#長久手市スクールカウンセラー
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tanakaeri · 1 year ago
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9月新学期、子供たちよ
楽しかった夏休みも終わり、9月新学期を迎えようとしています。 小学校の子供達、中学校の子供達、高校生、そしてお母様、お父様、9月からの新学期の不安を抱えていらっしゃる方のご相談が増えております。 そう、学校に行きたくないと悩み、苦しんでいる人が多くいるのです。 何故、行きたくないのか。理由が分かる事場合、分からない場合、ケースはそれぞれです。 ただ、今日は、明日は休んでいいよ と言われても、明後日は学校へ行かなけれ��と苦しみが続いています。 一旦、期間を置くことも必要な場合があります。 子供の気持ちに寄り添う方法が分からない 子供を甘やかしすぎてしまうのではないか どのように対応して良いかわからない等 ご両親であるお母様、お父様がいらっしゃいましたら一度ご相談くださいね。 個性が大きく影響する時代ですが、学校はこれからの社会で生活できるように学ぶ場所であります。 集団行動や決められたこと…
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mark311text · 6 years ago
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私は宮城県名取市閖上(ゆりあげ)出身です。
今日は2011年から7年。2018年3月11日、午後2時46分から1分間の黙祷を終えたところです。
2011年3月11日
私は中学2年生で、卒業式の予行練習で午前授業だった。お昼過ぎには家に帰って、両親の部屋でテレビを見ていた。高校生だった兄も帰宅していて、家には私と兄と猫の太郎がいた。
こたつに入って横になっていると、突然、「ゴーーーー」というものすごい音がした。長かった。びっくりして固まっていると、次は激しい地震がおこった。体がゆさぶられるような揺れだった。太郎は驚いてこたつの中にとびこんだ。見ていたテレビが倒れ、画面が割れ、ここにいては危ないと思った私は、ベッドの上にあがり、上になにもない部屋のすみに避難した。クローゼットの扉は全開になり、中の荷物が全て床に落ちた。お母さんが使っていた、普段はうごかせないほど重いドレッサーも、揺れに合わせて生き物のようにズ、ズ、と前に動いていた。ガタガタと揺れる音や、ガシャーンと1階の台所からか食器の割れるような音が聞こえ、すごく怖かった。揺れはなかなか収まらず、もしかしてこのままずっと揺れているんじゃ��いかと怖くなり、耳をふさぎながら「あーあー!」と大きな声で叫んでやりすごした。
しばらくして揺れがおさまったので、自分の部屋に戻ろうとすると、ふた間続きになっている手前の兄の部屋は、タンスの引き出しや勉強机の上にあったものが全て落ち、足の踏み場がなくなっていた。地層みたいだった。物を踏みながら奥の自分の部屋に行くと、そこも同じように物の海になっていた。
兄に「とりあえずお父さんのところに行こう( お父さんは家の近くの公民館職員)。」と言われ、部活で使っていたエナメルバッグに持ち出せそうなものを入れ、ラックの上にひっかかっていた薄手の黒いジャンパーを着た。
もしかしたら役に立つかもしれないとお母さんドレッサーの引き出しに入っていた、カード会社や保険会社からの郵便物もカバンに入れた。無意識だったけど、もう家に戻ってこられないかもしれないと思ったのかもしれない。
兄が「避難所では猫の食べるようなものはもらえないと思う」と言うので太郎のご飯が入ったタッパーも鞄に入れた。太郎が怖がってこたつの中から出てこなかったので、兄に頼んで無理やり引っ張り出してもらった。このとき、兄は膝を悪くしていて、無理をすると膝の皿がずれてしまう状態だった。太郎を無理にだしたので膝が痛んだようで、少し休憩してから家をでた。その間も何回か揺れがきていて、家の壁には亀裂が入っていた。
外にでると、道路はでこぼこになっていて、マンホールからは水が溢れていた。家や電柱は傾いて、いつもの景色がゆがんでいるようだった。私たちと同じように、みんな近くの避難所へ移動しようとしている様子で、公民館に向かった。公民館のグラウンドでは小さい子たちが楽しそうに遊んでいた。状況がよくわかっておらず、興奮しているようだった。
公民館の中で誘導をしていたお父さんに会いに行くと、「津波がくるそうだ。公民館は津波の指定避難所ではないから( 公民館は二階建てで低い建物) 小学校か中学校に誘導するよう連絡がきたから、お前たちもそっちに早く避難しろ。」と言われた。
お父さんに話しかけるまで舞台の上で座っているときに、自分の膝から血が出ていたことに初めて気づいた。どこかにこすったようだったけど、不思議と痛くなかったことを覚えている。
お父さんから、津波がくると言われたけど、いつも津波がきても何センチかで結局大したことなかったので、今回もそんなもんだろうと思っていた。いつだったかのチリ地震の際もそうだったからだ。同じようなことを話している人もたくさんいた。私たちは2キロ先の小学校に向かった。
小学校に向かう途中、生協の前でNちゃんに会った。お兄ちゃんとはぐれたらしく、家に一回戻ると言っていた。私は津波が来るらしいから戻らないほうがいいと言ったが、大丈夫だからとNちゃんは戻ってしまった。
Nちゃんは津波にのまれて死んでしまった。
もっと強く引き止めていればよかった。
消防車が走って避難を呼びかけていた。
いつも何かあると鳴る、町のサイレンはこの日、鳴らなかった。
中学校の前で兄の膝が痛み出したので、予定を変更して中学校に避難することにした。中に入ると誰かが「3階か屋上へ!」と叫んでいた。兄と私は上へと向かった。外階段から中へ入られるドアをガンガン叩く音が聞こえ、見ると女の人が必死にドアを叩いていた。ドアの前に机が置いてあり、開かないようだった。でも、みんな自分の避難に必死で誰もどかそうとはしなかった。兄と机をどかし、ドアを開けた。「津波だ!」と、窓の外を見た。黒い水がじわじわと学校の駐車場に流れてくるのが見え、おじいちゃんが一人、まだ外にいるのを見つけた。「逃げて!」と叫んだけど、そのおじいちゃんが助かったかはわからない。
少し遠くを見ると。ず……、と、景色がそのままゆっくりゆっくりと動いた。町の中に船が見えた。船が家にぶつかり、家はぼろぼろになって崩れていった。あちこちに水の上なのに火が見えた。町全体が濃い灰色だった。兄と三階の教室から、水没したグラウンドを見た。水でいっぱいで、まるで映画を見ているようだった。夜になるにつれてどんどん暗くなり、懐中電灯を教室の真ん中あたりに置き、壁や周りにアルミホイルを貼って反射させて明かりを作った。持ってきたラジオからは、「絶対に水辺には近寄らないでください。被害の状況は­———」というような声が繰り返し聞こえていた。私は湿った教室の床に横になり、太郎を抱いていた。何も食べていないはずなのにお腹は空いていなかったし、眠気も全く来なかった。気づいたら朝になっていた。
朝になると水は引いていた。町を見たくて屋上にいった。それと、太郎がトイレをするかなと思って。屋上から見た景色に、町はもうなかった。グラウンドには車や船や瓦礫のようなものがぐちゃぐちゃになっていた。目の前にあった生協もなかった。今度は町が茶色だった。
あのときのトイレは今でも思い出すと吐きそうになる。人の用を足したものが積み重なり、ひどい臭いだった。吐きそうになりながら用をたした。学校には知ってる人がたくさんいて、Sちゃんに会った。Sちゃんは学校のジャージで、お腹から下は泥まみれだった。津波に少し飲まれたらしい。Sちゃんはお母さんとまだ合流できてない、小学校の方にいるかなあと言っていた。あとから知ったが、Sちゃんのお母さんは津波で死んでし��っていた。
お昼前ぐらいに兄が自宅の様子を見に行くと言って、少しして戻って来た。うちがあった場所には、うちの二階の屋根があっただけだったようだ。まだ実感がなく、そうなんだうちはもうないのか、と冷静に思った。
その��ちに大人の人たちが崩れてしまったお店から、食べ物や飲み物を持ち出してきた。避難した時に食料を持ち出すことのできた人たちから少しだけお裾分けをもらった。でも全員分はもちろんないので、たしか私はベビーチーズのようなものを一口分食べた。太郎にはお水を少しだけもらえたのでそれをあげた。
安全な内陸の避難所に全員移動することになったが、中学校の出入り口やバスが迎えに来てくれるおおきな道路にでるまでの道には、船や車や瓦礫などがたくさんあって、大勢の人が移動できるような状況ではなかった。なので自衛隊が道を作ってくれるまで待機するように言われた。
暗くなる前に作業は終わり、みんなでバスのところまで歩いた。海水のようなにおいと、ものが燃えたこげたにおいとガソリンのようなにおいがした。いたるところに車や船があって、きっと中には人がいたかもしれない。水は引いていたけど泥がすごくて、靴はすぐにぐしゃぐしゃになった。靴にビニールをかぶせていた人もいたけど、結局みんなどろどろになって歩いていた。
私と兄と太郎は、内陸の小学校の体育館に避難することになった。着くとすでに近隣の地域の人も避難していて、人がいっぱいいた。入り口でおにぎり一つと使い捨ておしぼりを一つずつ配られた。どこか寝る場所を確保しようとしたけど全然場所がなくて、体育館の中のゴミ回収のスペースの前が少し空いていたのでそこに落ち着いた。おにぎりを食べて、おしぼりで足を拭いた。毛布やシートも物資で配られたりしたようだったけどわたしたちがついた頃にはもうなかったので、余っている段ボールをもらって、段ボールを床に敷いて横になった。近くから避難してきた人たちは、自分の家から持ってきた毛布や服などであたたかそうで、わたしたちみたいな海から逃げてきた人たちとはギャップを感じた。目も怖かった。太郎も不安なのか、私のジャンパーの中から出てこようとしなかった。でもそのおかげで、すごく寒かったけど、お腹はあったかかった。中学の先生が状況把握のため点呼をとっていて、太郎をお腹に抱えた様子をちょっと笑われた。
夜、暗い中で何回か余震があって、そのたびに体育館の照明が大きく揺れて、ざわざわした夜だった。
朝になると支援物資が届いた。飲み物はコップがないともらえないと言われて、考えて、ひとり一個もらえるパンの中からサンドイッチ用のパンを選んで、その空き容器で飲み物をもらうことにした。兄はマヨネーズ入りのカロリーの高いロールパンを選んで、とにかく栄養を確保するように2人で食べた。トイレは、プールの水をバケツでくんで流せたので困らなかった。古着も物資で届いたので、パーカーなどの着られそうなものをもらった。わたしたちの隣にいた老夫婦が小さな犬を連れて避難していて、太郎は犬に懐かれていて面白かった。
兄と座っていると、名前を呼ばれた。お母さんとお姉ちゃんが走ってこちらに向かって来ていた。
生きててよかったと抱きしめられた。みんなで��泣した。
お母さんは仕事で内陸にいて、お姉ちゃんもバイトで海からは少し離れたコンビニにいて、津波が来る前に東部道路に避難して助かっていた。2 人は違う小学校で合流できていたようで、わたしたちの地域の人たちが避難している場所を探していてくれたようだった。お母さんが働いていた保育所の休憩室を間借りしていいといわれたらしく、そこに移動することにした。車できたからそれでいこうと外にでると、血の繋がっている方の父がいた( 私の両親は離婚していて、お母さんは再婚して、新しいお父さんがいます)。私は父のことを嫌っていたし、何年も会ってなかったけど、そのときはなぜだかとっても安心して、頭を撫でられて肩を抱かれると泣いてしまった。非常事態だったので、お母さんも連絡をとって食料や布団などをわけてもらったらしい。
車に乗り、保育所に向かう途中、太郎が安心しておしっこをもらした。避難所では粗相をしなかったので、太郎もがんばっていたのだなと思った。
保育所の休憩室は、5畳ないくらいのスペースで小上がりの畳になっていた。畳の上に段ボールを敷いて、布団を敷いて、家族で川の字になって眠った。やっぱり寒くてなかなか寝付けなかったけど、お母さんが抱きしめてくれたおかげで、よく眠れた。
次はお父さんと合流しようと、情報を求めて市役所に向かった。市役所の中に入ると、壁いっぱいに「◯◯に避難しています◯◯みたらここに連絡をください」といったような内容の紙がびっしりと貼られていた。その中には知っている名前も幾つかあって、ああ無事だったのだなと安心したこともあった。お父さんの名前を見つけたけど、けがをしている、というようなことが書いてあったので焦った。とりあえずお父さんがいるという避難所へ向かうと、お父さんは元気そうに出入り口近くの椅子に座っていた。安心したお母さんはへなへなになって笑った。あのときは情報が錯綜していたので、間違ってそう書かれてしまったらしい。すぐに同じ場所にお父さんも移動したかったけど、お父さんは公務員なので被災者の誘導等の仕事があったのですぐには保育所に一緒に戻れなかった。
保育所での生活は体育館にいるときよりずっと過ごしやすかった。狭かったけど、家族がみんないて、人の目を気にしなくていいのはすごく救われた。電気はまだ復旧していなかったけど、水道が使えて嬉しかった。ごはんも、お母さんの仕事仲間の人が炊き出してくれたりして、あたたかいものを食べられた。ずっとお風呂に入れてなかったので気持ち悪くなって一度、水で頭だけ洗ったけど、寒すぎて凍えた。被災してから一週間たたないくらいに、電気が復旧し始めて、近くの家に住んでいたお母さんの職場の人の好意でお風呂に入らせてもらった。久しぶりのお湯はあったかくてきもちよかった。
お店もすこしずつものを売られるようになって、学校もない私と兄と姉はそれぞれ生活に必要なものを行ける範囲で探し回った。持ち出せたお小遣いをもって、とにかくいろんなお店でなにか買えないか歩き回った。個数制限で、ひとり3個までしかものが買えなかったり、なにも残ってなかったり、3時間以上��んだりした。
あるとき、ひとりでお店の列に並んでいると、知らないおじいちゃんに話しかけられた。どこからきたのかなんでひとりなのか聞かれ、答えると「大変だったね」と自分が買ったバナナを分けてくれた。少し泣いてしまった。いろいろなところで食べ物などを買えてうれしかったけど、そのころは物資不足で窃盗や空き巣が多発していたので、ビクビクしながら保育所に帰る道を早歩きでいつも帰っていた。
銀行でお金をおろせるようになり、保育所も再開するので長くはいられないと、アパートを借りることになった。お父さんががんばって見つけてくれた。引越して、いろんな人の好意で家電や家具をもらって、なんとか避難所生活はひとまず終わった。
アパートで炊飯器をつかって炊いた、炊きたてごはんをたべたときはすごくすごくおいしくて、おかずは缶詰の鯖だったけど、何杯もおかわりをした。あのとき食べたごはん以上に美味しいと感じたものは今もない。
アパートで暮らし始めて少しして、携帯の電話番号を覚えていた友達に電話をかけてみた。その子は飼っていたペットたちは犠牲になってしまったけど無事だった。ただ、その子との電話で「Aちゃん残念だったね。」と言われた。Aちゃんは私のすごく仲良しの女の子で、どういうことなのか理解できなかった。
Aちゃんの妹の名前と避難先の書かれたメモを市役所でみていたので、Aちゃんもきっと無事だろうと思っていた。「新聞の犠牲者の欄に名前が載っていた」そう言われて、後の会話は覚えていない。電話の後に新聞を読み返して犠牲者の欄を探したら、Aちゃんの名前を見つけてしまった。新聞に名前が載っている,という証拠のようなものをつきつけられて、一気に怖くなり、悔しくて信じられなくてまた泣いてしまった。
兄もその欄に仲の良かった友達の名前を見つけてしまったようで、リビングのテーブルに突っ伏して、「なんでだよ」とつぶやきながらテーブルを叩いていた。
4月のある日の夜、また大きな地震が起こった。また津波が来るのではないかと家族全員で車に乗り、指定避難所に急いだ。幸い、なにもなかったが、その日の夜は怖くて車から降りられず、朝まで起きていた。
通っていた中学校から一度学生も職員も集まるよう連絡が来た。当日は市の文化会館に集合し、そこからバスで市内の小学校に移動した。久しぶりに同級生と再会して、今どこに住んでいるのか家族は無事だったのかたくさん喋った。そしてみんなが集まった前で先生が、犠牲になった同級生の名前を読み上げた。Aちゃんの名前も呼ばれた。先生の声は震えていて、最後は泣きながら私たちに向かって話していた。7人の友達が死んでしまった。学校全体では、14人の生徒が犠牲になった。
私はすごく後悔していることがある。遺体安置所に行かなかったことだ。市内のボーリング場が安置所になっていて、そこにAちゃんがいることもわかっていたが、怖気づいていけなかった。私とAちゃんともう一人とで三人で仲良くしていて、そのもうひとりの子は会いに行っていた。顔中があざだらけでむくんでいた、と言っていた。お化粧をしてあげたよ���聞いた。私も会いに行けば良かった。
学校は市内の小学校の旧校舎を間借りして再開した。歩いて行ける距離ではなく、駅から毎日臨時のスクールバスが出ていたので、私はそこから毎日学校に通った。文房具や教材は支援物資が届いて、しばらくは制服もなかったので私服登校だった。何週間も字を書いてなかったので、文字が下手くそになっていた。遠くに避難して、転校してしまった子もいたけど毎日家族以外の人とも会えるのは嬉しかった。でも、間借りしていることは肩身が狭かった。間借り先の小学校の子とは話した記憶がない。支援物資や有名人がきた時は「ずるい」、「 そっちばっかり」と言われるようなこともあった。自分は生徒会役員だったため、お礼状や物資管理を手伝っていたけど、千羽鶴や「頑張って!」、「絆」などのメッセージを見るたびに複雑な気持ちになった。無理やり前向きになれと言われているようだった。
学校も落ち着いた頃、同級生の一人のお葬式に参加した。小学校の頃から係活動で仲良くなった子だった。その子はお母さんも亡くなって、その子のお父さんから良かったらきてほしいと連絡があった。とても天気のいい暑い日で、田舎の方の緑がたくさんあるところでお葬式が行われた。久しぶりに会ったKちゃんは小さな箱になっていた。焼かれて骨になって骨壷に入ったKちゃんは、軽くて白かった。お墓にお箸で骨を一つ入れさせてもらった。「ああ、Kちゃんはもういないんだ」と、「こんなに小さくなってるなんて」と、脱力した。
私は夢を見るようになっていた。夢の中で津波から逃げたり、友達と会ったりしていた。その中でも強烈だったのが二つ
ある。一つは、どこかのホテルに友達と泊まりに来ていて、ホテルのベッドで飛び跳ねて遊んでいた。途中までは私も遊んでいたけど、何か変だと感じて、だんだん飛び跳ねている音がうるさくなってきて、「ねえもうやめようよ」と声をかけた。するとその音は「ゴーーーー」という地鳴りの音に変わって、私は耳を塞いでしゃがみこみ、叫んだところで目が覚めた。自分の叫び声で起きた。
もう一つは、なぜか私は小学生で、小学校の帰り道をAちゃんと何人かの友達と歩いていた。夢の中では納得していたけど、不思議なことにみんなでAちゃんのお葬式に行こうとしていた。道の途中で、2本に分かれているけど少し行くとまた繋がる道があり、そこで私はAちゃんをびっくりさせようと「また後でね!」と違う方の道を走って待ち伏せしていた。でも、だんだん不安になって、泣きながらAちゃんを探した。立ち止まっているAちゃんを見つけて、「 行かないで!」と抱きついた、Aちゃんは静かに「なんで私のお葬式があるの?」と、聞いてきた。
そこで目が覚めた。しばらく体は動かず、寝ながら泣いていたようで、頬が涙でカピカピになっていた。
冬になって、12月11日の早朝、お母さんとお姉ちゃんの声で起きた。どうしたのかとリビングに行くと、2人が「お父さん!」と声をかけて、体を揺すっていた。後から聞いた話によると、朝、お姉ちゃんがバイトの支度をしているときに、お父さんから寝息が聞こえず、お母さんに「変じゃない?」と言って、2 人��起こそうとしたようだった。私も声をかけたが起きず、お母さんは「かなこ!( お姉ちゃんの名前) 救急車!」と叫んで、心臓マッサージを始めた。バキバキと骨の折れる音が聞こえた。お父さんの胸はベコベコにされていたが、起きない。私も交代でマッサージをして、救急車を待った。救急車が到着して運ばれる直前、そっとお父さんの足を触った、氷のように冷たくて硬かった。救急車を後ろからお母さんの車で追いかけ、病院についた。ドラマで見たような部屋に運ばれ、看護師に心臓マッサージをされていた。心電図はまっすぐで、「ピー」という音がなっていた。何分間かどれくらい経ったか、マッサージが止まり、瞳孔を見られていた。「すいません」と看護師の方が言い、「ご臨終です」と、初めて聞く言葉を耳にした。病室には「ピー」という音とが響いていた。
みんな無言で家に戻り、お母さんがリビングに座ったところで、「どうして!」と泣き叫んだ。お母さんがそんなに泣いているところを初めて見た。お父さんのことはまだショックでよくわかっていなかったけど、その姿がどうしようもなく悲しくて、お姉ちゃんと抱き合って泣いた。
中学校には、お母さんが色々な手続きで忙しそうだったので、自分で電話をした。担任の先生に繋がり、ほぼ文章になっていなかったけど泣きながら事情を説明した。先生はゆっくり聞いてくれて、学校のことは心配しなくていいよと言ってくれた。
お葬式までの間、斎場でお父さんと過ごした、ドライアイスで冷やされて、冷たかったけど、箱の中にはずっといて、怖くもなかったし、もしかしたら起きるんじゃないかなんて思ったりもした。まあ、当たり前にそんなことはなく、火葬の日がきた。
お父さんが焼かれる場所へ、親族一同で向かった。炉の中へ入れられるとき、もう体さえもなくなってしまうんだと、お父さんに会えなくなるんだと理解した私は一気に悲しくなり、「お父さん」とつぶやいた。涙が止まらなくなり、「行かないでよ」とつぶやいた。お母さんが私の背中をさすった。兄が私の頭に手を添えた。
お父さんは焼かれた。ちゃんとお骨を拾い、壺の中にお父さんは収まった。
お父さんは公民館職員で、そして糖尿病を患っていた。震災の日、公民館は建物が低いので、違う避難場所に誘導している途中で津波が来た。目の前で他の職員が流されるのを見たそうだ。公民館にいた人はギリギリ二階に登り助かったものの、船が建物にぶつかって半壊し、もう少しでみんな死んでしまうところだった。でも、避難途中で犠牲になった人の遺族からすれば、いたら助かったじゃないか! とひどく責められていたらしい。
避難場所でも、公務員はずるい優遇されていると同じ被災者なのに責められ、ストレスで体がおかしくなっていた。持病の糖尿病が悪化し、20キロ体重が増えていた。お母さんから後から聞いた話によると、毎晩のように公民館のグラウンドいっぱいに遺体が並び、こっちに来いと呼ばれる夢を見ていたそうだ。死因は無呼吸からの心肺停止だった。
お父さんは震災に殺された。
お父さんの死と、自分の受験のシーズンが重なり、私は少しおかしくなっていた。受験している場合なのかと悩んで、身が入らなくなっていた。トイレで隠れて手首を切るようなこともあった。今思えば、なにも考えたくなかったからそういうことをしてしまったのかもしれない。様子がおかしいと思われたのか、スクールカウンセラーの先生に、週1回、カウンセリングを受けることになった。行きたくなくてサボった日もあるけど、先生は怒らなかった。優しくいろんな話をしてくれた。友達にも支えられて、なんとかいつも通りに過ごせるようになった。
高校受験もおわり、合格発表の日、私は1人で受験した高校に結果を見に来ていた。無事番号を見つけてお母さんに連絡すると、すぐにメールで返事が帰ってきた。メールが2通届いて、確認してみると、もう1通はお父さんの携帯からだった。「合格おめでとう!」と、本当にお父さんからきたかと思って嬉しかった。すぐにお母さんがお父さんの携帯で送ってくれたのだろうと気づいたけどとっても嬉しかった。
高校では美術科に在籍していたため、常にコンペに向けて制作をしていた。一度だけ、Aちゃんを描いたことがあったけど、周りには誰ということはなにも言わずにただ描いた。それっきり震災関連で制作をすることはなかった。
高校生活の中で辛かった授業がある。保健体育の授業だ。心肺蘇生の心臓マッサージを学ぶ授業の時は、お父さんの感触を思い出して辛かった。避難について学ぶ授業では、ふざけた男子生徒が、避難のシミュレーションを発表するときに「津波だー!」とヘラヘラしながら津波のモノマネをしていて腹がたった。そういう授業があった日は、その日1日は震災のことなどで頭がいっぱいになり、帰ってからいつもお母さんやお姉ちゃんに慰めてもらった。
そして何度か震災復興のためのアートプロジェクトに参加した。被災者として何かしなければと義務感に駆られて、割と積極的に参加した。でも、いつも心の隅には、こんなことをしてなにになるのだと皮肉な自分もいた。震災の時のことを公演してくれ、文章にしてくれ、という依頼は全て断った。語ったりはしたくなかった。
高校の卒業制作展で、ゲストを迎えたパネルディスカッションを行った。ゲストは有名な大学の先生で、私は卒展の実行委員長としてトークをした。その中で、「地域復興」の話題を担当し、いろいろなことを話したけど、「私もゆくゆくは自分の地域をなにかしら盛り上げたい」と口にした後は「本当にそう思っているのか?」と、苦しい気持ちになった。立派なことを言わなければ、というプレッシャーがあった。
いつも3月11日は家で家族と過ごすようにしていたけど、2015年のその日は、震災以来初めて閖上にいた。
京都に引っ越す前にみんなに挨拶がしたいと思ったからだ。お花を持って友達と待ち合わせをして、久しぶりに来た日和山は、前はみんなで鬼ごっこをして遊んだ場所だったけど、今は慰霊の場所になっていて、上から街を見渡すと、何にもなかった。まっさらでたまに草が伸びている、そんな景色だった。
中学校に移動して、2時46分を待った。鳩の形の風船が配られて、メッセージを書いた。「行って来ます。」と。そして2時46分、みんなで風船を飛ばした。
でもその瞬間はひどいものだった。多くの人がスマホを構えて、風船を飛ばす瞬間を撮っていた。カメラの音がたくさん聞こえて悲しくなった。なんのためにやっていることなのか、気持ち悪かった。一緒に来ていた友達も怒っていた。イベントじゃないんだ、と叫びたかった。
京造に進学してからは、震災の話題に触れることは少なくなった。し、自分でも避けるようになった。
宮城出身です、というと大体「震災大変だったでしょ?」と言われた。「そうですね」と正直に言うと、気まずそうな申し訳なさそうな対応をされた。それが嫌で、出身は言いづらくなって、「震災大変だったでしょ?」と言われても、「大丈夫でしたよ」と言うようにした。一回生の授業である先生が、どんな内容で言ったのかは忘れてしまったけど、「津波はあっけなく人を殺すからね〜。」と、さらっと言ったことがあった。私はショックで涙がとまらなくなった。俯いて、寝てるふりをした。周りの子にはバレていたかもしれない。その日はずっと気分が上がらず、帰ってからお母さんに電話をした。当時一緒に住んでいたルームメイトに抱きしめてもらった。
二回生の時は、授業中に阪神淡路大震災の映像が流されて、震災の時の記憶がフラッシュバックしたこともあった。イヤホンをつけて目をつぶってやり過ごして、大階段を登ってすぐ横の芝生のベンチで家族に片っ端から電話をかけた。午前中でなかなか繋がらず、体育すわりをしながらずっと待っていた。お姉ちゃんとつながって、落ち着かせてもらって、その日は授業があったけど、一度家に帰った。夜は眠れなかった。
7年経った今でも、津波の映像や写真は見ることができない。彷彿とさせるようなものも苦手だ。3月はいつものように睡眠を取ることもできなくなる。11 日は家族と実家で過ごすようにしている。閖上の方向を向いて必ず黙祷をして、黙祷している時は、悲しい、悔しい、いろんな感情が混ざったように涙が出る。
私はずっと震災に潰されている。それが、とても嫌だ。
——
でも、このままでいるのはもっと嫌だ!
