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ginzayuri254 · 6 years ago
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ruuuchan01 · 4 years ago
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@datsumo_labo の プレゼントキャンペーン で藤田ニコルがCMしてる 脱毛器が当選しましたっ💖 忙しくて脱毛は全身脱毛に 通うのを躊躇していたけど この脱毛器のおかげで 家で手軽に時短で脱毛が できるようになって とっても嬉しいです(人 •͈ᴗ•͈)✨ 脱毛は完了したけど ちょっと気になるなって いう時にも使えて 脱毛完了後の数本の毛にも 効果があって便利です💕 フラッシュは専用の ゴーグルがついてるので 眩しくなくて、かつ短時間 で効率的に照射できて 痛くも熱くもないのが お気に入りのポイントです💖 永遠に女の子だもん✨ ずっとつるすべ肌で 美意識を忘れずに人生を 楽しんでいたい(〃゚3゚〃)🎶 コロナ終わった夏は ツルすべ肌で沢山プールや 海に行こーっと❤ #プレゼントキャンペーン当選#脱毛ラボ#脱毛Labo#脱毛器#セルフ脱毛器#セフル脱毛#自宅で脱毛#時短脱毛#エステ脱毛#光脱毛#フラッシュ脱毛#ツルすべ肌#ツルツル肌#美容好きさんと繋がりたい#美容好き#美容大好き#ファッション大好き https://www.instagram.com/p/CQIVWl3jnK3/?utm_medium=tumblr
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zendatsu10-blog · 7 years ago
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emilianproject-blog · 7 years ago
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edamamepro-blog · 8 years ago
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creative-board · 8 years ago
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syarousi · 3 years ago
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#提出代行 #事務代理 #申請書の作成 #書類提出 #社会保険労務士法 #記名押印 #はら社労士 #沼津 #富士 #静岡県 #社会保険労務士
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bugtalemihachi-makoto · 3 years ago
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【BUGTALEの概要&キャラクター説明】
【BUGTALEの概要】2022.2.19
BUGTALEの世界には「バグ」がモンスターでも生き物でもなく、敵として登場します。 「バグ」とは虫という意味ではなく、プログラムなどの不具合の意味をさします。
【大まかなストーリーの流れ】 オリジナルのゲームをプレイ中、ホコリが舞う薄暗いラボであなたは古びたメモ帳を拾いました。 ミミズが這ったような字で「きょうは、にいちゃんと…」それだけ読み取れました。 今まで見たことが無いアイテムでしたが、何気なくポケットに入れます。 リセット後、そのメモ帳がなぜかポケットに残っていました。 仕様なのか、バグなのか…あなたは遺跡の暖炉へ、そのメモ帳を投げ入れました…
大好きなゲームのキャラクターたちが、なにやら今までとどこか違います。 見た目も、能力も、記憶も、セリフも。 オリジナルのゲームの世界にバグを発生させてしまったため、メインキャラクター達を含め 全員がオリジナルのキャラクターではなくなってしまっていたのです。 黒い花フラウィーに教えて���らいながら、あなたはこの世界に「バグ」と呼ばれるものがあることを知ります。 あのメモ帳が引き金だったのでは。ならばバグを直して、元のゲームに戻さなくては。 そう考えたあなたは、敵として登場するバグを倒しながら原作通りの流れで進んでいきます。 基本の流れはオリジナルに近いものとなっています。
Nルート→途中ロードでPルート→BPルート(バグPルート)→Gルート と進んでいきます。
【キャラクター紹介】 ◆Human(ヒューマン) あなただ。 プレイヤーであるあなたは、これがゲームであると知っています。 原作同様、プレイヤーであるあなたはセーブ、ロード、リセットの力を持ち、経験値やレベルの概念を知っています。 セーブとロードを繰り返すことですべてのモンスターに勝つことができます。 性別不明。茶色の髪、ピンク色のハイネック長袖の服の胸元と両袖には太い黄色の線があります。 茶色のズボンと茶色の靴を履いています。 オリジナルのゲームをプレイ済みの為オリジナルのすべてのルートの知識を持っています。 料理が得意で足が速く、ロードができるからと怖いもの知らずです。
◆Flwey(フラウィー) 花茎も根も全て真っ黒な花です。黄色いリボンが花茎についています。白い目と口があります。 地底に落ちた際あなたの前に現れます。 フラウィーはあなたに、友人が大切なものを無くしたので探したい。けれど一人でここから出ることができない。 道案内をしてあげるから連れて行ってとお願いします。 許可した貴方の肩に乗り、バグについてなど知識も教えてくれますが、他のキャラの前にいるときなどは地中に隠れているのか姿が見えなくなります。 長い根は伸縮自在のよう。
◆Toriel(トリエル) 原作同様遺跡の番人のヤギのようなモンスター。 原作よりも少し幼く見えます。 くせっ毛が強く、たれ耳の毛はくりくりにはねており、茶色い服を着ています。 遺跡は紺色の壁。落ち葉が沢山落ちていますが、とても温かい場所です。 遺跡には一部屋、鍵がかかった部屋があります。 優しく涙もろく、遺跡から出ようとするあなたを危険だからと止めようとしますが、最後は諦めて扉を開けてくれます。 貴方に「小さなスケルトンを頼りなさい」と助言をしてくれます。
◆Dog(ドグ)(バグの影響で自身がパピルスと知りま��ん) 背の高いスケルトンです。茶色いファー付きのアウターを羽織り、紫色のマフラーを付けています。 チャコールグレーの細身のズボンに、黒いヒール靴を履いています。 右目と右頭にひびが入っており、右目は見えません。 スノーフルへ向かう際中のあなたを見つけ、そっちは危険だよと遺跡に戻るよう訴えてきます。 戦いを好まず、平等に優しい性格をしています。 非情に寒がりで、家の中でもアウターを脱ぎません。 幼い頃は研究員の兄とスノーフルに住んでおり、兄の仕事が忙しくなった時にラボ内に移り住みました。 しかしラボ内での事故により兄を亡くし、まだ幼いドグはスノーフルに戻りました。 事故により怪我をしたため、ラボで何が起こったのか覚えていません。兄の死は自分のせいではと考えています。 兄が作るココアが好きでした。現在もチョコやミルクをグリルビーズで購入して手作りしています。
◆Blessi(ブレッシ)(バグの影響で自身がサンズと知りません) 背の低いスケルトンです。フード付きの服の上に白衣を羽織っています。 紫色のストールを巻き、ピンクの靴下に紫色のスリッパをはいています。 ラボで起こった事故によりアマルガム化するモンスターに巻き込まれ、15体のモンスターと合体してしまっています。 ブラスターとも合体してしまい、頭には3本、ブラスターの角が飛び出て見えます。 額には3つ目がありますが、右目は失明しています。 ウォーターフェルであなたは一瞬スケルトンを目にします。どこかへテレポートした彼を、 セーブロードを繰り返すことによって掴むことができます。逃げる場所逃げる場所に登場する貴方に、彼は諦めたのか話をしてくれるでしょう。 ラボの事故後、彼は異形化した自分の姿を見せたくないという考えと、弟を事故に巻き込んでしまったことを悔やみ 自身は亡くなったとアルフィーを通して弟に知らせてもらいました。 ウォーターフェルとラボを行き来しています。
◆undyne(アンダイン) 正義感がとても強い小さな女の子です。 青い肌に赤い髪、左目に眼帯をつけ、大きな人魚耳があります。 ラボで暮らしていた時の幼いドグの友達でした。ラボに潜り込んではアルフィーの仕事を眺めていました。 アンダインはアルフィーを男だと思っていたようです。 ラボで起こった事故に巻き込まれ、強く影響を受けてしまった彼女は成長が止まっています。 アズゴアの強さにあこがれ、ロイヤルガードというチームを自分で作り人間がいないかと地下世界を巡回しています。 年齢は離れるばかりだが、毎日ドグの家の扉をノックし、ドグをロイヤルガードに勧誘しますが戦いが嫌いなドグには断られてばかりです。 パスタに生クリームなど甘い物をトッピングする料理をします。
◆Alphys(アルフィー) ブレッシと共にラボで働いていました。 黄色いトカゲのようなモンスターです。白衣を羽織っていますが、その下にはパジャマを着ています。 黒に白の水玉の上と、オレンジ色のズボンです。 目の下の隈が目立ちます。 アマルガム化は自身の失敗だと考え、ブレッシが異形の姿になってしまったのも、アインダインの成長が止まったのも自分のせいだと考えています。 ラボから出ることはなく、ずっとブレッシを戻す方法はないかと研究を続けています。 ラボの冷蔵庫には甘いものが沢山入っています。
◆博士 ブレッシとアルフィーの上司でした。 両腕はありませんが、触手のような黒い手が足元から生えています。 王からの命令でラボ内ではソウルの実験を行っていましたが、その中で王より「ソウルをつくる」という作業を博士一人で進めていました。 モンスターがしんでも、塵になる前に作ったソウルを入れることで生き返らせるという内容で指示があったものの、王はまた別の使い道を考えているようでした。 博士自身は「生命を手作りする」実験を王にも内緒で行っていました。体・ソウル・感情。この3つがそろえば命になると考えた博士は 「バグ」を捕まえ、バグを器として実験を行いだしますが…その後アマルガム化の事故、そしてラボの事件が起こりだします。 BUGTALE本編の中では彼は亡くなっています。ただ、なにやらラボには塵霊がいるとか…
◆Mettaton(メタトン) ラボ内の監視役としてアルフィーが作ったロボットです。 見えないもの、隠れているものを見つけることが得意。拘束機能、相手のHPや攻撃力防御力を見る力を持っています。 彼の動力は博士が作ったソウルモドキとよばれる機械のソウルです。失敗作のため、いつ止まるかわかりません。 いつもは半目でうなだれたように歩いています。ネガティブであまりしゃべることはありません。 ラボ内を監視の為徘徊中に侵入者を発見すると目を大きく開き注意事項をしゃべりながら捕まえに来ます。 長い手足はつぎはぎだらけです。アルフィーが修理を繰り返していますが、素材が足りないようです。
