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加害者の山際陽子ちゃん
山際陽子ちゃんは泣いていた。スターバックスの喧騒の中、私がトイレに立ちそして戻ってきたそのとき、静かに泣いていた。すこしだけためらってからお待たせ、と声をかけた。山際陽子ちゃんは涙を拭って笑った。成人した人間が泣くところを見るのはいつぶりだろうか。人はその気になればスターバックスでだって泣けるのだ。それは泣くのにあまりにもふさわしくない場所だったけれど。山際陽子ちゃんはあかるいちゃいろの髪の毛を持っていて、それらは素直にすとんと生えている。地面に向かって伸びている。山際陽子ちゃんは聞くところによると月収15万で、それは保育士の仕事をすることで手に入れており、しかし山際陽子ちゃんはもうすぐ保育士の仕事を辞める���定だった。実家で休養しながらパートタイムジョブをしようと考えていた。理由はあまりにも忙しすぎて死にそうだったからだ。それから彼女は先日恋人と別れた。別れさせられた。
恋人は山際陽子ちゃんに一方的に別れを告げ、また、彼女のことをきっと人格障害だろうと吐き捨てた。今はやりの。アスペだか、サイコパスだか、ボーダーだか、メンヘラだか、そういうのあるじゃん。そういうの人格障害っていうらしいじゃん。あんたそういうやつだよ。山際陽子ちゃんは泣きわめいた。恋人は浮気をしていて、山際陽子ちゃんは怒り、恋人を怒鳴りつけた。その怒り方は尋常なものではなかった。皿が割れ、壁には穴が開き——敷金のことを山際陽子ちゃんは考えた——、彼から借りていた漫画で彼を殴り、殴り終わったあとそれらをびりびりに破き、彼のカバンで彼を殴り、カバンからこぼれ出た彼のノートパソコンを破壊した。仕事で使うものだと知っていた。壊しながら、なぜパソコンを使って彼の頭を殴りつけなかったのだろうと山際陽子ちゃんは後悔した。パソコンはすでに恋人の手に渡ってしまっていた。彼を鈍器で殺すための方法が一つ失われた。
いますぐ死んでしまえ、と山際陽子ちゃんは叫んだ。恋人はため息をついた。あんたのそういうところが嫌いだった、と言った。そういうふうにいつも怒るから。浮気したのだってあんたに全然余裕がなかったからで、そもそも結婚してるわけでもないんだから浮気したことより殴ったりパソコン壊したことのほうが罪が重いよ、分かってんの? あんたこれ友達にも同じことすんの? 友達この勢いで殴ったら間違いなくその場で警察呼ばれると思うんだけど。今から警察呼んでいい? 山際陽子ちゃんは恋人がどうして死なないのか不思議だった。
山際陽子ちゃんは彼の一部になりたかった。自分が液体のようであればよかったと思っていた。彼の内臓や彼の皮膚にうるおいを与える液体のような存在になりたかった。彼の人生から彼女が欠けてしまった場合彼は即座に死んでしまう、そういう存在になりたかった。
でも山際陽子ちゃんは彼の人生にとって何でもないものだった。彼は女子大生の「ハルカちゃん」と浮気をしていた。ツイッターで知り合ったらしい。ハルカちゃんは山際陽子ちゃんの予想に反してとても可愛い子だった。彼女がインターネット上に残す言葉はあまりにも平穏で、例えば丸の内で映画を観ただの、期間限定のラムレーズン味のアイスが美味しいだの、四つ葉のクローバーを見つけただの、そういうことばかりだった。山際陽子ちゃんが恋人から「超おもしろいから」と言われて借りた漫画は地球を侵略してきたナメクジのような宇宙人によって人がどんどんドロドロに溶けてしまうみたいなおどろおどろしい��容で、たぶんハルカちゃんはこういう漫画きらいなんじゃないの、と思った。それでも、山際陽子ちゃんは彼の人生にとってなんでもないものだった。ノートパソコンが壊れるのと私と永遠に会えなくなることとどっちが苦しいだろうか、考えるまでもなくノートパソコンが壊れることだ。山際陽子ちゃんは恋人のそういうところが大嫌いだった。彼女は彼が死んでしまえばいいと思い、その予想に反して彼はちっとも死ななかった。「警察とか呼ばないからもう二度と連絡してこないで」と言い捨てて恋人は彼女のアパートから出ていった。
