#大人の艶髪
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汚辱の日々 さぶ
1.無残
日夕点呼を告げるラッパが、夜のしじまを破って営庭に鳴り響いた。
「点呼! 点呼! 点呼!」
週番下士官の張りのある声が静まりかえった廊下に流れると、各内務班から次々に点呼番号を称える力に満ちた男達の声が騒然と漠き起こった。
「敬礼ッ」
私の内務班にも週番士官が週番下士官を従えて廻って来て、いつもの点呼が型通りに無事に終った。辻村班長は、これも毎夜の通り
「点呼終り。古兵以上解散。初年兵はそのまま、班付上等兵の教育をうけよ。」
きまりきった台詞を、そそくさと言い棄てて、さっさと出ていってしまった。
班付上等兵の教育とは、言い換えれば「初年兵のビンタ教育」その日の初年兵の立居振舞いのすべてが先輩達によって棚卸しされ、採点・評価されて、その総決算がまとめて行われるのである。私的制裁をやると暴行罪が成立し、禁止はされていたものの、それはあくまで表面上でのこと、古兵達は全員残って、これから始まる凄惨で、滑稽で、見るも無残なショーの開幕を、今や遅しと待ち構えているのであった。
初年兵にとつては、一日のうちで最も嫌な時間がこれから始まる。昼間の訓練・演習の方が、まだしもつかの間の息抜きが出来た。
戦闘教練で散開し、隣の戦友ともかなりの距離をへだてて、叢に身を伏せた時、その草いきれは、かつて、学び舎の裏の林で、青春を謳歌して共に逍遙歌を歌い、或る時は「愛」について、或る時は「人生」について、共に語り共に論じあったあの友、この友の面影を一瞬想い出させたし、また、土の温もりは、これで母なる大地、戎衣を通じて肌身にほのぼのと人間的な情感をしみ渡らせるのであった。
だが、夜の初年兵教育の場合は、寸刻の息を抜く間も許されなかった。皓々(こうこう)とした電灯の下、前後左右、何かに飢えた野獣の狂気���想わせる古兵達の鋭い視線が十重二十重にはりめぐらされている。それだけでも、恐怖と緊張感に身も心も硬直し、小刻みにぶるぶる震えがくるのだったが、やがて、裂帛(れっぱく)の気合
怒声、罵声がいり乱れるうちに、初年兵達は立ち竦み、動転し、真ッ赤に逆上し、正常な神経が次第々に侵され擦り切れていった。
その過程を眺めている古兵達は誰しも、婆婆のどの映画館でも劇場でも観ることの出来ない、スリルとサスペンスに満ち溢れ、怪しい雰囲気につつまれた素晴しい幻想的なドラマでも見ているような錯覚に陥るのであった。幻想ではない。ここでは現実なのだ。現実に男達の熱気が火花となって飛び交い炸裂したのである。
なんともやりきれなかった。でも耐え難い恥辱と死につながるかもしれない肉体的苦痛を覚悟しない限り抜け出せないのである。ここを、この軍隊と云う名の檻を。それがあの頃の心身共に育った若者達に課せられた共通の宿命であった。
この日は軍人勅諭の奉唱から始まった。
「我ガ国ノ軍隊ハ代々天皇ノ統率シ賜ウトコロニゾアル……」
私は勅諭の奉唱を仏教の読経、丁度そんなものだと思っていた。精神が忘れ去られ、形骸だけが空しく機械的に称えられている。又虐げられた人々の怨念がこもった暗く重く澱んだ呻き、それが地鳴りのように聞こえてくるそんな風にも感じていた。
勅諭の奉唱が一区切りついたところで、一人の古兵が教育係の上等兵に何か耳うちした。頷いた上等兵は、
「岩崎、班長殿がお呼びだ。すぐ行けッ」
全員の目が私に集中している。少くとも私は痛い程そう感じた。身上調査のあったあの日以来、私は度々辻村机長から呼び出しをうけた。あいつ、どうなってんだろ。あいつ班長殿にうまく、ゴマすってるんじゃないか。あいつ、俺達のことを、あることないこと、班長殿の気に入るように密告してるんじゃないか。同年兵も古兵達も、皆がそんな風に思っているに違いない。私は頑なにそう思い込んでいた。
つらかった。肩身が狭かった。
もともと私は、同年兵達とも古兵達とも、うまくいっていなかった。自分では余り意識しないのだが、私はいつも育ちや学歴を鼻にかけているように周囲から見られていたようである。運動神経が鈍く、腕力や持久力がからっきし駄目、することなすことがヘマばかり、ドジの連���の弱兵のくせに、その態度がデカく気障(きざ)っぽく嫌味で鼻持ちがならない。そう思われているようだった。
夏目漱石の「坊ちゃん」は親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしていたと云うが、私は生まれつき人みしりのする損なたちだった。何かの拍子���いったん好きになると、その人が善人であれ悪人であれ、とことん惚れ込んでしまうのに、イケ好かない奴と思うともう鼻も引つかけない。気軽に他人に話しかけることが出来ないし、話しかけられても、つい木で鼻をくくったような返事しかしない。こんなことではいけないと、いつも自分で自分を戒めているのだが、こうなってしまうのが常である。こんなことでは、同年兵にも古兵にも、白い眼で見られるのは至極当然内務班でも孤独の影がいつも私について廻っていた。
あいつ、これから始まる雨霰(あめあられ)のビンタを、うまく免れよって――同年兵達は羨望のまなざしを、あいつ、班長室から戻って来たら、ただではおかないぞ、あの高慢ちきで可愛いげのないツラが変形するまで、徹底的にぶちのめしてやるから――古兵達は憎々しげなまなざしを、私の背に向って浴せかけているような気がして、私は逃げるようにその場を去り辻村班長の個室に急いだ。
2.玩弄
部屋の前で私は軽くノックした。普通なら「岩崎二等兵、入りますッ」と怒鳴らねばならないところだが、この前、呼び出しをうけた時に、特にノックでいいと辻村班長から申し渡されていたのである。
「おう、入れ」
低いドスのきいた返事があった。
扉を閉めると私はいったん直立不動の姿勢をとり、脊筋をぴんとのばしたまま、上体を前に傾け、しゃちこばった敬礼をした。
辻村班長は寝台の上に、右手で頭を支えて寝そべりながら、じっと私を、上から下まで射すくめるように見据えていたが、立ち上がって、毛布の上に、どっかとあぐらをかき襦袢を脱ぎすてると、
「肩がこる、肩を揉め」
傲然と私に命じた。
私も寝台に上がり、班長の後に廻って慣れぬ手つきで揉み始めた。
程よく日焼けして艶やかで力が漲っている肩や腕の筋肉、それに黒々とした腋の下の毛のあたりから、男の匂いがむっと噴き出てくるようだ。同じ男でありながら、私の身体では、これ程官能的で強烈な匂いは生まれてこないだろう。私のは、まだまだ乳臭く、淡く、弱く、男の匂いと云うには程遠いものであろう。肩や腕を、ぎこちない手つきで揉みながら、私はふっと鼻を彼の短い頭髪やうなじや腋に近づけ、深々とこの男の乾いた体臭を吸い込むのだった。
「おい、もう大分、慣れて来た��、軍隊に」
「……」
「つらいか?」
「いエ……はァ」
「どっちだ、言ってみろ」
「……」
「つらいと言え、つらいと。はっきり、男らしく。」
「……」
「貴様みたいな、娑婆で、ぬくぬくと育った女のくさったようなやつ、俺は徹底的に鍛えてやるからな……何だ、その手つき……もっと、力を入れて……マジメにやれ、マジメに……」
辻村班長は、岩崎家のぼんぼんであり、最高学府を出た青白きインテリである私に、マッサージをやらせながら、ありったけの悪態雑言を浴びせることを心から楽しんでいる様子であった。
ごろりと横になり、私に軍袴を脱がさせ、今度は毛深い足や太股を揉みほぐし、足の裏を指圧するように命じた。
乱れた越中褌のはしから、密生した剛毛と徐々に充血し始めた雄々しい男の肉茎が覗き生臭い股間の匂いが、一段と激しく私の性感をゆさぶり高ぶらせるのであった。
コツコツ、扉を叩く音がした。
「おお、入れ」
私の時と同じように辻村班長は横柄に応えた。今時分、誰が。私は思わず揉む手を止めて、その方に目を向けた。
入って来たのは――上等兵に姿かたちは変ってはいるが――あっ、辰ちゃんではないか。まぎれもなく、それは一丁目の自転車屋の辰ちゃんなのだ。
私の家は榎町二丁目の豪邸。二丁目の南、一丁目の小さな水落自転車店、そこの息子の辰三は、私が小学校の頃、同じ学年、同じクラスだった。一丁目と二丁目の境、その四つ角に「つじむら」と云ううどん・そば・丼ぶり物の店があり、そこの息子が今の辻村班長なのである。
私は大学に進学した関係で、徴兵検査は卒業まで猶予されたのであるが、彼―― 水落辰三は法律通り満二十才で徴兵検査をうけ、その年か翌年に入隊したのだろう。既に襟章の星の数は私より多く、軍隊の垢も、すっかり身についてしまっている様子である。
辰ちゃんは幼い時から、私に言わせれば、のっぺりした顔だちで、私の好みではなかったが、人によっては或いは好男子と言う者もあるかもしれない。どちらかと言えば小柄で小太り、小学校の頃から既にませていて小賢しく、「小利口」と云う言葉が、そのままぴったりの感じであった。当時のガキ大将・辻村に巧みにとり入って、そのお気に入りとして幅をきかしていた。私が中学に入って、漢文で「巧言令色スクナシ仁」と云う言葉を教わった時に「最っ先に頭に想い浮かべたのはこの辰ちゃんのことだった。ずる賢い奴と云う辰ちゃんに対する最初の印象で、私は殆んどこの辰ちゃんと遊んだ記憶も、口をきいた記憶もなかったが、顔だけは、まだ頭の一隅に鮮明に残っていた。
辻村班長は私の方に向って、顎をしゃくり上げ、辰ちゃん、いや、水落上等兵に、「誰か分かるか。」
意味あり気に、にやっと笑いながら尋ねた
「うん」
水落上等兵は卑しい笑みを歪めた口もとに浮かべて頷いた。
「岩崎、裸になれ。裸になって、貴様のチンポ、水落に見てもらえ。」
頭に血が昇った。顔の赤らむのが自分でも分った。でも抵抗してみたところで、それが何になろう。それに恥ずかしさに対して私は入隊以来もうかなり不感症になっていた。部屋の片隅で、私は手早く身につけていた一切合切の衣類を脱いで、生まれたままの姿にかえった。
他人の眼の前に裸身を晒す、そう思うだけで、私の意志に反して、私の陰茎はもう「休メ」の姿勢から「気ヲ付ケ」の姿勢に変り始めていた。
今日は辻村班長の他に、もう一人水落上等兵が居る。最初から突っ張ったものを披露するのは、やはり如何にもきまりが悪かった。しかも水落上等兵は、私が小学校で級長をしていた時の同級生なのである。
私の心の中の切なる願いも空しく、私のその部分は既に独白の行動を開始していた。私はどうしても私の言うことを聞かないヤンチャ坊主にほとほと手を焼いた。
堅い木製の長椅子に、辻村班長は越中褌だけの姿で、水落上等兵は襦袢・軍袴の姿で、並んで腰をおろし、旨そうに煙草をくゆらしていた。班長の手招きで二人の前に行くまでは、私は両手で股間の突起を隠していたが、二人の真正面に立った時は、早速、隠し続ける訳にもいかず、両手を足の両側につけ、各個教練で教わった通りの直立不動の姿勢をとった。
「股を開け。両手を上げろ」
命ぜられるままに、無様な格好にならざるを得なかった。二人の視線を避けて、私は天井の一角を空ろに眺めていたが、私の胸の中はすっかり上気して、不安と、それとは全く正反対の甘い期待とで渦巻いていた。
二人は代る代る私の陰茎を手にとって、きつく握りしめたり、感じ易い部分を、ざらざらした掌で撫で廻したりしはじめた。
「痛ッ」
思わず腰を後にひくと、
「動くな、じっとしとれ」
低い威圧的な声が飛ぶ。私はその部分を前につき出し気味にして、二人の玩弄に任せると同時に、高まる快感に次第に酔いしれていった。
「廻れ右して、四つん這いになれ。ケツを高くするんだ。」
私の双丘は水落上等兵の手で押し拡げられた。二人のぎらぎらした眼が、あの谷間に注がれていることだろう。板張りの床についた私の両手両足は、時々けいれんをおこしたように、ぴくッぴくッと引き吊った。
「顔に似合わず、案外、毛深いなアこいつ」
水落上等兵の声だった。突然、睾丸と肛門の間や、肛門の周囲に鈍い熱気を感じた。と同時に、じりッじりッと毛が焼けて縮れるかすかな音が。そして毛の焦げる匂いが。二人は煙草の火で、私の菊花を覆っている黒い茂みを焼き払い出したに違いないのである。
「熱ッ!」
「動くな、動くとやけどするぞ」
辻村班長の威嚇するような声であった。ああ、目に見えないあのところ、今、どうなってるんだろう。どうなってしまうのだろう。冷汗が、脂汗が、いっぱいだらだら――私の神経はくたくたになってしまった。
3.烈情
「おい岩崎、今日はな、貴様にほんとの男ってものを見せてやっからな。よーく見とれ」
四つん這いから起きあがった私に、辻村班長は、ぶっきらぼうにそう言った。辻村班長が水落上等兵に目くばせすると、以心伝心、水落上等兵はさっさと着ているものを脱ぎ棄てた。裸で寝台の上に横になった水落上等兵は、恥ずかしげもなく足を上げてから、腹の上にあぐらを組むように折り曲げ、辻村班長のものを受入れ易い体位になって、じっと眼を閉じた。
彼白身のものは、指や口舌で何の刺戟も与えていないのに、既に驚くまでに凝固し若さと精力と漲る力をまぶしく輝かせていた。
「いくぞ」
今は褌もはずし、男一匹、裸一貫となった辻村班長は、猛りに猛り、水落上等兵を押し分けていった。
「ううッ」
顔をしかめ、引き吊らせて、水落上等兵は呻き、
「痛ッ……痛ッ……」と二言三言、小さな悲鳴をあげたが、大きく口をあけて息を吐き、全身の力を抜いた。彼の表情が平静になるのを待って、辻村班長はおもむろに動いた。大洋の巨大な波のうねりのように、大きく盛り上がっては沈み、沈んでは又大きく盛り上がる。永落上等兵の額には粒の汗が浮かんでいた。
凄まじい光景であった。凝視する私の視線を避けるように、流石の永落上等兵も眼を閉じて、烈しい苦痛と屈辱感から逃れようとしていた。
「岩崎、ここへ来て、ここをよーく見ろ」
言われるがままに、私はしゃがみこんで、局部に目を近づけた。
一心同体の男達がかもし出す熱気と、激しい息づかいの迫力に圧倒されて、私はただ茫然と、その場に崩れるようにすわりこんでしまった。
戦いは終った。戦いが烈しければ烈しい程それが終った後の空間と時間は、虚しく静かで空ろであった。
三人の肉体も心も燃え尽き、今は荒涼として、生臭い空気だけが、生きとし生ける男達の存在を証明していた。
男のいのちの噴火による恍惚感と、その陶酔から醒めると、私を除く二人は、急速にもとの辻村班長と水落上等兵に戻っていった。先程までのあの逞しい情欲と激動が、まるで嘘のようだった。汲(く)めども尽きぬ男のエネルギーの泉、そこでは早くも新しい精力が滾々(こんこん)と湧き出しているに達いなかった。
「見たか、岩崎。貴様も出来るように鍛えてやる。寝台に寝ろ。」
有無を言わせぬ強引さであった。
あの身上調査のあった日以来、私はちょくちょく、今夜のように、辻村班長の呼び出しをうけていたが、その度に、今日、彼が水落上等兵に対して行ったような交合を私に迫ったのである。しかし、これだけは、私は何としても耐えきれなかった。頭脳に響く激痛もさることながら、襲いくる排便感に我慢出来ず私は場所柄も、初年兵と云う階級上の立場も忘れて、暴れ、喚き、絶叫してしまうので、辻村班長は、ついぞ目的を遂げ得ないままであった。
その時のいまいましげな辻村班長の表情。何かのはずみでそれを想い出すと、それだけで、私は恐怖にわなないたのであるが、辻村班長は一向に諦めようとはせず、執念の劫火を燃やしては、その都度、無残な挫折を繰り返していたのである。
その夜、水落上等兵の肛門を責める様を私に見せたのは、所詮、責められる者の一つの手本を私に示す為であったかもしれない。
「ぐずぐずするな。早くしろ、早く」
ああ、今夜も。私は観念して寝台に上がり、あおむけに寝た。敷���や毛布には、先程のあの激突の余儘(よじん)が生温かく、水落上等兵の身体から滴り落ちた汗でじっとりと湿っていた。
私の腰の下に、枕が差し込まれ、両足を高々とあげさせられた。
「水落。こいつが暴れんように、しっかり押さえつけろ。」
