Tumgik
#頭の中の消しゴ���
0awup · 10 months
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ぷわぴなとのしれっと行うヘッダー企画、4番目!!!もう折り返しらしいっす。ぁえ〜〜、早いっすね。まあ、のんびりゆるっとヘッダーやってるし、こうやってTumblrに書き記すのも結構のんびりやから、早かれ遅かれ12月中には終わるんちゃうかな〜〜とか思ってます。めっちゃ他人事じゃないですか!?って?それはそう。俺もこれを12/7に打ってわけわからんくなってる。もうこの時点で12/9ですよ、遅れすぎやないですか?俺。フライングしがちなんすよね俺。きっとゴr……あなたなら許してくれると思うんすけど!!一応言っておきたくて。てか、あなたとか俺が呼んだら似合わんし、気持ち悪くてゾワゾワしたんすけど(笑)まあ、まあ。いいです、そんなことはさておき。出会ってからこれまで〜の話振り返りは誕生日祝った時にしたんで、その誕生日以降の内容からっすかね。話すとしたら。なんやろね。社長とは誕生日終わってからでもわりと結構沢山話してたんじゃないかなって思います。というか、聞いてください。3000文字意外とキツいっすよ、あんだけ誕生日で社長のことをつらつらと書き記して、さらにって考えると。この前1000文字分書いたから、今回は2000文字〜〜ってならないっすもんね?鬼畜なこと言うてますよ社長!!!鬼!「ヘッダーでも真剣にお願いします!」と言われたら、さすがに…断れなかったすね〜〜。そこが俺の敗因かも。ちょろいところが。前置きはここまでにして、そろそろ本題に移ろっかな。discordで話す時はデカ文字を覚えたからなのか、「お腹すいた」と圧をかけてきたり、(※圧のかけ具合マジで半端ない。)まあ俺は社長に圧かけるような事が今のところないんで、やらないっすけど、もしやることがあれば、圧返ししないでくださいね!!!倍になって飛んできますよ、もしそうなったら。デカ文字の使い方をマスターしたからいろいろ使いたくなっちゃってる社長が今のとこかわいいなって思いますね。普段からおもろいとこしか見てなかったんで、たまにこういうところを見ると、ギャップ萌えがすげ〜〜!ってなります。勉強になります、とても。最近の出来事で一番?下手したら二番くらいかもしれないけど、俺にDM送ろうとしたらすぐ消えて3回くらい送り直してるってのを聞いた時がおもろかったっす。3回も打ち直してるんや……って想像したら、可哀想というか、不憫というかなんというか。バグが早く治ればいいなって思います。俺はいつまで経っても社長のピクミンらしい。何色なんかめっちゃ気になる。また何色やったか教えてくださいね〜〜、待ってます。(※結論から言うと、社長曰く何色でも似合う事にされたから、火に強いし、水に耐性あるし、電気に強いし、硬くてやられにくいし、怪力……?やし、空飛べるし、毒持つし、明るい場所は活動できんし。)…ん?ま、確かに…?俺、朝弱いしな。昼からか夜からしか行動出来ひん。そのついでで、気になる!と言えば、俺の事ウサギだかなんだかで例えて、結局俺が「寂しくても死にはしないから違うっすよ!」って否定したから「小さいネズミ」って言ってて、でもネズミの名前が思い出されへんでそのまま終わってるやつ。名前なんなんや。気になって夜しか寝れへんじゃないっすか。(※寝れてるじゃないですか。って突っ込むのはナシな!!!)とりあえずこれで、ってワンワン送られてくるわ、ワンワンかわいいって俺が言うたら、うーたんのがすきと言われ。そのついででぽぅぽの話もした。ぽぅぽはマラカスっぽいって社長は言うてたけど、俺からしたらうーたんの方がフォルムがマラカスっぽいし、ぽぅぽはお手玉っすよ。沢山ついてるからお手玉。その後に社長が「ちぎれそうですもんね……」って言うからちょっと吹いたけど。不意打ちに笑わせるんやめてください。って、まぁ他愛のない会話やけども、話題がこうやってポンポン出てきておもろいっすね。楽しいっす。色んな話出来るのって。こういう教育番組のことも話せるのってなかなかいないっすよ。って言ってる間に1000文字到達してたっすわ。簡潔にまとめても1000文字越すんすね。ぁえ〜〜、こっからあと2000か。今までの思い出振り返り大会、終わっちゃった……!なんすけど。まあ、時系列ぐちゃぐちゃになるけど、目標の3000文字まで喋り散らかしますよ。まだこの時点で1600文字分しかないの、途方に暮れる。でもあと半分なんで頑張りますけど。さっきから数字のこと言って文字数稼いでてすいません。誕生日の時に語りすぎたせいです。それなければ多分いけてたと思うんすよ…。(※言い訳する男はダサい。)あとなんか言うことあったっけ。あ、めっちゃ大事なこと思い出した。社長は俺の事どう思ってるか知らないっすけど、睡眠不足にオススメしてくれた動画、検索したら『赤ちゃん 5分で 眠くなる』とか書かれてて「?????」ってなったんすけど!!!赤ちゃんの気持ちになってオルゴール聴けばいいってことっすか?疑問に思う点がいくつもあるんすけど……??なんか俺としては耳かき〜とか、オノマトペとか、そういうASMRを勧められると思ってたんで、まさか赤ちゃんのためのオルゴール勧められるとは……。ま、勧められたからにはちゃんと聴きますけど…、その勧められた当時は分数とか気にしてなかったし、せいぜい3時間とかかな〜〜って思って見たら、驚異の11時間とか書いてて。本気で寝かしつける気満々やな、コレ。って思っちゃいました。それ聴いて数分でマジですや〜って寝れたんで、社長スゲ〜〜って思いましたよ。どこからそういうの検索してくるんや……謎。社長ってやっぱり……、なにかとぶっ飛んでますよね。あ、コレ悪い意味じゃないっすよ!!!良い意味で言ってます。とても。予測不可能なところからボケがきたり、つっこんでくれたり。社長って意外とオールラウンダーすよね。なんでもできる。俺もそういうところ、見習いたいな〜〜とか思ってたり、思わなかったり。ぼちぼち。通話の約束も出来たところで、俺が話せるか話せないかは社長にかかっとるんで、よろしくお願いします〜〜。って、discordで圧かけることないわ〜〜どうしよ〜〜って社長に言うとったけど、ありました。圧かけること。何でもかんでも社長にかかっとるわ!!って言ったら、コレ、圧かけてることになりますよね?でもな、今のところ1個しか圧かけられることがないところが少し、いやかなり弱いところではあるけど、これから、社長に圧をかけられるようななにかが、見つかったらいいな〜〜とは思いますね。いろいろ語りたいこと、頭から引っこ抜いてきたら、もうこんな話してるんすね。俺にしては頑張ったと思いますよ!!!なので、Tumblrを定期的に見てるから、俺が「ヘッダーにしてる!」って言うまでに見てるかもしれないと言ってた社長は、この文章が載せられた時に、どういう反応するんか知りませんけど、ドン引かんといてくださいね。あなたが3000文字要求してきたんやからね!?ほんまに俺にしては頑張った方やと思う。頭の中の引き出しからたくさん引っこ抜いてきたから、今の引き出し、空っぽにした。これからまたたくさんの思い出作れたらええなあ〜〜、急いですぐ作らなくてもゆっくり、なにか出来たら。ほなね!
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newsvoice420 · 3 years
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マンチェスター・ユナイテッドの得点力不足は“まだ”解消されていない。4ゴ ... - フットボールチャンネル #最新ニュース
マンチェスター・ユナイテッドの得点力不足は“まだ”解消されていない。4ゴ … – フットボールチャンネル #最新ニュース
マンチェスター・ユナイテッドの得点力不足は“まだ”解消されていない。4ゴ … – フットボールチャンネル マンチェスター・ユナイテッドの得点力不足は“まだ”解消されていない。4ゴ …  フットボールチャンネル マンUがリーズ下して2連勝! 一時は2点差追いつかれるも…途中出場2人の得点で勝ち越す(SOCCER KING) – Yahoo!ニュース  スポーツナビ CKから待望の今季初得点! マンチェスター・U、不名誉記録に終止符  SOCCER KING 19歳のユナイテッドFW、倒れ込む…宿敵ファンが頭部に物投げつけ  Qoly Football Web Magazine ユナイテッドがリーズ撃破で2連勝! 一時2点差追いつかれるが途中出場2選手のゴールで突き放す《プレミアリーグ》(超WORLDサッカー!) – Yahoo!ニュース  スポーツナビ Google…
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marisa-kagome · 4 years
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シナリオ『Room.I』
【概要】
人数:2~3人 時間:2~3時間 推奨技能:無し
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【あらすじ】
「せっかくアイホート様の雛育てるんなら美味しい苗床になってくれ(とある狂信者の手記)」
連れて来られて体重が増えるまで帰れない、と見せかけた、逆ラ〇ザップシナリオとなります。 生贄にならないように部屋から脱出してください。 また、謎解きがメインですが、料理ロールなども出来るので、ワンルームでわちゃわちゃ遊ぶことも可能ではないかなと思います。 ただ若干ややこしい謎解きをしなければ、死にます。 また、窓からはアイホート様がじっと、探索者を見つめています。
【導入】
目が覚めると、探索者は知らないワンルームにいた。前後のことがよく思い出せず、持ち物などは何もない。 部屋にはキッチンやテーブル、ベッド、カーテンの間仕切り、扉があり、ひとつだけある窓からは夕焼けのような真っ赤な光が差し込んでいる。
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◎部屋
壁には数字と記号の様なものが書かれている。
窓側の壁:31 扉側の壁:2] カーテン側の壁:25] キッチン側の壁:[4
◎窓
赤く光る窓。それ以外は何も見えない。
もし目星などをふってまじまじと見るのであれば、どこか不気味な光に感じるだろう。 また、窓の下にはハッチのような物があり、その隣に小さなデジタル式体重計が置かれている。(※地図左上、グレーがハッチ、ピンクが体重計)
☆体重計
ボタンの二つ付いた体重計。
右のボタンを押すと「HATCH MODE」と表示される。乗ってみると探索者の名前と、飲み食いをしていなければ「-10kg」という数字が表示される。
この体重計に+10キロのものを抱えて乗るのなら、部屋の中にそれに該当するものは探索者達自身しかない。お互いを抱き上げる、等の行動を取れば、条件を満たせないことは無いだろう。
左のボタンを押すと「KEY ISN’T[WEST]」と表示される。乗ると、体重が表示された後に「×LOCK」の文字が出る。
英語技能:直訳すると「鍵は西ではない」となる。
☆ハッチ
取っ手のついたハッチは閉まっている。鍵がかかっているようだ。
このハッチは、体重を10キロ増やして体重計に乗ることによって、開けることができる。 開けると中は、そこそこ急なスライダーのような形になっている。奥は見えない。滑った場合は後述。
◎キッチン
ガス台や流しの並ぶキッチン。オーブンレンジや食器棚はキッチンに組み込まれている形となっている。 隣には冷蔵庫が置かれている。(地図左、キッチン横の正方形が冷蔵庫)
☆流し
プラスチック製のたらいが一つ置かれており、水を満たしたその中にはスチロール製の魚の切り身を入れる様なトレイが浮いている。
☆冷蔵庫
食材が入っている。おおよそ1食分であることが分かる。
※何のレシピを作っても、一食分が消耗する。また、全員が食べて寝ると中身はリセットされる。
目星:N極とS極が赤と黒に塗り分けられた、よくある棒磁石が貼り付けてある。
☆食器棚
人数分の皿と茶碗、箸、フォーク、スプーン、ナイフ、包丁、まな板、ハサミが置かれている。
アイデア:最低限の調理器具、といった印象だ。
目星:「美護印のカロリーファイト 1kg」と書かれた袋を見つける。中には白い粉が大量に入っており、使い方の欄に「なんの料理にも合います。100gで1キロ、上手く作れば3キロ、とびきり美味しいものだと5キロ、食べた後にぐっすり寝ると体重が増します。飯マズだと増えないかも」と書かれている。味は何もしない。
クトゥルフ神話技能:美護という単語に聞き覚えがある。ミ=ゴでは、と気付く。詳細はルルブ。
※こちらは日数が経過しても増えない
◎テーブル(※地図真ん中)
ランチョンマットの敷かれたテーブルの上には、メッセージプレートのようなものが置かれている。
アイデア、目星:テーブルが固定されている事に気づく。
※もしもこの後に家具を調べるのであれば、それらが全て固定されていることに気���く。
☆メッセージプレート
かなり軽い。持ち上げるなら、発泡スチロールで出来ているようだと気づく。
「+10キロに増えないと出られません」と書かれている。
また、裏面を見てみるのならば「×=C」とも書かれている。
◎ベッド(※地図右下)
上に一冊の本が置かれている。
アイデア:全て固定されていることが分かる。
☆カロリー満点レシピ
様々なレシピが載っている。簡単なものから凝ったものまで、カレー、シチュー、肉じゃが、ハンバーグなど、総カロリーがたっぷりしたものばかりだ。
本には、それぞれの料理の成り立ちも載っている。
《カレー:Curry》
多種類の香辛料を併用して食材に味付けするというインド料理の特徴的な調理法を用いた料理、またその英語名。 明治時代、日本にはイギリス料理として伝わった。それを元に改良された「カレーライス」は、現在洋食として普及している。
《シチュー:Stew》
シチューは、野菜や肉、魚介類を出汁やソースで煮込んだ煮込み料理の英語による総称である。日本への「シチュー」の伝来がいつかについて明確な記述はないが、明治4年の東京の洋食店の品書きに存在する。しかし本格的に「シチュー」が全国に浸透したのは、第二次世界大戦終結以後のことである。
《肉じゃが:Nikujaga》
広く流通しているのは、東郷平八郎が留学先で食べた「シチュー」の味を非常に気に入り、日本へ帰国後に作らせようとしたが、命じられた料理長は「シチュー」を知らず、イメージして作った「シチューではないもの」が始まりという話である。これは都市伝説であると近年では言われている。
《ハンバーグ:Hamburg steak》
ひき肉とみじん切りにした野菜にパン粉を混ぜ、塩を加えて粘性を出し、卵を繋ぎとしてフライパンで加熱して固めたものである。原型に関しては諸説あるが、一説には「タルタルステーキ」が原型であるとされている。
また、読み進めるのであれば、その中に一箇所だけ「ヒトナベ」という項目を見つける。
《ヒトナベ(hitonabe)》
美護印のカロリーファイトを大さじ一杯と人間一匹を入れてぐつぐつ煮込むだけ!茶碗一杯で10キロオーバーなこと間違いなし!」
と書かれたそこには、文字通り人がぶった斬られ煮込まれている写真が載っているだろう。SANチェック1/1d4。
◎カーテンの奥(※地図右上波線)
五右衛門風呂のある、簡素な風呂場となっている。 固形燃料が入れてあり、傍にはマッチが落ちている。
目星:くしゃくしゃの紙切れを見つける。
「方角が分かればいいのか?駄目だ、さっぱりわからない、方位磁針なんてないし、有った所で壁の数字の順番はどうなる?何周りだ?それとも法則があるのか?西は夕陽が差し込んでいる方だと思っていたが、一向に陽が沈まない。不気味だ、食べて寝るだけの生活は悪くない、が、一体どうなってるんだ」
◎扉
鍵がかかっているが、鍵穴などは見当たらない。
【料理について】
楽しいクッキングが出来る茶番パート。 DEX×5とアイデア両方に成功することによって、美味しい料理が作れる。 料理技能がある探索者であれば、料理技能の成功のみでうまく作れて構わない。
DEX×5かアイデアの片方に成功すれば、普通の料理となる。 両方失敗するとまずくなる。料理技能の所持者はファンブルが失敗に値する。
クリティカル:5キロ増える 美味しい:3キロ増える 普通:1キロ増える まずい:増えない ファンブル:SANチェック
ヒトナベ:五右衛門風呂で誰かを煮込めば、大匙一杯の粉で一気に10キロ増える。ダイスの成功の有無などは関係ないものとする。
【扉から出る方法】
方位磁針を作成する。
水を張ったタライの上のスチロール、もしくはそこにメッセージプレートを浮かべ、上に磁石を乗せることによって、方角を知ることが出来る。
水に浮かべた磁石は正しく方位を指すだろう。
なお、方位磁針の作り方が思い浮かばなければ、アイデアや知識、それらしい本を見つけることによって思い出して構わない。
方角は以下のようになる。
南:窓側の壁 北:扉側の壁 西:カーテン側の壁 東:キッチン側の壁
「KEY ISN’T [WEST]」とあるように、鍵は西ではない。
西以外の文字「窓側の壁:31」「扉側の壁:2]」「キッチン側の壁:[4」を時計回りに並べると、[4312]となる。時計回りについては「×LOCK」の「×」にメッセージプレートにあった「×=C」を代入することによって「CLOCK」というヒントが出て来る。
鍵は西ではない=西以外のものを使う、という案が出ない場合、アイデアを振らせてもよいだろう。
出て来た[4312]を同じかっこのある[WEST]と並べ、数字の順番に並べると[STEW]、レシピに出て来たシチューとなる。
「KEY ISN’T STEW」、「鍵はシチューではない」(英語技能で分かってよい)という所から「シチューではないもの」と明記されている肉じゃがが鍵となる。
肉じゃがを作って乗せる、作って食べて乗る、または原材料を乗せても構わない。その方法で体重計を動かすことによって、扉のロックを解除することが出来る。
肉じゃが以外で上記の行為を行うと「ERROR」と出る
正直ややこしい問題だとは思うので、適度にヒントを出してあげてください。
【扉の向こうの部屋】
ドアを開けると、むわりとした腐臭が鼻をつく。中は薄暗く、入ってみるならば真ん中に死体があることが分かる。SANチェック1/1d3。 また、部屋には本棚と机が置かれている。
◎死体
男のようだ。ローブの様なものを纏っている。
目星:周囲に、蜘蛛の子供の様なものが蠢いているのに気付く。一旦視界にとらえれば、その数がかなりあることが分かるだろう。SANチェック1/1d3。また、手に何かメモを握っていることが分かる。 医学:腹が裂けたことにより死んだようだ。また、一部骨まで齧りつくされているのが分かる。
☆メモ
「-29」と書かれている。
◎本棚
ほとんどが洋書の本棚である。
目星:一段だけ空っぽな場所の奥にスイッチのような物があり、本を数冊をはめ込むことで棚が動きそうなことが分かる。 図書館:表紙が真っ黒のぼろぼろの本を見つける。タイトルは書かれていない。
『アイホート
イギリスのセヴァン谷の地下深くにある迷宮に棲んでいる。白く青ざめた肉の塊に幾つもの足が生え、体は目に覆われている。その瞳の色は赤いとも青いとも言われている。彼は人間の犠牲者を隅に追い詰め、質問する。これを拒むとその場で殴打され、殺されてしまう。申し出を受けたのであれば、その人物はアイホートの未成熟な雛を受け入れ、胎内で孵すこととなる。迷宮には多数の門が存在し、世界各地に繋がっていると言われる』
ここまで読んだ探索者はSAN値減少1d4。クトゥルフ神話技能+2。
◎机
上には地図帳が四冊置かれている。 また、引き出しがついている。
☆地図帳
「Ghana」「Japan」「Australia」「Austria」の四冊。
☆引き出し
開くと、一枚の紙が出て来る。本のページのようだ。
『怪談 赤い部屋
ある夜、タクシー運転手が一人の女を乗せた。真っ赤な服を着た俯きがちな女性は非常に美人で、運転手は気になりあれやこれやと話しかけるが、なんの返答もされない。やがて目的地に辿り着き客は降りていくが、気になった運転手は後から付けて行き、鍵穴から部屋をのぞこうとする。しかし、赤い部屋しか見えず、彼女は赤い色が好きだという情報しか得られないまま、その晩はアパートを後にする。
後日、幽霊話をしていた同僚が、赤い服を着た女性の話を持ち出す。あれは幽霊だったのかと驚く運転手は、顔も見た、という同僚の次の一言で、体を固まらせた。
「あの幽霊、格好だけじゃなくて目も真っ赤だったよ」』
オカルト、知識1/2:この話が、有名な都市伝説であることを知っている。
上の本と合わせ���ここまで読んだ探索者がもしリアルアイデアで窓の向こうの存在に気付いたのなら、SANチェック1/1d3。 あなたたちは、どうやらじっと人でない存在に見つめられているようだ。
【脱出】
「KEY ISN’T STEW」から導き出された肉じゃがから29、肉を引く。
英語表記にした時に「JAGA」は、地図帳の頭文字にそれぞれ該当する(オーストリアとオーストラリアの前後は問わない)。 本棚に「Japan」「Australia(Austria)」「Ghana」「Austria(Australia)」の順で地図帳を並べると、ロックの外れる音がする。
本棚を押しのければ、そこには白い光が広がっているだろう。 中に歩みを進めるのであれば、探索者はやがて意識を失い目を覚ます。
気付くと、公園のベンチに倒れていた。知っている場所でも知っていない場所でも構わないが、一応調べれば、探索者の家からそう遠くないことが分かるだろう。
夢だったのだろうか、そう思うにはやたら���アルだった体験を時折思い出しながら、探索者たちは日常へと戻って行く。トゥルーエンド。
また、体重は戻っていない。頑張ってください。増えていた場合、人によってはノーマルエンド。
【ハッチから脱出する】
ハッチから滑り降りると、探索者は広く薄暗い空間に投げ出される。
そこには夕焼けも何も無かったが、重い足音に振り返ると、白い楕円形に象の足の様なものを生やした、生き物と称するには悍ましい姿をした巨大な存在がいた。
無数の赤い目がまばたきをせずじっと探索者を見つめる。アイデアに成功すれば、その目の輝きに見覚えがあるだろう。それは赤いあの窓の色だった。
アイホートの姿を見た探索者はSANチェック1d6/1d20。
この後は、雛を埋められるか殺されるかのいつもの二択となります。雛を埋められた後、別の門から帰る事は可能ですが、幸運に成功しなければ見たこともない国外に辿り着いているでしょう。残された時間は、ルールブックの通りです。バッドエンド。恐らくロスト。
【生還報酬】
生還した:1d3
太らなかった:1d3
美味しい料理が作れた:1d3
SAN値は上限を超えて回復しないものとする。
【余談】
Room.Eye、もしくはRoom.Eihort。
この狂信者絶対肉じゃがめちゃくちゃ好きだと思います。
お読みいただきありがとうございました。 感想等いただけると喜びます。
詐木まりさ Twitter @kgm_trpg
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short-span-call · 4 years
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#066 オリエンタルコンクリート(1)
 男も女も大人も子供も白人も黒人も黄色人種も社会人も学生も先生も生徒も日本人もアメリカ人もイタリア人もチェチェン人も総理大臣も大統領も天皇もクー・クラックス・クランもロスト・ジェネレーションもヤリマンもヤリチンも処女も童貞もヤクザもカタギも、みんなみんな、オナニーしてるんだよなあ、と考えると、どんなことも許せるような気がする。落ち込むことがあったり、人やモノにムカついたり、悲しみに暮れたり、何かとてつもなくひどい目にあったとき、そんな想像をすると、心が穏やかになる。への字口が微笑みに変わる。なんでも許せるような気持ちになって、ああ、みんなそうやって生きてるんだなぁ、と思う。敵も味方も、自国も他国も、いじめっ子もいじめられっ子も、絶頂に達する瞬間は、それぞれの場所で、たった一人なのだ。すべての垣根を飛び越えて、ただのニンゲン、ただの動物になるのだ。戦争、紛争、争い、諍い。すべてを超えて、すべてを忘れて、人はオナニーをする。どこかの国と国が戦争を起こしそうになったとき、みんながそんな想像をしていれば、すべてがバカバカしくなって、あーもういいよやめよーぜドンパチ、と言い出す人がたくさん現れるんじゃないだろうか。だって嫌だ。安心して、穏やかな場所で、絶対的に一人でいられる場所で、確実にオナニーができなくなる世界なんて。そんなの絶対に嫌だ。みんな、嫌なはずだ。ともすれば、オナニーは世界を平和にする、たった一つの完璧な手段なのかもしれない。さあ、みんなで想像しよう。シンクオナニー。ラブアンドピースアンドオナニー。
 午後5時半。帰りの会も終わりダラダラと居残っていた女子もいなくなり、校庭でたむろしていた男子も帰り支度をはじめたころ、ぼくは4年2組の教室の、一番後ろの席よりさらに後ろ、窓際の、掃除用具が入っている巨人の筆箱みたいな灰色の物置と窓の間のすきっ歯みたいに微かに空いたスペースにうずくまっているミヨシを見下ろしていた。 「ねえ」  ぼくは右腕に持っているホッチキスをカチカチ鳴らしながらミヨシに声をかけ続ける。 「ねえって、ば」  ば、という声と同時にぼくは身体を抱え込みすぎて埋もれそうになっているミヨシのアゴの少し下のあたりを、足でやさしく蹴り上げる。やさしく、というのは、ぎりぎりアザにならないレベル、ということだ。 「早く受け取ってほしいな」  できるだけ穏やかに、のんびりとした口調でぼくは言う。蹴り上げたことにより顔が上がり、けれど目線だけは床の木製タイルのつなぎ目あたりに泳がせているミヨシの、その目線の先に、ぼくはホッチキスを差し出してやる。 「これ。ホッチキス。ぼくのなんだけど」 「ふ……」ミヨシの視界がホッチキスを避けようとしているのがわかる。 「おーい」  ぼくはゆっくりかがみこんでミヨシのアゴを思い切り掴む。ぼくとミヨシの顔は今、至近距離で対面している。はじめは目を逸らしていたミヨシは、どうやらそうしないとぼくが一生この体勢のまま動かないとでも思ったのか、意を決したようにぼくの目を見た。いい子だ。かわいい子。ぼくはうっすらと口元だけで笑いながら、さっき蹴り上げたミヨシのアゴを確認した。うん、アザにはならないはず。上履きの先端をもう少し硬く改造できないかな。ライターで炙ったら、どうだろうか。  極度の緊張でまばたきを忘れているのか、ミヨシの眼が水気を帯び、涙が目尻に溜まりはじめていた。いじらしい、ってこういうことだろうか。ぼくは昨日の夜、父さんの部屋の本棚からてきとうに選んで読んでいた西村京太郎のトラベルミステリで出てきた単語を思い出す。ミヨシ、ああ。ぼくとミヨシの顔は限界まで近づき、額と額がぶつかり合いそうになったところでミヨシは目をつぶり、ぼくは顔を横にそらせて唇を舌でしめらせてから、ミヨシの右目尻にキスをした。唇を離すとき、ミヨシの皮膚とぼくの唇が唾液によってできた線で一瞬繋がり、ぴふ、という、風よりも微かな音と共にまた離れた。ぼくはその唾液の跡を確認するように舌先で同じ場所を舐める。その間ミヨシは何度も身体を小さく震わせていて、ぼくは思わず荒い鼻息を漏らしてしまう。ミヨシについたぼくの唾液が、すぐ横の窓から差し込む夕陽に照らされテラテラと光っている。その姿に圧倒的な美しさを感じながら、ぼくは感動を悟られないように呼吸を整えてから顔を離し、両足のスネの前で固く結ばれているミヨシの腕を解き、ホッチキスを手渡した。 「かんたんだよ」ミヨシの手首を強く握ってぼくは言う。「すぐ、だよ」 「あの、ぼく」ミヨシの目は手の中に収まっているホッチキスとぼくの目を行ったり来たりしていた。 「ぼく?」 「ぼくは、あ、は……」言うべき言葉がそのまま口から出てこないもどかしさからか、ミヨシは小さく折りたたんでいた両足をさらに身体の中へ中へと押し込んでいくような素振りを見せた。 「だいじょうぶだよ」ぼくはこれまでで一番やさしい声を出す。「こうやってね、それを、口の中へ入れて、ベロをちょっとだけ出してね。その、ベロに、その、ホッチキスを挟み込んでね、あとは、手に力を入れるだけだよ」 「う、ふ」ぼくが言葉を区切るたびに、ミヨシは目を固く閉じ、首を縦に振ったり横に振ったりしている。もう、よくわからなくなっているんだろう。この状況が。この時間が。  ぼくがミヨシをこうして追い詰めはじめてから、すでに1時間は経っていた。  短く刈り込まれたミヨシの頭を撫でる。ランドセルの肩紐を律儀に掴んで通学路を歩くミヨシ。理科の実験で試験官を落としてあたふたするミヨシ。給食を食べるのが誰よりも遅いミヨシ。昼休みの最初から最後まで自分の机から離れず手塚治虫の漫画を読みふけるミヨシ。音読が下手なミヨシ。あらゆるミヨシがぼくの頭に浮かび、そして今、極限まで追い詰められ、なすがまま、ぼくに頭を撫でられているミヨシと繋がる。誰よりも地味でドジで目立たない日陰者のミヨシ。そのミヨシにぼくは今、スポットライトを当てているんだ。誰よりもミヨシがミヨシらしく輝く瞬間に、ぼくは立ち会っている。みぞおちの辺りを思い切り蹴りあげたい衝動を押さえつけながら、ぼくはミヨシに声をかける。 「さあ。ほら。だいじょうぶ。だいじょうぶなんだよ」
 保健の授業で、担任の柏木がニヤリと笑い、 「さてみんなに問題です。赤ちゃんは、なーんーで、できるの、で、しょうか」  と黒板に同じ言葉を書きながらぼくらに問う。  にわかに騒がしくなった教室で、ぼくは一人シラけた気分で机の隅を指でこすっていた。手をつなぐ! なんだよそれカンタンすぎだろ。そういう特別な手術があるんだよきっと。どういう手術だよ。愛し合っていれば自然にできるんじゃない? だから自然ってなんなんだって。ていうかそれオレら必要? 男子は口々に自分の考察を発表し、別の男子や女子がそれに難癖や反論を加えていた。柏木は黒板の端に「仮説」と書き、みんなの意見を馬鹿丁寧に書き並べていった。 「そんなの決まってんじゃん」  後ろの席でチートスが声を上げる。 「キスだよキス」 「わたし、ちっちゃいころ弟とキスしたことあるけど、子供できなかったよ」  教室の窓側から数えて二列目の、一番前の席に座っているコトチーがすかさず口を尖らせて反論する。こいつはチートスの言動になにかと突っかかるクセがあるのだ。 「それは、それはさ」しばらく口ごもってからチートスは言う。「そのころはまだ、オレらの身体にそういう、えっと子供ができる機能? みたいなのがちゃんとできてなかったんだよ」  教室の数人から、おー……、という、納得と感心が入り混じった声が漏れる。柏木はそんな教室を一望してにやにや笑っていた。 「キスの仕方も関係、あると思う。あと、確率、みたいなのも、あるんだと思う。キスしたら確実に子供が産まれるわけじゃないっていうか」  そこまで言ってチートスは黙りこみ、教室の空気も、なにやらそれぞれが考えこんでいるのか、小さなざわめきが聴こえる以外は、表立って発言をする者はいなくなってしまった。コトチーも、一人、机の一点を見つめて黙って腕を組んでいる。  ぼくは脚を投げ出して頬杖をつきながら、誰も座っていない目の前の席をぼんやり見つめていた。ミヨシは今日、学校に来ていない。少しいじわるしすぎただろうか。ミヨシの机の引き出しに昨日ぼくが渡したピンク色のホッチキスが入れられているのが見えて、ぼくは股の周辺が熱くなっていくのを感じる。何度か脚を組み替えながら、ぼくは頬杖をやめてピンと背筋を正してみる。それを見ていた柏木が、なにを勘違いしたのか、 「トラくん、どう思う」  とぼくに意見を促してきた。  ざわめきが収まり、教室中の顔という顔がぼくの方向を見る。チートスもたぶん、目の前にあるぼくの背中をじっと見つめているのだろう。コトチーは腕を組んだまま首だけを曲げて、眉間にしわを寄せてぼくを見ていた。あんたこんなナイーブな話題に対してヘンなこと言わないでちょうだいよ、といった顔だ。コトチーの左隣に座っているガンバは両肘を机に付いた状態で微動だにしない。眠っているのだろう。柏木から一番近い席に座っていながら、大した度胸だ。その姿がなんだか冬眠前のクマのようでぼくは目を細める。 「不思議だよねえ、よく、コウノトリが運んでくるんだよ、なんて言うけど、ほんとなのかなあ。お父さんお母さんに、そういうこと、聞いたことあるかなあ、みんなのお父さんお母さんは、なんて答えたのかなあ、ほんとうは、どういう仕組みで、みんなは産まれたのかなあ、ねえ? トラくん、ねえ?」 「ちんことまんこです」  ぼくは柏木に聞こえないように小さく舌打ちをしてから間髪入れずに言ってやる。コトチーの鼻から息が漏れる音が聞こえたような気がした。 「正しくは女性器、膣、ヴァギナと、男性器、陰茎、ペニス、その二つが接合し、ペニスから発射される精液に含まれる精子というオタマジャクシ状の生殖細胞がヴァギナの奥を進み卵子という細胞と接触、結合することにより細胞分裂が起こり胎児、つまり現在のぼくたちの原型のようなものができあがっていきます。ちなみにペニスから精液を発射させるためには恒常的かつ適度な刺激が必要とされていて、ああそうだった、女性器にもある程度の刺激が必要ですね、その刺激を自らで自らの性器に与える場合もあり、これを一般的にオナニー、または自慰と言います。そして主に男性と女性がお互いの性器を刺激し合うことを性交、エッチ、セックスと呼び、これは一般的にお互いを恋い慕っている者同士が行うものだと認識されています」 「よく知っているねえ」  男、女、ヴァギナ、ペニス、精子、卵子、性器、と、柏木はぼくの発言からキーワードを抜き取って黒板に書き出した。知っている者、知らない者の反応がここで一気に分かれる。知らない者は一体こいつはなにを言ったんだろうという顔できょとんとしている。知っている者はなんとなく気まずそうだ。顔をうつむけている男子、女子。醜くニタニタ笑う男子。顔を近づけ��コソコソとなにごとかささやき合っている女子、女子、男子、女子。教室の空気が微妙に変化したのを察知したのか、ガンバの身体が一瞬大きくビクンと揺れて、何事もなかったようにゆっくりと目の前の黒板に顔を向けた。チートスは机から思いっきり身を乗り出して、なあ、つまりどういうこと、とぼくの耳元で言う。コトチーはもうぼくを見ていない。スカートの裾を直してから、寝ちまったよ、いったいなんの話をしていたんだ? というお決まりの困り顔でコトチーを見つめるガンバの太もも辺りを引っぱたいて、黒板に向けてアゴをしゃくった。  ぼくは無性に腹が立って、もう一度小さく舌打ちをした。ダメなんだ。こういう状況が。知っていながらなにも言わない連中の醸し出すぬるい空気にアレルギーを起こしそうになる。ヘタクソな演技。身を乗り出したままでいたチートスがぼくの舌打ちを聞いて、なんだよ、なにキ���てんだよ、とおどおどしながら身体を椅子に戻した。ぼくは貧乏ゆすりを抑えながら、にらまないように目を見開いて柏木に顔を向ける。 「そうだねトラくん。男の子の身体には、ペニスという性器がついていますねえ。ちんちん、ちんこ、という呼び方のほうが、みんなにはなじみが深いかなあ。そ、し、て。こっちのほうは、知らない子のほうが多いんじゃないかなあ? 女の子の身体には〜、ちんちんが付いていないねえ。そのかわりに、ヴァ〜ギ〜ナ、ヴァギナという、窪みのようなものがあります」  柏木はあくまで、まんこ、という言葉を使わない気でいるらしい。  くそばばあが……とぼくはつぶやく。  詳しく説明してあるビデオがあるから、それを観てみましょうねえ。と言いながら柏木はビデオテープをセットし、テレビの電源をつけた。  大人はいつからぼくらのことを侮るようになったんだろう。テレビに映る砂嵐を見ながらぼくは夜眠る前にいつも頭に浮かぶことを思った。  流された映像は、まさに今このときのために作られました、という雰囲気で満ちあふれた、いかにもな教材映像だった。仮病やほんとうの病気で学校をお休みするとき、間延びしたようなお昼どきによく観るNHKみたいな感じ。のっぺりした女の声が、簡素な空間で男性器と女性器の模型をいじくっている人間の手の動きに合わせて、性交の説明や避妊具の解説をしていた。みんな、静かに、食い入るように画面を見つめている。意外だ。でもそれはそうか。ぼくらはもう10歳で、小学4年生で、親や先生や周囲の大人のふぬけた予想よりはるかに多くのことを、知っているし、知ってしまっているし、そしてこれからも多くのことを知ってしまうだろうという微妙な予感もちゃんと抱いている。性についてなにも知らないような奴らも、かわりに同じくらい別のなにかを知っている。知っていること、知らないことの、なんていうか、レベルや経験値の振り分けが違うだけで、ぼくらの知識の総量はきっと、同じなんだ。そしてきっと、大人とぼくらの知識の総量も、変わらない。ドロケイの必勝パターンやドッチボールの自己流投球フォーム、でたらめな言葉で会話すること、一人一人の言動や身なりにピッタリよりそっているような抜群のアダ名をつけるセンス、良いぺんぺん草の見分け方、泥団子をピカピカに磨き上げる技術、百科事典で4時間遊ぶために必要な想像力と創造力、そういうなにもかもを大人たちは惜しげも無く捨て去って、脳みその、からっぽになった場所に別のものを、タイクツななにかを、社会の教科書にのっているたくさんの歴史上の人物、例えば織田信長、フランシスコ・ザビエル、聖徳太子、大塩平八郎、その人物画みたいなぼやけた眼、かすんだ顔をして、詰め込んでいく。  ミヨシ。ミヨシがいない。  ぼくはミヨシのことが知りたかった。  誰よりもなによりも、ぜんぶをぼくの中に詰め込もうと思った。テレビの画面は、精子が膣の奥へ奥へと進んでいく3Dアニメーションを映している。ぼくはミヨシの奥へ奥へ、入っていくのだ。あるいは奥へ奥へ、入ってくるミヨシを受け入れていくのだ。その方法を大人は教えてくれないということもぼくは少し前に知ってしまった。あくびをこらえすぎて左目から涙がたれる。にじんだ視界からでもコトチーの一つにくくられた後ろ髪の形くらいはわかる。今日はコトチーと帰ることになるだろう。怒られるかな。やだな。
