#十二単衣を着た悪魔
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Ayaka Miyoshi in Junihitoe wo Kita Akuma / The Devil Wears Junihitoe Kimono (2020)
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I took advantage of my knowledge of other people’s fate. This is divine retribution. Why her?! Why not not punish me? …I don’t know why you feel this way, but… You cannot switch places with the departed.
#the devil wears junihitoe kimono#十二単衣を着た悪魔#genji monogatari#tale of genji#ito rai#heian period#every time I watch this I catch even more little details#like how the green robe rinshi was sewing before she died moves around their room#making it clear rai carries it with him everywhere#aaaand now I’m feeling sad again#watch it please#this movie is a treasure
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残されがちなパセリって栄養価の高い香味野菜なんですよ! 食べなきゃ損です
洋食和食を問わずあらゆる料理に添えられ、料理を美味しく映してくれるパセリ。
風味付けのハーブや付け合わせの野菜というよりは、いろどりを添える「飾りもの」の印象が強く、残念ながら実際に食べる方は少ないようです。
ですががこのパセリ、実に栄養価の高い香味野菜で、残してしまうは損です。
そこで今回は、ちょっと苦手で敬遠していたパセリの美味しい活用方法や、その栄養や効能についてご紹介します。目次
パセリの由来と歴史
そもそもパセリとは?
パセリの種類
パセリの栄養成分と効果効能
パセリの栄養成分と効果効能1・鉄不足を解消
パセリの栄養成分と効果効能2・デトックス効果
抗パセリの栄養成分と効果効能3・酸化作用
昔から伝わる殺菌効果
生パセリと乾燥パセリ・栄養価の違いがあるの?
乾燥パセリでもビタミンCの効果
乾燥パセリは栄養価よりも彩りや風味付けに
葉も茎も美味しく食べて十分にパセリの活用を
さっくりパセリの天ぷら
パセリの手作りソフトふりかけ
簡単便利な上万能なパセリソース
茎は煮込み料理で活用
自宅で簡単便利なドライパセリ
パセリの栽培方法する
苗から育てよう
水やりと日当たりの管理
収穫は春から秋にかけて
最後に
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パセリの由来と歴史
古くは古代ギリシャの詩人ホメロスの叙事詩に、「戦士は戦いの前に馬車馬を俊足にするためにパセリを食べさせる」と記されたように、パセリは古代ギリシャや古代ローマの様々な伝説や寓話に登場し、儀式や薬草として使用されていたことが伺えます。
ギリシャ神話では、アルケモロスが亡くなった時に流れた血からパセリが生えてきたとされ、葬礼競技での勝者への冠や、墓場に供える花輪として使用されたそう。
また、死が近い人の事を「あの人はパセリが必要になるね」と言い表すなど、「死」と関連する植物であったため、古代ギリシャでは食卓には決して出されなかったと言われます。
古代ローマにおいても食用としては使われず、宴会の席での「毒除け」としての首飾り、アルコールの匂い消し、消化を助ける薬など、おもに薬用効果が利用されました。また、「花嫁は悪魔よけとしてパセリの花輪を身に着ける」、「妊婦や授乳中の女性はパセリに近づかないようにする」、「パセリの発芽率が低いのは地獄とこの世を9回往復するため」などの迷信も多くあり、当時の人々のパセリの薬用効果に対する畏敬の念が表されています。
パセリが食用として使われるようになったのは、中世ヨーロッパになってからです。
9世紀のカール大帝の頃にパセリが食用ハーブとして栽培され始め、ヨーロッパ全土へ広がっていきました。
日本へは18世紀にオランダより持ち込まれ、「オランダセリ」の名がつけられました。
そもそもパセリとは?
パセリは地中海沿岸が原産のセリ科オランダゼリ属の二年草で、和名をオランダゼリといいます。
料理の風味づけの香味野菜として世界各国で利用される、とてもポピュラーなハーブなんです。
パセリの種類
パセリには、大きく分けて2つの種類があります。
細かく縮れた葉を持つタイプ(縮葉種)
平たい葉を持つタイプ(平葉種)
日本で主に使用されるパセリは前者の縮葉種ですが、ヨーロッパではイタリアンパセリなど後者の平葉種が一般的です。
チャイニーズパセリとも呼ばれるコリアンダー(パクチー・シャンツアイ)は同じセリ科の植物ですが、パセリとは別の属種です。
他の有名なセリ科の香草野菜には、セリ、三つ葉、セロリ、チャービルなどがあります。
パセリの栄養成分と効果効能
パセリに���鉄分、βカロテン、ビタミンC、ビタミンK、カリウム、カルシウムなどの栄養成分が多く含まれ、その栄養価の高さは野菜の中でもトップクラスですよ。
パセリの栄養成分と効果効能1・鉄不足を解消
パセリは、緑黄色野菜の中で最も鉄分が多く、その含有量はほうれん草や小松菜より数倍もあります。
鉄分が不足すると、疲れやすい、やる気がでない、集中できない、頭痛、貧血、めまい、動悸、息切れといった体調不良を引き起こしますが、これらの症状は放っておくと生活習慣病へと繋がりかねません。
なので健康維持のためにも、普段から意識的に摂取したい成分のひとつ鉄分も、パセリを残さず食べると今より鉄分を補充できるんです。
パセリの栄養成分と効果効能2・デトックス効果
パセリに含まれるクロロフィルには、体内に蓄積された有害物質や老廃物を体外へ排出する解毒作用があります。
またパセリには体内の塩分バランスを整えるカリウムも多く含まれ、利尿効果により浮腫みの解消に役立ちます。
そしてβカロテンやビタミンCの抗酸化作用により体内の錆び(=活性酵素)を浄化してくれるなど、デトックス効果も抜群です。
抗パセリの栄養成分と効果効能3・酸化作用
パセリにはβカロテン、クロロフィル、ビタミンCといった抗酸化作用を持つ成分が多く含まれます。
この抗酸化作用は、体内に蓄積される老化原因となる活性酵素を抑制することで、動脈硬化や高血圧、脳梗塞、糖尿病といった生活習病を予防します。
またクロロフィルには、コレステロール値を下げる働きもあり、私達の健康を支えてくれる心強い存在です。
昔から伝わる殺菌効果
古くから知られていたパセリの殺菌効果は、独特の苦味成分アピオールによるものです。
この働きにより、雑菌の繁殖が阻まれ、口臭予防、食中毒予防などに効果があります。
お弁当などの付け合わせに使われている理由にも納得です。
生パセリと乾燥パセリ・栄養価の違いがあるの?
ところでこの栄養たっぷりのパセリですが、野菜売り場にある生パセリと、手軽に使え保存もきく調味料売り場にある乾燥パセリとでは、栄養価に違いはあるのでしょうか?
乾燥パセリでもビタミンCの効果
パセリに含まれるビタミンCは過熱に弱いため、乾燥させたパセリにはビタミンCの効果は期待できないと思われがちです。
確かに加熱処理した乾燥パセリでは、ビタミンCの栄養価は多少減少しますが、加熱しないフリーズドライ製法の場合、ビタミンCの栄養価は80%ほどを保持しているそうです。
乾燥パセリは栄養価よりも彩りや風味付けに
もともと乾燥パセリは、生パセリのひとつの保存法です。
栄養価を求めるよりも、料理の彩りや風味付けとして手軽に活用するのがお勧めです。
ただし時間が経つと色合いや風味も落ちてきますので、保存用であっても早めに使い切るように心掛けて下さい。
葉も茎も美味しく食べて十分にパセリの活用を
さっくりパセリの天ぷら
一口大の大きさに切り分けた生パセリを、薄目の衣でさっくりと天ぷらにしてみてはいかがでしょうか。
火を通すだけで、パセリ独特の苦みや口に残る固い食感が減り、美味しい風味が際立って、パクパクと沢山食べられちゃいます。
パセリの手作りソフトふりかけ
蕪や大根の葉で作るソフトふりかけのパセリバージョンです。
生パセリの葉と茎をザクザクと細かく刻み、少量のゴマ油でゆっくり炒め、塩と醤油で味付けし、水分が飛んできたらできあがり。
ご飯がすすむ1品で、お好みでゴマやチリメンジャコなどを加えると、さらに美味しさが増しますよ。
簡単便利な上万能なパセリソース
いつもの料理にサッと加える乾燥パセリを、手作りパセリソースに代えるだけで、びっくりするほど風味が変わります。
生パセリ、オリーブ油、クルミ、パルメザンチーズ、ニンニク、塩コショウをフードプロセッサーにかけてペーストにします。
バジルで作るジェノバソースよりクセがなく、どんな料理にも合う万能ソースに。
茎は煮込み料理で活用
生パセリの茎は、固くて苦くて、ついつい残してしまいがちですが茎が余ってしまったら、スープやシチューなどの煮込み料理の香りづけ、ブーケガルニとしての活用がお勧めです。
しかもパセリの茎は葉よりもずっと香りが高く、少量でも効果的ですが、繊維質の食感が残るためダシ袋などに入れて使用すると便利です。
ブーケガルニとして使われる香味野菜はパセリの他にも、セロリ、ローリエ、タイムなどがあり、単品でも一緒にしてもOKです。
自宅で簡単便利なドライパセリ
せっかく買ってきた生パセリが使いきれず余ってしまったら、ドライパセリにして保存しましょう。
作り方はいたって簡単。葉の部分だけを切り取って、耐熱皿の上に重ならないように並べ、電子レンジで4~5分加熱します。
取り出して様子をみて、パリパリに乾燥してい���ら出来上がり。(乾燥が足りないようでしたら、さらに過熱します。)指でつぶしてパラパラの状態にして、タッパーやジップロックで保存します。
パセリの栽培方法する
パセリはベランダやキッチンでも手軽に栽培ができ、春から秋にかけての長い期間収穫が楽しめます。
自分で育てた摘み立てのフレッシュなパセリを、毎日の食卓に載せてみてはいかがでしょう?
苗から育てよう
パセリは種からでも育てられますが発芽率が低いため、苗を鉢やプランターへ植え付けて育てた方が容易です。ただし植え付けの際は根を崩さないように注意してください。
水やりと日当たりの管理
水はけのよい土を好みますが、乾燥に弱いので水やりはしっかり、春から秋にかけてはパセリが育つ時期ですので、土が乾かないように管理します。
また、適度な日当たりは必要ですが真夏の直射日光などは避け、明るい日陰で育てるのが最適です。
収穫は春から秋にかけて
パセリの成長は早いので、食べごろになったら外側から少しづつ使う分だけ収穫し、常に10枚くらいの葉を残しておくと、続けて何度も収穫が楽しめます。
また初夏に花をつけると葉が固くなりますので、花茎が出たら早めに摘み取ります。
最後に
思った以上に栄養満点で美味しい食べ方もたくさん、そして栽培も手軽で保存も簡単です。
#パセリ #ハーブ #料理のアクセント #グリーン #健康 #栄養 #レシピ #食材そんなパセリの新しい魅力を、これからの日々の生活に活かしてみませんか。
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映画『ソドムの市』(2004)
Amazon Primeで高橋洋監督の映画を二本続けてみました。
一つは『ソドムの市』(2004)。
パゾリーニの『ソドムの市』(1976)ではありません(パゾリーニの方は留学中にパリの映画館で見ました。もう一度見たいと思うような映画ではありません)。Amazon Primeでパゾリーニを検索したら、こちらが出てきたのです。
数日前、私は『笑う警官』とか『長いお別れ』とかすでにある有名な作品のタイトルを別の新しい作品につけるのはいかがなものかと書きました。『ソドムの市』に関しても同じことが言えます。
ただ、これはこれで面白い作品ですし、『ソドムの市』というタイトルにしかできなかった理由もわからなくはありません。
物語は俎渡海(そどむ)市兵衛なる人物の結婚式から始まります。花嫁が祭壇に来て、市兵衛は嬉しそうな顔で迎えます。するとその瞬間、花嫁は血を吐いて死んでしまいます。
花嫁が着ているウエディングドレスを探ると、花嫁の絵姿に何本も針を刺したものが出てきます。「これは呪いだ。花嫁は何者かに呪いをかけられたのだ」、「こんなことができるのは、お付きのキャサリンとテレーズしかいない」と言って、市兵衛は二人の侍女を連れて来させます。キャサリンとテレーズはどこからどう見ても日本人です。
もちろんここは笑うところです。
高橋洋はあの迷作『発狂する唇』(2000)、『血を吸う宇宙』(2001)の脚本家ーー『ソドムの市』はその二作の系統に属する不条理ナンセンスコメディーなのです。
市兵衛はキャサリンとテレーズを拷問にかけ真相を吐かせようとします。井戸のようなところに入れられ首まで雪に埋められたキャサリンとテレーズは、あくまで無実を主張し、市兵衛に呪いをかけながら死んでいきます。
するとそのと��、横溝正史の『悪魔の手毬唄』に出てくるような老���が現れます。老婆は俎渡海の下働きで、針刺しを置き忘れていったと言います。はい、花嫁の絵姿に何本も針を刺したものというのは呪いの品ではなく、老婆が忘れていった針刺しだったのです。
もちろんここも笑うところですね。
大変なことをしてしまったと後悔する市兵衛に祭壇の十字架の影が落ちます。市兵衛は苦しみだし、目が見えなくなります。
すると突然、床が割れてそこから棒のようなものが出てきます。私には単なる鉄の棒に見えましたが、どうやら仕込み杖のようです。
目が見えなくなった市兵衛は仕込み杖を取って、周囲にいる人間を斬りまくります。
つまり……『ソドムの市』の「市」は「座頭市」の「市」だったわけです。
そこで「300年後」のテロップが出ます。
え? ということはこれまでの場面は江戸時代の話なの?
野原で子どもたちが缶蹴りをしています。一人の少年が缶にギザギザの切れ目を入れて「この方がかっこええやろ」となぜか関西弁で言います。画面の下に「俎渡海一郎、10歳」とテロップが出ますが、全く子どもには見えません。おっさんです。
子役を雇う金がなかった……のではなく、笑わせるために絶対わざとやってますね、これ。
一郎がギザギザをつけた缶を蹴ると、一緒に遊んでいた子どもの顔に刺さり、その子どもは死んでしまいます。
一郎が死んだ子どもの葬式(なのかな?)に行くと、子どもの母親(なんと秋本奈緒美が演じています)が「あんたのせいでうちの子は」と言って一郎につかみかかってきます。揉み合ううち母親は勢い余って飛んでいき、祭壇に置かれていたギザギザのついた缶に刺さって死んでしまいます。
一郎は妹のキャサリン(!)に「俺10歳なのに、もう三人も死なせてしまった(え? 二人じゃないの? いつの間にもう一人死なせたんでしょう)。俺の人生これからどうなるんだろう」と言い、「結婚できないかもしれない(え? そこ?)」と言います。キャサリンは「それなら私がお兄ちゃんのお嫁さんになってあげる」と言います。
「20年後」とテロップが出て、一郎の結婚式の場面になります。花嫁はもちろん妹のキャサリンではありません。300年前市兵衛と結婚するはずだった花嫁と同じ女優が演じる女性です。
キャサリンは披露宴にセーター姿で参加しています。
え? 花婿の妹なのにセーター?
