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#雑誌やテレビやweb紹介されているジーンズの洗い方はほとんどが間違い
touchislovejeans · 2 years
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【ジーンズのお洗濯】 ジーンズのお洗濯は、こまめな方が、デニムが痛まなくて、長持ちします。 洗わないと、身体の脂や汗、そして埃などで、デニムがダメージを受けたり、デニム自体の動きが悪くなり、穴とか切れの原因になります。 夏の汗をたくさんかく時ならば毎日。 冬なら2〜3日穿いたらお洗濯するのが、オススメです。 ジーンズは裏側が弱いのです。洗濯機の壁に当たったりする擦れに弱いのです。 だから、 洗う時は、一番上のボタンだけ留めて、表向きに洗濯機へ。 脱水後干す時は、一番上のボタンだけ留めて裏返して干してください。日焼け防止です。 乾いたら、脇割りの部分の耳(デニム生地の端)が、写真のように倒れていたら、そこだけ、軽くアイロンしてから穿いてください。 理由は、脇割り部分が捻れていると、表から見た時にアタリがカッコ悪くなるからです。 全体的なアイロンは不要です。 もし、ウエストがキツくなったら(太ったら)、アイロンの蒸気を出しながら、ジーンズのウエスト部分を引っ張って、アイロンがけしてください。 #ジーンズ #デニム #ジーンズコーデ #デニムコーデ #アタリ #ジーンズの洗い方 #雑誌やテレビやWEB紹介されているジーンズの洗い方はほとんどが間違い #長持ちしませ #元リーバイスの元ランドリースペシャリスト工藤からのアドバイスです #信用しても良いと思います ホームページでも紹介しています。 ホームページTOP>>>洗濯方法 をご覧ください。 https://touchislovejeans.com/laundry/ (タッチイズラブジーンズ) https://www.instagram.com/p/Cn5wYBTP-2i/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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abcboiler · 4 years
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【黒バス】愛のある生活
2013/05/03発行オフ本web再録
【愛のある生活】
「真ちゃんさ、今週か来週、どっか空いてる日ある?」
空調の効いた部屋の中で、高尾は何のきっかけもなく、たった今、降って湧いたのだとでもいうような口調で緑間に声をかけた。部屋の外ではまだ夕方の火が残って、黒い道路とベランダをじりじりと焼いている。けれどそんな外のことなど、窓を閉じきった二人には関係の無い話であった。二人の厳正なる協議の結果決まった二十八度の人工的な空気の中で、緑間と高尾は古びた革張りのソファに腰掛けている。所々に煙草の焦げ跡が見えるこれは、宮地から受け継いだ歴史ある一品である。宮地もまた、大学の同級生から受け継いだと言っていたから、ヴィンテージと呼んで差し支えないほどの貫禄を持っていた。きっと二人の前に宮地はここに腰掛けて雑誌を読んでいたのだろうし、名前も知らない彼の同級生は野球観戦をしていたのだろうし、きっとその前の持ち主はこのソファの上で窮屈なセックスをしたに違いなかった。時間と情念が染み込んだずっしりとした色は、思いのほか部屋に馴染みやすい。高尾はその上であぐらをかいてテレビを見ていたし、緑間は足を組んで本を読んでいた。てんでバラバラの行動をしている二人は、目線も合わせずに会話している。
高尾の唐突な質問に、緑間は雑誌から顔を上げずに答えた。並んで座るソファの向こうではテレビが騒がしい音を立てている。
「丸一日か」
「んー、できれば」
そこでほんの僅か、緑間は雑誌から視線を上げると宙を見つめた。蜃気楼を見定めようとするように細めた視線の先には何も無い。頭の中のカレンダーを彼はめくる。九月の始め。大学二年生の夏休み。高校生はもう二学期が始まっているだろうが、大学生はまだ半分近く夏休みが残っている。むしろ本番はこれからだろう。しかし、世の学生は講義が無ければバイトと遊行で予定を埋め尽くしているかもしれないが、こと緑間に限ってそれはなかった。伝手で紹介してもらった家庭教師のバイトは酷く割が良かった。一時間二千円で毎回ケーキやらしるこが出るのだよ、と高尾に伝えた時の表情を、緑間は未だに忘れていない。