合点と云わんばかりに、水落上等兵は私の顔の上に、肉づきのいい尻をおろし、足をV字形に私の胴体を挟むようにして伸ばした。股の割れ目は、まだ、水落上等兵の体内から分泌された粘液でぬめり、私の鼻の先や口許を、ねばつかせると同時に、異様に生臭い匂いが、強烈に私の嗅覚を刺戟した。
「むむッ」
息苦しさに顔をそむけようとしたが、水落上等兵の体重で思うにまかせない。彼は更に私の両足首を手荒く掴んで、私の奥まった洞窟がはっきり姿を見せるよう、折り曲げ、組み合わせ、私の臍の上で堅く握りしめた。
奥深く秘められている私の窪みが、突然、眩しい裸電球の下に露呈され、その差恥感と予期される虐待に対する恐怖感で、時々びくっびくっと、その部分だけが別の生き物であるかのように動いていた。
堅い棒状の異物が、その部分に近づいた。
思わず息をのんだ。
徐々に、深く、そして静かに、漠然とした不安を感じさせながら、それは潜行してくる。ああッ〃‥ああッ〃‥‥痛みはなかった。次第に力が加えられた。どうしよう……痛いような、それかと云って痛くも何ともないような、排泄を促しているような、そうでもないような、不思議な感覚が、そのあたりにいっぱい。それが、私の性感を妖しくぐすぐり、燃えたたせ、私を夢幻の境地にさそうのであった。
突然、激痛が火となって私の背筋を突っ走った。それは、ほんのちょっとした何かのはずみであった。
「ぎゃあッ!!」
断末魔の叫びにも似た悲鳴も、水落、上等兵の尻に押さえつけられた口からでは、単なる呻きとしか聞きとれなかったかもしれない。
心をとろけさせるような快感を与えていた、洞窟内の異物が、突如、憤怒の形相に変わり、強烈な排便感を伴って、私を苦しめ出したのである。
「お許し下さいッ――班長殿――お許しッ ――お許しッ――ハ、ハ、班長殿ッ」 言葉にはならなくても、私は喚き叫び続けた。必死に、満身の力を振り絞って。
「あッ、汚しますッ――止めて、止めて下さいッ――班長殿ッ――ああ――お願いッ――お許しッ――おおッ――おおッ―― 」
「何だ、これくらいで。それでも、貴様、男か。馬鹿野郎ッ」
「ああッ、……痛ッ……毛布……毛布……痛ッ――汚れ――汚れますッ――班長殿ッ」
毛布を両手でしっかりと握りしめ、焼け爛れるような痛さと、排便感の猛威と、半狂乱の状態で戦う私をしげしげと眺めて、流石の辻村班長も、呆れ果てで諦めたのか、
「よしッ……大人しくしろ。いいか、動くなッ」
「うおおおー!!!」
最後の一瞬が、とりわけ私の骨身に壊滅的な打撃を与えた。
「馬鹿野郎。ただで抜いてくれるなんて、甘い考えおこすな。糞ったれ」
毒づく辻村班長の声が、どこか遠くでしているようだった。
終った、と云う安堵感も手伝って、私は、へたへたとうつ伏せになり、股間の疼きの収まるのを待った。身体じゅうの関節はばらばら全身の力が抜けてしまったように、私はいつまでも、いつまでも、起き上がろうとはしなかった。
班長の最後の一撃で俺も漏らしてしまったのだ。腑抜けさながら。私はここまで堕ちに堕ちてしまったのである。 瞼から涙が溢れ、男のすえた体臭がこびりついた敷布を自分の汁と血で汚していた。
どれだけの時間が、そこで停止していたことか。
気怠(けだる)く重い身体を、もぞもぞ動かし始めた私。
「なんだ、良かったんじゃねぇか、手間取らせやがって」
おれの漏らした汁を舐めながら辻村班長が言った。
そして汚れたモノを口に突っ込んできた。
水落上等兵は、おいうちをかけるように、俺に覆い被さり、聞こえよがしに口ずさむのであった。
新兵サンハ可哀ソウダネ――マタ寝テカクノカヨ――
(了)
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カレンチャン-WORK-
ウマ娘 プリティダービーより
Cerberus Project フレンチドール様のガレージキット カレンチャン
製作工程まとめです。
トレフェスオンライン12にて購入
出戻りでガレキをやり始め(といっても美少女ガレキは今作で人生6体目)た為トレフェスオンライン自体初でした。いい時代になったものです。
早速仮組
いくつか埋めた気泡はあるものの微細気泡もなくパーティングラインもそこまででした。
もうカワイイ
台座は100均フォトスタンドにそれっぽいフェルトを敷いてます。
面相
いつものリキテックスソフトを使用
下描きが馴染む気がするのでプライマー→クリアコート後に目を描いてサフレス塗装
ただオーバーコートを吹きすぎてまつ毛が消えすぎたので後に修正してます。
髪
キャラデザの原画とゲーム内で微妙に違うのと(ゲーム内は赤が強め?)寒色と暖色の間といえばいいのかこれが微妙な色で寒色系の銀髪好きの自分は大苦戦。
FGプラチナブロンドから立ち上げた結果
まぁ黄色い
流石にドボンしてベースにラスキウスの亜麻色を使用したものがこちら
ラスキウス使っとけばなんとかなるのでは?
他の作例より寒色寄りな気もしますがゲーム内はこれくらいの印象なのでこれでよしとしました。
さらにゲーム内で特徴的なハイライトもマスキングで塗り分け
脚 赤タイツの塗装は初めてでしたが中々いい感じ
太ももと一緒に全体を肌色で塗った後マスキング後クリアレッドを重ね塗り、シャドウはクリアパープルで 最後にクリアイエローをオーバーコート
勝負服等
シャドウにココアブラウンを吹いた後フィニッシャーズのクリアブラックで調整(茶系なので助かります)
艶消し前はかなり濃淡を出せたと思いましたが艶消しで仕上げるとあっさりめに
今回の反省は今後の参考にします。 やはり黒は難しい。
フリル含め勝負服自体の白はナッツホワイトベースで暖色寄りに仕上げてます。
ストライプ柄も初でした。 これもなかなか難しい。
途切れた細い線は面相筆でちまちま修正しました。
今作の難所 金色の装飾部分
フチはマスキング、正面の細かい部分は4アーティストマーカーにて筆塗り。
シルバーに近い上品な金にしたかったのでEXゴールドを使用、マーカーも金と銀を混ぜて近い色にした上で塗ってます。
ペチコート(スカート裏)こちらも難所
そのまま接着しても見えずらい部分ではあるのですがスカートを着脱仕様にするとやはり見られる部分の為一応合わせ目消しを行いました。 もはや気分の問題。
塗装後の作業なので気を使います。
ところどころ筆入れ、修正を行なって組み付けたら…
完成!
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言葉の果てに雨が降る
朝ご飯として無印の”不揃いバウム チョコがけショコラ”を食べた。不揃いバウムシリーズ、本当に大好きだ。でも、チョコがけショコラは初めて食べた。チョコ欲が満たされて超ハッピーになれる。こんな素敵な商品を生み出してくれる無印さんよ、どうもありがとう。おいしいものを食べると、全ての行動を丁寧にしたくなる。特に無印の物を食べるとそうなる。仕事に行くだけなのにおにぎりを丁寧に結んだり、髪を丁寧にセットしたり、靴下の重ね履きの重ね方を丁寧にしたりなんだり。寒さから身を守るためにする行為、全部好きだ。中でも、湯船に浸かることがわたしはこの世で1番好きで毎晩1時間以上浸かっている。今晩も1時間以上なにも考えずに浸かっていた。
湯船から上がってからはひたすら家計簿と向き合った。生きていくための作戦会議。来月はRECがあるから、だらしないお金の使い方はできぬ。小さな無駄を省き、のびのび挑戦にお金を回せるように。音楽を中心に生活が回っている。来月は観に行きたいライブもある。ああ、迷う。でも、楽しみたいな。
今日の帰り道、途中下車。明日配るためのお菓子を買った。あらゆる誘惑に打ち勝ち、ローソンでからあげクンをゲット。クーポンを使えば、からあげクンを無料でゲットできるのだ。びっくり。本当にもらえてしまった。頬張りながら夜道を歩く。艶やかなイルミネーションが街を彩る。今年初イルミ。きれいだった。浸っていたら、片言日本語外国人男性にスタバはどこですか?と声を掛けられ、分からなかったからその場で私がGoogleマップを開こうとしたら彼は、そうじゃん!Googleマップで調べれば良いんじゃんとガッテンした様子でセンキュー!で別れた。寒かったから、無事にスタバでゆったりできていたらいいなって思う。明日になれば、仕事が終わる。帰り道、岩盤浴にでも寄ろうかな。
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国立音楽大学1ね.ん生の18才Eカップかのんちゃん。汁ハッピーとデート後、様々な体位で膣イキ、イチャラブまで。 - 無料動画付き(サンプル動画)
国立音楽大学1ね.ん生の18才Eカップかのんちゃん。汁ハッピーとデート後、様々な体位で膣イキ、イチャラブまで。 - 無料動画付き(サンプル動画) スタジオ: FC2 更新日: 2024/03/06 時間: 96分 女優: 一夫多妻制度を夢見るクズ男 汁ハッピーです。 今日紹介する僕の嫁(自称)は、ピアノの専攻国立音楽大学1**でまだピチピチで18才清楚系の女の.こ. かのんちゃんは、艶やかな黒髪 色白で張りのあるEカップあるバスト まだ3日前に18才になったばかりの大人になりきれていない未成熟で成長途中の身体と素直な性格でお話していると明るい気分にさせてくれる女の.こ.です。 一緒に映画館に行った後、ホテルデート♡ はじめてのラブホテルに緊張気味の様*。 「ええっ だって... 部屋明るいし」照れてる姿も初々しいです。 愛嬌たっぷり ***********************************
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火炎がはじけて
我慢できない、あなたに触れたい
欲しくて、喉が渇いて、息が切れる。 あなたに触れる。そんな夢を見る。何度も。あなたと恋に落ちる夢を見る。 きっと叶わないんだ。それでも求めて、飢えて、潤いに包まれたいと願う。 果肉みたいに咬みつきたい。シロップのように舐めたい。香り立つその肌の熱を、俺の熱でめちゃくちゃにしたい。
「にーちゃん、俺、今日もゆったんのとこだからなっ」
牛乳をぶっかけたコーンフレークをがつがつ食らいながら、弟の光斗はそう言った。制服に着替えながら歯を磨き、さらに光斗が食べこぼしをやらないか見張る俺は、歯ブラシを含むまま「またかよ」と答える。
「いいだろー。にーちゃん待ってるだけなの、つまんないもん」
俺は肩をすくめて、「勝手にしろ」と光斗に背を向ける。 だって、やばい。顔が笑ってしまうのをこらえられない。 単にそれだけだったのに、「にーちゃん、怒ったの?」と光斗は急に不安そうな声を出す。だから俺は、何だかんだ弟に甘い。「怒ってねえよ」と歯ブラシを吐き出してきちんと言うと、「よかった!」と光斗はすぐ笑顔になり、コーンフレークにラストスパートをかける。 こないだ連休が過ぎて、高校生になった春は終わりかけている。早くも熱中症アラートが出る初夏だ。窓からの朝陽は、レーザーみたいに視覚を焼く。 光斗は、俺が小六のときに生まれた弟だ。妊娠を聞かされたとき、性教育済みの俺は「え? とうさんとかあさん、今もやってんの?」と真っ先に思った。そんな複雑な吐き気も覚える中、光斗は誕生して、二歳になるまでは育休を取ったかあさんが面倒を見ていた。 しかし、仕事というものは無情なものだ。これ以上育休するならいったん退職してくださいと、かあさんにお達しが来た。俺の親ものんきなタイプではないので、元から保活はしていたのだが、これがなかなか決まらない��� 光斗は人見知りなところがある。勇気を出して、同じ組の子に話しかける努力はするのだが、あとから「俺、もしかしてうざかったかもしれない」とか盛大に反省会を始める。「うざかったら一緒に遊ばないだろう」ととうさんが言っても、「みんな我慢してたかもしんないじゃん!」と泣き出すこじらせっぷりだ。 だから、今の保育園に体験入園して、「ゆったん」こと早田勇多くんと光斗が見事に打ち解けられたときは、家族総出で喜んで入園希望を申し込んだ。空きがまわってきたのがこの春で、やっと光斗は楽しげに保育園に通うようになった。 俺は俺で高校に進学したところだったが、それは二の次だった。両親は朝六時半には家を出て、電車で長距離通勤をしている。だから、光斗を起こし、食わせ、支度を手伝い、ちゃんと保育園の送迎バスに乗せるまでは、暗黙の了解で俺の仕事だった。 高校に着くのは遅刻寸前だ。弟の面倒を見ていると言っても、生活指導の先公はいい顔をしない。どこから聞きつけるのか、俺のその弁解を知って、女子には「言い訳がブラコンだよねー」とか言われている。分かってくれるのは、男友達だけだ。 でも、いいんだ。同クラの女子連中なんか、俺も興味はない。俺には好きな人がいる。 保育園は十五時で終わるが、家庭の都合がある子供たちは、夜まで預かってもらえる。最初、光斗には保育園に残ってもらい、俺が放課後に連れ帰る予定だった。ところが、光斗愛しのゆったんは、十五時にゆったんママが迎えに来て帰ってしまうのだ。 ゆったんが去ったあとの光斗は、真っ白な灰らしい。「にーちゃん、学校辞めて迎えに来いよ!」と光斗は家で半泣きになって、わがままを言い出しはじめていた。 そのことを保育士さんに聞いたゆったんママが、「光斗くんのご家族さえよければ」と俺の放課後まで光斗を預かることを申し出た。もちろん恐縮すぎる話で、両親は気持ちには感謝して断ろうとしたが、「勇多も光斗くんを置いて帰るのが心配そうなので」とゆったんママは言い添えてくれた。 かくして、光斗はほぼ毎日ゆったん宅にお邪魔して、やっと機嫌を直した。ゆったんの家が都合悪いときは、遠慮なく光斗を置いていってくださいとは伝えてある。だから、たまに保育園に迎えにいくこともあるが、基本的には俺はゆったんの家に光斗を迎えにいっていた。 ゆったんママと初めて顔を合わせたときは、地味だな、と思った。目を引く美人ではない。長い髪は黒く、眼鏡もかけている。高校生の俺にとっては、子持ちの時点で若さすら感じない。 俺が迎えに来ても、光斗はおとなしく帰るわけではない。ゆったんと長々遊び、そのあいだ、俺は一軒家の玄関先でゆったんママと世間話をしている。いい加減遅いと、俺は家に上がらせてもらって、子供部屋から光斗を強制連行する。 その日も、光斗はなかなか子供部屋から出てこなかった。夕陽が射してくるのを合図に、「遅いっすね」と俺が言うと、ゆったんママは苦笑して「連れてきてあげてください」と俺を家に通す。俺はスニーカーを脱いで、二階の子供部屋に向かった。 ため息をついて、少し茶色を入れた髪をかきむしり、今日はどう言って引っ張るかな、とドアの前で思案した。そのとき、不意に「みっちゃん」とゆったんが光斗に話しかける声が聞こえてきた。
「みっちゃんは、自分でおまた触ったりする?」
俺は動きを止め、板張りのドアを見た。
「んー、ちんちん触るってこと?」 「分かんないけど……」 「にーちゃんは触ってるときがあるな」
何この弟、ちょい待て、それ以上言わんでくれ。
「ほんと?」
何で食いつくんだよゆったん、もうやめてくれ。
「やっぱり、大人は自分のおまた触るのかなあ」 「ゆったん触るの?」 「僕は触んない……だって、おしっこするとこだもん」 「俺もそう思うからあんまり触らない。洗うだけ」 「そうだよね。でもね、ママは自分のおまた触ってるの。眠ってるパパの隣で──」
俺は目を開き、とっさに、その先を聞く前に、「おい、光斗っ」と俺はドアに向かって声をあげた。
「帰るぞっ。その……もう、暗いしっ」
「えー……」とか言う光斗の声が聞こえたが、「早くしろっ」と俺は乱暴に言う。
やばい。やばいやばいやばい。 頭の中が暴れるみたいにそう思っていると、ちょっと不安そうな顔になった光斗が顔を出した。
「にーちゃん──」 「お、怒ってねえよっ。腹減ったしさ。遅いと、かあさんが先に帰ってくるかもしんねえし。あ、ゆったん、今日もありがとな」
細身で背の高いゆったんはこくんとして、「見送るね」と立ち上がった。ゆったんが隣に来ると、「行こっ」と光斗ははしゃいだ顔になって、ふたりは一階に降りていく。 ふーっと息をついて、ばくばくと腫れ上がる心臓を抑え、俺も一階に降りた。子供たちが靴を履いている玄関に、足を向ける。
