wgmawgm
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XIX
汗ばんで入った待ち合わせのお店は、冷房が効きすぎていてブランケットを首まで羽織る。くちなしの丘が流れていた。窓からみえるビルは熱を貯め、四方に放射している。
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XVI
窓の外にはりつくイモリに月の光が当たっています。明日の朝までここにいるつもりでしょうか。
時計の針の音と、机の上に横たわるワイヤレスヘッドホンから漏れるピアノの拍は合いません。音に反応した猫がなきはじめると、ライブの前の音合わせのようです。時計の針がコクリと��き、ヘッドホンが目配せして、そうしたらサッと、次の瞬間に音が合わさるんじゃないかなって、目を閉じるんです。
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XIII
セピアの空に溶けた水彩絵の具が降ってきた
空も森も道も街も川も海も、色を取り戻したのに、表情を変えずに、唇を結び、一羽のシラサギを見つめるひとりのひと
シュレッター
10階の窓をこぼれた
紙吹雪
風がなって、飛び立ったとき、
安心するように笑ったひとりのひと
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Ⅻ
焼き付けられたひとつの円のような記憶は彼の身に吸収されずに、背中にこびりついているのだろうか。お腹で抱きしめているのだろうか。潮騒のような草の騒めき、波は引いたら寄せてゆく、愛おしい場所がぎこちなく、なのに丁寧に去っていったらどうしたらいいんですか?こさえることなんてできますか?目を閉じてごらん。「はい、葉っぱ。あの日の葉っぱ」小説を読み、その樹の上に訪れ胸を高揚させたわたしは彼にそっと差し出した。
(草の竪琴/カポーティ 数年前の読書メモより)
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Ⅺ
...
神社に足を踏み入れた瞬間ものすごい雨でびしょ濡れになった。急いで石段を上がった。その場にいた人みなが急ぎ足で屋根のある方へ向かってった。狭いので向こうの屋根の下に行きたかったけど、雨を潜らないといけなくて、10秒で洋服が絞れるくらいに濡れるのがわかった。そのまま止むのを待った。雷鳴が響いた。パパと息子がいた。若い女の子たち数人、ひとりできているおじさん、みなが雨が止むのを待った。ヒールの高いミュールを脱いで足を拭いていた。この夕立は凄いな、と誰もが立ち尽くしていた。向かいの建物が雨で霞み、見えなくなった
...
葉が蒸した匂いと自分の汗と、SPF50の日焼け止めの香りが混じったものが服の隙間からあたたかく昇った。時間が止まっているようだったが、うそみたいにカラッと晴れて、水たまりに足を浸しながらお守りを買った。神社を出ると、雨あがりで夏の植物なにもかもが光っていた。新しい水を吸い込み、さっきまでの雷雨を散々だと笑っているようだった。広い国道沿いを歩いた。蒸し暑く、遠くで雷雲がピカピカと光っていた。
...
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Ⅶ 鉄鋼・棲む魚編
明日、街に出現する川に棲む魚は、
その頃 空の高いとこにいて
雨降る駐輪場を観察していた
自転車のサドルに落ちた水滴だけが明日のことを知っていて口をちいさく開け鉄を撫でた
工事現場のブルーシートが
夜の海に扮してざぶーんと波打ちました
おおきな犬にかけられた
赤く発光する首輪は
どこか名残りおしそうに道を照らしました
おおきな犬は落ちたツツジの花が少し怖くて
避けながら暗闇をすすむ
ーー
水面に映された向かいの家の標札が佐藤ですと挨拶をした朝は、
見慣れた和室の天井の紙魚(シミ)日和
紙魚の坊やは湯呑み茶碗に注いだ水を飲み干し
洗面所からバケツをもってきて、糸、糸、糸、裁縫セットを取り出して、細い糸を投げ、短い糸を投げ、摘んだ刺繍糸を三つ編みにする
三つ編みの隙間からは冷凍ごはんのいびきが聞こえてきて、そっと息を吹き込むのです
道という道が急に川に変身したのですから交通機関はどうやら大変そうでした
車の保持者や宅配業者はとくに呆れていました
紙魚の坊やだけが、棲む魚の声を聞いていました
「塩辛たべたいな塩辛をたべて、そうして 隣の駅まで泳ぐんだ」
紙魚の坊や、
刺繍糸と安全ピンと塩辛の釣り人、
この町で誰よりも早く釣り人になった人、
誰にも気づかれないまま、海がひとつ枯れた 新しい種を川辺に蒔く前に 紫色の魚を差し出します
彼女はまだ眠っていて
ちいさく寝息を吐くと水面はぶくぶくと泡立ち
それは慣れないココナッツの香りがした
放られた安全ピンが誤って白い胸を刺し、
愛の夢が枕を濡らして、
でもそれはささやきでした
障子は飛沫でふやけはじめ、
紙魚の坊や、慌てて窓枠にのって、ツツジが咲く花壇に降りて、
そこに足を浸すと冷たく、葉が絡まってくすぐったいと笑った
猫は窓に肉球を当ててビクビクしながら川を見つめていました
棲む魚はバケツの中でくるくると円を描きます
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Ⅴ
霧雨の夜走りました。
緑がぐんぐんと迫っては横切って、またね、
緑がぐんぐん迫っては横切って、またね、
ーーー
アメリカの国道にガソリンの匂いが充満する中揺られている。イエローのニット。窓からみえる海にはひし形の鱗が落ちている。ガタガタとボンネットの中の荷物が振動する音
何日も洗っていないジーンズは身体に馴染みきっていて少し重くなっている。スニーカーの先端を見たり目を逸らしするのは 口内の煙草の味がガソリンと混ざり乾燥した空気で乾いてゆくから。甘ったるいオレンジジュースをのみたい。眠りから冷めて車窓をあけたときに差し込む黄色の夕焼け
ーーー
彼女の歌声に思い出す光景や感情はヘンテコなもの。
閉まってた植物園の壁に描かれてた豚の絵のこと。
夜のスカイツリー周辺を歩き続けてできた足のタコのこと。
向こうでダンスセッションやってる!ときこえてきて見てみると盆踊りだったこと。
音に合わせて控えめに揺れている女の子たちが吹く煙のこと。
はやく悩んでみたいと願った/だってここには心臓以外のなにもない[それはわたしを憐れんでいるのですか]いいえ違います、それはコーラスです、こころの優しい白鳥です、死です、彼らはわたしの亡霊をみている、彼女らはわたしの瞳を知らない
聴こえてきた優しい声の、希望でも救いでもないどちらかといえば絶望のその声の正体に近づ��ないまま、
ひとり行き着いた写真美術館の大きな大きな青色の写真の前に突っ立ったこと
....
