#群盗荒野を裂く
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好評発売中『群盗荒野を裂く』Blu-ray&DVD予告編
革命の血に染まったメキシコで男たちの友情と裏切りが交錯する! 反骨の映画監督ダミアーノ・ダミアーニが放つ 戦乱に揺れるメキシコ革命を舞台にしたマカロニウエスタンの金字塔! 恋愛からホラーまで多彩なジャンルの映画を手掛けつつも、常に権力に批判的な視点で社会問題を扱う反骨の映画監督ダミアーノ・ダミアーニ。彼の国際的な名声を決定づけたのが本作である。1910年代に勃発した「メキシコ革命」を背景に、革命軍に加担する野盗団のボスと謎めいたアメリカ人青年との奇妙な関係を描いたマカロニ・ウエスタン。野盗団のボスを「荒野の用心棒」のジャン・マリア・ヴォロンテ、アメリカ人青年を「殺して祈れ」のルー・カステル、他にクラウス・キンスキーやボンドガールを2度務めたマルティーヌ・ベズウィック、など豪華キャストが揃う。日本語吹替版協力:村田博幸/細川博幸/亜蘭寿美志 (株)フィールドワークス STORY 1910年代、革命軍と政府軍の争いが激化するメキシコ革命真っ只中。エル・チュンチョ率いる野盗団は、政府軍から武器弾薬を奪い、革命軍の将軍エリアスに売りつけていた。ある日、政府の輸送列車を襲撃した際、その列車に乗り合わせていたアメリカ人青年ビルと出会う。野盗団に協力したビルを仲間に加えたチュンチョは、彼と共に軍施設の襲撃を繰り返し武器を強奪してゆく。次第にチュンチョとビルの絆が深まっていくのだが…。
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Buone Notizie
「おおーい、おおーい、裏切者」
「ちょっと診てもらいたいのじゃが、家にあった銃じゃ、見えぬところに隠してあったのじゃ」
「まさか、自分の盗んだ品物を警察へ届けるやつがあろうとは」
「ヒヒ人間は、やつらは槍を持っていたのか?」
「いいや、小さな石を持っていた」
「あなたの奴隷どもの流す血におきをつけください」
「嘘ツイタラ神様ノ罰アタルデ」
「容疑者でない者などいませんよ」
「えっ金送れ、いいトシをして少しは考えろ」
何千もの人人(電)広がり続ける(ソ)協調行動の結果(ソ)偶然ではない(魔)ネットワークに深入りするにつれ俯瞰的な視点を失い(ソ)いまいましい部屋の中は風通しがよくない(イ)路上の(電)出来事をみつけ(多)サウンドを録音(電)雑多な物が浮かんでいた(解)醜く歪められ手足を切り取られたプラスティックの女性(ヌ)溺れ死んだ牛が見える(解)フェンス(ワ)にしがみついた水死体(解)カメラを構えた別働隊(わが)スポーツクラブのマネジャー(コ)ハゲタカの目(ワ)老衰してコルセットをつけたテナー歌手(裸)第三の(学)擬似撮影(わが)悲しげに(爆)路上をさすらう門付芸人(赤)つかの間の休息場所....見知らぬ公園の臭い(爆)陽光の中(ク)鎌みたいな口(う)奇形の精巧な模型(性)ぶらぶら(刺)玉虫(フ)でっかい糞がはりきって(イ)汚物のなかに横たわって(イ)コウモリ耳に(ハ)唇は紫色に(裸)片目の商人(荒)帽子をかぶった頭が(い)消え去り(い)マーマレイドを舐め(J)笑い声を残して(刺)死のまぎわまで近づいた人間(蝶)手に数珠を携えた一人の老女(イ)黒いウーズテッドのアブリル・ハリソンのスーツ(視)歩き方があやふや(解)ショッピングモールの前を横切る(コ)震える金属の若者(爆)澄んだ水底のような眼が開く(大)ハエの眼(匂)立派な建物に(イ)ひび割れたコンクリート(爆)鎧戸の向こうから微笑みかける(イ)複雑な(イ)裸形(大)夫婦(イ)種々のちがった背景のもとであれ体系の硬直性(魔)人は問題の規模にすぐに圧倒されてしまう(貧)地表のうえに疑問符として垂直に立てられている(人間)人間の群(イ)恋の霊感が舗道から立ち昇る(イ)我が心は愚かなる白痴(爆)エ��ーチェンバーは時間とともに(ソ)クモの巣を作りだした(魔)システマティックに(電)メタノイアに(内)何百万何千万という(ソ)録音再生(電)
注意深いまなざし(コ)放火犯を特定するものは何もない(コ)サスペンスを超えている(バ)アナウンサーの絶叫が頭上を谺して消えてゆく(ク)ルールや因襲をなに一つ守らない(バ)悲劇的な結末はともかくとして(コ)ざっくばらんに(コ)つくりあげることに非常に関心がある(バ)この見捨てられた領域の全体に(コ)幾つかの足跡が残されていた(コ)つねに死刑を利用してきたことを忘れてはならない(処)
目を開けて扉をけんめいにさがす(リ)熱の本質が運動(魔)足音と共に(幽)ピストンの圧撃音や電動機の交替破裂音(リ)赤ん坊を鉄条網からはずして生きる者(五)死せる者たちの上に投げ出す(五)太陽光線は光るうえに熱いが他の天体は光るだけ(魔)星は果てしない自由落下の状態で永久に存在し続ける(多)夜明けに包まれて眠っている(五)しかし王は権力に毒されて暴君となり(魔)騒音が鉄のドアから湧き出る(五)寓話の曖昧さは(魔)手を伸ばして通り過ぎる(リ)その二重の機能から生じる(魔)精神のない自然には模倣も反復もない(リ)
徘徊者どもは夜起きて(葬)気づく(葬)幻の刻み音(蝶)不気味な異常とあの恐怖の一瞬(永劫)計画は渦のように正確に廻り(黒)夢を脅かし(人)生とは意志動機でありその労働者たち(バ)恐怖も忘れて(黒)機械仕掛けの手つき(荒)もはや生きているとは言えまい(バ)永久に(葬)祝聖(五)これが最後の一行(バ)徘徊者(葬)見よ(ジ)
月明かりで鉛色に(改)丸い斑点や血の筋の(改)モザイク(改)聴衆は(解)うずくまって(五)声もなく(解)静まっていた(解)想像力は視覚が衰えるにつれて(改)衰えていったが(改)少し怯えて(改)ザワザワと不思議などよめきが起こって(解)しかし(時)何等異常と認められるところがない(日本)実際には(時)彼らは集団のなかへ紛れ込むのではなく(時)巨大海獣に飲み込まれ(カ)冷酷非情(葬)未熟な(改)太陽が顔をみせず(改)そこは落ち込んでいる(時)灰燼に��ぎない(カ)歯車に切り刻まれた労働(カ)特に軍隊において(時)共通の関係が(薔)抗争的関係のなかで翻弄されてしまう(カ)卑しむ(薔)隷属組織(カ)
またカノンの(カ)鋸屑(カ)常識という観点からみれば(改)聖歌隊の歌をもう少し聞きたい(処)下僕(カ)半盲の老人(改)罪人に石を投げて命を奪った(処)おぼろげに物が見える(改)悪と(五)無実を示す新証拠(処)勃起と(五)電流との接触(処)腐敗の(五)努力(五)騒々しい夜の夢は(五)惨めなものに(ア)ヒステリカルな色合い(ア)はるかに複雑(処)不眠の夜の天職(カ)風と殺人(五)分離と分析(S)モードの問題ではない(カ)サイエンス・フィクションそれは(S)知らずに終わった(S)最後の例(数)人間に関するものだ(S)
階段の途中のあの曲がり角が近づくと(薔)ありもしないものの(薔)凹面鏡の映像(ア)雨靄露湿気(ア)風で波がたつように(現)水はさまざな形を変えて(ア)解釈は無限(現)真理の方から鍵を開けることを知る(現)波の稍高い夜(秋)
始まりをもたず(美徳)造化の(食)何千年(怪人)渡り鳥の群(解)浮浪児(日本)遠い日々(ビ)数発の銃声(解)目に見えない音の戦士(解)すべてのものの終わりに(四)抑圧された残虐への郷愁(怪人)人間社会がその膨大な富によって押しつぶされ(解)多くの人が死んだように立ちつくした(サ)権力が過剰になるとその限界のゆえに対立する権力が生まれてくる(孤)狼狽した(解)神は(食)虚空に宙吊りに(食)相手は答えない(食)嘘と腕を組(薔)忍び足でその場を立ち去った(サ)
陽に焼けた肌(コ)鏡をはめ込んだドア(コ)飛沫の音に耳を傾けた(コ)焰とガスの竜巻(コ)
バカ騒ぎを演じる(湖)暴動のニュースが高速で伝わる(爆)途中不慮の死にあった(湖)ひとりの姿を二つに見せている(黒)原子はそれらを傍観すべき位置にあった(永劫)無作為を生みだすコンピュータ・プログラムはどこにも存在しない(べ)機械により作られたイメージと自動筆記のイメージは視覚的に同義である(ヌ)記憶はない(湖)何時間も過ぎ(器)写真は生きた有機体を光と化学で固定したもの(ヌ)
うっかりと天の円天井に穴を開けてしまう(食)蒸気とチリで出来た大きな雲の下(解)巨人ら人間の造るすべて(薔)沈黙が有力な手(ス)
野心を囁きかけては(ゲ)幻聴ネットワーク(バ)カテゴリーを(バ)全くの偽名(ア)欺き(ゲ)そこにいる人全員を(バ)ゲロンチョンは(エ)向こうが(バ)見る前に見る(バ)忍耐強さと落胆に耐える能力(バ)望まない者(エ)いまなお(S)目下の急務は食料を手に入れ(解)
永遠なる物体の質量(パ)だれでもないものの墓(い)ぐるぐる(電)光の渦巻き(電)夢だと思ったあのときの文字(永)消え去るよう(い)静かになりたい(赤)眠りたい(赤)ノスタルジーを抱いてきた(2)枯れ葉のようにあちこちに吹き飛ばされ(Y)人は銘々(戦)かろうじて(サ)自分だけ生きてゆくだけの話(戦)未来完了(S)
小刻みだが飢えたような呼吸(ス)新しい男(ビ)奇怪な仮面を着けさせて猥雑なアングルから女性の体を狙った(ヌ)もう一人の(ビ)太陽の踊り(食)陰毛のタブー(ヌ)太股を白日のもとにさらけ出した(美徳)失笑以外のなにものをもさそわない(美徳)善良な野蛮人(食)ヒキガエルに嘲笑を浴びせかけた(食)酩酊犯罪(日本)
空に輝く天体はまだ存在せず(食)魚を獲るために川のほとりに居を定める(食)香り(爆)
ラストショット(ワ)上空にだれも気づかない小さな空飛ぶ円盤が静止していた(怪)全宇宙においてエントロピーは常に増大する(数)夢に見られるうちはいい(い)ひとはねごとに小便を垂れていた(食)
第三の頂点(食)罪に染まる可能性は(ス)もしそれが(ヴ)霊域に踏み込んで(数)電気をながし(ワ)観測した瞬間にそこに現れる(数)閉門を告げる鐘(四)感電死の主たる特徴は血液の黒変(処)
暗黒があ��りを支配し(食)視力は非常にゆっくりと衰えていった(改)黒ずんだよだれが垂れる(食)風雪の中で(改)不安な調子(ヴ)
霧雨けむり夜はしょうしょうたる雨となる(戦)コンマのように描きこまれた(ヴ)植物の領域( )虫から人間へと道をたどってきた(ニ)毎夜森の中の空き地で眠った(食)
知覚にはつねに体位の平衡を保とうとする努力が伴っている(眼)
一生ほど数奇なものはなく(日精)書ける以上の意味がある(Y)超人とは大地の意味である(ニ)小さな子供のようにアルファベットの各文字を扱うことをふたたび学ぼうとしなければならない(魔)もし一枚の紙に描いたら(Y)ウンでもスンでもない(赤)不即不離(両)暗黙の前提(ジ)微に入り細に入り(処)ラッシュの中に消えていった(ク)白い嘘(おぼ)くしゃくしゃに丸めて握りしまいにはどこへやったか忘れ(ビ)大地に穴をうがってゆく(悪し)
町に俺の顔写真が出ているのを見たか(日本)苦悩の根があり(時)特別な盲点を持つ(ジ)香り(爆)無数のけだもの(赤)バスタオルを棍棒代りにして(ユリ)全ての言語に数があるわけではない(数の)
暗闇の奥(千)世界の創造という作業を放棄してしまうことは(ニ)失った(アル)一個の人格(ユ)みじめな暴落(アル)死が速やかに訪れ(言)敗北だけでなく絶滅あるのみ(ユ)太陽が見えない(食)完成された概念(ヌ)
覗き魔の(ワ)ロールシャッハテスト(暗)黒い風(東)視覚の謎(眼)除去しようと思わなかったとすれば(眼)黒い鏡に(裸)映像への関心(怪人)黒い翼(ヴ)かっ古い顔は消え去りその代わりに(Y)月の化身(食)別の顔が見える(Y)残忍(内)まっこうから(裸)誤解の余地なく(パ)世界中の(内)脈略の毒性(赤)隠密裡に(濁)苦い永い悪食の卓に(赤)魂を知る(悪)日常的な能天気な貪欲さ(ビ)鏡の中の父親の像に笑いかけ(眼)よく考えれば別の顔を思い浮かべる(Y)
細いサイレン(ヴ)混沌たる渦のまっただ中(お)陰謀のイタダキ(ダ)農耕技術と狩猟の手管によって万物を支配するにいたった(悪)
家庭の晩餐用の器一式をとりそろえてほしい(時)小規模な(静)キッチン(静)乳と塩味のパン(改)野菜スープ(死)肉の塊(ビ)氷に詰めた魚(ビ)デリカテッセンの調理済み食品(ビ)赤葡萄酒(死)料理の輪郭(食)一日の終わり(ビ)懐古談(ビ)全部���在として現れる(大)テーブル(ビ)壁一面が画面(静)団欒(ビ)必ず負ける(大)笑劇(アル)
はるか遠い風景のなか(ヴ)デニムのズボンに汚染した(赤)いくつもの縺れ(イ)こどもだまし(アル)
近視矯正用の(日精)特徴づけるメガネ(内)虫の好かない未来(イ)歯の抜けた魔女の息の(バ)混ざり合う(イ)冷淡さ(ク)声のトーンはわかる(電)不愉快だった(イ)ろくでなし(イ)Xの母親には勝てない(Y)ただ文字に書かれただけではない(イ)
或る夜(ヴ)過去のあらゆる過ちが旅人を不利に導く(ア)悪訳に対するアンチテーゼ(学)嫌悪が恐怖に変わって(怪人)高みからデカダンスの本能が秘かに作動している(ニ)自然によって設定されている(眼)視覚(シ)ジグザグ線に似ている(Y)歩きのクセ(わが)悪には悪を( )横っ面を引っぱたく(半)シンバルを鳴らし(シ)心耳にとどろく(お)
一切の空間の母胎(眼)黒い水の蜃気楼(イ)脂肪のテラテラ浮いたひたい(暗)膏汗がにじみ(半)胴震いがとまらなかった(赤)まったく不明のまま(日精)泥のように眠る(戦)空白期間のあいだ(ス)
独りでとり乱し(蝶)片手に猛毒(ハ��鉄砲玉(赤)単純な図式(学)それが好きでなければならない(歴)白羽の矢(処)自身がニュースになって(電)病勢は(日精)忍ばせた密かな野心の重みで(ビ)どんどん進行していった(日精)
唸り声におびやかされ(箕)ごみごみした(ビ)罹災(わ)泥濘(改)の都(ハ)幾万の衝突(ク)何かの科によって(小)かつての「現在」を甦る不気味な既視感(プ)方向を記述する(シ)記号がその記号をくり返し(見)続き番号が登録され(ビ)目印の役割(数)前へか後ろへか(ニ)エゴからセルフへの(経)見返りの(わ)欲望に制限を課す(裸)多くの家畜(裸)四つの市門がある(パ)さまざまな民族が混合し(ユ)都市が存在し始める(見)
空想的な(ユ)自分達の顔を(蝶)観察をはじめたときは(サ)目にしたものを写す(電)はずんだ眼の色(濁)囁き合い(濁)破片と化して到着するかもしれない(ア)陰険な肉欲の鉄則以外には常に笑い続けてきた(ノ)眠りまで(フ)究竟(刺)をともなった機敏さ警戒心(ア)無口(日精)静穏(裸)に叮嚀に(刺)精神修行の核心(ア)息を吸うこと(内)いよいよおもしろくなってきた(サ)原始的な観照力(パ)死ねずに(蝶)眠っていた言葉(I)言うことはない(い)
うそ寒い寂しい日(戦)この阿魔(刺)かの眼(う)さまざまな角度から(学)愛情の監視(殺)そっけない(歴)間に合わせの丸太小屋(爆)血の悪酔い(大)コンビニエンスな発想が( )ひどく痛む(半)奇態な自覚にいきなり打たれ(蝶)鬼子母神(戦)手たちが群がる(爆)クエバ・デ・ラス・マノス(数の)
なぜそんな(小)却を経た(赤)古い都(赤)泥棒(大)十夜の夢(大)少し舌のもつれる歌声(裸)変化をズバリ誰によって(バ)拡まったのかその由来は勿論分からない(小)密雲を吹き払った(濁)定めて大向こうを騒がす(刺)毒素遺伝子が絡む(A)九尾の狐(小)
直径数キロの(ク)悪い空気(ノ)墨や朱をだんだんに注し(刺)どんな機械でも(I)退引きならない(半)愛情を帳消し(半)すべての(い)亀裂が(学)地獄(い)吸収する(フ)機械の形をとった化石化(マ)どこか現実離れしない(赤)未来の避けられない変化(解)
合理的な価値(孤)リトル・アジア(フ)男と女の脳(内)不意に思った(永)人間たちはなんとなく不満を持っている(孤)弱者が不正と見なすものも強者にとってはつねに正しいものでしかない(ソ)物語の陰の物語をあばく(処)都合よく操られ(処)うなだれた(い)ある種の心理的な(孤)劣等感を(孤)欲求のセットを育てあげてきた(孤)人間という生物は幾世紀にもわたって自分をコントロールする能力のどうしようもない欠如を示してきた(バ)
