「神の見えざる手」にも、いろいろあって、今回の「神の手」は、どうやらリセットボタンに向かってのばされた指であるようだ、という話をしようとおもいます。
皮切りに取り上げたいのは「軍事」です
ははは。なんだか、紙芝居みたいで、primitiveで、面白い出だしのツイートですね。
一度、やってみたかった😁
ウクライナでの戦争を恐怖と共に眺めているグループのひとつにアメリカの軍事専門家たちがいる。
ごく近い将来の「空がなくなる」現実を眼前の光景とともに噛みしめている
ドローンが飛び交って戦果をあげているのは、いい。
予想の範囲内で、むしろ想定よりも単独で飛来、あるいは攻撃するドローンは、おおきな被害を与えられなかった。
人間による遠隔操縦のドローンはステルス性はあっても低速なせいで撃墜できるドローンの数が多かったからです。
でも戦況を見つめる世界中の軍事専門家たちには、少なくとも2030年頃にはやってくる軍事上の「リセット」が現実のものだと判らないわけにはいかなかった。
アメリカ軍の、ここ80年の歴史で初めて、「空が助けてくれない」戦争を戦わなければならないことが明らかになったからです。
あの悲惨なチョシンの戦いでさえ、圧倒的な数で押し寄せる人民解放軍の洪水のなかを逃げ惑って、前にも左右にも後ろにも中国の兵士たちが囲む絶望的な戦場で、なんとか米軍が壊滅しないですんで、秩序だっているとは到底言えないが、はるばる釜山まで敗走することが出来たのは、空軍の優位があったからでした。
対地ロケット弾を叩き込み、ナパームで山腹を焼き尽くして、道路の両側にずらりと並ぶ狙撃兵や、凍てついた大地を裸足で蹴って突撃してくる恐ろしい形相の解放軍兵士を、相手が人間だとはおもえないほど、紙人形からなにかのように一挙に焼き尽くして、ただの炭に変えてしまう空爆がなければ、米軍は、全滅していた。
いまのドローンは、世代的には、ミサイルでいえば第二次世界大戦でいえばナチのV1で、あのパルスジェットで低高度を飛んで、時速700km以下の水平飛行で目的地まで飛んで、そこから浅角ダイブに入る始原的なミサイルのV1は、タイフーンやスピットファイアで撃墜することが出来た。
V2は、そうはいかなかった。
成層圏を飛んで飛来して、そこから逆落としに落ちて、3000km/hのインパクト速度で1トンのアマトール火薬を爆発させるV2は、迎撃の方法はなくて、結局、最も効果的な「迎撃」方法は、Hague-Wassenaar の発射基地を破壊することでしかなかったが、V2は、ヒットラーのテラー戦略のなかでも、うまくいったほうだったでしょう。
でもね。
だって、ジャイロで最大高度88000mの落下開始地点まで誘導する方式では、もとより「爆撃精度」などは期待のしようもありませんでした。
今度はAIによって自律的に誘導されるところが異なる。高空から、まったく音も立てずに、反撃の余裕も与えずにピンポイントで音速の数倍の速度で落下してくる。
なあんだ、なにかとおもったら、このあいだまで流行っていたAIの話ですかい。
それならそうと、言ってくれれば、読まなかったのに、とおもった、そこのきみ、
甘い。
もう、ほぼ技術的に完成しているAIによる自律型ドローン/ミサイルは、そんなにあまちゃんな兵器ではないので、プロダクションやメディアのおっちゃんたちの汚い手で、抑えつけられて、寄ってたかって改名させられて「のん」にされてしまうようなものではないのです。
例えば、時速6000km/hというような人間の反応時間では制御できるわけがない落下速度でも、AIは、ピンポイントでミサイル/ドローンを制御できる。
青天の霹靂、というが、文字通り、暢気に日曜の散歩を楽しんでいた大統領を、小型の自律AIドローンで脳天一発、ぶち殺してしまうことも出来そうです。
自律AIは、アメリカが支配していた空をすべての国に、あるいは国ですらないテロリストたちに、潜在的に解放してしまった。
あるいは、中国人民解放軍が、ずば抜けた技術を持っている「スウォーム」、何千という小型ドローンを連携させて、死角や飛行中の損害をリアルタイムで計算しながら戦術を決めて集団攻撃する技術も、人間の操縦者では、とても手に負えない瞬時の計算と決断を繰り返しながら、最も「効果的」な攻撃を行う技術も、ときどきデモンストレーションをやっているように、すでに初期の完成をはたしている。
