#ゆくゆくは脱白髪染め
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𝕝𝕟𝕤𝕥𝕒𝕘𝕣𝕒𝕞をご覧の皆様 おはこんばんちわ~‼️ #ウシロノヘアカタ #ヨコノヘアカタ 今回は計画的に明るくしていく ショートスタイルです。 初来店時は結構しっかり暗めの カラーをさせていただいたのですが 白髪との向き合い方の話で 暗めに染めた時のコントラストを 気にしていては… いつまでも気になって しかもだんだん早く気になる ようになってくる💦 いたちごっこのような感じに。 髪色に制限があるとなかなか 一気に明るくは難しいので 長期的計画で明るくしていく カラーの頻度を減らし、頭皮を いたわり、健康な髪を育てる プロジェクト‼️ #健髪育プロジェクト 名前は今勝手につけました。 これに、ご賛同の皆様は これからのヘアカラーを 年単位で計画していきましょう。 それではまた次の投稿で See you NEXT Time👍 僕の中の髪型を決める際に 重要視する3大ポイントは☝️ ①やりたいかやりたくないか ②似合うか似合わないか ③オシャレかオシャレじゃないか * この投稿を見たあなたの髪を切るのは… オレかオレ以外か…は違うか(笑) ♚ 今、目の前の担当している お客様にとって何がBESTなのか🧐⁉️ 四六時中考える服部です。 よろしくお願いします🙇♂️ * ヘアを自分史上最高にカワイクして 毎日ハッピーな毎日を 僕と一緒に始めませんか…💓 ✩ たくさんのお客様のヘアパートナーに なりたい!! ✯ ✩ #僕のセブンルール 【レディ編】 【ユウイチの7⃣ルール】 1⃣髪の生え方や癖を見る 2⃣頭の骨格を感じる 3⃣顔立ちを見る 4️⃣鏡越しに表情などをみる 5⃣前髪、顔周りは特に丁寧に仕上げる 6⃣椅子を回して360度のシルエットチェック 7⃣『僕の目をみて』と正面から質感チェック ★ ☆ △夢中になってるアプリのアカウントI.D. ▼Instagram:69_top_of_creator_96 ♢Tik Tok:6_hairdresser_9 ⿴ZEPETO:3XD7F6 ⿻YouTube:服部裕一のゆうチャンネル フォローしてくれたら飛んで喜ぶ。 ⿸ 【Hair menu】 cut…4500 color:retouch…5800 fulllengthcolor…8000~ doublecolor…15700~ medicalcolor…7300~ pointbleach…3600~ perm…9900~ medicalperm…16500~ pointperm…4000~ treatment…3000~ headspa…5000~ ※料金は税別+長さにより変わります。 ♡ヘアスタイル創りのコンセプト↓ ♥髪は作物、頭皮は畑、カットは剪定。 ♡ #名古屋 #名東区 #名古屋カフェ #名古屋美容師 #zele一社 #madeinゆういち #名古屋のyoutuber美容師 #毛束つまみがちな人 #僕にしか出来ないヘア #大人ショート #徐々に明るく #耳かけショート #ゆくゆくは脱白髪染め #ハンドブロー仕上げ #こだわりのえりあし #オルチャンヘア #perm #be容師 #レア髪 #認知されたい #いいねコメントフォロー待ってます #頭は丸い #髪は動いてこそ美しい #ホットペッパービューティー ✩ ZELE一社( ✧Д✧) カッ @69_top_of_creator_96 愛知県名古屋市名東区一社1-87 ユウトクビル2階 ☏052-709-4100 営業時間 平日*土曜日 10:00~19:00 日曜*祝日 9:00~17:00 今までイメージ通りの髪型になったことのない方😫 自分に似合う髪型が分からない方🧐 ぜひお気軽にDMでご相談下さい👍 #服部裕一 ✩ お電話予約の際は あなたの綺麗を叶える魔法の合言葉は 『服部さんのインスタを見た!』ですよ。 特典があるかもしれませんよ。 ✩ トップのリンクから ホットペッパーのWeb予約出来ます!! おかげさまで口コミ高評価増えてます。 ありがとうございます。 (Itsushiya, Meito-ku) https://www.instagram.com/p/CpFVdYBvflV/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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戦闘服の男たちNo.1
さぶ増刊号 1985/7
G-men 2009/6
§1 夜明け��
俺は島護、25歳の陸上自衛隊員だ、体付がごついのでゴリラの様だと皆言う、勿論短髪、入隊して3年、我ながら戦闘服姿が板に着いて来たと思う。今俺は、ジープのドライバーとして、この久しぶりの大演習に参加している。
演習場の空が、ようやく白み始めてきた。午前4時、俺の運転するジープは、戦車がさっきこねくりまわしていったぬかるみを、ケツを左右にふりながら最後の目的地にむかっている。夜通しの演習は何度も経験してるけど、3日めになるといつも意識もうろう、ただ気力だけで動いているっていう感じ。頭は短髪だからなんとかなってるけれど、顔は不精髭、体だって風呂なんか演習中入れないので汗と埃でべっとりしている。隣で無線機片手にさっきまで巻くっていた金城3尉も、いまは黙りこんでいる。
金城3尉は27歳、骨太ですげえいい体しているんだぜ、頭はいつもさっぱりと刈りこまれた短髪で、いかにも沖縄生まれっていう顔は本当に野生の証明そのものだね。
実は俺、前から憧れっていうと照れくさいけれど、気になる人だったんだ。けれども違う小隊の幹部だったのでなかなか話すチャンスも無いし、遠くから見てるだけ。だから今度の演習でジープの運転手として一緒に行動をするって聞いた時とても婚しかったよ。
そんな金城3財が、ポツリと
「元太の奴、どうしてるかな。」
元太っていうのは、俺の同期で、九州からきた高橋士長のことだ。あいつも図体でけえくせに俺より3歳も年下で、口は悪いが性格よくてなかなか憎めない奴だ。
そんな元太なんだが腰を痛めたとかで演習の3日ほど前から入院して-まっている。たしか金城3尉の小隊だったはずだ。
「ああ、あいつのことなら心配せんで下さいよ。キングコングみたいな、図体がそう簡単にへこたれませんよ。」
「ひでえこと言うなあ。おまえもゴジラみてえな体してるくせに。」
「じゃ、金城3尉は大魔神じゃないですか。」
あは、言ってしまった。3尉殿に大魔神だなんて、思わずペロリと舌をてしまう。
「お前も元太と一緒で可愛い奴だな。」
「エヘ、そうですかぁ」
なんて冗談を言っているうちに眠気も覚めてきた様だ。
夜も明ければ状況(訓練)終わり。終われば休暇が待っている。
§2 事件発生
演習���状況終了になると、その夕方は演習場の天幕(テント)の中で恒例の大宴会が始まることになっている。正直言ってこれを楽しみにしている隊員も多い、汗臭い戦闘服を脱いだ時の解放感と、酒を飲んでポロリと出る本音のぶつかり合いがたまらなく好きなんだよな。
あたりも暗くなり宴もたけなわ、俺たちの天幕は8人のむくつけき男どもで足のふみばもないくらいだ。さっきまでの疲労の色もなんのその、酒は命の水とはよく言ったもんだ。
幹部同士で呑んでいた金城3尉が赤らめた顔をして、焼酎の一生瓶をかかえてやってきた。そして俺の隣に座りこむ、
「おい、島、飲んでいるか。まっ一杯飲め!」
と言って一生瓶をさしだしてきた。
「3日間、御苦労だったな。お前のおかげだ、さあ飲まんか!」
いくら俺が力自慢でも金城3尉に押えつけられたら手も足も出ない。
それでも有無を言わさず、瓶ごと口につっ込んでくる。俺、思わずむせてしまった。そしたらやっと力を緩めてくれた。
「ふーっ!助かった。もー殺さんでくださいよ。」
あたりに笑い声が響き渡った。
そんなとき、俺の手がぐっと3尉に、握られていることに気がついた。
熱い手だった。急に頭がクラクラとしてきた。酔いが回って来たようだ。だんだん意識が……
「島士長!起きてください」
がんがん鳴り響く闇の底から起こされたのは、午前3時。俺をゆさぶっていたのは、不寝番の伊藤一士だった。重い頭をかかえながら起き上がると伊藤一士は
「高橋士長が、地区病院から行方不明になったそうです。今部隊から連絡が有りました。」
頭がボーッとしている俺は最初その事態の重大さに追い付いて行けなかったが。少しして、
「な、なんだって!元太が逃げたって!」
隣で寝ていた金城3尉も起き上がって来た。
「元太がどうしたんだ。」
「地区病院から脱柵(脱走)たって……」
「あの馬鹿野郎!いったいどうしたんだ。」
3尉もまだ酔っている様だ。俺は戦闘服をひっかけると、半長靴を急いで履き
「金城3財、中隊に電話してきます。」
といって天幕を飛び出した。いったい元太の奴、なにがあったというんだ。まだほとんど冷めて無い酔いとともにそんな思いがぐるぐるめぐっていた。
電話のある天幕はこの時間には誰もいない、さっきも不寝番が飛んで来て受けたのだ。
俺は中隊へ電話かけた。こんな事件のあった時は必ず当直が誰かひとり起きているはずだ。
「はい、3中隊当直幹部です。」
「演習部隊の島士長ですが、高橋士長の件でどうなったのか、知りたいと思いまして。」
「あ��島か、三上2尉だ、どうやら午前2時ごろいなくなったらしいんだがな。」
「いったいなにが原因何ですか、」
「それは俺が知りたい位だ。」
「じゃ、詳しい事はまだ…・・・・。」
「そんな所だ、島士長、あまり心配せんで移ろ。」
俺は、演習場に居て何も出来ない自分にどうしようもないいらだちを感じていた。
「何かわかったら電話下さい。俺、ここでまってます。」
そういって竃話を切った。
§ 3 ふたたび夜明け前
いつのまにか後ろには金城3尉が立っていた。
「詳しいことはまだわからないそうです、なんか信じられないっすよ。」
金城3尉は、俺の肩を抱きながら、
「元気出せ島。元太は戻って来る、必ずな。俺も一緒に連絡を待とう。」
そういって3尉は、持って来た一生瓶を俺に差し出した。俺は進められるままに一生瓶ごとくい飲みした。自棄酒だな、まったく。
「どうだ、もっと飲め。」
金城3財は、自分でも一杯飲むと、今度は俺を天暮のシートの上に押し倒した。ふだんならこうも簡単に倒れるわけ���いのだが酔ぱらってなんだか分からなくなってきた。
「まだ飲み足らんか、お前は可愛いやつだぜ。」
金城3時は、俺の体の上にのしかかって来た、酒の匂いと共に戦闘服に染み込んだ男の匂いがムッ、としてきた。
気が遠くなりそうな、でも俺、嫌じゃなかった。
金城3尉の手が俺をきつくだきしめる。耳に熱い吐息がかかる、だんだん体から力が抜けていく……
「元太の所へ俺だって飛んでいきたいんだ、島、分かるかこの気持ち、実はな、俺はこの中隊に来てからずっとお前ら2人が気にいっていたんだ。元太はともかく、お前だって俺は遠くから見ていたんだ。だがな、こんなふうになるとは思ってもみなかった。元太の奴め、俺は寂しいよ。」
そういい終わると静かに唇を重ねてきた。熱いものが体の中から沸いてくる。
3尉は俺の職闘服の上衣のチャックをおろすと胸のあたりをなぜまわし始めた。
「ウーツ」
自然に声が出てしまう。いつのまにか戦闘服のズボンのボタンも外されていた。
そして無造作に手が突っ込まれてきた。
「堅いな。」
そう言って俺の気持ちを確かめると、おもむろに酒を煽り、口移しで酒を送り込んできた。
あまりの量の多さに口から溢れてしまった、金城3尉は舌でそれを拭うとまた、唇を重ねてきた。舌と舌が口の中でからみあう、それに加、て強い雄の臭いがたまらなく俺を刺激する。
「金城3尉!た、たまんねえよう。」
俺はあえぎ声を出してしまう。
「そうか、たまんねぇか、もっと良くしてやる。」
と、言って戦闘スポンからず大くなった俺のモノを引き摺りだした。
「体にお似合いのゴツいモノだな。」
そう言いながら唾をおれのモノに垂らすと、指で一番敏感な所をこねまわしてきた。もう片方の手は俺の口の中に容赦無く入り込んでくる。
「どうだ、今度は俺の番だ。」
といいながら、自分の戦闘ズボンの前をまさぐり、俺に馬乗りになってきた。そしていきり勃ったモノを口にねじ込んできた。
「ウグッ!」
むせ返るような強い臭いに圧倒され、俺は無心に頬張る。その間にも金城3尉は俺のモノをこねくり回す。
「いいな島、この事は2人だけの秘密だからな。」
腰を動かしながら金城3尉がいう。
頬張りながら俺がうなずく。
そして3尉は、一層堅くなったモノ引き抜くと体をずらし、俺の爆発寸前のモノと自分のモノを一緒に握り、激しくシゴキだした。
「ウ、ウッ島、」
「キ、金城3尉ー」
二人は、押し殺した声でお互いの名を呼びながらおびただしい量をほとばらして果てた。それは、戦闘服のはだけた分厚い胸にふりそそいだ。それを3尉はていねいになめると軽く口を重ねてきた。
俺はだんだん気が遠くなりそのまま寝てしまった。

§4 捜索
翌朝俺と、金城3尉は元太の捜索に協力する為、一足先に演習場を出発した。
二人とも照れ臭いのか黙ったままだ、だがその沈黙を破るように3尉が、
「昨日のこと、覚えて要るか。」
と、ひとこと言った。
「え、ええ。」
俺は思わずどぎまぎして答えた。
「嫌だったらごめんな。」
「そんな、始しかったです。」
言葉少なめに答える。ジープが信号で停車した。
シフトレバーを握る手がもうひとつの大きな手に包まれた。
中隊に帰るとすぐ捜索に加わったが、その日の手がかりは何も無かった。
だがその夜、金城3尉あてに電話が掛かってきた。
「元太、お前何処にいるんだ。え、よし分かった今行く。」
「島!来い」
慌てて3尉は飛び出して行く、俺も急いで付いて行く。シープは二人を乗せて夜の町へ走り出していった。
5分もジープを走らすと、ヘッドライトが道に立っている元太を照らしだした。
「さあ早く乗れ、一緒に中隊に帰ろう。」
金城3尉が元太に話掛けた、だが、
「俺、帰りたくない。」
と、一言言ったまま黙って仕舞った。
「仕方が無い、じゃ、俺のアパートに来い、それならいいだろう。」
3尉がそう言うと黙って元太はうなずいた。
結局元太は、退職していった。奴の腰の病気は、自衛官として仕事を続けていきり直ることはないというものだった。
陸曹になり、幹部に成ることを元太は夢見ていたのにそれが挫折してしまった。それがつらくて逃げだしてしまったそうだ。
俺も3尉もなにもしてはやれなかった。あんなに丈夫な奴だったのに。
「俺は、野原でひと暴れする為に自衛隊に入ったんだ。小銃片手に演習場を走り回る、屈強な男だけに許された仕事さ、だけどこの体じゃもうそれもできねぇ。たとえ部隊に戻れても、どうも事話関係の仕事に回されて任期がくれば、はいさよなら そんなのやだぜ」
そう言ってあいつ��国へ帰って行った。
§5明日へ
それから数週間が過ぎた。あれ以来金城3尉ともなかなか話する機会もなくたまに目で挨拶をかわすぐらいしかできない日が続いた。
そんなある日、再び金城3尉のドライバーとして演習の偵察に行くことになった。もちろん3尉のご指名…っていうか元太の後釜。
ほとんど単独行動になるのでずっとふたりきりという訳だ。俺もじっとまってたよこの日をね。
けれども仕事は、そんな俺の甘い考えをふっとばすかのようにとても忙しかった。話すことは仕事上のことばかり、演習場のなかをシープは縦横に走り抜けて行く。
「さあ、これで終わりだ。島士長、シープを降りて一休みでもしよう。」
と金城3尉がいったのは午後の日が沈みはじめた時間になっていた。
「はい」
と返事をして俺はジープを道端に止めた、あたりは一面に草がおい茂っている。
3尉は降りて立小便をはじめた、おれも並んではじめる。
「フーツ」
小便が終わっても二人はそのままたっていた。ふと金城3尉の方を俺は見た。横顔が夕日に染まっていた。3尉もこちらを向く、視線が絡み合う。
「久しぶりだな。」
「長かったけど、俺待ってました。」
ふたたび前を向くと、金城3尉は俺の肩を抱いて茂みの中へ歩き出した。
夏の終わりの演習場は背の高い草に覆われ、ほんの少し足を踏み入れただけでそこはもう二人だけの世界になっていた。
「俺の事好きか?」
と、金城3時が聞く。俺が目でうなずく。
肩に回された手に力が入り思いっきり抱き締められた、背骨が折れんはかりの力である。
ああ、これが俺たちの愛し方なんだ、有無をいわさぬ強引さで右手が開いたままになっていた戦闘服のズポンの前に突っ込まれてきた、すでにはちきれんばかりとなっている俺のモノを引き摺りだすと唾を付けてシコキだす。
「たまんねぇよぅ。」
俺はうめき声を金城3尉の耳元でささやいた。
「よーしいいぞ。」
金城3尉はうなずくと、しゃがみ込み俺のモノをくわえこんだ。そして両手で俺のズボンのボクンをはずし際まで下ろす、右手は俺のケツのあなをいたぶり、左手はキンタマを滑り回す。
そして俺の手は金城3尉の頭をがっちりと押さえ込んでいた。
「金城3尉ーもうがまんできねぇー。」
「うるせぇまだだ。」
そういうと3尉は、俺を後ろ向きにした。
俺は覚悟をした。
ベトベトになった俺のモノをこねくり回しながら、ケツを舐め始めた
「あっ汚いっす」
臭くないわけがない、それでもグッと舌を突っ込んで舐めまわす。
俺は快感に蹂躙された。
3尉は立ち上がって口を拭う。
「いいな。」
と、一言いうと、自分の戦闘スポンから見事に怒り狂ったモノをまさぐり出し、俺のケツにあてがった。そして乳首を…
俺が、つい、力を抜くと同時にゆっくりと先の方がめり込んできた。
「ううつ・い、痛ェよう。」
「なあに痛てえだと?男ぞ!がまんせんかあ。」
そういうと、腰にまわした手に力を込めてきた。物凄い力で俺のケツが引き裂かれる様に少しずつねじ込まれてくる。
「し、島、入ったぞおーっ」
3尉がうめく様に汗を拭いながら言う、俺もまだ着たままの戦闘服で額の汗を拭った。
「まだ痛いか。」
俺は首を横に振る。
ゆっくりと金城3尉は腰を使いはじめた、手は俺のモノをシコキだす、もう片方の手は俺の戦闘服のチャックを下ろし、シャツをたくし上げ、乳首をいたぶる。
いつのまにか俺は金城3財の動きに体を合わせていた。
突然金城3尉の体が痙攣し、俺のモノが思いっきりシゴかれた。体の中で激しいほとばしりを感じると同時に、俺も勢いよく草むらに噴出してしまった。
そしてそのまま二人ともその場に倒れこんだ。
二人で大きなためいきをつくと、寝っころがったまま空を見上げた。あたりはすっかり夕焼けで真っ赤になっている。
ふと、金城3尉が言った。
「島、お前も満期(2任期‥4年)で除隊しちまうんか!」
「ええ、そろそろ国へ帰って親父の現場仕事でも手つだおうか、とでも思っていたんですが。」
本当はまだどうするか決めていなかった。
「そうか。どうだ、島、陸曹候補生受けてみんか。」
陸曹になると俺たち陸士の様な任期制の際員と違い、定年まで勤務ができる様になる。つまり職業軍人というわけだ。勿論その為には、試験があり。学科だけでなく、体力検定、基本教練、あげくの果てには小銃担いで障害物競争をする武装走まであるという苛酷なものだ。正直言って一度受験したらもうたくさんと思ってしまう。
「でも、この前一度受けて落ちましたから。」
「一度ぐらい落ちた位でなんだ。もう一度受けてみろ。お前は自衛隊に憧れて入隊してきたのは分かっている。演習に出ている時、お前は一番いい顔をしているじゃないか。」
そう言って金城3尉は立ち上がった。そして、
「島、そこの俺の帽子見てみろ。」
俺は、そばに落ちていた帽子を拾い上げた。
「あっ、この帽子は…」
「そうだ。元太のだよ。あいつが辞めた時、補給陸曹に頼んで交換してもらったのさ、」
「そんなに金城3尉は元太の事を、」
「そうだ、今でもお前と同じくらいな。好きだったよ。だがな、あいつは気付いてなかったよな。そんなこと。ただの口うるさい小隊長さ。」
ジープに寄り掛かりながら話てくれた。
「じゃ、俺が辞めても何か俺の身につけていてくれますね。」
すると俺の方を睨みつけて言った。
「馬地野郎!まだわからんのか。お前は陸曹になるんだ。そして俺に付いて来い!必ず良かったと思う。もう別れの寂しさなんかまっびらだ。」
そう言いながら俺を強く抱きしめた。迷いが少しずつ消えていくような気持だ。
「よし!俺、また挑戦します。」
「その調子だ、島、俺が合格するまでたっぷりシゴクぞ。」
「エへ、じゃ、合格したらシゴイてくれないんですかぁ。」
二人は顔をあわせて笑った。(終わり)
さぶのカットと、G-men 版の挿画
どちらも木村べん氏。挿画はべん氏より頂いた鉛筆画のコピー。

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Persona 3 Club Book Strega pages scan and transcription.
ストレガ
Strega
主人公たち特別課外活動部の行く手に現れる謎の3人組。同じペルソナ使い ながらあくまで敵対する彼らもまた、彼ら自身の信念でその限られた力を振るっている。
復讐代行屋 Strega
港区全域
自らをストレガと名乗る3人組の表向きの顔は、「復讐依頼サイト」に書き込みされた内容を受けて、自ら手を下せない依頼人の代わりに復讐を果たすことだ。人知れず所持する武器を手に、彼らは裏社会を渡り歩いている。
3人はいずれもかつて幾月が、ペルソナ能力者開発のためにグループ内部にすら秘密裏に進めてきた研究の被験者だ。非合法の人体実験で多くの子どもたちが命を落とすなか、幸運にも生き永らえて能力を開花させたものの、悲惨な実態を目の当たりにして研究所から逃亡し、身を寄せ合って生きてきた。
ペルソナ能力の発現と引き換えに心身に過剰の負担を負う彼らは、制御剤の力を以ってすら長くは生きられない。生命としてのルールを逸脱した運命に魅入られ、彼らは刹那的な衝動にのみ突き動かされて生きている。
たった3人だけで影時間に生きてきた彼ら。宵も享楽を求めて夜の街を笑う。
タカヤ Takaya
凶行の担い手
ストレガの実質的リーダー。3人の中では推定年齢が一番高く、研究所から逃亡した当初から指導的立場に立っている。刹那的・虚無的な思考が強く、自分にも他者にもあらゆる物事への執着の愚かさを説く。復讐代行屋として銃の引き金を引くときも、自分の享楽はもちろんだが、相手の生にしがみつく無様な姿を浄化してやろうという思いがあるようだ。
かつて同列の研究対象であったタルタロスは、忌まわしい邪悪なものではなく、甘美な悪夢をもたらす近しいものだと考えており、ペルソナ使いの存在はもまた、タルタロスあってのものだとしている。そのため真意を知らずタルタロス破壊を目指す主人公たちの存在は、愚かな人間がシャドウの恐怖に怯えることへの嘲笑も込めて、抹殺すべきものだと捉えている。
主人公たちの働きではからずも滅びそのものである二ュクスの復活が秒読み段階に入ると、自ら二ュクスの代弁者を名乗り、滅びと破壊の思想で扇動する。
タカヤの救世主思想
• あなたが自覚している悪意と、相手が感じている悪意とは無関係⋯ 人はみな、聞きたいように聞き、信じたい事だけ信じるものです。(6月22日影時間・裏通り)
• 聞けば、人々を守るための、“善なる戦い” だとか。ですが⋯ 今夜はそれをやめて頂きに来ました。(8月6日影時間・防空壕跡)
• 時の限られたこの体⋯力を失ってまで生き永らえるなど無意味⋯ ならば、 私の生きた証⋯ この地に立てるのみ!(11月3日影時間・ムーンライトブリッジ)
• 分かっていますね⋯? 君には “居場所” など無い⋯ 私たちと来る以外にはね。君もよく知っている筈だ⋯ 怖いのは死ぬ事なんかじゃない。(11月21日深夜・辰巳記念病院)
• フ⋯亡霊などではありませんよ⋯ 生に “執着” などしなかった我々を、運命はそれでも “生かした”⋯ 私は “選ばれた” のです。(11月22日影時間・タルタロス)
自分たちの思想こそが浄化された世界を作ると信じるストレガのリーダー。痩せこけた体に長い髪、色素の薄い瞳という憂世離れした姿。
欲深き自称メシア
ほぼ同年代のはずのストレガですがタカヤは見るからに老け顔。不精ヒゲを剃って髪を切ったらかっこいいのに。
ジン Jin
知性派の爆弾魔
タカヤの右腕を務める少年。自作の爆弾を持ち歩き、武器として使用している。
社会から隔絶された自分たちだけのコミュニティの中で生きているストレガは、物資の調達の大半を影時間を利用した略奪行為によってまかなっているが、その指揮を担うのがブレーンであるジン。特別課外活動部を脱退してからの荒垣に接触し、ペルソナ能力抑制のための制御剤を提供することになったのも、ジンの情報収集能力あってのことである。またネットでは同名のハンドルネームで知られており、その知名度と情報操作のノウハウが、ニュクス教を一気に広げることを可能にした。
つねにともに生きてきたタカヤを崇拝しているが、それゆえに狂気の思想に囚われる彼を、命を捨てていさめようとする。
物議を醸す髪の構造がよくわかる右からの一枚。身につけているものひとつひとつにもこだわりが感じられます。
ストレガ一家を支える苦労人な屋台骨
実際的な生活能力の欠如したストレガを支える一番の常識人。資金調達から食事の世話まですべてを担う関西弁のミリタリーマニア。
ジンの毎晩大変なんだから
• お前を恨んどるヤツがおんねや。でもって、“復讐” を頼まれとる。(6月22日影時間・裏通り)
• お前らには “個人” の目的しかあらへん。どいつも本音はその為に戦っとる。お前らの正義は、それを正当化する為のただの “言い訳” や。そんなんは “善” や ない⋯ ただの “偽善” や。そんなもんに邪魔されとうない。(8月6日影時間・防空壕跡)
• 破れかぶれは、あかん! ⋯すんません。でもこれは⋯ あなたが言うてくれた言葉です。(11月3日影時間・ムーンライトブリッジ)
• やめときや、タカヤ⋯ アンタ���は先がある! ここで無理したって⋯意味 あらへん! (11月22日影時間・タルタロス)
チドリ Chidori
手斧の魔女
白いドレスに身を包んだ、虚ろな表情の少女。ストレガのひとりとしてタカヤやジンと行動を共にし、ぺルソナ能力のひとつである索敵能力でふたりのサポートを行なうが、ふたりとともに戦いの場で力を振るうことは少ない。
感情表現に乏しく、とくに喜びや悲しみを表に現すことはほどんどない。それは幾月の下で受けた過酷な人体実験や、逃亡後の寄る辺のない生活によって後天的に身に付けた自衛の手段。また彼女は自身のペルソナを通して、あらゆる生き物に命を分け与えることができるが、これも自分の人生にはすぐ先に死が見えているという揺るぎない事実ゆえ、生きることに対してまったく執着を持たなくなった結果の悲しい力だ。しかしそれでも、ふたりが手を下す殺戮現場に決して目をやろうとしないのは、運命をゆがめて与えられる死への、本能的な嫌悪感を抱いているからかもしれない。
生を放棄した飛べない小鳥
可憐な容姿に似合わず手斧を振るって戦う少女。気の向かない相手とは一切会話せず、自分のペルソナだけを拠りどころに生きている。
冷めた目線はチドリのトレードマーク。豪奢なドレスは彼女の趣味なのか、ジンのお仕着せなのか。
あんたには関係ない私の言葉
• チドリよ。私の名前。順平が訊いたんでしょ? あの絵⋯もうすぐできるから。私の描いたものは、私にしか分からない。でもそんなに見たきゃ⋯来れば? (8月31日昼・ポートアイランド駅前)
• 命より、作戦が大事ってこと? 死ぬ事って、普通の人には一番の恐怖なんでしょ? ⋯ 違うの? (9月5日影時間・巌戸台分寮屋上)
• ⋯言っとくけど、心配してくれなんて、言ってないから。あんたの勝手な早合点でしょ。(9月8日昼・辰巳記念病院)
• なにそれ⋯ なんで、そんな顔してるの? 死ぬなんて怖くないのに⋯ 死なんて、あした目が覚めないってだけ⋯ ただそれだけじゃないの。(9月10日昼・辰巳記念病院)
• そう⋯アイツのせいよ⋯ アイツが近づいて来てから、私、毎日、苦しくて⋯ 死ぬのが⋯怖くなって⋯ (11月21日深夜・辰巳記念病院)
• 順平と一緒に居ると、怖くなかったものが、なんでも怖くなる⋯ 無くすのが怖い⋯ 死ぬのだって怖い⋯ 一緒の時間が終わっちゃうのが⋯怖い⋯ だから、私⋯ (11月22日影時間・タルタロス)
「チドリ補正」の入った超ナイスガイな順平とともに。幸せになって欲しいカップルNo.1。
順平との出会いと「生きること」
敵同士としての立場にありながらも献身的に尽くす順平と出会って、チドリは少しずつ生きることの意味を知る。けれどそれは自分自身の死の認識と同義。ずっと忘れていた死ぬことの恐怖におののきながら、それでも彼女は愛する彼に生きて欲しいと願った。
頬を染めたグラマラスなチドリの魅力に、すっかり鼻の下が伸ぎ切った順平がキュート。がんばれヒゲ男くん!