「想像」という語の解釈(魔)冷静に物事を見詰め(バ)欲望のまま(シ)聴く(シ)超越した見識(バ)多くの出来事は中立良くも悪くも無く特別に不吉なものでもない(バ)怠慢な安逸との間に(魔)微妙な媒質(X)感覚の映像(魔)
独裁的な(楽)見知らぬミクロコスモス(パ)死は変幻自在な生命体(ア)軽々しく信じたり無批判に受け入れたりすることも危険(ア)腐敗し汚物に変身(パ)亀ふたたび(パ)絵文字は(言)無限にヴァリエーションが作り出せる(言)午に近い(箕)某月某日(戦)同日同刻(同)原典の複製(学)独創的な暗号(わ)目が吸いつけられ(ク)どのようにでも(言)ある観測者と(数)別の観測者(数)同じ時間に偶然立ち止まっている(サ)
「もうどうにも(い)インチキだ明らかにインチキだ」(裸)歯をガチガチ鳴らしながら(ビ)
マラチオンの(内)ぬるぬる(裸)登場人物の(裸)二三本横にはみ出した乱杭歯に(美)ひきゆがんだ顔(東)整形手術(裸)工夫と情熱(孤)一種の密室殺人(わ)動機を(歴)追剝ぎ(半)ひょっとすると(歴)排除する(I)仔細が(半)巣を食っている(半)少女の手ほどの雲が一つ(ハ)うす気味の悪い(箕)蛇の皮をゆすって幽霊のように笑う(永劫)時の手(ア)坐って微笑んでいる奇怪な像(フ)熾烈な戦い(処)意志をくじく(オ)
最も醜い容貌を持つ(濁)小人の肖像画の意図(フ)筋金入りの糞(視)大長老の威厳などどこへやら(わ)ピカレスクの要素(I)裏銘(永)概念を付与し(数の)登場人物や名前や舞台に関心がある(バ)金歯を吐き出して(裸)制度化された低い暴力(内)全面的に疎外され(視)恥辱のために(裸)不屈で戦闘的な(殺)奇妙な豊かさ(い)最悪の方式(ソ)社会と正気(言)不安に対する不安(時)現代の集団的神経症(時)時代診断のうち(時)有している特徴としては(日本)思考阻害(日本)自閉性(日本)無情性(日本)情性欠如性(日本)嗜虐性(日本)自己顕示欲性(日本)スピードは人間にとって意味への意志(時)によって深く支配され(時)フラストレーション不満不充足を麻痺させる(時)現代病(時)世迷いごと(バ)心への反映(時)迷惑(半)迷信(パ)迷蒙(パ)ミアスマ(パ)被害者カレンダー(バ)孤独な群衆(孤)針と墨と図柄(見)
理想のメディア(ヌ)アメリカ人を政治へ招待している(孤)政治的な支配は上層部が永続的に存在するのに不可欠なのだ(資)新奇な(性)車は(I)軍政(悪)
右脳にインプットし左脳にトランスすることで暗号化する(数)どの局にも同調しないチューニング(ア)マルコーニ無線電報(ハ)連結ラインに電気のけいれん(爆)かすかなきしみ音(蝶)脳内に録音された言葉エングラム(視)死刑執行人の不手際(処)叛乱と解放が行われた(ユ)主体が(バ)身代わりになって体験(バ)死んだ山羊の屍体を夢中になって(C)検屍しようというのではない(C)一様に匂う空気の流れは高度に人工的(匂)頭上の暗雲(マフ)
豪雨(戦)第一の布告(ハ)喉が渇いている(悪)コカ・コーラの成分を(悪)事実ファクトと虚構フィクションをアッセイ分析と(歴)すべての政治組織の(I)悪人の欲望を伸張し倍加する正しい方法はシンジケートのマネー・ロンダリングに(殺)
都市規制計画という墓場に埋葬される(建)白き路上に影をおとし(戦)整備コスト削減(悪)ファシズムの都市(建)市場から駆逐されてしまった(悪)街の音(ダ)電気の欲求(爆)テロリズム的な工業化(西)本道から言えば邪道である(戦)今それは機械的制御の危険性について私たちに警告する目的を果す(I)実験において(匂)意思決定をしているのは機械ではなくその機械を設計して権限を与えた人間(A)生活水準が著しく低下し貧困問題の悪化(悪)格差には常に根本的に主観的で心理的な側面が存在することになりこれは当然ながら政治的な対立を引き起こす(2)予測不可能な(ノ)愛情の要因を排除する(ノ)この面をさげて(イ)あたかも都会人は歯をみがく(戦)
はじめに言葉ありき(言)言葉とは何であるか?(言)「私」という言葉について混乱している(I)言葉を移しかえるだけでは成り立たない(学)怖ろしい硬直から(い)苦痛の蓄積にキーワードをつなぐ(視)黒豹のオペラケイプが床に広がり(ハ)真のユートピアとは(シ)青空を背に(大)最後の生命(ノ)二人の亡骸と(半)末裔で結ばれていた(ユ)バランス(シ)守るべき何の節度をも持たない人々をかきわけ(ノ)たどった道をとらえ(日)失われた文字のアルファべットに従い(見)泥の壁(裸)沈潜し(日)太陽そのものが大地に降りて来ないように(パ)はなしことばを言語を説明する(日)あいだに虚空の広大無辺(い)言語とメタ言語(日)避けがたい(シ)影は長く(グ)不自然に這い進み(大)種をまくことだけを( )言葉だけがただひとり虚無に挑戦する(オ)
曇天の暗い湿ったような日(戦)指導者のインスピレーションの下に(ユ)わが国旗なお健在なりし(裸)小世界にはただゆっくりと四季のめぐりがある(時)人間は成長がとまるとともに衰えはじめる(ジ)このように快いものだとは知らなかった(戦)
夢とは正確に何ですか?(I)習癖ノート(裸)初耳のすじのとおった話(C)手紙の一行一行(C)くちばしをさしはさまない(視)心の内部(電)環境の中にある(電)汚水溜(時)ゴミ棄場(時)非衛生的な場所(時)うらぶれたもの哀しさすべて吸収し熟知している(電)無縁な考察(食)大量の思い込み(2)全てが主要な要素になる(シ)灰(パ)中心点の中心(パ)一つの針穴(い)零のために(い)破壊されたものが積み重なった世界だ(解)故郷からすすんで身をかくし(時)遠く離れていた(Y)互いに関与し合う対極として存在するのは遺伝子と環境であり生まれと育ちとも呼ばれる(生)現実的根拠のない無内容なおしゃべり(2)仏も不在にする無心(赤)住所を残さなかった(爆)孤立し酒を飲まずあまり外出しない(視)不在の(爆)克明さ(戦)別の「現実」(コ)狩り集められ(ユ)定義することが不可能(アル)死体(ハ)はだれだ?(爆)一事が()万事この調子(解)
眼球の動き方を確かめる方法。浮かびあがった地球から三千光年、孤独も友情もみんな同じだ。塵と憂鬱に人物がちぐはぐに、コンスタントに、直接、間接に、人間を通して表われ音のように響く。一つの面影へ引き返すある種の有限の未来。散髪はいまでも1世紀前でも所用時間は変わらない、人間の顔はそれがその時代の様式を形成する。古い物がみんな消え禁欲が長びくともう我慢できない。身動きが苦しいような一日があきれるほど長く、暗がりにうごめく何かに妙にフィエゾルのホタルの火を思い出した。悉く謎を持ち乱れて飛ぶ白泡のさながら、野次馬根性の好奇心で妨害音のように喋りまくり音楽は破壊される。言葉のチリが堕ちてくるとともに侵入から悲鳴までの一行、感情の届く前に目は左から右にたまらなく動く。無と化したガラクタの預言者なり。
黒蛇と白蛇がもつれて跳るが如く半酔半醒の彼は、低く細き境界のかげひなたを好む、先天的の悪人だったのかもしれない。一道の稲妻がすべてを粉砕し、彼は不倶戴天の敵と単なる知り合いであろうが残らず召喚する。彼の教えは人一人に確定している死に「多い」という処を目的に唯夢中に足を早めさせた。「多い」に到達した者から「私の過去はすべて私のものではないものです」 と書置きをのこしてみな自決した。小さな虫はいつの間にか占領する、影で動き変化する悪の形を視た者はいない。バロウズの見えないシャム双生児アザーハーフのように、蛙鳴と云い蛙吠と云う平仄の都合ばかりでなく、虫の声は寂しく、理屈無しに雨に泣く、これで午前中の報告は終矣と。
未来派夫人は肉親間以外また害獣以外への宣戦布告、それは魂のサディズムを剥奪してやるために。険悪さと雅量との中間地点、隙間恥部に設置した高性能プラスチック爆弾。耳をつんざくような閃光のオレンジと人影の醜怪な黒が燃え上がる。心おきなく空想の富を失った裏の裏、肉親間の思いがけない共鳴を生じ深怨の瞳を交わした。火の玉は不規則に混乱し街は血走ってぴくぴく脈打。自身の小心を呪い、片づけておかねばならない急用を未来派夫人は解放出来なかった。九階から急いで玄関にかけ下りた、演劇的に乱暴な死にものぐるいの態度、零落した青い血管、急激に溶暗した埋火の悔恨。場景に現れた巨大な身体の検屍官は会釈したようにも見えた。中和しあうウイルスの味を繁殖する数千人の劣等者たる他人ども、だれ一人情報を寄せるものはなかった。下落した通貨のようなうそ寒い空気がただよいだしていた。
夢の国の住人、ロイドメガネのこじき娘がいる。人を支配せず人にも支配されない人間、それは狡猾な抜け道であった。腹痛の波緊急の催し、最後の場面で共同便所に駆けつける。蚋に刺されながら糞、惨事の規模であり鈍い唸りにして、定尺の二十三分。排便の発見、蝿が飛び回る便器は大陸を汚染するに足る。みずから進んで足や腕といった具合に身体のあらゆる部分に便をぬった。やりすぎで子供じみて見える怪奇千万の事実。彼女は四方を林で囲まれたファイトトロン型屋外便所を完成させた。不変にして不動の均整の四角四面の日課を形成した。太陽の差込み残光が神経のほうでマヒするも、一笑に付し行き先は定めない、叫びは率直でありたい。強烈な獣性の創造力、非常な自信を得た。夢の完成などというものではない、これはタブーの果てと太古への憬れに向かって一歩を進める話である。
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"Kill them with kindness" Wrong. CURSE OF MINATOMO NO YORITOMO
アイウエオカキクケコガギグゲゴサシスセソザジズゼゾタチツテトダ ヂ ヅ デ ドナニヌネノハヒフヘホバ ビ ブ ベ ボパ ピ プ ペ ポマミムメモヤユヨrラリルレロワヰヱヲあいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわゐゑを日一国会人年大十二本中長出三同時政事自行社見月分議後前民生連五発間対上部東者党地合市業内相方四定今回新場金員九入選立開手米力学問高代明実円関決子動京全目表戦経通外最言氏現理調体化田当八六約主題下首意法不来作性的要用制治度務強気小七成期公持野協取都和統以機平総加山思家話世受区領多県続進正安���保改数記院女初北午指権心界支第産結百派点教報済書府活原先共得解名交資予川向際査勝面委告軍文反元重近千考判認画海参売利組知案道信策集在件団別物側任引使求所次水半品昨論計死官増係感特情投示変打男基私各始島直両朝革価式確村提運終挙果西勢減台広容必応演電歳住争談能無再位置企真流格有疑口過局少放税検藤町常校料沢裁状工建語球営空職証土与急止送援供可役構木割聞身費付施切由説転食比難防補車優夫研収断井何南石足違消境神番規術護展態導鮮備宅害配副算視条幹独警宮究育席輸訪楽起万着乗店述残想線率病農州武声質念待試族象銀域助労例衛然早張映限親額監環験追審商葉義伝働形景落欧担好退準賞訴辺造英被株頭技低毎医復仕去姿味負閣韓渡失移差衆個門写評課末守若脳極種美岡影命含福蔵量望松非撃佐核観察整段横融型白深字答夜製票況音申様財港識注呼渉達良響阪帰針専推谷古候史天階程満敗管値歌買突兵接請器士光討路悪科攻崎督授催細効図週積丸他及湾録処省旧室憲太橋歩離岸客風紙激否周師摘材登系批郎母易健黒火戸速存花春飛殺央券赤号単盟座青破編捜竹除完降超責並療従右修捕隊危採織森競拡故館振給屋介読弁根色友苦就迎走販園具左異歴辞将秋因献厳馬愛幅休維富浜父遺彼般未塁貿講邦舞林装諸夏素亡劇河遣航抗冷模雄適婦鉄寄益込顔緊類児余禁印逆王返標換久短油妻暴輪占宣背昭廃植熱宿薬伊江清習険頼僚覚吉盛船倍均億途圧芸許皇臨踏駅署抜壊債便伸留罪停興爆陸玉源儀波創障継筋狙帯延羽努固闘精則葬乱避普散司�����豊洋静善逮婚厚喜齢囲卒迫略承浮惑崩順紀聴脱旅絶級幸岩練押軽倒了庁博城患締等救執層版老令角絡損房募曲撤裏払削密庭徒措仏績築貨志混載昇池陣我勤為血遅抑幕居染温雑招奈季困星傷永択秀著徴誌庫弾償刊像功拠香欠更秘拒刑坂刻底賛塚致抱繰服犯尾描布恐寺鈴盤息宇項喪伴遠養懸戻街巨震願絵希越契掲躍棄欲痛触邸依籍汚縮還枚属笑互複慮郵束仲栄札枠似夕恵板列露沖探逃借緩節需骨射傾届曜遊迷夢巻購揮君燃充雨閉緒跡包駐貢鹿弱却端賃折紹獲郡併草徹飲貴埼衝焦奪雇災浦暮替析預焼簡譲称肉納樹挑章臓律誘紛貸至宗促慎控贈智握照宙酒俊銭薄堂渋群銃悲秒操携奥診詰託晴撮誕侵括掛謝双孝刺到駆寝透津壁稲仮暗裂敏鳥純是飯排裕堅訳盗芝綱吸典賀扱顧弘看訟戒祉誉歓勉奏勧騒翌陽閥甲快縄片郷敬揺免既薦隣悩華泉御範隠冬徳皮哲漁杉里釈己荒貯硬妥威豪熊歯滞微隆埋症暫忠倉昼茶彦肝柱喚沿妙唱祭袋阿索誠忘襲雪筆吹訓懇浴俳童宝柄驚麻封胸娘砂李塩浩誤剤瀬趣陥斎貫仙慰賢序弟旬腕兼聖旨即洗柳舎偽較覇兆床畑慣詳毛緑尊抵脅祝礼窓柔茂犠旗距雅飾網竜詩昔繁殿濃翼牛茨潟敵魅嫌魚斉液貧敷擁衣肩圏零酸兄罰怒滅泳礎腐祖幼脚菱荷潮梅泊尽杯僕桜滑孤黄煕炎賠句寿鋼頑甘臣鎖彩摩浅励掃雲掘縦輝蓄軸巡疲稼瞬捨皆砲軟噴沈誇祥牲秩帝宏唆鳴阻泰賄撲凍堀腹菊絞乳煙縁唯膨矢耐恋塾漏紅慶猛芳懲郊剣腰炭踊幌彰棋丁冊恒眠揚冒之勇曽械倫陳憶怖犬菜耳潜珍
“kill them with kindness” Wrong. CURSE OF RA 𓀀 𓀁 𓀂 𓀃 𓀄 𓀅 𓀆 𓀇 𓀈 𓀉 𓀊 𓀋 𓀌 𓀍 𓀎 𓀏 𓀐 𓀑 𓀒 𓀓 𓀔 𓀕 𓀖 𓀗 𓀘 𓀙 𓀚 𓀛 𓀜 𓀝 𓀞 𓀟 𓀠 𓀡 𓀢 𓀣 𓀤 𓀥 𓀦 𓀧 𓀨 𓀩 𓀪 𓀫 𓀬 𓀭 𓀮 𓀯 𓀰 𓀱 𓀲 𓀳 𓀴 𓀵 𓀶 𓀷 𓀸 𓀹 𓀺 𓀻 𓀼 𓀽 𓀾 𓀿 𓁀 𓁁 𓁂 𓁃 𓁄 𓁅 𓁆 𓁇 𓁈 𓁉 𓁊 𓁋 𓁌 𓁍 𓁎 𓁏 𓁐 𓁑 𓀄 𓀅 𓀆
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ダ-ティ・松本 不健全マンガ家歴30年[-α]史 ●はじめに この文章は同人誌「FUCK OFF!7」において書かれたものをベースにして逐次増補改定を加えていき、いずれ歴史の証言として、[というほど大袈裟なものでは無いが…]一冊の本にまとめたいという意図のもと、近年どんどん脳が劣化していくダ-松の覚え書きとしても使用の予定。事実関係は間違いに気付き次第 訂正。同人誌発表時のものも今回自粛配慮して、実名、エピソード等を削除した箇所有り。有り難い事に某出版社よりすでに出版打診があったがまだまだその時期ではない、マンガを描く事が苦痛になったら活字の方も気分転換にいいかも…。 /*マークは今後書き加える予定のメモと心得たし。 ●前史/修行時代・1970 さいとうプロの短くて濃い日々…… 1968年に上京。数カ月後東京は戦場に。熱い季節の始まりだった。 2年後親元を飛び出し友人のアパートに転がり込む。場所は渋谷から井の頭線で駒場東大駅下車、徒歩5分。地図で見ると現在の駒場公園あたり。昼間でも裸電球を付けなければ真っ暗という馬小屋のような部屋。数メートル先には当時の建設大臣の豪邸が…。前を通りかかるだびに警備のおまわりがじろり。 いつまでも友人に迷惑もかけられないのでとりあえずアシスタントでも…と手元にあったマンガ誌をひっくり返し募集を探す。幸いさいとうプロと横山まさみち氏のところでアシ募集があり両方応募。どっちか一つ通れば…と思っていたら何と両方受かってしまい、双方に条件を聞く。当時高円寺 のアパート、風呂無し4畳半の部屋で相場12000円の時代。前者一ケ月の給料10000円、後者20000円との事。給料の方がボロアパートの家賃より安いとは…!どう考えても前者は食う方法がないと判断し、後者さいとうプロへ入社。 ここに居たのはたったの半年に過ぎないけれど今思えばこれだけで本が一冊描ける位の濃い半年だった。しかしこのあと2X年分も書かねばならないことを思えば今回はいくつかのエピソードを書くだけに留めよう。 ダー松が入った時は小池一夫氏[クビ?]、神田たけ志氏や神江里見氏、きしもとのり氏[現・松文館社長]等と入れ替わりの時で、きし氏の女遊びの凄さと神江氏の絵のうまさは伝説になっていた。現在「亀有」「ゴルゴ」が歴代単行本の巻数の多いベスト1、2位だが[ともに100巻を越えた]、3位は神江氏の「弐十手物語」[70巻以上]だという事は知ってる人は少ないだろう。 