に張り付けられた大きなモニターには地図が映し出され、中央部に赤い点滅の光が存在していた。どこからか延びている赤い線はまるで道を沿うように描かれ、その先に点滅がある、という形だ。線は単調に東へと向かっており、その先にある首都へと続こうとしているのは誰の目で見ても明らかであった。それは、クロ達の旅の歩みと重なる道だった。 「まあ、いずれはと思っていたけどね。ついにこの日が来たという感じもするよ」 「そういうの、お好きですね。割と最近にも聞いた気がしますが」 「ああ。多分、ニノと、彼女の夫の命日の時さ。今年のね」 「そうでしたね、そういえば」 女はさほど興味も無さそうに抑揚のない相槌を打つ。今年のニノの命日。あの日、ラーナーは黒の団の手によって排除される予定だった。それを指示したのはこの男。男は決行をこの日としていた。何故そうしたのか、女は知らない。尋ねて躱されるということを繰り返しているうちに、最早その質問を投げかけることも億劫になっていた。 「バジルはもう動ける状態かい?」 男は椅子を軽く動かして隣にいる女の方に向き直りながら尋ねる。即座に彼女は頷いた。 「はい。すぐにでも出せるかと」 「それは良かった」 「ですが、作戦内容にはやはり動揺しているようでした」 「そうなることは承知の上だ。彼はここを乗り越えない限りは次の段階にいけない」 楽しそうに男は笑う。喉の奥が鳴り、眼鏡の奥の瞳はゆらりと光る。意地が悪い人だと女は心の中で呟いたが、表情には決して出さないようにした。それは自分も同じだ。彼女はよく分かっている。バジルの顔を思い浮かべた。疲弊しきった体に鞭打つように渡した作戦要綱を見せた瞬間の、驚きに目を見開いた表情。あまりにも予想通りの反応で呆れすら感じていた。やれるわね、念を押すように尋ねた声に彼は狼狽しながら小さく頷いた。そう答えるしか彼には無い。作戦も自らの感情を切り捨てて取り組んでくれるだろう。冷徹で、健気で、理想の形に育った彼ならば。 「さて、面白くなってきたね」 男は机上に置かれたパソコンを操作し、大画面に映し出された地図を閉じる。 「ですね。でもこんな子供相手に、少し手間取り過ぎてしまいましたね」 「ただの子供と思ってはいけないよ。彼等は……笹波白と紅崎圭、そして首都に住み着いている真弥は数多の人々を手にかけてきたからね……人間と思わない方がいい」 「そうは思ってませんわ。けど、心がまだ幼い」 「そうだね。可哀そうな子達だよ」 うん、可哀そうだ。彼はそう淡々と確かめるように繰り返した。そしてパソコンの隣に置かれた、黒々とした濃いブラックコーヒーの入った銀色の味気無いカップに手を伸ばす。彼は一日に何杯もコーヒーを飲む。そのせいか元々強くはなかった胃が更に弱り、ご飯もほとんど食べない。常に着ている白衣の下は痩せた体がある。目の下に刻まれたクマはもう何年もとれることなく在り続ける。不健康を象徴したような彼だが、もう慣れたものなのか本人は特に支障なく、淡々、坦々と仕事を進めている。 彼女もつられるように手元のコーヒーを飲んだ。苦味が頭をまた覚醒させていく。 ほうという息が彼等の口元から洩れ、束の間の安堵に似た空白の時間が訪れる。 「だから、もうこんな滑稽な遊びは、終わらせてしまっても僕はいいんだよ」 低い声がした。 しんと女の背筋に静かな寒気が迸った。考えるよりも先に男の顔を見やり、その光無き黒々とした両眼を捉える。物腰のやわらかく見えるこの人間は、しかし誰のことも拒絶し、軽蔑する。時折底が見えない心の暗みが顔を出す。その瞬間を彼女は何度も見てきた。そして彼は決まってその口元を吊り上げる。いつ何時も楽しんでいるのだ、何もかも。予想通りに事が運んでもほくそ笑み、反する方向に未来が進もうと広い余裕で状況を判断し、面白げに嗤う。 ディスプレイに映し出されていた旅路も、結局彼の掌の上で踊っているように彼女には思われた。この人がひとたび手を返せば、あっけなく道は断ち切られてしまうような。いや、実際そうなのだろう。ウォルタでの作戦も、彼のよしという鶴の一言であの日行われたのだ。 彼の先程の言葉に自然と含まれる重み。緊張と共に訪れる、高揚。彼女の胸のざわめきは一気に拡張していく。 「……��あ、仕事に戻ろう。君も続きにあたってくれ」 男は眼鏡をかけなおし、温和な笑みを浮かべながら彼女に声をかけた。そこでふと彼女は我に返り、しかしすぐに平常心を取り戻す。 「はい」 何事も無かったかのようにそう彼女は返す。今日もまた時間は回っていく。ふと戻ってくる自分から漂う血の匂い。白衣に染み付いたものなのか、はたまた肌に刻み込まれたものなのか、あるいはどちらもか。どれでも変わらない。口元に笑みが零れる。鼻につくそれに対する感覚はとうの昔に麻痺しきっていた。自分だけじゃない、これはこの組織全体に張り付き既に充分に浸透した匂いだ。 ノートパソコンを腕に抱え、男に背を向ける。首都の作戦を考えるだけで胸が躍る。ホクシアで数年ぶりに間近で見た深緑の少年の顔を思い出すたび、次に会う時が楽しみでたまらなかった。
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バジルは大きな部屋に所狭しと植えられた木々のうちの一つに右手を翳す。紺色のシャツを纏い、普段は黒い上着によって隠されている黒い輪が手首に巻かれているのが窺える。息をか細く吐く。同時に、木が蠢き始める。遥か直上、四方八方へと伸びる木の枝はまるで生きているかのように、一気に生長を見せる。その動きに固さは無く至って滑らかであり、生長を数倍早送りしているかのようだった。他の木々の枝を軽々と蹂躙していく。しかしふと彼の集中力は削がれる。彼の背後に人の気配を感じたからだ。 「相ッ変わらず鮮やかですねえ、この反則技」 中性的な若い――いや、幼いともとれる声がバジルの耳へと突き刺さり、露骨に彼は顔を顰める。粘つくような奇妙な笑い声が部屋を漂う。 「でもこうやって訓練するのなんて最近では珍しいですよね。僕、ちょっと心配してたんですけど、意外に気合入ってるんですかあ?」 言いながらその人はバジルの横に顔を出す。背丈に対して大きめの黒い上着を身に纏い、そのフードを深く被っている。加えて、長い銀色の髪のおかげでその目はほとんど外側からは確認できない。辛うじて口の動きは確認できる程度だ。そしてその口は今、にたりと三日月を象っていた。一人称は“僕”だが、胸まで伸びた髪や、狭いとも広いともいえない肩幅、バジルよりも少し低い身長、大きめの服を着ているおかげで体格が分かりづらいことから、女であるか男であるかどうかすら曖昧だ。 しかしその性格には難がある。不快なことこの上無い、とバジルは心の中で唾を吐く。 「何の用だロジェ。悪いが世間話をしている余裕は無い」 「あれえそうですかあ? いや用という用はないんですよ。ただどうしているのかなあって気になったんですよね~ほら、謹慎明けも間もないのに出された作戦の内容に動揺していないかなあって」 「余計なお世話だ。お前は自分のことに集中しろ」 冷たく突き返そうとするバジルに対して、何がおかしいのかロジェは高笑いを放った。 「あははははっ! 僕はよっゆうですよおラーナー・クレアライトなんて一番簡単じゃないですかあ! なあーんの力も無い女。むしろ余裕すぎて落胆って感じですよねえ」 不自然に肩を落とす。些細な挙動も軽々しい言葉も全て目や耳につく。風の無い水面のようなバジルの集中は既に彼方へと飛び去り、今は混沌とした苛立ちの渦が巻いている状態だった。ロジェの口から出てきた作戦へ対する不満を録音して上に聞かせて、処罰でも与えてやりたい衝動に駆られる。如何せん、ロジェは思考も行動も軽さが拭えない。どうしてこのような精神状態になったのか、理解しがたい。 バジルは大きなため息を吐き、ちらとロジェの方を向く。 「その一番簡単なラーナー・クレアライトをキリで仕留めきれなかったのは、どこのどいつだ」 「え~いや~それはあ、僕じゃなくて僕のポケモンですから! それにあれだって完全に成功してたんですよお。まさかニノ・クレアライトの呪いが残ってるなんてだーあれも考えていませんでしたしい、不可抗力です。でも二度目はありませんよお」 ロジェは自信に満ちた笑みを浮かべる。癇に障る言い方がバジルの心を更に逆立てた。 「そんなことを言いにわざわざ来たなら、さっさとどこかに行け」 「ほんっとにバジルさん余裕無いんですね。それって後が無いからですか? それともターゲットが紅崎圭だからですかあ?」 その言葉を言いきったか言い切らなかったか、そのぎりぎりの点の瞬間、ロジェの首元に閃光が走る。空気の切り裂く音は刹那に張り裂けた。思わず彼の緩んでいた表情も一瞬引き攣る。氷のように冷徹なバジルの目は刃物のようにロジェを鋭く睨みつける。寸でのところで留められた枝先は、あともう僅か進んでいればロジェの首を貫いていただろう。 冬の夜のような冷たい静寂が空間を支配する。やがて、枝先のロジェの首が僅かに動いた。 「……ハハッ図星ですね。これは威嚇ですかあ?」 「警告だ。これ以上邪魔をするな。お前との会話に付き合っていたくない」 「まーいいですけど。力じゃ勝てるわけないですし」 諦めたようにロジェは首を横に振り、露骨に肩を落とす。しかしまたころりと表情は戻り、白い歯をずらりと見せる。 「まあ、冷血で冷酷で冷徹なバジルさんなら、笹波白じゃなくて紅崎圭が相手だろうと関係ないですよね~心配して損しましたよーう……じゃっ、僕はこれにて」 最後までからかう姿勢を見せたまま、木の枝が更に伸びようとした直前にロジェはその場から軽快に後方へと離れる。乱雑に伸びた銀色の髪が白い電灯を反射して輝いた。最後にバジルに一瞥した後背を向けて、機嫌が良さそうに軽い足取りで部屋から伸びる長い廊下へと向かっていった。その様子をバジルは顰め面で見守り、完全に姿が見えなくなったことを確認してからようやく重い息を吐いた。 紅崎圭。バジルは改めてその名前、顔を頭の中に思い浮かべる。 相性を考えればこうなることは当然だ。笹波白は炎。紅崎圭は水。そして自分は草。笹波白に対しては分が悪く、紅崎圭に対しては分がある。しかし感情的な自分がぽつりと呟く。何故こうなったんだ、と。笹波白が相手なら遠慮なく力をふるえる。元々自分の手で葬り去ってやりたい気持ちもあった。バハロで目の前で逃がした悔しさもある。笹波白に対しては、許せないという感情が強い。けれど上から下された指示はバジルの考えを無視していた。近日行われる首都での攻撃作戦での彼の相手は、紅崎圭。 何故だ。 上に逆らう気は更々無い。与えられた仕事は忠実にこなさなければならない。それが自分の道なのだから当然のことだ。けれど、何故よりにもよって。オレンジ色の髪も瞳も、言葉が通じなくても何故か息が合った瞬間も、記憶に根強く残っている。動揺の渦は心の底を蠢き続けている。だらりと下に落とした手に無意識に力が籠っていた。それに呼応するように周囲の木々はざわめく。紅崎圭とだけは、戦いたくなかった。その思いがバジルの本心として根強いていた。だが、それを無理矢理抑え込もうとする。奴は敵だ。笹波白と手を組み、自分を裏切った。殺せ��指示されればそれに従うのみ。これは任務だ。仕事だ。使命だ。右手を大きく上に翳す。直上で枝が剣を振るうように縦横無尽にしなり、暴れまわる。切り落とされた十数の枝が床に渇いた音を立てて散らばる。異様な光景であった。傍から見れば、木が独りでに動いているようにしか見えない。しかしその幹の傍、バジルの額には汗が滲み出ていた。 「許されぬ」 彼はぽつりと呟いた。広くとった視界の端、人ほどの大きさの細い木に焦点を定める。 「決して倒れるな」 その細木の根元から茎の太い草が茂り、縛るように木に絡まりつく。 「決して滅びるな」 空気を横一字に腕で切り裂く。動きに合わせるように、先程まで乱れ狂っていた木の枝のうち太い一本が空を裂いて細木の元へと向かう。 「決して、逃げるな」 目を細め、噛みしめるように言い放った直後、パンと激しい音が部屋に響く。幹が空へ弾け飛んで激しく回転、他の高木に衝突し、やがて力無く地面へと落ちた。細木は抗うことなく真っ二つに割れていた。 バジルは静止する。後に残っていたのは、空虚だけだった。
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車窓に張り付くようにアランは外の景色に夢中になっていた。地上より少し高い場所を走り抜けていく電車は次々と町という町を追い抜いていき、いよいよ首都は目の前に来ようとしていた。心臓が高鳴る。町全体に歴史的情景に重きを置いたトレアスでは拝むことの無い現代的な高層ビル群が既に視界に入ってきていた。童心に帰ったように彼は頬を赤くして自然と笑っていた。胸にこみ上げてくる期待で体が破裂しそうである。 「おいおい、夢中になるのはいいが、せめて椅子に落ち着いて座ったらどうだ」 通路側の席に腰かけているアランの師匠、ガストンは苦笑を浮かべる。そして正面にある座席テーブルに置かれた缶ビールを手に取り、豪快に飲み干してしまう。 指摘されることでアランはようやく自分が椅子から腰を持ち上げていたことに気が付き、慌てて座り込んだ。体格が良く座席が小さく見えるようなガストンとは、落ち着きの度合いがまるで違う。少し恥ずかしさを覚えながらも、相変わらず興奮した声音でアランは話し始めた。 「��ってほんとに首都に来たんだなあって思うとわくわくが止まりませんよ! これからある研究会もどんな雰囲気なのか楽しみだけどまずあそこの空気がどんなものなのかビルに囲まれてるってどんな感じなのかどれだけ人がいるのかどれだけ交通機関は便利なのかどれだけ俺の予想を覆してくるかを考えるだけでもういてもたってもいられないですよ!!」 「分かった分かった。いや、早口すぎてよく分からないが、とにかく落ち着け」 アランの勢いに呑まれて呆れた声で彼を軽く諭す。 温度差にアランは悔しさを覚えるが、ガストン自身は首都に慣れているため仕方が無いといえるだろう。燃やすものを失い段々と炎が鎮火していくように彼は少しずつ冷静さを取り戻していく。それでも自然と窓の外へと目を向けてしまう。長い電車の旅だった故に体も固まっており、早く着いてほしいという思いは強かった。 「……クロ達にも会えるといいな」 ガストンがぽつりと呟き、アランは師匠の顔に視線を移す。元来厳つい顔の口元は柔らかく微笑んでいた。 それはアランも強く願っていることで、すぐに彼は大きく縦に首を振った。 数日前、突然クロからかかってきた電話を思い出す。その時の彼の声は弱々しく、思わず強い口調で叱り飛ばす勢いで言いたいことをぶちまけてしまった。あれから連絡は無い。元々向こうから連絡をしてくること自体夏に雪が降るようなものだと彼は割り切っていたから既に期待などしていなかったが、不安は拭えない。何しろ彼等は心底不器用なのだ。苦難の道を歩いているとはいえもっと楽に生きるやり方があるだろうに、クロもラーナーもぎこちなくて無理をして、見ていて危なっかしい。だから支えてやりたくなる。助け舟を出してやりたくなる。 今は何をしているのだろう。どこにいるのだろう。どんな時間を過ごしてきたのだろう。気になって仕方が無い。 けれどこの首都できっと会える。実際に会えば、どんな状態でいるかは分かる。少なくとも電話越しよりもずっと理解できる。 「早く、会いたいです」 アランははっきりと言い張った。不安はある。けれどそれ以上にアランの中に膨らんでいるのは、会いたいという焦がれだった。
