#幻戯書房
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findareading · 1 year ago
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本を読んでいるとき、もっと心地よい考えが突然あなたの空想の中に入ってきたら、精神はすぐさまそれに飛びついて本のことなど忘れてしまうが、目は単語や文章を機械的に追っている。あなたは何を読んだか理解も記憶もせぬままページを読み終えてしまう。──これは、あなたの精神が、相方に読書を命じておきながら、自分が少し留守にすると暇乞いをしなかったからで、つまり他者のほうは、もはや精神が聴いていないにもかかわらず読書を続けていたというわけだ。
— グザヴィエ・ド・メーストル著/加藤一輝訳「部屋をめぐる旅 」(『部屋をめぐる旅 他二篇』2021年10月、幻戯書房〈ルリユール叢書〉)
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honoya · 2 years ago
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〈ルリユール叢書〉全点フェア開催のお知らせです!
2月4日(土)〜3月21日(火)まで、本は人生のおやつです!!店頭&web shopにて、幻戯書房から刊行されている世界文学を堪能できる〈ルリユール叢書〉の全点フェアを開催いたしま��! 
〈ルリユール叢書〉についてはこちら!
@serie_reliure
全点フェア期間中に〈ルリユール叢書〉をお買い上げの皆さまには、なんとも嬉しい特典が3つつきます☆
この素敵にすぎる叢書の世界をさらに広く、さらに深く、多くの方々にお楽しみいただけることができたらば、今回のフェアに携わった関係者一同、これ以上の喜びはありません!!
■期間中、〈ルリユール叢書〉をお買い上げの皆さまへの特典・その1
3月4日(土)13時〜15時、本は人生のおやつです!!店内にて開催される〈ルリユール叢書〉編集者・中村健太郎さんのトークイベントにご招待いたします!
ゲストに『ニルス・リューネ』の翻訳者・奥山裕介さんをお迎えいたします☆
※3月3日(金)までにお買い上げの方に限ります。先着順、定員は15名です。
ご参加の方は、自力で当店までお越しくださいませ。
もしくは、
3月15日(水)〜25日(土)の間、上記トークイベントの内容をYouTubeにて限定配信いたします。その配信にご招待します。
※3月21日(火)までにお買い上げの方に限ります。配信U R Lは追ってご連絡いたします。
【荒天(特に大雪による)などの場合、やむなくトークイベントが延期or中止になることがあります。予めご了承くださいませ。】
※配信協力:ちくわや撮影部さん
■期間中、〈ルリユール叢書〉をお買い上げの皆さまへの特典・その2
お買い上げくださった〈ルリユール叢書〉の翻訳者さんからのメッセージが掲載されている「〈ルリユール叢書〉編集者さんと訳者さんから」をお渡し、あるいは同封させていただきます。
「〈ルリユール叢書〉編集者さんと訳者さんから」は、vol.1〜11まで11枚あります。vol.1〜11のそれぞれに、各〈ルリユール叢書〉の翻訳者さんからのメッセージが、刊行順に3名or4名分掲載されていますので、該当「vol.」のものを、お渡しあるいは同封いたします。
■期間中、〈ルリユール叢書〉をお買い上げの皆さまへの特典・その3
編集者・中村健太郎さんor翻訳者・奥山裕介さんに、ご質問いただけます! 「お名前・ご連絡先(メールアドレス)・ご質問」を明記の上、当店H Pの「お問い合わせフォーム」に、3月14日(火)までにお送りください。いただいたご質問は、トークイベント、もしくは当店を経由したメールにて、3月末までの間に回答いたします☆
編集について、作品について、はたまた翻訳について等、日頃気になるあのことやこのことを、ぜひこの機会にお二方に聞いてみてくださーい!
※ご質問をお送りいただいたのち、3日以内に当店からの「質問の受付・完了メール」が届かない場合には、お手数ですが当店営業日に079-660-7472にお電話ください。
何卒よろしくお願いいたします☆★☆
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fukagawakaidan · 6 months ago
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【深川お化け縁日2024 秋の陣】出店者一覧
出店者一覧(順不同・敬称略) 最終更新日:7月20日 12:00
**パフォーマンス** ● 恐怖紙芝居の〇〇一味 ● 妖怪プロジェクト ● アメノシズ
**出店** ● ALBA-DOLL ● 古今怪奇刊行会 ● ���久庵 ● 鵺鵼(小林義和・ar=ma) ● 招き ● Elfrog工房 ● Kikizte ● 海月堂 ● A⛤H Handmade ● 朱狐屋 ● AtelierAnge ● ストレイ・シープ ● 妖毛thethe & 幻妖商会 ● うそうそ時の座敷ねこ堂 ● わやぶく道 ● ことりの双樹(こかとり堂・双樹の庭) ● ヒカリトイズ ● BeːinG ● meRry ● 日向庵 ● 玩具戯邪縷歩縷 ● 怪作戦 ● 十里百 ● 小間物処 つくも堂 ● 変幻堂 ● しげおか秀満 ● 深川猫 近堂 ● 消しゴムはんこ・小梅 ● 型染工房紗希 ● bakè latte ● お化け友の会/お化けと生活舎 ● おまめこぞう本舗 田中良平 ● amibozu & かえるや ● 妖茸堂 ● shogo balloon ● 梅桃屋&ぐるりん雑貨店 ● なあぷん堂 ● 書肆鯖 ● 魔女のタロット占い ● オリチャ占い ● 田巻屋 ● いわんだまりや ● サッカール ● 鴻利 ● 忍者パスタ
**委託** ● あやかしの杜 ● 狐々贔屓 ● 怪人ふくふく ● ainsel
出店者の皆さまには8月10日までに案内のメールを送信いたしますので、確認をよろしくお願いいたします。
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nekotubuyaki-blog-blog · 1 year ago
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今週の入手本(1104〜1110)
『ビーバー:世界を救う可愛すぎる生物』(ベン・ゴールドファーブ著/木高恵子訳/草思社/Kindle版)
『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』(川本直著/文庫版解説:若島正/ロゴ・表紙デザイン:粟津潔/本文・カバーフォーマット:佐々木暁/カバー装幀:大島依提亜/カバー装画:宇野亞喜良/帯文:魔夜峰央/河出文庫)
『銀河叢書 ゴンゾオ叔父』(小沼丹著/解説:中村明/装幀:緒方修一/幻戯書房)
『駅前旅館』(井伏鱒二著/解説:池内紀/カバー装画・文字:峰岸達/新潮文庫)
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mayamiyamaillustration · 2 years ago
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20年前と小学生の頃の私の妖精画。
アイルランドの妖精の分類は、主にThe Sociable Fairies*The Trooping Fairies(仲間と一緒にいる妖精たち=比較的温和)とThe Solitary Fairies (ひとり暮らしの妖精たち=無情、陰気で恐ろしい、邪悪)とされ、後者を描いていたと思われる。
エルフ系統の妖精をピクルスにする無情なゴブリン(? Far Darringファー・ジャルグ*赤い服を着た男の意味→性悪の悪戯者。邪悪。悪魔を見させる力を持つ。分類中とりわけ無骨とされる。)を描いた20代は、とらえどころはまずまずだったと思う。
装丁センスは皆無だが、天狗と妖精を仲間にしたあたり、小学生ながらまずまず冴えていた。
ちなみに、妖精は、「妖精」と呼ばれることを忌み嫌い、「お隣さん」「紳士たちジェントリー*Gently 異境の人々の意味もある)、Good People, Good Neighbor=ディナ・マッハ”小さな人々“(ウィー・フォーク)と別名で呼ばれる。
※参考文献:⚫︎「妖精とその仲間たち」井村君江著/1992/河出書房新社 ⚫︎「妖精Who‘s Who」/キャサリン・M・ブリッグズ著/1990/筑摩書房 ⚫︎「妖精辞典」キャサリン・M・ブリッグズ著/1992/富山房 ⚫︎「幻想動物辞典」草野巧編/1997/新紀元社 ⚫︎「彼らと僕ら。ー妖精紳士録ー」高畑吉男著/2022/銀河企画
My fairy illustration from 20 years ago and when I was in an elementary school.
Fairies in Ireland are mainly classified as The Sociable Fairies*The Trooping Fairies (fairies with friends = relatively gentle) and The Solitary Fairies (fairies living alone = heartless, gloomy, frightening, evil), seems to have drawn the latter.
A heartless goblin that pickles elven fairies .) I was the twenties who drew .) were also not so bad catching.
Although I had no sense of binding books, I think I was reasonably clear even though I was an elementary school student when I made friends with a tengu and a fairy of the mushroom.
By the way, fairies hate to be called "fairy", "neighbors", "gentlemen Gently" (also meaning people from foreign countries), Good People, Good Neighbor = Dina Mach "little people" (Wee) fork).
* References: ⚫︎ "Fairies and Their Friends" Kimie Imura / 1992 / Kawade Shobo Shinsha ⚫︎ "Fairy Who's Who" / Catherine M. Briggs / 1990 / Chikuma Shobo ⚫︎ "Fairy Dictionary"Catherine M. Briggs / 1992 /Fuzanbo ⚫︎ "Fantasy Animal Dictionary" Takumi Kusano/1997/Shinkigensha⚫︎”They and UsーThe Fairies Social Registerー“ Takahata Yoshio Aki-Tadhg/2022/Galaxy Plan Inc.
