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見つめると
瞳が揺らいでしまう
言葉にしようとすると
唇が震えてしまう
手を取ろうとすると
指先が硬直してしまう
誰かに寄りかかろうとして
突き放してしまう
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よく目を凝らしてみてほしい。
冷たく澄んだ水底を。
親指に絡まる水草を掻き分ければ、そこに骨が埋まっているのが見えるだろう。
陽気な音楽が流れていて、地平線では何をしているんだろう。
パレードだろうか、かすかに歌も聞こえる。
君たちは私のことを知らない。
私は君たちに話しかけることができない。
よく見てほしい、君たちの歩く泥の道。
腐った髪が埋もれているのがわかるだろう。
花びらを撒き散らして、色とりどりのパレード。
透けた私の体を通り抜けた、君たちの幸運を祈る。
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全部どうなったっていいと思う
翡翠色の砂利に流れる澄んだ水
ひと雫ペーパーナイフで切れた傷口から流れるもの
溶けて川を下る
かつての生物の気配
ぶつかり絡まりあう淡水
涙はほぼ海の味でしたね
波間のきらめきが頬を下から染める
睫毛の先を光らせるから
瞬きをすると星が舞うのでしょうか
ぬるい波が地上をヒタヒタにして
これが琥珀色のまどろみ
日は落ちて
全て黄昏のなか
温かい午後
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やまない霧雨、
対岸にはオレンジ色の光が点々と水平線を描いている。
遠くから聴こえる鐘の音は鼓動よりだいぶ遅く、
あー、
湖にかかる雨のレイヤー。
あー、
まつげから垂れる淡水の一滴。
泥を蹴る、
石に当たる、
泥を蹴る、
砂利を噛む、
窓を突き破った
真っ白なシーツ!
泥に絡まり、
車輪に巻き込まれていく。
車輪に、巻き込まれて行く。
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夜から朝に変わっていく間の静かで暗くひんやりした空気の街なかを歩いている 誰もいない道端にぽつんと灯りの点るお店は剥製屋さん。 (ははは、ショーウィンドウに私の顔が映らない) 一昨日から降り続いていた雨はアスファルトに染み込んでいたようだ。 冷えた夜の空気はこれからしばらく後に現れるだろう太陽に熱せられて、放置されたバターのような匂いがする。 五叉路の脇道に入ると舗装は粗く、少しずって歩けばじゃりじゃりと音がする。 コンクリートとコンクリートが擦れる感触。 近づいて観察したら火花が散っていないだろうか。 2年近く履いているスニーカーのソールには隙間があって、いつも小石が挟まる。 その小石と共に火花を散らして夜と朝の間の街を歩く。 振り返って焼け野原になっていたらどうしよう。と笑う。悪い考え。 じんわりと汗をかき、髪の毛がはりつく。 街路樹の朝露は前髪に落ちて、目頭の脇を通り、鼻の横を通り、上唇を伝い、ついに口の中に入った。
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君と僕で同じところを数えて、少しのちがうところに怯える。
でも多くは同じところしかない。
皮膚の中の水分とか成り立ちとか神話に近いところまで一緒なんだ。
いったい君に何がわかるっていうんだと思いながら、わかって欲しくて仕方がないのに、わかってくれなくていいのに、わかりたい気持ちがある。
またプールの底で色のついた石を探してる。
たくさんあって全部拾えないのに、キラキラ綺麗で全部自分のものにしたい。
* みんな本当は優しかったんじゃないんだろうか
その優しさはどこへ行ったの もしかしてただ視線を恐れていただけ?
氷は炎に炙られて 大きな川へ流れていったよ
もう探すこともできない * 大河は世界をふたつに分けました
橋を渡す必要なんてあるか?
