#先輩離席の奇跡
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beforedawnwitch · 1 year ago
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ヤバい。全部おもしろすぎて深夜に爆笑してる。
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tanakadntt · 2 years ago
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旧東隊の小説(二次創作)
刺身蕎麦クッキー
三輪秀次の好物は、ざる蕎麦、刺身、クッキーである。
一、刺身
ドアがあくと、まずプンと磯臭い空気が部屋に入ってきた。ここは東隊の作戦室で、三輪は同隊隊員である。
「大漁だぞー」
ついで入ってきたのは、発泡スチロールの箱を抱え���隊長の東春秋である。機嫌がいい。私服である。本日、東隊は任務のないシフトであったが、学校のあと、隊員は作戦室に集まっていた。仕事のためではない。
「おかえりなさい」
現地で購入したとおぼしき白い箱の中身は釣った魚だ。手持ちのクーラーボックスに入りきらなかったらしい。肩に下げているクーラーボックスだってかなり大きいのに、発泡スチロールの箱はさらに大きかった。重そうだ。三輪は発泡スチロールのほうを受け取った。ずっしりとしていて、よろける。氷がゴロゴロ動く音がした。
「床を濡らさないでください」
二宮匡貴が用意しておいたブルーシートを指す。
「気が利くな」
ニコニコしながら、東がクーラーボックスを肩から下ろす。三輪を手伝ってやりながら、二宮は黙って頷いた。
「東さん、長靴と道具は?」
「まだ車の中だな」
「後で取りに行きましょ。ほっとくと忘れちゃうわ」
加古望がキッチンから顔を出した。
ペリペリとビニールテープを剥がして、蓋を開ける。
のぞき込むと
「…大きい魚」
「鯛だな」
氷水の中に魚の王様が埋まっている。
東が器用にさばいていく脇で三人の隊員も忙しい。キッチンが臭くなるのは嫌と、加古はあらかじめ新聞紙をシンクに敷いていた。
「内臓はここに入れてね」
新聞紙で作った箱は暇なときに皆が折ってストックしてある。
タッパーや折を用意していくのは三輪の役目だ。紙袋にもポン、ポンと保冷剤を入れていく。
「秀次は手際がいいな」
「俺が教えました」
「あら、私が教えたのよ」
「今日、本部にいるのは誰かな? いつものことで悪いが、
手分けして、配りに行ってくれ」
「二宮、了解」
「加古、了解」
「了解です」
テンポよく言えずに、三輪は口の中でつぶやいた。
「ねえねえ、東さん、海鮮しゃぶしゃぶにしてみない?」
加古はカレイを見ながら提案する。
「新鮮なんだから、刺身だろう」
二宮が言い返す。二人はいつもこんな調子だ。
本日は、東隊長の釣ってきた魚を堪能する会なのだ。作戦室では飲酒禁止なので、ビールを飲みたい東の希望もあって、このあと本部内の彼の持っている居住スペースにお邪魔させてもらっての開催である。
「鍋があるからできるが、それなら最後はうどんで締めたいなあ」
「売店で売ってるんじゃないかしら」
東は包丁の手を止めてそうだなあと言いながら、チョイチョイと手招きして三輪を呼んだ。
「はい」
てっきり、うどんを買ってくるよう言われると思っていた三輪に東は、
「味見」
鯛の切れ端をヒョイと三輪の口の中にいれた。
「どうだ」
「おいしいです」
白身魚が甘いのを三輪はここにきて初めて知った。
ニ、クッキー
「暑いわね」
盆である。
この時期、食堂が休みなのだ。若者はコンビニに行き、偉い人は仕出し弁当を頼む。
今日の東隊長は上層部に呼ばれて会議に出席中である。これはよくあることで、片手間で隊長をやってるのではないかと思うほど忙しい人なのだ。今頃、上層部と高級弁当を食べていることだろう。
時刻は午後一時である。
「お腹が空いたわね」
先程から、加古は暑いとお腹が空いたしか言わないと気がついて、三輪は少しおかしかった。二宮はまだ到着していない。要領のよい彼のことなので、どこかで食事をしてからやってくるのだろう。
「コンビニで買ってきます」
三輪は立ち上がった。本部の中にも最近コンビニができたのだ。
「今日はコンビニのご飯って気分じゃないのよねえ」
と、加古は顎に長い指を当てた。二宮がいたなら、わがままだとののしったに違いないが、三輪はあまり気にならない。
「外へも買いに行きますよ」
どのみち三輪も何か腹に入れないといけない。
「本部の外は暑いわよ」
「そうだけど」
最近、加古に対しては敬語がすっぽ抜けるときがある。年上とか年下だとかそういうのを突き抜けたところが加古にあるからだ。
加古は天井に視線を送って、しばし考えたあと、
「どっかにクッキーがあったはず」
ぽんと手を叩いて、立ち上がった。
「東さんがもらってきてた」
「え! あれ? 」
あれは確かお中元でもらった高級クッキーだった。お中元をもらう大学生もどうかと思うが、東はよく頂きものをする。ご相伴にありつくのは隊員の役得だ。
しかし、いいとこのクッキーを昼飯代わりとは。
棚をゴソゴソとあさって、すぐに加古はクッキーの四角い缶を見つけてきた。目星をつけていたらしい。
「これこれ」
遠慮なくカパッとあけると、ほとんど手つかずの高級焼き菓子が現れる。
「三輪くん、冷蔵庫から飲み物持ってきて。私、アイスティー」
三輪は麦茶にした。
「お前らばっかり何食ってんだ」
案の定、程なくして現れた二宮は呆れた声を出した。
「太るぞ」
「三輪くんはもうちょっと太った���うがいいわ」
「お前だ、加古」
「ご飯代わりだもの。それにこれから、動くから問題ないわ」
「トリオン体じゃあ関係ないだろう」
そう言いつつも、二宮もクッキーに手を伸ばす。
「二宮先輩、何飲みますか?」
「牛乳」
結局、三人でバリボリ食べて、缶のクッキーはすっかりなくなってしまった。
「内緒ね」
「証拠隠滅だな」
三輪くんの方で捨てておいてねと空の缶を持たされた。三輪が本部に住んでいるからだ。
なんとなく捨てそびれて、東隊が解散して、それぞれが別の隊を持つようになった今でも、その缶は三輪の部屋にある。
三、ざる蕎麦
「なんだ、引っ越したばかりなのか」
東隊が結成されたばかりの頃の話だ。
なんの用事だったか。多分、東からの言伝てがあったのに三輪へのメールが既読にもならないし、電話にも出ない。
二宮、すまない。俺、手が離せないから、伝えるついでに様子をちょっと見てきてやってくれ、そのまま帰っていいから。
隊長にそう頼まれたら、二宮も嫌とは言えない。もう、夜と言っても差し支えない時間だった。加古は既に帰宅している。
東に聞いた区画で三輪の部屋を見つけ、何度か呼び鈴を鳴らして、ようやくドアはあいた。
単身者用らしく、玄関から見渡せるほどの部屋だ。
およそ、生活感というものがない部屋だった。
中はガランとしていて、薄い蒲団が敷いてある他は、ダンボール箱がひとつおいてあるだけだ。入り口すぐに見えるキッチンも使っている形跡がない。
だから、二宮は引っ越してきたばかりかと聞いたのだ。三輪は焦点の合わない目をして、否とも応とも言わなかった。
出会ってまもないが、三輪には時々そういう不安定な状態に陥るときがある。何もかもが億劫になるらしく、食べることも眠ることもしなくなる。反応も鈍い。
この街には、この街独特の事情によって、そういう人間は割と存在し、容認されている。だから、二宮もそれほど奇異には思わない。あの日あのとき、『あちら側』だったんだなと思うだけだ。
それでも淡々と任務をこなす姿は評価するが、面倒な後輩であることにはかわりなかった。
東からの用件を伝え、確認をとったらもう二宮の任務は終わりだ。
しかし、
「夕飯は食ったのか?」
「ああ、はい、いえ」
返事は要領は得ないが、おそらく食べていない。
(昼も食べてなかったな)
「夕飯、食うぞ」
「……え?」
やはり反応が鈍い。二宮はイラッとしたが、今の三輪相手に何か言う気はしない。
三輪を連れて、食堂に行こうとする。
が、二宮はふと気が変わった。
「鍋あるか?」
「ないです」
「皿は?」
「ないです」
「コップは?」
「ないです」
二宮がため息をつくと、すみませんと三輪が謝った。徐々に意識が浮上してきたようだ。
「あの、二宮先輩、食堂で」
「いや、待ってろ」
三十分後、調理道具一式を調達してきた二宮は再び三輪の部屋に現れたのだった。
「蕎麦を茹でるぞ」
「…蕎麦ですか?」
その頃には、三輪もうつ状態になっているどころではない。二宮のペースに乗っかりもできず、さりとて落ちることもできない。
「あの、なんで、蕎麦」
「引っ越ししたら引っ越し蕎麦だろう」
引っ越しのことを考えたら、最初に思いついたのが蕎麦だった。新居で食べるのにふさわしい。
「あちこちから、借りてきたからな。明日、返しに行くぞ」
本格的な塗りの四角いセイロまである。三輪はおっかなびっくり持ち上げて、意味なく裏をのぞき込んだ。
その間に、二宮は鍋を沸かし、乾蕎麦を放り込んでいる。
「七分、計ってくれ」
「了解です。料理されるんですね」
「麺を茹でるくらい料理に入らんと思うぞ」
菜箸で、麺を動かしながら、二宮はこともなげに言った。
「三輪も食堂の飯ばっか食ってないで、蕎麦くらい茹でろ」
「はい」
思いの外、大量に茹で上がった蕎麦をセイロに山のように盛って、二人ですすった。箸もなくて割り箸だった。
もうここに一年ほど住んでいますと言えずに三輪は黙って、蕎麦を食べた。
この日にようやく三輪の引っ越しが終わったといえるかもしれない。
終わり
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juznimono · 1 year ago
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プロ野球を観た
日本がWBCに沸いた今春、我が家にもWBC旋風が吹き荒れていた。近藤選手の応援歌が好きだなあなどと思っていたら世間は日ハム時代の方を使うべきだという意見が主流だったようでちょっと凹んだ思い出がある
それから季節は過ぎても野球へのフワっとした興味は続き、観戦に行ってみたい気持ちは日に日に高まっていった。立地を考えて甲子園か京セラに絞る。甲子園周辺はこれまでも結構縁があったため、今回はオリックスの試合に決めた。よく連絡を取る友人がオリックスファンだったのも大きかった。舞台バンド漫画の話しかしない私が、急に野球を見たいのでついてきてくれとのたもうたのだから不審に思っただろうが、友人は快諾してくれた。一瞬友人カップルの観戦デートに混ざる可能性が出てなんだか面白くて話に乗ったものの、正気に戻った彼女が別日程をとってくれた。水差し女にならなくてよかった
(余談なんですが、物心つかない頃に千葉に観戦に行ったことはあります。「里崎!里崎!」とコールしたことしか覚えていない。確かキャッチャー。知っている野球選手を里崎選手一本で押し通していたら野球ファンの周囲の人間はみんな曖昧な笑みを浮かべてきました。何?)
友人がチョイスしてくれた観戦日は、女子をターゲットにした「織姫デー」(七夕とかじゃないんだ)という日だった。公式サイトを中心に事前情報や観戦マナーなどを仕入れるにつれてこの織姫デー、なんだか凄そうだというのがわかってきた。 イケメン投票で選ばれた選手がアイドルさながらにこちらを見つめる画像と黄色いネットの声は、最初にイメージしていたプロ野球のイメージとかけ離れていて驚いた。 野球を盛り上げるために色んな種類のプロが頑張っているのが感じられて、観戦前から「プロ野球、すげ~~」と感服しっぱなしだった。友人との共通の後輩に似た選手がいたので彼を推しと定めて(どの界隈でもとりあえず誰が好きかをなんとなく設定しておくと楽しさが倍増するタイプなので)当日に向けて姫になりきるべく色々と楽しく準備した。しかし来る当日朝、愛車のボンネットが熱々になって私は待ち合わせに2時間遅刻し、すべての準備を台無しにしてドーム前に半泣きでたどり着いた。ハンカチも、渡したかったお土産も忘れた。最悪の滑り出しだ。普通に心配してくれた優しすぎる友人に連れられていざ京セラドームへ
私はアイドルにもスポーツにも疎いため初めてのドームとの邂逅で、お上りさんのように大感動してしまった。 ドームでっかすぎる!巨大な水色のどら焼きみたいな摩訶不思議な建物。宇宙人が乗り捨てていったUFOですよと言われると、信じられないにしてもそういうコンセプトなのかなぁと思ってしまう。調べると自分が生まれる前に完成していたらしい。恥ずかしい
駅からドームの中まですごい盛況ぶりで、アイドルに扮したイケメン選手ののぼり(!?)が立っており、観客を出迎えてくれた。普段どんな比率なのかはわからないが確かに女性も多く見受けられた。友人のチケット発券を待つ間におじさん達が選手の批評をしたり、制服の学生達や、両チームのユニフォームを着た子達が楽しそうにしているのを見た。いいなぁ~。 事前に見た球場飯やグッズが気になっていたが、冷やかす気が起きないほどどの店も賑わっていた。友人曰く京セラの球場飯は微妙らしい
ドーム内へ続く入り口から見えたのはマウンドではなく対��の客席だった。想像より遙か遠くに米粒大の人間がぎっしりと並んでいて、遠近感がめちゃめちゃになって混乱した。えっこんなに広いの・・・・・・?!なんというかハリーポッターのハーマイオニーのビーズバッグの中がめっちゃデカい魔法みたいだった。遅刻してきたのにずっと京セラの外観と内観��興奮している私を友人はどう思っただろうか。
チケットを片手に友人は内野席をずんずん進んでいく。5500円ならこの辺かな?の予想をぶっちぎって前へ進んでいき、選手の背番号が易々と見えるようなものすごいところで着席した。5500円で、この近さ。舞台ならこうはいかない。収容人数と飲食で収益を上げているのだろう。しかも選手達もちゃんと食べていけるお給料の仕組みになってるのが完成されてる。ありがたい
子どもが待つグラウンドに選手がやって来た。ものすごく遠い距離でボールを回している。めっちゃ速い。生で観るまでこんなに大きな規模感でやっているとは知り得なかった。ライオンちゃんがこの日のゲストでやってきていて一気にごきげんよう感が増す場内。そういえばなんか良い匂いがする柔軟剤を入り口で貰った
Tumblr media
空きっ腹に入れたビールが午前に車がぶち壊れたことを気持ちよく忘れさせてくれたところで試合が始まった。友人が横から解説を添えてくれるが周りの音にかき消されて聞こえなかったので、確かにデートで来たら自然と距離が縮まるかもなぁとか考えながらぼーっと観ていたら山﨑選手が先頭打者に打たれて一気に試合に引き戻された。つくりものではないのでうかうかしてたら二度と同じ瞬間は見られないのだ
「相手の下位打線の時とかにご飯を買えば良いよ」と言われていたが、どちらの攻撃も面白くてずっと座席から離れられなかった。あと横浜の応援歌がめちゃくちゃ良くて、体が勝手��動いてしまった。不勉強なもので一つ一つのプレーを事細かに記憶したり記録するのは出来なくてアホの感想になってしまうけれど、全部に一喜一憂して楽しかった。打って喜び打たれて関節が白く浮き出るほど手を握りしめたり、あとトンネルエラーも見られたし、謎のドッカン投球(申告敬遠だそうだ)もあった。打たれて「わ゛ーーー😵!!!」と叫んだ声がバシッと決まった好守備に「わ゛ーーーっ~~🫣🥹😙😙!?」に変化したり。
そして生まれて初めてホームランを拝むこともできた。斜め上をまっすぐヒューンとボールが渡っていったのが今も忘れられない。訳のわからない言葉を口走りながら跳びはね、ぐちゃぐちゃのハイタッチをした。もっと周りの喜び方を観察したり森選手に賛辞を送るべきだったのに、すべてがそっちのけになってしまうほど興奮した。森選手はなんと2本もホームランを打ち、2本目も我を忘れてしまった。もうホームランを前に冷静さを保つことは無理なんだと思う。友人も今まで聞いたことがない声でなにか叫んでいた
試合はオリックスが勝利した。スターターキットのような試合だった。友人はほっとしていた。私の初観戦が充実したものになるか気をもんでくれていたようだ。ありがたい。あとお土産でめっちゃ美味しい韓国海苔のおやつと可愛いおちょこと北海道ラーメンをくれた。神。 私もオリックスが勝ってくれて良かった。小賢しい私は遅刻と勝利で±トータルプラスになっただろうと踏んですっかり調子こきに戻って意気揚々と祝杯をあげに居酒屋に向かったのだ。選手の皆さんがもぎ取った勝利がこんな浅ましい操作に使われて申し訳ない。素晴らしい試合をありがとうございました
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プレー以外でも退屈させない工夫がそこかしこに見られて、総合エンタメですやんと思った。球団アイドルの女の子に手を振られてガチ照れした。たっぷり3時間を楽しみ尽くした休日だった 。奇跡的に1枚だけとれた1789が中止でしょげていたところに野球選手にジェンヌと通ずるものを感じてツボが刺激された。同時に宝塚も観た感じ。あ~オリックスバファローズ♪の歌と中川選手の応援歌(好みで覚えやすかった)をハミングしながら帰った
今度はオペラグラスを持って行きたい。ピッチャーの手がどうなってるのか観察したい。ユニフォームのズボンってどんな素材なんだろう。めっちゃ伸びそう
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ミリしらならぬ1試合観戦後のミリしりを書いていたけど似てる人コーナーになったので消しました。
私が事前に注目しようとしていた太田選手は怪我で出場できなかったようです。太田選手がまた治癒されたら絶対見に行きたいと思います
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chaukachawan · 1 year ago
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激重役者紹介
まりおです。まとめるのが苦手なので支離滅裂です。なので文量はバラバラです。もっと短く素敵な言い回しがあればいいけど、ない。言う機会ここしかないなって思ったんです。マジで激重です。まじですみません。
〇佐々木モモ
ころねさん。ラブ!!我らが座長って書こうとしたけど、ころねさん=衣装の長のイメージ。新歓の時、布持ってこれ安かったの!!の笑顔が忘れられない。
役者のころねさんは、ずっと向き合って答えを出してるイメージ。かっこいいなって思って自分も真似してみたけど上手くいかない。難しい。答えのない問いに逃げ出したくなる。それを毎公演やってるんだから凄い。できない。読み方から歩き方まで使えるもの全部で役を作っているのをずっと覚えてる。
役でガッツリ絡む事って実はすごく少ない。だから何がきっかけでこんなに仲良くしてもらうようになったっけって思うけど、思い出せないぐらいいっぱい話した。でも足りない。いつだって会��たいしお話ししたい。実は先輩像の目標はころねさんです。全然出来てないけど。ころねさんみたいな先輩になりたかった。近づきにくいことはなく、後輩から頼りにされて、でも適度な距離感で見守ってくれているころねさんが目標でした。こんな先輩になれたら素敵だろうなって思ってた。
きっと娘枠はなすかに取られるので、孫枠を狙っていきます。どんな時も「う〜んそうか〜頑張ったね〜」って言いながら頭を撫でてくれるころねさんを求めてる。私のメンタルの支えだった。本人はそうは思ってなさそうだけど、不安があっても大丈夫!!って言ってくれるころねさんに間違いなく支えられた。あの包容力がなくなったらどうなってしまうんでしょう。もうやっていけないよ!!!
〇黍
きびさん。多分バレてると思いますが最後だから言わせてください。大ファンです。大好きです!!!いっぱいお話ししたいのに、お話しする内容がなくていつも困る。お話したいのに!!!きびさんといると、自然とテンポがゆっくりになるというか、目まぐるしく回ってるときに緩やかにブレーキがかかって急行から鈍行になる感覚になります。私が今まで出会った人の中にはいなくて、いつだって新鮮。
実はオムニの時から一緒。実は最初はちょっとだけ怖かったです。おそらく稽古場よりも仕込み週の方が話してる。でも楽st後の「おつかれ~」って笑顔で言ってるきびさんに完全に落ちました。今では何この人、おもろ!!です。きびさんのコメディ見たかったな~。まだ見れないか期待してます。脚本も演出も演技もきびさんの作る世界観がすごく好き。ずっと見ていたくなる。願わくばもう一度だけきびさんの脚本に出たかった。去年の外公の時はただただ楽しいだけで何も見えてなくて、終わったあとに気づいたあの奥深さを表現したい。きっと力不足なんだろうけども。
きびさんにしか出せない雰囲気、場の持たせ方、動き方、読み方、真似出来ない。絶対に追いつけない。それでもこれからも密かに勝手に追いかけます。支えになってたって言ってたけどそんなことは絶対にない。でも1ミリでもなれてたら嬉しいです。
最後に照明。仕込みめっちゃ楽しかった。あんなに仕込みが楽しみだった理由の8割は照明のおかげです。シュートでテンション上がってるきびさんを見れたのは照明班の特権だと思ってます。木彫りと怖い話の照明が1番好きです。キャスパは三原色。ストロボほんとに天才。色んな面で尊敬しています。またスイーツ食べに行きましょう。
〇君安飛那太
コルクさん。コルクさんって「君安飛那太」感凄いですよね。フルネームで呼びたくなる感じ。ついにおじさんとおばさんになっちゃった。
この人は役の作りこみが凄い。そしてそれを表現しきる演技力もずば抜けてる。動きがすごく上手い人だからそっちに目が行きがちになるけど、どのシーンも役の感情が深くまで考えられていて、こう思ってるからこの動きの順序がわかりやすい。もしや感情が分かるから動きも上手いのか?なんだか命題みたいになってきましたね。33期唯一の役者皆勤賞?間違いなく毎公演、どの役でも輝いていた。今年に入って、この人は脚本っていう外せない枠組みの中で最善策をとにかく追い求めてるなって思いました。どんなに手詰まりでも何とかしようと模索し続けてるのがコルクさんなのではと最近思う。特に呼吸の第3幕、第2回通しからゲネでここまで変わるかってぐらい変わってた。悩んでる場面に遭遇したけど、こうしたらああしたらって色んな案が出ていて尊敬しかありません。もっと同じシーンに出たかった。掛け合いが超楽しい。もっと共演したかったなあ。あとはキャスパ。もっと踊りたかった!!
ちなみにこれ書いてる時にSpotifyがたまたまだれかの心臓になれたならをかけてきました。奇跡ですね。
〇坪井涼
ごこさん。未だにカラスのイメージが強い。発声中よくカラスの動きしたら真似してくれる。でもこの前ごこさんから「まりおちゃんよく発声中にやってくるよな」って言われた。気づかれていたのは悔しいですね。
ごこさんは発声えぐいイメージ。普段のよく通る声がそのまま舞台上で聞こえる。ごこさんのシーン始まったな〜って幕裏で毎回思います。可愛い役が多いし、実際とても似合うけども、えげつない発声でただ可愛いだけの印象じゃ終わらない役に進化させてる。
加えて言語化が上手い。これはどの人に聞いてもそう返ってくると思う。稽古場が滞った時に今の問題点を的確にまとめてくれる。マジで助けられた。初めは扱い方というか(先輩にすみません)冗談のラインが分からなかったけど、ほぼ100%冗談って分かってからはすごく楽しい。ごこさんの返しは誰にも真似出来なくて秀逸です。いつか上手く返したい。何回かごこさんに動きや読み方を褒めてもらって、それが凄く嬉しかったのを覚えてます。どストレートに褒めてくれるから本当に嬉しいんです。ありがとうございます。
〇握飯子
クオリアさん。ご飯行きましょう。とりあえずこの前のリスケしましょう。クオリアさんは頼り上手で頼られ上手です。本当に相談しやすい。でもいつの間にか相談されてたりするから面白い。
クオリアさんは天才です。がむしゃらの天才。秋公でそれを改めて実感しました。セリフ読みに悩んで1度読んでもらった時や、大集前でシーンを見てもらった時、悩みがすっ飛びましたね。なんで解決策がわかるんだ。演出やったことある人はやっぱり違うのか。私的にシーンに難航してる時の解決策が思いつくのが演出のスゴイところだと思ってます。それが遺憾無く発揮されましたね。そして役にずっと悩んでいらっしゃった。いつ見てもみそかとシーン練してた。これは今回だけじゃない���ど。凄いや。久しぶりに稽古場でクオリアさんを見て、あ、クオリアさんだな〜ってなった。クオリアさんの不憫な役大好きです。今回のさやちゃん、外公のゆうちゃんみたいないじめられっ子とはまた違う微妙な塩梅がクオリアさんにしか出せないと思う。尊敬です。いつか習得したい。いっぱい教えてもらったけど、まだまだ、もっと教えてもらいたいことが沢山ある。時間が足りないよ!!!
〇えどいん
えどさん。役者と衣装班のイメージがごちゃまぜです。いつもマントとコルクさんの衣装作ってますね。もはや専属。
関わりがなかったようで関わりがあるようでなかった?いやあるなって感じです。共演こそあまりですが結構話したのでは?稽古場ではひたすら自分のセリフを深めてた。ハマった時が超強い。個人的に33期の方は特化型が多いように思いますが、一番特化型だと思ってます。他の人が出来ない役を出来る人。1番好きなのは外公の山田です。外公の「帰れ」の写真が一番好き。一番本人の味を役に出せる人だと思います。縁の下の力持ちの人。しれっと作業にいるし、しれっと衣装作ってるし、しれっと存在感を残してます。全てその前後の記憶がないからしれっとです。
〇梅本潤
しあらさん。不憫ですね〜不憫ですええ。こんぐらいいじってもまあ許されるでしょう。めっちゃ関わった気がするのに実は共演ほぼしてないんですよね。まじで意外。それぐらい大変お世話になりました。
さすが舞監と言うべきか、安心感がすごい。締め方と抜き加減がバランスよくて、周りも気張りすぎずに頑張れる。しあらさんが舞監ってだけで仕込みや本番前などの雰囲気も良くなってました。仕事しやすいし、気になったことを相談しやすい。上に立つ人の雰囲気ってすごく重要だと個人的にはおもってますが、もう完璧にこなしてた。きっと人柄なんでしょう。コント、共演出来て良かった。確か去年の外公でツッコミのしあらさんと絡みたいと書いた気がします。まさかコントになるとは。まじで嬉しかった。やって思ったのはしあらさんって普段からツッコミしてるなって思いました。違和感なかった。コント練習終わりに話してる時と違いがない。ずっとちゃうかに振り回されてた印象ですが、打ち上げで楽しそうに茶番やってるのを見てなんか安心しました(めっちゃ上から目線ですね。すみません)
楽ステめっちゃ良かったです。オペ席ど真ん中で見れてよかった。確実にみんなのギアをとても上げてた。怒りやくやしさなんかを出す時のしあらさんの演技がとても好きです。がむしゃら感や人間の泥臭さがある。ゲネ日ボロボロに言ってすみません。フォローがフォローになってなかった。まじでご飯行きましょう。話し足りない。新歓マジで頑張ります。リマインドだけお願いします。
〇かの
すふれさん。きゃわです。個人的にメイクに関して努力の人だと思ってます。今年めちゃくちゃお話しした。まじで新歓が大きかった。
天然なんだかそうじゃないんだか未だにつかめておりません。少なくとも恋愛相談の時のすふれさんは世界一頼りになります。カラオケで確信しました。個人的に怒鳴るすふれさんが大好きなんですが、今回舞台上で見れたのが本当に嬉しかった。あのシーンは本当に怒ってるお母さんみたいに段々と雲行きが怪しくなって、どこかで爆発したように怒り出すのが好きだった。33期で怒鳴りが好きなのがすふれさんとしあらさんなので、華幻の喧嘩シーンは本当に私得。あのすふれさんの一体どこからそんな声が出ているのか。ちゃうか7不思議の一つですね。もっといろんな役者のすふれさんが見たかった。絶対人間臭い役似合うんじゃないかな。もっとお話ししたい。ご飯に行きましょう。くおりあさん混ぜたらもっと面白くなりそう。
〇Aru=R
ほばさん。最近関わりが少ない!!オムニではお世話になったのに!!
発声と音楽に詳しい人のイメージ。オムニの時、5限後に来た私に発声を教えてくれました。感謝。今考えると、あの時点で発声教えれるってすごいんですよ。私には出来なかった。今公演では悪役。新歓の時から思ってましたが、やっぱり似合いますね。張った時の声のトーンと雰囲気が悪役にはまる。でも今回は完全な悪役じゃなくて、それぞれの正義を持ってる感じですごく新鮮でした。面白かった!とりあえず33期新人をもう一回見ようと思います。
〇ベジはむの残留思念体
ベジさん。同じ三田の民。先に脱出してしまいました。まりおのいなくなった三田は俺が守るって言ってたからきっと大丈夫でしょう。
The ちゃうかって人。普通にアドリブをぶっ込める度胸がすごい。アドリブして毎回噛んでる私からしたら信じられない。オムニで共演して以来恐怖しかありません。ある意味共演したくない。絶対に素笑いしてしまう。お客さん側でずっと見ていたいですね。途絶えかけたちゃうかイズムは確実に後輩達に伝わってます。げんつきの楽ステ、オペ席は全員声を押し殺して笑ってました。カラオケ凄く楽しかった。もう一回行きましょう。
〇トロン
トロンさん。後輩でトロンさんと共演経験があるのは、実はレアなのでは?
ベジさんと同じく共演に恐怖を覚えてる人です。本当にピザキライは面白かった。楽ステで素笑いしそうになるのを必死で堪えてました。妄想では幕裏のため声を押し殺して大爆笑しました。最高に楽しかった。
ロキから話をよく聞いているのですが、もっと話したかったなと思います。ロキの恋愛相談を聞いてるトロンさんの話を聞いていたい。絶対面白い。もっと話してみたかったです!!!
〇田中かほ
ゆるあさん。ゆるっとゆるあさん。私はゆるあさんのゆるはゆるっとのゆるだと永遠に主張します。
最初の印象は優しい!頼もしい!パワフル!かわいい!こんな人いるんだ!でした。でも時が経つにつれてこんなにも人間らしくてでもまっすぐに進んでいる人は他には居ないんじゃないかと思うようになりました。パワフルなのは変わらないけど、私にはない世界を見ていて、私が必死に向き合いたくないって背を向けてることにちゃんと向き合ってる。だからこそ最後の最後でゆるあさんと演出と役者で関われたのが嬉しかった!!ゆるあさんにしか気づけないような日常の一部分を切りとったような脚本に出れて幸せです。自分じゃ気づけない世界を見れたような気がしました。最終的にパフォが当初の想定と全然違うものになっちゃったのが謝罪。おばさん難しかったけど楽しかったです!!!
演劇してるゆるあさんも殴りを持って走り回ってるゆるあさんも大好きです。いつだって楽しそうに目の前に向き合っているから着いていきたくなるし、助けたくなる。そんなところをずっと尊敬しています。私の腕はいつでも空いてるのでいつでも抱きしめます。飛び込んできてください。
〇Ω
べーたさん。今頃スペインでBARに行ってるんでしょうか。私がストーリーにトリスの写真をあげる度にいいねが飛んでくるのが密かに面白い。
なんやかんや共演させてもらいました。普通に上手い。存在感ある。そして何よりやりやすい。ペアの役だとよりそう思いました。つられてにギアが上がっていく感じが本当に楽しい。今ごろスペインでも楽しく元気��やっていることでしょう。何故か分かりませんが毎日のように声は聞いてますからね!!
言われなくてもな気がしますがお元気で!!
〇荻野琥珀
ハクさん。しばらく会えてないよ!!
ハクさんの脚本大好きなんですよね。少年心が湧き出てくる。ライカン本当に楽しかった。朗らかでありながらテキパキと指示を出すはくさんにそろそろ会いたかった。そして妄想の侍と人魚のゴリラ、マジでツボでした。何回でもゴリラのハケシーンは見返してます。笑いをしっかりかっさらっていくのはずるい!!マジで会いたかったな!!
楽ステ、キャスパまではギリ耐えてたのに、カテコでシーリングの逆光で眩しいきびさんコルクさんえどさんの背中で涙が止まらなかった。
先輩がいなくなるよりももっとより友達に近い存在がいなくなる感覚です。それぐらいお世話になったし沢山話したし、関わった。
本当にお世話になりました!!!!
