#小貝川ふれあい公園の桜と菜の花
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Cherry blossom and Rapeseed blossoms
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各地句会報
花鳥誌 令和3年7月号
坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和3年4月1日 うづら三日の月句会 坊城俊樹選 特選句
春彼岸阿弥陀背にして説法を 柏葉 母編みし毛糸のベスト解いて編む 由季子 解く帯に桜一片舞ひ落ちぬ 都 人に酔ひ酒にほろ酔ふ花の園 同 初蝶の行きつ戻りつ旅立ちぬ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月1日 花鳥さゞれ会 坊城俊樹選 特選句
天蓋は万朶の桜愛子の忌 かづを 最古てふ天主や花の海に浮き 同 椿落つ秘めたる想ひ絶ち切れず 笑 花の寺御仏こぞりて笑み賜ふ 同 走り根の絡む老木の花淡く 希 鐘楼門栄華の花は盛りなり 同 初蝶の止まつてばかりゐる黄色 雪 ぽつたりと云ふ落ち様の肥後椿 清女 濠は今満月のもと花万朶 数幸 ねむたげな目をして地蔵花の寺 天空
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月3日 零の会 坊城俊樹選 特選句
花屑の起伏を流れたる音頭 要 あかんばうだらんと垂れて八重桜 いづみ カーブへと都電の軋む花の駅 眞理子 霾やホテルアスカのネオン消え 光子 白き指触れれば老いてゆく桜 順子 花山のお狐さんの花見酒 きみよ 風光る都電カーブに傾けば 光子 花追うてちんちん電車下町へ きみよ 丁字路に男惑へば花ふぶき 和子 貨車つづく花の昼なら長々と 和子 春惜しむやうに各駅停車かな いづみ 花衣花の音頭に揺れ止まず 慶月
岡田順子選 特選句
花屑の起伏を流れたる音頭 要 花��雪その一瞬の神かくし 久 北病棟梟徘徊する深夜 公 世 山頂は花の冠雪なりしかな 俊樹 春昼の子爵の気配する館 きみよ 動くたび翠玉に化け春の蠅 小鳥 落つ花も落ちざる花も狐憑く 俊樹 お屋敷は棕櫚の置かれし復活祭 いづみ 山吹や古き稲荷に鬼女の謂 千種 都電行く花のレールを懇ろに 俊樹
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月7日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
愛子忌や花の仏の目鼻だち 世詩明 陽炎や聖火近づく靴の音 ただし 尼様の逝かれて久し花の庵 清女 春愁や廊下に邪魔なすべり台 同 屋根の上猫を消し去る花吹雪 誠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月9日 芦原花鳥句会 坊城俊樹選 特選句 塵芥浜に打ち寄す涅槃西風 よみ子 紅椿落ちしまゝなりいくへにも 寛子 朧の夜磨りて薙刀月なりぬ 依子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月9日 札幌花鳥会 坊城俊樹選 特選句
亀鳴くや狸小路といふところ 清 子猫には知らぬ値札の差でありき 同 新しき街にもなれて朧月 同 いつの間に少女は乙女初蝶来 晶子 ほつとする出会ひに似たり蕗の薹 寛子 鮨屋出てちよいと歌碑まで啄木忌 のりこ 舞姫の余波の浜の桜貝 岬月 空海の学びし都霾れり 雅春 花は葉に大樹あくまで孤高なる 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月9日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
葱坊主砂丘の畑に海を見て 栄子 縮こまりゐしが色めき勿忘草 史子 妹の炊く釘煮の味や春の潮 佐代子 花曇貝殻拾ふ習はしに 幸子 チューリップ閉ぢて乗せゐる細き月 都 払暁の厨に水を撒く浅蜊 宇太郎 大手門潜り落花の畏まる 悦子 鞦韆や正面にある日本海 益恵 大土手に游がせ青き鯉幟 益恵 囀や赤子は喃語はなしかけ 和 子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月10日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
もこもこと花に潜りし虻の尻 三無 著莪咲くや十年祭のとしあつ師 文英 石楠花の色の溢れて空の青 同 虻戻る宙の一点違へずに 秋尚 野の草も木々も輝く寺うらら 瑞枝 影淡く残しほぐるる牡丹かな 秋尚 若楓日に透けて師の十年祭 文英 蜃気楼より戻りくる大漁旗 三無 手のひらに残花ひとひらとしあつ忌 同 花筏小鷺の暫し石の上 文英
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月12日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
笑ひ皺深き自画像山笑ふ 清女 ヘリコプター右往左往の霾ぐもり ただし 一輪の菜の花明り無人駅 英美子 二百羽の白鳥去りて水落とす さよ子 となりからグラタン届く蝶の昼 清女 黒々と土掘り起こす夫の春 錦子 お姉さんと呼ばれし母の古浴衣 清女 昭和史を読み継ぐ窓や冴返る 上嶋昭子 落花浴び二人の会話とめどなく 中山昭子 風光る子の背で踊るランドセル 英美子 霾れり外は砂塵の匂ひあり 中山昭子 日差し受け新樹ふくらみ山太る みす枝 牡丹の土くろぐろとごろごろと 信子 調停を終へて出で来る白日傘 上嶋昭子 四月馬鹿小さくなりし力こぶ 三四郎 豊麗といふ重さあり八重桜 上嶋昭子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月12日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
草団子つかまり立ちし子の笑ふ 実加 花の雲散りては隠れ鳥の群 あけみ 空色のファーストシューズ若草に 登美子 自転車で駆け抜けてみる花吹雪 紀子 花の下貨物列車がゆつくりと 同 リード張る犬の目の先青葉萌ゆ あけみ 草餅を炙るおばあの手の記憶 同 春の灯や見覚えのある泣きぼくろ 登美子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月12日 伊藤柏翠俳句記念館 坊城俊樹選 特選句
花万朶天守の高さ残し散る かづを 天主てふ高さ支へし花の雲 同 天帝の機嫌のよしや雲雀また 同 散る花に戦争語る皺深く みす枝 はじめての大地歩む児風光る 同 春愁や黒が似合ふと云ひし人 雪 鳥帰る古墳の山を越えて行く 千代子 涅槃図の嘆きの蛇の舌赤し ただし 葱坊主蝶遊ばせて三畝ほど 高畑和子 天に紅地に錆色の落椿 英美子 鯉幟青空支配してゐたる 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月12日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
妻の座に一人占めなる春炬燵 世詩明 巣立鳥軒離れるに啼き叫ぶ 同 春水の池も小川も老舗宿 和子 風の中ゆつくり曲がる花筏 千加江 チューリップどんな空にも納まりて 同 吾が前にチューリップ揺れ百八色 昭子 児の描く屋根より高いチューリップ 啓子 春塵や踏台見ゆる古本屋 泰俊 義士祭や夕日の端に寺箒 同 黒髪の如くつらつら椿かな 雪
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月12日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
