#気持ちが落ち着いたら怒涛にポストしてしまうかも
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ネオポリ×ゆぐどら
やっぱりこの二人の感じ好きだわー。世話焼き弟な感じが、ホロではお姉さん枠のアキちゃんに刺さるから余計に新鮮なんだわね。
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#ネオポリス#アキ・ローゼンタール#昨日はだいぶ栄養を享受した#レイードのボスぅ!?はホントに元気出る#気持ちが落ち着いたら怒涛にポストしてしまうかも#まだ夢見心地#ネオポリス最高!!#Youtube
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楽しすぎてしょうがない!
(ついでにBT克服した)
ゲームが……デスストがあまりにも面白すぎて、Tumblrの更新にまで手が回らなくなっていた。
更新している場合じゃない、荷物運びしないと……!!
今回はドドーンと進めて、サム指名依頼No.7〜22まで進めた!!
西配送センターでカイラル・プリンターを取り戻す依頼、ここが初のミュールバトル。隠れながらストランドでかっこよく決めたかったところ、いくら背の高い草でも近付かれたらそりゃわかる。結局、パンチキック👊
お次は風力発電所へ! BTコワイコワイ言いながら、かつてない怒涛の回り道!!
おかげで気配は感じても一切見つからずに行くことができた! ここを避けるなら反対側を行くって人が多い気がしたけど、こっちもアリだと思う😎
DC版で追加されたのかな? 帰り道でカイラル結晶お得スポットを見つけて、ラッキーと思ってよじ登って拾った。
風力発電所の帰りは雨が降らないタイミングなので、ここぞとばかりに可能な限りの荷物を拾い、近くにあった二つのポストに分けて保管。自分の足とこの後のバイクとで全部運んでめちゃめちゃいいねを貰った✌︎
このあとはキャピタル・ノットシティで依頼を受注するために来た道を引き返す。そのついでにルーデンス・マニアに落とし物を届けてカイラル通信を接続。幸いにも、ここの往復でBTと遭遇することはなかった。
ついでのついでにミュールから荷物を取り戻す依頼を受けて、あとでバイクが通りやすいように橋を建設しつつ、ミュールはまたもパンチキックで倒した🤜 一人ずつ来るからNormalでも割と楽勝だな(反撃を受けつつ)
西中継センターに立ち寄り、バイクの劣化率やバッテリーが気になってきたところで問題発生。そう、時雨である☔️
キャピタル・ノットから中継センターへの道のり、初見時と先日は看板に従い、崖からロープで降りて行ったため、バイクで同じ道を行くことはできない。そして、そこは座礁地帯だった……。
不安に駆られつつも行くしかない>< おそるおそる途中に発電機を建てつつ駆け抜けたところ、辿り着くまでにBTは出なかった。
よく考えたら、初見時もここをバイクで通って遭遇しなかったので、この後の展開(血液グレネードを試せ)もあってこの時は遭遇しないようになっていたのかもしれない🦆
帽子を貰った🧢 前は真っ赤に染めて楽しんでいたので、今回はカイラルリフレクター✨ 銀色カッコいい!
東部はついに、クライマックス。
ポート・ノットシティまでの道のりがこわいなあと何度も呟く。風力発電所の前後あたりからTwitterで騒ぎ散らかしていた。
そこで現れたDC版の新要素!!
訓練場だーーー!!! 武器は実戦で初使用とならずに済むの、すごく助かる🥹
しかし、これでわかったのは、たとえ演習であってもBTは怖い。ハンターの音が怖い。なかなか上手く太刀打ちできない、というものだった。
不安を取り除くにはどうしたらいい。職場の人にホラーが怖い時の対策を訊ね回るなどしたが成果は得られず。
しかし、BTはゲイザーもハンターもキャッチャーも、逃げおおせることは理解していた。そこに血液グレネードという武器ができたのだから、これまでのように尻込みしてはいられない!
そこで思い出したのが、誰かがやっていたハンターを排尿で退けるという動画。しかも焼却所という超序盤だった。
これができたら、かなり勇気に繋がるのでは(`・ω・´)
実際にやってみると、まあ難しかったけど、本当にササーッと逃げていってそれがまた面白かった。もっと早くやれば良かった。
そこからいい感じに吹っ切れて、バイクで座礁地帯を移動。近付��てきたら一旦降りて、ゲイザーやハンターに向けてグレネードを投擲。外したら、もがいて距離をとって排尿。
ただ、キリがないので途中でバイクでブーストかけて突っ切った。楽しかった。
この勢いのまま、ポート・ノットシティへと向かう。前回道中で使い切った教訓から、血液グレネードは山ほど持って行った(5×6個くらい)
初見時は早々にキャッチャーを倒すも、間もなく再び雨が降り出し、南側の荒れた狭い道をヒーコラ突き進んだものだったが……
みんながバイクに乗って行ったのって、こっちの道かなあああ
結局、途中でハンターに引きずり回されてキャッチャー戦になったのがわかる道順(B3→B2の先まで連れて行かれた)
荷物もだいぶ散乱してしまったけど、あまり傷付いていないのが幸いだった。洞窟内のメモリーチップも確保!
乗り越えたぞーーーーー���!!!
一気に成長を感じる……とても……。めっちゃフォトモード使うようにもなったし。
フォトモードのフィルターに「火星」ってあるけど、火星にも行くのかなとか考えてた。クリフと宇宙のあたりはまだよくわからない。
夜のポート・ノットシティ。綺麗。
出たな、ヒッグス! フラジャイルの分までいつかブン殴ってやりたい。あと、Exグレネードを投げ付けたい。
キャッチャーにトドメを刺した瞬間! ていうか、Very Easyに比べてNormalの敵、固っ!! 白いサムも手伝ってくれた。
「私は壊れない」フラジャイルのこの台詞も、今聞くと、とても重い。
そんなこんなで船に乗って湖を渡る。
ムービーシーンでもフォトモードを起動できることを知り、ますます感動。どこでどれを撮っても綺麗。
レイク・ノットに初めて着いた時には、あちこちに落ちている荷物を拾うのを諦めて向かったけど、今回は違う! XL含め、頑張って全部拾った💪
そして、素材は国道復旧に!
うおおおおおおおおおおおおお
エンジニアとエルダーへの荷物配送のついでにミュールを全滅させた。
荷物投げ!……は相変わらず命中率が低いので、ビリビリを食らいつつも、近付いてきたところを直接荷物で殴った。荷物「解せぬ(全損)」
エンジニアの荷物が壊れものだったのにミュールに突撃していったの、今思うとなかなか強気だな。
橋がほしい看板があったから建てようとしたら、ダイハードマンに怒られた時の写真。このあと無事に建設できました。
クラフトマンへの道中で撮った写真もぼちぼちTwitterに上げつつ、さあ来たぞ。BTリベンジ戦!
初見時、キャッチャーに挑んで早々に敗北。クレーターを作ってしまったクラフトマン北のショッピングモール跡地。
血液グレネードは山ほど持ってきた。梯子を壁にかけて、この先にゲイザーがいることを知っている。
乗り越えた先で見つけた敵にグレネードを次々と投擲! 近付いてくるハンターにもとりあえず投げ付ける! カイラル結晶ざくざく!
しかし、思ったよりも広い……前はここに足を踏み入れる前にぽっかり大穴を開けてしまったものな。
見える範囲のゲイザーを片っ端から倒して、見つけた! クラフトマンの依頼品!
ていうかプライベートボックスがある……ていうか、めっっっっっちゃ国道復旧用の素材が入っている!!!
キャッチャーを倒せば安定して持って帰れるな……と思ったけど、そもそもそれ以上の量が入っているので、フローターか壁向こうにトラックを付けて運び出すのが最適かなと思い、今回はセラミックを少し頂戴して足早に立ち去った。
ふう…………リベンジ、成功!!!(キャッチャーは?)
次回は、ミュールをトラックから引きずり下ろします!! 一度やってみたかった。
余談。国道復旧の成果(このあとさらに上がった)
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2019 Best Albums 上半期
令和初投稿
今年上半期によく聴いた & もっと聴かれるべき Albums10枚(1つはEP) を記します。(順不同)
ものの見事全てロック・アルバムとなり令和も全然ロックは死んでないなと痛感しました。自分の趣向が偏っているだけではありますが・・・
Foals - Everything Not Saved Will Be Lost Pt.1
今やUKを代表するロック・バンドとなった Foals の5作目となる新譜です。心の底から待ってました。
去年、初期メンバーとなる ワルター・ジャーヴァース (Ba) が脱退を発表しファンとしては(例え脱退の理由がポジティブだとしても)寂しい思いはありましたが本作を聴いて、バンドとしてより強靭かつオリジナリティーあるサウンドをものにしたんだなと少しホッとした同時にかなり興奮しました。
まあ Foals の魅力が詰まってます。肉厚のあるリズム隊に支えられたうねるようなメロディーはトライバルな��ウス・ミュージックのようであり、また 3rd AL 以降のヘヴィなギター・リフや各パートが綿密にグルーヴを膨張させて一気にカタルシスを爆発させる展開力など、圧巻のロック・サウンドです。 エレクトロニック・ミュージック的な味付けが強いですが紛れもなくこれはロック・アルバム。あと曲の構成もいいですね。気付けばエンディングへと流されるかのように辿り着いてしまいます。
しかしヤバいのは本作は2部構成の1部にすぎない事であり、もう1枚を今年中にリリースするってところなんですよね。どこまでも挑戦的な彼らのアティテュードにロックを感じました。
Foals - In Degrees
NOT WONK - Down the Valley
北海道からまじでクールなグッド・メロディーが届きました。
3人組バンド NOT WONK の 3rd AL。cutting edge/avex からのリリース!!!
元・銀杏BOYZ の 安孫子真哉 氏がプロデューサーを務めるレーベル KiliKiliVilla から2枚 AL をリリースし、早耳ロック・リスナーから支持を集めていた彼らの新譜は最高にグルーヴィーなロックン・ロールアルバムです。M-1″ Down the Valley ” から全曲通してエモーショナルが爆発した展開に泣きメロの連続。また本作はソウルから影響を受けたようで、たしかに M-3″ Of Reality ” や M-9″ The Bare Surface, I’ve Longed For You ” などのトラックからはロック的な熱さの奥にまた違った黒いグルーヴを感じます。加藤修平 (Gt&Vo) 氏がインタビューで語った「エモーション・ロックとソウルは音楽性は違えど本質的な意味は一緒。」という言葉を裏付けるような説得力です。
しかし、1st AL の時から思っていたけど M-6 ″ Count/Elation ” のこの怒涛の畳みかけるような疾走感を筆頭に andymori を彷彿させるなーと。この曲だけでもいいから聴いてほしいぐらい。
日本にもいいロック・バンドはいるぞって証明してくれたかのようでなんだか嬉しくなりました。
NOT WONK - COUNT/ELATION
The National - I Am Easy to Find
現行USインディー・シーンを代表するバンド The National の8枚目となるAL。4AD からのリリース。
00年代から既に話題にはなっていたバンドなのですが彼らの音源をこんなにしっかりと聴いたのが本作で初めてでした。じゃあ何が一体胸を打たれたのだろうと考えていたのですが、正直に言うと答えは見つかっていません。
しかし、1時間を超える長尺なアルバムは頭から聴いていると少しだれてくるんですが、本作には曲が進むごとにのめり込んで聴き続けたくなる魅力があることは確かなんですよね。その理由の一つにたくさんの素晴らしい女性ミュージシャンがゲストとして参加している点があるのかもしれない。その参加している女性ミュージシャンがどの人もエネルギッシュで生命の力みたいなものが溢れていて、そのエナジーを摂取したくなって聴いているのかもしれない。
また The Postal Service のような温もりのあるエレクトロニックなサウンドと物寂し気なメロディーもとても好きですね。あとは繊細な構成を支える Bryan Devendorf のパワフルなドラム・プレイの良さに気付いたという点も挙げられると思います。アンビエンスなアレンジが印象的なトラックやゴスペルからの影響が窺えるトラックを随所に挟んでからの M-13 “ Hairpin Turns ” が流れた瞬間も好きでいつも泣きそうになる。。
何はともあれ The National の良さに気付けたことはプラスだと思うのでもっとかみ砕いて聴いていこうと思います。
The National - Rylan
Beirut - Gallipoli
USの SSW ザック・コンドン が率いるバンドの5作目となるAL。4AD からのリリース。
このアルバムはとても暖かいです。それは南イタリアのプーリアを拠点として制作されたというのもあるかもしれません。でもそうではなくて何というか、人の優しさに触れたような温かみ、または一期一会の出会いなどと酷似した温もりを感じます。それは、本作を制作するまでに至った経緯で ザック・コンドンの見聞きした物や風景、感情などがそのまま形となったパッション(または郷愁)が通底しているからなんでしょうか。全曲が生き生きとしています。特に M-11″ We Never Lived Here ” はとても情熱的です。
Beirut の面々は普段自分が聴かないであろうあらゆるジャンルの音楽をたくさん聴いているんだろうなって思うんです。そしてそこからアウトプットされたいろんな楽器のいろんな音が聴こえてくる楽しさや彩りのあるメロディーの面白さなどといった音楽の良さを直に伝えてくれるので本当に大好きなバンドです。
Beirut - When I Die
Deerhunter - Why Hasn't Everything Already Disappeared?
現行USインディー・シーンの最高なバンド Deerhunter の 8枚目となる AL です。4AD からのリリース。
本作には Deerhunter の良さが詰まっています。つまり時代の変化に敏感なフロントマンである ブラッドフォード・コックス (Vo&Gt) の音楽的素養がいつになく前面にアウトプットされているということです。そして全曲があらゆる楽器の多彩なメロディーによって作られているからかいつも以上にポップに落とし込まれています。またそれらを支える軽快なリズム隊もたまらない。M-2 ″ No One’s Sleeping ”や M-7″ Futurism ” とか聴いていて楽しすぎる。
コンセプト的にはレトロ・フューチャーなんでしょうか。古風で広大な風景を彷彿とさせながらもすごく未来的なんですよね。例えば M-3 “ Greenpoint Gothic ”の木琴?とサイケデリックなシンセの組み合わせやラスト・トラック M-10 “ Nocturne ” はノイズががったサンプリングとチープなシンセから始まる不穏なバロック・ポップのようで奇妙な感覚に陥ります。
Deerhunter は最高。
Deerhunter - Death in Midsummer
Crows - Silver Tongues
ロンドンからは4人組バンドのデビュー・アルバムを。
IDLES のメンバーが主宰するレーベル " Balley " からリリースしているみたい。とてもいい関係性。
バンド名やジャケットからすでに匂っていますが、全体的にダークな空気を纏っています。けれどサウンドは骨太で��ケール感があり、そしてポスト・パンクのようにひねくれていて疾走感があります。Black Rebel Motorcycle Club や Joy Division が頭によぎる程にクール。特に M-7 ″ Chain of Being ”とかヤバいですね。アングラな雰囲気は薫ってくるけれど大衆の心を掴むようなアンセミックなメロディーが最高。ロックが下火な時代ですが彼らには期待してもいいのではないでしょうか。いつかデカいステージで観て圧倒されたい。
CROWS - CHAIN OF BEING
Big Thief - U.F.O.F
NYの4人組オルタナティブ/フォーク バンド。 本作は Saddle Creek Records ではなく 4AD からリリースされました。
一聴すると音が限界まで削ぎ落されているミニマルなフォーク・サウンドなんですが、その一音一音が光の粒のように美しくて儚い。そしてその音たちがゆっくりとメロディーへと収斂していく展開は心を優しく包み込むように柔らかい。勿論つま弾かれるアコースティック・ギターと Adrianne Lenker (Gt&Vo) の綺麗な歌声は言わずもがな、それらの奥で鳴っている生々しい様々な音、あるいはノイズやアンビエンスなアプローチに感動します。難しいことをやっているはずなのにこんなにも心地よく受け入れてしまう音楽ってそうないです。特に M-11″ Jenni ”は白眉。不意にノイジーなギターが鳴り響くところでいつも鳥肌が立つ。
また「UFOに乗ってきた友達」という意味の少し不思議なタイトルがついていますが、たしかにミステリアスな雰囲気も漂っています。 掴めそうで掴めない浮遊した空気感というか。
彼らの音楽を聴くと「音楽を聴くという行為」を改めて考えさせられというか、、音楽はパーソナルな時間を大切にしてくれるものだと思っているので、だから本来「音楽を聴くという行為」は、”自分と音楽とで一対一で聴くものだ”とまるで誰かの受け売りの言葉のようなことを考えてしまい、簡潔に言うと音楽を聴く時間を大切にしたいな、なんて思わせてくれますね。
Big Thief - UFOF
Drahla - Useless Coordinates
UKはリーズの3人組バンド。ずっと待っていたデビュー・アルバム。 Captured Tracks からのリリース。
まあヤバい。M-1 ″ Gilded Cloud ” の時点でぶっ飛ばされます。Mourn をもっと鋭くさせてハード・コア成分を強めた感じといったらいいのか、この人間味を感じさせない緊張感がえぐいです。NYの No Wave バンド勢のような冷たさと攻撃力のあるひりついたポスト・パンクで大好物なヤツ。何が良いって10曲30分という丁度いいトータル・タイム。だから即効性があるんですよね。一瞬で持ってかれる。また M-3 ″ Pyramid Estate ” や M-5 “ React/Revolt ”の James Chance and the Contortions ばりに耳をつんざくようなサックスがエロくて頭がくらくらします。まじで最強だと思います。
Drahla - Stimulus For Living
FONTAINES D.C. - Dogrel
アイルランドはダブリンからの5人組バンドのデビュー・アルバム。IDLES もリリースしている Partisan Records から。
方々からすでに高評価を得ている本作ですが、正直初めはあまり馴染みませんでした。でポスト・パンク好きだし、インディー・ロックだしで絶対に自分が好きな音楽性なのにどうして馴染まないんだろうと思って何回も聴きなおしているうちに気付けば彼らの魅力にどっぷりと浸かってしまっていました。
まず掴まれたのは Grian Chatten (Vo) の声ですね。感情が乗っているのか乗っていないのか、抑揚のないテンションで淡々と歌いあげるさま。
そして声だけでなくとにかく彼の眼が良い。人を寄せ付けない冷たい眼光。この冷め切った表情と声で熱い歌を歌っている姿はこれぞロックン・ローラーて感じですげぇ良い。勿論サウンドも最高で M-1 ″ Big ” や M-3 ″ Too Real ” などハードなナンバーから M-6 ″ Roy's Tune ” や M-11 ″ Dublin City Sky ” とロマンチックなナンバーまで音楽性が幅広い。初期衝動でやっているようで実は練られたアレンジが顔をのぞかせる、熱さと甘さと冷たさが凝縮した2019年随一のロック・アルバムだと思います。
また、バンド名の D.C. はダブリン・シティーのことであったり上記の ” Dublin City Sky “ であったりと郷土愛が溢れているところも魅力的です。
Fontaines D.C. - Too Real
オマケ EP
Sports Team - Keep Walking!
最後はロンドンの6人組バンドの 2nd EP。自主レーベル Holm Front Records からのリリース。
今 Shame や Dream Wife や Goat Girl に Black Midi (来日最高!!)..と挙げればきりがないぐらいサウス・ロンドンのロック・シーンがかなり熱いってのは有名ですがその中でも注目されているバンドの1つですね。
Alex (Vo) の悪ガキ感とか Pavement のような味のあるへろへろなギター・リフが最高です。あと絶妙な酔いどれ感がいいですね。特にラスト・トラック M- 6 ″ Georgie ” とかグッド・メロディー過ぎてまじで泣ける。。狭いハコでシンガ・ロングしたい。
彼らの何が良いって自主レーベルを設立してそこからリリースしたってところ。やっぱりいい音楽を作る人って音楽との向き合い方が本当にクールなんですよね。
Sports Team - M5
上半期は 4AD にやられました。
最高なレーベル!!!!
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kyonyu JKお つ ぱい 動画av・エロ動画・エロビデオ特集!
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2016年は怒涛の一年でした?? みなさん、こんばんは?? たかしょーです! 久しぶりのブログ更新です(*´ω`*) 今年も、あと数時間で終わりますね!あっという間に一年過ぎましたー。 2016年は怒涛の一年でした。 5月にMUTEKIさんからデビューさせていただきま...
プレゼントありがとうございます。 Nさん、ネックレス毎日Nさんのこと思い出しながら付けてます。 Rさん、今日から早速...
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マフィアパロ パーヴェ
1.
