#卒園児の近況
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smi********さん
2016/1/25 18:18
なかよし・・・1990年代末まではりぼんと並ぶ名門で、メディアミックスでは紛れも無くNo.1だった雑誌。しかし1990年代に大ヒットした美少女戦士セーラームーンとカードキャプターさくらの影響が悪い方に作用し、編集部がオタクの嗜好と女児の嗜好を取り違えて、いつしか美少女戦士やら魔法少女ばっかり重視するようになり、それが描ける作家はCLAMPとか征海未亜とか外部作家やフリー作家を連れてきたりして優遇する代わりに、描けない作家は大ベテランのあさぎり夕であろうが高瀬綾であろうが川村美香であろうが引退を突き付けて『粛清』し、「アニメ」ではなく「少女漫画」を求めていた読者から見放されて自爆した雑誌。 現在では「美少女戦士・魔法少女=アニメオリジナル・園児向けのプリキュア」(一応なかよしで連載しているけどね)という図式が定着した影響で少女漫画での魔法少女漫画の需要がなくなったせいで、遠山えまや鳥海ペドロらを『調���』してちゃおを"卒業"した子やその路線になじめない子狙いでコミックス売上狙いでエロ路線に走っている(とはいえ、エロのレベルは一時の少女コミック・Cheese!と比べりゃ微々たるもの)けれど、一部を除く女児には不評。ちゃおほどメディアミックスに熱心できる状況ではなく、りぼんほどコミックスが売れる作家が多いわけでもなく、コミックスのスペースもかつてのちゃおが味わった苦汁のごとく年々削減されて、セーラームーンとCCさくらの貯金を取り崩しながら破滅に近づいている状況。 りぼん・・・2000年代までは少女漫画売上No.1で、マーガレットの妹分。恋愛漫画も充実。メディアミックスはヒット作に全く恵まれずに消極的なおかげでなかよしと比べると少女漫画の品位は保たれているし、ちゃおよりも少女漫画らしい誌面。ただし1990年代から2000年代前半はメディアミックスではなかよしを追い抜こうとした時期があり、姫ちゃんのリボンをテレビ東京系でもいいからアニメ化したり、秋元康に頼んでナースエンジェルりりかSOSを立ち上げたり、赤ずきんチャチャを魔法少女モノに改変したり、どちらかと言うと原作は鬱要素が強いこどものおもちゃを子供向け路線に改変してアニメ化された影響で、誌面はタイアップバリバリだった。そのおかげで姫ちゃん~こどちゃがアニメ化されていた頃は低年齢層を掴んで1994年には少女漫画最高記録の255万部/月を達成するが、こどちゃ以降はアニメ化に恵まれず、新人を猛プッシュした種村有菜のアニメ化作品が神風怪盗ジャンヌ・満月をさがしてとともに不振だったり、Cookieの分離創刊を機に吉住渉、矢沢あい、小花美穂ら古参作家を放出させ、春田なな、酒井まゆ、槇ようこら絵柄重視で新人作家を猛プッシュしたりした影響でやっぱり古参読者が離れて部数が激減、一時は3誌で最下位になるものの、その後のなかよしの大自爆により2位に浮上。 現在では春田なな・槙ようこが看板格に育ち、雪丸もえのひよ恋がスマッシュヒットしたが、最盛期には遠く及ばず、また夢色パティシエールの大爆死以降はちびまる子ちゃんを除くメディアミックスも一切なく、中高生向け少女漫画と同じくコミックスで生き残りをかける格好。 ちゃお・・・1990年代中盤までは売上・人気面でボロボロで10万部台の頃もあり。起死回生を図るために1993年に(当時キャンディキャンディの版権問題で水木杏子・講談社と揉めていた)いがらしゆみこを招聘してムカムカパラダイスをアニメ化して以来、漫画よりもアニメとのタイアップを中心に捉えてきた。2000年代初頭まではタイアップ先(特にバンダイがメインスポンサーの女児アニメ)がちゃおを敬遠していたこともあり、ポケモン、少女漫画ウテナ、デ・ジ・キャラットにょ、電脳コイルといったオタク層や男性(男児)向けの作品が比較的多く、その漫画版が載っていた1997~2003年頃のちゃおはカオスな雰囲気を醸し出していた。しかし2002年のわがままフェアリーミルモでポン!のヒットで少女漫画売上No.1になるとオタク向け路線は徐々に一掃され、ChuChuの分離創刊(現在は廃刊)であらいきよこ・おおばやしみゆきらベテランが放出されるが、ミルモ・恋プリ・ちびデビ・ちいちゃんと児童向け路線で4作続けてヒットを出す篠塚ひろむと、男ショタキャラの魅力でちゃおを卒業した読者もコミックスに安定して取り込む八神千歳の存在は頼もしく、3誌の中で唯一世代交代に成功したといえる。2000年代後半からはアイドル物に力を注ぎ、きらりん☆レボリューションで中原杏を猛プッシュ。関連商品の売上は上がるが、デッサン力・画力は決して高いとはいえない彼女を起用したおかげで、高学年を中心に読者離れが起きて本誌の売上は下がる。 現在では売上は下落の一途だけど前述のアイドル路線を引き継いだアイカツ・プリパラと、妖怪ウォッチのタイアップで華はある印象。そのおかげでスーパーやコンビニ・書店では月末には真っ先に売り切れる。それらのタイアップ作品に流されやすい女児には堅調で、それに流されにくい女児は早々と逃げられ、女児の間で評価が分かれる(後者は早めに少女コミック・マーガレット・花とゆめなど中高生向け雑誌に移行することが多い)。あと女装ショタや性教育エロ路線では鉄板で、1991年の水色時代でのレギュラー化から現在のドーリィ♪カノンまで25年間もちゃお・学年誌に居座り続けているやぶうち優はいろいろな意味で化け物。 マーガレット・・・当たり前だが、りなちゃ3誌よりは少女漫画らしい雑誌。少女コミックス・花とゆめを含めた3大隔週誌の中では王道路線であり、アタックNo.1、ベルサイユのばら、エースをねらえ!、花より男子のヒットを築く。しかし、花より男子が終了した2000年代後半には部数が激減し、10万部を割り込む。近年はメイちゃんの執事がヒットするが、部数減に歯止めがかからず5万部台で推移、りぼん・なかよしと同じく主戦場���完全にコミックスに移行。
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ちょっと前のパシャリング📷🌟 野良でトモダチと会えるの、嬉しいね🎇
むかしむかし、友限が全然成立しなかった頃、 たまたまタイミングが合ったトモダチの野良に入る方がまだご一緒できてた時代を思い出す…… あの頃の幸せと言ったらなかったよね……
思いっきりイメチェンした子、事情があってしばらくログインできないトモダチ、持っていないコーデ、自分では思いつかなかったミックスコーデ、いろいろなみんな……
ぼくも最近はあまりアドパラで暴れられなかったから言える立場じゃないんだけど、前ほどは見かけなくなったアイドルさんが多くなってきた印象。2日以上来てない人が半分くらい……。
人間の腕はちょっと前よりかはうっすら良くなってるので、できれば無理のない範囲で友限もやっていきたいなって思ってたんだけど、なんか数ヶ月前よりもメンバーが集まりにくくなってきちゃったな(っY`。)ぐすん 楽しい写真ばかりのはずなのに、少しさびしくなっちゃうね(´Y`)、、、
せめて今すぐの方でパシャりまくるとかしていきたいな~~🔥🔥🔥 ログインした時にお呼ばれ通知で交換日記みたいなことしてた日々が懐かしい💭
以下、人間の言葉: そういえばネコメイクが登場したので既存のパーツと合わせてサブキャラの1匹を再現できることに気づきました。明日あたりちょっと試して遊んでみようかなと思っています!🐈️゛
あと、夏に新作が出るキンプリのために(それまでほとんど知らなかった)プリリズを履修しているのですが、ようやくDMFの14話まで来ました。しかし先は長いです。 一応キンプリの映画自体は単体で観ても楽しめるはずだと聞いていますが、オーロラドリームのキャラやジャンプが出てくるので元々知っている方が楽しめるかもとも聞いています。できれば全部観てからがいい…… 時間がなさすぎたらサクッと旧作を見てから映画館に行くことになると思いますが、どうなることやら……
ニャァアン🐈️💨💨💨💨💨(´Y`)暴れネコめ…… 💥🐱💥🐱💥ウワァアア(´Y`)ァアアァア💥🐱💥🐱
↓これマジで役に立ってない なんでだろ
話は横にそれますが、(ここから先はマジで読まなくていいです) アイプリにはプリズムジャンプやメイキングドラマ、やってみた、プリマジイリュージョンのようなシリーズでお決まりの魅せ場はありませんね……。 ただし我々は7話までしか観ていないので、それ以降に出てくるのであれば全くの見当違いな話をすることになります。出てないならさっさと魅せてほしいよ…… 心を掴んで😢
プリズムアクトというプリズムジャンプやメイキングドラマに比べても長く一生懸命な感情表現シーンに浸った後でアイプリを観始めると、ライブ中に延々と流れるモノローグだけでお気持ちを済まされるあたりが浅いのに煩わしい演出に感じてしまいます。 これまでのコーデが光る演出は毎度ではなく、極稀に限られた者だけがバズリウムチェンジできる。でも何がどうすごいのか、ステージを通してアイプリとファンは本当に情熱が通じ合っているのかはいまいち伝わってきません。
DMFは真っ直ぐでみんな頑張りやさん、全体的に明るいけど決して軽いわけではないですよね。だからこそ濃淡のギャップで余計にそう感じるのかもしれません。 いや……、でも、まさかずっとああやってモノローグで済ませる気とちゃうやろなぁ!? ちゃうって言って♡(と書かれたオタクの団扇) プリティーシリーズはアニメでもゲームでも切り替わりごとに必ずどこかで先代とは違う要素を組み込んできました。大抵の女児は3年ごとに女児向けコンテンツを卒業するので、時代に合わせた挑戦をしてきたという痕跡が感じられます。でも、だからこそ大事なものを捨てないで!
また、似た展開をやるにしてもこれまでのプリティーシリーズであれば何話も重ねてきたであろうストーリーですらサクっと済ませてしまうことに拍子抜けでした。 とくに大会で負けるキャラのライブパートはあっさりカットするなど、びっくりするぐらい感情移入する隙がない。待たんかい ひまり「あ~楽しかった!」 さくらさん「たの、しい…………?」 いや、人の心とかないんか? (どうでもいいけどニコニコがまさかのずーーっとメンテで読めね~のな)
ひまりがアイプリであることを学園長に知られるまでも、アイプリが禁止された後即解禁されるまでも、あまりに短くて「ひみつ」の持続時間はオーデコロン並、ガチで驚きました。 うせやろ、らぁらですらはっきりバレるまでに20話くらいかかったやんかい! 展開を急ぎすぎちゃうか。。。ソシャゲのスキップボタンがあるストーリーかよ
諸々はギャグとして楽しめばいいのかもしれませんが、それにしてもノレない。どうして……。 今のところ一番面白かったシーンはヴィクトリアとパトリシアの掛け合いで身振り手振りがやたらと激しかったところです。 (どっちが先にあんな感じだったかはわからないけど)友情は壊れたつもりでも、実は自分自身の習慣として残っていたんだ…… ちょっとしみじみしてしまいました。 でも正直、その前で他の全てが霞んでしまうのはまずいやろ。他にもっとなんかあるやろ、なんか
私はもともとアイドルタイムプリパラもプリチャンも最初はあまり楽しめないでいて、どこかのターニングポイントで「あ、知りたい」と強く感じた時に最初から観直すということをしてきました。 特に華園しゅうかちゃんやガァララというキャラクターの関係性、周囲の人が口にする感想の数々、私にとってはこれらが鍵でした。ブログ時代が終わってSNS時代だから仕方ないけど、アイプリの感想をがっつり書いている人少なすぎ…… なんでもいいから書いて
あぁえっと、要は、今後の可能性を期待しているので、面白くないとか苦手だという理由でアニメを切ることはしません。現実が忙しいとか、視聴中に爆睡して虚無った場合に視聴継続を諦めています。ぶっちゃけアイプリも観ている途中に眠くなりがちで義務アニメ枠。早く面白くなってほしい。
プリチャン3期とプリマジは…… 正直放送途中で存在を忘れてしまった。優先順位がかなり低いアニメになってしまった。 でも、大量にある視聴したい映像作品の末に観るであろうリストくらいには座しています。何年後になるかわからないけど。
あと、これがマジで気になってること。アイプリって何? そりゃアイドルプリンセスなのは知っています。そうじゃなくて、場所とジョブを同じ単語で指さないでほしいのよ。 例えばYouTubeとYouTuberは別でしょ? その両方をまとめてYouTubeと呼んでいるかのような曖昧さ、ていうかちょっと不親切やないか? きちんと説明しているところあった? あったなら観ます。
アイプリバースデーの役割もよくわかりません。番組なのはわかるよ。じゃあそれはYouTubeでいうチャンネル、企業がやっているタ��プのチャンネルではないか? そこに出演しているのがひまりをはじめとしたアイプリたちであって。でもオーディションって何? 毎回何をジャッジしてるんだよ、暇なん……?(目的は?)
エンディングで「推し活最高」と言っている割には誰も誰かを推していないのがずっと気になっていました。お掃除対決のひよこ脱走ハプニングでみんなが疲労困憊している時、「みんなを元気づけたい」からとひまりがアイプリをしたがるのも謎です。 すごく疲れたからって、私たちだって「YouTube観たい~観て元気になりたい~」とは思わないはずです。せめて具体的に「誰々ちゃんのチャンネルが観たい~」になるはずです。
あの番組に出演しているアイプリであれば、とりあえずは観てもらえるんでしょう? みんな観ているという共通の話題があるだけで、バズリウムチェンジという(謎の)偉業を遂げたアイプリだから注目しているのであって、ひまり個人を推してはいない。ビジュアルで推すならまだしも、まだ個人で配信していない内面的な魅力は不明瞭だからです。 どうして元ある掃除という役割の途中に消えてまで? なぜ自分が元気を与えられると思うのか? しかもいなくなってることに学園の誰もが気づかない。状況的に、同一人物じゃないかと疑うキャラがいたっておかしくない。でも、そもそもいなくなってることにモブの誰も言及しない。現実世界のひまり、人としてさみしすぎないか? ひまりはみつきとさくらさんとつむぎ以外に推されていない。 でも彼女は主人公です。主人公が主人公たる理由を、物語できっと描いてくれるはずです。本当に推してくれている人が片手で数えられるのは、正直今のキャラクターからして身の丈に合っているのはそのレベルだと突きつけているようで心が痛いです。私はひまりを推していません。
ヴィクトリアがアイプリを解禁した時にわざわざ 「この2人の初めてのファンはわたくし」(セリフはうろ覚え) と言ったシーンでは、明確に推しを表明するシーンが描かれています。 つむぎがアイプリリクエストを送った時は匿名、送ったのは自分だと伝えたのは1対1でした。影で支えるささやかな推し方です。私はこっちの方が好きです。
一方、ヴィクトリアは全校生徒の前で宣言しているあたり、個人的には厄介ファンじみていて同じ界隈には居たくないタイプのファンです。……が、彼女は数十年?ぶりに友情の大切さを思い出��た劇的なシーンの後ですからね。あの手のひら返しはきっと熱い感動の現れでしょう。
推し活は身を滅ぼすこともあるけれど、自分自身や周囲の人生を輝かせる素敵なものだということを二度と忘れないで欲しいです。
あれ、私もしかしてヴィクトリアのこと……、(頬を赤らめる)
まぁ、私は推しとかいう言葉が割と苦手なのですが……。(カスやん) (脳内では「~が好き」に変換して聞いているので周囲に気遣いを求める発言ではないです) できれば明日は8話以降を観ます。午前2時って何?
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"Kill them with kindness" Wrong. CURSE OF MINATOMO NO YORITOMO
アイウエオカキクケコガギグゲゴサシスセソザジズゼゾタチツテトダ ヂ ヅ デ ドナニヌネノハヒフヘホバ ビ ブ ベ ボパ ピ プ ペ ポマミムメモヤユヨrラリルレロワヰヱヲあいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわゐゑを日一国会人年大十二本中長出三同時政事自行社見月分議後前民生連五発間対上部東者党地合市業内相方四定今回新場金員九入選立開手米力学問高代明実円関決子動京全目表戦経通外最言氏現理調体化田当八六約主題下首意法不来作性的要用制治度務強気小七成期公持野協取都和統以機平総加山思家話世受区領多県続進正安設保改数記院女初北午指権心界支第産結百派点教報済書府活原先共得解名交資予川向際査勝面委告軍文反元重近千考判認画海参売利組知案道信策集在件団別物側任引使求所次水半品昨論計死官増係感特情投示変打男基私各始島直両朝革価式確村提運終挙果西勢減台広容必応演電歳住争談能無再位置企真流格有疑口過局少放税検藤町常校料沢裁状工建語球営空職証土与急止送��供可役構木割聞身費付施切由説転食比難防補車優夫研収断井何南石足違消境神番規術護展態導鮮備宅害配副算視条幹独警宮究育席輸訪楽起万着乗店述残想線率病農州武声質念待試族象銀域助労例衛然早張映限親額監環験追審商葉義伝働形景落欧担好退準賞訴辺造英被株頭技低毎医復仕去姿味負閣韓渡失移差衆個門写評課末守若脳極種美岡影命含福蔵量望松非撃佐核観察整段横融型白深字答夜製票況音申様財港識注呼渉達良響阪帰針専推谷古候史天階程満敗管値歌買突兵接請器士光討路悪科攻崎督授催細効図週積丸他及湾録処省旧室憲太橋歩離岸客風紙激否周師摘材登系批郎母易健黒火戸速存花春飛殺央券赤号単盟座青破編捜竹除完降超責並療従右修捕隊危採織森競拡故館振給屋介読弁根色友苦就迎走販園具左異歴辞将秋因献厳馬愛幅休維富浜父遺彼般未塁貿講邦舞林装諸夏素亡劇河遣航抗冷模雄適婦鉄寄益込顔緊類児余禁印逆王返標換久短油妻暴輪占宣背昭廃植熱宿薬伊江清習険頼僚覚吉盛船倍均億途圧芸許皇臨踏駅署抜壊債便伸留罪停興爆陸玉源儀波創障継筋狙帯延羽努固闘精則葬乱避普散司康測豊洋静善逮婚厚喜齢囲卒迫略承浮惑崩順紀聴脱旅絶級幸岩練押軽倒了庁博城患締等救執層版老令角絡損房募曲撤裏払削密庭徒措仏績築貨志混載昇池陣我勤為血遅抑幕居染温雑招奈季困星傷永択秀著徴誌庫弾償刊像功拠香欠更秘拒刑坂刻底賛塚致抱繰服犯尾描布恐寺鈴盤息宇項喪伴遠養懸戻街巨震願絵希越契掲躍棄欲痛触邸依籍汚縮還枚属笑互複慮郵束仲栄札枠似夕恵板列露沖探逃借緩節需骨射傾���曜遊迷夢巻購揮君燃充雨閉緒跡包駐貢鹿弱却端賃折紹獲郡併草徹飲貴埼衝焦奪雇災浦暮替析預焼簡譲称肉納樹挑章臓律誘紛貸至宗促慎控贈智握照宙酒俊銭薄堂渋群銃悲秒操携奥診詰託晴撮誕侵括掛謝双孝刺到駆寝透津壁稲仮暗裂敏鳥純是飯排裕堅訳盗芝綱吸典賀扱顧弘看訟戒祉誉歓勉奏勧騒翌陽閥甲快縄片郷敬揺免既薦隣悩華泉御範隠冬徳皮哲漁杉里釈己荒貯硬妥威豪熊歯滞微隆埋症暫忠倉昼茶彦肝柱喚沿妙唱祭袋阿索誠忘襲雪筆吹訓懇浴俳童宝柄驚麻封胸娘砂李塩浩誤剤瀬趣陥斎貫仙慰賢序弟旬腕兼聖旨即洗柳舎偽較覇兆床畑慣詳毛緑尊抵脅祝礼窓柔茂犠旗距雅飾網竜詩昔繁殿濃翼牛茨潟敵魅嫌魚斉液貧敷擁衣肩圏零酸兄罰怒滅泳礎腐祖幼脚菱荷潮梅泊尽杯僕桜滑孤黄煕炎賠句寿鋼頑甘臣鎖彩摩浅励掃雲掘縦輝蓄軸巡疲稼瞬捨皆砲軟噴沈誇祥牲秩帝宏唆鳴阻泰賄撲凍堀腹菊絞乳煙縁唯膨矢耐恋塾漏紅慶猛芳懲郊剣腰炭踊幌彰棋丁冊恒眠揚冒之勇曽械倫陳憶怖犬菜耳潜珍
“kill them with kindness” Wrong. CURSE OF RA 𓀀 𓀁 𓀂 𓀃 𓀄 𓀅 𓀆 𓀇 𓀈 𓀉 𓀊 𓀋 𓀌 𓀍 𓀎 𓀏 𓀐 𓀑 𓀒 𓀓 𓀔 𓀕 𓀖 𓀗 𓀘 𓀙 𓀚 𓀛 𓀜 𓀝 𓀞 𓀟 𓀠 𓀡 𓀢 𓀣 𓀤 𓀥 𓀦 𓀧 𓀨 𓀩 𓀪 𓀫 𓀬 𓀭 𓀮 𓀯 𓀰 𓀱 𓀲 𓀳 𓀴 𓀵 𓀶 𓀷 𓀸 𓀹 𓀺 𓀻 𓀼 𓀽 𓀾 𓀿 𓁀 𓁁 𓁂 𓁃 𓁄 𓁅 𓁆 𓁇 𓁈 𓁉 𓁊 𓁋 𓁌 𓁍 𓁎 𓁏 𓁐 𓁑 𓀄 𓀅 𓀆
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初心をふりかえってみる
2023年2月1日
今さらですが協力隊の志望動機とか 相変わらずの殴り書きですが
なぜか小学校で働いてしまった そもそも教員には絶対にならないと思っていたし特に小学校なんて良い思い出なかったのにうっかり支援員として働き始めてしまいました。 (当時は免許ないどころじゃないただの高卒フリーター) ちなみに最後の年はいわゆる学テ対策に関わってました。 沖縄県が最下位が続いてるころに「うちが県内最下位だよー笑」とか言っちゃう学校。
うっかり大学に行ってしまった 働いている中で「ちゃんと免許取ろう」となる。 通信でも4年かかると聞いて記念受験のつもりで受けたら受かってしまった。 (現役のときも同じとこ受けたし図工が一番難しいからちゃんと勉強したいなあと思って受けたけど本当に受かるとは思ってなかった。)
教育学部なのにびっくりするくらい教育に興味ない人たち まあ歴史的なのもあるんですが どちらかというと「アーティスト養成」に興味のある教員陣だったのでだいぶいろいろありました。 幼児教育の教員陣に感動してそっちに行くことを決める。 学部には感謝している。特に学部長(当時)
偉そうなことを言いたかった という流れで「美術教育(造形教育)ってこういうもんだろ」という偉そうなことを言いたくて ちょうどそういうことができそうな案件を見つけて協力隊に応募した。 というとても不純な動機。 あと沖縄を出たかった。やっぱり不純。 そのうち院にも行きたいと思っていたのでそのお金も貯まるならいいかなと 不純さしかない
目的ではなく手段 ということで私にとって協力隊への参加はあくまで手段
偉そうなこととは… ということは個人的な遍歴?ですが教育的なことを言うと 最初に働いた小学校は先生方が「ここで働けたらどこでも働ける」というようなところでした。(今でも確かに、ってなる) 支援員が関わるような子は特に、「環境さえ整っていればなあ」と思う子ばかりで 一番衝撃的だったのはひらがなカタカナの読み書きできない3年生 自分の名前を漢字で書けない6年生にはもはや驚かない。 ちなみに地元の学校でしたが、市内には美術館があって、市内の小中学校に 企画展の招待券や優待券を配っているような館でした。 中学生のころはそれでよく美術の授業の課題で行かされた思い出。 でも勤務校の子たちはほぼ美術館なんて行ったことない子たちで。 3年生の街探検で歩いて行くけど、招待券や優待券をもらえるけど、それでも美術館が身近じゃない子たち���
大学進学後は教育学部附属の小中学校の子どもたちに主に関わりましたが (実習とかで) そこの子たちは1,2年生でも博物館美術館に行ったことがあって 定期的に水族館に通っている子もいて(大人が車で連れて行かないと行けない) まずその違いに衝撃を受けて
美術館博物館の教育普及とは と学芸員資格課程も取りましたが、実習でチルドレンズミュージアムに行ったら 毎月県外から来てるリピーター親子がいたりして 一方で無料ゾーンでたまってるだけの地元の中学生たちがいたりして
家庭の状況と子どもたちの文化的体験ってリンクしてるんだろうなと体感 この状況やばくない?という話をしても 「沖縄に格差はない」 「美術は金持ちしかできない」 と教員陣から言われて 見てろよお前らこの野郎気持ちで協力隊に応募したわけですが
生活の中にアートがある 幼児教育の影響もあって 子どもの生活の中にすでに美術芸術があるのでは という仮定?を持って協力隊に参加したわけですが
途上国というより中進国という罠 何度か書いてますが生活面にはほぼ問題ない我が任国 活動校もそれなりに生活基盤がしっかりしている子たちが揃っている印象 しかしアラブ人の感性も相まって 「私たち・子どもたちは貧しいから」と開き直られ 廃材製作もあまりウケず 「コンクールで良い賞を取らせたい」と言われ いろいろとモヤる しかし美術(体育音楽)に取り組むのは読み書きそろばんができたあと というのはおそらく世界共通なのでしょう。
着地点が見つからなくなってきましたが 志望動機振り返りは1年すぎたころにやってみようとは思ってたので書いてみました。
あと最近「美術教育の目的」みたいなことを考える機会が増えましたが (折り返し地点っぽい) STEAM教育とかSDGsとかいろいろ言えるし 国際協力関係の話聞いてると「安全保障」とか「基本的人権」の方に行く流れなのかなと感じてるんですが 個人的には学校・園でしかそういう体験できない子とか 子ども時代の良い思い出がそれくらいとか そういう子が確実にいて 私はそういう子のために美術教育を学んだはずだった となります。
あんまり書くと怒られそうだけど えらい人たちすごい人たちの話を聞いてると 大学時代の教員陣、美術関係者に感じたものと似たものを感じるときがあります。
たぶん帰ったら国際協力には関わらないだろうしなんなら沖縄に帰るんだろうなという気がしています。
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新規ノート
2024.05.20 月 午前 2:59 ・ 29分 30秒
参加者 1 00:19
こんばんは、としみほです。 夜のこ中国になっております。実はこれ、ポットキャスト自体は昨日の昼に収録したんですけど、なんか後で雑談部分がね、ちょっと気にかかってきて、問い直す花になっております。昨日喋った雑談は、幼稚園とママ友ととある政党の活動っていう、 なんだろう、微妙なテーマで、それにまつわる出来事が今週あったんですよね。まつわるって私が思ってる出来事があって、そのモヤモヤをね、喋ったんだけど、後で考えてみたら、やっぱそれがなんか誰をも傷つけない話ではなかったなっていう風に思って、今雑談部分だけ問い直すことにしております。
参加者 1 00:48
結構ね、だから本編はやたらハキハキ、なんか今回に限ってハキハキ喋っちゃってるんだけど、ここのここだけボソボソ喋りっていうことになります。ご了承ください。ちょっと音量はね、編集の時調整するつもりだけど、テンションが違うから本当ごめんね。っていう感じです。
今日はね、幼稚園で保育参観っていうのがあったんですよね。保育参観って、なんかさ、私が子供の時って存在しなかったから知らない。なんか みんな知ってるのかな。幼稚園卒の人たちは知ってるんですかね。私の時代には。私は保育園、公立保育園の出身なんですけど、そんな親が見に来るとかは一切ね、親子遠足だけだったけど、参観日ってのはなかったな。
参加者 1 01:16
だから何やってるか知らなかったんだけど。ちょっと、だから説明しますけど、幼稚園も保育園も、多分ね、みんなあると思うんだけど、参観が一斉参観じゃなくって、コロナの前から、こう、見に来て、いい日を何日か幼稚園から提示されて、早い者勝ちで、何組かこう、普段の保育状況を見られるんですよね、見ることができる。
普通にこう、遊んでるとこに入ってって、授業見てみたいな感じ。それに行ってきたんですよ。
なんかね、そこであった、ちょっとそうやって自分の子供とまとトラぶったっていうか、機嫌を私がね、私が機嫌をそこにしまって、色々あったんだけど、その辺はね、子供のプライベートだから、ちょっと伏せときますけど
参加者 1 01:44
ーいって思うのはさ、別に今日に限らずだけど、幼稚園に行く機会ってやっぱ 結構あって、その、小学校とかと違って、小学校もそうなのかな。そうなのかもしれないけど、結構普段からね、その、居残りって言うんですか、限定を、で、残って遊んでいいよってい���時間があるから、そういう時もいつもいるんですけど、 そん時も思うけど、すごい他の子、自分の子供じゃない子供、絡んでくるんですよね。その、ややな感じじゃなくてさ、
参加者 1 02:05
なんかすぐ、なんとかちゃんのままだみたいなさ、言ってきて、な、なんとかちゃんのママ、これやって。みたいな、これ見て。みたいな風に言ってくるのはさ、なんていうの、全然嬉しいんだけど、自分そういうことしなかったなって思って、なんか今日は特にそういうことを思ったんですよね。
その、私にとってさ、友達のお母さんって、結構アンタッチャブルな存在だったなと思って。ちょっと、ちょっとね、もしこれ、万が一、同級生のさ、お母さんとか、同級生が聞いてても、怒んないでほしいんですけど、その、
参加者 1 02:24
その、お母さん、友達の特定のお母さんがやばかったとかじゃなくて、私の性せいべきとかと関わる話だから、そんなね、ちょっと、そっちがあるわけじゃなくて、こっちが悪いわけだから、もうちょっと怒んないで聞いてほしいんですけど。
なんかね、小さい頃、私、友達のお母さんって、なんかこう、すごいはてなボックスっていうかさ、すごい黒い箱にはてなが書いてあるみたいな感じに誰しも見えてて、 なんかこう、なるべく刺激しないようにしようって、ちょっと失礼な感じなんですけど、なんかもう、遊びに行ったら、あんまりね、学校で絡んだ記憶、学校でさ、あったからって、わざわざなん��かちゃんのママとかって呼びかけないし、
参加者 1 02:50
放課後に会った場合も、お家に遊びに行った時に顔出した時も、なんか礼儀正しく挨拶はして、もう余計なことは言わないっていう風にすごい気を付けてたんですよね。
それはなんで。なんでかなって思った時に、なんか今日はあれかって思いついた事情があったんですよ。なんかそれはさ、うちはなんか度々言ってるんですけど、 母親の実家なんですよね。自分の家が。だから母親は嫁じゃない。その家で嫁として振る舞っていないけど、他のお母さんはそう。田舎でみんな
参加者 1 03:13
親と同居。自分の親が相手の親と必ず同居してるから、多分他のお母さんは大方お嫁さんだったんですよ。それが、その時はそれ意識してなかったけど、なんかその感じが自分にはやっぱ あっていう、なんかはてなっていう、何か、何かここにあるなっていう感じになってたんだなって思って、なんかそれですごい納得しましたね。