「あ、克斗くん。ごめんなさい、今日も遅くしちゃって」
ゆったんママが普通に話しかけてくる。俺は顔をあげられないけど、「え……っ」とぎこちない声は出す。
「あ、『暗いし』って言ってるの、ここまで聞こえて」 「……あ、いや。すみません」 「ううん、本当に暗くなっちゃったもんね。よかったら、私が車で送ろうか」 「そんな……ぜんぜん、大丈夫っす」
今まで何とも思わず、聞き流していたゆったんママの声が、急に艶やかな大人の女性の声だと気づく。視線の先が定まらない。せわしなくまばたきをしてしまう。「克斗くん?」とゆったんママの声が近づいて、俺はびくんと顔をあげてしまう。
「どうしたの?」
あ……けっこう、肌、綺麗じゃん。すっぴんでその肌なら、化粧を覚え��きた女子連中より、ずっといいかも。黒髪も腰がありそうだから、指ですくったらさらさらしてんのかな。唇だけさっと色が乗せられて、桃色がうるうる��ている。そして、吸いこんでしまいそうな黒い瞳は、無垢なくらいに澄んでいる、のに── ……この人、自分でしてるんだ。
「あ……の、」 「うん?」 「名前……」 「え?」 「あ、いや、そういや俺、ゆったんママって呼んでて、名前知らないなって」 「ああ、そんな……ゆったんママでいいですよ」 「でも」
すがりつくみたいに、彼女を見てしまう。俺のそんな瞳を受けて、彼女の瞳も揺れる。ややとまどったのち、「咲花です」と彼女ははにかんで答えてくれた。
「咲花……さん」 「呼びにくいでしょう? ゆったんママでいいですから」
そう言って咲花さんが微笑んだとき、「靴履いたよっ」と光斗の声が割って入った。「僕も!」とゆったんも言い、「勇多は履かなくていいでしょー」と咲花さんはあきれたように咲う。
「にーちゃん、帰ろっ。俺も腹減った!」 「お……おう。そうだな」
俺は動作がぎすぎすしないように、スニーカーを履く。「明日もおいでね」と咲花さんが光斗の頭を撫ででいる。 白いすらりとした指。あー、どんな味がするんだろ。 無意識にそう思って、俺は慌てて目をそらした。「じゃあ、失礼します」と頭を下げて、咲花さんの眼鏡の奥まで直視できないまま、俺はゆったん宅をあとにした。 ──その夜、俺は咲花さんを想って、した。何度も。口元から咲花さんの名前がこぼれた。返事なんかない。それでも、誰かの──求める相手の名前を口にしながらすると、手の中に吐く瞬間、たまらなく気持ちよかった。 ダメだ。バカみてえ。ガキの話を盗み聞きしたのが切っかけとかマジでアホか。 でも、俺は一気にあの人が欲しくなった。自分でしなくても、俺がなぐさめるのにとか思ってしまう。あの人と恋に落ちれば叶うなら、すべてから奪って、俺の腕の中にさらいたくなる。 そして、自分のシーツに熱い吐息をこすりつけて、俺はまた自分の右手でなぐさめる。 咲花さんに報われぬ恋をするまま、梅雨は過ぎて夏が来た。夏休みは自由登園になる。「おにーちゃんとおうちで過ごせるね」とかあさんが言うと、光斗はびっくりした顔をして、「俺、ゆったんと遊ぶから保育園行くよ!」と当然のように答えた。「振られたな」ととうさんが笑って、「うっせ」と俺は吐き捨てつつ、じゃあ夏休みも咲花さんに会えるんだ、と内心浮かれた。 が、よく考えたら、俺は夏休みにはもちろん学校を休むので、十五時に光斗を迎えにいけるのだった。咲花さんとは、保育園で立ち話ぐらいはするが、ロミジュリみたいに光斗とゆったんを引き離すのが主な仕事だった。 二学期が始まり、ようやく元通りの毎日になった。俺はもう咲花さんの前でぎこちなくなったりはしなかったけど、つい照れて目を伏せたり、優しい言葉に頬が染まったり、こめかみに響くほど鼓動が脈打ったりしてしまう。どんどん咲花さんのことが好きになっていく。その手に手を伸ばして、指を絡めた��なる。 ゆっくり、日が短くなっていく。夕暮れが早くなる。もっと咲花さんといたいのに。俺は焦がれて苦しい胸に息を吐きながら、光斗と家に���る。
「──克斗、明日どうしても仕事で残らなきゃいけなくてね。おとうさんも遅いだろうし、好きな出前でも取ってくれる?」
九月が終わりかけた夜、風呂上がりの俺をつかまえて、かあさんが申し訳なさそうにそう言った。俺は握らされた紙幣を見て、「んー、了解」と深く考えずにうなずいた。翌朝、光斗にそれを言うと、「ピザ食いたい!」とのリクエストも承った。ピザは確かに悪くない、とか俺も思っていたのたけど──
「それなら、うちで食べていきなよ」
例によってゆったん宅に光斗を迎えにいき、世間話の中で今夜は出前だというと、咲花さんは当たり前のように言った。
「え、でも」 「今からでも、買い足し行けば間に合うから」 「いや、けど、かあさんに金もらっちゃったし──」 「気になるなら返せばいいし、何なら、克斗くんがもらっちゃってもいいんじゃないかな」
悪戯っぽく咲花さんが咲って、「そ、そうなのかな」と俺も現金ながら揺らいでしまう。そんな俺に、「もらっちゃえ」と咲花さんが少し俺の耳元に近づいてささやいた。
「私、ちゃんと秘密にするから」
俺は咲花さんを見た。咲花さんはすぐ身を離し、「じゃあ、急いで買い物行かないと」と言った。
「俺、せめて荷物持ちますよ」 「ありがとう。でも、子供たちがいるから。家にいてくれると安心かな」 「あ、そっか。そうっすね……」
別に寂しそうに言ったつもりはないのだが、咲花さんにはそう見えたのだろうか。少し考えたのち、「じゃあ、みんなで買い物行こうか」と咲花さんは提案してくれた。俺はぱっと顔をあげて、つい笑んでしまいながらうなずく。すると咲花さんもおっとり微笑してくれて、また、俺の中がちりちりと焦がされる。 そんなわけで、俺と咲花さん、光斗とゆったんで近所のスーパーに行った。光斗とゆったんは、一緒にお菓子を選べるのがそうとう嬉しかったようで、はしゃいでいた。そんな子供たちを、咲花さんは愛おしそうに見つめている。 子供たちのリクエストで、夕食はチーズハンバーグに切り替わり、結局買い足しでなく一から食材を買った。帰り道、俺は宣言通り荷物を持たせてもらった。咲花さんは遠慮しようとしたけど、ちょっと強引に俺がエコバッグを奪うと、「ごめんね」と言いつつ任せてくれた。 秋の夕暮れが景色を染めていた。一軒家が並ぶ住宅街に、茜色が透けて映っている。空は高く、沈みゆく太陽が滲ませるオレンジにしっとり彩られて、明日も晴天のようだった。 道端で遊んでいた小学生は、夕飯の匂いや灯った明かりに気づいて、手を振りあって家に帰っていく。すうっと抜けていく風は、すっかり涼しい。 俺は隣を歩く咲花さんをちらちら見た。眼鏡のレンズに触れそうな長い睫毛、柔らかそうな頬やしなやかな首。高校生の俺には若くないなんて前は思っていたけど、やっぱり子供ひとり生んだだけだから、まだ腰も綺麗にくびれている。 俺の視線に気づいたのかどうか、咲花さんはこちらを見て微笑む。夕陽に蕩けそうな、優しい笑顔だ。俺は切ないくらいにぱちぱち灯る心に、つい照れたような笑みになってしまう。 家に到着すると、咲花さんはすぐキッチンに立った。「手伝いましょうか」と料理ができるわけでもないのに言ったら、「大丈夫、子供たちを見てて」と咲花さんは俺にリビングにうながした。 光斗とゆったんは、DVDでアニメの劇場版を観始めていた。俺も幼い頃は夢中になったアニメだ。そんなふうにきらきらした目でこのアニメを観ていたのに、いつから観なくなったっけ。 じゅーっというハンバーグの焼ける音と、そのおいしそうな匂いがただよってくる。さすがに俺も盛りつけくらいは手伝えるので、キッチンに立った。チーズハンバーグ、ほかほかのライス、マカロニサラダとコーンスープ。子供たちはちょうどアニメを観終わり、歓声を上げてダイニングのテーブルで待機に入った。 テーブルに並べた料理は、俺と光斗とゆったん、三人で食べはじめた。「咲花さんはいいんですか?」と気になって問うと、「旦那と食べるから」と返され、俺の心にはちくりと影が射した。 いや、でも、好きな人の手料理を食えるのは幸せなことだよな。そう思って、とろりとハンバーグからあふれるチーズをフォークですくっていると、玄関のほうで物音がした。咲花さんはすぐそちらに行き、もしや、と俺が緊張すると、現れたのはビジネススーツの男──「パパ」とゆったんがその男を呼んだ。ということは、やっぱり咲花さんの旦那か。 旦那は真っ先に俺を見た。俺は頭を下げ、「すみません、お邪魔してます」と月並みに言い、「ゆったんパパに挨拶しろ」と光斗にも「こんばんは!」と言わせた。「勇多のお友達と、そのおにいさんなの」と咲花さんが言うと、旦那はそちらには「そうか」とそっけなかったが、「ゆっくりしていってね」と俺と光斗には笑顔で言って、ゆったんの頭も撫でた。
「あなたも勇多たちと食べる?」 「いや、食ってきたから」 「えっ、……ごめんなさい、夕飯いらないって連絡もらってたかな」 「あー……どうだったかな。ばたばたして、してなかったかもしれない」 「……そう。じゃあ、私、この子たちと食べようかな」 「ああ、そうしろ。俺は風呂に入ってくる」
ビジネスバッグを置いた旦那は、ネクタイを緩めながらリビングを立ち去っていった。元気に振る舞っていた咲花さんが、一瞬、哀しそうに視線を伏せる。 ああ、あいつが好きなんだ。そうだよな。気持ちが冷めてたら、そんな顔はしない。ましてや、寝てる隣でみずからなぐさめるなんて── よく分かっていても、それ以来、俺は光斗を迎えにいったとき、世間話の中で積極的に咲花さんを褒めたり励ましたりした。咲花さんが、そういう言葉を言ってほしい相手は俺じゃない。知っていたけど、俺は咲花さんをせめて言葉で癒やしたいと思った。 玄関に橙色が映り、夕陽が射す。相変わらず、それがお別れの合図だ。咲花さんとゆったんに手を振り、俺と光斗は家路につく。 俺に手を引かれながら、「何か、帰る時間早いよ」と光斗はむくれる。「これから日が短くなるからなー」と俺は雑に説明する。俺だって咲花さんと話す時間が減るの寂しいんだよ、とは言わない。
「ねー、にーちゃん」 「んー?」 「ゆったんのパパとママ、昨日喧嘩してたんだって」 「えっ」 「おっきい声が怖くて、ゆったん部屋で泣いてたんだって。そしたらパパが来て、『今度、違うママに会わないか』って言われたって」 「は……?」 「ゆったん、意味が分からなくて泣いてて、そしたらママが来てまた喧嘩してたって」 「……そう、か」 「ゆったんのママは、ゆったんのママしかいないよね? 『違うママ』って何? 俺、分かんなくて。にーちゃんには訊いてもいいよって、ゆったん言ってたから」
俺は口をつぐむしかなかった。月が浮かぶ夜道に、ふたりぶんの足音だけ残る。「にーちゃん」と答えをせがまれたが、「俺も分かんねえよ」と言うと、光斗はただ不安そうな表情になった。 ……あの男、ほかに女いるのか。ぼんやりそう思って、とっさに瞳に怒りが揺らめいた。が、それはすぐに鎮まった。 だったら、俺が咲花さんを奪えばいい。咲花さんの孤独の隙間に入って、そこにひそみ、あの熟した唇を奪うのだ。 そうしたら、あの唇はどんな味がするのだろう。そう思っただけで、妄想がはちきれそうになる。欲しい。どうしても欲しい。ぱちぱちと弱く灯っていった欲望が、ばちばちと強い火炎になっていく。 咲花さんが欲しくて気がふれそうになる。抱きしめたい。キスしたい。つらぬいて俺のものにしたい。 だが、どんな事実があっても、俺と咲花さんの距離は一向に縮まらなかった。俺は見ているだけだった。不意に苦しそうにうつむく咲花さんを、見ているだけ。 やっと残暑が身をひそめた十月半ば、その日も俺は、玄関先で咲花さんととりとめなく世間話をしていた。今日も今日とて、光斗が二階から降りてくるのは遅い。 ふと会話が沈黙になり、俺は咲花さんを見た。
「なあに?」
何事もないみたいに、咲花さんは笑みを作る。俺には、そんな無理はしなくていいのに。
「何でも……ないっす」
少し声がかすれた俺を、咲花さんは見つめる。 抱きしめたい。咬みつきたい。奥まで突き上げたい。俺があなたを満たしたい。そして、その心をあんな旦那からさらってやるんだ。 バターみたいに柔らかそうな肌と、蕩けるほどに肌を重ねたい。水蜜のように瑞々しい肌に歯を立て、俺の痕跡を残したい。 食べたいんだ、俺はあなたを食べてしまいたい。 想いがどんどん強い火炎になって、意識も心情も視界も焦がされてしまう。
「……光斗、遅いっすね」
かすかなため息と刹那のまばたきで、気だるくなりそうなめまいをはらうと、俺はそう言った。
「そう、だね」 「ちょっと、呼んできます」 「うん」
「失礼します」と断って家に上がった。咲花さんと、顔を合わせられない。こんな、泣きそうに恋に愁えた目。そのまま階段を向かうと、不意に、咲花さんが俺の名前を呼んだ。 俺は足を止め、咲花さんを振り返る。
「まだ、待って」 「えっ?」 「まだなの」
俺はきょとんとした。けれど、咲花さんの瞳に宿るものに気づいて、はっと息を飲む。 ──俺と同じ、恋に愁えた潤み。 思わず、玄関に駆け戻っていた。腕を伸ばす。咲花さんの腰をつかまえる。強く引き寄せ、ひと息にキス。 果実を貪るようなキス。壁に抑えつけ、立ったまま行為に至ってしまいそうなキス。 でも、咲花さんはそうなる前に俺と軆を離した。
「まだよ」
頭の中が、甘い発熱にくらくらする。まだ? まだってことは、いつか俺は許されるのか? その皮膚をちぎるみたいに咬んで、彼女に深く深く届けることができるのか? 引き攣った息がこぼれる。「我慢できない」と口走っていた。自分でも驚く、低い男の声だった。でも咲花さんは、「まだ見ていて」と意地悪を言う。
「今は、ダメ」
ああもう。そんな優しい声で言わないでくれよ。俺は言うことを聞くしかないじゃないか。 そのときだった。階段を駆け下りてくる足音に、「にーちゃん、帰ろーっ」と光斗の声が重なった。我に返った俺は、はたとそちらを見て「お、おう」と何とか自然を取りつくろう。
「え、と……じゃあ、失礼しました」
スニーカーを履き直した俺が言うと、何もなかったみたいに咲花さんは笑顔を作る。「また明日ね」と言ったゆったんに、「うんっ」と光斗は笑顔で答えている。 緩やかに暗くなる夕暮れの中で、咲花さんは微笑んでいた。ちゃんと言うこと聞けるかな、と思った。我慢なんて、本当にできるのか? だって、火炎がはじけて止まらないんだよ。 あなたと恋に落ちたい。獣みたいに皮膚に歯を立てて、果汁を飲み干して潤いたい。俺はからからだ。飢えて、渇いて、おかしくなりそうだ。 あなたもそうなんだって分かった。だったら、俺たちのやることはひとつじゃないか。 夕陽が射しこむ部屋で、熟れたあなたはオレンジ色で。俺はきつく抱きしめて、俺はその果肉を食べる。誰よりも味わって食べるよ。この火炎をぶつけて、焦がれるような想いを思い知らせ、あなたの濃い蜜をこくんと飲みこむ。 まだ待って──そう言うなら、ぎりぎりまでこらえるけど、待つほど俺が獣になるのは分かるよな? だから、あんまり待たせないでくれ。焦らさないでくれよ。俺はあなたの心を、軆を、優しく奪いたい。 あるいは、あなたは獣になった俺にめちゃくちゃにされたいのだろうか。だとしたら、俺は──
「にーちゃん」
光斗が、歩きながら何も言わない俺を手を引っ張る。心配性な弟に、「怒ってねえから」と俺は苦笑していつも通り言う。 マンションの群衆に入り、もうすぐ家に着く。吐息が疼く。呼吸ができないほど。 熟れきった心と軆を交わし、恋に落ちていく。ずっと夢に見ていた。あなたと恋に落ちる夢を見ていた。いつのまにか馨しい夢は目の前にあり、俺の理性は、爆発して壊れてしまいそうだ。 欲望の火炎がはじける。あなたを求めるその熱に、俺の頭はもう狂ってしまう。 立ち並ぶマンションの合間に月の光を見つけた。その輪郭は、燃えているみたいに、あるいは潮騒みたいに、ざわめいて見えた。
FIN
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不思議な村に行った話
執筆者: 河合 曽良
◆
皆さんは田舎とかに行って、���いと感じたことはありませんか?