とりどりの緑の若葉森太る 三無 淡く透け風を誘ふ栃若葉 秋尚 初蝶は白でありけり水辺ゆく 和魚 地を漁る鳩嬉嬉として躑躅燃ゆ 三無 サ���カーの声を散らして若葉風 怜 若芝を歩く足裏に気の満ちる 貴薫 東屋の池の水枯れ著莪の花 せつこ 傾きし午後の日集め山吹黄 秋尚
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月13日 萩花鳥句会
秀吉を偲ぶ醍醐寺春の星 祐子 入寮す荷解きの窓春の月 美恵子 金の座の柔人生花吹雪く 健雄 明日発つ子に取り分ける桜鯛 陽子 春の月言葉少なに客送り ゆかり さくらさくら今は無人となりし駅 克弘
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月18日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
囀のやみておくつき土匂ふ ゆう子 鶯の声の滴の落つる句碑 三無 大空を抱きて長閑母の塔 亜栄子 法鼓鳴る終の牡丹のいよよなる 慶月 鯉幟岡本太郎の目がふたつ 千種 武士の如蘖ゆる城址かな 斉
栗林圭魚選 特選句
年尾来よ陽子の墓へ虹架けて 俊樹 シーサーの睨みの門扉松の芯 亜栄子 初蝶来うすむらさきの影を追ひ 久 若楓威を持ちて守る年尾句碑 文英 葉の蔭に香り残して花通草 秋尚 春行くやおほよそおうてゐる時計 久 武士の如蘖ゆる城址かな 斉 枡形の山峡深く藤懸かる 亜栄子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和3年4月22日 鯖江花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
うららかや女医に診られてゐる鼓動 一涓 グクと泣く鍬先に詫び畑を打つ 同 訪へば由利に左内に花吹雪 同 ことごとく合掌解きて紫木蓮 同 初蝶の黄のあまりにも濃ゆきこと 雪 雨上がり燕大きく十字切る 信子 天を指す指より甘茶光り落つ みす枝 化粧水顔を叩けば夏めきぬ 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
風光る帆を張る船は膨らみて 佐和 風光る紙飛行機の未知の空 久美子 胸もとへ闇はゆるやか花衣 佐和 風光る臍の緒ほろと母の手に 睦子 花屑を浮かべ流離の水となり 朝子 星月夜帰船に満ちし博多港 佐和 ゆるゆると緋鯉にゆらぐ春の雲 勝利 いつまでも止めぬ石蹴り風光る 久美子 花蘇枋久女多佳子のこゑ聞こゆ 美穂 風光り手押しポンプは水を吐く 洋子 空までも君と一緒の半仙戯 さえこ 炊出しに悪漢もゐて彼岸寺 喜和 かくれんぼいつかひとりの春の暮 ひとみ たちがみの天馬とまがふ仔馬生れ 千代
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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仙台公演のレポートと第3期の総括です。
3月31日の土曜日、まだ桜が咲き始めたばかりの肌寒い仙台、東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)にて東北ユースオーケストラ演奏会2018の仙台公演を行いました。この冒頭の写真はフォトグラファー丸尾隆一さんによるオフィシャルフォトです。このあと差し込んでいく写真でも、わたくしのライブ感と短距離感だけが取り柄の素人写真との違いを一目瞭然お気づきになるだろうと、あえてクレジットいたしません。丸尾さん、毎度のオフィシャル写真撮影をありがとうございます。
さて、21日の東京公演から10日間のブランクが空き、指揮の栁澤寿男さんとしては、「みんな、これまで出してきた注意、指示を覚えてくれているかなぁ」と不安そうです。
合同練習や合宿など集まる機会には必ず忘れ物が出てくる東北ユースオーケストラですが、演奏楽曲は身体に染み込んでいると期待したいところです。
リハーサルにあたって坂本龍一代表・監督から「今年度の締めくくりとなる、集大成となる演奏を」と柔和な檄が飛びます。
演奏会の構成も忘れているかもねと、舞台上の動き含めて演奏順に曲をさらっていきました。
コンサート前半を盛り上げて締める『Three TOHOKU Songs』は、団員の地元3県の民謡「大漁唄い込み」(宮城)、「南部よしゃれ」(岩手)、「相馬盆唄」(福島)をメドレーとして現代音楽の作曲家である藤倉大さんによる編曲作品です。
東北の民謡独特のグルーブ感にこだわる坂本監督は、本番直前でもパーカッションセクションに溶け込んでの手拍子指導です。
威勢のいい拍子木を響かせるのは気仙沼の高校生、三浦瑞穂さんです。以前伺った三浦さんのご実家のお隣まで津波で流された体験談は鮮烈に覚えています。この三浦さんのお祖父様がつくられた農園のいちごを差し入れでいただきました。
三浦さんお祖父様は民謡の先生でもあって、昨年は「ちょいさーのさーっさ」の掛け声のリズムとイントネーションについてご指導に来ていただきました。1年前の東京公演での『Three TOHOKU Songs』の演奏の様子はYouTubeでご覧いただけます。一聞は百見に如く。ぜひお聴きください。
youtube
一通り演奏と動きを通した後に、冒頭の開演前のカゲアナ隊の練習です。携帯電話を切りましょうなどの諸注意事項を団員が表に出てお伝えする演出です。この仙台公演はもちろん仙台市出身で固めました。
右から畠山茜キャプテンはちょうど仙台市出身。坂本彩雲さん、中学1年生、フルート担当。木島悠太くん、中学1年生、ヴァイオリン担当。浅野海輝さん、高校1年生、パーカッション担当。狩野諒也くん、大学2年生、ホルン担当。曽我ひかるさん、大学4年生、コントラバス担当は、実は仙台市のお隣の多賀城市出身でした。
そして、開演を告げる団員の福島市の高校1年生、堤英純作曲の金管八重奏を、トランペット中村祐登くん、秋葉大地くん、井出大雅くん、ホルン曽根瑞貴さん、田嶋詩織さん、トロンボーン江見悠希くん、バストロンボーン新川和弘くん、チューバ冨澤悠太くんが、今日は花道で演奏します。
本番前にOGが激励に来てくれました。
見事大学に合格して来期から復帰してくれる郡山市の芦名さん(妹さんは第3期からのメンバー)と今年から宮城県の中学校で音楽教師となった初代キャプテンの長谷川桃さんの二人が、「ジャージ姿ですみません」という栁澤寿男さんを挟んで記念撮影です。
お昼のお弁当はJA共済連の今日は宮城県本部さんからいただきました。JA共済連さんには毎度毎度、団員の血になり骨になる食事をご提供いただき本当にありがとうございます。
リハーサルで疲れた身体には美味しさのあまり縦のお弁当になりました。
ごちそうさまでした!そして、東北ユースオーケストラオールドボーイズも応援にかけつけてくれました。
懐かしい顔の中でも注目したのは一番左の岩花くん。昨年度まで岩手県宮古市から福島市の練習会場まで片道5時間かけて巨大なチューバとともにやって来てくれていたのですが、中学生の一年間見ない間に大学生と同じくらいの身長になっていました。思春期の雨後の筍のような成長には目を見張るものがありますね。
こちらは事務局の「おかーさん」こと岡田さんにTYOオリジナルハンカチーフを巻いてとねだる列。
本番準備が進んでいるのは舞台裏だけでなく、舞台表も同様で。
今年もJA共済さんのご厚意で、わたくしの駄文とノリだけの写真で活動記録のパネル展示をしていただいていました。
ロビーでの寄付受付コーナーもお客様を待つばかり。
昨年で卒団したリケジョ楢山さんがシックな黒づくめの出で立ちで、東京に引き続き地元公演の受付係にボランティアで参加してくれました。右隣は福島事務局の大塚真理さんの姪っ子さん、 菅藤 さんも就活スタイルで手伝っていただけました。そして、今回返礼品を無償提供いただいたアウドドアのプロダクトで世界的に高名なパタゴニア日本支社、自らアウトドアマンの辻井社長以下のスタッフのみなさんも、どうもありがとうございます!そもそものTYOロゴにはじまり返礼品にTYOロゴをあしらうデザインをしてくれた、TYOの美術教師長嶋りかこさんもありがとうございました!