山際陽子ちゃんはスターバックスの席に座るや否や、いきなり私に彼氏と別れたよ、と言った。「なんかでも私は今になっても自分がどうすればよかったのか全然わかんない。休みの日も働かなきゃぜんぜん仕事おわらなかったし、ぜんぜん寝てなくて、でもお金ぜんぜんなくて、でもあの人も仕事すごい忙しいときで心配したりご飯作ったりして欲しかったみたいで、でもそういうのできなくて、でも会いたかったからいつも休みの日とか仕事終わりとか会ってて、そしたら仕事ですごい意味わかんないミスとかしちゃって、二度とやるなって怒られて、私でもカフェイン剤とかいっぱい飲んでたの。頑張ってたんだけど。なんかだからそしたら私こんな頑張っててさ、でも会ってるときは楽しくいようって思うじゃん、漫画とかも面白いか分かんないし怖いけど読んで、でも私はお勧めできる漫画とかなくて、だって読む暇も元気もないんだよ、暇な時間は仕事してるかあの人に会いにいってたんだよ、だからツムツムしかやってないからそしたらすごい馬鹿にされて、一緒にやろうよとか言ったけど馬鹿がうつるとか言われて、でもさツムツム馬鹿にしてくる人がスマホでやってることが女子高生漁りじゃん、絶対ツムツムのほうが誰も傷つけてないしなんていうか偉い? 偉いっていうか、まあ正しい? 分かんないけど、あーなんか本当になんていうか」
でもさ、殴ってさ、パソコン壊したじゃん。だから私が一番悪いってことになってさ、それもすごいイライラしたんだよね。山際陽子ちゃんはそう言った。私は「そうだね」と言う。殴りさえしなければ、パソコンを壊しさえしなければ、あなたは完全に被害者でいられたのに、惜しいことをしたね。そう言ってやりたい、と少し思った。スターバックスがうるさい場所でよかった。
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安楽死法案の可決
最近は胃痛がどうにもおさまらない。病院で検査をしてもらったら自分がどれくらい不健康か分かるのだろうか。5年前はこんなに指先が節くれ立っていただろうかとときどき恐ろしくなるし、そうでなくても二日に一回は腹痛で脂汗をかいている。しかし自分がどれほど死に近い生き物かというのは分からなければ分からないほうがよい。死が恐ろしいとかそういうセンチメンタルな理由ではなくて、ついつい考えてしまうからだ——自分がもっと愛されるに足る人間であれば、もっと死から遠い人生を歩めたか、もしくは死に近かったとしても誰かから気遣ってもらえただろうということを。
どうしてかつての日本人たちは畳ではなくてフローリングを快適で清潔でよりよいものだと判断したのだろう。寒さのあまり顎が震え歯がガチガチと音を立てるのだが、こんなふうに分かりやすい「寒さ」の表明をしたところで誰が見ていてくれるわけでもない。おそらく裏側がカビているであろう布団に倒れ込む。5年間一度も掃除をしたことのない灰色のカーペットには私のフケや髪の毛や陰毛それからペヤングのキャベツなんかが積もり積もっている。
先月知人が安楽死した。安楽死をするのに条件は必要がない。そういう法案だった。ただ当人が「自分はもう生きていたくはない」という感情と、それらに伴う必要事項をひとそろいの書類に記入し提出すればそれでよいのだ。たとえばそれを府中市役所に提出し、提出後はすみやかに安楽死に対応した病院に入院する。まあ、知人といっても職場の人間なので詳しいことは知らない。入院から死、そして火葬から埋葬に至るまで全ては病院だか府中市だか、もしくはそれらと提携している民間企業だかが迅速に行ったため、葬式も通夜もなかった。なくてよかった、と私は安堵した。たかが職場が同じだった人間のために出したいと思う金はない。
安楽死法案が可決された当初、この法案は国家による自殺幇助だ、とSNSで憤っている人々がたくさんいた。私はせせら笑った。ではなぜお前たちには愛する家族がいて暖かい我が家があるのだ。どうして自殺をしたくなるような情景を私に見せつけて憚らないのだ。反対派の声もむなしく法案が通り、私には選択肢が与えられた。もし���明日、仕事をするのが本当に嫌になってしまったとしても、逃げる場所が残されている。首をつったりビルから飛び降りたり電車に轢かれたりする必要はもはや無くなり、安らかで苦痛のない死が私を迎えてくれる。
いざとなれば死ねばよいと考えると右足からも左足からもやる気がみなぎってきた。上司に何を言われても「じゃあ私はきょうこの足で市役所に行き死んでまいります、遺書にはあなたの名前を書きます、明日が納期のこの案件は私がいなくなることで炎上必至でしょうが私には知ったことではありません」と頭の中で反芻しことなきを得た。どうせ給料は上がらない。
老後のことも考えなくて良くなった。これまでは不安で仕方がなかったのだが、今は今月の食費と家賃と光熱費さえあればそれでよい。毎月の給料が17万なのを見てやにわに涙が溢れ出ることがなくなり本当に良かった。何しろ働けなくなれば死ねばいい。
ほんらい動物というものはこういうものだ、きょうを生きるだけで精一杯で、明日のことを考えられる状態のほうがおかしいのである。
知人が死んだと聞いたとき、次にこの職場で死ぬのは私だろうと思い、そして——矛盾しているのだが——次に職場で死ぬのは誰だろうか、あの人あたりが怪しい、などとつらつら考え、それから先日購入した宝くじのこと、また先だってSNSで求愛した高校生のことを考えた。