当時の制作部は、さいとうたかを[以下ゴリ]をトップに石川班[ゴルゴ13、影狩り]、甲良班[バロム1]、竹本班[シュガー、どぶ等]の3つに分かれ、それぞれのキャップにサブ・チーフが一人づついて、ヒラが2~6人いるというシステムで総16名。独立し現在も活躍中の叶精作、小山ゆう、やまさき拓味の3名がそれぞれの班のサブ・チーフ。ダー松は石川班で左右1メートル以内に叶氏とゴリにはさまれ、のんびり出来ない状態で、はなはだ窮屈。叶氏はほとんどマンガ家になりたいとも思った事のなかった人で、設計事務所みたいなところで図面を引いていた人がなぜマンガプロダクションに来たのか不思議だった。格別マンガ好きというわけでもなかったせいか現在まで全ての作品が原作もので、オリジナルは一本もないのはそのせい?祭りなどの人がうじゃうじゃ出てくる群集場面が得意。 やまさき氏は大の競馬好き、現在競馬マンガを多く描くのは当時からの趣味が生きたというべきか。もう一つの趣味である風俗についてはここでは書くのは差し控えよう。小山氏は後日ここの事務の女性と結婚するが、当時はつき合っているとは誰も知らず、スタッフの一人がやめる時その女性に交際を申し込んだら、茶店に呼び出されて小山氏からと凄まれたと聞いたが���か本当かは不明。 ここでの生活は新入り[ダー松を含めて3名]は朝の9時前に会社に行き、タイムカードを押し、前日のごみをひとまとめして外に出し、トイレ掃除をして、16人分のお茶を2Fで入れて制作部のある3Fへの狭い階段をふらふら昇り、机ごとに置いて歩き、終れば、一息ついて買っておいたパンと牛乳を3分で食べて、やっとそれから仕事。しかし新入りの3名の内1人折茂は常に遅刻なのでいつも佐藤と2人でやっていた。佐藤も遅れる時はダー松1人で。辞めてから10年位、16人分のお茶を持って階段をふらふら歩きお盆をひっくり返す夢をよく見たものだが、実際ひっくり返したのは折茂と佐藤の2人で、よく茶碗を割っていた。 たまには夕方6時には帰れるが、普通は夜10時までで、アパートに帰って銭湯に行けばもう明日にそなえて寝る時刻、このくり返しの日々。週1日は徹夜で明け方に帰り、その時は当日の昼12時出勤。休日は日曜日のみで忙しい時はそれも取り消し。つまり休みは月3日。[これで給料2万円!]そんな日々の繰り返し。 夕方までは皆和気あいあいと仕事していたが、ゴリが夕方6時頃に「おはようさん」と現れると、全員無駄口がたたけなくなり、仕事場はシーンと静まり返り、以下その日が終わるまでは疲れる時間がただひたすら流れるのみ。 当時石川班は「ゴルゴ13」と「影狩り」を描いていたがゴリは主人公の顔と擬音のみ。マジックで最後に入れる擬音はさすがに入れる位置がうまいと感心。ゴルゴの顔はアルバムに大小取り混ぜてコピーがとってあり、忙しい時は叶氏がピンセットで身体に合わせて「これが合うかな~」といった感じで貼り付けていた。 その頃すでに「ゴルゴ」は近々終わると噂されていたが、現在もまだ続いているとは感嘆ものだ。 ゴリと石川氏が「ゴルゴ」の最終回の終わり方を話しているのを聞いたら、何ともつまらない終わり方。しかしあれから20年以上も経つ事だし、きっともっといい終わり方を考えてあるだろうなと思っていたら、先日TVで本人が最初から考えてある終わり方だと言うのを聞き、がっくり。企業秘密だろうから書かないが、作品の最初の方に伏線が数度出ているのでわかる人にはすぐわかる筈。 辞めた小池一夫氏とさいとうプロに何があったかは知らないが、漏れ聞く話では結構もめ事があったみたいだ。 「子連れ狼」で「ゴルゴ13」と同じ設定の回があった時、「小池のガキャー訴えたるー!」とゴリが吠えていたものだが、結局たち消え。さいとうプロ作品で脚本を書いた本人が辞めた後、他の作品で同趣向の作品を書いても著作権は脚本を書いた原作者のものだと思うがどんなものだろう。その回のタイトルは忘れたが、ある場所に居合わせた人々が武器を持った集団の人質となり、その中に素人だと思われていた主人公、実は殺しのプロフェッショナルがいて、次々とその集団を殺していく、といったプロットで、ミッキー・スピレーンの短編に同じような作品があり、本当に訴えていたら恥をかいたと思うが・・・。 そういえば事務の方には山本又一郎という男がいたが、後年映画プロデューサーとして 「ベル薔薇」や「太陽を盗んだ男」等を創る事になるが、この野郎が生意気な男で当時皆に対して10歳は年上、といった感じの振る舞いだったが後日俺と一つしか年が離れてなかった事を知り、そんな若造だったとは、と皆怒ったものだ。以来奴の事を「マタさん」から「クソマタ」と呼ぶようになる。 さて半年後に先輩たちが積もり積もった不満を爆発させる反乱事件が勃発し、2年は居るつもりでいたここでの生活も、辞めるか残るかの選択を迫られる。残ればさいとうプロの現体制を認める事となるので、ダー松も退社。 しかし反乱グループとは別行動をとって一人だけの肉体労働のアルバイター生活へ突入。超ヘビーな労働の製氷工場、人使いの荒い印刷所、命綱もない高所の足場で働く建設現場等々。トラックの助手をしていた時は運ちゃんが「本宮ひろしって知ってるか?うちの息子の友達でさぁ、昔、おっちゃんメシ食わしてくれーなんて言ってきたもんだが、今は偉くなっちゃってさー、自分のビル建てたらしいよ。赤木圭一郎みたいにいい男なんだ。」とうれしそうに話してくれたが、運ちゃんには悪いがそいつは今も昔も一番嫌いなマンガ家なんだ。あの権力志向はどうにかならんか。天下を取る話ばかりだもんなぁ。 ところで後日、単行本の解説で高取英が「さいとうたかをのヤローぶっ殺してやる!」とダー松が言ったなどと書いているが、小生はそんな危ない事言った覚えはないのでここできっちり訂正しておきます。 「会社に火ィつけてやる!」位は言ったかも・・・[嘘] 。 悪口は言っても別に怨みなど無い。ところでアシスタントとしてのダー松は無遅刻、無欠勤以外は無能なアシだったと反省しきり。理想的なアシスタントとはどんなものか、それはまた別の機会に。 *入社試験はどんな事を? *さいとうプロ��は当時ほとんどろくな資料は無かった? *ハイジャックの回の飛行機内部の絵は、映画「大空港」を社内カメラマンが映画館で写してきたものをもとに描く。 *当時のトーンは印刷が裏面にしてあり上からカッターでけずったり出来ない。 *トーンの種類は網トーンが数種、それ以外はほんの3、4種類位しかなかった。 *仕事中のB.G.M.はアシの一人が加山雄三ばかりかけるので大ひんしゅく。好評だったのは広沢虎造の浪曲「次郎長三国志」、初代桂春団次の落語。眠気もふっとぶ位笑えた。 ダ-松が岡林信康の「見る前に跳べ」をかけてるとゴリは「何じゃー!この歌は!」と怒る。名曲「私たちの望むものは」はこの男には理解不能。 ●1 9 7 1 ~ 1 9 7 4 持 ち 込 み & 実 話 雑 誌 時 代 当時は青年劇画誌全盛時代で、もともと望月三起也氏や園田光慶氏のファンで活劇志向が強く、 主にアクションもののマンガを描いて持ち込みに行っていた。今のようにマンガ雑誌が溢れかえって、山のようにマンガ出版社がある時代ではなく、数社廻るともう行くところがない、という状態で大手では「ビッグコミック」があっただけで 「モーニング」も「スピリッツ」も「ヤン・ジャン」も当然まだない。テーマを盛り込んだ作品を持って行くと編集から「君ィ、うちは商売でやっているんだからねぇ」と言われ、アクションに徹した作品を持って行くと「君ぃ、ただおもしろいだけじゃあねぇ」と言われ 「おい、おっさん!どっちなんだ?」とむかつく事多し。この辺の事は山のように書く事があるが、有りすぎるのでパス。 *そのうち書く事にする。 ただ金属バットで頭をカチ割って脳みそをぶちまけてやりたいような奴が何人もいたのは事実。今年[’97]「モーニング」に持ち込みに行って、断られた奴が何万回もいやがらせの電話をかけて逮捕された事件があったが、そのうちトカレフを持って殴り込みに行く奴が出てくるとおもしろい。出版社も武装して大銃撃戦だぁ!などと馬鹿な事書いてどうする!とにかく持ち込みにはいい思い出が何もない。そんな中、数本だけ載った作品は渡哲也の映画「無頼」シリーズの人斬り五郎みたいな主人公がドスで斬り合う現代やくざもの[この頃の渡哲也は最高!]、ドン・シーゲルの「殺人者たち」みたいな二人組の殺し屋を主人公にした『汚れたジャングル』、陽水の「傘がない」が好きだという編集さんの出したテーマで車泥棒とブラックパンサーの闘士とのロード・ムービー風『グッバイ・ブラ���ー』、拳銃セールスマンを主人公にした『ザ・セールスマン』、等々10本ちょい位。 さてその頃並行してまだエロマンガ専門誌といえるようなものがなかったような時代で、実話雑誌という写真と記事ページからなる雑誌に4~10ページ位を雑誌の味付けとして描かせてもらう。当時、お手本になるようなエロマンガなど皆無で、エロ写真雑誌を古本屋で買ってきてからみのポーズを模写。マンガで裸を描く事はほとんど初めてで、これがなかなか難しいのだがエロシーンを描くのは結構楽しい。当時出版社に原稿持って行き帰りにグラフ誌をどっともらって帰るのが楽しみだった。SM雑誌の写真ページも参考になる。なお当時のペンネームは編集部が適当につけた池田達彦、上高地源太[この名前はいけてます。また使いたい]等。その数年後、逆にマンガが主で記事が味付けというエロマンガ誌が続々と創刊される。 *さいとうプロをやめたあと編集や知人に頼まれて数人のマンガ家の所へ手伝いに行く。秋田書店「漫画ホット」で『ジェノサイド』を連載中の峰岸とおる氏の所へ行き、仕事が終わったあとまだ売れてない頃の榊まさる氏も交え酒を飲む/川崎のぼる大先生のところへ数日だけ/3000円たこ部屋/小山ゆうオリオンププロ *当時のアルバイトは記憶によると時給150~200円位/大日本印刷市ヶ谷駐屯地/坂/ *一食100円/どんなに貧しい漫画家もみかん箱の上で書くやつはいない/TV萩原サムデイ *ろくでなし編集者 ●1 9 7 5 ~ エ ロ マ ン ガ 誌 時 代 に 突 入 実話誌は意外とエロは抑え目で描くように口すっぱく言われていたのだが、以前活劇っぽい作品を描かせてもらってたが潰れてしまった出版社にいた児島さんが編集する「漫画ダイナマイト」で打合せも何にもなしに好きに描かせてもらい、ここでエロマンガ家としての才能[?]が開花する。描いてて実に楽しく眠る時間がもったいない位で、人に睡眠時間が必要な事を恨んだ程。出来る事なら一日中休まず描いていたい気分で完全にはまってしまう。 初の連載作品「屠殺人シリーズ」はこの頃から/『漫画ポポ』。中島史雄氏は大学時代にこの作品を見ていたとの事で、トレンチコートにドクター・ペッパー模様のサイレンサーつきマグナム銃で遊戯人・竜崎一也が犯しまくり殺しまくり、サディスト、マゾヒスト、殺人狂、まともな奴が一人も出てこない性と暴力の祭典。ちなみにタイトルページは描かないでいい、との事でどうするのかと思っていたら編集部が中のワンカットを拡大してタイトルページを創り、1ページぶんの原稿料をけちるというせこいやり方だった。けちるといえば、原稿の1/3にCMを入れる際、原稿料を1/3削った会社もあり。 ●1 9 7 6 ~ 後に発禁仲間となる高取英と出逢い、『長編コミック劇場』で「ウルフガイ」みたいのをやろうと、怒りに震えると黒豹に変身してしまう異常体質の主人公を設定し、獣姦のイメージで「性猟鬼」なるエロマンガをスタート!しかしその号で雑誌が潰れる。この路線は今でもいけそうな気がするがどんなものだろう。 この頃の珍品に「快楽痴態公園」がある。タイガースに11-0とワンサイドで打ちまくられ、怒ったジャイアンツファンのおっさんが公園でデート中の女をずこずこに犯りまくり、その間にジャイアンツは9回裏に12-11とゲームをひっくり返してしまうのである!その時のジャイアンツの監督はもちろんミスター長嶋、先発堀内、打者は柴田、土井、高田、王、張本等々がいる。タイガース監督は吉田、ピッチャー江本、キャッチャーフライを落球する田淵、そしてあの川藤もいる。解説は牧野…… ●1 9 7 7 ~ 上記2作品を含む初の単行本「肉の奴隷人形」が久保書店より発行。後にリングスの会場で逢った佐竹雅昭氏はこの本が一番好きとの事だった。 「闇の淫虐師」もこの年スタート。一話完結でバレリーナ、バトンガール等々、毎回いろんな女たちをダッチワイフのごとくいたぶりまくるフェチマンガとして1979年まで続け、単行本は「堕天使女王」「裂かれた花嫁」「エロスの狂宴」「陶酔への誘い」「終りなき闇の宴」の全5巻。ちなみに今年「闇の淫虐師’97」を『コミック・ピクシィ』にて発表。いつか『闇の淫虐師・ベスト選集』でも出したいところ。 [’98に実現、’99には続刊が出る] ●1 9 7 8 ~ 久保書店より第2弾の単行本「狂った微惑人形」。収録作品の「犯された白鳥」は持ち込み時代に描いた初のバレリーナもの。結構気に入っていた作品なのに、後年再録の際、印刷所の掃除のおばさんが捨ててしまい、この世にもはや存在しない不幸な子となる。[’99に宝島スピード・ブックに本より直接スキャンして収録] エロ、グロ、ナンセンスの会心作「恍惚下着専科」を発表。サン出版より同名の単行本発行。また同出版より「コミック・ペット/堕天使画集」として今までの作品を続々単行本化。全10巻位。これは今でも古本屋で流通しているとの事で、まだまだ世間様のお役にたっているらしい。 この年、「堕天使たちの狂宴」を描いていた『漫画エロジェニカ』が発禁処分、来年でもう20年目となる事だし、当時の人たちと集まってその大放談を収録し「発禁20���年特集号」でも創ってみようかと計画中。さて当時の秘話としてもう時効だろうから書いてみるけど、前述の『堕天使画集』に「堕天使たちの狂宴」は収録される事となり、当然修正をガンガン入れて出版されるものと覚悟していたら、米国から帰国後出来上がった本を見ると発禁になった状態のまま再録されている!以下桜木編集長との会話 ダ/いや~、いい度胸してますね。 編/だって修正してあるじゃない。 ダ/その修正状態で発禁になったんですよ 編/・・・・・ ダ/・・・・ 以下どんな会話が続いたのか失念…… それにしてもサドの「悪徳の栄え」の翻訳本は発禁後20年以上して復刻されたけれど、「堕天使たちの狂宴」は半年もしない内に単行本になっていたとはエロ本業界とは何といいかげんな世界!しかし作品そのものは、今見るとリメイクする気にもならないどうという事もない可愛い作品で、結局あれもあの時代の姑息な政治のひとかけらに過ぎなかったのだろう。いい点があるとしたら一つだけ、それまでのエロマンガになかった瞳パッチリの少女マンガ的ヒロインを登場させた事位か。今の美少女エロマンガは本家の少女マンガもかくや!という位眼が大きいが当時としては画期的だったかも。 ●1 9 7 9 ~ この年の「淫花蝶の舞踏」は「堕天使たちの狂宴」よりずっといい/『漫画ソフト』。今年出た「別冊宝島/日本一のマンガを探せ!」でベスト2000のマンガがセレクトされているが、ダー松の作品の中ではこの作品が選ばれている。教師と生徒、二人の女たちが様々な男たちの手によってに次々ともてあそばれ、闇の世界を転々として再び巡り会う時、女たちは蝶と化し水平線の彼方に飛び去り、男たちは殺し合い血の海の中で屍と化す。ダー松作品にはこのように男根が女陰の海に飲み込まれてに負けるパターンが多い。[性狩人、遊戯の森の妖精、美少女たちの宴、人魚のたわむれ・・等々] この年からスタートの「性狩人たち」シリーズ[劇画悦楽号]はバレエ、バイオレンス、SEXの三要素がうまくからみあい、それぞれが頂点まで達する幸福な神話的作品だ。ここから派生した路線も多く、美少年路線は’83の「聖少女黙示録」へ。身体障害者路線は’80の「遊戯の森の妖精」、’84からの「美姉妹肉煉獄」へと繋がる。’81の最終話「ハルマゲドンの戦い」ではせりふなしで24ページ全てが大殺戮シーンという回もあり、中でも一度やりたかった見開きで銃撃戦の擬音のみという事も実現。こんな事がエロマンガ誌で許される時代だった。ちなみにこの回は[OKコラルの決闘・100周年記念]だが、何の意味もない。