#イランの核開発に反対するイスラエルのモサド
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)5月5日(水曜日)
通巻第6897号
中国、北朝鮮、そしてイランは頭痛の種
米国、イランと核合意復帰の下交渉が水面下で続く
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米国がイラン制裁の一部を解除するという報道があった。
イラン国営メディアが5月2日に報じたもので、「拘束している収監者を4人ずつ交換し、米制裁によって関係国が支払いを凍結しているイラン資産70億ドル(約7700億円)を引き渡すことで合意した」となんだか陽動作戦、攪乱情報のようだった。
米政府は即座にこの報道を否定した。
バイデン政権はオバマ政権時代の2015年にイランとの間で締結し、トランプが無効を宣言した「核合意」交渉の再開を意図し、水面下で交渉を続けてきた。
イランはトランプ前米政権の経済制裁解除を求めているが、「イランが核合意の逸脱行為をやめるのが先決だ」と米国は前提となる原則を曲げず、交渉は行き詰まっている。ロシアと中国は「米国が先に制裁を解除すべき」とし、イランを積極的に支援している。
四月下旬にイスラエルは米国に外交使節団を派遣した。なかでもモサッドのコーエン長官がバイデン大統領と会談したことは既報の通り。
帰国後、会談の内容は明らかにされていないが、イラン核合意復帰のバイデン路線には変更がなく説得は不首尾に終わったようだ���
その直前、イスラエルのガンツ国防相(前統幕議長)はエルサレムを訪問したオースティン米国防長官と会談している。二人はイランへの対応で「協調」を確認したというが、ガンツは「米国がイラン核合意に復帰する場合、イスラエルの安全が守られるように」と婉曲な表現ながら、重ねて警告した。
会談後の記者会見で、ガンツ国防相は「米国はイランだけでなくあらゆる行動における完全なパートナー」とし、「イランとのいかなる合意も世界と米国の利益を確保するよう、そしてわが国周辺地域における軍事競争を阻止しイスラエルを守るため、米国の同盟国と緊密に行動する」と述べた。
イランは「イスラエルを殲滅せよ」と絶叫してテロリストを支援している国である。そのために核兵器開発に余念がないのだ。
イラン革命防衛隊は「イラン革命」で政権を掌握して以来、パーレビ下の国防軍幹部5000名を含む、反体制派を三万人前後を粛清し、そればかりか同性愛者も処刑し、外国人記者も拘束してきた全体主義国家である。
この点では北朝鮮と同じ体質だが、異なるとすればイランは資源輸出国であることだ。この石油のために、インドも中国も韓国もイランの内政には立ち入らない。
中国は一日100万バーレルをイランから輸入している。
▲イラン各地のモスクはじつに美しいが、人々の心は冷え切っている
筆者は1990年代にイラン各地を十日間ほど旅行した経験がある。モスクの美しさ、バザールの賑わい、水タバコ、ガラス美術館で中国が自慢する唐三彩の原形が、ペルシァ
にあることに気がついた。ペルシャ絨毯は日本の販売価格の三分の一ほどだった。
旅行していた気がついたのは、人々の目が猜疑心の所為か輝きを失っていること。政治向きの会話を絶対にしないこと。随所にある喜捨箱に誰もお金をいれないこと等だった。
狂信的宗教指導者に吸い上げられる資金となる真似はしないのだ。また革命防衛隊というのは文革時代の中国の紅衛兵的な尖兵であり、かれらがイラン経済の利権をほぼ掌握してしまったことに絶望を漂わせていた。
空港では中国の軍人が大勢乗っていて我が物顔に振る舞っていたことも鮮烈な印象だった。
米国のシンクタンクFDD(民主主義防衛財団)に拠れば���イランはテロリスト組織や危険な政権に年間160億ドルもの支援資金を提供していると報告している。シリアのアサド政権に150億ドルという巨額。レバノンのヒズボラに7億ドル強、イラクのシーアは民兵に1億5000万ドル、パレスチナのイスラミック・ジハードに1億ドル、イエーメンのフーシに数千万ドル。くわえてイラン国内にテロリストの「安全地帯」を提供している。
ところが、3月27日、中国はイランとの間に「25年間に及ぶ両国の包括的協力協定」に署名した。
テヘランを訪問していた王毅然外相は、ザリフ外相、ロウハニ大統領と会談し、交換条件は「一帯一路」へのイランの参加だった。中国は5G通信システム構築などでイランに総額4000億ドル(約44兆円)相当を投資し、その見返りに向こう25年間、原油を廉価で輸入する。また両国は軍事協力を推進してきたが、ドローンなど軍事面の関係強化を謳った。
イラン訪問の三日前、3月23日に王毅外相は、訪中したラブロフ(ロシア外相)と名勝地・桂林で会談し、念入りな打ち合わせを済ませていた。物騒な国々が、舞台裏で複雑怪奇な動きを続けている。
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)2月17日(木曜日)
通巻7222号
イラン、秘密の核開発施設を山の中に建設中
イスラエルのメディアが報じた中味とは?
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エルサレムポスト(2022年2月16日)がすっぱ抜いた。
「イランはイスラエルからの空爆を避けるために、新しい核施設をナタンズの地下深くに造成している」と報じた。
国際政治の舞台では、イスラエルの空爆は「イラン核合意」交渉の決裂をもって実施されるだろうとしており、また中東諸国にとってもイランの脅威を排除するイラスエルの軍事行動に反対は起きないだろうと観測されている。
ナタンズの秘密核施設は山中から地下深くに建設中で、イスラエル軍機の空爆で破壊は不可能という。
中国の核ミサイル基地のように山の中に無数のトンネルがあちこちをつないでいるらしい。ミサイル発射も中国軍の場合はトンネルからのレイルガン方式が想定されている。
モサドは2020年7月と2021年4月にニケ所の核施設疑惑の建物などを爆破したと推測されているが(小誌既報)、新施設はその地域に近い地下施設だ。
この「ナタンズ・トンネル核複合施設」が建設されている山は「クー・エ・カラン・ガス・ラ」(海抜1608メートル)。また遠心分離施設が建設されている山は「クウエ・ダグ・グーイ」(海抜960メートル)。
現在欧米とイランの交渉がつづく「イラン核合意part2」は、この新設箇所を協議の対象とはしていない。どうみても、この巨大地下施設とトンネルは核開発計画の一環で、イラン雄機密プロジェクトだと考えられる。
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