だから私は向き合うことにした。
制作をはじめると同時にひまわりの種を植えた。ひまわりは、お父さんの1番好きな花だったから。
だけど、ひまわりは咲かずに途中で枯れてしまった。
私にはもう少し、時間が必要なようだ。
もうすぐ、8年目の3月11日がくる。
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kurihara-yumeko · 4 years ago
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【小説】The day I say good-bye(4/4) 【再録】
 (3/4)はこちらから→(https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/648720756262502400/)
 今思えば、ひーちゃんが僕のついた嘘の数々を、本気で信じていたとは思えない。
 何度も何度も嘘を重ねた僕を、見抜いていたに違いない。
「きゃああああああああああああーっ!」
 絶叫、された。
 耳がぶっ飛ぶかと思った。
 長い髪はくるくると幾重にもカーブしていた。レースと玩具の宝石であしらわれたカチューシャがまるでティアラのように僕の頭の上に鎮座している。桃色の膨らんだスカートの下には白いフリルが四段。半袖から剥き出しの腕が少し寒い。スカートの中もすーすーしてなんだか落ち着かない。初めて穿いた黒いタイツの感触も気持ちが悪い。よく見れば靴にまでリボンが付いている。
 鏡に映った僕は、どう見てもただの女の子だった。
「やっだー、やだやだやだやだ、どうしよー。――くんめっちゃ女装似合うね!」
 クラス委員長の長篠めいこさん(彼女がそういう名前であることはついさっき知った)は、女装させられた僕を明らかに尋常じゃない目で見つめている。彼女が僕にウィッグを被らせ、お手製のメイド服を着せた本人だというのに、僕の女装姿に瞳を爛々と輝かせている。
「準備の時に一度も来てくれないから、衣装合わせができなくてどうなるかと思っていたけど、サイズぴったりだね、良かった。――くんは華奢だし細いし顔小さいしむさくるしくないし、女装したところでノープロブレムだと思っていたけれど、これは予想以上だったよっ」
 準備の際に僕が一度も教室を訪れなかっ���のは、連日、保健室で帆高の課題を手伝わされていたからだ。だけれどそれは口実で、本当はクラスの準備に参加したくなかったというのが本音。こんなふざけた企画、携わりたくもない。
 僕が何を考えているかを知る由もない長篠さんは、両手を胸の前で合わせ、真ん丸な眼鏡のレンズ越しに僕を見つめている。レーザー光線のような視線だ。見つめられ続けていると焼け焦げてしまいそうになる。助けを求めて周囲をすばやく見渡したが、クラスメイトのほぼ全員がコスチュームに着替え終わっている僕の教室には、むさくるしい男のメイドか、ただのスーツといっても過言ではない燕尾服を着た女の執事しか見当たらない。
「すね毛を剃ってもらう時間はなかったので、急遽、脚を隠すために黒タイツを用意したのも正解だったね。このほっそい脚がさらに際立つというか。うんうん、いい感じだねっ!」
 長篠さん自身、黒いスーツを身に纏っている。彼女こそが、今年の文化祭でのうちのクラスの出し物、「男女逆転メイド・執事喫茶」の発案者であり、責任者だ。こんなふざけた企画をよくも通してくれたな、と怨念を込めてにらみつけてみたけれど、彼女は僕の表情に気付いていないのかにこにこと笑顔だ。
「ねぇねぇ、――くん、せっかくだし、お化粧もしちゃう? ネイルもする? 髪の毛もっと巻いてあげようか? あたし、――くんだったらもっと可愛くなれるんじゃないかなって思うんだけど」
 僕の全身を舐め回すように見つめる長篠さんはもはや正気とは思えない。だんだんこの人が恐ろしくなってきた。
「めいこ、その辺にしておきな」
 僕が何も言わないでいると、思わぬ方向から声がかかった。
 振り向くと僕の後ろには、��身の女子が立っていた。男子に負けないほど背の高い彼女は、教室の中でもよく目立つ。クラスメイトの顔と名前をろくに記憶していない僕でも、彼女の姿は覚えていた。それは背が高いという理由だけではなく、言葉では上手く説明できない、長短がはっきりしている複雑で奇抜な彼女の髪型のせいでもある。
 背が決して高いとは言えない僕よりも十五センチほど長身の彼女は、紫色を基調としたスーツを身に纏っている。すらっとしていて恰好いい。
「――くん、嫌がってるだろう」
「えー、あたしがせっかく可愛くしてあげようとしてるのにー」
「だったら向こうの野球部の連中を可愛くしてやってくれ。あんなの、気味悪がられて客を逃がすだけだよ」
「えー」
「えー、とか言わない。ほらさっさと行きな。クラス委員長」
 彼女に言われたので仕方なく、という表情で長篠さんが僕の側から離れた。と、思い出したかのように振り向いて僕に言う。
「あ、そうだ、――くん、その腕時計、外してねっ。メイド服には合わないからっ」
 この腕時計の下には、傷跡がある。
 誰にも見せたことがない、傷が。
 それを晒す訳にはいかなかった。僕がそれを無視して長篠さんに背を向けようとした時、側にいた長身の彼女が僕に向かって口を開いた。
「これを使うといいよ」
 そう言って彼女が差し出したのは、布製のリストバンドだった。僕のメイド服の素材と同じ、ピンク色の布で作られ、白いレースと赤いリボンがあしらわれている。
「気を悪くしないでくれ。めいこは悪気がある訳じゃないんだけど……」
 僕の頭の中は真っ白になっていた。突然手渡されたリストバンドに反応ができない。どうして彼女は、僕の手首の傷を隠すための物を用意してくれているんだ? 視界の隅では長篠さんがこちらに背を向けて去って行く。周りにいる珍妙な恰好のクラスメイトたちも、誰もこちらに注意を向けている様子はない。
「一体、どういう……」
 そう言う僕はきっと間抜けな顔をしていたんだろう、彼女はどこか困ったような表情で頭を掻いた。
「なんて言えばいいのかな、その、きみはその傷を負った日のことを、覚えてる?」
 この傷を負った日。
 雨の日の屋上。あーちゃんが死んだ場所。灰色の空。緑色のフェンス。あと一歩踏み出せばあーちゃんと同じところに行ける。その一歩の距離。僕はこの傷を負って、その場所に立ち尽くしていた。
 同じところに傷を負った、ミナモと初めて出会った日だ。
「その日、きみ、保健室に来たでしょ」
 そうだ。僕はその後、保健室へ向かった。ミナモは保健室を抜け出して屋上へ来ていた。そのミナモを探しに来た教師に僕とミナモは発見され、ふたり揃って保健室で傷の手当を受けた。
「その時私は、保健室で熱を測っていたんだ」
 あの時に保健室に他に誰かいたかなんて覚えていない。僕はただ精いっぱいだった。死のうとして死ねなかった。それだけで精いっぱいだったのだ。
 長身の彼女はそう言って、ほんの少しだけ笑った。それは馬鹿にしている訳でもなく、面白がっている訳でもなく、微笑みかけてくれていた。
「だから、きみの手首に傷があることは知ってる。���い傷だったから、痕も残ってるんだろうと思って、用意しておいたんだ」
 私は裁縫があまり得意ではないから、めいこの作ったものに比べるとあまり良い出来ではないけどね。彼女はそう付け足すように言う。
「使うか使わないかは、きみの自由だけど。そのまま腕時計していてもいいと思うしね。めいこは少し、完璧主義すぎるよ。こんな中学生の女装やら男装やらに、完璧さなんて求めてる人なんかいないのにね」
 僕はいつも、自分のことばかりだ。今だって、僕の傷のことを考慮してくれている人間がいるなんて、思わなかった。
 それじゃあ、とこちらに背を向けて去って行こうとする彼女の後ろ姿を、僕は呼び止める。
「うん?」
 彼女は不思議そうな顔をして振り向いた。
「きみの、名前は?」
 僕がそう尋ねると、彼女はまた笑った。
「峠茶屋桜子」
 僕は生まれて初めて、クラスメイトの顔と名前を全員覚えておかなかった自分を恥じた。
    峠茶屋さんが作ってくれたリストバンドは、せっかくなので使わせてもらうことにした。
 それを両手首に装着して保健室へ向かってみると、そこには河野ミナモと河野帆高の姿が既にあった。
「おー、やっと来たか……って、え、ええええええええええええ!?」
 椅子に腰掛け、行儀の悪いことに両足をテーブルに乗せていた帆高は、僕の来訪を視認して片手を挙げかけたところで絶叫しながら椅子から落下した。頭と床がぶつかり合う鈍い音が響く。ベッドのカーテンの隙間から様子を窺うようにこちらを見ていたミナモは、僕の姿を見てから興味なさそうに目線を逸らす。相変わらず無愛想なやつだ。
「な、何、お前のその恰好……」
 床に転がったまま帆高が言う。
「何って……メイド服だけど」
 帆高には、僕のクラスが男女逆転メイド・執事喫茶を文化祭の出し物でやると言っておいたはずだ。僕のメイド服姿が見物だなんだと馬鹿にされたような記憶もある。
「めっちゃ似合ってるじゃん、お前!」
「……」
 不本意だけれど否定できない僕がいる。
「びびる! まじでびびる! お前って実は女の子だった訳!?」
「そんな訳ないだろ」
「ちょっと、スカートの中身、見せ……」
 床に座ったまま僕のメイド服に手を伸ばす帆高の頭に鉄拳をひとつお見舞いした。
 そんな帆高も頭に耳、顔に鼻、尻に尻尾を付けており、どうやら狼男に変装しているようだ。テーブルの上には両手両足に嵌めるのであろう、爪の生えた肉球付きの手袋が置いてある。これぐらいのコスプレだったらどれだけ心穏やかでいられるだろうか。僕は女装するのは人生これで最後にしようと固く誓った。
「そんな恰好で恥ずかしくないの? 親とか友達とか、今日の文化祭に来ない訳?」
「さぁ……来ないと思うけど」
 僕の両親は今日も朝から仕事に行った。そもそも、今日が文化祭だという事実も知っているとは思えない。
 別の中学校に通っている小学校の頃の友人たちとはもう連絡も取り合っていないし、顔も合わせていないので、来るのか来ないのかは知らない。僕以外の誰かと親交があれば来るのかもしれない���、僕には関係のない話だ。
 そう、そのはずだった。だが僕の予想は覆されることになる。
 午前十時に文化祭は開始された。クラス委員長である長篠めいこさんが僕に命じた役割は、クラスの出し物である男女逆転メイド・執事喫茶の宣伝をすることだった。段ボール製のプラカードを掲げて校舎内を循環し、客を呼び込もうという魂胆だ。
 結局、ミナモとは一言も言葉を交わさずに出て来てしまった、と思う。うちの学校の文化祭は一般公開もしている。今日の校内にはいつも以上に人が溢れている。保健室登校のミナモにとっては、つらい一日になるかもしれない。
 お化け屋敷を出し物にしているクラスばかりが並んでいる、我が校の文化祭名物「お化け屋敷ロード」をすれ違う人々に異様な目で見られていることをひしひしと感じながら、プラカードを掲げ、チラシを配りながら歩いていくと、途中で厄介な人物に遭遇した。
「おー、少年じゃん」
 日褄先生だ。
 目の周りを黒く塗った化粧や黒尽くめのその服装はいつも通りだったが、しばらく会わなかった間に、曇り空より白かった頭髪は、あろうことか緑色になっていた。これでスクールカウンセラーの仕事が務まるのだろうか。あまりにも奇抜すぎる。だが咄嗟のことすぎて、驚きのあまり声が出ない。
「ふーん、めいこのやつ、裁縫上手いんじゃん。よくできてる」
 先生は僕の着用しているメイド服のスカートをめくろうとするので、僕はすばやく身をかわして後退した。「変態か!」と叫びたかったが、やはり声にならない。
 助けを求めて周囲に視線を巡らせて、僕は人混みからずば抜けて背の高い男性がこちらに近付いてくるのがわかった。
 前回、図書館の前で出会った時はオールバックであったその髪は、今日はまとめられていない。モスグリーンのワイシャツは第一ボタンが開いていて、おまけにネクタイもしていない。ズボンは腰の位置で派手なベルトで留められている。銀縁眼鏡ではなく、色の薄いサングラスをかけていた。シャツの袖をまくれば恐らくそこには、葵の御紋の刺青があるはずだ。左手の中指に日褄先生とお揃いの指輪をしている彼は、日褄先生の婚約者だ。
「葵さん……」
 僕が名前を呼ぶと、彼は僕のことを睨みつけた。しばらくして、やっと僕のことが誰なのかわかったらしい。少し驚いたように片眉を上げて、口を半分開いたところで、
「…………」
 だが、葵さんは何も言わなかった。
 僕の脇を通り抜けて、日褄先生のところに歩いて行った。すれ違いざまに、葵さんが何か妙なものを小脇に抱えているなぁと思って振り返ってみると、それは大きなピンク色のウサギのぬいぐるみだった。
「お、葵、お帰りー」
 日褄先生がそう声をかけると、葵さんは無言のままぬいぐるみを差し出した。
「なにこのうさちゃん、どうしたの?」
 先生はそれを受け取り、ウサギの頭に顎を置きながらそう訊くと、葵さんは黙って歩いてきた方向を指差した。
「ああ、お化け屋敷の景品?」
 葵さんはそれには答えなかった。そもそも僕は、彼が口を利いたところを見たことがない。それだけ寡黙な人なのだ。彼は再び僕を見ると、それから日褄先生へ目線を送った。ウサギの耳で遊ぶのに夢中になっていた先生はそれに気付いているのかいないのか、
「男女逆転メイド・執事喫茶、やってるんだって」
 と僕の服装の理由を説明した。だが葵さんは眉間の皺を深めただけだった。そしてそのまま、彼は歩き出してしまう。日褄先生はぬいぐるみの耳をぱたぱた手で動かしていて、それを追おうともしない���
「……いいんですか? 葵さん、行っちゃいましたけど……」
「あいつ、文化祭ってものを見たことがないんだよ。ろくに学校行ってなかったから。だから連れて来てみたんだけど、なんだか予想以上にはしゃいじゃってさー」
 葵さんの態度のどこがはしゃいでいるように見えるのか、僕にはわからないが、先生にはわかるのかもしれない。
「あ、そうだ、忘れるところだった、少年のこと、探しててさ」
「何か用ですか?」
「はい、チーズ」
 突然、眩しい光が瞬いた。一体いつ、どこから取り出したのか、先生の手にはインスタントカメラが握られていた。写真を撮られてしまったようだ。メイド服を着て、付け毛を付けている、僕の、女装している写真が……。
「な、ななななななな……」
 何をしているんですか! と声を荒げるつもりが、何も言えなかった。日褄先生は颯爽と踵を返し、「あっはっはっはっはー!」と笑いながら階段を駆け下りて行った。その勢いに、追いかける気も起きない。
 僕はがっくりと肩を落とし、それでもプラカードを掲げながら校内の循環を再開することにした。僕の予想に反して、賑やかな文化祭になりそうな予感がした。
 お化け屋敷ロードの一番端は、河野帆高のクラスだったが、廊下に帆高の姿はなかった。あいつはお化け役だから、教室の中にいるのだろう。
 あれから、帆高はあーちゃんが僕に残したノートについて一言も口にしていない。僕の方から語ることを待っているのだろうか。協力してもらったのだから、いずれきちんと話をするべきなんじゃないかと考えてはいるけれど、今はまだ上手く、僕も言葉にできる自信がない。
 廊下の端の階段を降りると、そこは射的ゲームをやっているクラスの前だった。何やら歓声が上がっているので中の様子を窺うと、葵さんが次々と景品を落としているところだった。大人の本気ってこわい。
 中央階段の前の教室では、自主製作映画の上映が行われているようだった。「戦え!パイナップルマン」というタイトルの、なんとも言えないシュールな映画ポスターが廊下には貼られている。地球侵略にやってきたタコ星人ヲクトパスから地球を救うために、八百屋の片隅で売れ残っていた廃棄寸前のパイナップルが立ち上がる……ポスターに記されていた映画のあらすじをそこまで読んでやめた。
 ちょうど映画の上映が終わったところらしい、教室からはわらわらと人が出てくる。僕は歩き出そうとして、そこに見知った顔を見つけてしまった。
 色素の薄い髪。切れ長の瞳と、ひょろりとした体躯。物静かな印象を与え��彼は、
「あっくん……」
「うー兄じゃないですか」
 妙に大人びた声音。口元の端だけを僅かに上げた、作り笑いに限りなく似た笑顔。
 鈴木篤人くんは、僕よりひとつ年下の、あーちゃんの弟だ。
「一瞬、誰だかわかりませんでしたよ。まるで女の子だ」
「……来てたんだ、うちの文化祭」
 私立の中学校に通うあっくんが、うちの中学の文化祭に来たという話は聞いたことがない。それもそのはずだ。この学校で、彼の兄は飛び降り自殺したのだから。
「たまたま今日は部活がなかったので。ちょっと遊びに来ただけですよ」
 柔和な笑みを浮かべてそう言う。だけれどその笑みは、どこか嘘っぽく見えてしまう。
「うー兄は、どうして女装を?」
「えっと、男女逆転メイド・執事喫茶っていうの、クラスでやってて……」
 僕は掲げていたプラカードを指してそう説明すると、ふうん、とあっくんは頷いた。
「それじゃあ、最後にうー兄のクラスを見てから帰ろうかな」
「あ、もう帰るの?」
「本当は、もう少しゆっくり見て行くつもりだったんですが……」
 彼はどこか困ったような表情をして、頭を掻いた。
「どうも、そういう訳にはいかないんです」
「何か、急用?」
「まぁ、そんなもんですかね。会いたくない人が――」
 あっくんはそう言った時、その双眸を僅かに細めたのだった。
「――会いたくない人が、ここに来ているみたいなので」
「そう……なんだ」
「だからすみません、今日はそろそろ失礼します」
「ああ、うん」
「うー兄、頑張って下さい」
「ありがとう」
 浅くもなく深くもない角度で頭を下げてから、あっくんは人混みの中に消えるように歩き出して行った。
 友人も知人も少ない僕は、誰にも会わないだろうと思っていたけれど、やっぱり文化祭となるとそうは言っていられないみたいだ。こうもいろんな人に自分の女装姿を見られると、恥ずかしくて死にたくなる。穴があったら入りたいとはまさにこのことなんじゃないだろうか。
 教室で来客の応対をしたりお菓子やお茶の用意をすることに比べたらずっと楽だが、こうやって校舎を循環しているのもなかなかに飽きてきた。保健室でずる休みでもしようか。あそこには恐らく、ミナモもいるはずだから。
 そうやって僕も歩き出し、保健室へ続く廊下を歩いていると、僕は突然、頭をかち割われたような衝撃に襲われた。そう、それは突然だった。彼女は唐突に、僕の前に現れたのだ。
 嘘だろ。
 目が、耳が、口が、心臓が、身体が、脳が、精神が、凍りつく。
 耳鳴り、頭痛、動悸、震え。
 揺らぐ。視界も、思考も。
 僕はやっと気付いた。あっくんが言う、「会いたくない人」の意味を。
 あっくんは彼女がここに来ていることを知っていた。だから会いたくなかったのだ。
 でもそんなはずはない。世界が僕を置いて行ったように、きみもそこに置いて行かれたはずだ。僕のついた不器用な嘘のせいで、あの春の日に閉じ込められたはずだ。きみの時間は、止まったはずだ。
 言ったじゃないか、待つって。ずっと待つんだって。
 もう二度と帰って来ない人を。
 僕らの最愛の、あーちゃんを。
「あれー、うーくんだー」
 へらへらと、彼女は笑った。
「なにその恰好、女の子みたいだ���」
 楽しそうに、愉快そうに、面白そうに。
 あーちゃんが生きていた頃は、一度だってそんな風に笑わなかったくせに。
 色白の肌。華奢で小柄な体躯。相手を拒絶するかのように吊り上がった猫目。伸びた髪。身に着けている服は、制服ではなかった。
 でもそうだ。
 僕はわかっていたはずだ。日褄先生は僕に告げた。ひーちゃんが、学校に来るようになると。いつかこんな日が来ると。彼女が、世界に追いつく日がやって来ると。
 僕だけが、置いて行かれる日が来ることを。
「久しぶりだね、うーくん」
「……久しぶり、ひーちゃん」
 僕は、ちっとも笑えなかった。あーちゃんが生きていた頃は、ちゃんと笑えていたのに。
 市野谷比比子はそんな僕を見て、満面の笑みをその顔に浮かべた。
   「……だんじょぎゃくてん、めいど……しつじきっさ…………?」
 たどたどしい口調で、ひーちゃんは僕が持っていたプラカードの文字を読み上げる。
「えっとー、男女が逆だから、うーくんが女の子の恰好で、女の子が男の子の恰好をしてるんだね」
 そう言いながら、ひーちゃんはプラスチック製のフォークで福神漬けをぶすぶすと刺すと、はい、と僕に向かって差し出してくる。
「これ嫌い、うーくんにあげる」
「どうも」
 僕はいつから彼女の嫌いな物処理係になったのだろう、と思いながら渡されたフォークを受け取り、素直に福神漬けを咀嚼する。
「でもうーくん、女装似合うね」
「それ、あんまり嬉しくないから」
 僕とひーちゃんは向き合って座っていた。ひーちゃんに会ったのは、僕が彼女の家を訪ねた夏休み以来だ。彼女はあれから特に変わっていないように見える。着ている服は今日も黒一色だ。彼女は、最愛の弟、ろーくんが死んだあの日から、ずっと黒い服を着ている。
 僕らがいるのは新校舎二階の一年二組の教室だ。PTAの皆さまが営んでいるカレー屋である。この文化祭で調理が認められているのは、大人か、調理部の連中だけだ。午後になり、生徒も父兄も体育館で行われている軽音部やら合唱部やらのコンサートを観に行ってしまっているので、校舎に残る人は少ない。店じまいしかけているカレー屋コーナーで、僕たちは遅めの昼食を摂っていた。僕は未だに、メイド服を着たままだ。
 ひーちゃんとカレーライスを食べている。なんだか不思議な感覚だ。ひーちゃんがこの学校にいるということ自体が、不思議なのかもしれない。彼女は入学してからただの一度も、この学校の門をくぐったことがなかったのだ。
 どうしてひーちゃんは、ここにいるんだろう。ひーちゃんにとって、ここは、もう終わってしまった場所のはずなのに。ここだけじゃない。世界じゅうが、彼女の世界ではなくなってしまったはずなのに。あーちゃんのいない世界なんて、無に等しいはずなのに。なのにひーちゃんは、僕の目の前にいて、美味しそうにカレーを食べている。
 ときどき、僕の方を見て、話す。笑う。おかしい。だってひーちゃんの両目は、いつもどこか遠くを見ていたはずなのに。ここじゃないどこかを夢見ていたのに。
 いつかこうなることは、わかっていた。永遠なんて存在しない。不変なんてありえない。世界が僕を置いて行ったように、いずれはひーちゃんも動き出す。僕はずっとそうわかっていたはずだ。僕が今までについた嘘を全部否定して、ひーちゃんが再び、この世界で生きようとする日が来ることを。
 思い知らされる。
 あの日から僕がひーちゃんにつき続けた嘘は、あーちゃんは本当は生きていて、今はどこか遠くにいるだけだと言ったあの嘘は、何ひとつ価値なんてなかったということを。僕という存在がひーちゃんにとって、何ひとつ価値がなかったということを。わかっていたはずだ。ひーちゃんにとっては僕ではなくて、あーちゃんが必要なんだということを。あーちゃんとひーちゃんと僕で、三角形だったなんて大嘘だ。僕は最初から、そんな立ち位置に立てていなかった。全てはそう思いたかった僕のエゴだ。三角形であってほしいと願っていただけだ。
 そうだ。
 本当はずっと、僕はあーちゃんが妬ましかったのだ。
「カレー食べ終わったら、どうする? 少し、校内を見て行く?」
 僕がそう尋ねると、ひーちゃんは首を左右に振った。
「今日は先生たちには内緒で来ちゃったから、面倒なことになる前に帰るよ」
「あ、そうなんだ……」
「来年は『僕』も、そっち側で参加できるかなぁ」
「そっち側?」
「文化祭、やれるかなぁっていうこと」
 ひーちゃんは、楽しそうな笑顔だ。
 楽しそうな未来を、思い描いている表情。
「……そのうち、学校に来るようになるんだって?」
「なんだー、あいつ、ばらしちゃったの? せっかく驚かせようと思ったのに」
 あいつ、とは日褄先生のことだろう。ひーちゃんは日褄先生のことを語る時、いつも少し不機嫌になる。
「……大丈夫なの?」
「うん? 何が?」
 僕の問いに、ひーちゃんはきょとんとした表情をした。僕はなんでもない、と言って、カレーを食べ続ける。
 ねぇ、ひーちゃん。
 ひーちゃんは、あーちゃんがいなくても、もう大丈夫なの?
