#四畳半曼荼羅
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valiantlydarktiger · 6 years ago
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【四畳半曼荼羅】相棒【二次創作】
墨佳遼様の創作「四畳半曼荼羅」の二次創作です。バーで聞き役していただいているだけ!
【どうでもいいあらすじ】
シヴァ家のぼん、韋駄天スカンダは火天アグニにして烏枢沙摩明王の倅でもあるので、特に疑問も持たずに両方のすねをかじるぞ。
 なんで今頃冬の話かといえば単に書きあがらなかっただけ!
 人も神も仏も立ち寄るバーには、ぽつりぽつりと客が来る。  にぎやかなのが好きなものが一つあれば、たちまち呼ばれて混雑し、孤独を好むものがあれば、満足して立ち去るまではほぼ貸し切り。  采配の神の手腕かもしれないし、それぞれの神仏がちょうどいい時間を見計らってるのかもしれないし、時空がゆがんでいるのかもしれないが、気にすることでもない。  ちょうど客が途切れた時に、扉が開いた。 「鳥入れていい?」  孔雀を抱えていたのは韋駄天スカンダ。  乗騎の孔雀は、普段中型バイクとなって駐輪場やバイク置き場で留守番しているのだが、今日はスカンダの上着にくるまれている。 「どうぞ。怪我でもしたの?」 「寒くて動けないっぽい」  わかる、と、お供が蛇の軍荼利は店内に迎え入れてブランケットを出してくる。 「汚れるから」 「ここをどこと心得る、お掃除明王の縄張りぞ」  勿体ぶって言った軍荼利に、スカンダはぺこりと頭を下げた。  ブランケットごと孔雀を抱いて、泣きだしそうな顔は、どうしようもなく子供っぽい。 「いつも寒がってない?ウスサマと喧嘩でもした?」 「してない」  言ってから、スカンダはまっすぐ軍荼利を見る。 「俺の親をどなたと心得る」  ややこしいが知らないわけがない。 「最高神にして大破壊神シヴァが我が父。天も魔も世界もまとめてぶっ壊す気満々だけど身内にむっちゃ甘い!」  軍荼利がぷっと笑ったのを大仰にうむと確かめてからスカンダは続ける。 「大破壊神にして嵐の神シヴァはよいお父ちゃんなので、息子のおねだりにこたえる単位が最低1サイクロン」  日本に行くのが台風でインドに来るのがサイクロンね、と解説してくれるスカンダは基本的に親切ないい子である。 「小分けにしてもらえないの」 ��駄目。倅が寒がってお父ちゃんに助けて言ってるなんて知れたら、ならば軍神らしく温まるために戦でも起こしてやろう、ちょっと転生して地上でひっかき回してくるから待てとか普通に言うから全っ然駄目」  シヴァの声真似をしてみたスカンダは、ブランケットごと孔雀を抱きしめる。 「お父さん動くと天界みんなで便乗して地上の人間半分に減らそうみたいな話になって大戦になるのでとてもやばい」 「大変だねえ。普通に甘えたりしないの?」 「普通に話したり遊んだりするけど、お願いとおねだりは最終手段、って暗黙の了解」  戦の時くらいしか使いようがないよね、と、ぼそっと幼顔の軍神は言って、ブランケットに顔を押し付ける。 「そっちじゃないお父さんに寒いって言えばいいじゃない」 「そっちじゃないおとさんは世界を焼き尽くし世界を生み世界に熱を与える最古層の大火神アグニです。やっぱり息子にべた甘い」  孔雀はまだ元気がないらしく、スカンダが撫でても首を上げない。 「年末年始でたき火に護摩にお焚き上げに呼び出されまくって働きまくって異常乾燥注意報で火の用心なこの時期になんかお願いしたらどうなると思う、1お願い1火山だよ!」 「火山」 「今フル火天MAXエクストラだから、息子のお願いでマッチ一本とかライターひと押しみたいなささやかなお願いでも大サービスで一富士山に増量キャンペーン」  困ったねえ、と、軍荼利がつぶやき、スカンダは大きくうなずく。 「だから下手に呼べないし火も使えなくて、寒い、です」  ブランケットの中の孔雀はふるふる震え、飾り羽がさらさらと鳴る。  ホットミルクを舐めるように飲むスカンダは、自分も眠いのか、頭がぐらぐら。 「パラヴァニは俺のこと嫌いで、ご飯は勝手に食べてくるし呼んでも来ないんだけど、具合悪くなったり日が暮れると帰ってくるの。鳥目だから暗いところ苦手で」  いつも反射板みたいに暗闇でもきらきらしているスカンダはつぶやく。 「暗いから困ってる、しんどくて動けないのにつけ込んでなでたり抱っこしたりするんだけど、俺のこと嫌いだから明るくなるか元気出たら、用事言いつけないとすぐどっか行っちゃう」  抱き潰さないようそーっと抱いて、しょんぼりした孔雀の羽に顔を埋めて、スカンダはくすんと鼻を鳴らす。 「べたべたされるのいやなら早く元気出して逃げな」  孔雀はしばらくもそもそ動いていたが、やがて静かになった。