開場直後からの「ロビコン」つまり、ロビーコンサートチームのご紹介です。 ホルン八重奏「3つのエピソードより第一楽章/真島俊夫」 千葉大輝、佐藤咲良、狩野諒也、立谷隆太郎、千田捺月、田嶋詩織、曽根瑞貴、磯貝雛子。
トロンボーン7重奏「Bosco Rosco / Tommy Pederson」大谷龍陽、江見悠希、大波さくら、筒井温之、橋本幸歩、新川和弘、冨澤悠太。
木管五重奏「木管五重奏のためのディベルティメントより第1楽章、第4楽章/ハイドン」菅野桃香、関根慧、田嶋詩織、西村優里、木戸口夏海と クラリネットカルテット「クラリネットポルカ」木戸口夏海、山中陽香、黒須菜月、阿達弘将のチーム木管。
ヴィオラ六重奏「G.P.テレマン/4本のヴィオラの為の協奏曲第1番より第3楽章」村岡瞭、服部未来子、高橋奈々、鈴木祥子、佐藤ひかり、紺野未帆。
さあ、開場しました。列をなしてお待ちいただいていた熱心なお客様に次々とアンサンブルを披露していきます。
団員のご家族ご親戚お友達も聴きに来られているのが呼びかける声からもわかります。これでこそ地元公演ですね。
カゲアナ隊が舞台袖に登場してきました。
続いてオープニングファンファーレの金管八重奏隊も。
団員が続々と下手の舞台袖に集まって来ました。
恒例の坂本監督とのタッチによる送り出しで、みんながステージに。
ピンボケ写真でもわかるのは監督に笑顔で応じるフルートの菅野さん。
オープニングは『Behind The Mask』。坂本監督YMO時代の作品です。
実はこの曲、東北ユースオーケストラが企画物として初登場したルツェルン・フェスティバルARK NOVA松島の2013年に演奏されていました。今回のために監督自らアレンジを見直され、開演にふさわしく管の響きが鮮やかな曲となりました。
二曲めは『戦場のメリークリスマス』。毎年の団員の演奏希望曲アンケートでは必ず何人かが挙げてくれていましたが、ついにTYOとして今年初披露できました。
三曲めは『ラストエンペラー』。初年度の夏合宿地の宮古島でシーサーをつくりながら皆んながこのメロディを口づさんでいたのが懐かしい、こちらおじさんの感傷に舞台袖でひたっていました。
滑り出し三曲は東京公演よりも落ち着いたいい演奏になった気がしますよ。司会の渡辺真理さんの流麗な進行につられ、坂本さん栁澤さんともに東京よりもリラックスされているのか饒舌気味で、客席にも笑いが起きています。
そして、次の出番を控えたあの方が!
後ろ姿から後光が差してる気もする小百合様。
ご登場です。
朗読される詩をまとめられたお手製の製本が左手に光りますね。
このパートでは坂本監督指揮による『Still Life』に合わせての朗読となります。
まずは団員の地元である岩手県は花巻市出身の宮沢賢治の詩から二篇「村娘」「星めぐりの歌」から
そして広島、沖縄の平和を願う詩をそれぞれ一篇、原民喜「永遠のみどり」安里有生「へいわってすてきだね」、最後は東日本大震災をきっかけに福島の小学5年生だった関根妃奈乃「あの山を登れば」です。
圧倒的な存在感がありながら、優しく包み込むような吉永小百合様の朗読は、やはり「日本の母」。東京公演の、のんさんの「妹の力」(©️柳田國男)とは個性のまったく違う時間が流れました。公開中の映画『北の桜守』のプロモーションでご多忙を縫ってのご出演ありがとうございました。わたくし個人的には、この日小百合様からリアルに「宏和さんは」と話題にされ、旧約聖書で神ヤーウェにいきなり名前を呼びかけられ、「なぜ神は私の名前をご存知なのか!?」と感動に震えたアブラハムのごとく畏れ多さに跪きそうになりました。(事前にわかればスマホで録音したのに・・・)
さて、続いては今年初めての企画、団員のオリジナル作曲作品を団員が演奏披露するコーナーです。昨年の12月に藤倉大さんによる作曲ワークショップを行い、親交のあるヴィオラ奏者の安達真理さんにも当日お越しいただき、数々の特殊奏法を紹介してもらいながら、それらを参考につくった団員の出来立てほやほやスコアをその場で実演してもらい、藤倉さんと坂本監督が講評するというものでした。当初の「ほとんど誰も作曲できないのでは」という予想を��い意味で裏切り、全員が2時間で作曲できたのです。人間の創造性というのは、環境と動機づけ、それを導く人次第で引き出されるのだということを実感しました。
今年の演奏会で作品を発表したい人を募りましたところ、6名が手を挙げてくれました。ここ仙台では、東京公演とは違う3名による作品を3名が演奏しました。坂本監督もステージに残り、会場の全員が耳をそばだててソロ作品を聴くという緊迫したコーナーです。
最初は福島県浪江町出身の大学1年生菅野桃香さん作曲作品「当たり前の幸せ」を岩手県北上市出身の大学4年生、木戸口夏海さんがクラリネットで演奏。
直前合宿でのリハーサル時に菅野さんの出身地を入団申し込み時のデータから「いわき市」と紹介したのですが、本人から「実は浪江町出身で、いまは実家は取り壊され、避難していわき市に住んでいます。浪江町で紹介をお願いします」と明るく言ってくれたのには胸にこみ上げるものがありました。タイトルがまた「当たり前の幸せ」ですからね。重く響く題名をつけられた作品が軽やかなクラリネットで奏でられました。
続いては、福島市出身の大学3年生、佐藤実夢さん作曲作品「チェロのための音遊び」を福島市の高校1年生の誉田憲丸さんがチェロで演奏。
高校1年生、緊張したと思います。途中特殊奏法も含まれる作品でしたので、間違ってもお客さんにはばれにくいという利点もあったかとは思いますが、1500人以上を前に堂々とした演奏でした。
そして、トリは仙台市の大学3年生、中村祐登くん作曲作品「ホルンのためのimpromptu」を同じく仙台市出身の大学3年生、千葉大輝くんがホルンで演奏します。
「impromptu(アンプロプテュ)」とはフランス語で「即興曲」の意味。千葉くんは『火の鳥』のソロより緊張したそうです。
団員作品発表コーナーの後は、団員たちの眠れる作曲家としての資質を見事に開花させてくださった藤倉大さん編曲の『Three TOHOKU Songs』で前半終了。
栁澤寿男さん、前半の出来栄えに上機嫌です。
そこに割って入ってくる中村くん。
ちゃっかりしてるなあ。後半に向けて頑張っての意を込めてパチリ。
カメラを向けると必ずポーズの田嶋さんにつられて、同じホルンの赤間奏良くんもピース。繰り返しますが、中学生の身長の伸びには目を見張るものがあります。たぶんこの3年間で20センチは伸びたのでは。
今年のホルンはみんな元気で、パートとしての一体感がありました。
左の狩野くん、
ハイタッチでリラックスしてるなと思いきや。
団員全員が板付いたところで、急に舞台袖に「やばい、やばい」と走り込んできました。もうチューニングがはじまっています。楽屋に戻っていったみたいです。
しばらくしてまた「やばい、やばい」と階段を降りて来ました。もうチューニングは終わってますよ。
なんとミュート(消音器)を忘れて楽屋に取りに戻ったようです。忘れ物が多い東北ユースオーケストラですが、本番での楽器の忘れ物は初めてでした。団員への楽器忘るべからずの教訓としてご紹介しておきます。
後半のメインの楽曲の最初は、クロード・ドビュッシー作曲の交響詩『海』です。坂本監督、団員の演奏を指揮者モードでチェックです。
栁澤さんの指揮も自然と大振りになる『海』です。
今日も録音のために来られているサウンド・エンジニアのオノ・セイゲンさんのブースで。
坂本監督、サウンドチェックに夢中のあまり、人知れず指揮!