スウォームの技術を自律AIに載せて、無人戦闘機に適用すると、どうなるのか。
戦闘機は、知られているようにパイロットが耐えられるGが限定要因になっています。いったんは戦術思想として否定したものの、ベトナム戦争をやってみて、やっぱり必要不可欠な戦術だと判ったドッグファイトにおいて取り分け重要で、性能上は可能な高速旋回も人間がパイロットでは、どうフライングスーツをつくっても操縦士が失神してしまうので、旋回速度に限界が生まれるが、自律AIでは超音速で旋回することすら可能です。
ネット上のアマチュア軍事専門家や、簡単にいってしまえば軍事オタクを観察すれば判る通り、「無駄に頭がいい人が無駄な知識を貯め込んでいる」のが戦争に関心が高いひとたちの特徴で、歴とした、高級将校たちでも、「海洋をいく巡航艦隊のように運用される戦車群が将来の地上戦の主役になるだろう」と述べたリデル・ハートを、さんざん冷笑して、おまえはバカか、ということにして閑職に追いやってしまって、このリデル・ハートの主張に実務家の軍人として興味をもって、研究して、ドイツのブリッツクリークを組織/実行したグデーリアンに、オラオラオラと追いまくられて、ダンケルクから命からがら逃げのびて、「ドイツ人って、なんて頭がいいんだろう。イギリス人の頭では、到底考えられない作戦だ」とオメデタイことを述べていたひとびとや、日本の例ならば、ボロ負けに負けた戦後になってもなお、大艦巨砲主義なら勝てたと主張して、航空主兵主義の山本五十六たちのせいで負けたのだと、1992年に93歳で死ぬまで、ボロクソにこき下ろし続けた「プロ軍人ちゅうのプロ軍人」黛治夫たちのように、「頭脳明晰で不思議なくらいバカ」なのが通常なので、あんまり言わないほうがよくて、詳細に及ぶことは避けるが、
アメリカの空の優位が失われたことは、世界中、どんな軍事実務者にもすでに理解されている。
DJIの民生ドローンでロシアの新鋭戦車の一群が全滅させられたニュースをおぼえているひともいるでしょう。
あれ、わしも持っているドローンだったが、そんなもので、ロシアの冷酷政府にとっては二束三文でかき集めてきた戦車兵たちの安価な生命はどうでもいいとして、死ぬほどオカネがかかった新鋭戦車が、あっというまに鉄くずの山になってしまうのは耐えられない損失だった。
そうやってウクライナでの戦場での戦術はすでに変化してしまっているが、戦術レベルの変化は戦略に及んで、結局は国家レベルの大戦略に影響する。
あと数年もすれば大規模に導入される自律AIコントロールの航空機群が実戦配備されると、どうなるか。
日本に関係があることでいうと、「西太平洋防衛の要としての沖縄」は重要でなくなります。
沖縄の人、よかったですね、と長年の被支配の苦しみから沖縄のひとたちが脱する端緒を祝うのはまだ早くて、いざ戦争となれば雨あられとミサイルが飛んでくるに決まってる兵站拠点を、わざわざ日本以外の場所に移すことに利点はなにもないので、アメリカが沖縄の基地を、というか、基地の沖縄を、手放すわけはない。
日本側から見て、後方兵站だった沖縄が前線基地化する、という戦略上の意義の変化があるだけです。
重要なのは、同盟国としての日本の意義が低下することで、めんどくさい(←悪い癖ですね)ので長々と説明しないが、絶対制空権を失うことは、それに起因する戦略の変化を考えれば、「日本は要らない」ということに他ならない。
これからの日米同盟は、「日本は要らないが日本人の汗と血がいる」というふうに変化していくはずで、そういう観点からいま太平洋軍と日本政府が共同でやっていることを眺めると、すでに変化への着手は始まっていて、米軍主導どころか、ほぼ無理でも米軍の言いなりにならなければ自国は守れない、と判ってしまった日本政府人たちの投げやりな気持ちが伝わってくるようです。楽な同盟は、これから先、やらせてはもらえないが、仮にトランプが再度大統領になって所謂「トランプ2.0」が起これば、日本は片務同盟から一躍、日本側の負担のほうがおおきい、双務軍事同盟にいこうせざるを得なくなる。