#persona 3#p3#p3 club book#strega#takaya#jin#chidori#scanned these ages ago but have only now transcribed them
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(昔の日記です、お気に入りの文章教えてくれたらモチベになります……)
日記
その日は朝からジョギングをした。いつも昼過ぎぐらいに起きていたから、朝8時の街のざわめきがあんなにも違和感なく受け入れられていることに驚いた。結局少し走っただけでくたくたになってしまった。川を眺めながら、ゆっくり、ゆっくり歩いて帰る。鈍色の川だった。1週間に1回くらい、いままで生きたすべての生きものの屍が、地を踏む私の足裏のずっと奥底にしずんでいることを思い出して、不思議な気持ちになる。恐竜もそう、目に見えない小さな微生物も灰ほどの大きさになって光景の一部にちゃんと溶けている。そのことに深く安心して、わたしは好きな人たちのことをちゃんと思い浮かべられる。調べたら、紀元前5万年前から今までに誕生した人間を合わせると、1082億人もいるらしい。1082億人もの人間たちが流した血を、蓄えた知恵を、つないでいった命のことを考える。丘丘を越える風や、夜と花との匂いに触れると、結局いつもそんな想いに辿り着く。昼からは医療脱毛の予約が入っていた。ほぼ素っ裸になって赤い水性ペンで体のあちこちに線を引かれて、ぱちぱちした熱くて痛い光に耐える。わたしの褐色の身体だっていつかあの、深いところにある脆い、目に見えない、灰になってしまうのになあ。電車に揺られながら、ゴミ溜めに差す光を見つめていた。小説の中の、「眼を傷��けるほど鮮明に」という表現を気に入ったので、メモに残す。細い雲が花嫁の白いヴェールのように空に広がっている。なんだか浮かれていた。アルバイト先で出勤打刻を入力して、都合よくふたりきりになった同期の男の子に思っていることをべらべらしゃべってしまった。なんかもう誰に何を思われるとか誰かと何かをくらべるとかそういう事柄に鈍くなっている。バイト前に控え室に入るといっつもからだをじろじろみてくるあの人、ふと見たら私の足を見つめてて、それ以来マジで無理になっちゃった。なんかたまたま目に入る情報の引きのわるさに自分でもびっくりしちゃうの。街歩いてたらちょうどだれかが小便してたり、ちょうどネズミが裏路地からでてきたり、恋人と上手くいってない時にインスタを覗けばちょうどだれかの記念日だったり、そういうの。でもこのあいだ西加奈子の白いしるしっていう本を読んだんだけど、富士山に関係している話で、それでたまたまわたしも来月山梨に行くの。こういう「ちょ��とラッキー」みたいな軽くてふわふわした柔らかな偶然が、積み上げられたいやーな記憶を許してくれる。こんなことを永遠に喋っていて、性格が悪いと思われるかもと不安だったけど、その人の方がわたしよりも5億倍くらい性格が悪かったので、あとはふたりでお偉い人が休憩から戻ってくるまでげらげら笑った。その夜はなんだかお酒でも飲みたかった。それで全て忘れ去るのは惜しいけれど。読まなきゃいけない本よりも読みたい本を読もう。学ばなきゃいけないことよりも、からっぽにみえる毎日のしずけさに意味を見出したい。恋人に別れを告げたのは自分なのに、会ったら触りたくなっちゃった。そういうこともあるよねー
無題
この人でいい、じゃなくて、「この人がいい」という感覚と大事にしていきたいと思う。4連勤目、ありがとうの一言も言えない禿げたひとたちにへらへら愛想を振りまく。やさしさに見返りを求めてはいけないなんてほんとうに馬鹿げている。わたしは自分に見合う対価をいつだって求めてるし、それを与えることこそが相手への敬意を表明する最適な手段だとずっと信じている。なんかもう無理、みんなキモイ。足裏も首も肩も痛い。インターネットばかり眺めていたら、夕陽の映る海も連なる山々も消費するものの1つに思えてきて、相当心が疲れているんだなあと自負する。色欲も皆無で、今ならどんなイケメンであろうと抱かれない自信があるくらい。言葉にできない日々こそ尊いのか、はたまた言葉に値しないものなんて、記憶されるに値しないものものなんてその程度なのか。通り過ぎた過去と進むべき未来の間で、ただ棒立ちしている。ただ、減っていくフォロワーの数値を眺める。わたしがその人の人生からいなくなる瞬間に、前よりもなんかすこしだけほっとする。
無題
ふと、あーこんな文章書くのやめて男子高校生のフリして架空の日記をつらつら綴っていきたいなーなんてことを思った。好きな女の子が教室に入ってくるあの瞬間に世界の色が変わって、空間がぐわんと無音で一新するかんじとか、廊下にひびきわたる古びたオルガンの重低音。蛇口から溢れる生きものみたいな水に顔をうずめて、あつい夏をのりきる。シャトラルランのアナウンスに合わせて、きゅっきゅと靴が床の光沢を擦る。太陽はギラギラ照って、それと同じ純度でみんなの肌が光る。時間にゴールテープがあったら、あと何回わたしはそれを切っていけるのだろう。いまはもっぱら実家暮らしを卒業したいと思っているけれど、いつか女であることを卒業したいと思う日がくるのかもしれないしそういう不確かなことばかりで全部うごている。ガガーリンの「地球は青かった」という台詞は有名だけれど、あれ、ほんとうは「地球は青いヴェールをまとった花嫁のようだった」と言ったとする説もあるらしい。わたしたちみんな青いヴェールをまとった花嫁のように生きていきたい。不確かで不透明な身体、心、ちいさな葛藤や、変化、醜さを直視する必要なんて全くないんだ。
無題
黒いワンピースを大学に着て行ったら、先輩に黒が似合うと褒められた。わたしが可愛げなく「黒なんて誰でも似合う無難な色じゃないですか」と返すと、黒が似合う人ってほんとうは2割ほどしかいないらしいよと言う。でも先輩、黒いウェディングドレスなんてどこにもないじゃないですか。
とことんついていない日が続いている。空きコマにカラオケに立ち寄ったら、店員の不手際によってひどく待たされた。しかも音質がぼろぼろで、もうなにを歌っても音痴に聞こえてしまって、さいごのほうは泣きながら宇多田ヒカルを歌っていた。やることが多すぎて、依頼書添削の通知が深夜2時にきたりする。ぜんぶやめたい。
大学の学祭実行委員をやっているのだけど、新規統括が決まった。これから新規が入ってくる中で、だれがどういう立ち回りをするか。新規統括の下にチームリーダーも2人いて、みんな多分わたしと同じくらい忙しいのに同じチームの人のタスク管理まで把握しているし、守らないといけない表記基準もちゃんとおぼえている。人の振り見て我が振り直せっていう諺、あったなあ。今は等身大にきこえる。
無題
ぽつぽつとした雨の音が家をまあるく包みこむ。包丁で水気の多い野菜を切る音やテレビの雑音を絡めながら一つの線になってゆく音の波に赤ん坊のように心を揺らされる。ときどき、だれかに肌で肌に触れてほしくなるときもあるけれどなんとか平気。朝起きて、しわしわになった白いベッドシーツになぜだか生きていたことの証を感じとって、朝からふわふわした気持ちだった。成り行きから友人と文通をすることになった。最近は眼鏡がこわれて、イヤホンをなくして、ほかにも不運だと思うことが何件かあった。それでもどんどんに綺麗になっていく自分のうつくしさや、河川敷でからだを動かした後の汗ばんだ首元を冷やす風、そういうものにその都度救われていく。文章を書くのだって、すこし書かないだけでとびきり下手になったような感じだけどこうやって振り子のようにあちこちをいったりきたりして自分の居場所を掴んでいくと妥協できるようになった。わたしもほんとうは妥協を信仰とよびたいよ。書くの難しい、日記の練習。
反逆
朝から訳あって母と銀行に行かなくちゃいけなくなった。暑くて全部が嫌だった。道すがら、誤って小銭を何枚か落としてしまって困っていた��だけど、母はそれにすら気付かず歩く足を止めなかった。一度も振りかえらないまま。その瞬間、ああこのひとはこういう人なんだ、と思った。あなたが母親としてすべきことは娘の束縛でもスケジュールの管理でもなくて、隣に立ってあげることなんじゃないの?って、込み上げてくる怒りを必死に押し殺す。もうどうでもいい。わたしは宗教がきらいなわけではなくて、それに付随する人間の因縁がしぬほどきらいなのだと気がついた。
昨晩、大学の唯一の男友達とたらふくごはんをたべた。ありじはやさしいから全人類が惚れる、これまじ、と言われて心がほかほかした。「俺はさー親の束縛とかあんまなくて。朝帰りとかしても、母親、いつもと変わらずに何食べる?って聞いてくれるんよ。あーうどん、あったかいの、っていうと隣でつくってくれてさー」みたいな話を聞いて、母になる日がきてもこなくても何よりも大事にすべきなのってそういうあったかさ、優しさであってほしい。テーブルにあった占いボックスみたいなのに100円いれたら、吉と書かれたうすっぺらい紙がでてきた。ラッキーカラー青。次髪染めるならブルーブラックかな、そう思った。ちなみに男友達は「緑の人」って認識されたいらしくて、いつも緑の服着ててまじでおもしろい。
新宿駅は夜でも、バチバチに光っていた。帰宅して、そのあとは元恋人の友達と夜通し通話した。間にしょうもない下ネタをいいながら、ほぼ恋の話。エロい台詞を言わせたりして、ゲラゲラ笑った。毎日筋トレしてたら、足が細くなって、気持ちも前向きになった。でも、朝起きたら元恋人のインスタに載ってた私の写真が削除されていて、気持ち的には2度目の失恋だった。一度、私にもプライドがあるし元彼に連絡とかしたくない、と言ったとき、じゃあそのプライドを最後まで突き通しなよと言われたのでわたしはほんとうに最後まで突き通した。こんな美人でやさしい女を振るとかまじで勿体ねーっていう強さをおかずに生活を食ってるよ、ほんとうにすきだったんだ。
無題
高校時代、すごく仲のよかった友人にはじめての恋人ができた。このあいだ新歓合宿にいったの、といって見せてくれた写真、ほんとうにどれも眩しかった。わたしは大学に気の置けない友人が数人しかいないし、おまけについこのあいだ振られた身なので正直心の底から同じ目線でよろこぶことができなくてとてもつらい。ほんとうにいちばん救われて、いちばん好きな友達だったからこそなおさら。というか、さいきんずーっと無気力で、与えられる日々を過ごすというか半ば消化するような感覚でうけとめている。こうやってみんなそれぞれ離れていくのだとおもうとすごくさみしい。彼女にとって、わたしにとって一番だった関係性が、いつしかくずれてしまうのではないか、もう崩れてしまっているよでは無いか。そんなことをかんがえる。気休めにカフェでチャイティーラテを頼んだんだけどクソまずい、救われない。じぶん、はじめて付き合ったとき、どういう気持ちだったっけ。わたしの人生だからわたしがきちんとそこに価値や意味を与えないといけないのに、横たわって天井ばかり見て、挙げ句の果てに他人に妬みすら覚えてしまうのってすごく阿呆らしい。うらやましいな〜〜〜結婚するのかな〜握っていた手を手放されてしまったわたしにとっては、彼女が今一番求められているという状況は嬉しくもあり、うらやましくもある。海を背景に男の子と裸足で駆けだしたりするのって幻じゃなく存在するんだ。なんでこうもひとと比べてしまうのかわからない、何でそんなに上手くいくんだろう、なんでわたしだけこんなに不運で、こんなに寂しくて、こんなにつらいんだろう。だれしもが闇を抱えているのにそれを無視して、わたしだけ、わたしだけ、と卑屈に叫んでいるからバチが当たったのかな。去年、彼女とふたりで予備校へむかうとき、「はじめて」って片道切符だよね、なんてことを話した日もあったのに。もうほとんど大学に馴染むとか、ともだちつくるとか、学チカとかぜんぶぜんぶ諦めて、必要だけどこころの栄養にならないものは先送りにして隅に追いやって、ただひたすら本読んだり映画見たり、観葉植物に囲まれた生活をおくりたい。天気がいい日にはフラッと海に行って、そこにひとりでいるひとがいたら話しかけるとか、そういうところから心を元あった場所に置き直す努力をしないとこのままいちばんうつくしいとおもっている10代が終わってしまうなんてあまりに耐えられない。余裕がなさすぎるから5,000円の寿司料理を食べにいきたい。花を生けたい。北海道の僻地へ一人旅したい、新潟の温泉とか和歌山の麦畑とか。ちっちゃなドラゴンをこころに飼いたい、人差し指くらいの蛇のタトゥーを掘りたい。意地悪な天使みたいな女の子になりたいし、やさしい悪魔みたいな男の子に好かれたい。バイトでお客様の身分証をみてそのひとの住所とか名前とか生年月日を手入力するんだけどなんか、その作業をするたびに不思議な気持ちになる。当たり前のようにみんな違う名前で、違う日に生まれて、違う人生をおくっている。世の中わたしがしらないことで成り立っている。わたしは頑張っている、がんばることなどなにもないはずなのに頑張らないといけないことがとてもつらいけど、人生そういうもんですか?
無題
大切な人たちはこれからわたし以外のひとたちにも大切にされてゆく、でも。私はどうだろうか?なんてことを考えながら天井を眺めている。2限が終わってから、駅で待ち合わせて委員会のメンバーとはじめて会って昼食を食べた。そのあと用事があったけれど時間が余っていたので学校へ戻ったら、さっきの授業で同じ教室にいた女の子ふたりが外のベンチで���のしそうに話していた。雨ニモマケズ課題ニモマケズ。積み重なる焦燥感。積み重なると言うより色味が強調されてる感じ、わたしだけモノトーンの世界に取り残されている。木々がわさわさ揺れる。ともだちも好きな男もいなくなったときのために、ずーっと居たくなるサイコーの部屋をつくるぞ!���思って、観葉植物とプロジェクターとイエローのベッドカバーセットをポチる。ありったけのエネルギーをつかって見栄を張っているだけで、けして強くはない。気を緩めば赤ん坊のようになみだがぼろぼろでてくる。努力しているのだ。うつくしい写真を撮ろう。恋人はいるけど上手くいってるのか上手くいってないのかよくわかんない、けれど以前のように自分のことを犠牲にすることは少なくなった。今はわたしの相手をするのを面倒くさいと思う人に割く時間なんて1ミリもないと思っているし、だったら一人でしらないひとと酒を飲む方がまだマシ。外に出ればいくらでも拓けた空が存在していて、孤高になりきっているかのように風が吹く。汗をかけば涙なんて用無しだし、歩いて歩いて歩きまくれば、一瞬くらいは生きててよかったと思えるものが転がっているはずで、じぶんはそれを受け止めるのに値すると思っている。もうすぐ19になる。自分に時間を割くこと、自分への愛を惜しみたくない。だれかに想って貰うこと、だれかを想うことにはいつだって悲しみが伴うから、それをちゃんと受け入れられるくらいに。
無題
なんでわたしはふつーに生きていけないんだろうってずっと思っていた。母も父も日本の恵まれた環境でわたしを育ててくれたは良いものの、父は英語主体の企業に勤めていて、母に関しては日本語は流暢に喋れるものの読み書きは未だに不自由。小さい頃から携帯電話の契約書も学校の書類もすべて弟の分までわたしがこなしていた。想像してみて欲しい、12歳の少女が契約書の堅苦しい日本語を解読している様子。みんなが両親に綺麗な字で書いたもらった保護者会やPTAとかの同意書の中で、ひとり浮かないように1文字書くのに1分かけて、わたしの字とバレないように普段は字の汚い女の子を演出していた。日本人の集団に馴染むのが早かったのは、それくらい妥協や諦めを得るのがひとよりもはやかったということ。まわりの大人はみんな神様について話したがっていた。かみさまってなんだろう?かみさまなのに、自分でなんでもできるのに、なんで人間なんかにこだわるんだろう?さみしいのかな?なんて思っていたけれど、「かみさまは全能なので寂しいなどとは思わないのよ、許しを乞いなさい」そう言われてしまった。わたしのやさしさも、ときにはだれかにとって、間違いとなってしまうことを知った。自分のことを、昔も今もとてもやさしいと思っている。けれどそれは人に優しく接することで自分は善良な人だと信じたいだけなのだと最近思う。自分は世界から優しくされるべきだ、人に愛されるべきだと、自分のことを肯定したかった。インターネットをはじめたばかりの頃、世界には寂しい人間がこんなにたくさんいるんだと知って、それが救いだった。たくさんの言葉を綴ったけど、こわくなって一度ぜんぶ捨てた。だれかたったひとりでいいから、わたしも心底愛されたい。川のせせらぎや木々の息吹、風のあおさ、若い緑の匂い、花々、流れゆく時間のうつくしさ。ぜんぶかみさまの化身だと思っていて、それらに愛されていると感じていた。けれど高校に入ると、みんなひたすら楽しそうだった。好きな男の子に抱きしめられたり、友達と夜遅くまでどんちゃん騒ぎしたり、じぶんの美しいからだを隠さず、美しいということを魅せることによってつたえる。ずーっと日に当てず、布で覆っていた髪の毛は、日焼けすることなく漆黒を纏って光っている。みてほしい、ふれてほしい、わたしを認めて欲しい、そういう思いだけがぐらぐらと心のなかで揺れていた。お父さんお母さんにわかってたまるかとおもう、自分たちは宗教や厳しいしきたりが当たり前で誘惑の少ない世界で育ったからそれを受け入れられるのが自然だっただけで、わたしと同じ目線に立てないくせに、立とうとしないくせに、守るとか成長させるとか文化だからとかいう理由でほんとうの自分を確かめたりそれを探すためにいろいろな経験をする機会をくれなかった。そもそも自分が天国に入りたいからという理由で、ひとの地獄にも気がつけない、もしくは与えているってとてもわたしよりも罪深い、そうおもってしまう。あーなんか愚痴みたいになっちゃった。生まれた瞬間から取り憑かれている呪いに終止符は打てない。もう戻れないと思ってしまった。きのう、大学のゼミの友人と、みんなで花火をして、夜の11時半に帰った。お酒とか飲むとすごく気持ちが楽になってなんでも話せて皆んなでわらって過去の苦悩をともにして、すごく幸せだった。風が髪の毛をおもしろおかしく靡かせて首元をくすぐる。愛してくれる男の子もいる。頼りないし馬鹿だし女心ひとつもわかってないところもあるけど、それでもわたしの置かれていた宗教のこと、いっぱい知ってくれようとして、受け入れてくれて、ふたりのわたしをどちらも同等に扱ってくれる。友達は何も言わなかった。わたしが変わってしまっても、それに負い目を感じていても、ただただそこにいるわたしをみてくれた。みんなに、日々にだきしめられることのあたたかさを前よりもちかくかんじる。すぐそこにあったかい塊がたくさんある、本当はたまにすごくこわくなるけど、一人ぼっちになることとかいつかしんでしまうことは避けられないことかもしれないけど、それでも美しい日々を美しいものだと受け入れて生きていくこと、かみさまを理由にくるしいと喚いていたときよりも、自分はもっとこの世界が好きになった。どうか許してほしい。わたしがほんとうにやさしいの、いちばんしっているでしょう。人のことをすぐに疑うくらいなら心底信じてあげたほうがいい。今の自分を成り立たせるために、自分の一部を犠牲にしているかもしれない人も、それゆえに必死に暴れている感情に戸惑っている人も、みんなほんとうはとても素直で優しくてすてきなのだと思う。わたしは気付く、気づいてあげられる。寂しいときもうれしいときも、誰よりも貴方の元へまっすぐに走っていく。
無題
容赦なくどばど��目の奥に垂れ流れてくるブルーライト、過呼吸気味に泣き続ける夜もあと数年したら体力的に出来無くなりそうだから早く早く歳をとりたい。夜の3時なのに目を閉じても眠れなくて全身の血液が逆流しそうなくらいからだが強張っている。もうここ2週間くらい学校行ってない、なにしてるかというと家のカーペットのど真ん中でプリン食べながらフランス語の授業受けてる。同じ大学の女の子が、大学にはBBQかスノボかフットサルがやりたいようなやつしかいない。わたしは坊主か髪色がショッキングピンクのやつとしかともだちになりたくない、みたいなことを言っていて、そういうのってなんか違うし、かなしいとおもった。でも、こうやってかなしくなったりさみしくなったりするのを全て五月病として片付けてサヨナラできるから5月はわりと気に入っている、どれくらい好きかというと6月と10月の次くらいに好きかもしれない。「五月病」の仮面を被った鬱憤とした鈍色の塊が街中を苛ましているの、なんだかどきどきするから毎日赤い口紅をつけている。いつ悲劇に見舞われても良いように。ピエロみたいな足取りでときどき水たまりをばしゃばしゃしながら走り続けた、足元の花も日付もその日の占い結果も、あなたとのLINEのトーク画面も、日に日にぜんぶ気にかけなくなってゆく。手をつないでいた、自分の中にいた幼い少女が夢の中で喪服を着てた。あなただけは離れないで、と思って、でも、目を覚ましてもあなたに連絡は取らなかった。
無題
今日こそ、と意気込んでキーボードの上で指を交差させながらものがたりを紡ごうとするたび、これまで触れてきたいくつもの眩いことばがぶわっと一気に蘇ってわたしを刺してくる。おまえにはなにも書けないなにも残されていないおまえはなにもかなしんでいない。奥へ奥へとひきずりこまれる。誰も彼もが各々の光を持ち寄って、目の前の道はもう見えないところのほうが少なくなってしまったくらいに隅から隅まであかるい。どんなふうでも在ることのできたそれがほんとうのほんとうに空洞であったと気づいて、でももう泣けない。詩はどのように湧き出てくるんだろうか。音も色も。炭酸がシュワシュワするとか松ぼっくりの形とかどんぐりを拾い集めたりしたときのこと、もうわすれてしまったみたいに、世界がまぶたを1ミリ閉じた、それだけのことかもしれないのにその僅かなエッセンスがこんなにもわたしを主人公たらしめていたのかと途方もない気持ちをおぼえる。サンタクロースがいないとわかった瞬間にクリスマスへのあこがれが半減するのとおんなじようなさみしさをずーっとここさいきん噛み締めている。シシュンキが芸の才能の全盛期だからだろうか、おとなになればいままでずっと見えなかったものがわかって、もっと色鮮やかに日々を過ごせるのかと想像していた。外でガラス瓶ががらがらからからこんこんうるさい。布団の端っこ���握りしめすぎてすごくやわらかくなって、あたらしいパソコンも使いこなせるようになった。かなしいかなしいとおもうけれど、そのこと自体になんの揺らぎも感じなくて、かなしさがより加速するだけ、日々をヒビと書いていた頃があったのをおもいだした。ヒビをいれてゆく、ヒビがふえてゆく、日々。
無題
晴れて大学生になることができて、数日後に入学式を控えている。でもほんとうはもう大学やめたいくらい友達ができるのか不安すぎて、毎晩寝る前に泣いてしまう。このあいだ新入生交流会があったとき、教室に入ったら女の子が皆んな似たような淡いお洋服を着ているし、髪の毛が丁寧に整えられていて、かわいくて、おんなじような雰囲気で、インターネットでつながって和気藹々とはなしているひとたちもいて、自分は見かけが日本人じゃないから声もかけられないし、声をかけようと思っても(わたしこんなに目立つし、びっくりさせちゃうかもしれないし、迷惑かな...)とか考えちゃってすごくこわくて。ツイッターに勇気出して何か投稿しても、だれからも反応が来ないとそれもまた不安になってすぐに削除してしまう。これからずーっとこんなかんじで、高校のときみたいに心から打ち解ける友達なんて一生出逢えないのかもしれないとか思っちゃってさみしくて涙がぼたぼたでてくる。おおきいキャンパスの中を新歓のために端から端までひたすら歩いて、すっごくつかれた。新鮮といえば聞こえはいいけど、わからないことだらけで自分からなにか行動を起こすのをいちいち億劫にかんじてしまう。大学の中でも明るい人が多い、キラキラした男女が多い、と言われているような学部で、自分もそこに馴染めるかな、と思うとつらくなっちゃう。全然おもってたのとちがう、こんなの。これからどうしよう
無題
冗談抜きで毎晩泣いてしまう、ただそれが今はいちばん正しいことのように思えるからそうしている。
通知表をなくしてしまったので家中を捜したけれど見つからなかった。それで明日先生に怒られる予定だから今更のほほんと眠ることもできないでいる。たかがそれだけ、という言葉で収まることではなくて、何度もこうやってモノを無くしておいて一切学ばない自分に腹が立っている。
忙しくて皆んなの文章を読む時間がなかった、そうしたら自分のブログも読んでもらえなくなっちゃった。
今日も頑張ったと自分を愛でてあげることができない。
なにもこんなにかなしいことばかりを書きたいわけじゃなくて、むかしみたいに空が綺麗だったとか友達と一緒にひるやすみにフルーツジュースを飲んだこととか、長らく話してなかった同級生と体育の時間でペアになってキャッチボールができたとか、予備校での先生のプチ話が面白かったとか、そういうちいさな喜びはあるけれど、夜になると感情の波が音を立てて自分の中でせめぎあう。その狭間で、わたしがいちばん好きだったわたしがぎゅうぎゅうに押しつぶされて捻り絞られて塩辛い水で溺れてしまう��。
こんなことを書いておいて浪人でもしたらどうしよう。恋人とでんわしていると本当にくるしくなってしまって、すごく嬉しいはずなのに全然喜べなくなってしまった。逢えないのに、逢えないのにそんなことするの、逢えないんだからこうしてほしい、とかそういう自分の身勝手な思いが本当に申し訳なくてくるしい。好きだからお勉強のことを応援したいのに、すきだから逢いたいし、好きだからそれを同時に我慢しないといけないものとひどく重たく捉えてしまって、すきだから嫌いになりたくないという一心で自分のもやもやした気持ちに無理やり蓋をする。会える距離にいる人たちの並んでいる姿を見て落ち込んでしまうけど、わたしはわたしのすべきことがあるし、それは彼もそうだから割り切るしかないこともあるのだとおもう。
金平糖
わたしがいくら誰かを呪って恨んでも、紙がその言葉で埋まるほどクソクソクソと書き殴っても、結局のところ現実ではその人を愛する人たちが存在していて、そして当人もまた違う誰かを愛しながら日々に幸福を見出すのだから、本当に一番かわいそうなのはわたしだけかもしれないなんて思った。だれかのことを考えて途方もなく苛立つ自分がいちばん自分を不幸たらしめている。駅前にあるでっかい木がゆらゆら揺れる。ゆうがた、眠くなったので勉強道具を片付けて喫茶店をあとにした。暑さで足取りが重くなりつつもすこしずつ歩く、踏んでいるのが蝉の死骸か大きな枯れ葉かの区別もつかない。黒い蝶々をみてから不運続きだ。だれもわたしが泣いてるなんて気づかなくて、錆び付いた車輪を引きずりながらどこにいるかもわからない恋人のことをかんがえる。遠くなった。夕陽を後ろにわたしの影だけが前に長く長く、大きく伸びて、前方を歩く少年が気付かずに頭にあたる部分を何度も踏みつぶす。美しいものにはある種の残虐さがあることを信じて、祈りとかいう逃避を繰り返している。大丈夫?と聞かないで欲しい、大丈夫じゃないから。もう誰にも自分のことを見て欲しくない。ただ自分だけは自分のことを大丈夫だと信じてあげたくて文章を書くという行為をしている。
雨が降っている。雨が降り続けてくれればいいのに、そうしたらわたしもそれを偶然だという言葉でもって割り切ることができるのに。点滅の中に放り出されて、その明暗に目眩を覚えながら自分の行き先もまともにわからずにただただ進んでいるだけのまいにち
不在
かみさまが見つからない。登録していた音楽ストーリーミングサービスが解約されていた。昼から夜まで建物のなかに閉じ込められて、夕焼けをゆっくり眺めることもなくなった。映画館の薄暗い照明と大きな音にこわくなっても、恋人の手を握ることができない。かみさまがいない。なにもかもを投げ捨てた結果、罪悪感から今更おかあさんにありがとうと言うこともできない。��っと、信仰という名の呪いの渦の中にいる。小さい頃からこの世の中のものはすべて神さまが創ったんだと信じていて、でもさいきん��そのせいで自分の行動が制限されるのがとても憎々しかった。どれもこれも、神さまのせい、親のせい、うまれたせい、というふうにずっと側にあって救われてきたものを突き放すことそれ自体にとても苦痛を覚えるのに、脳味噌が勝手にそういう思考をして勝手にくるしんでいる。挙げ句の果てには同級生に推薦入試のネタに利用される。こんな家でていきたい、と思っても行くアテはひとつもない。お金もない。お金を自力で稼ごうとする活力もない。どんなにわたしがぜんぶ無かったことにしたくて信仰を罪で上書きしようと、依然として実在していようがしてまいが神さまというものはわたしの中にあって、そうか。これはそういう呪いなんだ、と思う。もうだめなんだと。恋も音楽も言葉も、性別も家族も、見た目も才能も過去も、ぜんぶ同じ容量で「呪い」として全人類に等しく降り注いでくれたならいいのに。抜け出せない世界を抱えるもの同士、ふたりでいっそのこと呪いをかけあってしまいたい、それなら呪いだって愛に変わるのかもしれない、とそういう陳腐な妄想でしか漠然とした淋しさを消費できない。さみしい。唯一の居場所を自ら捨てて、こんどはどこにも居場所がないとさみしくて涙を流す。こういう呪いが不思議と人生という物語の大きな軸になっていって、結局さいごにはその「呪い」自体に自らを救われる、なんていちばん美しい結末を享受できる人は一体どれくらいいるのだろう。迷信。もう剥ぎ取ることのできない仮面。うつくしかったわたしの心は嘘を重ねる毎に醜くコーティングされ続けて、今ではもうすべてのものが何かに縛りつけられているみたいに、目の前の光景はわたしになにも応えてくれなくなった。何をどうしたら正解なのか、どうしようどうしようと悩み続けた末にその苦しさを世界のほうが背負ってしまったのかもしれない。うつくしいという言葉に収まりきれずに溢れでて、胸をぎゅうっと締め付けるもの。瞬きを忘れるくらいにずっと見ていたいと思えるもの。一切のものを捨ててでもいいからその気高さに近付いたいと願わずにはいられないもの。そういった、どうしても拭えない不安感をやさしく抱き締めてくれる愛がほんとうは色々なところにあるはずなのに、以前に美しいと思っていたものをもう同じように美しいと思えない。花というのは揺り籠から墓場まで人の生活を彩るものだ、というようなことを太宰治が書いていた。「孤独は花だから。美しいものを寂しくしないように、そのまま纏えるほどの強さを身につけていけますように」 と綺麗な言葉で文章を終わることができない。不完全でも愛してください。底無しの未来に水をあげて。
無題
