#コスモスの影にはいつも誰かが隠れている
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. . 祈り 藤原新也 . . 写真、文筆、絵画、書とあらゆるメディアで表現し続ける藤原新也。この写真集は、彼のこれまでの道程と根幹に流れる人への思いを「祈り」というテーマに込め、初期作から最新作の作品と書下ろしの文章で、藤原新也の多彩な活動を辿る集大成 . 現在開催中の、藤原新也の『祈り』展に足を運んだ人もそうでない人にもうれしい一冊 . 会期:2022.9.10-11.6/北九州市立美術館分館・北九州市立文学館 2022.11.26-1.29/世田谷美術館 . . . #祈り #藤原新也 #ShinyaFujiwara #1944年 #福岡県門司市生れ #メメントモリ #インド放浪 #西蔵チベット放浪 #逍遥游記 #東京漂流 #少年の港 #日々の一滴 #コスモスの影にはいつも誰かが隠れている #北九州市立美術館分館 #北九州市立文学館 #小倉北区 #世田谷美術館 #ライカc #LEICAcTyp112 . . https://www.instagram.com/p/CjpsFbNPejy/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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続・くのいちイリュージョン
1. 女性だけのイリュージョンチーム「コットンケーキ」に所属していたあたし、御崎芽瑠(みさきめる)がフリーのマジシャン、谷孝輔(たにこうすけ)と出会ったのはほんの4か月前のことだった。 恋人同士になり、専属のパートナーになって欲しいと頼まれた。 悩んだ末、あたしはコットンケーキを辞め、彼のアシスタントになって生きることに決めた。 2. 以前は撮影スタジオだったというフロアの半分に客席のソファとテーブルが並んでいる。 残り半分があたし達のステージだ。 ちらりと見たところ、客席は結婚式の披露宴みたいに着飾った人ばかりだった。 ここってものすごく高級なクラブなの? 「会員制の秘密クラブさ。会費は安くないらしいよ」 「すごいね」 「みんな俺たちを見に来てくれてるんだ。ドキドキするステージにしよう」 「うん!」 〇オープニング ステージが暗くなって、中央にスポットライトが一本当たった。 ゴーン。 鐘の音のSE(効果音)。 あたし一人で進み出た。 衣装は真っ赤な忍者の上衣、ショートパンツに網タイツとブーツ。覆面で顔を隠している。 身を屈めて爪先で小走り。ときおり物陰に隠れるようにして周囲を伺う。 あたしは敵地に侵入したくのいちだ。 絶対に見つからないよう、気配を殺して・・。 〇 スネアトラップの罠 がたんっ!! 大きな音がして、くのいちが消えた。 ピーッ、ピーッ! 呼び子が響き、ステージ全体が明るくなる。 くのいちは頭上高くに吊られていた。 片方の足を縄に絡められて、逆さになって激しくもがいている。 これは森で動物などを捕獲するために使うスネア・トラップという罠だ。 目立たないように張ったワイヤを引っ掛けると、縄の輪が足に掛かり、立ち木をしならせたバネの力で吊り上げられる。 「獲物がかかったか!」 黒装束の忍者が登場した。コースケだ。 長いマントを翻し、背中に太刀を背負っている。 黒忍者は逆さ吊りになったくのいちの手首を捕らえると、後ろ手に組ませて縄で縛り上げた。 さらに覆面を剥ぎ取って、その口に懐から出した白布を詰める。 「舌を噛んで自害されては困るからな」 にやりと笑うと、前髪を掴んで前後左右に振り回した。 ・・あたしは悔し気な表情を浮かべながら振り子のように揺れた。 揺れ幅が小さくなると、再び髪を掴んで揺らされた。 全体重を片足で受けているから長く続けると足首を痛めるけれど、そのために足首部分を分厚くしたブーツを履いているから耐えられる。 〇 逆さ吊りオリガミ 黒忍者は小さな箱を載せた台を押してくると、くのいちが揺れる真下に据えた。 一辺がわずか30センチほどのサイコロ形の箱である。 その箱の蓋を開け、くのいちを吊るす縄を緩めてゆっくり降下させた。 くのいちの頭が箱に入り、続けて肩、胸、腰と沈んでゆく。 こんな小さな箱にどうやって人間の身体が入るのか不思議だった。 くのいちの膝まで箱に入ったところで、黒忍者は足首に絡んだ縄を解き、さらに左右のブーツを脱がせた。 網タイツだけになった脚を上から押し込んで箱の蓋を閉じる。 黒忍者は背中の太刀を抜くと、箱にぶすりと突き刺した。 すぐに抜いて別の角度で再び突き刺す。 これを何度も繰り返した後、黒忍者は箱の面を内側に折り込んで半分の大きさにした。 さらに折って小さくする。 箱をゲンコツほどの大きさまで折り畳むと、黒忍者はその台まで二つに畳んで運び去ってしまった。 〇 皮張り椅子からの出現 ステージが暗くなって、反対側に置いた皮張りの椅子にスポットライトが当たる。 黒忍者はその椅子に艶のある大きな黒布をふわりと被せた。 すぐに布を外すと、そこにくのいちが腰掛けていた。 縄で後ろ手に縛られ、白布の猿轡をされた姿は変わりがない。 黒忍者はその口から覗く布の端を摘むとずるずる引きだした。 咳き込むくのいち。 その首を両手で締め上げる。 くのいちは首を振りながら苦しみ、やがて動かなくなった。 ・・コースケの首絞めは容赦なしだ。 あたしは息を詰まらせ、ちょっぴり感じながら気絶する演技をする。 黒忍者はくのいちの頬を叩いて意識を失ったことを確認する。 大きなビニール袋を持ってくると、くのいちの上から被せ、袋の口を縛って床に転がした。 〇 透明袋のスパイク刺し 椅子が下げられて、キャスター付の薄い金属台が登場した。 金属台の広さは畳一枚分ほど。 黒忍者はくのいちを入れたビニール袋を金属台に乗せた。 袋の中ではくのいちが目を覚ましたようだ。 ・・あたしは身を捩ってもがくふりをする。 この後、後ろ手に縛られた縄を抜けてビニール袋から脱出するけれど、そのタイミングが難しいんだ。 コースケがアドリブで芸をすることもあるし。 痛! こらコースケっ、女の子を足で蹴るなぁ。 喜んじゃうじゃないか~!! 黒忍者がくのいちを袋の上から蹴って、くのいちが苦しむ。 その間に頭上から大きな器具が降りてきて、ビニール袋のすぐ上で停止した。 鉄板は金属台とほぼ同じ大きさで、100本以上の金属針(スパイク)が下向きに生えていた。 生け花に使う剣山(けんざん)を逆さにしたような形状である。 四隅に布ロープを掛けて吊るしているようだ。 もしロープが切れたら鉄板は落下して、鋭く尖ったスパイクがくのいちを貫くことになるだろう。 黒忍者は火のついた松明(たいまつ)を持つと、4本の布ロープに順に火を移した。 燃え上がる布ロープ。 透明な袋の中ではくのいちが必死に縄を解こうとしている。 4本あるロープの1本が燃え尽きて切れた。 鉄板は大きく揺れたが、まだ宙に浮いている。 反対側の1本も切れた。 鉄板がぐらりと傾き、それにつられて残りの2本が同時に切断された。 がちゃん!! 大きな音がして鉄板が落下した。 ちぎれたビニールの破片が舞い散る。 観客の誰もが息をのんでステージを見��めた。 金属台にスパイクが突き刺さっているが、そこに人影はなかった。 最後の瞬間まで、袋の中には確か��くのいちが閉じ込められていた。 いったいどうなっているのだろう? ステージが明るくなった。 黒忍者がマントを広げると、その陰からくのいちが現れた。 拍手の中、並んでお辞儀をする。 ・・やったね! コースケの目を見て微笑んだ。 コースケも笑ってあたしの頭を叩いてくれた。 3. 「じゃあ、お仕事うまくいったんですね!?」ノコが聞いた。 「まあね」 「いいなぁ、私も見たかったです」 「ダメよ。会員でないと入れないお店だから」 ノコはコットンケーキの後輩で、あたしとちょっと特別な関係にある女の子だ。 「・・だいたい片付きましたね」 「ありがとう、助かったわ」 「メルさんのことなら何でもお手伝いしますよ~♥」 ここはコースケのマンション。 彼の専属になって、あたしは前のアパートを引き払いコースケと一緒に住むことにした。 一緒と言っても、籍は入れない。ただの同棲だけどね。 ノコは引っ越し荷物の整理に手伝いに来てくれたのだった。 「お茶、入れるわ」 「お茶よりも・・」「何?」 「コースケさんはまだ帰らないんですよね?」 「うん。彼、ショーの打ち合わせで、戻るのは夜になるって」 「なら、触れ合いたいです、メルさんと」 「もう」 「えへへ」「うふふ」 あたし達はくすくす笑いながら着ているものを全部脱いで裸になった。 忍者の長いマントを互いの首に巻く。 マントは忍者装束が趣味のあたしがノコと一緒に過ごすときに必ず着けるアイテムだった。 「拘束してもらえますか?」 「ノコってマゾなの?」「はい、ドMです♥」 相変わらず素直ではっきり言う子。だから好きなんだけど。 ノコはマントの下で後ろに手を合わせ、あたしはその手首に手錠を掛けてあげた。 「ああ、これで私に自由はありませんよね」 後ろ手錠の具合を確かめるノコ。 その顎に指をかけて持ち上げた。そっと唇を合わせる。 キスの後、後ろから回した手で左右の胸を揉みしだく。 この子はあたしより小柄なくせに、おっぱいが大きくてふわふわ柔らかいんだ。 股間に手をやると、そこはもうしっとり濡れていた。 「はぁ・・ん」 カナリアみたいに可愛い声。 こんな声で鳴かれたら、あたしも濡れてくるじゃないの。 ソファに揃って倒れ込んだ。 乳首を甘噛みすると、ノコは全身をびくんと震わせた。 「・・俺がいないときを狙って、何やってるの」 振り向くと、ドアが開いてコースケが立っていた。 4. 「コースケ! 帰るのは夜だって・・」 「のはずだったけど、早く済んだから帰ってきたの」 コースケは頭を掻きながら呆れたように言う。 「ま、こんなことになっているだろとは予想してたけどね」 「すみませーん��、メルさんを食べようとしちゃって」ノコが謝った。 「俺は気にしないよ。それに食べようとしてたのはメルの方じゃないの?」 「・・」 あたしはノコの上から離れた。 赤くなっているのが自分で分かる。 二人の関係はコースケ公認だけど、彼の見ている前でこの子とエッチするほどあたしの心臓は強くない。 「わははは。メル、それじゃ欲求不満だろう?」 「ばか」 「楽しませてあげるよ。ノコちゃんもね」 「うわ~い」 そんな簡単に喜んじゃダメよ、ノコ。 コイツがこんな風に言うときは、だいたいロクでもない目に会うんだから。 コースケは皮張りの椅子を持ってきた。 それ、この間のステージで使った椅子。 「はい、メル。ここに座って、前に両手出して」 「この格好で?」「もちろん」 コースケはあたしを椅子に座らせると、前に出した両手首を縄で縛った。 さらに肘を折らせて手首の縄を首に巻いて括り付けた。 あたしは手を前で合わせたまま、下げられなくなった。 椅子ごと大きな黒布を被せられた。 「動いたら後でお仕置き。いいな?」「う、うん」
「さあノコちゃん、メルを好きにしていいよ」 「うわ~いっ」 後ろ手錠のノコが這って黒布の下に入り込んできた。
自分は膝立ちになると、あたしのマントの中に頭を挿し入れた。 ちゅう。 「きゃ」 おへその下を吸われた。そ、そんなに強く吸わなくても。 ノコの口は下へ下へと移動する。 あ、それ下の毛! 汚いよぉ。 「そろそろ諦めて足を開いてくださぁい、センパイ♥」 だ、だ、だっ、だめぇ。 両足の間にノコの肩が��り込んだ。 「はんっ!」 クリを吸われた。 「あ・・、あん、はぁん」 舌の先で転がされる。 「あ、あ、あああ」 我慢する気はすっかり失せた。 あたしは身を反り返らせて喘ぎ続ける。 「れろれろ。メルさんのおつゆ♥ 美味しいです」 「ば、ばか。そんなとこ、」 「噛みますよぉ。イっちゃってください」 「あ、やっ」 きゅん!! 衝撃が駆け抜けた。一瞬、意識が遠のく。 ノコの顔が上がってきて耳元で囁かれた。 「抱いてあげたいんですけど、手錠してるんでダメなんです。・・代わりにキスしますね♥」 「あぁっ!」「んんっ!」 ノコとあたし、両手を拘束された女同士がディープキスをする。 はあ、はあ。 肩で息をして、もう一度吸い合った。 ぱちぱちぱち。 「いいねぇ。堪能させてもらったよ」 のんびり拍手してからコースケが言った。 「はあ、はあ。コースケぇ。もう許して」 「そうだな。じゃ、そのままバニッシュしてよ」 「そ、そんな、無理」 「無理じゃないさ。それくらいできないとこの先困るぞ」 「きっとできます! メルさんなら」 もう、ノコまで無責任に。 「じゃ、いくぜ。・・ワン、ツウ、スリー!」 コースケは椅子全体を覆う黒布を両手で持って外した。 そこには後ろ手錠のノコだけが膝立ちで屈んでいた。 あたしが座っていた椅子の座面には、半透明の液体が広がって溜まっていた。 5. 翌日。 喫茶店に現れたサオリさんは以前より綺麗になっていた。 「待たせたかしら」「いえ、あたしも来たばかり」 「メルちゃん、何だか綺麗になってない?」 「あたしこそ、サオリさんが綺麗になったって思ったんですけど」 「え? あはは」「うふふ」 コットンケーキのリーダー、サオリさんと会うのはチームを辞めて以来だった。 あたしが円満に退所できたのはサオリさんが応援すると言ってくれたからで、あたしはとても感謝している。 「どうしてるの?」 「クラブで彼とイリュージョンのお仕事をやってます」 「そっか。頑張ってるのね」 「まだ続けてできるかどうかは分からないんですけど」 「コットンケーキだって最初はそうだったわ。・・それで、どこのお店?」 「それはまだちょっと、」 あたしは言葉をにごす。 秘密クラブで拷問イリュージョンやってます、なんてこの人には言えないよ。 サオリさんの目がきらりと光った。 「そう・・、詳しくは聞かないけど、いろいろなお店があるわ。危ない仕事はしないでね」 「無茶はしません。彼を信じて頑張ります」 「分かった」 サオリさんは笑って手を握ってくれた。 「じゃあ何も言わない! 自分の信じた道を進むのよ、メルちゃん」 「はい!」 6. 「くのいちの拷問とは考えたもんでんなぁ。客の評判は上々でしたで」 クラブのマネージャーが言った。 ガッチーと名乗る不思議な関西弁を喋るおじさんだった。 あたしとコースケは先週のステージの評価を聞きに来たのだった。 「来月も頼みますわ。それも好評やったら出演枠を毎週とる、ちゅうこと��」 やった! あたしはコースケとガッツポーズをする。 「・・まぁ、できたら、できたらでよろしおまっけど、次は、もちょっと過激にしてくれたら、ええかもしれませんな」 「過激に、ですか?」コースケが聞く。 「過激に、ですわ。そちらのメルさんでしたか、可愛い顔やさかいグロな演出やったら喜ばれますわ。エロでもよろしいけど」 「分かりました、やります。まかせてください」 彼が胸を叩いた。 グロかエロって、あたしがやるんだよね。 コースケ、大丈夫? 安請け合いしちゃっても。 7. 東京から車で2時間の高原。 そこは小さな湖に面したキャンプ場だった。 次の出演が決まったお祝いに、あたしとコースケは二人でゆっくり過ごそうとやってきた。 キャンプなんて面倒くさいし汚れるからホテルがいいと言ったあたしに、大人気の絶景キャンプ場だから行こうと誘ったのはコースケだ。 「・・誰もいないじゃないの」 「あれ? おっかしいなぁ~。