 多分何分もたってない。  勢いよく店の扉が開いて、いらっしゃいと誰か声をかける前に、それまでしょんぼりしていた孔雀が跳ね起きて走る。  外に行ってしまう前に雑に掴みあげたのはウスサマ��った。  居眠りしていたスカンダが飛び起きる。 「寒がってるんだけど焼き鳥にしないで」  えー、と、ウスサマは孔雀の顔を覗き込む、と、しょんぼりしていた孔雀は持ち方が雑だと蹴りかかり、ウスサマが噛みつく振りで応戦する。 「元気そうだから絞める」 「パラヴァニは俺以外に殺せないから大丈夫だし!」 「じゃ、むしって箒にする」 「抜けたのあげるよ」  喧嘩になる前に終わりそうだが、スカンダはウスサマが雑に抱えている孔雀から目を離さない。 「寒いんじゃなくてのぼせてるんだよ。しばらく放っておきな」 「…何で看病してた俺のこと嫌いでおとさんに抱っこされてんの」  ウスサマは孔雀を床に下ろすが、孔雀はそのまま座り込んでそっぽを向く。 「のぼせてんならおとさんのそばの方がよっぽど熱いのに」  大火神アグニは火天で烏枢沙摩明王で全ての火。どこでどんな姿で遭遇しようがとりあえず熱い。  孔雀は聞こえてるのかいないのか、翼に頭を突っ込んでしまう。  ふくれっ面のスカンダは、借りていたブランケットを畳んで精算して、孔雀を覗き込む。 「好きなところにいればいい」  孔雀はスカンダが店を出ていくまで丸まったままだった。 「いいの?ずっと心配してたよ」 「一緒にしとくと両方のぼせるから離しておいた方がいいんだ」  足音も聞こえなくなった途端、孔雀はウスサマに蹴りかかるが、慣れきった動きで掴まれ、動けないままキンキンとものすごい声で鳴く。 「聞くから!音量落とせ」  叱られて孔雀はキロキロクルクルとしばらく変な音を出してから、ぼそぼそと野太い音を出し、ウスサマも聞き取りづらい言葉で何か答えた。  人間くさいというか明らかにおじさん声でぼそぼそ喋る孔雀はおとなしくウスサマの膝におさまり、ウスサマもどこか遠い国の言葉で相づちを打つ、と、カウンターの大威徳がむせた。  振り返ったウスサマがしーっとたしなめる。 「ただの鳥の鳴き声だから」 「聞いてないから気にするな」  孔雀は気にしていないのか訴えるのに忙しいのか大威徳を気にもしない。さえずりのような人の声のような音は低く長く続いて、うんうんうなずいてやっているウスサマが、時々額を押さえたり天井を見上げたり。  聞いてないと言いつつ聞き取れてしまっているらしい大威徳が、時々手を止めて息も止めて肩を震わせていた。  やがてウスサマが勢いよく立ち上がり、孔雀も元気よく床に飛び降りる。 「鳥も機嫌治ったから、飲んでくる」 「長居しても構わないよ?」 「焼き鳥食いたがってるから」  ウスサマは財布を出して、思い出したように大威徳に振り向く。 「別に秘密じゃないんだが」 「聞き取れたとしても言いふらしてこっちに何の得もないから」  お騒がせしました、と、ウスサマは孔雀を抱えて店を出ていく。  ど派手な孔雀抱えてどの焼鳥屋に行くのか、入れてくれる店があるのか孔雀が鶏肉食べるのはどうかは、知ったことではない。
「孔雀なんかおもしろいこと言ってた?」  キッチンにいた��叉に聞かれて、大威徳は曖昧にうなる。 「アスラだって聞いてたが、喋るの聞いたことなかったから驚いた」 「話通じそう?」 「古代語すぎる」  若者の言葉は乱れてけしからんって言われそうだと大威徳がつぶやき、夜叉も軍荼利も笑う。 「…格調高い古代語で即興壮大な詩形でえんえんと主自慢とのろけを」  聞かされてる方が恥ずかしい、と、大威徳は氷水を一口。 「中身がおっさんなのにスカンダが気にしなさ過ぎで可愛がるからすぐのぼせる、いちいちのぼせてられないから離れてるのに怒る、怒るのが可愛いどうしてくれる、だそうだ」  それを美辞麗句と故事の引用で美しい詩にしてスカンダの実父ウスサマに愚痴ったところで、犬にでも食わせとけ以外のアドバイスは出るまい。  しばらく暑がっていた大威徳は、エプロンを外す。 「すぐ戻る」  牛だね、牛の顔見に行ったね、と、夜叉と軍荼利はくすくす笑いあう。  大威徳の乗騎は水牛、普段は車に擬態して、主の留守をおとなしく駐車場で待っているのだ。  牛が喋れるのかどうか、三人とも長い付き合いだが知らない、けれどどうでもよかった。
