#かえる カエル 育成ゲーム
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ふわふわしている以外は何もわからない!?
見つけたら図鑑を見てみよう!!
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リチとの遭遇(冒頭試し読み)&通販のお知らせ
こたつの天板をひっくり返すと麻雀のラシャだった。あの緑色が現れると夜だった。布端がちょっとほつれて毛羽立っていて、直行はいつも焦れったかった。剥がれかけたかさぶたを引っ掻くみたいに手が伸び、びーーっと引っ張りたくてたまらなかったが、あれは父とその友人、あるいは伯父たちが夜な夜なジャラジャラやるためのものだった。勝手に触ると叱られそうな気がしてがまんしていた。 母家の隣のプレハブ小屋だ。父たちはしょっちゅうそこに集まり、ときには半裸になって酒を飲んでいた。母や祖母はほとんど来ない部屋だった。酒とかつまみとかを運んで溢れた灰皿を交換する役目は直行だった。夏の小屋はかなり蒸すが、窓も扉も全開にして扇風機をまわしておくと夜風が涼しかった。 ぶおお……ぶおお……と風に乗って鳴き声が響く。あれは牛蛙だと祖父が言った。火を通すとささみみたいだがあまりうまくはない、ただし唐揚げにすれば鶏か蛙かわからない。直行は、六年生になったら授業でカエルの解剖をやる、一人一匹カエルを与えられて必ずお腹を割かねばならないと上級生からおどかされていたため、いつまでも響く鳴き声が怖かった。そうしたら祖父が励ますみたいに「鳴いているのはみんな雄だ」と教えてくれた。変な励ましだと思った。 日が暮れる。父は小屋に向かう。麻雀牌にベビーパウダーをまぶし、夏場は長い時間やっているうちに牌と牌が汗でくっついてしまうからで、直行が赤ん��のころ汗疹やおむつかぶれにはたかれたのと同じ粉だった。いそいそと作業する父の背中は汗ばんで、太い首が桃色に染まっていた。小屋の中を甘いにおいでいっぱいにして仕度し、父は客を待った。そうしていいにおいは男たちの汗やたばこでたちまちぐちゃぐちゃになった。 牌は杏仁豆腐みたいに見えた。しっかり固くて、スプーンを押し当てたらすとんと切れる、甘いシロップの中に浮かんでいる……。牌山を見ているとひんやりと甘い味が口の中によみがえった。甘味が虫歯に滲みる気さえした。あるいは父たちのツモったり切ったりの手つきは寿司職人みたいだと思っていた。伏せられた牌の白色はシャリで、背の黄色は……、黄色いネタって何かな。沢庵とか卵とか。もしくは辛子を塗られた? そんなもの見たことはないがたぶんバラエティ番組の罰ゲームっぽい何かが頭にあった。直行がじっと見ていても父も誰も麻雀のルールを教えてくれなかった。そばで携帯ゲーム機をいじりながら勝手な想像ばかりしていた。 父の後輩らしきちょっと若い男。日焼けした体がケヤキの若木みたいで、背中も眉も額も、体の全部がまっすぐだった。定規で引いたみたいな輪郭だと直行は思った。彼が「ロンです」と控えめに発声する感じがいいなと思っていた。あ、ロンです。あ、ツモ。おとなしく勝つ感じが格好いいもののように思えた。ただどうもロンとかツモとか宣言しても必ずしも勝ちとはならないようで、直行にはますます謎めいていた。 昼。男たちがいなくなったあとも直行はそれについて考えた。授業中や掃除の時間にふと思い出した。ポン、チー。卓のあっちからこっちへやりとりされる点棒。あれは算数セットの何かに似ていなくもない。小屋の麻雀はいつも長い時間やっているから直行は途中で寝てしまうこともあり、誰かが布団へ運んでくれた。男の横顔。彼はたばこを吸わない。漬物の茄子を齧るとき、汁がこぼれないようにあるいは惜しむように、口に運んだ箸をちょっと吸う。直行も真似をしてみたが茄子漬けを好きになれなかった。においも感触も苦手だった。鉢に残った漬け汁の青色は朝顔みたいな色だと思った。授業で育てた朝顔。直行のだけ成長が遅かった。みんなが実をスケッチしたり種を収穫したりしているころ、直行の鉢だけまだ青い花を咲かせていた。 苦手だとわかっているのに客の前で見栄をはり、茄子を口に入れたら飲み込めなくてべえっと吐いた。父はべつに叱らなかったが声をかけてくれるでもなかった。若い男がティッシュをとってくれた。しゅっしゅっとすばやく二枚。二枚も��って母親に怒られないかと、小屋にはいないのにとてもどきどきした。そうして若い男は出し抜けに「子どものころ学校のトイレでうんこするのが恥ずかしくて、体育館横のトイレは幽霊が出るって噂を流したよ」と言った。おれ専用のトイレにしたんだと笑った。 鳴いている蛙はみんな雄だ。いつかの祖父の励ましは理屈として通らないと思ったが、あれは理屈を言いたいわけではなかったのだとしばらく経ってからふと思い至った。体育館でマットを運んでいたら急にそう思った。たんになぐさめようとして言葉を継いだのだ。直行の学校は体育館の横にトイレはなかった。渡り廊下がいつも薄暗かった。 それならばと直行は思い、父たちのいない昼のうちにこっそりラシャのほつれを毟ることにした。学校から帰ってきてそっと忍び込み、昼間の小屋はかえって薄暗かった。カーテンの隙間から差し込む光が埃の粒子に跳ね返り、光の道筋を作ってキラキラしていた。直行は口を開け、ぱくっぱくっと空気をかじって吸い込んでみた。キラキラが埃だというのはわかっていた。汚い粒が自分の胃袋に溜まっていく背徳感に酔った。 天板を浮かせて隙間に手をつっこみ、布端を探った。天板は重く、指を挟むと爪がぎゅっと白くなった。痛くはないが圧迫される感じがよかった。思ったより少ししか糸はほどけず、びーーっとはならなかった。千切った糸は絨毯の裏に隠した。すっかり擦り切れたパンチカーペットで、タバコの焦げ穴があいている。直行の人差し指がちょうど嵌まる穴。そこに指を突っ込むのが好きだった。自分の指が芋虫になって絨毯を食う。きっと穴はどこかちがう場所につながっている。ワープ。そのころ髪を抜くのもちょっと癖になっていて、ぷちっと抜いたときの案外痛くない感じがやみつきになっていた。根元の白いかたまりが大きいとうれしくて、いい感じのかたまりが取れるまでぶちぶち抜いた。抜いた毛も糸と一緒に絨毯に挟んだ。 直行は一人で小屋に入り浸るようになった。毎日緑の布地をこすった。父たちがラシャと呼んでいたからこれはラシャなんだろうなあとおぼえたが、本当はもっとちがう名前があるのか、このような敷物がラシャというのは世の中の常識なのか、直行にはわからなかった。ラシャは音を消した。酔った父たちのでかい声に反し、牌を切る音はことんことんとおとなしかった。おらっとふざけて乱暴な打牌をすることはあったが、それでも大した音は鳴らない。寿司っぽい。寿司のことはよく知らないけど。白い調理服の男のイメージ。たまに連れて行ってもらう回転寿司は若いアルバイトとおばさんのアルバイトが多く、ちょっとちがった。伯父は醤油をむらさきと呼ぶ。伯父の太鼓腹には盲腸の手術��がある。盲腸の痛みがいかに大変だったか、伯父は大仰に語り直行を怖がらせたが、手術跡というのは格好いい気がしていた。酔った伯父のひたいはてかてか赤く光った。 重い天板に手首の骨のところをわざと挟んでみて、痛くないのに痛がってみた。手がちぎれる! 罠が仕掛けられていた! 鰐に噛まれた! そういう想像。なかなかいい演技だったと直行は思うが一人きりでやっていたことなので誰も見ていない。昼間の小屋には誰も来なかった。やがて自慰を覚えた。 挟まれる感じといえば、重たい布団に押しつぶされるのも好きだった。押入れに積まれた布団の間に体をねじこみ、圧迫される感じがうれしかった。そしてそういう喜びは人に知られてはいけないものだろうと直感していた。これは誰にもばれてはいけない感情だと直行は噛み締めた。 でも従兄弟たちは察していたのかもしれない。集まった子どもたちで床にうつぶせになって何人も重なる遊びをよくやっていて、直行は一番下にされがちだった。その遊びのことはペチャンペチャンと呼んでいた。一番下はじゃんけんで決めようとは言うが小さい子が下になってはかわいそうだともっともらしく言われ、だいたいいつも直行が下敷きになった。どんどんみんな積み重なって、他人の体と密着したのはこれが最初の記憶かもしれない。自分ではない体のぐにゃっとした重さや熱。におい。 二つ上の従兄はそんなに背が高いわけではなかったが腕や足が骨っぽくて重かった。のしかかられると日焼けした腕にうっすら毛が生えているのがよく見えた。従兄の輪郭も定規で引き直されつつあると思った。直行が重いと叫ぶと毛が揺れた。草原だと思った。自分のとはちがうよその家の服のにおいがくすぐったかった。ペチャンペ��ャンをやっていると母たちに叱られた。内臓が破裂しちゃったらどうするの。直行はそのスリルにもひそかにドキドキしていた。ペチャンペチャンは三人目くらいから腹がぐっと押され、潰される感じで、苦しい苦しい、痛い痛い、ぺちゃんこになっちゃうよと直行はわめいた。ほんとはそんなに痛くなかった。痛みよりも快感があったのだが、ごまかすみたいに苦しいと叫んでいた。 やがて従兄は中学生になり麻雀の輪に入っていった。卓を囲む四人の男たち。じゃあ、従兄が入ったぶん誰が抜けたのだろう。それとも誰も抜けずに仲良く交代で? 疑問に答えは出ないまま、やがて直行が中学に入るころには父たちはあまり集まって遊ばなくなった。若い男は結婚し、子どもが生まれたときいた。直行は小屋をもらって自分の部屋とした。
5/21文学フリマ東京の新刊です。3万字くらいの短い小説で、薄い文庫本です。
通販開始しましたのでよかったら覗いてみてください〜
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#愛する人へふたたび #愛する人へ2 #ヒマだからネット個展 #ギャラリー . . . 2019年夏の8月1ヶ月間でした。 三重県津市一志町田尻の松尾表具店内、 松尾画廊にての、 岸野雅樹・第11回個展『愛する人へ 2 』 来場者こそ少なかったものの、私の精神は最高潮でした。 この広い世界ではじめての1があり、2のある、シリーズものの個展。 『愛する人へ 2 』 僕は個展開催中はひたすら家で呑んだくれてました。 会場ほったらかして。 まぁ、見る限りの作品が並びました。 マスターカラーはみどり。 この個展で、最終的に僕の個展や絵を反省すると、 『💦僕ってみどり色しか使ってないな』 インターネット化された今の時代では、ネットで個展を見る事もできますけど、その個展の空間表現を3D化して、個展会場にまるで居るかのようなネット3D個展って、画期的でもないほど、普通に考えたら可能性ありますよね。 このインスタでは2Dでしか無理ですけど。 まぁひとつご覧になって行ってください。 火の鳥の絵が、僕が第1回の時に、21歳でデビューした個展の主役でした。 その火の鳥を踏まえて、みどり色で様々な世界を彩った個展が、2019年、三重県津市一志町田尻の松尾画廊で開かれて居ました。 松尾画廊では、マンスリーギャラリーと言って1ヶ月間会場を貸し切る事も可能です。 丁寧な店主夫人と、少しいやらしい画廊主である、松尾表具師が今でも経営しています。 松尾表具店には長年お世話になりました。 もしこの投稿を見かけて(♡ᴗ͈ˬᴗ͈)、松尾画廊で個展を開きたいという方は、美術大艦で調べてご一報ください。 個展や、様々な展覧���、大きな会場での絵の展示など、テレビ番組などのドラマでそれが紹介されるより、お客様にとっては華やかな世界には見えるでしょうけれども、 個展、展覧会、ともに、本当に毎日の地味な努力の集積で、その華やかな舞台は成り立って居ます。 その舞台がお客様に華やかに見えれば見えるほど、その下積みや準備作業は果てしなく地味なものです。 たとえば、僕がMaco氏を描いたS50号の『ゼフュロスとフローラ』がありますが、あの1枚は、コピー用紙の3000枚〜5000枚の線の練習から成り立って居ます。 5000枚も線を練磨すると、Maco氏の写真の姿の線をキャンバスに描いた時、線だけでもう充分に愛らしく可愛いものでした。 いま、いろいろあって、僕は今そのMaco��にこの世界というよりもまずこの日本の広さから思い知らされて居ます。 タブレットの𝐓𝐢𝐤𝐓𝐨𝐤で配信系🈁アプリ美女図鑑を作って居るのですが、もうひとつの配信アプリをマラソンして駆けずり回るだけで、様々な女性と出会い、様々な人間を見ました。 ほんの、まだ元旦バージョンとBIGO LIVE.大阪女子編を作っただけなんですけど。 そのタブレットの𝐓𝐢𝐤𝐓𝐨𝐤のアカウントは@kyary_0413 です。 まぁ、でも、いいんじゃないスか? 井戸の中の蛙大海を知らずとはさ、言うものの、カエル🐸って淡水生物やろ?? 海の塩水にカエル🐸が飛び込んだらカンピンタンになって干からびるねん。 この世界は広いけど、全てを知ろうとすると全てを失うから、 この世界の広さすべてを知る必要なんか無いねん。 あなたが見てる世界を少しずつ広げていけばいいだけ。 あんまり極端に世界の広さを思い知ると疲れるだけだから、 とりま、このネット個展の『愛する人へ 2 』だけでも見てって??? まぁ、この広い世界のひとカケラとして、こんな世界もあるねん。 . . . . . #一般社団法人亜細亜美術協会 #一般社団法人社員画家 #亜細亜現代美術展 #ワンセブンライブ奏蒼 #17ライバー奏蒼 #ほとんどの配信アプリでキャリさん #美女たちの森と沼 #奏蒼マジック #変態枠 #世界のピンク枠 #broadcast #livestreaming #BIGO #REALITY #ゲーム配信 #宮崎県産まれ三重県育ち #統一を諦めない精神は多様性を称揚する #否定ほど芸術に多くを与えるものはない #似顔絵 #ギリシア神話画 #世界一の画家になるために #ミルダム顔出し配信キャリさん #もうすぐ𝐓𝐢𝐤𝐓𝐨𝐤ライブ始めます https://www.instagram.com/p/CnTy4FnO6bE/?igshid=NGJjMDIxMWI=
#愛する人へふたたび#愛する人へ2#ヒマだからネット個展#ギャラリー#一般社団法人亜細亜美術協会#一般社団法人社員画家#亜細亜現代美術展#ワンセブンライブ奏蒼#17ライバー奏蒼#ほとんどの配信アプリでキャリさん#美女たちの森と沼#奏蒼マジック#変態枠#世界のピンク枠#broadcast#livestreaming#bigo#reality#ゲーム配信#宮崎県産まれ三重県育ち#統一を諦めない精神は多様性を称揚する#否定ほど芸術に多くを与えるものはない#似顔絵#ギリシア神話画#世界一の画家になるために#ミルダム顔出し配信キャリさん#もうすぐ𝐓𝐢𝐤𝐓𝐨𝐤ライブ始めます
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ボードゲームをインクルーシブデザインの手法を使ってプロダクト改善する その1
こんにちは、株式会社コンセントで、人事を担当している山本和輝です。初めてこのブログの記事を担当させていただくことになりました。今回は、現在、社内で進行中の企画「著作権ボードゲームをインクルーシブデザインの手法を使ってプロダクト改善する」に人事として携わった感想をご紹介できればと思います。
実は私、コンセントに入社してまだ1年経っておらず、デザインとはまったく縁がないシステム屋さんから転職をしてきました。当然、今回ご紹介するようなプロダクト改善などやったことがありません。ただ、まったくの素人でもインクルーシブデザインの手法を使ってみると見えてくる改めるべきところや素人だからこそ感じることというのがあり、こういった取り組みの新鮮さや驚きをお伝えできればと考えています。
さて、前置きが長くなりましたが、この企画は、2018年度に制作した「著作権ボードゲーム」をベースとしています。著作権にまつわる問題に解答し、正解ならばサイコロを振って駒を進めることができるという、クイズと双六を組み合わせたシンプルなゲームです。
2018年度に制作した著作権ボードゲームの問題カード
コンセントの業務柄、社員が著作権に対する理解をしっかりと深めていく機会として、この著作権ボードゲームを新入社員研修に活用すべく、私も本企画にメンバーとして参加させてもらいました。
経緯