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工場の連なる道を抜け、ベッドタウンと思われる住宅街を抜け、やがて彼等はビル街を丸く囲う深く広い堀川の傍までやってくる。人通りも多くなってきていた。様々な車が途切れることなく横を通り抜けていき、橋を次々と通過していく。こういった巨大な鉄橋が中心に向かって多く作られている。自分達の頭よりずっと高い世界では、どこからか伸びた何本もの高速道路やモノレールが緩やかに川の向こうへと向かっている。整えられた道に沿って店や会社が入った多様な建物が建てられているが、川を渡る銀色の大きな橋の先にある天も貫かんとする高層ビルの群集は、遠くから眺めるだけで圧倒されるものがあった。 「あれが、首都の中心街……」 「通称、セントラル、か」 ラーナーの圧巻された声に付け加えるように、クロが呟いた。 アレイシアリスヴェリントンというのが正式名称だが、長さ故か人々からはただ簡潔に首都と呼ばれ、更に川の内側に存在する主要都市はセントラルと呼ばれる。首都といえばこのセントラルを指すことが殆どだ。アーレイスのほぼ中心に位置したここは、名実共に国の中心地である。 クロとラーナーは圭の居たリコリスへ向かう際にこの首都を電車の乗り換えのために実は一瞬だけ訪れていたのだが、その余韻に浸る間も無くすぐに出発していた。大きく時間をとって訪れるのは彼等の旅において初めてである。長く旅をしているクロ自身もここは避けるようにしてきた。人と政治と技術と情報と、アーレイスのほぼ全ての核が詰め込まれた首都は、得られるものも多いが同時にリスクも大きい。逃亡の身にある彼等にとってはそれは尚更だ。それでも今、いつかは来ることになるだろうと覚悟していたこの場所に、足を踏み入れている。 果たして、求めるものは、ここにあるのか。無機質で、しかし底の見えない世界が広がっているこの場所に。いや、きっとある。クロは睨みつけるようにセントラルを見る。ここだから手に入れられるものがあるはずだ。だから意を決してやってきたのだ。ふと隣にいるポニータの視線を感じて自然とその黒い大きな目を見る。ポニータは彼の一歩を促すように大きく頷いた。まるで見通されているようでくすぐったささえ感じる。ただそれだけで、緊張に固まっていたクロの心は多少融かされた。 「行こう」 クロが声をかけると、ビル街に圧倒されていたラーナーと圭は改めてクロに視線を向け、それぞれ頷いた。
様々な者達が、各々の思惑を抱えて、混沌の地で遭遇し、交錯し、錯綜し、飽和していく。 その果てにあるのは何か。 誰の望む未来になるのか。 誰の望まぬ未来になるのか。
その行方は――闇の中。 < index >
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若おかみは小学生-ルーベンス展-ムンク展
『若おかみは小学生!』-ルーベンス展-ムンク展 『若おかみは小学生』の評判がどえらい良いので上野のTOHOシネマズへと馳せ参じたわけである。 原作の小説は小学生のころ友達が呼んでるのを見たとか図書館に置いてあるのをちょろっと読んだとかその程度。 俺にとって黒魔女さんシリーズとかぼくらのシリーズとそう変わらないものだ。 当代の小学生カルチャー圏には確かに存在したけれども縁遠かったもの。 でも、表紙絵の女の子は当時かわいいと思っていた。 中学生のころ見直しても普通にかわいいと思っていた。 今回映画を観たら、どえらいかわいいと思った。 俺はロリコンになっていた…。 ふざけてるようだけどこれは重要なことで、明らかにいわゆるオタクのロリ萌え的な要素がこの作品には含まれているのだ。 そしてそれがこの作品を良作たらしめる一因ともなっている。 というわけで以下感想。 まず、おっこと両親が舞を観て、その帰り道にトラックに轢かれるシーン。 このオープニングから涙腺持ってかれた。この時点で完全に作品鑑賞のテンションが決まった。 俺はずっとニコニコしながら観ていた。 もうわかるわかる。作品の構造がこれでもかとわかるのだ。 おっこがかわいい。 おっこは特に興味のない退屈な舞を観る。 宿のある土地から都会に帰る。 その途中両親を失う。 そして���っぽの家から出て行く。 ランドセルを背負ってはいるが、学校には行かない。 電車の窓に映る他人の家族に微笑む。 こうして宿のある土地に戻りそこの子となる。 そして全てを失ったおっこは労働者となる…。 このオープニングの展開を折り返すことで物語は進行する。 もう俺には何がどうなるのか手に取るようにわかった。 おっこは労働者となり、その職能ゆえすべてを取り戻していく。 窓ガラスに映る幻影(亡霊、家族の記憶)を再現するが如く少年の霊に出会う。 ランドセルを背負って学校に行く。 街と宿、宿と学校を行き来することでおっこの失われた世界は徐々に回復する。 また、宿で知り合った人物二人は良心の代替的存在、家族の象徴となる。 最初の宿を介した遭遇者の薄汚い親子。その連れの少年はラスト、おっこにとって父親の代わり(=求めるべき男性性の象徴)となることが示唆される。 その次の遭遇者である占い師の女性は母親代り(=自身の成長を促す大人の女性性)となる。 この二人が出てきて家族としてピースに次々当てはまって行くのをみて、これは「この世界の片隅に」とはまったく別アプローチで成功した傑作だと確信した。 自分は「片隅に」の原作を未読の状態で鑑賞した。 そのため物語をある程度予測しながらの鑑賞となったのだが、その展開がまったく読めなかった。 時限爆弾で少女が死んでしまうところだけは読めたので本当に嫌な嫌な悲しい悲しい気持ちになったのだが、それ以外は読めなかった。 絵が柔らかすぎ、人々が優しすぎ、それに比して戦争という現実があまりに克明すぎたのだ。 柔和な絵柄で描かれるすずという魅力的な女性を、この物語における戦争がどこまで犯してしまうのかわからなかった。 火垂るの墓までだろうか? 火垂るの墓は断絶した孤児という「現実に存在したフィクション的空間」に落とし込むことで辛うじてそれを描かずに済んでいた。つまり普通の人間が壊れてしまう様である。 自分の戦争アニメにおけるイマジナリーラインはそこが限界だったから、すずが金切り声をあげて泣き��ぶところなど想像できなかった。 だが物語は自分のイマジンをはるかに突き抜けて彼女を破壊した。 そしてすずというキャラクターは見事にそれを克服していった。 驚くべきは作り手側の悪意ではなくすずにかけられたキャラクターとしての強度なのだ。 すずがあそこまで強固になり得た大きな理由は声優ののんにももちろんある。 また広島の市井の女性をやり方次第であそこまで強くできることを発見したこうの史代先生はやはり偉大と言わざるを得ない。 そして、現実を写実以上に克明に描き、なおすずを極めてリアルに存在させ得た片渕須直監督の手腕は単なる取材マニア・資料マニアでは語れないものがある。 彼はその点で類型物語と取材力を武器とした宮崎駿をとうに超えてしまった。 では 「若おかみ」はどうか。 「若おかみ」は徹底して類型的であることを選択したのだ。 「この世界の片隅に」と決定的に異なり、まず物語における幸福度と残酷度の限度が冒頭に示される。 家族との幸福な時間。優しく理想的な男性としての父。理想的な女性のモデルとしての母親。 そして残酷な現実。家族が途端に消え去り、孤独に取り残されるおっこ。 が、この映画のうまいところは、絶望を描いたあとでおっこのキャラクターとしての強度を即座に示し観客を安心させてしまうのだ。 取り残されたおっこが一人戻ることのない引っ越し済みで空っぽの家に「行ってきます」と呼びかけるシーン。 また、車窓に映る他人の家族の仲睦まじい場面に優しく微笑むシーン。 そしてクモとトカゲに慄き慌てて飛びのくシーンの愛らしさ、その愛らしさを深刻な状況下で出してしまえる豊かさ。 この三つだけで少女の根源的な強さを示した。彼女の人間性補正と萌えオタクものをも取り込んだ愛しさ補正、その二つがピリリと効いている。 これはうまい。 こうした工夫が全編張り巡らされた物語は終始鑑賞者の感情的な枠を踏み越えないまま幸福と絶望を繰り返す。 これはなんなのか。 つまり少年アニメである。 少年少女に向けた「デジモン」「ポケモン」「おジャ魔女どれみ」「プリキュア」また古くは「クレヨン王国」などといった小学生の読み物たる児童文学と密接に結びついた類型物語をそのまま踏んでいる。 当たり前だ。 原作が児童文学なのだから。 だから今作の素晴らしさを語る上で言葉を選ぶ必要はまったくない。 「子供の頃読んでいたあれ」 「子供の頃観ていたあれ」の超超超・上質バージョン。それで事足りる。 そのスピリットの素晴らしさはいかほどなものか。 昨今の衒いに衒ったこってりアニメや「大人が観ても楽しめる」と称した過剰な鬱展開を盛り込んだ作品、演劇的な作風、メタ的表現の数々…それらにうんざりしていた身としてこれほど待ち望んだものはない。 そうなのだ。 「あの頃本気で憧れた『良いもの』」を歴戦の勇士たるアニメ監督・演出・脚本家達に本気で表現されたらそりゃハート鷲掴みにされるに決まってる。 アニメーション表現にもそのスピリットは顕著に現れており、幽霊の少年が幻影の花を散らす場面や鯉のぼりのシーンなどは極めて極めて少年アニメ的な躍動感に溢れている。 そこには表現主義に凝り固まったアニメーションは一つもない。 これぞ、これぞまさしく『国民的アニメ』と呼ぶべきものではあるまいか! どこに出しても恥ずかしくない作品とはこのことを言うのだ。 だが、この作品に反感を覚える人がいるのもわかる。 この記事で何回か書いた通りおっこはもらわれ者の労働者であり、また女将という立場は他の人物と比較して高いものではない。いってみれば仮住まいを貸す女中のようなものだ。 子供が労働現場に置かれてそこの客とのヒエラルキーを前提としたコミュニケーションを繰り返す様に具合が悪くなる人もいるだろう。 自由社会とはそういうものだ。 だが、これはその更なる中の「そういう話」なのだ。身もふたもないが。 作中にはおっこに限らず親の手伝いや家業を継ぐ形で働く子供が何人も出てくる。 まだ人生の一も十もわからないうちから自分の生き方を決めてしまう人は確かにいる。そしてそれを悪とは決して考えない。 確かにそれはその通りだ。彼女らはそのコミュニティの中で生きる限り孤独死と縁がない。そういったメリットもある。 これはコミュニティ社会という現実を切り取り温泉街という形にカリカチュアした世界の話なのだ。 そして作中ではそのことを主人公のライバル的な女の子が明確に批判してもいる。おもてなしや真心など、真のもてなし=客のリラックスを考える上で不合理だと。 それに対しておっこは徹底して負担を背負い、乗り越えることだけで解消しようとする。負担を無くそうとはしない。 おっこ一人ではライバルに対するおもてなし不合理への反証を出せないのだ。 だからこそ、周りの人物を味方につけ仲間を増やすことで答えてみせる。コミュニティ社会を形成すればシステム社会に対抗できるという体現だ。 たからこそ、主人公の人生を踏みにじることになったトラック運転手の親子が出てきた時、この物語は少しだけ輪から外れる。 トラック運転手の一家の描き方はいかにも下層階級といった感じで良い印象を与えない。父親はやや粗暴で食事を残すわ口に入れたものを飛ばすわでマナーがなってないし、台詞回しもやや威圧的だ。 その子供はこの作品のテーマである「躾」がなっていない子として描かれる。 その母親も教養深く理想的な存在としては決して描かれない。 この一家の象徴するものは、おっこ達が持つ高度技能者たちのつくるコミュニティ社会に決して入れない人々だ。 彼らは自身に悪意がなくとも誰かの失態を背負わされ、人を傷つけ、自分も傷つき、疲れ果てている。 そういう人物がコミュニティ社会と関わったときどうなるか。 彼らは「憎まれること」か「許されること」でコミュニティ社会に取り込まれるのだ。 そしておっこ達旅館の人々は後者を選んだ。 それが今作の顛末である。 今作に違和感を覚える人は、このコミュニティ外の人々が関わってきて許される受け入れられるまでの描き方に要点があるのではないか。 今作は強固なコミュニティがシステムからはじき出された人々を取り込み更生する話なのだ。 それが表面上は「気の毒で健気で優しく愛らしい少女が、悪人ではないが自分の罪に無自覚(というより『躾』の欠如による礼儀の無知)なトラック運転手の大人によってトラウマを抉り返される」話に置き換わっている。 本来はトラック運転手は罠にかかった獲物であり、主人公の涙やトラウマの発露は復讐なのだ。 物語は「そうした悲しみを乗り越えておっこはすべてを受け入れ赦す」というふうに続くが、これは言い換えれば「トラウマを知らしめ復讐を果たしたおっこは、なぜか援軍にやってきた占い師の女や同郷のライバルの手を借りて男率いる一家を追い詰めコミュニティに搦めとる」……構図になる。 これに違和を感じるのは当然といえよう。 足を悪くし内臓を切除し療養も兼ねて温泉にやってきたトラック運転手にとっては上記の言い換えられた構図がすべてなのだから。 彼の悪夢は解消されない。 しかしそれこそがコミュニティ社会の強さなのだ。ヤクザが身内に甘く他人に厳しいのと同じ。 