#「湖畔の散歩道」 空と湖を見ながら のんびり歩く散歩道。 日差しが強いぶん 影の色が濃くて美しい 静かで 心地よく 優しい風が吹いている そんな散歩道 かとうようこ 透明水彩
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20/アルファルド
. 地上を滑る流れ星を見た。 今思い返してみれば、あれは吹雪が見せた刹那の幻影だったかもしれないし、本当に雪原の大地を奔る流星だったのかもしれない。それでも、確かにあれは輝いていた。星のように眩くきらめいていた。それだけは、疑いようの無い事実だった。 星は何も囁かなかった。それでもそれを星と見間違えたのは、白く弾けた視界の中で、燦然と閃く青く冷たい輝きは、星以外に喩えようが無かったからなのかもしれない。 吹雪の中の出来事だったので、流星はすぐに雪にかき消えて、その尾の痕跡さえ残さなかった。しかし到底、ただ極北が見せた幻には思えなかった。なぜかそう思いたくはなかった。あんなに凍えるような光であったのに、網膜に焼き付いたように忘れられなかった。未だにその、言語にできない感情を覚えている。それはその後、彼女と出会うことになった切っ掛けだったからかどうかは、彼には終ぞ解らないままだったのだが。 流れ星に願い事を三度繰り返すと、願いが叶うのだって。 イフはそんなことを思い出した。誰が言ったことだっただろうか。母親か、兄弟か。もしかしたら、空の噂に星自身がさざめいただけだったかもしれない。しかし彼はそれを思うと、不快になるほど肺腑が締め付けられるのだった。重たい左腕に力が籠もり、拳を作ってしまうほどに。 だって、流れ星なんて見つけたその瞬間に消えてしまうものだ。願い事を言いたくたって、一瞬で消えてしまうなら、どう必死に唱えたってそんなもの、叶いやしないじゃないか。そんな噛み切れない固い泥のような不快感を、奥歯でぎりりと噛み締めながらそう考えたのだ。 誰の願いも受け止めることができず、堕ちていった星は、一体どこに行くのだろう。 † 「遭難しました」 サアレは取り留めて問題は無いような口調でそう言った。 イフは頭を抱えながら大きな溜め息を吐く。周囲は木立は茂っているものの、鬱蒼とまではいかない程度の山林だ。夕空の紺が、木葉の間に見え隠れしている。そしてそれらはじきに葉擦れの音ごと夕闇に飲まれてしまうのであろう。彼は木立を仰ぎ見て、そして空を睨んだ。 晩秋、冬に入る一歩手前の深山は落日。釣瓶落としの勢いだ。 この日は珍しく、イフとサアレは二人で狩りに入っていた。……そう説明をすると彼は機嫌を悪くするかもしれない。正しく言えば、イフの用事にサアレが相乗りをして着いてきただけで、彼としては伴なんていらない筈だった。照れ隠しなどではなく、割合本心からの思いだ。なにしろ、事実本当に彼女は相乗りをしただけだった。目的地に着くなり彼女は「じゃ」の一言と片手を上げる挨拶を一瞬しただけで彼のことなんてまるで居ないかのように山奥に滑るように潜って行ったし、本当にその後日が沈むまで彼の元へ帰っては来なかった。 苦い言葉の一つや二つ言いたくなって然るべきだろう。最初から一人で来るつもりであったとはいえ、一応伴連れで訪れているのである。ましてや率直に言えば夫婦であるのに――彼女のその振る舞いに、不可解な音色を持つ怒りが沸いて来たことは、イフには到底説明がし難いものであったが、妥当な感情だと言えよう。 結局彼は自分の用事を済ませた後、いや流石に置いて帰るのは、という憐憫を抱いたせいでサアレを探して山の深い所まで潜ってしまったのだった。その選択が今となっては大きな誤算となって彼を悩ませている。 結果として、山慣れをしている彼女は獲物を両手にひっさげてけろっとした顔をしていた。