ここ四日間くらい先週の頑張りが底をついたのかぐったりしてしまって勉強にあまり手がつかない。殺してほしい。まいにち死にたい。がんばっても報われないひとだっているし、大して頑張らなくてもおいしいとこを掻っ攫っていくことができる人もいるんだろうなとおもうと泣いちゃう。東京という概念が巨大化して人を貪っている。東京って、日本ってこんなに高校生いたんだ、と思う。餌にされてしまうことの恐怖を突きつけられている。だれかの優越感を満たすための餌としてその努力を利用されてしまう未来がみえる、こんなこと言ったらまた考えすぎだってみんなに怒られちゃうけど。風が吹かないとその音がわからない風鈴みたいにわたしのなかのいちばん美しいところも、もしかしたら誰かに傷つけられて大きくその心を揺さぶられるまでわからないのかもしれないなんて気休めにぼんやり考える。夏という言葉が都合よくあちらこちらで使われるようになって、ぜんぶみんな夏のせいにするようになったから、たぶんもうほんとうの夏はもうやってこない。夏は遠くて遠くて悲しいくらいに鮮やかで到底手の届かないモノだと信じていたかった、それが今やだれかの快楽の理由付けにされてしまっているのだからもっと惨め。わたしがこうして夏を文章のネタにしているのと同じくらい惨め。おかあさんが泣いている姿とか勉強を理由にインスタグラムを更新しない友人の笑顔とか彼氏がわたしを抱きしめるときのつよさとか、そういうだれも知らないであろうものの美しさを、わたしだけが一瞬ひらりとわかるとき、そういうのがほんもののしあわせなんだろうと思う。もうあと半年とちょっと経ってしまえばわたしのこれからの人生の枠組みはもうほとんど決まった、という体で毎日がすすんでいく。日本は学歴社会だから大学名は重要だよと声を揃えて言われ続けて、今でもまだその現実を黒く塗りつぶして無かったことにしている。はやくぜんぶ死んじゃえばいい。アーメン。
魔法のトンネル
18歳になりました、という投稿をするつもりだったけれど、合間合間に想いの丈を綴っているうちに月を跨いでしまった。この期に及んで未だ梅雨を引きずっているかんじの毎日で、最後に晴れた日がいつだったかも忘れた。君のいない世界なんて夏休みのない8月のようだ、といつか野田洋次郎が歌っていたのを思い出して現実になりつつある言葉の並びに少しどきりとする。大学受験まであと半年くらい。アルコールでささくれが目立つ指。これから1年後、自分の居場所を全く想像できないことに対して残る不安感。この一年の間でとても大切な人ができて、その人が居るから今年はだれかと祝福メッセージやプレゼントの数を比べて露骨に落ち込むこともなかった。こんなままではいけないと思うけれど、これでもかというほど甘えてしまう。彼から電話がかかってこないまま気がついたら零時、開きっぱなしの参考書。ベッドから机の上の山を見あげる。もう流れるような文章も書けなくなった。ただ、机元を照らすためだけに付けた光が部屋中に行き届きすべてのものを露わにするように、自分のために費やした諦めとかいう努力がいつか私の人生全体を明るく縁取りますように。そう期待することしかできない。
朝、きまってこの時期の朝の。とりわけまぶたが重くて視界がぼやけているとき、雨音と扇風機の回転音の違いを聞き分けられないままなんだかもう一度眠ってしまいたくなる感覚になる。自分の憂��な気持ちをすべて代弁してくれているかのように完璧な美しさを崩すことなく泣いてくれる空、ずっと梅雨が好きだった。17歳。強いのか弱いのかわからない外圧をずっと肌身に感じながらも良くここまで頑張れてこれたと思う。強まったり弱まったりを繰り返しながら着実にわたしの内側を蝕んでいくもの。どんな記憶であれ時間が経てば薄れていってしまい、曖昧に濁した言葉でしか文章を綴れない。降って、降って、降りつもってゆくのはけして愛や幸せではなかった。幸せが一方で加速させる理想や願望、それによる劣等感、幸せでなくなる恐怖、あるいは幸福それ自体への疑いも、ぜんぶずっと祈っていればいつか大丈夫になるとおもっていた。そうした形での正しさしか知らなかった。
歳を重ねるにつれて特別なものが増えていくけれど、それらはなにもさいしょから特別だったわけじゃなくて、くるしくなったり嬉しくなったりするたびに複雑に絡まっていたものの辻褄があって少しずつ真っ直ぐな一本の線になっていく感覚に近い。最初はちいさな不幸から始まったことが最後にはたくさんの愛に囲まれて光になっていくと半年前ちょうど失恋したあとに書いた。たぶんきっとそういうことだとおもう。そういうことだとおもいたい。消化しきれない劣等感を抱えながら、それでもそれをだれかの優越感の餌にされてしまうのが気持ち悪くていつも満足げに振る舞っていた。小学6年生の頃、布団に包まって壁に手を当てながら(世界のどこにいても良いから今だけ運命の男の子が壁の向こう側で同じように手を合わせてくれていたらいいのにな、)とか祈っていた。アスファルトに浮かぶ白線が血脈のように都市に光を流し込んでいく、わたしはひとりで遠くまでこれるようになった。
誕生日当日、晴れた土曜日。
だれもわたしのことを知らないということがいちばん幸せだった。
となりには愛おしい恋人がいて、いっしょにタピオカを飲んだり服をみたり歌を歌ったりした。街中ですれ違う人はだれもわたしがブログをやってるなんて思わないし、人生で殆どはじめてに近いことをしているとも思わない。そういうのってとても気持ちが楽で良いなと思った。信頼している人たちに過度に期待をされること、責任を半分こするのに疲れてしまった。一緒に悪者になってほしかった。わたしがなにをしても、それがいちばん正しいことかのように大丈夫だよと諭してくれるだけで、それは救いになれるはずだった。おかあさんに喜んで欲しいから、友達に見限られたくないから、だれにも落胆されたくないから、とかいう言い分を勝手に作って勝手にくるしんでいる。ほんとうは静かでいられる関係性が好きだけれど学校の友人はみんなはしゃぐのが好きだから求められているものをそれらしく纏う。両親は善良な人だけれど時折意味不明な束縛をするので面倒くさい、わたしも普通の日本人の女の子みたいに生きてみたかったと思ってしまうことにすら罪悪感を感じる。信仰というのはとても美しい行為だと思うけれど、本来は人を救うはずであるものが「救われる」「罰せられる」という境界線においてときどき人をひどく苦しめてしまうのでとても扱いにくい。救いを見出すはずの宗教によって苦しめられるのはちがうよ、��友達に言われたことがある。大学生になったらぜったい一人暮らしをしたいとおもった。伸ばせと言われ続けてきた髪も思い切り切りたいし、慎ましいふりをするのもやめたい。わたしほんとうは男の子に抱きしめられたこともあるの。けれどそんなことを言えば両親をがっかりさせてしまうから、遠いところで一人で植物とか猫とかに囲まれてひっそりと生きていたい。
かみさまに対する信仰心が薄れても、小さな嘘に罪悪感を覚えなくなっても、男の子と関係性を持ったことがなかった自分自身を忘れても、文章が書けなくなっても、友達と疎遠になってしまっても、病気で人がたくさん死んでも、普通に生活が続いていくことにときおり悲しくなる。それくらいわたしは案外どうでも良いとおもってることが多いんだと感じてもっと悲しくなる。あっちへいったり、こっちへきたり、あるいは戻ったり、そういうのを繰り返していたら、もう戻れないところまできてしまったみたい。あるかどうかも分からない未来のことや、だれかとその過去を背比べしてそれに一喜一憂してい��こと、ぜんぶだいじょうぶになればいいなとおもう。ぜんぶ抱きしめてぜんぶ愛してあげられたらどんなにいいだろうとおもう。わたしには愛しているものが沢山あるし、わたしもだれかにきっと愛されている。最近見かけなかったので死んだのかなと思っていた野良猫を今朝ひさしぶりに見かけて胸がきゅうっとなった。汚いものに沢山触れてきたわたしの手はもう美しい手じゃないけどそんな手のひらの中でも心地良さそうに包まれているちいさなその頭が愛おしくてなんども撫でる。純粋でなくなってしまうのがずっとこわかった。ううん。たぶん純粋だと思われなくなってしまうのがこわかった。
続きを書きたいけどあしたも学校があって、さすがにちょっとねむい。悪者になっても大丈夫だから、わたしはわたしのそばにいるし、君のそばにはわたしの愛してるきみがいるからだいじょうぶ。特定の誰かじゃないよ、みんなが幸せになれますように。
n(atsu)
線路が控えめな緑に縁取られていて夏を感じた。でんしゃがいつもより大きく揺れるな、とおもった。ひさしぶりに乗るから余計にそう感じるのか、ほんとうにいつもより大きく揺れているのかは良くわからなかった。塾へ着いたら体温検査をされた。世の中の非現実味は薄れていくけれど、それでもやっぱりまだどこかふわふわしているかんじがする。ふわふわ、という言葉は抽象度が高くて便利だと思う。白黒はっきりつけることで正義を実感している人間って意外と多いのかもしれないし、わたしも気付いていないだけで実際はそういうところがあるのかもしれない。燕が雛に餌をやっている様子と、健気に咲いている向日葵と、それに加えてマスクの内側の皮膚が熱気を帯びていく感覚。去年、男の子と花火を見に行って、わたしの中での鮮度の高い美しい夏はそこでずっと止まっている、あるいはもうほとんど完結されたようなかんじ。塾が終わってから本屋へ寄ると、同い年くらいの背の高い男の子が絵馬の形をした紙に合格祈願を書いてちいさな箱へ投じていた。わたしも流されてペンと紙を持ったけれど、多神教じゃないんだよなあと思ってやめた。わたしはわたしが信じている神様にもまだこわくて合格でき��すようになんて言えていない。いつだってこわいものから救ってくれるものが神様なのに、自分勝手に生きていながら窮地に追い込まれたときだけ救いを求めるのは割りが合わないと思う。好きな人と一緒に昼間から眠りたい。神聖な場所で祝福された心を持つ人に祈りを唱えてもらいたい。突然変異で雪が降ってほしい。騒音の全てを吸収して、それで全てなかったことかのように水になって溶けていってしまうの。指輪が欲しい。細いやつ、宝石はなくていいし装飾もなくて良いから。涙を拭う手に宿る愛があれば、だれかにゆるされたという証が指にあれば、虚無感を紛らわせるための画面スクロールも、劣等感を埋めるために耳触りの良い言葉を連ねる必要性も、不確かな焦りも薄まるかもしれない。というのも最近また得体の知れないストレスに悩まされていて、今日もすこしだけ泣いてしまった。すべてあなたの心の持ちようで変わるの、薬はなにも解決してくれないよ、と母にはそう言われて、それでもっとかなしくなった。そういうことじゃないの。模試を受けるにしても勉強した量に等しい成績が出なかったら、とか、到達点は同じでもそこまでの努力の過程に差があるだけで劣等感をかんじてしまう。まいにち頑張りたいのに思うように脳みそとからだが動かなくて悶えている。わたしは自分を高めることで自分は大切に扱われるべき美しい人間なのだという確信が欲しいだけで、それほどまでにきっとわたしの内側にある自分への愛や期待値というのは年齢とともに他人任せになっていって、諦めや、未来の自分の幸せに対する責任を負いきれないという言い訳や、ときおり世界から拒絶をされているかのように感じられた幼い頃の傷ついたこころがぜんぶガチガチに固まったしこりのようなものがずっとあるみたい。もっと自分で自分のことを愛してあげられますように。今、世界ではいろいろなことが起きていて、それに対して声をあげないという選択が道徳的ではないと非難されてしまうことがあるらしいけれど、関心を持たないということもひとつの意味のある心の持ちようだし、それをやさしさと捉える人もいるのに、とてもやりきれない。恋人が「みんなつらいけど、ありじはつらいの」と言ってくれたことがとても救いだった。だれかの不幸と自分の不幸を秤にかけるということにやっぱりわたしはある種の違和感を覚えるし、たとえそこに差があっても自分のことを放棄してまでだれかのために立ち上がることは少しちがうと思う。そうして切り捨てたものが何らかの拍子にいつか今度は自分自身を殺すかもしれないし、自分の身近で大切な人を傷つけるかもしれないし。わたしはわたしを取り巻く世界をたいせつにできたらいいなと思う。足取りが軽くなれば、もっと遠くへといけるでしょう。だいすきなひとが苦しんでいたらすぐに駆けつけられるし、わたしはそういう風に愛される女の子になりたいから沢山のことを頑張っている。月が変わったのでカレンダーをめくったら、「涙は人生のお師匠さん」という言葉の周りにたくさんの滴のイラストが描かれていた。扇風機をつけると、紙がパタパタ揺れる。がんばる。わたしの愛する人たちが沢山愛されますように。
どれほど遠いところに行こうと試みても
どこか気持ちがもやもやし��やりきれなかったので少しばかり走りに行こうと洗面所の前に立ってコンタクトレンズをつける。泣くまいとしていたけれど、使用期限切れだとも知らずにレンズを瞳に上にのせた瞬間、意志とは関係なく勝手になみだがぼろぼろでてきて焦る。ずっと我慢していた涙ももしかしたらそのなかに紛れていたのかもしれない、濡れた睫毛やすこし充血した白目を見るといつもどこかほっとした。
世界は絶えず美しくて、じぶんなんかがその大きな器の中で堂々と情けない顔をしているというのがなんだか滑稽に思えてきた、と昨日は日記に書いたけどやっぱりそう思えない。うまれる、しぬ、という表現がコピーペーストされてできた世界線。どうしてもくるしくなってしまう、くるしいものを見ないようにと目に覆いを被せて生きているからたまに世界を直視したときにあまりの眩しさになにもみえなくなってしまう。
結局のところ、きっとわたしはなににでもなれるし、なににでもなれた。わたしはわたしが望みさえすれば、家をでていくことも、うまれながらにして与えられた名前を捨てることも、今つながりを保っている関係性を断つことも、信仰を捨てることも、自分のからだを誰かに売ることも、求められてそれに応えることも、アカウントを削除することも、つらい勉強に身を投じることなく大学に行くことも、自分自身やそれに関係する人々をきずつけることもできてしまう。その可能性についてぼんやりかんがえていた。
考えてみればあまりにも不安定なわたしは、なににでもなってしまいかねない自分というものとずっと一緒にあるいてきたように思う。自分というものの一部をわざと切り離してあえて失うことを選んだり、あるいは舐められないよう努力をして立派なものに築きあげたりする過程でしか自分が自分であることをたしかめられなかった。欲を我慢しなさい、謙虚な姿勢で生きていきなさい、と幼い頃から教えられてきたことの反動がまさに今起きていてつらい。人間は生まれたままの姿こそもっとも美しい、醜い人間というのはひとりもいなくて、そしてだれもが平等に愛されるに値する、といった程度の言葉ではこの漠然とした不安感は解消されなくなってしまった。
あなたがいちばん大切にしていて、且つあなたをあなたらしくさせているものはなに?という質問をともだちがインスタグラムで公開して回答を募集していた。わたしは今までずっと恋愛をすることでしか自分を保てなかったの、という彼女の文句もまた同様に等しくまぶしいものだということに当人は気付いていないかもしれない。膨大な情報のなかで、なにをほんとうに掬いとるべきなのかわからずにいつまで彷徨い続けるのだろうかという不安を抱えている。たすけてほしい。毎晩、たすけて、たすけて、と寝る前に心の中で念じるようにしていて、そうして眠りにつくとなんだかほんとうにたすかったような感じがする。
というのも、なんとなく、という世界線を生きること自体あまりに物事を都合よく解釈していていらいらするので、とうとうまともに祈ることすらできなくなってしまったのだ。は��かしい。わたしは決して善良な人間ではないのに、善良な人間の中で同じ言葉を唱えていることに一種のはずかしさを覚える。
無題
一年前までは、死ね、クソ、うざ、という言葉にほんとうに値する人間や事物などなくて、物事のすべては捉え方なのだと、主観で世界の全てを決めつけてはいけない、美しくいなければいけない、という考えがあったからわたしはほんとうに一度もそういった言葉を使わなかったし使えなかった。それなのに今や抵抗が少なくなってしまって思いたくなくても大事な人たちにいらっとしたときや精神が弱っているときに反射的に汚い言葉が脳裏に浮かんでしまってやりきれない。過去をふり返るとき、その足跡がどれだけ美しくても、長く歩き続けてきたとしても、結局その先にあるのが地獄だったら意味がないでしょう。
外に出ても風は一切吹いていなかった。頬に染み付いたなみだの生温さは消えず、水面の揺れもしずかだったので川が川じゃなくてアスファルトみたいに冷たく感じられて、音もない夜にわたしは勝手にひとりぽつんと取り残されてる感覚だった。
それでも良いこともあった。このあいだ、雨が降った日にふとした好奇心で自分のうまれた日の天候を調べたら、わたしがうまれたその日も東京では雨が降っていたらしいとわかったこと。たくさんの雨粒のなかにも一粒くらい当時のものも紛れているのかなあ、と思った。たとえ同じ形をしたものが数多くあっても、情報量の多さのなかで下敷きになってしまうようなほんの些細なことでも、わたしはわたしのことを愛してくれているものをがんばって見つけ出したい。そしてそう思っているのと同じくらい、同時に心の奥のほうでは常にだれかに見つけて欲しいと思っている。わたしが失ってしまったわたしの美しさを見つけてほしい。もう誰にも傷付けられないように。もう自分のことを傷つけなくて済むように。愛せますように。
無題
あ〜もうわたしなんも勝てないな〜って思って泣きそう。勝てないものがおおすぎる。受験生なのに自分の欲に打ち勝って勉強に励むことすら怠ってしまって、他人と比べることでしか自分を測れないからだれかが頑張っているすがたをみても素直に応援できない自分がいてくやしい。みんな守りたいものをちゃんと守って、それをつよみにしているのに、わたしはなにかを失うことでしか自分が満たされていたことを実感できなかった。捨ててしまった欠片をひとつひとつ集めようと、かがんで地面を這っている惨めな姿を誰かに見られたらどうしよう。だれよりもきらきらした世界をしっているつもりで、かみさまからも愛されているつもりで、たくさんの人がずっとそばで応援してくれていることに対してそれ相応の結果や愛を返せているつもりだった。だけどぜんぜんそんなことなかった、そんなことなかったのにそれでも絶えず世界も人も優しくて美しくて眩しくて純度が高いので薄汚れた言葉をもってしまったわたしにはもう直視できないんじゃないかと挑戦することすらこわくてできない。わたしの写真や文章がだれかに良い影響を与えていたらそれはうれしいけど、それでわたしだけのものだったわたしの一部が他の誰かのものになってしまうのは少しだけ悔しい。ブルースクリーン越しに奪うこと、奪われることに慣れてしまった。わたしは結局わたしだけみてほしいと思っていて、それがわたしの幼さで弱さなのだと思う。弱さも強さも武器になるうるけど、ほんとうに強い人はちゃんと矛先を向ける対象を選ぶことができるから目の前の道をどんどん拓いてい��るけど、弱いままのわたしはずっと自分の胸に矛先を向けているからだめで、自分を窮地に追い込んではじめて大切なものに気がつくことができる。「わたしが失ってしまったものをありじちゃんは大切にしていてすごいと思うし、これからもそれを守り抜いてほしい」とメッセージをいただいたことがあるけど、わたしが彼女の立場だったら同じようなことは決して言えないだろうと思う。きっと、ずるいなあ、と思ってしまう。ずるい。わたしもあなたみたいになりたかった、と。なりたい自分に到達できずに足��いている途中であたらしい自分が形成されたとして、それはむしろなりたい自分とは真逆な人間なわけだから、その歪さを美しいと褒められても全くうれしいと思えない。やっぱりでも今日だけ美しいといってほしい。今日だけ慰めてほしい。そろそろぴえんって言葉つかっちゃいそう。
愛?
さいきん日常の何気ない瞬間において、いいなあ、とたくさん感じたけどその都度いちいちメモに起こしていないので内容はほとんどわすれた。なのでブログを更新できないし、あと二ヶ月も経たぬうちに十八になってしまうからせめて可愛げのあることなんかを少しくらい書きたかったのに状況が状況なので仕方ない。毎朝オンラインで出席確認があるんだけど昨日は二度寝して出られなかったし、このあいだ試しに大学の過去問を解いたら点数はだめだめだった。一日だけ夜に恋人に電話で弾き語りをしてあげた。ぜんぶ壊れちゃうならさいしょから手を伸ばさなきゃよかったってことを話したら、あのね、ちがうの、持っていたっていう事実がとてもたいせつなの、さいしょから持ってるのと持ってないのじゃちがうでしょ?わかる?と諭された。そうかもしれない。怠惰に怠惰を上書きするように生きている。こめかみに銃口を押し付けられて脅され怯えるようにして、つきまとってくる色々な事実から目を背けている。こんな具合に漠然とした不安感がうんぬんかんぬんとダラダラ書いているけどほんとうはそれなりに幸せで充実した生活をしているからいつかバチが当たってしまいそう。歳上の彼氏と別れた友達の女の子が、今頃煙草でわたしの肝臓ぼろぼろなんだろうなあ、もっと自分のことを大事にしてあげたかった、と裏垢で溢していたけど、きっと彼女にだって彼の影響で自分のモノが形を変えていく過程に幸福を覚えていた瞬間もそれ自体に救われたこともあったんだと思う。ただ薄暗くふちをなぞっていかないと未来への期待値があまりにも高すぎて落とし穴にハマってしまいそうでこわいからみんな可哀想ぶっている。たぶんどこにも事実なんていうものはほんとは存在などしていなくて、みんなが情報を選んだり捨てたりしているだけで、人間が数値にしたり名前をつけたりしながら記録をしているだけで、何もかもを取っ払ったら、あ、でも、そうなったらわたしはどうなっちゃうんだろう、なんてことをずっとぼんやり考えている。二か月くらい前にだいすきな友達といっしょに塾へと向かう道を歩きながら、わたしたち卒業までにいつか絶対この道で泣くと思うって笑いながら話していた。今ごろ存在していたかもしれない日と流していたかもしれない涙とあったかもしれない出逢い。そういうので世界が動いているのかもしれないと思うと心がふにゃあってなって泣きそう���なる。この足を踏んでいるところのずっと奥に埋れてしまったいくつもの歴史に救われている。その後、小さなレストランで二人分のサンドイッチを頼んだ。ずっと憧れていた女の子にはやっぱりなれなかった。一度「憧れの女の子のフリをする」アカウントをつくろうとしたけど苦しくなってやめた。新作の化粧品と知恵袋での大学受験生の相談事と参考書のレビュー調べだけでほとんど埋まっている検索履歴欄の隅っこに追いやられてしまったいちばん綺麗なわたしを誰かに拾って欲しかった。少しくらい未来をあきらめても人生は終了しないけど単純にそこでわたしの自己肯定感は終了するし、わたしがいちばん大事にしたかったわたしも死んじゃうから、ねえ、わたしは大好きなみんなのことも自分のことも美しさを表現することもぜんぶあきらめないからみんなもわたしのことあきらめないでってインスタの裏垢に書いたあと、電気を消して寝た。許されない愛だけが輝いている。ずっと輝いている。いつか校庭を一面石灰の白に染めて北国の雪景色みたいにして、雨で偽物の冬が消えてしまう前にわたしたちは濡れながらキスをするの。安っぽい映画みたいに物語の順番をぐちゃぐちゃにして今よりももっときれいなところに走っていきたい。“なにも決定的なことが起きていないようなのに、いつしか死が準備されてしまっている、日常という戦場” において、好きな人にお願いだから死なないで、一人にしないで、と一方的に伝える行為がとても無責任だということだとはわかっているけど、ただ、それがわたしの知っている方法の中でいちばん確実にあなたの心を殺せるものだからゆるしてほしいと思った。しんだら身体の隅々まで洗って、痛かったところを撫でて、さいごにわたしの名前の由来になっている花の香りを墓石につけてあげる。あなたの歪みにはじめて触れた日、わたしはあなたのいちばん美しいところをみたようなかんじがして、それがとくべつで嬉しかった。まるかったり、とがっていたり、硬かったり、やわらかかったり、ざらざらしてたり、さらさらしてたりするの。生きているだけで美しいという言葉はみんな戯言だと笑って受け流すのに、しぬことになると急になんか真面目な顔をするからやになっちゃうよね。写真を撮ることを知らなかった頃のわたしはたぶんほんとうの写真家だったし、まだロックミュージックを知らなかった頃、わたしのロックスターはずっとわたしでしかなかったし、文学を知らなかった頃に感じていた世界とおなじ色合いの世界をわたしはもう見れない。そういうものだから、もしかしたら死ぬことなんて知らなかった頃、わたしたちもずっと死んでいたのかもしれない。それでたぶん今でもその頃の残像が残ってるのかもしれない。逃げて逃げて逃げた先で待っているから、そこでまた逢えますように。
無題
あこがれている女の子たちがみんな色白で華奢なことにむかついている。だれかを真似して美味しいところだけを盗むことは誰にでも出来るんだけど、でもそうじゃなくて、彼女たちがもっているものは彼女たちにしかもつことを許されていない域にある圧倒的なものだからくやしくて泣いてる。その子たちがフォローしている��カウントを全部フォローしたら同じ世界を見れるかもと思ったけどやめた。きっとわたしよりもいろんなものを見て感じて聞いて愛してたくさん傷ついてきたんだろうなあ、と思う。自分と向き合うのはとてもくるしくて、美しいものに触れることで浮き彫りになる絶望もまたするどくて、それでも躊躇いなく自分の内側にあるものを外にだして整えてまたぐちゃぐちゃにしていくの。そういう工程を何度もじっくりしずかにしてきたのかもしれない。お世辞にも美しいとは言えないものでも、美しい人がすればそれはたちまちに美しくなってしまう。ずるいなあ、十七年かけて見つけたものが諦めとかいう単なる逃げだとしたらやりきれない。頑張れるかなあ、がんばりたいなあ、って言うのたぶん二千回くらい繰り返しているけれど、こんなわたしもすこしずつちゃんと踏み出していて、前に比べたら痩せてメイクもするようになって結構垢抜けたし、何も書けないと言いながら泣き喚いてブログのアカウントを消すこともなくなった。ワンクリックで消えてしまった昔のわたしの言葉には相応の墓場もないけれど、だれかの支えや救いやたのしみになれたことが嬉しい。文章なんて手軽なもので誰でも書けるものだけど、誰でも、の中で、わたしのを読んでくれている人がいるのだという事実がうれしい。きっとでも綺麗事抜きでほんとうはだれでも特別で、特別じゃない人はいないんだろうけど、すべて目に見える数字として統計されてしまう今だからこそ他人からの評価やさまざまな人たちからの好意や自分は愛されているのだという確信の多さがそのひとの輪郭をなぞって、より濃くして、いわゆる個性と呼ばれる類のものを形成していくのかもしれない。くやしいし皮肉だけどそれを掻き分けていくのが、生きるということかもしれないし、あるいは自傷行為なのかもしれないし、わかんないけどわたしだけは自分の味方であれるように努力していけたらと思う。たとえ負け犬でも遠吠えできる余裕と気力があるうちはまだ勝ってる、たぶん
無題
きのう、河原まで自転車で走った。昼間の明るい時間帯に行くのはとても久しぶりだった。最近はストレスで奇行に走る人がいるらしいから夜に外に出るのはやめて、と母に言われた。テレビをつけてもスマートフォンのスクリーンをいくらスクロールしても、そこに有るのは饒舌に討論を繰り返す人間と、それに対する第三者からの警告、といったような感じだし、鬱々としていたのでちょうど良かったかもしれない。運動用にだぼっとしたパーカーを着て、弟のサドルがすこし硬い自転車を借りた。前方から吹いてくる強い風に服がぴたっと身体に張り付くので、はずかしくなってペダルを踏む力を強くする。桜の木はもうどこにも見当たらず、小さな花びらだけがコンクリート上にまばらに散らばっていた。空は青くて、高くて、鳥が群れてそこを飛んでいて、それをわたしが見ていて、だけどわたしのことは誰も知らないの。そしてわたしだって誰のことも知らない。その事実がいちばんやさしくて、それでいていちばん淋しいから美しいと思う。川の水面が光��受けてきらきらと煌めいているのを眺めるのが好き。光りの粒がたくさんあって、見る場所によってそれが大きくなったり小さくなったり近くなったり遠くなったりしてかわいいの。昼間は白く光るのに、夕方になると今度はピンク色になったり朱色になったりするからもっとかわいい。塔屋看板にペンキを塗装する業者の人。頭上を走るモノレール。走る犬。投げられたフリスビー、野球ボール。ふうっと口をすぼめてたんぽぽの綿毛を飛ばす子どもたち。うっすら川のにおいがして、うれしくなって少しのあいだ草原の上に横になった。草ってこんな柔らかいんだって思った。オレンジ色ってこんなにオレンジ色だったんだ、とか、鳥が一斉に空へ飛び立つときにパタパタと羽根の動く音が聞こえて、しゃぼん玉が弾ける瞬間にせっけんの匂いがして、英単語帳をしばらく眺めていたんだけどすぐに閉じて空のずっと奥の方をみてた。いつもはうざったい太陽の残像でさえ愛おしく思えてしまうなあ、どうなるんだろうなあ、これから、って思った。わたしが掬い取っている現実はきっとほんとうの世界のほんの一部でしかないから、救われますようになんて偉そうなことは言えない。だけど、たかが数日間外に出ていなかっただけなのに一人でこんなにも大袈裟に感動している。すこしくらい見返りを求めてもいい気がしてくる。
頭ぐわんぐわんする
現実に翻弄されている人間を嘲笑うかのようにして桜が我関せずと言わんばかりに堂々と咲き誇っているので、なんだかすこしだけ愉快な気持ちになった。白い四角形を顔の表面に貼り付けながら、それでも歩く足を止めない人間の行く末をかんがえると何もかもがいやになってしまうけれど絶望の輪郭をみんなでかじって食べていけば、なんとも名付けようのない不器用な形をした詩のような世界ができあがるのかもしれない。今日くそみたいなじじいがくそみたいな眼差しでこちらをみてきたので睨み返してやったんだけど、どれだけそうして自分の弱さを繕うように強がっていても彼には変わらずに愛するものがあって彼を救いにしている人もたくさんいて、そのことがなんだか、それだけがなんだかそのときのわたしの苛立ちの唯一の誤魔化しだった。だからわたしは彼を刺殺さないし、彼もわたしを殴り倒さない。そういうのって、大事なんだろうなあと思いながら電車の広告の文字を追っている。ちなみになにも頭には入ってこない。あたたかい毛布にくるまっていると誰かに抱きしめられているかんじがするから心地がよくて、すこしだけ唇を尖らせる真似をする。まぶたをあと何回閉じれば。何回綴じれば。いいんですか。コンクリートジャングルと自転車のサドルとスカイツリーの心臓。あ、と思う頃にはもうすでに全てが遅くなっていて後悔をするけど、あ、と再び思うと今度は以前のそれよりもより大きな幸せに満たされていることに気がつく。竹刀を持った少年たちが夜になると川辺に集まっていつもその刀を縦に振っている。わたしはたいして歌を歌うことも上手ではないし、勉強も大してできないし、顔だって凸凹している。けれどそれでも真っ直ぐに生きていけるかな。生きていきたいね。終末感の漂う世界をみることで、わたしは独りですこしだけ安心できた。終りがあることに赦される。本当は衝動のまま洗面所にあるハサミで髪の毛を思い切り切ってみたいし、派手な髪色にして東京の真ん中を歩きたい。それでも晴れることのない憂鬱を自分の中の非道徳的な理想に想いを馳せることで誤魔化してみたり、寂しいと思わなくても好きな人を自分の家に泊めて隣でぴったりからだを重ねながら長い夜を過ごしたい。そういうのをだらだらとしたいだけなのに、そういうのをするのにも勇気や妥協や諦めが必要らしい。がんばるよ。すこしずつ。