コミュニティ社会は身内は「受け入れ」るが、他人は「赦す」��� だがこの構造は罪と罰と許しを描く作品にはまったくありがちなことで、当然児童文学においては類型化されている。 多くの人は違和感なく受け入れ、自分の属するコミュニティを振り返る機会に恵まれるだろう。 こうした物語の根幹にある構造が観てて痛いほどわかった。 これは類型をさらに深くするどく描く作品だと。 この物語がなにも逸脱しなければ完全なる良作と化すと鑑賞中に確信した。 その確信は大正解だった。 本作「劇場版:若おかみは小学生」は良質なアニメーションと丹念に織り込まれた類型的文学に支えられ傑作となった。 これはまったくもって観ておいたほうがいい作品である。 理屈はともかくおっこがかわいい。着替えシーンは萌え的強度が高かった。 そしてオープニングとエンディングで泣いた。作中でも何回か泣いた。 今作に感動するあまり、鑑賞後寄ったトイレで自前のツナギの袖を便器につけてしまった。綺麗なトイレだったしまだなにもしてなかったから気にせずツナギを腰に巻いて、せっかく上野に来たわけだしルーベンス展に赴く。 ルーベンス展は予想通り良い絵が一枚見つかったくらいで観終わった。 この手の中世近世画家はもうみんなこんな感じで感情を揺さぶられることがない。 技術技法がこってりしててその奥の作者が全然見えない。見えたとて薄っぺらなものだったろう。 また技法に特化してるわりには手足の描き方があまり上手くない印象だ。ルーベンスの描く手足の指はどことなく丸くてカリカチュアされててうまさを感じない。 そのぶん朱に染まった皮膚や透き通った静脈を描かせると天才的なのだが。 「セネカの死」という作品が素晴らしく描けているので観ておいて損はありません。 しかし、よかったのが一枚だけとはなんとも割り切らない煮え切らない。 このままではなかなか帰途に着く気になれず、仕方なくもう一軒展示を回ることに。 同じ上野公園でやってるフェルメール展は相変わらず行列待ちがすごいし断念。 ムンク展に行くことにした。 「ムンクかあ、今の僕にムンクが必要かなあ」と躊躇はしたが、結局行った。これが大正解だった。 素晴らしかった。ムンクの絵は「病める子供」が特に素晴らしく、見入っているとなにかしらエモーショナルな感情が引き摺り出され涙が出てしまった。 ムンクは何度も病める子をモチーフに描いているのだが、これがすべて素晴らしくいいのだ。 また、何年も何年も観たい観たいと思っていたムンクの「太陽」の絵が飾られていた。完成作は壁に直接描かれたものだから日本に来ているのは習作だろうが、感動の度合いは留まるところを知らない。 もう絵を見る幸せを腹一杯味わってしまった。 あまりにもよかったので特別展を出たあとグッズシャツと缶バッジを買ってしまった。すごい好きなデザインだから。 美術館のハシゴは二軒でやめにして帰宅。 眠気を押してこれを書いてる。 自分はいま手持ち無沙汰ですることがないのだが、こんな時こそアイデアを練り作品を作らねば。 そういうわけで給料も入った折、思わずインプットを堪能してしまった十一月一日でした。
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明かりは乱闘で割れてしまったらしい。一部の机の上と床の片隅にさあっと硝子の粒が春の霜みたいに張っていた。通りの光だけを採る粉屋は半端に暗い。
「さて、じゃあ授業を始めます」
形だけはいつも通り、なつめが教壇に立って教室を見回した。
春は両手を前に携えて思い詰めながら壁際に立ち尽くしている。隣に翳島が腕を組んで凭れている。彼の表情はなにか普段と違う事態が起きるとときどき読み取れなくなる。
図々しいことに部屋の真ん中を占めて、魔性のごとき少年が長机に肘をついている。
誉が持ち掛けた勝負の、封切りの場だった。
「今日はお客さんを迎えての対談だ。誉」
誉、となつめは呼んだ。極力感情を排したような声で。
「君が知りたいことは、何?」 「はい」
すうっと片手が挙がる。挑戦者の少年。
「やはり古今東西、学徒の議論といえば神にきまっているだろう。なつめくん、君の育ちなら信仰を持っていておかしくない。実際どうなんだい、君にとって神は、在るのか、無いのか」
春は思わず翳島の横顔を仰いだ。青年は気づかないのか無視したのか、春のほうは見なかった。
信仰、神、という言葉に並んで、なつめの育ちの話が出た。誉は何を指して言っているのだろうか? なつめの家のことを、春はいまだ聞いたことがなかったのだ。なつめはいつも、授業を終えるとどこかに帰っていく。けれどその行き先を不思議と尋ねたことがない。聞く必要がない、あるいは聞いてはいけないことのような気がして。
翳島は知っているのだろうか。二人で旅をしてきたのだから、決まった家があるのじゃないはずだ。
「結論から言おう」
なつめは言った。部屋の空気が張り詰めていて、びんと春の鼓膜が震えた。
「神というものは在るよ。信じる人にとってはまちがいなく」 「へぇ?」
なつめの声に迷いはなかった。誉が伺うように瞳を細くした。
「信じる人に、とは?」 「それより先に、だ。誉」
鉾先が鋭利に返る。 なつめはゆっくりと狙いを定める目つきをしている。
「君にとって神とは何だ?」
そうだ、と春は思った。彼が持ちかけた議論の題目は酷く抽象的だ。
誉は唇を持ち上げた。
「不死であり、永遠、万物の父」 「それは文字通りの意味でそれが神だということか?」 「それ以外にどんな神がある?」
二人の視線が互いを睨み据えた。春は無意識に口元を押さえた。そのやり取りから、剥き出しの言葉の塊がぶつかりあって散らばり落ちるような気がしたのだ。
何の話だろう、と春は考えた。神。少年たちの言う神とはなんのことであるか。不死、永遠、万物の父。それが日本古来の神道で祀っている神のことではないのは神奈神社の巫女である春にはすぐに肌でわかった。
詳しくはないけれど知る限りそれは、西洋から来た神さまのことである。
その正体を、誉がなつめに問う��いるのだ。奇妙な状況だ。誉は仏門の僧服を着ているのに。
「なつめさんは……」
出しかけた小声を隣から遮られた。しいっと指を立てた翳島だ。その意図が分からなかったけれど、眼鏡越しの真剣な眼光を見て春はぱたんと口をつぐんだ。
ぽかりと空虚なままの胸の洞が疼いた。少年たちは何の土俵で戦っているのか。
春は何も……知らない。
「この世には」
となつめは言った。なつめの双眸がぎらぎらしている。
「説明できないことが無数にある。それを説明しようとするのがぼくら学徒だ」 「へえ」
ひとまず傾聴の姿勢を示すよ、とでも言いたげに誉は肘を突く。なつめはようやく普段の「授業」を思い出してきたようである。
かんッ、と白墨が鳴った。
「ケプラーの法則を知っているか」
なつめが黒板に文字を書いた。小学校の廃棄品のお下がりを春たちで貰ってきたものだ。
「天体の運動に関する基礎概念だ。近代天文学はここから始まる」 「俺はきみたちのそういうやつは不得手でね。教えてくれよ」
誉は応じて首を振った。きみたちの、と言ったのは春や翳島というよりもなつめとその性格に似たたくさんの学徒たちを示しているように思われた。生徒役の従順な態度になつめはまだ目玉を奇妙に光らせたまま頷いた。
「簡単に説明しよう」
なつめの手が円を描く。
「『惑星は太陽を焦点の一つとする楕円軌道を動く』」
白墨の線に合わせて、春の頭の中をぐるんと木星だか火星だかの像が回った。
「春、これは何だい」
自分に問いかけを振られているのだと、春は遅れて気が付いた。思わずすこし腑の抜けた声で答えた。
「第一法則……」 「そう。ケプラーの第一法則」
春も習った。これくらいのことは一年足らずで覚えていた。なつめが夏に冬に星を見上げては語る宇宙。
惑星は太陽の周りを疾駆している。その莫大な質量に近づいたり離れたりを繰り返しながら。それは春にとっても印象的な事実だった。宇宙に思いを馳せるとき、自分まで星になったように感じることがある。
なつめはこちらから目を離した。
「じゃあ、第二法則は?」
彼の手がすいと動く。陽だまりの空気をその肌が白く反射して遮る。
「翳島」 「『惑星と太陽を結ぶ線分が単位時間あたりに動く面積は一定である』」
翳島は棒暗記した教科書を読むように感情のいっさいない声で息継ぎせずにそう言った。春よりももちろん彼のほうが正確に知識を持っている。
「面積速度一定の法則だ」 「正解。それが第二法則」
なつめは特段の満足を生徒たちに示すこともなくそう言った。細い手がふたたび日影をうごめいた。黒板のうえにかつかつと文字が増えた。春が答えたもの。翳島が答えたもの。図にも複数本の線分が書き足されて、三角に似た扇形がいくつか切り取られた。春はそういうものなら見分けることができる。軌道上を動いた惑星が太陽を見つめる視線を示しているのだ。
「それから、最後は少し複雑だからぼくが自分で書こう。『惑星の公転周期Tの二乗は、楕円軌道の半長軸aの三乗に比例する』。惑星が遠ければ遠いほど、その惑星が太陽を周回するのには時間がかかるということだ。聞いてくれれば、それぞれの性質を求める方法も教えよう。だけどひとまず、今の問題は、この式自体の意味するところを解明することではない。 わかるかい、つまり、定式化できるんだ。 宇宙には法則がある。遠い宇宙に、たった三行で書き表してしまえるような法則をケプラーは見つけたんだよ」
なつめの目が輝き始めていた。
大丈夫だ、と春は思う。
同じ光ではあっても、最初に誉を迎えたときのなつめと、ここにいるなつめは違った。春の知っている通り教卓に立っているなつめは、いつもの星の輝きに戻っていた。夜みたいな色の黒板の前に立つ星。北斗星みたいにぶれずに先を示す星だ。
「ヨーロッパはこのときどういった状態だったと思う。誉?」
一周して、なつめの視線が客人に戻った。けれどさっきまでみたいな不安感は春にとってはもうない。
「近世だね」
と誉は言う。彼はどこまで歴史を知っているのだろうか。
「ルネサンスだ。文芸復興」 「少し古いかな。エル・グレコなら悪くはない」
楽しそうになつめの双眸がまばたく。エル・グレコは受胎告知の作家だ。
「一七世紀は、ヨーロッパにとって圧倒的に危機の時代だった。戦争。内乱。飢饉。世界的な寒冷の波が当時ユーラシア大陸を襲ったと言われている。気候はいつの時代だって重大な歴史の決定要因だった。寒きは草を枯らせ、食を細らせて人を歪めるんだよ。その証拠に、歴史上の最も陰惨な事件のいくつかはこの時代に起こった」
誉がくすくすと笑った。なんだか心当たりでもあるみたいな笑い方だった。
「魔女狩り」 「分かってるんじゃない」
陽射しのまっさらな白が彼らの輪郭を飛ばして春の目に映りにくくする。春は思わずまぶたを細くして会話の続きをかいま見ようとした。
「その中でね、ケプラーは星を見た」
チカッと、明かりが弾けたのが見えるようだった。
白墨が黒板を鳴らした。
「悲しい事件が起こっていたのと、惑星運動の法則が定められたのが同じ時代のこと。科学は、暗闇を照らす人の手の灯火だ。そうは思わないか」
春は陶然とした。なつめの言葉を聞くのはいつだって疾走する列車に乗るような心地だった。
ずっと聞いていたい。ほんとうにずっと聞いていたら、なんだかおかしくなってしまうのはおぼろげに知っているけれど。
はん、と一方で誉が鼻を鳴らした。聞き手がつい忘れる本筋に、強引に全員の意識を引き戻していく。
「じゃあ、きみにとっては科学こそが光で、それより前にあったものは冥盲というわけか。神も暗闇。さっき魔女狩りの話が出たね。じゃあ信仰は、なつめ、罪なき魔女を狩らせる悪者か?」 「まさか。よく聞いてくれよ」
なつめはめげない。少年の手が軽やかに踊る。
「ぼくが言いたいのはね、ケプラーは神学者だったってこと」
春はそれを聞いて横から目をぱちくりした。
天動説、というものを聞いたことがある。地球は動いていないのであって、回っているのは空の方だ。これに反する説を唱えた科学者は地位を追われた。なぜなら神の作った大地は静止していなければならないからだ。
ケプラーの話は、神の教えにまっこうから反しているように思われる。
彼が神学者だったならなら、なぜ。この先の話は、春も知らない。
「ケプラーはたとえ表面的に聖書に反していたとしても、真理の究明を行うことこそが信仰だと考えた。彼の信念はね、『神の作った宇宙は美しくあるべきだ』だったんだ。ケプラーの師匠にブラーエっていう人がいるんだけど、このブラーエも、当時としては珍しくないカソリック教徒だ。ブラーエは、火星の運動の解明をケプラーに託した。なんて言ったと思う? より美しく、より神にふさわしく在るように、世界の謎を解いてほしいと。そうなんだ。国立天文台で星を見た人々にとって、神さまは、世界の基盤だった」
なつめが客人の瞳を真っ直ぐに覗き込んだ。
「言いたいこと、わかる?」 「わかるともさ」
誉は薄く笑みを浮かべたままふわりと首を傾げた。なつめの横顔を照らす光が誉の髪にも木漏れ日模様を作っている。
「世界の仕組みを、科学で解明したとしても、その仕組みをそう定めたものを、神と呼ぶことには何の矛盾も生じない」
あぁ、と空気の残滓に胸を鳴らしながら、春は思った。
誉が正確にとらえた、なつめの話す言葉が、目の前を照らしていた。いつものように、遠いものと遠いものをその手に捕まえて、一瞬のうちに鮮やかに結び合わせる言葉。
春はこの言葉が大好きだった。黒板の前を跳ねる白い手が大好きだった。誉がどんな野望を抱いてこの粉屋に入ってきたのかはわからない。だけど、と春は思う。
この言葉に、彼の紡ぐ物語に、人は頭を垂れなかったら嘘なのだ。
なつめに勝てる人間なんて、この京都いっぱいを見渡したって一人もいない。
そうでしょう、ねえ、あなたも。
胸が詰まる。
明るい視界の真ん中を、体勢を変える黒い僧衣がすうっと横切っていく。
「きみもそれを『神』だと思っているわけ?」 「というのは?」 「『きみ自身も、世界の謎を謎と定めた力を神と呼ぶのか』ってことさ。ケプラーやブラーエの話じゃなくてさ?」
「そこまで言う必要があるかい?」
なつめは小さく笑った。
「信じる人にとって、そこに神のはたらきはある。それだけでいいだろう?」 「そ��じゃあなつめ」
誉の言葉の、色が変わった。
「問題だ。たとえば聖母像を抱いて崖から飛び込んだ女がいたとする。彼女は教義に反して穢れた女で、教会が彼女にそうすることを命じた。当人の女も、それで己の罪が清まるのなら良いと納得して死んだらしい。 それが啓示の結論だったとしたら、それは救いか、それとも破滅か?」