◆Asgore(アズゴア) 地底世界の王です。赤と黒、淡いピンクの服に黒いマントを付けています。 ボルドー色の髪や髭をたくわえており、くせっ毛ではねています。 鋭い目と返しが付いている黒い巻き角はどこか怖さがあります。 昔は優しい王でしたが、息子を亡くしてから人間のソウルを集めるためならモンスターも巻き込むようになってしまいました。 落ち着いたしゃべり方をしますが、あなたをお茶に誘うことはないでしょう。 ��器を持たない彼ですが、玉座から立ち上がればその姿に圧倒されます。 彼を倒すのか、説得するかはプレイヤー次第です。
◆ナプスタブルーク 幽霊の彼は、あなたの目にうつることも、声が聞こえることもありません。 なにやらトリエルには見えているようです。
◆グリルビー スノーフルにあるグリルビーズというバーで働く炎のモンスターです。 昔ブレッシはよくここで練乳パフェを食べていました。 幼いドグが「バナナが食べてみたい」という言葉に頑張って調達してくれるいい人。 結果彼がバナナ好きになり、食べすぎたため赤い炎はピンク色になってしまいました。(カリウムの取りすぎにより) あまりしゃべらないが、しゃべるときは敬語です。 じつはおねぇです。小さなドグがいることに気づかずしゃべってしまい、ドグだけは彼をグリルビーおねぇちゃんと呼んでいます。(女性だと思っています) ドグ以外は気づいていません。
◆マフェット 6本腕の蜘蛛のモンスター。 花を使ったお菓子や紅茶、お香などを作り販売している礼儀正しく大人びた女性です。 グレーのワンピースに大きな黒い蝶々リボンが付いています。 お香のちからで相手を眠らせる力や、回復スピードが速くなるリラックス効果のあるラベンダーティーなども持っています。 場所場所に蜘蛛がショップを開き、運が良ければいいアイテムを購入できるかもしれません。
【BUG バグという存在について】画像
バグはモンスターではありませんが敵です。見た目は黒い液体、スライムのようです。 バグを見ることのできるモンスターは限られています。プレイヤーであるあなたは見ることができるようです。 バグは地面から染み出るように出現します。襲ってくるもの、悪さをするものもいますが、何もせずそこに居るだけのバグもいます。 バグは体、ソウル、感情を持ち合わせていません。無に近い存在です。 言葉を発さず、目や口といったパーツがありません。食べる行為、空気を必要としません。 大きさと強さは関係ありませんが、バグは強い「親レベル」と親レベルより下の「子レベル」に分かれます。 バグ同士に仲間意識はありませんが、一つのバグが発生した際、それに影響され同時に生まれたバグはともに行動する可能性があります。 バグは強くなりたいという本能しかなく、バグ同士が会うと、戦いをはじめ、勝ったバグが負けたバグを吸収し、武器や盾として使います。共食いをして強くなるという表現を使うことがあります。 子同士でも戦いを行い、強くなると親レベルに変わる可能性を持っています。 バグを見ることのできるモンスターは限られているため、存在を知らないモンスターの方が多いです。 親に使われていた他のバグが切り離された場合、いたくてそのバグについていたのか、生まれた時から一緒なのか、無理矢理吸収されていたのか、切り離された際攻撃で弱っているのかにより、そのバグがその後親へ自主的に戻るのか、逃げるのか、親へ攻撃するのか、弱っているため消滅するのかが決まります。 地底で生まれているバグたちは地上へ出ることができません。感情のないバグたちはまず地上に出たいという考えがありません。 見えるモンスター確定は博士、フラウィー、ブレッシ、ドグ、アルフィー、アズゴア
博士はバグを見ることができたため、バグを捕まえる装置を開発し、ケースにバグを入れて実験材料として集めていました。 ソウルをつくると言う王からの命令の為が最初でしたが、「生命を手作りする」という博士が独断で進めていた実験にも非常に重要でした。
バグはプログラムの中を行き来する力があります。 まるでPCのケーブルのように、ネットワークのように広がる道がモンスターやあなたにも見えないゲーム自体の空間にあります。 バグの道は真っ黒で、バグにしか作ることはできず、また出来ては消えてを繰り返します。
◆?????(黒い子) あなたが友達になったドグの家にはいると、そこにドグはおらず、ドグと同じ服を着たダークグレー色のスケルトンが椅子に座っていました。 ドグのやわらかい表情はなく、話しかけても声を発することもありませんが、ドグと同じく右目と右頭にひびがあります。 名前非公開の彼を以降黒い子と呼びます。 このドグに似ているスケルトンは、ドグに寄生しているバグがドグの意識を乗っ取っている状態です。 黒い子はあなたが殺意を向けない限り、あなたがドグを倒そうとしない限りあなたを襲うことはありません。 次出会えたいつもの白いドグに、あなたに似た彼のことを伝えても「誰だろう」と首をかしげることでしょう。
【ラボ 幼いドグとバグについて】 幼いドグはラボにある自身の部屋で毎日仕事から兄が帰るのを待っていました。 寂しがりなドグはいつしかラボの中を歩き回り、実験材料のバグ置き場である博士とブレッシの研究室を見つけ毎日通います。 研究室にいる彼は、とあるバグに毎日話しかけていました。返事は返ってこないけれど、兄と博士は仕事で忙しいのです。 ある日、ケースをこんこんと叩くと、なんとバグからも反応が返ってきたのです。 その瞬間から、なぜかドグにはそのバグの声だけが聞こえるようになりました。 驚きと喜びでそのことを兄と博士に知らせます。友達になれるかなと喜びましたが、博士はそれを実験材料として持って行こうとします。 あの子はいい子だよ、酷いことしないで。ドグの言葉に兄は博士にお願いをしてそのケースに入ったバグをドグのもとに置いておくことを許可してもらいました。 ケースからは出られないけれど、そのバグはドグにだけ反応を返し、ドグもそのバグを本当の友達として沢山話をしたりお散歩をしたりしました。 そのバグはドグから愛情という感情を貰い、学びました…。 博士は生命とは体、ソウル、感情が必要と考えています。生命をつくる実験をしている彼にとって、感情を得たバグは良い実験材料です。 あとは安定して動くソウル���ドキを完成させ、体を与えればそれは博士の実験の成功を意味します。
しかし、あなたはあのメモ帳を捨ててしまいました。 「きょうは、にいちゃんと…」そう描かれていたメモ帳が消えたラボでの実験により多くの被害が出だしてしまいます。
上記キャラ紹介等につきましては不定期で変更、追加される可能性があります。
御八真
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zendatsu10-blog · 7 years ago
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emilianproject-blog · 8 years ago
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okaimonoweb · 3 years ago
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【総合部門】Thu, 16 Dec 2021 10:21:00 +0900 現在売れ筋ランキング1位 [楽天市場の部]: 脱毛 ラボ ホームエディション【ポイント最大54600円還元 12/16(木)0:00-12/16(木)9:59★レビューでプレゼント4】アイブロウスティックセット/業界初クーリング機能で痛くない光 脱毛器 家庭用 脱毛器 脱毛 サロン開発 脱毛器 脱毛 光美容 脱毛 光 脱毛器 家庭用 脱毛器 男���兼用 脱毛 サロンと同じ強力パワーを実現 脱毛器 アイブロウスティック セット 脱毛ラボ メンズ 脱毛 レディース 脱毛 VIO 脱毛 ヒゲ 髭 脱毛 デリケート http://okaimonoweb.com/topSellersRaku/
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icetoicee · 3 years ago
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2021年12月07日 14:01:44 の美活フ ィード
2021年12月07日 14:01:44 の美活フ ィード
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recordsthing · 4 years ago
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晴ママと志希ちゃん
「やべ、もうこんな時間だ。家に帰らねーと」  あたしのラボで一緒に実験していた晴ちゃんが、スマホからの通知で思っていたより時間が経っていることに気がついたみたいだ。Physicsは専攻じゃないけど、ボールの回転とか運動についての実験のために模型を作って説明していた。サッカーへの興味も相まってかずっと一緒に喋っていた気がする。もっとも、あたしはスポーツを見るのはそんなに興味があるわけじゃないから晴ちゃんの話は大体流し聴きしていたのだけれども。 「それじゃな!」  いつも通りの挨拶、そんなのに飽きたのか気まぐれなのかはわかんないけど、意志より先に言葉が出ていた。 「ねーねー、今日晴ちゃんの家には誰がいるの?」 「ん?アニキ達は今日予定あるっていってたし、オフクロだけじゃねーかな。なんでそんなこと聞くんだよ?」 「じゃあさ、家に行ってもいい?どんなとこなのか興味湧いてきちゃった♪」  顔が露骨に嫌そう……というよりも、なんでわざわざ?みたいな困惑した様子だ。でも確かに家という場は仕事仲間のアイドルとしているわけではないから、そういう違いを見られたくないのかもしれない。 「いや……なんてことない普通の家だと思うけど、ホントに来るのか?」 「うん♪レッツゴー!」  はぁ、と一つため息をついて帰路につく晴ちゃんを後ろからついていく。優しくて断りきれないのをよーく知ってるから、最初からこのお願いが大体うまくいくだろうなー、とは思っていた。  ラボを出て事務所の外に出ると、日は傾いていて辺りを赤焼けた色に染め上げている。先を歩く小さな影を踏んで、見慣れない景色を後ろへと追いやっていく。
