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虜囚図
cydonianbanana
「聞いたかね」下家が山に指を伸ばし、「昨日、北半球第四図が燃えたらしい」と一筒を切る。
地図が燃えた?「それは、地図が稼働しているサーバーが燃えたって意味ですか?」ぼくは上家が切るのを待って尋ねる。
「いいや。文字通り、地図が燃えたのさ。後に残ったのは、風が吹けば崩れ去るのみの焦げた断片と、鼻を突く黒煙のにおいだけだったんだと」
ぼくは窓の外に目をやる。地平線まで一面となった灰色の地面と黒い空が見える。この月面図がいま燃えたとしたら、ぼくらはどこへ逃げればよいのだろう。
「観世音、南無佛」下家がなにか呟きながら牌を切る。二筒だ。
「えぇ?」
「ほら、牌の横に刻まれてるだろ? 延命十句観��経だよ」
言われて雀牌の側面を注意深く触ってみる��、竹の部分にごくごく細かい溝が掘られていることに気づく。
「あ。これ、お経が彫られているんですか? またどうして」
「マニ車みたいなもんさ。牌ってのは初め山に積まれて、それから河へ流れていくだろう? 一局終われば河から再び山へと還る。この繰り返しだ。つまり、牌は循環しているんだよ。これほど輪廻転生的な回転運動を活用しない手はない。牌にマントラを彫っておけば、麻雀を打つだけでどんどん徳が溜まっていくって寸法さ」
「じゃあ、身心こめて打たなきゃいけませんね」ぼくは山から引いた中に掘られた経文を読み取れないかと人差し指を擦りつけてみるが、諦めてそのまま切る「こんな細かい文字、よく読めますね。ぼくには、なんとなく凸凹してるってことしかわかりませんよ」
「盲牌ができれば、そう難しいことじゃあない」
「なるほど」ぼくたちはいつも手で山を積んでいる「あなたと打つのが急に怖くなってきました」
「オレは積み込みなんてしない。徳が減るからな」そう言って下家は一萬を切る。
雀卓の上に山河が繰り返し形成され、絶えず変化し続けることは示唆に富んでいる。麻雀を打つことは、地図を描くという行為の反復に他ならない。雀卓を時間軸にそって俯瞰すると、それは考えうるあらゆる可能な地図のバリエーションを包含する超地図へと向かわねばならない。浄土=地図宗の僧侶もたしかそう言っていた。
「ところで、キミはこの地図に住んで何年たつ?」下家の口数が多い。手が悪いのかもしれない。
「そろそろ四年になるはずです」ぼくは答えて二枚目の中を切る。
「その前に住んでいた地図を思い出せるか?」
「よく覚えていません。海辺の街だったような気がするんですが」
縮尺一分の一の地図に住んでいる以上、地図飛躍はつねに話題の中心になる。地図の中の地図、あるいは地図の外の地図への出口を暴きたいという欲望はヒトの社会的欲求の根本に接続しているらしい。巧妙に隠蔽された出口の発見にはアルキメデス的発見の快楽が伴うのだ。
「海辺の街か、いいな。ここよりはずっと楽しそうだ」
月面図に来てすぐのころは目新しい風景に喜んだものだが、数日も過ごせばどこもかしこも同じ景色ですぐに飽きてしまう。ほんの先��まではこの月面図にも両手で数えるくらいの人がいたのに、いまでは面子を四人揃えることさえできなくなり、今日もこうして三人麻雀を打っている。
「まるで囚人のようですね」脱獄の閃きを待つだけの囚人だ。
「どんなに穴を掘っても、その先はまた次の牢屋につながってる」下家が引いてきた赤五筒を河にたたく。どうやら染めているらしい。
上家の河からは何をやっているか読み取れない。対子系の手かもしれない。
「北」ぼくは北を抜いて、切れるうちに三索を切っておく「だんだん、この卓が牢獄に思えてきました」
「それは正しい認識だ。オレたちはこの卓に新しい地図を描いている。地図と地図の中の地図との間に挟まる地図をな。雀卓ってのは、地図という牢屋を生み出しつづける牢獄なんだ」
そう言って下家が三枚目の中を切ったときだった。
「ロン」今までずっと黙っていた上家が唸りながら牌を倒した。その一三牌は、すべてが互いに異なる么九牌から成っていた。
ぼくと下家が息を呑む。卓上に異なる幾何学と計量へ向かう座標変換が生じ、一〇八枚の牌に隠蔽されていた地図が展開される様が透視されたかのようだった。上家の姿は忽然と消えている。
「上がったか」下家がボソッと呟く「先を越されたな」
「また次の囚人を待ちますか」二人で麻雀は打てない。
「一人二役で打ってもいいぞ」
「ご冗談を」月が新たな虜囚を得るまで、麻雀はお預けだ。ところで……すこし焦げ臭いにおいがしませんか?
宇宙地図の成立よりも、ずっと前の時代の話である。
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最強のビールを探究していけ。 https://t.co/swzNGkLiyA cydonianbanana https://twitter.com/cydonianbanana/status/1510497367744659458
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望郷/ねじれ双角錐群 感想のようなもの
感想を書きたいといいながらも全く手を付けられないでいたので、とりあえず体裁はあんまり気にしないで書きたい事書いてみようの巻です。 ネタばれはしないようにしたいけど完遂できるかどうかはちょっとわかりません。あまりネタバレが致命傷になる作品ではないので多分大丈夫だと思います。
望郷/ねじれ双角錐群 Kindle版URL
01「物語のない部屋」 石井僚一 出だしを飾る、実に正統派に「物語」を物語る物語。正統派ってなんだよって感じですが名状しがたくも正統派なんです。 物語と現実の境をくるくると乗り越えて、次第に不確かになる足元。失われていく物語。 私もいま、ある意味で物語の中に生きているのかもしれない。こうして綴ることでいまが物語になっていくのかもしれない。そんな風に思ってみたり。
02「新しい動物」 小林貫 「空中に巨大な鯛の活け作りが浮かび上がっている。」という書き出しから始まる、どこかがこちらとは違う奇妙に歪んだ世界の物語。の中に出てくるヒロインがあまりにも普通にかわいくて、ギャップがすごいというか一周回ってちょっと怖くもある。 でもそのアンバランスさに妙に胸がときめく。なんともいえぬ面白さがあると思った。感想なんだからがんばってなんとか言いたかったんですけど無理だった。どんな感じか知りたい人は読んで。
03「二色の狐面」 笹帽子 のじゃロリ狐かわいい。 ある意味で妖怪というものは何よりも純粋に物語性に依存した生き物(生き物?)なのだよなぁといったようなことも考えたり。しかしのじゃロリ狐かわいい。 「物語」というテーマを守りながらもKAWAIIを忘れない姿勢に感服した。すき。かわいい。
04「組木仕掛けの彼は誰」 cydonianbanana プログラム上でシミュレートされる人格と意識についてのSF。なんというか一番しっかりした作品だと思う。 エンタメ性と思索の深度が両方確立してる感じ。 ひんやりとした一種無機質な切なさが残る読後感がとてもよかった。 内容とはあんまり関係ないかもしれないけど、島崎藤村の作品を読んだことがなかったので今度読んでみようと思ったりして。
05「ユゴスに潜むもの」 伊川清三 いあいあくとぅるふふたぐん! いやクトゥルフは出てこないんですけどね。舞台ユゴスだからね。 なんだか懐かしい感じというか、休日に適当にテレビをつけてCSでなんとなく見てた海外ドラマをなぜか思い出す…謎のノスタルジーが…
06「香織」 国戸シャーベット 太ももが好きな主人公の恋愛模様を描いた作品。ピュアってなんだ。 しかし残念ながら私は肩甲骨フェチなので彼とは気が合わなかった…というのは半分冗談で半分本当の話。村上春樹を読みたい気分の時にこっちも読み返したい。
07「器官を失ったスピンドルの形」 全自動ムー大陸 ちょっと名状しがたいまでにこれが好き。 尋常でない勢いで刺さった。 で、刺さりすぎた結果どこがどう好きでどう良かったのか言語化できなくて感想にならなくなってしまいました。言語化能力足りなさすぎ… もうちょっと修行してからここだけ追記します多分。
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水道橋博士のライムスター宇多丸評 - はてなでテレビの土踏まず (via rhytak) (via fukumatsu) (via petapeta, petapeta)
2009-10-24