あれは二人で夕飯の買い出しに出かけた時のことだ。季節は秋の終わりで、冷たくなった空気に秋物のセーターは少し風通しが良すぎた。俺久しぶりに真ちゃんに殺意抱いたわ、とはその時の高尾の言である。今日の夕飯はもやしでいいかな、俺今月ピンチなんだよね、真ちゃんはお金あるかもしれないけどね、とぶつぶつ呟く姿は、緑間でなくともあまり眺めていたいものではなかった。当の本人である彼は、お前は以前にも俺を殺そうとしたことがあったのかと問おうか考えて、どのような答えが返って来たとしてもあまり歓迎できる事態ではない、と結論づけた。喉元まで出かかっていたその言葉を飲み込んだ。その程度には彼も大人になっていた。代わりに、お前とセックスする時は大体死にそうになっているんだが、と伝えれば高尾は何も無い所でつまずいた。その後しばらく無言で、高尾は肉を買い物かごに無心に放り込んでいた。その日の夕飯は牛のすき焼きだった。とてもよく覚えている。
「……真ちゃん?」
「ああ、ぼんやりしていた」
「もー。それで、どう?」
完全に思考が逸れていた緑間は、もう一度、空中に浮かぶ見えないカレンダーに視線を移す。大学に入り、友人もできた。高校ほど顕著に周囲を拒むことは無い。講義の終わりの飲み会にだって顔を出すようになった。しかし、彼は大学の友人たちと毎日繁華街に繰り出すより、二人の家で静かに本を読むことを好んだ。カレンダーはまだ空いている。
「……木曜。来週でいいなら火曜」
「あー、今度の木曜は俺がバイト入ってんだよなー、来週の火曜は空いてる」
「それなら、そこでいいんじゃないか」
「うん」
再び本に意識を戻した緑間は、高尾の「それじゃー、そこ空けておいてね」という一言に軽く頷いた。
「それで、結局なんなのだよ」
「ああ」
目線を合わせないまま、ゆっくりと会話は続く。高尾の突然な誘いは初めてのことではない。最初は理由から何から全て尋ねていた緑間も、最近では中身も聞かずに��可を出すようになった。全ては『慣れ』の一言で片付けられるのかもしれない。そしてそれは、悪いものでもなかった。二人の間を流れる時間は酷く優しかった。きっと二人は昨日もこうしていたのだろうと思わせるような速度。明日もこうしているのだろうと思わせるような空気。テレビからは、バラエティ番組特有の揃えられた笑い声が響く。
「大掃除しようと思って」
「……大掃除?」
そこでようやく緑間は、読んでいた本から意識を外した。怪訝な顔で高尾の方を見れば、視線に気がついた高尾も、テレビから緑間へと視線をスライドさせる。隣同士に座る二人の距離は近い。
「そ。去年の夏はドタバタしててやれなかったけどさ。年末に大掃除やったじゃん? あれ、夏もやっとこーかなーと」
二人がルームシェアを始めたのは、大学入学とほぼ同時期だ。緑間は危なげなく第一志望の医学部に合格を果たし、高尾も、周囲から危ぶまれつつ有名私大の経営学部に合格した。あれだけバスケしかやっていなかった癖に、と周囲からやっかみ半分賞賛半分の拍手を受けつつ、めでたく二人で現役合格を果たしたのである。
難があるとすれば、それは双方共に大学が自宅から離れていることだった。一人暮らしには躊躇う。けれど自宅から通うには厳しい、そんなもどかしい距離。特に、遅くまで授業が入るであろう緑間にとって、通学に二時間かかるという現実は歓迎できたものではなかった。
「だったら、一緒に住んじゃおうよ」
そう言いだしたのは高尾だったろうか。緑間は「馬鹿なことを言うな、許され���筈がないだろう」と言ったかもしれないし、「そうだな」と答えたかもしれない。
いいや、もしかしたら緑間が「一緒に住めばいいだろう」と言ったのかもしれなかった。高尾が「それは無理なんじゃないかな」と答えたのかもしれなかったし、「真ちゃんナイスアイデア!」と叫んだのかもしれなかった。今となっては二人とも覚えていないことである。それは世間一般から見れば大事なことだったのかもしれない。しかしこうして一緒に暮らすことに慣れてしまえば、大切な思い出は存外あっさり過去になっていくものだった。一度この件で二人言い争ったこともあるが、お互いに相手が言いだしたのだと主張して譲らなかった。「どっちが先にプロポーズしたか論争みたいだよな」と、後に高尾は苦笑いしたけれど、それに関してはお互い自分からだと譲らなかったのだから、不思議なものである。
どちらが言いだしたのかはともかく、まだ学費も親に出してもらっている身の上の二人、まさか当人だけで決定できるはずもなかった。恐る恐る親に話を出してみれば、二人が驚くほどスムーズに親同士は連絡を取り、一時間ほどの世間話と五分の要件で話はあっという間にまとまった。妹を抱え、あまり余計な出費をしたくない高尾家と、財政面はともかく、お世辞にも生活力があるとは言えない息子を一人暮らしさせるのが不安な緑間家は、あっさりと大学生二人の同居を許諾したのである。高校三年間、お互いの家に入り浸り続け、親にすれば今更だったのかもしれない。両親同士が、迷惑をかけると思いますがうちの子をよろしくお願いします、と言い合うのを聞いていた二人の表情は、それはそれは微妙なものだった。何故俺がこいつによろしくしなくちゃいけないのだよ、いや迷惑かけるのは恐らく真ちゃんっしょ、という視線が二人の間で交錯していた。