衣装代がなかった……のではなく、笑わせるために絶対わざとやってますね。
キャサリンは水差しに毒を盛り、花嫁は一郎の目の前で血を吐いて死にます。
どういう経緯だったか忘れましたが(忘れたんかい!)、一郎は目が見えなくなります。床が割れて鉄の棒のようなものが出てきます。もちろん仕込み杖です。
目が見えなくなった一郎は仕込み杖を取り、そばに駆け寄ってきた妹キャサリンを斬ってしまいます。そこから一郎は披露宴の出席者を斬って斬って、斬りまくるーーソドムの市の復活です。
次の場面では棺桶を引きずった一郎が荒野を歩いています。棺桶の中には妹キャサリンの遺体が入っているのでしょうが、まあこれは明らかにマカロニウエスタンへのパロディーというかオマージュですね。
すると一本だけ生えた木の根元で一人の男がうずくまっています。一郎は男に「腹が減っているのか」と言い、近くの蕎麦屋(なぜ荒野に蕎麦屋があるのかと思わないではないですが、あるのだから仕方ありません)に言ってカツ丼を食べさせます。
勘定を頼んで、店の人間が「2400円です」(一郎は男にカツ丼を2杯おごり、自分も1杯食べたので、カツ丼の値段は800円ということになります。まあ、そんなもんですね)と言うと、一郎は仕込み杖を抜いて店にいる人間を全員斬り殺します。
派手な食い逃げですね。もういちいち書きませんが、もちろん笑うところです。
男を手下にして、しばらくまた荒野を歩いていると、一本だけ生えた木の根元で今度は女がうずくまっています。一郎は女をそば屋に連れて行き、カツ丼を奢り、店にいる人間を全員斬り殺します。その時偶然、女性客がトイレから出てきます。妙に色っぽいちょっと年増の女性ですが、彼女は一郎に抱きつき「あんたについてくわ」と言います。
こうして手下が三人できた一郎は世界征服(!?)に乗り出す、そして彼を捕まえようとする女刑事テレーズ(!?)と戦うことになるのですが、大笑いしたのはそこまでで、そこから先はちょっとなかだるみ。ラストも登場人物たちが延々と意味もなく斬り合うだけなので、紹介はそこまでにします。
キライじゃないですよ、こういう映画。というか貴重だと思います。
役者はみんな下手くそです。でも、いいんです。わざとそうしているわけですから。SFXもちゃちです。新幹線も飛行機もおもちゃにしか見えませんし、ピアノ線が見えています。でもいいんです。わざとそうしているわけですから。
なかだるみせず、もう少しコンパクトにまとめて、最後まで疾走できれば、傑作になっていたと思いますが、このままでも十分いい映画です。
不条理ナンセンスコメディーがお好きな方、そういうものを許容できる方は是非、『発狂する唇』、『血を吸う宇宙』と合わせてご覧ください。
Keep watching the sky !(見た人にしかわからないと思いますが、『血を吸う宇宙』の阿部寛の決め台詞にして名台詞です)。
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【SS】この世界から隠れんぼ
『チェインパラドクス』 © 恵門・唯衣のプレイヤー/くらりん/トミーウォーカー
改竄世界史に向かうパラドクストレインは新宿駅のホームに発着するため、都外に在住する復讐者が改竄世界史へ赴く際には一旦新宿区と在住地域を繋ぐ別のパラドクストレインに乗車する必要がある。 移動に要する時間こそほんの一瞬とは言え、手間であることには違いない。
復讐者の身となったからには世界を救うために頑張っていきたいと思ってはいるものの、事に臨む前に何度も電車を乗り換えるのはそういうものにあまり親しみの無かった私としては気持ち的にしんどいし、そして戦いを終えた後に同じようにして家まで帰ってくるのはもっとしんどい。 とは言え私は一人暮らしが出来る年齢ではないし、仮に年齢が足りていたとしてもたった一人きりの生活なんてとてもじゃないが営めそうにない──
──概ね、そんな感じの理由により。
最終人類史基準時間の2023年5月某日。 家族と共に京都市近郊から奪還済の東京都内にある賃貸マンションへと引っ越してきた私は、自身に割り当てられた部屋の内装をある程度整え終えた後、これから私たち一家が毎日使用することになる予定であるところの小綺麗なバスルームにて、お湯に浸かって一息ついていた。
我ながら大分急な申し出だったな、と思ってはいる。 各所の手続きがある程度スムーズに行ったのは本当に幸運だった。私のわがままを受け入れてくれた家族にも感謝しないといけない。これで今後の復讐者活動にも身が入る、というものだろう。
……まあ、実のところ。 私は心の奥底に、全く別の真意を秘めていたのだけれど。
噂に聞くところによれば、程なくして発生すると予見されている『七曜の戦』という奴は、全ての改竄世界史が地続きとなり全世界が戦場となってしまうようなめちゃくちゃな規模で発生する代物らしい。 ならば、重点的に防衛されると思しき新宿区の付近へと移り住んだ方が安全なのではなかろうか。そう、私は考えたのだ。
元も子もない言い方をしてしまうと、今回のこれは家族に事前避難して貰ったみたいなものである。逆疎開、とでも呼ぶべきだろうか。
京都付近を守護してくださる予定の復讐者の皆さんを信頼していない訳ではもちろん無いし、当然私自身も生まれ育った街に近しい地域を護りに行くつもりではあるけれど、それでも。 万が一にでも、私の大切な家族が失われてしまったら──そんな風に少し想像しただけで私は比喩表現ではなく本当に夜も眠れなくなってしまうくらい��から、もしも現実にそんなことが起こればきっと私の頭は完全におかしくなってしまうに違いない。 だから、今回のこれは家族のことだけに限らず私自身の頭、もとい精神を守るための行動でもあった。少なくとも、私自身の心象としてはそんな感じだ。
ただ。その辺りの込み入った事情というか、私の考えそのものについての話は、直接家族にはしていない。後ろめたい気持ちがあったからだ。 だってどう考えたって卑怯っていうか、復讐者としてちゃんと活動してるんだからある程度わがまま言っても許されるよね、みたいな浅ましい魂胆が丸出しの事柄だし。 自分の都合で引っ越しをして貰うという時点でかなりの申し訳なさがあるというのに、さらに自分勝手で邪な意図を含んでいるだなんて──この最終人類史に生き復讐者という存在を信じて共に戦っている人々に対する裏切りというか、他ならぬ復讐者の方々自体に対する背信行為にも似た意図があるだなんて、知られる訳にはいかない。< もしかすると邪とか裏切りとかとまでは言えないかも知れないけれど、少なくとも私の個人的な心象としてはそんな感じである。だから、話せる訳がない。拒絶の感情を示された場合はもちろんのこと、仮に受け入れて貰えたとしても間違いなく心の中に悔恨の念が残るからだ。
故に、私は単に先程思い返したような──手前味噌ながらもある程度年相応の可愛らしさがあり、ごくごくつまらない、だからこそ真実味のある、そしてある程度は真実も混ざってはいるそれっぽい理由を提示した上で「東京都内に引っ越しをしたい」と伝え、そしてそれが受け入れられ、転居に関する諸々の手続きをして貰って………その諸々の結果として、無事こうやって一人穏やかにお風呂に入れているという訳だ。 まあ、本意をカミングアウトをしていない今現在の私の心の中にも、少なからずもやもやとした感情が渦巻いてはいるのだけど。
「……どうするのが、一番よかったのかな」 ぽつり、と呟いた後、私はぶんぶんと頭を振る。先程シャワーを浴びた名残である所の髪の毛に残っていたす水気が払われると共に壁面へと叩きつけられ、何粒かの水滴を作った。
もしも、の話を考えても仕方のないことだし、そもそもまだ結果すら出ていないのだから一番いいも何もない。私がとった今回の行動が最良だという可能性も普通にあり得る。 だから、今考えるべきことはもっと他にあるはずだ。例えば─────そう。復讐者として今後ちゃんとやっていくため、もっと上手く戦う方法、とか、に、ついて………。
あっ駄目だ、今この状態で難しいことを考えたら間違いなくこのまま寝る。 先日まで住んでいた家にあったような狭いお風呂でならまだしも、この新居のそれなりに広い浴室に存在する、今まさに私が浸かっているこの湯船で睡魔に襲われてしまったら、最悪溺死するかも知れない。 そんなくだらない理由のもと素っ裸の状態で新宿島の海岸に流れ着いたら後世までのお笑い草だし、多分恥ずかしくて自発的に死ぬ。というかそもそもの話、万が一にでも甦れなかったら洒落にもならない。
“いのちだいじに”。 そんな標語じみた響きのある、有名なゲームのコマンドに書かれていた言葉を思い返すようにしつつ、私はこのぬくぬくとした場所から脱することを決めた。
◆
浴室の戸の前、大きな鏡が備え付けられた洗面台がある場所にて私が濡れた体を拭いていると、突然がちゃり、と音が鳴ると共に傍らの扉が開け放たれた。
「あ、唯衣ー。今から焼肉食べに行かない?」 「今から!? 私いまお風呂入ったばっかりなんだけど!!??」
慌ててバスタオルで体を隠しつつ、私はその闖入者──姉に対して、非難の視線を送った。 さすがにお父さんが近くに居たりするようなことはないとは思うけれど、いきなり過ぎてびっくりするからノックくらいはして欲しい。本当に。
「いや、なんか二人とも急ぎでやることあるらしくってさ。外食ついでに何か手軽に食べられるもの買ってきて、って言われたんだよね」 小部屋の扉を閉めつつ、彼女はぽりぽりと頬を掻くようにしながら事情を説明する。 「お風呂は帰ってきてからまた入ればいいじゃん? 唯衣は普段頑張ってるんだし、それくらいの贅沢は許されるでしょ」
……頑張ってる、か。そりゃまあ、本来の日本基準で考えうる所の普通の女子中学生に比べれば、十分すぎるほどに頑張っている方だとは思うけれど。
別に私だけじゃなくて、この最終人類史で暮らす人々は──そして改竄世界で必死に生き延びている人々は、皆さん頑張っているものなのではないか。 この期に及んで家族の安全のことしか考えていない、我欲まみれの私なんかよりも、ずっとずっとずーっと、努力しながら生きているんじゃないだろうか。
「あ、また何か暗いこと考えてるでしょ。そういう顔してるよ?」 背を屈めた姉の顔が眼前に現れ、私は慌てて取り繕う。 「まあ……うん、ちょっと──お腹が空いちゃってて。焼肉に行くかどうかはともかく、何か食べるのは大賛成!」
しゅたっ、と姿勢を正して挙手してみせた私の姿を見て頷くようにした後、姉は微笑みと共に言葉を返す。 「お店探すついでに、ちょっと散歩とかもしよっか? 気持ち的に疲れてるなら、無理にとは言わないけどさ」 「平気平気、ディアボロスはこれくらいじゃあへこたれない! 任せてくださいよ!」
そんな風にして、おどけて返答しつつ。 世界の平和はもちろんだけど、それより何よりこの日常を、大切な家族を失う訳にはいかない──そんな��欲で汚れた自身の心を覆い隠すようにして、私は衣服を着用する。
外行きの私服に身を包み、姉と一緒に新しい街へ。 この先どうなるかはわからないけれど。明日からの運命を、私自身の手で変えていかなくっちゃ。
p.s.
大森靖子 - 焼肉デート(YouTube)
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One's property
昔、親に売られ奴隷となった少年が出てくる物語を読んだ。 それを読んだ頃の自分は、人買いが当たり前に存在している物語を昔話だと考えていたと思う。 世間知らずだったと言えばいいのだろうか。人の売り買いが今も行われていることなんて知りたくもなかったけど。 そんなことを考えて、久しぶりに頭がはっきりしているのを自覚する。少し眠れたのかもしれない。今、自分がいる場所は窓も明かりもなく、時間の感覚がわからなくなる。 ここを部屋と呼んでいいのだろうか。岩壁から石を切り出したあとのような空間の床とも地面とも言い難い場所で寝起きし、包まるための布切れを一枚だけ与えられている。 扉は、開かない方が嬉しい。 外に出たってきっといいことはない。水を運んでくる男はそれだけのためにくるわけではないし、出入りする人間はみんな僕を売り物にふさわしくするためにやってくる。 ふさわしいも何も、親に売られたのだから僕はもう売り物だ。 空っぽのお腹が痛む。極度の空腹と呼ばれるものはここに来て初めて味わった。ここに来て数日経った頃だ。 ここにくる前、確かに我が家の食事は質素になっていったがひどい空腹を抱えることはなかったように思う。家族が飢えに慣れる前に子を売った親は何を思っていたのだろうか。 考えても無駄なことだった。 ◇ 宿に戻った自分が、焦りを隠せていなかったのはあるだろう。 そもそも、彼は吉報を受ける気しかなかったはずだ。 こんな小さな町で越してきたばかりの親子を見つけられないなんてことがあるはずがない。 だと言うのに、従者は手ぶらで、平静を装えていないのだ。 俺が主人――この場合は主人の息子だ――からの叱責に怯えるようなタマでないのは彼もよく知っている。 「ジルはどうした」 その言葉とともに発された殺気と呼べそうな気迫は、甘やかされて育った坊ちゃんの出すものではなかった。 ◇ 誰かの、ここに来て聞き慣れたものとは種類の違う悲鳴が遠くから聞こえ、部屋にいた男が慌てて外に出て行く。 うめき声や他人の気配にはもう慣れてしまったが、いつもと違う物音を拾い上げる能力はまだ残っていたようだ。 この部屋の近くには同じような場所がいくつかあり、そこには買われたばかりの奴隷や買い手の決まった奴隷がいて、必要な躾を受けるのだそうだ。 この部屋に放り込まれた時、明日には逃げる気も無くなると馬鹿にするように言われたのを思い出す。 その時の僕は、商人から金を受け取る父親の考えの読めない表情を思い返していて男の話はほと��ど聞いていなかった。 騒ぎが少しずつこちらに近づいてくるのを感じた。騒ぎの中心にいる人物は外から来た客で、ずっと何かを怒鳴っている。突然の訪問だったのだろうか。こちらに近づいてくるということは誰かを買うことが決まっているのか。 男たちは客を宥めるのに必死のようだ。それなら、しばらく休めるかもしれない。 扉と反対に頭を向けて地面に横たわる。少しでも外界を遮断するために耳をできる限り塞いだ。 客の怒鳴り声が近づいてくる。耳を塞いでも聞こえる声が邪魔だ。 その客は、すでに買い手の決まっている奴隷を自分のものにするために男たちを脅しているらしかった。 ◇ 元々、半分は休暇、半分は面倒ごとを押し付けられたような仕事だった。 主人の商談兼周遊に付き添うのが普段の俺の仕事で、やってることはほとんど護衛。商売のことはまるきり素人だ。 少し長めの旅を経て本宅へ帰るとお坊っちゃまの家庭教師がそいつの息子を連れて引っ越していた。 引っ越しの馬車が出たのは一昨日。ほとんどすれ違いだったようだ。 家庭教師の息子ーージルはお坊っちゃまのご友人で。まぁ坊ちゃんにはそれを寂しがって落ち込むような可愛げはない。案の定、俺を見るなり友人の引っ越し先に連れて行けと仰せだった。 坊ちゃまは、我慢することを知らなくて、目的を達成するために選ぶ手段はお父上よりもさらに強引だ。 屋敷に帰ればほとんど仕事のない俺は、いいじゃないか行ってやれという主人の軽い言葉とともに坊ちゃんとの二人旅へと送り出された。 想定していた面倒というのは十とそこらの年の子供――我儘なお坊ちゃまが旅の道中や友人との別れにどれだけ不平不満を漏らすのだろうかということで。 面倒ごとの内容が想定していたものと違っていた今、ここにいるのが俺でよかったという気持ちは間違いなくあった。 なんせ、荒事には慣れている。 ◇ 客の怒鳴り声がすぐ近くで止まったかと思えば部屋の扉が開く。肩がびくりと震えるのは反射的なものだ。 荒っぽく入ってきた男に肩を掴まれ立ち上がることを強いられた。男の片手が首元にかかり顎を押し上げる。強引にあげられた顔は部屋の入り口に立つ客の方へ向いている。 扉がこんなに長く開いているのは久しぶりのことで、その明るさに目が慣れない。 客の顔はよく見えなかった。身なりはいい。少なくともこの部屋を出入りする男たちよりはよっぽど。 声から想定していたように男性だ。 男たちは、客に対して、僕がいかに商品にふさわしくないかを伝えるのに必死だ。既に買い手がついている奴隷というのは僕のことだったのか? 男性は、鋭い口調で男たちの言葉をことごとく否定する。 薄汚れているといえば洗えばいいと。丈夫でないといえば肉付きは悪くないと。 まるで家畜の売り買いのようだ。多分、話している人間たちは本当にそういうつもりなんだろう。 「こいつと並べるんだ。売りたくないなら商品を見せるべきじゃなかったな」 客が、彼の後ろに隠れていた人物の腕を掴んで目の前に押し出す。薄布ーー安さで薄いのではなく丁寧に作られた美しい布ーーを纏った高級そうな奴隷。装飾の鎖がシャラリと揺れる。 背の低いその人物ーー大人たちの間から現れた子どもの青い髪と、目つきの悪く偉そうな顔を僕は知っていた。 ◇ 「俺様も連れて行け」 ジルのところに向かうのなら、と暗に示すその言葉は、大人としては拒否するのが当然だったのだと思う。 ジルに起こった悲劇を、包み隠さず話したことも、間違っていたのだ。 悲劇自体は一言で説明がつく、金に困った親が子を売って、その子は奴隷の身分となった。 十分な給金を得ていた筈の父親がなぜそんなことをしたのかはわからないが、そんなことはどうでもよかった。 人身売買は、禁止されている領地も増えたが行われている土地まだまだはある。 ましてや、ここは未踏地に近い土地だ。わざわざ摘発し、処罰されるとは思えない。かといって、昨今ではクリーンな商売とみなされることも少ない。ジルを買い取った商人たちもガラの悪い連中の集まりだと思っていいだろう。 「連れて行くには条件があります」 思えばこの時点で、ジルを買い戻すのだということについて迷いがなかった。 坊ちゃんが黙って俺のいうことを聞いてくれたのも、俺たちの目的が同じだったからかも知れない。 ◇ こんな場所で知った顔を見たことに対する驚きに、声を出すことは許されなかった。 最近呻くことしかしていなかった喉と肺が音を作ることができなかったのだ。 ◇ そこからはもうめちゃくちゃだ。 坊ちゃんにつけた条件は、自分が情報を集めて戻るまで宿を動かないこと。 必ずジルの元に連れて行くが、向かう先では喋らないこと、俺のいうことを必ず聞くこと、それだけだ。 金は、二人旅には潤沢すぎるほど持っていたが人を買う相場のことを思うと不安がある。 そもそも、用途を果たせばなんでも良いというわけでなく、特定の品物が手に入らなければ意味がないのだ。 舐められたら金なんていくらあっても足りないだろう。 幸いーージルに起こったことを思えば不幸でしかないが幸い、ジルの売られた先は簡単にわかった。 馬鹿親父は引っ越し先と伝えた街に未だ滞在しており、息子が売れた後の売り上げをもらうのを楽しみに待っていたようだ。 俺の知る限りの人身売買は即金のやりとりが当たり前だ。こいつも騙されていたのかもしれないがそんなことはどうでもいい。 ジルの売られた先は、案の定ゴロツキの巣のようだった。 ◇ なんのつもりだ!?と怒鳴ろうとした息は最初の音以外が全て咳に変わる。 最初の馬車に乗った時に渡されていた水の皮袋を改めて口元に寄せられたので仕方なく喉を潤す。 過ごしていたのは土埃まみれの乾いた部屋だった。まだ、声を出せるようにはなっていないのかもしれない。 あの後、僕は幼馴染そっくりの子どもを奴隷として連れた男に買い取られた。脅し��ためだろう、交渉の中で男が一人床に転がっていた。 そして馬車に乗せられ、なぜか一度馬車を乗り換えた今、ようやく喋ることを許可された。最初の馬車に乗せられた時に言われた黙ってろの言葉を律儀に聞く必要もなかったのだが。 「ジル、聞きたいことには全部答えてやるからとりあえず落ち着け。」 僕にそう告げる男は、客として部屋の扉をくぐった男で、明るい場所で服装を変えると幼馴染の父親の従者だとわかった。 あの場所で僕の前に現れた目つきの悪い幼馴染は、その時に着ていた奴隷然とした衣類や装飾を外し、いつもの服装に戻っている。 「なんで、ベリトくんが」 ようやく口から出た声は、ひどくかすれて細かった。 ◇ かつて岩の切り出し場だったであろう岩壁にいくつかの掘っ建て小屋とテントを建てた奴隷市場。 その一角で男を一人殴り飛ばし、駆けつけた連中を相手に怒鳴り散らす。殴られた男は泡を吹いて倒れているが知ったことではない。 今の俺は、やんごとない身分の主人のために奴隷を買い付けに来た使用人だ。既に一人は奴隷を得ていて。もう一人、見目のいいガキを探している。 見せられた奴隷が気に入らないので、仕込みが終わっていなくても構わないから仕入れたばかりの奴隷を見せろと市場の奥に入り込んだのが今。多分、ジルがいるのもこの辺りだろう。 腕っぷしには自信がある。相手が刃物を持ち出して来ても、まぁどうにかなる。 赤毛のガキが入荷されたのは知っている。今すぐ譲れを声を荒立てれば、及び腰の男があのガキはもう買い手がついたから売れないと言う。 最悪だ。坊っちゃまが俺の背後から奴隷商たちを睨みつけたのがわかった。 買い手とは近くに住む好色な富豪のようで、男たちの口調から上得意とーーつまり頻繁に奴隷を仕入れているのだと察せられる富豪が、買い取った奴隷をどれほど酷く扱うのかは想像に難くない。 ◇ 質問に、幼馴染は答えてくれなかった。 僕を買い上げた男曰く、彼らは、というよりベリト君は僕に会いに来たらしい。 僕は会いたくなかった。 そんなことを言えばベリトくんは怒るだろうけど。あんな場所で会うくらいなら、会いたくなかった。 僕が自分の気持ちを口に出すまでもなく、ベリトくんの機嫌は最悪だ。 多分、怒っている。だれに、何に怒っているのかは知らない。 ◇ 強引な商談だった。 恫喝と暴力と賄賂の金細工、トータルでは安く上がったと思う。男たちが値付けができないのか、ジルの父親が売り込みをしくじったのかは知らない。 教養があって見目の良い子どもだ。金は足り苦しいと踏んでいた。 とは言え、派手な金の使い方をした。ジルを買い戻せたいからには金を惜しむ理由もない。 追跡を警戒して馬車を乗り換える。帰路で襲われて奴隷を奪われるのは馬鹿らしい。 ジルを買う予定だった貴族とやらに追いかけられてもたまらない。 一息ついてジルに声をかける。砂埃にやられた喉では喋りにくそうだった。 ジルから離れて座る坊ちゃんは静かだ。奴隷市場から出たら話すなという約束も終わるし、ジルに声をかけるかと思っていた。 ジルの質問にも答えない。仕方がなく俺が返事を返す。 頻繁に咳き込み、水を飲むジルに、食えそうならばと干した果実を与える。落ち着いたら何日食ってないのかを聞かないといけない。 急に坊ちゃんが口を開く気配がした。 一言だけしゃべって再び押し黙った坊ちゃんの言葉は素直でないガキの言葉にも聞こえたが、その表情は何かを悔しがているようにも思えた。 自分の無力を感じでもしたのだろうか。金がなければ何もできなかったのだから坊ちゃんには十分な力があったのではと言うのは俺の考えでしかなくて。言っても納得はしないだろう。 ◇ ベリトくんが静かな声で言葉を発する。 その言葉を聞いて、僕はベリトくんに助けられたのでなく、彼に買われたのだと気付いたのだった。
(再掲:初出2021年7月4日)
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エーガね!REPORT「movie@theater 映画の力を信じて!」 ▶︎11月14日(土)に映画『十二単衣を着た悪魔』公開記念名古屋舞台挨拶がミッドランドスクエア シネマで開催され、映画上映前にメガホンをとった黒木瞳監督と、カリスマ的キャラクターの弘徽殿女御を熱演した三吉彩花さんが登壇! https://ameblo.jp/mottomovie/entry-12638040407.html #movieattheater #映画の力 #映画館に行こう #十二単衣を着た悪魔 #三吉彩花 #黒木瞳 https://www.instagram.com/p/CHkwxgbjZUf/?igshid=1xnjrzn8fx3zx
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キノフィルムズ10周年&キノシネマ3周年記念フェスティバルにて『ミッドナイトスワン』の上映決定!
このたび、キノフィルムズ10周年&キノシネマ3周年記念フェスティバルでの上映作品の発表がありました。
みなさまに投票していただいた結果、『ミッドナイトスワン』の上映が決定いたしました。
投票ありがとうございました!