こちら反響板の隙間からいい撮影スポットを見つけました。
降り番メンバーも舞台袖で応援しながら聴き入っています。
順調に『海』の演奏が進みます。
エンディングを舞台袖特設カメラで録画してみました。
youtube
20分強のドビュッシーの『海』の演奏が見事に終わりました。満員の観客からの拍手を受けて下手袖に下がる栁澤さん。
youtube
とりあえずひと山超えたぞー、の笑みですね。
ひと呼吸置いて、舞台袖で待ち受けていた坂本監督と。
続いて今年のメインの2曲目となるイーゴリ・ストラヴィンスキー『火の鳥(1919年版)』の演奏がスタート。
こちら降り番は余裕でしたが、
舞台上では緊迫した熱演が。しかし、東京公演よりものびのびした演奏になっているような気がします。そして大団円と呼ぶにふさわしいエンディングを迎えると、このひと時を残したいと思わず舞台袖特設カメラの録画ボタンを押しました。
youtube
胸に染み入る会場からの鳴り止まない拍手です。
そして、ついにアンコール。司会の渡辺真理さんが代表・監督の坂本龍一さん、指揮の柳澤寿男さん、ゲストの吉永小百合さんをお一人づつ舞台に呼び込んで、今日の感想コメントを聞いていきます。
東北ユースオーケストラ第3期の最後の演奏となります。坂本監督の1984年の作品で前身の楽器修復プロジェクト『こどもの音楽再生基金』からのテーマ曲『ETUDE(エチュード)』。5年前のルツェルン・フェスティバルARKNOVA松島での演奏がアップされていましたのでリンクをはってみます。
ステージでは吉永小百合様も手拍子でご参加。
ついに東北ユースオーケストラ演奏会2018のすべてのプログラムが終了しました。
舞台袖に引き上げてくる出演者、団員。
仙台出身の畠山茜キャプテンは地元公演で第3期の活動の幕を降ろしたことに感無量の表情です。
お互いのパフォーマンスを称え合う時間、
「引率の先生」役としては1年で一番うれしい時間です。
東北ユースオーケストラの活動では、いつもは意識的に距離を取っているはずの高橋姉妹もそろって感極まっています。
ピンボケでも姉妹だとわかりますよ。
小百合様にも堂々と握手を求めに行く団員たち。
みんな、泣いているのか、笑っているのか、両方なのか、もはやわかりません。
ひとつの舞台を一緒につくったという意味において、
日本を代表する大女優も世界的音楽家も、
マエストロも有名なアナウンサーも、
小学生も明日から社会人になる大学生も、
ステージに立った一人一人の全員がフラットに仲間になる瞬間です。
お疲れ様でした。
左隅の曽我さんと話している福島事務局の竹田学さんも涙。栁澤さんご不在の時には代わって指導していただいたおかげで今日の演奏が成し得たと思います。どうもありがとうございました。今期の裏方MVPです!
大型楽器の搬出を終え、きれいになった舞台袖。
ここから団員の記録係、福島の大学2年生、阿部“だんでぃ”秀捷くん(チェロ担当)の写真を使って、今年初のイベント、大学4年生の卒団者送り出し会の模様をお伝えします。
まずは緊張の本番から解放された笑顔たち。
団員にはホールの客席に座ってもらって卒団生を一人一人紹介していきます。
まずはヴィオラの服部未来子さん���
時にあえて団員に苦言を述べる憎まれ役を買って出てくれて、本当に頼りになる存在でした。そして、北海道の鉄道会社勤務になる身でありながら、東北ユースオーケストラOBOG会をつくり、初代会長になると宣言してくれました。
チェロの下村鈴之介くん。
自衛隊勤務の異色の経歴の持ち主で、確かなチェロの腕前で坂本監督とのカルテットやトリオの演奏もしてくれました。
コントラバスの曽我ひかるさん。
ここで、居ても立っても居られず、「わたしがコメントを拾います」と、
渡辺真理さんがハンドマイクを持って客席に。この機転のきく行動力にいつも助けられています。ありがとうございます。
オーボエの鳥居紗季さん。
三年間にわたって盛岡駅から新幹線に乗る岩手県組の面倒をみてくれました。
送り出し会は、この立派なホール貸切状態で進んでいきます。
次はホルンの曽根瑞貴さん。
第1期からのメンバーで4月からは仙台市の職員として保育園の先生に。OBOG会の経理を担当してくれるそうです。心強い限りです。
クラリネットの木戸口夏海さん。
4月からはプロの演奏家を目指すとのこと。TYOには引き続き指導や何かで関わっていきたいと、有難いことを言ってくれました。
フルートの佐藤星香さん。第3期からのメンバーでありながら、貫禄の溶け込み具合でしたよ。
ひと通り卒団生の紹介が終わったところで、坂本監督からのサプライズ。
2年間キャプテンの大役を務めてくれた畠山茜さんに特別に花束のプレゼントです。
畠山キャプテン、アイドル風に感謝の挨拶。
わたくしが最近眼にした『常勝キャプテンの法則――スポーツに学ぶ最強のリーダー』という本がありますが、この2年は畠山さんのキャプテンシーがあってこそだったと思います。
ここで仙台公演にも来られた一般社団法人東北ユースオーケストラの代表理事、押木 正人 さんからも一言いただきます。
東京と仙台の演奏会への労いと今後の一層の発展を願うお言葉を述べられた押木さんは、この4月からヤマハの国内販社であるヤマハミュージックジャパンの代表取締役社長に就任されます。
「こどもの音楽再生基金」の立ち上げメンバーである押木さん、引き続きのご支援をよろしくお願いします。
最後はこれも恒例となってきた、坂本監督の音頭による指1本からはじまる五本締め。
お疲れ様でした〜。
このあとは怒涛のごとく監督に群がる即席サイン会&記念写真大会です。
東京に戻る新幹線に間に合うギリギリまで快く応じる監督。
しかし、みんなとのお別れの時間です。
団員も家路に着く、こちらは仙台駅経由で福島駅まで向かうバスの車内を。