 ゴ。  いいい―――――――――――ん。  眼を開けたぼくの視界にふす――――んと厚ぼったい鼻息を繰り返すカラスウリみたいな頬の父さんが見える。  ぼくは布団の中にいて、父さんはぼくに馬乗りになっている。  しなびたボンレスハムみたいに筋張った父さんの左手は、ぼくの両腕を掴んで離しそうにない。  ぼくは寝ながらバンザイしているみたいな体勢で、父さんの眼、頬、唇、額、そしてもう一度眼を見る。にらまないように眼を見開く。 「おい」  ふす――――ん。  ゴ。  視界が一瞬青くなり、ぼくは顔をしかめようとする動きを必死にこらえる。酔った父さんは頭突きの加減を知らない。いいい―――――――――――ん。 「おい」  父さんの声を聴くと、ぼくはいつも、歌えばいいのにと思う。びっくりマークをつけなくても、びっくりマークをいくつ付けても足りないくらいどこまでも響いていくその太く伸びやかな声ならば、きっとどんな歌も祈りのように美しく切実な音に変わるのに。 「てめえは、なんに、なりてんだ。あ?」  ゴ。ゴ。ゴ。ゴ。  こういうときにミヨシのことはあんまり思い出さない。むしろ思い出すのは体育の授業、息をぜえぜえ言わせながら汗だくでサッカーボールを追いかけるガンバのことだったりする。明日は学校に行ったらガンバの机の前まで行って、今日観た『笑う犬の冒険』の話をいつもみたいにしよう。ガンバはホリケンが好きだから、ホリケンの言動をオーバーに真似するだろう。ぼくは泰造が好きだ。そしてコトチーはそんなぼくらを横目に漢字ドリルを進めたりするんだ。家はお兄ちゃんがいるから今やるの、とか言いながら。 「聞いてんのかっつってんだよ」  この家は父さん専用のスピーカーなんだと思う。壁、天井、ドア、柱、すべてが父さんの声に合わせて振動し、増幅されてぼくの耳を限界まで震わす。 「てめえはいいよな毎日毎日メシ食ってクソしてテレビ見てそれで終わりなんだからよ。てめえオヤジがくたくたで帰ってきてその態度はねえんじゃねえの」  その態度。  お風呂に入って歯を磨いて布団にもぐって眠ることを言っているのだろう。 「てめえ将来なんになりてえんだよ。おい」  耳鳴りが起こり、視界の中で父さんの顔、腕、身体が遠くなっていく。カメラのズームアウトみたいに、部屋と一緒にどんどん小さく縮んでいく。父が黙ると家全体も静まり返る。母さんはたぶん、寝室かキッチンでうずくまっている。明日は母さんのどこにアザができているか、ぼくは一瞬眼を閉じて予想してみる。鎖骨かな。数日前はこめかみだった。  なにも言葉を発しないぼくに飽きたのか、壁にとまっているハエを叩き殺すようにぼくの顔面を正面から平手でぶっ叩き、父は立ち上がって部屋から出ていった。ぼくはしばらく、バンザイの体勢のまま、天井を見つめ、自分が息を吸ったり吐いたりする音を聴いていた。枕の下に入れてある小さなマイナスドライバーを取り出して強く握り、横に寝返りをうつ。身体を布団の中で小さく畳んで、自分の腕を見つめる。眼を閉じて、服の上から自分のペニスをそっとなでる。マイナスドライバーの先端を舐める。外で強い風が吹き、窓ガラスが音を立てて揺れる。今夜はさらに冷え込みそうだ。
「うそつき」 「なにが?」 「昼休み」 「ああ」ぼくは砂利をおもいっきり蹴飛ばす。「うそじゃないよ」 「うそでしょ」コトチーも、地面の砂利を蹴るように歩く。  高速道路の高架をくぐり、獣道を抜け、深緑色に濁った真間川に沿って、ぼくたちはもう三十分くらい歩いている。コトチーと一緒に学校から帰るときは、いつだって遠回りをした。大人の身長ぎりぎりくらいに架けられた薄暗い橋の下を通る。なにを獲るためなのかわからない漁船やボートが連なって停められている。おばあちゃんの髪の毛みたいな藻が水中でぬらぬらと揺れているのがかろうじて見える。砂利道には犬の糞や食べかけのカップヌードルやぼろぼろになったピンク色の手袋やコンドームが散乱している。それでもいつも、不思議と嫌な臭いはしなかった。ぼくは(そしてたぶんコトチーも)、この道とこの川が好きだった。 「コトチー冬休みどうするの」 「どうするって?」 「なんか、するの」 「なんかって?」 「なんでもない」  ブルーシートと鉄パイプ、しめ縄、折れた踏切の棒、ベニヤ板、反射板、あべこべな材料で組まれた堅牢な小屋の前をぼくらは通り過ぎる。中から微かにラジオの音が聴こえた。 「うちにはお兄ちゃんがいるから」コトチーは小さくスキップするようにして、ランドセルを背負い直した。「どこにもいけない」 「男にだって生理はあるよ」ぼくは急に話題を戻した。「血は出ないけど」 「うそつき」 「うそじゃないよ」 「それは夢精」コトチーが身体を曲げて、ランドセルの背でぼくにぶつかってきた。「トラだってわかってるでしょそれくらい。別にわたしが気にすることでもないけどさ、なんも知らない子にそういうこと吹き込むの、あとで自分が恥ずかしくなるだけなんじゃない」 「うそじゃない」ぼくはよろけながら、そう言うしかなかった。 〈生理〉という言葉には、もちろん〈月経〉という意味もあるけれど、〈生物の体の働き〉という意味だってあるのだ。  だったら、夢精や射精、オナニーを生理と呼んだって、間違いではないんじゃないか。  でもなぜか、それをコトチーに言うことはできなかった。屁理屈や言い訳にしか聞こえないことも、なんとなくわかっていた。  空はもう赤かった。カラスの鳴き声がどこかから聞こえてくる。 「トラ、大丈夫?」 「なにが?」ぼくはわざととぼけた。 「なにが、って……」 「大丈夫だよ」ぼくは地面の石を拾って、川に向かって思いっきり投げた。石は漁船のお腹にぶつかって、鈍い音をたてて川に沈んでいった。「大丈夫」  今日、一ヶ月ぶりにミヨシが学校へ来た。  あの日。柏木が授業でセックスの話をした日から、ミヨシはずっと学校を休んでいた。みんな、誰も、何も言わなかった。まるで最初からそれが当たり前だったかのように日々が過ぎていった。ぼくと、コトチー以外は。柏木だって何も言わなかった。プリントや宿題を届ける役目を誰かに任せることもなかった。ぼくの目の前の席はずっと空っぽで、空っぽの机の中のホッチキスはずっとそのままだった。ぼくは自分が段々自分じゃなくなっていくような、それまでの自分が絡まりあった細い糸で出来ていて、その糸が少しづつほぐされて、バラバラに散ってしまっていくような気分で毎日を過ごしていた。昼休み、いつも一緒に校庭を走り回るチートスも、給食の時間、牛乳のおかわりを取り合うガンバも、ぼくのそんな内面には気づいていないみたいだった。コトチーがぼくを見つめる表情だけが、日に日に険しくなっていった。 「さすがホトケだよね。完全に無反応だった」  コトチーは、柏木のことを「ホトケの柏木」と呼んだりする。いわゆる「神様仏様」のホトケではなくて、警察官が死体のことを呼ぶ俗称としての、ホトケ。らしい。  一ヶ月ぶりに学校にやってきたミヨシは一ヶ月前となにも変わらなかった。朝の会が始まる少し前に登校し、国語の授業では句読点を無視してつっかえつっかえ音読し、理科の実験ではアルコールランプの消火にまごつき、昼休みは口角を少しだけ上げて手塚治虫の『三つ目がとおる』をじっと読んでいた。ぼくはそんなミヨシをなるべく見ないように一日を過ごした。  ミヨシはキュロットを履いていた。  それ以外、なにも変わらない、いつものミヨシだった。  真間川が終わり、東京湾の工業地帯にたどり着く。巨大な水門は今日は閉じていた。海沿いにそびえ建つセメント工場が夕陽に照らされて嬉しそうに輝いている。湾の向こう岸に建ち並ぶ工場からコンテナが運ばれていく。クレーンが動く。消えそうにない煙が立ち上っている。大きな船が小さな模型みたいにちんまりと停まっている。静かだ。重たい海水の音と、母さんがいつもベランダやキッチンや庭に置きっぱなしにするゴミ袋みたいにギチギチに人を詰め込んだJR京葉線が高架を通り過ぎる音だけがはっきりと聞こえてくる。コトチーとぼくはしばらく立ち止まって、それらすべてを並んでぼんやり眺めていた。ここは千葉なのに、今目の前に見えているこの真っ黒な海原は東京湾なんだ、というその事実に、ぼくはなんだか無性にくらくらしてしまう。 「コトチーのお兄ちゃん、ぼくがぶっ殺してあげよっか」  そんなこと言うつもりはなかったから、ぼくはぼく自身に驚いていた。 「いいね」コトチーは笑わなかった。「どうやって?」 「ゆっくり殺そう」ぼくはコトチーを見ずに言った。「まず、まっすぐに伸ばして針金にしたクリップで、両眼を刺して、ぐちゅぐちゅかき混ぜるんだ。で、眼をどろどろにしたら、排水口のぬめり取りで、歯を少しづつ溶かそう」 「あはは。サイコー」 「爪切りで��しづつ、両手両足の肉と骨を削いで、詰めていこう」 「あはは」 「髪の毛はペンチで豪快にむしり取ろう。耳にはギターを繋げたイヤホンをつけて、爆音でかき鳴らして鼓膜を壊そう。ヘソにはうんと尖らせたトンボ鉛筆を突き刺して、睾丸とペニスは……。睾丸とペニスは、」 「……睾丸とペニスは?」 「睾丸と、ペニスは……」ぼくはわざとらしく間を置いて言った。「一番みじめで一番いたくて一番ねちっこくて一番、一番ぜんぶぜんぶ後悔させるような方法で、こっぱみじんにする」 「こっぱみじん」  初めて知った言葉を口の中で転がすように、コトチーが繰り返す。 「そう、こっぱみじん」 「すごいね」 「すごいよ。こっぱだよ」 「ありがとう」  コトチーは微笑んだ。声が少し揺れていて、でもぼくはなにも言わなかった。  来た道を引き返し、ぼくとコトチーはそれぞれの家に向かって同じ道を歩く。  ぼくの家とコトチーのマンションは道を挟んで隣り合っていて、いつもみたいに、家とマンションの中間、道のど真ん中で、ぼくとコトチーはハイタッチを交わして別れる。すっかり、夜になっていた。夜に玄関をまたいでも叱られないような家に、ぼくとコトチーは住んでいる。コトチーが明日学校にやって来るまで、どうか誰もコトチーの身体を触ったりしませんようにと、ぼくはたまに祈ってみたりする。
 ぼくはリビングのテーブルで、晩ごはんを食べようとしている。  晩ごはんはミヨシだった。  ミヨシはこんにゃくで、こんにゃくという食べ物がミヨシだった。 「いただきます」ぼくは言った。  味噌汁を入れるお椀のなかに、透明な液体と輪切りにされたミヨシが浮かんでいて、ぼくは白ご飯を口に含んでから、そのお椀を手に取った。 「虎彦」  ミヨシがぼくの名前を呼んだ。  ぼくはミヨシの一つを箸でつまむ。  ミヨシが微笑んだ。輪切りにされたミヨシに顔なんてないけれど、黒いぶつぶつの連なりが顔の代わりなのだということがぼくには分かる。ミヨシが微笑んでいることも、ミヨシが呼びかける声も、ぼくにしかわからない。ぼくとミヨシだけの言葉じゃない言葉だ。  母さんは、テーブル越しに対面する形で、ぼくの前に立っている。片手に包丁を持って、眼が充血している。 「てめえ何様のつもりだよ」  母さんの声は父さんで、ぼくは母さんの顔を見つめながら、ミヨシを口に入れる。 「いっつもいっつもいっつもいっつもいっつもいっつも」  そういう動きしかできないブリキのおもちゃみたいに、母さんは手に持った包丁を上下に振り続けている。 「いっつもいっつもいっつも、いつもいつもいつもてめえはてめえは」  ぼくはミヨシを噛んで、飲み込もうとする。でも噛めば噛むほど、口の中でミヨシはどんどん膨らんで、ぼくはとうとう口の中からミヨシをこぼしてしまう。口からこぼれたミヨシはもうミヨシじゃなくてただのこんにゃくで、床の上でぷるぷる揺れている。  さっきからぼくの頭上で浮かんでいたポリバケツが、UFOみたいに光を発した。光りに照らされた、ミヨシだったこんにゃくは浮かび上がって、ポリバケツの中に吸い込まれていく。 「ミヨシ」  ぼくは立ち上がってポリバケツに手を伸ばす。でもぼくは体温計だった。水銀が暖まらないと手が伸ばせない。手というのは、赤いゲージのことだった。  そこで眼が覚めた。  ぼくはマイナスドライバーを枕の下にしまって、起き上がる。 「ミヨシ」
 次の日も、次の次の日も、次の週も、ミヨシはキュロットを履いて、ぼくの目の前の席に座って、いつものミヨシみたいに振る舞っていた。仕草を変えたり、一人称を変えたりすることもなかった。周りの人間も、キュロットを履いたミヨシをいつものミヨシみたいに扱った。つまり、みんなミヨシに無関心だった。あまりに無関心すぎて、ぼくの頭がおかしくなって、ぼく一人だけが、ミヨシの幻覚を見ているのかと思ったほどだ。 「あいつさあ……」  男子トイレで隣り合って小便をしているとき、ガンバが言った。 「そういうこと、だったんだなあ」  ぼくはそれで、最近のミヨシがぼくだけの幻覚じゃないことを知った。 「でも、なんか、そういう感じ、だったのかもなあ、これまでも。うん」  ガンバはうつむいて、自分の小便を見つめていた。 「いとこがさあ、そういう感じ、なんだよなあ。オレが保育園行ってたときは、まだ、アニキって感じだったんだけど、今はもう、なんだか、そうでもない感じでさあ。……あいつよく見たらかわいらしい顔してるしさあ。オレぐらいドジだけどさあ。これからチン毛とか生えて、どうなるかわかんないけどさあ。オレ、ああそういうことかあ、って感じなんだよなあ」  ガンバがそんなことを言うのがなんだか意外で、ぼくはズボンのチャックを上げながら、ガンバの顔をまじまじと見つめてしまう。 「なんだよお」 「や……うん。うん。なんでもない」  ぼくはガンバの背中を強めに叩く。 「おいなんだよ、まだションベン中だぞ」 「さき、体育館行ってるから!」 「待てよお! おーい!」  ガンバの声が響くトイレを出てぼくは早足で歩く。ぼくは泣き出しそうだった。
 ミヨシがキュロットを履くようになってから、ぼくはまだミヨシと一言も言葉を交わしていなかった。放課後は校庭でたむろしているチートスたちの元へ行くか、一人で、あるいはコトチーと二人で、逃げるように帰っていた。  ミヨシと、放課後、教室の隅で、どちらからともなく寄り添って、「ああいうこと」をするようになった、そのときから、ぼくはもうこの先のことがなんとなくわかっていた。言葉として、映像として、脳みそでわかっているわけではなかったけれど、こんなことが、このまま、この状態のまま、変わらずに続くはずがないことくらいはわかっていた。ミヨシの頬を叩くとき、ミヨシの肩をつねるとき、ミヨシの頭をなでるとき、ミヨシを言葉だけで追い詰めるとき、ミヨシの膝が夕陽に照らされているのを見たとき、ミヨシの眼に映るぼくや教室の天井を見たとき、ミヨシが「ぼくは」と言うとき、ミヨシがぼくの名前を呼ぶとき、ミヨシの身体のその中の、誰にも見えないところでボロボロに泣いているミヨシそのものにぼくは目を背けてミヨシの眼を見つめ続けてきた。学校では教えてくれないこと。父さんは、母さんは、柏木は、大人は教えてくれないこと。誰も教えてくれないこと。ほんとうは教えてほしいこと。その、「教えてほしいこと」の種類が、ぼくとミヨシでは決定的に違っているのだ。「教えてほしいこと」の種類も「認めてほしいこと」の種類も「信じてほしいこと」の種類もなにもかも。一緒だと思いたかったのは、ぼくだけだろうか。ぼくはミヨシのペニスを思いきり頬張りたかった。誰よりもやさしく乱暴に触りたかった。でもそれを望んでいるのはぼくだけなのかもしれない。ミヨシはミヨシ自身のペニスなんて触れられることすら嫌なのかもしれない。そのことを考えるだけでぼくは頭がはちきれそうになった。頭がはちきれそうになることくらいわかりきっていたから、ぼくはミヨシと、ぼくらの間だけで通じるセックスを、「ああいうこと」を続けていた。ぼくはまだ、ミヨシのペニスを見たことがない。ぼくはミヨシに今すぐ触れたかった。いま、今、すぐ。  体育館では、先に来ていたチートスたちがバスケットボールの山盛り入ったカゴを倉庫からひっぱり出しているところだった。せっかちな奴らがカゴの中のボールを手にとって、好き勝手に投げ合っている。  ぼくは早足のまま、体育館の隅で壁に寄りかかってぼんやりしているミヨシの元へ向かう。 「ミヨシ」  ミヨシはぼんやりした顔を強張らせてぼくを見つめた。放課後以外でぼくがミヨシに話しかけるのは初めてだった。 「髪」ぼくの声はかすれていた。 「かみ?」 「どうして」ぼくは右手をミヨシの肩くらいまで上げて、また下げた。  ミヨシは黙っていた。 「伸ばせばいいのに」言った途端、ぼくの眼から涙がこぼれた。  今この瞬間、この場にいる全員、消えていなくなってしまえばいいとぼくは思った。お願いだからぼくとミヨシ以外、全員、バスケットボールとゴールだけを見ていてほしかった。  ミヨシは顔を強張らせたまま口を半開きにして、数秒固まったあと、これ以上ないくらいかわいそうな人を見るような表情でぼくを見た。 「どうして」 「トラ。虎彦」  ミヨシはぼくの手の甲をなでてから、頬の涙をそっとぬぐった。 「虎彦。今日、一緒に帰ろう」  バスケットボールが床を跳ねる音の隙間から、チートスの笑い声が聞こえる。ガンバが遅れて体育館にやってきて、おい、トラ! とぼくを呼ぶ。ぼくはミヨシにうなずいてから、なんでもなかったように背を向けて走り、カゴの中のバスケットボールを取って、ガンバに向かって高めに投げる。
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yagaikatsudo · 4 years
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北上川カヌー単独行② 盛岡~花巻
1997年9月23日~26日 4日間 3日・4日目
■3日目
7時起床。寒い、快晴、息が白い。 昨日までの寂しい風景が一変して輝いている。 作業服を着た土建屋のオジチャンが出勤前に釣りをしている。寒いですね、と言うと、今朝は10℃切ったからなぁ、と言った。 ラーメンを食い、テントを撤収、カヌーに荷物を詰め込む。困ったことに昨日、雨が降ったのに一昨日より水量が減っていて、カヌーをエントリーする場所の斜度がきつく、滑って川に落ちそうになる。すったもんだの末、ようやく川に漕ぎだすと、一部始終を橋の上から見ていたオバチャンが笑いながら「頑張れや~~」と見送ってくれた。今日は4名から「気ぃ~付けて~」「ご苦労さんやの~」と声援を送られたが、みな、ジイサン、バアサンだった。北上の川沿いに住むうら若き女性たちよ、今度赤いカヌーを見かけたら黄色い声で声援をよろしく。ビールなんか差し入れてくれたら更に嬉しい。 川の流れは穏やかだった。僕はなるべく漕がずに周りの木や田んぼ、泥岩の崖を眺めながら下った。 上半身を後ろにそらせば秋晴れの空が目に沁みる。カルガモの群れが突然現れたカヌーに驚いて、フガフガ鳴きながら飛んでゆく。
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↑泥岩の崖
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川幅広くなり大河の様相を呈してくる。時速5キロぐらいだろうか、クルクルと回るカヌーの上で、僕はユラユラと流されてゆく。ひたすらいい気分だ。
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後ろ向きに流されてゆくとゴツンと何かにぶつかったので焦った。水面ギリギリにある隠れ岩だ。パドルでバランス取り問題なし、再び流されてゆく。 東北新幹線の鉄橋の下をくぐり、右手に花巻空港に向け着陸態勢に入ったJASの機体を眺めながら行くと大正橋。 橋脚の向こうにしぶきを上げる瀬が見える。右を行けばたいしたことなさそうだが、久々の轟音に血が騒ぎ左を攻めた。しかし恐ろしいことにそこは50cmぐらいの落ち込みで、沈はしなかったが船底を思い切りこすってしまった。おまけに顔面に冷たいしぶきがドヒャッとかかった。
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次の井戸向橋で上陸、船底は補強に貼ってあったガムテープが裂け、本体の布も少し擦り切れていた。セメダインとガムテープで応急措置をし、乾くまで昼メシ(菓子パン)とする。
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再び出発。 川の両岸はジャングルのように鬱蒼としたり、突然、ヨーロッパの田園風景のようになったりと、様々な表情を見せてくれる。スメタナのモルダウなど口ずさみながらユックリ流されてゆく。 平和だ、そしてシアワセだ。思わず僕は天を仰いだ。
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そんな風景の中をしばらく行くと、川面から飛び出た岩の上で何かが光った。何だろうと思ってカヌーを近づけると、それは60cmはあるスッポンだった。スッポンは岩の上で気分よく昼寝をしていたのだ。光って見えたのはその立派な甲羅だった。野生のスッポンを見るのは初めてなので僕は独りで静かに興奮した。当のスッポンは昼寝を邪魔され、うざったそうな顔で僕に一瞥してスルスルチャポンと水の中に消えていった。 僕は急に腹が減った。スッポンを見てスッポン鍋を思い出してしまったのである。こう書くと、何て卑しい、あさましいと思うPTAのようなつまらない方もいらっしゃるだろうが、僕の育ちはそんなモンだから仕方がない。
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↑大河の雰囲気
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次第に雲が多くなり川の上を行く風も冷たさを増してきた。 少し力を入れて漕ぐ。大きく右へカーブしたところへ差し掛かると、そこには地層が幾つも重なった泥岩が連続していて、不思議な眺めだった。これを過ぎると花巻大橋、更にその向こうにはJR釜石線の鉄橋も見える。あの2つを越えれば今日の目的地、花巻ももう少しだ。怪しくなってきた空を眺めながら僕は漕ぎ続けた。
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花巻大橋を越え、釜石線の鉄橋が近づいてくるとゴーゴーと激しい瀬の音が聞こえてきた。カヌーの両脇に腕を立てて自分の体を持ち上げ、少しでも先が見えるようにする。 ”う~~、すごい瀬だ。2級と3級の中間ぐらいだなぁ、やだなぁ~。そう言えば何年か前、あそこで地元の漁師が死んだって本に書いてあったなぁ”と狼狽しつつも素早くコースを選ばなくてはいけない。 ゴ~~~という音が段々と大きくなり僕をビビらせる。エライコッチャ、エライコッチャと焦りながらカヌーを瀬に対し真正面に向け、下っ腹に力を入れ〝行くぜ”と呟き選んだコースに突っ込む。 その刹那、滅多に通りそうにない2両編成の釜石線が頭上を走って行く。チラッと見上げると小学生らしき男の子が、僕を見てアッというような顔をした。僕も目が合い、アッというような顔をしたが、目の前には荒れ狂うような瀬がオイデオイデしている。 次の瞬間、体が大きく跳ね上がったかと思うとすぐに叩きつけられ、顔面に冷たい水がぶち当たる。「ウヒョ~~~~~!!!」僕は我武者羅にパドルを漕いでバランスを取った。気が付くと無事に瀬を脱出していた。 それは一瞬だったが、日頃緊張感のない生活をしている僕にとってなかなかのスリルだった。 空はいつしか曇天となり、僕は宮沢賢治が名付けた花巻のイギリス海岸の端っこへ上陸した。盛岡から約45キロだ。 イギリス海岸とは渇水した時のここの河原の風景が、イギリスのそれと似た泥岩の奇観を呈していることに由来するそうだ。ただ、この日は水かさはあったため、その姿を見ることはできなかった。
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コスモスの咲く芝の上にテントを張っていると、観光客らしきカップルが写真を撮りながら冷たい視線を僕に投げかける。キキーッとタクシーが停まり、出てきた運ちゃんが、熟年フルムーン夫婦にガイドしながらこちらをチラチラと見ている。イギリス海岸はもっと向こうのはずなのに、何でみんなここへ来るんだろうと不思議に思っていると、近くの看板に「ここがイギリス海岸」と書いてあった。 端っこだと思っていたのはこちらの勘違いで、僕は宮沢賢治ゆかりのイギリス海岸のど真ん中にテントを張っていたのだ。 しかし、その芝と言い、コスモスと言い、眼下を流れる北上川と言い、そのロケーションは野宿者憧れの、と言った感じなので僕は死んだふりをしてテントを張った。見方を変えれば観光客ご一行も、「おお、さすがイギリス海岸、カヌーにテント、実にブリティッシュ、絵になりますなぁ」等と言いながら、パシャパシャ写真を撮れば良いのである。 まぁ、でも、そこに佇むのは、ど~見ても薄汚い三十路ジャパニーズの僕なので、実にブリティッシュ、とはいかないか。。。 街に出る。 見知らぬ街をウロウロするのは好きだ。何となくその土地の雰囲気が路地裏から伝わってくる。30分も歩けば、そこが自分の肌に合うところかどうか何となく分かってしまう。不思議なものでアチコチ旅してきたせいか、そんな風になってしまった。 そして花巻は良いところだった。何となく懐かしい気持ちにさせてくれるからだ。 公衆電話で明日の天気予報を聞く。70%雨。土地の人に尋ねても雨。 僕はあっさりこのカヌー旅の打ち止めを宣言した(誰も聞いてないが)。 もうすっかり「雨ニモ負ケテ、風ニモ負ケテ・・・ソンナ人ニワタシハナッテル」という気分だ。 ついでに明日は温泉!ということも、これまた別に誰も聞いていないけど宣言してしまった。花巻には幾つもの秘湯があるのだ。やっぱり旅の終わりは温泉に限る。 こうなったら後は酔っぱらうだけである。北上の流れを見ながら、戻りガツオのタタキとツブ貝の刺身を肴に、一番搾りをグビグビ飲む。ウマイ!シアワセ。 川の近くで生まれ育ったせいか、川を見ていると落ち着く、ビールがあると更に落ち着く、カネが無くても腹が減ってても落ち着く。 日が暮れてテントに入り、ヘッドランプの光を頼りに本を読み、ウイスキーを舐める。シアワセ。 いつの間にか眠ってしまったが、途中、雨音で目が覚める。ポタポタというテントに当たる雨音が気持ちいい。そして雨音は僕を再び眠らせた。
■4日目
雨の中、テントとカヌーを撤収。昨日頼んでおいた宅急便のトラックが取りに来てくれる。 電話で「イギリス海岸にいる服部です」と言うと、応対してくれた女の子が真面目に「では、明日午前中にイギリス海岸に伺います」と言ったのが可笑しかった。それに宅急便の運ちゃんも何故か、「どうぞ」と言って三色パンをくれたのも可笑しかった。 温泉は数ある秘湯の中から、案内所のオバサンが勧めてくれた大沢温泉にした。花巻駅からバスで1時間、山合いの渓流、豊沢川に面した一軒宿の露天風呂だ。 建物は宿のオヤジも知らないと言うほど古く、休憩室には、ここへ遊びに来た少年時代の宮沢賢治の写真もあった。湯治客が多いため障子で仕切られた和室がたくさんあり、その間の細い廊下を縫うように行くと渓流を臨む混浴の露天風呂。ここでも圧倒的にジイサン、バアサンだが、雨中の風呂は最高である。 この宿は素泊まり2,000円、夕食1,500円から、布団300円、毛布100円、ストーブ700円、枕10円など、細かく料金表に書いてあった。 花巻駅に戻り、〆として立ち食いそば屋で450円のじゃじゃ麺を食う。みそダレが美味い。 高校生の集団と一緒に鈍行列車に乗り東京を目指す。 またいつか、続きを下りたい。 終                           
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honyade · 4 years
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(5月31日まで開催中)【フェア】人から紐解くiPS細胞
代官山 蔦屋書店 営業時間について 5月11日(水)~当面の間 11:00~19:00
■代官山 蔦屋書店ご入店に関して ・1号館2階 映像フロアでのレンタル対象商品は「新作のみ」とさせていただきます。 ・3号館2階 音楽フロアはご利用いただけません。 ※お客様およびスタッフ同士の距離感を十分に取れる空間の確保・維持のため、入場制限を設ける場合がございます。 その場合は整理券を配布いたしますので、ご案内の際は指示に従ってくださいますようお願い申し上げます。 ※大変恐れ入りますが、マスクを着用していないお客様のご入店はお断りしております。 ※休店日や営業時間、当日のご案内方法は予告なく変更となる場合がございます
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iPS細胞研究所所長の山中伸弥さんをはじめとした研究者の方々や、京都大学総合博物館で行われる特別展「iPS細胞、軌跡と未来―こだわりの研究所を大解剖―」の関係者の皆様が、ご自身の人生で現在に至るまでに「刺激を受けた本」の数々を紹介教えて下さいました。 それぞれコメントも頂いておりますので、これが皆様にも刺激となれば嬉しいです。
———- 京都大学 iPS細胞研究所 所長 山中伸弥
『宇宙英雄ローダン・シリーズ』K・H・シェール他(著)ハヤカワ文庫SF 子どもの頃、夢中になって読んでいました。科学の力で問題を解決していく登場人物にあこがれたのが、今の仕事の原点かもしれません。日本語版が600巻を超えた今でも続きが出ている人気作です。
『星新一のショートショート』 環境問題、人口増など現代にも通じる社会問題に鋭く切り込んだ作品が多く、読んでいて刺激になります。
『仕事は楽しいかね?』デイル・ドーテン(著)きこ書房 アメリカ留学から帰国後、仕事に悩んでいたときに読んだ本です。思うように研究が進められず、研究を続けるかどうか悩んでいた私に、仕事を楽しむことを思い出させてくれました。
『FACTFULNESS』ハンス・ロスリング他(著)日経BP 科学者にとって、自分の偏見を捨て、データと真剣に向き合うことは非常に重要です。これは科学者以外の方にも言えることだと思います。この本は、世界のいろいろな事象を思い込みに惑わされずに見つめる訓練にとても役立つと思います。
『理不尽に勝つ』平尾誠二(著)PHP研究所 仕事をしていると、理不尽な目にあうことはたくさんあります。そんなときに手に取る本です。著者の平尾誠二さん(故人)とは友人として深い付き合いがあり、仕事の進め方やリーダーシップについて、多くを教えてもらいました。この本は、彼から教わったことを思い出させてくれます。
———- 京都大学 iPS細胞研究所 所長室 中内彩香
『阪急電車』有川浩(著)幻冬舎文庫 片道わずか約15分という阪急今津線の乗客の人間��様が優しいタッチで描か��、映画化もされた大ヒット小説。人にはみな、それぞれが主役の人生のドラマがあるという当たり前なことにふと気づかされると同時に、(誤解を恐れずに言うと)「人って悪くないな」と思わされます。人間関係に少し疲れたときに読むと、ほっこり温かな気持ちになれる一冊です。
『僕たちの戦争』萩原浩(著)双葉文庫 何の接点もない戦時中の少年と“今どき”の少年が、ひょんなことからタイムスリップして互いの時代を生きる様子を描いたフィクション小説。背伸びしない、少年の目線で当時を想像しながら本の世界に没入し、現実世界に戻った後も、当時の人が急に今の私たちの日常に迷い込んでくるとこの世界はどう見えるのだろうと想像を膨らませました。当時を懸命に生きてきた方たちのおかげで今があるということを改めて考えさせられました。
『チーズはどこへ消えた?』スペンサー・ジョンソン(著)扶桑社 いつから変化を恐れ、前に踏み出すのをためらうようになってしまったのだろう。常に起きる変化にどう適応するかは自分の考え方次第。物事をシンプルに捉え(自分で勝手に複雑化しない!)、柔軟に行動し、冒険を楽しむ。「新しいチーズ」探しの旅を始める勇気をこの本からもらいました。心が弱くなる度に読み返すと背中を押してくれる、私の良き伴走者です。
『Newtonニュートン』ニュートンプレス 親が愛読していたこともあり、物心がついた頃にはページいっぱいに広がる鮮やかなビジュアルに惹かれて、わけもわからずページをめくっていました。今思えば、それが知らず知らずのうちにサイエンスに興味をもつきっかけになったように思います。読者を「追いていかない」工夫が凝らされ、また号のテーマによらない最新の科学情報も得られるので、おすすめです。
『SNOOPY COMIC SELECTION』チャールズ・M・シュルツ(著)角川文庫 1950年から描かれ、スヌーピーをはじめ愛くるしいキャラクターが人気の漫画。ほのぼのとしたやりとりに心を癒されるときもあれば、子どもの他愛のない一言が、大人が目を背けがちな真理をついていてハッと気づかされるときもあります。読後の爽快感がたまらず、休日の午前に読みたくなる作品がたくさんあります。
———- 京都大学 iPS細胞研究所 臨床応用研究部門 准教授 池谷真
『神様からの宿題』山本育海他(著)ポプラ社 私たちの研究室では、進行性骨化性線維異形成症という筋肉組織中に骨ができる難病の研究に取り組んでいます。この本は、患者である山本育海君と、そのお母さんの手記です。患者さんとご家族が抱える苦悩、葛藤、決意などの思いが込められています。毎日を頑張って生きようという気持ちになります。
『細胞の分子生物学』ブル-ス・アルバ-ツ他(著)ニュートンプレス ミクロ系生物学が網羅されている、大学レベルの教科書です。大学合格が決まった後、すぐに購入しました。当時、第2版で、現在は第6版になっています。時に読本として、教科書として、辞書として、そして枕として大活躍しました。
『最強マフィアの仕事術』 マイケル・フランゼーゼ他(著)ディスカヴァー・トゥエンティワン 実際に裏社会で成功を収めた著者が、仕事のやり方を経験に基づいて書いた本だそうです。『マフィア』の法則ですが、現実社会に通じる内容が数多く含まれています。思わずニヤッとしてしまうような箇所もあり、心が疲れた時に半分娯楽として読むとちょうど良いかと思います。
『ブラック・ジャック』手塚治虫(著)講談社 医学に関心がある漫画好きの方なら、一度は読んだことがあるのではないでしょうか。法外な治療費を請求するなど理不尽に思える内容もありますが、治療不可能と思える患者を一人の天才外科医が治していく姿に憧れました。
『ドラえもん』藤子・F・不二雄(著)小学館 あんなことやこんなことを、夢の道具で実現してくれるドラえもん。何より、その発想の自由さに、子供心をくすぐられました。ただ同時に、サボった分は後から自分でやらないといけないという人生訓も教わりました。
———- 京都大学 iPS細胞研究所 未来生命科学開拓部門 講師 中川誠人
『ぼくらの七日間戦争』宗田理(著)角川文庫 中学生が大人の言いなりにならないために一致団結して向かい合う青春ストーリー。テンポがよく、ワクワクしながら一気に読んだ覚えがあります。秘密基地などは誰もが幼い頃にあこがれたのではないかと思います。本の終わりも痛快・壮快で良く覚えています。映画にもなりましたね。純粋に楽しめる本だと思います。
『三国志』横山光輝(著)潮出版社 最初に横山光輝さんの漫画から三国志の世界に入りました。様々な登場人物がそれぞれの信念を持って中国統一に向けて戦います。武力だけでなく知力、政治力、一番は人力(魅力)に優れている事が重要だと感じました。そういう人の周りには優れた人が集まり大きな力となるのだと思います。小説は数種類読みましたが、書き手によって内容や登場人物の性格が違っているのが面白かったです。個人的には劉備・関羽・張飛の義兄弟の絆にあこがれます。
『ザ・ゴール』エリヤフ・M・ゴ-ルドラット(著)ダイヤモンド社 ストーリー仕立てで、製造現場の生産管理の手法「制約条件の理論(Theory of Constraints)」を易しく学ぶことができる本。研究には関係無さそうであるが、ラボマネージメントの観点から非常に参考になりました。考え方によって様々な状況に対応できる理論になり得るのではないかと感じました。
『英語は3語で伝わります』中山裕木子(著)ダイヤモンド社 初心者でも、なんとなく英語を勉強してきた人でも参考になるのではないかと思う。いかにシンプルに英語で表現できるかを学べる。英語を難しく考えがちな思考を変えてくれる良本と思います。
『マイケル・ジョーダン物語』ボブ・グリーン(著)集英社 引退した今もなおバスケットボール界の神様と言われているマイケルジョーダン(MJ)の伝記。コート上での神様MJの圧倒的な支配力、そして人間MJの比較をうまくまとめた本。超一流の人には何か共通するものがあるのだろうと感じた。
『細胞の分子生物学』ブル-ス・アルバ-ツ他(著)ニュートンプレス 通称「セル」と呼ばれる、生物学の基礎教本。最初はその重さにやられてしまいますが、制覇した時の達成感は忘れられません。生物学の研究を志すなら、要点をまとめたエッセンシャル本もありますが、是非「セル」を読んでください!筋トレにもなります(笑)
———- 京都大学 iPS細胞研究所 国際広報室 和田濵裕之