あらゆる贅を尽くした室内に無機質な機械音が響いている。まさしく豪華絢爛な部屋にふさわしい大きなサイズのベッドの横には硬質な医療器械がずらりと並んでおり、無機質な機械音はそこから発せられていた。
機械から伸びた無数のチューブは、ベッドの上に横たわる人物と繋がっていた。
黒い��ーツを身に付けた赤髪の美丈夫はひとり静かにベッドのそばに佇んで、無数の管に繋がれ浅く呼吸をして横たわる男を見下ろしていた。
「――……パーシヴァル、…そこに、いる…のか…」
薄らとベッドに横たわる男の目が開き、掠れたいまにも掻き消えてしまいそうな声を洩らした。
「…はい、ボス」
パーシヴァル、とは赤髪の美丈夫の名だ。うめき声のようなちいさな声を漏らさず聞き届けたパーシヴァルは顔を近づけるように蹲み、しかと返事をする。
男の薄らと開かれている虚ろげな瞳にはパーシヴァルの顔どころかすでにほとんど何も映ってはいないことも、耳もあまり聞こえていないことも、パーシヴァルは知っていた。
微かに聞こえたのであろうパーシヴァルの声を辿って弱々しい腕が上がりすっかり細く骨のようになってしまった指先がパーシヴァルの頬をなぞる。
男は――ファミリーを束ねるボスであり、ファミリーの構成員は彼を父として慕っている。もちろんそれはパーシヴァルにとっても同じで、父のような存在だった。マフィアという世界だけではなく、この世界で生きる術を教えてくれた、今のパーシヴァルがあるのはすべて彼のおかげと言っても決して過言ではなかった。
彼は、病にかかるより前は岩のような大男だった。
面白がってよくパーシヴァルの頬をつついたり撫ぜてきた優しい指先もこんなに細くなかったし、さまざまな表情を彩っていた頬もこんなに痩けていなかった。声だっていつも少々ボリュームを落としてほしい正直思ったことがあるほどであったし、笑うときなんかそれはもう豪快に笑う人だった。
――それが、数年前に思い病を患ったことで彼はこんなにもやつれてしまった。
抗争で銃弾の雨を浴びても、暗殺まがいのことをされて腹に派手な風穴が空いても、しばらくすればひょっこり戻ってきて、やっちまったわ、とげらげら笑って心配していたパーシヴァルを笑い飛ばしていたような豪胆な男だった。“何度殺しても死なない男”と、別のファミリーからも恐れられていた。そんな彼が、病に負けるなんてこうなった今でもパーシヴァルは信じられなかった――信じたくなかった――。
もはやかつての面影は薄れおよそ威厳というものは感じられず、そうなっては下にいる構成員――ソルジャー――の不安を招き最悪内乱にだってなりかねない。それゆえほとんど表舞台に立つことはできなくなり、彼に会うことが叶っているのはそういった心配のない信用がおけるパーシヴァルと、幹部であるカポレジームの面々くらいだ。
「……俺ァ、もう長くはねェ……、ファミリーを、…ココを、…頼んだわ…」
「! ボス、それは――」
「…アンダーボス、の、おまえの……務めだろうがァ……、務めを果たせ、…パーシヴァル…」
パーシヴァルはその言葉に、途端に顔を強張らせる。
――アンダーボス。次期ボス。それが、パーシヴァルの、このファミリーにおいての役目だ。だから、ボスに何かあれば己がこのファミリーを束ねるのだという自覚はずっと前からあった。そのために様々学んできたつもりだった。
しかし、現実を目の前にすると途端にずしりとパーシヴァルの肩に重圧がのし掛かる。
そして、病に伏せりやつれはじめた頃から本当は薄ら感じてきた、彼の死という現実に血の気が引く。
「ハ、…かてえ、かてえ……、ああ…、おめえは頭はいい、が…ちいとばかり…かてえんだよなァ……」
彼の漏らした薄い呼気は、呼吸だったのか笑ったつもりだったのか判然としなかった。
けれど、呼気を洩らした唇はゆっくりコマ送りのように弧を描いた。
そして、パーシヴァルの頬に触れていた手はぽとんとベッドの上に落ち、薄ら開いていた瞳が瞼で覆われてしまった。…チューブを通して注がれる薬の副作用で、あまりボスは目を覚ますことはなく、ほとんど眠っている。深い、深い眠り。
ボスの病は治らない、もう手を尽くしてしまった。現状は…ただただ、細い糸のような命を繋ぎとめているのだ。
パーシヴァルはベッドの上に無造作に落ちた手をベッドの中に戻し、布団を整えて立ち上がった。
真面目すぎる、頭が硬い、甘い、とは彼からは言われ慣れた言葉の数々ではあったが、今この時言われることとは重みが違う。
今一度、彼を見下ろしてからパーシヴァルは踵を返した。
静かに部屋から出て扉を閉め、パーシヴァルは険しい顔でその場に立ち止まりつるりとよく磨かれている床の上に立つ、己の革靴の爪先を見つめた。
「ジークフリート」
おもむろに名を口にして半ば睨み付けるように見つめていた床から視線を動かすと、いつの間にか音もなく、離れた場所にパーシヴァルと同じようにスーツを着た男が立っていた。
まるで、気付かれたことが意外だとでもいうように、男――ジークフリートは、ひとつに結び横に流した緩やかにうねる茶髪を揺らし眼鏡の薄いレンズ越しの鼈甲色の瞳を丸めた。
「おまえに頼みたいことがある」
「俺に、か? 珍しい」
「コンシリエーレ、ジークフリート。おまえに相談がある」
そう呼ぶと、笑みさえ浮かべていたジークフリートは、穏やかに弧を描いていた唇を何か言いたげにわずかに開き、それからすぐに引き結び瞳を細めた。
“コンシリエーレ”、それがこのファミリーの中でのジークフリートという男に与えられた役割。
顧問とも呼ばれるコンシリエーレは主にソルジャーたちの相談役ではあるが、その存在はファミリーにとってはなくてはならない存在だ。他に誰���その役割につくこともなく、ジークフリートただひとりだけコンシリエーレという立場にいる。間違いなくファミリー内でのトップはボスただひとりだ。しかし、その次は誰なのかと言われれば、パーシヴァルはきっとジークフリートなのだと言う。アンダーボスである自分よりも、表だって出てくるわけではないがジークフリートはこのファミリーの中心にいる人物であろう、とそう思っている。
パーシヴァルがこのファミリーに入ったときには既に、ジークフリートはその位置にいた。ボスは、付き合いは長い、と言っていたが具体的にどういう繋がりなのか、どうしてこのファミリーにいるのか、彼が何をなしてきたのかは知らない。知る者も多くはないはずだ。
ジークフリートも無口なわけではないが決して雄弁なほうではないので、あまり語らない。パーシヴァルも進んで問うこともしない。この男の底知れぬ何かを、本能的に察しているのだ。
「暫く不在にする。その間、適当に繕っておいてほしい」
「…構わないが、知られたくない場所へ行くのか?」
「……今の、ファミリーを見たい。俺が普段、目の届いていないところに」
――いずれ、…いや、近いうちにボスは死んでしまう。そうなったときに、新たなボスとなるのはパーシヴァルなのだ。それを、先程ボスと言葉を交わして改めて自覚した。
肩にのしかかる重圧も、迫りくる彼の死という現実も、全てを乗り越えなければならない。彼が作り上げたこの大きなファミリーを、束ねなければならないのだ。
だからこれは、パーシヴァルの決意だ。
「では、それも俺の方でなんとかしよう。当てがある」
ジークフリートは更に問うでもなく、あっさりと承諾した。ボスがあのような状態になってから、裏で代わりをしていたのはほとんどパーシヴァルだ。もちろんジークフリートやカポレジームたちも動いてはいたが、次期ボスとしての責務として主はパーシヴァルに任されていた。ファミリーのためとはいえ…そのパーシヴァルが長���不在にするということは特にジークフリートへ負荷がかかってしまう。
それゆえ、反対のひとつやお小言でも飛んでくるものと思っていたから――あまりジークフリートらしい行動とは思えないが――、少々拍子抜けではある。
「――もう然程、時間はないだろうからな」
ぽつり、と扉を見つめ呟いたジークフリートの横顔は、普段となんら変わりないもののようでいて、少しさびしげであったように思えた。
パーシヴァルもその横顔を見つめ、それから同じように扉を見つめた。
2.
(……案外変わるものだな)
パーシヴァルは鏡に映る、少しだけ見慣れない自身の姿を眺めていた。
赤く綺麗だった髪は黒がかりくすみ、同じように赤い色だった瞳も変色している。パーシヴァルのようにはっきりとした赤い色の髪や瞳はこの辺りではあまり見ないから、という理由でジークフリートに毛染めと色のついているコンタクトを渡されたのだ。
はじめはたったこれだけで、と思ったが…髪の色や瞳の色が変わるだけでもこんなにも印象というものは変わるものか、と今ではいっそ関心さえ覚えている。
体躯を包んでいるのは普段身に着けている質の良い艶のある黒いスーツではなく、パーシヴァルのギリギリ許容範囲程度の質素な服だ。布も薄く、心もとなさに顔を顰めながら服を摘まむ。
ファミリーに入るより以前はこういう服を身に着けているのがふつうだったというのに、それが今では違和感を覚えてしまうようになったというのはなんとも皮肉な気がして、ちいさく自嘲ぎみに笑みを零す。
アンダーボスとなってから、ボスにスーツをもらった。全てフルオーダーなのだというそれの値段はパーシヴァルとて知らぬわけではなく、こんな高価なものをボス手ずからいただくなど、とパーシヴァルは焦ったものだが、ボスはアンダーボスになったからこそこういう服を着るべきなのだと言っていた。外見を着飾ることも、重要なことなのだと。
特にパーシヴァルは年若く、なかなかこの年齢で今のポストにいる人間というのはごく一握りであり、それ故古びた考えも持つ人間にはなめられやすいのだ。だから、スーツは防具であり、武具だった。
(そろそろ行くか…)
本邸ではなく、この潜入のために用意した街外れにある小さな家に付けられた時計を見上げる。
ジークフリートの言う当て、とやらが何を指しているのか知らないが、時間と場所を指定されたのだ。何故、と聞き返したら、行けばわかるさ、とだけ言われた。
パーシヴァルは今日から、ファミリーの新入りとして身分を隠し潜入することになる。下の者たちが今どのようにしてファミリーを支えているのか、――あるいはファミリーの規律を乱しているのか、パーシヴァルはそれをしっかり見定め、これから己がトップとなったときファミリーのためになる舵取りを考えなければならない。
「え、えーっと…今日から世話係になったヴェインだ! よろしくな!」
ジークフリートに指定された場所にいたのは、なんとも呑気な顔付きの男だった。明るい金色のふわふわしている毛がひよこか犬かのようで余計にその呑気さを増していて、パーシヴァルは思わず顔を顰めそうになったが、ぐっと堪えて笑みを張りつける。初日から自分の世話係とやらに噛み付く新入りはまずいないだろう。
だがそれにしたってこの男…ヴェインは、とても裏社会であるマフィアの一員にはあまり見えない。街中のどこにでもいる、平穏な陽の当たる生活をしていそうなごくごく普通の青年だ。
ボスやジークフリート、カポレジームや彼らが率いるソルジャー…みな、そういう雰囲気を持っている。みな性根が腐っているとまでは言わないが、良い人間とは言えないし汚いことに手を染めたこともある――陽のあたる場所にはいけない、そういう存在だ。……もちろん、パーシヴァルも。
「…パルツィです、よろしくお願いします」
きれいに張りつけた笑みのまま、差し出されたヴェインのごつごつしている無骨な手を握り返す。
本名でそのままいくわけにはいかないと思い、偽名を考えてはいたけれど…パーシヴァルの顔を見てピンとも怪しむでもなくにこにこ阿呆のように笑っていたこの男にそこまで警戒する必要はあるのだろうか、とも正直考えてしま��。それほどまでに、ヴェインからはおよそ警戒や疑心を感じなかった。この男は、純粋すぎるように思えてならない。その純粋さは普通の生活では然程問題にはならないだろうが、ことこの社会においてはその気質は食い物にしかされないだろう。
「わ、いや、敬語とかいいって、ほんとに…。たぶんそっちのほうが年上だろうしなあ……あと俺も入ったばっかで、ほとんど新入りみたいなもんだしさ…。なのに、急にコンシリエーレ? っていう役職の…ジークフリート、さん? に頼むって言われて……あんなすげー人が何で頼んできたのかわかんないんだけど、そもそももしかしてパルツィってジークフリートさんと知り合いなのか?」
何なんだ、この男は。パーシヴァルは張りつけた笑みのまま口元を僅かにひきつらせた。
初見から能天気そうな男だとは思ったが、妙に慣れ慣れしい上に先程からべらべらと怒涛の勢いで喋ってくるものだから、パーシヴァルは若干引いた。喧しい、とついいつものように言ってしまいそうなのをなんとか堪える。
――ヴェインと己の相性はともかく。ジークフリートの当てとやらがヴェインだとはどういう意図なのかわかりかねたが、ほとんど新入りなのだということでようやく納得した。
パーシヴァルが潜入したのは、カポレジームが率いる構成員であるソルジャーのところではなくそれより更に下の準構成員であるアソシエーテのところだ。
大きなファミリー故、ソルジャーでさえもすべてを把握しているわけではないが、それ以上にアソシエーテは更に未知数だ。人種もなにもかもごちゃまぜになっていて、それ故一番所属している人間が多いので、パーシヴァルは今まで接したことさえない。
その中で更に新入りともなれば、アンダーボスであるパーシヴァルの顔や容姿、その存在さえもあまり知らなくて当然と言えば当然かもしれない。
「……コンシリエーレとは、偶然拾っていただいたというそれだけだ」
当然これも嘘だ。そうでも言わないと、ファミリーのトップに近いジークフリートと入ったばかりの新入りが繋がっているのは怪しい。
拾われたという理由ならば多少は現実味がある。ファミリーには拾われたという人間も決して多いわけではないが、いることにはいる。拾われた、というのは正真正銘文字のまま拾われた者のことだ。街の中心部やその周辺はとても裕福でにぎわうこの街も、街外れに向かえば向かうほど治安が悪く、所謂スラムになっており、そこには家も何もかもを失った者たちが、限りなく死に近い状態で暮らしている。
そこから、ファミリーの者が気まぐれで目を付けて拾ってくることがあるのだ。だが、ただただ拾ってそれで終わりなのではなく、拾われた者の不始末は拾った者の責任となり同じように、血の掟により制裁を受けることになるのだ。だからあまり拾いたがる人間もいないのだが、ごく稀に情を移して拾ってくる人間もいる。
ジークフリートは、適当に言いつくろっておいてくれ、となんとも無責任なことを言ってきたので、唯一現実味がある嘘をついてしまったが、さすがのヴェインもこれは怪しむのではない��ろうか…と、パーシヴァルはヴェインが怪しんできて発する言葉をいくつか脳内で浮かべ、その返答を何通りも思考��ながらヴェインを見つめる。
「ふーん、そうなのかあ」
ひく、とパーシヴァルの顔が引きつる。……この男、能天気なだけではなく実はただの馬鹿なのだろう、そうはっきり確信した。へらへら笑って、すんなりパーシヴァルの言葉を一部も疑うこともなく受け入れてしまったのだ。ここまでくるといっそ末恐ろしささえ感じる。
「…コンシリエーレとの繋がりは、他の者へ余計な気をもたせてしまう。他言無用でお願いしたいのだが」
「おっけー」
またもヴェインは浮かべた笑顔を崩すこともなく即答だ。……軽い。果てしなく軽すぎる。パーシヴァルであれば、こんなふうに言われたら間違いなくその者をまず疑うだろう。ただ、その時にはヴェインのように了承はするだろうが、内心は疑心に満ちさてこいつをどう調べてやろうかと思考を巡らせる。――しかし、ヴェインからはやはり疑心を感じないのだ。
「おまえは俺のことを怪しいと思わないのか」
ヴェインがあまりにも能天気で、苛立ちさえ覚えてつい口走ってしまったことをパーシヴァルは口にしてから後悔した。ヴェインが能天気で人を疑う事を知らないのであれば尚の事、身分を隠したいパーシヴァルにとっては非常に扱いやすく都合が良いというのに、だ。これでは、ボスに甘いと言われるのも道理だ。
「え? なんで? だってパルツィって悪い人には見えねえし、ジークフリートさんもそう言ってたし。俺だって、信じていい奴と信じちゃいけない奴くらい区別つくんだぜ」
きょとんとしたヴェインは、言葉を躊躇するでもなくやはりすんなりと答え、むしろ胸さえ張るのだから、どうしようもない。
真っ直ぐに信頼を向けてもらえることに胸を躍らせるほど、パーシヴァルは純粋な心根は既になく、どこか冷えた心地でこいつはきっとこの社会では生きてはいけまい、と思った。騙し合いなど当たり前のようにあって、人を信じれば、なんて理論は通用しないし、善悪の判断など不要だった。周りも自分も、結局悪でしかないのだから。それをわからなければ、やはりこの男は食い物にされるだけだ。
“悪い人”ではない、などとよくも言えたもので、そもそもこのような場所に身を置く時点で“良い人”ではなくなるというのに。いっそこのまま、己の手を汚したすべてをぶちまけてしまおうか、そんな事さえ思う。やれることならばなんでもやった、人を手に掛けた事も何度もある。抵抗さえその内なくなって、気が付けばこんなところにいる。――腹の奥がぐるぐる気分が悪い。汚い言葉を遣ってしまえば、胸糞が悪い、ということなのだろう。
パーシヴァルは小さく舌打ちを零し、握ったままだったヴェインの手を振り払った。
「…パルツィ?」
どうかしたのか、とヴェインが気遣わしげに覗きこんでくる。
まだ染まりきっていない、真っ直ぐな瞳に己の姿が映っていることが耐えがたく、パーシヴァルはふいと視線を逸らした。
「おなかすいた?」
……やはりこいつとはウマが合わない、とパーシヴァルは深く溜息を零す。何をどう考えたらお腹が空いているのだと思うのか。いかにもな態度を取ったのはパーシヴァル自身ではあるが、あまりの度し難さに半分睨み付けるようにヴェインを再び見遣る。
すると、一瞬ヴェインの瞳が揺らいだ。怯え、かあるいは。…ただ、パーシヴァルはそういう瞳を見たことがあった。――他でもない、スラムで。
徴収でスラム街付近を通ったとき、パーシヴァルはいくつもの同じような瞳で見つめられた。風格が出てきたということだ、と周囲には言われたがパーシヴァルの胸中には釈然としない何かがあった。
スラムの人間を助けることはパーシヴァルの仕事でも、マフィアの仕事でもない。同情をしても、仕方がないことではある。けれど、パーシヴァルは――
「…これから世話になる身でありながら失礼な態度を取ったこと、許してほしい」
血が上った頭をゆっくり冷やす。パーシヴァルは何も新入りをいびりにきたわけでも威圧しにきたわけでもない。次期のボスになるために、このファミリーの実情を見に来たのだ。そして、ヴェインはいくらどうしようもなく能天気で阿呆だとしても、パーシヴァルにとっては貴重な協力者なのだから――もちろんヴェインはそんなことになっているとは微塵もおもっていないだろうが――、事を荒げず上手くやっていかなくてはならない。だから今は剣を収めるべきだ。
「いや俺のほうこそ、何か気障ることしたんだよな、ごめん」
謝る必要がないだろうがおまえには、と言いそうになる口をつぐむ。
街角のどこにでもいそうな青年に見えていたヴェインに、何か歪みのようなものを感���るのは何故だろう。
(……こんな世界に入るくらいだ、こいつにも何かがあるのだろう)
みな訳アリなのは当然のことだ。ただ、ほんの一瞬でも弱者の瞳を見せたこの男はこの弱肉強食の世界には向いていないと思った。
「…よし! じゃあ飯でも食おうぜ、俺の家すぐ近くなんだ」
「おい、仕事は――」
「んなの飯の後! 腹が減ってはなんとやらって言うだろ!」
わははは、と笑いすっかり明るい調子に戻ったヴェインはそう言ってさっさと歩いていってしまう。能天気なくせに度胸はある奴だ。仕事をさっさと熟さないで怒られるのはヴェインだろうに。
はあ、と今一度溜息を零しパーシヴァルはヴェインの後を追った。
3.