(via gkojaz, gkojaz) (via non117, non117) (via mittan, mittan) (via cydonianbanana, cydonianbanana) (via funa1g, funa1g) (via klaftwerk, klaftwerk) (via zaiga, zaiga) (via kemurikatutika, kemurikatutika) (via mmqqbb, mmqqbb) (via -ill-, -ill-)
(via si-no, si-no)
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つまらない映画をつまらないって語ることは本当につまらないんです でもつまらない映画がなぜつまらないか、 いかにつまらないかをおもしろく語ることは ものすごく発見と技量がいるんですよね そしてその放送を聞いて その地獄のように��まらない映画を映画館にまで観に行かざるを得なくなる 不条理な行為そのものが人生そのものであり映画的体験である っていうことを本当にこのラジオは教えている、と
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三階建ての現
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昔から一度やってみたいと思っていたのだ。ぼくらは周りに誰もいないことを確認してから���勢いよく下りのエスカレーターに突入し、登りはじめた。ぼくが先頭で、四階の駐車場ヘ向けてエスカレーターを逆走する。後ろにみっちゃんが続く。全力で走っても全然体が前へ進まない。半分くらいまで登ったところで、エスカレーターが伸びはじめていることに気づいた。「後ろがなくなってるぞ!」背後で叫び声が聞こえる。振り返る余裕はないので、とにかく頑張って走りつづける。後ろからドカドカした足音が続く。どんなに走っても四階はやって来ない。むしろ後退しているようにも思われる。《後ろがなくなってる》とはどういう意味だろう。エスカレーターの下が文字どおりなくなっていて、このまま走りつづけないと奈落の底へ落ちていってしまうんだろうか。ふと、背後の足音が聞こえないことに気づく。慌てて振り向くと、そこはもう奈落の底だ。
飛び起きる。どうやら机に突っ伏して眠っていたようで、目の前にタイプライターが置かれている。それは数年前に古物商から買ったもので、周りの作家が皆ワープロを使っているなか、ぼくはそれを使いつづけている。タイプライターの口から、書きかけの小説がのぞいている。そこにはエスカレーターを逆走する二人の少年の様子が書かれており、二人が奈落の底に落ちるところで途切れている。携帯を見るとみっちゃんの電話番号が登録されているようなので、彼を呼び出す。一時間たって玄関のチャイムが鳴る。ひとまず居間に通してお茶も出さずに「どうも混乱している」と口火を切ると、彼は深刻そうな顔でこたえる「でもこれが現実だ。さっきのエスカレーターから落ちるまでのおれたちと、今のおれたちは確かにつながっている」諦めの滲んだ声でこうつづける「とにかく続きを書いてみることだ。そうすれば、なにが起こっているのか分かる。これからなにが起こるのかも、分かるかもしれない」そう言い残して彼は帰る。ぼくは続きを書くことにする。
続きA
奈落の底は別に奈落の底ではなかった。普通にデパートの三階に降り立ったぼくは、みっちゃんの姿を探す。彼はおもちゃ売り場にいて、試遊スペースでヘッドマウントディスプレイを被り、左右の手にそれぞれコントローラーを持って、VRゲームをプレイしている。隣接する平面ディスプレイに彼が見ている光景が映し出されている。そこはどこかのデパートの中で、プレイヤーである彼は下りエスカレーターを走って登ろうとしている。コントローラーをガチャガチャやって小刻みにジャンプを繰り返しながら悪戦苦闘するが、どうしてもエスカレーターを登ることはできない。ゲームプレイング上の制約だろうか? 登るのを諦めてフロアを少し進むと、おもちゃ売り場が見えてくる。その光景が映るディスプレイと現実のおもちゃ売り場とを、ぼくは交互に眺める。���ィスプレイがVRゲームの試遊スペースと、そこでヘッドマウントディスプレイを被るみっちゃん、そして隣のディスプレイを眺めるぼくの姿を捉える。ディスプレイの中のディスプレイがディスプレイを映し出しており、そのディスプレイが映し出すディスプレイの中にまたディスプレイがあって、ディスプレイの中のディスプレイの中のディスプレイの中のディスプレイの中のディスプレイの中のディ
続きB
奈落の底へ落ちるぼくを書いているぼくがいる。それがはっきりした今、みっちゃんは二人のぼくがつながっていると言うけれど、どうしたって書かれている側と書いている側との間には決定的な隔たりあるように思えてならない。こちら側からこちら側を書く高次のあちら側は見えない。そしてまた、もしこの話に続きがあるならば、必ずそれは既に書かれているのだと思わずにはいられない。こちら側を書く高次のあちら側で。あるいは、さらに高次の向こう側で。こちらから見えない以上、安易にそれを否定することは出来ない。今こちら側を書いているぼくは、まるで自分が全能の有翼人種であるかのように思っているだろう。でもそれは間違いだ。井戸の中に建てた城はずっと井戸の中にあり続けるしかない。彼はただ、自分が誰かに書かれているということに、まだ気付いてないだけなのだーーここまで書いてぼくは万年筆を置く。こうして縮尺一分の一の地図を書いているあいだ、彼女は黙ってピアノを弾いている。「未散」と呼ぶと、彼女は演奏を止める。その瞬間世界は凍りつき、あらゆる事物が静止してーーぼくはそっとワープロを閉じる。少し熱を持ったワープロの背に両手を当てて、さらに向こう側がもう現れないよう、できるだけ静かに祈りを捧げる。
続きC
奈落の底を落ちる間、重力加速度を感じなかった。等速で下へ向かって、でも、下ってどっちだ? 加速度がなければ静止しているのと一緒だ。どこか遠くからタイプライターの音が聞こえる。大声でみっちゃんの名前を叫んでみるが、返事はいっこうに聞こえない。代わりにタイプライターの音がどんどん近づいてくる。恐ろしさに耳を塞いだ瞬間ーーぼくは世界を貫通している。そこでタイプライターを叩くぼくは、紙送りから吐き出されて机の上に横たわる存在に気づいてないようだった。天窓から差し込む陽光が、仰向けになったこの顔を執拗なまなざしのように照らしていた。たまらずタイプライターを踏み台にして飛び上がると、身体がどんどん天窓の方へ吸い込まれーー気がつくとぼくは巨大な原稿用紙の上を走り回っていた。頭上からこちらを追い立てるように走る万年筆のニブが青い道を刻んでいる。一体どうなってる! 息を切らして走り続ける。やがて青い道がクリーム色の大地の端に到達すると、突如大地が翻ってすべてがもみくちゃになりーー気がつくとぼくは、ワープロの前に座るぼくの背後に立っていた。彼はワープロを閉じ、なにか祈りを捧げているようだった。もう迷う必要はなく、ぼくは彼の先��と貫通するため、彼の首に手をかけた。
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心射方位図の赤道で待ってる
ジャンル
神待ちSFアンソロジー
紹介
待チ人ハ来ズ。 {だから|されど|そして} ぼくらは。
神待ち——寄る辺ない少女がインターネット掲示板で自分を泊めてくれる存在を探すことを意味したその言葉が、いつしか文脈を逃れ、眠らない街を闊歩する。現代、未来、そして別世界に、まだ見ぬ出会いを透視する淡い待望。SFと幻想の視座から祈りを再定義する第四小説誌!
電子版
Kindle
収録作品
01 「神の裁きと訣別するため」 murashit: 箇条書きで語り尽くせる着想を散文によって展開するのは、労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である。よりましな方法は、あらゆる事象を項目として書き出して、並列に差し出すことだ。より論理的で、より無能で、より怠惰な筆者は、じゃんけんにかんする完全でしかし短いリストを書く道をえらんだ。
02 「山の神さん」 笹帽子: 家出少女の神籬菜々は、神待ちアプリの暴走によりタイムリープし、大正時代の高校生・広瀬とマッチングしてしまう。下宿の部屋に泊めてもらうことなどできるはずもなく、代わりに広瀬と共に高みを目指す神籬だったが、背後には家出少女の時空補導を狙う魔の手が迫っていた!