置いて行っても問題無かったのではないだろうか、とイフが考える前に、「なんでここにいるんですか」と、表情だけではなく発言をして真顔で首を傾げたサアレに、彼が激昂しなかったことは賞賛に値するべきだった。 深山は上ることも容易でなければ、その逆もまた然りであり、下山にも困難を要した。枯れかけた草木は、そう移動を阻害しなかったにせよ、如何せん山奥まで立ち入り過ぎた。下山が遅れたのが最も大きな理由で、更に徐々に暗くなっていく風景に珍しく焦ってしまったのか、二人は戻りの路を外れてしまったらしい。 気がつけば山中で立ち往生。黄昏はあっという間に闇へと色を変えていく。彼らは文字通り、遭難していた。 とはいえ、二人の表情には焦りも緊迫も、もっと言えば緊張もさほど見受けられなかった。強いて言えば、イフがわずかに「面倒な事になった」と言いたげに顔を歪ませている程度で、サアレはいつも通りのぼうっとした真顔のまま木立が揺れるのを眺めている。 「もう夜だが。……無理をすれば、下りられるか?」 イフが溜め息交じりにそう尋ねた。 夜という時間においては、彼だけでなくサアレも得手とする舞台である筈だ。お互いに夜目は利く。道は見えなくても、自分に聞こえる星の声と、彼女の聴力・視力さえあれば、そう困難も無く下山ルートを探し出せるだろう。最も、懸念していることはそこではない。夜間、魔物けだものが跋扈しているところに突っ込んでしまった時、それを対処できるかという意味を込めての問いだった。 サアレは耳だけを動かして、少しだけ考える素振りを見せたが、しかしすぐに頭を振り「いける、とは思いますが。……オレの目が少し厳しいですね今日は月が明るすぎるので」溜め息と共に、ぱちりと目をしばたかせた。瞼が持ち上がるのと同同時に、白い強膜がすうっと黒く反転した。赤い光彩がらんらんと輝くふちに、涙がこぼれた。 イフは空を見上げた。木々の切れ間に微かに見える月は大きく、明るく、丸い。満月が近いのだった。
「……下山は無理、か」 「いいんですよ別に放っておいて下りられても一夜だけ過ごせばいいだけですし夜は不眠でもなんとかなります。一人ならですが」 音も無くぼろぼろと後をついて零れる涙を、煩わしそうに手の平で拭う。辺りに噎せるような��い香りが風に乗って広がった。イフは思わず顔を逸らす。同時に、首を横に振った。 夜に涙が出る体質の彼女は、更に月の満ち引きにより涙の濃度が影響されるらしい。つまり、満月に近い今は常日頃よりも強い香りをする代わり、良く“沁みる”のだった。そんな状態であれば、視界は封鎖されたようなものだ。夜目は利くとはいえ、此処は市街地ではなく森だ。滲みっぱなしの視界では、暗さも際だって、盲目に等しい。とあれば、強行軍をするのは得策ではないだろう。 「今日は野営だな」 イフの否定をする隙の無い断定的な言い方に、サアレが「そうですか」と小さくぼやいた声だけが、風の隙間に重なった。 周囲に廃屋が無いか散策しても、歩ける範囲内には何も見当たらなかった。 彼らは仕方なく薪を集め火を熾し、今日の獲物を早速捌いたものを串に刺して焼いたものと携帯食で、黙々と食事を済ませた。 何一つ滞りも緊張感もなく、それらは進んだ。夜闇に便乗してこちらを虎視眈々と狙う獣がいないとも思えないのに、それに対する切迫した思いすら、両名とも抱いてはいない。不思議な事だと、二人とも思っている。それは恐らく、自分だけの身なら守れるだろうという、希薄な逃走の意思とはまた異なったものだということも、なんとなく理解はできていた。 サアレだけは、なんとか言いたげな視線を時折、イフへ投げかけていたがそれも一瞬で、二人は暫く無言で焚き火を見ていた。イフが生乾きの枯れ枝を投げ入れると、火の粉がぽっと踊って、煙がもうと上った。