「……よろしくお願いします」
「……よろしくお願いします」
ダンボールに溢れかえった二人の新居で、正座しながら向かい合って挨拶をした初めての夜を、二人ともまだ覚えている。
 一年目は慌ただしく過ぎた。正直な話、幾度か破局の危機を迎えたほどである。女の子と結婚する前に同棲しろってのはなるほど正しいと、高尾は一人、誰もいないトイレで頷いたものだった。ちなみにこの時は、トイレから出るときに便座の蓋を閉めるか閉めないかで二人が大喧嘩していた時であり、現在では蓋は必ず閉じきられている。だいたいそういったことに我慢がきかなくなるのは緑間の方で、彼の様々なジンクスに高校生活で大分慣れたと考えている高尾ですら、一緒に生活してその異常さを痛感することになったのであった。今までこれを全て実行していたのかと思えば頭が痛い。真ちゃんママとパパってさ、流石真ちゃんのお父さんとお母さんだよね。初めて緑間と喧嘩をして仲直りをした日の夜、高尾がぽろっと呟いた言葉は紛れなもなく本音である。とはいえど、緑間から言わせれば高尾の生活も酷いものであった。味噌壺に直接胡瓜を突っ込んで食べる、牛乳パックを開け口からそのまま飲む、CDの外と中身が一致していない、なんていったあれこれである。そういったこと一つ一つ、慣れない暮らしや生活習慣の違いを見つける度に二人は喧嘩をして、たまに食器が一枚割れたりした。しかし二年目ともなればお互いに慣れてくる。緑間が洗濯物を洗う曜日に敏感なことも、高尾が調味料のメーカーにこだわることも織り込み済みである。夕飯を食べるか食べないかの連絡だってスムーズになった。慣れは、決して悪いものではない。
高尾が言った大掃除とは、年末に二人で行ったものである。なるほど、確かに一年分の汚れはなかなか落ちるものではなかった。半年間隔でやってしまおうという意見は、緑間にとっても悪いものではない。
「場所は? 全部か?」
「全部! まあ普段だってちょいちょいやってるし、一日で終わるだろ」
天井払って、壁と床拭いて、窓磨いて、あと洗面所と風呂トイレに台所だろー。
指折り数える姿に、悪いものではないが、これは結構な重労働になるなと緑間は溜息をついた。背の高い緑間にとって、天井付近はあまり負担ではないが、その分床に近づくと途端に身動きが取れなくなる。自分の体が、邪魔なのである。せめてその日が晴れるように祈るしかない。雨の日に水拭きなどしたら間違いなくカビが発生して、本末転倒になるだろう。
二人の協議の結果決まった二八度の冷房。高尾が選んだ柔らかいらくだ色のローテーブル。二人が好きなつまみ。緑間は、細かい朝顔の透かし彫りが入った切子ガラスのコップに手を伸ばす。氷を入れたグラスと緑茶は、見た目からして涼やかだ。冷房の下、僅かに汗をかいている表面をなでて、彼はそのまま一息に飲み干した。頭の中のカレンダーに、大きく赤い文字で、大掃除と刻み付ける。
「ところで高尾、テレビは消していいのか」
「えっ!? あ、ダメダメ。宮地さんが推してるチーム歌うから。真ちゃんもしっかり見ろよ?」
「は?」
「え、だって十月に大坪さんと木村さんも一緒に飲みあんじゃん。絶対にカラオケ行って歌うから、合いの手とコール覚えなきゃだろ?」
「断わる! お前だけやればいいだろう!」
「真ちゃんも一緒にやるから面白いんだろ!」
ほらほら、これCM明けに歌うから!
逃げだそうとする緑間を押さえつけて高尾はテレビの音量を上げた。暴れだす体の向こうで、同じ顔をしたアイドルたちが笑顔を振りまく。半年前に出た新曲と同じようなメロディと同じようなキャッチーさで、彼女たちはテレビの向こうから愛を届けている。日本中の可愛い恋人たちのために。
二人、相手を黙らせるために仕掛けたキスに夢中になって、結局ろくに歌を聴くことはできなかったのだけれど。
     ***
 よっしゃ、良い天気だ。
前日に二人で作ったてるてる坊主が効いたのかどうかは判らないけれど、檸檬色のカーテンをひけば高い青空が見えた。白いちぎれ雲が自信ありげに浮かんでいる。ホンの少し涼しくなった空気はまだ残暑模様。朝でも肌には汗が浮かぶ。午後からはきっと焼け付くような暑さが来るだろう。おり良く強い風が吹く。洗濯物がよく乾きそうだった。絶好の掃除びよりだと高尾は笑う。お前はそんなに掃除が好きなら、普段からもっと部屋を片付けろと緑間は溜息をつく。そう言う緑間が、いつもより十五分早起きしていることを高尾は知っている。