不吉なたとえだった。
春は眉をひそめて誉を見つめた。悪趣味な問いかけを口にした少年は、粉屋の薄い陽だまりの真ん中で薄く笑んでいる。
「見方によるよ」
なつめもやや不可解な顔をしていた。初めてそこで、なつめは話の流れを見失ったような表情をしたのだった。
「そのときの人々にとっては、どんなに悲しくても罪が清まるのなら救いだったかもしれない。彼らにとって神は在ったのさ」
「別の質問をしよう」
誉は答えを出さない。あくまで自分の裁量で話を進めてしまう。
「それじゃあ、信じる人たちが神の力と信じたところに、別の理由が見つかったらきみは教えてあげる? たとえば、天空じゃなくて地球が動いていた、みたいなことさ」
なつめがすこしの間黙った。
「それも場合によるだろう。事実の過誤で誰かが不利益を被るなら教える。そうでなければわざわざ本人たちに特別に伝えることはない」
「ふーん」
何が楽しいのか、誉はずっとにこにこしていた。
「きみは言ったね。『世界の説明できないことを説明しようとするのが学徒だ』って。そしてこうも言った、世界の仕組みを科学で解明し、その仕組みをそうと定めたものを神としても矛盾しないって」
なんだか不安な香りがした。春は思わず背中を硬くしながら二人のやり取りを交互に見守った。
「俺にはこう聞こえるんだよね。『まだ自分たちが説明できない事象のすきまには、特別に仮の説明として別の力を認めてやってもいい』って」
かたん、と、なつめが白墨を置いた。
その音をひどく乾いた音に感じた。春の呼吸が浅くなっていた。翳島は相変わらず微動だにしない。一瞬空の上を薄い雲が過って、粉屋に差す明かりの強さを変える。
話の内容は遠回しで、いったい何を見据えて議論が行われているのか春には判然としなかった。
なのに、はっきりと思う。流れが変わった。
春の聞きたくない話に、少しずつ部屋の温度は遷移していた。
「そこまで言ってないよ」
なつめは空気を振り払うように笑って言った。
「すでにわかっていることにだって、ときには人は救いを求める。花の花びらの枚数で恋人の気持ちを量ったりだとかね。それが一体くだらない行いか? 人が思いを託す場所として、信仰は尊い。ぼくはそう思うよ」
「『人が思いを託す場所』」
誉が鸚鵡返しにする。機械で打った文章を読み上げたみたいな声色。
「信仰は人にとって、さまざまな念慮を受け止めてくれるという意味で実益ある思想である。そういうこと?」 「何か間違ってる?」
なつめがふいに語尾を奪い取るように勢い込んで言った。その頬がわずかに紅潮していた。驚くくらい子供っぽく見える態度で唇を結んでいる。
「ぼくは確かに古くは神やもののけの領域とされてきた分野を解明しようとしている。だけどそうしたものを考え出してきた人の営みそのものを否定しようなんて思わないって、そう言っているんじゃないか」 「間違ってるだなんて、言ってないじゃないの。俺は絶対そんなこと言わないよ」
誉はけたけたと笑い声をあげた。その声が悪鬼じみて聞こえて春はがんと突然の頭痛を感じた。
「『そうしたものを考え出してきた人の営み』! そうさ、俺はそういうきみと話しにきたのさ。ねえ仁路なつめ、あんたとずっと話したかった」
その喋り方が、いつの間にかずいぶんあけすけになっていた。
誉がすいっと手を差し出した。その手に虎目石の数珠が絡みついているのを見て春はどこか気圧された。この少年は少なくとも形の上僧侶なのだ。
「人が神やもののけを考え出してきた。これがきみたちの思想だ」
説話を読むように言う。もう片手も差し伸べる。
「神が人を作り恩寵ではぐくんできた。これがたとえば、さっきの聖書の思想」
両手に概念を携えて較量するように、誉は笑う。
「さて、どっちが正しい?」 「どっちもだ」
迷いなく、なつめは言った。少し急いだような言い方だった。
「世界をとらえる枠組みは人によって違うんだ。間違い探しで勝負するものじゃない」 「ふん! そういうことにしておこうかね」
誉は笑った。凄惨な鬼のようにどくどくしく見えた。
「頭ではそんなふうに考えてるってことか。言葉の隙間から出るものはどうだか知らないけど。まあそれならいいんだよ、俺は少なくともきみがそう思う限りは何も言うつもりはない――」
春は無意識に後ろに手を伸ばして机の紙束を掴んでいた。
ずっと黙って聞いているばかりだった翳島がちょっと驚いたように物音に振り向いて春のほうを見た。春はそれに構う余裕はなかった。
「帰ってちょうだい!」
喉をつんざいて、口から叫び声がほとばしり出た。
春がそれに気づいたときにはもう自分の手が勝手に動いて手当たりしだいに握ったものを大きく振りかぶっていた。誉に向かってばさばさと古い紙やら乾いた筆やらを投げつけた。ぴょんと両手をひっこめた誉は人畜無害な子犬みたいな顔をして春をまばたきとともに見つめた。
「春ちゃん、お怒りかい?」 「帰ってちょうだい! 帰って! 出てって」
繰り返しながら喉が擦り切れる気がしてぜえぜえと息を吐いたら隣から大きな手のひらが伸びてきて肩を捕まえられた。春は続けて投げつけようとしていたインク瓶を空中で携えたまま無理に動きをとめた。翳島が諫めるような目をして春の腕を支えている。
「品のないことはやめろ」
「でも、だってっ、あの人が最初に喧嘩をけしかけてきたんじゃない! 翳島さんだって腹を立ててたはずだわ。ごろつきを送り込んで殴らせたんだって! それがこんなふうに座らせておくなんて間違ってるわ。最初から、追い返せばよかったのに、追い返したかったのに、来なければ……」
悔し涙が滲んで春は必死で奥歯を噛んで押しとどめる。春の居場所だったあたたかい粉屋を、踏みにじっている誉が許せなかった。
姫さまがいたらこんなとき、背中にふわりとけはいを香らせて落ち着かせてくれるのに、と春はひどく喪失を感じた。姫さまはどこにいったのだろう。姫さまならこの話をどんなふうに聞いたのだろう。春には理解できないことが多すぎた。教えてほしかった。
「泣くな、春」 「泣いてないわ」
ここで泣いたらまるで一人だけお子さまの癇癪そのものだ。敵のいる前でそんな姿を絶対に見せるわけにはいかない。
鼻をすすってきっと前を向いた。誉が軽い動作で席を立っていた。いつの間にかその黒い僧服姿が春の正面の数歩先にいる。
「御大層な送り出しをありがとうだね」 「茶化さないで」
見据える。睨みつける。視線で少しでも春の強さを伝えようとする。春は最初からこの少年を一瞬でも歓迎したことはない。
「あなたの神さまなんかわたしにはどうだっていいんだわ」
敵意を込めて少年の持ち掛けた論題を突き刺してやる。
誉はわざとらしく驚いたみたいににやついて目をぱちくりした。
「春ちゃん、なんか勘違いしてないだろうね」 「なに?」 「俺の格好見なよ。仏の門徒だよ。神さまの話は一般論。別に細かい話はいいんだけどさ。俺があっちの神信じてたらかえってこの話持ってこなかったよ。中から来る言葉はいつだって信用ならないものだからね」
何を言っているのか知らないが誉は十分信用ならない。彼の信仰が仏門だというのが彼の無粋さになんの関係があるのか。
黙って睨み返す春に音もなく近寄って、誉の手がぽんと春の胸元を突いた。春は目をぱちくりした。
「それから、きみもきみ自身にもっと誠実になるべきだと思うね」
正面で見ていたのに接近を許した。
自分への驚きが先に立って、聞いた言葉はよそごとのように響いた。意味をとらまえる前にぼんと心臓が爆発するように空気をいっぱいに取り込んだ。生命が冬の終わりに息吹をいっぱいに持ち上げるように、身体に燃え上がったような気がした。
春は思わず声を漏らした。
「あっ」
胸の空洞になっていた場所に知っているけはいが芽吹いた。正確にはそれは戻ってきたのだ。
『ぷはぁっ』
姫さまが、息を吹き返した。
春はぶわっと真っ赤になって自分の胸を押さえた。動揺やら昂奮やら、ずっと不安だったものへの安心と、色んな感情が一緒くたになって言葉が出なかったのだ。身体のない姫さまは久しぶりに家に辿り着いたように春の胸の中に疲れたようなけはいを溜めていた。『春』耳馴染んだ声が言う、『すまなんだ』
春は今になってぶるぶると抑えきれない涙が込み上げてくるのを感じていた。
「ねえっ、姫さま、今まで何がっ…………」 『説明はまたにさせよ。わらわも休みたい……』 「おいっ、てめぇ!」
至近で荒々しい声がして、春はびくっと顔をあげた。
幸い、というより当然のこと、その声はもちろん春に向けられたものではなかった。誉の背中に翳島が怒っていたのだ。僧服の少年はとっくに粉屋の入り口を出て、明るい三条の表通りに駆け出していた。
「止めるかい? まだ何か話し足りない?」
楽しそうにくるりと回る少年は言う。
「談義なら俺はいつでも付き合おう。俺自身の世界観で語って聞かせたっていいよ。今回はきみたちばかりに語らせてしまったからね。というより主になつめくんか。いや実に申し訳ない。翳島暁蔭(あきかげ)、だったっけきみは。きみもなかなかに面白い解釈を持っていそうな気がするんだよね。もしかしてきみのほうが賢いかもしれないとさえ思う。俺は賢い人間は好きだよ、愚かなのと同じくらいにね。ねっ、春ちゃん」
丸い瞳が春をとらえてにっこりと三日月を描いた。
「桜が散る前にまた会いたいな」
浮つくくらい気障な言葉。
「可能なら一回り大きくなって来てくれるととても嬉しい」
翳島が耐えかねたようにがんと踏み出して戸口の柱木を叩いた。
びいん、と建物全体が共鳴した。春は首をすくめて思わず目を閉じた。ひらひらと片手を振った誉はまるで遊ぶ途中の子供のように小さな背中で駆けていく。
その背中が見えなくなるまで、全員が黙っていた。
翳島がゆっくりと拳を下ろした。静かだった。
「まぁ、悪い夢でも、全員で見たんだろうと思おうや」
低い声だ。冗談にしてしまうには、粉屋の状況は奇妙に過ぎた。割れたランプ、乱れた机、少年が座っていた後に散らばった紙の束。
「あいつ、また来やしねえかな。このまま来やがらねえなら、こっちから関わってやる義理は二度とないんだが。なつめ、拠点を移すなり、色々考えるか。ここはちょっとあいつらのお膝元に近え気がするな。なつめ?」
軽い声で翳島は続けて、床に散らばったごみくずを拾いあつめるために腰を曲げた。なつめが付き合わないので、翳島はすこしして黙っている少年に向けて頭を持ち上げて呼びかけた。
日が動いて完全に影になった黒板のもとに、仁路なつめは古樹にでもなったように黙然と、身動きせずに佇んでいた。
その瞳がすこし憂えげに見えて、春は一歩歩み寄りかけた。
「なつめさん……」
呼ぶ前に、
「もう一回、話したいな」
なつめが言った。
翳島が度���を抜かれた拍子に机の一つに肘をぶつけた。動いた机がごとごとと音を立てた。
「おいなつめ」
頬の青たんと一緒に痛々しい顔をして、翳島は机を挟んだままなつめに迫る。春もほとんど息をとめたままなつめの顔を見つめていた。少年は春たちのほうを見やることはなく、どちらかといえばぼんやりとさっきまで僧侶の少年が座っていた席のあたりをじっと見つめている。
まだ、議論の続きを考えているような顔だった。
「頭がいいと思ったんだ。ぼくとはきっと違う視点を彼は持っている」 「だからって……っ」
ここで声をあげたのは春である。だからってもう一回話したいなんて。だってあの人とても失礼な態度を取っていたのよ。だけど春のその言葉はうまく口から出なくて春は唇をごにょごにょさせた。失礼な態度だったのは、はて、具体的にはどの発言がそうだっただろうか。
「春や翳島は巻き込まなくてもいい。冬子も」
今は居合わせない仲間の名前をなつめは後ろから一つ付け足した。疎外されたようで春はかえってもやもやする。
「だけど、ぼくはもう一度、確認してみたい……」
姫さまのけはいがすっと胸の奥から出てきた。
その意図は分からなかったけれど、時を同じくして、なつめの茫洋とした瞳がようやく今現在に焦点を合わせた。はしばみ色の瞳がゆっくりと春を視界の真ん中に収めた。
「そうだね、春。……ぼくの『家』に来る?」
黙って春はなつめを見つめ返した。
それは議論のはじめに提示された春の知識の空白部分だった。なつめは春が置いてけぼりになっていたことを気にしてくれていたのかもしれなかった。
隣で机に手を突いていた翳島が、何やら言おうとして一度口を開けた。けれど何も言わなかった。姫さまのけはいが背中を包んでいた。
春が小さく頷くと、なつめが笑った。
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もくじ
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スクエアンノウン.04.途中変なの挟まってますが仕様です。
前回のあらすじ「純粋な喜びと隠しきれない腐臭と、流れていったピラーマン(戦車)」
----伝人(六窓)視点----
香港において食事は中断され、文字通り、戦いの火蓋は切って落された。 殆ど知っている通りだったので詳細は省くが、ポルナレフが 仲間に なった! ▽ そして現在、俺たちは偽船長の乗る、爆破される船を眺めていた。
「チャーターしたのはあの船だ。我々の外には乗組員だけだ。外に乗客は乗せない。もしもの事故があるとまずいからな」
特に真剣に議論されるようなことでもなく、推測できるような情報もないため、俺の勝手な想像でしかないが、本物の船長は既に死んでいるだろう。どうしようもないのでそこはもう始めから諦めている。残りの船員は、ストレングス戦でスクエアを使い、可能な限り香港の港に強制送還する予定だ。
「ムッシュジョースター、ものすごく奇妙な質問をさせていただきたい」 「奇妙な質問?」 「……詮索するようだが、あなたは食事中も手袋をはずさない……。まさかあなたの『左』腕は『右』腕ではあるまいな?」 「…………? 『左』腕が『右』腕? 左が右? 確かに奇妙な質問じゃ……。いったいどういうことかな?」 「妹を殺した男を探している……。顔は分からない。だが、そいつの腕は両腕とも右手なのだ」 「……50年前の名誉の負傷じゃ」 「失礼な詮索であった。許してくれ」