焚き火の赤が、黒い片目に反射している。まるで炉みたいだ。サアレはぼたぼたと流れる涙の隙間に、何度目か考えたそれを見て、その熱さを思った。白い左目よりも、それはずっと明るく見えた。 不意にサアレは空に呼ばれたような気がして、すっと真上の空を見上げた。視界がぐるり、天球と枝葉で埋まる。 その視界の真ん中をさあっと光の筋が尾を引いて、消えた。涙が頬を伝って地面に滴るのと、ほぼ同時だった。 その一瞬だけ、ぼやけた視界はクリアで、満天の星の群れが見えた。涙の膜はすぐに瞳孔を覆って、曇らせる。 「流れ星」 子供のような声音で呟くと同時に、サアレはまず、イフがそれに反応して同じように空を見上げたことに驚いた。目を丸くして、「え、」と声のない声が漏れる。イフははっと気がついたように、直ぐに目線を地面に落とした。 少しの、無音。 不思議そうに首を傾けたサアレの視線を汲んで、イフは目線だけをサアレに向ける。彼女はもう一度空を見上げて、流れ星の軌跡を指でなぞっていた。もう視界に流星は残像すら残ってはいないだろうに。ぶつぶつと、夜空に散らばる星々の位置をぽつぽつ指さしながら、あれは、これは、と名前を呟いている。涙で潤む視界にも、星は見えているのだろうか。 「……北天の、」 「?」 「星の帯の隣、……白く大きな星が一つあるだろう」 「はい」 「それが、白鳥の尾。そこから南へ真っ直ぐ伸びて、それより一回り小さい星が、白鳥の胸」 「はい」 イフは空を見上げずに、書物を諳んじるような口調で淡々と空をなぞる。サアレはじっと空を見上げ、時折視���を覆う涙を手の平で拭いながらその言葉に従って星と星の間を指で繋いで行く。 「胸から左右、歪曲するように等間隔に伸びた暗い星の連なりが右翼、胸と同じ輝きをした星とその先の星、二つ結ばれる線が左翼」 薪が火の中で小さく爆ぜる。 「胸の星から南へ、二つ暗い星を越して、一回り明るい橙色の星、そこが、」 「白鳥の嘴。……終着点ですか」 「そうだ」 サアレの瞳は終点となった橙色に煌めく星を見つめている。空に引かれた白い星々の群体の隣、湖畔のほとりを飛翔するように、美しい尾を靡かせた白鳥が北天の空に翼を広げて優雅に飛んでいるのが、サアレにも解った。手の平を広げる。翼は遙か彼方、夜の闇の向こうにあって、サアレには掴むことが出来ない。 イフは何故、このような話をしているのか自問自答した。自らの血に所縁のある事象を、偶々耳に入れた為だろうか。 唐突にサアレが「あれ、」と声を上げた。釣られてイフは空を見上げてしまった。「あの」サアレは彼を見ずに尋ねる。視界の紺碧は遙か彼方の星雲の色を、滲んだインクのようにかき混ぜた紫と、青と、緑と、鮮やかな黒から成っている。己の翼にもあるそれらは触れることができるはずなのに、どうしてか苦しいほど、遠くに見えた。 「白鳥の嘴、あの橙色の星の直ぐ側にもう一つ小さな星がありませんか」 「、は」 「小さな白い星が重なっているように思います。見間違いでしょうか見間違いではないと思ったのですが。貴方ならご存じかと思いまして」 指の先が何処へ通じているのか、その線を追うことは難しかったが、彼女の口調から何を指しているのかは解った。きっと、白鳥の嘴を言っている。 イフは体内に冷たいものが広がるような奇妙な感覚を覚えた。冬空の下、冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んだ時の、体の芯までがすっと痺れる時の感覚に良く似ていた。このまま口を噤むべきか否か悩んで、イフは躊躇いがちに唇を開いた。 「……二重星だ」 「ニジュウセイ」 はてと首を傾げるサアレの横顔にイフは頭を抱えた。 「双子星だ。