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Luis Pato ~ポルトガルワインのレジェンド~訪問
2019年8月12日、ポルトガルのバイラーダ地方にあるワイナリー、ルイス・パトを訪問。リスボンから北へ車で約2時間半、ポルトから少し南の地域です。大西洋から19km内陸のため、砂土壌が多く、海風や湿気の影響を受け、朝晩の温度差が大きい地域。
まずはちょっと気難しそうなご当主ルイス・パトさんからの初対面の言葉「うちはカベルネやシャルドネのワインは造っていないよ」そう、ルイスさんはバイラーダ地方の固有ブドウ品種“Baga(バガ)”を使ったプレミアムワインのパイオニア。私がそれを知っていることに安心したルイスさんは、明るいひょうきんなおじ様に早変わり。
ルイスさんによると、3000年前、“バガ”は“ピノ・ノワール”、 “サンジョヴェーゼ”、“ネッビオーロ”、“クシノマヴロ”と同じ品種だったが、それぞれの品種が持ち込まれた土壌や気候���順応して現在のような個別の品種になったそうです。1980年にルイスさんがワイナリーをお父様から引き継いだ時のバイラーダ地方はブルゴーニュの品種が主流で、バガは余り知られていない地場品種。ルイスさんは、バガの可能性を信じて、最適なテロワールでバガを栽培、フロテーションシステム導入などの技術革新をし、更にシングル・ヴィンヤードワインをポルトガルから初めて世に出して、Mr.Bagaという尊称で呼ばれるように。
ルイスさんは、バガを2回に分けて収穫することを思いつき、8月末収穫の未熟な青ブドウはスパークリングワインへ、そして9月末収穫の熟したブドウはスティルの赤ワインへ。バガ品種の特性で、樹に房数が減ると残ったブドウのタンニンが柔らかくなって、若いうちから飲めるワインができるそうです。
ルイス・パトワイナリーで栽培しているのは、白ブドウはBical(ビカル), Maria Gomez(マリア・ゴメス), Cercial(セルシアル) Sercialinho(セリシアリーニョ)の4品種、黒ブドウはBaga (バガ)とTouriga Nacional(トウリガ・ナショナル)の2品種で、すべてポルトガル土着品種です。
セラーを見学。白ワインには栗又はオーク樽で、赤ワインにはオークの650リットル大樽を使用。バガは、小粒で厚い果皮でタンニンに富んでいるのが特徴なので、通常(225リットル)のオーク樽より大樽の方がタンニンを和らげてくれるそうです。
ここで、樽からのワインを2種試飲させてもらうことに。
Baga2018 接ぎ木あり、石灰土壌
Baga2017 接ぎ木なし、砂質土壌
アメリカ台木に接木しない自根で栽培されたバガのワイン。深いコクがあり繊細な味わいでした。自根栽培ではブドウの房が小さく果皮も厚く果汁が少ないことから、1本のブドウの木からグラス一杯しか取れませんが、これは、「ヨーロッパ本来のブドウの姿を復活させたい」と願うルイス・パトさんがフィロキセラ禍の危険を冒してまでも実践した彼の夢でした。このワインは「ペ・フランコ」(=Free Foot。アメリカ台木を使わず自力で立つ)と呼ばれ、40年間も保管可能です。40年後とは2057年!
試飲ルームは扉が全開できる広々とした気持ちいいスペース。涼しい風が入ってきます。
ルイスさんのレクチャーを聞きながら12種試飲という贅沢な時間!
① Baga Vinho Espumante (バガから造ったロゼスパークリング)
② Maria Gomes Vinho Espumante (土着品種マリア・ゴメス主体の白スパークリング)
③ Vinha Pan Baga BirradaDOC 2015(8月収穫バガの白スパークリング。酸素のフロテーションシステム採用。ノン・ドサージュ。SO2無添加。きりっとした辛口)
ルイスさんは、酸素のフロテーションシステムを導入することにより、亜硫酸塩を添加しなくても、ワインの品質を長く保てることを証明しました。
④ Pan Baga Rose Informal 2014(玉ネギ色のロゼスパークリング。窒素のフロテーションシステム採用。ドサージュ入り、SO2添加)
⑤ Vihas Velhas Branco 2018 (バイカル/セルシアル/セリシアリーニョ3種ブレンドの白ワイン。ステンレスタンクのみ使用)
⑥ Vinha Formal Vinho Branco BairradaDOC 2017(シングルヴィンヤード。バイカルの白ワイン)
⑦ Parcela Candido Vinha Formal Cercial BairradaDOC 2015 (シングルヴィンヤード。セルシアルの白ワイン)
⑧ Vinha Barrosa Monopolio Vinha Centenaria BairradaDOC 2015(シングルヴィンヤード。樹齢100年以上のバガで、1本の樹から3、4房のみ。赤ワイン)
⑨ Vinha Pan Vinho Tinto BairradaDOC 2015 (シングルヴィンヤード。バガのフリーランジュースのみ使用の赤ワイン)
ワインのエチケットには可愛いアヒルが登場しますが、これはファミリー名の“パト”がポルトガル語で“アヒル”という意味で、実際ワイナリーにはアヒルが生息しています。そしてシンボルの3羽のアヒルはルイスさんの3人のお嬢さんを表しているそうです。
⑩ Vihas Velhas Tinto Baga 2016 (樹齢40年で、1本の樹から6房のみ収穫の赤ワイン)
ルイスさんの造るバガのワインは、凝縮した果実、滑らかなタンニン、バランスの良い酸味の複雑な味わいで、個性的な魅力があります。
⑪ Luis Pato Quinta do Moinho 2000(シングルヴィンヤード。9月末収穫のバガに8月収穫のバガを混ぜて発酵した赤ワイン)
2000年ヴィンテージですが、まだまだフレッシュ!