そもそもこの「著作権ボードゲーム」をインクルーシブデザインの手法で改善するという企画のきっかけは「辻さんといっしょに遊びたい」というシンプルな思いからでした。 全盲のエンジニアである辻さんは、コンセントで推進しているインクルーシブデザインをドライブさせるスペシャリストとして、私と同時期にコンセントに入社しています。仕事はもちろんのこと会社生活をいっしょに過ごす中でもなかでもいろいろな気づきや発見があるのですが、その中でも「電車でGo!!」や格闘ゲームを辻さんが遊ぶという話を聞いて、「一緒にゲームを遊んでみたい!」と思ったのがきっかけです。 そして改善するなら、単に視覚障害者が遊べるゲームとしてではなく、視覚障害者とともに改善・開発したゲームにチャレンジしたい!と思い立ち、「インクルーシブデザインの手法を使ってプロダクト改善」という企画になりました。
企画の流れ
冒頭から単語として出てきている「インクルーシブデザインの手法」ですが、これはこれまでデザインプロセスから除外(exclude)されてきた多様な人をリードユーザーと呼び、共に(include)考え、開発していくデザイン手法を指します。今回の企画も、社内から組織を横断していろいろなメンバーが参加していて、さまざまな観点からプロダクトの改善を行っています。
昨年の2019年10月から企画がスタート。まずは、メンバーでアイスブレクと認識を揃えることも兼ねて「著作権ボードゲーム」や、他のカードゲームなどを実際に遊んでみました。著作権という法律にまつわる小難しい話もゲームとして遊びながら学べるので、とっつきにくさが減っていたり、解説がカエルのキャラクター同士の会話で書かれていたりと、わかりやすくするための工夫がいろいろなところにされていました。 プロダクトの改善としては、実際に遊んでみて、メンバーが感じた課題点を挙げ、どうすればその課題が解決できるかを議論し、次の回で、改善案を実装した状態でゲームを遊んで検証するということを繰り返していきます。 最初は、普通に「著作権ボードゲーム」をするだけでも「すごい!」と思ったものですが、同時に遊んでみるなかでいろいろな改善点も浮かび上がってきました。
例えば、こんな改善点がありました。
著作権という法律をテーマに問題が作成されているので、問題が設定している状況が聞いただけだとイメージしにくく、また同音異義語などが判別できないため、イラストや問題文の「漢字」を見ないとわからない。
解説にでてくる専門用語が難しい。
問題文の読み手によって、聴きやすさやわかりやすさに差が出る。
カードが小さくて見づらい。
リードユーザー(辻さん)ならではの課題としては
サイコロのマス目がわからないので、「サイコロを振る」という行為そのものに疎外感がうまれる。
双六が見えないので、自分が何番目の順位なのかわからない。
問題を聞いただけでは内容が覚えられないことがある。
この改善をしていて面白いなと思ったのは、障害のある人とそうでない人が感じる課題の差異と共通点でした。
差異のところでは、双六にまつわる部分が印象的でした。辻さんにサイコロを振ってもらってマス目を伝えたり、双六の進み具合(順位)も適宜伝えれば良いと思っていたのが、実は疎外感を生んでしまっていたり、逆に共通点については、例えば、問題文などは最初安直に「辻さんは目が見えないから、問題文が書かれているカードは使わずに、読み上げ形式にしよう!」と改善をしたところ、結局全員聴いただけでは問題文の内容をしっかりと把握できず、答えを考えている間に問題を忘れてしまったということがありました。
このようにインクルーシブデザインの手法によるプロダクトの改善は、視点の違いによる課題感の差異や共通点がはっきりとわかるところにメリットがあり、同時に面白さでもあると思います。実際にやってみても「まさかそんな所につまずきのポイントがあったとは!」と驚くことばかりです。
課題に対して、障害のあるユーザーも共に楽しめるゲーム体験にするにはどう��った工夫が必要なのか、また、どういった要因がゲームを面白くないものにしているのか、実際に遊んでみた印象や認識の違いを議論し、ゲームに落としこんでいっています。 わかりやすくなるように改善したら、ゲームのテンポが悪くなって面白くなくなるといったこともありバランスの調整が大変です。
具体的に改善したものをひとつとして、例えばさきほどの「双六が見えないので、自分が何番目の順位なのかわからない」という課題については、双六のマス目に凹凸をつけたり、駒をプレイヤーごとにまったく違う形のものにすることで、辻さんが自��のタイミングで順位や進捗を把握できるように改善しました。
このように試行錯誤を繰り返しながら、色々なユーザーが楽しめるゲームとしての完成を目指して改善しています。
「インクルーシブデザインの手法」というとすごく難しそうなイメージがあったのですが、やってみたら意外とシンプルで、プロダクト改善以外にも人事のいろいろな仕事のなかで使えるものだと思いました。
人事としては、4月に実施される新入社員研修でこのゲームを使った著作権の学習と、このプロダクト改善のプロセスそのものも知ってもらいたいと思っています。 コンセントの仕事は常にクライアントがいて、その先のエンドユーザーがいて、その中でどうやってデザインを使ってクライアントの課題を解決していくかを考えていかなくてはなりません。
4月に新たにコンセントの仲間になる新入社員のなかには、美大でデザインを専攻した人もいれば、一般大でデザイン以外の分野を専攻している人もいます。そういった色々なバックグラウンドを持っている人が、このインクルーシブデザインの手法を使ったプロダクト改善のプロセスに触れることで、コンセントの掲げる「デザインでひらく、デザインをひらく」難しさとその先にある楽しさを知ってもらえたらと思っています。
———
山本 和輝
人事。仕事でも研究でも人の「キャリア」にまつわることを仕事にしています。コンセントでは、育成や採用などHRにまつわる様々な仕事を担当しています。デジタルハリウッド大学 非常勤講師 担当講座「現代社会学/キャリアデザイン学特講」
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ソラユメ雑感
2018年は新規ゲーム1本もやらなかったようですが、2019年はやってたことをやっと思い出しました。
というわけで『ソラユメ』うろ覚え雑感です。
田舎で骨董品店を営む家の娘さんが魔の指輪を嵌めてしまったことで悪魔とか神とか呪いとかに巻き込まれながら成長したり恋愛したり親友と喧嘩(?)したりする、我が敬愛するTAKUYO発の読み系乙女ゲーです。
初出は2008年(PS2)。翌年PSP、2014年Vitaに移植。信頼できる筋からおすすめされてたのと、シナリオ担当が『スイクラ』の人と『死神と少女』の人ということで気になり、ていうかスイクラと世界観を同じくしてそうな気配を感じて2016年に購入し、3年後の昨年にやっと手をつけました。
さすがTAKUYO愛してる。
世界観もですが、思想が一貫してるのがTAKUYOゲーの魅力ですね……。お陰でいつでも同じ“料理”を提供してもらえる安心感があるし、他の作品に触れることで既にプレイ済みの作品をより深く理解できる。さすがTAKUYO最高です。
最近の作品と比べると描写がずいぶん薄味な気もしましたが、各ルートを進めることによって意味がわかってくるスルメぶりが際立ち、お陰で解釈と周回がはちゃめちゃに楽しかったです。受け手の読解力を信頼・期待してくれる作品だいすき。TAKUYO一生ついてく。
以下、クリア順にキャラ別感想。
■ルーエン=エグランティーン
第一印象からそんな気はしてましたが一番好きでした。黒髪マント人外長寿俺様知性わかりにくいけどたしかな愛情と頼りがい、パーフェクトです。立ち絵の表情もいちいちが素晴らしい。
CVが置鮎さんなのも良かった……置鮎さんと言えばラスボスのイメージが強いですが私はヒーロー声が好きでして、悪魔という悪役(ラスボス)でありながらその実メインヒーローであるルーエンの声が置鮎さんなの絶妙だった……これだけで伏して礼を述べられる。
本人のルートは短めにして淡白で肩透かしですらあったんですけど、他のキャラのルートでは大活躍するし、先述した通り他キャラのルートをこなすと本人のルートでの意義がわかってどんどん濃くなってくの最高でした。
あと印象的だったのが、ルーエンルートにおけるつつがなさでした。ルーエンがTAKUYO文法における“大人”で事件を未然に防いでくれるからこそなんですけど、およそ物語とは事件が起きてなんぼなのに敢えて事件が起きない物語を描くことでキャラと世界を深めてくるTAKUYO本当に脱帽する。
■朝峰涼志
ルーエンが“大人”ポジションならこちらは“子供”ポジション。無邪気にエゴが凄かったり血生臭さとか陰惨な雰囲気、何より誰も悪くないけどこうなってしまうのも頷ける絶望的な展開が、今までの我がオタク経歴として一番馴染む深いお話でした。いやぁエグかった。
■山瀬勇人
甘酸っぺえ。子供の頃から知ってるから面白ダメキャラに見えてたけど、知らないところで成長してて気づけばめちゃくちゃ頼れる男の人になってたの見事でした。幼馴染ラブの醍醐味では。「名は体を表す」感じは一番好きかも。たぶんたとえるなら“旦那”。いやほんと頼りになる。かっこいい。
■水窪一真
実質進藤鈴菜ルート。上記の通り各ルートを見るまで山瀬が“子供”枠で水窪が“大人”枠かと思ってたんですけど逆でしたねぇ……。水窪は“彼氏”って感じでした。同級生の猛攻恋愛、こちらも甘酸っぱかった。
話はややそれますが、『カエル畑』でもうっすら感じた都会disのようなものを、山瀬と水窪のルートで強く感じました。何というかTAKUYO文法における“大人”と“子供”の違いは社会性や視野の広さと感じてて、田舎の全体主義と都会の個人主義と相性が良いんですよね。
なので都会出身の水窪は洗練された印象だけど、その実自分とその周囲しか見ない“子供”。対して山瀬はなんか土臭いけど、その実社会全体に気を配れる“大人”。みたいな。それを「都会dis」と感じるのは穿ってると我ながら思いますが。
まぁでも実際のところ、水窪は両親に先立たれ大人からの庇護が乏しい環境で育っており、対して山瀬はひいじいちゃんを始め町の大人達とよく関わって育ってるから、たしかに精神的安定感に差は出そうだし、この図式って都会と田舎で発生しやすいものではあるよな……。
■進藤鈴菜
そして両親の不和で精神的安寧を得られなかった鈴菜ちゃんが、周囲への配慮を欠く主人公カップルのせいで追い詰められて一線を超えてしまうのはほんっっっっと見ててつらかったです。鈴菜ちゃんも涼志と同じく馴染む深いタイプのキャラだったので、ほんとつらかった。幸せになってほしいなぁ。
■御剣暁
なんだろう、“男”にして“人”かなぁ……。こういう一見すると優しくて頼れるお兄ちゃんなんだけど腹の底では何を考えてるかわからないし冷酷感すらある、ともすると己のために利用してきかねないキャラは苦手な部類なので、ルート見てて疲弊した記憶があります。
CVの草尾さんも私の中ではヒーロー声でして、なのに「頼れるお兄ちゃん」として無邪気に甘えられないところがつらかったんじゃないかな。このキャスティング、ルーエンと対照的でいいですね。
■餘部透
号泣した。
『スイクラ』冒頭で否定され、『カエル畑』冒頭で嫌悪された「神」にやっと出会えたの嬉しかったし、やっと井上作品の基礎を目の当たりにできて感激したし、これが井上作品の基礎なのかと思ったらもうたまりませんでした。
この作品群に出会えたことを心の底から感謝したし、力の及ぶ限りついていこうと誓いました。
■守永皐月
そういえば書いてなかった主人公。
ゲーム開始して間もない頃の「いい子だなぁ」って印象と、鈴菜ルートもとい水窪ルートにおいて無自覚に鈴菜ちゃんを傷つけてく姿への記憶が強いです。良くも悪くも“田舎”で純粋培養された“女の���”ってキャラなんだろうな……。良い悪いではなくアクは薄いとは思いました。橿野柘榴と冬浦めぐみが濃すぎる説。傾向としては菅野風羽系統かな。
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9月30日 第2回CD
この日は、日本環境教育フォーラムのカモさんによるワークショップ��参加しました。
まず初め��サイコロ2つを振って12匹のカエルを動かしていくというゲームを行いました。
サイコロの合計で出た数字のところにいるカエルが1づつ前に進んでいくというものですが、サイコロの目が出る確率でなんとなくどこのカエルが進むのかということはわかると思います。しかし、実際にサイコロを振ってみると、確率とカエルの進んでいる距離が少し違っていたりと、やってみないと結果はわからないものだと思いました。
このゲームでは、カエルを実際に動かしながら行うので、子供達にもわかりやすく楽しく確率を学ぶことができるので、とても面白いゲームだと思いました。
そして、このワークショップの本題では、「あたらしい”つよい”動物をつくろう」というものでは、恐竜を紙とペンとノリでより強くなるようにどんどんと進化させていくというものでした。
主に子供たちが楽しむための遊びだと思っていましたが、少し成長した私たちくらいの年齢になると、知恵がある分ただ牙を増やしたりするだけではなく少し変わった恐竜がたくさんできて、みんな自分の知恵を限界まで使うために大学生ながら夢中になって恐竜を作っていました。
一つのお題でもみんな全く違う恐竜が出来上がって、30人いれば30通り���アイデアが出てくると思いました。
難しいことは考えずに夢中になって行うだけで、みんなでこんなにも楽しんで行うことができるというのは、大人になったら忘れてしまいがちなことなのでこの日に感じた気持ちを忘れないようにしていきたいです。
〜次回までにやること〜
・小学校の教材に目を通しておく
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第2回 特別講義 考える力を育てるワークショップ
講義内容
この日はジャパンジェムズセンターから講師の方をおよびして、特別に講義を行なってもらった。内容としては講師の方が実際に子供向けに行なっているワークショップを実際に体験することによって、どのように子供たちに対して学びを促すことができるのかをここで学んでいった。
「さんすう」をわかりやすく伝える
講義が始まってすぐに行なったのは、サイコロを振って行うカエルレース。12匹のカエルが番号を割り振られて並んでいる。二つのサイコロを振り、出目の合計値のカエルが前に進む。そしてどのカエルが最初にゴールするのかを当てるというゲームだ。賭けの要素もあって、カエルに飴を賭けてみんなで楽しむことが可能だ。このゲームを行うことで、まだグラフで表すという概念のない子供に、それを教えることができるという。また、どのサイコロの目が出やすくなるかを予想する、という確率的な思考を育てることもできるという。
ここで重要になってくる観点は、子供が自分自身で思考する環境にしておくことだという。例えば、写真では1〜12までのカエルがいるが、サイコロを二つ振る以上、1は絶対に出ない。しかし、あえて残して「どうして1が出ないのか?」という所に気づいてもらう狙いがあって残してあるという。大人が子供の考える機会を奪っては、正解を模索していくちからが身につかないという考えがそこにはある。遊びを通じて楽しく考えるという���とを自然に行なってもらうことがここでは重要視されている。
みんなで交代しながらサイコロを振るのはとても楽しく、とても数学的な要素があるとは思えなかった。純粋にレクリエーションとしても盛り上がれる。そこのような遊びからも人間は成長することが可能なのだとここで理解することができた。もちろん遊んで終わり、ではなく、そこに使われている原理を言葉で明確化することでより定着していくのだと思う。一見して勉強の要素のないもので、実は学びに繋がっているというものが、今回の最終目標でもあるのだろう。
つよい動物に進化させよう
カエルレースのあとは進化について学べるワークショップを体験した。とても弱い生き物が身を守るにはどんな姿になったらいいだろう?と考えるものだ。弱い生き物の素体に画用紙を切り貼りして、「自分の中の最強の生き物」を作るのだ。写真は自分が製作した生き物である。びっしり鱗に覆われていて、いざという時は鱗の下から鋭いとげを立たせることで攻守一体型を目指した。草食動物である。
これも皆ユニークな生き物を生み出していたが、このようにどうすれば身を守れるか?という観点を考えさせられた。この課題は
・導入(どうすれば身を守れるか?)