平日は空いてるのかなぁ~?」 「コースケ、知ってたんでしょ」 「わはははっ、まあいいじゃねーか」 「こんな寂しいところで二人だけなんて、どういうつもりよ!」 「誰もいなけりゃ、エッチし放題だぜ」 「え」 「ほら、今夜は晴れてるし、外でするってのはどう?」 これで喜ぶんだから、我ながら単純な女だと思う。 コースケはキャンプの料理も上手だった。 フライパンで焼いたピザとペンネ、チキンとキノコのホイル焼きを食べるとお腹いっぱいになった。 「マシュマロ、焼けたぜ」 「わ、食べるぅ」 パチパチ燃える火を前に並んで座っていると自然といい雰囲気になる。 あたしが身を寄せると彼が肩を抱いてくれたりして。 「キャンプも悪くないだろ?」 「うん、バカにしてごめんね。・・今度はノコも連れて来たいな」 「ああ、あの子なら喜ぶだろうね」 「見てっ。星がすごーい!」 「おお、まさに満天の星だ」 「こんなにたくさんの星見るの、初めてだよー」 見上げていると、頬に彼の手が添えられた。 顔を向けてキス。 「今日は優しいのね、コースケ」 「俺はいつでも優しいぜ?」「うそ」 「どう? 今なら何されてもいいって気分にならない?」 「そうね。・・いいよ、今なら」 「よっしゃ。じゃ、早速」 へ? コースケは立ち上がると暗がりの中を歩いていった。 もう、せっかくロマンチックな雰囲気だったのに。 バタン! あれは車のハッチバックの音。 「お待たせ~」 「何、そのキャリーケース」「見てな」 コースケはポケットから鍵を出すとキャリーケースの蓋を開けた。 大きな塊がごろんと転がり出た。 サージカルテープでぐるぐる巻きにされた布の袋だった。 テープを剥がして袋の口を開くと、中に膝を抱えて小さくなった女の子が入っていた。 「ノコ!!」 「えへへ。こんばんわぁ、メルさん」 「あんた、いつから」「えっと、朝からですぅ」 朝から? じゃ、あたし達がドライブして、ランチ食べて、コスモス園行って、それからえ~っと、ともかくいろいろしてる間、ずっと!? 「はいっ、頑張りましたぁ」 「水分補給も兼ねてカロリーゼリー持たせてたから問題ないぜ。トイレは無理だけど」 「私、漏らしたりしてませんよぉ。エライでしょ? ・・そろそろ限界ですけど」 「その袋は防水だよ。中でやっちゃって構わないって言っただろう?」 「女の子なのに、そんなことできませんっ。それに私、メルさんのためならボーコー炎になってもいいんです」 「そーいう問題じゃないでしょ!」 ともかくノコを袋から出して、トイレに行かせる。 ノコは裸で汗まみれだった。 「着るものあるの? それじゃ風邪引くわ」 「大丈夫です。メルさんに暖めてもらいますから」 「え? きゃっ」 やおらノコはあたしの服を脱がせ始めた。 「コースケ! 笑って見てないで何とかしてっ」 「俺、ノコちゃんの味方」「え~っ」 コースケは全裸になったあたしとノコを向かい合って密着させた。 反物のように巻いた布を出してくると、あたし達の首から下に巻き始めた。 とても薄くてゴムのように伸びる布だった。 きゅ、きゅ、きゅ。 弾力のある布が肌を絞め付ける。 き、気持ちいいじゃない。 「マミープレイに使う布だよ。メルはぎゅっと包まれるのが好きだろ? 性的な意味で」 「性的な意味は余計っ。・・否定、しないけど」 肩と肘、手首まで布に包まれる。 これ自力じゃ絶対に抜けられない。 「おっと、これを忘れてた」 あたしとノコの股間にU字形の器具が挿し込まれた。 「ちょっと重いから落ちないようにしっかり締めててね、ノコちゃん」 「はい!」 ノコ、何でそんな殊勝に応じるの。 やがて布はあたし達の膝から足首まで巻かれ、さらに二重、三重に巻かれた。 「口開けて、メル」「んっ」 コースケはあたしの口にハンドタオルを押し込んで上からガムテを貼った。 猿轡、あたしだけ!? 「よっしゃ、頭も巻くぞ」 あたし達は首から上も布を巻かれて一つの塊になった。 そのまま地面に転がされる。 「いいねぇ、女体ミイラ」 布の巻き具合とあたし達の呼吸を確認すると、コースケはおごそかに宣言する。 「二人揃ってイクまで放置。時間無制限」 えええ~っ!? 「俺は君らを肴にホットウイスキーでも飲んでるわ」 8. まったく動けなかった。 動けないけれど、女の子二人で肌を合わせて強く巻かれているのは気持ちよかった。 ちょっと息が苦しいのはノコの巨乳があたしの胸を圧迫するせい。 まあ仕方ないわね。 「メルさぁん♥」 耳元でノコが甘い声を出した。 あたし達は頬と頬を密着させた状態で固定されているから、この子の声は耳元で聞こえるんだ。 ぺろ。ぞくぞくぅ! 「んんっ、んんん~っ!!(ひぃっ、耳を舐めるな~!!)」 思わずのけ反ると、股間のU字器具が膣壁を刺激した。 「ひゃん!」「ん~っ!(ひゃんっ!)」。 あたしとノコは同時に悲鳴を上げる。 これ、うっかり力を入れるとヤバい・・。 ぶーんっ。 そのU字器具が振動を開始した。 「あぁ~んっ!!」「んんっ~ん!!��」 双頭バイブっ!? コースケめ、仕込んだなぁ!!! ノコがびくびく震え、同期してあたしもびくびく震えた。 膣(なか)で暴れるバイブは的確にGスポットを突いた。 耐えられずに下半身に力を入れると、それは刺激となって相手のGスポットに伝わる。 そしてさらに大きな刺激が返ってきて、こちらのGスポットをいっそう強く責めるのだった。 「はん! はん! はぁんっ!!!」「ん! ん! んん~んっ!!!」 コースケは双頭バイブのリモコンを気ままに操作した。 あたし達は震え、もがき、快感を増幅し合った。 イキそうになる前にバイブは停止して、その度に二人とも半狂乱になった。 疲れ果てたけれど、眠ることも休むこともできなかった。 あたしもノコも被虐の嵐の中をどこまでも堕ちた。 明け方近くになってコースケはようやくイクことを許してくれた。 ノコが声にならない声を上げて動かなくなり、それを見てあたしも安心して絶頂を迎え、そして意識を失った。 とても幸福だった。 朝ご飯の後、コースケが撮影した動画を見せてもらった。 スマホの画面の中で、あたし達を包んだミイラがまるで生き物のようにびくびく跳ねまわっていた。 9. クラブからさらに過激なネタと求められて、コースケは新しいイリュージョンを準備した。 機材の費用はクラブが出してくれるという。 続けて出演契約できたら、という条件だけどね。 「どう? いける?」「大丈夫、いけるよ」 あたしは新調したガラス箱に入って具合を確かめている。 クリスタルボックスに似ているけれど、幅と高さの内寸が50センチずつしかないから中で身を起こすことはできない。 高価な耐熱強化ガラスで作った箱だった。 絶対に成功させないといけないよね。 「じゃ、隠れて」「分かった」 あたしは底の扉を開けて、その下に滑り込んだ。 燃え盛る火の下でも安全に過ごせる隠れ場所。 「蓋、浮いてるぞ」「え、閉まってない?」 「太っただろ、メル」「失礼ねーっ。バストが大きくなったの!」 「そりゃあり得ねー」「言ったわねー。なら今夜確かめる?」「よし、徹底的に確かめてやる」 軽口を叩き合いながら、あたしは自分の位置を調整する。 「ごめん、一度押さえてくれる」「おっしゃ」 ぎゅ。かちゃり。 仰向けになったあたしを押さる天板が下がって、あたしはネタ場の空間にぴたりとはまり込んだ。 「どう?」「気持ちいい」 「何だよそれ。・・浸ってないで、とっとと出てこい」 「もうちょっと」 「あのねぇ~」 それからあたし達は次のステージの構成を決めて、ネタの練習を続けた。 10. 次のショーの本番当日。 「ノコ、何であんたがここにいるのよ」 「えへへ。私も手伝いに来ました」 控室にはノコがいた。 コースケと同じ黒い忍者の装束で顔に覆面をしていた。 「あんたもコットンケーキ辞めさせられちゃうよ」 「大丈夫です。ちゃんと顔隠してやりますから」 「それでバレないほど甘くないと思うけど」 「やらせてやれよ。ノコちゃんも覚��して来てるんだ」 コースケが言うなら、とあたしはノコのアシスタントを認めた。 アシスタントと言ってもノコは黒子で機材の出し入れなどを手伝う役だ。 「・・御崎メルさん、来客です。フロアへどうぞ」「あ、はい!」 来客? 客席に行くと、そこにはセクシーなイブニングドレスの女性が待っていた。 「サオリさん!! どうしてここに!?」 「コットンケーキのリーダーが秘密クラブのメンバーだったらいけない?」 「いけなくはないけど・・、驚きました」 「ショーのプログラムに『Kosuke & Meru』ってあって、もしやと思って来たらやっぱり貴女だったのね」 「知られちゃったんですね。恥ずかしいです」 「いいのわ。わたし、今日はすごく楽しみにしてるんだから」「?」 サオリさんは微笑んだ。今まで見たことのないくらい色っぽい微笑み方だった。 「ここでやるってことは、メルちゃん、きっと可哀想な目に会うんでしょ?」 「え」 「正直に言うとね、女の子が酷いことされるのが大好きなの。拷問されたり、無理矢理犯されたり」 「・・サオリさん、やっぱりSだったんですか」 コットンケーキ時代、サオリさんの指導がとても厳しかったのを思い出した。 あたし達後輩はいつも泣かされて、このドS!とか思ったものだった。 「うふふ。逆かもしれないわよ」 サオリさんは笑っている。 「ま、まさか、ドM!?」 「わたしのことはいいじゃない。ステージ、怪我しないよう頑張ってね!」 「・・はいっ」 控室に戻り、ノコに「サオリさんが来てる」と伝えた。 「ぎょぼ!」 何、その驚き方は。 11. 〇 緊縛木箱と性感責め スポットライトの中に黒忍者のコースケと黒子のノコが登場した。 テーブルを出して、その上に空の木箱を置いた。 すぐに木箱を持ち上げると、テーブルの上にはくのいちのあたしがうつ伏せになって縄で全身を縛られていた。 衣装は先月のステージと同じ赤い上衣にショートパンツと網タイツだけど、ブーツと覆面は着けていない。 その代わり最初から口に縄を噛ませて猿轡をされている。 緊縛はタネも仕掛けもない本物だった。 背中に捩じり上げてほぼ直角に交差させた両手首と二の腕、胸の上下を絞め上げる高手小手縛り。 両足は膝と足首を縛り、後ろに強く引かれて背中の縄に連結されている。 決して楽じゃないホッグタイの逆海老縛り。 ショーが始まる前からこの姿勢で木箱に仕込まれていたのである。 黒忍者はくのいちの足首の縄を首の方向へ強く引いた。 テーブルについた顎に体重がかかる。 さらにその状態で太ももの間に手が侵入し、突き当りの部分が激しく揉み込まれた。 ・・くっ! あたしは両目をぎゅっと閉じて恥辱に耐える。 きついけど、これはまだまだ序盤なんだ。 今度のショーではお客様の前で性的な責めを受ける。 コースケは本気で責め、あたしは本気で苦しみ本気で感じる。 二人で決めたシナリオだった。 やがて膝と足首の縄が解かれ、右足と左足を黒忍者と黒子が掴んで開かせた。 逆海老の後は180度に近い開脚。 黒忍者は苦無(くない:忍者が使う短刀)を持ち、先端をくのいちの股間に突き立てる。 ショートパンツが破れない程度に突くけれど、それで��確実に女の敏感な部分が責められている。 「ん、あああああ~っ!!」 ・・耐えられずに声が出た。 あたしは喘ぎながら身を震わせる。 完全に被虐モードだった。じっと忍ぶ力なんて残っていない。 スポットライトに照らされて光る粘液がテーブルを濡らす様子が客席からも見えたはずだ。 〇 鞭打ちレビテーション ぐったり動かなくなったくのいちに大きな布が被せられた。 テーブルの後ろに黒忍者が立ち、両手で持ち上げる仕草をすると、布に覆われたくのいちがゆっくり上昇した。 2メートルほどに高さに浮かんだところで、黒忍者は一本鞭を手にする。 振りかぶって布の上からくのいちを打つ。 ぴしり。「あっ!」 鞭の音と呻き声が聞こえた。 ぴしり。「んっ!」 ぴしり。「んんっ!」 ぴしり。「んあっ!」 ぴしり。「ああーっ!!」 5度目の鞭打ちで布がずれ落ちた。 ・・この鞭打ちにも一切タネがない。 布が被せられているとはいえ、あたしはコースケの鞭を本当に受けている。 絶対に逃げられない拷問。 「女の子が酷いことされるのが大好きなの。拷問されたり、無理矢理犯されたり・・」 さっき聞いたサオリさんの言葉が蘇った。 あたし、本当に酷いことされてる! 鞭で布が落ちると、そこには高手小手で縛られたくのいちが浮かんでいた。 黒忍者は両手を振ってテーブルの上にくのいちを降下させた。 もう一度布を被せ直して、再び浮上させる。 鞭打ちが再開された。 ぴしり。「あぁっ!」 ぴしり。「んん~っ!!」 黒忍者は鞭を置くと、宙に浮かぶ布の端を掴んで引き下ろした。 ばさっ。 そこにあったはずの女体は消えてなくなっていた。 〇 ミイラ短剣刺し ステージ全体が明るくなった。 隅の方に敷かれていた黒布がむくむく膨み、中からくのいちが立ち上がった。 猿轡は外れていたけれど、高手小手の緊縛はそのままだった。 その場から逃げようとするが、黒忍者が両手を合わせて呪文を唱えると、何かに固められたかのように動けなくなって黒子に捕らえられた。 黒忍者は反物のように巻いた布を持ってきた。 これはあのキャンプで使った薄くて弾力のある布だった。 その布をくのいちの頭から足先までぐるぐる巻きつけた。 薄手の布の下にはくのいちの顔が透けて見えていたけれど、何重も巻くうちに見なくなって、全体が白っぽいミイラになった。 くのいちのミイラは床に転がされた。 黒忍者は短剣を持って掲げる。刃渡り10センチほどの銀色の短剣だった。 やおらその短剣をミイラのお腹に突き刺した。 「きゃあっ!!」激しい悲鳴。 さらに3本の短剣を出して、胸の上下と顔面に刺す。 ミイラは1本1本刺される度に悲鳴を上げてびくびく跳ね、短剣を突き立てた箇所には真っ赤な染みが広がった。 〇 ガラスの棺 透明な箱が登場する。 細長い棺(ひつぎ)のような形状をしていて、人が入るとしたら横たわるしかない大きさだった。 黒忍者はミイラから短剣を抜き、肩に担いで棺の中に入れた。 黒子が蓋をして南京錠の鍵を掛ける。 黒忍者は松明(たいまつ)に火を点けた。 照明が消えて真っ暗になった。 ステージの明かりは黒忍者が持つ松明だけである。 黒忍者は棺のまわりを歩きながら、松明で棺の中を照らした。 すると、何と、棺のミイラが燃え始めた! その火は次第に大きくなって、棺の中いっぱいに燃え広がった。 わっ。観客がざわつく。 一瞬だけ、棺の中にくのいちが見えたのだ。 しかしすぐにその姿は炎の中に消えてなくなってしまった。 ・・ヤバい!! あたしは棺の底に背中をつけて隠し扉を開けようとし��いた。 ガチで両手を縛られているから動かせるのは指先だけだった。 その指に、ある��ずの扉のフックが掛からない。 見つからないっ、見つからないよ!! 網タイツの足がちりちり焼け始めた。 火が小さくなって静かに消えた。 やがて照明が点いてステージが明るくなる。 黒忍者と黒子が棺の前後を持ち、斜めに傾けて中身を客席に向けた。 皆が目をこらした。 棺の中は黒い粉が溜まっているだけで、その他は何も入っていなかった。 くのいちの女の子は灰になってしまったのだろうか? 黒忍者が客席の後方を指差す。 黒子がほっとしたように両手を叩いた。 そこにはくのいちが立っていた。 忍者の衣装は灰で黒くなり、網タイツは焼けて穴が開きその下は赤くただれていた。 ・・あたしはステージに向かって走っていった。 ふらふらしながら、どうにか倒れずにすんだ。 