無題
まいにち予備校の自習室にいっていたら、自習室でしか勉強したくないからだになった。いままで宗教上の理由で髪の毛を隠してきたけど、大学生になったらボブにして染めて街を堂々と歩いてみたい、し、そうしてみる。たくさんあそびたい、だれになにをどう言われようと自分のしたかったことを一つずつしていきたい。親といっしょに暮らしていたら、わたしの「非」はぜんぶ彼らの責任になってしまうけど(これもちょっとおかしい話だけどそう考えている人は多いみたい)一人で暮らしだとわたしのしたことは全部わたしの責任になるらしいので、最近は常に逃げ出したい。思春期や若さを理由にしてどこか遠くへ逃げてしまうことは何もわるくない。ぜんぜんわるくない。寧ろそうするべきだとも思っている。一度離れ離れになることで改めて気付かされることや見えてくるものなんてたくさんあるし、それに加えて黒猫を相棒に迎えいれることがきまって、その子といっしょにふたりで(猫だから「人」ではないけど)暮らすことが決まったのでどきどきしている。もう失うものはない気がして、でもそれは自分がなにも持っていないからではなくて、幸せなことにたくさんのものを持っているからだということに最近気がつきました。毎日走ろうと思ってる、思ってるというか走っている。たくさんがんばって可愛くなるので、そのときがきたら誰かデートしてね
無題
つまらない文章しか書けなくなった。いや、そんなことはないんだけど、もしかしたら面白い文章を書かなくちゃと思うことがなくなっただけなのかもしれないけど、それでも書かずにはいられないほど心を動かされるものとかそれをさせてしまうくらいにわたしの大切なものをかき乱した嵐のような愛とか、水みたいにさらさらしてる美しい光景の数々とか、光とか風とか、なんかそういうの、そういうのに自分のからだとかこころを預けるのがこわくなってしまった。あっちへいったりこっちへいったり、そうしているうちに自分を見失いそうでこわい。だけど反面、もう自分のことで苦しまなくていいようにいっそのこと自分の存在とは程遠いなにかに染まってしまいたい。自分らしい自分なんて本当は存在しないのだとわかっていながらもそういったくだらない不安感をおぼえてしまう。というのも、たくさんの言葉とか音楽に触れているうちに、どんどん自分が感化に感化を重ねて変わっていっているのが自分でもわかっていて、だからもう昔書いていた文章は書けないし、昔捉えていた景色の感触も思い出せない。わたしが考えていることはすでに誰かが思いついていることで、でもだからといってその価値が下がるとかそういうことではないんだけど、時折それがすごくさみしくなる。なにかを表現することで、表現したくないなにかを誤魔化してきた自分が浮き彫りにされているようでとてもくるしくなる。ほんとうのわたしを認めてほしい、などと思うけど、同時にわたしのなにが貴様にわかるんだ、とも思う。自分のほんとうはどうしたいのかという気持ちをうまく掬いとってあげられないのがくやしい。思春期ってそういうものなのかなあ、こうやってぐるぐる変な渦に巻き込まれて、いつも自分だけど自分ではないなにかとすれすれになりながらもがいている。いちばん近いはずなのに、いちばん掴めない。なのに影みたいにしてどこまでもひっついてくるので厄介で。むかしの自分かもしれないし、認めたくない自分かもしれない。いずれにせよ、世界に翻弄されがちな自分の絶望や幸福を言葉や写真などに起こして大袈裟にしてみせる一連の行為に疲れてしまった。わたしはわたしに自分のことを認めてさせてあげたかったのだと思う。あなたの感じていることは言葉にされるに値することだと、慰めてあげたかったのだと。でも今はこうして文章を書くことで、言葉に残さなかったなにかが消えてしまいそうでこわいと思ってる。写真を撮ることで、写真に残さなかったなにかを裏切るような感じがしてこわい。それともそれはただ口実で、ほんとうはほんとうに一切のことに無関心になってしまったのかなあ。全てのことをどうでもいいと投げやりにしてしまうことで、失うものを少なくしたかったのかもしれない。そうすることがずっと強さだと思ってたけど、今もそう思っているところはあるけど、誰かにわたしのぜんぶを決めて欲しいなと思うけど、でも自分でちゃんとえらんでいきたいね。突き抜けたわたしの弱さを、考えすぎたよという言葉で突き放すひとたちはいたけど、それをわたしのいちばんの強さだと肯定してくれたひとは少なかった。考えすぎてしまうこと一般的にみていいことではないかもしれない。たしかにわたしは考えることで現実から目を背けているし、考えることであたかも自分が真っ当に生きていることを正当化しているし、考えることであなたに連絡したい気持ちやあなたに抱いてほしい気持ちを誤魔化しているけどそれがなんかいいなあっておもう。それがなんか、ちょっと可愛いというか、なんか人間味に溢れて嫌いになれない。ぐだぐだ空白を消費しているうちに、どうにもやりきれなくなって深夜にワンピース一枚でそとへ飛びだしたことがあって、そのとき足のくるぶしから太ももの内側へとひっつく夜の風のつめたさに今も慰められている。変わりたくない、と思うけど変わっていく自分を受け止めてあげられるだけの気持ちの余裕やそのかわりになにかを手放す強さとかそういうのを育てていかなくちゃいけないのだと思う。ちょっとだけかなしいけど、もしかしたらそれができた頃には、また遠い昔に出会えていた感動にまたはじめて「あたらしく」出会えるかもしれないと思うとちょっと頑張ってみようという気持ちになる。長々書いたけど自分でも一貫性がないことにくすりとしてしまう。ただの自分語り、あとでたぶん消しちゃうのでこれを読めた人はラッキー。あしたいいことがあるかもしれないね。
無題
ふわふわと遠いどこかを彷徨っているかんじで、それがちょっとだけ気持ち良かったり、気持ち悪かったり、こわかったり、かなしかったりした。一日中そんな調子だったのでひどくつかれた。わけわからないウイルスのせいで色々な部活の大会や練習が取りやめになった。期末試験もなくなって、これから空白の一か月間。放課後あちこちからだれかのすすり泣きとそれを優しく諭す声がきこえてきて、わたしは失うものなどなにもないのに、なにかを失ったような気分で、これを書いている今でさえ少し泣きそうで指が震えている。頑張って頑張ってさいごまで努力を続けてきたのに、こんなにも呆気な��終わってしまったことが悲しい。このままドミノ倒しみたいにたくさんの報道が、たくさんのだれかの涙が、自分の知らないところで募り続けていくことをかんがえただけでなんだか胸が空っぽになる。大した努力をしていないわたしが悲しむようなことでもないのかもしれないけど、それでもわたしは努力をしている友達の姿がだいすきだし、みんなの泣いている姿をみるのがつらかった。反面、涙を流せるほどの熱量をなにかに注いだ覚えもないことが余計にこころを空っぽにさせた。すこしだけ、この、世界がゆるやかにくずれていく様子に好奇心を覚えて胸が高鳴った瞬間もあったけど、やっぱりもっと美しいのがいいね。やさしいほうがいい。さいきん文章書いてなさすぎていかにも日記みたいな日記になりました。ぜんぶ大丈夫になりますように。
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長々と「ゴーストワールド」考
私がテリー・ツワイゴフ監督の映画「ゴーストワールド」と出会ったのは、2000年代中盤のことだった。映画館ではなく、ツタヤでDVDを借りて実家のリビングで観た。コロナ禍によってビデオ・DVDレンタル屋としてのツタヤが街から消えた今になって振り返ると、あの日からずいぶん遠くに来てしまったことを実感する。
映画冒頭、アップテンポなジャズが流れ出し、こぶしの利いた男性シンガーの声が重なる。「シャンフェケシャンフゥ」--何語だか分からないが、気分を高揚させる陽気なグルーヴ。しかし、映像はアメリカ郊外の白いマンションで、音楽の古めかしさと不釣り合いな印象を与える。
カメラはマンションの外から窓の中を捉えつつ、右へと移動する。それぞれの窓の向こうにいる住人たちが部屋でくつろいだり食事をしたりといった光景がいくつか展開された後、濃いオレンジの壁紙の部屋が映し出される。部屋の中央で、黒縁眼鏡をかけたぽっちゃりめの女の子が、黒髪のボブを振り乱して踊っている。傍らには昔ながらのレコードプレーヤー。そこから大音量で流れる「シャンフェケシャンフウ」--アメリカにおけるサブカル眼鏡女子の強烈な自己主張は、無機質な郊外の光景へのレジスタンスのようだ。
細かい台詞やキャラクターは忘れてしまっても、このシーンだけは鮮烈に頭に残っている。この映画が何を描こうとしているのか、冒頭を観ただけで分かった。自分の世界を持っている人間の素晴らしさと痛々しさ。そんな存在を愛おしむ監督の眼差し。
2時間弱の物語の中では、高校を卒業したものの進路が決まらない主人公イーニドが迷走に迷走を重ねる。そして、彼女が何かを成し遂げるようなラストも用意されていない。
ありがちなティーンエイジャー文化に埋没する無個性なクラスメイトや郊外の退屈な人々を馬鹿にしている割に自分自身もぱっとしないイーニドの姿は痛々しいが、十代の自分にも確かにそんな一面があったことが思い出され、いたたまれない気持ちになる。それでも、映画を見終えた私の心には温かい余韻が残った。監督が最後までイーニドに寄り添い続けていることが伝わってきたから。
2023年下旬、何の気なしに見ていたX(旧twitter)で、ゴーストワールドのリバイバル上映を知った。絶対に行かなければと思った。あの名作と、映画館で出会い直したい。 上映が始まって約1ヶ月後の2024年1月、再開発によって円山町から宮下に移転したBunkamuraル・シネマの座席で、私はイーニドたちと再開することになった。
改めて観てみると、最初に観た時の感動が蘇ったシーンもあれば、初見では気付かなかった要素が見つかったシーンもあり、希有な鑑賞体験になった。 これ以降、個人的に気になった部分を列挙してみる。
自由という試練
物語の序盤で、主人公イーニドと幼馴染みのレベッカは、揃って高校を卒業する。式が終わると、イーニドとレベッカは会場から走り出て、卒業生が被る伝統の角帽を脱ぎ、校舎に中指を突き立てる。二人とも大学には進学せず就職もしないので、これからは受けたくない授業を受ける必要もなく、大人として自分の道を選ぶことができる。スクールカースト上のポジションに惑わされることもない。
しかし、コーヒーのチェーン店で働きながら親元を離れて暮らすためアパートを探し始めるレベッカとは対照的に、イーニドは将来のビジョンを持てないまま高校の補講に通い、髪を派手な色に染めてみたり、映画館のアルバイトを一日でクビになったりしている。ルームシェアをする約束を果たす気があるのかとレベッカに問い詰められれば「自立、自立って馬鹿みたい」と滅茶苦茶な言葉を返して怒らせ、家に帰ってからベッドで泣く。イーニドは自由を満喫するどころか、自由を持て余しているように見えた。
高校生の頃は、学校の教員たちが決めたルールに従い、与えられたタスクをクリアすることが求められていた。経済的に親に頼っている分、親や家族というしがらみもある。大人の介入を避けられない年代にいるうちは、人生の問題を大人のせいにすることもそれなりに妥当だ。
しかし、高校を卒業してしまえば、もう人生の諸問題を安易に大人のせいにできない。複雑��家庭の事情に悩まされていても、「もう働ける年齢なんだから、お金を貯めて家を出ればいいんじゃない?」と言われてしまう。
自分の進路を選び、やるべきことを見極めて着実に実行することは、何をすべきなのか指示してくる人間に「やりたくない!」と反抗することよりもはるかに難しい。与えられた自由を乗りこなすだけの自分を確立できていないイーニドの戸惑いと迷走は、滑稽でありながらも、既視感があってひりひりする。
シスターフッドの曲がり角
この映画には、イーニドとレベッカのシスターフッド物語という側面もある。十代を同じ街で過ごし、お互いの恋愛事情も知り尽くしている二人が、高校卒業という節目を境に少しずつ噛み合わなくなってゆく過程が切ない。二人とも、相手を大切に思う気持ちを失ったわけでは決してない。それでも、環境の変化が二人の違いを鮮明にし、今まで通りではいられなくなる。
イーニドもレベッカも、世界をシニカルに見ている点は共通している。派手に遊んでいたクラスメイトが交通事故で身体障害を負ってから改心し、卒業式のスピーチで命の尊さを語っていたことに対して「人間そんなに簡単に変われるわけない」と陰で批判したり、卒業パーティーでも弾けたりせずぼそぼそ喋っていたりと、どこかひねくれた態度で生きている。世の中が用意する感情のフォーマットに素直に乗っからない低温な二人の間には、確かな仲間意識が見て取れた。
しかし卒業を契機に、二人の関係はぎくしゃくし始める。 イーニドは仮に卒業できたものの、落第した美術の単位を取得するため補講に出なければならない。スムーズに卒業したレベッカはカフェのチェーン店で働き始め、アルバイトではあるが社会に居場所を得る。卒業したばかりの頃はイーニドと一緒にダイナーに行き、新聞の尋ね人欄に出ていた連絡先にいたずら電話をするといった行動にも付き合っていたレベッカだったが、アルバイトも続かずルームシェアの部屋探しにも消極的なイーニドに徐々に愛想を尽かす。イーニドが中年男性シーモアとの関係を隠していたことが、さらに二人の距離を広げてしまう。
イーニドは古いレコードを集めるのが好きで、一癖あるファッションを身に纏い、多少野暮ったい部分はあるにしても自分の世界を持っている。バイト先でも、上司の指示に違和感を覚えれば分かりやすく態度で示す。表面的にはリベラルな国を装いつつ水面下では依然として差別が行われているアメリカ社会に対しても、批判的な眼差しを向けている。
しかし、それを表現した自分のアート作品が炎上した際、イーニドは作品を批判する人々に対して展示の意義を説明せず、展覧会の会場に姿を見せることすらしなかった。どんなに鋭い感性があっても、表現する者としての責任を全うする姿勢のないイーニドは、アーティストにはなれないだろう。黒縁眼鏡の媚びない「おもしれー女」ではあってもカリスマになる素質はなく、かといってマジョリティ的な価値観への転向もできないイーニドの中途半端さは、何とも残念である。
一方レベッカは、シニカルな部分もありつつ、現実と折り合いを付けて生きてゆけるキャラクターだ。店に来たイーニドに客への不満を漏らしながらも、上司に嫌味を言ってクビになったりすることはない。経済的に自立して実家を出るという目標に向かって、地に足の着いた努力ができる。
そして、レベッカは白人で、イーニドより顔が整っている。二人がパーティーに行くと、男性たちはユダヤ系のイーニドに興味を示さず、レベッカにばかり声を掛ける。 どう考えても、社会で上手くやってゆけるのはレベッカの方なのだ。
卒業を契機に、高校という環境の中ではそれほど目立たなかった二人の差が浮き彫りになる。置いて行かれた気持ちになるイーニドと、現実に向き合う意欲が感じられないイーニドに苛立つレベッカ。どちらが悪いわけでもないのに、高校の時と同じ関係ではいられない。絶交するわけではないけれど、何となく離れてゆく。
人生のフェーズに応じて深く関わる人が変わってゆくのはよくあることだし、どうにもならない。それでも、楽しかった長電話が気まずい時間に変わったり、昔だったら隠さなかったことを隠すようになる二人を見ていると、人生のほろ苦い部分を突きつけられるようで、胸が締めつけられる。
シーモア:大人になりきらないという選択肢
冴えない中年男性シーモアは、この映画におけるヒーローでありアンチヒーローだ。平日は会社員だが、休日は音楽・レコード・アンティークオタクとして自分の世界に耽溺し、友達も似たような同性のオタクばかり。せっかくライブハウスで女性が隣に座っても、音楽の蘊蓄を語って引かれる。そのくせ「運命の出会い」への憧れをこじらせている。自分の世界を持っている人間の素晴らしさと痛々しさを、これでもかと体現しているキャラクターだ。
イーニドとシーモアの出会いは、イーニドのいたずら電話がきっかけだった。新聞の尋ね人欄を読んでいたイーニドは、バスで少し会話をした緑のワンピースの女性にまた会いたいと呼びかける男性の投書を発見し、この気持ち悪いメッセージの発信者を見てやろうと、緑のワンピースの女性を装って電話をかける。会う約束を取り付け、待ち合わせの場所に友達と共に向かうと、呼び出されたシーモアがやって来る。
待ちぼうけを食らうシーモアを陰で笑いものにするイーニドだったが、別の日に街で偶然見かけたシーモアを尾行して、彼がレコードオタクであることを知り興味を持つようになる。シーモアのマンションで開かれたガレージセールで、イーニドはシーモアが売りに出した中古のレコードを買い、会話を交わし、徐々に距離を縮めてゆく。
シーモアが自宅でレコードオタクの集まりを開いた日、イーニドはシーモアの部屋に入る機会を得、彼のコレクションと生き様に驚嘆する。
恐らくイーニドは、シーモアという存在から、アーティストやクリエーターにはなれなくても自分らしさを手放さずに生きられると学んだ。たとえ恋愛のときめきが去ったとしても、シーモアの残像はイーニドの中に残り、社会と折り合いを付けられない彼女の行く先をささやかに照らすのではないだろうか。
(そして、シーモアの姿が、一応仕事や勉学などで社会と折り合いを付けながらも、家庭を持たず読書や映画鑑賞や執筆に明け暮れる独身中年の自分と重なる。その生き様が誰かの未来を照らしたりすることはあるのだろうか。もちろん作家として誰かの人生に言葉で貢献するのが一番の目標ではあるものの、映画を観た後、最低限シーモアになれたらいいなという気持ちになった。初見の時と感情移入するキャラクターが変わるというのは、なかなか新鮮な体験。)
矛盾を抱えたアメリカ社会への言及
最初に観た時はイーニドや一癖あるキャラクターたちが織り成す人間模様にしか目が行かなかったが、二度目の鑑賞では、画面の端々に映り込むアメリカ社会への皮肉もいくつか拾うことができた。
ライブハウスのシーンに、ブルースに影響を受けたと思われる白人のボーイズバンドが登場する。ヴォーカルは「朝から晩までcotton(綿花)を摘む毎日さ」みたいな歌を熱唱する。確かにブルースにありがちな歌詞だ。しかし、綿花を摘む労働をさせられていたのは主に黒人であり、白人は黒人をこき使う側だったはず。労働者の心の拠り所として作られたブルースという文化を、ブルジョワである白人が無神経に簒奪しているという皮肉な現実が、この短い場面にそっと描かれている。
また、イーニドとレベッカが一緒にパーティーに行くとレベッカばかりが男性に声を掛けられる件には既に触れたが、声を掛けてくる男性はほぼ白人だ。アジア系の男性や黒人男性などがレベッカをナンパすることはない。たまたま二人の住む街が白人の多い地域という設定なのかもしれないが、このようなキャスティングが決まった背景には、制度上の人種差別がなくなっても人種によるヒエラルキーが社会に残っているという監督の認識があるのではないかと感じた。
そして、個人商店がチェーン店に取って代わられ、住宅地が画一的なマンションで占められ、街が少しずつ個性を失ってゆく描写もある。レベッカが働くカフェ(ロゴがスターバックス風)やイーニドがバイトをクビになるシネコン内の飲食店は、無個性なチェーン店そのものだ。モノやサービスが画一的になり、雇用や労働のスタイルも画一的になり、マニュアル通りに動けない人間が排除される世界へのささやかな批判が、様々なシーンの片隅にそっと隠されている。
この映画は、十代の葛藤を単なる自意識の問題として片付けず、矛盾だらけで個性を受け��れない社会にも責任があると言ってくれていた。改めて、監督や制作者たちのティーンエイジャーに対する温かい眼差しを感じた。
ラストシーンをどう解釈するのか
ネタバレになるので詳細は伏せるが、この映画のラストシーンは比喩的で、どう受け止めるのが正解なのか分からない。イーニドの人生に希望の光が差すことはなく、かといって大きな絶望が訪れることもなく、自分を命がけで守ってくれた人の思い出を胸に強く生きることを誓うみたいな展開にもならない。とにかく、分かりやすいメッセージのある終わり方ではないのだ。
(映画館を出た後にエレベーターで乗り合わせた若いカップルも、やはりラストの解釈が難しいという会話をしていた。)
私自身は、このラストを、イーニドが他力本願な自分から卒業することをようやく決意したという意味に捉えている。
これまでのイーニドは、心細くなれば友人のレベッカやジョシュを呼び出し、映画の中盤以降ではシーモアにも絡んでいた。人生に行き詰まれば、誰かを頼って気を紛らわす。偶発的に何かが起こって道が開けないかな、みたいな感覚で生きているような印象だった。 しかし、物語の終盤で、一時はイーニドにとってヒーローだったシーモアが、突然遠のく。レベッカとも既に疎遠になっているイーニド。そして、不思議なラストシーン。イーニドは、私たちに背中を向けている。
イーニドは、自分を導いてくれるヒーローも、どう生きるべきか教えてくれる天使も、どこにもいないということに気付いたのではないだろうか。 人間は最終的には孤独で、自分の人生は自分で切り拓いてゆくしかない。ラストシーンのイーニドからは、彼女が紆余曲折の果てに辿り着いた人生の真理が滲んでいるように思える。
そして、イーニドの後ろ姿は、スクリーンのこちら側にいる私たちに対しても「自分の人生は自分で切り拓いてゆくしかないよ」と語りかけている気がする。どう生きるべきか、映画に教えて貰おうなんて思うなよ。自分で行動して、傷ついたり恥をかいたりしながら、自力で見つけるんだ。
以上が私なりの解釈だが、違う見方もあるのかもしれない。他の人の批評も検索してみたい。
おわりに
Bunkamuraル・シネマでの「ゴーストワールド」上映は明日で終わる。しかし、各地の名画座での上映はまだ続くようだ。これからも沢山の人がイーニドたちに出会うことを想像すると、自然と笑いがこみ上げる。
イーニドの冴えない青春は、観た人の心に何をもたらすのか。
これを読んで少しでも気になった方は、是非スクリーンで、ラストシーンまで見届けてください。
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Event Live 火炎瓶 @川崎 CLUB CITTA'
OA含めて18時半開演だとばかり思い込んでいて間に合わずw FORBIDDEN観れてないですが
鋲さんがこれから色んなとこぶち込んでくから
来いよ
って言ってるとこだけ観た
今日のチッタも思ったより人いっぱい
荷物を預けてフロアに戻ると今年何度も聴いたBGM
①VIRGE
バンドが拡大するタイミングでメンズ動員さんが増えるのあるあるだと思ってるんだけど気合い入ったギャ男さん達の野太い麺コが場を盛り上げていて始まる前からかなり良いムード
とにかくお客さんの声がデカいVIRGE
遼さんが現れ氷のような冷やかな眼差しでフロアを見渡すとお立ち台へ
悲鳴歌い出し3秒でカリスマ性が爆発する歌声と声量 さらにパワーアップしたのでは
新しいベースの方が加入されたので注目したい気持ちはあるんだけどどうしても遼さんに持ってかれる 良くも悪しくもメンバーチェンジ耐性凄い
今日はドラムセットがツーバス バスドラのヘッドにカラーのイラストが入ってる
私が知らない間に出ている新曲達が3曲?挟まれたけど帰ったらすぐ聴かなきゃと思えるヴァージュらしさだった
折り畳みと同時に入るフロアの声とメンバーを呼び叫ぶ声がとてもトッパーと思えない盛り上がりでゾワゾワ ものすごくデカいバンドを見ている気分
ラスト 空に落ちる蛍はサビで遼さんジャンプジャンプとフロアを煽る
最後の"この命を抱いてくれ"を歌っている最中に楽器隊が捌け1人残された遼さんがお立ち台に足を畳んで座り 繰り返す 度々自分の胸をゴツンとマイクで殴る鈍い音を挟みながら
シーンと鎮まり返った会場に響く独唱を最後に幕が閉じた
幕の向こうでコドンと何かが落ちる音がすると
大きな歓声と拍手が沸き起こる
この終わり方何度か観たけどまた鳥肌(笑)
今日のヴァージュかなり良かった
②Chanty
楽器隊板付きで開幕
演奏をバックにステージへ出てきた芥さんが後ろを向いて合図をするとドラムが2打
こちらを向いてマイクの方へ来てから振り返り再び2打 そして2打
火炎瓶 はじめま~す 居場所教えてください と手を挙げさせて1曲目アイシーへと繋ぐ
冤罪ブルースでは下手の方で芥さんと野中さんが向き合って野中さんに声出しをさせる場面も
曲中でテンポが変わると気付いてから聴く冤罪かっこよかったなぁ
でも次の曲 レインドット 初めて聴いたけどなんですかこれはめちゃいいじゃないか
竿帯のコーラスに芥さんのボーカルが入ってく所すごく良かったしそこのドラムもかっこいい もう1回聴きたい サブスクにないからいよいよ音源買うしか
レインドットの途中で芥さん上着を脱いで芥さん二の腕(`⊙ω⊙´)カッ!!
お馴染みの不機嫌 マイクスタンドごと上手下手に移動して歌う芥スタイル 演劇観てるみたいに感じるのはこんな細かなパフォーマンスのせいなのかも
ラストは芥さんがギターを持っておやすみ
間奏部分メンバーのシルエットだけを照らす照明が幻想的で綺麗だった
全員でアウトロを演奏しながら閉幕
③THE MADNA
どの曲だったかな sweet dreamと極彩色かな
ザアザアと同じ進行方向向いて走るタイプのモッシュができてた
無音板付き開幕 白縁サングラスにジャージ姿でお立ち台に立っている涼太さんが喋り出して1曲目 sweet dream
感動さえ誘うコーラスの曲なのに下手を見れば朋さんw目の周りを黒で塗り潰し額に線2本 アオダイショウ(蛇)みたいなのを身体に纏っていてギャグみたいなヴィジュアルなのにずっと見てるとかっこよく見えてくるのはあの顔面だからとしか言いようがない
2023年 楽しかったー?
それは 俺たち タイムリーの漢たちのおかげと言っていいか?
V系って知ってるに負けてらんねぇぞまじで…
これからもずっとこうやって行こうな いいか?
時間なくても割と喋る涼太さん
ラスト極彩色
太嘉志ちゃんのお立ち台にちょこんと腰掛け背中を預ける涼太さんに 太嘉志ちゃんがぼよーんぼよーんておしりで攻撃してて涼太さん歌いながら笑ってた(かわいいしかない世界)
捌ける時にいつもゆっくりみんなに顔を見せてくれる理緒さん 飲み干したペットボトルをお立ち台から投げるその飛距離たるやさすがドラマー
④ザアザア
幕が開くと同時にベースを掻き毟る零夜さんの背中が見えたんだけど何その衣装
今日何着てるのそれ
上手側からフェードインしてきたチェックのジャケットは春さん え え
新衣装??????????
何の衣装なのそれ(混乱)
いつものマイクで叫び散らかすあの表情だけど何も聞こえてこない
マイク入ってない? スタッフさんに知らせるためか袖に向かって中指を立てたりしてしばらく闘った後マイクスタンドごと蹴り飛ばした(笑)
そうこうしてる間にセンターに一葵さんがいてザアザア 発表があります
12月3日 ザアザア10周年 Zepp新宿でライブやります
待ってぇ~~~
一旦待ってぇ~…
唐突の新衣装だわマイク入ってないわ色々ありすぎて脳の処理が追いつかないぜ…
なんだって?
https://x.com/xaaxaa_official/status/1740708778516025474?s=46&t=uhUsDFLEfL0OfgvCYi4Eog
ちょっと後で考えるわ
バッドスタート
零夜さんのベースは今日も白 いにしえのイエローハウス感満載でチェッカーズ味も覚える新鮮な姿を追うのに必死であっという間に終わってしまった
起きてるー?ねてんのー?寝てんのかー?っていうからスリーパーかと思えば
全員左寄れ
攻撃的な左寄せw 今日はフロアへ降りずに蜘蛛の糸
まだセトリ出てないから全部書くと忘年会しよーぜー アル中
私の名前をちゃんと呼んでよ 一旦演奏が止まり一葵さんの泣き叫び嗚咽するパフォーマンスに呼吸が止まった 怖くなるほど物語に入っていくからイベントライブの中のほんの1曲でも映画観た後みたいに影響されてしまう
この後少しMC 上手袖からアレが出てきた(アコギ)
ラストと言って演奏されたのは雪時計 あーー
あーーーーもうなんていうか来年も全部行きます(あっさり)
お時間あとどのくらい残ってますかー?
袖から「あと2分40秒残ってます」
感電、けがのおそれがあります。
演奏始まってしばらくして時間来たら幕閉めちゃってください
最初の走らされる所でほんとに幕が閉まりはじめて(笑)(笑)右往左往するフロアを残し閉幕
一葵さんだけ幕の前に少し残ってたけど演奏が止まると楽しかった ありがとって手を振って幕の中に消えて行きました
演奏しながら幕が閉まるとか何本見てもレポのネタが耐えない
⑤RAZOR
SEを取り定番のメンバー登場
大きなバンドロゴフラッグをバックに
ドラムセットがゴールドのグリッター仕様でRAZORらしい
タイムリーで最も頭が狂っているのはやはりどう考えても猟牙氏 サイドバックのブロンドヘアにグラサンでステージへ
KNOT INVISIBLEで準備運動させGRAVITY EMOTIONへ 初めて聴いたけど近年のRAZORらしい綺麗で激しいかっこいい曲だった
すぐさまグラサンを外し ペットボトルの水を頭から被り手ぐしで髪をオールバックに
ドラム台から黒いハットを拾って被ると
今日の出演バンドを紹介(VIRGE忘れててお客さんからVIRGE…VIRGEって言われて)VIRGEの話始めたけど忘れてたわけじゃなくてって言い訳してた
LIQUID VAIN が聴けるとは…!ブレイクダウンのとこのドラム 哲也さん以上の音では聴けないだろうと思ってたけどNIKKYさん華もあるし技術もあるしすごいねーw めっちゃかっこよかったぁ
続いて瓦礫 猟牙さんの歌唱力も上がってる気がした いい曲
俺たちの ラブソングがあるんですけど と 真ん中割れろのジェスチャー !!!!!!