『どうだ、調子は』
影になっている建物の壁に背を預け、耳に当てた携帯から聞こえる久方ぶりのジークフリートの声に顔を顰める。
「……どうもこうも…」
振り返り、背を預けていた壁から顔をわずかばかり覗かせると、少し離れた場所にヴェインがソルジャーのひとりと話しているのが見える。
いつもパーシヴァルの前ではおしゃべりな口を噤ませ、眉を垂らし顔色があまり良くないことから察するに、おおかた説教か鬱憤を晴らすように言いがかりでも食らっているのだろう。
ソルジャーがやって来たのを察知して、パーシヴァルはうまいことヴェインに理由を言って――何を言ってもヴェインは許容するだろうが――その場から逃げおおせたのだが、ちょうどジークフリートから電話がかかってきたのだ。
パーシヴァルが潜入を始めて三日が経った。一番下のアソシエーテとだけあり渡される仕事はあまり緊張感のない、汗臭いものだった。みかじめ料��貸した金の徴収やらに方々街中歩き回ったりが主だ。時折密輸やら密造に関わることもあったが、それも結局力仕事をさせられるだけだ。
汗をぬぐいながら、アソシエーテに任せられる仕事は確かにこのくらいだろうなとパーシヴァルは思う。しかし、こういったものは異国では縁の下の力持ちと言ったか。やはりファミリーにとってなくてはならないものと言えよう。しかし、アソシエーテは人種が様々なせいか、非常に良い扱いを受けていないようだ。
今のヴェインのようにソルジャーに突っかかられるのは最早どうしようもないが、アソシエーテの面々にはこれからも励んでもらうために何か考えるのもいいかもしれない。鬱憤を晴らしたいのもわかるが、やはり素行がやや目立つ。今すぐ血の掟で粛清するほどのことでもないが、今後も監視は続けるべきだろう。
「――…それなりに成果はある、が……おまえの手配したあのヴェインとかいう男はなんとかならんのか」
『ヴェインか? ああ……良い青年じゃないか』
「…正気か? アレにはこの世界で生きることなど到底無理だ、誰だあんな男を拾ってきた阿呆は」
再び背を預けた壁を後ろ手にこつこつちいさな音を立て苛立たしげに指先で小突く。すると、暫しの沈黙の後電話越しに小さく笑う声が聞こえ、パーシヴァルは眉間にしわを寄せる。
「何がおかしい」
『…いいや、心配をしているようで…随分ヴェインと仲が良くなったようだと思ってな』
「な……」
心配している? あの男を? 何故俺が。そんな文句とも疑問とも言える言葉が一気に溢れだして、なんだと、という言葉は正確には吐き出せなかった。
ヴェインとの関係性は別段変わったことはない。ヴェインは相変わらず馴れ馴れしく、騒がしい。しかも、どんなに疲れ果てた日でも変わらず喧しいのだ、あの男は。
それと、どうしようもないくらい致命的に方向音痴ということも判明した――しかも本人は認めようとしない――。そのせいで徴収がまるで捗らず、単純計算で課された仕事を今日一日で終わるかどうか…と、とうとう耐えられなくなったパーシヴァルが逆方向へ歩いていくのを首根っこひっつかんで引き戻し、そのたびに溜息を洩らしたものだ。
正直、ヴェインといると平和ボケというべきか、調子が狂う。アンダーボスになり、ボスが病に伏せてからずっとパーシヴァルは息の詰まるような重圧と隣り合わせの日々を続けていたから、余計にヴェインといると気が抜けて嫌になる。
それに、ファミリーに入る前も後もあまりパーシヴァルの周囲にヴェインのような男がいなかったということもあり、接する度に疲労感さえ正直覚える。…ヴェインのような男がほいほいそこら中にいても困るだろうが――想像するだけで鼓膜が破れ頭が爆発しそうだ――。
敢えて言うのであれば。ヴェインは時折、あの時見せた顔色を窺うような弱々しい視線をこちらに向けてくるときがある。意識的にそうしているのか無意識なのか知ったことではないが、余程あのときのパーシヴァルの態度が響いたらしかった。ある種、恐怖を植え付けられて服従するという点では御しやすく組織的には一向に構わないのだが、パーシヴァルはヴェインのそういうところは気に入らなかった。
「っ、そんなことはどうでもいいだろう! そんなことを言うためにわざわざ電話をしたのか!」
自分でこの話題を振っておきながらこの言い方はないだろう、と恥じながら、しかしパーシヴァルはこれ以上何か言われることも、誤解されることもごめんだった。
『……そうだな、本題に入るが…例のファミリーに妙な動きがみられたと、つい今しがた報告があった』
途端に真剣な声音になりジークフリートが告げた内容に、パーシヴァルは眉を顰める。
「…ボスのことが勘付かれたか」
『可能性は否定できないが、少なくとも好機とは思われているだろうな。近いうちに仕掛けてくるのは間違いない』
よりにもよってこんなときに、とパーシヴァルは舌打ちを思わず零した。
“例のファミリー”とは、この都市に根付くパーシヴァルたちのファミリーとは別のもうひとつのファミリーだ。普通、ひとつの都市にファミリーが複数存在することは通常ありえないことだが、この都市には昔からふたつのファミリーが存在していた。
いままで、大きな争いもなくお互いの縄張りを守ってきたが…ボスが不在の今を狙ってくる可能性も考え、周辺を探らせ見張らせ警戒していた。長いこと何も諍いもなくやってきたから、まさかとは思うが念のため…と慎重になったのが功を奏したようだ。
ボスが健在であればこんな事態どうということもなかったかもしれないが…いいや、ボスがいても、これほどの規模になっているファミリー同士がぶつかる抗争となれば被害は相当なものになるはずだ。小競り合い程度ならば被害は最小限にとどめられるだろうが、総力戦となった場合は――。
「……わかった。引き続き見張らせ、また動きがあればすぐに知らせろ、いざと言うときは俺が指示を出す」
『ああ。俺のほうでもやれることはやっておく』
「! おい、ひとりで突っ走るなよ、ジークフリート。今回ばかりはおまえひとり動いてどうにかなるものでもあるまい」
『わかっている、情報収集をするだけだ。…それにしても……ふむ、ボスに似てきたなパーシヴァル』
妙にうれしそうなジークフリートの声音に、パーシヴァルは咄嗟に言葉をかえせず唸る。
たしかにボスはよく茶化すような声音で同じような事を言っていた。それというのも、ジークフリートは単独行動をするきらいがあり、裏で手を回しなんやかんや解決してしまうということがままあったからだ。
ジークフリートならばひとりでも問題はないのだろうが、それは絶対ではない。不測の事態が必ず起きないという保証だってないのだ。そして、ジークフリートはファミリーにかえがいない重要な人間で、ボスがいなくなろうかというこの時期に失うわけにはいかない。
それに、ボスだけではなくジークフリートまでいなくなってしまったら――と考えパーシヴァルはハッとする。
「っ茶化すな、ジークフリート」
『茶化したつもりはないが、すまなかった』
「くそ、謝っているように聞こえん! そろそろ切るが、何かあればすぐ連絡しろ、いいな」
『もちろんだ』
電話を切ると、遠くのほうでヴェイン��パーシヴァルを呼ぶ声がちょうど聞こえてきた。
先程を同じようにこっそり振り返ると既にソルジャーの姿はなく、ヴェインが噴水を中心にした円形の広間の周囲をうろうろひとりで歩き回っていた。
このまま放置すれば、パーシヴァルをさがして当てもなく歩き出し、またどこぞかで迷子にでもなりそうな勢いだ。今日も方々歩き回りコキ使われたので、さっさと休みたいというのに更にヴェインをさがしまわるなんて御免こうむる。
「ここだ」
「あ、パーさん! どこまで行ってたんだよ、先に帰っちまったかと思っただろ」
呼ばれたその名で、パーシヴァルは眉間に皺を寄せる。当然ヴェインにもわかるよう露骨にそういう表情をしたのだが、ここ最近ではパーシヴァルのその表情には反応しなくなってきた。
パーシヴァルとて本気で怒りを覚えているわけでも苛立ちもしていないのだが、それを見ぬきだしてきたヴェインという男の抜け目のなさのようなものがやはり気に入らない。
能天気そうに見えて、ヴェインは存外人の機微に敏い男だ。顔色を窺っているように思えるが、どちらにしても見抜かれているような気分は心地よくはない。
しかしながらヴェインの気に入らない点などこのように上げ始めたらキリがないのだが、その中で一番パーシヴァルが気に入らないのは“パーさん”などという不名誉極まりないその呼び名だ。
「“パーさん”ではない。いい加減その間抜けな呼び方をやめろ」
なんとも腹立たしいことに、このやりとりはもう数えきれないほど繰り返しており初日からずっと続けているのだ。最早“パーさんではない”と“パーさんと呼ぶな”はまるでパーシヴァルの口癖のようになってしまっている。
はじめてヴェインと顔を合わせたあの日、結局郊外にあるヴェインの自宅で食事をしたのだが、そのときに“決めた!”とヴェインが突然声を上げ、“パーさんでいこう!”とこれまた突然言い出したのだ。
ヴェイン曰く、これからふたりで色々仕事をするんだから俺たちペアじゃんバディじゃん、とのことらしい。……意味がわからない。
そしてパーシヴァルが何度言ってもやめようとしないという謎のメンタルの強さに、パーシヴァルは苦戦を強いられているのだった。
「いいじゃん、友だちみたいで!」
「――友だと? おまえが俺の? ハッ、ごめんだな」
そもそもこの男は、マフィアがなんたるか正しく理解しているのだろうか。そんな友だのなんだの仲良しごっこをしていること自体おかしいのだと、何故わからない。
それを差し引いてもヴェインと友など考えられないが。
えー、といかにも納得がいっていなそうな声を上げたヴェインが不満げに唇を尖らせる。
「友などとのんきな奴だな、おまえには友人のひとりもいないのか」
「――…え、…あー…うん、まあ…そう、なるかな」
「なんだ、その他人事のような言い方は。自分のことだろうが?」
わかりやすくヴェインは困惑したような表情を見せ、返答に困ったのか歯切れの悪い言葉を返してきた。だが、何かを隠しているという風でもなく、どちらかと言えば自分のことであるはずなのに、誰か別の人間のことでも言っているかのようだ。
「……ま、まあいいだろ…。そんなこと、どうでも���パーさんと俺が友だちっていうのが今ジューヨーなことだろ!」
「だから友では……」
「よっしゃパーさん、今日も夕飯食べに来てくれよ! な! ほら行こうぜ!」
有無も言わさずがしりと肩に腕を回され、早々にヴェインが歩き出してしまったため、パーシヴァルはほとんど引きずられているのに近しい形で連行されていく。
ヴェインは見かけに相応しく馬鹿力で、さしものパーシヴァルもこれを振り払うのにはそれなりの体力を必要となる。それに、振り払ったら振り払った��またヴェインとまた延々とやり取りをすることになるだけなので、ここは素直にヴェインに合せてやっているのだ。
事あるごと…毎食ごとにパーシヴァルはヴェインの家に連行され、何故か食事を振る舞われていた。
これが最高にまずいのであればパーシヴァルは何が何でも抜け出すのだが、これは見かけに反してヴェインの料理は美味いので満更でもない……いや、美味な食事に罪はない、そういうことだ。それだけだ。
あとは食事中にヴェインが黙っていてくれさえすれば、郊外のボロ家の食事でもそれなりに楽しめるのだが。
(……しかしこいつに友人のひとりもいないとは)
パーシヴァルが素直についてくるのがわかったからかようやっと回されていた腕が外れて、やれやれと肩を回しつつ鼻歌をうたい上機嫌のヴェインの横顔を眺め、パーシヴァルはなんともなしにおもう。
パーシヴァルからすればウマの合わない男ではあるが、一般的に見てヴェインは“良い性格”なのだろう。性格に裏表がなく、優しい部類で面倒見も良い。人に対する共感性も、感受性も強い。誰かを率いるリーダーの資質があるわけではないだろうが――本人の性格的にも――、人の輪の中心にいるのが似合うような男だ。だから、そんなヴェインに友人がひとりもいないというのも不思議な話だった。
それに、先程の妙な態度……。友人が出来ない、もしくは、いない理由でもあるというのか。
(――いや、俺はなにを)
つい思考をまわし考え込むのは悪い癖か。だとしても、よりにもよって考えるのがヴェインのこととは。なんたる不覚、とパーシヴァルはひとり渋い顔をする。
パーシヴァルがいまなにより今一番考えなければならないのは、ジークフリートから連絡を受けた例のファミリーのことだ。
もし万が一、予想通りこちらを潰そうともくろみ準備を着々と進めているのであればどうするべきか。
パーシヴァルとしては、慎重になるべきだと思っている。抗争を避けられるのであれば避けるべきだ。たしかにもうひとつが潰れれば、ファミリーもさらに大きくなるかもしれないがその代償はあまりにも重い。むやみやたらと構成員たちの命を散らすことになる。
だが、これはあくまでもパーシヴァル一個人としての意見であり、実際ジークフリートや幹部であるカポレジームの面々の意見は違ってくるだろう。
特にカポレジームは古参も多く、いまだ若輩であるパーシヴァルが次期ボスであることに納得していない者もいる。そしてそういう者に限って、好戦的であったりするからまた���介なのだ。
どうせ、パーシヴァルが抗争を避けるべき、と言えば、聞くに堪えない罵りが飛んでくるに違いない。
(…問題は山積みだな)
しかし、パーシヴァルにはやらねばならない、という強い意思がある。これしきで立ち止まってなどいたら、パーシヴァルに託すと言ってくれたボスに顔向けが出来ない。
だからヴェインに傾ける思考などパーシヴァルにはないはずなのに、それでも思考の片隅にちらつくこの男がひどく憎らしかった。
「うわ、すごい雨降ってきたなぁ。パーさん今日は泊まっていったら? 時間も結構遅くなっちまったし」
ちょうど食事を終えたところで、外からものすごい音が聞こえだしたので何かと思えばどうやら大雨が降ってきたらしい。
ヴェインが引いたカーテンの隙間から見える外はいつの間にか暗くなっており、雨粒は良く見えなかった。
「…………ああ、そうさせてもらおう。だが俺はパーさんでは」
「パーさん律儀だなあ、それもしかして毎回言う気かよ」
「…………」
ヴェインの家に泊まるなど、夜は果たして静かに寝かせてもらえるのだろうかと少々不安ではあるが、たしかにこの暗闇と大雨の中走るのは少々堪える。
「とりあえず、俺は風呂と部屋の準備してくるからパーさんはここでゆっくりしててくれ」
それじゃあ、とヴェインは言いたいことだけ言ってさっさと部屋の奥に消えて行った。
(……そういうところだけは妙に気が利くんだがな…)
ならばもう少し他のところも気が利いてほしいものだが。パーシヴァルは食後に出された温かいハーブティー――これもヴェインが自ら育てたハーブで淹れたものらしい。すっかりパーシヴァルのお気に入りになったもの――を飲みながら、ゆるゆると一息漏らす。
家人として客人をもてなすのは当然だと言わんばかりに、パーシヴァルが家にやってくるとヴェインはあれこれ気を利かせてくる。パーシヴァルはいつも、ただ椅子に座っているだけだ。
「パーさん、あんま背丈変わんないし俺のパジャマでもいけるよな?」
準備が終わったのか、ヴェインが手に何やら持って戻ってきた。
背丈はたしかにヴェインとパーシヴァルはあまり変わらない。ヴェインのほうが一、二センチ高いくらいだ。しかし、体の厚みやなにやらを比べるとあまり同じくらい、とは言い難いような気もする……というところまで考えると強烈に悔しいので、パーシヴァルは気を落ち着かせるためにひとまずもう一度ハーブティーを飲んでから、改めてヴェインの手元を見る。
「!? 貴様なんだその幼児が着るような柄は!」
ヴェインの手に乗っていたパジャマは、とてもヴェインのような成人もとっくに過ぎた筋肉盛りの男が着るとは思えぬ愛らしくデフォルメされた犬がまるで布の上をはしりまわっているようにあちこちにプリントされたなんとも可愛らしいもので、パーシヴァルは危うくふきだしそうになった。そしてそれをこれから自分が着るのだと思い、その姿を想像するだけでゾッとする。
「ん? ああでも確かにパーさんが着ると……っく、ぷ…ふ…」
「おい、今笑ったな!」
「パーさん顔いいから何でも似合うって! 」
ほらほらと言ってヴェインは手元に畳んであったパジャマを拡げ、目の前のパーシヴァルに当ててみせてくるのでパーシヴァルは椅子から立ち上がってそれを避ける。避けるとヴェインがまたパジャマをパーシヴァルのシルエットに当ててこよう��するので、それをまた避けて――と狭い室内でふたり
「いや待ってくれよパーさん、ほら似合っ………、ッあー! だめだやっぱおかしい! すげえかわいいもん!」
「な…貴様ァ!」
とうとう堪えきれなくなったのか、ヴェインはひいひい笑いながら覚束ない足元でふらついて机に伏してばんばん叩きはじめた。
避けるパーシヴァルを追ってくるくる回っているときから、ハムスターか何かのように頬をパンパンに膨らませて今すぐにでも噴きだしそうな勢いではあったが、いざ実際ここまで大笑いされるとパーシヴァルも黙ってはいられない。
「そんなもの着るか! 裸で寝る!」
「ええ~…パーさん裸族かよ、えっちだなぁ~」
「…………」
ひく、と口元が引き攣り眉間に濃く皺が寄る。裸で寝ている人間などそこら中ごろごろいる。ヴェインはそれら全員を“えっち”であると言うつもりなのか。
そしてパーシヴァルは本来普段寝るときは、ナイトローブを着るか上半身だけ何も身に着けていないか全裸の三択だ。ヴェインのこの感覚からすると、その三択はすべて“えっち”と言われそうな気がしてならないのは何故だ。
しかしここ最近は、簡素なものではあるが上下共に着て寝ている。何故かといえば、まさしく今パーシヴァルの目の前でにやついた顔を向けてきているこの男のせいだ。
ヴェインは頼んでもいないのに朝は必ずパーシヴァルの家まで迎えに来るわけで、そんなときにうっかりとてもこの生活層に似つかわしくない上質な素材を使った肌触りの良いナイトローブなど着ているところなら見られた日には、さしものヴェインにも何か勘付かれてしまいそうだからそうせざるえなかった。
「冗談だって、ふつうの無地のやつもあるから」
「なんだと!? はじめからそちらを出せ!」
「だって面白いだろ」
「知るか!」
すっかりヴェインの調子に乗せられていたことに気付き、パーシヴァルは舌打ちをもらしながらどすりと再び椅子に腰を下ろす。
残っていたすこし冷えてしまったハーブティーを喉に流し込みティーカップを置くと、机の傍にしゃがみ机上に置いた腕の上に顎を乗せ、へらへらというよりゆるゆるにとろけた顔でヴェインがパーシヴァルを見上げてきていた。
「…なんだ、気味の悪い」
「ひでえなぁ、俺これでも先輩なんだけど」
「おまえが自分との間では上下関係を気にするなと言ったんだろうが」
「まあそうなんだけどさ。……へへ、なんか…いいなあって、こういうのすげー友だちみたいだな、って思って。俺、ずっと同じくらいの歳の友だちほしかったんだ」
先程の馬鹿笑いと違い、頬をほんのりと染めほどけるように零された吐息のようなほほえみは、嘘偽りがないことをわかりやすく示していた。ヴェインは本当にパーシヴァルを友だと思っていて、こんな些細なことに幸せを感じているのだ。――こんな、人の表情を見て偽りか否かから考えるような男であると知っても尚、それでもヴェインは友であってよかったのだと、幸福なのだと言えるだろうか。…そんなことを考える自分に辟易とする。
「……フン、知るか」
ばかばかしい、そう言うように���ーシヴァルは椅子から立ち上がって先程ヴェインが消えて行ったほうへと歩みを進める。
背から、お風呂右手側~、とヴェインの相変わらずゆるっゆるな声が投げかけられた。
今日も相変わらずヴェインに振り回されて疲れた。労働よりもよっぽどそちらのほうが疲れるかもしれない。はやいところ疲れを流して眠ってしまいたい。明日もどうせ同じような感じなのだろうし。
パーシヴァルは深く溜息を零しながらシャツを脱いでいく。しゅる、と音を立ててシャツがパーシヴァルの肩から滑り落ち、鏡にパーシヴァルの白めのすべらかな背の素肌が映る。
「――……」
鏡に映ったパーシヴァルの背――肩のあたりにはタトゥーが刻まれている。タトゥーにしては控えめな模様、ワンポイントのようなそれをパーシヴァルはちいさく振り返り見つめた。
「パーさんタオル渡すの忘れて――…あ、悪い」
どたどた扉の前までくる足音にハッと我に返り、ちょうどヴェインが扉を開けた瞬間パーシヴァルは肩からずり落ちていたシャツを手繰り寄せ背を隠した。
タイミングよく、パーシヴァルが脱いでいたシャツを着こんだのを目にしたヴェインはパーシヴァルが着替えを見られたくないのだと思ったようで、タオルを傍に置いてすぐに顔を逸らした。
「――早く出て行け」
「! ごめん」
低く唸るようなパーシヴァルの声に、肩をすくませたヴェインはちらりとパーシヴァルをうかがうように見つめる。はじめて会った日に見せた、弱者の瞳に苛立ちを覚える。――やめろ、俺をそんな目で見るな、と。
「…それとも。そんなに俺の裸体にでも興味があるのか、人のことを“えっち”などと言っておきながら、おまえのほうがよっぽど――」
嘲りというよりはからかうようにつらつら言葉を吐き出しながら、もう一度ヴェインを見やる。
元に戻ってかみついてくるかと思ったヴェインは、何故か顔を青ざめ強張らせて黙り込んでいた。まさか本当に俺の裸体に興味を持っているのか、などという考えは一瞬にして霧散する。そうであればヴェインは顔を赤らめるはずである。ヴェインはそういう男だ。
しかし、ヴェインは顔を青ざめさせている。何か、おそろしいことが気づかれてしまったかのような、顔。
実は同性愛者だとか? そういう趣味であるとか? さまざまな考えが浮かんではくるが、そのどれもヴェインの凍った表情の理由づけにはならないような気がした。
そうしてパーシヴァルが何も言葉を次げずにいると、ヴェインはまたちいさな声で“ごめん”と呟いて、ふらふらとした足取りで廊下に出て行ってしまった。
4.