・探求(実際に画用紙で進化させる)
・概念化(進化というものを知る)
・応用(じゃあもっと良い進化はないだろうか?)
といった四つの要素をサイクルにすることで構成されている。このサイクルを「ラーニングサイクル」と呼ぶそうだ。子供たちに自分たちで課題解決をする能力を身につけるために考えられたという。ここでは大人の存在はあくまで補助者であり、知識を教えるのではなく、発見させることに重きが置かれているのが特徴だ。
実際にはこんなに簡単に進化するはずもないのだが、子供達に進化という概念を教える��は単純化したりするのが良いのだとわかった。学問の入り口から難しいことを教えていくよりも、知的好奇心を掻き立てられるような入り口にした方がのちに繋がるだろうとも思えた。遊びを使って学びを得ることは一種の学びのデザインなのだと改めて実感することができた。
空間作りと安心感
これまでの他にも大切な要素がある。空間作りだ。発言のしやすい空間、楽しんで行える空間、自由に表現しやすい空間、といったものがあるのとないのとでは、子供達の学びがどれだけ伸びていくのかに影響がでるという。空間や雰囲気を作ったり、親しみやすいものから始めたりすることは本当に重要だ。身近にあるものを使用したり、知っていることをさらに発展させるということもそれに繋がるだろうか。
講義まとめ
・間違いを敢えて残す(正解を模索する機会を奪わない)
・教えようとしない(気づきを促すお手伝いをする)
・空気作りを工夫する(のびのびと活動できる空間を作る)
今回学んだことはこの辺りだ。自分が子供の時、間違えて先生に怒られるのが怖かったことを思い出す。答えのないものを探す楽しみがあの時あったとは言い難い。そうならないように、子供の着眼点や意見などを尊重しながら、学びのお手伝いができたらいいと思う。
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白砂の花びら
海沿いの俺のまちは、夏も冬も日本海からの潮風に守られている。この日はどういうわけか 普段よりずっと日差しが強く、昨日よりおとといより気温がだいぶ上昇していた。冬にはあおぐろく染まる北陸の空でも夏はそれなりに抜けるような青さを見せる。一種の雰囲気を感じて振りあおいだら、立ち枯れたみたいに生えている電信柱のいただきに、黒くうずくまる猛禽の視線と俺の視線がかちあった。
海沿いの道は温泉へ向かう車が時折走り抜けるだけで、歩いているのは俺たちだけだった。俺の半歩後ろをついて歩くユウくんはスマートフォンを構えながらあれこれ撮影している。ポロン、ポロンとこの世界に異質なシャッター音が溢れて落ちる。
バグジャンプのふもとまでたどり着くと、彼は先ほどの猛禽をあおいだ俺みたいに首をまわして仰いだ。
「映像で見るより大きい。ていうか高い。スキーのジャンプ台みたいだね」
俺の貸したキャップとサングラスが絶妙に似合わない。卵型のユウくんの輪郭にウェリントン型のフレームは似合っているのだけど、ユウくんがかけるとアスリートというより、田舎の海にお忍びでやってきたはいいけれどただならぬ雰囲気を隠そうともしないセレブリティに見える。
バグジャンプは体育館を改築した旧スケボーパークに隣接している。パークに置きっ放しのブーツと板からユウくんに合うサイズを選んでフィッティングして俺もブーツを履き、板を持って2人でバグジャンプへの階段を登った。
登り切ると眼下に日本海が広がる。日本も世界もあちこち行ったけれど、俺は今も昔もこの景色を愛している。光をたたえた海は水平線へ行くほど白くて曖昧で、潮風が俺たちの頬を撫でた。ユウくんが歓声をあげてまたシャッターを切る。
ユウくんの足をボードに固定しでグリップを締めた。いざとなったら抜けるくらいゆるく。アスリートのユウくんは自分の身体感覚に敏感だからかスタンスのチェックは一瞬だった。「まず俺が滑るから���てて。俺はスタンスが逆だけどそこは気にしないで」「トリックやってくれる?」「やんない。ユウくんのお手本だから滑って跳ぶだけ」フェイクの芝の上に板を滑らせる。重心を落として体重を全て板にのせ、軽く弾ませてスタートした。視界がスピードをもって背後に駆け抜けてゆく。軽く踏み切ってそのまま弧を描いてエアクッションに着地した。板を足から外して体を起こし、バグジャンプに取りすがってユウくんに電話をかける。「こんな感じ。ターンとかしないで普通に滑り下りればオッケー。スピードでて怖くなったら力抜いて。体重偏らせる方が危ないから。踏切のときにもどこにも力入れないで。そのまま落っこちる感じでいけば今みたいになるから」「YouTubeで見たのと同じ絵だ! すっごい。俺今北野アヅサの練習見てるよすごくね?」「俺の話きいてる?」「聞いてる聞いてる。体をフラットにして変に力入れないで、姿勢の維持だけしておけばオッケーってこと?」「そう」「りょーかあい」
ユウくんがバグジャンプのてっぺんで右手を掲げる。スマホを動画撮影に切り替えて俺も手を挙げた。板をしならせて、ユウくんがスイッチした。レギュラースタンス。腰を軽く落とした姿勢はいい具合にリラックスしている。ユウくんの運動神経に間違いはないけれど、万が一ケガがあったらという不安が喉につかえた。俺の心配を茶化すようにその姿はあろうことか一回転してエアクッションに沈んだ。
「ありえない。回転しくじってケガしたらどうすんの」
「狙ったんじゃないよ。ちょっとひねってみただけ。エアってすごく気持ちいいんだね。横の回転なら慣れてるけど縦の回転はないから、めっちゃ新鮮。空が見えるし楽しいし着地気にしなくていいなんて最高。両足固定されてるのはちょっと怖いけど」
回転数のあがったユウくんは頰を火照らせて躁気味に笑っていて、まばたきが減って口数が多くなってるのが余計に危うい。教えてくれというので絶対に無茶はしないことを約束させて、基本の滑りにもう少し解説を加え、簡単なトリックをひとつレクチャーした。もともと体ができていることもあるしユウくんの身体と脳は笹の葉のように研ぎ澄まされていて、俺の言葉の通りに体を操っていく。終いにはタブレットでお互いの滑りを録画し、「ここ、ユウくんは左に落としたいんだろうけど下半身がついてってない」だとか「アヅはこのときどこを起点に体を引いてるの?」だとか結構真面目にやってしまった。休憩のたびにユウくんは海へ体を向けて「船」だの「カップル」だの「カモメ…ウミネコ? 」だの、言葉を覚えたての子どもが看板を読みたがるように単語を頭の中から取り出して眺めていた。「ジャンプやばい。やれば���るほど考えたくなってやばいやつ。ね、夕ご飯の前に海行こ」とユウくんから言い出した。
行く、と言ってもバグジャンプを降りて道路を横切り防波堤を越えればもう砂浜だ。ボードを片付けて、軽くなった足でアスファルトを踏む。防波堤の上に登るとユウくんはまた海の写真を撮り出したので、その足元にビーサンを並べてやる。俺も自分のスニーカーを脱いでビニールに入れ、バックパックにしまう。
やや遠くから犬を散歩するじいさんがこちらへ歩いてくるくらいで、ここは遊泳区域でもないので先客はいなかった。ユウくんは「砂浜やばい、何年振り」だの「ここ走ったら体幹鍛えられそう」だの「日本海は綺麗だって聞いてたけど本当だね。うちの県の海水浴場は海藻ばっかりだよ」だの俺の相槌も必要とせず軽やかに波打ち際へと歩いて行った。
波に脚を浸したユウくんの半歩後ろにたつ。そのまっすぐ伸びたかかとのうしろで、黒や茶色の細かい砂利が水のふるいにかけられて一瞬まとまり、また瓦解していく。そこには時折海藻だとか丸まったガラスの破片だとか、たよりなくひらひらと翻る桜貝だとかが浮かんでは消え、俺はなんとなくユウくんの白いかかとその様を眺めていた。
ユウくんは「俺札幌雪まつりやる」と言い出し、それはどうやら砂で何かを造ることだったようで、黙々と建造を始めた。俺はごろんと横になって脚をのばし、自然と目に入ってきたユウくんの、キリンの子どもみたいに野生的な首筋についた砂つぶを眺めていると、風にあおられたその粒がハラハラと飛び散って俺の目に入った。ユウくんの向こうでは空が乳白色になるポイントと遠浅の海の水平線が交わりハレーションを起こしている。
キャップをかぶせているとはいえユウくんを長時間砂浜で太陽光にさらすのはよくないだろう。日焼け止めはバックパックの中に入っているけれど…そう思いながら目をしばたいているうちに意識が遠のいていく。次に目に入ったのは呪いの像みたいな謎のオブジェだった。「…それって」「どう? 自由の女神」「ゲームにとかに出てきそう。調べると誰かの遺書とかみつかるやつ」「アヅひっど。辛辣。砂と海水だけで作るの難しいね。ねえ、どこかの国にね、砂の像の本格的な大会があるんだって。砂と海水だけで最低でも高さ1m以上のものを作るの。砂浜一面にたくさん城だとかオブジェだとかが作られるんだけど、どれも満ち潮になると流されちゃうから、その日だけ。ヨーロッパっぽくないよね。その侘び寂び精神って日本っぽくない?」「侘び寂び精神?」「ほら日本人って桜が好きでしょ。すぐ散っちゃうハカナサ的なもの込みで。何かそういうこと」
ユウくんはスタイルの悪い自由の女神��頭部を指先で整える。俺たちの一身先まで波がきてまた引いていった。ここも満潮時には水がやってきて、その呪いの女神像も今夜には海に還る。
大学生になって夏休みの長さに驚いた。中高をほとんど行けてなかった俺にとって、夏休みは授業の進行を気にしなくていい気楽な期間だった。それにしたって大学の夏休みは長い。俺は授業があろうがなかろうが練習漬けの毎日だが、この2ヶ月という期間を世の大学生は一体何に使うのだろう。
大学一年生の冬、2度目のオリンピックに出てからメディアからのオファーが目に見えて増えた。俺自身も思うところがあって露出を増やすことにした。15歳のときもメダルひとつで世界が変わったけど、あのときはそれでも中学生だったからか(すぐ高校生になったけど)競技の注目度の低さからか今考えれば優しいものだった。夏季オリンピックへの挑戦を表明してからは練習練習練習スポンサー仕事練習練習といった毎日だ。調整のために海外にいる日も少なくない。
だからこの2日間だけが、きっと本当の夏休みになる。
俺も俺で慌ただしかったが、そのパブリックな動き全てがニューストピックスになるユウくんのそれは俺の比ではなかった。シーズンが終わっても出身地にモニュメントが造られたりタイアップの観光案内が造られたり、国内のショーに彼が出演すると報じられた瞬間チケットの競争率がはね上がったり。そんな彼がスカイプで「夏休みをやりたい」と言い出したときは、いつもの気まぐれだろうと俺は生返事をした。しかしそれはなかなか本気だったようで「海行ったり花火したりする‘ぼくの夏休み’的なのやりたい。田んぼに囲まれた田舎のおばあちゃんちで過ごすみたいなワンダーランド感をアヅとやりたい」と彼は食い下がった。
���俺と? ユウくんのじいちゃんばあちゃん家ってどこにあるの?」
「うちの実家の近所。長閑な田舎感ゼロ」
成人男子の頭をふたつ持ち寄ってしばし考えたものの、俺たちは家族旅行の記憶もまともにない。物心ついた頃から休日は練習だし、旅行=遠征だ。「国内がいいな。海…沖縄?」「このハイシーズンにユウくんが沖縄行ったりしたらめっちゃ目立たない?」「うううん、目立つのは仕方ないけどアヅとゆっくり過ごせないのはやだな…じゃあ何かマイナーなところ」そんな場所が即座に出てくるような経験はお互いにない。だからしばらくお互いスマホをつついてるうちに俺が「海と田んぼあって田舎で特に観光地でもない、ウチの地元みたいな場所っしょ。何もないところって探すの逆に大変なんだね」と口を滑らせたのは特に他意のないことだった。
「アヅの地元‼︎ 行きたい、スケートパークとかあのバグジャンプとか見たい。日本海って俺、ちゃんと見たことない。���ヅの家見てみたい」と食い気味に言われて面食らったものの悪い気はしなかった。知らない土地に行くより気安いし何よりうちの地元には人がいない。両親は友人を連れていくことにはふたつ返事だったが、それがユウくんであることには絶句し、地味に続いている友人関係だと告げるとやや呆れていた。でもそんなの普通だろう。だって高校生を過ぎて、友人のことを逐一両親に話す必要なんてない。ユウくんがただの同級生だったらそんなこと言わないっしょ、と胸に芽生えたささやかな反発はそれでも、訓練された諦めによってすぐに摘み取られた。
砂の上に起き上がり砂をさらっていくつか貝を拾い、謎の像を写真に収めているユウくんに声をかける。「そろそろ晩メシだから帰ろ」夏の太陽はそれでも夕暮れにはほど遠く、西に傾いた太陽の、ささやかに黄色い光がものがなしい。振り返ったユウくんの顔はなぜか泣きそうに見えた。その頰は午後5時の光線の中でもはっきりわかるくらい白くて、まるで俺が拾った桜貝の内側のようだった。彼の唇がちいさく動いたけれど、波の音に消されて何も聞こえない。かりにユウくんの目から涙がこぼれていたとして、そしてそれが流れる音がしても、波の音にかき消されてしまうだろう。「疲れたっしょ。車持ってくるから待ってて」。踵を返そうとしたらTシャツの裾を掴まれた。俺はユウくんの白い手を包んでゆっくりほぐした。「大丈夫、すぐ戻ってくるから」