だいたい2030年頃からと予測されている世界のあらゆる地域、あらゆる領域(経済、外交、政治…)で起きる「リセット」のほぼすべてにはAIが密接に関わっている。
AIが核にある、と言い直したほうがいいかも知れません。
経済は、例えばアメリカならば、大統領がトランプになってもバイデンになっても、経済上のリセットはほぼ避けられない、というのが最も多い意見でしょう。
マスメディアが騒ぐほどには、どちらが大統領になっても終局の事態は変わらない、とわしも考えている。
よく「なぜアメリカ人は、あんなひどい人間を大統領に選ぶのか」というが、それは都市部のアメリカを見すぎているからで、いちど、二三ヶ月、中西部や南部をクルマで旅して、いろいろなひとたちと話してみればいいのですよ。彼らはもう「アメリカ」に耐えられないんです。
彼らが望むのはリセットのなかでも最もわかりやすい「破壊」であって、最初期のトランプ・ホワイトハウスの首席戦略官にスティーブン・バノンが任命されたので判るとおり、「すべてを焼き尽くす地獄の業火のなかから再び起ち上がる白人種」という「白人種再生」のイメージが、彼らの頭から去っていかない。
もう平等にも政治的な正しさの主張にも、完全に倦んで、
大暴れするバカタレなひとびとの、その後景に身を潜ませている知にすぐれたひとびとも、例えばアルプスより北の欧州ならば確実に犯罪集団と見なされて大量の逮捕者を出していたはずのウォール街人たちが行った、ビンボ人たちからCDOを手品の中核のタネにして巻きあげて、「アメリカ」を破壊した行為を決して許そうとしていない。ときどき、この人たちはウォール街の人間たちを国中から探し出して処刑するところまで行くのではないかとあるはずのないことを妄想してしまうほどの語気です。
トランプという道化が倒れたら、また次の破壊者を立てるだけだ、と言葉にして明言しているのは、
Mercer家のひとびとだけではないのです。
投資家の世界でも、途中から、無理もない理由で口を噤んでしまったが、例えばウォーレン・バフェットのような穏健で聡明と見なされるひとびとも、ちょうど映画でいえば2015年につくられたThe Big Shortの舞台になっている2000年代のウォール街を心から嫌悪してきたが、それが一般国民の心のなかに現体制への憎悪となって巣くって、ついに、それがトランプ大統領となって結実してしまった。
ちょうど現状程度の世界の複雑さにならついていける、リベラルなアメリカ人がトランプサポーターたちを見て茫然とするような気持で、ウォール街で、さんざん悪事を、しかも嬉々として得意気に他人の生活を食い物にして働いておきながら
、いっぱし良心と知性がある人間のような顔でヒラリー・クリントンを支持してトランプの粗野と無知を笑っていた偽善者の群れを、嫌悪と軽蔑で眺めている。
経済上の結果は、多分おなじだが、だから、政治上は、トランプ2.0においては一期目よりも遙かに露骨な白人至上主義の勃興、アジア人排斥、新孤立主義、…考えてみれば、どれをとっても日本の人には有り難くない結果になるかもしれません。
当然に、東アジアの緊張も高まる。
それとは別に政治上のリセットが引き起こす最大の変化は、多分、自由主義と民主社会の敗北が決定的になることで、厳格な手続き主義に守られたアメリカの民主制と自由社会が、大統領そのひとが民主制を軽蔑していて、議会に対する叛乱を呼びかけてしまう、という未曾有の、日本の人が好きな表現をわざと使えば「想定外」の事態に陥って、ついにシステムが時代遅れになってしまったことを露呈しているのを世界の人が暗澹たる気持ちで観てきたが、ここからあとに起きることは、状況としては、役者を変え、地域を変えて、1930年代にやや似た所があって、
至るところで民主主義は敗北して、自由主義は縮退し、社会の生産効率から見て「無駄」な人間は、徹底的に抑圧される社会になっていきそうです。
現在の予想では、民主制は、徐々に小国の統治原理としてかろうじて生き延びることになりそうです。