くるりと背を向けて話を続けるポルナレフ。そしてやはり、『雨がよけて通っていた』ことを聞いた。 ハングドマンが水溜りの中で傘を差していたと言えば全て解決するのだろうが、これが俺たちのようなイレギュラーが絡んでの『予定調和』の結果で、敵として現れる可能性が一番怖い。多少無理をしてでも明らかにしておきたいポイントだ。 目の前と袖の中にスクエアを発現して、それぞれをアン・ノウンへと繋げ、小百合に手早く確認を取る。
『館で、これが証明できるような何かはあったか?』 『いえ、特に。彼がこの件に関する話を誰かにしていたこともありませんでした。わざわざ話す程の過去でもなかったのでしょう』 『その何かが、水溜りの中で傘という仮説以外の結果として突きつけられる可能性は?』 『十分考えられますね。全く知らないスタンド使いもチラホラいましたし……』 『厳しいな』 『……ポルナレフには、私がその辺り��含めて説明いたします』
そこまで読むとぷつんと回線が切られ、スクエアが自動的に俺の中に返された。アン・ノウンが外部アクセスを遮断した、ということだろう。ためしに再アクセスを試みるが、いつまでたっても接続中状態。向こうが許可しなけりゃ全く繋がらないらしい。 ……分かれて行動している時、安易に小百合につなげるのは避けたほうが良いだろうか。彼女が敵と戦っている時に俺からのアクセス通知というのは、かなり危ない気がする。よほどでなければ控えるとして、後で伝えておかなければ。
「……そうして君らを殺して来いと命令された。それが正しいことだと信じた……」 「肉の芽のせいもあるが、なんて人の心の隙間に忍び込むのがうまいヤツなんだ」 「その両腕とも右手の男ですが、館にいましたよ」 「……なに?」
個人的に、二度も花京院の台詞を奪っているのが地味に気になるが、まぁ今回は仕方あるまい。 女にしては大きな手でアン・ノウンをズイッとかけ直し、一歩前に出る小百合。長い三つ編みが潮風で揺らめいた。
「DIOを目指していけば妹の敵に出会えると思っていた。が……君は今、なんと言った?」 「両腕とも右手の男は確かにDIOの館にいた。と、申し上げました」
ポルナレフがざっと俺たちに視線を潜らせた。真実であるか確認したいんだろう。 各々頷いて返す中、花京院が小百合の後ろから声をかける。
「……サユリ、もしかして、ポルナレフと私は会っていたんじゃあないか?」 「いいえ。私達が館に行ったのは3ヶ月前。名前こそ聞いたことはありましたが、実際に出会ったのは今日が初めてになります」 「なんだ? どういうことだ? 少年は記憶がないようだが……そちらのお嬢さんは……まさか肉の芽もなしに、DIOの元に……?」
……結局、花京院のエジプト行きから説明することになったのだが、意外にも、これが中々骨の折れるイベントだった。 スタンドに珍しいも変わっているもないが、小百合ほどステータスが極端なケースは確かにそういるもんじゃあない。 更に、彼は生まれつきヒトガタのスタンドを持っていた。それに対し、彼女のスタンドは出会ったときからずっとかけている、その眼鏡。理解し難いのも分かる。 最終的に手に取り、かけてもらって、するりと透けて落ちて見せて初めて納得してもらえた。
「……ところで、気になっていたんだが」 「なんだろうか」
ようやく一段落したところで、俺はポルナレフに対し、ずっとモヤついていた疑問をぶつけてみた。
「俺の手は確認しなくて良かったのか? さっきから袖で見えていない筈だが」 「事件は3年��。それで日本の学生……ましてや幼い子供を疑うほど人間不信ではないつもりだ」 「幼い、子供……だと?」
俺に電流走る……! バッと承太郎を見た。若干の苦笑い。帽子のつばを引き下げて誤魔化された。 ジョースターさんを見た。「まー、しょうがないんじゃあないか?」という顔をしている。 アヴドゥルさんを見た。俺の言いたいことを何となく察したらしく、ぎこちない笑顔で応援された。 そして花京院と小百合を見る。堪えているつもりのようだが、どう見ても笑っている。
「……伝人は18歳だぜ」 「……なに?」
見かねた承太郎が、ようやく動いてくれた。 声に出していなくても、その全身からやれやれと聞こえるようだ。 承太郎はタバコを吸う姿に何の違和感もないくらい、俺とは逆の意味で17歳には見えない。俺もやれやれだと言いたい。おまわりさん、コイツ、ミセイネンです。形だけでも止めてください。不公平です。俺は吸わないが。
「俺、学生組の中で最年長なんだけど」 「失礼ですよ。ね、典明」 「全くだ」 「……!??」
俺の台詞を聞くや否や急に真顔になり、流れるように乗ってくる後輩2人。 遊ぶな、茶番開始すんな。なんだか揺れる前髪と三つ編みが動物の尻尾に見えてきた。捥ぐぞ。 対して、ポルナレフは軽く責められてうろたえている。いっそ俺もうろたえたい。
「……18歳?」 「は?」 「……じじい」
ここに来て、ジョースターさんが何やら聞き逃せない言葉を零した。 それを聞いて承太郎まで笑いそうになってやがる。ギルティ。お前らそれでもジョナサンの子孫か。紳士の遺伝子仕事しろ。
「……あれ。ジョースターさんには、俺と承太郎が中学の時に知り合ったって……話しましたよね?」 「2コ下の、高校1年生かな~、と……思っとったんじゃが、違ったんじゃな!」 「ジョースターさん……クラスで一緒だったと言われたじゃないですか……」
アヴドゥルさんはどうしてブ男呼ばわりされているのか。マジに良い人である。 ジョースターさんはもう少しちゃんと話を聞いてくれ。 ……それにしたって、何故こうも不当な扱いを受けねばならない……。 身長に関しては譲ってやっても良いが、背の低い大人はいっぱいいるだろうがよ。
「どいつもこいつも! 有罪だ!!」 「その、……誤解していたようだな。すまない」 「やれやれだぜ……」
一番罪のないやつに真摯に謝られるわ、友人にはガチ呆れのやれやれを食らうわ、散々である。 これ以上この話を広げられたら香港の沖合い35kmに放り出すつもりだったが、ようやく落ち着いたのでギリギリ勘弁してやった。
「すみませーん、ちょっとカメラのシャッター押してもらえませんか?」 「!」
まだ少し怒りが残っているところへ、旅行者らしい女性の2人組が近づいてきた。ため息を吐いてクールダウンする。 やはり時間が前後しても抑えるところは抑えてくるというか、隙あらば正史通りの現象を起こしたがる何かを感じる。 ベタではあるが、『ここ』にそういった運命の予定調和のようなものがあるとするならば、『俺達』はその運命を根底から覆すか、それでも抜けられる手段を講じる必要がある。
「……」
全員の注意がそちらへ反れる中、小百合だけが一瞬動きを止めたのが見えた。 これだけぐだぐだした後だというのにどうでも良さそうなイベントがきっちり発生したのだから、俺と同じようなことを思ったのだろう。ポルナレフの流れをざっくり予習させておいたのもあるが、彼女は『運命どおり』というのにかなり敏感なハズ。嫌でも反応してしまうか。
「おねがいしまーす」 「やかましい! 他のヤツに言え!!」 「まあまあ、写真ならわたしがとってあげよう」
ポルナレフのナンパが炸裂する中でこんなにシリアスな気持ちになるとは、転生というのは苦労が多い。 小百合は花京院から見えない位置でグッと拳を握り、直ぐにその緊張を解く。俺と同じように、それがいつもの仕草ってヤツらしい。
「なんか、分からぬ性格のようだな」 「頭と下半身がハッキリ分離しているというか……」 「……サユみたいだ」
だが、ここで全く予期しない台詞が投下され、頭が追いつかなくなった。
「え? ……柿ピー今なんてッ!?」 「いや、あの切り替えの早さ、凄く見たことあるなー……なんて、思っ……ふっ、ほんと、いつも見てるッ……!!」 「ええ……笑いすぎだろ、私に失礼だよ……」 「それはそれでポルナレフに失礼じゃねぇか?」
2人して真面目な思考だったのもあるが、完全に花京院に置いていかれた。似てる似てると1人でツボに入ったらしく、馬鹿みたいに笑いが止まらない。 ここまでは『俺達』が動かない限り大体『運命どおり』だったと思うが、10年間もスタンド使いの転生腐女子と一緒にいた花京院は、そんな運命に従うようなヤツではなさそうだ。 俺のじゅうはっさい(笑)騒ぎが収まったかと思えば、次は小百合ときた。中々真面目になれない旅だ。
「……テメーらといると疲れるな」 「まだ日本出たばっかだぞ、確りしろ承太郎」
651 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- え? なにこれ修学旅行か何か?
652 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 流れていったピラーマン(戦車)がほんとに「仲間に なった!」の一言で流れてった件について
653 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 確かに腐女子モードと敬語モードがハッキリ分離してるといえばしてるかもしれない
654 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- テンメイが幸せそうでなによりだけど承りついていけてないwwwwwwwww 頑張れwwwwwwwwwwwwww
655 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square 承りはスタンド使ってないのにSPガリガリ減ってる気がする 漂流中に俺んちのテレビに繋げて相撲とか一緒に見るわ
656 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ていうか次の船長なんだけど、見た瞬間サユにバレるんじゃね?
657 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>655 それ…漂流っていうのか? 水も食料も足りなくなる心配ゼロっつーか…漂流してるか?
658 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known SP? 知りませんね。 流石に真面目な場面では自重しますが、 暇になったら特に理由のない安価が承り先輩を襲います。覚悟!!
659 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square >>658 せんせー! 後輩が俺の友達をいじめてまーす!! …猿の後の漂流までは安価してやるなよ? はじめてのひとりスタンドバトルになると思うし、ここで承りが変に動揺してたら全滅しかねん
これから船長とかストレングスとか色々あるから俺は落ちるけど、 アン・ノウンとちゃんねるはできるだけつなげっぱにしとくんで宜しく。
660 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>656 サユ「黒」 テン「おk」 承り「オラオラオラオラオラオラ!!」 こうですね分かります
661 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>658 くっ��wwwwwwwwwwww 恐れを知らないサユwwwwwwwwwwwwww
662 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>659 六窓もそこは延期じゃなくて止めてやれよwwwwwwwwwwwww 承りは怒って良いぞwwwwwwwwwwwww
663 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 俺こんなのと10年いたら禿げてるわ
664 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 名前呼ばれただけで安価察してたし、テンメイも相当色々あったんだね……
665 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known え? なんです??? 私ばっかり迷惑かけてるみたいなこの空気は……???
666 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>655 違うのか? 違うとするならば証拠を提出すべき
667 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>666 あれー、そんな口利いて良いんですかねー? 幼馴染ぞ? 私、幼馴染ぞ?
668 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 私はむしろサユとかいう爆弾が友達になってしまったテンメイがどんな暴走をしているのか見たい 要するに写真クレ
669 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 証拠!! 証拠!! バンバンバンバンバンバンバン バンバン /⌒ヽ バンバンバン バンバン∩#^ω^)はよ!はよ! /_ミつ / ̄ ̄ ̄/__ \/___/
670 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 「おまえ、見えないメガネのサユちゃんと友達なんだってー?」→「無双、そして私まで親を呼ばれる始末」 【かなり遠目だが、赤毛の男の子が小学校の廊下で複数人の男の子に囲まれている画像】 【何故か絡んでいた方の男の子達が床に縫い付けられるように転がって悶えている画像】 【子供のものと思われる両手で思いっきり顔を掴まれ正面を向かされているのに、思いっきり目をそらしている赤毛の男の子の画像】
「あそこ、ネコかな? なんか入ってったね」→「捕まえてきてよ」 【空中から逆さになっている視点で、地面では若干ピンボケした赤毛の男の子がわくわくした表情でこちらを見上げている画像】 【廃ビルか何かの中で、ネコではない2匹の何かがその子供を庇うように牙をむいてこちらを睨みつけている画像】 【動物図鑑のハクビシンのページを抑える、包帯の巻かれた子供の手の画像】
わたしは、うんめいうんぬんいぜんに、つよくなるときめた。
671 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- がーぞう!!!!!! がーぞう!!!!!!!!