 訊けなかった言葉は、ジャガイモと一緒に飲み込んだ。
「ねぇ、うーくん、」
 ひーちゃんは僕のことを呼んだ。
 うーくん。
 それは、あーちゃんとひーちゃんだけが呼ぶ、僕のあ���名。
 黒い瞳が僕を見上げている。
 彼女の唇から、いとも簡単に嘘のような言葉が零れ落ちた。
「あーちゃんは、もういないんだよ」
「…………え?」
 僕は耳を疑って、訊き返した。
「今、ひーちゃん、なんて……」
「だから早く、帰ってきてくれるといいね、あーちゃん」
 そう言ってひーちゃんは、にっこり笑った。まるで何事もなかったみたいに。
 あーちゃんの死なんて、あーちゃんの存在なんて、最初から何もなかったみたいに。
 僕はそんなひーちゃんが怖くて、何も言わずにカレーを食べた。
「あーちゃん」こと鈴木直正が死んだ後、「ひーちゃん」こと市野谷比比子は生きる気力を失くしていた。だから「うーくん」こと僕、――――は、ひーちゃんにひとつ嘘をついた。
 あーちゃんは生きている。今はどこか遠くにいるけれど、必ず彼は帰ってくる、と。
 カレーを食べ終えたひーちゃんは、帰ると言うので僕は彼女を昇降口まで見送ることにした。
 二人で廊下を歩いていると、ふと、ひーちゃんの目線は窓の外へと向けられる。目線の先を追えば、そこには旧校舎の屋上が見える。そう、あーちゃんが飛び降りた、屋上が見える。
「ねぇ、どうしてあーちゃんは、空を飛んだの?」
 ひーちゃんは虚ろな瞳で窓から空を見上げてそう言った。
「なんであーちゃんはいなくなったの? ずっと待ってたのに、どうして帰って来ないの? ずっと待ってるって約束したのに、どうして? 違うね、約束したんじゃない、『僕』が勝手に決めたんだ。あーちゃんがいなくなってから、そう決めた。あーちゃんが帰って来るのを、ずっと待つって。待っていたら、必ず帰って来てくれるって。あーちゃんは昔からそうだったもんね。『僕』がひとりで泣いていたら、必ずどこか��かやって来て、『僕』のこと慰めてくれた。だから今度も待つって決めた。だってあーちゃんが、帰って来ない訳ないもん。『僕』のことひとりぼっちにするはずないもん。そんなの、許せないよ」
 僕には答える術がない。
 幼稚な嘘はもう使えない。手持ちのカードは全て使い切られた。
 ひーちゃんは、もうずっと前から気付いていたはずだ。あーちゃんはもう、この世界にいないなんだって。僕のついた嘘が、とても稚拙で下らないものだったんだって。
「嘘つきだよ、皆、嘘つきだよ。ろーくんも、あーちゃんも、嘘つき。嘘つき嘘つき嘘つき。うーくんだって、嘘つき」
 ひーちゃんの言葉が、僕の心を突き刺していく。
 でも僕は逃げられない。だってこれは、僕が招いた結果なのだから。
「皆大嫌い」
 ひーちゃんが正面から僕に向かい合った。それがまるで決別の印であるとでも言うかのように。
 ちきちきちきちきちきちきちきちき。
 耳慣れた音が聞こえる。
 僕の左手首の内側、その傷を作った原因の音がする。
 ひーちゃんの右手はポケットの中。物騒なものを持ち歩いているんだな、ひーちゃん。
「嘘つき」
 ひーちゃんの瞳。ひーちゃんの唇。ひーちゃんの眉間に刻まれた皺。
 僕は思い出す。小学校の裏にあった畑。夏休みの水やり当番。あの時話しかけてきた担任にひーちゃんが向けた、殺意に満ちたあの顔。今目の前にいる彼女の表情は、その時によく似ている。
「うーくんの嘘つき」
 殺意。
「帰って来るって言ったくせに」
 殺意。
「あーちゃんは、帰って来るって言ったくせに!」
 嘘つきなのは、どっちだよ。
「ひーちゃんだって、気付いていたくせに」
 僕の嘘に気付いていたくせに。
 あーちゃんは死んだってわかっていたくせに。
 僕の嘘を信じたようなふりをして、部屋に引きこもって、それなのにこうやって、学校へ来ようとしているくせに。世界に馴染もうとしているくせに。あーちゃんが死んだ世界がもう終わってしまった代物だとわかっているのに、それでも生きようとしているくせに。
 ひーちゃんは、もう僕の言葉にたじろいだりしなかった。
「あんたなんか、死んじゃえ」
 彼女はポケットからカッターナイフを取り出すと、それを、
      鈍い衝撃が身体じゅうに走った。
 右肩と頭に痛みが走って、無意識に呻いた。僕は昇降口の床に叩きつけられていた。思い切り横から突き飛ばされたのだ。揺れる視界のまま僕は上半身を起こし、そして事態はもう間に合わないのだと知る。
 僕はよかった。
 怪我を負ってもよかった。刺されてもよかった。切りつけられてもよかった。殺されたって構わない。
 だってそれが、僕がひーちゃんにできる最後の救いだと、本気で思っていたからだ。
 僕はひーちゃんに嘘をついた。あーちゃんは生きていると嘘をついた。ついてはいけない嘘だった。その嘘を、彼女がどれくらい本気で信じていたのか、もしくはどれくらい本気で信じたふりを演じていてくれていたのかはわからない。でも僕は、彼女を傷つけた。だからその報いを受けたってよかった。どうなってもよかったんだ。だってもう、どうなったところで、あーちゃんは生き返ったりしないのだから。
 だけど、きみはだめだ。
 どうして僕を救おうとする。どうして、僕に構おうとする。放っておいてくれとあれだけ示したのに、どうして。僕はきみをあんなに傷つけたのに。どうしてきみはここにいるんだ。どうして僕を、かばったんだ。
 ひーちゃんの握るカッターナイフの切っ先が、ためらうことなく彼女を切り裂いた。
 ���ンク色の髪留めが、宙に放られるその軌跡を僕の目は追っていた。
「佐渡さん!」
 僕の叫びが、まるで僕のものじゃないみたいに響く。周りには不気味なくらい誰もいない。
 市野谷比比子に切りつけられた佐渡梓は、床に倒れ込んでいく。それがスローモーションのように僕の目にはまざまざと映る。飛び散る赤い飛沫が床に舞う。
 僕は起き上がり走った。ひーちゃんの虚ろな目。再度振り上げられた右手。それが再び佐渡梓を傷つける前に、僕は両手を広げ彼女をかばった。
「    」
 一瞬の空白。ひーちゃんの唇が僅かに動いたのを僕は見た。その小さな声が僕の耳に届くよりも速く、刃は僕の右肩に突き刺さる。
 痛み。
 背後で佐渡梓の悲鳴。けれどひーちゃんは止まらない。僕の肩に突き刺さったカッターを抜くと彼女はそれをまた振り上げて、
  そうだよな。
 痛かったよな。
 あーちゃんは、ひーちゃんの全部だったのに。
 あーちゃんが生きているなんて嘘ついて、ごめん。
 そして振り下ろされた。
  だん、と。
 地面が割れるような音がした。
  一瞬、地震が起こったのかと思った。
 不意に目の前が真っ暗になり、何かが宙を舞った。少し離れたところで、からんと金属のものが床に落ちたような高い音が聞こえる。
 僕とひーちゃんの間に割り込んできたのは、黒衣の人物だった。ひーちゃんと同じ、全身真っ黒で整えられた服装。ただしその頭髪だけが、毒々しいまでの緑色に揺れている。
「…………日褄先生」
 僕がやっとの思いで絞り出すようにそれだけ言うと、彼女は僕に背中を向けてひーちゃんと向き合ったまま、
「せんせーって呼ぶなっつってんだろ」
 といつも通りの返事をした。
「ひとりで学校に来れたなんて、たいしたもんじゃねぇか」
 日褄先生はひーちゃんに向けてそう言ったが、彼女は相変わらず無表情だった。
 がらんどうの瞳。がらんどうの表情。がらんどうの心。がらんどうのひーちゃんは、いつもは嫌がる大嫌いな日褄先生を目の前にしても微動だにしない。
「なんで人を傷つけるようなことをしたんだよ」
 先生の声は、いつになく静かだった。僕は先生が今どんな表情をしているのかはわからないけれど、それは淡々とした声音だ。
「もう誰かを失いたくないはずだろ」
 廊下の向こうから誰かがやって来る。背の高いその男性は、葵さんだった。彼はひーちゃんの少し後ろに落ちているカッターナイフを無言で拾い上げている。それはさっきまで、ひーちゃんの手の中にあったはずのものだ。どうしてそんなところに落ちているのだろう。
 少し前の記憶を巻き戻してみて、僕はようやく、日褄先生が僕とひーちゃんの間に割り込んだ時、それを鮮やかに蹴り上げてひーちゃんの手から吹っ飛ばしたことに気が付いた。日褄先生、一体何者なんだ。
 葵さんはカッターナイフの刃を仕舞うと、それをズボンのポケットの中へと仕舞い、それからひーちゃんに後ろから歩み寄ると、その両肩を掴んで、もう彼女が暴れることができないようにした。そうされてもひーちゃんは、もう何も言葉を発さず、表情も変えなかった。先程見せたあの強い殺意も、今は嘘みたいに消えている。
 それから日褄先生は僕を振り返り、その表情が僕の思っていた以上に怒りに満ちたものであることを僕の目が視認したその瞬間、頬に鉄拳が飛んできた。
 ごっ、という音が自分の顔から聞こえた。骨でも折れたんじゃないかと思った。今まで受けたどんな痛みより、それが一番痛かった。
「てめーは何ぼんやり突っ立ってんだよ」
 日褄先生は僕のメイド服の胸倉を乱暴に掴むと怒鳴るように言った。
「お前は何をしてんだよ、市野谷に殺されたがってんじゃねーよ。やべぇと思ったらさっさと逃げろ、なんでそれぐらいのこともできねーんだよ」
 先生は僕をまっすぐに見ていた。それは恐ろしいくらい、まっすぐな瞳だった。
「なんでどいつもこいつも、自分の命が大事にできねーんだよ。お前わかってんのかよ、お前が死んだら市野谷はどうなる? 自分の弟を目の前で亡くして、大事な直正が自殺して、それでお前が市野谷に殺されたら、こいつはどうなるんだよ」
「……ひーちゃんには、僕じゃ駄目なんですよ。あーちゃんじゃないと、駄目なんです」
 僕がやっとの思いでそれだけ言うと、今度は平手が反対の頬に飛んできた。
 熱い。痛いというよりも、熱い。
「直正が死んでも世界は変わらなかった。世界にとっちゃ人ひとりの死なんてたいしたことねぇ、だから自分なんて世界にとってちっぽけで取るに足らない、お前はそう思ってるのかもしれないが、でもな、それでもお前が世界の一部であることには変わりないんだよ」
 怒鳴る、怒鳴る、怒鳴る。
 先生は僕のことを怒鳴った。
 こんな風に叱られるのは初めてだ。
 こんな風に、叱ってくれる人は初めてだった。
「なんでお前は市野谷に、直正は生きてるって嘘をついた? 市野谷がわかりきっているはずの嘘をどうしてつき続けた? それはなんのためだよ? どうして最後まで、市野谷がちゃんと笑えるようになるまで、側で支えてやろうって思わないんだよ」
 そうだ。
 そうだった。日褄先生は最初からそうだった。
 優しくて、恐ろしいくらい乱暴なのだ。
「市野谷に殺されてもいい、自分なんて死んでもいいなんて思ってるんじゃねぇよ。『お前だから駄目』なんじゃねぇよ、『直正の代わりをしようとしているお前だから』駄目なんだろ?」
 日褄先生は最後に怒鳴った。
「もういい加減、鈴木直正の代わりになろうとするのはやめろよ。お前は―――だろ」
  お前は、潤崎颯だろ。
  やっと。
 やっと僕は、自分の名前が、聞き取れた。
 あーちゃんが死んで、ひーちゃんに嘘をついた。
 それ以来僕はずっと、自分の名前を認めることができなかった。
 自分の名前を口にするのも、耳にするのも嫌だった。
 僕は代わりになりたかったから。あーちゃんの代わりになりたかったから。
 あーちゃんが死んだら、ひーちゃんは僕を見てくれると、そう思っていたから。
 でも駄目だった。僕じゃ駄目だった。ひーちゃんはあーちゃんが死んでも、あーちゃんのことばかり見ていた。僕はあーちゃんになれなかった。だから僕なんかいらなかった。死んだってよかった。どうだってよかったんだ。
 嘘まみれでずたずたで、もうどうしようもないけれど、それでもそれが、「僕」だった。
 あーちゃんになれなくても、ひーちゃんを上手に救えなくても、それでも僕は、それでもそれが、潤崎颯、僕だった。
 日褄先生の手が、僕の服から離れていく。床に倒れている佐渡梓は、どこか呆然と僕たちを見つめている。ひーちゃんの表情はうつろなままで、彼女の肩を後ろから掴んでいる葵さんは、まるでひーちゃんのことを支えているように見えた。
 先生はひーちゃんの元へ行き、葵さんはひーちゃんからゆっくりと手を離す。そうして、先生はひーちゃんのことを抱き締めた。先生は何も言わなかった。ひーちゃんも、何も言わなかった。葵さんは無言で昇降口から出て行って、しばらくしてから帰ってきた。その時も、先生はひーちゃんを抱き締めたままで、僕はそこに突っ立っていたままだった。
 やがて日褄先生はひーちゃんの肩を抱くようにして、昇降口の方へと歩き出す。葵さんは昇降口前まで車を回していたようだ。いつか見た、黒い車が停まっていた。
 待って下さい、と僕は言った。
 日褄先生は立ち止まった。ひーちゃんも、立ち止まる。
 僕はひーちゃんに駆け寄った。
 ひーちゃんは無表情だった。
 僕は、ひーちゃんに謝るつもりだった。だけど言葉は出て来なかった。喉元まで込み上げた言葉は声にならず、口から嗚咽となって溢れた。僕の目からは涙がいくつも零れて、そしてその時、ひーちゃんが小さく、ごめんね、とつぶやくように言った。僕は声にならない声をいくつもあげながら、ただただ、泣いた。
 ひーちゃんの空っぽな瞳からも、一粒の滴が転がり落ちて、あーちゃんの死から一年以上経ってやっと、僕とひーちゃんは一緒に泣くことができたのだった。
    ひーちゃんに刺された傷は、軽傷で済んだ。
 けれど僕は、二週間ほど学校を休んだ。
「災難でしたね」
 あっくん、あーちゃんの弟である鈴木篤人くんは、僕の部屋を見舞いに訪れて、そう言った。
「聞きましたよ、文化祭で、ひー姉に切りつけられたんでしょう?」
 あーちゃんそっくりの表情で、あっくんはそう言った。
「とうとうばれたんですか、うー兄のついていた嘘は」
「……最初から、ばれていたようなものだよ」
 あーちゃんとよく似ている彼は、その日、制服姿だった。部活の帰りなのだろう、大きなエナメルバッグを肩から提げていて、手にはコンビニの袋を握っている。
「それで良かったんですよ。うー兄にとっても、ひー姉にとっても」
 あっくんは僕の部屋、椅子に腰かけている。その両足をぷらぷらと揺らしていた。
「兄貴のことなんか、もう忘れていいんです。あんなやつのことなんて」
 あっくんの両目が、すっと細められる。端正な顔立ちが、僅かに歪む。
 思い出すのは、あーちゃんの葬式の時のこと。
 式の最中、あっくんは外へ斎場の外へ出て行った。外のベンチにひとりで座っていた。どこかいらいらした様子で、追いかけて行った僕のことを見た。
「あいつ、不器用なんだ」
 あっくんは不満そうな声音でそう言った。あいつとは誰だろうかと一瞬思ったけれど、すぐにそれが死んだあーちゃんのことだと思い至った。
「自殺の原因も、昔のいじめなんだって。ココロノキズがいけないんだって。せーしんかのセンセー、そう言ってた。あいつもイショに、そう書いてた」
 あーちゃんが死んだ時、あっくんは小学五年生だった。今のような話し方ではなかった。彼はごく普通の男の子だった。あっくんが変わったのは、あっくんがあーちゃんのように振る舞い始めたのは、あーちゃんが死んでからだ。
「あいつ、全然悪くないのに、傷つくから駄目なんだ。だから弱くて、いじめられるんだ。おれはあいつより強くなるよ。あいつの分まで生きる。人のこといじめたりとか、絶対にしない」
 あっくんは、一度も僕と目を合わさずにそう言った。僕はあーちゃんの弱さと、あっくんの強さを思った。不機嫌そうに、「あーちゃんの分まで生きる」と言った、彼の強さを思った。あっくんのような強さがあればいいのに、と思った。ひーちゃんにも、強く生きてほしかった。僕も、そう生きるべきだった。
 あーちゃんが死んだ後、あーちゃんの家族はいつも騒がしそうだった。たくさんの人が入れ替わり立ち替わりやって来ては帰って行った。ときどき見かけるあっくんは、いつも機嫌が悪そうだった。あっくんはいつも怒っていた。あっくんただひとりが、あーちゃんの死を、怒っていた。
「――あんなやつのことを覚えているのは、僕だけで十分です」
 あっくんはそう言って、どうしようもなさそうに、笑った。
 あっくんも、僕と同じだった。
 あーちゃんの代わりになろうとしていた。
 ただそれは、ひーちゃんのためではなく、彼の両親のためだった。
 あーちゃんが死んだ中学校には通わせられないという両親の期待に応えるために、あっくんは猛勉強をして私立の中学に合格した。
 けれど悲しいことに両親は、それを心から喜びはしなかった。今のあっくんを見ていると、死んだあーちゃんを思い出すからだ。
 あっくんはあーちゃんの分まで生きようとして、そしてそれが、不可能であると知った。自分は自分としてしか、生きていけないのだ。
「僕は忘れないよ、あーちゃんのこと」
 僕がそうぽつりと言うと、あっくんの顔はこちらへと向いた。あっくんのかけている眼鏡のレンズが蛍光灯の光を反射して、彼の表情を隠している。そうしていると、本当に、そこにあーちゃんがいるみたいだった。
「……僕は忘れない。あーちゃんのことを、ずっと」
 自分に言い聞かせるように、僕はそう続けて言った。
「僕も、あーちゃんの分まで生きるよ」
 あーちゃんが欠けた、この世界で。
「…………」
 あっくんは黙ったまま、少し顔の向きを変えた。レンズは光を反射しなくなり、眼鏡の下の彼の顔が見えた。それは、あーちゃんに似ているようで、だけど確かに、あっくんの表情だった。
「そうですか」
 それだけつぶやくように言うと、彼は少しだけ笑った。
「兄貴もきっと、その方が喜ぶでしょう」
 あっくんはそう言って、持っていたコンビニの袋に入っていたプリンを「見舞いの品です」と言って僕の机の上に置くと、帰って行った。
 その後ろ姿はもう、あーちゃんのようには見えなかった。
 その二日後、僕は部屋でひとり寝ていると玄関のチャイムが鳴ったので出てみると、そこには河野帆高が立っていた。
「よー、潤崎くん。元気?」
「……なんで、僕の家を知ってるの?」
「とりあえずお邪魔しまーす」
「…………なんで?」
 呆然としている僕の横を、帆高はすり抜けるようにして靴を脱いで上がって行く。こいつが僕の家の住所を知っているはずがない。訊かれたところで担任が教えるとも思えない。となると、住所を教えたのは、やはり、日褄先生だろうか。僕は溜め息をついた。どうしてあのカウンセラーは、生徒の個人情報を守る気がないのだろう。困ったものだ。
 勝手に僕の部屋のベッドに寝転んでくつろいでいる帆高に缶ジュースを持って行くと、やつは笑いながら、
「なんか、美少女に切りつけられたり、美女に殴られたりしたんだって?」
 と言った。
「間違っているような、いないような…………」
「すげー修羅場だなー」
 けらけらと軽薄に、帆高が笑う。あっくんが見舞いに訪れた時と同様に、帆高も制服姿だった。学校帰りに寄ってくれたのだろう。ごくごくと喉を鳴らしてジュースを飲んでいる。
「はい、これ」
 帆高は鞄の中から、紙の束を取り出して僕に差し出した。受け取って確認するまでもなかった。それは、僕が休んでいる間に学級で配布されたのであろう、プリントや手紙だった。ただ、それを他クラスに所属している帆高から受け取るというのが、いささか奇妙な気はしたけれど。
「どうも……」
「授業のノートは、学校へ行くようになってから本人にもらって。俺のノートをコピーしてもいいんだけど、やっぱクラス違うと微妙に授業の進度とか感じも違うだろうし」
「…………本人?」
 僕が首をかしげると、帆高は、ああ、と思い出したように言った。
「これ、ミナモからの預かり物なんだよ。自分で届けに行けばっ��言ったんだけど、やっぱりそれは恥ずかしかったのかねー」
 ミナモが、僕のプリントを届けることを帆高に依頼した……?
 一体、どういうことだろう。だってミナモは、一日じゅう保健室にいて、教室内のことには関与していないはずだ。なんだか、嫌な予感がした。
「帆高、まさか、なんだけど…………」
「そのまさかだよ、潤崎くん」
 帆高は飄々とした顔で言った。
「ミナモは、文化祭の振り替え休日が明けてからのこの二週間、ちゃんと教室に登校して、休んでるあんたの代わりに授業のノートを取ってる」
「…………は?」
「でもさー、ミナモ、ノート取る・取らない以前に、黒板に書いてある文字の内容を理解できてるのかねー? まぁノート取らないよりはマシだと思うけどさー」
「ちょ、ちょっと待って……」
 ミナモが、教室で授業を受けている?