『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ(著)ハヤカワepi文庫 幹細胞を使った再生医療に関係する仕事をしている者として、とても刺激になりました。ノーベル文学賞受賞で話題にもなりました。どういう未来が私達にとって良いのか、考える際の参考になると思います。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹(著)新潮文庫 村上春樹さんの作品はどれも好きですが、特に印象に残っているのがこの作品。読むのにとても頭を使いました。こんなに頭を使ってしんどい思いをしながら読んだ作品も珍しいですが、しんどくても次を読みたいと思わせる魅力があります。科学的コミュニケーションにもそうした魅力をうまく持たせたいです。
『パラサイト・イヴ』瀬名秀明(著)新潮文庫 科学コミュニケーションを行う上で、科学に興味のない人にどうやって科学的な内容を伝えたらいいのかと悩む中で参考になった一冊。物語の中に科学を散りばめることで、より多くの人にアプローチできるのではないかと思うきっかけとなりました。
『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス(著)ハヤカワ文庫NV 刻々と変わっていく文章の書き方が、日々変化している主人公の知能を反映していて、初めて読んだ高校生のときには衝撃を受けました。時が経過して、アルツハイマー病の患者さんの病気が進行していく姿にも共通するように感じ、改めて読み直したいと思った一冊です。
『ルリボシカミキリの青』福岡伸一(著)文春文庫 大学3回生の時に学生実験で数週間だけ指導をしていただいた福岡伸一先生。雑談の中にあふれる知識に魅了され、4回生の研究室配属では福岡先生の研究室に入りたいと思いました。残念ながら他大学へ移られてしまい、念願は叶いませんでしたが、あの時に感じた魅力、科学コミュニケーションにとって大事なことがこの本には現れているように思います。
『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス(著)ハヤカワ文庫NV 刻々と変わっていく文章の書き方が、日々変化している主人公の知能を反映していて、初めて読んだ高校生のときには衝撃を受けました。時が経過して、アルツハイマー病の患者さんの病気が進行していく姿にも共通するように感じ、改めて読み直したいと思った一冊です。
『銀河英雄伝説シリーズ』田中芳樹/藤崎竜(著)集英社 舞台は宇宙ですが、歴史ものの小説のような作品。世界には様々な価値観があり、いずれも正しく尊重されるべきであることを強く意識するきっかけとなりました。
———- 京都大学 iPS細胞研究所 国際広報室 志田あやか
『松風の門』山本周五郎(著)新潮文庫 中3の国語のテストで収録作『鼓くらべ』に出会い、すぐに図書館へ走ったのを覚えています。自分の信念ではなく、人にどう見られるかを基準に行動してしまいそうになったときに読む本。
『壬生義士伝』浅田次郎(著)文春文庫 吉村貫一郎という新選組隊士が主人公。「お国のため」が第一だった武家社会を背景に、自分の軸を持って生きるというのはどういうことかを教えてくれる本。
『どうなってるのこうなってるの』鈴木まもる(著)金の星社 父に毎晩読み聞かせをしてもらって育ちましたが、リピート率No.1はこの本でした。「どうなってるの」で十分タメてから「こうなってるの!」と進むのがコツです。
『脳死・臓器移植の本当の話』小松美彦(著)PHP研究所 著者の小松氏は、大学に入って最初の講義の講師でした。「私を含め、他人が言うことを検証し建設的に批判できるようになれ」と言われたのが記憶に残っています。この本は、小松氏自身がそれを実践した著作。脳死のとらえ方に新しい一石を投じてくれるはずです。
『完璧じゃない、あたしたち』王谷晶(著)ポプラ文庫 あたりまえのことなんですが、男との出会いだけが、女にとっての「特別」であるはずがないのです。恋愛、友情、尊敬、女同士のいろいろを描いた短編集。
———- 京都大学 情報環境機構/学術情報メディアセンター 助教 元木環
『観る―生命誌年刊号Vol.45~48』中村桂子(著)新曜社 中3の国語のテストで収録作『鼓くらべ』に出会い、すぐに図書館へ走ったのを覚えています。自分の信念ではなく、人にどう見られるかを基準に行動してしまいそうになったときに読む本。
『壬生義士伝』浅田次郎(著)文春文庫 JT生命誌研究館の季刊冊子が年に一度まとめて発刊されるうちの一冊。研究者である編者が様々な分野の専門家と繰り広げる対話の連載や各種記事が、生命科学関連の研究を非専門家向けに、丁寧なテキストとビジュアル表現で伝達されており、研究を伝える時の態度や工夫が感じられるのが楽しい。この号は、自分が大学で、研究を対象にデザインをし出した頃にとても参考になった。
『図解力アップドリル』『[動く]図解力アップドリル』原田泰(著)ボーンデジタル この2冊のシリーズは、「読めばすぐできるような」デザインマニュアルだと思い手に取ると、期待を裏切られる。タイトルやぱっと見からではわからないが、知識や情報、あるいは経験を「視覚的に表現し、伝達する」ことの本質を、頭と身体を使い、実践的に掴んでいくための道しるべとなる本になっている。デザイナーだけでなく、科学を対象とするデザインに関わる人にもとても参考になるし、続編の「動く」の方は、映像作成の考え方の基礎にもなる内容で秀逸。
『患者はだれでも物語る』リサ・サンダース(著)ゆみる出版 CiRA展とは別で展示の準備中に出会った先生からいただき、とても面白かった本。医師が患者の問診や診察でどのように診断をしていくかが物語として描かれている。デザイナーが、制作依頼を受けて、相談、制作していくデザインプロセスとも通じるところがあることが興味深い。
『デザインに哲学は必要か』古賀徹 (著)武蔵野美術出版局 デザインの実践者かつ教育者である著者らによる論考がまとめられており、デザインの裏側にある考えを想像する手がかりになる本。実践者が自ら「デザインとは何か」と問い、表現している言葉に共感を覚える箇所が多数ある。CiRA展に関わったデザイナーたちは確かに、(うまく言語化できていなかったとしても)フレキシブルでかつ一貫した考え方を持って、制作に携わっていたのだ、と想像してもらえるかも。
『優しさごっこ』今江祥智(著)理論社 私が紹介するまでもない有名な小説であるが、小学生の頃以来、時々読み返す本。いつも関西(京都?)の言葉で綴られる光景やモノローグや会話の表現、時々出てくる食べ物の描かれ方に引き込まれるが、タイミングによって、娘、親、別の登場人物など、別の視点で読んでいる自分と、行間や背景に想像できる範囲が変わっている自分に気がつかされる。装幀や挿絵(初版は長新太さんによるもの)を含めたブックデザインに興味を持つきっかけとなった一冊でもある。
『アイデア No.355』アイデア編集部(編)誠文堂新光社 もし古本でも手に入るなら、「《特集2》奥村昭夫と日常」のページをみてほしい。CiRAマークの相談を受けブラッシュアップした、グラフィックデザイナー(当時京大メディアセンターの客員教授であった)奥村昭夫氏のデザインに対する態度、大学の中の様々な仕事の中でCiRAマークの制作に関わることになった様子に触れることができる。
『美術館は眠らない』岩渕潤子(著)朝日新聞社 大学生の頃、授業中ある先生から「美術館に興味があるならこれを読んでみたら」と紹介され出会った本。筆者がアメリカの美術館での研修員時代の体験談を軸に、アメリカでの美術館を支える組織、社会のあり方が紹介されている。今とは時代背景は異なるが、美術館や博物館を運営する(もちろん展示を行うにも)仕事は多様な専門性があって成立していること、国によって異なる歴史や社会の仕組みが、美術館や博物館にもとても影響をすることを教えられた一冊。感染症の関係で、美術館や博物館にまつわる社会の仕組みも再編されるのではという目で読むこともできる。
京都大学総合博物館 准教授 塩瀬隆之 『ちいさなちいさな王様』アクセル・ハッケ他(著)講談社 わたしたちの国と人生が真逆で、たくさんの知識や先入観をそぎ落とし、どんどん好奇心あふれ、いたずら心であふれる最期を迎える国の王様の話。「可能性で埋め尽くされた想像の毎日を捨て、なぜ斯くもつまらない一つの正解だけを追う日々を生き急ぐのか」と王様にわたしたちの社会が笑われている。
『エンデの遺言』河邑厚徳(著)講談社+α文庫 ファンタジー童話『モモ』や『はてしない物語』で知られるミヒャエル・エンデの晩年の関心は、「お金を根源から問い直すこと」。お金がお金を生む投機的な世界に心を奪われた現代社会を風刺し、思想家シルビオ・ゲゼルの「老化するお金」を研究した。『モモ』の世界に登場する時間貯蓄銀行の灰色男は、あくせく働きすぎの現代社会を40年も昔から見透かしていた。
『木を見る西洋人 森を見る東洋人』リチャ-ド・E・ニスベット(著)ダイヤモンド社 問題を細分化する西洋流の要素還元的なモノの見方に対して、全体の調和を保とうとする東洋流のモノの見方こそが大切で、どちらかに優劣をつけようというのではない。大局観を失った近視眼的なモノの見方を揶揄する言葉であるが、それが心理的な差異にとどまらず、経済、法といった社会制度の好み、宗教観にまで影響を及ぼしていると指摘する。
『不実な美女か貞淑な醜女か』米原万里(著)新潮文庫 ロシア語通訳の米原万里が、要人通訳などにおいて意識した技術と視点を紹介する本。見栄えはよいが中身を伴わない文章と、見栄えが悪くも中身を正確にとらえた文章、使いこなす文章は常にその間を揺れ動いている。翻訳に限らず、あらゆる言葉の表現をするうえで、悩ましくも筋の通った考え方を示す。文章そのものも明解で極めて参考になる。
『バーバパパのがっこう』A・チゾン/T・テイラー(著)講談社 学校を舞台にしたバーバパパシリーズ。監視を強める学校に反発する個性豊かな子どもたちに手をやく大人。見かねたバーバファミリーが、ダンス好きな子���絵が好きな子、メカが好きな子それぞれの個性にあった学びをとどける。興味をもったところに、学校の数学の先生がかえってきて一緒に教え、結果として質の高い学びを得る物語。監視を強める学校教育への警鐘と言える。
———- 特別展「iPS細胞、軌跡と未来 こだわりの研究所を大解剖」デザイナー 東南西北デザイン研究所 石川新一
『生き物の建築学』長谷川尭(著)平凡社 泥臭い、生きるためのデザインをしたいと思った時に読むといい本
『さあ、横になって食べよう』バーナード・ルドフスキー(著)鹿島出版会 既成概念にとらわれていないか?と自分に問う時に読むといい本
『鯨尺の法則』長町美和子(著)ラトルズ 日本文化で癒されたい時に読むといい本
『Usefulness in Small Things』Kim Colin and Sam Hecht(著)Rizzoli アノニマス(無名性)デザインで参考になるいい本
『メイカーとスタートアップのための量産入門』小美濃芳喜(著)オライリー・ジャパン 私などデザインをする人が将来の野望ために読むといい本
———- 特別展「iPS細胞、軌跡と未来 こだわりの研究所を大解剖」デザイナー 奥村昭夫
『伊���十三選集』伊丹十三(著)岩波書店 若い頃、伊丹さんの本は読む楽しみとともに、元気づけてくれました。 今、伊丹十三選集を楽しく読んでいます。
『瑞穂の国うた』大岡信(著)新潮文庫 文中の、夏目漱石の”レトリック など弄している暇はないはずだ、ア イディアがすべてだと思うよ、ということです。”の言葉に、製作の確 信を得てたびたび思いおこしています。
『常用字解』白川静(著)平凡社 常に手の届くところにあって、漢字と言葉の散策をしています。
『黒田泰蔵 白磁』黒田泰蔵(著)求龍堂 圧倒的に美しい白磁、緊張とすみきった空気を感じ、頭と心を研ぎす ましてくれます。
『大衆の強奪』セルゲイ・チャコティン(著)創元社 “戦争に対する戦争”のスローガンに代表されるように、伝える事の 本質と、言葉とシンボルの力を教えてくれました。
【プロフィール】 京都大学iPS細胞研究所 iPS細胞研究所所長の山中伸弥さんをはじめとした研究者の方々や、京都大学総合博物館で行われる特別展「iPS細胞、軌跡と未来―こだわりの研究所を大解剖―」の関係者の皆様が、ご自身の人生で現在に至るまでに「刺激を受けた本」の数々を紹介教えて下さいました。 それぞれコメントも頂いておりますので、これが皆様にも刺激となれば嬉しいです。 2006年に誕生し、2012年に「成熟した細胞を、多能性を持つ細胞に初期化出来る事を発見」した事により、山中伸弥/J・B・ガードン両氏が2012年のノーベル生理学・医学賞を共同受賞した事で、一躍再生医療の救世主と目されることになった「iPS細胞」。 そんな新たな存在を医療の現場に応用させる為の研究を行う「京都大学iPS細胞研究所(CiRA)」は2020年で設立から10周年を迎え、同研究所の軌跡と未来を記した『iPS細胞の歩みと挑戦』(東京書籍)も刊行されます。
会期 2020年5月11日(月)~2020年5月31日(日) 時間 営業時間通り 場所 蔦屋書店1号館 1階 ブックフロア 主催 代官山 蔦屋書店 共催・協力 京都大学iPS細胞研究所 東京書籍
問い合わせ先 03-3770-2525
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nyantria · 7 years
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関連部隊 100部隊  関東軍軍馬防疫廠     (秘匿名満州第100部隊、後に徳25207部隊と改称) 動物を対象にしていたので直接関係はないかもしれませんが、 一応731部隊の関連として説明します。 動物、主として軍馬の病気を扱う部隊がありました。 通称100部隊と呼ばれるこの部隊は、 1933年(昭和8年)に新京(現・長春)の寛城子に臨時病馬廠として設立されました。 その時点では関東軍の獣医部長だった高橋中佐が責任者で、 高橋部隊と称していました。 1936年(1938年?)に天皇の軍令によって孟家屯に移転して正式に関東軍軍馬防疫廠となりました。 *在満兵備充実に対する意見 1936年4月23日、関東軍参謀長板垣征四郎から 陸軍次官梅津美次郎への要望書   陸満密大日記より 第24、関東軍軍獣防疫廠の新設増強 関東軍にて臨時編成しある病馬廠を改編して傷病馬の収療、防疫、細菌戦対策の 研究機関たらしむる如く関東軍軍獣防疫廠を新設す 駐屯地は寛城付近とす その時点での規模は敷地面積1000m×500mで、 隊員、研究者はすでに800人、中国人労働者は300人を越えていたと言われます。 日本国内における本部は陸軍獣医学校です。 ちょうど陸軍軍医学校の下部組織として731部隊が出来たと同じ様に、 獣医学校の下部組織として100部隊が出来た事になります。 初代廠長(部隊長)は高島一雄獣医大佐です。 敗戦間際に改正された部隊番号を見ると731部隊の第25201部隊から始って 100部隊が25207部隊と続き番号になっています。 部隊長 並河才三(猛家屯に移転するまで、そして高島の後再度部隊長になる)   高島一雄獣医大佐   若松有次郎獣医少将 隊員の数は906名で組織は 庶務部(総務部)             2つの課があり、総務・内勤・医療・衛生等と、栽培実験場を管理した 部長 村本金彌少佐 実戦研究部門で、いくつかの課があった。 細菌とウイルス実験を通して、鼻疽、炭疽、伝染性貧血 および植物ウイルスの効能を解明し伝染させる方法を確立した。 馬および動物の血液一般に関する病気の研究 第1部 細菌戦の分野における調査業務、細菌やウイルスの研究と製造を行う部隊の主要部門 将校20名、研究員30名、技術員50名が勤務 第1課  細菌戦、細菌再生産の方法    炭疽、鼻疽、牛疫、羊疫 西田研究員 山口実験手 平桜全作 他約20名 第2課  病理学 家畜の病毒(鼻疽、羊痘、牛疫、炭疽) 第3課  実験動物の管理、繁殖 第4課  有機化学(毒薬) 第5課  植物-作物の病気 第6課(後で出来た)  細菌戦準備の諸問題 三友一男 40名から50名の人員 第3部 血清ワクチンの製造 第4部 動物飼育 第5部 教育(別名531部隊)  獣医学,細菌学,植物学,化学 敷地  東西 1.5キロ 南北 2.5キロ 建物  敷地内に約100 捕虜収容所  約40人 死体焼却炉  3基 支部  大連、ハイラル(後に克山に移転)、チャムス、拉古、東安、鶏寧、東寧、四平 獣医部隊でしたから馬やその他の動物に関する病気を研究することが表向きでしたが、 実際は731部隊と同じように細菌戦の研究実践を行ない,人体実験もしていました。 敷地内には大きな墓地があり、焼却されなかった動物や人間の死体が埋められました。 *1949年農民が巨大な墓地を発見して  当局に「人間の死体が長さ50メ-トルの土地一筋に埋まっている」と報告し、  別な農民は「現場では人間の死体が層をなしており、  深さ6尺から1丈の深い所にもまだ人間の死体があった」と断言しています。 「100部隊の資金」資金は2つのル-トから入っていました。 1944年4月からの1年間で東京の陸軍省から60万円、関東軍から100万円が入っていました。 「証言」 * 関東軍獣医部長 高橋隆篤中将の証言  (ハバロフスクク裁判の尋問) ....私のなした仕事は、第100部隊の実践活動を指導して、 細菌兵器、とりわけ鼻疽、炭疽、牛疫、羊痘、モザイクのごとき 急性伝染病病原体の大量生産に関する指令を発したことであります。 私は第100部隊が細菌兵器の大量生産に関するこれらの任務をいかに遂行しておるかを監督し、 その目的をもって毎月約1回自ら第100部隊におもむき、 細菌用兵器の製造についての私の命令の遂行状態を査問しました.... * 安達誠太郎供述書(1954年8月16日) 私は1932年8月5日、中国東北奉天に来て、関東軍臨時病馬収容所所長に任じられた。 関東軍臨時病馬収容所は100部隊の前身だった。 1931年11月に出来た。初代所長は獣医中佐斧紀道だった。 2代目所長は私で、1933年7月までつとめた。 第3代所長は獣医中佐高橋隆篤で1933年8月から35年7月までだが、臨時病馬廠と改称した。 第4代所長は獣医大佐並河才三で1935年8月から37年7月までだった。 第5代所長は獣医大佐高島一雄で、一般に高島部隊と呼ばれており、 1937年8月から39年7月までである。 第6代所長は獣医大佐並河才三で、1939年8月から41年7月までだった。 彼がこの職についた当初は並河部隊と称していたが、途中で100部隊と改称した。 第7代所長は獣医少将若松有次郎で1945年8月までつとめた。 1941年に100部隊が秘密部隊となってから、私は細菌戦の研究と準備のためであることを知っていた。 しかし関東軍の命令とあれば提供しないわけにはいかなかった。 太平洋戦争において勝利するためには、悪いことでもしなければならないと考えていた。 * 福住光由 獣医 100部隊は基本的に細菌学者、化学者、獣医学者、農業技師で構成され、 主要任務は謀略および細菌戦に備えることだった。 家畜および人間の大量殺戮のための細菌並びに猛毒の大量用法に関する研究を行っていた。・・・・ これらの毒薬の効力を検定するため、家畜及び生きた人間に対する実験を行って来た。 * 畑木章 研究助手 家畜と人間を用いた実験によって細菌の活動を研究し、 その目的で部隊は馬、牛その他の動物を有し、また人間を監獄に収容していた * 韓蔚  日軍細菌殺人罪行的見聞録から (中に出てくる中村は石井四郎の妹の夫、中村吉二軍医中佐) 100部隊の実験室はすべて暗号で呼ばれていた。 1つの培養室に入るには5つのドアを通って行かねばならなかった。 ある実験室へ行くと、白い服を着た1人の日本人が引き止めて言った。 「今丁度試験中なので、本室の人員でなければ立ち入り禁止だ」。 それから中村はまた私を地下室の実験室の参観に連れて行った。 地下室には、温度計、湿度計、洗浄器具が設けられていた。 手を洗い、白衣に替え、マスクをつけて、ゴム靴を履き、消毒をしてからようやく中に入る事を許された。 実験室では、何列も並んだ様々な大きさの電解槽を見たが、 中は薬液に浸された寒天で、細菌を培養する養分となるものであった。 2列目の台の上には大小様々な培養皿が置かれ、両脇には大きなオ-ブンがあり、 さらに蛍光灯と高圧滅菌器等の設備があった。 さらに中に進むと、両側はみな暗室になっていた。 中村は私に、これは培養室だと説明した。 生物桿菌は普通の培養器で生長し、酸��を必要とし、運動しないとも言った。 もしこれを暗く湿気の高い場所に置けば、数ヶ月でも、長ければ数年でも生かしておくことができる。 もし完全に乾燥した場所におけば、2、3日以内で死んでしまう。 この種の菌は、米穀綿花の上に生存しており、80度にまで過熱すれば死亡するが、 耐寒力は極めて強く、冷凍してもほとんど無期限に生存している。 さらに50mあまり行って左に曲がり、地下の暗室に入った。 この時空気は急に重苦しくなり、吐き気を覚え、目を強く刺激する悪臭がして自由に呼吸ができなかった。 見ると廊下の両側におよそ10幾つかのドアがあり、すべて赤と黒の暗幕で覆われていた。 このとき真ん中のドアが開けられ、3人の白い服を着た日本人が、 中から手術車を押して出てきて、 上には白い布がかけられ高く積み上げられた少なくとも3体の死体があった。 さらに前へ進むと、両側の部屋には大小様々な大きさの乾燥器が並べてあり、 別の1部屋の中はすべて化学薬品であった。 ほかの数ケ所もすべて見張りがいたばかりでなく、すべて立入禁止の札が掛けられていた。 中村によると、中の人員はすべて指定された仕事の範囲があり、 勝手に歩き回ることは許されず、規律は特に厳格であった。 注:数年働いていた王慶有によれば、そばに立ってちょっと見るだけでも駄目で、   日本兵に見つかったら直ちに撃ち殺された 100部隊の細菌生産能力は、年間で炭疽菌200キログラム、 鼻疽菌100キログラム、赤��菌2~30キログラムだと言われています。 「100部隊が実践した細菌戦」 *1942年、ハイラルの北約120キロのソ連国境で行なった「三河演習」 第1部長村本金彌少佐の指導の下に、ソ連に流れ込むデンブル河に鼻疽菌を散布し、 地面を炭疽菌で汚染した。 *1000頭に近い馬を、炭疽菌で感染させ、モンゴル人を使ってソ連国境まで運搬,ソ連の領域に放した。 *1945年、ソ連国境の南ハン・ゴ-ルで、細菌を雪の上、草の上に放置して、 動物がペストや羊痘にいかに感染するかの実験をした。 * 人体実験は731部隊と協力し安達野外実験場を使用した 牛疫に感染した牛の肉を粉末にして飛行機から散布する 人体実験の被害者は部隊衛生所の隔離室に収容し、 各種細菌や毒物の実験をし、験後は殺害し部隊裏の家畜墓地に埋められました。 敗戦時、すべての捕虜を殺害し、証拠を消すために施設を爆薬で破壊して部隊は新京を出発、 安東経由で8月21日、京城(現・ソウル)で解散しました。 戦後GHQは731部隊でさえ調査しなかったのですから当然100部隊もよく調査されていません。 敗戦後の8月20日に馬やネズミに細菌を感染させて逃がしています。 そのため戦後長春一帯はペストを始めとして色々な病気が流行したそうです。
100部隊(関東軍軍馬防疫廠) | おしえて!ゲンさん! ~分かると楽しい、分かると恐い~ http://www.oshietegensan.com/war-history/war-history_h/5902/
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kamizake · 7 years
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音MADLIVEを終えて
はじまりは昨年末でした。
そのころはZ会合作でのピンチヒッターを終えて 丁度人生の危ない時期だったのも相俟ってしばらく合作系はいいかなあと思っていました (合作参加する度に思ってる) 。そんな折、ボトルさんからMIXでのイベント参加のお誘いを頂いてちょっと悩んだんですがボトルさんの言うことは断れないので参加することに決めました。こんな人をリクルーターにしてるのはズルい。
参加するのはいいんですが人生が危ないのでどう考えても遅刻は免れません。そこで自分よりも前に流すMIXを予め貰ってMIXのMIXをすれば〆切が必ず伸びるし遅れても前の人に責任転嫁できるな!と安易に考えて音MAD-mix-mixというテーマに(音MAD-mix-mix.aioという一発ネタしか作ったことがなくて音MAD-mixを上手く組む自信が無いというのも半分)。
「例えばの話なんですけど、あらかじめ自分より前に流すパートを貰って音MAD-mix-mixするのは運営の倫理的にアリですか 2016/12/18 22:13」
「主催がアリって言ってるんで大丈夫です! 2016/12/18 22:18」←地獄の始まり
薄々感づいていたことですが結局は一番最後に配置されて全員分をMIXをすることになってしまいました。テーマの性質上そうなってしまうのは仕方ない。
そして全てのMIXが出揃ったのが4月中旬でその頃自分のMIXの音声が出来上がったのは5月3日、動画が出来上がったのが放送の1時間前。ギリギリですみません。
人生も危なかったのですが無職状態で制作に集中できたのは結果として良かったと思います。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm31203931
肝心のMIXなんですがいろいろあったので忘れない内に書いておきます。まず全員分を繰り返し聞いて後からネタが拾えるように繋げそうなところとか気に入った所を各パートごとにEvernoteにメモしておいて、そこから拾い上げて組んでいきました。文字に書き起こすと聴いて探すより効率が良いのでこういう形をとることは多々あります。
綺麗にMIXすることには自信が無かったので意味を繋げる方向で拾いました。
全体の動画の構成としてはLIVEで流れたmixをさらにmixにしたワケですから生放送を直撮りしてメタっぽい演出に。視点は視聴者と同じで、放送を見ていたらもしかしたら自分にも同じものが作り得たかもしれないという距離の近さを感じられるとグッと一体感、LIVE感が盛り上がるかなあという意図もアリ。
作り方としては放送画面のスクリーンショットをベースに数字とか文字を書き換えてディスプレイ解像度に合わせて全画面表示したものを撮影。結構モアレが出たりホワイトバランスが崩れたりしたんですが分かりやすい直撮りのシンボルだなと感じて撮り直さずそのままにしました。来場者数とかコメントに関しては2016年の音MAD作者が選ぶ今年の音MADランキングを参考に適当な数字にしたんですが、低く見積もり過ぎました。10選のコメント数:5082は放送事故でコメント欄めちゃくちゃ遊ばれてたのでかなり盛られた数字だったという風に記憶しているので3000くらいが妥当かなと思ってたんですが音MADLIVEでは最終的に来場者数5248、コメント数16858という大記録なのでビックリしました。
タイムテーブルをマジメに受け取ってた為に4時間ジャストでスタートしてたんですけど余裕の無さからくる打ち合わせ不足でした。いろいろ藻掻いて頂いたみたいですみません。結果として真贋判定の材料になってたのは面白かった。
また今回はかれをばなさんの REAPERのプロジェクトをAEに読み込むスクリプトを使って基本的な部分に関しては30分くらいでできました。ありがとうございました。今回サブプロジェクトを多用したのもありそのまんまではエラー吐いて読めなかったので、AEに渡す用に整形させたRPPを作ってその場を凌ぎました。あとアイテム刻んだところはレイヤがエライことになるので、REAPERのトラックで明示させたらAEでコンポに纏めてくれたりしたら楽だなあと思いました。
直撮り演出自体は音MADには以前から使われてるんですか他より珍しいくらいで核心的な意味がある演出かと思うとなんか違うなあと漠然とした反感を抱いていたので、こういう機会にカウンター(?)をかけられてよかったです。(以前sm29338106で音MAD風味に対するカウンターをかけた時もそうだったんですが機会待ちで出てないというネタが結構あるのでなんとか形にしたい)
(開幕)
「音MADLIVE.XXX」の放送は終了しました。 皆さんご視聴ありがとうございました!」終わヘリ
メモには『音MADLIVE.XXXは終わるが音MADLIVE.MIXがここから始まる』って書いてあるんですけど.XXXは3つのエックスでミックスみたいなツイートを見かけてそういう意味も拾えるなら.MIXの改変ロゴとか作らずに素直にXXXのままで出した方がいいかなと思ってボツ。以下メモ内は二重鉤括弧で。
1.ヤマダリオンP
・リックとサムの音MADLIVE.XXX(このライブに賭けようぜ)おさらいコーナー
(BPM180)
ここらへんを一番最初に作ったんですが、後がまったく続かなくてかなり放置しました。銀河最強の戦士は個性が強すぎてなかなか混ざらないなあと少し前にブライガー(sm17431300)に影響を受けたB'zのメガミックスが頓挫した時も思った。
2.ふーふー
前述の通りここらへんは最後の方に繋げました。重ねるというより繋げる感じが序盤では有効かなと。この後にBPM145まで落としていかねばならなかったので減速していたところを拾えて大変助かりました。
(BPM145)
3.youtt5
音声を作ってるときはちょっと強引かなと感じていたんですがバンバードからの絶望信号機が青空で繋がるアクシデントで助かりました。音を映像が、映像が音を補完しあってるといいですね。
4.namacream
新宝島繋ぎ。
『 ・純度の高い爆発 』
5.たいうお
一番それっぽいところが繋がってくれて助かりました。基本的にその作者の音MAD-mixを混ぜてるワケで元の音MADを混ぜてるワケではないという建前があるので、そのチョイスが、マッシュアップが、映像がその制作者らしいと思う部分をなるべく取り上げるように心がけました。しかし混ぜる過程であっちが立てばこっちが立たずというのが多発したので偏りも出てしまって全員等しく、というワケにはなかなかいきませんでした。
6.水無月☆★
ココらへんを2番目に作りはじめました。けっこう長い間ベースになってます。
目が光るパンダのおもちゃRemixが好き。
(BPM145→212)
7.感想
しりとりで構成された音MAD-mixなのでこれを拾うためには拾い上げた先でもそのルールを成立させる必要がありました。
『 ・(再構成してもしりとりが成立するようにしたいなあ) 』
『 ・静かな山Xまっまま(ここすき) 』
わざとじゃないしー!貴様は貴様だしー!→静かな山→ままっままっま→丸亀製麺(ん)
丸亀製麺 so Happy がタイトルだけど画面にロゴがドンっと出るので「ん」で打ち切っていいなと思ってここでしりとり終わり!というより続けられない。感想さんの出番が少なすぎるけどもっと構成の精度を高めないとmix-mixでしりとりはこれ以上は難しい。
やや小さめの窓を中央に置く映像構成が繋がりそうだったのでパンダRemixのスケールをあわせて、音MADLIVEロゴのマスクを移動させて窓の境界を意識させる感じに。
8.影莉央
・丸亀製麺
前の料理対決と意味が繋がるアクシデントに助けられました。
『 ・ あまいキャベツ(音MAD作者)に汁が絡んでご飯が止まらないよ母さん! 』
9.キャベツ
『 ・ あまいキャベツ(音MAD作者)に汁が絡んでご飯が止まらないよ母さん! 』
・きのこと鶏の味噌バンギラス
・BMBを持ってくる予定だったので初期段階ではきのこと鶏の味噌バター砂消しでした。
・前述の通りやっぱりBMBもってきて上の運営コメントにキャベツって書いてあると面白いかなと思ったんですがどうにも合わなくて B4Uッキを持ってきて七枚MIXを重ねることでBMBが乗っかってるのでそこでノルマクリア。
 ・低音がパンダRemixの後だと少しさみしいので、後ろでふーふーMIXの冒頭のBadAppleキックが流れてます。
9.七枚
結構長い間ベースになってます。
・B4Uッキ
放送では被りチョイスに対してやや否定的な雰囲気もあったり、制作時にセットリストを共有してなるべく被らない方向で運営が進めていたりしていたのですがmix-mixによって肯定的に捉え直すことができて満足。
音MAD-mixでは映像を合成モードでもって重ねるというのがよくあるのでそれをさらに合成モードで重ねるとワケ分かんなくなりそうだったのでロゴでクリッピングするというのは最初の方には決まってました。B4Uッキでは映像のスケールも全く同じだったので、ロゴの境界をシャドウで意識させて重ねているのに同じ!というのを見せたかった。
10.owatax
StereoToolで中央定位のキック系を取り出してオートメーションで徐々に(キタキタキターの部分)サイド部分に遷移させていく。これは多用してます。
あとマスターにMStereoScope挿してると定位感の確認に役立ちました。体調によって聞こえ方が結構変わるので。
カットアップ系だと顕著なんですがBPMを上げれば上げるほど音程の違いが気にならなくなってくるっていうのを実感しました。どちらかと言うとメロディよりもリズムが合っているかどうかが重要になってくる感じ。
いろいろ拾いたいところがあったんですけど結果として短くなってしまった…
11.菅沼
(BPM212→150)
映像がMIX制作者を現しているのでどこを拾ってもよかったんですげと後ろの伯方の塩にCCOが入ってるのでKYMで合わせたら馴染むかな~と。
せっかく十字傷があったので阿良々木君につけときました。
12.メスシリンダー
最初はここにメスシリンダーMIXを置くつもりはなかったんですが直前の「 シャア!謀ったな! →測ったな!→メスシリンダー」というネタを思いついてから入れました。 
13.エルフィン
・The setting 3700繋ぎ
・イキスギ字幕オーバーライドはCute告知動画リスペクト
音が詰まったMIXなので何も重ねてはいません。すこしマキシマイザーかけたくらいです。
Watch He.vanvoxの上でエルフィンと書かれてる状況にしたかったというのもあります。
14.なで肩
カットアップなんですが、このまま混ぜるとリズムが混濁してしまうので、ダッキングさせて拍の頭を強調、後ろのセーラは裏拍を強調させることでリズムを合わせるというより作る感じでした。
15 新ドナP
(BPM150→160)
『・ 殺人の時効は15年 』
やっぱりここが一番耳に残ってるので。混ぜることでダークからポップな雰囲気になってるのがより一層ダークで個人的に満足。
映像に関して、スペシャルは 「カテゴリには収まり切らないMIX」とブロマガにあるのでじゃあ物理的に枠から出してみたいと思ってこうなりました。
元々の動画がAppleっぽいデザインなのでこの為に中古のiPhone4Sを4000円で買ってきました。初めてAppleハード買ったので知らなかったんですけどSIM無いとアクティベーションできなくて文鎮と化すんですね。アクティベーション用のSIMも追加で買うハメになって一層Appleが苦手になりました。
4Sのアスペクト比は2:3だったので16:9の動画も少し改変して合わせました。最初は新ドナPから通話着信が来るっていう映像の予定だったんですけど着信が来て音楽プレイヤーの画面に移るとなんか自分が切ったみたいでおかしいなと感じたので画面外からスライドさせて入れました。
手の震え止まらない。
16.BAN長
ちょっとチルアウトっぽい雰囲気からリニアワイプ。
主宰なので満を持してという雰囲気が欲しかったのでこの位置に。
17.月面ドリルライナー
提出された音MAD-mixで戦争するならこのMIXが一番パワーがあるなあと感じたのでこのパワーを活かして反撃する感じで。
『 ・親父おかわり!→ダメ。 』
ここで全員分出したので後はこのパワーを活かしつつ着陸させる方向でMIXを続けました。
『 ・LIVE中の内輪ネタ(零)は→ダメ。 ダメ。 ダメ。 ダメ。 ダメ。 ダメ。 』
『 ・なんでも(メスシリ)ダメ。 ダメ。 ダメ。 ダメ。 ダメ。 ダメ。 』←ボツ
・うしろでふーふーMIXを流しつつゆく年くる年の参道に繋ぐ。中央の厳島神社の参道は2017年のゆく年くる年から新規で。告知動画を出してしまったので4つ全部入れた。
・朱色の大鳥居
『 島では新年を祝って人々に贈る縁起物があります。 宮島名物の、しゃもじ。→お尻(生クリ)/月面のお尻 』
『 ・うんこちんこまんこおしっこ コンプリート』
・こんにちはお尻ちゃん
音声が無理のある繋ぎだったけど映像の構成に助けられました。
(BPM190)
『 ・900(七枚)から引っ張ってきて月面とMIX 』
ト マ ←偶然出来た部分だけど好き。
由美かおると月面MIXの900がバッチリ合ってくれて助かりました。
『・やめるんだボルケニオン!→う~い セルニモン!(入れどころなさそう) 』←入れどころなかった。
『 ・これ本当トラウマ・・・・・・ 自演コメ 』
ちゃんとコメント数も1増えてる。
『 ・ あまいキャベツ(音MAD作者)に汁が絡んでご飯が止まらないよ母さん! 』
・数字MIX→「1・2・3・4!!(Cute告知)」
・かぐや姫のパーフェクト神田川教室
この辺りで南こうせつに移らないと冗長も冗長になってしまうのでここに入れた。最初は入りが綺麗に繋げられないなあと思い月面MIXを改めて見直して、音を綺麗にすることに囚われてはいけないという初心を思い出しました。ありがとうございます。また助けられました。
「 おとうさんにMAD中継に変えられてしまいました。 」という演出で月面MIXでは視点が一つ上に移るのに対して、ここでは同じ映像なのに視点が一つ下がるというのが面白いと思いました。スタッフロール等のED演出の為に下げる必要があったのです。
・よーし世の中にはどんな男がいるんだ?