灰色のカーペットをじっと見ていると急に吐き気がしてくる。自分と世界の間にはこのカーペットのような気色の悪い隔たりがあって、その隔たりがある限り、私は生きて死ぬことしかできないのに違いない。
「殺すぞ」と適当に宙へつぶやき、その吐いた呪詛はすぐさま自分の身に戻ってくる。どうせなら呪詛によって死んでしまえればいい、それであったら、「誰かが私を殺した」とあの世で胸を張れるのに。
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妊娠を決めてから妊娠するまで
今年の2月に妊娠した。きょうは10月18日、37週と6日。私はあと1カ月しないうちに出産する。それから私と森田くんは子供のいる人生を始める(厳密にはもう「子供のいる人生」なんだろうけど、何しろ体が分離していないし、それゆえに我が子は私の意志に反して泣いたり寝なかったりなんだりしないから、まだノーカウントでいいんじゃないのかと思う)。
妊娠をしてもいいよね、というふうに夫婦で��めたのは去年の12月末だっ��。積極的に二人で子供について話しあったわけではなかった。と思う。私があるとき森田くんに「ピルを飲むのをやめます」と宣言し、森田くんはそれに反対をしなかった。そのあとセックスをしたとき、二人で手短にコンドームを付けるかどうか話して、「付けなくてもいい」ということになった。それで「今後は妊娠してもいいのだ」ということになった。それはつまり、道を歩く子供を見たときに、「来年は私たちもああいう生き物を手に持って歩いているかもしれないよね」と二人でクスクス笑うということだ。
こういう感慨は我ながら過剰にロマンチックだなと思う。おままごとみたいだ(と当時よく言われた)。本当はもっとシリアスでなくてはならないのだろう。何しろ命をつくるというのは非常に危険な行為だ。でも私にとって「子作りをする」というのは、そういうメルヘンなことだった。避妊をしないセックスをすること、それについて何の恐れもないこと、行為をし「てしまった」夜、アホみたいにイビキをかいて眠る相手を尻目に、泣きそうになりながら携帯で「緊急避妊薬 産婦人科 八王子市」みたいなワードで検索をかけないこと。
むしろ、ティッシュで膣を抑えながら溢れる精液にニヤニヤし、そのうち二人で寝落ちしてしまったり、「このまま抜いたらシーツが汚れるから頑張って抜けないようにしながらティッシュを取って」とゲラゲラ笑いながら依頼したりする、そういうこと。あたり一面に幸福が漂っているような、たんなる愛しかそこにないようなセックス。
いいことだと思った。飼っているハムスターたちの回し車を回す音が響いて、私も森田くんも髪の毛がボサボサで、何ならお風呂に入ってなかったりして、本当にひどい有様だ。全然ときめかなかった。ムラムラもしなかった。でも森田くんと一緒にそうやって過ごしていると悲しくならない。
避妊をしないし、それについて一切の衝動性がない、というか、「AVみたいじゃない」セックスは、彼に対する信頼そのものだと思った。
私は仕事で不妊治療について勉強したことがあって、20代前半で子供を作らないなら、後で後悔しないように卵子を凍結したいと考えていた。そういうことは森田くんには話さなかったけど(そもそも卵子を凍結するための作業は体に針を刺して卵子を抜き取る必要性があり、それは非常に痛みを伴うものらしく、実行するのに躊躇いがあった)。でも、とにかく、「子供ができていいと考えているなら、『避妊をしない』程度のチンタラしたことは言わず、なるべく早くできるように努力するべきだ」と思った。
そういうわけで、私は避妊をしなくなって次に最初の生理が来たその日、産婦人科に行った。基礎体温表を提出し、不妊治療に関する一通りの説明を受���た。ホルモンの値を調べてもらうために採血をした(のちに黄体ホルモンが基準範囲内ではあるけれども少ないということが分かった)。
生理が始まってから5日経ち、私は森田くんに「毎日セックスをしたほうが妊娠の確率が高まるので、我々は毎日セックスをしなければならない」と通告した。それから亜鉛のサプリメントを毎日飲めと要求した。21時に二人でシャワーを浴び、22時には寝床につき、前戯のないセックスをする。疲れて疲れて今すぐに寝たい、という日でもきちんと毎日セックスをした。どうしてもできないときは早朝にセックスをした。色気はちっともなかったけれども、こういう性欲があってもいいのだなと私は妙に感心した。