怖いまでいかなくとも、「不気味だ」とか「不思議だ」とか。
僕はそういうの、滅多に感じない方なんですが、つい昨日そういう体験をしたんですよ。
別に何の変哲もない村だったんですけどね。
家屋はこまめに整備されているのか寂れた印象は全くなくて、緑もあおあおとし、水車の爽やかな音が心を落ち着かせてくれるとても心地が良い場所で
猟師が居て、女子どもが居て、年寄りも流れ商人も居る
普通でしょう?
他所者の僕たちに変な目を向けることもなければ、妙に擦り寄ってくるわけでもありませんでしたし
至って普通の、どこにでもある良い集落、といった感じで。
けど芭蕉さんがね。居なかったんですよ
村にお邪魔して少し歩いてから気がついたんですけど、後ろくっついて歩いてた芭蕉さんがいつの間にか居なくなってて。
まあアレも自由なジジイなんで。
勝手にちゃらちゃら村を歩き回ってるんだろう、バカが、と思ったんですけどね。村を一周しても見つからなくて、村人たちに尋ねて回っても「見てませんね」の繰り返しで(因みに何かを誤魔化したり、一点張りしたりなどという様子は無かった)
仕方なく村周辺の森なんかも見てみたんですが、結局芭蕉さんはどこにも居なかったんです。
で、そんなことをしているものだから日も暮れてきて
西陽も物凄く眩しくて暑くて、
途中 村の女性からいただいた甘栗なんかを食べながら、寝ぐらを探し始めました。集落だし、たまには屋根のある場所で一泊したかったですしね。
そこから半刻ほど経った頃くらいですかね? 痛い斜陽を浴びながら暫く訪ね回って、一軒だけ見つかったんです。
眼鏡をかけた短髪の若い主(装いは男性のそれだが顔つきは女性っぽいものでした)と、おろしたままの黒髪が艶やかな奥さんの、二人組のお家で、戸口にかけられた細い標縄(みたいな飾り)が印象的なお宅でした。
「ありがとうございます。助かりました。これからもう一人増えるかもしれないのですが、よろしいですか? 無理にとは言いません。ダメならダメで、別に構いませんので」
「けっこうですよ。どうぞ遠慮なく、くつろいでいってくださいな」
「それはどうも。恩に着ます」
「いえいえ。ただ、あの…」
僕が笠をとって頭を下げると、奥さんの方が声をひそめたんです。
「客間と寝所は、この家屋ではなく別の場所にあるのですが。よろしいですか?」
「? はあ。はい」
ちょっと首を傾げました。だって別にそんなこと、ひそひそ声で言うような内容じゃないじゃないですか。まるで人目を憚るような、ねえ?
それに村にしては この一帯はそこそこ広かったですし、この家が村長��るいは司祭の家系だとしたら、離れ屋敷があっても変ではないですから。
でもまあ気にせず、承諾したんです。
「では、お連れしますね。」
奥さんがそう言うと、主の方は陣羽織を着て、僕の背後に立ちました。奥さんが前、次に僕、後ろに主といった形で 、縦一列ですね 。
歩き始めてからは集落を抜け、薄暗い小山のけもの道を通って、苔だらけの石段を100段くらい登らされました。
また道中ずっと甘い香りがしていたことを覚えています。羊羹とかしぐれとか、そういうお菓子系の匂いで、森の中でこんな匂いがするものか?と妙な気分にもなりました。村には流れも居ましたから 、その手の職人がこの森を通っているのかとも思いましたけど、近くに人の気配や物音はありませんでしたし。
まあ、そんなふうに若干不思議な心地になりつつも、階段を登り切ったんです。
顔を上げると目線の先に大きな黒い鳥居が立っていて、まるで僕らを待ち構えているようでした。
その奥には苔むした社がありました。とても小さく、見立て六畳一間くらい。人二人がギリギリ横になれる程度でしょうか。
「ここ………ですか?」
奥さんの方に問いかけると、彼女は「ええ」と頷いて社の方に向かって行きました。そして扉の前で何かごそごそして 、間も無く扉が開きました。
するとどこからともなく、声が聞こえてきたんです。
何と言っているのか、この時は分からなかったんですが、主と奥さんに促されて社に入ると その声はより鮮明になりました。
「ねえねえ」
って呼んでるんですよ。
小さな女の子みたいな声です。あどけなさが声音に乗っている、けれど棒読みでどことなく無機質な声なんです。
しかもその声は段々と多くなってきて、
「ねえねえ」
「あのね」
「こっちこっち」
「きて」
など、色んな声が混ざって重なるようになりました。
これだけ聞くと、近くで子どもが遅くまで遊んでいるんだろうと思うでしょう?
けど、そうではないんです。耳のすぐそばから聞こえてくるんです
すぐ背後とか、真隣とか、頭上とか
そんなものですから、
まるでこの社の中に一緒に居る。
そんな想像がふと頭に浮かんで、流石に、まずいかもしれないと感じました。
その時です。
複数の声に混ざって、聞き慣れた声が社を通り抜けました。
「マーフィー君もいない。探さなきゃ」
耳元ではなく、明らかに社の外から聞こえてきました。ハッとして社から飛び出したんですが、周囲に芭蕉さんの姿はなかったんです。
当然心地は良くなく、舌打ちをして社の方へ向き直りました。戻って就寝するためではありません。荷物を取って、立ち去るためです。
お化けや怪異といった類は 怖くはありませんが、こんな不気味な場所で寝泊まりなんて、誰もしたくありませんからね。
けど身支度のために社に戻ると、ふとあるものを見つけたんです。
くたびれ��熊のぬいぐるみ。
バカジジイのものです。
それをなんとなく拾って懐に入れて、社を出ると、ふと背後で声がしました。
「曽良君みっけた!」
振り返ると芭蕉さんが立っていました。
普段通りの気の抜けた笑顔で、無駄にバタバタ腕を振りながら「も〜どこに居たんだよ曽良君たら!凄く探したんだからね!!!」って。
僕、思わず言葉を失いまして。
そのまま主と奥さんの方に視線を向けると、主の方が僕の懐を見つめながらうっすら微笑んだんです。
そして平坦な声でこう呟いてました。
「あの人、命拾いしたな」
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ポケモンSV🎇🎆鬼フェスの鬼は鬼畜の鬼編👘🍎
おはこんハロチャオ🎶!( ΦωΦ )みーくんです🖤
残暑も去りすっかり秋めいて来た今日この頃ですが、先週てゃ(鴨見 居ちゃん)🌼おむ(オムライス)🐣けーちゃん(けなみちゃん)💜と遂に待望の…!
🏮👘✨️✨️㊗️DLC記念‼️🎉キタカミ夏祭りデート(👈強調)✨️✨️🏮🎇
に行ってきました〜!😻💖甚平姿が眩しいぜ🤦
✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。
👇コレは初っ端からふざけだすてゃおむ📸😎
当日は昼の部🌞と夜の部🌃で分けて遊びまして、けーちゃん♡は夜の部からの参戦です🥳💘打倒‼️鬼フェス上級‼️😡️👊💥👹てことで本番は夜♡😘
昼の部の時はてゃおむに俺の図鑑完成を手伝って貰ったり軽く上級凸って練習したり屋台行ったり、とにかく写真をメチャクチャ撮ってた‼️👨👧👧️💥📸
✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。
🌿ぽにおピクニックもしたゾ🎶🤗
👇てゃ🌼が撮ってくれた大変百点満点な写真🤗
👆おむ🐣が撮ってくれたガンダムSEEDのOP🤗
自分をオーガポンだと思い込んでるハリボーグ好き
✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。
三人組なら一度は撮ってみたい三馬鹿ともっこ写真📸ガラ悪めで猫っぽいミー、頭脳明晰なシエル、ひよこポケモンのタマで綺麗に分かれたが、イイネイヌはイヌだし個人的にシエル(てゃ)のイメージはうさぎ🐰
日も暮れ始め、やりたかった事を大体し終えたところで夜の部に備え一旦解散‼️また後でな👋🌇
何かこの写真めっちゃ好き🥲🌌タマもシエルもミーも心做しか楽しそう;一生一緒にいてくれや😭
ミータマ、ミーシエ、シエタマは〝ある〟(は?)
✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。
✨️🍎👘🎇🌞昼の部まとめ動画🌞🎇👘🍎✨️
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動画内でソチャデスとチャデスを間違えてます🙇♂️
✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。
夜の部は〜じま〜るよ〜❣️❣️✨🍧️👘🎆けーちゃんと合流します‼️🥳💜
―――…最強ミュウツー討伐以来、凡そ三週間ぶりだろうか。久しぶりに会った彼女は髪を切り色も可憐なダスティピンクに染め上げ、少し大人びた容姿になっていた。あどけなさの残るタマ(おむ)、ボーイッシュなシエル(てゃ)とはまた違う、艶のある女性の面を垣間見たミーは唐突なSSやめーや💥💥👊😅
✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。
けーちゃんのお写真に関してはてゃが撮ってくれた写真が良すぎるから見て‼️🤯💘可愛い❣️😭👇
この4人組可愛いなァ〜🤪💜🐈🌼🐣
一方その頃おむ🐣💛が撮ってくれた写真♡😋👇
ガンダムOPを引きずるな何で毎回オモロいねん
オタチとオオタチの写真とても���愛いの暴力
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各自渡したかったポケモン交換も終えて…((🤗))
さて‼️今回のメインディッシュ‼‼️✨️️😋🍽💞✨️鬼退治フェス上級ですが‼️‼️🤗👹
怖すぎワロタ。
尚最高レベルの10まで到達は出来るものの一歩二歩及ばずホントにギリギリのとこでクリアまで漕ぎ着けなかったので次回こそは‼️🔥💢🤬👊👹
んまっ🌟今回のでおおよその流れを掴んだ俺らなら余裕っしょ🌟🤟😸🫰(特大フラグ建築)
また遊ぼ〜〜〜ね〜〜〜❣️❣️❣️🌈🌈✨️✨️今回も楽しかった‼️‼️👊😻
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✨️🍏💜🎆🌃夜の部まとめ動画🌃🎆💜🍏✨️
youtube
夜の部は鬼フェスで予想外に時間取られた為ゆっくり写真撮る時間が設けれなかったのが唯一の心残り😭次回はけーちゃんとも屋台に行きたい!😖📷
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🌈ここらでポケモンちゃんの写真コーナー🌈✨️
交換で貰った子や皆の手持ちの子たち😎📸
ミー太郎の手持ちは動画で見てクレメンス🙌
一番下のてゃおむのどっちか(多分てゃかな?)に撮って貰ったやつなんだけどメチャ可愛い‼️💘🦊
内股気味でもイケメンでゴメン🤦(は?)
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動画やココに載ってない子たちも含め頂いたポケモンちゃん達は大事に大事にします♡🍀🥰🙏
乙!!