 僕の代わりに、ノートを取っている?
 一体、何があったんだ……?
 僕は呆然とした。
「ほんと、潤崎くんはミナモに愛されてるよねー」
「…………」
 ミナモが聞いたらそうしそうな気がしたから、代わりに僕が帆高の頭に鉄拳を制裁した。それでも帆高はにやにやと笑いながら、言った。
「だからさ、怪我してんのも知ってるし、学校休みたくなる気持ちもわからなくはないけど、なるべく早く、学校出て来てくれねーかな」
 表情と不釣り合いに、その声音は真剣だったので、僕は面食らう。ミナモのことを気遣っていることが窺える声だった。入学して以来、一度も足を向けたことのない教室で、授業に出てノートを取っているのだから、無理をしていないはずがない。いきなりそんなことをするなんて、ミナモも無茶をするものだ。いや、無茶をさせているのは、僕なのだろうか。
 あ、そうだ、と帆高は何かを思い出したかのようにつぶやき、鞄の中から丸められた画用紙を取り出した。
「……それは?」
「ミナモから、預かってきた。お見舞いの品」
 ミナモから、お見舞いの品?
 首を傾げかけた僕は、画用紙を広げ、そこに描かれたものを見て、納得した。
 河野ミナモと、僕。
 死にたがり屋と死に損ない。
 自らの死を願って雨の降る屋上へ向かい、そこで出会った僕と彼女は、ずるずると、死んでいくように生き延びたのだ。
「……これから、授業に出るつもり、なのかな」
「ん? ああ、ミナモのことか? どうだろうなぁ」
 僕は思い出していた。文化祭の朝、リストバンドをく���た、峠茶屋桜子さんのこと。僕とミナモが出会った日に、保健室で僕たちに偶然出会ったことを彼女は覚えていてくれていた。彼女のような人もクラスにはいる。僕だってミナモだって、クラスの人たちと全く関わり合いがない訳ではないのだ。僕たちもまだ、世界と繋がっている。
「河野も、変わろうとしてるのかな……」
 死んだ方がいい人間だっている。
 初めて出会ったあの日、河野ミナモはそう言った。
 僕もそう思っていた。死んだ方がいい人間だっている。僕だって、きっとそうだと。
 だけど僕たちは生きている。
 ミナモが贈ってくれた絵は、やっぱり、あの屋上から見た景色だった。夏休みの宿題を頼んだ時に描いてもらった絵の構図とほとんど同じだった。屋上は無人で、僕の姿もミナモの姿もそこには描かれていない。だけど空は、澄んだ青色で塗られていた。
 僕は帆高に、なるべく早く学校へ行くよ、と約束して、それから、どうかミナモの変化が明るい未来へ繋がるように祈った。
 河野帆高が言っていた通り、僕が学校を休んでいた約二週間の間、ミナモは朝教室に登校してきて、授業���受け、ノートを取ってくれていた。けれど、僕が学校へ行くようになると、保健室登校に逆戻りだった。
 昼休みの保健室で、僕はミナモからルーズリーフの束を受け取った。筆圧の薄い字がびっしりと書いてある。
 僕は彼女が贈ってくれた絵のことを思い出した。かつてあーちゃんが飛び降りて、死のうとしていた僕と、死にたがりのミナモが出会ったあの屋上。そこから見た景色を、ミナモはのびのびとした筆使いで描いていた。綺麗な青い色の絵具を使って。
 授業ノートの字は、その絵とは正反対な、神経質そうに尖っているものだった。中学入学以来、一度も登校していなかった教室に足を運び、授業を受けたのだ。ルーズリーフのところどころは皺寄っている。緊張したのだろう。
「せっかく来るようになったのに、もう教室に行かなくていいの?」
「……潤崎くんが来るなら、もう行かない」
 ミナモは長い前髪の下から睨みつけるように僕を一瞥して、そう言った。
 それもそうだ。ミナモは人間がこわいのだ。彼女にとっては、教室の中で他人の視線に晒されるだけでも恐ろしかったに違いないのに。
 ルーズリーフを何枚かめくり、ノートの文字をよく見れば、ときどき震えていた。恐怖を抑えようとしていたのか、ルーズリーフの余白には小さな絵が描いてあることもあった。
「ありがとう、河野」
「別に」
 ミナモは保健室のベッドの上、膝に乗せたスケッチブックを開き、目線をそこへと向けていた。
「行くところがあるんじゃないの?」
 もう僕に興味がなくなってしまったかのような声で彼女はそう言って、ただ鉛筆を動かすだけの音が保健室には響き始めた。
 僕はもう一度ミナモに礼を言ってから、保健室を後にした。
    ずっと謝らなくてはいけないと思っている人がいた。
 彼女はなんだか気まずそうに僕の前でうつむいている。
 昼休みの廊下の片隅。僕と彼女の他には誰もいない。呼び出したのは僕の方だった。文化祭でのあの事件から、初めて登校した僕は、その日のうちに彼女の教室へ行き、彼女のクラスメイトに呼び出してもらった。
「あの…………」
「なに?」
「その、怪我の、具合は……?」
「僕はたいしたことないよ。もう治ったし。きみは?」
「私も、その、大丈夫です」
「そう……」
 よかった、と言おうとした言葉を、僕は言わずに飲み込んだ。これでよいはずがない。彼女は無関係だったのだ。彼女は、僕やひーちゃん、あーちゃんたちとは、なんの関係もなかったはずなのに。
「ごめん、巻き込んでしまって」
「いえ、そんな……勝手に先輩のことをかばったのは、私ですから……」
 文化祭の日。僕がひーちゃんに襲われた時、たまたま廊下を通りかかった彼女、佐渡梓は僕のことをかばい、そして傷を負った。
 怪我は幸いにも、僕と同様に軽傷で済んだようだが、でもそれだけで済む話ではない。彼女は今、カウンセリングに通い、「心の傷」を癒している。それもそうだ。同じ中学校に在籍している先輩女子生徒に、カッターナイフで切りつけられたのだから。
「きみが傷を負う、必要はなかったのに……」
 どうして僕のことを、かばったりしたのだろう。
 僕は佐渡梓の好意を、いつも踏みつけてきた。ひどい言葉もたくさんぶつけた。渡された手紙は読まずに捨てたし、彼女にとって、僕の態度は冷徹そのものだったはずだ。なのにどうして、彼女は僕を助けようとしたのだろう。
「……潤崎先輩に、一体何があって、あんなことになったのか、私にはわかりません」
 佐渡梓はそう言った。
「思えば、私、先輩のこと何も知らないんだなって、思ったんです。何が好きなのか、とか、どんな経験をしてきたのか、とか……。先輩のクラスに、不登校の人が二人いるってことは知っていました。ひとりは河野先輩で、潤崎先輩と親しいみたいだってことも。でも、もうひとりの、市野谷先輩のことは知らなくて……潤崎先輩と、幼馴染みだってことも……」
 僕とひーちゃんのことを知っているのは、同じ小学校からこの中学に進学してきた連中くらいだ。と言っても、僕もひーちゃんも小学校時代の同級生とそこまで交流がある訳じゃなかったから、そこまでは知られていないのではないだろうか。僕とひーちゃん、そして、あーちゃんのことも知っているという人間は、この学校にどれくらいいるのだろう。
 さらに言えば、僕とひーちゃんとあーちゃん、そして、ひーちゃんの最愛の弟ろーくんの事故のことまで知っている人間は、果たしているのだろうか。日褄先生くらいじゃないだろうか。
 僕たちは、あの事故から始まった。
 ひーちゃんはろーくんを目の前で失い、そして僕とあーちゃんに出会った。ひーちゃんは心にぽっかり空いた穴を、まるであーちゃんで埋めるようにして、あーちゃんを世界の全てだとでも言うようにして、生きるようになった。そんなあーちゃんは、ある日屋上から飛んで、この世界からいなくなってしまった。そうして役立たずの僕と、再び空っぽになったひーちゃんだけが残された。
 そうして僕は嘘をつき、ひーちゃんは僕を裏切った。
 僕を切りつけた刃の痛みは、きっとひーちゃんが今まで苦しんできた痛みだ。
 あーちゃんがもういないという事実を、きっとひーちゃんは知っていた。ひーちゃんは僕の嘘に騙されたふりをした。そうすればあーちゃんの死から逃れられるとでも思っていたのかもしれない。壊れたふりをしているうちに、ひーちゃんは本当に壊れていった。僕はどうしても、彼女を正しく導くことができなかった。嘘をつき続けることもできなかった。だからひーちゃんは、騙されることをやめたのだ。自分を騙すことを、やめた。
 僕はそのことを、佐渡梓に話そうとは思わなかった。彼女が理解してくれる訳がないと決めつけていた訳ではないが、わかってもらわなくてもいいと思っていた。でも僕が彼女を巻き込んでしまったことは、もはや変えようのない事実だった。
「今回のことの原因は、僕にあるんだ。詳しくは言えないけれど。だから、ひーちゃん……市野谷さんのことを責めないであげてほしい。本当は、いちばん苦しいのは市野谷さんなんだ」
 僕の言葉に、佐渡梓は決して納得したような表情をしなかった。それでも僕は、黙っていた。しばらくして、彼女は口を開いた。
「私は、市野谷先輩のことを責めようとか、訴えようとか、そんな風には思いません。どうしてこんなことになったのか、理由を知りたいとは思うけれど、潤崎先輩に無理に語ってもらおうとも思いません……でも、」
 彼女はそこまで言うと、うつむいていた顔を上げ、僕のことを見た。
 ただ真正面から、僕を見据えていた。
「私は、潤崎先輩も、苦しかったんじゃないかって思うんです。もしかしたら、今だって、先輩は苦しいんじゃないか、って……」
 僕は。
 佐渡梓にそう言われて、笑って誤魔化そうとして、泣いた。
 僕は苦しかったんだろうか。
 僕は今も、苦しんでいるのだろうか。
 ひーちゃんは、あの文化祭での事件の後、日褄先生に連れられて精神科へ行ったまま、学校には来ていない。家にも帰っていない。面会謝絶の状態で、会いに行くこともできないのだという。
 僕はどうかひーちゃんが、苦しんでいないことを願った。
 もう彼女は、十分はくらい苦しんできたと思ったから。
    ひーちゃんから電話がかかってきたのは、三月十三日のことだった。
 僕の中学校生活は何事もなかったかのように再開された。
 二週間の欠席を経て登校を始めた当初は、変なうわさと奇妙な視線が僕に向けられていたけれど、もともとクラスメイトと関わり合いのなかった僕からしてみれば、どうってことはなかった。
 文化祭で僕が着用したメイド服を作ってくれたクラス委員の長篠めいこさんと、リストバンドをくれた峠茶屋桜子さんとは、教室の中でときどき言葉を交わすようになった。それが一番大きな変化かもしれない。
 ミナモの席もひーちゃんの席も空席のままで、それもいつも通りだ。
 ミナモのはとこである帆高の方はというと、やつの方も相変わらずで、宿題の提出率は最悪みたいだ。しょっちゅう廊下で先生たちと鬼ごっこをしている。昼休みの保健室で僕とミナモがくつろいでいると、ときどき顔を出しにくる。いつもへらへら笑っていて、楽しそうだ。なんだかんだ、僕はこいつに心を開いているんだろうと思う。
 佐渡梓とは、あれからあまり会わなくなってしまった。彼女は一年後輩で、校舎の中ではもともと出会わない。委員会や部活動での共通点もない。彼女が僕のことを好きになったこと自体が、ある意味奇跡のようなものだ。僕をかばって怪我をした彼女には、感謝しなくてはいけないし謝罪しなくてはいけないと思ってはいるけれど、どうしたらいいのかわからない。最近になって少しだけ、彼女に言ったたくさんの言葉を後悔するようになった。
 日褄先生は、そう、日褄先生は、あれからスクールカウンセラーの仕事を辞めてしまった。婚約者の葵さんと結婚することになったらしい。僕の頬を殴ってまで叱咤してくれた彼女は、あっさりと僕の前からいなくなってしまった。そんなこと、許されるのだろうか。僕はまだ先生に、なんのお礼もしていないのに。
 僕のところには携帯電話の電話番号が記されたはがきが一枚届いて、僕は一度だけそこに電話をかけた。彼女はいつもと変わらない明るい声で、とんでもないことを平気でしゃべっていた。ひーちゃんのことも、僕のことも、彼女はたった一言、「もう大丈夫だよ」とだけ言った。
 そうこうしているうちに年が明け、冬休みが終わり、そうして三学期も終わった。
 三月十三日、電話が鳴った。
 あーちゃんが死んだ日だった。
 二年前のこの日、あーちゃんは死んだのだ。
「あーちゃんに会いたい」
 電話越しだけれども、久しぶりに聞くひーちゃんの声は、やけに乾いて聞こえた。
 あーちゃんにはもう会えないんだよ、そう言おうとした僕の声を遮って、彼女は言う。
「知ってる」
 乾燥しきったような、淡々とした声。鼓膜の奥にこびりついて取れない、そんな声。
「あーちゃん、死んだんでしょ。二年前の今日に」
 思えば。
 それが僕がひーちゃんの口から初めて聞いた、あーちゃんの死だった。
「『僕』ね、ごめんね、ずっとずっと知ってた、ずっとわかってた。あーちゃんは、もういないって。だけど、ずっと認めたくなくて。そんなのずるいじゃん。そんなの、卑怯で、許せなくて、許したくなくて、ずっと信じたくなくて、ごめん、でも……」
 うん、とだけ僕は答えた。
 きっとそれは、僕のせいだ。
 ひーちゃんを許した、僕のせいだ。
 あーちゃんの死から、ずっと目を背け続けたひーちゃんを許した、僕のせいだ。
 ひーちゃんにそうさせた、僕のせい。
 僕の罪。
 一度でもいい、僕が、あーちゃんの死を見ないようにするひーちゃんに、無理矢理にでも現実を打ち明けていたら、ひーちゃんはきっと、こんなに苦しまなくてよかったのだろう。ひーちゃんの強さを信じてあげられなかった、僕のせい。
 あーちゃんが死んで、自分も死のうとしていたひーちゃんを、支えてあげられるだけの力が僕にはなかった。ひーちゃんと一緒に生きるだけの���さが僕にはなかった。だから僕は黙っていた。ひーちゃんがこれ以上壊れてしまわぬように。ひーちゃんがもっと、壊れてしまうように。
 僕とひーちゃんは、二年前の今日に置き去りになった。
 僕の弱さがひーちゃんの心を殺した。壊した。狂わせた。痛めつけた。苦しめた。
「でも……もう、『僕』、あーちゃんの声、何度も何度も何度も、何度考えても、もう、思い出せないんだよ……」
 電話越しの声に、初めて感情というものを感じた。ひーちゃんの今にも泣き出しそうな声に、僕は心が潰れていくのを感じた。
「お願い、うーくん。『僕』を、あーちゃんのお墓に、連れてって」
 本当は、二年前にこうするべきだった。
「……わかった」
 僕はただ、そう言った。
 僕は弱いままだったから。
 彼女の言葉に、ただ頷いた。
『僕が死んだことで、きっとひーちゃんは傷ついただろうね』
 そう書いてあったのは、あーちゃんが僕に残したもうひとつの遺書だ。
『僕は裏切ってしまったから。あの子との約束を、破ってしまったから』
 あーちゃんとひーちゃんの間に交わされていたその約束がなんなのか、僕にはわからないけれど、ひーちゃんにはきっと、それがわかっているのだろう。
  ひーちゃんがあーちゃんのことを語る度、僕はひーちゃんがどこかへ行ってしまうような気がした。
 だってあんまりにも嬉しそうに、「あーちゃん、あーちゃん」って言うから。ひーちゃんの大好きなあーちゃんは、もういないのに。
 ひーちゃんの両目はいつも誰かを探していて、隣にいる僕なんか見てくれないから。
  ひーちゃんはバス停で待っていた。交わす言葉はなかった。すぐにバスは来て、僕たちは一番後ろの席に並んで座った。バスに乗客の姿は少なく、窓の外は雨が降っている。ひーちゃんは無表情のまま、僕の隣でただ黙って、濡れた靴の先を見つめていた。
  ひーちゃんにとって、世界とはなんだろう。
 ひーちゃんには昨日も今日も明日もない。
 楽しいことがあっても、悲しいことがあっても、彼女は笑っていた。
 あーちゃんが死んだ時、あーちゃんはひーちゃんの心を道連れにした。僕はずっと心の奥底であーちゃんのことを恨んでいた。どうして死んだんだって。ひーちゃんに心を返してくれって。僕らに世界を、返してって。
  二十分もバスに揺られていると、「船頭町三丁目」のバス停に着いた。
 ひーちゃんを促してバスを降りる。
 雨は霧雨になっていた。持っていた傘を差すかどうか、一瞬悩んでから、やめた。
 こっちだよ、とひーちゃんに声をかけて歩き始める。ひーちゃんは黙ってついてくる。
 樫岸川の大きな橋の上を歩き始める。柳の並木道、古本屋のある四つ角、細い足場の悪い道、長い坂、苔の生えた石段、郵便ポストの角を左。
 僕はもう何度、この道を通ったのだろう。でもきっと、ひーちゃんは初めてだ。
 生け垣のある家の前を左。寺の大きな屋根が、突然目の前に現れる。
 僕は、あそこだよ、と言う。ひーちゃんは少し目線を上の方に動かして、うん、と小さな声で言う。その瞳も、口元も、吐息も、横顔も、手も、足も。ひーちゃんは小さく震えていた。僕はそれに気付かないふりをして、歩き続ける。ひーちゃんもちゃんとついてくる。
  ひーちゃんはきっと、ずっとずっと気付いていたのだろう。本当のことを。あーちゃんがこの世にいないことを。あーちゃんが自ら命を絶ったことも。誰もあーちゃんの苦しみに、寂しさに、気付いてあげられなかったことを。ひーちゃんでさえも。
 ひーちゃんは、あーちゃんが死んでからよく笑うようになった。今までは、能面のように無表情な少女だったのに。ひーちゃんは笑っていたのだ。あーちゃんが���ういない世界を。そんな世界でのうのうと生きていく自分を。ばればれの嘘をつく、僕を。
  あーちゃんの墓前に立ったひーちゃんの横顔は、どこにも焦点があっていないかのように、瞳が虚ろで、だが泣いてはいなかった。そっと手を伸ばし、あーちゃんの墓石に恐る恐る触れると、霧雨に濡れて冷たくなっているその石を何度も何度も指先で撫でていた。
 墓前には真っ白な百合と、やきそばパンが供えてあった。あーちゃんの両親が毎年お供えしているものだ。
 線香のにおいに混じって、妙に甘ったるい、ココナッツに似たにおいがするのを僕は感じた。それが一体なんのにおいなのか、僕にはわかった。日褄先生がここに来て、煙草を吸ったのだ。彼女がいつも吸っていた、あの黒い煙草。そのにおいだった。ついさっきまで、ここに彼女も来ていたのだろうか。
「つめたい……」
 ひーちゃんがぽつりと、指先の感触の感想を述べる。そりゃ石だもんな、と僕は思ったが、言葉にはしなかった。
「あーちゃんは、本当に死んでいるんだね」
 墓石に触れたことで、あーちゃんの死を実感したかのように、ひーちゃんは手を引っ込めて、恐れているように一歩後ろへと下がった。
「あーちゃんは、どうして死んだの?」
「……ひとりぼっちみたいな、感覚になるんだって」
 あーちゃんが僕に宛てて書いた、彼のもうひとつの遺書の内容を思い出す。
「ひとりぼっち? どうして? ……私がいたのに」
 ひーちゃんはもう、自分のことを「僕」とは呼ばなかった。
「私じゃだめだった?」
「……そんなことはないと思う」
「じゃあ、どうして……」
 ひーちゃんはそう言いかけて、口をつぐんだ。ゆっくりと首を横に振って、ひーちゃんは、そうか、とだけつぶやいた。
「もう考えてもしょうがないことなんだ……。あーちゃんは、もういない。私が今さら何かを思ったって、あーちゃんは帰ってこないんだ……」
 ひーちゃんはまっすぐに僕を見上げて、続けるように言った。
「これが、死ぬってことなんだね」
 彼女の表情は凍りついているように見えた。
「そうか……ずっと忘れていた、ろーくんも死んだんだ……」
 ひーちゃんの最愛の弟、ろーくんこと市野谷品太くんは、僕たちが小学二年生の時に交通事故で亡くなった。ひーちゃんの目の前で、ろーくんの細くて小さい身体は、巨大なダンプに軽々と轢き飛ばされた。
 ひーちゃんは当時、過剰なくらいろーくんを溺愛していて、そうして彼を失って以来、他人との間に頑丈な壁を築くようになった。そんな彼女の前に現れたのが、僕であり、そして、あーちゃんだった。
「すっかり忘れてた。ろーくん……そうか、ずっと、あーちゃんが……」
 まるで独り言のように、ひーちゃんは言葉をぽつぽつと口にする。瞳が落ち着きなく動いている。
「そうか、そうなんだ、あーちゃんが……あーちゃんが…………」
 ひーちゃんの両手が、ひーちゃんの両耳を覆う。
 息を殺したような声で、彼女は言った。
「あーちゃんは、ずっと、ろーくんの代わりを……」
 それからひーちゃんは、僕を見上げた。
「うーくんも、そうだったの?」
「え?」
「うーくんも、代わりになろうとしてくれていたの?」
 ひーちゃんにとって、ろーくんの代わりがあーちゃんであったように。
 あーちゃんが、ろーくんの代用品になろうとしていたように。
 あっくんが、あーちゃんの分まで生きようとしていたように。
 僕は。
 僕は、あーちゃんの代わりに、なろうとしていた。
 あーちゃんの代わりに、なりたかった。
 けれどそれは叶わなかった。
 ひーちゃんが求めていたものは、僕ではなく、代用品ではなく、正真正銘、ほんものの、あーちゃんただひとりだったから。
 僕は稚拙な嘘を重ねて、ひーちゃんを現実から背けさせることしかできなかった。
 ひーちゃん��手を引いて歩くことも、ひーちゃんが泣いている間待つことも、あーちゃんにはできても、僕にはできなかった。
 あーちゃんという存在がいなくなって、ひーちゃんの隣に空いた空白に僕が座ることは許されなかった。代用品であることすら、認められなかった。ひーちゃんは、代用品を必要としなかった。
 ひーちゃんの世界には、僕は存在していなかった。
 初めから、ずっと。
 ずっとずっとずっと。
 ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと、僕はここにいたのに。
 僕はずっと寂しかった。
 ひーちゃんの世界に僕がいないということが。
 だからあーちゃんを、心の奥底では恨んでいた。妬ましく思っていた。
 全部、あーちゃんが死んだせいにした。僕が嘘をついたのも、ひーちゃんが壊れたのも、あーちゃんが悪いと思うことにした。いっそのこと、死んだのが僕の方であれば、誰もこんな思いをしなかったのにと、自分が生きていることを呪った。
 自分の命を呪った。
 自分の存在を呪った。
 あーちゃんのいない世界を、あーちゃんが死んだ世界を、あーちゃんが欠けたまま、それでもぐるぐると廻り続けるこの不条理で不可思議で不甲斐ない世界を、全部、ひーちゃんもあーちゃんもあっくんもろーくんも全部全部全部全部、まるっときちっとぐるっと全部、呪った。
「ごめんね、うーくん」
 ひーちゃんの細い腕が、僕の服の袖を掴んでいた。握りしめているその小さな手を、僕は見下ろす。
「うーくんは、ずっと私の側にいてくれていたのにね。気付かなくて、ごめんね。うーくんは、ずっとあーちゃんの代わりをしてくれていたんだね……」
 ひーちゃんはそう言って、ぽろぽろと涙を零した。綺麗な涙だった。綺麗だと、僕は思った。
 僕は、ひーちゃんの手を握った。
 ひーちゃんは何も言わなかった。僕も、何も言わなかった。
 結局、僕らは。
 誰も、誰かの代わりになんてなれなかった。あーちゃんもろーくんになることはできず、あっくんもあーちゃんになることはできず、僕も、あーちゃんにはなれなかった。あーちゃんがいなくなった後も、世界は変わらず、人々は生き続け、笑い続けたというのに。僕の身長も、ひーちゃんの髪の毛も伸びていったというのに。日褄先生やミナモや帆高や佐渡梓に、出会うことができたというのに。それでも僕らは、誰の代わりにもなれなかった。
 ただ、それだけ。
 それだけの、当たり前の事実が僕らには常にまとわりついてきて、その事実を否定し続けることだけが、僕らの唯一の絆だった。
 僕はひーちゃんに、謝罪の言葉を口にした。いくつもいくつも、「ごめん」と謝った。今までついてきた嘘の数を同じだけ、そう言葉にした。
 ひーちゃんは僕を抱き締めて、「もういいよ」と言った。もう苦しむのはいいよ、と言った。
 帰り道のバスの中で、四月からちゃんと中学校に通うと、ひーちゃんが口にした。
「受験、あるし……。今から��校へ行って、間に合うかはわからないけれど……」
