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apparelweb-collection · 8 years ago

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【2017秋冬NYFW　ハイライト6】ブランドの「個性」打ち出す　強まるメッセージ性

（写真　3.1 フィリップリム）

ＮＹコレクション後半では仕立てのよさや生地の上質感を打ち出す試みが相次いだ。メンズとのクロスオーバーは一段とこなれて、従来の「ジェンダーミックス」の先へ。女性らしさを再確認するかのようなデザインが掘り下げられた。「アメリカ」の成り立ちや多様性を反映したクリエーションが広がったのも、今回の目立った傾向。スーツのカムバックはオンとオフの境界線を打ち消すかのようだ。

◆3.1 フィリップリム（3.1 Phillip Lim）

Courtesy of 3.1 Phillip Lim

たおやかなフェミニンと芯の強さの両方を印象づけるクリエーションが目立った今回のＮＹ。「3.1 フィリップリム（3.1 Phillip Lim）」は「新しいロマンチシズム」を掲げ、テーラードとたおやかさを融け合わせた。コレクションを象徴したキーカラーは淡いローズピンク。コートやパンツスーツなどに繰り返し迎えた。マニッシュな仕立てのジャケットやスーツはビジネスシーンでも着やすそう。クールな印象を与える深いブルーでもスーツルックを組み上げた。

ディテールに主張を込めた。太めのバギーパンツはハイウエストを深く折り返している。ブラウスの袖は手首のあたりでいったん絞って、再び袖先をベルスリーブ風に広がらせている。パンツも裾広がりにして「ベル×ベル」のグラマラスなシルエットに。大きな輪っかを横につなげたようなビッグチェーンのベルトがウエストをまばゆくマーク。レザーのコルセット風ベストは裾にペプラムをあしらって起伏を加えた。片方だけに袖を付けたワンピースもドラマティックな着映え。編み目の大きいフィッシュネットはフェティッシュなムードを添えていた。

◆トリーバーチ（TORY BURCH）

Courtesy of TORY BURCH

米国東部の上流社会を舞台にした1940年の映画『フィラデルフィア物語』で大女優のキャサリン・ヘップバーンが演じた令嬢役からインスパイアされたコレクションを発表した「トリーバーチ（TORY BURCH）」。デザイナー自身もこの地方の上流家庭で育った。クラシカルな装いを巧みにアップデート。洗練されたエレガンスと、自信を持つ女性像を融け合わせている。ビッグボウ（リボン）をキーモチーフに据えて、ブラウスや靴にあしらった。髪の毛も後ろにまとめてリボンで束ねた。上質感が伝わるツイード生地、正統派イメージを帯びたチェック柄で品格とクラス感を漂わせている。

上下逆さまの「ダブルＴ」ロゴで知られるが、イニシャルの「ＴＢ」を飾り文字の刺繍で配した。真っ白のファーをはじめ、ホワイト主体のコーディネートはノーブル感が高い。ワイドパンツは紳士服風のテーラーリングを利かせた。ボタンダウンのシャツも取り入れている。ベースボールジャケットやベンチコート風アウターにはプレッピー風味を帯びた。トップスは袖に優雅なボリュームを与えている。小物にも自身のルーツを込めた。ネックレスのペンダントは父のシガレットライターから着想。メンズのブリーフケース風バッグも添えた。ゴールドの植物柄で程よい装飾性を加味。このブランドらしいチャーミングな気品を印象づけた。

◆ブルックスブラザーズ（Brooks Brothers）

photo by Rie Miyata

ザック・ポーゼン氏は創業200年の節目を迎える「ブルックスブラザーズ（Brooks Brothers）」にクラシカルなムードを呼び込んだ。「タイムレスエレガンス」をキートーンに据えて、アイコニックなキャメル��ートをはじめ、丁寧に仕立てたスーツやジャケットをそろえた。チェック柄、ヘリンボーン柄などでプレッピー感を宿し、マスキュリンとフェミニンを調和させている。すっきりとしたシルエットはビジネスシーンにもなじみそうな落ち着いた着映え。フィット＆フレアのカクテルドレスやゆったりしたポエットブラウスはレトロな雰囲気を醸し出している。