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次の記事で連れ回してたアリアドスとかイトマルの紹介が出来たらいいにゃ😸 (2023/10/06)🐈
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K-POPをフェミニストアートとして読む
(G)-IDLE『Nxde』MV考察
はじめに
K-POP アイドルグループ、(G)I-DLE(アイドゥル)は2022��10月にリリースした新アルバム『I love』で、発売と同時に iTunes Top Album 部門全世界40地域で1位を獲得し、タイトル曲『Nxde(ヌード)』は韓国国内音源サイト全てで1位を独占する「パーフェクトオールキル」を達成した。また、タイトル曲『Nxde』はビルボードワールドデジタルソングセールスチャートで13位にランクインし、彼女達の影響力が韓国国内に止まらないことが示された((G)I-DLE 日本公式サイト 2022)。
「ヌードという言葉の検索結果をジャックしたかった」とメンバー達が話しているように、この楽曲が韓国社会の性被害問題に与えた影響は大きい。(G)-IDLE は韓国語で「아이들」と表記されるが、英語の「I(アイ)」の読みとしての「아이(アイ)」には、韓国語で「子ども」という意味がある(들は複数を表す接尾辞)。以前までは、韓国のポータルサイトで「아이 누드(子ども ヌード)」と検索すると、児童ポルノに関するサイトや画像がヒットしていたが、「아이들 (アイドゥル)」による『누드(ヌード)』という楽曲が発表されたことで、検索結果が彼女達の新曲のプロモーションで埋め尽くされるという現象が巻き起こったのだ(Sato 2022)。
タイトルだけでも社会に肯定的な影響を与えた『Nxde』は、歌詞に込められたメッセージ、様々なオマージュを用いた皮肉たっぷりのミュージックビデオ(以下MV)で、彼女達を「まなざしの対象」として消費する社会への反抗を表している。本稿では、この『Nxde』が、エンタメ業界及び社会全体に蔓延るmale gazeや商業主義を告発しながら、ステレオタイプを批判し、「ヌード」という言葉の再領有を試みている点について考察する。
モンロー、バンクシーへのオマージュによるmale gazeおよび商業主義の告発
「私が一番イケてる」とガンを飛ばす2NE1の『I AM THE BEST』、容姿を揶揄してくるアンチに唾を吐くMAMAMOO の『HIP』、自分らしくでいるときが完璧なのだと歌いあげる ITZY の『WANNABE』など、ありのままの自分で強く堂々と生きる姿を提示する、所謂「ガールクラッシュ」コンセプトは、K-POP市場において不動の人気を集めてきた。しかし、今回の(G)-IDLE による『Nxde』は自己肯定や個人の関係を描き出すことに終始せず、K-POP産業や社会の構造を俯瞰して捉え、痛烈に批判しているという点で、他とは一線を画している。
「Why you think that 'bout nude 'Cause your view's so rude」というフレーズに始まるMVのコンセプトはバーレスク。メンバーの衣装やブロンドの髪は明らかにマリリン・モンローへのオマージュだ。商業映画の中でmale gazeを向けられ、快楽の媒体として消費され続けたモンローに扮したメンバーは、スマホやカメラを手にした「鑑賞者」たちに囲まれながら歌い踊る。「私は裸で生まれたのであって、そこに卑猥な意味づけをしたのはお前達だ」という力強い歌詞さながらに、妖艶さを誇張するようなポーズを取りながらも、表情には彼女達の意志が感じられる。「見られている」という状況をその外側から写した映像という点では、女性を視線の客体として肖像化してきた絵画の構造に類似しているが、彼女達は見られていることに自覚的であり、その視線を拒否するどころか、見ている側であるはずのこちらに視線を跳ね返す勢いで、しかとカメラを見据えているようである。そこに、性的ファンタジーが投影された受け身の女性像はない。
モンローを引き合いに、女性たちに向けられてきたまなざしを可視化したことに加え、曲中 2:49での「변태는 너야(変態はお前だ)」という歌詞と共に裸の女性のイラストがシュレッダーにかけられるシーンは、バンクシーの『Love is in the Bin』を彷彿とさせる。アートが常に採点され、その所有権を争って金が積まれていくというオークションの商業主義を批判したバンクシーのパフォーマンスの引用によって示唆されるのは、女性(アイドル)たちを厳しい美的基準のもとで常にジャッジし、素行を監視し、採点し、競わせ、消費することで利益を産み続けてきたエンタメ業界の有害性への批判の姿勢だ。
また、シュレッダーにかけられることになるイラストの女性が、輪郭を保ったままスキャンダル記事の断片から成るコラージュに変化していくシーンは、身体の断片化や平面化によって、女性を性的欲望の対象(=モノ)として描いてきた家父長的な映像・ショービジネス界隈の悪しき「伝統」への皮肉を感じさせる(Mulvey 1975: 809)。
このように『Nxde』は、有名作品のオマージュを通し、女性 (アイドル)の身体が他者のまなざしによって占有され、評価され、利益のために利用されている構造を強く批判しているのである。
ステレオタイプを模倣し批判する
「Baby how do I look? How do I look? 아리따운 날 입고 따따랏따라(美しい私を纏ってタッタラッタラ)」という『Nxde』のサビは、鑑賞者の性的な視線によって作り出された女性像及び、女性達が彼らを満足させるために纏ってきた「美しい私」の空虚さを暴き出す。ここで使われている動詞「입다(イプタ)」とは、衣服などを身に纏う・着るという意味で、「美しい私」の着脱可能性を示唆している。このサビの歌詞は、日々良きものとして消費されるアイドルたちの煌びやかな外見や振る舞いが、彼女らのありのままの姿ではなく、あくまで消費者達、業界関係者達のrude な視線によって着せられた括弧付きの「美しい私」に過ぎないことを暗示しているのではないだろうか。
『Nxde』のMV中では、この括弧付きの「美しい私」が過剰に強調されており、例えばメインボーカルのミンニは『Diamond is a girl’s best friend』のモンローを思わせるピンクのドレス に身を包み、冒頭のAメロで以下のように歌う。
Hello my name is 예삐 예삐요 ハロー。私の名前はかわい子ちゃん
말투는 멍청한 듯 몸매는 섹시 섹시요 話し方はおバカみたい。だけど体つきはセクシー
舞台・衣装・ヘアメイクも相まって、この歌詞が「美人でセクシーな頭の悪い尻軽」という、いわゆる「blonde bombshell」ステレオタイプのことを指していることは明白だが、艶やかなクラブの舞台に立つ彼女をMVという媒体(もうひとつの舞台)を通じて見せることで、このステレオタイプがあくまで仰々しい演出の一部であり、「彼女たちはショーのためにそれをわざわざ演じている」ということを見る側に気づかせる。
さらに、この歌詞に続くウギのパートでは、「그럼 다이아 박힌 티아라 하나에 내가 퍽이나 웃게 퍽이나 웃게(だからダイヤのついたティアラ1つで、私が喜ぶとでも思った?)」と、『Diamond is a girl’s best friend』で提示されるような「美しくおバカで何よりも高価なダイヤを求める女性像」を信じて近寄った者たちを突き放す。
ダイヤを渡せば我がものにできるような意思のない存在だと思っていた対象(女性)が、主体性を持って反論してくるという状況は、欠陥(lack)として扱われ、排除される女性の存在によってマスキュリニティの優位性が保たれてきた男性中心社会(Irigaray 1974: 308 女性を不完全な他者とすることで男らしさとは何なのかの輪郭が形作られるので、イリガライいわく、女性は男性の「鏡」。偶然か意図的か、MVにも鏡のシーンが出てくる...!)を動揺させる。このように、『Nxde』は欲望の対象をまなざすrudeな視線によって女性の身体に映し出される「美しい自分」像が、本当の彼女達個人とはかけ離れていることを示しながら、家父長的で一方的な性的消費が行われている社会構造を批判しているのである。
「ヌード」という語の再領有
「美しい私を纏う」というサビからは、また別の意図も読み取ることができる。それは、「ヌード」という単語に肯定的な意味を見出し再領有することで、それが指すところの彼女たちの身体自体をも回復する試みである。美術界における「ヌード」とは、男が抱く異性愛的欲望を投影した「女」のイメージを意味し、描かれる対象である女性たちは徹底的に受動的な立場に置かれ、主体性を認められず、彼女たちが何者であるか、何を考えているのかなどの情報は性的幻想化の障害として徹底的に削除されてきた(笠原 2018:109)。作詞・作曲・コンセプトの提案まで担ったリーダーのソヨンは、この伝統的な「ヌード」への意味づけからの解放を目指しているようである。ソヨンは自分の本来の姿を「ヌード」と表現して曲を書いたのに、「エロい歌なの?」「扇情的すぎるのではないか」という会社の反応に、「絶対に世に出さなければ」と思い、ヌードが猥褻な言葉ではないということを世間にわからせてやると決心したのだと、出演したTV番組で語った(Todoroki 2022)。
また、サビ前の「꼴이 볼품없대도 어쩌면 네게도 다신 사랑받지 못한대도 (不恰好だとしても、もしかしたらあなたにもう愛されることができないとしても) Yes I'm a nude」という歌詞からの流れも考慮すれば、サビで纏う「美しい私=nudeの私」とは、他人の欲望を映し出す平面的な女性像ではなく、素のままの自分を意味していることが読み取れる。「Nxde」が収録されたアルバムのテーマが自己愛であることも考えれば、曲名の 「Nxde」で「u」が伏字になっている理由も見えてくる。彼女たちが描く「ヌード」に、性的な視線でまなざしてくる u(you)は必要ない。(G)I-DLE は「ヌード」という単語を自己愛の対象である「素のままの自分」として読み替え、女性の裸が欲望によって消費されることに反抗しているのだ。
さいごに
本稿では、(G)I-DLE の最新曲『Nxde』のMVを、male gazeと商業主義批判、ステレオタイプ批判、「ヌード」の再領有という3つの観点から考察した。
自分自身の身体は他者に占有され、評価されるべき物ではない。私は私の生まれたままを受容して、他者から気に入られないとしてもその態度を貫くの��。このような強い意志を感じさせる『Nxde』が、K-POP史における画期的なフェミニスト的楽曲のひとつであることは間違いない。「あるべき姿」の強要に抗するメッセージを打ち出したグループのメンバー全員が、痩身で白い肌、大きな眼に整った顔立ちであることは、representationの面で限界があると言わざるを得ないだろう。それでも、韓国の美の基準を満たし、テレビに出演し、韓国だけでなく世界に向けて発信できる人気アイドルという地位を存分に利用し、社会に問題を投げかけていることの意義は非常に大きい。
カムバック前に公開された動画 “I love” Interview における、わざとらしく欲望を掻き立てるような編集とと煽るような台詞は、フェミニストによる批判をシャットアウトしてきた「まなざす」人々のMV視聴を促進したに違いない。そうして扇情的な映像を期待した彼らは、最後に「変態はお前だ」と言い放たれるのである。
参考文献・サイト
Aya Sato,2022,「わいせつな検索結果を一掃…韓国アイドルの歌が起こした変化」COSMOPOLITAN(https://www.cosmopolitan.com/jp/k-culture/korean entertainment/a41741485/gi-dle-new-song-nxde/). (G)I-DLE 日本公式サイト,2022,「(G)I-DLE、Mini 5th『I love』米国ビルボード「トップアルバムセールスチャート」にランクイン」(G)I-DLE 日本公式サイト,(https://gidle.cubeent.jp/news/992). 笠原美智子,2018,『ジェンダー写真論』里山社. Laura Mulvey, 1975, "Visual Pleasure and Narrative Cinema." Luce Irigaray, 1974, "Speculum of the Other Woman." Yuki Todoroki,2022,「過激だと反対され…(G)I-DLE ソヨンが明かす「Nxde」の制作秘話」COSMOPOLITAN(https://www.cosmopolitan.com/jp/k-culture/korean entertainment/a41827839/221101-gidle-nxde/).
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自転車
自転車を買った! 2024年11月4日、自転車を買った。Claigslistというアメリカの、メルカリのようなやつで。自転車を買ってから今(11/9)までいろんな出来事があって、全部楽し愛おしい。
11月4日はNY生活の5日目。1日目にアパートからセントラルパークまで歩いて、セントラルパークの大きさに参り、半分くらい歩き回っただけで、帰宅したら4,5時間歩き回っていたことになり、とにかく自転車が欲しいと思った。Citi Bikeがどこにでもあるから!と行く前に職場の元ニューヨーカーが教えてくれていたけれど、地元民たちからはあんな高いの無駄すぎる、と言われた。元々ニューヨーク計画が立った頃は自転車を持って行こうかと思っていたのだけれど、ヨセミテの話が出てきて登山グッズを持っていくことになったので諦めたのだった。そしてシアトルの乗り換えの時に荷物を一回全部受け取って、入国審査があって、それから国内線への乗り換え、しかも1時間以内、という状況に立ち会った時、“あぁ、自転車なんてとても運べなかったな”と、持ってくることは不可能だった、と諦めがついた。ついたはずだったのに、1日目にしてもう悔しかった、自転車がないここでの生活は勿体無すぎる!と。地下鉄は1回2.9ドルでとてもお得なので乗りまくれるんだけど、気づけば日本円のレートで冷静に考えたら500円弱なので、乗りまくっていると結構嵩む。かといって歩きまくっているのも時間がねぇ。
そんなわけで、中古自転車を買おう、と毎日思うようになった。Claigslistというところでただ同然でボロバイクが出されているのを見始める。 過去に自転車盗難に遭い、あらゆる転売サイトで検索した経験があるので、安すぎて盗難車を捌いている売人に当たるのが嫌だなぁと思いながらも、この切り詰め生活では安いものにばかり目が行く。一件、もうすぐ引っ越すので自転車が不要になった、という良さげな投稿を見つけてとりあえずメッセージを送って返事が来ないので寝た。
翌朝、まだメッセージの返事が来ていなかったので、もう2件ほど気になる投稿にメッセージを送って朝ごはんを食べていたら、1件からすぐに返事が来た。良いよ、何時にする?と。過去にClaigslistで車を買ったことのある大家(友達)によれば、Claigslistには本物もいれば、危険もある、という恐ろしい例を聞く。変なところに呼び出されて銃出されてお金だけ取っていかれるという例がたくさんあるそうだ。大家の友達はそれで大変な目にあっただとか。 ビクビクしはじめる。でも待ち合わせ場所は人通りの多い場所だし、昼間だし、きっと大丈夫だろうと大家が言う。地図を見て、もしやばくなったらマクドナルドか地下鉄に逃げ込もう。シューズはランシュを履いて逃げれる準備万端にして出かける。メッセージが来てから1時間と経たずに出かけた。 住んでるアパートはアッパーウェストサイドで、待ち合わせはマンハッタンの結構下の方で、40,50分かかる。その間中ドキドキしながら向かった。Delancey St-Essex Stという駅に待ち合わせの15分前くらいに到着し、対岸の銀行で80ドルを下ろす。
待ち合わせの角に行く。こちらが先に待ち合わせ場所にいるのはちょっと怖かったので、歩道の反対側に立って待った。あの人かな、この人かな、と対岸の角を行き交う人間を観察するのは、アクション映画に入り込んだみたいな気がしてちょっと楽しい。反対側からでもマクドナルドのWi-Fiが入ったのでネットもあってグッド。11時の待ち合わせ時間になっても現れず、「自転車持ってくるんだよね?」とメッセージを送ったら直後に、おじさんが自転車に乗ってきた。中華系の大きなおじさんが自転車を待ち合わせ場所に停めたので後ろから声をかけるとにこやかであまり危険オーラは感じない。待て待て、とジェスチャーしながら携帯電話で電話をかけ、突き出してくる。電話を取ると陽気な男の声が聞こえて、「どう?気に入った?」と。「おう、はい、やー」的な返事をして、まずは乗らせてくれ、と言おうと思っていたら間髪入れずに「まぁまずは乗ってみてよ」と言われる。「そう言おうと思ってたんだサンクス、乗ってみる」と言って電話をリン(林)という男に戻して乗ってみる。
座高が高すぎる。座れない。買っちゃいけないかなとも思うけど、とりあえず動作に問題はなさそうだし、写真で見ていた以上に見た目が気に入った。座高は高くても乗れなくはないし、3ヶ月だけだし、とにかくこの売買の状況がおっかないし、ということで戻って、「買うわ」と言っておじさんに80ドルを手渡した。サンキューサンキューと言い合ってとっとと別れた。
さて、マップが自転車用ルートを示してくれるあたりで既に予感があったのだが、マンハッタンあるいはニューヨークは、ものすごい自転車大国だと思う。自転車用の道が古くから整備されていて、車より自転車が優先されている。道の整備のされ方は本当に自転車乗りにとって理想的な幅と道筋だし、車にとっても歩行者にとっても自転車道と自転車の存在が当たり前のこととして存在している。自転車マークの信号もある。座高高くてずっと立ち漕ぎであっという間に汗だくだけれど、気分は高揚していた。セントラルパークを走る際に降り坂で何もせずに自転車が進んで行き、これまで乗っていたどんな自転車よりも大きくてタイヤ幅もあるため安定感抜群で両手離しができる、もう最高の気分だった。 結局1時間以上かけて帰宅し、アパート前の何台か括り付けられている木の囲いの鉄格子に括り付けて部屋に戻った。
その日の午後は大家がカフェワークということで私も一緒にカフェに。嬉しくて子供みたいにとりあえず自転車をひいていく。カフェの中からも見える位置のバス停のポールに自転車を括り付け、美味しく大きなチャイラテでカフェワークタイム@Plowshares Coffee Roasters.