仙台公演も数々のメディアに取り上げていただきました。 当日のNHK仙台放送局のニュースになりました。 理事社で主催の河北新報の記事、同じく理事社の福島民報の記事、毎日新聞の記事、産経新聞の記事、電通報も東京公演も含めて記事に。
東北ユースオーケストラ第3期の活動が終わりました。今期はせっかくいただいた寄付をカタチにとパーカッションを購入し自前で保有し、福島民報本社のホールをお借りして、定期的な練習場所となるホームを持つことができました。3年目にしてようやく活動の足腰となる基盤が整った気がします。また前期から2年目のキャプテンとなった畠山茜さんのもと、団員の役割分担が組織化され、とりわけ自らがクラウドファンディングで予算を調達しながら、被災地に有志演奏会を行うという自主的な試みは、東北ユースオーケストラの存在意義を強く感じる活動でした。それらに伴い、JR東日本発足30周年の東京駅でのエキコン出演や三菱商事のCM音楽演奏、宮城県の311追悼メモリアルイベントでの演奏やバドミントンリーグのトーナメント戦のオープニングアクトを務めるなど、活動の幅も外へと広がってきました。
音楽を「言葉���という意味の世界に閉じ込めるのは、音楽が表現する「言語獲得以前」の人間の豊かな感性を抑圧する蛮行だという考えを持つわたくしでありますが、今年の『海』と『火の鳥』が象徴する意味の思いがけない広がりには、最後に触れておきたいと思います。今期をスタートさせるにあたって、演奏会でのメインの楽曲選考の過程で、団員のアンケートも取りつつ、最終的に坂本龍一監督とマエストロ栁澤寿男さんのやり取りでクロード・ドビュッシーの交響詩『海』とイーゴリ・ストラヴィンスキーのバレエ組曲『火の鳥(1919年版)』と決まりました。『海』の選曲については、津波被害が甚大であった東日本大震災を契機に生まれたオーケストラが『海』を演奏するのはどうかという声がいくつか挙がったのは事実です。TYOの初年度の夏合宿で、ひょんなご縁から沖縄県の宮古島に伺い、東洋一と言われる美しい海岸で顔をつけ、「しょっぺえー!」と叫んだ子供を忘れることはできません。東北ユースオーケストラの団員にとっては「入ることができない海」でした。今期の石垣島合宿でも「生まれて初めて生の海に入った」団員ばかりか、「怖くて震災の後、海を見ることすらできなかった」という声を聞きました。
沖縄の見事な色合いを刻々と見せる海を2度体験したことは、団員にとっての「恐ろしい海」のトラウマを癒すには大切な過程だったのだと思えます。今年が没後ちょうど100年にあたるドビュッシーの作品は、団員の実力ではとても太刀打ちできるものではなく、石垣島では『海』のスコアを前に音を出すことすらできない団員を前に柳澤さんがメロディを歌っていた。そんなレベルからのスタートでした。
実際、3月の直前合宿に入る段階では「本当にお金を払って観に来ていただくお客様に満足してもらえる演奏になるんだろうか?」との不安が絶えませんでした。プロのオーケストラでも難しいという『海』『火の鳥』なのだから、うまくいかなかった時はご愛嬌で許してもらえるんではなかろうかと無理に楽観的に考えることもありました。しかし、最後は何とかするミラクルオケ、東京公演、仙台公演を経て、プロのオケでは出せない、東北ユースオーケストラならではの、青々と瑞々しい『海』と『火の鳥』を堂々と演奏しきってくれました。
今期のキックオフが7月17日の「海の日」で、トランペットのパートリーダーでク��スチャンの中村祐登くんのFB投稿で知ったのですが、今期の最後の演奏となった仙台公演の3月31日はイースター(復活祭)。『火の鳥』は世界各地で不死鳥や鳳凰として表象される再生・復活の象徴です。つまり第3期は『海』ではじまり、心理的にも『海』を乗り越え、技術的にも『海』を克服し、『火の鳥』という復活を遂げるドラマトゥルギーの中にあったと言えます。坂本監督と栁澤さんの2曲に込めた選曲意図が、たまたま7月17日の海の日と、3月31日のイースターという時間軸でシンクロした。これが誰かの意図的な計らいであったのではなく、偶然性のもとに仕掛けられたドラマであったことに大きな驚きを隠しえません。さらには3月31日はオーケストラの日であったと聞きました。なんでも「耳に1番」の語呂合せとのこと。だったら「オーケストラの日」でなくても、「ビッグバンドの日」でも「弾き語りの日」でもよいのではないかと思いますが、そこはご愛嬌。キリスト教も日本的駄洒落も味方につけたいものです。東北ユースオーケストラは意図せざる時の良き差配を受ける、偶然性の祝福に恵まれたオーケストラなのだと自信を持って大きく構えてみたい気がします。先日、「“たまたま”の人生を楽しむ」という紹介で日本テレビのニュース番組でコメンテーターを務めたわたくしにとってみると、東北ユースオーケストラは人智を超えたパワーで存続しているのだとでもうそぶいてみたくもなります。
さて、類い稀なTYOの肯定感に浸りながらも、「海を乗り越えた」第3期は東北ユースオーケストラにとって、シーズン1が終わった一区切りのような気がします。もう夏合宿は沖縄でなくていいんじゃないかという運営上の��合だけではなく、より音楽性や創造性を磨いていくシーズン2のはじまりだと考えています。その意味で、せっかく出来上がったTYO流の『海』や『火の鳥』は折に触れて繰り返し演奏したらいいのではと個人的に思います。『火の鳥』は全曲版もあることだしと言うと、火を噴く人も出てきそうなのでこの辺でやめておきます。
演奏会2018年にご来場いただいたみなさま、実現のためにご支援ご協力いただいたみなさま、どうもありがとうございました。
東北ユースオーケストラはみなさんから活動資金をいただくことで存続している団体です。来期第4期の活動に向け、現在クラウドファンディングで呼びかけさせていただいています。 https://japangiving.jp/campaigns/33779 引き続きのご支援をどうぞよろしくお願いいたします!
