#ArtCollaborationKyoto WadeGuyton Comtenporaryart ACK
Explore tagged Tumblr posts
Text
戦略会議 #21 アートライティング/ Wade Guyton @Art Collaboration Kyoto
開催決定からずっと楽しみにしていたアートフェアを訪れるため、弾丸日帰りで京都へ向かった。目的地は国立京都国際会館で行われている「Art Collaboration Kyoto」である。 「Art Collaboration Kyoto」の特徴は、日本を代表するコンテンポラリーアートのギャラリーがホストとなり、関わりのある海外のギャラリーのアート作品を京都へと誘致するという形式をとったこれまでにない新しいアートフェアとなっている点である。世界的なアートマーケットのサーキットの外側に位置する日本。香港などに比べて小さいと言われるアート市場の規模とその割に高いブース代との兼ね合。その他、様々な要素(ハードル)がこの形式によってある程度クリアされ、メガギャラリーの名前こそないが、海外の尖ったギャラリーの数々が名を連ね、日本においてかつてないほどのクオリティを担保したアートフェアになっていたと思う。今後も是非継続していってくれることを切に願う。
今回一番楽しみにしていたのが、日本のTaka Ishii GalleryとケルンのGalerie Gisela CapitainのコラボレーションによるWade Guytonの作品である。Wade Guytonについては、京都芸術大学の通信制大学院の後藤繁雄ゼミに在籍中、講義の中で紹介されたWhitney Museumで展示していた真っ黒い出力に覆われた壁の作品を見たのが最初であった。Guytonは出力機を意図的に誤用し、イメージにノイズを発生させ、そこに非人間的な装置の意思のようなものを浮かび上がらせる。はじめて実際の作品と対面したのは2019年3月のART BASEL HongKongであったと記憶している。プリンターに流し込まれたリネンに出力されたイメージによるよるもので、かなり衝撃を受けたのを覚えている。僕自身の作品シリーズ、《A.o.M(Aesthetics of Media)−メディアの声に耳を傾ける試み》はこの展示を観たことをきっかけとしてスタートしたと言ってもいいと思う。(参照:「戦略会議 #25 アタラシイアタリマエノカタチ/北 桂樹|A.o.M(Aesthetics of Media)ーメディアの声に耳を傾ける試み。」)
![Tumblr media](https://64.media.tumblr.com/8cc7e32bb0c532c9a148c17d57b4e176/4fe90fb6cf74aa47-2e/s540x810/3c8702fd808641858a89eaf76f226cbbbdb3ba49.jpg)
今回のTaka Ishii GalleryとGalerie Gisela Capitainで展示されていた作品はGuytonがパンデミック中に制作した新作であるとのことであった。作品は縦90 cm程度の3つの作品と縦200cm程度の1つの大型作品からなる。キャンバス地にインクジェット印刷をしたものをフレームに固定したもので、イメージは厚さ3cmほどの側面までプリントされている。
![Tumblr media](https://64.media.tumblr.com/197500e86ac1fc78331a9b7877656a29/4fe90fb6cf74aa47-b2/s540x810/4277ae29047971dbe2cecee54e4a4e2d3bb028cb.jpg)
これらの4点の作品は右から、 ① 床や壁面にGuyton自身の作品が見える「スタジオイメージ」 ② 紫という色と他のイメージが介入してきている「(おそらく)スタジオイメージ」 ③ ぼぼ画面全体を覆った「チューリング・パターン」で、底面に黒字に白文字で「/232.8M」という文字がみえることからスクリーンキャプチャであると考えられるもの ④白地に「チューリング・パターン」と何かのイメージが重ねれたもの、印刷の掠れのようなもので構成されたもの という4点の構成になっている。
![Tumblr media](https://64.media.tumblr.com/3d1862380ec6e6e7908d1bc9908db03a/4fe90fb6cf74aa47-a0/s540x810/e08e862e9a507d6d47f41074112f667be996f9b0.jpg)
![Tumblr media](https://64.media.tumblr.com/bd66c636badd8f8cbe47179339055142/4fe90fb6cf74aa47-a9/s540x810/8d495a53c09f2920b138e4eebbc0530fbc20a8e5.jpg)
①の「スタジオイメージ」や③の「チューリング・パターン」はこれまでもGuytonは他の作品でも反復して使っている特徴的なモチーフである。抜群にかっこいいのだが、これらがどんなことを示した作品であるのか?というのを考えるのはいつも通り、なかなかに難解であった。
今回���使われている「チューリング・パターン」とは先の対戦中、ドイツ軍の暗号機「エニグマ」を解析し、現在のコンピューターにつながる電子計算機の基礎を作ったイギリスの数学者アラン・チューリングが1952年に理論的存在が示された自発的な空間パターンのことである。詳しくないのでざっくりとした補足をすると