カフェからの帰り道の出来事である。ハーレムをチャリで走って、大きな交差点で信号待ちをしている時、黒人さんから写真撮っても良い?ときかれる。「私の写真?」と驚いた感じで答えると、そう、と言ってカメラを指差していた。もちろん、と答えて何枚か撮られる。ハーレムでチャリにまたがるアジア人、という構図だろうか?振り返ると確かに背景はニューヨークのそれで、黄昏時刻のトラフィックを背景に私が映った写真だった。貰えばよかった、あの直後からずっとそれを後悔している。この悔しさが胸に艶やかに残っていることそのものも楽しんでいる。
そうやって自転車を買った1日がいろんな感情を味わわせてくれて終わった。
翌日、day6 of NY life。この日はPublic Libraryで仕事やいろんな片付けをすることにした。もちろん自転車でBryant Parkに向かう。走り出して間も無く、タイヤが凹む。昨日は必死に漕いで帰って気にしなかったけれどまぁまぁ凹んでいた。でも今朝になって一段と凹んだ気がする。気分も凹んでくる。やっぱり咬まされたか〜。これ以上ない安物買いの銭失い過ぎる〜と、大層気持ちの良いハドソン川沿いの自転車道を走りながら大汗かいて悲しみながらもただただ気持ちよくて、気分がごちゃ混ぜ。とりあえず図書館行って自転車屋調べて持っていこう、と漕いでいった。6日目になるまで一度もタイムズスクエアに行こうとよぎりもしなかったけれど、ガッツリ通過した。昨日も通過したけど中央道ではなかったので、今日は本当にガッツリ通過した。自転車で通過するくらいがちょうど良いのではないかなとか変な感想を抱いた。竹下通りを通る時のあの感覚だね。
まだまだ慣れない路駐という常識。ちなみにアパートの前に路駐して一晩明けたら鍵にガッツリ切ろうとした形跡が残っていた。怖過ぎるでしょ。一晩目なのにもう切り跡が!でも道路の至る所に自転車停めのポールがある。凄いよなぁ。日本には無いなぁ。というか日本は道が狭過ぎるか。とまぁポールに行こうと横着をして階段を数段、持ち上げないで自転車をガタガタと降ろしたら早速チェーンが外れた。横着な自分が嫌になりながら、仕方あるまいと手を汚す覚悟でチェーンを嵌めようとしたら、どうにもこうにもハマらない。これまでにない大きな自転車で、スタンドがなくて、基本的にオンボロで。格闘していたら、「Yo!」と黒人のお兄ちゃんがやってきて、あっさりと助けてくれた。通りかかったら何や大変そうじゃん、と思ってさ、ということだった。ありがとうが過ぎるっす!と固い握手をお互いチェーン触った��れた手で交わして別れた。あったけぇなぁと思った。自転車じゃなかったら出会わなかった暖かな兄さんに出会えたのか、とか思いながらPublic Libraryに入っていってテンション爆上がりした。何じゃこりゃ。もう毎日ここで仕事しよう、そう思った。でもちょっと寒い、天井がやたらと高いので。明日から暖かいもの持って来よう。
調べた近所の自転車屋さんに持っていき、きっとチューブがダメだと思うんだ、と言ったら、そう?問題なさそうだけ���?とちょっと強面なヒスパニック兄さんがシュパシュパと力強く空気を入れてくれて万事休す。 最高の気分で帰宅した。何と言ってもやはりセントラルパークの坂を駆け抜けるのは最高に気分がよくて、もうこのライドだけで80ドルの元は回収できたわ〜などという気分。
そしてday7、今日も今日とて図書館へ。と思いきや今度はチェーンが噛み合わない。経験したことのない噛み合わなさで、日本語ですら説明できない状況に陥った。図書館など行っている場合ではなく、昨日空気を入れてくれた自転車屋さんに駆け込んだ。昨日と同じ強面な兄さんは、これはお手上げだわ、ということでうちじゃなんもできねぇ、こっち行ってみて、と別店舗を案内してくれた。やっぱりダメだったか〜ポンコツ車、そんな気分で案内された別店舗に行ったら、なるほど本格的な自転車屋さんだった。置いてある備品全てなかなかの高級品がズラリ。やってくる客も結構ちゃんとしたロードバイクばかり。日本語でも説明できない状況を英語で話したってなんら伝わらない。タチの悪いことに、一見なんの問題もないのだ。でも漕ぐと、なぜかチェーンがハマらない。受付のお相撲さんみたいに大きなおじさんが、なんやこの子、言ってること分からん、って感じで立ち上がり、「マエストロォ!」と奥に向かって叫ぶ。ついてこいというのでついて行ったら、マエストロと呼ばれる髪の毛はペっっっとりとポマードで撫で付けられた小柄なおじさんがむしゃむしゃとサンドウィッチを食べているところだった。お相撲さんが私の言ったことをスペイン語で繰り返し、サンドウィッチを咀嚼しながらうむうむと頷いたマエストロは、「食い終わったら見るからちょい待て」と合図してくる。どうなることやら、という気持ちで、ゆっくり食べてくだされ、と言って店内物色。
一通り自転車を点検したマエストロは、何が問題なの?と。色々がたついているところ微調整したから乗ってきてみて、ということで、おそらく問題解決していないだろうと思いながらちょいと乗り回し、やはり解決していないので戻った。熱心に台に乗せて再度チェックしていたマエストロは、「一体何年乗っているんだね?この自転車は」と聞いてきたので、「んー、1日」とつまらんジョークのような返事になった。「一昨日見知らぬ男から買ったんだ」「いくらで?」「80ドル」「80ドルか」 マエストロの目から見て80ドルが高いのか安いのかは分からなかったけど、マエストロは私が貧乏人であることはちゃんと分かったのだと思う。 ここもここもあれもこれも、もう変えなきゃダメなんだよね、ルーズなんだ全部、そう言う。「ルーズ?」「ルーズ、緩んでいるんだよ全部」「あぁlooseね」まぁ驚かないね。「でも全部変えたら、もうすごい値段になっちまう」「だろうねぇ」いくらになる?とは聞かないし、マエストロもいくらくらい、なんてことは言ってこない。10年以上ロードバイクに乗っているからよーく分かる。備品ひとつ変えるだけだって偉い出費なのに、この為替で、そんなに何箇所も変えるなんてできっこない。「どうにもならんかねぇ」と言っても仕方のないコメントをした。
良いなぁ、と思ったのは、日本の自転車屋さんだったらこんなオンボロ車鼻から相手にしてくれない状況で、マエストロはしっかり向き合ってくれていると言うこと。良いなぁ、と思った。日本だったら、こんなにまで古くなる前にオーバーホールか買い替え、とすぐ言われちゃう。だから、無理に交換を進めてくるわけでもなく、油差したりネジ閉めたり調整してくれる姿が良いなと思った。 「よし、ちょっと俺に試させてくれ。どうにかならんか試してくる。」マエストはそう言って、自転車を持って消えた。と言うか道路に出て漕いでどこかに行った。しばらく帰ってこなかった。その間にも立派な自転車を持ち込んでくる今にでもレースに出れそうなガチな格好の男たちがよく店にきた。マエストロは忙しいだろうに、こんなオンボロ車に時間使ってくれて〜と言う気持ち。 戻ってきたマエストロが吉報を告げる。「この段とこの段のギアチェンジはするな。こことここはまだ使える。でもこっちの段にしちゃううと飛んじゃってダメだ。分かったか?この段とこの段だ」と。 アンティーク車のギアチェンジは怖すぎてしてこなかった。1回でも試みて2度と戻らないなんてことが容易に想像できたので、ギアは触ってこなかった。マエストロは前後の全段試してきてくれたという。ありがとうマエストロ!!! まだなんとか乗れそうで、とってもありがたい。結局たったの8ドルと言うお会計だった。
良いなぁ良いなぁ、と言う気分でこの日は走った。こんなオンボロ車でもまだ乗れる策を考え出してくれる、自転車屋さん自体が。そんな自転車カルチャーがとても良いなぁと思いながら、まだ2日しか付き合っていないのに早くも愛着が湧き出していることに気がついた。
翌朝アパートのエレベーターから自転車を出すところを手助けしてくれたお父さんが、「なんだってそんな大きな自転車乗っているんだい?世の中にはもっと小さくて良い自転車がたくさんあるよ!俺は自転車屋で働いているんだ。」と話しかけてきた。良いの良いの、あたいはとりあえずこいつで良いのです。
マエストロに見てもらってからはなんの問題もない。問題ないどころか、コーニーアイランドにも行ったし、フェリーにも乗った。買い出しもピクニックもカフェも本屋も、それからイーストに住んでいる友達の家にも、全部全部自転車で走り回っている。もう地図を確かめることも無くなった。片道20km超えのブッシュウィックまでも、マンハッタン中を走り続けてブルックリンブリッジ渡って漕いで行った。自転車のないNY生活はやっぱり全然考えられないし自転車だから出会えたあれこれが全部楽しい。嬉しい。
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今日の東京は穏やかなお天気に恵まれ、我が家のバラたちもまだ蕾をつけ続けています。イチョウの木も徐々に黄金色に変わり、クリスマスのイルミネーションも増え、街並みがいつの間にか今年一年を締めくくる準備を始めていますね。
11月17日に開催したサンデーサービスにご参加いただきました方、そして素晴らしいサーモンとデモをしてくださった松山ミディアム、アウェアネス・マスタークラスの生徒さんに心より感謝いたします。ご協力いただきましたご寄付は後日、振込報告をいたしますので、今しばらくお待ちいただけますと幸いです。私たちの光の活動にご賛同いただきまして、どうもありがとうございました。
霊界通信のデモンストレーションの様子をダイジェストでお知らせします。読みやすいようにあとから編集しています。
森:男性がいらっしゃっていて、割と丸顔で色白な感じがします。肌艶が良くて、そんなにお酒に強くない感じがするんですけど、というのは顔が赤ら顔?付き合いがあってお酒を飲んでいたのかな?あんまりお酒に強くなかったけど、飲んでいた感じかな。で、ちょっと頭が寂しい感じで、割とアクティブな感じですね、ゴルフをしている姿を見せてくださっています。帽子もよく被っていらっしゃって、ハンチング棒みたいなものを。体型は中肉中背、若い頃は痩せていたかもしれないですけど、中年以降はちょっとね、代謝が弱まりますから…。で、なんとなくちょっと北の方(に住んでいた方)な感じがします、寒い、東北とか北海道とか、そんな感じがしますね。お父様だと思うんですけど、思い当たる方っていらっしゃいます?(手が挙がらないので)全部当たらなくてもいいですよ?(笑)〇〇さんは、お父様はご健在ですか?
女性:父は色白で、お酒飲むと赤くなるんですけど、丸顔ではない。でも帽子は被っていましたし、ゴルフは時々やっていました。北海道じゃなくて長野ですね。
森:じゃあ〇〇さんかな…あと私、なんて言いましたっけ…アクティブな感じがするんですけど。
女性:はい、そうです。
森:まず、お父様は綺麗好きでいらっしゃいました?
女性:はい。
森:なぜかと言うと落ち葉をね、こう…掃いているんですよ、集めてね、そういったことをお父様はされてました?
女性:はい。(笑)
森:あ、やっていました?家の周りとか。
女性:はい。
森:で、ご自身も最近されています?
女性:はい。
森:割と木が多いところに住んでいらっしゃるのかな?やってもやっても落ち葉があってキリがない、それをお父様がマメに助けようとしています、放っておけないというか。あとね、柿の種を見せてくださっているんですけど、ご自身は食べます?
女性:あの〜母と父が大好きでした。(笑)
森:あ、よかったよかった。
女性:お菓子の柿の種ですよね?
森:お菓子のです、柿ピーってやつですか。
女性:はい。
森:ご自身は食べない?
女性:私も好きです。
森:そうなんですね、(お父様が)柿の種のことをおっしゃってますよ。あとね、爪を気にしていらっしゃるんですけど、爪は弱いですかね?
女性:弱くないですけど、マメに切っています。あの、ちょっと仕事柄、爪が伸ばせないし。
森:なるほどね、なんか爪のことを気にしていて…水仕事なのかな、カサカサになっちゃう感じで…マニキュアとかも塗れない感じですかね、じゃあ。
女性:しないです。
森:爪の保護みたいなことを(お父様が)おっしゃているんですよ。手入れのこと…ちょっとオイルを塗るとかね、やってらっしゃいます?
女性:全然やっていないです。(笑)
森:(笑)それを(お父様が)塗りたいみたい。お父様って割と綺麗好きでなんかこう、おしゃれっていうか…。
女性:はい、そうです。
森:女の子なんだから、って言いたいみたいです。(笑)ご生前はそんなやりとりはありました?もっと髪の毛、こうしたらいいよ、とか。
女性:そうですね、結構マメでした。
森:お嬢様に対して、ファッションのアドバイスとかをしたい感じが今も伝わってきています。専属のファッションアドバイザーですかね。(笑)もう一つおっしゃっているのが、人の才能はすぐに気づくんだけど、自分の才能には気づいてないね、って。お父様は美的感覚のことをおっしゃっているんだけど、モノを作ったりとか描いたりとか、されます?
女性:はい、絵を描いています。
森:あっいいじゃないですか!サイキックアート…じゃないけど。(笑)ご自身に才能があるって、お父様、生前に言ってました?
女性:特に言われていないです。
森:照れくささもあったかもしれないです、そういう美的感覚を伸ばしてくださいっておっしゃっているので。綺麗なものに囲まれて過ごしてくださいって。
女性:はい、ありがとうございます。
森:次も男性なんですけど、まだ若い感じがして…ここの来ている方と同年代、みたいな感じがします。血が繋がっている感じがしますので、ご兄弟、お兄様とか従兄弟さん、で、なんかちょっと急に亡くなっている感じがするんですけど…ご病気でか事故か、すぐに亡くなった感じがします。30代後半から40代ぐらいの感じで犬を見せてくれていて、球技みたいなのをしている感じがします。ずっと九九を暗唱する声が聞こえてきて、アウトドア派で望遠鏡が見えるんですけど。ここまでで思い当たる方、いらっしゃいます?
女性(さっきお父様からメッセージをもらった〇〇さん):弟なんですけど急に亡くなりまして、球技はテニスをやっていてアウトドア派で、理系ですごく勉強ができて。
森:そこは私、言ってないですよね。
女性:で、顕微鏡を覗いてました。
森:顕微鏡か!そっちか。じゃあ、〇〇さんの続きかもしれない、すぐに(弟さんが)出ていらっしゃったから。九九って思い当たります?九九を(弟さんに)教えたりとか、しました?
女性:私が教えていました。
森:教えていたっていう記憶はハッキリとあります?
女性:はい。
森:じゃあ、メッセージ取りますね。引っ越しとかは考えていないですよね?
女性:はい。
森:動く、みたいなことを見せてくださっているんですけど、もしかしたら旅行とか考えていらっしゃいます?
女性:はい、23日に父と弟のお墓参りに。
森:法事があるんですね。引っ越しかと思ったんですけど家族中で動く、大きな動きがあるみたいに感じたので。
女性:親族一同、動きます。
森:そうなんですね。犬はどうですか?
女性:飼っていました。
森:じゃあ、弟さんからメッセージもらいますけど…弟さんは生前よく水を飲んでいた感じがするんですけど、それとご病気とは関係ないですか?
女性:トレーンングをしていたので水を意識して飲んでいました。
森:そのことをご自身にもおっしゃりたいような感じがします。あとは弟さんも、もっと自分に自信を持ってくださいって言ってるんですよね。持っていらっしゃっていたらごめんなさい。だとしたら更に、もっと活躍して欲しい、お父様とか弟さんの分まで。あんまりプレッシャーを感じて欲しくないですけどね、応援されています。ご自身は想像力がある方、アイデアがある方だと(弟さんが)おっしゃっているので、何か自分発信のことをして欲しい、とおっしゃっています。
女性:はい、ありがとうございます。
森:次は絵を描きます。父方の方だと思うんですけど、おじさんかな?ちょっと面長な感じでメガネをかけていて、髪の毛は白髪混じりな感じですね。割と端正な顔つきをされていて、歳は70代後半なような感じがします。目がユーモラス、というかちょっと離れ気味な感じの方。そんなに目は細くない…職業が営業職のような…外に行くような、教育に関わっているような感じもちょっとしますね。ここまでで思い当たる方はいらっしゃいます?お父様より年上のおじさんだと思うんですけど。(手が挙がらないないので)△△さん��どうですか?
女性:おばの旦那さんがそんな感じなんですけど、歳は70歳くらいでした。
森:メガネはかけていらっしゃいました?
女性:かけてました。
森:父方のおばさんですか?
女性:はい。
森:職業は…割と外回りな感じなんですけど、
女性:外回りです。
森:よく会ってました?
女性:はい、もうすごく親しい方でした。
森:じゃあ、△△さんかな、メッセージもらいますね。この方、ユーモラスな方でした?割と。
女性:はい。
森:なんか、ふざけた感じじゃないけど、周りを盛り上げようとし��いるのがすごく伝わってきていて、それをご自身にもやって欲しいみたい。2人でふざけて漫才とかはしていない?掛け合いみたいな。
女性:私は笑う方ですけど、よく漫才してました、おばとかと。
森:そうなんですね。なんか(おじさんが)ツッコんで欲しいみたい。
女性:(笑)
森:(笑)笑いを広げたいのかな。ご自身の生活の中にも、そういう掛け合い漫才みたいな、気の合う人だけじゃなくても笑いを起こすことでその人の心を溶かしてください、って言っています。ドキドキする瞬間ですけど絵をお見せしますね、こんな感じ。(写真の絵を見せる)
女性:あぁ〜、そうです、そっくり。
森:よかった描いて!
女性:ありがとうございます。
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12月8日(日)・9日(月)に開催する6時間ワークショップへのお申し込み受付を開始いたしました。こちらからお申込いただけます。
Clairvoyance A to Z 〜霊視能力の目覚め〜
12月8日(日)10:00~17:00(1時間のお昼休憩あり)
12月9日(月)10:00~17:00(1時間のお昼休憩あり)
料金:1回 8,000円(アイイス会員・税込)・10,000円(非会員・税込)
両日共に同じ内容です
どなたでもご参加いただけます
最少催行人数:3名
日常生活において、私たちは主に目、視覚からさまざまな情報を得ています。
その比率は80~90パーセントとも言われています。
私たちはそれぞれ独自の経験や能力を最大限に活かしながら霊性を伸ばしていますが、霊的能力の中で最も使われているのも霊視能力、クレアヴォヤンスです。
霊的な視点を持つことは、自らの霊性を育むだけでなく、日常生活においてもさまざまな気づきに繋がります。
私たちの周りには、既に色鮮やかな美しい世界が広がっているのにも関わらず、固定概念や先入観、偏見というフィルターを自ら無意識にかけているため、真理を見ていないのです。
霊性が育まれると、今まで見えなかったものが見え始めます。
愛や笑顔、真心や思いやり、善や良心という光のヴィジョンに出会えるようになります。
霊性が育まれると、自分の本当の姿を思い出し始めます。
本当のあなたは、肉体ではないこと
本当のあなたは、唯一無二だということ
本当のあなたは、完全だということ
本当のあなたは、全てに繋がっていること
このワークショップでは、クレアヴォヤンスについて学び、実践していただきながら、霊的な視力を伸ばすことを目的としています。
あなたの挑戦を喜び、励まし、支えてくれるスピリットの存在と一緒に、光の時間を過ごしませんか。
主なレクチャー内容
・クレアヴォヤンス、クレアヴォヤントとは
・クレアヴォヤンスが現れる時
・クレアヴォヤンスの歴史と背景
・クレアヴォヤント6つのスタイル
・肉眼とサードアイの違い
・クレアヴォヤンスが構成される仕組み
・クレアヴォヤンスとチャクラ・オーラとの関係
・ヴィジュアライゼーションの方法
主な実習内容
・クレアヴォヤンス Sitting in the Power
・ヴィジュアライゼーションエクササイズ
・サインに気づき、分析する
・クレアヴォヤンス トランス
・クレアヴォヤンス ヒーリング
・オーリック、サイキック、ミディアミスティック各種リーディング
このワークショップは以下のような方に向いています
・クレアヴォヤンスに関する理解を深めたい
・霊視の練習、経験をしてみたい
・ヴィジュアライゼーションの方法を試したい
・指導霊との繋がりを深めたい
・本当の自分の人生の目的を探りたい
・自分自身の可能性や能力を探りたい
・霊性開花を通して人の役に立ちたい、社会に貢献したい
2025年1月開講の春学期クラスへのお申し込み受付を開始いたしました。春はフレッシュスタートにピッタリな季節です。一年の目標を立てたり、気持ちを切り変えたり、新たな想いを胸に抱きながら、一緒に自分の内側にある光について学んでみませんか?皆さまのご参加をお待ちしています!