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honyakusho · 18 days ago
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2024年12月24日に発売予定の翻訳書
12月24日(火)には18点の翻訳書が発売予定です。
バロック音楽の基礎知識
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カール・カイザー/著 白井美穂/翻訳
アルファベータブックス
信頼と不信の哲学入門
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キャサリン・ホーリー/著 稲岡大志/翻訳 杉本俊介/翻訳
岩波書店
報いのウィル
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カリン・スローター/著 田辺千幸/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
7人殺される
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周浩暉/著 阿井幸作/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
OHTANI’S JOURNEY 大谷翔平 世界一への全軌跡
Los Angeles Times/編集 児島修/翻訳
サンマーク出版
聖ボナヴェントゥラ著作選集
ボナヴェントゥラ/著 フランシスコ会日本管区/監修 小高毅/編集・翻訳
教文館
ギリシャ語通訳
コナン・ドイル/著 小林司/翻訳 東山あかね/翻訳 猫野クロ/イラスト
金の星社
アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版 シナリオ集 運命の森+火吹山の魔法使い
ブレット・スコーフィールド/著 スティーブ・ジャクソン/企画・原案 イアン・リビングストン/企画・原案 安田均/監修 こあらだまり/翻訳 柘植めぐみ/翻訳
新紀元社
チャーチ・レディの秘密の生活
ディーシャ・フィルヨー/著 押野素子/翻訳
勁草書房
ナルニア国物語2 カスピアン王子と魔法の角笛
C・S・ルイス/著 小澤身和子/翻訳
新潮社
戦車兵の栄光 : マチルダ単騎行
コリン・フォーブス/著 村上和久/翻訳
新潮社
UXライティングというビジネス : できるUXライターは「コピーを書く」だけじゃない! ビジネス目標の整理、成果の測定、社内のプロセスづくりまでをも網羅
Yael Ben-David/著 奥泉直子/翻訳 池田茉莉花/翻訳 UX DAYS PUBLISHING/監修・翻訳
マイナビ出版
レペルトワール
ミシェル・ビュトール/著 石橋正孝/監修・翻訳
幻戯書房
ユダヤ人の女たち
マックス・ブロート/著 中村寿/翻訳
幻戯書房
エントロピーと多様性の数理
Tom Leinster/原著 春名太一/翻訳
森北出版
ワンダードッグ 人に寄り添う犬たち : 日本初のファシリティドッグ“ベイリー”とその仲間たちの物語
モーリーン・マウラー/原著 ジェナ・ベントン/原著 特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ/監修・翻訳 齋藤めぐみ/翻訳
緑書房
TOUCH/タッチ
オラフ・オラフソン/著 川野靖子/翻訳
早川書房
第二次世界大戦の日本の航空機 大図鑑
トーマス・ニューディック/著 源田孝/監修・翻訳
ニュートンプレス
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yfxif · 1 month ago
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2024.05日記
2024/05/03.04
03
妹と父が祖母の家に行ったので、母と寿司へ。推しの子とコラボしていて、コラボメニューが美味しそうだったので注文するとむきむきのゆるキャラのシールが当たった。YouTuberらしい。
04
スマホを購入してポケモンGoにハマってい��叔母とみなとみらいへ。海の匂いをかぎながら、ひたすらスポットをくるくる回したり、ポケモンを捕まえてレベルが1上がった。叔母の住む団地には何人かのポケモンGOプレイヤーがいるけれど、積極的にプレイしているのは叔母とむさのこうじというプレイヤーらしい。それで、夜な夜な互いに陣地を奪い合ってはポケモンの名前で会話をしているらしい。(もう寝るよ、と言いたいときはスリープという名のポケモンを配置する)
2024/05/05
サマーカーディガンを買いにearth music&ecologyとsm2へ。白いカーディガンを見比べて、いったん持ち帰り。
2024/05/06
最後の休みなのでどこにもゆかずたくさん食べる。MOWのマスカット、チョコパイ、オレンジピールパン、ハンバーグ、ベリーとくるみのパン、オレンジ、羊羹。竹村和子『愛について』を読む。
2024/05/07
指示のとおりに資料を出すと「ありがとうございます」と言われ、このひとありがとうとか言うんだと思っていたら、あとあと「なんかいきなり渡された」と影で言っているのをうっかり聞き、真に受けても仕方がないのにまっとうにショックを受けてしまった。
2024/05/08
昨日のことで吹っ切れて今日はスーツっぽい私服で出社し、特に問題なし。抱き合わせのように仕事をすることになったひとは全く仕事をせず、私が十数個作るものを1.5個しか作らずにスマホをいじっていて一日なにをしていたの?と思う。わたしは時間を忘れてもくもくと作業するほうが楽だが、そうでないひとなのだろう。大胆にさぼるわりにすごく低姿勢なひとで、帰り道には歩き煙草をしていてやはり大胆だった。気持わかるな。
帰りは雨が降っていて、朝よりも寒かった。the lost child、エルピシアの魔剣少女、風のクロノア1.2をカートに入れて悩む。
2024/05/09
馬鹿げた理由で残業。ちょうど愛用の眼鏡もなくしてしまっていて、もう帰りにブラウンの眼鏡を買ってしまおうかと自棄になっていたがなんとか帰宅して、気合でさがす。洗面所の棚の上にあった。今まで洗い物をしたくないという理由で割り箸を使っていたが、お弁当を作り始めてみれば毎日お弁当箱を洗うことになっているので(ブロッコリーの臭いが強すぎる)箸を買ってしまおうかと思う。
2024/05/10
おまえが考えなければ意味がない、というスタンスで��き放された仕事は、考えてもわからず泣きつくと「これは難しいなあ」といわれほぼずるのような形の解決へ誘導された。仕事についてはAに聞くのがもっとも早いが、Aにばかり聞いているとBの反感を買うので、いったんCに聞き、Cがわりと大きめの声で「Aに聞きましょう!」と言うのをBに聞かせてからAへ尋ねるというのを毎回している。帰りは寄り道したがとくになにもなく。ハーゲンダッツの抹茶ブラウニーを買って、食べた。
2024/05/11
突然思い立ち前髪カットへゆく。担当は新人らしいひとで自分で切ったら前髪がばらばらでという話に「そうですね」と言われたり、足をついたまま椅子を回転されたりする。前髪の出来はふつうによいのでアンケートはよく見ずすべての項目で星5をつけておいた。接客業大変そう。カラオケで1時間うたったあとナイスクラップで明日のためのパンプスを買い、同じビルのSABONで母の日のギフトを買う。ギフトが10000円で、11000円以上の購入でノベルティがつくとのことだったので、憎い商売とおもいながらちいさなボディソープを購入。それから別で3ヶ月以内に購入したひとへのノベルティもつけてもらい、なんだかんだ自分のお風呂セットも豊かになった。
2024/05/12
あたまにきらきらをつけてゲームのイベントへ。舞台のうえではキャラクターの域を超えて観客に影響をおよぼそうとする(たとえばアドリブ)演技があり、そこがフィクションの域を越えた場所であることをつよくかんじた。あとは終始声優がわちゃわちゃしていて、必要ないところでも楽しそうにしているひとというのをひさびさにみた。記念にランダムのグッズを買って、ついでに近場で和三盆とメレンゲ、クッキー、飴を買って帰宅。風のクロノアを少しプレイ。
2024/05/13
朝起きるとスマホの充電がなく、外は大雨で30分遅刻して出社。ほかのひとびとも今日出社するのはたいへんだったようで、30遅刻したにもかかわらずチームでは自分ひとりしかいなかった。仕事はなにごともなくおわり、ブリの刺身を買って帰宅。本屋にも寄ったが、もうすっかりスピリュアル系の棚が確立されてしまい、欲しいジャンルもあまり入荷されず。とくに買うものもなく帰宅。大田洋子『屍の街 半人間』、水沢なお『うみみたい』を読んでいる。
2024/05/14
任天堂の株が上がっている!ありがとう。
2024/05/15
なんだかやってもやっても終わらない仕事だったので1時間ほど残業していたら「水を差す用で悪いのですがそんなに頑張らな��ても大丈夫です」と言われてしまい、お気遣いいただいたのはわかっているがとてつもなくはずかしく、わたしってがんばっちゃってるひとだったのだろうかと情けないきもちになりながらとぼとぼ帰宅。帰りのバスの運転手はとても元気に話していてすこしうるさい。
周りの人が仕事をさぼりがちなので真面目にしているのがばかみたいと思うものの、仕事をさぼるとしたら1.人間関係の整備に手を抜き顰蹙を買う 2.さぼっても大丈夫な人間関係を整備する のどちらかの努力が必要になるだろう。どちらも得意ではないので、やっぱり真面目に行き、真面目にするってばかばかしいかもと思いながら真面目にし続ける努力を選ぶしかない。仕事は嫌いではないし、ひともきっと悪くはないからまあよい。
(純粋なる手つかずの哀しみとしてのこども、それは人間)
2024/05/16
やってもやっても終わらない仕事をやっていく。おそらく同年次で、ふたりで期限までに終わらせてくださいといったふうにいっしょに仕事を振られているひとは毎日遅刻しては寝ているのでわたしの負担が大きくなっているが、他人の目があるなか負担が大きいというのは被害者意識の強いわたしにとって半分ご褒美のような状況なのでやはり生き生き残業したりしている。資格試験が近いのでゲームはしばらくお預けで過去問を解く。
2024/05/17
Fとサラダパスタを食べる。疲れてうまくはなせない。
2024/05/18
神保町のブックフリマへ。いちばんの目当てであった幻戯書房の売り場をなんとか見つけ『子供時代』をかったあと、白水社へ向かうと知り合い同士のたまり場のようになっていてひるむ。いろいろみて、青土社へ行くと買っていった読者のことを別に悪い言いようではないがあれこれ話していて、なにごとにおいてもひとに認知されることが苦手なのでそのまま逃げ帰り、なんだかどうでも良くなって2時間カラオケののち帰った。帰りは道に迷った挙げ句偶然御茶ノ水からかえることになったが、こちらの道のほうが500円くらい浮くことを知る。それからTwitterを見ていたら未知谷へ行きたくなり、明日も行くことをきめた。
2024/05/19
予定通りふたたびブックフリマへ。未知谷で3冊、現代思想を2冊、白水社で6冊買う。一冊一冊はおそらくAmazonで買ったりしたほうが安く昨日もそれで買い渋ったが、すぐに読めないハードカバーの長編小説はこういうときでないと買わないだろうと購入。店内も昨日よりは空いていて、社員の子どもが入っては可愛がられている以外は静かで良かった。昨日は偶然そういう時間だったみたい。1時間後に訳者のサイン会があるとのことだったが、サイン自体にあまり興味がないので待たずに帰った。あとは青土社リベンジを果たすことができた、とはいう���のの、雑誌を買ったときお釣りをくれた方の男性が、雑誌を渡す若い女性を指差し「(わたしの買った)2冊ともこの子が作ったんですよ!」と言い、反射的にやっぱむり!と思った。思い返せば自分の編集した本をピンポイントで2冊買う客が居たら嬉しかったろうし、そう思うと「大切に読みます」くらい言いたかった気持ちもある。でもやっぱ交流むり!