セックスには二つあって「文化的な」ものと「生物学的な」ものがある。妊娠の確率を上げるために毎日毎日セックスをしているとき、文化的な、興奮するような要素はそこにはなくて、私たちはお互いを「楽しませ」ようとか、そういう「文化的な」ことを一切考えなかった。ジェルを使って擦れても痛くないようにし、刺激によって素早く射精する、そして寝る。
私たちがこれまで興奮してきた性的なコンテンツは常に「AV的」で、だから、絶対にレイプや暴力のにおいを孕んでいた。森田くんも私も、お互いに対して暴力を振るったり、振るわれたりすることを一切望んでいないのに、「文化的な」セックスではお互いをそういう暴力の中に置かねばならなかった。この世で一番大切な人を、たかが自分の性欲のために非常に乱暴に扱うのは、とても悲しいことだ。だから、「粘膜が擦れることによって射精に至る」という機械的な一連の流れは好ましいものだった。
こういうセックスのありようは妊娠を望んでいるときにしか行えない。それが私は悲しかった。私は森田くんとセックスでもコミュニケーションを図りたいけれども、もう子供を産むことはできないとなったら、どうやって暴力的でないセックスをすれば良いのだろう。今もよく分からない。暴力的なセックスでなければ興奮しない、というふうに形作られてしまった私の性癖が悲しい。
産婦人科には毎週通った。通うたびに21ミリに、つまり排卵に近づく卵胞を見てドキドキする。「そろそろ排卵なのでタイミングを持ちましょう」と産婦人科医に通告されて神妙に頷いた。
排卵をしたタイミングは(多分)分かった。都会に出かける用事があった昼のことだ。なにしろ吐きそうになるほどの下腹部痛に襲われた。真っ青になりながら立ち止まる。きょうからしばらくは、最悪の場合セックスを忘れても大丈夫だなとチラッと思った。
森田くんはその日ちょうどぎっくり腰になってしまった。セックスのやりすぎが原因ではない、と思いたい。1日動けず、友人と映画を観に行く約束だったのをキャンセルして寝込んでいた。コルセットと湿布を買って帰った。「今月は妊娠のこと考えなくてもいいよ」と笑ったけど、でも、ちょ��と残念だなと思った。
まあでも、��果的にその月、私は妊娠した。排卵したと思われる日から毎朝ドキドキして体温を測った(妊娠していると体温が高いまま下がらなくなる)。一週間経った日に早速妊娠検査薬を使って陰性だった。検査薬を使うのは本来セックスをしてから三週間後なので、どう考えても早すぎる。だから陰性になるのは当たり前なのだけど、なんとなくガッカリした。金の無駄だよなと思いつつもそれから毎日検査をした。
陽性の線がうっすら見えると思ったのはそれから3日後ぐらいだ。妊娠したかもしれないとドキドキした。「まだ分からないけど妊娠した可能性がある」と森田くんにすぐにLINEをする。「でも違うかもしれない」。「もしも妊娠していたとしても流産する可能性が高い」。「そもそも妊娠していないかもしれない」。「二週間ぐらい経ってもまだ検査薬で陽性が出ていたら病院に行く」。
陽性の線は日に日に濃くなっていく。毎朝私は森田くんにそれを見せた。「もしかしたら本当に妊娠かもしれない」。「でもこの時期は流産しやすいからあまり喜んではいけない」。
と言いつつ私はすぐに親や友人に報告をしてしまった。一人きりになった瞬間に「ああ今年の終わりにもしかしたら子供がいるのかもしれない」と思って嬉しくてジャンプをした。
5週3日で産婦人科に行く。子宮外妊娠でもなく、週数相当の小さい��さい我が子がいた。「この時期は流産が多いですからね」という医師の言葉を神妙に聞く。本当にそうだよなあと思った。油断はできないのだ。
妊娠はギャ〜と喜んだり涙がポロポロこぼれたりサプライジングに訪れたりすると思っていたけど、全然そんなことはなく、用意周到に計画された通りに訪れ、そしていつまでたっても未確定のことばかりだった。いつまでたっても不安だった。
そういうわけで私は妊娠した。
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消耗
大学生のだらだらした日常を描く、みたいなアニメにイライラしてテレビを消したくなる。消したくなるだけで本当に消すわけではないなぜならリモコンが見当たらないからだ。こんなのばっかり馬鹿じゃないのかと言いかける。母親のつくるグズグズの煮物のにおいが鼻に残っている気がして思わずティッシュを手に取る。孤独、という言葉は全然ほんとうの孤独を言い表してくれない。
誰にだって辛い時期はある。ていうかもっと辛い人はいっぱいいる。自分は生きていて、少なくとも今後5年は飢え死にしないだろう。頭もおかしくないし体も丈夫。精神科医は自分の異常を見つけてくれないだろう。過敏性腸症候群は薬では治せない。誰だってストレスに耐えてる、もっと鈍感になりな��い。
もっと鈍感になりなさい。これ以上どうやって?