拍手の中、揃って頭を下げる。 うずうずした。 お客さんの前だけど、もう我慢できない! あたしはその場でコースケに抱きついた。 黒忍者とくのいちはそのまま長いキスをした。 12. 喫茶店。 あたしはサオリさんと向かい合って座っていた。 「怪我したって本当?」 「火傷しただけです。脚に痕が残りますけど」 「可哀想に・・」 「大丈夫です。イリュージョンするのに問題ありません」 生足を出すのはちょっと難しいけどね。 「クラブの仕事はどうするの?」 「続けます。ただ、出演は減らそうって彼と相談してます」 「それがいいかもね。クラブを辞めないのなら、わたしはメルちゃんが苦しむシーンをこれからも楽しめるし」 「サオリさん、それ酷いですよ」 「あはは。じゃあ、今度はわたしが苦しんでみましょうか」 「見たい! でもいいんですか? コットンケーキのリーダーがそんなことして」 「コットンケーキでやればいいんでしょ? 拷問イリュージョン」 「まさか本気で言ってませんよね?」 「半分本気よ。ノコちゃんもやりたいって言ってるしね。貴女達のネタ見て興奮してるみたい」 「ぎょぼ!! 知ってたんですか、あの子のこと」 「リーダーを舐めちゃダメよ。そのときはメルちゃんもゲストで参加してくれる?」 「はい!」 13. 椅子に座ったあたしにコースケが黒い布を被せた。 「さあ、皆さま、ここに黒布に包まれたくのいちが一人!」 あたしは布の下から両手を前に出してひらひら振ってみせる。 「はい!」 真上から頭を叩かれた。ぱすっ。 「おおっ」「きゃっ!」 驚きの声が聞こえる。 あたしの頭はぺたりと潰れて、肩の高さで平らになってしまったのだった。 ここは公園。 あたしとコースケは通行人の前でイリュージョンをしていた。 赤と黒の忍者装束。 ノコはスマホの撮影担当で、ときにはネタの手伝いもしてくれている。 動画サイトに上げた『Kosuke & Meru のニンジャ・イリュージョン』は少しずつ閲覧回数が増えて、ほんの少しだけど収益を出すようになってきた。 「では、最後のイリュージョン!」 コースケはあたしの身体に布を巻き始めた。 薄くて弾力のある布を何重にも巻いて、あたしをミイラにする。 全身をきゅっと締められる感覚。 その気持ちよさにきゅんと濡れてしまいそうだ。 コースケは別の大きな黒布をあたしの上に被せた。 「はい!」 その黒布はふわりと広がって地面に落ちた。 あれ? 黒布を上げると、そこにはミイラに巻いていた薄い布だけが解けて落ちていた。 中身の女性はどこ��消えたの? おおーっ。パチパチ! 一斉に起こる拍手。 その音をあたしは地面に置いたトランクの中で聞く。 今日も大成功ねっ。 この後、あたしはトランクに入ったまま帰ることになる。 荷物になって運ばれるのは悪い気分じゃない。 今夜はノコも一緒に過ごすことになっているから、またきっと酷い目に会うだろう。 「・・酷い目に会う女の子が大好きなの」サオリさんのセリフ。 あたしも大好きです。 ほのかな性感と被虐感に満たされた。 狭いトランクの中で回収されるのを待ちながら、あたしは甘くトロトロした時間を過ごすのだった。
~ 登場人物紹介 ~ 御崎芽瑠(みさきめる):25才。コースケとイリュージョンの新しい仕事を始める。イリュージョンチーム「コットンケーキ」元メンバー。 谷孝輔(たにこうすけ):30才。フリーのマジシャン。メルの恋人。 ノコ : 22才。コットンケーキの現役メンバー。メルのペット。 サオリ : コットンケーキのリーダー。30台半ばくらい。 前作 でコースケに誘われたメルが彼と一緒に頑張るお話です。 布や袋を使うというお題で拷問イリュージョン。 短剣をぶすぶす刺したり、火で燃やしたり、女の子は最初から最後までずっと緊縛されているとか、いろいろ楽しませてもらいました。 無茶といえば無茶ですが、ここはメルちゃんの精神力がスゴイから可能ということにしておきましょうww。 この先コースケくんとメルちゃんは秘密クラブとユーチューバーの二足の草鞋(わらじ)で生きるのでしょうか。 それともどこかで名を売ってメジャーなイリュージョニストになるのでしょうか。 くのいちイリュージョンのお話はこれで終了しますが、機会があればいつか描いてあげたい気もします。 (お約束はしませんよ~) 挿絵の画像はいただきものです。 黒布の下には実際に女性が椅子に座っています。 2枚目は分かりにくいですが、椅子に座った女性に向かい合ってもう一人女性が膝立ちになっています。 ノコちゃんがメルを責めるシーンはこの写真に合わせて書かせていただきました。 それではまた、 ありがとうございました。 # このコロナ禍中、皆さまの健康とお仕事/商売が無事であるよう祈っております。
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シン・ウルトラマン(2022 樋口真嗣)
さあ「シン・ウルトラマン」について書くぞ。 長くなっちゃったので久しぶりにこの見捨てられた地に置くことにする。 個人的な話なので、他の人がどうかとかは一切関係ないしどうでもいい。映画に合わせてわざわざ初代「ウルトラマン」を全部見直すようなダメオタクの言ってることだから、うっかり見てもスルーするくらいがいいと思う。
まあ、禍威獣が元気があってよかった。冒頭の禍特対前史は「そうくるかー!」と思ったし、各禍威獣のアップデート(そして流用)アイデアは面白かった。デザインワークスを買えていないのが悔しいが、一般流通に乗ったら買おうと思っている。 怪獣(もういいよね)デザインは「着ぐるみの制約を外したい」というだけあって多彩で刺激的だった。 特にガボラは予告編が卑怯にもミ��リードを誘っていたので、全貌をスクリーンで見て「そうくるかー!」と思い、ウルトラマンを圧倒するパワーの格闘シーンを楽しんだ。直前の予告ですごいドリル回ってたから「えっグビラも出すの?」と一瞬思ったんだよなぁ。 ザラブもよかった。元デザインからそう変わらないかと思ったら、見えているのはポリゴンの表側だけみたいな、実体があるかどうか不明なぺらっぺらな立体の生物なんて、CGIじゃなかったらやろうと思わないよな。 メフィラスももちろんよかった。元のデザインを踏まえて鋭角に抽象化を大胆に進めたあたり、「初代」の造形デザインに携わったアーティストたちの個別の作品群を思うと「制約なしのエスキース段階っぽい!」という気持ちになった。 予告を観たとき一番危惧したのは「解像度だけ上げてシーン再現みたいなことになったら最低だ」ってとこなんだけど、それは完璧に杞憂に終わった。まあ個人的にはもっと炎を上げてもらって、低い視点から熱の揺らめきの向こうに怪獣を見たかったんだけど、ちょっと乾いた感じにしたいのだったら、それもまあなしではない。変化のあるアングルは楽しかったしね。
ただ、個人的に大事な話としては、これ多分ソフトを買わない。持っていたいと思える作品にはならなかった。 それは主に、僕が好きな「初代」の作品的な雰囲気はほぼ拾われていなかったためで、要するに解釈違いというやつだ。「シン」が最大公約数の「みんなが求めるウルトラマン」だろうと、僕は別にそうじゃなくてもいい。
「初代」は前企画「ウルトラQ」を引き継いでスタートしているので、ウルトラマンという全話通じた主人公的存在はいても、そのヒーロー性だけを前面に押し出して展開された物語群ではない。宇宙人であり、異星の文明においてある種の役割を持っており、同族も存在していることは描かれこそすれ、基本的には「未知」であり「神秘」の領域にいるものだ。それこそ「怪獣というカオスと対置されるコスモス」というコンセプトそのものの存在が「ウルトラマン」だ。 そういうカオスとコスモスが、何に介入してくる物語かといえば、言うまでもなく「普通の日常」である。日常に入り込んだカオスをコスモスという力で元通りに、あるいはちょっと変わった新たな日常に戻していくのが物語のスタイルだと言っていい。それゆえ非日常的なコスモスは、最後に地球を去るのである。 だが、そういった日常を侵食される怪奇な雰囲気が、この映画には微塵もない。さらに言うなら「浸食される平穏な日常」自体がない。描いてないけど日常なんですよ、なんてそんな馬鹿な。ほぼCGIで作った映画に「意図して描写しないで」どうやって日常が描かれるというのか。 だから、ほとんどが戦闘行動に終始する物語になっている。まあ、怪獣災害に悩まされる日々が日常なんだ察しろ、というのであればそれでいいんだけど、それはもう「初代」とは別の精神性の物語にならざるを得ないし、そもそも、そこまでの非常事態下にある日常として描かれてもいない。
怪獣対策がかっこいい、のか?まあそういう向きはある。けどもそのプロセスそのものは決定的に物語の尺が足りず、コンパクトに説明するべく煮詰めた故にルーティンとなってしまうし、怪獣の駆除に成功した事例は過去の事実としてしか描かれていないので、軽口たたいてるけど禍特対はそこまで優秀なチームなの?という風にも見えてしまう。 物語の尺というのは、かなりの部分で物語が表現できるものの範囲を決定する。本来が39話あったものの一部をピックアップしてきたとはいっても、そのほかの話数で培われた表現や了解を切り捨てられるわけではない。 そういった部分を大事にしないで「事件だけで構成した」から起きている問題はこの映画の中に多くあるけども、特にキャラクターにそれを負わせざるを得ないせいで、イデほどの苦悩の深さとストレスを滝に感じられなくなっている。打ちのめされるほどのことお前この映画の中でしてないじゃん、何言ってんだよ、と言いたくなる薄っぺらさが終盤になって現れるのはどうなのか。いいのか。いいことにしようか。僕はごめんだけど。 浅見というキャラクターの扱いもひどい。尺が足りないせいでなんでそんなに神永に好意を持つのかが不明だ。もう物語の都合上そうしました、という感じにしか見えない。「初代」で同じ位置にいたフジは集団の中にあって常に自由な立ち位置にいる(時代性のある描写を強いられることはあれども)キャリアウーマンだった。だが浅見ときたらどうだ。能力集団の中で不在の神永を印象付ける役回りでしかないし、しかもそこにプロフェッショナルとは思えない感情まで入り込んでいる。この21世紀にもなって。 しかも。 巨大化させられ意思を奪われた挙句、スカートの中を衆目にさらし、それを野次馬に撮影され世界中に拡散され何度も閲覧される。もうこの描写自体が醜悪極まりないのだけど、映像拡散に関して気にしているのは顔が割れたこ��だけだという。動画がメフィラスの力で全削除されたらOKだという。正気か?そのキャラクター造形は大丈夫なのか誰も問わなかったのか。 異空間に隠されたβボックスを追跡するために浅見の「匂い」を手掛かりにしよう、というアイデアが出る。その前に自分の体臭を気にする描写がありつつ、禍特対の面々の前で神永に全身の体臭を嗅ぎまわられる。状況が状況なので仕方がない、という面白シーンのつもりなんだろうけども、誰もそれを少しも止めないのが、良識ある人間の社会という描写ということでいいのか。本当に誰もこれをおかしいと思わな��ったのか。 この下品さが、僕には耐えがたかった。 なので、ウルトラマンはこれを守りたいと思うのかなぁ、という気持ちを抱いたまま残りを観ることになった。 僕は最初のほうで怪獣のデザインアイデアに関してはすごく感心して面白がったと書いたけども、画面の中での描写に関しては全く納得がいっていなかった。 何しろ、圧倒的に質感表現が足りない。そういう巨大なものが、光を受けて存在しているとは思えない平板さ。「こんにちは、僕CGIです!」そうか、可哀想にな。ぎゅんぎゅん動いているときは多少ごまかされるけども、動きが静まると途端に造形のエッジばかりが立って、心許ない胡乱な表現の面が露見してしまう。宇宙人はギリギリOKだが怪獣はダメだ。もしもこれWETAがやってたらいったいどんな怪獣がスクリーンで咆哮していたんだろう。 ゼットン、でっかいなぁ。火力すっげえ。僕が最終決戦で思っていたのはせいぜいその程度だ。だから僕はこの映画のソフトを多分(ということはかなりの確率で「絶対に」)買わない。 まあ解釈違いだけなら買ってたかもしれないけど、僕、それが偶然であっても許されずに人のスカートの中を見て喜ぶ趣味ないんだよ。劇場で目を背けていたんだぞ。わかるかこの苦痛。わかんないんだろうな。それを笑って見過ごすのが最大公約数だというならば、本当に願い下げだよ。
まあ、それはそれとして。 ウルトラマンをめぐる国際社会の動き関係はちょっと面白かった。国際関係や各国決定権者の未成熟に宇宙人が付け込んで謀略を巡らせるあたり、どこに落としどころを持ってくるんだ!って思いながら観ていた。 あと、「ヒーロー」ウルトラマンをある首尾一貫した存在として描く、というのはこの映画の独自性としてありなんじゃないか、と思った。ウルトラマンという「神」を僕はこう理解しました。そういう論文みたいなもの。僕は宗派が違うのでその主張を首肯するかは別だけども、愛のあり方としては理解する。 ただ「初代」では「ヒーローの有り様」はエピソードの中に内包しつつも、その存在もまた怪奇や神秘のうちにあったことを踏まえると、すべてを合理の中に収めるのは「現代的ではあるけども理屈が勝ちすぎる」のではないかな、と思う。 僕もウルトラマンと怪獣に対して愛を捧げてきた時間がとても長いので、わかる部分があり、絶対に認められない部分があるのだ。
手放しで楽しめて、手放しで褒め讃えられる人に幸あれ。僕は無理でした。 樋口真嗣が特技監督より上の権限で参加している映画は、劇場にもう観に行かないと思う。元凶が庵野の脚本に仮にあるとしても、それをコントロールできない人間がどうして監督を名乗れるのか、僕には理解できない。
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各地句会報
花鳥誌 令和3年1月号
坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和2年10月1日 うづら三日の月句会 坊城俊樹 選特選句
広々と切株香る刈田道 英子 約束の当てにならぬも温め酒 都 秋深し手に残りたる化粧水 同 草紅葉園児手つなぐ楕円形 同 秋の夜や人に秘す物古りし文 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月3日 零の会 坊城俊樹選 特選句
色鳥来聖観音は石の膚 千種 青き龍彫り込む廟の冷まじく 順子 秋さぶの解脱門てふ朱の翳り 炳子 秋蝶の思ひありしか秀忠に 三郎 護符を買ふ小鳥の空を背にし 順子 霊廟の魂とし木の実落つる日よ はるか 光背に東京タワー秋の寺 梓渕 鵯騒ぐ正室死後も人寄せず 千種 セルロイド褪せて水子の秋日向 光子 土饅頭裏の湿りに蚊の残る 光子
岡田順子選 特選句
ずつしりと鐘つき堂にある秋思 美智子 色鳥来聖観音は石の膚 千種 鰯雲石段やはき襞なせり 千種 解脱門出で松茸を食ひに行く 俊樹 秋蝶のお江の方へすぢ広げ 慶月 鋳造の龍より涙雁渡し 千種 和宮の矜持の墓やとべらの実 眞理子 鱗雲解くやタワーの赤き針 慶月 古墳ともただの丘とも草紅葉 梓渕 色なき風地蔵千躰かいくぐり 眞理子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月7日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
