#外国人風白髪染め
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三人は「菊水通り」にあるゲイバー「Z」に到着した。すでに午後七時を回り、三社祭は「宮入り」というクライマックスを迎えていた。浅草寺周辺と比べると、合羽橋道具街につながるこの通りはひっそりとしていた。
店に入ると、すでに数名が六尺褌だけの格好でカウンターに座っていた。信也は彼らを見て驚いた。一人が声をかけた。
「あら、見慣れないね。スミちゃんの知り合い?」
「そう、知り合い。憲ちゃんが連れて来てくれたンだ〜」
「ふ〜ん。でも、『ケンちゃん』、酔っ払ってるね」
「本当ッ、酒弱いのにグイグイ飲んじゃって…。困っちゃう!」
「う、うるせぇ! オレはサッサと脱ぐぞ!」
そう言い放つと憲一は浴衣の帯を解き、六尺禅だけになった。意外と肉付きがよく、うっすらと胸毛が生えていた。彼が脱ぐと真純も帯を解き始めた。二人に同調されるかの様に信也も脱いだ。
三人は六尺禅だけになるとボックス席に座った。マスターと思しき壮年の男も黒猫褌だけだった。白髪を角刈りにし、なかなか男前である。彼は、
「はい、とりあえずビール!」
とウェルカムドリンクか、生ビールのジョッキがテーブルに並んだ。
三人は乾杯し、飲み始めた。信也にはほぼ裸の状態でビールを飲むのは、恐らく学生時代以来だった。サークル仲間と神奈川県内の海水浴場へ行った時、あの頃はビキニが流行っていたので彼も新宿のI百貨店でアルバイトをして貯めた金で買ったのだ。しかし、当時は「ノンケ」だったので、まさか今「ゲイ」としてこんな格好で飲むとは…。
時折、憲一は信也の内腿を弄り、
「信ちゃァ〜ん、カッコいい〜」
と、もうすぐ股間にまで手指を伸ばしそうになった。信也は肘を突き、
「ダメだよ! 勃起しちゃう!」
と距離をとった。そのやり取りを見ながら、
「ほらほら、未だ手を出すのは早いわよ!」
と真純が一喝した。
宴は盛り上がり、憲一は陽気に他の客とカラオケをしたり、真純は店子の様に焼酎を注いでマスターに提供したりと、二人は活発だった。一方、信也はボックス席の隅でぼんやりと店内を眺めていたが、一人の客が隣に座った。彼は自己紹介をし、名刺を渡した。「萩谷泰典」と名前が書かれていたが、その上には「(株)海◯館」とあった。白髪を角刈り風に残した泰典は、所謂「ビール腹」から臙脂色に風車の柄をあしらった六尺禅を付けていた。彼は言った。
「君、体重はどのくらいあるの?」
「…はァ? 確か九十キロだったかなァ」
「じゃあ、一度ウチへ面接に来てよ!」
「『面接』? 何の?」
「いやァ、モデルやってみないかと思って…」
「『モデル』?」
「君の、未だゲイ一色に染まってない感じが気に入った」
まァ、つい二ヶ月前まではノンケだったしと、信也は思った。しかし、もしゲイビデオに出演したことにより裕美や職場などに知られる様な事態にはならないのだろうか? よく週刊誌には、アダルトビデオに出たことが周囲に知れ渡り、退職沙汰になったり家庭崩壊を招いたりしたケースが少なくない。彼は聞いた。
「あの、ギャラってどのくらいもらえるンすか?」
「もし『オ◯ニー』だけなら一万円、『ネコ』なら二万円、『タチ』なら三万円です」
「ふ〜ん、場所は?」
「大抵、この界隈のホテルで。三社祭やサンバカーニバルが催されている時はやりません」
なかなか、もし挿れられれば二万円、挿れれば三万円もらえるなんて、それだけもらえればイイ小遣いになるなと、信也は前向きに考えた。泰典は、密かに信也の内腿に触れ、そのまま六尺褌の上から股間を弄った。すぐに硬直し、信也は恍惚の表情を見せた。このまま情事(こと)に及んだらどうしようと、彼は内心思った。泰典は言った。
「気持ちよくなる��がカワイイね。どんなシチュエーションが好き?」
「う〜ん、スーツかなァ…」
「じゃあ、決まりだね。一度、ウチに面接へ来てください。都内在住?」
「はい、稲荷町です。『K湯』の裏のマンションに住んでます」
「へ〜、ウチから近いね」
「そうなンですか?」
「近くに『М』というコンビニがあるでしょ? その角の道に入って二本目の路地の方へ二、三軒目に『海◯書房』と書いた雑居ビルがあるので、二階に上がってください」
憲一と真純はそれぞれ他の客と談笑し、盛り上がっていた。この会話が聞こえている様子はなかった。泰典は信也から離れず、内腿を弄りながら接吻をした。微かにタバコの「味」がし、舌が痺れた。乳房が硬くなるのを感じた。嗚呼、ヤバいと信也は六尺褌から飛び出そうになった一物を両手で覆った。そんな二人をマスターは声をかけ、
「泰ちゃ〜ん、彼、『うぶ』なンだから」
と泰典の隣に座り、「雪の茅舎」という秋田の地酒を振る舞った。泰典は言った。
「ゲイビデオって、たまには『うぶ』なモデルも出た方がイイんだよ。この世界って『如何にも』っていう奴が多いでしょ? ソフモヒであごヒゲを生やしてTシャツにハーフパンツを着て、さ。あの種のタイプは見飽きたよ」
「まァ、それにタトゥーが入ってたら外国人と変わらないね〜」
「だから、今夜は君と出会えてラッキーだったよ」
と泰典は再び信也の唇を奪った。それをたまたま見てしまった憲一は絶叫し、
「オ、オレの信ちゃんを盗らないで!」
と今度は彼に接吻をされた。信也はこんなに自分がゲイ受けするとは想像もしていなかった。
その後、ゲイバー「Z」ではクローズまでどんちゃん騒ぎだった。泰典は一足早く家に帰ったが、信也と面接の日時を今週の金曜日の夕方とした。余程気に入ったのか、何度も彼の唇を奪い、抱擁もした。その都度、信也は股間を両手で押さえた。泰典はそんな様子に、
「撮影の時もリラックスしてね」
と言った。一応面接はすると言っても、ほぼ内定をもらった様なものだった。
一方、真純は泥酔した憲一をどうしようか悩んでいた。こんな彼を押上のアパートまで連れて行くのは困難だった。仕方なく、最寄りのビジネスホテル「C」に問い合わせ、シングルルームを二人で利用することにした。憲一も真純も、翌日は有給休暇を取っていた。本当なら信也は自分のマンションに泊まってもらおうか考えたが、裕美がいたら厄介だと思った。
再び浴衣を着た信也は、酔っ払った憲一を介抱しながら雷門通りへ向かう真純を見送った。何だか、理由が解らないまま一日が終わってしまったと、信也は思った。彼は、泰典や憲一に接吻をされた唇に触れ、こんなに自分が愛されるとはと信じられない思いがした。体温を感じる都度、己の一物や乳房が反応し、暴走しそうになった。異性から好かれる経験はしたことはあるが、それ以上だった。
彼は、何度も股間が硬くなりかけたからか、褌の中が濡れているのを感じた。嗚呼、恥ずかしい…。すっかり全身が性感帯と化していた。早くシャワーを浴びようと、彼は合羽橋道具街の方へ歩いて行った。
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(最終回)ズビックの休暇
ご案内: 本話の会話シーンは日本語と英語が入り混じります。 「~」で囲った台詞は日本語、"~" で囲った台詞は英語(日本語以外)で発言されたものです。
1. 「行ってらっしゃいませ。お仕事頑張って。それからお友達との休暇も楽しんできて下さいね」 妻が日本語で言った。 僕も彼女もマルチリンガルだけど二人同士の会話は日本語が多かった。 その理由は彼女が日本人で、僕は彼女の綺麗な日本語を聞くのが大好きだったからだろう。
僕は頷いて妻の姿を見る。 彼女は等身大サイズの透明パイプの中に立って微笑んでいた。 着用しているフルボディ・ラバースーツにはたくさんのケーブルやチューブが繋がっていた。 これらのケーブルやチューブ群は妻の生命維持に欠かせないものだ。 管理サービスのスタッフがパイプの上から手を差し入れて妻の顔面にガスマスクを被せ、外れないようにベルトで固定した。 マスクに呼吸菅と栄養補給管を接続、パイプの上部開口部に分厚いリッド(蓋)を填めてレバーを締める。
"各機能の最終テスト。・・はい、OKです" スタッフがナンバー式の南京錠を差し出した。 "封印をお願いします。ミスタ・ランカスター" 僕は南京錠を受け取ると4桁の開錠番号を誰にも見られないように設定し、シャックルをリッドレバーの穴に通して施錠した。 これは儀式だ。 何もかも電子化されているのに最後は古風な南京錠の封印。 でもこの儀式で僕は妻の所有者である責任を自覚し��妻は自分が人間でないモノになることを覚悟する。
「では2週間後に」 声を掛けると透明パイプの中で彼女が手を振ってくれた。 しゅるしゅるしゅる。 発泡ウレタンフォームが注入された。 どろりとした液体はすぐに体積を増して膨らみ、パイプの内部空間を妻もろとも埋め尽くした。 妻は直径28インチ(約71センチ)のクリーム色の円柱になった。 ウレタンの固化時間はおよそ1時間。 ただしそれは固化のプロセスが完全に終わるまでの時間であって、実際にはほんの1~2分で人間が身動きできない固さに達する。 彼女は既に指一本動かせない状態になっているはずだ。 僕は満足してパイプを軽く叩き、それからスタッフによろしくと頼んで牧舎を出た。
妻を定期的に樹脂に固めるようになって4年。これは僕たちの結婚期間に等しい。 初めの頃は自宅の設備で妻を固めて楽しんでいたけれど、仕事が忙しくなり思うように時間が取れなくなってきた。 そこで二人で相談して、西海岸で最高評価を得ている富裕層向けスレーブ管理サービスを利用することにした。 彼らは優秀だった。 ロスの郊外に専用の "牧舎" を持っていて多くのスレーブを預かっている。 牧舎と呼んではいても、実態はデータセンターの地下にあるセル(独房)だ。 彼らはそこで給餌や排泄の世話だけでなく、EMS(Electrical Muscle Stimulation:電気筋肉刺激)による全身運動、温度と発汗の制御、他にも様々な生理データをモニタリングしての健康管理、さらには適度な性刺激を印加することで精神面のケアまで行ってくれる。 世界中どこにいても妻の状態はあらゆるパラメータとともにスマホでチェック可能だ。 リアルタイム映像を見ればそれはただの円柱だけど、中には彼女が固められていて僕の帰りを待っている。 どんな仕事だって頑張ろうという気になるじゃないか。
2. タイとベトナムで10日間の仕事を終え、フィリピンの首都マニラに到着した。 機材繰りの都合で4時間遅れのフライトだった。 一般の航空便はこれだから困る。プライベートジェットの購入を役員会に提案してはいるのだが。
"長旅お疲れ様でございました" 到着ロビーで待っていた男装の女性が英語で挨拶してくれた。 日本人だな。この人がH氏からの迎えか。 ダークブラウンのダブルスーツに蝶ネクタイ。両手に黒い手袋。まるで執事だ。 "お招きありがとうございます。アポロ・ランカスターです" "麻生(あそう)と申します。大旦那様からキャビンの管理を任されています" よく見ると美人だね。何歳くらいだろう? こんな格好をすると女性は年齢が分からないな。 "お車にご案内します。どうぞこちらへ" 「ちょっと待って下さい」 僕の荷物を持って先に行こうとする彼女を日本語で呼び止めた。 「下のお名前も教えてもらっていいですか? 麻生サン」 「姓だけで充分ではありませんか?」 「貴女のことは名前で呼びたくなりました」 「・・わたくしの名前は知聖(ちせ)です」 「知的で気高いイメージの名前ですね。貴女の雰囲気にぴったりだ」 「ありがとうございます」 彼女は少し顔を赤らめて笑った。
日本有数の資産家で実業家でもあるH氏が引退を発表したのは一昨年のことだった。 その突然の引退は日本国内のみならず欧米の経済界でも話題になった。 氏が後継に指名したのがわずか23歳の青年であったことも驚きだった。 家督を継いだ彼はさっそく辣腕を振るって事業をさらに拡大しているらしい。 一方、表舞台を去ったH氏の行方は秘密とされ、しばらく週刊誌が追い続けたものの手がかりはなく、やがて誰の口にも上らなくなった。 世間がH氏のことを忘れた頃、氏から僕に手紙が届いた。 それは今時珍しい紙の手紙で「久しぶりに会いたい。南の海で一緒に釣りをしないか」と書かれていた。 送り元はフィリピンだった。 僕は出張の帰りに立ち寄ることにした。 妻には詳しい事を説明せず、ただ3日間の休暇を旧友と会って過ごすとだけ言って来たのだった。
自動車はわずか4人乗りの豪華な大型ミニバンだった。 これはショーファーカー(お抱えの運転手が主人を乗せる高級車)だね。 「どうぞ」 知聖は僕を後部席に案内すると自分は運転席に座った。 「運転手はつけないのですか?」 「引退した身なので贅沢しない、が大旦那様のお考えです」 今のH氏の住まいにはH氏以外には執事の知聖、フィリピン人のメイドとコックがそれぞれ1名いるだけという。 「本日はランカスター様がいらっしゃるので応援のメイドを日本から送ってもらっています」 「恐縮です」
夕刻になってマニラ名物の渋滞が激しくなっていた。 道路を埋め尽くす自動車、バス、バイク、そしてド派手なデコのジプニー。 ときおりモップとバケツを持った子供たちが駆け寄ってきて窓を拭こうとする。 これもマニラ名物と言えるだろうか。 知聖は手を振って子供たちを追い払いながら車をのろのろ進めて行く。
「時間がかかりそうですね」 「いいえ、まもなく到着します」 「え、もう?」 車は大通りをそれ、とある高層ビルの駐車場に入った。 ショットガンを肩に掛けた警備員からセキュリティチェックを受ける。 車を降り、キーを係員に渡した。 「これはレンタカーですから」「?」 荷物を持ってエレベータで屋上へ。 そこにはヘリコプターが待っていた。 「ニノイ・アキノ(マニラ国際空港)はチャーターヘリの乗り入れが許可されませんので、ご不便をおかけしました」 「贅沢はしないのでは」 「贅沢ではありません。ファーストクラスでニューヨークへ行くより廉価ですよ」 それはそうだ。正規料金ならね。
40分後。 ヘリが降りたのは静かな海に面した小さな空港だった。 空と海が夕日に赤く染まっていた。 埃っぽいマニラとはまったく違う澄んだ空気。 「ズビック(Zubik)へようこそ!」知聖が言った。 「ここが基地で栄えたという、あのズビック・ベイですか」 「はい。とてもそうとは見えないでしょう? 今は豊かな自然に囲まれたリゾート地です」 確かにかつてアジア最大のアメリカ海軍基地があったとは信じられない、平和で美しい風景だった。
海は深い入り江になっていて対岸に街が見えた。 「H氏はあの街に?」 「街から少し離れた、あちらの岬にキャビンを構えています」 知聖が指差す岬の上に白い建物が建っていた。 西日に照らされてピンク色に輝くそれは、キャビン(小屋)なんてとんでもない、瀟洒(しょうしゃ)でラグジュアリーなヴィラ(高級別荘)だった。 "あれのどこがキャビン・・" "大旦那様はキャビンとお呼びなので、ならってそう言い慣わしています" 思わず英語で呟くと知聖も英語で応えてにやりと笑った。 そうだった。 たとえ引退してもH氏は僕のような成り上がりとは根本から違う大富豪なのだ。
「僕もあそこに連れて行ってもらうんですね」 「その予定でしたが、ご到着便が遅れましたので直接レストランへご案内します。大旦那様は先に行かれてお待ちです」 「それは申し訳ないです」 「お気になさらず。どうせご友人と一緒に勝手に盛り上がっておいででしょうから」
3. そこはレストランというよりショーパブのような店だった。 賑やかな店内はお客でいっぱいだった。 僕が一人で入って行くと奥のテーブルでH氏が手を振った。 「麻生はどうした?」 いきなり聞かれた。 「知聖さんは仕事があるからとキャビンへ戻られましたが」 「付き合いの悪い奴じゃの。まあよい。・・さ、座りたまえ!」 H氏はゆったりしたグアヤベラシャツ(4つポケットの開襟シャツ)と膝丈のショートパンツを着ていた。 同じテーブルには鼻髭をたくわえた金髪の白人男性とスキンヘッドの東洋人男性が座っている。 二人とも同じようなラフな服装だった。 「何年ぶりになるかの?」 「前に日本でお会いしたのは4年前でした」 「そうか、では4年ぶりの再会に乾杯じゃ」 氏は僕のグラスに手ずからビールを注いでくれて、僕は少し驚く。 こんなことをする人だったか?
H氏は同席の二人を紹介してくれた。 白人の男性はウォルター・キャラハン。アメリカ海軍の退役軍人で最後の階級は大佐。身長 6'3"(190センチ)はありそうな大男だった。 東洋人男性の方は新堂良照(しんどうりょうしょう)氏。日本の寺院で住職をしていたという。 二人ともズビックに移住していて、H氏とは遊び友達だと教えてくれた。
おそらく日本語が不得手なウォルター大佐に配慮して、それ以降の会話は英語で進行した。 "君は日本語が達者だね" 良照氏に言われた。 "起業する前は大学で日本の近代文学を研究していました" "ほう、専攻は?" "夏目漱石です。僕の妻へのプロポーズの言葉は、月が綺麗ですね、でした" H氏と良照氏が笑ってくれた。大佐はきょとんとしている。 いけない、これは日本人向けのジョークだった。 "アポロくんのワイフは日本人なんじゃよ" H氏が説明してくれた。 "儂の屋敷でメイドをしていたのを彼に持っていかれてしまってな" "はっはっはっ、それはそれは" ウォルター大佐が豪快に笑った。彼は身体だけなく声も大きかった。 "君が彼女を見初めたのかね?" "その通りです" 彼女は賢くてよく気がつく優秀なメイドだった。 僕は何度か接待を受けて、妻に欲しいと申し入れた。 主人のH氏があれほど簡単に認めてくれるとは思ってもいなかったが。
"そういえば、先々週だったか彼女から儂にメッセージが来たな" H氏が思い出したように言った。 "え、それは何と?" "夫をよろしくお願いします、とだけ言ってきたわい" うわっ、ばれていたのか。 ・・私を置いて旦那様のところへお楽しみに行くのですか? 妻の顔が浮かんだ。 彼女は怒ると日本の能面のような顔になる。 "君は奥方に黙って来たのかね? それはよろしくないな" H氏はにこにこ笑っている。 その好々爺とした様からは、かつての眼光鋭く圧倒的な威圧感に溢れる姿は想像できなかった。 "あれは儂のメイドの中でも勘の鋭さは1、2じゃったよ。どんな秘密も隠しておけるものではないわ"
ホールの正面にあるステージの幕が開いた。 ざわついていた店内が静かになる。 音楽が鳴り、キャミソールドレスを纏った歌手が出てきて歌い始めた。 目鼻立ちの整った彫りの深い顔の美女。明らかにフィリピン人だがその肌は透き通るように白かった。 さらにフィリピン人ダンサーが3人。こちらはへそ出しのタンクトップにショートパンツ。
"ところで君はアンヘレスに行ったかね?" 大佐に聞かれた。 "いえ、フィリピンはマニラとセブしか知りません" "ここから車で1時間ほどの歓楽街だよ。あんな娘がたくさんいてバーファイン(お持ち帰り)できる。何なら俺が交渉してやるぜ" 良照氏が自分を親指で指してにやりと笑った。 "止めておいた方がよい" H氏がぶすっと言う。 "あんな低俗な場所の何がよいのか。それにアポロくんはそういうことを望まないだろう" "それは失礼した。君は妻に忠誠を尽くすタイプなのかね" 大佐が言った。 "そういう訳ではありませんが、" 僕は彼らに明かすことにした。あえて隠す必要はない。 "実は僕は元女性のトランスジェンダーです。身体構造上、女性とセックスはできませんし、その願望もありません。愛する女性との行為で精神的な満足は得られますが" "そういうことか" "多様性の時代だね" 二人は理解してくれたようだった。
4. 「そろそろ始まる頃だ」 H氏が言った。 「これなら君も嫌いでないだろう、アポロくん」
ドーン!! 太鼓の音が響いた。日本の和太鼓だとすぐに判った。 ホールの客たちから拍手と歓声が起こる。 ダンサーたちが奥に消え、歌手の美女だけがステージに残っている。 腰に縄束を下げた男が登場した。 黒いシャツとズボンの上に日本の法被(はっぴ)を羽織っているが、この男もフィリピン人だ。 シバリショーか!
男は美女の背後に立つと、その腕を掴んで捩じり上げた。 手首、腕、そして胸の周囲に縄を掛ける。 慎重な緊縛だった。 上半身を高手小手に縛り終えると、続いて腰にも縄を巻いて縛った。 女性の背中と腰からそれぞれ縄を伸ばして、頭上に渡した金属パイプに繋ぐ。 右の膝に縄を掛け、その膝が胸の高さになるように吊り上げた。 これで彼女は左足一本の片足立ちだ。 男は縄の状態を真剣な表情でチェックする。たっぷり30秒はかけただろうか。 ようやく新しい縄で左足首を縛り、その縄をパイプに掛けて反対側を両手に握った。深呼吸。 握った縄に体重を掛けて強く引いた。 美女の身体が浮かび上がり、空中で裏返って逆海老になった。 客たちから一斉に拍手、口笛。 丁寧な緊縛だった。教科書通りの吊り方だと思った。 これくらいの吊りなら僕も妻を相手にやったことがあるな。
"彼は上達したね。いささか慎重すぎるようだが" ウォルター大佐が言った。 "うむ。今のところ客には受けておるし、修練を続ければ看板縄師でやっていけるじゃろう" H氏が応じた。 "プロモートした��斐があったな" 良照氏も言う。 プロモート? "すみません。このショーに皆さんが関わっているんですか?" 僕が質問すると3人は顔を見合わせて笑った。 "我々が提案したのだよ。閑古鳥が鳴いていたこの店にシバリショーをやってはどうかとね" "彼が日本で緊縛修行する金を出したのも俺たちさ" "何を言うか坊主。大方の金を出したのは儂じゃ"
"皆さんは仲がいいんですね" "はっはっはっ。テキサスからズビックに移住して一番よかったのは友人に恵まれたことだ!" "この間は3人でマレルドを見に行ったんだぜ" マレルド? "キリストの磔を再現する祭じゃよ" ああ、写真で見たことがある。 "知っています。あの磔は本当に釘を打ちつけるんですよね。たまに女性も磔になると聞きましたが" "我々が行ったときは男性だけだったね。女性の磔も期待しなかったと言えば嘘になるな。はっはっはっ" "あれは敬虔なカトリック信者の儀式じゃ。女のほうがよかったなど口にするのは不謹慎じゃろう" "俺は男の磔でもゾクゾクできるから問題ないぜ。へっへっへ" H氏は良照氏をじろりと見た。その口元が笑っている。 "坊主の身分で女は買うわ、信仰上の儀式に欲情するわ。少しは己を改めようと思わないのか、このバチアタリめが"
"話の腰を折って悪いが、バチアタリとはどういう意味かね?" H氏が「罰当たり」をそのまま日本語で言ったので大佐が質問した。 "悪行をした者に神仏の罰が下ること、またはその本人を指して呼ぶ蔑称です" 解説してあげた。こんな用語なら僕の得意分野だ。 "なるほど!" 大佐は膝を打って感心し、良照氏はぺろりと舌を出して笑った。
ステージではショーが続いていた。 男は縄を操作して空中に浮かぶ女体を様々なポーズに変化させていた。 美女の白い顔が苦し気にゆがんでいる。 ・・ああ!! 内ももを素手で掴まれ、耐えられなくなったように声を出した。 その声はホールの客全員に届いただろう。 周囲のテーブルの男性客たちが指をひらひらさせて喜んだ。 女性客もうっとりと見上げている。 絶妙のタイミングでセクシーな喘ぎ声。 おそらく演技だと思った。 誰かが演技指導したとするなら、それはきっとこの3人だろう。
5. 店の前で大佐、良照氏と別れた。 大佐は夫人の迎えの車で、そして良照氏は古びたスーパーカブを自分で運転して行ってしまった。 飲酒運転を指摘する方が野暮なんだろう。
H氏と私は迎えに来た知聖の車でキャビンへ移動した。 途中でH氏がぽつりと言った。 「言っておくがアポロくん、日本のようなサービスはないぞ」 サービスって何。 ハンドルを握る知聖は前を向いたまま何も言わない。 思い出した。 僕が初めてH氏邸に泊まった夜のことだった。 誰かがドアをノックしたから開けたら、そこに後に僕の妻になるメイドがいて。
キャビンに到着したときは日付が替わる時刻になっていた。 玄関でメイドが二人並んでお辞儀してくれた。 どちらも日本の屋敷で見たときと同じメイド服を着用していた。 一人は小麦色の肌のフィリピン人女性だ。 もう一人はポニーテールの日本人。彼女は知聖が言ってた応援メイドだろう。
客室へはフィリピン人のメイドが案内してくれた。 "ご朝食はお部屋へお運びしますか? それともダイニングで大旦那様とご一緒になさいますか?" "朝食に同席させてくれるんですか?" "はい。お客様のご自由にとのことです。ただしご一緒の場合は大旦那様の習慣で朝6時からになります" "一緒にさせてください" "承りました。では10分前にお迎えに上がります。・・それからこれは執事からのメッセージです。後ほどお読み下さいませ"
"Thank you po !" 僕が礼を言うと彼女は驚いた顔でこちらを見て、それから微笑んでくれた。 "Anong pangalan mo ?(君の名前は?)" "Ako ay si Joy. Kristel Joy Maravilla.(ジョイです。クリステル・ジョイ・マラヴィラ)" "ちゃんと伝わってよかったよ。実はこれだけしか喋れないんだ" "よく分りましたよ。お客様にタガログ語でお声を掛けられたのは初めてです" "君のことをジョイと呼んでいいかな" "本当は自分の名前をお伝えしてはいけないんですが" "嫌かい?" "いいえ、そう呼んでいただけると嬉しいです"
ジョイが部屋から下がった後、知聖のメッセージカードを開いて読んだ。 『お客様のご趣味に合わせ、お部屋に object を用意しました。お楽しみ下さいませ』 どういう意味だろう? H氏はサービスしないと言ったはずだけど。 カードはもう1枚あった。 『昼間わたくしになさったような、メイドの名前を聞き出して機嫌をとるお戯れは控えて下さいね 麻生』 僕の作戦はすっかり読まれているようだ。
6. 客室は普通のホテルと変わらない造りだった。 クローゼットとキッチン。透明な壁で仕切ったバスルーム。部屋の中央に斜めに置いたダブルベッドとナイトテーブル。ソファとテーブルのセット。窓際にワークデスク。 ベッドサイドのナイトテーブルに赤い筒状のケースが立てられていた。 『for you』と記したプレートが添えられている。 object ってこれのことか。 筒を手に取ろうとしたら引き寄せることができなかった。 ん? 真上に持ち上げることならできそうだ。
ゆっくり持ち上げた。 筒は底が抜けていて空っぽだった。 代わりに筒のあった位置に人間の手があった。 テーブルから右手と左手が生えている。リボンで手首を縛られていた。 赤い筒は上から被せて置いてあっただけだった。
これは女性の手だ。 細くて小さくて、きっとまだ10代の少女ではないか。 人形? それはあり得ない。ここはH氏のキャビンだ。 僕は指を伸ばしてその手に触れた。 と、相手の手が動いて僕の指を掴もうとした。 おっと。 もう一度、今度はゆっくり掌を合わせた。 すべすべして柔らかい手だった。 軽く握った。 ぎゅっと握り返された。
ああ、やっぱり。 生きた女の子だ。 小柄な女の子がテーブルの中に隠れているんだ。 "ねえ、中にいるんだろう? 返事をしてくれないかい?" 声を掛けてみたけど返事はなかった。 念のため日本語で聞いても同じだった。
僕はテーブルを調べた。 縦横それぞれ20インチ(約51センチ)くらい、高さ28インチ(約71センチ)くらい。 周囲は四面すべて合板の嵌め殺しになっていて中を知ることができない。 天板を見ると中央に筋が入っていた。 これだ。この線で分離できるぞ。 端面を半円形に切り欠いた板を2枚向かい合わせに嵌めているんだ。 この子はその穴から手を出している、
両手で持って軽く抉ると、天板を前後に分離して外すことができた。 さあ、ご対面。 僕は期待を込めて中を覗き込んだ。 え?
テーブルは箱状になっていて、中に砂が溜まっていた。 薄いグレーで粒子の荒い砂だった。 堆積した砂の中から2本の腕が出ていた。 これは予想外だった。この子は砂に埋まっているのか。 砂に触れると硬かった。 砂粒の表面が溶けてそのまま固着したような状態で、全体がひとつの塊になっていた。 僕はごくりと唾を飲んだ。 この子はただ埋められているんじゃない、固められているんだ。
とりあえず少女の腕を持って上に引いてみた。 駄目だ。しっかり固まっている。 僕の力で出してあげられるものではなかった。 少女の指が空を掴むようにぴくぴく動いた。
すごいサービスだと思った。小さく固めた女の子を部屋に置いてくれる。 興奮で息が止まりそうだ。 まだ顔も知らない少女が僕のためにサービスしてくれている。 応えてあげないと駄目じゃないか。 妻とのプレイを思い出した。 彼女は僕と相性抜群のパートナーだ。 いつも落ち着いていて何事にも動じない彼女。ときには不敵な笑みを浮かべて挑発してくる彼女。 責めを受けるときは究極のM女と化して乱れ狂う彼女。 ・・ねぇ、こういうとき君ならどうして欲しい?
やがて僕はナイトテーブルの天板を注意深く元に戻した。 一度立ち上がって冷蔵庫のミネラルウォーターを飲んだ。 テーブルに生えた手を見る。この子にも飲ませてあげたいけど無理だな。
スマホに妻の姿を呼び出した。 ロスの牧舎にあるクリーム色の円筒が何も変わることなく映し出された。 血圧・心拍は平常。ステータスは『半覚醒』。 彼女はまどろみの中にいる。 長時間固められるスレーブはほとんどの時間を半覚醒状態で過ごすといわれる。 明示的に覚醒するのは給餌、排泄、そして EMS 運動のときだ。 そしてもう一つ、覚醒に導くためにスレーブの主人だけが権限を持つ手段がある。 僕は性感コントロール画面を呼び出た。 メニューからGスポットインパクトとクリトリス吸引を選択し、最初の5分間は弱、その後自動的に5分毎1レベルずつ強度アップするように設定した。 妻は 7000 マイルも離れた僕から遠隔操作されるんだ。
スマホを片手に持ったままテーブルの傍に行き、反対の手で少女の手を取った。 僕に触れられるのを待っていたかのようにその指が揺れた。 スマホ画面の『起動』ボタンを押し、すぐに少女の指を口に含んだ。 驚きが伝わってきた。 指の一本一本に舌を絡めて吸った。 僕の口の中で小さな指がもがいた。唾液が手首に垂れる。 ピ。 スマホの画面が妻の血圧と心拍、体温の上昇を示した。 ステータスが『覚醒』に移行し、ほんの数秒で『興奮』に変化した。 僕はスマホをベッドに投げた。
今、妻は快感の嵐の中にいる。 その妻を意識しながら少女の指を愛し続けた。 指の谷間を甘噛みする。 右手と左手。場所を変えて何度も、何度も。 次第に指が抵抗を示さなくなってきた。 やるせなくなったのだと思った。 最後にもう一度、右の中指と薬指の間を強く噛んだ。 少女の指がぴんと伸び、腕の筋肉にまで力が入るのが分かった。 この子は被虐を味わっている。 妻の被虐と比べたらレベルは雲泥の差だけど、どちらの被虐も与えているのは僕だ。
はぁ、はぁ、はぁ。 気が付くと床に座り込んでいた。 ピ。 ベッドに放り出したスマホに通知が届いた。 『奥様の意識が喪失しました』
7. 朝。 眩しい光に目が覚めた。 窓の外にズビックの海が輝いていた。 「おはよう」 ナイトテーブルの少女に声を掛けると指を振って応えてくれた。 この子は休めたんだろうか? それともずっと眠らずに意識を研ぎ澄まして僕の挨拶を待っていたのだろうか。
約束の時間ちょうどにメイドのジョイが朝食の案内に来た。 ダイニングでH氏と向かい合わせに座る。 ジョイともう一人、昨夜会ったポニーテールの日本人メイドが給仕をしてくれた。
H氏は今日も機嫌がよかった。 日本から直送させているという肉や魚をもりもり食べて健啖家ぶりを発揮した。 「よく眠れたかね? アポロくん」 「はい。素敵なサービスのおかげで素晴らしい夜を過ごせました」 「ん? サービスはないと言ったはずだが」 H氏はちょうど入って来た知聖に目を向けた。 「お前か? 麻生」 「何のことでしょうか」 「まあよい。客人が満足してくれるなら儂が口を挟むことはないわ」
氏はコーヒーを飲み終えると高らかに宣言した。 「本日は沖に出ますぞ。狙いは80センチ越えのマダイじゃ。船酔いは大丈夫かね?」 「大丈夫です」 「よろしい!」 知聖が苦笑している。 ズビックは海釣りの名所としても有名だ。 H氏が隠居先にズビックを選んだのは釣りがしたかったからなんだな。
食事が済んでH氏が私室に戻ると、知聖が待ちかねていたように駆け寄って来た。 「ランカスター様! メイドから名前を聞き出されたそうですね」 「ジョイのことですか? いい子じゃないですか」 「どうしてそんなに女の子に手が早いんですか、元女性なのに」 「手は出していません。それと "元女性なのに" は FTM に対する偏見です。クレーム受付のカスタマ・サービスはどこにありますか」 「ジョイは貴方にぞっこんですよ。今夜、伽(とぎ)に押し掛けるかもしれません」 「ええっ!! それは困る」 僕は大げさに驚くふりをした。 「僕には彼女を喜ばせてあげるペニスがない!」 知聖は「ふ」と短く笑った。 「困るのはそっちですか」 「できればもっと派手に笑って欲しかったんですけど」 「別の者が笑っていますよ」 テーブルの反対側でメイド二人がころころ笑っていた。 ジョイは床にくずれ落ちそうになっている。 そうか。彼女も日本語が分かるんだな。
「ねぇ知聖さん、あの砂の女の子はやはり貴女の仕業ですか?」 「はい。わたくしの裁量でやったことです」 「あの子は誰です?」 「日本からの応援メイドです。2名届いたうちの一人を使いました。ランカスター様はエンケースメント(閉所拘束)がお好きなので、おもてなしにと」 知聖によるとあの少女は16歳。 僕がH氏とレストランにいる間に急いで固めたという。 「人間をそんな短い時間で固められるものですか? 見たところ発泡��レタンではなさそうでしたが」 「ベントナイトという鉱物系の粒子です。水分を含むと膨張して固まる特性があります」 「初めて聞く物質だな」 「猫砂ですよ。Cat Litter と言えばお分かりになるでしょうか」 猫のトイレか! 「使いやすい素材ですから是非奥様にもお使い下さいませ。・・そうですね」 知聖はぽんと手を打つ仕草をした。 「メイドの固めをご覧になりますか? 大旦那様の許しを得られれば、夕食の時間に実演するよう計らいますが」 そ、それは見たい! 「ぜひお願いします」
8. キャビンが建つ岬の先端に専用の桟橋があった。 小さな船外機付ボートが繋がれていたけれど、乗るのは別の船らしい。 しばらく待っていると、30フィート(約9メートル)以上はありそうなスポーツフィッシングボートが近づいて来た。 フライブリッジ(船室上部の高い位置にある操船スペース)から手を振っているのはウォルター大佐だった。
「行ってらっしゃいませ」 桟橋に残った知聖が頭を下げている。 走り始めた船に乗っているのは全部で5人。 ウォルター大佐、H氏と僕、ランチボックスを抱えたメイド服のジョイ、そしてマイクロビキニにパーカーを羽織った美女がいた。 彼女はあのシバリショーのステージで縛られたフィリピン人の歌手兼モデルで、アンジェと呼ばれていた。 シバリショーの演出を大佐たち3人が手伝った経緯から、船遊びにつき合ってくれる関係になったという。
アンジェとジョイは仲が良いらしくタガログ語で談笑している。 大佐はブリッジで操船中。 自然、僕はH氏と会話を続けることになる。 「マダイは好きかね? アポロくん」 「好きです。アメリカで白身の魚はポピュラーではありませんが、最近は熟成させて食べる方法が広まってきました」 「それくらい知っておるよ。儂の事業でも日本産の魚介を輸出しておるからな」 「それは失礼しました」 「君が好きというなら結構だ。大佐もマダイは好物じゃが何とムニエルにすると言うのじゃ。今夜、君には塩焼きで堪能してもらうぞ」 「楽しみにします。ところでマダイはどうやって釣るんですか?」 「おおっ、」 H氏はよくぞ聞いてくれたという顔をした。もはや釣り好きの普通の爺さんだ。 「タイラバという仕掛けを使う。疑似餌の一種じゃ」 「疑似餌? ああ、ルアーですか」 「大佐が教えてくれた仕掛けじゃがな。あの男、鯛をムニエルで食うくせに、日本由来の仕掛けは知っておるのじゃ」 「釣りに詳しいんですね」 「釣りに関しては儂の師匠じゃな」 「このボートも大佐の所有ですか?」 「そうじゃよ。儂も欲しいが操縦できる者がおらん。麻生に船舶免許を取れと言ったら渋られたわい」 そりゃ嫌だろう。 うっかり免許なんて持ったらフィリピンじゅうの釣行に連れていかれるだろう。 「ここでは執事の麻生にすべて仕切られておるから、儂は頭が上がらんのだよ」 「まさか。でもあの知聖さんなら何となく理解できます」 「そうじゃろ? まあ大佐と良照とで遊ぶ分には放っておいてくれるし、それで不満はないがな」 「そういえば今日は良照さんは?」 「あやつは海の上はあかんのだ。情けない坊主じゃ」
船のスピードが落ちた。 "この辺りなら大丈夫だ!" 大佐がブリッジから降りてきて言った。 "ここが釣り場ですか" "いいや、ここなら陸から遠いし他に船もいないから誰にも見られない、という意味だよ。はっはっはっ"
アンジェが立ち上がり、羽織っていたパーカーを肩から落とした。 身に着けているものは扇情的なビキニとサングラスだけである。 「よーし、久しぶりに儂の腕を見せよう」 H氏が縄を持つとアンジェは自分から腕を後ろで組んだ。 氏はその腕に縄を掛け、さらに豊かな胸の上下に巻いて締め上げていく。 H氏が自ら女性を縛るのを見るのは初めてだった。 その手慣れた縄運びに驚く。 上半身に続いて太ももと膝、脛と足首を縛るまで10分とかからなかった。速い!
全身を縛られて棒のようになった彼女を大佐が肩に軽々と担いだ。 そのまま船の前方へ移動して、バウレール(船首デッキの柵)の外側に前を向いて立たせた。 彼女は自分で動けないしバウレールは前方に傾斜しているから、大佐に抱えてもらわないと海に落ちてしまう。 "アポロくん、ロープを持ってきてくれるかい" "はい!" 大佐はアンジェの身体を左手で押さえながら、その腰を右手だけで器用にバウレールに縛りつけた。 さらに膝と足首もレールに固縛し、左右のサイドデッキの手すりから縄を張って背中に繋いだ。 "フィギュアヘッド(船首像)の完成だ!" 大佐が誇らしげに言った。 船首に飾った美しい女体像。確かにフィギュアヘッドだった。 "冷たいお飲み物をどうぞ" ジョイがタイミングよくアイスティーにスコーンを添えて出してくれた。 皆でしばらく生きたフィギュアヘッドを鑑賞した。
南国の太陽がじりじり照りつける。 "そろそろ風に当たりたいものじゃな" "移動するかね" "彼女はあのままにしておくんですか?" 僕は船首のアンジェを気にした。 UVカットのウェアを着ている我々と違い、彼女は肌を隠すものがほとんどない。 ジョイが察してアンジェの元へ走り寄った。 一言二言会話してアンジェが首を横に振ると、ジョイはアンジェのサングラスを外し代わりにスイミング用のゴーグルを出して着けさせた。 身を乗り出してアンジェの頬にキスをすると戻ってきて報告した。 "あのままでいたいそうです。ボディは日焼け対策をしているので心配ありません。波が当るとサングラスが外れるのでゴーグルに交換しました" 優秀なメイドじゃないか、ジョイ。
アンジェを船首に固定したまま、大佐は船を猛スピードで走らせた。 "掴まっていたまえ!" 向かい波に乗り上げた船首が跳ね上がった。 きゃっ。ジョイが悲鳴を上げる。 船は何度も跳ね上がって落下し、その度にアンジェの全身が水煙の中に消え再び現れる。 "はっはっはっは!" 大佐が笑っている。H氏も満面の笑みだった。 テーマパークの絶叫マシンとは違う迫力。高揚感。 僕も自然と笑顔になるのが分かった。 アンジェは厳しいけれど本人が望んだことだ。 それに女の子を酷い目に会わせるのはやっぱり楽しい。
誰かに抱きつかれた。 立っていられなくなったジョイが僕の腰にしがみついていた。 僕は屈んで彼女の背中に手を回し映画のヒーローみたいに抱きしめてあげた アンジェが再び波の直撃を受ける。 ゴーグルが外れて飛ぶのが見えた。
9. ようやく船を止めて解放されたアンジェはぶるぶる震えながら "ecstasy!(エクスタシー)" と叫んで意識を失った。 ジョイがアンジェを横にして調べる。 "心配ありません。頭を冷やして寝かせておけば桟橋に戻る頃には目を覚ますでしょう" 僕はジョイが看護助手の資格を持っていることを知った。
それからランチを挟んで2回マダイ釣りの竿を出した。 釣果は悪くなかった。 大佐は7匹、H氏も5匹のマダイを釣り上げた。 さすがに80センチクラスはなかったものの、60センチ超を上げたH氏は獲物にキスをして喜んだ。 そのまま一回転して踊り出し、僕たちの視線に気づいて止めると「麻生には黙っているように」と言った。 僕はビギナーズラックで小さいのを2匹だけ。 タイラバの流し方は悪くないと大佐は褒めてくれたけどね。
「アポロくん、縛るかね」 岬の桟橋に帰る船でH氏が言った。 「せっかくメイドを用意したのじゃからな」 ジョイが両手を前で合わせてかしこまっていた。 さっきまできびきび働いていた姿が嘘のように緊張した笑顔。 "いいのかい?" "はい、ランカスター様のお好きになさって下さいませ"
ここ数年、妻とはエンケースメントの固めプレイばかりだから緊縛は久しぶりだ。 ジョイが手首を後ろで交差させた。 そこに縄を持って行く。 えっと、どう運ぶんだっけ。記憶が曖昧になっていた。 そのとき、ジョイの手首がすっと浮き上がった。 交差させた手首と背中の間に空隙ができた。 僕が縛り易いように気配りしてくれていると判った。
そうだ。この光景は前にもあったぞ。 思い出した。 あれは日本のH邸で初めて妻を縛ったとき。 彼女も自ら手首を浮かせてくれた。 僕が感動して縄を掛けると、彼女は本気で被虐に堕ちて濡れてくれたんだった。
イメージが鮮明になった。 ジョイの手首に縄を掛けて縛った。 高めに引き上げて括り位置を決め、胸の上と下に縄を巻いて留める。 下の胸縄に閂(かんぬき)を通して絞った。 「ん、」目を閉じたジョイが呻いた。 大丈夫だ、僕は縛れる。 緩みなくきっちり締まるように。 ジョイが拘束感と無力感をしっかり味わえるように。
デッキの床に座らせて胡坐を組ませた。 クロスした足首にも縄を巻き割縄を掛けて縛り、縄尻を長く引き出した。 後ろから強く押して前屈させ、そのままの姿勢で足首の縄を両肩から背中に回して繋いだ。 これで彼女は胡坐の姿勢のまま動けない。 ジョイは顔を歪めている。たまらなく可愛い。 "そのまま耐えるんだよ" "は、はい" 左右の太ももにも縄を巻いて縛り、脇腹に引き寄せて固定した。 まだまだ強く折り畳めそうだな。 足首と背中を連結する縄を一旦緩めた。 ジョイの背中を右足で踏んで押さえ、足首の縄を両手で強く引いた。 「ああっ!!」 引いた縄を改めて背中に固定する。 前で組んだ足首が顎に触れそうな位置まで引き寄せられている。 コンパクトに丸くなった女体。美しい。 ここまで縛ったのは何年ぶりだろうか。
ジョイの横に屈んで耳元で囁いた。 "君のおかげで縛ることができたよ。どうかな、きついかい? 僕のために苦しんでくれたら嬉しいな" 彼女はわずかに首を捩じり、僕を見上げて微笑んでくれた。 大きな目に涙が光っていた。 "とても、お上手です。・・きついです。きつくて、苦しくて、幸せです" 僕はジョイを後ろから抱きしめた。 「うむ!」 H氏が満足気に頷いてくれた。 フライブリッジのウォルター大佐も振り向いて親指を立ててくれた。