『 ・G2RベースにMCハマー(Cool_PR)連呼、CoolPRを南こうせつの映像で全て置き換える。 』
Cool告知をフレーム単位でトレースして、トランジション等も最低限必要なところは再現しました。フォントはよく検証してないんですけど多分源ノ角ゴだと思います。ファーストチャレンジスタート→ラストチャレンジスタートに改変。
『 ・しつこいくらい南こうせつ 』
『 ・アンケートにご協力ください。今日の番組はいかがでしたか?「1:南 2:こ  3:う  4:せ  5:つ」 』←入れ忘れた。惜しい。 
『 ・エンドロールの名前を全て南こうせつで書き換える(例:ボトル/bobineKS→ミナミ/minamiKS) 』
名前改変ネタは割りと最初の方に考えていました。Cute告知制作した■■さんが匿名で参加ということで、ブロマガや告知動画では「匿名」や「???」とされていたのがきっかけでした。そこが個人的に嫌な方向に伊尻られていたので、全員を南こうせつで上書きしてしまえば荒れないし、誰が匿名なのか分からないし、出来る限り平等に扱いたいという気持ちもあるのでこの試みは個人的には成功したと思ってます。
作ってる途中は休憩動画での参加者も改変して載っけようと思っていたのですが全員把握してないし、△▼という改変不可最強HNが出てしまったので運営の方で休憩動画の参加者リストを作ってくれていたのは助かりました。
・CaGOuYo!MaGniRAcLES
自分は音MADLIVEはニコ生でのイベントという認識だったのでこういう動画になったのですが、ちょくちょく実際のハコでやると思ってる人がいて(告知動画にもクラブっぽい映像がある)LIVEといってもいろいろ認識があるんだなあと感じていました。それが「これは音MADのLIVEじゃない」と言われないかちょっと気がかりで、なるべくLIVEという認識について広く取り上げたくなり、ニコ生風の映像、クラブ系の映像、バンド、コンサート、オーケストラなどいろいろ取り上げた内の一つとして、ここに挟みました。南こうせつラッシュからの温度差で上昇気流が生まれるかもしれないという狙いもあります。
『 ・爆発オチ特有のモジャモジャは事実上の南こうせつ 』
爆発って記号的に終わるんだなっていうのが分かっていい。え、これで終わり?感が出にくい。もちろん一瞬だと通り過ぎていくけどキチンと差をつけてハッキリと分かるくらい爆発爆発爆発なら感情が一方向に揃ってくれる、と最近は思っています。
爆発音はnamacreamMIXから拾って、そのままだとアタック感に欠けるのでオケヒ音源を後ろで鳴らしてます。
黒髪ドナルドが爆発後の漫画的なモジャ表現ぽかったので爆発ラッシュに3カット発煙ドナルド(南こうせつ)を入れてます。3カット目は顔のマスクだけ描いてあとはぐにゃぐにゃじゆうに歪。ドナルド核爆発。
あと最後は「攻撃戦だ」ではなく功勲国家合唱団による「我らの銃剣の上に平和がある」の映像です。ぜひ聴いてください。
一通り書いてみて、やっぱり全体的にアクシデントに頼り過ぎですね。でも改めないんだろうなあ、いつか間に合わなくなるぞ、と言いつつ…
作ってる時はしばらく合作系はいいかなあと思いましたが、終わってみるともう一回くらいなんかしてもいいかなって気分になりますね(毎回思う)。イベントに関わった全ての皆さんありがとうございました。楽しかった。 
終わり。
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thedevilsteardrop · 7 years
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familie komplex 前
 毎朝繰り返し君が死んで、目がさめる。
  夢見としては最悪の部類だと思う。
 何度も夢で君が死ぬところを見て。
 目がさめれば、君のいなくなった現実が残されてる。
 寝ても覚めても逃れられない喪失に、それこそ最初の数回は目覚める度絶望した。その時期の自分の行動は思い出せない。でもどうにか今まで生きてるんだから、一応日常生活を送ってたはずだ。
 その夢が幾度も繰り返されるものだと気付いてからは見るのが辛くて眠りたくなくて、けれど何日も眠らずにいることができるわけもなくて、ほんの浅い眠り数分の間に君の死ぬところを繰り返し見る。
 また今日も彼女は死んでしまった。
「……」
 呆然と瞬き、天井を見上げていた視線をぐるりと回して起き上がる。がらんとした部屋に一人。淡いベージュのカーテンは閉めっ放し。朝だというのに照明を点けて、寝そべっていたソファからベッドに移動した。先日、病院から自宅に帰って来たのだ。
 以前は彼女と二人で暮らしていた部屋。一人では少し広い……そうは言っても俺達はしょっちゅう身を寄せあっていたから、この部屋は元から広々としてたはずなのに……今あるそれは開放感とかじゃなく、どこに居ればいいんだろう、という戸惑いと身の置き場の無さ。
 彼女は生活の一部だった。俺にとっての家族。精神論でもきっとそうだし、社会的にもそうだ。俺達は一応、姉弟ということになっていて、同じ大学に通い、同じマンションで下宿していたから。
 家族だった。
 学友で、親友でもあった。
 平和な国で、傍に居るのが日常で。肌を触れ合わせるのが基準のゼロ距離から都合によって間を取るような、近しい距離感の間柄。その相手が、今、ここに居ない。
 シーツに横たわって息を吐く。重い息。心臓が引き絞られる感覚。痛い。ぎゅう、と。
 はあ、息を吐く。
 苦しい。着替えなきゃ。苦しい。身体が重い。指先すら動かすのが億劫だ、重い、沈んでるな。いや、投げ出してる、身体を。ベッドに。
 そろそろ大学にも顔を出さなきゃ、講義の出席が足りなくなりそうなのに。
 彼女が居なくなってから、この部屋で生前二人過ごした時間を思い返してばかりいた。何度も、何度も繰り返し、夢に対抗するように。遺品整理はしていない。部屋中どこを見ても彼女を思い出す。まるでこの部屋だけ時間が止まっているみたい。
  俺と彼女が出逢ったのは高校生になってからだった。だから、遡る記憶の量は、生まれて以来ずっと同じ家に住んでるようなきょうだいよりも、うんと少ないんだろう。俺にとって彼女は自分より先に生まれて家族を形成していた部品ではなくて、最初から一人の人間だった。
 綾瀬郁深という、個人として、俺はすぐに彼女を好きになった。
  くっついていても苦にならなかった。
 一緒に眠ったベッド。ダブルサイズ。二人とも小柄な方じゃないから常に身体が触れる。寒い時は俺が郁深の抱きまくらにされることもあった。絡められた脚の片方が俺の身体の下敷きになるのを、自分が勝手にやってるくせに朝になったら「しびれた」と文句を言ってくる。
 もこもこと気持ちのいい毛布に二人してくるまって、しょっちゅう二度寝しては昼を迎えて「そろそろ学校行く……?」なんて不真面目な問いかけをし合う。午前講義の日は、帰ってきてすぐ横になろうとすると「シャワーを浴びろ」と怒られた。郁深はシーツを一週間に一度だけ洗う。他の日はなるべく汚さないように。だからホコリっぽいままベッドに上がるのは禁止。互いの身体に触れ合うときも、必ずシャワーは浴びてからベッドに入った。
 ここで眠るせいで郁深の夢を見るのかも、と思ってソファに移動して眠ってもだめだった、同じことだった。眠れば同じ夢をみる。夢を見る度に違う時期違うシチュエーションで、郁深は死んで……俺は泣きながら目を覚ます。
 ソファにも、床にもデスクにもキッチンにも風呂にも 郁深の記憶がある。
 どこに居たって彼女のことを想ってた。だからきっとどこで眠っても俺は夢を見る。
 ふらつく足で立ち上がってベッドからまたソファへ。座り込んで、服を脱いだ。
 着替えよう。
 外に出られる格好ではあるけど、一応、数日間も着たままでいた服装で大学には行き辛い。
   大学の友人達は、郁深が死んでから俺を避けるようになった。……避けるというと語弊があるかな、腫れ物を扱うかのようになった。落ち込んでる俺に対しどう接すればいいかわからないのかな。
 焦って話しかけてきた友人の一人が、失言したせいもあるんだと思う。
「まあ気を落すなって!そのうち立ち直れるからさ」「俺も肉親が死んだ時は大変だったけど、時間に身を任せるしかないと思うぞ」……
 その時俺はどんな表情をしていたのか、俺の顔色をうかがった友人達は全員おどおどと視線をそらし、口を噤んだ。
 自分でも青ざめて返す言葉を無くしたのがわかったし、足元が崩される感覚にふらついて彼等から後ずさってしまった。
 以来、まともに話し掛けられていない。こっちから話す気力も無かった。
 姿を見かけても気まずく挨拶を交わすだけだ。
 「落ち込んでる時ほど支えあうのが友達ってモンだろうによ」
「……そんなに深い仲になることばかりじゃないよ。日々楽しく過ごすためだけの相手だって居ていいと思う、 ……?!」
 自然と答えて
 ばっ、と顔を上げる。
 大講義室の隅、机の上に突っ伏していた姿勢から声のした頭上へ視線を。
 郁深が笑ってる。
 いたずらっ子みたいに目をきゅうと細めて、口を開けて快活にわらう。節の目立つ手指がだらしない姿勢をした俺の頭を撫でた。スキンシップの好きな彼女らしい仕草。俺はよく、他の友人にも躊躇無く触れる彼女の両手に嫉妬するのに、その同じ手で宥められ機嫌が治ってしまうんだ。
「楽しいだけの相手だっていいさ。けど、そっから踏み込めるようになったなら心強いもんだよ」
「……そういうことなら俺には郁深が居るからいいよ」
 そういう相手は、おいそれと出逢えるようなモノでも無いし。でしょ?
 郁深はかけがえがないんだよ。
 頭を撫でていた手を片手で掴んで、口元に引き寄せる。振りほどかれることは無い。腕を伝って身体の揺れが伝わってきた。くすくす。
「それで?何をそんなに落ち込んでたって?」
 郁深の笑いは朗らかで楽しげで、けど、茶化す響きも軽んじられてる様子も無くて、心地良い。つられて穏やかな気持ちになる。
 人が笑顔になるのは好きだ。それが郁深なら尚更。
 ……なのにさっきまで俺は、楽しそうにしてる誰もかれも煩わしく、ぶち壊してしまいたいと思ってた気がする、俺さえ加わらなきゃ楽しい会話もできるだろうに、自分から話しかけたら彼等の日常まで壊すんじゃないか、とも、思ってたような。
 なぜ?
「………んん…ん、…?」
 なんでだったかな。
 まぁいいや。郁深の笑顔見たらモヤモヤも消し飛んじゃったみたいだ。
  「夏休みになったら、川遊びしに行こうぜ?お前の運転で!」
 帰り道、下宿までの道を二人で歩く。天気がよくて日の光は眩しいくらい。午後の講義が終わったばかりの暖かい外気。これからどんどん気温が上がっていくだろう。
「いいね。海か山行きたいって思ってた……けどいきなり山道運転させる気?」
 俺はようやく春休みに免許を取ったばかりで、まだ整備された一般道にすら慣れてない。高校卒業してからの一年は引っ越しとか忙しいことが多く、免許取ってる暇がなかったんだ。大学の近くで下宿してるせいで普段は運転する必要も無いし。
「ちょっと不安じゃない?」
「私が助手席に居るんだからへーきだよ。疲れたり無理そうなとこあったら代ってやるし。それに山道は歩行者が居ないから」
 その分安心だろ、と郁深は言う。
 最悪事故っても自分たちが死ぬだけだ、なんて、冗談めかして。
 ああでも、それだったら
 一緒の車で一緒に事故で死ぬなら、まぁ、いいかもしれない。
 一人だけ遺されたりしないなら。
 ……なぜかそんな風に思う。
「なら、それ用に服でも買いに行こうか」
「そうだな、今からでも……」
 直後のことだった、郁深の言葉が切れて俺は突然抱きかかえられた。
 声を上げる間もなく全身に衝撃が走る。歩道を普通に歩いてたはずが、弾き飛ばされて車道へ投げ出された。クラクションの音。急ブレーキ、耳を劈くそのあとで、ゴ リッと嫌な感触をアスファルトに伝えて俺の寸前で車は止まった。止まった、止まったんだ。一瞬写真にうつしたように静寂があって、この状況を理解しようとして、頭より先に目だけがぐるぐると回る。身体は重い、痛い……動かせない、
 郁深に抱えられているから……
 なに?
 何が起きた?
 一瞬のできごとだった
 まさに今まで歩道の上を歩いてたはずなのに
 彼女が歩いていた、歩道の建物側を見る。車から運転手が降りてきている。建物の裏手にある駐車場から出てきたところのようだった。ここは塀が死角を作って、 運転手からは歩行者が見え辛い。そうでなくても歩道を横切る前には一時停止だけど。だけど。だけど郁深は、ぶつかったんだろう、ぶつけられた、車に、それで身体を飛ばされて、俺がそっちに居たから、車道へ突き飛ばさずに、あえて抱きしめて、俺の頭を守った。
 腕と胸の感触がする。俺を抱えている郁深の身体は顔に押しあてられているのに、彼女の香りはしない。代りにひりひり、じくじくと粘膜を焼くような鉄臭さが鼻をつく。
 血の匂い。
 俺の腰をはさむように彼女の脚がある。胴体に巻き付けるように、ガッチリとガードされていた。片足は俺の下敷きだ。首を支え頭に回された腕の中で、それでも俺の身体は痛い。身体動かせない。痛い。俺でさえ痛い。郁深の、デニムに覆われてたはずの、細くてしなやかな、野性味のある脚。きっと ぼろぼろ だろう  な。
 起き上がれないまま、俺は呆然と、動かし辛い頭をずらして
 彼女の顔を見上げようとした。
 あるのは血だまりだけだった。
   自分の絶叫で目を覚まし、俺の脳みそは覚醒についていけなかったのか地面に投げ出された直後の悪夢を描き続けた。跳ね上がった全身は見たくないものから逃げようとするかのごとくにもがいて、両手で髪を掻きむしる。
 郁深、郁深の頭、が 
 ―――なに、俺は、何を
 俺は
 違う、見えてない、頭の中にノイズが、あって
 どうして   どうして 歩いてただけだ、それなのに…… うそ、だ、ろ
 ひ、ひ、と呼吸が上滑りして、動かせなかったはずの身体は「事故にあった直後なのに無理やり跳ね起こされた」せいで酷く震え、平衡感覚を失い倒れ込む。とても立ち上がれない、とても一人では……
 手をついて、はっと気がついた。
 ……―――自宅の、ソファの上だ。
「……」
 呆然と瞬き、目前まで迫っていた座面を押し返して座り直す。ひゅうひゅうとおかしく鳴る咽を押さえて、呼吸を落ち着けようとする。さっき見たはずの光景が過るけれど、違う、あれは、夢だ。落ち着け。視線をぐるりと回して確認する。ほら、やっぱりここは自宅で、リビングのソファの上だ。午前八時。あれは夢。うそだ、と思った、その通り。だって、
 郁深はあんな死に方、していない。
 ……うそだ、った。あれは、夢だ。
 夢……
「っ……どうして……」
 ぐう、呻き声が漏れる。涙が溢れ出す。痙攣していた身体の震えは嗚咽に変わって止まらなかった。どうして。
 どうしても、君が居ない。
 また今日も彼女は死んでしまった。
「……」
 目が痛い。頭がぼーっとする。
 どのくらいそうしていただろう。ソファーの上。時計が滲む。
 たぶん、そろそろ、学校に行かなきゃ。
 麻痺した頭がそんな風に、理性のケースへ形を嵌め込んで蓋をする。日常から死を追い出そうとする。
 シャワーでも浴びてこよう。
 夢だ、
 また夢だったんだ。
   脱衣所で服を脱ぎながら、シャワーを浴びながら、こんなところにまでしっかり刻まれている郁深の存在に、のどの底が熱く痛む。心臓が引き絞られる感覚がして、頭上から落ちる水に打たれながらタイルに踞った。
 この体勢も懐かしい。
 高校生あたりの俺は精神的に他人をシャットアウトしていたから、郁深のことも最初から信頼できたわけじゃ無い。同居を始めても数ヶ月は、挨拶以上は会話も難しい有様だった。シャワーの水が温まるのを待たずに踞りながら浴び、郁深に会わないようにそそくさと自室に隠っていたっけ。
 だけどある日偶然ばったり、風呂場の脱衣洗面所で鉢合わせして、俺の血色の悪い、寝不足で目元に隈が沁みついた顔と、とても健全とは言えない裸を見た郁深はどういうわけか恥じらうこともなく俺を押し倒し、「なんだよこれ!」と叫んだのだった。
 思わず口を開閉しながら呆然としてしまった。
「あ、あの……郁深さん、」我に帰り慌てて身体を隠そうとしても、跨がられていて微動だにできない。のんびりと入ってきた態度からおそろしいほどの瞬発力で郁深の動きが変わって、気付いたら押さえつけられていた。
 なにこのひと、すばやいしちからつよい。
「お、おれ全裸、あの、これはちょっと」
「痕!なんだよこれ!」
「はい?」
 その時俺は本気で意味がわかってなかった。あと?なに?と思っていると、彼女はじっと検分する目つきのまま俺と視線を合わせ、
「私が悪かった」
 いきなりそう言い放った。
「……え」
「母さんとお前のこと誤解してた。はやく縁を切ろう……いっそ海外にでも行こうか、姉弟二人なんだから身軽だぜ?どこへだって行ける。お前他言語話せないだろ?この際実地で覚えに行くか?なあ?」
 ……ちなみに郁深は英語がペラペラってやつだ。技術関係の専門的な用語まで知っている。やたら難しい資格を史上最年少で取得したとかで、文科省かどっかから表彰されてた。けど、通ってる学校自体は俺のよりも幾分「レベルが低い」なんて言われるとこで、郁深のことを頭いいとか賢いなんて話を聞いたこともなかった俺は、全裸をみられたくらいでそこまで悟られるとは思っておらず、突然こっちの事情を察されて酷く狼狽えた。全く取り繕えなくなり、身体も全裸ならば心も剥き出しで。
「私はお前にそんなことした奴を許せない。許せないからな」
 ギリ、唇を噛み締めて、いつも朗らかに細まっている双眸に晒される。ギラギラと見開かれる内側、激しい怒りがこっちまで伝わって、熱に満たされていくようだった。
 この時に思ったんだ。
 ああ、この視界に選ばれた物だけが、俺にあればいいや、って。
  結局俺は高校を中退し、住居も郁深が通っていた大学の近くに下宿を借りてそこへ二人で引っ越した。通学が楽になった~と喜ぶ郁深を見て嬉しくなって、ここが新しい故郷になるかなとそわそわ探索に繰り出した。バイトと家事をしながら通信で高卒資格を取り、郁深と同じ大学を受験して……。
 一緒に大学に通えるようになって。
 本当に幸せだった。人生の中でいちばん、嬉しいことや楽しいことに満たされた時間だった。
  シャワーからあがって洗面台に映った自分と向き合う。朝の光が蒼白いのも相俟って、いつぞやのごとく血色の悪い、寝不足で目元に隈が沁みついた顔してる。
 あの時は裸で押し倒されて跨がられて、まったくとんだ衝撃もあったものだけど、今となってはそんなこと慣れきってお互い半裸程度は何度も目撃してるなんてな……そういえば、郁深は私服がダサくて、脱いだ時の方が断然いいよなんて、よく茶化してたっけ。自分の格好に無頓着な郁深はそんな皮肉も笑い飛ばしていた。気にならないんだろう。クローゼットには、着替えやすい丸首のシャツと作業用のツナギしか入ってない。まぁ俺も人のこと言えないけど。
 箪笥から引っぱり出した下着を身につけた途端、ガラッと戸が開く。
「あ、出てたのか。歯磨きしようと思って」
 あの日みたいに動じないですたすた入ってくる郁深に後ろから抱きついて、俺は考えてたことを提案してみることにした。
「今度何か対外用のお洒落な服でも買いに行こうか」
   二人ともが思い立ったら即行動、計画を練るよりもとっとと身体を動かし始める質なおかげで、俺が思いつきで口にしたショッピングの予定もすぐさま実行に移された。丁度今日は午前だけに講義が集中してる、午後から大学の最寄り駅周辺にあるショッピングモールにでも行こう、そう郁深が提案して、俺もノった。
 講義を終えたその足で郁深の居るゼミ室に寄って、二人連れ立って大学を抜け出す。その日受けた授業ででたハインリッヒの定理が頭に残ってた。ので雑談のネタにした。
 1:29:300の法則。1の重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する。
 小さなミスが重なって重なって大きな事故になる。
 例えば一時停止違反の車とスピード違反の車と、たまたま二人で会話しながら歩いていて一人の時よりも警戒の薄かった歩行者。きっと違反者はこれまでに300くらいの回数違反してたのかもしれない。歩行者はそれまでに楽しい会話を何度も交わして帰路についていた、その日も、いつも通り楽しく家まで帰れると信じて。
 ……なんのデジャビュだろう、縁起でもない。
「講義の本筋じゃなくて余談って感じだったんだけどさ。題材より印象に残っちゃって」
「確かに何の題材に出てきたかわかんねーけど頭に残るな。定理って言うだけあるけどそっちがオマケなのか。ほんとに学部選択によって全然内容違うんだなー」
 講義の内容から、他どの講義取ってるんだ、ゼミはどうするのか、という類の話、そして徐々に目的の買い物についてへ話題がうつる。
「お前は何か服買うの?」
「俺はいいかなあ、郁深のが選びたいよ。自分じゃ選ぶ気無いんでしょ?」
「まー自分で選んだらシャツとかジーパンとかシャツとかジーパンとかになるだろうなって思うわけだけど」
「まぁ俺も自分で自分の選んだらただのシャツになるかな」
「あとジーパンとかな」
 話しながら、ふと前を向く。
 自分達が歩いている歩道沿いの建物。裏手の駐車場に通じる、塀に覆われた乗用車の出入り口。塀が死角を作って、出てくる時に運転手から歩行者が見え辛い。歩行者からも、車は見え辛い。
「……郁深、」
「……?どうした」
 呼んで、腕を掴み、歩調をゆるめる。そこから車が出てくるか確認してから通ろう、そう思って、
「……!」
 出入り口直前まで進んでいた足が止まる。少しだけ息を噛む。突如目の前に飛び出してきた車は、歩道を横切って車道の直前で止まった。黒いワゴン車だ。車線を流れてくる白いトラックの方ばかりを見ていた運転手は俺達に気付かないままに、トラックが通り過ぎた後平然と進行方向へ顔を向きなおして車道へ出て行く。
「……危なかったな」
「……」
 さっき見た、デジャビュ。もしも、あのまま歩いていたら……
「……デジャビュのシーンを回避できたのって、俺初めてかも」
「え?……今の?」
「うん。マジで危なかったんじゃねーかな」
「すごいな、サンキュ。私もデジャヴはそのシーンになってから気付くな……」
 ほっとしたように笑う郁深と、妙に落ち着かない気持ちになる俺と。顔を見合わせて笑う。
   サイズとデザインが気に入ったのだけ選んで試着する。似たようなのと着比べる。互いに茶化しあって褒めあって貶しあう。やっぱり郁深は全裸がいいとかソレを言うならお前こそ全裸がいいとか、俺の裸が良いなんていうのは郁深くらいだとか、……傍から聞けばあらぬ誤解をされそうだ。いやあらぬこともないけど。実際見てるし。
 郁深は俺にニットとオーバーカーディガンとインナーを買った。俺は郁深にニットとスキニーパンツとガウチョを買った。
「俺のはいいって言ったのに結局買うんだもんな」
「これなら文句無い。似合ってたぜ」
「郁深も。スタイルがいいから」
「お前ほんとに私の身体好きだな……」
「変な言い回しやめろよ……!」
「照れるポイントがわからん」
  ショッピングモールを出て駅を背にしばし歩いたところで、郁深がふと足を止めた。
「……?」
「どした?」
「……いや……ちょっとね」
 気になって、と彼女は首を傾げる。吹下ろしの風に煽られた前髪がぶわりと浮き上がり、その両目がしっかり見開かれているのが露になった。暴き、検分する目つき。
 固定された視線を追ってみても、その先に何を見詰めてるのかわからない。俺と郁深の視力は殆ど同じはずなのに。俺にはピンとこなくて、郁深だから気付けた何かが、その視線の先にあるんだ。
「なに?気になるのって……」
「悪い、先帰っててくれるか?」
「え、ちょっと、郁深!」
 一緒に行こうか、瞬時、迷って手を伸ばす。風に煽られながら伸びた前髪越しの視界の中で、郁深は迷いなく駆け出していた。しなやかな脚。俊敏に地面を蹴って、一目散、視線を向けていた先へ……
 そして、声を張り上げる。
 気付いた何か、がある方向。
「危ないっ!」
 ぶわり、
 風が吹いた。
  「……っ」
 呆然と眺める、仮設テントの、スチールパイプ?あれが、郁深の方に突然吹き飛んできて、追い越すように俺の方へ飛んできたテント部分が視界を覆って、
 けど、その直前に確かに、郁深は……
 …
 …… 静かだ。
 目前に描かれていた情景は俺の頭が時間差で認識した虚構だったようで、現実の俺は壁にもたれて床に座り込んでいた。室内に風は無く、人の行き交う音もしない。まっすぐに水滴が髪から滴っていく。今目にしているのは鏡の中の自分だった。いつぞやのごとく血色の悪い、寝不足で目元に隈が沁みついた顔。
 ……ただし鏡に映った俺の顔は、郁深によく似た素朴な顔立ちだ。
 郁深が、居なくなった、後の 顔。
 夢だ。
 また、夢、だったんだ。
 そう思ってようやく、は、っと息を吸う。いや、吐いた?にわかに思い出された呼吸は混乱して、自分が吸ってるのか吐いてるのかわからない、
「は、はぁー……、は、あ」
 息を止めてからゆっくり吐け、まずは吐けこういうときは。耳の奥で響いた彼女の声に従う。吐かなきゃ吸えねーんだから吐け、そんで、ゆっっくり吸うんだぞ。
 呼吸を落ち着けながら、時計を確認する。時刻は夜の九時過ぎだ。今日は学校にも買い物にも行って、帰ってすぐにシャワーを浴びた。郁深とは一緒じゃなかった、だって彼女はもう、居ないのだから。
 帰った時はまだ午後七時半頃だったはずだから、いつもより長く眠って……いつもの夢をいつもより長く、見てたのか。
 てことはやっぱり夢の終わりで、郁深は、また……死んでしまったのか。
 強いビル風、仮設テント、スチールパイプ。覆われる視界。
 脱力し、凭れていた壁からずるずると背を横に倒す。なんだか頭が重い、身体も重い。鈍い痛みが動きを妨げてるみたい。……熱が出たのかも。寝てたというより、気絶かもしれない。郁深が居なくなってから、また冷水シャワーで済ませてるせいかな。
「……なんで……居ないんだよ」
 水滴が落ちる。静かだ。心臓の音が、耳障りなくらい。
   熱が出たからと言って、翌日の授業を休むわけにもいかなかった。しばらく引き蘢っていたせいで、これ以上休むと単位が取れない可能性が出てくる。
 一睡もできず熱は下がらなかったし身体もだるいけれど、なんとか身なりを整えて大学に向かった。パーカーとジーパン。不潔でさえなけりゃいいだろ何でも。
 講義室は前方に真面目な学生の集団、後方に不真面目な学生の集団がかたまって、俺はそのどっちにも紛れていく気力がわかず、ぽっかり空いた真ん中あたりの席に座る。寒いような熱いような体感に意識がぶれて仕方無い。せめて解熱剤飲んでくればよかった……なんで思い至らなかったかな、アホか俺は。
 溜息をついた俺の隣の席に、誰かがそっと座った気配がした。控えめな気配の割に、随分近くに座るのはなぜだと思って顔を上げたら、相手は「久しぶり」と俺の肩を叩いたところだった。……友人だった。
「……久しぶり」
「ここ、空いてるよね?」
「……。他にも空いてる席あるけど」
「そう言うなって」
 心配してたんだよ、あんた返信もしないし、下宿も知らないから……と言葉を重ねる友人から、そっと視線を外す。
 まだ一人で居たかったな。
 空いてる席は、最近までずっと俺の右側だけで
 今友人が座ったのは、左側の席だった。
 相手はきっと意識していない。左側は郁深が一緒の時の定位置で、右利きの俺と左利きの彼女の腕が、ノートをとる時ぶつからないために決まって座ってた位置なんだ。
 友人が心配して関わってきてくれたのは、有難いんだろうと思う。それでもつい、その裏の……このままじゃ自分達が気まずいからお前が様子見て来いよ、とか言われたんだろうな、って思惑を、感じてしまって、勝手に落胆して、煩わしくなってしまう。ただの下手な勘ぐりかもしれないけど、でも、そういう感じってあからさまにせずとも伝わるものだ。あまり意識を割きたくない。
 講義は新しい題材に入ってて、ハインリッヒの定理が出てきた。知ってる気がする、なんだっけ……
「なぁ、聞いてる?」
「……講義聞いてた。ごめん、後で話そう」
「……ああ」
 正直なとこ講義終わったらさっさと帰ってしまいたい。
 もう一度溜息を吐く。とうとう悪化してきた頭痛に耐えるためにこめかみを押さえる。
   ボールペンのうしろでぐり、ぐり、と頭痛の波にあわせて額を揉んでいたら、
「もう講義終わったぞ、大丈夫かよ」
 と聞き慣れた声がした。
 大講義室の隅、机の上に突っ伏していた姿勢から声のした頭上へ視線を上げる。郁深が笑っていた。
「あれ、あいつは?」
「あいつって?」
「……さっきそこに座ってた、」
「……どした?そこに座ってたの私だよ?」
「そうだっけ」
「そうだろ。大丈夫かよ?熱でもあんのか?」
「……」
 熱?熱なんかないよ。郁深と一緒に買い物に行く予定なのに……熱なんか出してられるか。
「ならいいけど。行こうぜ」
 ほっとした様子で俺の額に伸ばしかけた手を下し、郁深はきゅ、目を細めてわらう。子供の絵本に出てくる狐みたいな笑顔。
 なんだよ、本気で心配したのか?