2024/05/22
吉本隆明が宮沢賢治についてあれこれ話している本を読む。楽しみにしていた予定がキャンセルになり無になっていたけれど仕事おわりに行けることになったという連絡が来ていた。→やっぱりいけないとのこと。
2024/05/23
夢。とつぜん起きた爆発に巻き込まれて通学中の子供が火だるまになり、別の子どもが炎の移った衣服を叩いて助けようとしていて、目を離したら濁流にみんな流されて溺れてしんでいった/優しくていつも甘えている上司にとつぜん思い上がるなと怒鳴ら��声が出なくなるまで土下座して謝る/カラスの群れに気づくと白い鳥がまじりはじめ、白いカラスは更なる不吉の予兆といわれる/脚力だけで跳躍
評価面談。とくに問題なさそうと言われるので、周りの環境の劣悪さをはなして頑張ってるんですという話をした。
2024/05/24
他人に巻き込まれて残業。もともと残業する予定だったからいいけれど。ひきつづき吉本隆明が宮沢賢治についてあれこれ話している本を読む。
2024/05/25
歯医者の予定だったが、駅についたところで財布と保険証、会員証を忘れていることがわかりキャンセルし代わりにカラオケで2時間過ごした。ワンドリンク制を選ぶとすこしまえからQRコードで支払うようになっていて、杏仁フロートを頼む。ひとくち飲むと、あまり混ぜていないのかしたのほうがすっぱかった。
2024/05/26
用もなくショッピングモールへいき、レトロガールの週末セールを眺める。会社に可愛い服はきて行けないというのに万が一会社に好きな服で行けるようになったら、と仮定して会社に行くための可愛い服を見て、現実に目を覚ますのをくりかえした。ブルーベリーのチーズケーキをたべたが、甘くてチーズの味がわからない。
2024/05/28
台風ということで夜の風はかなり強かった。昔、台風の日、友人に家が壊れるのが怖いと言ったら「家なめんな」と返されたことがある。その友人はすでにメンバーがいませんになっているけれど、風のつよい日のたびに思い出す。ふつうに会社へいき、仕事をした家なめんなの日。
2024/05/29
Aが「影で(仕事のことを)愚痴っていた」というのをBから聞き、内容の予想もつかないけれどなんとなくいやな想像をして予防線を張っておく。だから世の中のひとたちは大抵よいひと。仕事の帰りに橋本秀幸のodorikoを聞きながら雑貨屋とUNIQLOを回ると、世の中にはかわいくてファンシーなものがあってすばらしいという気になる。たとえばマーガレットのような花のついたヘアクリップ、半円の、スイカやキウイのように色づけされたヘアクリップ。服はきれいめの方がよい。むねの左右にギャザーの入ったシャツ、チェックのシャツ、無地のてろてろのシャツ。
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k-240 · 3 months ago
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目の前でかけがえのないものが失われるという切迫がありながらそれに対して自分はなすすべがないと思ったときぼくは無性に写真が撮りたくなる。
鈴木了二(2016)「建築と書物」潮田登久子『みすず書房旧社屋』幻戯書房
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nagaihiru-lineup · 4 months ago
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1.古本/町田康『記憶の盆をどり』/講談社/¥900 2.古本/町田康『常識の路上』/幻戯書房/¥800
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bearbench-3bun4 · 6 months ago
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「虚無への供物」中井英夫 1141
第一章
14透明人間の呟き 01
目白の“ロバータ”っていう喫茶店での続きです。
やはり、 久生は、風呂場に隠れていた人が犯人だと考えているようです。 しかも、 藍ちゃんも同じ意見らしいです。 藤木田は、 外部犯行説みたいです。
で、 亜利夫たちが電話をかけに行ってる間の様子を藤木田に確認します。 本人が、口裏を合わせたと言われればそれまでと前置きしますが、 だからなおのこと、正しいのだと言うことなんでしょう。 でないと、フェアではないですからね。
藤木田は、 もう一つの出入り口の鎌錠が開いてないこと、 カンフルを用意してきた背後の橙二郎のこと、 それに、呆然としてた爺やのことを確認したことを話します。
それから、 橙二郎が福寿草を煎じろと言いつけたのが、不審だったので、 藤木田はわざと、橙二郎から見えない位置に移動して、橙二郎の様子を探ったそうです。 すると、橙二郎が何か呟いたあと廊下へ出た気配だがしたので、 風呂場を覗き込んでみたがどこにも変わったようすはなかったそうです。
その後、橙二郎のあとを追って見ると、入れ違いに二階から降りてくる爺やがいたので、 爺やへ風呂場を見張るように言いつけたのです。 たしかに、この間、一分くらいは、風呂場に誰もいない状況があったとのこと。
藤木田が風呂場に戻ってみると、あの紅い毬が死体の傍に濡れて転がっていた。
そこまで聞いて、 久生は逃げ道を作ってやったと、風呂場に隠れていた犯人がその間に逃げ出したと言いたそうです。
藤木田は、自分の汚点になるとでも思ったのか、あるいは、犯行の方法を思いつてるのか、 皆が一斉にのぞき込む以前に死亡していたことだけは間違いないと、 自分に言い聞かせるよう繰り返しています。
で、橙二郎に関しては、 その間も、しきりに緑司のいる産院へ電話をしなければと真顔で言っていたという。
不思議な行動ですね。 橙二郎が犯人だとすると、一体何のための行動なのか?
藤木田に説得された橙二郎は、 結局二階へ上がって、何やらやっていたということで、 そのまま、 亜利夫たちが帰ってくるまで浴室と二階とを等分にみやりながらまっていたそうです。
ところで、橙二郎が『福寿草が駄目なら麝香(じゃこう)で』といってますが、 福寿草も麝香も強心の効能があるみたいですから、 この点だけ見ると、本当に橙二郎は紅司の心配をしていたのかもしれませんね。
直った電話で産院の緑司が元気なことを確かめた橙二郎が 先程までの奇妙な行動を説明します。 紅司君の脈がないことは判ったし、背中の十字のミミズ腫れをみたとき、 緑司が生まれたときの様子を思い出し、急に心配になった。 どうしても安否を確かめたくなった。 とのことです。
その当時の帝王切開は、十字に切ってたのでしょうか? 縦か横に切ればいいような気がします。
ところで、 紅司の背中のミミズ腫れのことを『赤い十字架』と表現していますが、 その後、『紅い十字架』という表現もあります。 どういう意味なんでしょうか? 橙二郎が、それほど慌てていたということでも表しているのか、 それとも、何かの伏線でしょうか?
橙二郎は、産院へ逃げ帰って目白へは顔をみせなくなります。 藤木田はそのことでも、不平不満を並べますが、 その中で、橙二郎の姉にあたる広島で死んだ朱美という人物が出てきます。 なんだか、わざとらしい登場の仕方ですね。
亜利夫が橙二郎が“赤ん坊”と口走ったのを確認しますが、 それは、 例の紅い毬を見つけてそれを赤ん坊みたいに錯覚したのでは? といいますね。 特異な状況なのだから仕方ないかもしれませんが、 ちょっと無理があるかもしれません。
久生は、 背中の十字架をつけたであろう与太者のことを確認します。 藍ちゃんが一度電話を受けたことがあるというので、 与太者は実在しているのかもしれません。 紅司も否定はしていませんしね。
アイヌも最近は現れていないし、 与太者のことも忘れてもいいのではないかと 久生はバッサリ切り捨てます。
藤木田は、橙二郎が二階から降りてきてないことは確実だと言います。
亜利夫は 紅司が自ら風呂場にこもって鍵をかけたあと心臓に変��をきたしたことも考えられないかといいます。 それを藤木田は、過去の探偵小説に先例があるとバッサリ切り捨てます。 おいおいって感じですね。
で、藤木田の提案で、来年の一月六日に、“アラビク”で推理比べをすることになります。
藤木田は、四人を小説に登場する探偵に例えますね。 亜利夫をワトスン役、久生は、ミスホームズ、 と、ここまではシャーロック・ホームズだとわかるのですが、 藍ちゃんをモーリス・ルブラン作の奇巌城にでてくる高校生探偵イジドール・ボートルレに例えようとします。 単に高校生ということからなんでしょうけど、このあたりはなかなか難しいです。 でも、結局は、小柄ということでエルキュール・ポアロに例えますね。 ポアロは、アガサ・クリスティ作の小説に登場する探偵ですね。 こちらのほうが馴染みがあります。
自分自身は、通称H・Mなので、ヘンリー・メリヴェール卿に例えます。 このヘンリー・メリヴェールは、カーター・ディクスン(ジョン・ディクスン・カーの別名義)作の推理小説に登場する探偵です。
推理比べの参考にと、今までに出た大きないトリックはたいてい載っている1954年6月に早川書房から出版された江戸川乱歩の「続・幻影城(げんえいじょう)」を取り出します。 ここに書いてあるように空色のカバーなのかどうかはわかりませんが、確かに発行されているみたいですね。
なんと、乱歩が「化人幻戯(けにんげんぎ)」と「影男」を書き始めたと書いてます。 さすが乱歩は人気ありますね。
この作家も、乱歩が好きなんでしょうね。 それとも、それぞれ主人公と言える人物は、「化人幻戯」は、サイコパス、「影男」は犯罪者なので、 そのあたりを示唆したかったのでしょうか?