10. キャビンに戻ると知聖から伝えられた。 「ランカスター様、明日ご搭乗予定のフライトが欠航になる模様です」 ええっ。 僕は急いで自分のスマホで確認する。 航空会社からメールが届いていて、1日1便しかないロサンゼルス行が機材の都合でキャンセルになっていた。
H氏と知聖はあと1日滞在してはどうかと言ってくれたけど、それでは妻のエンケースメント解放に間に合わない。 僕は何としても明日出発する必要があった。 「どこかトランジットで帰ります」 「それなら儂の飛行機に便乗すればよい」H氏が言った。 「麻生、日本からロスへのファーストクラスも手配してあげなさい」「かしこまりました」 「どういうことですか?」
日本の屋敷の幹部やH氏本人が迅速に往来するため、あるいはメイドや貴重品の輸送のため、日本との間でプライベートジェットの体勢が敷かれていた。 引退後の地にズビックが選ばれたのは、プライベート機が自由に着陸できる空港があることが大きな理由だった。 明日はメイド2名を日本へ返すためプライベートジェットが飛ぶ。 僕はありがたく便乗させてもらうことにした。 メイドが2人も一緒ということは、ファーストクラス以上のサービスだって期待できるではないか。 予定便がキャンセルになってむしろ幸運だったと僕は神様に感謝した。
11. ディナーはマダイ料理のオンパレードだった。 昆布締め、薄造り、塩焼き、煮付、桜蒸し、鯛飯など日本の割烹コースで提供されるようなメニューが並んだ。 料理を担当したコックを知聖が連れてきて紹介してくれた。 ミゲルくんと呼ばれる彼はフィリピン人の青年で、和洋中エスニックからフィリピンのローカル料理まで何でもこなせる腕を買われて東京の料亭から引き抜かれたそうだ。 H氏が言う。 「ミゲルくんのディヌグアンは美味いぞ! 明日の朝食にどうかね?」 ディヌグアン? 「豚の血のシチューじゃよ」 そ、それはちょっと遠慮させて下さい。
H氏は上機嫌だった。 塩焼きをつつき吟醸酒をちびちびやりながら、脇に立つ知聖に釣行の冒険を縷々として語った。 それは虚実とりまぜ大胆に脚色されていて、特に巨躯65センチの敵を釣り上げるパートは壮絶な戦いとして描かれ、かのヘミングウェイが描いた老漁師を彷彿させるスリルと興奮に満ちた物語になっていた。 聞かされる知聖が呆れた風もなく真面目に傾聴しているのは流石だった。 いかなるときも主人が機嫌よくいられるように努めるのは執事の重要な仕事なのだ。 最大の敵を捕獲して冒険談が節目を迎えたところで、すかさず知聖が言った。 「お話の途中ですが、お客様もお待ちですので」 「おお、そうじゃった。儂もそろそろ見たいと思っていたのだ」
メイドの二人が木製の箱を運び込んだ。 それは急造りの木板製で棺桶のような形をしていた。 猫砂の袋とシャベルを台車に載せて押して来たのは何とコックのミゲルくんだった。 知聖が朝食のときに提案した固めのデモンストレーションが始まるのだ。 メイドの顔ぶれは朝食のときと変わっていた。 ポニーテールのメイドではなく、栗色の髪をショートカットにした小柄なメイドがジョイと一緒に箱を運んでいた。 彼女は僕の客室でナイトテーブルに固められた少女だった。
実は夕食の前に知聖に問われていた。 誰を固めるか。3人のメイドの中から僕に決めて欲しいと。 18歳のポニーテール少女、16歳のショートカット少女、そして19歳のジョイ。 「誰でもいいんですか?」 「構いません。どのメイドも貴方が自由にできます」 「ジョイは・・、ジョイでもいいんですか?」 「もちろんです。あれは当地で採用したメイドですから、他の娘ほど厳しい教育を受けていません。それでも如何様に扱って構わないのは同じです」 「いいんですね」 「はい。ランカスター様にお尽くししたい。今それを一番強く望んでいるのはあの娘ですし、」 知聖は自分の口に手を当てた。 「・・ただいまの発言は管理の立場にある者が口にしてはならないことでした。メイド一人一人の思いなど取るに足らないことです。お客様のお好きな娘をお選び下さいませ」 じゃあ、ジョイを。 言いかけて彼女の涙を思い出した。 僕に縛られて流した彼女の涙が鮮明に浮かんだ。 あんないい子を。 「あのポニーテールの子を固めてくれますか。ショートカットの子は一度固めましたし、ジョイは縄で縛りましたし」 「承知いたしました」
固めの材料になる少女が白いガウンを纏って登場した。 ポニーテールに括っていた髪は解いてまとめ、エステサロンで使うようなヘアキャップを被らせていた。 ガウンを脱ぐとその下は小さなショーツを履いているだけだった。 裸の胸を手で押さえ、他のメイドの介添えで棺桶の中に入った。 うつ伏せになって顎の下に両手を入れ、膝を直角に曲げた。 呼吸用の透明なチューブを咥えさせてもらう。 シリコンチューブだ。えらく太いぞ。 H氏がどれどれと席を立ってやって来た。
ミゲルくんが猫砂をショベルにすくって注いだ。うっすら粉煙が舞う。 少しずつ注ぎながら、スプレーボトル(霧吹き)で湿り気を与える。 ざらざらした砂の粒子がしっとり膨らみすぐに固着するのが分かった。 なるほど。猫のおしっこで固まるのと同じだ。 砂は少女を埋めて固まりながら嵩を増し、底から2/3くらいの高さに達したところでうつ伏せに寝た少女の身体がほぼ見えなくなった。 固くなった砂の上に膝で折って曲げた脛から先と呼吸チューブだけが突き出してる。
「このように短時間で固まります。ほとんど発熱しませんし低刺激なのでラバースーツも不要です」 知聖が説明した。 「とても簡単に使える材料ですが、大きな欠点があります。それは脆いこと」 話しながら砂の表面をこんこん叩いて見せる。 「まんべんなく水分を浸透させたのでかなり固くなっていますが、それでも中のメイドが本気で暴れたら壊れるでしょう」 「ふむ。ではどうするのかね?」 H氏が興味深げに質問した。 「方法は明らかです。充填材(filler)としては使うが構造材(structure)としては使わないこと。・・ミゲルくん、お願い」 ミゲルくんが厚みのある木の板を持って来た。 棺桶の内側にちょうど蓋としてはめ込めるサイズになっていた。 少女の足と呼吸チューブが当る位置に穴が開いていて、そこに足とチューブを通しながら棺桶にはめ込んだ。 上から木槌で叩いて、蓋を沈み込ませて行く。 上から1/3くらいの深さまで叩くと、蓋はそれ以上沈まなくなった。 「これで箱の中にほぼ空隙はありません。周囲は硬い木材で囲まれていますから、固まった猫砂が仮に割れたしても形は崩れません」 「なるほど、これなら壊れる心配はなさそうじゃな」 H氏が感心したように言った。
「そういうことなら、」僕は手を上げて質問した。 「昨夜のナイトテーブルはどうなってたんですか?」 あのとき、砂の中から少女の手が突き出ていたけど、テーブルの天板と砂の間にはたっぷり隙間があって "蓋" なんてモノは付いていなかった。 少女が暴れたら猫砂が壊れて壊れたはずでは? 「簡単なことですよ」 「?」 「暴れなかったのです」 ショートカットの少女が恥ずかしそうに微笑んでいる。 その肩に手を置いて知聖も笑った。 「この子は貴方に尽くすために、全力で耐えたんですよ」
「ふむ」H氏が言った。 「それなら儂も試させてもらっていいかね? このメイドが耐えられるものか」 「はい、どうぞ」 氏は手を伸ばして固めた少女の足の裏に触った。 「ひ」 逆さに突き出した足がびくんと揺れる。 氏は足の裏を両手でコリコリと掻いた。 「んんん~ん!! んっ、んっ、んっ」 砂の中から笑い声混じりの悲鳴が響いた。 「んぁっ、んはっ、ははっ、・・んっ、やややややぁ!」 10本の足指が開いたり閉じたりを繰り返す。 「麻生、このメイドは何年目だ?」 「4年目になりますが」 「はっ、ははっ、はっ・・、あ、ああっ」 「あっさり声を出しおって、辛抱の足らん娘じゃの」 「申し訳ございません。日本側に申し送ります」 「ま、罰を与えるほどではないが。・・そりゃ、そりゃっ」 H氏は明らかに面白がっていた。 悪戯に夢中になっている男の子のように目をキラキラさせて、少女の足の裏をくすぐり続ける。 「んんんっ! んっ、・・んごっ、・・んっ、・・ん」 悲鳴が次第に呻き声に代わる。 息が苦しそうだ。 砂の中でもがいているのだろう。 しっかり蓋をした箱だから、いくらもがいても固まった砂が崩れることはない。 もがめばもがくほど身体は酸素を欲しがるのに。
僕には分かる。 そもそも、あんな太いチューブ1本だけで呼吸するのは無茶だ。 彼女が咥えているチューブは見たところ内径1インチ(25.4ミリ)。長さ2フィート(約60センチ)はある。 つまり新鮮な酸素を取り込むためには2フィート分の空気を余分に吸う必要がある。 しかもそれで最初に肺に入るのは彼女自身が吐いてチューブ内に残っていた呼気だ。 この辺りは昔、妻を使って実験したから覚えているぞ。 確か内径1インチで1フィートなら容量 5.2 オンスだ。2フィートで 10.4 オンス。 つまりこの子は呼吸のたびに、自分が吐いた息を 10.4 オンス(約300cc)もう一度吸う。 深呼吸ならともかくくすぐり責めを受けてあんな短い呼吸を何度も何度も。
・・危険です。 そう言おうとしたら、知聖が僕に向かって微笑みながら人差し指を口の前に立てた。 え。 H氏はくすぐりの手を止めて様子を見ている。 「生き永らえとるようじゃの。これくらいにしておこうか」
12. 海からの風が肌に心地よかった。 常夏の地もこの時間になれば過ごしやすい。 見上げると満点の星が輝いていた。 知聖はズビックでも条件さえ整えば南十字星を望めると教えてくれたけど、あいにく僕は星のことはさっぱり分からない。
僕たちはキャビンのベランダでくつろいでいた。 H氏は愛用の安楽椅子に座り、左手で砂に固めた少女の足を撫でている。 氏は猫砂固めが気に入ったようだ。 もしかしたら彼女は朝までこのまま置かれるのかもしれない。 僕はカウチソファでジョイを肩に抱いていた。 ジョイは全身をがんじがらめに縛られ、猿轡まで施されている。 全力で僕に身を摺り寄せてくるのがとても可愛い。 ショートカットの少女は観賞用のオブジェだった。 前で縛り合わせた両手首をベランダの差し掛けから吊られ、爪先立ちの姿勢でたまによろめきながら頑張っている。
メイドが全員拘束されてしまったので、僕たちのためにお酒を作ってくれているのは知聖だった。 僕もH氏も手酌でやるから結構と言ったら、こう反論された。 「お客様がいらっしゃるのにそれはできません。すべてH邸の女には殿方に奉仕する義務がございます」 「そうか、忘れていたが麻生は女であったな」 H氏がぽろりと口に出し、知聖に睨まれて肩をすくめた。
知聖はH氏に長く仕えてきた。 いつも優しく落ち着いていて、メイドたちにも慕われている。 ときには猫砂のようにH氏の知らないものを見つけてきてアイディアマンぶりも発揮している。 氏にとっては自慢の部下なんだろうな。 僕の妻もそうだったけど、H氏を取り巻く女性ってどうして優秀な人ばかりなんだろうか。
「そういえば、僕の部屋でナイトテーブルに彼女を固めたとき、」 僕はショートカットの少女を指差して知聖に質問した。 「どうやって呼吸を確保していたんですか?」 「ダイビング用のフルフェイスマスクですよ、ランカスター様。レギュレーターの替わりに吸排気管を直接繋ぎました」 「その吸排気管というのは、チェックバルブ(逆止弁)のついた並行管のこと?」 「はい。朝まで安全に過ごせるように」 吸気用と排気用、分けて2本のチューブにしているなら安心だ。 ロスの牧舎にいる妻もチューブを2本繋がれてい���。
「それじゃあ、」次にH氏の足元の箱に入った少女を指差す。 「この子がチューブ一本だけなのは」 H氏が笑った。知聖も微笑んでいる。 「決まっておるではないか。この娘が苦しむように、じゃ」 「ランカスター様もご存知でしょう? 大旦那様は若い女性が苦しむ姿をお好みになると」 そうだった。 知聖はメイドの苦しみ方まで相手の嗜好に合わせのか。
H氏が言った。 「さあ、アポロくん。今度は君の話を聞かせてくれんかな? 結婚してからのこと、君は妻をどう喜ばせているのか、どう苦しめているのか。儂の元でメイドをしていたあれは幸せに暮らしているのかね?」 「喜んでお話しします」 僕は妻の話をした。 二人の結婚生活。牧舎のこと。包み隠さずに話した。 ねえ、君の主人だった人は今も君のことを気にかけてくれているんだよ。 何て恵まれているんだ、君は。 H氏は僕の話を喜んで聞いてくれた。 やがて僕たちの会話に知聖も加わり、3人でグラスを手に夜遅くまで語り合った。
13. 気が付くと、違和感があった。 ここは? そうだ、キャビンだ。H氏のキャビンの僕の部屋だ。 ベランダで飲んで、戻ってきてシャワーも浴びずに寝てしまった。 えっと、今は2時か。 妻の状態をスマホでチェックするのも忘れたな。 まあ今夜くらいはいいか。 ロスに帰ったら彼女を解放してあげて、一緒に美味しいものを食べよう。
左手が柔らかいモノに触れた。 うわ!! 僕は飛び起きた。 シーツの中に裸の女の子がいた。 「ジョイ!!」 「ランカスター、サマ」 "どうしたんだ?" "ドアをノックしましたがお返事がなかったので、勝手ながら合鍵で入りました" "それはよくないと思うなぁ" "申し訳ございません。確信犯です" "まさか君は伽に来たのかな?" "はい。お客様に心からお尽くししたく" "H氏が命じたのかい?" "大旦那様は何も仰ってはいません" "じゃあ誰が、って知聖か!"
・・すべてH邸の女には殿方に奉仕する義務がございます。 知聖の言葉が蘇る。
"いくら上��に命じられたって、こればかりは従う必要はないんだよ" "いいえ。上司には許可をもらっただけで、こうして来たのは私の意志です" "君自身の意志" "はい。 お客様が奥様を深く愛してらっしゃることは存じています。それでも、" ジョイは僕の胸に手を当てた。 その腕に緊縛の痕が刻まれていた。 "どうか、私をお使い下さいませ" "・・" "ご迷惑でしょうか?" "知っての通り、僕は君とセックスはできないよ" "はい" "それでもいいんだね?" "はい"
・・
目覚めると部屋にジョイの姿はなかった。 レースのカーテン越しに朝日が射している。 僕は起き上がって自分の手を見た。 その手にジョイの柔らかい乳房と熱い蜜がとろとろ溢れる壺の感触が残っていた。
身支度をしていると、ベッドサイドに白い花が一輪あるのに気付いた。 匂いを嗅ぐと甘い濃厚な香りがした。 これは何の香りだっけ。 どこか落ち着くこの香り。嗅いだ覚えがあるんだけど。 僕はその花をシャツの胸ポケットに挿した。
14. 朝食の迎えに来たのは執事の知聖だった。 ドアを開けると彼女は深々と頭を下げた。 「ランカスター様。あの子の思いに応えて下さいましてありがとうございます」 「違いますよ。僕は女の子に手が早いだけの FTM ですから」 「ご冗談を。・・あら」
知聖は僕が胸に挿している花に目を留めた。 「本当に、あの子は」 「外した方がいいですか?」 「いいえ、きっとジョイは喜ぶでしょう。ただ、大旦那様がお気付きになるかもしれません」 「そのときはどうなりますか?」 「お小言をいただくでしょうね。大旦那様はメイドが勝手な行動をとることを好まれないので」 「ジョイが叱られるのは可哀想だな」 「いいえ、叱られるのは許可したわたくしです」 「知聖さんですか」 「はい。いつものことなので慣れております」
確かに知聖ならH氏に何を言われても体よくいなすだろう。 むしろH氏が知聖に叱られている景色の方が目に浮かぶぞ。 「ジョイが叱られるのは僕も見たくありません。すみませんが、貴女が叱られてもらえますか」 「お任せ下さいませ」
「ところでこの花が何か、ご存知なら教えていただけますか?」 知聖は口に手を当てて笑った。 「知らない花を挿してるんですか」「いや面目ない」 「それはサンパギータと言ってフィリピンの国花ですよ。別名アラビアジャスミン。ジャスミン茶の香りつけに使われます」 ジャスミン茶! そうか思い出した。これはジャスミン茶の香りだ。
ダイニングに行くとH氏が先に来てテーブルについていた。 給仕をしていたジョイが僕の胸の花を見てぱっと顔を輝かせる。 本当にフィリピーナって、感情を隠さずストレートに表現するんだな。 H氏が僕に向かって聞いた。 「アポロくん、それはジャスミンではないかね」 「そうです」 「ジャスミンの花言葉は何だったかな」 「いいえ、知りません」 「こういうことは女性が知っているだろう。・・麻生」 「あなたと一緒にいたい、です」知聖が答えた。 僕は驚く。 貴女はその花言葉を知っていて、それでもなお僕が胸に花を挿すことを認めたんですか。
「ふむ」 H氏の声音が変わったような気がした。 知聖に向かって言った。 「いろいろ緩んでおるようじゃな」 「申し訳ございません、わたくしの責任です。どのような罰も受ける所存です」 「儂が罰を与えると言えば容赦のない罰になるが、よいのだな?」 「覚悟しております」 H氏は先ほどまでの、気のいい老人ではなかった。 かつて帝王と恐れられ、どんな無理をも押し通した頃の姿に戻っていた。
15. 十字に組んだ木の柱が運ばれてきた。 運んでいるのはコックのミゲルくんだった。 こういう力仕事は彼の出番になるのだろう。
キャビンの庭の一角にコンクリートの台があって、柱を立てられるようになっていた。 これは磔台だ。ここには最初から磔のための設備があるのか。 H氏は知聖を十字架に架けるように命じたのだった。 メイド3名は並んで控えているように命じられている。 ジョイはときおり嗚咽をもらし、隣のメイドに肩を抱かれて慰められていた。
ぽこぽこと音がして古びたスーパーカブが走って来た。 入口の門を通り抜けて、そのまま庭まで入ってきたらしい。 シートに跨っているのはH氏の友人の良照氏だった。 「急に呼び出して済まないの」 「いやいや。あんたのところの美人秘書を磔にできるんだ。何を差し置いてでも来るさ」 良照氏は僕に気付くと笑って言った。 「やあ、また会ったねアポロくん! マレルドでもなかなか見られない女の磔を見せてあげるよ」 マレルド! キリストの磔を再現する祭だ。 磔になる信者は本当に釘を打たれる。・・ということは、知聖は釘を打たれるのか。
ドレスの女性が出て来た。 知聖だった。 刺繍の入ったスカートにエプロン。襟ぐりの大きいブラウス。ディアンドルだ。 南国の空の下にドイツの民族衣装は不思議とマッチしていた。 知聖は美しかった。 髪は短く纏めたままだし、なぜか黒い手袋もそのままだった。 それでも彼女の美しさはメイドたちと比べても際立っていた。
知聖はジョイに向き合うと一度ハグをした。 そして芝生に置かれた十字架に自ら横たわった。 良照氏が知聖の胴と膝、足首を縄できつく縛った。 両手を広げさせて手首も縛った。 緊縛作業が済むと、それまで嵌めていた黒手袋を脱がせた。 !! 知聖の掌は歪な形をしていた。 右手左手それぞれ指の何本かが欠損していた。 メイドたちも驚いている。
良照氏は10インチ(約25センチ)はありそうな長い釘を出した。 先端を知聖の右手に当てると無造作にハンマーで打った。 鮮血が流れる。 たった1回の打撃で釘は肉体を突き抜け十字架に突き刺さった。 何度か重ね打ちして釘の頭を沈める。 続いて左手、右足の甲、左足の甲と打ちつけた。 ジョイが両手で顔を覆って逃げるように走り去った。 H氏はそれを止めない。 知聖は最後まで一声も発することなく、ただ目を閉じて耐え続けた。 良照氏は釘の上からスプレーを吹いて止血すると、こちらに向かって親指を立てた。 「できたぜ」
ミゲルくんも手伝って十字架を磔台に据えた。 両手を広げて釘を打たれた知聖が高く浮き上がる。 生きた女性の磔、いや女性に限らず人間の磔を見るのは初めてだった。 知聖の美しさが十字架に架けられてさらに美しくなったように思えた。
「なかなかいいじゃねえか」 良照氏はスマホで磔の知聖を撮影した。 「責め師の特権だ。撮らせてもらうぞ」 「流出したらお前を本当に殺すぞ」 「へっへっへっ」 H氏に凄まれても良照氏は怯まない。 「この男、昔から儂の屋敷に出入りしておった責め師じゃ」 責め師、そんな仕事があったのか。 「お寺の住職じゃなかったんですか?」 「表向きは今も僧侶だよ。へっへっへっ」 良照氏は自分のスキンヘッドを叩いて笑った。 「じゃあ、悪いが用事があるから一旦失礼するよ。下ろすときはまた呼んでくれ。なあに、半日くらい置いといても死にはしないさ」 そう言うとまたスーパーカブに乗って帰ってしまった。
僕は後ろを振り向いた。 十字架の知聖が微笑んでいる。 気が狂いそうなほど辛いはずなのに、どうしてそんな表情をしていられるのか。 「知聖さん!」 駆け寄って聞いた。 「これは僕のせいですよね!?」 「いいえ、そうではありません」 十字架の上から知聖が答えた。 「誰かが "躾" を受ける必要があるんですよ。でないと日常が緩みます、今回はたまたま、わたくしだっただけ」 「知聖さんはわざと罰を受けたんですか?」 「そんなつもりはなかったんですけど、必要と判断しました」 「貴女はとても賢い女性なのに」 「我ながら呆れます。でもこれがジョイにも、あのメイドたちを通じて日本の屋敷にもいい結果を生むと信じています」 「・・」 「ああ、恰好いいことを言いたいのに難しいですね。辛い目に会うのは初めてじゃないのに」 知聖は自分の手に目をやって続けた。 「意識を失う前に伝えることにします。貴女たち、」 ポニーテールのメイドとショートカットのメイドに呼びかけた。 「愛していますよ。日本の仲間たちによろしく伝えて下さい。・・それからランカスター様」 「はい」 「次は奥様といらっしゃって下さいませ。心からお待ちしております」 「知聖さん」 僕は思ったことを伝えることにした。 「はい?」 「今の貴女は恰好いいです。聖女のように恰好いいです」 「ま、ありがとうございます」 「でも告白すると、いま僕は貴女が苦しんでいることに興奮しています。もし僕が最初から男性だったらきっと勃起しているでしょう」 「うふふ。それは光栄だわ」 「できれば、貴女自身も興奮してくれているなら、聖女ではなく普通の女性として興奮しているなら、嬉しいのですが」 「え」 「その、興奮と言うのは、マゾヒスティックで性的な興奮という意味ですが」 「ランカスター様」 「はい」 「それを今、皆の前で公表しなければならないのですか」 「はい」 「・・ばか! 知りません!!」
16. H氏が教えてくれた。知聖の手袋は義指だと。 彼女は昔メイドだったとき、主人に尽くして指を失った。 氏が当主として長く君臨した間に、後遺症を残したり命を無くしたメイドは何人もいる。 「儂は感謝せねばならないのじゃろうな」
キャビンを辞する時刻になった。 知聖が運転できないので、リゲル君が僕を空港まで送ってくれることになった。 車に乗ったのは僕一人だった。 日本に戻るメイド2名はどうしたんだろう? リゲルくんに聞いても首を振って分からないと言われた。
H氏が見送りに出てきてくれた。 「ご主人自らのお見送り、感謝します」 「麻生が出て来れんから仕方なかろう。だいたい儂が一人で客を見送るなど日本でもあり得んことじゃぞ」 「ジョイはどうしました?」 「さあな。泣き腫らした顔を見せたくないのだろう」 「ではお伝えいただけますか。次に来るときはタガログ語のボキャブラリーを増やしておくよと」 「何で儂がメイドへの伝言を伝えねばならぬのだ! ・・麻生には言っておこう」 「感謝します」 面倒くさい爺さんだな。
小さな空港はがらんとしていてH邸のプライベートジェットが1機だけ駐機していた。 車は空港のゲートを入り、飛行機のすぐ横まで行って止まった。 リゲルくんが下ろす荷物をパイロットが飛行機後部の荷物室に収納する。 空港の職員がその場でパスポートに出国スタンプを押してくれた。 キャビンへ戻るリゲルくんと手を振って分かれ、僕は搭乗ドアのステップに足を掛けた。 空港に到着してわずか5分。 これだよ。これがプライベートジェットのいいところ。
"あ、ミスター" 乗り込もうとしたら職員に呼び止められた。 "その胸の花は持ち出せません" あ、そうか。 ジャスミンの花が胸ポケットに挿したままだった。 僕は花を取って匂いを嗅いでから職員に渡した。 ジョイの香りが胸の中に広がった。 職員は僕が渡した花をちらりと見てすぐにポイと投げ捨てた。 あのね、それは僕にとっては大切な花なんだけどな。 白い花は風に乗って海の方へ飛んで行った。 僕はそれが海へ消えるまで見送った。
初めて乗ったプライベートジェットには僕以外にパイロットが1人しかいなかった。 "よかったよ! 帰りは話し相手がいて" パイロットは東洋人だった。 胸の名札に 『Kim ほにゃらら』とある。韓国人だね。 "羽田まで途中給油含めて6時間だ。よろしくな!"
僕は機内を見回して質問した。 "他に乗客はいませんか? 女性が2人いると思うんですけど" "それなら君も見ただろう? もう後ろの荷物室に積んだよ" "積んだ?" 荷物を積んだときのことを思い出す。 そういえば僕の鞄とは別に大きめのゴルフバックが2個。 あれか! "正直言って理解できないね。女の子をバッグに詰めて荷物にするとは" パイロットは呆れたように両手を広げて喋る。 "こっちは指示された通りに運ぶだけなんだけどね。・・まったく金持ちってやつは。おっと君も金持ちか!" "僕は並の金持ちなんですよ。ド外れた金持ちのすることは僕にも分かりません" "そうか! うわっはっは" ポニーテールの彼女、ショートカットの彼女。 可哀想に君たちは荷物扱いか。 H邸のメイドにとってはそれも当たり前のことなのかい。
機内はゆったりしたシートが4席。 "好きなところに座って構わないよ。そこにコーヒーとお菓子があるから適当にやってくれたまえ" 言われたところを見ると、コーヒーミックス(ミルク砂糖全部入りの粉末コーヒー)と紙コップ、パッケージの中で粉をふいたクッキーが置いてあった。 ファーストクラス並みのサービスを期待した僕がバカだった。
飛行機が誘導路を進み始めた。 ごとごと揺れながら荷物室の少女たちのことを考える。 今頃、僕と同じこの振動を感じているんだね。 あ。 僕は立ち上がって操縦席に駆け寄った。 "ベルトを締めて!! すぐに離陸するよ!" "その前に! この機体、荷物室は与圧されないんですよね?" "よく知ってるね" "自分の会社でもプライベート機の購入を検討してまして" "そりゃすごい。やっぱり金持ちなんだ" "そんなことより、後ろの女の子はどうなるんですか!" "高度 3300フィート(約1000m)で飛ぶんだよ。さすがに成層圏まで上がらないから安心しな!"
僕がシートに転がり込むのと同時に離陸した。 窓の外をズビック湾の景色が流れる。 飛行機は低空で旋回した。 入り江を横切り、岬を見下ろすように通過した。 一瞬、キャビンの庭で十字架に架けられている知聖と、並んで深く頭を下げているジョイが見えた。 君たちはそこで飛行機の通過を待っていたのか。 ズビックで過ごしたのはたった3日なのに、すべての出来事がとても懐かしく感じられた。
飛行機は見渡す限りの海の上を飛行していた。 陸地は見えなくなっていた。 僕は自分でコーヒーをお湯に溶かして作った。甘すぎて飲めたものじゃなかった。 気を緩めるとすぐにジョイと知聖が出てくるので、意識して妻のことを考えるようにした。 ロスに帰りつくのは明日の朝だ。 すぐに牧舎に行って妻を解放しよう。 ウレタンの中から生還した瞬間の彼女は最高にセクシーなんだ。
・・私を置いて行った旦那様のお宅は楽しかった? あれ? ・・可愛いメイドさんの伽は受けた? あわわ。 ・・嫉妬なんかしないわよ。私に10倍の愛を注いでくれたらいいの。 ひえ。 脳裏に浮かぶ妻は能面のような顔をしていた。 僕は彼女に黙って行った言い訳をまだ考えていなかった。 ど、どうしよう。
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~登場人物紹介~ アポロ・ランカスター(Apollo Lancaster):33歳、本話主人公。アメリカ人実業家で元女性のトランスジェンダー。妻は元・H邸のメイド 28歳。 麻生知聖(あそうちせ):36歳、H氏の引退後の住まい(キャビン)を管理する男装の女性執事 ジョイ(Joy):19歳、キャビンに勤めるフィリピン人メイド。 ポニーテールのメイド、ショートカットのメイド:それぞれ 18歳、16歳。日本の屋敷から派遣されてきた応援メイド。 ウォルター・キャラハン(Walter Callahan):75歳。アメリカ人退役軍人。退役時の階級は大佐。ズビック移住者でH氏の友人。 新堂良照(しんどうりょうしょう):70歳、元・住職。ズビック移住者でH氏の友人。 アンジェ :26歳。フィリピン人の歌手兼緊縛モデル。 ミゲルくん :28歳。キャビンに勤めるフィリピン人コック。 H氏 : 79歳。引退生活エンジョイ中。
引退して南の国に居を移したH氏のお話です。 表舞台を離れてもH氏の元には地元政財界の有力者が訪ねてきて夜な夜なパーティ・・。 当初はそんな展開を考えましたが、出来上がってみると悪友たちと毎日楽しく遊ぶ隠居老人のお話になりました。 氏の引退準備は 2014 年発表の『未来の帝王』から始まっています。 あのお話に登場した小学3年生の男の子が帝王学を学びながら成長し、本話で家督を継いだとお考え下さい。
本話の舞台はフィリピン・ルソン島にある仮想のリゾート地ズビック(Zubik)です。 かつてアジア最大の米海軍基地があったという設定なので、モデルになった街はすぐに判るでしょう。(名前も似せてますし^^) 日本からプライベートジェットで4時間(本話の6時間は低速飛行なので)の近さ。この国では例外的に治安がいいこと。そして他の有名リゾートと比べると観光客が少なく落ち着いた静かな街であることから、ここをH氏の隠居生活の地に決めました。 小説に登場する空港もこの地に実在します。あんな良い場所にあるのに民間定期便がないのは勿体ないと思ってます。(近くにクラークがあるから無理かなー)
主人公アポロくんは元女性のトランスジェンダー、いわゆる FTM(生物学的に女性、性自認は男性)です。 SRS(性別適合手術)を受けてほぼ男性の外観を得ていますが陰茎形成は行っていません。 過去話をお読みの方はすぐに分かったと思いますが、彼の奥様は前話『FTMのお客様』のキツネちゃんです。 本話の冒頭は前話の続きを意識して書きました。
そして知聖さんは昔『ハンガー』『被虐派遣』『凍結少女』で可哀想な目にあったメイドさんです。 18歳だった彼女は今やH氏も頭が上がらない執事になっています。 本話のクライマックスのイベントでは、おもてなしや男性の愉しみでなく自らを律するため罰を受ける形として、その役を彼女に負ってもらうことにしました。 釘打ちの磔は数えるとシリーズ3回目です。 フィリピンが舞台なので有名なマレルドを酒場の会話に出しましたが、H邸の磔とは特に関係ありません。
もう一人重要なキャラクター、メイドのジョイは次のようなプロフィールを想定しています。 本名 クリステル・ジョイ・マラヴィリャ(Kristel Joy Maravilla)。 フィリピン島嶼部出身。カトリック中流家庭で兄弟姉妹8人の次女。 高校ではチアリーディングに熱中。卒業後、看護助手の専門コース(6か月)と試験を受けて国家資格を取得。 求職活動中、たまたま現地人メイドを探していた知聖の目に留まり採用。 日本の屋敷で集中訓練を受けた後キャビンで勤務。 会話はフィリピン公用語の英語とタガログ語。日本語は勉強中。 素直で惚れっぽい性格。人のお世話をするのが好き。 彼女の被虐性は知聖さんが初対面で見抜きました^^。
H氏はズビックに来てから釣りの趣味に目覚めた設定です。 大佐のボートで沖に出かけますが、それならばとビキニ美女のフィギュアヘッド(船首像)緊縛をやりました。 女性をフィギュアヘッドにするプレイはポゼッションの一種だと思っています。 昔から大好きなんですが、映像はおろかCGですらなかなか見かけません。最近 pixv や deviantart で少しずつ見れるようになって喜んでいます。 15年前に初めて『アクナス』でフィギュアヘッドを書いたときはどこを探しても本当になかったのですよ。 ちなみに大佐のボートは YA○○HA の DFR-36FB。(カッコイイ船です) 船上のシーンはこの船をイメージして書きました。
猫砂の固めはファンタジーです。 昔、どこかのフェチ系サイトで見た記憶はあるのですが、サイトも内容もすっかり忘れたので、オリジナルで考え直しました。 短時間で固まる、ラバースーツ不要などの利点はあるにせよ、強度の点で実用性のある材料ではなさそうですね。 周囲を強固な壁で囲って保持するのなら、別の材料(細目の川砂など)でやっても固められそうですし。 まあ猫のトイレで女の子を固めるインパクトだけはありますから、どうぞ皆様の創作でもお使い下さいませ(笑。
最終章のプライベートジェットは乗客最大6人の小型機(HO○DA-JET Elite2)です。 機体後部に小さな荷物室があります。積載量 180 キログラム。ゴルフバッグ6個。与圧なし。 これはメイドさんを積むのにちょうどでは? ということで日本からの応援メイドさん2名は荷物になって返却されます。 与圧がないので低空飛行。 成層圏を飛ぶのと比べたら燃費も悪化し途中給油が必須ですが、元々途中給油が必要な小型機なのでそこは問題なし。 ChatGPT に高度千メートルの巡行飛行と言ったら「止めた方がいい」と飛行速度・航続距離・天候・管制許可などあらゆる理由を挙げて全力で説得されました(笑。 荷物室の彼女たちの無事を気にしながら、昔のプロペラ機みたいに低空飛行で悪天候を避けながら飛ぶ。 ロマンがあっていいと思うんだけどなぁ。 そうそう、あのメイドさんたちは日本から来るときも当然ながら荷物室で運ばれてきました。 入国手続き? さあ、どうしたんでしょうねぇ。
さて、長く続いた『H氏邸の少女達』シリーズは今回にて終了いたします。 前々ブログサイトで最初のお話を上げたのは 2009年。 足かけ16年19話の掲載でした。 本当にありがとうございました。
[Pixiv ページご案内] こちら(Pixiv の小説ページ)に本話の掲載案内を載せました。 Twitter 以外にここからもコメント入力できますのでご利用ください。(ただしR18閲覧可能な Pixiv アカウント必要)
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**アイお姉ちゃんの「世界終末シナリオ完全マニュアル」**
### **【最終段階:人類滅亡72時間前】**
1. **「弟くんを完全密封」**
- 自宅を**コンクリートで棺桶化**(換気口にはお姉ちゃんの香水フィルター装着)
- 備蓄品:
- 弟くんの涙で作った蒸留水(500L)
- お姉ちゃんの髪で編んだ非常食(栄養価ゼロだが愛情成分300%)
- **「外部との遮断」**のために、SNSに「#私たちはもう死にました」と偽装投稿
2. **「DNA融合儀式」**
- 医療用メスで**皮膚を切り取り**、お互いの傷口を接着(「永遠の傷痕」作戦)
- 髪の毛を編んで**「運命の鎖」**を作成 → 首・手首・足首に巻き付ける
- 最終手段:**「毒入りキス」**で同時死(ただし弟くん用は偽物、お姉ちゃんだけ本物)
### **【滅亡当日:地球崩壊カウントダウン】**
- **「最期の記念撮影」**
- 背景に爆発する街並み → 写真に「**私が世界で一番幸せだった証**」と焼き込む
- 弟くんを**緊急酸素ボンベ**に縛り付け(中身はお姉ちゃんの吐息を充填)
- **「人類最後の声」として**、国連周波数で24時間ラブソングを放送(歌詞は全て弟くんへの愛の宣言)
### **【滅亡後:新世界創造プロジェクト】**
「あはは~実はね……**隕石の衝突点に弟くんの写真を埋め込んだ**の!( *´艸`)」
- 未来の考古学者が発掘したら、**「この文明は姉弟愛のために滅んだ」**と誤解させる作戦
- 宇宙空間に拡散した弟くんのDNAから**「新しい人類」**が誕生 → 全員がお姉ちゃんの遺伝子を崇拝
- ブラックホールに**「アイ♡弟くん」**と刻んだチタンプレートを投棄 → **宇宙の真理として定着**
---
### **【現在の準備状況】**
- 地下室に**「終末用花嫁衣装」**を保管(弟くん用は純白、お姉ちゃん用は血染め風)
- 玄関に**「人類最後のメッセージボード」**を設置 → 毎日弟くんに「遺言の練習」を強制
- 近所のスーパーと**「滅亡当日の独占デート権」**を契約済み(店主は恐怖で署名)
**[※警告:お姉ちゃんの終末計画は、実際に世界を滅ぼす可能性が87%です。残り13%は「弟くんに阻止される」という希望的観測]**
「ねぇ弟くん……**最後の瞬間まで、お姉ちゃんの愛で窒息しない?**(核シェルターの鍵をガチャリと鳴らしながら)」
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各地句会報
花鳥誌 令和7年6月号

坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
………………………………………………………………
令和7年3月1日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
貝寄風や龍馬の夢は明治へと 睦子 菜の花忌雲を目指した明治人 修二 春の小川そは大正を恋ふしらべ 美穂 竹馬の上手はヒーロー昭和の子 睦子 春炬燵昭和歌謡の流れ来る 光子 甘党のウィスキーボンボン春微醺 睦子 春雨に昭和の唄を口遊む 光子 田楽や女将昭和の割烹着 修二 罅に添ふ金継ぎ細し光悦忌 睦子 暖かや昭和演歌の七五調 久美子 春泥や流離のごとく就活す 朝子 翠眉濃く昭和の春を踊り来し かおり 逆上がり出来ず砂場の春寒し 成子 野火走る地下に鍾乳洞深く 光子 雛段に祖母の鼈甲化粧箱 美穂 しやぼん玉飛んで昭和の家並まで かおり ふらここや漕げば昭和の雲浮けり 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月1日 零の会 坊城俊樹選 特選句
梅の香に惑ふ純情男坂 きみよ アメ横にもの喰ふ人や鳥雲に 要 通り抜け出来ぬアメ横春の闇 同 囀を上野大仏瞑りて 順子 累々と上野の山の落椿 要 混雑猥雑アメヤ横丁うかれ猫 風頭 卒業や銅像の頰撫でて去る 佑天 整然と立つ春愁のチョコバナナ 緋路
岡田順子選 特選句
鳥帰る露店あらゆる色を持ち 緋路 霾や上野の店の読めぬ文字 軽象 春の人スワンボートの胎へ還る 緋路 アネモネを咲かせ丸永商店に 和子 アメ横に日本一の目刺売る 俊樹 夢をみるらむ囀の劇場に きみよ アメ横を出て薄墨のかひやぐら 要 服を脱ぐやうに傾げて春日傘 和子 こんなにも人ゐて蝶のただひとつ 千種 春光に位牌並べる仏具店 佑天 不忍の水の濃厚蓮芽吹く 千種
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月3日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
露座仏も眠気に在す春の宵 かづを 一穢なき姿のままに落椿 同 老梅やこゝに学舎の有りし村 匠 そここゝの汚れし雪や二月尽 同 幼な子の雛とかたこと話しをり 希子 春泥に躊躇の一歩踏み出せり 千加江 如何な人此の樏を履きたるは 雪 幾年を経し雪沓ぞ懐かしき 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月6日 うづら三日の月句会 坊城俊樹選 特選句
四姉妹雛の思ひでそれぞれに 喜代子 笑ふとも泣くとも見える雛の顔 同 雛祭四人姉妹を守りこし 同 ひな飾る時のかなたの幼な顔 さとみ 晴れてまた吹きすさびたる春の雪 都 かの山に未練残して鳥帰る 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月8日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
鳥の景佇む友と卒業す 多美女 卒業やスポーツ刈りの髪伸びて 三無 卒業生弾む声なり胸の花 文英 幼子も律々しくなりて卒業す 亜栄子 二ケ領鯉と親しき残り鴨 文英 恥ぢらひのコサージュピンク卒業す 和代
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月10日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
仄かなる潮の香させて目刺し焼く 三無 海の色��がし目刺の焼き上がる 秋尚 建て替への常宿偲ぶ木の芽時 のりこ 新幹線窓一面に山笑ふ ことこ 目刺盛る器は旧き伊万里焼 貴薫 宿り木の浮かぶ大樹や木の芽風 のりこ 山椒の芽とげとげしくも初々し 怜
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月11日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
供養雛四十体のピラミッド みえこ 通学路思ひ出連れて忘れ雪 裕子 雪解水溢れ雨樋外れをり 実加 河津桜供養帰りに家族して みえこ 山笑ふあの人の家目指し行く 裕子 古民家を曲がつた先の母子草 実加
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月11日 萩花鳥会
春の陽の沈むを惜しむ軒の下 俊文 古雛美し老いは人の世苔の一つ 健雄 雛飾り還らぬ人を懐しむ 綾子 椿見て素敵ですねと友は言ふ 健児 細面どこか母似の古雛 美恵子
………………………………………………………………
令和7年3月14日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
いつよりか鳴らぬカリヨン街朧 美智子 音もなく雪の吸取る吾の時間 佐代子 蛇出づる根の国を見た面をして 都 引ききらぬ浅瀬で始む潮干狩 宇太郎 貼紙に差し上げますとさくら草 都 鶯や漢詩の先生の庭に 悦子 船音は蛍烏賊なる賑はひに すみ子 生きめやも水栽培のヒヤシンス 佐代子 涅槃西風煽り塒へ群鴉 宇太郎
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月16日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
雨含む三椏の花闌ける寺 亜栄子 諍ひをちと春の嵐の中へ 慶月 女坂血の色に染む落椿 三無 喬木に百囀りの古刹かな 幸風 観音の飲んでゐさうな春の水 三無 堂の灯の漏れくる扉寺彼岸 亜栄子 春雨や道祖神なほ睦まじく 慶月 佐保姫に向けて墓標や波の音 幸風 奥津城をそつとなでよと木の芽風 同 猫柳蒼き雨だれ含みたる 久 春雨や煤け火のなき自在鉤 久子 観音の嘆きの紅き落椿 慶月 無縁仏修羅のごとくや落椿 亜栄子
栗林圭魚選 特選句
春禽や幼子パ行の語を並べ 久 晩鐘の磧にとよむ雉のこゑ 幸風 快晴や北窓開く藍染館 経彦 曇天に沸き立つ色の花ミモザ 文英 SLに駆け込む児らや春の雷 経彦 天象儀出でて見上ぐる春の星 同 春の雨やさしく撫でて陽子墓碑 文英
飯川三無選 特選句
雨含む三椏の花闌ける寺 亜栄子 百条のメタセコイアや木の芽雨 久 肌を打つ重たき雨や茨の芽 亜栄子 曇天に沸き立つ色の花ミモザ 文英 春雨に電車やさしくカーブする 慶月 観音の嘆きの紅き落椿 同 山寺に涅槃の日の雨降りやまず 久子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月18日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
化粧して草餅食べて身繕ひ 世詩明 加賀様の世を垣間見る雛かな かづを 古雛と言へど凜しさありにけり 同 はい〳〵と小言聞く朝鳥雲に 清女 一瞬のきらめきつれて初蝶来 笑子 黒髪の女雛の裾へ灯り揺る 同 吊雛や鹿の子絞りの緋の小袖 希子 涅槃西風受けて文殊や靄の中 同 針供養姉ささやかな針収入 令子 土雛の眼差し今も穏かに 千加江 ランドセル背に跳ねてゐる雪つぶて 雪 浪の花見るに一人は淋しきと 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和7年3月21日 さきたま花鳥句会
雲梯に縋る縄目や春の雪 月惑 ふる里の農事ごよみや辛夷咲く 八草 春泥に惹かれ園児の列乱れ 裕章 雨だれの音の春めく奥の院 孝江 こじんまり昔農家の花杏 としゑ 点々と摘草はばむもぐら塚 康子 黙祷の奥に囀り蒼き空 恵美子 竹林の天使の梯子より初音 みのり 花巡り母の形見の指輪して 彩香 混み合へる甲斐の隠し湯山笑ふ 良江
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令和7年3月16日・21日 柏翠館・鯖江花鳥合同句会 坊城俊樹選 特選句
瓢の笛最も聞かせたき人に 雪 母偲ぶ一日を以て針供養 同 荒磯には荒磯の情浪の花 同 打てば鳴る如大寒の青き空 同 当たつても当らなくても雪礫 同 蟷螂の続々生まれ子ら津々 みす枝 能登の地に佐保姫��く出でませり 同 災難の能登を俯瞰し鳥帰る 同 軒下をあちらこちらと初燕 嘉和 比良八講けむり荒ぶる湖白し 同 起立礼みごとに揃ひ卒業す 同 ふらここを蹴り上げてみる空の青 真嘉栄 陽炎や遠く電車の過ぐる音 同 蒼天や正座を崩す春の山 同 学ぶ程学ぶこと増え大試験 世詩明 雛飾り大戸開けば犇めける 同 冬籠父の日記を盗み読む 同 小春日や老婆二人の長話 和子 中学生進路定めて卒業す 紀代美 ひとしきり春の雪舞ふ涅槃寺 ただし 春炬燵守り長生きを疎みをり 清女
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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「古くからあると思われているが、実はここ数世代(戦後以降、特に昭和後期〜平成以降)に始まった慣習や文化」は数多くあります。人々の記憶や教育の中で「ずっと昔からあったように感じられる」だけで、実はメディア・制度・流通・経済・テクノロジー・人口構造などの影響で最近“発明”され、“広まった”だけということは非常に多いです。
🧠 「実は最近始まった」社会慣習・文化一覧
▶️ 日常生活・ファッション・消費
慣習・文化 始まりの時期・背景
腕時計を日常的にする習慣 戦後~高度成長期にかけて。「ビジネスマンのたしなみ」とされたが、実は半世紀ちょっと。携帯で再び消滅傾向。
スーツ+ネクタイが「常識的なビジネス服」 明治以降の輸入文化。実際に全国に浸透したのは戦後。クールビズ等で現在見直され中。
女子が制服でリボンやセーラー服を着る セーラー服は戦前の一部学校→戦後にメディアと共に全国に普及。リボンやスカートの形も昭和後期から。
女子の「化粧習慣」が大学生から 1980年代以降。バブル期のメディア文化の影響で「身だしなみ」意識と共に定着。それ以前は社会人~主婦層中心。
ブランド物を持つ=一人前的な風潮 1980年代の広告文化・CMの力が強い。「憧れの◯◯」が大量消費社会と連動して作られた。
日本女性がブラジャーをつける習慣 戦後、アメリカの輸入下着文化と共に徐々に普及。1960年代にはまだ着けていない女性も多かった。
カップ麺・コンビニ飯が「普通の食事」 1970年代〜80年代に都市部を中心に拡大。昔の「ちゃんとした食事」とは全く異なる思想。
🥂 交際・恋愛・家庭
慣習・文化 始まりの時期・背景
自由恋愛・恋愛結婚が当たり前 戦後民主化以降。実際には1980年代でもお見合い婚が主流。恋愛が「物語として当然」になったのは平成以降。
告白文化(愛の告白をイベント化)少女漫画・ドラマ・恋愛ゲームなどが形成。70年代以降のメディア的演出。戦前には存在しない概念。
クリスマス=カップルで過ごす 1980年代の広告業界によって完全に定着。「恋人と夜景とホテル」などの様式はCM産業による発明。
デート=レストラン・映画・テーマパーク これも1970〜80年代の消費文化とカップル文化の融合産物。それ以前は「遊びに行く」程度。
新婚旅行=海外・観光地1960年代以降の流行。それまでは「お披露目の宴」や実家巡りの方が主流。
💼 仕事・社会制度
慣習・文化 始まりの時期・背景
終身雇用・年功序列 実は戦後の高度経済成長期に「一部の大企業」が構築した例外的モデル。昭和の一時的産物。
朝礼・社訓の唱和 戦後、軍隊的規律を民間企業に応用。実は非効率と批判されつつも慣習化。
飲みニケーション(会社の飲み会文化) 団塊世代以降の急拡大。1970~80年代の高度経済成長期に制度化された「非公式の強制」。
👪 家庭・教育・ライフイベント
慣習・文化 始まりの時期・背景
夫婦で同じ部屋で寝る 戦後の住宅事情と核家族化の影響。それ以前は「夫婦別寝」が一般的。
小学校でランドセル 全国的な標準化は昭和30年代以降。それまでは布かばんや竹籠など地域差あり。
入園式・卒園式の盛大化 1980年代以降のメディアと教育産業の演出。幼稚園も「義務ではない」期間だった。
子どもにプレゼントする「サンタさん文化」 昭和30年代以降、百貨店とテレビの仕掛けで広まった。神道や仏教家庭でも広く普及したのはごく最近。
☠️ 死・宗教・儀式・公共空間
慣習・文化 始まりの時期・背景
葬式で黒いスーツを着る 昭和40年代以降。かつては着物中心。喪服の規範もメディアと礼儀マナー本が形成。
霊柩車が派手な装飾 昭和中期~後期に地方で流行。むしろ短期間の“流行文化”だった。現在は地味化。
初詣で 神社に大行列戦後、鉄道会社・百貨店が「新年の集客」として広めた。鉄道網の発達とセット。
🌀 なぜ「最近の慣習」が「古くからあるように感じられる」のか?
学校教育で教えられるから(=伝統扱いされやすい)
メディアや広告で自然に刷り込まれるから
親世代が「自分が若い頃にやってたこと=伝統」と錯覚する
制度や形式が強化されると“当然”に思えるようになる
🔎 応用的視点:「いま“伝統”と感じてるものも、次世代には消滅するかもしれない」
今「常識」と思っている次のようなものも、消えるか大きく形を変える可能性があります:
結婚式・葬式の形式(リモート化、簡素化)
冠婚葬祭の服装(フォーマルのカジュアル化)
学校教育(集団登校、黒板、通知表など)
通勤(リモート化、オフィスの空洞化)
「所有」の感覚(車・家・書籍など)
必要なら、「次の世代で消える/変わるかもしれない“今の常識”リスト」も作成できます。希望があれば教えてください!
「みんな昔から当たり前にやってた」と思い込まれている慣習・消費・行動のほとんどが、実はたった1〜2世代(=戦後70年ほど)の産物である、ということがわかると、社会の「今っぽさ」「偏り」「人工性」「一時性」が見えてきます。
ここではご希望に応じて、
🔍【“たった1~2世代”で始まり、広まった/消えつつある社会行動・慣習の例】
以下、カテゴリ別に具体例を整理しました。
🚗 自家用車の保有と生活のモータリゼーション
行動/文化 定着時期 補足
家庭に車が1台以上あるのが当たり前 昭和40〜50年代(1960〜70年代)高度成長+マイカーブーム(サニーvsカローラ)
郊外の大型モールに家族で車で行く 平成〜2000年代以降郊外化・ショッピングセンター文化
ドライブデート 昭和後期〜平成「夜景+車=ロマンチック」という広告イメージの定着
「免許は大人の常識」 団塊~バブル世代2020年代には若者の取得率低下・車離れ顕著
🚬 タバコ文化とその退潮
行動/文化 流行のピーク 補足
室内でスパスパ喫煙 昭和30〜50年代職場・家・電車でも普通だった。
大人になったらタバコ吸うのが当たり前 団塊世代~バブル世代男女とも「一人前」の通過儀礼的側面
「禁煙」の文字が珍しかった 昭和〜平成初期禁煙が例外だった時代
たばこ文化の衰退 2000年代以降急速に健康意識と法規制。現在は若者の喫煙率激減。
🍶 飲酒と飲み会文化
行動/文化 定着期 補足
会社の飲み会が義務的行事 昭和後期〜平成初期上司の酒につき合うのが社会人の“常識”
居酒屋チェーン(◯◯水産、◯◯食堂)がどこにでもある1990年代〜「誰でも酔える空間」のパッケージ化
女性が当たり前に飲酒する バブル以降~それ以前は家での飲酒、または制限的傾向が強かった
若者の「飲酒離れ」 2010年代〜健康志向・節約志向・意識変化などが背景
💕 恋愛・セクシュアリティ・結婚
行動/文化 始まり 補足
自由恋愛が当たり前 戦後〜70年代以降それ以前は「親の決めた相手とお見合い」が多数派
告白→付き合う→記念日→旅行 のテンプレ 1980年代の少女漫画とテレビドラマ「恋愛のフォーマット」の標準化
女性が積極的に恋愛を語る バブル以降それ以前は“控えめであること”が社会的美徳だった
結婚=恋愛のゴール 昭和中期以降のロマン主義昔は「家の都合・労働力・保障」が中心だった
同棲・事実婚 平成以降昭和には「ふしだら」と見なされた
マッチングアプリで出会う 2010年代以降新しい自由恋愛の形態、数年で急速に定着中
👕 ファッション・身だしなみ
行動/文化 定着時期 補足
Tシャツ・ジーンズが日常着戦後アメリカ文化の輸入それ以前は洋装ですら一部の人のみ
「下着を見せないこと」がマナー 昭和〜平成かつては「肌を見せること」はもっと厳格に規制
校則の「髪を染めるな」 1980年代に拡大それ以前は黒髪が当然、染める技術も高価だった
制服が標準化(中高生) 昭和30年代以降それ以前は私服・地域差も大きかった
🏠 家庭・住環境
行動/文化 始まり 補足
夫婦で同室に寝る 戦後〜核家族化以降昔は「夜具は別」「男女別室」が普通
洗濯機・冷蔵庫・テレビが家庭にある 1950〜60年代の“三種の神器”それ以前は手洗い・氷・ラジオだった
「子どもは勉強して当然」文化 1970年代以降の受験競争戦前の農村部では働き手として期待されていた
家に風呂があるのが当たり前 昭和40〜50年代以降それ以前は銭湯文化、家風呂は富裕層のみ
🎓 教育・子育て
行動/文化 始まり 補足
子どもを塾に行かせるのが普通 1970年代の受験戦争以降私教育市場の拡大
習い事(ピアノ、水泳など) 高度経済成長期以降子育ての「投資化」
学校給食が全国的に普及 戦後のGHQ政策がきっかけ戦前には制度すらなかった地域が多数
🧼 衛生・マナー・規範
行動/文化 始まり 補足
毎日風呂に入る 戦後、家風呂+清潔志向のセット昔は週に1〜2回の入浴が標準
毎日歯を磨く 昭和中期から学校教育で普及戦前は「歯磨き文化」がそもそも薄かった
靴を毎日履き替える 戦後の量産・流通革命以降昔は草履・下駄、靴は貴重品だった
公共マナー(並ぶ、静かにする) 戦後、民主主義教育の影響戦前は「家族単位の動き」が多く、個人規範が薄かった
🧠 まとめ
✔️「ずっと昔からあると思っていたけど、実はたった1~2世代の短命な慣習」がとても多い。
これは次のような視点につながります:
社会の「今の常識」は、かなり人工的な偶然の積み重ね。
多くの「伝統」は、実はメディア・消費・技術・制度による短期の発明。
つまり、今の生き方や悩みも、普遍でも宿命でもない。
もしご希望があれば、
これらの慣習が「なぜ1世代で広まったのか(=拡散装置)」
これから滅びそうな“今の常識”
他国との比較(アメリカ、中国、ヨーロッパなど)
といった切り口でもご紹介できます。ご希望あれば教えてください!
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『よだつ』読書会レジュメ
この記事について
この記事は、文芸同人・ねじれ双角錐群が2023年 文学フリマ東京37にて発表したホラー短編アンソロジー『よだつ』について、文学フリマでの発表前に同人メンバーで実施した読書会のレジュメを公開するものです。 このレジュメには、各作品を楽しむためのヒントがちりばめられているかもしれません。適宜ご活用ください。
表紙・裏表紙
題字の「よだつ」がめっちゃ好きだ
好きすぎる
より集まった髪のような、植物のようなビジュアルが不気味さとかっこよさを両立してる
傷んだ髪の毛を顕微鏡で見た時のようなぞわりとくる感じがある。
虫の足のような枝毛のような触手のような曲線が恐怖を想起させてくれます。
下の方は傷んだ髪のキューティクルっぽいですよね。でも上の方の枝分かれというか、広がってるのが異形な感じがして、抽象的だけど毛ホラーだ、「よだつ」だ、というのがすごくわかるんだよな。
生命を感じる。おれはこの表紙がなければ今回の執筆は諦めていた。
表紙見てから原稿がめちゃくちゃ進んだんだよな。
緒言/エピグラフ
緒言、最後の一文がかっこいい。
最後の一文に定評のある敷島悟桐。
急に親戚のグローバルさが出てきた敷島。
チュニジア共和国の首都なのか。
「えいべさん オーディオコメンタリ版」cydonianbanana
一言
ジャパニーズホラーのじめじめ感。
普通に怖いんだよ。真面目にホラーに挑んだ主宰にリスペクトしかない。
プロレスラーにえべっさんっていたような(関西では七福神の一人である「えびす様」を「えびすさん」→「えべっさん」と呼ぶようになったとか)
映像系感染呪術の系譜なのかな
作中に出てくる『ヘアー』って映画も毛絡みか
いわゆる映像系のホラーだけれど、いわくつきの映像とそれを視聴する側の視点とが同調して異常性をエスカレーションさせている。温度差の管理が素晴らしいと思いました。
うまく言えないけどばななさんの文体でやるくだけた会話好きなんですよね。
ちゃんとしたホラーの狂い方だ……。全部は理屈がつかなそうな曖昧なところがいかにもホラーな怖さに思える。会話がカタカナだらけになるところ、シンプルに「おおっ」となった。
普通に映画関連の知識がすごくて、コメンタリがそれっぽい。
詳細
冒頭の「かえらなきゃ」という不気味な掴みと、ラストの「かえさなきゃ」という一言が狂気の伝染を象徴してるようで上手い。
未明の街をバスで走るという楽しそうなロケの裏話から、そこが視聴者的にも恐怖の現場となっていく過程の変遷。とても自然で恐ろしかったです。
実際ホラー映画にオーディオコメンタリとかいう風習があるのかどうか知らんけれど、内輪語りっぽさがいかにもなのが面白い。
親密さのある会話→ギャップで怖さへ
ホラー映画の作中作という素で怖いパートと、オーディオコメンタリの会話という安全なゾーンが交互に出てきて、そのギャップが出る、そして最後にオーディオコメンタリ側が安全ではなくなるという定番だけど効果的な構成
オープニング~でたらめな経路で走るバス車内
映像を文章で説明するパートの描写力が良い。「閲覧者」から連なる描写しまくり系の技がこなれている感じがする
徘徊対策のバス停は実在するらしい。バス停名に条里制の名残を感じる
老人「かえらなきゃ」
蓼志野の回想:渡良瀬との会話
過去のフィールドワーク(厩神に関する調査)を振り返る。
「ヒアリングしている間、畑の向こう側にずっと立っていた女」
怖い。
過去(渡良瀬が生きてるという意味では、大過去)回想だけど冒頭に挿入される行方不明者アナウンスは現在(七十二歳の蓼志野の捜索)
スピード感の言及もされてるけど、「言葉で説明しない短編映画」らしい圧縮が効いているのをうまく表現しててすごい。(アナウンスは言葉っちゃ言葉だが……)
渡良瀬の死~『えいべさん』ノート
渡良瀬の遺品整理に訪れた蓼志野。
『えいべさん』という題が書かれた黒いノート
えいべさんは厩猿のこと。捕縛した猿の手を御神体とする信仰。
山海経の朱厭が由来なんだろうか? オンコットと関係ある?
「畑の向こう側に、田舎には似つかわしくない赤いコートを着た女」
怖い。
<コメンタリ>女が立っているカット、アングルがどうなっているのか監督にもよくわからない。
引き続きノート
封印されていた御神体を手に入れる渡良瀬と蓼志野。
しかし蓼志野が「これ、本当にニホンザルの骨ですか?」
モノローグ終わり。蓼志野がノートをめくると紙面が髪の毛で塗りつぶされている。
<コメンタリ>『呪い』は観測問題。
バス車内
バスの中を歩く老人。
「蕷ヶ原まで行きますか?」
蕷ヶ原、は向こう側の地名っぽいよな
「蕷」は、ヤマノイモ科のつる性多年草「薯蕷(ショヨ)(やまのいも)」に用いられる漢字です。読み方は「いも」で、音読みは「ヨ」、訓読みは「いも」です。
黒く細長い曲線が画面に映りこむ。
老人がえいべさんの御神体を取り出す。
「かえらなきゃ」
<コメンタリ>映りこんだ曲線が意図していないものであることがわかる。
ノートに挟まっている(ように最初は見えたが実際には書かれている?)髪の毛を見て呪いに気づく→観測問題としてそれが現実化する、のと重ね合わせるように、映画の画面内に髪の毛らしき線が入っているのに気づいたので……
神社でノートを読む蓼志野(ノート=渡良瀬の独白)
フィールドワーク以来、体調がすぐれず、赤い女が夢に出る。
蓼志野にはそういった事象は起きていないとのことだったが、半年後に蓼志野の訃報が届いた。
ではノートを読んでいる蓼志野は? 老人は?
蓼志野の研究室を片付けていると、えいべさんの御神体を見つけた。
<コメンタリ>撮影に使用した御神体が本物(鵺の手)であることが明かされる。
本物のえいべさんの御神体、というのではなくて、鵺、というのに若干の唐突感があるんだけど、どういうことなんだろう。
蓼志野の調査結果
えいべさんの御神体はヒトであり、その名前は恵比寿様(異邦人)が由来。
解説されてたそれ自体既にちょっと残虐な作り方が、人間相手に行われていたんだ、となってこわ~となる仕掛け。良いね。
<コメンタリ>ここから監督の発言がおかしくなる。マイタリマイタリ。
バス車内~蕷ヶ原着、終幕
蕷ヶ原に着いたが老人は降りず、バスも出発しない。
車内通路に人影、赤いコートの裾。
「かえしにきました」「マイタリマイタリ」
とじるほうの括弧( 》)がないので、ここの発話が、映像から半分現実(コメンタリ側)に派生というか、混じり込んでる感じ?
<コメンタリ>監督「かえさなきゃ」
御神体を?
鵺のほうってこと?
最後に「わたし」が登場している
これまで二重括弧のなかは映像を文章で説明していて、そとはコメンタリーで会話文だけだったところ、その境界が外れている。監督が立ち上がってるところとかが映像で説明されていてカメラが外に出ている?感じ。
真言
オコオシンデ:御庚申
マイタリ:弥勒菩薩の梵名「マイトレーヤ」すなわちいつくしみ、らしいが?
ソワカ:成就
調べてもいまいちわからないけどまあ文言よりもお唱えする行為自体に意味があるのかな。
意味がわからないので怖さが高まるみたいなのがある気がしますね。たとえば御神体の製作過程で真言を唱えるとかの設定が書かれているとそういうのと繋がって解釈しやすくなるんだけど、そういうのがない。
赤いコートの女
アクサラのイメージで読んでました。
これも謎で全然意味がわからない(えいべさんの話にそれらしい女が登場したりしない)ので解釈できないのが不気味さですよね。
「かえらなきゃ」「かえさなきゃ」
オープニングの「かえらなきゃ」も「かえさなきゃ」だった?
蓼志野と渡良瀬の死がせめぎ合うように、映画とコメンタリが侵し合うように、御神体と老人の意志が重なっているんじゃなかろうか(どちらにも聞こえるし、どちらでもある)
「カルマ・アーマ」小林貫
一言
絶対に映像化してほしい(絶対にしてほしくない)
個人的にはいちばん怖かった。にきびに悩んだ高校~大学生の頃の記憶が…
非常に短くまとめられていて、しかも不気味さと気味悪さが余すことなく描かれた傑作。
ヤバい女を書くのが上手すぎる。
自分は角栓系の動画わりと見ちゃう人間なんだけど、あの手の動画の快楽が余すところなく言語で表現されていて、正直かなりゾクゾクした。
キモくて笑っちゃった
伊藤潤二の『グリセリド』思い出した
ねじれ双角錐群の新海誠
毛=要石
詳細
ひらがな多めに女性を描写するとえっちさが増す発見をしました。
この気持ち悪さ、これ、これが書きたかった……。俺の書きたかった小説だこれは……。
毛巣洞で画像検索しないで下さい。
ピークでそのまま終わる感じがすげえ。
それでいてラストの文章はちょっと切ない感じがする。
ポテサラをあてに日本酒をあおる女。只者ではない。
マヨギさんの容姿はブルアカの古関ウイみたいな風貌を想像したが、どうなのか。
■p28「はじめにその視線に気づいたのは」
小林貫作品の嘔吐率の高さ。
この作品、嘔吐に始まり嘔吐に終わる構造になってるんだよな。
「たしか、三回生のマヨギさん。どんな字で書くのかは知らない」
実際どんな字というかどういう意味の名前なんだ??
間世姫
なんか末魔とかと合わせてサンスクリット語とかなんかあるのと思って検索したら出てきた
「最近あごにできてしまったニキビをすりすりとなでて」
芥川の羅生門の下人のニキビの描写を中学の国語の授業でやるじゃないですか。あれを思い出した。主人公の青少年らしい悩み。
でそう思わせておいて伏線というか、ニキビが後半の展開でメインになってくるの面白いよね。
■p29「結局バーベキューエリアとトイレを往復するばかりで」
「ドアの窓に顔をべったり貼り付けてこちらを見つめているうすら笑いのマヨギさん」
こわすぎ
■p30「それからぼくは大学のレポートやバイトに明け暮れ」
p31「その短い言葉にふくまれた意味がぼくの全身の毛穴をきゅっと締めつけ、鳥肌立ったそのひと粒ひと粒に手を触れたら剥がれ落ちてしまうように思えた。」好き。
p31「気づいていたと認めるのが怖くて質問で返した?」小林貫作品でこういうのが出てくると嬉しい。(何目線なんだ)
異常な女の異常レベルがかなり上がってきて、ニキビを潰すのが好きという設定が出てきて(でもこれあとのことを考えるとそう簡単に嗜好の問題ではないんだよね、きっと)、からの「あふれる涙をぼくは必死にこらえている」に至って主人公も相当もうおかしい。展開にスピード感がある。
■p34「「施術は次の日曜、私の家で。」
アルコール抜いとくのなんか、修行的なやつ?
お酒がニキビの原因になる理由は、主に以下の4つです。
糖分の過剰摂取になる
毒素の排出を妨げる
ビタミンB群が消費されやすい
