#EU脱炭素税
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あれだけ脱炭素を盾にEVを推進しておきながらいざ自国の産業が脅かされると反旗を翻す欧米の強かさ。EVについて日本は一番の被害者だと思う
[B! 中国] EU 中国製EVに38.1%の関税 上乗せする方針を発表 | NHK
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自由党は反EUの民族主義政党でもある。EUから離脱を求めるだけでなく、通貨はユーロはやめて、元の通貨であるギルダーへの復帰を求めている。そればかりか、全オランダ国民の民族出自の登録や、犯罪者の民族出自の記録義務も求めている。 どの民族の出自が犯罪を犯しやすいかを可視化して、自分たちの価値観に合わない民族グループを排除しやすくすることを考えているわけだ。旧植民地時代からアフリカ南部に住む白人たち(アフリカーナー)への支援ももとめている。 気候変動やエネルギーに関する政策では、気候変動に関するさまざまな国際合意からの離脱し、航空税と二酸化炭素税を廃止し、原子力発電所とクリーン石炭火力発電所への投資を増やすことを求めている。現在当たり前のように捉えられている脱炭素の動きとは一線を画しているのだ。
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EU脱炭素、日米と同床異夢 国境炭素税で摩擦辞さず
ヨーロッパ
2021年8月2日
欧州連合(EU)の欧州委員会が域内の温暖化ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする目標実現に向けて包括案を公表した。掛け声だけでなく、具体案を出すのは主要国・地域で初めてだ。環境覇権を狙うEUの野心が透ける。
「欧州は(世界を)先導する準備ができている」。フォンデアライエン欧州委員長は7月14日、包括案を公表した記��会見の冒頭発言をこう締めくくった。EUが気候変動分野のトップランナーであり続けるには、他国との摩擦も辞さないとの決意表明でもあった。
なかでも強い姿勢を示すのが国境炭素調整措置(CBAM)だ。EU関係者によると、環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかけるCBAMについて、日米などの国から「EU単独で発表するのか」との問い合わせが相次いだ。自国のどの産業にどの程度の影響があるか、制度設計を尋ねる内容だった。
実際に導入されれば他国にとっては負担増になる。環境・通商摩擦が起きるのは明白だ。ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は3月、CBAMを「最後の手段とすべきだ」とけん制した。バイデン米大統領も6月のEU首脳との会談で懸念を伝えた。
それでもEUは独自の発表にこだわった。CBAMの負担額は域内の排出量取引制度の価格をもとに算出する。05年から制度を導入したEUには「ノウハウが蓄積されている」(ティメルマンス上級副委員長)。
EUは、排出量取引など国レベルの炭素価格を持たない日米がCBAMを直ちに採用するのは難しいとみる。中長期で日米とCBAMで連携する「グリーン同盟」を組む可能性は排除しないものの、EUが主導権を握るとの意思表示といえる。
背景には米中のどちらかが環境覇権を握ることへの警戒感がある。IT(情報技術)を巡る技術覇権争いでEUは米中に後れを取った。欧州委がいち早く対策を公表したのもEUの温暖化ガスの排出量は世界の8%にすぎず、EUの存在感がかすみかねないとの危機感からだ。欧州政策研究所のエルカーバウト・リサーチフェローは「野心的な対策であり、他国に対してEUが(環境政策の主導権を握る)ゲームに参加していると理解させた」と語る。
中国が勝てば、世界の脱炭素化の首根っこを押さえられる。国際エネルギー機関(IEA)によると、電気自動車(EV)の生産に欠かせないレアアース(希土類)の加工で中国は9割近いシェアを握る。リチウムとコバルトは6割前後だ。