10歳より前、10歳、20歳、30歳、40歳、50歳、60歳。多分70歳にはなれないしその頃になったら自分みたいな人間を合法的に殺すための法律ができているに違いない。だから大丈夫。
とにかくその場をやり過ごして次の1時間を待つ。何度も何度も1秒を繰り返すとそのうち1日が終わる。多分こうやって一生が終わっていくんだろうけど、そうじゃなくてどこかのタイミングで恋人が見つかったりするんじゃないかとも思う。いや多分そんなことは絶対にない。でも、分からないけどそういう分かりやすい救いがもしもないまま、
あああ。あああああああああああ。
恋人をつくるなら恋人をつくるなら、恋人をつくるなら、髪の毛を染めていない人がいい。この孤独を本当に正しく理解してくれる人がいい。友達は親友と呼べる人が3人くらいいる人。その人たちもみんなマトモであってほしい。二人で働いていけば貧乏でも生活は今よりマシになるに違いない。結婚して子供をつくる。分からないけど医療関係者がいい。風俗に通っている既婚者の友人に同窓会で会って「これが自分の伴侶」と言う。
誰かがもっと自分を分かりやすい形で迫害してくれればよかった。基本的にはとても幸福な育ちだった。不幸だと自らを呼ぶことのできる要素がなかった。誰も自分を殴らなかったし、もしも殴られれば怒ることができただろう(でも、誰も自分を殴らなかったので、分からない)。何も間違えがないのがいい、と思っていたのに気づいてみればやはり間違えていたのだろうか。
大学に行ければ何か変わっていたのかと思うけど、17のときに「奨学金を借りてでも勉強したいことなんてない」と思ったのは自分。今17に戻ったとしたらどうするだろう。分からない。
社会のせい、誰かのせい、政治のせい、親のせい、と怒る人のことが嫌いだ。怒る理由がある人のことが嫌いだ。言葉にしようのない怒りが胃のあたりに溜まってそれが過敏性腸症候群を引き起こす。本当に生きている価値のある人を見分けるAIが早く作られればいい。生まれた瞬間に殺されればよかった。
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今から私のためにオールしてよ
そうじゃないって言ってるのにバカじゃねえの。と、あなたに適切な言葉を投げかけるのが面倒くさかったからそう思った。人間のやさしさは有限だと思う、有限だからあなたに全然やさしくしてあげられなくてごめんね。そういう気持ちは加害行為をしたのとほとんど同じ。やさしくしてあげられなくてごめんね。あなたがしてほしいことは分かっているのに、体も心も全然もう残りわずかって感じで、だからあなたのために身を挺して行動してあげられない、あなたの気持ちを満たしてあげられない。そういうのが本当にごめんね。 エミちゃんは私のこういう「気がきく」ところが大嫌いだった。だからエミちゃんに会うときは「気がきかない私」でいようと思った。エミちゃんはきっと私の「心の病気」がエミちゃんといるときは治ってるんだろうなと思っただろうけど全然ちがうんだよね。エミちゃんは私が他人のために行動してるのが嫌いで、そういう人を見るのが嫌いだろうから、私はそういうエミちゃんのために気を使ってあげた。 エミちゃんと会うと翌日すごく疲れるけど、でも、エミちゃんと会うのは楽しい。どれくらい楽しいかというと彼氏と会ったときの楽しさが100と考えるとエミちゃんと会ったときは40くらい楽しい。シカコと会うときがマックスで楽しくてシカコは50くらい楽しい。エミちゃんにもシカコにも生活があって私より大事な人がいるって分かってるしエミちゃんともシカコともセックスができないし二人は私の前で吐いたりしないし、二人の前では地獄みたいなことが起こらない限り泣けないから、なんか違うなって思う。私は分をわきまえたいい子だからシカコにもエミちゃんにも迷惑かけないよ。っていつも思ってる。でもときどき本当はすごく迷惑をかけたいと思ってしまう。彼氏とくだらねー喧嘩をしたり、生理がめっちゃ痛かったり、仕事で失敗したり、寝坊したり、なんかそういうときに「今から飲みにいきたいよ」と甘えたい。でもなんか飲んだりしたらそんなのセックスする相手みたいだって思う。それにシカコもエミちゃんも激しいお金持ちとかそういうのじゃないから、いっぱい飲みに行ったら大変だし、私のかなしみは彼女たちに交通費込みで4000円を払わせる価値があるのかなって思ってしまうから、うまく言えなくなる。 みんなに対して上手にやさしくしてあげたいと本当に心から思う。そのためなら私そのものがいくら磨り減ってもいいと思えたらいいのに。でも私の体力も私の心も有限だからそんな風に「徹する」みたいなことができない。それでエミちゃんにまた怒られる。私はエミちゃんのことが大好きでだからもっとエミちゃんに大好きだと言いたいけどうまく言えないから「エミちゃんはバカだ」と深夜にこっそり一人で呟いている。
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可愛いあなたは私の