 四月から、僕たちは中学三年生で高校受験が控えている。教室の中は、迫りくる受験という現実に少しずつ息苦しくなってきているような気がしていた。
 僕は、「大丈夫」なんて言わなかった。口にすることはいくらでもできる。その方が、もしかしたらひーちゃんの心を慰めることができるかもしれない。でももう僕は、ひーちゃんに嘘をつきたくなかった。だから代わりに、「一緒に頑張ろう」と言った。
「頭のいいやつが僕の友達にいるから、一緒に勉強を教えてもらおう」
 僕がそう言うと、ひーちゃんは小さく頷いた。
 きっと帆高なら、ひーちゃんとも仲良くしてくれるだろう。ミナモはどうかな。時間はかかるかもしれないけれど、打ち解けてくれるような気がする。ひーちゃんはクラスに馴染めるだろうか。でも、峠茶屋さんが僕のことを気にかけてくれたように、きっと誰かが気にかけてくれるはずだ。他人なんてくそくらえだって、ずっと思っていたけれど、案外そうでもないみたいだ。僕はそのことを、あーちゃんを失ってから気付いた。
 僕は必要とされたかっただけなのかもしれない。
 ひーちゃんに必要とされたかったのかもしれないし、もしかしたら誰か他人だってよかったのかもしれない。誰か他人に、求めてほしかったのかもしれない。そうしたら僕が生きる理由も、見つけられるような気がして。ただそれだけだ。それは、あーちゃんも、ひーちゃんも同じだった。だから僕らは不器用に、お互いを傷つけ合う方法しか知らなかった。自分を必要としてほしかったから。
 いつだったか、日褄先生に尋ねたことがあったっけ。
「嘘って、何回つけばホントになるんですか」って。先生は、「嘘は何回ついたって、嘘だろ」と答えたんだった。僕のついた嘘はいくら重ねても嘘でしかなかった。あーちゃんは、帰って来なかった。やっぱり今日は雨で、墓石は冷たく濡れていた。
 けれど僕たちは、やっと、現実を生きていくことができる。
「もう大丈夫だよ」
 日褄先生が僕に言ったその声が、耳元で蘇った。
 もう大丈夫だ。
 僕は生きていく。
 あーちゃんがいないこの世界で、今度こそ、ひーちゃんの手を引いて。
 
 ふたりで初めて手を繋いで帰った日。
 僕らはやっと、あーちゃんにサヨナラができた。
  あーちゃん。
 世界は透明なんかじゃない。
 君も透明なんかじゃない。
 僕は覚えている。あーちゃんのことも、一緒に見た景色も、過ごした日々のことも。
 今でも鮮明に、その色を思い出すことができる。
 たとえ記憶が薄れる日がきたって、また何度でも思い出せばいい。
 だからサヨナラは、言わないんだ。
 了
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chirinovel · 5 years ago
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NOxAyumu
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堀田歩
その日は、起きるのに少し苦労した。一度スマートフォンのアラームで起きて、エアコンを除湿でつけてぼんやりしていたらまた寝てしまった。前夜に寝付くまでラジオを聴こうと耳にしたイヤホンの紐が首にかかったまま意識が浮上してきて、寝ぼけながら一生懸命それを解こうとした。自分のんー、んーと唸る声で目が覚めてきた。古いアパートだから、上の階の忙しない足音が聞こえる。しばらく天井を見つめ耳を澄ましていると、豪快な施錠の音。
バタン、ガチャ。
もうそんな時間か。
エアコンですっかり冷えた腕をさすりながらベッドを出た。テレビを点けるとニュースが流れ、アナウンサーの真剣な顔を横目に耳だけそちらに向ける。
「えー、引き続き、昨日午後五時頃、○○県立第一高等学校で起きました、無差別殺傷事件の速報をお伝えしております」
ご飯はいいや、いや、食べられるかな。カップラーメンを食べよう。線まで水を入れて、電子レンジに入れて三分チンする。本当は、火花が散るため強く禁止されている横着だ。かつて友人に火事になるぞと言われて一時期やめたけれど、ついやってしまう。普通にお湯を沸かして三分待つことができなくなってしまった。
タバコも吸わない、彼女もいない、麻雀もやめたし、なるべく歩くし、お年寄りには席を譲り、未来ある青少年教育を担う。カップラーメンで電子レンジに火花を散らしたくらいじゃ、誰も怒らないでしょう。 
芯の残った麺は、割り箸には重たい。啜りながらノートパソコンを開くと、喚くようなファンの音が耳に付く。夜中電源を切らなかったから、熱がこもってしまったんだ。ああ、また熱がこもる季節になってきたんだな。それとも、パソコンの寿命かな。メールをチェックしようとすると、机の上のスマホが震えた。
「はい、堀田です」
「あ、堀田先生おはよー」
「おはよう、さやか。どうしたの」
「あのさあ、体育館開いてないんだけどさあ、今日男バスの顧問が当番でしょ」
「え、職員室行った?前田先生居ないの」
「居ねー」
「居ねー、じゃねえだろ。じゃあ前田先生に連絡して、今から行くから。女子バスケ部の皆さんもういるの?外練できる?」
「うん。私らはいいけどさ、なんか男バスの一年の子居るよ」
「二年来たら外周しといてって伝えて」
「了解。じゃーね、早く来てね、ほったちゃん!」
「こら」
通話を切って、前田先生に連絡を入れた。自分も行かなくては。一歩踏み出すと、胃の中でラーメンがゆらりと揺れた。いつもなら軽くかき込んで出ていけるところが、なんとなく立ちすくんだ。いやだな、変なことしなきゃよかったな。内臓冷えてるところに追い打ちを掛けてしまった。後悔しながら、手にした残りのラーメンを、全て流しの三角コーナーに捨てた。ヒゲ剃って歯磨きもして、夏は上着が無くてシャツのシワが目立つから、一番綺麗に見えるシャツを羽織る。パソコンに刺さっていたUSBを勢いよく抜いて、部屋を飛び出した。
なんだか嫌な天気だ。もうじんわりと汗ばむのに、思ったよりも、全然夏じゃない。途方も無く白い薄暗ささえある。SF映画に出てくる恐怖の惑星のセットみたいだな、と目を細めて見ていた。さあ、行かなくちゃ。頼りないエンジン音を聞きながら、サイドブレーキを降ろす。
学校に近づくと、ちらほら我が校の制服を見かけるようになる。顔を伏せ気味に車を運転し、中庭に停め運転席を降りると、体育館前であぐらをかいている山賊のような生徒たちが何人か見えた。先ほど電話をかけてきた、女子バスケ部員たちだ。俺が男子高校生ならば、その迫力に大いにおののいた事だろう。
「ちょっと、あんたたち女子高生でしょ」
「ほった、おはよー!」
「堀田先生」
「ほった、早く鍵開けてよ」
「お前らあんまそういうこと言ってると前田先生にご報告ですからね」
「え、やめてやめてやめて、ほんっとうにやめて」
「授業も同じだからな、今日は小テスト落ちないでよ。さ、じゃ、職員室に鍵取りに行くから、ちょっと待っててね」
「もうあと一時間しか練習できないんですけど!」
「ごめんって」
職員室は静かだった。普段あまり会話を交わさない年上の教諭や、コピーを���っせと取る非常勤職員がちらほら居るだけで、あとは二台の空調が部屋を冷やさんとごうごう音を立てていた。
今年の春に赴任してきて、三ヶ月。生徒の前では、当然他人行儀とか見知りとかなんて言っていられないし、慣れてなくても、教え子は愛情を持って下の名前で呼べば「そう言う感じ」の先生でスタートできるし、そうすれば先生の間でもあんまり目立たないし。上手にやれていた。無理はしてないし、仕方も知らない。抱えてきた荷物を自分の机に降ろせば、手の甲にひんやりと冷たい天板が触れた。
「おはようございます、あの、前田先生まだいらっしゃってないですかね」
校内の鍵は全て教頭先生の机の背面に管理されている。教頭先生に声を掛けると、眼鏡をずらしてこちらを見た。
「来てると思うよ。スクールカウンセラーのことで保健室の方に行かれてるんじゃないですかね」
「あ、なるほど。ありがとうございます」
「なにか御用でした?」
「あ、ちょっとご相談があって」
そう言いながら体育館の鍵に手を伸ばした。
 体育館への昇降口は、塗り立てのペンキの匂いがした。太陽は雲の向こうにさんさんと照っているのに、そこには最悪な企みがあるような。ドアスコープの向こうから、笑みを浮かべてこっちを覗き込む影の不気味さに似た、信じきれない温もりに、ワイシャツがじっとり肌に吸い付く。
体育館の鍵を開けに行くと、女子バスケ部員の生徒たちが、手を叩いて笑っていた。
「先生」「ほったちゃんに聞いてみようよ」「ねえ先生」
「おまたせ」
体育館を解錠していると、背中から代わる代わる問いかけられる。
「先生さ、犯人とか捕まえられる?」
「は?」
「昨日一高で殺人事件あったじゃん」
「殺人っていうかね、あれはね」
無差別殺傷事件って言うんだよ。いや、殺人事件でもまあ間違えてはないけど。
「あれでさあ、なんか結局警察来るまで犯人の生徒そのままだったんでしょ?先生とかって生徒取り押さえられないの?」
「 さあ」
どうしてたんだろうね。
昨日、近隣の高校で、生徒による無差別殺傷事件が起きた。同校男子生徒が授業中に所持していた刃物を振り回し、今朝の時点で生徒四名、教師一名が搬送先の病院で息を引き取った。いや、「さあ」じゃなくて。
「君らさあ、簡単に言うけど先生も亡くなってるの知ってる?」
「あ、そうなの?」
「そういうのをね、自重というのだよ、君。モテたいなら化粧じゃなくて思慮深い発言するようにね」
「はあ?今日してねえし」
「ばか、毎日しねえんだよ。今日なな香部長は?」
体育館の重い扉を開け、「部長休み」と答えた生徒に体育倉庫の鍵を差し出す。
「え、今日顧問無し?」
「前田先生御用だから」
「いやほった副顧問でしょ、見てくれないの?」
「見てた方がいい?」
「いた方がいいよ」
からかうように笑いながら、体育館に駆け上がる子供たち。
かわいいな、と思う。
でも、命をかけられるかな。まだ出会って間もないこの子たちの無邪気��未来を守るために、この先の全てを投げ打てるかなあ。
立派だったと思う。亡くなった先生は。どう亡くなったのかはわからないけど、きっと勇敢だったに違いない。もしかしたら、一人目に刺されて、痛がる生徒の姿を見たら、お前!なんて、刃物の前に立ち塞がれるかも。書いて字のごとく、胸が痛い、想像すると、首元もぞくぞくと悪寒がする。お葬式、どうするんだろう。かわいい生徒たちが、みんな来て、泣いてくれるんだろうか。いや、こんなに一度に亡くなってしまったら。
深く刺さった、刃物を握る、他人の子供。進路相談も、模試も、朝礼もしたのに。たくさん単語が、構文が詰まった頭を抱えて、やっと振り絞った気持ちが、初めて、深々と刺さったんだろうな。いや、案外、スッと、頸動脈に刃物が当たっただけかも。あっけない、怖い。
体育館に響くドリブルの音は、カップラーメンすら受け付けなかったばかに繊細な胃の底を、力強く揺さぶった。
今日はいつもに増して欠席者が多い。午前中の授業を終え、職員室前の学級ごとの欠席者数報告に足を止めた。
うちの学校は、いわゆる田舎の進学校で、ゆとり教育の後に吹く強い風にちょうど晒される場所だ。大学入試の意義も体制も揺らぐ中、何だかよくわからないものを信じながら、生徒は生まれ育った家から何百キロとある遠い地の公立大学へ進学していく。不安を抱える生徒は少なくない。
自身のクラスの名簿を職員室で開く。
風呂蔵まりあ。久しぶりに出席に丸のついた名前にため息をついた。
 「堀田先生」
 「はい」
前田先生の声だ。立ち上がって振り返ると、おじさんが申し訳なさそうな顔をして立っていた。
「ちょっと」なんて、もの言いたそうに手招きするから、怖かった。
こう言う時のおじさんって怖いよな。俺はどう見られてるんだろう。促されるまま職員室のとなり、会議室の椅子へ腰を掛けた。昼休みに会議室を使う先生は結構多くて、別に聞かれても構わないけど「聞いて欲しくはない」ような背中をしている。生徒を叱っている先生もいるし、部費の計算をしている先生もいる。職員室でやればいいのに。
キョロキョロ癖、治らない。
視線を手元の長机に落とすと、前田先生は視界の隅へプリントを置いて俺の横に腰掛けた。
「今日ごめんね、朝練の面倒見てもらっちゃって」
「いえ、そんなそんな」
「あ、堀田先生お昼食べました?すみません、確認もせず。すぐ済むので」
「ああ、いえ、大丈夫です」
「これなんですけどね、言い訳がましくなっちゃうんですけど、市からスクールカウンセラーを増やすって連絡が来て。例の事件のことで、市の方でも対策を取ろうと言うところで」
「一高の、無差別殺傷事件ですか」
「そう。僕ね、ちょっとしばらくこっちの方担当しなくちゃならなくて、部活の方に行けなくなってしまうので、週末まで部活動を堀田先生にお願いしたくて」
「ああー!はい、是非是非。監督さんにも僕の方からお伝えしておきますね」
「いやあ、助かります。なんだかんだでここ最近女バスも男バスも僕の方で面倒見ちゃってたから」
「こちらこそ、むしろ前田先生お忙しいのに、ずっとお任せしっぱなしで」
「いやいや。それでね、これはまた別件なんだけど、堀田先生のクラスの…」
前田先生は、良くも悪くも癖の無い人だ。少し強面で、いつもジャージで、身体が大きくて、ちらほら白髪が混じっている。いわゆるよくいる体育の先生。同じ男子バスケ部の顧問として、それなりに活動を共にすることはあるけれど、特に大きな思い出はない。「はい」口半開きのまま、次の言葉を待つ。嫌な予感と言えば失礼だけれど、ちょっとどきどきした。
「あの、お話中すみません。堀田先生に保健室から内線入ってます」
背後から声をかけられて、振り返った。事務員の女性が腰を曲げて申し訳なさそうに職員室を指差していた。
前田先生の方をちらりと見ると、手でどうぞ、と促される。
「お待たせしました、堀田です」
「お忙しいところごめんなさい。保健室の仁科です。あの、風呂蔵さんがいらっしゃってます。午後は早退したいみたい」
「あー、だめそうですか」
額に手をやって、そのまま前髪を持ち上げた。クーラーの直風が生え際を撫でる。
「お昼休みに駆け込んで来た時はいつもと変わらない様子だったんだけど。逆にそれが気になったんですよ。昨日、結構ショッキングな事件があったでしょう」
「ああ、はい」
「私の方でちょっとお話を聞いてみてもいいんだけど、先生、午後どこかで保健室いらっしゃられますか」
「お昼休みの後になっちゃうんですが、五限にお伺いします」
「分かりました、あと、桝さんが風呂蔵さんとお昼一緒に食べようって来てくれてますよ」
「桝ですか、そっか。良かった。ありがたいです」
「はーい、じゃあ、失礼しますね。いらした時に私がいなくても、丸いテーブル使ってくださいね」
「はい。恐縮です」
受話器を戻し、自然と力のこもっていた首を左右に揺らした。
うちのクラスの風呂蔵まりあは、心が痛くなるほど普通の女子高生に見えた。
元々、学生時代の付き合いの中で、風呂蔵の姉と面識があった。確か名前は、風呂蔵いのりさん。姉の方は静かで人見知りのようだったから、この珍しい苗字でなければ気づかなかっただろう。風呂蔵まりあの担任になってすぐ、新年度のはじめは、クラスの中心になるグループの一員くらいに思っていた。昼休みはぎゃあぎゃあ騒いでる女子たちの一角に、お弁当を持ってそそくさと座り込んでいたし、教室を出る時も同じような女子たちと誘い合って出て行った。俺のことも、他と一緒になって「ほったちゃん」と茶化していた気がする。他人との境界をあまり感じない振る舞いもあり、そういう子、だと思ってた。
一方で、未提出の課題を催促したときや、遅刻を叱ったときは、心の底から後ろめたそうにして、ちょっと悲壮な表情にすら見えたのが強く印象に残った。この年頃の女子生徒が男の先生を茶化したりするのは、まあ仕方のないことだと思うし、高校まで来てそんなことを正そうとも思わない。ただ、自身が軽んじられやすいからか、風呂蔵の、普段の様子とは少し異質な「次は気をつけます」「明日出し��す」は、むしろこっちがたじろいだ。
根が真面目なんだな、と結論付けた。それでも、風呂蔵の未提出物や遅刻、居眠りは増えていって、クラスのグループ作りのざわつきは収まってきた時期、ちょっと心配になった。風呂蔵は昼ご飯を一人で食べるようになったから。
 
ぼんやりと立ち尽くしていると、前田先生が職員室へ入って来た。
「堀田先生、今の内線は風呂蔵さんのお話ですか?」
「あ、すみません、ぼんやりしてて。お話の途中だったのに」
「いや、仁科先生が朝、風呂蔵さんにカウンセリングを考えるよう堀田先生へ話してみて欲しいと言われて」
「はい」
「そんな感じなので、これ、カウンセラーの先生の出校表です。良い機会なのでと」
「ありがとうございます、助かります。すみません」
「こちらこそ、結局お呼び出しした意味がなくなっちゃって、すみませんね」
前田先生は、「風呂蔵さんは体育もあんまり出席が無くて」と切り出したが、会話を続けたいわけでは無さそうで、「ね」なんて言いながら自分の席へ戻って行った。
前田先生の後ろ姿は、やはりおじさんだった。昼休みが終わり、五限目の予鈴が鳴る。
授業は無いけど、片付けないとならない仕事が山ほどある。放課後がしばらく部活動にとられちゃうから、詰め詰めでやって行こう。でもその前に、風呂蔵…いや、六限に返す小テストの採点が先か。
俺も、学生時代は要領がいい方じゃなくて、特に優先順位を付けることが苦手だった。コンプレックスの変遷はいわゆる教科書通り、腰パン、チェーン、声変わり、ワックス、眉毛、女のこと。やりたいことと出来ないことの折り合いの中で、ふと気がつくと、周りの人には出来て当然のことが出来ない大人になっていた。時間ギリギリに来る、忘れ物をする、誤魔化し、嘘をつき、ほぞを噛み、夜更かしをした。
外に向けられていたコンプレックスが、内面に出現したことをくっきり感じ始めたのが教育学部に入りたての頃だったから、「みんなそんなもんだろ」では自分を誤魔化せなくなって、今度は自分こそ教育者になるべき人間だと、正当化した。弱者の気持ちが、分かるから。共感性を無くした閉塞的な学校王国の教師たちなんかより、出来ないことの辛さを知る俺は立派になれるはずだ。世の中に辟易してるのはみんな、俺みたいなやつで、自分が駄目であればあるほど、そういう子どもに救いの手を差し伸べることが出来るんじゃ無いかと、思った。
こうして根底に湧き出た自己肯定感は、めちゃくちゃな毒だったのだが、歳を取る以外にそれを知る術はない。恐らく。
 
採点が終わると、もう三十分も経っていた。一コマが五十五分だから、あと二十五分しかない。風呂蔵と十分くらいしか話せないかも知れないな。とりあえず、行ってみなきゃ。
職員室を出ると、外は蒸し暑かった。一階にある保健室へ階段を降りる足音も、どこかこもって響かない気がする。下駄箱を通り過ぎて、体育館へ向かう昇降口の手前に保健室がある。
「失礼します」
ドアを開けると仁科先生の姿は無く、窓から入る陽の光で白くぼんやりかすむ室内は、教会のようだった。クラスメイトたちが授業を受けているときにここで差し伸べられる救いの手、泣くほど嬉しいんじゃないか。でも、案外仁科先生怖いしな。
「まりあー?」
仁科先生が使っていいよと言ってくれた、パーテーションの中の丸テーブルに腰掛けながら、風呂蔵を呼んでみた。保健室という場所は、何故か妙に緊張するから、勝手に探し回るのもあれかな、なんて。しばらく耳を澄ましてみても、返事が無い。
「帰っちゃった?」
パーテーションから顔だけ出すと、準備室に続く扉から、「せんせー、カフェオレー」と、カップを片手にした風呂蔵が出てきた。黙って見ていると、顔を上げた風呂蔵と目があった。向こうは、誤魔化すような笑みを浮かべた。
「うわ」
「はい、まりあさん、こちらへどうぞ」
「えー!やです」
「やですじゃないです」
風呂蔵は渋々カップをすすぎ、流しに置いて、丸テーブルの向かい側へ腰掛けた。慣れたもんだな、おい。
「先生、暇そうだね」
茶化してくる。この、人とそつなくコミュニケーションを取ろうと言う切り出し方は、春の頃と変わらないのに。
「まりあこそ、暇そうじゃん。午後出ようよ」
「具合悪いの!」
「お前なあ」
「明日はちゃんと全部授業出る」
「勢いだけは良いんだよなあ。仮に家に帰るとして、親御さん居るの?」
「親は居ないけど、先生の初恋の人ならうちにいるから」
「あほ」
手にしていたファイルで頭を軽くはたく。痛いんですけど!と笑う。風呂蔵が「先生の初恋の人」と揶揄したのは、彼女自身の姉のこと。
「そういうの柏原くんから吹き込まれるわけ?」
柏原くんというのは、俺の大学時代の友人だ。俺が風呂蔵の姉と面識があったのも、その柏原が当時同じサークルの一つ後輩だった風呂蔵いのりさんと交際関係にあったからだ。面識があると言っても、柏原と遊ぶたびに惚気話ばかり聞かされていただけで、実際に会ったのは、大学祭の時の一度きりだ。
柏原とはいまもずっと連絡を取り合っているが、風呂蔵の姉とは今も続いているそうで、彼女の妹にあたるまりあに、俺の話をあることないこと吹き込んでいるらしい。
「でも柏原くん言ってたよ、堀田先生もうちのお姉ちゃんのこと好きだったって」
「あなたね、そう言うのを減らず口って言うんだよ。やっぱり元気じゃん。小テスト落ちてもいいから出なさいって」
 
言葉による返事はなかった。代わりに目は逸らされ、喉から絞り出すような笑い声が差し出された。
心が痛かった。大人と喋るのはちょっと怖いよね。でも、そんなに無理するもんじゃないよ。
仁科先生の声を頭に思い浮かべて、なるべく優しい声を出してみた。
「…まりあ」
自分の声が思いの外おじさんで、ちょっと気持ち悪かった。まりあの顔も心なしか引きつっているように見える。自分に違和感を感じながら続ける。いや、なんか気持ち悪い、本当にごめん。
「具合悪いのは、こう、学校に居ると心が辛い、みたいな感じかな。それとも、本当に体調悪い?」
「お腹痛い!私さ、生理痛重いんですよ」
間髪入れず返ってきた風呂蔵の言葉を、強がり、と言うのも憚られるほどに。
さあ、どうして、心が痛むんだろう。訳もなく晴れない、多感な時期の子どもの苦悩に直面しているから?
「最近の若い子って、そう言うのためらい無いわけ?」
違う。救いの手だと思って差し伸べているものが、見当違いかもしれないと言う不安。
自分は子供達にとって、救いの存在じゃ無いという確信。
先生なんて、生徒が一番、それなりにやり過ごす相手じゃないか。
前田先生の後ろ姿。あんな風に、俺も見られてるのかな。
慕われる先生って、こんな時どうするんだろう。
「てか、先生さ」 
「はい」
「クラスの生徒のことって大事?」
「当然じゃん」
当然じゃん
「命かけて守ろうと思う?」
迷っているところとか、困っているところとか、あんまり教師が見せるもんじゃないだろうと、勝手に思っていた。少なくとも俺が生徒の立場だった記憶の中で、「先生」は毎度迷わず教科書通りでいてくれた。でも、それも、俺には出来ないことの一つだった。いつもいつも正しくはいられない。
「どうかなあ。学校って色んな人がいるから、命がけで守って欲しい人も、そんなことして欲しくない人もいるんじゃないかな」
「堀田先生っぽい」
「申し出に合わせると思う」
だってもう、本当に分かんねえもん。守って欲しいなら、差し伸べた手を掴んでよ。どうしたいの
「風呂蔵は」
「え」
風呂蔵が、まん丸の目をこっちに向ける。前髪で隠れたニキビ。乾いてささくれの一助となった色付きのリップ。十四時五分前、時計の真下。
何て言ったら正解なんだろう。何を言えば、風呂蔵は幸せになれるかな。
「命がけで守られたら、午後の授業出る?」
「今日は、本当に!」
両手の平を顔の前でピタリと併せて、そう言いながら立ち上がる。
「まだお話済んでませんよ」
「本当に!」
ごめんなさい、立ち上がりこうべを垂れる風呂蔵に、授業の終わりを告げるチャイムが降り注ぐ。
ガラス棚に光が射して、跳ね返った光線は、空中に舞う埃を縁取った。まりあって名前の由来、もしかしてマリアさま?
