#僕と幽霊が家族になった件
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僕と幽霊が家族になった件(Marry my dead body)見たよ。
社会風刺、コメディ、ホラー、サスペンス、アクション、ヒューマンドラマが盛り込まれたエンターテイメントで面白かった。
まぁ盛り込みすぎて一番のテーマはなんなのか、ぼんやりしちゃった感はあったけど。
主人公のミンハンはゲイ嫌いというか、時代遅れの価値観を持っている勘違い野郎な感じだったけど、ミンハンの考え方がガラッと変わった感じはあんましなかったかな。
同性婚が実現したからこそ、結婚したいと思ったマオマオと結婚がそもそも合わない元彼との気持ちのすれ違いが起こって、ずっと誰かと一緒にいる願いって叶えるのは難しいんだ、となるのは切ない。まぁだからこそ、同性と��結婚(や離婚)が当たり前のように認められる一歩踏み出した社会と日本のような社会とは天地との違いがあるよなと思った。
映像にとても高級感があり、特に台湾の風景が綺麗に撮影されてたなぁ。
呪詛に出てたおばちゃんが出てて、「あの映画はちゃんとフィクションだったんだ!と安心したw
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2023年
旅行
海外旅行が再始動できたことが本当に良かった。私の人生の鉄剤。(もうちょっとロマンチックな言い方ができないのか)とにかくあれば、元気に過ごすことができる。1月石川、2月フロリダ、5月韓国、8月新潟、11月アナハイム。国内旅行は減らして?、航空会社のセールやJRのポイントを使ったりして、移動にあまりお金をかけない代わりに良い温泉に泊まったのがかなり楽しかった。もうあまり観光はしなくて良い。美味しいものが食べられてゆっくりしたい。来年は台北に行くことが決まっているけれど、それ以外何も決まっていない。
読書
読んだ本は25冊。これでも月2冊の計算か。本当に全然読めなかった感覚。図書館で借りた本も読み終わらずに返すことが多かった。期限がないと読み切れないと思っていたけど、忙しくて結局読み切れない。2024年は本を買う生活に変えようかな、とも思うけど、図書館には通ってしまうし、本の適切なリリースを考えないと、大変な部屋がますます大変なことになってしまう。要検討。
読んで良かった本5冊
①アメリカの壁/小松左京
②実は内向的な人間です/ナム・インスク
③さみしくなったら名前を呼んで/山内マリコ
④chatter/イーサン・クロス
⑤私は自分のパイを求めるだけであって人類を救いにきたわけじゃない/キム・ジナ
映画
鑑賞映画は約60本。コロナが終わってこちらも減少。今年は自分的大ヒットがなく終えた。台湾映画は劇場公開されたものはたぶんほとんど観られたのが良かった。日本映画はあまり観ていない。
好きな10本
①生きる
②好きだった君へのラブレター
③1秒先の彼
④僕と幽霊が家族になった件
⑤キングダム 運命の炎
⑥わたしがやりました
⑦Perfect Days
⑧きっと、それは愛じゃない
⑨赤い糸 輪廻のひみつ
⑩ウィッシュ
その他
昇進した。今までも忙しかったのにもっと忙しくなりそうな気配。なんとか仕事をする時間を減らす方向に動きたい。
韓国に行って、コスメブームがやってきた。特に基礎化粧品で肌の状態をあげること。そしてメイクをすること。自分へのケアの1つ。正しいかどうかを置いておいて、アイメイクが少しできるようになったことが進歩。
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@Ohmypopopo @yoqips様のテンプレートをお借りしました (https://privatter.net/p/10318628)
◆ キャラクターシート
ウィークエンド CS末尾番号【0】
◆身上調査書
姓名:ウィークエンド・シンドローム
年齢:享年29歳
性別:男性
種族:ゴースト
血液型:A型
誕生日:2/29
身長:182cm
体重:埃くらい軽い
体型:がっちりしているが腰は細く脚が長い
髪色:#BFC5CA
瞳の色:グリーン×グレー
肌の色:ゴーストらしい青白い肌
視力:とても良い
きき腕:右
声の質:ホール全体に通る大きな声
身体的特徴:胸に大きな穴
尊敬する人:生前働いていたホテルの先輩
出身:西の日差しの強い国
家族構成:妹(ラングドシャ・シンドローム)
職業:コンシェルジュ
恐怖:人質事件
癖:都合が悪くなるとヘラヘラすること
酒癖:酒には強いが、酔うとサービス精神が過剰になる。積極的に酒を作り人を褒めまくる。
人間に対して:他人事じゃないので、みんな頑張れ〜!と言っている
ホテル役割:キャスト
*交流向け恋人/許婚:いたら楽しそう! 一人称:私/僕/俺 二人称:様、呼び捨て 呼び方:同僚達にはフレンドリーに話す
*概要 胸に大きな穴の空いたゴースト。 コンシェルジュは一応の肩書きであり、基本的にどんな業務も行う。 接客が好きで死後も仕事し足りない!と悪魔に頼んでバタースカッチ・コキュートスのホテルを紹介してもらった。 生前から名のあるホテルに勤めており大体の仕事はそつなくこなせるため他の給仕の教育係に回ることが多い。 ホテルにいる皆は家族みたいなもんやから…と���なりフレンドリーに接する。 初対面から距離が近くなりがちだが、敬意は忘れない。
*性格 愛想が良くフレンドリーな男性。ワーカーホリックで仕事が楽しくてしょうがない。 自分のことを「人の気持ちがわからない」と説明するのは天性の無神経さからこれまで対人関係の問題が多発したため。 接客自体は経験則でうまくやっている。
*モンスター生態 単純なゴースト。幽霊。 殺害されたが未練垂れ垂れだった所を悪魔に掬われ、永遠に彷徨う代わりに働ける場所を紹介してもらった。 死因である胸に空いた大きな穴は塞がることがなく、よく物が貫通しがち。 『時間が止まった人間』という定義ではあるが意識すれば霊体として身体を希釈することができる。
*能力 生前から語学に長けており5カ国の言語を使い分けていた。 ホテルに来てからも主な意思疎通は問題ない上で、種族特有の言語や伝達方法を教えてもらい、勉強して次にお越しになった時はその言語でサービスする。
*ホテル外での活動 休日もなんだかんだ働きがち。
*好きなもの
食べ物:レモンのケーキ、ローストビーフ
飲み物:アイスコーヒー
気候:タヒチの海風
色:グリーン
香り:Givenchyの香水
書籍:語学教本
動物:犬を撫でまくる
ファッション:いつも仕事着
場所:秘密に包まれた自室
愛用:仕事用万年筆
趣味:接客
---従業員詳細--- 姓名:ウィークエンド・シンドローム 属:ゴースト(元人間 1844/2/29)
『キャドー・オペラ人質事件』 【1873年12月19日】キャドー・オペラ(cadeau opéra)を襲撃、人質を取って立てこもるという一連の事件は22日、治安当局の特殊部隊が現場に強行突入し、容疑者計3人が死亡、人質のうち4人が犠牲になるという衝撃の結末を迎えた。 死亡した被害者は、襲撃時容疑者を取り押さえた47歳の銀行員、35歳と29歳の同ホテルコンシェルジュ、21歳の学生の4人である。
血の淵池の悪魔に掬われ当ホテルに斡旋。 勤続150年。 基本的にゴーストに終りは無い。 問題行動がない限り契約は自動更新。
【関係】 ・トッポギ (後輩)
*
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Vogue VLve 2020 July 1st
ニックン が珍しく自宅から行ったインスタLive45分もあるのに、ほとんど訳してくださり感謝しかないてす。
Thai to English thx to @Daffodil0624 on twitter
注)彼女のクレジットなしで持ち出さないでください
ニックン :コロナは僕を怠け者にした。エクササイズやいろいろやりに外出は出来ないな、と思えた。実はただの言い訳なんだけどね。
もし、本当にエクササイズして自分の健康を気遣う気があれば、どこにいたって出来る。家だろうが外だろうが、仕事に行きながらだって出来る。
家に居ると、Netflix見たり、ゲームしたり、ピアノの練習したりしてる。あんまり外出は好きじゃないんだ。でも僕は活動的な人間だから、外出したら、家に帰るまでに何もかも済ませようとその日をつかう。
TheBrothersTHでBroachになったことについて:普段はメンターとかオーディション番組の審査員とかは好きじゃない。誰かを批評したり、評価したりするほど、自分に才能があるとは思ってない。
でもTik兄さんが言ったんだ、アイドルであり紳士でもある若い子を発掘して育てたいって。いちばん大事なのは、この番組には台本が存在しないってこと。撮影してるどの日も、ドラマもなければ言い争いもない。僕はこれまでたくさんの国で仕事してき���から、自分の経験をこの子達に伝えたかった。
Vogue:じゃあ、番組であなたが真剣に厳しく彼らに接してるのは、リアルなのね
そうだ。厳しくしないようにはしてる。この世界で抜きんでようとどれだけの決意があるかを知りたいんだ。芸能界に入りたい人にはさまざまな理由があるだろ。ある人は有名になりたいから。またある人はお金持ちになりたいから、また別の人は自分の才能を世の中に示したいから。彼らがスターになりたい理由を見定める必要がある。
彼らはいい子達だし、マナーもちゃんとしてる。何人かは決めかねてるから、僕はその子達に厳しくしてる。課題を時間までに仕上げてなかったら、僕はかなり厳しく接したよ。でもアナンダ兄さんは言うんだ、そんなに叱るなって。叱る役は引き受けるって。だから、僕はいい役どころだった。
彼らの練習を見てたら、10年以上前の自分自身に微笑みかけてた。練習していた自分を思い浮かべたよ。20人の子達の中には、実に才能ある子もいる。
自分がJYPに初めて行った時と状況が似てる。50人練習生がいたとしたら、40人はトップクラスの才能ある練習生だった。あとの10人はルックスや身体的見かけだけで選ばれた練習生だ。この10人は悪戦苦闘してたよ。どんなに練習したって、他の練習生に追いつけなかった。たとえ、2倍頑張っても、まだまだ足りなかった。
もし僕がマイナス20からのスタートだとしたら、他の練習生は60からだった。だから、本当に追いつけなかった。TheBrothersの20人には、自分との戦いと、同じ程度のスキルを持った他の子達との競争があった。
彼らの目を見ると、練習生の頃の自分自身に思えた。振り返ってみると、毎日毎日練習していたけど、自分の未来がどんなふうになるのかは見えてこなかった。自分が他の人ほど上手く歌えてるのか分からず、可能性があるのかさえ、確信が持てなかった。歌も踊りも、韓国語さえ話せなかったんだから。
「なんで出来ないんだ?どうして、他の人より上手くならないんだ?」と何度怒られたか。「ならどうして僕のオーディションテープを見たんだよ。僕が全然ダメなの知ってるだろ。なんで選んだんだよ」としょっちゅう思った。僕が才能ないって知ってて、僕にダメ出しするんだよ。長い間、気分が悪かった。こんな叱咤はもうたくさんだった。
「才能ない。君には出来ない。最低」こんな言葉はこれ以上聞きたくなかった。トレーナーに「上達したね。出来るじゃないか」と言わせたかった。自分のその腹立たしさが、上手くなろうとする発奮材料だった。
Vogue: でもあなたは今やスターじゃない
決意と熱心に取り組む事が最も大切だが、運も重要なポイントだ。
自分はラッキーな人間だとこれまでも言ってきたけど、2PM のメンバーじゃなかったら、あの年に2PM としてデビューしてなかったら、今の地位はないと思う。
タイミングはパーフェクトだった。当時は韓国でよく知られてた外人は多くはなかった。2PM はHeartbeatのおかげでますます人気になった。だからパーフェクトなタイミングだったと言うんだ。
Vogue: HOTTESTは2PM にカムバしてもらいたい
2PM は必ず一緒にカムバックするよ。来年の中頃を予定してるけど、コロナで遅れるかもしれない。来年の僕らのプランにコロナがどれだけ影響するかわからない。メンバーはしょっちゅう会っては話をしている。会うたびに、6人で一緒にステージに立った時の話をする。僕らはあの瞬間を懐かしんでるんだ。
僕らが一緒にいた時間は奇跡だ。僕が一緒に仕事してきたこの5人は僕のベストフレンド。僕がいちばん愛してる友達だ。お互いのためなら、自分達を犠牲に出来る友達だ。
ずっとそんな友達と仕事した来た。僕達の仕事は人を幸せにする。お金では買えないものだ。運命が僕達6人を結びつけた。
考えてみると、面白い。僕は韓国人じゃない。歌手になるなんて思ってもみなかった。芸能界に入りたい願望もなかった。そして、5人に会った。単純に奇跡だね。
Vogue: 仕事以外ではどんな話をするの?
仕事の話は10%だけだよ、あとの90%はたわいもない事言いあってる。
皆んなにゴルフしようよとずっと勧めてる。チャンソン とテギョンは始めた。他の3人の説得をいまだに続けてる。
Vogue:ゴルフは何年やってるの?
ほぼ5年になる。ゴルフは自分との戦いだから好きだ。バトミントンもやるよ。本当に上手い選手をやっつけるのは大変さ。ゴルフだと、敵は自分自身だ。プレイする時は条件はいつも違う。風、雨、芝、そして自分。今と共にあれとゴルフは僕に教えてくれる。
もし、あまり先を考えると自分の目の前の目標が見えなくなる。一歩ずつ前に進むのがいい。
Q:子供と撮った写真をたくさんインスタにあげてるの見たわ。
子供は大好きさ。アメリカで従兄弟の子供達に会った時、大人になった時に少しでも楽しかったなと思えるかもしれない思い出を作ってあげたかったんだ。
僕の愛を注ぎたかった。子供を見てると、嫉妬を感じる。目の前に広がる世界を全て手にしてるみたいだ。人生は始まったばかり。なりたいもの何にでもなれる。
人生の過程において、どれだけたくさんのいい人に会い、どれだけ良いことも悪いことも経験し、どれだけ愛されるかにかかってる。だからお金はあげたくない。僕の愛情を与えて表現したい。自分達がどんなに価値があるか子供達に知って欲しい。素晴らしい大人に育って欲しい。
僕が会った子供達には愛されるために生まれてきたんだよと知って欲しい。君達は世界の光だ。どんなに大切で価値のある存在なのか知って欲しい。そんな基本的な事は知っておいて欲しい。
子供は好きだ。でも自分の子供をいつ持つかはわからない。自分の子供は人の子とは違うよ、とよく言われる。ポジティブとネガティブな両面がある、と。
だからそんなすぐには起こらない。そうだろ、HOTTEST?僕が子供との写真をアップすると、50%のファンは「いつ自分の子供を持つつもりなの?ニックン が自分の子供と遊ぶ姿見たいわ」と聞いてくる。
Vogue: どんなふうに子供と遊ぶの?
空中に放り投げる。あと見下ろさないようにしてる。僕が大人だって感じて欲しくないんだ。もし子供達が床に座って遊んでたら、僕は寝っ転がる。床に寝っ転がって子供と遊ぶ。友達だと思ってもらいたいから。と同時に、守られて、安心な存在だと感じて欲しい。僕は大きいからね。
子供達と遊ぶのは楽しいよ。でも、子供ってある時点で超アクティブになる。それはすごく疲れるよ。もっと高く放り投げられるのが気にいられると、翌日は腕がブルブルだよ。
Vogue:UNICEFとは何年仕事してるの?
7年だ。僕の家族もいくつかの財団に寄付してきた。
僕が韓国で仕事し始めた時に、マラリアに罹った子供達のUNICEFの広告を見たんだ。すぐにマネージャーに頼んで電話してもらい詳細を聞いた。寄付した後、僕の名前を見た韓国のUNICEFスタッフがお礼の電話してきた。それから何年かして、タイUNICEFが親善大使にならないかと言ってきたんだ。
UNICEFのスポークスマンになる申し出を僕は受けたよ。過去7年間に、数カ所のスラム街で子供達に会った。信じられないだろうけど、バンコクではショッピングモールのすぐ脇にスラム街があるんだ。
ショッピングモールのバッグ屋さんほどの広さもないスペースに7、8人の家族がぎゅうぎゅうに暮らしてる。そんな住環境ってないだろう。学校に行ってなきゃいけない子供が家族を助けるために働いてたり、弟や妹の面倒を見なきゃならなかったりする。そんな子供がたくさんいる。
そんな家族を訪問し、話をした。おじいちゃん、おばあちゃんが孫達をご飯だよと呼んだ。何を準備したんですか?って聞いたよ。走ってやってきた孫達は幸せそうだった。そうして僕は見たんだ。おじいちゃんが古いもち米ご飯を取り出して塩をふりかけたのを子供達にあげてた。幸せそうに食べてたよ。
正直言って、彼らの世界やスラム街の住環境全てを変える事は僕には出来ない。僕に出来る最善の事は、僕がスラム街で見てきた事を出来るだけたくさん、人々に伝える事だ。
人はこういう事には興味がない。自分の家からそう遠くない場所にそんなところがあるとは思いもしない。基本的な権利も、当然与えられるべき機会もない人達が何十万人といる。
UNICEFが子供の手助けをしている事を知ってる人もいて、寄付をしたい人もいるかもしれない。寄付が何に使われてるか知ってますか?いちばん重要なのは子供達の食料を買うことだ。特に、アクセスが難しい地域に住んでる子供達にはすぐに口に出来る治療用食品ペースト、薬、そして水を提供している。
読書を促す素晴らしいキャンペーンもやってる。移動図書館キャンペーンだ。トラックを借りて、移動図書館に改造し、地方の遠い村々まで行く。
「私は金持ちじゃないし、寄付出来る余裕はない」と考える人もいるかもしれない。でも10バーツだって、100バーツだって毎月寄付すれば大きく違ってくる。皆んな一緒になって助け合えば、どんな事も前に進められる。1万バーツとか10万バーツとか寄付する必要はない。寄付は一定額に達しなくても出来る。
本当に真心があれば、1バーツだって充分だ。1人1バーツを1万人が寄付すれば1万バーツになる。1万バーツあれば子供達のワクチンやら食料やらいろいろな物に使える。
Khunはタイホラー映画 Crackedについても話した。今年公開予定だが、コロナの状況によると。
Vogue: 幽霊は普通は怖い?