「じゃ、まずは上からな」
「壁か」
「んー、天井ざっとはたいてから壁かな」
汚れても良い格好ということで、二人とも服装はラフである。高尾は少しくたびれたTシャツに、これまた古びたジーンズ。緑間も洗いざらしのシャツとクロップドパンツだ。二人とも素足だが、ここでも去年の夏、スリッパ派と素足派による二日間の戦争があったことを知るのは、この二人だけである。ちなみにこれは開戦から二日目の夜、素足派による「だって夏のフローリング気持ちいいじゃん!」という叫びを否定しきれなかったスリッパ派の譲歩によって幕を閉じた。一週間に一度のクイックルワイパーを条件にして。それももう、一年前の話である。
ハタキと、堅く絞った雑巾を手渡され、緑間は黙々と天井の埃を落とし始めた。丁寧にやるような箇所でもないので、四角い部屋を丸く掃くような雑さで終える。そもそも、椅子に乗らなくとも天井に手が届く緑間にとっては簡単な作業である。洗剤やらスポンジやらを出して準備している高尾を尻目に壁にとりかかった。手渡された雑巾で、力をこめずに、壁紙の目に沿って拭いていく。ポートレイトや写真が貼られているのを丁寧に外してみれば、うっすらと壁に日焼けの跡が見えた。僅かに色の変わった境界線を、感慨深く緑間は撫でる。ついでとばかりに、飾ってあった額も拭いてしまう。それにしてもなんだか見慣れた雑巾だと思えば、それは高尾が寝間着代わりに使っていた白いTシャツだった。それがざっくばらんに切り刻まれ、雑巾として再利用されていることを見て取って、緑間はまたひとつ溜息をついた。いつの間にこんな主婦臭い技を身につけていたのか。
そもそも壁を拭くことすら緑間は知らなかった。しかし考えてみれば壁も汚れるものである。年末に帰省した際に母に聞いてみれば、毎年拭いていたとのことで、それまで母の仕事に全く気がついていなかった緑間は少し自らを恥じた。言われれば手伝ったのにと暗に言えば、あなたにはもっとやって欲しいことがあったから、と少し老いた母は笑った。高尾に、何故お前は知っているのだと聞けば、俺ん家は妹ちゃんも俺も総出で掃除させられたから、とあっけらかんとした答えが返ってきて、彼は黙り込むしかなかった。
その高尾は先に窓を始めている。バスケをやめた今となっても、自分にあまり水回りの仕事をさせようとしない高尾のことを緑間は知っている。基本的に自分の物は自分で片付けることが二人の間のルールだが、食後の皿は緑間がやろうとしても高尾が全て洗っていた。高尾が手際よく洗っていく皿を、緑間は隣で黙々と、白い木綿の布巾で拭いていく。会話は、あったりなかったりである。さすがに大掃除となって、濡れた雑巾に触れないわけにも行かないが、洗剤を使うような場所は頑なに自分でやろうとする高尾を、今更とがめはしなかった。その小さなこだわりは、きっとこれからも続いていくのだろうと緑間は知っていた。いつか高尾が緑間の左手を大事にしなくなった時、二人の関係は終わるのかもしれないなとぼんやり緑間は思っている。それが、本当の終わりなのか、それとも次の場所へと進むのか、そこのところはまだわかっていないし、わからなくて良いと思っている。結局、今のこの場所が居心地良いと思っているのは、双方同じなのである。だからこそ、こうやって二人で手入れをするのだから。
二人暮らしの狭い家とはいえど、壁一面となればそれなりに重労働である。意識をそっと白い壁に移して、彼は壁紙をなぞる。固く固く絞られた雑巾が、ホンの少し黒ずんでいく。その分また壁は白くなる。世の中はうまい具合にできている、と緑間は思う。
 緑間が壁を拭き終わり、高尾の様子を窺えば、彼は丁度全ての窓を磨き上げたところだったらしく、休憩にしようか、と笑った。曇り一つ無く、洗剤の跡すら見えない窓ガラスと積み上げられた雑巾に、こいつも大概完璧主義である、と緑間は思う。太陽は既に頂点、二人が掃除を開始してから二時間が経過、時計は十二を僅かに過ぎていた。朝の想像通り、日差しはますます勢いに乗って世界をじりじりと溶かす。無論掃除している最中にクーラーはつけていないので、二人とも背中には汗の痕が滲んでいた。風呂入る? という高尾の一言に緑間は首を振る。どうせこれからもっと熱くなるに決まっているし、目的はまだ半分しか達成されていなかった。