■上映作品:
① 『偽りなき者』(2013/3/16公開)
② 『クソ野郎と美しき世界』(2018/4/6公開)
③ 『ミッドナイトスワン』(2020/9/25公開)
④ 『十二単衣を着た悪魔』(2020/11/6公開)
■上映劇場:
キノシネマ横浜みなとみらい/立川髙島屋S.C.館/天神の3劇場
■上映期間とタイムテーブ���:
2021年10月1日(金)~10月7日(木)迄
上映タイムテーブルは9月21日(火)より各劇場サイトにて発表予定
※上映期間は変更になる場合があります
■キャンペーン公式サイト:
https://kinofilms.jp/10th-3rdanniversary
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Junihitoe wo Kita Akuma (2020)
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Intro credits for The Devil Wears Junihitoe (2020)
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キスをしたのは初めてじゃない
騙されたと勇利は思った。アイスショーが終わったので、食事をしないかとクリストフに誘われ、やってきたものの、それは勇利が想像していたものとちがった。勇利としてはクリストフと夕食をともにするのだと思って気軽に応じたのに、そこにはたくさんのスケーターがいて、どうやら会食という状況らしかった。勇利がうらめしそうな顔をすると、クリストフは平然として肩をすくめた。 「ふたりでなんて言ってないからね」 それはそのとおりだ。そのようには明言されなかった。しかし、いかにもふたりなのだと勘違いしそうな物言いではあった。意図的なものにちがいない。 勇利は絶望し、自分は帰ると主張したかったけれど、そうするといろいろ言われそうなので、果たしてこのまま黙って食事だけしてさっと帰るほうがよいのか、思いきってここでさよならと宣言するほうがよいのか、さっきから天秤にかけていた。 勇利だって、ほかのスケーターとまったく交流しないわけではない。話しかけられれば答えるし、知り合いも幾人かいる。だが、今回はだめなのだ。どうしてもだめなのだ。なぜなら──。 「ヴィクトル! 君のプログラムはよかったよ。すばらしかった。それに、演技のとき以外も、最初から最後までいきいきしてたね」 声をかけられたヴィクトルは笑い、「口やかましいコーチがいないからね」と気楽に答えた。勇利は彼に背を向け、視界に入らないようにするのに大変だった。 ヴィクトルがいるなんて。もうとんでもない。本当に帰りたい。けれど、彼を近くから見るよい機会ではある。ヴィクトルが勇利の存在に気がつかなければよいのだが。もっとも、ヴィクトルは名も知らぬ日本の選手なんて眼中にないにちがいない。それならいてもよいだろうか。ああ、困った。難しい問題だ……。 レストランに入ったとき、クリストフが勇利に小声ですばやく言った。 「ヴィクトルの隣に座りなよ」 勇利はものすごい形相で彼を見た。クリストフは笑い声を上げ、「そうなるようにしてあげようか?」とさらに言った。 「絶対にやめて」 「喜ぶと思ったのに」 「もう帰りたい。それにしてもヴィクトルはかっこいいね……永遠に見ていたいよ……」 「勇利、支離滅裂だよ」 さいわいなことにクリストフのとりはからいはなく、勇利はヴィクトルから離れた席で食事をすることができた。これくらいならバンケットでよくある感じだし、ヴィクトルをみつめていることもできるのでかなり都合がよい。勇利はほっと息をついた。 ヴィクトルは楽しそうに仲間たちと話している。そんな彼に勇利はうっとりして夢中になっていた。何かの拍子にヴィクトルの視線が動いたら、隣のスケーターの陰にさっと隠れることは忘れなかった。そんなことをしなくてもヴィクトルは勇利について思うところなどないだろうし、我ながら自意識過剰だとあきれるのだけれど、ついそうしてしまうのだ。それに、勇利のことをあまりに知らない彼が、「関係ない子がまぎれこんでるよ」などと言う心配もまったくないわけではない。 「ちょっと勇利、人がせっかくヴィクトルと近づきになれるようにしてあげたのに」 「いいの。ぼくのことはほっといて。見てるだけでしあわせだから。ヴィクトルすてき……」 クリストフが近くに来たときそんな会話をした以外は、勇利はほとんどしゃべらず、愉快そうなヴィクトルに感激して過ごした。やがて、すこしずつではあるけれど、スケーターたちがホテルに戻り始めたので、勇利も「じゃあぼくもここで」と席を立ってもよかったのだが、ヴィクトルを見ていられる機会という誘惑になかなかあらがうことができず、そのまま席に座り続けていた。しかし、あまりに仲間の数が少なくなると不安になるので、そうなる前に帰ったほうがよい。 ヴィクトルは酒を飲んでいた。彼は強いようでいくつもグラスを替えていた。勇利は、ヴィクトルってお酒も強いんだ……とめろめろだった。勇利はすこしも飲んでいない。そんなに何度も飲んだことはないけれど、いままで、酒に関してはよい思い出がない。こんなところで失態を見せるわけにはいかない。 勇利は時計を見、あと十分したら帰ろう、と時間をきめた。今日は本当にしあわせだった。ショーの自分のプログラムも悪くなかったし、ヴィクトルの演技も最高だったし、こうしてヴィクトルと食事ができたし──。 勇利がよいこころもちになっていると、ふいに、「ヴィクトル、大丈夫?」というクリストフの声が聞こえた。勇利はどきっとした。具合が悪いのだろうか? 「ああ……、大丈夫だよ」 さっきまで陽気に話していたヴィクトルは、いまは眠そうな様子で笑っていた。どうやら気分がよくないわけではないらしい。彼はあくびをひとつした。 「プログラムのことをいろいろ考えていたものだから、ゆうべあまり寝てなくてね」 「ここで寝ないでよ」 「平気さ。もう二、三杯何か飲めば目がさめる」 「あんまり感心しない方法だね。そろそろ帰ったほうがいいんじゃない」 「クリス、俺を追い払うつもりなのか?」 「心配して言ってるんだよ。ほら、文句言わずに帰りな。そうだ、かわいい子をお目付役につけてあげるから」 勇利は、ヴィクトルが帰るならそのあとに自分もホテルへ戻ろうと考えた。しかしヴィクトルの姿が完全に見えなくなってからだ。もちろん彼は勇利が同じ道にいても通行人としか思わないだろうけれど、勇利は彼に夢中なので、ただ歩くということだけでも平静でいられる自信がないのだ。ヴィクトルが店を出てから十分くらい間をおいて……と計画を立てていると、突然、「勇利!」と名前を呼ばれた。 「は、はい」 反射的に返事をしたところでまわりの選手が自分に注目していることに気がつき、勇利は赤くなった。なんだろう? 「え、えっと……、クリス?」 勇利は声がしたほうへ顔を向けた。そして耳までまっかになった。クリストフがヴィクトルと並んでこちらを見ており、手招きをしているではないか。 「ちょっとおいで」 「い、いえ、あの、けっこうです」 「何を言ってるの? 頼みたいことがあるんだよ」 「ここで聞きます」 クリストフだけならよいけれど、ヴィ���トルに近づくなんてとんでもない。勇利は断固として拒絶した。 「まったく君は……。まあいいや。ヴィクトルがホテルへ戻りたいそうなんだ。彼、ちょっと酔ってるし、眠そうであぶないから、一緒に帰ってあげてよ」 「……え?」 勇利はぽかんとした。言われたことを理解するのにかなり時間がかかった。ヴィクトルと一緒に帰る? ヴィクトルに近づくなんてとんでもないと思っていたけれど、それ以上にとんでもない話だった。 「えっ! あ、あの、ぼく……」 「勇利、さっきからもう帰りたいって言ってたじゃない」 「いえあのそれは」 「時計もちらちら見てたでしょ」 「そうだけど、でもぼくもうちょっといたいっていうか」 いたいというわけではないけれどヴィクトルとは帰れない。勇利はぶるぶるとかぶりを振った。クリストフは「そうか」とうなずいて溜息をつき、ヴィクトルのほうを向いた。 「ヴィクトルと一緒に帰るなんて絶対いやだってさ」 「クリス!」 なんてことを言うのだ! 勇利は飛び上がった。 「一緒に帰る! 一緒に帰るよ!」 「よかった。じゃあヴィクトル……」 クリストフがにやっと笑ったので、勇利は罠だと気がついた。しかしもうどうしようもない。勇利はうらみをこめてクリストフを見た。クリストフは笑いをこらえている様子だ。 「ふたりとも上着を忘れないようにね」 「ああ……」 「ヴィクトル、まだ帰らないとか言ってたのに、かわいい子をつけてあげるって言ったら急に素直じゃない」 「へ、変なこと言わないでよ!」 勇利は上着を腕にかけながら声を上げた。ヴィクトルが簡単に否定しそうなことを言わないで欲しい。わかっていることでも、はっきり拒絶されると傷つくのだ。 「じゃあ気をつけてね。とくに勇利、ヴィクトルを部屋に入れないほうがいいよ。何をされるかわからないから」 みんながどっと笑い、勇利はこれには「変なこと言わないで」と言うこともできずうつむいた。泣きたいくらいだった。ヴィクトルに「部屋までついていきたいほど魅力のある子じゃないだろ」と思われたにきまっている。 「それじゃあ」 ���ィクトルがみんなに挨拶し、勇利もぺこりと日本式に頭を下げた。クリストフが視線を合わせて合図するようにうなずき、笑った。勇利のためによいことをしたつもりなのだろう。半分はおもしろがってやっているのだ。勇利は、次に会ったら抗議してやる、とかたい決心をした。 それにしてもホテルまで歩くあいだ、いったい何を話せばよいのだろう? 勇利にはさっぱりわからなかった。ヴィクトルとできる会話なんてひとつもない。ずっと黙っていてもいいのだろうか。そもそも、隣を歩いてもゆるされるのか? 「上着を着ないのかい?」 店から出ると、ヴィクトルは気軽な口ぶりでそう尋ねた。勇利は「上着を着ないのか」というまったく平凡なひとことにさえ、ぼくに向けられた言葉なんだ……と感激した。 「え、ええ……、暑いので……」 「そうかな」 本当はすこし肌寒いくらいかもしれない。しかし勇利はさっきから汗をかいていた。頬も熱い。 「悪かったね」 ヴィクトルが明るく言った。勇利は何を言われているのかわからなかった。 「俺が帰るっていうだけなのにきみを巻きこんでしまって。クリスは、ああ言えば俺が素直に言うことを聞くと思ったんだよ。もっと楽しみたかっただろう?」 「い、いえ……ぼくは……べつに……」 「ああ、心配しないで。部屋に上がりこんだりしないし、何もしないよ。そんなにおびえなくていい」 ヴィクトルは微笑した。勇利は自分がそんなことを心配しているわけではないと──そんなにうぬぼれ屋ではないと言いたかったけれど、彼があんまりすてきなのでぼうっとなった。 「きみはとても魅力的だから、クリスが自分の友達を心配するのもわかるけどね」 あきらかにお世辞ではあったが、勇利はヴィクトルが言ったというだけでのぼせ上がってしまった。しかし、何か話さなければ。ヴィクトルが見ず知らずの勇利にこんなに気さくに接してくれるのだから、自分からも話題を提供するべきだ。だが勇利の頭にはほとんど何も思い浮かばなかった。 「あ、あの──、体調が悪いんですか?」 やっと言ったのはそんなことだ。まったく自分はつまらない人間だ。 「いや、そうじゃないよ。眠いだけさ。ショーが終わって気持ちがゆるんだのかもしれない。酔いも今夜は早かったから……、そんなに酔ってはいないけどね」 「そうですか……」 勇利はヴィクトルが心配になった。部屋まで行くつもりなんてなかったけれど、ちゃんと付き添わなければいけないような気がした。ずうずうしいと思われるだろうか? だが、もし廊下で倒れてしまったら……。 「部屋はどこなんですか?」 ホテルへ入ると、勇利は思いきって尋ねてみた。ヴィクトルの部屋は勇利と同じ階で、場所もそれほど離れていなかった。 「付き添います」 「大丈夫だよ」 「でも心配ですから」 「クリスにあとで何か言われる?」 「ぼくが心配なだけです」 ヴィクトルはちょっと勇利を見、かすかに笑ってうなずいた。 「優しい子だね。ありがとう」 そのひとことで、勇利こそ倒れるところだった。不用意にすてきな声でそんなことを言わないで欲しい。 部屋へ戻ったヴィクトルは、さっさとベッドに行って勢いよくあおむけになった。勇利はどきっとしたけれど、体調が悪いのではなく、ただくつろぎたいだけだとすぐにわかった。 「大丈夫ですか? いま水を……」 さいわいなことに、冷蔵庫に水のペットボトルが入っていた。勇利が手渡そうとすると、ヴィクトルはまぶたのあたりを大きな手で覆って、「飲ませてくれるかい?」と言った。 「えっ」 「冗談だよ。こんなことを言ってたら、俺こそクリスに怒られるな。でもきみもちゃんと気をつけないといけないよ。こんなに簡単に部屋についてきたりしちゃだめだ」 「ぼくはヴィクトルが心配で……」 「きみを連れこむために酔ったふりをしているのかもしれない」 ヴィクトルがくすっと笑った。 「……もちろんそんなつもりはないよ。何もしない。でも用心したほうがいい。こういう会合があるたび、あの子は誰かについていってるんじゃないかと心配になるからね」 ぼくはヴィクトルにしかついていきません。そう言いさして勇利は慌てて口をつぐんだ。そんなことを言うわけにはいかない。 「……そんな魅力ぼくにはないから大丈夫です。安心してください」 「きみはひとみが綺麗だ」 ヴィクトルがぽつんと言った。勇利はどきんとした。 「きらきらしている……見ないほうがいい気がするな」 「……もともと、ぼくのことなんか見ていなかったでしょう?」 「よく見てとりこになっちゃったら困るからね」 冗談で言っているのだろうか? もちろん本気ではないだろうけれど、笑えばよいのかよくわからない。ヴィクトルはふしぎな言葉で話すひとだと勇利は思った。英語は理解できても、それ以上の意味ではすこしものみこめない。 「また変なことを言ってしまった……。俺のことを軽薄な男だと思っただろうね?」 ヴィクトルが手の端から目をちらとのぞかせてちいさく笑った。勇利は赤くなった。 「いえ、そんな……」 「誤解しないで欲しいんだが、誰にでもこういうことを言ってるわけじゃないよ。こんなことは初めてさ。人を部屋に入れるのもね。──おっと、こんなふうに言うほうが危険なのかな。忘れてくれ」 ヴィクトルはもう一度笑った。 「今夜はどうかしている。──確かに酔ってるのかもしれないな」 彼は息をつき、ふしぎそうにつぶやいた。 「どうしてこういうことを言ってしまうのかな……。自分でも謎だ。もしかしたらきみが好みなのかもしれない」 そう推定してから彼はさらに笑った。勇利はものも言えなかった。お世辞や冗談にしても度が過ぎているのではないだろうか。 「まずいな。どんどん自分が危険なやつになっている気がする……。大丈夫、冷静になるよ。何もしない。本当に。酔ってるけど酔っぱらいじゃないんだ」 「あ、あの……、頭を冷やせばすこしは楽になるかも」 「ああ、その必要を感じるね」 「洗面所を使ってもいいですか?」 「もちろん」 勇利は洗面所で自分のハンカチを出し、それを水で濡らしてヴィクトルのもとへ戻った。目を閉じているヴィクトルは眠っているように見える。勇利は床に膝をつき、彼の額にハンカチを当てた。 「ああ……、気持ちいいな……」 「よかったです」 ヴィクトルはうすくまぶたを開け、長い銀色の前髪越しに勇利を見た。 「優しいね、きみ」 勇利はしどろもどろになった。 「いえ、そんな……」 「この感じはなんだかおぼえがある」 「え?」 勇利は、誰かとまちがえているのだろうと思った。ヴィクトルの好きなひとだろうか? ──いや、自分と感じが似ているというのだからそうではないだろう。 「あれは……、そう、スケートだ。ショーでスケートを見たんだよ」 「誰のですか?」 「それがわからないんだ。俺は自分の出番のためにいろいろ支度をしていたし、ちょっと問題が起こって振付師と話したりしてた。だからどのときにリンクを見たのかはっきりしない。とにかく、慌ただしくしてるあいまにちらっと見たんだよ。あれは誰の演技だったのか……、青い照明が印象的だったな。その中に調和して、優美にそのひとは舞っていた。音楽にとけ��んで、空気も衣装も青い色も、すべてが一体になったようだった……。俺は見蕩れたんだよ。でも、問題を解決するために呼ばれてそこを離れなければならなかった。本当に惜しかったね。もっと見ていたら……」 勇利は頬が熱く、胸がどきどきして、ただ黙ってヴィクトルの額にハンカチを当てていた。勇利のプログラムでは青い照明を使っていた。それ以外の色はなかった。しかし、ほかに青を使ったスケーターはいくらでもいる。青しか使わなかったのは勇利だけだけれど。 「その無垢で上品で清楚なスケートと、きみの感じがよく似ている」 ヴィクトルはちいさく息をついてつぶやいた。 「なつかしいとすら思える慕わしさだったな……」 「……人ちがいです」 勇利はぽつんと言った。それ以外に考えられなかった。 「そうかな……。あの演技と、きみのさっきのきらきら輝く星のようなひとみ……、それをはっきり見たら……」 ヴィクトルは心静かな様子で夢見るように言った。 「俺は恋に落ちるかもしれない……」 勇利は何も言わなかった。何も言えないではないか。ヴィクトルが話しているのはきっと自分のことではないし、自分には彼の言うようなひとみも魅力もない。勘違いなのだからそう指摘したいけれど、すぐにも眠りたいというふうなヴィクトルにうるさく話しかけるのはひかえたい。だから勇利は黙っていた。 ヴィクトルはそれ以上は話さず、それきり、眠ったようだった。勇利は彼の額にハンカチを添えたまま、まぶたを覆っている彼自身の手をみつめてどきどきしていた。 「勇利、考えたんだが」 中国での試合が終わり、ホテルでひと落ち着きしたとき、ヴィクトルが気にしたように言いだした。 「なに?」 「もしかして謝ったほうがいいのかな」 「何を?」 「俺はごく自然にそうしたんだし、勇利もそう受け止めたと思うけど、きみはいろいろ考えこんじゃう性質だからね。あとになって気になるかもしれない。もっとも、まったくなんとも思わず、平気だと感じてる可能性もあるけど」 「なんのこと?」 「勇利のことはまるで読めないからね」 「だからなんの話なの?」 本当にわからなかったので勇利は首をかしげた。ヴィクトルは率直に言った。 「キスしたことだよ」 「ああ」 なるほど。そのことか。本当に気にしていなかった。ヴィクトルもなんとも感じていないようだけれど、勇利が気にしているか気にしていないかということ自体は気になっていたのだろう。 「勇利には初めてのキスだっただろうからね。そういう意味では──」 「ぼく初めてじゃないよ」 勇利が簡単に答えると、ヴィクトルはぎょっとしたような顔になった。 「なんだって?」 「初めてじゃないんだよ──ヴィクトル、そろそろ部屋へ戻ったほうがいいんじゃない? ぼくもやすもうと思う」 「ちょっと待ってくれ。いまの話は……」 「何も重大なことじゃないよ。あいづちみたいなものじゃない。ああ眠い。昨日ほとんど寝てないんだ。本当はね」 「勇利!」 もう寝たいと主張する勇利の肩を、ヴィクトルは両手できつくつかんで、ひどく真剣な顔をした。 「いったいどういうことなんだ?」 「何をそんなにまじめになってるの?」 「勇利には恋人がいたことはないんだよね」 「そう言ったことはないよ。ヴィクトルが勝手にきめてかかってるだけで」 「いたのか!?」 「いないけど」 ヴィクトルは安心したような、しかし納得できないというような、なんとも複雑な表情をした。 「じゃあいったいどういうことなんだ?」 「簡単なことじゃない。恋人はいたことないけど、キスをしたことはあるんだよ」 「恋人でもない相手と!? 勇利はそんな子じゃないだろう!」 「恋人じゃないけど、好きなひととしたんだよ。いいじゃない、もう、そんなの……」 「いいわけないだろう。