地球上の資源が増大した人口からの需要に応えられなくなる、という背景も、案外、集団意識下ではおおきな役割を果たしているのかも知れません。
どうも、こうやって日本語で書いていても、ろくなことはなさそうな「リセット」の時代だが、リセットなしに「次」へ行ける状況では、もうなくなっているのは、日本も例外ではないのは、日本の人自身が最も判っているでしょう。
日本の人たちは聡明なので、きっとこの巨大な変化の大波を乗り切っていけるでしょうが、ひとつだけ心配(?)なのは、前に「なにもしないためなら、なんでもする」と書いた、日本の人の変化の必要に迫られると、いきなり、くるりと背を向けて、しゃがみこんで、「変わらないほうがいいんだ」と耳を覆って叫び続ける国民性で、仮に、その性癖が出てしまうと、日本語人全体が隷属的な立場の言語集団になって、民族集団としての知能とでもいうべきものを失ってしまう結果になってしまう。
もうひとつの日本の人たちが心配すべき点は、空母打撃群という殊に対中国人民解放軍の決定的な戦力が、中国から見て脅威でなくなってしまうことで、なにしろ実戦で試していないので人民解放軍も半信半疑だとおもうが、自律AIにコントロールされた一群の新世代兵器は、アメリカから絶対制空権を奪うだけでなく、中国に技術的な優位を戦場に与えることになる。
中国はスウォームだけでなく、形態認識など、、戦争に必要な技術分野においては、当面世界が追いつけないほどのAI先進国だからです。治安などの用途で、すでに現実世界での使用を積み重ねてきているメリットもある。
空の優位と技術の優位を失ったアメリカは、よくメディアが伝えているとおり、必死の巻き返し策に出ています。中国の企業に対する国家を挙げての牽制も、これと無縁だとおもうほどナイーブな人はいないでしょう。
そのバランスをジッと観察して、例えば習近平が、自分の不人気と、現実的な任期、台湾への調略と圧力の進展具合、さまざまな要素を計算して、ある日、台湾への武力侵攻に乗り出すかどうかよりも、日本のひとにとっては、ほぼ自動的に「日本の形」を規定してきた太平洋における太平洋軍の戦略の変化することで起きる、さまざまな日本の立場の変化のほうが重要でしょう。
さすがに「アメリカが日本人の生活を守ってくれる」と信じる人はいないでしょうが、日本の戦略上の位置と地位を過大に見積もりすぎて失敗する、という可能性はありそうです。
あんまり書きたくなかったブログ記事の「リセット_軍事篇」も、書かないですますと、これからの「リセット」の津波の形が見えにくくなるので、まずツイートで紙芝居風に書いてみました。
上に書いたことは、実は「近い未来を考えるために世界の人間が共有している知見」なので、「そんなこと、もう知ってらあ、うるせえな」という人が多いでしょうが、
経済、政治、文化と話を進めていくために避けられないので、書いて残しておきます。
https://x.com/gamayauber01/status/1771357906014982279?s=46
0 notes
原村の住所いま鵜鷺棲む
かなり具合が悪かった。そこまで体力を使いすぎた感じもしないが、気圧上昇にここまで左右されるのは、体力量というより、基礎体力が落ちているということだろうか。なんとか不調でも1日4時間は立っていられないと困るので、具合は悪かったが区役所目指して出かけた。こういう時、意味不明にかばんに本とノートと筆記具を遮二無二詰め込んでいくから肩が死ぬのだと思う。無事区役所で諸々の手続をすませ、もう立っていられないと思いドトールで休んだ。ミルクレープを食べて何とか回復し、『差別はたいてい悪意のない人がする』の続き、4章までを読む。途中かなり眠かったのだが、トイレに行ったらしゃきっとしたし、やや体調が回復していた。左どなりに座ったスーツのジジイ2人が(一方は64歳だと言っていた)、なんだか変な会話をしていたので気になった。ニーチェの神は死んだを、ヨーロッパの産業革命や科学革命により神の創造した世界の記述が覆され、その結果神はある意味で死んだも同然、という意味で私はこの言葉を理解していたのだが、彼らはなんというか、そのままの意味で使っているようだった。