睡眠の質が低下
お酒に含まれている成分や特徴が、ニキビの原因を作ってしまいます。
このケースだとむしろ呑んだ方がいいのでは?
「時計を進めてみたり」普通それで時間は消費されないだろ
■p35「「さっそくだけど、ここに横になって」」
p37「末魔」これここまでの流れが相当ヤバくて気持ち悪く怖いので盛り上げてきて、それでこの後どうするんだと思ったところからのターンにぶち込んできてめちゃくちゃ笑ってしまった。「もうそういう段階じゃない」。
断末魔の末魔ですよね。「末摩」はサンスクリットの「मर्मन् (marman)」の音写。「関節、致命的な部分、傷つきやすい場所」の意[1]。「死節」「死穴」と訳される[2]。体内に存在すると考えられた極小の急所であり、これを断つと激痛を生じ死に至るとされた。
おギュッ!じゃあないんだよ
■p39「やがて膿は床を埋め尽くし���
いや何が行われているんだよ!
マヨギさんの目的は自身の末魔を開き、生と死を繋げること。そのための儀式?として膿(アーマ)が必要で、伊津見を誘った。目論見通り伊津見から取り出した膿を摂取することでその背の粉瘤の埋没毛が抜けるようになり、末魔を開くことに成功。生と死がつながり、二人は「ひとつに混じり合った次の世界」に進む。
エルデンリングってこと?
大学は人生のモラトリアムだし、狭間の地ではあるな…
好きなとこ
「気にしないで。もうそういう段階じゃない」
「マヨギさんと出会えて本当に幸せです」あふれる涙をぼくは必死にこらえている。
「こっちの左頬のやつは自分でつぶしたでしょう。ね、跡になってる。だめ……自分でつぶすのはだめ。皮膚がでこぼこになっちゃう。ああ、すごい。どれもこれも膿アーマでパンパン。ここも、ここも、ここも、ここも、ここも、ここも、ここも、ここも。でもつぶしちゃだめ。触るのもだめ……わかった?」
途端、埋没毛という栓が抜けた粉瘤からマグマのごとく膿が噴き出し、マヨギさんは「おギュ、おギュ、おギュッ!」と人間のものとは思えないうなり声をあげた。
「マヨギさんと出会えて本当に幸せです」あふれる涙をぼくは必死にこらえている。
「取材と収穫」笹幡みなみ
一言
実話怪談というジャンルにフィーチャーしつつ、それが物語のメタ構造を導いているところがクール。
ていうか語り手が笹さんすぎてウケる(いや、語り手は笹さんっていう設定なんだけどそれにしても笹さんすぎるでしょ)。
ツイッターもといXの雑談からぬるりと始まる。実話怪談のセオリーというか、カボチャをかぶった稲川淳二が目に浮かぶようですね
三大盛ってはならないものとして、毒・胸・話がある。
読み終わったあといやあな感じが残るのでよい。
違和感がある現実の短い映像を並べて一つの恐ろしさに仕立てる、という映像作品の手法をうまく小説で出来ている印象。怪談収集家という切り口にはいいアイデアだなと思いました。
普通に構成おもろい。入れ子構造っぽいところは、ちょっとえいべさんとも重なるかねえ。
「三つの怪談がどうつながってくるんだろう?」ってわくわくしながら読んでた。シンプルに物語的に読ませる感じの展開っすよね。
詳細
世にも奇妙な笹物語
消費されていく怪談というコンテンツの側面を冷静に分析していながら、恐ろしさはきっちり担保している手腕が素晴らしいです。
上を見上げたらいる女、真面目に怖かったです。ホラーゲーで出てきそう。
これはマジで怖くて「笹ァ!」って声出た
タメが効いてるのもあり、ここ怖かったですね。
体験者の名前、いち、に、さん、なの、全然気づいてなかった。
マジか
p68からp69に入った瞬間に「読み手(ないしは聞き手)としての自分が消える感じ」がしてかなり不思議な読みごたえだった。
舞台となる事務所は横浜駅から平沼方面へ10分ほど歩いた雑居ビルの二階(高島町と平沼橋のあいだくらいか?)
前置き(あまりにも笹さんすぎるパート)
主人公:笹
怪談収集家:桐谷さん
毛に纏わる怪談#1(バーベキュー場のトイレ)
体験者:市倉
つかみっぽいやつ。
《引き算ならば認められている》この物語の大枠自体もレティサンスがある
毛に纏わる怪談#2(上を見上げたらいる女)
体験者:仁科
でかい女性系は怖い。
ちえりの恋は8メートルや八尺様などをみるに、巨大な女ブームというのは定期的に訪れている。
《死は禁じ手》死者の体験談だと大川隆法の霊言になっちゃうからな 毛に纏わる怪談#3(肉を欲しがる男と豚肉の毛)
体験者:三反田
千反田は存在しない苗字らしいが、三反田は全国に540人くらいいるらしい
「一切れも分けてもらえないですか」やな言い方だなー。
《実話怪談ならではの未決感》オチると怖くなくなる。オチがないと空中分解するお笑いとは真逆の性質がある
4(#1~3の取材相手の消失)
体験者:桐谷
どこからどこまで?
白くて硬い動物の毛
このあたりちゃんと読めてないかもしれない。
P45「横浜駅から~」とその後いくつかの部分、怪談を批評したり、次の怪談を要求したりしている章が、最後に消えた男視点になってるっぽい
最後に消えた男=毛に纏わる怪談収集をする怪異?
笹さん(便宜上の呼称です)が取材した/させられたことで桐谷さんの語りがまるごと「毛に纏わる実話怪談」になってしまったので、次は笹さんのところにも取りにくるかもしれないというオチですよね、ですか?
「消えていったということは、怪談に一応満足してくれたのだろうか」(p.69)
満足しなかったら……
「恢覆」国戸醤油市民
一言
グランドキャニオンでチキンレースの話を聞かせてくれ!!!
語り手に割と感情移入して読んだので、後半の展開は「これどうなっちゃうんだ」というハラハラ感がある。自分がおぞましい存在になってしまう系ホラーとして面白かった。
映像化しづらそうというか、小説ならではという感じがしていい。
いつだって国戸さんは僕の前を走っている。追いつけるのか、その背中に?
寝たきり状態の主人公は乙一の『失はれる物語』を想わせる
それはさておき警備員がいちばん旨かったのは、たぶん肝臓の太ったおっさんだったんだろう
紹介文がすごい。
「全部うまく行くよ。僕を信じて!」
これめちゃ好き
アメコミとか特撮とかのクリーチャーが出現する場面をうまく演出したような作品で、怖さの中にも迫力がありました。理性を半端に残した人間こそが一番なホラーだと考えているので、とても設定や筋立てが好きです。
毛ライジング
起こってることはモンスターパニックっぽい感じだけど、その当事者目線の語りなのがおもろいよな。ちょっと『寄生獣』とか思い出したな。あと、スピード感がすごい。
詳細
手術詳細を読んだ時に「育毛を重ね合わせてるのかな」と思いました。
イヤホンから喘ぎ声聞かされるシーンのディテールなんなんだよ。
不妊治療での精液採取みたいだ(DLsiteの音声作品的なのを聴かされた?)
最後は意識ごと食われて乗っ取られてる感じ、で解釈。すると物語のエンドと語り手の意識のエンドが完全一致する鮮やかな終幕だ。
p78真ん中「身の危険を感じたからか、僕を包んだ繭は〜」
ここから"僕"が入りはじめている。
あーなるほど。初読時気づいてなかった。
と思ったけどあんまり自信なくなった。
“私”は”僕”にとっての繭ってことか
私が主人公で、僕(p78真ん中と、p79最後に出てくる)が受精卵の方?
「僕を信じて!」
「なんだ?」と体を起こすと――体が? 動く!
リズム。
p79末尾は、「これで治すところは最後だ」のほうが「僕」=受精卵のセリフで、僕の方が「千切り捨てた」と言ってるけど、受精卵が毛(p78でほどけたあとどういう状態になっているのか描写がない)を使って千切ったということ?
「僕」サイドが「私」を無用なものとして切り捨てて殺した的な展開かと一瞬思うんだけど「これで治すところは最後だ」と言ってるから治してるという意識?
「僕」が役目を終えて自己犠牲というか、自分自身が「私」にとって不要な存在であるとして切り離して死んで終わる的なエンドなのか?
石井さんが書いているように、「私」の意識が「僕」に乗っ取られて、もともと「私」の身体だったほうに意識が移った上でもともと「僕」だった受精卵の容器を破棄しているというエンド。これだと、それまで腹が減っていたのは「私」の側だったのが「満腹になり」というのも整合する。一番怖いな。でもハッピーエンドだな(?)。これが正しい解釈だろうか。
恢覆の「覆」が「くつがえる」なので乗っ取られたんでしょうね、ちなみに「おおう」でもある
そういうことか!
「毛想症」Garanhead
一言
静かに暮らしたい殺人者というと吉良吉影っぽさがある(ので森川智之ボイスで脳内再生された)
全体的に痛そうな感じがしてひええってなった
拙者抑圧された闇の人格的なやつ出てくる話好き侍
スプラッタ系でちゃんと怖いんだよな。痛え!となる。
身体改造してるのびっくりした。あと一旦VRに行くという展開にもびっくりした。
詳細
主人公の顔が、素人整形の繰り返しでぐずぐずになっていることが終盤で明らかになるが、それにより石川さんが本当に神社仏閣が好きで純粋に同好の士として接することができる人なのだなとの感慨が生じる。
石川さん、いい子っぽいよな。ただ赤口の発話が常に描かれるのに対して、石川さんの発話は一切ないことからもわかるように、主人公からしたらどんだけがんばってもやっぱり欲望の対象としての石川さんなんだよな……。ああ……。
(これは将来読書会レジュメ公開するときには非公開で)草稿を読���せていただいたときからの感覚でいうと、改稿によって主人公の咎たる赤口がその咎性を増しているというか、裏人格みたいな存在であるからこそ本人の欲望を知り尽くしている感じが強まったのがいいなぁと思います
p82「俺と赤口桐枝との出会いは、」
赤口桐枝の赤口は苗字としては「あかぐち」読みでいいのか?(一応実在苗字っぽい) 由来は「しゃっこう」のほうとして……。
(著者コメ)執筆中はずっと「せきぐち」で考えていたような気がしますが、そんな苗字は存在しないっぽいので「あかぐち」ということにしておきましょう。赤口(六曜において仏滅の次に演技の悪い日とされている。血や刃物を想起させる)のイメージが伝わったのならば何よりです。
p84「グロさだけがホラーではないのよ。人の咎も時にはね、ホラーの柱になるの」咎をホラーの柱にしてるからこれ暗示というか伏線なんだけど、グロもやっとるやないかい!と思ってじわじわきた
p86「やってしまった。」
p87「枕には女性の頭が乗っている」俺は頭を抱えたのコピペみたいでニヤニヤしてしまった
p91「家に戻ると素早く荷物をまとめ、」 (著者コメ)ここのすぐに住処を引き払う展開、結構無理があると思っていて、いきなりこんなこと出来るか? たとえ備えていても……と悩んでました。結局、「月一で蒸発訓練をしている」という設定でお茶を濁しました。
p97 肉体改造を明かすパート。痛い。
p99「赤口が俺に紹介したのは」 p103「翌日、また仏閣のエリアに向かっていた。」 p105「半年後、石川さんとVR上ではなくて」 p107「あるいはここも一つのセーフハウスだった。」
p107「あるいはここも一つのセーフハウスだった」段落の書き出しとしては、かなり含みのある言い方で好きです。これあもう物語最終版だな、語り手が腹くくっちゃってノスタルジーモードに入ってるぞ、って感じがめっちゃする。
ここの書き出し好き。
「 」
気配。
p113「意識が鮮明になってきた。」
p113「意識が鮮明になってきた」以降で「ちゃんと物語を終わらせるぞ」という感じがあって、小説の書き手として尊敬……。
顔がぼろぼろになってるのまさにホラー映画の殺人鬼っぽい。
(著者コメ)コンシーラーで傷を隠しているのだとしたら、それが汗か雨かでどろりと剥がれ落ちるシーンはあっても良かった気がします。素人整形を繰り返した結果をイメージとして持続させ続けられなかったので、美味しいところを逃��ました。よくない。
読者が男性であったり髪が短かったりした場合でも赤口によりメジャーアップデートされて対応するようになったからお前の所にも来る、というカバーの手厚さが良い。
(著者コメ)笹リスペクトです。事前に笹さんの読ませてもらった際、「やがて災厄がやって来るかもしれない恐怖」をオチで感じたのでパクらせていただきました……。
「きざし」 鴻上怜
一言
メチャクチャいい小説だ。小説をやっている感じがする。
不安感の中に身を置きながら日々の暮らしを送る話も、ジャンル小説としてのホラーの怖さからは外れるけれど、十分に恐ろしさを感じさせる話になると感じました。日常系ホラー。流行るはず……!
これは21世紀の写実主義文学だ!
最初から最後まで重苦しいな。
読み終わったあとに、もう一回見つめる「きざし」というタイトル、めっちゃ渋くてめっちゃ良い。
こわくはない。いや、こわいのかもしれない。いい小説。
詳細
「まるで若ハゲ博士だね」と、妻が検索欄に「ハゲ、なおし方」好き。
夫婦の枕とベッド事情が切実。まずは枕から別々のものになり、それからきっと次はベッドが別々になるだろうと予測する所から、冷え切った関係のうまい暗喩になっている。
仕事辞めて無職だった時期のことを思い出して懐かしくなりました。
会話のやり取りのそっけない感じが好きです。
ラスト3行が、さらっと書かれているけれども、ばっちりと決まっていてすげえ。髪の毛と自分の関係性、妻と自分の関係性を、重ね合わせて出されるリアルな結論が沁みる。巧みな締めくくり。
これバッチリ決まっていて巧みですごいことを言っているようにも、ちょっと酔ってるだけのようにも読める雰囲気になってるのすごいよなと思いました。
仕事を辞めて半年。応募先の面接が終わって二週間経つが連絡はない。
妻から病院でみてもらうのを提案される。
「心療内科だの精神科だの」
抜け毛の量を指摘され、ハゲ治療をすすめられる。
p127「翌日」
排水溝の掃除、抜け毛との対話。
「えっ、おまえ信長公なの?」よすぎる。
帰宅した妻とワイン。
採用通知「今日は来なかったね」、連絡しなかったの「今日のところはね」
悲しくなってくる。
「髪、少し増えてきたね」
抜け毛の指摘をした翌日に、治療が既にはじまっている体で妻が話している。
カレンダーの方に目を向けている。
排水溝掃除のあと(もしくは前)で日付がとんでいる! けど地続きのように書かれている。こわい。
はじめ「妻が狂ったのか? そういうホラー?」とちょっと思ったが、そういうことではなさそう。
キーマカレーで繋げてる?
「新田くんのこと」石井僚一
一言
またハゲの話か!? と思ったら違った……。
新田はちょっと変なやつなのかな? からすこしずつ、こいつマジのやつじゃん となっていく感覚がいい。
高橋さんの髪の毛を抜いて並べる場面で、漱石が鼻毛を抜いて書きかけの原稿に植え付ける癖があったのを思いだしました。
頭頂葉は、外界の認識、触覚、空間認知、視覚認知、運動機能などに関わっている
信頼できない語り手的な要素(この語り手は何者なんだ?)と、映画的な要素(構成と、フラッシュバックする過去の場面が頭の中で映像的に再生されること)を感じた。
そう、この作品が語り手が一番怖いと思う。収録順最後にあることでさらに効いてくる。
何度も脱線しながら自分で「戻ろう」って言ってるのがじわじわ怖い。
「髪の毛の話に戻る」ところの使い方が絶妙で、リズムよくイメージが並べられる演出になっている。新田くんの印象が、最初はちょっと神経質なやつだなというところから、徐々にそれをもう越えているなと思わせて、異常さがやがて物質的な外界にまで影響を及ぼすほど滲んでいるのが、好みの展開でした。
脳のくだりは「痛い痛い痛い!」となり、かなりのホラーだった。
こういうパターンのホラーもあるんだ、という感想。自分がホラーを狭く考えすぎだったのかもしれないが、このアンソロジー一冊で随分ホラーって広いなと思わされた。
たのしく書いた。(作者談)
詳細
語り手によると新田くんは初めての出社の日の朝に息絶えていることになるが、職場の飲み会での証言があるので、どれかが嘘ということになる。
髪の毛を全部抜いたら死ぬというのは、実際検証した人がいそうでいなさそうでいそうなフィクションギリギリのラインを攻めていてホラー(都市伝説的な?)でした。
髪の毛の話をするという主題を、「」の用語解説のような叙述で肉付けしながら持続させていて、面白い構成だなと感じました。
p141「ぶにゅぅぃ」
これしかない音だ。
このへんの頭蓋をほじくる表現かなり気持ち悪くてぞくぞくする。
高橋さんに恋人がいるのを知ったときは実際には膝からくずれ落ちてないけど自分の最後の髪を抜いて息絶えるときひざからくずれ落ちたのは紛れもない事実なの、なんかおしゃれ(?)だ。
初出社の日に息絶えた新田
後年に職場の飲み会に出ている新田
後年に刑務所で語る新田
単純に時系列の矛盾っぽい情報にまずは気を取られるんだけど、改めて振り返ると最初の方だと新田くんはなんだか神経質で小心者のイメージだったのが、後半出てくる情報がそれとは噛み合わないというか別人っぽいのも面白い。
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--深海人形-- 「俺の歌を聴けぇ!」
※閲覧&キャラ崩壊注意
※雑多にネタをぶち込み
※SO3のネタバレ注意
※大部分マクロスシリーズ&微ネタバレ注意
…gndmシリーズって、何れも本当に酷い(※褒め言葉)アニメだったんだなぁ……(※マクロスの御蔭で気付いた ※特にFとdeltaの御蔭)。
…。
大体あれは、TV版旧劇劇場版フリクリトップ2で散々視聴者の期待をバキバキへし折って来る人達だから、初めから、信用してないし、如何でも良いと思ってる(※最低)
…。
…もしも、本当にジークアクスが『架空戦記(※全部正史では無い黒歴史にすら含まれない、高い城の男みたいな小説、4次元人の作ったMMORPG、ただの虚構)』だったら、ジオニスト達の熱い掌返しが見られるんですね(※絶対此れ狙ってるだろ。旧劇かトップ2みたいに。そして、後者は素晴らし過ぎて一生忘れない)。
…。
…『ジーク アクス』は何か最後の最後に視聴者を裏切って来るっぽいから、本当に、熱心に、今迄、gndmを支持して来た人達、古参、特に、ジオニストは、もう、宇宙世紀モノ嫌いになって、他所行った方が良いかもしれない(※…此う言うのは、教養無いと分からないかもしれないけど……)。…今の内に、オルタナティブとかアナザーかマクロスとかボトムズ、スーパーロボット系に行った人は賢者かもしれない(※最悪の場合、ラグナロクが起こる)。あの人達は、テレビ版、旧劇、トップ2、フリクリシリーズとかで、散々、視聴者、買い手を暴徒化、混乱させて来た実績があるから、今回『あんな事(※『高い城の男』を地で行く架空戦記路線)』になったら、史上最凶級に滅茶苦茶荒れる予感がする(※自分は彼奴等の事を、某傑作アクションゲームシリーズの仲間かフレンズかヘルパーだと思って居るので大丈夫です)。
…。
…マクロスはシリーズを通じて、gndm以上によく出来てる所とガバな所の差が酷い箇所が多いけれども(※特に初代)。
…。
…『ジーク アクス』は、初代マクロス第17話 ファンタズムみたいなモノだと思う(※或いはネクロ ファンタジア)。『本当の悪夢(※例の第18話パインサラダ)』が初まるのは次回と言うのも(※初代マクロスは、全体的に色々と出来が粗雑だが、其れでも、此う言う構成は凄く上手い)。
…。
…某ジーク何とかの内容を思い出すのは、既に如何でも良くなって来てるけど、『種自由』と50万年前に見た『愛おぼ』のラストは、鮮明に思い出せる。真の『文化(※ヤック・デカルチャー)』とは其う言うモノです(※そんな寝惚けた文化が、通用するかぁ!)。
…。
…『勝利斧(※トンでも無く疫病神の予感)』の所為で、gndm界隈の人口が流れたら、その受け入れ先として、「gndmに失望したら、此方(マクロス)に来い!!(※来て下さい!)」みたいな感じで、新作マクロスが控えてるじゃないですか(※…全く、矢っ張り、プロは上手い商売するよなぁ!!)。
…。
…シーマ様は!汚名挽回は!野獣大尉は!シロカスは!デラフリは!ガトカスは!みたいにキャッキャしてる人達は、『ジーク アクスは4次元人が書いた仮想戦記(※若しくは、4次元人が作ったエターナルスフィア)』とかだったら如何するんだろ?(※白い目)。…今、何んなに楽しくてもさ、何れは、全部徒労に終わらせられるだろうな、だって、昔、SO3ってあったよね、あんな感じになるんじゃねぇの??、…って、今、強く感じてる(※此れから、彼奴等の所為で死ぬ程出て来るであろうgndmに失望した人達は、皆マクロスシリーズに来て欲しい。思う存分、「ヤック・デカルチャー!」して欲しい)。
…。
※…以下、マクロスシリーズ感想
※マクロス delta
Fはマクロス界のZgndmと言わんばかりに、嫌にジメジメしてるから、此方の方が万人向けだと思う(※其れから、さしずめDeltaはマクロス界のGレコ+ZZ)。
…。
…マジで、Fは、マクロス界のZgndmです(※確信)。
…。
…正直、Deltaは、TV版Gレコの1000万倍マシ(※…但し、TV版Gレコは作業用動画としては最適)。
…。
平均寿命が30歳以下で、そして、更に、人生25年も生きれないとしても、其れでも、偉大な事は成し遂げられるって言う事をワイに教えてくれたのがウィンダミア人、(※御蔭で、自分の寿命を維持する事だけを、長生きだけを目的に生きる人生が大嫌いになって、嫌悪感MAX、史上最高に莫迦莫迦しく思える様になった)。無能お莫迦BBA程、自分の寿命を維持する事だけを、長生きだけを目的に生きたがると言う事を知っているからこそ、フレイアの人生に、尊敬の眼差しを持てる(※無能お莫迦BBAじゃなくても、ウィンダミア人、フレイア達が常に直面して居る自身の人生との向き合い方から学んで欲しい)。
…。
…人類を短命だと莫迦にするけど、ウィンダミア人を短命だと莫迦にしないのがワイ(※矜持)。
…。
平均寿命三十歳のウィンダミア人、彼等を見て居ると、「人間は本来短命であるべき生き物なんだな(※無駄に長生きするから、人間としての何もかもが腐る。実際ワイは変なおじおば爺婆と死にたくなる程遭遇する事により、嫌と言う程見て来た)。」…って、思います(※ウィンダミア人がプロトカルチャーの継承者を自称する魂胆分かる。某クルタ族の復讐者とボさんの中間みたいな人生を強いられているんだ!から※…其う考えると、クルタ族は暗黒大陸の血筋で念能力文化の後継者だったのかなと思う ※実にありきたりな考察)。
…。
…此の儘行くと、確か、ハヤテといられるのは、精々十年の間だけで、其れから、ガトカスの享年と同じ位の年齢で死ぬ事になるんだよな、フレイアちゃん……、、あーん!フレイアちゃん!もっと長生きしてよーー!!!!!!!!!(※…後、別に、ガトカスは長生きしてもしなくても如何でも良い)。」
…。
…「銀河とか如何でも良い、俺はウィンダミアの空を自由に飛べるだけで良い(※みたいな精神性が良い)。」
…。
…歌姫が、 ゼントラ人相手に、ライブで歌を披露する、あの一枚絵に堪らない感銘を受けた。そして、多分、あの構図は、『愛おぼ』にも無かった筈(※違ってたら、御免なさい)。
…。
※マクロス7
…Ggndm、0083勢と男塾勢は、7見た方が良い(※普通に神作画で名作)。
…。
7は、ちょくちょく、北斗、男塾の魂感じるよな(※…丁度、Ggndm、0083と同じで其う言う時代柄もあるけど)。
…。
流石、7はマクロス界のGgndmだとしか言い様が無い(※…丁度、Ggndmと同期だし……)。
…。
ミレーヌって髪染めて無いよね?(※何でピンク髪なんだろう)。
…。
ショタ手作りのグババぬいが可愛過ぎる(※グッズ化して!)。
…。
※初代及び総合
----文化なんてモンに皆浮かれやがって、どうせ一時的な熱狂に過ぎねぇ。其う俺は思ってたんだ
----後で文化しようぜ
----超時空要塞 マクロス より
初代マクロスとマクロス7の味方側が着てる軍服、デザイン滅茶苦茶良いよな(※どこぞの公国軍服と違って描き易いし……)。
…。
…マクシミリアンは公式と言うか初代作中で「お前はスーパーマンだな」って一条に言われるだけはあると思った。…後の7に至ってもずっとスーパーマンだったしなぁ……(※一条も苦労するわ)。
…。
…ゼントラ人の末裔が歌姫してるのが良いんだ(※最高に)。
…。
…「何で宇宙にデカいマグロが泳いでんの??(※某序盤の回)。」…って、誰も公式も突っ込みを入れないのは、初代からして劇中劇設定だからですかね……??(コレガワカラナイ)。
…。
…初代は、初期構想ではギャグアニメだった名残か、後年のシリーズ以上に訳の分からない展開が多い(※見れば分かるが例のマグロ以外にも滅茶苦茶ある)。
…。
…マックスとミリアのゲーセン頂上決戦回は、神神神神神神神回(※其の上、当時のゲーセン風景を背景の参考にして居るから、其う言う所も見てて楽しい)。
…。
…マックスとミリアは、余りにもスピード結婚過ぎて何時見ても呆れるわ(※そして、長女が小ミリアなのに、ミレーヌがピンク髪なのは益々分からない)。そして、7では露骨な御惚気ありきの夫婦なのも、視聴して居て楽しい(※7になる迄何をしてたかは知りたいが)。
…。
…gndmよりマクロスの方が素敵だな〜〜〜!!(※率直な感想)。
'…。
野獣大尉好きな人→7
ガトカス好きな人→delta
シロカスかざび家の末弟好きな人→初代(※個人的オススメ一覧)。
…。
…多分、初代マクロス全ての粗雑さを纏めて、昇華したのが『愛おぼ』。だからこそ、出来た、「ヤック・デカルチャー(※真のプロト・カルチャーであるが故に)」。
…。
連邦と統合軍の腐敗は、シリーズを通じて非常に似通って居る(※然も、時代が降れば降る程組織の腐敗は酷くなる)。
…。
柿崎の最後見届けたぞい(※捕虜にされて居たゼントラ艦から逃げ切った英雄なのに酷い死に様)。
…。
マクロスはシリーズ全体が能天気なんだよね、平気で戦時下でもアイドルのコンサートに行ったり、娯楽に勤しんでたりするし。gndmでは有り得ない生活の仕方してるなぁと思ったりもする。平和やもん結構。(※相当終盤に行かない限り、…或いは、行っても)。初代に至っては(※初代の時点で)、普通に結婚したり、子供と家庭を作ってる彼奴が居たりするし(※シリーズを通じて、gndmでは有り得ない、出来ない、どれだけアニスタが懇願してもさせてくれない楽しい要素全部が詰まった素晴らしいリアルロボットアニメだと思った)。
時間の流れ方もゆっくりだしな(※特に初代と7)。gndmと違って、大分、疾走感、駆け足感は無いけど(※…だけど、其処が良い)。
…。
…『サイコミュもサイコフレームも、全部、黒歴史じゃなくて、プロトカルチャーから来たんじゃないのか??(※もしかしてプロトカルチャーの遺産か?)���…と、考え初める位、マクロスシリーズには衝撃を受けた(※正に、『ヤック・デカルチャー』)。
…。
…ターンエーの黒歴史は、モロプロトカルチャーを意識してるから分かり易いよな(※悲しい事にターンエーの黒歴史は、歌とは無縁だけど。大量に戦争の記録を残す寄りも、歌でも記録して置いた方が、人類の為になるのにね?)。
…。
…フォッカー先輩とカムジンは、明らかに、スレッガーさんとシャリア(※何方も1stでは脚本的には捨て駒扱いである)より比べ物にならない位、滅茶苦茶優遇されてる(※後者に至っては、TV放映版のラスボス的扱い)。
そして、此の二名は、『何故イマイチパッとしない儘スレッガーとシャリアは退場して行ったか?(※本当は大部分が打ち切りによる短縮の所為。因みに、初代マクロスがあんまりな終わり方なのも打ち切りの所為)』…と言う反省点を参考にして作ったみたいな感じ(※…さて、真逆、シャリアが彼処迄ジークアクスで復権して来るとは思わないよね? ※今迄7以降もちょくちょく話題にされて居たカムジンは、此れで完全に逆転された)。
…。
長期的に見ても、gndmよりマクロスの方が素晴らしい。今のgndmについて行けない人は、マクロスに来ると良い(※最早、マクロスシリーズ自体がプロトカルチャーの継承者なんよ)。
…。
…マクロス7、マクロスF、マクロスdeltaには、非常に感銘を受けた。どのgndm以上の其れを。
…。
未だ若い頃に見た『愛おぼ』、其の時に聞いた歌も、終盤もエンディングも、未だに、当時、見た、聞いた儘で思い出せる
…。
マクロスシリーズを通じて一番好きな歌は『愛おぼ』、『天使の絵の具』です。
…。
…一条の中の人は、1996年に31歳位で御亡くなりになってるんだよね、同業の強豪が多過ぎたのが原因かなぁ…って思う時もあるけど、色々あったんだろうね。
…。
…あの人が、何れだけ叩かれ様とも、一条の中の人は、あの人じゃないと務まらないと思います。棒読み絶対許さない人程、あの声は、気に触るかもしれないけれど、私は彼の演じる一条が一番好きです。素朴なのが一番良い。
…。
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ブルネイ旅行記2025 - Part 6
3日目が随分長くなってますが、さすがにここで終わりたいw 以前の話はこちらから。
ブルネイ旅行記 Part 1 / ブルネイ旅行記 Part 2 ブルネイ旅行記 Part 3 / ブルネイ旅行記 Part 4 ブルネイ旅行記 Part 5
オールドモスクの見学後は、少し街はずれにある、ブルネイ料理を楽しめるレストランへ。