怖くはない。そんなに怖くはないにしとこう。遠い寂れた場所に1人で行くのはごめんだ。
タイの幽霊Pee-Umを体験したことがあるんだ。(寝ている間に窒息や金縛りを感じる。魂が生み出すと信じられている幽霊)それは初めて滞在したホテルで起こったんだ。窒息したように感じた後、目を開けると胸の上に幽霊が座ってるって、よく言うよね。時にはベッドの脇に幽霊が立ってるのが見えるって。その感じを体験したのは初めてだった。眠ってた。眼を開けた時、全く動けないとわかった。
出来るだけ眼を開けて、頭を起こし部屋を見渡そうとした。部屋に誰かがいるのを見れないかと。でも残念ながら、彼/彼女を見る事は出来なかった。
怖かったけど、僕にもそういう(霊)感があるのか本当に知りたかった。誰も見れなかったなんて残念だった。そのまままた寝たよ。
Vogue: ファンはニックン がいつタイに戻るか知りたがってるわ
今日ママにも同じ質問されたよ。いつうちに帰ってくるの?って
もしタイにイベントやら仕事やらで帰ったら、2日仕事するとしても、14日はタイで自己隔離しなきゃいけない。韓国に戻ってきたら、また韓国でも14日間は自己隔離だ。ひと月以上。だから、今は他の国で仕事と折り合いつけるの難しい。普段はしょっちゅう飛んで数カ国で仕事してる。
今回、何ヶ月も家にいた。そんな事には慣れてない。先月の電気代はいつもの月よりちょっと高かったよ。
僕のことを飽きずに待ってて欲しい。皆んなも元気でいて下さい。運動は忘れずにしてね。これ、ホントに大事!身体に良いもの食べるようにして。笑っていよう。そうすれば世界も少しは明るくなるから。
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Collections of Hiroki Kikuta’s blog
1997年秋から1999年末まで携わった、 「クーデルカ」という仕事は、僕の人生の中で大きな意味を持つ。 嬉しかったこともあり、残念だったこともあり、しかし、制作に費やした二年間は、 無駄ではなかったと、今振り返って思う。 サクノス立ち上げに助力していただいた、元セガ副社長の故藤本敬三氏の思い出。 ロサンゼルスはウエストハリウッドでの夢のようなモーションキャプチャーセッション。 胸に浮かぶままに、語るべきことは尽きない。 ここでは、写真、設定資料、デザイン画を中心に、ゲーム制作のプロセスと、 その印象を綴っている。 クーデルカのための宣伝用イラストレーション/1998 岩原裕二 部分 このサイトは、1999年12月にプレイステーション向けホラーRPGとして発売されたゲーム「クーデルカ」のディレクター菊田裕樹が、制作資料の掲載や作品解説を目的として運営するものです。ゲームをプレイしてくれたユーザーが、より深くクーデルカの世界とその魅力に親しんでもらうために、僅かなりと助けになれれば幸いです。 --- 「クーデルカ」のモーションキャプチャーは、1999年1月、ロサンゼルスはサンタモニカにあるスタジオで収録された。技術面を担当したのはフューチャーライト。普段は「ゴジラ」等のハリウッド映画のSFXを担当している映像制作会社である。遡る1998年9月、僕はイベント系を担当する人員の不足から、それを全てモーションキャプチャーで賄うという構想を建てた。全体で見れば一時間をこえるイベントシーンを、手打ちのアニメーションとスクリプトで実現しようとすれば、5人がか��の仕事となる。しかも、一向に従来のRPGの域を出ない、面白みの無い方法だ。ゲームのドラマ部分を表現するために、効果的で、目新しくて、しかも大きな省力化になる方法として、モーションキャプチャーは画期的な試みだった。無論、問題はあった。技術的に不可能だというのだ。物語の性質上、最大4人を同時にキャプチャーし、併せて音声も収録する必要があったからだ。僕はまず、日本国内のスタジオで実験をし、手応えを掴んだ。その結果、モーションキャプチャーは十分に魅力的な効果を生み出すという確信を得た。しかし同時に、僕の要求する仕様は日本国内では実現不可能であるということも分かった。だが、そこで諦めてはクリエイターが廃る。幸い、以前「双界儀」の録音でお世話になったデイブレイク社の大竹氏が、海外のコーディネイターに詳しいというので、畑違いながら探してもらったら、ロスにそれらしい技術を持った連中が居るという。早速連絡を取り、俳優のオーディション方々会いに行った。ところが実際に会ってみると、彼等も僕が考えるような仕様でキャプチャーをしたことがなかった。4人を同時に、音声もいっしょに、しかも数分に及ぶ芝居をいっぺんに収録する。そんなの聞いたことがない。しかし驚いたことに、面白そうだから是非やってみょうと、彼等は言ったのだ。新しいことにチャレンジするのが嬉しくてしょうがないスタッフ達。こうして、この前代未聞の試みは実現したのである。 クーデルカを演じてくれたヴィヴィアンとエドワードを演じてくれたマイケル。100人程のアクターをオーディションした中から選んだ人達だ。アメリカのアクターの層は厚い。皆、良い作品に出演することを夢見て、演技の勉強をし、技術を身に付け、レストランなどで働きながらハリウッド近辺で暮らしている。アメリカでは基本的に、どのような有名な役者でも、名前だけで出演が決まることはない。必ずオーディションをして、その役に本当に相応しいかどうかを確かめられる。彼等は、役の大小に限らず、それを勝ち取ることに真摯で、また仕事に臨んでも出来るだけ良い結果を残そうとする姿勢を崩さない。 セッションに参加してくれたスタッフ達。フューチャーライト側から、モーションキャプチャーの陣頭指揮にあたってくれたダン・マイケルソンをはじめ、プログラマーのランディ、エンジニアのジョン。彼等は4日に及ぶセッションの中で起った、様々な問題に素早く対処してくれた。日本側から、クーデルカのモーションを担当した竹原君。IPG側から、わざわざこのコーディネイトのためにニューヨークから駆け付けてくれたポール。そして、サウンドエンジニアのキース。 写真中央、このセッションのディレクションを全て担当してくれた、IPGから参加のデビッド・ウォルドマン。彼は日本でビデオクリップのADをしていた経歴があり、日本語が話せたため、今回の仕事に適任として選ばれた。映像制作の現場でのノウハウや、その進行に関して、彼に学ぶところは大きかった。その後、ロスでムービーキャメラマンの学校に入り、本格的に映画制作を志しているらしい。左は、デビッドの女房役のADであるクレイグ。右に居るのは、9才のシャルロッテ役を演じてくれた12才のサラ・パクストン嬢。その可愛らしさで、スタジオの人気者だった。しかし、プロとしての意識は本物で、長台詞を覚え、慣れないキャプチャーに戸惑うこともなく、見事に演じてみせた。下の写真は、キャプチャーセッションに先立つ、リハーサルの時のもの。近くのホテルで部屋を借り、本番の時と同じように、全ての芝居をチェックする。この時キャラクターはどんな気持ちなのか、何を考えながら演じればいいのかを、ひとつひとつ、押さえていく。このシーンは、クーデルカとエドワードが、オグデンとベッシーにスープを振舞われるところ。中央に、いかにも人の良いおばさんを演じてくれた人の良いおばさん、デニス・ホワイト。 スタジオというよりは工場といった有り様だが、実際すぐ横にプロップを組み立てる工房があったりした。一応サウンドステージとして作られてはいるのだが、防音がしっかりしていないため、上空を飛ぶ軽飛行機の音がうるさくて、撮影が中断したのには参った。真中に置いてあるのは、ジェームズら3人が大聖堂に入る扉が開かなくて悪態をつくシーンのための大道具。例えば、扉を叩く芝居が欲しい時に、何もないのにそういう振りだけしても、リアリティーは生まれない。扉を叩く時には、そこに扉があるべきだ。下の写真は、ゴミの山に埋もれてひっそりと稼動しているSGIのONYX。これに限らず、驚くような機材が、ごく当たり前に使われているのをあちこちで見た。聞けばそれらは全て、レンタルなのだという。こういう所にも、日本との状況の違いを感じた。右は、連日に及ぶ深夜の撮影で疲れ果てて眠りこける僕。 2000/11/25 菊田裕樹 --- ヴォイニッチ文書 部分 Emigre Document 紀元前5000年をさかのぼる昔、ブリタニアには高度な巨石文明を持った民族が栄えていた。今も島のあちこちに残るドルメンやストーンサークルは、現代科学を持ってしても不可能と思われるほどの彼らの技術力を、我々に示している。彼らはケルト人が到来するまで、全世界でも最も進んだ文化と文明を持つ民族であった。エジプトでピラミッドが建築される遙かに昔。中国、バビロニア、イスラエル、どの文化圏よりももっと以前に、ブリタニア全土に分布する巨石遺構は���てられたのである。 その力の秘密は、彼らの持つ宗教にあった。彼らは大地より湧きいでる生命の秘密に手をかける術を知っていたのである。生と死を操り、不死や、あまつさえ死者の再生をも我がものにし、労働力としての人間ならざる怪物を生み出し、高度な文明を築き上げた。それは自然の持つ輪廻の法則そのものを御する行いであり、神の為す神秘に等しい。いや、彼らこそが原初の「神」だったのかもしれない。彼らはその「神を遙かに遡る世界の成り立ちの秘密」を、文字にして書き記すことはなかったが、その祭儀や術としてのノウハウは、ケルト社会のドルイド僧に引き継がれた。ドルイド僧は古代人の残した祭儀法を基盤に、自分たちなりの技術的アレンジを加え、古代人には及ばないまでも、天地の秘密を力に変換することを自らのものとした。 だが、彼らもまた、自分たちの慣習や宗教に関して書き残すことをしない。ケルト民族の在りように関して最初に言及したのは、まさにそこを征服せんとして兵を進めたユリウス・カエサルである。しかし、彼が紀元前50年頃に「ガリア戦記を」書き記す以前に、前4世紀頃ケルト民族と親交のあったアレクサンダー大王が、アレクサンドリアの大図書館に收めるべく、ドルイドの秘儀をギリシア語で文書化させていたのである。彩飾図版を交えて作成されたこの文献は、その任に当たった人物の名を取って「エミグレ文書」と名付けられた。 この文書は閲覧を禁じられた秘密の書として王宮の図書館に保管された後、戦禍を逃れて持ち出され、数世紀の間、各所を転々とする。その間にはキリスト教の成立やローマカトリックの隆盛などがあるが、6世紀に入り、アイルランドに様々な修道院が建設され、写本事業が盛んになった結果、イタリアの片田舎に忘れられていた「エミグレ文書」は、リンデスファーン島にある写本で名高い修道院に持ち込まれた。だが、ギリシア語に堪能でない彼らは、内容の美しさや彩飾の艶やかさに目を見張りこそすれ、文書の持つ本当の力に気づくことはなかった。 9世紀に入って、度重なるヴァイキングの来襲により、蔵書の保存に危機を感じた修道院は、重要な文献を各地に避難させ始める。アイルランド生まれで敬虔な信者であるヨアヒム・スコトゥスとダニエル・スコトゥスの兄弟は、大修道院長より「エミグレ文書」を託され、その内容に驚愕した兄ヨアヒムは弟ダニエルをウェールズの辺境にあると記される聖地へ赴かせ、自らは写本を携え、フランス王の元に庇護を願い出た。弟ダニエルは聖地で修道院を建て、祈りを捧げて一���を終わる。兄ヨアヒムは碩学として歴史に名を残すが、その死後、ローマ法王庁に写本を接収されてしまう。 キリスト教を脅かす力を持ったこの文書は、ローマ法王を恐怖させ、禁断の書物として誰にも閲覧を許すことなく、書庫の奥底にしまい込まれたが、13世紀になってその損傷の激しさから、新たな写本を作る必要が生じ、当時最高の知識人として名高かったフランチェスコ会修道士ロジャー・ベーコンにその任が与えられた。彼は10年にも渡ってフランスに幽閉され「エミグレ文書」を精確に複製するこ���を強いられたが、その過程で文書の知識は彼の物となった。秘密を守るため彼をそのまま監禁し、二度と世に出すまいという法王庁の意図とは裏腹に、彼は密かに外部と連絡を取り、自らが解読した文書の示す聖地へ赴き、生命の秘密を探る試みに取りかかるべく、着々と準備を進めていた。 彼は、先にダニエル・スコトゥスが建てた修道院を改修し、実験施設となるべきゴシックの大聖堂を建築させた。そこで彼がどのような秘術を試みたのかは、記録に残っていないが、法王庁の手を逃れフランスを脱出した彼は、二度と姿を現すことはなかった。彼は、姿を消す前に、新たな一冊の写本を残している。エミグレ文書の記述を元に、ウェールズ語の暗号で書かれたその写本は、聖地の修道院に残されていたが、16世紀になってエドワード・ケリーとジョン・ディーによって発見され、新たな写本として書き直され、さらにローマの修道院を経て、20世紀になって古物商ヴォイニッチによって再発見され、ヴォイニッチ文書と名付けられて、現在エール大学のベイニック図書館で閲覧できる。 また、ロジャー・ベーコンによって複製された「エミグレ文書」写本(原典は破棄された)は19世紀までヴァチカン宮殿の奥深くに秘蔵されていたが、1890年頃何者かに盗み出され、以後その行方を知る者はいない。ダニエル・スコトゥスが建てた修道院は1536年の修道院廃止例の後、政治犯や重要犯罪人を拘留し処刑するための施設へと転用され、聖なる場所で多くの人命が闇に葬られた。 (設定資料より) 2000/10/25 菊田裕樹 --- 2000/10/25 Hiroki Kikuta Koudelka Iasant 1879年生~没年不詳。イギリスはウェールズの田舎、アバージノルウィンの寒村生まれのジプシー。幼い頃から強すぎる霊能力を持ち、様々な怪異を起こすため、呪われた存在としてジプシーの世界から追放される。1888年9才頃ロンドンで霊能力者ブラヴァツキー婦人に拾われ、秘蔵っ子として厚遇されるが91年婦人が他界すると共に、再び放浪の旅へ。普段は霊媒として失せ物を探したりして、糊口をしのいでいる。 年は若いが、世の中の事情を一通りわきまえたところがあり、良く言えば大人、悪くいえばすれっからし。普段はあまり明るい顔をせず、大体において不機嫌そうで態度が悪いが、時折女らしいところを見せる。差別される者や愛されない者に肩入れする傾向がある。自分を表現することが下手。 (登場人物設定資料より) Notes クーデルカという名前は、著明な写真家であるジョゼフ・クーデルカから採ったものだ。口にした時の不思議な響きと、民族や国籍を感じさせないところが気に入って、名字ではなく名前として使わせてもらった。手元の資料を見ると、キャラクターデザインの岩原裕二氏にコンペ用のスケッチを発注したのは1998年の3月26日だが、遡る2月10日の段階で、僕はゲーム全体の進行手順と、シナリオの箱書きを完成させていたし、キャラクターの心理設計も完全なものとなっていた。クーデルカはジプシーの出身である。彼らはインドをもっとも古い故郷とし、放浪に生きる人々で、自分たちのことを誇りを込めてロムと呼ぶ。それは人間という意味である。一般社会の人間たちとは隔絶され、自分たちの血縁関係の中だけで生きている彼らにとって、追放はもっとも苦しい罰となる。クーデルカはその特異な能力ゆえに、子供の身でジプシーを追われることになった。僕は彼女を、どこにも安住することを許されない、最も孤独な存在として設定した。平和で豊かな暮らしの中に、彼女の居場所は無い。呪われた魔物や幽霊が跋扈する、廃虚の暗闇の中にだけ、かろうじて自分を置くべき空間を見出せる。クーデルカは、そういう悲しい存在なのである。 岩原氏はこのプロジェクトのために、100枚にも及ぶキャラクタースケッチを描いた。クーデルカだけでも数十枚になるが、そのほとんどはポリゴンによるモデル化のための制約から来る衣装デザインの試行錯誤であり、キャラクターの本質部分に関しては、最初から完成形に近いものを掴んでくれていたようだ。また、氏にはゲームの制作に先行して角川書店の雑誌で漫画連載を始めてもらい、ゲーム設定の1年後のストーリーという立体的な構成で、物語の厚みと魅力を増すことに貢献してもらった。 クーデルカのポリゴンモデルは、当時広島のコンパイル社の倒産で行き先を捜していた渡辺伸次氏に、経済的に援助するということで東京に移り住んで制作してもらった。彼は同社の仲間とCGスタジオであるD3Dを設立した。そのころの彼等には全く実績が無かったが、見せてもらったプロモーションムービーのキャラクターの動きに並ならぬ情熱を感じ、彼等と一緒に新しいチャレンジをする気になったのである。しかし実際、キャラクターのモデリングは難航した。ゲームスタッフ側の無理解も大きな原因だったが、D3D側もクーデルカほど高いレベルのモデルを作るの��初めてとあって、試行錯誤のために何ヶ月も時間が必要になった。リテイクに次ぐリテイクの嵐。最終的には、僕自身が彼等の後ろに付いて、鼻をもう少し縮めてだの、唇をもう少し上げてだのと細かく指示を出し、なんとか納得のいくものに仕上がるまでに半年近くかかっている。 モーションキャプチャーにおいて声と演技を担当してもらったヴィヴィアン・バッティカ嬢は、米サンタモニカ・スタジオで行ったオーディションの中で、クールで独特の色気があり、抑えた芝居の出来る人として選定した。ただ可愛いだけではなく、クーデルカの持つ陰の部分を表現するためである。彼女自身まだ若く経験も浅いとはいえ、その熱意と努力は相当なもので、10分にも及ぶ長丁場の芝居、何十行もある長台詞を、たった数日で完全に頭に入れて撮影に臨む辺り、なるほどプロというものはこういうものかと感心させられた。度重なる技術的不備にも嫌な顔をすることなく、エドワード役のマイケル・ブラッドベリーと現場の雰囲気を明るく盛り上げてくれたことには、感謝の言葉もない。 2000/10/25 菊田裕樹 llustrated by Yuji Iwahara このページ内の全ての画像及び文章の著作権、版権、複製権、二次使用権は全てその正当な著作者、権利所持者に帰属します。よって、無断複製、無断転載を含め、著作権法に違反する形態でのあらゆる利用を禁止します。 All Rights Reserved 1997 1998 1999 2000. クーデルカは(株)サクノス・SNKの登録商標です。 All Rights Reserved (C)SACNOTH/SNK 1999 --- Nemeton Monastery イギリスはウェールズ地方。アバースワースにほど近い、海沿いの断崖に、人気もなく廃墟と見まごうようなネメトン修道院がある。ちょっとした公園ほどもあるその敷地の中には9世紀頃に建てられたと思われるロマネスク様式を色濃く残した修道僧の宿坊をはじめ、13世紀頃に建てられた飛び梁も美しいゴシックの大聖堂、会堂をかねた図書館、鐘つき堂、屠殺場を兼ねた炊事場、処刑台に使われた東屋、近代になって建てられた宿舎などが、全体を囲む壁と一体化して並んでいる。16世紀に修道会を禁ずる制令が発布されるのを待たずして寂れ、廃墟と化したこの場所は、17世紀に入って政治的な犯罪者や虜囚などを閉じこめたり処刑したりする目的に使用された。今でもどこかに地下牢が隠されているといわれている。近代になって、訪れる者も居なくなり、荒れるに任せていたのを、ある資産家が物好きにも買い取って移り住んだが、程なくして彼は姿を消し、後には様々な憶測と噂だけが残った。あるいは、財宝が隠されたまま埋もれているといい、あるいは、悪魔が彷徨っているといい。再び廃墟と化したこの修道院を訪れるのは、人目を���ける犯罪者や一攫千金目当ての食い詰め者だけだった。 (制作資料より抜粋) ネメトン修道院初期設計図/1998 松野泰三 1998年2月の段階で、ゲームの進行に伴う、マップ全体像の設計は、ほぼ出来上がっている。八棟の建物、地下道、墓地など、全部で100個見当の区画からなる構成で、イベントと連動して移動できる範囲が拡がっていく。実は、このような閉鎖された空間を舞台として設定したのは、単に演出的な意図によるものではなく、人的物理的制約による結果なのである。例えば、高度に訓練されたグラフィックスタッフが20人居るならば、一年間に500から600枚を超える背景画を制作することが可能だ。しかし、楽観的に考えても数人が限度と思われる人材確保の現状を前提にすると、およそ100マップ200~250画面が、用意できる背景数の上限と見なければならない。一般のRPGのように、ワールドマップがあって幾つもの街があって、などという仕様は、最初から無理。そこで、極めて限定された空間を設定し、それを有効に活用しつつ、様々な雰囲気のバリエーションを提供できるような仕掛けを考案した。それがホラーRPGという枠組みだったのである。 ネメトン修道院初期設計図/1998 松野泰三 ネメトン修道院を構成する建物群は、そのひとつひとつが、建てられた年代も、目的も異なるものである。各々の建築様式の違いは、ドラマの進行と相まって、ユーザーを飽きさせないための装置として機能する。扉を開けて新しい建物に入る度に、物語が次なる展開を迎えたことを実感してもらうために。微にいり細にわたり、緻密に作り上げることが、あたかも実際にそこに居るかのような臨場感を生む。そのために最も必要だったことは、実際の建築物を参考にすることであった。 ネメトン修道院初期設計図/1998 松野泰三 物語上でアバースワースとしたのは、アイルランド側の海岸にその場所を置きたかったからだが、98年8月にスタッフを伴って訪れた実際の取材は、ウェールズの下側に位置する観光地ペンブロークシャーを中心に行った。その一帯は、草原から突然に切り立った断崖が現れ、地平線の彼方まで続く、不思議な景観の土地である。その周辺に夥しい数の修道院や城跡が存在する。あるものは往時を偲ばせて健在だが、ほとんど廃虚と化した遺構も多い。セント・デイビッド教会は、中世そのままの姿で我々の目を楽しませてくれると同時に、石造りの聖堂が持つ、独特な雰囲気を理解するのに役立った。また、垂れ込めた雲と雨が作るどんよりとした暗い空気は、実際にその場に立ってみないとイメージできないものである。近辺の修道院の壁や石組みを大量に撮影して、3Dモデル用のテクスチャーとして使ったのも、大きく意味がある試みであった。 さて、ネメトン修道院の大聖堂���ゴシック建築として作られているため、本当ならば、その常として側廊が無ければならない。ゴシック建築は荷重を分散する構造にすることで壁を薄くし、ステンドグラスの設置を実現しているからである。しかし、ゲーム仕様上の制約としてプリレンダリングのマップを考えた時に、多数の柱を立体的レイヤーとして配置することが困難であるために、内部を単純な箱型にせざるをえなかった。外側から見ると、飛び梁様の補強柱が一定間隔で取り付けられているが、現実の物として考えれば、全体の重量を支えるために、壁自体もさらに厚くせざるをえないと思われる。なお、大聖堂頂部の鐘突き堂は、そのものが飛び梁によって構成されている特殊な形式だが、これは架空の物ではなく、実際に存在するスタイルであることを付け加えておきたい。 2000/10/25 菊田裕樹 --- Library : クーデルカという物語 By 菊田 裕樹 – 2000年 3月 28日Posted in: Library, Library : ARTICLE クーデルカという物語 2000年3月 公開 このサイトを御覧の方には僕の制作した RPG「クーデルカ」を未プレイの向きも多いと思う。 手短に説明すると、19世紀のイギリスはウェールズの 片田舎にある今は廃墟同然と化したある修道院を舞台に、 クーデルカという19才のジプシーが出会う様々な 怪異をテーマにした、いわゆるモダンホラーと 呼ばれるジャンルに属するゲームである。 僕はこの作品のコンセプトに始まり、キャラクター設計、 マップ構成、シナリオ、ムービーや モーションキャプチャーイベント部分の ディレクション等など、様々な種類の仕事をした。 基本的な部分の組み立てには約3ヶ月ほど要しただろうか。 全部で100冊以上の本に眼を通したが、 物語の発想の土台となったのは、 「幽霊狩人カーナッキ」という本であった。 短編集で、主人公である怪奇現象研究家カーナッキが、 様々な「怪異」と「怪異に見えるもの」に遭遇し、 あるものは解決し、あるものは良く分からないまま 終わる(笑)という、味わいのあるホラー小説集だ。 興味のある方は是非一読されたい。 さて、僕が物語を組み上げる段階でこだわるところは、 歴史上の事実を曲げないということである。 実際に起こったとして、記録に残っている様々な事件を、 相互に関連付け、その隙間を虚構で埋めていくという やりかたが僕は大好きだ。 同じ嘘をつくのでも、まったく根拠も無く考えるのと、 事実に基づいてその基盤を組み上げていくのとでは、 細かい部分でのリアリティーが違ってくる。 だから、クーデルカという物語には、 プレーヤー諸氏が考えているよりも、 ずっと多くの史実が含まれている。 エドワードやロジャーが実在の人物である事など、 歴史に興味のある方は、調べてみられるのも一興かと思う。 1898年は科学と迷信がせめぎあう世紀末の、 まさに移り変わる一瞬を捉えて興味深い時代である。 明ければすぐに1900年、近代科学文明の浸透の 象徴ともいうべき、パリ万博が開催される。 そしてそれこそが、僕がクーデルカの続編と 目論んでいた物語の舞台なのである。 ウェールズを描くために、ロンドンやペンブロークに 足を運んだのと同じように、僕はパリやベルギーに 取材をするつもりだった。 (パリ万博に出展されていた建物が、当時の ベルギー王の要望で買い取られ、 ブリュッセルに現存するのだそうだ) 会場から郊外を結んで建設された地下鉄と、 そこで起こる怪異。エースネクスト誌連載中の 漫画版のエピソードを終えたクーデルカが、 拠ん所ない事情でパリを訪れ、地下に巣喰う 亡霊どもの争いに巻き込まれていく。 実はクーデルカの続編は、僕の頭の中では4作目まで 出来ている。第一部イギリス、第二部フランス・・・ とくれば、第三部はアメリカである。 時代は大きく跳んで、1973年アメリカはシカゴ。 主人公は、シカゴ大学で教鞭を取る文化人類学者、 クーデルカ・ロードメル。 クーデルカの娘アメリアが後に渡米して産んだ子供で、 つまりは孫だ。ベトナム戦争末期とあって、 帰還兵が持ち帰ってしまった悪霊が、 様々な殺人事件を引き起こすのを、まだ生きている ロジャーの助けを借りて解きあかしていく。 (ちなみにロジャーはスーツを着て出てくる)(笑) そして第四部は1984年奈良。 関西大学で教える友人の宗教学者の元を訪れたクーデルカは 何者かに命を狙われ、陰陽師や式神と戦う羽目になる。 奈良の巨石墳墓や京都の町並みが、 雰囲気造りに一役買うだろう。 残念なことに、今のところ僕がそれらの 続編を作る予定はないが、 小説のようなものであれば、書いてもいいかなあと思う。 Story of Koudelka : Library --- Haven: On Koudelka, you served as producer, writer, and composer. What were some of the goals you accomplished in taking on these various responsibilities? Were there ways in which the project could have been better realized? Hiroki Kikuta: Let me begin by saying, whenever you divide up responsibilities among a group of people concerning the judgments that get made on a project, the end quality is bound to suffer as a result. To keep the quality high and the schedule organized on a project, it's better for as few people as possible to be making key decisions, and for them to be communicating within the group with as few conflicts as possible. The ideal situation would be for but one director to be delegated the responsibility of expressing his or her creative vision. That said, for Koudelka, I was pursuing that degree of creative control. To prepare, in gaining an understanding of the game's setting, I read about one hundred books on English history, touching on periods from the Medieval era to around 1900. It proved useful in discovering relevant episodes which could be incorporated into the story. Having several events to ground the plot in a kind of historical reality, I then started building on that foundation with some fictional events. For example, the character of Edward is based on an actual Irish dramatist named Edward Plunkett, 18th Baron Dunsany, while the woman who writes a letter for Charlotte is based on Sophie Dorothea of Württemberg. Roger Bacon is, of course, a historically famous philosopher. Also, the incident on the Queen Alice really occurred and is recorded in the captain's log of the vessel. By filling out the gaps in those historical events with fictional incidents, such as the Emigre Document and reincarnation ritual, I aimed at providing a realistic basis to the imaginary aspects of the story. Before production, some members of our staff went on a trip to Whales to gather information and capture the genuine atmosphere of the place with our own eyes. We demanded extreme accuracy in providing the background details, and we even used motion capture technology to provide culturally appropriate body language for the characters, techniques advanced enough to compete with the standards of the Hollywood industry at that time. Those challenges, which were provided by the passion motivating that project, were the real essence of Koudelka. Koudelka, "Patience," music sample I remember that I was reading the critical biography of James Cameron, who was making Titanic at that time, on the airplane to England. I was overwhelmed by his tremendous efforts to capture those startling images. At that time, I realized that it is necessary for creative work to have a degree of obsessive passion involved. I hope that some degree of that conviction had a positive result on the end product. --- As soon as it is in the year 1900, the Paris World Expo is to be held as a symbol of the penetration of modern scientific civilization. And that is the stage of the story that I was thinking as a sequel to Kuderuka. In the same way that I went to London and Pembroke to draw Wales, I planned to cover Paris and Belgium. (It seems that the building which was exhibited in the Paris Expo is bought at the request of the King of Belgium at the time and exists in Brussels.) The subway built by connecting the suburbs from the venue and the monster occurring there. Kuderuka who finished the episode of the comic version in the series of Ace Next magazine visits Paris due to circumstances that are not based, and is caught up in the strife of ghosts who nest underground. (The first line of the Paris Metro opened without ceremony on 19 July 1900,[4] during the World's Fair (Exposition Universelle - that is what is meant by subway) Actually, the sequel to Kudelka is made up to the 4th in my head. Part 1 England, Part 2 France · · · If you do, the third part is the United States. The era greatly jumped, in 1973 America was Chicago. The hero is a cultural anthropologist, Kurdelka Roadmel, who teaches at the University of Chicago. Kuderuka's daughter Amelia is a child who gave birth to the United States later, that is, it is a grandchild. With the end of the Vietnam War, the evil spirits brought back by the returning soldiers will solve various murder cases with the help of living Roger yet. (By the way, Roger comes out wearing a suit) (lol) And the fourth part was Nara in 1984. Kurdelka who visited the origin of a religious scholar of a friend taught at Kansai University is targeted to someone, and it will be fought against the Yin Yang masters and the expression god. The megalithic tomb of Nara and the townscape of Kyoto will contribute to the atmosphere building. Unfortunately, for the moment I have no plans to make those sequels, but if it's like a novel, I wonder if I can write it. --- RocketBaby: At what age did you become interested in music? Hiroki Kikuta: When I was ten years old, I met up with the music of Emerson, Lake & Palmer. I had never heard such marvelous music before. It was quite an impact for me. A few months later I heard that Keith Emerson was using a particular instrument called MOOG synthesizer. RB: At what age did you start writing music? HK: When I was twelve years old, the Folk blues movement came over to Japan from America. I studied Acoustic Guitar and started to create an original song immediately. I wanted to be a singer/ songwriter... if I wasn't a terrible singer. Actually, Digital equipment opened up my potential as a music composer. Without a musical sequencer, I can't create any complicated tunes. When I first acquired a YAMAHA SY-77 synthesizer/sequencer, I felt as if I got a ticket to a different world. RB: Why did you start Sacnoth? HK: I had held many original ideas about video games and visual expression for a long time. The most important purpose is to create an entertainment. When I was searching for a way to achieve my dream, I met a dominant business advisor. He introduced me to the chairman of SNK. I told him about many pitfalls that every existing RPG had. I thought those were lacking a comprehensive insight and a integrative interpretation. It is a structural defect of game production. To resolve the problem, it is necessary to get the picture of each element of game creation at the same time. I have an ability to do that. I established a company SACNOTH and took up my position as CEO in order to produce a new horror RPG project, Koudelka. But unfortunately... Though I conceived a grand scheme to realize an innovative game system and visual expression, many old staffs from SQUARE were not able to accept real change without hesitation. I say that the person who will have no change is already dead. After termination of Koudelka project, I