だってそのお母さんだけだもん。その友達のおじいちゃんおばあちゃんは怖くないんですよ。なんかその、はてなボックスが。とかって思わないけど、お母さんだけ、なんかこう、
参加者 1 03:38
ちょっとちょっと、あんまり、あんまり余計なこと言わないでしょって思うのって、なんかそういう不透明性みたいなものを、自分の母親と比べて感じてたからなんだなと思ってね。ちょっと失礼な話ですみませんなんですけど、きっとね、だからなんだろう。
別にみんなそんなよそよそしいとか、なんか何かを隠してるみたいな感じではなかったし、それぞれ個性のある存在だったからさ、きっと、 であれば、なんかそんなにドキドキしなかったと思うんだけど、やっぱ私はドキドキしなってたんだよね。それに比べると、その子供の幼稚園の子供たちってさ、なんかでちょっと安心しますね。
参加者 1 04:06
そういう風に接してもらえるとほっとする。でも、そう見えるんだけど、話しかけてくることいない子がいるのかもしれないけど。私も話しかけて来ない子っていうの、あんまり他の方にばれてなかったかもしれないけど。
そんな本日でご��いました。ちょっとね、疲れてヘロヘロになっちゃった。じゃあ、この後急にねこのコが変わって本編に入りますけどね。ちょっとここの準備をして、1回お聞きください。お聞きください。よろしくお願いします。
なんとなくですね、このまま話みたいのが続いちゃって申し訳ないんですけど、今回はね、テレビなし育児について語ろうと思います。子供が5歳を過ぎましてですね、誕生日を経過しまして、
参加者 1 04:37
子供が生まれる時に、うちではテレビをなくしたので、5年経ったんだなと思って、なんか節目として、なんか1回喋ってみようかなと。
でも、でも、なんかこう、別におすすめよみたいな、育児の世界ではこういうことが、みたいな、なんかそういう、なんかレクチャーみたいな話じゃなくて、育児情報じゃなくて、なんかテレビなくして、なんか私もさ、そういうのやってると、いろんな微妙な思いとかをすることがあって、なんかそういうのをさ、単なる日常の話の1つとして、こう喋ってみたいなと思います
参加者 1 04:58
ね。本当に。だからなんだろう、別にそういうレクチャーとかじゃなくて、本当、私の普通のファンピーの、一般的な、なんかなんか意識高い系じゃない、普通の人の話として聞いてもらえればなと思います。よろしくお願いします。じゃ、いきましょう。聖なる欲望ラジオ。
参加者 1 05:13
まずね、そもそもテレビなし育児っていうのを、多分育児界隈じゃない方は聞いたこともないんじゃないかなと思うんですよね。あるのかな。
結構ね、なんか、なんかの表紙で年配の方に、遠いすの年配の方とかにさ、話の流れで言うと、すごいびっくりされるんですよ。その家にテレビがないっていうの、
参加者 1 05:28
え、そうなの。みたいなさ、なんていうの、ちょっと貧しい人みたいなので、割と見られるっていうか、そういうのがあるっていう認識が、だから、ない人もいっぱいいるんだろうなっていう感じなので、ちょっと改めて説明しますと、今はわかんないけど、私の子供が生まれた頃は、5年前、2017年ですね、その時に多分流行ってたんですよ、テレビ無し育児っていうものが。
そんで、なんか結構ね、その保健所、母親学級とか、なんか、そういうとこでも結構口酸っぱくして、なんか子供の頃は、テレビ、赤ちゃん、赤ちゃんにテレビを見せないようにぐらい言われるんですよね。なんか、いいことないから
参加者 1 05:53
見せな。完全に見せないでとはやっぱ言ってこなかったと思うけど、見せても30分とかにしてっていうことと、あと、なんていうの、テレビに頼りきりだと、会話がなくなるから、その、赤ちゃんとのさ、その 見た後も、テレビを介して子供とコミュニケーションすることを気をつけてみたいな風に、結構言われたんですよね。で、なんか、その3000円から、結構言われるから、うちでは、結構がっつり真に受けたっていうか ね。私としては、だから、気をつけようかなぐらいの感じだったけど。
参加者 1 06:16
あと、視力の話ね、の話もされて。なんか小さい時に、なんかテレビに近づいていきがちだし、こうね、光とか音が出てもす寄っていっちゃうから、なんか余計近くでテレビ見ることになるし、そうすると視力が落ちるし、みたいな説明されて。視力はね、確かにちょっと気になるなっていうので、言うこと聞いてみるか、ぐらいの感じだったけど、なんか夫の方は、もう、もう、がっつりやるぞっていうスイッチが入ってて。
参加者 1 06:31
なんかもう、私がその産後退院してきたら、もうスタ��バイされてたんですよね。スタンバイっていうか、逆にテレビはサンバイされてないっていうことだけど。そう、私、30産む前は、リビングにあったテレビがなんか消えてて、その、 なんだろう、ごちゃごちゃした寝室かどっかに、こう、入れてあったんですよね。そんで、もうテレビなし育児だみたいな感じで育児生活が始まって、
参加者 1 06:47
やっぱ急にさ、急に全然見えなくなったから、コンセントとか、なんかもう配線ができないぐらいの場所に置いてあんですよ。部屋を変えたみたいな感じじゃなくて、やっぱ子供が生まれたばっかりってものが多くなっちゃって、家の中であんまり自由に例外とか聞かないんですよね。なんか色々定まってなくて、寝室がなんか物置きみたいな、そういう感じになっちゃってたから、 人が前に座って見れて、テレビ配線もちゃんと電源取れるっていう風に、テレビ置くのは難しかったんですよ。そんで、なんかテレビがただの粗大ごみみたいな感じで置かれるようになっちゃって、全然見れなくて。
参加者 1 07:12
やっぱね、最初はしんどかった。生理的にしんどい。私がね。私が生理的にしんどい時期がね、結構3か月ぐらい続いて、その年、しかもこう、 東京オリンピックあったし。私、フィギュアスケート大好きだからさ、それだけテレビ無理やりこう、無理目に配線繋いで見たりとかしたけど、なんか基本見れない。気楽には見れないから、 なんか人の顔がさ、恋しくなってくるの。だんだん。なんていうの。別にテレビで人の顔を干渉してるっていう認識が普段ないじゃないですか。意識に登んないじゃないですか。でもテレビなくした
参加者 1 07:38
とってすごいさ。あれ。人の顔がないなっていう。多分それでも産後で家から出ないから余計なんですよね。
私、あれ、だからその、予備校生の時とかも寮に入ってたからテレビなし生活なんですけど、そん時人の顔に飢えたっていう記憶はないんですよ。
当然その寮の中にいっぱい他の子がいるから、その食事の度にその100人ぐらいの女の子、一気に集まんないけど、何十人って女の子の顔見るし、寮母さんとかもいるし、その、ハゼの人とかもいるから、もし外に出ないとしても、かなりの人間の顔を見ることになるけど、やっぱ最後って、
参加者 1 08:00
その、子供連れての外出が難しいのは当然として、なんか大師だとね、余計なんか2人目だったらどうでもいかと思って出るけど、もう何もかも初めてだからさ、 そんなにぐいぐい出ていけないし、自分の体も結構ボーボー。なんていうか、なんか外出しようっていう気になんないわけ。それで、人の顔を全然見ないその 夫は、行くで。とがっつりとってくれて、家にずっといてくれたんですけど、夫と子供しか、もう人間の顔がないわけですよ。もうさ、もう人間の顔みたいな顔が見たいみたいな感じになっちゃって
参加者 1 08:21
ね。でも、だんだん、だんだん慣れたのかな。3ヶ月、3ヶ月くらいがピークで、そのオリンピック超えたら、なんかそのテレビを見たいっていう気持ちがすって引いていきましたね。
ただね、なんかもうサクサク時を、時を経過させていくけど、 なんか私の山はそこにあったけど、子供の山はもっとずっとアウトなんですよね。そのテレビがなくて育った子供って。だから当然そんなにテレビ見たいとかって絶対言わないけど、
参加者 1 08:43
��ちの子供、すごい小さい時から暇っていう言葉を発すんですよね。なんかすごい語彙が少ない子供だったんですよ。なんか発生で言葉が全然伸びなくって、だから、2歳、 2歳でほとんど喋れないみたいな感じだったかな。なんか、1歳半でちょっと喋るようになったのに、なんかそれが1回交代した時期があって、2歳ぐらいに喋んなくて、その後、だんだん、だんだんまた増えてったんだけど、その最初の25ぐらいの中に暇が入ってるみたいな、その暇を訴えてくる少ない声で、もうさ、 なんか、そんで暇って言うんですよ。うん。で、やっぱ、その時期って、幼稚園とかもどこも行ってないわけだから、結構追い詰められるっていうか、
参加者 1 09:13
なんか、1人でやっててくれりゃいいけど、そういうことが、やっぱ本当に小さい子供はできないんですよね。なんか、私は、自分はずっとお絵描きをして育ったみたいな認識だったけど、なんか、紙とペンさえ与えておけば大丈夫な風にだんだんなる。遺伝してればって思ったんだけど、やっぱね、そんな小さい子は、自分で何かを、こう、
参加者 1 09:27
クリエイトっていうかさ、集中するっていうことは、ほとんどできない。それ、うちの子だけじゃなくて、一般的に普通の子はできないんですよ。多分ね。そのものすごく。なんていうの。ガチでテレビなし。思想的にテレビなしやってるみたいな。お母さんが一生懸命時間をかけて色々やってれば、もしかしてそういう風になるのかもしんないけど、うちはもうそういう感じでは全然なかったから。
なんか私が気にしてるのは視力だけだったからさ。なんかそれ。そういう状況では、やっぱり1人で時間を潰すっていうのはすごい高度な技術すぎる感じでしたね。
だからこう、結構びっちりついてなきゃいけなくて、そのまま横に。
参加者 1 09:53
だから絶対なんか現実的じゃないなって思ってる期間がありましたね。そのうちはおとがめちゃくちゃこう家事の部分になってくれてるからそれが成り立ってるけど、 普通の家庭でその家事もたくさんやんなきゃいけないのに、暇っていう子供の横に来て何かをするっていうのは、もう物理的に全然できないことだなって思いましたね。そのやった人たちは、だからどうしてんだろうと思って。その子供が暇って言ってくる時に、自分の家事をしなきゃいけないってなったらさ、 ここに兄弟いると、上の子がいると、多分話が全然違ってきて、2人で遊ぶっていうことができるんですけど、
参加者 1 10:17
ただ、上の子がいる場合っていうのは、つまり上の子はテレビを見て育った場合っていう話だからね。テレビなしで育った上の子がもし第1の時はそういう状況に必ずなってるわけだから、暇状況が生まれるわけだから、 そのテレビを見てた子が途中でテレビなし育児に映ってくれるかっつった���それも難しいし。あと、家におじいちゃんおばあちゃんがいるっていうパターンも割と なんていうの。その子供の暇ぐらいにはおばあちゃん付き合ってくれるかなって。子供も何やってんのかなとかって見に行くかなって思うんだけど、
参加者 1 10:36
おじいちゃんおばあちゃんがいる家庭で手料無くすとかも多分すごい無理なんですよ。上の子以上にね。だから、一体このテレビなし育児が叶う環境ってなんで、なんかあるのかな。ぐらいに思いましたね。その時は2歳前後の時はね。
だからうちでは厳密なテレビなし育児っていうのはそこでやめたんですよ。動画をね、youtubeをその辺で導入したんですよ。
それ、それはテレビなしじゃねえよって、テレビなしでがっちりやってる人からは言われちゃうやつですね。これでも本当無理だった���何もさあ、見せないっていうのは
参加者 1 11:00
大体なんていうの。そのテレビなしっていうのと、話しかけようっていう思想はすごい繋がってて、テレビは親子の会話を減らしてしまうものだから、 そうしないで、いっぱい話そうねっていう風にさ、その、専門、それを勧めたい専門家の人たちは言うんだけど、なんか、23時と、そんな話題ある。っていうのあるじゃないですか。なんかこう話しかければいいよ、こう話しかければいよとかって、よくさ、よく言うのは、なんでも実況しようとか、その
参加者 1 11:20
ね、その、お皿綺麗だねとか、その、見て、あそこに消防車来たよとか、なんかそういうの、家とか書いてあんだけど、そりゃそうなんだけど、それ、本当に休みなく1日中やってたら、めっちゃ疲れんだけど。っていう感じですよね。いや、疲れる疲れる。無理本当。それにさ、なんか逆に、テレビあれば、そのテレビについてね、さっきも、その テレビについて話すのがいいみたいなく、最初に保健所系からは言われてたっていう風に言ったけど、そのさ、一緒に子供番組見れば。なんか、あと、薄めで見てればさ、そんなガッチ見てなくてもさ、
参加者 1 11:42
なんとなく話題ができるっていうか、なんかワンワンでかすぎて怖くない。みたいな、なんかそういう話できるけど、何もないさ、子供にそこまで、本当に なんていうの。1日15分も30分もあげられないっていうぐらい喋り続けるのは不可能で、ちょっと私は思ったんですよね。そんで、こう、1日15分って決めて、youtubeを見せることにして、 なんか、youtubeさま、どんなの見せてたかっていうと、うん、子供が、よその子がおもちゃで遊ぶっていう動画なんですよね。
参加者 1 12:05
私、自分が独身か子供がいないぐらいの時に聞いた時は、すごい。その子供が動画の中で、他の子がおもちゃで遊ぶ動画を見てるって聞いた時に、読む末だなって思ったんですよね。なんか、なんか、そうしてると、他の子と遊んだ気分になるから。みたい 言った時に、な、なんだそれ。みたいな、おもちゃ買ってあげなよ。みたいな本当思ったし、リアル友達と遊ぶよ。みたいな気持ちになったけど、やってみればそれはやっぱ難しいね。がっちりやで。ママも作ったり、飽きないほどおもちゃを買い与えたりできるわけじゃない。
なんか、あと、そこにね、その動画に撮られてる子たちって少しお姉さんだから、自分たちよりね。
参加者 1 12:31
で、なんかもうちょっと世界が広いから、なんかもう少し多い語彙とか、もう少し広い世界を見せてくれて、でも子供としての親近感はあるみたいな、すごいちょうどいい感じで、 もうめっちゃありがたかったですね。手も出たとか言ってたのに、すごい手のひら返して、もうありがたいありがたいみたいな感じになりましたね。なんか中でもすごいたくさん動画上げて、めっちゃ遊んでるけど顔出しはしないっていう子が、ナナちゃんっていう子がいて、
参加者 1 12:49
なんかね、その子には本当に助けられた。動画もなんだろう、変な感じじゃないし、視聴回数伸ばすためになんか割と大袈裟なことやったりみたいな人たちもいっぱいいるけど、ナナちゃんのチャンネルはすごい安心して見せれる。
なんかこんなに動画あげ続けて、なんかこの人にとっては仕事だし、なんか辛くないのかなって、やっぱ最初はね、思ったけど、その子はずっと本当に今も続けてくれてるから、なんか、でも
参加者 1 13:06
よかったんだろうなって���わかんないですけど、本当のとこはわかんないけど、もう大きくなったから嫌だったらやめ��るだろうっていう感じなんでね、好きでやってるとこもあんのかなって思うようにはしてますね。なんか思わないと辛いからさ。
ちょっと話がずれましたけど、そういうナナちゃんのyoutubeとかに助けられたりしてね。そっからは、うちではyoutubeはあってテレビはないっていう生活に切り替わって、そのまま アニメとかも。最近はね、ポケモンのアニメも見るようになって、この夏休みからですね、この間のね、あまりやっぱしんどかったから。
参加者 1 13:29
でもね、なんかテレビ見ないで育つと、そういうテレビ的なコンテンツを見るのに、結構ね、ぱすっといかないんですよ。
その、フィクションみたいなものに対する体制が全然なくて、その、小さい時に、まだちっちゃい時にさ、やっぱみんなアンパンマン好きじゃないですか。うちもテレビはないけど、公園で他のが持ってるアンパンマンのぬいぐるみを見た時に、もうその子を追跡するぐらいアンパンパンが気に入っちゃったから、もうグッズは全然買い与えてて。で、絵本とかもあって、
参加者 1 13:51
曲もめっちゃspotifyで聞かせて、ただこの本物のアニメだけがないっていう状態にしてたんだけど、そのアニメも、じゃあ見せてみるかと思ったら、もうね、ちょっと見ただけで、わいってなるんですよ。なんか、わいいみたいな、 やめてみたいな、 なんていうの。もう、序盤で、その、安定画面が暗転して、バイ近場とかが映った時点で脱落する、その、その、何かが始まりそうな予感っていうのにさ、その、悪いことが始まる予感みたいな、めっちゃ弱くて。
参加者 1 14:11
だから、全然そういうのが楽しめないんですよね。なんだろう、そういうフィクションの決まり事、そういうことがあるけど、なんか怖い描写があるけど、最後絶対アンパンチするとかって、 やっぱテレビを見てだんだん学んでいくことであって、それはやっぱなんだろう、やれる状態で見てたらさ、なんかテレビが小さい時から流れてると、なんか結構そんなもんかなと思って吸い込まれていくのかもしれないけど、2歳くらいからそれをやろうとしてもできないんですよ。
それなんか教育テレビ、eテレでも同じで、なんか見つけたっていう。私、小さい時はなかったけど、
参加者 1 14:35
なんか椅子、椅子、わかるでしょ。みんななんとなく、その育児業界にいない人も、なんか椅子のキャラいんなってことは多分知ってると思うんですよ。ナスみたいな頭し椅子のキャラがいるなっていう、あの人たちが出てくる なんか見つけたっていう番組があって、15分番組があって、ただ、その女の子と、サボさんっていう大きなサボテンのおじさんと、欲しいっていうそのリストいるんだけど、なんかその中で、アニメーション、
参加者 1 14:53
何アニメだったかな、あれ、フアニメなのかな。ちょっとごめんなさい、ちょっと細かいこともう忘れちゃったんですけど、立体っぽいアニメコーナーがあって、そこにすんげえ怖いキャラとか出てくるんですよね。別に話がそのものなんだけど、なんか骨 ポネスケルトン的な雰囲気のキャラとか、 あとなんか犬、すげえ口が開く犬とか、すごいその、キバが生ってるキャラとか出てくる時があって、そういうのにもう耐えられないんですよ、なんか。そんで、配信と違って、私、うちテレビがないから、そういうのもnhkプラスでお金払ってアプリで見てんだけど、
参加者 1 15:16
それって、でもテレビ的だから、その、同じ階がずっと見えるわけじゃなくて、1週間で全部入れ替わっちゃうし、 そんで見て、最後まで見ないとその会の構成がわかんないじゃないですか。見慣れてればお母さんが先読みできたりするのかもしれないけど、私はそこまで行かなかったから。
だから、いつ怖いのが出てくるかわかんないっていう状況になって、それで子供は見るのやめちゃったんですよね。本当、言い手で見せるの難しい。
参加者 1 15:33
そんな子が最近ようやくね、ポケモンにハマって。だからハマるっていうのも、うちではハマるって言ったら、そのキャラクターが好きになって、ぬいぐるみを買って、図鑑を読んで、みたいな、そういう外、外側から、だんだんこう、コンテンツの本場に近づいていくみたいなことですけど、好きになって、 とうとうアポケを見るようになったんですけどね、そこまで長かった。何かアニメを見るまでもポケモンしか見ないです。
ポケモンってさ、ちょっと話長くなっちゃうかもしんないですけど、すごい子供に見せるためによく考えて作られてて。私知らなかったんですけど、ポケモンってどんだけ傷ついても血が出ないんですよ。
参加者 1 15:59
それ、最初からそうだったのかな。それはわかんない。なんかだんだん配慮をするようになったのかわかんないんですけど、とにかくね、すんごいこう、ぶっ飛ばされたりとか、大変なこと、かなりの引っかき傷とかが あって、ついても、なんかこう、表面がこうすれてるみたいな、ちょっと黒くしゃしゃしゃって書いてあるみたいなだけで、絶対にね、血を流さないんです。だから多分うちの子は見れるんだよね。
うちの子供はすごい血に弱くって、自分が怪我すると、もうちょっとした怪我で、もうびえーってなって、そんでその後お風呂に入る時にまた傷を見たくないっていう理由でびえーってなる
参加者 1 16:24
みたいなすごい人なんだけど、でも、そういう配慮があるから、ポケモンは見れるんですよねえ。あっという間に配信でさ、その130話ぐらいだけど、今それ全部見ちゃった。結構。だからもう今や動画にそっくり。
普通じゃねえかみたいな感じなんですけど、そんな感じで今は生活しております。
なんかここまでテレビのない家で生まれた子供が世の中と折り合いをつけるまでみたいな話に、だんだん折り合いをつけていくまでみたいな話になっちゃったけど、テレビなしで育ったっていう特徴をね、こっからは喋っていきたいと思います。よかったこと的な。
参加者 1 16:50
子供の良かったこととしては、すごい。うちで1番大きかったなと思ってるのは、そのネガティブすぎるニュースに触れないで済むことですね。
なんかこう、すごいさ、想像力、想像力って言ったらあれだけど、なんかイメージするのが、イメージ力が強い子供で、 なんか、その、幼稚園で、結構、うちの幼稚園で、ネタを喋ってくるみたいで、その、ロシアと戦争始まった時とかも、
参加者 1 17:12
その話したりとか、なんか、別にニュースみたいな内容言ったりしてるわけじゃなくて、こうして、世の中に傷ついてるお友達がいますみたいな話をされたりとかするんだけど、もう、そうするとさ、 家に帰って、なんかその話をずっとす、なんか、戦争って言うわ、にすごい敏感になって、なんか、なんかのせいで、なんかのきっかけで、こう、うちら戦争っていう口言葉を口にすると、もう、何何何。って、なんか割って入ってきたりとか、 なんか、あと、そうね、なんか去年の冬に最初に、そういう戦争とか以前に、
参加者 1 17:33
なんか世界にはこういう風に、なんだろう、お金がなくて増やしてる人もいるんだよみたいな話を幼稚園でしたことがあって、その家に帰ってから、すっごいさ、繰り返すんですよね、子供がめっちゃ、なんか 世の中にはお家がない子もいるんだよ。お母さんに会えない子もいるんだよとかってすっごい言ってきて、なんか ショックを受けてるのもあるけど、それもありつつ、なんかこう、よっぽど心に染み入ってるっていうか、そういう感じだったんですよね。だから、そんな子供にさ、
参加者 1 17:56
なんていうの、コロナの初期の、なんか映像的記憶みたいのが残んなくてよかったなっていうのを思ってるんですよね。正直ね、 なんかさすがにお腹なっちゃった。ちょっとお昼の前だからね、なんかコロナのことはだんだん理解してきてるけど、その初期の混乱した感じとか、なんかもう、どうなるんだろうって、ざわざわしてる感じ。私もなんかそこに、正直、あんまり詳しく触れなくてよかったな、映像見なくてすんでよかったなって思ってんだけど、なんか親とかから話を聞いてね、
参加者 1 18:16
なんかそういうのが残んないと思うと、ほっとするとこがありますね。やっぱりね、そういうネガティブなニュースって、やっぱ、うん、その、ナブな子供にはすごい残っちゃうから。
私ね、日航機の墜落事項、82年の2月生まれなんですけど、 その墜落事故のことをすごい覚えてて、その詳しいことはやっぱ意外と、さすがにね、3歳だから知らなかったりするんだけど、その時の、大きな飛行機が落ちて、ものすごいたくさんの人が亡くなったっていうのは理解してて、
参加者 1 18:38
なんか登場者名簿みたいのがさ、今みたいに、その、ネットで一覧とかで見れないから、テレビで流すしかないんですよね。その、飛行機に乗ってた人の名前を親族が知るにはさ、その、乗ったんだよっていう確定を得るためには、テレビで流すしかないから、何百人っていう人の名前を、ずっと流してんですよね、テレビで。なんか、その、青いバッグに、なんか白いもちでさ、しかも、なんか 漢字が判明してる人が、漢字になってるけど、少しだけで、もうほとんどの人は、カタカナで、日本人の名前がすごいバーって並んでさ、なんかそういうのを覚えてて、飛行機こわと思って、 それだけで、まだ載ってないわけじゃないけど、まだ乗ってないですよね。
参加者 1 19:05
そんで、それって私でもはっきり映像で覚えてるから、よっぽど私が6歳ぐらいの話だったのかなって思ってたけど、調べたら3歳とかだったからさ、その時期の記憶がこんなに残るんだって、やっぱショックを受けるっていうのは、すごい小さい子供でも同じなんだなって思ったんですよね。
だから、そういう、それだけじゃなくね、日々なんか悲惨な話っていうのは報道されてるわけで。なんか私も病院の待合室とかで、周りにテレビを見ると、なん。なんか不安はある話ばっかりしてんな。ずっとこんな話ばっかりしてんなって、やっぱり思うようになりましたね。なんかこれに触れないってやっぱ大きいなっていう。
参加者 1 19:33
ラジオはうちはあるんですけど、ラジオってそんなにさ、真昼にずっと不安を煽る話とかしてないですもんね。なんかみんなからのお便りとか呼んで、季節の話とか日常の話とかしてるだけですもんね。すごい違う世界を生きてるなと思って。
ま、あと、だんだんね、子供はその、テレビがないおかげまで行ったらあれだけど、さっきは集中力が小さい時はないんだっていう話をしたけど、なんかそれがすごい途中からぐっと伸びてきましたね。
うん。その、絵を描くにも、なんだろ、結構がっつり集中すれば、1時間とかバリバリ、バリバリ、チャキチャキ書いてさ、もう私の同じ年の時よりもはるかに絵が上手で���ね。
参加者 1 20:05
なんかそれが、それがね、なんか他のことに発揮されるのかとかはわかんないけどね、集中力がついたのか、絵が好きになっただけの、なんか微妙っていうか、絶対後者だと思うけど、 でも、そういう風にさ、1人でちゃんと暇って言わない時間が増えてくれてよかったなっていう風には思いますね。でも、今も言うけど、その、休みの日で、昨日みたいにさ、雨で休みで出かけられなくて、みたいな日は、もう暇っていう感じですけどね。いまだに言う。
参加者 1 20:24
だから、だんだんテレビなし育児のテレビなし生活の利点が見えてきたっていう感じで、先にクオが来るんですよね。先に大変なことがいっぱいあって、もうやだみたいな感じになっちゃうけど、なんか後でもうちょっと楽になるみたいな。でも、それって、youtube見始めたからなのかな。動画を大きいからなのかな。
そうかも。普通にうちらでもこういうね、ちゃんぽんで、ちゃんぽんぐらいでさ、その、テレビはないけど、youtubeあるぐらいの感じでね、やっていけたらと思いますね。でも、どうなのかね、この先どんぐらいまで続くんだろうっていうことは思いますね。
参加者 1 20:47
小さい時は、幼稚園入ったらもうダメだろうって思ってたんですよ。その、なんだかんだこう、文化を輸入してくるっていうか、プリキュアがどうこうとかきっと言い出すんじゃないか、みんなと話が合わないみたいなことになるんじゃないかって思ってたけど、今ってやっぱ他のお家でも、テレビがあるおうちでも、結構 子供の趣味によって、プラスでなんか配信で見せたりみたいなことを全然してるから、その個々の興味に応じて特化していくっていう感じで、なんか漫然と流行ってるものとかあんまりない。あれ見てこれ見たっていう、毎日何かが話題に登るってことは全然ないみたいでね。そうそう、好きなものがあるって感じになってて。しかも
参加者 1 21:15
子供は、うちの子供はポケモンっていうその大派閥に所属してるわけだから、あんまりね、そのテレビがないっていうことで、他の子と話が合わないっていう風になってるとは思わないですね。多分ですけど。
この後もさ、youtubeはさ、別に話題がどうこうってことないんじゃないかな。どっちかって言ったらね、今の子なんて、あの動画見たぐらいの感じなんじゃないかな。わかんないですけどね。
あとは、本当は私がnintendoswitch欲しいって、ポケモンの新作やりたいって思ってますけど、
参加者 1 21:37
子供がポケモン好きになって、私は結構子供が好きなものはなるべく知っていこうと思う方だから、そんな意識高い感じゃなくて、もうなんか楽しいことないかなと思ってるからさ、ポケモンもどんどん覚えて、調べて、もう私もすっかり ね、ポケモントレーナーデビュしたいっていう気持ちになりました。めっちゃ新作楽しそう。hikakinのあれですよ、実況。実況じゃないからね。正確には 見てるうちにスイッチないから。もうネタバレとか何もないからさ、しょうがなく配信で我慢してるけど、本当はスイッチやりたいですね。テレビなし9時に関してはこんな感じかな。
参加者 1 22:02
テレビがね、あるといいことも。でもきっとあると思いますよ。なんかそれも思うな。その 一般常識みたいなのが。さっきのその事件を知らないっていうのはすごい良し悪しで。小さい時は本当にね、今みたいな幼稚園児ぐらいの時っていうのは気にならないと思うけど、やっぱり途中からはなんかその世界史みたいな話とも通じていくし。
なんかテレビがあるから選べる知識、やっぱ社会系はすごい大きいですよね。
参加者 1 22:21
私、すごい池上彰さんがパパだった中間子供ニュースのもう第1世代だから、なんか池上さんのありがたいお話、ほとんどね、忘れちゃったんだけど、その、中東の問題とかっていっつもね、解決してくれて、その時はそうなんだって、なるほどわかったって思うけど、忘れちゃうんだよね。また次の年までには複雑すぎて忘れるのこと 忘れちゃうんだけど、少しでもやっぱなんかなんとなくあの辺でずっと戦争してんだなってわかったりとか、そういうぼんやりした知識の入り方っていうのはテレビならではだなと思うからね。テレビがある良さっていうのもきっとあると思いますね。
参加者 1 22:46