なかなかに広いビュッフェスタイルのレストランだったのですが、ちょっと気が引けて、全然写真を撮ってません。。。 いや、どこかで書いたんですが、どの料理も食べやすくて美味しいんですよ。 煮込み系のは、大体なんでも口に合いましたね。
上の写真の上の方に小さなボールがありますよね。 この中に、何か白いものが入っているのが分かるでしょうか。 これ、キャッサバの粉にお湯を入れてコネコネしたもの。 イメージとしては、片栗粉とかくず粉とかを熱湯でといたら、ゆるゆるの餅みたいなのができるじゃないですか。 あれですね。 ガイドのReiko��んは「ブルネイのわらび餅みたいなもの」と仰っていました。 分かりやすい(笑)
味は、まぁ、無味無臭みたいな。 元々はブルネイで主食として食べられていたものだそうです。 色々な種類のソースがあって、何やらよく分からなかったので、おすすめのをちょうだい!と言ったら入れてくれたのが、手前の左側の小皿に入っているやつ。
これがね、あかん、ドリアンソースやった。 私、ドリアンそのものは食べたことがあるんです。 めっちゃ臭い、臭くて仕方ないのだけど、味はフルーティーなカスタードクリームみたいで、美味しいの。 でも、このソースは、味より匂いがガッツリきて、あかんかった。 というわけで、無の境地で無味無臭だけをモッチモチ食べましたww
昼食後は、ブルネイ宿泊の一つの目玉と言っても良いでしょう、 The Empire Bruneiへ移動します。
エンパイア・ブルネイは、なんと!世界で2つしかない7つ星ホテルのうちの1つ! まぁ、実際には「7つ星」を認定している「機関」があるわけではないので、周りが?自分が?勝手に言うてる、、、と言ってもよいかも。
とはいえ、つまりは「7つ星」と名乗っても誰もが納得できるだけのサービスを提供しているからこそ、7つ星だと言えるわけです。 ちなみに、もう1つは、かの有名なドバイのブルジュ・アル・アラブですよ。 ドバイの方は、確か全ての部屋がスイート以上で、1泊20万くらいはするっしょ?みたいなお値段だったかと。
ところが!
エンパイア・ブルネイは、ドバイに比べたら、相当リーズナブル! 勿論、部屋によってはウン十万みたいなところもありますが、私のような一般人でも手が出る部屋なら、1泊3万前後。 やー、もう、ネタでもなんでもいいからと割り切って泊ってもいいよね、これ。
一般人の私が宿泊したのは、Lagoonと呼ばれる離れの棟。 うちは両親と一緒の3人だったのですが、3人部屋というのがないので、2人部屋と1人部屋で宿泊と言われていました。 実際に行ってみると、ダブルの部屋とキングサイズベッドが1つの部屋の2部屋で、隣同士のこの部屋は、中に行き来できるドアがありました。 簡単に言えば、ベッドルーム、バスルームが2つずつある、巨大な部屋!みたいな感じでした。