成長って言うのは、ままならないね。そんな泣きそうな顔しないでよ、こっちだって簡単に命なんて張らないからさ、なんとか今は耐えて、自分のなりたいように大人になってごらん。それを邪魔する奴からなら、喜んで守ってあげるよ。
なんて言ったら、キモい!とか言うんだろうなお前ら。
すり足でパーテーションの外側へ出て行こうとする風呂蔵を見て、思わず笑ってしまった。風呂蔵の表情が安堵に満ちたのが分かった。
「気をつけて帰れよ。ちゃんと仁科先生にご報告して、早退届には明日まとめてサインするから」
「ありがとうございまーす」
俺をやり過ごすことが、そんなに嬉しい?学生時代の俺がまさしく見たかった生徒の笑顔だけど、それ。
そのまま風呂蔵は準備室へと戻って行った。静かになった教室に背を向けて、自身も保健室を後にすべく、引き戸に手をかけた。ただ気まぐれで、風呂蔵が消えていった準備室へと続く扉に向かって大きな声を出した。
「また明日!」
神様の声は、もう聞こえなかった。
六限まで終わると、生徒たちは掃除と軽いホームルームをして、各々放課後の活動へと散っていく。                
教室にポツポツと散る空席に、今日配布になった学園祭のお知らせを配って回る。風呂蔵の机にも同じようにお知らせを入れようとすると、「あの」と呼び止められる。
風呂蔵と親しい、桝莉花だ。
「あ、莉花、今日はありがとうね 」
「え?」
「お昼まりあのところへ行ってくれたでしょ」
「はい」
「まりあ、元気そうだった?」
「普通でした、割と」
でも、と髪の毛をいじる。上から見下げるのが申し訳なくなって、手近なまりあの椅子を引っ張って腰掛けた。
「お昼ご飯、買ってきてたのに、私が行ったら隠しちゃって」
「どういうこと?」
「ご飯食べてないのにご飯食べたって言ってました。あんまりそういうことないかも」 
「あ、ほんと」
桝莉花は風呂蔵と仲が良くて、何かというとよく二人の世界に浸っているように見える。それは俺と柏原の仲の良さとは確実に違う、いわゆる女同士っぽい付き合い方だなと思っていた。教師になってから、クラスの関係性を様々見てきたけれど、まあ珍しくはないだろうと思った。ただ、やはり風呂蔵の方が学校を休みがちということもあり、桝が進んで面倒を見ている、という印象は少なからずあった。状況だけで判断しているつもりは無く、日頃、桝の振る舞いが、少なからずそう言った雰囲気を漂わせていた。
それは全然悪いことじゃない。桝は独特だけど、優しい子なんだ。
「先生、私、まりあにプリント届けに行きます」
「ほんと?じゃあお願いしようかな、莉花今日は部活は?」
「行きます、帰りに寄るので」
桝にお知らせを手渡すと、それをリュックの中に押し込んだ。
「ねえ、莉花さんさ、まりあといつから仲良しなの」
「このクラスになってからですよ」
「そうなんだ、でも二人家近いよね」
「まりあは幼稚園から中学まで大学附属に行ってたと思います。エスカレーターだけど高校までは行かなかったっぽい。私はずっと公立」
「あ、そうかそうか」
割と最近なんだ、それにしてはと思ったけど、人間の数だけ価値観や感性があることを念頭に置かなきゃだめだ。
桝は頭を下げて教室を出て行った。
風呂蔵の机は綺麗だった。お知らせが溜まっているわけでも無く、置き勉がしてあるわけでもない。
うちの生徒は、教科書、ノート、資料集、問題集、解答集、模試ノートなど、一つの教科でいくつもの教材を持ち歩く。そこに部活の道具、塾の教材、その他諸々…土曜の補講も含め毎日学校へ来ることを考えれば、自分の席やロッカーは私物化せざるを得ない。教師に注意されても、それなりに上手くやりながら、かいくぐることをお勧めしたいね。
今日休んだ他の生徒の席も、そうは言っても、それなりに生活感というか、あああいつの席だな、とわかるくらいの面影がある。それが風呂蔵の席にはない。いつ居なくなっても、何も困らないくらいに。
桝が一生懸命、お知らせや返却物を溜まらないようにしているからだろう。しかしその行為は、いつ来ても自分の居なかったラグを実感することはなく、変わらず目の前には空っぽの席があるだけということなんじゃないか。
そう思うと、少しゾッとした。
俺なら、プリントそのままにしておいて、って言うかもしれないな。
遠くから何かの楽器の高らかな音が飛んでくる。空っぽの教室の輪郭を滑り落ちていく。そろそろ部活に行かなきゃ。立ち上がって振り返ると、出て行ったはずの桝と目が合った。
「うわびっくりした。どうしたの」
「あ、忘れ物…」
桝は自分の席に小走りで近寄って、ペンケースを持って逃げるように出て行った。
桝の目は時々すごく鋭い。二者面談をするときや、個人的に話すとき、彼女の人当たりとは裏腹な眼光の鋭さがある。もともとの顔立ちのせいなのかもしれないが、言いたいことをぐっと堪えたりしてるようにも見える。振り返った時にぶつかった視線もまた、言葉にならない訴えで射抜くような強さがあった。
十九時前、部活動を終え、職員室へ戻った。
朝とはまた少し違った終業の慌ただしさや、疲れ切った空気感は嫌いじゃない。蛍光灯のショボさはノスタルジーを誘い、高校時代に夜遅くまで校舎に残っているような、無限の王国、夏休みの直前、地球最後の日、そんな気持ちになる。無論、真面目だった俺はそんな経験はないけれど、学校の特定の場所、特定の時間帯に訪れるセンチメンタルは、それらをとても優しく捏造してくれる。
 「堀田先生、お疲れ様です」
隣の席の細倉先生がマスクをずらして会釈する。
「お疲れ様です」
「先生、どうすか。今日ご飯」
「あー…」
細倉先生は同い年で、気持ちのいい男の先生だ。俺もそれなりに、そこらの高校生には負けない背丈があるぞ、というのがなけなしの自慢だったけれど、細倉先生にはしっかり負ける。高校時代は剣道でインターハイまで行ったとか。さぞかしモテたことだろう。その勢いは衰えを知らず、今年度から細倉先生がこの学年の世界史を担当す��ようになってから、日本史を選択履修した女子が軒並み己を呪ったらしい。
「行きますかね…」
細倉先生は、よくご飯に誘ってくれる。ほとんど断ることはないのだが、快諾するたびに人懐っこそうな顔をするため、いつもお約束で迷うふりをする。こういうところが、やっぱり女性にもモテるし、俺も嬉しくなっちゃうんだよな。
「あ、でも細倉先生、何時に上がりますか?ちょっと今日遅くなっちゃうかもしれなくて」
「僕もう帰ろうかと思ってました」
「そっか。どうしようかな。というか、奥さん大丈夫なんですか」
「最近、ヨガのレッスンが入ってるとかで、あんまり夜家に居なくて」
「毎日ヨガ?」
「教えてる方ですよ、インストラクターなんで」
「へー」
「堀田先生は何時までお仕事なさるんですか」
「いや、やっぱり今日は帰ります、行きましょう」
「え、大丈夫ですか」
「はい。校務自体は終わっているんで」
「よっしゃ、じゃあ行きましょうか!で、あの、僕今日、自転車なんですけど」
「あ、載せて行きますか」
「えー!悪いなあ、でもありがとうございます!お言葉に甘えて!」
「初めからそのつもりだったくせに」
「あはは、じゃあ、すみません!お先に失礼します!」
「僕も失礼します」
細倉先生がまだちらほら残る上司たちに元気よく挨拶すると、遠くで難しい顔をした学年主任が片手をひらひらと振った。後に続くように自分も荷物を抱えて職員室を出る。
細倉先生はずるいね。すごくやりやすそう、色々と。
昼間、自分にこびりついたおじさんの残像にがっくりと肩を落とす。かといって、細倉先生のような先生が理想かというと少し違う。ドラマや漫画や実体験が就職のきっかけになっていない自分には、端から明確な理想像なんてなかったのかもしれない。でも、高校時代の、大学時代の、比較的鬱屈とした自分に問えば、めちゃくちゃ生意気な顔をしてこう言うだろう。
「ちょっと違うんだよな」
「え?」
「あ、いや」
俺の車の後部座席を倒して自身のロードバイクを一生懸命押し込む細倉先生は、バックミラー越しにこっちを見た。
「飯、どこ行きます?」
「駅前になんか有名なつけ麺のお店が出来たらしくて、そこ行きましょうよ!」
「駅前」
「駐車場無いんで、駅ビルの立体駐車場に止めましょ」
「はーい」
助手席に乗り込んで来る細倉先生に、「じゃあ出しますよ」とサイドブレーキを下ろす。スマートフォンの通知音が響いた。
ブルーライトに照らされた隣の細倉先生の横顔は、鳴ったのが自分のスマホの通知ではないと確認すると、わずかに左右に振れた。
「俺か」
サイドブレーキをもう一度引き、スマホの画面を確認すると、差出人が「柏原」のメッセージが数件来ていた。柏原か、まあ、後でいいかな。画面を暗くすると、今度こそ学校を出た。
「堀田、もう授業終わり?」
「今日まりあちゃんに会ったよ」
「飯行こうよ」
 車で二十分くらいかかり、ようやく駅の駐車場で確認した柏原のメッセージはその三件だった。柏原は風呂蔵の姉に会いに行ったのか。そこで早退したまりあに会ったらしい。また風呂蔵と二人で俺の悪口でも言っていたのだろうか。飯に行こうというのも、その延長で俺に話したいことでもできたに違いない。
「ごめん、飯は同僚と食べるから」
そう送った俺の返事にすぐ繋げられた返信は、誤字だらけだった
「今ら?あ、終わってらの?大丈夫かなる」
酔ってるのか?そう打ちかけた時、送信されたメッセージは取り消され、画面上から消えた。代わりにまた違う文面が送られてきた。
「分かった、また連絡するよ」
嘘だろ。どう考えてもおかしいだろ。細倉先生がしおらしく、「大丈夫すか?」と覗き込んできた。メッセージ画面を見ると、すぐ首を引っ込めた。
「彼女さん?」
「残念ながら」
とりあえず、「またね」とだけ返して、駐車場の外階段へ繋がる出口を目指した。帰る時に迷わないよう、頭上に掲げられた三階B区画の表示を確認する。
コンクリートに閉じ込められた埃っぽい熱気の中に、誘導灯の緑がぼやける。階段の錆びたドアを開け、細倉先生を先に通すと、会釈と溢れた「うわ、全然涼しくねえな」もまた、内側に逆流して誘導灯と輪郭を曖昧にした。振り返ると緑色がべったりと反射した愛車が、不安げに佇む。夏の夜に、人工の緑は良くないな。全然心穏やかじゃない。
「堀田さん?」
一歩が跨げずにいると、細倉先生がカンカンと音を立てて階段を上り直してきた。
「あ、行きまーす」
外に出ると、動かない外気と夜景が広がる。それらもまた、どこまで行っても息苦しく滲んでいるように見えた。
「そういえば俺、朝も麺だったな」
「朝から麺?堀田さん料理なんてするんですか」
「そう、高級なアルデンテなんですけど」
「絶対に嘘だ」
「でも食べきれなくて流しに捨てちゃった」
「流しに…?あっ、わかった。カップ麺でしょ。僕も最近食が細くてエネルギー足りないし、帰り自転車に乗る気力も湧かない。堀田さんも結構少食ですよね」
「まあ、何だかんだ暑いですものね。でも今日のつけ麺は美味しかったです、毎日食べれそう」
「ね!うまかったですよね」
つけ麺屋はそれなりに混んでいたが、待つこともなくスムーズに食事をして出て来られた。スマートフォンを確認すると、時刻は二十時半前。立体駐車場の外階段を上りながら、前を行く細倉先生の背中から声が降ってくる。
「どうすか、クラス」
「どうって」
「僕のクラス、今日すごい休み多かったんですよ。朝、出欠確認した時、びっくりしちゃって。十人くらい居なかった」
「そりゃ、結構居ないですね」
「でしょ。そこからまた一人頭痛で早退しちゃって、寂しかったですよ」
細倉先生は先に三階まで辿り着き、踊り場で夜景を一生懸命見ている。錆びた手すりの向こうは確実に夜を迎え、黒く低い空と、無数の騒がしい光が向かい合わせに続いている。
風呂蔵も、数多いる遅刻、欠席、早退のうちの一人だった。きっとどうしても学校には居られなくて、申し訳ないと心を痛めながらも、家に帰るんだろうな。みんな自分が一番情けない、恥ずかしいって思うのかな。それとも、ラッキー、くらいなのかな。ここから見れば、別に大きな差はないのに。
三階にたどり着き、今度は細倉先生が駐車場へのドアを開けてくれた。
「お嫁さん、もう帰ってきてます?」
「まだだと思う。遅いんですよ」
車の鍵を開けると、そそくさと運転席側に回って今度は車のドアまで丁寧に開けてくれる。
「ご自宅まででよろしいですか」
「よろしくお願いします!」
俺が乗り込むと、静かにドアを閉め、自分のシートベルトを締めながら、愛想のいい笑顔が助手席に収まる。本当に同い年かと、しげしげと顔を眺めながらエンジンをかける。この人の、クラスでの様子がいまいち想像つかない。
駐車場を出て駅前のごたついた道を抜けると、細倉先生がぽつりと話し始めた。
「昨日、一高で事件があったでしょ」
「はい」
「あれで亡くなった先生ね、僕知り合いだったんですよ」
「あっ」
赤信号で思わず強めにブレーキを踏んでしまった。そうだ、そういえば、細倉先生って。
「僕、一個前の赴任先が一高で、そこで、クラスを二年持ち上げした時に、新任で入ってきたのがその先生。優しい先生でしたよ。すごくいい人。でもちょっとおっちょこちょいで、間違いとか誤魔化そうとするし、僕はあんまり反りが合わないなって思ってたんですけど」
赤信号に照らされる細倉先生の横顔を、横目で見ていた。その鼻筋がパッと緑に縁取られて、慌ててアクセルを踏んだ。
「僕がこっちの学校に転任してしばらく経って、メールが来たんですよ。生徒と上手く行かなくて困ってるって。僕、言ったんです、他に相談できる先生を学年で作れよって、あんまり一人で抱え込むんじゃないよって」
細倉先生の声は落ち着いていた。俺が黙っていると、「こんな話あります?」とちょっと笑った。
「その、上手くいっていなかった生徒っていうのが、例の?」
励ますとか、諭すとか、さまざまな選択肢が脳裏に浮かんだけれど、もう胸が痛み正解を選び出すような力はなく、純粋な疑問が隙間���埋めるように口から溢れた。
「そうみたいです。学校に来れてなかった子だったらしいんですけど、説得して少しづつ来れるようになったら今度は、その先生と衝突しちゃうことがすごく増えたみたいで。なんだったんでしょうね、いじめられてたのかなあ、僕にも想像がつかない。でも、本当に彼、しつこくしちゃったのかも。最後にやりとりした時は、その生徒とはもう言葉が通じないって言ってて」
細倉先生の家が近い。俺は道沿いのコンビニに車を停めた。わずかに震えるような、大きいため息に押し出されるようにして続きが語られる。
「でも僕、その子も、一生懸命助けを求めてたんじゃないかって、思って。先生も救ってあげようとして、学校へ連れてきて、それなのに、言葉が通じなくて、お互いに、苦しかっただろうなって。それでも、あいつがしたこと、間違ってなかったって、だれか言ってあげて欲しい。事件で亡くなった生徒さんも居るから、お葬式では言えないし、今となっては、もう、遅いんですけど」
きっと、隣で感情を押し殺しながら、いつも通りの毅然とした顔でいるんだろう。それでも、細倉先生の顔は見れず俯いていた。
「ちょっと、堀田さん!」
細倉先生に肩を叩かれた。
「堀田さんが泣いてるじゃないですか!」
ちょっと涙目、くらいだと思う。鼻の奥がツンと痛かったから、それを噛んで堪えていた。涙もろいタイプですか、と散々茶化してから、細倉先生も少し鼻をすすった気がした。
「だから、僕、今日、あまりにもクラスに子供が居なくて、本当にビビっちゃって」
次の言葉を待っていると、ちょっと考えてから、
「ビビっちゃった、と言うことでした。僕が学校休みたいくらいだよって、ねえ」
強引に話を終わらせ、笑った。
生徒のことも、先生のことも、何もかもが、かき混ぜた水槽の様に、順序なく頭の中を漂っていた。
その中で、最後のメールに、細倉先生はなんて返したんだろう、という疑問というか、きっと、本当は聞かなくても分かるんだけど、後悔の本当の理由みたいなものに触れていいのかどうかだけが、深く静かに沈んでいくのが分かった。
「細倉先生、大丈夫ですか」
「いやいや、ははは!まさかそんなにダメージ食らう人でした?逆に大丈夫ですか」
「俺が泣いちゃったから泣けなかったですか」
「え、なんじゃそりゃ!すみません本当、全然そんなことじゃなくて」
細倉先生は顎に手を当ててしばらく唸った。
「いや、自分でもよくわからねえな。でも本当に、言いたかったんだと思う、誰かに。嫁にはこんな話できないですよ」
本当のところがどうかは分からないけれど、疑うなといわんばかりの強い語気を取り戻していた。俺も居直って、今度はきちんと細倉先生の顔を見た。
「話してくれて、ありがとうございます。俺なんかで良かったんですかね、少しは役に立てたらいいけど」
「あはは、なんかあれっすね。堀田さんって、卑屈というか、真面目というか…。なんて言うんだろう、ギブアンドテイクの精神がすごい人ですね」
いつもと違う会話の切り口で、少しどぎまぎする。何を言っても、話が空振りする。三振でも取らんとするその小刻みな頷きはやめてくれ。いつもなら爽やかだな、くらいにしか思わない細倉先生の笑顔が、コンビニのサインのくっきりとした光で陰影が与えられ、ちょっとだけ違って見えた。
「別に、堀田先生になんか役に立って欲しくて話したわけじゃないというか。俺も泣きたいとか、励まされたいとか、そんな感じの性格じゃないし。でも堀田先生は自然と話しやすいんですよ、教師向きで羨ましい」
真っ直ぐになだめられ、絶句してしまった。
訝しんだ手前、いつのまにか自分の方が励まされている情けなさが、反論や肯定や、細倉先生こそ教師向いてますよ、みたいな言葉も全部霞ませた。でも、細倉先生のは、ちょっと嘘っぽい言葉だな。本当に、ずっと調子のいい奴だ。隠した心はボロボロかもしれないけど、まんまとこのペースに乗せてくる。というか、お嫁さんは、よくこんな食えない男を捕まえたよな。
自分がどんな顔をしていたかは分からない。でも、細倉先生は多分、俺の顔で笑っていた。
細倉先生の胸ポケットのスマートフォンに明かりが灯り、画面を確認すると、そのまま呟いた。
「あ、嫁帰ってきた」
「車出します」
「大丈夫ですか?運転代わりましょうか」
そんなに情けない顔をしていたのか。
「大丈夫です!」
すぐそこが細倉先生の住むマンションだ。駐車場に入れるのが面倒で、いつもエントランスの向かいの道路に停める。
「じゃ、ありがとうございます」
助手席を降りて、後ろに積んでいた自身のロードバイクの固定を解きながら、細倉先生が語りだす。それをバックミラーで見ていた。
「僕、堀田先生が話しやすいのって、同い年ってこともあるけど、他人に興味がなさそうだからだって思ってたんですよ。割り切ってるっていうか。そういうところは僕とちょっと似てるなあって思ってたんです。僕もあいつからメールもらって、ああ、オレみたいな適当に流せるやつって話しやすいよねー、って。でも、ちょっと違ったみたいですね。全然物事深く考えられない僕の分まで、すごく色々考えてくれそう。あんまり抱え込んじゃだめですよ」
人懐っこそうに笑いながら、じゃあまた明日、なんていつまでも手を振っているから、そそくさと車を出した。
俺がもし、どうしようも無くなったら、この人を頼るだろうか。俺みたいに、変にダメージ受けるような奴より、普通はこういう強い人を選ぶだろうな。でも。ここでふと自分の嫌なところが顔を出す。でも俺だったら、もっと的確なアドバイスが出来たかもしれない。細倉先生の持つ強さって、深入りしないところなんじゃないのか。色んな人の心地よいところで踏みとどまれるというか。いい意味で浅い。だからこそ、亡くなった例の先生ごと見知らぬ生徒まで救うような導きの一撃ができなかったんだろうな。
もしも、俺だったら。
というか、いい距離感でいたからこそ俺は細倉先生に気に入られてたのかな、似てるって言ってたしな。でも、俺の反応は予想外だっただろうから、引かれたかもかな。最悪だな。最後の捨て台詞が、急に三行半のように思えてきて、チクチクと胸を刺す。いや、でもあれは感情が揺さぶられない方がどうかしてるだろ。そもそも、突然決めつけで打ち明けてきたのはあっちだし。
禁煙してなかったら、今絶対に吸ってた。どいつもこいつも、子どものためになら考え続けろよ。逃げるんじゃない。
感情の名前はいくつか知っているけれど、そのどれでもない。苛立ちなら六秒でピークは過ぎ去っていくらしいけど、この感情は一生このままのような気さえする。細倉先生のマンションから俺の家までは三十分かからないくらいの距離だが、それでもさらに遠回りを目指し左折した。
思いのほかずっと、「もはやこれまで」のまま長生きしている。生きていることに対しての恥ずかしさはもうない。夜眠れなくても、息を吸っても、吐いても、あの頃の不安はもう分からない。暗号の、解き方だけを忘れたような。周波数の違う電波は全部ノイズになってしまうような。
環状線へ乗ると、急に独りぼっちが寂しくなった。空になった助手席には、沿道の光が色とりどりに反射して、誰も居ないシートを浮き彫りにする。案外、もう、どうしようもないのかもしれないな。誰に助けを求めようか。
 家に着いたのは、二十二時前だった。車を駐車場に停め、不快な湿気と温度の中、しばらく放心した。身体がだるい。夏バテにしては早すぎる。重力に逆らえず、運転席に沈んだ。
スマートフォンの画面が光って、穏やかな着信音と共に学年主任の名前が表示される。
何かあったのだろうか。細倉先生とへらへら職員室を出た自分が思い出され、決まりが悪い。怒られたくないんだよ、今日はもう。なんなんだ、一体。ほうっておいてくれ。祈りを込めた一撃で、受話器のボタンをとんと叩く。
「はい、堀田です」
「もしもし、堀田先生、夜分遅くに失礼します。主任の篠原です」
ニュースキャスターのように優しい、穏やかな声だった。
「今、ご家族の方からご連絡がありまして、先生のクラスの風呂蔵まりあさんが、駅のホームから転落して病院に搬送され、先ほど、病院で息を引き取られたと」
あ、俺、風呂蔵にカウンセラーの出校表渡すの、忘れてた。
「ご家族に僕の方からご連絡入れるべきでしょうか」
「大丈夫ですよ。明日以降改めてご家族へのご挨拶と、クラスの生徒への対応を検討しましょう」
「はい」
「明日は早めに出勤できますか?」
「はい…あ」
「何かありますか?出来ればこちらを優先していただきたいのですが」
「いえ、あの、部活の朝練の監督を、前田先生がお忙しいので僕が代わるとお約束していて」
「ああ。でもそれは前田先生にお願いしましょう。堀田先生、七時に会議室にいらしてくださいね」
「は、はい」
駅のホームに流れる業務連絡のように、自分ではない誰かに向け左から右の遠い方へ、主任の声は逃げていく。
「眠れないかもしれませんが、しっかりと体を休めるようにしてください」
「はい」
「失礼します」
言葉にならない最後の返事を口の端からこぼして、通話を終える。焦点の定らないまま、車を降りて、駐車場を後にした。
部屋は温度が逃げ出したような奇妙な空気が静かに支配し、今朝捨てたカップラーメンの塩分の匂いだけが残っている。電気がまた、安っぽく部屋を照らす。俺の部屋はこんなにわざとらしい部屋だったか。B級映画のセットみたいだ。俺は、死ぬならここがいい。
ベッドに横になると、息を止めて、少しずつぼやける天井を眺めた。まぶたを閉じれば暗転する画面にかかる「カット」の声。息を吹き返して、笑って起き上がる。なんていうのは冗談で、閉じたままのまぶたに、まだまだ続く明日のことを思い浮かべた。
「あーあ」
どのタイミングで誰に何を言えばいいんだ。いつどんな仕事をすればいいんだ。持ち合わせない誠意を求められたら、どう示そう。個人的な後悔に襲われるのはい���だろう。報告書みたいなのがあるのか。警察へ行くこともあるだろう。クラスの子どもたちは、友達を一人失ってしまったことになる。学園祭、どうするんだ。クラス旗には風呂蔵の名前も入れてやろう。クラスTシャツは、風呂蔵の分も人数に入れて発注しよう。嫌がる子がいるかな。そうだ、風呂蔵と仲の良かった、桝。あいつには個人的に話した方がいいのか。大丈夫か。もう二度と友達に会えないことを、どう告げればいい。
次々と内に溢れる不安に身を任せて、朝まで漂うしかない。
投げやりに寝返りを打つと、指の先でスマートフォンの通知音が響いた。
「堀田、まりあちゃんの話聞いた?」
「今病院の駐車場にいる」
「落ち込んでる?」
柏原からのメッセージだった。こいつ、いつも三言打つ。
メッセージ画面を開くと、そのまますぐに通話ボタンを押した。呼び出し音の中で、深く胸が痛む。
桝は、もう風呂蔵と電話もできない、声を聞くことも、学校でいくら姿を探せど会うことも出来ない。風呂蔵へと繋がるはずの呼び出し音は永遠に止まない、これから彼女に訪れるのはそんな体験ばかりだろう。かわいそうでならない。
「あ、堀田?」
柏原の声は小声で、いつもの浮ついた口調とは違っていた。
「柏原」
「堀田ぁ、大変なことになったな」
「そうだね」
柏原の疲れたようなため息が遠くに聞こえた。タバコでも吸っているんだろう。
「疲れてるだろ、電話はいいからゆっくり休めよ。今日は自宅に帰れるの?」
「さあ、わからない。今は警察の人が来てる。というか、いやいや。疲れた声してんのはどっちよ、堀田。大丈夫?なんかさあ、こんな話したくないかもしれねえけど」
「いいよ」
「記者会見みたいなのするの?謝罪会見っていうのか、あれ」
「え?」
「テレビでよくやってるじゃん。自殺した子どもがいじめられてなかったか、キョーイクイインカイってのが調査するんだろ」
「あ、ああ…」
柏原はやや頭が悪い。大学の頃からずっとそういう振る舞いで、話が噛み合わないこともしばしばあるが、一生懸命会話をしようとするし、優しくて明るい、だらしなくてちょっと悪ガキ。友達が多くて、不思議と安心感がある。教壇に立ってしばらくしてから、柏原みたいなタイプを教員が妙に可愛がる気持ちをなんとなく���解した。その頃からずっと変わってない。
「やるのかなあ、わからないや。いじめは無かったと思うんだけど…、遺書とかが出てきて、内容にそういう旨が書かれていたら別だろうな。なあ、柏原。もしクラスでいじめがあって、気づいてないバカ教師だったら、俺は懲戒処分になると思う?」
「は、え?俺に聞くなよそんなこと。そういう法律とかがあるのか」
「知らない」
「うーん、でも、俺も、まりあちゃんがいじめられてるとは思わなかった。あの子、普通に明るい子だったじゃん」
「はは、そうだね」
「普通、分からねえよ。だって他人のことなんていちいち理解出来ねえし、なあ?」
柏原の言葉尻が少し荒い。もちろん、状況が状況であるから、全てが普段通りではないだろうが、こういう時に真っ先にしょぼくれるタイプの柏原に怒りがにじむのは、少し違和感がある。
「お前は悪くねえし、第一、なんでもかんでも先生が責任とるのはおかしいだろ」
柏原の声がもごもごした。タバコを咥えたのだろう。それでも、電話越しの声がだんだんと怒っていくのがわかった。
「柏原、怒ってる?」
「は?怒ってねえよ、別に」
怒っている。柏原は軽薄そうな見た目に似合わず声が低いため、ドスが効いてちょっと怖いなと思った。初めてだ、こんなこと。夕飯の前に送られてきた、変な誤変換だらけのメッセージのことを聞こうかと思っていたのも、触れないでおくことにした。
「風呂蔵はさ、その…遺書とか遺してたのか?」
「…さあ。俺は知らねえよ」
「じゃあ他殺の可能性もあるってこと?」
「いや、駅のホームの防犯カメラの映像で、まりあちゃん自分で飛び込んでるって、警察が。また明日警察行ってその映像を確認すんのよ、ひでえよな。いのりが無理そうなら俺が付き添いで行って、俺の確認で大丈夫だって言われたら俺が見る」
「ふーん…。いのりさんは、大丈夫?」
柏原は黙った。ひやひやしながら返事を待つ。
「だめだよ。もうずーっと泣きっぱなし。気の強いやつだけど、まあ、妹の面倒一生懸命見てきて最期は自殺って、そりゃ泣いても泣いても足りねえよ、無理もないんじゃねえの」
「あー」
胸が痛かった。形容し難いものが瞬く間に胸をいっぱいになって、今度は俺��黙った。
これからは、こういう気持ちを正面から受け止めることが仕事なのか。生徒の分、保護者の分、いのりさんの分、あと俺の分。俺の分?