672 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ってきたぁああああああああああああああああ!!!!!
673 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- テンメイwww ショタ時代はかなりやらかしてんなwwwww
674 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>670 ちょっと良い話なのにwwwww やりすぎwwwwwwwwwww「悪くない」みたいな顔wwwwwwwwwwwwwwwww
675 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- なんだこれwwwwwwwwwwwwww保存待ったなしwwwwww
676 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ハクビシンwwwwwwwwwww 小学生ロリVSハクビシン(子持ち)wwwwwwwwwwwwwww 死ぬわ
677 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ハイエロ見える友達ができてテンション高かったんだろうな!! サユも案外苦労したんだな!!!
678 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 真面目に鍛えだして間もない頃だったので、ハクビシン戦は本気で死ぬかと思いました。 殺しちゃマズイですし私はロリでしたし。 それについては後で全力で謝ってもらいましたが、その後もお互い色々やらかしてここまで育ってきましたね。 今となっては良い思い出です。
679 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- やだ……ここのテンメイ普通にアホ可愛い……もの静かで頭の切れるイメージない……
680 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ここから段々あのテンメイになって…るか? サユと同じように、ほんとはクールぶった馬鹿のまま育ったりしてないか?
681 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >679-680 クールぶった馬鹿×2ですが何か? 作戦は常にガンガンいこうぜですが何か?
682 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 推察系は六窓先輩がやってくれそうだからパーティバランスは問題ないのかもな
683 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>681 (自覚あったんだ)
684 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>681 っ「いのちだいじに」
685 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>682 六窓先輩が増えた分テンメイ抜けてたらだめじゃね…?
686 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 思い出話はこの辺にして、ここから実況しますね。
687 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 攻めてなんぼのパーティwwwwww
688 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>685 ほら、学生組はコンビでやってるから……たぶんだいじょうぶ……だよな?
689 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 実況!! 事後報告ばっかだったから嬉しい!!
690 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>688 大丈夫ですよ。テンメイはちゃんと頭の良い馬鹿なんで。 【随分高い視点から人のいる甲板を見下ろした画像】
どこから始めれば良いのか分からないのでとりあえずタイムリーにいきます。 承り「……あれは放っておいて良いのか?」 テン「あれ?」 承り先輩に、見上げられて指を差されました。 サユ「スガスガしい気分ですよ。私こういうの夢だったんです。船と言えば高いところでカモメやウミネコと戯れるに限ります」 テン「サユがあの程度の高さから落ちたくらいで怪我をするはずがないさ」 承り「アイツは猫か何かか」
691 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 待て待て待てどこにいるんだお前
692 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 柿ピーのそれは信頼なのかなんなのか
693 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ネコ × ハクビシン ○
694 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>691 マストにかかってる縄というか網みたいなやつに座ってます。 港でパンを買っておいたので、それで鳥さんとニャアニャアやってます。 >>693 有罪
テン「それにほら、彼女、馬鹿だから」 承り「ば、馬鹿だから……高いところが好きと?」 テン「Exactly」 サユ「おい柿ピー聞こえてんぞ」 テン「知ってる」 六窓「……いぐ……?」
六窓先輩、さらっと流してくれるかと思いましたがダメでした。 二度見されました。
695 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 相変わらず楽しそうだな
696 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- vs執事の時にそれ言われるだろwww どうすんだwwそりゃ二度見もするわwwwwwwww
697 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 彼女、馬鹿だから……馬鹿だから…… なんとかと煙じゃなくてストレートに言ったな
698 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- くっそwwwwwその台詞をテンメイに仕込んでんじゃねぇwwwwwwww
699 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- …なぁ、もしかして転生して細かいこと覚えてなかったせいで そういう敵の台詞とかを感染させちゃったのか? それともわざとなのか?
700 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>699 この台詞は分かってて教えましたが、無自覚に感染させた台詞は結構あるかもしれません。
隠紫「しかしお前らな~、その学生服はなんとかならんのか~! そのカッコーで旅を続けるのか? クソ暑くないの?」 テン「僕らは学生でして……ガクセーはガクセーらしくですよ」 サユ「何しろタダで貰った高級学ランですからね。着なきゃ勿体無いですよ」 隠紫「タダで? とは?」 テン「……実は……この学ラン……DIOの館で用意されたものらしいのです」 承り「そんな服着てDIOの首取りに行くなんざ、どーいう神経してんだテメー」 テン「ン……別に良いでしょう。やたらと丈夫みたいだし」 サユ「旅が終わったら着る機会ないじゃないですか。卒業したらそれこそタンスの肥やしに直行ですし?」
701 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square >>700 あとで……ちょっと打ち合わせしような……
702 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known わぁ☆ 六窓先輩怒らないでくださいよ。 わざとじゃないんですよ☆ この台詞以外は……この台詞以外は……!
家出少女が見つかり、なんやかんやで海に飛び込みました。
703 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>700 無自覚に感染させた台詞でなんかしらの大事故とかが起きなきゃいいけど
704 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- この台詞以外はな
705 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 打ち合わせという名のお説教 ーーー六窓先輩がログインしましたーーー
706 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ふざけた時の肯定の返事としちゃ使い勝手は最高だし、使いたいのは分かる
707 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- でも結構深刻な問題じゃね? 幼馴染が使ってる言い回しをやたら敵が使ってくるなんてどう考えても違和感あるだろ
708 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>700 執事に作ってもらった服を着て執事を倒しに行くテンメイwwww
709 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>707 大丈夫ですよ!! ここまでスレでは日本語でお送りしてますけど、基本ガクセー組以外は英語で会話してるんで!! ほんと!! 六窓先輩も安心してくださいって!! この先敵だって日本語使ってこないでしょう!?
承り先輩が後を追い、鮫をぶん殴って、テンメイがなんかいい感じに活躍してます!!
710 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square 逆に台詞の方にちょこちょこ英語入ってるし 暗殺者って言ったら世界中駆け巡ってて日本語も使えたって何もおかしくない 特に変身系のスタンド使いなんかは日本語だってペラペラじゃねーの…?「Do you understand?」
711 :サユ改めクールぶった馬鹿:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>710 やだ……//// 全然気づきませんでした……////
家出ちゃんがスタンド使いじゃないかとか疑われて、なんかガヤガヤしてます。甲板降りました。 ヴ男「このヴ男……噂すら聞いたことのない「スタンド」だ……」 因みに私と六窓先輩の間にはみんなと違う緊張が走ってて気まずいです。
712 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- サユwwwwww実況がないがしろになってんぞwwwwwwww
713 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- は? いや、英語なの?
714 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>709 考えてみりゃそうだよな… …戦車やヴっさんがなめらくぁ~な日本語を使えるというのも、変な話なのです
715 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- クールぶった馬鹿が英語得意なの意外過ぎた
716 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square いや…俺も軽く使ってたけど、まさかお前、よりによってそれをテンメイに仕込むとか…マジか、マジか…! 俺はまた落ちるけど、こっちの都合で回線ブチ切りとかするかもしんねーから覚悟はしといてくれ
717 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>714 助詞付きやめろwwwwwwwwww 半チャーハンwwwwwwwww
718 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known いや、万が一何もかもがばれたとしても、テンメイなら大丈夫です!! 私が保証しますから!! テンメイなら大丈夫です!!!! 責任は私が取りますから!!
サユ「貴女、お名前は?」 家出「……家出。きゅ、急に名前なんか聞いてなんだってんだ?」 ステータスをゲットした!▽ サユ「白ですね」 テン「なんだ、ただの密航者か」 家出「は?」 戦車「!?」 偽船長が出てきました。家出ちゃんを相手にし、こ��らを意識しないようにしているようですが、ニセモノと分かっているので詳しく見てみます。 案の定、スタクルメンバーに意識の糸が不自然に伸びていました。 戦車「いや今の……お、おお……ブラボー……」
719 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- まさか戦車に名前があれば何でも見えるって説明してない??wwwwwwwww 「お、おお…」wwwwwwww
720 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 確かにお前んとこのテンメイなら大丈夫な気はしてきてる
721 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>719 説明しましたが、まだちょっと半信半疑だったようですね。 因みに彼に説明するとき「直接触れてもらった」件はみなさんお気づきかとは思いますが、まぁそういう感じです。 こちらからはよく見えます。以上です。
722 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 「ただの密航者」ってwwwwww
723 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 偽船長が承り先輩に喧嘩売りました。その喧嘩を買ってひと悶着してます。 隠紫「それは考えられんぞ承り! この「船長」船長は財団の紹介を通じ身元は確かだ! 信頼すべき人物、スタンド使いの疑いはゼロだ……」 船長「ちょっと待ってくれ「スタンド」? 一体何をいっているのか分からんが」 サユ「……「船長」船長、ですか……?」 本当はなんて名前なんですかね。ステータス見れないので、本物の方の名前なんでしょうね。 彼のステータスを見たい気持ちもあったのですが。残念です。
承り「……。スタンド使いに共通する見分け方を発見した。それは…スタンド使いはタバコの煙を少しでも吸うとだな…」 一瞬チラ見されました。彼の前でわざとらしく名前を繰り返してみせたのが確信に至らせたみたいです。
724 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>721 戦車のプライベートは消えたんや……
725 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 承り「鼻の頭に、血管が浮き出る」 一同「「えっ!」」 戦車「嘘だろ承太郎!!」 承り「ああ、嘘だぜ! だが……マヌケは見つかったようだな!」 一同「「あっ!!」」
726 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>725 ここ転生組もやったのかな
727 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- サユいなくてもマヌケは見つかってたけどな
728 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 「船長」船長ってややこしいわ
729 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 隠紫「承り、何故船長が怪しいと分かった?」 承り「いや全然思わなかったぜ。船員全員にこの手を試すつもりでいただけのこと……。サユが名前を繰り返したときには、ほとんど確信していたがな」 サユ「……彼、「船長」などという名前ではないようです。フルネームではないとはいえ、ステータスが見えませんでしたので」 船長「ステータス……? フン、シブイねぇ……全くおシブイぜ。確かに俺は船長じゃねー……本物の船長は既に香港の海底で寝ぼけているぜ」 承り「それじゃあてめーは、地獄のそこで寝ぼけな!!」
>726 一応「あっ!!」はやっておきました。
730 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- にしてもホンモンの船長は一体どこで死んだのか。船員も気づかないうちに入れ替わってたって怖いわ
731 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known 家出ちゃんが人質になりました。 予習していなければここで私が突っ込みフジツボパーリィしていたかもしれません。 船長「水のトラブル!」 クラ○アン!! 船長「嘘と裏切り! 未知の世界への恐怖を暗示する「月」のカード!! その名はダークブルームーン!!」
話が長いので意訳します: 船長「小娘を人質に海へ入るぜ! 追って来いよ、ただし俺は5対1でも強いぜ。水の中なら素早いぜ。勝つと予言するぜ」 承り「一人でやってろだぜ」 船長は承り先輩に思いっきり殴られて一人で海にドボンしました。 ヴ男「占い師の私を差し置いて予言するなど」 戦車「10年早いぜ」
732 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 水のトラブルwwwww俺も思ってたけどwwwwwwwwww
733 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 意訳wwww会話ログコピペより面倒くさいんじゃないのか?wwwwサユ大丈夫か?wwwwwwww
734 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- お前実況飽きてきたんだろwwwwwwwwwww
735 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>733 ただのコピペではなく英語を日本語にする手間があるので、ぶっちゃけた話、意訳のほうが早いです。 >>734 飽きてきました。出来事を一々細かく翻訳・コピペとか、思っていたよりダルイです。
戦車「流されていくぞ。ダークブルームーン、自分のスタンドの能力をさんざん自慢していたわりには大ボケかましたヤツだったな」 隠紫「承りどうした? さっさと女の子を引っ張りあげてやらんかい!」 承り「う……。くっ、ち、畜生引きずり込まれる!!」 テン「え!?」 隠紫「なんだって!?」 六窓「フジツボだ……!!」
736 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 英語かー……サユって頭のいい馬鹿なのかな?
737 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- さあ、テメーは何になりたいんだ?のお時間です。
738 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>735 承りとタメかそれ以上に物理で強い上に英語もできるとか、お前はいったい何なんだよ。 10年修行したって、旅のためだけに英語も修行したのか?
739 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- でもサユの顔立ちって純日本人じゃない感じだし、なんか親戚が外国人とかなんじゃね?
740 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 次遅いな
741 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>739 最初からいたやつしか写真見れてないだろ 六窓先輩の張ってくれてたやつ……もう見れねぇから……三つ編みJKの写真とか俺だってほしいわ!!
742 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 回線切られたか?
743 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ここでスクエア使わないとヤバイことってなんかあった?