米国はバイデン氏が大統領に就任し、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰を決めたが、将来にわたって国際的な指導力を発揮できるか不透明感を払拭できない。ブッシ���元大統領(第43代)が京都議定書の批准を拒否し、トランプ前大統領はパリ協定から離脱した過去があるからだ。共和党政権に戻れば歴史が繰り返される可能性は否定できない。
包括案はCBAMに加え、ガソリン車やディーゼル車など内燃機関車の35年までの事実上の販売禁止達成や、自動車や冷暖房の燃料に炭素価格を課すなど家計の負担増にも踏み込んだ。
ポーランド経済研究所などの試算では、EUの低所得者層の平均年間負担額が自動車で44%、冷暖房で50%増える可能性がある。比較的所得の低い東欧などに不満がくすぶっている。
一部の業界団体も反発している。機械や電気、電子関連の団体はCBAM導入で、原材料価格が上昇する可能性への懸念を表明した。欧州自動車工業会は内燃機関車の販売禁止を「単一の技術を禁止するのは現段階では合理的ではない」と批判した。
EUは内部に不満や反対論を抱えながらも、4億5千万人の市場を後ろ盾に域外の国や企業に新たなルール導入を迫る姿勢を鮮明にした。日本や米国とは共通の価値観に基づき、対中政策などで共同歩調をとるが、環境分野では日米と同床異夢の状況を強めている。
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欧米は具体的な記載が目立つ。米石油大手エクソンモービルは、世界各国が気候変動対策で温暖化ガスの排出削減に向けた規制を検討しており、炭素税が課された場合などは製品価格が上昇する恐れがあるとした。また、比較的、低炭素な天然ガスへのシフトが進む可能性があると開示した。 米アルファベットは、欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)に重大な違反があると、全世界の年間売上高の最大4%もしくは2000万ユーロ(約24億円)の罰金などを受ける可能性があると明記する。 米アップルは、新製品の発売前に部品在庫を通常150日分と多めに発注し在庫リスクを抱えていることや、アイルランドに多数の子会社があるため、税率が、米国だけでなく、アイルランドの税制変更の影響を受ける可能性があると開示している。 米ボーイングは、防衛事業で固定価格契約が多く、コストが事前の見積もりを上回ると損失が出る可能性があると説明。実際18年度には、空中給油機のコストが想定を上回り、約7億ドル(約770億円)超の損失を計上したという。 日本では、住友金属鉱山が市況価格の変動が損益に与える影響額を開示。銅1トンあたりの価格が100ドル変動すると連結税引き前利益に年25億円の影響を与えるという。 内閣府令の改正で、今年3月末以後に終了する事業年度の有報から、リスクが顕在化する時期や程度、事業に与える影響の内容や対応策などの詳細な記述が必要となる。これまでは簡潔でわかりやすい内容が求められていた。 改正を先取りしたリコーは、18年度の有報で内容を大幅に��更し、英国のEU離脱の対策として、在庫を積み増したと記載した。 ただ、先行組でも、従来とほぼ変わらない記載にとどめているケースが多い。投資判断に役立つ開示では海外企業が先行しており、改善が欠かせなくなっている。
日本企業、リスク開示1割どまり 気候変動や高齢化 :日本経済新聞
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脱化石燃料・脱原発の野心的な目標をぶち上げたドイツだが、送電網の再整備が立ち遅れロシアの天然ガス頼みに
今年8月の猛暑の日、ドイツ北部のバルト海沖に浮かぶリューゲン島に数百人のツアー客が集まった。お目当てはビーチではない。アルコナ洋上風力発電所が開催した「魅惑の洋上風力発電」展だ。 世界の海洋プラスチック廃棄物の9割は、わずか10の河川から流れ込んでいる 港には巨大な白いグラスファイバーのブレードが並んでいた。この長さ約75メートルのブレードは、約30キロ沖合にそびえる風力発電用タワー60基の上に設置されると、ガイドが説明した。2019年初めまでに発電量は385メガワットに達し、40万世帯分の電力を供給できるようになるという。 「わが社がここでやろうとしていることを一般の人たちに知らせて、『おお、すごい!』