「あいつは神を信じてたから」「それで死ねたから幸せだよな」「神は死んだじゃないけど(俺らは神を信じてないけど、というようなニュアンス)」「ニーチェとかな」というような雰囲気の会話をしていて、え…?神は死んだという結論に至る経緯をまったく斟酌せずに、神の存在を信じないこと=神は死んだ、だと思っているのか…?とかなり胡乱な気持ちになり、なんだか恐ろしかった。その2人は会話もあまり噛み合っていないというか覚束なく、仲がいいのか悪いのかよく分からなかった。2人とも小説を書いているらしいが本業ではなさそうだった。64歳と言っていたのではないほうのジジイが電撃文庫がどうこう言っていて、自分の文章は電撃のターゲット層とはマッチしないみたいなことを(関係者に?)言われてなんとかかんとか、と言っていて、こんな年輩の方も今の電撃に応募しようという気持ちがあるのか、とかなりびっくりした(その方も再雇用がどうとかの話をしていたので60は超えていると思われた)。64歳の方のほうは、自分の話に挿絵がつくのはいい、というようなことを言っていて「でも低俗な雑誌ですよ」みたいなことを繰り返し、どうやら官能小説の雑誌に今も掲載作を書いている、というような感じだった。それを電撃云々のジジイのほうは、書き溜めて自分で文庫にして出せば、みたいな頓珍漢なことを言っていたので、何だこの人…となった。神は死んだ云々を言い出したのもこの人で、気持ち悪いな…と思った。でも小説を書いているんだな、と思った。謎だ。小説を書くのもいいが、全般的にもっと社会や世界の仕組みを知った方がいいのでは?と思ってしまったが、それでも定年まで勤めあげたであろう人なのだ。どうやったらこんなあやふやな感じで定年まで仕事が出来るのだろう、もしこれが女性だったら、こんなふわふわした感じでここまで生き抜いてくることはできないだろうな、とか意地悪なことを思ってしまった。全ての物事に対しての見識が曖昧だし基本的に間違っているしその癖相手のことを見下している感じ(謎の自分の優位性を疑わない態度、相手も優しすぎる)で、怖気が走った。というようなことを聞きながら、頭の片隅で考えながら、本(差別はたいてい悪意のない人がする)を読んだ。今日読んだところは、差別される側が保守的な行動を取ると、差別構造を自ら維持することになる、自分の置かれた差別構造に気づけず社会を肯定してしまう(その悪循環で差別は温存・助長される)、というあたりだった。4章はユーモアと侮蔑の話だったが、そのあたりで猛烈に眠くなり、半分寝ていたが、トイレに行って目が覚めた。『客観性の落とし穴』も進めたかったが、あまりにも具合が悪く、もはや文字を追えなかった。そのわりに電車を降りてから、ウーバーイーツよりはましだろうと思い、吉野家で牛すき鍋(単品)を食べた。吉野屋では言動がおっかないおじさんとか、明らかに若い女性店員にだけクレームを言うおじいさんとか、子供の要求を���視し続ける不機嫌な母親(飯が来るまで喋るなという旨のことを言い黙らせていた)とかがいて、結構おそろしいなと思った。それでも、吉野家のおそらく学生バイトの女の子は誰にでも愛想良く笑顔で接客していて、「そんな低い時給でそこまでのサービスを提供しなくていい!」と叫び出したかったが、自分も学生の頃そうだったなと思った。愛想良く笑顔で「相手を圧する」「屈しないことを示す」という戦略もある。それに何より、愛想良く接客している方が自分に「正義」がある感じがして気分がいい。たとえ舐められるとしても、本当に心の底で舐めているのはこっちなのだから別にいい、と思っていた。多くの善良なお客様に対しては愛想良く対応した方が気分がいいし、お客様によって態度を変えるのも変なので、全力で感情労働なるものをしていたと思う。社会人として接客していく中で、そこまで過剰に演技せず、自然体で接客してもいいんだと気づいてからはやめた。最初の接客が200%の感情労働を求めるマクドナルドだったことにも、私の初期接客態度への原因がありそうだ。