 そういうとこ好きだよ。
  「せっかくだし買った服どっか着て行きたいよな~」
 大学の最寄り駅周辺にあるショッピングモールに向かう道すがら。
 雑談は講義の内容から、今どの講義取ってるんだ、ゼミはどうするのか、という類の話、そして徐々に目的の買い物についてへ話題がうつっていった。
「今度の連休、川遊びしに行こうぜ?お前の運転で!」
 そしてとうとう休日の予定にまで話が広がる。
「いいね。初夏の山行きたいって思ってた……けどいきなり山道運転させる気?」
 俺はようやく春休みに免許を取ったばかりで、まだ整備された一般道にすら慣れてない。高校卒業してからの一年は引っ越しとか忙しいことが多く、免許取ってる暇がなかったんだ。大学の近くで下宿してるせいで普段は運転する必要も無いし。
「ちょっと不安じゃない?」
「私が助手席に居るんだからへーきだよ。疲れたり無理そうなとこあったら代ってやるし。それに山道は歩行者が居ないから」
 その分安心だろ、と郁深は言う。
 最悪事故っても自分たちが死ぬだけだ、なんて、冗談めかして。
 はっとする。
 辺りを見回す
 自分達が歩いている歩道沿いの建物。裏手の駐車場に通じる、塀に覆われた乗用車の出入り口。塀が死角を作って、出てくる時に運転手から歩行者が見え辛い。歩行者からも、車は見え辛い。
「……郁深、」
「……?どうした」
 すぐさま郁深の腕をつかんで、一歩、後ずさりながら自分の方へ引き寄せた。
 出入り口直前まで進んでいた郁深が俺のところまで戻って、彼女の居た位置に車のフロント部が突き出してくる。黒いワゴン車だ。歩道を横切って車道の直前で止まった。車線を流れてくる白いトラックの方ばかりを見ていた運転手は俺達に気付かないままに、トラックが通り過ぎた後平然と進行方向へ顔を向きなおして車道へ出て行く。
 黒いワゴン車。白いトラック。
「……危なかったな」
「……」
 ああ、
 これは夢だ。
 きっとまた目が醒める時、郁深が死んでしまうあの夢。
   買い物の間、これが夢だと自分に言い聞かせていたせいで、俺は上の空だった。軽口も少なく、試着も最小限で似合う服を引き当てた俺に、郁深は「シャーマンかよ……」と少し可笑しそうにしていた。
   ショッピングモールを出て駅を背にしばし歩いたところで、郁深がふと足を止める。
 やっぱり、きた。
「……何見てる?」
「……いや……ちょっとね」
 彼女は首を傾げる。吹下ろしの風に煽られた前髪がぶわりと浮き上がり、その両目がしっかり見開かれているのが露になった。
 彼女の見詰める視線の先。今ならばわかる、そこには仮設テントがあった。郁深はアレを見てるんだ。
「気になるのって、あのテント?」
 ついテントを睨みつけながら小声で訊くと、郁深は驚きました、と書いてある表情で俺の方を振り返る。
「よく気付いたな、お前はビルの立地とか風速とかそういうの興味無いと思ってたよ」
 立地……?
「立地危ないの?」
「うーんあれ危ないよな。ビル風あるから、あの位置だと風速オーバーだと思うんだけど」
 俺に負けず劣らず険しい目で睨む郁深に背筋がひやりとして、咄嗟にその肩をつかんだ。走り出されてしまったら俺には追い付けない。捕まえておかなきゃ。
「……なら、設営担当者に伝えた方がいいな。あそこに出てるの、丁度このモールの店がやってるキャンペーンだし、デパート側に報告したらいいんじゃない?」
「それもそうだな。あそこに居る人に伝えてもそ��場で畳むのは難しいだろう」
 納得した様子で踵を返しデパートの方に足を向けた、そこまでしっかり見届けて息をつく。
 ぶわり、
 風が吹いた。
 「あ、やべ。買わなきゃいけない本あるんだった」
「買わなきゃいけない?」
「講義で使うんだってよ。悪いけど先帰っててくれる?夕飯作っといて」
「了解。荷物持ってこうか?」
 デパートに逆戻りしたついでに買い忘れに気付いた郁深は書店に向かった。
 買った服を受け取って、サイフとケータイだけ入った手提げ所持の身軽な状態で送り出す。
 折角だから俺もどっか寄って行こうかな。
  一足先に家に着いて持ち帰った荷物を片付け、俺は夕飯に何を作ろうか考えていた。なんでだか少し気分がいい。郁深の好物でも作ろうかな。
 郁深と「家族」になってから、俺の家事への姿勢は著しく改善された。料理のレパートリーも増えた。
 意識が、嫌だ嫌だと思う意識が。無くなったから、だ。
 面倒だし、サボることもあるけれど、その手抜き加減でも許されてるところとか、それでも洗濯しとけば「ありがとう」料理すれば「おいしいな~」って返されることとか、多少散らかっても互いの存在を強く感じることだとかが、嫌だと思う気持ちを溶かして消していった。郁深の方がけっこうズボラで、そんなところも気楽になる。同居当初は俺の方こそ、「洗濯物脱ぎ散らかさないで」とか怒ってみせてたんだ。懐かしいな。
 彼女のズボラは全く改善されてなくて、俺がほぼ全部家事をやってるわけだけど。だって気付いたら自分が先にやっといた方が早いからね。
 くすくす笑いを零しながら、たまに洗い物してくれるだけで嬉しくなっちゃう俺はすげーチョロいかもしれない、と思った。
  ご飯を炊いて、みそ汁を作る。サラダを冷蔵庫に入れといてアジの開きをフライにして、まだ帰ってこないのかな、とケータイを確認した。
 その時着信に気付いた。
 不在着信。7件も。
 何?と訝しむと同時、見詰めていた画面が着信に切り替わる。咄嗟のことで驚いてケータイを落としそうになりながら、どうにか通話にして耳に当てた。
「い、郁深?どうし…」
『ご家族の方ですか?』
 電話の相手は郁深じゃ無かった。男性の声で、その人は警察関係者であることを指す肩書きと名前を名乗った。
『綾瀬郁深さんが事件に巻き込まれました。…中央総合病院にまで、来ていただけますか。詳しいことは、直接会ってお話します』
   とてもちゃちな事件だった。ありがちで、ニュースにもならないようなこと。確かに人の悪意が招いた事態なのに、ともすれば交通事故よりも些細な扱いで済まされてしまうような、本当にチープで、巻き込まれるのが馬鹿らしくなるような事件。
 郁深はひったくりにあった、らしい。
 バイクで通りすがりに引っ掴まれ、鞄が絡んで身体ごと引き摺られ、ついでのように殴られて吹き飛んで頭を打って即死。
 巻き込まれるのが馬鹿らしくなるような。運が悪いと言ってしまいそうなほどちゃちな。
 新聞にも載らない程度の、死んだところを想像すらされないであろう小さな事件。俺だってこれが見知らぬ他人なら、気に留めることさえなかっただろう。
 郁深でさえ、なければ。
 病院に着くと、顔の確認できない死体を「確認して下さい」と見せられて、何の反応もできなかった。
 体型も服装も見えてるけれど、どうしても郁深と重ねられない。ずれてずれて、輪郭がぐらついていくつも床が波を立てる。
 手が震えてがくがくと身体の内側が狂うのに、目の前に横たわっているモノに触れるのをやめられない。
 冷たい。冷たい
 冷たくて、俺の手でさすって、不意にめくれた服の下。
「……っ」
 皮肉にも俺に合わせていれてくれた刺青が、これが確かに郁深だと証明してしまう。
 肋に沿って彫られた、骨の刺青。
「……」
 これが、郁深?
 死んだ?
 こんな、突然
 俺の知��ないとこで
 ……
 俺は
 彼女が死んだ時、暢気に夕飯なんか作ってた。
 何も知らないで。
「……っ、は、」
 今だって、家に帰れば作っておいた夕飯がある。一緒に食べようって、いつもみたいに、特別手の込んだ料理じゃないけど、郁深はいつもおいしいって食べて
 一緒に
 買った服もちゃんとクローゼットに入れておいたよ、
 休みに出掛けるんだろ
 思い立ったらすぐにでも行動しちゃって、先の予定なんかろくに考えないのに
 こんな、前々から言い出すなんてさ
 よほど楽しみだったんだね。
 刺青をなぞる
 何度も、何度も
 何度も何度も何度も
「郁深……家、一緒に、帰ろう」
 ねえ。
 一緒にいればよかった。
  脚が萎えたように力が入れられなくてそのまま床に座り込んだ。
 呆然と
 思考も動作も全部、自分の意識から外れて
 自分の意識が、外れて
 からっぽの状態で、足元から冷えていく。
 ぼうっとする。
 酸欠かな
 息、
  「……は、っ」
 息を呑んで 周りを見渡す。
 白い壁にグリーンのカーテン。木目の長椅子とチェスト……
 病室?
 背後にはベッドもあって、自分がそこから落ちて尻餅をついたのだとわかった。
 記憶を辿る。講義室、ダルくて授業に集中できず、机に突っ伏した記憶がある。ここんとこずっと寝不足気味で、睡眠時間は足りてなかったし。ダルかったのは、冷水シャワーで体調を崩したのか、熱っぽかったから。なんで冷水シャワーなんて浴びたんだっけ……寝不足になったのは、なぜだっけ。
 とにかく、講義室。郁深が声を掛けてくれた。案の定熱を出して気絶した俺を、彼女がここに連れてきてくれたんだろうか。
 学校の医務室なのか、近くの病院なのかはわからないけど、………
 いや、待て
 違うだろ。
 声を掛けてくれた郁深。一緒に歩いた帰り道。黒いワゴン車、白いトラック……デパート、仮設テント。
 俺が講義室で眠ったのであれば過ごしていないはずの郁深との時間が記憶にあって、けれどそれは……
「夢、だ」
 そして、さっき、彼女は死んだ。
 また、夢の中で。
 デパートで分れた一人の帰り道、夕飯ができた頃に気付いた電話、病院で待っていた動かない、冷たい身体。
「……病院、か。まるであの後ショックで倒れて、今目が覚めたみたいだな」
 ひったくりに遭ったと聞いた気がする。
 俺はその時暢気に夕飯作ってたんだ、って
 俺が一緒にいなかったせいで郁深は……って
 思ったんだ。
 窓の外を見る。どこだろう、医務室なら学校っぽい景色が見えそうなものだけど、窓からの景色ではここがどこなのかわからない。
 午前中の講義で倒れたはずなのに、外はもう陽が傾いて暗かった。
 眠る時間が少しずつ長くなっている。
 郁深が居ない現実も、目覚める度慣れていくようで、
 ……立ち直って来ているんだろうか、彼女をなくしたショックから。
 胃が痛くなるような仮説だ。脳裏に過っただけでキリキリと内蔵が不随意な痛みを発して、思考を遮断させようとしてるみたいだった。
 立ち直りたくなんかないよ。
 郁深が居ないのに何でもない平気な自分なんて、受け入れられない。
   夢の中では郁深に会える。
   郁深が夢で生きている時間は、死を回避するごとに長くなっていった。
 一緒に歩いた帰り道。黒いワゴン車、白いトラック……デパート、仮設テント
 買い忘れの参考書、バイクのひったくり犯、一緒に歩いた帰り道、
 家で作る夕飯
 一緒の食事
  その後も、何度も彼女が死んだ
 階段から落ちたり、飲酒運転の交通事故だったり、盗難の鉢合わせで殺されたり、電車の混雑で線路に突き落とされたり、
 その度に俺は目を覚まして絶望して、汗だくの身体で震えながらもう一度目を閉じた。
  最近は穏やかな日常が続いて、これが夢だということを忘れそうになる。
 けど、夢だって忘れて警戒を怠って、また彼女が死んでしまったらと思うと恐ろしくて忘れられなかった。
  「おはよう」
 おはよ、学校で友人に声を掛けられるのは久しぶりで、咄嗟に口から出た挨拶は対象に向かわずにぼとりと落っこちたみたいな声だった。
 掠れた視界の向こうがなんだか遠い。ぎこちない笑顔の友人は「最近休みがちだけど、」と気遣う素振りで俺の背を撫でた。
「単位、大丈夫なのか?どうしてもしんどいなら代返しとくから、言えよな」
「……ああ、うん」
 最近休みがちだったのは、ずっと眠っていたせいだ。郁深の死を回避し続ける限り、夢を見ていられる。
 今朝になって目が覚めたのは……つまりそういうこと。
「なぁちょっと、おい」
「……ん?」
「ちょっといいか」
 なに、と訊くまでもなく友人は俺の身体をぺたぺたと触って、苦笑していた表情を苦味に偏らせた。
「痩せ過ぎだ」
「……は?」
「だから、お前痩せ過ぎだよ。メシ食ってるの?」
 険しい顔して俺の腰を掴んでくる友人をぼうっと見詰めながら、俺は全然別のことを考えていた。
 真剣な、その表情
 面倒そうな落ち込み具合の俺に対してわざわざ話しかけてくれる態度……
 あれ?
 こんな風に、俺を気遣ってくれる友人なんて、居たっけ。
 まじまじと相手を観察し、頭の霧を追い払う。
 掠れた視界をクリアに。遠い感覚から、触れているその手に意識を。
「聞いてるか?ぼーっとしてるな。頭にも栄養行ってないん」「郁深!」
「お、おう」
 しかめた眉がすとんと力を抜いて、突然叫んだ俺に驚いた様子で目を丸くする。
 目の前に立っているのは 郁深だった。
「……っ!」
 衝動が勝手に身体を動かす。息をつめて生まれてくる熱を閉じこめる。ぎゅうぎゅうときつく背に両手を回し、腕の中に抱き込んでその首筋に顔を埋め擦り付けた。
「郁深、郁深……!」
「……どうした?家に一人がそんなに嫌だったのか?」
「うん、うん……俺が我慢すれば喧嘩なんかならなかったのに、ごめん」
「喧嘩って……まぁいいや。っておい泣くなよ。泣くほどのことか」
「ひっ、ぅ」
 泣くよ。
 頭おかしくなりそうなんだ。呼吸するだけで気管支が焼けるみたいにすごく痛いんだ。苦しかった。起きてるのつらいよ、お前が心配してくれて嬉しい、俺をおいてかないで。
 いつから夢を見てるんだろう。喧嘩別れしてしまったこと、昨日の出来事なのかな。
 なんでもいいか、郁深がここに居るなら。
   講義を終えたその足で、郁深の居るゼミ室に寄って、二人連れ立って大学を抜け出す。
 ショッピングモールまで一緒に歩く。黒いワゴン車、白いトラック……仮設テントが壊れて、一緒に戻って買い忘れの参考書を買う。
 バイクのひったくり犯を躱して、家まで連れ立って歩き着いたらファッションショーごっこ。服をクローゼットに仕舞いながら連休の行き先を相談。
 夕飯を一緒に作って
 一緒に食事をする。
 ルーチンワークの日常は穏やかで、いつもの繰り返しで、……何よりも幸せだった。
 気が急くようなことや、人ごみで揉まれるような場所は避けて、余裕を持って過ごすように心がける。それだけで小さな怪我さえ減っていって、喧嘩は今回、するきっかけさえ無いまま回避された。
   そうして、「川遊びしよう」と約束していた、連休を迎えた。
 二人似たようなニットのゆったりした服装でレンタカーに乗り込む。
 何度も繰り返した会話がようやく現実になることが嬉しくて、俺は浮かれた気分を引き締めるのに必死だった。ほわほわした散漫な注意力で、事故ったりしたら元も子もない。曲がりくねった山道を慎重に走らせ、広い平地を作ってある砂敷きの駐車場に車を停めた。
 すぐ脇に川が流れて、そこそこ上流まできたおかげで岩や草花が大きく育っている。初夏の緑が鮮やかに日の光と混じりあって眩しい。
「すごい、晴れて良かったな!」
 嬉しそうな声とせせらぎの音。水色の空を背景に笑う郁深の笑顔も眩しい。いいな、嬉しい。楽しいな。
「早速行くか」
「カメラ持ってって良い?」
「いいね。清涼飲料水のポスターごっこしようぜ」
「なんそれ」
 俺も声を上げて笑う。こんな風に笑うのいつ振りだろう、そう思った途端胸に何か、ツキンと小さい痛みが刺さって、細めた目を開ける。
 郁深はじんわりと暖かな視線で俺を見ていた。
 ああ
 好きだ。
 「コテージに泊まるんだっけ。どこ?」
「駐車場の向こうだよ」
 車に荷物を置いたまま、早速俺達は河原で裸足になって岩から岩を伝い、浅いところで遊びはじめた。
「結構長く運転してきたなぁ。もうすぐゴールデンタイムだ……カメラに収めなきゃ」
「なぁ~やっぱカメラそれ邪魔じゃね?こっち来いよ」
「郁深だって持ってきていいって言ったじゃん!」
 抗議する俺を遮って郁深がざぶざぶ水に入っていく音を立てる。引き締まった綺麗な脚で幾重にも重なった岩の上を流れる澄んだ水を掻いて、軽やかに対岸の方へ。
 川の上流から降注ぐ夕日の帯が彼女を照らす。金色の光。ふわりと風にひらめく薄手のサマーニットの表面を転がる水滴、空中を滑る宝石のような飛沫、
 カシャ
「ん!撮った?」
「撮った」
 煌めく夕日の中でぱしゃぱしゃ水と戯れる姿を、何枚も残していく。山に来た興奮と空気を満喫するバタバタとした動きから、次第に彼女の足運びがダンスのような軽やかさに変わって、足場の悪い岩の上でくるりとターンする。怪我を心配しながらも写真に撮るのをやめられなかった。
 ぐん、と手脚が伸びやかに動き、実際の振りよりもうんと大きな波紋を生み出す。目に飛び込んでくる、美しい山の景色と、異界と通ずるような黄昏時の輝き。わざわざカメラを構えてる俺を意識して、絵になる動作をしてくれてるんだ。
 彼女の目がふっ、とこっちを見て
 口元が柔らかな曲線を描いた。
 カシャ
「写真ほどほどにしてこっち来なって~」
「わかったわかった」
 夕日は大分落ちてしまって、辺りは薄暗くなっている。
 最後に撮った一枚を確認し息を吐いた。熱の隠った吐息に自分で赤面する。……や、でもこれは、仕方無いでしょ。
 画面の中で微笑む郁深はあまりに優しい表情をして、カメラに目線を向けていた。写真として一度客体におとせば、明らかにわかる。彼女がどれほど温かな気持ちで、俺を呼んでくれてるのか。
「今行くよ」
 俺は鞄にカメラを仕舞うと岸辺のベンチに放置して、随分離れてしまった郁深の元に駆け寄った。
   すっかり日が落ちると岸辺でたき火をして、持ってきた花火を点けて打ち上げた。
 手で持つタイプの奴は持ってきてない。
「この打ち上げるコンビニ花火をさー、手で持って撃ち合って遊んだの懐かしいな」
「あれ熱いんだよ……危ないからもうやっちゃダメだよ郁深」
「はいはい」
 郁深と親しくなってからは、ふざけて危ない遊びをしてたことはままある。おかげで交友関係は悪友ばっかりだ。こんな風に穏やかに二人で過ごせるのは、ごく最近になってからだった。岩に並んで腰掛けて、ふふっと触れ合わせた肩を揺らす。
「大人になったんだなぁ、私達も」
「まるくなったってこと?確かに無茶できること減ったね。そういえば成人してから徹夜がキツくなったな」
「まだこれから先長いのに落ち着くには早いだろ!悪さはもうしないけど」
 大人、大人。
 リバーブしながら川辺で足だけ水に浸し、水面越しに彼女を眺めた。
 大人になったら、郁深に言いたかったことがある。
 好きだ、って
 弟としてじゃなくても、一緒に居たいって
 大人だからできることを、一緒にしよう、って
 言いたかった。さっきの写真を見ていたら、拒絶されることは無いだろうとも思えた。
 でもどんなに思っても、全部過去形にしかならない。後悔、未練、寂しさ……どうしてだろう。
「……?」
 どうして?
 何か大切なことを忘れてる気がする。
 どうして言えないなんて思うんだ。言えばいい、今だって……むしろ今のこのシチュエーションはすごくいいんじゃないか?
 綺麗な山の景色の中で、少し日常から抜け出した特別感があって。
 なのに、忘れてるはずの何かが気になって、俺は口を開けなかった。
 何も言わないまま、最後の花火が上がり、色とりどりの光が反射して、ぱん、と軽い破裂音。花火大会で披露される本格的なものじゃない、大したことはないけど、それでも周りが明るくなったように感じた。一瞬の花。咲いて、消える。
 そこから一気に静寂と夜の闇が戻ってくる。川辺は少し肌寒い。岩の間を流れる水は暗く深く、どこまでも沈んでいく底なしにさえ見えた。
「戻ろっか。向こう岸に」
 ひんやり冴えた空気を纏って郁深が立ち上がる。
 俺も黙って頷いて、後に続いて川に入った。
 その時、
 複数の足音がこっちに向かって来て
 背後から聞こえるそれに俺の方を振り返った郁深の表情が一変した。
「危ない!」
 目前に迫った郁深の手と一拍ずれて、頭部が揺さぶられる
 ガツン、と
  首が折れそうな衝撃を受けて水面に叩き付けられ、続けざまに身体を押さえつけられ
 右半身から荷物の触覚がなくなり、代りに服の上をまさぐられた。鳥肌が立つ。渦を巻いた頭にようやく届いたその正体は、人間の手だった。
 男が二人、俺の身体を押さえつけ、身につけている物を探っている。
 ざあっと血の気が引く音と、凍り付いたような心臓の痛みがして、感覚が一気に返ってきた。焦燥として視線を走らせる。郁深、郁深は……?!
 女だ、と 誰かが呟いたのが聞こえた。
 惑っていた視線がそちらに引きつけられる。吐きそうになりながらどうにか身を起こそうとして、二人掛かりで顔面から岩にぶち当てられた。ろくに平衡感覚が無い、ただ倒れていることさえできないくらい頭が痛い。
 だけど
「女だ」、と言った
 その言葉に含まれた裏は俺にだってわかる。もう、大人なんだ、これでも……俺にだって、郁深を
 そういう意味で意識したことは、あるんだ。
 俺を押さえつけてる以外に郁深に手を出す奴が居る、郁深に何かあったら。もしもここで何もできなかったら、俺は……
 もがきながらなんとかして視線を上げる
 滴る血液に邪魔された視界で、郁深に人影が多い被さるのが見えた。
 —————やめろ、
「なんで郁深なんだよ!」
 絶叫した俺に、嘲笑が浴びせられて
 掴まれた頭を���に突っ込まれる
 そのまま殴られ嘔吐感と、首の後ろを背からせりあがるような重苦しい圧迫感が襲ってくる。
「が、っは、……ぅぐ」
 自分の身体中から苦みが絞り出されて
 それが川の水と行き違う感覚
 苦しい
 苦しい
 だけど、郁深の傍に行かなきゃ。
   わかってる
 違反車のドライバーも設置違反したスタッフもひったくりも泥棒も愉快犯も
 駅のホームで肘をぶつけられたから押し返しただけだ、なんて逆ギレしていた会社員も
 郁深を郁深として認識してたわけじゃない
 全部偶然で
 ただの過失とか、ふざけ半分で
 たかがそんなことで、彼女は……
   何度も。
   大切なことを忘れている気がしてた。
 ここは、夢の中なんだ
   ボキッ、と 重いものが折れるような、いびつな音を立てて、俺の腕は押さえつけていた二人の下から抜け出す。同時にバシャリ、水面が大きく波立ったらしい音が聞こえ、生まれた光が乱反射し、近くから男の気配が無くなった。
 ろくに前が見えない。目が潰れたのかもしれない
 呼吸もできない、水を呑んだかな。でも集中してる時って呼吸は止まるものだ。構わない。
 郁深、
 手を伸ばす。
 なんだか水面に夕日が見える。その光に、水で濡れて着衣の乱れた姿が浮かび上がって、すごく綺麗だ。
 二人して佇むのは、丁度川幅の真ん中あたり。
 伸ばした手は届かずに、握っていたライターは川へ投げ出される。
 郁深を照らしていた火は俺に向かって掴みかかって、
 俺の腕は植物が絡むようにその人影を巻き込み 暗い水の底に堕ちた。
   「…………ひぅっ、は、っは、ひっ、ひゅっ……」
 どさ、と背中から落ちた衝撃があって、びくっと首をのけぞらせ上体が跳ねる。
 突然過剰な酸素を吸い込んでしまい痙攣する身体。投げ出された腕がベッドから垂れて、感覚が無い。
 夢だったはずなのに、俺の顔はものすごい痛みが渦巻いていて、ろくに焦点も定まらない。
 恐慌するままに身体を撥ね起こすと心臓が躍り上がるような衝撃があって、酷い目眩と耳鳴りがした。立ち上がろうとした途端一気に重力が膨れ上がって身体がぐらつき、もつれる脚で無理矢理傍らにあった洗面の鏡を覗き込む。
 傷がある、
 顔の上半分……ぐちゃぐちゃの傷が。
 夢だったはずなのに。とうとう郁深が死なないままに目を覚ました、はずなのに
「……まさか」
 郁深
 郁深?居るの?
 俺の、この傷はお前を守れた証じゃ無いの?
 郁深!
 ばっ と勢い任せに辺りをうかがう。そうでもしないとろくに身体が動かない。頭がガンガンする、目から入る光さえ刺激になって、けれど目を剥くのをやめられず、瞬きすらできないで周囲を見回した。病室のような空間、縋り付いているこれはベッドの脇に設置された洗面台だ。さらにその横に収納棚と来客用らしき長椅子。治療器具の類は置いてない、カーテンが閉められて、仕切られたその外側まではうかがえない、気配がわかる範囲には誰も居ない、郁深も、誰も。
 ―――――まだ、夢を見てる?
 ……いや
 何取り乱してんだよ
 動機息切れで、脳みそが正常な思考できない状態になっているのか。
「はっ……はっ……ふっ……」
 胸を押さえる。息を噛む。
 死なせずに目を覚ましたら、郁深がここに居るかもなんて
 ……そんなことあるわけ無いんだ、夢は夢だ。
 夢と繋がっているかのような体調不良での病室だけど、目を覚ました俺が病室に居るのだって不思議じゃ無い、経緯はわからないけれど、意識を失ってたんだろうから当然だ、心当たりなんていくらでもある、ろくに食事も摂らずに眠り続けてたら栄養失調になったっておかしくないんだ、貧血かもしれない、睡眠障害で倒れたのかもしれない
 今は繋がれてないけど、腕に点滴用のチューブが差し込まれてるし
 この傷は……大方階段から転げ落ちたりでもしたんだろう
 郁深は居ない
 死んでしまったんだ
 交通事故で……
 黒いワゴン車。
 白いトラック。
 出会い頭の衝突に、スピード違反の車の轢過……
「え……あ、れ?」
 頭の痛みが ぐわり、膨れ上がった。
 違う
 郁深の最期は、事故死じゃ無かった
   一緒に歩いた帰り道。黒いワゴン車、白いトラック……デパート、仮設テント
 買い忘れの参考書、バイクのひったくり犯、一緒に歩いた帰り道、
 家で作る夕飯
 一緒の食事
   階段から落ちて、飲酒運転の暴走車に撥ねられて、窃盗犯に殺され、線路に突き落とされ、
 その度に俺は目を覚まして絶望して、
 汗だくの身体で震えながらもう一度目を閉じた。
 ……あれは、夢だ
 彼女が繰り返し死ぬ、悪夢 
   じゃあ
 現実で、郁深は
 郁深が死んだのは
 彼女は
 郁深は……どうやって
 どうして死んでしまったんだ?
「……っ」
 何で
 思い出せない、……?そんな……
 思い出せない、郁深の最期、
「そ、んな」
  何度も
 何度も何度も繰り返してしまって
 何度も
 何度、も。
「……全部、夢だ」
 愕然とした。呟かれた声が口端からどろりと落ちて床に汚いシミを作る気がした。寝不足も不登校も睡眠障害も栄養失調も、全部夢が原因だ。
 夢、だったのに。
 ぼと、と
 身体が崩れ落ちる。座っているのさえ苦しい。支えていられない
 床に倒れ込んだ。白い天井がスクリーンのようで そこへ閉じられない目蓋の代りに、思考を映し出す。
 郁深 は
 郁深はもう居ない。
 この現実の、どこにも居ない。
 何度も繰り返し見る悪夢……にさえ慣れて。次こそ死なせないように、なんて
 次?
 次って何なんだ。
 いくら夢を繰り返したって、もう居ない。
 そんなことも
 そんなことさえ、今まで忘れて
 彼女の、最期さえ忘れて
 どうして、眠っていられたんだ
 どうして夢なんか見て、夢とはいえ、彼女の、死ぬところを見ていられたんだ……
 いくら会いたいと願ったとしても、夢だった。そしてその夢の最後にはいつも、彼女は死んでしまう。郁深が、死んでしまうんだ。ああ、なのに、どのくらいそれに縋って、どのくらいの間眠り続けたんだろう。いざ彼女が死ぬところを見ずに目を覚まして、今度はまた麻痺していた喪失に苛まれている。
   ああ、なのに
 いざ彼女が死ぬところを見ずに目を覚まして、
 郁深が居ない現実に耐えられない。
 郁深が居ないのに何でもない平気な自分なんて、受け入れられない。
   夢、だとしても
   郁深が居ない現実より
 郁深が生きている夢の方が、俺にとっては大切になってしまった。
   目蓋を閉じる。起き上がれない。床は冷たくて身体は憔悴していて、熱はどんどん失われていく。ここには居ない、温めてくれる眼差しを思い出す。夕日に照らされた郁深の笑顔が過る。真っ暗なはずのまぶたのうらに。これは夢だっけ?けれどすごくはっきりと思い描けるんだ。
 ぐちゃぐちゃにくずれて狭まった視界で彼女の顔がわからなくなって
 ただ激情を溢れさせるがごとく動いた唇が言葉を紡いだ、それだけが鼓膜を震わせて 刻み付けられる。
    「                   」
「  
        」
    「おはよう」
 意識が浮上すると同時に、頬を伝っていく熱を覚えて、滲む視界でそれが涙だとわかった。
 呆然と瞬き、天井を見上げていた視線をぐるりと回して起き上がる。すぐ横に人肌の体温。全開にされたカーテンから、朝日の差し込むベッドルーム。時計を見ると午前八時。なんて健康的なんだ。ぼやけた両目を軽く擦って「おはよう」と返すと、目の前にあった柔らかな笑顔がそっと近付いて、俺を抱きしめた。
 ああ、幸せだな。
 ずっとこの幸せが続けばいい……
 ほとほとと、シーツに沁みができていく。
 涙を零し続ける俺を見て、郁深は困ったように眉を下げた。
「どうしたんだよ……まだ具合悪いのか?」
 気遣う手つきで背を撫でられて、余計にぶわっと熱が込み上げ
 しゃくりあげながら答える声は上擦って掠れてしまう。
「ううん……平気。怖い夢をみたんだ」
 ……どんな?