犬や猫でもあるまいし、と言われたときそういうもんかなと思った。実家で飼っていたチョコは去勢手術を受けていたから、セックス(っていうか交尾か)とかそういうことを全然知らずに死んでいって、っていうか私が今まで出会ってきた「犬や猫」でポンポコ子供を産んだ個体なんていなかったから、だから通子のお母さんに「まあ下品」みたいな意味で「犬や猫でもあるまいし」っていう言葉を使われても、恥じ入ることができなかった。なんかそういう比喩には現実感がなかった。 でもとにかくエイちゃん妊婦だし、だから産むしかないんだよ、分かってよお母さん、と通子は熱弁をふるって、私もそれに合わせて「私やっぱり通子との子供を産みたいんです」と言った。通子のお母さんは馬鹿だなこの女たち��、みたいな顔だったけどとにかくいいよと言ってくれた。 よかった。 けっきょくその子のことを私は流産したんだけど通子との生活は楽しかった。ときどき訪れる寂しさを緩和するために私と通子は新しく肉を飼いならすことにする。「可愛いだけじゃなくてさ」と通子は言った。「肉は3日に1個体を増やすから、食費の節約にもなるよ」、実家でも飼ってたけど、美味しいしよかったよ。 こんなに可愛い肉を食べるなんてそういうこと言うもんじゃないよと私は言ったけど、肉が70匹を超えたときにやっぱり食べたほうがいいと思った。食べようか、じゃなくて、食べたほうがいい、と思った。私たちの家は肉たちが蹂躙して足の踏み場がなかったし、常に糞や尿、そして死んでしまった肉の臭いでいっぱいだったから。 ある晩、通子と調布でしこたま飲んで、帰りのコンビニでも酔いがさめないように発泡酒を買って飲みながら家に帰った。通子とベッドに飛び込んだ途端、ベッドでどうやらぬくまっていたらしい肉を押しつぶしてしまった。通子がギャアと悲鳴をあげる。シーツは肉の血で真っ赤に染まってまるで生理みたいだ。私は真っ青な顔をする通子を愛しいと思う。「食べるために飼おうって言ったの通子のくせになんで不慮の事故で殺すとそんなふうに驚くの」私が聞くと通子はエイちゃん酔うと怖いこと言うからやだ、と言った。 潰してしまった肉をつまんで口の中にほうりこむと血の味がした。「まずい」「生肉は味付けしないと駄目だよ」「そうなの」残っていた発泡酒をぐっと喉に押し入れる。通子にキスをする。「本当あしたこの肉たち全部食べちゃおうよ」通子は顔をしかめた。「臭いよエイちゃん」 それは通子も同じじゃん、と私は思う。そもそもこの家全部が臭いんだよ、と思う。私たちは「犬か猫みたいに」繁殖のための行為を始める。
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来世は石になる
ああじゃあ私が今月収14万なのは前世の行いが悪かったからなのかなと思った、それはコッコがファミレスで店員さんに怒っていたときで、デミグラスハンバーグを注文したのにトマトソースのハンバーグがきたというただそれだけでよくもまあそんなにエモーショナルになれるなと私はコッコを見つめていた。「よほど前世の行いが悪かったからあんなバカみたいな謝りかたする」とコッコは言う、平謝りの店員さんによって下げられたトマトソースはやっぱり廃棄になるのか、それとも店員さんの中でお腹が空いてちょうど休憩時間に入った誰かが食べてくれるのだろうか。「私別にトマトソースの、それ、食べるよ」と喉元まで出かかるけれどもやっぱり言うのをやめる。 前世の行いがどれくらい悪いと馬鹿な人間���生まれ変わって馬鹿だ馬鹿だと100年近く言われ続ける罰を受けないといけなくなるんだろう。それで馬鹿は馬鹿なりに自分より馬鹿な人を見つけてその人を馬鹿だ馬鹿だと言ったりするんだろうか。でもそういうことでは人間は徳? を積んだりができないから、一度でもそうやってクソみたいな人生を送ろうねと言われた人は永遠にクソじゃない人生を送ることができないんじゃないだろうか。前世の行いによって来世がどれくらいみすぼらしくなるかを決めるシステムは頭が悪いと思う。みんなが徳を積むことを期待したいなら、前世の行いが悪かった人をむしろサイコーのお金持ちの心がゆたかで余裕があってすっごく優しい人に生まれ変わらせてあげないといけないんじゃないのか。輪廻? これって輪廻だよね? のシステムを考えたのは誰なのか知らないけど、馬鹿だ。ものごとの因果関係みたいなものを全く理解していない。 コッコはお腹が猛烈に空いていたみたいで、トマトソースのハンバーグが下げられてからまだ3分も経っていないのに「遅くない?」と私に同意を求める。私はトマトソースのハンバーグと同時にきた私の分のジェノベーゼパスタがどんどん冷めていくことに悲しみを覚えている。「遅いかもね」パスタはほうっておくと伸びるだろうか。14万の給料の中から頑張って出した820円がどんどんぐじゅぐじゅになっていく。湯気を立てて崩壊していく。私パスタ先に食べていい、と聞きたかったけど、やっぱり何も言えずに「遅いね」と言う。
なんかさ何も言わないよねつまんないんでしょ、とコッコが私に問いかけた。
現世ではもっともっとひどいことをしなければいけないと私は思う。コッコのことをいきなり殺すくらいのひどいことをたくさんたくさんすれば来世で石か何かに生まれ変われないかと思う。そうしてずっと何にも生まれ変われないまま呼吸だけをし続けたい。それは実際今よりずっといいだろうと思うのだ。
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あなたを勘定に加える