その様子に高尾は軽く頷いて、額に滲んだ汗を首から下げたタオルで拭う。窓の裏側を掃除するために外に出ていた高尾の方が体感はより暑か��たのだろう、顔は少し赤くなっていた。素麺で良いよね、という言葉に緑間は頷いて、そのままぐるりと首を回した。パキ、と空気が割れるような音がする。あー、お湯沸かすのあっつい! という高尾の叫びを無視して、緑間はテーブルの準備を進めていた。どうせ手伝うこともないので、黙々と皿を並べる。濃緑の箸は緑間、橙は高尾。今は良いだろう、と緑間はクーラーのスイッチも入れた。お世辞にも新しいとは言えないそれは、大きく低い振動音と共にゆっくりゆっくり動き出す。ゴオ、オという音をたてて冷たい空気を排出するそれが効き始めるまでに、もう少し時間がかかるだろう。それまではこの部屋はただのサウナだった。気分だけでも涼しく、とグラスに氷を入れて緑茶を注げば、案外喉が渇いていたことに気がつく。
「きゅうり入れるー?」
「入れる」
台所の方から飛んできた声に、緑間は髪間入れずに答えた。夏の胡瓜は、夕立をナイフで切ったような食感がするから好きだと彼は思う。
「卵は?」
「細切り塩で」
「なんだよこまけえな」
文句を言いながらも、高尾は注文通りに手際よく仕上げていく。サラダ油がたっぷりと敷かれたフライパンの隣で、ボウルめがけて白い卵の殻がパカリと割れる。出てきた黄身をダンスでもするようなこ気味良さでかき混ぜて塩をふれば、その頃にはフライパンはすっかり温まって湯気を立てている。卵を流し込めば薄く広がって、柔らかいそれを一気にまな板の上に放り投げた。食べ物で遊ぶなと緑間が苦言を呈したことは数知れないのだが、最後に放り投げる癖は未だに抜けないままである。余熱で固まるそれを手際よく畳んで細く切りながら、なんか残り物あったっけ、と高尾は呟いた。緑間が冷蔵庫を開ければ昨晩の煮物が出てきたので、彼はそれを小鉢に盛る。タッパーから直接食べてしまえばいいだろうと言う高尾と、残飯を食べているようだと許せなかった緑間の、そんな戦争の結果はここにもある。
「おい、高尾、吹きこぼれそうだぞ」
「うっわ。やべ、あぶな」
透明な素麺は、川のようだから好きだと、昔高尾は笑って言った。
「いただきます」
「いただきます」
両手をあわせて自分の器にきゅうりと卵を投入しながら緑間は尋ねる。
「このあとは」
同じくきゅうりと卵を投入して、ごっそりと素麺を器に入れながら高尾は首を傾げた。麺つゆが器から溢れそうになるぎりぎりのところまで素麺が入り込んでいて、よくもまあそんな絶妙な量を取るものだと、緑間はいっそ驚嘆の目でそれを見つめる。彼の器には二口ほどで食べきってしまえる程度しか麺は入っていない。
「んーあとは床と水回りだな。台所洗面所風呂トイレ。あとリビング片づける」
「なるほど」
ネギは無いのか、という緑間の台詞に切らしてる、と口の中に詰め込みながら高尾は答えた。キムチならあるけど、という言葉に首を振る。生姜はするの面倒くさいから却下ね、と尋ねる前に答えられて緑間はいささか不機嫌そうに麺をすすった。
「台所は絶対に俺だとして、他の水回り、いやでも真ちゃんにできると思えねえ」
「失礼な」
「いや、そーは言うけど、排水口に詰まった髪の毛ヘドロって結構えぐいぞ」
「う」
緑間がそこの掃除を担当したことは今までに一度も無い。水回りだからである。しかし初めてパイプがつまりかけて、すわ水道トラブル五千円か、と慌てて掃除をした時の憔悴を高尾は覚えている。髪の毛だって人体の一部だということを何故忘れていたのだろう。生物の一部が、ずっと水にさらされていればどうなるかは明白だった。すなわち、腐る。その時の異臭とあまりにもグロテスクな見た目を思い出して、高尾は慌てて首を振った。間違っても食事中に思い出したい光景ではない。あれ以来、髪の毛はなるべく排水口に流さない、紙にくるんでゴミ箱に! と叫び続けていたが、そうはいっても限界はある。こまめに掃除をするようにはしていても、夏場の腐食の早さを冷蔵庫を預かる高尾は知っていた。そして、どう考えても潔癖症のきらいがある緑間に向いている仕事では無いということも。
「水回り全般俺がやるから、真ちゃん床お願いね」
「……分かった」
高尾の悲壮感の漂う決意を受け取ったのか緑間は神妙に頷いた。別に死地に赴くわけでもなし、高尾は笑って緑間の状況を告げる。
「しゃがむのきついだろうけどファイト」
身長百九十五にとっては、床に這うのも重労働である。広くないとは言えど、終わる頃には腰が悲鳴を上げることは歴然としていた。
「……代わらないか」
「ヘドロ」
「……」
緑間は黙って素麺をすすった。やっぱネギ欲しいな、と高尾は笑った。
 「高尾」
磨き上げられた窓の向こうから夕日が差し込むのを見て、緑間は風呂場にいる高尾に向かって少し大きめの声をかけた。実際、やってしまえば床は案外すぐに終わり、高尾が悪戦苦闘している様子を見てとった緑間は一人だけ休憩するのもなんとなく心地悪く、結果リビング全体の掃除を始めていた。小物に少し溜まった埃だとか、装飾棚の隙間まで、一度始めてしまえば徹底的にやり切るまで集中する緑間は、目を刺す橙の光にふと気がつくまで、黙々と掃除を続けていたのである。