あの星は一つに見えるが、遠くを見透かすと二つの星が重なっている。二つで一つの星に数えられている」 「上顎と下顎ですか。ははあなるほど色の違う星が双子とはオレも思いつきませんで。天の星には色々なものがある��ですね勉強になります」 「……あんな遠いもの、良く見えたな」 「目が良いので」 サアレは「あんなに近いところにあって、お互いぶつかってしまわないのでしょうか」と呟いた。イフは吐く息が冷たくなっていることに気がつかないふりをした。 「あれらは重なっているが、本当はずっと遠いところにお互い居る」 「側にいるように見えるのにですか」 「そう見えているだけだ。星同士なんて、お互いが俺たちにひとまとめのくくりにされていることなど知りもしないだろうがな」 「そんなものでしょうか」 「そんなものだ」 暫くサアレは、はばたく白鳥を大人しく眺めていたが、ふと思い出したように立ち上がって、焚き火の周りをうろうろし始めた。空を見上げながら。「おい」イフが咎めるように声を出しても、サアレはぶつぶつと人差し指をコンパスに、空を製図するようになぞり続けている。もう一度イフが声を出そうとしたとき、「イフ」不意に名前を呼ばれた。 「あれ、あの星は何という星でしょう」 「……どれだ?」 少し離れた場所、そこは枝葉の位置が異なるので、焚き火の側とはまた違った星模様が見れるのだろう。別に空なんて見上げなくても、翼を覗き込めば直ぐに探せるだろうに。という事を言いかけたが、イフはその言葉を飲み込んで同じように天を仰いだ。サアレの指先は、南西の空を指している。 「あそこの薄い橙色を帯びた明るい星です。山の縁視界が切れそうなところにいるでしょう。あれが貴方にとても似ていると思ったのでつい」 空の位置、得手がいったイフは一瞬だけ苦い顔をして、すぐ無表情に戻った。気取られてはいないはずだと思い直して、イフは言った。偶然の皮肉にしては、出来過ぎていると思えた。 「……海蛇の心臓」 「うみへび」 南西の夜空は確かに他の空と同じく、幾億もの星々もの囁きを集めたように輝いている。しかしどうだろう、彼女が指さした一点、海蛇の心臓に当たる赤い明るい星は、その空の中心で一人ぽつんときらきらしく瞬いている。その星の周囲には暗い星が散らばるばかりで、同じように強く輝く星が見当たらなかった。北極星は眩く、乳の道は白く美しく、空は彩られている筈なのに、どうしてかその星の周りは言葉に出来ない孤独で溢れていた。 「どうしてあれが俺だと思った?」 「はあ。強いて言うのであれば他の場所が星同士賑やかなのにたった一人意地を張って誰も居ない空にぴかぴか光っているあたりがとてもとても貴方らしいとおもったただそれだけなのですが」 「……意地を張っては余計だが、まあ、あんたの言いたいことも解らんでもない」 「おや珍しい」 天は広く、気が遠くなるほどに遠い。 例えば北極星がすぐ隣にある明るい星に手を差し出したとしても、その手は爪の先に触れることすらできないだろう。イフはそのことを知っている。見上げる空に涯はなく、追い求めたぶん疲弊するだけなのを知っている。どうせすぐ隣にも腕が伸びないのであれば、どこで輝こうと同じ事だ。双子と形容される星同士ですら、触れることすら叶わないというのに。 遠い。届かない。他の光に手を伸ばすことで、一体星の何が変わるというのだろう。人はそれを孤独と呼ぶのだろうか。それは忌むべきものなのであ��うか。 そうであるのならば、サアレの言葉は酷く正しいものに思えた。 「そうかあれは俺か。釈然と行った」 「認めるんですか」 「……あんたが言ったんだろう」 「だっていつもは真に受けないじゃないですか」 今日の彼女はやたら正論ばかり言うな、とイフはぼんやり考えた。 