そして、このあと、四人四様の犯行方法を指摘するようです。
つづく。
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findareading · 2 years ago
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片手にしおりを挟み込むようにして器用に読み進んでいることも、読書にふだんから慣れ親しんでいることをうかがわせる。そのしおりは何も印刷されていない半透明の薄いアクリル製のようだ。あらかじめ本に挿まれていた、版元がサービスで付けたそれというよりも、女性が常用している特別あつらえものという感じ。時折、しおりから離れた手がアゴに行き、軽く添えられる。その仕草にもデリケートな味わいがある。まるで京都・広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像のよう。
臼田捷治著『邂逅の孤独──地霊と失われたものと』(2022年11月、幻戯書房)
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mninmt · 1 year ago
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ロブ=グリエの映画について
いつだったかヌーヴォー・ロマンについて冊子を作ろうと思っているという話を友人から持ち掛けられて、それならロブ=グリエの映画なら観ているからと紹介文を書いたのだが、残念ながらその件はなくなってしまったらしい。せっかく書いた文章なので載せたい。
『不滅の女』 "L'immortelle"(1963)
異国情緒溢れる音楽と叫び声から始まる、その時点で、なんだかこれからすごい映画が観られそうだ!と思わずにはいられない。メーキャップのはっきりとした、目力の強い女性(フランソワーズ・ブリヨン)が、まるで“死んでいる”かのように横たわっている。窓際でじっと外を眺める主人公(ジャック・ドニオル=ヴァルク)は終始、目に光がない。斜めの線が意識されたような完璧な構図と柱のように立っている人々。またその人々の視線を再現するようにゆっくりと横移動するカメラワーク。何度も同じようなシー��が差し込まれるように思えるが、すこしずつどこかが異なっている。ジャンプカットで物語はどんどん進んでいくが、時系列はめちゃくちゃで、今まで観ていたものはいったいなんだったんだろう…?と思わず頭を抱えてしまう。響く虫の鳴き声と、船のエンジンの連続音が不穏な雰囲気をかもしだす。“夢に見たトルコ”で起こしてしまった事故に憑りつかれ、妄想を続けるうちに、主人公は女性と自分を重ねてしまったようだ。終盤、窓にカメラが近づくシーンで、主人公の視線(主観)がはじめてカメラワークによってあらわされ、映画を観ている私たちも主人公と重なり、もうこの物語から引き返せなくなるのだ。
“夢に見たトルコ”…ボイスオーバー「夢に見たトルコで 異邦人のあなたはさまよう 偽の監獄や要塞に デタラメな物語 もう引き返せない 逃げようとしても偽の船しかない」
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『ヨーロッパ横断特急』 "Trans-Europ-Express"(1966)
題名の通り、ヨーロッパ横断特急に乗り込んだ一行は、同じく乗り込んでいたジャン=ルイ・トランティニャン(本人役)を主人公に、ノワールものの映画製作をしようと、脚本をレコーダーに録音している。あらすじはさておき(!)、こんな格好いい映画を作れるんな���、こういうのずっと作ってよ!と思ってしまうほどには、ロブ=グリエ節が他の作��より薄め(といっても拘束趣味は全開)である。前作の『不滅の女』の東方正教会やモスク、脚本した『去年マリエンバートで』での洋館のように、本作においてもそういった、ある種、荘厳なロケーションでのシーンはお得意であるものの、匿ってくれるギャルソン(ジェラール・パラプラ)の部屋の窓や、パリ東駅というロケーションは、少年らしさ(また少年たちの憧れる格好よさ)を感じられて楽しい。ラストのチャーミングさも必見。
以下余談ーー。
昔は一番つまんないよ~と思っていた作品であったものの今は一番面白いと思えて、当時ロブ=グリエの映画作品の物語の大半を、わけが分からないまま、だけれど映像のアバンギャルドさやエロティックな雰囲気を楽しんでいたものを改めて観て、しつこいくらいに趣味嗜好を提示され、こんなんばっかやな…と思っていた時に、本作はその"ロブ=グリエ節"が抑えられていて、より一層のこと面白く観たのだった。
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『嘘をつく男』 "L'homme qui ment"(1968)
同時期の日本には、勅使河原宏が阿部公房の小説を映画化したものがいくつかある。それらの音楽(ほぼ効果音といってもよい)は現代作曲家の武満徹が担当しており、非常に特徴的なものとなっているが、ロブ=グリエの作品の多くもミシェル・ファノという作曲家が担当していて、その音響効果が非常に絶大なものになっているという点で、勅使河原の作品たちを思い起こされた。また酒場のシーンで、客達がカメラ目線で次々と話す様子は、ドライヤーの『裁かるゝジャンヌ』を彷彿とさせ、常連の集まるただの酒場が裁判所にでもなったかのように、観ているこちらを緊張させる。そして女性をオブジェクトとしてしか扱わない、(ロブ=グリエの)大好きな目隠し遊びのシーンの長いこと長いこと…。
本作品は主人公(ジャン=ルイ・トランティニャン)の語りで映画が進んでいくので、他の作品よりも物語がわかりやすくはあるのだが、タイトル通り“噓をつく男”の語りであるので、わかったところで…という気持ちにはなってしまう。村の英雄ジャン・ロバン(Ivan Mistrík)の親友ボリス・ヴァリサだと彼は名乗るが、誰も信じちゃいないし、映画の途中でボリスの名の書かれた墓が写っていたり、知っているはずの医者に、初めましてと言ったりする始末。噓をつきながら多くを語るこの男が、結局のところ何者なのかはまったく明かされず、最初のシーンへ戻るこの無理矢理な円環構造に驚くだろう。
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『エデン、その後』 "L'Eden et après"(1971)
始まった瞬間から赤青白…とゴダールの『メイド・イン・USA』や、小津の『お早よう』のように、色彩による主張が眩しい。主人公のヴィオレット(カトリーヌ・ジュールダン)のファッションが絶妙で、白シャツに黒のセーター、プリーツのミニスカートは赤を選びたくなりそうなところを青に。それと黒のロングブーツを履きこなしており、非常に可愛く参考にしたいのだが、ペイズリーのサテンワンピースは、それで街歩くの!?とびっくりするくらい短い。下着の赤い色にも、この作品の色のこだわりを感じるほどだ。そして、ギャルソンでさえも迷いそうな、モンドリアンルックで、幾何学的な雰囲気のカフェ、エデン。ヴィオレットたち演劇サークルはここをたまり場にしており、センセーショナルだが、ほぼお遊びのような演技をして暇をつぶしている。もしこんなお洒落な(可笑しな)コンセプトのカフェがあるのなら(襖みたいに壁が稼働したり、鏡張りだったり)、絶対にくつろげる雰囲気ではないので、演劇を試みるにはもってこいの場所だろうから、たまり場になるのもわかる。中盤の巨大工場のシーンも含め、観ているうちに『エデン、その後』“ごっこ”がしたくなっていく(!)。
一体、どこからどこまでが彼らの妄想で、演劇の設定で、“幻覚”なのか“現実”なのか、果たして謎の男Duchemin(ピエール・ジマー)の生死は?作中の「エデンとその客達がそう見せかけているのか」という言葉通り、あれさっきみたような…というシーンやモチーフが回収されていきラストに繋がる、ミステリー/ドラッグ/トリップムービー!
