#堂羽目浮彫
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貞奴の年表みたいな堂羽目浮彫がお寺を一周ぐるっと🌳
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光怪陸離
H:嘗鮮,是對食物而言。對事物的新奇體驗,以光怪陸離,五光十色,甚至五彩繽紛,五花八門。看一些奇幻異聞,鬼怪仙俠的古書。新鴛鴦蝴蝶「花花世界鴛鴦蝴蝶,在人間已是癲;何苦要上青天不如温柔同眠。」形容的很好,人間處處有桃花源,何苦想那青天上的仙境。美好的事物不必遠求,只在你我身邊周圍。
知足常樂得享天堂仙境「一花一世界,一木一浮生,一草一天堂,一葉一如來,一砂一極樂,一方一淨土,一笑一塵緣,一念一清靜。如果你不給自己煩惱,別人也永遠不可能給你煩惱。因為你自己的內心,你放不下。若能一切隨他去,便是人世間自在人。」20240816W5
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光怪陸離
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成 語光怪陸離
釋 義「光怪」,離奇怪異的樣子。語出《吳書》。「陸離」,參差錯雜的樣子。#語出戰國楚.屈原〈離騷〉。「光怪陸離」形容現象離奇怪異,色彩參差錯雜。典故說明「光怪陸離」係由「光怪」及「陸離」二語組合而成。
「光怪」是出自《吳書》。孫堅家族的祖墳在富春城東,墳上屢次出現怪異的光景,上頭時常飄著五色雲彩,連綿數里不斷,吸引很多人前去觀看。凡是看過的鄉親父老都說,孫氏要興旺了!後來孫堅出生,果真長相不凡,生性闊達,擁有不凡的操守。
「陸離」則是出自〈離騷〉。戰國時楚人屈原,遭靳尚等人毀謗,被懷王放逐漢北時,作〈離騷〉表明忠貞愛國之心。文中,屈原因為無法解開對現實和理想之間的矛盾,於是上天下地找尋解脫之道。他幻想駕鸞凰、鳳鳥乘風飛升,翱遊天際。一路上有望舒、飛廉、鸞凰、雷師、鳳鳥、雲霓等眾多仙人及侍從伴隨,色彩繁雜而絢麗。後來這��個典源被合用成「光怪陸離」,用來形容現象離奇怪異,色彩參差錯雜。用法說明
成語用法
成語釋義
光怪:光彩奇異;陸離:開卷參差。形容奇形怪狀,五顏六色。[1]
成語出處
戰國·楚·屈原《離騷》:“紛總總其離合兮,斑陸離其上下。”《三國志·吳志·孫堅傳》裴松之注引《吳書》:“冢上有光怪,雲氣五色,上屬於天,曼延數里。”[1]
解釋:
形容現象怪異、色彩繽紛。參見「光怪陸離」條。《孽海花》第八回:「見船上紮著無數五色的彩球,陸離光怪、紙醉金迷。」
五光十色
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成 語五光十色注 音ㄨˇ ㄍㄨㄤ ㄕˊ ㄙㄜˋ漢語拼音wǔ guāng shí sè釋 義形容景色鮮麗複雜,光彩奪目。語本南朝梁.江淹〈麗色賦〉。後亦用「五光十色」比喻內容豐富,變化萬端。
△「五彩繽紛」典故說明「賦」是傳統文學體裁之一,形似散文,但內含詩的韻律,是一種介於詩歌與散文之間的文體。盛行於漢魏六朝,魏晉南北朝時,因應新興的駢偶文風而發展出「俳賦」,此體多採四六對仗的句式,講求嚴格的平仄音律,並喜用典故。江淹為當時著名作家,〈麗色賦〉即其作品之一,內容描繪一位絕色美女的容貌、姿儀。其中一段,文曰:「其始見也,若紅蓮鏡池;其少進也,如綵雲出崖,五光徘徊,十色陸離。」大意是:初見佳人,如見生長於無波如鏡之池中的紅蓮,佳人一動,則如絢爛的雲彩自崖間飄出,色彩鮮麗,燦爛奪目。短短數語,即生動呈顯了麗人的綽約風姿。後來「五光十色」這句成語就從這裡演變而出,用來形容景色鮮麗複雜,光彩奪目。亦用來比喻事物的內容豐富,變化萬端。用法說明一、
語義說明
形容景色鮮麗複雜,光彩奪目。
民俗,就是世代相傳的民間生活風俗。世界民俗,就是關於世界各地的民俗。
五花、八門各指古代兵法中的五行陣、八門陣。 後比喻形形色色、變化多端。 如:「這家超商的食品種類真是 五花八門 。」 《儒林外史》第四二回:「那小戲子一個個戴了貂裘,簪了雉羽,穿極新鮮的靠子,跑上場��,串了一個 五花八門 。」
光怪陸離偵探社
《光怪陸離偵探社》是連載於起點中文網的一部懸疑類網絡小説,作者是吾即正道。[1]
該小説講述了陸離面對一扇詭秘之門,門後邪惡低語,奇異生物蠢蠢欲動。怨念之眼、黏糊粉腦、黃衣觀察者、墨綠污泥等奇異存在競相登場,它們以各自的方式發出邀請,共赴一場瘋狂派對。陸離在誘惑與危險交織中,毅然決然地踏入未知領域。
博客來介紹:
巷說異聞錄:光怪陸離的民國軼事
作者:檀信介
語言:繁體中文
出版社:好讀
出版日期:2019/03/01
【奇幻又真實,是故事也是人生】
本書兼具歷史、名人、志怪、懸疑、推理等多種吸引人的閱讀元素於一身,還能了解到民國初年,民間許多不為人知的神異傳說和風俗習慣。
●深受喜愛的志怪故事,引起廣大歡迎與討論,給熱愛志怪小說的讀者帶來一場文化盛宴。
●腦洞大開的異聞怪談,天馬行空的奇異想像,感受與眾不同的故事閱讀體驗。
●深得中國傳統志怪小說精髓,描繪一個個詭異奇幻的世界,反映人間百態。
●魔幻詭譎的故事反映現實中人們對財、色、長生不老的癡求,極具諷刺意味。
【精彩故事】
〈斬龍角〉:清朝末年,亂世中仍保持桃花源般安靜祥和的袁寨,收留一位能掐會算的「靈卦張」,袁家的運數因此受到巨大影響……
〈既濟壺〉:北宋末年,汴梁城裡有位小韃子,踢得一腳好球,年過四十依然健美英俊。傳說其家中有個寶物「既濟壺」,因此得以青春不老、容顏永駐……
〈陰陽魚〉:明朝末年,張獻忠屠蜀,一隊難民發現一處世外桃源,偌大的村莊只有一對形影不離的男女。圍繞這對男女,譜寫一曲哀婉的亂世悲歌。
【導讀賞析】歷史作家、譯者/廖彥博
檀信介帶著讀者一頭闖進近代史恢弘大敘事裡的小角落,看看那些「魔神���」如何在辛亥革命、日軍侵華、國共內戰裡存活下來,繼續魅惑人心。
收回
目錄
●破地獄
●斬龍角
●買竹籌
●賣鬼記
●斬鬼嬰
●金簪記
●既濟壺
●陰陽魚
【導讀賞析】近代史縫隙裡的魔神仔:《巷說異聞錄》/廖彥博
序
導讀賞析
近代史縫隙裡的魔神仔:《巷說異聞錄》
廖彥博(歷史作家、譯者、《一本就懂中國史》作者)
對中國大陸的讀者來說,民國是一個既陌生又熟悉的時代。
鴛鴦蝴蝶,旗袍馬褂,上海十里洋場,南京梧桐森森,我揮一揮衣袖,他達達的馬蹄,凡此種種,共同在影視作品裡構成人們心中對於民國風華的美好想像。可是民國也是神秘而落後的,甚至是迷信而妖魔橫行的。原因很簡單:不這麼著,很難突顯出「當今」橫掃一切牛鬼蛇神之後的現代和進步。
對台灣的讀者而言,民國則是一個既熟悉又陌生的時期(注意和前者的排序)。
鈔票硬幣上、公家文書上、報紙刊頭上,民國還是進行式,就在我們生活呼吸之中。可是民國也是截然兩分的:屬於歷史的那一大段,曾經顏色鮮明的、氣壯山河的存在過的民國歲月,四海歸心、堅苦卓絕的激戰年代,大多數台灣人已經不復記憶。
檀信介的《巷說異聞錄》替我們把既熟悉又陌生的歷史連接起來,而且還開啟了一扇魔幻又真實的觀景窗。中國文學的傳統裡,一直有著「志怪文學」的傳統。《山海經》以降,漢晉的《淮南子》、《搜神記》,唐傳奇、宋元話本、明清筆記小說,我們在荒山野嶺,感覺到陰風陣陣,或是捅破紙窗,看見女鬼畫皮,不管你的出身籍貫、政治立場,相信文化基因裡都有著妖怪活躍的身影。
而檀信介則帶讀者一頭闖進近代史恢弘大敘事裡的小角落,看看那些「魔神仔」如何在辛亥革命、日軍侵華、國共內戰裡存活下來,繼續魅惑人心。故事光怪迷離,看官們不禁眼花撩亂,可是驚魂甫定,卻又嘖嘖稱奇:誰能說這些「魔神仔」不存在?
《巷說異聞錄》由〈破地獄〉、〈斬龍角〉、〈買竹籌〉、〈賣鬼記〉等幾則故事組成,故事的舞台,正是清末到民國、抗戰勝利那段熟悉又陌生的歲月,幾個歷史上響噹噹的大人物,比方做過大總統、也登基當過八十三天皇上的袁世凱,還有我們台灣讀者算是相當熟悉的「蔣故總統經國先生」,在故事裡也出奇不意,客��亮相。看他們出場的時機,扮演的角色,起到的作用,一定會讓讀者們會心一笑。
留學蘇聯、篤信唯物主義的「太子」蔣經國,如何運用起茅山道術,去摧破汪精衛政權的秘密金庫?又怎麼會引來一場多年無法偵破的連續命案呢?且讓我們翻開這部《巷說異聞錄》。
維基文庫
麗色賦
作者:富嘉謨 唐本作品收錄於《全唐文/卷0235》
姊妹計劃: 數據項
客有鴻盤京劇者,財力雄倬,誌圖豐茂,繡轂生塵,金羈照路。清江可涉,綠淇始度,拾蕊歲滋,摘芳奇樹。錦席夜陳,苕華嬌春,瑤台吐鏡。翠樓初映,俄而世姝即,國容進,疑自持兮動盼,目爛爛兮昭振。金為釵兮十二行,錦為履兮五文章,聲珊珊兮佩明璫,意洋洋兮若有亡,蹁躚兮延佇,招吾人兮由房。凝釭吐輝兮明燭流注,願言始勤兮四坐相顧,時峨峨而載笑,唯見光氣之交騖。夜如何其夜遲遲,美人至止兮皎素絲,秉明心兮無他期。引鄉何其夜已半,美人至止兮青玉案,之死矢兮無彫換。既而河漢欲傾,琴瑟且鳴,餘弄未盡,清歌含韻。歌曰:「涉綠水兮采紅蓮,水漫漫兮花田田。舟容與兮白日暮,桂水浮兮不可度。憐彩翠於幽渚,悵妖妍於早露。」於是覽物遷跡,徘徊不懌,起哀情於碧湍,指盛年於光隙,擊節浩歎,解珮嘉客。是時也,楊雄始壯,相如未病,複有鄒、枚,藉藉荀令。鹹娛座客,嬉妙情,灑豪翰,動和聲。使夫燕姬趙女,衛豔陳娥,東門相送,上宮經過。碧雲合兮金閨暮,紅埃起兮彩騎多,價奪十城之美,聲曼獨立之歌,況複坐弦酌而對瑤草,當盛明而謂何?
百度百科
新鴛鴦蝴蝶夢創作背景
在1992年10月的一個晚上,黃安抱着女兒到樓下去散步,突然他聽到一段旋律,黃安趕緊回家迅速記下了這段旋律。這是一段中國五聲音��的旋律,琅琅上口,於是便有了《新鴛鴦蝴蝶夢》的原始素材。有了曲子後還需有詞相配才可以。黃安覺得那段旋律頗有古風,於是他翻開唐詩,一翻便翻到李白與杜甫的詩。在李白的《宣州謝朓樓餞別校書叔雲》中,有這樣一段描述,“棄我去者,昨日之日不可留,亂我心者,今日之日多煩憂,抽刀斷水水更流,舉杯消愁愁更愁,人生在世不稱意,明朝散發弄扁舟”,黃安僅是稍加修改便有了《新鴛鴦蝴蝶夢》的第一段歌詞。[2]
歌曲歌詞
昨日像那東流水
離我遠去不可留
今日亂我心多煩憂
抽刀斷水水更流
舉杯消愁愁更愁
明朝清風四飄流
由來只有新人笑
有誰聽到舊人哭
愛情兩個字好辛苦
是要問一個明白
還是要裝作糊塗
知多知少難知足
看似個鴛鴦蝴蝶
不應該的年代
可是誰又能擺脱
人世間的悲哀
花花世界鴛鴦蝴蝶
在人間已是癲
何苦要上青天
不如温柔同眠
昨日像那東流水
離我遠去不可留
今日亂我心多煩憂
抽刀斷水水更流
舉杯消愁愁更愁
明朝清風四飄流
由來只有新人笑
有誰聽到舊人哭
愛情兩個字好辛苦
是要問一個明白
共2張
歌曲MV
還是要裝作糊塗
知多知少難知足
看似個鴛鴦蝴蝶
不應該的年代
可是誰又能擺脱人世間的悲哀
花花世界鴛鴦蝴蝶
在人間已是癲
何苦要上青天
不如温柔同眠
看似個鴛鴦蝴蝶
不應該的年代
可是誰又能擺脱人世間的悲哀
花花世界鴛鴦蝴蝶
在人間已是癲
何苦要上青天
不如温柔同眠。
博客來介紹:
知足常樂
作者:林高樂
語言:繁體中文
出版社:大拓文化
出版日期:2011/09/08
內容簡介
一花一世界,一木一浮生,一草一天堂,一葉一如來,一砂一極樂,一方一淨土,一笑一塵緣,一念一清靜。
如果你不給自己煩惱,別人也永遠不可能給你煩惱。因為你自己的內心,你放不下。
若能一切隨他去,便是人世間自在人。
禪不清高,穿衣吃飯是禪;
禪不脫俗,柴米油鹽是禪;
禪不深奧,世間萬物皆是禪。
禪,不是要我們放棄責任,出家以求自我解脫。一個人身在俗世,勇於承擔,保持佛心,就是禪;即使身處鬧市,只要心中寧靜,就是佛。
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目錄
第一章 一花一世界,一木一浮生
昔時佛祖拈花,惟迦葉微笑,既而步往極樂。從一朵花中便能悟出整個世界,得升天堂,佛祖就是佛祖,誰人能有這樣的境界?佛曰:一花一世界,一木一浮生,一草一天堂,一葉一如來,一砂一極樂,一方一淨土,一笑一塵緣,一念一清靜。這一切都是一種心境。參透這些,一花一木便是整個世界,而整個世界,整個人生也便空如花木。
1.眾生平等
2.慧能收徒
3.達摩是個老和尚
4.老和尚是寶
5.生命如琴弦
6.俗眼無珠
7.聖人無名
8.物極必反,盛極必衰
9.淡泊以明志
10.人生的底線
11.美在靈魂
12.一切皆同
13.玉缽
14.一個無法滿足的人
15.財富、成功、愛
第二章 緣起即滅,緣生已空
佛說:修百世方可同舟渡,修千世方能共枕眠。前生五百��的凝眸,換今生一次的擦肩。今生的一次邂逅,定然孕育前世太多甜蜜或痛苦的回憶。萬發緣生,皆系緣分!偶然的相遇,驀然回首,注定了彼此的一生,只為了眼光交會的剎那。
1.生與死
2.怨也是緣
3.境由心生
4.一切都是緣,要學會包容
5.愛是生命最好的養料
6.心中有路
7.緣起緣滅,泥濘留痕
8.人生有個檸檬就做杯檸檬汁
9.不要為明天的落葉操心
10.因緣
11.一切皆隨緣
第三章 大悲無淚,大悟無言,大笑無聲
生活不一定是轟轟烈烈的,有時平平淡淡才是真!
功名利祿樣樣俱全,固然求之不得,但現實生活中的大部分人,還是與其不擇手段,換取名利雙全,不如平平淡淡,粗茶淡飯來得更真真切切。
1.超越生死的境界
2.忘我,不被世俗所束
3.普化圓寂
4.愛的回報
5.沒有什麼不能做
6.沉默人生最可貴
7.弦緊弓斷,學會放鬆
8.自然是福,自然最美
9.從容是一種人生智慧
10.人生如過客
11.隨遇而安
12.享受平淡的生活
13.過程比結果重要
14.真正快樂的生活
15.幸福是一種感覺
16.生活的境界——順其自然
第四章 心不動,人不妄動,不動則不傷
人生在世如身處荊棘之中,心不動,人不妄動,不動則不傷;如心動則人妄動,傷其身痛其骨,於是體會到世間諸般痛苦。
充滿誘惑的塵世間,你的心是否堅不可摧,是否能抵擋得了這一重又一重的衝擊?
1.天堂地獄一念間
2.放下包袱
3.保持一顆寧靜的心
4.快樂是自己的事
5.放下是一條解脫之道
6.「偷」來快樂
7.愛的責任
8.心境不同
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序
前言
一方古剎、一尊佛像、一襲衲衣;化緣為生、清貧孤獨、無慾無求,青燈木魚常伴左右。世人心中禪者的佛門生活就是這樣的不食人間煙火。
如果你也這麼想,那麼,就大錯特錯了。
佛曰:「普度眾生。」眾生為何意?很簡單,就是全人類。自從釋迦牟尼創立佛教到達摩初祖歷盡��難曲折將佛教帶入中國的那一天起,它就與我們的生活息息相關。
禪不清高,穿衣吃飯是禪;
禪不脫俗,柴米油鹽是禪;
禪不深奧,世間萬物皆是禪。
禪,不是要我們放棄責任,出家以求自我解脫。一個人身在俗世,勇於承擔,保持佛心,就是禪;即使身處鬧市,只要心中寧靜,就是佛。
沒有錢的時候,我們煩惱;有了錢,我們空虛。——窮得只剩下錢。
沒有愛情的時候,我們失落;有了愛情,叫人頭疼。——愛情價雖高,自由更可貴。
不出名沮喪,出了名鬱悶。——人怕出名,豬怕壯。
近在我們身邊的禪,能幫你化解所有這些問題。
菩薩心腸,有容乃大。
再厚的寒冰,太陽出來都會溶化;再冷的飯菜,柴火點燃都會煮熟。要做太陽,溫暖別人;要做柴火,成熟別人。遇事學會換位思考,你會發現,你的人緣會越好,你也會越快樂。
知足常樂,無慾則剛。
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「BARFOUT!」 FEBURUARY 2021
髙地優吾&田中樹
期待と信頼しかない大好きな雑誌故に、出るのがゆごじゅりだと知ってすぐに予約した。
毎回写真は勿論、なんとなく彼らの芯を垣間見せてくれるような雑誌だと思っている。
二人のページを開いた瞬間、その期待を外れるどころか上回るお洒落な二人が現れた。
SixTONESは皆それぞれ服が似合うけれど、中でもファッショナブルという意味でいくとダントツでこの二人の着こなし具合は半端じゃないんだよなぁ。
そんな二人のお洒落具合を存分に生かしたスタイリング。
そしてあえてそこに佇むだけ、という撮り方によって、二人の持つ雰囲気もあいまり、普通に声を上げて喜んでしまっ��。
特に、p.54の二人の存在の仕方と言ったら反則だろう。
似たような体格だけれども圧倒的に纏っている雰囲気の違いが如実に出ている上、喧嘩するのではなくまとまっている。
なんとなくシド&ナンシーを思い出してしまう。
尖っていて男らしい髙地さんと、尖っているけれども綺麗な樹さん。
ひとたび喋り始めれば、より一層浮き彫りになる二人の違い。
傍目には全てを包み込んでいるように見えるのに、ご本人自身はひたむきに目の前のことを頑張っているという髙地さん。
誰が見ても視野が広く頭の回転も速い、時代が時代であれば武将として成り上がっていたのでは?と思ってしまうのに、実際は感受性が豊かで優しい樹さん。
“『アイドル・ソングも攻めた曲を歌わせても髙地の声色はいけるんだよ』”
そうスタッフさんに言われているということが知れて、とても嬉しかった。
たぶん、なんとなく歌が特別にはうまくないという自意識のもと、引目を感じているように見える髙地さんの生来持っているものをそう評価してくださる方が彼の近くにいることが単純に嬉しいんだ。
私は音楽のことはからっきしだけれど、それでも、彼の持つ声が特別だ、と感じることはあった。
プロの目から見てもそうなんだ、と思うと小走りしてしまうほどに嬉しい。
やっぱり彼は音楽においても特別なんだ。
“『世界、平和になれ!』みたいなリリックなんてまったく書かないです(笑)”
と語る樹さんがいたのも、個人的にとても好きだった。
インディーズバンド時代は攻めた詞を書いていたのに、スターダムに乗っていくにつれ所謂世間一般の”普通”とは感覚が異なってきてしまう。
売れたロックバンドはいつしか世界平和を歌い出す。
そんな話を思い出した。
樹さんへの信頼の一つに、例えどんなに遠くへ世界へ羽ばたいても、きっと彼は自分の手の届く範囲の責任を全部取ろうとするんだろうな、ということがあって。
常人の範囲を超えた頭の良さ、気遣いの行き届いた立ち回りを意識的にしているであろう彼が、リリックを書く時は等身大で自らに抱えた葛藤を吐き出していると、堂々と言い切る姿がまた一層好きだった。
どんなに常人離れしたように見え���も、結局は彼も人間で、悩むこともあれば、どうすることもできない四面楚歌の状況で葛藤することもあるのだろう。
それでも、彼は堂々と余裕の表情で世界を目指すんだろう。
そんな、人間味を抱えて尚、常人を超えようとする彼がきっと好きなんだ。
そう、改めて思わされた。
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70代の今も現役で挑戦し続ける、スタイリスト・北村道子のファッション観とその生き方に迫る
「生き方と服は水と油のようなもの。そのふたつが混じり合うことで、化学反応が起きるんです。私は"服の力"という言葉を使う」
By CHIHARU MASUKAWA 2019/05/06
輝く女性たちはみな、自分の進むべき道を見据えている。そんな彼女たちが語る、生き方としての"作品"とは?