 自宅の外見はなんてことない一軒家だった。二階の戸建て庭付きで、屋根付きの駐車場には三台分の自転車がそれぞれ置かれていて、一つだけサドルが低めの自転車がある。どれも似たようなデザインで、少し古めかしくなっているので上の兄弟からのおさがりがそのまま使われているみたいだ。車が本来置かれてあるはずのスペースが空いているため、家族の誰かはでかけているのだろう。表札の『結城』という文字は石に彫られていて、あんまり詳しくないあたしでも立派なものだとわかる。  簡素な両開きの門を開いて、晴ちゃんが扉の近くの植木鉢の裏から鍵を取り出して開けた。不用心だな、とは思うけれども子供たちがいつでも帰ってこれるようにしているのかな。と思うと少しだけ心が温かくなる。……もちろん、すぐ鍵を失くしてしまうから、って可能性もあるけど。 「ただいまー」  本来はお邪魔しまーす、って言って入るべきなんだろうけど、ここでも悪戯心が発動してこっそり入ることにした。玄関は家にいる人が少ないのかそんなに多くの靴はない。靴が並べられてるのは、海外暮らしがそこそこあった自分からすると不思議な感じだ。晴ちゃんのお母さんの黒いブーツと、すぐ出かけられるようのサンダルが用意されてある。側の靴棚の上にはお洒落な花瓶に白い花が生けてある。……何の花だっけ?さすがに志希ちゃんといえど、あんまり興味のないことは覚えていない。 「お帰りー、早く手洗ってきな。お菓子用意してるから」  晴ちゃんのお母さんの声だ。透き通ってて、綺麗な声だ。 「あ、そうだ。えーっと……友達連れてきちゃったんだけど、大丈夫?」 「そうなの?」  左の部屋からひょこっと顔が出される。髪を後ろに束ねている様子から料理中だったのかな。綺麗な瞳でまつ毛が長い……もしかしたら晴ちゃんに遺伝したのかな。晴ちゃんの前に二人の子供を産んでいるにしては、全体的に若々しい印象を受ける。元気で明るそう、それでいて聡明さもあるような人柄がよさそうな雰囲気だ。  「こんにちはー♪お邪魔しまーす」  靴を脱ぎながら答える。  「あら!もしかして一ノ瀬さん?」 「そうでーす♪」 「いつも晴から話は聞いててね~。実際一度会ってみたいと思ってたの!ささ、上がって上がって」 「余計な事言うなよ……」  普段どんな話をしてるんだろ?その辺りの話も聞けたらいーな♪  そのまま廊下を通ってキッチン兼リビングになっている部屋に通される。広めのテーブルには六人分のイスが揃っている。上に載ってある座布団とかでなんとなく誰が誰のイスに座っているかわかる。その中に一つだけ、真っ白なものがある。 「はい、一ノ瀬さん。どうぞ」  その椅子が引かれ、座るように促される。確か前に聞いた話では五人家族だったから、来客用の椅子なのかな。特に遠慮することもなく、座らせてもらうことにする。 「二人はどういう関係なの?」 「恋人同士でーす♪」 「ぶっ!!なんてこと言うんだよ志希!!!」 「あらあら、うちの晴がご迷惑をかけてない?」 「いえいえ~、むしろこっちが良くしてもらってくるらいで」 「オフクロも合わせるなよっ!ったく……」  気まずくなったのかとことこと、どこかへ行ってしまった。好都合といえば好都合だけど、自分で振った話題とはいえ少しだけ気まずいなー、と思っちゃう。 「すぐ戻ってくると思うから待ってて、飲み物はなににする?紅茶にコーヒー、オレンジジュースとコーラと牛乳ならあるけど」 「オレンジジュースで!」 「はーい」  透明なコップに紙パックのオレンジジュースが注がれ、あたしの前に置かれる。口をつけると濃縮還元ではない味が口から喉へと流れていく。こういうところでも子供たちに気を使ってるのかな、と思うとその恩恵をあたしが横取りしてるみたいで、悪いことしちゃったかな、って気になってしまう。 「さて、一ノ瀬さん」 「は、はい」  正面に座った晴ちゃんのお母さんがずい、とこちらによって来る。なんだか先ほどまでとは違う圧のようなものを感じて少し口ごもってしまう。 「単刀直入に聞くけど、晴と付き合ってるんでしょ?」 「……わーお」  いきなり確信めいたことを聞かれる。とっさにどう答えていいかわからずに目が泳いでしまう。 「あー、えーと、��のー」 「いいのよ、怒ったりしないから」  また圧が強くなる。笑顔とは裏腹に嘘をついたり誤魔化したりしたら許さない、と思わされてしまう。 「……はい、付き合ってます」  目線を伏せて答える。身体から変な汗が出てきて気持ち悪い。恥ずかしいのか緊張しているのか自分でもわからない。 「よろしい。私は別に女の子同士で付き合うことは反対じゃないよ。それもあの子のいい経験になるって思ってるから」  そう話す表情は穏やかで優しくて、我が子の成長を見守る良き母親って感じだ。あたしのママもそんな表情をしていたことがあったな、なんてことを少しだけ思い出した。 「でもね、遊びなら許さない。ガサツだし荒々しいとこもあるけれど、優しくてまっすぐで大切な娘のことを弄ぼうなんて、母親として許せるはずがないでしょ?」 「そ、そうですね」  背中から嫌な汗が噴き出してくる。もし以前のままの関係でぐだぐだしていたら、どんな目にあっていたか想像できない……というかしたくもない。そう思わせるほどに、強い瞳をしている。 「それで、一ノ瀬さんはどういうつもりで晴と付き合ってるの?一度聞いてみたくってね」  口調は穏やかで軽いけれども、真剣な表情だ。学会発表ですらこんなに緊張したことはない。 「ええと……晴ちゃんは真っすぐで、純粋で、からかい甲斐のある子だなーって思ってました。あたしとは違ってひねくれてもないし、それでいて他の皆に気を使える優しい子です。でも、そんなあたしの相手を楽しそうにしてくれて、いつの間にかあたしの冷めた心を少しずつ他の人から貰った愛を分け与えてくれました。だから、少しでも晴ちゃんの日常を楽しくできたらなって」  あたしってこんなに口下手だったっけ、って自分で思うくらいあたしらしくない口ぶりだ。その様子を見て、晴ちゃんのお母さんは腕を組んでうなづいている。 「なるほど。一ノ瀬さんも苦労してきたんだね。大丈夫!二人はまだ若いんだからいろいろ間違ったりもするだろうけど、そんなに晴のことわかってるならきっとうまくいくって!なにかあったら相談してね!いつでも力になるから!」 「あ、ありがとうございます」  背中をばんばんと叩かれる。心配して圧をかけてくる母親から、急に姉御肌の友達みたいになった。 「なんだよー、二人でなに話してんだよ」  着替えた晴ちゃんがやってきた。渡りに船って言葉があるけど、まさしく海岸に現れた救いの船だ。 「なんでもないよ、晴ちゃんがかわいいって話」 「なんだよそれ」
 あの後三人で取り留めのない話をしていた。晴ちゃんが昔の話をされるたびに気恥ずかしそうにしているのがなんともかわいかった。帰り際にうちの晴をよろしくね、って言われてしまった。晴ちゃんがいや今から送っていくのはオレなんだけど、って返してたのが少し救いにはなったけれども。 「はぁ……今日は疲れちゃった、母は強しってやつ?」 「オフクロが?うーん……確かに怒ると怖いけど、そんなことねーと思うけどな」 「……晴ちゃんとの子供を授かったら、あたしも強くなれる��かな?」 「子供ぉ!?」  後ろにいる晴ちゃんが大きな声を出す。さすがに気が早すぎるというか、早計だったかな。 「あたしは欲しいよ、晴ちゃんとの子供」 「そんな理由で子供を作るなよ……志希はもう十分強いだろ?」  そんなことないよ、って言えない自分が少しうらめしい。でも晴ちゃんの意見ももっともだ。そんな理由で産まれ��子供はきっとあたし以上に捻くれて、雨の中を傘をささずに歩けるような子になってしまうだろう。ふと振り返ると、晴ちゃんがこちらを見ていたのか目があった。大きくなったらあんな風になるのかな、なんて思いを巡らせてしまう。それじゃ、あたしはどうなるんだろうな。  絶対に答えの出ない難問を頭に抱えながら、晴ちゃんを傷つけたらあの人が飛んで来るのかと思うとうかつなことはできないなと思う。それでもなお、 「んっ」  こうやってキスしたりするのは抑えられない。これが恋心なのかな、と新しい発見に心が躍った。
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lovecrazysaladcollection · 5 years ago
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カオスラウンジおよび破滅クルー周辺団体関係者
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” - (via rikukoike)
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okaimonoweb · 3 years ago
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【総合部門】Thu, 16 Dec 2021 10:21:00 +0900 現在売れ筋ランキング1位 [楽天市場の部]: 脱毛 ラボ ホームエディション【ポイント最大54600円還元 12/16(木)0:00-12/16(木)9:59★レビューでプレゼント4】アイブロウスティックセット/業界初クーリング機能で痛くない光 脱毛器 家庭用 脱毛器 脱毛 サロン開発 脱毛器 脱毛 光美容 脱毛 光 脱毛器 家庭用 脱毛器 男女兼用 脱毛 サロンと同じ強力パワーを実現 脱毛器 アイブロウスティック セット 脱毛ラボ メンズ 脱毛 レディース 脱毛 VIO 脱毛 ヒゲ 髭 脱毛 デリケート http://okaimonoweb.com/topSellersRaku/
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hananien · 5 years ago
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【キャプトニ】フィランソロピスト
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ピクシブに投稿済みのキャプトニ小説です。
MCU設定に夢と希望と自設定を上書きした慈善家トニー。WS前だけどキャップがタワーに住んでます。付き合ってます。
ピクシブからのコピペなので誤字脱字ご容赦ください。気づいたら直します。
誤字脱字の指摘・コメントは大歓迎です。( Ask me anything!からどうぞ)