うん。でも、私自身の気持ちとして、うん、テレビが、その、ゲームのディスプレイとして以外の用途のテレビが欲しいなとは、もうあまり思わないかな ね。だんだんこうやってウシタ見たくなっていくのかなって思いますね。電車。電車に私そうそう乗らないけど、月に1、2回、2、3回ぐらい、乗っても3回ぐらいなんですけど、なんかそういう時、すっごいょょょ強してず広告とか見るんですよね。世の中のことがわかんないからさ。
参加者 1 23:04
そう、で、芸能人とか政治家とかのさ、年撮った写真見てぎゃーっていっつもぎゃーとかさ。あと、若い人たちはもう知らない、全く知らない人になってるから、誰だろうみたいな。この人誰なんだろうなとか、よく知ってた俳優さんだけど、もう名前思い出せないなと思って見てたりとかね。ウシマタプリを結構楽しんでます。
そんなテレビがあるとかないとかに関する雑談でございました。じゃあ唐突ですが、そろそろエンディングに参りたいと思います。
そうそう、その前回のママとかに関して励ましのお便りをいただいたので読ませていただきます。
参加者 1 23:30
お名前の記入などありませんでしたので、匿名さんからのお便りとして読ませていただきます。幼稚園でのぼっち感、かなり辛いですよね。私もそんな感じでした。遠足の時、他のお母さんたちがにぎやかにしている時、私は娘と2人でおにぎり食べていました。
これね、遠足で。幸いにしてね、うちの幼稚園は幼稚園で家族行事でお弁当食べるってシチュエーション、今まで1回もないんですよ。コロナのせいなのか、元々午前中で終わるようになってんのかわかんないんですけどね。
参加者 1 23:50
なんかでも一応。しかし、みんなで集まってお弁当食べない。みたいな流れがこう、遠足のや遠足の時もあって、その時になんかこう、こっちみんな集まってるけど、実質ぼっちみたくなりそうやなみたいな予感はありましたね。結局なんか、 なんか前日にめんどくさくなって、弁当とか詰めんのもういいやと思って、やっぱ明日行かないわみたいな感じで言って行かなかったんですけど、行ってたら娘と2人でおにぎりコースになってたと思う。
続き読みます。娘が可哀そうになりました。こんな母親でね、こんな母親でって思っちゃうんだよね。その感じは子供が小さい頃が1番強かったですけど、割とそういうのがずっと続いていくのかなって思います。
参加者 1 24:16
続くんかい。 私は蒸れるの嫌いなので、群れようとする人を避けてしまう傾向がありま。小さい頃女子にいじめられていたので、���子の集団が苦手なんですよ。今でも苦手です。でもなんとか子供は成長します。というお便りでした。どうもありがとうございます。匿名さん ね、ずっと続くんかい。ってもずっと言っちゃいましたけどね。なんかどっかで克服できるのかなって思ったりもするけど、ずっと続くんだ。なんかね、簡単にはやっぱ元の状態には戻んない。簡単にはっていうか、戻んないのかもしれないですよね。
参加者 1 24:38
なんかさ、私、動物が小さい頃苦手だったけど、27、8ぐらいからすんごい好きになって、なん。なんで逆に苦手だったのなったのかなっていう。犬はさ、犬は全員いいやつ、基本いいやつだよっていう 強いこう思い込みっていうか、確信があって、なんか、だからさ、人間も犬みたいにさ、基本いいやつだよって思えればいいんだろうな、変わんないかなって思ったんだけど、ずっと思ってんだけどさ、それはちょっと違うよね。なんか犬に噛まれて犬が嫌いになった
参加者 1 24:58
とかじゃないからさ、犬の場合は、なんか人間は実在を受けてるから、やっぱり気持ちだけでは変わんないというか、そういうさ、切替えて、急に切り替わることってやっぱりないのかもしれない。良くなっていくとしても、本当に徐々に徐々にっていう感じなのかもしれないですね。この匿名さんがおっしゃる通りね。
でも救いがあるのは、そのこんな母親でっていう気持ちがの方がだんだん消えてくっていう。子供がねだって大きくなって、自分で行動するようになればねって私も思います。
私もこんな母親でって思う時があって、それは夏休みとか長期休みの時なんですよね。
参加者 1 25:22
冬はまだいいよ。冬と春は外で遊べるから、とりあえず公演とか言ってチャーニングしてればいいんだけ��、夏がさ、もう実質東京の夏って外で遊べないわけですよ。その暑さがひどすぎて。
だから遊ぶとしたら児童館。児童館でも夏休み中小学生優先だからな。
だからそれもあって、もう人んち行くみたいな遊び方しかできない。それか、暑さに強い子になるうちは、どっちかっていうとそっちの方向でやってきてますけど
参加者 1 25:41
ね。よそのうちに遊びに行くっていうのが1番いい方法なんだけど、それってやっぱ深い関係がないとできないわけですよ。だからそういう時にも本当ごめんねっていう。退屈な夏休みにさせちゃってごめんねって思ってます。ね。ね、早く自分1人で遊びに行ってくれるようになればいいな。何年生ぐらいからそうなるのかな。
ね、本当。あと、なんとか子供は成長します。なんとか成長してくれるよね、きっと。ねね、この方はお子さんどれぐらいになったのかな。結構たったっていうことでしょうね。もう、励ましのお言葉ありがとうございました。育児の先輩、いかがでした。
参加者 1 26:03
お便りの募集を最近テーマ別にお便りの募集をしてまして、その聞いてるポッドキャスト、 今聞いて、他のポッドキャストっていうのと、青春とラジオっていう題で募集してたんですけど、この青春とラジオがですね、いつも来なかったので、そう、そっちはもう今回は諦めて、また別の機会に募集させていただこうと思います。今聞いてる他のポッドキャストはもう1通いただけたのでね。今2通になったので、 あとね、5日3ついただけたら、そのテーマでね、私の聞いてるpodcastと、そのお便りでお2方が紹介してくれたpodcastとね、話したいと思ってます。
参加者 1 26:27
この番組��は、ご意見窓口としてマシュマロのアカウントを解説しております。概要団にリンクがありますので、こんな話してほしい、こんなことを聞きたいみたいな話。あとはもちろん、ご感想がございましたら、ございましたじゃないご感想もありましたら、お気軽に送ってみてください。匿名サービスですが、ラジオネームや年齢、ぼかした居住地など 書いても言い方は書いてくださると嬉しいです。めっちゃお腹なったまいた。じゃあ極小か。こうなりたいと思います。
えっと、spotifyのミュージックプラストーク機能を利用して、番組の最後にテーマにまつわる曲を紹介するということをこの番組ではやっております。
参加者 1 26:53
聖 9
0 notes
Text
常用漢字と教育漢字
川越は教育漢字と常用漢字は増やすべきだと思っています。
この文字常用漢字じゃないの?と感じた文字が、多すぎるのです。 また、この文字は小学校で習ってもいいのでは?という文字も、多いです。 ということで、川越が教育漢字の配当を考えた場合の表と、川越が考えた常用漢字表を作成しました。
まずは教育漢字です。 【1年】20文字増えて100文字とします。 1年は身近な感じを中心に追加しました。 漢数字は基本1年で習いますが、「万」が2年です。「1万円」とかでよく使うため「万」も1年にしました。 「父・母」、「自分」、「友」、「心」、「体」などの人に関する文字、 「外」に「行く」や、「今」、「言う」、「会う」、「太い」、「多い・少ない」といった1年でもよく使う言葉、 他にも、「止まれ」の標識を1年から読めるようにするために「止」、 「市町村」のうち「市」だけなぜか2年なので全部1年に統一し、よく食べる「米」も1年にしました。 「公園」も1年で習うべきだと思いますが、画数や漢字の構造を配慮して「公」のみ1年にしました。
【2年】20文字増えて180文字とします。 まずは、その文字に対する対義語がなぜか同じ学年ではないということがあります。 「高い」に対する「安い」、「明るい」に対する「暗い」、「長い」に対する「短い」などは学年がなぜか違うため、先に習う学年に統一しました。 また、「勉強」の「勉」、「学習」の「習」などの学校に関する言葉、「仕事」、「世界」、「動物・植物」といった名詞、 「勝つ・負ける」、「使う」、「待つ」、「遊ぶ」、「開ける」、「消す」といったよく使う動詞などを中心に追加しました。 また、学校で習う科目の文字を全部2年にするため、4年の「英」を2年に、 「都道府県」に使う文字は4年だが、「都道府県」という文字は全部2年にしました。 「衣食住」も同様で、4年の「衣」が2年です。 また、元号では、「昭和」の「昭」「和」が3年なのに、 「平成」は「平」が3年だが「成」が4年、「令和」は「令」が4年です。 これでは今の年号・前の年号のほうが、2つ前の年号よりも後に習う漢字になっています。 2つ前の年号よりも今の年号・前の年号のほうが先に習うべきです。そのため「平成」「令和」ともに2年にしました。 また、6年からも1文字2年にしました。「机」です。 「机」は学校には当たり前にあるものなのに、なぜか6年。遅いです。2年でもおかしくはないでしょう。
【3年】15文字増えて215文字とします。 ここも単語や対義語を合わせることが多いです。 「悪い」に対する「良い」、「有る」に対する「無い」などです。 単語では「健康」、「特別」といった重要な言葉なのに習うのが遅いと思った単語は3年にしてます。 「産業」の「産」、「児童」の「児」、「信号」の「信」、「関係」の「関」といった文字は単語として同じ学年に合わせました。 学校に関する言葉では「給食」の「給」、「席」、「卒業」の「卒」、「割り算」の「割」を3年にしてます。 食べ物から「野菜」の「菜」「果実」の「果」「飯」などを3年にしてます。「麦」は2年では早いと思い、3年にしました。 また、「戦争」や「民」「法」など社会面からの文字も3年になっているものもあります。
5年からは、「永久」「可能」は3年に、6年からは、また「階段」の「段」も、「階」に合わせて3年にしました。(「割」も6年からです)
【4年】13文字増えて215文字とします。 ここでは、都道府県の漢字を追加した分習う学年が遅くなった文字を元に戻したものもあります。 「囲・紀・喜・救・型・告・士・史・賞・停・得・費・歴・胃・腸」を、元の4年に戻しています。 しかし、「航・殺・象・貯・堂・毒・粉・脈」は他の漢字と比較した結果もとには戻していません。 他の追加分では、学校に関する言葉で「授業」の「授」、「修学」の「修」を4年に、 建設の「設」、豊富の「豊」を単語に合わせて、 「借りる」に対する「貸す」、「夫」に対する「妻」(夫に対しては「夫婦」の「婦」も同様)を対義語として4年に、 「快適」、「現在」、「非常」、「資格」、「準備」といった単語、 「増える・減る」、「得」を4年に戻したことにより「損」といった対義語、 「情報」、「技術」、「国際」の「際」、「個人」の「個」、 「営業」の「営」、「防災」、「政治」の「政」、「税」といった社会面からの文字も4年になっています。 そして、逆に習う学年が遅くなったのが2年の「汽車」の「汽」です。 「汽車」自体が最近都心部を中心に見ないので、2年では早いと思い4年にしました。
【5年】22文字増えて215文字とします。 元の5年に戻した文字は「恩・券・承・舌・銭・退・敵・預」の8文字です。「俵」は元に戻していません。 単語では「私」、「呼吸」、「宇宙」、「秘密」、 動詞・形容詞では「洗う」、「干す」、「危ない」、「困る」、「暖かい」、 「閉める」、「若い」、「痛い」、「誤る」、「忘れる」、「捨てる」、 単語として合わせた文字は「保存」の「存」、「価値」の「値」、 「就職」の「就」、「確認」の「認」、「探検」の「探」、「創造」の「創」などです。 また、「警察署」の「警」「署」、「内閣」の「閣」、「憲法」の「憲」、 「権利」の「権」、「討論」、「政党」の「党」、「否決」の「否」、「批判」の「批」、 「納税」の「納」、「経済」の「済」、「勤労」の「勤」、「省庁」の「庁」、「発射」の「射」、 「臨時」の「臨」、「法律」の「律」、「政策」の「策」、「衆議院」の「衆」など、 公民の授業やニュース・新聞でよく使用する文字を追加しました。 また、常用漢字からは「江戸」の「江」、「与党」の「与」、「完了」の「了」を5年に追加しました。
【6年】24文字増えて215文字とします。 常用漢字から、日常生活や授業・社会で使用率の高い漢字を追加しています。平成元年に外された教育漢字も復活したものもあります。 平成元年に外された教育漢字から復活したものは「称・兼・釈・需」の4文字です。「名称」、「兼用」、「解釈」、「需要」と、 よく使う言葉に使われるため、復活させました。 なお、「歓・勧・是・俗・壱・弐」は他の常用漢字と比較した結果優先度が低いと思い復活していません。 動詞・形容詞からは「甘い」、「押す」、「遅い」、「怖い・恐い」、「辛い」、「驚く」、 「涼し��」、「眠い」、「寝る」、「怒る」、「耐える」、「払う」、「汚れる」、「悩む」、 「抜く」、「怪しい」、「抱く」、「嫌う」、「離れる」、「狭い」、「戻る」などです。 対義語では「降りる」に対する「昇る」が入りました。 日常生活や街中で見る漢字からは、喫煙所の「喫煙」、「塾」、掃除の「掃」、「猫」、「袋」、「缶」、 冷凍庫の「凍」、風呂の「呂」、年齢の「齢」、「隣」、洗剤の「剤」、携帯の「携」、玄関の「玄」、駐車場の「駐」などです。 他の単語では、削除の「削」、普通の「普」、「豪華」、募集の「募」、 健康診断の「診」、宿泊の「泊」、突然の「突」、連絡の「絡」、貧乏の「乏」などです。 新聞やニュースでよく使用する漢字からは、違反の「違」、隠蔽の「隠」、「影響」、炎上の「炎」、 疫病の「疫」、架空の「架」、介護の「介」、監視の「監」、返還の「還」、環境の「環」、 企業の「企」、不況の「況」、緊急の「緊」、刑事の「刑」、抗議の「抗」、「攻撃」、購入の「購」、 更生の「更」、湿度の「湿」、福祉の「祉」、侵略の「侵」、地震の「震」、聴衆の「聴」、摘発の「摘」、 盗難の「盗」、「倒壊」、廃止の「廃」、排除の「排」、爆発の「爆」、処罰の「罰」、避難の「避」などです。
結果1140文字、現行より114文字増えました。
【常用漢字】先に言うと、483文字増えています。漢字単体では「何この文字?」というものも多いですが、 単語にしてみると「その文字だったか」という文字が多いです。
まずは、単語にしないとわかりにくい文字からです。「」が川越案で追加した常用漢字です。 「唖」然、狭「隘」(きょうあい)、「軋轢」(あつれき)、「斡」旋(あっせん)、 所「謂」(いわゆる)、「隕」石、「迂」回、「云々」(うんぬん)、漏「洩」、「冤」罪、終「焉」、 「謳」歌(おうか)、「喧嘩」、「凌駕」、「凱」旋、「徘徊」、「傀儡」、「乖」離、「撹」乱、「恍惚」(こうこつ)、 「狡猾」(こうかつ)、急「遽」(きゅうきょ)、「癇癪」(かんしゃく)、「恰」幅、「几」帳面、「杞」憂、 「贔屓」、動「悸」、一「揆」、「綺」麗、「毅」然)、厚「誼」(こうぎ)、「姦」通、 「吃」音(きつおん)、愛「嬌」、卑「怯」、飢「饉」、大「袈裟」、「牽」制、 「譴」責、「罫」線(けいせん)、「轟」音、永「劫」、「慟哭」(どうこく)、「膠」着、 「昏」睡、「梱」包、「渾」身、「些」細、「忸怩」(じくじ)、「炸」裂、 「颯」爽、、晩「餐」、改「竄」、「懺」悔、「弛」緩、「嗜」好、「熾」烈、 「灼」熱、復「讐」、「蹂躙」(じゅうりん)、「顰蹙」(ひんしゅく)、 「駿」足、前「哨」戦、「憔悴」(しょうすい)、豊「穣」、「贖」罪(しょくざい)、 強「靭」、「彗」星、円「錐」、同「棲」、「脆」弱、「贅」沢、特「撰」、 「醍醐」味、清「楚」、「齟齬」(そご)、「蒼」白、「忖」度、「拿」捕、「楕」円、「只」今、 平「坦」、「蛋」白、忌「憚」、ご「馳」走、「厨」房、範「疇」、「躊躇」(ちゅうちょ)、天「誅」、「凋」落、「諜」報、 「寵」愛(ちょうあい)、「酩酊」、抜「擢」、「顛」末、沈「澱」、「杜」氏、安「堵」、常「套」、 怒「涛」、「淘」汰、脳震「盪」、「恫」喝、「獰」猛、混「沌」、「捺」印、「捏」造、 化「膿」、「播」種、「狼狽」、「焙」煎、「莫」大、被「曝」、「撥」水、「挽」回、麻「痺」、 「誹謗」、「逼」迫、「豹」変、「憑」依、天「秤」、「瀕」死、不「憫」、 「憮」然、接「吻」、招「聘」、「僻」地、「拇」印、「呆」然、同「朋」、 割「烹」、先「鋒」、泡「沫」、我「儘」、「蔓」延、啓「蒙」、「悶」絶、「揶揄」、 「宥」和、執「拗」、「螺」旋、「罹」患、可「憐」、「黎」明期、瓦「礫」、「牢」獄、貫「禄」、 「歪」曲、界「隈」、「猥褻」などです。 次に、動詞・形容詞です。 「逢う」、「炙る」、「溢れる」、「頷く」(うなずく)、「俄か」(にわか)、「掻く」、「叶う」、「庇う」、 「噛む」、「嬉しい」、「怯える」(音読みは卑怯で用いる)、「煌めく」(きらめく)、 「漕ぐ」、「悉く」(ことごとく)、「彷徨う」(さまよう)、「冴える」、「捧げる」、 「囁く」(ささやく)、「捌く」(さばく)、「晒す」、「喋る」、「奢る」、「濡れる」、「偲ぶ」、「尖る」、 「穿く」(はく)、「閃く」(ひらめく)、「煽る」、「剃る」、「蘇る」、「逞しい」、 「叩く」、「辿る」、「溜める」、「掴む」、「繋ぐ」、「呟く」(つぶやく)、「疼く」(うずく)、 「躓く」(つまづく)、「吊る」、「咎める」、「舐める」、「馴れる」、「賑わう」、「吞む」、 「睨む」(にらむ)、「覗く」、「這う」、「遥か」、「媚びる」、「惹かれる」、「撫でる」、 「扮する」、「焚く」、「吠える」、「殆ど」、「撒く・蒔く」、「儲かる」、「萌える」、「貰う」、 「茹でる」、「凌ぐ」(音読みは凌駕で用いる)、「淋しい」、「憐れ」、「歪む」、「詫びる」などです。 次に、1文字でも意味が分かる漢字です。 「仇」、「磯」、「嘘」、「噂」、「掟」、「舵」、「躾」、「縞」、「巴」、「砦」、 「絆」、「雛」、「頁」(ページ)、「迄」、「禊」、「轍」、「罠」です。 次に、ジャンル別で漢字を分けます。
家族に関する漢字は、「甥」、「姪」、「姑」、「爺」、体・病気に関する漢字は、 口「腔」、「腱鞘」炎、「癌」、「肛」門、「膀胱」、「垢」、「痔」、湿「疹」、「膵」臓、「脛」(すね)、 「咳」、排「泄」、「喘」息、「躁」病、「腿」(もも)、「禿」、「髭」、五臓六「腑」、「糞」、「屁」、分「娩」、 「瞼」(まぶた)、「聾」学校、「肋」骨、「痙攣」、「咀嚼」、「倦」怠感、「頸」動脈などです。 生き物に関する漢字では、哺乳類では、「鼠」、「兎」、「豹」、「狼」、「狐」、「狸」、鳥類では、 「鴨」、「烏」、「鷺」、「雀」、「燕」、「鳩」、「鷲」、魚類・海・川の生き物では「鯵」、「鮎」、「鰯」、「鰻」、 「鰹」、「蟹」、「鯉」、「鮭」、「鯖」、「鮫」、「鯛」、「鱈」、「蛸」、「鰤」、「鱗」、「珊瑚」(さんご) 両生類や昆虫では「蛙」、「蟻」、「蛾」、「蝶」、「蝉」があります。 十二支の文字の「丑」、「寅」、「卯」、「辰」、「巳」、「酉」、「戌」、「亥」も追加しました。
伝統芸・神事・寺・国事に関する文字では、「阿吽」、外「苑」、天「狗」、舞「妓」、「弘」法、「賽」銭、 神「輿」、「菩薩」、「獅」子舞、「阿」弥「陀」、「巫」女、大「晦」日、「瞑」想、「狛」犬、「旭」日旗、 合「祀」、「瑞」祥、「煤」払い、「お祓い」、「祟り」、「彦」星、紫「綬」褒章などです。 歴史に関する文字では、公「卿」、元「寇」、「庄」屋、「攘夷」(じょうい)などです。 土地・建物・工業に関する文字では、「矩」形(くけい)、「躯」体(くたい)、廃「墟」、 「竣」工、「斧」、「杭」、「釘」、「跨」線橋、防空「壕」、「錆」、「堰」、金「槌」、 「梯」子、雨「樋」、「鳶」、「鉈」、「鋸」、「梁」、「襖」、中「洲」、「淵」などです。 植物に関する文字では、「粟」、「苺」、「苔」、生「姜」、林「檎」、「桐」、「栗」、 月「桂」樹、「橙」、「筍」、「椿」、「藪」、「柚」子、「蘭」、「蓮」、「蕾」、「葱」、「茄」子などです。 食べ物に関する文字では、「飴」、「餡」、「粥」、「燻」製、「蕎」麦、酒「粕」、「麹」、「胡椒」、 「醤」油、味「噌」、「惣」菜、「佃」煮、松「茸」、「麩」、「餃」子、「糠」、などです。 道具に関する文字では、「桶」、花「笠」、「鞄」、「兜」、お「灸」、石「鹸」、「糊」、軟「膏」、「杓」子、 刺「繍」、「竿」、「匙」、「凧」、「襷」、「樽」、「箪笥」、「壺」、「砥」石、「屏」風、「箒」、 「鞭」、「楊」枝、「鎧」、お「椀」、茶「碗」、金「箔」、甲「冑」などで、「塵」「屑」「埃」などのごみに関する文字もあります。 気象に関する文字では、「蜃」気楼、「雹」をいれました。 地名に関する文字も、都道府県以外でも使用度の高い文字は常用漢字でもいいと思っています。 都道府県庁所在地のうち唯一常用漢字でない、札幌の「幌」、政令指定都市の「堺」、イタリアを漢字表記した「伊」、 日本一長いトンネルの青函トンネルの、「函」、日本一大きい湖、琵琶湖の「琵琶」、 国会や日本の省庁が集まる霞ヶ関の「霞」も地名ながら入れてもいいと思います。
最後に、今回追加したい文字よりも使わないであろう、「虞」と「朕」は除外してもいいと思っています。
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3/17(金) ・ 本日は12:00〜愛ある食卓 @aiarushokutaku のマルシェ、オープンしております。 本日は春大根、長葱、ほうれん草、べによし五寸(人参)、小松菜、赤ひげ葱、四川児菜、スティックセニョール、京むらさき大根、カリーノケール、ブロッコリー、大根、菜花、サニーレタス、サラダ春菊、のらぼう菜、長谷川農産 @hasegawa_nosan の"日本一のマッシュルーム"があります🥕🥬🍠 来週はODAKYU湘南GATEで開催されます"bon bon marche"by 海の近く @umichika2016 の出店、イベント��ポートのため、お休みですので、ぜひ本日のご来店をお待ちしております😊 ・ MONKの営業は18:00〜24:00です。 本日はご予約でほぼ満席になっております。 遅い時間もお席空いてきますので、ご来店前にお電話でご確認いただけますと確実です👍 ・ 【今週の営業とお席の状況】 3/17(金)12:00〜愛ある食卓のマルシェ 通常営業18:00〜24:00 ほぼ満席 3/18(土)15:00〜24:00 ほぼ満席 3/19(日)13:00〜22:00 かなり空きあり 3/20(月)13:00〜22:00 夜はほぼ満席 3/21(火)13:00〜22:00 ガラガラ 3/22(水)定休日 3/23(木)定休日 ・ 当店の5周年ビールとして約1ヶ月タップでお楽しみいただきました「TAKE FIVE」 "缶ビール6本セット"、"缶ビールとオリジナルグラスのセット"をMONKのオンラインショップにて販売スタートしております‼️ ※完売間近になってまいりました! https://monk-shop.square.site/ *プロフィールにリンクが貼ってあります🔝 バーバリックワークス醸造、愛ある食卓のマルシェでもおなじみ、石田勝さんの無農薬みかんをたっぷり使ったゴールデンエール。 そしてこの缶のラベルのために最高のデザインのイラストをCHALKBOYさんに描きおろしていただきました✨ おかげさまで本当に本当に大好評でして、すでに飲まれた方もまだ飲まれていない方も、最初で最後の機会ですので、お買い逃しないよう、ぜひよろしくお願いいたします!😊 ・ *発送についてですが、店舗の業務と並行してますため、毎週火曜日までにご注文いただきました商品を金曜日に発送いたします。 *配達時間帯をご指定の場合は、お会計時のメモ欄へご記入をお願いいたします。 *商品金額が税込16500円以上のご購入で送料無料になります。 *ご決済方法は各種クレジットカード決済(一括払いのみ)になります。 *当店の酒販免許は通信販売酒類小売業免許のため、MONK店頭での販売はできません。何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます🙇♂️ ご注文、お待ちしております! ・ ・ ・ ・ #monk #monktsujido #辻堂 #辻堂昼飲み #辻堂ディナー #辻堂ワインバー #辻堂イタリアン #ナチュラルワイン #vinnaturel #vinonaturale #naturalwine #craftbeer #finefood #apero #aperitivo #愛ある食卓 #somafarm #虹色畑 #湘南八木農園 #ひらまき園 #ogawafarmshonan #rabudelove #長谷川農産 #workingweek #workingnights #ripsimonbooth #御酒vin帖 #お一人様歓迎 (MONK Tsujido) https://www.instagram.com/p/Cp4CKyiPc_c/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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船橋市薬園台駅近くの谷屋音楽教室です。
早いもので卒業シーズンですね🌸
春に向けて生徒さんの募集をしています。
現在火・水・木・金曜日開講しています。
空き状況は
●火曜日→14:00-16:00の間
●水曜日→16:00-18:00の間
●木曜日→満席です🈵
●金曜日→14:00-18:00の間
なかなか空きが出ない夕方は火曜日と金曜日、余裕があります🙆♀️
火曜日は幼稚園から直接来られる未就学児の方におススメの時間帯です。
状況が変わる場合がありますのでホームページから直接お問い合わせください🎹
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#卒園児の近況 ❣️ #グッチ 🐱 * 浅草ねこ園 園長さま ご無沙汰してます。 気がつけば、グッチをお迎えして半年以上経っていました。 まだそれだけしか経っていないのか、と驚いています。 すっかりお家に馴染み、昔からずっといる感じです。 グッチはとっても元気です。 だいぶお迎えした時より老けましたが笑(見た目が) 人間の膝の上や抱っこが大好きで、甘えん坊です。 最近、隔離生活を辞めました! 初めは先住シーちゃんが警戒して、グッチに怒ったりしていましたが、グッチは一切気にせず、シーちゃんもグッチがいい奴だ、と気づいたのか徐々に仲良くなってきています! 先月、健康診断とワクチンに行って来ました。 健康で、何の問題もありませんでしたが、太り気味だそうです。 ダイエットします! 最近、我々ニンゲンが忙しく毎日大変ですが、グッチとシーちゃんに癒され、頑張ることができます。 ねこ園さまのインスタも毎日チェックし、癒されています。 落ち着いたら遊びに行きます! では、また連絡いたします。 PS.シーちゃんのブサイクな写真見てください笑 グッチを見下ろして、監視していたけれど眠くてしょうがないブサイクなシーちゃんです。 * とのご報告🎶😺 徐々にシーちゃんもグッチを受け入れてくれるようになってますねー。 よかった❣️ 健康診断で太りぎみ⁉️ そんなことないよグッチ‼️ ちょうど良い体型だからどんどん食べてね〜🍚 もっともっと仲良しになりますように🍀🍀🍀 #浅草ねこ園 #ねこ園 #asakusanekoen #cat #catcafe #nekocafe #asakusa #浅草カフェ #里親募集 #里親募集型カフェ #保護猫カフェ #catcafetokyo #catcafeasakusanekoen #asakusanekoencatcafe #子猫 #kitten #adorable #adoptable #rescuecats #adoptdontshop (猫カフェ【浅草ねこ園】 Cat Cafe "Asakusa Nekoen")
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罪なる庭で(at the orchard of redemption)
錆びた柵のむこうで、檸檬の樹たちが未熟な実を揺らしていた。
私は鉄扉をくぐり、果樹園に入る。午後の光はこの先にある真夏の烈しさを忍ばせ、僧衣に隠れていない部分が灼けて痛む。
歩いているうち、鮮やかな黄色が目を刺した。
ある一つの樹にだけ熟した果実が生っている。その側に立つ影は樹にほとんど同化していた。
「リーマスさん」
名前を呼び掛けると、男は顔を上げてこちらを見た。
葉影に紛れて、顔はよく見えない。灰色のものが混じる髭の中に、謹厳に結ばれた唇が見える。後退した額に生え残っている髪が、水鳥の冠羽のように輝いた。
いつ見ても、ゴーレムだとはとても思えない。しかし、身に付けている黄色い衣が、彼が罪人であることを証明している。
「七月になりましたよ。今日はいいものを持ってきました」
ちいさなベンチを目の前に置いた。普段なら、この果樹園を訪なう信徒たちが休めるよう、木陰に置いているものだ。リーマスさんの視線がゆっくりと私と椅子の間を往復した。
「座ってください。見てるだけで疲れちゃいます」
ちょっと待ってみたけれど、動く気配はなかった。私は大仰に肩をすくめ、収穫に取り掛かる。
呪刑官のつくるゴーレムには、人間にあるはずの微細な動きがない。微かなみじろぎ、呼吸による胸の膨らみ、眼球の震え、鼓動。それらが欠落した身体は、外見が人間らしいがゆえに違和感を与えたが、次第に慣れた。
帰ろうとしたところで、唸り声が聞こえた。
「ゴーレムは疲れない。学校で習わなかったか」
足を止めて振り返った。木漏れ日のなかで、リーマスさんは不機嫌そうに私を睨んでいた。
「疲れない。快適そうですね」
「感覚がないんだから快も不快もない」
果樹園を出て聖堂へ帰ると、呪刑官が説教台の前に座っていた。私は、今日の分の収穫を渡した。数を確かめると無言で頷き、足早に立ち去った。