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esennk · 2 years ago
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4/25 体調◯
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 身体を引きずり20分遅れで一限へ。授業後喫煙所で黒髪短髪のゆうまに会う、びっくりした。二限も終え部室にベースを置きに行くとトムがいて、セージさんが好きそうなの見つけましたよ〜っていって曲を聞かせてくれた。本当によかった。
 家でゲームをしながら配達を待つも来ず、急いで駅に向かう。多分去年春子ちゃんを連れて���たぶりのそれいゆだった気がする。次郎との会話はホントに弾む。近況報告から悪口、悩み、ゲーム、特撮、映画などみっちり話し込んだ。二時間越えの滞在。次郎から引退してから見るライブの日のストーリーはとても辛いと教わった。シフォンケーキとっっっても美味しかった。
 智春さんとタバコ一吸いして吉祥寺まで歩いた。最近次郎はあんま一緒にいない人たちを誘ってドリームマッチさせるのが趣味らしい。僕が普段遊ばない人を誘おうとい話になり岡を呼ぶことに。結局岡塩塚かずさみのりちゃんにさすけまでくるという謎飲み会になった。最近もっと人と遊びたいと思っていた自分には嬉しすぎるイベントになった。岡とさすけの部長トークやみのりちゃんとのFS不和話、疲れたけど楽しかった。残りの一年、先輩ともちゃんと会っていきたいし後輩ともう少し親密になりたい。耐えてくれ自分の身体。
 高架下に行ったらFSナンバガ組に欅委員、たつきもいてアニメ最終話みたいな奇跡の大集合が起こった。しかも火曜日に。人と会って話すのがこんなに楽しいなんて久しぶりの感覚、ファミマの割引されてるおにぎりを食べながら、みんなの笑顔を眺めてた。
 家に帰ってきたら、流石にドッと疲れが、床に倒れ込む。次郎から今日は誘ってくれてありがとうのラインが来る。そういうところも次郎の愛おしいところだ。僕ももうすこし愛される先輩になりたいかも。
 そういえば岡達を待ってる間ロフトの地下で次郎とストファイして1-2で負けた。次こそ勝つ。
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3/26体調△
学校行ってモーニングコールズの練習。市川が不調で軽く合わせたあと遊んだが、その後2人で武道家に行き体力の充電をした。僕も一日調子悪かったのにとてつもなく元気になった。そういえばいつも入れないショウガを少し入れた。
3/27 体調◯
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 早起きしてから朝からバイト。この日は店長のサボりが特にひどく、ずっと文句を言ってたら1日が終わってた。お昼にいちご入ってる堂島ロールを一切れもらって食べた。こういうのが嬉しくてあそこのバイトは辞められない。
 退勤してそそくさと高田馬場へ。弟に駅まで迎えにきてもらったのだが、名物のロータリーバカ騒ぎを見れて逆に嬉しくなった。
 マルエツで回鍋肉の材料とプレゼントを買って弟の家へ。うちよりは広いキッチンに2人で並んで料理をした。あまり美味しくなかったけど、一緒にご飯をするだけでとても楽しかった⭐️。弟の近況、学校のこととか彼女のこと、軽音のことを一通り聞いて、まだ変なことはしてなさそうで安心。弟だけはサイコーな大学生でいて欲しい。また近々会いに行きたい。
 自分が大学一年生の頃なんて思い出しただけで恥ずかしくて死にたくなるくらいガキだった。でもみんなそんなもんでしょう、まだまだ駆け抜けたい大学生活。
3/28 運✖︎
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 この日はただただ運が悪かったのでその話を。元々四限終わりにコーシンと一緒にグリッドマンを観に行く約束だったのだが、気分でスバルを誘った。コーシンは本書いたりするし、ガイナックス的観点の話を、スバルは特撮愛強いし、円谷プロ的観点から話を聞けると思って。そして浅野くんに学校で話しかけられた。彼は今年の一年生で新歓でかなり話してた子だった、調子が良かった僕はその子を映画に誘った。彼は意外と興味があったみたいで新入生と人見知り2人をつれて意気揚々と新宿に向かった。
 少し早めに着いてタイムスでも行って話せば和むかなと思ったのだが、店は激混みで入れず。代替案も決められず駿河屋に彷徨い込み、みんな別々で店内の物色をする。この時点で浅野くんには申し訳ないなって思ってたんだけど更なる悲劇が起こる。
 上映10分前になり映画館まで行きチケットを取ろうとする。受付で4人と伝えると満席だと言われる。もう公開から6週間経ってるのに?!?!もう非難の嵐。先に取っとけとかとりあえず映画館に来るべきだったとか一年連れてきてるのにどうするんだとか。流石に凹んだし反省した。
 スバルと浅野くんに謝り、僕とコーシンは24:00上映終了の回を観に行くことに。とりあえずご飯とかお話くらいはと、4人でアルルに行く。自分たちの前に2組待っていたのだが、すでにお腹は空いていたし後輩に気を使ったりでとても疲れていた。もう次が順番のとこまで待っていたが、しんどくなりどこかご飯に行こうと提案し、店の前を離れた。その直後である、中から客が出てきて後ろの人たちが通されているのを観てしまった....。少しお店を探すも金曜の新宿はどこも混んでて、スバルと浅野くんは吉祥寺でご飯を食べると言って帰ってしまった。(スバル本当にごめんね)コーシンは今日は厄日なんですよ!そういう日なんですよ!ってひたすら励ましてくれた。
 2人で岐阜屋に行きチャーハンとビールを流し込んだ。なんかその日のチャーハンも調子悪かった。ビールだけはいつ飲んでも美味しい。コーシンがトー横題材の文章書きたいしって言ってきたので暇つぶしに歌舞伎町タワーの見学に行った。それはもうハリボテの作られたNIPPONのイメージと、治安の悪い空気の詰まったタワーだった。
 映画はもう最高だった。全ての不幸が焦らしだったかのように晴れやかな気持ちで映画館を出た。スバルには流石に断られ、2人で感想&考察を話しながらワンカン。一時半過ぎに解散した。
 かなりテキトーに文章を打ち続けたので読みづらかったらゴメンなさい。
4/29 体調◯
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 起きたら12:50分でバタバタ支度をして家を出る。セブンで昨日webで作った履歴書(テキトー)をプリントして土曜の吉祥寺を駆け抜ける。なんとか2分前に店の前についた。万星のアルバイトの面接を受けてきた。結果は来週中に電話すると、受かるといいな。
 5時くらいにたつきと智春さんと合流して高円寺へ。軽く散歩して四文屋で飲酒。テンポよくお酒とお肉が進む、居心地がよい。話した内容は忘れた。
 西荻に移動して戎で呑む。坂本慎太郎のMVを流して怒られた。ここでありちゃんを呼び出し、智春さんとの共演。ありちゃんは酔っ払っていた。頼むから変なお金の使い方をやめてほしい。最近は居酒屋でハイボール飲んでもペースミスしなくなった(大学四年生なのに今更^_^)。
 この日は元気すぎた。智春さんとお別れした後吉祥寺にありちゃんを連れてきて凜さん折田さんと合流、何気に初の清水屋で三軒目。美味しい食事と楽しい会話、友人に恵まれてると実感させられるような夜だった。次は智春さん折田さんを並べてお酒が飲みたい。
 最後たつきと2人でありちゃんを西荻窪に電車で送って、徒歩で帰った。最近たつきとちゃんと遊んでなかった(僕が悪い)のでゆっくり話せてよかった。彼には自我をもっと強く持って僕の憧れた頃の姿に戻ってほしい、頑張れ���️
 そういえば最後の最後で裕介が合流して3人で少し話したな、なんか変形合体ロボとか男のロマンがどうとかの話をしたね、僕はとても楽しかったよ。
 いつだって少年の心を忘れずにいたい。
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leajjack · 2 years ago
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大咲真白まとめ話
「三月うさぎと不思議なテーブル」の自PC「大咲真白」設定メモを全部載せした総まとめブログです。
・大咲真白 好きなもの:可愛いもの。美味しいと言って食べてくれる人。誠実な人。いちご。 嫌いなもの:否定や放置をされること。冷めたご飯。体調などの理由なく料理を残されること。
・名前の由来 →「よく笑う」��わらうは咲うとも書けるので「大きく咲う」の意味で大咲。真白は何も知らないまっしろな子、という意味でPLが背景を取り込んでつけたけど、PCとしては冬生まれなので「雪が積もって一面真っ白な日に生まれたから」というバックがあります。 本編墓下の「雪が解けたら春になる」はそこをちょっとサルベージしてました。
・幼少期~高校卒業まで これもう村では書かない(真白個人が過去を昇華しているので)からここに置いておく気持ち。 父親は多分生まれてすぐ母親に愛想つかして離婚した。養育費払って特に新しい家族も作らず一人で生きてそう。真白も父親は「いないのが普通」なのでマジ気にしてない。 幼少期はどう育てられたのかなーと考えた時、まあ多分ベビーシッターを養育費とかで雇って育てられてる気がする。遠足のお弁当とかは無いからお金の代わりにコンビニのおにぎりとか置かれてそう。 小学校入ってからは時々「みすみ」でご飯食べたり(ここが手料理の一番最初の記憶)、コンビニとかスーパーのお惣菜。料理に手を出すまではそんな感じで、遠足の時に多分お弁当じゃないのを変に気遣われたりからかわれたりして、でも顔が可愛いからいじめられはしないみたいな生活。小学校入る直前くらいが一番母親と会ってた時期だと思う(母親は明るめの茶髪に化粧バチバチ勢) 料理は最初の方は失敗続きだったけど、初めて「自分にもなにか出来る」ことが楽しくて続けて才能があったパターン。最初に失敗したのは卵焼き(殻が入って焦げて崩れた)、最初に成功したのも卵焼き。堅実に積み重ねていくタイプ。 で、「一緒にご飯食べたい」とは言えないまま何年も料理を作って置いては翌朝そのまま残されてる冷めた料理を温め直して……の繰り返し生活ですね。 中学は普通に小学校の子たちがそのまま進学する地元の中学。得意科目は家庭科(調理実習)、国語。苦手科目は数学、理科。 そのまま問題なく、母親に負担をかけない高校へ行きって感じ。
契機はやっぱ「母の日に作ったケーキゴミ箱行き事件」。これが高校一年生の母の日。 そこから荒れて、留年したりしない程度に授業サボったり、同じような家庭環境に難ありの子たちとつるんで大人に迷惑かけない夜遊び(補導される前に帰るし男遊びはしない)してた。ぷらいべったーのSSの感じですね。口数少ないギャル系。 顔は一軍・でも所属グループはどこにも属さない独特のところ。誰にでも分け隔てはないし話��と愛想は悪くないので密かに人気。 ここで苦手科目に英語も加わる。頭は悪くないけど出席率がね…。 でも普通の青春にすごい憧れはあって、皆で明るくわいわいしたい気持ちがあったので、これがゲイザータメ口の理由になるんだなぁ。 卒アルはまだ黒寄りの暗髪(地毛こっち)だし今よりやや幼い顔。寄せ書きには女子の名前しかない。日常風景の写真だったり、修学旅行の写真も独特の雰囲気あると思う(笑ってるけどつまんなさそう) ランキング系にも全然名前出てこないけど、「実は好きだった女子ランキング」とかで突如一位に名前が出てくる。あと料理が上手い人ランキングにもいる。 球技は得意じゃないけど体力系は得意。持久走で悠々と友達置いていくタイプ。
・卒業後~就職まで 卒業後は髪を染めて「可愛い」により妄念を抱くことになる。 マロンブラウンは母親と同じ色だから。同じ茶髪になったら娘だと思ってくれないかなとか、可愛いからあの色にしてたんだよね?なら同じ色にすれば可愛いと思われて今からでもやり直せないかな?とか。 調理の専門学校へ行きたいと言えず高卒でバイトしながらぼんやり生きてた。バイト先は飲食オンリーだったと思う。キッチン。 でも「このまま腐るのは嫌だ、こんな自分が一番可愛くない」ということも分かっていて、変わるきっかけをずっと探してた。そこからうさぎの穴にたまたま来店し、後は本編ロル通り……って感じ。
・けいちゃんタメ口なんで?の零れ話 ところで真白、勤続歴での後輩だったりにはタメ口だし、先輩sには敬語なんだけど、ゲイザーには「けいちゃん」だしタメなんですよ。 これゲイザー本人の雰囲気も勿論あるんだけど、「ゲイジーパイ伝説」があまりにも真白にとって理想の「調理部エピソード」というか料理が関わる青春の話で、勝手に親近感というか、「こんな人が同級生にいたらなぁ」という願望の結果なんですよね。 けいちゃん呼びもタメ口も「していい?」って許可取ってからやってるし、「マシロん」呼びも前述のことがあるから余計嬉しかったと思います。PLは。
本編中の真白が「ずっとなりたかった自分の姿」だし、根が善性で健気というか、「気持ちを受け取ってもらえないこと」で傷付いた過去があるので「相手からの気持ちは絶対否定したりしない」性質があります。褒められて「そんなことないです」は言わないし、けいちゃんに一回目のクッキーを商品には向かないと言われても「そうだよね、真っ向から言えるけいちゃんは正しいよ」って言ったのもそう。真白には正論だったし。あといちごの国の嫉妬の仕方も真白のこれが表れてると思う。
恋した相手が夜綿さんじゃなかったら「母親の愛を受け取らない」という唯一の「気持ちの拒否」は出来なかったし、あそこは真白個人のメインテーマとしてめっちゃくちゃ重いので、失恋ルートだったらこっそりケーキを食べて貰って美味しいよって言って貰って、それだけで幸せだよね、こんな未来を得られただけ奇跡だよって言い聞かせて前向きに生きるエンドだったと思う。 でも奇跡的に想って貰えてたのでこれからは色んなデザートを作るしお祝い事にケーキを焼ける。はっぴー。カメラも影響されて買うことから始まり、普通に新しい趣味としてハマりそう。 実家にご挨拶行く時は物凄く緊張しながら可愛い系じゃなく綺麗系で伺うし、髪も下ろして巻いてハーフアップにしたり、前日は緊張でトチ狂って「スーツのほうがいいですか!!??」って面接じゃねえんだぞ的な焦り方もする。夜綿さんは実家に泊まって色々語り合うだろうから邪魔しないでおこう、と思ったら一緒にホテル泊まる流れになって「あぇ???」てなる。
(すごい余談)
真白、まほいくなら「ペチカ」とか「プリズムチェリー」の立ち位置にいそうな成長物語を「村の出来事とお相手さまの存在を経て」成すことが出来たなーと思ってます。重い過去のわりに本人が本編開始時点でそれを気負わず「生まれ変わったつもりで」明るい大咲、に終始していたからか、The・光属性な感じ…。闇属性ではないなー。 サンリオならシナモン好きだろうし、ディズニーならダッフィーフレンズシリーズだし、ユニバならティムが好き。そんな雰囲気。 肩が出る服は本人の好みですね。1stイエベ春、2ndブルベ夏の骨格ウェーブ。 服はSNIDEL、MERCURY DUO、riendaイメージです。 好きなポケモンというか似合うのはマホミル、マホイップ、ペロッパフ、ペロリーム。
そんなまとめでした。
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kkagneta2 · 4 years ago
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ボツ2
おっぱい、大食い。最後まで書いたけど胸糞なのでここに途中まで投稿してお蔵入り予定。
時: 午前8時05分
所: ○○中学正門前
身長: 標準的。155センチ程度。
衣服: 〇〇中学指定の制服。黒のセーラー。リボンの色より二年生と断定。
年齢: 中学二年生なので14、5。
持ち物: 右手に〇〇中学指定の鞄。左手にスマホを所持。
同行者: 友人1名。興味無しのため略。
背格好: やや細身か。冬服のため殆ど見えなかったが、スカートから覗く脚、そして周りの生徒と見比べるに、肩や腕も細いと思われる。腰回りもほっそりとしていると感じた。正確には引き締まっていると言うべきか。
顔: いと凛々し。小顔。頬は真白く、唇には薄い色付き。笑うと凄まじく整った歯が見え隠れする。この時髪をかき上げ血の色の鮮やかな耳が露出する。
髪: ボブ系統。ほぼストレートだが肩のあたりで丸くなる。色は黒、艶あり。
胸: 推定バスト98センチ、推定アンダーバスト62センチのK カップ。立ち止まることは無かったが、姿勢が良いのでほぼ正確かと思われる。しっかりとブラジャーに支えられていて、それほど揺れず。体格的に胸元が突出している印象を受ける。隣の友人と比べるとなお顕著である。制服のサイズがあっておらず、リボンが上を向き、裾が胸のために浮いていた。そのため、始終胸下に手を当てていた。揺れないのもそのせいであろう。制服と言えば、胸を無理に押し込んだかのように皺が伸び、脇下の縫い目が傷んでおり、肩甲骨の辺りにはブラジャーのホックが浮き出ている。されば制服は入学時に購入したものと思われ、胸は彼女が入学してから大きくなった可能性が大である。元来彼女のような肉体には脂肪が付きづらいはずなのだが、一年と半年を以てK カップにまで成長を遂げたところを見ると、期待はまずまずと言ったところか。要経過観察。名前は○○。胸ポケットに入れてあったボールペンが落ちたので拾ってあげたところ、「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀をされる。
  時: 午前10時28分
所: 〇〇駅構内
身長: 高い。170センチ強
衣服: 薄く色味がかった白、つまりクリーム色のファー付きコート。内には簡素なグリーンのニットを羽織る。首元に赤のマフラー。
年齢: 22、3。休み期間中の大学生かと思われる。
持ち物: キャリーバッグ。手提げのバッグ。
同行者: 友人2名。先輩1名。何れも女性。貧。
背格好: 体格が良いと言った他には特に無し。腕も見えず、脚も見えず、首も見えず。肩幅の広さ、腰つきの良さから水泳を営んでいると推定される。
顔: その背に似合わず童顔。人懐っこい。マフラーに顔を埋め、視線を下げ、常に同行者に向かって微笑む。愛嬌よし。
髪: ショート。これより水泳を営んでいると断定。色は茶、染め上げてはいるがつやつやと輝く。
胸: 推定バスト129センチ、推定アンダーバスト75センチのR カップ。冬である上に、胸元が目立たないよう全身を地味に作っており、某コーヒーショップにてコートを取っても、無地のニットのために膨らみが分かりづらかった。さらに、胸の落ち具合から小さく見せるブラジャーを着用しているかもしれない。そのため、推��カップはR カップより3、4カップは大きい可能性がある。コートを取った際、胸元が一層膨らんだように感じられた。机の上に胸が乗って、本人は気にしていないか、もしくは気づいていなかったが、柔らかさは至高のようである。他の男性客の腕が肩にぶつかって、驚いた際に胸で食べかけのドーナツを落とす。以降会話は彼女の胸に話題が移ったらしく、左右に居た友人二名が所構わず触れるようになり、両手を使って片胸片胸を突っついたり、揺らしたりして遊ぶ。「机まで揺れる」と言う声が聞こえてくる。「ちょっとやめてよ」と言いつつ顔は相変わらず微笑むでいる。しばらくして四人とも席を立って、地下鉄筋の方へ消えていく。童顔ゆえに顔より大きい胸は驚くに値するが、体格からして胸元に自然に収まっているのを見ると、やはりなるべくしてなったとしか思えず。
  時: 午後00時14分
所: 〇〇市〇〇にあるスーパー前
身長: 低い。150センチに満たない。
衣服: 所謂マタニティウェア。ゆったりとした紺のワンピースに濃い灰色のポンチョ。
年齢: 26、7
持ち物: 買い物袋。ベビーカー。
���行者: ベビーカーの中に赤ん坊が一人。女の子である。
背格好: 小柄。寸胴で、かつ脚も長くはあらず、そして手足が細く、脂肪が程よくついている。つまりは未成熟な体つき。身長以上に小さく見える。
顔: かなりの童顔。着るものが着るものであれば高校生にも見える。可愛いがやつれていて、目の下に隈あり。子供が可愛くて仕方ないのか、そちらを見ては微笑む。
髪: セミロングを後ろで一束。中々の癖毛であるかと思われるが、目のやつれ具合からして、もしかしたら本当はもっと綺麗なのかもしれない。髪色は黒。可愛らし。
胸: 推定バスト110センチ、推定アンダーバスト58センチのQ カップ。体格が小柄であるのでQ カップよりもずっと大きく見える。というより迫力がある。私が訪れた時は買い物袋をベビーカーに吊っている最中であった。ほどなくして赤ん坊が泣き出したので、胸に抱えてあやしたが、赤ん坊��泣き止まず。片胸と赤ん坊の大きさはほぼ同じくらいであっただろう。また、胸と赤ん坊とで腕は目一杯伸ばされていた。胸に抱いて「よしよし」と揺らすのはしばらく続いたが、赤ん坊が泣き止むことはなかった。そこで、座る場所を求めて公園へと向かおうと、一度ベビーカーへと戻そうとしたのであるが、一度胸に食らいついた赤ん坊は離さない。「さっきも飲んだじゃない」とため息をついて片手で危なっかしくベビーカーを引こうとする。「押しましょうか」と接近してみたところ、意外にもあっさりと「よろしくおねがいします」と言って、私にベビーカーを預けた。中には玩具が数種類あった。道から離れた日差しの良いベンチに腰掛け、ケープを取り出して肩にかけ、赤ん坊をその中へ入れる。それでもしばらくは駄々をこねていたであったが、母親が甘い声をかけているうちに大人しくなった。私が「お腹が空いてたんですね」と笑うと、「困ったことに、食いしん坊なんです。女の子なのに」と笑い返して赤ん坊をあやす。話を聞いていると、母親の母乳でなければ我慢がならないと言う。授乳が終わってケープを外した時、子供はすやすやと眠りについていた。「胸が大きくなりすぎて、上手く抱っこできなかったんです。大変助かりました。ありがとうございます」と分かれたが、その言葉を考えるに、妊娠してから一気に胸が大きくなったのであろう。授乳期を終えたときの反動が恐ろしい。むしろベビーカーの中に居た赤ん坊の方に興味を唆られる。
  時: 午後01時47分
所: 〇〇市市営の図書館。某書架。
身長: 標準的。158センチ程度。
衣服: 白のブラウスにブラウンのカーディガン。
年齢: 30前後か。
持ち物: 白のタブレット
同行者: 無し
背格好: 小太りである。全体的に肉がふっくらとついている。けれども目を煩わすような太り方ではない。豊かである。ただし、著しく尻が大きい。
顔: 目尻は美しいが、柔らかな頬に愛嬌があって、どちらかと言えば可愛らしい方の顔立ち。鼻がやや低く、口元はリップクリームで赤々と照り��帯びている。色白とは言えないが、光の加減かと思われる。眼鏡をかけており、リムの色は大人しい赤。非常によく似合う。
髪: ストレートなミディアムヘア。髪色は黒であるが、不思議なことに眼鏡の赤色とよく合い、前髪の垂れかかるのが美しい。
備考: 司書である。
胸: 推定バスト128センチ、推定アンダーバスト81センチのO カップ。本日の夜のお供にと本を物色中に、書架にて本を正していた。胸が喉の下辺りから流麗な曲線を描いて20センチほど突き出ているばかりでなく、縦にも大きく膨れており、体積としてはP カップ、Q カップ相当かもしれない。頭一つ分背が低いので上からも望めたのであるが、カーディガンで見え隠れする上部のボタンが取れかけていた。本を取る度に胸が突っかかって煩わしいのか、肩を揺すって胸の位置を直す。本棚に胸が当たるのは当然で、文庫本などはその上に乗せる。一つの書架を片付け終わった辺りで、適当に思いついたジャンルを訪ねて接近すると、如何にも人の良さそうな顔で案内をしてくれた。脚を踏み出す度に甲高い音が鳴るのは、恐らくブラジャーのせいかと思われる。歩き方が大胆で胸が揺れるのである。途中、階段を下りなければならないところでは、一層音が大きくなって、臍のあたりで抱えていた本を胸に押し付けて誤魔化していた。そのため、ブラジャーのストラップがズレたかと見え、書棚の方へ目を向けている隙に、大胆にも胸を持ち上げて直していた。なまめかしい人ではあるが、年が年なので望みは無い。
  時: 午後02時22分
所: 〇〇小学校校庭
身長: 140センチ前後か
衣服: 体操服
年齢: 10、11歳
持ち物: 特に無し
同行者: 友人数名
背格好: ほっそりとしなやかである。幼い。腕も脚もまだ少女特有の肉が付いている。今日見た中で最も昔の「彼女」に似ている体つきであったが、この女子児童は単に骨格が華奢なだけで、痩せ細った体ではない。健康的である。脚が長く、短足な男子の隣に立つと、股下が彼の腰と同位置に来る。
顔: あどけなさは言うまでもないが、目元口元共に上品。笑う時もクスクスと擽るような、品の良い笑い方をする。眼鏡はテンプルに赤色が混じった、基本色黒のアンダーリム。そのせいで甚だ可愛らしく見えるが、本来は甚く聡い顔立ちをしているかと推定される。が、全般的に可愛らしい。
髪: 腰まで届く黒髪。ほぼストレートだが若干の癖あり。また、若干茶色がかっているように見えた。髪の質がかなり良く、時折肩にかかったのを払う度に、雪のように舞う。
胸: 推定バスト81センチ、推定アンダーバスト48センチのI カップ。体育の授業中のことである。男子は球技を、女子はマラソンでもやらされていたのか、校庭を走っていた。身体自体は小柄であるから胸はそう大きくはないのだが、無邪気に走るから激しく揺れる。揺れるごとに体操服���捲れ上がって腹部が見えそうである。明らかに胸元だけサイズが合っていない。何度か裾を直しながら走った後、耐えかねて胸元を押さえつけていたのであるが、いよいよ先生の元へ駆け寄って校舎内へ入った。そして出てきてから再び走り初めたけれども、その後の胸の揺れは一層激しくなっていた。ブラジャーに何かあったのだろうと思われる。顔には余裕がありながら、走る速さがこれまでとは段違いに遅く、これまで一緒に走ってきた友人に追い抜かれる。結局、彼女は胸を抑えながら、周回遅れで走りを終えた。しかし可哀想なことに、息を整えていると友人に後ろから手で掬われて、そのまま揉みしだかれる。小学生の手には余る大きさである。寄せあげて、掬い上げて、体操服をしわくちゃにしながら堪能する。私にはそう見えただけで、実際にはじゃれついていただけであろうが、指が深く沈み込んでいる様は男子児童の視線を寄せるのに足る。なされるがままにされていた彼女は、そのうちに顔を真っ赤にして何かを言いつつ手をはたき落とし「今はダメ」と言い、以降はすっかり両腕を胸元で組んで、猫背になって拗ねてしまった。この生徒は要観察である。下校時に再び見えてみれば、制服下の胸はブラジャーは着けていないながら見事な球形を為している。先程の光景から張りも柔らかさも極上のものと想像される。名前は○○。名札の色から小学5年生だと断定。ここ一ヶ月の中で最も期待すべき逸材。
  時: 午後05時03分
所: 〇〇市〇〇町〇〇にある某コンビニ
身長: やや高い。163センチほど。
衣服: ○○の制服。
年齢: 17歳
持ち物: 特に書くべきにあらず
同行者: 無し
背格好: 標準的だがやや痩せ型。恐らくは着痩せするタイプである。一見してただの女子高生の体であるが、肩、腰つきともに十分な量の肉量がある。その代わり腕は細い。右手に絆創膏。
顔: あどけない。非常に可愛らしい顔。人柄の良さが顔と表情に出ていると言ったところ。眉は優しく、目はぱっちり。常に口が緩んで、白い頬に赤みが差す。が、どこか儚げである。分厚くない唇と優しい目が原因か。
髪: 後ろに一束したミディアムヘア。一種の清潔さを表すと共に、若干の田舎臭さあり。後ろ髪をまとめて一束にしているので、うなじから首元へかけての白い肌が露出。これが殊に綺麗であった。
備考: 高校生アルバイター
胸: 推定バスト118センチ、推定アンダーバスト68センチのP カップ。服が腰元で閉じられているので、高さ24センチほどの見事な山が形成されている。そのため余計に大きく感じられる。手を前で組む癖があるのか胸が二の腕によって盛り上がって、さらに大きく見える。レジ打ちを担当していた。面倒くさい支払い方法を聞いて接近。レジにて紙を用いて説明してくれるのであるが、胸元が邪魔で始終押さえつけながらでの説明となり、体を斜めにしての説明となり、終いには胸の先での説明となる。ブラジャーの跡あり。よほどカップが分厚いのか胸と下着との境目がはっきりと浮き出ている。この大きさでこのタイプのブラジャーは、1メーカーの1ブランドしかないため、懐かしさに浸る。大体分かりました、では後日よろしくおねがいしますと言うと、にこやかにありがとうございましたと言う。腕の細さと胸の大きさとが全くもって合っていない。腰つきとは大方合っている。顔があどけないところから、胸に関しては期待して良いのではないだろうか? それを知るには彼女の中学時代、ひいては小学時代を知る必要があるが、そこまで熱心に入れ込めるほど、魅力的ではない。
   本日も予が真に求むる者居らず、―――と最後に付け足した日記帳を、俺は俺が恐れを抱くまでに叫び声を上げながら床へと叩きつけ、足で幾度も踏みつけ、拾って壁に殴りつけ、力の限り二つに引き裂いて、背表紙だけになったそれをゴミ箱へ投げつけた。八畳の部屋の隅にある机の下に蹲り、自分の頭をその柱に打ちつけ、顎を気絶寸前まで殴り、彼女の残した下着、―――ブラジャーに顔を埋めて髪を掻き毟る。手元に残りたる最後の一枚の匂いに全身の力を抜かされて、一時は平静を取り戻すが、真暗な部屋に散乱した日記帳の残骸が肌へと触れるや、彼女の匂いは途端に、内蔵という内蔵を酸で溶かすが如く、血管という血管に煮えたぎった湯を巡らせるが如く、俺の体を蝕んでくる。衝動的にブラジャーから手を離して、壁に頭を、時折本当に気絶するまで、何度も何度も何度も打ちつけ、忌々しい日記帳を踏みしめて、机の上に置いてあるナイフを手にとる。以前は右足の脹脛(ふくらはぎ)を数え始めて26回切りつけた。今日はどこを虐めようかなどと考えていると、彼女の残したブラジャーが目につく。一転して俺のこころは、天にのぼるかのようにうっとりと、くもをただよっているかのようにふわふわと、あたたかく、はれやかになっていく。―――
―――あゝ、いいきもちだ。彼女にはさまれたときもこのような感じであった。俺の体は彼女の巨大な胸が作り出す谷間の中でもみくちゃにされ、手足さえ動かせないまま、顔だけが彼女の目を見据える。ガリガリに痩せ細って頬骨が浮き出てはいるが、元来が美しい顔立ちであるから、俺の目の前には確かにいつもと変わらない彼女が居る。我儘で、可愛くて、薄幸で、目立ちたがり屋で、その癖恥ずかしがり屋で、内気で、卑屈で、でも負けん気が強くて、甘えん坊で、癇癪持ちで、いつもいつもいつも俺の手を煩わせる。冷え切った手で俺の頬を撫でても、少しも気持ちよくは無���、この胸、この胸の谷間が冬の夜に丁度良いのだ。この熱い位に火照った肉の塊が、俺を天に昇らせるかの如き高揚感を與えるのだ。
だがそれは後年の事。床に広がったブラジャーを拾って、ベッド脇��ランプの燈を点けて、ぶらぶらと下へと垂れるカップの布をじっくりと眺める。華奢で肉のつかない彼女のブラジャーだったのだから、サイドボーンからサイドボーンまでの距離は30センチ程もあれば良く、カップの幅も中指より少し長い程度の長さしかない。が、その深さと広さはそこらで見かけるブラジャーとは一線を画す。手を入れれば腕が消え、頭を入れればもう一つ分は余裕がある。記念すべき「初ブラ」だった。
それが何たることか! 今日、いや昨日、いや一昨日、いやこの一ヶ月、いやこの一年間、いや彼女が居なくなってから実に6年もの間、このブラジャーが合う女性には出会うどころか、見かけることも出来ないではないか。細ければサイズが足りず、サイズが足りればぶくぶくと肥え、年増の乳房では張りが足らず、ならばと小学生の後を付け回してはお巡りに声をかけられ、近所中の中高にて要注意人物の名をほしいままにし、飽きる迄北から南の女という女を見ても、彼女のような体格美貌の持ち主は居なかった。風俗嬢へすら肩入れをし、ネットで調子に乗る女どもにも媚びへつらった。
恭しくブラジャーを箱へと収めて床に散らばりたる日記帳の屑を見るや、またしても怒りの感情が迸ってくる。今日は左太腿の上をざっくりとやってやろうか。紙屑をさらに歯で引きちぎり、喉に流し込みながらそう思ったけれども、指を切る程度に留め、代わりに床を突き抜ける位力を入れて、硬い板の上に差す。今日書いた文面はその上にあった。
「なんで、なんで俺はあんなことを、……」
気がつけば奇声を上げつつ髪の毛を毟り取っていた。時計を見れば午後11時28分。点けっぱなしにしておいたパソコンの画面にはbroadcasting soon! という文字が浮かび上がって居る。忘れた訳では無かったが、その英単語二文字を見るだけで、怒りも何も今日の女どもも忘れ、急に血の巡りが頭から下半身へと下り、呼吸が激しくなる。まるで彼女を前にした時のようである。急いで駆けつけて音量を最大限まで上げて、画面に食い入ると、直にパッとある部屋が映し出され、俺の呼吸はさらに激しくなった。
部屋はここと同じ八畳ほど、ベッドが一台、机が一つ、………のみ。
机の上にはありきたりな文房具と、食器類が一式、それに錠剤がいくつか。ベッドの上には質の良さそうな寝具、端に一枚のショーツ、その横に犬用のリードが一つ。これはこれから現れる者が、謂わばご主人さまに可愛がられるために着けている首輪につながっているのである。そしてその横に、あゝ、彼女がまだ傍に居ればぜひこの手で着けて差し上げたい巨大なブラジャーが一つ、………。ダブルベッドをたった一枚で埋め尽くすほど大きく、分厚く、ストラップは太く、今は見えないが12段のホックがあり、2週間前から着けている���しいけれどもカップは痛み、刺繍は掠れ、ストラップは撚れ、もう何ヶ月も着たかのようである。
しばらく見えているのはそれだけだったが、程なくしてブラジャーが画面外へ消えて行き、ショーツが消えて行きして、ついに放送主が現れる。病的なまでに痩せ細って骨の浮き出る肩、肘、手首、足首、膝、太腿、それに反して美しくしなやかな指が見える。顔は残念ながら白い仮面で見えないが、見えたところで一瞬である。すぐさま画面の殆どは、中央に縦線の入った肌色の物体に埋められるのだから。その肌色の物体は彼女の胸元から生え、大きく前へ、横へと広がりながら腰元を覆い、開けっ広げになった脚の間を通って、床へとゆるやかにの垂れており、ベッドに腰掛けた主の、脚の一部分と、肩と、首を除いて、体の殆どを隠してしまっている。床に垂れた部分は、部分というにはおかしなくらい床に広がる。浮き出た静脈は仄かに青々として、見る者によっては不快を感ずるだろう。
言うまでもなく、女性の乳房である。主は何も言わずにただそこに佇むのみで、何も行動をしない。仮面を着けた顔も、たまに意外と艶のある黒髪が揺れるだけで動かないのであるが、極稀に乳房を抑える仕草をして、愛おしそうに撫でることがある。けれどもそれは本当に極稀で、一回の配信につき一度の頻度でしかなく、殆どの場合は、一時間もしたらベッドに倒れ込んで寝てしまうのである。
この配信を見つけてからというもの、俺の日中の行動は、その寝姿を見るための暇つぶしでしか無い。彼女そっくりな体つきに、彼女そっくりな胸の大きさ、―――しかもこちらの方が大きいかもしれない上に、彼女そっくりな寝相、………見れば見るほど彼女に似て来て、また奇声を発しそうになる。無言で、手元にあった本の背表紙で頭を打ちつけて落ち着きを取り戻し、画面を見ると、ゴロンとベッドから落ちてしまったその女の姿。彼女もよくやった寝相の悪さに、途端懐かしさが込み上げて来て、
「あゝ、こら、叶(かなえ)、寝るんだったらベッドの上で寝ないと、……。手伝ってやるからさっさと起きなさい」
と頬を叩いたつもりだが、空を切るのみで、消息不明となっている者の名前を呼んだだけ、羨ましさと虚しさが募ってしまった。
   幼馴染の叶が居なくなってから早6年、片時も忘れた事はないのであるが、隣に住んでいながら出会いは意外と遅いものであった。当時俺は11歳の小学5年生、物凄く寒かったのを思えば冬から春前であったろうか、俺の家は閑静な住宅街の中に突如として現れる豪邸で、建物よりも庭に意匠を凝らしたいという父上の意思で、洋館が一つと離れが一つ庭に面する形で建てられ、俺はその離れを子供部屋として与えられていた。球状の天井を持つその部屋は、本当に子供のために閉ざされた世界かのようだった。庭の垣根が高く、木に埋もれる形で建っているのであるから、内は兎も角、外からだとそもそも離れがあることすら分からない���音も完全に防音されていて、車が通りかかるのすら、微妙な振動でようやく分かるくらい外界から切り離されているのである。いつも学校から帰ると、俺はその部屋で母上と共に話をしたり、ごっこ遊びをしたり、宿題をしたりする。食事もそこで取って、風呂には本館の方へ向かう必要はあるけれども、学校に居る7、8時間を除けば一日の殆どをそこで過ごしていた。だから、近隣の様子なぞ目については居なかったし、そもそも父上から関わるなというお達しがあったのだから、あえて触れるわけにはいかない。学校も、近くにある公立校へは通わずに、ずっと私立の学校へ入れられたのだから、関わろうにも、友人と言える者も知り合いと言える者も、誰も居ないのである。
そんな生活の中でも、よく離れの2階にある窓から顔を突き出して、燦々と輝く陽に照らされて輝く街並みを眺めたものだった。今はすっかりしなくなってしまったけれども、木々の合間合間から見える街並みは殊に美しい。一家の住んでいる住宅街というのが、高台に建っているので、街並みとは言ってもずっと遠くまで、―――遥かその先にある海までも見えるのである。
そう、やっぱり冬のことだ、あのしっとりとした美しさは夏や秋には無い。いつもどおり、俺はうっとりと椅子に凭れかかって街並みを眺めていたのであるが、ふとした瞬間から、女の子の声で、
「ねぇ、ねぇ、ねぇってば」
と誰かを呼びかける声がしきりに聞こえてきていたのだけれども、それが少し遠くから聞こえてくるものだから、まさか自分が呼ばれているとは思わず、無視していると、
「ねぇ!」
と一層激しい声が聞こえてくる。下を見てみると、同年代らしい女の子が、彼女の家の敷地内からこちらを不満そうに見つめてきている。
「僕ですか?」
「そう! 君!」
と満面の笑みを浮かべる。
この女の子が叶であることは言及する必要も無いかと思うが、なんと見窄らしい子だっただろう! 着ている物と言えば、姉のお下がりのよれよれになった召し物であったし、足元には汚らしいサンダルを履いていたし、髪は何らの手入れもされていなかったし、いや、そんな彼女の姿よりも、その家の古さ、ボロさ、貧しさは余りにも憐れである。流石に木造建築では無いものの、築20年や30年は越えていそうな家の壁は、すっかりと黒ずんで蜘蛛の巣が蔓延っており、屋根は黒いのが傷んで白くトゲトゲとしているし、庭? にある物干し竿は弓なりに曲がってしまっていて、痛みに傷んだ服やタオルが干されている。全体的に暗くて、不衛生で、手に触れるのも汚らわしい。広さ大きさは普通の一軒家程度だけれども、物がごちゃごちゃと置かれて居るのでかなり狭苦しく感じられ、俺は父上がどうして近隣の者と関わるなと言ったのか、なんとなく理解したのだった。目が合った上に、反応してしまったからには相手をしなくちゃいけないか、でも、できるだけ早く切り上げて本の続きでも読もう。―――俺は一瞬そう思ったが、ようようそう思えば���うほど、彼女に興味を抱いてしまい、小っ恥ずかしい感情がしきりに俺の心を唆していた。
それは一目惚れにも近い感情だっただろうと思う。というもの、その時の叶の外見は、着ているものが着ているものだけに見窄らしく見えただけで、顔立ちは悪くないどころかクラスに居る女子どもなぞよりずっと可愛いかった。いや、俺がそう感じただけで、実際は同じくらいかもしれないが、普段お嬢様と言うべき女の子に囲まれていた俺にとっては、ああいう儚い趣のある顔は、一種の新鮮さがあって、非常に魅力的に見える。どこか卑屈で、どこか苦心があって、しかしそれを押し隠すが如く笑う、………そういう健気な感じが俺の心を打ったと思って良い。また、体つきも普段見るお嬢様たちとは大きく変わっていた。彼女たちは美味しいものを美味しく頂いて、線の細い中にもふっくらとした柔らかさがあるのだが、叶はそうで��ない。栄養失調からの病気じみた痩せ方をしていて、ただ線が細いだけ、ただ貧相なだけで、腕や脚などは子供の俺が叩いても折れそうなほどに肉が付いておらず、手や足先は、肌が白いがために骨がそのまま見えているかのようである。兎に角貧相である。が、彼女にはただ一点、不自然なほど脂肪が蓄えられた箇所があった。
それはもちろん胸部である。叶は姉から譲り受けた服を着ているがために、袖や裾はだいぶ余らしていたのであるが、胸元だけはピンと張って、乳房と乳房の間には皺が出来ていて、むしろサイズが足りないように見える。恐らく裾を無理やり下に引っ張って、胸を押し込めたのか、下はダボダボと垂れているけれども、胸の上は変にきっちりしている。体の前で手をもじもじさせつつ、楽しげに体を揺らすので、胸があっちへ行ったり、こっちへ行ったりする。俺は最初、胸に詰め物をしているのであろうかと思われた。そう言えば、一昨日くらいにクラスの女子が、私の姉さんはこんなの! と言いつつ、体操服の胸元にソフトボールを入れてはしゃいでいたが、その姿がちょうどこの時の叶くらいであったから、自然にやっぱりこの年の女子は大きな胸に憧れるものなのだと納得したのである。だが、叶の胸は変に柔らかそうに見える。いや、それだけでなく、ソフトボールを入れたぐらいでは脇のあたりが空虚になって、はっきりと入れ物だと心づくが、彼女の体に描かれる、首元から始まって脇を通り、へその上部で終りを迎える曲線は、ひどく滑らかである。手が当たればそこを中心に丸く凹み、屈んで裾を払おうとすれば重そうに下で揺れる。
俺が女性の乳房なるものに目を奪われた初めての瞬間である。
それは物心ついた少年の心には余りにも蠱惑的だった。余りにも蠱惑的過ぎて、俺の体には背中をバットで殴られたような衝撃が走り、手が震え、肩が強張り、妙に臀部の辺りに力が入る。頭の中は真っ白で、少しずつ顔と耳たぶが赤くなっていくのが分かる。途端に彼女の胸から目が離せなくなり、じっと見るのはダメだと思って視線を上げると、さっきとは打って変わって潤いのある目がこちらを見てきている。微笑んでくる。その瞬間、徐々に赤くなって行っていた顔に、血が一気に上る感覚がし、また視線を下げると、そこにはこれまで見たことがない程の大きさの胸。胸。胸。………あゝ、なんと魅力的だったことか。
「こんにちは」
「うん、こんにちは。今日は寒いね」
彼女に挨拶されたので、俺はなんとか声を出したのだった。
「私は全然。むしろあったかいくらい」
「元気だなぁ」
「君が元気ないだけじゃないの」
「熱は無いんだけどね」
「ふふ」
と彼女は笑って、
「君どのクラスの子?」
「いや、たぶん知らないと思う。この辺の学校には通ってないから」
「どおりで学校じゃ、見ないと思った。何年生なの?」
彼女がこの時、俺を年下だと思っていたことは笑止。実際には同い年である。
「へぇ、あっちの学校はどうなの?」
「どうもこうもないよ。たぶん雰囲気なんかは変わんないと思う」
「そうなんだ」
と、そこでトラックが道端を通ったために、会話が区切れてしまって、早くも別れの雰囲気となった。
「ねぇ」
先に声をかけたのは彼女だった。
「うん?」
「またお話してくれない?」
少年はしばし悩んだ。近くの者とは関わるなと言う父上の言葉が頭にちらついて、それが殆ど彼女の家庭とは関わるなとの意味であることに、今更ながら気がついたのであったが、目の前に居る少女が目をうるませて、希望も無さげに手をもじもじと弄っているのを見ると、彼女の学校での扱われ方が目に見えてしまって仕方がなかった。そっと目を外すと、隣に住んでいなければ、多分一生関わること無く一生を終えるであろう貧しい家が目に飛び込んできて、だとすれば、良い育ちはしていないに違いはあるまい。だが、今言葉を交わした感じからすれば、意外にも言葉遣いはぞんざいではなく、笑い方もおっとりとしている。それに何より、自分がここまで心臓の鼓動がうるさいと思ったことはないのである。少年の心はこの時、「またお話したい」などというレベルではなく、彼女に近づきたい気持ちでいっぱいであった。近づいて、もっともっとお話をして、その体に触れて、夜のひと時をこのメルヘンチックな我が部屋で過ごせたら、どんなに素敵だろう。この窓から夜景を見て、手を取って、顔を突き合わして、行く行くは唇を重ねる、………あゝ、この部屋だけじゃない、綺麗に見繕って、二人で遊びに行くのも良い、いや、もはや二人きりでその場に居るだけでも僕の心は満足しそうだ。………実際にはこんなに沢山ことを考えた訳ではなかったけれども、しかしそういうことが、父上の言いつけから少年をすっかり遮断してしまった。つまりは、彼女の言葉に頷いたのである。
「もちろん。こうやって顔だしてたら、また話しかけてよ」
「ふふ、ありがとう。またね」
「またね。―――」
これが俺と叶の馴れ初めなのだが、それから俺たちは休みの日になると、窓を通じて10分20分もしない会話を楽しんだ。尤もそれは俺が父上と母上を怖がって、勉強しなくちゃいけないだとか、習い事があるとか、そういう理由をつけて早々に切り上げるからではあるけれども、もし何の後ろめたさも無かったら日が暮れても喋りあったに違いない。
「えー、……もう? 私はもっとお話してたい!」
「ごめんね。明日もこうやって外を眺めてあげるからさ」
その言葉に嘘はなく、俺は休日になれば、堪えきれない楽しみから朝食を終え、両親を煙に巻くや窓から顔を突き出していた。すると叶はいつも直ぐに家から出てきて、
「おはよう」
と痩せ細った顔に笑みを浮かべる。彼女もまた、楽しみで楽しみで仕方ないと言った風采なのである。
「おはよう。今日はいつにもまして早いね」
「ふふ」
会話の内容はありきたりなこと、―――例えば学校のこと、家のこと(彼女はあまり話したがらなかったが)、近くにある店のこと、近くにある交番がどうのこうのということ、近くにある家のおばさんが変人なことなど、強いて言えば、近所の人たちに関する話題が多かった。というのも、この住宅街に住んでいながら、今まで何も知らなかったので、俺の方からよく聞いたのが理由ではあるけれども、話に関係ないから述べる必要はあるまい。