「ん、真ちゃん終わった? 俺も終わりかな~」
風呂場でシャツとズボンの裾を捲りながらカビと戦っていた高尾は、最後に洗剤をシャワーで流して伸びをする。腰からも肩からも不穏な音を感じて高尾は苦笑した。風呂に充満する洗剤の臭いに、少し頭が痛くなっている。換気扇を回して浴室から足取り軽く飛び出した。
「お、スゲー。リビング超きれいになってる」
「当然だろう」
床だけをやっている割には時間がかかっているなと薄々感づいていた高尾だったが、新居さながらに整えられたリビングと少し誇らしげな緑間の表情に、全てを悟って彼は笑った。完璧主義はどっちだよ、と告げれば軽く肩をすくめられる。
「やっぱ整理整頓は得意だよな真ちゃん。あんだけのラッキーアイテム把握してただけあるわ」
「だが、これが」
入らないのだよ。そう続けた緑間の視線の先には積み上げられた本と雑誌。幾枚かのCD。二人ともに気になっていたから、自分の部屋には持ち帰らずに置き放していた書籍の類である。月バスの五月号を買ったのは高尾だし、六月号を買ったのは緑間だ。緑間が気まぐれに買ったミステリの新刊を、高尾が気に入ってシリーズで揃えてしまった事もあった。高尾がおすすめだと無理矢理押し付けたバンドの新作のア���バムを何故か緑間が買ってきた。そういった、二人の間で分かちがたかったあれそれがリビングテーブルの上に広げられている。どちらが買ってきたのかももう覚えていない物もちらほらと見受けられた。これも一種の慣れなのかもしれないと、高尾は思う。放っておくには量が多すぎたし、どちらかの部屋に持ち込むにはあまりにも二人の間で共有されすぎていた。
「んー」
彼がちらりと壁に目をやれば時刻は四時。陽は頂点を過ぎてなお盛んである。むしろ暑さはこれからが本番だとでも言いたげな表情で、町は赤く燃え盛っていた。朝から掃除をしていたことを思えば結構な時間だが、一日を締めくくるにはいささか早い。まだ太陽は今日を終わらせるつもりがなさそうである。そう結論づけて、高尾は一仕事終えたと言いたげな緑間を振り返る。その表情を見て緑間は顔を引きつらせた。ろくなものではない。
「買いに行こっか」
「は?」
「本棚」
ホームセンター近えし。
その高尾の言葉に自らの予想が完璧に当たったことを理解して、緑間は一つ大きな溜息をついた。
そう、二人がこの街に居を構えることに決めた、大きな理由の一つがそれだった。本屋やコンビニを併設した大型のホームセンターが徒歩圏内なのである。トイレットペーパーから墓石まで揃うと謳うその店は流石の品揃えで、信じられないことに深夜二時まで営業している。男二人暮らし、計画的な買い物が得意ではない以上、いざという時に頼れる存在は大きかった。それは例えば、夜中にいきなり花火をしたくなった時なんかに。
「…支度をする」
置くのここでいい? と窓枠の下を指した高尾は、どこに持っていたのかいつ取り出したのか、メジャーを使って寸法を測り始めている。奥行ありすぎると通る時にぶつかっちゃうかな、でもあったほうが上に物とか置けて便利かな、そう目を輝かせる高尾はもう緑間のことを見ていない。これはもう止まらないな、と、この一年で学習した緑間は着替えるため、一人先に部屋に戻ろうとした。
「え、いーじゃんもうこのままで」
「外にでる格好ではないのだよ!」
見ていなかったはずの高尾に腕を掴まれて緑間は怒鳴る。その視野の広さを無駄に活用するくらいなら、素麺の噴きこぼれを防げと緑間は言いたい。そんな怒気に気がついているのかいないのか、メジャーをポケットにしまいながら高尾は笑う。
「今日組立までやるとしたらまた汚れるから着替え直しだし、めんどいだろ」
「そういう問題じゃ」
繰り返すが、今日は掃除で汚れると思っていたから、緑間も手持ちの服の中で最も汚れていいものを着ているのである。それに汗もかいている。近所のコンビニ行くのにラルフローレン着る必要なんてないだろ、と高尾は笑うが、コンビニじゃあないしラフにも限度があるし、これはマナーの問題だと緑間は思う。大丈夫真ちゃん別にくさくねえって、との言葉に彼は本気で頭を叩いた。
「ほれ、はやく」
涙目の高尾に引きずられて、結局、そのままの格好で、鍵と財布だけをポケットに突っ込んで二人は出発した。外に出た途端に額に滲む汗に、緑間も降参の溜息をつく。仕方がない。ここまできたら、とっとと買い物を済ませて綺麗になった家に帰ろう。足下のサンダルは安っぽい音を立てて道を進んだ。
 「ぜってえこっちの方がいいって」
「そんな下品な色がか? こちらの方が落ち着いていて良いだろう」
「そんなじじいっぽいのやだよ俺!」