プリントされた青を見つめて、写真の青色が心底好きだと思った
びっくりして、木魚が心拍になり指先に血を送る
[写真の前に突っ立つと飛行機が低空飛行で青空の下におおきな日陰をつくり 纏った衣類ははためいた 干し竿にかかる洗濯物であったころを想い、そしてまたとない明日のひかりに恋焦がれるようで 気づかない間に指先があったかくなってた]
---
ピエロが現れ、きみを指差しきみの物語を綴る
“ある日、音楽が鳴った ”
ピエロが、だぁれ ? と戯けていった。ピエロはピエロ中なので 完璧にだぁれ?と言った
声に出すと砕ける貝殻です[そのカットはひとふきの春風の視線です]彼すらも気づかなかった瞬きです 落ちた雨の雫です 剥がれて飛んだバミりです 彼女のポケットに眠るハンカチです 見るに耐えない日々にも浮かぶ泡が在って 見方ひとつかえるとそれは 繊細で まるくて 掴めないからふれてみた 「スプライトかセブンアップ」
セブンアップ
ーーー
霧雨の夜です。
街灯がひかり、草むらで野良猫たちが鳴いています。
走っています。
緑がぐんぐんと迫っては横切ってまたね、
緑がぐんぐん迫っては横切って、またね、
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Ⅲ. ボンネットにのしかかる桜の吹雪編
縫い合わせてから 卓上で手を組み ラップのかかった冷えた鯖の味噌煮の声を十年十日十分待ちました 雪沼まで泳いで、
おやすみ、ジムノペディ
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II.川べりの大きな木
燕がやってきた
エメラルドブルウの小石ひとつ
握った
途端にバッタが鳴き
虫たちが続き
最後は蛙が桃色を吐く
たゆむ草木に埋もれると
春の熟れた川の蒸気で
下着が肌に張り付いた
三毛猫が
“みかんのダンボール箱くらいすき”
と書いた恋文を口に咥えて澄ましてたから
ライバルの燕はそれを奪い
紙飛行機にして燃える太陽に向けて飛ばす
根っこにのっかると
葉がさわさわ
手を大にして抱きしめた
小石が落ちて
ころ
ころころ
転がっていきました
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Ⅰ
03.26 雑巾がけ編
花冷えの日は
伸びた裾をなぞってしまう
スウィートピー・アネモネ・スウィートピー
クォンクォンクォンクォンクォン....
虹の爆音から
地に足をつけて逃げなきゃ
桃の夕焼けが破裂 魚が飛び跳ねた 虹が破裂
流れる雲が破裂 春雨が破裂して
春雨だけはずるいよと 男の子が 靴紐を解いて円にして、ひとりあやとりをはじめた
ひっくり返るゴミ箱の埃が
五時間目の星屑になり光って まつげに絡まる
ねぇ グッド?
グッド(グッド)
ずっと?のずっとのさよならの、去り際に、何も言わず手を握ってくれて、どれだけ嬉しかったか、どれだけ泣きたかったか 、いつかきみも知るのでしょう
心臓が鳴っている とくとくとく 水の中に沈んだ大量のクラッカーは沈丁花といいます 父の愛人になった 遠くの街でバイクのエンジンがつき ヴォンヴォンと鳴った 夜道に描かれる青い線を思い浮かべた 100年前の寡作な作家が、畳に耳をつけて眠ろうとしてやめようとして、それで...
唱う
♪ 気まぐれ
神さま、
遠い昔 あの場所に
流れ星 ひとつ
落とした
あれから 随分
時はたち、
...
⭐︎
蜩
雀に
女郎花(をみなえし)
淡色
花闇
紅絹(もみ)のあか
(引用 こどものせかい/kotoringo)
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