スケートパークの駐車場からラングラーを出し、国道へゆっくりと出る。ユウくんが防波堤の上で所在なさげに棒立ちになっているのが見えた。
まず落ちたのは母親だった。ユウくんがメディアで見せるような完璧な笑顔と言葉づかいで挨拶しスポンサードされている化粧品メーカーの新作を渡す頃には、母の瞳は目尻は別人のように下がっていた。そこには緊張も俺たち兄弟に向けるようなぶっきらぼうさも消え失せ、俺たちにとってはいっそ居心地の悪いほどの幸福が溢れていた。さすが王子様。さすが経済効果ウン億の男。さすがおばさまキラー。夕食が始まる頃には遠巻きに見ていた弟も積極的に絡み出し、ヤベエとパネエを連発していた。野心家なところがある父が酔って政治的な話題を持ち出さないかだけが心配だったが、父はあくまで俺の友人として接することに決めたようだ。ユウくんの完璧な笑顔、お手本のような言葉に少しだけ負けん気を混ぜる受け答え、しっかり躾けられた人の優雅な食事作法。兄は居心地が悪そうに俺の隣でメシを食っていた。俺と兄だけは今、心を連帯している。スノボをとったら芯からマイルドヤンキーな俺たちと、歯の浮くような爽やかさを恥ともしないユウくんではあまりに文化が違う。いつも感じている座りの悪さがむくむくと膨らむ中、母が産直で買ってきたであろうノドグロの刺身と名残のウニだけが美味かった。
風呂上がりには念入りにストレッチをした。俺の部屋では狭いので居間でふたりで体をほぐす。ユウくんの体はゴムでできているように関節の可動域が広く、股割りを始めたときは思わず感嘆の声をあげた。俺もケガ防止に体は柔らかくしている方だが到底叶わない。いくつかペアストレッチをしてお互いの筋肉を触る。「アヅすんごい鍛えてるね。腹筋は前から板チョコだったけど大胸筋と下腿三頭筋ヤバい。何してるの?」「体幹メインだからそんなに意識してないけど…直で効いてるのはクリフハンガー。後で動画見よ」「もっと筋肉つける予定?」「んん、もう少し空中姿勢作りたいから、体幹は欲しいかな」「アヅがこれ以上かっこよくなったら俺どうしたらいいの…POPYEの表紙とかヤバイじゃん。ユニクロであれだけ格好いいとか何なの。あっ俺、明日は新しいスケートパーク行きたい」「マジ? ユウくんにスケボーとかさせれらないんだけど。怖くて」「うんやんなくてもいい。アヅが練習してるの見たい」ユウくんの幹のような太ももを抑えながら、俺は手のひらで彼の肩をぐっと押した。
両親はユウくんをエアコンのある客間に通すように俺に言ったけれど「コンセプトは夏休みに友達んち、だから」と言って俺は自室に布団を運んだ。六畳の俺の部屋は俺が大学の寮へ移ってからもそのままにされている。どれだけモノを寄せてもふたり分の布団を敷けばもうスペースはない。ユウくんは俺の本棚の背表紙を指でなぞりながら「教科書とスノボ雑誌以外なんもねえ」と楽しそうにしている。さっき風呂から出たばかりなのにもう肘の内側や膝の裏が汗ばんでいて、ないよりはマシだろうと扇風機をまわした。「もう寝る?」「んん、寝ないけど電気消す」窓を開けて網戸を閉め、コードを引っ張って電気を消した。カエルの鳴き声が窓の外、群青色の彼方から夜をたなびかせてくる。それは記憶にあるよりずっと近く、耳の奥で遠く響いた。
ユウくんは行儀よく布団に収まって俺の側に寝返りをうった。「自由の女神像、流されたかな」「多分ね。見に行く?」「あっそういうのもいいね。夜にこっそり家抜け出して海行くとか最高。でもいいや、そういう夢だけでいい」指の長い手のひらが、探るように俺の布団に潜り込んでくる。俺の指をつまむようにして指を絡めた。
「…何もしないのって思ってるでしょう」「うん」「今日は何もしないよ。ここはアヅの家だから。セックスして翌朝親��さんの前で息子やってるアヅも見てみたいけど、我慢する」ユウくんはいつもそうやって自分をあえて露悪的に見せる���思ったことだけ言えばいいのに、と心がざらついた。
「どうだった、うちの地元」
「うん、最高。アヅと歩いて、バグジャンプ見ただけじゃなくて跳べて、海で遊べたんだよ。こんな夏休み初めてだよ。バグジャンプからの眺め最高だった。一生忘れない」
「大げさ…」
ユウくんの目はほとんど水分でできてるみたいに、夜の微かな光を集めてきらめいていた。その目がゆっくりと閉じられるのをずっと見ていた。指先にぬるい体温を感じながら。
率直にいって覚えていないのだ。その夜、本当に何もなかったのか。
眠りの浅い俺が微かな身じろぎを感じて起きると、ユウくんが窓辺にもたれていた。布団の上に起き上がって片膝をたてて窓枠に頰を押しつけるようにして、網戸の外へ視線を向けている。俺の貸した襟のゆるくなったTシャツから長い首と鎖骨が覗いていて、それが浮かび上がるように白い。
扇風機のタイマーは切れていて夜風が俺の頰を心地よく撫でた。俺の部屋は二階。窓の外では田んぼが闇に沈んでいる。目が慣れてくるとそのはるか先に広がる山裾がぽっかりと口を開けるように黒く広がっていた。ユウくんの膝と壁の微かな隙間から細かな花弁を広げてガーベラみたいな花が咲いている。彼の足元から音も立てずシダが伸びていく。教育番組で見る高速再生みたいに、生き物として鎌首をもたげて。ユウくんは微動だにしない。名前のわからない背の高い花がもうひとつ、ユウくんの肩のあたりで花弁を広げた。
海の底に沈んだみたいに静かで、どの植物も闇の奥で色もわからないのに、そこには生々しい熱が満ち満ちている。
布団の上を這って脱力しているユウくんの左手の人差し指と中指、薬指を握った。ねっとりした感触に少し安堵する。
「アヅごめんね。起こしちゃったね」
ユウくんは首だけを俺に向けて囁いた。
背の低い葦がユウくんの膝を覆う。ずっと気づいていた。右足首の治りが芳しくないこと、それに引きづられるようにユウくんが心身のバランスを大きく欠いていること。
「ねえ、春からずっと考えてるんだ。今まで俺強かったの、俺が完璧に滑れば誰も叶わなかった。でもそうじゃない潮の流れがきちゃった。アヅ、日本選手権の前にテレビで‘誰でも何歳でもチャレンジはできる’って言ってたでしょう。あれ聞いて俺すごいどうしようもない気持ちになったんだよね。腹立てたり嫉妬したりした。お前まだ二十歳じゃん、俺も二十歳だったら、って。アヅとスカイプするたびに思い出しちゃって、一時期ちょっとダメだった。でもアヅに連絡しちゃうし、そういうのって考えるだけ無駄だし、もちろんアヅも悪くないし。なんか今までは細かいことに迷うことはあっても大きなベクトルを見失うことってなかったんだよね。世界選手権2連覇するとかそういうの。でも今わかんない。引退もしたくないけどどんどん前に行くガソリンみたいなのがない。スケート以外も何もやる気おきない。ゲームも立��上げるの面倒くさいし音楽も聞きたくない。でもこういうことって最後は自分で何とかすることだから誰に言っても仕方ないし、自分の中で消化するしかないんだけど。アヅはどんどん先行っちゃうし。それがすごいカッコイイし。好きだけど嫌い。でも俺にとって世界で一番カッコイイのアヅだな。アヅみたいに必要なこと以外は喋らないでいたいな。アヅの隣にいるのすごい誇らしい。これ俺のカレシーって皆に言いたいくらい。それが言えないのもすごい嫌だし。何かもう何もかも」
感情の揺れるままにユウくんは喋り、彼の語彙の海に引きずり込まれる。その偏りというか極端さというか、きっとこれが海水なら濃度が濃すぎて生き物は死んでしまうし、雪山だというのなら環境が過酷すぎて大した植物は育たない、そういったものに窒息しそうになった。俺たちの語彙や世界は圧倒的に貧しくて何も生きていけない。そこには美しさだってカケラもない。「よくわかんない。死にたくないけど、いなくなりたい」
幾重にも重なるカエルの声。降り注ぐような虫の声。こんなにもたくさんの生き物が泣き喚いているのに、そしてこのやかましくて力強い音楽が月明かりに照らされ満ち溢れている世界で、それでも虚しさしか感じられないユウくんが哀れだった。誰も見向きもしないやせ細った貧弱な空虚を大切に抱えているユウくんが。
ユウくんの背後に虚無が立ち彼の肩をさすっていた。けれどそはユウくんとほぼイコールの存在で、彼にとっては他人に損なわせてはいけない自らの一部だった。それは誰にも意味付けられたり否定されたり肯定されるべきではない。
勝ち続ける、他者より秀でる、新しい技術を得る。けれど俺たちの誰も等しく人間であるので、それには自分の体を損なう危険が常に伴う。けれど誰にもう十分頑張った、と言われても表彰台の一番上が欲しいのだ。
そして自分の体が重くなってゆくこと、誰かが自分より圧倒的に秀でるであろう予感を一番先に感じるのも、自分自身だ。
ユウくんは空いている右手でなく、俺とつないでいる左手をそのまま持ち上げて頰をこすった。子どもじみた仕草で。
ユウくんは孤独な惑星の住人で俺はその惑星のディテールの何一つもわからない。ただ俺もただひとりで惑星に佇んでいるという一点だけで、俺と彼は繋がっていた。
「アヅ、キスしたいな」
繋いだ手はそのままに、俺は体を起こして膝でユウくんを包む葦とシダに分け入った。草いきれの中でユウくんのうなじを掴んでキスをする。最初は触るだけ、次はユウくんの薄い舌が俺の唇を舐めた。そのままゆっくりと歯を探られればやがて頭の芯が痺れてゆく。ユウくんの唾液はぬるくて少し甘い。音をたてないように静かにキスをしながら、指に力を込めた。これだけが本当だと伝わりはしないだろうか。
こんなキスをしたらもう後戻りできない。俺の足に蔦が絡みつく。空虚が鳴る。胸を��されるような哀れで悲しい音だった。
次に目を冷ますと空が白んでいた。寝返りを打つうちにユウくんの後ろ髪に顔を突っ込んでいたらしく、それは麦わら帽子みたいな懐かしくて悲しい香りがした。スマホを引き寄せて時計を見ると4時半。ユウくんの肩は規則正しく上下している。そこは正しく俺の部屋で、布団とテレビと本棚、積まれた���装ケースがあるいつもの光景だった。ユウくんの足元に追いやられていたタオルケットを引き上げて肩までかけてやった。
首を傾けて窓の外を見る。抜けるような晴天にほんの少し雲がたなびいていた。手付かずの夏休み、2日目。俺はユウくんの腹に手をまわして目を閉じた。
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これで分かった!CSS GridとFlexboxの使い方を習得できるチートシート、ゲームまとめ
この記事では、CSS FlexboxとGridをつかってお好みのレイアウトを作成するコツやポイントをまとめた使い方ガイドやチートシート、ゲームなどをまとめて紹介しています。
ゲーム感覚で新しいCSSプロパティを学習することができたり、記述方法をど忘れしてしまったときなどにも便利で、お好みのレイアウトをオンラインで作成できるツールもあります。覚えようと思ってなかなか手がつかなかったひとも、これならすぐにはじめることができますよ。
CSS Gridの使い方ガイド、チートシート、ゲームまとめ
Grid Garden
CSS Gridレイアウトプロパティを使うことで、人参に水を与えながら自分の農園を育てていく、ゲーム感覚でGridプロパティを学ぶことができます。ゲームの各レベルでは、ゲーム達成に利用できる他のプロパティについてもサンプル例と一緒に解説されています。
Bonus – CSS Diner
実際にコーディングを書きながら、次々に出されるレイアウトに関するお題を解決していくゲーム。CSS Gridだけでなく、Flexboxやその他よく活用するCSSレイアウトの組み方を学ぶことができます。
Grid by Example
CSS Gridプロパティの基本的な使い方から、サブグリッドなど実用レベルの高度なモノまで、実際にサンプル例とコードを確認できるコレクション。作りたいレイアウトが決まっているときに便利。
Grid Visual Playground
あらかじめ用意されているカラフルなグリッドレイアウトを、さまざまなプロパティ値をリアルタイムで入力しながら、どのように変化するのか確認できるチートシート。
CSS Grid Generator
プロジェクトにあった自分だけのオリジナルグリッドシステムを作成できるオンライン・ジェネレーター。
CSS Grid Layout Generator
こちらもブラウザー上でグリッドテンプレートの作成を行うことができるオンラインツール。
CSS Tricks’ A Complete Guide to Grid
CSS Gridをこれからはじめるひとだけでなく、すべてのグリッドプロパティの使い方を一ヶ所で確認できるチートシート的な使い方もできます。
GRID: A simple visual cheatsheet for CSS Grid Layout
CSS Gridの各プロパティの使い方を、視覚的にまとめているだけでなく、クリックでコピー/ペーストできる点も◎。
CSS Grid Floor Plan
家の見取り図、フロアプランをCSS Gridのみで表現したユニークなデモ作品。
See the Pen CSS Grid: Floor Plan by Olivia Ng (@oliviale) on CodePen.