「パーさん! ��ーさんってば、起きろって!」
「…っ…、なんだ、朝から……さわがしい…」
翌朝のことだ。ソファで寝ると言ったがヴェインが頑として聞かなかったのでヴェインが普段使っているというベッドで就寝していたパーシヴァルは、ヴェインに慌ただしく突然叩き起こされた。カーテンの隙間から見える外は、まだ薄暗く陽も上っていなかった。
いまだ重い瞼を持ち上げのっそり起き上がると、起こしてきたヴェインも余程焦っているのかまだ寝間着のままだ。
――ふと、昨晩風呂の前でのことを思い出し、パーシヴァルは心地悪い気まずさにヴェインから目を逸らした。
あの後もヴェインとは一言二言言葉を交わしたものの、ヴェインは気もそぞ��といった様子で、こちらを見ようともしなかったのだ。
いや待てよ、とパーシヴァルは自身の咄嗟の行動に思考停止する。何故、パーシヴァルのほうが気まずさなど感じなければならないのか。そもそも、何の確認もせずに中に入ってきたヴェインのほうにも非は充分あるはず。それに、パーシヴァルは多少機嫌の悪さを見せたが、怒鳴ったわけでも威圧したつもりもなかった。ヴェインの反応は聊か大袈裟すぎたのだ。
しかも、そのヴェインが何故かいつも通りに戻って何事もなかったかのように接してきているのだから、パーシヴァルが気まずさを感じる必要など微塵もないのだろう。
はあ、と溜息を零し、寝起きで乱れている前髪を掻き上げながら改めて落ち着きのない様子のヴェインを見遣る。
「――こんな時間に起こしたんだ、余程の理由があるんだろうな?」
「お、おうそれはもちろん…! 今さっき連絡があって、ここのすぐ近くの街外れで喧嘩になってるみたいで…」
「……喧嘩? そんなもの好きにやらせてやればいいだろうが…」
どんな理由かと思えば、“喧嘩”。郊外の治安が悪いこの近辺では喧嘩などしょっちゅうだ。また、連絡があったということはファミリーの中でのことだろう。規律はあるがわけありな人間が集まった、ガラが良いとは言えない集団だ。喧嘩など起こるのも日常茶飯事ではある。しかしそれを諌めるのも、止めるのも、新入りのヴェインやパーシヴァルの役割ではない。無論、アンダーボスのパーシヴァルの役割でもない。トップであるパーシヴァルには内輪の揉めごとや喧嘩を禁ずる規律を作ることは出来るが、現場に毎度赴くことは役割ではない。そういったことは、どちらかと言えばソルジャーを直接まとめ上げているカポレジームの役割だろう。
第一新入りが止めに行ったところで、更に騒動が大きくなるだけだ。パーシヴァルは馬鹿らしい、とベッドにあげかけていた腰を下ろした。
「それが…内輪もめならいいんだけど、…俺たちのところと…もうひとつのとこが、喧嘩してるらしくって…。しかも最初は本当にただの喧嘩だったのに、どんどん人が集まってきてちょっとした小競り合いになってる、って…。これ、やばいよな」
「…なんだと?」
ヴェインの次の強張った固い声音で告げられた言葉に、もう一度寝るかとさえ考えていたパーシヴァルは目を瞠る。
ヴェインの言う“もうひとつのとこ”はこの街に存在するもうひとつのマフィアのファミリーのことで間違いない。一瞬、おそれていた事態は既に起こってしまったかと背中に冷たいものが伝う。しかし、情報収集にもたけているジークフリートがそんな危機的状況に陥るまで見逃すとは思えない。であれば、偶然的に誘発されたものとみていいだろう。
だが、当然このまま放っておくわけにもいかない。このことをきっかけに一気に事が進んでしまうのだけはなんとしてでも阻止しなければ。
ヴェインがどれだけのことを把握して“やばい”と言っているのかは定かでないが、存外敏い男のことだ、同じ街にあるファミリー同士が小競り合いとはいえ暴力沙汰の喧嘩になっているということがどれだけ危険であるかを正しく理解しているようだった。
こいつのそういうところはなかなか見どころがある、とパーシヴァルは感心する。
「すぐに行くぞ」
「ああ! じゃあ俺着替えてくるから、パーさんも早めにな!」
パーシヴァルが腰をあげると、ヴェインはぱっと顔を輝かせ力強く頷くと部屋を飛び出して行った。
どたどたとヴェインの慌ただしい足音が遠くなったのを小耳に挟み、パーシヴァルは携帯を取り出した。既に画面にはジークフリートからの着信履歴とメッセージが入っている。
さすが情報は早いな、と遅れてしまったことを悔いる。しかし己の未熟さを見直し恥じ入るのは後からでもいい、今は一刻も早く事態をおさめなければならない。
着替えの準備をしながら、パーシヴァルは電話でジークフリートにこれから自分が直接現場に行くことを伝えておいた。
「よし、じゃあ行くぜパーさん!」
「おい待て、その前になんだこの車は! 本当に動くのか!」
「え? 動く動く! たぶん!」
狭い車内の助手席でパーシヴァルは顔を青ざめさせ、アシストグリップに掴まり声を上げた。
運転席に座るヴェインがいかにも気合十分、みたいな顔をしているのが余計にパーシヴァルの不安を煽る。しかも、“たぶん”とまで言い出す始末だ。
着替えを終えてまだ陽も上っていない薄暗い街に出たふたりは、連絡のあった場所を確認した。徒歩でも行けることには行けそうではあるが、時間がかかってしまいそうだった。
一分一秒でも早く辿りつきたい、という意見が一致したところでヴェインは車で行こう、と言い出したのだ。
これにはさすがのパーシヴァルも驚いた。もちろんパーシヴァルは自身の車を持っているが、当たり前のように高級車なので持ち出してくることは不可能だ。
しかし、ヴェインのように郊外にひっそりとちいさな家で暮らしているような男が、金のかかる車というものを持っていることは珍しい。持っているのか、と聞くと、もらった、と言っていた。……車をもらう? と不審を抱いたものの、さっさと行けるのならばそれで、と承諾したのだ。
――そして、現在に至る。家から少し離れたところに停めてあった車はもう何年も前に出たような型落ちとなったようなボロ車だった。これにはパーシヴァルもドン引きだ。
本当に走るのか怪しいし、走ったとしても途中でタイヤが破裂したり操作不能になったりする可能性だってある。現場に着く前にこっちが病院送りになってしまいそうだ。
「俺を信じろよ、パルツィ!」
渾身のキメ顔である。何をかっこいい台詞決まった、みたいな顔をしているのか、とパーシヴァルは胸を熱くするどころか冷えた面持ちの白い目でその顔を見返す。
しかしヴェインはそんなこと知らないと言った様子で、早々に車のエンジンを掛けた。まるで安心も信頼もしていないパーシヴァルが思わず止めようと、“待て”と言おうと口を開きかけた瞬間、がくんと車が揺れあろうことか急発進し、そのままのスピードで走り始めたのだ。
アシストグリップを掴んでいて本当によかった、そしてこんなボロ車でもアシストグリップがついていてよかった、と普段であれば然程その存在におもうことがないだろうに、パーシヴァルは深くその存在に感謝したのだった。
「着いたぜ、パーさん! 車停められそうなのここしかなかったから、ここからちょっと歩いて……ってパーさんすげー顔色! 生きてるか!?」
「…っく…ふざけるな貴様……もっとまともな運転技術を身に付けんか馬鹿者…」
「急いでたんだからしょうがないだろ、ほら早く!」
目的地に到着した頃には、パーシヴァルは顔面蒼白になっていた。
ヴェインは料理やその他家事が得意なようで、なかなか手先が器用な男だ。だから、こんなボロ車でも運転は上手ければ問題なかろう、とほんの僅か思っていたが大間違いだった。急いでいるから、という理由が通用しないほどヴェインの運転はまるで遊園地のジェットコースターのように壮絶に荒かったのだ。ボロ車のひどい走行具合と相まって車内で激しく揺られながらパーシヴァルはあまりのひどさに途中から怒号を飛ばすことさえままらなくなった。パーシヴァルにとって人生で初めての車酔いだった。
ヴェインに急かされるようにふらふら車からパーシヴァルが出ると、近くでつんざくような音が鳴り響いた。
「! 今の、って……銃声、だよな?」
「……そのようだな」
静かな街外れということもあり、余計にその音は大きく響いた。ふたりの間にも緊張が走る。
音がした方角はこれからふたりが向かおうとしているほうからだ。喧嘩、とは聞いていたがどうやら銃までもちだすところまで事は大きくなっているらしい。
下手をすれば命を落としている者もいるかもしれない。今の銃声だって、どちらのファミリーの者が撃ったか定かではないが、誰かを殺した音だったかもしれない――おそらくヴェインもそのことまで考えたのだろう、強張った顔に微かに緊張と共に恐怖を滲ませていた。
(…銃まで持ちだされてくるようなところには行ったことがないようだな)
先程までパーシヴァルを急かすほどだったヴェインはその場に固まってしまっているのを見て、当然のことを考える。アソシエーテの仕事はパーシヴァルの体験してきた通り、雑用的なことが多い印象な上、ここ最近目立った抗争もなく落ち着いていたので入ったばかりと言っていたヴェインがこういった場がはじめてなのは当然だろう。
いまでこそアンダーボスにまで上り詰めたパーシヴァルだが、ファミリーに入ったばかりのころ――ソルジャーであった頃には、銃が持ち出されたのを幾度か遭遇したことがある。それこそ別の街のマフィアと抗争になったときなどは、撃たれて相当な負傷もした。
しかし初めてのときは、パーシヴァルも内心相当恐怖したものだ。なにせ、死に直結しかねないものだ。恐怖を覚えるのは当然のことと言える。……そう考えると、銃弾の雨を浴びて尚笑っていられるボスはやはりとんでもない人なのだと、改めて思う。
「やめるか?」
どうあれパーシヴァルは行かなくてはならないが、ヴェインは何も無理をして行く必要はないのだ。それに、緊張や恐怖で強張った体ではまともな動きが出来まい。命をむざむざ捨てさせるようなことは、パーシヴァルも許容できない。
パーシヴァルが声をかけると、ヴェインはハッとした様子を見せ、呆然としていた己を叱咤するように両頬を叩きふるりと頭を振った。
「――大丈夫、行ける」
深く息を吸い吐き出してから顔を上げたヴェインには、既に先程までの恐怖や緊張はなくなっていた。
ようやくのぼりはじめてきた朝日に照られ輝く新緑色の瞳は真っ直ぐに前を向いており、強い意思を宿したその瞳をパーシヴァルはただただ、うつくしいと思った。
まさかこんな男にそのようなことをおもうとは、と内心笑えてはくるのだけれど、いまはその色を己の瞳に焼き付けておきたかった。
(――…あらかた落ち着いてきたか)
周囲を見回したパーシヴァルは深く吐息を吐き出した。
どのくらい時間が経ったかわからないが、なんとか事態は収束したようだ。パーシヴァルとヴェインが到着して暫くしてカポレジームの数人がやって来たということと、こちらと同じくして、あちらのファミリーも事態の収拾のためにやってきたと思われるメンバーが集まってきたおかげで、あまり被害を出さずに事は済んだ。騒動を起こした者もパーシヴァルやヴェインも含めた仲裁に入った者も、軽傷から重傷まで怪我をした者はそれなりの数だが、命を落とした者がいなかったことが唯一の救いか。
聞けば、事の始まりは酔っぱらい同士の諍いというなんとも間の抜けたもので、偶然にも同じ街にふたつファミリーがいるということに不満のようなものを持っていた者たちがその場に集まっていたというのも、ここまで大騒動に発展した要因だったようだ。
――始まりこそ、単純な酔っぱらい同士の暴走かもしれないが、実のところその根は深い。
今回、あちらのファミリーが本当に仕掛けてくる準備をしているにせよ、そうではなかったにせよ、パーシヴァ���は少しずつ平穏が軋んできているように思えてならなかった。
今はどうであれ、近いうちに必ずこの均衡は崩れる。そのときパーシヴァルは、新たなボスとしてこのファミリーを必ず生き残らせなければならない。恩人であるボスのため、そして――己の目的のために。
(……、ヴェインはどこに)
ふと、騒動の渦中に飛び込んでからいつの間にか離れてしまった男の存在を思い出す。
死んでいる者はいないというのは確かな情報であるはずなので、怪我の有無はともかくにしてヴェインもとりあえずは無事だろうが……その姿をさがすべく、パーシヴァルはその場から歩き出した。
中心街から一番遠くの街外れにあたるこの一帯は、以前までは他と変わらず生活をする住民がいたはずなのだが、治安や生活環境などさまざまな理由から人が離れていき、気が付けばすっかり空家だらけになり、いまでは崩れかけた塀や家ばかりで人の気配もなくほとんど廃墟群のような状態になってしまったのだ。
既にこの辺りからはどちらのファミリーも引き上げていった後のようで、先程までの騒々しさから一転して再びもとの静けさを取り戻していた。
そんな廃墟と廃墟の隙間の壁にまるで隠れるように力なく座り込んで寄り掛かっている姿が視界に入る。金色のふわふわした髪はヴェインで間違いない。
「! ヴェイン、おい、大丈夫か」
一瞬見逃しそうになりパーシヴァルは数歩戻ってすぐに駆け寄り、どういう怪我をしているのかもわからないのであまり揺すらぬようにその肩にそっと手をやった。
「……ぱー、さん」
ゆるゆると気だるげにあげられた顔にはかすり傷や殴られたような痕があるものの、大した怪我ではないようで、ほっと安堵する。しかし妙にヴェインから力が感じられないので、目に見えないがどこか怪我をしているのかもしれない。早いところ診てもらったほうがいいだろう。
「肩を貸す、立てるか」
「…うん」
ひとまず車まで戻るためには、ヴェインに動いてもらわなくてはならない。パーシヴァルも力がないわけではないのだが、さすがに自分と同じくらいの背丈でがっしりとした体格のヴェインひとりを持ち上げて歩けるほどの力はない。
自身で歩けるようになるまで待ってやればいいのかもしれないが、今は暴れていた者たちをまとめているのか周囲に姿は見られないもののカポレジームの面々がいる関係上、パーシヴァルはなるべく早くこの場を去りたいのだ。
必ず正体を見抜かれる、というわけではないだろうが可能性は非常に高い。今日この現場に姿を見せたカポレジームの数名は比較的表だってパーシヴァルに噛み付いてくるわけではない穏健な面々だったことは幸いだが。
ヴェインは問いかけにうつろながらも、かくん、と首を揺らし、パーシヴァルに合せてその場から立ち上がり覚束ない足元でゆっくり歩きだした。
立ち上がったその姿を横目に見るが、やはりどこかほかに怪我をしている様子もない。簡素な白いTシャツに血らしきものが飛び散っているものの、ヴェインの傷の様子からそれはほとんど返り血でヴェイン自身の血ではなさそうだが……、何故こんなにぐったりしているのだこの男は。
(…気でも抜けたか?)