曼珠沙華消えずに咲いてくれし事 清女 生あれば何時か行く道彼岸花 同 天高く三途の川を遠くして 同 背に止まる地蔵菩薩に法師蟬 誠 風立ちて思ひの揺るる芒かな 同 オパールの如き目をもち恋の猫 秋子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月9日 芦原花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
あかあかと燃え立つ畦のまんじゆさげ 孝子 落葉掻太白星は山の端に よみ子 白砂ゆく凪の海射す秋日かな けんじ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月9日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
秋霖や孤児ら遊びし鄙の浜 宇太郎 鄙の駅降りて秋霖ありしこと 幸子 秋彼岸墓で出合ひし友久し すみ子 もう誰の碑とも分からぬ露の石 都 鵙去るが合図ものみな暮れにけり 栄子 何かの実爆ぜて赤赤秋日和 都 街の灯を望む谷間や虫すだく 宇太郎 砂丘秋径あるごとく人の散る 悦子 海鳴りを扱き混ぜ靡く芒原 悦子 一村が棚田百景曼珠沙華 益恵 曼珠沙華燃える一叢屋敷跡 和子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月10日 札幌花鳥会 坊城俊樹選 特選句
秋天や峡の水音遠き日に 独舟 秋の風二軒長屋は路地の奥 清 卒塔婆ただそれだけや草紅葉 同 駆け上がる改札口の秋の空 修子 飲み込んだ言葉が梨の重さかな 同 秋の灯や触れし半紙の裏表 のりこ 草叢に残る温みや秋の蝶 岬月 読み返す便箋七枚秋灯下 慧子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月10日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
秋黴雨煉瓦の学舎呆けをり 亜栄子 年尾忌や魂句碑になほ灯る 白陶 散り敷きて雨に際立つ金木犀 秋尚 記念樹の影広がりて年尾の忌 多美女 金木犀雨に濃く散る仏会かな 文英 木犀の香を削ぎ落す雨しとど 秋尚 金木犀煉瓦の門を焦がしをり 亜栄子 年尾忌や錆びることなき黒御影 ゆう子 灯を絶やさぬ想ひ年尾忌に 白陶 雨の色昏く宿せる竹の春 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月12日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
廃屋の屋根まで覆ふ蔦紅葉 さよ子 無月かと誰かが言ひてより寂し 信子 秋深し女人ばかりの喫茶店 久子 榠樝の実三角四角戯けたる みす枝 秋高し蓮如上人像凜と 信子 手枕の犬の鼾をきく夜長 清女 名月や故山ゆつくり離れゆく 信子 秋彼岸お供へもなき軍馬の碑 清女 満月の夜の講座の曙覧聞く 久子 彼岸花あれほどの赤着てみたし 錦子 芋の露こぼして去りぬ農婦かな 昭子 提灯の磴に斑をなす秋祭 時江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月12日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
いろり端焦げて集へるきりたんぽ ます江 吊橋や大きく揺れる初紅葉 有有 八幡平下山の後のきりたんぽ せつこ 古き文やうやく棄てし日の秋思 貴薫 水の音離れぬ径の初紅葉 秋尚 初紅葉ある処日の射す処 三無 雨音の途切れぬ秋思ありにけり ます江 晩歳に集ふ炉端や切たんぽ 怜 出汁染みて箸に崩れるきりたんぽ 三無 遺されし靴磨く黙秋淋し 美貴
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月13日 萩花鳥句会
美術館カラフルブレザー爽やかに 祐子 螇蚸の飛び付くゾウの滑り台 美恵子 観光の飛機の空路に鳥渡る 健雄 名月やラインで届く宴模様 陽子 言の葉も何も浮かばずそぞろ寒 ゆかり 鍬担ぎ家路を急ぐ秋の暮 克弘
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令和2年10月13日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
軽やかに電車の影絵刈田行く みえこ 秋の蝶命日参り二頭舞ひ 同 秋涼し写経の御堂開け放し 令子 秋晴や子と作りたる砂の山 裕子 仕事終へ重き体に秋の風 あけみ 真直ぐに続く並木の月夜かな 紀子 紅の深き深きや鶏頭花 同 道問へば指差す方に柿の秋 登美子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月16日 伊藤柏翠俳句記念館 坊城俊樹選 特選句
啄木鳥や故郷に帰る兵の墓 ただし 箱膳の流れ着きたる秋の川 同 自ら燃ゆるべく燃ゆ曼珠沙華 雪 蔦紅葉雁字搦めの出作小屋 みす枝 浜の路地ひとつ魔境へ秋の暮 一仁 コスモスや風と綾取りしてゐたり 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月18日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
時々は石仏掠め木の実降る 亜栄子 秋の雲掴みきれずに母の塔 亜栄子 菩提子を手品のごとくぶら下げて 秋尚 秋風や武士の声はるかなる 炳子 草の実といへぬ実袖につけてゐる 和子 圭魚選 白も黃も矜持のありて供華の菊 三無 吾亦紅蕊に埋み火残しをり 秋尚 木端の香あまく山寺冬仕度 和子 ますかたに集ふ碑のあり年尾の忌 文英 悠然と墓碑の天辺疣毟り 幸風 一本の竜胆正室の墓崩れ 慶月 古寺の庵の廂や郁子秘色 亜栄子 隠沼の水辺明るく末枯るる 斉
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和2年10月21日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
名月の一と日限りの夜でありし 世詩明 駅の名の謂れ繙く夜の秋 千代子 越前の山々なべて秋高し 和子 十五夜の月の渡れる屋根いくつ 昭子 十五夜やむかし兎も臼も在り 令子 大花野小さき流れ真ん中に 美代 曼珠沙華刈り横たはる阿鼻叫喚 雪 猫じやらし野にあらば野の遊びせん 同 鈴虫は鳴いてますかと古き文 同
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令和2年10月22日 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
十六夜の月は雲間に甍波 洋子 無花果や乳首噛みたる子も遥か 成子 無花果ややをら柔肌包む和紙 さえこ 山彦の栖の標烏瓜 ひとみ 射干玉の夜や石榴の熟れすぎぬ 伸子 天を衝く寺の石階鰯雲 成子 渡り鳥来て賑はひの鼓舞たける 睦子 鎖樋から大甕へ秋の水 愛 腕白の風に案山子の揺れてをり さえこ 母の手を振り切り駆けし鰯雲 順子 無花果の窪みのほどの愁ひかな 桂 空つぽになるまで鳴いて蟬骸 豊子 無花果や口約束はすぐ乾く 寿美香 望の月あげて地軸に狂ひなし 豊子 野の風を束ね小菊の香を母へ 朝子 秋の寺絵解き上手の僧のゐて 孝子 福音の風を信じて小鳥来る 朝子 無花果のお八つ昭和の子沢山 豊子 秋刀魚焼く流離の色を裏返し 寿美香 床屋出て見上げてをりぬ秋の雲 勝利 嚔する手の平うすき少女かな 睦子 群集の嘆きか風の蘆の花 勝利 まぼろしの麒麟出で来よ秋の雲 美穂
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鯖江花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
舟小屋の朽ちたる舟や秋の風 ただし 白を着し悪魔の衣裳菊人形 同 銀木犀銀の雫をこぼしけり 信子 赤とんぼ噂話の輪の中へ 同 パラグライダー花野の空を使ひ切る 昭子 自分のこと俺と言ふ子や七五三 同 露の世の翁の色紙塚に触れ 昭子 菊人形美女も野獣も香り良し みす枝 老僧を追かけ廻る赤蜻蛉 世詩明
(順不同特選句のみ掲載)
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チョコレートコスモス
当初ワンドロお題『秋』で脳内にスタンバイしてたもの。 加筆して某様おたおめに。a b-day gift for @sazamekko san (refined a bit from paperback /leaf<-- lol)
去年か一昨年から、出すだけ出したいと思っていたお花でもあったのですが、今年に限ってあまり咲きませんでした件 あと、ワンドロはポッキーの日だったのでそれもちょっとだけ。 のっけの引用は英国詩だったと思います。バイロンかシェリーかキーツかそのへん(つまり記憶が迷子です;;w +++++
――souviens, est momoir 忘れるな、記憶せよ 日は日に短く夜は長くなる――
*****
秋が深くなった。 夜明けは遅くなり、闇は早くに訪れるようになり、世界はまた少しつめたくなった。 人々はいくぶん猫背になって歩き、自分で自分を抱きすくめるようにして震えて道をたどる
「俺の国でならもっと昼間でも薄暗いままだからこっちはまだマシさ。あっちでは別にお洒落というのでもなく、せめてもということでずっとカラフルな極太のキャンドルを何本も灯して春を待つ」 どっちかというと、冬のうんざりする風景でもあるんだ。俺はたまにあっちに戻るだけだからロマンティックだとも思うが、それをあちらの連中にうっかり言うと、しかめっ面をされる。スウェーデン人の心を忘れてる、とか 「お父様の故郷もそんな感じだったようです。研究室の中は実験器具の間にサイフォンが混じって、一日中静かに湯気を立てていた、と。そんな風景は聞く分には不思議な美しさを覚えます。でも、」 当時の「私」の闘病日記は、それですっかりふやけてしまって難渋なさったのだとか。 ――そうか。 そんな言葉に返るものはそれ以上��かった、 *****
バニラの匂いの蝋燭に、コーヒー豆に、 週末の混雑を避けるべく早々と各店舗での買い物を済ませた彼らは、朝市と、店がそろそろ拡げられる頃合いのフリーマーケットを少し冷やかしたりしてから、のんびりだらだらと徒歩で帰路をたどる予定らしい。そのあたりで待ち合わせたあと二人と合流してから。
マーケットの開催される公園の入り口すぐで、とても見付けやすいオレンジ色のジャンプスーツの人影がベンチから立ち上がり、手を振った 「シャオさん」 機械少女が嬉し気に笑んだ。
*****
「思ったより全然寒いねぇ、大丈夫だった?」 スカートを履くことを諦めたらしい少女はそんな事を言い、他の通行人と同じく少々身を縮こめている。これだったら噂のカンノーロ��屋さん??のトラック来るまで待たなくてもいいかもあたし!と、体の小ささで一番体温維持が大変そうな彼女は。
そういえばね、来た時まだ霜も降りてたんだよ!なにもう氷点下なの? いやだなあもう~と大きすぎる声で言うその背後で、
「いや違う。0度に達さなくても霜は発生する」 シャオ、お前のはただの少々の用心不足だ。そんな冷淡なほどに平坦な声が少し離れた距離からした。
***** 歩いてくるその人物は寒風の中でも少しも身を丸めるでもなく、午前十時近くなっても白々と強く輝く東の空を、長く白い首を巡らせて見上げ、そしてまだ青と藤色が混ざり合ったようなとろりとした西の空まで、鳥のような仕草で見はるかした。 一応人目を避けたくはあるのか、まっ黒いフードを目深にかぶり、同じ色のセルフレームの眼鏡で目線も曖昧にしていたのが、冬の知らせのような風に吹き飛ばされ、その白い顔が露わになる。そして朝市の雰囲気を演出したい店側の思惑か、破れたら厄介なことこの上ない紙袋を胸に抱えたところから覗くのは林檎の鮮烈な赤。心臓の、あたりの赤。
「仁」
「あー……おはよう、か?」 そんな挨拶なのか微妙な男の言葉に、「そうだな」とだけ彼も応えた。
バニラの匂いの蝋燭にコーヒー豆に、林檎、それにとてもきれいなとても広い空
*****
彼等がたまに遭うようになってからしばらくになる。少女と機械少女だったり、機械少女と青年だったり、そこに少女もまじったり、もしくは青年と男だけで深刻そうに会うこともあった、そしてもちろん、四人が同席することも。一番人目に付きやすいパターンの今日は、下手に出歩かずさっさと「隠れ家」に戻って、昨夜仕込んで、美術図鑑でそっと押しをしてあるサンドイッチが待っている筈だった。 (本来それをやるつもりだった中華少女はうっかりその夜の「楽しい」「イベント」の数々に夢中になったあげくに眠ってしまい、機械少女はバッテリーが切れかけて充電タイムになった。その後深夜一時頃に再び灯りが点いたキッチンでは、一斤まるごとのパンに延々黙々とバターを塗る無表情な青年と、卵サンドはボイルドかスクランブルか厚焼きかと携帯で検索し懊悩する男がいたらしい) (適正な厚さでの切り方がわからなかったハムは剃刀で削がれ続けたか鰹節のようにフワフワになっていて、親の仇のように力を込めてつぶされてできたポテトサラダは多分『適度な食感』ではなく謎のペーストになっているだろうが、それはそれで「味」かもしれない)
***** ――閑話休題。つまりそんな話だったので速やかに撤収すればよかったのだが、少し待て、と一番不愛想な青年が言った。いかにも厄介な林檎の紙袋を男に押し付け、一応メールで予約もした。機能しているかは別の話だが見て来よう。そうとだけ言って、彼はまた雑踏に消えていく。
やれやれ、と肩を竦めた男に、でもね、ストール貸してくれたんだよ仁は。変じゃない?自分があんな恰好で出掛けるならストールいらないでしょ?どうして持って来たんだろ、そう言い、少女は膝の上で半保護色になっていたベージュのそれを掲げて見せた。 あらシャオさん、それは愛かもしれませんよ、 えっ、そうかな?やっぱそうかなあ?だったらいいのに! そんな楽し気な声に穏やかに笑い、その一方で男は周辺の警備状況を密かに確認する。
xxxxx
もう少ししたら、消えようと思う。
いつかの夜、「隠れ家」のソファの上で青年が言った。
彼だけが先んじて知る「真実」や、新たな厄介ごとは、とても対外的に説明困難なものであり、それどころかいくらかの理解に及んだ者たちにさえまるで伏せられた本の様であり、他の誰も手伝うことさえたいして出来ないものだということを男ももう知っていた。 だからそうか、ならどうすればいい、とその疲れ切っているらしい彼の髪を撫でて聞けば、もう一度シャオと、いや全員の顔を見てから出掛けたい、まとめて全員済めば合理的でいいので手配してくれと彼は言った。すまないと。 数日前の話だった。
*****
そういえば、ですよ、シャオさん。 今日はポッキーの日だと私の脳天が教えてくれてます。しかるのちに!今手の中にあるのはなんですか~?ポッキーですねポッキーですよーポッキーでしょう!仁とのポッキーゲームは完遂なさったのでしょうか、です!