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『快楽の漸進的横滑り』 "Glissements progressifs du plaisir"(1974)
快楽の漸進的横滑り(ぜんしんてきよこすべり)。いちばん口に出して言いたい邦題。当時はこの邦題の意味の分からなさと単語そのものが魅力的で、早く観たくて仕方がなかったものの、年代の古い順に観るくせがあり、わざと後回しに、5作品目でやっと観たとき、初っ端からロブ=グリエの大好きなモチーフたちがたたみかけられ、興奮したのを覚えている。今回改めて観ると、その露骨さには思わず笑ってしまった。“主題は割れた瓶”だという始末。他の作品にも再三使用されている、登場人物たちがカメラ目線で正面を向き、首を横に振ったのち、また正面を向くといったようなカットの他に、本作には手による表現も追加されており、その点は目新しさを感じるし、アーティスティックな画面作りには、よっ!真骨頂!と言いたくなるが、正直なところ、こんなのレズビアンもの好きの変態の妄想じゃん…!とうんざりしてしまうこともしばしば。神父(ジャン・マルタン)が気持ち悪すぎて泣けてくる。ミシェル・ロンズデール(判事)の十八番とも言える呻き声(あるいは叫び声)をあげる長回しや、みんな大好きジャン=ルイ・トランティニャン(刑事)のどんな役でもこなしている様子は見もの。“類似・繰り返し・置き換え・模倣”、とロブ=グリエの手法が抜群にきいた官能アート作品が観たい気分のときにおすすめしたい。
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『危険な戯れ』 "Le Jeu avec le feu"(1975)
美しい娘カロリナ(アニセー・アルヴィナ)との近親相姦的妄想を繰り広げながら語る父や、娼館に来る様々な客の役をこなすフィリップ・ノワレの気持ち悪さたるや…!娘のみた、いくつかの悪夢の中の一つである、太った男に身体を洗���れる夢、もはや恐怖である。出演女優たちは惜しげもなく服を脱いでいくのだが、それぞれの身体すべてがマネキン人形のように(腰から脚にかけてのラインや胸の大きさなどが)似通っていて、ロブ=グリエは、フェリーニのそれとはまったく違った美学で女性を見ていることが感じられる。
女たちの名前の書かれた寝室のドアを開けるたびに繰り広げられる、異色なプレイの数々には思わずカロリナもあんぐり。アニセー・アルヴィナのあの口元の緩さ加減はそれとして魅力的である。コメディタッチなシーンも多く楽しいし、広い館のたくさんのドアをすべて開けてみせてくれる、ゲーム脳的思考の持ち主(RPGではアイテム入手のために、部屋という部屋すべてを確認しないと気が済まないたち)には嬉しい映画。
『囚われの美女』 "La Belle Captive"(1983)
ルネ・マグリットの同名作品『囚われの美女』を含む作品群に着想を得つつ、ロブ=グリエの好きなモチーフやテーマがたくさん組み込まれている本作品を観ていると、ロブ=グリエって本当にこういうの好きだね…!と思わざるを得ない。割れたガラスと赤い血(のような液体)や、拘束された女性が横たわる姿は必ずといっていいほど出てくる、もはやそれらを待ち望んでさえいる。
主人公のヴァルテル(ダニエル・メスギッシュ)が、聴く音楽といえば、シューベルトの『死と乙女』か“とらわれの女”だと言うのだが、劇中に流れている曲は弦楽四重奏曲第15番で、『死と乙女』と呼ばれている曲(弦楽四重奏曲第14番)とは異なるし、“とらわれの女”という曲も実在しない(弦楽四重奏曲第15番が“とらわれの女”と呼ばれているといった話も聞いたことがない)。また『囚われの女』といえばプルーストの『失われた時を求めて』の第5篇だが、これも劇中でプルーストの名前は出されるものの、この文学作品を映画化したというわけでもない。アケルマンにも『囚われの女』という作品(これはプルーストに関連する)があるが、この劇中でも、シューベルトの楽曲が使用される。こうして“囚われ���”という言葉になんらかの様々な事柄を想起し、この物語にアプローチしていこうとする自分もロブ=グリエに“囚われ”てしまっていることには間違いない…。
毎度のことながら、ラストに向けて畳み掛けるように、幾重にもかさなった構造が明かされていくのだが、この題名の通り“囚われて”いるのは美女なのだろうか?とまたしても思考が止まらない。ロブ=グリエのフェティシズムに、心霊と夢と退廃的な世界観が足され、繰り返し挟み込まれる象徴的な映像にドキ!とさせられながら楽しめる作品だ。
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nekotubuyaki-blog-blog · 16 days ago
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2024年の「おっ!」と思った本を思いつくままに(相当なもれはあるけれど)
2024年の「おっ!」と思った本を思いつくままに(相当なもれはあるけれど)
『その昔、N市では カシュニッツ短編傑作選』(マリー・ルイーゼ・カシュニッツ著/酒寄進一訳/装画:村上早/装幀:岡本歌織/東京創元社/Kindle版) 『いずれすべては海の中に』(サラ・ピンスカー著/市田泉訳/竹書房文庫/Kindle版) 『11の物語』(パトリシア・ハイスミス著/小倉多加志訳/ハヤカワ・ミステリ文庫/Kindle版) 『失われたものたちの本〈失われたものたちの本〉シリーズ』(ジョン・コナリー著/田内志文訳/創元推理文庫/Kindle版) 『カモメに飛ぶことを教えた猫』(ルイス・セブルベダ著/河野万里子訳/白水uブックス/Kindle版) 『大いなる眠り 新訳版』(レイモンド・チャンドラー著/村上春樹訳/ハヤカワ・ミステリ文庫/Kindle版) 『P+D BOOKS 夜風の縺れ』(色川武大著/『夜風の縺れ』解題:木下弦/P+D BOOKS/小学館/‪Kindle版)‬ 『恐婚』(色川武大著/文春ウェブ文庫/文藝春秋/Kindle版) 『友は野末に─九つの短編─』(色川武大著/対談:嵐山光三郎/インタビュー:色川孝子/あとがき:色川孝子/新潮社/Kindle版) 『遠景・雀・復活 色川武大短篇集』(色川武大著/講談社文芸文庫/Kindle版) 『百』(色川武大著/川村二郎解説/新潮文庫/Kindle版) 『小さな部屋│明日泣く』(色川武大著/内藤誠解説/講談社文芸文庫) 『後藤明生・電子書籍コレクション 挟み撃ち』(後藤明生著/アーリーバード・ブックス/Kindle版) 『しあわせの理由』(グレッグ・イーガン著/山岸真編、訳/ハヤカワ文庫SF/Kindle版) 『祈りの海』(グレッグ・イーガン著/山岸真編、訳/ハヤカワ文庫SF/Kindle版) 『ひとりっ子』(グレッグ・イーガン著/山岸真編、訳/早川書房/Kindle版 『モナリザ・オーヴァドライヴ』(ウィリアム・ギブスン著/黒丸尚訳/ハヤカワSF文庫/早川書房/Kindle版) 『カウント・ゼロ』(ウィリアム・ギブスン著/黒丸尚訳/ハヤカワSF文庫/早川書房/Kindle版) 『ニューロマンサー』(ウィリアム・ギブスン著/黒丸尚訳/ハヤカワSF文庫/早川書房/Kindle版) 『ソラリス』(スタニスワフ・レム著/沼野充義訳/扉デザイン:岩郷重力+N.S/ハヤカワ文庫SF/Kindle版) 『来世の記憶』(藤野可織著/装画:濱愛子/装丁:名久井直子/角川書店/Kindle版) 『ピエタとトランジ<完全版>』(藤野可織著/挿絵:松本次郎/講談社/Kindle版) 『青木きららのちょっとした冒険』(藤野可織著/講談社/Kindle版) 『芸者小夏』(舟橋聖一著/講談社文芸文庫/Kindle版) 『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』(川本直著/装幀:坂野公一+吉田友美+島﨑���則(welle design)/装画:TANAKA AZUSA/河出書房新社) 『好色五人女』(井原西鶴著/田中貴子訳、解説/装画:望月通陽/光文社古典新訳文庫/Kindle版) 『アルマジロの手─宇能鴻一郎傑作短編集─』(宇能鴻一郎著/鵜飼哲夫解説/カバー装画:九鬼匡規「吸血娘 陰 晒」/新潮文庫/Kindle版) 『姫君を喰う話 宇能鴻一郎傑作短編集』(宇能鴻一郎著/篠田節子解説/新潮文庫/Kindle版) 『私説聊斎志異』(安岡章太郎著/講談社文芸文庫/Kindle版) 『水車小屋のネネ』(津村記久子著/イラスト:北澤平祐/装幀:中嶋香織/毎日新聞出版/Kindle版) 『ベートーヴェン捏造』(かげはら史帆著/カバーイラスト・章扉イラスト:芳崎せいむ/柏書房/Kindle版) 『沢蟹まけると意志の力』(佐藤哲也著/Tamanoir/Kindle版) 『人喰い⭐︎頭の体操』(深掘骨著/表紙デザイン・ファイル作成:甲田イルミ/惑星と口笛ブックス/Kindle版) 『世紀末探偵神話 コズミック』(清涼院流水著/本文デザイン:熊谷博人/扉作成:小石沢昌宏/梗概構成:みずさわなぎさ/講談社/Kindle版) 『富士日記 上中下合本 新版』(武田百合子著/巻末エッセイ:武田泰淳、大岡昇平、しまおまほ、武田花/中公文庫/Kindle版)『西荻随筆』(坂口安吾著/青空文庫/Kindle版) 『鮎の宿』(阿川弘之著/講談社文芸文庫/Kindle版) 『春の華客/旅恋い 山川方夫名作選』(山川方夫著/川本三郎解説/年譜・「人と作品」坂上弘/講談社文芸文庫/Kindle版) 『P+D BOOKS 緑色のバス』(小沼丹著/小学館/Kindle版) 『ミス・ダニエルズの追想』(小沼丹著/巻末エッセイ:大島一彦/装幀:緒方修一/幻戯書房/銀河叢書) 『タマや』(金井美恵子著/講談社文庫) 『陽だまりの果て』(大濱普美子著/装画:武田史子「温室の図書館」(エッチング、アクアチント、二〇一七年)/装丁:大久保伸子/国書刊行会/Kindle版) 『まだ、うまく眠れない』(石田月美著/カバー画:beco+81/デザイン:観野良太/文春e-book/文藝春秋/Kindle版) 『ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者』(藤永茂著/ちくま学芸文庫/筑摩eブックス/Kindle版) 『何かが空を飛んでいる』(稲生平太郎著/国書刊行会/Kindle版) 『バッタを倒すぜ アフリカで』(前野 ウルド 浩太郎著/装幀:アラン・チャン/光文社新書/Kindle版) 『美術の物語 ポケット版』(エルンスト・H・ゴンブリッチ著/田中正之著/天野衛、大西広、奥野皐、桐山宣雄、長谷川宏、長谷川摂子、林道郎、宮腰直人訳/���出書房新社) 『人間臨終図巻 上下巻』(山田風太郎著/徳間書店) 『世界神秘学事典』(荒俣宏編/平河出版社) 『地衣類、ミニマルな抵抗』(ヴァンサン・ゾンカ著/宮林寛訳/まえがき、カバー写真:大村嘉人/序文:エマヌエーレ・コッチャ/みすず書房) 図録『特別展 はにわ』(東京国立博物館、九州国立博物館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社編集) 図録『特別展「鳥 〜ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統〜」』(日本経済新聞社、日経サイエンス編集) 『バーナード嬢曰く 1-7巻』(施川ユウキ著/一迅社/電子書籍版) 『映像研には手を出すな!1-9』(大童澄瞳著/ビッグコミックス/小学館) 『志村貴子短編集 まじわる中央感情線』(志村貴子著/河出書房新社/電子書籍版) 『青い花 全8巻』(志村貴子著/太田出版) 『放浪息子 全15巻』(志村貴子著/エンターブレイン) 『サードガール 全8巻』(西村しのぶ著/小池書院) 『ファミリー! 全11巻』(渡辺多恵子著/フラワーコミックス/小学館/電子書籍版) 『一級建築士矩子の設計思考1-3』(鬼ノ仁著/日本文芸社/電子書籍版) 『えをかくふたり1 DRAWING BUDDY』(中村一般著/ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル/小学館/電子書籍版)