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5月の各地句会報
平成29年5月の特選句
坊城俊樹選
栗林圭魚選 栗林眞知子選 岡田順子選
平成29年5月1日
鳥取花鳥会
岡田順子選 特選句
手漕にて渡る川岸浜豌豆 すみ子
牡丹に重たき雨や誰も来ず 悦子
洞穴に蛙の鳴くや行者みち 美智子
花は葉に一足早にモノクロに 悦子
靴脱げば踝眩し四月尽 悦子
村挙げて菖蒲葺くなり本庄屋 益恵
今日までは春の三日月滲みゐる 都
春深し帆立の稚貝など買うて 幸子
若葉風露店に金平糖を売る 都
そら豆の莢まだ空を向いてゐて 和子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月2日
さくら花鳥句会
栗林眞知子選 特選句
背が少し伸びし少年夏に入る 登美子
ほほゑみて席ゆづられて麦の秋 令子
楠若葉柏手杜によく響く 寿子
薄青き空惜春の月の出づ 紀子
駆け下りる螺旋階段風薫る 登美子
春惜むこほろぎ橋の渓の音 光子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月6日
零の会
坊城俊樹選 特選句
シスターの俯いて去る夏日影 含香
グレースケリー佇ちしか大躑躅の陰 慶月
神木は石の肌なり若葉風 鯨
公家の踏む松の落葉も下屋敷 千種
行人のやうに胸突坂を��� 眞知子
神木のこのただならぬ木下闇 佑天
蜷の道椿山荘へ迷ひける 瑠璃
夏落葉ひとりとなれば音をたて 光子
横切りし蜥蜴の腹の息づかひ 久子
ひよんの笛吹きて穴より南風 ラズリ
砂糖壺の白き肌舐む蠅太し 和子
黒塗りの待てり躑躅の車寄せ はるか
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月7日
県民会館花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
人の世の綾を生き抜き永き日を 龍聲
鯉幟本家分家の競ふごと 文子
春星として潤まずに居れぬ星 雪
夏の星汐入川に突き刺さり 龍聲
春泥の犬の足跡ある廊下 清女
桐の花高きに咲かせ婿の来る 千代子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月8日
なかみち句会
栗林圭魚選 特選句
岩礁のあらがへるらし卯波散る 有有
喉もとにきちんと新茶のこく届く 聰
夕映えの富士に相模の卯波立つ 迪子
新茶汲む湑む一滴待つしじま 和魚
沖の船見え隠れして卯波寄す せつこ
好物の鱚の天婦羅浅草寺 貴薫
揚げたての鱚の天婦羅そり美しき 三無
診察室湯呑みに冷めし新茶かな 美貴
遠浅の浜の卯波のゆるゆると 貴薫
連絡船卯波蹴りたて出港す 和魚
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月8日
武生花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
藤房の花粉まみれの羽音かな 昭子
決断を迫られてゐる薄ごろも 昭女
母恋ふはいつもこの頃著莪の雨 昭子
花散るや永久に伏目の観世音 雪
揚雲雀空の碧さへ見失ひ 越堂
雨脚もさみどりとなり麦は穂に のぶ子
惜春の月あり星を散りばめて ミチ子
鳥雲に飼はれし鶴の長き脚 雪
噴水を集合場所にして散りぬ 昭女
囀りに囀り重ね奥の院 のぶ子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月9日
萩花鳥句会
城山に夏めく雲や牛蛙 小勇
兄戦死草笛の土手たもとほり 祐子
花みかん殊更匂ふ夜でありし 孝士
兄のまねして草笛を唇に 美恵子
瞬発のフォルテの音色草の笛 健雄
五線譜を抜けて彼方へ燕ゆく 吉之
老木に色めきだちし桐の花 陽子
珍しく今年の立夏夏らしく 晴子
葦原へ鳴き尽さんと行々子 圭三
初節句主役を脇に宴かな 克弘
平成29年5月11日
三日の月句会
坊城俊樹選 特選句
つばめ二羽筋交ふ早さ飛ぶ早さ 喜代子
いつか来ていつか去りゆく春の雲 牧羊
更衣して胸元の風新た 牧羊
娘等の更衣なる有るや無し 喜代子
九頭竜の空に波なし飛燕来る 牧羊
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月12日
芦原花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
二部合唱新緑をぬけ空に舞ふ 孝子
新緑の樹々の上なる飛行雲 久美子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月13日
枡形句会
栗林圭魚選 特選句
朴の葉の脈やはらかし豆御飯 鯨
懸り藤紫の風吹き渡る 多美女
花水木はらはら紅となり毀れ 陽子
乱鶯や多摩の雨脚強くして 鯨
紫雲英田や線路の果てに波の白 多美女
オレンジのクレーン吸ひ込む夏霞 亜栄子
母の日や母在すことに尽きるなり 文英
庭先に亡き人植ゑし翁草 教子
石仏の潤む半眼若葉雨 百合子
眼頭のあつくなる日よ母の日は 三無
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月16日
伊藤柏翠俳句記念館
坊城俊樹選 特選句
朝湯してゐる間に田植ゑすんでをり 清女
一人ゐて胸おもき日は野に遊ぶ 阿希
母の日に母となりたる孫見舞ふ 霞牛
伊勢神楽もう来る頃や麦の秋 文子
弁慶の洗濯岩へ卯浪寄す 文子
母の日に森田愛子の遺墨見に 文子
炎昼に女歩けば靴減らし 世詩明
初つばめ村に何かを持ちくれし 世詩明
更衣女ばかりが若やげり 世詩明
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月17日
福井花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
駅頭を手庇で出る街薄暑 越堂
薫風に高層ビルの磨かるる 牧羊
更衣してより肌の目覚めけり 世詩明
越前の窯場の幾つ風薫る 昭子
透けるもの纏つてみたく更衣 昭子
城址なる母校の跡や風薫る よしのり
更衣笑ひ上戸であるらしく 松陰
日には日の月には月の牡丹の香雪
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月21日
鯖江花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
羊歯茂る中に二つの甕の墓 ただし
白き色最も燃えてゐるつつじ 雪
一人居に慣れて一人の春惜む 雪
母の日の遺句反芻し忌を修す 一涓
FMを聴き春愁のひとしほに 一涓
一点のやがて点なす蟻の道 スヱ子
蛇を見しより走り根の動くごと みす枝
藤の房地に触れなんと風揺らす 信子
母の日の黄なるリボンの使ひみち 昭子
牡丹寺ここにも朝倉供養塔 越堂
首と顔日焼したれど皺だらけ 世詩明
青田風北より吹けば幟上ぐ 世詩明
香水をつけたる人の座の隣る 世詩明
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月21日
風月句会
坊城俊樹選 特選句
後ろより夏蝶降りて手に触れず 和子
すだ椎の作る果てなき木下闇 佑天