と言ってもらいたい」と、アルコナの幹部シルケ・ステーンは話す。 もっとも、ツアー客が港の別の場所に目をやれば、同じくらい壮大な人工物に気付いたはずだ。こちらは見学予定に入っていないが、港の一画にはコンクリートのコーティングを施した巨大な鉄鋼のパイプが積み重ねて並べてあった。 これらのパイプは、ロシアとドイツを結ぶ全長約1220キロの天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム2」の一部として海底に敷設される。予定どおり来年に工事が完了すれば、既に稼働中のノルド・ストリームと合わせて現在の2倍のガスがロシアから輸送される。 皮肉にも積み出し港を共有するこの2つのプロジェクトは、再生可能エネルギーに懸ける夢と、ロシアのガス頼みという苦い現実の板挟みになったドイツの苦悩を物語っている。 <「南北問題」がネックに> ドイツは10年、今世紀半ばまでに電力の80%を再生可能エネルギーで賄うという野心的な目標を掲げた。さらに翌年には日本の福島第一原子力発電所の事故を受け、22年までに「脱原発」を達成すると発表した。 ドイツはいち早く固定価格買い取り制度を導入(17年に入札制度に移行)するなど、個人や企業による太陽光と風力発電事業をテコ入れしてきた。おかげで1990年には電力比率の3・6%にすぎなかった再生可能エネルギー(風力、太陽、水力、バイオガス)が、発電量の3割超を占めるようになった。 しかし高邁なビジョンは、厳しい現実に突き当たった。世界屈指の工業国ドイツが脱化石燃料・脱原発に舵を切るのは容易ではなく、当初の予想以上にコストがかかり、政治的にも困難を極めた。結局、政府はエネルギー政策を見直して化石燃料への依存度を高め、気候変動対策で世界をリードする役目もある程度返上せざるを得なくなった。
送電網の全面的な再整備が必要
問題は送電網にある。太陽光・風力発電を主役にすると、従来よりも複雑でコストも高い送電網が必要になる。ドイツが目標を達成するには、「送電網の全面的な再整備が必要だ」と、再生可能エネルギー推進政策に詳しいアナリストのアルネ・ユングヨハンは言う。 風力発電ブームがもたらしたのは、供給と需要のミスマッチという予期しない問題だった。ドイツでは風力発電所は常に強い風が吹く北部に集中しているが、大規模な工場の多くは南部にある(南部に集中する原発は次々と運転を停止している)。 北部の風力発電所から南部の工業地帯に電力を送るのは容易ではない。風が強い日には、風力発電所は大量の発電が可能になるが、電力はためておくことができない。供給過剰になれば送電線に過大な負荷がかかるため、電力系統の運用者は需給バランスを維持しようと風力発電所に送電線への接続を切断するよう要請する。こうなるとツアー客が眺めた巨大なブレードも無用の長物と化す。 一方で、電力の安定供給のためには莫大なコストをかけてバックアップ電源を稼動させなければならない。ドイツでは昨年、こうした「再給電」コストが14億ユーロにも達した。 解決策は、北部の風力発電施設から南部の工場にスムーズに電力を送れるよう送電網を拡張すること。そのための工事は既に始まっている。巨額の予算をかけて(事業費は電気料金に上乗せされて、消費者が負担する)、総延長約8000キロ近い送電線が新たに敷設される予定だが、今のところ工事が完了したのは2割足らずだ。 <風力発電で大量の失業者> 「壊滅的に工期が遅れている」と、ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は8月に経済紙ハンデルスブラットに語った。遅れた理由の1つは住民運動だ。4本の高圧電線が通る地域の住民は電磁波の影響を懸念し、地下にケーブルを埋設するよう要求。そのために工期は延び、コストは膨らんだ。 今の見通しでは工事が全て完了するのは25年。原発が全て運転を停止してから3年後だ。 こうした状況下で、ドイツは再生可能エネルギーへの転換のペースを見直さざるを得なくなった。与党キリスト教民主同盟(CDU)の広報担当ヨアヒム・ファイファーは本誌の取材にメールで応じ、「再生可能エネルギーの発電量を増やすことに注力し過ぎていた」と認めた。「発電量を増やすと同時に送電網を拡張する必要があるのに、後者が後回しになった」
風力発電業界では大量の失業者