また、マントラ入門クラスを2学期制から3学期制に変更しました。
クラスの詳細はこちらのページをご覧ください。
継続受講の方は直接ショップからお申し込みください。
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アウェアネス・ベーシック後期 Zoomクラス
土曜日:19:00~21:00 日程:1/11、1/25、2/8、2/22、3/8
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アウェアネス・ベーシック通信クラス
開催日程:全6回 お申し込み締め切り:1/14
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アウェアネス・オールレベルZoomクラス
火曜日:19:00~21:00 日程:1/14、1/28、2/11、2/25、3/11
木曜日:10:00〜12:00 日程:1/9、1/23、2/6、2/20、3/6
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アウェアネス・マスターZoom クラス
月曜日:19:00〜21:00 NEW! 日程:1/6、1/20、2/3、2/17、3/3
火曜日:19:00〜21:00 日程:1/7、1/21、2/4、2/18、3/4
金曜日:19:00〜21:00 日程:1/17、1/31、2/14、2/28、3/14
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サイキックアートZoomクラス
日曜日:17:00~19:00 日程:1/12、1/26、2/9、2/23、3/9 水曜日:16:00~18:00 日程:1/8、1/22、2/5、2/19、3/5
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インナージャーニー 〜瞑想と内観〜 Zoomクラス
木曜日:19:00~20:00 NEW! 日程:1/9、1/23、2/6、2/20、3/6
土曜日:10:00~11:00 開催時間変更 日程:1/11、1/25、2/8、2/22、3/8
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マントラ入門 Zoomクラス
New! 2学期制から3学期制になりました!
金曜日:10:00~12:00 NEW! 日程:1/17、1/31、2/14、2/28、3/14
土曜日:13:00~15:00 日程:1/18、2/1、2/15、3/1、3/15
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トランスZoomクラス
木曜日:10:00~12:00 開催曜日変更 日程:1/16、1/30、2/13、2/27、3/13
土曜日:19:00~21:00 日程:1/18、2/1、2/15、3/1、3/15
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サンスクリット・般若心経 Zoomクラス
水曜日:19:00~21:00 日程:1/8、1/22、2/5、2/19、3/5
金曜日:13:00~15:00 開催曜日変更 日程:1/10、1/24、2/7、2/21、3/7
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以下は、今後のイベントの告知です。
クリスマス・サービス
12月22日(日)13:00〜15:00
参加ミディアム:開堂 慈寛・森 梢・澤輪 燕・亜笠 未來
ご参加は無料ですが、一口500円からの寄付金をお願いしています。
12:50 クリスマスソング 13:00 開会の祈り 13:03 遠隔ヒーリング 13:10 サーモン 13:17 サーモン 13:25 霊界通信のデモンストレーション 森ミディアム 13:25~13:40 トータル・サイキックアート 新見習いミディアム 13:40~13:50 トータル 亜笠ミディアム 13:50~14:05 トータル 澤輪ミディアム 14:05~14:20 トータル 開堂ミディアム 14:20~14:35 トータル 14:35 クリスマス瞑想 14:45 もらって嬉しいクリスマスプレゼントメッセージ 14:57 閉会の祈り 15:00 閉会
当日は以下のリンクよりご参加ください。
https://us02web.zoom.us/j/87859851547
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スピリット・コミュニケーション・トゥワイス NEW!
2月2日(日)20:00〜21:00 会員限定・参加費2,500円
出演ミディアム:恵子・森 梢
詳細とお申し込みはこちらからどうぞ
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サンデー・サービス(日曜 12:30〜14:00)詳細はこちらから。
2月16日(日)12:30〜14:00 担当ミディアム:本村・森
3月16日(日)12:30〜14:00 担当ミディアム:亜笠・森
ご参加は無料ですが、一口500円からの寄付金をお願いしています。
2月・3月へのご参加は以下のリンクよりどうぞ。
https://us02web.zoom.us/j/82349628335
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ドロップイン・ナイト
1月16日(木)19:00〜20:00 会員限定・参加費2,500円
3月13日(木)19:00〜20:00 会員限定・参加費2,500円
指導霊���スピリット・ガイド)のサイキックアート
詳細とお申し込みはこちらからどうぞ。
過去の開催の様子はこちらからご覧ください。
#awareness#unfoldment#spiritualism#spirit communication#mediumship#psychic art#art#demonstration#アウェアネス#スピリチュアリズム#サイキックアート#霊界通信#ミディアムシップ#スピリットコミュニケーション#スピリットポートレート#spirit portrait
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# 1話 新手のナンパ師
「おーいギスケ!それは下手(しもて)に運んでくれ」
「はい源さん」
商店街から少し離れた小さなビルの窓には『劇団みかん』の文字が一枚ずつ貼られている。今時の、目立つフォントを用いたカラフルに洒落込んだ看板とはほど遠く、黄色やオレンジの画用紙を用いた手作り感あふれるその『看板』が主張する一室がわたしの居場所だ。
今は3ヶ月後に迫った発表に向けて役者さんたちとの最終調整中で、舞台での立ち位置の把握だとか、それに合わせた照明の明るさやタイミング、それから舞台美術の配置…などなど、この劇団の裏方を担当するわたしは確認する事が沢山ある。
と言っても恥ずかしながら裏方のいろはを学んだ事はなく、さっき言われた「しもて」の場所もここに来てから学んだ事だ。たまたま、この劇団の座長がわたしの両親の知り合いであり、たまたま、高校を卒業後も進路に迷って暇を持て余していたわたしが、たまたま、人員不足のこの劇団に声を掛けてもらった。ただそれだけであって、ただそれだけなのに、気付いたらわたしはこの劇団の裏方としてもう3年ほど働き続けていた。そんな理由から始まったとはいえ、わたしはこの仕事がいつの間にか『当たり前』になっていて、好きか嫌いかと言われたらまあ…うん、そんな感じだけど、でもこの仕事は確かにやり甲斐を感じている。
…なんて言ったら本業の人に叱られそうだけど。
「いつも重いもんを運ばせて悪いなぁ」
「気にしないでください。仕事ですから」
「お!言うようになったなぁギスケ!えぇ?仕事もサマになってきたんじゃないか?」
しゃがれた声を跳ねるように弾ませて話すこの人こそ、この劇団の座長である源さんだ。ざっくり纏められた白髪混じりの髪と少し色黒な肌が特徴的で、どこまでも通りそうな声を放つ大きな口には真っ白な歯が際立って見えている。笑うとシワが刻まれる源さんの顔はいつ見ても元気が溢れていて、生命力を感じるとはこの事を言うんだろうと毎度感心する。
あ、そうそう。この劇団では劇団員との距離を作らない事をモットーとしているらしく、皆平等にあだ名をつけられる。この場で呼ばれる「ギスケ」とはわたしの事だ。
他にも、ふわふわとしたミルクティーのような色の髪が彼女自身をよく表している主演女優の舞さんは「まいやん」、そんなまいやんとは対照的に艶の良い真っ黒な髪を大胆に束ねて縛り上げている助演女優の聡美さんは「さとみん」、いつも劇団のムードメーカーな洋(ひろし)さんは「ようちゃん」…などなど、全て源さんと劇団員が決めたあだ名で呼び合っていて、源さんはみなもとと書いて「げんさん」と呼ばれている。
それにしても何故わたしは「ギスケ」なのか。そのルールなら幾らでも可愛いあだ名があったろうに…と少し不満に思っている事はここだけの秘密。
「そんな働き者のギスケに追加で頼みたい事があるんだがな、」
「じゃあわたしは定時なので上がります!お疲れ様でした!」
「なに?!お前さん帰る気か?!みんな残ってリハーサルを続けるのに?!」
信じられん!とわざとらしく息巻く源さんを横目にお先に失礼します、と急いでこの場から立ち去った。勿論毎回定時で上がるわけでは無いけれど、今日は事前に残業が出来ない事を伝えていたので何も気に病むことはない。暇な私にだって予定はある。
だって今日は!待ちに待ったササキベーカリーの新作、オレンジピールパンの発売日なんだから!!
「ごめんなさいねえ…ついさっき完売しちゃって…」
申し訳なさそうに答えるパンのように優しそうなこの方は、このササキベーカリーのブーランジェ。その印である白い帽子がよく似合う、まるで某あんぱんを作る有名なおじさん…を女性にしたかのような可愛らしい人。わたしはこのお店の常連であり、今、新作のオレンジピールパンが手に入らなかった事実に絶望している。
「ほ、本当に…一つもありませんか…?」
「そうなのよ〜ほんとについさっき、ついさっきだったんだけどね!若い男性が買われていって、あ、男の人にもオレンジって人気なんだわ!って思ってたところでねえ〜!」
常連客のわたしだから知っている。この先、ブーランジェの話は止まらない。見覚えのない人だから新しいお客さんかしら、だの、背がスッと高くてなかなかハンサムだったのよ、だの、最早コンプライアンスが怪しいマシンガントークが炸裂するのだ。お目当ての商品が買えなかったわたしはその話も早々にお店を後にする事にした。また来ます、と常連アピールは欠かさずに。
しかし、常連客であるわたしを差し置いて新作パンを買っていくとはなんと許し難い!…いや分かっている、全ては平等であってその人は1ミリも悪くない。悪いのはただ運が無かった自分だ。あーあ、もう少し早く着いていたらなあ、と、どうにもならない仮定を巡らせながらお気に入りの場所ーー…近所の堤防の草むらに寝転んだ。
この堤防下に流れる川は綺麗に整備されていて、早朝にはジョギングをする人、夕方には子供たちの駆けていく声、夜は犬の散歩をする人も多く、人々の憩いの場とされている。そこそこ名の知れたこの場所では稀にドラマの撮影なんかもしているらしい。今の時期は川の優しい音色と���夏を匂わせる風が心地良くて、わたしの好きな場所だ。いつも仕事を終えるとこの場所に来てのんびりしてから帰路に着く(雨の日だけはまっす��帰るけど)。幸いな事に今日は晴れているので、整備されたばかりのチクチクする草を背に感じながら帰る間際に遮った源さんの言葉を思い出す。
源さんの言う『頼みたい事』は分かっている。きっと『役者のオーディションを受けないか』って話だ。
話は戻って、わたしが裏方として所属する『劇団みかん』はいつだって絶賛劇団員募集中で、つまるところ役者が足りていない。そしてオーディションを受けたい人は決まって名の知れた劇団を求めているので、画用紙で看板を作るような小さな劇団はお呼びではないのだ。だから源さんはいつも懲りずにわたしに同じ話を持ち掛ける。
だけどね源さん、わたしは役者を志した事は一度もないし、そもそも劇団みかん以外の演劇には興味が無い。テレビ番組もニュースくらいしか見ないのでドラマや映画も勿論観ない。そんなわたしが役者なんて冗談が過ぎる。最初こそ丁重にお断りしたものの、あまりにもしつこいので最近はその話題から逃げるようになっている。それでも源さんは懲りてくれない様子だけど…明日はどうやってその話題からすり抜けようか…
そんな事を考えていると、ぐるる…と腹の虫がないた。
そうだ、今日はササキベーカリーの新作を食べる為に朝も昼もご飯の量をいつもよりうんと減らしていた。全てはオレンジピールパンの為に…それにありつけなかったお腹は悲しみの音で空腹を主張する。お目当てのものが買えなかったショックで忘れていたこの空腹も、一度気付いてしまうとどうしようもなく体の力が抜けていく。
「ああ…お腹すいたあ…」
「どうぞ」
ありがとう、と渡された紙袋を受け取る。ああ、どこからか香るパンのいい匂い……空腹で回らなくなった頭が優しい香りに包まれた事で一瞬鮮明になる。
……え?なにこれ?え、だれ??
「こんにちは、また会ったわね」
起き上がって渡された方を見ると見覚えのある人物がいた。
この時期だってのに黒いニット帽を深く被り、茶色と灰色を混ぜたような色の髪が少しだけゆるく癖をつけて左眉の上に飛び出ている。その上どこで買ったのか綺麗な形の丸メガネとマスクでほとんど分からない顔に、どこでも売ってそうな至ってシンプルな黒と白の長袖ジャージをキッチリと着た、どこからどう見ても怪しい男性。
わたしはこの不審者を知っている。その瞬間、一気に湧き上がる恐怖心に思わず大声を上げた。
「ぎゃあああああああ!!!!で、出たああ!!」
受け取った紙袋を持ったまま叫ぶわたしに相手は目を丸くしながらも、次の瞬間右手でわたしの口を塞いだ。反対の左手は人差し指をマスクの上に当てて、しっ!騒がないで!なんて言っていた。が、こちらとしてはそれどころではない。そもそも大声をあげた理由は全部この人物のせいである。何が騒がないで、だ!と腹が立ったわたしは、口を塞いできた奴の右手に思いっきり噛みついた。
「いたっ!!」
「き、気安く触らないでよこのナンパ師!昨日に懲りずしつこいんだよ!!」
間違いない。この不審者は昨日、わたしに声を掛けてきたあのナンパ師だ。いきなりわたしの腕を掴んだと思いきや「前に会った事ない?」なんてナンパの決まり文句をふっかけてきたあの忌々しい男!