小さくなりつつある焚き火を横目で見て、まだ何かを見上げているサアレの背中に「おい」と声を掛ける。薄ぼんやりとした風景の中、サアレの白銀がくるりと振り返りざまに翻った。 イフは呼吸を忘れる。 あの吹雪の夜に見た、流れ星に良く似ていると思った。 「イフ、貴方に似た星があの空の上にあるのならオレに似た星もあるのでしょうええきっとあるでしょう。オレの星はどれに見えるでしょう? 見繕えませんか?」 「……星は無理矢理、自分に合うものを見繕うようなもんじゃないと思うが。そもそも、あんたはあの空には居ないだろう」 「?」 確信めいた溜め息に、思わずサアレは疑問符を浮かべる。涙は音も無く零れた。見上げた空は、静かに輝く星たちで埋め尽くされている。暗黒は揺らめく兆しを見せず、押し黙ったままだった。空気を裂く、青い光はどこにも見当たらない。 瞬きの間に消えてしまう、青い冷たい、狐火のような燐光を翻す、あの。 「……あんたは、流れ星みたいなもんだろう。青い尾を引いて夜を奔る。……あんたそっくりだ」 サアレは押し黙っていた。無言で、目を丸くして――しかしその顔は驚きともとれない不思議な様相だった――イフを見ている。 サアレの網膜の上を、青い閃光が奔って行った。空はちりばめた星屑で彩られている。その隙間を縫う、青く冷たく、燃えさかるほどにあつい流星。先ほどの一瞬で瞳の中に焼き付いた、眩い程に白い青が、サアレの瞳の中に未だ瑞々しく残滓を残して生きていた。あれはもう死んでいるのに、死に向かう一瞬に一際強く輝く、今際の塵であるのに。 「失言した。今のは忘れろ」 イフははっとして、慌てて頭を振った。 「嫌だと言ったら?」 「……二度とは言わんからな。もう遅いしあんたもさっさと寝ろ。……無駄な事を話した」 イフはサアレの言葉に被せるようにして、我に返ったかのように寝支度を整え始めた。まるで空を見上げていた先ほどの一幕などそもそも無かった事だと言わんばかりに、荷物を纏め、バックパックを枕代わりにして、薄手の毛布を引っかける。 サアレは取り付く島を強制的に排除されて、非難めいた息を吹いたが、イフが足で焚き火に土を掛けている姿を見て、渋々自身も寝支度に入ることにした。くあ、と大きな欠伸をする。 サアレの荷は少ない。そもそも彼女は野営に荷物を持たないたちであるから、仕方が無い。雪山で遭難した所で着の身着のまま生きて帰ってこれる自信があるからこその無謀だと言うことはイフも知っていた。 サアレはまず周囲の枯れ葉のうち、綺麗なものだけを集めて土埃を蹴って払うと、その場にすとんと腰を下ろした。そうして、六つある大きな尾を器用に体に巻いたり、捻ったりして、まるで動物がそうするように自らの尾に包まってみるみるうちに寝床を作り上げた。 ……器用なものである。と端から見ていて、イフは無駄に感心をしている。尾に包まっている姿を見ると、本当に大きな狐一匹にしか見えない。顔が見えないのでなおさらだ。野営が嫌いな訳ではないが、そもそも今日は野営をする予定を組んでいない。バックパックの硬い枕と薄い毛布では、やはり寝心地は今ひとつだ。と、イフは地面に寝そべる為体を横にした。 視線が、合った。 焚き火はすっかり消えているので、辺りはサアレの持つランプが光る薄ぼんやりした青い光に照らされている。その仄かな青のベールの向こうに、煌々と燃える赤が水に滲んだ輪郭を持って、こっちを見ていた。目線が、切れない。イフは言葉を失って、起き上がる途中のような、寝ようとする途中のような、微妙な姿勢で固まっている。その姿を見て、合点が行ったかのようなサアレは、 「……使います? 尻尾」 そう、おずおずと聞いたのだった。 「何を、……どう解釈したら、俺があんたの尻尾を欲しがっていると、思えるんだ……」 「いえ寝心地が悪いと寝られない性分なのかと思いまして」 「バックパックはあるし、毛布だってある。