白金の長者の裔は山法師 鯨
結び葉��坊城俊樹向うから 公世
丸き膝胸に抱へて蟻の列 和子
夏蝶の無数に椎の影高く 炳子
青蔦を纏へばさらにくねる松 眞知子
青鷺の微睡む沼に染められて 文英
くちなはや水一切を沼として 鯨
土塁より先は根の国青葉闇 佑天
(順不同 特選句のみ掲載)
栗林圭魚選 特選句
記憶消すごとく零るる花うつぎ 秋尚
青鷺の狙ひ定めし首たたむ 千種
椋大樹初夏の空くねり取る 秋尚
木漏れ日の探しあてたる蛇いちご 三無
黄菖蒲の水面に溶かし消えぬ色 秋尚
根の搦み入りて土塁の木下闇 野衣
いただきを蝶の世界へ森五月 千種
青蔦を纏へばさらにくねる松 眞知子
ちよと触れて交はす伝言蟻の列 眞理子
夏蝶のもつれるほかはなかりけり 公世
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月25日
九州花鳥会
坊城俊樹選 特選句
夏の蝶もつれて風を結びをり 豊子
風薫る遠の朝廷の野に佇ちて 初子
鮎釣の鋼立ちなる影法師 佐和
雨多き女人高野や著莪の花 郁子
草笛の音と帰るや昏き道 かおり
生きるものなべて躓く青嵐 朝子
寂光をまとひ新樹の鐘を撞く 朝子
新樹晴幹を叩けば嚶嚶と 朝子
ペダル踏むマーガレットの白のせて 孝子
くれなゐを重ね生るる薔薇の香 かおり
波頭月を押し上げ麦の秋 由紀子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月28日
花鳥月例会
坊城俊樹選 特選句
渕は根の国へ通うて蓮浮葉 順子
靖国に現れ消えて夏の蝶 含香
あぢさゐの毬小さくして供華となる 佑天
神池のあちこち磨き水馬 含香
あぢさゐの蒼き多佳子の忌なりけり 公世
擬ひ物めいて常盤木若葉照る 野衣
九段坂雲の峰まで上りたる 佑天
黒を著てきて紫陽花の径ゆく 順子
緑蔭に香具師の幻来てをりぬ 梓渕
内陣へ倚る緑蔭の湿りかな 野衣
(順不同 特選句のみ掲載)
栗林圭魚選 特選句
高音の口笛小意気業平忌 ゆう子
万緑の爆発にある大鳥居 俊樹
神苑の果ての水音蜻蛉生る 眞知子
見上げたる新樹の風の銀色に 悠紀子
神殿の柱ほつそり緑さす 千種
翻る蓮の浮葉へ雲流る 政江
零戦の皮膚薄すぎて梅雨に入る 俊樹
英霊は静かに佇ちて木下闇 佑天
麦秋やカーブ大きく空のバス ゆう子
英霊の眠る社にまたも夏 清流
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年5月
花鳥さざれ会
坊城俊樹選 特選句
観音に都忘れと木洩日と 秋野風
飛魚や吾も���少年飛行兵 匠
白鷺のすつくと佇つや田植歌 天空
観世音おだやかにして五月晴 松陰
園児等の遊戯の時間蝶の昼 越堂
天鵞絨のやうな静けさ五月闇 千代子
忘れ鎌錆びて出て来る木下闇 清女
(順不同 特選句のみ掲載)
4月の句会(追記)
平成29年4月5日
立待花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
うららかな犬の鼾を聞き昼餉 清女
石仏の頰に手を触れ春惜しむ ただし
耕して土の匂ひを豊かにす ただし
夜桜や狐は友と円居して 誠
黄塵や日輪影を薄くせり 越堂
日野堤銀輪軽快菜花道 幸只
(順不同 特選句のみ掲載)
平成29年4月8日
札幌花鳥会
坊城俊樹選 特選句
入学の母乗り継ぎし連絡船 晶子
火の山の火口は見えず春の雲 晶子
亀鳴くや南の島のキャデラック 晶子
雪洞の点りて鬼女も花に酌む 岬月
母許の道のり深き百千鳥 岬月
虚子よりも生きて忌日を修しけり 秀夫
あたたかや水に落ちたる雲の影 寛子
大試験終へほろ苦き缶コーヒー のりこ
(順不同 特選句のみ掲載)
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4月の各地句会報
平成30年4月の特選句
坊城俊樹選
栗林圭魚選 栗林眞知子選 岡田順子選
平成30年4月1日 第七十二回愛子忌句会 坊城俊樹選 特選句 古草に牧羊の影愛子の忌 嘉子 春の潮たつぷり愛子語らばや 省吾 花柩本家の前を通りしや 千代子 夭折の愛子を今も椿寺 信子 眼裏に虹屋俳小屋藪椿 ミチ子 拾はずに居れぬ赤さや落椿 雪 落ちるべき所に落ちてゐる椿 雪 囀も咲き満つものも忌の心 嘉子 春の虹消えて久しや愛子の忌 健吉 愛子忌の読経の空を鳥帰る 清女 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月4日 さくら花鳥句会 栗林眞知子選 特選句 一村を挙げて言祝ぐ入学子 登美子 入学の子に捧ぐ歌口ずさむ 実加 手庇で見る日本海風光る 令子 満満と水はる春の田圃かな 令子 長き髪バサリと切りて入学す あけみ (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月5日 三日の月四月句会 坊城俊樹選 特選句 道標又一つ消ゆ春寒し 喜代子 うららかや大河大きく蛇行せる 都 残雪の白山今も鼓動せり 都 年ごとに童に帰る蓬摘み 都 バス降りし朧の中を別れゆく 都 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月6日 芦原花鳥句会 坊城俊樹選 特選句 田起しに付き餌をあさる鷺一羽 よみ子 夕桜夫を杖としひとまはり 孝子 峠路は恋の道とか風薫る 久美子 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月9日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句 筍の背伸びする音あるやなし 世詩明 調律師ボロンボロンと蝶の昼 越堂 鴨帰るこれより淋し日野の河 さよ子 点眼の仰ぐ梢やさへづれる 八重 しだれ桜三面鏡に溢れをり みす枝 水辺まで辿りつくまで青き踏む ミチ子 さみどりは伸びゆく色や入学す みす枝 遠足の二本で足りぬ教師の手 昭女 花月夜稜線��まだ昏れ残る 時江 偏屈で筍掘りの名人で 昭女 山笑ひ野に喝采の湧く如し 越堂 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月9日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句 囀りや木道階段ささくれて あき子 その上の輪も出来かけて踊子草 秋尚 鴨番桜蕊ふる暗き池 ことこ 老犬と歩幅合はせる春の雲 美貴 小流れに導かれ来て踊子草 和魚 若蘆の影のすつくと揃ひ立ち 秋尚 前の子の影踏み歩く長閑かな 美貴 小さき子に巡査敬礼春の空 美貴 八重桜まだまだまだと散りゆかず 有有 葉の陰にドガの隠せし踊子草 有有 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月9日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句 伝説の湖を守るかに残る鴨 俊子 花冷の欄干を背に聴く唱歌 都 日本種のたんぽぽ一つ城の跡 佐代子 雑踏の中の城址や桜咲く 幹也 城山を仰ぎ残花を浴びてをり 和子 鶯のまだつまづける一の城戸 栄子 城の径花の残心辿りけり 悦子 踊子草城門脇に控へをり 史子 花散るや開花指標となりし木も 益恵 犬ふぐり畦に小花の青を敷き 立子 昔此処船着場てふ八重桜 すみ子 白き館見し目を染める若楓 美智子 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月10日 萩花鳥句会 花冷の言葉通りの夜なりけり 牛子 振り返る九十年の朧かな 祐子 園児みな出番のありし流し雛 孝士 離島から十五の門出海おぼろ 健雄 出店なき指月公園花の宴 圭三 春の空枝伸びらかに大欅 克弘