カシミアのケーブルニットやツイード生地のジャケットなどで、素材の上質感を薫らせている。ヘリテージを重んじながらもモダンにアップデート。スカートスーツのジャケットは袖が短い。パンツは細身。ショート丈ジャケットでコンパクトな装いに整えている。テーラードの伝統を強みに、スーツルックをエフォートレスに再解釈してみせた。ワンピースのウエストにはリボンベルトを添えた。バッグにはイニシャルの「ＢＢ」のエンボスを施し、ブランドイメージを強調。足元では紳士靴でメンズ感を出した。チョーカー風に短く巻くスカーフ使いはレディー感を漂わせていた。

◆アリスアンドオリビア（Alice + Olivia）

photo by Rie Miyata

インド出身の作家、サルマン・ラシュディ氏の小説に着想を得て、「アリスアンドオリビア（Alice + Olivia）」はインド風のきらびやかな装いを組み立てた。イタリアルネッサンスの気分も持ち込んで、ボッティチェッリの名画『プリマヴェーラ』をダイナミックに写し込んだ。ラッフルやベルスリーブなどのディテールもドラマティックな見栄え。プレゼンテーション会場内ではボディーペインティングのアーティストがライブペインティングを披露。華やかさと強さを兼ね備えた、デザイナーのステイシー・ベンデット流のフェミニズムがにじむ。

ロック音楽やミリタリーの要素も加えて、クロスオーバーの濃度を上げた。Ｔシャツの胸にはステートメントを大きくプリント。軍用のコンバットブーツも取り入れている。パテントレザーのバッグや靴が着姿につやめきを加えた。デザイナーの顔を模したモチーフを配したウエアはキュートでラブリー。カラーリッチな総柄ドレスにはティアードをあしらった。レースや刺繍、ファー、グリッターで装飾的な装いに仕上げている。デザイナーのアイコンであるビッグサングラスも女性像にパワーを与えていた。

◆ザディグエヴォルテール（Zadig & Voltaire）

Courtesy of Zadig & Voltaire

パリのブランド「ザディグエヴォルテール（Zadig & Voltaire）」がＮＹコレクションでのデビューを飾った。スリップドレスとパンツを重ねるような大胆なレイヤードを組み立て、テイストミックスを押し出した。ロックとミリタリー、ランジェリーをねじり合わせている。レザーやニット、シルク系の異なる風合いを響き合わせた。ライダースジャケットやレザーパンツといったモーターサイクル系のウエアもそろえた。パリのノンシャランとＮＹのストリート感をミックス。女っぽい色のピンクや赤を効かせて、アクティブで若々しい「フレンチロック」の着姿に仕上げている。ブランド名のビッグレターや、長く垂らしたフリンジも目を惹く。

レイヤードの公式を崩す重ね着を提案。正統派のテーラードジャケットの上から、スカジャンライクなブルゾンを羽織った。両胸にはタトゥー風の骸骨モチーフを刺繍であしらった。ジャケットの上からニットベストを重ねるスタイリングは目新しい。ランジェリー風の悩ましげなウエアの上からはフーディーをかぶせた。ボトムスはチャイナドレス風のシルキーなパンツで合わせている。ダブルブレストのピンストライプ柄ジャケットにはイエローのニット帽をオン。斜め掛けバッグのストラップはギターベルトを思わせる。パッチワーク風パンツ・セットアップはミリタリーの薫り。ロックな服も足元はピンヒールで合わせている。

仕立てや素材、ディテールなどの面でブランド価値をあらためて訴えかけるような取り組みが広がったのが今回の特徴だ。ＮＹらしい機能性やストリート感に加え、ジェンダーやシーンを越えたテイストミックスは一段とこなれてきた。政治的なメッセージを含め、身にまとうファッションだからこそできるメッセージを打ち出した。「see--now-buy-now」形式の採用や、開催都市をＮＹ外に移す動きが続いているが、その一方で「ザディグエヴォルテール」のようにＮＹを発表の場に選ぶブランドもある。ショー演出の形式が様変わりする中、クリエイターが作品の統一感を強め、「コレクション」の意義を問い直す傾向が強まったのも、今回のＮＹの収穫と言えよう。

Text by Rie Miyata

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