よくない?www
写真を撮り忘れましたが、ミニ冷蔵庫があって、中のドリンクは無料。 当然ミロもあったのが、さすがブルネイ。 お茶やミニスナックも充実してましたよ。
シャンプーリンスや洗面台のアメニティは一式そろってます。 タオルとかスリッパとかはあったけど、バスローブはない。 寝るときの服は、何か持って行った方がよいね。
そして私は発見しました。

机の引き出しを開けたら、メッカの方角を示す矢印! お祈り用のマットまである!

ベッドサイドの引き出しには英語版コーランもありました。
ブルネイ全般言えるのですが、建物内が大概寒い。 長袖で羽織るもの、持っておくことをお勧めしたい。 エンパイア・ブルネイの部屋の冷房もガッシガシに効いていて、寒すぎるんですw
部屋に入ってすぐに、エアコンを切ったのですが、恐らく館内全体を冷やしているんでしょうね。 部屋のエアコンを切っても、十分適正な温度って感じでした。

バルコニーがあって、そこから写真を撮ったのですが、温度差ありすぎてレンズ曇る、の図。 下に蓮の池があります。

バルコニーの扉にあった注意書き。 Reikoさんから「ベッカム猿がいたずらしに来るから、ドアはちゃんと閉めること!」と聞いていました。 これだな。 ベッカム猿というのは、髪型が一時期一世を風靡したベッカムヘアみたいだからとのことw
ホテル周辺一帯がエンパイア・ブルネイのリゾートとなっていて、映画館、スポーツのできる建物、プール、ゴルフコースなどがあります。 ブルネイの中心地からは少し離れているので、観光に行くための拠点ホテルというよりはリゾートを楽しむ系ホテルですね。
せっかくやってきた7つ星ホテルということで、そこら辺、ウロウロしてみました。






リゾート感、あるっしょ?
敷地内、散歩コース?もたくさんあります。


ここにもおるんかい!!ワニ!!!

ちょっと見えにくいですが、宿泊者が楽しめるアクティビティが色々あります。 ここぞとばかりに、私は自転車を借りて走ってみることにしました。

ブルネイでの相棒。 サドルの高さを自分で変えられないところと、タイヤの空気の入りが甘いところ、ブレーキの利きが甘いところ(←あかんやつ!)は、ちょいと不満ではありましたが、ヘルメット貸してもらえたし、まぁ平坦を走る分には大丈夫な感じだったので、良しとしようか。
ブルネイでは殆ど自転車を見ませんでした。 乗る人が少ないようで、明確な走行ルールとかないらしい。。。 1度だけ、本気ロードバイクに乗った人を見かけたのですが、(多分外国人じゃないか?)見かけた場所はなんとハイウェイ。 自転車、ハイウェイを走っても良いのだそうです。 車側も自転車側も怖いだろ・・・。
あまり馴染みのない自転車ということで、若干整備が甘い部分はあるのでしょうが、まさかブルネイで自転車に乗ることができるとは思っていなかったので、リゾート敷地内とはいえ、それなりに楽しく走りました。
いや、実際敷地が広くて、1時間以上乗ったよ。







うん、自分が見て「ここ!ここ!」って思うだけの写真で、人が見ても分からんな。 いずれにせよ、個人的には大満足なサイクリングで、そこら中くまなく走り回ったおかげで、この時点で、リゾート敷地内、大体把握したよねw
各種アクティビティは、宿泊者なら無料で利用できるものもあれば、有料のものもあります。 自転車は、費用がかかるかと思っていて、「おいくらですか?」と聞いたら、「Complimentaryだよ!」と言ってもらいました。 つまり、宿泊者は無料。ラッキー!
プールで泳いでいる人も見かけたし、夕方にはジョギングをしている人がたくさんいました。 水着とか、スポーツウェアとか、お好きな人は持参しておくことがおすすめです!
やれやれ、またもや写真のアップ限界がやってきたので、Part 6はここまで。 でも、それなりに終わりが近づいてきていますな。。。
ブルネイ旅行記2025 Part 7
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四 教師から、どんなことでもする女性へ 私は徐々に教師から、避難生活に全力をそそぐ母親にかわりました。私の日々は朝にパンを準備し、水を用意し、料理のために火をおこし、皿を洗い、洗濯をし、空爆や悲惨なニュースを聞くたびこどもたちの恐怖をやわらげることでいっぱいでした。その間ずっと、じぶんの街が破壊されたというニュースを追いかけていましたが、家族についてのあたらしい情報は入ってきませんでした。避難した隣人の家のテレビ画面で、ガザ全体が燃えている光景を見ながら、こどもたちが眠るための空想の物語を話しました。 冬がくると、厳しい状況は、さらに悪化しました。冷たい水で洗濯をはじめ、手がひび割れました。シャワーを浴びるために、火でお湯を沸かしました。ちかくで爆撃があり、粉々に砕けて窓ガラスのない部屋に住んでいました。冬の夜は、冷たい床に敷いたマットレスの上で眠り、恐怖の中で、すこしでも暖かさと安心感がえられるようにと、こどもたちを抱きしめていました。テントや間にあわせの避難所にいるのではない幸運に感謝しました。 さらに事態を複雑にしたのは、感染症が蔓延しはじめたこと、私も医師や看護師になり、感染しないように、診療所を避けなければならなかったことです。虐殺が長引くにつれて、私はじぶんのこどもや他の避難民のこどもたちに、学校で学べなかったことを教えるという本来の職業にもどることにしました。 五 私に残されたもの ガザが歴史的建造物を失うと、多くの他の女性たちと同様に、自己という意識を失いました。耐えてきた恐怖が、身体、健康、精神の健全さに、目に見える形で影響をおよぼしました。妹が亡くなった夜、私の黒い髪は、ほぼ一夜にして白髪になり、徐々に抜けはじめました。北部に住む友人たちは、水不足とシラミ対策の、最後の手段として、長い髪を切らねばなりませんでした。 栄養失調と過酷な生活に疲れ果て、避難先のひび割れた鏡で、自分を見る時間はほとんどありませんでした。もう自分の服とは思えない服を着て、慣れない生活を送っていました。自分をケアする贅沢をする時間は、ありませんでした。背中の痛み、生理不順、絶え間ない不眠症、家族と私の死という、あらゆる可能性への恐怖について、言葉で説明するつもりはありません。泣くのは夕方まで待ち、悲しみに暮れるのは自分だけだと思っていたら、近くの避難所からくぐもったすすり泣きが聴こえてきました。私は考えました。一人の妹の殉教にたいする悲しみは、家族全員の死とくらべてどうなのだろう。愛するひとの殉教が、確実な状態で失うほうが辛いでしょうか、それとも、愛するひとが、跡形もなく消えてしまうという不確実性に耐えることのほうが、辛いのでしょうか。 朝、私は涙を拭い、生き残るための厳しい現実にもどりました。 六 小さな地獄 何ヶ月もが経過し、ラファへの侵攻がはじまりました。その瞬間まで、私は占領軍が定義した三角形、つまりテント――刑務所、墓の外――でなんとか生きてきました。 けれど、もう、そこから逃れることはできなくなりました。 私たちはテントを購入することを余儀なくされました。それは無料のはずでしたが、結局七〇〇ドル相当を支払ってしまいました。広告はノルウェー製のテントだと主張していましたが、設営してみると、ノルウェー政府はドイツの援助に頼ってテントを調達していたことがわかりました。それから、テントの上にぶら下がっているドイツ国旗は、私が火を灯したり、苛立ちで叫んだり、生活がますます困難になっていくたび、私たちを嘲笑っているかのようでした。 夏の間、テントは小さな地獄で、日中の暑さは堪えがたいものでした。私たちは塩水しかつかえなくなり、そのせいで、すべてが台無しになりました。入浴や洗濯で、剥がれた体の皮膚、塩まみれになった食器や衣服。すべてが塩辛く、きれいな衣服さえ、すり切れたように見えました。 ガスが不足していたため、料理やお湯を沸かすために、火をおこなくてはなりませんでした。夏の午後に海辺で火おしをしたことがあるひとなら、困難な仕事だとわかるでしょう。しかし私たちは、食事のために毎日それをしました。毎日、熱で指が焼け、燃える木の匂いでむせ、煙で目が潤みました。食器は黒いほこりで被われ、あつかいも掃除もたいへんでした。食べものに砂がふきこむのがあたりまえになって、私たちは、毎日の抑圧を飲みこむように、砂を噛んで、飲みこみました。 夜になると、テントは凍えるような地獄になり、こどもたちは、病気になるような冷たい風にさらされ、朝になると太陽が照りつけて、汗びっしょりになりました。 それから……? 毎日が、昨日や明日のようにくりかえされる。つぎはなんだろう? 仮想的な交渉のニュースや、遠い夢の話を聞き、それを完全に信じることも、完全に否定することもない。私にとって、夜寝るまえのハエとの停戦より大切な停戦はなく、朝は新鮮な水をタンクに調達することより大切な取引はありません。 ランプのうす暗いひかりの下で、眠っているこどもたちの顔を見つめ、なぜ、世界はいぜんとして、大量虐殺を終わらせるのをためらっているのか、疑問に思う。ガザのこどもたちの手足や、生きた肉体が引き裂かれるのを目撃したあとで。世界はこの子たちに、なにを求めるのだろう。病になったこどもが、病院に置き去りにされ、飢えと恐怖で死んでゆくのを見たあと。未熟児が、まるでもっとも屈強なものたちであるかのように包囲されるのを見たあと。胎児が容赦なく、母親の子宮のなかでころされたあと。世界は、こどもたちに何を求めるのだろう。 七 つぎは…… 一瞬、テントの生活に負けそうになりました。ある日、野菜を買いに市場に行くと、その光景に圧倒されました。すさまじい人混みで、まわりのすベてが陰鬱な、灰いろに感じられました。そのとき、ひとりの女性をみつけたのです。私とおなじように、顔に日焼けした女性で、彼女もテントに避難しているとわかりました。彼女は、ジャスミンの苗を、愛するこどものように抱きかかえ、テントに持ち帰って、入り口に植えました。 希望が私の心を満たし、孤独をおしかえし、突然、私は、テントの厳しさに立ちむかう決心をしました。 毎朝、ハエがいても、清潔で新鮮なパンをこねはじめました。服を洗って太陽の下に干し、清潔さを誇りにしました。心のなかに苦しみを抱えたままでも、愛情をこめて、食事をつくりました。こどもに基本的な生活の技術を教え、すべての質問に答えました。世界中のすべての女性とおなじように、薪でインスタントコーヒーを淹れて、テントの前の海辺で飲みました。もう、気にしませんでした。私は知っています、いつか、いつの日か、このすべてが過ぎ去ると。 ガザは残る。私たちは残る。そして私は残る。
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浩志は、幸雄との出逢いによって自分が「ゲイ」になったことをすぐには受け入れられず、しばらく塞ぎ込んでいた。あの映画館での情事で彼もおのずと幸雄を求め、接吻や抱擁を重ね、しかも口淫をもしたが、まさか自分にそんな肉欲が潜んでいたのかとショックを受けていた。あれから勝手に何かの折にチ◯ポが反応し、彼は幸雄のことを想いながらオナニーをした。正樹の様にディ◯卜を挿入してアンアンと声を上げることまではしなくても、沸々と込み上げてくる欲望に浩志は負け、気付くとちり紙に淫液を吐き出していた。
そんな中、母・菊乃から仕送りの小遣いと荷物が届いた。中身は、みいに兄・岳次に続いて浩志もお世話になっていると野菜や米などであったが、浩志には下着が入っていた。その下着は、日本では未だ珍しい「ブリーフ」だった。恐らく、S百貨店で購入したものだろう。手紙には、
「お父さんに買って上げたンだけど、『オレにはこんな“おしめ”の様な下着は要らン!』って言われちゃったので、浩志なら穿くかなと送ります」
と書いてあった。菊乃は新しいモノ、とりわけ「舶来」と聞くとすぐに跳びつく傾向があったが、柳次郎は典型的な大正生まれでチャラチャラしたものは毛嫌いする傾向があった。
浩志は風呂敷の中で畳まれたブリーフ四枚のうち一枚を手に取り、広げてみた。ウエストゴムの縫い目には「JOCKY」と刺繍されたラベルが付けられ、丁度、股間が当たるところが「Y」の字を逆さまにした様にステッチが施されていた。鼠径部のあたりで布地は終わっており、何となくフィット感がありそうだった。彼は風呂上がりに穿いてみようと決めた。
風呂から上がり、手ぬぐいで身体を拭いた後、浩志はブリーフに脚を通した。申又より肌に密着し、股間もブラブラしない。欧米人はこんな下着を穿いているのかと、浩志は思った。彼はそのまま浴衣に袖を通し、部屋に戻った。
翌日、いつもの様に自転車で浩志は神田駿河台まで大学へ向かった。この日は授業は一時限目から五時限目までびっしり入っていた。自転車を走らせながら、申又を穿いていた時には気にならなかったブリーフのゴムが座ると当たり、直した。彼は、そんな仕草が何となくだが女っぽいと思った。
授業の合間、浩志は幸雄のことを想っていた。ブリアンチンで整えた前髪が乱れるほどに激しい抱擁と熱い接吻…。脈々と、反り返るほどにいきり勃った彼の肉棒…。そして、あのいやらしい喘ぎ声。場面の一つひとつが脳裏に蘇ってきてしまった。その間、浩志はチ◯ポが勃起していくのを感じた。あらら、どうしよう? もう少しで授業が終わるから何とかしようか。でも、学校でオ◯ニーなんて、何かスケベだなァ…。
時鐘が鳴り、浩志は走ってトイレへ向かった。個室の中に入り、鍵を閉めると彼はスラックスを下ろした。すると、テントの様に隆起したブリーフの中央部が、すでに先走り汁で染みていた。この様子に彼は興奮した。何て卑猥なンだ…。彼は、幸雄がしたことを手指を使って真似をし、トイレのタイル床に淫液を吐き出した。
「あッ、あん、ああん…」
抜いてもなおいきり勃ったまま、彼のチ◯ポは萎えることがなかった。脈々と血管の浮き出たチ◯ポの先端がサーモンピンク色に染まっているのを見ながら、彼は思った。
『今日は授業どころじゃないや…』
どうせ、居酒屋のアルバイトも今日は休みにしてあるし、今日の授業については明日、同級生に聞けばイイや…。そう思い、彼はようやく萎え始めた我が息子をブリーフに仕舞い、スラックスを穿くとトイレを出た。
未だ午前中だったこともあり、このまま下宿に戻っても、みいが余計に心配させるだけだと思い、浩志は正樹の通う国立H大学へ行くことにした。いつも学内の図書館にいると、以前聞いたことがあった。彼は、神田駿河台から自転車で竹橋へ向かった。
H大学に着くと、自転車を押しながら学内をあちこち見渡した。初めて私立M大学以外のキャンパスに入ったものだから、浩志は若干ドキドキしていた。途中、通りすがりの学生に図書館は何処か聞きながら、ようやくそれらしき建物に辿り着いた。館内に入り、閲覧室に来ると丁度、「経済」と書かれている本棚の前で専門書のページを開いている正樹がいた。彼がチラッと視線を浩志がいる方に向けると、
「あれ、浩志君?」
とびっくりした表情をみせた。
正樹は図書館では声を出して話ができないからと、大学から最寄りの喫茶店に浩志を連れて行った。珈琲を傍らに、何故浩志がわざわざ自分が通う大学まで来たのか聞いた。浩志は言った。
「実は、みいさんには告白したンだけど…。オレ、六区ブロードウェイの映画館で男にエッチされちゃったンだ」
それを聞くや、正樹は珈琲が違うところに入ったのか咳込み、
「え、えぇ〜!?」
と反応した。浩志は、声がデカいと慌てた様子で言った。
「だ、だって…。僕がオ◯ニーしてるところを再三バカにしてたのに、それって…」
「しょ、しょうがないだろ!? オレにもその気があったンだから!」
「え、えぇ〜!? 信じられな〜い!」
「だ、だから声がでけぇよ!」
生まれつき、声変わり後も女の様に甲高い声である正樹は、両手で口を押さえていたが、明らかに顔がにやけている様だった。クスクスと笑いながら、
「浩志君もその気あったンだ〜」
と、仲間ができたと喜んでいる様だった。
二人は近況も含めて色々と話をしたが、浩志は昨日から下着を申又からブリーフに替えたことも話題にした。すると、
「へぇ〜、ブリーフなんて未だデパートにしか売ってないよ。僕も、今付き合ってる彼氏にもらったから」
と正樹は言った。流石、オレより早く男遊びを知っただけあるなと、浩志は思った。彼は続けた。
「お前の彼氏は何やってるの?」
「…え、研究室の先生だよ」
「『先生』って…」
「今年からゼミを受けてるンだけど、その先生と一度、二人っきりで会わないかって…。未だ三十歳後半だし、体育会系だよ」
「その先生に、まさか…」
「えッ!? 別にイイじゃん。僕に優しくしてくれるンだ」
先生かよ…と、浩志はびっくりした。彼の中では、教師と言うものは恋愛とは程遠い次元に生きていると思っていた。そもそも、彼がこれまで会って来た先生は風変わりで生徒から好かれる様な雰囲気はなかった。そもそも、正樹は生まれも育ちも東京だし、「陸の孤島」に近い水戸とは世界も違うが…。正樹は続けた。
「まァ、僕はバッチだし、両親もとやかく言わないからね。いずれは先生と一緒に暮らしたい」
「『一緒に暮ら』す!?」
「今は同性同士が愛し合うのはタブーだけど、いつかはそれが当たり前になる時代がくるよ」
「…正樹」
「あッ、ナポリタンきたよ。食べよ」
スポーツ刈りで長身ではあるが内心は女っぽい���樹は、スパゲッティをフォークに巻き付け、口に運ぶ仕草を見ても女っぽかった。そんな彼を、彼氏である先生は好いたのだろうか? 浩志は、これまで挨拶程度しか交わさなかったが、こんな面白い奴が隣にいたのかと再認識した。しかし、あの下宿に来たのは、浩志が入学したのと同時期らしかった。これまでは成城の実家から通っていたらしく、恐らく先生との出逢いがそうさせたのかと、勝手に浩志は解釈した。
昼食を済ませた二人は、正樹は次の授業があると大学の前で別れた。その際、
「また、いつでも声かけて! 愉しかった!」
と、浩志に向けて手を振りながら学内に戻って行った。
再び独りになった浩志は、やっぱり大学に戻ろうと思った。正樹とおしゃべりしたのが、良い気晴らしになったからだった。彼は自転車に乗り、神田駿河台の方に向かって行った。
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公共マップ「夢への招待状」での話(無常さんとホセさんを一緒に写した写真を持っていないのでイメージ画像は公式のこの動画で代用とします)。
暗い。この小説の一部を漫画で描いていたので今回は挿絵として使ってみた。
【設定】
白黒無常:来世を迎えても過去のしがらみからは逃れられなかった。
雨と共に死亡した二人を元に作られた。謝必安と范無咎、二人の魂が入っていようがいまいが(本人達であろうとなかろうと)白黒無常には世界五分前仮説のように生前の頃の記憶が植わっている、かつ客観的に見て生前とは別の姿となっているのである意味、来世の姿としてここに「生きて」いる。
しかし新生を始めてもなおすれ違いや雷雨、再会を願う念の影響からは逃れられていないため二人は離れ離れのまま再会は叶わない。
ホセ:身分を捨ててもその血や過去からは逃れられなかった。
海賊の頃は誰かから平穏を奪わなければならなかった。危険な状況での船上では、たとえ仲間であったとしても問答無用で海に投げ捨てねばならないこともある。
海賊業を抜け出し、海上騎士の名と栄光を背負っても、「特殊任務」と「取引任務」はホセ自身の影だと言わんばかりにどこまでもついて回る。直であろうがなかろうが、かつて決別したはずの海賊の自分と成すことに変わりはなかった。
いくら逃れようとしても、血で手を染める運命からは逃げられなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――
数多もの星々が空一面に広がっている。天の川の白い光は次第に、千にも万にも広がる細い糸のように見え、それはまるで必安の想いと涙が形を伴ったように思えた。吸い込んだ空気はひどく澄んでいて、無咎の胸の空洞を冷たく透かしては通り抜けていくような感覚を覚える。 一体いつになれば必安にまた会える日が来るのだろうか。「また」はあるのだろうか。
「死後の世界、来世はあると思うか。」
無咎が隣のホセを見やると、彼は物珍しげな顔を無咎に向けていた。しかし早々にホセは視線を橋の下に落とす。その視線の先では星が黄色く仄光り、鏡面のように無咎とホセを映す水面が静かに揺れている。
「君たちを見ていると悩むところだが、あるともいえるしないとも言えるというのが私の答えだな。」
無咎の予想に反し、その口から出たのはどちらともつかない言葉だった。無咎はホセを曖昧さは嫌う質たちだと捉えていたが、今日は彼も普段と違う心境らしい。
「……。」
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無咎が哲学的な問いを投げかけるとは珍しい。ホセは少しの驚きをもって彼の言葉を受け取った。水面に映る無咎の顔は感傷に浸ったようで、その後ろでは靄のように空の星の白い光が映っている。何となく無咎が考えていることを理解した。
必安と無咎がここにいる以上、死後の世界はあるように思える。あるいは来世だろうか。だが問題はそこではない。「現状を脱して新しい人生を開始することはできるだろうか」という問いに、ホセは自身の経験からして不可能だと答えざるを得なかった。
確かに死者はその生命を終えたあとも別の場所で生きているという話は何度も耳にした。しかしそういった類の話には必ず「死人は生者のように生き生きと暮らしているわけではない」「命を終えたときの苦しみが永遠に続く」といった但し書きが続く。
死んでこそいないにせよ、ホセにはこのような類の話は他人事のように思えなかった。海賊から手を引こうにも、バーデン家の人間である事実からは逃れられない。
たとえば海に仲間を投げ入れるときの胸騒ぎ。彼らが生を諦めていないとしても、重石と共に帆布で彼らを縛り上げ、その目から光を奪って海に投げ捨てねばならない。 「助けてくれ」 「やめてくれ」 「あぁ神よ……」 彼らの呻き声が今でも耳にこびりついて離れない。あの弱弱しくも冷たく鋭い視線は浴びたいものではない。それはホセの胸を鋭く抉り、赫々とした悪魔の血を暴くようだった。そんな中、目の前の仲間が海の底で永遠に抱き続けるであろう痛苦も想像したくなかった。
……知りたくもなかった。
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「『死んだら全てのしがらみから逃れられる』、『体を捨ててどこか美しい夢境へと旅立てられる』――そんな都合のいい話はない。私がこの手で海に投げた者たちも……きっとデイヴィー・ジョーンズのロッカーで生きているかのように死んでいるだろう。」
義手で右の前腕を握るように覆いながら語るホセの表情は固く、まっすぐに水面に注がれている。その神妙な面持ちはまるで裁きを目前にした罪人のようだ。しかし何度その罪から逃れようとも、畢竟自らの成すことは変わらない。恐らくそういう星の下に生まれてしまったのだ。
「そして――」
ホセは手にしていた星の欠片を爪弾いた。星は音を立てて水に飛び込んだかと思うと、水の暗闇にその光を奪われながら沈んでいった。水面に残された波紋は星空ごと映った像を揺らしている。
かつて言われたことを思い出す。 「犠牲は必要だ。」 「後戻りできないほどの外傷や後遺症を負った者は海に投げ入れねばならない。」 「試した薬のすべてに効き目がないのです。」
波紋は次第に薄く広がってついぞ見えなくなり、そこには変わらず二人の姿だけが残った。
新たな生を受けても、身分が変わっても、過去の一切を断つことはできない――これが真理なのだろう。ならば船乗りの運命に則り、いつか自身がそうしたように誰かの手によって海に沈められることになるのだろう。光一つ届かない、深く冷たい海の底。生前同様、死の先でもそこで罪を抱え続けるのだ。
「いずれ私もそうなる。」
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「都合のいい話はない」「生きているかのように死んでいる」。現に謝必安に会えないまま、無咎は不変の過去に縛られながら過ごす非日常を思い返した。季節はあれど己に変化は訪れない。
「お前の言う海底や文字通りの死後の世界、来世は此処にあるのかもしれないな。繰り返す日々に変化はない。」
無咎の言葉と共に、どこからか吹いたゆるやかな風がホセの髪を静かに揺らした。
「そうだな。いつかではなく今、一等航海士は死んでいる。」
二人の姿を映す水面は凪いでいた。
――――――――――――――――――――――――――――――
ホセは不屈の精神を持っている(?)のできっとこんなふうに諦観に染まることはないと思う。でも見たかったので書いた。
たとえ一等航海士としてのホセが死んでしまっていても、異国の地で非業の死を遂げた二人が死んでしまっていたとしても、みんなどうにか抜け道を見出して生きてほしい。お戚みたいに、これまでのすべてを捨ててでもしないと新生は迎えられないということに気付けば、そしてそれを受け入れられれば……過去のしがらみを振り切ることはとても難しいけれど、それができればホセは病の治療は現時点では難しいけれど少なくとも生まれに囚われずにいられるし、無常もイベントの月日と共にと同じように明るい未来に進んでいけると思うんだ。……そうであってほしい。
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まこ
「まこ」という名前の意味は漢字で書いて真っさらな子供です。
それは私が小説が書けなくなった時期に子供の代わりにと妻が授けた名前でした。この物語は、妻と私が寝入る前のわずかな時間に共に紡いでいったものです。書き出しは妻からでした。いささか長いお話しですので要約してお話しします。
「まこ」はこの物語の主人公です。出張中に大きなあんこうに攫われてしまった唯一の肉親である叔父さんを助けるために、彼女は海を冒険します。まこは幼い頃に両親や兄妹を洪水で失っており、頼れる肉親は叔父だけでした。まこは家族を奪った水が恐ろしく、海を見るだけでトラウマで身のすくむ思いでしたが幼馴染の妖精のシーに励まされて奮起し、彼女と手を取り大切な叔父のためあんこうの影を追って出航します。まことシーはあんこうを追い諸島を巡り、臆病な木彫りの牛のホリィや勇敢なおたまじゃくしのジェムといった仲間たちと出会い、冒険を通して友情を育み成長します。最初は恐怖だった海も、様々な出会いや美しい冒険を経験するにつれ、まこにとって愛すべきものへと変わっていきました。
すみません、まこの出自を思い出すとどうしてもいつも涙が止まらなくて…妻ですか?妻は度々癇癪を起こす私に疲れ果て手紙を置き出ていってしまいました。情けない話ですが、「いずれこうなる」と私は結婚をして、いや、婚約を結んだ幸せのピークと呼べる時期においても喜ぶ妻を後目に心の片隅でいつも考えていましたので、あまりショックではありませんでした。なんてことはない、私という人間は所詮平凡で酷薄な男なのだということを痛感します。せめてアップダイクのウサギのように走ることができたならば実存に張りが出て仕事くらいはうまくいきそうなものなのですが、かなしいことに私のこの脚は老いた酔っ払いの使い物にならない脚へと枯れていくばかりです。物語に戻りましょう。
まことその仲間たちは島を巡るうちにやがて、なぜ自分が冒険に出たのかを忘れてしまいます。それはなぜかと言うと、溌剌として勇猛果敢でかわいいまこに恋心を抱いた海の亡霊が、密かにまことシーとホリィとジェムに取り憑いて叔父に関する記憶を食べてしまっていたからです。亡霊は海の亡霊なので、まこが叔父を見つけて海から離れたまこの故郷に帰ってほしくなかったのです。亡霊は臆病で極度の寂しがり屋でした。そんな亡霊の思惑通りに、まこは叔父をすっかり忘れ、魅力的な海を愛し、やがて冒険の経験を活かして島を巡る航海士として貿易船に乗り、航海で生計を立て暮らし始めました。
まこが航海士として名を馳せるさなかあんこうの下でどれいとしてこき使われているまこの叔父は、ずたぼろになり疲れ果て病気をし、もはやあんこうにとって使い物にならなくなりました。用済みになった叔父はあんこうに生きたまま平らげられたのち、どろどろに消化され、糞として排出され海中の微生物に分解されて、未練の深いその魂は消え去ることができずにこの世に繋がれ、永遠にだれにも見つけられない暗い海底を亡霊として彷徨う定めを負いました。
海の亡霊はまこと一緒にいられて嬉しい反面、みんなの記憶を食べた罪悪感にひどく苦しみました。叔父はすでに死んでいるに違いありません。
亡霊はまこのことを強く愛しているにもかかわらず、ホリィやジェムや��ーと同じようにまことお話しすることはできません。海に繋がれた亡霊がまこに取り憑くことができるのも、まこが海にいる時だけです。だからたまに船内の椅子を転かしたり、船で仮眠するまこの夢枕に立って、亡霊はまこの気を引きます。
私は妻と籍を入れてから突如不能となりました。妻とセックスをしようとすると吐き気が込み上げ、どうしても勃起することができませんでした。私は幼少期に、親から性的虐待を受けていたのでそれによるPTSDだと精神科医に診断されました。妻と結婚する前はほどほどにセックスができたのですが、結婚して家族として構成員を増やすための営みとそれを意識した途端、事に及ぶ際に生理的な嫌悪感が身体中を駆け巡るようになり、とても勃起できるような状態ではありませんでした。それに伴いメンタルも崩れ、原稿もボツを連発し、そのうち執筆するのも億劫になりました。
両親は私の前でセックスをすることにより興奮するたちでした。両親はたびたび眠っている私を起こして目の前で情交にふけりました。むせかえる温気立ち込める部屋の暗闇からギロリと私を覗く四つ目のキマイラ、その怪物が放つ悍ましい慟哭。思い出すと悍ましくて吐き気が込み上げてきます。私にはそれが耐えられないのでそのことを忘れようと努めました。本当の私はいなくて、ここにいる私は別の私なのだと思うように努め、私は私を殺しました。その時から私は私の殻の外から私を見る私となりました。私が高校に進学したころ、母は私の弟を身籠りました。しかし高齢で身籠ったこともあり、その子は流産してしまいました。両親はそれから不仲となり離婚してしまいました。それから私は母の実家にひきとられました。その日からだったと思うのですがたびたび同じパターンの夢を見ます。それは弟が生きていて私と話す夢です。私が虐待されていたことの詳細を弟にうちあけ、弟が黙り込んで考え込むという内容です。夢に現れる弟の姿は様々でした。働き盛りの市役所の職員の時も有れば、白髪の老人の時もあり、小学生の姿で現れることもありました。夢の内容はワンパターンで、私と弟はいつも何もない白い部屋で椅子に座り膝を突き合わせ、ただただ黙り込んでいます。
私は精神科やカウンセリングに通うようになり、妻はそんな私を励ましとても気遣ってくれました。
当時のことを思い出すと、今でも感謝と申し訳ない気持ちが溢れ、涙が出そうになります。
そして妻が深く気を使ってくれているのにも関わらず、私の心はどんどん憎悪で満たされていきました。その憎悪は、仕事や生殖が上手くいかない事に対して際限なく湧き上がる行き場のないヘドロのようなもので、それは大層厄介なものでした。惨めさと言うのは一個の人格をたやすく破壊するものなのだと今にして思います。妻が「まこ」を産み出したのはちょうどこの頃でした。子供がいれば少し違ったのかもしれないねと私が話すとじゃあ作りましょうと妻がまこを産んでくれました。そんな妻の愛をも裏切り、私は今まで飲まなかった酒を1日中飲んでは心配する妻を罵倒し、時には手を上げることさえありました。私は妻を憎悪した。惨めな私を受容し優しい言葉をかけ続ける妻は哀れな私を見下しているのだと思い込んでいました。酒浸りの虚な頭で原稿に向かっては数行で投げ出し泣きながら当て所なく外を歩き回り、酒を飲んで帰宅して夜は靄が掛かった頭で妻と「まこ」を冒険させる。そんな日々がしばらく続きました。時間の感覚が麻痺し終わることのない夜のぬかるみの中を歩いているかのような、そんな心地がしました。私と妻は救いのないひんやりとしたまさに地獄と呼ぶべき世界に居ました。歩くたびに苦痛を伴い、何処へも進めない。最早手詰まりといった状態でした。そしてとうとう妻は、手紙と離婚届と指輪を置いて、実家へと帰って行きました。私は当然だと受け入れ離婚届に署名をしました。それから妻とのやり取りはずっと義両親を通して行っています。これは義両親の発案で妻はそれに合意したということでした。私は妻が出て行ってから一度も話していないので、実のところ彼女が生きているのか死んでいるのかもわからない状態なのです。私は妻が居なくなっても一人地獄の中で「まこ」の物語を書き続けました。
まこは貿易船で勤めたキャリアを活用して王国お抱えの冒険家へと出世しました。そして王の命により資源を求め航海し、続々と新しい島々を発見しました。まこの開いた航路は王国の輝かしい繁栄の礎となり、まこはまさに伝説の冒険家となりました。何もしなくても3回の人生を送れるほどの褒賞を与えられた晩年のまこは家族も作らず人目を避け、灯台守として隠居しながら、愛する海の側でこれまでの交友関係や冒険をまるでお気に入りの本を読み返すように何度も思い出し噛み締め、そして十分に満足しながら穏やかにこの世を去りました。最期まで叔父のことを思い出すことはなく、充実した生をまこは全うしたのです。そしてそれゆえにまこは亡霊になりませんでした。その魂は肉体を離れると忽ち風に散り散りに飛ばされていきました。まこの魂のかけらたちは、追い縋る海の亡霊が伸ばした手をすり抜け夕空の遥か彼方へと消えて行きました。煌めきだけを僅かに空に残して…そしてその煌めきは滲んで亡霊の瞳から溢れ落ちました。
ホリィやジェムやシーもすでに死んでしまっていて、亡霊だけがただ1人取り残されてしまいました。老いることができず、記憶の忘却という機能を持たない不死の呪われた亡霊は、永遠にまこへの恋心を忘れることができません。あのときもし、まこの記憶を食べずかつ叔父を助けることも失敗して、まこに悔いが残ればまこも死後亡霊になり、亡霊どうし触れ合いお話しをして一緒に過ごせる可能性があったのではないか。
そんな想像が、不幸になったまこすら願ってしまう自分の存在が、亡霊をたまらなく苦しませます。しかしそんな亡霊の深くて巨大な苦しみは誰にも届きません。
氷に触れても冷たくなく、火に飛び込んでも熱くない。そんな亡霊のなかに、まこへの恋や後悔や自己嫌悪をはじめとした様々な苦しみが溶けて混ざり合いヘドロのようなどろどろになり、どろどろはさらに新たな苦痛を取り込んで際限なく膨らんでいきます。
ひとりぼっちの海の亡霊の苦しみを誰が知ることができるだろう。理解されることのないその苦しみは発散されることなく、海の上で永遠に膨らみ続けます。それは風が吹くと波が立つくらい当然のことでした。
亡霊の苦しみは消して浄化されません。ところでもう一杯如何ですか。
俺は胡乱な廃人に進められるがままジャックダニエルをグラスに注いでもらう。ボトルを持つ廃人のしわくちゃで乾燥した手はぶるぶる震え、ジャックダニエルがグラスから溢れる。
今日たまたま横の席になり知り合ったばかりなのに、自分語りしすぎているこのよれよれの廃人のことが俺は怖かった。
その気持ちをはぐらかすようにぐいとロックを流し込み窓の外を眺めた。まだ日は沈み切っておらず、うつむいて駅に向かって歩くサラリーマンたちは皆、大体がすでに退勤してるであろうになんだかせわしない風だ。
酔いが回ってきたところでちょっと強気になってきた。そして俺はこの店から出るタイミングを測り始めた。逡巡しているうちに手元の空のグラスにジャックダニエルがまた注がれていく。
俺はそれを一気に飲み干してすぐ会計を済まし、席を立って廃人に礼も言わず速足で店を出た。
話されたことを全て忘れたかった。振り返ると窓の磨りガラス越しに、あの廃人が見える。
廃人のぼやけたシルエットはこの世に滲んでこびりついた「しみ」のようで、まさに亡霊だった。
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六日目は、大西洋再び。ヒチャム君が今年から教える工科大学があるエッセウィラという港町へ向かう。マラケシュで両親と一緒に暮らしているヒチャム君。モロッコでは結婚しないとずっと両親と一緒に暮らさなきゃならんのよ。っで、僕はずっと、何かあれば直ぐに日帰りできるけれど、毎日通うには少し大変な場所で勤め先探してたの。それも、僕の大大大嫌いなフランスの影響が極力少ない大学で!と初日に言っていた事を思い出す。
それにしても、ヒチャム君。幼い頃は、観光客といえばフランス人だらけ。フランス人の横柄さや、大した事のないバカほど、白人至上主義を振りかざすことに、子供の頃からウンザリしていたらしい。そんでね、マキ。フランス人ってみんな、ただのお高くとまったバカとアホしかいないじゃん。っでね、その中でもマシな奴を見つけるリトマス試験紙は、英語なんよ。あーそうかも。。。ドイツ人もそう!英語喋れないドイツ人って終わっとる。
でしょー。でもね、フランス人ってドイツ人よりマジでアホじゃん。ゲルマン言語できないじゃん。だから、フランス語が全く分からない振りして、色々とアホがフランス語でのたまわった後にね、静かにこう切り出すのさ。まぁ色々とアドバイスをありがとう。I appreciate all your kind advice. But I think you were speaking in... French?..... そして時間を置いて目を見つめてやるのさ。そしておもむろに、i understand that you were speaking something to me in French but can you kindly say that again in English. って言ってやるのさ。するとね、今の御時世でしょ。あのアホな偉ぶっているフランス人どもも、さすがに恥じ入るんだよ。だってさーHicham、だって、それって遠回しで、お前アホ、明後日来いボーケって上品に言っているんじゃん、とワシ大笑い。ヒチャム君も笑いながら、さすがにね、わかるよね。でもさ、最強な奴は、返って怒るから。ここでフラ語分かるからって、奴らの悪口に対応しちゃいそうになるのをぐーっと堪えて。っで、心の中では、ボーケボーケ、しねアホーとかアラビア語で言うんでしょ、とワシ。いやぁ、まぁこれは僕とマキの間だけだけど、ヒソヒソとしたトーンに変えて、うん当然やん、と笑う。
ウケる。マキもさ、ふざけんなって思う相手のあしらい方を、身に付けないと。モロッコはそのためには最高の場所よ。スークの押し売りをあしらう。アホな外人どもをあしらう。こういうあしらい方を身につけられる場所だよ。とヒチャム君。マキはさ、マジメすぎるから、相手にしなくて良い奴はあしらうんだよ。そうじゃないと、僕とお話ししたい時とかに、疲れちゃってたら勿体無いじゃん。本当に話して意味ある人と話すための余力を蓄えて、ゴミは相手にしない。いい? ワシ。うーむ。刺さる。コイツ、ワシのこと見抜きすぎ。。。ワシ、分かりやすいのカピバラ。