CSS Flexboxの使い方、チートシート、ゲームまとめ
Flexbox Froggy Game
CSS Flexboxのさまざまなプロパティを実際に入力しながら、カエルを蓮の葉っぱの上に移動させるゲームで、レベル24までいくと、。
Flexbox defense Game‘
Flexboxプロパティを入力することで、迫ってくる敵を阻止するゲームで、レベル12までいけばすべてのプロパティを体感的に学ぶことができます。
Visual Guide to CSS3 Flexbox
グリッドを増やしたり減らしたり、配置を変更してみたりと、Flexboxプロパティを利用してお好みのレイアウトを作成できるビジュアルガイド。
Flexbox playground
さまざまなflexboxのプロパティを実際に設定しながら、どのように配置が変化するのか確認できます。
See the Pen Flexbox playground by Gabi (@enxaneta) on CodePen.
Flexplorer
Flexboxを使ったCSSモジュールを試しながらレイアウトを作成できるプレイグラウンド。ボタン操作のみで直感的にレイアウトを組むことができます。
Solved By Flexbox
Flexboxを利用して解決することができるレイアウトなどをまとめたライブラリ。天地中央揃えなど、flexboxを使うと手軽なスタイリングが中心です。
Flexbox Patterns
タブやカード型などより複雑なレイアウトパターンをまとめた、実用的なコードサンプルが揃います。
CSS tricks Guide to Flexbox on CSS tricks
毎回flexboxのプロパティを忘れてしまうというひとは、チートシートで確認すると良いでしょう。すべての情報がひとまとめになっていて便利です。
Joni Bologna’s fruity Flexbox Cheatsheet
出題される質問にYES/NOで答えることで、どのようにスタイリングすれば良いのかすぐに確認できるflexboxのチートシート。
Flexbox Cheatsheet By Yoksel
左彩度に用意された各プロパティをクリックすると、サンプル用コードとレイアウトを確認できるチートシート。自分が使いやすいモノをブックマークしておくと便利です。
制作が捗る最新CSSツール、リソースを利用しよう!
CSSライブラリやフレームワーク、オンラインツールを利用することで、サイト制作の時間を節約、短縮できるだけでなく、新しい���クニックやプロパティなどに関しては、学習用ガイドラインも多数公開されています。
これまでに紹介したCSSに関する便利ツールもワークフローに加えることで、より快適な制作環境を整えることができるでしょう。
http://bit.ly/2YXq962
http://bit.ly/2Gc29EU
http://bit.ly/2lrIhpv
http://bit.ly/2YV6C66
http://bit.ly/2GhNwzU
参照元リンク : Fun places to learn CSS Layout – Part 1: Flexbox – Stephanie Walter
参照元リンク : Fun places to learn CSS Layout – Part 2: Grid Layout – Stephanie Walter
これで分かった!CSS GridとFlexboxの使い方を習得できるチートシート、ゲームまとめはPhotoshopVIPで公開された投稿です。
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保育園でお米の食育イベントを開催しました!
荒川区のひぐらし保育園でお米の食育イベントを開催しました。 0歳クラス~5歳クラスの子どもたちが元気に参加してくれました。
まずは、弊社キャラクター「こめつぶ丸」が登場する絵本「こめつぶ丸のごはんができるまで」を使って、 田んぼで「稲」が成長する様子や田んぼに住んでいる「生きもの」のお話、 収穫された稲がどのように「ご飯」になるかをお話しました。 みんな真剣にお話を聞いてくれました。
1合を目指して手でお米をすくうゲームは、多かったり少なかったり・・・ とても盛り上がりました。皆さんは1合(150g)ピッタリ計量したことはありますか?
1人ずつ順番に「お米」に触る体験をしました。 「硬い」「小さい」などの声が聞かれ、「これがいつも食べるご飯になるんだよ」と教えてくれる子や、 初めて触った子もいて、みんな興味津々でした。
最後に「お米・ご飯クイズ」をしました。
「田んぼにいる生きものの名前当てクイズ」では、おたまじゃくし、ゲンゴロウ、カエル、トンボ・・・ みんな元気に答えてくれて、なんと全問正解!!
イベントの記念に「こめつぶ丸の絵本」と「シール」をプレゼントしました。 今回のイベントを企画して下さった「ひぐらし保育園」のみなさんありがとうございました。 食育のイベントを通して、食へ興味を持ってくれたり、ご飯をさらに好きになってくれたら嬉しいです。 当社は子どもたちに食の楽しさや、お米の魅力を発信し、日本食文化に欠かせないお米を、次世代にも身近に感じてもらえる機会を作ってまいります。
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・ver9.1 アップデート内容 ちょっと不思議なかえる。ふうせんかえる が かえるの種類に追加されました! ふわふわしている以外は何もわからない!? 見つけたら図鑑を見てみよう!! ・ver9.1 アップデート内容 Billing Library バージョン 4 に 対応しました
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林田の世界(初稿版)
第7話 南さんのサムディ
「少し前から薄々そうなんじゃないかなって思い始めてて、なんか徐々に疑惑が深まってきたというか。俺だって最初は『いやいや、まさかなー』って思ったよ? 『また昔みたいに頭が変な風になっちゃったのかもしれないな』って」
最初は控えめで小さかった林田の声が徐々に徐々にはっきりしてくる。 「けど猫がな。どんどん大きくなってきてな。思ったんだよ。『もしかしたら、俺の頭は最初から少しもおかしくなかったのかもしれないぞって』」 林田は洗面台の蛇口の側に置いてあった手の平サイズの四角い石鹸を手にとり、気を紛らわせるように指先でいじり始めた。 顔は下に向けたまま、目だけを動かして俺を見る。 「もし俺の頭がおかしくなかったとしたら、今起きていることに全部説明がつくんだよ。外にいるあれが何になろうとしてるのかも、世界に何が起こるのかも何となく予想がつく。だって2回めなんだ。1回めは、お前だったんだ」 俺の舌はやっと感覚を取り戻す。 「……いつから俺をそういう目で見てたんだよ」 「あいつにお前の妹ちゃんの服を着させてあげた日。もしかしたらこういうの、2回目なんじゃないかって思い始めてて……。すごいデジャビュ感あったんだよ」 結構前じゃねぇか。 ――お前だって元は猿じゃん――。 あー。そういえばなんかみょーな目で見てたね。俺のこと。 「じゃぁ、何か? お前は俺が元々はマンドリルの赤ちゃんで、色々進化して最終的に俺になったと言いたいわけか? 小4の時に思い込んだみたいに?」 「うん」 俺は頭が胴体から抜け落ちるんじゃないかってくらい項垂れた。 ――まだ慌てるような時間じゃない――。 記憶の奥底から顔を出したスラムダンクの誰かが、両手を軽く広げて顔を横に振りながら、そう繰り返している。 「……で、外にいるアレも間もなく人間になると言いたいわけだな?」 「うん。人間になった後は自分が動物だったことを忘れてると思う。お前みたいに」 ――まだ慌てるような時間じゃない――。 頭の中でスラムダンクの誰かが顔を横に振る速度が上がる。俺の慌て度に首振り速度が比例しているのだろう。 「お前は覚えてないかもしれないけど、でも本当にお前はマンドリルなんだよ」 ――まだ慌てるような時間じゃない――。 いよいよ首振り速度がレッドゾーンに突入した。もはや名前が思いだせないそのキャラの顔はあまりのスピードで残像が見えるレベルで左右に振れている。でも名前が思い出せない。なんだっけなー。なんだっけなー。レモンが好きな人だ。 せ……せん……あき……せきぐ……福ちゃん……違う。せ、せ、せん……。 あ、魚住? 「仙道」ぶすっとした顔で林田が言う。 「それな! 知ってた!」 知ってたよー! 俺は両手の人差し指で林田を指差す。ゲッツ! 林田は俺のゲッツ指を掴むと、関節���1つ増やそうとでもするみたいにメリメリと力を込めてきた。 俺は悲鳴をあげて指を引っ込める。 「何すんだ!」 「真面目な話をしている時に別のことを考えるのやめてくんねぇかな。さっきそれで喧嘩したばっかじゃん」 「俺にだってどの話題を真面目に聞いて、どの話題を不真面目に聞き流すか決める権利がある!」 そう! 人間には生れながらに自由意志というものが備わっており! 何人たりともそれを奪うことはできないのだ! パワー・トゥー・ザ・ピーポーライトン! 「っていうかなんでお前俺の考えてることがわかるし!」 林田は俺の脳内にいた仙道と同じポーズで首を横に振る。 「こうやって、小声で『せん……せ、せん……まだ慌てるような時間じゃない……せん……魚住?』って言ってたら、誰だってわかる」 どうやら考えていたことが口に出ていたようだ。 「『せん』まで合ってるのに、どうしてそこで魚住が出てくんだよ」 「ウッセェな。それだけ俺の慌て度数が高かったってことだよ! まさか10数年の時を超えて、またしてもお前にマンドリル扱いされると思わなかった!」 びっくりぽんやわ! と頭の中の思い出ボックスから顔を出した朝ドラの人が言う。これは知ってるぞ。 マッサン! 「あさ」林田、ぶす面、パート2。 そう、それなー! 知ってたー! 「だから真面目に聞けってば」 「そんな話しをどうやって真面目に受け止めろっていうんだよ。それが原因で大喧嘩しただろうが。大変だったんだぞ。指は折れるし、夏休みのディズニーランドは取り消されるし、変な奴専用のサマーキャンプに無理矢理参加させられて、夏の思い出が不穏なのばっかりになるし!」 相バンガローの雪太君が「にんげんていいな」の不気味な替え歌を歌いながら、飯盒炊爨用の火に手足をもいだトカゲや羽を毟った虫や串刺しにした栗鼠だか野鼠だかを投げ込んでいた様は、今でも体調が悪い時とかに夢に見る。 燃え死んでゆく小動物の悲鳴は一度聞いたら忘れられない。 あのキャンプ、絶対、なんらかの症例が悪化するタイプのアレだと思う。ほら、ヤク中が刑務所に入ると余計酷いヤク中になるっていうアレみたいな。 雪太君が歌っていた『くまのこみていたかくれんぼー。弱った奴から食べてゆく。猟師が来たりて熊を撃つ。返ーりー討ーちー。いーいなーいーいーなー。人間っていーいーなー。この世は地獄だ、丸ごと燃そう。赤子の目玉が口からボロリ。右と左に悪魔がいるよ。前、前、前歯から、抜いてくね』って歌も時々思い出す。 雪太君はどういうアレで小学校の先生になれたんだろうか。 楽しくていい奴なんだけど、事件性を帯びた性格だとは思う。 「それでも夏休み明けにお前がちゃんと元どおりになってたのを見て、まず最初に『あぁ良かった!』って思ったのに!」 理不尽な理由で攻撃されたにも関わらず、友を心配するこの俺の器の大きさときたら! 「嘘吐け。お前、菓子折り持って謝りに行った俺にいきなり殴りかかってきただろうが」林田、ぶす面、パート3。 「『あぁ良かった!』って思った次に『このクソ野郎。テメェのせいで散々だ。ぶっ殺す!』って思っただけの話だろ。嘘吐いてねぇじゃんよ」 俺の器は大きいが、底は浅いのだ。大抵のことは受け止めるが、受け入れるとはかぎらない。 「お前もあのキャンプに参加すれば俺が殴りかかったことに納得いくはずだ。むしろ、刃物を持ち出さなかっただけ俺は偉いと思うよ。すっげー心を削られるキャンプだったんだからな」 ――赤子の目玉が口からボロリ――。 「でもキャンプならまだマシじゃないか。俺なんかこっちの病院だぞ」 林田は自分の頭を指差していう。 「夏休みの間、ずっと検査とカウンセリングだ!」 あ。そうだったんだ。 「……それは仕方ないだろ。俺がお前の親だったとしても病院連れてくよ」 林田はぶす面がいきすぎて潰れまんじゅうとしか形容しようのない顔になる。 「医者と親が結託してさ。俺を丸め込もうとしたんだ。なんかよくわかんない薬飲まされてさ! ケンタッキーおじさんみたいな医者と親に囲まれてずっと質問攻め! 俺が何か言うたびに親が泣くし! 俺が何か言わなくても親が泣くしさ! 1日中、周りのみんなが『君の記憶は間違いだ。君は妄想と現実の区別がつかないんだ。冷静に思い出してごらん。君の記憶は本当じゃないんだ。君が君の記憶だと思っているものはただの思い込みなんだ』って言い続けるんだぞ! 俺がどんなにお前が」 林田は俺を指差す。 「お前が化けマンドリルで、人間の振りして、俺以外のみんなを洗脳しているんだって言っても、誰も聞きゃしない!」 「そりゃぁ、そうだろうよ」 俺、生まれた時から人類だし。 「気持ちとしてはあれだよ! ほら、あの、ほら」 林田は「ほら、あれだよ、ほら」と言いながら何かを握りこむように右手の拳を丸め、目に見えない何かを叩くように上下させる。 「ヘェロォォー! チャッキィィィー!」 林田は喉を潰したダミ声で言う。 「……チャイルドプレイ?」 「そう! それ! あのキモい映画!」 俺、あの映画好きなのに。 「人形の名前がチャッキーで、男の子の名前はアンディだからな」 「どうでもいいよ、あんなキモいの」 俺、あの映画好きなのに。 「あれで人形が殺人鬼だって本当のことを言った主人公が、逆に頭おかしい扱いされて精神病院に連れてかれてっちゃうだろ? 気持ちとしては完全にアレ」 「……つまり、俺はお前の命を狙うチャッキー人形だったと。お前的には」 林田は頷く。 頷くなよ。そこで。つーか、だから体育倉庫で2人きりになった時に暴れまくったのか。 「本当のことを言ってるのに誰も信じてくれないし、俺はお前と友達になった覚えなんてないのにみんなが『前からの友達だよ。あんなに仲よかったのに』とか言うし。それで……これ以上本当のことを言っても俺が狂人扱いされるってわかってきたから、嘘ついて退院した。『俺が間違ってた。あいつはマンドリルじゃない。薬が効いた』って言って」 言葉が見つからない。 「いや、いや、ずっとじゃないから! ずっとじゃないからな! ただ、退院した後はまだお前を疑う気持ちが強かったから、その」 林田は言葉を濁す。 「何? 疑う気持ちが強かったから何?」 