呪刑官がここへやってきたのはつい先日のことだった。聖堂の裏の果樹園を使用する、という決定事項を伝えに来たのだった。そして、いちばん魔術への耐性が高い私を管理者に指名した。
罪果の採集が聖堂で行われるのは、聖職者たちが生まれつき魔術を拒絶する体質を持っているからだ。果樹園には呪刑官たち自身が入れなくなるほどの強い防護の呪文を幾重にも張る。聖職者なら、中に入ることができる。
あの檸檬の樹の根本には、リーマスさんの身体が埋まっている。魔術を掛けられた樹が、彼の記憶を吸い上げ、結実する。ひとつひとつに宿主の記憶が封入されたその実は罪果と呼ばれ、呪刑官のみが口にすることを許されている。呪刑官は、その果実に封じ込められた記憶を追体験し、真実を得る。
私の仕事は、罪果を余さず採集して呪刑官に渡すことだった。
*
ミサが終わり、鐘が鳴る。信徒たちは立ち上がり、世間話に興じながら帰っていく。
首都から遠く離れたこの聖堂を訪れるのは大体が地元の人々で、近所の大学からも学生が訪れる。彼らの卒業と入学で年月の経過を感じる。今年も、新しい顔がちらほらと見えた。
回廊を巡りながらステンドグラスや聖遺物たちを眺める彼らを横目に、燭台を倉庫へと運んでいると、後ろから声を掛けられた。
「あの、すみません」
顔を上げるとくろぐろと濡れた瞳がこちらを見ていた。新入生だろう。
「果樹園には誰でも入ることができると聞いてきたのですが、門に鍵がかかっていて」
「ああ」
間の悪いことだ、と内心でため息をつく。
「今年は開けてないんです。ものすごい毛虫が出て、葉がダメになっちゃって。前までご案内することはできますけど」
「そうなんですか」
青年は微かに目を伏せて、残念です、とだけ言い残し、出口へ歩いていった。申し訳ないなと思いながら、私は果樹園へと足を向けた。ちょうど収穫の日だ。
リーマスさんはいつものように檸檬の木の下に立っていた。ベンチには土埃が付いている。
収穫しながら、私は理髪師よろしく話しかける。
「息子さん、元気にしているといいですね」
リーマスさんは首都に住んでいた。魔術師として警備に従事しながら、かつての恋人が遺した子どもを預かって、つましく暮らしていた。
恋人は人狼との間に子供をなしていた。性徴期を迎えた子供は狼と化し、何人かの市民を襲い、郊外の家畜を殺害した。狼化を抑制する措置を怠ったことについて、リーマスさんは既に罪を負っている。
子供の行方は分かっていない。リーマスさんが何か手を回して逃がしたことは明白だった。リーマスさんは、自分に口止めの魔術を施していた。呪刑官たちが束になって記憶の錠をこじ開けようとしても、だめだった。言葉か、物か、音か……何が鍵になっているのか、わからなかった。
だから、からだに檸檬の樹を植えられ、魂を土人形に移し替えられた。呪刑官たちは血眼になって記憶を暴いている。
蝉の声を聞きながら果実を籠へ放り投げていると、珍しくリーマスさんの方から話しかけられた。
「きみは、魔術を感じられないんだな」
「ええ。見えず、聞こえず。目の前で死の呪文を唱えられてもへっちゃらですよ」
返答はなかった。私は、リーマスさんとの会話が途切れることを気にしなかった。
高いところにある実を取ろうと、必死で脚立から腕を伸ばした。どうにかもぎ取った実を満足しながら眺めていると、葉擦れと蝉の声の間に小唄のような呟きが聞こえた気がした。呪文だと思った。告解の典礼文であることに思い至るまでに時間を要した。
硝子玉の瞳が、脚立に座る私を見据えていた。
「あの子は、人狼であるだけでなく、きみと同じ体質だった」
私の手から、檸檬が落ちて転がった。
魔術が効かないということは、魔術による防疫や治療を施すことができないということだ。市居の人々は日常的に地域の治療師たちから病除けを受け、治療を施してもらう。でも、私たちは自然治癒に任せるしかない。
魔術が身体をすり抜けてい��子どもたちは親元から引き離され、教会のもとで保護される。私は孤児院からそのまま修道院へ移った。けれど、人狼の子供がこの体質だったら、どうなるのだろう。魔術によってしか抑制できないのだ。
「あの子を手元に置き続けたのが間違いだったんだろう。何も手を打てなかった。人狼の形質が発現したと疑うべき状況に直面しても、まだ信じられなかった。見て見ぬふりをしたんだ。
罰せられるべきはおれだ」
孤児院を脱走して下町で吸血鬼に噛まれたという腕白な男の子がいた。その子の姿を二度と見ることはなかった。
「あなたは、息子さんに逃げてほしいのですか」
リーマスさんは目を伏せた。
「時間をやりたかっただけだよ」
*
八月になるころには、新しい実が付かなくなっていた。
おそらく、そろそろ記憶が尽きるのだろう。その後で、リーマスさんにはどんな裁きが下るのだろうか。
ミサの準備をしながらそんなことをぼんやり考えていると、いつのまにか告解の時間になっていた。
落ち着かない気持ちで告解室に座っていると、控えめに戸が開いて、信徒が入ってきた。
仕切りを開くと、ちいさな手が隙間から覗いた。
互いに誦唱を済ませると、相手は凛とした声で話し始めた。
「司祭さま。ぼくは人を傷つけました」
言葉が途切れる。無言で続きを促すと、手が服の裾を掴んだ。
「無意識でした。最初のときは、何が起きたのか分かりませんでした。ふと意識を失い、次に目覚めたときには見知らぬ家に血塗れで立っておりました。何が何やらわからぬまま、手頃な服を奪い、家へ帰って血を落としました。それから何週間か経ち、今度は家畜の骸たちの中に立っていました。そういうことが何度か続きました」
聞き覚えのある声だった。残念です、という声の響きとともに、黒い瞳を思い出した。
「父には心配を掛けたくない一心で、黙っていました。でもある日、父はぼくを鍵の掛かった部屋に入れました。
窓から、円い月が見えたことだけを覚えています。
次に目覚めたとき、部屋の鍵は開いていました。父からの置き手紙には、長期の出張へ行くから南に住む知り合いのもとへ行くように、と書いてありました。
その方は、ぼくを快く迎えてくれました。でも、満月の夜になると、ぼくに強い睡眠薬を飲ませて、外から鍵の掛かった部屋に閉じ込めます。
父が逮捕されたと知ったのは最近です。
ここまで、檸檬の植えてある教会を訪ねてきました。父は、よく檸檬を買ってきたものです。檸檬の樹が沢山生えているところで生まれたからだと、南を訪れてはじめて知りました。父の魂が選ぶ果物は、檸檬の他ないはずです」
指から力が抜け、裾がぱさりと音を立てて落ちた。
「果樹園を見せて下さらなかったのは、この聖堂だけです。持ち出した睡眠薬は先月の分で尽きました。せめてこのミサだけ最後まで聞かせてください。そうしたら、呪刑官のもとへ出頭します」
少年は、静かにブースを出ていった。
引き戸に何かを挟まれたのか、私は外へ出ることができなかった。入れ替わりに告解をしにきた信徒に事情を話してこじ開けてもらったけれど、記憶の中の姿はあやふやで、聖堂のどこにも見つけることができなかった。
途方に暮れて、果樹園へと向かった。けれど、リーマスさんを見た途端、来たことを後悔した。何も言えるはずがなかった。
踵を返そうとしたが、肩を掴まれて振り向かされた。私がいつまでも目を合わせないでいると、腕に食い込んでいた指の力が抜け、腕が力なく垂れた。
リーマスさんは私の手を引いてベンチに座らせ、自分も隣に腰を下ろした。
はじめて書店に連れて行ったとき、とリーマスさんは話しはじめた。
「あの子は自分で絵本を選んできた。変わり者の吸血鬼たちの話だ。人の血を吸う代わりに、檸檬の実を齧って飢えをやり過ごすんだ」
ミサが始まる時間だった。鐘の音が遠くから響いてきた。それが止むと、鳥と蝉の声ばかりがあたりを満たした。
「おれに見えるのは青い炎だけだ。樹も、果実も、同じ色に燃えて、おれを焼こうとしているみたいだった。この果樹園でほんとうの色を纏っているのは、きみだけだった」
リーマスさんはそれきり何も喋らなかった。私は目を閉じて、冷たい炎に包まれた果樹園を想像した。けれど、再び目を開けると、そこには元通りの世界があった。枝葉と果実の緑が陽光のなかで燃え立ち、蝶の羽が鬼火のようにひらめいた。
私たちはそのまま、ミサが終わるまでとなりに座っていた。
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452 名無しさん@おーぷん 2018/11/21(水)03:27:41 ID:Lkb 今、興奮してるから無駄に長いです 私と友達(以下、友)は中学と高校が同じ、家も近所 一人っ子同士で母親同士も友達 高校を卒業してからは大学も就職先も離れていたし さらに結婚してからは夫の仕事の都合で引っ越したり、子供が生まれたりして 年賀状のやり取りと、年数回の電話くらいの付き合いになっていた (メールやラインが普及する前の話) 私の娘が幼稚園の年長さんのある日、友から電話がかかってきた いつもの近況報告かと思ったら、妙に硬い声で「入院することになったの」と言う 友のところは娘より一歳下の女の子が一人(以下、友子ちゃん) 私が「もしかして、友子ちゃんに弟か妹が?」と考えかけたら 友「わかんない病気なの 検査入院なの」 私「えっ!?」 友は最近体調不良で、医者にかかってみても原因がわからず 紹介状をもらって大きな病院で検査入院することになったそうだ 「あれま、でもここではっきりさせておいた方が後々安心じゃない?」と言うと 「そうだね……」と元気がなかった 医学のことは詳しくないから友から聞いた話をはしょって書くと 検査入院してもわからず、他の病院を紹介してもらってまた検査入院してというのを 繰り返し、かなり具合が悪くなったころ、ある大学病院に行きついた そこでやっと、病名がわかった 驚くことに、日本で数例しか症例のない、珍しい病気だった 友「道を歩いていたら宇宙から降ってきた隕石に当たった、くらいの確率よねー」 病気の治療というのは統計と経験値だそうで、そんな数少ない症例は 治療法が確立されていない しかし放っておいたら友は確実に命を落とす 453 名無しさん@おーぷん 2018/11/21(水)03:28:50 ID:Lkb 大学病院では主治医をリーダーに専門のチームが組まれ、治療が始まった 治療法が確立されてないわけだから、言い方は悪いがすべてが 人体実験みたいなものだ 友「ともかく試さずにし��より試してしんだ方がいい」 そんな手探りの状況で、入院期間は伸びていく 保険の効く治療ばかりではないし、かかる費用も増えていく 友と旦那さん両方の実家からの援助もあったが、すぐに消えていく なにしろい���までかかるかいくらかかるか見当もつかないのだ 旦那さんは大車輪で働いたが、問題は幼稚園の年中さんの友子ちゃんだ 初めは友のお母さん(以下、友母さん)が見ていたが、 友子ちゃんはやんちゃで元気いっぱいの子で、還暦の友両親が育てるのは きつくなってきた 旦那さんの実家は新幹線の距離で、預かってもいいと言ってくれたが これまでのように頻繁に友の見舞いには連れていけなくなる そんな友母さんの愚痴を聞いた私の母が、私に伝言ゲームのように情報を伝えてきた 私は夫を説得というより一方的に宣言し友の見舞いに行って言った 私「何年の付き合いだと思ってるの! 友子ちゃんはうちが預かる」 友「えっでも(私の)旦那さんにも迷惑が」 私「うちの娘は実は一歳違いの双子だったって言うから」 友「なにそれ」(笑) 友子ちゃんはしばらく我が家で暮らすことになった 冷静になってみると夫に申し訳なくて、子供達が寝てから土下座して謝った 夫「複数の子供がいるって案外いいねえ 友さんが治ったら、二人目考えようか」 ありがたくて泣けた 友子ちゃんはやんちゃな子のはずが、うちではおとなしかった 子供なりにどう振る舞ったらいいか考えているようだった うちの娘はむっつりもっさりタイプなんだけど 「お風呂一緒に入ろ、洗ってあげる」などと友子ちゃんに気を使っていた 夫も娘も後光が差して見えた 様子を見に来た私の母が、並んで眠る友子ちゃんと娘を見て 「こんなかわいい子がいるのに、友さん可哀想に……神様は意地悪だ」 と言って泣いた 454 名無しさん@おーぷん 2018/11/21(水)03:30:33 ID:Lkb 友の容体は一進一退、誰もが最悪の事態を覚悟したが、 誰も口には出さず、できることをした 友本人も しかし経験値を積んでいった成果は表れ、何年目かで病状が好転し始めた い��なり治るものではないが、「薄紙を剥ぐように」良くなっていった 見舞いに行っても、ほんのわずかずつ血色が良くなっていくのがわかった ただ、手術を含めた長期間の治療で、体そのものがボロボロになっていた 病気の克服と同時に、後遺症の治療もあり、体力も回復させねばならない 本当に時間がかかった まず、一日、外泊許可が出た 友子ちゃんは友に貼りついて離れなかった 外泊許可が週に一度ほどになって、やがて通院でよろしいとなって、退院できた でも家でも寝たきりだった 旦那さんが病院に車で送迎した 毎日の通院が三日に一度、一週間に一度、一ヶ月に一度となって このころには、友は休み休みだったが家事もできるようになって 友子ちゃんも家に戻っていた 三ヶ月に一度の検査を受ければよいということになって初めて 主治医から「勝利宣言」が出た 電話で報告を受けて、私と娘で「いえーい!」とハイタッチした 夫と二人目を考えてみたが、どうも神様は、うちの子は一人で十分と判断したようだ 娘は小学六年生、友子ちゃんは五年生になっていた その後の検査も半年に一回でよくなり、今は年一回 大人は誰でも年一回くらい健康診断するものなんだから同じようなものだ 後から聞いた話だと、病名がわかった時、友は旦那さんに離婚を切り出したが 旦那さんは 「僕と結婚したせいでこんな病気になったかもしれないんだから責任は取る」 と答えたそうだ 大学病院の主治医は、友の症例で論文を書いて、博士号を取得できたそうだ 友「人の病気をネタにして、稼ぐなってのよねえ」 私「いやそれが医者の仕事でしょ」 455 名無しさん@おーぷん 2018/11/21(水)03:31:58 ID:Lkb 今、娘は28歳でグータラ会社員、友子ちゃんは27歳で、来週末は友子ちゃんの結婚式だ いまどき媒酌人を立てると言うから古風だなと思ったら夫と私をご指名 娘は友人代表でスピーチをする 「友子ちゃんてば年下のくせに先に結婚する」 と口ではぶつくさ言っているが、顔が笑っている 絵を描くのが好きな友子ちゃんに、結婚祝いで数万円もする 外国製のパステルのセットを贈ったんだそうだ そういうものに疎い夫はネットで確かめてびっくりしていた ああもう興奮して今から眠れない 病気に関しては、私は当事者でなく又聞きばかりの上に フェイクも入れたので不正確です 難病だったのは確かです 一行で書けば、友達が難病にかかったが生還した、という話です 願わくば、すべての病気の人が、一時は大変でも「勝利宣言」できますように
願わくば全ての病気の人が「勝利宣言」できますように : 育児板拾い読み
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Batman: Creature of the Night
さて、このシリーズだが、2017年11月末から発行されたミニシリーズ。WriterはKurt Busiek。彼が以前に書いたSuperman: Secret Identityと対になる作品として、ヒーローを別視点で描くものである。本当はもう少し早く完結するはずだったのだが、アーティストJohn Paul Leonの闘病により、Book Threeが2018年4月に出てから1年以上中断となった。その後完結するかどうかも危ぶまれていたが、Book Fourが2019年11月末に発売、やっと結末を読むことができた。個人的に、ここ最近のバットマン作品の中では、最高傑作のひとつと評価したい。実際、こう書くと語弊があるかもしれないが、これは厳密には、通常のバットマン作品ではない。バットマンであって、バットマンではない、のだが、バットマン作品だ。何を言っているのかわからないって?それは、あらすじを見てみればわかるかもしれない・・・
この物語の主人公はボストンに住む、一人のバットマンファンの子供だ。Bruce Wainwright. バットマンコミックを読み漁り、バットマンとともに育ってきた。名前だって、ブルース・ウェインに近い。しかもAlfredという叔父もいる。(正確にはAlton Frederick Jepson, 短くしてAlfredだ)だが、あるハロウィーンの晩、彼の人生は永遠に変わってしまう。両親とともに家に帰宅したBruceはちょうど家に押し入っていた強盗と鉢合わせしてしまい、両親は強盗犯に撃たれて亡くなってしまう。両親を失ったBruce。でも、ほどなくして、彼はある影を感じるようになる。彼を守ってくれるある存在が。蝙蝠の影、バットマン・・・
この作品のテーマは、Bruceの精神的成長である。この一人のバットファンの精神的成長を通して、当のバットマンの精神を分析する作品でもある。バットマンが活躍する作品は山ほどある。バットマンが精神的に苛まれる作品や、オリジンを扱った名作も多くある。でも、今回の作品を読み解く鍵は、当のブルースの環境と精神状態に似た普通の主人公を持ってくることによって、ブルースとバットマンの関係を第三者視点で客観的に分析することにあると思う。なぜブルースはバットマンを生み出したのか。生み出さざるを得なかったのか。それはこのCreature of NightでBruce Wainwrightが直面した、両親を失ったことによる、ある強い望み、そこにあると思うのだ。今回のレビューでは、Bruce Wainwrightと当のブルースとの境遇を比べながら、バットマンへの道筋と彼の精神的成長を見ていきたいと思う。(一応、ネタバレを大いに含みます!)
本題に入る前に、私もバットファンの端くれではあるが、バットマンがいたらいいなと思ったことは幾たびかある。何か困難な場面に直面したとき、ああ、バットマンだったらこんな時でも切り抜けるアイディアを思いつくだろうな、とか、バットマンがいたら、こんなことは起こらなかっただろうな、とか。でも、バットマンはフィクション。私もコミックを(わけあって入院中の時も)読みながら、まあ、バットマンはどんなことでも解決していくけれども、所詮、それはコミックの話だからな、と思っていた。どんな不運でも、現実には避けることはできない。Dark Night: A True Batman Storyでは、Paul Diniも暴漢に襲われた時は、バットマンが救ってくれなかったことに対して、フィクションと現実の過酷さを身をもって体験している。強盗なら、バットマンは一瞬でやっつけてくれる。でも、現実には、バットマンなんていないんだ、と。
Bruce Wainwrightの場合も一緒だ。彼はバットマンをよく知っている。バットマンの強さにあこがれていた。でも、両親が死んだときには、誰も救ってはくれなかった。バットマンは現実にはいない。颯爽と現れて救ってくれるヒーローなど、どこにもいない。この世界はなんて不条理なんだ。両親の死後、BruceはAlfredのすすめで、Cornerstone Academyという全寮制の学校に通うことになった。ただそれがさらにBruceの孤独感を一層強めることになった。学校にはなじめない。Alfredは僕を見捨てたんだ。毎週Alfredに会っても、彼の不満は高まるばかりだった。ある時、Alfredと動物園で待ち合わせをしたとき、彼はAlfred を拒絶、だがその時蝙蝠の展示の前で、不思議なことが起こる。展示のガラスが内側から割れ、蝙蝠が飛び出してきたのだ。その後、Bruceは蝙蝠が犯罪者を襲う夢を見るようになる。だが、その蝙蝠は夢ではなかった。毎夜どこかで、実際に犯罪者を叩きのめしていく。そして、両親を殺した犯人、Donald Bradaghを見つけ出し、追い詰めた。動物園での蝙蝠との出会いは、実は彼にとって、運命の啓示とも言えるものだった。蝙蝠が、彼の精神と一体化した瞬間だったと言ってもいい。
もちろん、動物園での蝙蝠とのシーンは、まぎれもなく、Year Oneのバットマンのオリジンへのオマージュと考えていいだろう。傷ついたブルースが父親の書斎で座っていると、一匹の蝙蝠がガラスを突き破って、書斎へ入ってきた。その瞬間に、ブルースの運命は決した。「I shall become the bat.」蝙蝠になる、とのその決意は、運命とは言え、自分で選んだものである。
ただ、Bruce Wainwrightの状況と比較してみると、ブルース・ウェインが蝙蝠を自分のシンボルと決めてバットマンとなりえたのは、ただ、自分がバットマンになる、という決意からではなく、この状況を何とかしたい、このすべてが壊れた世界をどうにかしたい、という全てを失った幼い子供の願いから生まれたものだと解釈できる。蝙蝠は、もちろん他の作品でも述べられている通り、ウェイン家にとって運命の象徴と大昔から(石器時代から!)定められているとしている。ただ、現実的によく考えてみると、一人の、両親を失った少年が、誰も自分を救ってくれない中で生み出したもう一人の存在が蝙蝠とも捉えられる。ブルース・ウェインは、トムキングの解釈では、両親の喪失感から死を願ったともしている。でも、幼い子 の願いは誰にも、神にも届くことはなかった。そんな中で、バットマンは、彼が漆黒の闇の中で見つけた希望の光、というよりは、藁にもすがる思いで必死になって見つけた最後の生きる手段である。壊れてしまった世界、この狂気の世界において、自分が理性を保つために、選ばざるを得なかった唯一の存在。蝙蝠は、この狂気の世界を生きるための武器、鎧なのだ。普通では生きられないからこそ、蝙蝠の視点で、この世界を生きるしかない。蝙蝠が、蝙蝠だけが、彼を守ってくれるから。
Bruce Wainwrightを守る蝙蝠のようなもの、バットマン。動物園の事件後、彼は夜、Bruceと意識とは別に活動し、犯罪を取り締まっていく。新聞にも大々的に取り上げられることはない。夜屋上でBruceだけに姿を見せるバットマンが口にするセリフ。You safe? お前は大丈夫か?元気にしているのか?その蝙蝠は動物的な本能の感覚で行動しているため、複雑なことは話せない。それでも、Bruceのことを一番に考える。You safe? それは、Bruce Wainwrightが心でそう願ったからだろう。この世界はなんて不条理なんだ。自分は誰からも見捨てられた存在だ。バットマンさえいてくれたら。誰かが、自分をこの状態から救ってくれたら。自分を危険から守ってくれるそんな存在がいたら。その、孤独な自分を守ってくれる守護者を求める強い思いが生み出したものである。ブルース・ウェインと同じように。ただ、ブルースのバットマンとは、このBruceが生み出した蝙蝠は何か違う・・・
程なくして、BruceはCornerstone Academyからハーバード大学を卒業後、叔父のAlfredが設立したWainwright Investmentを受け継いで、経営に関わるようになった。経営はすこぶる順調。Bruceはコミックのブルース・ウェインのように富裕となっていく。彼の投資の決断は、素早く、確実で、ミスがない。名前が気に入ったからと、Pennyworth Manufacturing に投資を行うが、それも競合の会社の供給が嵐のせいでストップしたおかげで、結果的に莫大な利益を生み出す。それから、ブルースがウェイン財団を通じて犯罪孤児を救うように、BruceもWainwright Foundationを設立して、同じように犯罪孤児の支援を行うようになっていった。両親を同じように犯罪で失った14歳の少女、Robin Helgeland。やはり第一印象の名前で支援を決めたBruce。彼の決断の基本はバットマン。(特に作品中の鍵のシーンで挟まれるバットマンコミックの1ページが見どころでもある)バットマンがやったから、バットマン関係の名前があったから、のその選択は、実はすべてBruceの益になるように動いていく。Robinの両親の殺害も、未解決事件だと知ったBruceは、Officer Gordon Hoover (Bruce Wainwrightの両親の事件当時から面倒を見てくれている刑事で、本部長ではないけど、一応ゴードン)から情報を得つつも、バットマンとともに解決していく。結局犯罪組織Hanrahanのグループの報復に巻き込まれた結果だと知り、犯罪組織までつぶすことになるのだ。運はすべてBruceの味方か・・・だが、ある事件で彼の運命が暗転する。Bruceが投資していたある会社の競合会社ByteLinkの社長、Carl Benaresがドラッグ密輸で逮捕され、これもWainwright Investmentにとって競合が消えたことになったのだが、そのドラッグの証拠が実は偽物であり、誰かが密輸に見せかけたのだということが明るみに出てしまう。何かがおかしい。バットマンが密輸を見つけたのではないのか?Bruceはバットマンを呼び出し、真実を知る。このすべて、Bruceが自分の運だと思っていたことがすべてバットマンによって操作されていたことが。ドラッグもバットマンが競合相手の船に忍ばせていた。その他、数知れず、Bruceに不都合なことすべて、バットマンが「何とか」していたのだ。Make it right. Make it fair. それは、Bruceが心の底から望んでいたこと。それを体現したのが、バットマン。Bruceを守り、Bruceに不利益なことを消し去る存在。Bruceの人生がバットマンによって虚構で作られたことを知り、彼はバットマンを一度拒絶するのである。実際、コミックの世界でも、ブルース・ウェインの人生はバットマン中心の世界で、ブルースとしての人生はバットマンによって作られるものである。実際たまにブルースができないことをバットマンにやらせることで、自分に有利に働かせることもしてきた。Bruce Wainwrightの場合は、それが極端な方向に行ってしまった、というわけだ。
そこまでして、Bruce Wainwrightを一方的に守りたいバットマンとは何者なのか?コミックの世界では簡単だ。バットマンはブルース・ウェイン。彼らは表裏一体のものだ。彼らは相互依存の関係で、彼らが生きるためにお互いが必要である。ブルース・ウェインはバットマンの秘密を守るためにかぶる仮面、バットマンはブルースの本性。バットマンはブルースを守るために、ブルースはバットマンを守るために。それではBruce Wainwrightのバットマンは一体誰か。Bruceはひょんなことから、彼には死んだ双子の兄がいたことを知る。Bruceの出産時に死産だったというThomas。(まあ、これは梟の法廷を何となく思い起させるが)BruceはThomasが蝙蝠という形をとってBruceを見守るようになったのではと思うようになるのだ。様々な占い師やオカルト専門の学者を訪ね、Bruceが行きついた結論は、Thomasがバットマンの正体なのではないか。自分にはThomasというバットマンがいる事実を、叔父のAlfredや、Bruceが支援し、財団の支援をも行うようになったRobinにも打ち明けようとしたが失敗に終わった。Thomasは彼らの前には姿を見せることはなく、誰かに打ち明けようにも、頭がおかしいと思われるのがオチである。
Make it fair. Make it right. その思いはこのバットマンの姿をしたThomasの中ではさらに強くなっていく。Bruceの人生にテコ入れをすることはなくなったものの、このボストンから犯罪をなくすことに一層執念を燃やし、犯罪組織を次々とつぶしていく。ただ、その行為は無意味だった。一つ犯罪組織をつぶしたところで、新たな組織がゴッサムに入り込む。それをつぶしても、今度は別の組織が立ち上がる。まるでネズミの追いかけっこのように、ただひたすら���り返されていく。さらに、Gordon Hooverからの情報で汚職をやっていた政治家を追い、そこから他の汚職と犯罪組織のつながりを暴いたところで、その政治家は再選を遂げる。そして、当のGordonの組織のつながり・・・コミックだったらこんな事件などとっくにすべて解決しているはずのバットマン。コミックの世界とは違う。現実では、ボストンでは話が違う。すべて、この町がおかしいんだ。フェアじゃない。この町こそ汚れているんだ・・・They don’t deserve a Batman. この町はバットマンにふさわしくない。バットマンがいる価値すらない。お前たちには「僕」など必要ない・・・そう、そのどうしようもない怒りによってBruceとバットマンが心も体も一体化する時。心が一つになった時。理性を失った時、人間らしさが抜け落ちていく・・・
Book Four冒頭で切り裂かれているDKRの原画の一枚(!)は母親の真珠が散らばる瞬間である。あのブルースの両親が死んだときの夜。それが引き裂かれている。Bruceの(おそらく)爪によって。バットマンを運命づけるシーンのひとつであるが、ここでは二つ意味が読み取れる。一つは、コミックのフィクション性の幻滅。どんなに頑張っても、どんなにバットマンとして犯罪者と戦っても無意味だという、フィクションのバットマンの否定。もう一つは自分の両親の死を想起させるからこそ、フィクションの悲劇すら見たくないという思い。Bruceは自暴自棄となり、バットマンとしてもやたらに犯罪者を痛めつけ、Bruceとしてもトラブルを何度も起こし、そのたびに逮捕されることになった。精神が不安定となり、叔父のAlfredも、Bruceがまるで怪物のようなバットマンだと知った直後に心臓発作を起こして倒れてしまう。Bruceとバットマン。彼はRobinの勧めで精神科医へ行き、曖昧ながらバットマンのことを説明する。精神科医はこう判断する。バットマンは両親の死のトラウマから逃げるための防御作用、自分を守ってもらう誰か強い存在を願うゆえの症状だと。精神科医から薬をもらったBruce。ただし、その薬がバットマンを、Thomasを殺すことになる・・・では僕は一体何になるべきなのだ?