 チャリティーパーティーから帰ってきたトニーの機嫌は悪かった。スティーブは彼のために、知っている中で最も高価なスコッチウイスキーを、以前彼に見せられたyou tubeの動画通りのやり方で水割りにして手渡してやったが、受け取ってすぐに上品にあおられたグラスは大理石のバーカウンターに叩きつけられ、目玉の飛び出るくらい高価な琥珀色のアルコール飲料は、グラスの中で波打って無残にこぼれた。  「あのちんけな自称軍事���論家め!」 スティーブは、トニーが何に対して怒っているのか見極めるまで口を出さないでおこうと決めた。彼が摩天楼を見下ろす窓ガラスの前でイライラと足を踏み鳴らすのを、その後ろから黙って見つめる。  トニーは一通り怪し気なコラムニストの素性に文句を言い立て、同時に手元の情報端末で何かをハッキングしているようだった。「ほーらやっぱり。ベトナム従軍経験があるなんて嘘っぱちじゃないか。傭兵だと? 笑わせてくれる。それで僕の地雷除去システムを批判するなんて――」 左手で強化ガラスにホログラムのような画面を出現させ、右手ではものすごい勢いで親指をタップさせながら、おそらく人ひとりの人生を破滅させようとしているわりには楽しそうな笑みを浮かべてトニーは言った。「これで全世界に捏造コラムニストの正体が明かされたぞ! まあ、誰かがこいつに興味があったらニュースになるだろう」  「穏やかじゃないチャリティーだったようだな」 少しトニーの気が晴れたのを見計らって、スティーブはようやく彼の肩に触れた。  「キャプテン、穏やかなチャリティパーティーなんてないんだ。カメラの回ってないところじゃ慈善家たちは仮面を被ろうともしない。同類ばかりだからね」  トニーは振り返ってスティーブの頬にキスをすると、つくづくそういった人種と関わるのが嫌になったとため息をついた。「何が嫌だって、自分もそういう一人だと実感することがさ」  「それは違うだろう」  「そうか?」 トニーはスティーブの青い目を見上げてにやりと笑った。「僕が人格者として有名じゃないってことは君もご指摘のとおりだろ?」  「第一印象が最悪だったのは、僕のせいかい」 これくらいの当てこすりにはだいぶ慣れてきたので、スティーブは涼しい顔で返した。恋人がもっと悪びれると思っていたのか、トニーはつまらなそうに口をとがらせる。「そりゃそうさ。君が悪い。君は僕に興味なさそうだったし、趣味も好きな食べ物も年齢も聞かなかったじゃないか。友人の息子に会ったらまずは”いくつになった?”と聞くのがお決まりだろ。なのに君ときたらジェットに乗るなりむっつり黙り込んで」  「ごめん」 トニーの長ったらしい皮肉を止めるには、素直に謝るか、少々強引にキスしてしまうか、の二通りくらいしか選択肢がなかった。キスは時に仲直り以上の素晴らしい効果を与えてくれるが、誤魔化されたとトニーが怒る可能性もあったので、ここは素直に謝っておくことにした。  それに、”それは違う”と言ったのは本心だ。「君は自分が慈善家だと、まるで偽善者のようにいうけれど、僕はそうは思わない――君が人を助けたいと思うのは、君が優しいからだ」  「僕が優しい?」  「そうだ」  「うーん」 トニーは自分でもうまく表情を見つけられないようだった。スティーブにはそれが照れているのだとわかった。よく回る口で自分自身の美徳すら煙に巻いてしまう前に、今度こそスティーブは彼の唇をふさいでしまうことにした。
 結局、昨夜トニーが何に怒っていたのか、聞かずじまいだった。トニーには――彼の感情の表現には独特の癖があって、態度で示していることと、内心で葛藤していることがかけ離れていることさえある。彼が怒っているように見えても、その実、怒りの対象とは全く別の事がらについて心配していたり、計算高く謀略を巡らせていたりするのだ。  彼が何かを計画しているのなら、それを理解するのは自分には不可能だ。スティーブはとっくに、トニーが天才であって、自分はそうではないことを認めていた。もちろん軍事的なこと――宇宙からの敵に対する防備であるとか、敵地に奇襲するさいの作戦、武器や兵の配置、それらは自分の専門であるからトニーを相手に遅れをとることはない。それに、一夜にして熱核反応物理学者にはなれないだろうが、本腰を入れて学べばどんな分野だって”それなりに”モノにすることは出来る。超人血清によって強化されたのは肉体だけではない。しかし、そういうことがあってもなお、トニーの考えることは次元が違っていて、スティーブは早々に理解を諦めてしまうのだ。  べつにネガティブなことではないと思う。トニーが何をしようとも、結果は共に受け入れる。その覚悟があるだけだ。  とはいえ、昨夜のようにわざとらしく怒るトニーは珍しい。八つ当たりのように”自称軍事評論家”とやらの評判をめちゃめちゃにしたようだが、パーティーでちょっと嫌味を言われただけであそこまでの報復はしないだろう(断言はできないが)。彼への反感を隠れ蓑に複雑な計算式を脳内で展開していたのかもしれないし、酔っていたようだから、本当にただの”大げさな怒り”だったのかもしれない――スティーブは気になったが、翌日になってまで追及しようとは思わなかった。特に、隣にトニーが寝ていて、ジャービスによって完璧に計算された角度で開かれたブラインドカーテンから、清々しい秋の陽光が差し込み、その日差しがトニーの丸みを帯びた肩と長い睫毛の先を撫でるように照らしているのを何の遠慮も邪魔もなく見つめていられる、今日みたいな朝は。  こんな朝は、キスから始まるべきだ。甘ったるく、無駄に時間を消費する、意味だとか難しい理由なんかこれっぽっちもないただのキス。  果たしてスティーブの唇がやわらかな口ひげに触れたとき、トニーのはしばみ色の瞳が開かれた。  ……ああ、美しいな。  キスをしたときにはもうトニーの目は閉じられていたが、スティーブはもっとその瞳を見ていたかった。  トニー・スタークの瞳はブラウンだということになっている。強い日差しがあるとき、ごく近くにいるとわかる、彼の瞳はブラウンに��かかった、透明水彩で描かれたグラスのように澄んだはしばみ色に見える。  彼のこの瞳を見たことのある人間は、スティーブ一人というわけではないだろう――ペッパー・ポッツ、有名無名のモデルや俳優たち、美貌の記者に才気ある同業者――きっと彼の過去に通り過ぎていった何人もの男女が見てきたことだろう。マリブにあった彼の自宅の寝室は、それはそれは大きな窓があり、気持ちの良い朝日が差し込んだときく。  けれど彼らのうち誰も、自分ほどこの瞳に魅入られ、囚われて、溺れた者はいないだろう。でなければどうして彼らは、今、トニーの側にいないのだ? どうして彼から離れて生きていられるのだ。  「……おはよう、キャップ」  「おはようトニー」 最後に鼻の先に口付けてからおたがいにぎこちない挨拶をする。この瞬間、トニーが少し緊張するように感じられるのは、スティーブの勘違いではないと思うのだが、その理由も未だ聞けずにいる。  スティーブは、こと仕事となれば作戦や戦略のささいな矛盾や装備の不備に気がつくし、気がついたものには偏執的なほど徹底して改善を要求するのだが、なぜか私生活ではそんな気になれないのだった。目の前に愛しい恋人がいる。ただそれだけで、心の空腹が満たされ、他はすべて有象無象に感じられる。”恋に浮わついた”典型的な症状といえるが、自覚していて治す気もない。むしろ、欠けていた部分が充実し、より完全な状態になったような気さえする。ならば他に何を案じることがある? 快楽主義者のようでいてじつは悲観的なほどリアリストであるトニーとは真逆の性質といえた。  トニーが先にシャワーを浴びているあいだ、スティーブはキッチンで湯を沸かし、コーヒーを淹れる。スティーブと付き合うようになってから、いくつかのトニーの不摂生については改善されたが、起床後にコーヒーをまるで燃料のようにがぶ飲みする癖は変わらなかった。彼の天災のような頭脳には必要不可欠のものと思って今では諦めている。甘党のくせに砂糖もミルクも入れないのが、好みなのか、ただものぐさなだけかもスティーブは知らない。いつからかスティーブがティースプーンに一杯ハチミツを垂らすようになっても、彼は何も言わずにそれを飲んでいるので、実はカフェインが入っていれば味はどうでもいいのかもしれない。  シャワーから上がってきたトニーがちゃんと服を着ているのを確認して(彼はたまにごく自然に裸でキッチンやタワーの共有スペースにご登場することがある、たいていは無人か、スティーブやバナーなど親しい同性の人間しか居ないときに限ってだが)、スティーブもバスルームに向かった。着替えを済ませてキッチンに戻ると、トニーは何杯目かわからないブラック・コーヒーを飲んでいたが、スティーブが用意したバナナマフィンにも手をつけた形跡があったので���っとする。ほうっておくとまともな固形食をとらない癖もなかなか直らない。スティーブはエプロンをつけてカウンターの中に入り、改めて朝食の用意を始める。十二インチのフライパンに卵を六つ割り入れてふたをし、買い置きのバゲットとクロワッサンを電子オーブンに適当に放り込んでセットする。卵をひっくり返すのは危険だということを第二次世界大戦前から知っていたので、片面焼きのまま一枚はトニーの皿に、残りは自分の皿に乗せる。半分に割ったりんご(もちろんナイフを使う。手で割ってみせたときのトニーの表情が微妙だったため)を添えてトニーの前に差し出すと、彼は背筋を伸ばして素直にそれを食べ始めた。バゲットはただ皿に置いただけでは食べないので手渡してやる。朝食時のふるまいについては今までに散々口論してきたからか、諦めの境地に達したらしいトニーはもはや無抵抗だ。  特に料理が好きだとか得意だとかいうわけでもないのだが、スティーブはこの時間を愛していた。トニーが健康的な朝の生活を実行していると目の前で確認することが出来るし、おとなしく従順なトニーというのはこの時間にしかお目にかかれない(夜だって、彼はとても”従順”とはいえない)。秘匿情報ファイルであろうとマグカップだろうと他人からの手渡しを嫌う彼が、自分の手から受け取ったクロワッサンを黙って食べる姿は、人になつかない猫を慣れさせたような甘美な達成感をスティーブに与えた。  「今日の予定は?」  スティーブが自分の分の皿を持ってカウンターの内側に座る。斜め向かいのトニーは電脳執事に問い合わせることなく、カウンターに置いたスマートフォンを自分で操作してスケジュールを確認した。口にものが入っているから音声操作をしないようだった。ときどき妙にマナーに正しいから面食らうことがある。朝の短時間できれいに整えられたトニーの髭が、彼が咀嚼するたびにくにくに動くのを見て、スティーブは唐突にたまらない気分になった。  「僕は――S.H.I.E.L.D.の午前会議に呼ばれてるんだ。食べ終わったら出発するよ。それから午後は空いてるけど、君がもし良かったら……」 トニーの口が開くのを待つあいだ、彼の口元を凝視していては”健全な朝の活動”に支障を来しそうだったので、スティーブは自分の予定を先に話し始めた。「……良かったら、美術館にでも行かないか。グッケンハイムで面白そうな写真展がやってるんだ。東アジアの市場のストリートチルドレンたちを主題にした企画で――」  トニーはスマートフォンの上に出現した青白いホログラムから、ちらっとスティーブに視線を寄越して”呆れた”顔をした。よっぽど硬いバゲットだったのか、ようやく口の中のものを飲み込んだ彼は、今度は行儀悪く手に持っ��フォークをスティーブに向けて揺らしながら言った。「デートはいいが、そんな辛気臭い企画展なんかごめんだ」  「辛気臭いって、君、いつだったか、そういう子供たちの救済のためのチャリティーを主催したこともあったろ」  「ああ、僕は慈善家だからね。現地視察にも行ったし、NPOのボランティアどもとお茶もしたし、写真展だって行ったことがある、カメラが回ってるところでな」 フォークをくるりと回してバナナマフィンの残りに刺す。「何が悲しくて恋人と路上生活者の写真を見に行かなくちゃならない? ”世界の今”を考えるのか? わざわざ自分の無力さを痛感しに行くなんていやだね。君と腕を組んでスロープをぶらぶら下るのは、まあそそられるけど」  「まったく、君ってやつは……」 スティーブは苦笑いするしかなかった。