着る人に服の力を与え、潜在的な魅力を引き出す。北村道子は「スタイル」を日本で体現できる数少ないひとりだ。森羅万象に思いを巡らす哲学者のようでもある彼女のオリジナルな生き方とは。
“服は、その一着で映画や写真の世界をすべて変えてしまうような力を持っている。そこにワクワクするんです”
「自分らしく生きる」ということは、結局どういうことなのか。それはきっと、北村道子のような生き方だ。
「ショーのルックはショーのためのもの。実際に普段そのまま着る人っていないじゃない?」
「アントワープのデザイナーが好きなのよ…彼らはショーのために服を作っていない。着る人のために作っているのよ」
撮影の準備に取りかかる間にも、次々と言葉が飛び交う。他愛もないおしゃべりの端々に、彼女独特のものの見方が見え隠れする。切り揃えられたグレーヘアに、インパクトのあるラウンドフレームの眼鏡。どちらもまるでもともと彼女の一部であったかのように、その風貌に溶け込んでいる。この日は、彼女が愛するメゾン マルジェラと��ワール ケイ ニノミヤの服をまとい、カメラの前に立つ。その着こなしもまた、彼女の色にすっかり染まっている。
石川県で生まれ、10代の頃にはアメリカ大陸を一周する旅に出た。その後パリに約1年間滞在。場末の映画館で、初めて黒澤映画『蜘蛛巣城』(1957)を観たことが印象に残っているそうだ。帰国し、スタイリストのキャリアをスタート。初期は広告や資生堂『花椿』に携わっていたが、1985年、森田芳光監督『それから』に参加し、映画の衣装を手がけるようになる。主演である松田優作たっての指名だった。以降、是枝裕和監督『幻の光』(1995)、犬童一心監督『メゾン・ド・ヒミコ』(2005)、三池崇史監督『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007)をはじめ、日本映画界の重要作品に衣装を通してリアリズムという名の深みを与えてきた。
「役者がまだ誰もキャスティングされていない段階のシナリオを読んで、人物像をドローイングするんです。そうやって、世界観やビジュアルを考えていく。それができる作品ならば、私は携わろうと思うんです。外国映画の場合は、服から人物像を決めていくことが多いんですよ。それだけ、衣装が重要な役割を担っているということ。クリストファー・ノーランの『バットマン』シリーズなどは、そういった意味ですごい。アニメ的な要素とリアルな部分をギリギリのラインでつなげているんだもの。ああいったバランスの取り方は、日本ではちょっと見ることができないですね」
細部まで妥協せず、こだわり抜いてスタイルを形作っていく。人格や役柄のキャラクターを、衣装によって浮き彫りにしていく。
「服は、その一着で映画や写真の世界をすべて変えてしまうような力を持っている。そこにワクワクするんです。登場人物の服が、その人のバックグラウンドまで教えてくれる。映画はそうやって、裏側を見ていくと面白いですね。だけど、今の日本の映画界は、そういう表現の仕方を求めていない。そこまでこだわるってことをやろうとしない。それは残念なことですね」
出演者の知名度ありきに傾いている現在のシーンを、そんなふうに嘆くが、彼女の仕事ぶりに惚れ込む役者たちは数多い。松田優作、浅野忠信、池松壮亮、菊地凛子……そうそうたる顔ぶれと、厚い信頼関係を築いてきた。スクリーンやレッドカーペットで目にする彼らのスタイルやイメージの裏には、北村の仕事がある。
「彼らが海外に出たときに、どんな場所でもよく見えるようにしたいという��持ちがあるんですよ。私自身��、かつて恥をかいたことのある身だから。海外、特にヨーロッパには、スタイルのコードや格があるから、それを踏まえた着こなしで表に出られるようにしたいんです」
二宮 啓が手がけるノワール ケイニノミヤも大好きだと語る。構築的な一着をさらりと羽織り、自身のアイテムと自然にミックス。ジャンパー ¥125,000、ボータイシャツ ¥32,000 Noir Kei Ninomiya パンツ、スニーカー 私物
Chikashi Suzuki
スタイリストとはまさに、スタイルを創る仕事。着る人の人物像を創ること。
「スタイリングについて突き詰めたら、私は、服は何でもないセーター一枚でもいい、というタイプなんです。ただ、それをどうやってビジュアルに入れ込むかがキーになってくる。さまざまな役者の方からオファーをいただくけれど、私が仕事を受けるかどうかのジャッジは、その人自身に興味が湧くかどうか。俳優ひとりをスタイリングするのは、本当に大変なことですね。彼らの日常を捨てなきゃいけないから。誰かをスタイリングするというのは、つまり、その人そのものを知ることなんですよね」
ひとつのインタビューの中に、さまざまなトピックが飛び交う。コム デ ギャルソンに対するリスペクト、自身の父との思い出、スティーブ・マックイーンのスーツの着こなし、ダンディズム。チベット仏教の曼陀羅に使われている赤の印象、目下公開を楽しみにしているアメリカ映画『バイス』…。それぞれが断片的なようでいて、すべては北村道子の思考という一本の線上でつながっているようでもある。彼女の思考は、それら身をもって経験してきた無数の哲学のうえに成り立っている。
“生き方と服は水と油のようなもの。そのふたつが混じり合うことで、化学反応が起きるんです。私は「服の力」という言葉を使う”
昨年12月に出版された著書『衣裳術 2 』(リトルモア)は、まさに北村の思考をのぞくような一冊だ。2008年に刊行された『衣裳術』��第2弾にあたる本作は、さまざまな俳優とコラボレートしてきた撮影にまつわるエピソードや、俳優たちの魅力を語っている。どんなコンセプトで服を着せたか、どのようにポテンシャルを引き出そうとしたのか。そして、そうした試みを裏打ちする視点や考え方にも、随所で触れることができる。
「生き方と服は水と油のようなもの。そのふたつが混じり合うことで、化学反応が起きるんです。私は“服の力”という言葉を使うのだけれど、力というのはパワーのことを意味するのではなくて、哲学を指すんですね。なぜ、目の前にあるこの一着に惹かれるのか、釘づけになるのかといえば、それは服に力があるから。哲学があるから、ということだと思うんです」
そう諭すように服への思いを教えてくれた。年齢を重ねてくるうちに自分自身が変わったと感じることはあるかと尋ねれば、「同じよ。何も変わらないの」と迷いのない答え。「何でも、ものを知ろうとする気持ちが強い」という好奇心に導かれて、ずっと自身の考え方と感性を研ぎ澄ませながら歩いてきた。今、目の前にいる彼女は、彼女自身がこれまで紡いできたストーリーと信念の結晶だ。そこへ、70代というチャプターが新たに加わる。そこから見る未来、これからの展望とは?
「私の人生は、いつも何かに引っかかるようなところがありますね。体制や矛盾と闘うこともあったし、病や死を覚悟する怪我も経験しました。でもその分、無駄に生きることはない。どんなときでも、どんな経験からでも、何かを学べばいい。そういう考え方なのよ。私にこれから先の時間があるとして、きっと10年といったところ。その10年が、今の私にとっての希望だといえますね」
Styling: MICHIKO KITAMURA Hair & Makeup: ITSUKI at UM Interview & Text: CHIHARU MASUKAWA
From Harper's BAZAAR April 2019
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日記
4/28
11時起床。
夢を見た。
夢の中で自慰行為に夢中だった。
深層心理の現れとも言うが欲求不満ということだろうか。
昨日はお互いにとって良いセックスをしたので脳はまだそれに囚われているのであろう。
パンを1枚ブルベリーのフルーツソースを塗って食べた。
友達とLINEで最近話題のトゥルーラブの話をして、またパンを2枚、1枚は焼いてレトルトのビーフシチューをつけ2枚目は生のままオリーブオイルをかけて食べた。
外では珍しく雷が鳴り響いている。
幼い頃は雷が落ちるたび家に落ちて燃えてしまわないか不安と恐怖に駆られていたことを思い出した。今幼い頃と言ったが心配性な私は中学生の頃までは毎回しっかり怖がっていた。
Netflixでアンを見ている。
環境の変化がなかったり堅い城壁の中でひとりで生きていたり、自己や生き方が形成されている人間は人と生きていくことになったとき戸惑い、それまでの“自分らしい”と戦わなくてはならない時が来る。アイデンティティ。
城へやってきた訪問者に茶を出すほどの礼儀作法はわきまえているし、応接間での振る舞いだって心得ている。日差しが差し込む大きな窓に背を向けて置かれた来客用の赤いソファに座らせて、ハーブティーとパイを出す。裏の庭で取れたハーブなの、よかったら。そして正面に座り、客人のカップの内側の白とわたしの右手の中の白が同じくらいになるよう目をやりながら、いくつか質問をして話を聞く。そしたら同じようにまたいくつか話、カップが真っ白になった頃に、では、と立ち上がる客人を門の前まで送り届ける。だけどわたしが作法をわきまえているのは客間まで。わたしのためだけに建てられたわたしの城に、ズカズカと誰かが入ってくることは想定されていない。
アイデンティティ、わたしとは?それが揺らぐだろう。また城を建て直す必要がある。
変わることとアイデンティティを失う事は必ずしも等号式で結びつく事ではない。
門を開けて定式をひとつ得た。
城を建て直すことが必要なわけではなかった。
ただ城の食堂の壁にフレスコ画が飾られ、ロビーへ続く廊下には季節の花々を描いたステンドグラスを、階段の手すりはアールヌーヴォー調に彫刻し、晩餐のテーブルには旅した先々で集めた銀食器や燭台で彩られる。
たったそれだけのことであった。
もっと簡単に言えば、ランプがひとつ増えるだけ。
彼氏と別れたがっているともだちとLINEで別れるときに伝える言葉を考えた。
ウェブ授業があると思い少しばかり化粧をしパソコンを開いたが今日ではなかった。
出ていた課題も簡単で5分程度で終わってしまった。
7限は音声付きレジュメで倫理学の講義を受けた。
《ピロソピア=知を愛し求める》
生活的必要に拘束されない純粋な知的好奇心からくるピロソピアという営み。
知りたいという欲求を満たすだけのもの。
なんて無駄、なにひとつ意味がない。
ああ愛おしいピロソピアよ。私はピロソピアの従順な犬なのであります。
半年ぶりに講義を受けたら大学という場所について思い出した。
そもそも大学へ入った理由は私がピロソピアの犬であるからだ。
就職とか将来とかやりたい事とか、明確な目的があって入ったわけではない。
高校生の終わりに社会学に触れ、この味わい深そうな学問にむしゃぶりつきたいという心持ちのみで大学進学を決めた。
大学へ通うからには単位取得をしなければならないらしい。私は面白そうな講義の面白そうな回にだけ参加しほくほくした顔で帰りたいがために大学へ入ったのに。
聞いていた話と違うではないか。
煙草が切れているので百円ローソンで2箱ばかり買ってくる。
俺はピロソピアの犬。
同期からジッポをもらって嫌なことを思い出した。
煙草を一箱と大きなパンを2つと揚げた鶏を買って帰って食べた。
少しずつ思い出してきた。
文章を書くとき、何かに想いを巡らせて、深く息を吸いながら洗面台に張った水に顔をつける。
冷たい水が鼻を通り、血管を伝い目の奥や脳に届くのを感じながら顔を深く沈め、潜り続ける。
指の先の毛細神経まで水が行き渡った時、あたりは真っ暗で、私はどこかの海の底にいる。私の鼻腔から吐き出される酸素のあぶくが、月の明かりで照らされる水面に向かって静かに浮かんでいく。やわらかな揺れる世界に沈みこみ、手足を自由に曲げたり伸ばしたり、頭を腹部に押し当てるようにして前転をしてみたりする。窮屈な四畳半では満足に伸びをすることだって少ない。ここでは私の身体はどこまでも自由。そうしていると、フットライトで照らされたように光りを放つ場所が視界に入ってくる。光の方へと泳ぐと、そこにはサンゴやアコヤガイが身を潜めている。手に取って指に感覚を覚えさせるようにその形をなぞっていると、また他の場所で光出す。また光へ向かい泳ぎ、今度は静かに揺れるコンブやワカメを手に取り細部まで指でなぞりとる。この水の中ならどこへでもいける、なんだってできる。そうしているうちに、身体は海の底へ底へと導かれ、身体にかかる水圧も重みを増していく。ある瞬間、ふと目を開き、勢いよく水面から顔を引き上げる。長い間息を止めていたせいで随分と荒くなっている呼吸を、滴を垂らす睫毛やおでこの産毛を鏡越しに見つめながら整える。タオルで濡れた顔を拭き、部屋へ戻る。
というように、わたしは今ベッドから一歩も出ずに身体中を自由にし、文章を書くということについての海を旅してきた。
もちろん顔や髪が濡れたことなんて今日一度もないし、この家に越してきてから洗面台に水を張ったことだってない。
空を飛んで目についた王国に降り立つこともある。
いつもこうして文章を書いていた。
1度目を瞑り呼吸をする、煌めくガラスの破片を見つけ走り出す。それに追いていかれぬよう指を躍らせる。
この黒いスクリーンの向こうでは、わたしの身体も、気候も、風や匂いも、白い文字に形を変え自由に踊っている。
ひとつ不安なことがあるとすれば、明日以降スクリーンの前で目を閉じても貧相な風景しか浮かび上がらな��なってしまうこと。
翼を羽ばたかせるには餌がいる。
まだ23時半。
眠くなってきた。
わたしはただ、毎日エッセイを書いてみようと、日記をつけてみようと思っただけ。
花畑を駆け回ったら疲れてしまったらしい。
目が覚めたら2時半だった。
頭痛がひどい。
水を2杯コップに注いで飲む。
神がいるのならば許してほしいとすら思っている。
ああ神よ、あなたの為にわかりやすく膝をつきアーメンと口ずさむことだって厭わない。
きっとこの画面をつけたままいつ間にか眠っているだろう。
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各地句会報
花鳥誌 令和4年6月号
坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和3年2月14日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
立春の富士泰然と雲寄せず 三無 立春や玻璃越しの日の柔らかき せつこ ほどほどの人生うれしく梅見かな あき子 うすごほり割る子跨ぐ子ジャンプの子 美貴 薄氷や緋鯉ゆらりとくねりけり 和魚 立春やどの梢にも空展け 三無 紅白梅お寺の屋根の美しき反り あき子 新しき珈琲挽く日春立てり 貴薫 風神の滑り跡ある薄氷 三無 立春やベランダ野菜少し伸び エイ子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年3月2日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
左義長の火の昇るとき黄昏れる 世詩明 日脚伸ぶ柱時計のネジを巻く ただし 山寺の雪降りやまぬ寝釈迦かな ただし 草の戸に五人囃子や雛あられ 輝一 生まれたるままのお顔のお雛さま 洋子 風花を路面電車の軋む音 清女 日脚伸ぶ切るに切られぬ長電話 同 卒業す最��の家路ペダル踏む 誠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年3月3日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
裁縫箱折れ針二本供養する 由季子 百歳の君風花のやうに消ゆ 同 つばめ来て知らぬ大地に思ひはせ さとみ 誰が古墳今も謎めき山笑ふ 都 野遊びのかの日の友もみな老いし 同 筓も髪のほつれも譲り雛 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年3月5日 零の会 坊城俊樹選 特選句
朧なり阿羅漢の息かかりては 光子 あの羅漢春の夜より吾に棲みぬ きみよ 百態の羅漢に残る箔や春 眞理子 阿羅漢の水晶の眼に春の夢 光子 阿羅漢のゆるやかに着てあたたかし 炳子 石に彫る魚に目のなき涅槃かな 千種 雛の顔どこかに重ね羅漢見る 順子 乳母車春の闇へと押しやりぬ 和子 阿羅漢のひしめく息の春の闇 光子 肩少しいからせながら地虫出づ 悠紀子
岡田順子選 特選句
囀の鎮まりて僧本堂へ 小鳥 理髪店鏡のなかに椿の千 光子 水草生ふ瀬戸の火鉢に沈む魚 炳子 金箔の泪の羅漢春浅し 佑天 阿羅漢の水晶の眼に春の夢 光子 魂は螺旋階段昇る春 俊樹 朧より羅漢お一人ついて来し きみよ 権の助坂へ突き出る辛夷の芽 要 阿羅漢の手のひらに受く涅槃西風 小鳥 立子忌の夜を渡りて弔ひへ 俊樹 阿羅漢の寂寞のこし鳥帰る 小鳥
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年3月10日 花鳥さゞれ会 坊城俊樹選 特選句
バス停の薄き座布団日脚伸ぶ 雪 冴返る万年筆のペンの金 同 北風と云ふ路地を一直線の風 同 表情も気品も秘めし古雛 かづを 山笑ふ遠嶺々未だ覚めずとも 同 降るもよし木の芽起こしのものなれば 同 人間の蛮行さなか鳥帰る 数幸 されど三月叢生の息吹せり 同 耐へに耐へ山と云ふ山笑ふなり 同 振り向きて人影もなし涅槃西風 匠 雛の間に雪洞の灯の入りをり 希 観音の裾口ふるる桜の芽 千代子 そこばかり明かりのほのか雛の間 天空
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年3月11日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
野遊やすぐに泣く子はすぐ笑ひ 都 逃水や写しては消ゆ里の空 宇太郎 強東風や奇巌に跳ねる波頭 益恵 良き刀の切口美しき挿木かな 宇太郎 掌に雪のつぶ受け待つ便り 佐代子 花杏保育姉妹の帰る頃 すみ子 春の雪万の土鈴に万の黙 悦子 飾る世に喜寿となられし雛かな 美智子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年3月12日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
芍薬の芽に呼びかける風微か 秋尚 鶯の声降り止まぬ陽子墓碑 三無 春の土利き足の踏み残る跡 美枝子 土産物しじみ大きく輝きて 節子 蜆汁啜る同胞父忌日 三無 三椏の三輪親し冠木門 亜栄子 看板は蜆汁なる定食屋 白陶 耕運機ペンペン草の花揺らす 美枝子 母の香や譲りうけたる雛飾る 同 紙雛思ひ思ひの粋な貌 白陶
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年3月14日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
春雷や少し怖くてをかしくて 信子 正論を述ぶるに勇気冴返る 昭上嶋子 春寒し海辺に寄せし注射針 みす枝 背戸口の扉を叩く春一番 三四郎 未だ経に和せず老いて寒の紅 昭上嶋子 若狭路のお水送りの夜の色 ただし 春光る大志抱きて門を出る 英美子 日野隠すひとかたまりの春の雲 信子 一か八かやると決めたる春なりし ミチ子 恋猫の闇も月夜も隔てなし 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年3月16日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
春の風むかしの母の在すごと 令子 春風を抱き平たき胸でをり 昭子 夜の更けて椿のおつる音一つ 雪子 春日和もういいかいと声のあり 同 摘草やいつしか祖母の子守唄 啓子 春風や天守を望む校舎跡 笑子 お精舎の木彫の天女春の風 同 其の人の椿の花を嫌ふ訳 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年3月17日 伊藤柏翠俳句記念館 坊城俊樹選 特選句
われ生きるため置れたる春炬燵 世詩明 孕猫雌雄意のまま御意のまま 同 鳥帰る遠嶺かがやく日の中を かづを 美しきままに椿は落ちにけり 同 雪見たし酒飲みたしとのみの文 雪 仏皆美男で御座す彼岸寺 たゞし 花冷や襟高々と異邦人 真喜栄 掌を握り最後の別れ鳥雲に みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年3月20日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
日の色に添はぬ春蘭影もまた 斉 風光る兎狩り後の行在所 三無 うしろ手に歩く鴉やうららけし 千種 水温むとろりとろりと鯉群るる 炳子 春光や赤駒の碑に風のこゑ 幸風 卒業の唱歌流るる木の校舎 久子 陽炎やブリキ看板由美かおる 佑天 オルガンや弾き継がれたる春の曲 同 散る梅にきのふの雨の水たまり 兎生 江戸人形繰る糸や養花天 久 内裏雛烏帽子きりりと男前 三無 圭魚選 行く雲の薄墨桜に遅れがち 久子 豪農の裔の門扉や梅散りぬ 炳子 濡れ色にほぐれあぢさゐ芽吹きけり 秋尚 手際よく風を操る雪柳 三無 遣ひ手を待ちゐる傀儡花の昼 千種 江戸人形繰る糸や養花天 久 飛び石の間を奔りゆく春の水 三無 木の芽吹くけやき並木の空滲む 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年3月22日 鯖江花鳥俳句会
十字路��来て春風の屯せる 雪 古語辞典漢和辞典や春隣り 同 春灯墨つぎ足して書く一書 同 春風に各駅停車人拾ふ 世詩明 飾られて現し世を見る雛かな 同 地の温み風の温みに木芽立つ 昭中山子 北窓を開けて忘れし仲違ひ 一涓 境内は別の風吹く涅槃かな たゞし 衝立に虎の咆哮春寒し 昭上嶋子
………………………………………………………………
令和3年3月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
陽炎のたつや我が影見失ふ 睦古賀子 翅裏に戦火の色を揚羽蝶 佐和 蘆の角蘆の骸の積むところ 勝利 葬列を見送る先の紫雲英かな 美穂 さくら満つ校庭水のないプール 由紀子 春潮の膨れに踊る浮灯台 洋子 辛夷燃え東に白き十三夜 勝利 悉く天日とらへたる木の芽 さえこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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List of references about paint of ukiyoe
What kinds of paints were used for ukiyoe in the edo period and how color those were is necessary knowledge in reproducing for the purpose of the true work at that time. And also, they are what attracts my interest naturally in reproducing.
However, in the japanese traditional woodblock printing society, which consists of publishers, carvers, and printers who have taken a central role in reproducing, it seems that such research and knowledge have been not the subject of active interest.
In the traditional woodblock printing organizations or groups, making a deceptive impression as if using the same materials (paints and paper) as in the Edo period seems not uncommon. Detailed or objective and factual information couldn't be obtained from such them.
To get information about ukiyo-e paints in the edo period, I recommend you to check the references.
Therefore, in this article, I will make a list of them.
I hope it will be helpful for you.
Note that I myself don't grasp all the references and the list is going to be updated from time to time in the future.