いいわけないだろう」 どういうわけかヴィクトルはぶつぶつ言いながら部屋の中をうろうろし始め、そんな彼を見て勇利はきょとんとした。まさかこんなに気にするとは思わなかった。しばらくヴィクトルを眺めていた勇利は、なんだか可笑しくなって笑いをこらえなければならなかった。 ヴィクトル、おぼえてないのかな? 無理もないけど。酔ってたし、眠そうだったし、ぼくをあまり見てなかったし。 何年か前のアイスショーで、勇利はヴィクトルに会った。それについては何もおかしなことではない。アイスショーでスケート選手同士が顔を合わせるのは自然なことだ。しかし、ショーのあとクリストフに誘い出されて勇利が食事に行ったのは珍しいことだったし、そのとき、すこし酔ったヴィクトルに付き添って介抱したのもたった一度きりのことだった。 あのとき、勇利はヴィクトルの部屋にいるあいだじゅうどきどきしていた。ヴィクトルの額にハンカチを添え、いつ戻ろうか、もう行っていいのか、ヴィクトルは完全に眠っているのだろうか、彼とこんなふうにいられてなんてしあわせなことだろうと、いろいろ考え、思いみだれた。そのうち、あまり長居してはずうずうしいかもしれないと気がつき、ハンカチを取り上げて、そっと立ち上がろうとした。すると、ヴィクトルが勇利のほそい手首をつかみ、目を閉じたままつぶやいた。 「帰ってしまうのかい……?」 「あの……」 「帰らないでくれ」 勇利はまっかになった。 「まだ具合が悪いですか?」 「具合はもともと悪くない」 「疲れているんでしょう」 「いや……、そうでもないよ」 「でも、やすんだほうがいいように見えます」 勇利の言葉にヴィクトルはしばらく考え、それから優しくささやいた。 「きみがキスしてくれたら元気になるかもしれない」 勇利は言葉を失った。これも冗談なのだろうか? まさか本気ではないだろうけれど、ヴィクトルはどういうつもりで言っているのだろう。からかわれているのかもしれない。 「……ごめん。忘れてくれ。本当に今夜はどうかしている。きみ、俺に何かしたかい? 魔法でもかけた?」 「…………」 ヴィクトルはまぶたを閉じていた。勇利は彼に顔を寄せると、すこし身をかがめ、ヴィクトルのくちびるにこころをこめて接吻した……。 「いったいどういうことなんだ? 好きなひと? 勇利に? 聞いてないぞ。聞いてない……」 ヴィクトルはまだ部屋を歩きまわり、何やら悩んでいるようだ。勇利はくすっと笑った。 「ぼくの好きなひとなんて誰でも知ってるよ」 「俺は知らない。勇利は俺にひみつをつくるのか。いつもそうだ。なんてつめたいんだ。おまえは冷酷だ」 「そんなに知りたいなら話すけど」 「いや、聞きたくない!」 ヴィクトルが両手で耳をふさいだ。勇利は肩をすくめた。 「ぼくもう寝るから……」 「うそだ。知りたい。教えてくれ。──いや、待ってくれ。勇利の好きなひと……知りたいが……知りたいが……だめだ、精神が安定しない。おまえは俺をどうしようというんだ。魔法をかけただろう」 勇利は笑いだした。 「いつだったか、アイスショーのとき……」 「ああ、聞きたくない。聞きたくないぞ」 「…………」 「いや、なんでもないさ。それで?」 「みんなで食事をしたんだよ。ぼくはそういうの苦手だけど、クリスに上手くおびきだされた。そのとき、あるひとがちょっと酔ったみたいだったんだ。酔ったっていうか、眠かったのかな。睡眠が足りてないようだった。だから彼がホテルに戻るとき、ついていってやってくれってクリスに頼まれて……」 「なんだって? 勇利、それでついていったのか? だめだ、もっと気をつけないと。用心すべきだ」 勇利はまた笑いだした。あまり楽しそうに笑っているので、ヴィクトルはなぜなのかわからないというようにふしぎそうにしていた。 「……笑いごと��ゃないぞ。俺は真剣なんだ」 「ごめん。わかってるよ」 「それで部屋についていったらキスされたのか?」 「ちがうよ。ただ水を渡して付き添っただけ」 「それだけ? 本当に?」 「濡らしたハンカチを額に当てた」 「ああ、あれは気持ちいいよね。俺もしてもらったことがあるよ」 「誰に?」 ヴィクトルは答えようとし、それから首をかしげた。勇利は話を続けた。 「彼はなんだかおかしな冗談ばかり言ってた。ぼくをからかってたのかもしれない。でも落ち着いてて、優しかった。ぼくはずっとハンカチを添えてそばにいたよ。黙って座ってるだけだったけど、彼の役にすこしは立ったのかな」 「それは立っただろう。そういうのは、ひどくこころが穏やかになってやすらぐものだよ。俺もしてもらったことがある」 「誰に?」 ヴィクトルはもう一度首をかしげた。彼は考えこんでいる。 「しばらくそうしてたんだけど、いい加減帰らないと邪魔になるかと思って立ち上がろうとしたんだ。そうしたら彼はぼくの手首をつかんだ。もう帰るのかって言われた」 「まったく言語道断な男だな。お話にならない。ずうずうしいにもほどがあるんじゃないか?」 「ぼくはべつにそう思わなかったけど」 「勇利は好きだからゆるしてしまうんだ。つけこまれる。気をつけるんだ。いくら好きな男でも甘い顔をしてはいけない」 「でも、ヴィクトルもそうしたことがあるんじゃないの? 手をつかんでもう帰るのかって言ったことが」 「確かにそれはそうだが。──どうして知ってる?」 「それから、彼は……」 勇利はベッドに浅く座り、胸に手を当ててまつげを伏せた。 「キスしてくれたら元気になるって……ぼくに言った」 ヴィクトルが勇利に一歩近づいた。彼は抗議するように何か言おうとし、それからいぶかしげに眉根を寄せた。勇利は顔を上げてほほえんだ。 「だからしたんだよ。なんだか、そうしなきゃいけない気がしたんだ。それが当たり前っていう感じがした」 「…………」 「後悔してないよ」 勇利はにっこりしてうなずいた。 「勇利……」 「なに?」 「…………」 ヴィクトルはしばらく黙りこみ、口を動かし──、やがてぽつんとつぶやいた。 「……あれは勇利だったのか?」 「誰だと思ってたの?」 「夢だと思っていた。すごくいい夢を見たと……」 ヴィクトルが信じられないというように勇利の手を取り、勇利はゆっくりと立ち上がった。ふたりはみつめあい──、ヴィクトルが腰を引き寄せてキスしようとしたので、勇利はひとさし指一本でそれを押しとどめた。 「勇利」 「だって、好きな男でも甘い顔しちゃいけないって……」 ヴィクトルは勇利をじっと見た。勇利はきらめく黒いひとみで物静かに見返した。ヴィクトルが深い溜息をつき、勇利を離して額に手を当てた。 「ヴィクトル、どうしたの?」 「おまえはなんてつめたいんだ」 「今日眠いのはぼくだね。でもヴィクトルのほうが元気なさそう」 「勇利がキスしてくれたら元気になる」 「そう」 勇利はヴィクトルの前に立ち、まぶたを閉じると、つまさき立って接吻した。あのときのように……。 ヴィクトルが目をみひらいた。勇利は上目遣いで彼を見た。 「どう? 元気になった?」
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『おいしい話には気を付けろ!!!!!!!!』・・・体験からのメッセージ
このタイトルの言葉は、私が経験した事、習った事、本当の意味で次の世代に伝えるべき事、世の中の事について皆様の心に訴えていきたいと思います。
これは、私が『ガチョーン!!!!!!!!!』と、騙され、一瞬にして血の気が引いて、『絶望感』に浸った時の教訓ですので、今回は申し訳ございませんが精神障害者向けの文章ではございません。一般市民用に向けた文章にしたいと思われます。何故かと申しますと、私がまだ精神科にかかる前の話であり、(勿論ですが『ブチ』と3回切れた経験の後ですが)当時学生相談室(カウンセリング)に��室時代で、大学院を目指してた1987~1988年の自粛ムードで最低ブームの事ですので、精神障害者の方々にとってこの文章を書く事をお許しください。
私が大学3年生の時1987年12月に行われた英語劇祭(大会)で、特別(大道具ーー私の担当ーー)賞が取れて、次の日学校内で各部署課に、受賞報告に行きその年度最後のミーティングを開き、部長兼主幹の座を後輩に譲り引き継いだ後の事です。やっと上役の肩の荷が降りて気分が少し楽になり、学校の単位とアルバイトと大学院受験勉強のみだ、と思ってました。今までその年の後期、授業に出席出来たのは、演習(研究指導・ゼミナール)と英語5の出席必修だけでした。標準として1年に6回(70%)(前期3回・後期3回)だけでしか休めませんでした。又公欠も認められませんでした。私が履修した英語5の先生は、悲惨な先生で1年間いじめられて鍛えられました。この先生は、前期1回、後期1回しか欠席できませんでした。教室では、学生が国会か都道府県か市区町村かわからないが、議員みたいに立て看板毎回毎回必須の先生でした。部活が忙しい時の確か9月ぐらいに先生ともう一人の先生が、食堂の隣の喫茶コーナーにおられたので、直接先生に「先生、部活が忙しいので授業にあまり出られないのですが。⁉」と言いに行くと、先生は『部長を呼んで来い。!!!!!!!」と言われ、私がそのまま立っていると、『お前が部長か???❕」と言われ、「単位(今年のこの科目)は諦めろ!!!」と言われ、粘って立っていると、もう一人の先生が「この部活動って去年優勝したそうですよ!!!!!!!」助言が入り、先生は「何、お前達が優勝した?????」そして「よし1回だけ休ませてやる!!!!!!!それ以外はダメ❕」という事で、その場を去った。私も大道具作りに忙しく授業に出たのは、火曜日の3時限目は仕方なく出席、木曜日の4時限目は時々欠席(1年間に6回まで)、学生相談室(カウンセリング)は、大体覚えている時、ぐらいでアルバイトしてる暇もなかった。私の一日の時間割は、夕方5時から朝の5時まで大道具作り、5時から11時ぐらいまで毛布1枚持参して部室で就寝、11時に目が覚めたら学食で朝昼兼用の食事、12時半から授業等以外は、あるホームセンターまで買い出しに公共交通機関で一人で行く。バスも乗り換えないとホームセンターに着けないし、途中で降車しないと金が下せない。時には紙屋や布屋までに行くのに都心部まで買い出しに行った。お風呂だの歯みがきだの更衣だのしている暇は無い。ひたすら大道具作りに必死だった。フェスティバル(大会)まで間に合わせる事で必死だった。一通り出来上がったのは、約1週間前だった。それまでは、一人の先輩だけ時々手伝って下さったが、出来上がってから、色々な先輩方が修正を手伝って下さった。完全に出来上がったのは、公演前の前日であった。その日は一睡もする余裕がなかった。それでも他人は、私を健常者扱いされた。唯一幸運な事だったのは、天気が殆ど晴れていて尚且つ、1987年は秋から冬にかけて暖冬だった事だけだ。運搬費は全て私持ちで先輩方が運転してくれた。全然段取りもさっぱり解らず、行動が静止したり頭も働かなかったので、事実上先輩達に、おんぶにだっこになってしまった。ある県の僻地���山の上から、都心部の会場まで運ぶ事については、全く想像できなかった。先輩に「ここの扉の鍵締めといてな~。」と言われ、そこだけ施錠し、会場に向かった。3往復するはずのトラックが、2往復目で中々着かなかった。土曜日の夜に劇場搬入の予定だったが、一部しか搬入出来ず、公演出来るかどうか崖っぷちの窮地に追い詰められた。主催者の大道具担当の方が、「やっぱり心配してた通りになった。どうなるのかなあ。」定刻になったので、私達のメンバーは外に追い出された。ひたすらトラックを待っていた。それまでに全員分のほか弁買い出しに行き、30分ぐらい待って、自腹切って買って(去年のフェスティバルの時は先輩方が自腹を切ったので)トラックを待っていた。やっと着いたと思ったら、『ガチョーン!!!!!!!』「バカヤロー」と、大声と名指しで度が過ぎる程怒られた。何故怒られたかというと、『ガチョーン!!!!!!!』大道具作りした場所の、電気の消灯も場所の鍵も施錠も忘れていたのだ。私が悪いとしか言いようがないのだ。『ガチョーン!!!!!!!』としか言いようがないのであった。寺の合宿所に行き、度が過ぎる程コテンパに夜中まで怒られた。次の日、6時頃目が覚めて、後片付けして、寺に宿泊代金を納めて会場に急いだ。会場に着いて、委員会はもう扉を開けてくれないかなと思ったら、9時5分ぐらいに裏の扉を開けてくれたので、大道具を何とか搬入出来た。本番公演までギリギリ設置出来たので、公演そのものは、成立したのだが、出演者とっては、『ガチョーン!!!!!!!!』大変申し訳ない事をしてしまった。大道具入りは、彼らにとってぶっつけ本番をさせてしまった。当部長としては『ガチョーン!!!!!!!!』ごめんなさい。!!!!!!!!公演終わり、搬出し、ロビーに行くと、休部してた部員が来てくれた。合同夏合宿のメンバーの女子から花束をくれた。ただ私は、「有難う。❕だけど今、滅茶苦茶忙しいので、後で頂くよ。今ちょっとごめんね。」と言って、ロビーを後にして、慌ててトラックに乗り込み、大道具を積んで僻地の山の上学校まで戻った。そして出来る限り解体作業をした。解体出来ない壁は、部室近くの廊下��置かさせてもらい、後日、管財課に頼んで、倉庫に保管させてもらうように考えた。そして1日飲まず食わずで、トラックに乗り込み、閉会式の会場に向かった。『ガチョーン!!!!!!!!』トラックの中で思い出した。会計担当から預かったお金入り財布(何万円何千円単位)の入った手提げバッグを舞台の下手に置き忘れたままだ、と気付き先輩に言わずに会場に着いた。着いたら着いたで、また別の事で『ガチョーン!!!!!!!!』先程述べた合同夏合宿のメンバーの部長から「あの子泣いてるよ!!!!!!!!貴方が逃げて別の女の人から花束をもらい会場から逃げたのではないか???」と、言われ私は、「後で行ってちゃんと話す」と、部長同士約束した。これは、『ダブルガチョーン!!!!!!!!』を私は、食らった。でもまず自分の手提げバッグを探しに、舞台の下手に公演の邪魔にならない様にして公演と公演の間を狙って、下手に行った。私の手提げバッグは、下手の床に放ってあった。私は、それを拾い上手に行き、そして財布があるかどうか確かめた。序に中身も確かめた。結果1円も盗られていなかった。先ずは『ホッ!!!!!!!』。確認出来たらあの子のところまで探して行った。そしてあの子に「今朝はごめんね。!!!!!!!貴女の部長様から聞いたよ。あれから学校に帰って大道具を潰して片付けていたの!!!!!!!別に貴女の気持ちを踏み躙った訳ではないよ。ごめんね。誤解しないで欲しい。」と、言うと「こちらこそごめんね。」と言われたので、「では私は、自分の学校の仲間の戻るよ。本当にごめんね。」と言って、学校の仲間の席に行き着席した。密かに『ホッ!!!!!!!」と、してたらある先輩が、「今年は寂しいな~賞も何も来ないのか~」「おい❕お前の時代だけだぞ~賞も何もないのは~」と、別の先輩は言った。閉会式が、始まる。その前に客席で、連盟長に堂々と睨まれた。無視して客席に行き着席してた。入賞(優勝、準優勝、3位、特別賞、大衆賞、最優秀男優(女優)賞)の受賞の対象で、去年からノミネート制だったが、今年は、特別賞と大衆賞は、ノミネートせずに発表された。その特別賞のうち、審査員の一人の方が、「この賞の理由は壁が良かった学校にこれらの特別賞の一つを与えます。」と英語で言われ、私達の作品名と学校名が英語で告げられた。受賞つまり入賞したのであった。どの学校も入賞したら大きく喜んでいたのだが、私の学校はタイミング的には、絶句状態であった。私も『マジか???疲れた❕』と思い、審査員もびっくりしたが、すぐ演出担当が「やったー!』と叫び、やっと自分も「やった!やった!やったー!」と言えて、「行こ!行こ!行こう!!!!!!!」誘い叫んで、舞台の上で5人ぐらいいて、私が「やった!やった!やったー!」と舞台の上で叫んでいると、舞台下手の委員長と副委員長3人の4人に睨み付けられ、この委員長が「持って行けー!!!!!!!!」と怒鳴っていたのだ。こんな委員長はいらない、と、無視して上手の審査員は、拍手してた。私は、特別賞の小さなトロフィーを受け取り、他のメンバーは、賞状や、副賞を受け取った。嬉しかったけど、疲れの方が大きかった。先輩から「おめでとう❕。お前の賞や~」たり、他校の部長様や部員様からも「おめでとう❕」「おめでとうございます。❕」と言われたりしたけれど、私は、あまりにも疲れてたので、頭は何とか下げたが、「有難う。」の声が出なかった。外に出て打ち上げコンパの企画を、前部長がしてくれたので、彼が「おい、お前明日の夜の定時にどこそこな。報告会しておけよ。」と言われ、私は、「明日の昼の定時に部室集合!!!!!!!!」と言った。次の日昼の定時に部室集合して、大道具作りしたホールを皆で掃除したり、預り金から1年生優先で領収書と現金を引き換えたりしてました。前部長もおられたと思います。「報告会は、お前らでやってこい。夜の定時にどこそこな。」と言って去られ、̰私達のグループは、学長室から学部長室から学生課、教務課、入試課、管財課、図書館、等ありとあらゆる学内組織に報告の挨拶に行き周りました。最後は、部室の中で本年度の終了の言葉を述べて、新部長の指名任命をして、私の部長兼(学内)主幹の任務を終えました。正直『ホッ!!!!!!!!』としていたら、夜の打ち上げコンパに行き帰る時に、『ガチョーン!!!!!!!!』先輩からまたお叱りを、受けました。せっかく終わったと思ったら、説教された。理由は、『席の配置が悪い』と怒られました。この先輩は、一生付きまとうだろう。と思えました。私がこの学校を卒業が1989年3月ですが、30年経った2019年でもK市Y区M駅の3番出口の車の中から、見張ってました。コンビニ横から府道(旧国道1号線)に曲がるとすぐM駅なので、そこに車が止まっていて、運転手と私の目が合ってしまってお互い「あっ❕」とあの先輩に私だ、っと完全に分かってしまいました。「ガチョーン!!!!!!!!」こんな人はほっといて、1987年12月下旬やっと、部長兼主幹職を終え、後期試験やレポート提出に取り組んでいて、又アルバイトも探していく予定ですし、色々忙しい年末でした。K市の実家に帰ったのが、年末30日でした。アルバイトも学校の掲示板を見て、ある会社が時給1000円交通費1日500円までと書いてあったので、試験やレポートが終われば応募しました。それと並行に大学院受験勉強も開始しました。研究指導(ゼミナール)の先生が、何十冊も本を借りて頂き、最低限この本とこの英語本は、読みなさいよ。と、指導を受け、勉学の世界にのめり込みました。又アルバイトの面接も入って来ましたので、行きました。応募理由を聞かれ、はっきりと時給1000円という事が書いてあった、と告げると、はっきり告げられました。うちの仕事は、最初研修から始まって研修中の時給300円です。と、『ガチョーン!!!!!!!!』の気分でした。最後まで話を聞いてました。能力給制で、仕事内容は、主に結婚式のビデオ撮影でした。式と披露宴に分かれて報酬が違い、式は1本20分ぐらいで600円ぐらい、披露宴はランク制で、A、B、C、と基本分かれていて、Cランクから始まるけれど、基本二つのカメラを操作するのが、補助付きだとか不十分判定だとCランク、十分出来て一人で操作出来たらBランク、三つのカメラを一人で出来たらAランク、とのことです。披露宴は、標準2時間20分であり、Aが1本3000円、Bが1本2500円、Cが1本2000円です。結婚式に行った事があるか?と質問されると、無い。と、ゲーム機の経験は?と聞かれると、無い。と、アルバイトニュースは買っているか?と聞かれると、無い。と答えると、「3拍子揃っているね。」と言われ、お互いに『ガチョーン!!!!!!!!』の気分なのに、1か月後アルバイト採用をしてもらえました。私のスケジュールが土、日、祝日が 開いていたからです。その時の面接上司に、言われましたよ。『❕おいしい話には、気を付けろ❕』と、『❕これは、社会の常識だぞ❕』『❕これは、君が生きていくために忠告しとくよ❕』「嫌だったらもういいよ!!!!!!!!」と言われたけれど、私が「よろしくお願いします。」と言いました。1988年2月に仕事を始めて9ヵ月、11月には中断してしまいました。もうカウンセリングの世界を超えてしまっているとカウンセラーが判断し、学生課を通じて親を呼び出し、強制的に実家に返されました。
