#「空と湖」 風がやむと しん��静かになって 音がなくなるのを感じる 静けさって こういう感覚か…と 不思議な気持ちになる 瞑想して 頭の中の考えごとが ふっと静まった時と 同じよ
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katoyoko · 7 months ago
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ukigawachihiro · 7 years ago
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『雲間より』
 雲の隙間から地球を見る。青い波が日差しを白く照り返す。青と白の絨毯を一艘の小さな船が切り裂いていく。私の乗る飛行機と海を走る船はちょうどねじれの位置の関係になっている。少し人生に似ていると思った。  久々の帰省からの帰り道。十年ぶりに開かれた同窓会。すっかり大人になった人も、見た目が全然変わっていない人も入り混じって、時の流れを感じたり、高校生の頃に戻ったような気持ちになったり、ちっとも成長していない心が忙しく弾んでいた。あと、意外と名前を覚えているもんだなー、と思ったりもした。一番の仲良しだった佐々木葉子ちゃんはもちろん、一番可愛かった佐倉藍ちゃんも、頭の良かった豊島あかねさんも、野球部のエースだった三浦陽介くんも、四角い顔の山田亮治くんも覚えていた。本当は一番好きだった石黒航くんのこともちゃんと。彼は私の名前を覚えていただろうか。
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 白崎翔子さんのことを僕は好きなのだが、彼女は今、違う人と付き合っている。受験を控えた高校生三年生の夏に一体何をやっているのだ。クラスメイトとして、白崎さんの将来に影を落とす可能性のあるその関係を引き裂くべく、穏やかな湖の水面のように満ち足りた空気の二人の間に一石を投じたいところであるが、そんなことをしたら人間としての僕の評価は地に落ちるだろう。白崎さんに告白した男は、他のクラスの少林寺拳法部の奴だった。沢村一樹風の顔をしていて割と格好良いので、彼の成功も頷ける。これといった長所がない僕には初めから勝ち目はなかった。隣の庭に実った恋ほど味気ないものはなく、暇つぶしにもならなければ、腹の足しにもならない。  放課後、購買にパンを買いに行く。白崎さんのことを考えないようにし始めてから、異様に腹が減る。廊下に出て、階段を下ると、視聴覚室の前に白崎さんの後ろ姿があった。出来立ての彼氏と向かい合って話している。思わず二人を見てしまい、彼氏と目が合った。急いで無視する。胃の疼きに集中して、できるだけ颯爽と通り過ぎた。
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 空港は少し不思議な場所だ。子供の頃はターミナルに着いただけでワクワクして飛び跳ねていたし、その高揚感は大人になってもあまり変わらない。たくさんのお土産屋さんの間を、街中よりもゆっくり歩くと気持ちが良い。大きい窓から見える飛行機は、知らない人たちをたくさん乗せて、次々と飛び立っていく。誰かにとっての旅立ちが、他の誰かにとっては帰り道となる。誰かにとっての妥協の恋が、誰かにとっての失恋になるように。とても不思議だ。  空港は地上とも空とも重力が違っていて、ふわふわと浮かんでいる雲の上に建つ郵便局のような役割を持つ。そこに人や物や手紙といった様々なものが集められ、それぞれの目的地に合わせて、歩く歩道を使ってだんだんと仕分けされていく。ある人は南の島に。ある手紙は戦地の親友に。秘密の荷物はやはり秘密の場所に。翼を持たない私たちが空を飛ぶための長い準備。お腹が減って食べたソフトクリームは、雲をそのまま固めたように甘い。  決められた目的地に向かって飛び立てば、もう後戻りはできない。その怖さを、何も考えずに受け入れる鈍感さはいつの間にか身についていた。