「……定期的に下駄箱の中にバナナを入れておいて、反応を見ていた」 あれはお前の仕業だったのか。 「……定期的に下駄箱の中に発情期の雌猿の写真を入れておいて、反応を見ていたりもした」 あれもお前の仕業だったのか。 「お前がウッキーウッキー言いながらバナナを食べ始めるか、ウッキーウッキー言いながら雌猿の写真を持ち帰ると思っていたんだ」 バツが悪そうに林田は言う。 「いや……捨てるに決まってんだろ……気味が悪いし……。俺がバナナ食べたり、写真持ち帰ったらどうするつもりだったんだよ……」 「それはほら。あの……正体がはっきりしたということでだな。こう、ね。いっちゃってもいいんじゃないかなって。ね」 ねって何。ねって。 「実を言うと、いつお前が正体を現して襲いかかってきてもいいように、クリップをつなげて作った鎖帷子を常に服の下に身につけていたんだ」 そんな笑い飯みたいなことしてたのか、林田。 「あと、もしもの時の為にポケットにナイフ入れてた」 「殺意があるじゃねぇかよ……」 「いや、でも、ずっと殺そうとしていたわけじゃないからね? お前と一緒��過ごす内になんかどんどん慣れてきて。『もしかして本当に俺の勘違いだったのかな?』って思うようになったんだよ。だって、お前、なんか……なんか、普通だし」 「そりゃどうも……」 「いつか正体を現して、デッカい猿の化け物になって襲いかかってくるんじゃないかと思ってたのに、なんか普通に俺ん家きて、スト2やっては帰り、また俺ん家きて、ぷよぷよ通やっては帰り、また俺ん家きて、聖剣伝説2やっては帰り、また俺ん家きてマザー2やっては帰り……なんかこいつ「2」ばっかりやってるなぁとか、っていうか人ん家きてロープレのレベル上げしてくのってなんなのって感じで」 「しょうがねぇだろ。家でゲームしてると妹がリセットボタン押したり、コンセント抜いたりして邪魔してきたんだから。あとお前の家のオヤツはレベルが高かったし」 ホワイトロリータは正義。 「お前がずっとそんな調子だから、徐々に徐々に俺の気のせいだったような気がしてきて。みんなが言うみたいに、俺の頭がどうかしていたのかもしれないって思うようになって。それでも一応、時々お前のこと遠くからつけてたりしたんだけど」 待って。 「『アウターゾーン』のミザリーのエロいページだけ切り抜いたやつとか、電話ボックスの中に貼られてるエロ広告を集めて、橋の下に隠してる姿を見たり」 待って。見てたの。 「誰もいない教室で、黒板消し片手に『行っけー! トライダガーZMC!』とか言いながら走り回ってるのを見たり」 待って。待って。見てたの。見てたの。あれ。見てたの。 「そういうのを見てるうちにどんどん『あれ。こいつ別に普通のアホじゃね? これがチャッキー人形みたいな怪物か? これ普通のアホじゃね? 俺、こんなアホを怖がってたの? うーん。これはみんなの言う通り、俺の頭がおかしくなっていたんだな。俺が病気だったんだ。俺の記憶は、脳みそが創り上げた偽物なんだ。忘れよう』って思うようになったんだよ。それでちゃんとカウンセリング受けて、お前がマンドリルだった記憶を思い出さないように閉じ込めていたんだ。猫がああなるまでは、マンドリルのことなんて『そういえばそんな思い込みもあったなぁ』くらいに思ってたし」 「失礼だぞこの野郎! ストーカーしておいてなんだその言い分は! 恥ずかしいだろ! 何でみてんだよ! この、この、ばか! バカ!」 誰も見てないと思ってたのに! 誰も見てないと思ってたのに! 「でも、今は! お前のこと! ちゃんとマンドリルだってわかってるから!」 「わかんなくていいよ! このバカ! もうお前、黙ってろ! 俺は考えを整理する! 頭がおかしくなりそうだ!」 林田は「でも、俺の考えが正しければ、もうそんなに時間がないんだ」と言った。 「黙ってろ! 考え事するんだから!」 俺が強くいうと、林田は手の中のルービックキューブをくるっと回してから「本当に時間がないから、なるべく早く整理してくれよ」と切羽詰まった声で言った。 俺は目を閉じて、林田との殴り合いの結果、病院に運ばれた時のことを思い出す。 硬いシーツ。高さのあわない枕。クリーム色の仕切りカーテン。サイドテーブルに置かれた何冊かのスラムダンクの単行本。 お父さんがベッド側のスツールに座り、林檎を摩り下ろしていた。 お父さんが一摩りする度に、病室に充満していた消毒液とイソジンに似た何かの匂いを林檎の匂いが上書きしていった。 今でも林檎があまり好きではないのは、林檎の匂いを嗅ぐとこの時の身体中の痛みを思い出してしまうからだと思う。 「お前が寝てる間に林田君のお母さんから聞いたんだけどな」とお父さんは林檎を擦りながら話し始めた。 ホルモンのバランスだとか、自律神経の乱れだとか、あとは何かしらのストレスだとか、そう言ったちょっとした弾みで、記憶が部分的に抜け落ちてしまうという症例があるのだそうだ。 短ければ数分間、長ければ数年間の記憶が突然ふっとその人の中から消えてしまう。 脳みそは空白になってしまった記憶を埋めようと動き出し、元々そこにあった記憶とはまるで違うものを引っ張り出してきて、無理矢理に繋げてしまう。 そうして出来上がった「記憶」はデタラメで、奇妙で、意味不明なものだけど、本人にはその「後から作られた記憶」だけが本当の真実になってしまうのだ。 頭の中から「夜空」の記憶だけが抜け落ちてしまい、脳みそがその「夜空」の記憶を別の記憶で埋め合わせた結果、「夜空というのは本当は七色に光り輝くものであり、この暗くて白くて小さいものがキラキラしている夜空は、偽物である」と思い込んでしまった男の人や、頭の中の「犬」の記憶が「チョコレートドーナツ」の記憶と差し代わってしまい、「チョコレートドーナツ」に首輪とリードをつけて「飼って」しまった女の人もいるのだとか。 林田に起きたのはつまりはそういうことなんだとお父さんは言った。 周りがどんなに「そんなことは起きてないんだよ」と丁寧に説明しても、林田の頭の中にある「記憶」はそれを受け入れない。「周りが間違ってる」という思いがどんどん強くなってしまうのだという。 お父さんが言うには、林田の頭から「俺」の記憶がごっそり抜け落ちてしまって、その空白を埋めるために別の記憶、つまりは動物園から脱走した雌マンドリルの子供である赤ちゃんマンドリルの記憶がねじ込まれてしまったのだそう��。 「つまりどういうこと?」と俺が聞くと、お父さんは神妙な顔をして「林田君の世界ではな。小さなマンドリルの赤ちゃんが、最終的にお前に進化したってことになっているんだ」と言った。 俺は思わず「なんだそれ!」と笑ってしまったが、俺が話しかけようとする度に林田が向けてきた怪物を見るような怯えた眼差しや、遠くから向けられた鋭い探るような視線、クラスメイト達に言いふらしていた「あいつは原始人みたいに毛深い」「あいつは猿野郎だ」「あいつは新種のビッグフットだ」という俺に対する悪口を思い出して、笑いを引っ込めるしかなくなった。 俺は林田の世界の中で、友達でも親友でもなく、猿から進化した謎の生物になってしまっていたのだ。 俺は恐る恐る「でも、元に戻るんだよね?」と聞いた。 お父さんがなんと答えたのかはよく覚えていない。 でも夏休みが終わって林田と再会した時、あいつは−−ちょっとぎこちなかったけど−−、おかしくなる前の元の林田だった。 だから俺は「さすが医学」と胸を撫で下ろしたのだ。 俺は目を開けて手の中にある知恵の輪をガチャガチャと弄っている林田を見つめる。 ……それがまさか。10数年も過ぎた今になってひっくり返されるなんてなぁ。 大したことねぇじゃん、医学。褒めて損したわ、医学。 「ほら、見てよ」 林田は全く解けていない知恵の輪を俺に見せる。 「いや、そういうのは解いてからみせろよ」 林田は強いショックを受けた顔をして、殆ど聞き取れないような声で「あぁ。やっぱり」と呟いた。なにがやっぱりだ。知恵の輪は解いてから自慢しろ。 「あのさ、この知恵の輪なんだけど、元々は石鹸だったんだよ? 覚えてない? 知恵の輪になる前はルービックキューブだったし。覚えてない?」 「さっき言っただろ。ちょっと時間をくれって」 何わけわかんないこと言ってんだ。こっちは色々考えなきゃいけないのに。 「でも」 「5分でいいから」 俺はまた目を閉じる。 林田がカスタネットを叩く音が聞こえる。なんであんなもん蛇口の側に置いてたんだかちょっと気になったけど、それよりも頭の整理が先だ。
これは俺が引っ越してくる前に林田の住んでいた町で起きた、俺には全く関係のない話。 俺はそれを実際に目にしたわけじゃない。 クラスメイトや近所の人達、いつも同じバスに乗っていた噂好きのおばさん、妹の友達のお姉さん、それにお父さんや、林田のお母さんや林田から聞いた話をつなぎ合わせて頭の中に浮かんだ「きっとこういうことがあったんだな」という話だ。 俺が小4の時に転入した小学校のすぐ側には大きな雑木林があって、そのちょうど真ん中あたりに私営の動物園があった。俺が引っ越してきた時には既に動物園は閉鎖していて中には入れなかったけど、公園程度の大きさしかないささやかな施設だった。 元々は怪我や年齢などが原因でサーカスや牧場や動物タレント事務所にいられなくなった動物の保護が目的の施設で「近くに小学校もあるし子供達が動物のことを学習できる良い機会かもね」くらいの軽いノリで、後付けで動物園になったたものだと聞いた。 そこにいたのは、ヨーカドーとジャスコと西友と映画館とゲームセンターとミスタードーナッツとモスバーガーとタワーレコードがなくて、これから何十年経っても「アド街ック天国」で特集されることはないだろうけど「日本列島ダーツの旅」であればワンチャンある感じの町にお似合いの微妙な動物達だった。 どこかの暴力団が経営していた畜産場であまり口にしない方がいいものを食べて成長したという噂がつきまとっていた巨大な黒豚。 かつてはペットショップの看板鳥だったが子供のいたずらで官能小説の濡れ場のシーンを丸ごと暗記してしまい、それしか言えなくなったので買い手がつかなくなったヨウム。 動物園の同じ檻で飼われていたリスザル達に背中の毛を引き抜かれ続け、神経症になってしまったカピパラ。 『猫に育てられたワンちゃん』として一世を風靡したものの成犬になってから育ての親猫を食い殺したトイプードル。 バブル後半に歌舞伎町のロシア人ストリップクラブでナターシャやイリーナやアリョーシャの体に絡みつく仕事をしていたボールパイソンなどだ。 動物園に行くまでの曲がりくねった道は近隣住人たちの犬の散歩ルートになっていて、犬の糞があちこちに放置されていていたし、その糞に引き寄せられた蠅や蚊が空中をブンブン飛び交っていたので、その動物園に足を運ぶ小学生はさほどいなかった。 みんな1回行ったら気がつくのだ。 身体中を蚊にさされて、犬の糞を踏みそうになってまで――あるいは踏んでしまってまで――見に行くほどの価値はあの動物園にはないと。 妹は「ヨウムのところとか、男子が殺到してそうだよねー」と笑っていたが、あいつは何もわかってない。もしも万が一、ヨウムの官能小説朗読を聞いているところがクラスの誰かに見られてみろ。次の日からあだ名はエロガッパとか、ムッツリとか、変態になるだろう。あだ名じゃなくてただの悪口だ。クラスの最下層に置かれ、卒業まで無条件で笑い者にされるのだ。
そんなある日。しょぼくれた動物園に彼女はやってきた。生まれたばかりの赤ん坊を抱きかかえて。 ビー玉みたいにキラキラした茶色い目。 南の国からやってきた猿。 雌の16歳。 マンドリル。 名前は南さん。 浅倉南さん。 あの南ちゃんとは何の関係もない。 飼育員の苗字が浅倉で、その人が南こうせつのファンだったからつけた名前だ。 さかな君やアグネス・チャンみたいに南さんは「さん」まで含めての名前だ。 赤ちゃんマンドリルにはまだ名前がついていなくて、檻の側には「素敵な名前を考えてね!」と書かれた手作りの箱が置かれていた。 小学校は大騒ぎになった。 「スゲェ変な顔の猿が来た! 本当の動物園みたい! 赤ちゃんも一緒なんだって! 尻! 尻がすげぇんだよ!」と、皆が叫んだ。 子供達は連日動物園に押しかけ、南さんが子猿を抱きしめて寝ている姿を観察した。 その面白い姿を良い角度でみようと、檻の周りをうろちょろした。 中でも子供達が熱狂したのは南さんの『すげぇ』尻だ。 マンドリルの尻は大変面白い色合いをしている。 赤、青、黄色、紫、水色、ピンクのソフトなグラデーション。 31アイスクリームのハロウィンシーズン限定のアイスにありそうな色合い。 子供達は南さんが尻を見せる���びに歓声をあげた。 南さんがタイヤの山の頂上で座っていると、子供達はがっかりした。尻が見えないから。
そのがっかりが苛立ちに変わるのに時間はかからなかった。 「わざわざ見に来てやったのに、尻の1つも見せてくれないのか。生意気な猿だ」。 そういう空気が出来上がっていたという。
最初に南さんの檻の前でピアニカを弾いたのが誰なのかはわからない。 クラスメイト達は「6年生がやったんだ」と言っていたし、6年生は「俺たち6年生がそんな子供みたいな真似するわけないだろ。5年生ならやるだろうけど」と言っていたし、5年生は「1年生に決まってるだろ」と言っていた。真実は闇の中。 俺が知っているのは、誰かが「南さんはピアニカの音が嫌いで、ピアニカを弾くと子供を抱えて飛び上がるんだ。お尻が丸見えだよ」と言い出したということと、多くの小学生が南さんのお尻を見るために集団で檻を取り囲み、ピアニカを合奏したということだ。 カエルの歌から、猫踏んじゃった、ドレミの歌、それからチャルメラのテーマ。ドレミーレド、ドレミレドレー。 騒音で目を覚ました南さんがその大変面白い尻を振りながら檻の中で叫び声をあげ、歩き回るのを見るまで子供達は満足しなかった。 恐らくだけど、途中から「南さんの尻を見るためにピアニ��を弾く」ではなく、「パニックに陥った南さんが悲鳴をあげる様を見るためにピアニカを弾く」に、目的が変わっていたのではないかと思う。 飼育員が何度子供達に注意をし、ピアニカの持ち込みを禁じても、子供達のやり口は巧妙になるばかりだった。ピアニカはランドセルの中やスポーツバッグの中に隠せたし、子供達は飼育員が何時に他の動物の世話をしにいくのか、何時に手薄になるのかを把握していた。 南さんはどんどん情緒不安定になり、動物園側は南さんをしばらくの間、檻に出さないようにしようと決めた。 けれどもその判断はちょっとだけ遅かったのだ。
その日の朝。 南さんは彼女を移動させるため檻を開けた飼育員に襲いかかり、その長く尖った歯で飼育員の顔の肉をガッサー! と持っていった。倒れた飼育員を殴打し、肩の骨を砕いた。 悲鳴を聞いて駆けつけた他の飼育員にも襲いかかり、左手の指を全て食いちぎった。 そして赤ん坊を抱きかかえ、逃げ出したのだ。 雑木林を抜け、小学校の方角へと。