ーもううんざりだ * 言葉なんていらない
喋らないで 君と違う生き物なんだってまた気づいちゃうから 目だけ見つめて 手を触れて 揺らめく瞳の水分がプールの底で混じったみたい
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真四角の部屋に閉じこもっている。
熱く滾る鼓動を感じるが押し黙るように言い聞かす。
日は傾き夜がやってくる気配。
指先に熱が灯る。
窓の格子は十字架の格好で部屋の隅から天井へ逃げていく。
日は陰る、陰る、陰る、そして消える。
地平線では朝と夜が混じる。
複雑な色をした泥の匂いがする空。
暗闇の中で赤く光る血管が鼓動を打つが、そんなものは要らない。
古代の太鼓の音が私の中に戻って、目まぐるしく地中を走り回る光になる。
それが星の形を作って暗闇の部屋に溶けていく。
爪の間から髪の先から乳白色の光がスープのように暗闇に流れていった。
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金色に首を垂れる稲穂は
祈る姿にも似ている
赤い月は地平線近くに輝き
弧を描く鎌刃の三日月型は
まさにそれを反芻しているのだ
時は熟し鎌刃は稲穂の頭上を滑る
田の水は波紋を描き
今成熟した稲穂は刈り取られようとしている
稲穂が風に揺れているその場所で
土星を抱いて眠ることになる
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白い壁に包まれた部屋でひとり、イスに座っている。 壁はミルク色で生暖かい。 立ち上がることができないのは、踵が欠けているからである。 ここでずっと踵の欠片を探しているが見つからない。
壁をくり抜いたような、正方形の窓がある。 それは分厚い擦りガラスで、行き交う外の人々の影が見えた。 日が暮れて、星のまたたきが擦りガラス越しに見える夜。 イスに座ったまま夢を見ていた。 あなたの踵の欠片はこちらです そう渡されたものが床に転がった。 丸くてなめらかな出で立ちで真珠のようだ。
冷たい光が床に落ちていた。
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穴が空いたポケットのズボンから零れていく光の塊
杭を背負って振り返らず前を見て歩けと宣教師は言うけれど
振り返らなければ、下を見なければ、持っていた光の塊にも気付けない
例えばこの道の先に新しい光の塊が落ちていて それを拾うことも出来るかもしれないが
振り返らなければ、下を見なければ、ポケットに入ってた光の塊の数さえ知らずに
本当に私は全く何にも恵まれていなかったと
そう嘆き続けなければならないのかもしれない
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地平線の向こうまで広がる青い草原に立っている真昼
ミルク色の月が群青色の空にポッカリ空いている
冷たい風が喉の奥をひゅんひゅんと掠めていき、薄い雲をちぎりながらパノラマの視界を左に折れていく
膝を折り手を突くと、腐った草の泥の匂いがする
そのまま頬に触れるとますます青臭い
どこに行くこともなくこのまま、
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通り過ぎるのを待ち、耐える
何もかも満足行かず、いつも飢えている狼、肋が浮き、目が窪んだ老婆。
真っ暗な納戸で針の穴に柔い解れた糸を通そうとしていて、何を縫うってガチガチに固まった心臓を。
銀の皿の上には、血の一滴も出てこなくて、真っ黒にしわがれた組織が無数に見える。
澄んだガラスの瓶の中に腐った水がなみなみと注がれて、テーブルの上に突っ伏して、音だけ聴いてる。
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光をみている
真っ暗闇の中で、大きな窓を見ている。
薄いカーテンがかかっていて、向う側の闇が透けて見える。
暗くて暗くてとても寒い。
大きな窓がぽっかりと口を開いている。
カーテンは振りかざしたバットの風を受けておおきく膨らんだ。
とたん、ちいさな光の粒が、あたり一面に舞った。
鋭い破片は腕につぷりとささり、真っ赤な血が滴った。
月の光だけがカーテンのなかで蠢いていた。
光の粒は、足元に広がり、小さな宇宙になった。
それを私は踏みつけ、徘徊していた。
踵に刺さる光の粒が、確かな痛みを教えていた。
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暗い空とへびを喰う
空を見る 鳶が飛んでいる。 轟々とした唸り声をあげて飛んでいる。 鳶の口からは禍々しいへびが垂れ下がっている。 毒を私の頭上に垂らし込め、侵略しようとしている。 私は走っている。 毒が頭上にあらわれている。 沼地を バシャバシャと急いでいる。 暗雲は大きな生き物のように這いずり回り、 ちょうど大きなへびに見える。 今にも死にそうなへびは、私を噛もうとしている。 私は走っている。毒がてのひらにあらわれている。 地平線にへびが沈むころ 私はもはや紫いろの毒だ。 こぽこぽと泡立つ、紫いろの醜い毒だ。 沼と沼の間から沸き立つそれは、 まったく反省の無いような様子で、 また空へ立ち昇っていった。
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ジュース
殺してやると、果物ナイフを握って 月夜にさめざめと泣く。 突き立てたのは畳の網目で、 振り下ろした腕は、どうしたらいいのか解らないような格好で畳を撫ぜる。 さっくりと狂気に殺される夢を見る。 とっぷりと血の色に染まる浴室を想像する。 ああ、哀しくも箪笥に押込められたリビドー。 どっくんどっくんと流れる血液と、早くて浅い呼吸。
光る眼は銀色で、空を駆けるよ。一生懸命、空を駆けるよ。
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