 首を小さく傾けて、縋る俺を茶化すことも無く穏やかに訊ねられる。
 郁深が涙を指先で拭ってくれるのをそっと掴んで、手のひらに頬ですり寄る。鼻先が触れるまで近付いて、ほ、と息を吐いた。
「郁深が、……死んじゃう夢だった」
 つい昨日も病院で同じ夢を見て、動揺して床に倒れたんだよ。
 ぼそぼそと告白すると背に回された腕の力が増して、そのまま起こしていた上半身を重ねるようにベッドへ押し倒された。
 どくん、どくん、と
 重なった胸に、鼓動が伝わる。
「大丈夫だ」
 大丈夫。繰り返し囁いて、頬に当てた手で俺の顔をぐいと上げて視線を合わせられる。
 温かい、思わず動揺する、揺さぶられる……そんな熱をもった眼差しが俺を包む。
「私はここに居るよ。お前の傍に居る、香澄」
 大好きだよ。
 そう言って、吐息が混じるまで近付いた唇と、唇が触れ合った。
 目を閉じる。抱きしめあう腕に力を込める。
 きっともう、あの夢をみることは無い。
       掌編集『愛言掛』収録 <familie komplex>
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sorairono-neko · 5 years
Text
──いつか、
 雲行きはあやしかったのだけれど、勇利はそういうことを気にするたちではないし、ヴィクトルも同様で、さらに彼は勇利と出歩くことにはしゃいでいる様子だったので、出先でふたりが雨に降られたのは、ごく当たり前のなりゆきだった。ちょうどほそい道を歩いているときのことで、近くに雨宿りできるような場所はなく、ようやく店の軒先に飛びこんだときには、ふたりの服はじっとりと濡れてしまっていた。 「すごいね、急にたくさん降ってきた」  ヴィクトルが軒越しにどんよりと暗い灰色の空を見上げた。しかし彼は、全体的に濡れてしまったことをさほど気にしていないようだった。勇利は、水気をまとったヴィクトルをすてきだと思い、すこし見蕩れてしまった。 「勇利?」 「え、あ、えっと、ちょっと待って」  勇利は携帯電話を取り出し、天候を確認してみた。予測される降水量はずいぶんと多く、雨雲の動きからしても、なかなかやまないようだった。 「……あと二時間はこのままみたいだね」 「二時間経てばやむのかい?」 「小雨にはなるみたい」  勇利も空を見上げた。大粒のしずくは、もう道路を真っ黒に塗り潰している。雨粒に当たったら痛そうだというくらいの降りようだった。ずっとこの勢いではないだろうけれど、それにしてもしばらくよわまることはなさそうだ。 「傘買って帰ろっか」  勇利はゆっくりと首をまわした。このあたりには見当たらないが、すこし行けばコンビニエンスストアがあるだろう。 「でも、もう濡れてるし、いまさらじゃないか?」 「そうだけど、ないよりはましでしょ。傘がなかったらさらに濡れるわけだし」 「家に帰るまでどれくらいかかる?」 「一時間ほどかな……」  たまには勇利と出歩きたいとヴィクトルが誘ってくれたので、ふたりは街まで来ていた。電車に乗らなければ帰れない。 「風邪をひくね」  ヴィクトルがつぶやいた。 「…………」 「服を乾かせるところがあればいいんだけど」 「そんな場所はないよ」 「あそこは?」  ヴィクトルがすこし先に見えている看板を指さした。勇利はどきっとした。まったく自分に縁のない建物だけれど、どういうたぐいのものかはさすがにわかる。ラブホテルだ。勇利はうっすらと頬を赤くしながら横目でヴィクトルをうかがった。 「休憩できるって書いてある」  ヴィクトルはのんきに言った。確かに、「休憩」という文字の下に「REST」と英語でも説明書きがついている。 「どうだい?」  もちろん、ホテルとも書いてあるので、ヴィクトルはそれはわかっているだろう。勇利は、以前ヴィクトルとした会話を思い出した。 『勇利、あれはなんだい?』 『あれは……なんていうか……、その、恋人同士がいろいろするホテルで……』 『ワーオ、ジャパニーズラブホテル』 『その言い方やめて』 『セックスするためのホテルだね!』  ヴィクトルはあのとき、興味深そうにラブホテルをみつめていた。だから彼はそういうものが何かはわきまえている。ということは……。  ヴィクトルはぼくをセッ……に誘っている……。  勇利は、とんでもない、と拒絶しようとした。ヴィクトルはおもしろがって入りたいのかもしれないけどね、ぼくはそんなの無理だから。冗談じゃないよ。絶対だめ……。しかし、口をひらきさしてヴィクトルを見たとき、何も言えなくなってしまった。ヴィクトルはずいぶんと濡れている。ほうっておいたら本当に風邪をひくのではないだろうか。勇利はすこし寒かった。ヴィクトルも同じかもしれない。ラブホテルなんて恥ずかしい、そんなことできるわけないだろ、なんて言っている場合ではなさそうだ。勇利のわがままのせいでヴィクトルが病気になったら大変だ。 「えっと……、そ、そうだね……」  勇利はためらいながらもうなずいた。 「じゃあ……、ちょっと寄っていく……?」  まさか自分が「ラブホテルにちょっと寄っていく」なんて言う日が来るとは思わなかった。勇利は気恥ずかしくてまっかになり、うつむいてしまった。 「行く行くー!」  ヴィクトルは勇利の手を引き、雨の中へ駆け出していった。  ど、どうやって入るんだ……。すこし古めかしい感じの門をくぐり抜け、建物に足を踏み入れた勇利は、おどおどしながらあたりを見まわした。ほの暗い廊下だけれど、こういったホテルはみんなそうなのだろうか。それとも、���しいところではもっと近代的なのだろうか。最近はラブホテルでもしゃれているものが多いと聞くが、利用したことのない勇利には真偽は不明だ。 「人がいないんだね。フロントはどっちかな」  ヴィクトルがきょろきょろした。勇利は、ヴィクトルは日本語が読めないし話せないんだからぼくがしっかりしなきゃと思った。それに、早くあたたかいところへ行って服を乾かすべきだ。 「こっちだと思う」  よくわからないけれど、そちらにしか進めないので、勇利は覚悟をきめて歩いていった。すると突き当たりに、部屋を選ぶための装置があった。写真が並んでいて、好きな部屋のボタンを押せばいいようだ。これはなんか聞いたことがある……。 「ワオ、ここで決定するのかい?」 「そうだよ。えっと……」  いろいろな部屋があるみたいだ。しかし勇利は選んでいるゆとりなどなかった。どれでもいいから普通っぽいの、と思ったら、ヴィクトルが横から「これはおもしろそうだね!」とか「ここ豪華だな。勇利、ここは?」とか口を出してきた。 「普通でいいから。普通で」 「せっかく楽しそうなのに」 「いいから! えっと、料金は……」 「勇利、フリータイムってなんだい?」 「え?」  勇利は書いてあった注意書きを読み、何時から何時まではフリータイムで、休憩は何時間で、とその通りに説明した。話しながら、なるほど、と自分でも納得した。そういう仕組みなのか……。 「とりあえずこの部屋で……休憩でいいよね……あ、後払いみたい……」  こういうやり方でよいのかという不安はあったけれど、ヴィクトルにはわからないのだからてきぱききめるしかない。勇利は部屋を選び、すこしさきにあるフロントで鍵を受け取った。相変わらずあまり明るくない廊下を通ってエレベータに乗る。 「なんだか暗いね」 「新しくないみたいだし仕方ないよ」  ラブホテルというものに初めて入ったけれど、廊下や客室の扉は、一般的なホテルと変わらなかった。ふうん、と思った。ちょっと意外。でもこういうものかもしれない。 「あ、ここだ」  勇利は部屋を探し当てると、鍵を開け、中に入った。「普通の部屋」と言って選んだだけあって、全体的に白っぽい、ごく平凡な客室だった。ほっとした。 「えっと、お風呂入らないとね……」  勇利は荷物を置き、どぎまぎしながら言った。普通の部屋とはいっても、慣れない雰囲気で困ってしまう。 「ヴィクトル、さきに入って」 「え? 一緒に入ろうよ」 「なんで!?」  勇利はぎょっとして抗議したが、ヴィクトルはきょとんとして答えた。 「いつも一緒に入ってるから……」  そういうことか……。勇利は過剰に反応してしまったことに恥じらった。 「ここは温泉じゃないから、それはちょっと……」 「でもすごくお風呂ひろいよ」  ヴィクトルが浴室に入ってはしゃいだ声を上げた。そういったホテルなのだから、もちろんふたりで入ることを考えてつくってあるの���ろう。勇利はおずおずとヴィクトルの後ろから浴室をのぞいた。確かにひろくはあるが、派手さはなく落ち着いた印象の風呂場だった。ピンク色とかじゃなくてよかった……。 「泡風呂もできるみたいだ。すごいね!」 「はいはい。とりあえずお湯を溜めよう……」  勇利は部屋へ戻ると、大きく息をついた。なんだかこれだけで疲れてしまった。ヴィクトルは興味深そうに室内をあちこち検分している。彼がリモコンを取り上げ、テレビをつけようとしたので、勇利は思わず飛びついて取り上げてしまった。 「だめ!」 「なんだい?」  ヴィクトルは不思議そうだった。 「つ、つけないほうがいいよ」  よくわからないが、いきなりいやらしい映像が流れたりしたら困る。そういうものなのか勇利は知らないけれど、そうではないという保証はない。ヴィクトルが風呂に入っているあいだに普通の番組が見られるか調べておこう。 「そんなことより、とりあえず濡れた服を脱ごうよ」  そのために来たんだから、という意味を強調しながら勇利は提案した。しかしすぐに後悔した。服を脱ぐって、なんか……いかにも早くえっちしようよみたいな……。でも脱がないわけにはいかないし……。悩む勇利に、ヴィクトルはそれもそうだねとあっさりうなずいた。勇利はためらったが、下着もすこしだけ湿っていたので、気持ちが悪くて、仕方なくそれも脱いだ。バスローブに腕を通し、脱いだものをハンガーにかけた。下着が見えないようにしたかったけれど、それでは乾かないし、そんなふうにこそこそすることのほうがかえってみっともない気がしたので、我慢して堂々と干した。そうしているうちに湯が溜まり、ヴィクトルが陽気に「ほら、入ろうよ」と誘った。 「いや、いいよ、ぼくはあとで……。濡れたものを脱いだら暖房のおかげであたたまってきたし」 「そう言わずに、せっかくひろいお風呂なんだからふたりで入ろう」 「いいってば。ひろいお風呂なら毎日入ってる。珍しくもないよ」  ラブホテルの浴室は珍しいというよりも、もう一生経験しないような貴重なものではないかという気がしたけれど、だからといってヴィクトルとはしゃいで入れるとは思えなかった。勇利はヴィクトルの背中を押し、「ぼくはあとでいいから」と何度も言って風呂場へ追い立てた。ひとりになるとほっとした。  いまのうちに、部屋のものを把握しておこう……。とりあえず、日常的な音がないと落ち着かないので、テレビの一般放送をつけてみた。いきなりいやらしいものが流れてきたりはしなかったのでそれにはほっとしたけれど、見ようと思えばもちろん見られるようだ。ヴィクトルにリモコンを渡さないようにしなければ。彼のことだからおもしろがって確認しようとするかもしれない。あとは……。  まくらべにティッシュペーパーがあり、そこにちいさなかごが置いてあった。なんだろうとのぞきこんでみると、つまめるくらいの包みがふたつ入っていた。取り上げて観察していた勇利は、どきっとして急いでもとに戻した。 「ゴ、ゴムか……」  そんなのあるんだ、と思ったが、こういうホテルなのだから当たり前だ。いちいちびっくりしてしまうので、あまり部屋を調べないほうがよいかもしれない。ただ服が乾くのを待てばいいと思い、勇利はちょこんとベッドのすみに腰掛け、ぼんやりテレビを見た。  ──でも、ヴィクトルが「そういうつもり」でここへ誘ったんだとしたら。 「むりむりむりむり……」  勇利はうつむいて口元に手を当てた。それはだめだ。そんなことはできない。だって、経験がないからどうすればよいのかわからない。変なことをしてヴィクトルにあきれられてしまったら……。それに、何よりも恥ずかしい。ヴィクトルと裸で抱きあうなんてとんでもない。終わったあと、どんな顔をすればいいのだ。絶対じょうずにできないし、ヴィクトルにぜんぜんだめだねとか、つまらなかったとか、笑顔でよくない感想を述べられるかもしれない。その通り、へたくそにきまっているけれど、そんなのはいたたまれないではないか。それに、それに……初めては痛いものだと聞くし……。ヴィクトルなら優しくしてくれるだろうけれど、やっぱりちょっとこわい。変な声も出てしまうかもしれない。だめだ。できない。とても。  だけど、それでもヴィクトルがしたいと言い出したらどうしよう? 「…………」  ヴィクトルのことだから、強引にするということはないと思うけれど、勇利のほうで断れるかどうかわからない。いいよね? と優しく尋ねられたら、ぽーっとなってうなずいてしまうかもしれない。そうなった場合、うろたえたあげく慣れないままに妙なことをして後悔するのは勇利だ。  勇利は、いまからクリストフに電話して、こういうときの作法を訊こうかとよほど考えた。ヴィクトルに抱かれるときはどうすればいいの? しかし、いつヴィクトルが風呂から上がってくるかわからないので、どきどきしてできなかった。インターネットで検索してみればよいのではとずいぶん経ってから気がついたが、それも恥ずかしくてどうしても無理だった。  どうしよう……なんの知識もなくえっちすることになっちゃったら……。勇利がまっかになって頬を押さえると、風呂の中から、ヴィクトルの機嫌のよい歌声が聞こえてきた。おかしな日本語の歌だ。ぼくがこんなに悩んでるのに、と勝手に恨めしくなった勇利だけれど、ヴィクトルのいつもと変わらない様子に、なんとなくぽかんとしてしまった。  もしかしてヴィクトルは、そんなつもりはまったくないのではないだろうか。そもそも、本当にここをラブホテルだとわきまえているのか。確かに彼はラブホテルが何か知っている。けれどここがそうだとはわかっていないかもしれない。単純に服を乾かせる休憩所だと思っていたら……。一般的なホテルのデイユースという心積もりでいるとしたら? 室内を楽しそうに見まわしていたけれど、それはここが古いホテルだからおもしろかっただけかもしれない。  えっ、待って。ぼくもしかしてひとりで騒いでた? ひとりでえっちする気になってどきどきしてた? ばかじゃないの?  勇利は羞恥に襲われ、両手でおもてを覆った。あまりにもみっともない。ヴィクトルにそんな気はいっさいないのに、どうしようどうしようと悩んでいたのだ。ヴィクトルに知られたら恥ずかしさのあまり泣いてしまう。よかった、口に出さなくて。「ヴィクトル、ぼくとえっちするつもりなの?」──そんなことを尋ねていたら大変なことになっていた。 『え? 勇利、なに言ってるんだ?』 『きみ、俺とセックスしたいの?』 『そういう気はないんだけど……』  もう、消えたい……。ひとりで意識して恥ずかしかった。ヴィクトルがぼくに性的欲求をおぼえるわけないよなと思った。どうしてヴィクトルがしたがっているなんて考えたのだろう? ごく普通に、ただ風邪をひきたくなかった、勇利を気遣った、服を乾かしたかった、と判断するべきではないか。初めてラブホテルに入ったからといって大騒ぎするなんて、あまりに子どもだ。まったく……。  勇利は溜息をついた。まだどきどきしている。気恥ずかしさと、ヴィクトルとそんなことになるわけがないという思いと、知らない空間への緊張とで気持ちがやすまらない。いっそのこと、もうきっと一生来ることもない場所なのだから、ひとつの経験としていろいろ見ておこうかと思ったりもしたけれど、精神的に疲れて、何もする気になれなかった。 「はあ……」  勇利はベッドに倒れこみ、ぼんやりと天井をみつめた。 「……何なんだ」  消え入るような声でつぶやき、また溜息をついた。  勇利に風邪をひかせてはいけないと思っただけだ。服を乾かすべきだと判断して、そのためによさそうな場所があったから利用したかった。ラブホテルとかいうものだとはわかっていたし、どういうところかも理解していたけれど、ヴィクトルは気にせず、とにかくあたたかい環境を求めていた。だから勇利に提案したのだが……。 「……まずい」  勇利が困ったり赤くなったりどぎまぎしたりしている態度を見て、なんだかどきどきしてしまった。勇利を抱きたくてたまらなくなった。 「でもな……」  ヴィクトルは、温泉とはまたちがうひろびろとした浴槽の中で手足を伸ばし、息をついた。勇利はあきらかに未経験だから、こんなところでこんなふうにいきなり始めたら泣いてしまうかもしれない。さっきの緊張した感じや、ホテルに行こうとヴィクトルが言ったときからの赤い頬を思い出すと、かわいそうになってくる。ヴィクトルとしても、こういうなりゆきになったからセックスをする、というのは歓迎できないことだった。勇利とそうなるなら、もっとすてきな、甘くて優しいやり方があるはずだ。  しかし、それは理性の話で、ずっとかわいいと思っていたいとおしい子とふたりきりでいれば、抱きたいと感じるのは自然なことだった。日常的な部屋でふたりというわけではない。ここは、そういうことをするための場所なのだ。それに……こういう始まりだって、特別悪いということもない。あるがままのことではないか。 「はあ……」  入ったことのないラブホテルという場所に戸惑いながらも、なんとかしなければと一生懸命になっていた勇利を思い出すとときめかしさに胸が痛くなる。ぜんぜんわかんない、と言いたげなのに、ヴィクトルに頼ることはできないからとがんばっていた。勇利はかわいい。 「あー……」  俺は勇利とふたりでラブホテルにいるわけか……。たったそれだけのことなのに、こころがうずいて仕方がなかった。十代の子どもじゃあるまいし、と思いはするものの、勇利が相手では十代にも戻ってしまう。  ちょっとだけでも……しちゃだめかな……。最後までしなくても。さわるだけとか……。ヴィクトルはぼんやり考えた。勇利はヴィクトルのことをどう思っているのだろう。こんなところにいるのだし、すこしはセックスの可能性について考えてくれているだろうか? 勇利はヴィクトルのことを好きだろうけれど、セックスまでは頭にないかもしれない。むしろ、あこがれの相手にそんなことをされたら、衝撃で泣いてしまうかも……。  それはだめだ。  ヴィクトルは頭をひと振りした。いずれそういう関係になるにしても、いま急いでことを進めるのは感心しない。我慢しなければ。勇利を泣かせるのは問題外だ。あってはならない。彼は感じやすいのだ。ヴィクトルのちょっとしたひとことでも考えこんでしまったりするのに、性行為のそぶりを見せるなんて、そんなことは……。  気分を変えよう。セックスを頭から追い出すんだ。ヴィクトルは、最近知った日本の流行歌を正しくない日本語で歌いながら、無理やり気持ちを切り替えた。長風呂をしていては勇利があたたまれない。さっさと出よう……。  バスローブを着て浴室から出たヴィクトルは、勇利がベッドに横たわっているのをみつけた。近づいてみると、勇利はまぶたを閉じ、かすかな寝息をすうすうとたてていた。ヴィクトルは目をまるくし、溜息をついた。ヴィクトルとセックスするかもしれない、と緊張していたのなら、こんなふうに寝入ったりはしないだろう。やはり勇利は、そんなことはまるで頭にないのだ。さっきうろたえたり照れたりしていたのも、ヴィクトルが相手だからというわけではなく、ラブホテルという場所が彼をそうさせたのだろう。 「まいったな……」  ヴィクトルは苦笑を浮かべた。 「もうすこし意識してくれてもいいんじゃないか?」  ヴィクトルは手を伸ばし、勇利から眼鏡を取ってやった。眼鏡をかけていてもかわいいけれど、外すとすっきりして、彼の素朴なうつくしさがきわだった。ヴィクトルは、起こして風呂に入らせるか、このまま寝かせておくか迷った。身体が冷えていないのなら、無理に風呂に入らなくても構わないけれど……。ちょっとほっぺたにふれてみた。春に愛らしくふっくらしていた勇利の頬は、いまは優しく洗練されて、ほっそりした印象だった。あたたかい。ヴィクトルは、足や腕にもさわってみようとして、それは失礼だろうと手をひっこめた。起きているときならできるが、寝ているときはよくない。自分は劣情を持っているわけだし……。  ちらと見た勇利の脚は、バスローブの裾がはだけて、なんとも色っぽいことになっていた。ヴィクトルは天井をあおいで片手で目元を隠した。ちょっと肌を見たくらいで何なのだと自分でも思った。いちいち興奮して、鼻血でも出すつもりか?  落ち着かなければ……。ヴィクトルは息をつき、さりげなく室内に視線をめぐらせた。テレビがついている。勇利がしたことだろう。冷蔵庫やお茶道具など、一般的なホテルと変わらない設備があった。なんだ、普通だな、と思ったところで、まくらべにあるものに気がついた。コンドームだ。 「…………」  ぜんぜん普通じゃなかった……。ヴィクトルはなんとなく近づき、コンドームの包みを手に取って観察してみた。しかし、大きさが自分に合うかどうか調べていることに気がついてすぐにもとに戻した。何を考えているんだ。使わないんだ。使わないんだ。勇利にはまったくその気がないのだ。きっと冗談でも「これ、使っていいかい?」なんて尋ねたら、びっくりして何も言わなくなってしまうだろう。  服が乾けば���ることができるのだが。衣服をかけた壁際のハンガーに目をやったヴィクトルは、シャツやボトムスと一緒に干してある勇利の下着に気がついた。ということは……。勇利の腿をちらと見る。あの下は、いま、何も……。  ヴィクトルはつかつかと勇利に歩み寄ると、バスローブの裾を引き、きちんと脚を隠してやった。いい加減にしなければならない。こういう子どもじみた、俗っぽい思考はやめるのだ。 「勇利……」  ヴィクトルは勇利を起こして入浴させようとした。しかし勇利は気持ちよさそうに寝息をたてている。寒がってもいないようだし、やはり、無理に風呂に入れなくてもいいだろう。それに、すこしくらいの冷えならあたためてやればよい。  ヴィクトルは上手く上掛けや掛布をひっぱり、勇利を敷布の上に転がすと、彼の隣に横たわって、一緒にふとんにもぐりこんだ。勇利を抱き寄せ、背中をかるく抱いてやる。こうすればあたたまるだろう。 「ふう……」  時間はまだある。「休憩」は何時間だったか。とにかくセックスできるだけのあいだはこの部屋を借りていられるのだ。余裕はあるはずだ。残念なことに、自分たちはセックスはできないけれど……。そういえば、どうして「休憩」などと言うのだろうか。セックスをするのだからかなり活動的な時間だと思うのだが。──いや、セックスから離れよう……。  強く抱きしめすぎたのか、勇利が身じろいで息苦しそうにした。 「ごめんごめん」  ヴィクトルはすこし腕をゆるめ、勇利の髪を額から指で払ってやった。おさない、無邪気な寝顔がかわいらしい。黒くて大きな瞳はいまはまぶたに隠されて、その代わり、可憐なくちびるから白いちいさな歯がのぞいている。  もし、勇利が俺に応じる気だったら……。  ヴィクトルはふと、彼とセックスすることになっていたら自分はいったいどうしただろうと考えてみた。どんなふうにふれ、抱きしめ、くちづけただろうか。勇利はどういう反応を示したのか。きっと普段からは想像もつかない甘美なまなざしとかすれた声を……。 「…………」  ヴィクトルはもぞもぞとベッドから抜け出した。もう、いい歳をしてとかあきれたことだとか思うこともなかった。何もおかしなことはない。バスローブの下には何も着ていない勇利と同じベッドにいるのだから、当たり前なのだ。  ヴィクトルは手洗いに十分ばかりこもり、丁寧に手を洗って戻ってきた。勇利を抱きしめるとまたまずいことになる予感があったけれど、どうしてもそうせずにはいられなかった。鉄壁の理性で乗り切ろう。自分は精神的に強いのだ。どんな重圧だってなんとも思わないし、それが理由で試合を壊したこともない。──どうやら勇利は、ヴィクトルにとって、試合以上に大変な存在らしい。競技は自分との戦いだけれど、性愛は勇利との戦いだ。いま、勇利が相手ならヴィクトルはたやすく降伏してしまう。  なんだ、じゃあ「鉄壁の理性」なんてまったく脆いものなんだな。  そう気がついたヴィクトルはふっと笑ってしまった。腕の中で穏やかに眠っている勇利をみつめると、胸がひどく甘く引き絞られた。 「勇利、おまえを抱きたいよ」  ヴィクトルはつぶやいた。 「ああ、勇利とセックスがしたいなあ」  ぱちっと目がさめたとき、勇利は自分がどこにいるのかわからなかった。視界に入るものは知らない壁だし、知らない扉だった。しかし匂いは知っていた。勇利は身体があたたかいことに気がついた。ヴィクトルに抱きしめられている。あまりにぎょっとして、飛び起きることもできなかった。お互いバスローブ姿でかなり密着していた。素足はふれあい、まるでのしかかられているようだった。勇利の心臓はうるさいほどどきどきと高鳴った。思い出した。ぼく、ヴィクトルと、ラ、ラブホテルに……。  テレビの音が低く流れている。ヴィクトルは眠っていた。端正な顔に、長い前髪がかかっている。それを見ただけで勇利は胸が甘く、痛くなった。  当たり前だけれど、ふたりのあいだに何かがあったというわけではなさそうである。勇利は緊張と疲労のあまり寝入ってしまい、ヴィクトルは風呂から上がってそんな勇利をみつけ、マッカチンを抱くくらいのつもりで抱きしめて眠ったのだろう。こんな場所で──ヴィクトルはラブホテルだとわかっていないのだろうけれど──こんなバスローブ一枚のかっこうなのに、そんなふうにできるのだ。ぼくのことなんかなんとも思ってない証拠だよなあ、と勇利はせつなくて笑ってしまった。ぼくはこうして抱きしめられてるだけで、どきどきして心臓が壊れそうなくらいなのに……。  まあ、当然か。ぼくにはそんな魅力ないし、ただの生徒だしね……。勇利はもぞもぞと起き上がり、ヴィクトルの腕から抜け出した。眼鏡がない。視線をめぐらせると、ベッドのすみのほうに置かれていた。ヴィクトルが外してくれたのだろう。 「勇利……」  ヴィクトルが、勇利がいないことが気になったのか、敷布の上を手で探った。勇利はベッドから降りて振り返った。 「ヴィクトル、そろそろ時間だよ。出ないと」 「……ああ」  ヴィクトルは身を起こし、気の抜けたような声で返事をした。目つきもぼんやりしている。 「わかってる? 寝惚けてない? 雨に降られて、ラ……あの、ホテルでやすんでたんだよ。おぼえてるよね?」 「ああ、わかってるよ」  勇利は壁際へ行き、衣服にふれてみた。もうすっかり乾いている。よかった。どんなふうに服を着ようかとすこしためらった。いちいち身体を隠しながらというのはどうかと思うけれど、だからといっていきなり全裸になって堂々と着替えるのもはしたない。結局、バスローブを着たまま、そっと足を上げて下着を身に着けた。 「勇利……」 「なに?」 「……いや、なんでもない」  顔を向けると、ヴィクトルがちょうど目をそらすところだった。彼もベッドから出て窓のほうへ歩いていく。勇利はじっとヴィクトルをみつめ、それから思いきってバスローブを脱ぎ��ててシャツに腕を通した。 「ああ、雨は小降りになったみたいだ。勇利の言った通りだね」 「そう……」  勇利が身支度を整えていると、ヴィクトルもそばへやってきててきぱきと服を着た。勇利はヴィクトルのそばから離れた。  そういえば、ヴィクトルと一緒に寝たの、初めてだったな……。もっとあったかさを味わっておけばよかった。どうせ一生ないことだし。勇利は自分の腕にふれながら、ふとそんなことを思った。でも、改めて実感したりしたら、さらにせつなくなってしまったかもしれない。これでよかったのだ。 「じゃあ帰ろうか」  ヴィクトルが扉を開けて振り返った。勇利はほほえんだ。 「……うん」 「後払いだっけ? 俺が出すよ」 「だめ」 「俺が言い出したんだから」 「半分出す」 「勇利」 「出す」  意地を通して言い張ったら、ヴィクトルがほほえんで「わかった」とうなずいた。  ホテルの三軒隣にコンビニエンスストアがあったのでそこまで走り、傘を買うことにした。 「一本でいいよ」 「え、でも」 「いいよ」  ヴィクトルがにっこり笑って、いちばん大きな傘をレジへ持っていった。 「さっきは勇利の言うこと聞いてあげたから、今度は俺が言い分を通す番」 「それおかしくない? だってふたりで使った部屋なんだから、半分ずつ出すのなんて当たり前じゃん。ぼくがわがまま言ったわけじゃないのにそんなの……」  勇利ははっとして口をつぐんだ。これでは、「すぐそこのホテルからいま出てきました」と教えているようなものである。ヴィクトルとの会話は英語だけれど、英語のわかる人だってもちろんいるだろう。勇利は店員や客からそっと視線を外した。  まあ、部屋を使ったっていっても、寝てただけで何もしてないんだけど……。 「行こうか」  ヴィクトルが傘をひらき、勇利を見た。勇利が同じ傘に入ると、彼はしとしとと降る雨の中へ踏み出した。空は白くひかりを帯び始めていて、もうすこしもすれば雨も上がるようだった。ヴィクトルは黙って歩き、勇利もしずしずと彼に従った。 「──いつか、」  ヴィクトルがつぶやいた。 「いつかまた……、勇利と同じベッドに入るようなことがあったら……」 「え?」 「俺は勇利を──」  ちょうど裏小道から大通りに出たところだった。大型のトラックが通り過ぎていき、勇利はヴィクトルの言葉を拾い損ねた。 「なんて言ったの?」 「──いや」  ヴィクトルが勇利をみつめて優しくほほえんだ。勇利が見蕩れてぼうっとしてしまうほど、すぐれて甘美で思いやり深い微笑だった。  ──いつか。  いつかこのすてきなひとが、スケート以外でも、すこしでもぼくに興味を持ってくれたなら──。  勇利は微笑した。  あるわけないか。 「ふふっ」 「なんだい?」 「なんでもないよ」  勇利はヴィクトルの持つ傘越しに空を見上げ、にじむように輝く白い空をみつめた。  ふたりの指先が、ほんのすこし、もうちょっとでからみそうなくらい、ふれあっていた。
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marisa-kagome · 4 years
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【CoC】顔(だけ)はいいアイツが行方不明になった件について
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【概要】
プレイ人数:2〜3人
所要時間:ボイセで2〜3時間程度
推奨職業:探偵、警察関係者、もしくはNPCの知人
推奨技能:なし
形態:シティシナリオ、村を回る程度のもの
ある程度軽めのシティシナリオとなっています。また、グロ描写は無い為、クトゥルフによくある事件!死体!内臓!!が苦手な方、初心者の方にもお勧めです。
特にこれといった技能がなくても、行動次第でクリアが可能となります。推奨技能は無しと伝えてください。
【シナリオ・イラストの利用規約】
OK:主旨が変わらない程度の軽度の改変、このシナリオを回す場合のNPCとしてのイラスト使用、このシナリオのリプレイ動画への使用(報告不要)や卓画面のスクリーンショットの投稿
NG:イラストのサイズ以外の加工処理、シナリオやイラストの二次配布、無断転載、このシナリオ以外での立ち絵、トレーラーの使用、重大なネタバレとなる画像や文字を多くの人の目に留まる場所へ投稿する行為
リプレイ動画等に使用される場合は、絵師様のお名前、Twitterアカウントの明記をお願い致します。
トレーラー・キャラクター画像 黒川たすく @tas_po
シナリオ 詐木まりさ @kgm_trpg
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【あらすじ】
サークル旅行先で美人を捕まえたイケメン、丘竹義人(おかだけよしと)。やることをやって別れた後も連絡を取り続けており、一ヶ月後にまた逢いたい♡と呼び出されてのこのこ出かけて行った、が、実は人に化けたキツネであった彼女から告げられたのは妊娠だった。責任を取って結婚してもらおうと父親やら親類やらに拉致されてしまった丘竹はどうなってしまうのか………!!