03 「囚獄啓き」 小林 貫: 地獄とは、とあなたは思索する。死、罪と罰、終わりのない苦しみ……あるいは閻魔。取り留めのないイメージが交錯する。あなたが創り出す「地獄」へと続く道は無関心で舗装されている。念入りに、決して剥がれ落ちることのないよう幾重にもそれを塗り固めるあなたの姿は否応無しに物狂おしく、また少しだけ滑稽でもある。
04 「杞憂」 鴻上 怜: 北米先住民族の少年杞憂は老呪術師焼き脛の命を受け、機能を喪いつつある〈ポアソンの分霊獣〉の夢へ潜る危険な〈ビジョンクエスト〉を決行する。純情報空間キウィタスで働く女子工学情報生命体の棗と茘枝は、客として訪れた杞憂と出会い彼の秘密へと迫るが……
05 「キノコジュース」 国戸 素子: 俺は美少女魔法使いルシエが大好きな冒険者。大剣を振るって金を稼ぎ、いつかルシエに告白するんだ。でも最近、村のみんなの様子がおかしい。さらにルシエにも不穏な行動を見つけてしまう。村はどうなる?そして恋の行方は?俺は美少女魔法使いルシエが大好きな冒険者。いつかルシエに告白するんだ。
06 「蟹と待ち合わせ」 cydonianbanana: あたかも青く、青という言葉が失われてなお青みがかったような月下の海で、僕たちは今日も漂着物を探して歩く。人類が肉体を失う過渡期を生きる俺たちの日常と、私たちの《普通》。一人称複数の語りが重奏する、百年後のあたしたちによる克明な記録。
07 「ブロックバスター」 津浦 津浦: ひたすらに大きくなっていく放浪大亀/大亀の帰還を待つものども/ものどもの王/その世界にあったもの/その世界にないもの/その世界の外にあるもの/どこにもないもの/どこかにあるもの/生きている私たち。
執筆者
murashit(twitter, website)
笹帽子(twitter, website)
小林貫(twitter)
鴻上怜(twitter, website)
国戸素子(twitter)
cydonianbanana(twitter, website)
津浦津補(twitter)
表紙イラスト
全自動ムー大陸(twitter, website)
刊行日
2019年11月23日
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故障かなと思ったら
故障かなと思ったら、次のことをお確かめください。
想像力が始動しない → 十分な休息を摂っていますか? 睡眠時間を十分に確保してください。
想像力が広がらない → 十分な休息を摂っていますか? 睡眠時間を十分に確保してください。 → 摂取する現実及び虚構の多様性を確保してください。
想像したことを十分に出力できない → 十分な休息を摂っていますか? 睡眠時間を十分に確保してください。 → 完全な出力ができないことは仕様です。故障ではありません。
以上を試してみても想像力が正常に動作しないときは、下記の場所にてねじれ双角錐群第七短編集『故障かなと思ったら』をお買い求めください。
文学フリマ東京35(2022/11/20) | G-10
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《取扱説明書》アンソロジー
収録作品
01 「森/The Forest」 石井僚一 ある一人の男が、学生時代に恋人と訪れた森を、大人になって再び訪れる。レイ・ブラッドベリの名作短編「みずうみ」をもとに書かれた抒情SF。
02 「取説ばあさん」 小林貫 「おぉ……旦那様。説明書を、おお……説明書をお持ちではありませぬか」 極彩色のネオンと喧噪、眠らないサイバーシティで取説ばあさんに遭遇したおれは、踏み入ってはならないとわかっていながらも、その妖しさに魅かれていく。
03 「私の自由な選択として」 笹幡みなみ 足の裏の特定の反射区を刺激することは、自由意志信念の強化に繋がり(Coolidge, 2035)、特定の気分障害に対して有効とされる(Coolidge et al., 2038)。本文書はこれらの研究を概説し、彼女の選択を伝える。
04 「故障とは言うまいね?」 Garanhead 「マニュアリストロ」。それは国の認証を受けた、良質な説明書を作成する者たち。彼らの手がけた説明書なくして工業製品の出荷や流通が成り立たなくなった未来。心が故障した少年と、体が故障した少女。二人の最年少マニュアリストロたちが出会う時、過去と未来を繋ぐ因縁尽のマニュアルが綴られる。
05 「直射日光の当たらない涼しい場所」 全自動ムー大陸 「説明書」を題材にした短歌十首。
06 「子供たちのための教本」 murashit 役所はわたしたちが死ぬ日を正確に知っていて、その期日を書留で通知する。民法上の子を持たない者には本人、持つ者はその子に書留を送る。わたしはある日、通知を受け取った。父は二週間後、死ぬことになっていた。
07 「沼妖精ベルチナ」 鴻上怜 底辺会社員の俺は部下のオッドラの教育に手を焼きつつ、人事としての業務を日々行う。そんなある日、社のデータベースがぬるぬるの粘液で覆われてしまう。忙しい情シスに代わって原因を探る俺は、地下で謎の老婆サーバやまんばと遭遇する。そしてそれとは関係なく、俺のもとへ1体の妖精が訪れる。沼妖精を名乗る少女は、行方不明の御婆を探しているらしいが――
08 「閲覧者」 cydonianbanana 遮光スクリーンに覆われた窓、空調設備の定常的なノイズ、絵と本の切れ端に埋め尽くされた壁、椅子のない机、開かれたままの取扱説明書——登場人物不在、住人の輪郭を示す静物の素描で綴られた縮尺一分の一の地図をめぐる冒険がはじまる。
執筆者
石井僚一(website)
小林貫(twitter, website)
笹幡みなみ(twitter, website)
Garanhead(twitter)
全自動ムー大陸(website)
murashit(twitter, website)
鴻上怜(twitter)
cydonianbanana(twitter, website)
表紙イラスト
全自動ムー大陸(website)
仕様
B6判、226頁
価格
¥1000
刊行日
2022年11月20日
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『来たるべき因習』読書会レジュメ
この記事について
この記事は、文芸同人・ねじれ双角錐群が、2020年の第三十一回文学フリマ東京にて発表した第五小説誌『来たるべき因習』について、文学フリマでの発表を前に同人メンバーにて実施した読書会のレジュメを公開するものである。メンバーは、事前に共有編集状態のレジュメに自由に感想や意見を書き込み合った上で読書会を実施した。読書会当日の熱気は残念ながらお伝えできないものの、レジュメには各作品を楽しむための観点がちりばめられているように思われる。『来たるべき因習』読者の方に少しでもお楽しみいただけたならば幸いである。
cydonianbanana「UMC2273テイスティングレポート」
一言感想
持ち味が出てる良い構成だと思う
夢幻諸島みがすごい好き
酒という嗜好品であること、テイスティングノートというポエムであること、等がうまく作用している
倶多楽やベンオリンポスみたいな直接メインの話に関連しないがいかにもな感じのほら話(ほら話ではないが)も含めて、禁酒法時代とかフェンリルの設定とかの背景が伝わってくるのがよく、そのうえで「記憶の酒」っていうオチが全体の語りを浮遊させてる読後感がさらに���い。酒っぽい!
そういうのが全部ちゃんとウィスキーのテイスティングノートとしての体のなかでに繋げてやれてるのでウィスキーはすごい
色とか香りとかの細かい部分がちゃんと書かれているというのもめちゃくちゃ大事だと思う
架空の○○レビューいいよね。アソート感がとてもいい。ばななさんのウイスキーに対する愛情があふれてて、今までのテクニカルな作品もいいけど、こういうのも好きだな。お酒を飲むというのは時間を呑む行為なので、時間を読むSFとは相性がいいのだ。
エッセイのポエム感が、飛行機の座席ポケットに刺さってる航空会社の雑誌のポエムっぽい
このレビュー記事はフェンリルと地球の間の宇宙船に置いてある雑誌に載ってるのでは
細部
「事実関係」まとめ(「周期」はフェンリルでの「1年」を指す)
執筆された状況
2273年10月現在
執筆者:イアン・フォーサイス
2239年(34年、2周期前)時点で9歳。すなわち2230年生まれ
於:ユニバーサル・モルト・コンペティテョン
およそ17年に一度(正確には16.7年=1周期に一度)開催される
17年といえば周期ゼミ。ウイスキーでも17年ものは定番だけど、あれってルールあるのかな?
フェンリルおよびその住人「アウターピープル」
[M32](https://ja.wikipedia.org/wiki/M32_%28%E5%A4%A9%E4%BD%93%29) の中心に位置するブラックホール、をめぐる惑星。時間の進みが地球の1/16.7の速度。つまり1周期は16.7年(だいたい16年と8ヶ月半くらい?)