「じゃあ、ただスロープをぶらぶら下るだけでいいよ。ピカソが入れ替えられたみたいだ。デ・キリコのコレクションも増えたっていうし、展示されてるなら見てみたい。噂じゃどこかの富豪が画家の恋人のために、イタリアのコレクターから買い付けて美術館に寄付したって」  「きみもすっかり情報機関の人間だな」  「まあね。絵が好きな富豪は君以外にもいるんだなって思った」  「君は間違ってる。僕は”超・大”富豪だし、べつに絵は好きで集めてるんじゃない。税金対策だよ。あと、火事になったとき、三億ドルを抱えるより、丸めた布を持って逃げるほうが効率いいだろ?」  「呆れた」  「絵なんて紙幣の代わりさ。高値がつくのは悪い連中が多い証拠だな」  ところで、とトニーはスマートフォンを操作し、ホログラムを解除した。「せっかくのお誘いはありがたいが、残念ながら僕は今日忙しいんだ。社の開発部のやつらが放り投げた……洋上風力発電の……あれやこれやを解析しなきゃならないんでね。美術館デートはまた今度にしてくれ。その辛気臭い企画展が終わった頃に」  「そうか、残念だよ」 もちろんスティーブは落胆なんてしなかった。トニーが忙しいのは分かっているし、それはスティーブが口を出せる範囲の事ではない。ふたりのスケジュールが完全に一致するのは、地球の危機が訪れた時くらいだ。それでもこうして一緒の屋根の下で暮らしているのだから、たかが一緒に美術館に行けないくらいで残念がったりはしない。ごくふつうの恋人たちのように、夕暮れのマンハッタンを、流行りのコーヒーショップのタンブラーを片手に、隣り合って歩けないからといって、大企業のオーナーにしてヒーローである恋人を前に落胆した顔を見せるなんてことはしない。  「スティーブ、すねるなよ」 しかしこの(肉体的年齢では)年上の恋人は、敏い上にデリカシーがない。多忙な恋人の負担になるまいと奮闘するスティーブの内心などお見通しとばかりに、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてからかうのだ。「君だってこの前、僕の誘いを断ったろ? しかも他の男と会うとかで���  「あれはフューリーに呼び出されて……」  「ニック・フューリーは男だ! S.H.I.E.L.D.の戦術訓練なんて急に予定に入るか? あいつは僕が気に入らないんだ、君に悪影響を与えるとかで」  「君に良い影響を与えてるとは思えないのかな」  スティーブはマフィンに刺さったフォークでそれを一口大に切り分け、トニーの口元に運んでやった。呆気にとられたような顔をするトニーに、首をかしげてにっこりと微笑む。  トニーはしてやられたとばかりに、さっと頬を赤くした。  「この、自信家め」  「黙って全部食べるんだ、元プレイボーイ」  朝のこの時間、トニーはとても従順な恋人だ。
 トニーに借りたヘリでS.H.I.E.L.D.本部に到着すると(それはもはやキャプテン・アメリカ仕様にトニーによってカスタムされ、「なんなら塗装し直そうか? アイアンパトリオットとお揃いの柄に?」と提言されたが、スティーブは操縦システム以外の改装を丁重に断った)、屋内に入るやいなや盛大な警戒音がスティーブを迎えた。技術スタッフとおぼしき制服を来た人間が、地下に向かって駆けていく。どうやら物理的な攻撃を受けているわけではなさそうだったので、スティーブは足を速めながらも冷静に長官室へと向かった。  長官室の続きのモニタールームにフューリーはいた。スティーブには携帯電話よりもよほど”まとも”な通信機器に思える、設置型の受話器を耳に当て、モニター越しに会話をしている。というか、怒鳴っている。  「いつからS.H.I.E.L.D.のネットワークは穴の開いた網になったんだ? 通販サイトのほうがまだ上手にセキュリティ対策してるぞ!! あ!? 言い訳は聞きたくない、すべてのネットワーク機器をシャットダウンしろ、お前らの出身大学がどこだろうと関係ない。頼むから仕事をしてくれ、おい、聞いてるか? ああ、ん? 知るか、そんなの。あと二時間以内に復旧しなけりゃ、今後は機密情報はamazonのクラウドに保存するからな!!」  「ハッキングされたのか?」  長官の後ろに影のように控えていたナターシャ・ロマノフにスティーブは尋ねた。  「そのようね。今のところ、情報の漏洩はないみたいだけど、レベル6相当の機密ファイルに不正アクセスされたのは確定みたい」  「よくあるのか?」  「こんなことがよくあっては困るんだ」 受話器を置いたフューリーが言った。「午前会議は延期だ、午後になるか、夕方になるか、夜中になるかわからん」  「現在進行中の任務に影響は?」  「独立したオペシステムがあるから取りあえずは問題ない。だがもしかしたら君にも出動してもらうかもしれない。待機していてくれるか」  スティーブは頷いた。そのまま復旧までモニタリングするというフューリーを置いて、ナターシャと長官室を出る。  「S.H.I.E.L.D.のセキュリティはどうなってる? 僕は専門外だが、情報の漏洩は致命的だ。兵士の命に関わる」  「我々は諜���員よ、基本的には。だから情報の扱いは慎重だわ」 吹き抜けのロビーに出て、慌しく行きかう職員の様子を見下ろす。「でもクラッキングされるのは日常茶飯事なのよ、こういう機関である故にね。ペンタゴンなんてS.H.I.E.L.D.以上に世界中のクラッカーたちのパーティ会場化されてるわ。それでも機密は守ってる。長官があの調子なのはいつものことでしょ」  「じゃあ心配ない?」  「さあね。本当に緊急なら情報工学の専門家を呼ぶんじゃない。あなたのとこの」  すべてお見通しとばかりに鮮やかに微笑まれ、スティーブは口ごもった。  トニーとの関係は隠しているわけではないが、会う人間全てに言って回っているわけでもない。アベンジャーズのメンバーにも特に知らせているわけではなかった(知らせるって、一体どういえばいいっていうんだ? ”やあ、ナターシャ。僕とトニーは恋人になったんだ。よろしく”とでも? 高校生じゃあるまいし)。だからこの美しい女スパイは彼らの関係を自力で読み解いたのだ。そんなに難しいことではなかっただろうとは、スティーブ自身も認めるところだ。  ナターシャは自分がトニーを倦厭していた頃を知っている。そんな相手に今は夢中になっていることを知られるのは居た堪れなかった。断じてトニーとの関係を恥じているわけではないのだが……ナターシャは批判したりしないし、クリントのように差別すれすれの表現でからかったりもしない。ひょっとすると、彼女は自分たちを祝福しているのではないかとさえ思う時がある。だからこそ、こそばゆいのかもしれなかった。  「ところで……戦闘スタイルだな。出動予定があったのか」  身体にぴったりとフィットした黒い戦闘スーツを身にまとったナターシャは肩をすくめて否定した。「私も会議に呼ばれて来たの。武装は解除してる」  スティーブが見たところ、銃こそ携帯していないが、S.H.I.E.L.D.の技術が結集したリストバンドとベルトをしっかりと装着していて、四肢が健康なブラック・ウィドウは未武装といえない。だかこのスタイル以外の彼女を見ることが稀なので、そうかと聞き流した。  「僕は復旧の邪魔にならないようにトレーニングルームにいるよ。稽古に付き合ってくれる奇特な職員がいるかもしれない」  「私は長官の伝令だからこの辺にいるわ。復旧したらインカムで知らせるから、とりあえず長官室に来て」 踵を返して、歩きながらナターシャは振り向きざまに言った。「残念だけど電話は使えないわよ。ダーリンに”今夜は遅くなる”って伝えるのは、もうちょっと後にして」  「勘弁してくれ、ナターシャ」  聞いたこともない可愛らしい笑い声を響かせて、スーパースパイはぎょっとする職員たちに見向きもせず、長官室に戻っていった。
 トニーの様子がおかしいのは今更だが、ここのところちょっと度が過ぎていた。ラボに篭りきりなのも、食事を取らなかったり、眠らなかったり、シャワーを浴びなかったりして不摂生なのも、いつものことといえばいつものことで、それが同時に起こって、しかも自分を避けている様子がなければスティーブも一週間くらいは目をつぶっただろう。
 S.H.I.E.L.D.がハッキングされた件は、その日のうちに収拾がついた。犯人は捕まえられなかったが、システムの脆弱性が露見したので今後それを強化していくという。  スティーブがタワーに帰宅したのは深夜になろうかという頃だったが、トニーはラボにいて出てこなかった。これは珍しいことだが、研究に没頭した日には無いこともない。彼の研究が伊達ではないことはもうスティーブも知っているから、著しく不健康な状態でなければ邪魔はしない。結局、その日は別々に就寝についた。と、スティーブは思っていた。  次の日の朝、隣にトニーはいなかった。きっと自分の寝室で寝ているのだと思い、先に身支度と朝食の用意を済ませてから彼の居室を訪れると、空の部屋にジャービスの声が降ってきた。  『トニー様は外出されました。ロジャース様がお尋ねになれば、おおよその帰宅時間をお伝えするようにとのことですが』  「どこへ行ったんだ? 急な仕事が入ったのか?」  『訪問先は聞いておりません』  そんなわけがあるか、とスティーブは思ったが、ジャービスを相手に否定したり説得したりしても無駄なことだった。乱れのないベッドシーツを横目で見下ろす。「彼は寝なかったんだ。車なら君がアシストできるだろうけど、もし飛行機を使ったなら操縦が心配だ」  『私は飛行機の操縦も可能です』  「そうか、飛行機で出かけたんだな。なら市外に行ったのか」  電脳執事が沈黙する。スティーブの一勝。ため息をついて寝室を出た。  ジャービスはいい奴だが(このような表現が適切かどうか、スティーブには確信が持てないでいる)、たまにスティーブを試すようなことをする。今朝だって、”彼”はキッチンで二人分の食事を支度するスティーブを見ていたわけだから、その時にトニーが外出していることを教えてくれてよかったはずだ。トニーの作った人工知能が壊れているわけがないから、これは”彼”の、主人の恋人に対する”いじわる”なのだとスティーブは解釈している。トニーはよくジャービスを「僕の息子」と表現するが――さしずめ、父親の恋人に嫉妬する子供といったところか。そう思うと、自分に決して忠実でないこの電脳執事に強く出られないでいる。  「それで……彼は何時ごろに帰るって?」  『早くても明朝になるとのことです』  「えっ……本当に、どこに行ったんだ」  『通信は可能ですが、お繋ぎしますか』  「ああ、いや、自分の電話でかけるよ。ありがとう。彼のほうは、僕の予定は知ってるかな」  『はい』  「そう……」 スティーブはそれきり黙って、二人分の食事をさっさと片付けてしまうと、朝のランニングに出掛けた。  エレベータの中で電話をかけたが、トニーは出なかった。