ーーーーーーーーーーーーーーーー
(Below, the ones marked with "※" are comprehensive and easy-to-understand with the general public in mind. )
※Tokuno, T・ Koehler, S. R 「Japanese wood-cutting and wood-cut printing」
( Report of the United States National Museum for the year ending June 30, 1892)
Betty Fiske・Linda Stiber Morenus
「Ultraviolet and Infrared Examination of Japanese Woodblock Prints: Identifying Reds and Blues 」
(The Book and Paper Group Annual volume23, Book and Paper Group, 2004)
Stephanie Zaleski・Yae Takahashi・Marco Leona
「Natural and synthetic arsenic sulfide pigments in Japanesewoodblock prints of the late Edo period」(Heritage Science volume 6, Springer Nature, 2018)
Carole Biron・Aurélie Mouniera・Josefina Pérez Arantegui・Gwénaëlle Le Bourdon・Laurent Servant・Rémy Chapoulie・Clodoaldo Roldán・David Almazán・Nerea Díez-de-Pinos・Floréal Daniel
「Colours of the images of the floating world. Non-invasive analyses of Japanese ukiyo-e woodblock prints (18th and 19th centuries) and new contributions to the insight of oriental materials」
(Microchemical Journal , Volume 152,
Science Direct, 2020)
Capucine Korenberg・Michele Derrick・Lucía Pereira Pardo・Ryoko Matsuba
「Establishing the production chronology of the iconic Japanese woodblock print ‘Red Fuji’」
(The Arts and Sciences journal, Vol 5 - Issue 1, Open Science, 2021)
※石井研堂 「錦絵の彫と摺」
(芸艸堂、1929)
山領まり編 「絵画修復報告 No3」(山領絵画修復工房、1994)
下山進・野田裕子・勝原伸也 「光ファイバーを用いる三次元蛍光スペクトルによる日本古来の浮世絵版画に使用された着色料の非破壊同定」
(分析化学47巻2号、日本分析化学会、1998 )
※神庭信幸・小林忠雄・村上隆・吉田憲司監修 「色彩から歴史を読む」
(ダイヤモンド社、1999)
下山進 「浮世絵版画の色材分析から化粧品開発へ」
(加計美術館、2007)
※国立歴史民俗博物館編 「錦絵はいかにつくられたか」
(国立歴史民俗博物館、2009)
北田正弘・貴田啓子 「江戸時代の浮世絵版画に用いられたフェロシアン化鉄顔料の劣化」(日本金属学会誌74 巻 3 号、日本金属学会、2010)
※松井英男・南由紀子編 「浮世絵の名品に見る「青」の変遷」(アートシステム、2012)
※山口県立萩美術館・浦上記念館編 「木版画家立原位貫 江戸の浮世絵に真似ぶ」
(山口県立萩美術館・浦上記念館、2015)
※降旗千賀子・加藤絵美・佐川夕子編 「色の博物誌」
(目黒区美術館、2016)
小谷野匡子・二宮修治・新免歳靖・白石明香・大川美香・橋本麻里・羽生佳代 「東洲斎写楽の「二代目小佐川常世の一平姉おさん」の技法・材料調査」
(文化財保存修復学会第39回大会発表要旨集、2017)
島津美子・大和あすか 「幕末明治期の錦絵における赤色色材の使用実態」
(文化財保存修復学会第39回大会発表要旨集、2017)
大和あすか・一宮八重・ 土屋明日香 「錦絵における天然および合成石黄の使用事例」
( 文化財保存修復学会第42回大会発表要旨集、2020)
大和あすか・島津美子・田辺昌子・日比谷孟俊・山内れい 「豪華絵本と摺物に使用された彩色材料」(絵入本ワークショップⅫ資料集、実践女子大学文芸資料研究所、2020)
大和あすか・塚田全彦 「嘉永年間の役者絵に用いられた石黄の分析」
(文化財保存修復学会第43回大会発表要旨集、 2021)
大和あすか 「錦絵の緑・紫の混色表現における青色色材の変遷について」
(国立歴史民俗博物館研究報告 第230集 、 2021)
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そのセレモニーは、新国立競技場に1台のバイクが颯爽と走ってくるシーンから幕を開けるはずだった。大友克洋氏の漫画『AKIRA』の主人公の愛車、赤いバイクだ。会場に映し出されるカウントダウンの数字。ゼロになると、中央のドームが開き、ステージに3人の��性が姿を見せる。Perfumeだ。会場には、彼女たちをプロデュースする中田ヤスタカ氏の書き下ろし楽曲が流れている。 Perfumeの出演は幻に終わった 全ての画像を見る(23枚) 精魂込めて作り上げた210分間のステージが、全世界の人々を虜にし、アスリートたちの背中を押していく。演出振付家・MIKIKO氏と彼女が率いてきたチームにとって、東京五輪の開会式はそんな晴れ舞台となるに違いなかった。 演出責任者だったMIKIKO氏 ところが、7月23日の夜8時に始まった実際の開会式は、MIKIKO氏が思い描いてきたものとは、全く別物になっていた。 彼女たちの演出案を間近で見てきた五輪組織委員会中枢の一人は、小誌の取材にこう漏らすのだった。 「どうして、こんなことになってしまったのか……」 ◇ 演出責任者が次々に交代するなど、異例の経緯を辿った五輪開会式。その混乱は直前まで続いていた。 「本番4日前の7月19日に、作曲担当だった小山田圭吾氏が過去に“障がい者イジメ”を自慢するような発言をしていたとして辞任に追い込まれた。さらに7月22日には、ショーディレクターとして演出を統括していた小林賢太郎氏も、過去にコントでホロコーストを揶揄していたことが発覚し、解任されてしまったのです」(五輪担当記者) “障がい者イジメ”が発覚した小山田氏 東京五輪が掲げるメッセージを世界に打ち出し、アスリートが一堂に会する舞台だったはずの開会式。最高の演出を実現するために、多額の税金も投じられてきた。開閉会式などの予算は招致段階では91億円だったが、19年時点で130億円に増大。延期に伴って予算は増額され、165億円まで膨らんでいる。 「組織委の橋本聖子会長らは開会式が終わったことに安堵していますが、一件落着でいいはずがありません。実際には演出は迷走に迷走を重ね、予算も時間も浪費され、多くの人が傷ついた末に本番を迎えてしまったのです」(政府関係者) 組織委の橋本会長 MIKIKO案での森山未來 問題の根底には一体、何があるのか。小誌は今回、多くの関係者を通じ、昨年4月から今年7月にかけて作成された開会式の台本11冊を入手した。計1199頁に上る膨大な資料。そこから浮き彫りになったのは、開会式が“崩壊”していく一部始終だった――。 「本来なら、この台本で本番を迎える予定でした」 そう嘆くのは、MIKIKOチームの関係者。19年6月3日、能楽師の野村萬斎に代わり、演出責任者に起用されたのが、MIKIKO氏だった。 「この時点で、中身は全くの白紙状態。しかし、チームの総力を結集し、演出内容やキャスティング、衣装プランなどを固めていったのです」(同前) それらをまとめたものが、IOCにもプレゼンした昨年4月6日付の台本だ。タレントの渡辺直美が「かっこよすぎ」と絶賛し、IOCのセレモニー担当者も「よくここまで作り上げた」と評価した“幻の開会式”。小誌4月8日号でも一部を報じたが、その完全版を改めて紹介しよう。 NY在住の渡辺直美 冒頭で触れたように、会場に赤いバイクが颯爽と走ってくるところで幕を開ける。Perfumeがステージ上でパフォーマンス。プロジェクションマッピングを駆使し、東京の街や張り巡らされた地下鉄の路線が次々浮かび上がる。 舞台上でダンスを披露する3人組。東京五輪開会式では決して見られなかったシーンだが…… ワイヤーフレームで作られた車で登場するのは、ダンサー兼歌手の三浦大知。映し出された三浦の顔が徐々に木の根へと変貌し、会場中に広がった根は巨木となって空へ向かっていく。 樹木の生命力そのままに女優・土屋太鳳と、世界的ダンサーの辻本知彦が舞う。茶室の形をした光るフレームにあわせて踊るのは、こちらも世界的ダンサー・菅原小春だ。 世界的ダンサーの辻本知彦氏や、朝ドラ女優の土屋太鳳も開会式に登場する予定だった 会場に現れた「ネオ東京」で跳躍するのは、ダンスユニット・東京ゲゲゲイ。フィールドには、大友氏が新たに描き下ろした「ネオ東京」も映し出されていく。 鈴の音とともに、会場の中央をスポットライトが照らす。光を浴びるのは俳優・森山未來。森山が舞うと、その動きにあわせて、周囲の空間に映し出された幾何学模様が波を打つ。 MIKIKO時代には、光っている杖を使ったパフォーマンスが予定されていた森山未來 64年大会の競技映像を振り返り、渡辺直美が「READY?」と合図を送る。女性ダンサーたちが、ひとりでに走る光る球と呼吸をあわせて舞う。 世界大陸を模したステージの合間を各国のアスリートが行進。天皇の挨拶が終わると、ステージが世界大陸から鳩のフォルムに。空からは、鳩を象った無数の紙飛行機が降ってくる。 競技紹介は任天堂の宮本茂代表取締役が監修し、スーパーマリオやインベーダーゲームのキャラクターのCGが盛り上げていく。 ピクトグラムだった競技紹介は、最先端のコンピューターグラフィックスも駆使した演出に ステージは巨大な聖火ランナーの形へと三たび変化し、その周りをランナーが走る。最終ランナーがステージの心臓部に火を点けると、ステージを縁取るように花火が上がり、そびえ立つ聖火台が燃え盛る――。 「この企画案の特徴は、最新のテクノロジーと人間の身体表現とを絶妙に融合させていること。『コロナ前に作ったものだから派手にできた』と言われるかもしれませんが、そういう次元のものではありません。シーンの1つ1つが丁寧に作り込まれ、生命が吹き込まれている。一度で良いからホンモノを見て頂きたかった……」(IOC関係者) 表紙に〈Confidential〉の文字 ところがこの僅か1カ月後の昨年5月11日、MIKIKO氏は、電通代表取締役で「五輪事業を仕切ってきた」(電通関係者)髙田佳夫氏らによって“排除”されてしまう。代わりに責任者に就いたのが、髙田氏と電通同期のCMクリエイター・佐々木宏氏だ。 「衣装や舞台装置の準備を進めていたMIKIKOチーム案を再び白紙に戻したことで、億単位の費用が無駄になりました」(同前) そしてこの後の台本では完成していた企画案が無残に切り刻まれ、MIKIKO氏は絶望してしまう。 「昨年8月18日、佐々木氏はMIKIKO氏を呼び出し、現状の案を説明しました。が、それは彼女の案を切り貼りしたものだったのです」(同前) 実際は、どういう内容だったのか。昨年10月4日付の構成案を見てみよう。表紙には、佐々木氏の名前や古巣である電通のクレジットが掲載されている。 〈点→線→面→立体→空間→時間〉と、ザックリとした構成が冒頭に記されている企画案。そこには『AKIRA』の演出も描かれていた。MIKIKOチームはオープニングで使用していたが、佐々木氏のプランでは後半へと移行。主人公役に想定されているのは、俳優の菅田将暉だ。 前出のMIKIKOチーム関係者が憤る。 「確かに、主人公を菅田君に、という案はMIKIKO時代にも上がってい��した。しかし主人公が乗るバイクは特殊な改造がされ、会場を実際に走るのは危ない。運転に長けた専門のキャストに任せようという結論になりました。ところが佐々木氏は一度やった議論を蒸し返した上に、開会式のストーリーを全く無視した形で企画を切り貼りしています」 さらにレディー・ガガが赤い帽子をかぶってマリオの土管に入ると、同じ格好の渡辺直美に入れ替わるというサプライズ演出も描かれていた。ただ、佐々木氏の思い付きに留まっているのか、レディー・ガガの箇所には〈やってくれたらの話です〉と断り書きが記されていた。他方で、任天堂が監修していた競技紹介はこの頃から、ピクトグラム隊による〈コメディパフォーマンス〉に変わっている。 昨年10月時点の佐々木氏案にはレディー・ガガと渡辺直美が それだけではない。〈その他の案。〉として記されているのが、木材を使った五輪マークの周囲を火消しの男性たちが取り囲むイラスト。さらにフィナーレを飾るのは、歌舞伎俳優・市川海老蔵と野村萬斎だ。 森氏が強く推した市川海老蔵 「いずれも“政治案件”です。江戸文化である火消しは、小池百合子都知事がMIKIKO時代から、演出チーム側に『演出に入れて。絶対よ』と求めていました。都知事選で、火消し団体の支援を受けた“恩返し”の意味もあるのでしょう。一方、海老蔵は、組織委の森喜朗会長(当時)が『マストで』と押し込んできた案件。本番でも披露された『暫(しばらく)』の演目と衣装は、当時から指定されていたものです」(組織委関係者) ただ、あくまで中身を優先しようと考えていたMIKIKO氏は、火消しと海老蔵という“政治案件”は、思い描く演出内容に合わないと頭を抱えていた。実際、昨年4月6日付の台本からは、両者が外れている。 「ところが、佐々木氏はそれらをあっさり復活させました。“政治案件”も巧みに捌き、利益を最大化する電通出身者らしいやり方です。アイデアの盗用をはじめ、佐々木氏や電通の不誠実な対応を許せなかったMIKIKO氏は昨年11月9日、組織委に辞任届を提出しました」(同前) それから約1カ月後の昨年12月8日版の台本。ここから紹介する台本には全て表紙に〈Confidential〉の文字が刻まれている。 「竹中も許されないと考えて」 有観客開催なら“前座”として行われるはずだったプレショーのMCには、芸人の山口智充とタレントのSHELLY。オープニングでエアロバイクを漕ぐ女性には、元AKB48の秋元才加の名前が記されている。12月21日版では大工の棟梁役で、俳優・松重豊の名前も新たに登場した。 ところが、キャスティングは難航したようだ。年明けの今年1月19日版の台本になると、エアロバイクを漕ぐ女性から秋元の名前が消え、代わりに、 〈稲村亜美が良さそう(イモトもいいが)→スケジュール軽アタリ〉 と、軽い調子のメモが付記されている。稲村は「野球女子」で知られるタレント、イモトは芸人のイモトアヤコだろうか。 だが、キャスティング調整をしていた最中の3月18日、佐々木氏が侮辱演出案を巡る問題で責任者を辞任。ここが“MIKIKO氏排除”に続く2つ目のターニングポイントだった。 組織委幹部が指摘する。 「組織委から開会式の業務委託を受けていたのは、電通でした。予算や進行などの実権は電通が握っていた。ところが、髙田氏や佐々木氏がMIKIKO氏を外していく過程が明るみに出たことで、電通が一歩引く態勢とならざるを得なくなりました。代わりに寄り合い所帯の組織委が仕切ることになったのですが、人選など全て演出チームに丸投げで、今度はガバナンスが効かなくなったのです」 佐々木氏に代わって責任者に任じられたのが、後にホロコーストを揶揄した問題で解任される小林氏だ。 「サブカル界では有名だった小林氏は昨年8月、佐々木氏から『開会式を手伝ってほしい』と持ちかけられ、承諾しています。昨年12月23日にMIKIKO氏らが中心だった演出チームは正式に解散しましたが、佐々木氏や小林氏は新しい演出チームに残った。そうした流れもあり、小林氏が演出を統括することになりました。こうしたサブカル人脈の中で“渋谷系”の代表格、小山田氏の作曲担当での起用も決まっていきます。ただ、小林氏はダンスパフォーマンスの経験に乏しい。なかなか演出ビジョンが定まらず、精神的にもかなり追い詰められていました」(演出関係者) 解任された小林氏(左)は、佐々木氏が引っ張ってきた 残り1カ月を切った6月27日付の台本。この段階では『AKIRA』の演出は無くなり、プレショーのMCも山口とSHELLYから、フリーアナウンサーの平井理央へ変更。が、無観客開催が決まり、翌月にはプレショーの企画は消滅する。一方で〈森山未來さんによる追悼パフォーマンス〉は〈構成調整中〉と注意書きがあり、ギリギリまで調整が行われていた。 そして本番5日前、7月18日付の台本。表紙には〈IMAGINE尺確定〉〈栄誉賞VTR 尺確定〉〈国歌斉唱 TC微修正〉など前台本からの変更点が記され、完成形へと近づいていく。だが、この翌19日に小山田氏が辞任、さらに3日後の22日に小林氏が解任されてしまうのだ。 さらに――。 「公表されていませんが、本番直前に『第二の小山田』とも言える著名人が出演を辞退しているのです」 そう明かすのは、開会式関係者の一人だ。 「本番では大工の棟梁役を元宝塚女優の真矢ミキが演じましたが、21日に行われた通しリハーサルでは、棟梁役は真矢と、俳優の竹中直人の2人でした。もともと松重の起用が検討されていた役どころです。竹中はノリノリで大工たちを盛り上げ、図面を見ながら指示を出す演技をしていた。ところが小林氏が解任された22日、竹中も辞任を申し出たのです」(同前) 大工の棟梁役で登場した真矢ミキ(NHKより) 彼に何があったのか。別の組織委関係者が続ける。 「小山田氏の問題が発覚してから、組織委は慌てて開会式スタッフの“身体検査”を行いました。それに引っかかったのではないか、と。実際、竹中は85年に『竹中直人の放送禁止テレビ』というオリジナルビデオを発表していますが、障がい者を揶揄するようなコントを演じているのです」 ビデオは内容が過激だったために、版元が自主回収したとされているが、小誌は独自に内容の一部を確認した。映像には、信号機のメロディを頼りに横断歩道を渡る視覚障がい者のモノマネか、竹中をはじめとした一行がリズミカルに白杖を振り回し、笑いを取る場面が収められている。屍姦四十八手として、竹中が死体を模したセーラー服姿のマ��キンに様々な性的いたずらをするコントもあった。 小誌は7月25日、竹中に声を掛けたが、 「事務所を通して下さい」 と語るのみ。事務所に事実確認を求めると、マネージャーが取材に応じた。 竹中直人も本番2日前までは…… 「『放送禁止テレビ』が原因で辞任したのは事実です。小山田さんの問題が浮上した時、竹中本人から『36年前にこういう作品に出演している』と連絡があり、辞退したいと申し出てきた。ただ、この作品では竹中は演者。企画者でもプロデューサーでもないので、私は『予定通りお願いします』と。しかし小林さんが解任された際、コントでの言動が問題になった。これでは竹中も許されないと考えて、竹中から組織委に申し入れ、承認されました」 この作品を巡っては、過去にも抗議を受け、竹中が障がい者団体に謝罪に行ったこともあったという。 森氏が強く主張した松井秀喜 「契約上はリハーサルに出た日数の日当はもらえると思いますが、こちらとしては、リハの報酬は受け取らない意向です」(同前) 混迷を極めた末に迎えた7月23日の本番。小山田氏が担当していた冒頭の4分間は、別の曲に置き換えられたが、小林氏のカラーは随所に残っていた。 「劇団ひとりのコントやなだぎ武によるテレビクルーの寸劇がありましたが、いずれも小林氏テイスト。なだぎは、小林氏が作・演出を手掛けるコント公演にも出演している。劇団ひとりについても、発売中止になった開会式のパンフレットで、小林氏が『懐かしい友人』などと紹介しています」(前出・演出関係者) かたや花形の一つ、入場行進では「ドラゴンクエスト」など、世界的に有名なゲームの楽曲が19曲流れた。だが、6月16日付の〈MUSIC LIST〉の選手入場の項目を見ると、本番で流れなかった5曲の曲名が記されている。「ゼルダの伝説」のメインテーマや「スーパーマリオブラザーズ」のスーパーマリオ組曲、「ポケットモンスター」のオープニング……共通点はただ1つ、「任天堂ソング」ということだ。 マリオやゼルダなど任天堂ソングも 「MIKIKOチームでは競技紹介を任天堂に監修してもらいましたが、代表取締役の宮本氏は自ら本社のある京都から毎週のように上京し、会議を重ねていました。しかし佐々木氏に実権が移った後、彼は競技紹介をあっさりピクトグラムに変えた。そのことには、任天堂側も複雑な思いがあるのでしょう。結局、本番直前で任天堂の曲は全て外されました」(別の電通関係者。任天堂は「当社は回答する立場にございません���) そんな中で、多くの国民が驚いたのが、ドローンによる演出だろう。 「夜空に浮かぶ1824機のドローンが、一糸乱れぬ隊列で五輪のエンブレムから地球に変化するパフォーマンスを見せた。全体的に評判が芳しくない開会式で『地球ドローンだけは良かった』という声も出ています」(前出・記者) 本番で披露された地球ドローン ところが――。 MIKIKO時代の演出を知るスタッフが訴える。 「あれはMIKIKO体制の時に、テクニカルチームが苦労して作り上げた演出の“パクリ”。それを、今の演出チームは断りも無く流用しているのです」 MIKIKOチームの地球ドローン ドローンのパフォーマンスは、五輪のスポンサーでもある米インテル社が全面的に技術協力している。 「MIKIKO時代のテクニカルチームは、インテルのドローンチームと打ち合わせをするため、彼らの拠点であるドイツに渡航したりもしました。今の技術力でできることは何か、試行を繰り返して演出プランを完成させた。単にドローンのパフォーマンスだけでは、インテルの技術発表会になってしまう。そこで、MIKIKOチームでは会場でのプロジェクションやAR(拡張現実)と連動させる演出を考えていました。それを、本番ではドローン演出だけ“つまみ食い”しているのです」(同前) 様々な案が浮かんでは消え、アイデアがつまみ食いされ、クリエイターたちが傷ついていく中で、最後まで残ったのは、小池氏の火消しと森氏の海老蔵。2つの“政治案件”だった。 「開会式のクライマックスである最終聖火ランナーは、プロテニス選手の大坂なおみでした。ただ、彼女が選出された過程にも、政治やIOCの影が色濃く出ています」(別の組織委幹部) 大坂なおみ 実は、今年2月までは別の人物が最終聖火ランナーの予定だった。 「本番でも走った王貞治氏、長嶋茂雄氏、松井秀喜氏の3名です。長嶋氏については演出チーム側も推薦していましたが、松井氏の場合は、地元・石川県で彼の後援会の名誉会長を務めた森氏が強く主張し、候補者リストに入りました。ところが、森氏が“女性蔑視”発言で組織委の会長を辞任したことで状況は一変。今度は、IOCが掲げる『多様性と調和』を体現する存在として、大坂に白羽の矢が立ちました。本人に打診したのは、森氏の辞任から間もない3月です」(同前) 聖火ランナーを務めた王、長嶋、松井の3氏 大坂の直前には、被災地の子どもたち6人が走ったが、「復興五輪」の象徴として彼らを最終ランナーにする案はなかったのか。 IOCが拒否した「復興五輪」 「IOCは以前から演出側に『世界で困っているのは、東北だけではない。特定の震災を限定的に取り上げるのはダメ』と伝えていました。MIKIKOチームの演出には当初、黙祷シーンも入っていましたが、これもIOCから『外せ』と指示を受けた。それ���ど、IOCは復興五輪には否定的だったのです」(同前) 一方で、IOCが挿入を強く求めてきた点もあった。 「本番でも、開会式のストーリー展開を寸断するように流れた『Imagine』はIOCの強いリクエスト。18年の平昌五輪の時にIOC側が『今後はImagineを必ず開会式で流したい』と言い出し、今回の演出チームはこの要望を受け入れました。結果、演出としての作品性や復興五輪などの理念よりも、IOCや政治家など発言権が大きい人たちの意向に沿った開会式となったのです」(同前) ◇ 開会式から3日後の7月26日。ドローン演出の“パクリ”や竹中の辞任など一連の問題について、組織委に確認を求めたが、期日までに返事はなかった。 MIKIKO氏の排除に関与し、小林氏らを演出陣に加えた佐々木氏に開会式の感想を尋ねたところ、 「はい、見ました。あとは、お答えできません」 では、本来、開会式を万感の思いで見つめていたはずの人物――MIKIKO氏は今、何を思うのか。彼女の携帯を鳴らすと、言葉少なにこう語るのだった。 「お話しできることは何もありません。今は直近のライブに向けて、全力で取り組んでいます」 東京のため、アスリートのため、最高の演出を目指したはずのクリエイターたちが蔑ろにされ、最後までIOCや政治家、電通の要望ばかりが優先された開会式。MIKIKO氏は昨年10月16日、電通幹部らにこんなメールを送っていた。 〈このやり方を繰り返していることの怖さを私は訴えていかないと本当に日本は終わってしまう〉 アスリートが敗北から立ち直るように、この失敗から我々も学ばなければ、彼女の言葉は現実のものになりかねない。 source : 週刊文春 2021年8月5日号
台本11冊を入手 五輪開会式“崩壊” 全内幕 計1199ページにすべての変遷が | 週刊文春 電子版