平成30年4月14日 零の会 坊城俊樹選 特選句 囀の一つが遠き花街かな 光子 隠れ棲む人あるやなし蔦若葉 眞知子 十二階川の向かうの貝やぐら 要 料亭の昼はしづかに藤揺らす 光子 見番や龍神の小さき碑へ春塵 和子 墨堤に鬱々として啄木忌 佑天 墨堤の水のひびきが若葉より はるか 鬢に触れ藤の下ゆく向島 光子 スカイツリー曲げなんとして春疾風 梓渕 蔦絡む置屋名残りと見るからに 眞知子 花街の春塵に在り荷風めく 光子 牡丹へ花街の路はまた折れし 順子 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月14日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句 山鳩の鳴けば芍薬急に散る ゆう子 藤の花鉄路のカーブ膨れをり 亜栄子 すみれ踏みしなやかに行く猫のゐて 美枝子 夏近し鉄棒回る綺羅の靴 亜栄子 母逝きて風むらさきの諸葛菜 多美女 花の塵風の行方を着色す 教子 谷深く山藤の景揺るぎ無く 瑞枝 今年はも鶯なきし夫の墓地 陽子 すみれ摘み中子師の身を案じをり 美枝子 つつじ燃ゆ直立解かぬ兵の墓 三無 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月15日 風月句会報 坊城俊樹選 特選句 遅き日を森に漂ふ火の匂ひ 千種 森古し夏の近さ��噎せ返り 千種 蒲公英は昔からここに咲いてゐた 佑天 ビニールのキリン引摺る春野の子 佑天 乾きたる音を残して蜥蜴消ゆ 秋尚 春昼や耳底のジャズに揺られつつ 眞知子 大池へ傾れて春の野原かな 佑天 (順不同 特選句のみ掲載)
栗林圭魚選 特選句 解れんと力を溜めて蕨かな 秋尚 喋りたきやうな嘴春の鴨 眞知子 石南花や湿り気残る橋に添ひ ます江 栃の花こぞりて天を指す律儀 三無 乾きたる音を残して蜥蜴消ゆ 秋尚 葉の色に紛らふ栃の花見分け 淸流 橡の花いくつも幾つも見えてくる 秋尚 灌仏会として雨落つきらと落つ ゆう子 春光の嘴へ人へとあまねかり 眞知子 虻宙を広げてたつた一つゐる 千種 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月16日 伊藤柏翠俳句記念館卯月抄 坊城俊樹選 特選句 初蝶と呼ばるる為に我に逢ふ 雪 花筵押への四隅杖を置く ただし 魔法瓶中央に置く花筵 ただし 花散りし枝に祈願の恋みくじ やすか 雨無情初蝶に吹く風無情 清女 蝶一つ句碑に一つは敷石に 英美子 燕くる似たる屋号もたがはずに 阿希 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月18日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句 遺跡野の発掘遅々と草おぼろ 越堂 青き踏む虚子山脈に連なりて 越堂 チューリップそのしどけなきくづれ 和子 人影の見えぬ屋台や花の雨 嘉子 野の匂立てて草餅出来上る 嘉子 車窓より村にをの子や鯉幟 令子 ペンギンのよちよち歩く春日和 千代子 蝌蚪生れて細かき命犇めける よしのり 音の無き音を踏み行く落椿 雪 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月21日 鯖江花鳥俳句会卯月抄 坊城俊樹選 特選句 北窓を開け白山へ存問す 越堂 天を指す右手は濡れず甘茶仏 昭子 甘茶仏まつこと小さき肩濡らす ただし 山小屋を開ける釘抜き赤かりし ただし 友や来る鬱金香に声かけて 一涓 妻もまた丁字の重き香を疎む 一涓 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月22日 花鳥月例会 坊城俊樹選 特選句 春惜むパリーの恋のその続き 順子 葉桜をゆく束帯の勅使かな 野衣 蝌蚪の群れ天地創造泥の中 達彦 本殿に幔幕神池に渓蓀 千種 うららかや衛士は制服ごと古ぶ 光子 靖国に集めて寂し桜草 斉 英霊に聞こえよがしに囀れる 淸流 夏近し道の矢印白く並ぶ 和子 神池に残ると決めし鴨三羽 眞知子 招魂祭黒タクシーに賓を 順子 日章旗ゆたかに白く青葉風 和子 春闌けて献木の洞闇深き ゆう子 躑躅燃ゆアイドルへ列崩さざる 要 (順不同 特選句のみ掲載)
栗林圭魚選 特選句 ふつくらと歳時記ほつれゆく暮春 千種 戦跡の石に並びて春日傘 秋尚 黒塗りの車が控ふ招魂祭 斉 本殿に幔幕神池に渓蓀 千種 陽炎の奥処幔幕神鏡も 千種 ふれてみる新樹の葉先やはらかし 荘吉 爪立ちて踊子草の群舞かな 斉 桜草小さき風を一つづつ て津子 招魂祭勅使下向の木沓の音 梓渕 日章旗ゆたかに白く青葉風 和子 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月26日 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句 鞦韆の鉄錆匂ふ雨の夜 かおり 遠足を吸ひこんでゆく科学館 佐和 鞦韆漕ぐなほ情動は昂りて 勝利 チューリップ一年生はもう下校 初子 乗り捨てし風のぶらんこ揺れてをり 阿佐美 少年が鳥となりたる半仙戯 豊子 薫風に蹠を見せて歩む象 朝子 読み止しの瞼だるき蝶の昼 豊子 潮騒の寄する花菜の透き間より かおり 千年の仏の胡座風薫る 佐和 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月 県民会館花鳥句会 坊城俊樹選 特選句 夜桜の闇を篝火妖しうす 越堂 この春や千紫万紅眩むほど 数幸 山笑ふ遺影を撮りに写真屋へ 清女 生きてゐる限り春愁愛子の忌 清女 愛子供華プリマバレリーナてふ椿 千代子
(順不同 特選句のみ掲載)
平成30年4月 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句 師の句碑へ葉桜となり枝垂れけり 清女 花静か空余りにも青ければ 雪 あの人は花のトンネルぬけて来し 雪子 春愁を噛み殺しゐる阿修羅仏 越堂 登校児守る母あり麦青む 匠 古墳あり大山桜天蓋に 越堂 金粉をふりし和尚の花便り 和子 拾ふとは赤き椿の為にある 雪 (順不同 特選句のみ掲載)
平成30年3月7日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句 雪折れの音を背山に聞く夜かな 越堂 左義長や母の形見の長襦袢 ただし 木々芽吹く木の芽峠の石畳 誠 あの柿もあの栗の木も雪折れに 清女 眉毛にも雪をつけたりバスの中 輝一 西日射し朱色に染まる弥生尽 和子(山田) (順不同 特選句のみ掲載)
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