そしてこれも俺が引っ越してくる前に林田の住んでいた町で起きていただろう、俺には全く関係のない話。 俺はそれを実際に目にしたわけじゃない。 クラスメイトや近所の人達、いつも同じバスに乗っていた噂好きのおばさん、妹の友達のお姉さん、それにお父さんや、林田のお母さんや、林田から聞いた話をつなぎ合わせて頭の中に浮かんだ「きっとこういうことがあったんだな」という妄想だ。
そんなに頻繁に顔を合わせたことはないし、言葉を交わしたことも片手で数えられる程度しかないけど、目を閉じればすぐに思い出せる男がいる。 根元が黒いプリン金髪にきっついパーマをかけて、それをリーゼントにして、剃り込み入れて、ヒゲと一体化した長いもみあげを伸ばした、ベニチオ・デル・トロの目つきをした身長2メートル弱の男。 擦れるとシャカシャカ音を出すジャケットを着て、ブーツを履いて、指先部分を切り落としたグローブをはめていて、上の前歯が2本だけ金歯。そして目つきがベニチオ・デル・トロの男。 それが林田のお父さん。つまりは父林田(ちちしだ)だ。 長距離トラックの運転手兼地元猟友会の中心的メンバー。 「そういう怖そうな人に限って本当は優しかったり、お花やケーキが好きだったりするんでしょ。逆に」と思ってしまいがちだけど、そういう意外性のない意外性は父林田には通用しない。 外見が怖い父林田は、中身も怖かった。 様々な「怖い」の要素が盛り込まれるだけ盛り込まれて、あまりにも怖いので逆にちょっと面白くなっちゃっている感じの怖さだ。 話としては面白いけど、巻き込まれた側としてはシャレにならない系というか。
例えばだ。 父林田《は入学式にデコトラできた。 注意しに行った教師は翌日辞職届けを出した。 誰も知らないところで何かがあったのだ。そしてそれが明るみにでることはなかった。 授業参観にもデコトラできた。 注意しに行った教師は翌日辞職届けを出した。 誰も知らないところで何かがあったのだ。そしてそれが明るみにでることはなかった。 運動会にもデコトラできた。 注意しに行った教師は翌日辞職届けを出した。 誰も知らないところで何かがあったのだ。そしてそれが明るみにでることはなかった。 道路交通法など父林田には関係ない。彼が法だからだ。 注意しに行った警察官は翌日辞職届けを出した。 誰も知らないところで何かがあったのだ。そしてそれが明るみにでることはやはりないのだ。 デコトラには重低音に強いスピーカーが積まれていて、そのスピーカーからは佐野元春の歌声がいつも流れていた。佐野元春の曲に重低音を重視しなきゃいけない曲が果たしてあったのかどうかは、今でもわからない。 ただ、人食いザメの登場を観客に予感させるジョーズの例のテーマソングみたいに、佐野元春の歌声が聞こえてきたら父林田のデコトラがすぐそばに迫ってきているのが誰にでもわかった。夕焼け空にサムデイが響いたら、誰もがちょっと身構えた。 デコトラでこない時は、骸骨と炎と龍がエアブラシで描かれたメタリックパープルのアメ車でくる。これにも重低音に強いスピーカーを積んでいた。 何かしらの改造を施していたらしく、その車は前輪がバウンドした。駐車場でバウンバウンと車を弾ませているのを何度かみかけた。 度々、駐車場の持ち主らしき男が「センパーイ、もう勘弁してくださいよぉ。他に借り手いなくなっちまいますよぉ」と弾むメタリックパープルの車に向かって叫んでいるのを目にしたし、度々、メタリックパープルの車の運転席から伸びてきた太くて毛むくじゃらの手が駐車場の持ち主らしき男の胸倉を掴み、そのままバウンバウンと車が弾んでいる様も目にした。男が車と共に上下するのも見た。サムディのリズムにあわせて。 だからもう一度あきらめないで--男の胸倉が掴まれて。 真心が掴める--車の前輪が跳ね上がり、男の体が宙に浮く。 その時まで--車の角度が70度くらいで止まり。 サムデイ! --落下。悲鳴。さーせんした! この胸に--車の前輪が跳ね上がり、男の体がまた宙に。 サムデイ! --停止。落下。悲鳴。さーせんした! 男が「さーせんした! さーせんした! 本当にさーせんした!」と叫ぶと、林田の親父さんは弾んだ車が一番高い位置まで来たところで、その手を離した。男はいつもギリギリのところで落下してくる車のタイヤから逃れていたけど……そのうちスイカみたいにグチャって行くんじゃないかと思って気が気じゃなかったのを覚えてる。 ちなみに俺がみかけた父林田は、南さんに関するある一件があって「多少は丸くなった」後の父林田だ。 そういうわけで。親達の「うちの子が林田さん家のお子さんと仲良くなったら、あのお父さんとも関わり持たなくちゃいけなくなるのかしら」というヒヤヒヤを感じ取った子供達は、自然と林田を避けたのである。 何でもかんでも親のせいにするのはダサいとは思うけど、俺と出会うまで林田に友達が本当に、本当に、1人もいなかったのはちょっとまぁ、ハンデがでかすぎたんだなって気はする。
林田に友達がいないことを感じ取って父林田は--たまにしか家に帰ってこない分、顔をあわせると「気合の入った親父ぶり」をゴリゴリに押してきたのだと林田は言っていた--、林田の学校生活に積極的に介入した。止せばいいのに。
「これがな、イケてんだよ。人気者だぜ、えぇ、おい」--そう言って、父林田は林田の髪を金髪に脱色し、後ろ髪を伸ばさせた。 林田に友達はできなかった。 そして職員室に呼び出された。 しかし父林田の意向によるものだとわかると、担任は「先生はな。一人一人、みんな違くて、みんないいと思っているんだぞ」と言ってスルーした。 「これがな、イケてんだよ。人気者だぜ、えぇ、おい」--そう言って、父林田は林田に背中に昇り竜の刺繍が入ったジャケットを着せた。 林田に友達はできなかった。 そして職員室に呼び出された。 しかし父林田の意向によるものだとわかると、担任は「先生はな。そういう個性的なセンス、大事だと思っているんだぞ」と言ってスルーした。 「これがな、イケてんだよ。人気者だぜ、えぇ、おい」--そう言って、父林田は林田に手の平サイズの飛出しナイフを持たせた。 林田に友達はできなかった。 そして職員室に呼び出された。 しかし父林田の意向によるものだとわかると、担任は「先生はな。抑止力としての武器って必要だと思っているんだぞ」と言ってスルーした。
思うに、林田がジャイアンとスネ夫のハイブリットみたいな性格なら良かったのだ。恥ずかしげもなく「うちのパパはすごいんだゾォ」と自慢し、わがままを通せば良かったのだ。そしたらそういうタイプの友達ができただろうし、少なくとも小馬鹿にされることはなかっただろうと思う。 だが林田はどちらかというと、キテレツ大百科のトンガリタイプだった。 ちょっと腰が引けているけど、全然悪い奴ではなく、わがままではなくて、押しに弱い。 要するに、感じの良いへなちょこだ。 感じの良いへなちょこというのはつまり、「嫌っても害がない奴」ということだ。
そういうわけで林田はこれでもかってくらい嫌われた。 林田は何度か父林田に髪の色や服装を元に戻して普通になりたいと打診した。 しかしその度に父林田は「……そうか。悪かったな。俺はただ、親父らしいことをしてみたかっただけなんだ」とこれでもかというくらい落ち込み、ベランダに行ってタバコをふかし、青い煙と共に「サムデー、この胸にサムデー、誓うよ、サムデー」と悲しげな声を吐き出したのだ。 林田のよくないところは、ここで簡単に折れてしまうところだ。 結局、林田は全然好きじゃないタイプの服装に身を包み、全然似合ってない金髪ウルフカットで過ごすことになった。 南さんが飼育員に襲いかかって動物園から逃げ出したその日。 林田のクラスは体育の授業のため、校庭に出て体育の先生の指示の元で準備運動をしていた。 先生が朝礼台の上でホイッスルを吹きながら体を動かし、それを先生の前に背の順で縦4列、横8列に並んだ生徒達が真似る。 腕を前から開いて回す運動、胸を反らす運動、体を横に曲げる運動、体を前後に曲げる運動。 体をねじる運動の途中で、先生が突然一点を見つめて動かなくなった。 生徒達が先生の視点を追って振り返る。 雑木林と校庭とを隔てるコンクリートの壁の上に、何かがいた。 それは壁に片手でぶら下がり、校庭側に着地する。 そして両手の拳を地面につけると、生徒達のいる方に向かって近づいてきた。 誰かが「南さんだ!」と叫んだ時には、南さんと生徒達の距離はバスケットコートの横幅分程度しかなかった。 何人かの生徒は南さんから異常なものを感じて後ろに下がったが、何人かの生徒は興奮し、喜んでいた。校庭に犬が迷い込んできた時のテンション。 「バカだなぁ。マンドリルは草食で、大人しい猿なんだ。怖がることないのに」としたり顔で逃げた生徒を笑う子もいた。 南さんは一番派手で、目に付いた生徒に向けて走っていた。 つまり、たった1人だけキラッキラの金髪だった林田の元へだ。 誰かが「南さんの口、赤くない?」と言ったのと、やっと正気を取り戻した先生が「逃げてー!」と叫んだのと、ターンッという乾いた音が校庭に響いたのはほとんど同時だった。 南さんは林田から15メートル程離れた地点でつんのめるようにして倒れた。太ももの辺りから流れた血が砂っぽい校庭の土に広がった。 南さんは倒れたまま、水を求める人のように両手を林田に向けて差し出した。 もう一度ターンッと音が響き、南さんの体が見えない手に殴られたように震えた。頭の後ろに穴が空いていた。血が流れる。南さんは動かない。林田も硬直したまま動かない。
そこから起きたことを、学校中の人間が見ていた。校庭にいた生徒達はもちろん、校庭で何かが起きていると気がついて窓に集まっていた校舎の中の生徒達も。 父林田が先ほど南さんが乗り越えてきた壁を超えて、校庭に降り立った。父林田の後ろから父林田と同じような服装の男達が何人かついてくる。 「またぎだ」「またぎだ」「ワイルドハントだ」と生徒達はざわついた。猟友会とまたぎは全然違うのだが、生徒達は彼らをまたぎと呼んでいた。だって、またぎの方が短くて言いやすいから。 彼らは皆、長くて黒い棒をしっかりと抱えていた。猟銃だ。 その場にいた生徒達の頭の中でターンッという音と、血と、動かなくなった南さんとまたぎが繋がる。 子供達がピアニカで正気を失わせるくらいに大好きで、大好きで、大好きだった南さんは撃ち殺されたのだ。 サムディを背負った鬼のような男に。あまりにも無慈悲に。 生徒達はこの時、何も知らなかった。 彼らが知っているのは、なぜか姿を現した南さんが、何も悪いことをしていないのに目の前で撃ち殺されたということだけ。 しかし父林田は知っていた。 南さんに顔をかじり取られた飼育員が病院で生死を彷徨っている��とを。 指を食いちぎられた飼育員に待っているこれからの日々がどんなものになるのかを。 それに動物園の園長から、地元の小学生の蛮行を一通り聞かされていた。どうしょうもないピアニカ発狂団共。 父林田は、ブチ切れていた。 ただでさえブチ切れていた父林田を更にブチ切れさせたのは、林田のクラスの誰かが言った「南さんが可哀想」という言葉だったのだと、誰かが言っていた。 彼は分厚い軍手で包んだ手で事切れている南さんの首を掴み、そのままズルズルと死体を引きずって朝礼台まで歩いてゆき、まだ朝礼台の上に突っ立っていた先生をどかした。 そして開いている方の手で朝礼台に置いてあった拡声器を掴み、校舎の窓から頭を出している生徒達に向かって怒鳴った。 もう片方の手で南さんの死体を持ち上げ、その顔が変形した姿を見せつけながら。 「テメェらのせいで死んだんだ! よくみろ! テメェら全員で殺したんだ! 見えるか、馬鹿野郎が! テメェらのせいで、頭がおかしくなって死んだんだよ! この猿は! バカで、バカで、バカなクソガキ共!」 父林田の罵倒は他の猟友会の人たちが彼を数人がかりで朝礼台から引っ張り下ろし、「まぁまぁまぁまぁ。林田さん。まぁまぁまぁまぁ」と宥めて連れて行くまで延々と続いた。テレビだったらピー音でいっぱいになるような罵倒だったらしい。 この(不適切な表現をお詫びいたします)《ピー》! お前らなんか(不適切な表現をお詫びいたします)《ピー》! (不適切な表現をお詫びいたします)《ピー》で(不適切な表現をお詫びいたします)《ピー》!じゃねぇか! これで小学校の生徒達が心を入れ替えて南さんに申し訳ないと思って、生き物を大事にする気持ちが芽生え、飼育員も一命をとりとめ、顔も奇跡的に回復し、父林田は地元の人々から一目置かれるようになりました、っていうオチならさぞ気分がいいだろう。 しかし、これはそういうわけにもいかなかった。 『小学校の校庭で発砲! 問われる! 地元猟友会の倫理!』 『生徒の間近での発砲! 銃に怯える子供達!』 『なぜ麻酔銃を使用しなかったのか? 子供達に深刻なトラウマ!』 などといった見出しが週刊誌を賑わせた。 ちなみにこれらの週刊誌に記事を書いたのは学校に通っていた生徒の親の1人で、ある日突然辞職届けを出し、一家でどこかに引っ越したという。 誰も知らないところで何かがあったのだ。そしてそれが明るみにでることは多分ない。 それはそれとして。 これはさすがに響いたらしく父林田は少しだけ大人しくなった。駐車場でバウンバウン車をサムディさせたりはするが、それでも少しは大人しくなった。 しかし生徒達は全く、全然、これっぽっちも反省しなかった。 「確かに多少はやりすぎたかもしれないけど、だからといってあそこまで言われることないよねー?」 「ねー?」 「大体、麻酔銃使えば良かっただけの話じゃんねー?」 「ねー?」 「そもそも、南さんのこと、みんなで可愛がってただけじゃんねー?」 「ねー?」 「南さんは学校に遊びに来ただけじゃんねー?」 「ねー?」 「それを勝手に勘違いして撃ち殺したのそっちじゃんねー?」 「ねー?」 「あーあ。南さん可哀想ー!」 「ねー!」 こんな感じ。 飼育員がショック状態のまま息を引き取ったことも、彼ら彼女らの「僕たち、私たちは悪くないもんねー?」「ねー?」の前ではなかったことにされてしまうのだ。 更に悪いことに父林田がまた長距離トラックで仕事に出ると、今まではせいぜい林田を遠巻きに見て「あの子のお父さん、めっちゃ怖いよね」と陰口を叩く程度だったクラスメイト達が、ちょっとだけ大胆に林田を虐めるようになった。
例えばこんなの。 小さな紙に『林田君についてのアンケートです』の文字。 その下にはこう続く。 『林田君についてどう思いますか? これだと思うところに線を引いて『正』の字を作ってください。複数回答OKです。書いた人は前の席か、隣の席の人に回してください』 『林田君はキモい:正一』 『林田君はウザい:一』 『林田君は臭い:正正』 『林田君は死んだ方がいいと思う:正正正正正正正正正正』 これが授業中に林田以外の生徒の席に回る。そして一番最後、授業が終わる直前に林田の席に回ってくる。 林田は回ってくるメモを読まないで捨てるようになったが、そうすると今度は林田のジャポニカ自由帳が机の中から抜き取られ、その中に『アンケート』を書き込まれたのだ。 クラスメイト達はわかっていたんだと思う。 林田が「割と良い奴」だってことを。 だってああいうことが起きる前に「ピアニカ吹くのは可哀想だから止めなよ。赤ちゃんだっているんだから」とクラスメイト達に面と向かって意見したのは林田だけだったし、全生徒の中でピアニカを一度も吹かなかったのも林田だけだったから。 それに林田は「割と良い奴」であると同時に、「割と良い息子」だったので親に心配をかけないために虐められていることは絶対に何があろうと黙っているタイプだとクラスメイト達にはもう完全にバレていた。 「こいつなら、多少大胆に虐めても問題ないでしょ」ってカテゴリーに分類されたのだ。