単行本は最初サン出版より、その後久保書店より「白鳥の飛翔」「少女飼育篇」���ヘラクレスを撃て!」「眼球愛」「海の女神」の全5刊。現在入手出来るのは後の3刊のみ。[「海の女神」も最近在庫切れ] この年出た「人魚のたわむれ」の表題作は性器に{たこ}を挿入するカットを見た編集長が「・・・[沈黙]・・・頭おかしいんじゃ・・ブツブツ・・気違い・・・ブツブツ・・・」と呆れてつぶやいていたのを記憶している。たこソーニューは今年出た「夜顔武闘伝」で久しぶりに再現。なおこの作品は’83にマンガと実写を噛み合せたビデオの珍品となる。水中スローモーションファックがなかなかよい。 ●1 9 8 0 ~ なぜか「JUNE」の増刊として作品集「美少女たちの宴」がサン出版より出版され、その短編集をもとに脚本化し日活で映画が創られる事となる。[「花の応援団」を当てたこの映画の企画者・成田氏は日活退社後「桜の園」等を創る。]その際、初めて映画撮影所を見学し、せこいセットがスクリーン上ではきちんとした絵になってるのを見て映画のマジックに感心。タイトルはなぜか「性狩人」で、’96にビデオ化された。監督・池田敏春のデビュー第2作となり現在までコンスタントに作品を発表しているが、出来のいい作品も多いのになぜか代表作がない。初期の「人魚伝説」が一番いいか。 この映画に合わせて「美少女たちの宴」を2~3回のつもりで「漫画ラブラブ」で描き出すがどんどん話がふくらみ、おまけに描いてる出版社が潰れたり、雑誌が潰れたりで雑誌を転々とし条例による警告の嵐がきた「漫画大飯店」を経て、「漫画ハンター」誌上で完結したのは’83になる。この作品でクリトリスを手術してペニスのように巨大化させるという人体改造ものを初めて描く。 この年の「遊戯の森の妖精」は身体障害者いじめ鬼畜路線の第2弾!森の中の別荘に乱入したろくでなしの二人組が精薄の少女の両親達を虐殺し、暴行の限りをつくすむちゃくちゃな作品で、雷鳴の中、少女の性器に男達のペニスが2本同時に挿入されるシーンは圧巻!しかしこのとんでもない男達も少女の性のエネルギーに飲み込まれ、朽ち果てていく・・・。 ●1 9 8 1 ~ 美少女マンガ誌のはしり「レモン・ピープル」誌創刊。そこで描いたのが「白鳥の湖」。虚構の世界のヒロインを犯すというコンセプトは、アニメやゲームのヒロインをずこずこにするという今の同人誌のコンセプトと同じかも。バレエ「白鳥の湖」において悪魔に捕われたオデット姫が白鳥の姿に変えられる前に何にもされてない筈がないというモチーフにより生まれたこの作品は、悪魔に男根を植えつけられたヒロインが命じられるままに次々と妖精を犯して歩き悪魔の娘となるまでを描くが、あまり成功したとは言えない。ただ人形サイズの妖精をしゃぶりまくり淫核で犯すアイデアは他に「少女破壊幻想」で一回��っただけなのでそろそろもう一度やってみたいところ。「ダーティ松本の白雪姫」はその逆をいき、犯す方を小さくした作品で7人の小人が白雪姫の性器の中にはいり、しゃぶったり、処女膜を食べたり、と乱暴狼藉![ちなみに両者をでかくしたのが同人誌「FUCK YOU!3」の「ゴジラVSジュピター」]この童話シリーズは意外と好評で続いて「ダーティ松本の赤い靴」を上記の単行本に描き下ろして収録。童話は結構残酷なものが多く、この作品も切られた足だけが荒野を踊りながら去って行くラストは原作通り。 *近年童話ブームだがこの頃もっと描いておけば「こんなに危ない童話」として刊行出来たのにとくやまれる。 「2001年快楽の旅」もこの本に収録。快楽マシーンを逆にレイプしてしまう、珍しく映画「2001年宇宙の旅」風のSF作品。 掲載誌を決めずに出来る限り多くのマンガ誌で描こうというコンセプトで始めたのがこの年スタートした「怪人サドラン博士」シリーズ。「不死蝶」シリーズや「美少女たちの宴」シリーズの中にも乱入し、「漫画ハンター」最終号では地球をぶっ壊して[その際地球は絶頂の喘ぎ声をあげ昇天する!]他の惑星へ行ってしまう。今のところ10誌位に登場。いつかこのサドラン・シリーズだけ集めて単行本化したいところ。ちなみに「サド」と「乱歩」を足して「サドラン博士」と命名。作者の分身と言っていい。 [後年、「魔界の怪人」として全作品を収録して刊行、04年現在品切れ中] この年描いて’82の単行本『妖精たちの宴』に収録の「とけていく・・」はレズの女たちが愛戯の果てに、肉体が溶けて一匹の軟体動物と化す、タイトルも内容も奇妙な作品。作者の頭もとけていた? ●1 9 8 2 ~ 1 9 8 3 ’83年に「美少女たちの宴」が完結。全てが無に帰すラストのページは真っ白のままで、このページの原稿料はいりません、と言ったにもかかわらず払ってくれた久保書店、偉い![明文社やCM頁の稿料を削った出版社=某少年画報社なら払わなかっただろうな……と思われる……]この作品以外は短編が多く、加速度をつけてのっていく描き方が得意のダー松としてはのりの悪い時期に突入。また10年近く走ってきてだれてきた頃でもあり第一次落ち込み期と言っていい。マンガがスタンプを押すように描けないものか、などとふとどきな考えまで湧いてくる。思えば一本の作品には、いったい何本の線を引いて出来上がっているものなのか。数えた馬鹿はいないだろうが数千本は引いている筈。一ヵ月に何万本とペンで線を引く日々・・うんざりする筈です。 この頃のめぼしい短編をいくつか書くと、少女マンガ家の家に税務調査にきた税務署員が過小申告をネタにねちねちいたぶるが、���シスタントに発見された署員は撲殺される。そして板橋税務署は焼き討ちにあう、���いった作品「[タイトル失念]xx税務調査」。[後日読者よりこのタイトルを「色欲ダニ野郎」と教えていただく。ひどいタイトル *編集者のつけるタイトルはその人のセンスが実によくわかる。しかしサイテ-の題だなこりゃ…。 果てるまで「おまんこして!」と言わせながら処女をやりまくる「美処女/犯す!」はラスト、狂った少女が歩行者天国の通行人を撃ちまくり血の海にする。「嬲る!」はパンチドランカーとなった矢吹ジョーが白木葉子をサンドバッグに縛りつけ、殴って、殴って、殴りまくる。段平おっちゃんの最後のセリフ「・・ブスブスくすぶっちゃいるが・・・」「打てッ!打つんだ!ジョー!」「お前はまだ燃えつきちゃいねえ!」とはエロ・ドランカーの自分自身に向けて発した言葉だったのかも。トビー・フーパーばりの「淫魔のはらわた」は電気ドリルでアナルを広げてのファック!とどめにチェーンソーで尻を切断!いまだに単行本に収録出来ず。[’98の「絶頂伝説」にやっと収録]「からみあい」は夫の愛人の性器を噛みちぎる。「危険な関係」はアルコール浣腸をして火をつけ尻から火を吹かせる。この手は『FUCK YOU!2』の「セーラー・ハルマゲドン」で復元。そういえばこの作品の序章と終章だけ描いて、間の100章位をとばすやりかたはこの頃の「禁断の性獣」より。女性器にとりつき、男性器に変身するエイリアンの侵略により地球は女性器を失い滅亡する、といったストーリーで当時聞いた話では谷山浩子のD.J.でこの作品がリスナーの投書でとりあげられ、ダー松の名はダーティ・杉本と読まれたそうな。ヒロインの少女がひろ子という名前なのでこのハガキが選ばれたのかもしれないが、作者は薬師丸ひろ子からとったつもりだったのだが・・。[別にファンではない。] 「女教師狩り」は映画館で観客に犯される女教師とスクリーン上の同名のエロ映画の二本が同時進行し、一本で二本分楽しめるお得な作品。 ’83は’80に「漫画エロス」にて描いた「エロスの乱反射」の最終回の原稿が紛失したため単行本が出せないでいたのを、またまた「仏の久保さん」に頼んでラスト近くをふくらませて「漫画ハンター」に3回程描かせてもらい、やっと’85に出版。見られる事に快感を覚えるファッション・モデルが調教される内に、次第に露出狂となっていき、街中で突然裸になって交通事故を起こさせたり、最後はビルの屋上でストリップショー。そしてカメラのフラッシュの中に飛び降りていき、ラスト1ページはその性器のアップでエンド! 本格美少年・ゲイ・マンガ「聖少女黙示録」も’83。レズの姉たちの手によって女装に目覚めた少年がホモのダンサーたちに縛られなぶられ初のポコチンこすり合いの��精シーン。そして性転換して女となった主いるが、その中の’84の「白い肌の湖」はタイトルで解る通りのバレリーナものだがポコチンを焼かれた男が、一緒に暮ら人公が手術で男になった少女と暮らすハッピーエンド。この作品は単行本「美少女ハンター」に収録されてす二人の女と一人の男に復讐するエンディングがすごい!まず男の性器を切り取り、片方の女の性器にねじ込んだあと、その女の性器ごとえぐり取る。そしてその二つの性器をつかんだまま、もう一人の女の性器にフィストファック!のあげく、その二つの性器を入れたままの女性器をナイフでまた切って、ほとんどビックマック状態でまだヒクヒクうごめく血まみれの三つの性器を握りしめるとんでもない終り方!全くダー松はこんな事ばかりやっていたのかとあきれかえる。もう鬼畜としか言い様がない!しかし「ウィンナー」を二枚の「ハム」で包むなんて・・GOODなアイデアだ、又やってみよう。 ●1 9 8 4 ~ 「漫画ハンター」で「闇の宴」前後篇を描き、後日これをビデオ化。雪に包まれた六本木のスタジオで痔に苦しみながらの撮影。特別出演として中島史雄氏が絶妙の指使い、東デの学生時代の萩原一至が二役、取材に来たJITAN氏もスタジオに入ってきた瞬間、即出演で生玉子1000個の海で大乱交。カメラマンが凝り性で照明が気に入るまでカメラを廻さず、たった二日の撮影はやりたい事の半分も出来ず。撮影が終ると痔はすぐに完治。どうもプレッシャーからくる神経性だったみたいでこれに懲りてビデオは一本のみ。 この年の「肉の漂流」は親子丼もので、近所の書店のオヤジからこの本はよく売れたと聞いたが、一時よく描いたこのパターンは最近では「FUCK YOU!3」の「母娘シャワー」のみ。熟女と少女の両方が描けるところが利点。「血の舞踏」は久しぶりの吸血鬼もの。股間を針で刺し、噛んで血を吸うシーン等々いい場面はあるが、うまくストーリーが転がらず3回で止める。短編「果てるまで・・」は核戦争後のシェルターの中で、父が娘とタイトル通り果てるまでやりまくる話。被爆していた父が死んだ後、娘はSEXの相手を捜して黒い雨の中をさまよう。 またリサ・ライオンの写真集を見て筋肉美に目覚め、マッチョ女ものをこの頃から描き出す。しかしなかなか筋肉をエロティックに描くのは難しい。 ●1 9 8 5 ~ くたびれ果ててすっかりダレてきたこの頃、8年間働いてくれたアシスタント女史に代わっ���パワーのかたまり萩原一至、鶴田洋久等が東京デザイナー学院卒業後加わってダーティ・マーケットも第2期に突入!新旧取り混ぜておもしろいマンガをいろいろ教えて貰って読みまくる。「バリバリ伝説」「ビーバップハイスクール」「ペリカンロード」「めぞん一刻」「わたしは真悟」「Be ��ree!」「緑山高校」「日出処の天子」「吉祥天女」「純情クレイジー・フルーツ」「アクター」「北斗の拳」「炎の転校生」「アイドルをさがせ」「綿の国星」「いつもポケットにショパン」「バツ&テリー」「六三四の剣」永井豪の絶頂期の作品「バイオレンス・ジャック」「凄之王」「デビルマン」等々100冊以上とても書ききれない位で、う~ん・・マンガってこんなにおもしろかったのか、と感動! そこで眠狂四郎を学園にほうり込んで、今まであまり描かなかった学園マンガをエロマンガに、というコンセプトで始めたのが「斬姦狂死郎」。「六三四の剣」ばりに単行本20巻を目指すものの、少年マンガのノリは今では当たり前だが、当時はまだエロマンガとして評価されず、ほんの少し時代が早すぎたかも。’86に中断、今年’97に「ホリディ・コミック」にて復活!果たしていつまで続けられるか? →後に「斬姦狂死郎・制服狩り」、「斬姦狂死郎・美教師狩り」として刊行完結 前年末から始めた「美姉妹肉煉獄」は身障者いじめの鬼畜路線。盲目の姉とその妹を調教して性風俗店等で働かせ、娼婦に堕していく不健全・不道徳な作品で、肉の快楽にひたっていく盲目の姉に対し妹も「春琴抄」の如く己の眼を突き、自らも暗黒の快楽の世界にはいり、快楽の光に目覚めるラスト。 また、これからは女王様物だ!となぜか突然ひらめき「筋肉女」シリーズの延長としてフィットネス・スタジオを舞台に「メタル・クイーン」シリーズも開始。これは単行本2冊分描いたが、連載途中でヒロインの髪型を歌手ステファニーのヘア・スタイルにチェンジしたり、レオタードもたっぷり描けてわりと気に入っている。 10年近く描いた「美蝶」先生シリーズもこの年スタート!こうしてみるとマンガを描く喜びに満ちた大充実の年だったかも。 ●1 9 8 6 ~ この年は前年からの連載ものがほとんどだが、「エレクト・ボーイ」は空中でファックするシーンが描いてみたくて始めた初の超能力エロマンガ。コメディ的要素がうまくいかず2回で止める。この路線は翌年の「堕天使輪舞」で開花。 「夜の彷徨人」は自分の育てた新体操選手が怪我で選手生命を失ったため、その女を馬肉のごとく娼婦として夜の世界に売り渡した主人公という設定。しかし腕を折られ、女にも逆に捨てられ、そして事故によってその女を失ったあげく不能となってしまう。失った快楽を取り戻すため無くした片腕にバイブレーターを取りつけ、夜の街をさすらい次々と女たちをレイプしていくというストーリー。がっちり設定したキャラだったのにまったく話がはずまず、男のポコチンは勃起しないままに作品も不発のまま終る。 「斬姦狂死郎」が不本意のまま終わったため学園エロス・シリーズは「放課後の媚娼女」へと引き継が���る。当時見ていた南野陽子のTV「スケバン刑事・」とS・レオーネの「ウエスタン」風に料理。ラストの「男といっしょじゃ歩けないんだ」のセリフは一番好きな映画、鈴木清順の「東京流れ者」からのもじり。単行本は最初司書房から出て、数年後ミリオン出版から再販、そして’97久保書店より再々販ながら結構売れて今年また再版。この作品は親を助けてくれる有難い孝行息子といったところ。 ●1 9 8 7 ~ さいとうプロOBで那珂川尚という名のマンガ家だった友人の津田が「漫画ダイナマイト」の編集者になっていて、実に久しぶりに同誌で「堕天使輪舞」を描く。超能力エロマンガの第2弾。今回はエロと超能力合戦とがうまくミックスされ一応成功といっていい。この路線は「エレクト・ボーイ」とこの作品、そして’96の「夜顔武闘伝」も含めてもいいかも。一時、この手の作品は数多くあったが最近はめったに見かけない。しかし、まだまだこの路線には鉱脈が眠っているとにらんでいるがどんなものだろう。 ●1 9 8 8 ~ 「放課後の媚娼女」に続いて抜かずの凶一無頼控え「放課後の熱い祭り」を2年がかりで描く。’89に完結し司書房より単行本化。そして今年’97に改定してめでたく完全版として復刊!この頃が一番劇画っぽい絵で、たった2~3人のスタッフでよくこれだけ描き込めたなと改めて感心!エロシーンがちょっと少なめながら中島史雄氏がダー松作品でこの作品が一番好き、とお褒めの言葉を頂戴する。 TVで三流アマゾネス映画を見ている内、むくむくとイメージがふくらみ、昔から描きたかった西部劇と時代劇がこれで描けると、この年スタートさせたのが「不死蝶伝説」なるアマゾネス路線。昔々青年誌の創世期にあのケン月影氏がマカロニ・ウエスタンを描いていたことを知る人は少ないだろう。俺もあの頃デビューしていたらウエスタンが描けたのに、と思う事もあったが、このシリーズでほんの少しだけその願望がかなう。 この頃、アシスタントやってくれてた格闘技マニアの鶴田洋久に誘われ、近所の空手道場通いの日々。若い頃修行のため新宿でやくざに喧嘩を売って歩いたという寺内師範は、もう鬼のような人で、行けば地獄が待っていると判っててなぜ行く?と不思議な位休まず通う。体育会系はマゾの世界と知る。組手は寸止めではなく顔面以外は当てて可だったので身体中打撲のあざだらけ、ビデオで研究したという鶴田の体重をかけたムエタイ式の蹴りをくらい、右手が饅頭のように腫れ上がる。