 それが四日前のことだ。予告した日の真夜中に帰ってきたトニーは、パーティ帰りのような着崩したタキシードでなく、紺色にストライプの入ったしゃれたビジネススーツをかっちりと着込んでふらりとキッチンに現れた。スティーブの強化された嗅覚が確かなら、少なくとも前八時間のあいだ、一滴も酒を飲んでいないのは明らかだった。――これは大変珍しいことだ。今までにないことだと言ってもいい。  彼は相変わらず饒舌で、出来の悪い社員のぐちや、言い訳ばかりの役員とお小言口調の政府高官への皮肉たっぷりの批判を、舞台でスピーチするみたいに大仰にスティーブに話して聞かせ、その間にも何かとボディタッチをしてきた。どれもいつものトニー、平常運転だ。しかしスティーブは、そんな彼の様子に違和感を覚えた。  彼が饒舌なのはよくあるが、生産性のないぐちを延々と口上するときはたいてい酔っている。しらふでここまで滔々としゃべり続けることはないと、スティーブには思われた。べたべたと身体に触ってくるのに、後から思えば意図されていたと思わずにはいられないくらい、不自然に目を合わせなかった。スティーブが秘密工作員と関係のない職種についていたとしても、自分の恋人が何かを隠していると気付いただろう。  極め付けはこれだ。スティーブはトニーの話を遮って、「君の風力発電は順調?」とたずねた。記憶が確かなら、この二日間、彼が忙しかったのはそのためであるはずだ。  「石器時代のテクノロジーがどうしたって?」  スティーブはぐっと拳を握りたいのを我慢して続けた。「だって、君――その話をしてただろ?」  「ああ……」 トニーは一瞬だけ、せわしなく何くれと動かしていた手足を止めた。「おもい出した。言ったっけ? ロングアイランド沖に発電所を建設するんだ。もう何年も構想してるんだけど、思ったよりうちの営業は優秀で――何しろほら、うちにはもっと”すごいやつ”があるんだし――そう簡単に量産は出来ないけど――それで僕は気が進まないんだが、州知事がGOサインを出してしまってね、ところが開発の連中が怖気づいてしまったんだ、というか、一人失踪してしまって……すぐに見つけ出して再洗脳完了したけど――冗談だよ、キャップ――でも無理はない事だとも思うんだ、だって考えてみろ……今時、いつなんどき宇宙から未知の敵対エネルギーが降ってくるかもしれないのに、無防備に海の上に風車なんて建ててる場合か? 奴らも責任あるエンジニアとして、ブレードの強度を高めようと努力してくれてるんだが、エイリアンの武器にどうやったら対抗出来るってんだ? 塩害や紫外線から守って次元じゃないんだろ? いっそバリアでも張るか? いっそそのほうが……うーん、バリアか。バリアってのはなかなか面白そうなアイデアだ、しかしそうすると僕は……いやコストがかかりすぎると、今度は失踪者じゃすまなくなるかも……」  スティーブは確信した。  トニーは自分に何か隠している。忙しいとウソまでついて。しかもそれは――彼がしらふでこんなに饒舌になるくらい、”後ろめたい”ことだ。
 翌朝から今度はラボに閉じこもったトニーは、通信にも顔を出さなかった。忙しいといってキッチンにもリビングにも降りてこないので、サンドイッチやら果物をラボに届けてやると、その時に限ってトニーは別の階に移動していたり、”瞑想のために羊水カプセルに入った”とジャービスに知らされたり(冗談だろうが、指摘してもさらなる馬鹿らしい言い訳で煙に巻かれるので否定しない。羊水カプセル? 冗談だよな?)して本人に会えない。つまりトニーはジャービスにタワー内のカメラを監視させて、スティーブがラボに近付くと逃げているのだ。  恋人に避けられる理由がわからない。しかし嫌な予感だけはじゅうぶんにする。トニーが子供っぽい行動に走るときは、後ろめたいことがあるとき――つまり、”彼自身に”問題があると自覚しているときだ。  トニーの抱える問題? トニー・スターク、世紀の天才。現代のダ・ヴィンチと称された機械工学の神。アフガニスタンの洞窟に幽閉されてもなお、がらくたからアーク・リアクターを作り上げた優れた発明家にしてアイアンマン――億万長者という言葉では言い表せないほどの富と権力を持ち、さらには眉目秀麗で頭脳明晰、世間は彼には何の悩みも問題もないと思いがちだが――そのじつ、いや、彼のことを三日もよく見ていればわかることだ。彼は問題ばかりだ。問題の塊だといってもいい。  一番の問題は、彼が自分自身の問題を自覚していて、直そうとするどことか、わざとそれを誇張しているということだ。スティーブにはそれが歪んだ自傷行為にしか見えない。酒に強いわけでもないのに人前で浴びるように飲んでみたり、愛してもいない人間と婚約寸前までいったり(ポッツ嬢のことではない)、パーソナルスペースが広いわりに見知らぬファンの肩を親し気に抱いてみたり、それに――平和を求めているのに、兵器の開発をしたり――していたのは、すべて彼の”弱さ”であるはずだが、トニーはもうずいぶんと長いあいだ、世間に向けてそれが”強さ”だと信じさせてきた。大酒のみのパーティクラッシャー、破天荒なプレイボーイ、気取らないスーパーヒーロー、そして真の愛国者。アルコール依存症、堕落したセックスマニア、八方美人のヒーロー、死の商人というよりもよっぽど印象がいい。メディアを使った印象操作は彼の得意分野だ。トニーは自分がどう見られているか、常に把握している。  そういう男だから、性格の矯正はきかないし、付き合うのには苦労する。だからといって離れられるわけがないのだから、これはもう生まれ持ってのトラブル・メーカーだと割り切るしかない。  考えるべきことはひとつ。彼の抱える問題のうち、今回はどれが表面化したのか?
 トニーに避けられて四日目の朝、スティーブは再びD.C.のS.H.I.E.L.D.本部に出発しようとしていた。先日詰められなかった会議の再開と、クラッキング事件の詳細報告を受けるためだ。ジャービスによるとトニーはスティーブの予定を知っているようだが、ヘリの準備を終えても彼がラボ(あるいは羊水カプセルか、タワー内のいずれかの場所)から出てくることはなかった。見送りなんて大げさなことを期待しているわけではないが、今までは顔くらい見せていた��ずだ。  (これじゃ、避けられてるどころか、無視されているみたいだ)  そう思った瞬間、スティーブの中でトニーの抱える問題の一つに焦点が合った。
 ナターシャはいつもの戦闘用スーツに、儀礼的な黒いジャケットを着てS.H.I.E.L.D.の小さな応接室のひとつにいた。彼女が忙しい諜報活動の他に、S.H.I.E.L.D.本部で何の役についているのか、スティーブは知らされていなかった――だから彼女が応接室のチェストを執拗に漁っているのが何のためなのかわからなかったし、聞くこともしなかった。ナターシャも特に自分の任務に対して説明したりしない。スティーブはチェストの一番下の引き出しから順々に中を改めていくナターシャの後ろで、戦中のトロフィーなどを飾った保管棚のガラス戸に背をもたれ、組んだ腕を入れ替えたりした。  非常に言いにくいし、情けない質問だし、聞かされた彼女が良い気分になるはずがない。だがスティーブには相談できる相手が彼女しかいなかった。  「ナターシャ、その――邪魔してすまない」  「あら構わないのよ、キャップ。そこで私のお尻を見ていたいのなら、好きなだけどうぞ」  からかわれているとわかっていても赤面してしまうのは、スティーブの純潔さを表すチャームポイントだ、と、彼の恋人などはそう言うのだが――いい年をした男がみっともないと彼自身は思っていた。貧しい家庭で育ち、戦争を経験して、むしろ現代の一般人よりそういった表現には慣れているのに――おそらくこれが同年代の男からのからかいなら、いくら性的なニュアンスが含まれていようが、スティーブは眉ひとつ動かさないに違いない。ナターシャのそれはまるで姉が弟に仕掛けるいたずらのように温かみがあり、スティーブを無力な少年のような気持ちにさせた。  「違う、君は……今、任務中か? 僕がここにいても大丈夫?」  「構わないって言ったでしょ。用があるなら言って」  確かにナターシャの尻は魅力的だが、トニーの尻ほどではない――と自分の考えに、スティーブは目を閉じて首を振った。「聞きたいことがあるんだけど」 スティーブは出来るだけ、何でもないふうに装った。「僕はその、少し前からスタークのタワーに住んでいて――……」  「付き合ってるんでしょ。なあに、トニーに浮気でもされたの?���  スティーブはガラス戸から背中を離して、がくんと顎を落とした。「オー・マイ……ナット、なんでわかったんだ」  「それは、こっちの……台詞だけど」 いささか呆気にとられた表情をして、ナターシャは目的のものを見つけたのか、手のひらに収まるくらいの何かをジャケットの内ポケットに入れると、優雅に背筋を伸ばした。「トニーが浮気? ほんとに?」  「ああ、いや……多分そうなんじゃないかと……」  「この前会ったときは、あなたにでろでろのどろどろに惚れてるようにしか見えなかったけど、ああいう男は体の浮気は浮気だと思ってない節があるから、あとはキャップ、あなたの度量しだいね」  数日分の悩みを一刀両断されてしまい、スティーブは一瞬、自分の耳を疑った。音もなくソファセットの前を通り過ぎ、部屋を出て行こうとしたナターシャを慌てて呼び止める。「そ、そうじゃないんだ。浮気したと決まったわけじゃない。ただトニーの様子がこのところおかしいから、もしかし���らと思って――それで君に相談ができればと……僕はそういうのに疎いから」  「おかしいって? トニー・スタークが?」  まるでスティーブが、空を飛んでいる鳥を見て”飛べるなんておかしい”と言ったかのように、ナターシャは彼の正気を疑うような目をした。「そうだよな」 スティーブは認めた。「トニーはいつもおかしいよ。おかしいのが彼だ。何でも好きなものを食べられるのに、有機豆腐ミートなんて代物しか食べなかったり――それでいて狂ったようにチーズバーガーしか食べなかったり――それでも、何か変なんだ。僕を避けてるんだよ。通信でも顔を見せない。まる一日、どこかに行ったきりだと思ったら、今度はラボにずっとこもってる。ジャービスに彼の様子を聞こうにも、彼はトニー以外のいうことなんてきかないし、もうお手上げだ」  ナターシャはすがめたまぶたの間からスティーブを見上げると、一人掛けのソファに座った。スティーブも正面のソファに座る。彼女が長い足を組んで顎に手を当て考え込むのを、占い師の診断を仰ぐ信者のように待つ。  「ふーん……それって、いつから?」  「六日前だ。ハッキング事件の当日はまだ普通だったけど、その翌日はやたらと饒舌で……きみも付き合いが長いから、トニーが隠し事をしているときにしゃべりまくる癖、知ってるだろ」  「それを聞いたら、キャプテン、私には別の仮説が立てられるわ」  「え?」  「来て。会議の前に長官に報告しなきゃ」  ナターシャの後を追いながら、スティーブは彼女が何を考えているか、じわじわと確信した。「君はもしかして、S.H.I.E.L.D.をハッキングしたのが彼だと――」  「最初から疑ってたのよ。S.H.I.E.L.D.のネットワークに侵入できるハッカーはそう多くない。世界でも数千人ってとこ。しかもトニーには前歴がある。でもだからこそ、長官も私も今回は彼じゃないと思ってた」  「どういうことだ」  「ハッカーにはそれぞれの癖みたいなのがあるのよ。自己顕示欲の強いやつは特に。登頂成功のしるしに旗を立てるみたいに、コードにサインを入れるやつもいる。トニーのは最高に派手なサインが入ってた。今回のはまるで足跡がないの。S.H.I.E.L.D.