途中までは、ヴェインの動きはパーシヴァルからも見えていた。目に見えて気合の入りすぎであったので、その反動か何かだろうか。
姿を見失うまでのパーシヴァルが見ていたヴェインの動きを思い出す。その体格からもわかるように、相当鍛えている様子のヴェインはやはり身体能力は人並みより上だ。筋肉で盛り上がり重たそうに見える体は存外しなやかに軽やかで、それでいて力強い。
やや己の身を顧みないような突出や動きが見られはしたが、それ以外はおおむねパーシヴァルをうならせるには充分な腕だった。正直、アソシエーテにとどめるには勿体ないとさえ思うほどに。
この社会にはふさわしくない、生きてはいけない――初めて会ったときはそんな風にパーシヴァルは思ったが、性格やら考え方、思考はともかくにして…純粋な“力”という点においては、ヴェインを倒せる人間はそういないだろう。
自分がボスになったときに、ソルジャーか…いや、いっそ自分の傍付きにでもしてやるのもいいかもしれない。喧しいのが少々玉にきずではあるが…番犬くらいにはなるだろうし、争いごとが嫌ならば給仕係にしてもいい。何せヴェインの作る料理はあらゆる高級なものを口にしてきて舌を肥えらせてしまったパーシヴァルさえ虜になるほど美味いのだ。
共にいることが疲れる、とまで思い不満を漏らしていたはずなのに、自然と己の傍に置くような選択ばかり浮かべていることに、パーシヴァル自身気づきもせず己の良案にひどく満足げだ。
――そんなことを考えている内に、停めてあった車まで戻ってきた。
ヴェインは一言もしゃべらずやはり変わらずぐったりしているような様子なので、運転は難しいだろう。後部座席に寝かせておき、自分がヴェインの家まで運転してやるか、とヴェインのズボンのポケットを漁って車のキーを探る。
「んっ……、ぁ」
ヴェインを支えながらの片手のためなかなか見つけにくく、ポケットに手を突っ込んで中を弄っているせいか、ヴェインがぴくりと反応を示しちいさな声をもらした。
ヴェインの履いているズボンのポケットは、左右と後ろで合わせて四つだ。
ここに到着したときはパーシヴァルは車酔いでふらふらだったので、ヴェインが車から鍵を抜いてどこに入れていたかなんて見てもいなかったのだ。もちろん他に鞄などは持っていないし、上半身はTシャツだけなのでポケットもないから、消去法的にズボンのポケットに入れたのは間違いないだろう。ヴェインに聞けば早いが、どうせ四つしかないのだし。
「っ、…ぱーさん…、…」
「待て、今鍵を……」
余程体調が悪いのか、それかまさか催したか、と思うほどヴェインは妙にじれったそうな…急かすような声音でパーシヴァルの名前を呼ぶ。
くすぐったさもあるかもしれないが、そのように急かされても見つからないものは見つからないわけで――と、漁っているとついに後ろ側の最後のポケットにようやっと鍵を発見した。
ようやっと取り出せた目的の鍵は何もストラップなどついておらず、これでは見つけづらいわけだ、とパーシヴァルの己の手のひらの上に乗るちいさな鍵を見て眉間に皺を寄せる。
しかも、古い車ゆえの本当の過去の遺産のような鍵。今となっては、キーレスキーやスマートキーといった鍵を差さずに車を開けられるのが主流で…そうであったならばヴェインに肩を貸した状態でもすんなり開けられるというのに……どこまでもこの車はパーシヴァルを苛立たせる。
「……よし、おまえは後部座席で寝ていろ、すぐに着く」
なんとか鍵を差して開け、先にヴェインを後部座席になんとか押しこむ。
ごろりとされるがまま転がったヴェインの瞳にはなぜか涙が浮かんでおり、相変わらず息も荒く頬もほんのりと赤い。晒された首筋には汗も滴っている。
まさか…熱でも出しているんじゃなかろうか。ここに到着したときには何ともなさそうだったのに、何故こんなに急に…。まさか変な菌でも移ったか。たしかにおかしな菌のひとつでも漂っていてもおかしくないような雰囲気ではあるが、この辺りは。
「おい、ヴェイ――」
ともあれさしものパーシヴァルも気遣うような声音で、どれ熱でも測ってやるかと狭苦しい後部座席に入り近づくと、先程まで動かすことさえ億劫であるようにだらんとしていたのが嘘かのように、突然ヴェインの腕がパーシヴァルに向かって伸びてきた。
伸ばされたヴェインの腕は、熱を額に触れることではかろうと屈んでいたパーシヴァルの後頭部を捉え、節くれたった指はパーシヴァルの髪をも掴みぐんと一気に引き寄せてみせた。
当然、まさかそんなことをされるとは考えもしておらず、すっかり油断していたパーシヴァルの体はいとも簡単に何の抵抗もなく倒れるようにぐらりと傾く。
危ない、と反射的にヴェインの身体を避けて座席シートに手を付き、それからもう片方の手でシートの背を掴み倒れ込むことを回避したパーシヴァルではあったが――まるで時が止まってしまったかのようにその場に硬直してしまっていた。
何が起こっているのかわからず、目を見開いたままパーシヴァルは目の前の光景を呆然と見つめる。すぐ間近に、ヴェインの顔があり己のくちびるにはあたたかで柔らかい感触……、パーシヴァルはヴェインに唇を奪われたのだ。
「っ、お…い…、っ、…」
触れたくちびるが離れた合間になんとか抗議の声を上げるが、ヴェインの腕の力は強くなかなか引きはがすことが出来ず、また引き寄せられてすぐにその声もヴェインのくちびるに吸われる。
はむ、と食まれた唇の合間から肉厚な舌が無遠慮に入り込んできて、パーシヴァルの舌を絡め取った。
もぞもぞヴェインの舌が口内を蠢くと徐々に口内に血の味が広がり、パーシヴァルは鉄くさいそれに顔を顰める。おそらく、ヴェインの口内から送り込まれてきた唾液によるものだ。ヴェインの頬には殴られたような痕もあったので、口の中を切ったんだろう。
――それにしても、なんと色気のないキスか。パーシヴァルは嗜み的にそれなりに場数を踏んでこういう経験も少なくはないが…断トツで最悪のキスだ。最早“キス”とも呼びたくもない。こんなものを“キス”と呼んでたまるものか。
腕をまわされ抱きこまれるような格好ながら、パーシヴァルが離れようとしているせいで髪ごと後頭部を鷲掴みされて痛いし、埃くさく狭い車内……そもそも、一方的に攻められるのはパーシヴァルの性ではない。
瞬間、かちん、とパーシヴァルの中で火がついた。なにせ、パーシヴァルという男は実に負けず嫌いな性格だった。
(おまえが俺を好き勝手しようなど、何千何百、幾年かけようとも早いわ)
パーシヴァルの口内で好き勝手動き回っていたヴェインの厚い舌を、むしろこちらから絡め返してやる。抵抗されることは想定外だったのか、それとも気持ちいのかわからないが、ヴェインが瞳を細め間近で見れば存外長く繊細そうな睫毛を震わせた。
絡め取りかえせたのならばもう主導権はこちらのものだ。ざらついた舌の表面をぬるぬる擦りあわせながら、少しずつ自身の口内からヴェインの舌を押し返していく。じりじり押し返し、パーシヴァルはとうとう形勢逆転してみせた。
正直あまりにも簡単すぎて、まさか何かたくらんでいるのか、ともパーシヴァルは考えたがヴェインは抵抗する気配すらなくむしろ受け入れているような――逃げなければそれでいい、そんな感じだ。
こちらが優位に立ったというのに、まるでヴェインの思惑にのせられてしまったようでなんとも腹立たしい。
パーシヴァルは鬱憤を晴らすようにヴェインの口内を思う存分荒らしてやった。女性相手ならば丁寧さが求められようが、所詮相手はヴェインだ。しかも、強引に荒っぽく始めたのだってヴェインからなのだから、敢えてパーシヴァルが懇切丁寧にキスをしてやる義理はないだろう。
「ん、っ…、ん…ぅ、く…」
されるがまま。先程までの強引さはどこへいったのか、ヴェインはとんと大人しくなった。パーシヴァルの配慮が一切ない荒っぽいキスにさえうれしそうに喉を鳴らし、くちびるの合間から漏れる吐息は満足げで甘くなんともうっとりとしたものだった。
何なんだ、こいつは。一体何がしたかったんだ、とパーシヴァルは内心舌打ちを洩らす。
やはりヴェインは同性愛者なのだろうか。――とすれば、昨晩のことはパーシヴァルが考えていたよりもずっと単純なことだったのかもしれない。
(――こいつがあまりにも大袈裟な反応をするものだから、俺もつられたか)
それにしても顔まで青ざめさせ、足取りもふらふらにまでなるほどのことなのか――、一瞬また再び深く考えそうになった己を叱咤し、パーシヴァルは余程バレたくなかったとかそういうことだろう、と早々に思考を打ち切るように結論づけた。
パーシヴァルのキスですっかりとろりとしたヴェインはようやっと腕の力を弱めた。やれやれやっと解放された、とパーシヴァルは唇を離して、深く溜息を零しながらヴェインの腕を振りほどいて体を起こした。変な格好で身を屈めていたせいで腰が痛いではないか。腰の痛みを感じるなど、年寄にでもなった気分で最悪だ。
ふう、とパーシヴァルが扉に背を寄り掛からせた瞬間。先程まで、キスではあはあ荒い吐息を洩らしながら溶けて座席に沈んでいたヴェインはのっそり体を起こすと、その起き上がる速度とは比にならない手早さで今度はパーシヴァルのズボンをがしりと掴んだ。
「…!? 貴様ッ」
ずる、とパーシヴァルのズボンが僅かに腰から僅かにずれて下着がのぞく。
もちろんこのまま見過ごせるはずもなく、パーシヴァルはヴェインの手首を掴んで我慢ならず怒声を浴びせる。
キスくらいならば、まあ…戯れとして多少は許せる。しかし、ここから先はどう考えてもありえない。
世界は広いもので、男同士でセックスをする輩もいるそうだが――無論他人の趣味嗜好を否定するつもりはないにしても――、パーシヴァルは男に抱かれる趣味も、抱く趣味も一切ない。いくらなんでもそこまで悪食になれないだろう、さすがに。
パーシヴァルの怒声を浴びたヴェインはびくりと肩を竦めほんの一瞬だけ手を止めたものの、なおも力を緩めない。まったくこれだから馬鹿力は困る、怪我をしている可能性もあるからなるべく強引な手は打ちたくないのだけれど、最終手段は蹴り飛ばす他ないか。
パーシヴァルの腕力よりヴェインの腕力のほうが上であり、徐々にパーシヴァルのズボンはずり落ちていく見える下着の範囲が徐々に広がっていく。そろそろ蹴り飛ばすか、とパーシヴァルが足を動かすと、ヴェインはズボンを掴んだ手をそのままに身を屈めた。
「な、」
先程パーシヴァルが唾液塗れにしてやった艶めく唇が、下着に包まれているパーシヴァルのやわらかい陰茎を食んだ。なんとも形容しがたい唇の感触――。
「――…おさまら、なくて」
終始言葉を発しなかったヴェインが、ようやく口を開いた。その拍子に、はあ、と湿った吐息が股間部を撫で、パーシヴァルは眉間に皺を寄せヴェインを見下ろした。
「…興、奮して…………」
吐息混じりにぽろぽろ言葉を零しながら、何をいまさら恥じているのか眉を八の字にした弱々しい顔をこれでもかと赤らめたヴェインは、もぞりと己の下半身を揺らめかした。見るまでもなく、ソコは勃起でもしているのだろう。
……呆れた。なんて奴だ。先程のキスで、ということならばよかっただろうが…ヴェインの様子がおかしかったのは、つい先刻騒動が終わった後に座り込んでいるのを見つけたときからだ。思えばあの発熱のようなぐったりしたような状態は、ただ発情し興奮していただけだったのだ。
パーシヴァルには到底理解できぬことだが、殴り合いにせよ銃撃戦にせよ、そういったことで気が昂ぶってしまう者は一定数いる。そして、それが終わった後にも収まらないというのも、ままあることだろう。特に今回のような本気のものではなく、ただ止めるためだけに入った、力を加減したようなものでは余計だろう。
しかしまさかヴェインがその類の人間だったとは。嗜虐よりむしろ被虐のほうが納得できるし似合っていそうな――いや、その可能性もあるのか。幾らか殴られているようだし。
どちらにせよ、度し難いのは変わらないのだけれど。
「俺はおまえなぞに抱かれる趣味はないわけだが…」
襲いかかってきたものだからてっきりパーシヴァルを抱こうとしているのかとも思ったが、どうやらヴェインはそうではないらしい。パーシヴァルの言葉に、ヴェインはふるふる首を振った。
「…まあ当然男を抱く趣味もないが…、それは見ればわかるな」
現に、パーシヴァルの下半身は下着越しでもわかるようにまったく一切反応をしておらず、芯もなく柔らかい状態だ。ヴェインもさすがにわかっているようでちいさく頷く。
「――俺をその気にさせてみろ」
そうしたら抱いてやってもいい、そう言うと半ばあきらめていたヴェインは驚いたように目を丸めた顔をパーシヴァルに向けた。――いやまったく気でも狂ったか、と己の言葉にパーシヴァルは内心笑いさえ込み上げてくる。男を抱くにしても、ヴェインのように筋肉隆々とした男ではなく肉付きの薄い少々中性的な男のほうがまだマシというものだ。であれば、さっさと蹴り飛ばしてシートに沈めなおしてやればいいというのに、猶予をやるなどさすがに寛大すぎただろうか。
(まあ…その気になるかどうかはこいつ次第だが)
ある意味、その気にさせろ、というのは“その気になる可能性は低いが”、という意味合いも実のところ含んでいる。必ず向かない、という絶対的な自信ではないが、気が向く、というのもなかなか想像しがたい。
ヴェインは視線を泳がせ少々困惑したようであったが、決意は固まったようで再びパーシヴァルの股間に顔を埋めた。
パーシヴァルは阻止しようと掴んでいたヴェインの手首を離してやり、シートに片肘をついて己の足の間でもぞもぞ動くその様を眺める。
手を離してやったというのに、そこから更にズボンや下着をずり下げるでもなくヴェインはそのまま下着ごとパーシヴァルの陰茎を舐めはじめた。おかげで下着はヴェインの唾液で濡れ始め、既にパーシヴァルは気持ちが萎えている。するならするでさっさと直で舐めればいいだろうが、と溜息さえつきたい気分だ。まさかこの期に及んで直接舐めるのはちょっと…とでも言いたいのか。直接だろうが下着越しだろうが、同じ性である男の陰茎をくちびるで触れるなどパーシヴァルからすればどちらも正気の沙汰ではないと思うのだが。
じゅるじゅる唾液の音を立てながら、先程浮かべた困惑はどこへやらで夢中で舐めしゃぶっているその姿は抵抗感など皆無どころか、まるで大層な馳走にでもありつけたような喜色さえ見られる。……慣れている、そう感じるには充分すぎた。一体今まで何人の男の陰茎を同じようにくわえてきたのだ、と思うと不快感がこみあげてくる。しかしそれがヴェイン本人に対してなのか、それともそうさせた現実になのか…パーシヴァルも判然としなかった。そんな曖昧な己の感情さえ不快極まりなく、腹の奥底が煮えくり返る。
当然、そんな気分の中で陰茎が勃起するはずもなく、物理的な刺激でやや芯を持ったもののいまだ柔らかいまま下着の中に納まっている。
パーシヴァルが退屈そうに溜息を洩らすと、びくりと肩を竦めたヴェインの動きが止まった。しかしそれは一瞬のことで、すぐに動き出したヴェインによりようやっと下着がずり下ろされる。中途半端な膝あたりでとまっていたズボンと共に下着がシートの下に落とされた。
下着が取り払われ陰茎が外気に晒されて、車内とはいえまだ朝も早いので肌寒さにふる、と震えパーシヴァルの肌が粟立つ。
思っていた通り、パーシヴァルの陰茎は縮んで力なく垂れている。他者の前にそのような姿の陰茎を晒すなど男としては恥でしかないが、これは決してパーシヴァルが男として不能なのではなく、気分でないからというだけだ。
さあこれを見てヴェインはどう動くか。下着越しではあるが口で奉仕したにも関わらずこの萎えっぷりは、心が折れても仕方がないものだが――。
ヴェインは再び顔を寄せると、重く垂れる陰嚢に舌先をちょんと付け舐めはじめた。
…やはりヴェインは手馴れている。陰茎にせよフェラをするときにはそれなりに加減が必要である��とに違いはないが、陰嚢は男の直接的な急所でありほんの少しの衝撃であろうとかなり痛いので更に慎重に扱ってもわねば困る場所だ――もちろん陰茎も歯を立てられるとかなり痛いが――。女性でもあまり、陰嚢を舐めるという行為をすすんでやる者はいないだろうと思う。現にパーシヴァルはそこを舐められたことは今まで一度もない。なにせ、下手だった場合はかなりの痛みを伴うわけで、余程信頼できる相手ではないと任せられないので、してほしいと望んだこともないわけで。
しかし、ヴェインは舐めるだけではなく唇で食んだり、吸ったり、手でやわやわ揉んだり――するのもあくまでもやさしく絶妙な力加減で、責める場所も迷いなく的確に選んでいる。
フェラだけならまだしも、陰嚢を舐めることまで会得しているとなると、やはりそれなりに経験があるのだろう。
「っ……、ふ、…、くそ…」
不快感は変わらないはずであるのに、ヴェインから与えられる刺激にパーシヴァルの唇から思わず乱れた吐息が洩れる。そのような趣味は皆無であるはずなのに、たしかに性的興奮を引き出されはじめていることは認めざるを得ず、パーシヴァルはちいさく悪態も零した。
重くだらんと脚の間に垂れ下がっていた陰嚢も徐々にきゅうと締まり持ち上がっていき、それに伴い先程まで微塵も反応を示さなかったはずの陰茎がぴくりと反応し上向きはじめた。――そうして気が付けば、すっかり陰茎は立派に勃起していた。
こんなことであっさり勃起してしまったことに悔しさのようなものを感じ顔を苦々しく顰めたパーシヴァルを、顔を上げたヴェインがしてやったりとにんまりいやらしくわらう。
本当に、この男はヴェインなのか…そう思ってしまうほど、虚ろ気味に揺蕩う緑の色も、そそりたつ陰茎に涎を垂らす口元も、これまで数日間見てきたヴェインとはあまりにもかけ離れている。
「んく、…む……、ん、は…ぁ…」
ぱくりとヴェインのおおきな口に陰茎がのまれる。肌寒い外気に晒されていた陰茎が生温かい肉に包み込まれ、温度差に腰がぶるりと震える。生温かい口内に招かれて歓喜するようにカウパーを垂れ流し、それがヴェインの唾液と空気とで混じってじゅぽじゅぽ不格好な水音が立つ。
「…、…ッ…ク、」
ふうふう堪えきれない吐息がパーシヴァルの唇から零れ落ち、じわりじわりと追い詰められるようにして射精欲��こみあげてくる。生温かい口内も、丁寧に舐めしゃぶる肉厚な舌も、存外柔らかい唇も、すべてが丁寧にパーシヴァルの陰茎を愛撫する。
思えば、ボスが病に伏してから何かと忙しく肉体的にも精神的にも余裕がなかったためこうした行為は随分久しい。そのせいだ、と言い訳をしなければならないほどパーシヴァルの高揚感はとめどなく高まっていく。
ぐしゃりと己の前髪を掻き上げたパーシヴァルがふと見下ろすと、ヴェインはパーシヴァルのモノを舐めしゃぶりながら己のズボンに手を突っ込んでいた。しかも、今尚勃起したままの前ではなく、尻に。
驚くべきことに、ヴェインは己の尻の穴に自らの指を入れていたのだ。
――パーシヴァルはその光景に、思わず見入っていた。男の陰茎を咥え、己の尻を弄るその姿のなんといやらしいこと。
やがて、ヴェインはゆっくり己の口の中から今にも弾けそうなパーシヴァルの陰茎をゆっくり取り出し、ゆらりと体を起こした。ヴェインの口の端から垂れるそれは唾液とパーシヴァルのカウパーだが、車窓から差し込んだ朝日で透けきらきら光りまるで繊細な糸のようだった。
微かな金属音を立て外されたヴェインのズボンが、シートの下に落ちているパーシヴァルのズボンの上に重なる。
眼前に晒されたその素肌にパーシヴァルは目を丸める。
(――タトゥー)
パーシヴァルの上に跨ったその脚には、大きなタトゥーが大胆に深く刻まれていた。太腿から腰のあたりまで伸びるそれは、まるで肌の上を這いずりまわっているようだ。曲線が組み合わさった黒一色のタトゥーは実にシンプルで、種類としてはトライバルタトゥーに近いだろうか。
タトゥーを身に刻むことなど、今となっては普通のことだ。ファミリーに属している人間もそのほとんどがどこかしらにタトゥーを入れている。パーシヴァル自身もそうであるし、あのジークフリートだって入れているらしい。
しかし――ヴェインが、タトゥーを入れているという事実はパーシヴァルにとっては衝撃だったのだ。
「ぁ、ふ…っ、ぁあ……」
パーシヴァルが衝撃を受け固まっている間にヴェインは腰を沈め、己の指でほぐしたアナルにカウパーを垂らすパーシヴァルのそそり立つ陰茎を埋め���。
「! ぅ…ッ」
口内とは比にならず、また女性の膣内とも違う内部の熱と締め付けにようやっとパーシヴァルは我に返り、呻く。
ヴェインが腰を揺らめかす度にふたりの体重分、ボロ車がぎしりと揺れ傾く。
パーシヴァルが動くまでもなく、ヴェインは快楽を追って好き勝手腰を振り己の陰茎をも扱いて感じいっている。潤む瞳は変わらず虚ろげで、間違いなくパーシヴァルとセックスをしているはずなのに、パーシヴァルをまるで見ていない。
(――ふざけるな)
怒りで頭に血が上る。パーシヴァルは快楽を上回る感情の奔流のまま、己の上でなおも体をくねらせるヴェインの胸倉を掴みシートに半ば突き飛ばすように押し倒した。
どすん、とも、ぎしり、とも、車が悲鳴を上げる。ちいさなこの車では、体格の良い成人男子の体重が一気に片側に偏るだけであっさり傾いてしまう。
押し倒されたヴェインが、パーシヴァルを見上げる。それでも緑の瞳に輝きは戻らない。パーシヴァルの網膜に焼き付いた、うつくしい翠はどこにもない。パーシヴァルの姿さえ、映らない。
「――……パルツィ」
パーシヴァルの偽りの名が、ほろりとヴェインの唇から零れ落ちる。
ヴェインはあの晩のように徐々に顔色を青くし、ちいさく震えた。正気に返り、己のしでかしたことの大きさに気付きでもしたというのか。それとも、これがヴェインの気づかれたくない“おそろしいこと”だったのか。
「ぉ、おれ…っ、ァ…!? ぁ、待っ…!」
しかし、正気を失っていたにせよそうでなかったにせよここまで散々煽り好き放題人のモノを使ってほとんど自慰のような行為に付き合ってやったのだ、パーシヴァルはヴェインの言葉を待たずタトゥーの這う足をがっしりと抱きかかえ、ずん、と奥を突き上げた。
「っ、…ッ…! んんンッ、んく、ぅぅ…っ!」
ビク、と震えたヴェインはぱたた、と己の割れた腹に白濁を飛び散らした。たったひとつきでヴェインの高まった体はいとも簡単に達してしまったのだ。
本来であればさぞ高く啼いたであろう声は、すべてヴェインの宛がった手に吸われてしまった。
「ふ、…っ」
達した余韻でぎゅうぎゅうと中に締め付けられ、パーシヴァルも腰を震わせ白濁をヴェインの中に放った。
久方ぶりの快楽にずきずきと頭が痛む。眩暈のような心地の中、ゆっくりと瞬きをし見下ろすとヴェインは瞳を閉じぐったりと気を失っていた。
5.
