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光の箱と対
ギャラリーの設計(2016)
光で満たすことは光源を消すこと
世田谷区三宿での期間限定週末画廊を経たシュウ ゴアーツの六本木への移転計画.三宿では空き店 舗を改修し,その場特有のがらんどうの質を活かし つつ,移転後も持ち運べるよう三宿ライトという照 明器具をつくった.煌びやかな六本木では,商業 的な街の一部が展示空間を介して翻るようにまわり の質が変異してできた「結び目」としての空間が求 められた.
三宿の展示室と同サイズの空間をふたつ対に並べ,間に倉庫を挟んでそれらを繋ぎ,平面・ 断面とも凹型とすることで,各々の直方体が自律 性を持ったまま,お互いの空気が分け目を持たず 染み合う状態となっている.いずれの天井面にも 光源がない点で共通している.ここでの天井は,
下からの光を拡散させる反射面である.手前の空 間 で は ロ の 字 型 照 明 が 頭 上 に 宙 吊りに なり, 奥 の 空間では背の高いスタンド式照明が床に置かれ天 井を照らす.光源はどこにも見えないが,充満した光によって,雲の中のような影のない空間とな る.ふたつの空間は抽象度が異なっている.手前 の空間は抽象的な面のみで象られ,奥の空間に進 むと,家具や設備,窓などの具象物が現れ,よう やくモノの尺度を得る.展示方法によって,この両 空間の光とモノの様相は押し引きしながら変容する. そこにしか現れない現象のような光の箱の中で, 訪れた人は作品と宙ぶらりの状態で同存する.
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