埋葬
これほどバンギャの欲求を叶えてくれる曲はないぐらい暴れ方が最高
WoDのあとのもみくちゃモッシュが大好物なのでめちゃくちゃ発散できた(フロアに降りてた猟牙氏もモッシュに混じってたw)
最近あんまり見ないけどみんなこのモッシュ取り入れてくれよw
埋葬終わったのにまた真ん中割れろのジェスチャーw そして再びフロアへ降りる猟牙氏
センターの床に仰向けに寝転んで楽しかったー!と言うと立ち上がり ロックな感じで歩いてってフロア下手側後方の扉から出てった(そっから帰るのか)
今日のセトリは一番好きだった時代のRAZORをもう一度観るような流れで燃えた
楽しかった~楽しかったよ~
ブログ書きたいよ~
でもまだ仕事納まってなくて多分明日も大晦日も4日も出勤するから書けないかも…
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あのクラクションで世界は (1777字)
世界の終わりのようなクラクションが鳴り響く。 世界が終わる合図のような、世界を力ずくで終わらせにかかるような、世界そのものの断末魔のような。 あるいは世界の産声のような。 非現実的な音量のクラクション。 その音は確かに世界にひびを入れたのだと思う。 あのクラクションの前後で世界は少し変わってしまった。 私のコートの色はもうちょっと品の良いブラウンだった気がするし、彼女の髪はもう少しゆるやかに波打っていた気がする。 真夜中の都市は明るいけれど、それぞれの光はさっきよりも孤立していた。 結局のところ私たちは一人一人でしかない。 結局のところ。 「結局のところ孤独って何だろう」と私はきいた。 「戦術的撤退。あるいはスパリゾートハワイアンズ」 と彼女は答える。「単なるその言い換えにすぎない」 「孤独が?」 「孤独が」 クラクションが鳴る前の彼女だったら、はたしてそんな言い方をしただろうか。 私の耳には、まださっきの残響がやまない。
二人で信号待ちをしていると、彼女が身じろぎをした。コートを脱ごうとしているのだ。前をはだけると、それだけで白い胸もとがあらわになる。こんなに寒いのに。 「べつに寒くない」 と彼女は言った。「寒がりだなんて思わないで。汗、かいてるんだから」 彼女はコートをすっかり脱いでしまう。黒いビキニ。生々しい水着の女の子は、つめたい夜の都市に驚くほどなじまない。それゆえ彼女のための都市だという言い方すらできそうだった。神話的事実というやつは、たぶんこんな夜に生まれてしまう。 彼女の黒い水着は夜と同化して、彼女の白い肌は光を反射している。まるで水着と体が逆方向に進もうとしているみたいに。 彼女の髪はいつしか黒く、いまや瞳も真っ黒だった。 その部分は夜に少しずつ溶けだしていく。 これは誰だ? さっきまでと同じ女か? 「みんながみんな、桂馬や飛車の動かし方を知っているという前提で世界が進むのには、もううんざりしてるんだ」 と水着の彼女は言った。「一度も将棋の駒にふれることなく死ぬ女だっているというのに」 「まあねえ」 と私は曖昧な返事をする。 「あのさあ」 彼女の目つきが鋭くなった。「歌っても良い?」 べつに良いけど……と私が許可を出す前に彼女は歌い出した。 この夜、彼女が放ったすべての言葉を歌詞にして。 不気味なくらいに陽気なメロディ。鼻にかかった小さな声。一度も将棋の駒にふれることなく死ぬ女だっているというのに。信号の色が変わって、私たちはその色に染まる。 私は桂馬や飛車の動かし方を知っているだろうか。それを学んだことがあっただろうか。そのルールは、あの常識はずれのクラクションが鳴る前と今とで同じだろうか。 彼女の口から漏れる歌の一音一音が、憂鬱なスキャンダルのように私の血液を揺らした。
横断歩道を渡るあいだにも、一歩ごとに彼女が夜の闇に消えそうな気がして、私は怖くなり、思わず彼女の手を取った。そのときに二人の靴が見えた。 私の靴はベージュ。彼女の靴は黒い。 どちらも高いヒールで、体は地面から遠かった。 何もかもがそのせいかもしれない。 彼女は全身にうっすら汗をかいている。手も湿っていて熱い。正確に彼女の吐いたぶんの息だけが白くて、魔法みたいだと思う。彼女の体を私のコートに包んでしまいたいと思う。私もビキニを着ていたら良かったのに。水着の肌に、彼女の汗ばんだ肌をくっつけてみたい。 世界の終わりみたいなクラクションがまた鳴り響いた。 身も凍るような鋭さで、無慈悲なまでにうるさく、絶命しそうなほど長い。 クラクション。 世界が裂けはじめる。裂け目から誰かがのぞいている。暗い目つきの誰か。それは彼女の中身だったものかもしれないし、これから彼女になるもの、かもしれない。 誰でもよかった、 とか、 誰でもいい、 とか、 そういう暴力的な気持ち。 そういう気持ちに飲み込まれそうになる。 頭痛がする。目の奥が痛い。気分が暗い。 彼女はまだ歌い続けている。 「戦術的撤退。あるいはスパリゾートハワイアンズ。日没の残り火。壊滅的な土曜日。溶ける氷の分子挙動。悲惨なユーモア。不協和音のギターリフ」 か細い歌声。陰気なメロディ。 すべてをかき消すようなクラクションの音は、歌の背後でずっと鳴り止まない。古いクラブミュージックの記憶のように。 私は彼女から手を離して、自分の両耳をふさいだ。 彼女には何も聞こえていないみたいだ。
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帰ってきて、3時間くらい昼寝をした。いつぶりだろう。
01.今年の夏以降、なんだか忙しくて気持ちが休まらなかった。 春は少しの間休職していたので、時間の進みが比較的ゆっくりだった。 学生の頃のように短髪を10回も脱色して、賑やかな色の服を着て、肌の一部が見える格好で外に出て、友達と遊んだ。 その写真を、普段は通知に反応することさえしないのだが、家族のライングループに一枚投稿した。飼い猫が亡くなって以来、二度目の帰省の時に父から「大阪のおばちゃんみたい」と言われた。 わざわざ言わなくてもいいのに伝えてくるのは、多少なり自分たちの望んだ娘の姿ではないと思ったこととか、20代も終わるという年の��が何をしているのかと感じたこととか、 そういうのを匂わせた軽めの侮蔑、軽口に見せかけた非難、雑談の中で不意にダメージを与えることで、言われた側に爪痕を残し、言う側の意図を暗黙のうちに汲み取らせようという魂胆が垣間見える…ような気がした。 ここでふと我に帰る。そこまで考えてしまうのは少し極端だ、と自分で気がつけるようになった。
初手でここまでマイナスに受け取ってしまうのは、私の問題もあるのだろう。私は私の自我が非常に不安定な存在であることは知っている。
02.年末になると、会社からビジネス手帳が配られるのだが、これまで活用法が見出せずにほぼ白紙で毎年捨てていた。 もったいないと思いつつも、書くことが特にないし、日々の予定は私の場合は流動的なものが多いので、iPhoneのカレンダーで管理する方がよかった。今年の手帳もその例に漏れない。
ただ、来年からは自炊の献立を決めておいたり、毎月末に書く振り返りカード(100均のカードカレンダーの裏面に殴り書きしている)を貼付したり、好きなyoutubeチャンネルやドラマ、漫画をメモしたりするのに使う予定だ。 あわよくば資格や趣味の勉強もこの手帳で管理したい。自分なりにフォーマットを整えて(ボールペンの手書きで殴り書きだが)今月半ばから試験運用している。
私は非常に気分屋なので、少しでも手間に感じたらいくらでも途中で放棄してしまう。 しばらく経って再開することがあったとしても、来年末にまたほぼ白紙の手帳を捨てている可能性は高い。 なので、今年末から慣らしておこうという計画だ。うまく行くかは神のみぞ知る。
03.インターネットとの付き合い方をこれまでも何度か考えるタイミングがあり、snsもアカウントやコンテンツ(文章など)を作ってみてはしばらくして消すことを繰り返してきた。 先日、その中でも比較的長く残していたtwitterのアカウントを完全に削除した。とはいえ、データがweb上に現れなくなるのは30日後らしい。
Xになってからほぼ更新していなかったのでtwitterと書かせてもらうが、景色や特定のオブジェクトの写真を加工して載せたり、よく閲覧していたサブカル文系根暗ツイッタラーに影響を受けたツイートを投稿していた。
割とtwitterの中だけで育った交流もあったので、以前消そうとした時は後ろ髪を引かれる気持ちがあり、結局消せなかった。 ここ一年ほどは、たまにログインはするが投稿は更新しないという中途半端な形に落ち着いていた。当時から、仲良くなった人とは実際に会ってお茶をしたり、 ブラウザに依存しない他のアプリケーションで繋がったりしていたし、リア友にはtwitterがなくても繋がれるし、という状況は変わっていない。 決め手になったのは広告やおすすめ機能、全く自分と関連のないインフルエンサーの引用リツイートに埋め尽くされたタイムラインの不愉快さだった。 ネットで拡張された現実の先に、ただ誇張されただけの歪んだ現実があるという地獄のループをひたすら体感させられるような。
他の人たちと同じように、10年前に存在したような静かなインターネット(それでいて物理的距離を跳び越えた、新しい刺激をもらえる場所)を探し、行き着いた場所でアカウントを作成すると、前述した旧サブカル文系根暗ツイッタラーたちが軒並み同じ場所に鞍替えしていて、少し可笑しかった。 ネット越しの文章でも、やはり長く接しているとアンテナの張り方が似るものだと思った。
04.長いこと疑問だったが、自炊の面倒臭さと外食の手軽さを天秤にかけた時に、自炊の方が節約になるという人は少なくとも食費についてきちんと記録し、管理しているのだろう。 高校受験で燃え尽きて、その時鍛えた義務教育的教養の貯金の切り崩しで大学に来てしまった私は、すっかり負の意味でキャンパスデビューしてしまっていた。
活字があればとりあえず最後まで読んでしまうような子供だったのが、長い文章が読めない。 短文もインクの染みを追うだけのような感じで、意味が把握できない。数字はもともと苦手意識があったので尚更。 地図も、観察も、実験も、買い物も、人との会話でさえも、とにかく全ての情報を遮断したかった。事実拒否するような言動をしていたと思う。(当時周囲にいた人については申し訳なかった)
何度も書いてきたきたことだが、私は学校に行かなかった。 昼間はバイトの時間まで、布団を敷いて寝巻きのま���、自室の天井を見つめ続けた。 幼い頃、博物館や図鑑や論文のようなアカデミックな要素に憧れていたのをふと思い出しては、泣いた。 燃え尽きで志望校などなかったとはいえ、実際に今大学という場に所属できているのに、目の前に大規模な図書館やいつでもアクセスできる論文の山があるのに、私はそれらに近づくこともせず、8年もの間天井を眺め続けた。
その間に、字を読み書きするのが嫌ではなくなるとかのレベルで状況の改善もあった。 ただ、私にとって自分が本来の興味関心に沿った行動をとることができるまでに、8年以上の歳月がかかることは完全に予想外だった。 数年耐えれば治ると信じていたから。
社会に出て数年が過ぎ、自分の環境を自分の働いた給与によってコントロールできるようになってから、突然蓋が開いたかのような変化が見られて驚いた。 一人暮らしは9年目を迎えた。 社会人で食費を何も考えずに出せるようになると、準備の時間や水道代、ガス代、材料費、設備の初期投資がかかる自炊について、本当にこれは節約になるのか疑問が湧いた。(我ながら平和ボケしていたと思う)
特に一軒家を借りて住んでいるので、マンションの一室と違い、自炊ができる環境は最初から整っていない。 そこからお金をかけて揃えるとなると、考えることも多い。 まぁ数年経てばそこそこ設備も揃っているのだが、これは一旦確かめてみようということで、一週間の献立を立てて、実際に作った分で食費を計算してみることにした。
案の定一週間で二千円以下という結果だった。 外食であれば私は喫煙できるカフェとかに行くので、ランチだけで1,000円近くすることもある。そう考えると、当然自炊の環境は整えて正解だったということになる。 生活にかかるお金を管理することを、燃え尽き症の名残もあって長年避けてきたが、ちょっと来年からはがんばってみることにする。
05.海が近い町は良い。平野の緩急のない、ただ茫と広がる風景よりも好きだ。 埋立地なので風が強く吹き、冬は寒い。日差しは均等にならされたアスファルトに照り付けて眩しい。 空はどこから見ても開けていて、月がよく見える。大人になってからの記憶では、色や感触が鮮やかだ。 幼い頃の記憶は、まるで字幕すらない白黒映画のようで、情緒はあるのだが、断片的ゆえに淡白で、内容がよくわからない。
これまでの時間、自我の在り方と、これからの時間、自我の在り方を同居させることは非常に難しくて、たまに悩む。 同じ人間が体験しているとしても、これまでとこれからをいつまでも延長線上のように考えておくことはできない。あまりにも違い過ぎて。
なので、新しく生まれていく自我と生きていくことを選択することにした。 そうしてゆくと自分で自覚することが、いまだに襲われる自死への羨望を遠ざけ、生活を喜劇と設定しなくても、自然体で続けていくことに繋がると信じている。
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公共マップ「夢への招待状」での話(無常さんとホセさんを一緒に写した写真を持っていないのでイメージ画像は公式のこの動画で代用とします)。
暗い。この小説の一部を漫画で描いていたので今回は挿絵として使ってみた。
【設定】
白黒無常:来世を迎えても過去のしがらみからは逃れられなかった。
雨と共に死亡した二人を元に作られた。謝必安と范無咎、二人の魂が入っていようがいまいが(本人達であろうとなかろうと)白黒無常には世界五分前仮説のように生前の頃の記憶が植わっている、かつ客観的に見て生前とは別の姿となっているのである意味、来世の姿としてここに「生きて」いる。
しかし新生を始めてもなおすれ違いや雷雨、再会を願う念の影響からは逃れられていないため二人は離れ離れのまま再会は叶わない。
ホセ:身分を捨ててもその血や過去からは逃れられなかった。
海賊の頃は誰かから平穏を奪わなければならなかった。危険な状況での船上では、たとえ仲間であったとしても問答無用で海に投げ捨てねばならないこともある。
海賊業を抜け出し、海上騎士の名と栄光を背負っても、「特殊任務」と「取引任務」はホセ自身の影だと言わんばかりにどこまでもついて回る。直であろうがなかろうが、かつて決別したはずの海賊の自分と成すことに変わりはなかった。
いくら逃れようとしても、血で手を染める運命からは逃げられなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――
数多もの星々が空一面に広がっている。天の川の白い光は次第に、千にも万にも広がる細い糸のように見え、それはまるで必安の想いと涙が形を伴ったように思えた。吸い込んだ空気はひどく澄んでいて、無咎の胸の空洞を透き通りぬけていくような感覚を覚える。
一体いつになれば必安にまた会える日が来るのだろうか。「また」はあるのだろうか。
「死後の世界、来世はあると思うか。」
無咎が隣のホセを見やると、彼は物珍しげな顔を無咎に向けていた。しかし早々にホセは視線を橋の下に落とした。その視線の先では星が黄色く仄光り、鏡面のように無咎とホセを映す水面が静かに揺れている。
「君たちを見ていると悩むところだが、あるともいえるしないとも言えるというのが私の答えだな。」
その口から出たのは無咎の予想とはどちらともつかない言葉だった。無咎はホセを曖昧さは嫌う質だと捉えていたが、今日は彼も普段と違う心境らしい。
「……。」
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無咎が哲学的な問いを投げかけるとは珍しい。ホセは少しの驚きをもって彼の言葉を受け取った。水面に映る無咎の顔は感傷に浸ったようで、その後ろでは靄のように空の星の白い光が映っている。何となく無咎が考えていることを理解した。
必安と無咎がここにいる以上、死後の世界はあるように思える。あるいは来世だろうか。だが問題はそこではない。「現状を脱して新しい人生を開始することはできるだろうか」という問いに、ホセは自身の経験からして不可能だと答えざるを得なかった。
確かに死者はその生命を終えたあとも別の場所で生きているという話は何度も耳にした。しかしそういった類の話には必ず「死人は生者のように生き生きと暮らしているわけではない」「命を終えたときの苦しみが永遠に続く」といった但し書きが続く。
死んでこそいないにせよ、ホセにはこのような類の話は他人事のように思えなかった。海賊から手を引こうにも、バーデン家の人間である事実からは逃れられない。
たとえば海に仲間を投げ入れるときの胸騒ぎ。彼らが生を諦めていないとしても、重石と共に帆布で彼らを縛り上げ、その目から光を奪って海に投げ捨てねばならない。「助けてくれ」「やめてくれ」「あぁ神よ……」彼らの呻き声が今でも耳にこびりついて離れない。あの弱弱しくも冷たく鋭い視線は浴びたいものではない。それはホセの胸を鋭く抉り、赫々とした悪魔の血を暴くようだった。そんな中、目の前の仲間が海の底で永遠に抱き続けるであろう痛苦も想像したくなかった。
知りたくもなかった。
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「『死んだら全てのしがらみから逃れられる』、『体を捨ててどこか美しい夢境へと旅立てられる』――そんな都合のいい話はない。私がこの手で海に投げた者たちも……きっとデイヴィー・ジョーンズのロッカーで生きているかのように死んでいるだろう。」
義手で右の前���を握るように覆いながら語るホセの表情は固く、まっすぐに水面に注がれている。その神妙な面持ちはまるで裁きを目前にした罪人のようだ。しかし何度その罪から逃れようとも、畢竟自らの成すことは変わらない。恐らくそういう星の下に生まれてしまったのだ。
「そして――」
ホセは手にしていた星の欠片を爪弾いた。星は音を立てて水に飛び込んだかと思うと、水の暗闇にその光を奪われながら沈んでいった。水面に残された波紋は星空ごと映った像を揺らしている。
かつて言われたことを思い出す。
「犠牲は必要だ。」
「後戻りできないほどの外傷や後遺症を負った者は海に投げ入れねばならない。」
「試した薬のすべてに効き目がない。」
波紋は次第に薄く広がってついぞ見えなくなり、そこには変わらず二人の姿だけが残った。
新たな生を受けても、身分が変わっても、過去の一切を断つことはできない――これが真理なのだろう。ならば船乗りの運命に則り、いつか自身がそうしたように誰かの手によって海に沈められることになるのだろう。光一つ届かない、深く冷たい海の底。生前同様、死の先でもそこで罪を抱え続けるのだ。
「いずれ私もそうなる。」
「都合のいい話はない」「生きているかのように死んでいる」。現に謝必安に会えないまま、無咎は不変の過去に縛られながら過ごす非日常を思い返した。季節はあれど己に変化は訪れない。
「お前の言う海底や文字通りの死後の世界、来世は此処にあるのかもしれないな。繰り返す日々に変化はない。」
無咎の言葉と共に、どこからか吹いたゆるやかな風がホセの髪を静かに揺らした。
「そうだな。いつかではなく今、一等航海士は死んでいる。」
二人の姿を映す水面は凪いでいた。
――――――――――――――――――――――――――――――
ホセは不屈の精神を持っている(?)のできっとこんなふうに諦観に染まることはないと思う。でも見たかったので書いた。
たとえ一等航海士としてのホセが死んでしまっていても、異国の地で非業の死を遂げた二人が死んでしまっていたとしても、みんなどうにか抜け道を見出して生きてほしい。お戚みたいに、これまでのすべてを捨ててでもしないと新生は迎えられないということに気付けば、そしてそれを受け入れられれば……過去のしがらみを振り切ることはとても難しいけれど、それができればホセは病の治療は現時点では難しいけれど少なくとも生まれに囚われずにいられるし、無常もイベントの月日と共にと同じように明るい未来に進んでいけると思うんだ。……そうであってほしい。
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基本的に、髪の毛は自分で染めて、
時々、美容院へ行く私。
今回は、自分でブリーチのリタッチ。
いわゆる伸びたところだけをブリーチするということね。
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お客様では、絶対やりたくない仕事🤭
だって、きれいな仕上がりにならないだもん。
長年の経験の結果、先が見えてるの。
私の髪の毛、ご覧の通り、
ツートーンです💦
中間から毛先までは、以前のブリーチや、その上から、かぶせたカラーのくすみ感が残っていて
反対に、てっぺんの根本から中間までは、ただ、ブリーチしただけ、
いわゆる脱色しただけ、
もっとハッキリ言うと昔のヤンキー色です😂
つ、つらい…。
・
この上から、他のカラーをかぶせると
この境目がなんとなーく、ボケてくれます。
お客様では、本当にやりたくない仕事🤭
・
今は、ブリーチというか、ハイトーンを望む方が多いこのご時世。
ブリーチして、カラーをかぶせる。
インスタを見てても
みんな、いい感じ〜に載せてるけどね、こういう私みたいなリタッチの方のは、載ってないんです。
なぜだか、分かりますか?
やらないからですよ、
うまくやれないからです。
・
1回目のブリーチは、いいんです。
誰もがきれいに仕上がります。
けど、2回目から、思うようにいきません。
その上、料金と時間が倍かかります。
そこまでして、たくさん料金をかけれる方には、希望に応じますが、
果たして、これが何日、日持ちするのか、アフターケアーはどうしたらいいか?…など話してるうちに………。
辛くなってきます。
・
だから、私はお客様には正直に
目の前のことだけでなく、
3か月後、半年後、1年後、
こうなりますと、話します。
インスタの一時的な情報や画像に流されないでくださいね😊
⚠これ↑、大事!
・
白髪ぼかしやらなんやらも、
インスタ情報のみで、いいイメージをお持ちの方が、たくさんいらっしゃいますが…
半年後を想像すると、結局、
白髪染めをしていることが分かります。
一時的な理想で、
はい!そうしましょう!とは 言わないのが私の仕事です。
ポリシーです。
・
��んな私のお店にご来店してくださる、お客様に、ありがとうございますと、感謝しています✨
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出会いも別れも、人の御業。/一度あるなら二度はある。
髪を切ったから、もしかしたら気付かないかもしれない。 ──なんてのは、どうやら杞憂だったらしい。 大学のキャンバスをほっつき歩いていたさなか。 前方から向かってきた学生が、落ちた何かを拾おうとして、派手にリュックの中身をひっくり返した。屈んだ際に、ドザザザザザと。正に一瞬。まるで漫画の様なぶちまけっぷりに、夏油は思わず吹き出した。 「ぶはっ」 「……おい」 目の前の白い後頭部から低い声が響く。盛大に笑ってしまった手前、手伝う気持ちで彼の足元へと屈む。 「いや、笑ってしまってすまない」 彼が拾おうとした指の先を追えば、学生証が目に入った。案の定「五条悟」と記載されていて、やっぱりねと思う。まあこんなつむじの根元から真っ白い髪の持ち主なんてあの旧友くらいだろう。それには触れずに、夏油は含み笑いは堪え切れないまま、リュックから落とされた書類やノートを拾い集めた。 「これで全部かな」 はいどうぞ、と落とし主へ手渡す。落とし主──五条は少々仏頂面だったが、受け取りながら「どーも」と会釈した。 覗いたサングラスの瞳からは、どこまでも他人行儀な色が見える。髪の毛が耳に掛かるくらいまでしかない今の夏油を見ても、からかいの言葉ひとつ飛び出やしない。どうやら本当に、目の前の友人は自分のことを覚えていない様だ。そのことに、夏油は正直、ほっとした。 袂を別ったやつのことなんか忘れて、しあわせになればよかったのに。 夢幻に思われた空港での邂逅で、思っていても口には出さなかった、ひとつの本音。 告げるべき時は今だろう。 「いいえ、良いキャンバスライフを」 淡いさよならを滲ませて。目の前の親友だった男へ、心の底から祝いの言葉を掛ける。 返事を待たずに、夏油はその場を後にした。 縁があればまた袖触れ合うこともあるかもしれない。もしかしたら、今生これきりかもしれない。 それでもよかった。 この世に生を受けて早十八年。物心ついた頃にはいわゆる「前世」とやらを憶えていた夏油少年は、自分が持ち得るツールを使って、ありとあらゆる可能性を調べた。図書館やネットで年間行方不明者や都市伝説系な噂、かつて高専が存在した地域など。調べて、調べて、そしてそのすべてが空振りに終わった時、やっと心から実感したのだ。 どうやらこの世に、呪いや呪霊なんてものは無いらしい。 何より、今の夏油にはもう呪霊など見えなかった。幽霊だって一度も気配すら感じたことは無い。つまり自分は、あの頃「猿」と呼んだ人々と同じ存在になったということで。 そのことに気付いても、夏油は特に何も感じなかった。ただ、そうなのかと腑に落ちただけ。 結局のところ、あの環境から完全に脱却してしまえばそんなものだ。そんなものに自分は拘って、己と他者の命を賭した。 かつての行動に後悔は無い。しない、と言った方が正しいか。例え他人から見ればどれだけ無駄で無意味な行いだろうと、あの頃の夏油には必要だった。自身が捨て、篩にかけ、屠った者たちを無駄にしない為にも、果たさなければならない大儀だった。けれど、呪いなんてものが存在しない今生でまで、引き摺るほどの禍根もまた、無か���た。 ありはしないのだと、今なら言える。 なら、もうそれでよかった。 呪霊がいない世界。術師が──仲間が、いたずらに命を奪われない世界。非術師を憎まなくてもいい世界。それが叶ったのだから。 感傷なんてものは、全部全部、あの頃に置いていけばいい。 君もね。
天気は快晴。 まるで親友の瞳の様に鮮やかな青さが広がる空を、夏油はただただ、満足そうに見上げた。 ──なんて、殊勝なことを思ったものだが。 「そういや傑、髪伸ばしてんの?」 「今結構長めだよな」五条が夏油の首筋から肩口あたりを目掛けて、無造作に手を突っ込む。するする。指で横髪を梳いたと思ったら、そのまま五条の腕は反対側の肩へと着地した。抱き寄せられるまま、「こら、悟」と小さくぼやく。そこで、ふと。ぼさついた髪の毛を整えながら、夏油はちょっと、はっとした。 ──そういえば、昔は悟に髪を触らせたことなんて無かったか。 ここに来て初めてのことも、どうやらまだまだあるらしい。 正直な話、今となっては五条の記憶があろうと無かろうと関係なかったな、とは思っている。自分たちは結局また出会い、友人になった。あの頃の境遇や環境以外でも、どうやらちゃんと友誼を結べる下地があったらしい。 特に今生なんて最近の記憶だというのに、どうやって仲良くなったのかがさっぱり思い出せない。ただ、目が合って、会話して、一緒にいる様になった。それだけだ。本当に、ただそれだけだった。 けれど。 それだけ、ってのがきっと、人の出会いには大事なのだろう。 「実は前にもロングだった時があってね。久し振りに伸ばそうかと」 「へえ、い���?」 五条の問いに、夏油はふっと閃く。 もしも髪があの頃くらいまで伸びて、五条が思い出したりしたら。その時はばっさり切ってやろうか。何なら坊主でもいいかもしれない。 それだってきっと、私たちふたりにとっては、この世で初めての経験だろうから。 なんてね。 己の詮無い思い付きに、夏油はこっそりと笑う。 「もう随分昔の話だよ」 「あ、ああ~……」 クッソ情けない声に惹かれて、五条は思わず振り返った。 目にした先には、床に一列で並び散らばったノートと、それを前に途方へ暮れている、一人の青年。耳にかぶる様切り揃えられたサイドと、同じくらいの長さで揃えられた、ワンレンの前髪。黒いカーテンみたいなそこから除く男の顔を認めて、五条はちょっと目を見張った。いつぞやに自分がぶちまけた落とし物を拾う際、手伝ってくれた人物だったからだ。 何となく、足をノートの先頭列へと向ける。 膝をついて下から順繰りに拾い上げてやれば、目の前の男が「あっ」と声を上げた。 「こないだの」 「人のこと笑うからじゃね、この惨状」 人を呪わば何とやらだ。軽く鼻で笑ってやれば、青年はバツが悪そうに眉尻を下げた。「違いない」 そこからは無駄口を叩かず、青年と両端からせっせとノートを積み上げた。お互い半分ほど拾い上げたところで、「ほらよ」と元通りに重ねてやれば、彼は小さく頭を垂れる。長めの前髪がさらりと揺れた。 「ありがとう、おかげで助かったよ」 「別に、先に施し受けたのは俺だし」 「お礼と言っちゃなんだけど、学食でもおごろうか?」 ふいの誘いに、五条は手許のノートに目を配る。 「オマエ、それどっかの教授のとこに持ってかなきゃじゃねえの?」 「お腹が空いて力が出ないんだよね。どうせ急ぎのものでもないし、大丈夫大丈夫」 情けないアンパンマンみたいなことを言いながら、ほらこっち、と立ち上がった青年が顎で進路を指し示す。 ちょうど学食の入り口前で立ち往生していた手前、誘導されてしまえばついつい足がつられてしまい。あれよあれよと流された先。手馴れた様子で角席のソファーと椅子へノートの山を半分ずつ座らせる男に、コイツ絶対初犯じゃないなと五条は悟った。 「オマエ、まさかこれ目当てでそいつ引き受けたの?」 「情けは人の為ならずってことさ」 「調子の良いこって」 席取りを終えた青年に、そのままのこのこと付いて行く。二台の食券は程よく空いていた為、そう待たずに五条たちの番が回ってきた。 「何でも頼むといいよ。今の私はバイト代入って小金持ちだから」 コガネモチ? とやらはよく判らなかったが、ならばと五条は遠慮せずに、自分の食べたいもののボタンを押す。ピッ。ペッ。吐き出された食券を見て、男がしみじみと呟いた。 「この食べ合わせっておいしいの?」 「知らん。腹に入れば同じだろ」 「君にはぜひ、ちょっとは食に対して楽しみを見出すことをおすすめするよ」 「けっ、言ってろ」 そのまま自販機に万札を投入し、青年へと振り返る。 「ん?」 「オマエもなんか買いな」 「俺だけ奢られんのもフェアじゃないだろ」とぼやけば、「律儀だなあ」と青年は顔をくしゃりとさせ、笑った。これまで浮かべていた柔らかい笑みとは違う、どこかあどけない顔だった。何となく、どきりとした様な、しない様な。どうにも納まりが良くない心地に、五条は足先を打ち鳴らす。 ピッ。ペッ。迷いなく青年もボタンを押す。食券に記された料理は蕎麦だった。大学生にしては渋いチョイスだ。 「ホントにそれでいいの?」 「大好物」 ピースまでして喜びを露にした青年は、「ありがとう」と五条に微笑んだ。またしてもどぎまぎしてしまったので、思ったよりも余った釣銭で、ついでに自分用のパフェを買い足しておく。 時間にして幾何か。 利用者も多い学食だけあって、さほど待たずに受け取り口へ料理がサーブされた。各々受け取って席へ戻り、腰を落ちつける。鼻先に香ばしい匂いが漂えば、現金なもので、急に空きっ腹を感じ出す。 「いただきます」 「召し上がれ」 「お互い様だろ」 そこからは先ほどまでとは打って変わり、しばらく沈黙が続いた。 食事中に口を開くのは、幼少期から叩きこまれたマナーが染みついている手前、嫌煙しがちだ。だから黙ったまま食を進める青年に、五条は内心で口笛を吹く。厳つい見た目の割に、どうやら行儀は良い様だ。 強引な様で柔和。危うげな雰囲気の割に律儀。距離感が近い様で、こちらに踏み込み過ぎない。総括すれば、変なヤツ。 だからだろうか。 ふたりとも食べ終わったタイミングで、五条にしては珍しく、自分から相手に切り出した。 「そういやオマエ、名前は?」 一瞬とぼけた顔をしたのち、「ああ」と青年が口を開く。 「夏油だよ。夏油傑」 「あん? どういう字?」 漢字がパっと出て来なかった為問い返せば、夏の油に傑作のケツ、と青年──夏油がすべらかに語る。 「そういう君は?」 「あ? ホントに知らねえの?」 言っちゃ悪いが、この大学ではそこそこ有名人な自覚はある。百九十はある巨体に、白髪碧眼。見た目だけで十分噂される要素があった。だからこそ、思わず胡乱な眼差しを返したのだが。 「友達になりたいんなら、ちゃんと本人の口から知りたいだろ」 「……何だそりゃ」 「礼儀だよ、礼儀」 逆にじとっと見つめ返されて、五条は思わず息を呑む。まさかこの歳で友達云々を説かれるとは。いや、その前にダチになんのってこういう流れだっけ? 生憎常時つるむ様な相手がいなかった為、こんなもんなのかどうなのかすら見当がつかない。 よく判らない混乱を抱えて促されるまま、ぽつり。自身の名前を口走る。 「……五条悟」 「漢字は?」 「五条橋に、悟りを開くのサトル」 「なるほど、うん、想像通り」 「やっぱオマエ知ってんじゃねえか!」 そんなことはないさ、なんて胡散臭い顔で夏油が笑う。腹は立つが、正直どこかむず痒いのも確かで。 苛立ち半分、照れ隠し半分の中で、ふと。五条は気になっていたことを思い出す。 「じゃあ友達ついでに聞くんだけど、コガネモチって何?」 「さては君、普通のお金持ちだろ」 しょっぱいものを見た様な夏油の顔に、今度は五条が爆笑した。 一生の親友と二度目ましてになる、今日この良き日。 俗にいう、友達記念日というやつである。