それよりも、あんまり叶が早く出てくるので、いつのことだったか、聞いてみたことがあった。すると、彼女は心底意地の悪い笑顔で、
「私の部屋から丸見えなんだもん。そんなに楽しみ?」
と言うので、無性に恥ずかしさが込み上げてきたのは覚えている。どう返したのか忘れたが、その後の彼女の笑う様子が、強烈に頭に残っているのを考慮すれば、さらに恥ずかしい言い訳を放ったのは確かである。………
そんなある日のことであった。確か、叶と出会って一ヶ月経った日だったように思う。何でも学校が春の休み期間に入ったために、俺達は毎日顔を合わせていたのであるから多分そうで、非常に小っ恥ずかしい日々を送っていたのであるが、この日は俺しか俺の家には居ないのであった。それも朝一から深夜まで、何故だったのかは忘れてしまったが、両親も居なければ、ハウスキーパーも、確実に居ないのである。然れば初恋に目の暗んだ少年が悪巧みをするのも当然であろう。つまり俺はこの日、叶をこのメルヘンチックな離れに招待しようとしていたのである。
一種の期待を胸に抱きながら、いつもどおり窓から顔を突き出して、今や見慣れてしまった貧しい家の壁に視線を沿わせては、深呼吸で荒れそうになる息を整えようとする。一見、「いつもどおり」の光景だけれども、この時の俺はどうしても、初めての彼女をデートに誘うような心地よい緊張感ではない、恐ろしい罪悪感で押しつぶされそうだった。別に子供が同級生の女の子を連れてくることなど、親からしたら微笑ましい以外何者でもないかもしれない。が、これから呼ぶのは、父上が関わるなと言った、隣家の貧しい娘なのであるから、どうしても後々バレた時の事を考えると、喉が渇いて仕方ないのである。―――出来れば叶が今日に限って出てきてくれなければ、なんて思っても、それはそれで淋しくて死ぬ。まぁ、期待と緊張と罪悪感でいっぱいいっぱいだった少年の頭では、上手い具合に言い訳を考えることすら出来なかったのである。
「おはよう」
そうこうするうちに、いつの間にか外に出てきていた叶が声をかけてきた。一ヶ月のうちに、さらに胸が大きくなったのか、お下がりの服の袖はさらに長くなり、………というのは、服のサイズを大きくしないと胸が入らないからで、その肝心の胸の膨らみは今やバレーボール大に近くなりつつある。
で、俺は焦ることは何もないのに、挨拶を返すこともせずに誘うことにしたのであった���
「ねぇ」
「うん?」
「きょ、今日、僕の家にはだ、だれも居ないんだけど、………」
「え? うん、そうなの」
それから俺が叶を誘う言葉を出したのは、しばらくしてのことだったが、兎に角俺は彼女を頷かせて門の前まで来させることに成功して、庭を駆けている時に鳴った呼び鈴にギョッとしつつ、正門を開けると、さっきまでその気になっていた顔が、妙に神妙なので聞いてみると、
「なんか急に入って良いのか分からなくなっちゃった」
ともじもじしながら言う。それは引け目を感じると言うべき恥であることは言うまでもないが、一度勢いづいた少年にはそれが分からず、不思議な顔をするだけであった。それよりも少年は歓喜の渦に心臓を打たせており、今日という今日を記憶に焼き付けようと必死になっていた。というのは、普段遠目から見下ろすだけであった少女が目の前に現れたからではあるけれども、その少女の姿というのが、想像よりもずっと可愛いような気がしただけでなく、意外と背丈がひょろ高いことや、意外と服は小綺麗に整えてあることや、手も脚も、痩せ細った中にも一種の妖艶さが滲み出ていることなど、様々な発見をしたからであった。特に、胸元の膨らみにはただただ威圧されるばかり。大きさは想像通りだったものの、いざ目の前に来られると迫力が段違い。試しに顔を近づけてこっそりと大きさを比べて見ると、自分の頭よりも大きいような感じがし、隣に並んでみると、彼女の胸元にはこんな大きな乳房が生えているのかと驚かれる。
「ちょっと、どうしたの」
と言われてハッとなって、叶の手を引きながら広大な庭を歩き始めたが、少年の目はやはり一歩一歩ふるふると揺れる彼女の乳房に釘付けであった。
庭の様子は今後必要ないから述べないが、一方はお坊ちゃん、一方は女中にもならない卑しい少女が手を取り合いながら、花々の芽の萌ゆる庭園を歩く様子は、或いは美しさがあるかもしれない。
離れについて、「や、やっぱり私帰るね」と言い出す叶を無理に押し込んで、鍵をかけると、一気に体中の力が抜けて行くような気がした。何となく庭を歩いているうちは、誰かに見られているかのようで、気が気でなかったのに、今となっては何と簡単なことだったであろう。とうとう成功した、成功してしまったのである、叶を一目見た瞬間に思い描いていた夢が、一つ叶ったのみならず、この心の底から沸き起こる高揚感はなんだろうか。期待? それとも単に興奮しているだけ? いや、恐らくは彼女が隣に居ること、手を触れようとすれば触れられる位置に居ること、つまり、彼女に近づいたという事実が、嬉しくて嬉しくて仕方がないのだ。そしてそれが、自分の住処で起こっている、………俺は多分この時気持ち悪いくらいに笑っていたように思ふ。頭は冷静に叶をもてなしているつもりでも、行動の一つ一つに抜けている箇所が、どうしても出てしまって、土足のまま上がろうとしたり、段差に足をひっかけて転けそうになったり、お茶を溢しそうになったり、最初からひどい有り様であったが、彼女は引け目を感じながらも笑って、
「ほんとにどうしたの、熱でも出てるんじゃ、………」
と心配さえもしてきて、その優しさもまた、俺に��嬉しくて仕方がなくって、ますます惚けてしまったように思われる。が、それが出たのは昼前のことだったろう、あの時俺は、目の前ある叶の乳房が大きく重たく膨れ上がっているのに対し、それを支える身体が余り痩せすぎている、それもただ単に痩せているのではなくて、こうして間近で見てみると、骨格からして華奢であるので、身長はどっこいどっこいでも(―――当時の俺は背が低かったのである)、どこか小さく感じられるし、そのために、余計に体と胸元の膨らみとが釣り合っていない上に、胸が重いのか、ふらふらとして上半身が風で煽られているかの如く触れる時がある、それが緊張で体が強張っている今でも起こるので、段々と心配になってきて、
「す、すごい部屋、………」
ときちんと正座をしながら目を輝かす彼女が、今にも倒れてしまいそうに思われたのだった。しかし惚けた少年の頭では、ああ言えば失礼だろうか、こう言えば婉曲的に尋ねられるだろうか、などと言ったことは考えられない。ただ、この眼の前に居るかぁいい少女が、かぁいくってしょうがない。あれ? 叶ってこんなにかぁいかっただろうか? と、彼女の一挙一動がなんだか魅力的に見えて来て、手の甲を掻くのすらもかぁいくって、言葉が詰まり、今や何とか頭に浮き出てきた単語を並べるのみ、彼女を一人部屋に残して外で気持ちを落ち着けようにも、今ここに叶が居るのだと思えばすぐさま頬が燃え上がってくる。再び部屋に入れば入ればで、自分の思い描いていたのよりかぁいい少女が、きちんと正座をしながらも、未だに目をキラキラとさせ、口をぽかんと開けて部屋中を眺めている。そんなだから、一層少年の頭は惚けてしまった。同時に、胸の前で、乳房を押しつぶしながらしっかりと握られている両の手が目について、その細さ、そのか弱さに惹き込まれて無遠慮に、
「ねぇ、前々から気になってたんだけど、どうしてそんなに細いの? どうしてそんなに痩せてるの?」
と、彼女の正面に座りながら聞いた。
「あっ、うっ、……」
「ん? だって手とか僕が握っても折れそうだし」
「え、えとね?」
「うん」
「その、食べては居るんですけれど、………」
叶はここに来てからすっかり敬語である。
「食べても食べても、全然身につかなくって、………その、おっぱいだけが大きくなってしまってるの。だから、こんなにガリガリ。骨も脆いそう。………あはは、なんだか骸骨みたいだね」
「全然笑い事じゃないんだけど」
「うん、ありがとう。それだけでも嬉しいな」
とにっこりするので、
「もう」
とにっこりとして返すと、叶はすっかり普段の無邪気な顔に戻った。
「あ、でね、もちろんお母さんも心配してくれて、お金が無いのに、私のためにたくさんご飯を作ってくれててね、―――」
「たくさんって、どの���らい?」
「えっと、………」
と言葉に詰まるので、
「まぁ、別に笑わないからさ。言ってごらん?」
とたしなめた。すると返ってきた言葉は、俺の想像を軽く飛び越していたのだった。
毎日微妙に違うから昨日のだけと、はにかんだ叶の昨夜の夕食は、米を4合、味噌汁が鍋一杯、豆腐を3丁肉豆腐、その肉も牛肉1キロ、半分を肉豆腐へ、半分を焼いて、野菜はキャベツとレタスと半々に、鶏胸肉2枚、パスタ500グラム、………を食した後に寒天のデザートを丼に一杯、食パンを2斤、牛乳一リットルで流し込んだ、と、ご飯中は喉が乾いて仕方がないと言って、水もペットボトルで2本計4リットル飲んだ、いつもこれくらいだが、それでも食欲が収まらない時は、さらにご飯を何合か炊いて卵粥として食べるのだと言う。
笑わないとは言ったけれども、流石に苦笑も出来ずに唖然とするばかりで、俺は、スポーツ選手でも食べきれない食い物が、一体全体、目の前で顔を覆って恥ずかしがる少女のどこに入って、どこに消えたのか、想像をたくましくすることしか出来なかったが、そうしているうちに、今日の朝はねと、朝食までおっしゃる。それもまた米が4合に、やっぱり味噌汁を鍋一杯。そして、知り合いが店を構えているとか何とかでくれる蕎麦を、両手で二束、大鍋で茹でてざる蕎麦に、インスタントラーメンを2人前、水を2リットル。言い忘れてけどご飯は大きなおにぎりとして、中に色々と具材を入れて食うと言って、最後に、デザートとは言い難いが、デザートとしてシリアルを、やっぱり牛乳1リットルかけて食べる。その後パンがあればあるだけ食べる。水も何リットルか飲む。で、大体食事の時間は1時間半から2時間くらいで終わるけれども、お腹が空いていたら30分でもこれだけの量は平らげられるらしい。
「いやいやいやいや、………えっ?」
俺のそんな反応も当然であろう。ところで以上の事を言った本人は、言っちゃった、恥ずかしい、と言ったきり黙って俯いているが、益々見窄らしく、小さく見え、やはり可哀想でならなかった。
ポーン、と鳴って、時計が12時を示した。叶の告白から随分時間が経ったように思っていたら、もうそんな時間である。空腹を訴えかけている腹には悪いが、今ここで食事の話題を振れば恐ろしい結果になるかもしれない、一応自分の昼食は、父上が予め出前を取ってくれたのが、さっき届いたからあるし、母上が夕食もと、下拵えだけして行った料理の数々があるので、それを二人で分けて、一緒に食べる予定ではあったのだが、しかし先の話が本当だとすれば、とても量が足りない。だが、恐ろしい物は逆に見たくなるのが、人間の常である。俺は、叶がご飯を食べている様を見たくてたまらなかった。普段、外食は両親に連れられてのものだったけれども、幸い街を歩けばいくらでも食事処にはありつける。日本食屋に、寿司屋に、洋食屋に、喫茶店に、中華料理屋に、蕎麦屋饂飩屋鰻屋カレー屋、果ては創作料理屋まであるから、彼女をそこに連れて行ってみてはどうか。もちろん一軒と言わずに何軒も訪れて、彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげてみてはどうだろうか? 俺はそんなことを思って、心の内で嫌な笑みを浮かべていたのであったが、偶然か必然か、その思いつきは叶の願いにぴったり沿うのであった。
「あはは、………やっぱり引いた?」
と叶がもじもじしながら言う。
「若干だけど、驚いただけだよ」
「ほんとに?」
「ほんとほんと」
「じゃ、じゃあ、もう一つ打ち明けるんだけどね、………あ、本当に引かないでよ」
「大丈夫だって、言ってごらん?」
と言って顔を緩めると、叶は一つ深呼吸してから、もじもじさせている手を見つめながら口を開くのであった。
「えとね、私、………実はそれだけ食べても全然たりなくて、ずっとお腹が空いてるの」
「今も?」
「今も。ほら、―――」
叶が服の裾をめくり上げると、そこにはべっこりと凹んでいる腹が丸見えになる。
「すっかり元通りになっちゃった。君と会うために外に出た時は、まだぼっこりしてたんだけど、………」
「お昼は?」
「え?」
「お昼。お昼ごはん。どうするの?」
「我慢かなぁ。いつもお昼ごはんは給食だから、全然平気だよ!」
この時、図らずも俺の画策と、彼女の願い、というよりは欲望が、同じ方向を向いたことに歓喜したのは言うまでもない。俺はこの後のことをあまり覚えていないが、遠慮する叶に向かって、
「ご飯一緒に食べよう!!」
と無理やり立たせて、取ってあった出前を彼女の目の前に差し出したのは、微かに記憶に残っている。彼女はそれをぺろりと平らげた。口に入れる量、噛むスピード、飲み込む速度、どれもが尋常ではなく、するすると彼女の胃袋の中へと消えていった。母上が下ごしらえして行った料理もまた、子供では食べきれないほどあったが、5分とかからなかった。こちらは食べにくいものばかりであったけれども、叶は水を大量に飲みつつ、喉へと流し込んで行く。それがテレビでよく見る大食い自慢のそれとは違って、コクコクと可愛らしく飲むものだから、俺はうっとりとして彼女の様子を見つめていた。食べ終わってから、俺は彼女の腹部に触れさせてもらった。その腹は、3人前、4人前の量の食事が入ったとは思えないほど平たく、ぐるぐると唸って、今まさに消化中だと思うと、またもや俺の背中はバットで殴られたかのような衝撃に見舞われてしまった。ちょうど、叶の乳房に目を奪われた時と同じような衝撃である。思わず耳を叶のヘソの辺りに押し付けて、たった今食べ物だったものが排泄物になろうとしている音を聞く。ゴロゴロと、血管を通る血のような音だった。
「まだ食べられる?」
「もちろん!」
叶は元気よく答えた。俺は彼女がケチャップで赤くなってしまった口を、手渡されたナプキンで綺麗に拭き終わるのを待って、
「じゃあ、行こうか」
と、財布と上着を取りながら聞いた。
「どこへ?」
「今日はお腹いっぱいになるまで食べさせてあげるよ」
俺の昼食夕食を軽く平らげた彼女は、今更遅いというのに遠慮をするのであった。「いや、私、もうお腹いっぱいで」とか、「お金持ってない」とか、「別にいいって、いいってば」とか、終いには「ごめん、ごめんなさい」と言って泣き出しそうにもなったり、なんとかなだめて離れから飛び出ても、動こうとしなかったり、自分の家に入ろうとする。「だ、大丈夫! 嘘! 嘘だから! 忘れて! もう食べられないから!」など、矛盾に満ちた言葉を放っていたのは覚えている。俺はそれをなんとかなだめて、気持ちが先行してしまって不機嫌になりつつも、最終的には弱々しい彼女の腰を抱きかかえるようにして引っ張って行った。
「ごめんね、ごめんね。ちょっとでいいからね。私よりも君がたくさん食べてね」
と食べることには堪忍したらしい叶が、物悲しそうにしたのは、確か家からまっすぐ歩いて、3つめの交差点を曲がって、広めの県道を西に沿ってしばらく行った所にある小綺麗な中華料理屋だっただろう。前にも��べたが、俺はこの日のことをあまり詳しく憶えていないのである。何故この中華料理屋に訪れたかと言えば、ようやく落ち着いた叶に何が食べたい? と聞くと、渋々、春巻きが食べたいとの答えが返ってきたからであるのだが、この店は昔も今も量が多いとの文句が聞こえてくる名店で、俺はよく、父上が天津飯一つすら苦しんで食べていたのを思い出すのである。とまぁ、そんな店であるのだから、そんな店にありがちな、所謂デカ盛りメニューなるものがあって、例えば丼物、―――麻婆丼だったり、炒飯だったり、それこそ天津飯だったり、そういうのはだいたい揃ってるし、酢豚とか、八宝菜の定食メニューもそれ専用の器すらあったりする。そしてそれを30分以内に食べきったら無料なので、これならお金を気にする彼女も安心し��くれるだろうと、少年は考えた訳であったが、いざ入ってみて、奥の席へ通されて、
「この春巻きを10人前と、デカ盛りメニューの麻婆丼一つと、それと僕は、………エビチリ定食をご飯少なめでください!」
と注文すると、
「ぼ、僕? 冗談で言ってる?」
と、まず俺を見、そして叶を見して怪訝な顔をするのであった。
「冗談じゃないよ。ねぇ?」
と叶を見るが、彼女は静かに俯いている。
「ま、そういうことだから、お金は出すんだから、早く! 早く!」
「でもね、これはとっても量が多いんだよ?」
「うん、知ってる。だけど叶ちゃんが全部食べてくれるから、平気だよ」
「え、えぇ、………? この子が? 嘘おっしゃい」
そういう押し問答は10分乃至15分は続いたのであったが、とうとう店側が折れる形で、俺達の前には山になった春巻きと、山になった麻婆丼と、それ比べればすずめの涙程のエビチリが、テーブルの上に現れたのであった。俺も驚いたし、店員も驚いたし、何より他の客の驚きようと言ったら無い。奥の席だったから、人気はあまりないものの、写真を撮る者、頑張れよと冷やかしてくる者、わざわざ席を変わってくる者も居れば、自分たちも負けじとデカ盛りメニューを頼む者も居る。彼らの興味は殆どテーブルの上に置かれた理不尽な量の料理と、それに向かう華奢な少女であったが、妙に俺は良い気になって、ピースして写真に写ったり、冷やかして来た者を煽ったりして、相手をしたものだった。本当に、あの時の俺は、自分が一時の有名人になったかのような心持ちで、サインでも握手でもしてやろうかと思った。いや、そんなことよりも、もっと写真に撮って、もっと騒ぎ立てて、もっと人を集めてくれという気持ちであった。有頂天と言っても良い状態だった。が、ふと叶の方を見てみると矢張り俯いたままでいる。―――あゝ、こんなに騒がしかったら美味しいものも美味しくは無いだろうな、早く食べないと冷えてしまう、それに、自分もお腹が空いて仕方がない、そろそろ追っ払おうかしらん。叶の様子にいくらか冷静になった俺はそう思ったのであった。
「ごめんね、彼女、恥ずかしがり屋だから、ほら、あっち行ってて」
そう言うと、店主のハラハラした視線だけはどうすることも出来なかったが、皆次第に散り散りになった。叶もまた、周りに人が居なくなって安心したのか、顔を上げる。
「騒がしかったね」
「うん」
「まったく、野次馬はいつもこうだよ」
「うん」
「足りなかったら、もう一つ頼むことにしようか」
「あ、あの、………」
「うん?」
「いただきます」
この時の彼女の心境は、後になって聞いたことがある。たった一言、ああいう状況に慣れていなかったせいで、食べて良いのか分からなかった、と。実際には、中華店へ入る前から匂いに釣られて腹が減って死にそうになっていたところに、いざ目の前に好物の春巻きと、こってりとした匂いを漂わせている麻婆丼が現れて、遠慮も恥も何もかも忘れて食らいつきたかったのだそうである。事実、麻婆丼は物凄い勢いで彼女の口の中へと消えていった。
ところで麻婆丼は、後で聞けば10人分の具材を使っているのだと言う。重さで言えば8.7キロ、米は5合6合はつぎ込んで、女性の店員では持ち運べないので、男が抱えなければならない。時たま米の分量を誤って、餡のマーボーが指定分乗り切らない時があって、そういう時は乗り切らなかった餡だけ別の器に盛って出す。かつて挑戦した者はたくさんいるが、無事にただで食べられたのはこれまで1人か2人くらい、それも大柄な男ばかりで、女性はまだだと言う。
そんな麻婆丼が、11歳の、それも痩せ細った体つきの少女の口の中へ消えていくのである。休むこと無く蓮華を動かし、時折春巻きを箸に取っては、殆ど一口で飲み込むが如く胃の中へ流し込み、真剣ながらも幸せの滲み出た顔をしながら、水をグイグイ飲む。見れば、心配で様子を見に来ていた店主は、いつの間にか厨房に引っ込んで呆れ顔をしている。叶はそれにも気が付かずに黙々と口を動かして、喉が微かに動いたかと思ったら、蓮華を丼の中に差し込んで、幸せそうな顔で頬張る。あれよあれよという間にもう半分である。こういうのは後半になればなるほど勢いが落ちるものだのに、叶の食べるスピードは落ちないどころか、ますます早くなっていく。やがて蓮華では一口一口の大きさが物足りないと感じたのか、一緒に付いてきたスプーンで上から米もろとも抉って食べる。叶は普段から綺麗に食べることを心がけていて、大口を開けて食い物を口へ運んだとしても、それが決して醜くなく、逆に、実に美味そうで食欲が掻き立てられる。優雅で、美しい食べ方は、彼女が言うには、体の動かし方が重要なのだと、かつて教えてもらったことがある。気がついた時には、もう普通の麻婆丼と殆ど変わらない分量になっていた。一個もらうつもりだった春巻きは、………もう無かった。
俺は、叶の料理を食べている姿をついに見ることが出来て、ただただ感激だった。先程は恐ろしい勢いで食べたと言っても、量は大食いの者ならば簡単に平らげる程度しか無かったのである。それが今や10人前の巨大な麻婆丼を前にして、淡々と頬張っていき、残るは殆ど一口のみになっている。彼女はここに来てようやくペースが落ちたのだが、その顔つき、その手付き、その姿勢からして、腹が一杯になったのではなくて、あれほどあった麻婆丼がとうとうここまで無くなったので、急に名残惜しくなったのであろう。その証拠に、一口一口、よく噛み締めて食べている。俺は、またもや背中をバットで殴られたかのような衝撃に身を震わせてしまい、その様子をじっくりと穴が空くほどに見つめていたのであったが、汗もかかずに平然と、最後の豆腐に口をつける彼女を見て、とうとう食欲がさっぱり無くなってしまった。代わりに無性に苛立つような、体の内側が燃えるような、そんな堪えきれない欲が体の中心から沸き起こってきて、今までそんなに気にしてなかった、―――実際は気にしないようにしていた胸元の膨らみが、途端に何かを唆しているように思えて、もっともっと叶の食事風景を見ていたくなった。
「ごちそうさまでした」
と、声がしたので見てみると、澄ました顔で水を飲んでいらっしゃる。俺は慌てて、店主がテーブルの上に乗せて行ったタイマーを止めて時間を見てみた。
「16分39秒」
「えっ? 食べ終わった?」
「ほんまに?」
「本当に一人で食べたんだろうか。………」
気がつけば観客たちがぞろぞろと戻ってきていた。彼らの様子は、もうあんまりくだくだしくなるから書かないが、俺はまたしても注目を浴びている彼女を見て、ただならぬ喜びを感じたということは、一言申し上げておく必要がある。少年は輪の中心に居る少女の手を取るに飽き足らず、その体に抱きついて(―――何と柔らかかったことか!)、
「やったね叶ちゃん。やっぱり出来るじゃないか」
と歓声を放ち、
「ほら、ほら、この子はデカ盛りを16分で食べきったんだぞ。男ならそれくらいできなきゃ」
と、まるで我が手柄のように、奮闘中の大学生らしき男性客に言うのであった。俺の感性はまたしても有頂天に上り詰めて、多幸感で身がふわふわと浮いていた。隣で叶がはにかんで居るのを見ては、優越感で酔っ払ってしまいそうだった、いや、酔いに酔って、―――彼女の隣に居るのは僕なんだぞ。少年はそう叫んだつもりであるのだが、実際には心の中で叫んだだけなようである。俺がこの日の記憶をおぼろげにしか覚えていないのは、そんな感情に身も心も流されていたからなのである。………
騒ぎが収まってから、俺は半分近く残っていたエビチリを叶にあげた。もちろんぺろりと平らげた訳なのだが、しかしその後余りにも平然としてデザートの杏仁豆腐を食べているので、ひょっとしたら、………というよりは、やっぱりそうなんだなと思って、
「もしかしてさ、もう一回くらいいける余裕ある?」
「あ、………もちろん」
もちろんの部分は小声で言うのであった。そして小声のままその後に続けて、今体験した感じで言うと、もう一回あのデカ盛りを食べるどころか、さらにもう一回くらいは多分入ると思う。なんて言っても、まだ空腹感が拭えない。実のことを言えば、あれだけ店主が期待させてくるから楽しみだったのだけれども、いざ出てきてみれば、美味しかったものの、いつも食べてる分量より少なかったから、拍子抜けしてしまった、30分という時間制限も、頑張ったらさっきの麻婆丼2つ分でも達成できると思う。いや、たぶん余裕だと思う、出来ることならもう一回挑戦してみたいが、あの騒ぎを起こされた後だとやる気は起きないかなと言う。少年は彼女の食欲が未だに失せないことに、感謝さえしそうであった。なぜかと言って、この日の俺の願望は、彼女の食事姿を眺めること、そして、街にある食事処をはしごして、彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげること、―――この2つだったのである。しかし、前者は達成したからと言って、それが満足に値するかどうかは別な問題であって、既に願望が「彼女の食事姿を飽きるまで眺めること」となっていた当時の俺には、元々の望みなどどうでもよく、叶がお腹いっぱいになっちゃったなどと言う心配の方が、先に頭に上っていた。が、今��彼女の言葉を聞くに、彼女はまだまだ満足していない。腹で言えば、三分ほどしか胃袋を満たしていない。となれば、第二の願望である「彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげること」を達成していない。然れば、僕が叶の食事風景を飽きるまで眺めるためにも、そして叶が満腹を感じるまでに食事を取るためにも、今日はこのまま延々と飯屋という飯屋を巡ってやろうではないか。そして、あのメルヘンチックな子供部屋で、二人で夜景を眺めようではないか。………斯くして三度、俺の願望と叶の欲とは一致してしまったのであった。
結局叶は、春巻きをもう一度10人前注文して幸せそうな顔で味わい、その間に俺は会計を済ましたのであったが、あっぱれと未だに称賛し続けている店主の計らいで杏仁豆腐分だけで済んでしまった。本当にあの体にあの量が入ってるとは信じられんとおっしゃっていたが、全くその通りであるので、店を出てから叶に断ってお腹に手を触れさせてもらったところ、ちょうど横隔膜の下辺りから股上までぽっこりと、あるところでは突き出ているようにして膨らんでいる。ここに8.7キロの麻婆丼と、春巻き20人前が入っているのである。ついでに水何リットルと、申し訳程度の定食が入っている。そう思うと、愛おしくなって手が勝手に動き初めてしまいそうになったけれども、人通りの多い道であるから、少年は軽く触れただけで、再び少女の手を引いて、街中を練り歩き出した。
それから家に帰るまでの出来事は、先の中華料理屋とだいたい似ているので詳しくは書かないが、何を食べたかぐらいは書いておこう。次に向かった店は近くにあったかつれつ屋で、ここで彼女は再びデカ盛りのカツ丼4.3キロを、今度は初めてと言うべき味に舌鼓をうちながらゆっくりと、しかしそれでも半額になる25分を6分24秒下回るペースで平らげ、次はカレーが食べたくなったと言って、1つ2つ角を曲がってよく知らないインドカレー屋に入り、ご飯を5回おかわり、ナンを10枚食べる。おぉ、すごいねぇ、とインド人が片言の日本語で歓声を上げるので、叶はどう反応していいのか分からずに、むず痒そうな顔を浮かべていた。で、次はラーメン屋が目についたので、特盛のチャーシュー麺と特盛の豚骨、そして追加で餃子を頼んで、伸びたらいけない、伸びたらいけないと念仏のように唱えながら、汁まで飲み干す。この時既に、一体何キロの料理が彼女の腹に入っていたのか、考えるだけでも恐ろしいので数えはしないが、店を出た時に少々フラフラとするから心配してみたところ、
「いや、体が重いだけで、お腹はまだ大丈夫」
という答えが返ってくる。事実、その移動ついでにドーナツを10個買うと、うち9個は叶の胃袋へ、うち1個は俺の胃袋へと収まった。そして今度は洋食屋に行きたいとご所望であったから、先の中華料理屋の向かい側にある何とか言う店に入って、ナポリタン、―――のデカ盛りを頼んで無料となる19分17秒で完食す。とまあ、こんな感じで店をはしごした訳であったが、その洋食屋を後にしてようやく、ちょっと苦しくなってきたと言い出したので、シメとして喫茶店のジャンボパフェを食べることにした。彼女にしてみれば、どれだけ苦しくても甘いものだけはいくらでも腹に入れられるのだそうで、その言葉通り、パフェに乗っていたアイスが溶けるまでにバケツのような器は空になっていた。そして、喫茶店を出た時、叶は急に俺の体に凭れかかってきたのであった。
「あ、あ、………苦しい、………これがお腹一杯って感覚なんだね」
と、俺の背中に手を回してすっかり抱きついてくる。うっとりとして、今が幸せの絶頂であるような顔をこちらに向けたり、道の向かい側に向けたりする。人目もはばからず、今にもキスしそうで、その実ゴロンと寝転がってしまうのではないかと思われる身のこなし。心ここにあらずと言ったような様子。………彼女は今言った量の料理を食べて初めて、満腹感を感じられたのであった。―――あゝ、とうとう僕の願望と叶ちゃんとの欲望が、叶い、そして満たされたしまったのだ。見よ見よこの満足そうな顔を。ここまで幸せそうな顔を浮かべている者を皆は知っているか。―――少年も嬉しさに涙さえ出てくるのを感じながら、抱きついてくる少女のお腹に手を触れさせた。妊娠どころか人が一人入っているかのようにパンパンに張って、元の病的なまでに窪んでいた腹はもうどこにもなかった。胸元だけではなく、腹部にある布地もはちきれそうになっていた。思えばここに全てが詰まっているのである。今日食べた何十キロという食べ物が、………そう考えれば本来の彼女の体重の半分近くが、この腹に収まって、今まさに消化されているのである。少年と少女はついに唇を重ねるや、そっとお腹に耳をつけてその音を聞いてみると、じゅるじゅると時々水っぽい音を立てながら、しかしグウウウ、………! と言った音が、この往来の激しい道沿いにおいても聞こえてきて、この可愛らしい少女からこんな生々しい、胎児が聞くような音を立てているとは! 途端に、股間の辺りから妙な、濁流を決壊寸前の堤防で堰き止めているかのような、耐え難い感覚がして、少年は咄嗟に彼女から身を引いた。今度の今度は背中をバットで殴られたような衝撃ではなく、内側からぷくぷくと太って破裂してしまいそうな、死を感じるほどのねっとりとした何かだった。そしてそれは何故か叶の体、―――特に異様に膨らんだ胸元と腹を見るだけでも沸き起こってくるのであった。少年は恐怖で怯えきってしまった。この得体の知れない感覚が怖くて仕方なかった。目の前でふらふらとしている少女から逃げたくもなった。が、無情なことに、その少女はうっとりと近づいてきて、少年の体にすがりつくので、彼は逃げようにも逃げられず、為されるがままに、その痩せきってはいるけれども上半身の異様に膨れた体を抱いてやって、少女の希望ゆえにお腹を両手で支えながら帰路につくのであった。
「お母さんに何言われるか分からないから、楽になるまで遊んで」
離れに戻ってから、叶はそう言って俺の体に寄りかかってきた。道沿いでしてきた時はまだ遠慮があったらしく、俺はすっかり重くなった彼女の体を支えきれずにベッドに倒れてしまい、じっと見つめる格好になったのであるが、そのうちに堪えきれなくなって、どちらからともなく、
「あははは」
「あははは」
と笑い出した。
「ねぇねぇ」
「うん?」
「さっきキスしてきたでしょ」
「………うん」
俺はこっ恥ずかしくなって、素っ気なく答えた。
「もう一度しない?」
「………うん」
今度はしっかりと叶の顔を見つめながら答えた。
これで俺たちは二度目の接吻をした訳であるが、俺の手はその後、自然に彼女の胸に行った。この時、叶の方がベッドに大きく寝そべっていたので、俺の方が彼女より頭一つ下がった位置にあり、目の前で上下する乳房が気になったのかもしれない。俺の手が触れた時、彼女はピクリと体を震わせただけで、その熱っぽい顔はじっとこちらを向けていた。嫌がっている様子が見えないとなれば、少年は図に乗って、両手を突き出して乳房に触れるのであったが、それでも少女は何も言わない。思えば、少年が恋する少女の胸に手をかけた初めての時であった。やわらかく、あたたかく、頭ぐらい大きく、手を突っ込めばいくらでもズブズブと沈み込んでいき、寄せれば盛り上がり、揉めば指が飲み込まれ、掬い上げれば重く、少年はいつまででも触っていられそうな感じがした。と、その時気がついたことに、着ている物の感触として、女性にはあって然るべき重要な衣服の感覚が無いのである。
「ぶ、ぶ、ぶ、ぶらは、………?」
と少年は何度もどもりながら聞いた。
「高くって買えないの。………それに、おっぱいが大きすぎて店に行っても売ってないの。………」
と少女は儚げな表情を、赤らめた顔に浮かべる。
それきり、言葉は無かった。少年も少女も、大人にしか許されざる行為に、罪悪感と背徳感を感じて何も言い出せないのである。少年の方は、父上の言いつけに背くばかりか、この部屋に連れ込んで淫らな行為に及んでいるがため、少女の方は、相手が自分の手に届かない物持ちの息子であることから、果たしてこんなことをして良いのかと迷っているところに、突然の出来事舞い込んできたため。しかし両者とも、気が高揚して、場の雰囲気もそういうものでないから、止めるに止められない。そして、どうしてその行動を取ったのか分からないが、少年は少女に跨って下半身を曝け出し、少女もまた裾を捲って肩まで曝け出した。玉のような肌をしながらも、はちきれんばかりになったお腹に、少年はまず驚いた。驚いてグルグルと唸るそれを撫で擦り、次に仰向けになっているのにしっかりと上を向く、丸い乳房に目を奪われた。生で触った彼女の乳房は、服を通して触るよりも、何十倍も心地が良かった。少年は、少女の腹を押しつぶさないように、腰を浮かしながら、曝け出した物を乳房と乳房が作る谷間の間に据えた。と、同時に少女が頷いた。右手で左の乳房を取り、左手で右の乳房を取り、間に己の物を入れて、すっぽりと挟み込み、少年は腰を前後に振り始めた。―――少年が射精を憶えた初めての時であった。
叶の腹がほぼ元通りに収まったのは、日も暮れかかった頃であったろうか、彼女を無事家まで送って行き、すっかり寂しくなった部屋で、俺はその日を終えたのであるが、それからというもの、お話をするという日課は無くなって、代わりに、休みの日になると叶を引き連れて、街にある食事処を次々に訪れては大量に注文し、訪れてはテーブルを一杯にし、訪れては客を呼び寄せる。その度に彼女は幸せそうな顔を浮かべて料理を平らげ、満足そうな顔を浮かべて店を後にし、日の最後は必ずその体を俺に凭れさせる。彼女にとって嬉しかったのは、そうやっていくら食っても俺の懐が傷まないことで、というのは、だいたいどこの店にもデカ盛りを制限時間内に食べられれば無料になるとか、半額になるとか、そんなキャンペーンをやっているのだけれども、叶はその半分の時間で完食してしまうのである。「頑張ったら、別に2倍にしても時間内に食べられるよ」と言って、見事に成し遂げたこともあった。その店には以降出入り禁止��なってしまったけれども、痛いのはそれくらいで、俺は俺の願望を、叶は叶の欲望を満たす日々を送ったのであった。
だが、叶を初めて連れて行ってから一ヶ月ほど経った時の事、父上に呼ばれて書斎へと向かうと、いつもは朗らか��父上が、パソコンの前で真剣な表情で睨んで来ていらっしゃった。俺は咄嗟に叶との行動が知れたのだなと感づいて、心臓をドキドキと打たせていると、
「まぁ、別に怒りはしないから、隣に来てくれ」
とおっしゃるので、すぐ傍にあった椅子に腰掛けて、父上が真剣に見ていたであろうパソコンの画面を見てみた。そこには家中に配置されている監視カメラの映像が映し出されていたのであったが、その映像をよく見てみると、若い少年と少女が手を繋いで庭を渡る様子と、端に俺が叶を連れ込んだ日の日付と時間が刻銘に刻まれているのである。俺は頭が真白になって、どういい訳をしたらいいのか、どうやれば許して頂けるのか、―――そういう言葉ばかりが浮かんで結局何も考えられなかったが、兎に角、叶と会っていたことが父上にバレた、それだけははっきりと分かった。
「この映像に思い当たる節はないか?」
無いと言っても、そこに写っている少年の顔は俺であるし、後ろ姿も俺であるし、背丈も俺であるし、況や叶をや。言い訳をしたところで、事実は事実である上に、父上に向かってこれ以上見苦しい姿を見せたくなかったし、嘘を言うなんて事は俺には出来ないので、正直に告白することにした。もちろん、彼女に一杯物を食べさせてたなんて言うべきではないから、ただ一言会っていたとだけ伝えることにした。
「ふむ、正直でよいよい。そんなとこだろう。いや、それにしても、いきなり自分の部屋に連れ込むとは」
と、一転して朗らかになったので、急に恥ずかしくなってきて、キュッと縮こまったのであった。
ところで俺がこの監視カメラを甘く見ていたのには、少しばかり理由がある。1つには、庭は木が生い茂っていて見通しが悪いこと、そしてもう1つには、子供部屋として使っている離れには設置していないこと、だから俺はあの日の朝、部屋にさえ連れ込んだらこちらのものと思っていたのであったが、それ以上の理由として、父上がその防犯カメラの映像をあまりチェックし給はないことが挙げられる。父上は抑止力としてカメラを設置していらっしゃるだけで、その映像を見ることは月に一回あるかないか、それもたまに半年間もすっぽ抜かすこともあれば、チェックをするのも適当に何日かを選んで、早送りをして見るだけというずさんさがあった。俺はしばしばその様子を眺める機会があったのだが、いまいち鮮明でない画面であるがゆえに、もはや人が居るかどうかが辛うじて分かる程度であった。だから、俺はあの時、叶を部屋に連れ込んだとしても、見つかるはずは無いと高をくくっていたのである。
で、子供が一人で家の中で何をしているのか気になった父上が、ひょんなことから防犯カメラの映像を、ぼんやり眺めていると、何者かと共に離れにまで入っていく事を確認し、それが何とも見窄らしい格好をした少女であるから、2、3回繰り返して見ているうちに、隣家の貧家の娘であることに気がついたのであろう。
俺はそれから、また真剣な顔つきになった父上に、たんまりと諭されてしまった。この住宅街は、その大半が一般庶民の暮らしている家で埋められているのであるが、とある一画にだけは物騒な人(に売られる)が住んでいる。不幸なことにこの家を建てる時に、上手い土地が無かったために、ある一つの家を挟んで、そこと向かい合わせになってしまった。それならば、せめて家の裏にして、木で生け垣を作って完璧に仲を隔ててしまおうと思って、お前の部屋からも分かる通り、風景は見えるようにだけしたのである。もちろん、それなら別に他の所に住めば良いではないかと思うかもしれないが、しかしこの地は俺が子供時代に何年か過ごしたことがある土地であって、そして、お前のお母さんの生まれ育った土地である。つまりは夫婦の思い出の地であって、(言葉を濁しながら、)つまりは俺もお前と同じ穴の狢であるから、近所に住む女の子を一人や二人呼んだところで何も言いはしない。が、裏にある地区だけはダメだ。別にそういう地区ではないが、何しろ物騒な噂ばかり聞く。で、彼女の家はそんな地区と我々とのちょうど境目に建っていて、一番可哀想な境遇を経ているのであるが、向こうから色々と入れ知恵されていると人はよく言う。もし問題が起これば面倒事になるかもしれないし、お前に怪我でもあったら良くない。実際、昔お前のお母さんの友人が、あの地区にいる人といざこざを起こした時に、上辺だけは丸く済んだけれども、その後に復讐として連れ去られそうになったことがあった。彼らは放っておくとどこまで非情なことをするのか分からない。だからあの言いつけはお前を心配してのことだったのだ。そもそも、俺はお前にはもっとふさわしい女性とお付き合いしてほしい。ほら、一人二人くらい学校で仲良くなった子は居るだろう。いたらぜひ言ってくれと、最終的には学校生活の話をするのであったが、父上は諭している途中ずっと真面目であった。俺はそれをふんふんと頷きながら、その実父上がそういうことを話てくれることが嬉しくて、内容はあまり耳に入ってなかった。ただ叶が可哀想なんだなと思うくらいで、始まった父上の詰りに、すっかり考えを逸らされてしまったのであったのだが、
「しかし、可愛い子だな。あんな家に住ませておくのがもったいない。転校して会えなくなる前に、分かれの挨拶くらいは許してやるから、やっておけよ」
と、突然父上が衝撃的な事を言ってのけるので、
「え? 転校?」
と聞き返してしまった。全く、転校するなどとは俺には初耳で、椅子の上でぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
「もう少ししたら、気晴らしに別荘の方で何年か過ごすからな、―――あゝ、そうそう本当に何年間かだぞ、一週間などではなくて。だからそのつもりでな」
俺はぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
それからは急に頭がぼんやりとしてしまって、引っ越しまでどう過ごしたのか憶えて居ない。ただ、最後に叶に会ったことだけは憶えていて、彼女は泣いていたように思う。ようやく自分が満足する量の食事を隔週ではあるけれども、取っている彼女の体つきは、微かに肉付きがよくなっているのだが矢張りガリガリに痩せ細っていた。逆に、胸元だけは一層膨らみ始めていて、その大きさはバレーボールよりも大きかった。俺は木陰に入って、最後にもう一度触らせてもらった。もうこれが最後だと思うと、お腹にも耳を当てた。朝食後直ぐに出てきたというその腹からは、矢張りゴロゴロと中で何かが蠢く音が聞こえてきた。そして泣いて泣いて仕方がない彼女と最後のキスをして、また会う約束を交わして、蕾を付け始めた桜の花を、雲の下にてあわれに見ながら袂を分かった。
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sandicemails · 5 years ago
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砂漠歌人と砂丘歌人
 2019年7月14日ジュンク堂池袋本店内カフェにて、千種創一『砂丘律』第4刷&𠮷田恭大『光と私語』第2刷を記念してトークイベント「砂漠歌人と砂丘歌人」が開催され、55名近くが出席しました。以下その内容です。(敬称略)
1 はじめに
2 自己紹介
3 中東との出会い
4 短歌との出会い
5 旅行詠と滞在詠
6 暮らしにまつわるあれこれ
7 影響を受けた映画作品
8 音楽と短歌
9 増版とSNS
10 それぞれの作歌法
11 『砂丘律』制作秘話
12 『光と私語』制作秘話
13 翻訳について
14 『光と私語』の魅力
15 千種からの発表
16 さいごに
1 はじめに(ジュンク堂書店池袋本店・市川真意文芸書担当)
 二〇一五年末の刊行後、異例の売行で第二刷がされた『砂丘律』。この春、砂漠を詠んだ歌がSNSで大きな話題になり、第三刷、次いで第四刷が決定。一時帰国する著者千種創一を、鳥取砂丘育ちの新鋭歌人𠮷田恭大が迎えます。
 万葉時代から命脈を保ち続け、砂漠も都市も飲み込む器、短歌。その叙情はどこに行くのでしょうか。二人が語ります。みなさま、拍手でお迎えください。(千種・𠮷田が登場)
2 自己紹介
千種:みなさま、本日は雨の中お越し頂きありがとうございます。千種でございます。一九八八年、愛知県生まれです。二〇一五年、青磁社より『砂丘律』を刊行しました。
𠮷田:𠮷田です。一九八九年生まれ、鳥取県出身です。塔短歌会所属、学生時代は早稲田短歌会にもいました。今年の3月に、いぬのせなか座より『光と私語』を刊行しました。
 二〇〇九年に千種さんが外大短歌会を設立して、その初期に私が歌会にお邪魔してからのつきあいなので、かれこれ十年以上になりますね。その間には中東短歌なんていう同人誌もありましたね。
千種:そうですね。「アラブの春」の起きた二〇一二年、僕は中東に縁のある歌人たちと同人誌「中東短歌」を創刊しました。二〇一三年に第二号、二〇一四年に第三号で終刊、そして二〇一五年に砂丘律を刊行という流れです。
𠮷田:今回のトークイベントに先立って、ネットで質問を募集しました。そのうちいくつかへの回答を交えつつ、進めて行ければと思います。
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(撮影:青磁社)
3 中東との出会い
𠮷田:ではまず、千種さんの中東への関心というのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。
千種:幼稚園がキリスト教系だった関係で地元の教会に行っていてパレスチナとかに興味があって。で中学一年生のときにNYで九・一一事件、パレスチナで第二次インティファーダ(一斉蜂起)事件が起きて、そこから更に興味が出たんです。
 だって飛行機がビルに突っ込んだり、子供が石を投げてイスラエルの戦車に立ち向かうとか、尋常ではないでしょう。何なんだこの世界は、と思って。
𠮷田:ということは、初めて知った”外国”というのはそのあたりですか。これは質問も寄せられております。
千種:はい、聖書を読んでいたので、イエス・キリストの活動していたパレスチナ、エジプト、ヨルダン、そのあたりです。小さい頃はハリーポッターみたいに架空の国だと思ってはいましたが。
4 短歌との出会い
𠮷田:これも質問が寄せられているんですが、千種さんはどうして短歌をはじめたんですか。
千種:高校まで自転車で通ってたんですけど、道中で自然に歌ができていたんです。最初は忘れるに任せていたんですけど、あるとき勿体ないと思って、高二の春からノートに書きとめ出したんです。
5 旅行詠と滞在詠
𠮷田:砂丘律の冒頭から中東の歌がありますが、詠まれた時は実際に現地に行かれていたんでしたっけ。
千種:いわゆる「アラブの春」が起こる前に、シリアとトルコを旅行しました。でもそれくらいです。大学卒業後にヨルダンに住み始めました。
𠮷田:中東に旅行してみて詠んだ作品と、中東に住み始めてからの作品というのは何か違いがありますか。
千種:砂丘律は時系列に編まれていないので、中東に住み始める前の歌もかなり入っています。そのあたりの歌はかなり想像、というか妄想です。
 妄想と現実が一致しないのはよくある話なので、実際に住み始めてから修正したり、歌集には収録しなかった歌などもあります。中東に住み始めてからは、非日常が日常になっていく感覚はありました。
 ちなみに、砂丘律を編むにあたって、もともとは一四〇〇首とか一五〇〇首とかあったものを四一〇首まで絞って収録しています。
𠮷田:削除した歌はどこかに書き留めていますか?