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僕は中学生の頃からクラシック音楽鑑賞を趣味にしておりますが,それ以前にも聴く機会が無かったわけではありません。最初にオーケストラ音楽を聴き始めたのは,もう少し前のことでした。当時大流行していたRPGゲーム「ドラゴンクエスト」のBGMを作曲したのはすぎやまこういち氏で,それをすぎやま氏自身がオーケストラ編曲したものを聴き始めたのが最初だったと思います。耳慣れたメロディでしたから退屈することも無く,オーケストラの奏でる音色に楽しく馴染むことが出来たのは音楽鑑賞における大変有益な「下地作り」になってくれたと感じています。また,それをきっかけに僕は実際にサントリーホールで開催された演奏会にも参りました。すぎやまこういち氏による司会やオーケストラのメンバーとの対話はとても楽しく,また「ドラゴンクエスト」以外にサン=サーンスの「動物の謝肉祭」やプロコフィエフの「ピーターと狼」などもすぎやま氏によるユーモアたっぷりの解説を交えた物語形式で演奏して頂くことで「音楽って楽しいな」という経験を持てたこともやはり,僕が音楽の良さに開眼する上で非常に大きな助けになったと感じています。 そして,この「耳に馴染む」体験を元にして音楽を好きになったのは僕だけではありませんでした。僕の中学生時代にはCDというのは1枚が何千円もする非常に高額な商品で,当然そんなものを大量に買うことは出来ません。ですから当時僕が購入したCDの殆どは交響曲や協奏曲といった大作ならば誰もが知っているもの,そして「名曲集」といわれる古今東西の短く人気のある楽曲を収めたものでした。前者は「まず,世間で大勢から価値を認められている曲を実際にじっくり聴いてみたい」という思いで,後者は「そうは言っても,世界には大勢の作曲家が居て色々な曲を作っている。出来るだけ大勢の作曲家の作品に触れてみたい」といった考えで選んだ次第です。そういうわけでその頃に僕が聴いていた曲は誰にとっても耳馴染みのあるものばかりで,その結果,僕が部屋で音楽を聴いているところにお茶を持って来てくれた母が「この曲は小学校の給食の時間に校内放送で流れていた。何という曲か」と尋ねて来たり,食事に誘いに来た父が「CMで聴いた曲だ」と喜んだり,そうしていつしか我が家では土曜日夜には「N響アワー」を皆で鑑賞するという風習が出来たのでした♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪ さて,昔から児童教育の一環として小学校などでは「子供に優れた芸術に触れさせる」ことを目的に音楽鑑賞会や美術館での校外学習が行われています。僕が言っている「まず馴染んでもらう」というのは,それと同じものでしょうか。僕は「重なる面はあるが,少し違う」と考えます。僕も小学生のときに学校行事としてそれらに参加しました。無論「素敵だな」と感じた経験が無いわけではありません。しかしそれは例外で,退屈との戦いだったり無関心に終始したり,せいぜい友人たちと(給食ではなく)お弁当を食べるのが楽しみなくらいで終わってしまったのを覚えています。いきなり聴いたことも無い楽曲を聴いたり,訳の分からない絵画をみせられたりしてもそれは単なる苦痛でしかありませんでした。勿論,��して「それらは全く無駄な行事」などと暴論を述べるつもりはありません。中には音楽を聴いて「とても楽しかった」と声を弾ませる子や,或いは幾つもの絵画を前にして立ち止まり真剣に目を向けている子も居ました。しかし学校行事で芸術に触れてその良さを感じられる子は既に何かで「馴染んで」いるか,さもなければ芸術の良さを見抜く生来の天性の持ち主なのでしょう。また芸術の才能の無い僕も大人になってから「あぁ,これはあの学校行事で聴いた曲だ」「これは小学生の時に観せられた絵だぞ」と驚いたこともありますから「馴染む」効果もあるにはあるのでしょうが,僕の「ドラゴンクエスト」や母の校内放送や父のCMに比べて効率が良いとは到底思えません。やはり「馴染む」という感覚は日常経験や娯楽の中でこそ養われるのではないか。本格的な芸術体験で効率的に馴染んでいける人というのはそもそも音楽や美術の楽しさに開眼し,それを娯楽として受け止めている人なのではないか。 そんなことを考えているうち,今回ご紹介する猪羽恵一氏のコラムに出会いました。 高橋由一の「鮭」は洋画黎明期に日本人によって描かれた初期の油絵として非常に有名であり,皆様もきっとご存じでしょう。僕も非常に優れた芸術作品として以前からよく知っていました。しかしこの作品が,当初は見世物小屋で飾られていたというのは大変な驚きです。でも冷静に考えてみれば,これは得心の行く話ですね。高橋が「鮭」を描いた明治初期にも,絵画鑑賞を好む人々は勿論大勢存在しました。しかし当時の人々にとって一般的な絵画というのは大和絵であり或いは浮世絵であり,油絵の持つリアルさ・生々しさというのは全く馴染みの無いものだったでしょう。逆に言えば実物と見紛うような絵画は当時非常な驚きを巻き起こしたに違い無く,油絵を展示する「油絵茶屋」は盛り場のアトラクションとして人々の評判を得たというのは「なるほど,そうだろう」と納得のいく話です。つまり日本人は西洋画を,芸術としてというよりもまずは娯楽として受容し始めたというわけですね。現代の日本人は油絵をはじめとする西洋画を芸術として愉しみ理解していますが,それは最初「アッと目を驚かす見世物」として観ているうち,だんだんと馴染んできてその良さや芸術性にも開眼していったということなのではないでしょうか。 僕自身は美術の良さや楽しさに気付くのが遅れに遅れ,美術好きになった頃には既に若き日は完全に終わってしまっていました。誰でもない,向上心もセンスも無い僕の落ち度です。しかしその向上心もセンスも無い僕が,一方でクラシック音楽の良さについては比較的早くに開眼出来たのは何故か。すぎやまこういち氏が「ドラゴンクエスト」に優れた曲を付け,センスどころか興味すら無かった僕が連日触れ続けていつの間にか「馴染み」を得られたからに他なりません。母にとっての校内放送や,父にとってのCMもそれと同じです。仮に美術についても「ドラゴンクエスト」のような馴染みを作るきっかけがあれば,或いは僕ももっと早くその良さに気付けたかもしれません・・・と,そんなことを考えるうち,任天堂の販売する「あつまれ どうぶつの森」という人気ゲームについて知ることが出来ました。そのゲームの中では美術品を集めたり展示したりすることが出来るのだそうですね。その「美術品」とは実在の名画・彫刻等で画面に実際に表示もされ,また「偽物をつかまされる」ということもあるのでそれを避けるためには間違い探しのようにジックリと画面を見ないといけない。しかもその表示は「オンライン上で作品を鑑賞してもらおう」と米国や中国の美術館がデータを提供するほど極めて高精度だというのだから,こうしたゲームで遊ぶ中で美術について「目に馴染む」体験を得られれば,それはいつか子供たちが美術好きになる下地を作ってくれるのではないか。いや,子供に限りませんね。この「あつまれ どうぶつの森」は非常に面白いゲームで,大人にも人気だということです。ゲームを通じて美術の良さに多くの人々が開眼していけば,これは大変素晴らしいことです。 芸術の良さを知るには,まず日常や娯楽で目や耳に馴染ませることが有益ではないか。「ドラゴンクエスト」の音楽が僕にクラシック音楽の良さを教えてくれたように「あつまれ どうぶつの森」などのゲームには是非,人々に美術の良さを教える役割を果たして頂きたい。僕はそのように願っているところです(◍•ᴗ•◍)
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ひとみに映る影 第五話「金剛を斬れ!」
☆プロトタイプ版☆ こちらは無料公開のプロトタイプ版となります。 段落とか誤字とか色々とグッチャグチャなのでご了承下さい。 書籍版では戦闘シーンとかゴアシーンとかマシマシで挿絵も書いたから買ってえええぇぇ!!! →→→☆ここから買おう☆←←← (※全部内容は一緒です。) pixiv版
◆◆◆
ポーポーポポポーポポポー…
「こちらは、熱海町広報です。五時になりました。 よい子の皆さん、気をつけてお家に帰りましょう…」
冬は日が沈むのが早い。すっかり暗くなった石筵霊山では、 防災無線から地元の小学生の声と、童謡『ザトウムシ』の電子リコーダー音だけが空しく響いている。 一方、霊山中腹に建つ廃工場ガレージで、私は…
「ピキィェェェーーーーッ!!!」 「紅さん、落ち着いて下さい!」 「うっちゃあしぃゃあぁあーーー!!こいつがあ!鼻クソッ!殺人鬼のクソ!私の口、口にッ! お前も間接クソ舐めろゲスメド野郎おぉぉ!!こねぁごんばやろがあぁぁあああああああ!! キエェェーーーーッ!!」
その時私は言葉にならない奇声を上げながら、皮を剥かれた即身仏ミイラに向かって、半狂乱で錆びついたグルカナイフを振り回していた。 そこそこ大柄な譲司さんや、ガタイの良いアメリカ半魚人男性の霊を憑依したイナちゃんに取り押さえられていたにも関わらず、 どこから出ているかわからない力で、ミイラをジャーキーになるまで切り刻もうと試みていた。
そのまま体��二分ほど暴れ、多少ヒスが冷却してきた頃か。 突然ガレージ外からオリベちゃんがツカツカと近寄ってきて、
「!」
私の顎を強引に掴み上げた。 ラメ入りグロスを厚く塗られた彼女の唇が、私の唇に男らしく押し当てられる。
「んっむ…オ…オリベちゃん…!?」 <同じライスクッカーからゴハンを食べる、それが日本流の友情の証だそうね> 同じ釜の飯を食う?まさか、彼女も見てたのか。あの衝撃的なサイコメトリー回想を。 それでいてなお…私の汚い口に、キスを…? <それが何?子育てしてたら鼻吸いぐらいよくやる事よ。 だぶか(『逆に』を意味するヘブライ語のスラング)、これであなたも私のベイビー達の鼻水と間接キスしちゃったわね!> 嘘つき。今時医療機器エンジニアが、だぶか鼻吸い器も使わずに育児するわけがない! 私の思っている事を読み取った彼女が、テレパシーで優しい嘘をつきながら私を抱きしめてくれたんだ。 「お…お母さぁん…!」 これが人妻の魅力か。さりげなくナイフは没収されていた。
<ほらジャック、あんたもよ!> 「は!?」 次にオリベちゃんは、イナちゃんの肉体からジャックさんを引っ剥がして私に宛がった。 互いの唇が触れ合っている間、ジャックさんのコワモテ顔がみるみる紅潮していく。 「ぶはッ!」 唇が離れると、ジャックさんは実体を持たない霊魂にも関わらず、息を吸う音を立てた。 そして赤面したままそっぽを向いてしまった。 「や…やべえ、俺芸能人とキスしちまった…!」 たぶん彼は例のサイコメトリーを見ていないんだろう。ちょっと悪い事をした気分だ。
しかしオリベちゃんは既に譲司さんまでも羽交い絞めにしていた。 <コラ怖気づくんじゃないわよ!> 譲司さんは必死に抵抗している。 「そうやなくて!さすがに俺がやるとスキャンダルとかがあかんし…」 <男でしょおおおおおおぉぉぉ!!?> 「ハイイィィィィ!!!」 次の瞬間、譲司さんはとても申し訳なさそうに私と接吻を交わした。 そのまま何故か勢いでリナやポメちゃんともチューしちゃった。
全員が茫然としていると、いつの間にか意識を取り戻していたイナちゃんが私を背後から押し倒した。 「きゃっ!イナちゃん!?」 「みんなだけズルい!私もチューするヨ!」 そ、それはまずい!私はプロレスの手四つみたいな姿勢でイナちゃんを押し返そうとする。 「違うのイナちゃん!これにはわけが…うわーっ!!」 しかしなす術なく床ドンされ、グラデーションリップを精巧に塗られた彼女の唇が、私の唇に男らしく押し当てられる。
互いの唇が離れるのを感じて私は薄目を開けると、 目の前ではイナちゃんが『E』『十』の手相を持つ両手の平を広げていた。 「これ。ロックサビヒリュのシンボル」 肋楔の緋龍。さっきサイコメトリー内で、肉襦袢の不気味な如来が言っていた言葉だ。 どうして彼女がそれを? 「…見てたの?」 「意識飛んで、暗いトンネルでヒトミちゃんとヘラガモ先生追いかけた。 そしたらアイワズが、赤ちゃんのヒトミちゃんに悪さしてた」 アイワズ?もしかして、あの肉襦袢の事?イナちゃんは何か知っているのか…。
すると突然ポメラー子ちゃんが「わぅ!」と小さく鳴き、動物的霊感で床に散らばった半紙の一枚を選んで口に咥えた。 そのまま彼女はそれを私達の足元に置く。半紙には『愛輪珠』と書かれていた。 「これ、小さい頃私が書いたやつ…!」 「愛輪珠如来(あいわずにょらい)…」 譲司さんが呟いた。その語感は、忘れ去っていた私の記憶の断片とカチリと噛みあった気がした。
イナちゃんも、別の半紙を一枚拾い上げる。あの『E』『十』が書かれた半紙を。 「私、悪いものヒキヨセするから、 子供の頃から、韓国で色んな人見てもらってた。 お寺、シャーマン、だめ。気功行った、教会で洗礼もした。だめだった。 でも幾つかの霊能者先生、みんな同じ事言うの…コンゴウの呪いは誰にも治せないて」 私と譲司さんが同時にはっとする。 金剛…愛輪珠如来に続いて、またイナちゃんの口からサイコメトリーと合致するキーワードが飛び出した。
「まえ、気功の先生こっそり教えてくれた。地面の下はコンゴウの楽園あって、強い霊能者死ぬとそこ連れて行く。 アジアでは偉い仏様なアイワズが仕事してて、才能ある人間見つけると、 その人死ぬまでにいっぱい強くなるように、呪いかけていっぱい霊能力使わせる。 私のロックサビヒリュもそれで付けられた。 それ以上は私あまり知らない。たぶん誰もよく知らないこと思う」 地底に金剛の楽園?まるで都市伝説みたいだ。 でも、その説明を当てはめれば、愛輪珠如来と赤僧衣がしていた会話の意味が、なんとなく理解できる。
「なんだそりゃ。じゃあお前の引き寄せ体質は、呪いとやらのせいだったのか?」 ジャックさんの眉間に微かな怒りのこもった皺が寄った。 「うん。私、本当は悪い気をよける力使いヨ。でも心が弱ると、ヒリュが悪さするんだ!」 イナちゃんは悪霊を引き寄せた時と同じように、両手をぎゅっと固く握り合った。 今の私達はもう、この動作の意味を理解できる。 これはキリスト教的なお祈りのポーズじゃなくて、両掌に刻まれた呪いを霊力で抑えこんでいたんだ。
「…ねえアナタ」 突然リナがイナちゃんに問いかける。 「高校生ぐらいよね?年はいくつ?」 「オモ?十六歳だヨ」 「1994年生まれ?」 「そだヨ」
リナは暫く神妙な顔つきで何か考え、やがて口を開いた。 「どうやら、アナタにも…いいえ。 もうこの際、この場に集まった全員に知る権利があるわね」 そして顔を上げ、私達全員に対して表明した。 「紅一美と即身仏、そして倶利伽羅龍王について。アタシが知ってる事洗いざらい話すから、よく聞きなさい」
◆◆◆
1994年、時期は今と同じく十一月頃。アタシは紅一美という少女によって生み出された。 いや、正確には、アタシは石筵霊山に漂う動物霊の残骸をアップサイクルした人工妖精だ。 当時はまだ、リナという名前も人間じみた知性も持っていなかった。
アタシは与えられた本能に従って、自分を本物の鳥だと信じて過ごしていた。 そんなある日、金色の炎を纏った大きな赤い蛇に襲われて、食べられそうになった。 アタシはソイツを天敵だと見なして、無我夢中で抵抗した。
結論を言うと、ソイツはこっちが情けなくなるぐらい弱っちかった。 というより、戦う前から手負いだったみたい。 返り討ちされたソイツは、アタシを説得するために知能を与えて、こう語りだした。
「俺様は金剛の魂を金剛の楽園へ導く緋龍、その名も金剛倶利伽羅龍王だ。 本来ならお前如き軽くヒネってやれるが、今の俺様は裏切り者に大事な法具を盗まれ、満身創痍なのだ。 お前を生み出した者の家から金剛の赤子の肋骨を持ってきてくれるなら、お前の望みを一つ叶えてやるぞ」 そこでアタシは、そのクリカラナントカと名乗ってきたソイツに、人間になりたいと祈った。 知能を授かって、自分が人工の魂だと知ったとき、自分も霊魂を創って生み出してみたいと思ったからだ。 でもクリカラは、「今の俺にそこまでする力はない」と言って、アタシの顔だけを人間に変えた。
アタシは肋骨を取り返しに行く前に、まず人里に降りる事にした。 一刻も早く人間の世界を知りたかったから。それに、人間の顔をみんなに自慢したかったからだ。 ところが霊感のある人間達は、みんなアタシを見ると笑った。クリカラはアタシに適当な顔を着けたのだと、その時初めて知った。 だからアタシは腹いせに、クリカラの目論見を全て『裏切り者』にチクってやろうと考えた。
改めて自分が生み出されたガレージに戻ると、アタシは初めて内部に仕組まれたトリックアートに気付いた。 そのガレージ内は、なまじ霊感の強い人間が見ると、まるでチベットの立派な寺院みたいに見える幻影結界が張られていたの。 緑のトタン壁や積み上がった段ボールは、極楽絵図で彩られた赤壁とマニ車に。 黄ばんだ新聞紙の上に砂だらけの毛布が敷かれただけの床は、虎と麒麟があしらわれた絨毯に。 中央に置かれた不気味なミイラは、木彫りの立派な観音菩薩像に。 人間の霊能者並の知性と霊感を得たアタシにも、それは見えるようになっていた。
すると、漆塗りのローテーブル、もとい、ベニヤ板を乗せたビールケースの上で物書きをしていた小さい子が、元気よく立ち上がった。頭は丸坊主だけど女の子だ。 その子に…一美によって生み出されたアタシには、女の子だとわかった。 「書けた!和尚様、書けましたぁ!」 幼い一美は墨がついた手で半紙を掲げる。そこに書かれているのは少なくとも日本語じゃない、未知の模様だ。 すると観音像から白い気体が浮かび上がり、とたんに人間形の霊魂になった。
「あぁ…!」 思わず感嘆の息が漏れた。その霊魂は、結界内の何よりも美しかったのだ。 赤い僧衣に包まれた、陶器のような滑らかで白い肌。 まるで生まれつき毛根すらなかったかのような、凹凸や皺一つない卵型の頭部。 どの角度から見ても左右対称の整った顔。 細くしなやかで、かつ力強さをも感じ取れる四肢…。 これこそ真の『美しい人』だと、アタシはその時思い知った。 和尚、と呼ばれたその美しい人は、天女が奏でる二胡のような優雅な声で一美と会話したのち、アタシに気付いて会釈をした。
一美が昼寝を始めた後、その美しい人はアタシに色々な事を語った。 その人の名前は金剛観世音菩薩(こんごうかんぜおんぼさつ)、生前は違う名を持つチベット人の僧侶だったらしい。 金剛観世音…(ああ、面倒ったらしいわ!次から観音和尚でいいわね!)は生前、 瞑想中に金剛愛輪珠如来と名乗る高次霊体と邂逅した。 その時、如来に自分の没後全身の皮膚を献上するという契約を交わし、悟りを開いて菩薩になった。 皮膚を献上するのは、死体に残留した霊力を外道者に奪われなくするためだと聞かされて。 だけど、実際はその如来や、如来を送りこんできた金剛の楽園こそ、とんでもない外道だったの。
イナちゃんが話していた通り、愛輪珠如来はアジア各地の霊能者に、苦行という名の呪いや霊能力、特殊脳力を植えつけていた。 しかも金剛の者達は、素質のある人間は善人か悪人かなんてお構い無しに楽園へ迎え入れる方針だった。 それこそ、あの殺人鬼サミュエル・ミラーだって対象者だった。 そして、サミュエル・ミラーが水家曽良となって日本に送られてくると、 金剛の楽園で水家の担当者は愛輪珠如来になった。
だけど、愛輪珠如来と幽体離脱した観音和尚が水家の様子を検めた時、水家はNICの医師達によって、既に脳力や霊能力を物理的に剥奪されていた。 そこで如来は、水家と同じ病院で生まれた一美に、水家の霊能力を無理やり引き継がせたの。 それだけじゃ飽き足らず、一美の肋骨を一本奪って、それを媒介に、呪いの管理者である肋楔の緋龍を生み出すよう観音和尚に指示した。 観音和尚はここで遂に、偽りの仏や楽園に反逆する決意をしたのよ。
彼は如来の指示に従い、石英を彫って、緋龍の器となる倶利伽羅龍王像を作った。 但し、一美の代わりに自分の肋骨を自ら抜き取って、それを媒介に埋め込んだ。 この工作が死後金剛の者達に気付かれないように、彼はわざわざ脇腹の低い所を切って、そこから自分の体内に腕を潜らせて肋骨を折ったの。 そして一美の肋骨は、入れ替わりに自分の体内に隠した。
観音和尚は脇腹から血を流したまま七日七晩観音経を唱え続けた後、事切れて即身仏となった。 すると即座に生死者入り混じった金剛の者達が現れ、契約通り彼の遺体から生皮を剥いでいった。 霊力を失い、金剛の楽園にとって価値がなくなった遺体は、心霊スポットとして名高い怪人屋敷のガレージに遺棄されたわ。
一方何も知らないクリカラは、一美のもとへ向かっていた。 そして一美に重篤な呪いをかけようとしたその瞬間…突然力を失った! クリカラが自分の肋骨は一美のものではないと気付いた時にはもう遅かったわ。 仕方なくクリカラは、一美を呪う事を一時断念して、金剛の楽園へ退散した。
観音和尚はアタシに以上の事を打ち明けると、穏やかな顔で眠る一美の頬をそっと撫でて、続きを語った。
没後、裏切り者として金剛の楽園から見放された観音和尚は、怪人屋敷に集う霊魂や人工精霊達に仏の教えを説いて過ごしていた。 そして四年の歳月が流れた1994年、彼のもとに、不動明王に導かれし影法師の女神、萩姫が現れた。
「どういうわけか、金剛倶利伽羅龍王が復活しました。 龍王は県内各地のパワースポットを占拠して力を得ています。 一美は私達影法師にとって大切な継承者ですが、磐梯熱海温泉を守る立場の私は龍王に逆らえません。 どうか彼女を救うのを手伝って下さい」
これはアタシの想像だけど…クリカラは同時期韓国で、新たな金剛のターゲット、イナちゃんから力を奪ったんじゃないかしら。 萩姫に導かれ、観音和尚が猪苗代の紅家に向かうと、一美の胸元には確かに緋龍のシンボルが浮かび上がっていた。
観音和尚と一美の家族は協力してクリカラを退けたが、少ない霊力を酷使し続けた彼の魂はもう風前の灯火だった。 クリカラが完全に滅びていない以上、一美がいつまた危険に晒されるかわからない。 だからアナタの両親は、アナタを一人前の霊能者にするために、観音和尚に預けたのよ…。
◆◆◆
「以上、これがアタシの知っている事全て」 リナは事の顛末を語り終えると、改めて全員と一人ずつ目を合わせた。 私をさっきまで苦しめていた色んな感情…不安や悲しみ、怒りは、潮が引くように治まってきていた。 「この話、本当なら、アナタが二十歳になった時にご両親が話す予定だったの。…ていうか、明後日じゃないの。アナタの誕生日。 はっきり言って、観音和尚はアナタの友達が猪苗代湖で騒ぎを起こした頃には既に限界だったわ。 だから彼は最後に、アタシを猪苗代へ遣わせたの。 それっきりよ。以来、二度と彼を見ていないわ…」
数秒の沈黙があった後、私は口を開いた。 「リナにとって…観音寺や和尚様は、美しかったんだよね?」 物理脳を持つ人間と違い、霊魂は殆ど記憶を保てない。 だから彼らは自分にちなんだ場所や友人、お墓、依代といった物の残留思念を常に読み取り、 そこから自分の自我目線の思念だけを抽出して、記憶として認識する。 リナがこの観音寺を美しいと表現したのは、単に私の記憶を鏡のように反射しただけなのか、それとも…。 「少なくとも、この場から思い出せる景色を見て、今アタシは美しいと感じたわよ」 「…そうなんだね」
お蕎麦屋さんの予約時間はもうとっくに過ぎているだろう。 けど、私は皆に一つお願いをした。 「すいません。十分…ううん、五分でいいんです。 ちゃんと心を落ち着かせたいので、少しだけ瞑想をしてもいいですか?」 皆は黙ったまま、視線で許してくれた。 「わぅ」 構へんよ。と、ポメラー子ちゃんが代表して答えた。
影法師使いの瞑想は、一般的な仏教や密教のやり方とは少し異なる。 まず姿勢よく座禅を組み、頭にシンギングボウルという真鍮の器を乗せる。 次に両手の親指と人差し指の間に、ティンシャという、紐の両端に小さなシンバルのような楽器がついた法具をぶら下げる。 その両手を向かい合わせて親指と小指だけを重ね、観音様の印相、つまりハンドサインを作れば準備完了だ。
瞑想を始める。目を瞑り、心に自分を取り囲む十三仏を思い描く。 仏様を一名ずつ数えるように精神世界でゆっくりと自転しながら、じっくり十三拍かけて息を吸う。 「スーーーーーー…………ッフーーーー…………」 吐く時も十三拍で、反対回りに仏様と対面していく。 ちなみに一拍は約一.五秒。久しぶりにやったけど、相当きつい。肺活量の衰えを感じる。 でも暫くすると…。
…ウヮンゥンゥンゥン…ヮンゥンゥンゥン…
<何?何の音!?> 「この1/f揺らぎは…ああっ!紅さんや!」 私の頭上のシンギングボウルが一人でに揺らぎ音を奏ではじめ、皆がどよめいた。 実はこれは、影法師を操るエロプティックエネルギーという特殊な念力によるものだ。
…ワンゥンゥンゥン…ヮンゥンゥンゥン… テャァーーーーーン…!
息苦しさと過度の集中力が私の体に痙攣を引き起こし、時折自然とティンシャが鳴る。 波のように揺らぎ、重なり合った響きが、辺り一帯を荘厳な雰囲気で包み込む。 その揺らぎを感じて、私も精神世界で変化自在な影になり、万華鏡のように休みなく各仏様の姿に変形し続けている。 私は影、私は影法師そのものだ。完全黒体になれ。 そして心まで無我の境地に達した時、この身に当たる全ての光を吸収し…放出する!
テャァーーーーーン…!
「オモナ…すごい!」 そっと目を開ける。眼前に広がる光景は、もはやガレージ内ではない。 「そうか。ここが…あんたが信じ続けた故郷なんだな」 今ならイナちゃんやジャックさんにも見えるようだ。 懐かしい赤と真鍮のお御堂。窓辺から吹き抜ける爽やかな風。 そのお御堂の中心で、とりわけ澄んだ空気を纏って立つのは、仙姿玉質な金剛観世音菩薩像…和尚様。 そして、頭と両手に法具を置き、和尚様とお揃いの赤い僧衣を纏った私。 ここは、石筵観音寺。私が小さい頃住んでいたお寺だ。
『よく帰ってきましたね』 和尚様の意思が聞こえた。声でもテレパシーでもない、もっと純粋な波動で。 彼はまだ滅びていなかったんだ。 「あの…私達、申し訳ありません。和尚様の記憶、見ちゃって…それで…」 『一美』
和尚様は私の両手を取り、彼の胸の中に沈めた。ティンシャが「チリリリ」とくぐもった音をたてた。 心なしか暖かい胸の中で、私の手に棒のようなものがそっと落ちてきた。 両手を引き出してみると、それは細長い小さな骨…赤ん坊の頃に失われた、私の肋骨だった。 顔を上げると、和尚様の優しくも決意に満ちた微笑みが私の網膜に焼きつき、瞑想による幻影はそこで分解霧散した。
『行くのです』 彼は成仏したんだ。
次の瞬間、私達を取り巻く光景は薄暗いガレージに戻っていた。 でも、今のはただの幻影じゃない。和尚様のお胸には穿ったような跡が残っている。 私が握っていた肋骨はいつの間にか、何らかの念力によって形を変えていた。 「これは…プルパ」 <プルパ?> オリベちゃんが興味津々に顔を寄せる。 「私知てるヨ。チベットの法具ね。 煩悩、悪い気、甘え、貫く剣だヨ」 イナちゃんが私の代わりに答えてくれた。
そう、プルパは別名金剛杭とも呼ばれる、観世音菩薩様の怒りの力がこもった密教法具だ。 忍者のクナイに似た形で、柄に馬頭明王(ばとうみょうおう)という怒った容相の観音様が彫刻されている。
「オム・アムリトドバヴァ・フム・パット…ぐっ!!」 馬頭明王の真言を唱えてみると、プルパは電気を帯びたように私の影を吸いこみ…
ヴァンッ!…短いレーザービームみたいな音を立てて、刃渡り四十センチ程の漆黒のグルカナイフに変形した。 「フゥ!あんた、最強武器を手に入れたな」 影を引っ張られてプルパを持つ手さえ覚束無い私を、ジャックさんが茶化す。 「武器って、私にこれで何と戦えって言うんですか!?…うわあぁ!」 途端、プルパは一人でに動き、床に落ちていた『金剛愛輪珠』の半紙にドスッと突き立った。 「ウップス…」 ジャックさんも思わず神妙な顔になる。 どうやら、和尚様は…本気で怒っているらしい。 憤怒の観音力で、私に偽りの金剛を叩き斬れと言っているんだ!