再生可能エネルギー推進派は政策の後退に強く反発している。ドイツ風力発電連合のウォルフラム・アクセレムCEOによると、風力発電業界では大量の失業者が出ている。「19、20年にこの業界は苦境に陥るだろう」 一方、ノルド・ストリーム2の建設工事は着々と進んでいる。このプロジェクトの事業費110億ドルは、ロシアの国営エネルギー企業ガスプロムと5社の欧州企業が出資しており、ドイツの納税者には直接的な負担はない。パイプラインはドイツ、ロシア、フィンランド、スウェーデン、デンマークの領海を通過するが、通過を拒否するデンマークを除く4カ国は既に敷設を許可している。 今でもEUが消費する天然ガスの約3割はロシア産だが、予定どおり来年末にノルド・ストリーム2が稼働を始めれば、欧州のガス市場におけるロシアのシェアはさらに拡大する。欧州最大のガス田があるオランダは地震頻発のため30年までにガス田を全て閉鎖する予定で、EUのロシア依存は一層進む。 ドナルド・トランプ米大統領は7月、「ドイツは完全にロシアに支配されている」と発言。米政府はノルド・ストリーム2に投資する欧州企業に制裁を科す可能性があると脅しをかけた。 <褐炭の採掘はフル操業> ドイツ政府もロシアへの過度の依存���警戒しているが、エネルギーの安定供給を求める産業界の要望は無視できない。現実問題としてロシア産���スに頼らざるを得ないと、ドイツ国際安全保障問題研究所のエネルギー専門家クリステン・ベストファルは言う。「大きな需給ギャップを埋めるには、(ロシアの)ガスが必要だ」 再生可能エネルギー用の送電網整備が立ち遅れるなか、二酸化炭素(CO2)の排出量が最も多い化石燃料である褐炭の需要も伸びている。褐炭による火力発電はドイツの電力供給の25%近くを占める。化石燃料業界が逆風にさらされるなか、褐炭の採掘会社は稼げるうちに稼ごうと事業の拡大に余念がない。 石炭火力発電が大きく伸び、ドイツのCO2排出量は15、16年と連続で増えた(17年には微減)。ドイツは今なおヨーロッパ最大のCO2排出大国だが、アンゲラ・メルケル首相は汚名返上に努めるどころか、20年までに1990年比の40%という削減目標を撤回するありさまだ。 わずか数年前、パリ協定の採択に向けた議論が行われていたときには、ドイツはEUの気候変動対策のリーダーを自任していた。だが最近、ミゲル・アリアスカニャテ欧州委員会気候行動・エネルギー担当委員が30年までの削減目標を90年比40%から45%に引き上げようと提案すると、メルケルは渋い顔をした。 「既に決めた目標があるのだから、その達成が先だ。次から次に新しい目標を打ち出すのはいかがなものか」 <本誌2018年10月23日号掲載>
ダニエラ・チェスロー
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【全文】2020年アーミテージ・ナイ・レポート(翻訳)
2020/12/08 12:28
米シンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)が新たに日米同盟に関するレポート発表しました。このレポートはいわゆる「アーミテージ・ナイ」レポートの最新版です。
序文
大きな不確実性と急速な変化の時代にあって、米国と日本は並々ならぬ課題に直面している。それは、容赦のないパンデミック、ナショナリズムとポピュリズムの台頭、世界経済の混乱、複数の技術革命、新たな地政学的競争などである。日米同盟は、この大きな不確実性の時代において、安定性と継続性の最も重要な源泉の一つである。しかし、日米両国が共に、過去70年のどの時代よりも大きなストレス下にある地域秩序と世界秩序に備えなければならないことに疑いの余地はない。
米国ではバイデン政権が誕生し共和党が上院の多数派を占める見通しで、ワシントンではこの課題に対処することになる。ねじれ議会の可能性はあるが、日米同盟は超党派のコンセンサスに基づいた重要な分野の一つであるため、米国が前向きなアジェンダを持って前進できると信じる強い理由がある。