先輩たちの組手の試合も蹴りがもろにはいってあばら骨が折れたりで、なぜこんなヘビーな事をする?と思うが、闘う事によって身体の奥から何か沸き上がってくるものがある。スリランカの元コマンドと組手をやった時、格闘家の気持ちが少しだけ判るようになった。 ●1 9 8 9 ~ ’94まで続く「美蝶」シリーズでこの年は『ノスフェラトウ篇』を描き、シリーズ中これが一番のお気に入���。同人誌の「王夢」はこれが原点。 短編では「悪夢の中へ」はスプラッタ・エロマンガで久しぶりにチェーンソゥでお尻のぶった切り!はらわた引きずり出し、人肉食いちぎり!顔面叩き割り等々でラストに「ホラービデオの規制をするバカは俺が許さん!」などと書いているので、この年が宮崎事件の年か?世間は彼が日野日出志・作のホラービデオ「ギニーピッグ」を見てあの犯罪をおかした、としてさんざんホラービデオの規制をやっといて、結局見てもいなかったとわかったあとは誰一人日野日出志氏にもホラービデオさんにも謝らす゛知らんぷり。残ったのは規制だけで、馬鹿のやる事には全く困ったもんである。先日の「酒鬼薔薇・14才」の時も犯罪おたくの心理学者が、「これはマンガやビデオの影響です。」などと相も変わらずたわけた寝言をぬかしていたが、馬鹿はいつまでたっても馬鹿のまま。少しは進歩しろよ!お前だよ、お前!短絡的で幼稚な坊や、小田晋!よぅく首を洗っとけ!コラ! 「獣人たちの儀式」は退学者や少年院送りになつた生徒、暴走族、ヤクザ達が集まって酒盛りしながら女教師たちをずこずこにしてOB会をひらく不健全作品。編集長が「また危ない作品を・・・」とこぼしたものだが、岡野さん、田舎で元気にお過しでしょうか。この頃の「漫画エロス」には「ケンペーくん」だとか「アリスのお茶会」だとかおもしろい作品が載っていたものです。「爆走遊戯」は伝説のストーカー・ろくでなしマンガ家の早見純が一番好きな作品と言ってくれたが、なぜだかわからない。人の好みはいろいろです。以上3本は単行本「熱き唇の女神」に収録。 「ふしだらな女獣たち」はフェミニストの女二人が美少年をいじめる話。これは「氷の部屋の女」に収録。 ●1 9 9 0 ~ この年の「美蝶」シリーズは『ダンシング・クイーン篇』。マネキン工場跡でJ・ブラウンの「セックス・マシーン」にのせて5人プレイをするシーンや文化祭でのダンスシーン等々結構好きな場面多し。暗くて硬い作品が多いので、この「美蝶」シリーズは肩肘張らずに、かなり軽いノリでキャラクターの動きに任せて、ストーリーも、そして次のコマさえも先の事は何にも考えず、ほとんどアドリブで描いた時もある。 「不死蝶伝説」に続いてシリーズ第2弾「不死蝶」は2誌にまたがって2年位続ける。これも結構お気に入りの一遍。 ●1 9 9 1 ~ 1 9 9 3 「性狩人たち」の近未来版、といった感じの「夜戦士」は学園物が多くなったので、マグナム銃で脳天をぶっとばすようなものが又描きたくなって始めたミニシリーズ。全5話位。松文館より単行本「黒い夜と夢魔の闇」に収録。 この年から知り合いの編集者がレディス・コミックを始める人が多く、依頼されてどうしたものかと思ったが、エロなら何でもやってみよう精神と何か新しい世界が開けるかも、という事から’94位までやってみたものの結果的に不毛の時代に終わる。与えられた素材が体験告白物という事で、非現実的なものは描けないという事は得意技を封印して戦うようなもので苦戦を強いられ、これって内山亜紀氏がやまさき十三原作の人情話を描いたようなミス・マッチングで不発だったかな。今後、もしやることがあれば美少年SMのレディス・コミックのみ。そんな雑誌が出来れば、の話だが。 いくつかやったレディコミの編集の一人「アイリス」の鈴木さんは同じさいとうプロOBで、マンガ・アシスタント、マンガ家、マンガ誌の編集、そして今はマンガ学校の講師、とこれだけ多くのマンガに関わる仕事をしてきた人はあまりいないだろう。これでマンガ評論でもやれば全て制覇だが・・・。 この頃はいつもと同じ位の30~40本の作品を毎年描いていたが、レディコミは一本30~40枚とページが多く結構身体にガタがきた頃で、右手のひじが腱傷炎になり1年以上苦痛が続く。医者通いではさっぱり痛みがひかず、電気針で針灸治療を半年位続けてやっと完治。その後、住んでいたマンションの理事長を押しつけられ、マンション戦争の渦中に巻き込まれひどい目にあう。攻撃するのは楽だが、話をまとめるなどというのは社会生活不適格のダー松には大の苦手で「お前等!わがままばかり言うのはいいかげんにしろー!」と頭をカチ割りたくなるような事ばかりで、ひたすら我慢の日々で血圧がガンガン上がり、病院通いの日々。確実に寿命が5年は縮まる。あの時はマジで人に殺意を抱いたものだが、今でも金属バット持って押しかけて奴等の脳みそをクラッシュしたい気分になる時もある。いつかこの時の事をマンガにしようと思っていて、まだ誰も描いてない「マンション・マンガ」というジャンル、タイトルは「我が闘争」。え?誰も読みたくない? この間に出た単行本は「血を吸う夜」、「赤い月の化身」「熱き唇の女神」[以上・久保書店] /「牝猫の花園」「真夜中の人魚たち」[以上久保書店]、「美蝶/放課後篇」「美蝶/ダンシング・クイーン篇」「不死蝶/鋼鉄の女王篇・上巻」[以上ミリオン出版]。 ●1 9 9 4 ~ 1 9 9 5 ろくでもない事が続くのは厄払いをしなかったせいか、このままここにいたら頭がおかしくなる、と15年以上いたマンションから引っ越し。板橋から巣鴨へ移動し気分一新!以前からうちもやりましょうよ、と言われていた同人誌創りをそのうち、そのうちと伸ばしてきたものの遂に申し込んでしまい、創らざるをえなくなる。しかもそれが引っ越しの時期と重なってしまい大いに後悔する。しかしいろんな人にお願いして何とか一冊でっちあげ、ムシ風呂のような夏コミに初参加。これが運命の分岐点。レディコミ���この年で切り上げ、以下同人街道をまっしぐら。現在まで「FUCK OFF!」が9まで、「FUCK YOU!」が4まで計10+&冊���る。 ’95からダーティ松本の名前にも飽きてきたしJr,Sam名でも描き始める。 レディコミ時代は松本美蝶。あと2つ位違うペンネームも考案中。 この間の単行本「氷の部屋の女」「双子座の戯れ」[久保書店]、「黒い夜と夢魔の闇」[松文館]、「危険な女教師/美蝶」[ミリオン] ●1 9 9 6 ~ 美少女路線の絵柄もこの年の「夜顔武闘伝」あたりでほぼ完成、今後また少し変化させる予定。しかしこの作品は超能力、アマゾネス、忍法エロマンガとでも呼ぶべきか。「グラップラー刃牙」みたいに闘技場での勝ち抜き性武道合戦までいきたかったけれど、残念ながらたどり着けず。 「冬の堕天使」は久しぶりの吸血鬼もの。都営住宅で生活保護をうけている吸血鬼母子のイメージが浮かび、そこから漫画家協会・加藤芳郎を撃つ有害図書騒動のマンガへ。吸血鬼少年が光の世界との戦いに旅立つまでを描き、「闇に潜みし者」は時空を越えて近未来での戦い。その間を描く作品を今後創らなければ。 「FUCK CITY 2006」はクソ溜めと化した近未来のTOKYOを舞台に久しぶりにダーティ・バイオレンスが炸裂!ハード・エロ劇画と同人誌風・美少女路線の合体は果たしてうまくいったかどうか?30ページほど描き足して、’97、9月にフランス書院のコミック文庫にて発売。[「少女水中花」] 「放課後の媚娼女」と「人形愛」刊行。[いずれも久保書店刊]前者は以前、上下巻だったのを一冊にまとめて。後者は近作を集めた同人時代を経ての初単行本で、同人誌を知らなかった読者はショックを受ける。メタルフアンから以下のようなお手紙を受け取る。「これはジューダス・プリーストの『ターボ』だ。ラストの『眠れる森の少女』は『レックレス』にあたる。しかしジューダスもその後『ラム・イット・ダウン』や『ペイン・キラー』という傑作を世に出した事だし、今後を期待したい」という意のダー松のようなメタルファン以外は意味不明の激励をうける。 ●1 9 9 7 同人誌「エロス大百科シリーズ」スタート!いろんな項目別に年2刊づつ計100ページ位を別刊シリーズとして出し続ければ10年で1000ページになり、以前「谷岡ヤスジ1000ページ」という枕に最適の本があったが、これも一冊にまとめて枕にして寝れば、目覚める頃は3回夢精しているなんて事に・・・などとまだたった40ページの段階で言っても何の説得力もないか。飽きたら2~3号でSTOPするだろうし・・。[推測通り「毛剃り」「美少年SM」「女装」3号でストップ中]冬にはやおい系にも進出の予定。 今年出した単行本は厚くて濃いエロマンガを集めた久保書店MAXシリーズ第2弾!「放課後の熱い祭り/完全版」と「夜顔武闘伝」オークラ出版。ともに大幅描き足して25周年記念出版として刊行。ティーツー出版よりJr,Sam名で「昼下がりの少女」、9月にはフランス書院より「少女水中花」の文庫本が出���予定で現在、この同人誌と並行して描き足し中。「斬姦狂死郎」第2部も「ホリディ・COMIC」誌にて6月よりスタート!年内創刊予定の『腐肉クラブ』なる死体姦専門のマンガ誌にも執筆予定。 さてさて25年間、旅行の時を除いて、現在まで2日続けてマンガを描かなかった事はほとんどない。これはその昔、伊東元気氏というマンガ家とお会いしたとき「今月何ページ描いた?」との問いに、「今月仕事ないんでぜんぜん描いてません」と答えたら、「そんな事じゃ駄目だ。仕事があろうがなかろうが、毎月100頁は描かなきゃ。」と言われ、以後その教えを守り[描けるページ数は減ったが]、マンガは仕事ではなくなり、朝起きたら顔を洗うのと同じで生活そのものとなり現在に至る。 今は何でも描けそうなハイな状態で、以前はたまには外出しないと煮詰まってしまうので週いち位ガス抜きをしていたものだが、最近はせいぜい月いち休めば十分の「純エロマンガ体」。[純粋にエロマンガを描くためだけの肉体、の意。ダー松の造語] こうしてふり返ると、この路線はまだえぐり足りない、これはあと数回描くべし、なぜこれを一度しか描かない!等々、残り時間にやるべき事、やりたい事の何と多い事! 爆裂昇天のその日まで・・・ 燃 え よ ペ ン ! なお続きは 1997年後期 1998年 INDEX
http://www.rx.sakura.ne.jp/~dirty/gurafty.html
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翻訳記事:エンカウンター・オヴ・ジ・ウィーク「メドゥサの石像庭園」
原文はこちら
注:シナリオの翻訳記事となります。DM以外が読むと大きなネタバレとなります。
著: James Haeck
翻訳:つくも
今週の遭遇は「メドゥサの石像庭園」だ。プレイヤーの行動によって戦闘とロールプレイの両方の機会がもたらされる。多くの冒険者は生々しい彫像を発見すると警戒した方がよいことを知っており、どんなクリーチャーがそれを作り出したのか推察する必要に駆られる。メドゥサ? バジリスク? ゴーゴンやコッカトリス? 実のところ、今回は全部だ。
かつては風光明媚な田舎の別邸であった廃墟に住む一人のメドゥサがいた。彼女はかつてフィロメラという名の女性であった。その物語はメドゥサの名の由来となった女性の物語とよく似ている。深いロールプレイ体験に興味を持つプレイヤーは彼女の物語が悲劇であり、彼女の悲痛さと表面上の攻撃性に関わらず、理解し助ける価値のある「怪物」であることに気が付くだろう。一方、純粋に探索と戦闘に興味を持つプレイヤーはメドゥサと彼女が石化させたクリーチャーの群れが実に恐ろしい敵の集まりであることに気が付くだろう。
探索遭遇:メドゥサの石像庭園
このエンカウンターにおいて、キャラクターたちは石化したクリーチャーだらけの広大な庭園を探索し、宝物を捜したり、メドゥサに遭遇したりする。この探索遭遇にはレベル7のキャラクターに適した戦闘遭遇が含まれている。
丘の上に立つ荘厳な邸宅が荒廃してできた廃墟は、木々に覆われた原野に囲まれている。この原野はかつて広大な庭園であり、豪華な彫像や風変りな獣の群れで埋め尽くされていた。この邸宅は、その輝かしい美しさ、歌人とも詩人とも知られる技術を持ち、何よりも舞台裏での威厳ある人格で愛された名舞台女優、フィロメラの所有物であった。
フィロメラは毎週のようにこの別荘の庭でぜいたくな宴を催し、数十匹の異国風の同鬱や大理石の彫像、見事な水場の装飾などを展示しては同じように裕福な何百人もの客人に自分の富を誇示していた。彼女の名声は多くの友――と同じくらいの偽りの友――そしていくぶんかの危険な敵を手に入れた。フィロメラは護衛を雇うことで彼女に危害を加えようとするものたちから身を守っていたが、ついには定命の者を恐れぬ一人の敵が現れた。彼の名はグラッズト。
快楽と欲望と放蕩の魔王グラッズトは、我欲によってフィロメラを欲していた。フィロメラの盛大な宴の夜、彼は群衆の中からひとりの男を支配下に置いた。フィロメラの屋敷には何百人もの社交界の著名人や有名人が集い、彼女の珍しい獣を眺め、広大な庭園で笑いあっていた。地獄の最も冷たい炎で鍛えられたナイフが群衆の中の一人の男の手に現れ、彼は一心不乱に庭園を離れ、階段を駆け上がり屋敷の女主人の寝室へと向かった。
その男はぎらつき欲望に満ちた殺人者の目をしながら、フィロメラ個人の大部屋へと飛び込んできた。グラッズトは単純に、彼の最悪の、最も基本的な本能に基づいて行動するように焚きつけたのだ。男はフィロメラを見ると、グラッズトが渡したナイフを振り上げて突進した。無防備な彼女は勇敢に身を守ったが、男は悪魔の如きナイフを彼女の心臓に突き刺してしまった。グラッズトはいそぎ彼女の魂を盗み取ろうとしたが、狡猾な悪魔は別の大きな力によってそれを阻まれた。フィロメラの魂は死の間際、彼女の知る以上の力がぶつかり合う戦場となってしまったのだ。富と自由の女神ワウケーンは、フィロメラの自由な魂を最優先に守ろうとした。激怒したグラッズトはその瞬間フィロメラの運命を捻じ曲げ、彼女に恐ろしい呪いをかけた。
フィロメラが目を覚ますと、殺人犯は死んでいた。正しくは、大理石の像になり果てて彼女の前に立っていた。彼女は自分の手を見て愕然とした。彼女の肌はうろこ状になり、薄い緑灰色になっていたのだ。彼女が外へ駆け出ると、壮大な宴は悲劇に終わったことがわかった。彼女の異国風の動物たちは同様にグラッズトの邪悪な呪いにかかり、怪物的なコッカトリス、バジリスク、ゴーゴンに変身してしまっていた。客人たちはみな、動物たちによって恐ろしいほどに生々しい大理石の像に変えられ苦しんでいた。
あの悲劇的な夜から数十年の時が経ち、もはやフィロメラの屋敷には大きな宴や仮面舞踏会はなく、荒れ地が庭園を飲み込んで久しい。しかし、生い茂った庭の中には無数のクリーチャーがうごめいている。石化獣たちや、大理石の像の中で荒ぶる魂たち、そしてメドゥサフィロメラ自身。さらにはグラッズトの悪魔の間者も。彼らはまだワウケーンの介入を退ける方法を捜し、彼らの雇い主にメドゥサの魂を届けようとしているのだ。
遭遇の概要
キャラクターたちは草茂る庭園を探索して宝物を捜したり、その中心にある廃墟となった別荘を探索したりすることができる。キャラクターたちは探索中にいくつかの選択肢や判定を行い、その結果によって宝物やモンスター、あるいはその両方と出会うことになる。
遭遇のはじまり
キャラクターがこの場所の背景情報について幾分かを知っていることにするとよいだろう。その場所はかつて裕福な女優が暮らしていた庭園だったが、彼女に悲劇が降りかかった。彼女の庭園と屋敷は草生しているが、宝物と危険とがその中に隠れている。キャラクターたちがフィロメラの庭園の入口まで到着したのであれば、下記を読み上げるか、適宜言い換えて伝えること。
君たちの目の前には、節くれだった木々とトゲだらけの茂みが広がっている。目の前数フィートのところには、大きなバラの茂み��ら石のベンチの足が突き出している。この荒れ野は太古の森というより、何十年ものあいだ手入れがされていない庭のように見える。生い茂った庭の先、ごつごつした丘の上には老朽化した邸宅が建っています。