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 恋は終わり、チョコチップメロンパンを食いながら、自分自身の高校生活を振り返る。高校っていうのは、郵便局に似ている。進路選択を目の前にして、自分たちに宛先の住所と宛名を書き込んで、窓口に差し出すと、そこにたどり着くために必要な努力と費やすべき時間を示してくれる。それらを全て支払うことができれば、自分が望むポストまで届けてくれる。  ずっと好きだった白崎さんに想いを告げられないまま、間もなく最後の夏休みを迎える。今更告白しても遅い。白崎さんには彼氏がいるのだ。二年生の冬。バレンタインデーに白崎さんから唐突に貰ったチョコレートの甘さは、そのまま僕の高校時代の美しき青き思い出として残ってしまうのだろうか。あのチョコレートにはどんな意味があったのか、そんなことすらもう聞けない。  感傷に浸っている場合じゃないことは分かっている。行きたい場所を自分で決めなくてはならないのだ。宛先を書くのは、親でも、先生でも、ましてや好きな人でもなく、自分自身だ。誰かに連れて行かれる未来など、勘弁してもらいたい。いっそこのまま、どこか遠く、誰も追ってこれない場所に逃げてしまおうか。たった一人で。ああ、馬鹿らしい妄想だ。苛立ちとともにチョコチップメロンパンを食い終わったところで、僕は唐突に困った。  住所のないところに行きたい僕は、どうしたらいいのだろう。
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 高校生の頃、友人たちがよく男女の違いについて口にしていた。 「子供じゃん、男」 「まぁねー」 「話合わないよね」 「細胞レベルで幼稚だよね」  細胞レベルで幼稚であることは、とても良いことだ。老化を忌み嫌う私たち女子の細胞は、全能性を失い、多能性すらなくなって、阿呆な男子高校生のような未分化の細胞に戻ることはもうできないのだ。可愛さが最も強い力として君臨している教室。誰もがその文化の中に引きずりこまれていく。そのシステムは大人の社会の縮図なんだと、十年経って分かった。可愛さが支配する世界を誰も望んでいないのに、気が付いたら、そうなってしまっているのだ。誰かが仕組んだわけではなく、『学校』という小さな環境がそうさせるのだ。  飛行機の席を指定するように、自分の居場所を確保する。最初からファーストクラスに座っている子。窓側に座れる子。通路側を確保する子。真ん中に座るしかない子。路線は有限だ。学校で選ぶことができる選択肢は限られている。教室の数も、授業の種類も、部活も、先生も、善しとされる進路も、生徒の数に対してあまりに少なすぎる。狭いシートで体を歪めたまま、私たちは社会に適合した立派な大人に成長していく。  同窓会で再会した多くの友人たちは、学校で見せていた振る舞いを少し変えていた。学校という狭いコミュニティから、広い社会に出たから当然といえば当然だ。海外に羽を広げた人もいた。私たちは、いつの間にか歪んでいた姿勢を、少しずつ楽な方に伸ばそうと痛みに耐えている。一生懸命働いて、与えられたステージで自分自身を表現し、頭の中に描くことのできた、少し先の自分の姿に向かって休まず進���続ける。  でも、石黒くんだけは、あの頃と全く変わっていなかった。まるで大人になっていない。身体も大きくなって、陽に焼けた首や腕はずっと逞しくなっていたけれど、目は高校生の頃のままだった。未分化な彼は老化した私に言った。 「大人になったね」  飛行機の窓の外、見慣れた空と雲。いつも飛行機から見る、ありふれたの景色。本当は同じ雲なんて一つもないはずなのに。私の目はすっかり老いてしまったのだろうか。
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 高校生活最後の夏休みの間、僕は全く勉強しなかった。受験戦争の天王山と言われる夏に、僕は教科書を一切開いていない。そもそも、自分の未来が全く想像できない。大学生の自分。社会に出た自分。お金を稼いでいる自分。何にもイメージできないなら、何にもならなければいいのか。クーラーの効いた少し寒いくらいの部屋で、ゲームをしている今の自分のように。  ほとんどの生徒が大学に進学する高校に通いながら、大学以外の道を選ぶことも、また逃げているように感じていた。たくさんの大学の、無数にある学部の中に、自分の知りたいことがないという証明は、不可能にさえ思える。テレビゲームで負けて、太ももを思い切り叩く。一人きりの部屋に安っぽい音が響く。泣きそうになるのを失恋の悲しさでごまかす。  夏休み直前のホームルームで白崎さんに進路のことを聞いた。 「一応、推薦で国立とかもあるかなって考えてるよ」 「国立大学って、近いとこ?」 「うん。あんまり遠くに行く意味もないかなって。他の人には言わないでね。絶対。約束」  女の子は鳥のようにどんどん大人になってゆく。力強く羽ばたいて、遠くまで見通せる鋭い目で、進むべき道を選び取る。少し低い声で、明確な輪郭を描きながら、彼女は言った。僕は海底で押し黙るミズタコのように、何の言葉も返せないまま、ただ頷いた。