簡易だが」 「ここに柔らかい枕兼厚い毛布が四本も余っています」 「いらん」 ぴしゃりと言い切られて、サアレは少し考え込む。何を考えているつもりだ、とイフが胡乱げな顔をする横で、サアレはぽん、と手を叩いた。頭の上に電球が現れるような、そんな勢いで。 「気が使えずにすみません」 何が言いたい。と、イフが声にするよりも早く、腰を下ろしていたサアレが立ち上がった。そのまま彼女は前屈をするように体を折り曲げる。両腕が地面を掴み、ぐうっと、動物が伸びをするように背中が仰け反ったかと思うと、瞬きの間にするりと体躯は銀色に覆われ、背骨は伸びて前肢は縮んだ。尾をひとふり、ふたふりして、後肢を交互に伸ばす。魔法のように一瞬の変化に、流石のイフも驚いて声が出てこない。 「人の姿のままでは使うのに抵抗があったのですよね?」 「誰がそんなこと言った」 てこてこと軽い足取りで側に寄ってきた大きな妖狐は、さあ使えと言わんばかりに白銀の尾を差し出してくる。ばふ、と顔が尻尾に埋もれて、イフは邪魔そうに尾を手で退けた。 「……邪魔だ」 「まあまあ折角ですしどうせ夜は冷えることですし」 「俺は固い枕と土の布団で十分だ」 「なるほどそこに毛皮を敷くだけで豪華な寝台のできあがりという手はずですねよくわかります」 「人の話を聞け」 払っても払ってもばっさばっさと巻き付いてくる尻尾の群れに、イフは呆れた顔になる。サアレはその姿から戻る意思を見せず、起き上がらざるを得なかったイフの背中側に寝そべった。お前な、と小声でまた溜め息。サアレは知らん顔をして地面に顎を置いている。 しかし、この姿のサアレをよくよく見たことがなかったのもまた事実であった。狐になれる事実は知っている。見たこともある。あるが、あるにしろ。触れる機会などそうそう無いし、第一そうする理由もない。興味が、……無いことも、無い、のだが。 恐る恐る、躊躇いがちにその背に手を伸ばす。背、横腹。この場合はどこになるのだろう。とにかく、寝そべっているその胴に手の平を埋める。もふ、と音を立てずに指先が細い毛の束に飲み込まれた。思っているよりも柔らかく、長い毛足をしている。サアレは顔を動かさず、耳だけでこちらの動向を伺っているようだった。イフは、釈然としない面持ちをしていた。 ごく短い間、その見事な毛並みを手の平だけで味わう。この柔らかさであれば、確かに枕としては上等だろう。だが、それは果たしてやっていいものであるのか否か、イフには判断が困難だった。 これがもし、野生の人なつこい狐であれば、特に何を思うこともなく枕代わりにしていたかもしれない。イフは考える。そうきっぱりと道具代わりにすることができないのは、勿論相手がサアレであるからなのは明白である。色々な意味で。 「……変な気を起こすなよ」 「何阿呆なこと言ってるのかわかんないですが突然頭噛んだりとかですか」 「大体そう言う事だ」 「では善処します」 「……しないように務めてくれ」 最終的にイフは折れた。本人が布団として使えと言っているのであれば、もう諦めて使ってやろうという結論だった。腰の位置をずらして、丁度白い腹が枕になるように仰向けに横になる。もぞ、と背中の下を尻尾が動く気配がして、イフの眉間に皺が寄った。 「おい、尻尾は要らないからな」 「まあついでですし」 「お前な、おいサアレ、���ょっ……」 ぐいぐいと地面と体の隙間にねじ込まれる尻尾が無理矢理イフの体の下に潜り込み、背中と腰を支える。十二分に敷き毛布として優秀な厚みをもったその上に、覆い被さるようにしてもう一本、尻尾がかぶせられた。毛布のつもりなのだろうか。先ほどの薄手の毛布とは比べものにならない厚みは、どっしりと重い。 