キャラクターたちが庭園に入ったなら、外縁を探索するのか、それとも丘の上の屋敷に直接向かうのかを確認すること。庭園の外縁を探索する場合は特に目的地のない探索になるので道に迷ったり特定の目印を見つけたりするための判定は必要ない。下記の探索遭遇の表について1d6をロールすること。各遭遇は10分間隔で行われる。
技能チャレンジ:邸宅への道のり
キャラクターが丘に向かって直接移動しようとしている場合、パーティの中の 1 人 のキャラクターは 難易度15 の【判断力】〈生存〉判定をしなければならない。判定が成功したか失敗したかを記録すること。成功か失敗かにかかわらず、即座に探索遭遇表のd10 をロールせよ。1d10をロールして出た遭遇ののち、引き続き邸宅へ向かう場合にはパーティの中の1人のキャラクターが難易度15 の【判断力】〈生存〉判定を行い、さらなる遭遇のために 1d10 をロールしなければならない。それぞれの遭遇はだいたい 10 分間隔で発生する。パーティは3回成功すれば邸宅に到着するが、先に3回失敗した場合、パーティは道に迷って草茂る庭の端に��ることに気付くとともに、成功の合計は0に戻る。
パーティが一度でも道に迷ったならば、一度来た道を戻ることによって邸宅へと向かうためのすべての【判断力】〈生存〉判定に有利を得る。
探索遭遇
フィロメラの草茂る庭園を探索する間、キャラクターたちは奇妙な光景や生物に出くわす。庭園の外縁を探索している場合、10分歩き回るごとに下記の表で1d6をロールする。フィロメラの崩れた屋敷に向かって移動している場合、移動時間が10分経過するごとに同じ表で1d10をロールすること。
探索遭遇
1d6/1d10 遭遇
1:動かぬ石像
2:コッカトリスの群れ
3:バジリスクの群れ
4:徘徊するゴーゴン
5:動き回る石像
6:守護者なき宝物
7:デーモンの間者たち
8:ゴーゴンの群れ
9:つけ狙う悪魔たち
10:ワウケーンのコイン
動かぬ石像
パーティは顔に絶対的な恐怖の表情が刻まれた不気味に生々しい彫像を1d6体見つける。それらは開けた空き地に立っているが、蔦植物が生い茂っている。石像のうちの1体が石のような硬さでアイテムを握っている。魔法のアイテム表B(DMG144ページ)を1回ロールすること。
コッカトリスの群れ
鬱蒼とした木立の中をさまよっていると、突然10羽のコッカトリスの群れに襲われる。木々が生い茂り、すべてのクリーチャーは射撃攻撃からの4分の3遮蔽を得る。コッカトリスは宝を持っていない。
バジリスクの群れ
4体のバジリスクのグループは、藻類によって完全に覆われている直径20フィートの反射池の近くに潜んでいる。反射池の藻が取り去らわれると、池の10フィート以内のすべてのバジリスクは自分の姿が映っているのを見にいく。彼らはそれが反射だと気が付く前に一度だけこの失敗を犯す。バジリスクの腹の中には10d6gp相当の宝石が入っている。
徘徊するゴーゴン
一匹のゴーゴンが生い茂った生垣の迷路を徘徊している。頭上の木々は非常に茂っているため、自然光が届かない。
動き回る石像
パーティは、開けた空き地で怒りと苦悩を吠える表情のままに凍りついた、実物そっくりの大理石の像を3体見つける。石化した宴の客の荒ぶる魂は、これらの像の中にまだ残っている。クリーチャーが像の1つから10フィート以内に入ると、3つの像はすべての生き物が殺されるまで動き出し、狂乱の中で攻撃を行う。これらの彫像はヘルムド・ホラーのデータを使用しており、ヒート・メタル呪文の代わりにトランスミュート・ロック呪文(Elemental Evil Player's Companionに掲載。未訳)に免疫がある。これらの石像はそれぞれ500gp相当の宝石を身につけている。
守られざる宝物
石化した4人の冒険者を6体のバジリスクの死体が取り囲んでいます。各冒険者は、魔法のアイテム表Fからランダムに決定された魔法のアイテムを所持しています。
ゴーゴンの群れ
庭のこの場所には石像がなく、まったいらに均されている。地面がガタガタと鳴り始め、10体の暴れ狂うゴーゴンの群れが通り過ぎていく。1d4-1体のゴーゴンは空気の匂いを嗅ぐために立ち止まり、残りのゴーゴンが通り過ぎていく中で近くの獲物を探すために【判断力】〈知覚〉の判定を行う。この遭遇の後、キャラクターたちは庭園の中で行われる次の【判断力】〈生存〉判定に自動的に成功する。
デーモンの間者
グラッズトが放った3体のクアジットの間者グループは、藻で覆われた反射池の脇でヒキガエルの姿になって飛び跳ねている。キャラクターがヒキガエルを無視した場合、クアジットはコウモリに形を変え、こっそりとキャラクターの後をつけようとする。全てのキャラクターが 難易度15 の【判断力】〈知覚〉判定に失敗し、追跡者に気付かなかった場合、次の遭遇は必ず「つけ狙う悪魔たち」とのものになる。キャラクターが別の遭遇をロールする前に邸宅に到着した場合、つけ狙う悪魔たちはメドゥサに遭遇したときに襲撃してくる。
つけ狙う悪魔たち
数年に一度、グラッズトの手下たちがこの庭や屋敷の敷地内を歩き回り、フィロメラを見つけ出して殺し、彼女の魂をワウケーンの目を盗んでグラッズトに捧げようとしている。これらの4体のシャドウ・デーモンたちは、高い木や大理石の柱の影の間を飛び回り、グラッズトの敵を待ち伏せている。これらのシャドウ・デーモンのうちの1体は、魔法のアイテム表Gからランダムに選んだ魔法のアイテムを1つ持っている。
ワウケーンのコイン
キャラクターたちは地面に一枚の輝く金貨を見つける。鋳造年は刻まれておらず、片面に女神の顔が描かれている。コインを持っているクリーチャーは石化されず、石化したクリーチャーの石の皮膚にコインを押し当てるとコインは消え、その石化したクリーチャーは再度石化されなくなる。そして、メドゥサの皮膚にコインを押し付けるとコインは消え、メドゥサは人間に戻ることができる。
コインを拾ったクリーチャーは、風に乗って女性的で大きな声を聴く。「私は女神ワウケーン。あなたに我が祝福を授けましょう。この護符が石の呪いからあなたを守り、彼女自身の呪いから他の人を救うことができますように。女神から命じます。闇の王子がこの屋敷の女性を狙うことを決して許してはなりません」
邸宅に到達する
鬱蒼と茂った庭を巧みに通り抜けたキャラクターたちは、崩れかけた屋敷の壁に辿り着く。大きな中庭は幅100フィート、長さ50フィートの長方形で、苔むした石畳の小道が中庭の一端から屋敷の正門までまっすぐに続いている。苔むした石畳の小道は、中庭の一端からまっすぐに邸宅の正門へと続いている。小道の両側には直径30フィートの反射池が2つあり、どちらも藻類で完全に覆われている。
屋敷の扉はとっくに蝶番が外れてしまっているが、扉のアーチは残っている。難易度15 の【判断力】〈知覚〉判定に成功したキャラクターはアーチの影に潜むメドゥサ、フィロメラに気がつく。気づかれると影に潜み、「ここにはもう美も壮麗さもなく、痛みだけしか残っていないわ。愚かな結末を迎える前に引き返しなさい」と叫ぶ。
キャラクターが敵意を持って彼女に近づいてきた場合、彼女は2体の護衛バジリスクに命じて、荘園の朽ち果てたエントランスホールから突撃して攻撃するように命令する。彼女は出入り口から戦場を見下ろしており、30フィート以内にキャラクターがいなければ最も近いキャラクターに近づいていく。
フィロメラは死を恐れていない。自分が置かれた呪いを憎み、死を歓迎するとすら思っている。しかし、彼女は積極的な死の願望を持っているわけではないので、襲われたときは凶暴に戦う。
キャラクターが平和的に彼女に近づくと、彼女は物陰に隠れて、なぜここに来たのか、何を望んでいるのかを問う。彼女自身はなぜこの運命に呪われてしまったのかを知らない。彼女は自分の話���説明するが、自身の変容におけるグラッズトまたはワウケーンの役割をほんのわずかしか認識できていない。彼女ができる範囲で最大限説明したところによると、まるで彼女は、巨大な6本指の王子と、金色の輝きに囲まれた親切で美しい女性に引き裂かれているように感じたのだという。
メドゥサの最期
フィロメラが殺された場合、キャラクターは屋敷の暗闇から身の丈9フィートの人型の影が現れ、彼女の体に6本指の巨大な手を回すのを見る。その影は顔を上げて微笑んでから、遺体とともに消え去る。彼は感謝の印として、メドゥサの身代わりにデーモン・アーマーをその場に残していく。
フィロメラは「ワウケーンのコイン」を使ってキャラクターに助けられると、赤毛の身長6フィートの女性に変身する。彼女は衝撃で涙を流し、感謝の気持ちを述べる。彼女はメドゥサとしての悲惨な時を経て完全に混乱していたが、緊張から意識を失う前に、この場所から彼女を連れて出するようにパーティに頼むことができた。彼女が回復したなら、彼女は彼女の命を救った冒険者たちにそれぞれに5,000 gpの報酬を約束するとともに、キャラクターと同行し最寄りの主要都市へ行くことを依頼する。フィロメラは【魅力】20(+5)のバードであり、今後の冒険のためにキャラクターたちのパトロンになることもある。
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この遭遇は気に入りましたか? 「エンカウンター・オヴ・ザ・ウィーク」シリーズの遭遇をチェックしてみてください。また、私がDMs Guildで書いた冒険、例えば、マインドフレイヤーの悪役が登場するサスペンスフルな異界ミステリー『The Temple of Shattered Minds』などを見つけることができるでしょう。私の最新のアドベンチャーは、プラチナ・ベストセラー『Encounters in Avernus』に収録されています。これは、ギルドの達人たちによって作成された60以上のユニークな遭遇を集めたもので、アヴェルヌスや九層地獄の他の場所でのキャンペーンを強化するために使用できます。プラチナベストセラーのタクティカルマップもチェックしてみてください。これはギルドの達人たちが作成した88のユニークな遭遇のコレクションで、『Tactical Maps: Adventure Atlas』の美しいポスターバトルマップと組み合わせて使用することができます。
著者紹介:James HaeckはD&D Beyondのリードライターであり、Waterdeepの共著者でもあります。Dragon Heist, Baldur’s Gate. Guild Adeptsのメンバーであり、Wizards of the Coast、D&D Adventurers League、その他のRPG会社のフリーライターでもあります。ワシントン州シアトルに婚約者のハンナと動物の仲間のMeiとMarzipanと一緒に住んでいます。Twitterでは、@jamesjhaeckで時間を潰している彼の姿を見ることができます。
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屍者を射る者 死者をみる者(お試し版)
1. 曠野(あらの)の昼は短く、寒い。雪は岩肌を隠し、生きる者の姿は僅か。 鳥達は冬でも変わらず純白の香り高い花をつける白花樹(はっかじゅ)――生死の神が人の子に残した数少ない遺産――に止まり、また空へと去っていく。魂を持たぬもの、己の物ではない魂を持つものが多くを占めるこの世界において鳥達は己が魂を保持したまま、空を飛び続けている。 人ほどの大きさのある黒い鳥が大きな翼を羽ばたかせ、数羽、白花樹に止まった。しわがれた声で低く鳴き、生命少ない大地を眺めるようにして首を二、三度動かす。それから蜜の多い白花樹の花を食みはじめた。 しばらくして、白花樹を取り囲むようにして、鳥を捕まえようと手を伸ばす人影が幾つか現れる。身も凍える寒さというのに身に着けた衣はいつ織られたともわからぬ襤褸(ぼろ)のみ。木に登ろうとはせず、石を投げるでもなく。ただ遠くから唸り声をあげ、威嚇し、手を伸ばすのみ。人影らが白花樹の木陰には入れぬことを知っている黒い鳥達は、怯えるでもなく第二第三の花を食み始める。 黒い鳥達の止まった白花樹より二百歩ほど離れたまばらな岩陰に、息をひそめて身を隠した人影が幾名か。白花樹の優美な姿を取り囲む、襤褸のどこか唸り声も虚ろな集団とは異なり、皆様々な毛皮を縫い合わせた衣をがっしりと着込み、手製の武器を手にし、白い息を漏らしながら時を待っている。 「ロド、獲物と敵の数は」
熊の毛皮を目深に被った女が曠野に吹く風よりも冷たい声で短く側の男に問う。女の年は四十と少し、背は低いががっしりとした体つき。 「ニオル隊長、本当にやるんですか? 屍者(ししゃ)は十六名。大鴉が三羽。正直割にあわないですよ……大鴉はあまり美味しいもんじゃないですし。硬いし。臭うし。屍者だって食うし奴ら。確かに大鴉が取れれば肉は足りますが……その……」
黒い狼の毛皮を被った男、ロドは怯えも明らかな声で答え、同意を求めるように周囲を見る。ニオルよりか少しばかり背が高いが、他の毛皮で身を固めた数名の男女に比べれば小柄である。ニオルは雲に遮られ光の弱い太陽の位置を見定めて、子に言い聞かすようにロドに告げる。 「ロド、屍者は恐ろしいが間違えた魂の入った肉体にすぎない。屍者を喰って肥え太った大鴉も、人を喰って肥え太った熊も同じようなものだ」 「毎度思うんですが、共食いみたいでぞっとしないんですよ……」 「声がでかいぞ。直に食べているわけじゃないのだから何の問題もないだろ、臆病者」 後ろにいた男――白狐で作った帽子を斜めに被っている――がたしなめるようにロドの肩を叩く。少しずるそうなところのある整った顔立ちの狐に似た男で、笑いなれているのか口元に皺がある。 「そういう問題じゃない気がするんだけどなあ、フラス」 ロドは何ともいえない座りの悪さを説明することができずに、それでも何かを必死に訴えようとしている。 「ロド、フラス、まだ陽と樹のご加護がある。屍者達の動きも鈍い。今回の遠征は実入りが少なかったが、ここで鴉達を手に入れれば、しばらくは肉と金にありつける」 二人を現実に戻すようにニオルは告げる。背負った槍を抜く。屍者が嫌う白花樹の幹から切り出された槍であり、斬るというよりも突くことに特化した細長い杭のようであった。使い込まれており、すべすべとした白みがかった槍には使い古された布が巻かれていたが、穂先には暗く濁った屍者の血が染みついている。 「〈賢者の麺麭(ぱん)〉だけでも命は繋げられるが――」 ニオルは白い息を吐く。 「そもそも肉食わずして何が人の生だ、という、ね」 女の一人が朗らかな声でつぶやき、ひっそりと笑った。 「まあ確かにそりゃあ否定しませんけど。うちのガキ達だって育ち盛りだ。〈城塞(じょうさい)〉製の味気ない〈麺麭〉や苦い茸と薬草の汁以外の物も食わせたくなりますが……」 ぐだぐだと何かを言いたげでしかしその何か、をいうこともできないロドであった。 「ロド、「繁栄の時代」じゃないんだ。待っていれば毛長牛(けながうし)がやってきて勝手に解体されて並ぶ、などということはないぞ……弓師(ゆみし)は鴉を先に狙い、それ以外――私とフラスとホーアトは屍者をやる。できるな、ロド、アリーカ」 「「繁栄の時代」の南方に生まれたかったですよ! 「屍者の時代」の曠野じゃなくて! あーあーやりますよやりますよ……!」 「その意気だ、相方さん。気性に問題はあるが、弓の腕だけは信用しているからな」 アリーカと呼ばれた女、肉食わずして何が人の生だと笑った女はロドを励ますように小突いた。あまりのいわれようにロドの眉毛が狼の毛皮の下で少し垂れた。 「そりゃあありがとうございます……」 それから情けない調子のまま、ロドはアリーカをじっと見て、頼み込んだ。 「右手の二羽はこちらが落とすから、後ろの一羽はなんとしてでも、なんとしてでもやって欲しいかな……!」 「あいわかった」 弓師二人は弓を構える。岩の影から狙いを定め、弓を引き絞る。 「いくぞ」 ニオルと残りの二人の男は槍や投石具を構え、屍者の意識を引くように前に出た。