retired as CEO of SACNOTH. It was my choice. RB: As a composer how should music effect the game? As a developer how should the music effect the game? HK: A music composer wants to create a good tune with utter simplicity. But if you want to create a good game as a developer, it is not enough. Because good music does not necessarily fit a good game. The most important problem is adjustment of each of the elements. If the visual element exactly synchronizes with the musical element, a dramatic effect will be generated.. And I take it for granted that everybody wants to hear a good melody in the end. RB: What were your influences for Koudelka? HK: In the first instance, I designed all concepts and fundamental settings of the Koudelka's world. I gathered various graphic and text materials in London and Wales. I did character design, map design, event design, scenario writing, direction of computer graphics movie, direction of motion capture... I got involved with all of the integral parts of Koudelka except battle and game system. Especially, I had no influence in battle section. I still have a great regret. I wish I could have designed it. And a quick digression, I consulted many movies and books for Koudelka. A most impressive movie is The Name of the Rose (Jean Jacques Annaud 1986). I also read the original book which was written by Umberto Eco. It is a definitely masterpiece. If you want to know some origins of Koudelka's world, you may read Carnacki the Ghost Finder written by William Hope Hodgson and The Case of Charles Dexter Ward written by Howard Phillips Lovecraft. Many fantasy novels by Lord Dunsany (His his full name and title is Edward John Moreton Drax Plunkett 18th Lord Dunsany) are also important. If you want to know about visual origin of Koudelka, see photographs created by Bob Carlos Clarke and Jan Saudek and Holly Warburton. Those are extremely exciting works. RB: How did you manage to write, direct and compose the music for Koudelka? HK: Writing a scenario. Directing a CG movie. Composing a BGM. Each of those is no more than a single face of game creation. When I imagined the world of Koudelka, I figure graphic elements and story elements and sound elements all at once. Because, those are mingled with each other organically. So I think that It is rather easy to manage multiple affairs. RB: What was the easiest aspect of working on Koudelka? What was the hardest? HK: The easiest aspect is music composing. Because I can create a music by my lonesome. It makes me free and I feel comfort. Hardest aspect is behind-the-scenes maneuvering of power game in company organization. I am so tired to do that. Let's get something straight, I am not a buccaneer but rather a creator. All aspects about creation are really pleasant for me. RB: Why do you make music? Why do you make games? HK: Music composing is a natural behavior for me. Like breathing. I usually conceive a good melody and a harmony without suffering. So I have no reason to make music. I think that it is my vocation. Meanwhile, creating video game is not my vocation. It is my wish. I want to produce high quality entertainment in the future. When I write a story and a plot, I usually suffer by myself. Though it is very hard and thorny, I feel maximum accomplishment. RB: What inspires your melodies? HK: Many great works of famous composers and musicians inspire me. If I must respect only one person or group as a music composer(s), I will take Pink Floyd. RB: What are your hobbies and why? HK: Good question. Riding bicycles is my hobby. I also love my yellow Peugeot MTB made in France. I also have some fun playing with my cat. She is extremely pretty. RB: When did you begin working at Square? HK: I began work at Square in 1991. I was twenty seven years old. In those days, the production studio of Square was placed in Akasaka Tokyo. It was small and homey, different from now. I remember that Nobuo Uematsu and Kenji Ito interviewed me in their office. We talked about progressive rock music and famous guitar player Allan Holdsworth with each other. I created sound effects for Romancing Saga at the start of my career. A few of graphic staff worked with me to design a lot of novelty sounds. We worked hard in night and day. RB: How much freedom did you have making music at Square? HK: In a sense, I had perfect freedom. Because, the planning staff of Square put none of the assignments relevant to the menu of music work and schedule in my hand. Nobody explained to me about game detail which they were producing. I had to think and imagine what kind of music was needed for our game project. Changeover,changeover, and more changeover of specifications. It was difficult to foresee the final image of it. But I did. RB: What is favorite game that you worked on at Square and why? HK: May be Seiken Densetsu 2 (Secret of Mana). I think that it was a pretty good game except for the big BUG. The multi player system was extremely fresh and delightful. In the aspect of music, I was fully challenged in regard to sound expression using 8 voice PCM system of SNES hardware. Please see and hear the opening sequence of Seiken Densetsu 2. It is so simple but so lyrical, isn't it? I am really proud of my visual direction and music composition. RB: Did Nobuo Uematsu influence your work? HK: I think there is no influence from Nobuo Uematsu. I have never taken any lessons about composing game music. The style and the melody of my music are totally conceived by myself. Just the same, every staff composer at Square were free from influence of somebody else. Originality and personality were cheerished in our studio. It was the policy of Nobuo Uematsu. RB: What are the best and worst memories that you have of Square? HK: Hmmm... Best memory... it seems a trip to MANA island of Fiji republic. After a production of the game Secret of Mana, I and my friend decided to visit an island placed in South Pacific Ocean. We played skin diving everyday and watched some corals. Those were extremely beautiful. It looks like a blue heaven. I will never forget the view of the sunset from Mana's beaches. It is one of my treasures. By the way... Worst memory is a dissolution of the game team in which I was supposed to participate. I wanted to propose an innovative game system using music and sound effects. RB: Who is your favorite Square composer and why? HK: I recommend Jin Sakimoto (Hitoshi Sakimoto). His works are extremely dense. RB: One of our favorite soundtracks of yours is Soukaigi. The sound quality and styles are some the best for a game. HK: Soukaigi has many characters of sound. I designed it with different complex styles. House music meets real performance, fusion meets folk choirÖÖ It was an adventure for me. To tell you the truth, the style of music does not a matter. I don't dwell upon it. Though I put a high value on counterpoint it does not bind me. It is only a method. In the case of Soukaigi, I was mainly influenced by East European pops like Varttina. RB: Why did you leave Square? HK: I wanted to direct not only musical expression but also visual expression. And of course, I wanted to write a fine scenario which is different from existing one. I had felt a big complaint against those juvenile works. But unfortunately, I couldn't get a chance to take a part in those kind of production works in Square. I suffered terribly for a long time. After all is said, I left Square and established new company Sacnoth to achieve my idea. RB: Do you perform your music live? HK: If I have a chance to do that, I wish to play my music as a live performance. I didn't make an attempt to do that in Japan yet. Do you want to hear my music in front of your eyes, ya? RB: Who would you like to make music with? HK: Jin (Hitoshi) Sakimoto. Because, I could not collaborate with him on composing game music when we were hired together by Square. I respect him. Except for game music composer, I want to collaborate with Allan Holdsworth, a fusion guitar player. His music is a miracle. RB: How do you think game music compares to other genres of music? HK: I think that is similar to movie soundtracks. It is important to synchronize the music with visual element. It has an expressive purpose. If you want to create a game music, don't forget to construct it as an emotional device. RB: How will the next generation consoles allow you to express yourself as composer and game designer? HK: I feel a strong attraction to X-box and Game Cube. A big visual capability makes me hot. I have many ideas to display fascinating characters using real time computer graphics. They will sing and dance and talk with real emotion. Don't you want to play the Musical RPG on Network? I want to play it. RB: What would your advice be to people who: A. People who want to create game music. HK: Listen to as much music as you can. Don't confine yourself to your room. The genre of music is meaningless. If you want to find your treasure, you must challenge the common practice at any one time. B. People who want to create games. HK: Video games are not art. They are an entertainment. You must amuse your audience first instead of amusing yourself. I am always conscious of the feeling to accommodate someone with a fun service. Can you create a lot of gimmicks for the player? If you work so hard and push yourself enough, the day will come to collaborate in some way with me for sure. Let's think of a next game together. RB: What is in the future for Hiroki Kikuta? HK: I will be involved in some new game projects that are not directed by me. I will be a technical advisor. I will create computer graphics and sounds. But soon, I hope to form my studio and develop my own game project. So now I am looking for new investors around the globe. RocketBaby would like to thank Mr. Kikuta for chatting with us.
#koudelka#shadow hearts#hiroki kikuta#if anybody finds this post I'll be thoroughly surprised#archive
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2021年2月の夢
- 2021年2月28日 日曜日 7:22
夢 誰もいない家で甘い緑茶を飲む 証明書に名前を書くようにIさんに言われる 黒板の前で授業を受ける 男の子に向かってかわいい色のリップですねって言ってる人がいる ものすごく歩きにくい木靴。 おしゃれな靴屋だが買い切りではなくサブスクで靴を高額で貸している 歩いているがなんとなく自分の服装が気に入っていない感じがする 髪型が変わっている
- 2021年2月27日 土曜日 7:07 夢 どこかの地元の祭り。 白っぽい仕切りを覗くとハッピの人が踊っている。 山を登る。家族で。 かなり長い距離。 御神木らしきものがある。痩せていて曲がったうろが印象的。 登り切るとかなり小さい飛行場がある。 室内へ入る。薄暗く、でかい画面が映し出されている。 いつの間にか一人で、知らない女性が入ってきたり出ていったりする。 車に別れて乗る。 母の運転する車。 対向車とぶつかりそうになり怖い。 右折すると路面にエイが落ちているのが見える。 交差点の角にはアクリルの水槽がありトラックのタイヤ部分を洗っている。 服屋に入ろうとする。知ってる服屋。先客がいてなかなか入れず諦めて出る。 テイクアウトできるケーキのことを考える。かつて玉造にあったイギリスケーキ屋の丸いスマイル型のケーキ。 違う店の商品を見ている。ボトルに入った希釈用の飲み物。 店員の男性が話しかけてくる。
- 2021年2月26日 金曜日 7:22 夢 赤いラジカセ 液晶画面にゲームみたいなものが表示されている 前が見えないほどの大雨。ロの字の擁壁を雨水が流れ落ちる様子を見る。 置き去りにしていた人のメガネとノートを拾って戻る 置き配の出前を自転車のカゴ受け取りにしたら一部を知らん青年グループに食べられ、揉め、でかい声を出す
- 2021年2月25日 木曜日 6:45 夢 たいらのかみ 的な名前のめちゃくちゃでかい柑橘。色はスウィーティーと同じ。 田んぼの畦道みたいなところで農家の一家が剥いた実を食べている。おばさんが剥き、子供らが抱えるようにして食べている。道の向こうには泥の中に寝転がった人が食べたりしている。これは誰でも食べていいわけではなく本家の人間しか食べられないので分家の子供は我慢している。掘っ立て小屋があり、誰もいないはずだが白い布のようなものが見える。中に何かいるようだが、そう言ってもいないと言い張られる。
フォロワーが飼っていた犬。パグ。生皮がずるっと全部剥けて脱皮したようになった。その皮がスーパーの入口に置いてある。犬はその皮の中身がどこにいるのか気にしているみたいだ(きみのことだよ)、というほほえましい光景。
夜市のような食べ物屋ばかりのところにいる。 いろんな種類のジュースを飲む。 本屋の前を通る。 過激なケモロリ絵がpopになっており、おいおいと思う。一応という気持ちで写真を撮る。 FANBOX経由で送ったものらしい。恐山がそれについて軽く言及している。作者のアカウントを見つける。驚くほど詳細な自己紹介を載せている。製薬営業の仕事を半分趣味で初めたあと病気になって辞めたとのこと。 アナルプラグみたいな形のグソクムシみたいな生き物がいて、食べる物が悪いとこれが体内に詰まるみたいな話を聞く。弁の部分のつくりが恐ろしい。 人の部屋の机の前にいる。私の部屋に似ているが少し違う。 ピアスとか自分の置いていたものを全て回収する。17時少し過ぎたくらいだ。 部屋を出ようとするとふっくら気味の女性(ゆなさん?)と草彅剛が食事を終えてきた感じで入ってきてバッティングする。 空き巣がバレたかのような気分になり、あと数分早ければ合わずにすんだのにと考えるが、気を取り直して挨拶して去る。
- 2021年2月23日 火曜日 5:59 夢 コーラルの日々 母からのお年玉4000円 麻雀の試合 ドゥビさんが大麻を吸っている 大号泣して起きる
- 2021年2月21日 日曜日 8:47 夢 のぎへっぺんさんは女性だったとわかる。 二人現れる。
- 2021年2月20日 土曜日 9:08 夢 本を50部刷り、49部余る(リアルな数字だ) 社長が知らない人になっている。 青緑色のメトロタイルが貼られた室内の奥、オートロックがあるが番号がわからないらしい。初期設定なら1111か1234じゃないですかと言おうとしてやめる。 高く飛び跳ねながら資材を運ぶ。 白壁、とても晴れている。 潰れて廃墟と化した喫茶店にかつて売っていた皿。 寺院のようなところ。 高いところに金色〜白の蛾の模型が飾ってある。
- 2021年2月19日 金曜日 7:21 夢 何かの部品。 Kからはてなブログのアドレスが送られてくる。私のことをどこかから見つけだしたのかなと思うが自分のを送ってきたということらしい。
- 2021年2月18日 木曜日 6:25 夢 船か電車の、排水のひどい空間で溺れる。地上から上の階へ逃げるのが正解で、地下三階へ逃げてしまう。 昔バイトしてた雀荘の常連のおじさんがいる。 水はけの悪い土地で何かしている。カラフルな蛙がいる。 鳥を2匹飼っている。一羽は青っぽくて大きい鸚鵡。なぜかカゴから出てきてしまう。 電車の中で三人の学生が何かの問題集を解いている。菱形の中に三つの菱形が入った問題。それについて話すが、学生の一人が今はそんな暇はない、今も監視されていると言う。
- 2021年2月16日 火曜日 4:02 夢 Tさんの事務所を片付ける。 べとべとした酒瓶、カルピス原液のパックなど。 真空管みたいなもの、イヤホン���たいなもの。 出てきたまだ使えるものはその場で紙袋などによけておくと良いですよと言う。 刺繍をするように。 バレーをやろうかと言われる。 体育館のようなところ。 活発な子たちは時間はないがバレーがしたいらしい。 20分の長い試合を2回はどうかと指導の先生が提案
- 2021年2月15日 月曜日 6:57 夢 氷川きよしが昔やっていた散髪屋が近くにあった。 青いビニールのれんにクリーニング店っぽいカッティングシートで古臭い店。
- 2021年2月14日 日曜日 9:00 夢 どこかの海沿いの旅館のような建物。 もう一人と自分たちの部屋を探している。 該当の部屋は食堂のようなところだった。部活終わりの高校生たちが食事をとっている。ビニールタイル張りでテーブル三つくらい。建物の角を利用した感じの食堂。 連れがこんなところの床で眠るのは無理だ、おかしいと食堂の人に言う。 しかし何となく風景がきれいだ。
- 2021年2月13日 土曜日 8:05 夢 しっとりマクド、しとりドという商品を注文する。 単品で569円くらい。 商品と家にあるようなマヨネーズを渡され、つけて食べるよう促される。 揚げマクド という商品のポスターも貼ってある。 席につく。若いストレートヘアの女の子が向かいに座る。 フォロワーが一人になる。 Kに太極拳の本を捨てるつもりだが読みたいなら送ろうかと打診される。
- 2021年2月12日 金曜日 7:13 夢 深澤直人に会う 万博会場の海外エリアみたいに広い無印を見ている ゼミの先生が石のスライスを利用した家具を探している ばねで図を拡大して描けるもの、粗悪な紙の子供向けジャーナルなど(リンゴの絵を描くようにすすめたり ほぼ日手帳的なTIPSが所々書いてある) 元恋人が白血病患者の治療薬を健康体なのに飲んでいる、そういう自傷行為の自助組合みたいなのに属している 車の中に仲間がいるらしいが全員ポン中だ
- 2021年2月11日 木曜日 3:11 夢 チキン南蛮のネギは手でちぎる派なんです、と語る男。セクシーな感じの語り口。 縦の器具に電卓のようなものを挟む作業を二人でしている 隣の部屋から交際相手(夢オリジナルの見た目)が口汚く言い訳する声が聞こえてくる 僕はニョロゾが好きなんでニョロゾのグッズを買いに行ったんですよ!!と怒っており、好きなポケモンまでダサいなと思っている
恋人のためにイチゴ柄のプリントをするだけで身を立てた男 こうやって全部口で言うんだ、おはよう僕のかわいい小鳥ちゃん。チュッチュル。 前は彼女が強すぎてDV案件だったけど今は彼氏の方が盛り返して良い関係を築けているらしい。
昔懐かしいアイコン。映画パロディのもと。 部屋の隅のクロークの中にいる女性がそう。
スイカの皮でつくったカ��トとコテをしている人 文鳥がそれをかじる カブトを割ると断面が腐っている 女性がどこかから完全に腐っているメロンを持ってくる。鼻を覆うほど臭い これはいったい何個目のメロンなのかしら、色は緑色だし汁も垂れてる(大黒摩季が歌っている曲が流れる)
- 2021年2月10日 水曜日 8:46 夢 わすれた
- 2021年2月9日 火曜日 8:08 夢 なぜか文鳥に雛が2匹できている。 親戚の結婚式のような寄り合いがある。叔母がその関係の中で疎外感を感じている。手を握る。 勇作さんとペアで語られる知らないキャラクターがいることを知らされる。鳥羽俊太郎みたいな名前。
- 2021年2月8日 月曜日 7:48 夢 イヤミにルーターをつける
- 2021年2月7日 日曜日 7:46 夢 駅構内で南が走ってるのを見かけ、写真を撮る。 ピンク色のステッキのようなものを入手する。 バスに乗って帰る予定だが、間違えていつもの乗り場よりも奥に行ってしまい、迷う。 狭いワンルームだが、奥に広いことに気づく。どんどん進むと廊下、浴室など。床がとにかく傾いている。シャワーの水出しっぱなし。中年の女の幽霊がいる。
- 2021年2月6日 土曜日 4:44 夢 四角いロッカー なんか可愛い雰囲気の似ている三人組。
残したお弁当箱。 男の子二人。ネオ原宿みたいな感じの。 けみおみたいな喋り方。 赤い鳥居のある廃施設に入る。 ゴミがたくさんあり写真を撮る。コーラのびんなど。 遠くにいる。 追いつき、和解する。ボイスチェンジャーで声を変えて喋っている、異音はそのため 閉鎖されてる墓を開けようという話をしている 怖いので辞退し、鍵を返す役をやるという 赤いヒヤシンスが咲いている 施設を管理する側の人々が来る 好戦的
部屋を掃除する 注文した本が届く、AKIRAと同じサイズの漫画本で矢沢あいの作品っぽい感じ、殺ダニのため本に布団乾燥機をかけようとする
- 2021年2月5日 金曜日 7:07 夢 レポートを一本出し忘れており、え?え?と思う。あと半期伸びることは理解しているのだが、現実世界の安心感がまだ残っていて焦りが湧いてこない。 模型を作っている。広い中庭のある低層のコーポ。Macでベクターを使っていることを後ろに座っている青年にダサいと指摘される。
- 2021年2月4日 木曜日 7:18 夢 二重のアラーム オモコロ製ステッカー テルラウールキットキャッチタワー
- 2021年2月3日 水曜日 9:05 夢 徐さんってどこの人なのか聞かれる フジタがいる。紙製のポストを直す
- 2021年2月2日 火曜日 7:15 夢 船のようなものに乗っている 一段高い板の間に寝椅子を置いて外の景色をみている 風が強い。いいかんじの橋が見える。 本2冊。白表紙。破いて使う。 途中で人々を降ろしていく。
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人間の悪知恵には際限が無いものだという驚きと同時に,怪談話などよりもはるかに底知れぬ恐ろしさを感じました。 事故物件という名称は,我々の間でもすっかり有名になりました。僕は「居住者が亡くなった住宅のことだろう」と思っていたのですが,それは必ずしも正しい理解ではないようです。たとえば老人が家族に看取られながら大往生を遂げた家などは事故物件とは言われないそうですね。漠然とした表現ですが「事故物件とは,その屋内で人が非業の死を遂げた住宅のことを指す」と考えればよろしいでしょうか。なお集合住宅の場合,住宅全体が事故物件扱いされる場合も,事故のあった部屋のみが事故物件とされる場合もあるそうです。因みに何の事件も発生してはいないのに「幽霊が出る」などと執拗な噂が流れる住宅をも「事故物件」に含めるとも聞きましたが,これは例外と考えて良さそうな気が致します。 さて,そういう事故物件に住みたいという人は稀でしょうから,当然売価や家賃は通常よりも安くならざるを得ません。一見,その事実を隠して普通の値段を付ければ儲かるようにも思えますが,そういうことは許されていません。不動産の売買・賃貸の契約時には買主・借主に対して瑕疵の告知が義務付けられているからです。そして事故物件のことを不動産用語では「心理的瑕疵物件」と称します。これは悪辣な商行為を防止するための妥当な規制というべきでしょう。しかしこの事実を逆に捉えれば「事故物件は相場より安くてお得」という言い方も可能です。事故物件であろうがなかろうが,物件の利便性には何の影響もありません。そして大抵の場合,事故物件については通常よりも念入りにリフォームが行われるので「綺麗で住み心地の良い物件」になっていることすらあるわけですから。ただ「そんな物件は嫌だ」という社会通念ゆえに安くなっているに過ぎないわけです。 この記事によると,その「事故物件はお得な掘り出し物」という事実を逆手に取って販売促進を図る不動産業者が存在するのだそうですね。何と頭の良い不動産業者なのかという驚きを禁じ得ないところです。無論,賞賛などではなく「ずる賢い奴め」という強い不快感を伴う驚きですが。 一部の不動産業者が「おとり物件」という手法を用いているという話を,僕も耳にしたことがあります。成約済の物件や,酷い場合には嘘の物件を店先などに掲載し,それ目当てに来店した顧客には「ついさっき,契約が成立してしまいました。でも,他にも良い物件がありますよ」と商談を持ちかけるやり方です。無論,他の「良い物件」というのはおとり物件に比べれば劣ったものであるのは言うまでもありません。本当に同条件の物件であるならばそちらを宣伝に使えば良いのですから。しかしこの「ついさっき売れちゃいました」という手法は最近よく知られるようになり,実行すれば顧客の不信感を買うようになってきたようです。そこで今度は実在する良物件をおとりに使うやり方に切り替えたわけです。その物件目当てに来店した顧客に「実はそれ,事故物件です」と嘘を告げることで契約を躊躇させ,しかも「隠したい話をきちんと告げてくれる誠実な業者だ」と勘違いさせるというのですから,この手法を考案した人物はきっと悪の天才に違いありません。この記事によれば最近はその捏造情報が事故物件データベース「大島てる」等に掲載されることで大家等の耳に入り「嘘だ。この物件では人は死んでいない」などと露見することもあるようですが,それこそインパクトは少々弱くなるにせよ「何の事件も発生していないが,幽霊が出るという噂があって居住者が居付かない」などという嘘であれば露見のリスクをさらに低く出来るでしょう。通常の顧客は以前の居住者のことまでは調べませんし,仮に以前の居住者とコンタクトを取られても言い逃れは幾らでも可能でしょうから。 この悪辣な「ニセ事故物件によるおとり作戦」の欠点は記事にもあるとおり,その顧客が「事故物件でも構わない」という人だった場合でしょう。「おとり広告を掲載している業者からすれば、そうした客に当たってしまうことが、いちばん怖い話」とあるとおりです。但しこの記事では「『事故物件でも全然構わないので、ここに決めます』と言ってきたら、その業者はどうするのか」と疑問を呈して終わっていますが,仮に「不運にも」事故物件上等という顧客が来てしまった場合には已む無く儲けにならない契約をして「損切り」し,また別のニセ事故物件を捏造するのだと思われます。そしてそういう「事故物件でも良い」という意向の顧客はごく稀で,殆どの場合には「ニセ事故物件作戦」はうまく機能しているのでしょうね。 「おとり物件を用意し,それを活用して却って顧客の信用を得る」とは,常識では想像もつかない話です。僕などは呆れてしまいますが,世の中には色々な悪知恵が存在するものなのですね。
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2020.11.07
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ある程度(という「お塩少々」並に判然としない曖昧模糊で主観的な判断基準ではあるけれど、蓋し国際規格の一般論——莫迦捨て山こと治外法権市区町村のひとつである、ファベーラ・オカザキでは浸透し得ない、論旨になり得ない論理から大きく逸れはしないであろう度合い)の品性すら持ち合わせない人間(666の刻印持ちの正しく獣が如き)に対し、途方もない倦み疲れを覚えると、憫殺を決め込むことが最良の選択だったのだと気づく機会になります。節操のない、説法の甲斐もない母国語すら危うい輩は、一体全体どうして「ファック」という言葉を呆気なくあけらかんと、片仮名の発音で吐くのでしょうか。 僕自身がこのゲットーに住まう、ぽんこつ且つちゃんがらな存在であることが何よりの証明となることでしょう。 嗚呼、岡崎市。市長が謳った市民への給付金、一律五万円。財源も碌に足らんままに豪語したマニフェスト。低脳地区代表の僕にはそれの是非については杳としてわかりませんが、誰用か知れない駅前の繁華化開発と、該当地までの公共交通機関は不整備のままに、滅多矢鱈な護岸工事や歩道に重点を置いたインフラ整備ばかりが目立ちます。岡崎市という街のどこがOKなのか分からないので、NGAZAKI市と呼びたくなる愛すべき郷里です。状況的にはザキというよりもザラキですか? クリフト的にはオールOKですか? 演繹的に考えれば、この街が魅力の詰まった汲み取り式の厠であると誰もが気づくことでしょう。 一度はお越しになって、サイボーグ城を眺めてから、銘菓『手風琴』を手土産にそそくさとお帰りいただければ僥倖です。
どうも、皆さんこんばんみ。御器齧宜しくに中々しぶとく無駄生きし、厭世家風を吹かすキッチュの顕現体こと僕です。世捨て人って何だかデカダンで格好よさげだけど、結局二の足踏み抜いて俗世人のまま死んでいくんだろうなぁ。僕です。 先日、夢を見ました。ディテールやイメージに関しての記憶はごっそりと抜け落ちておりますが、なんだかやけに馬の合う女性とそれはもういい雰囲気でした。ただそれだけです。
やって参りました、自己陶酔の頃合いです。 どうせ世の中、四面楚歌てなもんでして。僕にとっての仇敵がわんさかと、えっさほいさと、娑婆中で跳梁跋扈だか横行闊歩だかしているのだから、僕くらいは僕という豆もやしを褒めそやし、肥え腐らせていかないでどうするのでしょう? そうでしょう、そうでしょう。どうでしょう。 自己陶酔というより、自己憐憫? はたまた自己愛恤? そんなこたぁどうだっていいですね。恥部の露呈に忙しなかったジャン=ジャックと何ら差異がないんですから。 変態の所業です��、こりゃあ。 兎角、どんな些細なものでありましても、感想をいただければ快哉を叫びながら、ご近所に平身低頭謝罪行脚を回覧板とともにお配りします用意はできております。奮ってご参加ください。
古錆びた要らぬ敷衍ばかりの冗長なアバンを持ち味にして、殊更に冗長で支離滅裂な本編へ参ります。 前回の更新で、『色覚異常』、『現代日本縮図』の楽曲について諸々の所感をさらりと書かせていただきました。今回は僕自身への感想なので、一瀉千里に書き殴り、超絶怒涛の仔細があります。まずは『SUCKER PUNCH 2 : FATALITY』を聴いてみてください。以下は読まなくても大丈夫です。 フォロー・ミー!