もうちょっと早く生まれてきたらよかったよねと閉子はいつも言っていた。閉子の膣はぐうっと硬くなってもう何も出し入れする隙間がない。そうだねと私は応えるけれども本当はだいすきなテレビ番組の続きのことのほうが大事だった。 閉子よりも大事なことがこの世にはたくさんある。例えばテレビ番組の続きのこともそうだし、私が今妊娠している子供のことももちろんそう。ケイスケだってムカつくことも多いけど、それでもこれからずっとやっていく伴侶なのだ、閉子よりずっと大事。お母さんも、お父さんも。職場の人たちのほうが閉子よりも大事だと思ったことすらある。 閉子が頼んだのは抹茶オレだった。「抹茶オレってさ、」と閉子は言う。「オレっていうのが、なんか、コーヒーっていう感じがするから、変だよね、コーヒーじゃないのにね」「ああ」久しぶりに会った閉子の爪はスヘスヘのピンクだワンピースは黒地にレモンのプリント、鞄にはタッセルが付いている、「その鞄可愛いね」「あはは。安かったんだよ」私は子が腹を蹴るのを感じる。きょう閉子と会ったことがどんなふうに私によいものをもたらすのだろうか。腹を撫でる。「ずいぶん大きくなったねえ」「そうだね」「前会ったのいつだっけ」「えっと5月?」「そんなに会ってなかったっけ」「違うかも」「いや5月か。ケイスケさんのゴールデンウィークのさ」「ああー」閉子の口からケイスケの名前が出てくるときは困る、思ってもいない言葉を言わねばならないような気分になる。
閉子は17で初めて知り合ったときからずっと同じようにボウリングが好きだ、ジムに通うのもずっと続けている。ヨガのインストラクターになったのもジムに通っているときに思いついたというのだからすごい。私はあれからずいぶん変わってしまった。ケイスケと出会ったし、結婚もしたし、子供も産まれる。でも一体私自身は何かを成し遂げたのだろうか。つわりで見るのも嫌になっていたマニキュアを昨日久しぶりに塗った。マニキュアを塗ろうと思いついた瞬間はあんなにドキドキしていたのに何度塗っても親指がうまく塗れないので嫌になった。初めてマニキュアを塗ったのは中学2年生のときだ。あの頃と全く同じ。「マニキュアってシンナーだけど大丈夫」とケイスケが言う、「大丈夫だよ多分」と私は言う。その瞬間ぼこりと腹が動く。「ほらね大丈夫だって」
もうちょっと早く生まれてきたらよかった、よかったよね、と閉子は言う。私はいつも「本当にそうだね」と返す。私が持ついくつかの大事なもの、その中に閉子を勘定するかどうか。勘定するべきなのだろう、と私は考える。
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空白
でもそれでも私とミクノがこれから半年の間に和解できるとは、私は思わなかった。死が何かを解決してくれるということはない。あっとうてきなセンチメンタリズムを味方につけて滂沱の涙とともに謝罪や感謝を述べてはいけない。
そういうことを考えているうちにミクノは死んだ。死んだという言葉はぜんぜん現実と違うと思った。死はそんなふうに私たちをドキッとさせるようなものではなかった。もっとスイートなものを予想していた。違う。それはある日突然にやってくる喪失だった。
死はちっとも映像的ではなかった。それは単なる空白だった。「もうここに、この世界に、私が物理的にたどりつくことが可能などんな場所にもミクノが存在しないということ」、私は考える。もう一度考える。「ミクノが世界のどこにも存在しなくなってしまったということ」。私はそうやっていなくなってしまったミクノと一緒に、自分もどこかに存在しなくなってしまえればよかったと考える。でも「存在しなくなったからといって、ミクノと同じようになれるわけじゃないからな」。ミクノは存在することをやめたのだ。
涙の流し方は分からないのだがとにかく出るものは出る。インスタグラムにアップできそうな泣き方であればミクノの死が報われるだろうか。あなたの死がとてもドラマチックでよかったでしょう。どうしてこんな風にくだらないことばかり考えるのか。
ミクノ自身はこれ以上生きられないことをどういうふうに考えたのだろうか。これ以上生きられないことが苦痛だっただろうかそれとも死の目前にはそんなことは考えられないのだろうか。私は自分が死ぬのはとても嫌だと考える、死を前にしてこういう自分のためらいや嘆きが全てどうでもよいものとなってしまうであろうことがとても悲しい。私が生きていることは一体なんなのだろう。私という生き物は大きな大きな目で見ればまるで取るに足らない生き物なのに、どうして私は、私だけは、私のそういう卑小さを正しく評価できずに、私がこの世界から失われてしまうことをこれほど恐れるのだろう。ミクノはどうだっただろう。
例えば洗濯物を干しているとき、私はミクノにどうしても会いたい、と感じる。それはいきなりの発作のように訪れる。私はわけの分からない衝動によって食道がぱんぱんになるのを感じながら「ミクノに今会いたい」と吐き捨てる。でもミクノに会うことはできない。死はそういうふうに、暴力的な空白として私を襲う。インスタグラムにアップのできない無言の感情たち、は、ミクノを追悼するための道具として正しいのか。私は上下の揃っていない下着を干し終える。
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next to me
エアコンの室外機からぬくい水がたらたら溢れだす 水難の相がでてるから水死すると断言する血の繋がった女のことを眺めているのあなたはそんなことを思い出すきゅうに この前の戦争は今の戦争のつづき そういえば夜は東京よりずっといいわと静岡県の人が言う 大学を卒業してしまった私があなたに言うことなど何もない 死にたくないというその一点ですら頷きあうことができないのだな 呪詛はいてみてよ受け止めてあげない 頼むから 内臓のなかに生まれてもいない罪を孕んでる エシカルな言葉を知っている私の脳はすぐれもの 亀山先生に習ったジェンダー学をまるでお腹の中から知っていたみたいにとうとうと語ります 似合っても似合わなくてもどっちでもいいから早く白いワンピースを着なよ そうしたら電車で席を譲ってもらえる あなたが人権を主張するとお腹の子どもが可哀想 あなたの言葉はいつか私を殺すけどあなたは私よりずっと先に死ぬから 眠れない夜あなたを思ってたくさん思い浮かべる言葉は哀切のたぐい