注)一部、再読を含みます
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oki-haru · 1 year ago
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業の花びら ⅴ
異空間の範囲
 賢治が幻想の「異空間」を十界と同一視したのは、どのような理由からだろうか。
 十界とは、天台宗の教義における、6つの迷いの段階(地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界)と4つの悟りの境地(声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界)を合わせた、10の世界のことである。十界は、賢治の暮らす人間界も含む。人間界は、家庭や職場など人々と共有している空間だが、自分の属していない別の世界である「異空間」は、幻想・幻覚として現れる。「修羅」である賢治が修羅界に属し、賢治の周りに住む人々が人間界に属していたとするならば、幻想の「異空間」は、修羅界や彼の憧れた天上界のことかもしれない。
 本章では、第二集の心象スケッチの中から、「異空間」の幻想と思しきものをいくつかの種類にまとめ、どの世界に対応するか探っていく。
1 異空間の投影
 「一九 晴天恣意 1924, 3, 25,」下書稿(二)第一手入形には、まさに「異の空間」ということばが出てくる。冬の空に積雲が浮かび、それを「異の空間」の「白く巨きな仏頂体」「高貴な塔」と表現している。
つめたくうららかな蒼穹のはて 五輪峠の上のあたりに 白く巨きな仏頂体が立ちますと 数字につかれたわたくしの眼は ひとたびそれを異の空間の 高貴な塔とも愕ろきますが 畢竟あれは水と空気の散乱系 冬には稀な高くまばゆい積雲です とは云へそれは再考すれば やはり同じい大塔婆 いたゞき八千尺にも充ちる 光厳浄の構成です
 この「高貴な塔」とは、すなわち「塔婆」(仏舎利)だという。この幻想の「塔」は、十界の内どの世界に属するものなのだろうか。
 なお、下書稿(二)第一手入形で「五輪峠」だった場所は、その一つ前のバージョン「一九 晴天恣意(水沢臨時緯度観測所にて)1924, 3, 25,」下書稿(一)最終手入形では「種山ケ原」となっていた。種山ケ原から五輪峠というロケーションの変更は、どのような意図で行われたのだろうか。
 種山ケ原は、奥州市、気仙郡住田町、遠野市にまたがる標高600~870mの高原地帯で、藩政時代から馬の放牧地として利用されていた。別名「種山高原」とも呼ばれる。種山ケ原が舞台となった作品は多く、童話『風の又三郎』『種山ケ原』、戯曲『種山ケ原の夜』などがある。
 五輪峠は、種山ケ原から北へ約8kmほどの位置にある。賢治は実際に、岩手軽便鉄道鱒沢駅から五輪峠を経て人首方面へ進み、水沢緯度観測所、現在の国立天文台水沢VLBI観測所に向かったという。その一連の過程が、第二集の「一六 五輪峠 1924, 3, 24,」「一七 丘陵地 1924, 3, 24,」「一八 人首町 1924, 3, 25,」「一九 晴天恣意(水沢臨時緯度観測所にて)1924, 3, 25,」に収められている。
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 「一九 晴天恣意」を読み進めると、幻想の仏舎利が立った空の下には、樹やイリスが生え、石塚のあることが示される。
あの天末の青らむま下 きらゝに氷と雪とを鎧ひ 樹や石塚の数をもち (略) 斯くてひとたびこの構成は 五輪の塔と称すべく 秘奥は更に二義あって いまもその名もはゞかるべき 高貴の塔でありますので もしも誰かゞその樹を伐り あるひは塚をはたけにひらき 乃至はそこらであんまりひどくイリスの花をとりますと かういふ青く無風の日なか 見掛けはしづかに盛りあげられた あの玉髄の八雲のなかに 夢幻に人は連れ行かれ 見えない数個の手によって かゞやくそらにまっさかさまにつるされて 槍でづぶづぶ刺されたり 頭や胸を圧し潰されて 醒めてははげしい病気になると さうひとびとはいまも信じて恐れます
 そこで樹を切ったり石塚を壊して畑を作ったり、イリスの花を摘んだりすると、祟られる、あるいは罰を受けてしまうようである。夢の中で、逆さまに吊るされて槍で刺されたり、頭や胸を押し潰されたりし、夢から醒めてみると、実際に病気になってしまうのである。
 石塚には何が祀られていて、何に祟られてしまうのだろうか。現存する最初のバージョンである「一九 晴天恣意(水沢臨時緯度観測所にて)1924, 3, 25,」下書稿(一)最終手入形では、樹や石塚に「鬼神」が棲んでいる。棲んでいるという表現だが、「由緒ある」ことから、祀られていると考えても良いだろう。
古生山地の峯や尾根 盆地やすべての谷々には おのおのにみな由緒ある樹や石塚があり めいめい何か鬼神が棲むと伝へられ
 「一〇六 石塚〔日はトパーズのかけらをそゞぎ〕1924, 5, 18,」下書稿(一)第一手入形でも、樹や石塚には「鬼神」が棲んでいる。
一本の緑天蚕絨の杉の古木が 南の風に奇矯な枝をそよがせてゐる その狂ほしい塊りや房の造形は 表面立地や樹の変質によるけれども またそこに棲む古い鬼神の気癖を稟けて 三つ並んだ樹陰の赤い石塚と共に いまわれわれの所感を外れた 古い宙宇の投影である    (わたくしはなぜ立ってゐるか     立ってゐてはいけない     鏡の面にひとりの鬼神ものぞいてゐる                第一九頁) おほよそこのやうに巨大で黒緑な そんな樹神の集りを考へるなら わたくしは花巻一方里のあひだに その七箇所を数へ得る
 このような樹や石塚と鬼神の組み合わせは、「五二〇 巨杉 1925, 4, 18,」でも繰り返される。賢治は、「古い鬼神の気癖を稟けて」すなわち、鬼神の性質を授かって不思議な姿になっている樹をみて、人々の「所感」の外にある「古い宙宇」が、樹や石塚に「投影」されていると感じている。人々の感覚の外にあるため、幻想の「異空間」が投影されていると考えられる。「古い」という形容詞からは、「異空間」は空間的にだけでなく、時間的にも過去に隔てられていることもわかる。①古い、②樹、③石塚、④イリス、のある場所に「異空間」を幻視しているようである。
 段落が下げられ、丸括弧で括られた4行も重要である。「わたくし」は立っているために、水面に映る自分の姿を覗き込むことができるのだが、そこに映っていた「わたくし」の姿は「鬼神」であった。この主語が作者である賢治だとすると、「鬼神」とは「修羅」のことである。①〜④のキーワードと結びつく「異空間」は、修羅界なのだろうか。
 賢治の「修羅」は杉などの樹木に喩えられてきた。「異空間」の性質を発現する「樹神」の集う場所が、花巻には7カ所もあるという。「樹神の集り」は、「一九 晴天恣意」で言われるように「由緒ある」「古生山地」にあり、具体的には「種山ケ原」「五輪峠」などの名前を挙げることができるのかもしれない。
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honyakusho · 2 months ago
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2024年11月26日に発売予定の翻訳書
11月26日(火)には16点の翻訳書が発売予定です。
公的ケアからの養子縁組
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タルヤ・ポソ/編著 マリット・スキヴェネス/編著 ジュン・ソバーン/編著 西郷民紗/監訳 海野桂/訳
明石書店
おばあちゃんのガールフレンド
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台湾同志ホットライン協会/著 小島あつ子/翻訳
サウザンブックス社
ぶち壊し屋(下) : トランプがいたホワイトハウス2017-2021
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ピーター・ベイカー/著 スーザン・グラッサー/著 伊藤真/翻訳
白水社
中国の「天眼」FAST――世界最大の電波望遠鏡
郭紅鋒/著 松永慶子/翻訳
科学出版社東京
失われたスクラップブック
エヴァン・ダーラ/著 木原善彦/翻訳
幻戯書房
神経コーディング
Fred Rieke/著 David Warland/著 Rob DeRuyter Van Steveninck/著 ほか
森北出版
さんにんめのミトンちゃん
リンダ・ベイリー/著 ナタリア・シャロシュヴィリ/イラスト みずのゆきこ/翻訳
化学同人
[図説]韓国都市探究 : 24の街の歴史、文化から産業まで
全国地理教師の会/著 水谷幸惠/翻訳 宗実麻美/翻訳 山口裕美子/翻訳
原書房
図説古代エジプトの神々・神話百科事典
ジャン=ピエール・コルテジアーニ/著 近藤二郎/監修 近藤悠子/翻訳
原書房
限局性激痛
ソフィ・カル/著 青木真紀子/翻訳 佐野ゆか/翻訳
平凡社
米軍極秘特殊部隊 ザ・ユニット : テロの激戦地で戦い続けた隊員の手記
アダム・ガマル/著 ケリー・ケネディ/著 沖野十亜子/翻訳
原書房
地図とデータで見る宗教の世界ハンドブック
フランク・テタール/著 蔵持不三也/翻訳
原書房
世界基準の教養 for ティーンズ はじめての地理学
水野一晴/監修 清水玲奈/翻訳 ミナ・レイシー/著 ララ・ブライアン/著 サラ・ハル/著 ウェスレー・ロビンズ/イラスト
河出書房新社
英文対照 天声人語2024秋Vol.218
朝日新聞論説委員室/編集 国際発信部/翻訳
原書房
リアル・メイキング
ターニャ・M・ラーマン/著 柳澤田実/翻訳
慶應義塾大学出版会
高みをめざすアップヒルアスリートのトレーニングマニュアル
スティーブ・ハウス/著 スコット・ジョンストン/著 キリアン・ジョルネ/著 海津正彦/翻訳 山本正嘉/監修
東京新聞出版(中日新聞東京本社)
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krkwngm · 2 years ago
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手帳の話
 自分が自分のために何かしたのはいつのことだったかをすぐ忘れる。映画を観て印象的な台詞や演出を噛みしめたこと。好きな漫画や小説を読みふけったこと。その行間をたぐって文章を綴ったこと。響きの良い句歌や詩の一節を好きな色のインクで書き留めたこと。初めて見る古いもの、伝わったものを作り出した時代や人間の営みに思いを馳せたこと。美味しいものを食べたこと。誰かと会ったこと。知らない場所へ出かけたこと。いつもの場所で過ごしたこと。自分が書きたいためだけにちまちま小説を書いていること。  それらすべてが、半日もすれば幾月も幾年も昔のことに思えてしまう。美しいものはいつも遠くにあると錯覚する。写真を見てもそれがつい先週の出来事という実感��ない。昨日書き上げて公開したばかりの小説が古びて見える。そしてどうにもならない虚無に呑まれる。生きてるのになんにもできてない。なにもしてない。なにもない。  なんにもしてないしなんにもないわ、と昨年末Twitterにつぶやいたら急に数十件の通知が来て、何事かと思ったらすべてたったひとりのフォロワーさんによるRTだった。この一年で自分がツイートした映画や小説や展覧会の感想、綴った文字、創った作品、見た風景、美味しかった思い出、棚に迎えたお気に入り、それらが突然自分の目の前に流れてきた。どれも自分にとっては良い出会いだったから忘れないように撮ったり書いたりしたはずなのに、いま見てもこれは良いものだったと確信が持てるのに、今年のものだと覚えていたものは半分にも満たなかった。半年前に観た現代詩のインスタレーションの展覧会をもう3年は前のものだと思っていたのはショックだった。なんにもしてないなんにもないという虚無感はただの幻覚だった。  ではこの焼かれるような空虚はなんだ。渇きはなんだ。虚無の分際で今日を終えるのは悪だ罪だと毎夜毎夜の底に溢れる焦燥が嘘で、不眠と不安に病んで労働もできずにいる現状ばかりが嘘ではないとはどういう。