「やったよ!それで惨敗に決まってるじゃん!」
もう、つらいなあ、と少女はため息をついた。そりゃあ、できたら嬉しいけど、むしろびっくりして困るし、むしろあとできっとせつない。
��ケットにあった、プレッツェルにチョコレートを撒いた菓子をぽりぽりとかじり、 「『大好き』っていうだけか、もっと内緒の言葉で言わせてくれるなら、ポッキーでもバレンタインのチョコでも関係なしでずっとあげたい」 大好き、じゃなかったら、大丈夫?心配してるよ?っていうだけでもいい。なのにさぁ。
「何がだ?」
そんなことを言っていると、また予想外のところから声がかかり、機械少女は振り向き、少女は飛び上がった。
*****
カンノーロとやらの予約はできていたらしく、リコッタチーズのクリームとそこから宝石のように溢れる色とりどりの果物の砂糖漬けに、キラキラというかぴかぴかした笑顔で少女がその一本目をかじれば、その隣で青年と男が粛々と荷物を運びやすく整理している。機械少女はよかったですね、シャオさん、などと微笑んでいる。
それで ああ、チョコレートとい��ば、こんなのをそのトラックでもらった。 チョコレート色のコスモスで、チョコレートの匂いがする説もあるという、と、胸ポケットからはみ出した茶色い花を思い出したように取り出し、彼は言った。
「いるか?シャオ。いらなければいい、アリサかラー…」 「うん、いるいるちょうだいちょうだい!」
言い交わしている彼らの幼い目の会話の可愛さに苦笑いする男の隣で、機械少女が少し立ち止まり、不動体制になった後で言った。忘れられた林檎の一つ二つやポッキーの箱をベンチの上から拾い上げる男が見上げると。
ああ、これは、いい解答例です、あの二名に提供すべき情報は、『変わらぬ想い』です。
少女は知らなかったかもしくは選択方法を持たなかった。それは哀しい意味の多すぎる花に付与される翻案であり、その花の最初から意味することは、その花の言葉は数日前の夜に青年が口にした方だったのではないかと思わせるもので。それはつまり、
『恋の終わり』
だった。
*****
東の空に蒼が拡がっていく。 西の空も澄んでいく。 その天球の下、また何か起きようとしていた。
*****
バニラの匂いの蝋燭にコーヒー豆と、血のように赤い林檎に恋の匂いのポッキー、きれいな変わりゆく空と黒い花
まるで引っ繰り返されたおもちゃ箱
そしてそれを片付けに来る者はいるだろうか
あるのは見上げる冷たく澄んだ美しく広い空 両手を広げたもっと外まで青が溢れている天蓋、
それと
それと
(了)
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今週の購入本
◇ 2017年7月28日(金) 横浜ビブレ・ブックオフ
堀江謙一「太平洋ひとりぼっち」(1973/角川文庫)
山田太一「岸辺のアルバム」(2006/光文社文庫)
池部良「ハルマヘラ・メモリー」(2001/中公文庫)
西部邁「戦争論 暴力と道徳のあいだ」(2002/ハルキ文庫)
藤原新也「コスモスの影にはいつも誰かが隠れている」(2012/河出文庫)
稲田和浩 守田梢路「5人の落語家が語る ザ・前座修業」(2010/NHK出版生活人新書)
山上たつひこ・原作 いがらしみきお・作画「羊の木」1巻(2011/講談社)
日野原重明「日野原重明句集 百歳からの俳句創め」(2014/富嶽出版)
角田光代 岡崎武志「古本道場」(2005/ポプラ社)
百瀬博教「裕次郎物語」(2007/ワック)
「おじいさん先生 熱闘篇 オフィシャル・ブック」(2007/日本テレビ)
◇ 2017年7月29日(土) 鎌倉・夏のゲストハウスで一箱古本市
手塚治虫「漫画大学」(2009/講談社手塚治虫文庫全集)
橋口幸子「いちべついらい 田村和子さんのこと」(2015/夏葉社)
◇ 2017年7月29日(土) 鎌倉・公文堂書店
中原弓彦「日本の喜劇人」(1972/晶文社)
◇ 2017年7月29日(土) 大船・ブックオフ
小林信彦「流される」(2015/文春文庫)
星野博美「銭湯の女神」(2003/文春文庫)
星野博美「謝々! チャイニーズ」(2007/文春文庫)
吉本隆明「フランシス子へ」(2016/講談社文庫)
千野帽子・編「オリンピック」(2016/角川文庫)
色川武大「いずれ我が身も」(2004/中公文庫)
小室直樹「世紀末・戦争の構造 国際法知らずの日本人へ」(1997/徳間文庫 教養シリーズ)
赤瀬川原平「老人力 全一冊」(2001/ちくま文庫)
浅草キッド「キッドのもと」(2016/ちくま文庫)
ベルクソン 林達夫・訳「笑い」(1976/岩波文庫) ※改版
松岡正剛「多読術」(2009/ちくまプリマー新書)
丸屋九兵衛「丸屋九兵衛が選ぶ、ヒップホップの決めゼリフ」(2014/スペースシャワーネットワーク)
東村アキコ「即席ビジンのつくりかた」(2016/講談社)
玉袋筋太郎「男子のための人生のルール」 ※「よりみちパン!セ」シリーズ (2006/理論社)
バクシーシ山下「ひとはみな、ハダカになる。」 ※「よりみちパン!セ」シリーズ (2007/理論社)
ピエール瀧「ピエール瀧の23区23時」(2012/産業編集センター)
片岡義男「たぶん、おそらく、きっとね」(2015/中央公論新社)
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体制派学会による知識の隠蔽
Martin Armstrong, The Suppression of Knowledge By Establishment Academics, January 21, 2015, [http://armstrongeconomics.com/2015/01/21/the-suppression-of-knowledge-by-establishment-academics/]
私が学会を批判する理由の一つは彼らが知識を隠蔽したという私の体験である。私は我々の歴史知識をさらに広げられるような重要な考古学的発掘に資金を使う。第一次湾岸戦争の爆撃がイラクの砂漠で誰も知らなかった古代都市を露にした。この古都には訴訟事件と論争を含むすべてが保存されている図書館があった。ところで、私は長年にわたって古代経済テキストの有名なコレクターであって、これらの数千枚の粘土板が闇市場に現れた。私はおのずとそこに接触した。発見物に入札した。そしたら私の唯一の競争者がノルウェー人の写本コレクター��るマーティン・シェーン(Martin Schøyen)であるということが分かった。この掘り出し物は一万三千冊以上を含むコレクションであった。マーティンのコレクションはマグナ・カルタの原版も含めた世界で最高のものだった。
学会は我々二人のような人々を憎悪している。というのも彼らは自分たちしかそのような発見の役を演じてはならないと考えているからだ。もちろん彼らにはお金がなく、納税者のお金で彼らのオモチャを買うために政府に阿って物乞いしながら歩くことになる。彼らは学界的な強欲ゆえに知識の全身にとって他の誰よりはるかに害をなしてきた。
イラクの砂漠での発見はハンムラビ法典に約三〇〇年先立つ世界最古に書かれたものとして知られるウル・ナンム法典(紀元前約二一〇〇年)を世に曝け出した。私はマーティンとチューリッヒで夕食に行った。我々は同意に達した――私は経済テキストへのアクセス権と引き換えに競りから手を引いた。彼はあらゆる文書を収集するもっと偉大なスペシャリストであり、私は彼のコレクションが適切な場所にあると���ている。この掘り出し物の翻訳はマーティン・シェーンによって完全に提供されている。翻訳に政府資金が欠けているとき、彼の私的な努力が我々の知識ベースに多大な貢献をしてきたのだ。ハンムラビ法典(紀元前一七九二~一七五〇年)が一九〇一年に初めて発見されたとき、この法は最初期の既知の例と布告されていた。この発見に続き、もっと古い法典コレクションが地上に顔を出した。
学会は、それが闇市場で購われたからといって、博物館に周遊する許可をきっぱり拒絶してしまうことでマーティン・シェーンの努力をブラックリスト化してきた。これらの人々は馬鹿野郎で、酷く危険である。私は彼らがなすことには十円ぽっちだろうと断じて寄付しない。このようなアーカイブは学会には発見できない。闇市場で発見されるのだ。そしたらこれが問題になる――誰かがそれを保存するために歩み寄るか、それとも闇市場で見つかったせいで無視するのか? 野郎どもはこれらのタイプの人々がそれをただで無傷のまま物を手渡すだろうと考えているのだ。人々は何も得られなければそれを破壊する可能性が高い。人々はあいにく金を好むのだ。学会はこの点で強欲な馬鹿である。目標はそれを保存することであるべきだ。我々はみな死すべき定めにある。とにかくそのようなコレクションは死の上に寄付されるのだ。
また、私はパピリ邸としても知られるウィッラ・スブウルバナ(Villa Suburbana)に埋まった残り二千八百平方メートルの採掘に歩み寄って出資するよう頼まれもした。これはウェスウィウスの傾斜地に位置するヘルクラネウムのリゾート地で最も豪華なヴィラであった。発掘された地の下で、一九九〇年代の新発掘は以前には未発見だったヴィッラのフロアを露にした。これは海を見晴らす一連のテラスを設えていた。学会はいつもどおり金がないから、私はこれに出資するよう頼まれた。これまでに生き残った古代の本の最も偉大なるコレクションを発掘するための余分の小銭はイタリア政府にはなかったのだ。私はこのプロジェクトを考慮していた。政府がプリンストン経済学部を差し押さえて以来、何もなされていない。
パピリ邸は古代ローマの町ヘルクラネウムにあった、七九年にウェスウィウス火山の噴火で埋まった私邸である。これは古代の書籍蒐集家の家であった。このヴィラはおそらくユリウス・カエサルの義父たるルキウス・カルプルニウス・ピソ・カエソニヌスに所有されていた。ウェスウィウス噴火は奇妙なことに、約三��メートルの火山灰でヘルクラネウム全土を覆い尽くしたとき、生き残ったことで有名な唯一の古代図書館を保存していた。
パピリ邸は一七五〇年と一七六五年の間にカール・ヴェーバーが地下トンネルで初めて発掘した。その名〔訳注:パピリ、すなわちラテン語「パピルス」の複数形〕は炭化したパピルスの巻物一七八五巻、すなわち「ヘラクラネウムのパピルス」を含む邸宅図書館の発見に由来する。
邸宅の所有者、最もありそうなこととしてカルプルニウス・ピソは、主に哲学的な性格の図書館を建てた。蔵書は彼の友達だったガダレウスのエピクロス派哲学者フィロデモスが集めたものと信じられている。エピクロスの追随者はこの道徳と自然の哲学者の教えを学んでいた。この哲学が教えたことは、人が死すべき定めにあり、コスモス、つまり宇宙は偶然の結果であり、摂理の神はおらず、良い人生の基準は快楽と節制である、というものだ。フィロデモスはヘルクラネウムとネアポリス〔訳注:現ナポリ〕で彼の周りに集まった若い生徒にギリシア文学と哲学を教えた。彼の作品の多くはヘルクラネウムで見つかった哲学図書館で約千巻のパピルスとして発見されたものだ。フィロデモスはこの時代の最も博学かつ有名なローマ人に影響し続けた。
紀元後七九年のウェスウィウス山噴火のとき、価値ある蔵書は火砕流に襲われたおりには即座に安全地帯へ移動できるよう箱に詰められていた。噴火は結局現場に二〇~二五メートルの堆積物を降り積もらせ、巻物を焦がしつつも保護していた。これは古代で唯一生き残ったライブラリーである。
以前掘り出されたものについて、いまや巻物が読めるようになるという幾らかの希望がある。いまやイタリア・ナポリのマイクロエレクトロニクスとマイクロシステム研究所の研究者は巻物を紐解かなくてもレーザーのようなX線を使って内部の文字を��むことができるようになったと言っている。もちろん、発見の余地あるほかの地はいまだ掘り出されぬままだ。それらは明らかにまた他の噴火の危機にある。政府は金を狩り取っているのだ――費やしているのではない。残された余地にはアリストテレス、プラトン、その他の失われし作品があるかもしれない。
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パンドラ、その箱を開けて7
土曜日。 ルネの両親は果物と花の入った籠を息子に渡し、今日はジョゼットのお見舞いに行ってきなさいと伝えた。 ルネは大喜びで店から飛び出したが、直ぐに戻ってくると自分がいなくて店は大丈夫なのかと尋ねた。 両親はルネの頭を撫でて『お前が反省してくれた事はよくわかったし、お店もなんとかなりそうだ。お友達の所に行ってあげなさい。もうマスコミもそんなにはいないから、友達だと言えば通してもらえるでしょう』と言った。 母親はaとuの発音がおかしなフランス語で「アなたが言っていた事をおトゥさんと話しアて、決めたの。これからは他の子と同じようにアソんでいいわ。お店の事はおトゥさんとオかぁさんで頑張るから。レジも接客もね。アなたは自由に生きていいの」と言い、ルネの頬にキスをした。 ルネはキスを返し、母親をぎゅっと抱き締める。 『でも寄り道しちゃだめよ。陽が落ちる前には帰ってきなさい』 ルネは大きく頷き、今度こそジョゼットのいる病院に向かって走り出した。
病院の個室。
ジョゼットはガスパールの言った通り、ミイラ状態で眠っていた。 両手、両足はもちろん顔も目と鼻、口を残して全て包帯で覆われており、頭は動かないように金属の棒に挟まれて固定されている。 点滴の落ちる音と心電図のピッピッという機械音が病室内に響く。 ベッドの周囲には見舞いの品が手付かずのまま並べられていた。果物や花束がいくつもあったが、花は枯れて果物の幾つかは変色してへこんでいた。