ここからは精神障害者には面白くない話です。私が言うのも変だけど、O都構想に幻想を持ってませんか???❕おいしい話には気を付けろ❕と、忠告します。経済とは、ご存知の通り経世済民の事です。働ける人が税金を納めなくしてどうやって社会サービス(社会保障)を受け取るつもりでしょうか???O市という政令指定都市を潰して、二重行政解消してO府(法律上)にしてOが良くなるとでも思われるのでしょうか。???余計に低税低福祉になるだけで、社会サービスは悪くなる一方です。社会保障として皆さんに返ってきません。やり手策では良くなるどころか悪くなる一方です。何故なら失業者も増えます。路上生活者が増えるだけではありませんか。格差は拡大され、貧民窟が増える一方だけです。本当にOを良くしたいのなら、地道に生活するしかありません。O府一本化したら、払った税金は府民全体にいきわたらないといけないので、社会保障や社会サービスは悪くなるだけで、府民に返って来ません。❕おいしい話には気を付けろ❕❕社会の常識です。❕❕O市民のために忠告しておきます❕当然多くの公務員が失業します。路上生活者が増えます。元々から、元O市長が公務員が嫌いだったではないですか!!!!!!!!。弁護士と政治家は噓つきでないとやっていけない職業です。彼らは、最初から独裁政権を狙っています。税金だけ取って後返さないのが、彼らの狙いです。O市民の事はO市民で守っていかなければならないのです。彼らに取られては、ならないのです。❕❕おいしい話には気を付けろ❕❕これが私からのメッセージなのです。
久郷克己、拝、
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映画は作品を観たいお客様が、自らの判断で選んで鑑賞するメディアであること、そのうえで、「個人の罪と作品は違う」という弊社の見解のもと、本編の再編集は行わずに、そのままの内容で上映をさせて頂きます。ご理解賜りたく存じます。
ニュースページ | 映画『十二単衣を着た悪魔』公式サイト
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ボツ2
おっぱい、大食い。最後まで書いたけど胸糞なのでここに途中まで投稿してお蔵入り予定。
時: 午前8時05分
所: ○○中学正門前
身長: 標準的。155センチ程度。
衣服: 〇〇中学指定の制服。黒のセーラー。リボンの色より二年生と断定。
年齢: 中学二年生なので14、5。
持ち物: 右手に〇〇中学指定の鞄。左手にスマホを所持。
同行者: 友人1名。興味無しのため略。
背格好: やや細身か。冬服のため殆ど見えなかったが、スカートから覗く脚、そして周りの生徒と見比べるに、肩や腕も細いと思われる。腰回りもほっそりとしていると感じた。正確には引き締まっていると言うべきか。
顔: いと凛々し。小顔。頬は真白く、唇には薄い色付き。笑うと凄まじく整った歯が見え隠れする。この時髪をかき上げ血の色の鮮やかな耳が露出する。
髪: ボブ系統。ほぼストレートだが肩のあたりで丸くなる。色は黒、艶あり。
胸: 推定バスト98センチ、推定アンダーバスト62センチのK カップ。立ち止まることは無かったが、姿勢が良いのでほぼ正確かと思われる。しっかりとブラジャーに支えられていて、それほど揺れず。体格的に胸元が突出している印象を受ける。隣の友人と比べるとなお顕著である。制服のサイズがあっておらず、リボンが上を向き、裾が胸のために浮いていた。そのため、始終胸下に手を当てていた。揺れないのもそのせいであろう。制服と言えば、胸を無理に押し込んだかのように皺が伸び、脇下の縫い目が傷んでおり、肩甲骨の辺りにはブラジャーのホックが浮き出ている。されば制服は入学時に購入したものと思われ、胸は彼女が入学してから大きくなった可能性が大である。元来彼女のような肉体には脂肪が付きづらいはずなのだが、一年と半年を以てK カップにまで成長を遂げたところを見ると、期待はまずまずと言ったところか。要経過観察。名前は○○。胸ポケットに入れてあったボールペンが落ちたので拾ってあげたところ、「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀をされる。
時: 午前10時28分
所: 〇〇駅構内
身長: 高い。170センチ強
衣服: 薄く色味がかった白、つまりクリーム色のファー付きコート。内には簡素なグリーンのニットを羽織る。首元に赤のマフラー。
年齢: 22、3。休み期間中の大学生かと思われる。
持ち物: キャリーバッグ。手提げのバッグ。
同行者: 友人2名。先輩1名。何れも女性。貧。
背格好: 体格が良いと言った他には特に無し。腕も見えず、脚も見えず、首も見えず。肩幅の広さ、腰つきの良さから水泳を営んでいると推定される。
顔: その背に似合わず童顔。人懐っこい。マフラーに顔を埋め、視線を下げ、常に同行者に向かって微笑む。愛嬌よし。
髪: ショート。これより水泳を営んでいると断定。色は茶、染め上げてはいるがつやつやと輝く。
胸: 推定バスト129センチ、推定アンダーバスト75センチのR カップ。冬である上に、胸元が目立たないよう全身を地味に作っており、某コーヒーショップにてコートを取っても、無地のニットのために膨らみが分かりづらかった。さらに、胸の落ち具合から小さく見せるブラジャーを着用しているかもしれない。そのため、推定カップはR カップより3、4カップは大きい可能性がある。コートを取った際、胸元が一層膨らんだように感じられた。机の上に胸が乗って、本人は気にしていないか、もしくは気づいていなかったが、柔らかさは至高のようである。他の男性客の腕が肩にぶつかって、驚いた際に胸で食べかけのドーナツを落とす。以降会話は彼女の胸に話題が移ったらしく、左右に居た友人二名が所構わず触れるようになり、両手���使って片胸片胸を突っついたり、揺らしたりして遊ぶ。「机まで揺れる」と言う声が聞こえてくる。「ちょっとやめてよ」と言いつつ顔は相変わらず微笑むでいる。しばらくして四人とも席を立って、地下鉄筋の方へ消えていく。童顔ゆえに顔より大きい胸は驚くに値するが、体格からして胸元に自然に収まっているのを見ると、やはりなるべくしてなったとしか思えず。
時: 午後00時14分
所: 〇〇市〇〇にあるスーパー前
身長: 低い。150センチに満たない。
衣服: 所謂マタニティウェア。ゆったりとした紺のワンピースに濃い灰色のポンチョ。
年齢: 26、7
持ち物: 買い物袋。ベビーカー。
同行者: ベビーカーの中に赤ん坊が一人。女の子である。
背格好: 小柄。寸胴で、かつ脚も長くはあらず、そして手足が細く、脂肪が程よくついている。つまりは未成熟な体つき。身長以上に小さく見える。
顔: かなりの童顔。着るものが着るものであれば高校生にも見える。可愛いがやつれていて、目の下に隈あり。子供が可愛くて仕方ないのか、そちらを見ては微笑む。
髪: セミロングを後ろで一束。中々の癖毛であるかと思われるが、目のやつれ具合からして、もしかしたら本当はもっと綺麗なのかもしれない。髪色は黒。可愛らし。
胸: 推定バスト110センチ、推定アンダーバスト58センチのQ カップ。体格が小柄であるのでQ カップよりもずっと大きく見える。というより迫力がある。私が訪れた時は買い物袋をベビーカーに吊っている最中であった。ほどなくして赤ん坊が泣き出したので、胸に抱えてあやしたが、赤ん坊は泣き止まず。片胸と赤ん坊の大きさはほぼ同じくらいであっただろう。また、胸と赤ん坊とで腕は目一杯伸ばされていた。胸に抱いて「よしよし」と揺らすのはしばらく続いたが、赤ん坊が泣き止むことはなかった。そこで、座る場所を求めて公園へと向かおうと、一度ベビーカーへと戻そうとしたのであるが、一度胸に食らいついた赤ん坊は離さない。「さっきも飲んだじゃない」とため息をついて片手で危なっかしくベビーカーを引こうとする。「押しましょうか」と接近してみたところ、意外にもあっさりと「よろしくおねがいします」と言って、私にベビーカーを預けた。中には玩具が数種類あった。道から離れた日差しの良いベンチに腰掛け、ケープを取り出して肩にかけ、赤ん坊をその中へ入れる。それでもしばらくは駄々をこねていたであったが、母親が甘い声をかけているうちに大人しくなった。私が「お腹が空いてたんですね」と笑うと、「困ったことに、食いしん坊なんです。女の子なのに」と笑い返して赤ん坊をあやす。話を聞いていると、母親の母乳でなければ我慢がならないと言う。授乳が終わってケープを外した時、子供はすやすやと眠りについていた。「胸が大きくなりすぎて、上手く抱っこできなかったんです。大変助かりました。ありがとうございます」と分かれたが、その言葉を考えるに、妊娠してから一気に胸が大きくなったのであろう。授乳期を終えたときの反動が恐ろしい。むしろベビーカーの中に居た赤ん坊の方に興味を唆られる。
時: 午後01時47分
所: 〇〇市市営の図書館。某書架。
身長: 標準的。158センチ程度。
衣服: 白のブラウスにブラウンのカーディガン。
年齢: 30前後か。
持ち物: 白のタブレット
同行者: 無し
背格好: 小太りである。全体的に肉がふっくらとついている。けれども目を煩わすような太り方ではない。豊かである。ただし、著しく尻が大きい。
顔: 目尻は美しいが、柔らかな頬に愛嬌があって、どちらかと言えば可愛らしい方の顔立ち。鼻がやや低く、口元はリップクリームで赤々と照りを帯びている。色白とは言えないが、光の加減かと思われる。眼鏡をかけており、リムの色は大人しい赤。非常によく似合う。
髪: ストレートなミディアムヘア。髪色は黒であるが、不思議なことに眼鏡の赤色とよく合い、前髪の垂れかかるのが美しい。
備考: 司書である。
胸: 推定バスト128センチ、推定アンダーバスト81センチのO カップ。本日の夜のお供にと本を物色中に、書架にて本を正していた。胸が喉の下辺りから流麗な曲線を描いて20センチほど突き出ているばかりでなく、縦にも大きく膨れており、体積としてはP カップ、Q カップ相当かもしれない。頭一つ分背が低いので上からも望めたのであるが、カーディガンで見え隠れする上部のボタンが取れかけていた。本を取る度に胸が突っかかって煩わしいのか、肩を揺すって胸の位置を直す。本棚に胸が当たるのは当然で、文庫本などはその上に乗せる。一つの書架を片付け終わった辺りで、適当に思いついたジャンルを訪ねて接近すると、如何にも人の良さそうな顔で案内をしてくれた。脚を踏み出す度に甲高い音が鳴るのは、恐らくブラジャーのせいかと思われる。歩き方が大胆で胸が揺れるのである。途中、階段を下りなければならないところでは、一層音が大きくなって、臍のあたりで抱えていた本を胸に押し付けて誤魔化していた。そのため、ブラジャーのストラップがズレたかと見え、書棚の方へ目を向けている隙に、大胆にも胸を持ち上げて直していた。なまめかしい人ではあるが、年が年なので望みは無い。
時: 午後02時22分
所: 〇〇小学校校庭
身長: 140センチ前後か
衣服: 体操服
年齢: 10、11歳
持ち物: 特に無し
同行者: 友人数名
背格好: ほっそりとしなやかである。幼い。腕も脚もまだ少女特有の肉が付いている。今日見た中で最も昔の「彼女」に似ている体つきであったが、この女子児童は単に骨格が華奢なだけで、痩せ細った体ではない。健康的である。脚が長く、短足な男子の隣に立つと、股下が彼の腰と同位置に来る。
顔: あどけなさは言うまでもないが、目元口元共に上品。笑う時もクスクスと擽るような、品の良い笑い方をする。眼鏡はテンプルに赤色が混じった、基本色黒のアンダーリム。そのせいで甚だ可愛らしく見えるが、本来は甚く聡い顔立ちをしているかと推定される。が、全般的に可愛らしい。
髪: 腰まで届く黒髪。ほぼストレートだが若干の癖あり。また、若干茶色がかっているように見えた。髪の質がかなり良く、時折肩にかかったのを払う度に、雪のように舞う。
胸: 推定バスト81センチ、推定アンダーバスト48センチのI カップ。体育の授業中のことである。男子は球技を、女子はマラソンでもやらされていたのか、校庭を走っていた。身体自体は小柄であるから胸はそう大きくはないのだが、無邪気に走るから激しく揺れる。揺れるごとに体操服が捲れ上がって腹部が見えそうである。明らかに胸元だけサイズが合っていない。何度か裾を直しながら走った後、耐えかねて胸元を押さえつけていたのであるが、いよいよ先生の元へ駆け寄って校舎内へ入った。そして出てきてから再び走り初めたけれども、その後の胸の揺れは一層激しくなっていた。ブラジャーに何かあったのだろうと思われる。顔には余裕がありながら、走る速さがこれまでとは段違いに遅く、これまで一緒に走ってきた友人に追い抜かれる。結局、彼女は胸を抑えながら、周回遅れで走りを終えた。しかし可哀想なことに、息を整えていると友人に後ろから手で掬われて、そのまま揉みしだかれる。小学生の手には余る大きさである。寄せあげて、掬い上げて、体操服をしわくちゃにしながら堪能する。私にはそう見えただけで、実際にはじゃれついていただけであろうが、指が深く沈み込んでいる様は男子児童の視線を寄せるのに足る。なされるがままにされていた彼女は、そのうちに顔を真っ赤にして何かを言いつつ手をはたき落とし「今はダメ」と言い、以降はすっかり両腕を胸元で組んで、猫背になって拗ねてしまった。この生徒は要観察である。下校時に再び見えてみれば、制服下の胸はブラジャーは着けていないながら見事な球形を為している。先程の光景から張りも柔らかさも極上のものと想像される。名前は○○。名札の色から小学5年生だと断定。ここ一ヶ月の中で最も期待すべき逸材。
時: 午後05時03分
所: 〇〇市〇〇町〇〇にある某コンビニ
身長: やや高い。163センチほど。
衣服: ○○の制服。
年齢: 17歳
持ち物: 特に書くべきにあらず
同行者: 無し
背格好: 標準的だがやや痩せ型。恐らくは着痩せするタイプである。一見してただの女子高生の体であるが、肩、腰つきともに十分な量の肉量がある。その代わり腕は細い。右手に絆創膏。
顔: あどけない。非常に可愛らしい顔。人柄の良さが顔と表情に出ていると言ったところ。眉は優しく、目はぱっちり。常に口が緩んで、白い頬に赤みが差す。が、どこか儚げである。分厚くない唇と優しい目が原因か。
髪: 後ろに一束したミディアムヘア。一種の清潔さを表すと共に、若干の田舎臭さあり。後ろ髪をまとめて一束にしているので、うなじから首元へかけての白い肌が露出。これが殊に綺麗であった。
備考: 高校生アルバイター
胸: 推定バスト118センチ、推定アンダーバスト68センチのP カップ。服が腰元で閉じられているので、高さ24センチほどの見事な山が形成されている。そのため余計に大きく感じられる。手を前で組む癖があるのか胸が二��腕によって盛り上がって、さらに大きく見える。レジ打ちを担当していた。面倒くさい支払い方法を聞いて接近。レジにて紙を用いて説明してくれるのであるが、胸元が邪魔で始終押さえつけながらでの説明となり、体を斜めにしての説明となり、終いには胸の先での説明となる。ブラジャーの跡あり。よほどカップが分厚いのか胸と下着との境目がはっきりと浮き出ている。この大きさでこのタイプのブラジャーは、1メーカーの1ブランドしかないため、懐かしさに浸る。大体分かりました、では後日よろしくおねがいしますと言うと、にこやかにありがとうございましたと言う。腕の細さと胸の大きさとが全くもって合っていない。腰つきとは大方合っている。顔があどけないところから、胸に関しては期待して良いのではないだろうか? それを知るには彼女の中学時代、ひいては小学時代を知る必要があるが、そこまで熱心に入れ込めるほど、魅力的ではない。
本日も予が真に求むる者居らず、―――と最後に付け足した日記帳を、俺は俺が恐れを抱くまでに叫び声を上げながら床へと叩きつけ、足で幾度も踏みつけ、拾って壁に殴りつけ、力の限り二つに引き裂いて、背表紙だけになったそれをゴミ箱へ投げつけた。八畳の部屋の隅にある机の下に蹲り、自分の頭をその柱に打ちつけ、顎を気絶寸前まで殴り、彼女の残した下着、―――ブラジャーに顔を埋めて髪を掻き毟る。手元に残りたる最後の一枚の匂いに全身の力を抜かされて、一時は平静を取り戻すが、真暗な部屋に散乱した日記帳の残骸が肌へと触れるや、彼女の匂いは途端に、内蔵という内蔵を酸で溶かすが如く、血管という血管に煮えたぎった湯を巡らせるが如く、俺の体を蝕んでくる。衝動的にブラジャーから手を離して、壁に頭を、時折本当に気絶するまで、何度も何度も何度も打ちつけ、忌々しい日記帳を踏みしめて、机の上に置いてあるナイフを手にとる。以前は右足の脹脛(ふくらはぎ)を数え始めて26回切りつけた。今日はどこを虐めようかなどと考えていると、彼女の残したブラジャーが目につく。一転して俺のこころは、天にのぼるかのようにうっとりと、くもをただよっているかのようにふわふわと、あたたかく、はれやかになっていく。―――
―――あゝ、いいきもちだ。彼女にはさまれたときもこのような感じであった。俺の体は彼女の巨大な胸が作り出す谷間の中でもみくちゃにされ、手足さえ動かせないまま、顔だけが彼女の目を見据える。ガリガリに痩せ細って頬骨が浮き出てはいるが、元来が美しい顔立ちであるから、俺の目の前には確かにいつもと変わらない彼女が居る。我儘で、可愛くて、薄幸で、目立ちたがり屋で、その癖恥ずかしがり屋で、内気で、卑屈で、でも負けん気が強くて、甘えん坊で、癇癪持ちで、いつもいつもいつも俺の手を煩わせる。冷え切った手で俺の頬を撫でても、少しも気持ちよくは無い、この胸、この胸の谷間が冬の夜に丁度良いのだ。この熱い位に火照った肉の塊が、俺を天に昇らせるかの如き高揚感を與えるのだ。
だがそれは後年の事。床に広がったブラジャーを拾って、ベッド脇のランプの燈を点けて、ぶらぶらと下へと垂れるカップの布をじっくりと眺める。華奢で肉のつかない彼女のブラジャーだったのだから、サイドボーンからサイドボーンまでの距離は30センチ程もあれば良く、カップの幅も中指より少し長い程度の長さしかない。が、その深さと広さはそこらで見かけるブラジャーとは一線を画す。手を入れれば腕が消え、頭を入れればもう一つ分は余裕がある。記念すべき「初ブラ」だった。
それが何たることか! 今日、いや昨日、いや一昨日、いやこの一ヶ月、いやこの一年間、いや彼女が居なくなってから実に6年もの間、このブラジャーが合う女性には出会うどころか、見かけることも出来ないではないか。細ければサイズが足りず、サイズが足りればぶくぶくと肥え、年増の乳房では張りが足らず、ならばと小学生の後を付け回してはお巡りに声をかけられ、近所中の中高にて要注意人物の名をほしいままにし、飽きる迄北から南の女という女を見ても、彼女のような体格美貌の持ち主は居なかった。風俗嬢へすら肩入れをし、ネットで調子に乗る女どもにも媚びへつらった。
恭しくブラジャーを箱へと収めて床に散らばりたる日記帳の屑を見るや、またしても怒りの感情が迸ってくる。今日は左太腿の上をざっくりとやってやろうか。紙屑をさらに歯で引きちぎり、喉に流し込みながらそう思ったけれども、指を切る程度に留め、代わりに床を突き抜ける位力を入れて、硬い板の上に差す。今日書いた文面はその上にあった。
「なんで、なんで俺はあんなことを、……」
気がつけば奇声を上げつつ髪の毛を毟り取っていた。時計を見れば午後11時28分。点けっぱなしにしておいたパソコンの画面にはbroadcasting soon! という文字が浮かび上がって居る。忘れた訳では無かったが、その英単語二文字を見るだけで、怒りも何も今日の女どもも忘れ、急に血の巡りが頭から下半身へと下り、呼吸が激しくなる。まるで彼女を前にした時のようである。急いで駆けつけて音量を最大限まで上げて、画面に食い入ると、直にパッとある部屋が映し出され、俺の呼吸はさらに激しくなった。