このシナリオは、友人、知人、探偵、或いは警察関係者である探索者達が、丘竹を連れ戻すことを目的としたシナリオになります。探索者は彼の彼女として参加してもよいでしょう。
【導入】
探索者たちは行方不明になっている男「丘竹義人」の捜索の為、とある旅館を訪れることになる。探偵や警察をやっていて丘竹の両親に依頼されても良いし、直接の知り合いであっても構わない。
◎丘竹義人(おかだけよしと)
21歳、大学三年生。明るく社交的な性格で決して評判は悪くないが、少々、というよりかなりノリの軽いところがある。ある意味とても、大学生らしい大学生。3月1日頃、晴間荘と言う温泉宿に二泊三日の一人旅に出かけたが、予定を三日過ぎても帰ってこない為、様子を見てきてほしいと依頼された。旅の目的などは誰にも告げていない。
もし探索者が彼の彼女である場合、親戚の家に行くと伝えられている、が、彼のパソコンの履歴を見たところ、晴間荘の予約が取れていたようだ。どういう
ことだと不審に思ってもおかしくないだろう。
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◎晴間荘(はるまそう)
中部地方の山間部、轟木村(とどろきむら)にある温泉宿。観光地化が特にされている場所ではなく、田舎にひっそりとある宿らしい。露天風呂があり、一応団体が宴会を出来る部屋などもある様で、幾つかの部屋の写真がネットに載っているだろう。
3月7日、一日二本のバスに乗り目的地を目指せば、19時過ぎに田んぼの広がる山のふもとに一件の宿が見えてくる。暖簾をくぐると年老いた女将が、遠路はるばるようこそおいでくださいました、と探索者を出迎えてくれるだろう。
◎女将に何か尋ねる場合
丘竹を知らないか→チェックアウトはしていないが、部屋に宿泊費が置いてあった。普通に帰ったのではないだろうか。荷物等はなくなっていた。
誰かと一緒にいたか→若い女と二人で泊まっていた。名前などは分からない。
この地方について→観光地ではないのでみて回るほどのものも無いが、美味しい豆腐屋がある。名物は油揚げ。本日の営業は終了している。
他の宿泊客について→あまり細かいことは答えられないが、三人ほど泊まっている。
丘竹の部屋を調べたいといった場合、特に断られもせず普通に案内されるだろう。また、丘竹が来て以降この部屋には誰も泊まっていないことも教えてもらえる。偶然丘竹が泊まっていた部屋に案内されてもよい。
小さな和室に目星を振るならば、30分程しっかり調べた結果、押し入れの奥に充電の切れたスマートフォンを見つけることが出来る。手持ちの充電器で回復させることが出来ても構わないし、もしも探索者がガラケー所持者な場合、他の部屋の宿泊者に借りに行っても構わない。電源を入れると、複数人で映った飲み会の様な写真がロック画面に出てくる。その中に丘竹の顔を見つけることが出来ていいだろう。
また、事前に晴間荘をネットで検索しており、この時点アイデアに成功すれば、ロック画面の写真が晴間荘の宴会の間であることが分かる。ここに気付き写真の取られた日付を調べれば、2月3日であることも分かってよい。スケジュール帳などを調べれば、ここに二泊三日のサークルの旅行が入っていたことも知ることが出来る。
携帯を調べる→晴間荘に来る前「天谷さつき(あまやさつき)」と呼ばれる女性とやり取りをしていたことが分かる。やりとりが始まったのは2月5日からで「また遊ぼ」「��っかいこっち来ない?」といった会話から、3月1日に丘竹がこちらへ来るようになった流れが確認できる。また、美人な女性の写真も途中に添付されている。会話は3月1日、丘竹の「着いた!」が最後となっている。
部屋を一通り調べ終えると、女将が「食事の準備が出来ました」と声を掛けてくる。
もしここで天谷さつきについて尋ねる場合「ああ、さつきちゃん?」と知っている素振りを見せるだろう。この宿のすぐ近くに住んでいるらしいことは教えてもらえるが、もし写真を見せるならば「これはさつきちゃんじゃないよ」と断言されるだろう。そして「こんな感じの人と丘竹さんは一緒にいたけれど」とも返される。また、帰省している天谷さつきの姉が、こちらに泊まっていることも教えてもらえる。
自室に向かえば山の幸と、噂の豆腐屋の豆腐と油揚げが並べられている。非常に美味な食事に舌鼓を打てば、女将が温泉も是非、と言うだろう。もし温泉に入ろうと思うのならば、浴場へ案内される。そこまで広くはないが風情があり、田舎���いうこともあってひっそりとしている。
もし女湯に入る場合、脱衣所で目星に成功するとぱらぱらと、小さい毛が落ちているのを見つける。生物学に成功すれば、これは動物の毛では、と思う。クリティカルがもし出れば、これが狐の毛であることが分かってよい。
探索者がのんびりと露天風呂に浸かっていると、突然、大雨が降りだす。天気予報を思い出したり調べたりするのであれば、その様な予報は一切出ていない。もし女将に何かを尋ねるなら「この地域ではよくあるんですよ、悪戯天気なんて言ってねぇ。急に止むこともあるから一概に悪いとも言えなくって」と話してくれる。
◎隣室の誰かを訪ねる場合
隣1:声を掛ければ「今忙しいんで後にしてもらえますか」という女性の返事がある。出ては来ない。もしもしつこく声を掛けるのなら一瞬だけドアが開き「うるっさいな!仕事中なの!忙しいからあとにして!!」と目の下にクマを作った女性が叫び、一瞬で戸は閉まるだろう。
隣2:声を掛ければ「どうしました?」と一人の男性が出てくる。四十代ほどの彼は「東風谷太郎(こちやたろう)」と名乗り、職業などを尋ねるのならの獣医であると答えられる。仕事ではなく、偶に都会の喧騒が嫌になって、こちらへ来ているらしい。何故ここにと尋ねれば「いやぁ、油揚げが絶品で、つい」と答えるだろう。
また、先に隣1に声を掛けていれば「そういえば、隣の人、びっくりしたでしょ。ファッションデザイナーさんみたいでね、今仕事が佳境っぽいんだよ。そっとしといてあげて」と言われる。
彼はこの地方に狐が多いことや、民俗学的なことは知らないが、もし狐に関しての知識を訪ねるならば、その生態を教えてくれる。「大体全国にいるかな、普通小さな家族単位で生活しているけど、大きなグループで生活していた例もあってね。宮城あたりだったかな。肉食に近い雑食だから餌が少なければ人の残飯とかも食べるし。あとは夜行性で用心深いけど、賢いし好奇心もつよいからね。慣れたら結構大胆になっちゃうからもちろん餌付けとかはしたらいけないよ。繁殖期は12月から2月くらいの間で、妊娠期間は二ヶ月いかないくらい。大体一ヶ月くらいで赤ちゃんいるってわかるよ、割と犬みたいなもんだしね。巣穴の長さが30メートルくらいになることもあるっていうから、すごいよねぇ」
隣3:声をかければ「はーい、ちょっと待ってくださいね」と一人の女性が出てくる。二十代ほどの彼女は「天谷あかね(あまやあかね)」と名乗り、職業などを尋ねるのなら、東京でOLをしていることを教えてもらえる。もし天谷と言う名前で丘竹のメールで見た名前を思い出し、そのことについて尋ねるのであれば、彼女の姉であることを教えてくれる。しかし写真を見せられたのであれば「これ、さつきじゃないけど」と言われるだろう。
帰省理由:休みが取れたので、また、さつきの具合があまりよくないと聞き、心配だったらしい。一週間ほど前に治ったらしく、明日の夜、ここから発つ様だ。家のすぐそばにあるここの宿の女将とは家族ぐるみの付き合いで、旅館業務の手伝いも兼ねてよくこうして泊まっているらしい。
さつきの具合の詳細については話してくれないが、一ヶ月ほど調子が悪かったことは話してくれる。
※もし積極的に探索者から隣室を訪ねなければ、風呂上りに自販機の前などで東風谷に遭遇してよい。出会えば軽く会釈をする程度の彼が自分から話しかけてくることはないが、何か声を掛ければ快く言葉を返してくれるだろう。そこから他にも宿泊者がいる情報を手に入れることが出来る。
◎食後
外は街灯の明かりなどもなく真っ暗で、この日は探索を続けることは出来ないだろう。
布団の中で寝入ったあと、気が付けば探索者は知らない黒い空間にいる。そして、誰もいない空間で呻き声のような物を耳にする。
「うう………ごめん…悪かったよ……帰して……俺を帰してぇ…………」
もし探索者が丘竹と知り合いであれば、その呻きが彼のものであるということは分かってよい。
また、ここで聞き耳に成功すると、小さなぼそぼそとした声を聞き取ることが出来る。「タイアン、ツギノタイアンニ、ギヲ」という声は人のものとは思えず、非常に不気味な響きである。SANチェック0/1。
次の瞬間、目が覚めれば朝になっている。
また、探索者がもしカレンダー等を調べるなら、次の大安の日が、明日であることがわかる。
朝、部屋を出ると食事の盆を三つ用意している女将に出会う。目星に成功、もしくは盆の上を注視すれば、三つ中二つに、油揚げがたっぷり盛られていることに気付く。指摘するならば「お客様からのリクエストなんですよ、九守(くもり)さんとこの、おいしいから」と答えてくれる。
※女将にこの地方の言い伝えや観光名所を聞いても、きつねのきの字も出て来ない、というのも、所詮は伝説であり、あまり実感がないからである。観光名所もこんなさびれた田舎には無く「美味しい豆腐屋くらいしかないですねぇ…」と答えられる。
◎九守豆腐店(くもりとうふてん)
豆腐屋に行くならば、旅館から歩いて10分ほどの場所に小さな店があるだろう。
中には鉢巻きを巻いた店主がおり、にこやかな声で「旅行かい?」と聞いてくる。
この地方や油揚げのことに関して尋ねれば「油揚げ、人じゃなくて狐にも人気なんだよ、あ、買いに来るわけじゃないけどね」もしくは「この地域はそうだなぁ……あ、狐が多いよ」などと答えてくれる。会話を続けると「化ける、みたいな話も伝わっててね」「きつねが一斉に宴会をやる、なんて伝えられてる河原もあるんだよ。宴河原って言うんだけど。たまにウチの油揚げをお供えしてるよ。無くなってるから本当に食ってるのかもしれないねえ」「何か知りたいのなら天谷さんの所に行ってみたらどうだい?古い蔵があるからね、何か見つかるかもしれないよ」等の話をしてくれるだろう。
◎天谷さつき宅
旅館から3分ほどの蔵のある古民家に行けば、一人の老婦が出迎えてくれる。
彼女に蔵の中のものを見たいと言えば「どうぞ、眠っているだけなのも可哀想ですから、見てやってくださいな」と、快く案内してくれるだろう。しかしさつきの事を聞くなら「あの子は今出かけています」と返す。心理学に成功すれば、彼女が何か隠していることが分かるだろう。病状などについても何も答えてくれない。
結構な広さのある蔵には、骨董品などが所狭しと並んでいる。目星か図書館で、二時間ほど探索すれば轟木の歴史に関してつづられた小さな書物を見つけられる。その中に探索者は狐の文字を見つけられるだろう。
「ある所に、狐を愛してやまない男がいた。男は毎日の様に山へ向かい、狐に食べ物をやり、時には家に上げるほどであった。そうして日々狐と共にいたある日、一匹の若い狐は男に恋をし、男も同じく雌狐に恋をした。一人と一匹は狐の父親に結婚させてほしいと頼んだが、父親は頑なに大事な娘を人へ嫁にはやらぬの一点張りだった。それでも男が何度も頼み込めば、普段食わせてもらっていることもあったのだろう、父親は”上等な婚礼衣装を用意し、吉日に天気雨を降らせれば結婚を赦してやる”と約束した。翌日、早速男は仕立て屋に赴き、殆どの財産を渡して婚礼衣装を作るように頼み込んだ。そしてその日から噂という噂を集めて回り、十里先の村に非常に力を持った陰陽師がいると聞きつけ、すぐさまそちらに出向いた。男は事情を話すと、人の言葉と引き換えに、天気を変えることの出来るまじないの書かれた書を譲ってもらう事が出来た。
早速試そうとした男だったが、人の言葉を失ってしまった男はまじないを唱えることが出来ず、途方に暮れていた。それを見た雌狐が、今度は反対方向へ十里の道のりを超え、とある薬師(くすし)から人に化けられる薬を手に入れて来た。人に化けた娘がまじないを唱えれば、雲一つない空から雨が降り始めた。狐は晴れ着を身に纏えば男のもとへ出向き、めでたく結ばれたという。そして空模様を変える術を手に入れた狐は、それからも嫁入りの度に天気雨を降らせている、それ故に天気雨が多いと、この地方では古くから伝えられている。」
蔵の探索が終わり天谷宅を出て一分ほどすると「待ってください!」と言う声がする。後ろを振り返ると一人の高校生くらいの少女が息を切らして立っている。「私のこと、探してました?」と言う彼女は天谷さつきと名乗るだろう。
「おばあちゃん、私が具合悪くなってから、あんまり人の前に出してくれなくて……」「実は、狐屋敷に行ってみたんです」「話に聞いてたから気になっちゃって」「行ったあとから最近までの記憶、実はほとんど無いんです」「……周りの人が言うには、乗っ取られたみたいだったって、割と有名な話なんです。狐屋敷に行くと屋敷に住むたくさんの狐に憑かれるの、イタズラ好きだからって。だからあの家壊せないんですよ」「屋敷って言ってもちっちゃい古い家ですけどね、たまに気になって行っちゃう観光の人もいるみたいです。やっぱりあんまり良い噂は聞かないですね、私みたいになっちゃったのかな」「携帯は失くしてました、仕方ないから新しいものを買いました」「記憶が戻ったのは、なんか勝手に出歩いちゃった日に、隣の隣の柴田さん家でなぜか。あれ?って思って、それで自分が靴も何も履いてないことに気付いて」
彼女は口を開けば大体この様なことを語ってくれる。また、丘竹のことや写真の女のことは知らない様だ。
※もし豆腐屋に行く前に、さつきに会いたいという用件のみで来れば、老婦は決して中へは入れてくれない。その後豆腐屋に行って蔵に興味を示せば、豆腐屋の主人が電話をかけてくれ、とりあえずそちらへは入れてもらえるだろう。さつきとのイベントは蔵を調べ終えた後となる。
※伝承に残る陰陽師はニャルラトホテプ、薬師はミ=ゴである。クトゥルフ神話技能等で分かっても良いが、特に知るメリットは無い。無闇に降らせず、探索者の提案があった場合のみダイスを振ってもらうこと。成功した場合はSANチェック1/1d3。
◎柴田家
入ろうとした途端、犬小屋の犬に激しく吠えられる。その声を聞きつけてか出て来た50代ほどの男性は柴田秋男(しばたあきお)と名乗り、すみませんねぇ、この子気性が粗くって、と謝ってくる。
さつきに関して尋ねると、一週間ほど前、急にちょうどこの玄関前に裸足で座り込んでいて驚いたという。暫く姿をみていなかったが、病気だったとはねぇ、と言った様子だ。
また、狐の話に関しては「五年くらい前に緑が欲しくてここに引っ越してきてね、あまりそういった話は知らないんだ」と言ってくる。
※狐は犬が苦手な為、さつきは徘徊中にここで目が覚めている。犬を借りようとするならば、それなりの嘘をつけば「犬を散歩に?構わないよ」と言ってくれるが、もし狐屋敷に連れていきたいと言うと「愛犬を廃墟に連れて行かれるのはちょっとね………」と断られるだろう。
◎宴河原(うたげがわら)
ごろごろと石が転がった河原。旅館からは徒歩約10分。油揚げは今は供えられていないが、平たいテーブルの様な岩が幾つかあることは分かる。目星に成功すれば、その側に毛を見つけることが出来る。生物学に成功で、動物のものだと分かってよい。
◎狐屋敷
ぼろぼろの小さな民家は集落から歩いて30分程度の山の中にあり、壁や屋根などあちこちに穴が開いているだろう。玄関から入ってすぐは土間で、他は囲炉裏や押入れのある小さな部屋が一つあるのみである。
聞き耳に成功すれば、飼育小屋の様な匂いがうっすらとすることにも気付いてよい。また、聞き耳でクリティカルを出せば「姿は全く無いのに何十もの瞳に見つめられている様な感覚」を覚える。SANチェック1/1d2。
家に足を踏み入れ何か技能を振ろうとする探索者は、その前にPOW×2。失敗すると、探索者は狐に二時間ほど憑かれることになる。憑かれる場合、次に幸運を振る。失敗すれば探索者は一目散に屋敷から飛び出してしまう。正気の誰かがそれを止めるには、DEX対抗や組み付き、STR対抗等が必要になってくる。
また憑かれた場合は1d6を振り、下の表通りのロールをする事。探索者は今は探索者であって探索者で無い状況であり、探索者の本来の精神は眠ってしまっている様な状況なので自我を出すことは一切不可能だ。一人称などが変わってしまっていてもよい。精神分析も不可である。中の狐はただ笑うだけだろう。
憑かれ表
1 何を聞いても油揚げの事しか答えず、隙を見てはすぐに豆腐屋へ行こうとする。
2 何を聞いても嘘や適当な事しか言わず、すぐに寝ようとする。
3 何を聞いても何も答えず、ずっと地面のあちこちを掘り返している。
4 何を聞いても何も答えず、じっとしゃがんで目を光らせている。幸運に失敗するとネズミが出現し、脇目も振らずそちらに飛びかかる。ネズミのDEXは15。
5 何を聞いても歯を見せて獣の様に唸るばかりである。時には飛びかかり、作業を妨害しようとする。
6 探索者の誰かを執拗に誘惑してくる。探索の事に関して質問しても、そんなことよりも、と一緒に旅館に帰ろうとするだろう。
もし、探索者全員が狐に憑かれた場合、意識が遠のき気がつけば、幸運に成功している場合狐屋敷で、失敗している場合私物や服を一つ無くした状態で河原にいる、時計を見ると時間が二時間経過している、という描写で構わない。SANチェック1/1d2。
もし、直前に宴河原に油揚げを供えていれば、もしくは犬を連れて来ていれば、POW×2は必要ない。また、上記の対策が出来ていない場合、何か技能を振る度に、その前にPOW×2の判定をやり直すこと。
屋敷にいる探索者をじっと見ている数十匹の狐は、常に乗っ取る機会を伺っている。
土間:目星に成功すれば、名刺ケースが落ちているのを見つける。中に入っている名刺には「デザイナー・松雪ミヤビ」と書かれている。
押し入れ:小さな化粧箪笥の様なものが入っている。中には巾着袋が一つ入っており、大量の何かの粒が入っている。聞き耳に成功すると薬の様な匂いが嗅ぎとれる。また、薬学を所持しているならば、何かの薬であることまでは分かるが、用途までは分からないだろう。
目星に成功すると、隠し引き出しを見つけられる。どうやらここを開けるには、鍵が必要な様だ。囲炉裏の鍵で開けることが出来、小さく折りたたまれた紙切れを見つけることが出来る。母国語に成功で読解可。「空ヲ操ル呪ヒ」と書かれており、読めはするがどこか背筋の寒くなる、奇妙な言語がつづられているだろう。SANチェック0/1。この呪文はMPを10消費し詠唱を唱える事によって一定範囲の天候を少し変えることが出来る。
詳しくはルールブックの天候を変える呪文参照(P273)。ただし今回は雨のレベル1とレベル2の間に、天気雨が存在する事とする。
囲炉裏:目星では何も見つけられないが、手を突っ込んで幸運に成功すれば、鍵をつかむことが出来る。鍵を使えば押入れの化粧箱の隠し引き出しが開けられる。
◎松雪ミヤビ
ドアを叩くと「ご飯そこ置いといてください」という声がするばかりで開かない。無理やり呼び出すとやはり怒りながら扉を開けて来る。説得や言いくるめに成功すれば「本当に忙しいんですよ、衣装製作してるんです。デザイナーなんです」「白無垢作ってます、知り合いが結婚するんですよ、もういいですか?」と疲れ切った目で状況の説明をしてくる。
目星で、部屋の中に白い布切れが散らばっていることが分かる。
狐に憑かれている彼女は油揚げで容易く外へ呼び出すことが出来る。誰かが彼女を呼び出している間、部屋に侵入することは可能だろう。その場合、部屋の中央には白無垢が掛けられており、脇の盆に大量の油揚げが積まれていることもわかる。
【丘竹の救出方法】
3月8日中に、
「天候を変える呪文の書かれた紙切れを盗む、燃やす、処分する」
「婚礼衣装を破壊する」
「薬を盗む」
のどれかを行うことにより、結婚式を阻止することが出来る。
もし上記の行為を行えば、その晩、眠っていた探索者はふと目を覚ます。聴こえてきたのは何十という爪がカリカリカリカリ、と窓や壁、扉を引っ掻く音だ。体は金縛りに遭ったように一切動かず、ひたすら全方位から響いてくる爪の音を長時間聞かされるだろう。SANチェック1/1d3。
そして爪の音はタイミングを合わせたようにぴたりと止み、同時にどっと眠気が押し寄せる。微睡む探索者の頭の中では不気味な呪うような声が遠くに聞こえる。「これではよめにいけぬ、これではよめにいけぬ、ええいいまいましい、すててしまえ、おぼえておけ」この声は、初日に夢の中で聴いた囁きと同じである。
次の瞬間悲鳴が聞こえ、探索者は寝た気がしないまま、明るい部屋の中で目を覚ますだろう。
悲鳴の声��は聞き覚えがある、初日に夢の中で助けてくれと叫んでいた声だ。
慌てて宿の外に向かえば、全裸の丘竹がそこに転がされている。
彼は全身引っ掻き傷だらけで号泣しており、何を聞いても謝るだけである。しかしキツネ、と言う単語を聞くだけで腰を抜かしガタガタと震え、謝罪の言葉は一層多くなるだろう。命に別状は無いようだ。
壁や窓に傷は一切ないが、丘竹の周囲には動物の足跡が大量にあることが分かる。気味が悪いほどの量だ。背筋に寒気を覚えた探索者はSANチェック0/1。
その後、探索者たちはチェックアウトを済ませれば、本数の少ないバスに乗ってこの地を発つことになる。田舎道を揺られている最中、ふと窓の外を見れば、一瞬、三角の耳が草むらから飛び出していたような、そんな気がするだろう。
エンド1:人のハッピーエンド。
もし上記の三つを一つも行えないまま3月9日を迎えた場合、太鼓や鈴の音で探索者は目を覚ます。外に出れば空は雲一つ無く晴れているというのに雨がしとしとと、地面に降り注いでいるだろう。また遠くの道に何かの行列が見える。目星に成功すればそれが花嫁行列で、しかし顔が全員狐であること、その中に一人だけ人間が紛れていることが分かる。同時に離れているというのに探索者の頭の中に「たすけてくれ、たすけてくれよぉ………」という悲痛な声が聞こえてくるだろう。そして瞬きをした瞬間、その光景は消え、音も声もすっかり止んでいる。SANチェック1/1d3。
それから丘竹の姿を見たものは、決して現れなかった。探索者たちは何も得られぬまま、晴間荘から帰ることになる。
エンド2:キツネのハッピーエンド。
【生還報酬】
丘竹を救出した 1d4
尚、SAN値は上限を超えて回復しないものとする。
ここまでお読み下さりありがとうございました!
シナリオを楽しんで頂ければ幸いです。
丘竹君ですが、これからは静かに生きていくと思います。仲良くしてやって下さいませ。
詐木まりさ @kgm_trpg
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cdne280023-blog · 7 years
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9コマシナリオとシャッフルディスカッション
11月13日(月)4,5限 第9回目授業
 どうも。この日の午後にwindowsOSが壊れて初期化し、最初からやり直さなければならなくなった投稿主です。右クリックができません。
 今回は各自で作ってもらったプロトタイプを見ながら、案を練り固めて前回と同じように他のチームに見てもらいました。
<9コマシナリオ>
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 この写真は私が持ってきたプロトタイプです。左からゴムコプター、ゴム動力ヘリコプター、紙パックシューターです。1つは失敗しましたがまぁなかなかの完成度だと私は思っています。初めから考えたおもちゃのプロトタイプではないですが、ここから私たちオリジナルのおもちゃを作り出します。
 メンバー一人一人に作ってもらったので、プロトタイプが6つになりました。おもちゃの案が決定した時はなかなか参考例が見つからず苦戦していたのですが、頑張って探して作ることが出来ました。
 特にメンバーに人気だったのはこちら
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 ッテッテレー ゴ ム コ プ タ ー ☆(青いタヌキ型ロボット風に)
 名前は安直です。いい名前が見つからなかったので。
 これは上の翼を時計回り(逆でも可)に50回以上回して、おもちゃを垂直にし、手を一気に離すと上に飛んでいくというものです。上に飛ぶはずなんですが、私のはなぜか頭の周りを一周したり、ななめ前に飛んでいきました。アレーオッカシィナァ―。
 楽しすぎて15分ぐらい遊んでしまい、9コマシナリオを考える時間が無くなりそうでした(笑)
 9コマのシナリオを考えて、ペルソナ決めて、目標を決めて、ゴールを決める・・・この作業は色んな授業でやったことがあるので、初めて学ぶものではありませんでしたが、使用するユーザーが考えることや想定される行動を決めておもちゃを作ることは足りないなと思っている部分にすぐ気づくことができる点で重要だなと思いました。また自分勝手な思い込みでほぼ完成版を作れば失敗して後悔するんだなということをこの授業で改めて思い出させてくれました。
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 9コマのシナリオは長いなと思ったんですが、書き出してみるとそうでもなかったです。4コマの起承転結みたいにあらかじめ決めてありましたが書き終わると追加したい要素が増えて9コマのシナリオが出来上がりました。
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 イラストは全員で協力し合って書きました。6割ぐらい私が担当しました。ペルソナと2コマ目までは結構細かく書いていたのですが、遊びすぎて時間が無くなりかけていたので簡略化して「分かればいい」イラストを10分ぐらいで書きあげました。こういうシナリオってどこまでイラストを細かく書いていけばいいのか分からなくなります。
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 ペルソナです。7歳ぐらいの子供と31歳ぐらいの母親にしました。先生に「母親若くない?」と突っ込まれてしまいましたが。
 <シャッフルディスカッション>
 説明ド下手くそによるド下手くそなおもちゃの説明はっじまっるよー(白目)。前回も説明したし、分かるまでおもちゃの案の会議したので緊張はしませんでしたが、果たして何人が私の説明を聞いて理解できたのでしょうか。(2人と先生2人にしか説明してないけどね)まぁ説明の件はおいといて、私たちのおもちゃの案は聞いてくれた方の多くに好評でした。プロトタイプで遊んでくれた方もいました。いいコメントもありましたが中には学習要素を一つのことに絞った方がいいとか巻く時間がもったいないとのコメントもあり、もう一度メンバーで見直そうと思いました。
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 他のチームに説明中(私ではないです。私より分かりやすい説明でうらやましい・・・)。
 先生方も私たちのおもちゃの案は良いが、名前がダサいのとデザイン(既存の物なので、翼の形を変えたり、部品を頑丈なものにしたり、ストローの長さを変えたりなど)を検討してみてほしいということも言われました。確かに名前はダサいです。名前の件で満島先生が、「名前はおもちゃの形から決めることもできる。例えば花の形にして花コプターのように」とヒントをくださったので、このヒントも取り入れてみようかなと思います。
 また、先生が最初の方でおもちゃをレンタルにするとおっしゃいました。しかし、私たちのチームは作って遊んで学習するようなおもちゃを考えていたので、その件も考え直さなければいけないかなーと思っていましたが、結構手間暇かかっていて味があるからレンタルじゃなくて持ち帰りできる物でも良い・・と許可してもらえそうなことを言われたので、自分たちでオリジナルのおもちゃを作ってもらうというコンセプト?は消えずに済みそうです。(^▽^*)
  改善できるところがいっぱいあるので、とりあえず学習要素と名前と部品や形をどうするのかを最優先事項として中間発表前までに会議を開いて決めようと思います。この応用演習はやりがいがあって面白いです。辛いけどおもちゃを考えたり、作ったりするのが楽しいです。
 次のミーティングで決めること
・学習要素を絞ってどんな説明をつけるかを考える
・デザインを考える
・巻き時間を考える
・「親子」の親要素をくっきりさせる
・飽きたときにどうするのか
  飽きる。私たちが作ろうとしているおもちゃは最初はたくさん遊べるのですが、段々飽きてくると先生に言われたので、飽きさせない工夫をしないとなりません。私も物凄い飽き性なので、一つの遊び方だけのおもちゃは耐えられず、遊ばなくなった思い出があります。おもちゃは遊んでもらうためにあるので、これも中間発表までに何とかなるといいなと思っています。
 決めることがたくさんだ。
私に時間をください。24時間とか短すぎる。
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ezokomachi51 · 7 years
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トム・ストッパード作『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』 − 裏『ハムレット』 −
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0.​ ​  はじめに
 1966年、チェコスロバキア出身、イギリスの劇作家であるトム・ストッパードは『ローゼンクランツとギルデンス ターンは死んだ』(原題:​Rosencrantz​ ​&​ ​Guildenstern​ ​Are​ ​Dead、以下「ロズとギル」)という稀代の名作のスピンオフともいえる戯曲を作​成した。この作品はかの有名な劇作家ウィリアム・シェイクスピアの四代悲劇にも数えられる『ハムレット』に登場する脇役二人組に焦点を当てた風刺劇であり、自分たちの「死」に知らぬまに近づい ていき最後にはハムレットの策略とも気付かぬまま死んでいくローゼンクランツとギルデンスターンの喜劇の物語でもある。
ここでは、1985年に執筆された『ロズとギル』の戯曲と1990年原作者によって監督撮影された同名の映画作品を参考に、1996年ケネス・ブラナー主演で撮影された『ハムレット』も含めながら、ローゼンクラン ツとギルデンスターンの物語の特徴を見ていく。
1. 対話、ゲーム、すり替え―様々な演出と役割
 まず戯曲『ロズとギル』の登場人物について確認する。前述のとおり本作はウィリアム・シェイクスピアによる戯 曲『ハムレット』の登場人物で、ハムレット王子の学友として彼の狂気の謎を探ってほしいと国王に依頼をうけたローゼンクランツとギルデンスターンという男二人が主役である。本作の登場人物は非常に少なく、彼ら二人以 外に重要な位置を占めるのが旅役者達の座長である。この物語はおもにこの三人を柱として進んでいく。時代 設定としてはケネス・ブラナーのハムレットとのヴィクトリア朝とは違いエリザベス朝を意識したものになってい る。二人はハムレットでは端役で、その生死さえも伝令のセリフ「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」のみで伝えられハムレットには小物呼ばわりされ脚本のなかで驚くほど役割を与えられていない。どんなに 物語の核心の近くにいようとも、入れ替わっても気づかれない彼らの存在で物語が実質的に動くということはほとんどないのである。しかし『ロズとギル』の世界において彼らの存在はメインであり、そこに時々ハムレットの世 界が乱入してくる。したがってハムレットの脚本に変更点はないが、そこで描かれたかもしれない間隙を補完す るように『ロズとギル』の世界が見えてくるという構造である。
1-a ​ ​ロズとギルの対話と物語進行のカギ
 冒頭の演出は映画でも脚本でもさほど変わりなく、エリザベス朝の旅装束をまとった男二人がどこともわから ぬ特徴のない場所(森)でコイントスをしながらあたりを見回しているところから始まる。その時ギルのコイン袋は 空っぽで、ロズの袋はいっぱいになっている。ここに来るまでに二人はコイントスでコインを賭け、表に賭けたロ ズが勝ち続けているため袋がいっぱいであるとわかる。しかしギルはこの奇妙な現象に何かしらの不信感を 持っているがロズはそれを気にかけてはいないというのがこの二人の第一に語られる特徴である。このあと二 人はこの連続して表が出るというコイントスの奇妙さについて対話をするが、そこで二人はこの現象の理論的な 解明を求めたり、予測や分析だけを執拗に行っていく。こうして彼らはハムレットという大きな物語を裏にして、 目の前で起きた現象についてひたすら対話しながらある時ふいに「自分たちが自由に歩くために外に出され たのではない」ことを、お告げを聴いたかのように思い出し前に進んでいく。これは本来の本編であるハムレット の世界軸に訳も分からず追い立てられる二人の不条理さを示す。この展開は、翻訳者である松岡和子が言う ように、『ゴドーを待ちながら』にみる不条理劇の要素を備えており*、本作においてこの姿勢は一貫し最後まで 続いている。その証拠に、あっけらかんと恐怖を感じないでいるロズとは対照的だが、二人が絞首刑となりゆく 船上のシーンにおいてギルは「船、孤独感、不安感...そういうもののせいで集中力がゆるんでくるんだ*」と心 情を吐露し、行先のイギリスという国の存在さえ疑いながら、その後も何の説明もなしに命を奪われることを嘆き 続ける。 こうした二人の対話は様々なバリエーションで行われ、前述のコイントスのようにゲーム形式で行われる特徴 がある。例えば二人が城に到着し、ハムレットから気狂いの種を聞き出すよう頼まれるシーンでは、ハムレットへ 質問をする練習のために二人が質問ゲームをはじめる。反語は反則あるいは聞きかえす事もなしという具合に ルールを設け、無為な時間が進んでいく。このシーンはテニスコートで行われるという演出が映画では加わっており、これは彼らの対話の遊戯性が強調されたものだとされている*。くわえて興味深いのはこうした不条理さ や彼らの変えられない「死」という結末を劇中劇としても展開する点であり、ここで大きな役割を果たすのが、第 三の登場人物の座長である。ハムレットの脚本同様二人は森の中で劇団に出くわし、そこから座長を含めた三人での展開が始まる。この三者の関係は『ハムレット』におけるそれとは全く異なった仕方でエンドに向かって いき、ハムレットの世界軸とロズとギルの世界軸が交差することでロズとギルが裏(本来の表)に飲み込まれて いくシーンでは必ず幾つかの鍵となるサインを用意する。それらは座長、楽隊の音楽(彼の劇団の奏でる)また は前述したコイントスのくだりにおいて初めて現れる「裏がでる」という描写が担い、裏の登場人物たちが出現 する。舞台の演出においてもそれは特異で、座長、ロズ、ギルの三人が対話しているとふとした瞬間に座長の姿が見えなくなると、背景の幕がすとんと落ち、奥からオフィーリアとハムレットが走ってきて「尼寺に行け!」のくだりが始まるなどの演出がなされている。
1-b 「すり替え」の演出
 座長と役者たちが本作のカギ(起点であり終点)となることは前述のとおりであるが、彼らは他にも重要な演出 と効果を担っている。それはロズとギルの不条理の末にある「死」という退場までを示唆するメタドラマ(劇中劇) の担い手としての役割である。ハムレットの劇中でもハムレット王子が役者たちにセリフを付け加えたうえで「ゴ ンザーゴ殺し」を上演させるシーンがある。これは先王殺害の現場を再現し、王を試す仕掛けであったが、本 作においては役者たちが「ネズミ捕り」を上演する。そして劇中で最後に絞首刑となる二人組がロズとギルの格 好をしているという演出がある。それは端的に二人の行く末を暗示していると言える。さらに終盤、座長と二人 が、自身の死を感じながら「死ぬこと」について対話するシーンでは、多くの役者が死の演技を行い死体として 折り重なった役者の姿が現れる。そしてそれは次第にハムレットの終盤の惨劇へと入れ替わっていくのである。こうした未来を示す劇中劇の「すり替え」という演出は、二つの世界軸が別々のものではないことを強調する。そしてこうした演出の数々は、劇中の登場人物によって語られる本作の基盤となるストッパードの演劇論に よるものである。
2. ストッパードの演劇論―物語構造と「死」について
「大体は普通のものばかり。ただし裏と表がひっくり返ってますがね。舞台の外で起こるはずのことを舞台の上 でやる。それでひとつの全体といったところです。すべての退場はどこか別の場所への登場だとすれば」*