◆◆◆
私達はガレージのシャッターをそっと閉じ、改めて公安警察内のNIC直属部署に通報した。 自分達はひとまず怪人屋敷内で待機。 譲司さんがお蕎麦屋さんにキャンセルの連絡を入れようとした、その時だった。
カァーン!…カァーン! スピーカーを通した鐘の音。電話だ。譲司さんはスマホをフリックする。 案の定、画面に再びハイセポスさんがあらわれた。 『やあ、ミス・クレナイ。さっきはすまなかったね。 石筵にあんな素晴らしい観音寺があるなんて、僕は知らなかったのさ』 「いえ、こちらこそ取り乱してすみませんでした。 …あの光景、ハイセポスさんも見られてたんですね」 『おっと、幻影への不正アクセスも謝罪しなければいけないかね』 彼はいたずらっぽく笑った。
『また電話を繋いだのは他でもない。ミス・リナの一連の話を聞き、一つ合点がいった事があってだな… ああ、その前に、アンリウェッサ。蕎麦屋の予約は僕が勝手にキャンセルしちゃったけど、構わないね?』 「え?あ、どーもスイマセン!」 譲司さんはスマホを長財布に立てかけようと四苦八苦しながら、画面に向かってビジネスライクな会釈をした。
『実は僕には兄がいて、中東支部で彼も殺されたんだ。 だが彼はある時突然、「俺はこいつの脳内で神になってやる」とかなんとか言って、水家の精神世界で失踪してしまった。 それから暫く経ち、僕達NIC職員のタルパが兄を捕獲すると、彼はこう言ったのさ…「俺は龍王の手下に選ばれた、神として生きていく資格があるんだ」とね』 「龍王!?」 「どうして水家の脳内に!?」 私達全員が驚きにどよめいた。
『そう、お察しの通り。君達の宿敵、金剛倶利伽羅龍王の事だろうさ。 龍王はなんでも、水家の脳内に蠢く『穢れ』を喰らっていたらしい。 そして僕の兄は、穢れを成長させるには沢山の感情が必要だから、あまりタルパを奪い尽くさないでくれとのたまったんだ』 「穢れ?」 『ジョージとオリベは知っているだろう』 「穢れ」譲司さんの額から汗が流れ落ちた。「…自我浸食性悪性脳腫瘍(じがしんしょくせいあくせいのうしゅよう)」 彼の口から恐ろしい言葉が飛び出した。
自我浸食性悪性脳腫瘍。私も知っている病名だ。 通称タピオカ病とも呼ばれるそれは、脳に黒い粒々の腫瘍ができて、精神がおかしくなってしまう病気だ。 発病者は狂暴になって、自分が一番大切な人を殺したり、物を壊したりするという。 ただでさえ殺人鬼の水家がそれに感染していたとなると…恐ろしいの一言に尽きる。 『その通り、穢れとはタピオカ腫瘍だ。 本来は生きた人間を狂わす脳腫瘍だが、霊魂にそれを感染させれば、そいつは強力な悪霊と化す。 だから龍王は、水家の脳内に閉じ込められたタルパ達を、穢れた腫瘍粒に当てがっていたんだ。 悪霊をたらふく喰って強くなるためにね。兄はその計画にまんまと利用されていたのさ』
ジャックさんが画面を覗きこむ。 「水家は、安徳森に俺達が救出された時には失踪していたんだよな? まさか、奴は今もどこかで、龍王のエサ牧場としてこっそり生かされ続けてやがるのか!?」 『そこまではわからない。だがこうは考えられないだろうか? 観音和尚の計らいで一たび力を失った龍王は、ミス・パクから霊力を吸収し、更に福島中のパワースポットを乗っ取って復活した。 すると金剛の楽園にとって因縁深い男、水家曽良を見つけ、更に水家の精神世界でタピオカ病という副産物を発見する。 彼は、水家の精神を乗っ取ってタルパを生ませ続ければ、ほぼ無限に悪霊を生み出し喰らえる半永久機関に気づいた。 そして自分が楽園で高い地位を獲得できるほど強大化するその日まで、フリードリンクのタピオカミルクティーを浴びるように飲み続けているのさ!』 「は、半永久にタピオカミルクティーを…アイゴー!」 イナちゃんが身震いする。いや、さ、さすがにそれは飛躍しすぎでは…。 とはいえ、この仮説が正しければえらい事だ。
「けど…」 譲司さんがおずおずと手を挙げる。 「もし水家の脳内でそんな強い悪霊が育っとったら、霊感を持つ誰かが既に発見しとるのでは? 水家はNICの強力な脳力者捜査官がおる公安部だけやなくて、マル暴にも指名手配されとります。 俺の友人にも、マル暴で殉職した霊がいますが…そんな話聞いたことありません」 <そうね。悪霊説は無理があるわ。 それでもあの殺人鬼は一刻も早く見つけ出さないとだけど> オリベちゃんが同調した。
私はその時、ふと閃いた。オリベちゃんといえば… 「そういえばオリベちゃん、ここに来た時、怪人屋敷の二階に気配がするって言ってましたよね?」 <え?…ええ。でも、一瞬だけよ。 ファティマンドラのアンダーソンさんを見つけた時には消えていたから、てっきり��ンダーソンさんの霊だったんだとばかり…> 『二階?…ああ、でかしたぞオリベ!これは灯台もと暗しだ!』 突然、ハイセポスさんがはっとした顔を画面いっぱいに近寄らせた。 『誰か、そこの階段を上ってごらん。そうすれば大変な事実に気がつくだろう! ああ、僕達は今までどうしてこれを見落としていたんだ!!』
画面内で心底嬉しそうにくるくる踊るハイセポスさんとは裏腹に、私達の頭上にはハテナマークが浮かんでいる。 とりあえず、私とオリベちゃん、ジャックさんで階段へ向かった。
◆◆◆
階段脇には館内図ボードがあった。影燈籠で照らしてみると、この工場は三階建てのようだ。 ジャックさんがボードを指さしながら、水家と共通の記憶を辿る。 「そういや、水家が潜伏していたのも二階だったな。 二階はほぼ一階の作業所と吹き抜け構造で、あまり大きな部屋はないんだ。 ええと、更衣室、事務所、細菌検査室…ああ、そうだそうだ!あいつが占拠していたのは応接室だ。」 「じゃあ、二階の応接室に向かいましょう! 影燈籠は光源がない場所では使えないから…」 私とオリベちゃんはそれぞれスマホを懐中電灯モードにした。
一つ上のフロアに出て、真っ暗な廊下を進む。 幾つかのドアをドアプレートを読みながら素通りしていくと、確かに『応接室』と書かれた部屋があった。 鍵は開いていたから、私達は速やかに入室する。
室内を見渡すと、端に畳まれたパイプ椅子と長机、それに昔小学校などによく置いてあった、オーバーヘッドプロジェクターが一台見える。 <応接室というより、まるで工場見学に来た子供達向けの教室みたいね> 「水家の私物はもう警察が回収したんでしょうか?それより…」 それより気になる事がある。オリベちゃん、ジャックさんも同じ事を考えていたように頷いた。 「…この部屋、あいつの残留思念や霊がいた気配を全く感じねえ。 あいつが潜伏していたのはここじゃねえみてえだな」 「本当にここが応接室なんでしょうか?ドアプレートは誰でも簡単に付け替えられますよね」 <ええ。それに、さっきの廊下、広かったわよね? 左右どちらにも沢山ドアがあって。どこが吹き抜けだっていうの?>
私達は改めて階段へ戻った。ここは…三階だ。 「二階が、ない!?」 私はまた階段を下ってみる。一階。上る。三階。 だからといって、一つ分フロアを隔てるほど長い階段じゃない。明らかに次元が歪んでいる!
イナちゃんや譲司さんも含めて、一階の階段前に全員集合する。 私は外灯が当たる場所に移動し、影の中のリナに呼びかけた。 「あんたはどうだった?私絶対二階がなくなってたと思うんだけど…」 「そうね。アタシ、途中で外に出て壁から入ろうとしたけど、それもダメだった」 <でも、次元が歪むなんて事、本当にあるの? NICは心霊やエスパーの研究でも最先端だけど、人間がテレポーテーションする現象は見た事ないわ> オリベちゃんは欧米的にわざとらしく肩をすくめた。 「現代解明されとる量子テレポーテーションは、SFみたいな瞬間移動とは別物やしな。 だったら、逆の発想や…イナ」 「オモ?」 譲司さんはイナちゃんに、スマホで音楽をかけながら一緒に階段を上るよう指示する。
『背後からっ絞ーめー殺す、鋼鉄入りのーリーボン♪』 ビクッ!…音楽が鳴り始めるやいなや、私は思わず身構えて、キョロキョロと周囲を伺った。 イナちゃん、よりにもよって、どうしてその曲を選んだんだ。 「あははは!ヒトミあんた、ビビりすぎよ!」 「う…うるさい、リナ!」 休みの日には聴きたくなかった声。 この曲は、私を度々ドッキリで連れ回す極悪アイドル、志多田佳奈さんのヒットソング『童貞を殺す服を着た女を殺す服』だ。タイトル長すぎ!
『返り血をっさーえーぎーる、黒髪ロングのカーテン♪』 「歌うで、イナ…仕込みカミッソーリー入りの♪」 「「フリフリフリルブラーウス♪」」 二人は階段を上がりながら、暗い廃工場の階段というホラー感満載の場に似つかわしくないアイドルポップを歌う。 しかし、 「「あーあー♪なんて恐るべき、チェ…」」 『…リー!キラー!アサシンだ!』 二人は突然、示し合わせたようなタイミングで歌うのを止めた。 イナちゃんのスマホから、佳奈さんの間抜けな声だけが階下に響く。 「なんだあいつら。歌詞を忘れたのか?」 肩でリズムを取りながら、ジャックさんが見上げた。 <…待って。あの二人、意識がないわ!> オリベちゃんが異変を感知。慌てて彼らを追いかけようとすると、その時!
「「…リー!キラー!アサシ…ん?」」 『わ・た・し・童貞を殺す服を着た女を…』 「オモナ?もうサビなの?」 彼らはまるで時を止められていたかのように、また突然歌いだした。 スマホから流れる音楽との音ズレに、イナちゃんが困惑する。 「やっぱりそうか。オリベ! 今から…ええと、ひーふーみー…八秒後きっかりに、俺に強めのサイコキネシスをうってくれ!」 何かに気付いている譲司さんは、そう言うと階段を下りはじめた。
五、六、七…八! <アクシャーヴ!>ビヤーーーッバババババ!!! 「わぎゃぁばばばばばば!!!死ぬ!死ぬーっ!!」 オリベちゃんの頭が紫色に光るのが傍目から見えるほど強烈なサイコキネシスを受け、譲司さんは時間きっかりに叫び声を上げた。 「げほっ、げほ…あーっ���ほら!行けたで、二階!皆来てみ!!」 少し焼けた声で譲司さんが叫ぶ。 「わ、わきゃんわきゃん!?」 飼い主の危機を察してポメちゃんが階段を駆け上がる。 私達もそれに続くと、途中で全員譲司さんに器用に抱きとめられ、我に返った。 「わきゅ?」 「あれ?」 「俺達、今…」
「どうやらこの階段には、二階周辺を無意識に飛ばしてまう、催眠結界が張られとるみたいやな。 それならテレポートより幾分か現実的や。 ただ、問題は…これ作ったん誰で、どうやったら開けられるかって事やな…」 譲司さんが目線で、二階入口の鉄扉を指し示した。 そこには、白墨で複雑極まりないシンボルが幾つも丁重にレイアウトされて書かれた、黒い護符が貼ってあった。
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劇団ブルドッキングヘッドロック『芸術家入門の件』の感想
置鮎さんにどはまりした人活動の一環として、劇団ブルドッキングヘッドロック『芸術家入門の件』@吉祥寺シアター���20日夜の回を観てきました。作・演出が『テニプリ』海堂先輩の喜安さん。
置鮎さんが出てもいないお芝居を観に行くのがなぜ置鮎さん略の一環かというと、ヘロQ以外の「声優さんがかかわるお芝居」も観てみないとヘロQが&ヘロQで置鮎さんが何をやってるのかよくわからんよな…と思い立ったからです。それに、もともと気が向いたってだけの理由でお芝居を観に行くタイプの演劇オタクなので。置鮎さんの舞台を初めて観に行ったときもそうでした。そういうもんです。
『芸術家入門の件』(以下『芸術家入門』)は、作品を作れなくなって行き詰まったけっこういい歳の造形作家の男が「芸術家入門」というあやしい看板をくぐるところから始まり、場面は彼の現在、美大の造形学科、古代ギリシャの石像建設現場を行き来していきます。あれこれあって、最終的に劇場に巨大な像が立ちます。すっごいでっかいやつが!
劇場に入ると幕もなく、ブラックボックス型を活かした広く四角い空間。舞台エリアにはイントレ(小劇場系のお芝居でちょくちょく見かける例の足場)が組まれ、俳優たちが何やら作業をしている。
開演前から、なんだか自分の大学時代を思い出すお芝居でした。私が通ったのは美大ではないごくふつうの大学でしたが学生演劇が盛んなところで、知人の演劇サークルを手伝うこともありました。あの作業場の雰囲気。
誰かが大道具を作っている横で、誰かは足りない単位の話をしている。自分の劇団を立ちあげる計画をしている人もいれば、2年でサークルも演劇もやめるつもりの人も。こっちのサークルが作っている横で、別のサークルも制作作業をしていたり、していなかったり。こっちの劇団の公演が終われば、あっちの劇団の公演が始まる。誰かが作ったり作らなかったり、誰かが公演したりしなかったりしながら、演劇は続く。
『芸術家入門』もそういうお話だった気がします。いろんな人がいて、美術への向き合いかたも様々。でも誰かがやっていて、制作の営みがあり、作品がある。そしてそれは、「芸術家」というラベルに先立つ。
美大パートでは、主な場所は造形学科の学生たちが来ては去る作業場。芸術をやっていこうと思っている学生もいれば、就職するつもりの学生もいる。作品をパパッと作れる学生も、時間がかかる学生も。作品制作を続ける学生も、理論に転向しようかという学生も。教員に見込まれる学生も、そうじゃない学生も。制作の話をする学生もいれば、学食やドライブの話をする学生も。何かの話をする学生もいれば、話に入らない学生も。そして誰かが何かを作ったり、作らなかったりしている。とはいえ、場所が美大の作業場というだけあって、作る場所、作る人たちではある。それだけが共通点。まだ何者でもない彼ら・彼女らが、作っている。
主人公である男の現在パートは、主な場所は彼の家とアトリエ。冒頭で男の「芸術家入門」の先生として登場した女性が住みこみで働いています。彼女の指導のもと、男は芸術家たるにふさわしい振舞いを身に着けようとし、いまいちな感じで失敗していく。彼女と男の間で、実際に作品をどう作るか、あるいは何がひとを創作に向かわせるかといった対話はまったくおこなわれません。振舞いや家族構成、性癖といった外的な要因だけが取り沙汰される。彼女が男に指導しているのは、芸術・作品を作る人としての芸術家ではなく、「芸術家」像にすぎない。しかも、おそらくは多くの芸術家の実像からかけ離れた、ステレオタイプとしての、エキセントリックな「芸術家」像です。 現在パートには、彼に作品制作を依頼したパトロンや、芸術的なセンスを期待されている彼の孫、彼の見習いなどが登場します。作品を作れない男は芸術家といえるのか?作品を作りはしないけれども作品制作のための資金を出すパトロンはどういう存在になるのか?芸術的であれということは、誰かに押し付けられるのか?「見習い」と「芸術家」の違いは何なのか?そして、盗作と創作の違いは?美大パートでは「作る」という行為が空間を漂い続けているのと対照的に、現在パートでは「作れない(作らない)」ということを中心に芸術家とそれ以外を分けるものが問題になる。
古代ギリシャのパートでも、芸術とパトロンの関係が扱われます。アテナイの威光を諸国に示すために、巨像の建設が計画されている。当初の計画では戦士の姿の像を作ることになっていますが、現場を担当する男は、像は女神の姿で作ろうと思い立つ。下からの提案が上に伝えられ、モデルも決まり、女神像が作られていきます。このプロセスはけっこうまだるっこしくて、責任者のOKをなかなかもらえなかったり、コネでモデルが決まったりする。さらに、途中で計画に横やりが入り、いいところを別の集団にもっていかれそうになったりもします。パトロンがいる制作では、思い通りに作品を作ることはできない。 もうひとつ、このパートではインスピレーションもポイントなんだろうと思います。戦士の像を作るという計画なのに、現場に立ち海を眺めインスピレーションを得た男が計画を変更する。「変更する」というか、勢いと熱意で「変更させる」というほうが正確です。それによって、単なる巨像制作事業だったものがアート・プロジェクトの様相を帯びてくる。いっぽう、主人公の男にはそのインスピレーションがない。古代ギリシャの男は、戦士の像を作るという与えられた仕事を、女神の像を作るという自分自身の仕事に変えていく。でも主人公の男は、頼まれて作ることと勝手に作ることのはざまに落ちてしまっている。
ほかに、美大パートのサブ場面として『オイディプス王』のリハーサルの場面もちょろっと出てきます。西洋演劇の起源としての古代ギリシャ演劇、その代表作としての『オイディプス王』。『オイディプス王』ではライオス殺害の犯人を捜索するオイディプスがその過程において自分の過去のおこないに向き合い、自身が何者かを知ることになる。『芸術家入門』では、芸術家になりたいと模索する主人公の男が、その過程でやはり自分自身の過去のおこないに向き合うことになります。
こういう劇で、どういう答えが提示されるのか。終盤になって、劇ははっきり現実とは断言できない領域に入っていきますが、たぶん以下のような感じです。現在パート。行き詰まっていた男は、過去と向き合い、とにもかくにも作品を完成させる。かつて苦し紛れの出まかせにパトロンに語ってみせたとおりの、数メートルはある巨大な像。美大パート。それぞれいろんなことを抱えた学生たちは、合宿で巨大な像を完成させる。古代ギリシャのパート。女神像の威光むなしく、攻撃にやってきた隣国の石礫が降り注ぐ。
それから「芸術家入門」パート。「芸術家」への指南役である女性は、主人公の男に誰かを殺すことを迫る(このへん、微妙~に『ピピン』っぽさもありますね)。男の作品が完成することと、男が彼女にとっての「芸術家」として完成することは別のことになっています。「芸術家」たるもの、ひとの一人も殺さねばならない。迫られた男は、ナイフで自分を刺します。そのあと、像の前で男と指南役の女性のあいだで短い会話が交わされ、像の背中の翼が羽ばたき、劇は終わります。
文章では「像」としか書けないんですが、劇場の大きさに比してほんとにでっかい像です。開演前には骨組みだけだったものが、劇の終わりには巨大な像として完成する。しかも、上に書いた劇がアクティング・エリアで演じられるあいだ、その横、つまり舞台スペースの端では常に誰かが何か作業をしている。像のパーツを作っているんです。いっぽう、(このへんからアフタートークの内容を参照して書きます)アフタートークで喜安さんが言っていたとおり、演劇は時間の芸術でもある。2時間の公演なら2時間、2時間半の公演なら2時間半、俳優と観客が時間の経過を共有する。その経過の内に演劇の上演がある。ということは『芸術家入門』では、劇という虚構においてなにごとかが演じられ結末にたどりつくというプロセスと、劇場という現実の空間で巨像が制作され完成するというプロセスが重ねられている。
上に結末部分をまとめて書きましたが、私の記憶力と文章力の問題だけじゃなくて、よくわからないんですよね。そういうふうに作ってある。ただ、演じられて、終わったことは確か。演劇の上演が完成した。巨大な像も。この劇ではそっちのほうが大事になってくる。
演劇では、「何か」が演じられているだけでなく、まず何かが「演じられている」。このへんもアフタートークで触れられていました。後者を強調して示す仕掛けとして『芸術家入門』では、一人の���優が複数の役を演じるという演出手法も使われています。たとえば、美大パートのあの人が、古代ギリシャのパートではまた別の人を演じるというふうに。しかも、あるキャラクターが「次の役をやらないといけないから」みたいなことを言いながら退場したりする。一人が複数の役を演じることは隠されていない。むしろはっきり伝えられている。ある役を演じることで虚構を生み出すという結果よりも、演じているというプロセスのほうを見せる。
「作られた、そして完成した」ということを何より雄弁に語るのが、最後に劇場にそびえたつ像なんだろうと思います。何度も書きますがほんとにでかいんです。私が最前列=傾斜のある客席の一番低いところで見ていたせいもあるかもしれませんが。で、その大きい像を上演中に舞台のど真ん中で組みあげるので、お芝居として見ると多少もたつくんですよね。リハーサルが繰り返され、遅滞なく進んでいく、上演の流れの一部としての巨像制作ではなく、その場で大勢が協力して取りかかる作業としての巨像制作。意図していないとしても、このもたつきも「いま・作っている」というプロセスを観客に意識付けていくことになる。とにかく作られている。その過程を見ている。完成を見る。
劇中では、美大の講義として、古代ギリシャ~ローマには「芸術家」がいなかったという話が出てきます。ざっくりいうと、芸術家ではなく手先の器用な人々や職人がいた。いま博物館・美術館に所蔵されているのも、芸術家ではなく職人の制作物だったというような話です。これも、「誰か」つまり芸術家と称されるような何者かが作ったかどうかではなく、誰かが「作った」ものであることのほうに目を向けるエピソード。それから、「何が」、たとえば芸術と称されるに値するような何かとして作られたのかどうかよりも、何かが「作られた」ということのほうに注目するエピソードでもある。
作品制作に行き詰まっていた主人公の男は、なにはともあれ作品を完成させる。それが満足のいく作品か、あるいはその作品は芸術かということより、作品が作られたということのほうが大事。そして、彼が作品を作るとき、劇の結末はもたらされる。彼が「芸術家」になれたかどうかの答えはでない。でも、彼が作品を作ったことと、彼が作品を作る人だということが残る。
創作の営みがあり、作品がある。そしてそれは、「芸術/芸術家」というラベルに先立つ。『芸術家入門』はそれをいろんなかたちで取りだしてみせてる劇なのかな~と思いました。こうやって考えていくと、ちらしのコピーのとおり、ここに芸術はない。芸術はないけど、何事かが作られ、そして実際に作られた。実践は芸術に先立つ。この結論を打ち出しているという点で、『芸術家入門』という劇は喜安さんの芸術論にはなっている。それにこの結論は、俳優、声優、脚本家、劇団の作・演・主宰と、メディアと立場をかえてさまざまに活動してきた人にふさわしい主張なのかも。ぜんぜん知らないので印象としてしか言えませんが。
ここで『芸術家入門』の感想は終わりなんですけど、置鮎さん略の一環なのでそっちについても書いておくと、「『芸術家入門』は演劇してるな~~!!」と思いました。私がふだん見るタイプの演劇ではないですけど、私が知ってるタイプの演劇ではある。ふりをする。身体と言語を用いて何事かを語る。演劇であるということと向き合う。利用する。たとえ舞台上に巨大な像を作るとしても、テーマに即した必然性がその像をそこに存在させている。ひるがえって思い返すと、ヘロQはやっぱりスペクタクルだな…(知ってた…)。
あと、ついでにもうひとつ。いまわたしたちが考える「芸術」観の成立については『芸術の逆説―近代美学の成立』(小田部胤久、東京大学出版会、2001年)、ある作品がどう「芸術」に列せられるか=何が作品をアートにするのかについては『アート・ワールド』(ハワード・S・ベッカー、慶應義塾大学出版会、2016年)や『アートとは何か:芸術の存在論と目的論』(アーサー・C・ダント、人文書院、2018年)など、わたしたちには書物と2,500年にいたる思考の蓄積があるわけです。繁華街のあやしい看板をくぐる前に! でも、それが主人公の男に役立つかどうかはまた別の話なんですよね。美大パートでは、制作を続けるか理論に移るかという話がでてくる。理論に移れば、ここに挙げたような本を入口に、劇で主人公がたどったのとは別のルートで「芸術とは何か」「芸術家とは何か」を模索することもできる。でも男のように実践を志すなら、どこかで実践に身を投じないといけない。答えのない、実践という営みに。劇の最後の最後の男の台詞も、実践という営みの答えのなさ、終わりのなさに言及しています。
作品は完成するけど、実践に終わりはない。だとしたら、作品が完成することさえ、実践という長いプロセスの一部にすぎない。『芸術家入門』の巨像は、頭がないままで完成とされる。完成と未完成のはざまのイメージです。その像が上演中に作られ、そびえ立ちながら、終演後には次の上演のために崩され、また作られていく。いちどの上演の完成を越えて、巨像制作も公演も、演劇の実践も続く。やっぱり、実践が何にも先立つっていうことについてのお芝居だったんだろうと思います。