あの時は何せ生まれて初めてのナンパに遭遇したので、思わず「知らない!」とだけ告げて全力で掴まれた手を振り払い、全力で逃げた。まさかそれがこ��再会と結びつけてしまうなんて、こんな事ならあの時にもっと強く断っておくべきだった。いや、なら今言えばいい。こんな失礼極まりないナンパ師なんぞ他の被害が出る前にわたしがキッチリとカタをつけてやる!!そう意気込んだわたしに、今まさに手を噛まれた痛みに耐えている目の前のナンパ師は飛び出すほどに目を大きく見開いてとんでもないことを言ってきた。
「な、ナンパって…私が?!そんなわけないじゃない!!まったく…失礼しちゃうわね」
し、失礼しちゃうわね?って、こっちの台詞でしょ?!意味がわからない。そしてシンプルに腹が立つ。あなたが昨日わたしにあんな事をしなければこんなに大声を出すことも噛み付くこともなく、多分存在すら気にも留めなかったはずで、それをそうしなかったのは全部この人物なのに、失礼しちゃうわね、なんてどの口がそれを口にするのか。
それとも、もしやこのわたしがそんな言葉に怯むと思っているのだろうか。わたしが何も言い返せないような大人しい人間に見えるってこと?そういえばナンパって断れないような大人しい子を狙う場合もあるって聞いた事がある。そうか、なるほど。それなら仕方ない。奥の手を使ってやろう。
「わかりました。そっちがその気なら警察呼びますから!今更逃げたってあんたが2度とナンパできないようにこの場所に不審者が現れるってビラをばら撒いてやるんだからね!!」
「え?!ちょ、ちょっと待って!誤解よ、お願いだから話を聞いてちょうだい!」
「はあ?人に付き纏っておいて何が誤解だよ!そもそも、それがお願いする人の態度かって言ってんの!!」
この不審者を突き放すために、ほんの1ミリでも大人しいとは思われないよう思い付く限りの強い単語を更に力強くぶつけていく。最早何を言っているのか自分ですら理解していないけどそんな事はどうでもいい。とにかくこの不審者に負けられない、その気持ちだけで歯向かっていると、相手は少し考えたように地面を眺めて、そうよね…なんて呟きながら小さくため息をついた。いや、ため息をつきたいのはこちらなんですが?と思うや否や、その人はその場で正座をして両手を地面につけて頭を下げた。
そこではっとした。これは土下座だ。
「怖がらせて申し訳な…」
「ま、待って待って!ストップ!!」
土下座というのはそう簡単にするものではなく、心からの気持ちを表す時にするもので、変な話、強要なんてした日には罪に問われるくらいには意味が重いもの…という程度の認識をしている。いくらなんでも土下座をしてほしいとは1ミリも思っていないので思わず肩を掴んで止めてしまった。しかしそれは間違いだった。相手はガバッと顔を上げたかと思うと「話を聞いてくれる?」と尋ねてきた。
その顔が少しでも笑いを含んでいれば前言撤回をしたはずなのに、向けられたその綺麗な切れ長の目に輝く瞳があまりにも不安でいっぱいだったので、わたしはもう何も言い返せなくなってしまった。と、同時に何故か凄まじい罪悪感に襲われた。
自分がナンパの被害者だと思っていたのに、これじゃあどっちが被害者かわからないじゃん…。
その、『不安でいっぱい』の瞳はわたしには効果覿面だったようで、わたしときたら自分の言いすぎたことを反省した上に、気付いたら相手の話を聞く体制をとっていた。しまった、チョロい奴だと思われただろうか。と一瞬考えがよぎったが、相手も安心したかのように瞳の緊張を緩めて体制を整えた。そして正座をしたまま、まっすぐ伸びた姿勢の良い背を折り曲げ、ごめんなさいと謝ってから話を始めた。
まず、自分はナンパ師ではないという事(これには念を押していた)。そしてわたしに声を掛けた理由は至ってシンプルで、昔の知り合いと間違えてしまっただけ、との事だった。ふぅん、なるほど、そうなんだ…と、思いかけたものの、いやいや、そんなに簡単に他人を信じて良いのか、と再び考えを巡らせる。だとしたら何故2度もわたしに声を掛けたのか。間違いだったなら再び声をかける必要なんて無いのではないか。ナンパ目的でないのなら当たり前の考えが頭をよぎる。やはりこれはナンパの類で、それはまだ続いているのではないか。そう問い詰めてやろうとした刹那、彼はふたたび姿勢を正して話を続けた。
「だからね、昨日の事を謝りたくて、もしかしたらまた此処に来るんじゃないかと思ってあなたを待っていたの。で、渡したそれはお詫びの品」
そう言って指を刺した紙袋を見て、渡されたままだった事を思い出した。お詫びの品って…なんて律儀な人なんだろうか。いや、ちょっと待って。ただ人間違えをしただけでそこまでするものだろうか?それって逆に怪しくない?と、わたしの中で気持ちがせめぎ合う。こういう時、なんとかは疑いやすい…と言うけれど、でももし、この袋の中にヤバいもの…ほら、盗聴器とか監視カメラとか…もしくは白いお粉が万が一入っていたら…?と最悪の事を考えながら再び紙袋に目をやる。薄くクリームがかった色の紙袋の中心には見覚えのある名前が印刷されていて、中には可愛らしい絵柄の、でもどこか見覚えのあるクッキーの箱が入っていた。
『おやつに最適。ササキベーカリーのやさしい味⭐︎クッキーアソート』
「ササキ…ベーカリー…って…」
「あら、知ってるの?さっき見つけて寄ってみたのよ。色んなパンがいっぱいで思わず自分用にも買っちゃったのよね。この新作って書いてあった…」
「お、オレンジピールパン?!」
その人はわたしに渡した紙袋とは別に、同じフォントが刻まれた紙袋をゆらりとかざして見せた。まさか、まさか。こんなところで出会うなんて!わたしが食べたくて仕方なかった、ササキベーカリー新作のオレンジピールパンは今、目の前にいる人物の持つ紙袋の中にある。最初に香ったパンの香りはまさしくこれだった。オレンジと焼けた小麦粉、そしてバターの香りが忘れていた空腹を再び刺激する。ほぼ無意識のうちにぐるる…と再び腹の虫が鳴いた。
「…こっちの方がいい?」
「え?!」
「このパンが好きならこれも受け取ってくれる?」
駄目、駄目だよそんな、幾らわたしがこのパンを欲している��たって、そんな、ず、図々しいにも程があるし、第一どこの誰か知らない人から食べ物を恵んでもらうなんて…といった気持ちとは裏腹に口から出た言葉といえば「いいの…?」と、情けない回答で、それにも関わらず目の前の人は丸いメガネ越しに目を山形に細めてどうぞ、なんて言っていた。
「お腹空いてるんでしょ。良かったら食べて」
「…へ、変なもの入ってないよね…?」
「……要らないならいいのよ?」「いただきます!」
今までの申し訳なさを言葉で表現したような話し方から一変して少し意地悪に言うもんだから、目の前に差し出されたお目当てのパンに咄嗟に食らいついてしまった。瞬間、ふわりと香る爽やかで少し苦味を感じるオレンジピールの香りと表面にコーティングされたザラメが溶けた甘いパンの食感に思わず魅了される。そうそう、これ!まさに想像していたとおりで今わたしが欲していた、ササキベーカリー新作のオレンジピールパン!
待ち望んでいたその香りと味に、先程までせめぎ合っていたいろんな感情がふっと解れる感じがした。
「…美味しそうに食べるのね」
だって美味しいし、と言いたかったけど口いっぱいに頬張ったせいで話せそうになく、声のした方をちらりと見る。そこには随分と優しい顔でこちらを眺めるその人がいて、その瞳と目が合った。なんだか小っ恥ずかしくなって紙袋に目線をそらすと、紙袋の中にはもう一つ、オレンジピールパンが入っていた。
そもそも、このパンはこの人が自分用に買ったものなのにわたし一人が頂くのはいかがなものか。今食らいついたパンを味わいながら、この妙な小っ恥ずかしい空気を逃れるように紙袋からもう一つのパンを取り出して差し出した。
「あ、あの!これ…良かったら…一緒に」
「ありがと。でも私はパンは食べないから気にしないで」
「え?」
さっき自分用って言ってなかった…?と尋ねると、職場の差し入れに渡す予定だったと返されたので慌てて最初に受け取ったクッキーをお返しした。別に良いのに…と言っていたけどさすがに差し入れを再び用意させるわけにはいかないので、と半ば強引に受け取ってもらった。この人がどんな仕事をしているのかは全く想像がつかないけど、差し入れをするような人なのだから真面目に働いているのかもしれない、し。
しかしこの…どう見ても男性のこの見た目とはあまりリンクしない話し方で一体どんな仕事をしているのだろう。バーとかかな。なんて勝手に少しだけ考えてみたところで、ふと、気が付いた。
「昨日会った時と話し方が違う気がするけど…」
「え?やだ、今気付いたの?」
昨日声を掛けられた時は確かに自分の事を「俺」と言っていたし、言葉ひとつひとつの発音もハッキリと強くて、今のような艶やかな話し方とは真逆だった。
当の本人はその問いに対して、とっくに気付いてると思ったのに、と少し寂しそうに遠くを見て呟いた。気づいて欲しかったのだろうか。いやいや、知らないし。なんて考えていると、少し、ほんの少し寂しそうな瞳で、この話し方が嫌なら直すけど?と聞いてきた。状況が理解できないまま首を横に振って答えるとさっきまでの寂しそうな瞳が優しく代わり、目をにこりとさせて「なら良かった」なんて言っていた。
「昨日は知り合いだと思ったからああ言ったけど、オフの時はこっちの方が楽なのよ」
「オフ…?」
「まあプライベートってとこかしらね」
はあ、そうですか。まあ正直言うとどっちでも良かった。というのもこの人の言葉を信じるならばただ人違いをしただけで、こうしてお詫びもしてくれたわけで、多分、もう、この先話す事も会う事も無いんだろうから。この人の話し方や立ち振る舞いなんてわたしには関係のない事なわけだし。
あれ、でも待って。それでいいのかな。わたし、結構この人に酷い事言っちゃったけど、わたしは謝らなくていいのか?それこそ何かお詫びが必要なんじゃないか?というか、このパンもお詫びとはいえ貰いっぱなしで良いものなのだろうか。ふたたびその人に目をやるとやはり優しい瞳でこちらを見ていて、急に目を合わせたわたしに少し首を傾げていた。
よし、やっぱり謝ろう。
「あの、さっきは酷い事を言ってすみませんでした。パンまでいただいて…その、なんとお詫びしたら良いのか…」
勿論心から申し訳ない気持ちで伝えるものの、幾つになってもこういう場面は慣れない。勢いで話してしまったので口篭ってしまった。そしてこれに対する返答といえば大体誰に伝えても同じで、許してくれるか許されないかのどちらかしかない。少し嫌な話をすると、言う前にどちらの返答をもらえるかは大体分かっているものだと思う。今回の場合もそうで、多分この人は気にしないで、と言うだろう。わざわざお詫びまで持ってわたしに謝罪をしてくれたということは、きっと本人も気が咎めていると思うからだ。
とはいえあれだけ好き勝手言ってしまったのだから、万が一許されなくても仕方はないとは思うし、その時は要求を呑むつもりではいる。
…���もこの人は許してくれる。勝手にそう思っていた。
しかしこれが甘かった。
思ったとおり相手は気にしないで、と、言いかけた。確かに言いかけたのに、言いかけて言葉を止めた。その沈黙に恐る恐る下げた頭をあげると、その人は左手を顎に近づけて何やら考えている素振りを見せ、そしてこの数分の一連の流れを思い出すかのように目を閉じて話し出した。
「そうねえ…私が悪いとはいえナンパ師扱いされたわけだし、危うく警察呼ばれちゃうところだったし…あ、別に詫びてほしいってわけじゃないのよ?でもその気持ちを無下にするのも…ねえ?」
ちらりとこちらを見ている目はいやらしく輝いている。なんっって!なんてわざとらしい!!もしこれでオーディションを受けたなら間違いなく不合格だと素人のわたしですらわかる程に嘘くさい演技!ねえ?じゃないよ無下にしてくれ。いっそキレてくれた方がいい。だってこれはどうみても何かを要求される前兆だ。
確かに許されなければどんな要求でも飲む気でいたよ。でもこれは予想していた詫びを超えたものを要求される。絶対そう。上手く言葉にできないけど今までの経験上、絶対面倒な事を要求される確信がある。いや、面倒な事だけならまだ良い。パシリだとかその程度で納得するならいくらでもやってやる。
だけど今回はそうじゃない気がする。パンをくれた事で忘れていたけどよくよく考えたら見ず知らずの人物に何を要求されるかなんてわかったもんじゃない。まさか、まさか身売りとかだったらどうしよう?!やっぱりあの時、警察に突き出しておくべき人物だったとしたら…?
再び最悪な考えが頭を過って、つう、と背中に汗が伝う感覚を覚えた。その漠然とした恐怖に飲み込まれてしまいそうで、思わず食べかけのオレンジピールパンをぎゅう、とキツく握りしめた。
「そうだ。じゃあ私の話し相手になってくれない?」
「…はい…?」
この辺りに知り合いが居なくて心細かったけど話し相手ができて嬉しいわ、とそれはそれは楽しそうに付け加えた。ちょっと待って、脳の整理が追いつかない。は、話し相手って…どういうこと?それに、あれ?わたしって一言も承諾していないよね?いやまあ拒否権はないといったところなのかもしれないけど…取り敢えず怖い事ではなくて良かったのかな…いや、知らない相手が満足するまで話し相手を務めるってそれはそれで恐怖なのでは…?と、再び混乱していると、この脳内を読み取ったのか相手はさも当然かの如く続けた。
「私に詫びたいんでしょ?自分の言った事には責任を持たないとね」
言ったけど。ええ、確かに何かお詫びをと言いましたけど。良くも悪くも全てが予想外と言いますか…だって今から一体何を話せばいいわけ?!はい、おはなしスタート!で始まる会話なんてお見合いじゃあるまいし何の意味があるっての?!そもそも何をどれくらい話せば満足するの?!なんて言いたくても責任を持てなんて言われたら下手に言い返すことすらできず、悔しい思いで口篭っていると、もう行かなくちゃ、と、相手が慌てて帰る準備をはじめた。
え?じゃあ今の提案はジョーダンって事??なんだ、びっくりした。そりゃそうか、話す事なんかお互い無いだろうし。渾身のジョークなら最後に大袈裟にリアクションでも取ってあげていれば良かったかな…なんて少し思って、へへ、と愛想笑いをしておいた。
この数分でドッと疲れたわたしは、帰り支度をする目の前の人物の背中をぼんやり眺めながら自身も帰りたいと心の底から強く思った。たった1人の見知らぬ人に昨日のナンパだけではなく今日もこんなに振り回されるなんてどうして想像できただろう。そしてこの時間は一体何だったんだろう…まあ、お目当てのパンにありつけた事だけは良かったんだけどね、と握りしめたせいで少し潰れてしまった食べかけのオレンジピールパンを残さずペロリと頬張った。
「じゃあ、またね」
「…え、」
今、またね、って言った…?え、またね、って何?ねえ!またねって何なの?!話し相手って今だけのことじゃなかったの?!
またもや口いっぱいに頬張ってしまったせいで伝えられなかった心の叫びは届くわけもなく、謎の人物は軽く手を振り小走りで去っていく。あんなに脚が長くては走りにくそうだと、おおよそ走る体制ではない、や��ら良い姿勢のまま離れていく背中を眺めながら、どうする事も出来ないわたしは口いっぱいに含んだそれを飲み込んだ後、紙袋から最後のオレンジピールパンを取り出して思いっきりかぶりついた。
「やっぱりあれ、新手のナンパだったんじゃん」
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ゆるやかな時間が流れる河川敷から少し離れた、ビルが立ち並ぶ道路の脇に一台の車が身を隠すかのようにひっそりと停車している。中には長方形の黒縁眼鏡とスーツ姿を着こなした男性が分刻みにビッシリ書かれたスケジュール帳と左腕に光るシンプルな時計を交互に眺めながら今か今かとその時を待っていた。
そのうち、ドアをコンコン、と叩く音を合図に車中の男性はスケジュール帳から目を離して窓を覗き込んだ。ドアの向こうには180cmほどあろうかと思われる男性が立っていて、深く被った黒いキャップの下からは肩までまっすぐ流した暗い胡桃染の髪が背後からの夕日に輝き、カーキ色のジャケットから伸びる右手には薄いクリーム色の紙袋をぶら下げている。
待ちくたびれた(と言っても約束の時間より5分ほど)車中の男性は急いでドアを開け、君が遅れるなんて珍しいじゃないか、と長髪の男性に釘を刺す。刺された本人は走ってきたのか、息を少し整えながらも至って真面目な顔で謝罪をしながら車の助手席に乗り込み、差し入れです、と持っていた紙袋を差し出した。
「このお店、この近辺では人気らしいですよ。なんでも…新作のオレンジピールパンが絶品だとか」
これはクッキーですけどね、と付け加えた彼の表情はほんの少し綻んでいるように見えた。
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駅のエレベーターに乗り込むと、元恋人のつけていた香水の香りがした。この香りを懐かしく思える。きっと前に進めている。
高校時代の後輩と7年ぶりに会うことになった。かくいう高校時代は数回事務的な話をしただけで、上京してから共通の友人を介して会ってからふたりでデートもした。当時のわたしはかなり歳上の男に首ったけで、後輩とのせっかくのデートなのに「男の子はこうした方がいいよ〜」とか「大人の余裕があればな〜」とか失礼なことを言った気がする。それを怒りもせず「頑張りますから、またデート誘います」と言って終電より1時間も早い電車に乗せてくれた。勘は鈍くない方だと思う。次会ったら告白される予感がして、連絡を絶った。それ以来である。
どういうつもりか聞くのも野暮だなと思い、何も聞かずに承諾したが、どういうつもりなんだろう。結婚報告か、田舎に帰ることになったか、お金を貸してほしいのいずれかだと踏んでいる。ただ結婚をわざわざ報告するような間柄ではないからあるとしたら後の二つだろうか。
人の思いを踏みにじるのは容易い。踏みにじっている自覚が無ければ尚のこと。きっと彼から連絡が来なければ、7年前最悪のタイミングで連絡を絶ったことも忘れていた。
ここだけの話。
雨が止んだ気配がしたから外に出る。まるまると太った猫の"トモコ"が久しぶりに顔を出してくれた。妙に人間みたいな顔をしているので人面猫トモコと勝手に名付けてから早2年。毛艶からしてきっとどこかの飼い猫で、この太り方からしてこうしてほっつき歩いている時にご飯を差し出してくれるお家もいくつかありそう。トモコにはいくつ名前があるんだろう。
髪の毛を暖色に染めてから初めての出社。上司がやたらと「いいね、似合うね」と褒めるので気味が悪くて、先輩に聞くと「転職活動してないんだって、近々で辞めるって言い出さないと分かって嬉しいのよ」と言われた。オレンジ髪で転職活動する奴だっているだろ。いや、いないか。
満月だね、と言うと、残念まだカレーパンですと彼。確かに、まんまるではなかった。むっちりとしたカレーパンに見えてきた。
生活は続く。
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