ことと場合によっては世間の分。何なんだ一体。何の責任を果たせばいいんだ、何の秤にかけられてるんだ、何の受け皿になったんだ、俺は。どうして死んだんだ、風呂蔵。
素晴らしい明日はしばらく来ない、過去も変えられない、出席表の丸は二度とつかない。
「なあ、堀田」
「なに」
「元気出せよ。無職になったら、仕事紹介してやるから」
「はは…縁起でもないな」
縁起でもないってなんだ、大切な教え子が死んだのに。言葉はいつも使ってるものが出てくるもんだな。何十年もかけて馬鹿みたいに毎日使えば、そりゃそうか。
「とりあえず、また連絡するわ」
「うん、じゃあまた」
「またな」
「はい、またね。切っていいよ」
耳からスマートフォンを離し手元で画面を見ると、十分六秒、七秒、八秒…。通話時間は刻々と続いて行く。
「切れよ」
集音部分に口を近づけ、笑いながらそういうと、向こう側からも笑い声が漏れ聞こえ、プツリと切れた。
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satoyuri0711-blog · 8 years ago
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東京叶うNo1復縁08060030537 恋愛叶うNo1霊視相談 電話占いNo1佐藤ゆかり 口コミ叶うNo1スピリチュアル 当たるNo1復縁恋愛浮気 叶うNo1恋愛離婚不倫 千葉県白井市 宮崎県児湯郡西米良村 新潟県燕市 沖縄県名護市 大分県玖珠郡九重町
上司が嫌いな部下を好きになることはあるのでしょうか?会社の既婚上司と変な雰囲気になってしまい元に戻ろうと必死です。元々この上司には嫌われていましたが、一度少人数の会社の飲み会に参加したときに目の前に上司がいてそこでかなり話が合ったのと、私が仕事中と違いかなりフランクだったようでそれを気に入って貰えたようでした。そこから私、上司、もう1人でとかの3人で飲みに行くようになりました。しばらくして上司が他部署に異動することになりました。そこから様子がおかしくなり、新しくくる上司と仲良くならないで欲しいなとか、仲良くなったら浮気ですよとか言い出すようになりました。どうしたんだろうと思っていましたが上司はそのまま異動しました。その間も仕事のラインはしょっちゅう来ていましたし私もしていました。それから1ヶ月後私もその上司がいる部署に異動することになりました。これは元々上司が異動する前から決まっていたようでした。異動してから2人で飲みに行くことが増え、次また同じ部署で働くことがあったらその時は抱かせてくださいねと言われたり、私が職場の人を異性として見れないと話すと僕は君を女性としてみてるよと言い出すようになりました。最終手を繋がれてこれはおかしい!と思い、上司に接触はやめましょう!と話し合いをしました。上司は確かにあれはダメだね…と言って苦笑いしていましたが、結局また後日飲みに他部署の新年会に参加したときに上司が頑張って盛り上げていて、その帰り僕頑張ったよね?ギュってしてと言ってきました。仕事中もかなり優しく甘い感じがするので周りからも付き合ってるのでは?と噂が立てられていてかなりやりにくくなってしまいました。なぜこんなことになってしまったのかわかりません。ただ上司ばかりが悪いわけではないんです。私も手を繋がれたとき振り解けませんでした。自業自得です。ですが上司と部下の関係でさらに最初かなり嫌われていたのに好意なんて芽生えるものなのでしょうか?これ以上関係を進めたくないので会社には報告済みです。
もう心がお腹いっぱいです… 自分をコントロール出来ずに出てくる何かで心がいっぱいです。自分を変えよう変えようでこうしようこうしようこうすればいいかなぁ。お正月中これからの事今の事考えて来ました。でもいざ学校が始まって部活が始まるとどんどん苦しくなってきてそれを誤魔化すようにそんなことばっか考えちゃうからいけないんだ。ほかのこと考えよってやって来ました。でもふとすると誤魔化してきたのが頭の中にドバドバ流れてきてそしてまた誤魔化して…の繰り返しです。保険室の先生、スクールカウンセラー、親。相談したことはあります。色々な悩みについて…だけど何となく相談した後少し引かれたり、余計に気を使われたり、こんな事もありそれ以来誰にも話せなければ会う度に何となく怖いという感情が浮かんで来てしまい緊張してしまいそれを隠すので精一杯になってしまいます。久しぶりの学校で体もすぐ疲れてしまって体調も良くない日が続いていて、そのせいで今のようになってるのかもしれないですが…苦しいです。母親と会話するのも何となく凄い気を使ってしまったり、怖くて声が出なかったり、でコミュニケーションは必要最低限です。しかも、話しかけても軽く返されるだけなので基本は部費や定期や演奏会の参加費などお金が必要な時だけです。お金お金言ってるせいかバイトもできないと知っていながらお小遣いもないし、言ってもくれないしで吹奏楽でお金がかかる時顧問が出してお金待ってくれたりしています。なんで私は生まれたのですか。幸せなんてどこにもない。毎日毎日思ってることを否定され、認めてもらおうと勉強を頑張ってもあっそ扱い…なにをかてに生きていけばいいんですか。なんで。毎日毎日お金が無いお金が無い…我慢もできない。親はそれをよそめに趣味者も健康食品を毎日のように買ったり、やりたい放題…なんでこんな親の子に生まれたんですか。なんで普通じゃないんですか。普通に愛されたかったです。かまってもかばってもほしかったです。なんで普通じゃないんですか。愛されたい。可愛いねって言われたい。褒められたい。ここでしか書けるところないので許してください。
貯金について質問します。 私は今中学3年です。高校に上がったら、バイトをするので今色々調べています。四月から、お小遣いや携帯代、文具、服、遊び代、塾等、 食費以外バイトをして、そのお金から出すことになっています。 私が月に貰っているお金は、5000円+塾の交通費(塾の時用の緊急用のお金)です。あと、夜ゴミ出しとか行くとたまに、30円とかもらえます。高校の学費は払って貰える事になっていて、大学は自分で払って行く事になっています。私は大学に行きたいので、大学費用をちょっとでも貯金しようと考えているのですが、携帯は高校生になったら持たないと思っています。(私はネットで買い物が好きなので辞めれるかなと)でも、バイトをするにあたっても携帯は持っていないと不便だし連絡用にも持っていたい気持ちもあります。料金の安いガラケーでも良いかなとも考えています。大学に向けて塾も行きたいし、たまには服も買いたいな、なんて思います。私には、姉がいるのですが食費以外、全て自分でまかなっています。でも、たまに服買ったり友達と出掛けたりもしています。携帯も持っています。来年は大学生なので、大学の体験の時も、新幹線に乗って行って、遠い時は泊まって行ったりしています。それもバイト代を切り崩して行ってるみたいです。聞けば、それなりに貯金もあるそうです。姉の生活は、かなり充実しているように私にはみえます。かなりやりくり上手だと思います。私も姉みたいに、やりくりを上手く出来るのか心配です。姉は大学に受かったら、一人暮らしするらしく、そうなると、食費や家賃も自分で出すようなって仕送りや援助もないです。(奨学金を少し借りるみたいです。)私はかなり心配です。本気で貯金しないとヤバイなと思っています。 でも、私は貯金がかなり苦手です。気づけばお金を使っています。何か貯金出来る方法はないですかね?私が今考えているのは、お金の記録(いくら使ったか何に使ったか等)をつけるぐらいしか思いつきません。貯金上手な方ややりくりがうまい方、コツを教えて下さい。宜しくお願いします。
自閉症?7ヶ月半の息子について。7ヶ月半の息子がいます。生後1ヶ月の頃から違和感がずっとあり心配しています。運動面の発達は早く、2ヶ月半で寝返り、4ヶ月半でズリバイ、6ヶ月半でタカバイ、一人座り、つかまり立ち、伝い歩きをしていますが精神面の発達が心配です。(不安な点)・目が合わない(〜5ヶ月頃まで)・お腹が空いた時、眠い時以外は私が居なくてもずっと一人遊びしている・人見知りしない・呼んでも10回に1回くらいしか振り返らない(変な声で呼ぶと1回で振り返る)・1時間以上、一人遊びしていて、転んで泣いた時に呼びかけたらこっちを見たのでくるかと思ったら素通りしてオモチャのところへ… ・意思の疎通が全く出来ない感じがする・手遊び嫌い、抱っこしてもすぐどこかにハイハイで行ってしまう・真似たり、人の動きをじっと見たりが無い。人に興味がなさそう・喃語はかなりあるが、物に向かって話していて、こっちが話かけても無視。(安心な点)・目が合い、私が笑うと笑う・お腹が空いた時、眠い時は私以外の抱っこだと大泣きし、後追いする・縦抱きすると、眠い時は必死にしがみついてくる・つかまり立ち、伝い歩きはつま先もかかともしっかりつけている・つかまり立ちやハイハイの途中、ほんのたまに振り返り目が合うと笑う・お座りを覚えてからは、落ち着きが出てきて座ってしばらく遊んでいる・水の流れや回る物に興味が無いみたい・たかいたかい、ハンカチでいないないばぁで笑う。育休中ですが、万一自閉症なら少しでも側に居てあげたいので、フルタイムの正社員をやめてパート等にしたいなぁと思っています。まだ7ヶ月半なので分からないと思いますが、息子のような子でその後は普通に育ったケース、やっぱりなんらかの障害だったケース、教えて頂きたいです。手遊び、絵本、語りかけ、抱っこ、全部逃げられてしまい淋しいです。妊娠中から、後追いは大変だなぁと思いつつ、ママ、ママと甘えてきてくれるのが楽しみだったので、凹み気味な毎日です。息子との関わり方が分からずに居ます。
質問ですが、児童相談所とはどういうところですか?長くなります。私は高1で、バイトを掛け持ちしていますが、5月からバイトを始めても現時点での貯金は15万程です。今までの給料を 計算すると、30万は超えます。貯金が少ないのは生活費に充てているからです。私は自身の進学、または就職した後の引っ越し代や生活が安定するまで使うであろうお金を貯めています。私は父と祖母との3人暮らしですが、彼女のいる父はその彼女の家へ行って、生活費も入れず彼女と、その子供と毎週遊びへ出掛けます。生活費も入れてくれません。祖母もバイトをしています。しかし祖母は食費に多くお金を使っています。私がバイトをし始めた事で確かに前より生活は豊かになりました。彼女が出来るまではパチンコばかりで私に手を上げていた父も優しくなり、生きていく為に必死で私の話を聞いてくれなかった祖母も、話を聞いてくれるようになりました。しかし、私は私の夢があり、その夢を諦める事になったとしても高校を卒業したら私はこの場所から出ていきたいのです。私は実は自傷行為をしています。縫うほどの傷もありましたし、薬の大量服用もしました。精神科にも行き、病名もあります。薬も処方されています。状態の酷かった私はカウンセラーを勧められ、そのカウンセラー代があまりにも高かった事から私はその病院に行くこともやめ、もう半年行っていません。しかし、冬になり気分が憂鬱になると、やはり私も反抗期なのか、父に対する嫌悪感や、祖母に対する怒り、そして自分と自分が今置かれている理不尽な境遇を嘆き自傷行為をするようになりました。私は明るい生活がしたいです。友達と遊びたいです。5日学校2日バイトの生活はとてもきつくてつらいです。仲のいい友達が遊んで、ゲームにお金を費やし自分の将来の心配をしなくてもいい程の家族に恵まれていて、その上で私に優しくしてくれるので、私はその友達への感謝の気持ちと憎しみの気持ちがあって、突然泣き出してしまったりもします。だから、国が運営している児童相談所なら、無料でカウンセラーをしてくれて、1日1食のゼリーと栄養剤しか飲み食い出来ない私の心身の健康を保障してくれるのではないかと考えました。先生にも児童相談所を勧められていて、1度親と離れて生活してみてはどうかと言われていますでも厳しい監視下の中自傷すら出来ないという事は私の精神が保つかも分からないです。だから不安に思いました。児童相談所に相談しようかどうか迷っています。どのような措置、対応をするのかも気になります。出来るだけ詳しく教えて下さったら嬉しいです。ここまで読んで下さりありがとうございます。解答、宜しくお願い致します。
贈与税等について質問させてください。私はゲイで、同性のパートナー(3月末で退職し来年度より収入0円)に専業主夫になってもらい同棲することにしました。 ちなみに、渋谷等で始まった「同性パートナー証明書」は取得してませんし、取得しない予定です。パートナーは私の扶養にできるわけもなく、食費・家賃等必要経費の他、国保・年金も全て私の収入より支出する予定です。関係は中途半端で不安定ということもあり、万が一のために私の収入の一部をパートナーに渡し貯金させることにしました。この際、貯金用資金の他、贈与税の課税対象になるのは、どの範囲までなのでしょうか?また、私達のような関係で税制上気をつけなければならないことはありますか?