千種:作った歌は全部大事にしたいので、発表できるレベルに達しなかった歌たちもWordファイルに書き溜めていますね。
 身辺整理の際にはファイルをデリートしようかなと思っています。これ死後に発掘されたら、地獄やな、思ってますので。(一同笑い)
𠮷田:千種さん、整理整頓できるほうですよね。わたし手元に全然歌を纏めていなくて。『光と私語』を出そうと思って色々掘り返したんですけど、1年くらい遅れてしまいました。
千種:あ、みなさんのために補足しますと、歌人って歌をいろんな雑誌や同人誌に書くので実は作品が散逸しやすいんです。
6 暮らしにまつわるあれこれ
千種:普段𠮷田さんとはこういう話はしないので結構緊張しています。先日も台湾に一緒に行ったのですが、どーでもいい話しかせんかったもんね。
𠮷田:そうね。暮らしの話はしないもんね。じゃあ、聞きましょう。「普段何を召し上がっていますか」(一同笑い)
千種:パン食べて生きています。安い。パンにホンムス(豆のペースト)を塗って食べています。だから日本にいるときはラーメンと寿司にどっぷりですね。
𠮷田:確かに台湾でもひたすら麺食べてたもんね。(一同笑い)
𠮷田:「日本に帰国したときに驚くのは何ですか」という質問もありますが。
千種:日本人がみんな子供に見えることですね。あとすれ違う人がみんな知り合いに見えます。
7 影響を受けた映画作品
𠮷田:千種さん、好きな映画は何かありますか。
千種:邦画で言えば、例えば『ジョゼと虎と魚たち』、『海街diary』、最近で言えば『寝ても覚めても』とか、人間のどうしようもなさを描いた映画が好きです。
 影響を受けた映画としては、ふらっと入った渋谷ユーロスペースで観たポーランド映画『エッセンシャル・キリング』(イエジー・スコリモフスキ監督、二〇一〇年)。
 中東風のテロリストが、砂漠と、そして拘束後に輸送された先の雪原をひたすら逃亡する。詳しい設定説明や台詞もなく、多くが謎のまま、ただ映像が綺麗。中身を語らずとも、枠を語ることから滲み出る美しさもあるんだな、と。
 ビジュアルというよりも、コンセプトの面で影響を受けました。
 他に��森博嗣原作の『スカイクロラ』(押井守監督、二〇〇八年)。キルドレというずっと子供のまま成長しない戦闘機乗りたちの終わらない、終わらせることのできない、運命や気持ちの揺れ、諦めみたいな世界観は、砂丘律にも影響しています。
千種:𠮷田さんの好きな映画は。
𠮷田:アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『光りの墓』(二〇一五年)とか。物語も好きなんですが、それより映像と音楽で引きつけていく、みたいな映画が好きです。
8 音楽と短歌
𠮷田:じゃあ、好きな音楽は何でしょう。
千種:中学生まではバロックを中心にクラシックばかり聴いてました。でもHYという沖縄のバンドのAM11:00という曲を偶然ラジオで聴いたことがきっかけでJポップにも興味が湧きました。
𠮷田:くるりの岸田繁さんが砂丘律の推薦文を書かれてますが、くるりとの出会いは。
千種:くるりは、高校生のとき「赤い電車」のMVを観たのが最初の出会いですね。
 高校生の頃はBump of ChickenとかRadwimpsとかの切実な曲を聴きまくってました。
 でも赤い電車を聴いて、こんなゆるい曲があるんだと思って何となく気になっていたところに、進学した先の大学で友達から、聴け、といってくるりのCDを大量に貸しつけられて、聴きこむようになりました。
𠮷田:くるりをまとめて貸してくれる友人っているよね。(一同笑い) 歌人に好きな人多いです、くるり。私は早稲田短歌の先輩から布教されました。
千種:𠮷田さんの好きな音楽は。
𠮷田:あまり聴かないんですよね。舞台に使われた音楽を聴いたり、もっぱら他人から勧められたのを聴いています。最近だと空間現代とか。
9 増版とSNS
千種:今回の重版は、この春にある方のツイートに載せられたこんな歌がバズったのがきっかけでした。
 アラビアに雪降らぬゆえたた一語ثلجと呼ばれる雪も氷も /千種創一
Tumblr media
元URL: https://twitter.com/Ots_mh/status/1106256914915028992
𠮷田:このサルジュの歌がバズったとき、どんな気持ちでしたか。
千種:あら、それバズるんだ、という気持ちでした。
𠮷田:そうだよね、キャッチーな歌とか他にもいっぱいあるのにね。
 実は今日、会場にそのツイート主にお越し頂いております。「なんでこの歌を引いたんですか」とか、ちょっと聞いておきましょう。
(マイクを受け取りつつ)
橋本牧人:はじめまして。この歌を引いた理由ですか。僕自身が大学一年生のときにアラビア語を勉強したことがあって。学問で得た知識を詠み込んだ歌を志向していきたいなと思って、この歌を選びました。
 他にはカロリーメイトの歌とかも好きです。
 煙草いりますか、先輩、まだカロリーメイト食って生きてるんすか /千種創一
千種:ありがとうございます。
 サルジュの歌、実は過去砂漠に降った雪の写真に添えて投稿したこともあるんですが、ぼちぼち伸びたくらいです。
 今回の橋本さんのツイートがあれだけ伸びたのは何でなんでしょうね。
𠮷田:Twitter本文に表示される横書きではなくて、歌集の写真として縦書きだったことが良かったのでは。そして橋本さんがその写真を撮ったという行為がワンクッションあること、あたりも理由として挙げられると思います。
千種:橋本さんの”物語”が差し込まれているというね。
𠮷田:そうそう。しかしこれだけ伸びたのは、作者冥利に尽きるのではないでしょうか。
千種:本当に。改めて橋本さんに感謝申し上げます。
10 それぞれの作歌法
𠮷田:Twitterで拡散されやすい歌、ってあると思うんです。
 千種さんの場合は、「先輩」というような呼びかけとか、会話体を使ったキャッチーな歌が多くて、初読で印象に残りやすい。例えばこんな歌。
 あっ、ビデオになってた、って君の声の短い動画だ、海の /千種創一
 千種さん、会話体使うの得意だよね。
千種:得意というか、そうなっちゃうんだよね。和歌風に文語旧仮名で朗々と詠いあげる、みたいなのは書けと言われても書けない。
𠮷田:破調はどうですか。会話を優先するのか、定型を優先するのか、みたいな。
千種:会話優先ですね。でも歌を作るときには、寝る前とかに百回なり千回なり、ぶつぶつ口に出して繰り返して、その一行のための定型みたいなものを探します。
 𠮷田さんはどんな風に作るんですか。
𠮷田:私はスマホで作りますね。声に出すのは割と最後の段階。視覚的な収まりどころを最初に探します。そこから韻律をいじります。
 この前、地元でNHKの取材を受けたんですが、作歌風景を撮りたいというのでスマホで作っていたら「絵的に弱いから、ノート持ってきたんでこれに書いてください」と言われました。でも結局、字が汚くてボツになったというオチ付きです。(一同笑い)
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(NHK鳥取のページより)
千種:僕は気分転換で紙を使うことはあります。
 僕も記録は基本スマホなのですが、歌のいろんなバリエーションを作って、俯瞰するために紙に書き出したりします。スマホだとせいぜい三行とかしか表示できないので。
千種:𠮷田さんは音楽聴きながら歌書いたりしますか。僕はくるりの「ばらの花」とか「ワンダーフォーゲル」とかえんえんリピートで聴きながらよく書きます。
𠮷田:THE YELLOW MONKEYを聴きながら連作を組んだりした時期もありました。ありましたが、精神が不調になりますね。(一同笑い)
 最近だと落語を聴きながらが多いですね。深夜とか、人の話声が聞こえてると安心するんです。でも歌詞のある曲だと自分の書いているものに干渉してくるんで……ラジオとかポッドキャストとか、聞き流していられるようなものが丁度いいです。
11 『砂丘律』制作秘話
𠮷田:歌集にまとめる際に、改作はどの程度していますか。確か砂丘律が出た直後の批評会(二〇一六年)で、歌人の田口綾子さんが指摘されていましたが。
(批評会記録:http://dunestune.blog.fc2.com/blog-entry-4.html )
千種:はい。当初、文語の歌も少しはあったんです。でも口語の多い砂丘律の中では浮いてしまうので、改作したり、もしくは泣く泣く落とした歌もありました。
𠮷田:ではその辺の歌は、没後出てくる感じで?
千種:出ません。出させません。(一同笑い)
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𠮷田:砂丘律は装幀・デザインもかなり話題になってました。
千種:当初、出版社の青磁社には、洋書のようなシンプルなペーパーバックで、写真はこれ使って、というような何となくのイメージを伝えていました。
 割と装幀は自分で介入するつもりでした。
 でも砂丘律の原稿を読んだ、濱崎実幸という装幀家さんに”ハイジャック”されて。「やりたいこともあるから任してほしい」と言われたので、僕も「任せます!」として任せたんです。
𠮷田:背表紙がむき出しの特殊な装幀でして、なかなか費用も手間もかかっているとか。
 実は本日は砂丘律の出版元、青磁社の永田淳代表にお越し頂いております。砂丘律に関し、どのような苦労がありますでしょうか。
永田淳青磁社代表:版元の青磁社の永田です。
 砂丘律はすべて手製本です。職人さんが一冊一冊、背表紙の寒冷紗を貼って、題簽を貼っています。今は圧倒的に機械製本が多いので普通の書店には手製本はほぼないと思います。
 砂丘律は製本代だけで300円くらいかかっています。ここにさらに印刷代などがかかります。業界の人ならわかると思いますが、定価1400円の中で製本代300円という数字は、すごいコストがかかっています。
12 『光と私語』制作秘話
千種:光と私語もまた、背中がむき出しの装幀が話題となっています。第二刷もされました。
𠮷田:砂丘律と光の私語は双子のようだ、という話も言われてましたね。本日は、光と私語のデザインを担当したユニット「いぬのせなか座」主宰の山本浩貴さんにもお越し頂いておりますので、その辺の話も伺ってみましょう。
山本「いぬのせなか座」主宰:デザインを担当した山本です。光と私語と砂丘律とを二冊並べて写真をSNSに投稿した人たちもいました。
 付き合いの長い𠮷田さんと千種さんのお二人の関係性でそういう投稿が見られたのかもしれませんが。
 実は、千種さんのこと知る前のことですが、かつて本屋の歌集コーナーで一番かっこいいと感じた砂丘律をジャケ買いしていました。
 そうしたこともあって、光と私語をデザインする際には影響を受けないようにしていたのですが、結局似てしまったのが面白かったです。
 ちなみに光と私語はコデックス装という装幀です。
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𠮷田:先般増刷された堂園昌彦さんの『やがて秋茄子へと到る』なんかもそうですが、なるべく長く売っていくためには、なるべく人に手に取ってもらうようなデザインが大事だと思っています。製品としての存在感があったほうがいいのではと。
千種:一時期、電子書籍で歌集を出そうという潮流がありました。紙の本が電子書籍に勝てるところといったら装幀とかと思って、砂丘律を出す際にはこだわりたいと思っていました。
𠮷田:電子書籍のメリットは版切れのないことと、アクセスの良さですよね。
 『光と私語』については近日中にデータ版を無料公開する予定なのですが、そこをきっかけに書籍版を購入してくれる人が少しでもいればいいなと思っています。何せ紙の本にはマテリアルとしての良さがありますので。
千種:軽く言っちゃうと、本のインスタ映えとかね。
𠮷田:そうそう。重要。
13 翻訳について
𠮷田:千種さんは割と、主題制作、つまり連作の中で物語を立ち上げるという試みをされていますが。
千種:はい。砂丘律の中だと、「或る秘書官の忠誠」という連作があって、独裁者の秘書官になりかわって詠んでいます。が、すごく評判が悪い。
 あと、確か歌人の紀野恵さんが、一時期、紀貫之か何かに成り代わった連作を雑誌「短歌研究」に連載していたんですけど、まあ、なかなか難しいですよね。
 それは歌人の力の限界なのか、それとも短歌という詩型の限界というか、向き不向きのような話だと思っています。
𠮷田:単純に物語を立ち上げるだけだったら、散文に分がありますからね。
 物語といえば、千種さんはアラブ文学の翻訳もされていますよね。中東短歌にも、歌と並行していくつか翻訳を発表されてました。
千種:はい。今日のチラシには「歌人・翻訳家」と書いてあるんですが、実はまだ翻訳で本を出せていません。
 とある出版社に翻訳の持ち込みをしたのですが、アラブ文学では商業出版はなかなか難しいと却下されてしまって。
 もちろん図書館に行けば翻訳されたアラブ文学もぼちぼちあるのですが、湾岸戦争、九・一一、アラブの春、など大きな事件が起きて、読者の関心が大きくなったときに翻訳・出版されたものが多いと聞きます。
𠮷田:中東情勢が荒れると、翻訳が出るということですね。となるとあまり出ない方が世界の平和のためには良さそうですが。(一同笑い)
 私は舞台関係のマネジメントを仕事にしているのですが、演劇界隈でも、中東への関心というか、アーティストを日本に招聘したり、作品が日本で試演されたり、ということが増えている印象があります。今後、政治情勢だけではなく文化の面でもフックは増えていくのではないかと思います。
千種:そう願います。みなさまの中にアラブ文学の翻訳出版に興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひ千種にお声かけを。宣伝しちゃった。
14 『光と私語』の魅力
千種:僕が自分について喋りすぎているので、光と私語の魅力について話します。話していいですか。話しますね。
 光と私語は、「枠」の歌集だと思っています。
 まず、装幀については、プラスチックのカバーだったり、本文中に四角や長方形のボックスが差し込まれていたり、視覚的にカクカクしているのが、とても都市っぽい、枠っぽいです。
 歌について言えば、例えば一月とか「時間枠」を読んだものが多くあります。
・一月は暦のなかにあればいい 手紙を出したローソンで待つ
 他にも、枠としての建築への関心も示されています。
・恋人の部屋の上にも部屋があり同じところにある台所
 短歌では、部屋でタバコを吸う「私」の恋人とか、一月に「私」が友達と行く初詣とか、枠の中身について話すのが普通です。
 一方で、光と私語では枠ばかりについて話すことで、「私」が希釈されます。
 でもそれこそが都市のリアル、我々が見る都市の人間像でないでしょうか。とてもリアルな。
𠮷田:なるほど。なんだろう、たぶん個人的には、私自身以外のところから私性を取り出したいのですよね。あまり自分の話をしたくないというか、枠の中身はどうでもいいというか。単に自分に自信がないだけかもしれませんが。
15 千種からの発表:活動再開宣言
𠮷田:そろそろ時間だけど、告知とかしましょうか。
千種:何だっけ。
𠮷田:ほら、これからの、歌の。
千種:え、ああ、これまとめに入ってますね。(一同笑い)
(考え込んだあと)ちょっと、実は、その、第二歌集を用意しています。冬か春くらいに出せればな、と。タイトルは「千夜曳獏」。
𠮷田:ここ数年は歌からは離れてましたが。
千種:はい、そうですね。
(しばらく考えて)砂丘律を出したあとに、言葉との距離がわからなくなってしまって。
 他人に不誠実な言葉、例えば嘘、を吐いてしまうこんな自分が、歌で綺麗な言葉を使っていてよいんだろうか、って。
 言葉を単なる道具みたいに扱っているんじゃないか、って怖くて。
 もちろんその葛藤や罪悪感はまだあるんですが、書くのをやめたこの数年、病気みたいになっちゃって。僕にとって書く行為は生体リズムの一部だったというのがこの数年でわかったことです。
 書いて褒められた��とかではなくて、書かざるを得ないんです。書いちゃうんです。ほら、マグロって泳ぎ続けないと死ぬじゃないですか。あれです。
 今後、また書いていきます。良いものが創れればと思ってますので、みなさま、どうぞよろしくお願い申し上げます。
𠮷田:今日は、その言質を取れたら勝ちだと思って来たので。もう引き返せないですよ。
千種:やられたわー。みなさんこれ、打ち合わせと違う展開です。(一同笑い)
16 さいごに
𠮷田:では最後に一言、どうぞ。
千種:はい。いろんな奇跡が重なって、僕もここにいるし、みなさんもここにいると思っています。
 𠮷田さんがいなければ僕はこんなに短歌にのめり込まなかっただろうし、砂丘律は青磁社や装幀家の濱崎さんがいなければ生まれなかった本だし、橋本さんのツイートやジュンク堂さんからのお声掛けがなければこのイベントもなかったと思います。
 書き手として本当にありがたいと思っています。みなさま、今日はお越し頂き、ありがとうございました。
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xf-2 · 5 years ago
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いたるところに、漢字、漢字、漢字が…!
「你好! 安田先生!(こんにちは!安田さん)」
小さいが清潔感のある空港から外へ出ると、私の名字が書かれた紙を持っている青年が流暢な中国語で声をかけてきた。彼の中国語名は子辰。紙には中国語で「歓迎」、日本語のひらがなで「ようこそ」と書いてある。彼は日本語はわからないが、Google翻訳で調べて書いてくれたという。
“子辰”と握手を交わした私のすぐ横を、機内で隣席に座っていた中国国営企業(資源系)に勤務する北京出身のビジネスマンの集団が歩いていく。彼らとは宿が一緒だったので「再見!(またね)」と挨拶を交わして見送った。
「四川電力阿壩公司」
現地の通貨を下ろすためにATMの列に並んでいると、またもや目の前に漢字があった。私の前に並ぶ男が、なぜか中国内陸部のインフラ企業・四川省電力公司アバ支社のサッカーチームのレプリカユニフォームを着ていたのだ。さらにミネラルウォーターのボトルを捨てる場所を探すと、中国語で「リサイクル」「その他のゴミ」と書かれたゴミ箱があった。
待っていてくれたピーター(子辰)と、空港付近で見かけた中国語の数々。ゴミ箱は中国の援助で設置されたらしく、英語よりも漢字のほうが文字が大きい。
そもそも、カタールのドーハで飛行機を乗り換えて以来、私はほとんど中国語しか使っていない。英語はせいぜい機内でのドリンクの注文と、入管で渡航意図を説明したときにちょっと喋った程度だ。
だが、私が来た場所は北京でも成都でもない。東アフリカの内陸部に位置する山岳国家・ルワンダの首都のキガリである。標高1500メートルほどの高原地帯に位置するキガリは、ほぼ赤道直下にもかかわらず、年間を通じて最高気温・最低気温の平均がそれぞれ約27度・約18度、湿度も低くて過ごしやすい。
“子辰”のルワンダでの名前はピーター・ムホザという(さらにフランス語でジャン・ピエール・ムホザという名もある)。意思疎通にほぼ問題がないレベルの中国語を話し、漢字のニックネームまで持っているが、れっきとしたルワンダ人だ。
ピーターとは、現地への渡航にあたり、北京の中国地質大学で恐竜学を学ぶ黒須球子(まりこ) さんのルームメイトのモザンビーク人留学生の友達の友達……という、恐竜とアフリカ系中国人材というカオスな人脈をたどった果てに知り合った。
(黒須さんについては、こちらの記事も参照いただきたい→https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64445)
中国を見るならアフリカを見よ!
ところで、私はなぜルワンダに行ったのか? 理由は簡単だ。いま、中国本土以外で中国ウォッチャーが最も見ておくべき場所は、アフリカだからである。
中国は1950年代以来、反帝国主義や第三世界の連帯を唱えてアフリカ諸国と独自のコネクションを築いてきた。イデオロギー主導の外交は1980年代にいったん下火になったが、21世紀に入ると資源エネルギー需要の増大や中国企業の対外進出(走出去)政策、さらに習近平政権下での一帯一路政策を受けて、アフリカとの関係が再び強化された。
※取材謝礼であるヤマハのステレオを手にテンションが爆上がりのピーター。ビックカメラの英語ページから欲しい商品を選んでもらったが、彼が選んだ液晶テレビは中国メーカーのハイセンス製だったので、第2希望のヤマハ製品を持っていった。
近年は中国の対外援助の5割近くを対アフリカ援助が占めている。「政治的条件のつかない援助」を合言葉に、相手国の政体にかかわらず(=たとえ独裁国家が相手でも)手を差し伸べる中国は、専制的な国も多いアフリカから見ればありがたい相手だ。旺盛な経済関係もあって、アフリカ諸国の対中好感度は軒並み高く、国連などの場でも中国の応援団として振る舞うことが期待されている。
そんなアフリカ諸国のなかで、私が今回訪ねたのがルワンダだ。1994年に50〜80万人もの犠牲者を出したルワンダ虐殺から、今年はちょうど25年目にあたる。いまこそ見ておくべき国だと言っていい。
詳しくは後述するが、内戦終結後のルワンダは「アフリカのシンガポール」を合言葉にスマート国家への脱皮を図っている。政治は専制体制、経済はニューエコノミーを重視した国家資本主義……と、国土面積が四国の1.4倍程度の小国にもかかわらず、中国さながらの国家を作ろうとしているのだ。
私は北京から約8000キロ離れたこの小さな国へ、「中国っぽいもの」を探す旅に出たのであった。
習近平は素晴らしいリーダーだ!