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 飛行機は目的地に向かって止まることはない。一見立ち止まっているように見えても、身体を前へ押し進める力から逃れることはできない。本当に止まってしまったら、途端に揚力を失い、私たちはただ落ちていく。鳥のように自由に空を飛べないから少し悔しいけれど、仕方ない。重力ほど平等なものは世の中にないのだから。それを理解することで、私たちは大人になっていく。  それもしても、私はいつから『自分が大人なのだ』と思い込んでいるのだろう。成人の日がそうさせたわけでも、親離れしたからでも、社会がそう求めたわけでもなく。気が付けば、ステレオタイプな社会人としての自分を自分自身が求めていた。  見たことがない場所を見てみたい。夢の中の香りを嗅いでみたい。想像もできない世界に出会えば、想像もできない自分になれるかもしれない。同窓会で石黒くんが皆に話していた海の中の話。碧のサンゴに紅のサンゴ。シャコガイの内側の煌めく瑠璃色。揺らぐイソギンチャクに身を隠すハナビラクマノミと目が合って、私は何を思うのだろう。  雲間より、海底を想う。
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 夏休みを引き篭もって過ごした僕は、親にも見放され、遂には一人、海に行くことを決意した。一番安い切符を買って、最終電車に乗る。同じ車両にはスーツ姿のおじさんが一人だけで、座ったまま目の前を凝視していた。おじさんから目をそらして、一番遠くの席に座る。乗り換えのために僕が降りても、おじさんは座ったまま動かなかった。クーラーが効き過ぎて、時が凍りついたかのような先頭車両。窓から見える街の灯りは、それでも徐々に減っていく。やがて、無人駅に着いた。ここで降りて、後は海まで歩く。小学生の頃に友達と来た時は、確か三十分くらいだったはずだ。街灯はまばら。それでも迷うことはない。海から風が吹いている。潮の香りの粘り気が強くなる。だんだんと海が近づいている。程なく波の音が聞こえてきた。  夜の海は夜空色のインクを垂らしたように黒い。白波が濃灰色の線として時折現れる以外は、ずっと先まで暗闇の世界だ。静寂は波音を大きくして、体育座りの僕をすっぽりと包み込んだ。好きな人に、好きだということすら伝えられなくて、果たして、自分の夢ややりたいことを誰かに言える日が来るのだろうか。目を閉じて波に訊いても、挨拶みたいな当たり障りない返事が打ち寄せられるだけだった。家族にも、先生にも、友人にも心配ばかりかけている。自分のことしか考えてられない自分に嫌気がさして、目を強く瞑り、腕で体を締め付けた。
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 文庫本に挟んだチケットの半券。空港の窓口で変えた飛行機の行き先。会社の上司に送った休みの連絡のメール。適当に書いた理由はもう忘れた。数日だけど、でも、行くことに意味がある。誰にも正解なんて分からない。十年経っても変わらない彼は、十年経っても弱かった私のムカつく心に、きっとそんな風に声をかけてくれる気がした。彼は私にも、私以外の誰にでも、悲しいくらい優しかったから。  着陸が近づいたアナウンス。景色が随分低くなった。眼下に広がる青。水面はだんだんと透けていく。海の底に広がるサンゴの森が見えてくる。このままでは海底を突き抜けて、どこまでも行ってしまいそうだ。私が一人でこんな世界に向かっていることを、阿呆らしいけど、奇跡のように感じている。大人になれば誰でもできることなのに。  もうすぐ一番低い雲を抜ける。
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 目を開けたら、空はすっかり藤色になっていた。陽が昇ると、だんだんと海が青く透けていく。座ったまま眠っていたようだ。砂浜には透明な波が寄せて、染み込むように消えていく。どこまでも青い海を見て、僕は海の果てのことを考えた。海に果てがあるとしたら、一体どんな場所なんだろう。地球は丸いから、海の果ては遠いだけでなく、おそらく海底にある。住所のないその場所ははどれほど暗く、透明で、静かな場所なんだろう。  波が出てきて、桟橋と船とを繋いでいるロープがぎしぎしと鳴っている。  船のある大学に行こう。そんな馬鹿みたいなことを、寝ぼけた脳みそがようやく思い付いた。
(新作短編集『雲間より』より表題作『雲間より』)
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