彼が成長するためには、子供から大人へ成長することが必要である。バットマンはただの現実逃避のツール。現実逃避をやめるには、現実を、自分を、自分の心を、じっくり観察することが必要になってくる。Bruceの場合、(もちろんコミックのブルース・ウェイン、バットマンも同じことが言えるのだが)両親の死というトラウマのせいで、成長を無理やり止めてしまったことにある。成長すること、大きくなることで、死が近づく。恐怖の世界を体験したくない。子供の、ファンタジーの世界で生きたい。自分が理解できない世界への恐怖を抱え、だから、ある大きな存在、自分を守ってくれる存在を作り出し、そこに隠れようとするのだろう。Hugo Strangeはバットマンの本当の姿は両親を求めて泣き叫ぶただの子供だと分析した。グラフィックノベルArkham Asylumでは、バットマンは全く両親の事件など乗り越えてもおらず、Dr. アダムズの単語組み合わせテストでも事件のことを思い出すような単語に耐えられず、最後までやることを拒否した。また同じく語られるArkham Asylumでのかくれんぼでは、子供のブルースが写る鏡を割り、自分の手を突き刺している。バットマンはいわゆる子供時代からの逃亡の結果とも言えるのかもしれない。私は、バットマンがあの両親の事件の悲劇を消してしまえば、バットマンではなくなるのではと思っている。ただゴッサムがバットマンを必要とし、またブルースも無意識にバットマンを求めるため、記憶をなくしてもブルースでいられるのは一時的だろう。(New 52 Bloomあたりを参照)コミックのブルース・ウェインが過去を乗り越えないままで生きられるのは、バットマンがいるからである。バットマンという「狂気」が、ブルース・ウェインをある意味精神的に成長を止め、世界の狂気に対抗しているからである。狂気の象徴がヴィラン。ヴィランがいるために、バットマンはある意味、コントロールを失わない。不思議な矛盾だが、まさにそうなのだ。バットマンの狂気とヴィランの狂気と。これが、Bruce Wainwrightだと話が違ってくる。彼は、生きるために成長しなければならないのだ。狂ったヴィランのいない現実世界に生きるために。社会は普通のBruce Wainwrightを欲しているのだから。だが、Bruceはバットマンを殺すことは自分を殺すことであり、バットマンを消したい誰かの陰謀だ、とすら考える。タイミングが良すぎるAlfredの死ですら、誰か、バットマンを消そうしている張本人にたどり着かせないために陰謀だと。バットマンには誰かArchnemesis , 最大の敵が必要だから。Bruceはその敵がGordonだとにらんだが、最終的に彼でもなかった。Bruceがすべての始まりの動物園に帰ってきたのは、最終決戦にふさわしい。「決戦」と書いたが、この決戦はBruceが自分自身に折り合いをつけるための決戦だった。自分はどう生きたいのか。Bruceの前にはバットマンのヴィランたちが現れ、嘲りの言葉を口々に言う。Bruceはこう強く思う。自分はボストンを浄化し、ヴィランを駆逐してやるんだ。Thomasを誰にも殺させない。自分はバットマンなんだ!RobinはBruceに最後まで寄り添い、Bruceの理性に訴えかけるのだ。ヴィランなんて、敵なんてどこにもいない、と。
Bruceは自分と戦っていたのだ。Thomasという、Bruceの失われた子供時代��象徴と。最後にThomasが薬をBruceに渡そうとするのは、Bruceが大人になるための過程と考えていいだろう。彼はそこで別れを告げることで、前へと踏み出せる。両親の死にとらわれた子供から、大人へと。一人の人間へと。
私はバットマンは中途半端な人間であると考えている。真の意味でブルース・ウェインになることもできなければ、怪物性に身を委ね、正義を第一に追い続けるバットマンになることもない。でもそれがいいのだと。ヴィランやゴッサム社会はブルースとバットマンにどちらかを選べと迫る。でも彼はどちらを絶対的に選ぶというわけではなく、そういう人間なのだ。ブルースでもあり、バットマンでもある。でもそれができるのは、たぶんゴッサムだからなのだろうか。ゴッサムの外では、生きられない。コミックの外では彼は生きられない。Bruce Wainwrightは自分の生きるべき道を見つけた。彼は彼で幸せを見つけたのだ。自分にとってfairな世界を、Thomasを通じて見つけたのである。いつか、バットマンも、と言いたいところだが、それはどうだろうか・・・?
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191219 猫の帰宅
約三週間、渡辺さんが台湾に行くというので飼い猫を預かっていた。今日の昼に迎えに来るのでやっと飼い主の元へ帰宅。渡辺さんは学部生の時の友人で、わしは今までも友人はいたが、渡辺さんほど色々な話をした友人はいない。量的にも、平井の10倍、牧君の50倍はしゃべっていると思う。でも卒業してからは1年に一回ぐらい何かの用で会うぐらいだ。
笠井潔の矢吹駆シリーズというパリを舞台にした長大な推理小説がある。主人公は警視の一人娘の強気で美人なパリジェンヌで、ナディアというなまえ。矢吹駆は、現象学の論理で難事件を解決する謎の日本人青年で、ナディアは事件では相棒役である。わしは渡辺さんに対し、ナディアが駆に対して抱く感情(から恋愛感情を抜いたような感情)をずっと持っていた。渡辺さんは駆のような張り詰めたお人柄ではないが…なんかとこしえのはかりしれなさへの尊敬&張り合い…みたいな…。ま、それがどういう感じかを知りたければ読んでみてちょうだい。
猫を預かってくれまいかと言われた時、え…やだ…と思ったが、なぜかいいよと言ってしまった。そもそもわしは動物に全く慣れていないのだ。人間が犬や猫を抱いている写真や映像を見るたびに、膝の上からどかしたらそこに糞や尿をされてるんじゃないか…?と思ってキモ~いと思っていた。膝は最悪だが家の床でも最悪。たたみとか絨毯だったらもっと最悪。と渡辺さんに言ったら、そういうことは滅多にないらしい(動物トイレというものがあって、そこでするような習性がある)。しかしとにかく、今までにない状況への好奇心もあって、11月26日にうちに猫が来ることになった。
基本的には案じていたほど大したことはなかったので、普段はほとんどほっといていた。でも最初の数日のおとなしさが消えてゆくにしたがい、うざ…と思ったこともあった。夜わしが寝る前にやたらと元気になり、机に乗ってものをいじろうとしたり、壁紙をひっかいたり、というようなことである。
はじめは机の手前にスチレンボードを立てかけ、それを椅子や重いもので抑えて防猫壁を作っていた。あと仕事スペースと台所方面を仕切る戸も自力で開けられると分かったのでそこにも防猫壁を作った。さらにボードをガムテープで貼り合わせ、約1.5畳×高さ約2mの幽閉スペースを作り、夜はそこにトイレと一緒に入れてみたりした。(うちには「鳥公園のアタマの中展」で使ったB1サイズのスチレンボードが10枚近くとってあるのだ)。しかし猫がどんどん活発化し、ボードを倒して深夜に大きな音を立てたり、無限に戸をガリガリしたり、無限に幽閉所で鳴きながらジャンプしまくったりしてわしを寝させなかった。明け方に、呆然としながらやっぱ猫用の宿屋みたいなとこ探してそこにブチ込むか…と思ったりもした。
しかしまあ朝になると寝て大人しくなるのでまあいっかと思って警戒を解いて日々仕事をしていた。そしてしばらくして、猫に何かをさせないようにすることは無理だと気づいた。ここに乗らせない、入らせない、騒がせない、というような施策は何もうまくいかない。それより机の上を(片付けはしなくとも)猫がその上に乗って歩いたりしても平気な感じにしとけば別にいいのである。我を忘れるほどひも類をいじるのが好きなようなので、机の上のケーブル類を本や書類の下に隠しとけばよい。本や書類の上を歩くのは別に構わないのだから…。壁は搔きむしらぬようボードで保護すればよい。そうしたらまあ、前ほど気をもむこともなく、基本的に猫を無視していられる時間が増えた。
わしはとにかく暴れるものや騒がしいものが嫌いなのだ。人間でも動物でも。大人しくしておけば後で片付ける必要もないのになぜわざわざビールを掛けあい、Qフロントの前で騒ぎ、棚の上に乗ってものを落とす?と思う。ちなみにこの性質ははっきりと父方の祖母ラインから受け継いだものだと思う。祖母は庭に野良猫が来た時にすぐ石を投げられるようにあらかじめ縁側に並べていたほど(とんでもない老婆…)。父は映画で激情した主人公が皿割りまくったり部屋にあるものを滅茶苦茶にするシーンを見るだけでいつも嫌そうにしていた。わしも、猫が騒いでいるときは、決してわしは猫のことを好きではなかった。知能の低く憎たらしい薄汚い獣よ…と思っていた。
でも大人しくしている時の猫はかわいい。おとなしい時というのは寝ている時か眠い時だ。日中わしが机で仕事をしている時、振り返ると後ろのベッドの上で寝ているかまどろんでいる。体を丸めてホットクのように平べったくなり、そこだけ羽毛布団がへこんでいるが、その沈み込み具合から大した体重もないことがわかる。そういうのを見ると、猫がいるというより、毛皮がポチャッと置かれてあるという感じで、無性にかわいいと思った。わしは赤ん坊も、顔やしぐさをアップで撮るより、部屋で寝て静かにしているところを外からドアを少し開けて撮った写真をなぜかかわいく感じるが、小さくておとなしいというのが条件なのだろうか。そしてそっとトイレや台所に行って戻ってくると、起きて心配そうにこちらを見ている。そういうところもかわいいと思った。
そしてわしが寝ようとして布団に入り本を読んだり携帯を見ていると、適当にひとしきり部屋を駆け回ったあとベッドに乗ってきて丸くなった。しばらくして布団を持ち上げるとさっと中に入り、いつもわしの腕に顎を乗せて寝ていた。またずっと机で仕事をする機会があると、そのときは机の上を右から左へ何度か行き来したのち(邪魔…)ひざへ降りてきて膝で寝てることもよくあった。これはまあ膝に乗って寝ていること自体はかわいいが、また起こすと厄介なので立ち上がれず迷惑でもあり、僅差で迷惑の勝ちという感じ。
最後の数日は、かわいさで憎しみの記憶が部分的に洗い流されたというか…厄介なことは無限にいろいろしてはくるが、そういうことのいくらかは(全てではない)なんとなく思い出せないどうでもいい感じになった。なんというか、かわいいとはこういうことね…というのが少しわかった気がする。
もう一つ猫との生活でわしが実感したのは、わしはむしろ自分が猫のように自由に生きたいのだということ、そして今までそのように暮らしていたということだ(去勢されて家から出されずに暮らす猫が自由かというと微妙だが…)。もちろん成獣の猫一匹程度なら、他人(他猫?)をケアしつつの生活はそこまで大したことではない。しかしあまりにも今までの自分の生活は自由だった。全人類の中で世界上位1%に入る自由さだと思う。
育児も介護もせず、ナプキンやタンポンを準備しておく必要もなく、定期的なインスリン注射・人工透析・ストーマのパウチ交換などの必要もない。借金もないので返済もないし、仕送りもしてない。実家も口うるさくなく、自分に特別な意向を持っている恋人もいない。政党・会社・大学・宗教ほかあらゆる共同体に属してない。この自由がいつまで続くかは分からないが、想像できるとしたら両親が要介護になるか、自分がある日倒れて要介護になるか、悪霊に取り憑かれて霊障に悩まされるか(突然のスピ)、ストーカーが現れて弁護士が必要になるか…ということだろうか。今のところその予感もなく、そして気構えもない。その時が来たらどうにかするしかないよね〜としか思わず、正直そんな風に思ってることにも後ろめたさもない。もちろんこの自由には失業保険や労災がないデメリットもあり、なにより孤独である。でも孤独が自分には必要だし、それが自由の条件でさえあると思う。つまり自由すぎて気づかなかったが、わしは自由と孤独を愛していたのだと思った。ナディアは「哲学者の密室」でこんなことを言っている。
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音楽家にとってピアノは、たんなる道具ではない。ベートーヴェンにとって存在の中核をなしている、作曲や演奏など音楽という存在可能性に至る通路なのだ。聴覚にしてもおなじことだろう。日常的にあたえられる無数の存在可能性は、音楽家の場合には音楽であるような、存在の中心的な可能性によって豊かに意味づけられている。
なぜそうなるのだろう。たぶん、ベートヴェンが音楽を欲し、それを愛していたからだ。わたしには、そうとしかいいようのない気がする。一杯のコニャックを楽しむこと。流行の服を着て街を歩くこと。自動車道路をスポーツカーで疾走すること。愛の対象は無限にありうるだろうが、事物や他者への気づかいを支えていること、それらを色づけ、ときめかせていることは疑いえない。
しかしながら人間は、だれでも、絶対にかけがえないと感じてしまうものをもつ。それが人間の中心的な存在可能性であり、そこにおいて愛は、もっとも濃密なものとして生きられ、成就されるのだろう。音楽家にはご馳走も新しい服も、演奏や作曲とは引換になりえないものだ。普通は趣味と呼ばれたり、あるいは快楽と特徴づけられたりする無数の小さな愛は、かけがえのないものへの愛を中心として配置され、またそれに包摂されてのみ存在している。
どのようにありうることが、自分の生にとって中心的であるのか。なにが、かけがえないものであるのか。
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ナディアにとってはそれは駆なのだと強く自覚してこの小説は終わるが、わしにとってはそれは、自由で孤独(だからこそ可能)な仕事をする生活なのだと思う。意識的にそうしたわけではないが、それがわしが家と別に通勤する仕事場を持たず、オフィスのシェアもせず、就職もせず、エージェントもいない理由なのだと思う。今まで自由のために戦うということがどういうことか正直分かってなかったが、この自由をわけもなく妨害���れるような目に誰か友人が遭っているとしたらそりゃ瞋ることだろうと思った。
ところで、望君がいいと言っていたので(みんな言ってるか)「Marriage Story」を見たら、こんな歌が歌われていた。
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以下引用
小学館の国語辞典「大辞泉」編集部が、第4回「大辞泉が選ぶ新語大賞 2019」を発表しました。大賞に選ばれたのは「イートイン脱税」です。
「大辞泉が選ぶ新語大賞」は、キャンペーンサイトやSNSで大辞泉に未収録の新語、または新しい意味が加わった既存語が、5月18日~11月17日にかけて募集されました。
編集部では、毎月「今月の新語」(月間賞)を選定・発表。最終選考会には明治大学国際日本学部の田中牧郎教授を招き、一般から寄せられた1927本の投稿の中から「大辞泉が選ぶ新語大賞2019」が選定されました。選ばれた言葉は他の新語とともに大辞泉の各種アプリなどに正式に収録・掲載されます。
第4回「大辞泉が選ぶ新語大賞 2019」に選ばれた、大賞、次点、投稿数ベスト10、そして今月の新語は以下の通り。なお、言葉の解釈は一般から投稿されたものであり、正式な語釈は編集部が執筆陣に依頼して、今後の改定時に「デジタル大辞泉」のデータとして収録される予定とのこと。既に一部の新語は収録済みです。
(以下、原文ママ)
■第4回「大辞泉が選ぶ新語大賞 2019」
大賞 =【イートイン脱税】
[投稿語釈]食品を持ち帰り税率の8パーセントで会計して、イートインで食べること。本来であればその場で食べる場合は税率10パーセントで会計しなければならない。
次点=【闇営業】
芸人がプロダクションを通さないで仕事を請け負うこと。また特に、裏社会からの誘いで仕事を請け負うこと。
次点=【にわかファン】
これまで関心がなかった物事に対し、流行等で急に興味を持ち、その事柄についてよく知っていないがファンになる人のこと。
■投稿数ベスト10
第1位【タピる】114本 第2位【令和】102本 第3位【上級国民】52本 第4位【ワンチーム】22本 第5位【闇営業】19本 第6位【タピ活】17本 第7位【草】【草生える】16本 第8位【ポイ活】14本 第9位【イートイン脱税】13本 第10位【にわかファン】10本
■「今月の新語」(月間賞)
▼5月 【上級国民】一般国民とは違う特別待遇を得られる国民。
【育自】育児は子供を育てるという意味だが、子供を育てながら自分自身の修業であり、親自身も成長をしていくという意味。
【オムチェン】(おむつチェンジの略)こどものオムツを新しいものに交換すること。
【神対応】対応困難な場面やトラブルなどの場面での対応の仕方が素晴らしいこと。
【生涯スポーツ】元気なお年寄りが、健康の為始めたスポーツにはまり、スポーツを頑張ってすること。
【ミスジェンダリング】個人が決定するべきジェンダーを、当事者でない外部の人間が本人の意志を無視して決定し、それが本人の決定と異なること。
【やらかい】柔らかいの事を最近は短縮はしょってやらかいと言う。でも正式にはやわらかい。
【ずこー!】ずっこけるような時に使います。幼稚園で覚えてきた娘が毎日使っています。
▼6月 【バイトテロ】アルバイト店員が、バイト先で非道徳的・非常識・または非衛生的な行為をあえて行い、それらをSNSを通して世界中に発信すること。
【拡大自殺】絶望感にさいなまれ、強い自殺願望を抱いているが、ひとりで死ぬのは嫌だバカらしいと考え、誰かを巻き添えにして死のうとすること。
【ネオクラシックカー】本格的なクラシックカーではなく、比較的新しい、昭和の終わりから平成の始まり頃の車。
【闇営業】芸人がプロダクションを通さないで仕事を請け負うこと。また特に、裏社会からの誘いで仕事を請け負うこと。
【反社会的勢力】暴力・強迫・ゆすり、詐欺・売春など犯罪を行うことで生活を営んでいる人々。裏社会の人々。
【ロマンス詐欺】婚活サイトや出会いサイトの写真や会話でイケメンに成りすまし、女性を騙して送金させる詐欺。
【突る】突撃する。
【界隈】俗に、特定の同じ趣味を持っている人たち。
▼7月 【責任世代】会社内である程度の地位とそれに伴う責任を負っている世代。中間管理職に居てもおかしくない年齢の層を指す。
【にこいち】2つのものを合わせ、1つのものを作ること。たとえば2つの車体から部品を取り、1台の車を組み立てること。
【こんにちはしてる】はみ出ていること。
【政党ロンダリング】時流を見て所属政党を次々に変えたり、悪いイメージがついたと感じると党名を変えて元々の立場や考えをわかりづらくさせること。また、選挙前に一旦離党して無所属として立候補、当選後に出身政党に戻ること。
【沼】趣味などに、引きずりこまれるほどのめり込んでいる状態のたとえ。
▼8月 【ホストタウン】オリンピックに参加する特定の国のお世話をする国内の市町村。
【ハンディーファン】持ち運びできる小型の扇風機。
【ギガ不足】スマートフォンなどでの通信をやりすぎて通信容量が月の契約ぶんを超えること。
【転売屋】転売を行う人。
【察してちゃん】要求や説明をしないのに、自分の気持ちを察してほしいと願う人。
【お悔やみ詐欺】新聞のお悔やみ欄で故人を見つけ、遺族から架空請求で金をだまし取ろうとする詐欺。
【へたっぴ(い)】下手(へた)。
▼9月 【乱横断】赤信号で横断歩道を渡ったり、横断歩道ではない場所で横断するなど、道路の危険な横断。
【ミートテック】皮下脂肪。また、自分の贅肉で温まること。肉とユニクロのヒートテックを合わせた語。
【おなかいっぱい】(1)飲食によって腹が満たされているさま。(2)あることをして気持ちが十分に満たされているさま。また、そのことにはもうあきあきしたさま。
【新卒ガチャ】新卒で企業に入社したが、運が良ければ上司・仕事に恵まれ、運が悪ければ両者に恵まれず出世コースから遅れるか、手に職がつかないで残業だけが多かったりすること。
【ラグい】動画をライブ配信できるサイトなどで、ネット回線が悪く、双方に時間差が生まれてしまうこと。タイムラグの「ラグ」から。
【集合体恐怖症】粒や塊が集合している状態の写真等を見ると恐れを感じてしまう人々の症状。
【リアチン】リアルチングの略。チングとは韓国語で友達の意。ネットの友達の反対で現実の友達。
【フレネミー】友達を装った敵。普段はまるで仲良しな友達のように振る舞っているのに、じつは相手を陥れてやろうとたくらんでいる。
▼10月 【電力トリアージ】電力についての 緊急度に応じて復旧や修理や搬送などの優先順位を決める「トリアージ」のこと。
【はこおし】アイドルグループの個人を応援するのではなく、グループ全体を応援すること。推すこと。
【イートイン脱税】食品を持ち帰り税率の8パーセントで会計して、イートインで食べること。本来であればその場で食べる場合は税率10パーセントで会計しなければならない。
【涙活】意識的に涙を流そうとする活動。映画や読書などにより、涙を流すことで心の浄化を図る。
【正義マン】イートイン脱税を勝手に取り締まろうとする人のこと。
【市民ライター】プロを目指して休日等に小説などを書き、各種公募等に投稿し続けている人。
【にわかファン】これまで関心がなかった物事に対し、流行等で急に興味を持ち、その事柄についてよく知っていないがファンになる人のこと。
【置き餌】動物(主に猫)に与える餌を、給餌の度に片付けることをせずに、置きっぱなしにすること
【学畜】ほぼ毎日、学校の部活や勉強などに追われ、私生活の時間をなかなか捻出できない状況にある人。
▼11月 【災後】災害に遭遇した後。被災した後。
【三次喫煙】喫煙者が自身の肺に吸い込む「一次喫煙」に対して、喫煙者が吐き出した煙や保持するタバコの先から立ち上る煙などが大気を経由して他人に吸入されることが「二次喫煙」である。三次喫煙は、受動喫煙が終わった後も表面上にまだ残る有害物質を吸入することである。
【父子規制】お盆休みに、母親を同伴せず子どもだけを連れて父親の実家に帰省すること。
【定期】繰り返される話題または言葉の返し方。鉄板ネタ。
情報提供:小学館
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長身女性 : 短編集
本当はもっと長々とした小説の一部だったけど、それはやめにしてこうして短編として残しておきます。
基本的にM な方向けですが、長身女性が好きでなくっても、頭の良い女の子に興奮するタイプの人は笑顔になれます
ジーンズ
幼馴染宅。夕食後。あいつの部屋。あいつの匂い。あいつのジーンズ。あいつのジーパン。
俺は今、そのジーンズの前で佇んでいる。遠目から見る限り何の変哲もないそれは、ベッドの上に乱雑に脱ぎ捨てられており、実際にさきほど、
「お風呂行ってくるねー」
���、俺の目の前で脱ぎ捨てられたものである。
――だが、一体なんなんだ、これは。
冗談のようにしか思えなかった。きれいに伸ばして形を整えてみると、その異様さが分かる。
――でかすぎる。……
もう訳が分からなかった。そのくらい、ベッドの上のジーンズは大きかった。
どのくらい、……と問われて長さをそのまま云っても良くわからないかもしれないが、センチにして約130センチ程度。手を軽く広げてようやく、裾からウエスト周りまでをカバーできる、俺の腕とジーンズのヒザ下がだいたい同じ、あいつのベッドは特注品だから今はパッと分からないが、俺のベッドではたぶんいっぱいっぱいになるだろう。とにかく、信じられないくらい長い。
「いったい、股下何センチあるんだよ。……」
正直に云って、わからない。ただ、100センチを超えているのは確か。もしかしたら110センチにも達しているのかもしれない。身長はいくつだったか、ちょっと前に2メートルまでもう5センチも無いと云っていたから、たぶん196とか、197センチくらい。だとすると、……
「いやいや、それだと半分以上が足じゃないか」
しかし、ここ最近のあいつを見ていると、なんだかしっくりくる。さっき、一緒に部屋に居た時には、お互い裸足だったのに、もうこちらの胸のあたりにあいつの腰が来ていたし、俺の頭と云えば、あいつのでっかいおっぱいにすっぽりと収まっていた。それに、今日も一日中連れ回されたけれども、「普通に」歩いては俺を置き去りにし、手を引いて歩いては、ひぃひぃ云いながら走る俺を、
「あははっ、おんぶしてあげようか? ぼく?」
と無邪気に笑う。
冗談ではない。同い年なのにそんな子供扱いなんて、況してやこちらのことを、まるで小学校低学年の男子児童のように「ぼく」と呼んでくるなんて、屈辱的である。しかも赤の他人の目の前で、親の眼の前で、友達の目の前で!