「最近のルワンダはアメリカと少しギクシャクしているけれど、中国との関係はすこぶる良好だ。いまのルワンダにとっていちばん重要な国は中国だと思うよ」
空港からのタクシーの車内で、ピーターがそう説明してくれた。
1990年生まれの彼はルワンダ虐殺で父を失ったが、内戦後は母子家庭のなかで勉学にはげみ、成績優秀者を選抜するルワンダ国家の奨学金を得て同国では数少ない高等教育機関であるルワンダ国立大学を卒業した。やがて2015年に中国政府奨学金留学生として北京科技大学に留学して、バイオ燃料にかかわる論文で修士号を取得している。
ピーターは細身の長身��、黙っていると横顔がちょっとウィル・スミスっぽくてかっこいいのだが、お調子者で不器用な性格が玉に瑕である(ただしルックスがよいのでモテる)。もっとも優秀なのは確かで、北京留学中は留学生の代表として訪中したルワンダ大統領のポール・カガメ(後述)にも会った。今年か来年、中国政府から再度の奨学金を得て北京で博士号を取るのが当面の目標だ。
「習近平は素晴らしいリーダーだと思うね。中国のリーダーはロング・タームでものを考えて、実行できている。多くのアフリカのリーダーも見習うべきだろう」
その経歴からしても当然、ピーターは親中派である。もっとも、こういうエリート層は最近のルワンダ(のみならずサブ・サハラ各国)ではそれほど珍しくない。例えば、2日後に私が会ったピーターの友人で、中国語教師のガット(32歳、中国語名「田文」)も言う。
「ルワンダがモデルにするべき国家は中国だ。政治的安定、経済発展、イノベーションを実現するには中国みたいな体制が理想的なんだ」
ガットも94年のルワンダ虐殺の生き残りである。ピーターと同じくルワンダ政府の奨学金を得て大学へ進学し、やがて中国政府の国策にもとづく語学教育プロジェクト・孔子学院の奨学金を得る形で重慶師範大学で漢語教育分野での修士号を取った。帰国後はそのままルワンダ国内の孔子学院に就職し、母国の後輩たちに中国語を教えている。
中国語とソロバン、広がる影響力
孔子学院はあくまでも語学教育プロジェクトであり、日本で一般に思われているほどゴリゴリのイデオロギー教育がなされているわけではない。ただ、ルワンダにとって最大の輸入相手国である中国の言語を教え、さらに奨学金を通じて「先進国」中国への留学の機会を提供してくれるので、現地のインテリ層の対中好感度を上げるうえでは一定の役割を果たしている。
2018年12月現在、アフリカ全土で孔子学院は59施設、より小規模な孔子課堂が41施設あり、のべ140万人以上が学んだとされる。ルワンダだけでも孔子学院・課堂は約20施設があり、ガットが教えているのはキガリからバスで3時間ほどの距離にある地方都市の教室だ。
ルワンダの孔子学院で、学生側が負担する費用は入学手続き料の30000ルワンダ・フラン(約3600円)のみ、入学後の学費は完全に無料だ。学位は取得できないとはいえ、将来を切り開く上ではかなりお得な教育機関だと言っていい。
※もう一人の孔子学院奨学金OBの中国留学経験者で、キガリ市内で旅行会社を経営するガテラ氏。アフリカ大陸のど真ん中にもかかわらず、中国語人材を探すとどんどん見つかる
孔子学院以外にも、私が目にした中国のソフトパワーを紹介しておこう。それはピーターの仕事である。彼は現在、北京に本社を置いて世界展開するソロバン教育塾チェーン「Shenmo(神墨)」グループのルワンダ・ブランチの運営にたずさわっているのだ。
キガリ郊外にある教室に遊びに行くと、6〜11歳の子ども十数人が、一心不乱にソロバンの玉を弾いていた。一通りソロバンを使わせた後は暗算である。算数の基礎能力を付けるうえでは、ソロバンは有効だ。
授業は英語でおこなわれるものの、教材は中国からそのまま持ってきたもの。漢字で書かれた答案用紙に、子どもたちが答えを書き入れていく。
かつてルワンダは旧宗主国のベルギーが教育に不熱心だったこともあって、1960年代まで大学が存在せず、その後も内戦などで教育の混乱が続いた歴史がある。Shenmoはまだ小規模だが、教育産業の需要それ自体はある国だ。
「ルワンダの教育環境は、はっきり言って現在でも全然よくない。理数系に強い人材を育てなきゃいけないんだ」
そう話すピーターは、半年ほど前に隣国タンザニアのダルエスサラームでShenmoのブランチ代表としての研修を経験した。イラン・ルワンダ・タンザニアの代表が集められ、中国人コーチからソロバンの特訓を受けたらしい。ライオンだらけの国に、中国ソロバン塾の「虎の穴」があったのだ。
父は穏健派だから殺された
ピーターのソロバン教室で学ぶ子どもたちは人懐っこく、あれこれと私に話しかけてきたり、時計やカメラをいじり回したりと天真爛漫だ。だが、彼らが生まれる前にルワンダが経験した歴史は重くて暗い。
ルワンダは過去にながらく、旧宗主国のドイツやベルギーによって作り出されたツチ・フツの「民族」対立に苦しんできた。ツチとフツの言語や宗教はほぼ同じで、両者の差異は実質的にほとんどないが、植民地時代に少数派のツチが「白人に近い」とみなされ中間支配層として活用されたことで対立の芽が生まれた。
ツチとされた人たちは人口の約14%、フツとされた人たちは約85%である(他に先住民である「トゥワ」が1%)。ツチ・フツは外見上でも区別できないが、植民地政府が作ったIDカードに「民族」を記載する項目が設けられたことが悲劇の遠因になった。
1962年のルワンダ独立後は多数派であるフツが権力を握り、初代のカイバンダ大統領時代にはツチがしばしば虐殺された。2代目のハビャリマナ大統領(服部正也『ルワンダ中央銀行総裁日記』にも「ハビさん」の名で登場する)の時代の末期、1990年代前半にも激しい内戦が起こり、権力の維持を図った同政権の取り巻き集団を中心にフツ至上主義(フツ・パワー)が喧伝された。
ツチへの憎悪を煽った雑誌『KANGRA』。ルワンダ虐殺の当時、ツチの民兵たちの間でよく読まれていた。キガリ市内の虐殺記念館にて許可を得て撮影
ついに94年、このハビャリマナ大統領の暗殺を契機に混乱がいっそう拡大し、民兵組織や地方有力者の扇動を受けた一般のフツ系住民が、ツチや穏健派フツをわずか3ヶ月間で50万〜80万人(一説には100万人)も虐殺するルワンダ虐殺が起きた。単純計算でも、内戦前の人口(約720万人)の10%近い人数が犠牲になったことになる。ソロバン先生のピーターも、この事件で父親を失っている。
「当時は4歳だったから、僕には父さんの記憶も、虐殺の記憶もない。父さんがフツで母さんがツチだったらしいけれど、父さんはフツなのに虐殺に加わらない穏健派だったから殺されたみたいだ。ただ、どうやって亡くなったのかはよくわからない」
いっぽう、孔子学院の講師であるガットは、父親がツチで母親がフツだった。ガットが7歳のときに発生した虐殺で父親の一族は皆殺しにされたが、当時は母親がフツの男性と再婚していたので、連れ子であるガットはかろうじて難を逃れている。ガットは言う。
「私みたいな話はいくらでもあるが、みんな我慢している。被害者も加害者も大勢いるし、(虐殺の)当時に何をしていたかは、他人に聞ける話題じゃないさ。過去に直接手を下したことがわかっている人についても不問に付す。それが未来のためだ」
虐殺25年後の強権と経済発展
1994年のルワンダ虐殺は3ヵ月ほどで終わった。隣国ウガンダに亡命していたツチ系勢力を中心とするルワンダ愛国戦線(RPF)が内戦に勝利し、虐殺が停止されたからだ(ちなみに同年9月〜12月にはルワンダ難民への人道救援活動として、自衛隊が隣国ザイールの難民キャンプに派遣されている)。やがて政情は徐々に安定し、2000年からはRPFのリーダーだったポール・カガメが大統領となった。
近年、カガメは強力なリーダーシップのもとで「アフリカのシンガポール」を目標にルワンダの国家改造を進めている。カガメはかなり独裁的だが、ジンバブエのムガベや中央アフリカのボカサのような、従来のアフリカにありがちな国家を私物化するタイプのリーダーではなく、あだ名は「ルワンダのCEO」だ。植民地時代から行政や教育現場で用いられてきたフランス語も、英語に置き換えられた。
ルワンダの一人当たりGDPはまだ750ドル程度で、国家予算の3割を援助に頼る。だが、ルワンダの汚職の少なさや政府の行政能力、良好な治安、起業の容易さなどは国際的にも高く評価されている。国外からの投資も集まり、2008年〜2017年の10年間のGDP成長率は約7.5%に達した。人口も虐殺当時の倍以上となる約1220万人まで増え、社会には若者が多く活気がある。
近年は政府の政策により清掃に力が入れられていることもあって、キガリ市内の中心部はかなり清潔だ。路上にゴミはほとんどなく、他のアフリカの都市と比較しても清潔感がある。夜間のひとり歩きも、それほど怖くない。
カガメ政権下では従来の民族対立も強引に押さえ込まれ、いまや「ツチ」「フツ」はもちろん「民族(ethnicity)」という単語すらおおやけに語ることはタブーだ。もっとも実際のところ、内戦前は人口的に多数派のフツ系が支配層だったが、内戦後はカガメ自身を含めたツチ系のリーダー��ちが台頭するようになっている。
現在、ICT分野で起業をしたり、中国に留学したりするような「意識の高い」ルワンダ人の青年エリートは(ピーターはフツ系だが)多くが幼少期に虐殺を生き延びたり、亡命先から母国に戻ってきたツチ系の人たちである。彼らはそれぞれカガメを手放しで称賛する。
「カガメ大統領は凄い。彼はルワンダ国民を愛しているし、ルワンダをもっと発展させてくれる。国家が発展するときは、ああいうストロングなリーダーの政治が必要なんだ。マスコミや野党の統制だって、ときには必要とされる場合があるのさ」(ピーター)
「カガメの政策は庶民の希望と合致している。彼ら(=RPF)はルワンダを虐殺から救ってくれたし、カガメに代われる者はいない。みんなが、カガメにもっと大統領を続けてほしいと思っている」(ガット)
中国人から「言論の自由がない」と評される国
ルワンダではカガメについて「褒める」以外の評価が許されていないとはいえ、かなり多くの国民が本気でカガメを支持しているのも確かだ。これはピーターやガットのようなエリート層だけに限った話でもない。
ただし、カガメ政権は経済発展以外の分野でもシンガポールや中国を参考にしているらしく、マスメディアを強力に統制し、野党を強力に弾圧している。さらに2015年には、憲法を改正して大統領任期を事実上17年間も延長してしまった。
プロパガンダ雑誌の表紙をかざるポール・カガメ。「ルワンダのCEO」のイメージを損なわないための演出なのだろうが、反政府ゲリラの元リーダーがこれだけスマートに振る舞っているのは驚きだ。
ルワンダの報道統制は凄まじく、中国系の民間シンクタンクが昨年8月に発表したレポート『非洲国家民衆眼中的中国形象—盧旺達(アフリカの国家・民衆から見た中国の姿:ルワンダ)』のなかでも「言論の自由は相対的に制限されている」「(現地メディアは)民衆の真実の感想や視点を反映したりよく伝えたりすることが比較的少ない」という記述がある。中国人が見てすら「言論の自由がない」と感じてしまうほどの国なのである。
従来、欧米各国はルワンダ虐殺への配慮もあってカガメ政権への批判を手加減してきたが、近年はさすがに批判が強まり、ルワンダの対米関係も悪化しつつある。ただ、それゆえに専制体制を気にせずに仲良くしてくれる「大国」の存在は歓迎される。つまり中国のことだ。
CNNによれば、中国は過去12年間でルワンダに4000億ドル(約4兆3900億円)を投資してきた。ルワンダの道路状況は地方を含めてかなり良好だが、こうした国内道路の7割は中国企業の建設によるという。昨年7月、習近平は中国の国家主席としては初めてルワンダを訪問して一帯一路構想への参加を歓迎し、一説には道路建設に1億2600万ドル(約138 億円)規模ともいう融資を決め、さらに病院や新空港の開発でもルワンダ政府と合意に達した。
ルワンダの目覚ましい復興は「アフリカの奇跡」として国際的にも高い評価を得ている。だが、その成功を支えるものは、広い意味での中国モデルの国家体制である。
「虐殺」の後には中国きたる
以前、私は『さいはての中国』(小学館新書)で、カンボジアでの中国の存在感の増大について書いた。かつて内戦とポル・ポトの虐殺を経験したカンボジアは、1990年代前半にUNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)をはじめとした国際社会の支援のもとで議会制民主主義が導入されて国家を再スタートさせたが、近年は中国の強い影響化に置かれるようになった。
現在、カンボジアは急速な経済発展で投資家の注目を浴びるいっぽう、与党が国民議会の全議席を独占するなど、フン・セン首相の独裁体制が固められている。フン・センと中国の関係は強固で、カンボジア国家は、中国からの多額の借款を受け入れている。ASEANの会議などで南シナ海の領土問題が持ち出された際に、カンボジアが必ず中国を支持する光景もすでにお馴染みだ。
虐殺の後には中国きたる――。この構図はカンボジアのみならず、ルワンダもまた同様だ。
米中対立の激化が進むなか、今年5月12日付けのAFP(日本語版)は、フランス国際関係研究所のアリス・エクマン氏の見解を引用する形で、世界の各国が米中のいずれの勢力に属するかの選択を突きつけられる時代の到来を予告している。中国に「新冷戦」を本気で戦い抜く覚悟と体力があるかは不明だが、近年の中国の国際的プレゼンスの拡大を受けて、第三世界の諸国のなかには、かつての毛沢東時代さながらに中国側へなびく国が出てきている。
ルワンダをめぐってはかつて冷戦下の1960年代に、西側寄り(フランス寄り)のフツ系政権を牽制する目的から、複数のツチ系反政府勢力がソ連や中国の支援を受けていた歴史がある。現在の中国とツチ系のカガメ政権との関係は、半世紀前の共闘の構図が新冷戦の時代に装いを変えて復活したもの、という見方もできるだろう。
アフリカで中国を探す私の旅は、まだ始まったばかりである。
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archibeambibibibibi · 6 years ago
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8年前のきょう
支離滅裂になると思うけど、書いていくぜ
8年前のきょう
僕は大学入試の後期試験の下見のために千葉大学に向かっていた。あの日、3月11日は後期試験の前日だった。電車に乗っていた僕は、翌日の試験のことで頭がいっぱいで、どんな問題が出るんだろうとか、朝ちゃんと起きれるだろうかとか、予約したホテルが喫煙ルームで臭かったら嫌だなとか、いろんなことを、だけどどれも情けないくらいに本当に自分のことだけを、ぐるぐると考えていた。
地震が起こった時、まさに電車は走っていた。車内は確か、それほど混んではいなかったけれど、座席は埋まっていて、立っている人もちらほら居た。
電車は大きく揺れた。何が起こったかはわからなかった。即座に、脱線かと思った。本当に倒れるんじゃないか、このままのスピードでどこかにぶつかるんじゃないか、というような、今まで電車に乗っていて感じたことのない揺れだった。直後にブレーキがかかり、電車は緊急停車した。
僕も、周囲の乗客たちも怪我はないようだったが、体にぎゅっと力を入れているように見えた。電車は止まったが、揺れていた。あ、地震なんだ。揺れは長く続いた。
「安全確認のため、しばらく停車します、お待ちください。危険ですので、電車の外には絶対に出ないでください」というニュアンスのアナウンスが流れた。
特にパニックが起こることもなく、電車の中は落ち着いていた。
当時はまだみんなガラケーを持っていた。車内の気を利かせた誰かが、わざと音量を最大にしてワンセグをつけ始め��。地震の報道が聞こえてきて、震源が東北であることを知る。地震の規模がとても大きいという報道も聞こえてきて、岩手にいる家族のことが気になった。
家族とは、もし何か災害が起きたら、集合しようと冗談混じりで決めてあった公園があった。西公園という家の近くの公園である。2000年代に、岩手山の火山活動が活発化しているという報道があったあたりに決めたのであろう。しかし千葉県から岩手県盛岡市の西公園までは遠すぎる。
父から、母と祖母は無事であるというメールが来た。よかった。そして、岩手は被害が大きいこと、父は職場に行って生徒を守らなければならないということ、だから、父は一関、母は盛岡、兄は埼玉、僕は千葉、家族は今バラバラだけど、無事である。特になおやは、知らない土地で、しかも入試の前日で、色々どうなるかわからなくて不安だろうけど、それぞれの地で、自分で頑張るべし、という連絡が来て、僕は、なんだか笑ってしまったのを覚えている。
あの時はまだ、その地震や津波の甚大な被害は、千葉の電車で、しかも、パケホーダイでもないからネットもほとんど見ていなかったし、バッテリーがなくなることを恐れて、ワンセグも見ていなかった僕は、何も知らなかった。ただ、少し聞こえてくる誰かのワンセグの音声を聞きながら、電車が再び動き出すのを待っていた。きっと30分もすれば動くだろうと思っていた。
だけど電車は動かなかった。
全然動かない。立っていた人たちも、しゃがんだり、座ったりしていた。電車が動く気配がない。みんな疲れ始めていた。
1時間、か、2時間ほど経ってからだろうか、車内アナウンスが流れた。
線路の安全確認が取れないので、電車から降りるというものだった。
まじかよ〜と思った。この時もまだ、状況が把握できていないので、僕は今日ちゃんとホテルにつけるかな〜とか、そんな心配ばかりしていた。
しばらくして、車掌さんが僕の乗っていた車両にきて、案内を始めた。ぞろぞろと隣の車両に歩いて行くと、本当にドアが開いていて、そこにハシゴのようなものがかけられており、ゆっくりとひとりずつ乗客が降ろされていた。
僕も後に続いて、電車を降りた。線路だった。うおー線路だ、と思った。どこに向かっているかわからないが、前の人に続いて、何分か線路を歩いた。このまま線路を歩いてどこかの駅まで行くのかと思ったら、線路横の階段を降りて行くと、地上に出た。普段は鍵がかけられている階段なのだろう。こういう通路があるのだな、と感心しながら、そして、僕は今どこにいるんだろうと、思った。
周りにもたくさん人がいて、なぜかわからないけれど、みんな同じ方向に歩いて行くので、それについていくことにした。土地勘がないし、今のようにスマホも持っていないから、本当にどこにいるのかもわからなかったけれど、きっと最寄りに駅に向かっているのだろうと思った。
何駅だったのだろう。予想通り、駅に着いた。とんでもない人だかりになっていた。そこまで大きくない駅なのに、駅の前のバスプールまで、人でごった返していた。おそらく、近隣を走っていた電車を降りさせられた人々や、近くの店に買い物に来た人々、駅に止まっていた電車に乗っていた人々、誰もが、バスやタクシーや、情報や、何かを求めて、みんな駅にいた。みんな安心するどこかへ向かいたかったんだと思う。
その時、驚くべきことが起きた。スクランブル’交差点のごとく人々が行き交う中で、同じ高校の1年生の時のクラスメイトを見つけたのである。
遠くから大声で呼んだ。彼はすぐに気がついて、僕の方を見た。
話をすると、彼も翌日に同じ千葉大学の後期試験を受けるという。3年生では、クラスが違ったので知らなかった。知っている人に偶然あえて、嬉しかった。
今冷静に考えれば、あそこまで非常事態になり、電車が止まっていれば、後期試験が普通に行われるわけがなかった。だけど、僕たちは動揺していたし、情報がなかった。
僕の予約しているホテルは、歩くには遠すぎる。クラスメイトのお父さんは、当時偶然千葉に単身赴任をしていて、そのお父さんの家なら、タクシーを捕まえればいけるかもしれない、という状況であることがわかった。しかし、タクシーは捕まらず、もし乗れたとしても、道路は狂ったように混んでいて、それも良策なのかはわからなかった。どうしたものかと二人で困っていると、一人のお兄さんが声をかけてくれた。
キャップをかぶり、大きな布のカバンを持っている。困り果てた田舎の二人の高校生が突っ立っているので、見かねて声をかけてくれたとのことだった。すると、お兄さんは、近くの避難所に行くという。僕たちの状況を話すと、クラスメイトのお父さんの家も、歩くには遠すぎるし、車も、つけるかわからない、そもそもお父さんと連絡がついていなかったので、一緒に避難所に行こうということになった。
お兄さんは、大きなカバンを持っていて、とても大変そうだった。僕は中身はなんなのかを聞いた。
お兄さんは言った「義手ってわかる?」
お兄さんは義肢装具士だった。カバンの中には作ったり、直したりしている大切な義手が入っているという。
僕らは、岩手県の高校生であること、そして、二人とも、前期試験に落ち、明日が後期試験であることなどを話した。
そうかそうかとお兄さんは優しく話を聞いてくれた。周りにもたくさん歩いている人がいた。30分ほどだろうか、歩くと避難所についた。
お兄さんは、知り合いにあったらすぐに今度は義手を届けに病院まで歩くという。頑張ってね、と言われて、握手をした。そして、お兄さんは、きっと必要になると思うから、もっとけ、と言って、数千円を僕たちに渡して来た。受け取れません、お金は持ってるので、大丈夫です、と断った。お兄さんは、「俺は千葉に住んでるから気合で歩いて帰れるけど、もしかしたら君達は、何日も岩手に帰れないかもしれない、そしたら、お金がかかるから、とにかく、もっとけ、いいから」と言って、お金を無理やり僕たちに握らせた後、大きなカバンを持って、すぐにいなくなってしまった。
なんてかっこいい人なんだろうと、思った。今これを書くまで、あのお兄さんのことは忘れていた。けれど、どんどん思い出して来た。クラスメイトと、このお金は、大事に使おうと、話して、避難所に入った。
気づけば、夜になっていた。
電車に閉じ込められていた時間も長かったし、そのあとも結構歩いていたのだなと思った。避難所は、小さな階段状のホールが付いている文化センターのようなところで、人間がたくさんいた。みんな不安そうな表情をして座っていた。ベンチも廊下も、人がたくさん座っていた。
本当に大変な規模なんだな、と避難所を見て実感した。
避難所の廊下ではテレビが置かれ、ニュースが沿岸部の工場が津波をかぶり、爆発した様子を報道していた。津波の映像も流れていた。世界が終わるのかと思った。自分の地元は盛岡で、内陸とはいえ、岩手はどうなっているのか、とても心配になった。高校の友人や先輩の何人かの地元は岩手の沿岸部だった。知り合いの誰かが、巻き込まれていてもおかしくないということを知った。
交通機関が止まってしまい、家に帰れない人がとにかくたくさんいるのだと思った。今考えるとあほなのだが、そこで僕は、その日予約していたホテルに、たどり着けないということを悟り、ホテルにキャンセルの電話をしなきゃ!と思った。ケータイの充電も貴重だというのに、ホテルに電話をしたら、奇跡的につながった。事情を話すと、非常時なので、キャンセル代もかからないし、空き部屋もあるので、もし、ホテルに来れたら、泊まってもいいと言われた。
そういう対応になるものなのか、と感心して、避難所をウロウロした。いい感じに休めそうなスペースは、もうなかった。困っていると、ホールが解放されたとのこと。ホールの座席にとりあえず座った。数百席はあるだろうホール。どんどん席は埋まっていくが、ステージの明かりはついておらず、当たり前だが、なんの演目も始まらないホール。泣いている赤ちゃんの声だけが響いていて、どっしりとした不安感があった。僕たちは、二人でいたので、席を確保したまま、荷物を一人に預け、トイレに行ったりコンビニに行って見たりした。コンビニはすっからかんで、何もなかった。避難所では、非常食と毛布が配られていたが、子供と妊婦さんが優先されており、それも数が足りないとのことだったので、僕たちはもらいにいかないで、コートにくるまって、ホールの座席に座っていた。
翌日の後期試験が気がかりだった。交通機関が止まっていれば、延期になるはずだと、今では思うが、というか、その時も思ってはいたが、数十分おきにケータイで大学のホームページをチェックしても、延期という情報は出ていなかった。千葉大学、やるのかよ?は?いいから早く延期というお知らせを出してくれよと、クラスメイトの祈りながら何度もチェックした。
兄からもメールがきた。他のいくつかの首都圏の大学は、試験の延期の情報がホームページ出ているが、千葉大学は出ていない、と、兄は知らせてくれた。まじかよ。
そのうちに、ケータイの充電も無くなってしまった。
もし、明日の朝、電車が動き始めたら、後期試験は行われるのだろうか。そればかりが気がかりだった。そのうちに、翌日から電車が復旧するという情報が避難所にも届いていた。やっぱり、東北が被害が大きいけれど、関東はすぐに普段通りの日常に戻るのかもしれない、そう思った。明日は早起きして、電車に乗ろう、そして入試会場に向かおう、と決めた。不安と、緊張と、心配と、いろいろと、ホールの赤ちゃんの泣き声。全く眠れるわけもなく、朝を迎えた。
本当に今思えば、試験があるはずもないのだが、僕たちは気合で最寄駅へと向かった。駅は再び大混雑していた。生まれて初めての満員電車は、本当に満員で、ぎゅうぎゅう詰めだった。動き始めた時間は通常の始発よりもだいぶ遅く、しかも、安全確保のために通常よりも遅い速度で電車は動いていた。
なんとか窒息せずに、大学の最寄り駅に着いた。時計を見ると試験時間の開始数分前だった。やばい!友達とダッシュして改札に向かった。改札の向こうには、千葉大学後期日程試験、延期のお知らせという張り紙が大きく貼られていた。来る意味なかった。
あ、お父さん!
いや、来た意味はあった。千葉で単身赴任をしているという、友達のお父さんが、僕たちの行動を読んで、改札で待ってくれていたのである。ケータイの充電も二人とも切れてしまっていたから本当に助かった。
友達のお父さんは、初めて会う僕のことも車に乗せてくれて、お父さんの部屋に連れて行ってくれた。大変だったね、と言われた。大変だったけど、東北の人のことを思うと、僕たちは、大変とは思えず、なんと言って良いのかわからなかった。
家に着くと、朝、握っておいてくれたというおにぎりを食べさせてくれた。うまかった。そういえば、昨日のお昼の後、何も食べていなかった。
そしてシャワーも借りた。スウェットも借りた。とにかくお礼を言った。そして充電させてもらった。
3人でテレビを見ながら、僕と友達は、状況もよくわかっていなかったので、友達のお父さんから、関東は電車が動き始めていること、だけど、岩手にはすぐは戻れないことなどを教えてくれた。そして大学入試もすぐには行われないだろうという話とかをした。
だからしばらくここにいてもいいよと言ってもらった。ありがたかった。
ケータイを見ると、兄からメールが来ていた。
兄に電話をした。兄は埼玉で学生をやっていた。兄は、そこからなら、もう電車が動いているから、早くうちに来いと言った。
確かに、いつまでも友達のお父さんに面倒を見てもらうわけにもいかないし、兄のところの方が、僕も落ち着くだろうと思い、そのことを友達のお父さんに話した。すると、すぐに、じゃあ近くの駅まで送っていってあげると言われ、駅まで送ってくださった。
くれぐれもきをつけて、とお互い、話をして、友達と、そのお父さんと別れた。
僕は兄の住む埼玉へと向かった。
(続く)
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negipo-ss · 6 years ago
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焼きそばハロウィンはいかにして無敵のアイドルになったのか(1)
 糸のように少しだけ開いたカーテンの隙間から朝陽が差していた。三角形に切り取られたやわらかな光の中を、田園を飛ぶ数匹の蛍のようにきれぎれの曲線を描いて埃が舞っていた。深い紫陽花色をしたチェック柄のミニスカートが、まっすぐにアイロンを当てられたシャツ、左右が完全に揃えられた赤いリボンとともに壁にかけられていて、部屋の主である女子高校生の内面を強いメッセージが込められた絵画のように表していた。  最も速い蒸気機関車が、そのペースをまったく乱されることなく東海道を走り続けていたように、その子どもがアスファルトを踏みしめるスニーカーのちいさな足音は正確に一分間当たり百六十回をキープしていた。それは彼女が小さなころから訓練に訓練を重ねてきた人間であることを示していた。太陽が地面に落とす影はすでに硬くなり、朝に鳴く鳥の歓びがその住宅地の道路には満ちていた。はっはっ、という歯切れ良い呼気が少女の胸から二酸化炭素と暖かさを奪っていった。  白いジャージに包まれたしなやかな身体は、湖面の近くを水平に飛ぶ巨大な鳥のそれに似ていた。ベースボールキャップからちらちらと見え隠れする桃色の髪がたった今自由になれば、相当に人目を引くほど美しくたなびいただろう。  ちら、とベビージーを見た視線が「ヤバイ」と言う言葉を引き出して、BPMが百七十に上がった。冷えた秋の空気が肺胞をちくちくと刺すようになったにもかかわらず、彼女の足取りは軽やかなままだった。そのままペースを落とさずに簡素な作りの階段をタンタンタンとリズム良く駆け上がりながら、背負っていた黄色のリュックサックからきらびやかなキーチェーンに取り付けられた部屋の鍵を取り出した。  かちゃり、と軽い音でドアが開いた。 「ヤバイってえ……」  靴が脱ぎ捨てられ、廊下を兼ねたキッチンの冷蔵庫が開かれると同時に、がっちゃんと重々しくドアは閉まった。その家の冷蔵庫は独身者向けの小さなサイズのそれで、天板に溜まった微かな埃が家主の忙しさを示していた。リュックから取り出された小さなタッパーを二つ、彼女は大事そうに冷蔵庫の中段に入れた。若干乱暴にそれが閉められた後、その場には一息に服が下着ごと脱ぎ捨てられた。浴室に荒々しく躍り込むと、曇りガラスの裏側でごろ、と音が響いて、洗い場の椅子が乱雑に蹴り退けられたようだった。  水が身体に跳ね返って飛び散り続ける音は短かった。男子高校生並のスピードでシャワーを終えて素早く黄色のトレーニングウェアに着替えると、彼女は強力なドライヤーで頭を乾かしながら鏡を睨みつけた。凄まじい早さで顔を直し、部屋の隅に立てかけてあったドラムバッグを一度だけひょいっと跳んで深くかけ直すと、小上がりに鎮座していたゴミ袋を掴んで「いってきます!」と誰もいない部屋に叫んだ。  キャップから出された、揺れるポニーテール。土曜日の早朝を走り抜けてゆく足音をゴミ収集車のビープ音だけが追っていた。  少女の部屋には静けさが戻る。
 地下鉄の駅を出ると、人混みをすいすいとくぐってきつい坂を下っていった。途中にある寺の横を小さく一礼して通り過ぎ、降りきった先の人通りの少ない路地を抜けていくと、やがてダンススタジオのちいさな立て看板が見えた。軽い足取りで一番下までたどり着き、ふう、と軽く息を吐く。耳から完全ワイヤレスのイヤホンを引き抜いてポケットに突っ込み、「ごめん!」と、笑顔を浮かべたまま身体全体で重い扉を勢いよく開いた。  小さな子どもたちが彼女の頭上を通り過ぎる笑い声と一緒に、白い光が斜めに入り込んで、暗い床を小さく照らしていた。彼女の瞳は、誰の姿も捉えない。 「……あれ?」 「あれ、じゃない」  ばこん、と、現れた女性に横からファイルで強く頭を叩かれ、彼女は悶絶して頭を抱え座り込んだ。 「城ヶ崎……集合時間は何時だ?」  く〜、と唸り声を上げた美嘉は、しばらくしてから「九時」と涙声で言った。 「今は何時?」 「八時五十八分、に、なったところです」 「正解だ。じゃあな、私はデートに行ってくる」 「ちょ、っと。トレーナー!」  美嘉はトレーナーの服を掴んで、「え」と言ったあと「……冗談、ですよね」と半笑いの顔を作って聞いた。上から下までトレーナーの服装を見て、それがいつもの緑色のウェアとは似ても似つかぬ、落ち着いた色合いの秋物であることに気づく。 「失礼だな、私にも急なデートの相手ぐらいいるよ。年収五百五十��、二十九歳、私にはよくわからないのだがシステム系の会社でマネージャーをしている――」  美嘉はうんざりとした顔を浮かべて、 「相手の年収なんて聞いてませんよ。ていうかそうじゃなくて、私たちのレッスンはどうなっちゃうんです?」 「まず第一に、私はいつも五分前行動を君たちに要請している」 「……それは、すみません。朝、用事で家を出るのが遅れてしまって」 「第二に、彼は笑うとえくぼがとてもかわいいんだ。好きな力士は豪栄道」 「彼氏情報はもういいですから……」  豪栄道とトレーナーの共通点を美嘉がまじまじと探していると、「第三に」と言って、トレーナーは指を振った。 「次は三人揃わないとレッスンはしないと、前回宣言したはずだ。案の定だったな」  美嘉は、うわっ、と呻いて「志希のやつ……」とつぶやきながらスマホを取り出して乱暴に操作した。 「先に鷺沢に連絡しろー」と、ヒールを履いたトレーナーは外に出ながら言った。 「あいつ、いつも三十分前に来て長々ストレッチしてるんだ。本番前最後の確認でいきなり無断欠席となると、少し心配したほうがいいかもしれないぞ」  ドアの隙間から微笑んで、「じゃあな」と、一言言うとトレーナーは去った。ぽかんと美嘉は小窓から彼女を見送る。かつ、かつという高い音は、軽やかに去っていった。  おかけになった電話番号は、電源が入っていないか――。  美嘉は携帯から小さく流れる音声を一回りそのままにしてから消し、スタジオの照明をつけないまま日の当たるところへと歩いていった。『い』から『さ』へ大きくスクロールして、窓際であぐらをかく。『鷺沢文香』を押し、耳に当てる。短いスパンで赤いボタンを押す。『鷺沢』赤ボタン。『鷺沢』赤ボタン。『た』にスクロール。 『高垣楓個人事務所』  耳元の小さな呼び出し音を聴きながら「なんで……」と美嘉は呟いた。短いやり取りで、事務員に文香への連絡を頼んだ。 「プロデューサーにも連絡お願いします……いえ、アタシは……はい、残って自主練やります。」  電話を切った後、ふうう、と美嘉は長いため息をついた。一息に立ち上がり、バッグから底の摩耗したダンスシューズを取り出して履くと、イヤホンを耳に押し込んで入念なストレッチを行った。同い年くらいの少女たちが数人、スタジオの横を笑い声を立てながら通り過ぎ、その影が床をすうっと舐めていったが、彼女はそれに目もくれなかった。  床に丁字に貼られたガムテープの、一番左の印に立った。トリオで踊るときのセンターとライト、残りふたつのポジションに一瞬の視線が走り、美嘉は目尻に浮かんだ悔し涙を一瞬親指の背で拭った。 「くそ」  いきなり殴りつけられた人がそうするように、美嘉はしばらく下を向いていた。闘争心を激しく煽る力強いギャングスタ・ラップが彼女の耳の中で終わりを告げ、長い無音のあと、簡素な、少し間抜けと言ってもいい打楽器が正確なリズムで四回音を立てた瞬間、美嘉は満面の笑みを浮かべてさっと顔を上げ、ミラーに映った自分を見つめながら大きく踏み出した。だんっ、と力強くフローリングを踏みしめた一歩の響きは、長い間その部屋に残っていた。
「おはようございます……」と挨拶をしながら、美嘉がその部屋に入っていくと、「あら、めずらしい」とパイプ椅子に座っていた和装の麗人が彼女を見て笑った。その人が白い煙草を咥えているのを見て、美嘉は「火、つけます」と近寄りながら言った。 「プロデューサー、煙草吸うんですね」 「いやですねえ、二人きりのときは楓と呼んでくださいと、このあいだ申し上げたじゃないですか」 「……楓さん、ライター貸してください。アタシ流石に持ってないんで……」  こりこりこり。  煙草が軽い音を立てながら楓の口の中に吸い込まれると、こてん、と緑のボブカットが揺れ、「はい?」と返事が返った。煙草と思っていたそれが菓子だったことが分かって、美嘉はがくりと頭を垂れた。 「ええと、ライターですか……あったかしら……」 「……からかってるんですか?」 「まさかまさか」  楓がココアシガレットの箱を差し出すと、美嘉は「いらないですって……」と顔をしかめて言った。 「今日は、打ち合わせ?」 「はい、次のクールで始まる教育バラエティの……楓さん、ちひろさんから連絡行きましたか」 「はいはい、来ましたよ。文香ちゃん、大丈夫かしら」 「……軽いですね」 「軽くなんか無いですよ」  ついつい、と手の中のスマホが操作され、「私の初プロデュース、かわいい後輩ユニットなんですから、応援ゴーゴー。各所からアイドルを引き抜きまくって、非難ゴーゴー!」と、画面を見せた。『高垣楓プロデュースユニット第一弾! コンビニコラボでデビューミニライブ』と大きく書かれたニュースサイトの画面には、『メンバーは一ノ瀬志希、城ヶ崎美嘉、鷺沢文香』と小見出しがついていた。びきっ、と美嘉の額に音を立てて青筋が現れ、「だったら」と美嘉は言った。 「ほんっと、真面目に仕事してくださいよ! なんなの、『焼きそばハロウィン』っていうユニット名!」 「ええ〜かわいくないですか、焼きハロ」 「ユニット名は頭に残ったら成功なの! ニュース見たら一発で分かるでしょ、記者さんも訳わかんなくなっちゃって、タイトルにも小見出しにも使われてないじゃん! ていうか百歩譲ってハロウィンは分かるとして、焼きそばってどっからきたの!!」 「以前、焼きそばが好きだっておっしゃっていたから……」 「え、そんなこと言ってましたっけ」 「沖縄の撮影に三人で行ったとき、一緒に食べておいしかったーって」 「……あれ、たしかに……はっ、いやいやいや、丸め込まれるところだった。好物をユニット名にしてどうすんの」 「美嘉ちゃんには対案があるんですか?」 「た、対案?」  いきなりプロデューサー業を完全に放棄して頬杖をしながらがさがさとお菓子かごを漁る楓に、美嘉は「対案……」と呟いて顎を触った。は、と思いついて「たとえば、志希がセンターだから、匂いをモチーフに『パフュー(ピー)』とか、あと……秋葉原でイベントやるし、そうだ、三人の年齢とかを合わせちゃって『エーケービー(ピイィー!)』とか、あーもうさっきからピィピィうるさい! なんなんですかそれ!」 「フエラムネですよ。あっ、今の若い子はご存じないですか」 「アッタッシッがっ、しゃべってるときにはちゃんと聞いてよ、アンタが考えろって言ったんでしょ! ていうか文香さんのこと、早く何とかしなさいよ!」 「ははあ」  ごり、と、ラムネを噛み砕くにしては大きい音が楓の口内から立てられた。美嘉は激昂から一瞬で冷めて、口元に小さな怯えを浮かばせた。月と太陽とを両眼に持ったひとはそれらをわずかに細め、もう一つラムネを口の中に放り込んだ。 「焼きハロ、私はリーダーを誰かに頼みましたよね。誰でしたっけ」 「……アタシ、です」  ごり。 「トレーナーさんからも話を聴きましたよ。なんでも志希ちゃんは、初回以来一度もレッスンに現れていないとか」 「あれは! その……志希は、前の事務所のときからずっとそうで……」  ごり。 「ふうん、美嘉ちゃんはそれでいいと思ってるんですね」  楓がゆらりと立ち上がり、美嘉に近寄った。彼女が反射的に一歩大きく下がると、壁が背後に現れて逃げ場が無くなった。フエラムネをひとつ掴み、楓は美嘉の少し薄い唇にそれを触れさせた。真っ赤に染まった耳元にほとんど触れるような位置から、楓の華やかな口元が「開けて」と動いて、美嘉がわずかに開けたそこにはラムネがおしこめられた。ひゅ、と一瞬鳴ったそれに、楓は満足そうに微笑むとテーブルに寄りかかった。「口に含んでもいいですよ��と楓が言った。美嘉は少し涙の浮かんだ目で楓を睨むと、指を使ってそれを口に入れた。 「私は高垣楓ですから」  テーブルを掴んでいる指で、楓はとんとんと天板を裏側から叩いていた。「傷つかないんですよね、残念なことに。何が起きても」とほんとうに少し残念そうに言った。 「だから、あなた方が失敗しても、私は特に何も思わない。たとえばコンビニのコラボレーションが潰れても、私は特に怖くない。少しだけ偉い人に、少しだけ頭を下げて、ああ、だめだったのかあ、と少しだけ感慨に浸るんです。でもあなた方はきっと、違いますよね」  美嘉の口の中で、こり、と音が鳴って、 「……何が言いたいんですか?」 「自信がないの? 美嘉ちゃん」  質問に質問を返されて、しかし美嘉はもうたじろがなかった。「最高のユニットにしてやる」と自分に言い聞かせるように呟くと、「なんです?」と楓は聞き返した。 「何も、問題は、ない。って言ったんですよ」  パン、と楓は手を叩いて、「ああ、よかったあ」と、言った。 「今日はもうてっぺん超えるまでぎっちり収録ですし、困ったなあ、と思ってたんですよね。明日の店頭イベント、よろしくお願いします」と、微塵も困っていない顔で言った。 「文香さんち、いってきます」と宣言し、美嘉はトートを抱え直した。行きかけた彼女は楓に呼び止められて、投げつけられたココアシガレットの箱を片手で受け取った。 「さっきはちょっといじめちゃいましたけれど……」と楓が言葉を区切ると、美嘉は心底嫌そうな顔をして「はあ」と言った。 「ほんとうにどうしようもなくなったら、もうアイドルを続けていられないかもしれないと思ったら、そのときはちゃんと私に声をかけてくださいね。す〜ぱ〜シンデレラぱわ〜でなんとかして差し上げます」 「もう行っていいですか。時間無いので」  恒星のように微笑んで、楓は「どうぞ」と言った。美嘉がドアを開けて出ていくと。入れ替わりにスタッフがやってきて「高垣さん、出番です」と声をかけた。  立ち上がりながら、ふふ、��笑うと、「楽しみだなあ、焼きハロ♫」と楓は呟いた。  だん、だん、と荒々しいワークブーツの足音が廊下に響いていた。「いらないっつってるのに……ていうか、一本しか残ってないじゃん。アタシはゴミ箱かっつうの」と独り言を言いながら、美嘉は箱から煙草を抜いて口に咥えた。空き箱はクシャリと潰されて、バッグへと押し込められた。 「あーっ、くそ!」  叫んで、ココアシガレットを一息に口の中へと含む。ばり、ばり、ばり、という甲高い音を立て、ひどく顔をしかめた美嘉の口の中で、それは粉々に砕けていった。