M32の伴銀河のブラックホールのなんとかかんとかな惑星とのこと
北海道天塩から年に一度の定期便が出ており、イアンの友人も2256年(1周期前)に移住している
「シャトルから事象の地平面へ向けて投射されるガベージは、ブラックホールストレージへインプットされるデータの表現となっている。そして遙かな未来へわたって輻射される粒子を一つ残らず捉え、ユニタリ変換の過程を追って情報を復元する全周囲観測施設は、史上最大規模のタイムカプセルとでも呼べるだろうか」はもしかしたらオチに関係するのかもしれないしそうでもないかもしれない
「アルコール飲料冬の時代」
23世紀(2200年代)初頭に始まったとされる
健康史上主義の結末。およそ40年経ち、ナノマシンの普及によって人類が非常に高いアルコール分解能を獲得して以降に緩んだらしい
マクローリンの論文(2234年)およびポートエリオットの年譜からすれば、2250年前後か
ユニバーサル・モルト・コンペティテョン、前々回(2239年)までの数回はお通夜で、前回(2256年くらい)はかなり盛り上がったのではないか。あるいは前回のコンペティションがちょうど切り替わる時期と考えてもいいが、そうなると「初頭〜40年」といえるか怪しい
オーウェン・ローウェン
およそ200年前(おそらくちょうど12周期前、2070年代くらい)からその存在が文献に残っており、およそ17年ごとに彼の記録が残っている
一種の名跡との噂もあるが、上記の周期からみればアウターピープルの可能性が高い
2239年(2周期前)にはポートエリオットに出現した
ポートエリオット蒸留所
執筆者イアンの親戚が運営する
2227年:のちの再建者エレナが生まれる
2239年:イアンが訪れた。ローウェンもいる
2244年:一度閉鎖
2259年:再建
グレンローワン12年
最初にぶつけるエピソードとして良い。科学的などうこうでもよかったところを、「謎」からはじめて期待感が上がる
ここで「17年周期」とか禁酒法時代とかの道具立てもしれっと出てくる
っていうか後半の話まで読めば明らかにオーウェン・ローウェンはアウターピープル説が強いんだけどここではいやわかんないですねみたいな書き方なのズルいでしょ
グレンはスコッチウイスキーに、ハイランドにありがちなやつ(谷の意)、ローワンはナナカマド
倶多楽9年ミッシング・カスクス
「レスキュー隊のような装備に身を包んだ蒸留所スタッフ」めっちゃいいんだよな。なんか想像できる。アメリカで事故った時に来るみたいなやたら重装備のやつらでしょ。
最後の一文かっこつけすぎでしょ!(いいと思う)
というか、基本的にどの挿話も締めがきれいで、なんというかふつうによくできてるんだよな
ここの一文は、やってますね
いかにもウイスキーの名前になりそうな日本の(アイヌ語だが)地名
ポートエリオットクラシック
「奥に長芋のピクルス」でめちゃめちゃ笑ってしまったんですよね。「奥に」「長芋の」「ピクルス」ってなんなんだよ。テイスティングノート文学っていうか、なんかマンションポエムみたいな独特のやつがあると思うんですけど、それを完全にやりきっているのがここで感じられたんだよな。これ絶対他のレビュアーは全然違うこと書いてるんですよ、長芋とか書いたやつ他にいないって。
ここまでわりと客観的な記述だったところに私的な思い出を語りはじめて「はじまったな!」感がある
グレンローワンのところでオーウェン・ローウェン何者��わからんのですよみたいな話したくせにお前、あとからわかったとは言え、会ったことあるのかよ!こいつ!ってなる
ちょっとズルくないかと思うと当時に、これもっとオーウェン・ローウェン出てくるぞという期待が高まるんだよな
アイランズモルト。ポートエレンとかの連想っぽい名前
「再建の指揮を執ったエレナ」は、ではなく、「実業家エレナ・バーンズは」にする、なんていうのかわからんけどこういう手法(?)、表現好きです。
これいい
ベンオリンポス22.4.0
個人的にはいちばん好きな挿話。倶多楽もそうなんだけど、よく考えればハチャメチャな話をこのすました文体で説明される感じがわりと癖になる
わかる
五感に接続して良い感じにするデバイスあったらもうウイスキー飲まなくていいだろ、という野暮なツッコミを破壊する強度がある
ベンは山の意。オリンポスの山。
天塩16年
また思い出の話。このへんで16.7年の話が2挿話に一回ずつ出てくるっぽいことに気がつく感じになるのかな
麒麟の尾。好き
「もう飲み尽くしちゃったんだよな」たまに出てくる、くだけたというか、人間くさい喋り方をする人、好き。
「熟成するウイスキーと同じ時間の中で歳を重ね、ウイスキーとともに生きるという、至極あたりまえの体験を」っていうのが、16年と関係あるのかな。1周期後にアウターピープルが戻ってくるよりも前に熟成を終えられる限界が16年
グレンパンクワイルドカード
テイスティングノートが良すぎるんだよな。これまでのマンションポエムを逆手に取った苦悩に満ちた表現……
著者の精神状態が相当安定してないってのがわかるところなんだな……
一石を投じている
カリアック167年
「天塩16年」にあった「熟成するウイスキーと同じ時間の中で歳を重ね、ウイスキーとともに生きるという、至極あたりまえの体験を」との呼応
167年がやりたかっただけだろ感あるんだけど、でも嬉しい
初期のアウターピープルが仕込んだ設定で間に合うようにしてるんだな、現地時間10年というのは(??)
なんならオーウェン・ローウェンが作ったかも知れない
「天使への分け前」機械天使のような上位者的存在が急に出てきたのかと思ったけど、そういう言い回しがあるんですね……。
草
アードロセス25年
一言にも書いたけど、ここで「ウイスキーに埋め込まれた記憶なのではないか」という話になるのはやっぱいい。酒を飲むというのはそういうことだと思います!
笹帽子「ハレの日の茉莉花」
一言感想
思ったよりだいぶダークソウルだった。
ねじれ双角錐群読者にダークソウル未プレイの者はいないはずだが?
そうさね
茉莉花→祭化?
登場キャラのビルドがそれぞれ違い、かつそれがちゃんと伝わってくるのがうれしい
ミカ:たぶん技量だと思う
シゲ:筋力寄りの上質か?
闇霊1:魔術師
闇霊2:脳筋
ミコ先輩:呪術師
ミコ先輩に激しい発汗をさせたかったから呪術師にしたのでは説があります
奇祭っていうテーマから「ハレとケのコントラストが」っていうところに観点を持ってきてるのは唯一だなあ。「終わらない文化祭前日」みたいな定型的な甘っこさに対してかっちり反論しているのがかっこいいと思う
そもそも奇祭要素がある話が少ないという問題はあるが……
バトル描写がふつうに上手いのはなんなんだ
注連縄構造
富ヶ谷は東海大学があるっぽいけど特に関係なし?
なぜか、ミカヅキは男勝りの女だと思ってしばらく読み進めてたけど普通に男でした
なぜかずっと御子柴さんが男だと思って読んでた
偶数章と奇数章で性別が逆になってるのかもしれない
化生の指輪
アストラのアンリ
細部
とりあえず以下にまとめた。特記事項としては……
奇数と偶数で季節が変わってる
基本的に偶数パート(秋)がダークソウルになってる(構成まとめてて気づいたけど、実際5と7はダクソ要素がねえ、8にさえあるのに)
6の終わり以降(ここでシミュレーションをやめるのでは、と思った)も↑の構造が維持されてるあたりはまだよくわかってない
1と2の時系列。1はいつの話なんだ?
素直に8の後ではと思ったけどなんかあるのかな
繰り返されるシミュレーションのなかの2つの祭を、偶数章と奇数章で交互に進めているようなことかな?
奇数章では一号館は崩れておらず、偶数証で崩れるので、時系列的には奇数章(夏)→偶数章(秋)の流れか。
1の「224日ごと」の説明どおりだと夏に開催されているはずなので、それもあるのかな。ただ、そもそもループして季節が変わるのかっていうとそういうもんではないと思うので、秋になるってこと自体が普通に考えるとヘン
庸の話あたりが最後→最初に繋ってループすることの示唆なのかなーとも思ったけど、読んでるうちではプロットの流れのままできれいに時系列繋って見えるのでわからなくなってしまう(そのあたりが狙いなのだろうとは思う)
あーそうか、1→3→5→7→2→4→6→8で繋がるか
1のミコ先輩の電話が、5のシミュレーションバレの連絡で
7でそのシミュレーションにえらく金がかかっていることがわかる。あと、この解釈だとミコ先輩は5の最後で(「ケありき」という選択ではなくて)「繰り返して最高の祭りにする」を肯定してるって読める(だから、このミコ先輩の選択のボカしかたは意図的なんだと思うんだけども)
2→4→6→8はふつうにいける。が、やっぱ8→1は否定できないか
うーんやっぱ無理あるかな……いけなくはない気がするが細部がちょっと��ってるような合ってないような
ちなみに初読時は、数多くの周回でのできごとをパッチワークにしてひとつにつなげてるくらいの感じなんじゃないかと思っていた(で、かつ、6の最後でいったん終了しているはず……と見ていたんだけど、やっぱ8でダクソになってるのとかはおかしいので、おかしい)
2→4→6→8→1→3→5→7かもな。夏→秋だと224日経たないので、秋→夏が正解っぽい。時計塔は再建された。
8でいい雰囲気で終わっている、シミュレーションだってネガティブな形ではないということになってる
シミュレーションに関して、ミカヅキたちの認識はどうなっているのか。
茉莉花の演算に都度ロードされているだけで、現実のミカヅキたちは繰り返されるシミュレーションを認識していない?