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月夜のせいではなく(R18)
人の子が林檎をかじるように。 ヴァンパイアが血を啜るように。
「愛してる」
綺麗な夜にそうささやくのは、彼にとって自然なことだった。 後ろめたくはない。だってこれは、“その先”の世界へと進むための、合言葉のようなものだ。 この言葉は200年経っても腐るということがない。 指先を唇に持っていきながら、許しを請うように上目遣いを送るアスタリオンがこの言葉をかければ、哀れな標的はみんな彼をせがむ。 青白い肌は、いくら重なってもまるで火照るということを知らないのに。
「詐欺師の言葉はいらないわ」
タヴはそう言って、アスタリオンの手をそっと離れた。 不意の展開にまばたきしていると、彼女の顔がさっと冷え切っていくのがわかった。 さっきまで親密な雰囲気だったのに、今は触れれば弾けるような緊張感を纏っている。
「詐欺師? ひどいじゃないか、一夜の感動をともにする相手に対して、これ以上ふさわしい言葉はないというのに」
お決まりのルーティーンに持っていこうとして失敗した吸血鬼は、小さな焦りを知られないように狡猾な微笑をすうっと浮かべた。 驚くことに、アスタリオンはこうなっても勝利をもぎとる自信があった。 数多ある口説き文句のなかで、たまたまお気に召さない言葉があったというだけだ。 万人受けするはずの魔法の言葉も、あくまで“この女”には効かなかったというだけで――。
「自分の言葉に価値があると思ってるのね」
黒い髪の垂れた顔は、まるでおめでたい、と言わんばかりに目を細める。 いったい、それの何が悪い? と言わんばかりにアスタリオンも視線を返す。
「お前にもほしいものぐらいあるんじゃないのか? 自由、快楽、希望……もしくは、優しく抱いてくれる恋人とか。そのどれかひとつぐらい俺が叶えてやるって言ってるのに。プライドが高いのは好みだがあんまり強情だと目の前の幸せを逃すぞ」
相手は表情ひとつ変えずゴブリンの酒樽にワイヴァーンの毒を仕込む女だが、感情がないわけではないのを知っていた。 さきごろ、事実上は森を救ったものの、ともに英雄扱いは肌に合わないアスタリオンと彼女は気の良い仲間たちにすべてを押しつけ、ふたりで夜を明かした。 大量の敵を魔法の炎で焼き払った余韻か、あの晩の彼女は昂っていて、とても凶暴だった。その野性的な手触りをアスタリオンはよく覚えている。 一度では忘れられないと、そう感じて逢引きに納得してくれたと信じていたのに。
「――私がほしいのはね」
突然、月が雲に翳るように、アスタリオンの唇は奪われた。 あまりの脈絡のなさに息ができない。 女魔術師は細い見た目にそぐわない強引な力で男を抱きすくめると、舌で唇をこじ開け、長い犬歯まであっという間に辿り着く。 なんの遊びもない、大胆不敵な���ス。 見た目はエルフだが、その迫り方はまるでオークだ。 だが、アスタリオンが驚いたのは一瞬だけ。なまめかしい舌の感触に喉奥が仔猫のように鳴るのがわかる。 なんだ、結局ほしがるんじゃないのか。 つまり彼女ですら定石通りでしかないと察して、吸血鬼は口の端に銀の糸を垂らしてほくそ笑んだ。 だが、そのチープなところが一番いとおしいとさえ思う。 逆にいえばそれ以外にアスタリオンの望むものはない。 平らな草の上に自分から寝転がり、女の身体を抱え上げる。 夜の静寂にしばらく息を交わす音と、舌のまじりあう音だけが響く。
「………ッは」
不意に離れた彼女を目で追う。 濡れた唇が光って、月に照らされた瞳がかがやいている。 それを美しいと感じると同時に、アスタリオンは止まったはずの心臓がナイフで傷をつけられたようにかすかな畏怖に震えるのがわかった。 闇を垂らしたような黒い髪を揺らし、タヴは微笑みを浮かべると、腰に回ったアスタリオンの片手をとって、指先に口づける。
「私がほしいのは、本物だけよ」
月夜を背負うには、この女の微笑みは鋭すぎる。 我ながらなんて皮肉だろうと自嘲して、アスタリオンはうっすらと目を細めた。
「……もったいつけたわりに、随分と素朴なことを言うじゃないか」 その恐ろしいほどの美貌とは裏腹に、タヴの求めるところは単純でしかない。 本物の愛がほしいだなんて、アスタリオンの覚えている限り200年前の処女でももっと背伸びした言葉を使っていただろう。 うすら恐ろしい笑みが似合う女魔術師様が、意外とかわいいところもあるんじゃないか。
「俺に言わせれば、お前は高望みだな。いまどきはセンチメンタルといってもいい。身体は俺みたいな軽い男をほしがっているのに、純粋な気持ちまでよこせとはびっくりだ。早く田舎に帰って、初恋を捧げた幼馴染みの男と幸せな結婚式をあげたほうがいいぞ」
同情まじりのジョークを告げても、女はくすりともせず、じっとアスタリオンを見つめている。 見つめられすぎて顔に穴が開きそうだと思った。それぐらいタヴの視線は弛みがなく、まっすぐにアスタリオンを見据えている。 腹をすかした狼に見つめられている気分だ。 このままでは場が持たないと感じ、アスタリオンは両腕をタヴの肩に巻きつけると、今度は自分からキスをねだる。 女の温かい舌に積極的に自分の舌を合わせ、彼女のほうから襲いたくなるように鼻にかかった吐息をこぼしながら導いていく。
「……私はお前の口から本物の声が聞きたいわ」
またそれか。 さすがに呆れてため息をつきそうになるが、その瞬間に長い耳の先を噛まれて、アスタリオンは思わず「あ」と声をあげた。 敏感な場所を食まれて、甘い戦慄が感覚を焼く。
「今のは演技?」
「……ふむ、どっちか当ててみるといい。次は反対の耳で」
「わかったわ」
女は言う通りにした。アスタリオンは先ほどよりもわざとらしく喘いでみせる。
「すごい! 上手じゃないか」
「……どうやらふざけているみたいね」
無表情の女が苛立っているのを見て、アスタリオンは愉快な気分だった。 大体、こういう夜に、言葉の裏の読み合いなんてするもんじゃない。 その向こうが空虚にしか続いていないことは、この世の誰もが知っている。 吸血鬼が鏡を覗き込んでも、そこに誰も映らないように。 アスタリオンはキスや愛撫を受けるたび、わざと甘えた声を出してはくすくすと笑いだす。それをタヴは冷たい視線で見ていたが、互いにゆっくりと時間をかけながら服を脱がせ合っていた。
「……?」
アスタリオンが女の細い腰からズボンを下ろそうと手を伸ばしたとき、違和感に気づいた。 女の股間にふくらみがある。しかも、温かい。 指先でするするとその輪郭を確かめるアスタリオンに、タヴは微笑み、自分から腰を上げてズボンを下ろしていく。
「……それはいったいどうした?」
タヴの黒い炎のような[[rb:陰毛 > ヘア]]のなかに、男の象徴が半立ちになっている。 前に見たときはこんなものなどなかったはずだが……。アスタリオンが疑問を込めて訊ねると、タヴは少し得意げに目を細めた。
「面白い呪文書を見つけたから、自分で試したのよ」
黒く長い髪に、豊かな胸と細い腰。魅力的な女らしいパーツが一通り揃った身体に男の性器を生やした彼女は、まるで両性具有の神の像のように堂々としていた。生まれたときからそれを持っていたような不思議な自然さがある。 魔法とはここまで万能だったのか、と呆れたような感心を抱きつつ、アスタリオンは彼女の股間にあるものをしげしげと眺める。
「……触ってみても?」
「かまわないわ」
了解を得て、右のてのひらでそれを包み込む。 「ほう」と好奇心を隠さずアスタリオンはうなずいた。 すべらかで身の詰まった感触はたしかに本物で、中身を伴わない幻術の類ではないと納得できる。 刺激したらやはり勃起するんだろうか、などと想像を巡らせて触れていると、ふいに顎先を持ち上げられて上からキスされた。
「今夜はこれを使ってお前を抱くわ」
タヴはそう言って、己の半身をアスタリオンの股間に近づけた。 まだ半分柔らかいものが自分のそれと重ねられる。大きさもほとんど変わらないから、双子のようだ。
「まるで新しい玩具を使いたくてたまらない子どもだな」
「遊び相手になってくれるんでしょう?」
「まあ、そうだな……」
さすがに股間に一物を生やした女に抱かれるのは初めてだ。 だが、アスタリオンはそこで迷いよりも興味が勝った。 200年を危険な色事に費やしてきてなお、自分に初めての行為があるということが皮肉で愉快だったし、魔法のかかった彼女の身体は魅惑的だと思う。 危険の多い旅路に、彼女を自分の武器で繋ぎとめておけるなら言うこともなしだ。
「いいだろう。一度挿れる側になったら戻れないってことを俺が教えてやる」
「強気だけど大丈夫? 怖くないのかしら」
タヴはわざと心配そうにため息をつくが、それはアスタリオンには失笑もののリアクションだった。 自分の得意な領域に持っていけることを確信したアスタリオンは青白い頬に完璧な微笑みを浮かべてタヴを見上げる。
「俺に怖いものなんてない」
「あら、カザドールも怖くないの?」
「その話は今するな!」
問答も惜しくなったアスタリオンはタヴの唇を奪い、細い腕を強引に自分の肌に導いた。 今までのものより荒いキスにふけりながら、アスタリオンの促すまま女の指先はするすると胸の先端に絡みつき、細かい動きで刺激を加え始める。 すでに知っている快感がちりちりと背筋を這い上がった。 ���うなるともはや予定調和でしかない。
「あぁ……は、あ……」
深いキスに溺れたように瞳を潤ませ、アスタリオンは女にいたぶられる悦びを吐息にしてこぼした。 タヴは合図のように乳首を引っ張ると、舌を動かし、さらに奉仕することを要求してくる。 アスタリオンは従順に応えた。めまいがするほど濃厚な口づけに溺れながら、身体に刻まれる刺激のひとつひとつに翻弄され、切ない喘ぎ声を漏らす。 それらはすばらしい手本のひとつとして数えられるような反応だった。 こうやってアスタリオンは千の夜を生きてきたのだ。 夜の森に派手な水音と男の嬌声が響く。
「あっ! あっ、ああっ、そこだ……もっと……っ」
彼女の指は後ろの窄まりに潤滑液を塗り込めている真っ最中で、獣のように四つん這いになったアスタリオンは敏感な場所を穿られる感覚のままにあられもない声をあげていた。 夜闇でも淡くかがやくような白い背を揺らし、なまめかしく息を切らす様はどう見ても快楽に溺れているようにしか見えない。 だが、今まで多くの者たちを楽しませてきた彼の痴態を見ても、タヴの顔は冷静なままだった。
「私を抱いたときも、そうやって上の空だったわね」
「っき、……急に、なにを、言って………う"あッ!」
現にアスタリオンは返事も覚束ないのに。 彼女の指は執拗に男の秘所を搔き乱し、容赦なく追い立ててくる。 アスタリオンは素直にその感覚に従っているに過ぎないのに、女はお気に召さないらしい。
「ア、ハッ……心外だな……俺はこんなに昂ってる、のに……、っ!」
地面に爪を立て、押し寄せる快楽に奥歯を噛み締める。 タヴはいったい何が気に食わないのかわからない。こんなに感じているところを見せているのに、なぜ納得しないのだろう。 実際のタヴの技巧には演技をする余地がなかった。 アスタリオンに負けず劣らず器用な指先は男の泣きどころを的確に捉えてくるし、異性を抱くのは初めてとは思えないほど手慣れていて、今さらリードするまでもない。 いつの間にかアスタリオンは彼女に主導権を譲って、与えられる快感を享受する一方だった。
「たのむ、もう、イきたい……っ」
「そうしてあげてもいいけど」
タヴはそっけなくつぶやくと、ずぽりと指先を引き抜いた。 玩具がなくなったことが惜しくて、思わずアスタリオンは喉の奥を鳴らす。
「ああ……タヴ、早く、お前がほしい……」
本当だ。 絶頂を前にして放り出される狂おしさほど持て余すものはない。 はぁ、はぁ、と荒く息をつきながら視線で訴える。欲望に眩んだ赤い瞳は濡れたようにかがやき、タヴだけを見据える。 冷たい表情だが、彼女の股間にあるものは大きくそそり立っていた。 アスタリオンの飢えた身体を癒せるのは今はそれだけだ。
「なら顔を見せて」
タヴは涼しくそう言ってのけると、地面に両手と両膝をついた男の身体を裏返しにした。 背中が土にまみれることにアスタリオンは抵抗を感じたが、タヴの腕は妙に強くて逆らえず、彼女の望むままに仰向けになる。 てっきり後ろから挿入されるものだと思っていたのに。 快楽を優先するのかと思いきや、急に顔と顔を突き合わせることになり、すっかり出来上がっていたはずのアスタリオンはかすかに臆した。 月の淡い光を浴びた髪が黒々とかがやいていて、そのうっすら細くなった瞳はよく研いだナイフのように光って見える。 彼女がこんな顔をして、ずっと自分だけを見ていたことを知って、心臓がもう一度止まりそうな気がした。 タヴの手に膝の裏を抱えられ、持ち上げられる。
「挿れるわよ」
潤滑液で濡れた窄まりに彼女が性器を近づけ、徐々に挿入する。 思わず息を止めていたアスタリオンは、その腹に響く感触に大きく声をあげた。
「あッ……あぁ……!」
はっきり言って、正常位で挿入されるのは好きじゃない。 やるとしたら処女と童貞同士とか、年季の入った夫婦がたまに愛を確かめ合うときにするもので、少なくとも快楽を優先して行う体位ではないと思っていた。 だが、タヴに挿れられた途端、甘美な刺激が電流となって全身を突き抜けた。彼女の勃起したそれが全部入りきる頃には、アスタリオンは泥に濡れるのも厭わず背をよじって悶えていた。
「今のは少し良い顔だったわね」
含み笑いをのせた声が降ってくる。 笑われた意味が理解できず、わずかなあいだ呆然となっていた。そのまま二の句を継がせないうちにタヴは腰を動かす。
「はあ……ぅ、ああ……っ」
ゆっくりとした動きは、十分に蕩けきった後孔を甘やかすように緩やかで、気性の激しいタヴの腰遣いとは思えなかった。 アスタリオンの知るタヴは、冷酷で容赦がなく、威圧的で、荒っぽいキスが好きな女魔術師だ。 だからこんな初めての恋人にするように丁寧に愛されるとは思ってもみない。 戸惑いと快楽に包まれながら、アスタリオンは熱に浮かされた声で喘いだ。
「タヴ……ッ、ま、て」
「お前の中を堪能してるの。……とっても狭くて、ひんやりしてるわね。ちゃんと血は流れてるみたいなのに、不思議だわ」
ゆっくり腰を突き入れするタヴはそう言って男の股間に手を伸ばした。 前戯のときからすでに昂っていたそれの、敏感な穴を指先で刺激する。 白い首をそらしてアスタリオンは肩を震わせた。
「ぁ、あ!」
「やっぱり顔が見えるといいわね」
タヴは身悶えするアスタリオンの表情をつぶさに観察して微笑した。 感じているところを見られているだけなのに、なぜだか胸が騒ぐ。今までこの痴態で多くの者を虜にしてきた。ベッドの上ではアスタリオンは常に踊り子で、与えられる快楽のままに振る舞ってきたのに、今はそうあることが難しい。 ただタヴは優しくしているに過ぎないのに。
「ああ……アスタリオン」
彼女は恍惚となったようにつぶやく。 その甘やかな声が鼓膜を揺さぶり、今行われている行為の濃密さを脳のより深くまで訴えかける。 今まで無表情だった彼女の顔が和らいでいるのがわかる。そんな表情は初めて見た。タヴが満たされていると知ると、なぜかわからないがアスタリオンの胸は不思議と高鳴った。 タヴは大きな胸をゆっくりとはずませ、呼吸を深めて男の肉襞をよく味わっていた。
「お前を近くに感じるわ」
その言葉に、アスタリオンはどこかむずがゆいような感覚を覚えた。 まるで胸が落ち着かない。挿入されているだけでじわじわと緩やかな絶頂感を味わっているようで、こんなタイプの快楽はあまり感じたことがなかった。
「……動くわよ」
タヴはつぶやいて、腰を揺らし始めた。 今までよりも強い打ち込み方だが、すっかり彼女の形に馴染んだそこは苦もなく受け入れてしまう。 ぐちゅ、ぐちゅ、と潤滑液で潤った後孔が出し入れのたびに濃厚な水音を立てた。
「ああっ、あっ、ん、っ……あ"ぁッ!」
激しくなる挿入に耐えかねたのか、ぷつん、と糸が切れたように股間のものが射精する。鍛えられた腹筋が自らの精液で濡れていくさまもたしかめられず、アスタリオンは顎をそらして奥歯を噛み、絶頂を耐え抜く。
「……まだいけるでしょう?」
荒く息をつき、腰の中に停滞する重い快楽が通り過ぎるのを待っていると、タヴがそっとささやいた。 最初は意味がわからず、聞きそびれたが、彼女は返事を待たずにアスタリオンの膝裏をより高く抱え上げた。 まだ快楽から抜け切れていない身体に強く腰が押しつけられる。それも激しく、何度となく。
「あ"ッ、あ"ぁ"ッ、あ"あ"あっ!」
意識が脳から押し出されそうになるほど強い衝撃に、アスタリオンは喉を嗄らし、もはや吼えるといってもいい叫び声をあげた。 その反応に、タヴはうっすらと汗を額に浮かべながら微笑む。
「……ああ、なんて良い声」
「ぅあ"ッ、あ"、あ”あ”っ!」
「すばらしいわ、アスタリオン」
タヴの称賛の声もアスタリオンには届かない。 ただ彼女の腰の動きに身体は芯から翻弄され、途方もない感覚に泣き叫ぶ。
怖い。
「だ、めだ……ッ、も、う、抜いて……ッ!」
涙を散らし、首を振って懇願のために喉を振り絞る。 このまま二度目の絶頂を迎えることに、アスタリオンは自分の魂が失われるような恐怖すら覚えた。 始めこそ優しかったものの、今の彼女は捕食者だ。 アスタリオンだけを執拗に追いかけ、首元に両手をかけて、今にもその意思ひとつで絞め殺せる立場にある。 その存在には心当たりがあった。
「だめよ、アスタリオン」
彼女に時折覚えたかすかな畏怖は、そこからきていたのだ。 とりわけ冷たく響いた声の後、より深く、より激しく追い立てる動きが続いて、アスタリオンは喉が焼けるほど叫び声をあげた。
「あ"あ"あ"ぁ……!!!」
強く穿たれ、熱いものが注がれる感触に目の前が白濁する。 全身の血管が逆流し、内臓が裏返しにされるような衝撃が襲う。 タヴはアスタリオンの中になみなみと精液を注ぎ込むと、しばらく余韻を味わってから、そっと性器を外した。
「あ……あ、あぁ……」
肛門からとろとろと精液が流れ出る制御できない感覚に、アスタリオンは漠然となった。 強すぎる絶頂のショックがまだ身体から抜けきらず、全身が痺れたように動かない。 そんな男を見て、タヴは満足したようにため息をつくと、涙の散った頬に手を伸ばした。
「すごく可愛かったわよ、思い出しただけで興奮してくるくらい……」
法悦を漏らすタヴは男が自分と同じように余韻に浸っていると思ったのか、優しく頬をなでて女神のように微笑んだ。 しかし、アスタリオンの嗚咽は止まらない。 痛むほど叫んだ喉は震えを吐き出し、肩を震わせながら悲しみに耐える。 あまりにも深刻な表情で涙を流すアスタリオンに、タヴもおかしいと思ったらしい。柳眉をかすかにしかめて、うかがうように見つめてくる。
「ちょっと、大丈夫?」
「…………」
「……���しかして、本当に嫌だったの?」
アスタリオンは力なく、しかし何度もうなずいた。 そのさまを見て、タヴは唖然と口を開ける。
「そんな、まさか……またふざけてるんだと思ったのに」
彼女も自分の行いを顧みてショックを受けているらしい。 アスタリオンは震える身体を引きずるように動かし、土の上にへたり込む。 生々しい恐怖が胸の中からなかなか出ていかない。 発作のように呼吸が乱れ、涙が止まらなかった。 あれは普通のセックスではなかった。少なくとも、アスタリオンにとっては。
「……悪かったわ」
悄然とした声でタヴが言う。 彼女が動く気配がして、反射的に逃げようとしたが、決してその手が伸びてくることはなかった。
「ごめんなさい。お前がふざけているときと本気のときの見分けがつかなかった私が愚かだった」
タヴの声は明らかに落ち込んでいた。 傍若無人な彼女が他人に謝罪しているところなど想像もしたことがなかったが、その態度は信じがたいほど殊勝だった。 アスタリオンは涙で何度かむせ込んだが、だんだん戻ってきた呼吸に落ち着きを取り戻していった。
「……いや、いい。最初ふざけてたのは俺の方だった」
子どものようにみっともなく泣いた後なのでやりきれない。 しかもタヴは本気で心配している。 気遣う視線を背中に感じながら、アスタリオンは小さな声で言った。
「俺も自分がふざけてるときとそうでないときの区別がついてない。よくわからないんだ。自分でも俺が言っていることは本気なのか、実はそうでもないのか、……今まで、深く考えたことがない」
長いあいだ、アスタリオンの止まった心臓は自分自身のものではなかった。 己が使役される道化であることすら忘れようとして生きて、それで今のアスタリオンがある。 権力に従い、自分を演じて、相手の欲望に応えることだけで今まで生きてきたのだ。 だが、先ほどのタヴとのセックスは、今までやってきたそれとは勝手が違った。 今まで闇の中に紛れさせてきた自分自身が、急に明るいところに引きずり出されたようで、ひどく無防備で、子どものように心細い気分になった。
「自分が自由なことを信じていないのね」
まず、何かを信じるということがどういうことだったか思い出せない。 今でもどこか茫漠とした気分で、アスタリオンは自分の肩を両腕で守るように抱いた。 ゆっくりとタヴが動く気配を察して、びくりと顔を上げたが、彼女は肩の隣に座り込んだだけだ。
「ゆっくり実感すればいい。……ただ、嫌なときは嫌とはっきり言って。それがお前のためよ。ただ、私もお前が本気かそうでないかをもう少し見極める目を養うわ。これからも一緒にいるんだから」
タヴは穏やかな表情を浮かべると、そっと指を伸ばし、まだ乾いてない涙の粒をとった。 欲望のままに抱き合っているときよりも、今の距離の方がアスタリオンの心には馴染んだ。 それはまったく不思議な感情で、温もりを知らない胸の中に存在する、棘で張り巡らされた冷たい心臓からひとつひとつそれが抜き取られていくようだった。
「ただ、俺は、強引にされるより……その、優しくされるほうが、よかった」
名前のつけがたい感慨に襲われたアスタリオンは、わずかに臆したように目を伏せると、自分でも知らないうちにわけのわからないことを口走っていた。 自分でも言った後に後悔した。 優しくしてくれと自分から要求するほどみじめなことはないと思っていたからだ。
「次はそうするわ」
タヴはそう言って、アスタリオンの肩に自分の頭を軽く乗せた。 意外な言葉に、アスタリオンは顔を上げる。
「次があるのか?」
「お前が望めばね」
タヴの黒い髪が柔らかく肩にかかって、かすかに花のような甘い匂いが鼻先を掠める。 花の香りに夢中になったことはないが、彼女から漂ってくるそれは不快ではなかった。
「……またしたくなるかどうかはわからない」
「別にしたくなければいいわよ」
「しなかったらどうなる? 何もなかったように振る舞うのか?」
タヴは静かにつぶやいた。
「ただ一緒にいるだけよ」
アスタリオンは茫然となって、タヴの黒い旋毛を眺めていた。 彼女の言葉を脳裏で何度も反芻させて、一生懸命意図を考える。 だが、言葉以上のものは何も思いつかなかった。 肩を寄せ合い、何もしないまま時間だけが過ぎる。 それはこういうことなのか、とアスタリオンの頭の中が少し片付く気がした。 彼女が肩にもたれたまま動かないので、寝てしまったのかと顔をうかがう。 月のように静かなタヴのまなざしがそこにあった。 鏡を覗き込んだときと同じように、そこは誰の姿を映すこともしない。 だが、タヴはたしかにアスタリオンを見つめている。その月夜のような美しいまなざしは自分だけに注がれていて、自分だけを見ているとアスタリオンは今なら実感できる。 アスタリオンは指先で彼女の唇に触れた。 ふっくらとした下唇の感触を親指でなぞると、そのかすかな温もりがどこか懐かしいとすら思った。
「……キスしたいかもしれない」
タヴはうかがうように男を見上げた。
「かもしれないじゃだめよ」
「じゃあ……、キスしたい」
「それならいいわ」
タヴはアスタリオンの頬にそっと手を添えると、自分から唇を重ねてきた。 短く触れるだけの口づけ。 離れるたびに彼女と視線が合って、またくっつけることを何度か繰り返す。 ふたりのキスはそれ以上の意味を持たず、またほかの感情を必要としなかった。
「タヴ……」
知らずにアスタリオンは彼女を呼んでいた。 その声が求めているのは、もっとしたい、なのか、もっとそばにいてほしい、なのか、自分でもよくわからなかった。 曖昧な感情に揺れる赤い瞳を見て、タヴは何も言わずに微笑んだかと思うと、また唇を重ねて、アスタリオンの肩を大きく抱き締める。
「あ……」
彼女は、その全部を満たしてくれた。 アスタリオンはタヴの行動のひとつひとつに言葉を詰まらせ、彼女がなぜそこまでしてくれるのか不思議でならなかった。 いくら考えても答えは出ない。 だが、今は無性に彼女の温もりが恋しくて、その背中を強く抱き寄せながら、自分からタヴの唇を乞う。 後ろに回ったタヴの手が、月に淡くかがやく銀髪を優しく、何度もなでていく。 言葉にし尽くせない思いを告げるように彼女と唇を重ねながら、この胸を満たす感情が、欲望が、美しい夜のかけた魔法ではないことをアスタリオンは強く願った。
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【死因】No.182【メディア黙示録】
安元洋貴が推しの声帯として実装されるとどうなる?しらんのか 古今東西あらゆる供給が5億倍になる…最近200回目を迎えた安元洋貴がパーソナリティの笑セルって飲酒ラジオ 岡本信彦(トップくん)も石川由依(ムイちゃん)もゲストで来てます YouTubeでアーカイブ聴けます 更に岡本信彦にいたっては『声優と夜あそび』で2022年に月曜ペアMCだったし 同番組でシェフ安元洋貴も色々見られます IHの火力にキレる不減(幻覚) 中村悠一(アンディ)とドライブトークするだけの動画もYouTubeで見られるんですよ みんなの財布になりがちな不減(幻覚) 界隈の交友関係が広すぎて言い出したらキリがないんです助けてくれ 推しの声帯が推しの声優 気が狂�� 弐大猫丸とかグアイワルも大好きなのでね?グアイワルはヒープリの敵幹部(筋肉枠)です ちなみに今期のヒロプリでも別キャラで出演あったんですがキュア重野メイン回でした 勿論この声ですから龍が如くにも出ていますよ 5の相沢(維新だと原田)で…アッ 品田が森川智之……これが釘宮理恵に左腕持ってかれるんですか 小山力也にアイアイサーすると どうしよう興奮してきた バイオRE3の日本語版カルロスもですね俺のいない世界なんて寂しすぎるだろとか言うんですよ カッコ良すぎるだろ頭おかしいんか?そういえばレオンは森川智之…安元洋貴といえばグラブルのジンも好きで まっ 三羽烏漢唄!!ビリー様もいたらソリッズじゃんちょっと三人目オイゲン枠でテラーは荷が重いからアンディあたり変わりにお願いしますね(?)ッツァ~思い出したくまみこでナツやってたわやっぱり熊さんだったんだよクリード=デッカードはさ…………………(??????)