 日付が変わる頃。  河川敷にぽつりとたき火。  スカンダが覗き込むと、ウスサマと孔雀が鳥の丸焼き中。 「うわーパラヴァニ焼き鳥ー」 「孔雀まずいから食ってやらん。これは心清い信徒からの奉納ニワトリぞ」  自分です、と、パラヴァニは胸を張り、スカンダは乱暴になで回す。 「元気になった、よかった」 「可愛がりすぎるから嫌がるんだよ」 「ちょっとしか可愛がってないし」  ねー、と、膝の上に抱っこされたパラヴァニははっきり返事をしないものだからまたなでられて、くたくたと溶けていく。 「俺が可愛がりすぎたんじゃなくておとさんが暖かくしてくれないから悪い」 「のぼせてるのに温めてどうすんだ」 「火天パワーMAX時期に火を使って火事にしたらまずいから、パラヴァニ湯たんぽにしてなでなでしすぎてのぼせちゃったんじゃないか」  そりゃ悪かったと軽く謝るウスサマに、スカンダとパラヴァニはそろってぶーぶーと文句を言い続け、はいはいとウスサマは聞き流して焼けた鳥をむしってよこし、文句だか近況報告だか喋り続けのスカンダは肉を細かくむしってパラヴァニに取り分ける。 「…敬虔な信徒は塩とかたれのお供えはしなかった?」  鳥だから塩使いません、塩土はおいしい、と、孔雀は応える。長い付き合いなので言葉は不要。  不要なのだが孔雀は肉片を飲み込んでから、落ち着かずにスカンダの膝から降りて、さっきは着ていなかった上着に蹴りかかる、が、とっさに流木でスカンダが受け止めた。 「なんか着膨れてると思ったら」 「んふふふふ、化繊じゃないぜダウン100%でパラヴァニ抱っこしてなくても火を使えなくても平気だぜ」  かーっと怒って蹴りかかる孔雀をことごとく流木で受け流してテニスのように遊んでいるスカンダは、軽く孔雀を抱き留める。 「なんでそんな怒るの。蹴り入れたら破れるから駄目」 「自分がいるのによその鳥にくるまれるとは何事だ、って」  言ってない言ってないそんなこと言ってない、と、孔雀は届かないウスサマを蹴飛ばし、律儀に食らった振りをしてウスサマはよろけてやるが、黙ってくれない。 「正直ふかふか度はハンサ(ガチョウ)に勝てないが奴ら濡れないように脂べとべとだから触り心地は俺の方がいいはずだそうだから、程々に」  そうかそうかとスカンダは孔雀の背中に顔を埋め、にゃーんと孔雀が吠えるが、町中から離れた河川敷だ、たいして近所迷惑にもならないはず。
 寒い時期の話なのにもう初夏です!孔雀は元気に繁殖期に入っているので動物園では接客担当孔雀さんがサービスに羽を広げてくれ、野生化した孔雀はそろそろぴよが生まれている時期です。
 孔雀のパラヴァニ、スカンダが出てきたときからレギュラーなのですが、ずっと目立たせないままでいました。  …スカンダの出生がややこしいというか並列でいくつもあるのと同じく、パラヴァニの中身も何通りもあるのです。  おもしろいので別頁にまとめて書いてみます。
【創作上のパラヴァニ】  インドクジャクの雄。クジャクとしてはでかい。  スカンダの乗騎として普段はバイクに擬態している。今はNinja。ぎらぎら構造色の青。  バイク用駐輪場がなかったりおなかすいたり暇だったりすると勝手にクジャクに戻ってどこか行ってしまう。スカンダが呼べば帰ってくるし夜は単独行動を嫌がって帰ってくる。  人間の言葉は十分理解しているが、世ほどのことがないと喋らないが喋れる。  好物はタマネギと小松菜。蛇も鶏肉も虫も人肉も何でもつつく。
 元はアスラの王ターラカ。  シヴァの子にしか殺されない恩恵を受けて天界を支配したが、シヴァの子スカンダに敗北。クジャクの姿に変えられ乗騎となった。
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