とっとと買い物を済ませようという当初の思惑などすっかり忘れ、緑間は高尾と二人、本棚のコーナーでにらみ合っていた。ただでさえ目立つ二人組は完全に周囲の視線を集めている。案内している販売員も、最初は少し驚いたようだったが今は完全に笑いをこらえた顔で二人のやりとりを眺めていた。
「この人だってこっちのほうが今はやりだっつってたじゃん!」
「はやりの物は飽きるのも早いのだよ。こちらのほうが容量も大きく沢山入るとあの方も説明していただろう」
「いいや、いっぱい入ったって好きじゃなかったらしょうがないね。見るだけで嫌になるようなものに物を入れたいなんて思わないじゃん」
「ふん、入りきらなければ元も子もないだろう。それに」
「それに?」
「大きいほうが良いに決まっているのだよ」
「真ちゃんここでもそのよく判らない大きいもの志向持ち出すのやめようぜ!」
話し合いは完全に平行線である。こちらの商品はいかがですか、と指し示されたものを見た二人は、数秒間それを見つめ、「財政的にちょっと」と同じタイミングで声を発した。
「待って真ちゃん、一回冷静になろう」
「良いだろう」
「まず容量だ」
ああでもないこうでもないと言い争えど結論が出ないので、ついに高尾は最終手段に出ることにした。申し訳なさそうに販売員に紙とペンは無いか尋ねる。快く差し出されたそれに、高尾は雑に「デザイン」「色」と書き込むと、他に何かある? と緑間に尋ねた。特になかったらしい緑間は首を振って黙って見ている。それに頷いて、高尾は二本の線を伸ばし、間に横線をランダムに引いていった。二人がどうしても戦争を終結させられなかった時、諦めの平和条約の作り方をこの一年間で彼らは生み出していた。
「真ちゃん、右と左どっち」
古式ゆかしいあみだくじだった。
一時間後、高尾の選んだ色と緑間の好みの型をしたブックシェルフは無事にレジを通り抜けた。販売員に頭を下げて、二人は板を小脇に抱え込む。あみだくじはぐしゃぐしゃに丸められて高尾のジーンズのポケットにつっこまれていた。後で洗濯をする時に出し忘れて洗濯物を汚すパターンなのだが、今の彼はそんなことには気がつかない。二人、何かをやり遂げたような顔で家路を行く。配送業者も組み立て業者も近くで待機していたが、これくらいならば自分達でやると丁重に断わった。自転車で来れば良かったかな、とぼやく高尾に、逆に載せられないだろう、と緑間も淡々と返す。背中に夕日を背負って、二人の前には長く長く影が伸びている。やべえ俺モデルみたいに脚長い、お前はもう脚長おじさんって感じ。そう言って高尾が笑いながら取ったポーズがあまりにも滑稽で緑間は笑う。どうやら笑わせようと思って取ったポーズでもなかったらしく、高尾は一瞬複雑そうな顔をしたが、どうやら調子に乗ったようで、その後も家にたどり着くまでことあるごとに奇妙なポーズで緑間を笑わせにかかった。調子に乗りすぎて板を落としそうになったところまでご愛嬌である。とはいえどなかなかの重労働で汗をしこたまかく羽目になったので、あの服装で正解だったのかもしれないと緑間は頭の片隅で思った。そんなこと、口に出しはしないけれど。
 会議という名の喧嘩時間に反比例するように、案外あっさりと組み立て終わった白いそれは二人の腰よりも低く、窓枠の下にぴたりと収まって、雑多に積み上げられていた本も雑誌もCDも、全て収めて夏の光をはじいていた。これに合わせて変えようと、高尾が一緒に買った白いカーテンがはためいている。磨き上げられた窓、滑らかな床、白い壁は夕日で赤い。本棚もカーテンも、夕焼けと同じ色で呼吸をしている。暑さも和らいできた。午後七時。夕日は地平に差し掛かり、町陵を金で縁取っている。昼間、高尾がいつの間にか干していたシーツが、朱金の鼓動を飲み込んで乾く。一日が、終わろうとしている。
「よっしゃ、これで終わり!」
「雑巾はもう捨てて良いか」
「おう!」
あー、一仕事終わったし、ビール飲もう! 枝豆冷やして! あとはなんだ、漬け物と、キムチで鶏のささみ和えて、いや、手羽先の方が良いかな。夏はうまい!
次々と夜の献立を並べる高尾に、緑間は僅かに頬を緩めた。腹が減っているのはお互い様である。何せ今日は、とてもよく働いたので。はじめは全くと言っていいほど合わなかった食の好みも段々と近づいて、今ではお互いの好物を好きだと言えるようになっている。
ねえ真ちゃん、今度おっきいソファ買いに行こうよ。今のも良いけどさ、もっとスプリング効いたヤツ。並んでテレビ見てさ、そんでそのまま…。
不真面目な頭を思い切りはたいて、歴史あるソファに緑間は腰をおろした。高尾が座れないように、真ん中に。空中にある明日のカレンダーの予定を見つめて、彼は午前中の用事に大きくバツをつけた。文句を言う高尾の口を塞ぐ。洗いたてのシーツで惰眠をむさぼるのも悪くないだろうと思って。
開け放した窓から夜風。彼らの城は今日も明るい。
Love is life.