「すみませーん」  美嘉は三度目の声をかけ、ドアベルをもう一度押した。鷺沢古書店の裏庭にある勝手口は苔むした石畳の先にあり、彼女はそこに至るまでに二度ほど転びかけていた。右手に持っていたドラッグストアの袋を揺らしながら側頭部をぽりぽりとかいて「……やっぱり寝込んでるのかなー」と心配そうに小さな声で呟いたとき、奥から人の気配がして、美嘉の顔はぱっと輝いた。  簡素な鍵を開けたあと、老いた猫が弱々しく鳴くときのような蝶番の音を響かせて、顔をあらわしたのは果たして鷺沢文香だった。「文香さん」と美嘉は喜びを露わにして言った。 「無事でよかったー! なんだ、元気そうじゃん」  美嘉は鷺沢のようすを上から下まで確かめた。ふわりとしたロングスカートに、肌を見せない濃紺のトップス。事務所でも何度か見たことのあるチェックのストールは、青い石のあしらわれた銀色のピンで留められていた。普段と変わらぬ格好とは裏腹に、前髪の奥の表情がいつになく固い事に気づいて、美嘉は「……文香さん?」と聞いた。 「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」と、文香は頭を深々と下げた。  どこか寒々しい予感に襲われ、美嘉は「あ……」と、不安の滲む声を漏らした。はっとすべてを消し去り、いつもの調子に戻して、 「今日のレッスン? もういいっていいって。連絡が無かったのはだーいぶあれだったけど、ま、志希のせいで無断欠席には慣れちゃったっていうか、慣れさせられたっていうか――」 「そうでは、なくて……」  文香は言葉に詰まった。合わない視線はゆらりと揺れて、隣家で咲き誇るケイトウの花を差していた。燃え盛る炎のように艶やかなそれを見ながら「アイドルを、やめようと思います」と彼女はゆっくりと言った。がっと両腕を掴まれて、文香は目の前で自らの内側を激しく覗き込もうとする黄金の瞳に眼差しを向けた。 「なんで!!」  美嘉が叫ぶと、文香はふら、と揺れた。陽が陰り、そこからはあらゆる光が消えた。産まれた冷気を避けるかのように、ち、ち、と小鳥が悲鳴を上げながら庭から去っていった。 「向いて、いないと、思いました」と、苦しそうに彼女は言った。 「突然で、ほんとうに、申し訳ありません……楓さんには、後ほど、きちんとお詫びをしようと――」 「嘘」 「……嘘では、ありません。自分が、古めかしい本にでもしがみついているのがふさわしい、惨めな人間――けだもの、虫の一匹だと、あらためて思い知ったのです」 「何があったの、だって」  美嘉は文香から一歩離れると、心の底から悲しそうな表情を浮かべた。 「あんなに……嬉しい、嬉しいって、新しいことを発見したって、何度も何度も言ってたのに!」 「間違いでした」 「何があったんだってアタシは聞いてるの!」 「もともと何も無かったんです!」  文香がこれまで聞いたこともないような大声を出したので、美嘉は呆然と立ちすくんだ。「すべてがまぼろしだったのです! ステージの上の、押し寄せる波のように偉大なあの輝きも!」と文香は一息に言って、興奮を抑えるようにしばらく肩で息をしながら美嘉を見つめていた。やがて、「まぼろしだったのです、あの胸の、高鳴りも……」と、悄然として言った。 「……なぜ」と美嘉は言った。その反転がなぜ起きたのか理解できないようすで、美嘉はただ文香を睨みつけて質問を繰り返した。  長い沈黙のあとに、「家に、呼び戻されました」と文香は言った。美嘉は唖然として「どういうこと」と聞いた。 「親の同意がないままアイドルをやってたから、やめろって言われたって、そういうことなの?」  文香はうなずいた。 「未成年者は保護者の同意書提出があるはずじゃん」 「あれは、東京の叔父に書いてもらいました」 「……だって、大学だってあるし、文香さんトーダイでしょ。そういうの、全部捨てて、帰ってこいって言う……そういうことなの?」 「そうです」 「そんなの、家族じゃない」  美嘉が断固とした調子で言うと、文香は口を一文字に結んだ。そのようすを見ながら「家族じゃない、おかしいよ」と美嘉は言った。 「だって、アイドルも、学校も、全部夢じゃん。自分が将来こうなりたいっていうのを、文香さん自分の全部を賭けて頑張ってたじゃん。アタシずっと見てたよ。すごいな、ほんとうにすごいなって、思ってたよ。ねえ」  文香の瞳をまっすぐに見つめて、美嘉は手を差し伸べた。 「全部捨てる必要なんてない、大丈夫だから」  青い海のようなそれに吸い込まれそうになりながら、美嘉は一瞬の煌めきをそこに見つけて、笑いかけた。文香が恐る恐るといった様子で、ゆっくりとその手を取ったとき、微笑みを浮かべた彼女の口元は「そう……分からず屋の家族なんて、捨ててしまえば――」と囁いた。「う」と小さな悲鳴を上げて、文香は手を振りほどくと、どん、と彼女の肩を両手で押し、庭土へと倒した。あっ、と倒れ込んだ美嘉は、文香を見上げ、「美嘉さんは、鷺沢の家を知らないんです!」と、文香が絶叫するのを聞いた。美嘉の眉はみるみるうちにへの字に曲がって、 「知らないよそんなの! アタシに分かるわけないじゃん!!」  ぐ、と文香の喉は、嗚咽するような音を立てて、やがて、ふううと長い息が吐かれた。 「……さようなら」と、短い別れの言葉で、ドアは閉められようとした。「待って!」と美嘉が呼びかけたときにその隙間から見えた、雨をたたえた空のようにまっしろな文香の顔色が、美嘉の目には消えゆく寸前のろうそくのようにしばらく残っていた。
 どさ、と重い音を立てて、その白い袋は金網で作られたゴミ箱へと捨てられた。美嘉はよろめく足取りですぐ横のベンチに向い、腰を下ろした。眼の前には公園に併設された区営のテニスコートがあり、中年の男女が笑いあいながら黄緑色のボールを叩いていた。  美嘉はイヤホンを耳に押し込むと、ボールの動きを目で追うのをやめてうつむいた。両手を祈りの形に組み、親指のつけ根を皺の寄った眉間に押し当てた。受難曲の調べが柔らかく彼女の鼓膜を触り終わったあと、シャッフルされた再生が奇跡のようにあの四回の簡素なリズムを呼び出して、今朝何度もひとりで練習したあの曲が鳴り始めた。美嘉は口をとがらせ、ふ、と微かに息を吐きながら顔を上げた。そしてテニスコートの男女が消え、自分の周りにひとりも人がいなくなったことを見つけた。  空はまっ青に晴れ、柔らかな光が木々の間から美嘉に差していた。そのやさしさをぼうっと受け止めながら、美嘉は立ち上がってゴミ箱から先ほど投げ捨てた袋を拾った。冷えピタやいくつかの薬、体温計を自分のバッグに移し、二つのフルーツゼリーをこと、こと、と静かにベンチの横に置いた。  曲はサビに差し掛かり、いつの間にか美嘉は鼻歌でそれを小さく歌っていた。てんてんと指で指してみかんとぶどうからぶどうを選びとると、蓋を開けてプラスチックのスプーンを突き立てた。  口に入るかどうかわからないくらいの大きさでそれをすくい上げて、飢えた肉食動物のような激しさでがぶりと食いついた。  歌い始めたときにはもうこぼれていた大粒の涙が、収め切れなかったゼリーの汁と一緒におとがいへと伝って、ぽとぽとと太ももに落ちた。  泣くときに必ず漏れるはずの音を、美嘉は少しも立てなかった。涙を拭いすらしなかった。たまに「あぐ」という、ゼリーを口に入れるときに限界まで開いた顎の出す音だけが、緑の葉が擦れるそれと共にそっとあたりに響いていた。食べ終わると同時に曲が終わり、美嘉はイヤホンを引き抜いた。ほうっと息を吐いて、ぐすっと鼻を啜った。涙のあとが消えるまで頬のあたりをハンカチでごしごし擦り、そのまま太ももを拭くと、鏡を出して顔を軽く確認した。  そして、は、と後ろを向く。  ベンチの背越しに伸ばされた腕がゼリーを取って、「これ食べていいやつー?」と聞きながら蓋を開け、返事を待たずにスプーンですくい取った。 「志希」と、呆然と美嘉は言った。 「ん?」と、ゼリーを口いっぱいに頬張りながら志希は言った。
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futoshiota · 3 years ago
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No music, No life. しつこいと言われようが… 第一、結婚や離婚が人生の全てでは無いわけであって、そこにしか価値が見出せないのは実におかしな話だよ…。 青山なんかにいると買い物や食事しながらお互いの持ち物自慢している悲しい女性たちの"何の為の会話なの?"という"友達なのかな君たちは?"と思わざるを得ない光景に限りなく出くわす。たいていが"今着てる・着けてるジュエリーやお洋服、今何となく会ってる彼、大して本気ではない仕事、いつ結婚(している人はそのリアルな生活への愚痴)"のコンビネーション。 そして夜の六本木に出れば(大抵はアニキからの招集時)、隣の宴席ではやれ"年収は、車のブランドは、マンションは、寝たオンナがどう"この4点コンビネーションを話す芸人、俳優、格闘家、実業家、投資家… まあもう君たち同士が最高に似合っているカップルでペアリングしてあげたいがな!笑笑 …と思う事は多々ある。 大概こういうペアの結婚式は男は悪ノリ仲間を呼ぶ。女は祝って欲しい人を呼ぶのではなく見せつけたい人を呼ぶ。 ペアリングといえば、中々これは稀な事で仲間同士の結婚が多かったりもする。 特に畑が基軸の一つにある皆は似たような価値観を持っているんだけど、少し背中を押すと恋愛が進行していく…なんてサマをよく見ている。 もっと広がればいいななどと、余計なお節介を考えない事もない。本気になったら、行動に移した方が良いしね。 子供が欲しいと思っても、遅いという事はある…というのは、結婚したばかりの頃、先輩方の中には一生懸命に働き過ぎて、いつの間にか授かり時を忘れたんだなんて意見を多く聞いたものだ。その度に自分はよく考えた。 果たして何が幸せ��のか… 妻は若い頃にバレエの過酷な減量が原因で子宮がぶっ壊れたことがある、という不安を抱えていた。正直、過去結婚から逃げに逃げまくった自分としては、結婚へと歩を進められる時点で子供はもうその延長線上にしかないと思っていたから、そういう事は気にすんなとしか思わず、伝える事もそれだけであった。 そんな中で子供が産まれてきたのは奇跡的な事だったのかもしれないが、症候群という疾患を抱えて生を受けた。 医師から"成長に障害が出るかもしれない、死ぬかもしれない"と言われたが、正直、ここまでの人生であれほどに何かにビビった事はない。 拳銃を何度か突きつけられた事より、日本刀を首筋や頭に当てられた事より、相手が刃物を振り回して身体が切れたり、金属バットや木刀をブンまわしてきたり、車で轢き殺しに来たのをかわしたり…にちそんな全てより恐怖に震えたのが、娘の病だった。 人生で向き合った最大かつ、最悪の相手であった事は今も書き換えの無い事実だったし、得体の知れない"娘の死"というものは… 奇跡がひっくり返ってしまったような気分だった。 そして、それが事業を通して再びひっくり返すことが出来たのは、本当にすごいなあと改めて思う。 どんなに自分たちが気をつけていても老害やイモの暴走車にハネられて殺されてしまう昨今、いつもの当たり前な光景は、すべて奇跡的なことなのかもしれない。ありふれた日常こそ、幸せなことなのだとね。それは、見せつける必要も、マウントとる必要もないこと。 皆気にすんなよ、バカはバカだよ。 世の中ブタばかりだよ。笑笑 #nomusicnolife #cielo #ありふれた日常 #世の中ブタばかり (Cielo) https://www.instagram.com/p/CZMAec5PIn6/?utm_medium=tumblr
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hummingintherain · 3 years ago
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弱虫ヒーロー
「ぼくがヒーローになるよ」  どんくささが災いし幼稚園でいじめられて涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた私に突然彼女はそう言って手を差し伸べた。  私達にとってヒーローとは日曜の朝にテレビで放送される戦隊物のイメージだった。毎週悪者が出てきて、町を荒らして、人の平和を脅かす。その脅威に立ち向かう戦士達。最終的に爽快な展開になって、子供はみんな憧れて、変身グッズを身に着けてヒーロー気分で跳ね回る。  その時、園内に植えられた巨大な木の陰で私は隠れて泣いていた。室内でおりがみを折ったりおままごとをするのが好きなのに、おそとで遊ぶのも大切だからと先生に連れ出されて、やりたくもないおにごっこに巻き込まれて、案の定さっさと鬼にされて、でも誰に追いつくこともできなくて、からかわれてばかりで、とてもいやな気分になって、悔しさとか惨めさとかに苛まれてしくしくと泣いていた。  私のことなんて忘れて違う遊びに切り替えたから、誰も私を探しには来ず、思う存分泣くことができた。唯一やってきたのが、彼女だった。きらきらとした木漏れ日が当たって、彼女を含めたあらゆる景色がきれいだった。 「まもってくれる?」  私が問いかけると、男の子みたいに髪を短くした彼女は自信満々といったように歯を見せた。 「まかせろよ」  小指が重なり、絡まる。指切りげんまんが交わされて、私たちの間には秘密が生まれた。  それから彼女は私にくっついてくれた。正しくは、私が彼女にくっついていた。  彼女は男の子に負けない体格の良さをしていた。幼児における男女差なんてそんなものだ。彼女は四月生まれで同学年だと一番成長しているはずで、私は翌年三月の早生まれで比較的小さい子供だった。四月生まれと三月生まれではあらゆる点で差が生じる。  彼女は負けん気が強くて、男の子にも果敢に挑んでいった。女の子たちは彼女のことを慕っていた。私は金魚の糞みたいなもので誰の視界にもうまく入らなかっただろうけど、とにもかくにも彼女が味方してくれているだけで私は随分と助けられた。  しかし、その年の三月に彼女は急に園を去ることになった。親の転勤が理由だった。  私にとって世界の終わりと同様だった。  うそつき、と言った。自分勝手に。まもってくれるって、言ったのに。私はあの日、彼女と約束を交わした日よりもずっとかなしい涙を流しながら、彼女にそんなこころない言葉をかけてしまった。ごめん。彼女は本当につらそうに謝った。私もとてもつらかった。彼女と離れることも、彼女が離れてしまった後のことも、あらゆることが不安でつらかった。  それから彼女はこの町を去って、私と彼女の秘密は遠く細く引き延ばされてぷつんと切れてしまった。
 *
 時が経過し、私は地元の公立中学に入学することになった。  私服登校だった小学校と違い、真新しくてぱりぱりしてて固い生地の、制服に袖を通す。私立や少女漫画みたいに可愛いチェックスカートも赤いリボンも無い、ただの紺無地のプリーツスカートにブレザー、リボンもネクタイも無し。ちょっと不満だったけど、身につけてみるとそれだけでお姉さんになったみたいで嬉しくなった。お母さんもお父さんもいたく喜んでくれて、入学式に臨む。  何校かの小学校の学区が複合しているので、元の小学校の友達は勿論、他の小学校の子もたくさん入学してくることになる。幼稚園では手痛くいじめられたが、小学校でなんとか少し持ち直し、友達もできた。中学校はどうか、クラスでうまくやっていけるか、部活はどうするか、勉強は大丈夫か、だとか期待と不安がぐるぐると回転している。  一年三組に組み込まれ、教室の後ろから父母に見守れながら私達は一人ずつ自己紹介をしていった。私はたいてい一番最初の出席番号になる「会澤真実」で、この一番最初という位置にどれほど振り回されてきたか分からない。会澤苗字のお父さんをどれだけ恨んだことか。  先生に呼ばれて、席を立ち上がる。最初がみんなにとっても肝心だということはよくわかる。みんなの視線が集まって、負けそうになる。やばい、吐きそうだ。知っている子を咄嗟に探す。真ん中あたりに小学校の友人がいて、あの子が傍にいてくれたらどれだけ心強かっただろうと思いながらも、彼女が小さく手を振ってくれたのを見てほっとして、なんとか私は噛まずに自己紹介を始める。名前と、出身校と、抱負。無難に終わらせて、ぱらぱらと拍手が起こる。  しばらくは多大な緊張がずっと糸を引いていて、意識が他の子たちの方に向かなかった。じくじくと鳴る心臓がやがて収まってきたころには、さ行までやってきていた。 「清水律」と聞いて、私はふと顔を上げた。どこかで聞き覚えのある音並びだった。立ち上がったのは学ランを纏った、中くらいの背の男子だった。中性的な顔つきで、どちらかというとイケメンな部類に入るような感じがする。しみずりつ、と心の中で繰り返す。なんだろう、このデジャヴ。  淡々と続いていた自己紹介に衝撃が走ったのは、そんな彼が発した次の言葉だった。 「ぼくは性別は女ですが、心は男なので、学校にお願いして男子として生活することにさせていただきました。よろしくお願いします」  教室に薄い困惑が広がった。  そして私は思い至った。どうしてこんなに大事なひとの名前を忘れていたのだろう。  昔、約束を交���した、私にとっての正義のヒーロー。 「りっちゃん」だ。
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「りっちゃん」  つつがなく入学初日を終えて、静かな興奮と動揺の残る教室で、りっちゃんの周りの子たちがいなくなったのを見計らって私は思いきって話しかけた。  りっちゃんはやっぱり学ランを着て、普通の男子とおなじような雰囲気をしている。でもさっき一緒にいた子達は女子だった。多分、同じ小学校の子たちで、友達なのだろう。なんで、とか、聞こえたから、たぶん彼女達もりっちゃんが男子の格好をしていることに驚いたのだろう。心が男だというくらいだから小学校でもボーイッシュな格好をしていたのかもしれないが、女子と男子で明確に見た目が区分される中学校でまで学ランを着てくるとは誰も予想していなかったように窺えた。  はじめりっちゃんは目をぱちくりと瞬かせたけど、ふわっと笑った。 「久しぶり。やっぱりまみちゃんだったんだ」 「うん」  私はどきどきした。なんだかずっと落ち着いた声色に思う。男子は少しずつ声変わりしつつある人も出てきているけれど、りっちゃんは当然ながら男らしい野太い声ではない。むしろ澄んでいる印象があった。なんだか大人っぽい。 「最初名前を聞いて、似てるなあって思ったんだ。思い違いだったら恥ずかしかったんだけどさ」 「私も……いや、最初は、その、名前を聞いてもなかなか思い出せなかったんだけど、りっちゃんが男子の格好をしてますって言った時に、思い出した」 「めっちゃ事細かに教えてくれるじゃん。てか、りっちゃんって懐かしいな」  私はちょっと慌てた。そうか、りっちゃんはりっちゃんだけど、男子として生きているんだとしたら、ちゃん付けは嫌かもしれない。 「小学校ではどう呼ばれていたの?」 「律が多いな。それか清水。こういうのだから、ちゃんとかくんとかややこしくて、呼び捨てが多かったんだ。でも呼びやすいようにしてくれればいいよ。別にりっちゃんでも。男でもちゃん付けのニックネームってあるしさ」  この余裕はどこから生まれてくるんだろう。私はたった少しだけの時間でりっちゃんはやっぱりすごい子なのだと思った。すごいね、と何気なく言うと、りっちゃんは首を傾げた。 「何が?」 「いや、いろんなことが。幼稚園の頃より落ち着いてるし、大人びて見える」 「幼稚園の頃よりは成長してたいわ。流石に」 「そっそうだよね。ごめん」 「いいよ謝らなくたって。まみちゃんはなんか、ちょっときょどきょどした雰囲気は残ってるね。懐かしい」  きょどきょど、という言い方がちょっと可愛いけど、多分良く言われているわけじゃない。 「でも、さっきの自己紹介とかさ、一番で緊張するだろうにちゃんとしててかっこよかったよ」  クラスの子たちに嘗められたりいじめられたりしないようにするには第一印象が何よりも重要だ。りっちゃんにそう言われると、たぶん割と大丈夫だったのだろうとわかり、ほっとする。 「すっごく、あがっちゃったけど」 「うん、緊張感は伝わってきた。女の子はそのくらいの方が可愛らしくていいよ」  りっちゃんはさばさばと笑う。けれど、どうしてもその言い方に引っかかってしまう。 「……あの、りっちゃんの、心は男っていうのは」  思ったよりすらすらと会話が進んだので、私は決意して尋ねてみることにした。 「ああ」りっちゃんはなんてことないように学ランの襟元を摘まむ。「言った通り。いろいろ迷って親や先生方ともよく相談したんだけど、ぼくは自分で着るならブレザーとスカートより学ランとズボン派だっていうだけ」  でも、まみちゃんの制服姿はとても似合ってる、とさらっと褒めてきた。はぐらかされたのだと解った。私は頬がちょっと熱くなるのを感じながら、辛うじて、りっちゃんも学ラン似合ってる、と返した。本当に似合っていた。私もそうだけど、制服に着せられている子ばっかりな中で、りっちゃんはそのぴしっとした制服の頑なさがりっちゃん自身にフィットしていた。 「そうか? 良かった」  ほっと肩の力が少し抜けたのを見て、ああ、涼やかな顔をしてるりっちゃんも緊張してたのだと知る。 「小学校の友達にもちゃんと言ってなかったからさ。皆びっくりしてて。でも、なんとかなるか。堂々としてればいいよな」 「うん」  私は素直に頷いた。  それから簡単に会話を交わして別れた。また明日、と言い合って。  また明日。反芻する。また明日、りっちゃんに会えるのだ。同じ教室で。幼稚園の頃と少し形は違うけれど、あの時永遠の別れみたいにたくさん泣いたのに、奇跡が起こって再会できた。そう考えるとなんだか嬉しくてたまらなくなった。  私は大きくなったりっちゃんの素振りや言葉を思い返す。  先生、だけではなく先生方とつける。果たして、小学校の時、そんな風にさらっと言える人は周りにいただろうか。中学一年生なんて、制服で無理矢理ラベリングされただけで、中身はまだ殆ど小学生みたいなものだ。その些細な気遣いのような言葉の選び方に、私は今のりっちゃんの人間性を垣間見たような気がした。
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 りっちゃんの噂は教室を超えて一年生全体に広がった。  面白半分に様子を見に来る野次馬根性の人もたくさんいた。初めのうちは私の席は入り口から一番近かったので、廊下にたむろしているりっちゃん目当ての人たちの声がよく聞こえた。どれ? あれあれ、あの座ってるやつ、へー、みたいな、好奇心だけが剥き出しになってる言葉が殆どだった。その中には、りっちゃんの元小の子たちもいて、小学校の時もやっぱり男子っぽさはあって、男子にまじってサッカーをしたり、誰にも負けないくらい足が速かったり、その一方で女子ともYouTubeの話をしたり恋バナをしたりしていたらしい、という情報を横耳で仕入れた。  要はクラスの中心人物として立っていた。あれだけ大人っぽかったら、確かに自然と中心になりそうだ。悪い意味ではなく「違う」感じがする。私とは全然違うし、皆とも違う。彼女は少し、違う。あれ、彼女っていうべきなのかな、それとも彼っていうべきなのかな。  たぶん、私が抱いているそういう戸惑いをみんなが持っていた。  そんな皆の戸惑いは素知らぬふうで、りっちゃんは「男子」として中学生活を送っていた。男女一緒くたの陸上部に入部して、毎日放課後に校庭でランニングしているのを見かける。私は小学校の友達に誘われて美術部に入った。絵なんて全然上手じゃないし好きじゃないけど、何かしらの部活には入っておいた方が友達ができると思ったからだ。友達はいるぶんだけ安心する。  実際、美術部は先輩後輩の上下関係も薄くて気が楽だった。プロみたいにびっくりするほど上手い先輩もいれば、幽霊部員もざらにいる。アニメっぽい絵を描いて騒いでる人もいれば、静かに一人で模型造りに没頭している人もいる。みんなそれぞれで自由にしていて、地味さが私にちょうど良かった。新しい友達もできた。  私とりっちゃんは全然違う世界の人だな、というのは、部活に入ってしばらくしてから実感するようになった。  初めのうちはちょくちょくタイミングを見計らって話したけれど、それぞれ友達ができたし、瞬く間に忙しくなった。小学校よりもずっと授業のスピードが早いし宿題は大変。塾に行っている子は更に塾の宿題や授業もあるのだから大変だ。私はらくちんな部類のはずなのに、目眩が起こりそうだった。  それでもたまに話す機会があった。委員会が同じだったからだ。園芸委員会である。だいたいこういう類は人気が無い。毎日の水やりが面倒臭いし花壇いじりは汚れるからだ。私のような地味な人間には似合うが、りっちゃんが立候補するのは意外だった。曰く、植物って癒やされるから、らしい。  校舎に沿うようにして花壇が設けられており、クラス毎に区分されている。定期的に全学年で集会があって、植える花の種類を決める。大体決まり切っているので、すぐに終わる。そして土いじりをして苗を植えて、水やりをする。水やりは曜日を決めて交代でしているので、りっちゃんとゆっくり隣で話すのは土いじりをするときくらいだ。だから、私はそんなに植物が元々好きだったわけじゃないけれど、この時間が結構好きだ。 「暑くなってきたよなあ」  とりっちゃんは腕まくりをして苗を植えながら言った。りっちゃんの腕はあんまり骨張っていないけれど、陸上部の走り込むようになって黒くなりつつあって、健康的な肌をしていた。 「そうだね。そろそろ衣替えだよね」  既に男子は学ランを脱いで、女子はブレザーを脱いでいる。女子はベストを羽織っているひともいるけれど、本格的に暑くなってきたら半袖に切り替わる。 「やだなあ」  りっちゃんは軽い感じで苦笑し、お、みみず、と言って、指先でうねうねうごめくみみずを摘まんだ。私は思わず顔を顰める。 「ええ、きもちわる」 「みみずっていいやつなんだよ。みみずのいる土は栄養分たっぷりってこと。だからここに植えた苗はきれいな花が咲く」 「知ってるけど」私は口を尖らせる。「きもちわるいものはきもちわるい」 「それは仕方ないな」  りっちゃんはおかしそうに笑い、みみずを元の土に返してやる。 「りっちゃんは家でもこういう園芸とか、するの?」  結局私は慣れている「りっちゃん」呼びを続けているけれど、クラスでそういうのは私だけだった。ただ、普段周りがいる中でそう呼ぶのはなんか恥ずかしいし、りっちゃんもちょっと嫌かもしれないから、「清水くん」と使い分けている。 「たまにね。母さんが庭いじり好きだから。雑草取りとかよくやるよ。暑くなるといくら取っても草ぼーぼーになるから、それも嫌だな。嫌いじゃないんだけどさ。植物って何も言わないし、無心になれるというか」 「ふうん」 「まみちゃんはこういうのやらない?」 「全然。うち、マンションだし。でも、委員会でやるようになってちょっと好きになった」 「いいね。まみちゃんはきっと綺麗な花を咲かせる」 「綺麗な花?」 「植物は人の感情を反映させるという噂がある」  りっちゃんは基本的には大人っぽくて男子らしさは確かにあるのだけれど、時々こういう可愛らしいというかロマンチックなことを言う。 「だからおれはいっつも雑な咲かせ方をする」  入学時には「ぼく」を使っていたけれど、五月頃には「おれ」と言うようになった。 「私も自信ない」 「じゃあ三組はみんなより変な花が咲くかもな」  二人して笑った。りっちゃんの冗談は心地良い明るさがあって、話していて楽しい。
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 最初の明らかな違和は、やはりというかなんというか、プールの授業だった。  暑くなってプール開きが示されて、教室にはいろんな声が沸き立った。女子の中には水着姿になるのが嫌だという子もいたし、男子は大体嬉しそうだった。でも三組には他の教室に無い疑問が浮かんでいただろう。  清水律はどうするのだろう。  りっちゃんは普段男子の格好をしているけれど、身体は女だ。だから、当たり前だけど、上半身はだかになる男子の水着姿はたいへんなことになる。かといって、女子のスクール水着を着たら、それはそれでなんだかおかしい感じがする。  トイレは男女共有のバリアフリースペースを使って凌いでいるけれど、こればかりはどうしようもない。陽の下に明らかになってしまうことなのだ。  結論からすると、りっちゃんは一切のプールの授業を休んだ。休んで、レポートを提出した。  プールを休む子は他にもいる。女子も結構休んだりする。女子には生理がある。体育の先生に直接生理だという理由を伝えるのは嫌だけど、お腹が痛いとか言ったら大体通じて休める。明らかに生理休みが長すぎる子は流石に指摘されて、しぶしぶ出たりするけれど。  一方でりっちゃんはずっと休んだ。それを不満げに見ている子もいた。レポートで済むなんて楽だよね、と嫌みったらしく言う子もいる。そんなの、仕方ないじゃんと思うのだけれど。りっちゃんだって休みたくて休んでいるわけじゃないのだ。たぶん。  そういえば、りっちゃんは生理はどうしているのだろう。あんまりにデリカシーが無いから訊けないけど。  生理に限らず、中学生の時期は男女で大きく身体が分かれていく。  女子の生理は小学生高学年から中学生にかけて初潮がやってきて、身体は丸みをおびて、胸がすこしずつ大きくなっていく。男子は、あんまりよくわからないけれど、声変わりして、ちょっとひげが出てきたりする。身体も大きくなってくる。女子も身長はよく伸びるし私も春から夏にかけて二センチくらい伸びたけど、男子は女子の比じゃないという。特に中学校で凄まじい勢いで伸びていって、ごはんの量も半端じゃない。エネルギーの塊、みたいな感じ。  りっちゃんは男子だけど、女子だ。身体は、女子なのだ。  衣替えになって、りっちゃんはひとり長袖のシャツをしていた。私はなんとなくその理由を察した。半袖のシャツは長袖のシャツよりも生地が薄くて、透けやすい。りっちゃんの胸は薄いけれど、たぶん多少は膨らんでいて、ブラだってしている。キャミソールとかタンクトップを上に着て、女子もブラが透けないように気をつけるけれど、りっちゃんはそのものを隠そうとしているのではないか。本人に��訊けないけれど。  そういったことが違和感が表面化してきたのは、夏休みが近くなった頃だった。  花壇に植えた向日葵の背が高くなって、もうじき花開こうという頃である。  他愛も無いからかいのつもりだったのだろう。座って次の授業の準備をしていたりっちゃんの背中を、男子の指が上から下へなぞった。  そうしようとしているのを、私は教室の後ろ側から、美術部の友達で一番仲が良いさきちゃんと会話しながら見ていた。やばい、と直感していた。男子達がそわそわしていて、なにかをりっちゃんに向けてしようとしていると解った。それがなんなのかまでは、会話まで聞こえていなかったから見当がつかなかったけれど、感じの悪いことであることには間違いないと思った。  そしてその指がりっちゃんのきれいな背筋を辿った時、私は思わず息を詰める。  男子が大きな声で、ブラしてる、と興奮なんだか卑下なんだか、宣言した。  りっちゃんは驚いて彼を振り返っていた。その男子のグループは手を叩いて笑っていた。やっぱり「してる」んだ、と謎を解き明かして、ものすごくおかしいことみたいにめちゃくちゃ笑っていた。一連の行為は三組みんなの耳に入っていただろう。  私は凄まじくその男子のことを嫌悪したけれど、りっちゃんの次の行動に、驚いた。  あの大人びて、いつも��やかなりっちゃんが、手を上げた。  がたんと椅子を勢い良く倒して、触れた手をひらひらと揺らしている男子に、殴りかかろうとした。  その顔は、遠くにいても、ものすごく冷たくて、恐ろしかった。怒りというものは振り切れてしまうと烈しい色ではなくもっと静かな色をしているのかもしれないと知った。  りっちゃんの怒りの拳はからぶった。  がん、と固い音。  降り下げられた先は、机だった。木の板が割れるんじゃないかと錯覚するほどの強い音だった。いよいよ教室中の空気が氷点下に下がった。窓の外の油蝉の声がやたらとよく聞こえて、虚しいほどだった。 「……ごめん」  脅える男子を前に俯くりっちゃんはそう呟いて、教室を出て行った。  静まりかえった教室だったが、りっちゃんがいなくなったことでどよめきが起こり始めた。間もなくチャイムが鳴って、先生が入ってきた途端、教室の異様な雰囲気を感じ取って目を丸くする。 「あれ、清水くんは?」  先生がそう言った。なんでそんな蒸し返すようなことをわざわざ尋ねるの、と、先生はなんにも悪くないのに私は強く思った。 「保健室です」  最前列にいる委員長がそう言って適当にやりすごした。  結局りっちゃんはその後教室に戻ってこなかった。翌日の学校を休んで週末を挟み、月曜からはまた学校にきた。私はほっと胸を撫で下ろした。りっちゃんはいつもと同じ涼しげな顔をして挨拶をした。クラスの反応はそれぞれだった。私みたいに安心していつも通りみたいな挨拶を返す子もいれば、ぎこちない子もやっぱりいて、そしてひそひそ話をする子もいた。  嫌な予感がした。  しかし、幸いというのかなんなのか、間もなく一学期が終わろうとしていた。  私は、夏休みを挟んで、この事件が生み出したこわばりが薄まることを、切に願った。
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 夏休み。  美術部は自由登校だ。一応コンクールはあるけれど、締め切りにさえ間に合えばあとはどうだっていい。  私はそれでも学校に来ていた。絵はそんなに好きじゃなかったけど、塾も無いし、やることがあんまりなかったから、なんとなく向日葵に水やりをしにきた。ひんやりとクーラーがよく利いた美術室で一休みしている間に、静まりかえった校舎にブラスバンドの練習している音が響く。同じ学校なのに、普段のせわしなさが無くて異世界みたいだった。こののんびりとした静けさは、いいな、と思う。ずっとこのくらい優しい時間が流れていればいい。  私はスケッチブックを脇に、ペンケースを片手に、花壇の方へ向かった。途中で青のじょうろを手に取り、水を入れる。日光に当てられているせいか最初は熱湯が出てきて驚いた。こんなに熱くては向日葵の根に悪そうで、充分冷たくなってからたっぷりと補給する。  たぷんたぷんと重たく跳ねる水。ときどきはみ出して、乾いた校庭にしみをつくる。  花壇側は影がほとんど無かったが、花壇の後ろの数段の階段部分、つまり一階の教室に直接通じる部分はぎりぎり黒い影になっていた。花壇から校庭側に目を向ければ入道雲が光り輝く夏の青空が広がり、とんでもない直射日光の下で運動部が練習している。サッカー部と、それに陸上部もいる。思わずりっちゃんを探したけれど、見当たらなくてちょっと残念だった。りっちゃんは高跳びをやるようになっていていた。助走をつけた直後の一瞬の筋肉の収縮と跳ね返り、そして跳んだ瞬間の弛緩した雰囲気、全身をバネにしてポールを越える刹那に懸ける感じが、きれいで、りっちゃんにぴったりだった。私はこっそり練習を遠目に見かけてスケッチブックに描いてみたけれど、あまりに下手すぎてお蔵入りだ。人体は難しい。  そうしてぽんやりと歩いて行くと、三組の花壇の前には思わぬ先客がいた。 「りっちゃん?」  声をあげると、りっちゃんが顔をあげた。その手には緑のじょうろを携えていた。 「あ、おはよう」  あまりに普通に挨拶された。慌てて挨拶を返す。 「すごい。夏休みなのに水やりしにきたのか。あ、部活か。美術部って夏休みもあるんだな」  りっちゃんはスケッチブックに視線を遣った。その中にはりっちゃんの跳ぶ瞬間を描いた下手くそな絵もあるので、慌てて後ろ手に隠した。 「りっちゃんこそ。というか、りっちゃんの方こそ部活は?」  まさに、陸上部がすぐそこで練習に励んでいる。えいえい、おー、だとか、かけ声を出しながら、走り込みをしている。  真夏のまばゆい陽に照らされて、りっちゃんは少しさみしげに笑った。りっちゃんに特有の大人っぽさに切なさが加わって、私はたったそれだけで胸が摑まれた。 「辞めたんだ」  咄嗟に、耳を疑った。  蝉の声がじんと大きくなる。 「辞めた?」 「ああ」 「陸上部を?」 「ああ」  私は信じられなくて、一瞬目の前がくらっとした。  真面目に頑張っていて、りっちゃんは楽しそうだった。身体を動かすのが好きで、小学校でだってスポーツが得意で男子にも負けなかったくらいだったという。足だって速かったという。実際、りっちゃんの足は速い。体育で私はそれをまざまざと見て、本当に、本当の男子にも負けていなくて、びっくりしたし、かっこよかった。 「なんで?」  蝉が近くでうるさく鳴いて、風を掻き回している。 「言わなきゃ駄目?」  りっちゃんは薄く笑った。なんでもあけっぴろげにしてくれるりっちゃんが見せた小さな拒絶だった。ショックを受けていると、りっちゃんは嘘だよ、と撤回した。 「陸上って、まあ、スポーツって全般的にそうだけど、男女で種目が分かれてるだろ」 「……うん」  どんくさいくせに、私はもうなんだか道筋が見えて、理由を訊いた自分がいかに無知で馬鹿か自覚することになった。 「どっちがいいのか、結構揉めてさ。そりゃ、身体は女子だから、身体を考えると女子になる。でもおれは男子でいたいから、男子で出場したいんだけど、なかなかそうはいかないんだとさ。ほら、戸籍とか学校の登録では女だから。おれ、格好が男なだけなんだよな。それに、やっぱり先輩とか見てるとそのうち絶対本物の男子とは差が出てくるんだよな。それってどうしようもないことだしさ。今はおれの方が成績良くても、そのうちあいつらは軽々と俺ができないバーを越えていくようになる。てか、今、おれが高く跳べるとか、速く走れるっていうのも、どうもあんまり良くないみたいでさ。実力主義って言って割り切れたらいいんだけど、どうもそういうわけにはいかないらしい。運動部って上下関係厳しいしさ。腫れ物扱いっていうかさ。なんかあらゆることが面倒臭くなって、そもそもおれの存在自体が面倒臭いんだって気付いて、辞めちゃった」  一気に言い切って、あはは、とりっちゃんは空虚に笑い飛ばした。あまりに中身が無い笑い方だった。  私は自分が立っている地面の堅さを意識しなければ、自分が立っているかどうかの認識すら危うかった。 「おれも美術部に入ろうかなあ」  などと、絶対に本心からではないことを言った。 「絵が下手でもやれる?」  りっちゃんの顔がにじむ。 「壊滅的に下手だから、美術部は流石に無理か」  また、からからと笑った。あはは、からから、表面だけの心にもない笑い方。 「……まみちゃん」  りっちゃんが驚いた顔をして、近付いてくる。 「なんで泣いてるんだ?」  私はまたたいた。いっぱいになった瞳から、堪えきれず涙が溢れて頬を伝った。 「ええ、どうした。なんかおれまずいこと言った?」  慌てて引き笑いをするりっちゃんの顔をしっかりと見ることができない。私は咄嗟に首を横に振り、嗚咽した。ほんとに、なんで泣いてるんだろ。私がどうして泣いているのだろう。  水の入ったじょうろが指から滑り落ちた。水が派手に跳ねて、じょうろは横倒れになって、乾いた地面に水溜まりが広がっていく。  空いた手で私は涙を拭く。肌で拭ったところで全然止まらなくて、スカートのポケットを探る。そうして今日に限ってハンカチを忘れたことに気が付いた。美術室に戻れば鞄の中にタオルがあるけれど、戻る余裕が無かった。私はじっと静かに泣いた。  やがて、りっちゃんから、黙って、青いハンカチが差し出された。  綺麗な無地のハンカチ。私は最初断ろうとしたけど、りっちゃんは自然なそぶりでそのハンカチで私の頬を拭った。このさりげなく出来てしまうりっちゃんの大人びた優しさが、いいところだ。やわらかな綿の生地が触れて、群青のしみが広がっていく。私は諦めて受け取り、自分で目頭に当てた。ついでに鼻水まで出てきて、ハンカチは申し訳ないくらい私の涙と鼻水をたっぷり吸い込んでしまった。りっちゃんは何も言わなかった。静かに待ってくれた。私は、頭が真っ白になりながら、頭のどこかで、この二人向かい合っている状況が誰の目にも入らなければいいと思った。りっちゃんも、私も、ややこしいなにかに巻き込まれないように。でも、隣のグラウンドではたくさんの生徒がいる。校舎内ではブラスバンド部が練習している。こんなところ、誰の目にも触れない方が無理だ。こんな時までそんなことを考える私は、最低だ。 「思い過ごしかもしれないけど」  私の嗚咽がピークを迎えてやや落ち着いてきた頃、りっちゃんは静かに滑り込むように呟く。 「まみちゃんが考えているよりおれは平気だから、大丈夫だよ」  嘘だ。  私は充血した目をハンカチから覗かせて、りっちゃんの顔を見上げた。女性的でも男性的でもある、きれいなりっちゃんの顔。りっちゃんは笑っていた。愛想笑いだった。  ほら、やっぱり嘘だよ。 「りっちゃんらしくないよ」  私はどう言ったらいいのか解らなくて、ようやく絞り出したのは、その言葉だった。  りっちゃんの顔が冷める。 「おれらしいって、なに?」  思わず息を止める。私はりっちゃんの冷たい双眸を凝視した。笑った仮面を剥がした、静かで、恐い、りっちゃんの表情。冷たい怒りを拳というかたちに変換して振り上げた、あの教室での鮮烈な映像が過った。  ぬるい風が強く吹いて、軽くなったじょうろがかたんと音を立てる。  りっちゃんは我に返ったように表情を変えた。ありありと後悔が浮かんでいる。 「ごめん」  そう口早に謝って、りっちゃんは俯いた。 「ヒーロー失格だな」  りっちゃんは呟いて、その場を去った。私の後ろの方へ足音が遠ざかっていって、やがて消えた。  蝉の声と、ブラスバンドの音と、運動部のかけ声、それにあまりにも重たい沈黙だけが残った。  なんてことを言ってしまったのだろうと、烈しい後悔に襲われてももう遅い。りっちゃんのハンカチで顔を覆ってうじうじと座り込んだ。私、小さい頃と何も変わっていない。うそつき、と心ないことを言ってりっちゃんを困らせたあの頃と、なんにも変わっていない。  他のクラスより堂々と高々と咲き誇った向日葵がふらふらと揺れていた。高い分、風によく煽られてしまうのだった。  それから私は何度か向日葵に水やりをしに来たけれど、りっちゃんと会うことはなかった。向日葵はだんだんとくたびれて、重たい頭でっかちな花の部分をもたげて、急速に枯れていった。