「くそ、……でも、どうして、……」
どうしてこんなに興奮してるのだろう。くそぉ、……。ベッドの上に横たわるあいつのジーンズを見て、さっきから股間が痛くてたまらない。
「ちくしょう。……昔は小さかったのに。昔はお兄ちゃんって呼んできたのに、……」
今では「ぼく」呼ばわりである。子供扱いである。
いや、あいつが小さかったのは本当である。ままごとをやる時はいつでもこちらが年上の役をやっていた。外に出れば可愛い兄妹のように見え、二つの家の者が会せば、
「お兄ちゃん」
とこちらのことを呼んでくるあいつと、その頭を撫でてやるこちらを、可愛い可愛いと云って持て囃す。
それが変わったのは、いつ頃のことだっただろう、確か小学校に上がってからだ。小学校に上がってからあいつの身長はグングンと大きくなって行ったんだ。
今思えば、本当にあっという間のことである。入学時には首元にあったあいつの頭が、一年経つと俺の口元に、一年経つと俺の目元に、一年経つと俺の額に、そして、もう一年経つと俺の頭の天辺、…………よりも高くなっていた。
「あれ? こんなに小さかった?」
と云いながら自身の頭に乗せた手を、こちらにスライドしてくる。
俺はとっさに背伸びをした。たぶん3センチほど背伸びをしたと思う。
――けれども、あいつの手は俺の頭上を掠めていった。――いや、掠めてもなかった。
「やったっ、私の勝ちだ! やーい、お兄ちゃんのチビ~」
背伸びをしても勝てなかった。それも女の子に、それも昔から知っている女の子に、それも今まで妹のように可愛がってきた女の子に。
この時の悔しさは今でも思い出す。俺はその後、何度も何度も手をスライドさせてくるあいつを突き飛ばして、自分の部屋で泣いた。あいつに身長を追い抜かれた。あいつにチビと云われた。あいつに、あいつに、……
それからもこの屈辱は変わることはなかった。俺は4ヶ月に一回、親に身長を測ってもらって柱にその記録をつけてもらっていたのだが、そういう時に限ってあいつは俺の家を訪れるのである。
「あ、身長測ってるの? わたしもわたしも!」
「いいわよ。ほら○○ちゃんも、そこに立って立って」
「はーい!」
と、一度こちらに顔を向けてから、柱に背中をぴったりつけて立つ。もう、この時点で、ついさっきつけた俺の跡は体に隠れて、……
嫌だったけれども、見るしか無い。心なしか俺の青ざめた表情を見て、あいつは勝ち誇った目を向けてきているけれども、そっぽを向いて興味が無い風を装う。
「ずいぶん高いわね~。168センチ、……と。うちのと比べると31センチ差! お父さんよりも高いじゃない! すごいわ!!」
これはお互い小学校を卒業する前のことである。あいつは小学生にしてすでに、160センチも残すところ2センチという長身。……
俺はまた泣きそうになった。けれども、この時はまだ、希望があったから泣くことはなかった。まだ自分の身長は伸びていない。伸びていないだけ。聞けば男性の平均身長は171センチ、……このまま俺も人並みに成長すれば、168センチなんて結局は超えられる。もう一回、あいつを見下ろす時が必ず来る。あいつをチビと罵る日が、……
――だが、儚い夢でしかなかった。
今では俺の身長は158センチ、あいつの身長はあれからも伸び続け、少なく見積もっても195センチ、……もはや比べるまでもない。しかも、もうお互い高校三年生である。あいつはともかくとして、俺の身長はもう伸びないだろう。伸びたところで160センチを少し超える程度にしかならないだろうから、この先ずっと、俺は小学生時代のあいつにさえ勝つことができない。もし、タイムマシンがあって、今の俺が過去に旅立っても、向こうのあいつは、
「チビ~~」
と罵しってくるに違いない。
「細いな。……」
ジーンズを手にとった時、俺はそう呟いた。昔は可愛かったあいつ、「お兄ちゃん」と可愛らしく呼んできたあいつ、今でもその可愛らしさは変わらず、体つきもほっそりしなやかで、たぶんモデルになれば途端に頂点へと上り詰めるだろう。
「で、でか、……」
立った状態で、あいつのジーンズを体に合わせてみる。足ではなく、「体」である。
「う、うわ、……すげ、……」
何せ、股下が俺のよりも2倍近くあるのである。その股の部分がヘソよりも上に位置しているのである。そして、ウエスト周りはちょうど胸に位置しているのである。
全くもって、同い年の女子高生が身につけていたとは思えない。
「すげ、……すげ、……」
と、その時、
――クスクス、………
あっ、と思った時には遅かった。俺の後ろ、……それもずいぶん高いところから、そんな声が聞こえて来た。
「お、お姉ちゃん、……」
恐る恐る振り返ってみると、そこには口元に手を当てて、笑いをこらえる一人の大きな大きな少女が、……
「クスクス、……おチビくん? 何してるの?」
「い、いや、……これは、それは、……」
「何がそんなにすごいの?」
「え、えと、……」
「ん?」
「これが、その、……大きくて、……」
「あははははっ、この変態っ。背比べする時は、あんなに嫌な顔するのに、かわいいやつめ!」
とガバっと抱きしめてくる。お風呂上がりのしっとりとしたあいつに、俺の体が包まれる。柔らかくて気持ちいい。……特に、頭を丸ごと包んでくるおっぱいの感触は、もうどうにかなってしまいそうなほどに気持ちいい。……
「お、おねえ、……」
「んふふふ、お風呂入ってきなさい。続き、……したいでしょ? 」
「ふ、ふぇ、……」
「あっ、背中流してあげよっか? ほら、おいで、おいで」
と、手を取って来たあいつの顔は、本当に同い年とは思えないほど綺麗で、優しくて、天井を見上げるほど高い位置にあって、俺は、
「おねえちゃん。……」
とつい本心から、彼女をそう呼んでしまった。
高校二年生の妹
ドアをバタン! と勢いよく開けられたのは、宵闇もそろそろ暗くなろうかという頃合いであった。
勉強をしている時は極力邪魔をするなと云っていたはずである。数年前から何度も何度も云っているのに、絶対に守らないのは、もはや力関係が変わってしまったからであろうか。けたたましい音を立てて扉を開けたその者は、今度はズカズカと部屋に上がりこんで来て、ぴらりと一枚の書類を見せて来て、
「お兄ちゃん! 見てみて、A 判定だったよ! しかも今回は上位100人のランキングに載ってた!!」
と嬉しそうに云った。見ると一枚の紙は、何ヶ月か前にあった模試の結果であり、俺の手元にも同じような紙がある。
――が、そこに記されている結果はまさに雲泥の差。雲は妹の方であり、泥は俺の方である。
「そろそろお兄ちゃんの結果も見てみたいな~~~」
と、彼女の結果を見て唖然とする俺を尻目に、机を椅子代わりにして「座ってくる」。
「あ、これ?」
「――おい! やめろ!!」
と、彼女の手につままれて、ひらひらとはためく一枚の「紙」に手を伸ばす。が、しかし、
「ふふん、――」
と、立ち上がられてしまった。
「ほーら、ここまでおいで~?」
と、手を天井へピトッとつける。「紙」を抑えるのはたった一本の人差し指、それも軽く抑えているだけ、……けれども、俺は必死である。こうなってはもう諦めるしか無いが、精一杯背伸びをして、時にはジャンプもして、「紙」を取り戻すべく手を伸ばす。
――それほどまでに、妹には「結果」を見られたくなかった。
「んふっ、んふふふ。……あわれだね~、お兄ちゃん。そんなに見られたくない?」
「か、返せ!!」
「ならここまでおいでよ。チビなお兄ちゃんにはできない?」
「お前がでかいだけだ!! くそ!! 返せって!!!」
ぴょんぴょんぴょん、……それはまるでおもちゃを取られた子供のよう。
「あははははっ! ほら、そーれっ、そーれっ、――」
と、今度は「紙」を人差し指と中指でつまんで、軽く上下させる。――が、俺にはとてもではないが、届かない。
それほどまでに、俺と妹とでは、身長に差があった。
――その差、実に47センチ。
もうこの時点で、手を真上に伸ばしても、妹の頭の天辺には届かない。況してやその上にある「紙」など、届くわけがない。俺からすれば、突然ダンクシュートを決めろと云われているようなものである。
「も、もう頼む! たのむからやめてくれ!!」
と涙声で懇願する。だが悲しいかな、俺をいじめるのが何よりの楽しみである妹は、今度は俺の手がちょうど届かない位置で、「紙」をゆらゆら、ゆらゆらと泳がせ始める。
「ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!」
ぴょんぴょんぴょん、……
「ふんふ~ん、ふふーん」
俺の懸命な叫びなど、妹にとってはなんともない。鼻歌を歌いながら、次は、手の届くところで待機させておいてから、俺が手が当たる直前に、ひゅっと引き上げる。余裕の表情で笑いながら、もはや慈しみさえ含んだ表情で笑いながら、……
いったいいつからこうなったのか。いや、もはや物心ついたときから何をしてもこの妹には勝てなかったから、俺の中では最初からである。特に学力は顕著で、3歳違いだと云うのに、昔から同じテキストで勉強をし、与えられた課題は妹の方が点数がよく、本を読めばあっという間に知識を吸収するものだから、俺の方が後追いで余分に勉強しなければいけない始末。
それに加えてこの身長である。小学生にして、もはや学力では妹に勝てないと悟った俺は、身長だけはと思って、背を伸ばす数々の方法を試してきた。が、結果は非情なものである、20歳も目前にしてたった156センチまでしか伸びなかった。
対して妹の身長はと云うと、156センチの俺と47センチ差、……つまり203センチ。……嘘だと思われるだろうが、本当である。つい数ヶ月前の身体測定の結果を嬉しそうに見せてくれた時、そこには確かに203.6と云う数字が並んでいた。
いったいこの妹をして、どうしてこの兄なのか。また、いったいこの兄をして、どうしてこの妹なのか。身長156センチの馬鹿で、物覚えも要領も悪い兄に対して、身長203センチの頭脳明晰、運動神経抜群、何をしても初めから人並み以上に出来る妹、……力関係が変わるのも当然であろう。俺が今こうして、ぴょんぴょんと飛び跳ねられているのも、妹が好きで遊んでくれているからである。
「そろそろ諦めない? ちょっと見てて痛々しくなっちゃった」
「やめるか!!」
と、哀れな目線に耐えきれなくて掴みかかる。だが、しかし、
「ぐえっ!!」
「ふーん、そういうことするんだ」
「あが、……や、やめ、……はなせ。……」
何をしているか。それは妹が俺の首を手で掴んで来ているのである。そして、俺は手足をばたつかせているのである。――体を空に浮かせながら。
「お兄ちゃん、ちゃんと食べるもの食べなよ~。軽すぎて準備体操にもならないよ~」
ほいっ、と云って、俺の体をぽいっとベッドの上に投げ捨てると、妹は再び、
「ふんふんふんふふーん、……」
と鼻歌を歌いながら、さきほどまで俺が腰掛けていた椅子に座った。
「うわっ、低っ」
それはもはや「椅子に座る」というのでは無かった。俺のよりも二倍以上長い妹の足は、床からほぼ直角に腰から伸び、それでいて足元を見ると、ぺたんと大きな大きな足が床についている。例えるなら、体育座りしているような、そんな感じである。
先程、机を椅子代わりにして「座ってくる」と云ったのは、誇張でも何でも無い。妹にとっては普通の椅子とはミニチュアの椅子でしかないのである。実際、彼女の部屋に行けばそのことがよく分かるであろう。まるで自分が小人になったかのような大きさの椅子と机が、これまた冗談のような大きさのベッドと共にお出迎えしてくれる。
「お前がでかすぎるだけだろ、……」
と、まだ痛む喉をさすりながら云った。
「ちょっと、その云い方やめてくれない? 不愉快」
「ごめん、……」
「ま、いいや。見るからね。どれどれ、……」
と俺の模試の結果が載っている「紙」を広げる。
「や、やめ、……」
「えっ、……なにこれ」
信じられないものでも見たかのような顔をする。
「D 判定って、お兄ちゃん、……真面目にやった?」
「……やった」
「えっと、同じ、……模試だったよね?」
「……うん」
「うっわ、なにこの数学の点数、今回簡単だったじゃん。一問も完答出来てないって、……えっ、ちょっとお兄ちゃん、真面目に聞くけど、今まで何をしてきたの?」
「うぅ、……」
「何をしてたの? 高校三年間と予備校の半年間、いったいなにをしてたの? 遊んでたの?」
「………」
「だってさ、まだ二年生の私ですら上位100人に入ったんだよ? しかもただの力試しで。お兄ちゃん、これだと本当に今年もダメになっちゃうけど、これでいいの?」
「………」
「はあ、……黙っててもわからないってば。いいの? 私の方が先に大学生になっちゃっても」
「………」
「もう、こっち来て。――」
と、ぬるりと手が伸びてきたかと思いきや、俺は妹の方へ引き込まれてしまった。そして、何が何だかわからないうちに、脇の下に手を突っ込まれると、ストンと妹の膝の上に乗せられ、耳元にしごくこそばゆい息を感じながら、
「えっち。何見てるの?」
とささやかれる。実のことを云うとさっきから、スカートから覗く妹の玉のような肌の太ももをじっと見つめてしまっていた。筋肉質ではあるけれども、それでいて女性らしいしなやかさを保っており、見るだけでも変な気分になってくる。あとついでに云うと、背中に感じる二つの柔らかい、――しかも結構な大きさの膨らみも気になってしょうがない。
「ごめ、――」
「ねっ、お兄ちゃん。勉強、教えてあげよっか」
と妹が云う方が早かった。
「えっ?」
「だってさ、一年かけてもぜーんぜん成績上がってないしさ、もうお兄ちゃんでは無理だったんだって、早く悟りなよ。――お兄ちゃんにはこの大学は無理」
「そ、そんなに云う、――」
「でも、そんなお兄ちゃんでも一人心強すぎる味方がいます。さて、誰でしょう?」
「は?」
「……私だって、もうお兄ちゃんのあんな顔は見たくないんだよ。……って、これ以上云わすなっ。いいからペンを持って、早く体を起こしておっぱいから離れなさい」
「はっ? えっ?」
とうろたえているうちに始まった妹の家庭教師は、誰の説明よりも簡潔明瞭で分かりやすく、たった一時間程度で、俺はこの数年間続けてきた努力以上の実りを手にすることが出来たのである。
夏祭り
「あのー、……久しぶりに夏祭りに行きませんか?」
急に浴衣が欲しいと云ったかと思えば、妻がそんなことを云ってきた。いや、実は、毎日食卓に一緒に並べられる夏祭りの広告だったり、話せば必ず夏祭りの話題に行き着くことから、察しはついていたけれども、浴衣まで用意するとは思わなんだ。
「どうしたんです、急にそんなこと云って」
「うーん、……何故でしょう、……?」
と首を傾げて微笑まれる。私に問われても困るが、しかし何歳になっても可愛いなこの仕草。
「いいですけど、せっかくなんで私も浴衣が欲しいですね。何と云っても、私たちの出会いはそこでしたからねぇ、――」
「それ!」
と、手をポン! と叩いて立ち上がる。危うく天井に吊ってある電燈に頭が当たりそうだったけれども、上手く避けたようである。
「びっくりした。――」
「ごめんなさい。でも、それです、それ」
と云いつつ椅子に腰掛ける。
「久しぶりにあの頃に戻りませんか? しょうくん」
「ちょ、ちょっと待ってください。あの頃って、僕が恥ずかしいだけじゃないですか!」
「ふふ、もう自分のこと『僕』って呼んでますよ? ほら、行きましょ? きっと楽しいでしょうから、ね? しょうくん?」
「その呼び方をしないで、――うわ、うわうわうわ、……もう穴があったら入りたくなってきまし、……ああ! そんな顔で見ないでください!」
慈しみに溢れたその顔には、昔私に見せてきたうっとりとした微笑みが顕れていた。
普通ならば、男など一瞬で虜になってしまうであろうこの笑みが、私にとってはどうしてこんなに恥ずかしいのか、大したことないのでここで語ろうと思う。
私たちの出会いは、上の会話から分かる通り夏祭り。当時、私は高校1年生だっただろうか、何せ入学してすぐに夏祭りに行った覚えがあるので、たぶん16歳の夏のこと。妻の年齢は、……今は控えておくことにする、それも良いスパイスでであるから。
さて、夏祭りは街一つをそのまま会場にしてしまうほど、結構な規模で行われており、路端には途切れること無くで店が立ち並んでいたり、どこもかしこも人で溢れかえって歩くのもままならなかったり、とにかくひどい賑わいであった。と、すると一緒に来た者と逸れるのは当たり前のことであろう、30分もしないうちに、私は一緒に来ていた友達がどこへ行ったのか、すっかり分からなくなってしまった。
だが、このくらいのこと、大した事ではない。はぐれて寂しい感じはするけれども、周りが賑やかすぎて寂しさなどすぐにかき消されてしまったし、その友人と云うのも、
「今日はお前そっちのけで他校の子と仲良くしてるかもな」
���云っていたから、最初から当てになどしていない。
そこで、私は一息つくためにも、椅子を求めて公園に向かった。
――妻と出会ったのは、その公園である。
「��う、……」
と息をつきながら提灯の赤々とした明かりを眺めていると、ギシッ、……という音と共に、青い浴衣姿の妻が隣の椅子に腰掛けてくる。
「こんばんは」
「こ、こんばんは」
私がちょっと言葉に詰まったのは、妻が何とも大人びて綺麗に見えたからである。
「ふふ、迷子?」
「い、いえ、そういうわけでは、……」
「うそ。迷子じゃなかったら、一人でこんなところに座ってないし、それに迷子の子はすぐそう云う。ほら、お姉さんと一緒に、お母さんを探しましょう?」
どうやら、妻には私のことが迷子になった子供に見えていたようであった。だが、何故か云い出せなかった。私は妻の差し出した手をそのまま握って、彼女に引かれるがままに立ち上がった。
――妻の背の高さに気がついたのは、その時だった。
今でもこの時の衝撃は忘れられない。同時に立ち上がったのに、私が足を伸ばしきっても、彼女の膝はまだ「く」の字に折れていた。上がり続ける彼女の顔はどこまでも登っていくようであった。そして、すっとお互いの背筋が伸び切った時、私の頭は彼女の首元にしか届いていなかった。二倍にも、三倍にも、妻の体は私の体より大きく見えた。
「で、でか。……」
「ふふ、当然ですよ。お姉さんなんですから、ね? ぼくもいつかは伸びるから心配しないで」
と私の頭を撫でながらうっとりと微笑む。
云っておくが、私はそんなに背が低かったわけではない。妻の身長が高すぎるだけである。当時の私の身長がたしか170センチ弱であったから、おそらく彼女はその時すでに、185から190センチの間であっただろう。確かに子供に見えなくともない身長差だが、なぜ妻が私のことを迷子だと思ったのかは、今でも謎である。
「そうだ、お名前はなんて云いますか?」
「しょ、昭一です。……」
「しょういち、しょういち、……うーん、しょうくん、って呼んでもいいですか?」
「ぼ、僕はお姉さんのことをなんて呼べば、……」
「お姉ちゃんでいいですよ。――ふふ、さ、行きましょう」
私たちはそうして歩き始めた。が、妻は迷子の子を母親の元へ連れて行くと云うよりは、私のような子を引き連れて歩くのが何よりも楽しいと云った風で、で店を覗いたり、神社に行っては参拝したり、
「お姉さん、射的がすごく上手だから見ててくださいな」
と云いつつも、何発も外したり、それでふてくされたかと思いきや、私の歩幅に合うよう歩みを緩めて人混みの中をただ練り歩いたり、――とにかく私にとっては夢のような時間であった。
しかし、周りの人の視線はかなり痛いものがあった。奇しくも高校一年生の男と、年齢不明の麗しい長身女性である。男が
「お姉ちゃん」
と舌っ足らずに呼び、女性が、
「しょうくん」
と子供をあやすように云う様は、それだけで見ものであろう。何よりも妻は繋いだ手を離そうとしてくれないのである。もう熱くて仕方が無いのに、時には手を振って歌ったり、時には立ち止まって私の両手をあの大きな手のひらで優しく包んでくれたり、その度に私は恥ずかしさで死にそうになった。
そんな視線の中で1番痛かったのは、彼女の友人たちと遭遇した時のことである。
「○○ちゃん!」
と呼び止める声がするので、私も妻も振り返って見てみると、そこには彼女と同じように浴衣を着た女性が何人か。だがしかし、その顔からはまだあどけなさが抜けきっていない。呼び止めた声もまた、どこか幼い気がする。
「もう、探したんだからね! 何してるの?」
「ごめんごめん。この子のお母さんを探してて、――」
「この、……子?」
と、近寄ってこちらの目をまじまじと見てくる。その気まずさったら無い。
が、私は別なことに気を取られてそれどころではなかった。彼女たちが近くに来て、またもやびっくりしてしまったのである。なんでこんなにでかいんだ、と。――
みんな長身ぞろいであった。それもただの長身ではない。私の頭は彼女たちの顎の下にあり、こちらを覗いてくる女性は腰を曲げて、膝に手を当て、その上で首を曲げていた。誰もが私のことを見下ろし、誰もが通り過ぎる人よりも頭一つ分突き抜けている。……
私は彼女たちの顔を見ようと顔を上げた。まさに天を見上げるような心地であった。星の煌めく夜空を背景に、彼女たちのあどけない顔が見える。下駄を履いているとは云え、誰もが身長180センチ代後半はあるように思えた。中には妻よりももっと大きな女性も居たから、190センチを余裕で超える者も居たと思う。
あれよあれよと云う間に私はそんな長身女性たちにすっかり囲まれてしまった。この時、どんなに可愛らしい女性と云えども、囲まれて見下されれば怖いと感ずるのだと知った。
「へーえ? かわいいじゃん?」
と後ろから私の肩に手を下ろしている女性が云った。ちなみにこの女性はこれを云う直前に、私の脇の下に手を入れて、俗にいう「たかいたかい」をしてきたのである。
「でしょう」
と得意げに妻が。
「うーん、まあ、確かにかわいい、けど、……」
と私を覗き込んでいた女性が云った。
「私たちは、このへんでうろうろしてるから、終わったら来てよね。花火は一緒に見よっ」
「うん。ちょっと連れて行ってくるね。――さ、しょうくん、行きましょうか」
と開放された私たちは再び歩き出した。
「ごめんなさい」
しばらく歩いた後に、妻がこう云ってきた。
「な、何がですか?」
「今日はバレー部の子たちと来てたの。だから、みんな体が大きくて怖かったでしょう?」
「いえ、みんな可愛らしくてそんなことは、……」
「ふふ、ありがとう。しょうくんは優しいです。謙遜でも、そう云ってくれると、みんな喜ぶと思います。――」
「あの、お姉ちゃん」
「ん? 何ですか?」
「バレー部って、ことはお姉ちゃんってまだ高校生なんですか?」
と云った時、妻の動きがふと止まった。と、思いきや、
「――あははははっ、違う違う、あははっ、……」
妻はしばらく笑った。腹を抱えるほどではないけれども、口に手を当てて、体を屈めて、笑いが漏れるのが抑えきれないと云った風であった。
「……ごめんなさい。えとね、私はまだ中学生なんですよ」
「ええっ?!」
「ちゃんと云うと、中学二年生。あの子たちも今中二で、一緒にバレーをしてます。改めてよろしくね」
「えっ、ちゅ、中学生?!」
信じられなかった。妻がこの時まだ中学生であることにも信じられなかったが、それよりもあんな背の高い、――身長185センチ以上、190センチを超えている者も居る女性たちが、まだ中学生だなんて、いったい誰が信じられようか。
――でも、信じるしか無い。あのあどけない顔立ちと、あのちょっと甲高い声は明らかに中学生のそれであった。
「そんなに驚くことないですよ。バレーをしてる人って、みんなああいう感じですし、……まあ、確かに私たちの中学校は少し背が高いような気がしますけど、……」
少しだろうか。身長185センチ以上の女子中学生なんて、学校に一人居ればいいくらいである。それがあんなに、しかも妻の口ぶりではまだまだ居ようかと云う気配。……後でアルバムの写真を見せてもらったら、確かに恐ろしいまでの長身ぞろいの中学生たちであった。あの身長を持つ妻が「紛れて」しまっていたのである。それどころか、監督をしていた男の教師が一番小さかったのである。――もちろん、入学したばかりの一年生も含めて、である。
「す、すごい。……」
「ふふ、……さ、私たちのことはこれくらいにして、早く行きましょ。そろそろ花火が始まっちゃう」
それから私たちは歩きに歩き回って、二人して疲れと云って、再び出会った公園に戻ってきた。ちょっとした奇跡だと思ったのは、花火が一番見える場所と云うのが、その公園だったのである。私たちは二人きりで花火を眺めた。もっとも、私は花火がボン! という音を立てて弾ける度に、妻の顔が鮮やかに照らされるのだと気づいて以来、彼女の方を向きっぱなしであったが。
「おーい、昭一!」
「はーい!」
友人の大きな声が聞こえたので、私も大きな声で返事をした。
「お友達も帰って来たことだし、お姉ちゃんはここでお暇することにしましょうか」
と、妻はゆっくりと席を立った。
「僕のお母さんを探すんじゃ、……?」
「あれ? そうだったっけ?」
と首を傾げて微笑まれる。私はこれまでの人生で妻のこの表情以上に可愛い女性の仕草と云うものを知らない。
「ぼ、ぼく? お母さん? お姉ちゃん? は? お前に姉が居るなんて、……」
「ふふ、お元気でね。また、会いましょう?」
としゃがんで私の頬へキスをしてから、妻は颯爽と公園から去って行った。
その後の友人の詮索については思い出したくもないので、ここには書かない。とにかく、他の学校の子と仲良くする、という友人の目的は私が代わりに達成してやったのである。――全校生徒中の笑い者にされるという代償を払って。
「しょうくん、あの時は私の顔見すぎでしたよ?」
「えっ、バレてました?」
「バレバレですよ。顔が火照るのを我慢するのにどれだけ苦労したか、分かってます?!」
と口を尖らせて怒る。その様子が何だかおかしくって笑うと、ますます怒ったような口ぶりで、こちらに文句を云ってくる。――ああ、可愛いなぁ。なら、もっと可愛い仕草をさせてやろう。……
「――ところで、なんで僕の事を迷子だと思ったんです? そんなに子供っぽく見えましたっけ?」
「さあ、どうでしょう、――」
と、妻は首を傾げて、顔を赤らめて、微笑みながら云った。―――
後輩
今俺が対峙しているのは、一人の女子高校生、なんだかぼんやりとしているのは気のせいではあるまい、お腹が空くと同時に力が出ないと云って、毎日昼前の授業は寝て過ごすのである、今日はその昼前の授業というのが体育だったから、寝ることが出来ず、体操服を着たまま、こうして眠そうな目をこちらに向けて突っ立っているのである。
「勝負ですかぁ? いいですよぉ?」
と先ほど彼女は云った。その間延びした声に俺は勝ちを確信し、彼女の前に立った。
賭けるものは昼食の弁当、――この学校では昼時になると業者が弁当を売りに来て、それが中々安いのに結構なボリュームで、しかも美味しい、……絶好のbet 案件である。
「で、何で勝負するんです、かぁ、……?」
もうフラフラである。こうなれば何であっても俺の勝ちは揺るぎないだろう。
「腕相撲とかする?」
「うで、ずもうですかぁ?……それはダメです先輩、……ダメです、……」
「なんで?」
「だってぇ、そんな勝ち負けが決まっている、……ようなもので勝負したらぁ、……勝負に、あれ? ……とにかく、勝負にならないじゃないです、かぁ。……」
「ああ、俺の勝ちってこと?」
「いいえぇ、違います。……私のです、……私の。……試しにやってみます?」
場所は体育館であるが、試合結果やら何やらを書くための机が常に配置されているから、俺たちはその一つへ移動した。途中、フラフラと足取りがおぼつかない彼女の背を押してやらなければならなかったが、とにかく、机を挟んで向かい合う形になった。
「俺は全く負ける気はしないんだがな」
「それは私も同じですよぉ。……」
と、右へふらり、左へふらり。もう立っているのもやっとのことであるようである。……
――しかし、こうして目の前に立ってみると、めちゃくちゃでかいな、こいつ。
後輩の女子高生とは云っても、以前聞いた話によると、その身長は195センチあるらしい。嘘だと思いたいが、俺の背がすっぽりと彼女の胸元あたりに収まるから、本当だろう。それで、ヒョロヒョロのモヤシ体型かと思ったら、どうもこうして対峙してみると違う感じがする。ムチムチとした腕に、ムチムチとした太ももに、服の上からでも分かるほど、引き締まった腰回りをしている。一見細そうな手足も、長いからそう見えるだけで、ほとんど俺の腕や足と、――いや、もしかしたら彼女の方があるかもしれない。……
負ける? いやいや、それでも普通の女の子である。腕相撲では絶対に負ける気がしない。俺は机に肘をついて、カクンとうなだれる彼女の手を取った。
「うわ、なんだこれ」
「んぅ? どうしたんです? もう初めてもいいですよぉ。……」
彼女の手は俺のよりも遥かに大きかった。そして、きめ細やかな肌が途方もなく気持ちがいい。……俺が声を出したのはそれが原因であった。しばらくはニギニギと握って、この心地よさを堪能することにしよう。
「せんぱぁい、……早く、……もう私お腹が空いて、……」
と、しばらくするとさすがに文句を云ってきた。
「あ、ああ、ごめん。俺は準備出来たが、お前は? 相変わらず力が入ってないようだけど」
「これでいいですよぉ、……勝手に始めちゃってください。これで負けたら私の負けでいいです。……」
――さすがにカチンとくる。なんでこんなに余裕なのか。勝負だから俺は本気でやりたい。女子高生相手に本気なんて大人気ないけど、やるからにはある程度は真剣にやりたい。
「いいのか? 始めるぞ?」
「どうぞどうぞぉ。……」
いいだろう、後悔させてやる。――
「………」
「………」
「んん……?」
「………」
「ク、……クソ、……なんで、……!!」
「んーん? せんぱぁい、もしかしてもう始まってますぅ? それで全力なんですかぁ?」
全力だった。上半身も全部使って、腕に力を込めている。
「ぬおおおおおお、……」
――なのに、彼女の腕は、嘘のように動かない。全く微動だにもしない。地面に突き刺さった鉄棒のように動かない。
「んふふ、せんぱぁい、私の云ってたこと、理解しました?」
いつの間にか彼女は眠そうな目を歪ませて、こちらを見つめてきていた。途方もない恐怖が俺を襲ってきて、この手の震えが過負荷からなのか、恐怖からなのかわからない。……
「じゃ、いきますよぉ? 勝負をしかけてきたのはせんぱいなんですからね? 折れても文句は云わないでくださいね?」
折れるってどういう、……
――突然、ガァン!! と、云う音がした。
「へっ?」
見ると、俺の腕は、彼女の手の下で、押し潰されていた。――
「があああああああ!! 痛い! 痛い! 痛い!」
甲が砕けたかのような激痛が腕に走り、床に倒れ込んで咽び泣く。何が起こったのかもわからない。痛みすら、一瞬遅く伝わってきた。訳が分からなかった。音からして机が割れたのかと思った。
「加減しましたから、大丈夫ですよぉ。そんなに痛がらなくても折れてませんから」
あんな冗談みたいな力を込めたのにも関わらず、彼女は呑気なものだった。
「ん~~~」
とゆっくり伸びをして、
「ふわあ、……目が覚めてきちゃいました。先輩、次はドッジボールしましょう」
と近くにあったバスケットボールを取りながらのんびり云う。
「く、くぅ、……何だったんだ今の、……って、お、おい、まて、それはバスケットボ、――」
――ヒュッと、風切り音がした。
その直後、バァン!! と後ろから破裂音が耳をつんざいた。跳ね返ってきたボールは、それでも物凄い勢いで俺の横を掠めて、彼女の手元へ戻っていく。
「は?……」
全く見えなかった。こんなのは野球をしたときと同じである。バッティングセンターで調子に乗って最高速度を試した時の、あの感覚、……白い筋が見えたかと思いきや、次の瞬間には後ろのネットに叩きつけられたボールが、ぽてんぽてんと目の前に転がる、あの感覚、……
彼女の投げたバスケットボールはそれに近かった。いや、それ以上だった。軌跡すら目に映らなかった。あんなのが体に当たるなんて考えたくもなかった。ドンドンとボールを手元でバウンドさせる彼女は、すっかり目を覚ましたのか、はっきりとこちらを見据えていて、――めちゃくちゃ怖い。……
「せんぱい? 次は当てますからね? ちゃんと取ってくださいよ?」
「待って、待って!! 悪かった! 俺が悪かったから!!」
「えー、……」
「もう俺の負けでいいです、はい。くだらないことに突き合わせて、すみませんでした」
「えー、……もう負けを認めるんですかぁ? それでも男ですかぁ?」
と、云われても俺の腰はすっかり抜けてしまって、立つことすら出来ない。