----伝人(六窓)視点----
小百合には絶賛実況中のところで悪いが、回線をぶった切った。 何度か此方からのぶち切りを経験しているだけあり、小百合も特に表情や動作に不自然さはなかった。真面目に承太郎の心配をしている顔だ。 別にあと1セット残っているし、回線を切らなければできないことじゃあなかったが、まさか実況のためにスクエアを空きゼロ状態にするなんて危険を冒すわけにはいかない。 一方の俺は承太郎が海へ引きずりこまれる前に新たにスクエアを出し、引きずり込まれる先を甲板にしてやる。
「グッ! つつ……!!」 「一応引き止めたが……このままじゃあラチが明かねぇな」
俺の能力で混乱気味のアンちゃんを小百合に押し付けながら、承太郎が立つのを見守る。 派手な音を立てて背中から落ちたので若干の罪悪感はあったが、ここで不用意に触っちまうとフジツボを貰うことになりかねない。
「ってぇじゃねーか」 「俺も行くべきか?」 「伝人……。いや、構わねぇ。俺一人で十分だぜ」 「ああ、分かった」 「伝人! 承太郎!!」
なんていうか、凄くいつものノリで会話を進めてしまった。 こう考えると結構、ガキの頃からアブネー橋をひょいひょい渡って来てたんだなと思う。ジョースターさんに咎められて初めて気づいた。
「なら口開けろ」 「く、くち?」
俺たちの突き進み具合にちょっぴり気が立っているジョースターさんは置いておき、承太郎の前でスクエアを2cm四方に縮めて見せた。 つい2週間かそこら前までは承太郎にとって『見えない四角』であったスクエアは、最近『見える四角』になった。 今までも歪んだ空間そのものは見えていたわけだが、それを縁取る額と背面も認識できるようになったのだ。 だからこの状態にしても、スクエアは見えている。数回瞬きをして、俺の言うことを察したらしい。
「あ」 「ほほぉ、なんじゃ、そういうことか……」
歯が見えるくらい大きく口を開ける承太郎。そこへスクエアの片割れを突っ込む。瞬間、小百合がビクンとしたのは気にしたら負けだと思った。花京院も見てみぬフリを通している。 十分空気が通る程度にサイズを調整し、それを軽く噛んでもらう。
「……れかいにゃ」 「え? にゃんですか先輩」 「 で か い な と言ったんだぜ」
しかしここで意味のない小百合の煽りが承太郎を襲った。 今は安価はできない筈なので素でやったわけだ。俺にはお前の素が分からない。紳士なのか馬鹿な腐女子なのかどっちかにしろ。 これには承太郎もスクエアを口から取り出して軽く言い返す、が、偽テニール船長が待ちぼうけだぞ早く行け。
「サユ、サユハウス!」 「かしこまです」 「……行って来る」
ガッと三つ編みを掴み、小百合を引っ張って下げる花京院。ほんと仲良いなお前ら。 スクエアを噛み直してもらった後、良い感じになるよう俺の右手の小指をブッ刺した。ネットを見るのと同じように、これなら遠くまで流れても『行ったことがある』場所になるので安心というわけだ。 大きく深呼吸をして海へ飛び込む承太郎を見送り、右手首だけを新たな窓で空中に浮かべた。理由はそのうち分かる。
「フフン、スクエアは使い方次第でいくらでも応用が利くんスよ?」 「なーるほどなぁ」
俺は余ったスクエアをくるくると回して見せ付ける。それに対し、ジョースターさんは感心したようにひげを撫でた。 無駄にネットで知識を漁っている訳ではない。頭脳戦なら貴方にも負けないつもりだ。
「ただやっぱり、承太郎あんまり口でかくねぇからな……。俺なら全然平気なんだが……」 「少々れかいんですにゃ」 「いい加減殴られるぞサユ」
船の上から承太郎の帰りを待つ。 エネルギーを吸い取られているとはいえ、呼吸は確保しているし、最悪スクエアで直接その場へ助けに行ける。みんなそこまでの緊張状態にはない。 渦潮には少々どよめいたが、そんな中でも、後輩組が宙に浮かぶ俺の右手を見て微妙な表情で声をかけてきた。
「……なんか、垂れてるが」 「しょうがねぇだろ。こうしねぇと射程範囲外に出たとき、承太郎の口の中が大変なことになっちまうんだからよ!」 「人はその液体をよだ……いえ、流石にやめておきましょう」
呼吸孔なので閉じるわけには行かない。開きっぱなしなので、当然、中の液体は零れ放題。 まぁ、お察しのとおりで、甲板にはホタホタと若干糸を引く透明な液体が滴っており、時折ぱしゃぱしゃと海水も混じる、というありさまだ。 もちろん思いっきりひっ被らないように、こちら��通じる窓は下を向かせ、俺の手は小指が一番下になるような向きにしてある。 それからしばらくして、若干遠目のくぐもった声が『スターフィンガー』と言うのが聞こえ、渦潮が消える。スクエア越しにスタープラチナの声が届いたわけだ。承太郎が上がって来たのを見てスクエアを解除した。
「おお!」 「JOJO!」 「やはりわしの孫よ!!」
承太郎が船に上がり、全くの無事ではないがそれなりに元気だと確認した後、俺は船室から雑巾を引っ張り出してきて、まず俺の手、そして床を拭いた。爆破されると分かってても、これをこのままにするわけにはいくまい。 それを見た承太郎から苦笑いを食らった。
「やれやれ……せめてもうちょっと隠して拭け。俺だって分かってたぜ、こうなってるってことくらい……」
ちゅどーん。
----可哀想なシェルビー----
男が始めてそれを見たのは、実はエジプトではなかった。 5、6年ほど前、ようやくその力で仕事をするというのも軌道に乗り、アメリカに行ったときのことだ。
日が沈みきった頃だった。 彼は偶々通り道だった広場で、孤児院か何かのイベントでキャンプファイヤーをしているところへ出くわした。 だがそんな中で1人だけ輪から外れ、火から遠いところでそっぽを向き、だらしなく片膝を立ててベンチに座って本を読んでいる少女に出会った。傍から見れば出会ったというほどのことではなく、それにとっては記憶にも残らないような瑣末な出来事であったが、男にとっては、忘れることのない確かな記憶となっている。
染めているのかくすんだブロンドに、沼底の泥のように光を知らない緑色の目。顔にはそばかすがあり、いかにも楽しくなさそうな眠たい顔が嫌に目を引く。 どうしてもやることがないから仕方なくこの本を読んでやっている。と言わんばかりの、刺激に飢えた視線が、足音に反応して男を刺した。が、見た瞬間、彼がそこにいることなど忘れてしまったかのように視線を戻し、つまらないという感情を見せ付けるように犬歯をむき出しにしてあくびをする。その態度、とうてい年頃の少女ではない。
彼は何故かそれに目を奪われたが、そのまま通り過ぎて広場を横切っていった。
「ねぇせんせい、どうしてシェルビーはみんなといっしょにこないの?」
すると、火を囲んでいる中でも特に小さな子供が、首に十字架をぶら下げた女に疑問を投げかけているのが耳に届く。 彼はシェルビーというのがあの眠たい顔の少女で間違いないと思い、なんとなく会話を聞いた。
「火が、怖いのよ。……あの子は、火事でお父さんを亡くしたからここにいるの。生まれつき声も出ないし……ああ、可哀想なシェルビー」 「カジ?」 「家が燃えてしまったのよ。今思い出しても、ひどい焼け跡だったわ……」
彼は女の使った『可哀想』という言葉が引っかかった。あの顔は、どう見ても『一緒にいられないから楽しくない』のではなく、『ここにいなければならないから楽しくない』、という顔に思えたからだ。 辛い想いをして捻くれたとも考えられるが、一人で拗ねているにしては辛さというものが微塵も感じられず、寧ろあまりの退屈さに憤りすら滲んでいたくらいだ。
「……でも、優しくて良い子よ。あとで仲良くしてね」 「うん!」
更に続けられた『優しくて良い子』というのも、男には信じられず、思わず辺りを見回してしまう。だが、それ以外にシェルビーという名で呼べそうな人影はなかった。 後姿からあの態度は伺えない。おとなしくベンチに座って見える。しかし前へ回ってみれば、それはきっとあのままの態度で、あの飢えた視線で他者を見るのだろう。
彼は、その食い違いが妙に気になった。 この流れから、彼女が猫を被っていることが想像できた。 では、何のための猫だろうかと思考を巡らせてしまった。
第一に、火事で炎にトラウマがある、というのは、態度からして嘘である。 第二に、火事で父親が死んだ、というのは、十字架の女の言葉からして真である。 第三に、やさしくて良い子を演じているが、本心では退屈に飽き飽きしている。
なんとなく察しがついてしまった。 彼は振り返らないようにして歩き、そのままの勢いで仕事を済ませた。直後、必要はなかったが、足早にアメリカから飛び立った。 だがもう遅いのだ。この時点で彼はすでに、抜けられない泥濘に片足を突っ込んでいる。
----花京院視点----
僕らは今、チャーターした船を爆破され、漂流している。 ……のだが、もはやスタンド使いは誰一人として漂流している気分じゃあなかった。 救助信号をうったからとか、そんな話ではない。いざとなれば小悪魔曲木のスタンドで一瞬で香港まで戻れるため、特にこの後どうなるのかという不安を持ちようがないのだ。
「お前らな~~……!」 「チャンネルは譲らねーぞじじい」
JOJOのひざの上に、白い糸の纏わりついたガラスのような板が置かれていて、その向こう側から相撲をやっているような音声が聞こえる。 アン・ノウン越しに見ると、曲木とJOJOから伸びる意識の糸が板にぶつかるところで不自然に切れているのが分かった。
僕は目の前で起こっている、通常では考えられないはずの現象を特に不思議なく眺めていた。生まれつきのスタンド使いだというのもあるが、サユと一緒にいると細かいことにいちいち突っ込んでいられないのだ。 小学校の頃、夏にスイカを割るのは素手だったし、中学校の頃、遅刻しそうなときは校舎を軽くよじ登って教室へ直接入ってきたし、それが高校ではかぼちゃを一突き、教室へ来るのは三角跳びにまで成長した。人間として、めちゃくちゃだ。 そんな彼女は今、僕の隣で長い三つ編みを首に巻きつけてなんでもないように海を見ているが、頭の中ではトランプのデータを引っ張り出し、僕とスピードをしている。
「救難信号はうってあるから、もうじき助けは来るだろう」 「なぁ、コーラとオレンジジュース、どっちが良い?」 「い、いま、どこから出したの……?」
密航してきた女の子は魔法でも見ているような呆け具合で、完全においていかれていた。 あれだけスタンド能力を味わってしまった後だからと、JOJOたちにはあまり隠す気がないらしい。2人で透明の四角を覗き込みながら、曲木が袖から2本のペットボトルを取り出した。
「袖」 「……? ……???」
彼は当然のように答えて見せるが、普通に考えて何を言っているのか分からない。 女の子はわけのわからない光景に不安になったのか、隣に座っているサユの腕にしがみついて、驚いた顔でいったん離れ、またしがみついた。僕には何が起きたのか分かる。硬かったんだね。分かる。
「あまりスクエア使わないであげてくださいよ。怖がってるじゃないですか」 「海の上でテレビ見てる時点で、もうなんでも良いだろ?」
サユが咎める��うな口調で遠慮なくオレンジジュースをもぎ取って、女の子に渡す。ただ、僕ら自身トランプで遊んでいる手前、あまり人のことを言えない。 少し悪戯っぽく笑って答える曲木の口には、小悪魔の名にふさわしいギザギザの歯がちらつく。彼のスタンドに物理的なパワーはあまりないが、あの歯で噛み付かれたら相当痛そうだ。
「あんたたち、いったい何者なの……? あ、冷たい」
なんだかんだ言いつつ、少女は受け取ったジュースをごくりと飲んだ。冷蔵庫で冷やされていたんだろう、ボトルに水滴がついている。
「君と同じに旅を急ぐ者だよ。もっとも、君はお父さんに会いに……わしは娘のためにだがね」 「……」 「安心してください。私たちの誰も、あなたの敵ではありませんから」
未だ警戒の解けない少女に対し、サユは凛々しい眉をやさしく緩ませて、琥珀色の瞳でまっすぐに見つめる。 ただの白地に黒襟のセーラー服が王子様の衣装に見えるくらいの、騎士然とした態度。とてもいつものサユだなと思ったし、そんなことをしながら頭の中ではトランプを裁き続けているのも、いつものサユだ。
「……サユリ」
頃合を見て肉声で声をかける。 サユは切りのいいところで適当にトランプのウィンドウを消し、視界の下の方に会話ログを立ち上げた。
「ええ、船ですね」 「え!?」 「か……貨物船だ! 気がつかなかった!!」
しばらく前から、波に紛れて白い意識の糸が漂っている。 スタンドの像も見えなかったので、何か形として見えるまで何も言わないつもりだったが、サユも同じような判断をしていたようだ。一応『怪しんでいるが気づいていない』ように振舞って、何もない米神を押さえた。 助けが来たと騒ぐ中言いにくいが、この船全体に緩く意識の糸が纏わりついている。これは発現しているスタンドの見え方だ。 JOJOと曲木も何か察したらしく、何気なく4cm四方くらいの見慣れた四角い板を渡された。それをサユが耳の後ろの髪の中に押し込む。通話用の窓というわけだ。
「……承太郎、何を案じておる? まさかこの貨物船にスタンド使いが乗っているかもしれんと考えているのか?」 「いいや……タラップが降りているのになぜ誰も顔を覗かせないのかと考えていたのさ」 『あー…、ここでこの貨物船『が』スタンドだって言ったら、全体的に死亡ルート入る雰囲気』 『これだけ巨大だと外から攻撃するほうが危なそうだ。乗るしかないな』 『曲木:聞こえるか? 聞こえるなら俺のほうを見て2回続けて瞬きをしてくれ』
素のサユと頭の中だけで会話を進めていると、突然、僕に聞こえていない曲木の言葉が会話ログに混じった。 彼を見ると、左の袖で口元を隠している。サユに聞こえたからログに入ったわけだ。タイミングをずらして、僕もそれに答えた。
『曲木:あ? ……そうか、アン・ノウンの機能か。これなら花京院にも伝わるな。把握したわ』 「ここまで救助に来てくれたんだ! 誰も乗ってねえわけねえだろーが! たとえ全員スタンド使いとしてもおれはこの船に乗るぜッ!」 「他に選択肢もなさそうだし、俺らも行こーぜ」
ポルナレフの後に続いて、みんなどんどん乗り込んでいく。 僕らを確認するように視線を寄越したあと、曲木もタラップへと移った。 女の子はすっかりサユに頼るつもりのようで、JOJOが手を貸すというのを知らん振りし、サユの短いプリーツスカートを軽く引く。下にジャージを履いているので、引っ張ったものがスカートだという認識が薄いようだった。
「やれやれ」 「私は別に構いませんよ」
サユはそう言いながら軽く少女を抱えあげると、そのままタラップへ飛び移ってたんたんと上り始めた。足音に合わせ、三つ編みの端で風車の彫られた金属の髪留めが揺れている。 あとを追うように僕も飛び移る。ふと、何か言いたそうなJOJOと目が合った。
「……ああいう女は初めて見たぜ」 「サユリは、女とかそういう枠組みの中の人間ではないのさ」
彼女はとても強い。とても。 そして、女としては少々発酵が進んでいる。
768 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ほ
769 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- し
770 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- し
771 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- い
772 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square たけは嫌いだ
どこからが良い? ①バッドニュース ②グッドニュース ③回線ぶち切りの後 >>780
773 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- おかえり六窓。無事か
774 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- おかえりー!!