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01. Vice Is Beautiful
SUCKER PUNCH 2:FATALITY by ベス・クーパーに
“Vice Is Beautiful”などと、大仰も大仰に「悪徳こそ素晴らしい!」と闇属性に憧憬をする中学生並みの痛々しい題名を読み上げると、今になって顔から火が出る思いで、同時に一斗缶満ち満ち請け合いの汗顔が迅速な消火活動に当たる思いでもあります。当たり前ですが、ピカレスクはピカレスクであるから素晴らしく、すべからく遏悪揚善すべきであろう、そう考えております。悪人正機でいうところの「悪人」の範疇がどうとかはこの際度外視で、僕という歩く超偏見型色眼鏡刑法書野郎の視点に於ける「悪人」は普く極刑であり、地獄に落ちることさえ生温いと思う訳です。願わくばファラリスの雄牛の中でモウモウと喚き続けていただければ有り難いとか云々カンヌン……。ただ僕は不可知論が信条ですので、地獄というのは表現の一環です。しかしながら途方もない腹痛に苦しめられている時だけは、神仏に縋ろうとするオポチュニストである自身の軽薄さに忸怩ってしまうところですが、正直なところどうでもいいなぁとも考えてしまいます。こういった僕のような人間を英語でなんて呼ぶかご存知でしょうか? “Japanese”です。横道に逸れ過ぎました。 閑話休題。 この曲、通称「VIB」。今からそう呼びます。ジャン=クロード・ヴァン・ダムを「JCVD」と呼んだり、マイケル・ジェイ・ホワイトを「MJW」と呼んだりのアノ感じが粋だと思うからです。 ジャンルはJ-POPです。僕は常にポップでありたいのです。アンディ・ウォーホルとか好きですし。付け焼き刃な例示なので、何が好きとかはないです。MJが“King of Pop”なら、YGは“Pawn of Pop”です。ほら、POPじゃないですか? じゃ、ないですか。 キーは知りません。BPMは196。曲展開は「イントロ1→イントロ2→A1→A2→B→C→間奏1→D→E→間奏2(ギター・ソロ)→C2→C3→F」となっております。 イントロ1でEなんたらのコード・バッキングからぬるり始まります。音作りに難航、してはおりませんが迷走しており、僕の三文鼓膜ではヨシアシが今でもわかっておりません。困るとドラムをズンドコと氷川きよしさせておけば何とかなると思っている節が聴き取れます。 A1、2共にコード・チェンジが忙しないです。Gなんとかとかいうコードとか、F#うんちゃらとかいうコードとか、後は6,5弦を弾いていないのでルート音とかもわからないのとか。「3x443x xx222x xx233x 2x233x 5x56xx 6x56xx」とかの流れで弾きましたが、どうかコード名教えてください。リフ・プレイも忙しないです。作曲に重要なのは引き算だと、偉い人が仰っておりました。全くもってその通りだと思います。その後のBがなんか転調してませんか? あんまりそういうのわからないんですけれど、元々のコード進行に引き戻せなくて懊悩した記憶があります。 C1は僕の悪い癖が出に出まくっています。4小節毎に変化するんですけれど、如何に多種多様なリフを生み出せるか(パイオニアだか傾奇者だか気取りたいという気持ちを汲み取っていただきたいです)に妄執しています。三回し目のリフが弦飛びしてて難しかったです。二度と弾きたくない。 奇天烈風を装いたくて3/4のDをぶち込み、曲中最ポップなEです。こちらのベース・ラインが気に入っております。もっと目立てる演奏力や音作り、ミックス技量があればと自身の矮小さに辟易としながら、開き直っております。 ギター・ソロでは似非速弾きが聴きどころです。 再び再帰するC2。前述の通り悪い癖が出ております。ネタ切れか、はたまた単に引き出しが少ないだけか、同一のフレーズを弾いております。C3ではてんやわんやの大盛り上がりです。頭打ちのドラムになり、ベース・ラインは「デデ↑デデ↓デデ↑デデ↓」と動きます。強迫観念なのかそういうフレーズを弾かざるを得ない体に、ゾル大佐によって生物改造人間にされています。 最終Fでは5/4があったりと僕なりの冒険心で取り組んだ努力が見て取れました。8分の〜とかになると対応できません。ギター・リフが格好よくないですか? 僕的には満足なんですけれど……。 全体的に楽器は何を弾いていたかわかりません。大抵が朦朧とした意識の中で録音していたので、記憶からずるり抜け落ちています。俯瞰から幽体離脱した状態で、白眼ひん剥いて必死に爪弾いていた僕を見ていたような気がします。 ここから僕のモニャモニャとした歌詞です。 全編通して日影者としての卑屈さがドバドバと分泌されておりましょう。本領発揮です。僕のようなペシミスト崩れがこうやって憂さを晴らすことでしか、自身の瓦解を防げないのです。本当に嫌な奴ですね。友達いなさそう。 可能な限り似た語感や韻、掛詞を意識しております。とどの詰まり、これは和歌です。と言いたいところですが、秀句と比べるにはあまりにも稚拙でございます。何せあの頃の修辞技術といったらオーパーツですし、即興性すら兼ね備えていると来ました。そして、何より読み人は貴族貴族貴族、もうひとつ貴族。僕なんて教養のない賎民でございますから、足りない頭を捏ねくり回して、やっとこと拵えた艱難辛苦の産物です。しかしながら、乾坤一擲の気概で綴った言詞たちではございますから、どうか冷ややかに、僕の一世一代ギャグを解説する様をお楽しみください。 冒頭のAのブロックでは押韻の意識を強くしております。各ブロックで頭韻を揃えながら、「掃射か/お釈迦」「淫靡で性〜/インヴィテイション」と中核を作ったつもりです。開口一番から延々と悪態塗れの陰気なアンチクショーです。鷸蚌を狙う気概、そんなものがあればよかったのに、という感傷的なシーンでございます。 Bでは掛詞が光ります。「擒奸」とはアルカホルの別称だそうで、「酩酊した奸物が容易く擒えられた」的なお話が漢文だかなんだかであるそうでございます。詳しくは知りませんが。「さ丹、体を蝕めば〜」では、アセトアルデヒドの影響で皮膚が変色する様と同時に、「“sanity”を蝕めば〜」と読めば身体、精神ともに変貌していくことを示唆していることに気づきます。 所謂サビの様相のCですが、可能な限り同じことを綴らないようにしております。繰り返し縷述する程に伝えたい内容がないのですが、言いたいことは四方山積みにあります。お喋りに飢えております。そんなC1は愛する岡崎市の縮図と現状、原風景とも呼べる花鳥風月が流れ去るドブ川のような薄汚い景観美の言及に心血を注いでおります。諸兄諸姉がご存知かはわかりませんが、徳川家康という征夷大将軍が400年ちょっと前におられたそうでして。その家康公(a.k.a 竹千代)が生まれた岡崎の一等デカいバラックから西に下ったところ、以前は『やんちゃ貴族』なる逆さ海月の助平御用達ホテルがありました。そして城下の北には『アミューズメント茶屋 徳川』なる股座用の射的場があるそうです。「城下、公卿の遊技場」というフレーズに秘められた情感ぷりたつの景観が想起されるのではないでしょうか。因む訳ではありませんが、『アミューズメント茶屋 徳川』の隣には『亀屋��という喫茶店があります。粋で鯔背ですよね。 Dでは、何処となくサンチマンタリスムが滲んでおります。何もなせないままに過ぎ去る今日という日の重圧と、それから逃げようとする怯懦心の肥大があります。 Eに入ると気が触れたのか、資本主義の礼賛です。情緒不安定です。そして麻雀用語でお茶を濁しております。 再びのC2です。自身の滑稽さが爆笑の旋風を吹き荒らします。非常にシンプルな隠喩表現があります。続くC3では、家康公の馬印からの引用をしております。C1では自身の有用性のなさ、無力さを嗟嘆。C2では開き直るも、C3で再び打ち拉がれるという情緒がひっちゃかめっちゃかです。 最終、Fでは曲の終わりと共に事切れる姿が描かれております。衒学者でも意味がわかるようにとても平易な内容だと、締め括られます。 始め、僕の全身全霊の圧縮保存の「Vice Is Beautiful.zip」を紐解く予定でしたが、既にご存知の通り冗長どころか蛇足々々々くらいのヒュドラ状態です。僕の意識下で綴られた拙筆なる修辞技法のアレソレコレドレは毎行に置き捨てたので、よろしければお探しください。全て見つけられる御仁がおられましたら、最早僕ではなく、そちらが八木です。
続けて次へと進みたいのですが、長過ぎませんか? 擱筆した方がいいですか? 次回にしましょうか。いや、このまま行きましょう。友達がいないので語り足りません。 最早、末筆なのではと自分自身に問いかけたいくらいにダバダバとした作文をしております。僕は頑張ったんだよって、僕が僕を認めるために。これくらいの自己愛やらナルシシズムがなきゃ曲なんか拵えないですよ。「誰かに届け!」とかそんな思いは毛頭ないです。申し訳ないです。 はてさて、世に蔓延るウェブログの弥終で管を巻き続けること数千文字ですが、続きます。
06. Catch You If I Can
SUCKER PUNCH 2:FATALITY by ベス・クーパーに
Manoさんが「90秒の覚醒剤」と評していただきました。嬉しかったです。 こちらの捩りは何ンク・某グネイル氏の半生を描いたアレです。美しき相貌のドデカ・プリオの演技が光ります。“Catch You If I Can”と題名の通りですが、実のところ僕はヴィジランテです。私刑を執行すべく、尻を蹴り上げるか、ガイ・フォークスの面を着けるか、視界を遮り棍棒を装備したりと、日中日夜イマジナリー・エネミーとの戦いに明け暮れております。クロエ・グレース・モレッツやナタリー・ポートマンやエロディ・ユンが側にいないところ以外は一緒です。僕自身が阿羅漢ぶった言い分ではございますが、僕もタブラ・ラサでイノセントな存在であると、大口で宣��る程の聖人君子ではないです。「罪のない者だけが石を投げよ」なんて言葉もありますので、僕は持ち前の当て勘で截拳道由来の全力ストレート・リードを打ち込みます。己やれ! こちら『SUCKER PUNCH 2 : FATALITY』のラスト・ナンバーを飾らせていただきました。締め切りを延ばしていただき、さらにその締め切りの後に提出しました。その件につきましては謝罪のしようもございません。 駆け抜ける清涼感、爽やかでポップでラブ&ピースな楽曲に仕上がったと思いますが、いかがでしょう? ジャンルは勿論、J-POPです。理由は前述の通りでございます。キーは勿論、知りません。ドレミファソラシドってどれがどれなんですかね。『おジャ魔女どれみ』世代なんで、ファ以降を知らないです。BPMは232です。曲展開は「イントロ→A1→A2→B→C1→C2→D→アウトロ」となっております。僕は映画でいうCパートが好物でして、そう言った部分を作ろうとしています。嘘です、たまたまです。勢い任せの一方通行な展開ですね。まるで乙川のようです。 イントロからハイ・テンションですね。押っ取り刀にサッカー・パンチ。今回カポタストを装着し、1音半上げでやっていきました。バッキング・パートは「x3x400 x3x200 x2x000 x2x200 | (1~3)x01000 x1x200(4)x222xx」と16分刻みで弾いてみてください。容易く弾けます。リフは知らないです。 A1はカッティングが効いてます。効いてます? 右手のフレーズが活き活きしています。悪態に拍車を掛けておりますし、ベースがブリブリと弾けたのも満足です。A2で困った時のお助けアイテム、三連符でコータローばりに罷り通っていこうとします。 Bがお気に入りでして。メロディと共にふんわりモコモコなドリーム・ポップ風です。サンバ・チックなリズムがよいアクセントではないでしょうか。ドラム・ソロを挟み加速度は自重で二乗といった気分です。BPMは変わりませんけれど。 C1は「C→B→E」ルートですが、ちょこちょこと変な音足してるので詳しくはわかりません。TAB譜作ったら貰ってくれる人いるのかしら? 要らないかしら? 自分用に作ろうかしら? ふた回し目にあるパワー・コードの「E→G→A#→B」みたいものを使いがちです。ギター・リフは半ばこんがりウンチ<©︎ダ・サイダー(CV.矢尾一樹)>——自棄くそ——気味で愉快ですね。0:47辺りに左前方で鳴る「ピョロロロー!」というお間抜けハッピー・サウンドですが、ワーミー踏みました。C2ではハーフ・テンポで落ちサビを作り、J-POPの体裁を取り繕うことに挑戦しております。リフはプリング・アンド・プリングです。プリプリですね。『Diamonds』のB面が『M』って知ってました? 度肝抜かれました。世界でいちばん寒い部屋で、心拍止まりそうです。頭抜けのブレイクが大好きです。演奏する時に思わずギターを振り上げてしまいたくなりますよね。 最終Dでは、バッキングのコードがなんか違った気がします。ここで浮遊感というか、シンガロングな雰囲気が作りたかったんですけれど、どうでしょう。ここを沢山の人々と合唱したいです。 続いて歌詞について掘り下げるようなそうでもないようなことをしていきます。筆がノリノリでして、一日で書けました。普段は、数日くらいあーでもないこーでもないと懊悩煩悶七転八倒五体投地に考えるんですけれど、勢いってありますよね。 青っ白い顔をした雀子宜しくの矮小存在が、邪魔者扱いされ、どうにも魔が差して刺傷でも企てそうな、風雲急を告げるといった面持ちのAです。三連符の誹謗で締めます。 掛詞の中傷で抽象な街を少しでも掘り下げるBですが、綴りたい文句が有り過ぎて並列表記してしまいました。お好きな方でご理解ください。「治水」は深読みしてください。 C1ではギリギリガールズに愛を込めたアレゴリーに着目していただければ嬉しいです。それ以外は珍しくストレートな歌詞ですね。読み返して恥ずかしくなっちゃいました。赤顔の余り、赤シートで消えそうです。「イエス・グッド」とはNGの対義語です。「やる気ゼロゼロコブラ」と共に流行らせたい言葉です。C2、「陰嚢の〜」の下りは語呂がお気に入っております。僕にとってのマリリン・モンローは現れるのでしょうか。 締め括りにDで僕のヴィジランテ精神を書き綴っております。「足りない」のはきっと音域です。 他にも修辞表現がございますので、お探しください。ウォーリーよりは簡単に見つかると思います。 全体的にムッツリ助平をひた隠すために労力を注ぎましたが、通しで読み返すとそれなりに一本の流れがあるように感じます。芥川龍之介すらもまともに読んだことありませんが、努力をせずに文豪になりたい、そう思っております。一人ぼっち善がりなエチュード・ソング、そう解釈してください。
カモン緞帳!
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くぅ疲。
もしも、僕のウェブログを眺め、「こいつは何を言っているんだ、気持ち悪い」と論旨について一考する間もなく、脳味噌無回転に匙の投擲大会に興じたとすれば、それは人としての思考力の欠如に他ならず、僕としてはしたり顔をするより他がない訳です。 僕も読み返してみたところ、何を言っているのかさっぱりわかりませんでした。思考力など何の役にも立たないのです。重要なのは大事な時に熱り勃てるかどうかなのです。 フィグ・サインを掲げていきましょう。 ファック!
追啓 この度、空飛ぶスパゲッティ・モンスター教に入信することと相成りました。
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23年8月2週目
今週は最低限しか働いていない。前半は資格試験を受検。想像通りの撃沈だった。半分も答案埋まっていないんじゃないか。久しぶりに脳みそが使いすぎの機能低下で血流詰まっている感じがした。来年は模試を受けよう。
後半は4連休。私は連休を取ったら海外に行きたく、行けないなら4連休以上にならないよう仕事を入れているのだけど、試験後であることと会社のシステムメンテナンスがあるので、かなり久しぶりに旅行の予定がない休み。初日は映画館3館はしごして、目が痛くなる。台湾映画2本と邦画1本。『僕と幽霊が家族になった件』『親愛なる君へ』『キングダム3』。合間に渋谷のTSUTAYAに行って、秋でレンタルサービスをやめると知って衝撃を受ける。新宿の時もショックだったけど、渋谷は最後の砦だと思っていたので、かなりダメージを受けた。どんなに配信サービスが発達しても、TSUTAYAでしか観ることのできない作品がたくさんあったのに。もうこれはNetflixをやめて、TSUTAYAディスカスにした方が良いのでは?という気がしてきた。ミニシアター作品も古い作品もディズニーもジブリも観られるんでしょ?最強じゃない?
2日目は妹と屋外でお酒を飲んでチルする会。ちょうどビルの日陰でほどよい暑さで最高だった。3時間半くらいそのスペースに滞在してた。滞在しながら、マッチングアプリで使えそうな写真を撮ってもらっていた。詳しく説明しなくても分かってくれて助かる。しかし、写真写りがとにかく良くなく、自分でベストショットが決められず。妹が世界で1番私を撮るのが上手いが、その本人からしても実物のが良いとのことなので、まぁ、写真写りは良いよねって言われるよりは良いか、という気もする。まだ恋愛の優先順位が高くないので、使うか分からないけど、使う日が来たら使わせていただく。
3~4日は追われるように借りたDVDを観た。「あの頃、君を追いかけた」の主演の女の子ミシェル・チェンが出ている『花様』と数年前映画館で見損ねた1960年代のバカンス映画『太陽の下の18才』を鑑賞。今『ジョー・ブラックによろしく』を観ている。これはブラピの正しい初対面の口説き方、みたいな感じでTwitterで見かけたものだけど、正当なブラピシーンはあまりなかった。ちょっとよく分からないけど、観た人には分かると思う。
去年京極堂シリーズのカノン?が終わったので、他のスピンオフなどに進むか悩んだけど、一旦違う作品も読んでみるかと『幽談』を読んでいる。短編集で、魍魎の匣に出てきた作家の作品みたいな感じがある。でも京極氏の作品で会社員の描写が出てくるのはなんか変な感じ。
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ひとみに映る影シーズン2 第二話「高身長でわんこ顔な方言男子」
☆プロトタイプ版☆ こちらは無料公開のプロトタイプ版となります。 最低限の確認作業しかしていないため、 誤字脱字誤植誤用等々あしからずご了承下さい。 尚、正式書籍版はシーズン2終了時にリリース予定です。
(シーズン2あらすじ) 私はファッションモデルの紅一美。 旅番組ロケで訪れた島は怪物だらけ!? 霊能者達の除霊コンペとバッティングしちゃった! 実は私も霊感あるけど、知られたくないなあ…… なんて言っている場合じゃない。 諸悪の根源は恩師の仇、金剛有明団だったんだ! 憤怒の化身ワヤン不動が、今度はリゾートで炸裂する!!
