#敷島梧桐
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アドベントカレンダー2022終結に寄せて
敷島梧桐
ねじれ双角錐群とはなんなのだろう。
このサイトの「About」ページには「文芸同人ねじれ双角錐群は、ホラー・怪奇小説を志向する創作群です」とある。「創作群」という言葉の捉え方に少し幅があるように思える。
ひとつには、創作を行う人たちの群であるとする解釈。この場合、創作団とか創作衆とか呼んでも同じような意味になる。
もうひとつには、創作された作品の群であるとする解釈。この場合、小説誌やこのサイトに掲載されてきた作品の総体をねじれ双角錐群と呼んでいることになり、またねじれ双角錐群というものの存在自体がある種の創作群であることを仄めかしてもいる。
わたしはねじれ双角錐群のいち群員であるが、実のところ、これまでこの文芸同人に作品を寄稿してきた人々と面識を持ったことがない。わたしたちは小説誌を頒布するため、年に数度開かれる蚤の市に出店するのだが、東京はわたしが住んでいる場所からアクセスが悪く、現地で参加する機会に恵まれてこなかった。
それが今年、ちょうど仕事の休暇と重なっていたこともあり、初めて現地へ行くことができた。飛行機を乗り継いで会場へ辿り着いたわたしは、ねじれ双角錐群のブースを探して2つの会場を練り歩いたのだが、不思議なことに「ヲ−137」という番号のブースはどこにも見当たらなかった。ときおりわたしたちの新刊を手に抱えて歩く人とすれ違ったから、ねじれ双角錐群が出店していることは確からしい。それで1つ1つのブースをしっかりと検分しながら会場を2周、3周と捜索したのだが、どうしても見つけることができないのだ。急に怖くなってメンバー間のやりとりに使っているDiscordを開いたところ、彼らはその日の打ち上げの算段をはじめており、鴨肉がどうとか言っている。こちらからメッセージを送ろうとしても、ネットワーク不良のためか、エラーが出てままならない。それでわたしは怖かったり情けなかったりで、そのまま会場を後にし、帰りの航空便を繰り上げて帰途についたのだった。
そういうこともあって、わたしはいまだにこの文芸同人に参加している人々の実在性を、本当の意味では確信できていないのかもしれない。まったくすべてが虚構であるとは思わないまでも、本当は存在しない人がひとりくらい紛れ込んでいたり、そういうことがあってもおかしくないような受け取り方をしている。このような形で、わたしはねじれ双角錐群が「創作群」であるのだと捉えているのだろう。
いまあらため��、これまでわたしがこの同人へ寄せた序文を読み返してみると、ずいぶん大仰な文章を書いてきたものだと少し照れくさくなる。とはいえ、怪談の序文を砕けた調子で書くわけにもいかないから、この点は仕方のないことだ。むしろ序文ばかりを続けて読むという行為の側に問題がある。ちなみに最近の同人内のやりとりで、たまには怪奇小説ではなく違うジャンルをやろうという気運が高まってきている。来年の今頃には、SFテーマの小説誌を出しているかもしれない。そうなるとわたしも、多少こなれた文体で序文を書くことができるかもしれない。来年なにが起きるか、わたしたちもまだ分かっていない。
12月いっぱいにわたって続いたねじれ双角錐群アドベントカレンダー2022は、記事を落とすこともなく、本日無事に終えることができた。いかなる形であれ、わたしたちという枠組みの中で書かれ・作られたものの総体がわたしたちであるということを踏まえて、来年以降もわたしたちは少しずつでも形を変え、あり方を変えていくことができたらよいと思っている。
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