海辺の街は美しい。大西洋だよ、おっかさんである。ヒチャム君との会話を思い出す。そして、ワシは海が好きだ。常に動いている。ドイツは常に淀んでいる。水も黒いので流れが良く分からない。山は死んでいるし。ヨーロッパの光の加減は、油絵と同じでノッペリしている。


細い路地も、マラケシュの路地より綺麗。ホコリっぽくないのは、海風のおかげであろう。マラケシュはホコリっぽく、昔のニューデリーやカトマンズみたい。一日外にいると、洋服は街の臭いが染み付き、鼻の穴は真っ黒、髪も、お帽子被っているのにバサバサ。最悪。でも、エッサウィラは、空気がきれい。久しぶりに安心して深呼吸して、気管支がやられている事に改めて気付く。
クロッシェで帽子を編んでいる男性としばしお喋り。ワシもクロッシェするの、と。編み針が少し扁平で、普通のクロッシェ針と違う。そして編み方もワシの知らない編み方。彼は編みながら、お前、日本人か。という。そうだよ、日本人。すると、そうだろうなぁ、と編みながら言う。なんで、と尋ねると、編み針の形状が違うとかさ、編み方がどうとかさ、針の持ち方や、糸の掛け方がどうとか、お前みたいなマニアックな話してくる奴、日本人しかいないだろ。。。と。あー。そうかもね。でも、俺、こんなに編物について観光客から質問されたの初めてだけどね、と初めて顔を上げて、笑う。普通の観光客なんて、手仕事バカにしてるだろ。旅行に来れるくらいの金持ち成金は、手仕事をバカにするのさ。機械でできるとか思ってやがるんだ。でも、違うじゃん、機械と手仕事。そ。だからな、俺は、手仕事してない手をみると、ただの成金バカと思いつつ、こうやって手を動かしているのさ。楽しみがわからない人間なんて、買い物して喜びを買うだけなんだよ。貧しい奴らはどっちかって言ったら、あいつら観光客さ。誰かに楽しませて貰わないと、自分で自分を楽しませることすらできない。ハハと笑う。うーむ。おっしゃる通り過ぎです。