これは、超党派の「アーミテージ・ナイ」レポート・シリーズの最新作であり、日米同盟の状況を評価し、新たな課題と機会に向けた新しいアジェンダを提案している。今回の報告書は、アジアのパワー・ダイナミクスの変化と日本への新たな期待から、特に重要である。実際、日米同盟の歴史の中で初めて、日本は、主導的とまではいかないまでも、同盟の中で対等な役割を果たしている。日本のリーダーシップを奨励し、より対等な同盟から最大限の価値を引き出すことは、ワシントンと東京の双方の指導者にとって重要な課題である。
日本がより積極的な姿勢を示すようになった背景には、2つの要因がある。第一に、日本はますます厳しい国家安全保障環境に直面している。第二に、米国の一貫性のないリーダーシップが、日本にアジアや世界の戦略的問題をリードする力を与えてきたことである。
この変革の多くの功績は、安倍晋三元首相にある。安倍晋三元首相は、日本が国連憲章に基づき集団的自衛権を行使することを認める日本国憲法第9条の解釈変更を実現し、米国や他の志を同じくする国々との新たなレベルの共同国際安全保障協力に乗り出したのである。また、環太平洋経済連携協定(CPTPP)を完成に導いた。さらに、「自由で開かれたインド太平洋構想」を掲げ、中国の非自由主義的な野心に対抗するための戦略的枠組みを構築した。
日本の革新的でダイナミックな地域的リーダーシップは、米国と地域に利益をもたらす。著者らは日本のリーダーシップの役割を維持しようとする菅義偉首相の努力を熱烈に支持し、ジョー・バイデン大統領と最も早く会談する訪問者の一人になるよう奨励している。世論調査によると、日本への信頼度は米国だけでなく、南アジアや東南アジアでもかつてないほど高くなっている。かつては日本のイニシアティブがワシントンで懸念された時期もあったかもしれないが、現在では日本の戦略が米国の目的に沿ったものであることは明らかである。米国と日本は共通の利益を共有している。さらに、日米両国は共通の価値観を共有しており、それが日米同盟の基盤となっている。米国の縮小が懸念されているにもかかわらず、主要な世論調査では、世界における米国の積極的な役割を一貫して支持していることが示されている。さらに世論調査は日米同盟が両国で依然として支持されていることも示している。
米国と日本は今日、歴史上、これまでにないほどお互いを必要としている。世界の中でも両同盟国は、前向きな未来像を実現し、中国の台頭に対応するために必要な地政学、経済、技術、ガバナンスの4つの戦略的課題のすべてに不可欠な国である。共通の枠組みを創設し、優先順位と実施を調整することが、今後数年間の同盟の最重要任務であるべきである。
同盟の前進
日本は必要不可欠で対等な同盟国になっただけでなく、アイデアの創案者(innovator:イノベーター)にもなっている。自由で開かれたインド太平洋構想から地域的パートナーシップのネットワーク化に至るまで、東京は共通の価値観を推進するための考える作業の多くを行っている。その結果、日米同盟は相互運用から相互依存へと移行しつつあり、危機に対応するだけでなく、長期的な課題にも対応するために、双方がお互いを必要とするようになってきている。これは、アメリカの外圧の時代から日本のリーダーシップへの大きな転換である。
同盟にとって最大の安全保障上の課題は中国である。アジアの現状を変えようとする北京の努力は、中国のほとんどの近隣諸国の間で安全保障上の懸念を高めている。米国が支援する日本の航空・海上活動、米国の尖閣諸島を含む第5条へのコミットメント、日本の南西諸島の軍事力を強化するための共同計画の実施は、同盟の対応の重要な部分である。しかし、米国、日本、および他の志を同じくする国々が取り組まなければならないもっと大きな課題がある。それは、競争的共存(competitive coexistence)のための新しい枠組みをどのように構築するかということである。
中国のいわゆる「グレーゾーン」の威圧は、日米両国が、日本から台湾、フィリピン、マレーシアを経てマレーシアに至る第一列島の戦略的性を重視していることを浮き彫りにした。日本は米国のように台湾関係法を通じた台湾の安全保障を支援する法的・外交的義務はない。しかし、中国の台湾に対する軍事的・政治的圧力の増加に対するワシントンの懸念を日本が共有していることに疑いの余地はない。このような中国の圧力の増加は、日米両国が台湾との政治的・経済的な関わり方において、より一層の協力を必要としている。