今年二十歳になった男子です。私は今告白すべきかどうか迷っています。今から5年前、中学生の時、同級生に好きな女の子がいまして、その子に一度告白しました。 しかし、フラれてしまい自棄で「成人式であなたが認めてくれるような男になる、それからもう一度告白する!」と本人の前で言ってしまいました。今思い出せば恥ずかしい限りです。約束した手前、きちんと成人式で告白すべきでしょうが、友人などにこのことを相談すると「別に、もともと彼氏だったわけでもないのにもう一度告白するなんていかがなものか。それよりもこの5年でやっと治ってきた関係がもう一度壊れるかもしれないよ」と言われ、告白しませんでした。 ”このことについて皆様はどう思われるでしょうか。”あと、2月のはじめごろにその子ともう一人共通の友人を交えてご飯を食べに行くことになりました。こんなことは今回が初めてで、もし彼女が5年前のこの出来事を覚えていてこれを企画したのかと思うと、申し訳なさと「言わなければ」という使命感で苦しいです。”やはりフラれてもいいという覚悟でけじめをつけるべきなんでしょうか”皆様よろしくお願いいたします。ちなみに今も私は彼女のことが大好きです。補足:皆様の回答を読ませていただき、今回は「好きです」という告白はなしにしようと思います。5年前のことについて「もし覚えていてくれて、それが原因で新しい恋に進めなかったのだとしたら、ごめんなさい。」と謝るだけにしようと思っています。ただ、諦めた訳でもなく、今後はきちんと食事などにお誘いをしていい関係を築いていきたいとも思って居ます。これは女性の方から見るとどう思われるのでしょうか。ただ諦めの悪い人だと感じられるのであったら考え直すつもりです。
近所のママづきあい疎外感を持たれた方、どう乗り越えましたか? 未就学児を持つ同級生、同性の分譲地家のご近所のお付き合いの仕方に相談です。住宅街の7件位の真ん中に我が家があります。私も気軽に遊べるママ友は欲しいのですが(残念ですがまだ出来ていません)地元の先輩ママや母が近所で仲よくして妬まれた事や物を盗った、盗らない等で子供同士の関係が悪化したり悩んでたことを見ていたので、なるべくご近所とは親は挨拶程度が理想で子供が小学生になれば子供同士仲良く遊んでくれたら思っていました。我が家は幼稚園年中の息子が居るのですが少し前まで人見知りで下の子がまだ2歳で活発なので家の前ではなるべく遊ばせず公園などで遊ばせていました。ご近所さんは同じく小さい子もいるのですが保育園や小学生など帰園時間が遅くなるので夕方6時ごろから外遊びをたまにされていました。我が家は寝る時間も早くご飯の時や家にいる時は無理せず、でくわした時に子供は遊んでいただいた事はあります。私は井戸端会議は苦手ですし、下の子もいるのでそちらについていることが多かったです。最近その親子たちも子供が成長するにつれ裏の家の人たちやどんどん仲良くなってきたようでバーベキューをされたり(うちは私が井戸端会議などあまりしないからか誘われていない)知らない間に同じ習い事に行かれたようで、決まった時間から子供たちの○○君バイバイ―言う声や遊び声が聞こえてきます。カートの音が聞こえたりします。住宅街なのでよく聞こえるので長男も気づきます。だれか遊んでいるねと、もう暗いのに。と言ったり、僕も外で遊びたいな。と言ったりします。ですがが冬なので暗くうちは出してあげることができません。その様子を見ているとうちは取り残されていて。右端の同い年の親子は少し遅れて引っ越してこられて同じ幼稚園に行くのですが、もう片方の人とすでに仲良しだからか挨拶しても会釈だけだったりです。声をかけられる事が有っても園の質問、頼み事をされるとささーと消える感じです。子どもの事を考えると不憫で申し訳なく思うのですが、かといって車でおでかけしたりする輪に入れて貰えるきもしないし、入れてもらえても仲が悪化した時の事を考えると私には出来そうにないです。春になると明るくなるし、もっと外の声も活発聞こえてきそうです。私は疎外感を感じるのは平気なのですが子供たちの今後を考えると不安です。特に下の子は同じ年の子に家が挟まれているので仲間はずれにされないかとか、今から心配で家事もろくに手もつかず夜も眠れません。暗い気持ちになってしまい、子育てにも余裕がなくなってくるので子供達のためにも明るく悩まないようにしたいです。よろしければ皆さんご意見やアドバイスいただけないでしょうか。
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satoyuri0711-blog · 8 years ago
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東京叶うNo1復縁08060030537 恋愛叶うNo1霊視相談 電話占いNo1佐藤ゆかり 口コミ叶うNo1スピリチュアル 当たるNo1復縁恋愛浮気 叶うNo1恋愛離婚不倫 千葉県白井市 宮崎県児湯郡西米良村 新潟県燕市 沖縄県名護市 大分県玖珠郡九重町
上司が嫌いな部下を好きになることはあるのでしょうか?会社の既婚上司と変な雰囲気になってしまい元に戻ろうと必死です。元々この上司には嫌われていましたが、一度少人数の会社の飲み会に参加したときに目の前に上司がいてそこでかなり話が合ったのと、私が仕事中と違いかなりフランクだったようでそれを気に入って貰えたようでした。そこから私、上司、もう1人でとかの3人で飲みに行くようになりました。しばらくして上司が他部署に異動することになりました。そこから様子がおかしくなり、新しくくる上司と仲良くならないで欲しいなとか、仲良くなったら浮気ですよとか言い出すようになりました。どうしたんだろうと思っていましたが上司はそのまま異動しました。その間も仕事のラインはしょっちゅう来ていましたし私もしていました。それから1ヶ月後私もその上司がいる部署に異動することになりました。これは元々上司が異動する前から決まっていたようでした。異動してから2人で飲みに行くことが増え、次また同じ部署で働くことがあったらその時は抱かせてくださいねと言われたり、私が職場の人を異性として見れないと話すと僕は君を女性としてみてるよと言い出すようになりました。最終手を繋がれてこれはおかしい!と思い、上司に接触はやめましょう!と話し合いをしました。上司は確かにあれはダメだね…と言って苦笑いしていましたが、結局また後日飲みに他部署の新年会に参加したときに上司が頑張って盛り上げていて、その帰り僕頑張ったよね?ギュってしてと言ってきました。仕事中もかなり優しく甘い感じがするので周りからも付き合ってるのでは?と噂が立てられていてかなりやりにくくなってしまいました。なぜこんなことになってしまったのかわかりません。ただ上司ばかりが悪いわけではないんです。私も手を繋がれたとき振り解けませんでした。自業自得です。ですが上司と部下の関係でさらに最初かなり嫌われていたのに好意なんて芽生えるものなのでしょうか?これ以上関係を進めたくないので会社には報告済みです。
もう心がお腹いっぱいです… 自分をコントロール出来ずに出てくる何かで心がいっぱいです。自分を変えよう変えようでこ��しようこうしようこうすればいいかなぁ。お正月中これからの事今の事考えて来ました。でもいざ学校が始まって部活が始まるとどんどん苦しくなってきてそれを誤魔化すようにそんなことばっか考えちゃうからいけないんだ。ほかのこと考えよってやって来ました。でもふとすると誤魔化してきたのが頭の中にドバドバ流れてきてそしてまた誤魔化して…の繰り返しです。保険室の先生、スクールカウンセラー、親。相談したことはあります。色々な悩みについて…だけど何となく相談した後少し引かれたり、余計に気を使われたり、こんな事もありそれ以来誰にも話せなければ会う度に何となく怖いという感情が浮かんで来てしまい緊張してしまいそれを隠すので精一杯になってしまいます。久しぶりの学校で体もすぐ疲れてしまって体調も良くない日が続いていて、そのせいで今のようになってるのかもしれないですが…苦しいです。母親と会話するのも何となく凄い気を使ってしまったり、怖くて声が出なかったり、でコミュニケーションは必要最低限です。しかも、話しかけても軽く返されるだけなので基本は部費や定期や演奏会の参加費などお金が必要な時だけです。お金お金言ってるせいかバイトもできないと知っていながらお小遣いもないし、言ってもくれないしで吹奏楽でお金がかかる時顧問が出してお金待ってくれたりしています。なんで私は生まれたのですか。幸せなんてどこにもない。毎日毎日思ってることを否定され、認めてもらおうと勉強を頑張ってもあっそ扱い…なにをかてに生きていけばいいんですか。なんで。毎日毎日お金が無いお金が無い…我慢もできない。親はそれをよそめに趣味者も健康食品を毎日のように買ったり、やりたい放題…なんでこんな親の子に生まれたんですか。なんで普通じゃないんですか。普通に愛されたかったです。かまってもかばってもほしかったです。なんで普通じゃないんですか。愛されたい。可愛いねって言われたい。褒められたい。ここでしか書けるところないので許してください。
貯金について質問します。 私は今中学3年です。高校に上がったら、バイトをするので今色々調べています。四月から、お小遣いや携帯代、文具、服、遊び代、塾等、 食費以外バイトをして、そのお金から出すことになっています。 私が月に貰っているお金は、5000円+塾の交通費(塾の時用の緊急用のお金)です。あと、夜ゴミ出しとか行くとたまに、30円とかもらえます。高校の学費は払って貰える事になっていて、大学は自分で払って行く事になっています。私は大学に行きたいので、大学費用をちょっとでも貯金しようと考えているのですが、携帯は高校生になったら持たないと思っています。(私はネットで買い物が好きなので辞めれるかなと)でも、バイトをするにあたっても携帯は持っていないと不便だし連絡用にも持っていたい気持ちもあります。料金の安いガラケーでも良いかなとも考えています。大学に向けて塾も行きたいし、たまには服も買いたいな、なんて思います。私には、姉がいるのですが食費以外、全て自分でまかなっています。でも、たまに服買ったり友達と出掛けたりもしています。携帯も持っています。来年は大学生なので、大学の体験の時も、新幹線に乗って行って、遠い時は泊まって行ったりしています。それもバイト代を切り崩して行ってるみたいです。聞けば、それなりに貯金もあるそうです。姉の生活は、かなり充実しているように私にはみえます。かなりやりくり上手だと思います。私も姉みたいに、やりくりを上手く出来るのか心配です。姉は大学に受かったら、一人暮らしするらしく、そうなると、食費や家賃も自分で出すようなって仕送りや援助もないです。(奨学金を少し借りるみたいです。)私はかなり心配です。本気で貯金しないとヤバイなと思っています。 でも、私は貯金がかなり苦手です。気づけばお金を使っています。何か貯金出来る方法はないですかね?私が今考えているのは、お金の記録(いくら使ったか何に使ったか等)をつけるぐらいしか思いつきません。貯金上手な方ややりくりがうまい方、コツを教えて下さい。宜しくお願いします。
自閉症?7ヶ月半の息子について。7ヶ月半の息子がいます。生後1ヶ月の頃から違和感がずっとあり心配しています。運動面の発達は早く、2ヶ月半で寝返り、4ヶ月半でズリバイ、6ヶ月半でタカバイ、一人座り、つかまり立ち、伝い歩きをしていますが精神面の発達が心配です。(不安な点)・目が合わない(〜5ヶ月頃まで)・お腹が空いた時、眠い時以外は私が居なくてもずっと一人遊びしている・人見知りしない・呼んでも10回に1回くらいしか振り返らない(変な声で呼ぶと1回で振り返る)・1時間以上、一人遊びしていて、転んで泣いた時に呼びかけたらこっちを見たのでくるかと思ったら素通りしてオモチャのところへ… ・意思の疎通が全く出来ない感じがする・手遊び嫌い、抱っこしてもすぐどこかにハイハイで行ってしまう・真似たり、人の動きをじっと見たりが無い。人に興味がなさそう・喃語はかなりあるが、物に向かって話していて、こっちが話かけても無視。(安心な点)・目が合い、私が笑うと笑う・お腹が空いた時、眠い時は私以外の抱っこだと大泣きし、後追いする・縦抱きすると、眠い時は必死にしがみついてくる・つかまり立ち、伝い歩きはつま先もかかともしっかりつけている・つかまり立ちやハイハイの途中、ほんのたまに振り返り目が合うと笑う・お座りを覚えてからは、落ち着きが出てきて座ってしばらく遊んでいる・水の流れや回る物に興味が無いみたい・たかいたかい、ハンカチでいないないばぁで笑う。育休中ですが、万一自閉症なら少しでも側に居てあげたいので、フルタイムの正社員をやめてパート等にしたいなぁと思っています。まだ7ヶ月半なので分からないと思いますが、息子のような子でその後は普通に育ったケース、やっぱりなんらかの障害だったケース、教えて頂きたいです。手遊び、絵本、語りかけ、抱っこ、全部逃げられてしまい淋しいです。妊娠中から、後追いは大変だなぁと思いつつ、ママ、ママと甘えてきてくれるのが楽しみだったので、凹み気味な毎日です。息子との関わり方が分からずに居ます。
質問ですが、児童相談所とはどういうところですか?長くなります。私は高1で、バイトを掛け持ちしていますが、5月からバイトを始めても現時点での貯金は15万程です。今までの給料を 計算すると、30万は超えます。貯金が少ないのは生活費に充てているからです。私は自身の進学、または就職した後の引っ越し代や生活が安定するまで使うであろうお金を貯めています。私は父と祖母との3人暮らしですが、彼女のいる父はその彼女の家へ行って、生活費も入れず彼女と、その子供と毎週遊びへ出掛けます。生活費も入れてくれません。祖母もバイトをしています。しかし祖母は食費に多くお金を使っています。私がバイトをし始めた事で確かに前より生活は豊かになりました。彼女が出来るまではパチンコばかりで私に手を上げていた父も優しくなり、生きていく為に必死で私の話を聞いてくれなかった祖母も、話を聞いてくれるようになりました。しかし、私は私の夢があり、その夢を諦める事になったとしても高校を卒業したら私はこの場所から出ていきたいのです。私は実は自傷行為をしています。縫うほどの傷もありましたし、薬の大量服用もしました。精神科にも行き、病名もあります。薬も処方されています。状態の酷かった私はカウンセラーを勧められ、そのカウンセラー代があまりにも高かった事から私はその病院に行くこともやめ、もう半年行っていません。しかし、冬になり気分が憂鬱になると、やはり私も反抗期なのか、父に対する嫌悪感や、祖母に対する怒り、そして自分と自分が今置かれている理不尽な境遇を嘆き自傷行為をするようになりました。私は明るい生活がしたいです。友達と遊びたいです。5日学校2日バイトの生活はとてもきつくてつらいです。仲のいい友達が遊んで、ゲームにお金を費やし自分の将来の心配をしなくてもいい程の家族に恵まれていて、その上で私に優しくしてくれるので、私はその友達への感謝の気持ちと憎しみの気持ちがあって、突然泣き出してしまったりもします。だから、国が運営している児童相談所なら、無料でカウンセラーをしてくれて、1日1食のゼリーと栄養剤しか飲み食い出来ない私の心身の健康を保障してくれるのではないかと考えました。先生にも児童相談所を勧められていて、1度親と離れて生活してみてはどうかと言われていますでも厳しい監視下の中自傷すら出来ないという事は私の精神が保つかも分からないです。だから不安に思いました。児童相談所に相談しようかどうか迷っています。どのような措置、対応をするのかも気になります。出来るだけ詳しく教えて下さったら嬉しいです。ここまで読んで下さりありがとうございます。解答、宜しくお願い致します。
贈与税等について質問させてください。私はゲイで、同性のパートナー(3月末で退職し来年度より収入0円)に専業主夫になってもらい同棲することにしました。 ちなみに、渋谷等で始まった「同性パートナー証明書」は取得してませんし、取得しない予定です。パートナーは私の扶養にできるわけもなく、食費・家賃等必要経費の他、国保・年金も全て私の収入より支出する予定です。関係は中途半端で不安定ということもあり、万が一のために私の収入の一部をパートナーに渡し貯金させることにしました。この際、貯金用資金の他、贈与税の課税対象になるのは、どの範囲までなのでしょうか?また、私達のような関係で税制上気をつけなければならないことはありますか?
今年二十歳になった男子です。私は今告白すべきかどうか迷っています。今から5年前、中学生の時、同級生に好きな女の子がいまして、その子に一度告白しました。 しかし、フラれてしまい自棄で「成人式であなたが認めてくれるような男になる、それからもう一度告白する!」と本人の前で言ってしまいました。今思い出せば恥ずかしい限りです。約束した手前、きちんと成人式で告白すべきでしょうが、友人などにこのことを相談すると「別に、もともと彼氏だったわけでもないのにもう一度告白するなんていかがなものか。それよりもこの5年でやっと治ってきた関係がもう一度壊れるかもしれないよ」と言われ、告白しませんでした。 ”このことについて皆様はどう思われるでしょうか。”あと、2月のはじめごろにその子ともう一人共通の友人を交えてご飯を食べに行くことになりました。こんなことは今回が初めてで、もし彼女が5年前のこの出来事を覚えていてこれを企画したのかと思うと、申し訳なさと「言わなければ」という使命感で苦しいです。”やはりフラれてもいいという覚悟でけじめをつけるべきなんでしょうか”皆様よろしくお願いいたします。ちなみに今も私は彼女のことが大好きです。補足:皆様の回答を読ませていただき、今回は「好きです」という告白はなしにしようと思います。5年前のことについて「もし覚えていてくれて、それが原因で新しい恋に進めなかったのだとしたら、ごめんなさい。」と謝るだけにしようと思っています。ただ、諦めた訳でもなく、今後はきちんと食事などにお誘いをしていい関係を築いていきたいとも思って居ます。これは女性の方から見るとどう思われるのでしょうか。ただ諦めの悪い人だと感じられるのであったら考え直すつもりです。
近所のママづきあい疎外感を持たれた方、どう乗り越えましたか? 未就学児を持つ同級生、同性の分譲地家のご近所のお付き合いの仕方に相談です。住宅街の7件位の真ん中に我が家があります。私も気軽に遊べるママ友は欲しいのですが(残念ですがまだ出来ていません)地元の先輩ママや母が近所で仲よくして妬まれた事や物を盗った、盗らない等で子供同士の関係が悪化したり悩んでたことを見ていたので、なるべくご近所とは親は挨拶程度が理想で子供が小学生になれば子供同士仲良く遊んでくれたら思っていました。我が家は幼稚園年中の息子が居るのですが少し前まで人見知りで下の子がまだ2歳で活発なので家の前ではなるべく遊ばせず公園などで遊ばせていました。ご近所さんは同じく小さい子もいるのですが保育園や小学生など帰園時間が遅くなるので夕方6時ごろから外遊びをたまにされていました。我が家は寝る時間も早くご飯の時や家にいる時は無理せず、でくわした時に子供は遊んでいただいた事はあります。私は井戸端会議は苦手ですし、下の子もいるのでそちらについていることが多かったです。最近その親子たちも子供が成長するにつれ裏の家の人たちやどんどん仲良くなってきたようでバーベキューをされたり(うちは私が井戸端会議などあまりしないからか誘われていない)知らない間に同じ習い事に行かれたようで、決まった時間から子供たちの○○君バイバイ―言う声や遊び声が聞こえてきます。カートの音が聞こえたりします。住宅街なのでよく聞こえるので長男も気づきます。だれか遊んでいるねと、もう暗いのに。と言ったり、僕も外で遊びたいな。と言ったりします。ですがが冬なので暗くうちは出してあげることができません。その様子を見ているとうちは取り残されていて��右端の同い年の親子は少し遅れて引っ越してこられて同じ幼稚園に行くのですが、もう片方の人とすでに仲良しだからか挨拶しても会釈だけだったりです。声をかけられる事が有っても園の質問、頼み事をされるとささーと消える感じです。子どもの事を考えると不憫で申し訳なく思うのですが、かといって車でおでかけしたりする輪に入れて貰えるきもしないし、入れてもらえても仲が悪化した時の事を考えると私には出来そうにないです。春になると明るくなるし、もっと外の声も活発聞こえてきそうです。私は疎外感を感じるのは平気なのですが子供たちの今後を考えると不安です。特に下の子は同じ年の子に家が挟まれているので仲間はずれにされないかとか、今から心配で家事もろくに手もつかず夜も眠れません。暗い気持ちになってしまい、子育てにも余裕がなくなってくるので子供達のためにも明るく悩まないようにしたいです。よろしければ皆さんご意見やアドバイスいただけないでしょうか。
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貯金について質問します。 私は今中学3年です。高校に上がったら、バイトをするので今色々調べています。四月から、お小遣いや携帯代、文具、服、遊び代、塾等、 食費以外バイトをして、そのお金から出すことになっています。 私が月に貰っているお金は、5000円+塾の交通費(塾の時用の緊急用のお金)です。あと、夜ゴミ出しとか行くとたまに、30円とかもらえます。高校の学費は払って貰える事になっていて、大学は自分で払って行く事になっています。私は大学に行きたいので、大学費用をちょっとでも貯金しようと考えているのですが、携帯は高校生になったら持たないと思っています。(私はネットで買い物が好きなので辞めれるかなと)でも、バイトをするにあたっても携帯は持っていないと不便だし連絡用にも持っていたい気持ちもあります。料金の安いガラケーでも良いかなとも考えています。大学に向けて塾も行きたいし、たまには服も買いたいな、なんて思います。私には、姉がいるのですが食費以外、全て自分でまかなっています。でも、たまに服買ったり友達と出掛けたりもしています。携帯も持っています。来年は大学生なので、大学の体験の時も、新幹線に乗って行って、遠い時は泊まって行ったりしています。それもバイト代を切り崩して行ってるみたいです。聞けば、それなりに貯金もあるそうです。姉の生活は、かなり充実しているように私にはみえます。かなりやりくり上手だと思います。私も姉みたいに、やりくりを上手く出来るのか心配です。姉は大学に受かったら、一人暮らしするらしく、そうなると、食費や家賃も自分で出すようなって仕送りや援助もないです。(奨学金を少し借りるみたいです。)私はかなり心配です。本気で貯金しないとヤバイなと思っています。 でも、私は貯金がかなり苦手です。気づけばお金を使っています。何か貯金出来る方法はないですかね?私が今考えているのは、お金の記録(いくら使ったか何に使ったか等)をつけるぐらいしか思いつきません。貯金上手な方ややりくりがうまい方、コツを教えて下さい。宜しくお願いします。
自閉症?7ヶ月半の息子について。7ヶ月半の息子がいます。生後1ヶ月の頃から違和感がずっとあり心配しています。運動面の発達は早く、2ヶ月半で寝返り、4ヶ月半でズリバイ、6ヶ月半でタカバイ、一人座り、つかまり立ち、伝い歩きをしていますが精神面の発達が心配です。(不安な点)・目が合わない(〜5ヶ月頃まで)・お腹が空いた時、眠い時以外は私が居なくてもずっと一人遊びしている・人見知りしない・呼んでも10回に1回くらいしか振り返らない(変な声で呼ぶと1回で振り返る)・1時間以上、一人遊びしていて、転んで泣いた時に呼びかけたらこっちを見たのでくるかと思ったら素通りしてオモチャのところへ… ・意思の疎通が全く出来ない感じがする・手遊び嫌い、抱っこしてもすぐどこかにハイハイで行ってしまう・真似たり、人の動きをじっと見たりが無い。人に興味がなさそう・喃語はかなりあるが、物に向かって話していて、こっちが話かけても無視。(安心な点)・目が合い、私が笑うと笑う・お腹が空いた時、眠い時は私以外の抱っこだと大泣きし、後追いする・縦抱きすると、眠い時は必死にしがみついてくる・つかまり立ち、伝い歩きはつま先もかかともしっかりつけている・つかまり立ちやハイハイの途中、ほんのたまに振り返り目が合うと笑う・お座りを覚えてからは、落ち着きが出てきて座ってしばらく遊んでいる・水の流れや回る物に興味が無いみたい・たかいたかい、ハンカチでいないないばぁで笑う。育休中ですが、万一自閉症なら少しでも側に居てあげたいので、フルタイムの正社員をやめてパート等にしたいなぁと思っています。まだ7ヶ月半なので分からないと思いますが、息子のような子でその後は普通に育ったケース、やっぱりなんらかの障害だったケース、教えて頂きたいです。手遊び、絵本、語りかけ、抱っこ、全部逃げられてしまい淋しいです。妊娠中から、後追いは大変だなぁと思いつつ、ママ、ママと甘えてきてくれるのが楽しみだったので、凹み気味な毎日です。息子との関わり方が分からずに居ます。
質問ですが、児童相談所とはどういうところですか?長くなります。私は高1で、バイトを掛け持ちしていますが、5月からバイトを始めても現時点での貯金は15万程です。今までの給料を 計算すると、30万は超えます。貯金が少ないのは生活費に充てているからです。私は自身の進学、または就職した後の引っ越し代や生活が安定するまで使うであろうお金を貯めています。私は父と祖母との3人暮らしですが、彼女のいる父はその彼女の家へ行って、生活費も入れず彼女と、その子供と毎週遊びへ出掛けます。生活費も入れてくれません。祖母もバイトをしています。しかし祖母は食費に多くお金を使っています。私がバイトをし始めた事で確かに前より生活は豊かになりました。彼女が出来るまではパチンコばかりで私に手を上げていた父も優しくなり、生きていく為に必死で私の話を聞いてくれなかった祖母も、話を聞いてくれるようになりました。しかし、私は私の夢があり、その夢を諦める事になったとしても高校を卒業したら私はこの場所から出ていきたいのです。私は実は自傷行為���しています。縫うほどの傷もありましたし、薬の大量服用もしました。精神科にも行き、病名もあります。薬も処方されています。状態の酷かった私はカウンセラーを勧められ、そのカウンセラー代があまりにも高かった事から私はその病院に行くこともやめ、もう半年行っていません。しかし、冬になり気分が憂鬱になると、やはり私も反抗期なのか、父に対する嫌悪感や、祖母に対する怒り、そして自分と自分が今置かれている理不尽な境遇を嘆き自傷行為をするようになりました。私は明るい生活がしたいです。友達と遊びたいです。5日学校2日バイトの生活はとてもきつくてつらいです。仲のいい友達が遊んで、ゲームにお金を費やし自分の将来の心配をしなくてもいい程の家族に恵まれていて、その上で私に優しくしてくれるので、私はその友達への感謝の気持ちと憎しみの気持ちがあって、突然泣き出してしまったりもします。だから、国が運営している児童相談所なら、無料でカウンセラーをしてくれて、1日1食のゼリーと栄養剤しか飲み食い出来ない私の心身の健康を保障してくれるのではないかと考えました。先生にも児童相談所を勧められていて、1度親と離れて生活してみてはどうかと言われていますでも厳しい監視下の中自傷すら出来ないという事は私の精神が保つかも分からないです。だから不安に思いました。児童相談所に相談しようかどうか迷っています。どのような措置、対応をするのかも気になります。出来るだけ詳しく教えて下さったら嬉しいです。ここまで読んで下さりありがとうございます。解答、宜しくお願い致します。
贈与税等について質問させてください。私はゲイで、同性のパートナー(3月末で退職し来年度より収入0円)に専業主夫になってもらい同棲することにしました。 ちなみに、渋谷等で始まった「同性パートナー証明書」は取得してませんし、取得しない予定です。パートナーは私の扶養にできるわけもなく、食費・家賃等必要経費の他、国保・年金も全て私の収入より支出する予定です。関係は中途半端で不安定ということもあり、万が一のために私の収入の一部をパートナーに渡し貯金させることにしました。この際、貯金用資金の他、贈与税の課税対象になるのは、どの範囲までなのでしょうか?また、私達のような関係で税制上気をつけなければならないことはありますか?
今年二十歳になった男子です。私は今告白すべきかどうか迷っています。今から5年前、中学生の時、同級生に好きな女の子がいまして、その子に一度告白しました。 しかし、フラれてしまい自棄で「成人式であなたが認めてくれるような男になる、それからもう一度告白する!」と本人の前で言ってしまいました。今思い出せば恥ずかしい限りです。約束した手前、きちんと成人式で告白すべきでしょうが、友人などにこのことを相談すると「別に、もともと彼氏だったわけでもないのにもう一度告白するなんていかがなものか。それよりもこの5年でやっと治ってきた関係がもう一度壊れるかもしれないよ」と言われ、告白しませんでした。 ”このことについて皆様はどう思われるでしょうか。”あと、2月のはじめごろにその子ともう一人共通の友人を交えてご飯を食べに行くことになりました。こんなことは今回が初めてで、もし彼女が5年前のこの出来事を覚えていてこれを企画したのかと思うと、申し訳なさと「言わなければ」という使命感で苦しいです。”やはりフラれてもいいという覚悟でけじめをつけるべきなんでしょうか”皆様よろしくお願いいたします。ちなみに今も私は彼女のことが大好きです。補足:皆様の回答を読ませていただき、今回は「好きです」という告白はなしにしようと思います。5年前のことについて「もし覚えていてくれて、それが原因で新しい恋に進めなかったのだとしたら、ごめんなさい。」と謝るだけにしようと思っています。ただ、諦めた訳でもなく、今後はきちんと食事などにお誘いをしていい関係を築いていきたいとも思って居ます。これは女性の方から見るとどう思われるのでしょうか。ただ諦めの悪い人だと感じられるのであったら考え直すつもりです。
近所のママづきあい疎外感を持たれた方、どう乗り越えましたか? 未就学児を持つ同級生、同性の分譲地家のご近所のお付き合いの仕方に相談です。住宅街の7件位の真ん中に我が家があります。私も気軽に遊べるママ友は欲しいのですが(残念ですがまだ出来ていません)地元の先輩ママや母が近所で仲よくして妬まれた事や物を盗った、盗らない等で子供同士の関係が悪化したり悩んでたことを見ていたので、なるべくご近所とは親は挨拶程度が理想で子供が小学生になれば子供同士仲良く遊んでくれたら思っていました。我が家は幼稚園年中の息子が居るのですが少し前まで人見知りで下の子がまだ2歳で活発なので家の前ではなるべく遊ばせず公園などで遊ばせていました。ご近所さんは同じく小さい子もいるのですが保育園や小学生など帰園時間が遅くなるので夕方6時ごろから外遊びをたまにされていました。我が家は寝る時間も早くご飯の時や家にいる時は無理せず、でくわした時に子供は遊んでいただいた事はあります。私は井戸端会議は苦手ですし、下の子もいるのでそちらについていることが多かったです。最近その親子たちも子供が成長するにつれ裏の家の人たちやどんどん仲良くなってきたようでバーベキューをされたり(うちは私が井戸端会議などあまりしないからか誘われていない)知らない間に同じ習い事に行かれたようで、決まった時間から子供たちの○○君バイバイ―言う声や遊び声が聞こえてきます。カートの音が聞こえたりします。住宅街なのでよく聞こえるので長男も気づきます。だれか遊んでいるねと、もう暗いのに。と言ったり、僕も外で遊びたいな。と言ったりします。ですがが冬なので暗くうちは出してあげることができません。その様子を見ているとうちは取り残されていて。右端の同い年の親子は少し遅れて引っ越してこられて同じ幼稚園に行くのですが、もう片方の人とすでに仲良しだからか挨拶しても会釈だけだったりです。声をかけられる事が有っても園の質問、頼み事をされるとささーと消える感じです。子どもの事を考えると不憫で申し訳なく思うのですが、かといって車でおでかけしたりする輪に入れて貰えるきもしないし、入れてもらえても仲が悪化した時の事を考えると私には出来そうにないです。春になると明るくなるし、もっと外の声も活発聞こえてきそうです。私は疎外感を感じるのは平気なのですが子供たちの今後を考えると不安です。特に下の子は同じ年の子に家が挟まれているので仲間はずれにされないかとか、今から心配で家事もろくに手もつかず夜も眠れません。暗い気持ちになってしまい、子育てにも余裕がなくなってくるので子供達のためにも明るく悩まないようにしたいです。よろしければ皆さんご意見やアドバイスいただけないでしょうか。
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