pixiv版 (※内容は一緒です。)
☆キャラソン企画第二弾 青木光「ザトウムシ」はこちら!☆
དང་པོ་
時刻は十四時三十分。MAL五八便が千里が島に到着してから既に五分以上経過した。しかし乗客はなかなか立ち上がれない。体調を崩して客室乗務員に介抱される人や、座席備え付けのエチケット袋に顔を突っ込んでいる人も見受けられる。機内に酸っぱい臭いが充満してきたあたりでようやく、私達したたびチームを含め数人がフラフラと出口に向かった。 機体と空港を繋ぐ仮設通路は『ボーディングブリッジ』というらしい、という雑学を思い出しながらボーディングブリッジを渡る。ある先輩俳優がクイズ番組でこれを『ふいごのトンネル』と珍回答して笑いを取っていたけど、なるほど確かにこれはふいごのトンネルだ。実際に歩きながら、言い得て妙だと感じた。 空港に入って最初に目についたベンチに佳奈さんが横たわった。ドッキリ企画の時から着っぱなしだったゴシックタキシードのボタンを外し、首元のヒラヒラしたスカーフで青い顔を拭う。 「うぅ、吐きそう……もらいゲロかも……」 「おいおい、大丈夫ですかぁ? トイレまで歩けます?」 一方ケロッとしているタナカD。口先では心配しているような言い草だけど、ちゃっかりカメラを回し始めた。 「やめろー撮るなぁー! ここで吐くぞー……うぅるぇっ……」 「ちょっと、冗談じゃなく本当に吐きそうじゃないですか! 大惨事になる前にトイレ連れてってきます」 私は佳奈さんに肩を貸してトイレへ向かう。タナカDの下品な笑い声が遠のいていった。洋式の個室で彼女を降ろし、自分も二つ隣の空いている洋式個室に入る。チャンスだ。まず壁にかかったスイッチを押し、滝音と鳥のさえずりが合わさったエチケット音声を流す。次にトートバッグから小さなクナイ型の物を取り出す。これは『プルパ龍王剣(りゅうおうけん)』という密教宝具だ。私が過去に浄化した悪霊を封じこめてあり、そいつから何時でも力を吸い出す事ができる。 「オム・アムリトドバヴァ・フム・パット」 口を閉じたまま、他人に聞こえるか聞こえないかギリギリの声で真言を唱える。すると、ヴァンッ! プルパは私から黒々とした影を吸い上げ、龍を刺し貫いた刃渡り四十センチ程のグルカナイフ型に変形した。 「う……うぅ……」 プルパに封印された悪霊、金剛倶利伽羅龍王(こんごうくりからりゅうおう)が呻き声を漏らす。昔こいつは人を呪ったり、神様の振りをして神社を乗っ取ったり、死んだ人の魂を監禁して怨霊に育てたりと悪行の限りを尽くしていた。ご立派な名前に似合わず、とんでもない奴だ。 <機内での騒動を聞いていたな。あの毛虫みたいな化け物は何だ?> 影を介したテレパシーで、私は威圧的に倶利伽羅に囁く。ついでに壁のボタンを押し直し、エチケット音を延長。 「ア……? 俺様が知るわけがぼがぼぼごがぼごがガガガ!?」 しらばっくれようとした倶利伽羅の顔を便器に沈めて水を流した。 <どこからどう見てもお前と同類だったろうが! その縮れた灰毛、歯茎じみて汚い皮膚、潰れた目! もう一度問う。あれは何だ?> 「げ、っほ、うぉ゙ほッ……! あ、あれは散減(ちるべり)……『母乳を散り減らせし虫』……」 <母乳?> 「母乳とは……親から子へ引き継がれる、『血縁』のメタファーだ。母乳を奪えば子は親の因果を失い……他人の母乳を飲ませれば、子とその相手は縁で結ばれる」 縁。そういえば千里が島の旧地名は散減島で、縁切りパワースポットだったか。あの怪物、散減は、どうやらその伝承と関係があるようだ。それにしても、 <ならその散減とお前には如何なる縁がある? またお前を生み出した金剛有明団(こんごうありあけだん)とかいう邪教の仕業か> 「知らん! だいたい貴様、そうやって何でもかんでも金剛のせいにがぼろごぼげぼがぼげぼろこゴゴポ!!?」 流水。 <資源の無駄だ。節水に協力しろ> 「ゲッ、ゲエェーーッ! ゲホガホッ! 本当に知らな」 <それとも次は和式の水を飲みたいか> 「知らないっつってんだろぉ!! 確かに散減も母乳信仰も金剛の叡智だ。だがそれをこの田舎島に伝来したのは誰か知らん! 少なくとも俺様は無関係だ!!」 残念だけど、こいつから聞き出せる情報はこの程度のようだ。私は影の炎で倶利伽羅を熱消毒して、洗面台でプルパと自分の手を洗った。 「ぎゃああああ熱い熱い!! ぎゃああああああ石鹸が染みるウゥゥ!!」 霊的な炎にスプリンクラーが反応しなくて良かった。 ベンチに戻ると、佳奈さんは既に身軽なサマードレスに着替えていた。脱水防止に自販機でスポーツドリンクを買い、大荷物を待っていると、空港スタッフの方が私達のスーツケースを運んできてくれる。 「ようこそおいでなすって、したたびの皆さん。快適な空の旅を?」 「いやあ、それがとんでもない乱気流に入っちゃいましてね。だぶか墜落せずにここまで運んでくれた機長さんは凄いですなぁ」 「乱気流が! ははぁ、そいつぁコトだ。どうか島ではごゆっくり」 尻切れトンボな口調でスタッフの方がタナカDと会話する。これは『南地語(なんちご)』と呼ばれる、江戸の都から南方にあるこの島特有の方言だ。『~をしましたか?』が『~を?』、『~なのです』が『~ので』、といった調子で、千里が島の人は語尾を省略して喋るんだ。 「佳奈さん、私南地語を生で聞くの初めてです。なんだか新鮮ですね」 「千里が島スタイルでは南地語(なっちご)って読むんだよ」 「へえ、沖縄弁がうちなーぐちみたいな物なので?」 「そうなので!」 「「アハハハハ!」」 二人でそれらしく喋ってみたけど、なんかちょっと違う気がする。案外難しい。それより、佳奈さんがちょっと元気になったみたいで良かった。今日この後はホテルで企画説明や島の情報を聞くだけだから、今夜はゆっくり休んで、気持ちを切り替えていこう。
གཉིས་པ་
空港出入口の自動ドアを開いた途端、島のいやに生ぬるい潮風が私達を出迎えた。佳奈さんがまた気分を悪くしそうになり、深呼吸する。私も機内の騒動で平衡感覚がおかしくなっているからか、耳鳴りがする。 「ともかくお宿に行きたいな……」 そう独りごちた矢先、丁度数台の送迎車がバスターミナルに列をなして入ってきた。特に目立つのは、先頭を走るリムジンだ。白く輝く車体はまるでパノラマ写真のように長い。 「わぁすっごい! 東京からテレビが来たってだけあって、私達超VIP待遇され���る!」 「いえ、佳奈さん、あれは……」 ところがリムジンは大はしゃぎする佳奈さんを素通り。入口最奥で待機していた河童の家一団の前に停車する。すかさず助手席からスーツの男性がクネクネしながら現れ、乗降ドア前に赤いカーペットを敷き始めた。 「どうもどうもぉ、河童の家の皆様! 私めはアトムツアー営業部の五間擦(ごますり)と申します。さあさ、どうぞこちらへ……」 アトムツアー社員は乗車する河童信者達の列に跪いて靴を磨いていく。全員が乗りこむと、リムジンはあっという間に去っていった。 「……あーあ。やっぱ東京のキー局番組じゃないってバレてたかぁ~。リムジン乗りたかったなぁ」 「ただの神奈川ローカルですからね、私達」 「こう言っちゃなんですけど、さすがカルト宗教はお金持ってますなあ」 「タナカさん、今の台詞はカットしなきゃダメですよ」 「あっ一美ちゃん! 私達の、あっちじゃない?」 リムジン後方から車間距離を空け、一糸乱れぬ隊列を組んだバイク軍団が走ってくる。機体はどれも洗練されたフォルムの高級車で、それに乗るライダー達も全員眩しくなるほど美少年だ。 「「「千里が島へようこそ、お嬢様方! アトムツアー営業部ライダーズです!」」」 彼らは私達の目の前で停車すると、上品なダマスク柄の相乗り用ヘルメットを取り出し白い歯を見せて微笑んだ。 「えーっ、お兄さん達と二ケツして行くって事!? やーんどうしよ……」 佳奈さんがデレデレと伊達眼鏡を外した瞬間、 「きゃー!」「ライダー王子~!」「いつもありがとぉねぇー!」 加賀繍さんのおばさま軍団が黄色い悲鳴を轟かせ、佳奈さんを突き飛ばしてイケメンに突進! 一方イケメンライダーズは暴れ牛をいなす闘牛士の如く、キャーキャー飛び跳ねるおばさま達にテキパキとヘルメットを装着し、バイクに乗せていく。ところがおばさま軍団の殿を堂々たる態度で歩く加賀繍さんは、彼らを見るや一言。 「ヘン。どれもこれも、モヤシみたいのばかりじゃないか。コールもろくに出来なさそうだねぇ」 イケメンライダーズには目も合わそうとせず、一番大きなバイクにどかっと着席。バイク軍団は颯爽とリムジンを追いかけていくのだった。 「……あーあぁぁ。やっぱ小心者モデルじゃイケメンバイクはダメかぁ~」 「腹黒極悪ロリータアイドルじゃダメって事ですねぇ」 「加賀繍さんも稼いでるもんなあ。コールですって、きっとホスト狂いですよぉあの人」 「タナカD、その発言OA(オンエア)で流したら番組打ち切りになるよ」 三人で管巻いていると、少し間を置いて次の送迎車が現れた。トココココ……と安っぽいエンジン音をたてて走る小型シャトルバスだ。私としては別に河童の家や加賀繍さん方みたいな高級感はいいから、さっさとホテルで休ませて欲しい。ランウェイを歩いていた午前中から色んな事が起こりすぎて、もうヘトヘトなんだ。「あ、あの……」しかしバスは残酷にも、私達の待つ地点とは反対側のロータリーに停車。玲蘭ちゃんと後女津一家を乗せて去っていった。「あの、もし……」小さくなっていく『アトムツアー』のロゴに、佳奈さんが中指を立てた。私もそれに倣って、親指を 「あの! お声かけても!?」 「ふぇ!? あ、は、はい!」 声をかけられた事に気がつき振り返ると、背の高い男性……を通り越して、日本人離れした偉丈夫がいつの間にか私達の背後に立っていた。しかも恐縮そうに腰を屈めているから、まっすぐ立ったら少なくとも身長二メートル以上はありそうだ。 「遅くなっちまって失礼を。僕は千里が村役場観光事業部の、青木光(あおきひかる)です。ええと、したたびさんで?」 「ええ。しかし、君が青木君かい!? 大きいなあ、あっはっは!」 タナカDが青木さんの胸のあたりをバシバシと叩いた。青木さんはオドオドと会釈しながら後込む。身体が大きいから最初は気がつかなかったけど、声や仕草から、彼は私と同い年か少し年下のようだとわかる。 「あ、あのォこれ、紅さんがいつも髪にチョークされてるので、僕も髪色を。ど、どうです……派手すぎで?」 「あ、ヘアチョークご自分でされたんですか? すごくお似合いですよ!」 「い、いえ、床屋のおばちゃんが! でも……お気に召したなら、良かったかもだ」 青木さんは全体をホワイトブリーチした目隠れセミロングボブを、毛先だけブルーにしている。今日は私も下半分ブルーだからおそろいだ。ただ、このヘアメイクに対して彼の服装はイマイチ……素肌に白ニットセーター直着、丈が中途半端なベージュカーゴパンツ、ボロボロに履き古された中学生っぽいスニーカー。確かに、『都会からテレビが来るから村の床屋さんが髪だけ気合い入れすぎちゃった』みたいな情景がありありと目に浮かんでしまう。もうロケそっちのけで青木さんを全身コーデしたくなってきた。 「それより青木君、私達の車は?」 佳奈さんが荷物を持ち上げる。 「え。いえその、言いにくいんですけど……」 青木君は返答の代わりに、腕を左右にスイングしてみせた。まさか…… 「徒歩なんですか!?」 「すす、すみません、荷物は僕が! 役場もコンペに予算とか人員を削がれちまって、したたびさんのお世話は僕一人などと。けど僕、まだ仮免だから……」 「「コンペ?」」 首を傾げる佳奈さんとタナカD。私は飛行機内で聞いた除霊コンペティションの話をかいつまんで説明した。 「困るよぉそれ! 除霊されたらこっちの撮れ高がなくなるじゃんかよ!」 「ゲ、やっぱり! 聞いて下さい青木さん。この人達、宝探し企画とか言っておきながら、本当は私を心霊スポットに連れて行く気だったんですよ!?」 「ええっ肝試しを!? 島のお化けはおっとろしいんだから、それはちょっとまずいかもけど!」 目隠れ前髪越しでもわかるほど冷や汗を流しながら、青木君は赤べこみたいにお辞儀を繰り返す。 「そら見なさい、触らぬ神に祟りなしですよ。私達だけ徒歩になったのだって、きっと罰が当たったんだ」 「そーだそーだ! 青木君に謝れタナカD!」 「なんだと? あなただって紅さんを地上波��失禁させるって息巻いてたじゃないか!」 「佳奈さん!!」 「そこまでは言ってないし!」 「ややや、喧嘩は!」 「あ、気にしないで下さい。私達これで平常運転ですから」 この罵り合いはホテルに到着するまで続く。したたびロケではいつもの事だ。私達は良く言えば忌憚なく話し合える仲だし、悪く言えば顔を合わせる度に言葉の殴り合いをしている気がする。それでも総括的には……仲良しなのかな、どうなんだろう。 空港からホテルへは、石見サンセットロードという遊歩道を行く。海岸沿いの爽やかな道とはいえ、心霊スポットという前情報のせいか海が陰気に見える。船幽霊が見えるとかそういう事はないけど、島の人も霊も全く外を出歩いていなくてだぶか不気味だ。 到着した『ホテル千里アイランドリゾート』はそこそこ広くて立派な建物だった。それもそのはず。青木さんによると、ここは島で唯一の宿泊施設だという。但し数ヶ月後には、アトム社がもっと大規模なリゾートホテルを乱造するんだろう。玄関に到着すると、スタッフの方々が私達の荷物を運びに…… 「って、玲蘭ちゃんに斉一さん!?」 「あっ狸おじさんだ! ……と、誰?」 そうか、普段メディア露出をしない玲蘭ちゃんを佳奈さんは知らないんだった。 「この方は金城玲蘭さん、沖縄の祝女……シャーマンですね。私の幼馴染なんです」 「初めまして志多田さん、タナカさん。金城です。こちらの彼は……」 玲蘭ちゃんが話を振る直前、斉一さんの中にさりげなく、ドレッド狸の斉二さんが乗り移るのが見えた。代わりに斉一さんらしき化け狸が彼の体から飛び出し、 「どうも、ぽんぽこぽーん! 幸せを呼ぶ地相鑑定士、毎度おなじみ後女津斉一です!」 彼はすっかりテレビでお馴染みの風水タレントの顔になっていた。芸能界で活躍していたのはやはり斉二さんだったみたいだ。 「あの、どうしてお二人が?」 客室へ向かいながら私が問いかけると、二人共苦笑する。 「一美、実は……私達、相部屋だったんだ」 「え!?」 すごすごと玲蘭ちゃんが襖を開けると、そこはまさかの宴会場。河童の家や加賀繍さん達で客室が埋まったとかで、したたびチームと玲蘭ちゃん、後女津家が全員大部屋に押しやられてしまったのだという。 「はぁ!? じゃあ私達、川の字で雑魚寝しなきゃいけないワケ!? 男女分けは……まさか、えっこれだけ!?」 「すみません、すみません!!」 佳奈さんが宴会場中央の薄っぺらい仕切り襖を開閉するリズムに合わせ、青木さんはベコベコと頭を下げる。 「やめましょうよ佳奈さん、この島じゃ誰もアトムには逆らえないんですから」 「ぶっちゃけ俺や金城さんも、半ばアトムに脅迫される形でここに連れてこられたんだ���ねぇ……あ、これオフレコで」 「いやいや狸おじさん、もう全部ぶっちゃけたっていいんですよ。うちのタナカが全責任を負って放送しますから」 「勝手に約束するんじゃないよぉ! スーパー日本最大手の大企業に、テレ湘なんかが勝てるわけないんだから!」 「「「はあぁぁ……」」」 全員から重たい溜め息が漏れた。
གསུམ་པ་
簡単な荷物整理を終え、したたびチームはロビーに移動。改めて番組の企画説明が始まった。タナカDが三脚でカメラを固定し、語りだす。 「今回は『千里が島宝探し編』。狙うはもちろん、徳川埋蔵金ですからね。お二人には明後日の朝までに、埋蔵金を探し出して頂きます」 「見つからなかったらどうなるんですか?」 「いつも通り、キツい罰ゲームが待っていますよぉ」 「でしょうねぇ」 埋蔵金なんか見つかりっこないのは分かりきっている癖に。完全に出来レースじゃないか。 「もちろん手掛かりはあるよ」 佳奈さんが机に情報フリップを立てかけた。書かれているのは簡略化された千里が島地図だ。 「山の上にあるのが噂の縁切り神社、『御戌神社(おいぬじんじゃ)』。そこから真下に降りたところ、千里が島国立公園のところに書いてあるこのマークが『ザトウムシ記念碑』。一美ちゃんは、民謡の『ザトウムシ』は知ってるよね?」 「もちろん知ってますよ。お店で閉店前によく流れる曲ですよね? あれって千里が島の民謡なんですか」 「そうなの。そしてザトウムシの歌詞は、一説によると徳川埋蔵金のありかを示す暗号だと言われてるんだ!」 「へえ、そうなんですね。じゃあ暗号は解けてるんですか?」 「それはこれから考えるんだよ」 「はぁ……」 なんだか胡散臭い手掛かりだ。 「だいたい、埋蔵金なんて本当にあるんですか? そもそも、千里が島と徳川幕府に関係性が見えないんですが」 「じゃあまずは千里が島の歴史を知るところからだね。青木君ー!」 「はい、ただいまー」 佳奈さんが呼びかけると、大きなホワイトボードを引きずりながら青木さんが画角内に入る。実はさっきから、彼は私達の真横でずっとスタンバイしてくれていたんだ。青木さんはホワイトボードにゴシック体みたいな整った字で『千里が島と徳川家の歴史』と書き、解説を始めた。 千里が島、旧地名散減島。ここは元々江戸時代に都を脅かした怨霊を鎮めるためだけに開拓された地で、その伝説が縁切りや埋蔵金の噂に繋がる起源なのだそうだ。 事の発端は一六七九年。徳川幕府五代将軍、徳川綱吉が男の子を授かった。名を徳松という。しかし徳松は一歳を過ぎても母乳以外なにも飲み食いできず、見るからに虚弱だった。これを訝しんだ綱吉が時の神職者に相談してみると、徳松は江戸幕府征服を目論む物の怪によって、呪われた悪霊の魂を植え付けられていたと判明する。 「物の怪は徳松の体のミルクから、縁を奪ってたんですだ」 「ミルクから……縁?」 既に倶利伽羅から軽く説明を受けていたけど、番組撮影のためにも改めて青木さんから話を聞く。 「昔の伝承じゃ、おっかさんのミルクにゃ親子の縁が宿るなど。ミルクをとられた子は親と縁が切れて、バケモノになっちまうとか。だから徳松は、本能的にいつまでもミルクを」 「へえ、そういう信仰があったんですね」 神職者が提示した儀式は、三歳、五歳、七歳……と二年毎に分けて行われる。魂が完全形成される前の三歳の時に悪霊を摘出し、代わりに神社の聖なる狛犬の魂を素材として魂を作り直す。五歳になったら身を守るための霊能力を与えて修行を積ませ、七歳で悪霊退散の旅に向かわせる。それが幕府と神職者が本来描いていた運びだった。 「ちなみにこれが七五三参りの起源なんだよ……だがしかしィーっ!」 佳奈さんがフリップに貼ってある付箋を勢いよく剥がす! 「デデン! なんと徳松は五歳で死んでしまうのです!」 「えぇ? 七五三参りの起源になった子なのに、七歳まで生きられなかったんですか!?」 「まあ現在の七五三参りは、男の子は五歳しかお参りしませんけどね」 タナカDが画面外から補足した。徳松は修行の途中物の怪に襲われ、命を落としてしまったんだ。それでも彼は物の怪を体内に封印し、二年間耐え抜いた。しかし物の怪は激しく縁に飢え、徳松の精神をじわじわと狂わせる。そして一六八五年、人の縁を完全に失った徳松の魂は大きな狛犬のような怨霊となって江戸中の縁を貪った。徳松に縁を食われた人々は不幸にみまわれ、家族や仕事を失ったり、人間性を欠きケダモノめいて発狂したりと大パニックだ! ついに諦めた幕府と神職者は、徳松を江戸から追い出してしまう。彼らは江戸中の女性から母乳を酒樽一斗分集め、それを船に乗せて江戸から遥か南の無人島に運んだ。徳松も船を追って海を渡ると、そのまま神職者は島に神社を建て、徳松の魂を神として奉った。以降徳松は悪縁を食べてくれる縁切り神として有名になり、千里が島は今日も縁切りパワースポットとして名を馳せているんだそうだ。 「では一美ちゃん、ここでクイズです! 怨霊事件から更に二年後、一六八七年。怨霊がいなくなった後も徳松の祟りを思い出してノイローゼになっていた綱吉は、ある法律を制定しました。それはなーんだ?」 「え、法律!?」 急に佳奈さんがクイズを振ってきた。歴史は得意でも苦手でもない方だけど…… 「ええぇ、徳川綱吉で法律といえば、生類憐れみの令ぐらいしか……」 「ぴんぽんぴんぽんぴんぽーん!!」 「え、生類憐れみの令でいいんですか!?」 「その通り! 綱吉は犬畜生を見る度に徳松を思い出してしまう! そして祟りを恐れて動物を殺さないように法律を作った。それが生類憐れみの令の真実なのだあ!!」 ババババーン! と、オンエアではここで安っぽい効果音が入るのが想像に難くない。しかし七五三参りだけでなく、あまつさえ生類憐みの令まで徳川徳松が由来だったなんてさすがに眉唾な気がする。 「徳松さんってそんなに歴史的に重要な人だった割には、あまり学校じゃ習わないですね」 「今青木君と佳奈さんが説明した伝承は、あくまで千里が島に伝わる話ですからな。七五三も生類憐れみの令も、由来は諸説あるみたいですよ」 タナカDが蚊に食われた腕を掻きながら再び補足した。すると佳奈さんが反論する。 「でもだよ! もし千里が島の伝説が本当なら、法律にしちゃうほど当時の江戸の人達が徳松を恐れてたって事だよね! だったら幕府は、だぶか大事な物は千里が島に隠すと思うんだ。まさに埋蔵金とか!」 「うーん、百歩譲ってそうだったとしても、それで私達が埋蔵金を見つけて持って行っちゃったら、徳松さんに祟られませんか?」 「もー、一美ちゃんは相変わらずビビりだなあ。お化けが怖くて埋蔵金がゲット出来るかっ!」 「佳奈さん。そんな事言ってると、いつか本当にとんでもない呪いを背負わされますよ」 「その子の言う通りさね」 「え?」 突然、誰かがトークに割り入ってきた。私達が顔を上げると、そこにいたのは加賀繍さんと取り巻きのおばさま軍団。なんてことだ。恐れていた展開、ついにアサッテの霊能者に絡まれてしまった。
བཞི་པ་