775 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- バッドニュースあるのかよ 1
776 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ショタは干ししいたけが嫌い(意味深)か ……ふぅ、③で
777 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 1
778 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 相変わらずここのスレ主達は唐突だな 2
779 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 1
780 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 1
781 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ③
782 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 1
783 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 2
784 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ①
785 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square バッド大目だな 良かった…始めに投下した花眼鏡の惨劇を繰り返さなくて……
というわけで準備はしていたぜ。下空けといてくれ
786 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square 【悲報】俺氏、家出少女に怖がられる
俺は猿の船の上で、スクエアで水兵の頭ぶち抜きを阻止したあと、彼らを無傷で家に帰してやろうと更に窓を増やして香港に繋げた……。ところが家出ちゃんだけがいつまでたってもサユの足にしがみついたまま窓をくぐろうとしない。 以下アン・ノウン会話ログ参照
六窓「……被せて帰すか?」 サユ「不安なのを無理やりにというのも可哀想ですが……」 テン『……サユ、その子、六窓が怖いんじゃあないのか?』 サユ「ぷっ、あえりえる……」 六窓「あ? なんだ?」 サユ「六窓先輩が怖いのではないかと、テンメイが」 家出「べ、別に怖いわけじゃ……」 六窓「よーしお前らちょっとこっち来い」 家出「ひゃ」 サユ「だからほらそーいうところが怖いんですってば!」
こうして家出少女は窓をくぐれず、まだ俺達のところにいる…… 解せぬ。
787 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- は?
788 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- バッドニュース、とは
789 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- んん? 六窓って怖いか?
790 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- バッドニュースが平和すぎて安心したwwwww
791 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 逆にサユに懐いてるっぽいな。 この時点だと承りの好感度高くないし、サユのほうが女の子で安心とか?
792 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square 俺より身長低いヤツが来たと思ったらこれだよ!!
で、グッドニュースは猿と船長を無事に倒したって話。 ちなみに今は救助されてシンガポールにむかってる
793 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known みなさん口の開いてない驚いた顔しか見ていないからそんな反応なんですよ。 六窓先輩のギザギザの歯と眉間のしわの寄りっぷりはまさに悪魔です。↓参考資料です。
ビフォー(`◉w◉) 【袖のだぼついた学ランを着た釣り目気味の少年を、斜め上から見下ろした画像】 アフター(`◎益◎’) 【写真の少年が今にも噛み付かんばかりに眉間にしわを寄せて牙を剥き、こちらを睨み付けている画像】
794 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- え?これ両方同じ子??六窓先輩???
795 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- も、猛犬注意かな?
796 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- おっかねぇ~~~~~~~wwwwwwwwwww
797 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>795 ハクビシンだろ?
798 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square あんだよ~! お兄さん怖くないから安心してくれよ~~~!!(`>w<´)=3
799 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known これ「よーしお前らちょっとこっち来い」のところですからね。それでこの顔ですからね。 >>797 そのネタ引っ張るのやめませんか???? ちょっと足の運動がしたくなってきました。
800 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ぬるっと入ってきて恐怖画像を貼るサユwwwwwwww
801 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>798 誤魔化せないwwwwwそんな顔文字じゃ誤魔化せないぞ六窓wwwwwwwww
802 :797:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>799 アッ……ごめんなさい……息子だけは、息子だけは……!!
803 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- お兄さん? おに、おにいさんか…。そうだったよな…。うん。
804 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- なんかお前ら怖いwwwwww唯一の癒しかと思われた六窓先輩も怖い人だったwwwwwwww
805 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square >>803 (`◉w◉)おれはじゅうはっさいです
806 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>802 797お前、さっきの干ししいたけの>776だろ? いろいろと大丈夫か?
807 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square >>802 (`◎益◎’)
808 :797:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>806 ああああああああああ!!なんで!!言った!!もう書き込めないじゃねーか!! すいません許してください!!調子に乗りました!!!
809 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 797は犠牲になったのだ……
810 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- 797、愚かなやつめ………
811 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- さよなら797、あんたのことは忘れるまで覚えておくよ……
812 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- ーーーーご愛読ありがとうございました! 797の次回作にご期待ください!!ーーーー
813 :797:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- え!?なにこれ!?俺死んだみたいなこの感じ!? いや、本当申し訳ございませんでしたっていうか!? まさかそんな六窓先輩がシルバーのピアスしちゃってるガッツガツの不良だとは思ってなかったっていうか!?
814 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- おwwwまwwwwえwwwwらwwwwwww
815 :六窓:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:Square 797は触れないほうが良いなと思って流してたから別に今更どうでもいいけどよ…。とりあえずサユの実況ぶった切ったあとのトコから続けて良いか? ちなみに俺のこれはピアスじゃない。イヤーカフ。引っ張れば取れるんで。穴開いてないんで。不良のつもりないんで。
816 :サユ:1988/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:an known >>813 煽る相手を間違えましたね、797……。
817 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- >>815 「この六窓は、いわゆる不良のレッテルを貼られている…」ってことかよwwwwww やっぱ承りの友達だなwwwwwwwww
818 :名無しの目覚め:XXXX/XX/XX(X) XX:X:XX.XX ID:-------- これは酷い去勢スレwwwwwwww
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不定期連載!へるコラム「中島みゆき」、あと3/29のJAPAN EXPO準決勝告知
暖かくなってきたから、つらつらと語るね。
私、市川へるのバックボーンは基本的に高中正義その人に尽きるのですが、女性部門で鳴り止まない詩というのは、否、解けない呪縛、こだまし続けるマントラというのは何を隠そう中島みゆきだったりするのですよね。
私が彼女の歌を初めて聞いたのは恐らくはかの同情よりは金を欲するタイプの女の子が主人公のドラマのテーマソング。「空と君のあいだに」でした。
当時乳離れもギリしてなかった頃だと思うので無論音楽なんてこれっぽっち興味のない僕にも分かりやすく刺さる曲で、漏れず自分の家族も彼女に魅了されて親父がある日CDを買ってきてアホの一つ覚えにあの暗い歌を車の中で家族旅行の時にヘヴィーローテーションしていたのですね。当時最新のアルバムだった「LOVE OR NOTHING」。
何でしょうかね。乳児といっても過言でない、言葉なんかほとんど知らないと言っていい俺の脳に何故か沁みいる、少しだけ悲しげなワードの並び。ひとつ言っておくと僕は彼女のアルバムを全部は持っていませんが、このアルバムが私の大きなトラウマとなったのは確かで。
何節か歌詞をご紹介致しましょうかね。
「何もない二人は与えあえる物も無く 何もない二人は夢の話だけをした もうあの桟橋に灯りは点らない ただ鉄条網が寒く光るだけ」 「無邪気だったあいつはあたしだけのものだった 無邪気だったあたしはあいつだけのものだった」 (「もう桟橋に灯りは点らない」より)
無論、こんなストーリーは小学校の低学年の僕にはちゃんと理解できなかった訳ですけども。言葉じゃ無くて凄味でわからされた感はあるよね。あの鬼みたいな勢いで、無理くり成長を叩きつけられっちゅうか。恋愛も精通もしたことなかった俺が喪失感に苛まれたのはあの時が初めてかもなぁ。
あと、彼女はたまに割りかしギャグみたいなパンチラインもある。切なさは、そのままに。
「身体こわさずがんばってみなよ たまには親にもtel(でんわ)してやんな 吹く口笛はスプリングスティーン あれは演歌だとおっちゃんは信じてる」 (「流星」より)
これは小さい俺でも何と無く長距離トラックの運転手の曲だと分かったものの、年々ここの節がクるんすよね。や、凄い字面なこと言ってるんすけど、これ、とてもいいんすよ。演歌が好きな運ちゃんがサービスエリアで出会った女の子に話しかけてるんすけどね。
まあ、おべんちゃらは止しにして、聞くのが一番早いんすけどね。
さて、実を言うとここはパニックハウスという、何ら中島みゆきと共通する項目が存在しなげなバンドの、恐ろしくポエジーのない男性メンバーが羨望愛憎入り混じって書き殴っている地獄のブログに御座います。
ただし私市川へるのみに関しては中島みゆきと同じく、「人間界生まれ賽の河原育ち無間地獄勤務」の列記とした鬼なんですね。
何が言いたいかと申しますと市川へる作詞作曲の「百万本のバラの花束をバリバリと噛み砕く猛毒を持った電気仕掛けの四次元ゴリラ」(https://soundcloud.com/panichouse/02-1を参照のこと)という恐ろしい曲と、彼女の初期の名曲「わかれうた」が制作された原理は、さして変わらないのです。絶対。
どちらかというと地獄強度(?)は彼女の方がどエグいんですけども。何でって、俺が生まれてから鬼に堕ちるその何年も前から同じ原理で曲をぼんぼん世に放っては、何故だかそんな恐ろしいものでヒットを飛ばして、ラジオのレギュラーまでもってる訳ですから。
彼女のヒット曲の「あした」という、ラブソングでさえ、これですよ。
「もしも明日私たちが何もかも失くして ただの心しか持たないやせた猫になっても」 「何もかも愛を追い越してく どしゃ降りの一車線の人生 凍えながら2人共が2人分傷ついている」
もしも、あなたが(どういう切り口であれ)ラブソングを書くとしてどうでしょうか?
読んでいる方々に詩作経験のある方もお有りだと思っているのですけども、(というか思春期に秘密ポエム帳が無かっただなんて言わせへんぞ)
仮に猫ちゃんが出て来てもまず痩せて無いだろうし割りかし人懐っこいか気まぐれな我が儘キャットだと思うんですよ。だって出さんやろ、そんな悲し過ぎる存在。
但し彼女にとってはそれは必然で。
地獄には年中曼珠沙華の花以外に咲く花は無く、悪鬼羅刹や魑魅魍魎が悪い恋愛をして、そして必ず最後は完全な無に帰すのです。しかも、無に帰すまでのすったもんだが一千兆年を超すクソ馬鹿が考えた桁数の年月続くのですよ。そんな暮らしの中で星に願いを託したり虹の橋を渡るような歌は生まれやしないのです。しかし世に蔓延る甘いラブソングとこの歌は、同義なのです。育って来た環境が違うだけで、この歌とSMAPの「セロリ」、
そして私共の「百万本のバラの花束をバリバリと噛み砕く猛毒を持った電気仕掛けの四次元ゴリラ(https://soundcloud.com/panichouse/02-1)」は全く同じと言って申し分無いでしょう。
嘘だとお思いでしょうか?
そう思われるならばひとつ試して見てください。確かに「セロリ」と「あした」はラブソングなのですが、「百万本のバラの花束をバリバリと噛み砕く猛毒を持った電気仕掛けの四次元ゴリラ(https://soundcloud.com/panichouse/02-1)」はラブソングでありながら別離の曲の側面もあります。(この曲は万能です)
そこで、もしあなたが今ハートブレイカームードの真っ只中に居られるのであれば、取って置きのみゆき嬢の失恋ソング「化粧」を聴いて欲しいのです。
地獄生まれの曲は、安易に悲しみの涙なんて流させません。泣くより先に貴方を深淵の底に物凄い勢いで叩き込みます。(余談ですが正真正銘鬼子であるこの僕でさえ安易に手を出して輪廻の輪を潜りました)
ちなみにこれは失恋時に「百万本のバラの花束をバリバリと噛み砕く猛毒を持った電気仕掛けの四次元ゴリラ(https://soundcloud.com/panichouse/02-1)」を聴いても起こる現象です。但し殺され具合は格段「化粧」に軍配があがる事でしょう。
要するに、みゆき嬢の曲は「失恋ソングの皮を被った閻魔大王の憤怒の焔」なのです。
もうお判り戴けたことでしょうが、中島みゆきは決してCMでバンバン流してもらえるようなポップス歌手なんかでは無いのです。
「怨念の権化」、「由緒正しき呪術師」、「人智を超えて考え過ぎたメンヘラー」などなど言いようは山盛りありますが、とにかくそのようなものなのです。
出したレコードが黒いのは恨みの分だけ真っ黒なだけで、あれは全然素材が他のレコードとは異なる、完全なるダークマターなのです。(CDの時代になって良かったですね)
ここまで書いといて何ですが、勿論彼女にも色んな楽曲の形式をとった呪いの数々があり、比較的ライトな呪いも存在します。それらを収録したのがあのベスト盤、「大吟醸」ですね。
ここを読んでる「生まれてこのかたパニックハウスとギターウルフしか聞いたこと無いべ?」みたいな方も居られることだとは思います。少なくとも市川へるのファンは居るでしょう。もしみゆき嬢に興味を持った方は是非、「大吟醸」から始めてみて下さい。まずはそこから滅びていきましょう。(でもあのベスト盤には「狼になりたい」というタイトルのショボくれたおっさんを皆殺しにする歌も入ってるからくれぐれもお気をつけて…!)
そんなみゆき嬢の意図(糸)を紡ぐ我々パニックハウス、綱渡りで通過してきたコンテストの準決勝が明日(3/29)なのさ!!以下告知!!
↓
2018.3.29(木)初台DOORS
「JAPAN EXPO ROCKS」 SEMI FINAL Stage
the Bugzy
たいようのまち
パニックハウス(19:00から!)
Sonic Blew
Chamaeleon
Blueglue
助っ人集団☆石井ジャイアンツ
DISDOL
OPEN 17:30 / START 18:00 我々は19:00から
喋り過ぎたか。失敬するよ。 HAVE A NICE HELL!!!
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