深夜のマクドナルドで、全ての店の中に存在するものを掃除し磨いていない部分がないようにする、というタスクがあり、いちばん汚いゴミ箱の中を拭く時は、私は小柄だったので、体ごと入って内側の激しく汚れているマクドナルドのゴミ箱を拭いていた。かなり力がいる、肉体労働である(その他、トイレ、机、椅子、仕切り、カウンター内の各機器、器具、全てを清掃する※深夜客の対応をしながら)。そして接客も全力の笑顔でやっていた。ゴミ箱に潜って中を拭いている時、サラリーマンの40くらいの男性(なんとなく斜に構えている感じの人)が「そんなに頑張らなくていいんじゃない?」と私を気遣って声をかけてくれた。私は、これが私の仕事で、順当に賃金をもらっているので、ただ正当に職務を遂行しているだけで…と思っていたので、おじさんの言っている意味が全然わからず、「え、特に頑張っているとかではないです😄普通にこれタスクなんで…ありがとうございます😄」と困惑しながらも心配ありがとー!みたいな気持ちだった。そのおじさんの気持ち、今ならわかりますね。そんな低い賃金で、そこまで己を削るな。差し出すな。搾取されていることに気づけ。ほどほどに手を抜け。本当にそう言いたい気持ちが今ならわかる。ただ、私は何事も全力で完璧にやり遂げるのが、人間の「ふつう」だと思っていたので、その理路が理解できなかった。ふつうにやる=一切手抜きしない、というのが仕事だと思っていた。その考えは私にその後も根強くあり、自分の本来の力の60%くらいで仕事も何事もこなさなければ生活全体を回せないのだから、全力で仕事をしてはいけないし、誰もそこまで求めていないということをはっきりと言葉にして気付かされたのは、33歳の時であった。かなり最近。嘘でしょ。他の人が、仕事から家に帰ってきた時点で、まだ40〜30%の体力を残しているのが普通で、2%とかで帰ってきて床に倒れるのはおかしいのだと、その時初めて人に聞いて知った。
それから最近は、具合が悪くてもとりあえず仕事に行って、パフォーマンスが低くてもとりあえず勤務時間をやり過ごす、そこに「いる」、仕事をとにかく「(できる範囲で)やる」ということが重要なんだということもなんとなくわかってきた。仕事で他の人に並びたいあまりに、98%の力を出してはいけない。自分は鈍麻で低脳な人間で、非効率でお荷物であるという事実を受け入れ、そういう人間として60%で仕事をこなす。出力パワーを抑える。そうして私生活やほかの活動を維持する。そういうことが長期的に見て仕事を続けることに繋がる。98%の短期決戦だからいつも数ヶ月〜2年でへばっていたのか。なるほど。と思った。生活ができなければ仕事も出来なくなっていく。当たり前だ。その当たり前が全く分からないまま30歳を過ぎていた。というか、仕事の仕方というものを考えている余裕がなかった。どんな時も具合が悪く、体力勝負で、そしていつもいつでも過去の記憶(生まれた家庭の記憶)に苦しめられていた。自分が帰る安全な場所を持たない人間というのは、全ての尺度が異常になりがちなのではないか。価値観が狂っているが、それを狂いだと自覚できない。安心して帰れる家ではない場所で育った人間は、仕事に過剰適応しようとする傾向があるかもしれない。先日友人と話していて思った(高校の同学年の彼女(36歳)は未だに実家に縛られ、金銭もケア労働も搾取され続けている)。その友人もかなり親に洗脳されているが、とにかく家を出ろと、先日100回以上言った気がする。親のことなんてお前が責任持つ必要ない。そんな最低な人間ともう関わるな。外野がいくら言っても、それでも、私たち子供って、親のこと、きょうだいのことが、好きなんだよね。難儀です。
今日はあんスタの天城一彩の誕生日でした。TLが誕生日絵で溢れかえっており、仕事始めの日に生まれるなんてやるなあ!と思った。それで元気づけられている方がいらっしたので。一彩の故郷では仕事始めという概念はないが、誕生日が判明しているということは暦があり、新年という概念はありそうだ。年明けに生まれた子、めでたい。その瞬間を思い、とてもいい気持ちになる。
