#プレイカラー2 | Explore Tumblr posts and blogs

sicihi · 8 years ago

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カラフル

この前、カラフル色鉛筆を買った。カラフル色鉛筆という名前が果たして正しいのかわからないけれど、一本の芯が放射状に区切られて7つの色が一緒になってるヤツ、くるくる回しながら描くとするする色が変わる、あれ。小学校の時、憧れて憧れて買ってもらった一本は大事すぎてあんまり使えなかった。

小さい頃から色とりどりなものに目がなかった。覚えているのは鍋敷き。知り合いの誰かが、チラシを折って組み合わせる工芸みたいなのが得意らしくて、細長い三角がたくさん折り重なって円になったような鍋敷きを作ってくれたのを、我が家ではずっと使っている。そこらのペラペラのチラシで出来ているのに頑丈で、未だに現役だ。小さい頃、その鍋敷きの、細長い三角ひとつひとつをよく見ては、お気に入りの三角を探していた。お気に��りの三角とは、何か衣料品だかのチラシで、カラーバリエーションがある部分が見えた状態に折られたパーツだった。これ、とても説明が難しくて、この文章が何言ってるのかがもう相当わからないと思うけれど、本当にこのままで、頭にこびりついているのだ、ひとつだけカラフルな三角が。大きくなって、頭にこびりついているカラフルを頼りに鍋敷きをよく見てみたけれど、表面は擦り切れてしまって見つけられなかった。でも確かにあのカラフルを私はとても好きだった。

とにかくカラフルが好きだった。なんでもないものでも、カラフルだと目を奪われた。これ、すきだな、と思った。

色鉛筆を、小さな鉛筆削りで削ると、粉がカラフルでうっとりした。それがエスカレートして、一時は色鉛筆を研いでは折り研いでは折りして、色とりどりの芯だけを集めて容れ物にしまっていた。きゅぽっとふたを開けると、小さなカラフルがコロコロ動く。今思うと、色鉛筆を綺麗に研いで折って集めるなんて、なんだか少しサイコな趣味にも感じるけれど、未だに色鉛筆を研ぐ時の粉を見ると気持ちがわかる。

小学校の高学年になって、塾に通い始めたら、その隣に文具屋さんがあって頻繁に通うようになった。ある程度お小��いを自分の裁量で使えるようになって、文具を買い漁った。ハイテック��、プレイカラー、コピック…カラーバリエーションの豊富なペンにとても惹かれた。それでもお金があまりなくて、ペンはセットで買えたことはなかった。メモ帳の収集の方が大事だったから、ペンは売り場で眺める方が多かった。でもカラフルさにはやっぱりうっとりして、憧れた。母が500色色鉛筆を途中まで買っていたことを知り、譲ってもらった時はこの世の全てを手に入れたくらいの嬉しさになった。

中学に上がって少し経つと、何かにつけてカラフルに色分けするのは少し子供っぽく思うようになった。好きな色1色、もしくは同系色でまとめる、それか2色の組み合わせで勝負する、大人っぽくオシャレな雰囲気に惹かれて、あまりカラフルカラフルしなくなった。ノートの色分けは緑と黄緑、それか青だけにしてみたり。高校生にもなると、色分けとかそういう楽しみもなく、そんなに色ペンを使いこなすこともなくなっていた気がする。もうなんだか既に記憶が薄い。

大学生になって、いつの間にか四年生になって、就活をしている。真っ黒なスーツに身を包んで出かけると、なんだか身体が堅くて重いし空気がぎゅうぎゅう詰まっているみたいだ。就活スケジュールをこなして、どんよりした気持ちで帰り道を歩いているときに、ふとカラフルな文具屋さんに目が止まった。普段から文具コーナーはウロウロしがちな方ではあるけれど、乗り換えの移動途中で目に入りつつ一度も立ち寄ったことがない文具屋さんで、久しぶりにわくわくした。便箋や、シール、手帳にマスキングテープ、別のフロアにはかなり充実した画材がずらりと置いてあった。画材のフロアはどうにも玄人感を受けて緊張し、長くはいられなかったけれど、わくわくした。途中で可愛らしい封筒を手にとって、レジに行く前にもう少し、もう少し…と隅々まで陳列を眺めていると真っ黒でかっこいい鉛筆を見つけた。マットな黒で触るとすべすべしていて、金の箔押しでロゴが入っている。中の木まで真っ黒で、大人の女の人みたいなセクシーさ。でもその芯は、放射状に別れた7色で出来ていた。アッと思って値段を見ると（貧乏性なので欲しいと思うとすぐ値札を見てしまう癖がついている）、100円。こんなものが100円で買えてしまうのか…と感動して、すぐにレジに連れて行った。帰ってきてクラフト紙の包装を解くと、夢みたいな鉛筆がわが家にあった。君はなんてマーベラス！という気持ちで早速白い紙にさらさらと線を引くと、するする色が変わって虹色の線があらわれた。自分が3本の指できゅっと持��た棒を紙に当てたその先から、こんなに簡単に虹色がするすると生み出される様は、魔法にひとしいのではないか。昔、鉛筆を寝かせて滑らせるとその鉛筆の先の通ったあとが綺麗に鉛色になっていくのを、改めてまじまじと見ていて、感動してしまったことがあったけれど、今回はもっとすごい。だって、カラフルな線がこんなにも簡単にするする紡ぎ出される。うっとり。

虹は幸せの象徴みたいなふうに、見るとみんなが喜ぶけれど、虹が例えば赤一色とかだったら、そこまでじゃないんだろうな。虹は7色で、カラフルだからあんなにハッピーなんだと思う。レインボーアートがあんなに欲しくてたまらなかったのも、あのブラシの魅力以上に、カラフルな絵が簡単に描けてしまう魔法に感動したからだと思う。戦隊モノや女児向けアニメ、アイドルの多くがメンバーカラーを持っているのも、カラフルな見た目になってみんなハッピーになれるからだ、きっと。カラフルはある意味パワーで、パンチだ。カラフルパンチ。色の暴力。グーで殴る。色で殴る。色で圧倒する。カラフルパンチは殴られた人をハッピーにする魔法。そんなことを考えながら、どうでもいいような絵をカラフル色鉛筆で描いてはうふふとやっている。真っ黒な服着てる私には真っ黒なこの鉛筆が最高の相棒に思える。小さい頃は勿体なくてあまり使えなかったカラフル色鉛筆、今の私はどんどん使っちゃえるのだ。100円で買えてしまう幸せを見つけてしまった。これは大人のための魔法のステッキなのかもしれない。多分そうだ。線を引くだけでうっとりできるなんて、合法トリップにも近い。そんなふうに、鉛筆一本で舞い上がっている自分がいて、カラフル好きも大概だな、三つ子の魂なんとやらだ、と思った。我ながら微笑ましい。

小さい頃なりたいと思ったものには全くならないコースを歩んでいるけれど、私はきっとこれからも、こういう魔法のステッキとか、魔法の紙とか、魔法のインクとか色んな小さな魔法を手に入れて半径30センチの中だけで効く魔法を使う大人として生きていくんだなと思うと、まあまあ悪くないでしょうというかんじ。お金で買う魔法だってなかなかやるのよ。カラフル鉛筆を削った削りカスを眺めながらふと、カラフル狂の幼き私を思い出したので、こんなことを書いてみたのでした。おわり

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