のセキュリティでも追いきれなかった」  「トニーじゃないってことだろう?」  「前回、彼は自分でハッキングしたわけじゃなかった。あの何か、変な小さい装置を使って人工知能にやらせてたんでしょ。今回は自分でやったとしたら? 彼がMIT在学中に正体不明のハッカーがありとあらゆる国の情報機関をハッキングした事件があった。今も誰がやったかわかってないけど――」  そこまで言われてしまえば、スティーブもむやみに否定することはできなかった。  「……ハッキングされたのは一瞬なんだろう。トニーがやったのなら、どうしてずっとラボにこもってる」  「データを盗めたとしても暗号化されてるからすぐに読めるわけじゃない。じつのところ、まだ攻撃され続けてる。これはレベル5以上の職員にしか知らされていないことだけど、現在進行形でサイバー攻撃されてるわ。たぶん、復号キーを解析されてるんだと思う。非常に高度なことよ、通信に多少のラグがあるだけで、他のシステムには全く影響していない。悪意あるクラッカーやサイバーテロ集団がS.H.I.E.L.D.の運営に配慮しながらサイバー攻撃するなんて、考えられなかったけど――もしやってるのがアイアンマンなら、うな���ける。理由は全く分からないけど」  ナターシャはすでに確信しているようだった。長官室の扉を叩く前に、スティーブを振り返り、にやりと笑った。  「ねえ、よかったじゃない――浮気じゃなさそう」  「それより悪いかもしれない」 スティーブはほっとしたのとうんざりしたのと、どっちの気持ちを面に出したらいいか迷いながら返した。恋人が浮気したなら、まあ結局は許すか許さないかの話で、なんやかんやでスティーブは許してしまったことだろう(ああ、簡単じゃないか、本当に)。しかし、恋人が内緒で国際平和維持組織をハッキングしていたのなら、まるで話の規模が変わってくる。  ああ、トニー、君はいったい、何をやってるんだ。  説明されても理解できないかもしれないが、僕から隠そうとするのはなぜだなんだ。  「失礼します、長官。報告しておきたいことが――」 四回目のノックと同時に扉を開け、ナターシャは緊急時にそうするように話しながら室内に入った。「現行のサイバー攻撃についてですが、スタークが関わっている可能性が――」  「報告が遅いぞ」 むっつりと不機嫌なニック・フューリーの声が響く。部屋には二人の人物が居た――長官室の物々しいデスクに座るフューリーと、その向かいに立つトニー・スタークが。  「ところで、コーヒーはまだかな?」 チャコールグレイの三つ揃えのスーツを着たトニーは、居ずまいを正すように乱れてもいないタイに触れながら言った。ちらりと一瞬だけスティーブに目をくれ、あとはわざとらしく自分の手元を注視する。「囚人にはコーヒーも出ないのか? おい、まさか、ロキにも出してやらなかった?」  「トニー、君……」  スティーブが一歩踏み出すと、ナターシャが腕を伸ばして止めた。険の強い声音でフューリーを問いただす。「どういうことです? 我々はサイバーセキュリティの訓練を受けさせられていたとでも?」  「いや、彼は今朝、自首しにきたんだ、愚かにも、自分がハッキング犯だと。目的は果たしたから理由を説明するとふざけたことを言っている。ここで君たちが来るまで拘束していた」  ナターシャの冷たい視線を、トニーは肩をすくめて受け流した。  「本当か? トニー、どうしてそんなことをしたんだ」  「ここだけの話にしてくれ」 トニーはスティーブというより、フューリーに向かって言った。「僕がこれから言うことはここにいる人間だけの耳に留めてくれ」 全く頷かない長官に向かって、トニーはため息をついて両手を落とした。「あとは、そうだな。当然、僕は無罪放免だ。だってそうだろ? わざわざバグを指摘してやったんだ。表彰されてもいいくらいだろう! タダでやってやったんだぞ!」  「タダかどうかは、私が決める」 地を這うように低い声でフューリーは言った。「放免してやるかどうかも、その話とやらを聞いてから決める。さっさと犯罪行為の理由を釈明しないなら、この場で”本当”に拘束するぞ。ウィドウ、手錠は持ってるか」  「電撃つきのやつを」  「ああ、わかった、わかった。電撃はいやだ。ナターシャ、それをしまえ。話すとも、もちろん。そのためにD.C.まで来たんだ。座っていい?」 誰も頷かなかったので、トニーは再びため息をついて、革張りのソファの背を両手でつかんだ。  「それで、ええと――僕が慈善家だってことは、皆さんご承知のことだとは思うんだが――」  「トニー」 自分でもぎょっとするくらい冷たい声で名前を呼んで、スティーブは即座に後悔したが――この場に至っても自分を無視しようとするトニーに、怒りが抑えられなかった。  トニーは大きな目を見開いて、やっとまともにスティーブを視界に入れた。こんな距離で会うのも数日ぶりだ。スティーブは早く彼の背中に両手を回したくて仕方なかったが、その後に一本背負いしない自信がなかったので、ナターシャよりも一歩後ろの位置を保った。  「……べつに話を誤魔化そうってわけじゃない。僕が慈善家だってことは、この一連の僕の”活動”に関係のあることなんだ。というより、それが理由だ」 ゆらゆら揺れるブラウンの瞳をスティーブからそらせて、トニーは話し始めた。
 七日前にもトニーはS.H.I.E.L.D.に滞在していた。フューリーに頼まれていた技術提供の現状視察のためもあったが、出席予定のチャリティー・オークションのパーティがD.C.で行われるため、長官には言わないが、時間調整のために本部内をぶらぶらしていたのだ。たまに声をかけてくる職員たちに愛想よく返事をしてやったりしながら、迎えの車が来るのを待っていた。  予定が狂ったのは、たまたま見学に入ったモニタールームEに鳴り響いた警報のせいだった――アムステルダムで任務中の諜報員からのSOSだったのだが、担当の職員が遅いランチ休憩に出ていて(まったくたるんでいる!)オペレーション席に座っていたのはアカデミーを卒業したばかりの新人だった。ヘルプの職員まで警報を聞いたのは訓練以外で初めてという状態だったので、トニーは仕方なく、本当に仕方なく、子ウサギみたいに震える新人職員からヘッドマイクを譲り受け(もぎ取ったわけじゃないぞ! 絶対!)、モニターを見ながらエージェントの逃走経路を指示するという、”ジャービスごっこ”を――訂正――”人命と世界平和に関する極めて責任重大な任務”を成り代わって行ったのだ。もちろんそれは成功し、潜入先で正体がばれたまぬけなエージェントたちは無事にセーフハウスにたどり着き、新人職員たちと、ランチから戻って状況の飲み込めないまぬけな椅子の男に対し、長官への口止めをするのにも成功した。ちょっとしたシステムの変更(ほら、僕がモニターの前に座って契約外の仕事をしているところが監視カメラに映っていたら、S.H.I.E.L.D.は僕に時間給を払わなくちゃいけなくなるだろ? その手間を省いてやるために、録画映像をいじったんだ――もしかしたら。怖い顔するな。そんなような気がしてたんだ、今まで)もスムーズに成立した。問題は、そのすべてが完了するのに長編映画一本分の時間がかかったということだ。トニーの忠実な運転手は居眠りもしないで待っていたが、チャリティーに到着したのは予定時刻から一時間以上は経ったころだった。パーティが始まってからだと二時間は経過していた。それ自体は大して珍しいことではない。トニーはとにかく、パーティには遅れて到着するタイプだった(だって早く着くほうが失礼だろ?)。  しかし、その日に限って問題が発生する。セキュリティ上の都合とやらで(最近はこんなのばっかりだな)、予定開始時刻よりも大幅にチャリティー・オークションが早まったのだ。トニーが到着したのは、もうあらかたの出品が終わったあとだった。  トニーにはオークションに参加したい理由があった。今回のオークションに限ったことではない。トニーの能力のもと把握することが出来る、すべてのオークションについて、彼は常に目を光らせていた。もちろん優秀な人工知能の手も借りてだが――つまり、この世のすべてのオークションというオークションについて、トニーはある理由から気にかけていた。好事家たちの間でだけもてはやされる、貴重な珍品を集めるためではない――彼が、略奪された美術品を持ち主に返還するためのグループ、「エルピス」を支援しているからだ。  第二次世界大戦前や戦中、ヨーロッパでは多くの美術品がナチスによって略奪され、焼失を逃れたものも、いまだ多くは、ナチスと親交のあった収集家や子孫、その由来を知らないコレクターのもとで所有されている。トニーが二十代の頃に美術商から買い付けた一枚の絵画が、とあるユダヤ人女性からナチ党員が二束三文で買い取った物だと「エルピス」から連絡があったのが、彼らを支援するきっかけとなった。それ以来、トニーが独自に編み上げた捜索ネットワークを使って、「エルピス」は美術品を正当な持ち主に戻すための活動を続けている(文化財の保護は強者の義務だろ。知らなかった? いや、驚かないよ)。数年前にドイツの古アパートから千点を超す美術品が発見されたのも、「エルピス」が地元警察と協力して捜査を続けていた”おかげ”だ。時間も、根気もいる事業だが、順調だった。そして最近、「エルピス」が特に網を張っている絵画があった。東欧にナチスの古い基地が発見され、そこには宝物庫があったというのだ――トニーが調べた記録によれば、基地が建設されたと思わしき時期、運び込まれた数百点の美術品は、戦後も運び出された形跡がなかった――つまり宝物庫が無事なら、そこにあった美術品も無事だったということだ。  数百点の美術品のうち、持ち主が明確な絵画が一点あった。ユダヤ人投資家の男で、彼の祖父が所有していたが、略奪の目にあい彼自身は収容所で殺された。トニーは彼と個人的な親交もあり、特に気にかけていた。  その投資家の男がD.C.の会場にも来ていて、遅れてやってきたトニーに青い顔で詰め寄った。「”あれ”が出品されたんだ――」 興奮しすぎて呼吸困難になり、トニー美しいベルベッドのショール・カラーを掴む手にも、ろくな力が入っていなかった。「スターク、”あれ”だ――本当だ。祖父の絵画だ。ナチの秘宝だと紹介されていた。匿名の人物が競り落とした――あっという間だった――頼む、あれを取り戻してくれ――」  (なんて間の悪いことだ!) 正直なところ、トニーは今回のオークションにそれほど期待していたわけではなかった。長年隠されていた品物が出品されるとなれば、出品リストが極秘であろうと噂になる。会場に来てみてサプライズがあることなど滅多にない。それがまさかの大当たりだったとは! こんなことなら、時間つぶしにS.H.I.E.L.D.なんかを使うんじゃなかった。トニーは投資家に「落札者を探し出し、説得する」と約束し、その後の立食パーティで無礼なコラムニストを相手にさんざん子供っぽい言い合いをして、帰宅の途についた――そして、ジャービスに操縦を任せた自家用機の中で、匿名の落札者について調べたが、思うように捗らなかった。もちろん、トニーが本気になればすぐにわかることだ――しかし、ちょっとばかり酔っていたし、別に調べることもあった。そちらのほうは、タイプミスをしてジャービスに嫌味を言われるまでもなく、調べがついた。  網を張っていた絵画と同じ基地にあった美術品のうち、数点がすでに別の地域のオークションや美術商のもとに売り出されていた。