どんな子供でも、どんな親でも、やはり生まれた時のことを思わずにはいられない。多くの愛情が、もしくは僅かな愛情がそこにはあり、だれかが抱き上げたり、寝かせたり、ご飯を食べさせたりしたのだ。だからみんな、今生きている。残念ながらそうはならなかった子供もたくさんいるが、成人まで生き延びることができた人間は、かならず、養育者やその他の人間にある程度は「生かされて」きたということで、そこに愛情はなかったかもしれなくても、もっともっとそれ以前の、言語化されないなんらかの情は存在した。だれかが子供��抱き上げて、乳を飲ませ、排泄させ、風呂に入れ、着替えさせたということだ。その事実に私は毎時毎瞬新鮮に感動することができる。
2024.1.4
1 note
·
View note
夕鶴②
ふぶき姫が『恩返し』に来てから、数日が経った。
ケータは毎日の課題と明日の予習を余裕でこなすようになってきた。
ケータより長く生きているSランク妖怪なだけあって、ふぶき姫は学問の知識に長けているらしい。
「ずっと会ってなかったけど、その間どうしてたの? 百鬼姫と椿姫は元気?」
「ひゃっちゃんもつーちゃんも元気よ」
ずっと気になっていたことを聞くと、ふぶき姫は笑顔で答える。
「メラメライオンたちは?」
「メラちゃんたちも元気……でも相変わらず雪遊びにつき合ってくれなくて」
淋しそうに言うふぶき姫を見て、ケータは妖怪たちのことを懐かしく思い出した。
今でも変わっていないのだと。
「ケータくん、手が止まってる」
ふぶき姫に言われて、ケータは教科書に向き直った。
「本当助かるなあ、ふぶき姫って教え方うまいよね」
「ケータくんの飲み込みが早いからだよ」
ふぶき姫は照れたように、頬を赤くして答える。
そのかわいらしさのあまり、ケータも少し赤くなる。
ケータとふぶき姫は、仲よく机に向かっていた。
「ちょっとジバニャン、見て下さいこれ」
呆れ顔でケータたちを見るジバニャンに、ウィスパーが妖怪パッドを差し出す。
ジバニャンが画面を覗き込むと、妖tubeの何かのチャンネルが表示されていた。
そのチャンネルの動画の再生回数は軒並み100万回超え、登録者数はゆうに100万人を超えている。
「ふーん、人気ニャンね」
と半目で見ていたジバニャンは「ニャニャ?」と二度見した。
その動画はどれも、ケータの日常生活を撮影したものだった。
「なんニャンこれ?」
「ふぶき姫が開設したチャンネルらしいんですけど……再生回数も登録者数もどんどん増えてるんでうぃす」
試しに一番上にある動画を再生してみると、ケータがゲームをしたり寝転がって漫画を読んだりしている。
至って普通ないつも通りのケータの姿だった。
「なんでこれがこんなバズってるニャン?」
「ふぶき姫の編集がよっぽどうまいんですかね……」
以前にもジバニャンが勝手に撮って上げたケータの動画がカクさんによって急速に拡散されたことはあったけれど、それにしても異常事態である。
「明日の準備は私がしておくから、ケータくんはお風呂に入ってきて」
ふぶき姫に言われて、ケータは素直に従う。
「お風呂から出たら、今日も一緒に寝ようね」
トドメのひとことに、ケータはドキッとする。
昨日も一昨日もその前も一緒に寝た。
一緒に寝ながら、ケータはふぶき姫に1ミリもふれていない。
そろそろケータの我慢も限界に到達しようとしていた。
何でもしてくれると言ったからには、ふぶき姫はケータの願望に応えてくれるつもりなのだろうか。
部屋を出たところで、ウィスパーとジバニャンに呼び止められた。
「ケータくんはこの動画のこと知ってるんですか?」
「ああそれ? すごいよね」
「広告収入とかどうなってるんですか?」
「収入が入ったらふぶき姫がオレのために貯金してくれるらしいけど……全部任せてあるしお金のことは別にいいや」
ケータはけろりと言ってのけた。
「でもちょっと気になるんだよね。動画の編集はふぶき姫の家でやってくれてるらしいんだけど、その間は召喚したり家に来たりしないで欲しいって言われててさ」
「どういうことです?」
3人は首をひねる。
「鶴の恩返しって、確か奥さんの鶴が機織りしてる姿を見ないでほしいって言ってたニャンね」
確かに、物語には鶴が自分の羽を抜いて布を織っていたシーンがあったことを、ケータも思い出す。
「ということはふぶき姫も自分の身を削って動画編集してるってことでうぃす?」
3人はますます首をひねった。
「ふぶき姫って何のためにうちに来たニャン?」