第二の地域的安全保障上の懸念は、北朝鮮である。25 年間の外交的失敗を経て、非核化は長期的な目標ではあるが、短期的には非現実的であることは明らかである。だからといって、米国が新たなアプローチへの扉を閉ざすべきということではないが、北朝鮮の新たな能力に直面した際の抑止力と防衛力を強化することで、核武装した北朝鮮をいかにして封じ込めるかを考えることが優先である。良いニュースは、金正恩氏が政権の存続を心配していることであり、自殺願望がないことである。したがって、抑止力と封じ込めは容易ではないが、可能である。これは日米同盟と米韓韓同盟にとって優先事項である。また、日米韓三国間の情報・防衛協力を強化する必要性もある。
これらの課題は、地域の安全保障上の課題に対して、より多くの調整と資源の投入を必要としている。しかし、防衛予算は、東京とワシントンの両方でより一層の圧力下に置かれている。このため、共同技術開発や、同盟協力の効率性を高めるための努力が重視される。日本は「多次元防衛力」を実現するため、防衛予算を6年連続で増加しており、現在はは年間約500億ドルである。今後は、二国間および内部の指揮統制、地域の平和と安定への貢献、同盟の枠組みの中で役割、任務、能力に関する大きな議論の中で、反撃能力とミサイル防衛が重要な問題となる。同様に、ミサイル防衛も有用であるが、同盟国は、過度にコストを課す可能性のある高額な投資や重複投資を避けるために協力しなければならない。日本の能力向上の質は量と同様に重要であるが、数も重要である。日本は国内総生産(GDP)のわずか1%しか防衛に費やしておらず、日本の防衛予算の総額は現在、英国を上回っているが、中国が拡大する人民解放軍の予算のほんの少しに過ぎない。
もう一つの協力の機会は、米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドとの情報共有ネットワーク「ファイブアイズ」に日本を含めることである。米国と日本は、シックス・アイズのネットワークに向けて真剣に努力すべきである。
現在、米国と日本は、同盟を強化し、地域協力を構築し、地域経済と世界経済を統合するために力を共有している。重要なのはこの力の共有であり、同盟をどのように活用するかについての議論は、この概念に焦点を当てるべきである。同盟は重荷ではない。著者らが主張してきたように、日米同盟は今、共有された戦略的ビジョンの実現に目を向け、努力しなければならない。米国は言説をリセットし、一刻も早く日本との間で在日米軍駐留経費負担に係る特別協定(a Host Nation Support Agreement)を締結しなければならない。二国間および地域全体での戦略的協力の実施が、今後の米国の関心の焦点となるべきである。
パートナーシップと連携の拡大
日米同盟は、地域内又は欧州などの価値を共有する国々との間で、多くの補完的で協力的な関係を強化しなければならない。共通の利益と価値観に基づく一連のネットワーク化された連携は、共通の地政学的、経済的、 技術的、ガバナンス的目標を守るために極めて重要である。これらの連合は、強要や武力行使を抑止し、国際経済秩序��刷新し、重要なサプライチェーンと情報の流れを保護し、ルールに基づく秩序を刷新する新たな技術に関する世界基準を設定することを目的とすべきである。日米同盟は、この一連の連携(coalitions)の核となるべきである。
過去20年間、北京の活動は、日米の支援によって促進されたアジア域内協力の新たなパターンに拍車をかけてきた。日本はオーストラリアやインドとの二国間、三国間の連携を強化し、クアッドが有望な新たな役割を担うようになった。しかし、クアッドが地域の秩序にとってより不可欠な存在となるためには、他の地域機関や連合に影 響を与えないよう、包括的でなければならないだろう。北朝鮮に関する日米韓三国間の政策調整は、地域の安全保障にとって引き続き重要である。東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム、ASEAN 国防相会議、東アジアサミットなどの制度化されたフォーラムとは異なり、この種の非公式なネットワークは、プロセスではなく、機能性を中心としたものである。アジアにおける共通の利益と価値観を守るためには、このような制度の網を強化することが非常に重要である。