⑫ AM 2010(Abafado Molecular) (9月最終週に収穫したバガ。冷凍して発酵をお願いします。途中で止めた甘口赤ワイン、フレッシュなチェリー味)
お茶目なルイスさん。この表情は“Pato Rebel”というワインのエチケットになっていて、ルイスさんはワイナリーの広告塔でもあります。
ルイスさんが造るスパークリング、白、そして赤ワインはどれも個性的で洗練された美味しさです。ここに到達するまでに試行錯誤を重ね、いろいろな実験、発見、技術開発を続けてきたルイス・パトさんは、まさにポルトガルレジェンドであり、偉大なる革新者です。お会いできて本当に光栄でした。
日本でのお取り扱いは木下インターナショナルさんです。
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1834年創業のポルトガルワイナリー JOSE MARIA DA FONSECA 訪問
2019年8月13日、ポルトガルのワイナリーJOSE MARIA DA FONSECAを訪問。ポルトガルの首都リスボンからテージョ川を越えて南へ車で1時間弱、ぺニンスラ・デ・セトゥーバルという地域にあります。ポルトガル3大酒精強化ワインのひとつモスカテル・デ・セトゥーバルを生み出したワイナリーです。
こちらの肖像画は創業者のジョゼ・マリア・フォンセカさん。1834年創業から家族経営を貫いて、現在は6代目と7代目が経営と醸造に参画し、その経営手腕により、ポルトガルの5地方に合計650haのブドウ畑を所有。ここぺニンスラ・デ・セトゥーバル以外にアレンテージョ、ドウロ、ダォン、ヴィーニョ・ヴェルデにワイナリーを持ち、ブランド数は30以上あります。
19世紀に実際使っていたマナーハウスやセラーを見学できます。写真左にあるのは、最も古い瓶詰め機械です。
写真のブドウはモスカテル・ デ・セトゥーバル(別名マスカット・オブ・アレクサンドリア)。 1849年に酒精強化ワインの モスカテル・ デ・セトゥーバル が初めて造られましたが、このブドウはそれ以前からこの地域で栽培されていました。醸造方法は、完熟した糖度の高いブドウを、収穫後に破砕した状態で果皮と共ににタンク内で発酵及び酒精強化をして、そのまま数か月間保管。搾汁後、樽内で最低18か月の熟成を行います。酒精強化によるアルコール、高い糖分、そして酸化熟成により,しっかりとしたコクのある香り高いワインが出来上がります。
1800年ヴィンテージから保管されているセラー。保管されているヴィンテージが刻まれています。
さて、試飲です。
まずは4種。
1. Lancers White(白。ポルトガルのいろいろなブドウからのブレンド)
2. Lancers Rose (ロゼ。Touriga Nacionalなどの5種ブレンド)
3. V Vinho VerdeDOC (白。LoureiroとTrajaduraのブレンド)
4. Twin Vines Vinho VerdeDOC (白。Loureiro,Trajadura,Pederna,Alvarinho)
さらに5種。ぺニンスラ・デ・セトゥーバルのワインです。
5.Periquita White2018 Peninsula de Setubal (Verdejo,Sauvignon Blanc 他)
6.Periquita Red2017 Peninsula de Setubal(Castelao, Trincadeira, Aragones)
7.Periquita Reserva2016 Peninsula de Setubal( Castelao, Touriga Nacional, Touriga Francesa)
8. Alambre Moscatel de Setubal DOC(Fortified, Moscatel de Setubal)
9. Alambre 20 Years Moscatel de SetubalDOC (Fortified. Moscatel de Setubal)
実はモスカテル・デ・セトゥーバルを初めて飲みました。 黄金に輝くトパーズ色、ドライフルーツ、キャラメル、トロピカルフルーツを思わせる華やかな香り、フルーティな上品な味わいにバランスの良い酸味が心地よいワイン。以前からポルトガル酒精強化ワインのポート、マデイラのファンでしたが、このモスカテル・デ・セトゥーバルも私のお気に入りに加わりました!
ジョゼ・マリア・ダ・フォンセカの日本でのお取り扱いは木下インターナショナルさんです。
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