ホテルロビーの椅子と机はフロントより一段低い窓際に位置する。フロント側に立つ加賀繍さんとおばさま方に見下ろされる私達は、さながら熊の群れに追い詰められた小動物のようだ。 「あんた、志多田佳奈だっけか? いい歳して幼稚園児みたいな格好して、みっとみないね。ご先祖様が泣いてるよ」 「ですよねぇ先生、大人なのに二っつ結びで」「嫌ーねー」 初対面で早々佳奈さんを罵る加賀繍さんと、それに同調するおばさま軍団。 「これはゴスロリっていうんですーっ」 佳奈さんがわざとらしく頬を膨らませた。こんな時でもアイドルは愛想を振りまくものだ。 「ゴスロリだかネンネンコロリだか知らないけどね。あんた、ちゃんとご先祖様の墓参りしているのかい? この島は特別な場所なんだから、守護霊に守って貰わなきゃあんた死ぬよ。それこそネンネンコロリだ」 出た、守護霊。日頃お墓参りを怠っていると、ご先祖様が守護霊として仕事をしなくなり不幸になる。正月の占い番組でよく聞く加賀繍さんの常套句だ。更に加賀繍さん直営の占い館では、忙しくてお墓参りに行けない人に高価なスピリチュアルグッズを売りつけているという噂だ。現に今も、おばさま方が怪しい壺やペットボトルを持って、私達をじっとりと見つめている。 「それから、そっちの黄色いの。あんたはちゃんとしてるのかい?」 黄色いの? ……ああ、アイラブ会津パーカーが黄色だから私の事か。佳奈さんは芸名で呼ばれたのに、ちょっと悔しい。 「定期的に帰ってますよ。家のお仏壇にも毎日お線香をあげてますし」 実家では、だけど。ここは彼女を刺激しないようにしたい。 「ふぅんそう。けどそれだけじゃあ、この島じゃ生きて帰れないだろうさ。仕方ないね、今回はあたしが特別にエネルギーを分けてやるよ」 そう言い加賀繍さんは指を鳴らす。するとおばさま方が私達のテーブルからフリップや資料を勝手にどかし、怪しい壺とペットボトル、銀のボウルをどかどかと並べ始めた! 慌ててタナカDが止めにかかる。 「ちょっと、加賀繍さん! 困りますよぉ、撮影中です!」 「はあ? 困るですって!?」 「あなた! 加賀繍先生が直々に御力添えして下さるのを、まさか断るってんじゃない��しょうね?」 「あ、いえ、とんでもございません」 「もー、タナカD~っ!」 しかしおばさま方に気圧されてあっさりと机を譲ってしまった。佳奈さんがタナカDの頭をペチッとはたいた。おばさまの一人がペットボトルを開け、ボウルに中身を注ぎ始める。ボトルには『悪鬼除滅水』という何やら物騒な文字が書かれている。横で加賀繍さんも壺の蓋を開ける。何か酸っぱいにおいが立ちのぼり、佳奈さんが私にし��みついた。 「エッヤダ怖い。あの壺、何が入ってるの!?」 小声で佳奈さんが囁く。加賀繍さんはその壺に……手を突っ込んでかき混ぜ始めた! グシュ、ピチャ、ヌチチチチ。まるで生肉か何かを攪拌しているような不気味な音がロビーに響く。 「やだやだやだ! 絶対生モノ入ってる! まさか、ご、ご、ご先祖様の……ご、ご、」 「ご遺体を!? タナカさん、カメラ止めにゃ!」 気がつくと青木さんまで私にしがみついて震えていた。かく言う私はというと、意外と冷静だ。あの壺や水からは、なんら霊的なものは感じない。強いて���うなら加賀繍さんご本人の中に誰かが宿っている気がするけど、眠っているのか気配は薄い。それより気になるのは、ひょっとしてこの酸っぱいにおいの正体は…… 「ぬか漬け、ですか?」 「そうさ」 やっぱり! 加賀繍さんは壺から人参のぬか漬けを取り出し、ボウルの悪鬼除滅水でぬかを洗い落とした。 「あたしん家でご先祖様から代々受け継がれてきたぬか床さ。これを食えばあんたらも家族と見なされて、いざという時あたしの強力なご先祖様方に守って貰える。ほら、食え」 加賀繍さんが人参を佳奈さんに向ける。でも佳奈さんは受け取るのを躊躇った。 「うわぁ、せ、先祖代々って……なんか、それ大丈夫なんですか?」 「なんだって!?」 「ひい!」 「し、しかしですねぇ加賀繍さん、お気持ちは有難いんで大変申し訳ないんですが、演者に生ものはちょっと……」 「カメラマン、あんたも食うんだよ」 「僕もですか!? いえ、僕はこないだ親戚の十三回忌行ったばっかだから……」 「美味しい!」 「一美ちゃん!?」「紅さん!?」 誰も手をつけないから私が頂いてしまった。これは普通に良い漬物だ。塩気や浸かり具合が丁度よくて、野菜がビチャッとしていない。ぬか床が大切に育てられている事がよくわかる。 「美味しいです加賀繍さん! 福島のおばあちゃんの漬物を思い出しました。佳奈さんも食べてみればいいじゃないですか」 「一美ちゃん案外勇気あるなあ……。じゃ、じゃあ、いただきます……エッ美味しい!」 「でしょ?」 「はははははっ!」 私は初めて、ずっと仏頂面だった加賀繍さんがちゃんと笑う所を見た。 「あんたは本当にちゃんとしているんだね、黄色いの。よく墓参りをする人は、親や祖父母の実家によく帰るだろ。だから家庭の味ってやつをちゃんと知っている。人にはそれぞれ家族やご先祖様がいて、それが良縁であれ悪縁であれ、その人の人生を作るのさ。だから墓参りはしなくちゃいけないんだよ。この島の神様は縁を切るのが仕事のようだけど、あたしゃ自分に都合の悪い縁を切るなんて愚かだと思っているのさ」 「そうなんですね。ちなみに私、紅一美です。覚えて下さい」 「あ? 紅? じゃあ何でそんなに黄色いんだい。今日から黄色ちゃんに改名しな! ハハハハ!」 どうやら私は加賀繍さんに気に入られたようだ。地元を引き合いに出したのが良かったみたいだ。それにしても、彼女の話はなかなか説得力がある。どうする事もできない悪縁を切るために神様を頼るのが間違っているとまでは思わないけど、そうする前に自分のご先祖様や恩人との縁を大切にする方が大事なのは明白だ。彼女がアサッテだからって偏見の目で見ていた、さっきまでの自分が恥ずかしくなった。ところが…… 「じゃあ、これ御力添え代ですわ。ほい」 おばさま方の一人がタナカDに請求書を渡す。するうちタナカDは「フォッ」と声にならない音を発し、冷や汗を流し始めた。あの五百ミリリットルサイズの悪鬼除滅水ボトルに『¥三,〇〇〇』と書かれたシールが貼ってあった気がするけど、人参のぬか漬け一本は果たしていくらなんだろう。それ以外にも色々な手数料が加算されているんだろうな……。 「加賀繍さんにパワーを貰えてラッキー! 果たして埋蔵金は見つかるのか!? CMの後、急展開でーす! はいオッケーだね、じゃ私トイレ!」 佳奈さんは息継ぎもせず早口でまくし立て、脱兎のごとくホテル内へ去っていった。 「あっコラ極悪ロリータ! 勝手に締めて逃げるなぁ!!」 「青木さん、私ぬか漬け食べたらお茶が飲みたくなっちゃったなー!」 「でしたらコンビニなど! ちぃと遠いかもけど、ご案内を!」 「おい青木と黄色! この裏切り者ーーーっ!!」 私と青木さんもさっさと退散する。まあタナカさんには、演者への保険料だと思って何とかして欲しいものだ。でも私は内心、これで番組の予算が減れば今後大掛かりなドッキリ演出が控えられるだろうと少しほくそ笑んでいた。
ལྔ་པ་
新千里が島トンネルという薄暗いトンネルを抜けた所に、島唯一のコンビニ『クランマート』があった。アトム系列の『プチアトム』ではなくて良かった。私はカフェインが苦手だから紙パックのそば茶を選び、ついでに佳奈さんへペットボトルのピーチサイダーを、タナカDへは『コーヒーゼリー味』と書かれた甘そうな缶コーヒーを購入した。青木さんも私と同じそば茶、『おおきなおおきなエビカツパン』、梅おにぎりを買ったようだ。青木さんが持つエビカツパンは、なんだかすごく小さく見えた。 外は既に夕日も沈みかけて、夕焼け空が夜に切り替わる直前になっていた。黄昏時……そういえば、童謡『ザトウムシ』の歌い出しも『たそがれの空を』だったな。私はコンビニ入口の鉄手すりに腰掛け、先程タナカDから渡されたペラペラのロケ台本をめくる。巻末の方に歌詞が書いてあったはずだ。するとタイミング良く、クランマートからも閉店ミュージックとしてザトウムシが流れ始めた……。
【童謡 ザトウムシ】 たそがれの空を ザトウムシ ザトウムシ歩いてく ふらついた足取りで ザトウムシ歩いてく
水墨画の世界の中で 一本絵筆を手繰りつつ 生ぬるい風に急かされて お前は歩いてゆくんだね
あの月と太陽が同時に出ている今この時 ザトウムシ歩いてく ザトウムシ ザトウムシ歩いてく
おうまが時の門を ザトウムシ ザトウムシ歩いてく 長い杖をたよって ザトウムシ歩いてく
何でもある世界の中へ 誰かが絵筆を落としたら 何もない灰色を裂いて お空で見下ろす二つの目
ああ月と太陽はこんなに出しゃばりだったのか ザトウムシ歩いてく ザトウムシ ザトウムシ歩いてく
「改めて読むと、確かに意味深な歌詞だな……」 私が独りごつと、隣の鉄手すりに座ってエビカツパンを咀嚼していた青木さんが口を拭った。 「埋蔵金探しは、したたびさんより前にも何度か。大体皆さんザトウムシ記念碑からスタートされて、『ザトウムシ』という歌詞の数だけ歩くとか、夕焼けの時間にどっちの方角を向くなどと……。けど、それらしい物が見つかったのは一度もだ」 「そうなんですね」 「そもそもどうしてザトウムシを……徳松さんに縁があるのって、どちらかと言えば犬では? けど何故か、島ではザトウムシを特別な虫だなどと」 「言われてみれば、生類憐みの令といえばお犬様! ってイメージがありますね。……ていうか、なんか、すいません。余所者のテレビ局が島のお宝を荒らすような真似して、島民の青木さんはいい気持ちしないですよね」 「そ、そ、そんな事! だぶか!」 青木さんは慌てた様子で私の方を向き座り直した。 「僕は嬉しいんだから! だって今まで、おっとさんらは島のこと僕に何も教えてくれないし、何もさせてくれなくて。けど今回は、社会人として初めて仕事を任されたので……ので……」 緊張したような様子で青木さんの姿勢が丸まる。コンビニから流れるザトウムシのメロディに一瞬振り返った後、彼はパンの袋を両手で抱えて更に縮こまった。 「……僕だって縁切りやお化けなんか、ただの迷信と。だけどこの島の人は実際、内地に比べてよそよそしいかもだ。何も言わず友達が引っ越してたり、親戚がいつの間にかおっ死んじまってたりなど……。それで内地の人と関われる役場の観光課に入ったのに、アトムさんがリゾート開発おっ始めて公務員は御役御免。僕は島に縁を切られたので?」 「青木さん……」 私も会津の田舎町で育ったから、彼の気持ちはわかる。狭いコミュニティに住む人々は、距離が近いようで時にとても排他的になるものだ。それは多かれ少なかれ互いを監視し、情報共有し合っているから当たり前の事だけど、縁切りで有名なこの島は特にそういう土地柄なのかもしれない。 「したたびさんのおかげで、やっと僕にバトンが回ってきたんだから。僕達で絶対埋蔵金を見つけにゃ。それで島のおっとさん方もアトムも、お化けも霊能者の先生方も……」 青木さんは腰を上げ、猫背をやめて私の前にまっすぐに立った。 「僕達の縁で、みんなを見返してやるんですだ!」 その瞬間、風が彼の重たい前髪をたくし上げた。彼の子犬みたいな笑顔を見た私は初めて、以前雑誌のインタビューで適当に答えた『好きな男性のタイプ』と青木さんが完全に一致している事に気がついたのだった。
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COC通過シナリオ
☆はKP可能なシナリオ※初回しの可能性有(シナリオ開いてるもの含) KPのみしているシナリオも掲載(pixiv等無料公開シナリオは☆マーク除外) KP(予定含)一度したものは◆ キャンペーンシナリオはCP名で記載します。
【あ行】 嗚呼咄咄‼︎ ☆ ◆I.C.D. 愛ではなく情☆ アイにかえる無彩花へ ◆愛の静寂 ☆ ◆愛は灼熱のアラビアン・ナイト ☆ 相食むる豚 愛罠蜂 ☆ ◆阿吽の断 ☆ 仰ぎ見る遡行 ◆秋葉原電人奇譚 ☆ アクアベル 悪魔の唇 ☆ Aconite アザーサイド・ウォーカー ☆ 浅草十二階 ☆ ◆亞書 ☆ Æ あトの祀リ☆ ┗ よ海くだリ ◆あなた方は御曹司です、金にモノを言わせてイタリアまでオペラを聴きに来ました。☆ アフェクシオンにも似て ☆ アベリアの町 アリスと終わらない不思議の国 ◆アルドラの騎士は君の名を呼ぶ ☆ アルリシャの星図 ☆ アンアンリ・ファンタスマゴリア☆ ◆暗狗☆ Unfinished Letter 家がない、燃えてる 家の中を歩いてみよう。☆ イエロウ・ウインド ☆ ◆異世界転生探索者と神託者の旅 ☆ 異説・狂人日記 犬神憑き☆ 鰯と柊 ☆ ◆インビジブルの慟哭☆ ウェンチェスター黙示録 (CP:1/2/3/4) ☆ 蠢く島 ◆嘘吐きなコトバと本当のココロ ◆泡沫の夢に踊れ☆ 現の盃 腕に刻まれる死 ◆海も枯れるまで☆ 永久の一日☆ Aの楽園Bの檻 ☆ エス ☆ SSS.S ☆ ◆えっ!壺を買うだけで幸せになるんですか!? ☆ ergo ☆ ┣ 第一章「行ける所まで行き」 ┣ 第二章「鳥は少しずつ巣をつくる」 ┣ 第三章「夜は助言を運ぶ」 ┣ 第四章「良い天気は雨のあとに来る」 ┗ 第五章「然るべき場所で死ね」 エロ=マンガ島って知ってる? エンジェル・デビル・インプロパー ☆ 縁と命はつながれぬ ☆ Oh! My Buddy! ☆ ◆覆い隠されたプラトニック ☆ ◆おこちゃまドロップス!☆ お地蔵さん ◆おす⇔めすぱにっく! ☆ ◆越智満異聞☆ 踊れ、ワルツ ◆終わりなき病の処方箋 【か行】 怪異交渉人☆ ┗追加パート(記憶喪失H/ 無音交渉) 邂逅 怪盗テトラクロマットと時詠みの国 怪盗ロマネスク かいぶつたちとマホラカルト☆ 怪物たちのララバイ☆ 傀儡たるもの 飼う男☆ かえりのかい☆ 赫々ノ女殺人事件 ☆ かくりよ葬乱録 ☆ 傍若無人-かたわらにひとなきがごとし- ☆ ◆蛾と踊る☆ ◆彼方からの君に捧ぐ ☆ 金糸雀の欠伸 ☆ カノヨ街☆ ┗追鯨 カルペ・ディエムの頽廃 ◆カワセミの終息☆ 監獄館殺人事件☆ ◆監獄病島☆ ◆寒慄のエトピリカ☆ 機械仕掛けの街 ぎこちない同居☆ ◆きせい☆ ◆喫茶セラエノ ☆ キネマ 君の奥さん、お隣さん家のタンス漁ってたよ 救世主☆ 狂気山脈 ☆ ┣ 狂気山脈-未知なる山嶺を夢に求めて-☆ ┗ カエラズノケン ~狂気山脈第三次登山隊の顛末~☆ 共振する綻び 窮鼠は何を喰らうのか?☆ 凶爽吊花 (CP:1-2-3-4) ☆ ◆魚人姫 ☆ ◆キルキルイキル ☆ ◆GUILTY or Not GUILTY☆ ◆クインズゲーム ☆ 空気男奇譚 ☆ クオリアの輝き☆ ◆九頭龍剣伝説 クトゥルフ オブ ザ マスカレード☆ クトゥルフロンパ 海月ロマンチカ ◆グラスバレヱ (CP:1-2-3-4-5-6) ☆ Crazy4☆ 黒いガレー船 ☆ X2U シリーズ ┣◆神父×マフィア ☆ ┣アイドル×マネージャー☆ ┣大正XU2 令嬢×使用人☆ ┣◆大正X2U 文豪×現代☆ ┗大正X2U 探偵×怪盗 ☆ クロノスを喰らうもの 九頭鳥の散華 ☆ ◆黒山羊の園から☆ ◆月面世界☆ 獣も斯くや 怪異交渉人 口渇ルルパ☆ ゴウスバーグの子供達 ☆ 辜月のN ☆ ◆ここで長く生きて☆ こゝろ 午前3時の茨城県 ◆五畳六腑 GODDESSIN THE DAR ☆ 孤独の密室 ☆ ◆コトワリ これを証明せよ☆ ◆殺していいのは呼吸だけ☆ 混濁の協奏曲 混沌と咲き誇る燃ゆる赫☆
【さ行】 最高の生贄☆ サイコメイズ☆ 最終列車とゆめのあと☆ サイバネティクスハニー ◆歳末逆行メトロ☆ SILENT (CP:◆SILENT-欠陥品の集まる谷-偽りの始まり-)☆ ┗ LUNATIC 鎖錠のローゼンクローネ ☆ 殺人姫☆ 砂糖菓子7つ The man in Gray ☆ サムシングフォーを探して☆ 猿の真言 ☆ 残夏に啼く☆ ◆SAN値回復温泉旅行 潮騒に月見里 九九九九 ☆ シグナルレッド・デッド 死体は夏に向いてない ◆死中に生を求める☆ ◆しにがみさんとのさいごのひ☆ シックコール ☆ 実験体δは青に微笑む 終焉賛歌救済論≒EF-Elyfine- 十二星座館殺人事件 ☆ 出社したら会社が炎上してた☆ ◆ジュノンの寵愛☆ 純潔の証明☆ JOKER≒JOKER☆ ◆SHOTGUN KIXXING MARRIAGE☆ 死を呼ぶつばめ(CP)☆ ジャンヌの��犬☆ 上海摩天楼 (CP)☆ 心臓がちょっとはやく動くだけ シンデレラは今夜も帰れない ☆ ���明鏡 ☆ 新約ルルミヤの心臓 神話と科学 水銀灯 水媒花 スーサイデッドメアリンク☆ 好きです、〇〇さん☆ ◆ストックホルムに愛を唄え☆ snuff video☆ 沼男は誰だ? 星花の海より君を臨む 聖夜の二重奏☆ 世界線の中庭☆ ◆刹夏☆ 038 先生 蒼穹 ◆ソープスクール ☆ 底闇 底闇2 ◆そして円の果てで約束を☆ その罪裁くは神か、或いは☆ 其の身に宿りしモノは。☆ 【た行】 代理殺人は覚めないうちに☆ 太陽と月と眼 太陽の死んだ朝☆ -多眼の0-☆ 黄昏の扉 誰かが死んでいる☆ ◆誰が為のパニヒダ 誰がロックを殺すのか ダンテの審判(CP) ◆痴情の蛇☆ 血は歯車のように チャルディーニの法則☆ 月と羊 ◆罪を孕みし堕落の子ら Dlma☆ デウス・エクス・マキナは死んだ DDG ◆デートorデッド☆ 天啓劫火 天使の愛しみ 天使の密室と不浄のロザリオ☆ 天上落土、堕楽のすゝめ☆ 輾転と町は 天の糸 天露尋☆ とある家(略) ☆ とある幸せな家族の話☆ ◆東京革鳴☆ 東京前線異常アリ 東京人魚 ☆ ◆東京リビングデッドマンズ ☆ ◆同居人☆ 匿名幸福論者は獨と踊る 髑髏に口付け、屍体に花を(CP:1-2-3-4-5)☆ 頭夢児島殺人事件☆ ┗頭夢児島殺人事件二冊目 ◆虜 ドロップアウトディスパイア トローリイ・アイロニイ☆ 【な行】 ナインルーム☆ ナギサの物語☆ NapFrappe 773 ◆なわばり☆ ◆28時のサクラメント☆ 2㌫のガランドウ 庭師は何を口遊む 人形回廊 ◆にんぎょうじみたぼくら☆ ねぇ、昨日なにしてた?☆ ◆猫のお宿 ◆ネームレス・カルト☆ 眠り姫は幽霊クラゲの夢を見るか? ネリネ☆ ◆ノーザン・シタデル☆ NOBODY*2☆ ◆ノゾキアナ☆ 呪いのAV☆ 【は行】 拝火のキャンプ☆ 拝啓、敬愛なる無能たちへ (CP) ☆ Bye Bye summer days ハイフェッツをなぞる病☆ 白鴉の城☆ 花は恋せど散りぬるを ☆ 母なる海の鯨の部屋☆ 薔薇の館 HELLO HERO☆ パピルン☆ パレヱドレイド☆ 盤上の一歩 ピース・メイカー☆ ヒガンのきみへ ☆ 潜む闇の意志 ☆ PYX☆ ⼈の⼼は妖⾯の如し☆ ひとりじゃワルツも踊れない☆ 白夜の歌☆ ◆火点し頃の蜘蛛踊り☆ ひび割れた鯨の胃の中にて☆ 秘密と内証☆ ◆ひみつのリフレクション☆ 瓶の中の君 不完全なる図書館 腐葉土に咲く薔薇の如く☆ ヘイコウセンソウ☆ ◆平行線のアポフィライト 変身☆ 返照する銀河 片鱗 VOID 4ARE☆ 咆哮エトランゼ 紡命論とシンギュラリティ☆ HOMING ☆ ぼくの苗床を紹介します☆ 僕の夏を君に捧ぐ ☆ ぼくはなにもしらない~この事件の犯人は HO2~ ☆ 星の神話エンドロール☆ 星へ至る棺☆ 星渡るカンパネラ☆ ポストヒューマン・ビーイング☆ ┣ エンジェル・デビル・インプロパー ┣◆アルトゥリスティック・ラブ ┗◆1226.38.9 ホテル・エウティプローン ホルマリン漬けの心臓 【ま行】 ◆魔術師たちのトロイメライ☆ マグロ また明日 ◆マチソワ・ランデブー 魔法少女希望譚☆ 魔を曳く獣 Mr.Sの華麗なる政策 ミサキバス☆ ◆水の破片を召し上がって。☆ 道案内 密室シェアハウス 密室のパスト ☆ ◆見果ての綸紡 ☆ ◆mirror 虫虫虫 ムーンウォーズ! ムーンエラーアウトサイダー メイキン・ウーピーは東京駅で恋をする 名探偵黒猫と大怪盗キャッツ ☆ 巡る妖精☆ 【や行】 山羊の歌は謡えない(CP:1-2-3-4) ☆ ◆焼肉飲み放題2時間3000円 やさしいじごくのつくりかた☆ ◆ヤドリギあやかし探偵社 (CP:1-2-3-4) ☆ 闇に捧ぐアリア☆ ◆闇に鈍痛 ヤロクギ叙事詩☆ ◆有限無情のシグナルパルス ☆ ◆ 有求必應 EUREKA ☆ ゆらめく魔法市☆ 宵闇神凵 ◆ようこそ!迷冥市役所都市伝説課へ! ☆ 欲望街☆ ◆因って件の如し(+◆獏の悪食) ☆ 406号室の隣人 【ら行】 Life goes on ~人生は続く~☆ ◆楽園パラノイア☆ ◆羅生門☆ ラストキス -最後にキスをして出る部屋- ラッキースケベと13階段 ☆ ◆ラブドールはキミの味☆ Love me,Love my dog.☆ 爛爛(CP) ☆ Re:おキツネさま☆ Residuum:Philadelphia リトルリトルクライシス☆ ReBirthTown 旅館の捕食者☆ リンクヴェルトゲンガー☆ ルパルファンの夢夜 ルベライトジャム☆ 零落奇譚 ☆ レッドパージ Repli;C∀ レプリカントの葬列(CP) ☆ ◆煉獄のレヴナント☆ 【わ行】 ◆わたしのかわいいハーメルン ◆嗤う人間師 我の名を答えよ 1ペニーの運命治療薬 ☆ ◆ワンルーム・ディスコン☆ =通過予定============= 掠う盲鬼 蛇の理想郷 Zodiac school
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大島てる
サニーです。 今日は和室でした。稽古前に畳の上で各々ストレッチをしながらの雑談中、久原さんが子供の頃、実家にお気に入りの場所があって、そこだけ畳が擦り切れてしまったという話から、「僕の家族は僕以外みんな霊感がある!」と言い始めて、霊の話に移っていきました。 すると、秋月さんが「”大島てる”って知ってますか?」と聞いて来ました。 日本全国の事故物件を見ることができるサイト���そうです。 話を聞いていたうちの1人はそのサイトを知っていて、以前調べてみたら、自分の住んでいる部屋が事故物件だったとか! (個人情報のため、誰なのかは伏せておきます。)
帰りの電車の中で、私もついつい気になって「大島てる」をググってしまいました。 でも、自分の家を調べるのは怖いのでやめておきました。
ふと「ギリシア悲劇には幽霊は出てくるのかな?」という疑問が沸いてきました。 シェイクスピアではお馴染みの亡霊。 ハムレットやマクベスの亡霊が出てくるシーンは、怖いというより、ちょっとコミカルで、私は割と好きです。
ギリシア時代はなんとなく霊も神も人間界もごちゃ混ぜのイメージがあったので、どんな風に出てくるのか気になりました。 そこで、「ギリシア悲劇」「亡霊」でググってみると・・・出てきました!
”ダレイオス王の亡霊” アイスキュロスの『ペルシア人』の中に出てきます。 この作品は、現存するギリシア悲劇のうち最古のもので、紀元前5世紀に起きたペルシア戦争におけるサラミスの海戦を、敗北したペルシア側の立場から描いています。 先王ダレイオス王の墓前で后のアトッサとコロスが呼ぶとその亡霊は現れ、ペルシア遠征軍が壊滅したのは、海神ポセイドンの怒りを招いたことに因ることを告げます。
やはり、亡霊はギリシア悲劇にも出てくるんですね。 稽古場の雑談を無理やりギリシャ悲劇につなげてみました!