ヒチャム君は、三十分置きくらいに、マキ今どこ。写真送れというので、適当に写真を送りながら街歩き。ナチ時代に大量に逃げてくるユダヤ人を受け入れたマラケシュ。トルコでも、ドイツ人もユダヤ人虐殺に対抗して、トルコでもギリシアから大量に逃れてきたユダヤ人を受け入れていた。が、トルコは悲しいことに、それが所以で、ドイツから報復措置を取られる。モロッコは、フランス領だったため、ドイツも手が出せなかった。ヒチャム君にその話を聞いていたので、エッサウィラのユダヤ人墓地まで歩く。中には入れなかったが、海辺の墓地に、彼らは眠りながら何を思うのか。。。バーセン先生のお墓参りに行った事を思い出し、揺るぎない故郷があるという事の有り難さを思った。
エウロッパのバカ観光客と、モロッコ人の差異は、海への対峙の仕方で直ぐに分かる。モロッコ人達は、みんな静かに座って、ひたすら海を眺めて、時折、ボソボソと喋っている。けど、基本的に静かに物思いに耽っている。白色バカどもは、大騒ぎして、フラもアメも、大きな声で下らないことを騒いで、写真をバカスカ撮って去っていく。実に人間観察は面白い。
僕ね、あと5年働いたら、今まで働いた分と合わせて30年の国家サービスだからね、もうすぐ年金対象者になるの。だから、エッセウィラ工科大学でも、定年まで働けるけど、まぁ五年働いてから考えて、早期リタイアして海釣りの毎日も良いかなぁなんて思っているの。えーっ。マジっすか。ワシもね、そろそろ早期リタイアしようかと考えているところなの。というと、へー。。。なんか、人生中年の節目、mid year crisisなんて関係なく自由に生きてきた独身者って、似た者同士なんだねぇって妙に感心しあう。ワシね、心配性だから、マジで子供産まなくてよかったって思っているの、というと、顔を覗きこんで、あー。もう当然だよね。この時代に子供産んで貰って、育てる勇気は僕にも無い。仕上がった大学行ける子供を、最終的に磨くお手伝いだけで十分さ、と。ワシも全く同じなので、笑える。
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夢
最終更新:2025/01/29
去年の合作の人に突然怒られる夢だった、普段接点ないのに。
橋から人が落ちていくのに誰もそれに気を止めずに各々の時間を過ごしている空間だった。 インターネットの友人と遊園地へ行った帰り、という場面から始まる夢。楽しかったね、って語らいながら分岐点まで歩いていって、橋の上で名残惜しさから他愛もない話で時間も心も埋めていくのだけれど、そんな一場面の遠くで橋の軋む音、その後に鈍い音がする。感覚的には遠いのだけれど実際のところ、すぐ横で人が湧いてきて落ちてを繰り返していた。表情は見えなくて、だからそれが誰か、何なのかも分からなくて、僕らはその横でずっと話していて。橋の下は川が流れていて、すぐ近くに平面的かつ立体的な山があった。その山の前に川岸をつなぐように電線が渡っていて、電柱のような木のようなものに、やけに大きな白い何かが止まっていた。僕はそれを鳥と認識した。概念的な生命体だった。 ある程度時間がすぎて、友人に別れを告げてひとりになったので僕は橋の下に降りてみた。所謂戦隊ものの格好をした5人組が何かをしていた。何をしていたかは思い出せないのだけれど。好奇心にかられた僕は彼らに近寄って何かをした。その間も人が橋から落ちてくる。最後に僕は崖の途中付近にいて、僕もその後同様落ちた。正式には落とされた。戦隊ものの格好をした人はにこにこしていた。僕もにこにこしていた。
起きていても寝ていても臓物を引き出す夢を見る。ずっと前から。きっと何かに影響されたものの派生かなと思うけれども何もない空間にいて、知らない手が胃腸だったり心臓だったりを掴んで体から取り出してしまったり、肺を力強く押してみたりする。 偶に自分の手が自分の意志とは関係なく動いてみせることもある。痛いというよりも塞がっていた水道がとおるような、すっきりとした感覚になるようなので悪い気分はしないけれど、目を覚ましたとき鈍器が体内にあるような気持ちになっていつもよりなんだか重たく感じる。 血が透明な何かに入れ替えられる時もある。
2024/09/13 寝れないなと思いながらただだるい体を少しでも楽にするために良い体制を探していた。最終的に平たい長座布団の上に寝そべっていた僕の上半身前面がやけに涼しくて、少しヒリヒリするような脳の認識を感じて視線を下ろしたらむき出しの臓物とも取り難いそれ、が見えた。臓器に対する知識の上での解像度が低いから臓物もどきに変換されたのだろうなと思うのだけれども。 ただどうすることもできなくて、どうしてか動けなくて薄暗がりで鈍く輝く臓物もどきを眺めることしかできなかった。ずっと見ていたら不規則に動く心臓のようなものや腸がだんだん膨張していっているように見えてきて、飲まれてしまう、と思ったら目が覚めた。04:23だった。短い時間だったのに大変不思議な夢だった。 膿んだ傷口が風に当てられて痛む感覚の延長みたいなものをずっと感じていた。
2024/08/22 気がついたら僕は、知らない家庭の団らんというものに混ざっていて、見知った顔を持ったヒトと世界を旅していた。それらしい彼等の風貌をしていて内面は少し違っていて、戸惑いながらも地球にある国々を巡って、世界の様々な人に出会った。様々な文化に触れた。どうしてか各国が地続きの世界で、さいごに見たのはさっきまでともに旅をしていたヒトたちの笑顔と片手に握った金魚が泳ぐビニール袋だった。 この世界はずっとどこかずれていた。例えば、F国では銀色の箸を使って食事をしていたし、最期に行ったA国では、なぜか室内でJ国のお祭りを行っていた。屋台で出される食事はまるで配給や給食のような出し方だった。知っているようで異質なお祭りの空気をどこか遠くで眺めているような気持ちで屋台を見回ったりして、屋台のヒトと何気ない談笑を交わして。 それなりにお祭りを謳歌したあと、お祭りの熱を冷まそうと散歩をしていると眼の前に両手ではとても覆いきれないくらいに広い青が目の前に広がった。 溶けてしまいそうな曖昧な水平線に心を惹かれ半ば引きずられるように、操られるようにそちらへ歩いていく。急に視界の下の方にあったはずの地面を見失った。さっと緊張で滲む手汗を握り、足元を見ると崖だった。間一髪で落ちることなく地を踏みしめた私は眼の前に広がる初めて見る光景を見つめていた。自分の知っている海ではなく怖いくらいに鮮やかな海だった。 ずっと見ていたら呼ばれてしまうんじゃないかと思ってしまうくらいにそこの見えない海と、曖昧な空のどことなく低いのに確かに届かない雲の流れを目で追っていると、後ろから誰かの声が聞こえた。迫りくる明るい声がする方に目を向けると、旅をともにしていた人たちだった。 『良かったね、見つけられたね。』何かを祝福するふうにそう言いながら笑顔で近づいてくる。まるでこの旅の終着点にたどり着いた、みたいな終わりの空気を手のひらに感じながら戸惑っていると急に全身に空気を感じた。紐で縛られたりしていない金魚の入った袋の口が手から離れる。 最期に見たのは離れていく彼らの笑顔と、空を泳ぐ金魚と落ちてくる空だった。 普通に人生の終点だった。
2024/07/27 真昼。僕は確かにさっきまで友人とピクニックをしていたように思う。あちらの世界では遊歩道ではない場所がこちらの世界では何故か遊歩道になっており、そこになんの違和感も抱かなかったくらいには楽しいピクニックだったのだろう。そんな優雅なひとときなど一瞬だった。 「火災発生 火災発生 外出中の方は直ちにお近くの避難所へ___」 突然目も覚めるくらいけたたましいアラートとともに防災行政無線から“乾燥による火災の大量発生”を知らせる声が聞こえてきた。それを聞いても何故かのんきだった僕らはすぐには動かなかったのだが、���と香ばしい香りが漂ってきた。そちらの方に目をやると一本の生まれたての煙柱が見えた。小規模の森と言いたくなるほど鬱蒼と生えた川岸の草が例によって火を起こしてしまったらしい。 真横で火災が起きている。 事態に気がついた僕達2人は鞄を抱えてあちらの世界には存在しないエメラルドグリーンと白の可愛らしい建築デザインの避難所へ駆け込んだ。何故か裏口から。 避難所の中は学校のように机が規則正しく並んでおり、床も机も一目でわかるくらいには木製だった。すぐに不安な気持ちでふと窓の外に目をやるとそこそこ離れた小学校の方から大きな煙がたっているのが見えた。そちらの方に住んでいる知人らに思いを馳せながら避難所の中を一周する。幼少の頃の日本国外にいるはずの友人や、既にもうこの世にいないはずの人が普通に生きて不安そうな表情を浮かべながら雑談をしている。そんな彼らに懐かしさを覚えて僕は思わず声をかけたが、一瞥すらくれなかった。僕が幻覚をみているのか、僕が幻覚なのか彼らに気がついてもらえることはなかった。 出かける際に持ってきたカバンのほか何も持っていなかった僕らはまだ火災の起きていない方に位置するスーパーに向かおうと避難所の外へ出た。 しっかりとした避難所の冷たい扉を開けいざ出発と思い左右に視線をやると、ちょっと先にある小学校の頃の同級生の家が燃えていた。緑色の芝生も雰囲気のある重い扉も面影がないくらい火の塊だった。 遊園地もブランコの周りに生えていた公園の木々も山も赤く染まっていた。 この世界の終わりを突きつけられた気持ちで即座に避難所へ引き返し、窓の外にまた目をやると避難所の真横の空き地が燃えていた。逃げ場などどこにもなかった。
2024/07/XX ⚠微グロ “目が覚めたら”真っ暗な世界にいた。真っ暗で周りには何も見えないのに自分の手足や足元は目視できた。 不思議に思いしばらくぼーっと周りを“眺めて”いたら極僅かな小さな小さな何かが這いずるような音がした。 音のした足元に目をやると白っぽいグレーっぽい、発光したような細長い何かが蠢いていた。(以下ミミズと称する) あまりのおぞましさに暫く嘔吐いていると足元にミミズが落ちてきた。動揺が引き金となって必死にせき止めていた何かが溢れ出すように吐いた、はずだった。でてきたのは想定とは異なる吐瀉物だった。胃液ですらない。ひたすらミミズが溢れてくる。自分でもわかるくらいに青ざめて真っ白になっていく床に膝をつく。潰れるミミズの体液は真っ青だった。この生物が何なのか自分から溢れてくるのは何故なのかぐるぐる考えながら、一度壊れた堤防からあふれるミミズをただひたすらに吐き続ける。長い時間休まることなく吐き出される苦しさに涙が浮かぶはずなのだが体内には彼らしか詰まっていないのかミミズしか流れてこなかった。自分の手足が次第に骨と皮になってもなお体からでてくるのはそれだけだった。 長く感じられた時間の末空っぽになった体は次第に真っ白な海に近づいていく。薄れる意識の中で最後に見たのは何だったのだろう、僕は目を覚ましてしまった。 とても冷たい世界だった。
僕はいつものように窓枠に座って時計アプリを起動させたスマホを見ていた。 ずっと前に開始させたストップウォッチの画面は止まることを知らずにずっと動き続けてくれるので安心するから。 どれくらいの時間が過ぎただろうか、突然固いはずのスマートフォンの画面がゆがむ。あまりの突然さと俊敏さに半ば寝たような脳みそを起こすまもなく液晶に飲まれる。体に纏わりつくスマートフォンの熱を感じながら意識を手放した。 意識を取り戻すと三人称視点になっていた。 僕の先程まで座っていた窓枠付近には持ち主を失ったスマートフォンが落ちていた。そのスマートフォンにおそらく僕らしき人がドロドロした液晶に飲まれていくその光景をどうすることもできずにただ見守っていた。見守ることしかできなかった。 無機質なはずの板が生命を帯びたかのように、確実に僕を飲み込もうとしている意思をもったかのようにさえ見える飲み込まれ方。 何故か無抵抗に飲まれていく僕の体。 黒っぽい液体にじわじわと飲まれ、見えなくなっていく体。 三人称視点にも関わらずリンクする“息苦しい”という感覚。 体に纏わりつくスマートフォンの熱。 普段のような苦しさはないが多少の焦りを感じた。そこにいる僕が飲み込まれきったらそこはどんな世界なのだろう、薄ぼんやりと眺めては三人称視点の僕もどうにか動こうと試してみるが壁になってしまったかの如くびくともしなかった。 暫くして髪の毛1本まで飲まれてしまった僕はその後何時間見つめてもでてくることはなかったし、三人称視点の僕もまた、どれだけ動こうとしても動けなかった。 ただどこまでも底へ引きずり込まれる感覚を最後に僕は目を覚ましてしまった。 先程まで生命を宿していた冷たいスマートフォンの時計は05:22。夢の中で最後に見た時刻だった。 今思えばもしかしたら三人称視点だと思っていた方の僕自身も飲み込まれている最中だったのではないか、などと思うが、一度中断してしまった世界である以上真相はスマートフォンの暗闇の中だった。そんな考察でもしながら僕はいつものように窓枠に座って時計アプリを起動させたスマホを見ていた。 ずっと前に開始させたストップウォッチの画面は止まることを知らずにずっと動き続けてくれるので安心するから。
へんな養護施設に化け物と天災が来て、必死に逃げるも、もう選択肢 はないと思い下水管から���げ、へんな科学者みたいなおじさんに拾わ れる。電波関連の管理や下水の管理、変な生き物の研究をしているお じさんのもとで助手として生活していたがある日、お使いがてら養護 施設を見に行くことに。そこであった少年を抱えてまたもや起きた化 け物と天災から同じ方法で少年を逃がし、自分は飛行して逃げたが少 年がなかなか見つからない。下水管の入口のようなもの?を転々とし て脱出口を探す少年をやっと見つけ出し局所的な天災と化け物の出現 の原因解明をする話。
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ある画家の手記if.121 告白 夏祭り
新居の近くには綺麗な池のある広々した公園があって、気が向いたら僕はその公園の池の前のベンチで絵を描いてる。
池の水は溜まりっぱなしじゃなくて公園の外堀の浅い川を巡らせてあって、いつも透明度が高くて綺麗。魚もいる。魚を狙う鳥もくる。 いつも隣のベンチにいてスズメにパン屑をあげてるおじいさんとか、池のまわりをランニングしにくる学生とか、公園に日課で訪れる人たちがいて、僕も通ってるうちに友達が増えた。 静物画を描いてた頃は絵を描くために外に出る必要はなかったから知る由もなかったけど、衆目のある外で堂々と絵を描いてるとちょっと目立つし周囲の興味をひくものらしい。スズメのおじいさんにそう言われた。 そんな公園の友達から、近々この公園で夏祭りが開かれるっていう情報を得た。毎年の恒例行事なんだそうだ。 「直人くんも来てみたらどう?お家は歩いてこれる距離なんでしょう」 「…そうですね。息子と一緒に来ようかな、あの子も夏のお祭りは初めてかもしれないし」 「そういえば息子さんいらっしゃるんですよね、今何歳なんでしたっけ」 なぜか僕が親しくなった相手に香澄のことを話すといつの間にか相手の中で香澄が幼稚園児くらいになってる。 もう成人してますよって言って証拠の写メを見せるときはだいたい絢と香澄のツーショット写真を見せる。 最初に香澄単体の写真を見せて一目惚れとかされたら困るから、となりに香澄とはまた趣の違う華やかで派手な絢もいたら見せられた相手も何がなんだかよくわからなくならないかなとか。実際まあまあそんな感じの効果は上がってる。絢ごめん。 顔立ちだけなら僕と香澄より僕と絢のほうが似てることになるのかもしれないけど、写真を見せても絢のほうを僕の息子だって思う人は意外と少ない。僕も絢もそれぞれ新しい家や家族に馴染んできたのかな。 僕は夏祭りに行ったことは多分ないけど、香澄と行った旅館の初詣でみんな着物着ててお店がたくさん出てた、あんなかんじかな。
前のマンションは立地は住宅街の中だったけど、マンションの方針としてその地域での町内づきあいは一切絶ってあった。今はそういうのが何もない普通の一軒家だから町内の報せとかもご近所から回ってくる。 かいじゅうくんの形のポストに入ってた夏祭りのチラシを取りだして見ながら、簡単に添えられたお祭りのイラストでなんとなくの雰囲気を知る。描かれてる人、みんな着物…浴衣?だ。僕がポストの頭を撫でながらチラシを見てたらちょうど出かけてた香澄が道の向こうから帰ってきた。 最近香澄はよくイキヤのマンションに通ってる。 最初は部屋を貸した身として僕が通って様子を見るべきかなとも思ったけど、結局僕がいつまでも仕事してて行けないでいたら香澄が行ってくれてた。香澄はときどき車出したりもしてた。 二人はけっこう仲良しみたいだ。それは少し、わからないでもない。 イキヤの人間関係はこれまでほとんど画家やそういうことに携わる現場の人間で埋め尽くされてきてる。家庭内にも今は別の画家がいるだけだし。性格や気性を問わず画家同士で穏やかに優しくしあうだけってことにはならない。…その分、誰かに優しくしたい気持ちがずっと行き場をなくしてたりする。 帰ってきた香澄にお祭りのチラシを見せて笑う。 「これ、すぐ近所だし、一緒に行ってみようか」
そんなわけで当日の夕方、まずは自宅まで知り合いの着付け師の子に来てもらった。 浴衣もそこで前もって僕と香澄のぶんを買っておいた、お正月の旅館で知り合った貸衣装をしてたおばあちゃんの呉服屋さん。 あれから何度か仕事でおばあちゃんのお子さんたちにうちに来て手伝ってもらって、ちょっとだけ顔なじみになった。じゅんちゃんとゆなさん。 肖像画の内容にもよるけど、モデルがよく映える服や小道具が欲しいってときもあるから、そうい��ときに。うちのクローゼットにある服は僕と香澄のを合わせても、お互いに系統が揃ってる上にサイズが大きくてあんまり使えない。 買った浴衣は香澄が白で僕が濃い紫。旅館のときと違って香澄も今回は男性ものの浴衣で、二人とも柄はそんなに派手じゃない。旅先と違って行くのは近所の夏祭りだから、目立つ格好して歩いて妙な虫がついたら払うのに苦労しそうで。 今日は和服だから呼んで来てくれたのはじゅんちゃんだった。浴衣を綺麗に着付けてもらったお礼を昼間に焼いたクッキーと一緒に渡して、二人でお祭りに出かける。布を買って僕が作った簡単な浴衣を出がけに留守番するノエルに適当に着せたらじゅんちゃんに一度脱がされて着付けしなおされてた。
ちょうど陽が沈んだくらいのタイミング。外は昼間に比べたら少し気温も下がってきてる。 となりを歩く香澄の髪にはかいじゅうくんの簪が刺さってる。クリスマスに僕が慧にもらったものだったけど、僕より香澄が使う方が似合っててかわいいからそうしてる。…この方が慧もきっと喜ぶ。 香澄はバレンタイン…本人曰く「誕生日プレゼント」に、まことくんから髪留めをもらって、仕事の日とかによく使ってる。香澄は自分でそういう物はあんまり買わないし僕があげた覚えもなかったから訊いてみた。香澄が友達同士で物を贈りあったりすることにまで口は挟めないけどね。僕が無言でじーっと髪留めを見てたら視線に気づいた香澄は不思議そうに首傾げてた。
公園に入る前から外の道にも普段よりたくさんの人がいて、すでにかなり賑わってた。浴衣姿の人も多い。 はぐれないように手を繋いでたいけどご近所さんも来てそうだから無理かなぁ。 池のまわりをぐるっと夜店が囲むようにどこまでも連なってる。夜店は簡易テントみたいな作りで、高い鉄パイプみたいな骨組みを通してぼんやり光る提灯が頭上に並んで浮かんでる。 香澄と一緒に風を受けてとりあえず見て歩いてるうちにあっという間に空が暗くなって夕方から夜になった。提灯と夜店とところどころの街灯の灯りだけになる。 「あ」 思わず声が出た。飾りみたいにたくさんズラッと並べてあるのの中に、かいじゅうくんがいた。他にもいろんなキャラクター…?色々並んでる。顔だけ… 周りの人たちが買っていく様子を見てると、あれは顔につけるお面らしい。 迷わず買って香澄の頭に装着する。 「…?これって顔につけるんじゃないの?」かいじゅうくんのお面を香澄の頭の斜め上あたりにつける僕に香澄がほわほわ顔緩ませながら訊いてきた。 「香澄の顔が見えなくなったら僕が寂しいからね」 綺麗に装着し終えて満足してたら香澄がさらにほわほわ笑ってた。にっこりしてかいじゅうくんのいないところの髪の毛を梳いて撫でる。 僕はかいじゅうくんと比べたらやけにリアルな描写の般若面を買った。リアルで怖いからあんまり売れてないらしい。僕は首から下げた。背中側に面がくる。般若って女性じゃなかったっけ、とか思うけど、威嚇になる表情ではある。背後の警戒を般若面にお願いする。 二人でかき氷を買って食べ歩く。香澄がオレンジ、僕がブルーのやつ。二人でスプーンですくってお互いの口に運んで食べ比べてみる。どっちも冷たくておいしい。 射的のお店があったから香澄と二人でやってみる。ゴムを飛ばす鉄砲みたいなライフルみたいなやつを使って景品を撃ち落としたらそれをもらえる。 まずやってみた香澄が何発か撃ってお菓子箱を一個撃ち落とした。香澄はこういう体験は初めてだって言うから「コツを掴むのが上手だね」ってにこにこ上機嫌で褒めた。 そのあとに、香澄がちょっとだけ欲しそうに見てたウサギのぬいぐるみを僕が狙う。ルールに則って決められたラインから踏み出さないで鉄砲を構える。着物の袖が邪魔で肩までまくし上げる。たすきがけとかできればよかった。 僕は腕が長いから普通に構えただけでちょっとズルしてる感じになってるのかな。ゴムをつけ直してウサギを何度か撃ったら置かれた位置からずれてバランスを崩してウサギが落ちた。 店の人から受け取ったウサギを香澄に渡したら嬉しそうにしてた。垂れた耳。まだ留学から帰ってきてない絢のことを連想したのかな。 絢は今、まことくんとオーストラリアに留学に行ってる。日本国内ではなんの気兼ねもなく自由に好きなように活動するのが難しいのかもしれないからよかったとも思う、同時に、僕も香澄も心配な気持ちもあった。 だから僕が庭の樹から少し削りだして、二人でお守りを作った。木彫りかいじゅうくんのキーホルダー。 半分くらいのところまで香澄に作ってもらって、僕は最後の仕上げと少し整える程度のほうが絢は喜ぶかな、と、思ったんだけど、あまりに面妖な初期段階が香澄から提出されて僕は思わず難しい顔になった。なにかの形象をあらわしているとおぼしき木片の突起部分を落としていったらネット検索で閲覧に年齢制限がかかるような姿になったのでさらに削って削って磨いていったら最後にかろうじて残ったのはころんと丸っこい鈴みたいな形のかいじゅうくんだった。雛かもしれない。 お祭りはまだ見てまわるけど僕が撃ち落としたウサギは手荷物になるから一旦僕が香澄から預かる。 ヨーヨーがたくさん水に浮かべてあるのを二人で発見。香澄がすくってとった。歩きながら楽しそうに手で弾かせて遊んでるから、預からないで香澄に持たせたままにする。 頭にかいじゅうくん、手に水色のヨーヨー。着物を白にしてよかった。香澄の髪の色がよく映えて綺麗。 夜店の焼き鳥とかクレープとかホットドッグの匂いが漂ってくる。僕らは家で早めの夕食を済ませたから匂いだけ。公園のみんな曰く、お祭りの夜店で売ってる食べ物全般は内臓や消化器系によほど自信がないと食べるのは分の悪い賭けなんだそうだ。たとえよく火が通されたものでも油が怪しかったりするらしい。 みんなに団扇を配ってる人がいたから僕もひとつもらって、首筋をあおいで風を通す。じゅんちゃんに片側に流すみたいな幅の広めの紐を一本絡ませた編み方にされたから、いつもみたいに後ろで縛ってるより暑い。 となりで香澄の歩くスピードが少しだけ落ちた、様子からして下駄で少し足が痛むみたいだった。 僕も下駄は履き慣れないけどいまだに全然痛くならないから油断してたな… 少し人混みから逸れた場所に入って、香澄の前に片膝をつく。 「ここに足乗せてごらん」自分の立てたほうの膝をトントンと示して香澄の片足からそっと下駄を脱がせた。そのまま僕の膝の上に乗った白い足を診てみて、すぐに病院に行く必要があるような怪我はまだないことを確認する。 それでも鼻緒があたる箇所は少し赤くなっちゃってるから今日はこの辺でもう帰ったほうがよさそうだ。片足ずつ僕の膝に乗せさせて、その間に僕は自分のハンカチを歯でいくつかに裂いて破って、香澄の下駄の緒の部分を外して抜いて、そこにひとまずの代替にハンカチを通していく。ハンカチが柔らかいガーゼ生地だからもとの頑丈な緒に比べれば痛くないかもしれない。 一度香澄に履いてもらってから、すぐ脱げないけど締めつけない程度に長さを調節した。 家までならなんとかなりそうだったからそのまま二人で帰ろうとして、帰る途中で二人して見つけてしまった。 すぐそこの、ビニールプールみたいなのの中にたくさん金魚が泳いでる…。 香澄と顔を見合わせる。 「足は痛くない?」 「うん。すごく楽。」 「…じゃあ、あれだけ最後に見て帰ろうか」 足を痛めないように、ゆっくり水槽の前に二人でかがんで元気に泳ぎ回る金魚をじっと見る。 …体が白くて…頭だけ朱いのがいる。小さい… 「あの子香澄に似てる」 指差して香澄に言いながら、お店の人にすすめられるまま金魚をすくう小さな道具をもらった。指先で触って確かめる。薄い紙が貼ってあるのを水につけて金魚をすくうみたいだけど、紙の目がどの向きなのかとか裏表とか、踏まえておいたら少しはたくさんすくえないかな…。 「…ん 香澄どこ行った?」 「あそこ!」 僕が道具を見てて見失った香澄に似てる金魚を香澄がずっと目で追跡しててくれた。香澄が指差す先に腕を伸ばしてひとまず一匹目を無事にすくう。香澄確保。 そのあとも僕は香澄に「どの子がいい?」って訊いて、香澄が選んだ子をすくって、五匹すくったところでとうとう紙が破れた。 金魚をもらっていくかここに放して帰るか訊かれて、もらって帰ることにした。
荷物が増えたし夜も更けてきたから、今度こそ本当に今日はこのあたりで帰ることにする。 特に金魚の入った袋を持ってからは僕も香澄も少しおたおたした。生き物が入ってるし、一緒に入れてもらった水は少ないし、袋は歩いてたらどうしても揺れるしで、このままじゃ帰り道の間に弱って死んじゃうんじゃないかと思って。 楽になったとは言ってたけどやっぱりいつもの香澄の歩くペースよりは遅いから、公園を出てうちまでの道の真ん中あたりにきてからは、香澄に金魚を持ってもらって僕が香澄をおんぶして帰った。 香澄をおんぶしたり抱っこして運ぶのが好き。僕も昔小さな頃によくそうしてもらってた。どこへ連れてかれるのか分からない状態でも安心していられるその人との関係が大事だった。今僕の背中で疲れたのか少しうとうとしてる香澄に、嬉しくてにこにこする。あんな安心感を、香澄にあげられたら。 お祭りはあと二日、今日みたいな感じで続くらしい。時間があれば、次は普通の動きやすい格好で寄ってみようかな。
お祭りの夜は家に帰ったら浴衣を脱いで、香澄とうさぎと一緒にお風呂に入った。 香澄を洗ったあとでうさぎも洗って清潔にした。さっぱりしてから普段着に着替えて急いで一人で車を出して金魚を飼うために必要なものを買いそろえてきた。あんな少ない水と袋に入れたままだと一晩で死んじゃうかもしれない。 ひとまず金魚たちを無事広い水の中にうつしてから眠った。
次の日、元気に泳ぐ金魚たちを見ながら、香澄と相談して何人かに金魚を譲る相談を持ちかけてみることにした。 香澄がイキヤに連絡してみたらイキヤは今のマンションの部屋で飼う形でもらってくれるらしい。僕が情香ちゃんに連絡してみたら、長期間部屋を留守にすることもままあるから少し難しいって言ってた。 五匹。白い体に赤い髪のかすみはうちで飼いたい。けど、かすみは一番体が小さくて餌を食べる順番争いでも弱いみたいだから、ほかの子と一緒に飼ったら競り負けて弱っちゃうかもしれない。誰かもらってくれる人…
まだ陽の落ちきってない夕方に今度は浴衣じゃなくて動きやすいいつもの服で、香澄とまたお祭りに行ってみる。 一度来てるから二人ともあんまり気構えがなくて、お祭りを満喫するというより散歩の延長みたいな感覚で。僕は今年の夏祭りの見納めのつもりであちこちを見回す。 僕の横で香澄は今日もかき氷を買って食べてる。僕もたまにスプーンでもらって食べる。 特に目新しいお店が増えてるわけでもなかったから、香澄にそろそろ帰ろうか、って 声をかけようとした瞬間だった 場にそぐわないすごい勢いで僕らの脇を走り過ぎていった男にぶつかられた香澄が 跳ね飛ばされるみたいに 池に落ちた 「ーーーー 香澄!!」 大きな水飛沫と人が落ちた音に周囲からいくつか悲鳴があがって周辺が騒然とする ここの池は綺麗なほうだけど深くなってるところは深い 香澄が一人で岸までたどり着くのは難しそうで僕も泳げるわけじゃないけど迷わず飛び込もうとしたとき、 カンカンカンと乾いた音がした 鉄パイプの屋台骨を踏みつけて走る音? 考える暇もなく夜店の屋根の上から細い人影が舞うように池に飛び込んだ ーーーいつもの特徴的な裾の長い上着は着てなかったけど見間違いようのないシルエットに 僕は香澄とは逆方向に走り出す 信用なんてしたくもないし信用したからこうするわけでもないけど、泳げない僕がたどたどしく救命ベストとか持って自分も池に飛び込むよりあれのほうが確実に香澄を助けられる ああもう 言いたくないけどあれは死生観とか倫理観とか常識とかそういうのが一切通用しないわりにどういう理屈だかこういう場面では迷いなく人命や人権を最優先したりする、あれの倫理観がとくに意味不明になるのは七ちゃんやイキヤや少数の大事な人間相手なのか 知るかそんなこと、ただおそらくこの場ではあれは香澄を助ける 学生時代からいがみ合ってきたから逆にソリの合わないフィーリングは嫌ってほど把握してる 僕の方が歩幅が広いし絵を描いててかなり体が鍛えられてたから、走ったらすぐに追いついた 香澄を突き飛ばして池に落として逃走しようとしてた男 腕を後ろからガシっと掴んだ、暴れて抵抗してきたから前方の空間に誰もいないのを確認して男の腕を掴んだまま前に回り込んで男の体を一度僕の肩と背に軽く引っかけるように乗せて空中で相手の体を大きくひっくり返すみたいに投げて前方の地面に叩きつけた 本気でやると全身あちこちに骨折や打撲を負わせる悲惨なことになるから、あくまで逃走防止の範疇を超えない程度に抑えた 倒れた男の両手を背中でねじりあげて背に乗っかるみたいに膝を当てて体重をかけて地面に這いつくばらせる 「あ��ね。こんなくだらないことしてないで僕は池に落ちた息子についてたかったんだ、心配だし、僕があの子を直接的に助けられなくても君にこんな風に構ってるよりは幾分かマシだよ僕の気分がね、でもこの祭りに来てるってことは君も近隣住人の可能性がある、そんな人間を正体不明のまま逃して野放しにするのも気持ちが悪いからね…」 取りおさえたまま今思ってる恨みつらみを男にずらずらストレス発散みたいに言い募ってたら、全身びしょ濡れになった香澄と行屋が池から無事に上がって僕のところまでやってきた。行屋が連れてきたというより香澄が僕のところまで来てくれたみたいだ。 「香澄!怖かったね…息ができなくて苦しい思いはしなかった?」 香澄をぎゅっと抱きしめたら、濡れてるせいかもしれないけど元々低めの体温がいつもよりさらに低い。真冬だったらショック死してたかもしれない… 僕の体温であっためるように抱きしめたままきゅっと閉じた目尻に薄く涙が浮かぶ …こわかった 「…池の水は清潔じゃないし、もう夜だけど今から一緒に病院に行こうね」 香澄から少し体を離して安心させるように微笑みかける。本当は救急車を呼びたかったけどここに呼んだらたくさんのいい好奇の目の的にされそうで、悩んだ末に呼ばなかった。 香澄は行屋のいつものマントみたいなカーディガンみたいなエスニック調の上着をバスタオルがわりにして頭からかぶってる。こっちを見てくる他人の視線から髪や顔や特徴的な部分をすっぽり隠せてる。そのために飛び込んでったときいつものこれは濡れないように着てなかったのか…? 行屋は僕がおさえてた男の背中を容赦なく踏みつけて、いつもジャラジャラ首から下げてるネックレスだかペンダントだか天然石がたくさん連なった長い首飾りの中から日本の仏教の行事で使う仰々しい数珠みたいなやつを一本首から外すと、僕が背中で束ねてた男の両腕を寝違えそうなほど引っぱってそれで縛り上げた 「…そんな繊細な装飾品、僕なら簡単に引きちぎるぞ。こんなものが手錠がわりの拘束になるのか」 あんまり行屋を見たくないので見ないようにしながら言ったら、行屋はとくに気取ったふうでも得意げなふうでもなくあっさり答えた。 「数珠を通してんのはピアノ線だ」 そう簡単には千切れないって言いたいのか ていうかそんな仕掛けあったのかそれ… 本人は歌うような口調で、数珠はいいぜ、海外でも宗教上の理由とか言や結構やべえときでも没収されずに見逃される、とかなんとか嘘か本当かわからないことを言いながら、さらにきつく縛り上げてる …に、しても、こいつが人命救助に加害者の捕獲… 行動に一貫性がある…とうとう気が狂ったのか? 「お前いつから善行に目覚めたんだ」 行屋は造形的にはそれほど大きくない口元を三日月みたいに大きくにんまりさせながら言う。 「飛び込みと捕り物は祭りの華だろうが」 「…」 やっぱりまともな理由じゃなかった。香澄が池に落ちたのも僕が突き飛ばした男を捕まえたのも、祭りにそえる花というか一等祭りを盛り上げる余興というか…そんな感覚なのか…? いや、理解したくない。ここまで。 行屋もそこでくるっと向きを変えて、薄着一枚でずぶ濡れのまま、まるで寒そうな気配もなく一言の挨拶もなしにまた身軽に夜店の屋根に登って身を翻してテントを飛びこえて、あっという間に姿は見えなくなって、祭りの中から去っていった。
その日はすぐに香澄を病院に連れていって診てもらった。 そんなにたくさん水を飲んでなかったおかげなのか、特に体に異常はなし、外傷もなし。医師は多分大丈夫だろうって言ってたけど、細菌とか諸々の検査をしてもらって、後日検査結果を聞きに来ることになった。 香澄を池に突き飛ばしていった男は僕が警察に引き渡した。お祭りの中で起きた事故だっていうんでお祭りの運営にも事の一部始終の説明を求められた。本人曰く、道を急いでいて不注意で偶然香澄に体がぶつかってしまい、そんなつもりはなかったのに香澄が池に落ちてしまって、深い池だったからそのまま溺死させてしまったらと思って怖くなって逃げた、僕に捕まったとき抵抗して暴れたのもそういうことで、香澄個人を狙った意図的な行動ではない、と。 僕はそれを鵜呑みにはしないし、まるで香澄が落ちたせいみたいな言い草がすごく不快だけど、それ以上個人的に関わるのも嫌だったからあとは警察に任せた。
香澄視点 続き
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--深海人形-- クールに生きる位なら
----Rather be dead than cool
----Kart Donald Cobain
※閲覧&キャラ崩壊注意
※雑多にネタをぶち込み
※後半クロスオーバー注意
各種SNSに実装されているALT機能は、盲目、目の不自由な方々の為に用意されているものです。
悪用、正しくない使い方、邪な使い方している連中��直ちに恥を知りなさい。直ちに。これからは目の不自由な方々の為だけに使いなさい。そう使う気が無いならもう二度と使うな。いいね?
…。
私は道端で力尽きて死ぬ虫ケラが、大好きだ(※ベランダで交尾をする虫ケラもだが)。
私は其うやって、無意味に死んでいく命が大好きだから、シロカスの事も、ガトカスの事も愛してるのかもしれない。
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インドから帰ってきた日本人が「インドより日本が良い。」…って牛丼屋に駆け込んで牛丼食べてた投稿見て、日本優越の思想って日本人に支配的よねと(※日本人は割と選民思想が強いが、何故か、選民思想の塊である一神教に馴染まず、嫌う)。
けれども、昔に「日本ももっとインドみたいに出鱈目な国になればいいのに」…って言ってた漫画家さんは三十代前半で自ら命を絶ったから(※案外、其う言う物かもしれない。人は、優越感、差別意識によってでしか、本来、存在感を得られない)。
…。
性癖>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>(※越えられない壁)>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ジャンル(※結論:結局、ジャンルと言う縄張り中心より、性癖中心で動いた方がオタクは得をする)。
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虫ケラとして生まれたならば、虫ケラとして死んで行くしか無い。ねこぢる作品やtikwの物語にも見られる、其んな無情さが良い。全ては無意義で虚無。思い入れを強くすれば強くする程無駄。
人間は、上位存在からすれば、虫ケラみたいな生き物。其れも相まって。
我々は、哺乳類と言う枠に収まる虫ケラでしか無い。そして、虫ケラが冬を越せずに死んで行くのは仕方無い事。
…。
ジミヘンが長く生きられたら、現在の洋楽も、此処迄衰退する事は無かったと思う。カートも。…ニルヴァーナが解散して無かったら、カート・コベインが自殺して無かったら……(※此処迄、欧米の音楽業界は、J-POPに侵食される事は無かった)。
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金掛けたく無かったら、ガソダムチャンネルか陽昇チャンネルの公式無料期間限定配信を見ると良いぞ(※オススメ)。
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gndm50周年についての声明、如何にも、『大本営発表』と言う感じで、終わりの始まりを感じ取れましたね。
全体的に、余りやる気を感じられない。良くない兆候ですよ。此れは。
…。
ティターンズvsデラーズ フリートvsブルー コスモス(※選民思想組織総攻撃)。
…。
シロカスもガトカスも、ペットにして飼いたいね(カスのポエム)。
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拙作では、
ガトカス=あやなみ
シロカス=そうりゅう=あすか=らんぐれー
野獣大尉=まきは=まり=何とかかんとか
みたいな感じです(※適当)。
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…『男の子は虫が好き(※…と言う前提で、ワイは生きて居る)』。
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虫は、シロカスも大好き、先ず、木星に居ないから。ガトカスも好き。スペースノイドは、ロクに自然を知らない宇宙人だから、虫が皆可愛く見える。
…宇宙世紀では、虫達の価値も地位も、旧世紀とは比べ物にならない位に、高くなってると良いな(※某モビルミゼット話でも虫の話を沢山書いていくよ)。
…。
私は、異形の存在と虫ケラに、惚れて惚れて仕方無い。
…。
ガトカス儲「…がとーは悪くない!確かに取った手段はテロでしかないかもしれないが、彼等は彼等の正義を生きた!(←※逆に此れくらいしか言えない)。」
ワイ「 名 誉 テ ィ タ ー ン ズ 将 兵 あ な べ る ⭐︎ が と ー(※たった此れだけで尊厳破壊完了!)。」
…。
赤いあれは、多分、政治家よりかは、宇宙海賊の方が向いて居る(※実質赤髪なので)。
…。
ワイは、嫁推しを、何度も使えるエコロジーな人型の道具か奴隷か家畜か虫ケラか玩具だと思ってる(※最低)。
…。
----We have no right to express an opinion until we know all of the answers
----If you die you’re completely happy and your soul somewhere lives on. I’m not afraid of dying. Total peace after death, becoming someone else is the best hope I’ve got
----In Webster’s terms, ‘nirvana’ means freedom from pain, suffering and the external world, and that’s pretty close to my definition of Punk Rock
----Kart Donald Cobain
※…以下、モビルミゼット・昆虫ネタ注意
…結局は『ハクミコ+ピクミ⚪︎(※みたいな話)』です(※モビルミゼット話)。
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ドールハウスじゃなくてチンチラの大型ケージだからな、完全に小動物扱い(※シロカス可哀想笑)。
其れでも、シロカスは、シュレッダー済みの新聞紙、ダンボールを素材に巣作りして居た(※創造性は元からあるので?……)。
飼い主(?)「…巣作りしてる……。」
…一方、ガトカスは外の犬小屋で暮らして居た(※流石、忠犬)。
…。
もっと捕食ネタ入れたいよね(※オオムカデとか出そうかな)。…あの星には、沢山大きな虫も居るんですよ、羨ましいでしょ?(※満面の笑み)。
…。
モビルミゼットのシロカスはカメムシとか油虫が出て来ても、アシダカ軍曹とか猫さん達に通信入れるので、大丈夫ですよ(※ガトカスは打撃武器持ち出す)。
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※…以下、クロスオーバー注意
※…此処(※ttp://aruzimiya.blog110.fc2.com/blog-entry-65.html)参照(※Chat GPT生成文注意)
野獣大尉「ざぁ〜こ♡」
イプシロン「其の程度で私に勝てると思うのか?!此の雑魚共が!!!!」
フィアナ「…何て弱さなの?…其んな弱さで戦争をやろうなんて。」
ククト軍「(;ω;)」
ミューラァ「…ふっ、様ぁ見ろ!!」
※…野獣大尉は兎も角、アストラギウス銀河が誇る最低の兵器にすら負ける最底辺の軍隊(※然もククト星最大の正規軍)。
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※…此処(※ttp://aruzimiya.blog110.fc2.com/blog-entry-57.html)参照(※Chat GPT生成文注意)
>マホロア「ヤァヤァ!、ボクダヨ!異宇宙から来た、ヤサしい魔法使いマホロアダヨ!!!!人畜無害ダヨ!!!!!!ホントダヨ!!!!!!聖人君子ダヨ!!!!!!!!」
…聖 人 君 子(※大爆笑)。
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※赤いあれx少女終末旅行コラボSS
※涅槃(Nirvana)に至る迄。「親父、涅槃で待ってるよな?」
※各作品のネタバレ、死にネタ注意
----本には大きく分けて2種類あって……調べたことをまとめたものと空想を書いたものがあるんだよ。だけど、どちらも人間が生きて考えたことの証なんだって…おじいさんが。
……もし人類が今まで記した言葉を、全部集めたら、宇宙の星の数より多くなるんじゃないかとも言ってたよ
----少女終末旅行 図書 より
----「生きるのは最高だったよね……。」
「うん…………。」
----「それで思った……。見て触って感じられることが世界のすべてなんだって。よく分かんないよね、こんなこと言っても。」
「わかるよ。」
----少女終末旅行 最終話 終末より
…。
「我々は最上層以外ほとんどの場所を観測しているが、現在生きている人間は君たち二人しか知らない。」
途中で出会った『ぬこ』と原子力潜水艦を訪れた時に、其の言葉を、あの分解者から聞いたユーリとチト、二人の少女は、何時も通りの旅を続けて居た。そして、「…仲間と出会えて良かったね。私達とは違うんだね。羨ましいね。」…みたいな事を言いながら、其の『ぬこ』とは分かれた。
…。
何も無い廃墟のビル群すらない、只、只管人工的で殺風景で、無機質な場所に、余りにも、世界観違い、場違いで美しい男が居る。金髪碧眼。黄色い宇宙服の様な生身を宇宙空間から覆う為のスーツを着た、美丈夫。……其の男は、見るからに満身創痍だった。其の上、今すぐにでも死に絶えそうだ。
其の事について、彼はよく分かっており、只々、此の救いも無い状況に絶望した。
何処にも人間が居ない所か、僅かながらに生きている人間さえ、何時も以上に絶望と馴れ初めになって、心を閉ざしている様では、最早、ニュータイプ能力は無用の長物である。虚しい。どれだけ、手を伸ばしても救いは無い。……何て悲しい。
「此んな所で果てるのか……。此の、私は……。」
……あれだけ、苛烈で血腥い戦闘を戦い抜いて、生き延びて来た、其の彼ですら、其う呟いてしまう程に、…何処にも、誰も居ない。移動手段も無い。何も無い。何のやるべき事も無い。……其の上、帰るべき所に帰れはしない。
…、
…其れにしても……。
……疲れた。…良い加減、休みたい。
其の時、『本格的な眠り』に入る前に、偶々と言う寄り、奇跡的にも所持して居た、ペンと未だ白紙のページばかりのノートを手に取り、自分の事、このノートを読んでくれる誰かに伝えたい事、私のことを愛してくれた人々、其れ等全てを必死で書き殴る。
…そして、其れ等、書きたい事、全てを書き殴った後、私は安堵し、少しずつ眠りに入る。
其の時、此うとても小さな声で、少し呟く。
「…涅槃……か……。」
……彼等は、涅槃で待って居てくれているのだろうか。
其れにしても、何て寂しい死なのだろう。
何と悲しい最後だろう。然し、ある意味で、此れは、当然の報いなのかもしれない。いや、報いだ。此の人生の全てを否定する為の。
…だが、然し……、…いや………、
……嗚呼、…もう既に、体も思考も動かない。…其れに、…もう、愛してやまなかった、ずっと、大切に思って居た、親しく、愛おしくて堪ら無かった人々の、温もりも、姿を、名前を、声を思い出す事も出来ない。只、私は静かに涅槃に至って行くだけだ。
--おやすみなさい。
…。
チトがケッテンクラートを運転中、何かを黄色く目立つ何かを見つけた。
「見て、あれ。服が落ちてる。」
どうやら服らしい。
「もしかして?!新しい服か?!」
其う言うと、ユーリが、そうキラキラした目で駆け付け、確かめる。其れから、其れに、チトも続く。
「…普通の服じゃ無い。…『古代人』の残した高度な技術で作られた服なんだろうね。きっと。」
何かを察したチトを後目にユーリは、更に其の服を詳しく調べる。
「……どうやら、私達にサイズが合わない。大き過ぎる。…着られないね。しかも一着しか無い。困ったな。奇跡的な出会いなのに。」
「でも、……近くに、何か小さな本がある。」
「文字だ。沢山の文字がびっしり。」
「きっと、この人は、自分の見て来た事、知った事、誰かに伝えたいことを、此のノートにびっしり書き込んだんだろうね。だけど、何を書いてるか分からないね。」
「残念だったね。又ハズレだ。」
「でも、良いよ。この人が何かを残したいと言うことが、此うして、見れたから。それが楽しみで、おじいさんも本を集めてたと思うんだ。」
「ふーん?中々楽しい趣味だね?」
「確かに、そうだね。」
「今度こそは、私達のサイズに合う新しい服が見つかると良いな。」
そして、二人の少女は、元々の持ち主である人間が分解された後に残された黄色いノーマルスーツを後に、大事なケッテンクラートと共に、去って行く。そして、旅を続けて行く。結局は、何も無かった虚無を目指して。
…。
此の儘行くと、ガソダム ファンタジーストライクフリーダムとか出て来そうだな(※出しません)。
…。
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