祭り以外の記憶がないみたいなことが書いてあった(そこでは、祭りが好きすぎてというニュアンスだが)ので、そういうことなのかなと思ってます
そもそもミカヅキが茉莉花に呼ばれて大学に入学しているところから怪しい。その時点からシミュレーションが始まっている可能性もある?
1:(夏)富ヶ谷祭「3日目」の朝
キャンパスのミニチュアを出すとこから始めるのがめちゃくちゃ上手いと思った。舞台となるキャンパスの描写にも役立ってるし、後半でもこの「ミニチュア」を喩えにした話が出てくるし、それを巡回する実行委員ってのが自然に出てくるしで
2:(?)闇霊が来てミカとシゲが応戦する。周回しているらしいことに気付く
魔術師のパリィのくだり、何度読んでも笑っちゃうんだよな
「闇霊の侵入ってなんだよ」と言いつつ侵入を実際に見たら即適応するのがいい……話の運びとして無駄がないし、祭りとはそういうもんだ(だからおもしろい!)っていう感じが出てくる
急にモブの亡者出てきて笑った
3:(?)回想。富ヶ谷祭と祭AI・茉莉花の紹介。ミカの入学と、委員としてはじめての富ヶ谷祭
祭AIってなんだよ(こうやって超AIを登場させる腕力がうれしい)
導入→見せ場→ループ?で引いて回想に入る流れが完全に出来上がってる感
構成上手いな〜と感心する
そもそもほんとに回想なのか疑惑がある
4:(秋)2の続き。ミコ先輩が来て1号館の時計塔の上へ
「アッシュグレーの修道女のドレス姿を露わに」ここでめちゃくちゃ興奮した(ダクソ3で一番好きなボスがフリーデなので)
「この先、尻があるぞ」
ここめちゃくちゃしょうもないんだけど、完全に「梯子上ってて上のキャラの臀部が見えてる」って絵面がはっきりと思い浮かぶのですごい
ここで未プレイ者を完全に振り落とした感ある
5:(夏)茉莉花が「シミュレーション」していることを明かす
「お前、箱庭は現実よりも��っていると考えているようだが、それは違う」のくだり、創作全般にも言��るんだよな。人間の認識の話を想起させる。
最後のとこ、ミコ先輩としては「祭を愛する一人の人間」のほうをとるだろうという話にはなってるんだけど、それがループを抜けるのか抜けないのかについては、どっちの道筋もつけられるって感じなのかー
6:(秋)ミコ先輩が茉莉花に挑戦し(ボス戦である)、舌戦で勝つ
祭AIにとってはケとしての日常というものが原理的に不可能(は言い過ぎか)ってところで神を殺してるのやっぱかっこよくて、この辺の二項対立のさせかたが、山の神さんとかでも好きだったところであるなあと思った。そういう意味では由緒正しきSFだよ
7:(夏)富ヶ谷祭「3日目」のたけなわ
5の最後との関連でここもけっこうあやしくて、「次の祭がある」の解釈が複数できる、はず
8:(秋)富ヶ谷祭の打ち上げ
ここで庸の話が出るのがかなりあやしいんだけどどう捉えていいのかまだ決めかねているのでとりあえずメモっときます
ダークソウルおもしろポイント
p.40:一礼返すや返さざるや
最初に一礼する闇霊はだいたい性格が悪い
p.40:魔力の結晶塊
マジでウザい(けどソロ闇霊やってるときはあんまり展開しない気がする、そうでもない?)
p.41:ラグのせいにするシゲ
誰もがイラつくあれ
p.41:焦って攻撃すると反撃されるのがまずい
白霊とかやってるときに欲張って追いかけちゃうと死ぬことよくある
p.43:パリィ致命で棒立ち
あの棒立ちのあいだ入力が効かず呆然と見てる時間がいちばん屈辱なんだ
p.43:ナーフはクソ
諦めてビルドを変えよう
p.49:緑花の指輪+3
DLCが出たおかげで周回しなくてもビルドが完成するようになってありがたいよね
p.49:歴戦の勇士の大きなソウル
協力とかのときにソウル獲得量とかでなんとなく周回数を察するアレ
p.51:置き溶岩
「置き溶岩だ!」じゃあないんだよ(呪術師として手慣れていることがわかるのが良い)
p.57:ボス戦のフィールドに下りるときは落下ダメージ無効
みんなが気になるやつだ
p.60:第二形態
ディレイを放ってくるのがいやらしい
p.67:地下牢の焼きごてババア
マジでクソ
小林貫「ハイパーライト」
一言感想
中に挟まれる各断章がそれぞれが、たった2ページ程度でいかにもなんか良い感じのワンシーンとして成立してるんだよな。このへんが小綺麗になまとまり感と冒頭末尾の突き放した感じがうまく対比になってるっぽい
猿が射精してるのが人類がハイパーライト放出しまくってるのと相似っていう理解で合ってます?
よし、仕方あるまいね
この台詞がえっちでいい。これがヴォネガットなら「そういうものだ」とかなるやつ。
ワイアットが「子供」、新藤が「青年」、ジリアンが「老人」っていう流れがきれい
細部
プロローグ:天使の登場
国単位で喋る(=世界意識として統一されつつある)のがかなり良い。最初「各国の代表者なのかな?」と一瞬思うのだけど、そうではないんだなという感じの流れになってる
そういうことなのか。普通に各国の代表かと思ってた
いやどうだろう、自信なくなってきました
《ワイアット》
この「どこかで見たような感じ」はなんなんだろうなと思うんですよね。映画とかでの「幸せな家庭ですよ」を見せるテンプレの描写がめちゃくちゃしっくりきてる。音程の外れたハッピーバースデーとか、ラジコンヘリとかベースボールキャップみたいな小物とか。まじでなんなんだ
この洋画テンプレがあって、猿も2001年宇宙の旅っぽさでそっち系で、からの新藤がすごいじわじわくるんですよね
《猿》
2001年宇宙の旅っぽさがある
《新藤》
どうせデータ生命になるんだしバイトサボってレポートも投げてっていうのがまずいい。そうだよね……
んで、そんなときにもかかわらず「いつもどおり」を貫いている人がいるというのもいい
バイトサボってレポートも投げ、風俗行くかとか最初は言ってたが結局コンビニで酒を買うとなったときに発泡酒になってしまう人間性
に対して、ビールをパックで買ってくる朝井さん
でもその朝井さんもレポートは提出するつもりだったりするのだ
朝居さんのひょうひょうとしただらしなさ好きになっちゃうでしょ
ぼくも一瞬で好きになっちゃったんだよね
最後にレポート提出のこと心配するのが最高すぎる
《ジリアン》
いちばんきまじめにその後のことを考え、祈りで終わるのがきれい
エピローグ:人類のデータ生命化以降
基本的には、肉体がなくなってもある種の熱みたいのが失われていないっていう、かなり優しさのある落とし方なんかなと思った
murashit「追善供養のおんために」
一言感想
これは奇祭のなかでも冠婚葬祭の祭なんだよな。奇祭SFそうひねってきたかという。習俗みというか、そういうのもありつつ、SFみもちゃんとあるという。
2文字は何なの? メモリであり、思い出なんだと思うけど、2文字で、サ変複合動詞になれる単語。記憶、と仮置きしてたが、記憶って単語使ってる場所があるな。
存在
結合
結索
索引
作用
存在な気がしてきた
本文に使われていない。一方でエピグラフ(読んだこと無くてわかってないんだ)にばっちり出てくるし……
神様みたいな◇◇、っていう表現特殊だと思うんだけど、それも存在だと説明つく気がする
係累、が非常にそれぽいが、本文に使われている
4文字はおばさん?