…と、冒頭から全力疾走 いや もう否定者狩りとチカラくんのアニメビジュアル公開&声優発表だけで脳の処理能力が全部持っていかれて本誌感想どころじゃなくなりお騒がせしました。アニメビジュアル、リップの足が長すぎてビビる。クリードはドッグタグ2枚でしたね。ズボンの柄が結構デカいのはやっぱ動かす都合なんだろうか。目が散らないように?どうしようアニメでもスーツの方が良かったか??って聞いてくれるんだ……うわ…何が絶対いねえだよラトラって大笑いしてんの安元ボイスで……ヤバ………UNGENインパクトで他のキャストさんに触れてなかったんですが梶裕貴リップやべぇな…僕は双子に愛されてる梶裕貴となると丸竜様が真っ先に脳裏をよぎりました。おとめ妖怪ざくろはいいぞ。日曜朝の民なのでキュア重野はもうタイムリー過ぎてひっくり返りましたね。ツバサくんにチカラくんを感じる瞬間があったのは間違いではなかったというわけだ(?)長谷川さんは歌がうまいイメージはあれど自分の履修ジャンルのキャラに馴染みがないので楽しみ!!ファンの台詞量で森川ボイスはもう四季編のアニメ化が確約されたようなものだと思う………
すみません一生脱線しそうですそろそろ本誌感想書きます。では改めて…
【数十億もの】No.182【鼓動の数さえ】
「全弾発射!!」
出雲風子ォ!!!不死リスペクト 君はどこまで強く まさかアニメに合わせてきたっていうんですかこの場面 漫画の天才……?こわ…
「ようこそ」「マスタールームへ」
(CV石田彰)
いたわ いたわ石田彰が(前回本誌感想) 櫻井孝宏も少し考えたが後の言動が石田彰だわ いっぱい触れたいトコあるんですがとりあえずよ 戦(暫定)さん 黒髪オールバックじゃなくて帽子だった ベガかな 不減もガイル(CV安元)だしこれはもう因縁よ…戦友殺されててもおかしくないね……顔面大傷どころか半人外フェイス最高以外の言葉がでねぇ 葉巻の煙もれてんの本当に好 好です
「ナメすぎなんだよ!!おめぇのルールは遅すぎる!!」
口調の開示もありがとうございます ありがとうございます ほぼ全ループ不減のテンションじゃろこれ……いやしかしここの円卓会話 上位存在の嫌なテンションを凝縮してきててめちゃくちゃに良い たぶん沢城みゆきと山路和弘もいる 今回声の話多くてゴメンね でもいるもん(脳内では)Ⅰ席と出雲風子のやりとりはもう飲み込んでいくしか無い新情報ばかりですけれど
「その場合の方がありがたい」
「今ここにいる全員私の不運で死んで」
「私達の勝ちですから」
の出雲風子はマジでヤバいなって思いました。覚悟がキマったというかイカれたプレイングだと言われるのもそうだし ハッタリじゃなく『殺意』を見せてくる出雲風子 正直 興奮する 自分の不運で人を殺すなんて一番のトラウマの筈なのに……優しいたぬきも好きですが 神を殺すことに迷いの無い目をした出雲風子 ちょっと新しい扉開いちゃう 困る
マスター円卓、バベルの塔乗ってる眼鏡ちゃんはほぼ言語で確定だろうけれど、前ループニコはもしかしてタイマンで暗号バトルとかしたかな???と思うなどしました。暫定性のオネェさん血の気多くて最高ですね。Ⅰ席外ハネまつ毛黒子(CV石田彰)、最初ちょっとルーシーちゃんに似てるなと思いました。瞳の雰囲気とか特に…デラメンズにしては細いから心配になる。死以外は無いと思っていたけれどこの風体だとわからんくなってきたな……Ⅱ席がシスター風だけれど血なまぐさいって言われるのはやっぱり宗教系かなぁ?よよよラッくん ラック?なるほど“運”はこの子 前回ちょっと予想で候補に上げてたのでちょっと嬉しい。風子と逆の位置に絆創膏あるの良いですね。
…こっからちょっと水を差す話になるので全肯定で読んでるタイプの方は嫌な気持ちになるかもしれませんが隠しても仕方がないので素直に書いておきます。アンディの所在の件、魂で僕達を抑えている 何回か心の中で噛み砕こうとしてたんですがやっぱりちょっとじわじわ来てしまった いや 魂の話は前々から出てるから大事なモンだってのはわかるんだけれど 黒点がアンディ も感動とかより妙な面白さが勝ってしまって 心の中で「ちょっと何言ってるかわかんないですね」ってなっちゃった 熱い場面ですまない すまない 魂で太陽に蓋してるアンディ うん ゴメンね なんかその 切ない気持ちとかになってる人には本当に申し訳ないんですが 感受性が突然終わってるオタクになってしまった すまない 漫画の展開はめちゃくちゃに面白いです。こっちはそういう面白いじゃなくて純粋に面白い方の……
「“こっちは任せろ”」「“やっちまえ”です」
これから殺していくぞという相手に対して『アンディの引用』以外は敬語なの 妙な風子らしさを感じですこです ニコがチンピラフェイスで最高だしジーナも良 パワードスーツ組のメットオフからしか得られない栄養素に圧倒的感謝 Nextringの背中の演出はアニメ逆輸入かな?めちゃくちゃに好 Endwarもやってくれ
「いいね」「上等だ!!」
今回はとことんアンディリスペクトの言動が多くて良 え!!?シスターでけぇ!!!!?!?まさかの2m族!?!!?!?ピンヒールの性よりでけぇし戦と並ぶレベル!!?!?そんなデケェ体でよよよとか言ってたの 好きだが(新章開幕キャパオーバー)
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ある画家の手記if.121 告白 夏祭り
新居の近くには綺麗な池のある広々した公園があって、気が向いたら僕はその公園の池の前のベンチで絵を描いてる。
池の水は溜まりっぱなしじゃなくて公園の外堀の浅い川を巡らせてあって、いつも透明度が高くて綺麗。魚もいる。魚を狙う鳥もくる。 いつも隣のベンチにいてスズメにパン屑をあげてるおじいさんとか、池のまわりをランニングしにくる学生とか、公園に日課で訪れる人たちがいて、僕も通ってるうちに友達が増えた。 静物画を描いてた頃は絵を描くために外に出る必要はなかったから知る由も��かったけど、衆目のある外で堂々と絵を描いてるとちょっと目立つし周囲の興味をひくものらしい。スズメのおじいさんにそう言われた。 そんな公園の友達から、近々この公園で夏祭りが開かれるっていう情報を得た。毎年の恒例行事なんだそうだ。 「直人くんも来てみたらどう?お家は歩いてこれる距離なんでしょう」 「…そうですね。息子と一緒に来ようかな、あの子も夏のお祭りは初めてかもしれないし」 「そういえば息子さんいらっしゃるんですよね、今何歳なんでしたっけ」 なぜか僕が親しくなった相手に香澄のことを話すといつの間にか相手の中で香澄が幼稚園児くらいになってる。 もう成人してますよって言って証拠の写メを見せるときはだいたい絢と香澄のツーショット写真を見せる。 最初に香澄単体の写真を見せて一目惚れとかされたら困るから、となりに香澄とはまた趣の違う華やかで派手な絢もいたら見せられた相手も何がなんだかよくわからなくならないかなとか。実際まあまあそんな感じの効果は上がってる。絢ごめん。 顔立ちだけなら僕と香澄より僕と絢のほうが似てることになるのかもしれないけど、写真を見せても絢のほうを僕の息子だって思う人は意外と少ない。僕も絢もそれぞれ新しい家や家族に馴染んできたのかな。 僕は夏祭りに行ったことは多分ないけど、香澄と行った旅館の初詣でみんな着物着ててお店がたくさん出てた、あんなかんじかな。
前のマンションは立地は住宅街の中だったけど、マンションの方針としてその地域での町内づきあいは一切絶ってあった。今はそういうのが何もない普通の一軒家だから町内の報せとかもご近所から回ってくる。 かいじゅうくんの形のポストに入ってた夏祭りのチラシを取りだして見ながら、簡単に添えられたお祭りのイラストでなんとなくの雰囲気を知る。描かれてる人、みんな着物…浴衣?だ。僕がポストの頭を撫でながらチラシを見てたらちょうど出かけてた香澄が道の向こうから帰ってきた。 最近香澄はよくイキヤのマンションに通ってる。 最初は部屋を貸した身として僕が通って様子を見るべきかなとも思ったけど、結局僕がいつまでも仕事してて行けないでいたら香澄が行ってくれてた。香澄はときどき車出したりもしてた。 二人はけっこう仲良しみたいだ。それは少し、わからないでもない。 イキヤの人間関係はこれまでほとんど画家やそういうことに携わる現場の人間で埋め尽くされてきてる。家庭内にも今は別の画家がいるだけだし。性格や気性を問わず画家同士で穏やかに優しくしあうだけってことにはならない。…その分、誰かに優しくしたい気持ちがずっと行き場をなくしてたりする。 帰ってきた香澄にお祭りのチラシを見せて笑う。 「これ、すぐ近所だし、一緒に行ってみようか」
そんなわけで当日の夕方、まずは自宅まで知り合いの着付け師の子に来てもらった。 浴衣もそこで前もって僕と香澄のぶんを買っておいた、お正月の旅館で知り合った貸衣装をしてたおばあちゃんの呉服屋さん。 あれから何度か仕事でおばあちゃんのお子さんたちにうちに来て手伝ってもらって、ちょっとだけ顔なじみになった。じゅんちゃんとゆなさん。 肖像画の内容にもよるけど、モデルがよく映える服や小道具が欲しいってときもあるから、そういうときに。うちのクローゼットにある服は僕と香澄のを合わせても、お互いに系統が揃ってる上にサイズが大きくてあんまり使えない。 買った浴衣は香澄が白で僕が濃い紫。旅館のときと違って香澄も今回は男性ものの浴衣で、二人とも柄はそんなに派手じゃない。旅先と違って行くのは近所の夏祭りだから、目立つ格好して歩いて妙な虫がついたら払うのに苦労しそうで。 今日は和服だから呼んで来てくれたのはじゅんちゃんだった。浴衣を綺麗に着付けてもらったお礼を昼間に焼いたクッキーと一緒に渡して、二人でお祭りに出かける。布を買って僕が作った簡単な浴衣を出がけに留守番するノエルに適当に着せたらじゅんちゃんに一度脱がされて着付けしなおされてた。
ちょうど陽が沈んだくらいのタイミング。外は昼間に比べたら少し気温も下がってきてる。 となりを歩く香澄の髪にはかいじゅうくんの簪が刺さってる。クリスマスに僕が慧にもらったものだったけど、僕より香澄が使う方が似合っててかわいいからそうしてる。…この方が慧もきっと喜ぶ。 香澄はバレンタイン…本人曰く「誕生日プレゼント」に、まことくんから髪留めをもらって、仕事の日とかによく使ってる。香澄は自分でそういう物はあんまり買わないし僕があげた覚えもなかったから訊いてみた。香澄が友達同士で物を贈りあったりすることにまで口は挟めないけどね。僕が無言でじーっと髪留めを見てたら視線に気づいた香澄は不思議そうに首傾げてた。
公園に入る前から外の道にも普段よりたくさんの人がいて、すでにかなり賑わってた。浴衣姿の人も多い。 はぐれないように手を繋いでたいけどご近所さんも来てそうだから無理かなぁ。 池のまわりをぐるっと夜店が囲むようにどこまでも連なってる。夜店は簡易テントみたいな作りで、高い鉄パイプみたいな骨組みを通してぼんやり光る提灯が頭上に並んで浮かんでる。 香澄と一緒に風を受けてとりあえず見て歩いてるうちにあっという間に空が暗くなって夕方から夜になった。提灯と夜店とところどころの街灯の灯りだけになる。 「あ」 思わず声が出た。飾りみたいにたくさんズラッと並べてあるのの中に、かいじゅうくんがいた。他にもいろんなキャラクター…?色々並んでる。顔だけ… 周りの人たちが買っていく様子を見てると、あれは顔につけるお面らしい。 迷わず買って香澄の頭に装着する。 「…?これって顔につけるんじゃないの?」かいじゅうくんのお面を香澄の頭の斜め上あたりにつける僕に香澄がほわほわ顔緩ませながら訊いてきた。 「香澄の顔が見えなくなったら僕が寂しいからね」 綺麗に装着し終えて満足してたら香澄がさらにほわほわ笑ってた。にっこりしてかいじゅうくんのいないところの髪の毛を梳いて撫でる。 僕はかいじゅうくんと比べたらやけにリアルな描写の般若面を買った。リアルで怖いからあんまり売れてないらしい。僕は首から下げた。背中側に面がくる。般若って女性じゃなかったっけ、とか思うけど、威嚇になる表情ではある。背後の警戒を般若面にお願いする。 二人でかき氷を買って食べ歩く。香澄がオレンジ、僕がブルーのやつ。二人でスプーンですくってお互いの口に運んで食べ比べてみる。どっちも冷たくておいしい。 射的のお店があったから香澄と二人でやってみる。ゴムを飛ばす鉄砲みたいなライフルみたいなやつを使って景品を撃ち落としたらそれをもらえる。 まずやってみた香澄が何発か撃ってお菓子箱を一個撃ち落とした。香澄はこういう体験は初めてだって言うから「コツを掴むのが上手だね」ってにこにこ上機嫌で褒めた。 そのあとに、香澄がちょっとだけ欲しそうに見てたウサギのぬいぐるみを僕が狙う。ルールに則って決められたラインから踏み出さないで鉄砲を構える。着物の袖が邪魔で肩までまくし上げる。たすきがけとかできればよかった。 僕は腕が長いから普通に構えただけでちょっとズルしてる感じになってるのかな。ゴムをつけ直してウサギを何度か撃ったら置かれた位置からずれてバランスを崩してウサギが落ちた。 店の人から受け取ったウサギを香澄に渡したら嬉しそうにしてた。垂れた耳。まだ留学から帰ってきてない絢のことを連想したのかな。 絢は今、まことくんとオーストラリアに留学に行ってる。日本国内ではなんの気兼ねもなく自由に好きなように���動するのが難しいのかもしれないからよかったとも思う、同時に、僕も香澄も心配な気持ちもあった。 だから僕が庭の樹から少し削りだして、二人でお守りを作った。木彫りかいじゅうくんのキーホルダー。 半分くらいのところまで香澄に作ってもらって、僕は最後の仕上げと少し整える程度のほうが絢は喜ぶかな、と、思ったんだけど、あまりに面妖な初期段階が香澄から提出されて僕は思わず難しい顔になった。なにかの形象をあらわしているとおぼしき木片の突起部分を落としていったらネット検索で閲覧に年齢制限がかかるような姿になったのでさらに削って削って磨いていったら最後にかろうじて残ったのはころんと丸っこい鈴みたいな形のかいじゅうくんだった。雛かもしれない。 お祭りはまだ見てまわるけど僕が撃ち落としたウサギは手荷物になるから一旦僕が香澄から預かる。 ヨーヨーがたくさん水に浮かべてあるのを二人で発見。香澄がすくってとった。歩きながら楽しそうに手で弾かせて遊んでるから、預からないで香澄に持たせたままにする。 頭にかいじゅうくん、手に水色のヨーヨー。着物を白にしてよかった。香澄の髪の色がよく映えて綺麗。 夜店の焼き鳥とかクレープとかホットドッグの匂いが漂ってくる。僕らは家で早めの夕食を済ませたから匂いだけ。公園のみんな曰く、お祭りの夜店で売ってる食べ物全般は内臓や消化器系によほど自信がないと食べるのは分の悪い賭けなんだそうだ。たとえよく火が通されたものでも油が怪しかったりするらしい。 みんなに団扇を配ってる人がいたから僕もひとつもらって、首筋をあおいで風を通す。じゅんちゃんに片側に流すみたいな幅の広めの紐を一本絡ませた編み方にされたから、いつもみたいに後ろで縛ってるより暑い。 となりで香澄の歩くスピードが少しだけ落ちた、様子からして下駄で少し足が痛むみたいだった。 僕も下駄は履き慣れないけどいまだに全然痛くならないから油断してたな… 少し人混みから逸れた場所に入って、香澄の前に片膝をつく。 「ここに足乗せてごらん」自分の立てたほうの膝をトントンと示して香澄の片足からそっと下駄を脱がせた。そのまま僕の膝の上に乗った白い足を診てみて、すぐに病院に行く必要があるような怪我はまだないことを確認する。 それでも鼻緒があたる箇所は少し赤くなっちゃってるから今日はこの辺でもう帰ったほうがよさそうだ。片足ずつ僕の膝に乗せさせて、その間に僕は自分のハンカチを歯でいくつかに裂いて破って、香澄の下駄の緒の部分を外して抜いて、そこにひとまずの代替にハンカチを通していく。ハンカチが柔らかいガーゼ生地だからもとの頑丈な緒に比べれば痛くないかもしれない。 一度香澄に履いてもらってから、すぐ脱げないけど締めつけない程度に長さを調節した。 家までならなんとかなりそうだったからそのまま二人で帰ろうとして、帰る途中で二人して見つけてしまった。 すぐそこの、ビニールプールみたいなのの中にたくさん金魚が泳いでる…。 香澄と顔を見合わせる。 「足は痛くない?」 「うん。すごく楽。」 「…じゃあ、あれだけ最後に見て帰ろうか」 足を痛めないように、ゆっくり水槽の前に二人でかがんで元気に泳ぎ回る金魚をじっと見る。 …体が白くて…頭だけ朱いのがいる。小さい… 「あの子香澄に似てる」 指差して香澄に言いながら、お店の人にすすめられるまま金魚をすくう小さな道具をもらった。指先で触って確かめる。薄い紙が貼ってあるのを水につけて金魚をすくうみたいだけど、紙の目がどの向きなのかとか裏表とか、踏まえておいたら少しはたくさんすくえないかな…。 「…ん 香澄どこ行った?」 「あそこ!」 僕が道具を見てて見失った香澄に似てる金魚を香澄がずっと目で追跡しててくれた。香澄が指差す先に腕を伸ばしてひとまず一匹目を無事にすくう。香澄確保。 そのあとも僕は香澄に「どの子がいい?」って訊いて、香澄が選んだ子をすくって、五匹すくったところでとうとう紙が破れた。 金魚をもらっていくかここに放して帰るか訊かれて、もらって帰ることにした。
荷物が増えたし夜も更けてきたから、今度こそ本当に今日はこのあたりで帰ることにする。 特に金魚の入った袋を持ってからは僕も香澄も少しおたおたした。生き物が入ってるし、一緒に入れてもらった水は少ないし、袋は歩いてたらどうしても揺れるしで、このままじゃ帰り道の間に弱って死んじゃうんじゃないかと思って。 楽になったとは言ってたけどやっぱりいつもの香澄の歩くペースよりは遅いから、公園を出てうちまでの道の真ん中あたりにきてからは、香澄に金魚を持ってもらって僕が香澄をおんぶして帰った。 香澄をおんぶしたり抱っこして運ぶのが好き。僕も昔小さな頃によくそうしてもらってた。どこへ連れてかれるのか分からない状態でも安心していられるその人との関係が大事だった。今僕の背中で疲れたのか少しうとうとしてる香澄に、嬉しくてにこにこする。あんな安心感を、香澄にあげられたら。 お祭りはあと二日、今日みたいな感じで続くらしい。時間があれば、次は普通の動きやすい格好で寄ってみようかな。
お祭りの夜は家に帰ったら浴衣を脱いで、香澄とうさぎと一緒にお風呂に入った。 香澄を洗ったあとでうさぎも洗って清潔にした。さっぱりしてから普段着に着替えて急いで一人で車を出して金魚を飼うために必要なものを買いそろえてきた。あんな少ない水と袋に入れたままだと一晩で死んじゃうかもしれない。 ひとまず金魚たちを無事広い水の中にうつしてから眠った。
��の日、元気に泳ぐ金魚たちを見ながら、香澄と相談して何人かに金魚を譲る相談を持ちかけてみることにした。 香澄がイキヤに連絡してみたらイキヤは今のマンションの部屋で飼う形でもらってくれるらしい。僕が情香ちゃんに連絡してみたら、長期間部屋を留守にすることもままあるから少し難しいって言ってた。 五匹。白い体に赤い髪のかすみはうちで飼いたい。けど、かすみは一番体が小さくて餌を食べる順番争いでも弱いみたいだから、ほかの子と一緒に飼ったら競り負けて弱っちゃうかもしれない。誰かもらってくれる人…
まだ陽の落ちきってない夕方に今度は浴衣じゃなくて動きやすいいつもの服で、香澄とまたお祭りに行ってみる。 一度来てるから二人ともあんまり気構えがなくて、お祭りを満喫するというより散歩の延長みたいな感覚で。僕は今年の夏祭りの見納めのつもりであちこちを見回す。 僕の横で香澄は今日もかき氷を買って食べてる。僕もたまにスプーンでもらって食べる。 特に目新しいお店が増えてるわけでもなかったから、香澄にそろそろ帰ろうか、って 声をかけようとした瞬間だった 場にそぐわないすごい勢いで僕らの脇を走り過ぎていった男にぶつかられた香澄が 跳ね飛ばされるみたいに 池に落ちた 「ーーーー 香澄!!」 大きな水飛沫と人が落ちた音に周囲からいくつか悲鳴があがって周辺が騒然とする ここの池は綺麗なほうだけど深くなってるところは深い 香澄が一人で岸までたどり着くのは難しそうで僕も泳げるわけじゃないけど迷わず飛び込もうとしたとき、 カンカンカンと乾いた音がした 鉄パイプの屋台骨を踏みつけて走る音? 考える暇もなく夜店の屋根の上から細い人影が舞うように池に飛び込んだ ーーーいつもの特徴的な裾の長い上着は着てなかったけど見間違いようのないシルエットに 僕は香澄とは逆方向に走り出す 信用なんてしたくもないし信用したからこうするわけでもないけど、泳げない僕がたどたどしく救命ベストとか持って自分も池に飛び込むよりあれのほうが確実に香澄を助けられる ああもう 言いたくないけどあれは死生観とか倫理観とか常識とかそういうのが一切通用しないわりにどういう理屈だかこういう場面では迷いなく人命や人権を最優先したりする、あれの倫理観がとくに意味不明になるのは七ちゃんやイキヤや少数の大事な人間相手なのか 知るかそんなこと、ただおそらくこの場ではあれは香澄を助ける 学生時代からいがみ合ってきたから逆にソリの合わないフィーリングは嫌ってほど把握してる 僕の方が歩幅が広いし絵を描いててかなり体が鍛えられてたから、走ったらすぐに追いついた 香澄を突き飛ばして池に落として逃走しようとしてた男 腕を後ろからガシっと掴んだ、暴れて抵抗してきたから前方の空間に誰もいないのを確認して男の腕を掴んだまま前に回り込んで男の体を一度僕の肩と背に軽く引っかけるように乗せて空中で相手の体を大きくひっくり返すみたいに投げて前方の地面に叩きつけた 本気でやると全身あちこちに骨折や打撲を負わせる悲惨なことになるから、あくまで逃走防止の範疇を超えない程度に抑えた 倒れた男の両手を背中でねじりあげて背に乗っかるみたいに膝を当てて体重をかけて地面に這いつくばらせる 「あのね。こんなくだらないことしてないで僕は池に落ちた息子についてたかったんだ、心配だし、僕があの子を直接的に助けられなくても君にこんな風に構ってるよりは幾分かマシだよ僕の気分がね、でもこの祭りに来てるってことは君も近隣住人の可能性がある、そんな人間を正体不明のまま逃して野放しにするのも���持ちが悪いからね…」 取りおさえたまま今思ってる恨みつらみを男にずらずらストレス発散みたいに言い募ってたら、全身びしょ濡れになった香澄と行屋が池から無事に上がって僕のところまでやってきた。行屋が連れてきたというより香澄が僕のところまで来てくれたみたいだ。 「香澄!怖かったね…息ができなくて苦しい思いはしなかった?」 香澄をぎゅっと抱きしめたら、濡れてるせいかもしれないけど元々低めの体温がいつもよりさらに低い。真冬だったらショック死してたかもしれない… 僕の体温であっためるように抱きしめたままきゅっと閉じた目尻に薄く涙が浮かぶ …こわかった 「…池の水は清潔じゃないし、もう夜だけど今から一緒に病院に行こうね」 香澄から少し体を離して安心させるように微笑みかける。本当は救急車を呼びたかったけどここに呼んだらたくさんのいい好奇の目の的にされそうで、悩んだ末に呼ばなかった。 香澄は行屋のいつものマントみたいなカーディガンみたいなエスニック調の上着をバスタオルがわりにして頭からかぶってる。こっちを見てくる他人の視線から髪や顔や特徴的な部分をすっぽり隠せてる。そのために飛び込んでったときいつものこれは濡れないように着てなかったのか…? 行屋は僕がおさえてた男の背中を容赦なく踏みつけて、いつもジャラジャラ首から下げてるネックレスだかペンダントだか天然石がたくさん連なった長い首飾りの中から日本の仏教の行事で使う仰々しい数珠みたいなやつを一本首から外すと、僕が背中で束ねてた男の両腕を寝違えそうなほど引っぱってそれで縛り上げた 「…そんな繊細な装飾品、僕なら簡単に引きちぎるぞ。こんなものが手錠がわりの拘束になるのか」 あんまり行屋を見たくないので見ないようにしながら言ったら、行屋はとくに気取ったふうでも得意げなふうでもなくあっさり答えた。 「数珠を通してんのはピアノ線だ」 そう簡単には千切れないって言いたいのか ていうかそんな仕掛けあったのかそれ… 本人は歌うような口調で、数珠はいいぜ、海外でも宗教上の理由とか言や結構やべえときでも没収されずに見逃される、とかなんとか嘘か本当かわからないことを言いながら、さらにきつく縛り上げてる …に、しても、こいつが人命救助に加害者の捕獲… 行動に一貫性がある…とうとう気が狂ったのか? 「お前いつから善行に目覚めたんだ」 行屋は造形的にはそれほど大きくない口元を三日月みたいに大きくにんまりさせながら言う。 「飛び込みと捕り物は祭りの華だろうが」 「…」 やっぱりまともな理由じゃなかった。香澄が池に落ちたのも僕が突き飛ばした男を捕まえたのも、祭りにそえる花というか一等祭りを盛り上げる余興というか…そんな感覚なのか…? いや、理解したくない。ここまで。 行屋もそこでくるっと向きを変えて、薄着一枚でずぶ濡れのまま、まるで寒そうな気配もなく一言の挨拶もなしにまた身軽に夜店の屋根に登って身を翻してテントを飛びこえて、あっという間に姿は見えなくなって、祭りの中から去っていった。
その日はすぐに香澄を病院に連れていって診てもらった。 そんなにたくさん水を飲んでなかったおかげなのか、特に体に異常はなし、外傷もなし。医師は多分大丈夫だろうって言ってたけど、細菌とか諸々の検査をしてもらって、後日検査結果を聞きに来ることになった。 香澄を池に突き飛ばしていった男は僕が警察に引き渡した。お祭りの中で起きた事故だっていうんでお祭りの運営にも事の一部始終の説明を求められた。本人曰く、道を急いでいて不注意で偶然香澄に体がぶつかってしまい、そんなつもりはなかったのに香澄が池に落ちてしまって、深い池だったからそのまま溺死させてしまったらと思って怖くなって逃げた、僕に捕まったとき抵抗して暴れたのもそういうことで、香澄個人を狙った意図的な行動ではない、と。 僕はそれを鵜呑みにはしないし、まるで香澄が落ちたせいみたいな言い草がすごく不快だけど、それ以上個人的に関わるのも嫌だったからあとは警察に任せた。
香澄視点 続き
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第2話「地(とし)上」
目覚めた先に見えたのは、暗闇に染まった無機質な天井だった。左右に視線を動かし、シンプルな照明器具があるのを見つけて、ここが自室でないと思う。その直後に、自室を最後どころか、地下都市クーニャを出たのだと思い出した ゆらぎは、がばりと慌てて起き上がる。
身体の軽さで、クーニャを出るときに着ていた上着が脱がされていることを知る。そろりと、暗闇の中で少し手を伸ばした先に、上着は丁寧に畳まれて置かれていた。
掴んだ上着を身につけつつも、暗闇に慣れた視界は、現在地を把握するのにそう時間は掛からなかった。と言うよりも、随分とシンプルで物がない部屋だったのだ。
窓に引かれた濃い色のカーテン、彼が寝ているベッドも似たような色合いだ。部屋の片隅に積まれたのは、頑丈にそして入念に封をされた無機質な箱がいくつか。それだけがあった。それしかなかった。
ゆらぎはベッドから静かに降りると、窓際へと移動する。夜闇の冷たさを吸い込んだカーテンを掴み、隠された光景を広げた。
「うわっ」
ガラスのキャンバスに映り込む外の景色に、驚きの声をあげる。
そこに広がっていたのは、光の洪水であった。
地下都市クーニャでは見られなかった高層ビル郡。それらの間を通り抜ける幾つもの光が流れる道。ギラギラと輝くのは車か部屋の灯りか。消灯時間になれば真っ暗になっていたクーニャとは対照的な光景に、ゆらぎは一歩後に引く。
その時、来客を告げる音���した。ついで、慌ただしい様子の足音が、部屋の外ーーおそらく廊下を駆け抜ける。聞き覚えのある声がしたが、その内容まではさすがに���き取れなかった。
ゆっくりと、そしてこっそりと部屋の扉をゆらぎは開ける。ほとんど音はせず、来客と家主の会話は止まることなく進められていた。
「新人を列車から連れ去った上で、イカロスに直接乗せるとか馬鹿じゃねーの!」
「うるさい。結果的にペティノスたちを殲滅したから良いだろう。大体お前だって、ノリノリで組んでたじゃないか」
「まさか、移送中のまっさらな新人のことだとは思わないじゃねえか。直接搭乗は禁止されてる。それを、兎成姉妹のイカロスにわからないよう小細工までしてやったことにオレは怒ってんだよ」
「だが、あれをしなければまず間違いなくペティノスを削りきれずに、犠牲者はもっと出た。左近だって、まっさらな何も知らない新人を尊い犠牲とやらにはしたくなかっただろ?」
「それはッ」
そこで来客者は押し黙る。わなわなと握る手を震わせてはいたが、それでも怒りを相手にぶつけることはしなかった。
ゆらぎは、そこまで聞いてようやく来客者の男が、あの黒のイカロスから聞こえてきた声の主だと気付く。そして、家主と思われる人物が、ゆらぎをイカロスで連れ去ったあの痩せた男だとも。両者ともがどこか似たような声質で、髪型や目の色などは違うが、それでも面影が重なる不思議な感覚に支配された時、第三者が現れた。
「はいはーい、右近も左近も夜中に大声で怒鳴りあうんじゃないの。あんまりにもうるさいと、獅子夜くんが目覚めるよ?」
先程まで言い合っていた二人とは違う、落ち着いた声。けれど、茶目っ気も含まれた言い方に、右近と左近の二人はムッとした表情を浮かべる。
二人の間に、文字通り床から浮き上がるようにして登場したのは、イカロスの中で現れたエイト・エイトと呼ばれる人物だった。その身体は透けており、彼がAIで、現れたのがホログラムだと分かる。
左近と呼ばれた来客は、少し落ち着きを取り戻したようだが、それでも言いたいことはまだまだあったようだ。
「だいたい、エイト・エイトも右近の無茶振りに応えるなよ。めろり教官だってカンカンに怒ってたし、ユタカ司令官も」
「あー、はいはい。うん、左近の怒りが治らないのはよーく分かった。オレちゃんだって、まずいなぁって自覚はあったさ」
「だったら、なおさらやるなよ」
テヘッとふざけたポーズをするエイト・エイトに、遂に毒気が抜けたのか。項垂れる左近に対し、エイト・エイトや右近は大して反省している素振りもなく、また慰めることすらしなかった。
がくりと膝をついていた左近は、そこでようやくゆらぎの存在に気づく。お、と顔を明るくさせた彼の様子に、右近もまた後輩が目覚めたのを知ったらしい。エイト・エイトだけは、肩をすくめた後に、パチンとウィンクをして、その場から消えた。
「よー、起きたんだな」
馴れ馴れしく近づいてくる左近に、彼がこれまで接したことのないタイプだったゆらぎは身体を固まらせる。
白い髪と桜色の目。けれど面立ちは右近とよく似ているし、痩せ型であるところも同様だ。色だけが違うだけで、あとは殆ど一緒であることに違和感がある。人間のクローンは違法であるが、ペティノスの一件を黙っていたこれまでのことがあるからか、ゆらぎはその説を捨てきれないでいた。
「獅子夜ゆらぎ、だっけ? お前すげーな、ダイブ直後だったんだろ? それであそこまで乱戦に対応できるなんて、本当天才だな。なぁなぁ、オペレート中の景色どこまで見えたんだ?」
ゆらぎの肩を組み、矢継ぎ早に繰り出される左近からの質問。それらに答えるだけの度胸もなく、ゆらぎは視線をきょときょとと不自然なほどに、あちらこちらに向けた。
その様子が、あまりにも哀れに思われたのか。右近から助けが入る。
「左近、獅子夜くんが怯えている。一旦、離れろ」
「えー、親睦だよ、親睦。右近だけでなく、オレとも仲良くなろうよ、獅子夜くーん」
「だから、獅子夜くんは、まだ俺たちのことを知らないんだ。お前だけでなくて、俺のことも、この場所のことも」
そこまで言われて、左近の動きがピタリと止まった。
「え? マジ?」
「大マジ」
確かめるように、か細い声で左近が問いかければ、重々しく右近は頷く。その答えに、左近はゆっくりとゆらぎの肩から手を引いた。
「……自己紹介も、もしかしてまだ?」
とんでもない相手をみる、怯えるような左近からの問いかけに、ゆらぎは無言で頷く。その様子で現状を客観的に見た左近は、右近に近づくと、彼の頭を叩いた。
「この大馬鹿野郎が! 完っ全に誘拐犯じゃねーか!」
そのまま右近の頭を床に押し付けようとする。が、右近は右近でそれに抵抗しているようだ。十数秒の攻防だったが、右近が左近の脛を蹴り飛ばしたことで決着がついた。
床にうずくまる左近を放っておいて、右近がゆらぎに近づく。そして、ゆっくりとした丁寧な口調で自己紹介を始めた。
「今更ではありますが、自己紹介を。俺は神楽右近(からき うこん)。君を連れ去った張本人であり、あの青のイカロス、つまりナンバーズ五番のパイロットです」
そこまで一息に告げて、右近はぎこちなく握手を求めてくる。ゆらぎもまた、ぎこちなく握手を返した。互いにその手は冷たい。
続けて右近は説明する。
「ここは、俺が住んでいる家で、獅子夜くんがいたのは……君用の部屋のつもりです。本当は新入生は寮に入る規則なのですが、ここはナンバーズ用の宿舎なので、多少融通は効くと思って、連れてきました」
それと、と続く言葉にゆらぎは首を傾げる。
「そこにいる、俺とよく似た男は神楽左近(からき さこん)。察していると思いますが、あの黒のイカロス、つまりナンバーズ六番のパイロットで、俺の双子の兄弟です」
ゆらぎは双子という言葉を初めて聞いた。
地下にいる人類は全員、統一マザーコンピューターによって、ガラスによく似た材質の擬似子宮から生まれる。ランダムに選出された卵子と精子が受精し、擬似子宮に着床。その後十ヶ月ほどかけて生まれ落ちた胎児は、血縁関係にない、統一マザーに選出された二人組の親の元で一定期間育てられるのだ。
ごく稀に、何らかの事情で兄弟姉妹の関係になる子供たちがいるらしいとは、ゆらぎもクーニャで聞いているが、双子の兄弟はどういう意味なのかと戸惑う。
「どーも、神楽左近デス。この大馬鹿野郎とは双子デス。双子なのを後悔してマス」
先程まで床にうずくまっていた左近は、恨めしげな声で、右近の背後をとる。ぎりぎりと首元に腕を回し、大馬鹿野郎の評価に反抗する右近を押さえつけた左近。両者の表情はまるで違っていたが、それでもそっくりに近かった。
「あの……双子ってなんですか? クローンとは違うんですか」
ゆらぎの質問に、気がついたらまた一戦交えようとしていた二人は、動きを止める。
「あー、そっか。そうだよな、普通は双子なんて見ないだろうしな」
「俺だってここに来るまで、左近の存在を知りませんでしたからね。もしかしたら、双子は別の環境で会わないように設定されているのかもしれません」
「可能性あるよなぁ……たまたまオレたちがここにいるっていう、滅多にないというか、とんでもない偶然があったから、話が広がってここ最近は双子の説明をする必要がなかったんだもんな」
そこまで互いに確認し合ってから、右近から説明が入る。
「ええっと俺と左近は、全く同一の受精卵から発生してます。とある受精卵が二つに別れたのち、別の人間になっていったのが双子、というわけです。統一マザーへ情報の確認をしましたが、俺と左近は二つに別れた後に、そのまま同じ擬似子宮で成長を続けます。その後、健康状態に不備はなく、無事に生まれ、全く違う親の元で育てられました。説明した通り、同一の受精卵なので同一の遺伝情報を持っていますから、結果瓜二つの人間となるわけです」
「え、でも髪色も目の色も違いますが」
ゆらぎの疑問に、カラリとした笑顔で左近が答える。
「それは、オレが脱色してカラコン使ってるだけ。元々は右近と同じ色合いだったんだ。オレも右近の存在を知ったのは、この『都市ファロス』に来てからで、お互いあまりにもよく似ているもんでな。周囲が間違えて間違えて、すっげー面倒になったから、じゃあカラーリング変えちまえって。その結果これよ」
「双子といえど、別の人間ですからね。進路適正には性格も含まれますが、まさか双子が揃ってイカロスのパイロットになるとは思わなかったのでしょう」
「さすがに、めろり教官や他のAIは間違えなかったから良かったといえば、良かったけど」
「替え玉試験はできなかったですけどね」
「そこは惜しかった」
うんうんと腕を組み合って頷く動きがシンクロしていることに、これが双子なのかぁ、とゆらぎは妙な感想を抱く。そして、二人がゆらぎを見つめているのに気づくと、今度は自分の番なのだと悟った。
「えっと、獅子夜ゆらぎです。クーニャのエリア6出身……というか、今回の卒業はエリア6の番なので、ご存知かと思います。兄弟はいなくて、両親と暮らしていました。あとは……その、特には」
他に何か言うことはあったかと空回りする思考の中、「よろしくな!」と左近が肩を組んでくる。おずおずとゆらぎは「よろしく……お願いします」と二人に改めて挨拶の言葉を告げる。
「ええ、よろしくお願いします」
ようやく家主であり、正体不明の相棒である右近の表情が和らいだのを見たためか、ゆらぎの体から力が抜ける。
その瞬間、盛大な腹の虫の音が鳴った。
「……」
「……」
音の出どころを確認する双子に対し、ゆらぎは顔を真っ赤にさせながらも俯く。
「���事にしましょうか」
「そうだな」
「あの……本当にすみません」
右近と左近の「気にするな」の言葉が重なった。
こっちです、という右近の案内で、ゆらぎはリビングへと案内される。彼の一人暮らしというには、テーブルやソファなどは広々と置かれていた。
ゆらぎは案内されたダイニングテーブルとその椅子に座る。
「エイト・エイト」
右近の呼びかけにAIが再び姿を表す。今度はエプロンを身につけたホログラムで、完全に主人の用件を把握しているようだった。
「はいはーい、夜食だね。獅子夜くんだけでなくて、右近と左近も食べるかい?」
「ええ」
「お、エイト・エイトの夜食だ。やった、ラッキー」
じゃあ、少し待っててねー、とキッチンの方へ向かうAIと、その様子になんの疑問も抱かない双子の様子に、ゆらぎは一拍だけツッコミが遅れた。
「え、いや、AIのホログラムって料理できませんよね!?」
「エイト・エイトは起動してから長いもので……ああ言った小芝居をよくするんですよ」
ゆらぎの言葉に、あっさりと右近は返す。が、そんな理由で彼が納得するわけもなく、苦笑いを浮かべた左近が補足する。
「いや、起動してから長いって理由だけじゃないよ。ほぼ同時期に支給されてるオレのAIに料理頼んでも、温めた料理プレートをテーブルに置かれるだけだぜ。……まぁたぶんだけど、当初この家住んでたオレ含めた連中の世話している内に、ああいう小芝居というか、親みたいな対応し始めたんじゃないかな。料理の好き嫌いが全員極端だったし、いちいち対応するのも面倒な連中だったしな」
懐かしい風景だと言わんばかりの左近の表情に、ゆらぎは困惑を隠せない。
「左近さんも、この家に住んでたんですか?」
「そう。二、三年前に出てったけどな。それでもエイト・エイトの料理はうまいし、たまに食べに来てるぜ」
「たかりにきているの間違いでは?」
「いいじゃんか。右近がちゃんとメシ食ってるかどうかの、確認も兼ねてるんだし」
どうも彼の言葉通りならば、この家には複数人の人間が住んでいたようだ。この広さや部屋数も納得できる。しかし、どうみても今は隣にいる右近だけが住んでいる状況。なんとなく違和感がゆらぎを襲ったが、空腹を刺激するいい匂いが立ち込める。
ぐぅと再びゆらぎの腹が鳴った。
「今もっていくから、獅子夜くん待っててね!」
軽快な言葉と鼻歌交じりで登場したエイト・エイト。彼の周囲には、物理ハンドで運ばれている三つの器があった。
「空腹限界の獅子夜くん用、ごろごろ野菜のスープです。ブイヤベースは、この間調べた改良型を合成してみたよ」
どうぞ、とテーブルの上に並べられた器の中身は、ゆらぎがこれまで見たこともない色と形をしたスープだった。香りもまた、見た目以上に食欲をそそる。
「うまそー」
「ああ、そうだな」
先輩二人がエイト・エイトに一言礼を告げて、スプーンで口にする。その二人の嬉しそうな顔に、ゆらぎはいてもたってもいられずに、スプーンを掴んで食べ始めた。
一口で止められずに、二口、三口とかき込むように、野菜を運び込む。あつあつのスープに、舌がやけどしかけたりもしたが、それでも水を飲んで冷ますと、また次を食べ始める。
がつがつと食べるゆらぎを見て、エイト・エイトは満足そうな顔をした。
「いいねー、こんなに勢いよく食べてくれる子がいてくれると、お兄さん嬉しいなぁ。見てておいしいってのがわかるのは、本当にありがたいよね」
にこにことするAIに対し、何か後ろめたいこともあるのか、双子たちは黙って食べ続ける。それなりに好き嫌いがあった彼らは、それはもう数多くのわがままを、AIに対してぶつけていたのを後輩には悟らせないようにしよう、と無言のまま誓い合った。
「ああ、そうそう。ユタカ司令官から、明日の十時に司令室に来るよう連絡があったよ。獅子夜くんも連れてくるように、だって」
三人が三人とも食事を終えた頃に、エイト・エイトが右近に告げる。その内容に、家主は嫌な顔を浮かべた。
「もう少し遅い時間にはできないのか?」
「だめだめ、さすがに今回の一件は早めに説明した方がいいよ。獅子夜くんだって、これ以上蚊帳の外に放置すべきじゃないし」
「……」
「右近が恐れるものは、AIのオレでも分かるさ。でも、彼はスバルとは違う。彼をスバルと同一視しないって、前に約束したよな?」
「……ああ」
すまない、と口に出した右近にエイト・エイトは満足そうに笑った。
その様子を横から見ていた左近は、からかい混じりに「司令官はめちゃくちゃ怒ってたぞー。あ、でも夢見博士は普段通りで、むしろ直接搭乗の件ですっげぇ興奮してたな」と、ここにくる前の光景を告げてくる。
「憂鬱だがしょうがない。獅子夜くん、明日はファロス機関の本部に……獅子夜くん?」
これまで何も尋ねてこなかったゆらぎを不審に思った右近は、彼の名を呼ぶ。が、それに対しても返事はない。
「あ、これ寝ちゃってるな」
隣にいた左近が、うつ伏せになっていたゆらぎの肩を揺らして、その顔を確認したところ、大変健やかな寝顔を晒していた。
「まぁ、空腹も解消しましたし」
「疲れてるだろうしなぁ……部屋まで運ぶの手伝うぞ、右近」
「ああ、助かる」
今日はオレもこのままこっちに泊まるかなと零す左近は、ふとした疑問を右近にぶつけた。
「どこの部屋だ? もしかしてオレが寝泊まりしてたあの部屋?」
客間に改造されていたのは知っているが、だがこれでは寝泊まりできないかも、と彼が思った矢先に、右近から静かに答えが返される。
「……スバルの部屋だったところだ」
その説明に、一拍だけ左近は動きを止めた。
「……そっか。うん、そうだよな。あそこは、もう誰も使わない部屋だもんな」
むりやり自分を納得させるかのような口調の彼に対し、話はもう終わりだと言わんばかりに双子の兄弟は指示を出す。
「左近は、獅子夜くんの足元を持ってくれ。俺は頭側を運ぶ」
「りょーかい、了解っと」
三人を見守っていたエイト・エイトは、静かにその場から消えた。
***
都市ファロスは、中央に街で一番長い塔があることが特徴である。その塔こそが、対ペティノスに特化したファロス機関の本部であり、その塔からイカロスたちが発射される。
塔の周囲ほど街は発展しており、主要な役所、対ペティノスの防衛学校、さらにはペティノス研究や医療機関も集中していた。
逆に街の外側へ向かうほど、植物園や食肉の合成工場、あるいは交通網が可視化されており、隠されているが街の防御に関連した施設も多数ある。
人々は、そういった施設の合間合間に住居を作っていた。
「というのが、大まかな都市ファロスの構造となります。移動は基本徒歩と自動通路。あのチューブみたいなのは……自動車の一種です。あんまり俺は使わないのですが、知り合いのパイロットの中には、あれのマニアも何人かいますね」
右近からの説明に対し、ゆらぎは「はぁ」と気の抜けた返事しかできなかった。何もかもが地下都市クーニャとは違いすぎて、驚くのも飽きてしまったほどだ。
「で、今からこの塔に登るわけですが、ここはさすがにセキュリティが強固ですので、獅子夜くんは俺から離れないように。ナンバーズ権限で、一緒に司令室まで向かいますから」
「は、はい」
右近が指差す先にそびえるクリスタルのように輝く塔。下の方へはより広がっていて、細長いラッパを置いたような形だとゆらぎは思った。
入り口と思われる場所は無人で、誰もいない。エントランスとも言えない場所に右近は立ち止まる。その横にゆらぎが並ぶと、入り口が一瞬にして閉じ、光が途切れる。完全な闇にたじろぐ彼だったが、すぐに二人の前にホログラムが現れた。
「……ペンギン?」
どういうわけか現れたのは、アデリーペンギンだった。いつだったか祐介がおもしろいと持ってきた映像にあった姿のままだ。
何故と首を傾げるゆらぎに対し、隣の男に驚いた様子はない。
ーーご用件はなんでしょうか?