 *
 二学期がやってきた。  りっちゃんは一人でいることが多くなっていた。  腫れ物、とまでは言わないにしても、なんとなくクラスのみんながりっちゃんに対してよそよそしくなっていた。夏休みを跨いでも、りっちゃんのちょっとした特異性の受け入れ方を迷っていた。勿論、普通に話しかける子もいる。私も、すれちがった時に挨拶はするし、園芸委員会で一緒になると普通に喋る。りっちゃんは夏休みの出来事が無かったことみたいに、自然に喋ってくれた。私にはうまく出来ない芸当だ。でも、私はそのりっちゃんの優しさに甘えて、何も言わずに安堵して会話した。  私はりっちゃんにずっと甘えている。幼稚園の頃からずっと。  苦しんでいるりっちゃんを前にしても、それでも透明人間みたい��、クラスのはじっこの方で、りっちゃんの背中を見ている。そして秘密の会議みたいな園芸委員会の時間だけ喋って特別感に浸ってる。りっちゃんのことを分かっているような気で、でも分かっていない。  残暑が厳しい中、次なる行事である運動会に向けて学校は動き出していた。  運動会は、学年種目、すなわち学年毎のクラス対抗の種目と、個人種目、すなわちクラス毎で定められた枠の人数で個人が立候補して争う種目と、二種類ある。そして応援合戦があって、これは三年生が主体となってダンスをする。  りっちゃんは基本的に男子なので、種目も男子の枠で出場するし、応援合戦でも男子として出る。  りっちゃんの噂は高学年にも伝わっているらしく、合同練習をするようになって、少し奇異な視線が向けられる。先輩たちも最初は迷ったようだが、男子の列にりっちゃんは加わった。りっちゃんはなんでもないように振る舞っている。  私は身体を動かすのがとにかく苦手なので、運動会なんて休みたいくらいだった。でも普段からそうして休むわけにはいかないので参加する。横一列になってみんなでよーいどん、なのでそこから置いていかれてはみ出さないようにすることで精一杯だった。  あと運動会まで一週間、というところで、園芸委員会では向日葵を根こそぎ捨てて、パンジーやビオラを植えた。ベタだけれど、寒い冬でも花を咲かせるという力強い品種らしい。それぞれのクラスに割り当てられた花の色はカラフルだった。とはいえまだどれも蕾なので、実際に咲いたらどうなるのか考えるとわくわくした。  スコップを土に突き立て、掘り起こす。りっちゃんと話し合いながら、三列になるように均等な間をつくり苗を植え替えていく。 「でも、冬になる頃にはもう園芸委員も終わってるな」  りっちゃんの言葉で気付いた。委員会は上期と下期で分かれるので、りっちゃんとのこうした共同作業ができる時間はもうすぐ終わるのだ。上期で委員会をした人は、下期では役職無しになる。そうしたら、私はほとんどりっちゃんと話せなくなるかもしれない。それは、寂しい。  私は、ふと、りっちゃんのことを好きなのだろうか、と考えた。  あまり深く考えたことが無かった。りっちゃんのことは好きだ。確かに好きだけれど、恋愛的な好きなのだろうか。尊敬してるし、かっこいいとも思う。顔だって素敵だ。特にやわらかく笑んだ顔を見ると心があたたかくなる。  クラスには、付き合ってるとか、そういう噂話も回ってくる。私は、りっちゃんと付き合いたいだろうか。付き合ったら、園芸委員という理由なんて無しにりっちゃんと一緒にいたとしても、なにもおかしなことはないだろうか。  でも、付き合うということは、りっちゃんは彼氏になるのだろうか。それとも、彼女? 私は女だから、彼女というのもなんだかおかしい気もする。女の子同士で付き合うこともあるというのは漫画で知っているけれど、実際自分にあててみると、どうなのだろう。男子に興味が無いわけではないのだけれど、男子といるよりも、りっちゃんといる方が楽しいし落ち着くし、心地が良い。というか、りっちゃんは、男子だし、でも、女子だし。  ううん。  考えるほどに分からなくなってしまう。  それに、りっちゃんと付き合うということは、りっちゃんも私を好きだということとイコールになる。  りっちゃん��私を好きかと言うと、それは自信が無い。私がりっちゃんを好きになる可能性はあっても、りっちゃんが私を好きになる可能性は、限りなく低い。どんくさいし、泣き虫だし、クラスの中で釘が飛び出ないように透明であろうとして、みんなのなかにいることに必死で、りっちゃんみたいにちょっと変わった部分を堂々としていられるような勇気も自信も無い。つまり、りっちゃんが私を好きになることは、無い。  そう至って、浮かんだ桃色の案が破裂した。  うん、無いな。  私はりっちゃんのファンみたいなものなのだ。推しなのだ。だから、りっちゃんの幸せを願っているし、りっちゃんが苦しんでいると途轍もなく悲しくなる。りっちゃんが優しく接してくれることに甘えているけれど、それ以上を求めるのは烏滸がましい。だから、園芸委員を期に離れてようやく普通になるんだ。きっと。 「何を頷いてるんだ?」 「ひょおおええ」  手を止めて自分の思考に没頭していた私に、りっちゃんが恐る恐る話しかけてきて、思わず奇声をあげた。りっちゃんはぶふっと笑った。しかも止まらなくて、ずっと笑い続けて、涙まで出して、お腹を抱えている。 「そこまで笑わなくてもいいじゃん!」 「だって、なに? ひょおおええって」  あっはははは。私は耳まで熱くなっていたけれど、一方で、りっちゃんがこうして思いっきり笑っている姿を見たのは随分と久しぶりだったから、胸がぽかぽかと温かくなった。恥ずかしいけど、まあいいや。私もつられて笑った。三組の花壇で二人して、げらげらと笑っていた。  翌日の朝。  私は水やりをしに少し早起きして登校した。  じょうろに水をためる。朝の暑さは真夏になると収まりつつあって、蛇口から出る水もすぐに冷たいものになった。たぷんたぷん、揺れる水の重みを片手に感じながら、私は花壇に向かった。  そこで、昏い現実を目の当たりにすることになる。  三組の花壇だけ、無残に掘り起こされていた。りっちゃんと一緒に丹念に植えたパンジーもビオラもぼろぼろに引きちぎられて、ぐちゃぐちゃに踏み荒らされて、原型を留めていなかった。  私はしばらく目の前の現実を受け入れられなくて、呆然と立ち尽くした。  なんだろう、これは。  誰かによる、暴力的な、意図的な、明確な悪意であることは確かだ。  蕾だけが投げ出されて、散らばっている。  葉も根もばらばらだ。  土はおかしなでこぼこができていて、靴の跡も窺える。  なんだろう、これは。  なんでだろう、これは。  りっちゃんと笑った、昨日の光景が浮かんだ。手を土で汚して、話し合って、ひとつひとつ苗を植えていった大切な時間や記憶が、汚い靴で踏み抜かれていく。  足が浮かんでるみたいだ。  なんで。  あまりに悲しくて言葉が出なかった。  りっちゃんにこの花壇を見てほしくなかったけれど、私の力ではどうにもできなかった。
 *
 おとこおんな、とりっちゃんについて誰かが言った。  園芸を揶揄してか、みみずりつ、と誰かが呟いて笑った。  クラスがなんだかおかしな方に向かっていた。  夏に傾いていた頃、背中のおうとつに指を当てられてからかわれたりっちゃんは、拳を上げた。  でも、もうりっちゃんは何も言わなくなっていた。  静かに、本を読んだり、次の授業に向けて教科書を開いたりしていた。  根暗でどよんとした空気を漂わせているわけじゃない。りっちゃんはいつだって背筋を伸ばして、堂々と座っている。だけど、その背中が寂しげに見えたのは、私の感情的なフィルターを通した光景だろうか。  さきちゃんをはじめとした友達は、りっちゃんの話題に触れなかった。彼女たちには私とりっちゃんが実は幼稚園が一緒だという話をしていたからか、むしろあんまり近付かないように警告した。私は知っている。私とりっちゃんのことが、影で噂されていること。私からは直接見えない、LINE等で噂されていること。私と一緒にいてくれる友人達はそれが勘違いであることをちゃんと解っているけれど、下手なことはするな、と暗に伝えているのだった。LINEのことを教えてくれたのもさきちゃんだった。それを聞いた時、正直私はぞっとした。  私は透明人間で、釘が飛び出ないように、必死だった。それは、幼稚園時代のようにいじめられることがとても恐いからだ。人の、無意識であろうと意識的であろうと、異端だと判断したときの容赦のなさは恐い。その恐怖に再び晒されてしまったらと考えただけで足が竦んでしまう。  りっちゃんは、女子だけど、男子であるという、りっちゃんそのものであることで、釘が飛び出てしまっていて、打たれつつある。  りっちゃん。  私は心で話しかける。  心で言ったところで、りっちゃんにはなんにも伝わらないのに。  りっちゃん。  私、どうしよう。
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 運動会を翌日に控えて、ダンスの最終練習に向けて、みんな衣装に着替えていた。一年三組は赤組なので、赤を基調として、体操服に布を張り付けたり、はちまきを手首に巻いて回転したときに動きが派手になるように工夫がなされている。女子はスカートを思いっきり短くする。長いとちょっとかっこわるいからだ。一年生はみんな膝下に伸ばしているので、普段はできないびっくりするような短さにそれぞれ色めきだっていた。私はちょっと恥ずかしかった。下に短パンを履いているからマシだけど。  男子はズボンはそのままだ。上は女子と対照的になるようなデザインになっている。  私はりっちゃんをちらりと見やった。りっちゃんは窓際の席で、机に腰を軽く乗せて、ぼんやりと教室を眺めているようだった。 「清水さあ」  窓際でたむろしているうちの男子の一人が言った。りっちゃんの視線が動く。 「本当はスカート履きたいんじゃないの?」 「は?」  りっちゃんが反抗を見せる。りっちゃんは最近おとなしいが、怒ると恐いことは皆知っている。  だけど、りっちゃんは教室の中で圧倒的にマイノリティで、りっちゃんの特異性を釘として打とうとしている誰かと、無言で見守る生徒達��いう多数からしてみれば、りっちゃんがいくら怒ろうとも、孤独だった。 「だって、女子のことちらちら見てさあ、本当はあっちが良かったって思ってんじゃねえの。ダンスも、競技も」 「馬鹿じゃねえの。お前らこそ短いスカートの女子に興奮してるくせに」  りっちゃんが吐き捨てる。いつになく顕著に苛立ちを発して、なんだかおかしいくらいだ。男子は一瞬息を詰まらせた。その隙にりっちゃんはその場を立つ。 「また逃げるのか? 図星だからだろ」  りっちゃんは無視する。無視すんな、という声も全部、無視して、教室を出た。 「サイテー、なに言ってんの?」  男子にも物怖じせずに話す派手めの女子が言う。その子も、本気で言っているというよりも、面白がっているように見えた。 「本気じゃねえよ。ああいう風にされると、冷めるよな」 「冗談が通じない清水さん」  あはは、と笑った。  不快だ。とにかく全てが不快だ。 「真実、大丈夫?」  隣でさきちゃんが声をかけてくれる。私はどうやら相当青い顔をしていたらしい。いつのまにか拳を握りしめすぎて、伸びた爪で皮膚を浅く抉って、じわりと血が滲んでいた。  ダンスの全体練習では、先輩の厳しい目もあるから、みんな従順に励む。私もなんとか振り付けを覚えて、人並みに踊れるようになった。軽快でポップな曲に合わせてステップを踏む。腕を振る、回す。先輩から指示が飛んで、修正する。三年生はこれが最後だから、やりきって満足する思い出が必要なのだ。その情熱にあてられて、三学年跨いでみんな頑張る。  りっちゃんは私の斜め前の方にいる。いつも通りの凜々しい涼しい顔で、日光に当てられて、白い顔でたくさん汗を散らしていた。  しかし、ダンスの通し練習の一回目が終わった時だ。みんなのびのびと小休止をして、屋上から全体をコーチしている先輩の指示を待っていると、りっちゃんが急に座り込んだ。  こんなことでバテるような人ではない。よろしくない雰囲気がする。後ろにいる男子が恐る恐る声をかけると、りっちゃんは首を横に振った。大丈夫、だと言っているように見えた。大丈夫という単語から連鎖して、夏休みに目の当たりにしたりっちゃんの「大丈夫」を思い出した。りっちゃんの大丈夫は、本当は、大丈夫じゃないかもしれない。 「会澤さん?」  後ろの子が、驚いたように声をあげた。急に私が列を外れたからだ。  私はりっちゃんに駆け寄った。  みんなから飛び出るという私の感覚でとりわけ恐ろしいことをしていると自覚していた。けれど、りっちゃんが苦しんでいるのを分かっていながら見て見ぬふりをするのはもっとしんどかった。 「清水くん」  こういう時でも、私は使い分ける。 「……まみちゃん?」  りっちゃんはぼそりと呟いて、私を見上げた。まばゆい太陽に照らされるりっちゃんの顔は、白いというより、病的なまでに青ざめていた。  戸惑う周囲を置いて、私はりっちゃんに顔を寄せる。 「どうしたの、急に座り込んで」 「大丈夫……」  ああ。ほら、やっぱり、大丈夫と言っていたのだ。私の観察眼もたまにはちゃんと的を射る。 「大丈夫じゃないよ。顔が青い……汗もすごい。熱中症とか?」  私が言うが、りっちゃんは頑なに口を暫く閉ざしていた。 「今日、暑いし。ちょっと休もう。通し練習一回終わったし、体調不良ならしょうがないよ」 「駄目だ。本当、大丈夫だから。もう一回、通しが終わったらちゃんと休む」  りっちゃんのいいところは真面目なところだ。でも、悪いところでもあるのかもしれない。 「本当のこと言って」  私が強く言うと、りっちゃんは私を見た。  周りが私たちに注目しているのが、よくわかった。視線を集めていて居心地が悪い。見ないでよ。りっちゃんが更に言いづらくなるでしょう。  暫く沈黙が���いたが、りっちゃんは諦めたように項垂れ、ぼそりと何かを呟いた。 「え?」  聞き取れずに聞き返す。こういうところが私はどんくさい。  耳を近付けた先で、りっちゃんはもう一度同じことを呟いた。お腹が痛い、と。  瞬時にいろいろと察した。だからりっちゃんは言えなかったのだ。それは本当の男子だったら起こりえないことだった。でも、結構辛い。酷いとげろげろ吐くくらい、途轍もない痛みを伴って立っていることも辛くなる。  三年生の先輩が流石におかしいと気付いて、駆け寄ってきてくれた。 「先輩。清水くん、ちょっと体調が悪くて踊れなさそうなので、保健室に連れて行きます」 「え、大丈夫?」  先輩が慌てた。大丈夫、とは便利な言葉だ。 「すみません。ダンスを抜けて……」 「いいよ。通しは一回終わったし。ちゃんと休んで」  溌剌とした優しさに弱々しくなったりっちゃんは頷いた。  男子の見た目をしたりっちゃんと、女子の私が一緒に、身体を密接にひっつけているのは周囲からするとどう映るだろう。気にしない、というわけにはいかない。私は気にしいだし、りっちゃんもなんだかんだ和を重んじる人だ。重んじるがゆえに、自分を犠牲にする、強くて同時に弱い優しさがあるのだ。清水律という名に恥じない、清らかな水のように凜としていて、自分を厳しく律する生き方をしている。  りっちゃんは私の肩を借りて、ゆっくりとダンスの列を外れた。背後がやや騒然としているのが背中から感じ取れるが、気にしている場合ではなかった。どうせ、距離を置いてしまえば、聞こえなくなるし見えなくなる。  でも、私達は一年三組という閉じた空間での運命共同体だ。  後先考えずに行動した後、どうなるのかは分からない。 「ありがとう」  りっちゃんは、力の抜けた声で呟いた。 「ううん。良かった、言ってくれて」 「ごめんな」 「謝らなくていいよ」  むしろ、私の方がずっと、りっちゃんには謝らなければならなかったのだ。  私はずっとりっちゃんに甘えて、りっちゃんに助けてもらって、素敵なことを受け取ってきた。  りっちゃんが苦しんでいるのなら、私が助けてあげられることがもしあるのだとしたら、今度は助けてあげたい。  乾いた校庭からひんやりとした校舎に戻り、りっちゃんを保健室に連れて行く。その前にトイレに行くべきか尋ねたが、首を横に振った。  保健室の先生に事情を説明した。りっちゃんの口からはなかなか直接的に言えないと思うので、私がそれとなく伝えて、ベッドに寝かせてもらった。  急いで教室に戻り、常備している鎮痛剤と水筒を持って保健室に戻った。そしてりっちゃんのベッドに駆け寄る。  りっちゃんの顔は歪んでいて、いつも伸びている背筋を曲げて、くるまった。よくここまで頑張ったのだと感心してしまう。でも、りっちゃんは頑張るしかなかったのだ。負けたくなかったのだ。昔から負けん気が強かった。それはりっちゃんの人間性で、どれだけ大人っぽくて、言葉遣いが丁寧で、優しくて、男子の格好をしていても、根っこは変わっていないのだ。でも、その人間性ゆえに、りっちゃんは苦しんでいるのかもしれなかった。  鎮痛剤と水筒を枕元に起き、私は項垂れる。 「りっちゃん」  ぽつんと呟いた。 「何もしてあげられなくて、ごめんね」  ここで泣くのは違うから堪えた。 「苦しかったらちゃんと言ってね。女子とか男子とかそんなの関係なく、私、りっちゃんのことが好きだから、りっちゃんにはいっぱい笑っていてほしい」  りっちゃんは何も言わなかった。  肩が震えているように見えたので、私はカーテンを閉めた。  ダンスは二回目の通し練習に入っていた。私は外に出て、遠くから眺める。私とりっちゃんの穴は目立つかもしれないけれど、私達がいなくても、整然と全体は動いている。それは思ったよりきれいな光景だった。きっと屋上から見たらよりきれいなのだろう。同じ動きをしてチームとして創り出す巨大な作品。それは素敵なことだ。それはそれで、本当に素敵なことなのだ。  通し練習が終わってから、私は勇気を出して列に戻った。またいろんな人の視線が集まった。興味だとか、戸惑いだとか、不安だとか、ないまぜになっているだろう。一身に受け止めると息が詰まりそうになる。自己紹介の緊張と同じだ。注目を浴びるのが苦手だから、注目されないように慎重に周りの目を窺ってきた。それが私の生きるための術だった。りっちゃんを助ける行為は私の信条を外れる。それはとても恐ろしいことだった。けれど、後ろめたさがなりを潜めて、少しだけ強くなれたような、そんな気がした。 「清水くん、大丈夫そう?」  さきちゃんが心配そうに声をかけてくれる。 「うん。とりあえず保健室で寝てる」 「そっか」さきちゃんは安堵の表情を浮かべる。「真実は、平気?」 「うん。平気」  私は穏やかに頷いた。りっちゃんの大人びた静けさのある笑顔を真似するように頷いた。
 *
 ダンス練習が終わり、一年三組に熱っぽいざわめきが押し込まれる。最後に蒸気する先輩が活を入れに教室までやってきて、先輩が「優勝するぞー!」と叫ぶと、全員で「おー!」と青春百パーセントな眩しいやりとりがなされた。私も折角練習したのだから、どうせなら優勝したい。でもそれよりりっちゃんが気になった。  先輩が教室を後にするところで、りっちゃんとたまたま鉢合わせた。 「あっきみ、平気? 元気になった?」  教室の空気が若干変容する。 「あ、大丈夫です。おかげで元気になりました。ごめんなさい、練習中断して」 「平気平気。明日は出れそう?」 「はい」  りっちゃんの肩を先輩が叩く。りっちゃんは恐縮げに頭を下げ、教室に戻る。  汗は引き、顔色も戻っていて私はひとまずほっとした。  何も無かったように、りっちゃんは自分の席に戻る。和を乱さないように、平然とした表情で男子の列に戻る。でも、今や、マイノリティのりっちゃんは、一致団結した教室のはみだしものと認識されているのだろう。  担任の先生もりっちゃんに声をかけ、終礼を進める。最後にさようならと声を揃えると、教室の空気は弛緩した。運動会前日らしい緊張と興奮に、ちょっと変な空気がまだ残っている。  りっちゃんが、勢い良く踏み出した。  なんとなくみんな、視線を寄せた。りっちゃんは良くも悪くも目立つ。  先程ダンスの練習直前にいじってきた男子の集団の前に立つ。私は緊張した。また殴りかかるのではないかと恐くなる。けれどりっちゃんは冷静で、いつも以上に凜としていた。 「おれ、明日も出るから」  はっきりと宣言する。 「男としてダンスもするし、競技もする。それだけだから」  特別叫んだわけでもない。しかし、りっちゃんのまっすぐとした声は、生徒の間をするする通り抜けて教室中にきちんと響いた。  りっちゃんの正義。ヒーローのような正義。敵に立ち向かう正義。それは時にあまりにもまっすぐで誠実で、人の気に入らない部分も刺激してしまうのかもしれない。でも、りっちゃんは、自分に根ざしている心を偽ることも、馬鹿にされることも、許せないのだ。 「……当たり前だろ」  静かな威圧にやられて、���手はしどろもどろになる。なあ、と言い合う。まるでりっちゃんが空気の読めないイタいやつみたいに。  りっちゃんは翻し、たまたまその正面に位置した私と目が合った。りっちゃんは微笑んだ。ぼろぼろになってしまった花壇でいつも見せてくれる、優しい、りっちゃんらしい笑顔だ。私は嬉しくなって、笑い返した。  でも、私はとても耳がいいので、次の言葉を逃さなかった。 「おとこおんな」  大衆の前で羞恥を晒されたことに耐えかねたのか、ぼそりとりっちゃんの背後で彼は言った。  真顔になったりっちゃんが振り返ろうとした。振り返りきらなかったのは、りっちゃんの正面で突然走り出した存在がいたからだ。  つまり、私だ。 「ふざけんな!!」  私は叫んだ。彼等に掴みかかる勢いだったが、さきちゃん達と、そしてりっちゃんが慌てて身体に腕を絡ませて止めていた。 「ふざけんな……っふざけんな!! りっちゃんは、りっちゃんはねえ……! あたしらなんかよりよっぽど、大人で! 自分に正直なだけで! それでも自分を律して、自分を犠牲にして! それをあたしたちが、馬鹿にする権利なんて!! どこにも!! ないんだから!! ふっざけんな!!」 「まみちゃん、落ち着いて!」 「真実-! どうどうどう!」  正面にいる男子は完全にたじろいでいた。むしろ引いていた。  私はいつのまにか涙と鼻水をまき散らしながら、その後もなんか言ってた気がするけど、何も覚えていない。記憶が吹っ飛ぶくらい、私の思考回路はぶち切れてしまったらしい。
 *
 運動会は、優勝しなかった。ダンスも優勝しなかった。  先輩達は号泣し「うちらは赤組が一番だと思ってるから! 赤組最高!」とやはり青春まっしぐらの文句を高らかに言い放ち、拍手喝采が湧き上がり、不思議な感動のうちに幕を閉じた。  声援で盛り上がったグラウンドは、しんと静まりかえって、夕陽色が全面に広がっている。  今日は部活も全部休みだ。それぞれのクラスで打ち上げが予定されている。私もりっちゃんも出る予定だったけど、こっそり抜けた。ああいった事件の直後なので流石に無理と判断した。不器用な私たちよりずっと器用なさきちゃん達が計らってくれた。  運動会の最中はスポーツが創り出す団結感によって、りっちゃんを馬鹿にした男子も、派手な女子グループも、たくさんの傍観組も、私の大切な友人も、りっちゃんも、私も、頑張った。全体として赤組は優勝しなかったが、一年三組は学年競技で一位になった。男女問わず、みんな手を叩いて喜んだ。  私は身体を動かすことは苦手だけれど、こういうのもたまにはいいかもしれない。細かい価値観の違いだとか、性別だとか、性格だとか、身体の特徴やかたちだとかそういった、それぞれで生じる違いや個性を超えて、一つの目標めがけて力を合わせることは。  りっちゃんは個人でも活躍した。決まっていたことではあるが、クラスで一番足が速いので、メドレーリレーに出場し、二位でバトンを受け取った後、辞めてしまった陸上部の仲間だった黄組の男子生徒に迫り、デッドヒートを繰り広げ、ぎりぎりで追い抜いた。その瞬間の盛り上がりようといったら、りっちゃんの纏っていた仄暗さを吹き飛ばすものだった。みんな調子がいいんだ。それはそうとして、りっちゃんはかっこいい。やはり、りっちゃんは自分を消すように着席しているよりも、太陽の下で輝いているヒーローみたいな立ち位置がよく似合う。  だけど、明日からの日常はどうなるかわからない。  今日と明日は違う。  でも私達はたぶんそんなに暗い顔をしていない。  きれいに整えた花壇の前で、手を叩く。 「いつかやりたいと思ってたけど、ようやくできたなあ」  りっちゃんは満足げに笑った。花壇を踏み潰された事件は実に陰湿でショッキングだったし、結局誰の仕業かは判明していない。あのパンジーやビオラは戻ってこないけど、一応、元通りだ。 「運動会の後に花壇をきれいにしたいなんて、りっちゃんもよくやるよね」 「ずっと心残りだったんだ。でもそれどころじゃなかったから」 「そうだね」  あらゆることがとりあえず一つの区切りを迎えたのだと思う。りっちゃんは気持ちの良い表情をしていた。 「またパンジーとビオラの苗、頼んで用意してもらうか」 「せっかくだから、違うのでもいいかも」 「なんかあるかな。調べてみるか。でも、三組だけ違うのもなんか変じゃない? こういうのは統一感があってもいいと思うんだよな」 「たまにはいいよ」  一年のくせに生意気だと言われるかもしれない。でも本当に通るかどうかなんて分からないんだから、言うだけ言ってみるのも手だろう。 「でも、園芸委員、もうちょっとしたら終わっちゃうんだよね」 「継続で立候補したらいいんじゃない? やりたいって言ったら別に誰も止めないだろ。他の子で園芸委員やりたいって奴がいたら別だけど、いないだろうし」 「いないだろうねえ」  私は土まみれになった手を見やる。汚いけれど、健康的な手だ。 「おれもその方がちょうどいいな。まみちゃんと一緒だし」 「えっ」私は大きな声をあげる。「また私と一緒でいいの?」 「え? うん」りっちゃんは目を瞬かせる。「え?」  なんだか変な沈黙が訪れる。  りっちゃんは怪訝な表情を浮かべているが、何か変なことを言っただろうか。  でも、一緒がいいと言ってくれるのは素直に嬉しいので、私は何も考えずにぽわんと笑みを零した。 「そっかあ。りっちゃんと後期も委員会一緒なら、楽しいね」 「……うん。そうだな」  りっちゃんは相変わらずちょっと挙動不審だけれど、まあいいか、とやがて大きな息を吐いた。  遠くでかすれ声のようなひぐらしが鳴っている。向日葵は枯れて、とうに夏は過ぎたと思っていたのに、まだ蝉は鳴いているのだと驚く。だけどじきにこの声も聞こえなくなるだろう。 「まみちゃん、垢抜けたというか」私を見ながら、しみじみとりっちゃんは言う。「さっぱりしたな」 「誰かさんの影響かな」 「誰だろうなあ」 「誰だろうね���」  ふふ、と笑い合った。なんだか幸せである。 「でも、殴るのはやめた方がいいな。ああいうのは、どんだけ相手がくだらない挑発をしていたとしても、先に手出した方が悪者になるんだ。それに殴った方は結構痛い」 「りっちゃん、痛そうだったもんね」  夏休み前の、りっちゃん暴力未遂事件である。 「あれはまじ、やばいぐらい痛かった。今までで断トツ。おれがあの時逃げたのは、痛すぎて、そして恥ずかしすぎたからだから。廊下に出てから、ちょっと泣いた」 「うそー」 「ほんと。まみちゃんも一回机殴ってみたら? まじで痛いから」 「やだよ」  しかし、振り返ってみるとなんと暴力的な園芸委員だろうか。実際、とんでもないおまけが付いてきた。  おとなしいやつほど怒らせると恐い。私とりっちゃんが一年三組に植え付けた強迫観念の一つである。園芸委員の二人は、そのおっとりとした穏やかな響きの肩書きとは裏腹に、暴力的なレッテルが追加されることになった。自分達の正義というか本能というか、挑発に乗った愚かさというか、そういったものが生んだので、名誉といったらいいのか不名誉といったらいいのか微妙なところである。先生も親も驚いた。多分、運動会が過ぎて、明日以降のどこかで話があるだろう。  これで、三組に渦巻く嫌な空気が吹き飛べばいいのだけれど。  少なくとも、直接的な影響がでなければまずはそれでいい。裏で何を言われてようと、遠く離れていれば気にするほどのことではない。 「さて、これからどうする?」 「うーん」  なんとなくこの大切な時間が終わってしまうのが寂しくてごまかす。  私は、一つ提案した。りっちゃんは嫌そうな顔をしたが、受け入れてくれた。 「なんかポーズをした方がいいのか?」 「いらないいらない」  私はおかしくて笑い、スケッチブックを捲り、鉛筆を立てる。  真剣な目つきで、ただ、花壇裏の階段に座るりっちゃんの横からの姿を写生した。  無自覚のうちに自分を律するりっちゃんは、リラックスした空気であっても肩の力が抜けていても背筋がきれいだ。ちょうどいい鼻の高さ、中性的な顔つき、長い白シャツとズボンの下が女性的でも、りっちゃんを形作る雰囲気は男性的で、どちらも兼ね備えるりっちゃんは普通と少し違って、素敵だ。でもきっと、みんなそれぞれ少しずつ違う。たまたまりっちゃんが目に見えやすいだけで。  強い夕陽に照らされて儚げな横顔。暗くなって見えなくなる前に、私は真剣に紙に写し取る。この瞬間を完全に切り取ることはできなくても、この瞬間を、私の目が捉えるこの瞬間を、できるだけ忠実に切り取りたい。  拙くても、私は一生懸命鉛筆を走らせる。 「ちょっと喋っていい?」 「うん。でも動かないで」 「厳しい」  りっちゃんは笑う。ぎこちなかった真顔よりこっちの方がいいな。私は消しゴムで口許を修正し、微笑みを与える。うん、りっちゃんらしい。 「おれ、幼稚園の頃、いじめられて泣いているまみちゃんを見て、守らなきゃって思って、ヒーローになるって言ったの。覚えてる?」 「もちろん」  明るい記憶ではなく、むしろ掘り起こされたくない部分でもあるが、りっちゃんに助けてもらったことは何にも代え難い私の希望だった。指切りまでして、約束を交わしたことを、よく覚えている。 「りっちゃんは、私のヒーローだった」 「うん。そうなりたいと思っていた。でも、実はまみちゃんもヒーローだったんだな」 「私が?」  咄嗟に素っ頓狂な声をあげて、手を止めそうになるが耐える。しかし、ふらふらと明らかに動揺した線になってしまう。 「おれ、結構きつかったんだわ。いろんなこと。男子として生きてみようと思ったのはいいけど、親がまず困る。親はきっと、おれのブレザーとスカートの晴れ姿を見たかったんだ。前例が無いせいで先生方も困惑してるし、みんながどう受け止めるべきか困っているのも解ったし。気持ち悪いものが気持ち悪いのは、しょうがないじゃん。単純なことかと思ってたら、おれだけの問題じゃないんだなってよく解って、でも、おれはおれであることからは逃れられないから、そことのギャップも、地味ないたずらも、苦しかったんだ」 「うん」 「昨日、ダンス練習して、一日目だったからやばいかもなーとは考えていたんだ。でも、もうこれ自体もさ、おれがどうあがいても女子っていう証拠で、覆せなくて、それがむかつくやら苛立つやら悔しいやら、でもどうしようもないから隠すしかない。でも、あの時は耐えられなかった���。最近あんまり寝れてなかったし」 「……そっか」  大人びたりっちゃんを創る、本当のりっちゃんが話しているのだ。私は余計な邪魔をせず、相槌に専念しつつ、絵を完成へ近付ける。 「身体の変化にはあらがえないと実感したけど、まみちゃんが助けてくれて、本当に助かったんだ。それに、その後まみちゃんが取り乱したのも、びっくりしたけど、この子は味方でいてくれるんだって」  りっちゃんが振り返る。私は、動かないで、と言わなかった。 「ありがとう」  夕陽を逆光にして、りっちゃんはきれいに笑った。本当に嬉しそうに笑った。  私は鉛筆を止めて、呆然とした。そしてまた号泣していた。 「いやいやいや、だからなんで泣くんだよ」 「わかんない」  りっちゃんは戸惑いというよりもおかしく笑った。私は鞄からタオルを取りだそうとして、青いハンカチが目に入った。あれから良い機会が全然無くて、返せずにずっと鞄に入れっぱなしにしていたのだ。私は泣きながらとりあえず返そうとする。 「いや、それで拭きなよ」冷静なりっちゃんは呆れる。「そのうち返してくれればいいし」  運動会の汗をたっぷり吸い込んだタオルよりもずっと清潔なハンカチに、また沁みができた。申し訳なさやらなんやらが積み込まれた、重たいハンカチになっていく。 「泣き虫だなあ」  りっちゃんは苦笑する。 「泣き虫だし、いつまでも、りっちゃんに甘えてばっかりで、弱虫で……だからずっとりっちゃんが苦しんでるの知ってたのに、見て見ぬふりして……全然、私、ヒーローなんかじゃない」  私はぽつんぽつんと涙ぐみながら言う。りっちゃんは首を横に振った。 「そんなことない。みんな弱虫だ。おれもそう」 「りっちゃんは、すごいから、私なんかと全然違って」 「すごくない。おれはまみちゃんの方がよっぽどすごいと思う。嘘をつく方がよっぽど楽なことだってあるじゃん。ちょっとはみだすことって、本当に大変で、勇気がいることだから。その一歩が一番大変だ。だから、真実ちゃんはすごいし、おれのヒーローだよ」 「うええ……」  身に余る言葉ばかりたくさん浴びて、私は写生どころではなくなってしまった。微笑むりっちゃんを写した拙い絵に、涙が一粒落ちる。 「うわっすげえ。この短時間で? めっちゃ上手いな。ちょっと気にしすぎなくらい人のこと見てるもんな。絵の才能あるんじゃないか?」  りっちゃんはスケッチブックを私の膝上からあっさり引き抜いた。 「他のも見せてよ」  了承を得る前に、まったく悪気が無い手さばきでりっちゃんは過去のページを捲る。  涙が瞬時に止まった。真顔になり、さっと血の気が引く。  その中には、こっそり、隠し撮りならぬ隠し描きした、りっちゃんの高跳びをする瞬間の写生画が入っているのだ。 「や、やめてーーーーー!!」
 透明人間だった私に、輪郭が描かれ、あざやかな色が塗られていく。
 了
「弱虫ヒーロー」 三題噺お題:世界の終わり、嘘をつく、指切りげんまん
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karasuya-hompo · 6 years ago
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ME:A 087 こつこつと
 メリディアン確保後、「仲間みんなと話してネ」とか言われても、ちょっとやりたいことのあった我が輩は、ヴェトラ以外全員□連打ですっ飛ばしました( ತಎತ)スマソ  ただ、ドラックが「Kid」と呼んだ後で「Ryder」と言い直すのだけは、そんな高速すっ飛ばし中でも目につくんだから、自分どんだけクローガン、そしてジジイ好きなんだと。  これ、ドラックがテンペストに来て間もなく「その"小僧"って呼ぶのなんなの(๑•̆૩•̆)」という会話ができるので、そのアンサーですね。一連の出来事を通して、もう子供扱いできないな、一人前の男だなと認めてくれたらしいドラック。プロフェッショナルのほうの選択肢はろくに読みませんでしたけど、カジュアルのほうは「"小僧"でいいよ」みたいな感じだったので、なんとなくそれ選択してみたり。  ちなみに日本語訳、サラ子のときは「小僧」じゃ変だしどうしようかなぁって……そもそも、ドラックの口調を勝手にジジ語にしてるのもどうかって話なんですが、女の子に向かってやはりKidと呼びかけるとしたら、日本語ではどう訳すればいいのかとはずっと考えていて。「小娘」は変。「娘」も変。誰か他人に話すときに「あの小娘が」と言うのはいいとしても、呼びかけるのに使うとおかしい。それでなんとなーく考えていて、結論は出たので、それはまあ、サラ子のプレイ記のときにでも……。  って、サラ子、本当に動くんだろうかなこの後……( ತಎತ)
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 ともあれ好きなものにだけは敏感な我が輩ゆえ、ヘイジャ船長のお姿はしっかりキャッチしてますよ? あっ、このグレーとインディゴのスーツは船長だ~❤と。……パスファインダーになったから船長じゃないんですけど、なんとなく、ほれ(´・ω・`) あと、さすがに顔で見分けはつきません(◞‸◟)  ともあれ、船長が言うのは「いつかパーチェロもこんなふうになる(素晴らしい居住地に辿り着く)かもしれない」ということ。ただ��、「こんな派手なやり方ではなくていいが」とのことw そらそうだ。ハイジャックされて墜落して、しかも着陸することは想定されてない宇宙船だからもちろん離陸もできず、結果的に「じゃあここ、ヒューマンの星でいんじゃね?」みたいな状況ですからね。一歩間違えば、クライオに残っていた一万人とかが死んでいたわけで。……それを防いだのが、自分を犠牲にしてもクライオを重点的に守ったダン船長。゚(゚´ω`゚)゚。ヤスラカニ
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 ヴェトラとはちゃんと会話。「2人きりにしたげたほうがいい?」と茶化すシドちゃんですが、慌てることもなくさらっと流すねーさんさすが。そこ以外の会話はけっこう真面目で、ロマンスしてないときと同じですね。
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 でも戻ってきたらこんなメールがw  この文字体だと❤には見えづらいのが難点ですな。あ��、あっちの顔文字って基本的に左側が上「:)」なのに、この「<3」だけ逆ってのも個人的には納得してません。すぐに打てるって条件があるので、イプシロンを使った「ε>」はダメなのも分かりますがね?