獣の匂いはしなかった。諦めて、腹の毛皮に頭を深く埋めると銀の毛並みが頬をくすぐった。さらさらと揺れるそれらからは、甘い花の香りがする。……それはそうだ。姿は違えど、これは狐でも魔物でもなく、サアレ本人なのだから。 呼吸を深く、吸う、吐く。息を吐ききると、体が厚い下毛と同化するように沈んだ。 小さく、一定の間隔でどくん、どくんと低い音が聞こえる。心臓の、音がする。 「……暖かいな」 「それはそうですよ、生きていますから」 サアレはそう言って、小さく欠伸をした。微笑っているのかもしれなかった。 森は静かだった。空もまた静かだった。 星の海は凪いでいる。水面を揺らす青い閃光もなく、ただ穏やかに暗黒だった。ぼんやりと、重たくなりつつあるまぶたの隙間から、夜空を仰いでいる。星々は相も変わらず手も届かぬ所で何も知らず輝いている。空に向かって手を伸ばす。届くはずはないと解っている筈なのに、伸ばさずにいられなかった。例えば、手を伸ばして���る頃には、そこにはもういない流れ星のことを思うと。 彼らの唄はどこから聞こえるのだろう。吐いた息が白くなった。体に巻き付くように掛けられた尾の重さが、少しだけ身に沁みた。 ふっと視界が刹那ぶれた。幻視かと瞬きをすると、まぶたの裏側に吹雪が吹いている。夢に落ちかけているのかと自覚をして、とろとろと落ちてくる帳に素直に従おうかと瞳を閉じる。横から叩き付けるような冬の嵐は、しかし幻である証拠に寒さも、痛みも無かった。ぼんやりと体は温かく、心地よく疲労している。 イフは傾斜のついた雪原の上で立っていた。それはいつかの大地を奔る流れ星を見た景色と同じだった。視界は霞んでいる。視界の端に煌めくものを見つけて、イフははっとした。おぼろげな、吹雪でそれと解らないのに、それだけは煌々と瞳に焼き付いてきた。青い、冷たい、まっしろな閃光。 「あ」 「? なにか」 「……なんでも。ただ、」 「はあ」 「流れ星」 「?」 「いや、あんただったんだなと、今更になって思っただけだ」 「……何の話なんでしょうね」 「さあな」 それは大地を駆けていた。吹雪の中を、それを苦ともせずに走っていた。青い燐光を残像に滲ませながら、白銀は雪を蹴散らしていた。流れ星なんかではなかった。しかしそれは、確かにイフが見た流れ星そのものだった。 それは一匹の獣だった。 白い体躯をした狐は一度瞬きをした合間に、もう雪原の向こうにいて、傾斜のついた丘を越えて見えなくなった。そこだけは、イフの記憶の中にある流星の光景と重なっていた。あれは、あの青い光は、尾だったのだ。流星の、尾。 暖かい。 「サアレ」 「はい」 「……流れ星は、最後にどこに行くと思う?」 「なんですかそれ。…………そのへんの地面にでもころがってるんじゃあないですか。解らないですけど」 「そうか。……そうだな、そうなのかもしれないな」 「話の流れがわからないですがわからなくていいですか」 「ああ」 「……変なイフ」 堕ちていった星は、一体どこへ行ったのだろう。 流れ星なんて、見つけた瞬間に消えてしまうものだ。そう思っていたけれど、それがただの石ころでも、屑鉄でも、隕鉄でも、そっと手の平に乗せることができるのならば、願いを囁くことくらい許されるのではないだろうか。 それに、案外すぐ側に、流れ星は転がっているのかもしれなかった。 「おやすみなさい」 とろり、融けるような眠気の波に覆われて、ゆっくりと夜の闇に意識は融けていく。サアレが顔を寄せて来た。その額を一撫でしてまぶたを閉じる。音が遠くなる。瞼の裏には、温かな闇が広がっている。あの日の吹雪は、もうどこにも見えなかった。
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