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つづく物語へ
どこまでも透明な春が目をさまし
はじまったあなたの物語
歩いて、走って、ページをめくる
吠えて、遊んで、時間はめぐる
黄金の葉の大地の上で
深く青く広い川を眺め
銀色の雪の大空の下で
風に歌う星の声聞いて
あなたは吠える
あなたは走る
あなたは遊ぶ
あなたは歩く
わたしは笑う
わたしは呼ぶ
わたしは撫でる
わたしも歩く
いつのまにか、思い出がつもって
いつのまにか、君はとしをとって
だから、わたしは
ずっと、願ってる
その美しい毛皮のうちにある
ふかくふかく透明なたましい
孤独で、
寂しが��やで、
世界でいちばん愛おしい、
あなただけの物語が
どうか
これからも
やさしさだけを
つむぎ続けますように
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はざま
はざまに
落ちていたり、
浮いていたり、流れついたり、
歩いていたり、飛んでいたり、
置いてあったり、震えていたり、
する なにかをみつけること
は
ことばかもしれない
こちらと あちらの はざま
境界は そこ かしこ に
夜と光のはざまには 宇宙の気まぐれ
海と空のはざまには 原子のやくそく
わたしと世界の はざまには
薄い皮いちまいと ひとかけらの意志
あなたとわたしの はざまには
証明のできないたましいと あいまいなあい
こちらと あちらの はざま
せかい、じかん、いのち
終わりのはじまりと 詩のはじまり
こちらと あちらの はざま
に ことば は 住まう
境界は そこ かしこ に
はざまにみちる
あなたとわたしの
巡りつづけるものがたり
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夏の思い出
「思い出さなくてもいいんだよ」
わたしの脳みその番人は
クルミみたいな椅子に腰かけ
ちょっぴり困った顔して、
やさしい声でそう言った。
猫じゃらしの生えた地面を見つめて
私は少しだけ、考える。
あの夏のいちにちを。
気味が悪くなるほどの青い空の下
セミの大合唱にかき消された誰かの声と
遠ざかる三羽のツバメの姿。
つかもうとした手のひらから逃げて行った
あの夏のいちにちを。
答えはもともと決���ってた。
銀色の猫たちが、足元にまとわりつくけど
わたしは前へとずんずん進む。
番人は脳みそをひとさじすくって
そっと道を開けてくれた。
どこからか、草の香りがほのかに漂う。
番人が悲しそうに、
静かにわたしに手を振った。
なんでだろう。少しだけ、なみだが出ていた。
いつのまにか銀色の猫たちは
地面の猫じゃらしに気がついて
夢中になって遊んでる。
今がチャンスだ。探しに行こう。
あの夏のいちにちを。
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まばゆいものは
朝
バスの車窓から燕の巣を見る
幼な子のくしゃみを聞く
ふと思い出す
朝
花が夜眠ることを初めて知った
あの白い光のなかで
君と思い出のなかを歩いたこと
朝
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とうめいな道のうえで
踏切があがる
雲ひとつない青い空へと
風が吹く
風見鯨の しっぽを回す
時間は流れる
千年生きた 大樹の脇で
私は立ち止まる
まだ小さな音がした
きっと これは夏の音
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どこかでひかるもの
わたしがわたしを見つけるための
長い道のりは
まだ真冬のただなかで
忘れられた記憶の片隅で
かすかに光る砂ぼこりだけが
ここにあるものを覚えていたのに
砕けたガラス片の上
チロチロ シャリリ
躍る光の粒たちよ
それは見捨てられた時間に浮かぶ
遠い国のいちばんさいごの
お別れのあいさつのよう
チロチロ シャリリ
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そして、おやすみ
いっときの祝福
日の光さす
葉脈に命を運ぶ
雲間の太陽
そそぐ素粒子
育つ空の
名のもとに
菜の花はまだ夢のなか
世界が凍る音がする
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真昼の草原で
あなたの時間の草原が
真昼の頃に差し掛かる
太陽はまぶしくつよく
あなたの瞳はかがやく
あなたは走る走る走る
四つの足で前へと進む
しっぽは命のしる���で
大切なもの知っている
やさしい心は息をする
吐く息は白く君は強い
太陽にも負けぬひかり
放つあなたは私の神様
あなたの時間はめぐる
過ぎた時と来たる時と
その全てにしあわせを
その全てにやさしさを