 ところで「顔で見分けはつかない」で我ながら思ったんですが、実際にヒューマン以外の顔ってテンプレですよね? 差ないですよね? ヘタするとおんなじ型を使って、ペイントとか色合い変えてるだけですよね??  いっそMEA2では、ヒューマン以外もキャラクリさせてくれないかと思います。  サラリアンの目は目で極端に変化はしないけど、その大きさは、ヒューマンの目の大きさの常識的な違いの範囲と同じように、大きめだったり小さめだったり、少し吊り目だったりタレ目だったりするはず。いや、サラリアンだとそういう差ではなくて、出ている・引っ込んでいるとか、まぶたの厚さだとかなのかもしれませんが、とにかく、画一的な顔にはならないはずです。  トゥーリアンだと外殻の厚みとかもあるかもしれないし、顎先(頬先)の形状の違いがあるかもしれない。頭部のツノというかヒレみたいな部分も、男性のほうが長いのははっきりしてるとしても、その長さには違いがあるだろうし、開き具合とか尖り具合とか、あと、欠けているってのもあっていいし……。ただ、目については元々がかなり小さいので、はっきり分かるほどの差ってのは生まれないかもしれません。  そういう個人差を、目立つNPCにくらいきっちり反映させていただきたいなと。  実際のところ、リアル系の多くの洋RPGでは、NPC個々の顔がだいぶ違いますよね? もちろんそれらのほとんどはヒューマンなわけですけど、同じようなことを何故異種族でやらないのか!! 技術的にやれないわけはないでしょ!?  ―――ええ分かってます。こんなことまず期待できないって:( •ᾥ•):  でももういっそ、そういうキャラクリキットを配布して世界中のファンに作らせて、そのモデルのうちいいと思うものをいくつか採用するとかでもいいから、ちゃんと個性を出してくれないかと思うわけですよっ。太ってる・痩せてる、背が高い・低い、肩幅が広い・狭い、足が長い・短いetc……ヒューマンですらまだまだ違いがあっていいはずなんだしさぁ。  シナリオ中はともかく、オンラインのPvPやPvEで使うキャラとかくらい……っ。
 そんなアンドロメダ級に見果てぬ夢を見たことはそっと胸にしまうとして。
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 タスクの一覧作成にとりかかっています。ミッション類は既に作ったわけですし、だったら完成はさせなければなと。  攻略本から書き写すだけとはいえ、私が買ったのはハードカバーの豪華版なのもあって、まあデカいし重いし……。  英語がさらさらと読める人にしてみれば、攻略本やwikiがあればこんなもの作らなくてもいいのですが、読めないわけではないけど大変だと思う人が、ME:Aをより楽しむ手助けになればいいなぁと。あとなにより、自分のチェックとして。  実際こうして書き写しながら、「あー、これあれか」とか、「これとりかかったことはあるけど完遂してないな」とか「これって……? はて?」とか出てきます。
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 そしてそれより作りたいのがこっち。武器の性能比較表。  このExcelリスト自体は私が利用するデータベースで、これを元に、特徴を書きだした武器リストを作ろうかと。一応こっちのファイルもDLできるようにはしますが、なにせこのPC、OSがVISTAですからね? いろんなもののサポートが切れ始めてるのは言うまでもなく、Officeソフト類も相当前のver.です。それじゃDLできるようにしても無駄かなぁと思わなくも……。いや、DLしてくれる人はいないだろうなとは思いつつ、万一にでもいたらね、申し訳ないよなと。  閑話休題。  当初は自力で全部ランク10にしてから比較しようとしてました。ランク1での比較が無理である以上(序盤に店売り・ドロップせず、研究もできないとなると、ランク1では手に入らないものもある)、確実なのはランク10。ランク5とかだとやっぱり、そのランクのときのものを入手しそこねたらおしまいですし。  もちろん現在でも、最終的にはすべてランク10にして、自分で触ってその違いを確かめるつもりでいます。  ただ、数値だけなら海外wikiに上がっているので、それを転写することにしました。  これで、理論上の違いについてだけなら語れます。  しかしそれでも、自分が実際に持ちだして撃ってみたときにどうか、他のランク10の武器と比較するとどんな感じかは、数字だけでは絶対に分からないわけで……。  相変わらずリサーチポイントもうじゃのスットコくんでありました _(┐「﹃゚。)_クレェ
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 大事なのはやはり、自分で使ってみたときの感覚。解説読んだだけではピンと来ないこともあるので、実際に使ってみるのがなにより大事なのです。  ランク10での比較も重要ですが、とりあえず使い勝手も試さねばなるまいと、こんな装備。  これらは……  メリーはアンガラのエレクトリックナイフ。硬直させるだけでなく、エレクトリックコンボの仕込みにもなります。リーチは短くダメージも低いけれど、攻撃発生が速いのも特長。  アサルトライフルはファルコン。アサルトライフルってーか、グレネードランチャーです。威力が高く、爆発時に周囲も巻き込みますが、hitscanではないという弱点もあります。 (hitscanというのは、撃った瞬間に当たるゲーム上のシステムのこと。これと反対なのがprojectileで、撃った瞬間に銃口を離れて弾が飛んで行ってヒットする)  スナライはインサイザー。前シリーズでもおなじみの3点バースト。基本のプレイスタイルがインフィルトレーターのわたくしにとっては馴染みの武器なのですが、ME:Aのスナライの中ではほぼ使ってこなかったので。  ピストル(SMG)はとりあえずランク5で作ってみたレムナント製イコライザー。これはprojectileなので、どんなもんかなと。  ショットガンもまたランク5で作ったレムナント製スキャッターです。レムナント製のものは弾数無限のエネルギーチャージ性なのは共通してますが、ビーム型と弾丸型があり……これは「追尾」するの?? 試してみなければ。  ―――ところで、通常弾の他にプ���ズマ弾、粒子弾ってのがあるんですけど、違いってなんなんですかね??(´・ω・`)
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 そんなわけで、戦闘相手を探しつつ適当にタスクを消化しようと、メモリートリガーと植物採取のため入ったきのこの洞窟。
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 ちんどる(´・ω・`)  近くのデータパッド読んでみると……読んでもよく分かんない(´・ω・`) 書いてるのは、「クラン」とか「哺乳類の求愛は奇妙だ」とか言ってるので、クローガンですかねぇ。ここに落ちてる貨物はアークからなんらかの理由で落ちたもので、手に入れて喜んでるのは確かなのですが、マーカスとかケイトリン、バクスターって名前も出てきて、これらどう見てもヒューマン種の名前。  たぶん、クローガンがここでヒューマンのスカベンジャーらかなにかと会って、boughtってのも出てくるのでなんらかの取引をしたのだろうとも思うのですが、それがどうやってこの死体につながるのかが分かりません。バクスターかマーカスのどっちかではあるんでしょうが……。うーむ、えいごりょく、もっとほちい(´・ω・`)
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 今更ですけど、見るたびに気になるノーマッドの内部。こちらは前部座席から正面側��んだけど……これって、前、見えてるの?(´・ω・`)
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 こちらは後ろをできるだけ見ようとしてるので、前シートと僅かに後部座席なんですけど……すげー狭いよね……?(´・ω・`)  しかもこれ、後ろにどうやって乗るんだ? 前のシート倒すとかするのか? ヒューマンはまだいいけど、ガタイのいいクローガン入れるのかこれほんとに??
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 そんなことしつつ、そのへん適当に見て回ってたら、コンテナ発見。死体もあるけど……前に立ち寄ったせいなのかなぁ。特になにもなく。  エラダン回ってると、病気にかかったスカベンジャーの死体を見つけることがあって、「もっとスキャンしないと分からない」とSAMに言われます。「The Infection」というタスクなのですが、マーカーもなにもないから探すのが大変。スカベンジャーがどうこう、と言われるたびに「病気の死体あるかな?」と戦いに行く、なんかものすげー迷惑なことしてるスットコくんご一行。
 とかやりつつ、ここから近いのはアーキテクト戦か……。  「そんな装備で大丈夫か?」、「大丈夫だ、問題ない(๑•̀ㅂ•́)و✧」とか別ゲーのネタやってる場合じゃなくてね?(´・ω・`) まあインサイザーあるし、イコライザーはそこそこ使いやすいし、逃げまわってればじいちゃんとねーさんがなんとかしてくれるっしょ(´・ω・`) 「小僧……」 「ライダー?」 「じゃあ近くの三角さんで武器変えてく(๑•̆૩•̆)」
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 こんな感じに……。  アサルトライフル・スイーパーはランク4という頼りなさですが、威力高めの3点バースト。projectileというのがちと気になるものの、使ってみたい武器。  スナライは安定したとろころでイーシャレイ。ウィドウを越える破壊力と精度を持つ反面、総合的な弾数は更に少ないという、高難易度では当たればデカいけどはずしたら命取りな、まさにスナイパー専用武器。……だからね? なんでね? インフィルトレーターにスコープ時スロー化能力なくなったのかな??( ತಎತ)  ピストルのUSHIOR(読み方さっぱり分からん。ユーシオアー? めんどいのでウシ呼び)はスナライ並の威力を持ちます。感覚としては黒ウィドウとかあのへんと同じです。スコープが標準装備でないことと、精度ではさすがに劣るものの、軽い上に威力も黒ウィドウ以上。近距離で使う武器としては破格の破壊力。  ショットガンはここまででまだ使ってなかったので継続。  防具も、うっかりアンガラセットのままで来ていたのをケット+マーベリックの武器コンバット特化に変更。  つまりは、いざとなったらイーシャレイ頼りでなんとかしてやろう計画(๑•̀ㅂ•́)و✧
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 そんだら突撃~っ(ʘ皿ʘ ╬)  って、さすがにイーシャレイ強い……(°A°`) ノーマルにランク10持ち込んでれば、mod入れてなくても足が2発ちょいで破壊できるし、頭は3発かな。(modはすべて抜いたのだ)  スイーパーは……オート型の高性能Aライフルに比べると、この程度の難易度ではどうしても取り回しが悪く感じます。ランクが低いのもあるかもだから、やっぱり10にしてからじゃないと……。  で、シングルショットのスナライ並の破壊力があり、かつ装填数がデフォルトで2発あるウシが、近距離のザコ戦だとかなり強いですな。一発ぶちこめばたいてい破壊されてくれます。スナライ代わりにするには精度が問題ですが、中距離くらいならスコープつければいける感じ。ただ、全弾数が基本25、マーベリック2ヶ所でスペア弾強化しても38なので、きっちり当てないといけないのはスナライ同様ですね。  スキャッターは……うーん……たしかに離れててもある程度の精度を持って当たるんだけど、だったら別にショットガンでなくてもいいよね? て気が(´・ω・`) 特殊型のショットガンならDHANのほうが明らかに強い感じ。これまたランクのせいもあるのかも。
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 ちなみに戦闘中、後ろにいることに気付かず噛まれちゃいました(´・ω・`)  ああん放してぇぇぇ(੭ु ˃̣̣̥᷄⌓˂̣̣̥᷅ )੭ु
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 その一方、戦闘終わったはずなのに仲間が何故か武器を下ろさないので、どこに残ってるんだと思ったら……柱の隙間にオブザーバーかな、挟まっとる……w  しかもこれ、柱が邪魔でどうしても攻撃ができないし、オーバーロードなら上から当たるんだけどシールドがほぼ消えるだけで、リチャージ待ってる間にこいつのシールドも回復していまい、どうしたもんかと思いました。  幸い、この柱の上、スクショ撮った位置からなら攻撃できたので、無事に倒せましたけど。ほっといてもいいようなものなんだけどね、気になるからね。どうしても届かなければ、エンジニアに変更してエナドレ→オーバーロードのコンボでなんとでもなったんじゃないかな。
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 その後はわんこにも噛まれてみたり。しかも無表情に噛まれとる(ㅍ_ㅍ)  そんなこんなで、いろんな武器持ち替えて試しながらのこまかいタスク潰し。メモリートリガー拾ったり、鉱石サンプル見つけに行ったり……毎回やりたいかと言われれば確実にノーですけど、たまにやると地味たのしい(´ω`*)
 そしてもう一つ。  たまたま近くに行かないかぎり発見のできない、目印になるマーカーもなにもないタイプのサブクエで一つ、未発見のものがあるのを思い出しました。  「The Vanished」です。  消えたと言えば銀河マップからヴォールドの名前が消えてて「おいどこだよあの星!?」てなりましたが、あれか? タスクもなにもなくなったせいか? でもジャーナル確認するかぎり、まだやってないクエストならちゃんとあるんだぞおい?(ちなみに、後にカダラとかで同じようにクエスト・タスク潰しても名前消えたりはしなかったので、単なるバグと思われ)  あ、次回作あるなら、ジャーナルのソート可能にしてほしいです。終了したクエストも請け負ってるものも、名前順にくらい並べ替えたい……。  それはさておき、このクエストはヴォールドで、2か所のうちのどちらか、オーディオログを見つけることで発生します。場所はこの2つのうちのどちらかなんですが……攻略本頼りに探してもけっこうたいへんでした。
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 片方はここ。テチックス(中央下部の三角ターミナル)の真北あたりです。
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 氷柱が立ち並んでいて、その中の一つの根本に発煙筒が落ちています。  この傍に、イビル(Ibyl)のオーディオログ。今回こっちを先に見つけました。内容は、 『お父さん、お母さん……。もし私がてチックスに辿り着けなかったら、レジスタンスがこのメッセージを見つけてくれるよう願うわ。それから貴方がたのことも。2人ともすごく愛してる。だからあんな洞窟に残していきたくはなかった。ケットが追ってきてる。きっと私も連れて行くわ。オレンとウルリみたいに。あいつら私たち家族になにしようっていうの? どうして私たちがこんな目に? 聞こえる。すぐそこにいる。愛してる……愛してるわ』  残っているのはこの音声ログだけで、彼女の姿はどこにもないので、連れて行かれてしまったのでしょう……(´・ω・`)  せめてということで、SAMに命じて両親がいるだろう洞窟の位置を割り出させます。
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 それはここ。すぐ近くです。レムナント遺跡のマークを挟んで左右、くらいの位置。
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 ここに、洞窟っていうほど深くもない、岩棚の下みたいな場所があります。最初に探すならこっちのほうがラクかも。西側のステーションからそのまま山際にそって移動するだけで良さげ。……場所が分かっていればそう言うこともできるけれど、なにも情報ないままだとやっぱりけっこうたいへん(´・ω・`)  で、こちらにもオーディオログが……。 『これを聞いているのが誰であれ、どうかお願いだ。私の娘を見つけてくれ。あの子はテチックスへ向かった。ケットが私たちを狩っていく。息子たちも娘たちも奪われた。イビルは私たち夫婦に残された最後の一人だ。テチックスは安全だと聞いたが、とても遠い。そしてここはとても暗い。ケットが尾けてきた。あつらが外にいる。私とエイラを見つけるのも時間の問題だ。イビル、もしこれを聞いているなら、私たちはおまえを愛しているよ、それを忘れないでくれ。そして強くあるんだぞ』  ……オチは分かってたけどさ……。゚(PД`q*)゚。  せめてせめて、彼等のことをレジスタンスに伝えよう、それより他にできることはもうない、というので終わりました。  なお、ここには透明わんこが3匹います。仲間が警告してくれるのでいきなり襲われてびっく��するってことはありませんけどね。  ところで、マップで見ても分かるとおり、ここからテチックスはそう離れてません。ノーマッドならすぐだし、スットコくんにとってはステーションが近いのでFTすら可能。  しかしもし徒歩で、警戒しながら移動しなければならないとしたら……それに彼等は、テチックスがだいたいこのへんにあるとは知っていても、ここだとまで知っていたわけではないように思います。そういう状態で向かっていたら、実際の距離よりもはるかに遠く感じたでしょうね。  ……まあ、そもそも彼等はどこに住んでいたのか、という疑問があったりしますが。レジスタンス基地にいたとは思えないし、かと言って近くに集落もないし。どこから来たんだろうなぁ(´・ω・`)
 サラ子を進めようと思ったけれど、リサーチポイントが手に入ったりもするし、武器の使い勝手調べるのはスットコくんでしかできないし(サラ子で同じとこまで進めるのが大変)、なんだかまだしばらくは、スットコくんがうろうろしてそうな気がします。ゴメンネ サラコ(´・ω・`)
3 notes · View notes
chaukachawan · 4 years ago
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行間に愛を込めて
こんにちは、つくもです。新人公演、役者紹介やっていきます!今回は、時間をかけてゆっくり長文を書きましたよ。
ピンキー
憧れ。圧倒的憧れ。女子なら分かるはず、彼女みたいな女になりたかったー。顔可愛いし服とか持ち物のセンスも良いし、演技上手いしダンスも踊れる。それでいて関西のギャグセンス。サバサバしてるのかと思いきやとってもピュアで真っ直ぐ純粋。え、悪いところなくないですか??オーラがありつつ人懐っこい性格で皆彼女の虜ですよ。ピンキーの演技にはとっても華があります。舞台でとてもイキイキしてて、見ているこっちもワクワクします。文字としてのセリフを発して決められた動きを再現してるのとは違って、そのキャラクターがそこで生きているような、そんな演技だなと思う。思えば共演するのは10月公演以来で、あの時とは立場が逆になったようで新鮮です。舞台上で彼女と沢山絡めるのはすごく楽しいし、色んな刺激を受けています。10月を思い返すと、仲良くなったな〜って感じるな。はじめは唯一女の子の同期だったし、仲良くしなきゃ!って思いすぎて色々気にしすぎだった思う。なんでも考えすぎちゃう自分と違って、ピンキーはあっけらかんと本能のままに生きてる気がする。羨ましい。ピンキーがいるだけで場が明るくなるし、嫌な気持ちが消えて私もテンション上がる。一緒にいてポジティブにさせてるれる人は貴重です。大切にしましょう。全然自分と違う彼女だからこそ一緒にいて楽しいし、見ていて飽きない。でも絶対恋愛観違うから恋バナは聞く専門がいいな笑 役者ピンキーの可能性はまだまだまだまだ無限大で、これからもっとステキな演技を見れることを楽しみにしてる。いつも元気をありがとう。
中津川つくも
私。今年度、4回も舞台に立たせていただけて心から感謝。
永満柊人
実家のような安心感。結構重めの兼サーしててとても忙しそう。今公演まであんまり話したことがなかったけど、とても話しやすくて稽古が楽しかった。彼は太陽みたいな人ですよね。それでいて話していて緊張しない安心感があります。普通にコミュ力高いんだろうな。彼はザ大学生って感じがします。変にひねくれてないから、ちゃんと楽しいときに楽しいと思える、楽しむべきところで楽しめる、そんな大学生活を送ってそうだし送って欲しい。お互い地方出身ということで田舎トークに花が咲きました。いつか九州案内してくれよな!音楽の趣味も合いそうだし今度カラオケ行きたい。いや、行こう。この公演期間で仲良くなれたなと思いつつ、もっと話したかったなとも思います。みんな言ってるけど、役者初とは思えないほど自然に堂々とした演技をしています。本人がとってもいい人だから善人の役とかやって欲しい。普通に泣かせられそう。よく分からんけど、唐突にイケボで語りかけてきて私もやり返して収拾つかなくなる遊びしてたよね。あれ楽しかったな。あと、ピンキーと変なオネエキャラみたいな絡みしてて、この2人のコント見たいなと思ってしまった笑 上述した通り忙しい人なので役者は最初で最後かもって言っているのを聞いた。どこかで、そうだろうなとは思ってたけどやっぱり寂しい。面と向かって言うのも困らせそうだから言えないけど、また一緒に舞台たちたいよ。それでもちゃうかには在籍し続けると言ってくれてるのでそれだけで十分嬉しい。頼れる宣伝美術チーフの彼にはたくさん助けて貰いました。フロンさんの優しさを受け継いでるよ。宣美に興味津々やったから、今後素敵なチラシを作ってくれるのを楽しみにしてる。時々ダメ〇なのに稽古いなくて電話かけたりしたけど、それ以外はとても素晴らしい人ですね。血液型が一緒と知ってめっちゃ驚いた。きっと私は永満のほんの少ししかしれてないんだろうな。もっと仲良くなりたいぜ。ちなみに、私は嵐の曲Breathlessが1番好き。
かけうどん
元気の源。今公演、よく一緒にいたし凄い助けられた気がする。誕生日が一緒なんですが、同期に2人という奇跡のおかげでたくさんの人に祝ってもらいました。ありがとうございます。喜びが2倍で幸せの誕生日でした。作業日が限られた中での大道具チーフ本当に大変だったと思う、お疲れ様。色んなイレギュラーに頭を悩ませていたけど、君だからここまで来れたと思う、頼もしかったぞ。ロッドマンの演劇論、好きなんですよね。でも、理解できるけど共感はできなくて、自分と違う考え方を持ってる人は凄いし新鮮だなと感じています。色々と妥協してしまう私は、あなたのように自分が納得するまで折れない姿勢に尊敬する。こだわりのない人間よりこだわりを持てる人になりたい。今思えば、ロッドマンを分かるまでにはだいぶ時間がかかった気がします。この人の頭の中はどんな思考が巡っているのか全然分からなかった。今も完全に理解はできてないだろうけど、ロッドマンの価値観・考え方・人生観みたいなことを聞くのはすごく刺激的で、私も頑張って生きようと思える。そんな友達が出来たのは嬉しいことです。ロッドマンて、笑う時声出さない子なんですよ。私が人の顔みて話すの苦手なので、たまに隣で声が聞こえないと、真顔なのか笑ってるのか分からなくて不安になって、横を見るとすっごい満面の笑みでいてくれる事がよくあります。この一連の流れが好きだったりする。最近気付いたけど、私ロッドマンといると絶対イライラしないんですよ。こんなに短気なのに、てかイライラしてても、ロッドマンと話すとなんか和んで気づいたらどうでもいいことで馬鹿みたいに笑ってる。これを私は、ロッドマンがツボなんだよね〜って言ってたみたいです。彼的には、何も面白くもないのにケラケラ笑ってる私が面白いらしいです。平和な世界か??今回の小道具の中に、彼が実家から持ってきたぬいぐるみがあるんですけど、それを抱えているロッドマンはまさに「ごちゃい(5歳児)」でとっても可愛いです。いっぱい写真撮りました。
高井下高井戸店
ぜんぶわかってくれる人。演出お疲れ様。タスクを抱えすぎだけど、それ以上に自分でやりたい気持ちが大きいんだろうなあと思う。もっとみんなを頼ってね、君が思っている以上に、みんなロビンソンを信用してる���ら。よく共感してくれるから勝手に似た人種だと思ってる。何かあったらTwitterに呟くテンションでよくLINEする。割とどうでもいい内容でもちゃんと(?)話聞いてくれるし良い奴だと思う。人間の行動分析とか社会情勢とかを雑に話すのが好き。自分に厳しい人だから、「俺別に演技上手いわけじゃないのに、自分の考えとかアイデアでみんなの演出していいんやろか」みたいな葛藤をすごく感じた。私個人で言うと、君に演出をつけてもらいたいし、君が思う世界観を体現したい。もちろん理想には届かないかもしれないけど、ロビンソンの思い描く作品に少しでも近づきたいなと思って稽古をしていました。初めてのちゃんとした演出、本当にお疲れ様、感謝しかない。君の創作意欲は凄いよ。きっと同期は皆君の味方だ。これから経験積んで、良い演出家になって欲しい。ちゃうかでお前の創造力と想像力を爆発させるんやー。怒涛の3週間、君は倒れなかったけどシンプルに心身が心配。新歓役者めっちゃ嬉しいけど、新人終わったらいっぱい休んでね。新人楽しかった?私はロビンソンが稽古場で笑ってる時が1番好きだったわ。あー面白い人が面白いもの見て面白いこと思いついてるーおもしれえってな。舞監は演出を支えるべきなのにロビンソンは自立して私がむしろ寄りかかってたかもしれない。公演期間の3ヶ月、本当にありがとう。同期のこと一番好きなのロビンソンよな。不器用さんめ。
藤丸翔
何を言ってもいい人。年齢的にお兄ちゃんなんだけど、私的には弟。いやでも、なんでも受け止めてくれる寛容さに甘えてるだけだからごちゃいがお兄ちゃんなのかもしれない。今公演で、照明チーフとしての有能さを遺憾無く発揮してた。普通に凄いし、かっけえ。照明のこと1ミリも分からない私が「そーすふぉーってどんな漢字書くの?」とか自分でも意味不明な質問しても、ちゃんとつっこんでから真面目に答えてくれる。優しいよねこの人。とても頼もしくて、先輩にも認めてもらえる彼の仕事ぶりを嬉しく思ってます(母かな) これからもっと色んな経験を積んで、凄い人になっていくんだろうな。君の考えた照明大好きよ。自分の気持ち気正直な彼は、たまにこっちがヒヤッとする発言をします。特に先輩に対して笑 今回は新人公演なので、あまり失言はなかった気がするな。少しごちゃいの失言を楽しみにしてる自分がいることに気づいて笑った。今回、ちゃうかとしては初役者で、ハマり役すぎるキャラクターに、最初の読み合わせで爆笑しました。先輩方なら分かってくれるはず笑 すごく自然で、こうゆうやついそう〜みたいな良いキャラをしてます。舞台上でイキイキしてる彼を見るのはすごく嬉しい。アドリブ王のロビンソンとペアのシーン、しんどそうだけど頑張って。キレキレのアドリブツッコミ期待してる。
久保勇貴
なりたいけどなれない人。2月上旬、ほとんどの人が諦めていた新人をずっと打ちたいと希望を捨てなかったのが彼。今公演、彼がいないと上演は不可能でした。その点で、たくさん迷惑をかけたし心から感謝しています。制作チーフが君で良かった。私は根がネガティブなので、ずっと前を向き続けることが出来ないんですね。でもくうやはとても真っ直ぐに、そして冷静に状況判断できる人だなと思います。でもまあ、怪我と遅刻を換算するとプラマイゼロかな?いつまでも根に持つ面倒な女とか言わないでください!演技の話をすると、私はずっとこの人と共演していくんだろうなと思いましたね。今回も例に漏れずいっぱい絡みます。今公演、シーンもキャスパもくうやと一緒のところが1番楽しい。どちらも顔を見合わせる瞬間があるんだけど、その時の彼の表情は好きですね。10月公演から良い表情する役者だなと思ってます。くうやは何事にも真っ直ぐ全力で、見ていて気持ちがいい。そのせいで、自分が気づかないうちに無理をしていたり突然スイッチが切れたように元気がなくなったりすることもありますが笑 一番最初の「なりたくてもなれない人」について。私の中でなりたい人には二種類あって「ちょっと頑張ったら届きそうな目標」と「どうやっても近づけない憧れ」があります。彼は後者で、こんな人になれたら人生楽しそう、とか思うんですけど、でも私は彼のようにはなれないなあとどこかで分かっているんです。(このあいだ、くうやは他人に嫉妬しないということが判明しました。まじかよ、そんな人間いるのか。嫉妬するとしたらみんな自分より凄いところがあるから、全人類に嫉妬してるよーとか言ってた。まじかよ。)完全に違う考えの持ち主だと思う一方、やっぱりこうなりたいと思ってしまうジレンマのせいで、その憧れを受け入れられるくうや全肯定期とそんなふうになれねえよっていうくうや嫉妬期が生まれ、対応に波が出てしまい申し訳なく思っています。まあ、何が言いたいかって言うと、いつもありがとう、強く生きてくれ笑
あしもとあしっど
未知。努力家だなと。よくそんなに頑張れるなあすげえなあって思ってる。絡むシーンが割とあって一緒に稽古することも多かったけど、現状に満足しない姿勢がすごいと思った。好きこそ物の上手なれって感じ。演劇が好きな気持ちが伝わってくる。皆さん、ニトロの台本見たことあります?すげえよ。ありゃすげえ。恐縮ですが、10月公演の自分の台本を思い出した。すごくたくさん考えて、言われたことを熟考して、自分の中で落とし込んで、より良い物を作りたいって気持ちは尊いよね。ニトロは普段と演技のギャップが大きいなーと感じる。別人格じゃね?って思う、表情とか声とか。そこまで代われるの凄いよな。今回の役、めちゃめちゃキャラが立ってると思う。座組ならわかると思うけど、ニトロの不思議な手足の動きはめっちゃツボだった笑 あとたまに、めっちゃ目力強い時あって自分の存在潰されそうとか思う。なかなか雑談する機会がなくて、ニトロの性格とか人物像はまだ掴みきれてないけど、誰かからアイデンティティ云々の話を聞いて、この人は面白いぞって興味を持ってる。私も思考っぽい所があるから、彼が普段どんなことを考えてどんな人間になりたくてみたいな話を聞いてみたいなと思う。今のところ化学に対する愛しか伝わってない…。このあいだひろせんせーとなにやら理系トークで盛り上がってたけど、私にはアボガドロ定数が何かすら思い出せなかった。こんな文系脳の私とも仲良くしてくれよな!かなり雑な紹介になってしまったけど、ニトロはきっとこれからもたくさん役者をやってくれると信じてるので今後のための余地ということで!前半のニトロと絡むシーン、個人的にお気に入りです!注目!
アニー
信頼の塊。みんなご存知の通り、スタッフにおけるアニーの信頼度は最高です。特に美術系はセンスが光り、舞台や小道具は彼女なしには考えられません。みんな、まあアニーなら大丈夫やろって思ってる気がする。信頼の裏返しとはいえ、たくさん仕事任せてる気がして申し訳ない。アニーが作るものがとっても好きなので、本当に今後が楽しみ!今度、宣伝美術にも入ってくれて、近々ステキなチラシが見れるのではとワクワクしてる。
役者としては、初めてとは思えないほど堂々と楽しそうに演技をしてる。彼女がまだ入団を決めかねているときの読み合わせを知っているからこそ、新人で役者をやっている姿に感動する。めっちゃかっこいいよ、あと面白い笑 もともとスタッフ志望で入ってるし、初めは演技に対して恥ずかしさとか自信なさの見えたけど、稽古を通してどんどんどんどん成長して、常に新しい課題を見つけて模索している姿はシンプルに尊敬する。演技の楽しさに目覚めてくれたようで嬉しい。(私が思うに)アニーが拘っているシーンがあって、キャラクターの変容っぷりとかっこいい低音ボイスに注目して欲しい!新人始まる前までは、たまに話す〜くらいの関係だったけど、一緒に時間を過ごすにつれ仲良くなれた気がする。たまに、気がつくとアニーが横にいて、くっついてくれてることがあってめっちゃ可愛いなーとなんか妹みたいに感じたりしてます。基本、アニーの方がお姉ちゃんなんだけどね笑 先輩はもちろん同期にもしっかり気を使えて優しいんだけど、言うべきことはちゃんと言うし関西のノリもあって、とても話しやすい。よく同期の面倒を見てくれてるイメージ。みんなボケだしふざけることが多い中で、一緒に笑いつつ冷静に諌めてくれる姉ポジ。アニーがちゃうかで楽しそうにしている姿がとっても嬉しい。これからも楽しいこといっぱいしよう!
雑賀厚成
安全地帯。よく話す同期。秋頃は、「シドはつくもの飼い犬」とか「地蔵に話しかけてるみたい」とか言われるくらい私が一方的に喋ってた気がするけど、今では5:5(たまに6:4でシド)くらいになりました。仲良くなれたのかなーと思ってます。お互い10月からずっと役者をしてるけど舞台で絡めるのは初めてでとても楽しいです。インパクトの強いシーンなので地笑い堪えるのに必死…笑 シドの演技は彼にしかない雰囲気があって、きっと演出もそれを見ての今回の役なんだろうなと思います。月並みな上手い演技は素晴らしいけど、その人にしかない味は唯一無二だと思う。そしてこのこは本番に強いらしく、これまでも何度も覚醒してきた。その姿を舞台上で見れると思うとワクワクするけど負けてらんねえと闘志を燃やしてます。シドは私にはない優しさに溢れていて、誰も傷つけないような言葉&面白い話を沢山してくれます。シドも関西人だな、と気づけたのは割と最近。私がイライラしてる時とかメンタル弱ってる時いつも泣きついてしまうので本当に感謝しかない。シドはみんなの精神安定剤だと思う。彼はあんまり弱ってる感を出さない(私が気づけないのか?)ので、人知れず病んでないか心配。もっとみんなを頼るんやで。公演期間中、シドが自転車を直すのが早いか私がコンタクトを買いに行くの早いか勝負をしましたが、私が勝利を収めたことを報告しておきます。
オペさん
照明
トニーー板倉(31期)
稽古後一緒に帰りたい先輩。トニーさんがいてくれるだけで安心感が凄いです。一緒に帰ると、美味しいご飯or楽しいカラオケに高確率で連れて行ってもらえるので嬉しいです。来セメからお忙しいみたいで、お会い出来る機会減りそうで悲しい。いや、トニーさんは箱の妖精だからなんだかんだ会える気がする。オペ席でたくさん笑ってください!
音響
佐藤舞弥
癒し。12月公演くらいから仲良くなった。きっかけはよく覚えてない。第一印象は声が可愛い〜で、声フェチの私的には仲良くなりたくてしょうがなかった気がする。すごいふわふわしてるんですよね。話し方とか雰囲気とか。そこにもすごく惹かれるし、たまに吐く毒も人間味があってとても好きです。私のこと唯一、ちゃん付けで呼んでくれる。なんとなく距離がある気がして呼び捨てが良かったけど、最近はつくもちゃん〜って言いながら寄ってきてくれるのが小動物っぽくて好き。どうしよなんの紹介も出来てねえ。みんなご存知だけど、とても有能メイクチーフです。事務的な仕事はもちろん、メイク案とかアイデアが豊富で、いつも奇抜だけど素敵なメイクを完成させてくれます。演劇において、舞台や照明と比べたらメイクは小さな存在だけど、それでもちゃんと意味があるんだって思わせてくれます。彼女と(普段の)メイクの話をするのも好き。結構タスクを溜めがちらしく、少し目を離すと病みかけてたりするので心配。でもきっと自分で立ち直るんだろうなーと私は放し飼いしてます(こうゆう所が冷たいって言われるんだよね)でもそれは信頼の裏返しなので、まやちゃんに頼んどけば大丈夫だろっていう気持ちで今公演過ごしていました。もちろん、その期待以上でしたけどね。スタオンだからなかなか会えないので、私的には役者をやってもらいたい、そしてもっとお話したい。そろそろまやちゃん呼びから、マヤに変更しようかなとか思ったり思わなかったり。彼女はたまに会えるそのレアさがいいのかもね。同期みんなまやちゃん大好きです。またラーメン食べに行こうね!!
音響オペ補佐
なしもとはな(31期)
デキル人。スタッフは宣美しか被ってないけど、そのセンスと仕事の速さに感服してる。音響でもその耳の良さを遺憾無く発揮してた。私にはそんな音の違い聞こえない…。他の人なら、ひいひい言って泣き言を言わなきゃやってられないような仕事量を涼しい顔でこなしてるイメージ。うさはなさんが弱ってる姿見たことない。そんなかっこいいデキル女になりたい!
映像
ひろせんせー
未知2。ニトロとは違って、単純に話す機会がなさすぎてどんな人か知らない。っていう体で紹介していこうと思ったんだけど、仕込み週になって話してみるとめちゃめちゃ面白くていっぱい書けそうだよ!第一印象は、大人しくて真面目そうな人だった。でもピンキーの知り合いってことで、彼女から面白い人だよ!って聞いてたから、面白いんだろうとは思ってた。人見知りするタイプかと思いきや、真顔で不思議な発言したりギャグセン高いし普通に面白い人だった笑 程よい関西弁がすごく良い!彼の実家がわりと田舎らしく、地元トークになった時、私の実家が富山で本名田近ってことが印象に残ったらしく、あだ名より先に出身地を認知された。良い意味で、人に対して遠慮がなくて優しいツッコミをするイメージ。なんかふわふわした不思議な雰囲気がある。今回のオペ席はふわふわしてるね!本人にも言ったけど、このまま1回も会えずに終わるのかな〜とも思ってたから、新人参加してくれてめっちゃ嬉しかった!同期と打ち解けるのも早くて、楽しそうに話している姿を見て嬉しかったし、ちゃうかにも沢山来て欲しいなって思った!私的に、声が高めのイケボ!って思ってるから役者姿も見てみたい(これを言うと本人に恥ずかしがられる、かわいいね) てか、歌絶対上手いでしょ!カラオケ行こう!異論は認めん!色んな所に所属していて忙しそうではあるけど、また来て話をしたいしもっと仲良くなりたいです!気合い入れてEnterキー押すんやで!蓄光・ケミ貼りめっちゃ手伝ってくれてありがとう。助かりました。
スペシャルサンクス
劇団ちゃうかちゃわん29・30・31期の皆さん
先輩方には本当に本当に色々な場面でお世話になりました。新歓もまともに出来ない中、4月・5月の段階で皆さんに出会えたことは私の救いでした。ちゃうかに所属している、ということが既に嬉しくて、稽古や公演を楽しみに前期は過ごすことが出来ました。例年の新人よりは知識も経験もないくせに偉そうにしている私たちかもしれませんが、少しは頼もしくなった姿をお見せできるよう頑張ります!
新人公演ということで、やっぱり同期の紹介は筆が乗りますね。楽しかったです。今回、舞台監督として責任ある立場について、改めて公演を打つということ、大阪大学、ちゃうかちゃわんの名前を背負うことの責任を感じました。こんな時代に公演を打てること、心から感謝しています。同期はみんな凄い人で、1番それを感じたのはやっぱり稽古中です。全員、やる気に満ち溢れているんですよ。たしかに、延期やら稽古再開の目処が立たないやらで、時間もなくギリギリの公演ではありますが、それ以上にみんなの熱量は半端じゃないです。演劇好きなんだなあ、32期が好きなんだなあ、ちゃうかが好きなんだなあと感じます。まあ、私もだけどね!!!そんな皆と公演を打てることは本当に嬉しいし、成功させたいなと思います。
私の中で、新人公演はトクベツではなく、本公演と同じ立ち位置でした。いや、むしろ初めの頃は新人に全然乗り気じゃありませんでした。頼れる人がいない状況で、右も左も分からない私たちが公演なんて打てるのか。仲良しを謳ってきた32期が新人公演を通して空中分解するんじゃないか。笑い事じゃないですよ、そんな兆しもありました。先輩方が大好きで、先輩方が作ってきたちゃうかの雰囲気が好きな私は、みんなと向き合うことが怖くて逃げ出したかった。スタオンでもいいかなって本気で考えたくらい。でも、みんな向いてる方向が違っているとしても、新人成功させたいって気持ちは一緒だったんだよね。だから通る道が違っても最後はひとつになれる、そんな人達だと気付けました。本当にみんな熱くて強い想いを持っていて、みんなが頑張るなら頑張ろう、この人たちについていこって思った気がします。私は先頭にたってる振りをして、実はみんなに後ろから押してもらってた、そんな感覚です。新人だから役者をするとか、新人で初役者参加とか、他のサークルとの兼ね合いとか、なんやかんやでこのメンバーが役者・スタッフをする機会は今回だけなのかもしれませんね。私はただ、向き合うのが怖かっただけなんだな。ここで諦めちゃダメだろうが。ずっと逃げてばかりでいいのか?俺はもう前向きに…そう、ちょっとは前向きになれたのかな。少なくとも今、新人公演は私たち、私にとって特別です。公演期間は3ヶ月。駆け抜けたのは3週間。涙が出そうなくらい幸せだったよ。
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