それで、林田は学校が嫌いになった。当たり前だ。これで嫌いにならない奴がいたらどうかしてる。 林田は時々学校をサボっては雑木林の中を探検するようになった。全然行かなくなるとお母さんが心配するだろうからと、サボる日は週のうち1日か2日くらいだったらしいけど。 犬の糞だらけの道は通らずに、道のない林の中をブラブラと歩いて時間を潰す。 蚊や蠅が多いのは動物園に続く道だけで、道を外れた林の中はほとんど虫がおらず、涼しくて快適だと林田は気がついた。間もなくして、動物園から少し離れた林の中に沼があるのにも気がついた。 気がついてからはその沼の側にある大きな石に腰掛けて、その週発売のジャンプを読むのが林田の習慣になった。 沼は静かで、眺めが良く、串にソーセージを刺したような形の面白い草が一杯生えていた。 林田はそこでぼーっと過ごす。 たまには石の上に寝転がって、木々の合間から見える空を見た。 そこでは林田は自由だった。
そしてこれは俺が引っ越してくる前に俺の家族に起きた、林田には全く関係のない話。シンプルで、どこにでもある話だ。 林田と出会う前の年に、俺のお母さんが殺されたのだ。 その日、お母さんはクリームシチューを作るはずだったのに冷蔵庫に牛乳がないと気がついて慌てていた。 お母さんは財布を手に取り「お母さんがスーパーに行ってる間にジャガイモの皮と人参の皮を剥いておいてくれるって約束するのなら、ついでにアイス買ってきてあげるね」と言い残して家を出た。 平日の午後6時を少し過ぎたくらいだった。金曜日。テレビでカウボーイビバップをやってたから間違いない。男か女かわからないエキセントリックなハッカーキャラが初登場する話だった。 俺と妹はテレビの前にボウルとピーラーと野菜を持って座り、言われた通りに皮を剥きながらアニメを見ていた。 俺も妹も、ブロッコリーみたいな頭の主人公がなんとか言う名前の宇宙船を操縦するのを見るのに夢中だった。たった今、家から飛び出したお母さんが、たった3軒離れた場所で通り魔に襲われ、血まみれで道路に倒れているだなんて想像すらできなかった。
お父さんは俺たち兄妹に事件の詳細を言わなかった。 「悪い人がお母さんを襲って、お母さんは死んでしまったんだ」、これくらいの説明しかしなかった。俺たちはお母さんの遺体をみることもできなかった。「今、お前たちの頭の中にあるのが、お母さんの本当の顔だから。これはみなくていいんだ」とお父さんは言った。棺桶には窓もついていなかった。 俺たちには何もわからないままお母さんはいなくなり、顔も見られないまま燃えて骨になった。
高校生になるかならないかくらいの時に、俺はそれをYoutubeで見��けた。 事件についての短いインタビュー映像。 若い、どこにでもいそうな男がカメラに向かって喋っている。 「女の人が突然叫んで道路に倒れたんです。最初は転んじゃったんだなって思っていたんだけど、側に立っていた男の人が、その女の人の頭に何か、ドリルのようなものを向けるのが見えて、妙だと思ったんですよ。大丈夫ですかって声をかけようとしたら、プシュップシュッ! って音がして、女の人の頭が道路にぶつかったんです。血が一杯流れていて、『どうしよう、死んじゃった』って思ったんです。俺が『誰かー!』って叫ぶと、その男の人が自転車にのって逃げて行ったんです。小太りで、メガネで、40歳くらいに見えましたけど」 Youtubeの動画タイトルは『自らの殺人について語る殺人鬼』。 説明文はこう。 『1998年の5月。住宅街で起きた釘打ち銃による通り魔事件の犯人・川畑周次郎。彼は事件の第一発見者を装い、マスコミのインタビューに答えていた。このインタビューが放送された翌日、警察は川畑逮捕のため自宅に押し入ったが、川畑は被害者と同じように顔に釘を打ち、死亡していた』。
死体がどういう状態だったのかをお父さんは教えてくれなかったが、グーグルは何でも教えてくれる。当時の週刊誌に載っていたモノクロの死体写真や、イラストで。 誰でもよかったのだと川畑の遺書には書いてあったそうだ。 たまたまそこにお母さんがいて、たまたまそこに川畑がいて、たまたまお母さんは死んだ。 シンプルで、どこにでもある、報われない話だ。
俺の与り知らないところで何かが起きて、そして俺には何の説明もないまま、俺の世界には空白が出来てしまった。 その空白は気になることもあれば、気にならないこともあるが、決して元どおりにはならず、何かで埋め合わせることもできない。 俺のお父さんが引っ越しを決意したのは、本当ならお母さんがいるはずの家に、公園に、スーパーに、時々家族で足を運んだ小さな映画館に、お母さんがいないのに耐えられなくなったからだ。お父さんにとってお母さんと過ごした全ての景色は、どこにもお母さんがいないことを思い知らせる景色になった。 それで、俺たち家族は元々住んでいた町から離れようと決意した。 俺たちは壁に日本地図を貼り、「日本列島ダーツの旅ごっこ」をした。 俺がルィルィウェウェウェイルィルィウェウェウァーと「日本列島ダーツの旅ごっこ」の歌を歌うと、お母さんが死んでから初めて妹が笑った。 俺の投げたダーツが日本海に、お父さんの投げたダーツが地図の外に刺さると妹は更に高い声で笑った。 そして妹の投げたダーツだけが関東の端っこに突き刺さった。 そこが俺たち家族の新しい町になった。 引っ越してきた初日。 まだ学校に転入する日ではなかったので、俺は町をぶらぶらと探検していた。 小さくて寂れた商店街をぶらぶらし、川沿いの道をぶらぶらし、とにかくぶらぶらし続けた。 一応ルールはあった。 知らない町なのでただひたすらまっすぐに歩くこと。 そうすれば仮に迷ったとしても、来た道をただまっすぐ引き返せば必ず家に戻れる。それから念のため、ポケットには新しい住所と電話番号を書いたメモが入れてあった。 で、まっすぐ歩いた。歩いて、歩いて、歩いて、歩き続けて、小学校側までやってきた。 そして更にまっすぐ歩いてゆき、動物園に続く雑木林の道に入り、そこでランドセルを背負った俺と同い年くらいの小学生が道を外れて林の奥へと消えてゆくのが見えた。 「お。第一村人発見!」 そう思った俺はその小学生に声をかけようと思って、彼の後を追いかけて林に入った。 いうまでもなく、その小学生が今俺の目の前で落ち込んだ顔であやとりをしている、林田である。
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2017-05-31-SeaAir【雑記】5月を振り返る
なんだか久々に取り留めなく。
いやぁついに終わりましたね5月。忙しかったなぁ。忙しかったというよりは色々あったなぁという感じ。
グアムで迎えた5月1日。やっぱり1歳10ヶ月を連れて旅行に行くと大変だねぇと改めて思ったり、メリットを享受する妻とデメリットに翻弄されるわたしで夫婦でも違いを感じたり。一方で家事なんかだと、妻はプラスがあるよりマイナスがないことを好み、私はマイナスがあってもプラスがあればいいやと思ったりするので不思議なものです。
グアムでスマートフォンを壊してしまい、帰国後即新しい携帯を購入してSIMを差し替えると同時に海外旅行保険でスマートフォンの補償手続き開始。幸いにして補償対象だったので最終的にお金は戻ってくるんですが、修理代がどれくらいかかるか、というのを明白にするため一旦メーカーの修理センターに修理依頼して見積もりが出たらそれを保険会社に送付、というなかなか面倒なことになりました。まぁそれで数万円もらえるんだから当然だけどね。
で、新規スマートフォンを携えて向かったのがボストン出張。良い経験になることは分かっていつつも、自ら悪癖と自覚のある不安症が猛威を振るって落ち着かない時間もありました。出張先で技術的な話を聞いてる時のほうがホテルに一人でいるより安らぐっていうね。
ホテルで不安な時に、気を紛らわせたのがデレステと幕末ラジオでした。普段はハースストーンをよく遊ぶんだけどネットワークが不安定で、リアルタイム対戦ゲームは切れちゃうんだよね。それで仕方なく遊んでたんだけど、なんかね、話は突然変わるようで変わってないんだけど、女性がフラれたことによる傷心につけこんでアプローチすると恋が成就しやすいっていう話あるじゃん?ボストンで漠然と不安だった時に、デレステと幕末ラジオで気を紛らわせていたら楽しく過ごせてしまった影響か、なんだか帰国してもデレステと幕末ラジオ聞くと安心感がすごくなってしまった。デレステなんて当分やってなかったのに。人の心理って面白いっていうか変だよねえ。
ボストン出張は同じ会社の人が途中帰国したり、火災報知器が深夜に鳴り響いたりとイレギュラーが起きて精神的疲労はあったけども、まぁなんだかんだ言って結局は五体満足で帰国できるんだよね。こういう積み重ねがあればどんどん平気になっていくのかな。とにかく英語が話せないと安心感が得られないというのは間違いないんだけど英語の勉強は疎かです。
まぁほとんど一人で海外出張行って帰ってきてて、現地では一人で公共交通機関乗ったり観光地散策したり美術館巡ったりしてるんだからぱっと聞いたら慣れてそうには見えるのかもしれないね。
しかしまぁ今は1歳11ヶ月になった息子がイヤイヤ期まっただ中なので一人日本に残された妻には苦労をかけました。一人残されてないか。息子と二人残されたことで苦労をかけた。ちゃんとこう...埋め合わせと言うか償いというか、そのあたりは今も頑張ってます。
イヤイヤ期ってどんな���?って話なんだけど、すごく簡単に言うと『これ以外は認めない』なんだよね。彼の意思が絶対。水が飲みたい。って彼が思ったらもうそれを叶えるまでは梃子でも動かなかったり大泣きし続ける。電車が来たけど電車に乗らない。って彼が思ったら、たとえ電車が到着しようとも一切その場から動かない。今から保育園行くのに...。というような親の都合への斟酌は一切ないのだ。
叶えてあげるのがいちばんいいんだけど、叶えられないことのほうが多いからとにかく泣き叫ぶね。泣き叫んでも無駄、ということを教えるためにひたすら宥めたりときには放っておいたりするけれど、本当に10分以上同じ大音量で泣き続けたりするから体力あるなぁって思う。泣いてるっていうか、泣き声系で叫んでいるだけ叫んでいる感じ。こうしてればパパママが言うこと聞いてくれるだろう的な。家庭内ならそうは問屋が卸さないんだけどね。でも電車とかエレベータとか公共の場だと仕方なく要求を飲むことが多い。それでまた増長するんだよなぁ。
まだ言葉も発展途上なので、なぜキレてるのか分からないことも多い。寝かしつけしてて普通に横になってて、特に何もしないまま数分ごろごろしてたのに、突然「もっと」って言い出して「もっと。もっと。もっと!もっと!!」って怒り出したりする。私が「何がもっと?お水飲む?トントンする?」とか聞いても「もっとぉぉぉ!もっとおおおお!!」って泣き出すからね。結局なぜ泣いているか分からないまま泣き止むまで待つこともある。とにかく子育ては大変である。
でもまぁ最近は偉いんですよ。自分で服を脱いだり、脱いだ服は洗濯機(ドラム式なので手が届く)に入れたり、おむつはゴミ箱に捨てるし、家を出る時にゴミ袋をまとめていると、マンションのゴミ捨て場まで持っていってくれるし。保育園や帰宅時は靴を脱いで靴下も脱いでくれるし。あいさつもまぁまぁできるようになったしね。
パトカー消防車救急車ブッブーあたりは得意だったけど、車関係が輪をかけて語彙が増えて、クレーン車ブルドーザーミキサー車タンクローリーゴミ収集車、自転車バイクタクシーレッカー車なんかもちゃんと見分けて呼べる。たどたどしいけどね。動物なんかも、うさぎネコいぬゾウくまカエルなんかのメジャーなところは言えるし、ちょうちょやてんとうむしなんかも絵本で覚えている。とにかく、すごいねとかえらいねとか言われるのが嬉しいらしく、自分ですごいねって自画自賛したり、私らがすごいねとか褒めるまで延々と指差して、うさぎ、うさぎ、うさぎ!うさぎ!って連呼してたりする。
まぁこんな感じでいいとこと大変なことがあるのが子育て、ってのは変わりませんね。とにかく自分の都合は後回しになるけどまぁなんとかやってけるもんですね。SeaAir含め。
というわけで久々にだらだら思うところなんかを書いたわけです。今後は6月に妻実家に帰郷したり、8月に私実家に帰郷したり、9月には国内旅行行ったりと過ごす予定です。ちょっといろいろあってボードゲーム会ができていないのが気がかりですが、また開催するつもりはあるのでその際にはぜひよしなにしていただきたいところです。
引き続き英語と筋トレを頑張りつつ、ゲームやボードゲームなんかの趣味も楽しんでいけたらと思います。あとSeaAirも。
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「アライアンス・アライブ」って3DSのRPGが気になる。明日0時から体験版が配信されるらしいので3DS用意しなきゃ。
ゼルダの伝説BoWは面白いです、見えるところ全て行ける!みたいな感じで、見えるんだけど進入禁止(マップの端)になってるエリアみたいなのが今のところは無い。まぁ最初の小さい台地なのでもっと先まで言ったらもちろん終わりはあるだろうけど。
スタートは室内からなので外出て勢いのままに崖から転がり落ちてさっそくゲームオーバーになったりしたけどすぐリトライできる安心設計。でも直近で死んだ場所はマッピングされる。なんで? イノシシや鳥を狩ったり、カエル捕まえたり爆破漁で魚とったり蜂が群がってるのを火で燻して蜂蜜ゲットしたりかなり奔放で楽しいです。
「A3!」ってスマホのゲームをなんとなくやり始めたんだけど面白いです。イケメン集めて舞台をやるぞっていうアイドル育成ゲームの類のやつ。ゲーム的にはプレイヤーがリアルタイムでやることあんまり無いからやや手持ちぶさただなって感じなんだけど話が面白いです。集結→反発→理解→事件からの瓦解の危機→結束みたいな。秋組の途中まで来たんだけど、今のところ夏組の話が特に好きかな。スタートダッシュガシャやり損ねたのでもう一回インスコし直そうかと思ってる。スマホ替えるし。
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