���の親戚のおじさんの微妙な距離感と、その中にある「まあ親類だし仕方ねえな」感が絶妙で
奇祭から帰省を導きだした収斂進化というか、因習に引っ張られた感
記憶のあり方が人のあり方であり、科学がいずれ記憶の領域に到達するのであれば、SFは記憶のあり方を先鋭化するべきものだ。
書かれている出来事と現実の関係。現実が確固たるものではなく、人間の認識によって形成されるものであるということ。その不確かさみたいなところを強く自覚した語り手。信頼できない語り手として非常に信頼できる。
区切りごとに語り手のテンションがリセットされてるのがそれっぽい
ここまでひょうひょうとできるのなんなんだろうな。なかなかいないですよ、こんなひょうひょうとしたやつ。
この冒頭そのまま使った告知ブログができるのは強い
細部
エピグラフ
グレアム・プリースト『存在しないものに向かって――志向性の論理と形而上学』らしい。
哲学的に異端とされ、ラッセルとクワインによって息の根を止められたと考えられていた「マイノング主義」。信念や崇拝などの志向的状態がサンタクロースやゼウスといった存在しない対象についてのものでありうるとするこの立場を、本書では論理的・説得的に理論づけ、志向性の問題に明確な解答を与える。新マイノング主義の最重要文献。らしい。
死者はもう存在しないんだけどそれを志向しているものがある限りは消えないみたいなそういう話か(ざっくり)
1:おじさんの人となり(p92)
後沢のおじさん:主人公の父方の伯父。三人兄弟で、上からこのおじさん、真ん中の女性、末っ子が主人公の父。(あとから訂正があって、父は三人兄弟の真ん中、すなわち上から「後沢のおじさん」、主人公の父、叔母(本編に登場しない))
後沢:ごのさわと読む。実在地名だとこの字はうしろさわと読むのが普通の様子。ごのさわ、だと五の沢という地名もある。
2:おばさんの死(p96)
3:おじさん、父、おばさんのきょうだい順の訂正(p99)
ここの「おばさん」は2で交通事故で死んだおばさん(おじさんの妻)とは別人で本編に登場していない人のことなんだろうけど同じおばさんという単語が使われてわかりにくいみたいなのが妙にこういうインターネット話でリアルというか、なんなんだろうな。っていうかこの訂正のやりとりも明らかに本筋から言って不必要で、そういうのを入れ込んでくるそれっぽさが。
4:おじさんの変化(正月)(p100)
理不尽に対処するには忘れるのが一番であるという一般的な方法、それを選ばなかったおじさん
5:後沢の葬式の変な風習(p103)
ここで、「うおっ、なんか始まった!」感を出すの面白いんだよな。でも正岡子規とか絶対嘘だろみたいになっ��くる雑さ、それからあとからひっくり返すことも含めて。なにがしたかったのかよくわからん感じが出るのが、いかにもそれっぽいというか、作者ではない書き手のレイヤーの存在が意識されるって言うか。
これ書いてるとき楽しいだろうな。
(キャッチャーがいないから)。面白ブログだ
6:知人から聞く新興宗教の話(数ヶ月後)(p105)
空白2文字が登場して、いよいよ新興宗教の話が明かされて(っていうか普通だったら明かすのさすがに遅すぎるんだよな、ここまでよく読者をつなぎ止められる)、SFっぽくなってきて急に物事か加速する感じを出しつつ、でももやもやっとして終わる。このふらつき具合が良い。
マドレーヌの下り好き
空白2文字
死んだ人の◇◇が残されたものに宿る
ものが無くなると、◇◇ごとなかったことになってしまう
神様みたいな◇◇が、ものとつながっていない◇◇を消してしまうため
なぜなら全世界の◇◇の許容量には限度があるので、スペースを空けないといけないから
これブログ(?)の上でもこういう表記になっているのか、ブログがこうして小説として提出されるというか収録されるときに落ちてこういう表記になっているのか、どういう扱いなんだろう
7:この記事を書いている理由(p111)
主人公はこの記事によっておばさんやおじさんのことを参照することで彼らの◇◇をつなぎ止めることができるのでは、と思っている
電子データでいいのかとか、そもそもリアルタイムの思い出ではなくて半年前のことを思い出して書いていてそれで成立するのかとか、わかっていないのだが
新興宗教の中身が見えたり、したところからまた揺り戻して、単にふわふわと不思議な、でも人生の実感に近い話になってくる
8:まとめ(p113)
浜村龍一(誰だよ)、葬式の風習、半袖シャツの友達あたりは全部嘘
なんで嘘だったかとかなんかを説明してあるんだが正直よくわかってない
うだうだと内省的なことを書き並べて勝手に自己解決してる病みブログか?
「ぜんぶうそだからだ」どこまでがうそ?または本当?
宗派の対立があった話
A:走査の段階でつながっていない◇◇に印を付けて、最後に消す。しかし消す◇◇の大きさにばらつきがあったりして別の大きな掃除が必要になったりする
B:走査しながらつながっている◇◇を新しい宇宙の方にうつしていって、最後に古い宇宙ごと消す。詰め込む効率が良くなるけど別の宇宙がいるし移し替えの労力がかかる
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
マーク・アンド・スイープ オブジェクトから別のオブジェクトへの参照をたどり、到達出来ないオブジェクトを破棄する方法。
コピーGC 通常使用するメモリ領域と同じ容量のメモリ領域をもうひとつ用意し、ガベージコレクションの際に有効なオブジェクト��みをもう一方のメモリ領域にコピーする方法。メモリ領域をデータ保持に必要な容量の2倍消費すること、コピーの際にオブジェクトのアドレスが変更されることなどの欠点があるが、ガベージコレクションとコンパクションが同時に行える利点がある。
ここで未来を過去形で語ってるのってどういう意味というか、効果なのかいまいちわかってないです。
「めちゃくちゃ教義問答に参加してえってなってるごく近い周りの人だけがワイワイ酒飲みながら盛り上がってる状況になって――それ、仲いいんじゃないか?」ここがめちゃ好き
9:一周忌(p120)
いきなりブログじゃなくなるのズルすぎる!!!
まとめのところがなんかまとまってる感じなくて、でどういうことなんだよ、というモヤモヤ感がどうしても残る(作為として残されている)中に最後にこんなかっこいいシーン持ってこられたら全部勝ちになってしまうよ
「草の間、骨ばかり残った雀らしい死骸のわきに〜急ごしらえで入道雲の形をとっているように思われた。」ここすごいな。
そう、ここすごすぎる。
「目を開けた途端にひときわ強い風が吹き、耳の中が通ったように蝉の声が響く」ここもすごい。
ぼんやりとかふわふわって表現が多用されてるなかここでくっきりピントが合うような感じ
元喫煙者としてはめっちゃ煙草が吸いたくなる。
10:次回は(p122)
いきなりブログが難しくなるの笑うからやめてくれ
なんなんだよ
鴻上怜「花青素」
一言感想
どことなく酉島伝法っぽさを感じた
毎行くらいの頻度でSFネタがギャグとして雪崩れ込んでくるのが楽しいし、そうやってとにかくいちいち興味を引かせて盛り上げてくこと自体が、4層になってる語りがいずれも夜なべのたわいないお話だったり時間かせぎだったりと、聞かせること自体を目的にしている語りなんだってところに対応してるのがみごとだなと思った。この強度でこのネタの数を出せるのいったいナニモンだよ
あとやっぱいちばん外側の文(地の文でいいのか)の文章がとくにすげえうまくてすげえよ
とにかく文章力がすごいな。複数の語り手でこれだけの強度を保ってるのが尊敬できる
いつにも増してタフだ。そしてこのタフな作品をさらっと仕上げて真っ先に提出するのがさすが……
姉SFじゃん
姉王の長乳の余韻が長く続く。
すごい
細部
A:地の文(?):姉たちの帰郷のようす(p.126)
最初の5行くらいでまず「国鉄や路線バス」〜「星間飛行」あたりでいきなりガガッと近所から宇宙まで世界が広がっててヤバいということがわかる。「事象の地平線の少し手前の……限界集落」と逆にギュッと小さくなるのと対比もかっこいい……
説明的すぎ��にややこしい世界観を説明しきってるのがさすがと思いました
「そこらで返り討ちにした青霊」ソウルライクフィクションだ!