こんなの病院のスタッフがなんとかすればいいのにと思いつつ、ルネは傷んだ果物をゴミ箱の中に投げ入れた。 「やぁ、ジョゼット」 眠ったままの彼女にルネは話し掛ける。 ルネはこの一方的な独り言の間にジョゼットが目を醒ますのではないかと期待し、咽の乾きを感じるまで喋り続けた。 彼の故郷がいかに素晴らしい所かという話や、みんなが心配しているという話、ガスパールとジョルジュの喧嘩の話や、ドミニクが旅行者のロシア人の女の子にベタ惚れしてロシア語を猛勉強し始めた話をしてから、最後に「もう誰かから聞いているかもしれないけど」と前置きしてレナルドの事を話した。 こうだったら良かったのに、というレナルドが死ぬ物語をだ。
*
その物語の中で、レナルドは酔っぱらった男の運転する車に跳ねられて死んだということになった。
あまりにも一瞬だったので、彼は最後の瞬間まで自分が死んだことに気がつかず、なんの苦痛も感じなかったということになった。 犯人の男は捕まるのが恐くてレナルドの死体を森に埋めた。
その土は特別な土で、レナルドの死体は殆ど痛まなかった。
ある日、いたずらもののビーバーがその死体を偶然掘り���て、川の水を塞きとめるダムに使おうと林檎サイダー工場の裏の小川まで引きずってきた。
それをたまたま工場のそばにきていたカップルが見つけたのだ。
死体は穏やかな顔をしていて、はねられた時についた傷以外はどんな傷も彼には残っていなかった。
犯人の男はレナルドの死体が発見されたというニュースをテレビで観て、その日のうちに自主をしてきた。
犯人は今、国で1番厳しいと評判のドルニューヴ刑務所に収監されていて、生きている限りは外に出てこられはしない。
ジョゼットの両親はようやくレナルドが死んだ事を受け入れ、今はジョゼットが目を覚ますのを待っている。
もう誰もジョゼットの幸せを邪魔しない。誰も彼女が笑うのを邪魔しないのだ。
*
ルネが話終える直前。
不意にジョゼットは目を開いた。彼女は目玉をくるくると回した後でルネに向ける。はっきりと意思が宿っている目だった。 ルネは驚き、ナースコールのボタンを押した。 「ジョゼット、大丈夫かい? 僕がわかる? ルネだよ!」 ジョゼットはほんのわずか顔を縦に動かして瞬きをした。 「どこか痛い所はある? 今、看護婦さんを」 言い終わる前に看護婦と医者が病室内に入ってきた。ルネは邪魔にならないようにベッドから離れる。 もじゃもじゃと腕毛の濃い若い医者がジョゼットの瞳を覗き込み、それから柔和な声でゆっくり語りかける。 「おはよう、ジョゼット。今日もちゃんと起きれたね。あぁ、体は動かさなくていいよ。いつも通り、「はい」なら瞬き1回、「いいえ」なら2回で返事をして」 ジョゼットは瞬きを1度する。 「よーし、いいぞジョゼット」 「あの、僕、彼女に挨拶しても大丈夫ですか?」 ルネは小声でカルテに何か書き込んでいる看護婦に話し掛ける。看護婦はルネには答えずに医者に声をかけた。 「先生」 「あぁ、大丈夫、こっちにおいで。でもまだ顎の骨や歯が治ってないからちょっとだけだよ」 ルネは医者の側に寄り、ジョゼットの顔を覗き込む。緑色の強い視線が彼を射った。 「ジョゼット、目が醒めて良かった。もっと早く来たかったんだけど、色々あって……。でも、これからは毎日来るよ! あ、もちろん、あの、君に迷惑じゃなければだけど……。それに何か欲しい物とか、会いたい人とか、教えてくれたら絶対に用意するから」 「まだジョゼットは言葉は喋れないよ」 医者に苦笑されてルネはしどろもどろになる。 「えっと、じゃぁ、じゃぁさ、えーと、とりあえず喋れるようになるまでは毎日お見舞いにくるよ。それでいいかなぁ?」 ジョゼットはルネから視線を外した。 ルネは酷く落胆し、それからほんの1日喋っただけの自分が連日見舞いに押し掛けるという事がどれだけ図々しいかに気が付いて顔を赤くした。 ルネは前々からジョゼットを知っていたが、ジョゼットにしてみればルネはただの下級生でしかないのだ。 あの公園での話だって、ジョゼットが気持ちを打ち明ける相手は誰でもよかったのかもしれない。
ルネは勝手に舞い上がって、こんな所にまでやってきてしまったのが途端に恥ずかし��なった。羞恥心で耳まで燃え上がる。 彼はこの場にいるのがいたたまれなくなり、曖昧にこびへつらうような笑いを浮かべて「冗談だよ、冗談。毎日なんてさ。また気が向いたらくるよ、他の皆とね」と言い、椅子から立ち上がった。 別れを告げて部屋を立ち去ろうとするとジョゼットが凄い勢いで瞬きを始めた。 「どうしたんだい、ジョゼット? 落ち着いて」 医者が彼女に問いかけるとジョゼットはルネから視線を外し、先程までルネが座っていた椅子の後ろを見つめる。視線の先にはゴミ箱があった。ジョゼットはもう 一度ルネを見て、また視線をゴミ箱に戻す。ルネは先程ジョゼットが自分から視線を外した時、彼女がこのゴミ箱を見ていたのだと気が付いた。 彼はゴミ箱を手に持ち、ジョゼットに向ける。 「お見舞いの果物とか、花、虫が集ってたから捨てたんだ。もしかして捨てちゃいけなかったかい?」 ジョゼットははっきりと瞬きを1度した。 看護婦がごみ箱の中を覗き込み、顔をしかめる。 「ジョゼット。このままだと虫が集ってしまうし、捨てた方がいいわ」 ジョゼットは2回瞬きをする。「いいえ」だ。ルネと看護婦、医者はそれぞれ視線を交わしお互いに「どうしようか?」という困った顔を浮かべた。 「でもね、病室は清潔にしていないといけないよ。臭いが出て来るだろうし、寝ている君に蠅がブンブン集るなんて嫌だろう?」 医者が言い聞かせるように言うがジョゼットは「いいえ」の瞬きをくり返すだけだ。ルネはベッドサイドの棚からビニール袋を何枚か取り出すと、腐った果物や花をゴミ箱から取り出してそれに詰め始めた。 「袋に入れて、口をきつく縛っておくよ。そうすれば虫は集らないし、臭わない。それでいいでしょう? きっと大事な物なんだ」 医者はぽりぽりと頭を掻いてから「あまり長くおいといちゃいけないよ」と言う。それからふと窓の外を見ると「それが終わったらお家に帰りなさい。そろそろ日暮れだよ」と言い看護婦を連れて病室を出て行った。 ルネは枯れたコスモスやリンドウの花、腐ったマンゴーやオレンジをゴミ箱から袋に詰め替える。 もしかしてこれは彼女の両親が持って来た品だったのかも知れない。だから捨てられるのは嫌だったのかも。そんな風に考えてルネは深く反省する。 母にぬいぐるみを勝手に捨てられた時、あれだけ悔しかったのに同じ事をジョゼットにしてしまった。他人には腐った生ゴミや、古びたぬいぐるみにしか見えなくても大事な意味が隠されている場合もあるのに。 ルネはゴミ箱の奥にメッセージカードがあるのに気が付いた。花束か、果物に一緒に添えられていた物らしい。気が付かずに一緒に捨ててしまっていたのだ。 ルネはそれを拾い上げて裏返した。よく知った名が随分と丁寧な字で書いてあった。
*
ジョゼットへ 君の1日も早い回復を祈る ガスパール・シャルダンより
*
ルネは黙ってそのカードをジョゼットの枕元に置いて病室から出て行った。 振り返らなかった。ジョゼットの顔を見るのが恐かったからだ。 病院を出た時、すっかり陽は落ちて街は暗く無気味な影絵と化していた。
ルネの足取りは重く歩みは亀のようだった。
彼の頭の中で���ジョゼットとガスパールが手と手を取り合って、どこかへ走り去っていくイメージがくり返し流れていた。 ガスパールとジョゼットはお似合いのカップルに思えた。どうして今まで気が付かなかったのかとルネはがっくりと肩を落とす。 ガスパールは誰とでも親しくしたけれどジョゼットの事は特別心配していたような気がしてきた。今まではなんでもないと思っていた彼の言葉や態度が急に意味深なものに思えてくる。 例えばルネがジョゼットを連れて故郷へ家出すると言った時、賛同してくれなかったのはガスパールがジョゼットと離れたく無かったからではないのだろうか。 それから別れ際の「俺は本当にお前を友達だと思ってるってわかっておいてくれよな」という言葉は、つまり、「俺はお前の好きな子と付き合っているけど、友達だよな」という意味ではなかったのだろうか。ルネは答えのない自問を続ける。 ガスパールは背が高く、ハンサムと言っても差し支えのない顔立ちで、ジョゼットと並ぶと薄幸の美少女と彼女を守る騎士といった感じになる。 対してルネは精々薄幸の美少女とあまり顔の似ていない弟、あるいは小間使いと言った所だ。 ルネは深々とため息を吐いた。 全く勝ち目がない。 もし自分がジョゼットだとしたら自分とガスパール、どちらを選ぶだろう? 考えるまでもない。ガスパールに決まっている。それこそダイヤモンドとガラス玉、いや、ダイヤモンドとプラスチックのビーズを比べるようなものだ。 ルネは泣きそうになるのを顔を上に向ける事でぎりぎりで堪えた。 失恋したのもショックだったし、思い人の恋人の目の前で見当違いで空回りな駆け落ちの計画を喋っていたというのも羞恥の極みだった。浮かれる自分を見てガスパールがどんな気持ちだったのかを考えると、ルネまで給水塔から飛び下りたくなった。 夜空を見上げながら歩いていると、ルネは誰かにぶつかった。
視線を下げて反射的に謝ると、目の前にいたのは頬と額にガーゼを貼付けたジョルジュ・デュシャンだった。 「何してんの、こんな所で?」 「それはこっちの台詞だよ。何してんの? 君の家逆方向だろ?」 ルネは慌てて周囲を見回す。ぼーっと歩いて来たからなのか、ジョルジュの言う通り家とは反対方向にきてしまっていた。周囲の風景にまるで見覚えがない。 「……ここ、どこ?」 プッとジョルジュが噴き出した。 「君、迷子かい?」 ルネは慌てて否定し、元来た道を戻り出す。が、数歩もいかない内に目の前で道は三つ又に分かれた。どこを通ってきたのか思い出せない。 ルネが固まっているとジョルジュが笑い始める。 「笑う事ないじゃないか! しょうがないだろ、ぼーっとしちゃってたんだから!」 「ごめん、だって、迷子なんて滅多にみないからおっかしくって」 ジョルジュはルネを追い越して左の道を歩き出す。 「ついといでよ。キャンディ工場の前までなら送ってあげる。そこからなら帰り道わかるだろ?」 「! ありがとう、ジョルジュ!」 ルネはほっと安堵してジョルジュの隣に並んで歩く。 道は進むに従って暗くなったが、住宅街が近いのでいつかゴミ���集所に行った時よりは視界がはっきりしていた。 「そういえばお店以外でジョルジュと一緒なの初めてだね」 そうだっけ? とジョルジュは首をかしげる。 「そうだよ。君、あまり人とつるまないじゃない。一匹狼っていうかさ」 ジョルジュは苦笑する。 「苦手なんだ、人付き合い。1人の方が気楽」 「ふーん」 そこで会話が途切れてしまい、ルネはなんとなく気まずい気分になる。工場までどれくらい距離があるかわからないけれど、無言のまま進むのは居心地が悪い。 「君の家はこの近くなの? 工場の側だって聞いてるけど」 「いや、ここより道1本東だよ。普段はここら辺通らないんだけど、今日はほら」 ジョルジュは顔のガーゼを指差す。 「病院に寄ってたから」 「すごい怪我だね。もしかして縫ったの?」 「少しだけね。でも口の中だから目立たないよ」 また少し沈黙が続く。今度はジョルジュが口を開いた。 「ガスパールの奴と会ったかい?」 ルネは首を横に振る。 「最近店に来ない。でも、彼はしばらく来ないと思ったらまたひょこひょこ顔出すような奴だし。……君はどうなの? 喧嘩したって聞いてるよ。その傷もガスパールだって」 「長い付き合いだし、喧嘩くらいするさ。今までよく我慢したと思うね」 「何が原因なの? 皆信じられないって言ってるよ。君とガスパールがそんな怪我するまで喧嘩するなんて」 ジョルジュはんーと低く唸りながら目を細めて遠くを見つめる。 「ルネ。君はガスパールと友達かい?」 ルネは頷いた。ジョルジュは哀れみを含んだ目でルネを見てから「そっか。なら友達の悪口を言うのは止めとこう」と何か言いたげに言葉を止めた。 「君だって友達でしょ? そりゃ、今は喧嘩してるかもしれないけどさ」 「ルネ」 厳しい声でジョルジュに名前を呼ばれてルネは少し驚く。 「俺は2度とあいつと友達になる事はない。絶対ごめんだ」 月明かりの下でジョルジュの横顔に何かゾッとする「もの」が宿った。ルネは不意に落ち着かない気分になる。限界まで研ぎすまされたピカピカの剃刀やナイフを見た時のそれに似た、危険だからこそ魅入られるものの側にいるような気持ちだ。怪我をするとわかっているのに、その刃に頬擦りをしたくなる奇妙な歪みの感覚。 危ないぞ。 ルネの心臓が警鐘を鳴らした。 ルネは黙って歩き続ける。自然と足が速くなった。前方に見えて来たキャンディ工場のシルエットが彼には救いの光に見えていた。 工場が近づいて来るにつれてルネの肩から力が抜けていく。 無気味な影絵でしかなかった風景が見なれた町の風景に変わってきた。ここから家までの道ならわかる。ルネは安堵のため息を吐いた。 「ここからなら1人で行けるかい?」 「うん、ありがとうジョルジュ。本当に助かったよ」 工場前に斜めに傾いて立っている街灯に照らされたジョルジュは、怪我の痕が少し痛々しくはあったが、ごく普通の少年にしか見えなかった。あの恐ろしい何かは消え去っている。最初からそんなものはなかったのかも知れないとルネは思う。見なれない場所を歩いたので恐怖心がそういうものを見せたのだろうと。 ルネは納得し、ジョルジュと分かれて歩き出した。ジョルジュは携帯で誰かと話をしながら遠ざかってゆく。 ルネの安物のデジタル腕時計は7時半を表示していた。途中でどこかに寄って家に電話をかけた方がいいかもしれないとルネは思った。スケートボードよりも先に携帯電話が必要なんじゃないかと少しだけ思う。 「ルネ! そこにいるのは、ルネだね!」 ルネは突然後ろからかけられた声に驚きながらも振り返った。 工場の入り口の所でヴェルニュがルネを手招きしている。彼は怒っているように見えた。 