 これは、前半コイントスをする二人の前を通りかかった劇団に向かって「どんな芝居ができるのか?」とギルが 尋ねた際の座長のセリフであり、このセリフこそが本作の根底を支えるものである。このように『ハムレット』にお ける「ゴンザーゴ殺し」あるいは『ロズとギル』における「ネズミ捕り」というような劇中劇しかり、『ハムレット』と本作 の関係しかり、こうしたメタドラマ構造こそが一つの出来事の全体を示す方法としてある。これについては再三 触れたが、このセリフにはもう一つ重要なストッパードの考えが反映されている。それというのは人間の、あるい は役者という存在の「死」についてである。座長のセリフにある「​すべての退場はどこか別の場所への登場だとすれば​」というのは暗に本作が「演じられている」ことを強調する。というのもメタドラマの構造には観客を舞台に 取り込むよう意識させる演出があるが、このセリフはまさにそうした効果を孕んでいる。まず一に、本作は映画で あろうが演劇であろうが演じられている最中(あるいは観客にとってはその後も)のロズとギルにとって人生の旅 路そのものである。よって演者は自分の人生が何かに導かれているように感じてもそれが何か分からず不安に 思うギルと、それとは対照的に恐怖を感じていない様子のロズになりきらなければいけない。そうすることによっ て座長という「全てを知る」ポジションを観客たちも共有し二人の喜劇性を楽しむことができる。第二に、このセ リフの退場とは文字どおり役者が舞台から去ることであるが、それは役者というものが死すらも「演じる」生き物であるというのが前提となっている。本作ではギルとロズの両者が人生から退場する、すなわち死を迎えるということが両者以外にははっきりとわかっており、それこそがこの劇のエンドに据えられる。しかし第三に、座長の セリフを考えるなら、本作も演じられているのだから二人は観客からすれば役者であってこの退場は別の場所 への登場、もっと大きく言えば『ハムレット』での二人の死は本作『ロズとギル』への登場だと捉えられる。とすれ ばローゼンクランツとギルデンスターンは本当に「死んだ」と言えるのだろうか。ここで、当人であるギルの「死」 に対する考えが明示されたセリフを見てみたい。
「駄目、駄目、駄目だ......まるっきり間違ってる......死を演じるなんてできっこない。死ぬという事実は、死ぬの を見ることとはなんの関係もない――(中略)――死とは、人間が二度と再び登場できなくなること、それだけ さ。今、見えてる人間が、次にはもう見当たらない、リアルなのはそれだけだ。ここに居ると思ったら、次の瞬間 にはもう消えて、それっきり――退場だ。ひっそりと、不意に――。消滅だ」*
このギルのセリフのように人間の死=退場しもう二度と現れず消滅することであって、それを演じることで見せる 役者に死を完璧に再現することはできないとするのであれば、『ハムレット』でのロズとギルの退場は紛れもなく ここでギルの言う死であっただろう。しかし先ほど述べたように、本作の様々な演出により二人の『ハムレット』で の死が『ロズとギル』という別の舞台への登場とされ、二人が本作に生かされたならば、『ハムレット』では一行に 満たないセリフだけで片付けられてしまった二人の死を、最後まで描き切るという目論見が本作にはあったとも 考えられる。そのためか映画では、首に縄をかけられ、二人がぎゅっと目をつぶり、次の瞬間二人が下に落ち ロープがピンと張った状態になるところまで描かれており、そのシーンの直後にフォーティンブラス、イギリスか らの使者とホレイショーのいる城内に景色は切り替わっていく。こうして本作は一つの全体として完成しエンドを迎える。
3.​  ​おわりに
 『ハムレット』は偉大な作品であり、優れた悲劇作品である。しかし本作は、その登場人物でもよりによって端役 中の端役に焦点を当て、メタドラマという構造のなかでストッパード自身の演劇に対する考えを、「死」という テーマの演出を通して提示した。さらに『ハムレット』を補完しつつも一つの喜劇、コメディ作品として作品を成 功させたことは実に興味深く斬新なことである。そして『ハムレット』と『ロズとギル』は互いに表裏一体なひとつ の全体と捉えることができると同時に、後者は前者を通じて提示された演劇や役者と観客の関係に対する一つ の批判的な作品であるとも言えるのではないだろうか。そしてそれは、シェイクスピアが『お気に召すまま』(原題:As​ ​you​ ​like​ ​it)の中で述べた「この世はすべて��台であり、男も女もその役者に過ぎない」という言葉への 応答でもあるのかもしれない。
*(​Jim​​Hunter​(​2000).​​Tom​​Stoppard:​​Rosencrantz​​and​​Guildenstern​​are​​dead,​​Jumpers,​​  Travesties,​​ Arcadia.​​​Macmillan.​)での指摘が最初のものとされている。
*トム・ストッパード作、松岡和子訳『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』劇書房、1985年、119頁
*石田有希「​​学位論文:エリザベス朝演劇と現代イギリス演劇にみるメタドラマ​​」福岡女子大学大学 院文学研究科、2014年
*トム・ストッパード、同掲書、23頁
なんか一文が長いし脈絡もないけど、滾った心のままに書いた物があったので菅田将暉と生田斗真の舞台が始まる前に投稿しときたかった...演劇のことよく知らんけど面白かったんだよ。未見だけどダニエル・ラドクリフのが主演の舞台もあるらしく、幕が落ちる演出はそちらにもあるようです。
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marisa-kagome · 7 years
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シナリオ『クレイジーガーデン』
【概要】
2~3人向けのクローズドシナリオ。初心者でも大丈夫だと思います。 推奨技能は特に無し、テストプレイはボイセで二時間でした。
【あらすじ】
ミ=ゴから貰い受けた薬と地獄の種子を元に研究を進めている人物に拉致された探索者達。 自身が地獄の種子を飲まされてしまった事に気付き、種を発芽させない為に一度死に、甦り薬を飲んで逃げるがトゥルーエンドとなります。
【導入】
11月21日の帰り道、探索者は突如背後から殴られ気を失う。 そして、目を覚ますと知らない部屋に後ろ手で縛られて転がされていた。 鞄や買い物袋はなくなっているが、ポケットの物等は残っている。 辺りを見渡せば壁や天井はあるが床は土となっており、一つだけある扉の向かい側に花壇があるのが見えるだろう。
DEX×3に成功すれば縄を抜ける事が出来る。 縄を抜ける、もしくは同行者が腕を確認すると、自身の腕にタグが巻かれている事が分かる。 タグには数字がついている。
※タグの数字は、探索者が二人の場合9と10、三人の場合9、10、11、と言う風に連番で増やして下さい。 ※ダイスを回して赤と黄色のタグを付ける探索者をそれぞれ決めて下さい。赤タグの探索者に地獄の種子が飲まされています。
♢部屋①
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☆花壇
三つの花壇にそれぞれ違う種類の草花があることが分かる。
◎花壇①
ピンクの花が咲いている
博物学:イヌサフランのような植物であることがわかる。食すと発熱、嘔吐、腎不全などの症状を引き起こし、最悪の場合死に至る毒性を持つ植物だという事を知っている。 知識1/2:イヌサフランのような植物であることがわかる。イヌサフランは毒性のある植物だという事を知っている。
※イヌサフランだと分かった場合
薬学、生物学:食すと発熱、嘔吐、腎不全などの症状を引き起こし、最悪の場合死に至る毒性を持つ植物だという事を知っている。
◎花壇②
紫色の花
博物学:トリカブトのような植物であることがわかる。食すと嘔吐や痙攣、呼吸困難、心臓発作を引き起こし、最悪の場合死に至る毒性を持つ植物だという事を知っている。 知識1/2:トリカブトのような植物であることがわかる。トリカブトは毒性のある植物だという事を知っている。
トリカブトだと分かった場合。
薬学、生物学:食すと嘔吐や痙攣、呼吸困難、心臓発作を引き起こし、最悪の場合死に至る毒性を持つ植物だという事を知っている。
◎花壇③
緑の草が茂っている。
博物学:ドクゼリのような植物であることがわかる。食すと痙攣や呼吸困難を起こし、最悪の場合死に至る毒性を持つ植物だという事を知っている。 知識1/2:ドクゼリのような植物であることがわかる。毒性のある植物だという事を知っている。
ドクゼリだと分かった場合。
薬学、生物学:食すと痙攣や呼吸困難を起こし、最悪の場合死に至る毒性を持つ植物だという事を知っている。
☆用具入れ
開けると枝用の鋏やスコップ、シャベル等が入っている。
目星:一枚の紙きれを見つける。切り取られた新聞記事である事が分かる。11月14日のもので「東京都内の自宅で男女が変死」と言う見出しの部分のみ読み取る事が出来る。他は汚れていて上手く読めない。
☆棚
ガラス戸の付いた棚。開けると中には液体の入った瓶がずらりと並んでいる。
化学:植物の肥料の様なものではないかと思うが、詳しくはわからない。 目星:ラベルが半分破れている瓶が目に留まる。残った部分に「生り薬、一人分」(赤いタグの人間の人数分)と書かれている事が分かる。 ラベルの貼られた瓶に聞き耳:甘い匂いがする。
♢部屋②
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右のドア:内側から鍵が掛かっている。開けると先に山の様な景色が広がっている。 左のドア:錠前が掛けられている。(鍵開け、もしくは花壇の鍵)
☆本棚
図書館:毒草図鑑を見つける。また、三枚の付箋が貼られた一冊の本が目にとまる。
◎毒草図鑑
花壇のものと照らし合わせるなら、①がイヌサフラン、②がトリカブト、③がドクゼリである事が分かる。
イヌサフラン 食すと発熱、嘔吐、腎不全などの症状を引き起こし、最悪の場合死に至る毒性を持つ植物であると記されている。
トリカブト 食すと嘔吐や痙攣、呼吸困難、心臓発作を引き起こし、最悪の場合死に至る毒性を持つ植物であると記されている。
ドクゼリ 食すと痙攣や呼吸困難を起こし、最悪の場合死に至る毒性を持つ植物であると記されている。
◎種子について
付箋①「地獄の種子」
摂取すると地獄の植物が心臓に寄生、一週間程で発芽し赤い花を咲かせ、宿主は死に至る。一度飲んだものは解毒剤を飲む、もしくは宿した部位にダメージを与え、種への栄養の供給を止める事でしか助からない。
付箋②「忘却の種子」
この極小の種子を 摂取すると 植物は脳を蝕み、宿主の記憶を食い荒らす。失った記憶を取り戻す方法は無く、一粒で飲んだ者の半年程の記憶が空白となる。液体に混ぜると赤く染まる。
付箋③「知恵の種子」
この極小の種子を 摂取すると 植物は自身の持つ知恵を脳に送り込む。種に寄って与えられる内容は様々だが、人々を混沌と恐怖に陥れるには十分な知識を己の物にする事が出来るだろう。液体に混ぜると黒く染まる。
☆机
ポットと紅茶の入ったマグカップが置いてある引き出し付きの机。 引き出しを開けると日記を見つける。観察記録と書いてある。
◎観察記録
8/19 改良を重ねたイヌサフラン、トリカブト、ドクゼリを被験者三名に与えた所、イヌサフランは発熱、嘔吐後に死亡せず、トリカブトは心臓発作で死亡、ドクゼリは呼吸困難で死亡。
9/2 改良を重ねたイヌサフラン、トリカブト、ドクゼリを被験者三名に与えた所、イヌサフランは発熱、嘔吐後死亡、トリカブトは心臓発作で死亡、ドクゼリは呼吸困難で死亡。
9/14 改良を重ねたイヌサフラン、トリカブト、ドクゼリを被験者三名に与えた所、イヌサフランは発熱、嘔吐後死亡、トリカブトは心臓発作で死亡、ドクゼリは呼吸困難で死亡。死亡時間も短くなっている。毒性の増強と症状の固定はうまく行っているようだ。
10/1 本日から地獄の種子の実験に移る。予定20人。まず被験者1、被験者2に与えて経過観察中。
10/6 被験者1、2、共に発芽確認。死亡。
10/8 被験者4に与えて経過観察中。
10/15 被験者4、発芽確認、死亡。
11/1 被験者6、8に与えて経過観察中。
11/3 被験者6、7、8、逃亡。
11/14 被験者6、8、死亡確認。
※KP情報:14日に逃亡した男女二人は新聞記事で死亡を確認している。
☆流し
やかんやまな板、包丁などの調理器具がある。
目星:針のついていない注射器の様な物がある。中には水が入れられている。また、三角コーナーに捨てられた小さな紙の切れ端に気付く。「更」と書かれている。
(注射器は種を入れ寝ている探索者に種子を飲ませるために使った物)
☆箱
開けると中には紙袋3つとスコップが入っている。「◯」「△」「×」とそれぞれ書かれた袋を開けると、大量の種が入っているだろう。
○:ケシ粒程の小さな種の様な物が入っている。水に入れると宣言した場合、入れた水が赤く染まる。 △:ケシ粒程の小さな種の様な物が入っている。水に入れると宣言した場合、変化は見られない。 ×:ケシ粒程の小さな種の様な物が入っている。水に入れると宣言した場合、入れた水が黒く染まる。
スコップに目星:土と花びらがついている。よく見れば、それが花壇①に植えられていた植物の花びらであることに気付く。
花壇①を掘り返すと、一つの鍵が出て来る。
♢部屋③
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錠前のかかった部屋は、花壇①の鍵、若しくは鍵開けで開ける事が出来る。 開けた瞬間、吐き気を催す様な重たい腐臭が鼻をつくだろう。 目の前にはレンガで囲まれた花壇の様な物があり、腐乱死体がいくつも転がっている。その死体の全身から植物の蔓の様なものが延びており、赤い花を咲かせているだろう。SANチェック1/1d4+1。
死体に目星:3本の腕に赤いタグが付けられている事が分かる。数字はそれぞれ1、2、4
☆箱
170センチ程あるながもちの様な横長の箱で、肥料箱、と書かれている。 開けてみると、中には死体が詰め込まれている。折り重なったいくつもの死体はほぼ原形をとどめておらず、転がった目玉が恨みを込めてこちらを見ている様に感じられるだろう。SANチェック1/1d4。
死体に目星:2本の腕に黄色いタグが付けられている事が分かる。数字はそれぞれ3、5。
【エンド分岐】
☆トゥルーエンド:赤タグの人間がトリカブト(心臓へのダメージ)を食べる→死亡した後に更生り薬(甦り薬)を与える→紅茶に忘却の種を入れて逃げる。
トリカブトを摂取した探索者は徐々に息苦しくなって行き、眩暈や吐き気を覚える。覚悟をしていたとしても自分が今から死ぬと言う恐怖をありありと感じてしまうだろう。SANチェック1/1d4。体から力が抜けて行き、やがて探索者は意識を失う。同行していた人間が確かめれば心臓が止まっている事が分かる。更生り薬を与えれば、その顔に血の気が戻って行き、息を吹き返すだろう。
紅茶に忘却の種を入れると、元々が赤いので色の変化は特に見られない。
右下の扉を開けると、山の中の様な景色が広がっている。20分程山道を歩き続けると、車道に出るだろう。 幸運に成功したならば、深夜だが車が通っている。失敗したならば1d6時間で麓に到着する事が出来る。 後日、惨殺事件のニュースが伝えられ、山中で複数の死体を遺棄した犯人が捕まったと報じられるだろう。容疑は否認しているが、そもそもの記憶が抜け落ちている様な言動が取り上げられている。どちらにせよ探索者達が、妙な変死事件のニュースを見る事は無くなるだろう。トゥルーエンドです。
☆ビターエンド:赤タグの人間がトリカブト(心臓へのダメージ)を食べる→死亡した後に更生り薬(甦り薬)を与える→逃げる。
トリカブトを摂取した探索者は徐々に息苦しくなって行き、眩暈や吐き気を覚える。覚悟をしていたとしても自分が今から死ぬと言う恐怖をありありと感じてしまうだろう。SANチェック1/1d4。体から力が抜けて行き、やがて探索者は意識を失う。同行していた人間が確かめれば心臓が止まっている事が分かる。更生り薬を与えれば、その顔に血の気が戻って行き、息を吹き返すだろう。
右下の扉を開けると、山の中の様な景色が広がっている。20分程山道を歩き続けると、車道に出るだろう。 幸運に成功したならば、深夜だが車が通っている。失敗したならば1d6時間で麓に到着する事が出来る。 警察等に連絡するならば捜査が開始されるが「そのような家は見つからない」との報告を受ける。自分達が今まで見聞きしたものが跡形も無く消えていると知った探索者はSANチェック0/1d3。
その一週間後、テレビを付けた探索者はあるニュースを目にする。それは近くで起こった変死事件で、体から植物の様な物を生やしながら死亡している事が報じられていた。探索者の脳裏には、あの悪夢の様な記憶が蘇るだろう。街の脅威はまだ消えていない。ビターエンド。
☆バッドエンド:そのまま逃げる、更生り薬(甦り薬)だけを飲んで逃げる、イヌサフラン、ドクゼリを摂取した後に更生り薬(甦り薬)を飲んで逃げる。
右下の扉を開けると、山の中の様な景色が広がっている。20分程山道を歩き続けると、車道に出るだろう。 幸運に成功したならば、深夜だが車が通っている。失敗したならば1d6時間で麓に到着する事が出来る。 警察等に連絡するならば捜査が開始されるが「そのような家は見つからない」との報告を受ける。自分達が今まで見聞きしたものが跡形も無く消えていると知った探索者はSANチェック0/1d3。
その一週間後、赤タグを付けられた探索者は心臓付近に激しい痛みを覚える。じりじりと握り潰される様な感覚は想像を絶する痛みで、胸を掻きむしりながら息絶えるだろう。意識を失う寸前、自身の皮膚を突き破った赤い花が見えた気がした。ロスト。また、黄タグを付けられていた探索者はニュースや人づてでこの事を知る。自分もいつ死んでもおかしくない。恐怖を感じた探索者はSANチェック1d3/1d6+2。赤い花に対する恐怖症、今後見た場合はSANチェック1/1d3が入ります。バッドエンド。
※知恵の種子を摂取した場合:飲んだ瞬間、頭に激しい痛みが走る。割れそうな感覚に探索者はのたうち回り、咄嗟に死への恐怖を覚えるだろう。SANチェック1/1d4。そして、次の瞬間あらゆる悪意とそれを成す術が頭の中を駆け巡るだろう。SANチェック1d10/1d100。INT+10、CON-10。クトゥルフ神話技能+10。
【クリア報酬】
生還した 1d3 種子を飲まされた人間のみ毒と薬を飲んだ 1d3 忘却の種を紅茶に淹れた 1d3
【タイトル】
まんま。
シナリオは以上です。 感想等頂けるととても喜びます。
詐木まりさ @kgm_trpg
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marisa-kagome · 7 years
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シナリオ『ねずなきは翠玉より』
【シナリオについて】
3~5人用の屋敷探索系シナリオです。 戦闘有り。推奨技能は基本の探索技能と戦闘技能、応急手当。 テストプレイは3人で約3時間でした。
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※画像:文字の追加等はご自由にどうぞ。
【概要】
肝試しに来た探索者達はとある屋敷に閉じ込められます。 脱出して下さい。
【あらすじ】
昔、ある所に欧米人の娘と結婚した男がいた。二人の間には娘が生まれ、仲睦まじく暮らしていたが、母親が病死してしまう。 数年後、男は同じく夫に先立たれた女と結婚する。女には既に二人の娘がいた。
その数か月後、父親は病死。血の繋がっていない娘はただただ忌々しく、手に入れた魔術書を読んだ女は彼女を生贄にし書かれている全能の力を手に入れようとする。
娘、灰ヶ崎エラは継母に虐待される日々を送っていたが、とある日に家の外で一人の男に出会う。話す回数も増え事情を知った男はエラに一緒に逃げようと提案する。しかし暫くすると男と話していたことがばれ、家の外に出られなくなる。
そんな彼女の前に魔法使いだ、と言って現れたニャルラトホテプは一足の靴が入った箱を渡す。「踵を三度ならしたら、一歩目で外へ、二歩目で  の世界へ、三歩目で君の行きたい人の所へ」と書かれた説明書を読んだエラは男の元へ行く為、靴を履いて三歩進むことに決めた。だが箱に全ての紙を良く読む様に書かれていた事に気付かず、詰め物の紙を開かなかった彼女は、一歩目で外に出た後も止まらずにもう一歩進むと、靴によって「かみがみの世界」であるアザトースの元に連れて来られてしまう。エラは発狂し、次の一歩で男の元に辿り着く。
エラが逃げた事を知った継母は、その一週間後、彼女を尋ねてやって来た男を捕らえ生贄にしようとする。洋間で斧を振り上げた瞬間、ガラスの靴を履き、歪んだ時空を超えて来たエラも同じ部屋に現れた。しかし、斧は下ろされ、目の前で男は死ぬ。 発狂していたエラはその場にいた継母と二人の姉を殺す。
近隣に稀に出没しては脳味噌を持ち去り、猟奇殺人を起こしていたミ=ゴがこのガラスの靴に目をつける。ミ=ゴはエラの脳味噌をまず持ち去り、隠し部屋に保管した。この間に死体を見つけた村人が外に知らせに行ったが、次に来た時には死体はミ=ゴによって持ち去られていた為怪奇事件となった。実際ここで死んでいたのはエラ、男、継母、娘二人だが、男一人女四人の死体が一瞬だけ目撃された為「五人家族が死んだ」と言う間違った情報が広まる。庭の十字架は事件を悼んだ人間が立てたもの。現場に唯一残っていた髪留めがかけられている。 この後もミ=ゴは継母や娘の死体を改造するなど人体実験を繰り返し、屋敷に来た人間も常に狙っていた。
そんな中、探索者達が肝試しの廃墟として屋敷に来ることに。
【導入】
探索者達は「肝を試して肝を焼くツアー」のチケットに当選し、肝試しに行く。 肝試しでたっぷり恐怖を体験した後にウマイ焼肉を食おう!と言う趣旨のもの。 小津(おづ)と言う気さくな若い男がバンにあなたたちを乗せ、目的地へと連れて行ってくれるだろう。
話を聞く:行く場所は山間の外れた場所にある館。昔とある夫婦と娘三人が暮らしていたが、殺人事件がおき、一つの部屋でまるで家族五人が殺し合った様な形跡のまま死んでいた。発見者は慌てて人を呼びに行ったが、帰って来ると死体は無くなり血塗れの部屋のみが残されていた。それから幽霊の噂や怪物が出ると言った話が絶えない様になり、廃屋敷と化したらしい。
もっと詳しく話を聞くなら、死体は頭に穴を空けられていたり、斧が腹に刺さっていたりと酷い有様だった事を聞かせてくれる。
しばらくすると洋館に到着する。時間は朝10時。
外に目星:洋館の表札には「灰ヶ崎」と書かれている。 また洋館の周囲の一角に十字架の様な木の棒が立ててあり、そこに髪留めがかけられている。
洋館に全員が入ると、小津の電話が鳴り出す。「ちょっと待っていて下さいね」と言って小津は部屋を出るだろう。そして暫くすると「あれ?ドアが開きませんね、鍵開けて下さい」と言う小津の声がする。探索者達がどんな手を使って鍵を開けようとしても、扉が開く事はないだろう。そして、ドアの外からごんっ、と重たい音と、人が倒れる様な音がし、小津の声が聞こえなくなる。呼び掛ければ、ケタケタと笑う様な知らない声が聞こえてくるだろう。SANチェック0/1。
また、扉から部屋の方に視線を移すと、目の前に少女が立っている。彼女は「わたしをあの人のもとへいかせて」と言って、幽霊の様にすうっと消えてしまう。SANチェック0/1d2。
アイデア:少女はどことなく欧米の血が混じっている様に感じる顔立ちだったと思う。
◎一階マップ(どこかで小津から渡してあげて下さい)
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【洋間】
ソファ二台と低いテーブル、暖炉のある部屋。 低いテーブルは隅に寄せられている。
目星:床板に古い血が染み込んでいるのが分かる。また、真ん中に十字型の大きな傷があることが分かるだろう。 アイデア:話に聞いていた事件現場ではないだろうか、と思う。
◎机
伏せた写真立てがおいてある。写真を見ると、男女四人の映った写真であることがわかる。家族写真であると推測出来るだろう。
目星:写真立てから外して調べると、端が不自然に切り取られていることに気付く。
◎暖炉
火は付いていない。
目星:椅子の残骸の様なものが中にある事がわかる。先に食堂に行っているなら、食堂にあった椅子と同じデザインのものであることがわかるだろう。
【食堂】
聞き耳:何かが軋む様な音が聞こえて来る。
長いテーブルと椅子が四脚置いてある。洋間の暖炉の中の椅子の残骸を先に見ていれば、同じデザインのものであることがわかるだろう。
目星:部屋の隅に、30センチほどの大きさの箱を見つける。
そして、部屋の奥にはきしきしと音を立てているものがいる。まるで人造人間の様なそれは体を金属でついだようないで立ちをしているが、紛れもなく人間であった名残があり、どこからともなく血を滴らせているだろう。SANチェック1/1d3。
アイデア(SANチェックに成功した人のみ):得体の知れないものの所々のパーツが女性の様に感じる。
この人造人間は探索者に襲い掛かって来る。戦闘開始。
(心無い)ブリキの人造人間(継母)
STR 14 CON 13 DEX 10 SIZ 12 HP 13 装甲4 (彼女は死体から作られた存在であり、HP0になるまで止まらない。)
斧 40%(1d4+1) 回避 24% 
倒した後、パーツがバラバラになったのを見てアイデア:得体の知れないものの所々のパーツが女性の様に感じる。
※難易度調整ご自由にどうぞ。勝てる程度でお願いします。
◎斧
目星:柄の部分が白くすべすべしている 医学:柄の部分が骨であることに気付く。
◎箱
中には固く丸められた紙が二つと、破れた紙が入っている。
箱に目星:「全ての紙をよく読んで」と書かれている。
◎破れた紙
説明書、と書かれている。
目星、または裏側を見ると宣言:紋章の様なものが書かれている。
◎丸められた紙
アイデア:詰め物の様だ。靴箱だろうと推測することが出来る。 開く:片方は白紙だが、一枚の紙の内側に「かみがみ」と書かれている。
【台所】
食器棚等がある。開けて調べると、ぼろぼろのネズミの人形がいくつか出て来る。
目星:一枚のハンカチが入っている事に気付く。
◎二階
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※小さな空室、一応お手洗いですがお好きにお使い下さい※
【部屋①】
KP情報:娘1の部屋
聞き耳:何かが唸る様な音が微かに聞こえる。
部屋に入ると、机、ベッド等が置かれている。娘の部屋だろうということが分かる。 また、部屋の奥に二体の怪物がいる。SANチェック1/1d3。探索者がドアを開ければそちらを振り返り、襲い掛かって来るだろう。
アイデア(SANチェックに成功した人のみ):得体の知れないものの所々のパーツが女性の様に感じる。
(おバカな)かかし頭の人造人間(娘1)
STR 11 CON 8 DEX 4 SIZ 12 HP 10
こん棒 30%(1d3) 回避 8%
(暴力的な)獅子頭のキメラ人間(娘2)
STR 17 CON 16 DEX 15 SIZ 11 HP 14
爪 40%(1d3+1d4) 回避 28%
※難易度調整ご自由にどうぞ。勝てる程度でお願いします。
倒した後、パーツがバラバラになったのを見てアイデア:得体の知れないものの所々のパーツが女性の様に感じる。
◎机
古い新聞が積み上げられている。
目星:連続猟奇殺人事件の記事が目にとまる。死体の共通点は脳味噌のみが見つかっていないと言う内容。また、現場近くで不審者が目撃されており、小さな男の姿が���かれている。
◎ベッド
マットレスだけが置かれた古いベッド
【部屋②】
KP情報:両親(母親)の部屋
鏡台、本棚、ベッド、クローゼット等が置かれている。
◎本棚
目星:魔術に関連する書籍が多い事に気付く。 図書館:栞の挟まった古い本を見つける。
◎本(栞の挟まった箇所のみであれば10分)
様々な儀式の方法について記されている本。「知、心、勇を授からんとする者、万能を望む者、骨の斧を手に取り、贄の腹を十字に裂け」と言う部分に栞が挟んである。
オカルト:儀式の内容に聞き覚えがある。昔一部の間で流行ったもので、動物を使って実際におこなった人間も複数いたが、特にオカルト的な結果は得られず、眉唾ものとして結論づけられていた事を思い出す。 探索者がクトゥルフ神話技能を振りたいと言った場合:成功すれば、これがクトゥルフ神話には全く関係しない儀式であり、一時的に流行っただけの眉唾ものの儀式だったのではないかと思う。
◎鏡台
引き出しが付いており、開けてみるとナイフが一本入っている。
◎ベッド
目星:ベッドの下から一冊の本が出て来る。手帳の様だ。
◎手帳
読むのには15分かかる。 「神には生贄を。あの穢れた娘を生贄に。それか、あの男でも良い。逃げようとしているのか、最近のあの娘はそわそわしている。それならばあの男を贄にしてやろう。」
◎クローゼット
クローゼットには鍵が掛かっている。鍵開け、若しくは風呂場で見つけた鍵で開ける事が出来る。
聞き耳クリティカル:ブーン、という羽音の様なものが聞こえる。
開けると中には何もなく、下に降りる階段が続いている。隠し部屋の様だ。
【部屋③】
KP情報:父親の書斎
机、本棚等が置かれている。
◎机
上には写真立てが二つ置かれている。一つには三人家族、一つには五人家族が映っている。 両方の写真に同じ男性と少女がうつっている。また洋間で写真を見ていれば、五人家族の写真が同じもののな、三人家族の方にも映っている少女の姿が、下の階の写真では切り取られていたことがわかるだろう。
◎本棚
図書館:表紙に紋章が書かれた本を一冊の見つける。靴箱のメモの裏側を見ていれば、同じ紋章だと言う事が分かるだろう。本は斜め読みで一時間かかる。読めばそこにはアザトースと言う神について書かれている。SANチェック1d3/2d3。クトゥルフ神話+6%。家に持ち帰り36週間の研究を重ねれば、呪文「アザトースの招来/退散」を獲得出来る。
【部屋④】
KP情報:娘2の部屋
ベッド、クローゼット等が置かれている。娘の部屋だろうということが分かる。
強制聞き耳:誰もいないのに、ひそひそと喋る様な声が部屋から聞こえて来る。その声は徐々に大きくなり、やがて部屋中に響く程のものになるだろう。「私のこと、馬鹿って言ったでしょう!」「言ってません!」「嘘付きなさい!」「お姉さまにそんなことしたらいけないんだぁ、叱っておかなきゃ」「熱い!やだ、やめて、助けて、お父さん!」響き渡る絶叫を耳にした探索者はSANチェック1/1d2。
◎クローゼット
救急箱が入っている。使うと応急手当に+20の補正が付きます。
◎ベッド
目星:隙間に一冊の絵本が落ちている。読むのには10分かかる。この地方に伝わる昔話のようなもので、「虫の様な姿をした神様が悪い子を攫って化け物の姿に変えてしまう」と言った様なことが描かれているだろう。
【風呂場】
浴槽に真っ赤な水が溜まっている。鉄臭い匂いが鼻をつき、血だと確信するだろう。SANチェック1/1d2。
栓を抜く:水が抜けると、一つの鍵が出て来る。
【物置】
埃をかぶった物置には棚や庭道具などが詰め込まれている。また、端に毛布が落ちている事に気付だろう。 棚を開ければ中には数冊の本や鉛筆が入っている。
アイデア:誰かが部屋として使っていたのではないかと推測出来る。
◎毛布
広げると一枚の破れた紙が出て来る。「踵を三度ならしたら、一歩目で外へ、二歩目で    の世界へ、三歩目で君の行きたい人の所へ」と書かれている。一階の食堂で見つけた箱の紙と破れた部分を照らし合わせれば、合致することが分かる。
◎棚
図書館(目星):一冊の日記を見つける。表紙の隅には「Ella」と書かれている。
◎日記(読むには一時間)
7/5 新しいお母様が来ました。お姉さまも出来ました。とっても綺麗で優しいの。
10/6 お父様の具合が悪そうで心配です。大丈夫かしら。私とお母様が看病をしています。
11/10 お父様がなくなりました。
11/29 お母様はまだ辛いみたいです。私を見るとすごい顔をします。怖いけどかなしいのはわかるから、少しだけがまんしよう。
12/12 お母様は部屋に入ったまま出て来ません。私は掃除と洗濯をするように言われました。食事も。きっとお具合が悪いのだわ。私ががんばらないと。
12/21 お母様、部屋から出て来るようにはなったけれど、こわい。私の所為でお父様が死んだのだと言って来ます。今日から部屋が変わりました。お姉様がおかしそうに笑っていました。私は働いています。働かないとぶたれるの。
1/12 寒い。毛布をもう一枚おねがいしたら怒られました。お姉さまも本や棒で叩いて来ます。ここはとても寒いです。小さい頃お母様がくれたねずみのぬいぐるみだけが私のお友達。お父様にあいたい。
2/4 ごみを捨てに行った時、人に会いました。背の高い、男の人でした。ころんでしまって、あざが見えたみたいで、大丈夫?って聞かれました。お母様にばれたら怒られるから慌てて逃げました。
2/11 またあの人に会いました。手を掴まれて、大丈夫かと聞かれました。すこしだけ泣きました。今までの事を話したら頭を撫でてくれました。もし何かあったら助けてくれるって、言ってくれたけれど。お母様が怖い。
2/26 ごみを出しに行く日、週に二回くらい、あの人に会います。少しだけお話をします。楽しいし嬉しい。いつか逃げよう、と言ってくれました。私は髪留めを渡して、あの人はハンカチをくれました。
3/10 お母様に見られました。もう外には出られません。あの人に会いたい。
3/11 魔法使いが現われたの。靴を貰いました。これであの人の元に行けるわ。私はここから逃げます。
【隠し部屋】
階段を降りて行くと、一つの部屋に辿り着く。 そこには、至る場所に人間のパーツや、脳を詰めたもの、複雑な機械、また、棚などが並んでいるだろう。 SANチェック0/1d3。更に、人ほどの大きさの見たことの無い虫の様な生き物が探索者達の方を見るだろう。ミ=ゴに遭遇した探索者はSANチェック0/1d6。虫は探索者に襲い掛かって来る。戦闘開始。
硝子のお靴に興味津々、増やしちゃったりしたミ=ゴ
STR 12 CON 11 SIZ 12 INT 13 POW 13 DEX 14 HP 12
ハサミ 30%(1d6) ※貫通武器は最小限のダメージしか与えられない。
※難易度調整ご自由にどうぞ。勝てる程度でお願いします。
部屋に目星:壁際にならんだ水槽に入っている脳味噌の一つがぴくぴくと動いており、繋げられたコードが隣のスピーカーの様な機械に繋がっている事が分かる。動いている脳味噌にSANチェック0/1d2。機械には赤いボタンが付いているだろう。
赤いボタンを押す:脳がびくりと動き、スピーカーから女性の声が流れ出す。最初に目の前に現れた少女の声だ。彼女は「わたしを殺して、あの人のもとへ行かせて下さい」と言うだろう。そして、赤いボタンを長押しすれば自分は死ぬことが出来ると続ける。彼女は灰ヶ崎エラで、もし何か質問をするならそれに答えてくれるだろう。外に出る方法を聞くならガラスの靴を履けばいいと教えてくれる。しかし「かみがみのせかい」「二歩目の世界」といったような単語を出せば、彼女は喜々としてアザトースと言う忌まわしい神について語り出す。SANチェック1/1d3。 ※もし毛布の紙を見つけていない場合、出る方法をエラは「硝子の靴を履き踵を三度ならして三歩進めば良い」と言って来るだろう。
赤いボタンを長押しする:電流の様なものが走る音が響く。最後に「ありがとう」と言う声がスピーカーから聞こえ、脳は動かなくなるだろう。もし彼女が発狂状態にあれば、音が酷く割れるレベルの絶叫の後に脳は動かなくなる。叫びを聞いた時のみSANチェック0/1。
◎棚
開けるとガラス製の靴が探索者の人数分入っている。
【脱出】
踵を三回打ち合わせて鳴らし、一歩踏み出すと屋敷の外にいる。目の前には頭から血を流した小津が倒れているが、生きてはいるようだ。 その場で探索者に靴を脱ぐか、二歩目を踏み出すか聞いて下さい。 脱いだ途端靴にはヒビが入り、その場でガラスの靴は粉々になる。 小津を揺り起こせば「誰かに急に殴られて気を失ってて」と謝って来るだろう。 そして20時前であればツアーに組み込まれている焼肉に向かおうと提案して来る。
その場を去るなら後日、屋敷が火事になったと言うニュースを探索者達は目にする。 焼け跡からは大量の骨と片方だけのガラスの靴が。
トゥルーエンドです。
【灰ヶ崎エラを殺さなかった場合】
屋敷から脱出する事は出来るが、探索者は夢を見る様になる。 狭い水槽の中で、ただひたすら、あの狂った部屋を眺めている夢だ。 不眠障害に悩まされる様になるが、解決法は見つからないまま年月が過ぎて行くだろう。
ビターエンドです。
【二歩目を踏み出すと宣言した場合】
二歩目を踏み出した探索者の耳には、歪なフルートの音が響いて来る。 目の前には闇の中で不定形な体をくねらせている忌まわしい姿が目に入るだろう。 アザトースの姿を目撃した探索者はSANチェック1d10/1d100。 よろめくようにして倒れれば、次の瞬間探索者は「一番会いたい人」の傍にいるだろう。 探索者は自分が一週間行方不明だった事を知る。 もしその人が死んでいる場合、探索者もロスト。 運良く生還しても、耳にこびりついたか細いフルートの音を忘れることは一生出来ないだろう。
バッドエンドです。
【報酬】
生還した:1d4 灰ヶ崎エラの脳を殺した:1d4 一歩で止まった:1d3 焼肉へ行った:1d3 ハンカチと髪留めを何らかの形で一緒にした(一緒に埋める、葬る、等)1d3
【タイトル・余談】
シンデレラとオズの魔法使いを混ぜました。 タイトル「ねずなきはすいぎょくより」。 一人ぼっちの鼠の鳴き声がエメラルドの都から、聞こえれば良かったのですが、残念ながら別の都に顔を出してしまった様です。
小津を殴ったのは通りすがりのニャルラトホテプ。
シナリオは以上です。 感想等頂けるととても喜びます。
詐木まりさ @kgm_trpg
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