「よ! おはよ、パーさん!」
「…………」
翌朝。今日は珍しくヴェインが家まで押しかけてこなかったので、本当だったらいつもの場所であるはず――初日に待ち合わせた場所だが翌日から毎日ヴェインが家に押しかけてきたのでここで待ち合わせるのは初日以来――の広間に行くと、ドン引きするほどいつも通りのヴェインに朗らかな笑顔で迎えられた。
すん、と無表情になったパーシヴァルは内心“は?”である。
昨日は、結局ヴェインは気を失ったまま起きなかったので、パーシヴァルは後始末をしヴェインにしっかり服を着せ、それから車を運転しヴェインを家まで送りベッドに寝かせた。
――そうだ、昨日は正真正銘パーシヴァルとヴェインはセックスをしたはずなのだ。ヴェインも途中まではどうだか知らないが最後は正気に戻ってパーシヴァルを認識していた。
これでもパーシヴァルは、翌日ヴェインがどんな反応をしてくるのかと結構考えたのだ。あんなことがあったのだ、さぞ気まずかろう…そんな風に思ったというのに。先日の風呂場の件のときといい、この男いくらなんでも神経が図太すぎやしないだろうか。そしていつもいつも、何故パーシヴァルばかり気まずい思いをしなければならないのか。
そもそも、今回に至ってはどう考えてもヴェインに100%非がある。どんな事情があるのか知ったことではないが、ヴェインがパーシヴァルを襲ったという点においては間違いがないのだから。
「どうしたんだよパーさん! 顔色悪いぞ~? あ、さては朝飯食ってないんだろ!」
……馬鹿だ。こいつはやはり筋金入りの馬鹿なのだ。人が決して良いとは言えない顔をしているときは必ず腹が減っているとなぜ思えるのかいまだに不思議で仕方がない。パーシヴァルにはヴェインの思考は到底理解できるものではなかった。
(…馬鹿らしい)
理解しえない人間のことを気にするのも、正直ばかばかしくなってきた。パーシヴァルもまあ、昨日のことは犬にかまれたとでも思って流すことにしようと決める。常々、ヴェインは動物で例えるのならば犬であろうと思っていたのである意味ちょうどいい。しかも躾がされていない、吠えて煩い駄犬だ。我ながら良い例えだと内心得意げに頷く。
「この近くに、モーニングが美味しい店があるんだ。そこ行こうぜ!」
「――店?」
「うん、そう。あ、すげえ安いから安心しろよ! なんだったら俺のおごりでもいいし」
俺先輩だからな、とふふんと胸を張る姿に、馬鹿か、と素直な言葉を溜息と共に吐くとヴェインはむうと頬を膨らませた。こいつ俺が実はアンダーボスなのだと知ったら今までの己の発言と行動を振り返って卒倒するのではないか、となんともなしに思い、それはそれで面白そうだといずれ来る日のヴェインの反応にほくそ笑む。
それにしても、珍しいこともあるものだ。朝昼晩全てヴェインは自分の家までパーシヴァルを引きずり込んであれよこれよと振る舞ってきていたが、今日は店の気分のようだ。
微かな違和感を覚えながら、そういう日もあるのだろうと思い、あれほど美味い料理を作るヴェインが“美味い”と評する店へ期待に胸を膨らませるのだった。
――違和感は何日も続いた。ヴェインは朝昼必ずどこかしらの店に行こうとパーシヴァルを誘い、仕事が終わった夜はさっさとひとりで家へ足早に帰ってしまう。
(わかりやすく露骨に避けているな)
最早ここまで来ると、パーシヴァル��だいたいのことを察した。ヴェインはなんでもない振りをしていつも通りを装っているが、その実パーシヴァルを避けている。…いや、正確に言えばパーシヴァルとふたりきりになるのを避けているのだろう。
何故か、などというヴェインの心理など詳しくは察しようもないが、セックスをしてしまったことが原因であることだけは間違いない。
チ、と薄暗い自室に苛立たしげなパーシヴァルの舌打ちが虚しく響く。
何を苛立っているのかも今となってはわかりようもない。ヴェインがパーシヴァルとセックスしたことをなんてことのないようにしていることなのか、今までしつこい程にべたべたしてきたくせに今さら露骨に避けられどこかよそよそしくされていることなのか、確かに美味いはずの店の料理を口にしてヴェインの作った料理のほうが美味いと無意識に考えてしまった己になのか。
(――どうでもいい、そんなことは)
ばさりと布団をかけなおし、目がさえているが瞳を閉じて無理矢理寝入ることにした。
「――、――」
――誰かに呼ばれている。吐息をそっと吐き出すように囁くその声音にパーシヴァルは、ようやく眠れたというのに…と不満げに薄ら瞳を開ける。
「ぱーさん」
「……ヴェ、イン…?」
ぼやける視界に映るその姿は――ヴェインだった。衣服を何も身に着けていない全裸のヴェインがパーシヴァルの上に跨っていたのだ。
あまりにも突然のことで状況が理解できず呆然とした声を洩らし強張ったパーシヴァルの頬を、ヴェインの太い指が撫ぜる。
意味がわからず丸めた瞳で見上げると、ヴェインはうっそりと微笑みを返した。まさかまた発情でもしているのかと思ったが、その瞳は先日見た虚ろげなものではなくパーシヴァルがいっとううつくしいと思った爛々と輝く翠を宿していた。
ああそうだその瞳がほしかった――パーシヴァルが思わず手を伸ばすと、ぐちゅり、と下半身から鈍い水音が響いた。
「んあっ…ぁは……、ぱーさんの…っおっきくなった、ぁっ…」
「ッ…! き、さま…っ」
跨っている時点で疑うべきだったのだが…、まさかそんなことをされてはいまいと思っていた。しかし、ヴェインはいつも通りパーシヴァルの想像の斜め上をいくもので、パーシヴァルの陰茎はヴェインのナカにずっぷりと埋め込まれていた。
そして、興奮で膨れた陰茎にうっとりとした声を洩らし恍惚とした表情を浮かべるヴェインは己の腹をいとおしそうに撫ぜた。明け透けなその仕草にもあっさり質量を増した素直すぎる己の陰茎にも、パーシヴァルはカッと顔を赤くする。
「くそっ…、貴様は…!」
「ぅあッ…! ァ、ッ…あ、だめ、ぱぁさん、もっとゆっくり、ぃっ…!」
好き勝手されるのはやはり性に合わないのだ。くねるヴェインの腰を鷲掴みにすると思い切り腰を突き上げ、そのままがつがつと幾度も突き上げてやるとヴェインは根をあげるような言葉を喘ぎまじりに言うが、その声音は甘ったるくて、むしろもっとしてほしいと言っているようだった。
「くぅ、ンッ…! あうっ、ひ、ああ、やさしくして、っ、ね、ぱ、さんっ…」
とうとう膝を立てることさえ困難になったらしいヴェインは倒れ込むようにぺたりと上半身をパーシヴァルにくっつけて、うるうる潤んだ瞳で訴えかけてきた。ぱーさん、ぱーさん、と甘えるように何度も何度もパーシヴァルの名を呼ぶそのくちびるはいやらしく濡れて艶めいており、なんだかとても美味しそうに見えた。
ふらふらと吸い寄せられるようにしてパーシヴァルはヴェインの頭に手を回し、そのくちびるにかぶりついた。普段かさついているくちびるもこの時ばかりふにふに柔らかく、心地よくて馬鹿みたいに夢中になってくちびるをむさぼりながら、パーシヴァルは膝を立て緩めることなくヴェインの身体をゆさぶるように突き上げた。
「ん、ふっ…んン…あふ…」
くちびるの隙間からヴェインの吐息が洩れる。パーシヴァルが薄ら瞳を開くと、同じくらいのタイミングでヴェインも瞳を開いた。ヴェインの瞳には涙が滲んでおり、ほんの僅かに翠が薄くなって甘い色になっていた。ああ、その色もいいなと思うと下腹が痛いほど疼いた。
「ぁ、もぅ…っ、も、だめ…」
「ああ…っ、ク、おれも…」
くちびるを離すと、ヴェインは限界のようでふるりと首を振る。その兆しのようにきゅうきゅう締め付けるナカに絞られるパーシヴァルもそろそろ限界が近い。一緒に、とヴェインが囁くように耳元にくちびるを寄せていやらしくねだってきたので、パーシヴァルはヴェインのびくつく腰を撫でながら抱き寄せ、お互いの汗ばむ額をくっつけてこれ以上ないほど密着した。
そしてふたりは――、
「……。……! …!」
がば、とパーシヴァルは文字通り飛び起きた。――今、…今自分は何を見ていた? 動揺しながらパーシヴァルはぱさりと垂れ下がってきた己の前髪を、ざわつく己の胸中を落ち着かせるようにかき上げる。
何も身に着けていない裸体の上半身には僅かに汗が滴り、心臓はドクドクと全身に響く程高鳴っていた。そして、嫌な予感がしておそるおそる下半身を覆い隠している布団を捲りあげると、身に着けているズボンが僅かに変色しこんもりと盛り上がっている。
(――最悪だ……)
ひどい夢を見た。気分は最悪だ。よりにもよってヴェインとセックスをする夢を見るなどと……しかもその夢で、現実でも勃起してしまうなど。
いやらしい夢を見て興奮してしまうなど青臭い童貞のすることだ。とうの昔に欲求を暴走させることもなくあっさりとそんなものを捨てるようにして卒業したパーシヴァルは、腹の内でぐるぐる渦巻き暴れまわり落ち着かない己の欲求とはじめての経験に顔を苦々しく顰めさせた。
「…ッくそ…」
ひとり悪態を洩らしても、一度膨れ上がった股間が静まってくれる気配はない。そして、こんな現状で眠りにつくことも不可能だ。
何故俺がこんなことをしなければならんのだ、��苛立たしく舌打ちを零しながらズボンを下着ごと荒っぽくずり下ろす。すると、パーシヴァルの最悪な気分とは裏腹に陰茎はカウパーを漏らしながら元気にぶるりとまろび出た。
己の肉体の一部がこんなにも憎らしく思える日が来ようとは、と自嘲気味な笑みを零しながらパーシヴァルは手を伸ばし萎えることなく血管の筋を浮かばせる陰茎を握り込んだ。
「ク…、ッ…は、」
早く終わらせてしまおうと性急に上下に扱き上げる度、にちゃにちゃといやらしい水音が余計大きく立ち、パーシヴァルの羞恥が煽られる。
日頃自慰をまるでしない、というのはいくら欲求が薄かろうと男である以上無理なものだ。生理的な反応故、一般的かつ平均的な回数今までもしてきたが、あくまでも生理的な反応と割り切って事務処理のように淡々とこなしてきた。快楽に耽ったことも皆無――のはずだった。
ふわふわおかしな心地で腰が浮つく。擦り上げる度に痺れるような快楽が頭のてっぺんまで突き抜け、だしたくもない声と吐息が止めようもなく洩れる。
下ろした瞼の裏側に映るのは、パーシヴァルが過去にセックスの相手をした大層な美女たちのいずれでもなく、先程の夢に出てきたヴェインだった。
いくら強く握り込んでも、ヴェインのナカの締め付けや熱は再現できようもないが、まるで突き上げるように腰が勝手に揺らめく。熱で浮ついて麻痺する頭はたったそれだけで愉快な勘違いをしてしまう。
「ぅ…、ぁ、ハ…ッ」
どぷ、と精液が噴き出し溢れる。数度扱き上げ、残滓も残らず漏らしたところでパーシヴァルはゆっくりと瞳を開いた。
当然眼前には誰の姿もなく、静寂と暗闇に包まれた自室にパーシヴァルの荒い吐息だけが響いている。
射精後の冷めた心地で己の股間を見下ろすと、とろとろと白濁とした体液を零しながらも少しずつ擡げていた頭を垂らしていく。――終わったはずであるのに、パーシヴァルは動くでも眠るでもなく己の手に纏わりついた欲望の証である白濁をただただ見下ろしていた。
「…お、…パーさん…今日は一段と顔色悪いな…?」
あれから一睡も出来ぬまま朝を迎え、気分も体調も最悪のままヴェインと顔を合わせた。
待ち合わせ場所にパーシヴァルが現れると、いつも通りぱっと笑顔を浮かべて手を上げたヴェインもパーシヴァルの顔色の悪さに気付いたようで、怪訝そうな表情を浮かべた。
「……黙れ」
「――…あのさぁ……、いや別にいいけど…。じゃあ朝ご飯食べに行こうぜ」
今は正直ヴェインの顔を見ても苛々するだけだ。完全に八つ当たりでしかないこともパーシヴァル自身わかっていたが、それでも割り切れない部分があり唸るような声で吐き捨て、顔を逸らした。
ヴェインは不満そうに何か言いかけていたようだが、パーシヴァルの態度を見て結局何を言うでもなく口を噤み、会話を切り上げ踵を返してさっさと歩きだした。
何か文句でも言いたそうな感じではあったが、そんなこと知ったことではない。文句を言いたいのはこちらのほうだ、とパーシヴァルは歩き出したヴェインの背を睨み付けた。
結局、朝から一日険悪な雰囲気がふたりの間に流れ一言も言葉を交わすことなく、黙々と言いつけられた仕事をこなした。ヴェインが静かな分、パーシヴァルの本来の目的である調査に集中出来たのでよかったと言えばよかったけれど。
こういう時に限ってヴェインは道を間違えないので、もしかしてこいつ方向音痴なのは嘘なのではあるまいなと疑いそうになったものの、そんな器用なことをヴェインが出来るとは思えない。だが、こうしてみるといつも喋り出すのはヴェインからで、パーシヴァルから喋りかけたことは少なかったのだと気付かされる。ヴェインがとんと無口になると、ふたりから一切会話がなくなるのだということにも。
そうして夜になった。どうせこの後もヴェインはさっさと帰るのだろうと思いながら、街の中心部からお互いの家がある郊外への帰路を辿る。
「……あの、パーさん」
ふたりの家はほとんど真反対の方向にある。ちょうど分かれるところである丁字路を曲がろうとすると、背後からヴェインに声を掛けられる。
朝ぶりに聞いたヴェインの声に、パーシヴァルは足を止め返事をするでもなく振り返った。
「……これ」
気まずそうに顔を逸らしたヴェインが鞄から何やら取り出して、ずいと差しだしてきた。
何かと思い近づき、その手に乗っているものを受け取って見下ろす。ちいさな個包装に入っているのは��のようだった。黄色の中心部から細い白の花弁――乾燥されているカモミールだ。ヴェインがなんともなしに始めて続けていると言っていた家で栽培しているハーブティーになるひとつで、パーシヴァルも何度かヴェインの家で馳走になったことがある。
ヴェインの意図がわからず、パーシヴァルは何も言わずに視線を上げヴェインを見つめた。
「…あんま、寝れてないっぽかったから……それ、寝る前に飲むとよく寝れるから、だから……その」
そういえば昼間、ヴェインはほんの数十分程どこかへ姿を消していたが……これを自宅に取りに帰っていたのか。パーシヴァルがいかにも睡眠不足の顔をしていたから、わざわざこれを。
――何なんだ、この男は。ヴェインと出会ってからもう幾度も同じことを思った。しかしそれ以上に、説明のつかない何かが胸中に満ちパーシヴァルは何も言えずただその場に立ちすくんだ。
「っ~、そんだけ! じゃあな!」
沈黙が耐え切れなくなったのか、ヴェインは強引に切り上げると背を向けてずんずんと大股で歩いていってしまう。
パーシヴァルは掌に乗ったハーブティー用のカモミールが入った包装をもう一度見下ろす。中にはカモミールとは別に、ちいさなメモが入っており、少し袋を振って重なっているカモミールを端に寄せて書かれた文字を見る。どうやらメモはヴェインの手書きのようで、ハーブティーの淹れかたが事細かに書かれていた。
「……」
もう一度顔を上げると、大股で足早に歩くヴェインの背はいくらも遠くにあった。もうあといくらかすれば角を曲がって見えなくなるその背を、パーシヴァルはじっと見つめる。
――別に、ハーブティーをもらっただけだ。パーシヴァルは立場であり、容姿であり、それらからいくらだって他者から贈り物をされたこともある。そして、その中でヴェインからのものは一番地味で全く一切金銭価値がないものと言えるだろう。それに、ヴェインはパーシヴァルの本来の立場を知らないし、容姿が好みだというわけでもないはずだ。
ふと、ヴェインがよく口にしている“ともだち”という言葉が浮かぶ。そう、ヴェインは結局のところパーシヴァルを勝手に友だと思っているのだ。だから心配して、贈り物をした。ただ、それだけだ。
それだけなのに、どうしてか手の中のちいさな贈り物がパーシヴァルには何よりも尊く思えた。
――気が付けば、パーシヴァルは足早に自身の家とは真反対になる道を歩き出しヴェインの背を追っていた。何をやっているんだ俺は、と思いながら。
「おいヴェイン」
「! うわびっくりした! な、何だよパーさん道間違えんなよ、パーさん家反対だろいつも俺に道間違えんなとか言ってるくせに」
背に少し追いついたところで声を掛けると、ヴェインはビクと肩を揺らし少し振り返ると大袈裟な程大声を上げた。静かな夜にヴェインの大声はなかなかに響く上、散々な言われようにパーシヴァルは顔を顰める。
「貴様と一緒にするな、誰が間違えるか」
「へ、へー、あっそ」
じゃあ何故こっちに向かって歩いているのか、ということを尋ねない辺り、ヴェインはパーシヴァルが自分に着いてきているのだと気付いているはずだ。
何も問いはしないが、明らかに着いてきてほしくはないというように更に歩く速度を上げる。やはり、どうあってもヴェインはパーシヴァルに家に来てほしくはないらしい。歩く速度を上げたのはパーシヴァルを撒くためではなく、その来てほしくないということをアピールするためだろう。しかしわざと気づかないふりをしてパーシヴァルは黙々とヴェインの後ろをついて歩いた。夜も遅いため、周囲にはひと気がないが傍目に見れば男ふたりが縦に並んで足早に歩いている様は随分おかしいものであろう。
「じゃ、じゃあ、おやすみパーさん!」
「おい待て」
早足だったせいか普段よりも幾分か早くヴェインの自宅に着いた。ヴェインは扉の鍵を開けさっさと中に入ると、パーシヴァルの目の前で堂々と扉を閉めようとするのでその隙間に足を差し入れ阻止すると、ぎゃあ! とヴェインが喚いた。うるさい。
「人が家まで来てよくも扉を目の前で閉められるな、貴様」
「え、ええ…だってパーさんいつも俺の家くんの嫌そうにしたじゃん、渋々って感じだったし……」
「……」
そんなことはない、と言い切れないのはたしかだ。ヴェインは貴重な協力者だったがため仕方がなしに付き合ってやるか、と思っていたのでまさしく渋々だったのだ。
「ご、ごめん……今は、本当に無理なんだ……」
図星に他ならず黙り込んだパーシヴァルをなんだと思ったのか、ヴェインはちいさい声でぽつりとそう呟いて顔を逸らした。
「――俺と、セックスをしたのがそんなに気になるものか」
「……!」
はっきりと遠慮なしにパーシヴァルが核心をつくことを口にすると、ヴェインはびっくりしたように目を瞠ってパーシヴァルを、信じられないとでかでかと書かれたような顔で見た。パーシヴァルも避ける話題だとでも思っていたのだろうか。
特に表情を変えるでもなく真っ直ぐに見つめると、ヴェインはさっと再び顔を逸らした。
「そ、そうだよ! それ以外ないだろ! お、俺っ変で…、でも、そういうことしない限りは平気なはずなのにっ…パーさんと、ふたりっきりになるの、考えただけでまたおかしくなっちまいそうで…、パーさんだってあんなの二度とごめんだろ、だからっ!」
ヴェインが顔を上げた瞬間、パーシヴァルは開きかけている扉に手を掛け強引に押し開けると、そのままヴェインの言葉を遮り口を塞ぐようにしてキスをした。
あまりに突然のことだったせいか、ヴェインは目を見開いたままかちんこちんに固まってしまい、閉めようと掴んでいたドアノブからも手をぽろりと外してしまっている。これ幸いと、キスをしたままパーシヴァルはその身体を押しやり家の中に滑り込んだ。
背後で扉の閉まる音がするのと同時に、そっと唇を離す。大して長い間塞いでいたわけでもないのに、妙に荒いヴェインの吐息が静寂に満ちた空間に響く。
「だ、だめ、…だって……ぱーさん…はう」
たじろぐヴェインの腰に手を回し抱き寄せると、その身体はとっくに熱を帯びていて指先で撫ぜるだけで蕩けそうな声が上がる。
だが、パーシヴァルは気をやったヴェインを抱く気は毛頭ない。あのくすみ淀んだ瞳に用はないのだ。
パーシヴァルが何も言わず瞳を覗き込むと、まるで射竦められたようにヴェインがハッと息を呑んで瞳を瞠る。淀みかけていた瞳が再び正気に戻る。
車の中でしたときも、ヴェインは途中でたしかに我を取り戻したのだから、セックスをしている間中トんでいるわけではないのだろう。どうすれば戻ってくるかなどわかったことではないが、こうして今戻ってきたことが全てな気がしてパーシヴァルは褒美を与えるようにまた唇にかぶりついて、舌を絡めとってやった。
「――ぅ…やっぱむ、むり、どうしていいか、わか、んねえし……」
「…あの時散々してただろうが」
「あ、あれは! あれは…俺も、わかんない内に勝手にやってるっつーか、…ほら…酔っぱらってるときって、よく覚えてないだろ…そういう、感じなんだよ…」
玄関先からベッドルームに移動して、たんまりキスを堪能したあと服を脱がせ合ったふたりであったが……ヴェインはパーシヴァルへの口淫を渋っていた。
ヴェインは自分の尻のほぐしかたも���くわからなくなっているようなので、パーシヴァルも決して詳しいわけではないがあの時のヴェインの様子からしてそこまで困難ではなさそうなので、見よう見まねでやってやることにしたのだ。その間、口淫でもしてもらおうと寝転んだパーシヴァルの上に頭の位置を逆に四つん這いにさせたのだが、どうやらトんでいる状態の技術は正気のままのヴェインでは出来ないらしい。
酔っぱらっているときの状態を覚えていないというそれ自体がパーシヴァル自身にはまるでわからないが、酔っぱらって記憶を飛ばしている人間ならば確かに見たことはある。だとしてもあれが酔っぱらっている状態と同じと言われてもピンとこないが。
「…わかった、ならしなくていい」
下手にやらせて歯を立てられても正直困る。以前食事中にちらりと見えたヴェインの尖り気味の歯を思い出し、あれで齧られなどしたら――と考えると縮みそうだ、色々と。
しなくてもいいと珍しく優しい言葉を掛けてやったというのにヴェインはいまだううと諦め悪く唸っている。そんなヴェインを放っておき、パーシヴァルはヴェインの家に何故かあったローションを自身の手の上と眼前に晒されているヴェインの尻に垂らし早速準備をはじめることにした。
「んッ…」
尻にローションがかかり、ヴェインはびくりと肩を竦める。パーシヴァルも己の手にかかったローションのひんやりとした感触に、たしかにこれを尻にかけられたら冷たいだろうなと思う。
やはり最初は、小指辺りからいれるべきなのだろうか。女性とのセックスでは指でほぐすということもするにはするが、女性の膣は基本濡れるので余程のことでない限り実際に膣に指を入れて丹念にひろげるということはしない。前戯としてするだけで、必須事項ではないだろう。
しかし元々そういった行為のためにあるわけではない男の尻が濡れるわけがないので――むしろ濡れたら一大事だ――、指を入れてナカをローションで濡らすということは必要だ。
「ぁ、っ…ン…」
考えた結果、とりあえず中指を宛がう。すると、見る見るうちにパーシヴァルの細長い中指はヴェインのナカにのまれていくではないか。パーシヴァルの指を食んだナカの肉壁はうねうねとうねり懸命に縋りつき、入口の輪は健気にぴっちりと吸いついてくる。
しかも、ヴェインは痛がるどころか腰をぶるりと震わせ善がっている。
この男の身体は一体どうなってしまっているのだ、といっそ探究心が煽られる。
そもそもが、同じ状況に陥ると自身ではどうしようもなくなってしまう“パブロフの犬”のような状態になるほどなのだから、体もそうなっているのかもしれない。
「は、…ハ、は、ぅ…ぁ、…あ…」
パーシヴァルは好奇心のまま一本、また一本と指を次々とヴェインの中に収めていく。どこかで痛がればやめようと思ったのに、指を増やしてぎちぎちになった肉壁に指が触れる度にヴェインは体をよじらせ、嬌声をあげる。そしてその度に、陰茎を握っていたヴェインの手が力んできゅうと窄まり、湿った吐息がかかりパーシヴァルも僅かに息を詰める。
「ん、ん…っ、んむ…」
とうとう意を決したのか、ヴェインはパーシヴァルの指に翻弄されながらもおそるおそるといった様子ではあるがパーシヴァルの陰茎をくちびるでくわえた。
懸命に舐めているようだが…本人���言っていた通り、あの状態のときと違って舌使いはかなり拙い。ぺろぺろと幼児がアイスキャンデーでも舐めるような単調なそれに技術もへったくれもないが、むしろそれがパーシヴァルの劣情を煽るようだった。
(俺も焼きが回ったものだな)
すっかり下半身に熱を溜めたパーシヴァルは内心自身を笑いながら、ヴェインが苦しくなったのかぷはと陰茎から口を離した隙にするりと下から抜け出し、無防備な背を押してベッドに寝かせる。
「あ、ぱーさん…」
大人しくベッドに半身を埋め、そろりと肩ごしに振り返ったヴェインの顔には困惑と不安が浮かんでいるが、その奥にはありありと隠しきれない期待が滲んでいる。淀みもなく潤んだ瞳にパーシヴァルはうっそり微笑みかけながら、勃起した自身をヴェインのアナルに押しつけた。
「んっ…ん、く、ぅぅ…ッ!」
指がもう何本もあっさり飲みこんだアナルはパーシヴァルの陰茎もすぐに飲みこんだ。ずぷずぷと焦らすようにゆっくり押しこんでいくと、ヴェインは時折腰をへこませながらベッドシーツに皺が寄るほどしがみつき枕に顔を埋めた。
そのせいでヴェインの嬌声らしきものは全て枕に吸いこまれてしまった。車内でシたときといい……トんでるときはこれでもかといやらしく啼いてみせるくせ、どうやら正気のヴェインは声を何が何でも聞かせたくないらしい。
――ほうなるほど。パーシヴァルは、かわいそうなくらいぷるぷる震えながら枕に顔を埋めるヴェインを静かに見下ろす。
当然そんなことを許すパーシヴァルではなく、がしりと枕を鷲掴んでヴェインから強引に奪うと部屋の隅まで放り飛ばした。
「あっ! やだ、や、ぱーさッ…ぁあ…!」
「くぐもった声を聞かされるこちらの身にもなれ、馬鹿者」
「ひ、ぁ、ンッ…だ、だって…っ、ぱーさん、おんなの、ひとと、ハぅ、んく、いっぱいっ…えっちしてるだろぉ…っ!」
「…………は?」
以前のように手で口を塞がれぬように手首を掴んでベッドに押しつけ、ようやくこれで始められると満足して腰を動かし始めたパーシヴァルだったが、ヴェインの意味不明な発言に急激に力が抜けていくのを感じ、動きを止めてしまった。
…今、この男何を言ったのか?