1/15 SUNNY
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【S/D】アダム 前半
ぴくしぶに投稿した「呪われたディーンとサムとジョン」の続編です~
平和に暮らしてたサムディーンとアダムに色んな意味で審判の日がやってくるという話になりそうです。今回は女体化ナシ。
憧れの作家様であるのりさんから続編の希望をいただきまして、喜び勇んで書きましたもの。ご期待に沿えるか非常に不安ですが心を込めて捧げます。。
18000字くらい。後半アップしたらまとめてぴくしぶに投稿しようと思ってます。
~1~
アダムの住む牧師館には腕利きの庭師がいる。彼はアダムが学校から帰宅するころになると、たいてい自分が植えたモクレンの木の下で横たわっている。牧師を教会に迎えに行ったあとで(彼は一流の運転手でもある)、午前中にやり残していた庭仕事をあらかた片づけ、泥を払った手袋を腹の上に置いて、片腕を目の上に、もう片方の腕をまくらにして、草のシーツの上に長い脚を投げ出して昼休憩をとるのが、彼のスタイルだ。 バスを降りて、中にいる友達に手を振り、アダムはバス停から牧師館への近道の丘を駆け登った。背負っていた鞄を肩から外しながら、石垣の鉄門を開くと、むせかえるような草花の匂いが彼を迎える。 夏の終わりの牧師館はまだまだ緑が氾濫している。そのほとんどが元から自生していた野草だ。庭師が英国式の造園本ばかり愛読しているせいで、よく手入れはされていても、どの植物も必要以上に刈り込まれたりせず自然の向きに生かされている。 セント・ジョージの古い牧師館は、主人であるジム牧師の住まいにふさわしい、こじんまりとして清楚とした佇まいだ。広々とした庭は、歴代の牧師にもてあまされ、アダム達が住むようになる前は森の一部と化していたそうだけど、今では違う。情熱にあふれる庭師の手よって、小さなあずまやが建てられ、裏の森から流れてくる小川には、野ウサギなら悠々と渡れる石橋まで渡されている。春にはバラがアーチを作り、夏にはタチアオイが天を目指して咲き誇る。毎年九月末のアダムの誕生日が過ぎれば、この庭は鮮やかなオレンジ色に染まる。モクレンの木には電飾が巻かれ、石垣の上には中身をくりぬかれたカボチャがたくさん並べられて、鉄門には蹄鉄と骸骨が吊るされる。そしてもちろん、庭師と彼に愛された庭が一年でもっとも輝くのはクリスマスだ。清貧の枠を出ないいじらしい装飾と、丁寧な庭仕事が何のきっかけからかSNSで話題になり、十数年前までは幽霊屋敷とまで噂されていた田舎町の牧師館は、季節ごとに観光客が覗きに立ち寄る、いまや地元のホットスポットの一つとなっている。 ジム牧師はあまり歓迎していなかった。そりゃそうだ、アダムだって、自分の住まいを好き勝手に覗き込まれるのは好きじゃない。だけど誰がディーン・ウィンチェスターに「庭をきれいにするのをやめろ」なんて言える? 彼は最高の庭師で、ドライバーで、整備士であり、掃除夫で、キッチンの王でもある。その肩書のどれか一つでも奪えば、彼はがっかりするだろう。彼をがっかりさせるくらいなら多少のプライバシー侵害に目をつぶるくらい、なんでもなかった。きっとジム牧師もそう思っている。 いつもの場所にディーンの足がなくて、アダムはあずまやの中をのぞいた。ベンチの上に使い古されたカップが二組残されているのを見て、唇がにやりと上を向く。 ディーンは弟のサムをあずまやに引き込むのが好きだった。アダムでさえ、天井の梁に頭をぶつけないために、座っていても背中を丸めないといけないのに、サムが入ればまるでキングコングか、不思議の国のアリスだ。 実際にサムがあずまやの中に入ることはめったにないけれど、ディーンは弟をからかうためだけに、彼が館に訪れれば”正式なお茶セット”をあずやまの中に用意する。つまりこれがあるということは、サムが館に来ているということだ。 サムがいるならちょうど良かった。アダムは今月で一六歳になる。誕生日に友人の家に泊まらないかと誘われていて、今日ディーンに許可をもらう予定だった。どうせディーンに聞いても彼はサムに連絡���るだろうから、二人が家にいるならまとめて説得するチャンスだ。 昔は使用人の出入りに使っていた裏口から入る。そこから続く二間がディーンとアダムの小さな住まいだ。入ってすぐにキッチンとダイニングがあり、四人掛けのソファを中央に置いてリビングスペースと分けている。廊下の片側がバスルームで、もう片側がアダムの寝室だ(ディーンはリビングで寝起きしている)。アダムは二人を探したが、声はするけれど姿はない。声は廊下の奥から聞こえた。奥のドアから先は主館になり、主キッチンや応接室、二階にジム牧師の私室がある。どうやら応接室にいるらしく、アダムは主館に向かった。 応接室といっても仰々しいわけでなく、ただ小難しい本が詰め込まれた本棚と、椅子とテーブルがあるだけの部屋だ(そしてよくそこは、ジム牧師が連れてきた”迷える子羊”のお悩み相談室になっている)。ディーンは「百年前の空気のにおいがする」と嫌がって、掃除する用事以外ではそこに近づかない。サムは客だけど、応接室に通すような間柄ではないし、二人がそこで何を話しているのか、アダムは興味をそそられた。 「おまえがそういうふうに頑固だから親父だって……」 ディーンの声。少しいら立っている。 「僕だって? 僕が何だよ、言ってみろ。問題は僕じゃなく親父の自分勝手さと、それを助長させてるディーンのやり方だろ!」 こっちはサム。明らかに怒っている。珍しく、怒鳴っていると表現してもいい。 「おれはただ、親父が心配で」 「だから僕に内緒で悪魔退治をしたって? 狩りはやめろって言ったのに!」 「親父がきくかよ」 「僕はあんたに言ったんだ、あんたに頼んだんだよ! せっかくここで平穏に暮らせるのに、どうして自分から危険に身をさらす。アダムだっているのに……」 「アダムのためだよ。わかってるだろ。黄色い目の悪魔はおれたち家族の災いだ。奴を倒すまでは安心できない、だから……」 「それが間違いなんだ。親父の常套句だったよな、これは必要なことだ、僕らの安全のためだ、母さんの復讐のためだ……」 サムの声が震えているのに気づいて、アダムはとても驚いた。サムはいつだって、穏やかで理性的な話し方をする。皮肉を言うときだってにこやかだ(だから余計に辛辣に聞こえるときがある)。感情が高ぶって声を震わせるサムなど、アダムの記憶に存在しない。 サムはその調子で続けた。「……復讐なんて間違ってる。関わるべきじゃなかったんだ、本当に子どものことを思うなら。あんただってそうだ、アダムがいるのに、僕の制止もきかないで親父の狩りに付き合って……」 「サム……もう狩りは終わったんだ。黄色い目の悪魔は倒した。おれたちは勝った……」 「で、今度は親父探しの旅に出るのか? アダムと僕を置いて?」 アダムの息を飲む音がヒュっと廊下に響いた。扉の奥でサムとディーンが顔を合わせるシーンが目に浮かんで、一歩後ずさる。ちょうどその分開いた扉の向こうに、唇を引き結んだ顔のディーンが現れた。 「盗み聞きか。お行儀が悪いぞ」 「声が大きすぎるんだ。それに、僕の話をしてた」 アダムは体裁を整えるために手のひらで腿を撫でて、それからディーンの横にいるサムに挨拶した。「いらっしゃい、サム」 「やあ、アダム」 サムは苦労してほほ笑んだという表情で頷いた。それでアダムはたまらなくなって問い詰めた。「ダッド、どこかに行っちゃうの? 遠くに狩りに出かけるってこと? 何の話をしてたの?」 サムとディーンは、さっきアダムが想像したとおりに目を合わせた。言い争っていた二人の動きがシンクロするのを、今さら驚いたりしない。二人はとにかく仲がいい。アダムの父親はディーンだけど、クラスメイトにはサムとディーンがゲイカップルで、アダムは彼らの養子だと思ってるやつもいる。それでいくと、サムはダウンタウンに住んでいるわけだから、二人は別居していることになる。別居中で子持ちのゲイカップルの片方が牧師館に住んでいるというのは、すごくクールな誤解だとアダムは面白がっている。 そういう誤解をされてしまうくらい距離の近い兄弟は、アイコンタクト中に何の了解をしたのか、同じような表情になってアダムを見つめた。 「ディーンはどこにも行かないよ、アダム」 安心させるようにサムがいう。 「そうだ、今はな」 ディーンの不穏な肯定にサムが眉をひそめた。「ずっとだ」 二人はまた見つめあったが、今度のアイコンタクトでは相互理解は得られていなさそうだった。 「オーケイ、まだ話し合いを続けたほうがよさそうだね」 アダムは一旦引き返すことにした。彼自身だって、ときたま彼らが兄弟でなく、夫婦みたいに感じることがある。牧師館に住んでいると、様々な問題をかかえた夫婦を目にする機会が多く与えられる。その中で彼が学んだことは、”夫婦喧嘩にかかわるな”。 「待てよ、何か話があったんじゃないのか?」 ディーンが引き留める。アダムは肩をすくめた。「そうだよ、お願いがあったんだ。だけど今はやめとく」 「僕の言ったことを守ってるのか?」 サムが本当の笑みを浮かべて言った。彼の笑顔はアダムの緊張を少しほぐした。「ああ、サムが言ったんだ、願い事をする時は絶対に叶えられるタイミングを見極めてからにしろって」 ディーンがため息する。「まったく似たもの親子だな――」 誰かが息をのんだ。 ディーンはアダムの横をすり抜けて、そのまま外へ駆けだしてしまった。「ディーン!」 サムが追いかける。だけど開かれたままの裏口のドアに手をかけたサムは、それから先まで兄を追おうとはしなかった。 アダムはまだ、廊下の奥に立ち尽くしていた。 サムが振り返ってこちらを見た。アダムは、兄のディーンとはあまり似ていない――どちらかといえば自分のそれとよく似ている――彼のシャープな頬の線を凝視してつぶやいた。 「サムが――僕の父親なの?」 サムはとても苦しそうな顔をした。
アダムはディーン・ウィンチェスターの品行方正とはいえない過去の産物で、彼とディーンの最初の出会いはディーンの愛車の後部座席だった。恋人に去られ、置き土産をもらった彼は途方にくれたが、遊び人であっても無責任な男ではなかったから、父親としての責務を放棄しなかった。幸い、彼には兄思いの賢い弟がいた。彼ら兄弟はアダムを連れて子育てに最適の環境に住まいを移した。彼らが幼少のころに世話になったジム牧師を頼ったのだ。ディーンは田舎町の牧師館でハウスキーパーとして働きながらアダムを育てた。弟のサムは大学に通いながら一緒に暮らした。やがてサムはロースクールを卒業し、ダウンタウンに住居と事務所を構える弁護士になった。ディーンは相変わらず教区の仕事をしていて、いまや地元で愛される名物男だ。 それがアダムの知る自分たち家族の歴史であり現実だった。ディーンは今でも女に色目を使うけど、アダムがいるときに館を空けたことは一度もない。休日には(厳密には休日ではなくても)釣りに連れて行ってくれるし、テントが欲しいと言えばその夜のうちに子供部屋がキャンプ場になった。運転を教えてくれたのは十二歳のときだった。ある夜アダムはこっそりインパラに乗って運転を間違い、沼に突っ込んだ。ディーンは愛車を沈めた息子を一切責めなかった。アダムの鎖骨が治るまで側にいてくれて、退院するとすぐサムと重機の力を借りてインパラを沼から引き上げた。それから一年かけて二人でコツコツ整備した。復活したインパラの最初の運転を任されたのはアダムだった。……ドラマに出てくるように模範的ではないけれど、彼は素晴らしい父親で、疑いようもなく自分を愛している。サムもそうだ。サムは理想的な叔父さんだった。小さい頃はいつでも側で話を聞いてくれて、成長してからはディーンが教えてくれないことを教えてくれた。ディーンは喧嘩で相手の鼻を先に折る方法を教えてくれたけど、サムは鼻を折っても過剰防衛にならない立ち回りを教えてくれた。最高のコンビだ。時々、自分を捨てた母親はどんな女だったんだろうと想像することはあるけど、ディーンやサムに聞いてまで知りたいと思ったことはないのは、彼らがアダムの最高の”両親”だからだ。 でも、今まで疑ったこともなかった。サムのほうが自分の父親だなんて。 気が付けば夜になっていた。サムの表情を見てそれが真実だと理解したアダムは、自分の寝室に逃げ込んで鍵���かけた。しばらくサムが「開けてくれ、アダム、話をしよう」という声をベッドの中で聞いていたけど、ジム牧師までやってきたので我慢できなくなって、ヘッドフォンを大音量にしてシーツを被った。 いつの間にか眠ってしまったようだ。ヘッドフォンは寝ているあいだに床に落ちていて、今はフクロウの声しか聞こえない。静まった館の中に一人きりにされたんじゃないかという不安がアダムを襲った。 寝室のドアをそっと開ける。リビングに明かりがあることにほっとした。ディーンは帰っているんだ。僕を置いてどこかへ行ったりしない。 リビングにはジム牧師とサムもいた。それだけの大人の男がいると小さな部屋がいっそう狭く感じられて、アダムは一瞬身がすくんだ。 サムと牧師は二人掛けのダイニングテーブルに、ディーンは自分が寝床にもしているソファに座っていた。アダムが姿を現すと、ディーンは幽鬼みたいにフラっと立ち上がって、静まり返った異様な雰囲気に動けなくなったアダムにゆっくり近づき、彼を抱きしめた。 ディーンの体は冷たかった。 「急に出て行ったりして、ごめんな」 「……本当なんだ、サムが僕の父親で、ダッドが伯父さん?」 ディーンが息を吸い込むのを感じる。ジム牧師がサムに頷くのが見えた。サムも頷いたように見えたけど、俯いただけのようだった。顔を上げないサムに代わって、ジム牧師がアダムに言った。「そうだ。サムは――サムはまだ、十六歳だった。父親になる準備ができていなかった。それで兄さんのディーンの子ということにして、ここで一緒に育てたんだ」 アダムは俯いたサムの仕草にムカムカした。なんで僕から顔をそむける? 父親なら立ち上がって抱きしめてくれたっていいだろ? 今のディーンのように。 アダムはディーンの腕を振り払って、サムの前に立った。 「準備が出来ていなかったって、そんなの言い訳だ。あ、あんたは僕をディーンに押し付けて、自分は大学に行って、弁護士になって――”準備”する時間は山ほどあったじゃないか。どうして今まで騙してた!」 サムが動かないのでアダムの苛立ちは高まった。気づいた時には彼の胸倉をつかんで引っ張っていた――アダムにも��少し上背と力があって、サムの背があと一フィート低かったら、彼の尻を椅子から浮かせることに成功したかもしれない――その後にアダムがやりたかったことが、彼を投げ飛ばすことにしろ、頬を殴りつけることにしろ、現実はドラマのようにはいかなかった。 サムは視線を落としたまま、大人しく顔を仰け反らせた。「アダム!」 ――ジム牧師の制止する声が聞こえる。彼が椅子を蹴って立ち上がる音も。 サムの体を引き倒すのは不可能だったし、差し出された頬も、殴りつけるのには距離があった。引っ込みのつかない状況にアダムの意気が少しくじかれた時、サムが重い口を開いた。 「――信じられなかったんだ……」 「……え?」 「信じたかったけど、信じられなかった。アダムが僕の子どもなんて――」 その言葉にアダムはショックを受け、サムから離れてよろよろと後ずさった。ディーンが動いて背中を支えてくれる。 「サム」 「僕が父親ならいいとずっと思ってた。でもそうじゃないかもしれない。後になってそうじゃないって分かったら僕は立ち直れない。死んだほうがましだ」 「サム!」 ディーンはアダムを退けてサムの側に駆け寄った。足元にひざまずいて、また俯いた彼の顔を覗き込む。いきなり支えをなくしたアダムは壁に背中を激突させたけど、誰も彼を気にしなかった。アダム自身も、背中の痛みより目の前で繰り広げられるホームドラマの続きのほうが気になった。 「お前の子だって言っただろ!」 ディーンは言った。「アダムはお前の子どもだ! そう言ったじゃねえか」 「……どうして兄貴にわかるんだよ?」 「わかるからだよ!」 苦悩の表れた顔を覆おうとする手を握って遮り、ディーンは強く言い切った。「おれにはわかってる! おまえはおれを信じればいいんだ。アダムはおまえの子だ!」 サムはディーンの手を固く握りしめた。「……僕は……アダムを愛してる」 「知ってるよ」 「ごめん、ディーン」 「いいんだ、ほら、来いよ」 サムが兄の肩にかぶさるように抱きつくシーンを、アダムはいささか茫然としながら見つめた。 「なんだよ? なんでダッドに謝るんだ」 ジム牧師が無言で彼の肩に手を乗せた。
~2~
ジム牧師の容赦ない視線はサムの心を痛めつけた。それでも長年心に重く圧し掛かっていた疑念と不安が一掃されたようで、サムは幸せだった。 「アダムに真実を話す絶好の機会だったのに」 ジム牧師はねちねちと続けた。「嘘にさらなる嘘を重ねて子どもをだますなんて、許しがたい罪だ。君たちはこのまま永遠に秘密にしておけると思っているのかね。いつかしっぺ返しを食らう時が来る」 「牧師のあんたが言うと身に染みるよ」 ディーンが言う。「神父様、私は罪を犯しました。これが初めての告解です……」 「私は牧師だ。しかし告解をしたいというならいつでもどうぞ」 「遠慮しとくよ。あんたには長生きしてほしいからね」 「君の告解で心臓発作を起こすとでも思うのか? 私の経験を甘くみないでくれ」 サムは、軽口を叩きあう兄と牧師の声を聞きながら、にやけてしまわないよう口元を引き締めるのに必死だった。 あのあと、なぜか気の抜けてしまった感じのアダムは、それ以上の説明やサムの釈明を求めようとせず、ディーンの焼いたパイを食べて自室に戻っていった。もちろん、明日またきちんと話をしようとサムは言った――アダムの返事はドアを閉める音だったけれど、彼が本当に心を閉ざしていないことはサムにはわかる。大人たち三人は、ディーンの冷蔵庫からバドワイザーを取り、主館のダイニングに移動した。 ディーンがはっきりとアダムの出生について明言したのは、ディーン自身が何といおうとあれが初めてだった。アダムが生まれた時でさえ、ディーンはサムに「おれたちの子だ」と言ったけれど、「おまえの子だ」とは言わなかった。サムのような言葉を生業にする人間にとって、その違いは致命的だ。 呪いによって女になったディーンと最初にセックスしたのはジョンだ。そのあとサムもディーンを抱いたけれど、緊張して何をしたかろくに覚えていないし、はっきりいってちゃんとやれたのかも怪しかった。そういう疑念が最初に芽生えてしまうと、何度も思い返すうちに妄想は肥大していく。アダムが自分の子どもであってほしかった。それが真実だと心底思う時期もあれば、彼は親父とディーンの子どもで、自分はのけ者なんだと思い込む時期もあった。しまいには考えることも疲れてしまって、最近は上面の役割を本気で演じることで平穏を保っていた。ディーンはシングルファーザー。自分は彼を健気に支えるよくできた弟。アダムは父親と同じくらい、僕を慕っている。悪くないシナリオだし、間違いなく真実よりもアダムにやさしい。 一生表に出さないはずの秘密と苦悩は、ディーンが口を滑らせたことで一部が解き放たれた。アダムを納得させるためのストーリーを新たに考えなくてはならなくなったとはいえ、サムの心は軽くなった。今ならスキップしながら裏庭を一周するくらいできる。昼間、ジム牧師の客が見ている中でやってもいい。楽勝だ。 「とはいえ、問題はジョンだ」 ジム牧師は無残にもサムの浮足立った踵に一撃を入れた。サムが喉の奥で唸る横で、隣に座ったディーンがバドワイザーを飲み下して頷く。「アダムを一人にしたくないけど、親父が心配だ。でもサムがここに泊ってくれれば問題は解決」 「ちょっと待てよ。どういう意味だ?」 サムは兄を見て言った。「一人で探しに行くつもりなのか? 冗談だろ、こんな状況で? 今ディーンが出て行ったりしたら、それこそアダムが傷つくよ」 「こんな状況って、アダムはわりと冷静だったろ。そりゃそうだ、肝が据わってんだよ、血筋だな」 開き直ったようにディーンが言うのに、サムは目眩がした。「そもそも、親父が行方不明になることなんて、しょっちゅうじゃないか。そのうちメールでも寄越すさ。どこそこで狩りっぽい事件を見つけたってさ。そして兄貴は呼び出されるまま親父と一緒に魔物狩りに……」 「言ったろ、サム、もう狩りは終わったんだ」 ディーンは静かに言った。「マムの仇は打った。目的を果たしたのに、親父が今姿を消すのは……おかしい」 サムは唇を引き結んだ。さっきまでにやけないよう苦労していたのに、今や微笑みのかけらも見いだせない。 アダムを産んだディーンに一世一代の告白まがいの説得をして、ジョンから遠ざけジム牧師のもとに身を寄せた。子どもを安全に育てるために狩りから遠ざかろうというサムの説得は、しばらくのあいだディーンを長閑な田舎町に留めることに成功した。けれどサムの知らないところで彼とジョンは連絡を取り合っていたらしい(それがわかったときは、アダムはジョンの子だと確信して死にそうになった)。アダムがある程度成長すると、ディーンは時々ジョンの狩りに同行するようになった。サムは何度も止めてほしいと頼んだけれど、そのたびにのらりくらりと交わされた。殴りあいの喧嘩に発展しないためには、常にサムのほうが折れるしかなかった。 アザゼルという悪魔の件も、話をきくとどうやら事の中心人物はサムであるはずなのに、彼自身が知ったのはごく最近だった。 「ディーン、それは……本当なのか。黄色い目の悪魔は……確実に倒したのか?」 ジム牧師が尋ねた。 ディーンは瓶を置いて、宣誓するようにテーブルに両手を乗せた。「やつは死んだ。地獄に送り返したんじゃない。確実に死んだ。親父が手に入れた、悪魔を殺せる銃弾でやつを撃った。やつの体はまるで中で爆発が起こったように光って――それからその光が消えた」 ディーンは誰ともなく頷いた。「ああ、あのクソ野郎は死んだ」 「神よ、感謝します」 ジム牧師が十字を切る。 「その黄色い目の悪魔の目的は、人間を悪魔化させて悪魔の軍団の将軍に仕立て上げることだったろ? ――正確には僕を」 サムは言った。「親父がやつの狙いを見抜いて、阻止するためにしてきたことには、僕も感謝しているよ。親父が――親父とディーンが――やり遂げてくれなきゃ、僕はどうなっていたか。できればもっと早く事情を教えてくれて、僕にも参加させてほしかったけど。悪夢や原因不明のポルタ―ガイストで狂人になる前に教えてくれたのはよかったけどね」 意地の悪い言い方だと自覚しつつ、サムはぼやいた。しかしディーンの反応はサムの予想を上回った。 「まだ悪夢を見るのか?」 椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がったディーンは、弟の頬を両手でつかんでぐいっと上を向かせた。「超能力も出現するのか? どんなだ? 具体的に言え!」 「お、落ち着けって」 キスできそうなほど近くにある兄の顔にサムはたじろいだ。穴が開きそうなくらい見つめられて心臓が音を立て始める。目じりに消えない皺がいくつか刻まれたとはいえ、兄の容姿は若いころと変わらず飛びぬけている。 最後にこの顔に吸い付いたのはいつだったろう? ずいぶん前だった気がする。この半年は難しい案件ばかり抱えていて、館に来られなかったし、館でいい感じのムードになっても、アダムがいるときは触れられないから、覚えている限り最後は――なんてことだ、一昨年のクリスマス。泊まりに来ていたサムを置いて、ディーンがアダムと牧師を教会に送ろうと準備をしていた時、二人を車に乗せたディーンが忘れ物をしたと言って中に戻ってきた――サムは主館のダイニングにいて――そう、ここだ――ダイニングの入口にはヤドリギが飾られていた――戸口に立ったディーンが僕を呼んで――今みたいに頬をつかんで引き寄せて、彼のほうからキスをしてきた。 