この文体すごいなとか思って読んでたらいきなりソウル要素が入ってきてめちゃくちゃじわじわくるんだよな。ニコニコ動画だったら異物混入って赤字で下に出てる(ただし明らかに残りコメントの量が終盤に偏っている)
「隠し味として生娘の月役を数滴、あああんたそんな高値いのを入れるなんて田舎料理が台無しねえ」がめちゃくちゃ好き
「睡眠中の生活」「惰眠域」→不安定で存在が揺らぐ、ってあたりできたきた!となる
っていうか、そうか、以降の語りは「惰眠域でのできごと」に��るのか
このへんはほとんどぜんぶパンチラインという感じがする
冒頭部の文体、相変わらず強い……
姉SFだよな。全然意味はわからないんだけどみんな姉なんだよね?
妹がいないんだよな(姉妹の契りを交わしてるところも含めて)
つーか、それこそ素直に考えると地の文の語り手は妹または弟なんだよな
B:ある姉の語り:忌寸を治しに〜シュヴァルツヴェルダーの登場(p127)
p.127:忌寸の由来が八色の姓にありそこから地方自治体の植樹につながるあたりがまず好き
蟲の話で最後に「分譲」って語が出てくるのとかもそうなんだけど、そういう「なんかわけわからんけどスケールでかい話から卑近に落とす」のが手管という感じする
地方自治体ってなんなのか。遠近感を狂わせる単語選び。
そういうことをいちいち言い始めるとすべての文に感想を書かないといけなくなってレジュメが破綻してしまうくらいの強さがある
p.128:目の前を横切る聖杯探索中の不死者
ここでいきなり十数年時間が経ってるのも見逃せない
p.128:しれっと「論理改変」みたいな大きめのガジェットが出てきてる
それがペストマスクに詰めた香草で中和できることになってるあたりもすごい良い
あと、そのへんの話があくまで参道歩いてる話に詰め込まれるのも上記の手管だ
p.129の「世界樹は〜」あたりもそうか。このへんも「ぜんぜんわからんけどなんか文章がかっこいい」ってなる
p.128:白髪三千丈みたいな忌寸の描写
p.130:糞の話〜ニーチェのあれ〜蟯虫検査のセロハンまでの流麗な下ネタの流れ
しかもこれが未消化の論理ときた
C:シュヴァルツヴェルダーの語り:姉である女王メイベアが器質藻を寄生させてる云々(p133)
長乳の描写が好きすぎる。
p.133:「禁蟲並庶幾諸法度(インセ��トゥム・コーデックス)」じゃあないんだよ
出てきる小道具たちの妙な卑近さと、古典的な悲劇みたいな���袈裟さとの対比もいい
器質藻のつなぎめを出すあたりのフェティッシュな感じ
p138直接的には意味の取れない「姉たち」がここで登場している
D:メイベアの回想:「まだ人類がこの惑星の主役だったころ」〜姉と太姉ナタリィの契り(p139)
いかにもな管理社会、相変わらずルビ芸がきいてる
ナタリィの系譜が姉たちで、メイベアの系譜が蟲たちって感じの話にはなってる?
p141 「嫌味な勤労課長からは新種の食用昆虫である庶幾蟲の育成状況をしつこく尋ねられるし」で庶幾蟲が登場している
ので、この「姉」は普通に人類で、なのでこれがどうメイベアの回想なのかよくわかってない(いや、単に脈絡のない語りなんだけど……)
あ!そうか、(ぼかされているにしても)メイベアって想定するの無理あるか。前段最後あたりのつなぎでそう読ませたいのかなと思ってたけどわからんな。なんとなく原型的な庶幾蟲が人間に寄生して今(今?)の(木に寄生する)庶幾蟲になったみたいなのを想像してました。いやでもどのみちどういうことだってなるわよね
ナタリィが姉の始祖・太姉であって、それが世界樹経由で広がる話が出てくるからそういう系譜なんだろうが、もうそのあたりはどこまで与太話なのかわからん
p.145「無数の惰眠の集合にはそれぞれの夢があって、だからその夢に串となる人格をさしてやる必要があるのよ」
最後になまめかしい姉妹の契りがかっこいい
寄生する概念の入れ子構造だ
ナタリィが寄生するミームで、世界樹を経由してて、世界樹に庶幾蟲が寄生してて
B:ある姉の語り:ハメられた!(p147)
咳き込みで2段一気に下がるのがきまってる感ある
わかる。キックなんだよこれ。
ここかなりリズム感がありますね。ハリウッドザコシショウも言ってました。何事にも気持ちの良いリズムがあると。
Dの語り手が明示されていない(全体に、焦点としては「ある姉」だったりシヴァだったりするはずなんだけど一人称ではない。が、とくにDは曖昧)なところからなのでなるほどってなる
脈絡の乏しい長話にあてられているのが実際読者っていう。うまいよね。
あと、ここで文字通りにはBを語る姉が死んでるはずやんってあたりもいい。論理(因果?)がおかしくなっている世界なんだなってあたりが強く出てくる(あるいはそうか、ふつうに与太なのか)
A:地の文(?)
戻ってくる構成、やっぱり強いよ
結局、信頼に足る情報がこの地の文からしか得られないんだよな……
「お盆に太姉=ナタリィの位牌のある日本家屋みたいなところ=裸の特異点に帰省して夜通し数千数万の姉たちが語る」ということしかわからない
実際んとこ、どうなると姉たちの「存在が薄らぐ」んだろ
石井僚一「忘れられた文字」
一言感想
枠としては底本の「対馬にて」の章「一 寄りあい」ほ��そのままで、登場してくる名詞が文字とか本とかに置き換えられてる(ほかにもところどころ若干の調整はあるが) 細かく照らしあわせてみるとけっこう調整が細かい!
元ネタには聞いた内容を説明してるって軸はやっぱある……のが、こうやって情景として想像できない形に置き換えられると(あくまでその軸を保ったまま)さらに遊離する感じになってくる。元ネタの「習俗の話」という、今やすでにしてちょっと別世界感がある話の報告を伝ってくせいで、リアリティのわりに現実ではないみたいなのの同居が云々(うまく説明できない)してる感
こういう置き換えネタは大体一発ネタだからこんな量ですら持たないというか、途中で読者が興味を失ってしまうか、それを心配した作者が諦めて(我慢できなくなって)原文を逸脱していくかだと思うんだけど、最後まで淡々と続けた上で、しかも内容的にそれで結構面白くなっているっていう状況がなんかすごいんだよな。
これがラストにあることによる一冊の引き締まりすごいと思う。
ちなみに途中まで、これは何かのパロディなんだろうとはわかったけど元ネタが掴めなかったので、宮沢賢治かな?とか思って読んでた
なんかあるだろこういうの。どんぐりと山猫かな。
どんぐりと山猫を読み直したが、全然違うな。
来るべき因習感が一番ある。
本作のおかげで文学オタクも本誌の守備範囲に入った感がある。
細部
対応表(仮)(文字合い=寄りあい) 完全に一対一で対応しているわけでもないところも大事かと思いますがざっくりと
文字たち=(村の)人々
題名=区長または(著者が話を聞いた)「老人」
章題=総代
駄洒落だ!
栞=帳箱
栞が挟まれるときの特別な現象、または栞そのもの=帳箱に入っている区有文書(古文書)
目次=寄りあいの場
本の調査に来た先生(著者)=対馬の調査に来た先生(著者)
ここけっこうあやしい
よく開かれた紙面=旧家で身分も高い給人の家
とはいえ、紙面=(寄りあいのなかの)グループ、でもある
別の本=千尋藻
目次=四ヵ浦、だったり、どうも千尋藻近辺の集落がその本の各章や付き物にあたるらしい
文字のおどり=寄りあいのあとの夕飯
紙の色やら香りやら=月あかりに照らされた光景やら
頁数=宿の老婆
その本の物語=その村の伝承
カタカナやひらがなや漢字(旧字体や新字体)、まがな……=郷士や百姓、領主(といった身分)
「この書棚」=対馬
このあたりでは目次=帳箱になっている
物語の自由=「村の前進」
このダブルバインドなオチに持っていくのがめちゃくちゃかっこいいと思う
p157「物語だった頃の話がしばらく続いた」でもう物語じゃない?っていうのがちらっと出てくるところからのひっぱってきてるのかな。
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アンソロポエジー
ジャンル
抒情人類学アンソロジー
紹介
人類不在の、抒情——。 失われた人類文明の延長線上に木霊する、あまりに虚ろであまりに愛おしい七つの抒情人類学。終末の彼方で物語の意味を問う、第三小説誌!