「だ、だって、俺男だし! 女の人みたいにかわいい声だせねえもん! それで萎えたとか言われても、ヤだし…っ!」
「待てそれ以前に“いっぱい”しているという発言を訂正しろ」
「ううっ…だってパーさん顔いいし、ち、ちんこ強いし…女の人放っておけねえじゃん絶対!」
「ぐ…貴様と話していると頭が痛くなる!」
同時にパーシヴァルの知能まで同じように急激に下がっていくような気分になる。いちいち発言が馬鹿っぽいのだ、ヴェインは。しかしわざわざこんな時にまでその馬鹿っぽい発言はやめてほしいものだ。
ついでに言えば、断じて“いっぱい”しているわけではない。“ちんこが強い”というのは意味不明だが、実際パーシヴァルはその容姿から女性が放っておかないのは本当で、そういう誘いが多いのも確かだった。けれどその誘いに乗るかどうかはパーシヴァルのそのときの気分次第なわけで、大概が気分ではない。そこまで派手な夜遊びをするような性格ではないパーシヴァルは、嗜み程度にしかしてきていない。
「なんで!? 俺なんか間違ったこと言ったかよ?! パーさんのばか! ずる剥けちんこ!」
「なんだと!? 貴様は幼児か!」
よくもまあそんなことが言えたものだ。ヴェインはパーシヴァルのことばかり言うが、ヴェインのモノもなかなかに凶悪な大きさと太さだ。並の女性では勃起したそれを目の前にすれば一瞬怯むはずだ。
「っ…いいから大人しく俺の下で啼いていればいいんだ、貴様は」
「なにそれ横暴っ――…ひぁ、やあ…っ!」
逃がさぬようにベッドに押しつけていた両手を掴みあげヴェインの上半身を起こし上げながら、パーシヴァルが思い切り奥を突き上げると思いのほか大きな喘ぎ声が響く。
「あっぁ゛あ! うッや、ぁ、やあ、ぱーさ、ぱぁさん、も、ゆっく、んハ、り、ぃ…っ!」
膝立ちと手綱のように両手を引っ張られ逃げられない状態で、硬い陰茎に激しく貫き犯され、ヴェインはほろほろ涙を流しながら一生懸命パーシヴァルに訴えかけてくる。
「ハ、ッ…、はは…、もっとやさしく、か?」
――ああなんだかどこかで聞いたような言葉だ。まるで正夢のようでおかしくて、パーシヴァルは吐息と一緒に笑い声を零しながらヴェインの耳元に舐めるように囁きかける。
「ん! ん…ッ! おねが、おねがい、だから、ぁっ…ぱーさ、ぁんっ…」
こくこくと夢中に頷き懇願するその姿に満足して、許すように囁きかけた耳元をぞろりと舐めあげるとぶる、とヴェインが震え甘ったるい声を漏らした。同時に、ずっと放置されていたはずのヴェインの陰茎から精液が噴き出した。
「ふ、――……、ハ、…ああ…」
リクエストにこたえてゆっくりとした速度で何度か肉筒の中を行き来すると、パーシヴァルも深く息を吐き出しながら精液をヴェインのナカに放った。
「――俺さ、はじめてヤったのってスラムにいたころなんだよな」
――あれから数度交わり行為が終わり、後始末もシャワーも済ませ、再び寝室に戻り一息ついたころ――パーシヴァルの隣で寝転んでいたヴェインは天井を見上げぽろりと突然そう切り出した。
「……スラム出身だったのか」
「そう。…とか言って、パーさんの事だからなんとなく察してたんだろ、そんなこと」
「――それは…」
確信があったわけではない。ヴェインの弱々しい瞳をスラムにいる人間と重ねあわせてしまったのは事実だ。だが、それを除いてはヴェインはやはり普通のどこにでもいる青年で…、だから確信がなかったが、やはりヴェインはスラムの出身だったのだ。
「ハハ、だよなぁ……。まあ、それでさ…スラムで俺を育ててくれたじーちゃんが死んで、俺ひとりになって…天国のじーちゃんを心配させないためにも俺はひとりでもちゃんと生きてくぞー!って新しい明日に向かって踏み出したらあっさり。ボッコボコにされて何人かに押さえつけられて。朝にポイ捨てみたいに放っておかれたとき、ああ俺何してんだろって思った」
つらつらと明かされる話にパーシヴァルは顔を顰めるが、当の本人であるヴェインは
「スラムではその一回だけ。そっから暫くしてこのファミリーのひとに偶然拾われて、頑張って働くぞって気合入れた初日でまた、されて。喧嘩の鬱憤晴らしだなんだって言われて、毎回、毎回、何度もされた。んで、気付いたら喧嘩とかあーいうことすると、わけわかんないくらい身体が熱くなって気が遠くなっちまうようになって」
何と言葉をかけていいかわからず、パーシヴァルが口を噤んでヴェインを見下ろしているとヴェインは、よっとちいさく声に出して起き上がるとパーシヴァルの肩からずり落ちていたシャツを恭しくそっと直してまたごろんとベッドに寝転がった。
「――それも、無理矢理入れられたのか」
何の恥じらいもなく大胆に全裸で寝転んだつい先刻まで抱いていたその姿を見下ろすと、やはり脚に這うタトゥーが異質のように思えてならず、パーシヴァルは思わず言葉を零した。
「ん? あー、これ。タトゥー?これは俺の意思。スラムで色々開き直って“やんちゃ”してたからさ、そのときに入れちゃえーって」
タトゥーが刻まれた素足を行儀悪くぷらぷら上げてヴェインはにひりと笑う。
なんとなくではあるが、自身の意思で入れたというのはおそらくは事実なのだろう。無理矢理入れられたのだとしたら、輪姦に強姦とそれ以上に非道なことをされてきたことをあっさりと話したくらいだ、わざわざ隠す必要もない。
しかし、“やんちゃ”することを楽観的に語るのは嘘らしく思えた。スラム――あの世界で生きるためには、なりふり構っていられないのがふつうで、自分を育ててくれたひとのためにもひとりで強く生きなければと、強く願ったヴェインが生きるために何をしてきたのかは――
「パーさん?」
ヴェインが逞しく生きてきた証なのだと思うと、このタトゥーもそう悪いものではないのかもしれない――パーシヴァルはタトゥーの刻まれたヴェインの太腿を慈しむように手を這わせながらきょとんと間抜けな顔のヴェインを見下ろし、ぽっかり半開きの唇にキスを落とす。
「ぱーさ、んっ…ふふ、なに…どーしたんだよ」
数度そうして唇を触れあわせると、ヴェインはくすぐったそうにわらいながら身をよじながらパーシヴァルの頬を両手で包むように摩った。
どうした、など��言われても、そんなことパーシヴァルが一番知りたかった。何故だか、むしょうにこの男にキスをしたくなったのだ。
「…パーさんの髪って、光にあたると少しあかくて、綺麗だな」
頬を包み込んでいたヴェインの手が撫でるように滑り、パーシヴァルの少し長い髪を梳く。今は髪染めでくすんだ色をしているはずなのに、綺麗などとこの男の審美眼はどうやら狂っているらしい……なのに、心底そう思って眩しいものをみつめるように瞳を細めるヴェインにパーシヴァルは言葉を失う。
そして、ふと先刻己の上に跨っていたヴェインの姿を思い出し、カーテンの隙間から洩れた光に透けてきらきら陽の光のようにきらめいていたこの男の金糸こそうつくしい――、そう思ってしまった自分もどううやら審美眼が狂ってしまったらしかった。
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2020 上半期 Best Albums 12
2020年上半期は未曾有の事態の連続で目まぐるしい日々を送りました。歴史的な1年になるであろう令和2年。決して忘れてはいけない継いでいくべき事実の裏では素晴らしい音楽もまたリリースされており、その中でも個人的によく聴いた&聴いてほしい AL を12枚(10枚に絞り切れなかった)記録としてここに残します。(順不同) 相変わらずロック色強め!
King Krule - Man Alive!
他の有象無象を蹴散らす程の異様に研ぎ澄まされた存在感は圧巻そのもの。絶賛されつくした名盤 2nd『 THE OOZ 』が進化した唯一無二なロック・サウンドに蕩けてしまえ!
King Krule - Cellular
ジャズ / R&B / ポスト・パンク / ダブ 等を飲み込み、着飾らないぶっきら棒な声でそれらを歌い上げる様は本当に20代なの?と疑わざるを得ない。そら孤高の天才なんて大仰な二つ名であらゆるメディアから呼ばれるのも仕方がないですね。King Krule のスタイルが完全に確立したといっても過言ではないです。圧倒されること間違いなしの作品です。
King Krule が創り上げる世界はあまりにも非現実的で。少なくとも僕が生活している日常には決して寄り添わないブルージーなロック・サウンドです。しかし本作はそんな語ることのない日々を特別に仕立て上げるような甘さも兼ね備えており、陶酔的です。それは M-1 “ Cellular “ を聴けばすぐに理解できるでしょう。しかし楽曲は勿論、彼の出で立ちやインタビューから醸し出すまるでベテラン・ミュージシャンが纏う無条件の説得力を齢25歳で既に身に着けたのかと思うとゾッとしますね。憧れます。
楽曲に話を戻します。M-3″ Stoned Again “ の生々しい感情がのった肉声&管楽器と陰鬱にリズムを刻む楽器隊のアンサンブルは狂気的であまりにもセクシー。無論クリーンに鳴るギターもたまらないです。M-4 “ Comet Face “ の未来的なポスト・パンクや黴臭いアンダーグランドの煙っぽさ薫るジャジーなサウンド M-7 “ Alone, Omen 3 “ や荒廃と化した都会でぼそぼそと呟くように唄う M-11 “ Theme For The Cross “ が特にお気に入りで、ぬるっと流れ出す全ての音が甘美な M-12 “ Underclass “ を聴けば恍惚となること必至。
彼の音楽にはいつも憂いが帯びていて。それは人が密集している都会特有の孤独に寄り添う妙な愛にも結び付くと思うんですよね。冷たいが決して突き放しはしない。彼の気難しさが宿るロックン・ロールに酔い痴れる夜があっても良いと思います。2020年は Man Alive! で酩酊しましょう。
Yves Tumor - Heaven To A Tortured Mind
2020年。新しい時代が始まった!さぁ、この快楽的で神々しくもあるフックの効いた異質な ロック・アルバム を聴いて感性のアップデートを行いましょう!
Yves Tumor - Gospel For A New Century
前作、数多の音楽評論家を唸らせた『 Safe In The Hands Of Love 』と同様 Warp Records からのリリース。
Yves Tumor 改め Sean Bowie の脳内から生み出される楽曲たちは新しいのか古いのか、、いや時代を感じさせないのか、、非常にカオスなんですが、でもこの混沌とした何でもありな現代だからこそ生まれた音なんだろうなと何故かそう思わせてくれるんですよね。奇を衒うとかではなく音楽が好きだというピュアな精神から産み落とされた非常にエモーショナルな1枚だとも思います。彼は稀有な存在です。
M-1 “ Gospel For A New Century “ のタイトルからもうワクワクさせてくれますね。どんな音楽が、いやどんな世界に連れて行ってくれるんだろうかと期待で高く上がったハードルを優に超えてくるクオリティー。高らかに響く管楽器と不機嫌そうなベース・ラインが印象的なのですが何より生き物としての暑苦しい程のエネルギーに満ちているんですよね。M-4 “ Kerosene! “ や M-8 “ Super Stars “ の泣きのギターはぜひ聴いてほしい。この2曲を筆頭に楽曲から匂ってくるゴージャスさと人間臭さが混ざった独特な世界観に興奮します。ポスト・パンクのカラーと哀愁を兼ね備えた M-2 ″ Medicine Burn ” も勿論聴き逃せないですね。黒いグルーヴも感じるしあらゆる音楽の熱さが���り混じっています。
そして、全曲キャッチーなのがまた素晴らしい。特に M-6 “ Romanticist “ ~ M-7 “ Dream Palette “ が大好きです。畳みかけるように吐くヴォーカルとノイジーかつグルーヴィーなメロディーは Yves Tumor の素晴らしさが凝縮しているといっても過言ではないでしょうか。また、こんなにも心情をかき混ぜられる曲で溢れているのに M-12 “ A Greater Love “ のぶつっと切れるかのようにあっさりと終わってしまう本作の流れも聴いていて違和感を感じる大きな理由かもしれません。
でも結局、音楽好きしか辿り着けない音楽だし気楽に人に薦めることができる AL でもないとも思ってしまいます。ただそれでも、やっぱりいろんな人に聴いてほしいなと思う作品です。全く Yves Tumor のことを知らなかった人がこれを聴いて特別な感情を抱いてくれたらとても嬉しいな、、
Disq - Collector
USはウィスコンシン州マディソン出身の若き5人組インディー・ロッカーたちがストレートにかき鳴らす哀愁やアイロニーをふんだんに込めたバンド・サウンドを聴いて心揺すぶられること間違いなし!名門 Saddle Creek から満を持して Debut・Album をリリース!
Disq - Daily Routine
胸がスカッとするパンキッシュでダンサブルなバンド・サウンドと冷め切った暗い日々をがなり立てるように歌う M-1 ″ Daily Routine ” を聴いて Shame や Sports Team 辺りと共鳴すると感じたところからロンドンのバンドなのかなと思っていましたがまさかのアメリカなんですね。上記に挙げた2バンドもそうですが、この斜に構えた若者特有のいなたさ、あるいはやさぐれ感がたまんないです。
「全ての曲は、私たちが人生の中で経験してきた葛藤をテーマにしています」とフロントマンである Isaac deBroux-Slone が語るように本作は、生きていれば誰もが抱えるであろう鬱憤を吐き出さんとする気だるそうなヴォーカルと共にノイジーな楽器隊が目立ちます。しかしメロディー・ラインはとてもポップでそれがまた愛おしい。M-3 “ I’m Really Trying “ や M-7 “ Gentle “ を聴いてみてほしい。メロディックなポスト・パンクとでもいうのでしょうか。シニカルで荒々しくも馴染みやすいメロディーに思わず涙腺が緩みます。
また M-4 “ D19 “ はフォーキーなロック・サウンドで歌としてもしっかりと聴かせてくれるし、M-5 “ Loneliness “ や、Deerhunter がよぎる M-6 “ Fun Song 4 ” はフレイバーを一味変えたサイケデリックなナンバーもあり、一筋縄ではいかないセンスがまた光ります。
数あるデモからセレクトされた曲たちが彩る本作を締めくくるにふさわしい M-9 “ I Wanna Die “ と M-10 “ Drum In “ は彼らのアンセムにもなるであろうポテンシャルが秘めていると感じました。Disq は間違いなく将来スタジアムを揺らすことができるロック・バンドになると思います。
彼らの愚直であるがこそ真っ直ぐな音楽とメッセージは未だ人生に方向性を見出せていない、いい歳した大人たちにはおもいっきり刺さるのではないでしょうか。
Sorry - 925
2017年 名門 Domino Record からデビューし、オルタナ好きの音楽ファンを虜にしてきた4人組 バンド Sorry が遂に Full Album をリリース!