        【愛こそすべて!?】
  まさか真ちゃんがあそこまであのソファに愛着を持っているとは思わなかった。その点は俺の見込みが甘かったとしか言えない。そりゃ、俺だってあれのことは気に入ってるさ。大分古びてるとはいえども、それがまた洒落てる感じ出してるし。座り心地だって悪くない。いや、悪くなかったんだ。でもさ、スプリング壊れちゃったんだから仕方ないじゃん。布を突き破って出てきたバネは鈍い黄金色をしていて、王様みたいな貫禄があってやけに格好良かった。それが真ちゃんとのセックスの最中じゃなければね。あの男三人が座ったらぎゅうぎゅうになる場所でどうやんのって話だけど、まあ窮屈には窮屈なりの楽しみ方があるってことでここはひとつ。
さて、俺たちはしばらく顔を見合わせたあと、まあお互いのケツにそれが刺さらなくて良かったじゃないかっていう結論に達した。その後ベッドに移動してどんくらい何をどうやったかっていうのは、俺だけの秘密にさせてくれ。
んで、後日修理してもらおうと、見積の業者さんを呼んだ俺たちは、提示された金額に頭を抱える羽目になった。流石王様。流石ヴィンテージ。俺たちは知らなかったが、このソファに使用されていた革は本革の相当質の良いものだったらしく、 これを貼り直すとなると普通に新品を買ったほうが良いというような、そんな値段になってしまうのである。古い物ほど、整備には金がかかるってことらしい。人間もそうかもね。
「あっちゃー、これはしょうがねえな……買いなおすか」
「……」
「やっぱ無いと不便だもんな。真ちゃんいつ空いてる? 別に丸一日じゃなくてもいいけど。買いに行こう。粗大ゴミって確かシールとか貼って業者さん呼ばなきゃいけないんだっけ……」
「…………」
「真ちゃん?」
「捨てないのだよ」
「は?」
「捨てない」
パードゥン? って感じだった。っていうかパードゥン? って言っちゃった。そしたら、捨てないのだよ、ってもっかい強く言われて、マジか、ってなった。その時は、俺は真ちゃんの、いつもの、まあかわいい我が儘だと思ってたんだけど、思ってたから、割と軽い調子で説得を始めちゃったんだけど、どうやらそれがより気に食わなかったらしく、結局その日の夕飯は無言でお互いにカップラーメンをすすった。そりゃ、俺だって愛着がないとは言わないけど、流石にあの値段は学生には無理だ。そんなの真ちゃんだってわかってるはずである。なんでそんなにこだわんの? って聞いたら、視線をそらされながら「バネが飛び出たソファがラッキーアイテムになるかもしれないだろう」って言われた。もしもそんなことになったらいよいよおは朝は専属の占い師を変えるべきだと思う。
とりあえず翌日、前の持ち主である宮地さんに電話してみた。もらったんですけど壊れちゃいましたすんませんっつったら、お前らにやったモンだから別に構わねえよ、とだるそうに返された。そもそもあれ古かったしな。しかし何して壊れたんだ? そんな風に聞かれて、いや、ちょっとはしゃぎすぎて、としか返せなかった俺は多分悪くない。
まあそんな感じで、俺は捨てて新しいのを買いたいんだけども、真ちゃんは全然そんなつもりがないらしく、バネはいつまでも飛び出したままだった。最初は王様のように見えたそいつもずっと見てると腹立たしくなってくる。案外間抜けな感じじゃないか。何年の歴史があるんだか知らないが、お前の時代はもう終わったんだ。
っていうか普通に危ない。怪我をしたらいけないからと説得したら、真ちゃんはしばらく考えたあげく、部屋からぬいぐるみを一つ持ってきてぶっさそうとしたので慌てて止めた。なんで目の前でいきなりスプラッタを見なくちゃいけないんだ。お前の男らしさはそんなところで発揮されるべきじゃないだろう。っていうか、そもそもお前はそういう物を大事にする奴だと思ってたんだけど。一通り止めた後、不審そうな顔で、「お前は何を言ってる。これはパペット人形だ」って、最初から手を通すために空いてる穴を見せられて思わず脱力。そんな訳であのソフアには蛙がど真ん中に堂々と立っている。バネは見えなくなったが、今度はこいつがウザイ。心底腹が立つ。っていうかこの蛙の居場所のためだけに、俺たちの生活スペースが侵食されてるんですけど! 真ちゃん!
「これは」
俺とお前が、初めて、一緒に選んだものだろう。
そうですね。
 「は? それで結局お前らそれどうしたわけ?」
「いや、やっぱ普通に不便だし無理なんで、新しいの買いました」
「そりゃそうだよな」
「んで、あのソファは真ちゃんの部屋に運び込まれて、今大量のラッキーアイテムのぬいぐるみが置かれています」
「あっそ」
久しぶりに宮地さんと差しで飲んでいる時に、ふとその話題になった。いや、俺が、ソファに座ってこの前真ちゃんとテレビ見てたら、って言ったんだっけ。結構酔いが回ってるらしい。覚えてない。
「つか、お前らが一緒に選んだってなに。あれ、俺がゆずったやつだけど」
「いや、実は真ちゃん、あれ宮地さんの部屋にある時から気に入ってたみたいで、俺も結構欲しかったんで、宮地さん家に行った時にそれとなくねだろうって事前に打ち合わせしてて……あたっ」
笑顔の宮地さんに叩かれたが、まあこれは仕方がない。引越し祝いに下さいとねだったら案外あっさりくれたんだし、そんなに怒らないでくださいよ。愛する後輩の、かわいいおねだりじゃないですか。やっぱり世界は愛が回してるんですよ。あのソファは、俺と真ちゃんと、あと多分宮地さんとか、宮地さんの前に使ってた人とか、それより前に使った人とか、その前の人とか、その前の前の人とか、作った人とかの愛がこもってるんですよ。だからやっぱり、捨てれなかったんですよ。そういうことなんですよ。決して、真ちゃんの我が儘に付き合った訳じゃないんです。
「嘘つけ」
そうっすね。嘘ですでも嘘じゃないんですよ。だってこれも俺の愛の形で、あれも真ちゃんの愛の形。世界は愛でできてるんです。愛こそ全て! 飲みましょう!
Love is life, Love is all.
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