 「これがどういうことか、わかるだろう」 トニーは許可をとることをやめて、二人掛けのソファの真ん中にどさりと腰かけた。デスクに両肘をついて、組んだ手の中からトニーを見下ろすS.H.I.E.L.D.の長官に、皮肉っぽく言い立てる。「公表していないが、ナチスの基地を発見、発掘したのはS.H.I.E.L.D.だろ。ナチスというより、ヒドラの元基地だったらしいな。そこにあった美術品が横流しされてるんだ。すぐに足がつくような有名なものは避けて、小品ばかり全国にばらけて売っている。素人のやり方じゃないし、僕はこれと似たようなことをやる人種を知っている。スパイだよ。スパイが物を隠すときにやる方法だ」  「自分が何を言ってるかわかってるのか」 いよいよ地獄の底から悪魔が這い出てきそうな不機嫌さで、フューリーの声はしゃがれていた。「S.H.I.E.L.D.の職員が汚職に手を染めていると、S.H.I.E.L.D.の長官に告発しているんだぞ」  「それどころの話じゃない」 トニーは鋭く言い放った。「頂いたデータを復号して、全職員の来歴を洗い直した。非常に臭い。ものすごい臭いがするぞ、ニック。二度洗いして天日干しにしても取れない臭いだ――」 懐から取り出したスマートフォンを操作する。「今、横流しに直接関わった職員の名簿をあんたのサーバーに送った。安心しろ、暗号化してある。解読はできるだろ?」 それからゆっくり立ち上がって、デスクの正面に立ち、微動だにしないフューリーを見下ろす。「……あんた自身でもう一度確認したほうがいい。今送った連中だけの話じゃないぞ。……S.H.I.E.L.D.は多くの命を救う。僕ほど有能じゃなくても、ないよりあったほうが地球にとっては良い」  「言われるまでもない」  「そうか」  勢いよく両手を合わせて乾いた音を響かせると、トニーは振り返ってスティーブを見つめた。ぐっと顎に力の入ったスティーブに、詫びるようにわずかに微笑んで、歩きながらまたフューリーを見る。「で、僕は無罪放免かな? それとも感謝状くれる?」  「帰っていいぞ。スターク。ひとりでな」  「そりゃ、寂しいね。キャプテンを借りるよ、長官。五分くらいいいだろう」  言うやいなや、トニーはナターシャの前を素通りすると、スティーブの二の腕を掴んで部屋を出ようとした。  「おい――トニー――……」  「キャップ」 ナターシャに視線で促され、スティーブはトニーの動きに逆らうのをやめた。うろんな顔つきで二人を見ているフューリーに目礼して、スティーブは長官室を後にした。
 「トニー……おい、トニー!」  トニーの指紋��証で開くサーバールームがS.H.I.E.L.D.にあったとは驚きだった。もしかしたらこれも”システム変更”された一つかもしれない――トニーは内部からタッチパネルでキーを操作して、ガラス壁を不透明化させた。そのまま壁に背をもたれると、上を向いてふーっと長い息を吐く。  スティーブは壁と同様にスモークされた扉に肩で寄りかかり、無言でトニーを見つめた。  「……えっと、怒ってるよな?」 スティーブが答えないでいると、手のひらを上げたり下ろしたりしながらトニーはその場をぐるぐると歩き出した。  「きっと君は怒ってると思ってた。暗号の解析なんか一日もかからないと思ってたんだが、絵画の落札者探しも難航して――まあ見つかるのはすぐに見つかったんだが、西ヨーロッパの貴族で、これがまた、筋金入りの”スターク嫌い”でね、文字通り門前払いをくらった。最初からエルピスの奴らに接触してもらえばもうちょっと話はスムーズについたな。それでも最終的には僕の説得に応じて、返還してくれることになった――焼きたてのパンもごちそうになったしね。タワーに帰るころには解析も済んでるはずだったのに、それから数日も時間がかかって――」  「何に時間がかかっていようが、僕にはどうだっていい」 狭い池で周遊する魚のように落ち着きのない彼の肩を掴んで止める。身長差のぶんだけ見上げる瞳の大きさが恋しかった。「僕が怒ってるのは、君が何をしていたかとは関係ない。それを僕に隠していたからだ。どうして、僕に何も言わない。S.H.I.E.L.D.に関わりのあることなのに――」  「だからだよ! スティーブ……君には言えなかった。確証を掴むまで、何も」  「何をそんなに……」  「わからないのか? フューリーも気付いたかどうか」 不透明化された壁をにらみ、トニーはスティーブの太い首筋をぐっと引き寄せて顔を近づけた。「わからないのか――ヒドラの元基地から押収した品が、S.H.I.E.L.D.職員によって不正に取引された――一人の犯行じゃない。よく計画されている。それに、関わった職員の口座を調べたが、どの口座にも大金が入金された痕跡がない。……クイズ、美術品の売り上げは、誰がどこに流してるんでしょう」  「……組織としての口座があるはずだ」  「そうだ。じゃあもう一つ、クイズだ。その組織の正体は? キャップ……腐臭がしないか」  「……ヒドラがよみがえったと言いたいのか」  「いいや、そのセリフを言いたいと思ったことは、一度もない」 トニーは疲れたように額を落とし、スティーブの肩にもたれかかった。「だから黙ってたんだ」  やわらかなトニーの髪と、力なくすがってくる彼の手の感触が、スティーブの怒りといら立ちを急速に沈めていった。つまるところ、トニーはここ数日間、極めて難しい任務に単独で挑んでいた状況で――しかもそれは、本来ならばS.H.I.E.L.D.の自浄作用でもって対処しなければならない事案だった。  体調も万全とはいえないトニーが、自分を追い込んでいたのは、彼の博愛主義的な義務感と、優しさゆえだった――その事実はスティーブを切なくさせた。そしてそれを自分に隠していたのは、彼の数多く抱える問題のひとつ、彼が”リアリスト”であるせいだった。彼は常に最悪を考えてしまう。優れた頭脳が、悲観的な未来から目を逸らさせてくれないのだ。  「もしヒドラがまだこの世界に息づいているとしても」 トニーの髪に手を差し入れると、そのなめらかな冷たさに心が満たされていく。「何度でも戦って倒す。僕はただ、それだけだ」  「頼もしいな、キャプテン。前回戦ったとき、どうなったか忘れた?」  「忘れるものか。そのおかげで、今こうして、君と”こうなってる”んだ」  彼が悲観的なリアリストなら、自分は常に楽観的なリアリストでいよう。共に現実を生きればいい。たとえ一緒の未来を見ることは出来なくとも、平和を目指す心は同じなのだから。  「はは……」 かすれた吐息が頬をかすめる。これ以上のタイミングはなかった。スティーブはトニーの腰を抱き寄せてキスをした。トニーはとっくに目を閉じていた。スティーブは長い睫毛が震えているのを肌で感じながら、トニーを抱きつぶさないように自分が壁に背をつけて力を抑えた――抱き上げると怒られるので(トニーは自分の足が宙をかく感覚が好きじゃないようだ、アーマーを未装着のときは)、感情の高ぶりを表せるのは唇と、あまり器用とはいい難い舌しかなかった。  幸いにして、彼の恋人の舌は非常に器用だった。スティーブはやわらかく、温かで、自分を歓迎してくれる舌に夢中になり、恋人が夢中になると、トニーはその状態にうっとりする。うっとりして力の抜けたトニーが腕の中にいると、スティーブはまるで自分が、世界を包めるくらいに大きく、完全な存在になったように感じる。なんという幸福。なんという奇跡。  「きみが他に――見つけたのかと思った」  「何を?」 上気した頬と涙できらめく瞳がスティーブをとらえる。  「新しい恋人。それで、僕を避けているのかと……」  トニーはぴったりと抱き着いていた上体をはがして、まじまじとスティーブを見つめた。 「ファーック!? それ本気か? 僕が何だって? 新しい……」  「恋人だ。僕が間違ってた。でも口が悪いぞ、トニー」  「君が変なこと言うから――それに、それも僕の愛嬌だ」  「君の……そういうところが、心配で、憎らしくて、とても好きだ」  もう一度キスをしながら、トニーの上着を脱がそうとしているうちに、扉の外からナターシャの声が聞こえた。  「あのね、お二人さん。いくら不透明化してるからって、そんな壁にべったりくっついてちゃ、丸見えよ」  スティーブの首に腕を回し、ますます体を密着させて、トニーは言った。「キャプテン・アメリカをあと五分借りるのに、いくらかかる?」  唐突にガラスが透明になり、帯電させたリストバンドを胸の前にかかげたナターシャが、扉の前に立っているのが見えた。  「あなた、最低よ、スターク」  「なんで? 五分じゃ短すぎたか? 心配しなくても最後までしないよ、キスと軽いペッティングだけだ、五分しかもたないなんてキャップを侮辱したわけじゃな……」  「あなた、最低よ、スターク!」  「キーをショートさせるな! 僕にそれを向けるな! 頼む!」  スティーブはトニーを自分の後ろに逃がしてやって、ナターシャの白い頬にキスをした。「なんだか、いろいろとすまない。ナターシャ……」  「いいわ、彼には後で何か役に立ってもらう」  トニーがぶつぶつと文句をつぶやきながらサーバーの間を歩き、上着のシワを伸ばすさまを横目で見て、ナターシャに視線を戻すと、彼女もまた同じ視線の動きをしていたことがわかった。  「……トニーを巻き込みたくない。元気にみえるけど、リアクターの除去手術がすんだばかりで――」  「わかってるわ。S.H.I.E.L.D.の問題は、S.H.I.E.L.D.の人間が片をつける」  ナターシャの静かな湖面のような緑の目を見て、自分も同じくらい冷静に見えたらいいと思った。トニーにもナターシャにも見えないところで、握った拳の爪が掌に食い込む。怖いのは、戦いではなく、それによって失われるかもしれない現在のすべてだ。  「……もし、ヒドラが壊滅せずにいたとしたら――」  「何度だって戦って、倒せばいい」 くっと片方の唇を上げた笑い方をして、ナターシャはマニッシュに肩をすくめた。「そうなんでしょ」  「まったく、君……敵わないな。いつから聞いてたんだ」  「私は凄腕のスパイよ。重要なことは聞き逃さない」  「いちゃつくのは終わったか?」 二人のあいだにトニーが割り入った。「よし。ではこれで失礼する。不本意なタイミングではあるが――ところでナターシャ、クリントはどこにいるんだ?」  「全職員の動向をさらったばかりでしょ?」  「クリントの情報だけは奇妙に少なかったのが、不思議に思ってね。まあいい。休暇中は地球を離れて、アスガルドに招待でもされてるんだろう。キャップ……無理はするなよ。家で待ってる」  「トニー、君も」 スティーブが肩に触れると、トニーは目を細めて自分の手を重ねた。  「僕はいつでも大丈夫だ。アイアンマンだからな」  ウインクをして手を振りながら去っていくトニーに、ナターシャがうんざりした表情を向けた。「ねえ、もしかしてこの先ずっと、目の前で惚気を聞かされなきゃいけないの?」 そう言って、今度はスティーブをにらみつける。「次の恋愛相談はクリントに頼んでよ!」
 ◇終◇
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