部屋はここと同じ八畳ほど、ベッドが一台、机が一つ、………のみ。
机の上にはありきたりな文房具と、食器類が一式、それに錠剤がいくつか。ベッドの上には質の良さそうな寝具、端に一枚のショーツ、その横に犬用のリードが一つ。これはこれから現れる者が、謂わばご主人さまに可愛がられるために着けている首輪につながっているのである。そしてその横に、あゝ、彼女がまだ傍に居ればぜひこの手で着けて差し上げたい巨大なブラジャーが一つ、………。ダブルベッドをたった一枚で埋め尽くすほど大きく、分厚く、ストラップは太く、今は見えないが12段のホックがあり、2週間前から着けているらしいけれどもカップは痛み、刺繍は掠れ、ストラップは撚れ、もう何ヶ月も着たかのようである。
しばらく見えているのはそれだけだったが、程なくしてブラジャーが画面外へ消えて行き、ショーツが消えて行きして、ついに放送主が現れる。病的なまでに痩せ細って骨の浮き出る肩、肘、手首、足首、膝、太腿、それに反して美しくしなやかな指が見える。顔は残念ながら白い仮面で見えないが、見えたところで一瞬である。すぐさま画面の殆どは、中央に縦線の入った肌色の物体に埋められるのだから。その肌色の物体は彼女の胸元から生え、大きく前へ、横へと広がりながら腰元を覆い、開けっ広げになった脚の間を通って、床へとゆるやかにの垂れており、ベッドに腰掛けた主の、脚の一部分と、肩と、首を除いて、体の殆どを隠してしまっている。床に垂れた部分は、部分というにはおかしなくらい床に広がる。浮き出た静脈は仄かに青々として、見る者によっては不快を感ずるだろう。
言うまでもなく、女性の乳房である。主は何も言わずにただそこに佇むのみで、何も行動をしない。仮面を着けた顔も、たまに意外と艶のある黒髪が揺れるだけで動かないのであるが、極稀に乳房を抑える仕草をして、愛おしそうに撫でることがある。けれどもそれは本当に極稀で、一回の配信につき一度の頻度でしかなく、殆どの場合は、一時間もしたらベッドに倒れ込んで寝てしまうのである。
この配信を見つけてからというもの、俺の日中の行動は、その寝姿を見るための暇つぶしでしか無い。彼女そっくりな体つきに、彼女そっくりな胸の大きさ、―――しかもこちらの方が大きいかもしれない上に、彼女そっくりな寝相、………見れば見るほど彼女に似て来て、また奇声を発しそうになる。無言で、手元にあった本の背表紙で頭を打ちつけて落ち着きを取り戻し、画面を見ると、ゴロンとベッドから落ちてしまったその女の姿。彼女もよくやった寝相の悪さに、途端懐かしさが込み上げて来て、
「あゝ、こら、叶(かなえ)、寝るんだったらベッドの上で寝ないと、……。手伝ってやるからさっさと起きなさい」
と頬を叩いたつもりだが、空を切るのみで、消息不明となっている者の名前を呼んだだけ、羨ましさと虚しさが募ってしまった。
幼馴染の叶が居なくなってから早6年、片時も忘れた事はないのであるが、隣に住んでいながら出会いは意外と遅いものであった。当時俺は11歳の小学5年生、物凄く寒かったのを思えば冬から春前であったろうか、俺の家は閑静な住宅街の中に突如として現れる豪邸で、建物よりも庭に意匠を凝らしたいという父上の意思で、洋館が一つと離れが一つ庭に面する形で建てられ、俺はその離れを子供部屋として与えられていた。球状の天井を持つその部屋は、本当に子供のために閉ざされた世界かのようだった。庭の垣根が高く、木に埋もれる形で建っているのであるから、内は兎も角、外からだとそもそも離れがあることすら分からない。音も完全に防音されていて、車が通りかかるのすら、微妙な振動でようやく分かるくらい外界から切り離されているのである。��つも学校から帰ると、俺はその部屋で母上と共に話をしたり、ごっこ遊びをしたり、宿題をしたりする。食事もそこで取って、風呂には本館の方へ向かう必要はあるけれども、学校に居る7、8時間を除けば一日の殆どをそこで過ごしていた。だから、近隣の様子なぞ目については居なかったし、そもそも父上から関わるなというお達しがあったのだから、あえて触れるわけにはいかない。学校も、近くにある公立校へは通わずに、ずっと私立の学校へ入れられたのだから、関わろうにも、友人と言える者も知り合いと言える者も、誰も居ないのである。
そんな生活の中でも、よく離れの2階にある窓から顔を突き出して、燦々と輝く陽に照らされて輝く街並みを眺めたものだった。今はすっかりしなくなってしまったけれども、木々の合間合間から見える街並みは殊に美しい。一家の住んでいる住宅街というのが、高台に建っているので、街並みとは言ってもずっと遠くまで、―――遥かその先にある海までも見えるのである。
そう、やっぱり冬のことだ、あのしっとりとした美しさは夏や秋には無い。いつもどおり、俺はうっとりと椅子に凭れかかって街並みを眺めていたのであるが、ふとした瞬間から、女の子の声で、
「ねぇ、ねぇ、ねぇってば」
と誰かを呼びかける声がしきりに聞こえてきていたのだけれども、それが少し遠くから聞こえてくるものだから、まさか自分が呼ばれているとは思わず、無視していると、
「ねぇ!」
と一層激しい声が聞こえてくる。下を見てみると、同年代らしい女の子が、彼女の家の敷地内からこちらを不満そうに見つめてきている。
「僕ですか?」
「そう! 君!」
と満面の笑みを浮かべる。
この女の子が叶であることは言及する必要も無いかと思うが、なんと見窄らしい子だっただろう! 着ている物と言えば、姉のお下がりのよれよれになった召し物であったし、足元には汚らしいサンダルを履いていたし、髪は何らの手入れもされていなかったし、いや、そんな彼女の姿よりも、その家の古さ、ボロさ、貧しさは余りにも憐れである。流石に木造建築では無いものの、築20年や30年は越えていそうな家の壁は、すっかりと黒ずんで蜘蛛の巣が蔓延っており、屋根は黒いのが傷んで白くトゲトゲとしているし、庭? にある物干し竿は弓なりに曲がってしまっていて、痛みに傷んだ服やタオルが干されている。全体的に暗くて、不衛生で、手に触れるのも汚らわしい。広さ大きさは普通の一軒家程度だけれども、物がごちゃごちゃと置かれて居るのでかなり狭苦しく感じられ、俺は父上がどうして近隣の者と関わるなと言ったのか、なんとなく理解したのだった。目が合った上に、反応してしまったからには相手をしなくちゃいけないか、でも、できるだけ早く切り上げて本の続きでも読もう。―――俺は一瞬そう思ったが、ようようそう思えば思うほど、彼女に興味を抱いてしまい、小っ恥ずかしい感情がしきりに俺の心を唆していた。
それは一目惚れにも近い感情だっただろうと思う。というもの、その時の叶の外見は、着ているものが着ているものだけに見窄らしく見えただけで、顔立ちは悪くないどころかクラスに居る女子どもなぞよりずっと可愛いかった。いや、俺がそう感じただけで、実際は同じくらいかもしれないが、普段お嬢様と言うべき女の子に囲まれていた俺にとっては、ああいう儚い趣のある顔は、一種の新鮮さがあって、非常に魅力的に見える。どこか卑屈で、どこか苦心があって、しかしそれを押し隠すが如く笑う、………そういう健気な感じが俺の心を打ったと思って良い。また、体つきも普段見るお嬢様たちとは大きく変わっていた。彼女たちは美味しいものを美味しく頂いて、線の細い中にもふっくらとした柔らかさがあるのだが、叶はそうではない。栄養失調からの病気じみた痩せ方をしていて、ただ線が細いだけ、ただ貧相なだけで、腕や脚などは子供の俺が叩いても折れそうなほどに肉が付いておらず、手や足先は、肌が白いがために骨がそのまま見えているかのようである。兎に角貧相である。が、彼女にはただ一点、不自然なほど脂肪が蓄えられた箇所があった。
それはもちろん胸部である。叶は姉から譲り受けた服を着ているがために、袖や裾はだいぶ余らしていたのであるが、胸元だけはピンと張って、乳房と乳房の間には皺が出来ていて、むしろサイズが足りないように見える。恐らく裾を無理やり下に引っ張って、胸を押し込めたのか、下はダボダボと垂れているけれども、胸の上は変にきっちりしている。体の前で手をもじもじさせつつ、楽しげに体を揺らすので、胸があっちへ行ったり、こっちへ行ったりする。俺は最初、胸に詰め物をしているのであろうかと思われた。そう言えば、一昨日くらいにクラスの女子が、私の姉さんはこんなの! と言いつつ、体操服の胸元にソフトボールを入れてはしゃいでいたが、その姿がちょうどこの時の叶くらいであったから、自然にやっぱりこの年の女子は大きな胸に憧れるものなのだと納得したのである。だが、叶の胸は変に柔らかそうに見える。いや、それだけでなく、ソフトボールを入れたぐらいでは脇のあたりが空虚になって、はっきりと入れ物だと心づくが、彼女の体に描かれる、首元から始まって脇を通り、へその上部で終りを迎える曲線は、ひどく滑らかである。手が当たればそこを中心に丸く凹み、屈んで裾を払おうとすれば重そうに下で揺れる。
俺が女性の乳房なるものに目を奪われた初めての瞬間である。
それは物心ついた少年の心には余りにも蠱惑的だった。余りにも蠱惑的過ぎて、俺の体には背中をバットで殴られたような衝撃が走り、手が震え、肩が強張り、妙に臀部の辺りに力が入る。頭の中は真っ白で、少しずつ顔と耳たぶが赤くなっていくのが分かる。途端に彼女の胸から目が離せなくなり、じっと見るのはダメだと思って視線を上げると、さっきとは打って変わって潤いのある目がこちらを見てきている。微笑んでくる。その瞬間、徐々に赤くなって行っていた顔に、血が一気に上る感覚がし、また視線を下げると、そこにはこれまで見たことがない程の大きさの胸。胸。胸。………あゝ、なんと魅力的だったことか。
「こんにちは」
「うん、こんにちは。今日は寒いね」
彼女に挨拶されたので、俺はなんとか声を出したのだった。
「私は全然。むしろあったかいくらい」
「元気だなぁ」
「君が元気ないだけじゃないの」
「熱は無いんだけどね」
「ふふ」
と彼女は笑って、
「君どのクラスの子?」
「いや、たぶん知らないと思う。この辺の学校には通ってないから」
「どおりで学校じゃ、見ないと思った。何年生なの?」
彼女がこの時、俺を年下だと思っていたことは笑止。実際には同い年である。
「へぇ、あっちの学校はどうなの?」
「どうもこうもないよ。たぶん雰囲気なんかは変わんないと思う」
「そうなんだ」
と、そこでトラックが道端を通ったために、会話が区切れてしまって、早くも別れの雰囲気となった。
「ねぇ」
先に声をかけたのは彼女だった。
「うん?」
「またお話してくれない?」
少年はしばし悩んだ。近くの者とは関わるなと言う父上の言葉が頭にちらついて、それが殆ど彼女の家庭とは関わるなとの意味であることに、今更ながら気がついたのであったが、目の前に居る少女が目をうるませて、希望も無さげに手をもじもじと弄っているのを見ると、彼女の学校での扱われ方が目に見えてしまって仕方がなかった。そっと目を外すと、隣に住んでいなければ、多分一生関わること無く一生を終えるであろう貧しい家が目に飛び込んできて、だとすれば、良い育ちはしていないに違いはあるまい。だが、今言葉を交わした感じからすれば、意外にも言葉遣いはぞんざいではなく、笑い方もおっとりとしている。それに何より、自分がここまで心臓の鼓動がうるさいと思ったことはないのである。少年の心はこの時、「またお話したい」などというレベルではなく、彼女に近づきたい気持ちでいっぱいであった。近づいて、もっともっとお話をして、その体に触れて、夜のひと時をこのメルヘンチックな我が部屋で過ごせたら、どんなに素敵だろう。この窓から夜景を見て、手を取って、顔を突き合わして、行く行くは唇を重ねる、………あゝ、この部屋だけじゃない、綺麗に見繕って、二人で遊びに行くのも良い、いや、もはや二人きりでその場に居るだけでも僕の心は満足しそうだ。………実際にはこんなに沢山ことを考えた訳ではなかったけれども、しかしそういうことが、父上の言いつけから少年をすっかり遮断してしまった。つまりは、彼女の言葉に頷いたのである。
「もちろん。こうやって顔だしてたら、また話しかけてよ」
「ふふ、ありがとう。またね」
「またね。―――」
これが俺と叶の馴れ初めなのだが、それから俺たちは休みの日になると、窓を通じて10分20分もしない会話を楽しんだ。尤もそれは俺が父上と母上を怖がって、勉強しなくちゃいけないだとか、習い事があるとか、そういう理由をつけて早々に切り上げるからではあるけれども、もし何の後ろめたさも無かったら日が暮れても喋りあったに違いない。
「えー、……もう? 私はもっとお話してたい!」
「ごめんね。明日もこうやって外を眺めてあげるからさ」
その言葉に嘘はなく、俺は休日になれば、堪えきれない楽しみから朝食を終え、両親を煙に巻くや窓から顔を突き出していた。すると叶はいつも直ぐに家から出てきて、
「おはよう」
と痩せ細った顔に笑みを浮かべる。彼女もまた、楽しみで楽しみで仕方ないと言った風采なのである。
「おはよう。今日はいつにもまして早いね」
「ふふ」
会話の内容はありきたりなこと、―――例えば学校のこと、家のこと(彼女はあまり話したがらなかったが)、近くにある店のこと、近くにある交番がどうのこうのということ、近くにある家のおばさんが変人なことなど、強いて言えば、近所の人たちに関する話題が多かった。というのも、この住宅街に住んでいながら、今まで何も知らなかったので、俺の方からよく聞いたのが理由ではあるけれども、話に関係ないから述べる必要はあるまい。
それよりも、あんまり叶が早く出てくるので、いつのことだったか、聞いてみたことがあった。すると、彼女は心底意地の悪い笑顔で、
「私の部屋から丸見えなんだもん。そんなに楽しみ?」
と言うので、無性に恥ずかしさが込み上げてきたのは覚えている。どう返したのか忘れたが、その後の彼女の笑う様子が、強烈に頭に残っているのを考慮すれば、さらに恥ずかしい言い訳を放ったのは確かである。………
そんなある日のことであった。確か、叶と出会って一ヶ月経った日だったように思う。何でも学校が春の休み期間に入ったために、俺達は毎日顔を合わせていたのであるから多分そうで、非常に小っ恥ずかしい日々を送っていたのであるが、この日は俺しか俺の家には居ないのであった。それも朝一から深夜まで、何故だったのかは忘れてしまったが、両親も居なければ、ハウスキーパーも、確実に居ないのである。然れば初恋に目の暗んだ少年が悪巧みをするのも当然であろう。つまり俺はこの日、叶をこのメルヘンチックな離れに招待しようとしていたのである。
一種の期待を胸に抱きな��ら、いつもどおり窓から顔を突き出して、今や見慣れてしまった貧しい家の壁に視線を沿わせては、深呼吸で荒れそうになる息を整えようとする。一見、「いつもどおり」の光景だけれども、この時の俺はどうしても、初めての彼女をデートに誘うような心地よい緊張感ではない、恐ろしい罪悪感で押しつぶされそうだった。別に子供が同級生の女の子を連れてくることなど、親からしたら微笑ましい以外何者でもないかもしれない。が、これから呼ぶのは、父上が関わるなと言った、隣家の貧しい娘なのであるから、どうしても後々バレた時の事を考えると、喉が渇いて仕方ないのである。―――出来れば叶が今日に限って出てきてくれなければ、なんて思っても、それはそれで淋しくて死ぬ。まぁ、期待と緊張と罪悪感でいっぱいいっぱいだった少年の頭では、上手い具合に言い訳を考えることすら出来なかったのである。
「おはよう」
そうこうするうちに、いつの間にか外に出てきていた叶が声をかけてきた。一ヶ月のうちに、さらに胸が大きくなったのか、お下がりの服の袖はさらに長くなり、………というのは、服のサイズを大きくしないと胸が入らないからで、その肝心の胸の膨らみは今やバレーボール大に近くなりつつある。
で、俺は焦ることは何もないのに、挨拶を返すこともせずに誘うことにしたのであった。
「ねぇ」
「うん?」
「きょ、今日、僕の家にはだ、だれも居ないんだけど、………」
「え? うん、そうなの」
それから俺が叶を誘う言葉を出したのは、しばらくしてのことだったが、兎に角俺は彼女を頷かせて門の前まで来させることに成功して、庭を駆けている時に鳴った呼び鈴にギョッとしつつ、正門を開けると、さっきまでその気になっていた顔が、妙に神妙なので聞いてみると、
「なんか急に入って良いのか分からなくなっちゃった」
ともじもじしながら言う。それは引け目を感じると言うべき恥であることは言うまでもないが、一度勢いづいた少年にはそれが分からず、不思議な顔をするだけであった。それよりも少年は歓喜の渦に心臓を打たせており、今日という今日を記憶に焼き付けようと必死になっていた。というのは、普段遠目から見下ろすだけであった少女が目の前に現れたからではあるけれども、その少女の姿というのが、想像よりもずっと可愛いような気がしただけでなく、意外と背丈がひょろ高いことや、意外と服は小綺麗に整えてあることや、手も脚も、痩せ細った中にも一種の妖艶さが滲み出ていることなど、様々な発見をしたからであった。特に、胸元の膨らみにはただただ威圧されるばかり。大きさは想像通りだったものの、いざ目の前に来られると迫力が段違い。試しに顔を近づけてこっそりと大きさを比べて見ると、自分の頭よりも大きいような感じがし、隣に並んでみると、彼女の胸元にはこんな大きな乳房が生えているのかと驚かれる。
「ちょっと、どうしたの」
と言われてハッとなって、叶の手を引きながら広大な庭を歩き始めたが、少年の目はやはり一歩一歩ふるふると揺れる彼女の乳房に釘付けであった。
庭の様子は今後必要ないから述べないが、一方はお坊ちゃん、一方は女中にもならない卑しい少女が手を取り合いながら、花々の芽の萌ゆる庭園を歩く様子は、或いは美しさがあるかもしれない。
離れについて、「や、やっぱり私帰るね」と言い出す叶を無理に押し込んで、鍵をかけると、一気に体中の力が抜けて行くような気がした。何となく庭を歩いているうちは、誰かに見られているかのようで、気が気でなかったのに、今となっては何と簡単なことだったであろう。とうとう成功した、成功してしまったのである、叶を一目見た瞬間に思い描いていた夢が、一つ叶ったのみならず、この心の底から沸き起こる高揚感はなんだろうか。期待? それとも単に興奮しているだけ? いや、恐らくは彼女が隣に居ること、手を触れようとすれば触れられる位置に居ること、つまり、彼女に近づいたという事実が、嬉しくて嬉しくて仕方がないのだ。そしてそれが、自分の住処で起こっている、………俺は多分この時気持ち悪いくらいに笑っていたように思ふ。頭は冷静に叶をもてなしているつもりでも、行動の一つ一つに抜けている箇所が、どうしても出てしまって、土足のまま上がろうとしたり、段差に足をひっかけて転けそうになったり、お茶を溢しそうになったり、最初からひどい有り様であったが、彼女は引け目を感じながらも笑って、
「ほんとにどうしたの、熱でも出てるんじゃ、………」
と心配さえもしてきて、その優しさもまた、俺には嬉しくて仕方がなくって、ますます惚けてしまったように思われる。が、それが出たのは昼前のことだったろう、あの時俺は、目の前ある叶の乳房が大きく重たく膨れ上がっているのに対し、それを支える身体が余り痩せすぎている、それもただ単に痩せているのではなくて、こうして間近で見てみると、骨格からして華奢であるので、身長はどっこいどっこいでも(―――当時の俺は背が低かったのである)、どこか小さく感じられるし、そのために、余計に体と胸元の膨らみとが釣り合っていない上に、胸が重いのか、ふらふらとして上半身が風で煽られているかの如く触れる時がある、それが緊張で体が強張っている今でも起こるので、段々と心配になってきて、
「す、すごい部屋、………」