たまたま観に行っただけですが、それがこの作品でよかったな。そんな観劇でした。
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美大の講義の話のあとに入れようと思った文章なんですが、構成的にうまく流れなかったので、註がわりにここに置いときます。
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これと対照的なエピソードとして、男にセクハラをされたという女子学生が訪ねてくる場面があります。男は彼女にヌードモデルを頼んだ。でも彼はモデルを作品制作につなげられなかった。ということは男は彼女のヌードを眺めていただけ。女性にとっては脱ぎ損、見られ損。それでセクハラを訴えにくる。では、作品を作れていたらそれはセクハラではなかったのか?チープなセクハラ批判批判と解釈することも可能な場面ですが、おそらく男の立場を浮き彫りにするために置かれている。女性の裸を眺めるという行為は、芸術につながれば許容され、芸術につながらなければ許容されないのか?ひとりの男がいるとして、何をすれば彼は芸術家になるのか?(どんなとき、彼は芸術家でなくなるのか?) 裸を眺めるという行為なり男という存在なりについての評価が、作品や芸術が介在することで変わる。いずれにしろ、とにかく作らなければはじまらない。
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3回無視される女
一柳 みちる(攻め)
二階堂 幸司(受け)
志水 絵梨(みちるのセフレ)
岸田 亨(みちるの後輩)
見ると狂う動画があるんですよ。
VHSで、や。誰かがUSBにデータ落としたのが出回ってるんで今はVHSじゃないンスけど。てか昔VHSのことみんなビデオビデオっていってましたよねエ。それが今じゃVHSVHSって言ってて訳わかんなくないすか? 何の略だよみたいな。え? ビデオ・ホーム・システムっていうんだ。へー、先輩物知りっすね。
で。内容なんですけど。よくわかんねえですよ。視聴者投稿心霊ビデオ。カッコ、ガセ、カッコ閉じ。みたいな。
ビデオカメラで心霊スポットっぽい廃墟を撮ってるんです。撮影者は男で、ほかに男二人、女二人がちらちら写ってて。みんなでワーワーキャーキャーみたいな。軽いノリの心霊スポットめぐりを動画に撮りましたーって感じ。そんで、もともとホテルの廃墟らしいんですけど地下があって。動画の最後に地下いくんですけど、そこに女が立ってるんです。別にヘンな女じゃないんです。白い服に長い黒髪、って感じじゃなくて、普通の服装の、普通の髪型の、女。黄色のワンピースに、茶髪らしいっす。フツーでしょ。ソイツが中心に立ってて、でも誰も気づかないんですよね。一人の女が、黄色いワンピースの女にぶつかるんですよ。どっちの女もぶつかった感じで体が跳ねるんですけど、ふたりとも反応しない。確かにぶつかった様子が写ってるのに、女はぶつかってないみたいな素振りなんです。そんでみんな「なんにもないねー」みたいな。「帰ろっかー」みたいなね。
で、みんなぞろぞろ帰ってく。撮影者が階段に背向けて撮ってるらしくて、四人ともカメラのほうに向かって歩いてきて左右にフェードアウトしてく。んで、残ったのは件の「見えない女」だけなんですけど、その女が歩いてくるんですよ、さっきのやつらと同じく。でもほかと違うのが、階段に向かって歩いてくるってよりもカメラに向かって歩いてくる感じでまっすぐこっちにくる。どんどんどんどん近づいてきて、ちょっと背伸びしてカメラに顔を近づけてきたんです。そんで云うんですって。
「無視したの2回目だよ。3回目はないから」
後ろから他の男の「オイー。帰んぞー」って声がして。女がすっと階段のほうに歩いてく。撮影してる男も振り返って階段上る。その間、前を歩いてる女の白いパンプスが写ってるんですって。でもやっぱり誰も何も言わない。
そのまま雑談しつつ車に乗り込むんですけど、黄色いワンピースの女も当然のように車にいるんです。当然のように他のやつ等は無視し続けてる。いないみたいに。
そんで暫く走ってたら、黄色い女が「��ったア」っていうんです。車にって意味だと思うんですけど。でもみんな反応しないじゃないですか、女は「酔った酔った酔った! ねえ! とめてよ!」ってでかい声で言う。でもみんな無視してケータイ弄ったりしてる。
んで、ひとりの男が言うんです、「このまま飛ばしてカラオケで朝明かしちゃおうぜ」って。
みんな「おっいいねー」みたいな。撮影者は助手席に乗ってて、カメラを前に向けてたんですけど、「いいねいいね」みたいなこと��いながら振り返って後部座席を写す。
そしたらその黄色いワンピースの女が、待ってたみたいに身を乗り出してて、カメラ掴んで引き寄せながら叫ぶんスよ、すごい形相なんすよ。
「三回目はないって言ったよね!!」
それで、急に映像が終わるって言う。
「訳わかんないっすよね。でもこれ見ると狂うっていう」
「へえ。で、お前それ見たの?」
「せんぱ~い。おれ狂ってるように見えますウ?」
「お前はいっつもおかしいよ」
みちるがそういうと、後輩の岸田はケラケラ笑った。お願い事があるという話で、わざわざ仕事終わり、真っ直ぐ待ち合わせ場所に来たのだが、一向に相談事とやらを言い出す様子はなく、唐突に怪談話を始めたのだから呆れる。会って開口一番に「相談に乗ってもらうんだから奢りますよ」といって入った店も、安価なドー���ツ屋だった。舐められているのだといわれればそうなのだが、この男はすべての人間平等にこのような振る舞いをするので、付き合うならいちいち怒るほうが疲れる。
「用事あるっていうから来たんだよ。怪談話に付き合わされるンなら帰る」
カップの縁に付いた飲み跡を親指の腹で拭いながら話を促す。
「雑談して空気を和らげようと思って、」
「疲れてんだよ。ていうかそんな気ィ遣いながらされる頼みごとなんて禄なもんじゃねえだろ。さっさと断ってやるから云え」
岸田は相変わらず軽佻な笑みを浮かべて、口を無理に動かすような仕草をした。それから何事もないように笑う。
「先輩、相も変わらず欲しがりさんですね」
「帰る」
「わー! すみませんすみません。先輩しかももう頼めるひといないんです! 助けて下さい」
立ち上がろうと机に手を突いたみちるの手首を掴んで、岸田は哀願した。上目に視線を遣して許しを請うように頭を下げる。あげた腰を椅子に下ろすと手首は開放され、岸田も幾分かは真面目な顔になって椅子に座りなおした。
「うちの大学にもオカ研あるじゃないスか」
「ああ。うん」
「あすこにいる一年のヒラサカってヤツが、あるビデオを探してるってネットで滅茶苦茶呼びかけてるんすよ。しかも賞金付き」
そういうと岸田はスマホを取り出してSNSを開いて見せてくる。比良坂というアカウントのプロフィール欄には、大学名とオカルト研究会所属であるという簡素な自己紹介のみだった。下の投稿文を見てみると、
『三回無視する動画のデータをお持ちの方はリプかDMください。お礼金出します』
『見ると呪われる動画のデータはリプかDMください。お礼金5万出します』
『心霊スポットめぐりしている動画でそれを見ると呪われると噂の動画のデータをお持ちの方連絡ください。お礼金10万出します』
『黄色のワンピース 茶髪 三回無視 女 見ると呪われる 動画データ20万買取』
という内容が羅列している。お礼金とやらは、投稿されるたびにどんどん値上がりして行き、直近の投稿では、50万にまで跳ね上がっている。20万付近になると反応も増えているが、投稿が絶えないところ見ると、いまだ求めているデータを手に入れられていないようだった。
日付をみるとここ最近投稿されたものばかりだが、何せ投稿量が多い。何気なくそれらを下にスクロールしていくと、岸田がアッと声を上げてそれを止めた。
「それで、ここです。ここ」
示されたところを読む。
『データや情報を頂けるのは有り難いですが、ガセネタやニセデータであることが多いです。中にはそれっぽく撮った動画を送ってくる人もいます。出来の悪い動画に払うお金はありませんが、完成度の高い再現動画であれば、そのデータの購入も検討します。最大で30万払います』
「ね、スゴイでしょ」
「狂ってンな」
みちるは淡白に云った。少なくともみちるには、ただのデータにぽんと30万だの50万だの出せる金はない。金銭感覚の乖離も相まって、比良坂という人物の狂気ぶりが浮き彫りになっている。所詮金持ちの道楽……というには切羽詰った印象を受けるが、それにしても正気の沙汰ではない。放っておけば、礼金の額も百万くらいに伸びそうだ。
「これね、リンク先にいくとホームページに飛ぶんです。ンで、おれがさっき先輩に教えてあげた話はここに載ってるわけっすね。この内容に沿った、完成度の高い動画は30万で買い取ってくれると」
「ああ」
岸田が何をしたいのか判ったみちるは、聊か低くなった声で唸る様に相槌を打った。
「つまりお前はこれの再現動画撮って30万稼ごうって魂胆ね」
「話が早い!」
「俺に協力しろと」
「その通り!」
「断る」
「何でエ?!」
まだ夜というには明るい時間とはいえ、薄暗く、店内も落ち着いて静かな空間となりつつある中で、岸田の絶叫はひときわ目立って響き渡った。みちるは足を蹴って黙らせる。
「んな禄でもねえこと当てにしないで真っ当に稼げ。バイトのシフト増やせよ」
「先輩がそれいうンすか?! おっさんに抱かれて金稼いでる先輩がっ?」
「声がでけえ」
店内が静けさを増したのを感じて岸田の足を二度蹴った。二回目の蹴りは脛にあたり、岸田は顔を臥せって悶絶している。
「すみません、コーヒーもう一杯お願いします」
飲み干したカップにコーヒーを淹れてもらいながら、岸田が回復するのを待つ。店員が厨房に戻るのを待ってから口を開いた。
「俺がおっさんにケツ売ってんのとお前のは違うだろうが」
「どこがスか。寧ろ倫理的にヤベーのは先輩の方っしょ」
「お前が倫理を語るな。明らかに怪しいだろ。あるかも判らん動画に50万だの30万だの出すとか。旨いだけの話があるか」
「金で男子大生抱くおっさんのどこが怪しくないんですか!」
「俺の話はもういいだろ。うるさいな」
岸田は不服そうな顔で居たが、やがてせわしない様子で膝を揺らし始める。トントンと踵が床を叩く音が聞こえる。
「お前そんなに金入用なの?」
「あー……まあ。」
気まずそうにうなずいたあと、岸田は微笑んで右手を上げ、ドアノブを捻る様に手を動かした。
「パチンコ嵌っちゃって」
「バカ、死ね」
「ほんとやばいっす。親の仕送り使い込んででも我慢できなくて友だちにも借金したんスよ。でもこういうときに限って勝てないンだよなあのクソ台がよ、絶対遠隔操作だよヤクザ商売が……や、でもマジで学校とか親にも云うとか云われちゃってそれだけは勘弁じゃないすか! 今すぐ金ほしいんです。足洗うためにも兎に角三十万! 頼みますよ。金借りてるからダチには頼みづらくて」
両手をすり合わせて、殆ど泣くような格好で岸田は頼み込んでくる。みちるは喉につっかえていたため息をまるまる吐き出してから黙ってコーヒーを飲んだ。
「前に教えてやった時、向いてないから止めるって云ってただろ」
「でも先輩あン時大勝ちしてたじゃないスか! んで運だとかいうからおれにも運が来たらあんくらいは行けッかなって。あれくらい当てたらやめようって思ってたのに!」
「お前本当向いてねえな……」
うるさいっすよお、と岸田はとうとう泣いてしまった。たかが三十万されど三十万、学生にとってははるか頭上の大金だろう。岸田もそれなりのバイトと親の仕送りで生活できていたそこそこ裕福な類の学生であったろうが、こういう目に遭えばあっさり沈んでしまうものである。その沼に突き落としたのは自分でもある、と思えば口の中も苦くなるというものだ。
「わかったよ」
「え。」
「その胡散臭い動画づくり手伝ってやるよ。ただしその比良坂とか云う奴がインチキ野郎でも俺を恨むなよ」
「大丈夫っす、そん時は比良坂を恨みます!」
真っ直ぐな正論だった。
「ンで、俺は何すりゃいいの」
「動画に出てくれればいいです。画質悪いビデオカメラ用意して撮るんで顔はそんな見えないと思うけど、イヤなら撮影者の男役でもいいですよ。あと男ひとり、女ひとり声かけてくれないですか。女の子ふたりはこっちで協力してくれる子いるんですけど、それ以外はいなくて」
「お前マジで友だちいねえな」
「先輩よりはいますけどねー。ま。いま大体の奴に金借りたり、金せびられるから遊ぶなって注意喚起回ってるみたいで。セフレと元カノのふたりしか捕まんなかったです」
「嫌なメンツだなあ」
「ふたりとも友だちで仲良いンで無問題ですよ」
「もっと嫌だよ」
みちるの言葉が聞こえないのか、岸田は機嫌よくメッセージアプリを開きながらなにやら操作している。と思っ��いるとテーブルのスマホが震えて、グループに招待されている通知が来た。
「この件は今度からこれで連絡取りましょう。あ、女の子はフリーの子がいいなー。彼女ほしいんで、俺。足洗うにはやっぱ彼女っていうストッパーが必要ですよねー」
ウフフ。と笑う岸田は、メンツを余程地獄の様相にしたいらしい。
「俺とお前穴兄弟になるけどイイのか、それは」
「俺といい��じになったあと、先輩と浮気しないんならオッケーですよ。女の過去とか気にしない性質なんで。つかやっぱ先輩女関係乱れてますね」
お前ほどではない、と否定しようと思ったが、傍から見たらどんぐりの背比べなのでやめた。フリーで、岸田と(いい意味で)相性がよさそうな知り合いを選んでメッセージと岸田の写真を送る。バイトでもしているのか、すぐに既読は付かなかった。スマホを置いて岸田に向き直る。
「メンツは判った。でも勝算あるの? お前映画監督でも動画撮った事もないんだろ。比良坂ってのはそういうオカルト系の舌は肥えてんだろうから、ただ撮るだけじゃ跳ねッ返されると思うんだが」
「あー。大丈夫ッす。賞賛はありますよ」
岸田は得意げな表情で、再びホームページを開いた。動画の説明と思われる、怪談話をスクロールしていくと下に画像が二枚貼られていた。遠目からみれば白黒写真にも見えるが、スケッチのようである。
「これ、動画で写る廃墟の様子らしいんですけどね。こっちが玄関、これが階段下りてすぐの地下。ここの真ん中に女が立ってるっていうんですけどね。」
言葉を一旦区切り、眼を弓なりに細めながら、岸田は笑った。
「ここ。おれの地元にある心霊スポットとそっくりなんすよ。つか、多分同じ。ね。凄くないすか? ここのリプとかみても、そこの話してるやつ誰一人いないんですよ。あすこの心霊ホテル、ありきたりっつーか、そこまで有名じゃないから地元の人間でもないと知らないのかな。でもおれはこの絵みてぴんときましたよ、あ、ここだって。ここで撮ればかなり『リアル』に撮れると思うんですよ! これって勝ちじゃないすか?」
余程自信があるようだ。
「ふうん。ホントなら確かに凄いけど、なんだって平良坂って奴はそこまで詳しく知っててデータ欲しいんだろうな」
「見たことあるけど、データ手元にないってことはよくあることでしょ。曰く付きの動画って、そういう界隈じゃ高く売買されたりしてンじゃないですか? 三十万、五十万出してもヨユーで元取れるような。……マ。ただのオカルト狂いかもしれないけど。でもそんなことどーでもいいじゃないですか? とりあえずおれはこれに賭けたいんで。お願いします!」
「あー、うん。わかったわかった。いつやんの?」
「揃い次第ですかねー。こっちは三人オールオッケーなんで、明日にでもいけますよ」
スマホが震える。さっきのグループチャットに件の女ふたりが参加したようだ。
「じゃあこっちの予定決まったら連絡するよ」
「お願いします。マジ、俺らは一時間後集合ってなっても即行けるンで。よろしくです」
そういって岸田は、冷え切ったコーヒーを一気に飲み干すと立ち上がった。
「すみません、おれこれからバイトなんで失礼します」
岸田の言葉に被さるようにしてスマホが鳴る。先ほど声をかけた知り合いからの電話だったので、スマホを取り上げながら岸田に片手を上げる。岸田が出口に歩いていくのを眺めながら出ると、開口一番に「浮気ってどっから浮気?」と来た。
「そりゃあもう、手エ握るのも駄目だよ」
『フーン。みちるに抱かれるのは浮気なわけでしょ。逆はどうよ』
「逆?」
『あたしがみちる抱くのは浮気なわけ?』
絵梨はそういうと笑った。冗談のような口ぶりだが、それが本気で云っているというのは短い付き合いでも解る事だった。
「当たり前だろ。どういう理屈だよ」
『そっかなー。あたしのは使ってないわけよ。アンタのもね。てか気持ちよくないし。なんか犬と遊んでる気分じゃん』
「ひとを犬扱いするなって」
似たようなもん、と笑うので、電話を切ってやろうかと思う。一度お遊びで逆をさせたのがまずかったのか、それ以来時折手癖の悪い男みたいに「ヤらせてよ」とくる。悪ふざけでもなく、この女の加虐性に火を点けてしまったあの夜を後悔し続けている。
「何回も云ってるけど、腰の振り方も分かんねえ女に抱かれる筋合いはないよ。金くれるンでもないのに」
「ま。金払ってまでみちる甚振ってもしょーがないか。岸田くんってフリーなのマジ? 可愛い顔してるけど」
「元カノと連絡とってるタイプ。セフレ一人。パチンコで大損して知り合いに借金こさえて泣いてる。ストッパーになる彼女が欲しいって。どうよ」
「いい感じ。バカなのが好きだかンね。みちるくん手放すのは惜しいけど、可愛い彼氏できんならしょうがないかな。例の動画撮影だっけ? あたし暫く空いてっからいつでも連絡してよ。そんじゃあね」
絵梨は一方的に捲し立てると、そのまま電話を切った。いつもの事なので気にすることでもない。後ろから駅の音が聞こえていたので、電車に乗る寸前だったのだろう。みちるはスマホを仕舞うとそのまま立ち上がって出口に向かった。
あとひとり、男が必要だが大方見当は付けている。問題は、絵梨の様に協力的ではないので、どう引っ張り出すかと云うところである。
****
「全然話と違うんだけど」
「ンだよ。飯食ったろ」
「それだけのつもりだった!」
「俺はそんなつもりなかったよ。お前も聞いてこなかったじゃん」
あの日から、早い方がいいという事で次の日の夜に件の心霊ホテルとやらに向かうことにしたが、騙し討ちと云う形で引っ張り込んだ男の機嫌が思いのほか悪かったので、みちるは駅に着くまでに宥められるかどうかを考えていた。幼馴染、現・同居人の幸司は首辺りまで肌を赤くさせながら此方を覗き込んできた。
「なあ。僕は「ご飯外で食べてくるの?」って意味で聞いたんだよ。そしたら君はうんっていっただろ」
「ああ。でも俺はそのあと用事があるって意味も含めて、飯外で食ってくるって云ったんだぜ」
「まあ、それは解るよ。多少のすれ違いはね。でも、それじゃあそこで解散して良いじゃんか、なんで僕も行くんだよ」
幸司は口に手を遣りながら云った。電車内での声量に気を付けているつもりだろうが、その配慮が意味を為しているとは云い難い。少し離れた位置にいる絵梨が声の大きさに、窺うようにこちらを見ている。
「丁度男手が足りなかったんだよ」
「ほら! 最初から騙して連れてくつもりだったんだろ」
色の薄い眦が吊り上がるのに比例して声が跳ね上がる。腕を掴んで落ち着かせようと伸ばした手は跳ね除けられた。
「云ってお前が来るか?」
「そうじゃなくてちゃんと説明するべきだって云ってンだよ。来てほしいなら僕を納得させろよ。君はいっつも自分勝手で順序を守らないんだ。僕がそういうの一番嫌いだって知ってる癖に!」
「ねえ。喧嘩するなら一回降りようよ。二人とも声おおきいって」
近づいてきた絵梨が耐えかねたようにそう云った。その声に幸司は驚いたように振り返って、肩より下にある絵梨を見て恥じ入った様に脣を噛む。
「ごめん」
「まーみちるが悪いと思うけど。幸司くんも付いて来たってことは本気で嫌なわけじゃないんでしょ、みちるに怒るのは当然としても後でいいんじゃない?」
それは、と口を開いてから、幸司は諦めたように首を傾げる。幸司が本気で嫌がって怒っているというのは、みちるが一番わかっていた。彼は確かに無理やり電車に乗せられたようなものだ。然し、みちるが幸司の腕を掴んで無理やり歩かせたとか、脅して付いてこさせたというわけではないので、傍目からは幸司が進んで付いて来たようにも見えてしまう。
要は、彼の生来からの自己犠牲を伴うお人好しな性格や、奉仕精神が形成した、彼の流されやすい性格を、みちるが十分理解した上で利用したのだ。そうすれば、自分で付いて来たんだろ、と云い包めてしまえるというのも計算済みで。
みちるは絵梨に手で制して、車内の端、暫くは開閉されない扉の前まで幸司を引っ張る。顔を寄せて謝ると、幸司の顔からは幾分か怒りの色は抜けて、太い眉は困った様に下がっていた。
「謝ってほしい訳じゃないよ」
「解ってる。でも、本当に悪かった。こうすればお前は勝手に帰らないで付いてきてくれるっていうのも分かってやった。これからやろうとしてるのが、お前が凄く嫌がるだろうなってことも知ってた。でも本当にお前しかいなかったんだよ。急に今日に決まって頼めるやつもいないし、丁度お前が空いてるみたいだったしさ」
「良くない事だと思うよ。後輩くんを助けるのもね。自分で蒔いた種じゃないか」
「俺が教えたのが悪かったんだよ。あんな悪ハマリするような奴だって見抜けなくて連れてったんだ。種を蒔いたのがのがアイツでも、水かけて肥料ぶっかけたのは俺みたいなもんだぜ。突き放して切羽詰まったアイツが下手なところに金借りに行ってみろよ。ボヤが延焼するだろ。尻拭いにお前を付き合わせるのは本当に申し訳ないって、」
「もういいよ。僕が怒ってるのはそれだけじゃないって云うのも判ってるよね」
顎を引いて身を起こした幸司は、そのまま扉に寄りかかって此方を見る。多分、見当違いなことをいったら次の駅で降りて行ってしまうだろう。
「騙して、ちゃんと説明しなくて、ごめん」
「うん、」
「何の為に何をするか説明してから、お前の同意を得るべきだった。せめて納得させてから出かける��きだった。順番間違ってた」
「そうだよね。僕も君もずっと家に居たのに、何も話さないで出がけに急に話持ち出して、騙し討ちだったもんね。めんどくさかったんだろ。出かける前にこんな問答したくないもんな」
「そうだな、そう思ってああしたよ」
幸司は目を伏せた。睫毛の間から見える黒目が少し濡れているように見えた。
「頼むから少し誠実になってくれよ。君の性格は解ってるつもりだけど、今回みたいにわかってて不誠実な方法を取るのはいい加減やめてよ。後で揉めるのなんて判りきってるじゃないか。てきとうに扱われるみたいで、不愉快だ」
「判った」
頷くと、幸司はようやく顏を上げて、脣の両端を引き上げた。でも目線は斜め下、肩辺りに落ちている。理解はしてくれたが、赦してはくれていないということだ。
「うん。じゃあ仲直りしよう」
そういうと幸司はみちるの肩を掴んで引き寄せる。長い腕が背中に回って、肩に頬が乗る。筋肉で張り広くなった背を軽く撫でると、熱い身体は離れていく。
「先に絵梨さんの処戻ってて。僕はもう少し頭冷やしてからいく」
戻ると絵梨はスマホから目を離して怪訝な顔をしていた。
「何あれ」
「もう納得してくれたから大丈夫だよ。悪かった」
「じゃなくてさ。いっつもあれやってんの? 抱きしめるやつ」
絵梨はわざわざ両手を広げて、空気を抱きしめるような仕草をしたあと、脣を鳴らした。キスはしてないだろ、と反論してから顔を逸らす。
「いいだろ、別に」
「悪いなんて云ってねーじゃん。仲いいね」
おもしろい玩具を見つけたような顏で絵梨が笑うので、みちるは向きなおって制した。
「頼むから幸司をいじんなよ。俺にやるみたいなやつ。アイツは俺らと違うから、いろいろ。繊細だから、マジで。頼むぜ」
「親かよ」
深刻そうに云うみちるの言葉を、冗談だと捉えたのか絵梨が笑う。振り返って幸司が此方に意識を向けていないのを確認した後、絵梨に向きなおって顔を近づけた。
「マジで云ってんの。あのな、アイツ婚前交渉はしない主義だぜ。俺の云ってる意味わかるか?」
「はあ?」
面を喰らった顏で絵梨は顔を突き出してきた。
「マジで?」
小さく何回も頷くと、絵梨は思いついたように両手を合わせ、祈るような仕草をして云った。
「あー、こっち系の人?」
「違う。や、アイツのばあさんはそう。でもそれの影響で、あいつ自身は別に何も信仰してないけど、そういう道徳で生きてンの」
「あーっそ。まーそういうことなら、いつものノリでいじったらヤバいかもね、たしかに」