電子版
Kindle
収録作品
01 「物語り殺し物語」 笹帽子: 被害者は最後の人類にして一日三万字執筆する超作家。容疑者は四編の物語生命たち。誰が彼女を殺したか? オーケー書き手たち、小説を書き終えた翌朝から自分の小説がクソに思えてくる現象への対抗策は、次の小説を書くことしかないんだ。
02 「筐体反転」 cydonianbanana: 代替数学の氾濫によってあえなく消滅した人類は、滅亡の最中、文明の遺産を外宇宙へと放流する。時を経て《筺》を手にした七腕の知性は、人類文明の解明に力を注ぐが……。著名な人類学者による日記の形式をとった、滅亡後の人類最初の奇書。
03 「冷凍冷蔵庫」 石井 僚一: 宇宙と呼ばれる空間を一万年くらい漂っていた冷凍冷蔵庫が小石にぶつかられて、青くて白い惑星に落下していくまでの数十分間を描いた超短編。びゅー。ごごごごーっ。
04 「燃える」 小林 貫: Search key ---> '%Love%' Error: Not authorized reference
05 「フライバイ」 全自動ムー大陸: その身に走った《罅》のために転生を剥奪された「蒐集者」の追放前夜。その思惟は、その光は、その音は、その言葉は、かつて蒐集した《思い出》の最中にある。はたして「括弧」の内外をつなぐ脆い往来に景色は流れ出した。
06 「彼岸過迄」 murashit: 死を恐れず計算を続ける「彼ら」と、彼らに造られ死を恐れる「私たち」。自らが造った者たちに殺されることを願う彼と、彼の異言を受けてそれを実行せんとする私を主軸に、自意識をもてあます原・人類から脈と続く苦悩を描く。ダイソン球に自分自身を重ねた漱石の自己との血みどろの闘いはこれから始まる。
07 「イリンクス」 鴻上 怜: 氷層に閉ざされた深宇宙の水の惑星。その深海域に棲息する環形動物の少女は、ある日機械の少年を拾う。〈文明の羹〉を名乗る少年は海底世界に地球の知識を広めようとするが……。繁殖の円環から逸脱した者たちの、理と感動をめぐるナラタージュ。
執筆者
笹帽子(twitter, website)
cydonianbanana(twitter, website)
石井僚一
小林貫(twitter)
全自動ムー大陸(twitter, website)
murashit(twitter, website)
鴻上怜(twitter, website)
表紙イラスト
全自動ムー大陸(twitter, website)
刊行日
2018年11月25日
0 notes
Photo
廻廊
ジャンル
虚構画譚アンソロジー
紹介
虚構をめぐる、風景——。SF、幻想譚、恋愛小説、そして美少女AI百合。19世紀末に成立した絵画『望郷』を登場させることを条件に描かれた、六つの虚構画譚。
電子版
Kindle
収録作品
01 「cond/quote/lambda」murashit: ハムサンドを食みながら束の間のネットサーフィン、仕上げ��錠剤を水で流し込む。目を閉じる、瞼を押さえる。ぐりぐりと撫でる。働くおんなのこたちの(動悸が)どきどきロービジュアル小説、ニューリリース!
02 「My Sensible Friend」笹帽子: 「ラング・ド・シャがかわいいのって、フランス語効果でしょ? フランス語なら牛タンだってかわいくなるよ。ラング・ド・ブフ」「かわいくないです」「おんなじ猫の舌でもドイツ語で言えば超かっこいい! クーゲルシュライバー!」「カッツェンツンゲン」「日本語で言うと美少女AI百合」「猫の舌」
03 「逆行の標」小林貫: 最も大切にしているものを失ってしまった人々は、その先きっと獣のように飢え続けるのだろう。海岸に積み上がってゆく魚の死骸はなにを諷示するでもなく、ただ静かにそれらを見つめている。
04 「故郷」伊川清三: その日、僕は好きな彼女のために絵画「望郷」を燃やした。画家であった父の遺言に従って、僕と彼女は「望郷」を探すための旅に出た。これは晩夏の甘い物語――
05 「夜明けは夢の【枢:くるる】」全自動ムー大陸: 生まれてから一度も眠ったことがない私は、悪夢を背負った女「遠野」と出会う。ある日、運命に似たその女は夏を理由に私を海へと誘った。
06 「望郷」cydonianbanana: 人と芸術の関係が決定的に転換した時代、現実に影響をおよぼす虚構群は《湯守》によって管理されていた。ぼくは今日も温泉街を抜けて《湯守》の彼女を訪ねる――絵画『望郷』を内包し、内包されるぼくらの日常を描く幻想画譚。 00 「レトロスペクティヴ」鴻上怜: 画家ウィリアム・ポストレーの回顧展に足を運んだ絵画修復士・八女川和子は、そこで顔が塗り潰された娼婦のヌード画と出会う。「望郷」と銘打たれたその絵画には、ある秘密があった——。電子版書き下ろし作品。
執筆者
murashit(twitter, website)
笹帽子(twitter, website)
小林貫(twitter)
伊川清三(twitter)
全自動ムー大陸(twitter, website)
cydonianbanana(twitter, website)
鴻上怜(twitter, website)
表紙イラスト
全自動ムー大陸(twitter, website)
刊行日
2017年11月23日
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Photo
望郷
ジャンル
短編小説アンソロジー
紹介
物語への、憧憬——。幻想譚、恋愛小説、SF、怪奇小説、そして、のじゃロリ狐ババア。 ねじれにねじれた渇望の末、自身が物語であると自覚する七つの短編。
電子版
Kindle
収録作品
01 「物語のない部屋」石井僚一: ——ねぇ。どこかから声がする。 私は同人誌を出そうと誘われて物語を書きはじめる。ところで物語ってなんだろう? 問い��物語を、物語は現実を示して、そう、このお話は最後の物語と最初の物語の間に生じた小さな声。
02 「新しい動物」小林貫: 全生活史健忘の男と得体の知れない魚頭人身の女。希望と不安、秩序と混沌――すべてが混ざり合う白い街で、行き着いた果てに二人が見出す新しい世界とは。著者処女作となるスペキュレイティブ・フィクション。
03 「二色の狐面」笹帽子: 僕の父は陰陽師だ。妖怪変化、魑魅魍魎の類を退治して金を取る、職業陰陽師である。職業陰陽師って流石に何だよ。父の妖狐退治に手を貸した僕は、妖狐に魅せられてしまう。もふ尻尾のじゃロリ狐ババア短編。
04 「組木仕掛けの彼は誰」cydonianbanana: 外界を言葉としてしか認識できない病に冒されたぼくは、AR故人《島崎藤村》β版のデバッグのため温泉旅館に逗留し、そこで奇妙な失踪事件に巻き込まれる。きみとぼくと《島崎藤村》が織りなす湯けむりSF幻想譚。
05 「ユゴスに潜むもの」伊川清三: 近未来、冥王星探査に降り立った三人の宇宙飛行士。探査チームの隊長は、無名の谷の奥底に「都市」を発見した! 奇妙な都市の探索に向かった彼らが体験した出来事とは?
06 「香織」国戸シャーベット: 「だから僕たちはキスをいつも虹の一番高いところで済ませた」――ジャスミンの香水を愛用する香織と僕の青春の日々。読書、遊園地、ファミレス――僕たちの先にあるのは一体? どこまでも甘く、ピュアな恋愛小説。
07 「器官を失ったスピンドルの形」全自動ムー大陸: 寓意だらけの丘で向日葵の海が揺れている。物語以前の不明の中で、彼らがはじめからどこにもない約束を果たしあうことができたのならば、どんな種類の光であってもその駆け出す一歩を祝福するに違いない。
執筆者
石井僚一
小林貫(twitter)
笹帽子(twitter, website)
cydonianbanana(twitter, website)
伊川清三(twitter)
国戸シャーベット(twitter)
全自動ムー大陸(twitter, website)
表紙イラスト
全自動ムー大陸(twitter, website)
刊行日
2016年11月23日
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世界を変える決定的な出来事がすでに起こってしまった後、な小説しか書けないな。 cydonianbanana http://twitter.com/cydonianbanana/status/1229779429573836800
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時折だが、コーヒー・アンド・シガレッツを無性に見たくなるタイミングがあるだろう? それが今だ。 cydonianbanana http://twitter.com/cydonianbanana/status/1197887317651755008
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積極的に麺をつけていけ。 https://t.co/W5EbBflK8F cydonianbanana http://twitter.com/cydonianbanana/status/1148568959609790466
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