ときちんと正座をしながら目を輝かす彼女が、今にも倒れてしまいそうに思われたのだった。しかし惚けた少年の頭では、ああ言えば失礼だろうか、こう言えば婉曲的に尋ねられるだろうか、などと言ったことは考えられない。ただ、この眼の前に居るかぁいい少女が、かぁいくってしょうがない。あれ? 叶ってこんなにかぁいかっただろうか? と、彼女の一挙一動がなんだか魅力的に見えて来て、手の甲を掻くのすらもかぁいくって、言葉が詰まり、今や何とか頭に浮き出てきた単語を並べるのみ、彼女を一人部屋に残して外で気持ちを落ち着けようにも、今ここに叶が居るのだと思えばすぐさま頬が燃え上がってくる。再び部屋に入れば入ればで、自分の思い描いていたのよりかぁいい少女が、きちんと正座をしながらも、未だに目をキラキラとさせ、口をぽかんと開けて部屋中を眺めている。そんなだから、一層少年の頭は惚けてしまった。同時に、胸の前で、乳房を押しつぶしながらしっかりと握られている両の手が目について、その細さ、そのか弱さに惹き込まれて無遠慮に、
「ねぇ、前々から気になってたんだけど、どうしてそんなに細いの? どうしてそんなに痩せてるの?」
と、彼女の正面に座りながら聞いた。
「あっ、うっ、……」
「ん? だって手とか僕が握っても折れそうだし」
「え、えとね?」
「うん」
「その、食べては居るんですけれど、………」
叶はここに来てからすっかり敬語である。
「食べても食べても、全然身につかなくって、………その、おっぱいだけが大きくなってしまってるの。だから、こんなにガリガリ。骨も脆いそう。………あはは、なんだか骸骨みたいだね」
「全然笑い事じゃないんだけど」
「うん、ありがとう。それだけでも嬉しいな」
とにっこりするので、
「もう」
とにっこりとして返すと、叶はすっかり普段の無邪気な顔に戻った。
「あ、でね、もちろんお母さんも心配してくれて、お金が無いのに、私のためにたくさんご飯を作ってくれててね、―――」
「たくさんって、どのくらい?」
「えっと、………」
と言葉に詰まるので、
「まぁ、別に笑わないからさ。言ってごらん?」
とたしなめた。すると返ってきた言葉は、俺の想像を軽く飛び越していたのだった。
毎日微妙に違うから昨日のだけと、はにかんだ叶の昨夜の夕食は、米を4合、味噌汁が鍋一杯、豆腐を3丁肉豆腐、その肉も牛肉1キロ、半分を肉豆腐へ、半分を焼いて、野菜はキャベツとレタスと半々に、鶏胸肉2枚、パスタ500グラム、………を食した後に寒天のデザートを丼に一杯、食パンを2斤、牛乳一リットルで流し込んだ、と、ご飯中は喉が乾いて仕方がないと言って、水もペットボトル��2本計4リットル飲んだ、いつもこれくらいだが、それでも食欲が収まらない時は、さらにご飯を何合か炊いて卵粥として食べるのだと言う。
笑わないとは言ったけれども、流石に苦笑も出来ずに唖然とするばかりで、俺は、スポーツ選手でも食べきれない食い物が、一体全体、目の前で顔を覆って恥ずかしがる少女のどこに入って、どこに消えたのか、想像をたくましくすることしか出来なかったが、そうしているうちに、今日の朝はねと、朝食までおっしゃる。それもまた米が4合に、やっぱり味噌汁を鍋一杯。そして、知り合いが店を構えているとか何とかでくれる蕎麦を、両手で二束、大鍋で茹でてざる蕎麦に、インスタントラーメンを2人前、水を2リットル。言い忘れてけどご飯は大きなおにぎりとして、中に色々と具材を入れて食うと言って、最後に、デザートとは言い難いが、デザートとしてシリアルを、やっぱり牛乳1リットルかけて食べる。その後パンがあればあるだけ食べる。水も何リットルか飲む。で、大体食事の時間は1時間半から2時間くらいで終わるけれども、お腹が空いていたら30分でもこれだけの量は平らげられるらしい。
「いやいやいやいや、………えっ?」
俺のそんな反応も当然であろう。ところで以上の事を言った本人は、言っちゃった、恥ずかしい、と言ったきり黙って俯いているが、益々見窄らしく、小さく見え、やはり可哀想でならなかった。
ポーン、と鳴って、時計が12時を示した。叶の告白から随分時間が経ったように思っていたら、もうそんな時間である。空腹を訴えかけている腹には悪いが、今ここで食事の話題を振れば恐ろしい結果になるかもしれない、一応自分の昼食は、父上が予め出前を取ってくれたのが、さっき届いたからあるし、母上が夕食もと、下拵えだけして行った料理の数々があるので、それを二人で分けて、一緒に食べる予定ではあったのだが、しかし先の話が本当だとすれば、とても量が足りない。だが、恐ろしい物は逆に見たくなるのが、人間の常である。俺は、叶がご飯を食べている様を見たくてたまらなかった。普段、外食は両親に連れられてのものだったけれども、幸い街を歩けばいくらでも食事処にはありつける。日本食屋に、寿司屋に、洋食屋に、喫茶店に、中華料理屋に、蕎麦屋饂飩屋鰻屋カレー屋、果ては創作料理屋まであるから、彼女をそこに連れて行ってみてはどうか。もちろん一軒と言わずに何軒も訪れて、彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげてみてはどうだろうか? 俺はそんなことを思って、心の内で嫌な笑みを浮かべていたのであったが、偶然か必然か、その思いつきは叶の願いにぴったり沿うのであった。
「あはは、………やっぱり引いた?」
と叶がもじもじしながら言う。
「若干だけど、驚いただけだよ」
「ほんとに?」
「ほんとほんと」
「じゃ、じゃあ、もう一つ打ち明けるんだけどね、………あ、本当に引かないでよ」
「大丈夫だって、言ってごらん?」
と言って顔を緩めると、叶は一つ深呼吸してから、もじもじさせている手を見つめながら口を開くのであった。
「えとね、私、………実はそれだけ食べても全然たりなくて、ずっとお腹が空いてるの」
「今も?」
「今も。ほら、―――」
叶が服の裾をめくり上げると、そこにはべっこりと凹んでいる腹が丸見えになる。
「すっかり元通りになっちゃった。君と会うために外に出た時は、まだぼっこりしてたんだけど、………」
「お昼は?」
「え?」
「お昼。お昼ごはん。どうするの?」
「我慢かなぁ。いつもお昼ごはんは給食だから、全然平気だよ!」
この時、図らずも俺の画策と、彼女の願い、というよりは欲望が、同じ方向を向いたことに歓喜したのは言うまでもない。俺はこの後のことをあまり覚えていないが、遠慮する叶に向かって、
「ご飯一緒に食べよう!!」
と無理やり立たせて、取ってあった出前を彼女の目の前に差し出したのは、微かに記憶に残っている。彼女はそれをぺろりと平らげた。口に入れる量、噛むスピード、飲み込む速度、どれもが尋常ではなく、するすると彼女の胃袋の中へと消えていった。母上が下ごしらえして行った料理もまた、子供では食べきれないほどあったが、5分とかからなかった。こちらは食べにくいものばかりであったけれども、叶は水を大量に飲みつつ、喉へと流し込んで行く。それがテレビでよく見る大食い自慢のそれとは違って、コクコクと可愛らしく飲むものだから、俺はうっとりとして彼女の様子を見つめていた。食べ終わってから、俺は彼女の腹部に触れさせてもらった。その腹は、3人前、4人前の量の食事が入ったとは思えないほど平たく、ぐるぐると唸って、今まさに消化中だと思うと、またもや俺の背中はバットで殴られたかのような衝撃に見舞われてしまった。ちょうど、叶の乳房に目を奪われた時と同じような衝撃である。思わず耳を叶のヘソの辺りに押し付けて、たった今食べ物だったものが排泄物になろうとしている音を聞く。ゴロゴロと、血管を通る血のような音だった。
「まだ食べられる?」
「もちろん!」
叶は元気よく答えた。俺は彼女がケ���ャップで赤くなってしまった口を、手渡されたナプキンで綺麗に拭き終わるのを待って、
「じゃあ、行こうか」
と、財布と上着を取りながら聞いた。
「どこへ?」
「今日はお腹いっぱいになるまで食べさせてあげるよ」
俺の昼食夕食を軽く平らげた彼女は、今更遅いというのに遠慮をするのであった。「いや、私、もうお腹いっぱいで」とか、「お金持ってない」とか、「別にいいって、いいってば」とか、終いには「ごめん、ごめんなさい」と言って泣き出しそうにもなったり、なんとかなだめて離れから飛び出ても、動こうとしなかったり、自分の家に入ろうとする。「だ、大丈夫! 嘘! 嘘だから! 忘れて! もう食べられないから!」など、矛盾に満ちた言葉を放っていたのは覚えている。俺はそれをなんとかなだめて、気持ちが先行してしまって不機嫌になりつつも、最終的には弱々しい彼女の腰を抱きかかえるようにして引っ張って行った。
「ごめんね、ごめんね。ちょっとでいいからね。私よりも君がたくさん食べてね」
と食べることには堪忍したらしい叶が、物悲しそうにしたのは、確か家からまっすぐ歩いて、3つめの交差点を曲がって、広めの県道を西に沿ってしばらく行った所にある小綺麗な中華料理屋だっただろう。前にも述べたが、俺はこの日のことをあまり詳しく憶えていないのである。何故この中華料理屋に訪れたかと言えば、ようやく落ち着いた叶に何が食べたい? と聞くと、渋々、春巻きが食べたいとの答えが返ってきたからであるのだが、この店は昔も今も量が多いとの文句が聞こえてくる名店で、俺はよく、父上が天津飯一つすら苦しんで食べていたのを思い出すのである。とまぁ、そんな店であるのだから、そんな店にありがちな、所謂デカ盛りメニューなるものがあって、例えば丼物、―――麻婆丼だったり、炒飯だったり、それこそ天津飯だったり、そういうのはだいたい揃ってるし、酢豚とか、八宝菜の定食メニューもそれ専用の器すらあったりする。そしてそれを30分以内に食べきったら無料なので、これならお金を気にする彼女も安心してくれるだろうと、少年は考えた訳であったが、いざ入ってみて、奥の席へ通されて、
「この春巻きを10人前と、デカ盛りメニューの麻婆丼一つと、それと僕は、………エビチリ定食をご飯少なめでください!」
と注文すると、
「ぼ、僕? 冗談で言ってる?」
と、まず俺を見、そして叶を見して怪訝な顔をするのであった。
「冗談じゃないよ。ねぇ?」
と叶を見るが、彼女は静かに俯いている。
「ま、そういうことだから、お金は出すんだから、早く! 早く!」
「でもね、これはとっても量が多いんだよ?」
「うん、知ってる。だけど叶ちゃんが全部食べてくれるから、平気だよ」
「え、えぇ、………? この子が? 嘘おっしゃい」
そういう押し問答は10分乃至15分は続いたのであったが、とうとう店側が折れる形で、俺達の前には山になった春巻きと、山になった麻婆丼と、それ比べればすずめの涙程のエビチリが、テーブルの上に現れたのであった。俺も驚いたし、店員も驚いたし、何より他の客の驚きようと言ったら無い。奥の席だったから、人気はあまりないものの、写真を撮る者、頑張れよと冷やかしてくる者、わざわざ席を変わってくる者も居れば、自分たちも負けじとデカ盛りメニューを頼む者も居る。彼らの興味は殆どテーブルの上に置かれた理不尽な量の料理と、それに向かう華奢な少女であったが、妙に俺は良い気になって、ピースして写真に写ったり、冷やかして来た者を煽ったりして、相手をしたものだった。本当に、あの時の俺は、自分が一時の有名人になったかのような心持ちで、サインでも握手でもしてやろうかと思った。いや、そんなことよりも、もっと写真に撮って、もっと騒ぎ立てて、もっと人を集めてくれという気持ちであった。有頂天と言っても良い状態だった。が、ふと叶の方を見てみると矢張り俯いたままでいる。―――あゝ、こんなに騒がしかったら美味しいものも美味しくは無いだろうな、早く食べないと冷えてしまう、それに、自分もお腹が空いて仕方がない、そろそろ追っ払おうかしらん。叶の様子にいくらか冷静になった俺はそう思ったのであった。
「ごめんね、彼女、恥ずかしがり屋だから、ほら、あっち行ってて」
そう言うと、店主のハラハラした視線だけはどうすることも出来なかったが、皆次第に散り散りになった。叶もまた、周りに人が居なくなって安心したのか、顔を上げる。
「騒がしかったね」
「うん」
「まったく、野次馬はいつもこうだよ」
「うん」
「足りなかったら、もう一つ頼むことにしようか」
「あ、あの、………」
「うん?」
「いただきます」
この時の彼女の心境は、後になって聞いたことがある。たった��言、ああいう状況に慣れていなかったせいで、食べて良いのか分からなかった、と。実際には、中華店へ入る前から匂いに釣られて腹が減って死にそうになっていたところに、いざ目の前に好物の春巻きと、こってりとした匂いを漂わせている麻婆丼が現れて、遠慮も恥も何もかも忘れて食らいつきたかったのだそうである。事実、麻婆丼は物凄い勢いで彼女の口の中へと消えていった。
ところで麻婆丼は、後で聞けば10人分の具材を使っているのだと言う。重さで言えば8.7キロ、米は5合6合はつぎ込んで、女性の店員では持ち運べないので、男が抱えなければならない。時たま米の分量を誤って、餡のマーボーが指定分乗り切らない時があって、そういう時は乗り切らなかった餡だけ別の器に盛って出す。かつて挑戦した者はたくさんいるが、無事にただで食べられたのはこれまで1人か2人くらい、それも大柄な男ばかりで、女性はまだだと言う。
そんな麻婆丼が、11歳の、それも痩せ細った体つきの少女の口の中へ消えていくのである。休むこと無く蓮華を動かし、時折春巻きを箸に取っては、殆ど一口で飲み込むが如く胃の中へ流し込み、真剣ながらも幸せの滲み出た顔をしながら、水をグイグイ飲む。見れば、心配で様子を見に来ていた店主は、いつの間にか厨房に引っ込んで呆れ顔をしている。叶はそれにも気が付かずに黙々と口を動かして、喉が微かに動いたかと思ったら、蓮華を丼の中に差し込んで、幸せそうな顔で頬張る。あれよあれよという間にもう半分である。こういうのは後半になればなるほど勢いが落ちるものだのに、叶の食べるスピードは落ちないどころか、ますます早くなっていく。やがて蓮華では一口一口の大きさが物足りないと感じたのか、一緒に付いてきたスプーンで上から米もろとも抉って食べる。叶は普段から綺麗に食べることを心がけていて、大口を開けて食い物を口へ運んだとしても、それが決して醜くなく、逆に、実に美味そうで食欲が掻き立てられる。優雅で、美しい食べ方は、彼女が言うには、体の動かし方が重要なのだと、かつて教えてもらったことがある。気がついた時には、もう普通の麻婆丼と殆ど変わらない分量になっていた。一個もらうつもりだった春巻きは、………もう無かった。
俺は、叶の料理を食べている姿をついに見ることが出来て、ただただ感激だった。先程は恐ろしい勢いで食べたと言っても、量は大食いの者ならば簡単に平らげる程度しか無かったのである。それが今や10人前の巨大な麻婆丼を前にして、淡々と頬張っていき、残るは殆ど一口のみになっている。彼女はここに来てようやくペースが落ちたのだが、その顔つき、その手付き、その姿勢からして、腹が一杯になったのではなくて、あれほどあった麻婆丼がとうとうここまで無くなったので、急に名残惜しくなったのであろう。その証拠に、一口一口、よく噛み締めて食べている。俺は、またもや背中をバットで殴られたかのような衝撃に身を震わせてしまい、その様子をじっくりと穴が空くほどに見つめていたのであったが、汗もかかずに平然と、最後の豆腐に口をつける彼女を見て、とうとう食欲がさっぱり無くなってしまった。代わりに無性に苛立つような、体の内側が燃えるような、そんな堪えきれない欲が体の中心から沸き起こってきて、今までそんなに気にしてなかった、―――実際は気にしないようにしていた胸元の膨らみが、途端に何かを唆しているように思えて、もっともっと叶の食事風景を見ていたくなった。
「ごちそうさまでした」
と、声がしたので見てみると、澄ました顔で水を飲んでいらっしゃる。俺は慌てて、店主がテーブルの上に乗せて行ったタイマーを止めて時間を見てみた。
「16分39秒」
「えっ? 食べ終わった?」
「ほんまに?」
「本当に一人で食べたんだろうか。………」
気がつけば観客たちがぞろぞろと戻ってきていた。彼らの様子は、もうあんまりくだくだしくなるから書かないが、俺はまたしても注目を浴びている彼女を見て、ただならぬ喜びを感じたということは、一言申し上げておく必要がある。少年は輪の中心に居る少女の手を取るに飽き足らず、その体に抱きついて(―――何と柔らかかったことか!)、
「やったね叶ちゃん。やっぱり出来るじゃないか」
と歓声を放ち、
「ほら、ほら、この子はデカ盛りを16分で食べきったんだぞ。男ならそれくらいできなきゃ」
と、まるで我が手柄のように、奮闘中の大学生らしき男性客に言うのであった。俺の感性はまたしても有頂天に上り詰めて、多幸感で身がふわふわと浮いていた。隣で叶がはにかんで居るのを見ては、優越感で酔っ払ってしまいそうだった、いや、酔いに酔って、―――彼女の隣に居るのは僕なんだぞ。少年はそう叫んだつもりであるのだが、実際には心の中で叫んだだけなようである。俺がこの日の記憶をおぼろげにしか覚えていないのは、そんな感情に身も心も流されていたからなのである。………
騒ぎが収まってから、俺は半分近く残っていたエビチリを叶にあげた。もちろんぺろりと平らげた訳なのだが、しかしその後余りにも平然としてデザートの杏仁豆腐を食べているので、ひょっとしたら、………というよりは、やっぱりそうなんだなと思って、
「もしかしてさ、もう一回くらいいける余裕ある?」
「あ、………もちろん」
もちろんの部分は小声で言うのであった。そして小声のままその後に続けて、今体験した感じで言うと、もう一回あのデカ盛りを食べるどころか、さらにもう一回くらいは多分入ると思う。なんて言っても、まだ空腹感が拭えない。実のことを言えば、あれだけ店主が期待させてくるから楽しみだったのだけれども、いざ出てきてみれば、美味しかったものの、いつも食べてる分量より少なかったから、拍子抜けしてしまった、30分という時間制限も、頑張ったらさっきの麻婆丼2つ分でも達成できると思う。いや、たぶん余裕だと思う、出来ることならもう一回挑戦してみたいが、あの騒ぎを起こされた後だとやる気は起きないかなと言う。少年は彼女の食欲が未だに失せないことに、感謝さえしそうであった。なぜかと言って、この日の俺の願望は、彼女の食事姿を眺めること、そして、街にある食事処をはしごして、彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげること、―――この2つだったのである。しかし、前者は達成したからと言って、それが満足に値するかどうかは別な問題であって、既に願望が「彼女の食事姿を飽きるまで眺めること」となっていた当時の俺には、元々の望みなどどうでもよく、叶がお腹いっぱいになっちゃったなどと言う心配の方が、先に頭に上っていた。が、今の彼女の言葉を聞くに、彼女はまだまだ満足していない。腹で言えば、三分ほどしか胃袋を満たしていない。となれば、第二の願望である「彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげること」を達成していない。然れば、僕が叶の食事風景を飽きるまで眺めるためにも、そして叶が満腹を感じるまでに食事を取るためにも、今日はこのまま延々と飯屋という飯屋を巡ってやろうではないか。そして、あのメルヘンチックな子供部屋で、二人で夜景を眺めようではないか。………斯くして三度、俺の願望と叶の欲とは一致してしまったのであった。
結局叶は、春巻きをもう一度10人前注文して幸せそうな顔で味わい、その間に俺は会計を済ましたのであったが、あっぱれと未だに称賛し続けている店主の計らいで杏仁豆腐分だけで済んでしまった。本当にあの体にあの量が入ってるとは信じられんとおっしゃっていたが、全くその通りであるので、店を出てから叶に断ってお腹に手を触れさせてもらったところ、ちょうど横隔膜の下辺りから股上までぽっこりと、あるところでは突き出ているようにして膨らんでいる。ここに8.7キロの麻婆丼と、春巻き20人前が入っているのである。ついでに水何リットルと、申し訳程度の定食が入っている。そう思うと、愛おしくなって手が勝手に動き初めてしまいそうになったけれども、人通りの多い道であるから、少年は軽く触れただけで、再び少女の手を引いて、街中を練り歩き出した。