ワシントンと東京は、これらの連携を構築する上でいくつかの課題を克服しなければならない。その中でも特に重要なのは、日本と韓国の間の緊張が続いていることである。米国は、北東アジアの2つの同盟国が、さまざまな地域的・世界的な問題について建設的かつ現実的に協力することを必要としている。北朝鮮や中国の課題に対処し、より広範な経済、技術、ガバナンスの課題を設定するためには、両同盟国は極めて重要である。双方は、過去ではなく未来に焦点を当てる必要がある。東京とソウルの関係を強化することは、米国の同盟国との二国間関係を強化することになる。菅首相と文大統領が再出発の重要な機会として捉えるべき漸進的な進展の兆しがある。その意味では、五輪に向けた二国間協力が目前に迫っている。
ロシアや中国との協力は、もう一つの課題である。日米両国の指導者は、モスクワや北京との交渉には時間がかかるが、目に見える成果は少ないことを学んできた。とはいえ、北朝鮮、気候変動、パンデミックなど、地域的・世界的な様々な課題に対処するためには、これらの国々との協力のあり方を明確にすることが必要であろう。
経済技術協力の強化
日米の経済・技術協力の深化は、日米同盟の基礎である。日米安保条約第二条は、日米両国に対し、「両国の国際経済政策における紛争の解消を図り、両国間の経済協力を奨励する」ことを求めている。貿易、技術、インフラ、エネルギーを含む強固な経済的要素がなければ、インド太平洋戦略は空虚で持続不可能である。この地域における貿易や技術のルール、基準、規範は南シナ海と同様に争われており、日米はこれらの問題の大部分で緊密に連携している。宇宙もまた、日米両国が民間・防衛分野で協力を強化すべき分野の一つであり、競争が激化している。さらに、コロナウィルスのパンデミックで明白になったように、日米両国は、地域の繁栄と経済安全保障を維持するために不可欠な安全なサプライチェーンに関わる利害関係を持っている。
米国はCPTPPに参加し、経済ルールを形成するリーダーとして日本と連携すべきである。参加への政治的困難さは明らかだが、米国の繁栄と安全保障に対するより大きなリスクがあるため、参加は必須である。11月15日に調印された地域的な包括的経済連携協定(RCEP)は、米国を含まないアジア太平洋地域の広範な貿易協定であり、ワシントンは目を覚ますべきである。
CPTPPは、米国が地域の経済空間を取り戻し、日本と協力して経済ルール作りのリーダーシップを強化するための不可欠な手段である。2017年初頭にトランプ氏が離脱した後、当初のTPP協定を救うための日本の大胆な策略は、ルールに基づく秩序のために重要であった。東京は、米国の再参加を促進するために、新協定を構造化した。新政権がCPTPPの変更を合理的に期待する場合には、既存の参加国との交渉で対応することができる。しかし、まずはワシントンが参加の意思を示し、テーブルの上に座る必要がある。米国、日本、その他の地域のパートナーにとっての経済的・戦略的利益に加え、米国を含むCPTPPは世界経済の40%以上をカバーすることになり、その基準や規範に世界的な重みを与え、世界貿易機関(WTO)の改革に向けて志を同じくする国々と結束するための力を与えることになる。
CPTPPの美点の一つは、デジタルガバナンスの高水準にある。データは21世紀の経済の石油であるが、インターネットはEU、米国、中国が主導する3つのデジタルレジームに分断され始めている。米メキシコ・カナダ協定(USMCA)や2019年9月の日米デジタル貿易協定でさらに強化されたCPTPPの規律は、この重要な領域におけるルールや規範をグローバル化するために構築される可能性がある。これらには、国境を越えたデータの自由な流れ、デジタル製品への無関税、データのローカライズ要件不要などの原則が含まれる。日本は、G20 大阪サミットにおいて、世界貿易機関(WTO)の電子商取引交渉において、このような原則を推進するプロセスの上で、重要なリーダーシップを担った。ワシントンと東京は、G7やアジア太平洋経済協力(APEC)を通じて志を同じくする国々を動員し、データガバナンスのより一貫したシステムに向けたコンセンサスを構築することで、この作業を推進していくことができるだろう。