 どういう。
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 とにもかくにも、幻覚から与えられる暴力は完全に余計な苦しみである。ないものに人生を割いている場合ではない。  まず自分のために何をして何と出会って何を持ち帰ったのかを、振り返る場所が必要だった。自分で自分のツイートを遡るのは悪手だった。すべて自分のためにやっていることとはいえ、自分が良いと思ったものが多くの他人にスルーされている現実を直視する作業は事故が起こりかねない。なんにもないという幻聴が肥大化する。作業の成果が芳しくなければどうせ心が折れる。たわいもない一年分の他人の戯言からその人間にとって良い出会いだったであろうものをひとつひとつ拾って掌に乗せて見せるような、先のフォロワーさんの行いがたいへんありがたかった理由はそういうところだ。  できれば個人的な記録に留めたい。やたら遡らずとも一瞥で俯瞰できる記録がいい。一目で視界に収まる大きさと、何を書いても許される自由さと、どこに何を書くか迷わない易さと手間がかからない身近さ、短さ。「ちゃんとしてない」感が滲んでメンタルを倦ませることがないように、最低限の記録でもそこそこちゃんとして見える形式のもの。  まあ手帳だろうな、と思い至った。  手帳は毎年買っているがいかんせん使いかたがへたくそだ。年の半分までは仕事の予定や映画の公開予定日などをそこそこ書き込んでいるのだが、年末に近づくにつれ手帳を開くメンタル的余裕が死んでいく。予定やToDoは付箋に書いてデスクに貼り付けておくのが早いし終わったものから剥がして捨てていかないと終わった気がしない。平日休日寝込んで過ごして結局観に行けなかった映画の、公開予定日だけが書き込まれている手帳は視界に入るたびHPを削られる。果たせなかった予定だけ消しゴムで消したいのに同じ日付のマスに書き込んだボールペンの字がこすれて広がる。貼ってはがせるはずのシールが剥がれず醜い爪の痕が紙面に残る、紙ごと剥がれてみっともなく毛ばだつ、ここまでくるともう嫌になって自宅の床で丸まるしかない。手帳を使う才能がない。  それでいてまだ手帳かと言われるとぐうの音も出ないのだが、要は変動する予定を管理する才能がないのであって(言ってて悲しくなってきた)、確定した結果を書き留める才能はあるかもしれんのである。事実これまでノートのまとめかたが分かりやすいとか、まとめた感想がコンテンツを浴びるきっかけになったとか、プレゼンが上手いとか、ありがたいことにそっちの方面でお褒めいただいた経験は何度かあった人生である。他人から見てそこそこ得意であるらしい能力を他人ではなく自分のためだけに使う、というのはかなり贅沢なことでちょっと気が引けるけれども、人間は自分で自分を幸福にする、ないし幸福にせねばならない生き物なので、「おまえはおまえのためにこうした良いものを与えておまえをちゃんと幸福��しようとしている人間なのですよ」という事実を、ほかでもない自分自身に理解させるためには清貧など謡ってられないのである。清貧すなわち死。餓えて死にたくなくば張り切れおまえ。ここで張り切らんでどうする。
 というわけで、『結果を記録する』ための手帳を探した。B6サイズで月間と週間、どちらの予定も書き込めるタイプのもの。週間の書式はバーチカルが望ましかった。「行動記録」をつけるためだ。  鬱病で休職している職員の復帰に向けたデイケアに通っていたときは、毎日「行動記録」をつけて提出することを求められていた。行動記録とは認知行動療法の一環で、その日の行動によってどんな感情が起こったか、感情によって体調がどうおかしくなったかを客観的に把握するためのものだ(と自分は理解した)。眠れない起き上がれない気持ち悪い外が怖いつらいしんどい吐き気すごい眩暈する寝たくない動けない何も手につかない頭回らないできない意味ない価値ない何、いまのおれは何、という不甲斐なさが全部どす黒いぐちゃっとした粘性の虚無が脂で覆われているだけの無意味な肉塊と化していたのがいちばん酷い鬱だったときの自分の状況なわけだが、このどす黒い虚無のいくらかは実は「気のせい」であると知るために認知行動療法はある(と自分は理解した)し、行動記録は実際やってみるとそういう効果があった。  やり方は認知行動療法の本に載っているのでほんとうに必要な方は調べたうえで用法容量を正しく守って実践してほしい。ここには基本だけ書く。午前・午後・夜の時間帯それぞれに自分が取った行動と、そのときの気分を記録する。「午前:寝ていた(鬱)、午後:掃除をした(集中)、夜:DVDを見た(楽しい→就寝前は不安)」くらいでいい。  こんなのでも二週間も続けていれば見えてくるものがある。いくら自分が「理由もなく寝込む無意味で無駄で無用な最底辺の人間」であることは事実!と思っていても、記録をつけていれば寝込んでいたのは前日のデイケアを頑張りすぎたせいで、家事は予定通りにこなせていて、つまり「理由もなく寝込む」のも「無駄で無用」な自分も「気のせい」だと知ることができる。自罰が習慣付いている人間はこれだけでもちょっとは息ができるようになるものだ。
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 デイケア通所期の行動記録は、ラコニックの「STYLE NOTEBOOK Weekly」というノートに付けていた。日付が入っていないフリー形式の週間ダイアリーで、見開き1ページに一週間分の記入欄が24時間のバーチカル形式で印刷されている。クリーム色の紙に薄いグレーの罫線、読みやすいが主張の強すぎない書体で構成されたノートは目にうるさいと感じることがなかった。  その日の行動と気分を簡潔に記録する。当然生じる数多の空欄は、放っておくと「何もしてない」幻聴が無限に湧いてくるので、好きな色柄のシールを片っ端からぺたぺた貼って塞いだ。病んで働けない虚無から逃れようと創作に走って走り過ぎていよいよ情緒と頭がおかしいことになっていた夏のさなか、創作を諦め、毎日ちまちまと自分の行動を書き取りシールを貼るだけの作業は手間だったが不快ではなかった。
ラコニック STYLE NOTEBOOK Weekly https://laconic-generalstore.jp/?pid=164509740
 このノートを一冊使い切ったので二冊目を買おうかとも思ったのだが、手帳とノート二冊を抱えて出勤する手間を自分は惜しむだろうと予想がついた。文房具は大好きだがいっぱい持ち歩きたい欲はあまりない。手荷物はできるだけ少なく、お気に入りのものだけ携えていきたい。  そんなわけで昨年の末、手帳売り場で「マンスリー」「週間レフト」など書式ごとに分類されたラベルのなかから「バーチカル」をを探してはサンプルを開き、ああでもないこうでもないと呻いた末に辿り着いたのがNOLTYだった。
NOLTY公式サイト https://nolty.jp/
 NOLTY(能率手帳)は1949年に日本で初めて「時間目盛り」入りの手帳を販売したメーカーだ。能率手帳という名称に「ビジネスマンのための手帳」といった印象を個人的に受けるのは、自分の父が掌に乗るほど小さく真っ黒な能率手帳を長年愛用しているせいだろう(朝から晩まで多忙な父があの小柄な紙束にどうやって仕事の予定をまとめているのかいまだに不思議だ)。実際「時間目盛り」は仕事の能率を上げるためのアイデアだったらしい。手帳売場にNOLTY専用のスペースが毎年そこそこの広さで展開されるのを見てはいたが、手帳が上手く使えない人間には過ぎたものに思えて横目に通り過ぎるばかりだった。この数年は働けていない身で働く人間のための売場に近付くのも恐ろしかった。  今回NOLTYを選んだのは、ほかのメーカーから出ている「バーチカル」のデザインが絶妙に自分の需要と合わなかったからだ。書体が読みづらいとか、強めの朱色が苦手だとか、こまかいところは色々あったがいちばん困ったのは「余白」だった。  様々なデザインの手帳をめくってみると、見開き1ページあたりの余白、ないしメモ欄の配置や大きさは手帳の書式に左右されるということがしみじみ分かる。たとえばマンスリー(月間)手帳はブロック形式のカレンダーに似た、1ヶ月分の記入欄を見開きページ全体に大きく配置し、その両端や下段に余白が置かれているものが多い。ウィークリー(週間)手帳、特に週間レフトは、見開きの片面(左面)に一週間分の記入欄がやや余裕を持って納められ、右面に丸々空いた余白は自由度の高いメモ欄として開放されたデザインをよく見かける。  一方で、バーチカルは1日の時間軸を一定の時間ごと、等幅の罫線で区切る書式なので、日ごとの記入欄がどうしても一方方向に長く伸びる。罫線の幅が狭いと書き込みづらく、機能性が落ちるので、最低限の広さを縦横に持たせる必要もあるだろう。これを一週間分ずつ見開き1ページに詰め込んだうえで、時間に縛られない週別の予定やTodoが書けるような「余白」も配置するというのは、どうやらほかの書式に比べて大変であるらしい。実際、売場で見かけたバーチカル手帳は余白が広いほど機能の一部が犠牲になっているデザインが多かった。平日はノートの縦いっぱいに1時間ごと罫線を引いておきながら、土日は「午前」「午後」のざっくり分けで長さを縮小し縦一列にまとめてしまっているもの。朝活重視で5:00から罫線を引きつつ、夜時間は21:00以降を省略し下段をメモ欄に充てているもの。休日も夜間も仕事がある人間は顧客として扱われていない感があるデザインだ。もちろん自分で罫線を引く手もあるが、そういうひと手間が結局は日々の記録をしんどくさせる。
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 NOLTYはその点、さすがだった。伊達に長年能率を謡っていない。見開き1ページに収められた一週間分の記入欄は一日ごとに充分なスペースを保持し、日々の時間軸は平日土日問わず6:00から24:00まで罫線が引かれている。自分が求めていた、行動記録のために最低限必要な導線がそこにはあった。そのうえで各日の上段と下段には日ごとの予定を書き込む余地のある余白があり、見開きの右側には全体の三分の一ほどもある広いメモ欄が確保され、右上には今週が月の第何週目かを一目で把握できる小さいカレンダーまで盛り込まれている。
「一目で視界に収まる大きさと、何を書いても許される自由さと、どこに何を書くか迷わない易さと手間がかからない身近さ、短さ。「ちゃんとしてない」感が滲んでメンタルを倦ませることがないように、最低限の記録でもそこそこちゃんとして見える形式のもの。」
 自分のための記録をつける場所へ最初に求めたものがなんかもう全部ここにあるのだった。  今まで他の売場で見てきたちまちましたバーチカルとはなんだったのだろう。同じB6サイズで同じ書式なのに使い勝手の良さの差をこうも歴然と見せられると愕然としてしまう。しかもNOLTY、同じバーチカル手帳のなかにレイアウトと仕様の違うものがいくつもある! 月間と週間が連続したページ構成の「アクセス」、日ごとの余白が三つある「キャレル」、書体が上品な印象でメモ欄の充実した「ベルノ」など、手帳を使う人間の様々なニーズに対応しうる機能がそれぞれに搭載・拡張されているラインナップを前に正直はしゃいだ。全然分かってなかったけど能率手帳、めっちゃすごいのでは…!?