「うん、もう負けです。お弁当は約束通り買ってあげます。一週間続けてもいいです」
「えー、……つまんなー、……」
と云って、彼女はつまらなさそうに背伸びをして、バスケットボールを軽くリングの中へ入れてから近寄ってきた。いつもはのんびりとした、しごく大人しそうな子なのだが、彼女の2メートル近い長身も相まって、今は鬼のように怖い。
しかも分かってやってるのか、一歩一歩確実に、ゆっくりと近づいてくる。……
と、俺の元にたどり着いた時、そんな恐ろしい彼女が脇下に手を入れてきた。そして抱きしめるようにして俺の体を抱えると、ひょいと、まるで猫でも抱きしめるかのような体勢で持ち上げてくる。俗にいうお姫様抱っこというやつか。傍から見れば軽々と抱えられているように見えるだろうが、俺はあまりの力強さに、喉からひゃっくりのような声を漏らしてしまった。
「んふふ~、せんぱぁい、わたし今、ちょっと機嫌が悪くてですね、普段出せない力を見せたくなってるんですよ~」
「ひっ、……」
「かと云って、せんぱいにこれ以上危害を加えると嫌われてしまいそうですし、どうしましょ」
「こ、このままお昼ご飯に行くというのは、……?」
「ダメです。最後に一回勝負をしないと、気が、――あ、思いつきました。せんぱい、手を出してください」
と、云われるがままに手を差し出すと、するりとあの気持ちのいい手で握られる。
「あ、……これって、もしかして、……」
「んふふ~~、そうですよ~? 指相撲です!」
これなら先輩にも勝てるかもしれません! と元気よく云うのだが、もはや勝敗は決していた。俺の小さな手は、彼女の大きな手に握り「込まれ」、人差し指から小指までは全く見えず、何よりも向かい合った親指が、……巨人に立ち向かう小人のような、そんな感じで、彼女の親指と面しているのである。たぶん長さにして二倍は違うだろう。指相撲は相手の親指を上から抑え込まねばならないが、俺の親指と云えば、彼女の親指の第一関節に触れられたら良いくらいで、勝負が始まった途端に押し込められることであろう。
案の定、指相撲は彼女の圧勝で終わった。初め! と云った瞬間に、あの長い親指で、しかも恐ろしい力で抑え込まれるのだから、勝ち負け云々を議論するほうがおかしい。
「ふぅ、いつかはせんぱいも強くなって、私の本気を受けてみてくださいね。――あ! あのバスケットボールを投げたのはまぁまぁ本気だったので、他言無用でお願いします。せんぱいだけにお見せしたので、……まぁ、うん、それだけはご考慮を、……」
と顔を赤くして云うのが不思議で、やっぱり女の子とはいつでもか弱いところを見せたいのかなと思った。
それから俺は彼女の着替えを待って、弁当売り場へと向かった。けれども、すでに弁当は売り切れ、業者は撤退した後であった。俺たちは仕方なしに購買へパンを買いに行って、仲良く空き教室で、むしゃむしゃと口を乾かせながらコッペパンやら何やらを食べたのである。
妹たちの背比べ w/ お兄ちゃん
「せーのっ」
「せーのっ」
「――184センチ!」
「―��179センチ!」
「あー! またお姉ちゃんに負けた!!」
「でも6年生だった頃の私より高いじゃん」
「お姉ちゃんに勝ちたいの!!」
「もー、……」
……里乃と詩乃、二人の少女が何を比べているのかと云うと、それは互いの身長である。姉の里乃に負けて、妹の詩乃が悔しそうな顔をするのは、もはや毎年、身体測定の行われる季節の定番となっている。
「179.8センチって、もうちょっとで180じゃん!」
「だから悔しいんだってば」
女性で180センチ前後の身長を有する者は珍しいだろう。しかし、彼が驚いたのはそこだけではない。
「中学生になるまでに、お姉ちゃんを追い抜けるかな?」
「この調子だと、あと半年くらいじゃない?」
そう、妹の詩乃はまだ小学生なのである。6年生になったのは、つい半月前ほど。
そして、姉の里乃はまだ中学生なのである。1年生になったのは、つい半月前ほど。――
「んー、もう少しなんだけどなぁ。……」
と、詩乃が頭に手を当てて、里乃の額にコツンとぶつける。二人を見上げる彼からすれば、二人の身長差なんてあまり無いように感じたが、確かに数センチは差があるようである。
「もうこんだけじゃん」
「お姉ちゃん、いつもそう云ってる」
「そうだっけ?」
「あはははは、――」
「ふふ、ふふふ、――」
――と、そんな笑い声が二人の間で木霊する中、
「はあ、……」
と彼はため息をついていた。――なんで妹たちばかりこんなに大きくなっていくんだ、と。
小学6年生の詩乃ですらもう180センチ、……里乃が小学生にして150センチを超え、160センチを超え、170センチを超え、どんどん垢抜けていく一方で、まだ幼い詩乃に希望を抱いていたのだが、そんな詩乃ですら一昨年、――まだ彼女が小学4年生の時に自分をさらりと追い抜いて、今では姉の身長に追いつこうとしている。……
「はあ、……」
と彼は再びため息をついた。こんな信じられない妹たちを持っているものだから、ものすごく肩身が狭い。
出かければ子供扱いされるのは自分なのである。プールに行けば溺れるのを心配されるのは自分なのである。店に行けば「弟さん」と云われるのは自分なのである。親戚の家に行けば年下扱いされるのは自分なのである。食事をすれば「こぼさないように」と云われるのは自分なのである。……
もちろんそんなことを云ってくるのは何も赤の他人だけでも、親戚だけでも、親だけでもない。ため息をつくのを目ざとく見つけた二人の少女、――彼の妹たち、――中学生にして身長184センチの里乃と、小学生にして身長179センチの詩乃、――この二人にも数々の屈辱的な言葉を並べられるのである。――ほら、今も項垂れている彼を見て、クスクスと笑っている。……
「兄さん?」
と里乃が。
「お兄ちゃん? どうしたの、そんなにため息をついて。」
と詩乃が。
「あっ、分かった。混ざりたいんでしょ?」
「えー、お兄ちゃんはいいよぉ。だって、かわいそうだし!」
「もう、そんなこと云ったらダメだよ。兄さんだって、好きでこんな小さい訳じゃないんだから、……」
「なんでお兄ちゃんだけ、こんなに小さいのかなぁ。……」
そんな風に、無意識に彼を傷つける言葉を並べつつ近づいて行く。
一歩一歩、妹たちが近寄ってくる毎に、彼の首は上を向いていった。壁に引っ掛けてあるカレンダー、カーテンレール、エアコン、そして天井、……と云った風に、視界に入るものがどんどん移り変わっていく。
――妹を「見上げる」、なんて体験はそんなに出来る人は居ないだろう。どんな心地であったか。それはとんでもなく屈辱的で、そのあまりの悔しさから心臓は脈打ち、気をつけなければ自然に涙が出来るほどである。
二人の妹たちが目の前に来た時、彼は思わず一歩退いた。彼女らの顔はにこやかだったけれども、なぜか途方もない威圧感を感じた。それは本能が、この二人の妹たちを恐れたからだろうか。きっとそうである。感じる威圧感だけで彼は押しつぶされそうな心地を抱いていた。
しかし、二人ともまだ12歳と13歳だけあって、何とも可愛らしい。顔だけみれば、台にでも登っているような心地を抱いてしまう。とてもではないが、180センチもあるようには思えない。
が、現実は二人ともぺったりと、30センチを余裕で超える大きな素足を床につけているのである。彼は妹たちの笑顔を見るのに耐えられなくて下を向いたとき、そのことを実感した。彼女らの足に比べれば、自分の足は子供のそれである。以前、無理やり里乃の靴を履かされた時の、あの笑い声が聞こえてくるようだった。
「ごめん兄さん、変なこと試しちゃって」
と、里乃は笑いをこらえられたようだったが、詩乃の方はカポカポと音を立てて歩く自分を笑いに笑った。
そう云えば逆もあった。が、入るには入ったけれども、残り三分の一を残してつま先が先端に到達したらしく、
「きゃははっ、お兄ちゃん足もちっちゃ~い」
と何度も何度も詩乃が靴を踏んづけていたのは記憶に新しい。本当に自分の足は、彼女らに比べれば、子供のそれなのである。
それに、その足自体が、めちゃくちゃ長いのである。
――えっ、そんなところに腰があるのかと、もう毎日見ているのに思ってしまうのである。なんで自分はこんなに短足なのに、妹たちは身長の半分以上もある脚を持っているのか、彼には理解できていない。――もはや理解できないのである。それほどまでに、里乃と詩乃の脚は長いのである。
例えば昔、――と云ってもつい1ヶ月前に飛行機に乗った際、ゆとりのない席だったせいで、彼女らはこれほどないまでに膝を折り曲げて座らねばならなかった時があった。
「あ~、これはちょっと、……」
「狭い!」
と何度も何度も文句を云った。
ただ、里乃はまだよかった。
「兄さんごめん。ほんとうにごめん」
と云いながら彼の座席の方へ足を伸ばせられたのだから。しかし、片側が見知らぬ夫人だった詩乃の方はそうもいかず、常時通路側へ飛び出してしまい、道行く人々のじゃまになっていたのであった。もう彼女らにとっては、この世界は小さいのである。
「兄さんどうしたの? そんな俯いて、……」
「ほらほら、怖くない怖くない、……」
と、彼を引き寄せた詩乃が頭を撫でてくる。――もはや子供扱いである。外では終始、彼の方が弟扱いされているものだから、次第に彼女自身もこういった行為が増え始めて、今では誰が見ていようが見ていまいが、頭をなでてきたり、膝の上に座らせたり、後ろから軽く抱きしめるように腕を回してきて、隣に居る里乃と談笑するのである。
「お兄ちゃん?」
と、顔を上げられる。詩乃の溌剌とした可愛い顔が見える。
「兄さん?」
と、クイッとそのまま横に向かされる。里乃のおしとやかな可愛い顔が見える。
――もう、頭一つなんてレベルじゃないのか。……
と彼は思った。どう考えても、自分の頭は詩乃の首元にしかたどり着いて居なかった。里乃に至っては肩にも掠っていない。
「兄さんは何センチだったっけ?」
「もう、お姉ちゃん知ってるのに、……」
「詩乃、静かに」
「はーい」
「………」
彼は黙っていた。妹たちの身長を聞いた今では、自分の身長を思い出すことすら嫌だった。が、
「ん?」
と、里乃がお姉さんっぽく微笑む。――当然、彼女も彼のことを弟扱いしているのである。もうこうなってはお手上げである。口をパクパクと動かしてから、ようやく彼は喋り始めた。
「……ひゃ、ひゃく、ご、……」
「んーん?」
「ひゃくごじゅ、……」
すでに詩乃は笑いをこらえている。
「157センチ、……です。……」
「あははははっ、――」
と詩乃が吹き出す。
「はい、よく云えました。よしよし、――」
と里乃が頭を撫でてくる。――
彼の身長は157センチしかなかった。実は1センチくらいサバを読んでいるのだが、それは去年の里乃に、
「もう20センチも差がついちゃったね~」
と云われないためであった。が、今では、
「あははははっ、もうわたしと比べても、20センチ以上小さいじゃん! あはははははっ、――」
詩乃にすら実に23センチも差を付けられてしまった。
「こら詩乃、そんな笑わない。――兄さん、兄さんは小さくても可愛いから、そんな悩まなくても大丈夫だからね? もう、泣かないの」
目元を拭って、里乃が慰めてくる。……もうそれすらも、彼にはたまらなかった。拭われても拭われても、とりとめのない涙が目から溢れて仕方がなかった。
だが、彼の地獄はまだ終ってなど居なかった。里乃に涙を拭われ、詩乃に笑われ、それからちょっとして家の外に車の止まる音が聞こえた。
「あ、来たかなぁ」
「たぶんね」
ああ、そうだった。――と、彼は今この家に居ることを後悔した。今日はその日だった。逃げ出したかったけれども、詩乃の膝の上に座らされて、しかも抱きしめられているものだから、動こうという気すら起きなかった。
「一ヶ月ぶりくらい?」
「うん。楽しみだね~。ね、ね、お兄ちゃんもそうでしょ?」
と里乃が彼に問いかけたところで、コンコンとノックの音が聞こえてきた。と、間もなくして扉が開き、久しぶりの来訪者が「腰をかがめて」入ってくる。――
「里乃ちゃーん、詩乃ちゃーん、久しぶり~~~」
「久しぶり~~~」
「小さいお兄ちゃんも久しぶり~~~」
と、まずは部屋の中に居た三人の兄妹に挨拶をした。
顕れた人物は二人。名前は紗絢(さあや)と香音(かのん)と云う。両者とも可愛らしい顔つきをしており、さすが里乃と詩乃の従姉妹だけある。歳は紗絢が15歳、つまり中学3年生、そして香音が里乃と同じ13歳である。
そして、二人とも巨人である。いや、彼が勝手にそう思っているだけで、普通の可愛らしい女子中学生なのだが、紗絢も香音もとてつもなく背が高い。身長179センチの詩乃よりも高ければ、身長184センチの里乃よりもずっと高い。特に、姉の紗絢の背は2メートルにも達しているのかと思われるほどで、天井に頭をぶつけないよう腰を屈めて、三人の兄妹と対峙している。
「紗絢姉さんも、香音も久しぶりだねー」
と、まずは立ち上がった里乃が。
「うひゃー、……」
と、次に詩乃が感嘆の声を漏らす。
「ひ、久しぶり」
と、最後に彼が詩乃の膝の上で怯えながら云った。――と、途端に紗絢の目が変わる。
「もー、お兄さん! そんなところに居ると詩乃ちゃんが動けないでしょ、――」
「相変わらず甘えん坊さんですねぇ」
「いる?」
と詩乃が彼を抱きかかえて、二人の長身姉妹に差し出した。
「えっ、ちょ、ちょっと詩乃、――」
「私がもらいましょう」
香音はそのまま彼をお姫様抱っこすると、赤ちゃんでもあやすかのように、トントンと腕の力だけで揺さぶる。
「ふふふ、お兄さんかわいい。……」
「まって香音、おろ、……下ろして、――」
香音の身長は恐らく190センチを軽く超えているだろう、そんな彼女に抱きかかえられると、身長156センチの彼からしれみれば、いつもより高い位置から部屋を見渡しているようなものなのである。それに何より体勢が不安定なのである。中学1年生の女子とは、――いや、人間とは思えないような力で支えられているけれども、��のすごい恐怖を感じていることだろう。
「紗絢も見てないで助けて!」
「えー、嫌ですよ。この通り、香音のスイッチ入っちゃいましたし」
確かに香音はこの上ない優しい表情を浮かべて、彼をあやしている。たぶん、子供と遊ぶのがかなり好きなのだろう、やめる気配はどこにも無い。
「だから、しばらくはこのままで。――もう、大丈夫ですって、香音のことだから落ちることはありませんってば」
「そんな、……り、里乃!」
「なぁに、兄さん? 嫌だよ、だって香音の邪魔をするとすごく怒られるもん」
「ふふ、そうですよぉ、おにいさん。このままおにいさんは私の赤ちゃんになっちゃうんです。……ふふ、ふふふ、――」
それから紗絢と里乃と詩乃が喋っている間、香音は彼をあやし続けた。途中、
「そうだ、お腹空いてませんか? おっぱい飲みますか?」
と云って、本当に姉譲りの巨乳を曝け出そうとした時はさすがに紗絢に止められたけれども、実に30分間、彼を腕の中に抱きかかえたまま、とろけるような声をかけ続けた。それが終わったのは、「たかいたかい」をして天井に頭をぶつけてしまったたからで、恐らくその「たかいたかい」が無ければ、赤ちゃん扱いはずっと続いたことであろう。この部屋どころか、階下に降りて行って互いの両親に見せびらかしたことであろうし、夕食も一口ずつスプーンに乗せて食べさせられたことであろうし、お風呂だって一緒に入ったかも知れない。もちろん寝る時は、湯たんぽ代わりに抱きかかえられるに違いない。
香音が彼を下ろしてから、残る三人も彼の元に集まって、彼は後ろに詩乃、右に里乃、左に香音、前に紗絢、――という風に、すっかり長身の少女たちに取り囲まれてしまった。もはや天井も見えないし、彼女らに光が遮られて昼過ぎなのに薄暗いし、でもなんだか良い匂いが立ち込めているし、それに前から突き出ている紗絢のおっぱいが顔に当たっているのである。
「ふぁ、……」
「ふふ、幸せそう」
と香音が云った。
「えー、そんなことないよー。だって私たちが近寄っただけで逃げるんだよ? お兄ちゃんは」
「でも幸せそうですよ? ね、お姉ちゃん?」
「うん。さっきから必死で私の谷間の匂いを嗅いでるからね。――」
「え、ほんまに?」
「ほんまに」
「ちょっとお兄ちゃん!」
と詩乃が思いっきり抱き寄せるので、彼の顔は紗絢のおっぱいから引き剥がされてしまった。だが、怒っているのは詩乃だけで、里乃も香音も、それに紗絢もしごく優しげな顔をしている。詩乃もまた、ひとしきり叱った後は、後ろから自分のおっぱいに彼の後頭部を押し付けつつ、頭を撫でる撫でる。……
彼は、一番の年長者が一番小さい上に、余裕もないと云う事実に震えた。妹たちも従妹たちも巨人だった。一番小さい詩乃でも179センチもあることが信じられなかった。二番目に小さい里乃でも184センチもあることは、もっと信じられなかった。ならその妹たちをを見下ろす香音は? そしてそんな香音を見下ろす紗絢は? いったい何センチあるのだろう。二人とも天井に顔がある。自分の頭は香音の胸にしか届いていない。脇の下にも届いていない。紗絢に至っては、下手するとおっぱいの下に顔が入るほどである。
――巨人だ。……
彼は二人の身長を知らない。昔から彼女らの方が大きくて、子供扱いされるのが嫌で、とうとう今の今まで聞かずじまいであった。
と、ふと、従妹たちの身長を知りたくなった。本当は知りたくなどないのだが、もう40センチも差を付けられてしまえば、一度すっきりしてしまうのも手であろう。
「あれ? メジャーが落ちてる。……」
と、ふいに後ろを向いた紗絢が、折良く先日に机を新調したいからと云って使っていたメジャーを見つけた。拾い上げてスルスルスル、……と引き伸ばしていく。
――途端、ピン! ……と、腕が伸び切っていないのにメジャーが張る。
「あー、……身体測定前に身長を測りたかったけど、2メートルしかないかぁ。……」
まだ伸び切っていない腕を見て、紗絢がつぶやいた。
「残念だったねぇ。うちの家はそれしかメジャーが無いから、紗絢姉さんには短すぎますねぇ」
「あちゃあ、……じゃあ、今はやめとこうか。でも、香音はギリギリ測れると思うから、一応測っときな」
「はい、姉さん」
と香音がメジャーを貰い受ける。
ところで彼は、
「へっ、……えっ、……?」
などと声にならざる声を上げて、目を見開いて妹たちの会話を聞いていた。
――2メートルしかないかぁ。……
――紗絢姉さんには短すぎますねぇ。
この言葉、そして伸び切っていなかった腕から察するに、紗絢の身長はとっくの昔に2メートルを超えているのだろう。
彼は思わず身震いした。妹たちも信じられないが、今までこんな日本中どこを探しても居ない中学生が身近に居たなんて、しかも従妹に。いったい何を食べればこんなに大きく、――それも女性らしい美しさを保ったまま背を伸ばすことができるのだろうか。自分はこれまで身長を伸ばすために何でもやってきた。妹たちに笑われながらも、牛乳は沢山飲んだし、夜は遅くとも10時には寝ていたし、里乃に腕を持ってもらってぐいー、……と背筋を引き伸ばしてもらったこともあった。恥を忍んで紗絢に背の伸ばし方を聞いたことさえあった。だがそれで得たのは156センチという、大概の女性と同じか、低いくらいの身長のみ。……もうみんなに笑われる、みんなにからかわれる、みんなに子供扱いされる、妹たちに弟扱いされる、従妹たちに赤ちゃん扱いされる。
屈辱で心が折れそうだった。今すぐにでも駆け出したかった。
けれども、詩乃が後ろから抱きしめてきていて、全く動けそうにない。……香音の身体測定を見守るしか出来ない。……
「はい、背筋伸ばして―」
と上で待機している紗絢が云った。
「準備出来たよー。いつでもどうぞ」
と云う里乃は下でメジャーを抑えている。
いよいよである。紗絢の身長は結局分からずじまいで終わりそうだが、香音の身長はこれで分かる。分かってしまう。
「おー、結構伸びたねー、……おっ、おっ?」
「おっ?」
「香音すごい! ……うん! ぴったり2メートル!! おめでとう!!」
「えっ、うそ、ほんとうに?」
「ほんまにほんまに」
「――やった! お姉ちゃん、とうとうやったよ!」
と大人しそうな顔に、心底嬉しそうな表情を浮かべて、姉とハイタッチをする。ついでに里乃にも、ついでに詩乃にも、そして、ついでに彼にも。――
「香音おめでとう! さすが!」
「私もあと21センチ頑張らなくちゃ」
と、4人の妹と従妹たちはすっかりお祝いムードである。
ただ彼一人だけは、途方に暮れていた。
――2メートル、2メートル、女で2メートル、中学1年生で2メートル、……
そんな考えだけが頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。胸はドキドキして止まらなかった。屈辱やら悔しさやらで息が上がって苦しかった。立っているのもやっとだった。
そのうち、4人の中の一人がメジャーを片手に近づいてきた。そして、こう云った。
「ほら、お兄さんも測りましょう。今日こそは教えてもらいますよ」
――ああ、そうだった。そういえば今までのらりくらりと躱し続けて続けてきたんだった。……
声の主は、先程2メートルぴったりだと判明した少女であった。見下ろしてくるその顔は確かに中学生の可愛らしさ、幼さがあった。
――だが、2メートル。
もうダメだった。彼はとうとう体中に力が入らなくなって、床に崩れ落ちた拍子に頭を打って気を失ってしまった。その直後の展開は、彼はよく知らない。が、目が覚めると、なんだか途方もなく柔らかくてあたたかいものに、体が丸ごと包まれているし、なんだか楽しげな話し声が聞こえてくるし、それになんだか良い匂いが漂ってくる。
辺りを見渡して、それが食事だとは彼にもなんとなく感づいたようであった。だが、
「あーん」
と、スプーンに乗って差し出された料理が離乳食だとは、全くもって気が付かなかったようであった。妹たちの笑い声は、しかし、再び紗絢の腕の中で眠った彼には聞こえてなどいなかった。
(おわり)
出来すぎた妹
これから話すことは惚気と受け取られてもしょうがない話であるが、生まれて5年後には生涯の伴侶が居たのだから、生い立ちを語れと云われて惚気話になるのは致し方あるまい。
さて、俺の生まれはとある地方の山の中で、周りに店の一つも無ければ家もなく、駅すらも歩いては行けない場所にある、今の華々しい生活からすればひどい環境としか云いようがない田舎だった。恵まれたものは何もなく、強いて云えば川が綺麗としかもう覚えていないのだが、特に恵まれてなかったのは金だった。彼女のことを知っていると云うなら、俺の家にどれほど金が無かったのかはご存知だろうと思う。あいつが生まれて間もなく父親が交通事故で亡くなり、母親一人で家計を支えるのは大変だったろうに思える。いや、思えるなんてものではない。毎晩毎晩、家に帰れば死んだように青ざめた顔で、海苔も巻いていない握り飯を一時間も書けて食う母親を見て、俺たちは二人して抱きしめ合ってシクシクと泣き、絶対にこの哀れな女性を楽にしてあげようと誓ったのである。
ところで生まれたばかりの彼女の姿をご存知だろうか? それはそれはものすごく可愛かった、目に入れても口に入れも耳に入れても痛くないほどに可愛かった、今では考えられないほど小さな手足を一生懸命に動かして、生きようとする健気な姿は何度も何度も俺の心を強く打ってきた。家計が家計であるから、父親が死んで数年もすれば、俺はこの子のために生きようと、この子のために何でもしてあげようと、この子のために我が身を捧げても良いようと思った。
だから働いたのである。小学生の頃から何でも出来ることはした。中学校を卒業した折にはすぐに地元の建設業で働き始めた。全ては妹のためだと思えば、先輩からのパワハラなど気にもならず、無茶苦茶な仕事内容を与えられるのも気にもならなかった。もうその時には彼女は小学5年生か6年生になっていただろうか、スラリと伸びた手足に、まっすぐに伸びた美しい黒髪に、ぷっくりと膨らみ始めた蕾のような胸には、十二分に将来の可能性が顕れていた。それに何より、その頃から急激にあいつの背が伸び始めたのである。俺だって背が低かったわけではない、今立ち上がって見ても分かる通り、男性の平均身長はある。けれども、あんなに可愛かった妹はたった一年や二年で俺の背丈を追い越すと、そのままグングンと背を伸ばして行ったのである。悔しいと云えば悔しいと云えるが、それよりもどんどん大人びて行く妹が綺麗で、美しくて、それでいて可愛くて、兄思いで、母親思いで、あろうことか俺は、次第に実の妹に心を寄せていってしまっていた。――いや、当然と云えば当然だろう。何と云ってもあの誰もが認める美貌である。もう中学二年生の時には、明らかに他の女の子とは一線を画していた。それに度々仕事場に訪れては、汗まみれの俺を気遣い、最後にはちょっとした差し入れと、「頑張ってね」の一言を添えてサラサラと長い髪の毛を、あぜ道の緑と晴れ渡った空の中に揺らめかせながら、地平線へと消えていく。それを見届けつつ、手渡された包を開けるのが俺の楽しみであった。差し入れられたお茶とおにぎりの味は、今食べるどんなご馳走よりも美味しい。今でも時たま具の入っていないおにぎりを所望して思い出したくなるほどに、美味しい。……まあ、そんなこんなで俺は実の妹に恋心を抱いていたのである。
時は妹が中学3年生のときである。この時期ほとんどの中学生は受験のことで頭を悩ませると思う。それは妹も同じではあったが、少し違うのはやはり家を顧みてのことだった。彼女は時おり俺と母親を招いては、
「私も、お兄ちゃんのように、……���
と泣きそうになりながら云うのである。俺にはそんな考えなど無かった。俺はこのまま頑張り続けて、妹を高校へと行かし、大学へと行かし、豊かな生活を歩んで欲しかった。だから母親と一緒に彼女を説得して、進学へと道を決めさせたのである。そもそも思うに、妹ほどの才女が高校へも大学へも行かないというのは、ものすごくもったいないことであろう。それというのも、成績通知表を見る度に、俺は目を瞬いて「本当に同じ腹から生まれた子なんだろうか」と思ったほど、妹は頭が良かったのである。運動はあまり得意では無かったようだけれども、国語数学理科社会音楽、……と云った座学の方は全て、――それも全学年に渡って、最高ランクの「5」がついていた。毎日疲れて帰ってくる俺を、明日が試験日だろうが何だろうが寝るまで労るので、
「俺のことはいいから勉強しなさい」
と云っても、
「いいよ、お勉強は授業聞いてたらだいたい頭に入るし、今はお兄ちゃんが最優先。ほら、マッサージするから寝て」
と優しい手付きで足やら腕やらを揉んでくる。それでも次の日のテストでは、本当にほとんどの科目で満点を取るのである。
話が逸れてしまったが、とにかくあの天才は受験勉強などほとんどせずに、県内で一番の進学校へ歩みを進めた。袖の短くなった制服から、あの長身に合った制服を身に着けた瞬間、俺と母親はついうっかり涙を流した。もう妹はすでに立派な女性だった。180センチを大いに越した身長も、H カップにまで育った豊かな胸も、全てが美しかった。妹は美そのものだった。俺は妹に見下ろされながら、神と対峙した時のような畏れを抱いた。ぷっくりと膨らんだ唇が、ものすごく魅惑的に見えた。シミひとつ無い白い肌は、触るのも恐れ多かった。長いまつげの下にある慈しみの籠もった目には、何もかもを見通されているような心地がした。俺は彼女には勝てないと悟った。
だから、つい唇を奪われるのを許してしまったのである。風呂から上がって自室へ行く途中の出来事だった。彼女が待ち構えているというのにも気が付かずにのこのこと階段を上った俺を、あいつはまず肩を掴んで拘束し、じっと見つめて来た。
「ど、どうした?」
俺が放った言葉はそれだけだった。いや、真剣な眼差しで見つめてくる彼女に威圧されてそれだけしか云えなかった。高校生になってもまだ伸び続けている彼女の身長は、この時188センチもあり、ちょうど首元に目が来る俺からすれば、蛇に睨まれた蛙のような心地がする。
「お兄ちゃん」
「おう」
「お兄ちゃん?」
「だ、だからどうした」
「お兄ちゃんっ」
としばらく妹は俺を呼び続けた。それも一言一言、こちらの反応を楽しむかのようにして、調子を色っぽくしたり、子供っぽくしたりしてくるのである。今、小悪魔的と呼ばれるのは恐らく俺のせいであろう。
「ふふ、……ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「愛してる。ずーと、ずーと昔から、愛してる」
と最後に云うと、あいつはなんと、目を閉じて唇を近づけてくるのである。もちろん、俺も目を閉じた。そして、顔を近づけた。悲しいことに精一杯背伸びをしなくてはならなかったが、こうして、俺は妹と唇を重ねたのである。初めてのキスの味は如何ほどであったか、それを語るには紙面が足りないから省略するにしても、唇を離した時のあいつのうっとりとした顔は、生きとし生ける物全てが思い浮かべる必要がある。ペロリと口の端に垂れた、どちらのものか分からない涎を舐めて、ふわりとこちらの体を包み込むようなハグをして、ポンポンと頭を叩いてから、意外にもあっさりと、彼女は自室へと戻って行った。今思えば、それもまた、俺を焦らそうという気持ちからやったのであろう。
彼女が高校生の時の思い出はそんなものであろうか。繰り返しになるが、やはりあいつはとんでもなく頭が良く、勉強をしているのかどうか分からないにも関わらず、定期試験だろうが、模試だろうがなんだろうが、ほとんど満点を取ってきていた。だからなのか、高校3年生のときの面談で進められたのは国の最高学府であった。いったい、天は俺の妹に何でもかんでも与え過ぎである。誰もが振り向く美貌に、誰もが驚く長身に、誰もが惑わされる大きな胸元に、誰もがひれ伏したくなる長い脚に、誰もが惚れざるを得ない優しい性格に、誰もが天才だと認めざるを得ない知能。一つだけ、まだ金だけは与えてくれていなかったが、それももう時間の問題である。まず最初の出来事に、彼女は驚くことに特待生であの大学へ入学し、入学金も授業料も免除されたことがある。これで浮いた金のほとんどを俺は仕送りとして送ろうかと思っていたのであったが、妹に強く、
「それはお兄ちゃんのために、そしてお母さんのために使ってください。特待生に選ばれたのはただのまぐれですから、お気遣いなく」
と云われては引っ込めるしか無い。だからその頃にはすっかり母親も持ち前の朗らかさを取り戻したような気がするのだが、やはり遠くで頑張る娘が気になっていたようだった。
そんなこんなで始まった妹の大学生活であったが、やはり語らねばならないのは、ミスコンのことであろう。そう、彼女の転換期である。ずっと昔から、俺はさんざん妹に面と向かって「可愛い」だの「綺麗」だのを云い続けてきたけれども、本人は本当に自身の容姿に自身が無かったらしく、
「いえ、そんな」
「私なんて」
などと云っていたから、そんなものには出ないと俺は思っていた。が、誰かにそそのかされたのか、彼女の友人の勧めで客席に座っていた俺の前に顕れたのは、確かに妹だった。いつもと変わらないナチュラルメイクに、いつもと変わらない長い黒髪を後ろで束ねて、いつもと変わらないぷるんとした唇を赤くした彼女は、信じられないほど美しかった。一人だけ後光が差しているような気がするほどに、美しかった。結果が発表される前から、もはや決着はついていた。予想通り彼女は1位を獲得し、恥ずかしいような、もどかしいような笑みを浮かべて、周りの者どもそっちのけで俺の元へとやってくる。
「お兄ちゃんごめんなさい」
と彼女は何故か謝った。
「私、お兄ちゃんがあれだけ容姿を褒めてくれたのに、全然信じられずに適当に返事をしてました。ごめんなさい」
理由を聞くと泣きながらそう云った。俺は、
「自信はついたか?」
と聞いた。すると、とびっきりの笑顔を見せて、
「うん! なんだか生まれ変わったような心地がする!」
と云う。全く、今から見ても、あれで容姿に自身が無いなど、他の女性から刺されてもおかしくは無いだろう。
その夜、俺は妹の下宿先へ初めて二人きりで夜を明かした。酒に酔った彼女を見たのも初めてだった。顔を赤くして、
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、おにいちゃぁん」
と猫のようにじゃれてくる妹は、もう見ることの無いと思っていた、かつて甘えん坊だった時の彼女そのものだった。実はその時に、彼女の初めてを頂いてしまったのだが、これは語ると俺が刺殺されかねないのでここには書かない。タオルケットにくるまって、自身の大きくて蠱惑的な体を隠そうとする彼女は、女神と云うよりはいじらしい生娘のようで、どれだけ体が大きくなろうとも妹は妹であった。つまりは可愛かったのである。