温かな血と魂の宿る肉体を感じ、屍者達は緩慢に、しかし徐々に速度を上げながらニオル達の元へと近づいてくる。濁った暗い目には渇望の光が見て取れる。大鴉達は何が起きたとばかりに舞い上がろうと二、三度翼を動かす。 「当たれ当たれ当たれ当たれ……!」 ロドは矢が当たるように願い、素早く二度矢を放つ。大鴉は矢に貫かれ、そのまま二羽は己が天に帰れぬことを知らずに真っ逆さまに白花樹の根元へと墜落する。 「逃げるな、肉!」 焦りのあったアリーカの矢は狙いをそれ、空の彼方へと消えた。ロドも思わず肉……! と口元でつぶやきながら矢筒から数本、矢を抜き、難を逃れようとしている大鴉を狙う。 前方ではニオルと二人の男達が屍者を散らそうとしているが、数が多い。イシュラ達は雪原を駆け回りながら屍者の群れをあちらこちらに誘導し、群れから離れた者を倒してはいるが、屍者達の速度は段々上がっている。 「アリーカ、隊長の支援をっ。大鴉はおれがやるっ」 ロドはそういい終わらないかのうちに最初の矢で大分高くまで飛行しつつあった大鴉を射る。ぐらりと重心を崩し、なおも逃げようとする大鴉にとどめを刺すようにもう一矢を放った。 ロドはいつも狩りの最中に襲われる妙な感覚を味わっていた。時が止まり、己がこことあちらの両方にいるよう。弓を射るロドと獲物をすぐ側で眺めるロド。大鴉の魂をそのまま捕まえたような錯覚を覚え――すべてがすべて正しく行われた満足感に一瞬触れ――ふっと地面に落ちた大鴉の音に我に返る。 「アリーカ、後は隊長さん達がうまいこと屍者を倒して大鴉を回収すれば――」 「無理かも」 「え」 ロドは青ざめた。いやな予感が胃を締め付ける。 「フラスが喰われた、いや、まだ喰われてないがっ」 アリーカの視線の先には転げ落ちた白狐の帽子としりもちをついて槍を振るう男の姿があった。十六人いた屍者は半分減って八人。そのうちの四人がフラスを取り囲み、なぶる様にして槍の隙間をぬい、彼の衣を切り裂いている。フラスは足を雪に取られたらしく、立ち上がれなさそうだ。残りの四体はニオルとホーアトへと襲い掛かろうとする。 投石具を持ったニオルの横の青年、ホーアトがフラスを助けようと屍者に背を向け石を放とうとする。 「ホーアト、白花樹の方へ逃げろ!」 呼ばれたホーアトはニオルの声を聞き思わず動こうとする。しかし背を向け足を止めた一瞬が彼の命取りとなった。一人の屍者が彼に飛び付き組み付き、動けなくなっている瞬間に残り二人がホーアトを貪り食おうとする。若々しい魂と血が羨ましいとばかりに。それは自分の物だといわんばかりに。ホーアトの高い叫び声。彼の血が雪を赤く染める。屍者の笑い声が響く。砕ける音。咀嚼音。聞こえるはずのない咀嚼音。ホーアトの祈り。「〈妖術師〉よどうか我を捕まえたもうな――」離れている。ロドには聞こえるはずがない。 ロドは大鴉を射たときと同じ、己が二か所にいるような感覚に浸っていた。 屍者殺しの木、白花樹の枝で作った矢に自然とロドの指が伸びる。屍者達の歪な魂を目がけて無心で矢を射る。手を伸ばすように。ホーアトの魂をまだこちらに引き留めるかのように。射た矢は吸い込まれるように屍者に当たり、一人崩れ、二人崩れ――その横でニオルが残りの二人の屍者を自慢の槍で串刺しにしていた。フラスを助けようとアリーカも弓を引く。屍者達はフラスを弄ぶように飛び回り、はしゃぎまわり、しかしその動きはぎこちない。ぎこちなくはあるが、日が出ているうちにしては、屍者の動きは活発であった。 舌打ちもせずフラスを囲む屍者達に矢を放つ。後四人。ロドの意識はこの世の外、生死が行きかう場所にあり、ロドの魂は死者の歪な魂達を睨みつけていた。 一人、二人、三人。一拍置いて四人目。 流れるような動作で屍者達は急所を射られ倒れる。 どさり、という音を最後に動き回る者はいなくなり、ただ白花樹の満開の花を揺らす風の音が響いていた。
屍者はもはや動かなかったが、同じようにフラスとホーアトも息絶えていた。ロドとニオル、アリーカは天を見た。光の弱い太陽は沈みつつあり、耳をすませば遠くから屍者の声が聞こえたような気がした。常に飢えさかしまな、今の世界の殆どを占める住人達の声が。 「城塞に戻るぞ。私達まで屍者のエサになったら笑い事じゃない」 三人は大鴉を橇に乗せ、フラスとホーアトの二人が屍者に穢されぬよう白花樹の枝の下へと動かした。持ち帰るために、僅かな二人の遺物を手にする。フラスの狐帽子は屍者の血に汚れ、ホーアトの投石具には投げられなかったままの石が一つ、包まれていた。 雪の中を歩く。ロドは神経質そうに白花樹の松明を掲げ、ニオルは槍を手に前方を警戒し、アリーカは橇を引っ張っている。 「恋人泣かせのフラス、白狐のように美しくこずるかった男も今や体と魂が分かたれた。男も女も老いも若きも、彼の死を悼むだろう。おお、〈妖術師〉に災いあれ。神ならざる神に災いあれ」 ニオルが唱えれば、アリーカも答えるように唱える。 「年若きホーアト、投げる石は流星のごとく。成人の年に狩りの地で命を落とした。おお、〈妖術師〉に災いあれ。神ならざる神に災いあれ」 ロドは低い声で続けた。 「神々は何処に、生死の司は何処に、今や我らの知る神は〈妖術師〉。魂盗みの神、屍者らの神のみ――」 沈黙。後は橇の引きずられる音と荒い息遣いだけ。
夜の帳が落ちかけた頃。屍者達の無秩序な声が聞こえ始めた頃。三人の目の前に鋼と石で作られた城塞が現れる。城塞の周囲には粗末な木製の小屋が幾つも建っており、それらを囲むように杭を敷き詰めた屍者除けの空濠(からほり)がぐるりとある。外周には白花樹、屍者の敵にして生の象徴が幾つも植えられており、絶えることのない白い花をはらはらと散らし続けていた。 門の上から誰何の声が聞こえれば、 「黒熊隊代表のニオル、およびロド、アリーカ、獲物は大鴉三羽」 ニオルは答え、ロドは生者の証とばかりに松明をかざす。アリーカは屍者が来ないかどうか、橇の縄を持ちながら警戒している。 「通ってよーし!」 やがて、跳ね上げ橋が下り、三名は急ぐように、城塞内に入った。
葬儀は宵に行われた。フラスとホーアトには家族はなく――フラスには数名の恋人達がいたが――、財産は同じ狩猟隊のニオル達の間で分けられることとなった。
これが〈鋼の城塞〉。人の子が息をひそめて暮らす集落のうちの一つ。 神々が姿を消し、屍者が地上を闊歩するようになり三百年。 人々は北の曠野で終わりを待つように生きていた。
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ed. from the everworld
バルナバーシュは夢を見ていた。かれは夜の海のせせらぐ柔らかな砂浜にうつぶせており、身を起こすと、あたりを見わたし、ここがたしかに故国ゲルダット――その十の都市のひとつ、拝火の街ジルヴァの西に続く、〈竜域の海〉に臨む〈月と海の浜〉であることが、妙にさえざえとした頭ですばやく把握できた。
身に着けている衣服は、寄せ手の隠密として囚われていたジルヴァの大聖堂から逃げのびてきた時のままで、厚手のくたびれた濡羽色の外套のほかは、皮製の防具を最低限に取り合わせた軽装のみだった。かれは大聖堂の地下で、ジルヴァの現在の監督者であるカレルから手酷い拷問を受けていたが、セニサの手引きのおかげで脱走できたのだった。そして無力と絶望のなか、ほうほうのていでこの海岸までたどりついた。かつて愛しあったセニサと逍遥し、口づけを交わしたこの場所に。
(あれから、私は……)
無意識に内隠しへのばされた手が懐中時計をつかみ、取りだして、細やかな意匠のほどこされた金の上蓋を開いた。特殊な動力源が発する永久的なエネルギーを得ながら、針は白磁色の文字盤のなかで規則正しく時を刻んでいる。時計は何も語らない――そのことに得体の知れない喪失感が身裡を這いあがり、バルナバーシュは立ちくらみのような激しい眩暈に襲われた。この時計に、大切ななにかがあったはずだ。思い出そうとしても頭のなかに深い霧がかかり、身もだえしかできない己れがひどくやるせない。
離れたところに、肩掛けの荷が砂にまみれて転がっているのが見えた。手がかりをもとめて開くと、魔術の助けとなる秘薬やわずかな食糧が散乱するなかで、まったく覚えのない、未知の材質からなる金属塊が異様な存在感を放っていた。
手に取ると、それは機械仕掛けで動く右腕のようで、強い力によって――おそらく斧のような武器で斬り飛ばしたあとが断面にみてとれた。バルナバーシュは知らず息をのみ、あえぎつつ額をおさえた。頭蓋の最奥がどくどくと痛み、これは絶対に手放してはならないのだと甲高く警鐘を発している。由来など分からなかったが、霊次元に通ずる魔術師であるかれは、この感覚の訴えをひとまず信じることにした。荷を背負い、砂をはらって立ち上がると、切り立った崖の上に暗鬱とそびえるジルヴァの中心街を見あげた。街中から上がる無数の火の手が大聖堂の尖塔の数々を燃え立たせるように照らし、戦さがすでに佳境にあるのを伝えている。バルナバーシュは戦慄した。
「セニサ……!」
ジルヴァの本丸であるはずの大聖堂をさして、砂に足をとられつつもバルナバーシュは駆けだした。すでに崩れかけ、あまたの窓から火を噴く街路につづく西門からは入らず、自分が来た道――セニサの案内でそこから逃がされた、大聖堂の内部につながる隠し通路へと引きかえす。
通路は大聖堂の真下――ジルヴァの街のはるか崖下にあり、海に流れ出ている数ある水路のひとつだった。バルナバーシュは躊躇なく暗く湿ってよどむ水路を突きすすみ、横道に入って腐食しかけた扉を蹴りやぶり、崖の内部に掘られた石造りの長い螺旋階段をとばしとばし駆けのぼった。不思議と疲労はつのらず、胸にある懐中時計が一秒を刻むごとに活力を与えてくれるような潜在力のみなぎりを覚え、勢いはむしろいや増す���にも感じられた。
最後の段を踏みこえ、石壁に似せた重い扉を押し開くと、大聖堂のいまは使われていない、木箱やがらくたの積み置かれた暗い小部屋のひとつに出た。セニサに地下牢から導かれ、そして別れた場所だった。逃走のとき、振りむいて最後に見たセニサは、彼女の行動を不審に感じたカレルの配下に見とがめられ、いずこかへ連れていかれるところだった。自分が逃げおおせたことはすんでのところで知られていないはずだが、彼女が心を読む魔術を会得したカレルの尋問を受ければ終わりだ。今度こそ、裏切り者としての末路――ひと思いには殺されず、いまわしい禁術の数々によって生きながら魂の業苦を受け、永遠に死によって解き放たれることのない悲運がセニサにもたらされてしまう。急がねばならない。
バルナバーシュは耳をすまして部屋の外をうかがった。くぐもってはいるが、廊下からは無数の戛然たる剣戟や、入りみだれる突喊と悲鳴、調度品が燃え落ち、破壊される音、壁が崩れる轟音が混沌と聞こえてくる。大聖堂は攻め入られており、なにを相手に戦っているのかはすぐに分かった。〈オールドクロウ〉の家門の軍勢だ。バルナバーシュ家は〈オールドクロウ〉の遠い傍系であり、代々が住む屋敷も、かれらの管轄である橋梁の街、ウィルミギリアにある。屋敷とそこに住む二人の使用人の安全を保障されるかわりに、おそらくは最後の当主となるセインオラン=エルザ・バルナバーシュは、命を受けてジルヴァの街に隠密として潜入していた。その任はまっとうできなかったが、〈オールドクロウ〉は長い歴史において何事にも中立をつらぬきつつも、唯一、時の浅からぬ同盟と不即不離の友誼が息づいていた拝火の街ジルヴァがカレルの支配によって穢れ、暗黒に落とされたことを知ると、義を果たすためついに出兵を決めたのだった。
バルナバーシュは、〈オールドクロウ〉の優勢を確信して廊下に飛び出したが、目の前で繰り広げられているのは酸鼻をきわめた地獄の有りさまだった。廊下や中庭では、多足の巨大な鰐や、複数のあぎとが張りつく不定形の黒い生物、無数の顔と槍をかいこむ腕がたえず浮かびあがる赤黒い肉塊などのおぞましい魔物の群れがひしめいて、〈オールドクロウ〉の戦士や魔術師らともみ合いになり、頭から次々と喰らってはかみ砕き、肉や骨がつぶされる聞くに堪えない音と理性あるものたちの断末魔を響かせていた。禁術を用いて召喚されたに違いないが、この大群のためにどれだけの生贄の血肉と魂、そして理解を絶する儀式が必要とされたのかは想像すらもしたくなかった。また、その多くが静寂を愛するジルヴァの罪なき住民たちであろうことも。
「バルナバーシュ!」
声がしたほうを振りむくと、〈オールドクロウ〉の家門の次男である豊かな黒髭をたくわえた男――名をハヴェルという――が、甲冑を鳴らしながら駆け寄ってくるところだった。直接、バルナバーシュに諜報を下知したのもこの者である。かれは優れた魔法剣士であり、右手には金の魔法的装飾が美々しいルーンソードが握られていたが、薄青く光る刃や刻まれたルーンにはいましも浴びた熱い鮮血がしたたっていた。
「おぬしが捕らえられたと聞いて、もう死んでいるものと思っていたぞ。我らはカレルの配下や、その後ろ盾である〈不言の騎士〉の増援と戦っていたのだが、きゃつら突然、苦しみだしたかと思えば、体がふくれ、あのような魔物に成り下がってしまったわ。いまさらだが世も末よ……我々は禁術などに手は出さんが、ゆえに成すすべも残されていないだろう。国は終わりだ」 「かもしれんな。魔術に善悪などなく――暴走するヒトの心こそが悪となり怪物となって、かような禁術をも生んでしまう。だが国が終わろうとも、私たちはまだ生きている。そして、あなたがた〈オールドクロウ〉は最後の砦なんだ。いまこそ、かつてゲルダットを興した十賢者のなかでも最高とうたわれた智者の血を継ぐ者たちとして、生きようとする人々の灯火となってくれ。頼む」 「忘れられては困るが、バルナバーシュ家もその血の継承者だ。どれほど遠かろうともな。して、おぬしはどうする。我らは撤退しつつあるが、ここで戦うのか?」 「やらねばならないことがある。セニサがまだ生きている」
そのとき、言葉を交わすふたりに一体の鰐の魔物が、のたうち、床に折り重なった死体を踏み荒らしながら突進してきた。二人は左右にさけてやり過ごし、バルナバーシュは腰に差した剣を抜き放つと、足をとめた鰐の背へ、尾からとぶように駆けあがって太い首根に刃を突き込んだ。自分が持ちえないはずの高い判断力や身体能力とともに、バルナバーシュはそこではじめて、手に持つ武器がただのありふれた剣ではなく、魔銀から鍛えられた業物であるのを知り、銀の薄刃は大気を鋭く切り裂けるほどに軽く、切っ先は鰐の異次元の物質からなるいびつな鱗を乳酪かなにかのようにたやすく貫いた。血管のように精密に、かつ生物的に張りめぐらした魔術回路によって、魔力を通わせつつ驚くほど自分の手に馴染むものだったが、これをいつ手に入れたのかが思い出せず、混乱したわずかな隙にバルナバーシュは暴れる鰐の背から振りおとされてしまった。うめきつつハヴェルに助け起こされ、ルーンソードを構えた彼に脇へと押しやられた。
「さっさと行け。そしてセニサ殿を助けてこい」
バルナバーシュは指揮官たるハヴェルにその場を任せると、ヒトと魔物が殺戮に熱狂する阿鼻叫喚の渦中を駆け、死体と血だまりの海を泳ぎ抜けるようにして石の回廊を突き進んだ。中庭から望む空では赤く脈打ちながら膨張した月が、うごめく紅炎を幾筋も発しながら天頂にとどまり、いまこの地が現世と異界をつなぐ巨大な門と化している証左をまざまざとあらわしている。バルナバーシュは大聖堂内部の道すじを正確に把握していた。若かりしころに魔術と学問の研鑽に励み、学友のセニサと青春を謳歌した愛すべき地ゆえに。大聖堂は本堂である大伽藍の周辺をさまざまな施設が囲い、入り組んでおり、有事には砦としても機能する。バルナバーシュは本堂をさして向かっていた。
やがて地獄を抜け、ヒトも魔物の姿もなくなって、聞こえるのは自分の息づかいだけとなりつつあった。本堂へ続く廊下はしんと静かで奇妙に気配もなかったが、その理由を考えているひまなどなく、ひたすら走り、ついに百フィートを超える高さの天井をもつ大伽藍にたどりついた。翼廊には建国の祖である十賢者を描いたステンドグラスがそびえ、背後には巨大な薔薇窓が輝いていたが、赤い月の投げかける光がすべてを血のごとき真紅に染めあげていた。連なる長椅子の濃い影のなかからいくつもの闇がわきあがり、人の形をなして這い出ると身をひきつらせながらバルナバーシュに殺到したが、かれは果敢に銀剣を鞘走らせ、敵の喉元を突き、首を宙にとばし、また振るわれた闇色の刃をはっしと受け止めつつ防御を切りくずしてその囲いを破っていった。