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文フリありがとうございました
完売(?)しました。投げ銭もけっこういただきましてありがたかったです。またよろしくお願いします。
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とてもいいあなたのとてもいい声とてもいい笑顔とても毎日が こんな春は英語のリスニングもうまくいかない耳が東京をはなれないから あの日に買った灰色のカーディガン捨てる機会ないからいくつもいくつもの思い出が 付着して毛玉の中に���おいごと残ってとれない 交通事故できのう死んだひと何人いるの 家の中にちらばった下らない漫画も無益な新書も無用心でわるくていやなやつだったときの自分が ただ髪を伸ばし髪の抜けるそのさま 子猫もそうじゃない猫も春だから神さまに あずけたきりの午後だよ
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すきなひとのすきなひと、それから、すきだったひとのことを考える それはとてもよい朝だ 2017年の海の日もあなたの呼吸は一定で それがとてもよかったとおもえない私はいやなやつ 恋のことをとてもすてきだとハミングする春は、春はそれは地獄のきせつだよ とむかしの詩人がいったことを何度かおもっている とてもあなたは幸せなんでしょうどうせ 皮膚は伸びきって塩っぱい 交配する ここから見えるのはとてもゆるい夜だよ小麦粉をまぜたみたいに たぶんこの世のたくらみはすべて失敗して逃避行にでかけるから 幸せなあなたの幸せをすこしだけ、
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おっぱいが妊娠でおおきくなって、私はむかしから胸が小さくて、ちいささを説明すると、手もちいさいんだけどそれでもスッポリ胸をてのひらで覆えるくらいちいさい。でも小さいっていうのはあんまり気にしたことなくて、なんでかというと、ないわけではなくて、でも平ら、みたいな胸をずっと見てたから、この体型がせかいいち可愛いな、と思ってたのに、妊娠でおおきくなってしまった。 きのう、新宿の東郷青児の美術館にいったら、18世紀ヨーロッパの絵画を展示してて、 そこにいた婦人みたいなのが、私よりおっぱいがちいさかった。 ヨーロッパの婦人、私よりおっぱいがちいさかった。 ああーと思った(よろこびともかなしみともつかない)。
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5月7日に文フリに出る告知
5月7日の文フリに出ます。やる気がないので、朝きて13時ごろ店じまいする予定。
本4冊を無料配布するのと、 あなたの顔見てあなたのために詩を書きます。これはお金くれ。お金ない人だったらお金いらないです。
本4冊のうちわけは、 ・散文集1 ・散文集2 ・小説の短編集 ・前すごい情熱とともに作った、バレエの解説本
です。本がほしいけど文フリまでいく予定がない人は森田のことをお茶に誘ってください、頭が悪いのでホイホイお茶をしばきにきます(でも東京にすんでいるのでなるべく関東圏にかぎる)。
あとは住所をさらす勇気があれば郵送でもいいです。クリックポストつかうのでこれもお金いらないです。
文のサンプルを明日アップします。はあ〜〜メンドクセ
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きたるあす、とてもよいあさと
すこしばかり遠くの観光地で春と寒さをわがみに知る ふたしかなことばかり最近の明日は ほんとうにそうだな 丸い腹から命のゆくすえを感じる私はわかわかしい震えとともに ああ私の今までがここにて結実すると涙さえ浮かべている
えりあしが伸びたあなたは大切なものを大事におもう方法をなぜだか分かっていて かわいいね、と言うその言葉が上滑りせず私の表面をおおってゆく おおきな駅のおおきなパルコに入っているかわいい石鹸屋さんが見たい でも諦めがつく 諦めることのここちよさ 私のどこにも私のゆくすえを断じる言葉がなくても 私がいま生きていることの正しさ
あいらしいあなたのほおぺたに触れる日のことをまるで過去のことのように夢見ている すへすへした皮膚に私はたくさんたくさんの約束をするのでしょう 悲しくなるほどの可愛らしさをあなたは両手ににぎってこの世につれてくる きたるあす とてもよいあさと
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急いだすきに天から空がこぼれてくる あまりに止め処がないのでわたくしたちは悲しみを感じる余裕もなくぽかんと口をあけていた ああ重力があってよかったね引きつけられる意味がわかっているから、そんなことを家の近所で話したよねいつか あれは確か春の終わりで 季節のにおいが難しくかおっていた 底のみえる恐怖はきちんとした理屈になって夜から昼までを管理してくださる 何度もきみに殺される運命でとめどなく落ちるペチュニアの鉢植えをどんどん買い置きしていようね。ふたりの間になにもいらないと思ったってどんどん二酸化炭素は増えていくんだものね。 明日の予定を聞かせてと言ったとき本当は来世のことを聞いていたからごめんね。きみとはもう会えないと思って。 さっききた夜がまた夜になる、それからまた夜がくるから
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