yoruni-inoru
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Euphoria
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根拠の無い過度な幸福感。陶酔感のこと。
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yoruni-inoru · 1 year ago
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yoruni-inoru · 2 years ago
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先ほど、愛した男にとどめをさしました。
そうせずにはいられなかったのです。 お昼ご飯に温かいきつね饂飩を作ってあげました。あなたはそういう人だから、お揚げを最初に食べ、ネギを残します。私は、麺を食べ終えてから、味の染みたお揚げを食べるのです。 
凶器を取り出しました。 臓器に届くぐらい強く早く、今すぐしっかり息の根を止めてあげられるように、とどめは重く、深く。手が震えました。息が出来ませんでした。彼の表情は脅えを露わにしながら固まってしまいました。顔色もみるみると変わり、どくどくと色々なものが流れ、あっという間に崩れました。急いで彼の家を飛び出し、扉は莫迦丁寧にゆっくり閉めて、走って走って走りました。知りません。知りません。走って走って、走ったのです。 
その時、同じく南から走ってきた、白くて柔らかい獣とぶつかりました。 それが猫でした。私はどうやら、先ほどぶつかった猫と、入れ替わってしまったようです。ハッと見上げると、私の躰はこちらに会釈し、踵を返してゆっくりと去ってしまいました。 不思議と、ひどく冷静でした。しばらく、猫の姿でひだまりに身を委ねていました。耳や鼻は敏く、四肢もしなやか、舌はなんでも絡め取ってしまえるのではないかというほど、細くて器用で人間よりもずぅっとザラザラとしています。 
ーーーそうだ。 
先ほどとどめをさしたばかりの男の家に行ってみることにしました。この躰ではドアノブに到底届かないと予想できたので、開け放たれたベランダから覗いてみることにしました。ひどく心に障る臭いがしましたが、私が昨夜、何か��まじなうように焚いたお香の余韻です。男は先ほどと同じ場所に横たわっているようでした。 死んでしまったのでしょうか。部屋に差し込む傾きかけている西日が赤くて、眩しくて、人影しか見えません。 一般的な猫の鳴き声とは、どのようなものでしょうか。
「……にゃー。」
男の名を呼ぼうとしたら、勝手に口から普遍的な鳴き声が出でました。愛が混ざっていたのでしょうか、思いの外、甘く馨しい声が、吐息を孕んで、空を翔く綿毛のように漏れました。発した声の甘美さに、自身で身が震えてしまうほどに。 その時、この家の扉が開いた音がしたのです。 
知らない女でした。 
「ちょっと、鍵空いてんじゃん。あれ、寝てんの?来たよ。」 
死んだんじゃないかと思っていた男の体が、ゆっくりと起き上がりました。 
「ん、寝てた。なんかね、ばれちゃってたみたいだわ。」
「私との関係が?」 
「ううん、それもかもしれないけど、それより、もうこっちに気持ちが無いこと。」 
「そっか。」 
彼と彼女は、嬉しげに見つめあった後、しばし抱き合い、キスを始めました。鳥が餌箱を突くような、短くて、アレグロで、クレッシェンドです。彼がベランダの窓を閉めるために立ち上がりました。私は見つかってしまうことを恐れ、慌てて、ぴょいと隣の部屋の領域に飛び移りました。 
(猫いたわ。)(ふふふ。)
小さくそのように聞こえたあとは、何やら二つの幸せそうな笑い声がこだまし、やがて何も聞こえなくなりました。 
私がとどめをさしたのは、恋人関係という、形式でしかなかった壊れかけの脆い鎖でした。
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yoruni-inoru · 2 years ago
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