草原には白い花が咲く
舞う花びらに目を細め
空の香りをかいだなら
新しい時がはじまるよ
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あらがうもの
光をはじく金色の万年筆の上にたたずむ
それはきっと渡り鳥
まぶしげに細められた目に
うつるのは偽物だらけの真実で
それは必然としての影
はるかかなたより風をはこぶ
その使命をやがて来るあしたへ託して
いまはねむりにつく
そのあたたかな羽を
やさしくなでる手のひら
それは必然としての光
ねがいのためにあらがう
いのりのために旅をする
それは必然をこえるため
君はやがて羽ばたく
目も眩むほどの青空のもとで
影も光も追いつけないほどに
君は高く羽ばたく
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霧のくに
生まれたとたんに しずかに くずれる
編まれたとたんに くうきに かえる
白い霧は ゆれる ゆれる
向こう岸の見えない大きな湖
青黒いみなもに ゆらゆら ゆれる
ふれたとたんに あまく とける
それはまるで あの子の���白いわたがし
うばぐるま ういた うかんでく
ゆりかご ゆれた ゆめうつつ
生まれたとたんに しずかに くずれる
編まれたとたんに くうきに かえる
霧のくに 白いたましい ゆれる ゆれる
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白
カラスが鳴いている
なにかを呼んでいる
スズメが飛んでいる
朝の光を追っている
新しい万年筆はひかってる
これから万年生きるのだと
真っ白なノートが明日を憂いて泣いている
一度書かれた文字は決して消えないのだと
空白のままの可能性としろい宇宙と
終わったことのしるしとしての骨と
昨日についての論文を提出ましょう
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あなたのなかにめぐるもの
春の空気そっと抱きしめるみたいに
あなたは あなたをたいせつにして
だいじょうぶだよ おわりなどない
花びらが散ったあと 緑はかがやく
すべてのみのりはひとつにかさなり
それはいつかまた春へとめぶくから
雪きどけの水の冷たさに目をあけて
めぐりゆくときは やがて星となり
あなたの手のひらから空が生まれる
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白い小さな花へ
春のとある夕暮れ時から、わたしは
まいにち、ある花にさよならを言う
けれども、その白い小さな花は
ぜんぜん、儚くなんかなくて
まいにち、さよならを言うわたしの頭上で
可憐に、優雅に、咲き誇る
わたしのさよならはあまり意味がないようだ
散る時はじぶんで決めるよ。
そう言われた気がした
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春のゆめのなか
梅の花の中に雨つぶがきらめく
そんな春の日に 君は生まれる
僕は空へ帰る
うららかな陽の光が君を包んで
あたらしい世界へ導いてくれる
明日が芽吹いて昨日がささやく
こうもりのやさしいこもりうた
今日のゆりかごで君はおやすみ
ひつじのあたまをそっとなでて
ゆめの中でならきっと出会える
いっしょにうたおういのちの詩
みらいはきっと きみとともに
思い出はきっと ぼくとともに
梅の花が風に乗ったら合図だよ
さあはじめようそれぞれのたび
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おと と とき
生きてることをかんじるのは
しんしんと冷える冬の朝
しとしとと降る雨の音を
ぽかぽかと温かい毛布の下から
ぼんやりと聴いているとき
はるか彼方にあるという
死とゆめの世界に限りなく近い
意識のすみっこでまどろみながら
ぼんやりとその音を聴いているとき
しんしんと、しとしとと
しんしんと、しとしとと
心臓の音��なっている
どきどき、と
生きてることをかんじるのはそんなとき
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きみとなら
君と歩けば 暗くてさむいこの道も
月が照らす すてきな夜の旅になる
茶色のお鼻をくんくんさせて
歩こう 歩こう 僕らの旅路
君と走れば ぼくも陽気な風のともだち
しっぽをパタパタ わたげのように
楽しくて、嬉しくて、どんどん進むよ
走ろう 走ろう 僕らは自由
君となら 君となら
君とならどこへでも
まっさらな雪の大地に 足あとつけよう
一緒にすすもう 白い明日へ
きらめく未来へ 歩いて 走って
君となら 君となら
君とならどこまでも
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