待ってました。そして期待を優に超える名盤です。Wolf Alice を代表に、ポスト・パンク バンドの Squid や Black Country New Road (この2バンドも Full Al が待ち遠しい...!!) など続々と頭角を現しているノース・ロンドン シーンの一角のバンドです。
Sorry - Rock 'n' Roll Star
幼馴染の男女二人組から始まった Sorry。インタビューでは、バンド名はただ何となく面白そうだからつけたらしく、またタイトル『 925 』には「完璧じゃなくてもいい」というメッセージが隠れながらも別にただのランダムな数字の羅列として受け取ってもらってもいいなどと話していて、どこか緩い雰囲気を感じます。
しかし、そんな雰囲気とは裏腹に彼らの生み出す音楽は非常にヘヴィーです。
不意を突かれるピアノと管楽器から始まる M-1 “ Right Round The Clock ” を聴けばすぐに彼らのヤバさがわかると思います。100点のトラック1です。
Sorry の魅力といえば、重々しく歪むドラムやギター、聴き手をあざ笑うかのようなポップなメロディー、気だるげな男女のコーラス・ワーク、不快に鳴り響く管楽器など枚挙にいとまがないですが、一言で表すならば「不穏」ですね。M-4 “ Starstruck “ や M-8 “ Wolf “ とか最高です。M-5 “ Rosie “ のおどろおどろしいAメロからサビで切なくなる展開も良い。M-9 “ Rock ‘n’ Roll Star “ とかエラー・コードが表示されまくったポップ・ソングのようでマジでクールです。
Debut AL ってやっぱり作り手の集大成を全て詰め込む作品になると思います。本作がまさにその通りですがただ詰め込むだけでなく、今まで受けてきたインスピレーションを大味にすることなく曲に反映している点が本当にハイセンスだなって思います。そしてそんなアイデアが詰め込められた曲たちは、ローファイでグランジ/ヒップホップの影響を感じたり、ピアノや管楽器や多彩な効果音などを絶妙に駆使したりと、独創的なセンスからはルーツの深さも窺えます。
また、バンドというよりも自分たちの活動はプロジェクトだと言うように、MVも自ら手掛けています。そういった DIY 精神、または心の底から活動を楽しんでいるところも Sorry の魅力の1つです。
THE NOVEMBERS - At The Beginning
各メディアから絶賛された 7th AL『 ANGELS 』からわずか1年程でリリースされた 8th AL『At The Beginning 』は前作を更に昇華させたノイズと耽美性が蠢く壮大なロック・アルバムです。
僕は THE NOVEMBERS はずっと曲単体では好きだけどアルバム通してはそんなにだなという印象だったんですが『 ANGELS 』でカッコいい、、と興奮しての本作『At The Beginning 』で完全にノック・アウトさせられました。
THE NOVEMBERS - 理解者
THE NOVEMBERS といえば、シューゲイズ / ノイズ・ロック などの非常にダウナーな轟音をかき鳴らすオルタナティブ・ロック バンドのイメージがあったのですが、ここ最近の彼らの作品からはシンセ・ポップ / ニューウェーブ / インダストリアル などを感じさせるエレクトロニック・ミュージックとも調和しており、1曲1曲がより一層濃密になっていると感じます。
凶暴なドラムンベース的なビートと神々しいメロディーが共存し最終的には洪水に呑まれるかのように音が渦巻く M-1″ Rainbow “ を聴いた瞬間、自分の中で「名盤に出会った」感覚になって一瞬で虜になりましたね。
M-3 “ 理解者 “ なんてマジで最高です。『 ANGELS 』の M-5 “ DOWN TO HEAVEN “ や M-6 “ Zoning ” が大好きで、こういう音楽をずっと作っていってくれ~と思っていた僕の思惑を見事叶えてくれたまるで BOOM BOOM SATELLITES をよりごつくさせたようなヘヴィーなサウンドが疾走するナンバーから矢継ぎ早に M-4 “ Dead Heaven ” のフロントマン 小林祐介 の破壊的なシャウト& 楽器隊がかき鳴らす轟音に腰が砕けるほど高揚してしまいます。
そして M-5 “ 消失点 “。正体不明の民族が奏でるようなトライバルな音と力強いリズム隊の上にのるメロディーはあまりにも美しくて切ない。かなり風変りな曲なのにどうして涙を誘うほどに綺麗なんでしょうか。M-8 “ Hamletmachine “ も破壊力が高くて好きです。音圧に押しつぶれる程に重い曲ですがサビがまたアンセミックで本当に素晴らしいですね。これぞインダストリアル・ロックです。
ライブハウスでこの美しい轟音を早く全身で受け止めたいです。。
Caribou - Suddenly
2014年振りの新譜はあまりにもパーソナルな1枚でひどく不規則に揺れ動くエモーショナルなエレクトロニック・ミュージックです。
CARIBOU - You and I
本作はタイトル通りトラックの流れや展開が「突然」変化するのですが、Caribou こと Dan Snaith は彼の人生に起こった予測不可能な人生の変化について作曲された曲たちで構築されています。
それは前作『 Our Love 』と本作の間に起きた最愛の妻の兄弟の死と、その姉妹の離婚、そして実の父の大病といった出来事など、、人生の予測ができない経験から影響されています。
例えば、タイトル「Suddenly」は娘の口癖からつけられていたり、母親がまだ幼い姉に歌う童謡をサンプリングしたという M-1 “ Sister “ から始まり、妻の母親の死を悼む M-2 “ You and I “ や M-4 “ New Jade “ では離婚を経験した義妹に向けて書かれていたりなどしています。それはまるで彼の人生のターニング・ポイントを記録していったかのような作品にも感じます。
上記に書いた通り本作にはコンセプチュアルなテーマが通底されているのですが、やはりどこか捉えどころがないんです。
艶めかしく響くグランド・ピアノの音を急に怒涛のラップが邪魔をする M-3 “ Sunny’s Time “ や M-6 “ Lime “ では野暮ったくも心地よいビートが急に消えてガラッと展開が変わったと思ったら、テンポも曲調も全く違うハウス・ミュージック M-7 “ Never Come Back “ が続けざまに流れてきたり。また、甘くドリーミーな M-2 “ You and I “ やファンキーなリズムとトレンディなストリングスがダンスを誘う M-5 “ Home “ に、切ない歌モノ的ナンバー M-9 “ Like I Loved You “。ラストは悲哀を帯びたメロディーが徐々に開花していき最後は光をみせてくれる非常にエモーショナルな M-12 “ Cloud Song “ など曲調も展開もトラックの流れも良い意味で読めないです。Dan Snaith の奇想なアイデアがちりばめられた素晴らしい一枚です。
Dan Snaith が本作を語るときに「船酔いするかのような」と形容していましたが、オール・タイム43分後はたしかにそれに似たような感覚に陥り、頭がくらくらしますね。
NNAMDÏ - BRAT
ユーモアとシリアスが交差するエクスペリメンタルなヒップ・ポップ アルバムが炸裂! シカゴのマルチ・インストゥルメンタリスト/SSW が NNAMDÏ 名義で2nd をリリース
この音楽は全てがなんか引っ掛かる。
例えば、情熱的だが精緻なドラミングやプログラムされたビート、器用なギタープレイ、鋭く尖ったラップ、そして遊び心のあるヴォーカルアレンジや創意工夫を凝らしたリズム...と非常に自由度が高く、そんな多彩で巧みなサウンド・プロデュースに耳を奪われがちなんですが、聴き終わった時には何故だか心に切ない蟠りが残ります。本当に不思議な音楽だと思います。
NNAMDÏ - Wasted
子供たちの叫声のような ヴォーカル・エフェクト が色んな曲に散りばめられているのも非常にユニークで、NNAMDÏ 改め Nnamdi Ogbonnaya ( ナムディ・オグボナヤ ) は SEN MORIMOTO を輩出したレーベル SOOPER RECORDS の創始者と知り、俄然納得しました。本作が『 BRAT (餓鬼) 』と名付けられているのも面白いです。
しかし、1曲1曲は全体的にはポップなんですね。だけどその曲たちを構成する下地にはロック(それも非常に難解な)やヒップホップやゴスペルなどジャンルの垣根を超えたバラエティーに富む様々な要素が明らかに感じられます。
そこで、Nnamdi の存在自身に興味を惹かれ彼のキャリアを少し調べてみたのですが、まず マス・ロック バンドのベーシストから始まって、それから ポスト・ロック、ヒップ・ホップ グループの一員でもあったり、ポップ・パンクのドラムスであった時期もあり、その他数多くの パンク/マス ロック/フュージョン/スクリーモ 等のバンドで活躍したりと、まぁ経験値が豊富。
繊細にかき鳴らされるアコースティック・ギターから始まる M-1 “ Flowers To My Demons “ を聴いたときの胸の高鳴りといったら。。徐々に音色が重なっていき最後は激情的に叩くドラムと切ないストリングスが曲を加���させる。と終ったと思ったらこれまたユーモラスなビートの上を面白おかしくミックスされたヴォーカルが重なるオルタナティブ・R&B 調の M-2 “ Gimme Gimme “ と変貌する。チャーミングな(奥でリズミカルに叫ぶあらゆるミックスを施されたヴォーカルの応酬は狂気とも捉えられるか)イントロから重々しく展開する M-3 “ Bullseye ” はわずか1分弱でこの存在感かと思わず笑ってしまいます。リード・トラック M-5 “ Wasted ” も本作の中でも突出して不思議なナンバーです。リズムやビートは聴き心地がよくメロディーも悲しげなのですが、その上にのるアレンジされたヴォーカルがまたシュールなんです。でも何故か気持ちよく聴けるんですよね。
僕のようなロック畑出身からすると、それこそ マス・ロック / ポスト・ロック の趣がある M-7 ″ Perfect In My Mind ” がたまらないですね。展開に追いつこうと耳を傾けるが追いつけない程に不可解で、うねるような楽器隊の怒涛のアンサンブルは最高です。また M-8 " Semantics " 〜 M-10 " Really Don't " の Nnamdi の鬼気迫るシャウトやシリアスなムードを作る曲展開は最後まで聴き飽きることをさせない魅力の一端を担っています。
そして、1枚の作品が終わることを知らせるかのような寂しさが伝わる M-11 “ It's OK “ から続いて、鳥のさえずりが聞こえてくる爽やかなイントロ 〜 Aメロから雄大な景色を想起させる重厚感のある ロック・ナンバー M-12 “ Salut “ で大団円を迎えます。
この強靭ともいえるクオリティー。Nnamdi のミュージシャンとしての仕事っぷりからひしひしと伝わってくる、野心的または偏執的とも捉えられることができる本作は、今まで彼が積み上げてきた経験や知識やセンスなど血肉になったもの全てが結晶化したような1枚といえると思います。
毎年1枚ヒップ・ホップ 作品でお気に入りが見つかるのですが、今年は BRAT一択になりそう。
The Homesick - The Big Exercise
オランダで異彩を放っていたオルタナティブ・ロック バンドが Sub Pop Records と契約して 2nd AL をリリース!ヘンテコなリズムがクセになります!初期 Vampire Weekend を彷彿とさせるドタバタ感!
難儀なことをスマートにやってのけているヤバいやつら。予想のできない展開や奇妙な音使いも気になりますが、何よりあえて音数を少なくして隙間を作っている曲構成にセンスを感じます。
The Homesick - Male Bonding
しかし、彼らの音楽は何と形容すればいいのでしょうか。水流の音?と何かを攪拌しているようなSEからゆるりと始まる牧歌的な M-1 “ What's In Store “ ( この曲はあらゆる国歌から着想を得たらしい。どおりで無駄に荘厳なんですね ) や忙しく叩かれるドラムにとぼけたように吹かれたラッパ音?やご機嫌に響くピアノなどが面白い M-9 “ Kaïn “ を聴くと「子供たちが無邪気に作曲したバロック・ポップ」なんていうフレーズが浮かびました。とにかく彼らを既存のジャンルにカテゴライズするのは難しいです。ですが、そういった時代を先取ろうと試みるアティチュードも最高です。(マイペースな感じが初期 OGRE YOU ASSHOLE っぽくもあるなぁ..)
また、パンキッシュなサウンドも魅力的で、例えば M-5 “ Leap Year “ や M-7 “ The Big Exercise “ や M-8 “ Focus On The Beach “ 辺りはポスト・パンクからの影響が窺える粗さが良いです。M-10 “ Male Bonding “ も最高ですね。軽快なドラミングの上をノイジーに歪むギターとシャウトで感情を爆発させたかと思えば、アウトロは息の合った見事なアンサンブルでリスナーを惹きつけて終劇。素晴らしい発想力と演奏力です。
情報量は多いのにしつこさを感じさせないのは湿度0%のカラッとした録り方にあるんでしょうか。やりたいことはやっているけどリスナー側にも立つことも忘れない。クレバーだと思います。まぁ単純にそういう音が好きなだけだと思いますが...
もう一つ最大の魅力を挙げるとすれば M-4 “ I Celebrate My Fantasy “ を筆頭に この手数の多いサウンドを3人で演っている点ですね。People in the box にも通ずるクールさ。(さっきから何故か日本のバンドばかり思い出すな..) 3ピース・バンドってやっぱりカッコいいなと改めて思わせてくれました。
余談ですが、フロントマンである Elias Elgersma のソロ名義 Yuko Yuko もチルくて良いです。 Lo-Fi / Vaporwave 特有のしょぼさがたまらん。
Yuko Yuko - Purple Pace
Georgia - Seeking Thrills
UKはロンドンの次世代エレクトロ/シンセ・ポップ シンガーの 2nd AL は多幸感ある未来的なダンス・チューンが満載!
Georgia - Feel It
クラブにも行かないしポップスを好んで聴かない僕が本作に魅了されたのは、キャッチーなメロディーを支えるサウンドの味わい深さです。
エレ・ポップのキャッチャーな部分とあらゆるクラブ・シーンで脈々と受け継がれてきたであろう多彩なメロディーが混ざり合ったサウンドには、エスニックな香りが漂っており、そこがクセになります。それでいて未来的だし、ジャケットのようにハイになること間違いなし!
パーティーが始まることを告げる M-1″ Started Out ” から鈍く疾走するベース・ラインとポップだがどこか儚げなメロディーが気持ちいい M-3″ Never Let You Go ” や アッパーなんだけど気品のある M-4 ″ 24 Hours ”。それからクラブ・ミュージックのヘヴィーなグルーヴを感じさせてくれる M-5 ″ Mellow (feat. Shygirl) “ といった前半の流れに一気に掴まれました。Shygirl のダウナーなラップもエロい!
個人的なベスト・トラックは M-7 ″ Feel It ”。妖艶で煙いサウンドから突如彼女のエモーションが溢れるかのような熱い展開が最高です。
インタビューを読む限りどうやら彼女の人生はダンス・ミュージックで出来ているようです。父親は レフトフィールド の創立者である ニール・バーンズ で彼の影響でドラムを学びまた、初めて行ったクラブに衝撃を受け解放的な気分を味わったとのこと。たしかに本作にはその���験の熱をそのまま詰め込んだかのような初期衝動を感じます。
懐古的にはならずしっかりとアップデートするセンスに脱帽です。
Pinegrove - Marigold
USインディー シーンの至宝 Pinegrove が UKを代表する老舗レーベル Rough Trade から 4th AL をリリース!
Pinegrove - Phase
���リーゴールドといえば僕はあいみょんではなく Pinegrove なのですがそんな戯言はさておき、相変わらずの温かみのある フォーキーなアルバムに仕上がっています。前作『 Skylight 』をよりしんみりさせた雰囲気がありますね。
本作の魅力といえば、雑味がなくなったミニマルな インディー・ロック といえばいいのでしょうか。無駄な音がないんですね。非常にシンプル。だからこそ深く耳を傾けたくなります。
しかしファンとしてはアナウンス通りに『 Skylight 』に続き新譜をリリースしてくれたことに感謝は勿論、それ以上に安堵感を覚えました。それはフロントマンである Evan Stephens Hall が 強制わいせつ罪で訴えられていた事実があったからなんです。問題が解決されるまでは活動休止状態になっていた時期があって、それを含め他のパーソナルな問題と向き合ったメンバーたちがようやく世にだしたという経緯があり、様々な背景込みでより染みわたります。
本作のコンセプトは「忍耐」だそうです。たしかにタイトル通り、酒とドラッグを我慢する様相をうたった M-4 “ no drugs “ や不眠症をテーマとして眠るためにいろいろと試行する M-7 “ Phase “ や何一つ変わらない日常の虚無感をうたった M-8 “ Endless “ など圧迫された日々に対する陰鬱を嘆くような曲が多いのかと思いました。エンディングを飾るアンビエンスなナンバー M-11 “ Marigold “ が終わった後の余韻といったら、、、
Pinegrove の音楽を聴くと、普遍的で変化のない一日常をプラスαでほんの少しだけ特別にしてくれる、、まるで人肌に包まれるかのようで本当に心地がいいんです。完全にひいきにしてますが、クソ個人的な短評だし文句の言うやつなんていないからこれからも持ち上げまくってやります。そしてぜひ来日してくれ!!
今年リリースした新譜で The 1975 が Pinegrove について言及した曲をクレジットしたのは2020年のハイライトの1つだったな。。
Nada Surf - Never Not Together
28年選手のブルックリンが誇るメロディックなロック バンドの4年振り通算9枚目の AL は心の奥底まで優しく響き渡るグッド・メロディーで溢れている至福の1枚。
Nada Surf - So Much Love
Nada Surf を今まで通ってきていなかったことを後悔するぐらい、このALは本当に心から良い曲だなと素直に思える曲ばかりでファンになってしまいました。
1曲目 M-1 “ So Much Love “ からしてもうズルいですよ。青いピュアなサウンドで心が震えて Matthew Caws (Vo&Gt) の優しく包み込むような歌声でいつも泣きそうになる。彼らをジャンル付けすると パワー・ポップ / ギター・ポップ あたりになるのですが、M-2 “ Come Get Me “ やリード・トラックに相応しい M-5 “ Something I Should Do “ を聴くと、彼らの音楽性を語るときに引き合いに出されたジャンルたちの醍醐味が詰まっているなと感じました。M-3 “ Live Learn and Forget “ や M-7 “ Crowded Star “ の耳に馴染む懐かしくて切ないメロディーも沁みます。特に M-4 “ Just Wait “ はあまりにも感傷的で永遠に浸っていたい。
そして、子供たちの美しいコーラスから始まる童謡にも似たメロディーから壮大なバラード・ロックへと開花する M-6 “ Looking For You “ でいつも作業している手が止まる。本作のハイライトです。また、疾走感あるキャッチーなロック・ナンバー M-9 “ Ride In The Unknown “ がゆっくりとフェードアウトして本作は終わりますが、それはまるで「ここは一つの到達点でありまだ終わりじゃないんだ。」というような示唆をも感じ、既に次回作に期待してしまう。。
ベテランの安定感といいますか、この円熟したアンサンブルから伝わってくるロック・バンドの力強さは何十年も音楽と真摯に向き合ってきたからこそなんでしょうね。何だか年を重ねていくことへのネガティブな気持ちがすっと無くなった気がします。
Nada Surf を掘る下半期になりそうだ。
Pet Shimmers - Face Down in Meta
謎多きUKはブリストンの7人組バンドの Debut・Album は青春にも似た小っ恥ずかしさ及び衝動をローファイに味付けした煌びやかなインディー・ロックです。
Pet Shimmers - Post-Dick Circle Fuck
なんなんでしょう、このどうしようもない青春感は。どうしてか焦燥的で故にメランコリー。わざとらしいキッチュな音質も憎いし本作を聴くと Los Campesinos! を彷彿とさせるんですよね。(Sandy) Alex G がツアー・ゲストに呼んだのが納得のバンドです。余談ですが、最近改名して(Sandy)がなくなったらしい。。。RIP (Sandy)。。
まぁとにかくこの「ごった煮感」を堪能してほしいです。フロントマン Oliver Wilde のフェイバリットかつ素敵なものをこれでもかとふんだんに詰め込んで Like a パワーパフガールズ’s オリジン 生まれたこの曲たちにはどれもが作り手の愛が濃縮しています。多彩な楽器たちとエレクトロニカと 8 bit がまぜこぜになったインディー・ロックをぜひとも一聴してほしい。
詞の乗せ方とかもリズミカルで例えば M-4 “ Duvet Day ” や M-6 “ Angel Made “ は特に気持ちが良いですね。浮遊感があってアナログTVの砂嵐にも似た粗いサウンドがお気に入りです。
またここ数年のロックを語るには外せない サウス・ロンドン シーンの中心的な小さいヴェニュー The Windmill でも活躍する Goat Girl ���呼んでの M-5 “ Feels Hz “ も横のつながりが見えて良いですね。
丁度ALの真ん中にあるハーフ・タイム的な要素も持ち合わせる M-7″ Cheat Codes (THPS2) ” も良い味を出しています。アコースティック・ギターと合わせて呟くように重ねる男女のコーラス・ワークはしっぽりと酒をなめる時の最高のアテです。
M-9 “ Nobody: Me: “ や M-10 “ Post-Dick Circle Fuck “ が顕著なローファイなサウンドの疾走感と絶妙に熱がこもっていないヴォーカルの不思議なハーモニーもぜひ味わってほしい。彼らの音楽性が詰まってます。 ラストの M-12 “ Crash Tense Dummy “ が10分と長尺なところも青臭くて良いですね。めっちゃノスタルジー。。
純粋無垢に音楽をインターネットで漁っていたあの頃の十代が漠然と脳裏によぎり、無駄に感傷的になってしまいました。。これは長く聴いていくやつだわ。。。
今年は割と意識的に音楽が聴けているし、何より6月7月と一気に聴きこみたい期待のALが続々とリリースされていったので、これからが非常に楽しみだ!
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