一方、人工知能、ロボティクス、バイオテクノロジー、ナノエンジニアリング、新素材、5G ネットワークなどの新技術は、デジタルと物理的世界を融合させ、今後数十年の経済成長を牽引し、地政学を形成していくものと思われる。米国と日本は、新技術を管理する技術標準や規則がオープンで、包括的で、相互運用性を促進することに重大な関心を持っている。
そのためには、主要な新興技術(5G、IoT、AIなど)を管理する技術基準や規範が世界的に互換性のあるものとなるように、国際電気通信連合(International Telecommunications Union)などの国際的な基準設定機関における日米の連携を強化する必要がある。北京は「中国標準2035」構想で、中国の技術に有利になるような新しい基準を策定しようとしている。米国は、日本やその他の国々と協力して、より効果的な官民パートナーシップを促進するために、国際的な基準設定に力を入れる必要がある。
5Gは21世紀の知識経済における重要な実現技術であり、日米両国はこの分野での共同作業を優先すべきである。両政府は、ファーウェイに代わる代替技術を生み出すための民間部門の努力を促進すべきである。日本は、5G(最終的には6G)へのソフトウェア・ベースのアプローチであるオープン無線アクセス・ネットワーク(O-RAN)の開発で主導的な役割を果たしており、垂直調達モデルに代わるコスト競争力と相互運用性のある代替手段となり得る。
インド太平洋地域における日本のリーダーシップのもう一つの重要な分野は、地域インフラと経済発展である。中国の「一帯一路」が汚職、負債、劣悪な基準の上に成り立っているという指摘が強まっていることは、実行可能で透明性の高いインフラプロジェクトを形成する機会を示唆している。東京は2015年に2000億ドルの「質の高いインフラパートナーシップ」を設立し、オープンな調達、環境と債務の持続可能性、インフラファイナンスの透明性などの原則を定めた。日本は2019年の大阪サミットでこれらの原則についてG20首脳の承認に勝ち取った。バランスシートと戦略的マンデートを強化した新しい米国国際開発金融公社は、国際協力銀行(JBIC)、アジア開発銀行(ADB)、世界銀行グループと協力し、2030年までに25兆ドルの地域インフラニーズに対応すべきである。ワシントン、東京をはじめ、オーストラリアや韓国など、他の主要な地域・地域外のプレーヤーとの間でこれらの活動を調整することは、日米両国の指導者にとってますます重要な役割となるであろう。米国と日本は、インフラに関する決定が完全な透明性をもって行われるよう、良好なガバナンスと説明責任を促進するために、受益国への支援を拡大すべきである。
最後に、エネルギーと気候変動は日米経済同盟の重要な側面である。2050年までに日本経済をカーボンニュートラルにするという菅首相の公約は、韓国の同様の公約と一致しており、クリーン・エネルギーの拡大の緊急性を強調している。日本の国内と国際的な目標を達成するためには日本は石炭の使用と投資を抑制する必要がある。原子力と天然ガスの協力に基づき、日米両国はクリーンエネルギーと気候に関するパートナーシップを拡大すべきである。共同開発のための優先的なクリーンエネルギー技術には、水素、蓄電池(輸送の電化と再生可能エネルギーの拡大の鍵となる)、二酸化炭素回収貯留(CCS)、リサイクル、スマートグリッドなどがある。これらの技術は、市場ベースの効果的な気候変動緩和のために有望である。
���論
ここで概説されているように、より対等な日米同盟を構築することは、地域的課題と世界的課題の両方に対処する上で重要である。日本は、あらゆる面で米国の利益と価値観に最も沿った同盟国である。いくつかの分野では、日本はすでに主導権を握っており、共通の価値観、高い基準、自由な規範を推進している。実際、米国は多くの分野で東京のアプローチとより緊密に連携することで利益を得ることができる。日米同盟は、進化する多極化した世界をリードする立場にある。本報告書では、日米同盟が関係を前進させるために優先すべき課題を明らかにした。世界の安全保障と繁栄のために 東京とワシントンの新政権は、これらの課題に立ち向かうべきである。
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