「恩返しのレベル超えてませんか?」
「それは……」
的確な指摘に、ケータは言葉を詰まらせる。
実際、ケータも疑問に思っていたことではあった。
ここまで尽くしてもらうほどのことはしていない。
「でも今ふぶき姫が帰っちゃったら、また勉強放り出すようになっちゃいそうなんだよなー」
ケータはため息まじりに言う。
それが手に取るように分かるので、ウィスパーとジバニャンもやれやれとため息をついた。
「あのさあ、ずっと気になってたんだけど……」
ケータは一歩前に出て、彼らににじり寄る。
「あのふぶき姫って本物のふぶき姫なの? ズルズルづるが化けてるの?」
「さっきケータくんと話してた感じだと本物のふぶき姫っぽいですけど……」
ケータはさらにウィスパーに迫った。
「ズルズルづるが化けてるとか、憑依してふぶき姫を操ってるとかじゃないよね?」
「Sランク妖怪のふぶき姫がズルズルづるに操られるとは考えにくいですけど……」
ケータの鬼気迫る雰囲気に、ウィスパーは困惑した。
「なんでそんなに気にするんですか、ケータくんやりたいんですか?」
「そんなわけないじゃん!」
ケータは慌てて否定した。
否定しながらも、内心ギクリとしていた。
下心がないと言ったら嘘になる。
「もし本物のふぶき姫だったら、関係��いのにつき合わせて悪いなって思っただけだよ」
捨て台詞のように言い残して、ケータは浴室へ向かった。
湯の中でケータは悶々としていた。
もしあのふぶき姫が本物のふぶき姫だったとして、彼女を好きにしていいと言われたらどうしたらいいのか。
欲望の赴くままに行動していいのだろうか。
危険すぎる、やめた方がいい、それはケータも分かっている。
一度でも甘美な果実を味わってしまったら、そのままずるずるとのめり込んでしまうのが目に見えている。ズルズルづるだけに。
いくら可愛い女の子であっても、相手は妖怪。
人間どうしのようにつき合えないのなら、ここで踏みとどまっておくしかない。
「それにしてもかわいいよなあ……」
ケータは脱力して、バスタブに体を預ける。
ふぶき姫が可愛いというのは昔から知っていたけれど、さらに目を見張るほど美しくなった。
身長が伸びて胸のあたりが成長した今のふぶき姫は、ケータと同世代の少女のように見える。
普通の男子高校生であるケータは普通に可愛い女の子に興味がある。
本音を言えば、ふぶき姫にさわりたいし密着してみたい。
あつガルルたちがふぶき姫によそよそしくする気持ちが、半分わかるけど半分わからない。
「あんなかわいい彼女いたら自慢しまくるけどな……」
ケータは浴室の天井をぼんやりと見上げた。
湯から上がって髪を乾かして寝衣を着て、ベッドに入る。
ふぶき姫は先に床に就いていた。
「……いい匂いする」
「ケータくんがお風呂に入ってる間に私も家に帰ってお風呂に入ってきたの」
お風呂と聞いて、ケータの耳と体が反応する。
思わず入浴中のふぶき姫を想像してしまった。
「寝る時くらい家に帰ってもいいよ……なんか悪いし」
妄想を見抜かれないように、ケータはあえてそっけなく言う。
「だって、別々に寝るの淋しいから……ケータくんは私と一緒に寝るのイヤ?」
ふぶき姫はケータに顔を寄せるように近づく。
石鹸の香りがふわりとケータの鼻孔をくすぐった。
「イヤじゃないけど……」
目を合わせないように答える。
ふぶき姫が嬉しそうにするのが分かった。
なるべく顔を見たくない。
煩悩に負けてしまいそうになるから。
「ケータくん、私にして欲しいこと考えておいてくれた?」
鈴を転がすような声で囁かれて、ケータは体をムズムズさせる。
「……明日、学校終わるくらいに迎えに来てもらっていい? そのあとちょっと遊びに行こ……」
「遊びに? 嬉しい!」
ケータの提案に、ふぶき姫は大喜びで頷く。
「いつも勉強教えてもらってるから、お礼っていうか、息抜きっていうか……」
ふぶき姫は歓喜の涙を目に浮かべて、ケータの腕にしがみついた。
「嬉しい……楽しみにしてるね」
「うん……」
幸せそうに笑うふぶき姫の顔を、ケータはちらっと見る。
本当に、悩ましいほど可愛い。
目を閉じて、今日も悶々としたまま眠れぬ夜が更けた。
次へ
Back
0 notes