「ふたつの仮想的な物質が混ざり合う時、それは均一には混ざらず、濃い部分と薄い部分を作りながら空間に繰り返すパターン(反応拡散波)を作って安定する」 というものらしい。チーターやヒョウ、シマウマのなどの模様などの規則性もそれにあたるとされているようである。今回はこの「チューチング・パターン」をモチーフとして現代社会の様相を示した作品であると考えられる。 2017年にロンドンのサーペンタインギャラリーで行われた展覧会の図録を持っているのだが、実はこれがかつてないほどに理解不能なものであった。『Zeichnungen von Drama und Frühstück im Atelier Vol.Ⅱ』と題されたこの展覧会の作品は全て同ポジションで撮影されたイメージで、床に重ねられていく破かれた印刷物のページが重ねられ、重ねられ順と逆ににページネーションされた構成となっている。そして、表紙はまさに「チューチング・パターン」がデザインされている。
![Tumblr media](https://64.media.tumblr.com/cb9d0abfd4b063219efa1a85cba3764f/4fe90fb6cf74aa47-73/s540x810/64e9af3e9f8c501960787a2a152f847a68ab5812.jpg)
![Tumblr media](https://64.media.tumblr.com/302011afe706ac54e94b1406d1df5631/4fe90fb6cf74aa47-da/s540x810/b947198c1d6708ce052f05e85970a3929d750e92.jpg)
今回の「Art Collaboration Kyoto」での展示と共通するモチーフを使ったこの『Zeichnungen von Drama und Frühstück im Atelier Vol.Ⅱ(ドラマのドローイングとスタジオでの朝食 Vol.2)』と題されたその作品はスタジオの足元で展開された現代のドラマであったのだろうということが今回の展示を観て少し触れられた気がする。 小一時間作品の前に居て、①から④の作品の順番はおそらくこの順で展示をするようにというのはアーティストの意思であろうと思ったので、ギャラリーの人に確認すると、やはりアーティストからの指示でこの順番になっているとのことであった。このことから考えるにこの作品にも現実の「物質世界」に近い①のスタジオイメージからはじまり、④のコンポジットされたイメージに向かうある種の方向性が存在する。
④の作品内でクッキリと印刷された「チューリング・パターン」と何かが重ねられた2つのイメージは他の3点の作品とほぼ同サイズでプリントされている。このことによって、この壁面上には5つの作品がかけられているかのようにも見える。つまり、一番大きな作品の背景の白地を作品ではなく展示会場の壁面としてみることで「物質世界」と「イメージ世界」もしくは「バーチャルなオンライン上の世界」は④作品の中、もしくは展示壁面全体で一度境界線が曖昧にさせられ、再度混ぜ合わせれ安定する。つまり、この「作品か壁面か」という「図と地」の転倒は壁面展示上において「物質世界」と「イメージ世界」という2つの世界が様々な位相で濃淡をもって混ざり合いを引き起こす。まさしく「チューリング・パターン」が示すものそものものである。 4点のうち1点がこのサイズであることはおそらく戦略的なことであったのだろう。 帰宅後確認すると、『Zeichnungen von Drama und Frühstück im Atelier Vol.Ⅱ』でもおそらく同じことを示そうとしていたのだろうということが伝わってくる。モネの図録から破り取られた紙や新聞など様々な印刷物が重ねられていっているのだが、そこにはオンライン上の情報(Apple Air Podsのページなど)が重ねられている。「物質世界」の印刷物の情報に「バーチャルなオンライン上の世界」の情報が介入している。その状態こそが真の意味での「現実世界」なのだということをたびたび挟み込んでくる「チューチング・パターン」によっておそらく示していたのだろう。これこそが現実のドラマであり、「現実世界」はもはや「物質世界」のみでは語れないということなのだろう。 Covid-19が引き起こしたパンデミックはこの現実を私たちにより強烈に感じさせる出来事であったということは僕自身も思うことである。対面とオンライン、様々な場面でこのふたつの現実の境界線は曖昧になっている。 ちなみに、現在読んでいる、ヒト・シュタイエルの著書『デューティーフリー・アート課されるものなき芸術 星を覆う内戦時代のアート Duty Free Art: Art in the Age of Planerary Civil War』の表紙も「チューリング・パターン」でデザインされている。内容もまさに世界をインターネット世界と物質世界との境界線を行き来しながら現実世界を考える思考の必要を迫るものである。「物質世界」だけで「現実世界」を理解しようとしてもGuytonの④の作品内のイメージ同様「チューチング・パターン」が重ねられたように「現実世界」は見えなくなってしまう。彼らは「チューチング・パターン」を2つの仮想的な物質ではなく2つの世界がもつリアリティの混ざり合いのメタファーとして現在に適用している。
![Tumblr media](https://64.media.tumblr.com/b3f89d66b9e1c9a99d5eee323c7403b3/4fe90fb6cf74aa47-8c/s540x810/e578a5da7b40e2ec0708dbc200224ea091cd7f24.jpg)
「Art Collaboration Kyoto」非常に興味深い作品を観れて満足であった。Guytonに関してはじめて少しだけ指先が触れた感じがする。引き続き研究していこうと思う。
===
Art Collaboration Kyoto https://a-c-k.jp/ 2021年11月5−7日 国立京都国際会館イベントホール
#21#アートライティング#Wade Guyton#Art Collaboration Kyoto#taka ishii gallery#ArtCollaborationKyoto WadeGuyton Comtenporaryart ACK
0 notes