さて、転換期を迎えた妹の躍進は、ものすごいものがあった。急に、
「私、モデルになっちゃうかも」
と云ったかと思いきや、次の瞬間には海外に飛んでいるのだから、俺たち家族ですらあの頃の彼女にはついていけてなかった。ただ、これはみなさんご存知であろうから、ここでは多くを語るには及びまい。重要なのは、大学在籍中に本格的にモデルやら女優やらの仕事に打ち込み初めて、溺れるほどに金が入ってきたことであるから、それだけは云っておくことにする。
それで、パッと大学を卒業した彼女は、しばらく各地を点々と放浪していたらしいのだが、ある日突然、思ったよりも大人しめな衣装で実家に帰ってくるや、触れるが恐ろしいまでの金を家に振り込んできた。おおよそ一生を遊んで暮らせるほどの額である。そして、こう云った。
「これでお兄ちゃんの人生を買ってもいいですか?」
と。思い出せば物騒な物言いだが、実際には彼女の優しさが詰まった言葉であった。この金を使って私のために人生を捧げてくれたお兄ちゃんに恩返しがしたい。私はお兄ちゃんが高校に行けなくてどんなに惨めな思いをしたのかちゃんと分かっていないかもしれないけれども、でも少なくとも高校入試の時に同じ気持ちを抱いたことはある。だからまずはこれで高校へ行き、青春というものをもう一度味わいませんか? そして、行く行くは大学へと進学し、そして、 ――と、そこで顔を赤らめて云った言葉だけが頭に残って、はっきりとは思い出せないが、そんなことを彼女は云った。――俺はその言葉に乗るしか無かった。何故かと云って、どういう訳かその日づけで職場から俺の名前がなくなっていたのだから、彼女の提案に乗るしかあるまい。
それから、俺は初めて訪れた受験を乗り切るべく、勉強漬けの日々が始まった。朝から晩まで、妹の作ってくれたテキストで妹の授業を受け、妹の作ってくれた問題を解き、妹の回答解説を聞く。分かりやすくはあったけれども、俺と妹とではあまりにも能力に差があって、しばしば歩みを緩めなければとてもではないがついていけなかった。
「えぇ、……お兄ちゃんまだ覚えられてないの。……」
と、暗記物では云われた。いや、これは妹がおかしいのである。英単語を500個、一晩で全部の読み方綴例文まで覚えろと云うのだから、所謂天才で無ければ無理であろう。あの妹の吸収力は心底羨ましい。
そんなスパルタな教え方もあって、俺は妹と同じ高校へ進学した。10年と云う歳月を経て、妹の後を追って同じ高校へ進学するというのは、中々屈辱感があったが、意外にもすぐに私はクラスに受け入れられ、楽しい学校生活を送った。ただ次に始まったのは、妹の大学受験対策で、一ヶ月くらい部屋に引きこもる日が多くなったかと思えば、とんでもない量のテキストを俺に差し出して、
「はい、お兄ちゃんは今日から大学受験までにこれを全部問いて、覚えて、覚えて、覚えて、私の解説を聞いてもらいます。まあ、簡単だし、あんまり量も無いから大丈夫大丈夫」
と明るい口調で云うのであるが、机の上に50センチくらい積まれたテキストの山はどう考えても「量がない」とは云えないし、それに妹の「簡単」は全くもってあてに出来ない。実際、問題を問いていると、10年に一度クラスの難問がどんどん出てくるのである。しかもどうやら妹は過去の問題から引っ張ってくるようなことはせずに、自分で作った問題をテキストに載せているらしく、ズルすることもできない。結局俺は毎日、
「ちょっと、ちょっと、これくらい解けなくてどうするの。これはもっと単純にこうすればいいんだよ。お兄ちゃんって意外と頭が堅いタイプの人?」
と妹の目がさめるような解法を聞いて、驚くばかりであった。だが毎日やっているうちに彼女の考えに染まって来て、次第に正解する問題も出てきた。そういう時は二人で抱きしめ合って喜んだ。模試もまた、妹のテキストに慣れているせいか、どれも簡単に思えて実際に中々良い点数を取ることが出来た。擬似的に体験しただけだけれども、天才の頭の中とはこういうものとは、たぶんああいうものなのだろう。眼の前の問題が、自分の頭の中に追いついていないような感覚である。
俺はその頃、逆に妹に感謝したくなっていた。大金を用意し、あんなハイレベルなテキストを作っただけではなく、毎日毎日、朝早くから俺のために朝食と弁当を用意し、学校帰った俺を迎えてくれ、それからずっと付きっきりで勉強を見てくれ、夕食を用意し、そして一日の締めくくりに体を重ねた後、俺が寝静まったのを確認してから採点をする。まったく、出来すぎた妹を持つのも大変である。俺はもうすでに妹の金で実質暮らしていたが、それまで稼いだ金にはあまり手を付けておらず、それなら、普段の豪遊っぷりからすればささやかなものではあるけれども、妹を食事にでも誘おうと思って、土曜の昼食時に提案してみた。
「んもう、お兄ちゃん。どこまで私を惚れさせれば気が済むんですか。ダメです。――ま、せめて大学に合格した日に誘って下さい。はい、勉強に戻りましょう��
と断られてしまったが、その嬉しさで溢れる顔から、合格発表時に誘えば必ず首を立てに振るであろう確信が取れたので、その時はそれでよかった。
だから、頑張った。日々理不尽なレベルの妹の問題に文句を云いつつ、理不尽なレベルの妹の要求に悲鳴を上げつつも、俺は頑張りに頑張った。だからなのか、努力が実って、俺は妹がかつて通っていた大学に合格した。残念ながら特待生ではなく、平均的な点数でもなく、ドベから数えて5番目くらいではあったけれども、とにかく妹と同じ大学へ通うことになったのである。そして、合格発表の時、俺以上に涙を流している妹と抱き合いながら、再び彼女を食事に誘った。彼女は快く頷いてくれた。ワイングラスを傾けた時、彼女は云った。
「今日は、さ、お互いを名前でみ、みませんか?」
と、たいそう恥ずかしがりながら。
「そうだなぁ。じゃ、まずは俺から。――美希、今日の今日までありがとうな。これからは妻として、――」
「うっ、……」
「美希?」
「――ダメ! ダメ!……やっぱやめ! 無理! 恥ずかしすぎる! やっぱり今まで通りで!」
「えー、美希の提案だったじゃん」
「お兄ちゃん!!」
その時のあたふたとする妹の姿は、恐らく歴史に名を残すであろうモデルとは思えないほど、子供らしく、いじらしく、それでいて艶かしく、――まあ、一言で云えば、めちゃくちゃ可愛かったのである。
それで今、俺は妹と暮らしながら優雅な大学生をやっている訳だが、年々彼女が可愛く見えてくること意外には特に特筆すべきことがない。結局俺の生い立ちを語るようでいて、彼女の人生を語ったようなものであるが、いかがだっただろうか。たぶん誰も俺の人生には興味が無いだろうから、これはこれで良いのではないかと思う。後は彼女の出したエッセイやら何やらを参考にすれば、大方俺たちの、謂わばちょっとおかしな家族関係というのが明瞭に見えてくるはずであろうから、今はここで筆を休めることにしよう。
人魚
人魚は外の世界に憧れを抱くなんてよく云うが、ここに佇んでいる彼女もまた、その一人である。日々海の中に沈んでいる外の世界のガラクタを拾ってきては、格好の隠れ家へしまい込み、それを眺めてはため息をつく。ああ、外に出てみたい。出来れば素敵な恋を、素敵な王子様としてみたい。が、そう思えば思うほど、この自慢の尾びれが自分を縛る足かせのような気がしてならない。
「はあ、……」
とまたため息をついてしまった。もう何度目だろうか。一日に20回や30回はしているはずだから、一年365日で、物覚えついたのが5歳ごろだから、……と、虚しいことを考えているうちに、何者かが近づいてくる物音が聞こえてきた。実際には水流の音なのだが、彼女らにとっては物音である。
「誰、――?」
「おやおや、こんなにたくさんゴミを溜め込んで、……」
と、入ってきた人、……嫌に黒い尾びれをした、老齢の人魚が云う。
「ゴミだなんて! 私には宝物です!」
「ゴミはゴミだね。あいつらは要らなくなったものを海に投げ捨てるのさ。私は地上に降りた時にこの目で何度も何度も見たわよ」
「えっ、――」
今、「地上に降りた」と云わなかったかしら? ――と、彼女は思って目を見開いた。黒い人魚の嫌な笑みなど、その目には入っていなかった。
「地上に降りたいかい?」
「……」
「降りたいならそう云いな。条件は付けるがね」
ヒッヒッ、……と、黒い人魚は悪い魔女のように、眼の前の無垢な人魚に見えるようわざと白い歯をむき出しにして笑った。――
「わあ、素敵!」
人魚は空を仰いでそう云った。初めて感じる足の感覚、初めて感じる土を踏みしめる感覚、初めて感じる地上の空気、――そのどれもが新鮮で、気持ちよくて、今までの人生が灰色のように見えてくる。
「これが地上、……これが空気、……」
あの人魚は怪しかったけれども、こうして服までちゃんと用意してくれたし、実は良い人魚だったのだろう。
「いいかい? 時間はきっかり12時間。それを超えて地上に居ると死ぬからね。覚えときな」
と、ぶっきらぼうに云った割には時計までよこしてくれた。さすがにここまでされては、あの人を悪者をには出来ない。……
「うふふ、たのしい!」
しばらくは野原を駆け回った。本でしか見たことのない、兎や、鳥や、花や、草花たちがお出迎えしてくるような気がして、いつまでもどこまでも走り回れるような気がする。
「あっ、そうだ、――」
と、云ったのは唐突に人と喋りたくなったからである。――海は広い。広すぎて普段は同じTribe の者としか会うことが出来ない。数年に一度程度の割合で、餌を求めて海流に乗って回遊していると、志を同じくする者と出会うことはあるが、だいたいすぐにはぐれてしまう。
なれば早速行動である。12時間のうち、もう2時間も使っている。急がなくちゃ、恋どころか友達すら出来ない。
「でも、どこに行けばいいんだろう?」
ま、初めての地上である。こういうのは多めに見てもらいたい。
「ああ、やっと見えてきた」
それから数時間後、迷いに迷って人魚はとある王宮のある街へとやってきた。
「ああ、ああ、――」
と感嘆の声を漏らす。門の中では目まぐるしく人が行き交い、賑やかな声がこちらにまで聞こえてくる。
人魚は思わず走った。もう少し、もう少しで憧れの人々と言葉をかわすことが出来る。――
「やっとだ、やっとだ、……」
ふう、……と息をついて顔を上げた、だがその時、
「えっ?」
と思わず彼女は驚いて、ぽかんと口を開けて固まってしまった。
「――ち、ちっさ、……」
憧れの人々、先程まで目まぐるしく行き交って居た人々、――その誰もが人魚の腰にしか頭が届いて居なかった。
「うおおっ、――」
「な、なんだ、……?」
「でけぇ、――」
彼女の姿を見た者がそんなことを云いながら、わらわらと集まってくる。が、誰一人として、彼女の首元にも、肩にも、脇にも、胸にも辿り着けていない。
「う、嘘でしょ?……えっ? 人間もこんなにちっちゃいの、……?」
間違って小人族の街に入っちゃったかしら? と思ったけれども、先程見かけた看板には、列記とした人間の街の名前が刻まれていた。
――なら、本当に人間って本当にこんなに小さいんだ。
「うふ、なんだか可愛いく見えてみちゃった、……」
半分くらい本心からそう思った。ぴょんぴょんと飛び跳ねる者などは、物語などに居る、高いところについた木の実を取ろうとする子供のよう。いや、遊び場にお姫様が迷い込んできた子どもたちと云った方がいいか。こういう時は、その小さな体でお城まで連れて行ってくれるのが常である。
「こんにちは、小さな人間のみなさま」
と、人魚はスカートの裾を持ち上げながら、少し足を屈めて、本を読んで学んだ通りの挨拶をした。失礼なことに、動いた拍子に悲鳴を上げて逃げた者が居たが、まあいいだろう。後で覚えていらっしゃい。
「――私、ここの国の王子様に用があるのですけど、どなかた案内してくれませんか?」
「で、では私が案内いたしましょう」
と、名乗り出たのは、これまた小さな男、……正直、彼女には子供にしか見えなかったが、顔立ちからして20代そこそこの青年だろう。���ちらの手を取ってきて、案内してくれるようである。
が、その手もまた、めちゃくちゃ小さい。きゅっと握り込んでしまえば、潰れてしまいそうである。
「す、すみません。もう少し力を緩めてくださると、嬉しいのですが」
体が小さいせいで、彼らは力も無いようである。こちらとしては、これほどにないまで軽く握っているつもりなのに、さらに力を緩めろと云うのは如何なものか。逆にもう少し力を入れてやろうではないか。
「うっ、……」
と顔を歪ませたが、何も云わないので、まあ、大丈夫だろう。
それにしても、本当にみんな小さい。露店も小さければ、人も小さく、家も小さい。あんなドアでは上半身がつっかえてしまうだろうに。それに、あれは二階というやつかしらん? 私の頭と同じ高さにあるのに、……ああ、そうか、こんなに小さい人たちならぴったりな大きさね。まさか憧れていた地上の人がこんなに小さかったなんて、なんだか幻滅だわ。……王子様はせめて私の胸のあたりに顔があればいいのだけど、……
人魚はそんなことを思いつつ歩いていたのだが、道行く人々の反応は相変わらずであった。
「で、でっかー!」
と叫んだ者すら居る。
と、そのうちに王宮の中に入っていたのか、門番の兵士に(――この人もめちゃくちゃ小さい!)、待つように云われて、案内されるがまま、応接間で王子様を待つことになった。すんなり通してくれたのは、どうもすでに人魚の噂がここにまで届いていたらしく、物珍しいものが好きな王子様が、むしろ自分から会いたいと仰っていたからだと云う。――物珍しいなんて失礼な。これでも私はまだ生まれてから18年しか経っていない、若き人魚だぞ。人間になってもまだ大きいからってそんな風に云うな、……と、文句の一つも云いたかったが、静かに待った。椅子が小さくて座れなかったが、せっかくの憧れの世界である。それも我慢することにしよう。いや、ちょっと我慢ならないかな。扉は腰を曲げないと通れないし、天井に頭はつっかえそうだし、ろうそくのついたシャンデリアには実際につっかえたし、もう少しまともな部屋はないのか。
「おまたせしました」
と、しばらくして声がしたので、ふっと顔を上げた。
「王子様、……?」
「ええ、そうです。お会いできて光栄です。長々とした名はついておりますが、ぜひエドと呼んでください」
深々とお辞儀をする王子様であったが、その姿を見た途端彼女は、
「――嫌です」
と、ついうっかり口にしてしまった。
「えっ? 今、なんと?」
「嫌です。――小さい人は嫌です。さようなら」
人魚は鍵が壊れるほどの力でドアをこじ開けると、呼び止める王子様とさきほどの青年の声を無視して、行き交う人々を蹴り飛ばしながら、ずんずんと街を歩いていった。――ふん、人間を蹴るのは気持ちがいいわ。蹴りやすいところに体があるのがいけないのよ。
街を後にしたとき、数人の兵士が追いかけてきていたような気がするのだが、歩幅が違いすぎて、彼女が走れば誰も追いつけないのは明白であろう。あっという間に海にまで戻ってきてしまった。
「――まさか王子様が一番小さかっただんて、……」
と、灯台の横で夕日を眺めながら人魚はつぶやいた。実際、王子の顔は、彼女の腰どころか、股の下あたりにあった。あれではお互い立った状態でも、跨げるのではないだろうか。人の脚の長さがそっくりそのまま身長だなんて、いくらなんでも小さすぎる。
「あーあ、なんだか幻滅しちゃった」
初めての地上はあまりにも小さかった。まるで怪物のように見られたし、思い出してみればすごく恥ずかしいので、今後来ることはないだろう。
「おっと、いけないいけない。あと5分か。……」
辺りはすっかり暗くなっていた。幻滅したけれども、空に浮かぶ星々はどれもはっきりと輝いていて、まことに美しい。ザバン! と、海に入った彼女は体を表にしてプカプカと浮きつつ、ぼんやりと空を眺めていた。もう人はいいけれど、この星や、兎や、鳥たちを愛でるためにもう一度来よう。そうしよう。――
「時計を返せ」
と、隠れ家に戻った時、例の人魚に突然そう云われたので、素直に返す。
「どうだったかい? 初めての地上は」
「なんだかもういいやっ、て感じ���わ。でもありがとう、貴重な体験だったわ」
ヒッヒッ、……と黒い人魚は笑って、
「これに懲りたら、こんなゴミ捨ててしまうことだね。――ヒヒッ、ではまた会おう」
と穴から去っていった。
残された人魚はしばらくこのガラクタたちの未来を考えていた。そして、再び地上の思い出を振り返るや、こう呟いた。
「はあ、……まさか人間も小さかったなんて、私に合う殿方はもうこの世にはいらっしゃらないのかしら、……」
と。―――
女尊化社会
最近、小学生中学生の男子生徒が、あらゆる面で同学年の女子生徒に劣り始めているのだそうだ。勉強をしては順位表をつけられないほどに差をつけられ、運動をしてはかわいそうになるくらいにボコボコにされ、教室では大人と子供が一緒に授業を受けているような印象を受けると云う。これを受けて政府は女子生徒だけ学年を一年か二年繰り上げる、……なんてことも検討しているらしく、つい先日に始まった選挙では、それをマニフェストとして掲げることが当たり前となっている。
普段、そんなに女子小学生や中学生に触れることのない私は、にわかにはそんな現状を信じることが出来なかった。ここ1年で始まった女尊化現象、……その大部分を担う少女たちを一目見たく、私はとある中学校へ取材に申し込み、次の週に実際に訪れることを許可された。これはその時の手記を元に書いた、いわゆる一つの随筆文である。――
私が訪れたのは都内某所にある名門私立校で、全校生徒は500人ほどのそれなりに大きな中学校ではあったが、とにかく男子女子の比率が一対一、かつ、勉強だけではなくスポーツにも力を入れていることから、様々なことを比較するには打って付けだろうと思い、そこを選んだ。
「それなら、登校も見ものですよ」
と応対してくれた先生の一人に云われていたので、私はちょうど授業の始まる20分前頃に校門をくぐったのであるが、まず驚いたのは少女たちの背の高さであった。
前方にとびっきり大きな制服姿の女の子が居るかと思えば、次の瞬間には楽しげな声で会話する、これまたとんでもなく大きな少女に追い抜かれるのである。私は一瞬動きを止めてさえして、彼女らが校舎に消えていく様子を眺めた。別に、今どきの子供に身長を越されることなど、まだランドセルを背負ったあどけない女の子ですら、身長175センチの私より高いのがざらに居るのだから、全く驚くことではない。だが、身長190センチとも、200センチとも取れる女子中学生が、こうもたくさん登校して行く風景は、私の目を瞬かせるに足ったのである。
「ふわあ、……」
と手を伸ばしながらあくびをする子ですら、私より頭一つ分以上は大きい。と、云うよりは、私より頭一つ分大きくない少女は居なかった。みんながみんな、190センチ以上の長身を持て扱いながら登校していた。
「おはようございます。今日の案内を担当する○○と申します」
「よろしくおねがいします」
親切なことに、学校側は人を一人割り当てまでして、私の取材の手助けをしてくれるようであった。案内をしてくれたのは、まだ教師になりたての若い男性で、ついでに学校の宣伝にもなりますからと、身も蓋もないことを云っていたのは、まだ覚えている。
「さて、女生徒学年繰り上げ問題についての取材だと伺っていましたが、どうしましょう? 延々と書類を見ながら説明するのも、飽きてきますでしょうから、彼女たちの授業風景を見ながら、私が口を挟む、……と云う形でよろしいですか?」
「ええ、構いません。むしろそうしてくれるよう、こちらから頼もうかと思っていた所でした」
こうして私たちはまず、教室で英語の授業を受けている彼女たちを見に行った。
ガラッ、……と扉の開く音に反応した生徒たちに、まじまじと見られたのはそれなりに気まずかったけれども、確かに大人と子供が同じ教室で同じ授業を受けているかのようだった。すらりと伸びた足を艶かしく組んで、つまらなさそうに頬杖を付きながらため息をつく様は、中学生のそれとは到底思えなかった。それに対して男子は、袖の余った制服に身を包み、どこか落ち着き無く授業を聞いている。
だが、やはり気になるのは、男子と女子で机の高さも大きさも全然違うことである。一回りどころか、二回りも三回りも大きいような気がした。
「すごいな。……」
と私は自然に声を出していた。後で教えてもらったのだが、中学一年生の女子の平均身長が191.6センチ、中学二年生で199.7センチ、中学三年生で206.2センチもあるらしく、私たちが見たのは中学一年生の教室であったから、まだマシと云ったところで、これが中学三年生の教室に行くと、もっと机の高さに差があるらしい。実際に見ることは叶わなかったけれども、空き教室にある女子用の机に座らせてもらったところ、20センチも30センチも足が浮いてしまい、もはや巨人の学校に訪れたような心地がした。
私はこの時、実は女性が巨大化すると同時に、男性の方はどんどん小さくなっているのだ、と思っていた。たぶん女子の体が大きすぎて、相対的に男子の体が小さく見えただけだろうが、同じ学年だと云うのに、ここまでの差を見せつけられては、そう思わざるを得なかった。それを確かめるには、後10年弱時が経たねばならないが、それがもし違っていたとしても、結局女の子の方が圧倒的に体が大きい事実は変わりあるまい。私たち男は、一生を首を上げて過ごさなければいけないのである。
しばらく私は、髪の毛をくるくると弄って暇をつぶしている女の子を眺めつつ、一緒になって授業を聞いていたのだが、
「女の子の方は、みんなすごくつまらなさそうにしてるでしょう。――」
と突然喋りかけられた。
「ええ、やっぱりそうなんですか?」
「ええ、そうなんですよ。ちょっと出ましょうか、――」
私たちはそこで一旦教室の外に出て���廊下で話の続きをし始めた。
「こちらがつい先日に行われたばかりの、このクラスのテストの結果です。すごいと思いませんか? 上位は皆、女の子たちです、それもほとんど者が満点で、一位の次が15位なんてことに。……」
「うわ、……ほんとだ。……」
「他のクラスでもだいたい同じ結果で、――あ、こちら学年の全クラスを通してのランキングですが、見て下さい。――」
と云われたので、差し出された書類の一部に目を通したのだが、最初の7ページ目まで順位が全部一位であったし、その後も次々と女性の名前が連ねられ、最終的に男子の名前を見たのは後半になってからであった。
「男子女子の名簿みたいですね。……」
「そうでしょう。男女混合にしてしまうと、もはやランキングの意味がないので、最近では男子なら男子、女子なら女子、と云うように作ってます」
「でも女子の方はそれでも機能してなさそうですね」
「おっしゃる通りです。女子の最低点が、男子の最高点よりも高いですからね、彼女たちはもう満点かそうでないかで、互いを競っているそうです」
「確かに授業をつまらなさそうに聞くわけですね。それに政府が女子の学年を繰り上げるのも頷けます」
「ですが、一年や二年程度では話が収まらないかも知れません。何せ、彼女たちは高校の内容まで熟知していますから。いっその事男子女子で、学校まではっきりと分ける必要があると思います」
「なるほど確かに。それで小学校の次が大学、――と云うのが彼女たちの能力に一番合っているのかもしれませんね。――」
この会話が契機となって、私たちは窓の中でこれほどになくつまらなさそうに授業を聞く少女たちを眺めながら、彼女たち、――ひいては日本の、――特に私たち男の行末を話し合った。
私の取材は中々円滑に進んだと思う。途中、一人の男子生徒を捕まえて、
「テストの結果どうだった?」
と聞いて顔を青ざめさせてしまったのは反省点だが、案内役の先生の話は大変実りのある話題ばかりであった。
「もうあと数年もすると、ここに居る女の子たちが世界を席巻するでしょうね。いえ、冗談ではなくて、事実、確実にそうなります。学問も、政治も、経済も、スポーツも、……全てあのテストの結果のようになるでしょう」
と、お昼を一緒に食べている時に、彼は寂しそうに語った。それは毎日、あの中学生と触れ合っているからこそ出来る顔だったように思える。
「ところで、午後は体育館の方へ行きませんか? あなたもご存知の通り、私共の学校では特にスポーツに力を入れておりまして、……」
そこで学校の自慢になったので、ここで多くは書き記す必要はあるまい。だが、一つ興味深い事を云った。
「――しかし、私は一つ楽しみにしていることがあるんです」
「と云いますと?」
「男が打ち立てた世界記録が次々破られる瞬間が、――なんだか変なことを云っているように自分でも思いますが、楽しみなんです。それで、ついでなのでぶっちゃけてしまいますが、ちょっとこれは、――」
アフレコでお願いしますと云って、彼は話を続ける。
「実は、もうすでにいくつか破っているのもあるんです。――」
「なんと」
「例えば、トレーニングルームにあるベンチプレス。彼女たちは涼しい顔で持っていますが、その重量は世界記録を大幅に超える800キロとか、900キロなんです」
「ええっ!」
「それともう一つ例を取ると100メートル走。彼女たちは早かった遅かったで、喜んだり悔しんだりしていますが、その記録はだいたい8秒から10秒なんです。11秒台の子は滅多に居ません。確か一番遅かった2組の子で11.1秒とか、そんなだったと記憶してます」
「そ、そんなに?」
9秒台に乗ったとか、乗らなかったとか、もはや馬鹿らしくも感じる。相手にもならない。しかもまだ中学生で、恐らく体育の授業で遊びで測ったのだろう。本気で練習に励んだらもしかすると7秒台も夢ではないかも知れない。
そうやって、私が驚いているうちに体育館へついたようである。中ではバレーの試合をしているらしく、元気な声とボールを打つ音が響いているのだが、
「あれ? もしかして、相手は男性の方ですか?」
と私は思わず聞いた。白い体操服に赤いゼッケンを着けた少女たちの向かいのコートには、ちゃんとしたユニフォームを来た男性が居たのである。
「ええ、話せば長くなりますが、端折って云うと、今はとある男性プロチームと試合をしています。あ、そうそう、授業なので体操服を着ていますが、部活では私たちもちゃんとユニフォームを着ますよ」
と、云うことは彼女たちは全くの素人がほとんどなのであろう。だが、その体つきはプロチームよりも遥かに大柄であるし、その動きはプロチームよりも遥かに機敏であるし、それに表示されている点数を見て、私は目を見開いて固まってしまった。
「20 - 0、……」
さっきから中学生チームばかりがサーブを打っているから、きっと負けているのはプロの方なのであろう。見ると、ゲームはだいたいサーブで決まっているらしく、男性プロの方は飛んできたボールを唖然として見るだけである。反応したかと思えば、あらぬ方向へ飛ばしてしまい、またサーブが飛んでくる。上手く取れても、うっかり彼女らのコートへ飛ばしてしまって、次の瞬間には耳をつんざかんばかりの音を立てて、ボールは空高く跳ね上がる。
確かにかわいそうに思えてくるような試合運びであった。
「でも大体の競技はこんなものですよ。以前、野球の試合をした時には、男子高校生のチームに初回だけで17点も入れてましたからね。それに、つい先月に、こっそりとプロ野球のチームとも試合したのですが、結果は15対1、……もちろん彼女らの勝ちですよ。あまりにも一方的な試合だったので、3回途中で切り上げられてしまいましたが、あのまま続行しておくと、少なくとも50点は入ったのでは無いのでしょうか。まったく恐ろしいものです」
その後、バスケもテニスも卓球も、何もかも一方的な試合をやりすぎて、もう外からは練習試合を組んでくれないことを彼は語った。
電光掲示板に25 - 0が刻まれ、焦燥しきった様子の男性プロチームの面々がベンチに戻る中、私はそのベンチに座る一人の男に話しかけた。彼は試合中もベンチに座っていたのだが、怪我をしているのか腕に包帯を巻いて、頭を抱えて自分のチームが素人の女子中学生に、ボコボコにされている様子を見守っていたのであった。誰に話しかけてもよかったのだが、悲壮感の漂う監督に話しかけるのも気が引けるし、まだ息の整っていない選手たちに話しかけるのも気が引けるので、しごく真面目な顔で、ちょっとお話をお伺いしたく、……と声をかけると、意外にも朗らかに彼は応対してくれた。
「こんな試合は初めてですよ。3セットやって、一点も取れないなんて」
「い、1点も、……ですか?」
「そう、1点も。と、云うより昨日から初めて、うちが取った点数はたったの3点ですよ、3点。しかもそのうち2点はあの子らのミスで取れたようなものです」
聞けば、練習試合はこの前の日から行われていたらしく、彼らは毎時間、体育の授業として訪れる女子中学生相手にボコボコにされ続けたと云う。最終的に取った点数は合計で10点だったらしいが、その時のことはもうどんなに聞いても教えてくれない。
「それで、その腕はどうしたんですか?」
と、真新しい包帯に包まれた、真新しいギブスに嵌められた腕が気になって仕方が無かったので、私は問うた。
「あ、それ聞いちゃう?」
「ダメでした?」
「まあ、ここまで恥ずかしいところを見られてたら、同じか、……」
彼はギブスの巻かれた腕を上げながらそう呟いて、
「あの子たちにやられたんですよ」
「喧嘩でもしたんですよか?」
「喧嘩なんて、……そんな恐ろしいことする訳ないじゃないですか。折れたんですよ、彼女らのスパイクで、バッキリと真っ二つに」
「お、折れたんですか、……?」
「俺たちがあの子らのスパイクを取らないのは、体がついてこないんじゃありません。折れるんですよ、あんな強烈なスパイクで骨が。だから、絶対に当たらないよう、逃げるんです。悔しいけど、そうしないと体がもたない」
と、歯ぎしりをしながら彼は云った。それはプロの意地というものであろうか、負けると分かっていて、なお体を動かせないもどかしさが存分に顕れていた。――
私は次いで、コートを横断して賑やかな声を出す少女たちの元へ向かった。
「あ、はーい?」
と声をかけると可愛らしい声で反応してくれたが、あまりの身長差から、私には壁に立ちはだかったかのような心地がした。
「何でしょう?」
驚くことに、男性のプロチームをボッコボコにするほどの試合をしたというにも関わらず、彼女らの息はもう整っていた。
「どうでしたか、さきほどの試合は?」
「あ、……えーと、……まあ、いい相手だったです」
と、彼女はかなり言葉を選びながら云うので、
「正直に云っても構いませんよ」
「いいんですか?」
「ええ、何とも思わないので大丈夫です」
「えーと、それじゃあ、……正直に云って弱すぎでした。じゃれ合っているみたいで、途中から私たちも手を抜いたんですが、それでも弱くって、……」
こんな正直すぎるほどの回答が得られたのだが、彼女が話しているうちに周りに居た子らも、わらわらと集まってきて、気がついた時には私は2メートル前後の長身女子中学生に囲まれてしまっていた。
「弱かったねー。プロだって云うからもっと強いのかと思ったのに」
「うんうん、あんなのでプロになれるなら、誰だって出来ちゃうよ」
「体も小さいしね」
「何回パーフェクトゲームした?」
「もう5回? 6回くらい?」
「もっと多いよ―」
「っていうか何回ボールがこっちに入ってきたっけ?」
「私サーブを打つしかしてない!」
……はるか頭上で繰り広げられる会話に入り込む隙なんてなく、私は黙って聞いているしか出来なかった。聞きたかったことは山積みだったけれども、その後も結局、彼女らの圧倒的な体格に、文字通り圧倒されてしまい、少女特有の甘酸っぱい匂いと立ち込める「熱」にやられたこともあって、今の今まで聞けずじまいである。
「どうでしたか、我が校の生徒たちは?」
と、帰り際に案内役の先生に問われた。
「素晴らしかったです、色々な意味で」
「そう思ってもらえたのなら、嬉しい限りです。それで、取材はこれだけでも十分ですか?」
「ええ、ええ、もう十分すぎるほどです」
「それは良かった。ぜひ、またいらしてください。今度は今回見せられなかったトレーニングルームも案内しますよ」
「ありがとうございます。――」
さて、その後の展開であるが、私の取材した内容は、次の日のどこそこの雑誌に先手を取られたために、結局公表できずじまいでそのままになってしまった。だが、あの学校を訪れた時の衝撃には、未だに忘れられないものがあるので、この日記にしたためて、時おり見返したいと思う。
(おわり)
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