「理解が早くて助かるよ。弄るんなら岸田にしろ。あ、でも幸司の前ではやるなよ。泡拭いて倒れられたら困る」
呆れたように絵梨がスマホを振ると、ストラップが揺れる。先についたウサギのマスコットが顔にあたりそうだったので、みちるは顔を引いた。
「じゃあ、アンタが身体で金稼いでンのも、あたしみたいな(幸司君からしたら)ヤベーお友だちがいるのも知らない訳か」
「まあぼんやり分かってんじゃねえの。俺の事知ってるやつはアイツに云うだろ、そんな奴とルームシェアして大丈夫? みたいな。俺と違って友だちに恵まれてるからな、アイツ。でも、まあ、寛大なんだよ。やさしいから、相容れない部分は目エ瞑ってくれてんだろ」
「へー。まあ、毎回あんたみたいな不誠実の塊がアホやるたびにあんな風に怒ってくれんならマジで良い奴だね。フツー縁切るよ」
毎回縁切られるかな、とは思っている、とみちるは密かに覚悟している。性格を直すにも惰性が先んじて同じことになるのだが、今回は本当に危なかった。本気で幸司は怒っていたし、泣きそうになっていたので、そろそろ本気で誠実さという者を身につけなくてはいけないかもしれない。
「つかそんな箱入りの男をこんな緩い集まりに引っ張りこんでんなよ、」
至極正論だ。
「知ってんだろ、男の友だちなんて他にいねえよ」
正論に現実をぶつけると絵梨は閉口した。呆れているとも云う。
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Page 74 : コミュニケーション
漆黒を残してビルディング群の向こう側へと太陽は完全に去っていった。頭上から道を照らす人口の灯火はちかちかと不規則的な点滅運動を繰り返していて、どこか頼りない。管理が行き届いてないんだと真弥は言う。人間に放っておかれた道具はゆっくりと時間をかけて力を失い、朽ち果てていくだけ。無数の窓から放たれている室内灯の大群や派手なネオンの広告が目に焼き付く情景を思い出すと、華美とは正反対の枯れた静寂に違和感を抱かざるを得なかった。けれど、そういうものなのかもしれない。クロはひとり自分に納得させる。どんな場合でも何かしらの死角がある。手の届かない隙間には埃がたまっていくものだ。首都も例外ではない。きっと、それだけの話。 アパートから歩いてすぐ辿り着く場所にピザを売っている店がある。真弥がクロと圭を引きつれてやってきたのは、そこだ。 セントラル北区のカラーである住宅区らしく道沿いを埋めるようにマンションやアパートが立ち並ぶ中で、息を潜めてこじんまりと構えている小店だったが、扉を開いてみれば彼等と同じく夕食を買いに来ている客で店の中は賑わっていた。闇夜の中で煌々と輝く店内はそこだけ陽だまりになっているかのようで、食欲を刺激する濃厚なピザの香りと雑多な明るい声で満たされていた。きらきらと輝いているような温かな照明が闇夜に慣れた目には眩しく焼き付くようだ。 一ホール頼むことも勿論できるようだが、木でできた見世棚に並べられたカラフルなピザはそれぞれ切り分けられていて、透明なケースで蓋がされている。好きなものを選んでトレイに乗せていく形式が基本らしい。奢るから遠慮しないで食べなさい育ち盛りの青少年。真弥があっけらかんとそう言い放って自由に泳がされた青少年二名。圭が目を輝かせピザに釘付けになっている横で、クロは目を右往左往と動かして圭についていっているような状態だった。 「なあなあ、トマトならどれがいいかな! やっぱりこのマルゲリータかなあ、この店で二番目に人気だって!」 「結論ついてるならそれにすればいいだろ」 「いや、でも、ハムとかチキンとか大量に乗ってるあれも気になるんだよ」 「もうどっちも買えば? どうせ一枚だけのつもり、ないんだろ」 明らかに興味が無さそうな受け答えはあてにならない。ちゃんと考えてくれよ、と口を尖らせながら、圭はトマトベースのものが並んだ一角を前に悶々と悩む。その最中、肩を落として溜息をついたクロの様子に視線が動く。 「クロは何にしようとしてんの?」 一度自分の迷いを棚に上げて圭が尋ねる。 「いや、別に、俺は何でもいいんだけど」 「けど?」 「……大したことじゃないから」 誤魔化そうとするクロを前に、圭の眉間に皺が寄る。目の前で淀んだ言い草をされるのを圭は特に好まない。 「なんだよ気になるじゃん。大したことないなら別に言ったって問題ないだろ!」 ああ、面倒臭い追求だ。無意味に隠そうとすればすぐに食いついてくる。圭はそんな奴だった。クロが大きな溜息を吐いた瞬間、ピザをとるヘラが目の前に飛び込んできて反射的に身が震えてしまった。 「旨いもんの前でむやみやたらに溜息を吐かない! 飯に失礼だ!」 鋭い指摘。視線を横にずらしていくと、クロをまっすぐ睨みつけている圭の顔にぶつかった。クロはまた大きく息を吐きそうになったが、寸のところで止める。 「……あいつは」 「あいつ?」 「何が、好きだったっけ、って思ってただけ」 クロが何のことを指してるのか数秒思考して、思い至る節にぶつかった。その瞬間、圭の顔がゆるまっていく。 ああ、なるほど。それはつまり。 「ラーナーの喜ぶ顔が見たいけどそういえばラーナーの好みをよく分かっていないことに今ようやく気がついて焦ってどうしようどれなら好きなんだろう喜んでくれるんだろう、というやつか!」 「そこまでは思ってない」 忙しなく動いた舌のなんと軽やかなことだろうか、クロは低い声で応戦する。 「またまたあ、お前も可愛いとこあるじゃん」 「そういうのじゃなくて、だから……ああ、もういいや」 「そういうのってなんだよー、どういうこと俺が思ったって?」 「もういいって言っただろ!」 にやけた表情で顔を覗き込んでくる圭から逃げるように、クロはその場から足早に立ち去ろうとする。からかう素振りが気に入らなくて、無性に腹立たしい。同時に急に顔が熱くなってきていて、胸の奥が引っかかれているようだった。 ごめんごめん、と圭が笑いながらクロを追いかける。謝罪の言葉は上っ面だけで、反省の欠片も見えない。気に入った玩具でも見つけたような笑い方。全く、こっちは真剣だというのに。先程の圭に対する自身の態度は棚に上げ、クロは圭を見ないようにわざとらしく視線を上げて周りを見渡す。相手が低身長だというのはこういう時に便利だった。 そこで、多忙に声をあげながら店員が手を動かしているレジカウンターの隣に立つ真弥の姿を視界に入れた。 真弥はよく足を運んでいる常連らしく、一人他の店員とは違うデザインの制服を着た――安易な発想だが、店主だろうか――中年男性と談笑している様子が認められた。一体どんな内容の話題を膨らませているのか、騒がしい店内では聞きとることができない。けれど真弥の表情は非常に和やかなもので、相手も同様であった。真弥の持っているプレートに男性が破顔しながらどんどんピザを乗せていって、真弥は少し困ったような素振りを見せながら、けれど笑っている。その日常の切れ端を垣間見ただけでも、打ち解けた仲であることは容易に想像できた。そういう空気を纏っていた。森の中に生える一本の木のように、なんの違和感なく空気に馴染んでいる真弥の姿は、クロの目にはやたらと印象的に焼き付く。意識して見つめていると、不意に自分が置き去りにされているような感覚に襲われた。ざわめきの中で浮き彫りになる、自分というかたち。耳から遠のいていく笑い声。 腕から力が無くなっていく最中、突然背中を叩かれる。衝撃は決して強いものではなかったが、驚きが全ての思考をはねとばした。濃厚なチーズの香りが鼻孔に同時に蘇ってくる。彼の中で消えていた周囲の声が息を吹き返して一気に降り注ぐ。 「なにぼーっとしてんだよ。人の話聞いてんのか!」 真弥に気がとられて、すっかり圭のことは頭から飛んでしまっていた。怒っているようだが、隣にいたにも関わらず圭が発していたらしい言葉をどうしても思い出すことができない。 「聞いてない」 「そういうところは正直だな、まったく……」 諦めたように圭は肩を落とし、再びクロを見上げる。 「俺はやっぱり無難なのは人気なものかなって思うんだけど」 何が、と尋ねようとしたところで、ラーナーに何を買って帰るべきか悩んでいたことを思い出した。圭は店が提示している紹介タグを頼りに候補を挙げていく。自分が他のことに気を取られている間に真面目に考えてくれていたのだと気付くと、申し訳無さが沸き上がってくる。 「ほんとなんか、知らないわけ。なんだかんだ二ヶ月くらいは一緒にいるんだろ?」 「うーん……」 クロの視線は自然と落ちる。圭からは呆れたように苦笑が漏れた。 「お前さ、笹波白とか俺達の仲間とか黒の団の情報とか集めるのもいいけど、目の前の情報を手に入れる方が先なんじゃね? ほんと他人に興味無いのな」 「うるさいな」 声は濁っている。裏表の無い言葉は軽くとも時折容赦なく的を射るから、油断していると身構える前に胸に突き刺さってくる。相手に悪気はなくても。つまり、図星だった。同じようなことをアランにも言われたことを思い出す。他人のことを知ろうとしていない、わかっていないと激しい怒声で揺さぶられた道中の記憶が脳裏にちらつく。 他人に対して自分の姿勢に問題があるのは間違いないのだろう。気持ちを読み取ろうとする意欲も欠けている。 「あいつ、なんでも食べるから。……分かりづらい」 「大事だぜ、コムニケーション」 聞き間違いか、圭の発した単語に違和感を抱いたが、クロには言い返す言葉もない。 なんでこんな話を圭としてるのだろう。情けなさが湧き上がってきて、クロは肩を落とす。ラーナーが倒れてアランに連絡したときもそうだ。彼女が関わると、自分ひとりでは匙を投げてしまう。答えを求めるように誰かに縋る。いつの間に、自分と誰かを繋げている糸がこんなに強く纏わるようになったのだろう。 「じゃあ、逆に嫌いなものとか」 「嫌いなもの」 反復すると、脳内の端っこで何かがちらつく。引っかかりを手繰りよせると、自然と眉間に皺が寄る。何かが、思い出せそうだ。その正体を判明させようと思考を回転させる。頬を綻ばせて食べている表情で、何かを言っていた。会話をしていた。そう遠い過去のことではない。昼下がりの、たくさんの人の声とジャズ音楽。サンドイッチ。穴を掘っていくように外側から記憶の断片を繋いでいくと、思い至る節に突き当たる。思いついた瞬間閉じ込んでいた心に涼風が吹きこんだ。 「ピーマンが駄目だって言ってた」 「お、有用。じゃあピーマンが乗ってそうなやつはやめよう。……って、そんなに無さそうだけど」 からからと笑うと、つられてクロの口元も僅かに緩む。 夜はますます深まっていく。店主との談話を終わらせてやってきた真弥に急かされて、夕食を選ぶのにそれからそう時間はかからなかった。 結局、無難に人気なものを数種と、ウォルタ出身ということで海鮮物は好きなのではないかというふと思いついたクロの安直な予想のもとシーフードのピザを選んで、ラーナーへの土産となったのだった。
*
「あそこのピザは美味しいんだ。店長もいい人だし。いつ行っても明るくてね」 軽い足取り、軽い口ぶりで帰路を辿る。道を歩く男三人の手には平たい箱の入った袋がそれぞれ入っていた。相変わらずふらふらと点滅している外灯の下を潜り抜けていく。 「近所に旨い食べ物屋があるっていうのは幸せだと思わないか。あのピザ屋があるから今のアパートに定住しているようなものだよ」 隣を歩くクロは目線を上げる。 まるであの店が真弥とこの地を結び留めている綱であるかのような物言いだとクロには聞こえた。勘繰りすぎなのだろうか。そうでなければ今すぐにでもここを出て行くのに、と言葉にならない部分が含んでいるかのようだった。けれど、生活に大きな不満を抱えているようには見えない。彼は、彼なりの良き生活を手に入れているのではないのだろうか。首都に溶け込んで、そんな真弥を見ていると、クロの心にちくりと針を刺したような痛みが走る。どこかで感じたことのある痛みだ、すぐに、リコリスでルーク家に優しく包まれている圭の姿が頭に浮かび上がってきた。その本能的な感覚が、感情が、一体何を示しているのか。自分のことなのにひどくぼんやりしている。 そういうことばかりだ。自分のことも、他人のことも、よくわからない。真弥のことも、よくわからない。 「意外でした」 「何が?」 振り返った真弥の表情は不思議そうに笑っている。 「いや……普通に生活してるところというか、馴染んでいるところが」 「ああ、わかる。クロとはちょっと違った雰囲気で、一匹狼でいそうだって思ってた!」 「何それ���俺そんなに孤独なイメージあったの?」 真弥は苦笑を浮かべる。 「そういうつもりじゃないですけど。なんていうか」考えを整理するように一呼吸を置いてから、クロは再び口を開く。「普通の人みたいだって」 「そう見える?」 試すように彼は改めて問いかける。 濃厚に凝縮された熱を閉じ込めた袋が、歩く度にがさがさと音を立てる。静寂に浸った夜の中ではやたらと耳を突く音だった。 「お前等にそう見えたなら、及第点かな」 返答を待たずに言い放ち、真弥は満足そうな表情を浮かべた。 「クロや圭はどうしてたわけ。あの時に解散したはずだけど、なんでまた一緒にいるんだろうなって思ってたんだよね。二人ともずっと旅してるのか?」 「違う違う。俺はついこないだからクロに合流したんだ。それまでは、リコリスに」 即座の圭の返答に、真弥がへえと声をあげた。 「リコリス? ……っていうと、どこだっけ。アーレイスだよな」 「わかんないのかよ、ひでえな。アーレイスだよ。李国との国境に沿って、山脈があるだろ。そのあたり」 「大雑把すぎてあんまり場所がぴんとこないよ。まあ、それはまた辺鄙な所に」 「山奥だから分からなくたってしょうがないけどさ。あまりに田舎だから、ずっといても黒の団の影一つなかったんだ」 「はは、それはいいや」 「だろ? いいとこなんだ」 自慢げに胸を張る圭。無意識に零れる無邪気な笑顔。 その裏側にある淋しさは見せないように振る舞っている。 真弥はふと口を開ける。でも、と何かを言おうとしてしかし引っ込めた。尋ねようとして野暮��問いだと気が付いたのだ。ならば今どうしてここに。昔に比べて明るくなった性格、彼をそうさせた環境。僅かな会話からも感じ取れる、圭がリコリスに抱いている愛情。平穏な場所を飛び出した理由は、どうせ、黒の団に繋がっていく。真弥には容易に想像できた。思い出が美しいほど、汚れた記憶は顧みたくないものだろう。 「じゃ、クロと圭が再会したのは、リコリスか?」 「そう。クロから来てくれたんだ」 「よく居場所が分かったな。黒の団だって掴めなかったんだろう」 真弥の視線は圭からクロに流れていく。会話の相手に指定されたクロは目を俯かせて淡々と応える。 「昔ポケギアで連絡先の交換をしてたのが残ってたので。幸いにも、お互い捨ててなかったから」 「ポケギアって、まさか、あの?」 驚きに上ずった声に、クロは頷く。真弥の目はぐんと丸くなる。 「よく捨てなかったな。俺は気色悪いし今は新しいのにしてるよ」 「そりゃ、俺だってできるなら捨てたいですけど……便利なのも、事実ですから」 「同じく」 だって仕方がない。圭は両手を開いておどけたポーズをとってみせた。 気持ちが悪いというそのポケギアが、クロと圭を繋ぎ直して、アランや他の誰かと繋げていく。重要なツールは身に馴染むと簡単に手放すことが出来ない。クロは左手にピザの入った袋を持ち替えて、右の腰につけてあるポーチからポケギアを手に取った。小さな傷が無数に刻まれた、闇夜のような黒色のボディ。懐かしいな、とそれを見た真弥は呟いていた。溜息を共に吐くような感慨の籠もった声であった。 「……圭に会いに行ったのには、何か理由があるんだろ」 ポケギアを定位置に戻した後、不意打ちの発言に、クロの手が止まる。 「よくわかりましたね」 「わかるよ。山脈付近なんてそう気軽にいける場所じゃないんだし、なんとなく話をしたいだけならそれこそ電話で出来る」 妙に察しがいい。クロが次の言葉を探っている間に、次々と真弥からは問いが浴びせられる。 「何をしようとしてるんだ? 他の奴はどうした」 クロは口を閉じ、考え込む。回り込んでこずに直球で真ん中に投げてくる。隠す理由も特に無い。どうせ、真弥にも持ちかけようとしていた話題だ。まさかこのタイミングで話すチャンスがやってくるとは考えていなくて、不意を突かれただけだ。クロは細く息を吸って続けざまにゆっくりと吐き出す。 「真弥さんにも言おうと思ってたんですけど」 無意識にクロの声はいつもに増して小さな声になっていた。 軽く周囲を見回す。何を言おうとしているのか、同じようにリコリスで話を持ちかけられた圭には簡単に予想できた。クロにつられるように彼も周りに人影が無いことを確認する。 それからクロは真弥に顔を近付け、遠くの誰かに聞きとられないよう慎重に口を開いた。 「俺、黒の団を、倒したいんです」 「へえ」 口の中で転がしただけのような小さな声に、即座に相手の声のトーンが上がる。真弥の興味を引いた。クロは手応えを掴む。 「それはまた、物騒で抽象的な目標だ」 「圭にそれに協力してほしくて俺はリコリスに行きました。まずは信用できる仲間がほしかったから。他の皆はまだ何も分かっていない状態です」 「……それで首都に来たと。ここなら何か分かるかもしれないって」 「それだけではないんですけど……はい。それに、真弥さんが首都にいるかもしれないという噂は聞いていましたし」 「ふーん」 ふと真弥の足が止まり、それに合わせてクロと圭も立ち止まる。いつの間にか、彼等は真弥の住むアパートの目の前へとやってきていた。すっかり暗闇に包まれた住宅街では、点々と窓から零れている光が人の気配を感じさせる。真弥の住む部屋も、ラーナーやノエルの存在を示すように明かりがついている。 真弥はクロ達の方を見ず、考え込むように口を紡いでいた。 「真弥さんにも、協力してもらいたいんです」 崩れなかった柔和な笑顔は今は影に潜み、固くなった表情で地面に視線を落としている。返答が来る気配はない。 多分、もう一歩だ。クロは姿勢を前のめりにさせる。 「黒の団の行いは、真弥さんもよく解ってるでしょう。もう、終わらせたいんです、全部。団員も、秩序も、実験も、全て壊す。そうしないと、いつまでも俺達は本当の意味で自由になれない。そう、思いませんか。それに、旅の最中でも黒の団の理不尽な行為を目の当たりにしてきました。直接的には無関係なのに傷つく人も見てきました。リコリスで圭が世話になった家族も、圭を匿った事実がある以上、黒の団がいる限り安全とは限りません。あいつは……ラーナーは、家族を黒の団に奪われた」 「……そうだな。ニノも」 ほつりと落とされた呟きは風に溶ける。癒えることのない古傷が痛んだように、強気に強張っていたクロの表情がニノの名前に歪んだ。 「ラーナーは、ニノや父親のことを知りません。自動車事故だと報されてる」 「そうか……」 項垂れていた真弥の頭がゆっくりと上がり、視線は遠くの空へと向く。しばらくそのまま考え込むように無言を貫いた後、そうか、と繰り返した。そして、クロの方に顔を向ける。 「複雑だな、クロ」 疲れたような浅い笑みから滲み出た声に、クロは応えることができなかった。 そこにいる誰もの身体の奥にあるそれぞれの傷が、痛む。 真弥は息を吸い込んだ。落ち着かせるように、深く。 「それにしても、打倒黒の団ってやつか」重量のある感情を払いのけたように、真弥の声は軽くなっていた。「考えておくよ、前向きに。面白そうだからさ。ただそれより今は、夕飯の方が優先だ」 話題を転換させて、真弥はまた元のように穏やかな笑みを浮かべた。 消化不良と言いたげにクロは顔を顰めたが、深追いはしない。したところで、躱されるのは目に見えている。誤魔化し躱すことが得意で飄々とした彼だからこそ、真面目な顔をして吐きだす言葉には本心がより滲み出ているようだった。 複雑だと言い放った真弥の渇いた笑みに滲んだどこか悲しげな顔は、クロも圭も殆ど見たことのない顔だった。 一行が真弥の部屋に戻ってくると、窓際に立ちポニータの頭を撫でているラーナーの姿がまず彼等の目に入る。見回りを支持されていたアメモースも戻ってきており、ポニータの火に照らされて空中で羽ばたきを続けていた。彼女の足元にはエーフィやブラッキーも揃っている。囲むように旅を共にしているポケモン達が並んでいた。 「これは壮観だ」 思わず感嘆の声をあげる真弥。帰宅した面々は持ち帰ってきた食事をテーブルにそれぞれ置く。 ブラッキーが耳をぴんと立てて真弥を見やる。遠くのものを目をこらして見つめようとしているように赤い瞳は尖る。睨みつけられている真弥は苦笑いを浮かべた。やがてブラッキーはラーナーの傍を離れ、庭へと飛び出す。 「ブラッキー!?」 慌ててラーナーは身を外に向けたが、いつものアメモースのように遠くへいくような素振りは見せない。正方形に区切られた真っ暗な草むらの中で、黄色い輪が浮き上がるように光る。草同士が擦りあっている音はやがて沈黙する。その場に座り込んだらしい。 「あれニノのポケモンだよね。俺、昔からあのブラッキーには嫌われてるんだ。基本的にポケモンには好まれないんだけど」 真弥は諦めるように肩を竦めた。 その横で圭が率先してピザの箱を開いていた。蓋を開けた瞬間、店に満たされていた香りが褪せずに溢れ出す。その香りはすぐにラーナーの鼻にも届き、空腹感が擽られる。表面に乗った油分が照明を照らし返して光っており、生地はふっくらと焼けている。今にも蕩けていきそうなチーズは、まだ乾燥せず温かさが残っている。 ラーナーは庭から離れクロ達の元へと集まる。本日の夕食を目の当たりにして、抑えきれない興奮が歓声となり湧き上がる。 「すごい。ピザなんて、本当に久しぶり!」 「俺のおすすめ。ホールも買ってあるし、これだけあれば腹いっぱいになるでしょ」 次々と箱は開かれていく。計五箱。それに新鮮な野菜が詰め込まれたサラダや柔らかく揚げたばかりの山盛りポテトといったサイドメニューの詰め合わせ。一堂に集まっている人数に対して、少し多すぎるくらいだ。 「これ、ノエルさんの分も含まれているんですよね?」 想像を遥かに上回って大量に用意された御馳走に圧倒されラーナーが尋ねると、勿論と真弥はすぐに頷く。 「あいつも好きだからね。残しておけば夜中にこっそり食べるよ。全く、出てこればいいのにな」 「真弥さん、それより早く食べようぜ。俺もう腹減って死にそうだ!」 真弥がノエルに対して憂いているのを気にも留めていないかのように圭は訴えかけた。トマトソースの赤とチーズの白が鮮やかに分かれたマルゲリータに既にその手は伸びている。 食欲を我慢しようとも隠そうともしない圭を前に、ラーナーも真弥も一瞬ぽかんと面食らう。やがて、真弥は胸の奥からふつふつと湧き立ってくるように、身体を震わせるように笑った。 「ははっそうだな。それが大事だ。よし、どんどん食べろ!」 「お言葉に甘えて!」 よしと命じられた飼いならされた動物のように、圭の手はピザを掴んだ。それに続く様に、各々好きなものを手に取っていく。濃厚に味付けされたそれらはまだ焼き立ての熱気を含んで膨らんでおり、ひとたび口の中に入ればあっという間に味覚を豊かに刺激する。歯が具を潰すたびに程よい油と熱が破裂して満たしていき、各口を緩ませた。 「美味しい……!」 心底幸せそうに頬を蕩けさせて、海老や烏賊といった海鮮物が豪快に乗ったピザをゆっくり噛みしめているラーナーの顔を横目に、クロはこっそりと胸を撫で下ろすのだった。 < index >
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錯視上ブルーエンド⑥
6話:8月15日(午前10時49):ゴミ×試験
先輩が追いつきやすいよう、ゆっくりと駅に向かう。
どんな町だろうと駅が近づいてくれば多少は栄えてくるもンだけど、ここは逆だ。どんどん廃れてくる。お綺麗な歩道と歪みのない車道の両側に並ぶのは、ゴミと雑草だらけの空き地と、潰れたまま放置されている何かの店の跡地ばかりだ。
「最初から全然必要のない場所に無理やり作った駅だからなぁ。これから発展するぞ! って見込んだ人たちが色々な店を出してたけど、まぁ、結局はこういう具合だよ」と、前に先輩が言っていた。
商店街やブラジル団地は「昔はお元気だったんだけど、お亡くなりになっちゃってる」って感じの死臭だが、ここは「死んで生まれた赤ん坊の口におしゃぶり突っ込んで、服を着せて、ベビーカーに乗せて、生きてるって言い張ってる人に染み込んだ臭い」みたいな──やめだ! 頭に���かぶ想像図がエグい上に辛い! しかも悲しい! やめだ、やめ!