「こんな時間に1人でうろついてちゃダメじゃないか! こっちに来なさい!」 ルネは「大丈夫です! もう帰りますから!」と返したが、ヴェルニュは納得していない様子で「ここから君の家まで歩いて40分近くかかるだろう! いいからこっちに来なさい、車に乗せていってあげるから! 携帯も貸すから家に連絡しなさい! いいね!」と言ってイライラと地面を足で叩く。 確かにここから家まで1人で歩いて行くのは心細いし、家に連絡をいれたいと思っていた所だったのでルネは素直に工場の入り口前に戻っていった。 「全く、もっと危機感を持たないとだめじゃないか。もしかしたらまだあの誘拐犯がいるかも知れないんだよ! ほら、携帯で連絡を……」 工場の前まで行くとヴェルニュがごそごそとズボンのポケットに手を突っ込み、携帯を取り出そうとする。 「携帯……携帯……あれ? れ?」 見つからないらしくヴェルニュはポケットの布地を外に引っ張り出す。だが出て来たのはハンカチとボトルキャップのおまけらしきモンスターのフィギュアだけだ。 「あぁ、工場に置いてきたようだ……。鍵閉めちゃったよ、また開けなきゃ、面倒臭いなぁ、もう……。あぁ、ルネ、先に車で待っててくれないか? そこの奥のガレージ。シャッターはもう開いてるから」 ぶつぶつ言いながらヴェルニュは上着のポケットから鍵の束を取り出し、工場の方へ戻って行く。 ルネは言われた通りに車で待つ事にした。茂みの奥に大きめのガレージが見える。シャッターはルネが屈めば通れるくらいの中途半端な幅だけ持ち上がっていた。 「壊れてんのかな」 呟いてからルネはガレージの中に足を踏み入れた。 ガレージの天井はかなり高く、外から見るよりも中は広かった。天井からぶら下がっているオレンジ色の大きな電球がガレージ内を明るく照らし、ずっと暗い場所を歩いて来たルネに安心感を与えてくれた。 ガレージの中にはルネの店にキャンディを届けに来る運搬用のワゴン車が3台停まっていた。どれも同じデザインで明るい水色に塗りつぶされ、どことなくヴェルニュに顔の似たピエロのキャラクターが様々な種類のキャンディを両手に握っている。 シャッターの方から足音が聞こえてきた。 車から顔を放して振り返ると携帯電話を弄っているヴェルニュがルネの方に向かって歩いて来る所だった。 「早かったですね」 ヴェルニュは携帯をシャッターに向けて何かボタンを押した。���ャッターの横の壁に留められている制御装置のランプが赤く点灯し、シャッターが下がり始める。 ルネは「あぁ、やっぱりシャッターが壊れてるんだ。下がってく」と思い、彼の目の前に立つヴェルニュに車がガレージを出るまで、自分が制御装置を中から手動で操作しようかと聞こうとした。 「シャッターが壊——」 それが痛みだと認識出来ない程の痛みがルネを襲い、彼は意識を失った。
前話:次話
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. . いよいよ スタートした . 藤原新也の『祈り』展 . 生誕の地にほど近い 北九州市立美術館分館と 北九州市立文学館で . . 写真、文筆、絵画、書とあらゆるメディアを縦横無尽に横断する藤原新也の表現活動 . 半世紀以上におよぶそんな彼の仕事から[祈り]をキーワードに初期〜最新作までを一堂に . 規模・展示方法ともにこれまでのどの展覧会をも凌駕(本人談) . 藤原新也の全才能を立体的に俯瞰するにはこの上ない好機となりそう . . 会期:2022.9.10-11.6/北九州市 2022.11.26-1.29/世田谷美術館 . . #祈り #藤原新也 #ShinyaFujiwara #1944年 #福岡県門司市生れ #メメントモリ #インド放浪 #西蔵チベット放浪 #逍遥游記 #東京漂流 #少年の港 #日々の一滴 #コスモスの影にはいつも誰かが隠れている #北九州市立美術館分館 #北九州市立文学館 #小倉北区 #世田谷美術館 #ライカ #Leica . . (北九州市立文学館) https://www.instagram.com/p/CiW87wrP9_9/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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. . ささやかな日々 深く静かな声 愛と別れの一瞬と 永遠の物語 . 「コスモスの影には…」の帯に記されたこの一文からもうかがえるように、どこを切り取ってもこよなく優しく美しい文章と力強い写真が読み手の五感にまで響く、藤原新也の本。 . それらはあたかも、著者自身の手ずからの料理を味わうかのようなかけがえのない時間を読者にもたらしてくれそう。 . . #藤原新也 #ShinyaFujiwara #コスモスの影にはいつも誰かが隠れている #メメントモリ #日々の一滴 #LeicaC112 #ライカc112 #LeicaC #VarioSummicron #バリオズミクロン . . https://www.instagram.com/p/CFEY1oaFYbX/?igshid=orbaefc73u8q
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. . 37年前から2020年まで、書かれた時代も表現形式も異なるのに、そのどれもに通底しているのは、生と死を題材に作品を作り続けているこの人ならではの死生観や哲学、そして優しさと愛。 . いまこの時期に、命についてきちんと考えたい人に最良の好著かも。 . . #藤原新也 #ShinyaFujiwara #メメントモリ #日々の一滴 #コスモスの影にはいつも誰かが隠れている #LeicaC112 #ライカc112 #LeicaC #VarioSummicron #バリオズミクロン . . https://www.instagram.com/p/CFEYeERFrQI/?igshid=1a7vmr0qibecp
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. . コロナ禍だからというわけではないけれど、このところ藤原新也の著作を読み続けるのが毎日の愉しみに。 . いま手元にあるのは図書館からの「日々の一滴」「コスモスの影にはいつも誰かが隠れている」「メメント・モリ」 . リーダビリティが高く軽妙洒脱な筆致が魅力の随筆集。創作なのか実話なのか判然としない…けれども読むほどに心の襞に沁みわたる味わいぶかい物語集。そして、若い頃から気になりつつも未読だった著者の代表作。この3冊をほぼ同時並行に。 . . #藤原新也 #ShinyaFujiwara #日々の一滴 #コスモスの影にはいつも誰かが隠れている #メメントモリ #LeicaC112 #ライカc112 #LeicaC #VarioSummicron #バリオズミクロン . . https://www.instagram.com/p/CFEYBdHFT2u/?igshid=jz4s3t6f8eh8
#藤原新也#shinyafujiwara#日々の一滴#コスモスの影にはいつも誰かが隠れている#メメントモリ#leicac112#ライカc112#leicac#variosummicron#バリオズミクロン
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シン・ウルトラマン(2022 樋口真嗣)
さあ「シン・ウルトラマン」について書くぞ。
書いてたら長くなっちゃったので、仕方なくここに放置することにした。
個人的な話なので、他の人がどうかとかは一切関係ないしどうでもいい。映画に合わせてわざわざ初代「ウルトラマン」を全部見直すようなダメオタクの言ってることだから、うっかり見てもスルーするくらいがいいと思う。
まあ、禍威獣が元気があってよかった。冒頭の禍特対前史は「そうくるかー!」と思ったし、各禍威獣のアップデート(そして流用)アイデアは面白かった。デザインワークスを買えていないのが悔しいが、一般流通に乗ったら買おうと思っている。 怪獣(もういいよね)デザインは「着ぐるみの制約を外したい」というだけあって多彩で刺激的だった。
特にガボラは予告編が卑怯にもミスリードを誘っていたので、全貌をスクリーンで見て「そうくるかー!」と思い、ウルトラマンを圧倒するパワーの格闘シーンを楽しんだ。直前の予告ですごいドリル回ってたから「えっグビラも出すの?」と一瞬思ったんだよなぁ。
ザラブもよかった 元デザインからそう変わらないかと思ったら、見えているのはポリゴンの表側だけみたいな、実体があるかどうか不明なぺらっぺらな立体の生物なんて、CGTじゃなかったらやろうと思わないよな。
メフィラスももちろんよかった。元のデザインを踏まえて鋭角に抽象化を大胆に進めたあたり、「初代」の造形デザインに携わったアーティストたちの個別の作品群を思うと「制約なしのエスキース段階っぽい!」という気持ちになった。 予告を観たとき一番危惧したのは「解像度だけ上げてシーン再現みたいなことになったら最低だ」ってとこなんだけど、それは完璧に杞憂に終わった。まあ個人的にはもっと炎を上げてもらって、低い視点から熱の揺らめきの向こうに怪獣を見たかったんだけど、ちょっと乾いた感じにしたいのだったら、それもまあなしではない。変化のあるアングルは楽しかったしね。
ただ、個人的に大事な話としては、これ多分ソフトを買わない。持っていたいと思える作品にはならなかった。 それは主に、僕が好きな「初代」の作品的な雰囲気はほぼ拾われていなかったためで、要するに解釈違いというやつだ。「シン」が最大公約数の「みんなが求めるウルトラマン」だろうと、僕は別にそうじゃなくてもいい。
「初代」は前企画「ウルトラQ」を引き継いでスタートしているので、ウルトラマンという全話通じた主人公的存在はいても、そのヒーロー性だけを前面に押し出して展開された物語群ではない。宇宙人であり、異星の文明においてある種の役割を持っており、同族も存在していることは描かれこそすれ、基本的には「未知」であり「神秘」の領域にいるものだ。それこそ「怪獣というカオスと対置されるコスモス」というコンセプトそのものの存在が「ウルトラマン」だ。
そんなカオスとコスモスが、何に介入してくる物語かといえば、言うまでもなく「普通の日常」である。日常に入り込んだカオスをコスモスという力で元通りに、あるいはちょっと変わった新たな日常に戻していくのが物語のスタイルだと言っていい。それゆえ非日常的なコスモスは、最後に地球を去るのである。
そういう、日常を侵食される怪奇の雰囲気が、この映画には微塵もない。さらに言うなら浸食される平穏な日常自体がない。描いてないけど日常なんですよ、なんてそんな馬鹿な。ほぼCGIで作った映画に「意図して描写しないで」どうやって日常が描かれるというのか。 だから、ほとんどが戦闘行動に終始する物語になっている。まあ、怪獣災害に悩まされる日々が日常なんだ察しろ、というのであればそれでいいんだけど、それはもう「初代」とは別の精神性の物語にならざるを得ないし、そもそも、そこまでの非常事態下にある日常として描かれてもいない。
怪獣対策がかっこいい、のか?まあそういう向きはある。けどもそのプロセスそのものは決定的に物語の尺が足りず、コンパクトに説明するべく煮詰めた故にルーティンとなってしまうし、怪獣の駆除に成功した事例は過去の事実としてしか描かれていないので、軽口たたいてるけど禍特対はそこまで優秀なチームなの?という風にも見えてしまう。
物語の尺というのは、かなりの部分で物語が表現できるものの範囲を決定する。本来が39話あったものの一部をピックアップしてきたとはいっても、そのほかの話数で培われた表現や了解を切り捨てられるわけではない。
そういった部分を大事にしないで、事件だけで構成したから起きている問題はこの映画の中に多くあるけども、特にキャラクターにそれを負わせざるを得ないせいで、イデほどの苦悩の深さとストレスを滝に感じられなくなっている。打ちのめされるほどのことお前この映画の中でしてないじゃん、何言ってんだよ、と言いたくなる薄っぺらさが終盤になって現れるのはどうなのか。いいのか。いいことにしようか。僕はごめんだけど。
浅見というキャラクターの扱いもひどい。尺が足りないせいでなんでそんなに神永に好意を持つのかが不明だ。もう物語の都合上そうしました、という感じにしか見えない。「初代」で同じ位置にいたフジは集団の中にあって常に自由な立ち位置にいる(時代性のある描写を強いられることはあれども)キャリアウーマンだった。だが浅見ときたらどうだ。能力集団の中で不在の神永を印象付ける役回りでしかないし、しかもそこにプロフェッショナルとは思えない感情まで入り込んでいる。この21世紀にもなって。
しかも。 巨大化させられ意思を奪われた挙句、スカートの中を衆目にさらし、それを野次馬に撮影され世界中に拡散され何度も閲覧される。もうこの描写自体が醜悪極まりないのだけど、映像拡散に関して気にしているのは顔が割れたことだけだという。動画がメフィラスの力で全削除されたらOKだという。正気か?そのキャラクター造形は大丈夫なのか誰も問わなかったのか。
異空間に隠されたβボックスを追跡するために浅見の「匂い」を手掛かりにしよう、というアイデアが出る。その前に自分の体臭を気にする描写がありつつ、禍特対の面々の前で神永に全身の体臭を嗅ぎまわられる。状況が状況なので仕方がない、という面白シーンのつもりなんだろうけども、誰もそれを少しも止めないのが、良識ある人間の社会という描写ということでいいのか。本当に誰もこれをおかしいと思わなかったのか。
この下品さが、僕には耐えがたかった。 なので、ウルトラマンはこれを守りたいと思うのかなぁ、という気持ちを抱いたまま残りを観ることになった。