2023年1月始まり ウィークリー手帳 NOLTY エクリB6-7 https://jmam.shop/shopdetail/000000004818/
 サンプルを見比べて吟味した結果��自分が選んだのは「エクリ」だった。これは月間と週間が交互に並ぶ「アクセス」とは異なり、手帳の前半に月間、後半に週間のページがまとめられた構成になっている。書き込む内容を月間と週間で分けようと考えていたので、前後に分かれた構成のほうが使いやすそうだったのだ。色違いのスピン(栞)が2本付いており、当月当週のページを手繰るのに不自由しなさそうなのも良かった。「ベルノ」の書体の優雅さとメモページの豊富さは自分では持て余す気がした。各日の下段に余白があるのは「キャレル」も同様だったが、「キャレル」の余白は無地なのに対し「エクリ」の余白は時間軸と同じ幅の罫線が引かれていて、書くときに迷うことがなさそうなのは後者だった。万が一のとき24:00以降の目盛り代わりに使えそうなのも良い。  ちなみに「エクリ」とはフランス語で「書く(書かれたもの)」を意味するらしい。公式の説明にも「「書く」ことを第一に考えた記入スペース充実のシンプル手帳」とある。名詮自性を果たすかは使い手次第としても、潔い名前だ。穏やかに光るホワイト紙にグレーの数字、罫線、休日欄の淡い赤、明朗だが趣のある書体で構成された「エクリ」は、たしかにどんな筆跡もさまになりそうな佇まいをしている。
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 そんなこんなでうちにやってきたエクリは色々あってこういうすがたになった。  臙脂色の手帳用バンドはミドリの製品だ。過日の使いこなせかった手帳に合わせて買ったものだが、エクリの表紙が暖色系のグレーなのでわりと似合っている気がする。ちなみに取り扱いサイズはA5とB6用、色はほかに黒と紺がある。
ミドリ クリップバンド https://www.midori-store.net/smp/item/62311006.html
 表紙裏のペンホルダーに挿してあるのはKaweco製万年筆で、太さはEF(めっちゃ細い)。FやMのほうがぬらぬら書けて楽しいのでふだんまず買わないのだが、このIridescent Pearlという色は当時とても人気で、ダメ元でペンとインクと文房具の店を訪ねたところこの一本だけが残っていたのだ。かなり迷ったが、細かい字が書けるから手帳なんかにいいですよ、と店主にも勧められたので買った。手帳に装着するには別売のクリップが必要で、これはほかの文具店で問い合わせたところ在庫がひとつしかなく、そのたったひとつがカラバリのなかでもこの本体の色に似合いそうだと思っていたシルバーだったのでほっとした。インクはKawecoのロイヤルブルーを入れている。片岡義男が『万年筆インク紙』で述べている、ブルーのインクはクリーム色の紙に書くのがいちばん美しい、との意見には全面的に同意するけれども(書籍用紙「ソリスト」を使用したBIBLIOPHILICのBIBLIO NOTEなんかはほんとにそうである)、このホワイト紙とロイヤルブルーの組み合わせも悪くないというか、書いてて気分が上がるくらいの良さはある。
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 週間バーチカルには予定どおり「行動記録」をつけている。何時に寝て起きてどこ行って何を観て買って、などをざっくり書く。そのときの気分も書くのが本来は正しいのだが、デイケア通所期にもあった、頭の調子が悪いと気分と幻聴の区別がつかなくなってあることないこととめどなく書き連ねる現象が起きそうだったので今年は止めた。自分のためにしたことを振り返って「無駄だった」と思うようであれば当時の多幸感や前向きな気持ちも書いておくとよいのだけど、最近はそういう不調も少なくなった。「楽しかったな」「やってよかった」と思えるほどには回復できて本当にほっとしている。  各月のインデックスにはTRAVELER’S notebookのカスタマイズシールを貼った。毎年違うテーマに基づいた限定柄のグッズが展開されていて、趣味に近いテーマが取り上げられるとつい買ってしまう。2021年の「本」と2023年の「カフェ」がまさにそれで、今年の手帳は月間ページに21年のアブサンじみたグリーン、週間ページに23年のワインレッドを合わせた。
 仕事の予定も週間バーチカルに書き込んでいるので、予定を把握しやすいように職場の月間予定表を縮小コピーし、SUNNYの手帳用下敷きにマステで貼って当週のページに挟んでいる。下敷はB6サイズ用だが手帳からはみ出さないよう少し小さめに作られていて、そこが気に入っている。
 月間は、自分のためにした行動を月ごとに振り返るページにした。バーチカルの記録から、観た映画、読んだ本、出かけた場所、食べたもの、創作した日を拾って書き込む。最初は書き写すのが面倒になりそうで、自分のために何かした日にシールを貼るだけにしたのだが、この日なにかしたっけかと何度もバーチカルをめくり直すほうがよほど面倒だった。良い記憶を遠くへ追いやってしまう悪癖の根深さを忘れていた。時間を割いてでも振り返りをするべきなのだ、自分のような、自ずから虚無を幻視するような人間は特に。  書き写すときはなるべく太い字かつ鮮やかな色で書く。太い線だと字数のわりに紙面がそこそこ埋められるし、文字が潰れないよう大きめに書くから目に留まる字が書ける。よく使うのは数年前にゼブラから発売された水性マーカー「クリッカート」。蓋がないのにペン先が乾かない独自のインクを使用しているノック式マーカーで、48色のカラーは紙に滲まず可読性に優れている。ノックしたときに白い本体の窓からのぞく赤色もかわいい。
ゼブラ クリッカート https://www.zebra.co.jp/pro/detail/clickart/
 むろん万年筆で書くこともある。最近は紙の色や筆の細さによっては読みづらくなってしまう淡い色のインクをサファリのLAMY万年筆M(中字)に入れて使うのが楽しい。LAMYのMは(筆圧や机の高さにもよるだろうが)2mmくらいの太さで文字が書けるので、黄色系やピンク系のインクで書いた文字でもわりあいすんなり読める。ただし自分のようにせっかちな人間はよく書いたあとを擦る。それも色が淡いので許容範囲だ。どうしても気になる場合はもうシールで隠す。必要な記録を終えたらあとはとにかく好きなシールを貼って貼って貼る。自分にとっての良いもので不在の虚無を充たしていく。  それと各月の余白に「しいたけ占い」の月毎の運勢をプリントして貼っている。占い全般、熱心に信じる気概はない。自分が思いもつかないベクトルから助言があるところは面白いが、直接の助けになることはまずないからだ。自分にしばしば助言や応援をくれる周りの人たちは、こちらの現状や経歴をふまえてこちらができそうな範囲の提案をしてくれるし、受け入れられそうな言葉を選んで話してくれる。そういう優しさに救われている。占いはこちらの背景を一切知らない立場から一方的に予測を投げてくるばかりなので、こちらが状況に応じて都合の良い言葉を拾うしかない。ただ、そうすると自分を知っている人間ならまず向けない視点や言いそうにない提案が当然混じってくる。なるほどそういう考え方もあるか、と自分の現状を面白がるのに占いは使える。
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 ここまで整えておいてちゃんと年末まで使われているのか、どれほど役に立つかはまだなんとも分からないけれども、少なくともこうして振り返る場所を整えることはちゃんと自分のため��ったのだし、今後あんまり使われなかろうと「自分のため」に一念発起した事実はかたちとしてもうここにある。自分が何を考えて一連の準備をしたかも書き出せたからには、ひとまずは良しとしたい。読んでくれてありがとうございました。
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