去年の夏休み。
先輩は「『なぜこの地区だけが発展から取り残されているのか』を夏休みの自由研究課題にする」と言って、図書館で笹巳の古地図や江戸、明治、大正、昭和に書かれた土地に関する文献を調べまくっていた。確か担任に紹介状だかなんだかを書かせて、笹巳大学の教授に話を聞きに行ったりもしてたと思う。
俺も時々は先輩と一緒に図書館に行って、コピーとったり、本を戻したり持ってきたりっていう雑用をした。
「共同学習ってことにすれば、俺もこの課題を提出できるから」と説明すると、先輩は俺が手伝いを買って出たことに納得したが、実際はまぁ、夏休みにも部活外でも会う口実が欲しかっただけだ。
図書館にいる間、先輩は何も喋らずに古い地図の写しに線を引いたり、印をつけたりを繰り返してた。その真剣な顔は、先輩が走ってる時だけに見せるもので──つまりはいつもならどんなに運が良くても10秒程度しか見られないものだった。USSR(アルティメットスーパースーパーレア)。
俺は本を読んでいるふりをしながら先輩を見つめ、時々、何か面白い本を探しに行くかのような素振りで席を立っては、一番エアコンが効いているパソコン室に入って真っ赤になった顔を冷ますのを繰り返した。あーゆーギャップとかそーゆーの、卑怯だと思う。
それだけ真剣に取り組んでいたのに、ひと夏かけて出てきた結論は「特になんの理由もありません。ここは屠殺場だったことも、処刑場だったことも、戦場だったことも、墓場だったことも、疫病がはやったことも、沼地だったこともありません。どういうわけか江戸、明治、大正、昭和、平成とどんなに時代が流れても、栄えなかった土地です。特になんの理由もありませんが、何となく周りから嫌われています」だった。ざけてる。
結論が出た後、先輩は図書館の机に突っ伏し、「理不尽だ」と呻いた。
俺は先輩が落ち込んでいるのだと思い、鬱陶しく思われない程度の慰めの言葉をかけようと思ったが、どういう言葉がいいのかあれこれ考えているうちに先輩は「まぁ、ものは考えようだな。何にでもいい面はあるし」と言って顔をあげた。ケロッとしていた。
先輩は落ち込むようなことがあったとしても、自力でさっさと立ち上がってしまう。もちろん、そりゃ、それが一番いーンだけど。なんか、もうちょい、こう、あんじゃん。
前方から男たちのガラの悪ぃ笑い声と、バイクの音が聞こえてきた。ただのバイクの音じゃねぇ。クソでけぇ音がするように、マフラーをいじったバイクの音だ。嫌な予感しかしねぇ。
やがて50メートル程前方にある交差点の左手から、ごっついスクーターが3台ぬるりと顔を出した。乗ってる奴らは全員ノーヘル。離れてても雰囲気がヤベェのはわかる。チンピラっつーか……輩(やから)だ。
水中でシャチの群に出くわしたような気分だ。スクーターのデカくて黒くて丸いっこいフォルムと、シャチの顔の白い模様に似たライトのせいだろう。
信号を無視してスクーター達はクラクションを鳴らしながら坂を下りてくる。つーか、俺に向かってくる。ヒャッハァァー! とか言ってる。ンだよ……マッドマックスの白い坊主かよ……。
俺は���道からできるだけ離れ、ちょっと強い風が吹いたな? みたいな顔して歩く。こういう時、目をばっちり合わせちゃダメだし、かといって見向きもしねぇのもダメだ。やり過ごせ。運がよけりゃ、絡まれずに済む。
先頭のスクーターに乗っているのは半袖短パン、タバコをくわえた30代くらいの男で、両腕と脛にペイズリー柄みてぇな刺青を彫り込んでいた。クソ、オシャレかよ。
スクーターはスピードを落とし、歩道ギリギリまで走ってきた。
「よぉー! どこ行くんだよ、兄ちゃん!」
話しかけてくんなよ。前歯ねぇじゃん。溶けてんじゃん。
どう答えればこいつらが俺から興味を失ってくれるのか考える。返事をした方がいいのか、無視した方がいいのか悩んでいると──輩どもはそんな俺を見て楽しんでいるように見えた。クソッ──、車のエンジン音が聞こえてきた。
坂の下から1台の車が上がってくる。茶色いファミリーカー。ちょっと高いやつだ。場違い感がすげぇ。
車は俺と輩たちの側を通る時、少しだけ減速した。運転席にいた中年の男が困惑した顔で俺と輩を見ているのが見えた。
車はすぐに坂を登りきり、交差点の赤信号の前で停車した。……ここらの人間じゃねぇな。ここらの人間��ら、この地区、この状況で赤信号に従ったりしねぇ。そんなもん無視して一刻も早く走り去るはずだ。つか、ここらの人間はそもそもあんな車に乗ってこんなとこ来ねぇけど。
輩たちは俺に向けていたニヤニヤ笑いをファミリーカーに向ける。……ターゲットが移ったようだ。
「兄ちゃん。これ、捨てといてくれやぁ!」
男は咥えていたタバコを俺の顔に向かって投げつけてきた。反射的に後ろに跳びのいたので当たらないで済んだけど、ちょっとでも遅れてたら目がやられてた。こいつ──!
「ッぶねぇな! 何しやがる!」
反射的に怒鳴っちまった。また注意を引いちまったんじゃねぇかって不安になったが、男は笑い声を上げ、車に向かってスクーターを走らせていた。2人の取り巻き輩も先頭の輩にならって喫いかけのタバコを俺に投げつけ、車に向かってゆく。
「いー車だなぁ! 俺らも乗せろよ!」
スクーター達はクラクションを鳴らしながら車の横に付き、車体を叩き始めた。まるでシャチの群がトドを取り囲んで小突きまわしてるみてぇだ。
信号が赤から青に代わり、車は道を左折してゆく。スクーターの輩どももついて行く。……あの感じだと人通りの多い道に出るまでつきまとうだろう。
俺はなるべく早めにあの車が輩どもから逃れられることを祈りつつ、足を止めて腕を組み、うーんと唸る。
車を運転してた人、どっかで見た顔だった。向こうも俺に見覚えがあったんじゃねぇかな? なんか、そーゆー感じの顔して俺を見てたような気がする。
車が消えた方向を眺めながら、俺はしばし考える。スクーターのクソうるせぇ音はだいぶ遠ざかった。もう戻ってこないで欲しい。
スクーターの音が完全に聞こえなくなると、代わりに足音が坂を上がってくるのが聞こえた。輩どもに絡まれかけてからずっと強張っていた肩の力が抜ける。
「さい」
ホップ。
「ごー」
ステップ。
「どーん!」
ジャンプ。
また背中を叩かれたが、今度はむせなかった。
「待たせたな」
先輩はハーフパンツとTシャツに金属のビーズがジャラジャラついたパーカーを羽織っていた。
「……なんか90年代の変なラッパーみたいっスね、それ」
「西郷どんにあわせて、俺もチンピラリティを上げてきたのだ!」
先輩は俺の前で回って服を見せる。パーカーの背中には虎の顔が刺繍されていた。ビーズはともかく、この刺繍はカッケー。
「チンピラじゃねぇって。全然ちげーし。つかどこで売ってんスか。なんスかそのギラギラしたの。先輩、そんな服持ってましたっけ?」
「いや、俺のじゃないよ。家に置いてあったから適当に着てきた。ほら、この俺が着こなすと、そう、ここはパリコレ!」
先輩は両手を腰にやり、キメ顔でモデル歩きをしてみせる。
パリコレかどうかはわからないが、堂々と歩かれてしまうとなんだか本当にその変な服が奇抜なブランドもんに見えてきた。腹が立つ。
「いーから、もう行きますよ。電車来ちゃうから」
「大丈夫だよ、まだ電車くるまで時間あるから。のんびり行こうではないか。行きと帰りも大事なイベントですぞう?」と先輩は笑う。
俺もつられて笑いかけるが、ぐっと奥歯に力を込めて笑うのを堪える。
こうやって普通に話しているつもりでも、どんなに仲良くなったように思えても、先輩は俺のことを見限ったまんまなんだと思うと、一緒に笑っちゃいけない気がするんだ。笑ったら、先輩が俺を見限ってる状況を了承したことになっちまう気がする。それは嫌だ。絶対に。
こうして一緒に下校したり、どっかに遊びに行ったりするのが当たり前になってきたある日──つまり優しい先輩の偽装メッキが剥がれて、驚きのウザさが丸出しになった頃──、先輩は「クラスの奴がくれたから食おうぜ」って帰り道にプリングルスを持ってきた。
部活帰りの男子2人じゃプリングルスなんか瞬殺だ。学校を出て早々。商店街前の坂を登り切らない内に容器は空になった。
先輩は空容器を通学鞄に入れようとしたが、俺は通り過ぎようとした店のシャッターにちょうどプリングルスの直径と同じ程度の穴が空いているのに気がついた。
俺は先輩に「それいーっスか?」と言ってプリングルスを受け取り、その穴に押し込んだ。
いいアイディアだと思ったんだ。何にも悪いことをしているつもりはなかったし、なんなら面白いことをしたと思ってた。
だから店の前で先輩が立ち止まって「お前はそういうことをするんだな」と言った時、戸惑うしかなかった。
先輩は軽蔑か、落胆か、怒りか、悲しみのどれかが浮かび上がる直前の、何考えてんだかわからないお面みたいな顔になっていた。
そんで結局、それらのどの感情も浮かばせることなく、先輩は「よくないぞ」と言って笑った。
今でもあの時のことを思い出すと掌に嫌な汗が滲んでくる。
あれは誰かを完全に見限った人間が浮かべる類の笑顔だった。
俺は慌てて「何スか、そんなマジになって。取るって。取りゃーいんだろ!」と言ってシャッターの穴からプリングルスの容器を抜き取った。
「んだよ、細けぇスね! たかがゴミだし、この店だってもうやってねぇんだからいいじゃねーっスか! 店ん中、もうゴミだらけだしよ。俺がやんなくたって誰かがサァ!」とか何とか自分を擁護する言葉を並べた。
先輩は「そうだな。お前の言う通りだな。俺は少し細かいところがあるんだよ」と言って笑っていたが、先輩の目からはその時、その瞬間までは確かにあったはずのある種の親密さが消えていた。
そしてその消えてしまった何かは、今も戻らない。
あの時、俺は先輩の中で行われている何かの試験に落ちたんだと思う。
以来、先輩と一緒にいると、どんなに楽しかったり嬉しかったりしても、どうしても胸に影が落ちる。その影は先輩の住んでるこの地区の状態を知り、ゴミだらけのボロい家や空き地を見たりするたびに大きくなる。あの時、俺が軽いノリでしたことが、当たり前のようにしたことが、面白いと思ってしたことが、先輩にどんな風に見えていたのかを思い知る。
それでも、「やり直しのチャンスくらいくれてもいいんじゃねぇのか」って思うんだ。
先輩の中にいる俺はきっと、プリングルスを空き家に捨てた時の俺のまんま更新されずにいて、その更新されない俺はきっと、この地区を『何書いてもいい場所』扱いしてる連中とおんなじラベルを貼られていて、きっと、先輩の家を見てゲラゲラ笑うんだ。
俺、本当はそーゆーんじゃねぇのに。
俺はベラベラと海までの道のりを説明し続けている先輩を見下ろす。それからゴミだらけの空き地を見る。あれは全部昔の俺みたいな奴が捨てていったんだ。
俺は筋肉と骨でできた自転車のフレームみたいな先輩の肩を掴んで、俺の方を向かせて、大声で怒鳴りたくなる。
「俺はそーゆーんじゃねぇからな! あんたが思ってるような人間じゃねぇんだ! 成長したんだ! 俺はいー奴なんだよ!」って。やんねぇけど。
今も俺のこと、見限ったまんまなのかよ? って聞きたい。聞かねぇけど。
俺、あれからどこでもゴミ捨てねぇし、あんたが見てないとこでもそーゆーことしてねぇけど、それでも俺、あんたの謎試験の追試もうけらんねぇの? あんたさ、あれで俺の何がわかんの?
あれで俺の全部わかったってこと?
もっと踏み込んでくりゃいいじゃん。そしたら俺、あんたが思ってるような人間ってわけじゃないって、わかんじゃねぇの?
たまんねぇんだけどさ。あんたの中の俺が、あんたが思ってるような俺が、俺じゃねぇのにあんたに見限られてんの。
もっと俺に踏み込んでくれよ。そしたらぜってーわかるから。
それとももう踏み込む価値もねぇの?
そーゆー試験だったのかよ、あれが?
って聞きたくなる。聞かねぇけどな。
だって聞かなくてもわかるんだ。あれは、そーゆー試験だったんだ。
前話:次話
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11月の花鳥各地句会報
平成28年11月の特選句
坊城俊樹選
栗林圭魚選 栗林眞知子選 岡田順子選
平成28年11月1日
県民会館花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
見つめられ菊人形の顔となる 雪
福の神貧乏神も旅立たる 文子
神留守の宮を守りて巫女二人 龍聲
産土の神のお発ちか神鼓鳴る 文子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月1日
さくら花鳥句会
栗林眞知子選 特選句
冬桜描きし便りが絶筆に 寿子
菊人形前田利家作成中 令子
靴下の穴繕ひて冬支度 登美子
奥越の市に試飲の新走 令子
読経の僧の背中や菊日和 紀子
小鳥来て乳飲み子抱きて昼下がり 実加
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月2日
立待花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
熱燗や男同志のはかり事 ただし
肋骨を見せて着替へる菊人形 ただし
山中に生きぬく僧や霧深し ただし
白鳥の声より日野の夜の明けし 越堂
日野は霽文殊の山は初時雨 越堂
枯野中日野川黒く蛇行する 正子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月4日
芦原花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
花八手稽古の庭の片すみに 久美子
マスクしてさらに無口となりにける 由紀子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月5日
零の会
坊城俊樹選 特選句
末枯の野に遺伝子を語る背ナ はるか
葉の散るは金の小鳥が来てるから いづみ
日だまりは草禿てゐて神の旅 鯨
秋水は今深々と井戸の底 佑天
ざらざらの木肌晒して冬の来る 八之助
ニュートンの空に小さな林檎園 伊豫
神の留守ヒマラヤ杉の縦横に 炳子
青空があるからピラカンサス真赤 順子
ニュートンもメンデルの木も末枯れて 耿子
旧医学校鎖しぽつねんと烏瓜 順子
鉄錆をすすりて秋の蠅青し 鯨
黄落の彼方に古き医学校 炳子
医学校嘗ての窓へ小春の日 慶月
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月7日
鳥取花鳥会
岡田順子選 特選句
秋天へ手をあげ子らのすべり台 俊子
温め酒遺影の夫は笑み返し 都
冬に入る惚け来し姉に医師やさし 幸子
秋天へ爺の削りし竹とんぼ 幹也
閉ざされしロッヂや秋を惜みをり 和子
種を採る風よく乾く日なりけり 栄子
数珠玉や流れは母の里なりし 逸子
切干す仮屋通りの日を溜めて 悦子
気休めの櫛を通して木の葉髪 史子
水漬田は広し白鳥迎へけり 益恵
木枯や木の色香り攫ひゆく 立子
海凪いで全船帰港松葉蟹 すみ子
秋日和夫へひと言多羅葉に 美智子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月8日
萩花鳥句会
秋田より昔の人ときりたんぽ 牛子
新蕎麦や何もつけずにひとすゝり 孝士
こよみには立冬とあり草を引く 七重
日露談長門でヤマ場冬に入る 健雄
立話し二人三人して小春 陽子
誰がために椿ぞ咲くか野山獄 吉之
身に入むや松陰講話立志殿 圭三
岬めぐる一と日となりぬ石蕗の花 克弘
平成28年11月10日
三日の月十一月句会
坊城俊樹選 特選句
猫の髭銀に輝く小春かな 都
四姉妹小春日和に似たるかな 由季子
木の葉髪団居て語る昔語 未草
思ひつき小春日和の大仕事 英子
文化の日曾孫と三三が九を学ぶ 牧羊
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月10日
花鳥さざれ会
坊城俊樹選 特選句
木枯の寺苑の中の観世音 匠
石南花の帰り花して観世音 雪
落葉して残るひと葉に日の濃かり 匠
打ち申す板木の音も時雨冷 雪
先生の遺愛の硯冬めく日 雪子
落葉踏み来て枝折戸に引き返す 雪
みかへりの仏十一月の日矢 松陰
一葉の落葉の天地裏返る 龍聲
九頭竜の空を微塵に鳥渡る 越堂
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月12日
枡形句会
栗林圭魚選 特選句
冬蝶の影に戯れ寺の猫 亜栄子
ひもろぎとして不揃ひな榠樝かな 鯨
烏瓜竹をたはむる赤さかな 鯨
恙なく白寿迎へて冬に入る 多美女
もう風にまかせる高さ鷲翔り 美枝子
沖合に白く波立つ神の旅 美枝子
彫深き顔に泥つけ蓮根掘る 鯨
鷲の檻青年ふいに指鳴らす 三無
鷲の目の人の動きに向はざる 三無
傾ぎつつ荒鷲となり翔びゆけり ゆう子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月14日
武生花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
菊人形笑へる顔も泣く顔も 雪
村に又離農のうはさ燗熱く みす枝
餡の色かすかに透けて菊の餅 ミチ子
綿虫に空やはらかくなりにけり みす枝
かくまでに瑕瑾なき空神無月 錦子
窓高き温水プール冬紅葉 ミチ子
休耕田すでに花野となりゐたり 時江
漣か鴨の水尾曳く綺羅なるか 越堂
霧込めて日野の流れを沈めけり 時江
茶の花を一輪曾孫の髪にさし 文子
十夜寺真夜にふるまふ小豆粥 文子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月14日
なかみち句会
栗林圭魚選 特選句
大川の潮さす匂ひ芭蕉の忌 三無
時雨忌や季寄せに滲む赤ワイン 貴薫
子のつけし傷ある机木の葉髪 三無
白蛇の祠を拝み冬耕す あき子
浅間路の風倒木も冬に入る 迪子
冬耕の畝なんとなく右曲がり 三無
草に木に己に問うて翁の忌 秋尚
木の葉髪とくあめ色のつげの櫛 あき子
晩学の俳句に出会ひ芭蕉の忌 あき子
冬耕や時に遠くを眺めをり 有有
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月16日
福井花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
綿虫の夢連れ来るか追ひ来るか 牧羊
新蕎麦をすゝれば義父をまなうらに 和子
綿虫のつかず離れず神の池 嘉子
山茶花のその道母の好きな道 雪子
母さんと呼びたくなつておでん鍋 雪子
遠き世の祖母の話や膝毛布 松陰
瀞小春九頭竜ここに来て曲る 龍聲
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月16日
伊藤柏翠俳句記念館霜月抄
坊城俊樹選 特選句
日の丸を掲げ日本一の菊 ただし
前山の空に紅葉のにじむほど スヱ子
日光も月光も秋菩薩かな スヱ子
酔ふほどに貴方の近く菊膾 真琴
古屏風立てて用無き座敷かな やす香
ひと仕事終へれば釣瓶落しの野 富美
はからずも懐炉を貰ふ羽目となり 清女
草虱好かれて男連れ戻る 世詩明
雪吊の早や括られて呪縛めく 世詩明
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月20日
風月句会
坊城俊樹選 特選句
古沼に動かねば鴨石と化す 千種
推敲の膝の上なる枯蟷螂 芙佐子
冬帝が大黒松を傾かせ 千種
晴れ女嘯く人の小六月 亜栄子
綿虫を追うて巨木に見失ふ 芙佐子
枯園の濡れゐる径に獣臭 眞知子
みづいろの冬すきとほる羽で死ぬ 和子
綿虫のうつつへ出でしばかりなる 秋尚
(順不同 特選句のみ掲載)
栗林圭魚選 特選句
鴨浮きて日矢に捕はれをりしかな 俊樹
男の子今団栗だらけ日矢だらけ 俊樹
冬帝が大黒松を傾かせ 千種
もの知りの隣に座せる翁の忌 清子
何かゐるらしく冬野の木橋混み 千種
朝靄の池へ一筋冬日引き 秋尚
水震へ波とならざる寒さかな 千種
よどみたるみづやはらかし浮寝鳥 公世
幾層の落葉の嵩や土塁跡 芙佐子
���を求め枝を撓めて花八手 清子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月21日
鯖江花鳥俳句会霜月抄
坊城俊樹選 特選句
枝折戸の欲しと思へり月の庭 雪
子祭や子供歌舞伎の天晴れな ただし
銀杏を十ほど拾ふ母の忌に 紀代美
落葉踏み山の深さを聴いてをり みす枝
日溜りの落葉にもある裏表 信子
蕪村忌や日は落ちてもう月出でて 一涓
悪食は茂吉にも似て薬喰 一涓
お隣りに嵩なす落葉詫びて病む 一涓
纜のたゆたふ一日浜小春 一涓
灯台の径水仙の咲き崩れ 越堂
中天にシリウス青き霜夜かな 越堂
鴛鴦に木地師の山の風渡る 青一路
一羽づつ暮れ落ちてゆく鴨の陣 昭子
鴨浮寝町騒に馴れ人に馴れ 昭子
仰臥して見る竜神図寺小春 昭子
膝毛布臑に疵持つ足二本 世詩明
紅葉して山美しく人遊ぶ 世詩明
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月24日
九州花鳥会
坊城俊樹選 特選句
天神にピエロ降り立つ街小春 阿佐美
雲間より日差し一条冬耕す 佐和
海峡の霧流れ出す胸満たし 佐和
小春日や木の間木の間に石仏 富子
鳴き砂の浜に人なく小春凪 初子
鳴き声の短くなりぬ冬の庭 友子
鬢付け油香れる路地の小夜時雨 かおり
蒼天に一会の鷲をゆくりなく 佐和
百年を生きて小春の空に逝く 由紀子
手袋を置きて幕間を立ちにけり 郁子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成28年11月27日
花鳥月例会
坊城俊樹選 特選句
乳母車還る神座へ押し出せり 律子
黄落へ国士となつてゆくばかり 惠介
神還り給へばさらに大鳥居 眞知子
青を曳きつつ大綿は宮裏へ 眞知子
木の影に吾の影足して冬帝へ 順子
胎児聴く十一月の拍手を 惠介
裏側は幼き色の冬紅葉 鯨
ダックスフンドの毛糸のチョッキきゆうくつさう 炳子
袴着や抱かれて仰ぐ軍人像 律子
(順不同 特選句のみ掲載)
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