ペンギンから女性の声がした。合成音特有の、ぶつ切りにされた音に、これまでのAIたちとは違い随分と雑な印象を抱く。ペンギンのくちばしすら動いていない。
「ユタカ司令官への面会を予定している、神楽右近だ。同席者として獅子夜ゆらぎもいる」
ーー音声照合実施。声門に相違なし。ユタカ・マーティンのスケジュールを照会、矛盾なし。未承認の人物がいます。この人物が獅子夜ゆらぎですか?
「ああ」
右近の右人差し指がゆらぎを指した。
ーー獅子夜ゆらぎを登録します。バッジを提示してください。
指示された通りにゆらぎは卒業バッジを掲げる。その瞬間、何か光の線が複数彼を通り抜けていった。おそらくなんらかの光学センサーが、彼の中身ごと分析したに違いない。
ーー登録を完了しました。それでは、司令室へと案内します。
ぴょこん、とペンギンが跳ねて背を向けたかと思えば、一瞬にして暗闇が消えた。
「うわっ、すごい……」
全面がガラス張りの箱のような部屋が、塔の中を上昇していく。何かしら特別な作りなのだろう。都市ファロスが眼下に広がる。
「それなりに機密の多い建物ですから……都市の景観が見られる代わりに、この塔でどれだけの人間とAIが働いているのか一切わからないようになっているんです」
そんな右近の説明を話半分で聞き流しながら、広がる街と覆う空を眺め続けるゆらぎ。彼の様子に、右近はこれ以上の説明は野暮かと思い口を閉じた。
ーー司令室に到着します。
先程の女性の声が響く。再度ペンギンが跳ねて、二人の方を見た。バイバイとジャスチャーのために羽を���たつかせたペンギンが、その場から消える。その直後に見えない扉が横に開き、広い部屋に出た。
大きな窓が都市ファロスを映し出す。その窓の前に置かれた重厚な執務机には、いくつかの画面が浮かび上がっている。全体的に品のいい家具で揃えられた部屋だった。
その中央に、男が立っていた。身長はゆらぎや右近よりも高い。一眼でわかるほどに、鍛えられた体躯だ。
「待っていたよ、神楽右近君。そして初めまして、獅子夜ゆらぎ君。ファロス機関の歯車の一つ、ユタカ・マーティンだ」
友好的な挨拶、浮かべる笑みは柔らかい。けれど、顔や手に刻まれた皺も、白髪に染まった頭も、血のように赤く鋭い目も、全てが年老いた狡猾な重鎮である彼を構成する圧となる。
「今回、君たちを呼び出したのはただ一つの理由からだ。神楽右近君。私は君に尋ねよう。何故、何も知らない新人に直接搭乗などという暴挙をさせたのか」
その言葉でようやくゆらぎは、目の前にいる男が非常に強い敵意を持っているのだと気付いた。
右近が挑発的な眼差しを添えて、質問に答える。
「俺のオペレーターを迎えに行っただけです。あのままでは、まず間違いなく今回の新人は犠牲となった。大多数の命を救うために、強行しました」
その迷いない答えに、ユタカは冷笑を浮かべた。
「そのために、直接搭乗のリスクも説明せずに、たった一人の新人を犠牲にすると? 確かに、事前情報で獅子夜君のオペレーター適正が高いことは事実だ。だが、直接搭乗はオペレーターに過度の負担がかかる。まして、基礎情報を直接的に脳内にインプットする『ダイブ』直後に、乱戦を行うことがどれだけの負担になるのか、長くイカロスに乗っている右近君が知らぬわけではあるまい」
何も知らないゆらぎにも、どのような事態だったのか分かるよう、ユタカが淡々と丁寧に説明を交えて問いかけていく。昨晩あれほど左近が怒っていたのも、この説明を聞けば頷けるものだっただけに、ゆらぎは顔をこわばらせた。
少年のその様子で、ユタカはパチンと指を鳴らした。途端に室内が暗くなる。
「どうも君は、獅子夜君に説明していないことが多いようだ。改めて、ペティノスやイカロス、そして現在の戦況について説明しよう」
ふわり、と天井から三つのホログラムが降りてきた。
一つはペティノス。
一つはイカロス。
最後の一つは、地球だ。
「約百五十年前に飛来したペティノスの正体は、現状分かっていない。彼らの形状も実に様々で、飛来した直後は絶滅した動物を模したものが多かったそうだ。が、近年ではその姿に統一性も法則性もない。ただ、小型なものは素早く、大型なものはパワー重視の戦略をとることは共通している」
ペティノスのホログラムが複数に分かれ、さらに形状が数秒ごとに変化していく。
「ペティノスが攻撃するのは、人類に限られる。数が大変少ないが、その他の動植物に対しての攻撃は、人間を狙うために巻き込むこと以外はないと断言していいレベルだ。つまり、あれらの狙いは人類の滅亡である」
ここまでいいかね、とユタカからの問いかけに、ゆらぎは無言で頷いた。
「ペティノスへの有効な攻撃方法は、必ず存在する人の顔を砕くことだ。砕く、と表現したが、それは銃撃でも切断でも構わない。ただ、顔を破壊しなければ、あれらは再生を続ける。
そして、その攻撃手段として開発されたのが、イカロスと呼ばれる機体だ」
ペティノスのホログラムと対峙するように、イカロスのホログラムが横に並ぶ。しかし、その形状はどこか弱々しく、ただの骨格標本と表現してもいいほどに細かった。
「イカロスは素体と呼ばれるものを基本とし、その周囲の装甲と武器をパイロットやオペレーターの得意とする戦法によりカスタマイズしている。獅子夜君が昨日、搭乗したあの青のイカロスは、乱戦を得意とする機体であり、背に羽のような銃を身につけた形状だ。似たような戦法をとる、黒のイカロスは腕を六本つけてのガンマナイフを用いた超接近戦での乱戦を得意とする。同じ銃を使う赤のイカロスは、長距離戦でのスナイパーのような戦法を。白のイカロスは、剣と銃を使い分ける中距離型だ」
ユタカの説明により、イカロスのホログラムが複数の姿へと変化していく。そこに映るのは、確かにゆらぎが見たあのイカロスたちだった。
「さて、そのイカロスだが、操作にはパイロットとオペレーターという二人の人間が必要となっている。パイロットはその名の通り、機体そのものの操作を行なっており、オペレーターは簡単に言うとレーダーだ。ありとあらゆる信号をキャッチし、あらゆる方向からの攻撃の察知および計算による敵の動きを予知レベルで推測していく。このオペレーターの成り手は非常に少ないのだが、理由は脳負荷が挙げられている」
そこでホログラムが一旦消え、どこかの映像が流れ始めた。そこには、ボサボサな髪を乱雑に結いあげた、白衣姿の女性が映し出されていた。
「今、写っているのは夢見・リー博士だ。ペティノス研究の第一人者であり、またオペレーター適正に対して脳科学分野からの研究もしている」
画像の中の夢見博士は、気怠げな口調で論文を読み上げる。
『つまり、オペレーターたちはありとあらゆる刺激を元に、自身の脳内に仮想領域を形成しているのです。AIならともかく、常に仮想領域を展開し続け、現実と仮想の二重の視界の中で戦闘をすることは、多大な負荷となっています。
ここで掲示しているのは、イカロスで取得できる情報量を徐々に拡大していったときの、オペレーターたちのストレス値の上昇具合をグラフ化したものです。
見れば分かると思いますが、一定の法則性があります。
そして、オペレーターを続けられる限界点の存在も見えてきました。これまでストレス値への耐性や、仮想領域の形成精度には個人差がありましたが、このグラフを用いればより適正な人材の判別および、長期的なオペレートの限界点の早期発見が可能でしょう。今後の進路適正試験において、これらの情報を元にしたオペレーター適正試験も導入すべきことが分かります』
そこで、ぶつりと映像が消えた。ついで、イカロスと地球のホログラムが再び現れる。
「これらのストレス値を軽減するために、導入されたのが間接搭乗という手法だ。二重の視界をなくし、より精密なオペレートを可能とした手法で、オペレーター病とも言われた頭痛・視力低下・記憶障害および色覚異常がなくなった。それを……」
そこで、再びユタカは右近へ視線を向ける。
「右近君は、利己的な理由で、一人の人間を使い潰すつもりか」
ぎらりとユタカの赤い目が右近を睨みつける。だが、右近もまた譲れない部分があったようで、負けじと言い返した。
「使い潰すなんて、そんなひどいことはしません。確かに直接搭乗にはデメリットも多い。が、メリットだってあります。それに、機体の性能向上によりAIとの連携も進み、オペレーターの負担は減りました。最後の空中楼閣撃破を狙うのならば、タイムロスの存在しない直接搭乗を行うべきです」
突如新しい単語が出たことで、ゆらぎは「あの、」と緊張した面持ちで手を上げる。ユタカは彼の疑問を察して、地球のホログラムを指さした。
「……確かに、右近君の言うことも、もっともな部分がある。だが、私は三十年前の大敗を知っている身だ。安易に、その意見を呑めない事情がある」
彼は、地球のホログラムのとある一点を指さした。その一点が拡大され、一つの奇妙な浮島が現れる。浮島は東洋のどこかの建築物を核として、その周囲に木々が生えている、なんとも奇妙なものだった。
これは……とユタカは説明を始める。
「空中楼閣と名付けられた、高度二十キロ地点に浮かぶ、ペティノスの拠点だ。この拠点周囲での時空転移により、ペティノスは現れ、地球に襲来する。……三十年以上も前に、地球上にこの空中楼閣は五十基ほど存在していた」
絶望的だったと続くユタカの感想に、ようやく彼の暗い過去が垣間見えた。
「人類の空中楼閣撃破が、初めて為し得たのは三十年前。とある英雄たちにより、その大半が撃破されたが……そこで油断してしまったのだろうな、人類は」
ずらりと地球上のいたるところにあった空中楼閣の映像は、その撃破の映像であったが、歓喜にも似た雄叫びが流れるのとは対照的に、ユタカの声は淡々としすぎている。
「最後の空中楼閣撃破を目指した人々は、ある英雄の死により任務を失敗。歴史的大敗により多くの同朋が亡くなったが、特にパイロットを庇ったオペレーターたちがその割合を多くしていた」
スッと、司令官の視線が右近とゆらぎの間を通り抜けた。まるで、誰かが彼らの間に立っているかのように、視線が固定される。
「……同じ悲劇を繰り返さないためにも、次の空中楼閣戦において、オペレーターは間接搭乗を行うべきだ。そして間接搭乗によって起きる、目下の問題として地上と高度二十キロ地点での通信ラグについては、多くの技術者と科学者が解決方法を模索している。そう、焦るべきではないんだ」
それまでの怒りが勝った口ぶりとはうってかわった、ユタカの諭すような口調に、しかし右近は噛み付く。
「ですが、基地本部とのコンマ一秒以下のタイムロスが原因で、あの最後の大敗が起きたと言われています。オペレーターとパイロット間でのタイムロスは、それ以上に命取りなのは自明でしょう。そして、人類に残された時間が想像以上に少ないのは、俺の元オペレーターのスバル・シンクソンが証明しています」
あいつは、とそれまでにない激情を込めて右近は言葉にする。
「間接搭乗をしていたスバルは、それでも原因不明の病に倒れました。最期まで何の解決策もなく、薬も意味を成さず、原因すら不明で、この世を去ったんです。そして、スバル��ような最期を迎える人間は、年々多くなっています。今は、確かにペティノスに滅ぼされていないけれど、いずれ時間が過ぎれば過ぎるほどペティノスに抵抗する力さえ失って、滅びるのは事実です」
右近の言い分で、ようやくゆらぎは、あの広々とした家の隙間を誰が開けたのか理解した。一緒に住むほどに、彼らは仲が良かったのだろう。そして、いなくなった後そこから引っ越しすることもできないほどに、未練を残す最期を迎えたのも察せられた。
その痛みをゆらぎは感じ取った。ユタカもまた、感じてはいる。いるのだが、頷けない。
「……これは、私だけの意見ではない。同じく、三十年前にオペレーターを亡くした現見さんもまた、直接搭乗には反対している。死の重みは、平等であるべきだ」
痛々しい吐露に、現見という人物とユタカが、同じ傷を負ったのだと察せられた。それでも、右近はたたみかける。
「現見さんには、俺が言います。俺が説得します。あの人だって、時間がないのは知っているはずです」
「そこまで言うのなら、明日のこの時間に他のナンバーズを召還しよう。そこで、君一人で彼らを説得してみなさい」
私ができる譲歩はここまでだ、とユタカは告げる。そして、彼はそのままゆらぎの名を呼んだ。
「獅子夜ゆらぎ君」
「……はい」
「君は、本当に直接搭乗でいいのかね? 先程から君の様子を見ていると、何も右近君から教えられていないようだ。先程説明したように、直接搭乗には多くのリスクが存在する。そのリスクを全て了承した上で、君はイカロスに乗るのか?」
ゆらぎは、どうすればいいのか正直分かっていなかった。
卒業してから、地上に出てから、ペティノスを見てから、イカロスに乗ってから、目覚めた先の空虚な部屋を見てから、右近の周囲の人間を知ってから……ありとあらゆる場面で、激情とされる何かは顔を見せていた。だが、その感情の正確な名前は分からない。それがどんな意味を持つのかも、彼は知らない。ただ、理解していることは一つ。
「おれは、まだ何一つ分かりません。分からないから、とりあえず右近さんと一緒に、イカロスに乗り続けようと思います」
「……そうか」
ゆらぎの答えに、満足はしていないユタカだったが、それでも一つの区切りとなったらしい。要件は終わりだと彼は告げて、退室を促す。それに右近は無言で頷き、ゆらぎは丁寧な礼をして去っていった。
再び、二人は都市ファロスを見下ろす見えない道を辿って帰っていく。その後ろ姿を見送ったユタカは、誰にも聞こえないことをいいことに、独り言を零した。
「きっと、こんな中途半端な私のことを卑怯者だとも言ってくれないんでしょうね、海下先輩と高城先輩は」
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各地句会報
花鳥誌 令和5年9月号
坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年6月1日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
草取れば天と地しばし離される さとみ 沙羅咲きて山辺の寺の祈りかな 都 神官の白から白へ更衣 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月2日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
読み辛き崩し字祖父の夏見舞 宇太郎 滝飛沫祈りて石を積む人へ 栄子 担当医替る緊張なめくぢり 悦子 青葉木菟声を聞きしは一ト夜のみ 史子 黒を着て山法師てふ花の下 すみ子 砂丘拍動遅滞なく卯浪立つ 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月3日 零の会 坊城俊樹選 特選句
病院の跡へ南風の吹き抜ける 季凜 梅雨の石積むもののふの墓暗く はるか 十薬とは屍を小さく包む花 和子 もののふの山が鳴るなり青葉風 はるか いとけなき蜘蛛も浄土を知りつくし 順子 菩提寺は城を見上ぐや男梅雨 慶月 ナースらの谺を追うて枇杷熟るる 順子 階段をのぼるつま先街出水 小鳥 青梅雨のしづくすべてが弥陀のもの 光子 罠であり結界であり蜘蛛の糸 同
岡田順子選 特選句
墓守のアパート三棟蕗の雨 風頭 眼をうすく瞑る菩薩の単衣とも 俊樹 アトリエへ傾るる大樹枇杷たわわ 眞理子 真夜中の泰山木の花は鳥 いづみ 青梅雨のしづくすべてが弥陀のもの 光子 昼顔は雨の列車にゆらされて きみよ 行き先を告げよ泰山木咲けば 和子 夏菊や南無遍照と一家臣 慶月 梅雨出水過ぎて正気を歩きをり いづみ 青梅雨の真黒き句碑が街映す 小鳥
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月3日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
点ほどの人の生涯芝青し 朝子 青芝にまろぶフレンチブルドッグ たかし 海亀の孵化高精細の大画面 勝利 水郷の蛍のなかに嫁ぎゆく 孝子 子供の日クレーンは空へ置き去りに 久美子 特攻の話し聞く夜の蛍かな たかし 日輪は地球の裏に蛍の夜 睦子 青芝を犯す少年のスパイク 同 黴の中遺されしもの錆てゆく 美穂 舞ふものゝ影をも流し梅雨の川 かおり 袋ごと枇杷をもげよと檀太郎 睦子 亡き父のジャズ沁み込みし籐寝椅子 たかし ハーレムの少年 青芝にいのちの次のスニーカー 修二
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月5日 花鳥さざれ会
少年の少女の昔あめんぼう 雪 ふる里の水の匂ひにあめんぼう 同 風みどり故山の空を吹きわたる かづを あめんぼう映れる雲に乗りゐたり 同 水馬水のゑくぼに乗り遊ぶ 泰 俊 名刹に雨を誘ふや水馬 同 売家札とれて漏るる灯蚊喰鳥 清 女 強かに生きて卒寿の髪洗ふ 同 緑陰に栄華の茶室古りしまま 希 落武者��子孫が育て花菖蒲 千代子
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令和5年6月7日 立待俳句会 坊城俊樹選 特選句
紅薔薇や三國廓址の思案橋 世詩明 更衣恋に破れて捨てがたし 同 水芭蕉分水嶺の聖なる地 同 夏帽子振つて道草してゐる子 清女 鳴く顔が見たくて覗く蛙の田 同 読み終へし一書皐月の朝まだき 同 鋏手に赤き手袋バラ真赤 ただし 浦人の少年継げる仏舞 同 欲捨てて今日も元気蜆汁 輝一 紫の色をしまずや花蘇枋 同 一番星遠ち近ち蛙鳴きはじむ 洋子 手折りたる酸葉噛みつつ歌ひつつ 同 自転車を押してつつじの坂上る 誠 飛魚の羽ばたき飛べる船の旅 同 風薫る慶讃法要京の厨子 幸只
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月10日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
富士見えて多摩横山に風薫る 白陶 朽ちし色残し泰山木咲ける 秋尚 風薫るポニーテールの娘の声に 幸子 日々育つ杏とエール送り合ふ 恭子 夜も更けてたれが来たかと梅実落つ 幸子 余白には梅雨空映す年尾句碑 三無 記念樹の落ちし実梅も大切に 百合子 観音の指の先より風薫る 幸子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月12日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
浴衣着て父似母似の姉妹 清女 香水のひそかな滴人悼む 昭子 髪洗ふ心のしこり解くやうに みす枝 白鷺の孤高に凛と夏の川 清女 梅雨じめりしたる座敷に香を焚き 英美子 知らぬ間に仲直りして冷奴 昭子 夏場所や砂つかぶりに令婦人 清女 明易や只管打坐してより朝餉 同 蟇が啼く月夜の山に谺して 三四郎 白足袋の静かな運び仏舞 ただし 梅雨しとど鐘の音色も湿りたる みす枝 答へたくなきこともあり紫蘇をもむ 昭子 本題に触れず香水帰りゆく 同 水面にゑくぼ次次梅雨に入る みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月12日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
ためらはずどくだみ束ねバルコニー 和魚 釣堀の揺るる空見てゐるひと日 秋尚 何も手に付かぬひと日や五月雨るる 秋尚 どくだみの清潔な白映す句碑 三無 十薬の匂ひの勝る生家門 聰 どくだみの苞白々と闇に浮く 和魚 五月雨にふくらんでゐる山の湖 怜
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月13日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
目を染めて麦の秋へとなりにけり 光子 短夜の夢も短き目覚めかな 文子 子の植うる早苗の列の右曲がり 登美子 バースデーソングと夏至の雨響く 実加 羅の受付嬢はちよと年増 みえこ 色街の女を照らす梅雨の月 登美子 五月雨真青な傘を買ひにけり あけみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月13日 萩花鳥会
車椅子頼りの暮し梅雨籠り 祐子 革ジャンに沁みた青春黴生ふる 健雄 玉ねぎの丸々太る五月晴 俊文 亡き夫の捨てられきれぬ黴ごろも ゆかり 雨蛙降り出す庭で鳴き交はす 恒雄 星々に瞬きかへし舞ふ螢 美惠子
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令和5年6月16日 さきたま花鳥句会
大胆に愚痴を透かして青暖簾 月惑 紫陽花や小走りに行く深帽子 八草 まな板も這ふらし夜のなめくじら 裕章 夕まぐれ菖蒲田の白消し忘れ 紀花 屋敷林青葉闇なる母屋かな 孝江 鐘供養梵鐘の文字踊りけり ふゆ子 漣の葉裏に返る新樹光 とし江 花手水薄暑の息をととのへり 康子 風薫るいまだ目覚めぬ眠り猫 みのり 花菖蒲雨に花びら少し垂れ 彩香 短夜や二日続けて妣の夢 静子 耳かきの小さな鈴の音初夏の夜 良江
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令和5年6月17日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
登山者が供華に挿し行く地蔵尊 やす香 蟬一つ鳴かぬ光秀忌を修す ただし 桃色の若き日の夢籐寝椅子 みす枝 村百戸梅雨のしとどに濡れそぼつ 同 空き箱に色褪せし文梅雨湿り やす香 西瓜買ふ水の重さの確かなり 同 薫風や見上ぐるだけの勅使門 真喜栄 そよぐには重たき鞠や濃紫陽花 同 花菖蒲咲かせ半農半漁村 千代子 日の暮れて障子明りに女影 世詩明 香水の女に勝てぬ男かな 同 早苗饗や上座に座る村の長 同 春深し遊び心の雲一つ 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月18日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
蜻蛉生る山影ふかきむじな池 芙佐子 むじな池梅雨闇の棲むところかな 要 朝まだき甘き匂ひの蛍川 千種 田の隅の捨苗萎れゆく日差し 芙佐子 大方は夏草となる畑かな 秋尚 過疎村に農大生の田植笠 経彦 行き止る道に誘ふ夏の蝶 久 蚯蚓死すむじな池への岐れ道 千種 捩花の螺旋階段傾ぎをり 斉 道をしへ夜は蛍の思ひのまま 炳子 故郷の水田へ草矢打つやうに 要
栗林圭魚選 特選句
蜻蛉生る山影ふかきむじな池 芙佐子 六月の谷戸のすみずみ水の音 三無 蚯蚓死すむじな池への岐れ道 千種 虎尾草より風生まれをり流れをり 久 どんよりと新樹映して濁り池 要 源五郎さ走る田水光らせて 久子 桑の実や落ちては甘く土を染め 三無 万緑の中の水音澄みてをり ます江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月21日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
故里の百年の家花石榴 啓子 巣作りの青鷺歌ふ高らかに 千加江 母に詫び言はねばならぬ梅雨の入り 昭子 幹太くなりたる樹々の夏の午後 雪子 衣替へして胸に白すがすがし 同 梅雨の灯に猫の遺影と娘の遺影 清女 寝返りを打ちても一人梅雨の月 同 枇杷啜るこつんころりと種二つ 希子 女子高生混じる一人に黒日傘 数幸 観世音御ンみそなはす蛇の衣 雪 観音に六百年の山清水 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月22日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
あめんぼうてふ名に滑る他は無し 雪 九十二の更衣とはこんなもの 同 白鷺のいよいよ白き青田かな 同 蛇の衣こんな綺麗に脱がずとも 同 落椿描ける女人曼荼羅図 同 殉国の遺影と父の日を終へり 一涓 青春に戻りて妻と茱萸を捥ぐ 同 門川の闇を動かす蛍舞ふ みす枝 母の日の花は枯れても捨てきれず やすえ 一番星あちこち蛙鳴きはじむ 洋子 草矢打つ程の親しき仲でなし 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年6月25日 花鳥月例会 坊城俊樹選 特選句
紫陽花や伐らねば夜の重くなる 要 打水はインド料理の香をのせて はるか 炎帝の満を持したる神の池 要 炎天へ柏手打てば蹌踉ひし 順子 靖国は蒼くなりけりサングラス 緋路 雨蛙虫呑みてすぐ元の顔 裕章 サングラス胸にひつかけ登場す 光子 魂となる裸電球祭待つ はるか
岡田順子選 特選句
押し寄せる蓮のひとつに蓮の花 俊樹 紫陽花や伐らねば夜の重くなる 要 凡人てふ自由たふとし半夏生草 昌文 蓮原の沖に宮城あるといふ 光子 内堀の夏草刈られ街宣車 要 混ざり合ふ手水と汗の掌 緋路 祭の準備指揮をとる大鳥居 みもざ 水馬ふたつの天のあはひゆく 裕章
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年5月22日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
蛍狩り娘の掌のがれて星となる 世詩明 更衣恋の火種を残しけり 同 少年を仰いでをりぬ青蛙 昭子 うまいとも言つてくれぬが菜飯炊く 同 子よりまづ泳ぎ出したり鯉幟 一涓 夏暖簾廊下に作る風の道 紀代美 喉鳴らし母乳呑む児や若葉風 みす枝 目に見えぬものを脱ぎたり更衣 洋子 青鷺が抜き足差し足田を進む やすえ 一院のかつて尼寺白牡丹 雪 蝸牛角を突いてゐる女 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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