「セニサ!」
最奥に設えた石造りの祭壇には、求めていた女性が灰色の長衣を着せられた姿でぐったりと横たえられ、その前にはカレルが――顔の右半分を残して肉体のほとんどが溶け崩れ、ふくれあがり、繊維のように無数の触手や肉の細いすじがねじれながら波打つ異形となりはてた男が立っていた。かれはバルナバーシュの姿をみとめたが、かまわずに、くぐもった笑いをもらしながらセニサを取りこもうと腕だったもの――青と緑の宝石におおわれた触手の一本をのばしてゆく。カレルは理性をとどめながらも肉体そのものが異次元の一部と同化し、門の役目となって、彼女を混沌のただなかへと連れ去ろうとしているのだ。バルナバーシュは絶叫しながら、銀剣とともに大伽藍の祭壇へ駆けていく。近づくにつれ、カレルは肉体のあらゆる節々と裂け目から、この世のものではない光炎を噴き出し、みだりがましくも激しい様々な色相をまたたかせ、ゆがみ、ひしめき、抑制のきかぬ痴れきった力の波動を放ってバルナバーシュを押しかえそうとした。黄緑の熔岩があふれて泡だち、強烈に移りゆく奔流のなかで怪鳥めいた哄笑をあげ、己れを神だと驕った者の末路を見せつけながらも、カレルはいまもって禁術を自在にあやつり、セニサを、そしてジルヴァの街をも呑みこむべく異界の領域を拡げる古代の呪文を低くつぶやきはじめた――カレル、そして禁術に手を染めたものらが永遠と信じたかたち、完全だと思い描いた世界を手に入れるために。
バルナバーシュが永続的に放たれる波動に銀剣の切っ先を差しむけると、霊圧を切り裂くことができたが、それでも前進は困難なものだった。だが、セニサに魔手が巻きつき、門となったカレルのなかへ引き込まれつつあるのを目にしたとき、胸元から青白い光が差し、突如として白熱した! すさまじい力が流れ込んできて、横溢するバルナバーシュの肉体と精神は耐えきれず咆哮し、まばゆい魔力の青い光を剣から放ちながら床を蹴った。一足飛びに祭壇に躍りかかり、艶美な石に守られた触手を目にもとまらぬ剣速で断ち、宙高くへ斬り飛ばした。そして驚愕するカレルの、心臓と思しき肉塊のひだのなかへ銀剣を突き入れる。そのまま両手で柄を握りこみ、触手や肉のすじを引き裂きながら斬り上げてカレルの頭部を中心から両断した。カレルは自らの重みに潰れるようにして崩れ落ちたが、いまだ繋がったままの異次元のロジックに生かされているのか、身の毛もよだつ異形の悲鳴をあげながらのたうっていた。バルナバーシュはその姿に同情こそすれ、悪心や嫌悪を覚えることはなかった。
「すまない、カレル……」
まだ目を閉じて眠るセニサに息があり、異常がないのを確かめると、バルナバーシュは彼女を抱きあげて急ぎ大伽藍を脱した。もはや制御のきかなくなったカレルの肉体からは、異次元の際限なきゆがみ――現次元には抑えきれぬ未知のロジック――があふれ続けており、その先触れにさらされたあらゆる物体は変質し、カレルと同じようにねじれてのたうち、でたらめに様々な生命が生まれ、数分ともたず息絶えて腐り、甘い熱を発するおびただしい死骸の海をなしていった。そうしてゆがめられたジルヴァの大聖堂が、灯台たる尖塔が、灰色の静寂の街と、そのかけがえのない歴史のシンボル――目に見えぬ象徴的な存在――が、儚いまぼろしだったかのように崩壊していく。跡形もなく。ふたたび隠し通路を抜けて、〈月と海の浜〉まで避難したバルナバーシュは、セニサを砂浜に横たえながら、火勢の増したジルヴァの街が巨大な葬送のなかで燃えて灰に帰していくのを茫然と眺めていた。愛おしく、懐かしきものへの憧憬のように。
ゲルダットという国は遠からず終わりを告げるだろう。十の都市のうち、八つはいまだ禁術に酔いしれ、一つはいま眼前で灰となり、残された一つだけが小さな光の欠片――希望の寄る辺だった。〈オールドクロウ〉の家門が治める、ゲルダット最西端の都市、ウィルミギリアなる土地だ。西方の多民族国家、ハンターレクとの交易が盛んで外交政治に長けた都市だが、このままゲルダットが異界の力にあふれた魔境と化せば、ハンターレクへと吸収されていくのかもしれない。それでも、ウィルミギリアには様々な可能性が残されている。バルナバーシュ家の屋敷も無事に守られていることだろう。
馬も船もない。街道は野盗が目を光らせているので危険だ。セニサを背負ってウィル���ギリアへ向かうためにも、いまは休まねばならなかった。あるいは目覚めるまで待つのがいいのだろうが、あの葬送の光景を彼女が見てしまったら、という不安がバルナバーシュの心中でまさっており、可能なかぎりジルヴァからは離れておきたかった。ジルヴァの街を治めつづけた家門〈灰の乙女〉の直系たるセニサもまた、街へとってかえし、ともに灰になろうとするのではないかと、その彼女を果たして私に止められるのだろうかと、バルナバーシュはひとり苦悶しつづけた。あらゆる秘密と呪いが海底に眠るとうたわれる〈月と海の浜〉の、寄せては返す波の音楽的な音を聴きながら。異界とのつながりが断たれた月は、もとの真珠のごときゆたかな色あわいを取りもどし、ひとつの終わりと始まりの解放を穏やかに静観していた。
白地のカーテンが初夏のそよ風に揺れ、なにものかの訪れと錯覚した意識が机でまどろんでいた頭をもたげさせたが、目を巡らせた狭い書斎には自分以外の者はだれもいなかった。心地のよい昼下がりだった。絨毯のない板張りの床も、乳白色のやわらかな左官壁も、また棚や調度品も簡素な一室だったが、父の代から長年仕えてくれた使用人が亡くなるとともに離れたウィルミギリアの屋敷よりも風通しはよい。あのあらまほしき思い出の残る家から去るのは心を焦がすばかりだった。だが、もうひとりの――みずからとさして歳の変わらぬ女性使用人がいとまを得ると、そこにささやかに住まい、いまは屋敷とともに思い出を守ってくれている。それは彼女自身の願いや意思だったが、やるべきことを終えたあかつきには、家族を連れていつでも帰ってきてよいのだとも言ってくれた。
扉がほとほとと叩かれ、ひとりの女性が部屋をおとずれた。長い銀灰の髪を編んで束ね、薄手の白いチュニックと藍色のスカートを爽やかにまとったセニサだった。あの美しかった灰色の長衣の姿は、ジルヴァの街が失われた日から一度も目にしていない。思い出してしまうのだろうかと思うと心苦しかった。
セニサは薬草茶の器を載せた盆を机におくと、そこに広げられている図面をしばらく一心に見つめていた。
「これが、あなたの描く未来なのね」
私の肩に手を置きながら、ものやわらかに彼女は言った。うなずき、私はそばにあった機工の残骸――あの日、荷物に入っていた見知らぬ機械仕掛けの腕――を手に取り、ためつすがめつ眺めてみる。そして窓の外へ目をやった。あれから十年の歳月が流れた……。ゲルダットという国は消え、その大地もまた各都市とつながった異次元からあふれだした力によって変容し、人跡は失われ、岩の多い野ばかりが広がるだけの辺境と変わり果ててしまった。太古の火山がふたたび目覚め、火を噴き上げ、おびただしく氾濫する熔岩によって大陸そのものを作り変えられたかのようだった。三千年以上も昔、神の怒りに触れて滅びた北方大陸より生き残りを率い、新天地を求めて〈竜域の海〉を越えてきた十賢者がここに叡智の小国を興したのだが、それ以前の支配者のない自然に立ち返ったのだ。東西それぞれの隣国であるハンターレクとミラの主導者たちは、ゲルダットが滅びたのちも魔術によって呪われた地として近づこうとはしなかった。しかし恐れ知らずの有志たちは、新たな土地、新たな富というまだ見ぬ夢をたずさえて、開拓に乗りだしはじめている。私たち二人もそのさなかにあった。
私とセニサは、開拓者の村で読み書きや様々な知識を伝える教師として、また有事の相談役として働いている。このまっさらな天地に流れてきた開拓民の多くは、ハンターレクやミラで貧困に苦しみ、またある者は迫害を受けて暮らし、教養を持つことの許されなかった境遇にあった。知識の伝授は、ここから長い時をかけて発展し、かれらとその未来を守る鎧ともなるだろう。
私はその暮らしのかたわら、開墾や土木を助ける機械仕掛けの自動人形の研究をしている。魔術で生み出せる自立式の泥人形、ゴーレムでもこなせるはずだが、いまは魔術に頼らずともすむ道も探さねばならないと考えるようになった。
(悪を滅ぼすのではない。悪を善に変える――それが過去をすら償い、みずからの手で運命を編みだす技となるのだろう)
私には、無知――怒りと恐れによって多くの書を焼きはらった悪がある。カレルを殺さざるをえなかった悪も。このゼロからの出発は、長い道のりとなるだろう。
開拓者たちが作物の世話を終え、切り株に腰かけて談笑している屋外へと放った目を、手に持った機械仕掛けの腕にもどす。腕は人体を模して精密かつ柔軟に作られ、もし本体に繋がっていたなら完璧とも言えるはたらきで動いていたのであろう。どこか遠い国から流れ着いたのだろうか――しかし漠然とだが、この腕は手放してはならないものだと、いまでも感じている。守護、約束、呼びかけ、絆、思い出、夢……あの〈月と海の浜〉の水底から唯一、引き揚げられた甘くも苦い秘密、あるいは呪いの側面を持った愛。人知の及ばぬ遠いかなたの不可避のロジックによって私に結びつけられ、次元さえ越えてきたのかもしれなかった。
「セイン。これはあなたの懐中時計なの?」
セニサが図面をさして尋ねてきた。自動人形の核となるエネルギー源として、懐中時計とその動力の結晶体が役立ちそうだった。だがそれ以上に、この時計をこの子に、私の夢にこそ託したいと考えていた。そう伝えると、セニサはうなずきで同意を表した。
「それでも、私は託すだけだ。何を選ぶのかは、この子に任せたい。世界を作り出すのは、その時代を生きる者たちなのだから」
青く晴れ渡った天空を見上げ、思いを馳せた。過去、現在、未来の連なり――そしてあるひとつの象徴へと。はるかなる彼方にそびえる大樹の豊かな枝葉のさざめきが、空を往く風によぎっていった。
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Replay @Ideyoshi: 群盗荒野を裂くがありますよ。ま、まあステファンは主役の数ではネロ並みですけどけど…— Ideyoshi (@Ideyoshi) June 3, 2020
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ユダの赤いろうそく
僕の知るあのひとは決して聖者ではなかった。日曜日の夕暮れ時、聖唱隊のセーラー服に身を包み、グレゴリオ聖歌を歌うのが僕らの務め。中には歌詞を覚えきれない小さな子どももいたし、合唱の終わりにご褒美として神父さまがくださるキャンディを心待ちにしていた女の子もいて、合唱隊といっても、信心深い両親たちが自らの子どもに信仰という名の目覚めを施すべく寄せ集められた、まだ幼い子羊たちの群れにすぎなかった。僕もまた敬虔な面持ちでキリエを歌ったものだけれど、花壇に群れ咲く美しいすみれの花を見て、神父さまに「すべてのものには神さまが宿るのでしょうか。たとえばこのすみれたちにも」と尋ねてみたら、「それは汎神論だ。誤った考えだから止しなさい」と云われてからというものの、すっかりへそを曲げてしまって、すべてのものに神さまが宿らないのだとしたら、女の子が待ちわびているキャンディも、そしてミサのたびに授けられる聖餅も、等しく神さまは宿っていないのだろうと思うようになった。 母さんや父さんには口が裂けても云えなかったけれど、僕の抱いていた素朴な信仰は他ならぬ神父さまによって打ち破られ、虫を殺めるにも、嘘をつくにも、僕に懺悔することを強いる神父さまを僕は面白からず思うのだった。 ある日僕は自ら懺悔室の扉を叩き、神父さまに迎え入れてもらったが、懺悔したいことなんて何ひとつなかったし、聖歌隊の女の子がいつも抱きかかえているクマのぬいぐるみをハサミで切り刻んでしまったことや、夕食の世話をする家政婦のラベンダーの香りのハンドクリームをくすねたことを打ち明けてみたけれど、それらは僕がでっち上げた嘘にすぎなくて、その嘘そのものが罪なのだということを僕は神父さまに断罪して欲しかったのだと思う。 しかし神父さまは僕の嘘を見抜くことはできなかった。人の言葉を疑うことを知らない神父さまは訥々と僕に教えを説いた。大切なクマのぬいぐるみを切り裂くなんて罰当たりなことだったし、女の子がどんなに悲しんだのか考えてもみなさい、と神父さまはたしなめるのだった。 ハンドクリームをくすねたことに対しても、神父さまは聖句を引用して神さまに許しを乞うよう切々と諭した。子どもの僕にとっては、花壇を荒らせば奥様に叱られるからと、庭に出て一緒に遊んでくれない家政婦は憎むべき存在だったし、エプロンに縫いつけられたうさぎのアップリケでたびたび僕の機嫌を取ろうとする彼女にはほとほと嫌気が差していたのだ。 この世の中にはついてもいい嘘とついてはいけない嘘があって、僕の口にする嘘なんて、野薊の小さな棘ほどの脅威しか持っていないというのに、神父さまは僕の嘘を間に受けて、いらぬ猛省を促すのだった。そのたびに僕はひざまずき、両手を組んで神さまにお詫びした。とはいえ心の中までは神さますら手を出せない。僕は神父さま��カソックを剥ぎ取って、背中に666と数字を刻印することだけを考えていた。 僕はクマもうさぎも嫌いだったし、ついでに云えばこの神父さまだって嫌いだったけれど、神父さまは大いなる神さまの愛に包まれているから、僕ひとりが小さな悪意を向けたところで動じることなどありはしないのだ。その気になれば捻り潰してしまえるような、小さな蝶々が視界を遮るぐらいの力しか僕は持ち合わせていない。 そう考えるとだんだん腹が立ってきて、僕はポケットに忍ばせたろうそくを取り出した。このろうそくは今夜この教会で聖歌を歌う際に聖歌隊が火を灯すためのもので、聖歌隊の先生は赤いろうそくを一本ずつ丁重な手つきで僕らに配った。まるで聖餅を授ける聖者のように。 僕のポケットにはマッチも入っていた。家では僕がマッチ箱に触れることを禁じられていたけれど、愛煙家の父さんがテーブルに置き忘れた一品を盗んだのだった。 もう僕は神さまだって怖くない。父さんだって家政婦だって、そして目の前に座っている神父さまだって。僕にはなんだって盗むことができるし、どんな嘘だってつける。 僕はろうそくに火をつけて、厳かな面持ちで聖書を紐解いている神父さまの手に蝋を垂らした。 たちまち聖書は焼け焦げて、神父さまはまるでヨハネの黙示録に描かれた獣のような叫び声を上げた。僕はろうそくに照らし出された神父さまの顔をうっとりと眺めた。苦悶の表情を浮かべ、紫色の瞳からは透明な涙がこぼれ落ちて、ろうそくの光にきらきらと輝いた。 僕は夢中になって神父さまのカソックに蝋を垂らし、たちまち焼け焦げていく黒衣から真白い肌が露わになるのを眺めた。たちまちその肌も桃色に染まって、たいそう美しく見えた。 「神さまなんていませんよ、神父さま。だってこうして僕がひどいことをしても、神父さまを助けてくださらないじゃありませんか。殉教者となる名誉しかあなたには残されていないんです。汎神論者の僕によって冒涜されて、聖書も焼かれて。もうあなたに残された道は教えに殉じるほかありません」 神父さまはもはや言葉も発することなく、焼け焦げた聖書を胸に抱きながら滂沱の涙をこぼしていたけれど、やがて火傷だらけの手を僕に差し伸べた。 「蝋に焼かれる悦び、教えに背く罪、殉教者にもなりきれぬ己の弱さ、そのすべてが私を愚かな欲望へと掻き立てるのですね。ユダ、あなたにこの身を捧げましょう。私は悪魔の子となって、あなたの炎で溶かす蝋を甘露とし、カソックに背徳の体を包んで生きてゆきましょう」 こうしてふたりの背教者は旅立った。その行方は誰も知らない。女の子が二十歳になるまでクマのぬいぐるみは五体満足だったし、うさぎのアップリケの笑顔はいつまでもいつまでも曇らない。
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