僕は最初のほうで怪獣のデザインアイデアに関してはすごく感心して面白がったと書いたけども、画面の中での描写に関しては全く納得がいっていなかった。 何しろ、圧倒的に質感表現が足りない。そういう巨大なものが、光を受けて存在しているとは思えない平板さ。「こんにちは、僕CGIです!」そうか、可哀想にな。ぎゅんぎゅん動いているときは多少ごまかされるけども、動きが静まると途端に造形のエッジばかりが立って、心許ない胡乱な表現の面が露見してしまう。宇宙人はギリギリOKだが怪獣はダメだ。もしもこれWETAがやってたらいったいどんな怪獣がスクリーンで咆哮していたんだろう。
ゼットン、でっかいなぁ。火力すっげえ。僕が最終決戦で思っていたのはせいぜいその程度だ。だから僕はこの映画のソフトを多分(ということはかなりの確率で「絶対に」)買わない。 まあ解釈違いだけなら買ってたかもしれないけど、僕、それが偶然であっても許されずに人のスカートの中を見て喜ぶ趣味ないんだよ。劇場で目を背けていたんだぞ。わかるかこの苦痛。わかんないんだろうな。それが最大公約数だというならば、本当に願い下げだよ。
まあ、それはそれとして。
ウルトラマンをめぐる国際社会の動きは、ちょっと面白かった。宇宙人が人間の国家関係の、また個々の決定権者の未熟さに付け込んで謀略��絡め取っていく流れは、これどこで手打ちにするんだろう、とわくわくしていた。一方で「所詮日本はアメリカの属国だから」みたいに自嘲的に言ってみせるお決まりの現状認識があらわれてくると「またか、またその僻みか」という気になってしまう。新しいリアリティある関係性を提示したって罰は当たんないだろと思うが、どうなんだろうか。
「ヒーロー」ウルトラマンをある首尾一貫した存在として描く、というのはこの映画の独自性としてありなんじゃないか、と思った。ウルトラマンという「神」を僕はこう理解しました。そういう論文みたいなもの。僕は宗派が違うのでその主張を首肯するかは別だけども、愛のあり方としては理解する。
ただ「初代」において「ヒーローの有り様」はエピソードの中に内包しつつも、その存在もまた怪奇や神秘のうちにあったことを踏まえると、すべてを合理の中に収めるのは「現代的ではあるけども理屈が勝ちすぎる」のではないかと思うのだ。 僕もウルトラマンと怪獣に対して愛を捧げてきた時間がとても長いので、わかる部分があり、同時に絶対に認められない部分があるのだ。
手放しで楽しめて、手放しで褒め讃えられる人に幸あれ。僕は無理でした。 樋口真嗣が特技監督以上の権限で参加している映画は、劇場にもう観に行かないと思う。庵野の脚本が元凶だとしても、それをどうにかできない監督がなんで監督を名乗れるのか、僕には理解ができない。
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各地句会報
花鳥誌令和2年1月号
坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和元年10月2日 立待花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
焼栗や問はず語らず炉辺の黙 世詩明 風の消す蜀の火侘し秋彼岸 ただし 曼珠沙華墓場の艶や蕊拡げ 輝一 丑三つの厠の閑や蚯蚓鳴く 輝一 泣きじやくり駄々こねる子の秋祭 誠 母の忌の近づく仏間障子貼る すみ子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年10月3日 うづら三日の月句会
坊城俊樹選 特選句
旧国道沿ひに一群彼岸花 柏葉 青空のやがて銀色秋深し 由季子 入日受け銀に輝く芒の穂 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年10月5日 零の会
坊城俊樹選 特選句
秋の沖浜の一舟戻り来ず 眞理子 色街の名残りの白き曼殊沙華 三郎 金風に熟寝や朝の屋形船 梓渕 鳥渡る品川宿を大森へ 和子 纜の秋潮を曳く齢かな 三郎 踏切の音をまだらに秋の風 小鳥 舟だまりとは秋水のどんづまり 要 釣船の朽ちし窓辺の赤とんぼ 炳子 秋の薔薇へと古井戸の水滲み 慶月 舟宿の香り漂ふ曼殊沙華 三郎 金風の抜けて寂れし路地の井戸 要 秋蝶の千本鳥居へ行つたきり 光子
岡田順子選 特選句
金風に熟寝や朝の屋形船 梓渕 来し人に林檎すすめる青果店 小鳥 草紅葉残してかつて私娼館 光子 小鳥来る宮大工より木の香して 光子 登高の杜に赤子の宮詣り はるか 長屋にも零余子あふるゝ実りかな いづみ 舟宿の閑かな秋の灯の白く 三郎 鰯雲を沖へ見送る鯨塚 光子 百五十年目の秋を履物屋 淸流 運動会よく聞こえたる木賃宿 いづみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年10月8日 萩花鳥句会
戦時下の稲刈奉仕なつかしむ 祐子 水鏡壊さぬやうに紅葉舟 美恵子 揺れ動く心のごとき稲の波 吉之 テレビ席昼間のビールでタブル杯 健雄 角打ちの常連さんや古酒の酔 克弘
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令和元年10月11日 鳥取花鳥会
岡田順子選 特選句
冷えてくる膝を離さず十三夜 栄子 海原へ白き竜飛ぶ秋の空 佐代子 銀杏の実落ちる頃なり夫の墓 佐代子 花野ゆく赤いリュックに手を振つて 幸子 カーラジオのジャズと見渡す秋夕焼 栄子 やはらかき遺影の眼差菊かをる 都 柴栗を貰ひてさてと剥く覚悟 史子 彼岸花あやかし色の畦を踏む 都 色付くは覗かるゝことさねかづら 史子 箔打ちの音路地に洩れ秋時雨 悦子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年10月12日 武生花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
裏庭の一画照らす曼珠沙華 三四郎 竹を背にかぐや姫なる菊人形 昭子 永訣の警笛深秋の空へ 昭女 壮大な羊の群れや秋の雲 三四郎 己が影曳きて流るる木の葉髪 世詩明 端正な喪主の絶句や残る蟬 昭女 君偲び杖につまづく花野かな 清女 薄幸にも見えて山田の案山子かな 昭女 鰯雲こんなに遠く広ごりて 錦子 裸婦像の息づく胸に秋黴雨 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年10月14日 なかみち句会
栗林圭魚選 特選句
秋雨や陽子姉眠る古刹に来 和魚 句碑守りし陽子姉偲ぶ秋の雨 あき子 名刹の雨に包まれ秋の声 せつこ 秋雨や年尾句碑守るひと逝きて 秋尚 冷ややかな雨に信女の文字深く 三無 木犀の香り秘めたる寺の黙 三無 秋明菊住み古りし庭抜きんでて 和魚 暗闇坂灯す山茶花咲き初むる 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年10月16日 福井花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
野分きて大切な人連れ去りし 和子 神無月口々に君を悼む句座 和子 みぎひだり頰吹き分けて野分過ぐ 昭子 神隠してふ失せ物や十三夜 清女 遠くとは河のむかうや小鳥来る 啓子 女坂いろどるほどの曼珠沙華 よしのり 城跡を出て首塚へ曼珠沙華 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年10月17日 伊藤柏翠俳句記念館
坊城俊樹選 特選句
玄関に見覚えの無き時雨傘 英美子 空席の一つ師の席露けしや 英美子 逝きし父だけが知りたる茸山 英美子 後の月色ある如く無き如く 雪 生垣に誰が忘れたる捕虫網 雪 コスモスの影をとどめぬ無人駅 ただし 蘭の香の衣の襖に合掌す ただし コスモスの一億本の中に立つ かづを 赤すぎる色の淋しや曼珠沙華 かづを コスモスの花に奈落のある如し 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年10月20日 風月句会
坊城俊樹選 特選句
稲埃上げ少年の昂りて 佑天 くぐり萩頰に触れ来てくちびるも ゆう子 キャラメルのエンジェルマーク小鳥来る 久子 木の葉降る肩に微かな音触れて 秋尚 義貞の駿馬踏みしむ草紅葉 慶月 現世を後に花野に入りにけり 佑天 暗がりにてらてら媚びを売る菌 千種 かの人の欅紅葉を降らすかな 慶月
栗林圭魚選 特選句
防人の歌碑に寄り添ひゑのこ草 眞理子 万葉の歌碑より展け秋深む 斉 木犀の垣に包まれ竈焚く 芙佐子 少しづつ青き空見え小鳥来る 幸子 赤蜻蛉多摩横山の空を占め 三無 金風やかつて内井戸ありし門 久子 透明に金木犀の香が過る 斉 稲扱の小さな音を箕に集め 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年10月21日 鯖江花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
虫塚に蝶を放ちて虫供養 雪 小さきは小さき音に芋水車 雪 芋水車ことこと廻り主留守 雪 曼珠沙華一乗谷に紅蓮の火 雪 さう云へば三日月に顔ある様な 雪 穴まどひ佐々成政城趾なる 雪 空の青露草の藍足触る 直子 秋空に真赤なシャツの御仁かな 直子 秋高し負けてはならぬ気比鳥居 昭子 設へて香具師おもむろに秋祭 一涓
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和元年10月21日 九州花鳥会
坊城俊樹選 特選句
大空や色鳥はやも風となり 朝子 恋愛が下手で夜長のシューベルト 由紀子 身に入むや濡衣塚と云ふだけで 豊子 秋澄めり被爆マリアの泪あと 寿美香 六道の辻にて迷ふ秋の暮 伸子 菊人形にも愛憎のひと欠片 美穂 雨あとの夜目にもしるき女郎花 阿佐美 花野来て今宵の花でありにけり 喜和 身に入むや好きも嫌ひも女偏 寿美香 スープと愛とろ火に煮込む夜長かな 伸子 身に入むや波濤鎮めて沖の宮 かおり 一閃の落暉芒の中に棲む 朝子 身に入むや形見の帯をまけば鳴る 孝子 身に入むや痴人の愛に見る我が身 勝利 鳥渡る天上の紺海の紺 豊子 あれほどの夜々のちちろの行方かな 孝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
さくら花鳥会
岡田順子選 特選句
弔電を娘の糺す秋時雨 令子 道を掃く母の後ろは秋の山 登美子 遅生りの無花果を捥ぎ古翁 同 萩刈の時期となりゐし古寺訪へば 紀子 バス待つ子一緒に並ぶ秋桜 紀子 また来るね母の後ろの柿赤く あけみ 竹の春知らぬ言葉を辞書に引き 光子 古寺や萩の主と談義せむ 紀子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
花鳥さゞれ会
辞書古りて膏薬だらけの秋灯下 匠 秋風の白し左内の立像に 匠 鰯雲三国へ流れ左内の忌 雪子 天高し左内の像は影もたず 啓子 柏翠の忌日に露の身を正す かづを 底曳きに海猫騒ぎゐる柏翠忌 笑 鳴き果てて虫の浄土となる古刹 希 一匹のきりぎりすもて眠れぬ夜 清女 柏翠忌秋水自在の書を掲ぐ 天空 刈り入れのすみし田んぼや左内の忌 天空
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今週の購入本
◇2017年10月29日(日) 自由が丘・ブックオフ
みうらじゅん 宮藤官九郎「どうして人はキスをしたくなるんだろう?」(2016/集英社文庫)
藤原新也「コスモスの影にはいつも誰かが隠れている」(2012/河出文庫)
「ユリイカ」2008年9月号 ※特集・太宰治/坂口安吾 無頼派たちの“戦後” (青土社)
「Switch」2014年3月号 ※特集・進化する落語 (スイッチ・パブリッシング)
◇2017年10月3日(金) 渋谷・まんだらけ
「佐藤雅彦全仕事」 ※「広告批評」の別冊 (1996/マドラ出版)
◇2017年10月3日(金) 渋谷・ブックオフ
ドナルド・D・パルマー 澤田直・訳「サルトル」(2003/ちくま学芸文庫)
松方弘樹「松方弘樹の世界を釣った日々」(2016/宝島社)
「STEPPIN’ OUT!」1号 ※表紙・横山剣 (2008/TCRC)
「中川家ガイド」(2003/東京ニュース通信社)
◇2017年10月3日(金) 渋谷・古書サンエー
「編集会議」2003年12月号 ※総力特集・コラムベスト88 (宣伝会議)
◇2017年11月5日(日) 黄金町アートブックバザール
「鳩よ!」2001年5月号 ※特集・町田康 (マガジンハウス)
◇2017年11月5日(日) 伊勢佐木町・ブックオフ
ドリヤス工場「定番すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。」(2016/リイド社)
谷口菜津子「人生山あり谷口」(2015/リイド社)
近藤ようこ「アカシアの道」 ※新装版 (2015/青林工藝舎)
バナナマン「バナナマンのさいしょの本」(2009/ヴィレッジブックス)
◇2017年11月9日(木) 新宿西口・ブックオフ
村上春樹「風の歌を聴け」(2004/講談社文庫)
石丸元章「平壌ハイ」(2003/文春文庫)
戸部田誠(てれびのスキマ)「人生でムダなことばかり、みんなテレビに教わった」(2017/文春文庫)
タモリ「タモリのTOKYO坂道美学入門」(2004/講談社)
小泉今日子「小泉今日子書評集」(2015/中央公論新社)
黒柳徹子「トットひとり」(2015/新潮社)
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