それから家に帰るまでの出来事は、先の中華料理屋とだいたい似ているので詳しくは書かないが、何を食べたかぐらいは書いておこう。次に向かった店は近くにあったかつれつ屋で、ここで彼女は再びデカ盛りのカツ丼4.3キロを、今度は初めてと言うべき味に舌鼓をうちながらゆっくりと、しかしそれでも半額になる25分を6分24秒下回るペースで平らげ、次はカレーが食べたくなったと言って、1つ2つ角を曲がってよく知らないインドカレー屋に入り、ご飯を5回おかわり、ナンを10枚食べる。おぉ、すごいねぇ、とインド人が片言の日本語で歓声を上げるので、叶はどう反応していいのか分からずに、むず痒そうな顔を浮かべていた。で、次はラーメン屋が目についたので、特盛のチャーシュー麺と特盛の豚骨、そして追加で餃子を頼んで、伸びたらいけない、伸びたらいけないと念仏のように唱えながら、汁まで飲み干す。この時既に、一体何キロの料理が彼女の腹に入っていたのか、考えるだけでも恐ろしいので数えはしないが、店を出た時に少々フラフラとするから心配してみたところ、
「いや、体が重いだけで、お腹はまだ大丈夫」
という答えが返ってくる。事実、その移動ついでにドーナツを10個買うと、うち9個は叶の胃袋へ、うち1個は俺の胃袋へと収まった。そして今度は洋食屋に行きたいとご所望であったから、先の中華料理屋の向かい側にある何とか言う店に入って、ナポリタン、―――のデカ盛りを頼んで無料となる19分17秒で完食す。とまあ、こんな感じで店をはしごした訳であったが、その洋食屋を後にしてようやく、ちょっと苦しくなってきたと言い出したので、シメとして喫茶店のジャンボパフェを食べることにした。彼女にしてみれば、どれだけ苦しくても甘いものだけはいくらでも腹に入れられるのだそうで、その言葉通り、パフェに乗っていたアイスが溶けるまでにバケツのような器は空になっていた。そして、喫茶店を出た時、叶は急に俺の体に凭れかかってきたのであった。
「あ、あ、………苦しい、………これがお腹一杯って感覚なんだね」
と、俺の背中に手を回してすっかり抱きついてくる。うっとりとして、今が幸せの絶頂であるような顔をこちらに向��たり、道の向かい側に向けたりする。人目もはばからず、今にもキスしそうで、その実ゴロンと寝転がってしまうのではないかと思われる身のこなし。心ここにあらずと言ったような様子。………彼女は今言った量の料理を食べて初めて、満腹感を感じられたのであった。―――あゝ、とうとう僕の願望と叶ちゃんとの欲望が、叶い、そして満たされたしまったのだ。見よ見よこの満足そうな顔を。ここまで幸せそうな顔を浮かべている者を皆は知っているか。―――少年も嬉しさに涙さえ出てくるのを感じながら、抱きついてくる少女のお腹に手を触れさせた。妊娠どころか人が一人入っているかのようにパンパンに張って、元の病的なまでに窪んでいた腹はもうどこにもなかった。胸元だけではなく、腹部にある布地もはちきれそうになっていた。思えばここに全てが詰まっているのである。今日食べた何十キロという食べ物が、………そう考えれば本来の彼女の体重の半分近くが、この腹に収まって、今まさに消化されているのである。少年と少女はついに唇を重ねるや、そっとお腹に耳をつけてその音を聞いてみると、じゅるじゅると時々水っぽい音を立てながら、しかしグウウウ、………! と言った音が、この往来の激しい道沿いにおいても聞こえてきて、この可愛らしい少女からこんな生々しい、胎児が聞くような音を立てているとは! 途端に、股間の辺りから妙な、濁流を決壊寸前の堤防で堰き止めているかのような、耐え難い感覚がして、少年は咄嗟に彼女から身を引いた。今度の今度は背中をバットで殴られたような衝撃ではなく、内側からぷくぷくと太って破裂してしまいそうな、死を感じるほどのねっとりとした何かだった。そしてそれは何故か叶の体、―――特に異様に膨らんだ胸元と腹を見るだけでも沸き起こってくるのであった。少年は恐怖で怯えきってしまった。この得体の知れない感覚が怖くて仕方なかった。目の前でふらふらとしている少女から逃げたくもなった。が、無情なことに、その少女はうっとりと近づいてきて、少年の体にすがりつくので、彼は逃げようにも逃げられず、為されるがままに、その痩せきってはいるけれども上半身の異様に膨れた体を抱いてやって、少女の希望ゆえにお腹を両手で支えながら帰路につくのであった。
「お母さんに何言われるか分からないから、楽になるまで遊んで」
離れに戻ってから、叶はそう言って俺の体に寄りかかってきた。道沿いでしてきた時はまだ遠慮があったらしく、俺はすっかり重くなった彼女の体を支えきれずにベッドに倒れてしまい、じっと見つめる格好になったのであるが、そのうちに堪えきれなくなって、どちらからともなく、
「あははは」
「あははは」
と笑い出した。
「ねぇねぇ」
「うん?」
「さっきキスしてきたでしょ」
「………うん」
俺はこっ恥ずかしくなって、素っ気なく答えた。
「もう一度しない?」
「………うん」
今度はしっかりと叶の顔を見つめながら答えた。
これで俺たちは二度目の接吻をした訳であるが、俺の手はその後、自然に彼女の胸に行った。この時、叶の方がベッドに大きく寝そべっていたので、俺の方が彼女より頭一つ下がった位置にあり、目の前で上下する乳房が気になったのかもしれない。俺の手が触れた時、彼女はピクリと体を震わせただけで、その熱っぽい顔はじっとこちらを向けていた。嫌がっている様子が見えないとなれば、少年は図に乗って、両手を突き出して乳房に触れるのであったが、それでも少女は何も言わない。思えば、少年が恋する少女の胸に手をかけた初めての時であった。やわらかく、あたたかく、頭ぐらい大きく、手を突っ込めばいくらでもズブズブと沈み込んでいき、寄せれば盛り上がり、揉めば指が飲み込まれ、掬い上げれば重く、少年はいつまででも触っていられそうな感じがした。と、その時気がついたことに、着ている物の感触として、女性にはあって然るべき重要な衣服の感覚が無いのである。
「ぶ、ぶ、ぶ、ぶらは、………?」
と少年は何度もどもりながら聞いた。
「高くって買えないの。………それに、おっぱいが大きすぎて店に行っても売ってないの。………」
と少女は儚げな表情を、赤らめた顔に浮かべる。
それきり、言葉は無かった。少年も少女も、大人にしか許されざる行為に、罪悪感と背徳感を感じて何も言い出せないのである。少年の方は、父上の言いつけに背くばかりか、この部屋に連れ込んで淫らな行為に及んでいるがため、少女の方は、相手が自分の手に届かない物持ちの息子であることから、果たしてこんなことをして良いのかと迷っているところに、突然の出来事舞い込んできたため。しかし両者とも、気が高揚して、場の雰囲気もそういうものでないから、止めるに止められない。そして、どうしてその行動を取ったのか分からないが、少年は少女に跨って下半身を曝け出し、少女もまた裾を捲って肩まで曝け出した。玉のような肌をしながらも、はちきれんばかりになったお腹に、少年はまず驚いた。驚いてグルグルと唸るそれを撫で擦り、次に仰向けになっているのにしっかりと上を向く、丸い乳房に目を奪われた。生で触った彼女の乳房は、服を通して触るよりも、何十倍も心地が良かった。少年は、少女の腹を押しつぶさないように、腰を浮かしながら、曝け出した物を乳房と乳房が作る谷間の間に据えた。と、同時に少女が頷いた。右手で左の乳房を取り、左手で右の乳房を取り、間に己の物を入れて、すっぽりと挟み込み、少年は腰を前後に振り始めた。―――少年が射精を憶えた初めての時であった。
叶の腹がほぼ元通りに収まったのは、日も暮れかかった頃であったろうか、彼女を無事家まで送って行き、すっかり寂しくなった部屋で、俺はその日を終えたのであるが、それからというもの、お話をするという日課は無くなって、代わりに、休みの日になると叶を引き連れて、街にある食事処を次々に訪れては大量に注文し、訪れてはテーブルを一杯にし、訪れては客を呼び寄せる。その度に彼女は幸せそうな顔を浮かべて料理を平らげ、満足そうな顔を浮かべて店を後にし、日の最後は必ずその体を俺に凭れさせる。彼女にとって嬉しかったのは、そうやっていくら食っても俺の懐が傷まないことで、というのは、だいたいどこの店にもデカ盛りを制限時間内に食べられれば無料になるとか、半額になるとか、そんなキャンペーンをやっているのだけれども、叶はその半分の時間で完食してしまうのである。「頑張ったら、別に2倍にしても時間内に食べられるよ」と言って、見事に成し遂げたこともあった。その店には以降出入り禁止になってしまったけれども、痛いのはそれくらいで、俺は俺の願望を、叶は叶の欲望を満たす日々を送ったのであった。
だが、叶を初めて連れて行ってから一ヶ月ほど経った時の事、父上に呼ばれて書斎へと向かうと、いつもは朗らかな父上が、パソコンの前で真剣な表情で睨んで来ていらっしゃった。俺は咄嗟に叶との行動が知れたのだなと感づいて、心臓をドキドキと打たせていると、
「まぁ、別に怒りはしないから、隣に来てくれ」
とおっしゃるので、すぐ傍にあった椅子に腰掛けて、父上が真剣に見ていたであろうパソコンの画面を見てみた。そこには家中に配置されている監視カメラの映像が映し出されていたのであったが、その映像をよく見てみると、若い少年と少女が手を繋いで庭を渡る様子と、端に俺が叶を連れ込んだ日の日付と時間が刻銘に刻まれているのである。俺は頭が真白になって、どういい訳をしたらいいのか、どうやれば許して頂けるのか、―――そういう言葉ばかりが浮かんで結局何も考えられなかったが、兎に角、叶と会っていたことが父上にバレた、それだけははっきりと分かった。
「この映像に思い当たる節はないか?」
無いと言っても、そこに写っている少年の顔は俺であるし、後ろ姿も俺であるし、背丈も俺であるし、況や叶をや。言い訳をしたところで、事実は事実である上に、父上に向かってこれ以上見苦しい姿を見せたくなかったし、嘘を言うなんて事は俺には出来ないので、正直に告白することにした。もちろん、彼女に一杯物を食べさせてたなんて言うべきではないから、ただ一言会っていたとだけ伝えることにした。
「ふむ、正直でよいよい。そんなとこだろう。いや、それにしても、いきなり自分の部屋に連れ込むとは」
と、一転して朗らかになったので、急に恥ずかしくなってきて、キュッと縮こまったのであった。
ところで俺がこの監視カメラを甘く見ていたのには、少しばかり理由がある。1つには、庭は木が生い茂っていて見通しが悪いこと、そしてもう1つには、子供部屋として使っている離れには設置していないこと、だから俺はあの日の朝、部屋にさえ連れ込んだらこちらのものと思っていたのであったが、それ以上の理由として、父上がその防犯カメラの映像をあまりチェックし給はないことが挙げられる。父上は抑止力としてカメラを設置していらっしゃるだけで、その映像を見ることは月に一回あるかないか、それもたまに半年間もすっぽ抜かすこともあれば、チェックをするのも適当に何日かを選んで、早送りをして見るだけというずさんさがあった。俺はしばしばその様子を眺める機会があったのだが、いまいち鮮明でない画面であるがゆえに、もはや人が居るかどうかが辛うじて分かる程度であった。だから、俺はあの時、叶を部屋に連れ込んだとしても、見つかるはずは無いと高をくくっていたのである。
で、子供が一人で家の中で何をしているのか気になった父上が、ひょんなことから防犯カメラの映像を、ぼんやり眺めていると、何者かと共に離れにまで入っていく事を確認し、それが何とも見窄らしい格好をした少女であるから、2、3回繰り返して見ているうちに、隣家の貧家の娘であることに気がついたのであろう。
俺はそれから、また真剣な顔つきになった父上に、たんまりと諭されてしまった。この住宅街は、その大半が一般庶民の暮らしている家で埋められているのであるが、とある一画にだけは物騒な人(に売られる)が住んでいる。不幸なことにこの家を建てる時に、上手い土地が無かったために、ある一つの家を挟んで、そこと向かい合わせになってしまった。そ��ならば、せめて家の裏にして、木で生け垣を作って完璧に仲を隔ててしまおうと思って、お前の部屋からも分かる通り、風景は見えるようにだけしたのである。もちろん、それなら別に他の所に住めば良いではないかと思うかもしれないが、しかしこの地は俺が子供時代に何年か過ごしたことがある土地であって、そして、お前のお母さんの生まれ育った土地である。つまりは夫婦の思い出の地であって、(言葉を濁しながら、)つまりは俺もお前と同じ穴の狢である��ら、近所に住む女の子を一人や二人呼んだところで何も言いはしない。が、裏にある地区だけはダメだ。別にそういう地区ではないが、何しろ物騒な噂ばかり聞く。で、彼女の家はそんな地区と我々とのちょうど境目に建っていて、一番可哀想な境遇を経ているのであるが、向こうから色々と入れ知恵されていると人はよく言う。もし問題が起これば面倒事になるかもしれないし、お前に怪我でもあったら良くない。実際、昔お前のお母さんの友人が、あの地区にいる人といざこざを起こした時に、上辺だけは丸く済んだけれども、その後に復讐として連れ去られそうになったことがあった。彼らは放っておくとどこまで非情なことをするのか分からない。だからあの言いつけはお前を心配してのことだったのだ。そもそも、俺はお前にはもっとふさわしい女性とお付き合いしてほしい。ほら、一人二人くらい学校で仲良くなった子は居るだろう。いたらぜひ言ってくれと、最終的には学校生活の話をするのであったが、父上は諭している途中ずっと真面目であった。俺はそれをふんふんと頷きながら、その実父上がそういうことを話てくれることが嬉しくて、内容はあまり耳に入ってなかった。ただ叶が可哀想なんだなと思うくらいで、始まった父上の詰りに、すっかり考えを逸らされてしまったのであったのだが、
「しかし、可愛い子だな。あんな家に住ませておくのがもったいない。転校して会えなくなる前に、分かれの挨拶くらいは許してやるから、やっておけよ」
と、突然父上が衝撃的な事を言ってのけるので、
「え? 転校?」
と聞き返してしまった。全く、転校するなどとは俺には初耳で、椅子の上でぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
「もう少ししたら、気晴らしに別荘の方で何年か過ごすからな、―――あゝ、そうそう本当に何年間かだぞ、一週間などではなくて。だからそのつもりでな」
俺はぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
それからは急に頭がぼんやりとしてしまって、引っ越しまでどう過ごしたのか憶えて居ない。ただ、最後に叶に会ったことだけは憶えていて、彼女は泣いていたように思う。ようやく自分が満足する量の食事を隔週ではあるけれども、取っている彼女の体つきは、微かに肉付きがよくなっているのだが矢張りガリガリに痩せ細っていた。逆に、胸元だけは一層膨らみ始めていて、その大きさはバレーボールよりも大きかった。俺は木陰に入って、最後にもう一度触らせてもらった。もうこれが最後だと思うと、お腹にも耳を当てた。朝食後直ぐに出てきたというその腹からは、矢張りゴロゴロと中で何かが蠢く音が聞こえてきた。そして泣いて泣いて仕方がない彼女と最後のキスをして、また会う約束を交わして、蕾を付け始めた桜の花を、雲の下にてあわれに見ながら袂を分かった。
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エーガね!NEWS「movie@theater 映画の力を信じて!」 ▶︎三吉彩花、黒木瞳監督 登壇予定!11月14日(土)にミッドランドスクエアシネマで『十二単衣を着た悪魔』名古屋舞台挨拶を開催! https://ameblo.jp/mottomovie/entry-12637170577.html #movieattheater #映画の力 #映画館に行こう #十二単衣を着た悪魔 #三吉彩花 https://www.instagram.com/p/CHZyoQFjNYe/?igshid=1a0tkg05nhy9o
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東京オリンピックのファッションディレクター山口壮大が「ジャップ」というオンラインショップを立ち上げていた事が判明し壮大に炎上! 悪目立ちだ ショップ名という誰でも思いつくところに変な名前を付けるのは ユーチューバーがアホな事をして再生数を稼ぐのと本質的に同じ 「ナチス」でも同じ 「俺は悪魔だ!」でも同じ 「コンビニの冷蔵コーナーに入ったよwwww」でも同じ 「へー?だから?」と言われたら返す言葉を持ってない クリエイティブでも何でも無い なのでクリエイターとしても三流 YMOが世界的評価を受けたのは名前じゃなくて音楽そのものが新鮮で西洋に無かったからだ その点、オンラインショップ「ジャップ」には何も無い そんな三流クリエイターをファッションディレクターとして起用して スーパー銭湯の従業員 と言われたのは恥だ ロゴ丸パクリの赤恥、佐野研二郎を思い出す 反省は活かされなかった 師匠筋の世界的なデザイナー高田賢三さんがパリで出した店が「ジャングルジャップ」という 賢三の回顧展を手掛けたのが山口壮大 師匠の店名をパクリとパクる精神がダメだ しかも「ジャングル」を外した為にただの差別語、蔑称の「ジャップ」となってしまったのも、先を見通せないのもセンスが無い 徒然草 第百十六段 現代語訳 「お寺の名前や、その他の様々な物に名前を付けるとき、昔の人は何も考えずに、ただありのままにわかりやすく付けたものだ。最近になってよく考えたのかどうか知らないが小細工したことを見せつけるように付けた名前は嫌らしい。人の名前にしても、見たことのない珍しい漢字を使ってもまったく意味がない。 どんなことも、珍しさを追求して、一般的ではないものをありがたがるのは、薄っぺらな教養しかない人が必ずやりそうなことである。」 https://tsurezuregusa.com/116dan/ 「寺院の号、さらぬ万の物にも、名を付くる事、昔の人は、少しも求めず、たゞ、ありのまゝに、やすく付けけるなり。この比は、深く案じ、才覚をあらはさんとしたるやうに聞ゆる、いとむつかし。人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なき事なり。 何事も、珍しき事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ。」 さて、日本🇯🇵らしさとは何だろうか? 服においては単純、直線だ。 勿論、侘び寂びの日本🇯🇵と 歌舞伎の日本🇯🇵では全く違うが世界中からお客様が来る時に日本人の有志大勢がお出迎えするには「かぶいている日本」ではあり得ないだろう。 むしろ多少黒子的な位置付けであろう。 単純な柄、綺麗な色、直線的で、日本の夏にピッタリな服があろう。 浴衣である。 日本の数千年の歴史で生き残った我が国の意匠、衣装 これに勝つのは誠に難しい。 しかるに1964年東京オリンピックでは表彰式のスタッフ衣装は和服だったのである。 足元さえ工夫すれば 着崩れさえ防げば 「浴衣」 が日本人の納得する衣装、意匠である。 むしろボランティアスタッフだけではなく! 閉会式には全世界の選手全員に浴衣をプレゼント🎁して 盆踊りよろしく 東京音頭などで 新国立競技場を 全選手が浴衣と団扇で練り歩き 世界平和を祈念したい! 日本の夏である。 世界中のトップアスリートの記憶に 世界中の視聴者の記憶に 圧倒的に残る素晴らしい閉会式にできる 何より選手たちが 「盆踊り楽しかった〜❣️」と口々に話す様子が目に浮かぶのである。 閉会式は盆踊り 衣装は浴衣 これが東京オリンピックだ❣️ https://t.co/UeBvf6b77Y
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