キスがしたいな。今すぐ。 そんなロマンチックなサムの高まりも、ディーンの平手打ちで霧となって消えた。「おいサム! ぼーっとしてんじゃねえ、答えろ! まだ悪夢を見てんのかよ眠り姫!」 「痛い! 何すんだい��なり!」 「いいから言え! 悪夢を見るのか? サイキックパワーも?」 「ないよ!」 乱暴な兄の腕を払いのけ、サムは椅子に座り直してシャツの胸元を正した。「……全くないとは言えないけど、僕だって漫然と生きてきたわけじゃない。パワーを抑えるコツを学んだよ。僕はまともだ」 「そういう問題じゃねえ」 ディーンは厳しい顔を崩さない。「最後に悪夢を見たのはいつだ? 昨夜はどうだった? その前は?」 「そんなにしょっちゅう見るもんじゃないよ!」 「ディーン、どうした。何がそんなに不安だ」 ジム牧師が穏やかに切り込んだ。ディーンはテーブルの周りを歩き始めた。 「ディーン?」 「親父はこう思ってた。サムのサイキックは悪魔の血によるものだ。成長すればするほどそれは完成されていく。だけど大元の悪魔を殺せばそれはなくなるはずだって」 「親父は正しいかも」 サムは肩をすくめる。「やつを倒したのは……四日前? まだそれしか経ってないだろ? 僕は四日間、悪夢は見てない。パワーは消えたのかも」 「サイキックはどうだ」 ジム牧師。「サム、パワーを抑えているんだろ? 消えたならもう抑える必要はない。解き放ってみなさい」 サムはためらった。「簡単にいうけど、何年もかけてルールを築いてきたんだ……蛇口を捻るだけで解放できるわけじゃないよ」 「やってみろ」 ディーンは言って、また隣に座った。「やってみろ。おれがついててやる」 サムは真剣な――真摯といってもいい――表情のディーンを見つめ、瞬きをした。まぶしすぎて直視できなかったわけではないけど――とにかく、ディーンはサムの運命の人なのだ。少なくともサムが性に目覚めた十二歳の明け方からそう定められている。その運命の人はめったにサムにやさしい言葉をかけてくれない。サムは本当は、恋人には砂糖のようにべったべたに甘やかされたいし、自分もそんなふうに愛したい。だけどそもそもディーンは兄で恋人ではないし、彼に甘やかされたい、甘えさせたいと言えば殴られて冷水をかけられるか、もっと悪くすれば聖水をかけた銀のナイフで刺される。 ”おれがついててやる”というのは滅多にない兄の甘やかしである。サムは存分に堪能することにした。じゃあ、遠慮なく。サムは目をつむって息を吐いた。隣に兄の体温を感じる。手を伸ばして、彼の手を取る。一瞬だけびくっと小さく抵抗したが、あとは大人しくサムの手に握られたままになった。 「こんなことを言って白けさせたくないし、君たちをジャッジする気はみじんもないんだが」 ジム牧師が淡々と言う。「どうかお願いだから、私の前で私の信仰心を試すようなことはしないでほしい」 ディーンが低い声でしどろもどろに言い訳するのを聞きながら、サムはゆっくりと呼吸を深くして瞑想状態に入った。瞑想はサムの人間らしく生きる上での必需スキルだが、何が起きても守ってくれると確信できる人が側についていない限り、人前でやる行為ではない。 ディーンの手を握っていれば、不可能なことなど何もないように思えた。ジェイソン・ボーヒーズが正義漢の強い不遇のヒーローだと陪審員に信じさせることすら容易な気がする。 瞑想に入るにはコツが必要だ。サムは二十代の前半に始めてからすぐにコツをつかんだ。そうでなければとっくに廃人になっていた。ディーンと共に静かにアダムを養育するための最初の数年間はサムにとって楽園でもあったけれど、同時に地獄だった。幼いころに発芽した不穏な力が年々増しているのを自覚したからだ。予知夢めいた悪夢で不眠症になり、いつ起こるかわからないポルタ―ガイストにびくついて、心も体も疲れ果てていた。このままだと衰弱死する自分を正確に予想したサムは、将来のディーンとのラブラブな生活のためにどうにかしてその力を制御する方法を求めた。それが瞑想だった。 深い瞑想に入ったサムの前にバスタブが現われる。赤茶けた真鍮のバスタブだ。冷たい水で満たされている。サムは力の高まりを感じると、このバスタブの中に入る自分をイメージしてその力を制御してきた。バスタブにつま先をかけただけで制御できることもある。水死体のように全身を沈めても、マグマのような力が水を沸騰させることもあった。だけどたいていはうまくやってきた。 サムはバスタブの側に立って、十年以上彼を守ってきた冷たい水を見下ろした。現実世界で自分と手をつないでいるディーンを思いながら、その水を抜いていく。 「僕は無防備だ」 サムはまだ瞑想に入ったまま、つぶやいた。「どうすればいい?」 「サイキックパワーがなくなった感じはするか?」 ディーン。サムはゆっくりと首を振る。「よくわからない。自分じゃ何も変わったように感じない」 「試してみよう」 ジム牧師が言う。「不安定だった時の君は、身の周りの物を浮かしていた。君自身が気づいていないこともあったけどね。この部屋にはたくさんの物がある。どれかを浮かせてごらん」 サムはうなった。「やろうと思って出来ることじゃ……」 「出来なけりゃそれでいいんだ」 ディーンの声があまりにも真剣なので、サムは自分自身に失望してしまった。何となく、自分には”出来てしまう”ような気がしたからだ。適当に黙り込んで、「出来ないよ」と言ってしまうことはできるけれど、一時しのぎの誤魔化しに何の意味もないことはわかっていた。 息を吸い込んで喉の奥で止める。体中の毛が静電気で逆立つような感覚がして、キッチンの吊り下げ電球がチカチカと明滅する。 サムは目を閉じていたから、物が浮いたかはわからなかった。目を開けたときに見えた、二人の表情がすべてを物語っていた。 「……アザゼルは死んでないのか」 青ざめて茫然としたディーンがささやいた。「い、いや、そんなはずがねえ。格の上下はともかく、前にも悪魔を殺したことはある。やつが死んだのは確実だ。でも、じゃあ、なんで……」 「ジョンの仮説が間違っていたんだろう」 同じように青ざめていはいるが、もう少し冷静なジム牧師が続けた。「サムの力はアザゼルの生死とは関係がない。完全に独立したものということだ」 「アザゼルの計画はどうなる?」 そう言うやいなや、ディーンの顔から完全に色が消えた。人形のように凍り付いてしまった兄の、握ったままの手を、サムはおそるおそる両手で包み込む。 「ディーン? ディーン、どうしたんだ?」 「……親父を探さないと」 ディーンはつぶやいた。サムは何か嫌な予感がして、バスタブの水がないことに不安を覚えた。 「ディーン、親父の行方を心配する理由、他にもあるんだろ? 悪魔を倒す前に何かあったのか?」 「……黄色い目のクソ野郎は、”俺たちはもう次の計画にシフトしている”って言ったんだ――親父に向かって、”お前の運命は変わらない”とも。負け惜しみの断末魔だと思ってあんまり気にしなかった」 凍り付いたままの表情で、サムを見たディーンの目は心底怯えていた。いつだって強気の姿勢を崩さない兄の変わりように、サムはショックを受けたけれど、プライドがムクムクと大きくなっていくのも感じた。ディーンが怖がってる? OK、問題ないよ、僕がついてる。 「俺たち? ”俺たち”と言ったのか? アザゼルは」 ジム牧師が確認する。ディーンは黙ってうなずいた。牧師は参ったというように両手で胸を押さえ、椅子の背にもたれた。「私もジョンも、アザゼルがこの計画のトップだと思っていた。計画に関与している悪魔でやつと同格の者が少なくとももう一人いるということか」 「なあ、そもそも、その悪魔の計画って、穴だらけだと思わない?」 サムはシリアスな空気に穴を開けようと頑張ってみた。「僕を悪魔将軍にしたかったら、なんでさっさと浚って洗脳するなりしなかった? 確かに何度か危ない目にはあったけど、奴らが本気で僕を引き入れたがったようには思えない」 「それは、親父が先回りしてやつらを追い払ってたからだ。悪魔よけのまじないも彫ってやったろ。それにおまえは実際、何度か浚われかけた。小さいころやたら親切なアパートの管理人がいただろ、あいつは悪魔だった。おまえに優しくして仲間にしようとしてたんだ。親父が殺したけど」 「本当に悪魔だったことを祈るよ」 サムは冗談半分で言ったけれど、二人が少しも笑っていないので咳をしてごまかした。 「あのさ、こういう可能性はないかな――僕はフェイク。最初からそうだったのかはわからないけど、もっと大きな計画の目くらましに僕を使っていたとか」 「それはありうる」 ジム牧師が頷く。「今言えるのは、なんだってありえるということだ。アザゼルが死んだにせよ、ディーンが聞いた最後の言葉を断末魔だと切って捨てるわけにはいかないな。ジョンの運命とやらも気になるし――やはり彼に話を聞くしかないな。彼を探さないと」 サムもそれには同意してもよかった。ただし、そのためにディーンが当てのない旅に出るというのは納得致しかねた。 はっきり言って、ジョンのことは尊敬している部分もあるし、愛してないわけではないけれど、次に会うのが彼のハンター式の葬式の場でも構わないと思っている。そりゃ死ぬまでは無事で生きていてほしいし、たまに電話で声を聞くのはいい。だけど実際会うのはごめんこうむりたい。間違いなく些細な意見の違いが言い争いに発展するし、どちらかが胸倉でも掴めば、双方アダムよりも体格もよければ負けん気も強いので、殴り合いになること必至だ。殴り合いで勝っても負けても、ディーンは悲しむ。自分がディーンを悲しませた罪悪感と、親父もまたディーンを悲しませることが出来るのだという、ひねくれた嫉妬心で、真鍮のバスタブも変形するかもしれない。 「ディーンが親父を探しに行くなら、僕も一緒に行く」 ディーンはまだどこか茫然としていたけれど、サムの言葉に正気を取り戻したようだった。「馬鹿いえ、アダムを一人にしておけないって言っただろ。どうせ仕事サボるならここにいてアダムを守ってろ」 「仕事はいつやめてもいいんだ。アダムのことも守る。でもディーンを一人で行かせない」 「言ってることめちゃくちゃだぞ……。おれは一人でも大丈夫だ、いつだってそうだったろ」 「いつだって狩りは親父と一緒だったし、最後に一人で買い物と婦人クラブに参加する以外で町の外に出かけたのはいつだった? 五年前か、十年前? あんたは一人に慣れてない。危険すぎるよ、論外だ」 ディーンは目を丸くして、サムに握られていた手を振りほどいた。「ハア? 何言ってんだ、正気か? だいたいおまえが何を知っているんだよ、この半年、うちに寄り付きもしなかったくせに!」 「寄り付かなかったなんて、そんなことない! たまたま仕事が忙しかっただけで……」 「あーあー、そうですか、仕事ね。弁護士様だもんな。狩りとは比べ物にならないスバラシイ仕事だもんな。おまえ最低だぞ、たまに来て文句だけ言って帰るなんてそういうの世間だとモラハラ男っていうんだぞ」 「なんッ……!」 サムは腰を上げてディーンを見下ろした。わざとらしく吊り上げられた眉の曲線は普段なら鑑賞すべき代物だが、今はただムカつくだけだ。「あのな、だいたい僕を館から追い出したのはディーンだろ、僕はここから通勤するって言ったのに、こんな狭い家にいつまでも居座られちゃ迷惑だとか、いつまでもママの家に住むなんて意気地がないとか言ってまだ就職先も決まってないうちに僕を追い出したくせに!」 「狭い家ですまないね」 二人の言い合いが始まったとたん、目を反らして存在感を消したジム牧師がつぶやく。 「アダムがジュニアに上がるのに、いつまでも男二人がくっついて暮らしてたら変じゃねえか! 弁護士のサラリーならいい家に住めるだろ!」 「まだ見習いだったし、それにいい家なんか欲しくなかった! ディーンとアダムの側にいればそれで……!」 サムは熱くなってしまった自分を抑えるために、瞑想に入るときのように深く呼吸をした。天を仰いで目を閉じる。 クソッ、よくない兆候だぞ。バスタブに水はもうないんだ。ジム牧師の前で痴話げんかっぽいやり取りをしたあげく、彼の館の窓ガラスを悪魔の血由来のパワーで割ってみろ。目も当てられない。 何度か呼吸を繰り返し、落ち着いてからサムは続ける。 「……どんな小さい家だろうが一緒がよかった。……だけど、あの頃はちょうど、一番力が暴走しやすい時期で僕は不安定だった。アダムに危害が及ばないかそれが不安だった……だから、今ならディーンの気持ちもわかる……」 「――待てよ、おれがおまえの力がアダムに危険だと思って追い出したと思うのか?」 サムが何も言わないと、ディーンはため息をついて彼の腕をつかんだ。「どうしておまえは話を複雑にしやがる。おれがおまえをここから出したかったのは……」 その時、またキッチンの電球が明滅した。サムは目を開いて前を向いた。ディーンを見下ろすと困惑とほんの少しの警戒の混じった表情をしている。腕を組んで成り行きを見守ってくれていたジム牧師も、同じような表情だ。 「いや」 サムは言った。「僕じゃない」 電球がイヤな音を立て始め、そして破裂した。三人とも即座にその場に屈み込み、テーブルの下に逃げ込む。そうしているうちに、キッチンのあらゆるものが振動し始めた。キッチンだけでない、三人がいるダイニングも、廊下も、牧師館全体が。 「地震か!?」 ディーンが叫ぶ。壁掛け棚の保存食品が雪崩のように床に落ちてきた。「クソっ! サム! おまえじゃないんだったら――」 ディーンの悪態も最後まで聞くことは出来なかった。耳鳴りのような高音が響き渡り、三人とも両手で耳をふさいで床をもんどり打つので忙しくなったからだ。それでもディーンが腹ばいで扉のほうへ移動しようとするのをサムは見た。アダムの無事を確かめに行くつもりだ。 サムは自分が行くといってディーンを止めようとしたけれど、そうする前にダイニングの扉が勢いよく開かれた。外で雷鳴のような轟音が響き渡り、同じタイミングでパジャマ姿のアダムがテーブルの下に転がり込んでくる。 「無事だったか!」 ディーンが自分の懐に彼を抱え込もうとする。アダムは混乱して叫びまくっている。「地震だ! 地震! みんな早く外に逃げなきゃ!」 「ディーン? これはやばいぞ……」 ジム牧師も叫ぶ。「これは自然現象じゃない……!」 すさまじい衝撃と音、それと光がダイニングを襲った。霰のように砕け散ったガラスが部屋中に飛散し、サムたち四人はただうずくまって身を守ることしか出来ない。夜風が館の中に入り込んでくる。そしておそらくみんなが感じたことだ――それ以外の”何か”も。 耳鳴りと振動が止んで、サムは頭を守っていた腕をゆっくりと下ろした。テーブルの下から這い出ようとするディーンの手を引っ張ったあと、アダムにも手を貸す。ジム牧師はディーンが抱えて起こした。そして立ち上がった四人は、ダイニングとキッチンの戸口に立つ男の影を見つける。 「何者だ。侵入者よ、名を名乗れ」 館の主であるジム牧師が、魔物にも人間にも通じる誰何をする。 男は顔を上げた。暗がりに月明かりが差し込み、姿が露わになる。サムはその背に一瞬巨大な羽のような影が見えた気がした。しかし次の瞬間には消えていて、戸口には痩せた中年の男の姿があるだけだった。 男は片手に大きな荷物を持っていた。 「もう一度問う。お前の名を名乗れ」 「牧師よ、警戒は必要ない。私の名はカスティエル。おまえと同じ偉大なる御方に遣える者」 男は見かけと同じように、あまり覇気の感じられない声で言った。「――そして、そこの男、ディーン・ウィンチェスターの誉れ高き守護天使だ」 サムの耳に、今度こそはっきりとバサバサという翼が風を切る音が聞こえた。 「何言ってんだ?」 名指しされたディーンは、困惑したような、怒ったような声を出す。「ただの変質者なら、見逃してやるからさっさと出て行け。名前と電話番号は控えさせてもらうぞ、あとできっちり弁償してもらうからな。でも人間じゃないなら――」 「ディーン、彼は天使だ」 「――ハンターと牧師が相手だぶっ殺してやる……って、サム? は?」 「彼は天使だよ。翼が見えた。それに自分で天使だって言った」 「じゃあ僕はアメリカ大統領」 アダムが言って、目を回してからすぐに謝罪する。「ごめん。黙る。みんなが正気になるまで」 「その通りだ。サム・ウィンチェスター。私は君の守護天使ではないが、君のことはよく知っている」 男は手にした荷物を引きずりながらこちらに歩み寄ってきた。母猫のようにアダムを抱き込んで庇うディーンは、警戒心むきだしの態度で怒鳴る。「おい、それ以上近寄るんじゃねえ!」 「大丈夫、これを渡すだけだ。自分で命を絶とうとしていたので気を失わせた。彼にはまだ生きていてもらいたい」 「ジョン!」 最初にその”荷物”の正体に気づいたのはジム牧師だった。荷物――もとい意識のないジョン・ウィンチェスターは、砕けたガラスが散らばった床の上に仰向けに転がった。 「親父……!」 ディーンはアダムを離してジョンの側に跪いた。倒れ込むような勢いに、サムの胸はぎゅっと締め上がる。彼はアダムを抱き寄せた。アダムは抵抗しなかった。ディーンを見つめながらサムの腕を強く握りしめた。 「親父、親父……! なんで……おい、クソ野郎、親父に何をしたんだ。目を覚まさねえ」 「そのままのほうがいい。また死のうとするかもしれない。彼には君たちの説得が必要だが、事情を知らないとそれも出来ないだろう」 男はテーブルの前まで進み出て、「座って話をしないか」と言った。しばらくの白けた静寂のあと、アダムが代表して言った。「あんたのケツはガラスが刺さってもノーダメージなの?」 男は発言の意図がわからないようだった。小首をかしげたあと、ようやく「ああ」と頷いた。それから先の光景はまさに夢のようだった――男の両目が青白く輝き、両腕が指揮者のように天を向く。すると、床に落ちたガラスや小物が一斉に浮き上がり、逆再生されたように、それぞれ元に��った場所へ戻っていった。 ガラスの最後のひと欠が、パズルのピースのように窓枠にハマる。レースのカーテンがさらりと揺れ、傾いたテーブルの脚が元の高さになる。 そしてすべてがほんの十五分前の、静かで緊迫した夜のダイニングルームに戻ったあと、男――カスティエルは言った。 「私のケツはノーダメージだ」
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『私たち異者は』スティーヴン・ミルハウザー
スティーヴン・ミルハウザーの短篇集。ほぼ中篇といっていい表題作を含む七篇所収。これまでのミルハウザーの物語世界と地続きでありながら、どこか新味を感じさせる作品が揃っている。どれも粒よりであることはいうまでもない。どこまでも手を抜かず精緻に組み上げた精巧な細工物のような世界は健在である。それでいて、造り物めいた手触りが控え目になり、より地に足がついたようで、古くからのファンは物足りなさを感じるかもしれない。
舞台となるのは、アメリカ映画によく出てくる、堂々とした街路樹が陰を作り、道路から程よく距離を置いた瀟洒な家が芝生を前に建ち並ぶ郊外都市。都会に近く電車等で通勤可能でありながら、静かで落ち着いた環境に恵まれている。治安もよく、人々も親和的。これまで何度もミルハウザー作品の舞台となってきた町であるだけでなく、平均的なアメリカ人が夢見る暮らしができそうな町である。
「平手打ち」はどこからともしれず突然現れた男が町ゆく人に平手打ちを食らわせ、そのまま姿を消す事件に見舞われたスモールタウンの話。シリアル・キラーならぬ、連続平手打ち犯(シリアル・スラッパー)はタン色のトレンチ・コートを着た男というだけで、被害者には犯人の心当たりがない。場所もちがえば相手も異なる複数の人間が被害に遭うことで、住民は疑心暗鬼に陥る。
そんな目に遭う見当がつかないとはいうものの、誰にでも過去はある。胸に手を当てて考えれば、思い当たるふしもない訳ではない。しかし、被害者の数が増えるにつれ、個人的な怨恨説は消え、住民全員への嫉みや憾みではないか、と論調に変化が現れる。新しい被害者が出るたび、新しい論議を生む。命にかかわる危険ではないものの、訳の分からない事件に巻き込まれた町の人々の間に高まってゆく不安な空気感。外見に変化はないのに、事件を境にかつては平穏だった町が、不穏な変貌を遂げる、ざわざわする恐怖感が半端ではない。
ミルハウザーの短篇が巧いのは、狙いを一つにしぼり、読者の眼をその一点からそらさないことである。「白い手袋」はまさにその好見本。仲のいい二人の高校生がいる。「僕」は学校の帰り、エミリーの家を訪ねては、彼女の家族と食事をし、スクラブルをして過ごしていた。ところが、ある日、エミリーは学校を休む。電話をしてもエミリーは出ない。それ以降、エミリーの左手はいつも白い手袋に被われている。
「僕」は、その白い手袋が気になって仕方がない。好奇心が募り、ついには深夜、勝手知ったるエミリーの家を訪れ、彼女の手から手袋を外そうとまでする。どうにかしてそれは思いとどまるものの、二人の間には以前とは違って壁のようなものが立ちふさがる。白い手袋は、エミリーが明かそうとしない秘密となって、二人の間に立ちふさがる。果たして、白い手袋の下に隠されたエミリーの秘密とは。何の変哲もない白い手袋を効果的に使った古典的スリラー。
モールの隣の広場に突然出現した<The Next Thing>と名乗る店はちょっと変わっていた。入口に大きなオフィスがあり、人が一人入っているブースがたくさんあって、通路が四方八方にのびている。店自体は地下にあった。初めは無視していた「私」だったが、次第に急拡大していく店舗にひきつけられてゆく。それは他の住民も同じで、高収入につられて社員となり、元の家を売り払い、地下にある最新設備つきの社員住宅に転居する。
新しい生活が始まる。空調と照明のせいで地上の世界と変わらない地下の暮らしに次第に慣れてゆく。しかし、収入がよくなれば、仕事はそれにつれて増える。仕事がこなせないと職を追われ、今や住む場所のない地上に帰るしかない。ノルマに追われ、息つく暇もない地下の暮らしは、作家にすれば空想の産物なのだろうが、兎小屋に住む働き過ぎのエコノミック・アニマルと揶揄された当時の私たち日本人のそれを嫌でも思い起こさせる。地下に住む大勢の奴隷労働者が、地上に暮らす一握りの上級国民の暮らしを支えるディストピア。そのモデルは日本なのかもしれない。
掉尾を飾る「私たち異者は」は、中篇と言っても通る長めの一篇。コネチカットに住む「私」は父の跡を継いだ五十二歳の医師。妻には去られ、再婚を考えていた矢先、軽い眩暈に襲われ、重い気分で寝床に入る。翌朝、私は「重みが胸からのみならず体じゅうから下りたような気」分で目を覚ます。そして、ベッドに寝ている自分を見つける。「私」は、その日を境に「異者」たちの仲間入りをした。
ふつう怪談は、古い邸に棲みついた幽霊を、そこに住む生者が見るものだ。「私たち異者は」は、それをひっくり返し、幽霊となってしまった「異者」の眼から、この世界を描いてみせる。死んだら自分はどうなるのだろう、というのは洋の東西を問わない問いなのだろう。医師という科学的な考え方をする人種だからか、キリスト教徒の国であるアメリカにあって、この「私」はかなり異端ではないだろうか。
しかし、ほとんど信仰というものを持たない、われわれ日本人にはなんだか馴染みのある死後の世界である。一人の独身女性の家に居ついた「私」と、どうやら「私」の存在に気づいたらしい、その女性と、その家を訪れた姪との間に繰り広げられる何とも奇妙な三角関係。幽霊の眼で見た死後の世界、という斬新なアイデアが光る、ちょっとユーモラスな異色怪談である。子の死後の世界をどう受け留めればいいのか、妙に気になる一篇。他に、ごく短いショート・ショート風の「刻一刻」、「大気圏空間からの侵入」、「書物の民」の三篇を含む。
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