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32『ラ・ラ・ランド』
#32『ラ・ラ・ランド』(2016/米)
3度ほど感想を書いてみたのだが、1.いずれも長くなりすぎた、2.日を置きすぎて内容の一部を忘れ始めている、ということに気づいたので簡潔にまとめることする。
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序盤:全く乗れなかった。まず、セブがミアに恋心を抱いたタイミングが判然としない。プールサイドで再会した時点では、(少なくともセブは)ミアに恋心を抱いていない。これはパーティー終わり、面倒臭そうにプリウスのキーを取ってあげるところに明らか(ミアが声をかけていなければ、セブはそのまま帰っていたはず)。しかしその直後、セブは自分の車とは離れた場所に向かうミアに付き添って丘を登るのだ。この間に一体何があったのか。さらに、自分の車を取りに来たんではないことを悟られぬよう、ミアが車で発進する際、セブは丘を登るフリまでするのだ(一体何の為に!)。次のシーンにはもう、ワーナーの撮影所に侵入しての求愛行動である。
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中盤:序盤の判然としない構造上の問題がつきまとい内容に没入しきれず、メモを取ろうと持参したノートは未だに白紙。(『ネオン・デーモン』でも2ページ使ったというのに)。とどめを刺したのは、サプライズディナーでのセブの言い分。これは構造的におかしいというより、セブの言ってることの支離滅裂さに絶望したという感じ。自分で決めたことをミアのせいにした挙句、言い放ったのが以下のようなセリフである(うろ覚え)。
セブ「(バンドが成功して)俺は今、みんなに好かれているんだ」
ミア「好かれるとか、いつからそんなこと気にするようになったのよ!」
セブ「君は女優だろ。そんなこと女優に言われたくない」
(略)
セブ「君は、ぼくが上手くいってないほうが優越感を得られて良いんだろ」
ミア「それ本気で言ってる?」
セブ「本気さ。いや、・・・・わからない」
ぼく「!!!(さっきから何をぬかしおんじゃこのアンダラッ!!)」
脳内で彼らの喧嘩に参加してしまうほどに激怒した。ダメだ、遥々観に来たのに。見る前にあんなにはしゃいだのに。これは、とんでもない駄作なのでは。グルテン入りのデザートにおかんむりの様子だったカフェの客同様、「refund!(返金してくれ!)」という気持ちが沸き起こる。
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終盤:敗戦ムード濃厚のまま突入した終盤、ミアのオーディションシーンで一気に潮目が変わる。祖母(叔母?)の話から始まるミュージカルシーン、それまでずっと上ずっていた(キーが合ってなさそうだった)ミアの歌声が、エマ・ストーンの地声に近い、太くしなやかな歌声に変わったのだ。デメキンのような顔をグチャグチャにさせながら、切実さと清々しさを併せ持った表情で歌い上げるミアの説得力たるや(このシーンはミア以外なにも映っていない)。あまりの画力に字幕を観る余裕がなく、そこで何が歌われたかはあまり把握できなかったが、しかし確実に、序盤~中盤にかけてのモヤモヤを晴らすだけのパワーがこのシーンにはあった。
そしてここからはエンディングまで、ノンストップで最高だった。「Re:refund!(返金を返金!)」と叫びたかったほど。
オーディション終わりにベンチで語らう二人。ミアの「昼間に(天文台に)来るのは初めてだわ」というセリフは、いつか観た、遠く夜空に浮かんでいた月や星=夢をついに掴んだことを示唆しているに違いない。もちろんこれはセブにとっても。夢(を叶える決意)がその手の中にある二人に、夜空はもう、必要ないのだ(一番良いシーンだと思う)。
あまり意識はしないことだが、何かを選ぶということはきっと、それ以外の全てを諦めるということなんだと思う。彼らが夢を掴むためには、一緒には居られなかったように。が、これは悲しむべきことではない。ラストのミュージカルシーンは、選択しなかったものが消えてなくなるわけではないこと、あったかもしれない未来が今を作っているということを見せてくれる。
客席に座るミアを見つけ、動揺を飲み込みながら放った「Welcome to Seb's」という、一見そっけない言葉(この映画でセブが放つ最後の台詞)は、天文台のベンチで誓い合った「I'm always gonna love you」を裏切らなかったセブの、ミアに向けた一世一代のアンサーである。これをしかと受け取ったミアは、クラブを去る間際にセブの方を振り返る。今度はミアからの、無言の「I'm always gonna love you, too」である。セブは笑みを返し演奏へと戻ってゆく。ミアは夫と子供の待つ家へと帰ってゆく。二人は、それぞれが選択した未来へと帰ってゆく。
(セリフを使わない見事なエンディングを思い出して、書きながら若干込み上げてきている)。
一生を添い遂げることで裏切らない「I love you」も、別々に生きることで裏切らない「I love you」もある事を教えてくれる素晴らしい恋愛映画を観た。
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31 『ネオン・デーモン』
#31『ネオン・デーモン』(2017仏・米・丁)
上映ギリギリに到着、急いでチケットを購入し着席。
後ろを振り返ると30代〜40代くらいの女性が4人ほど居た(収容人数100人)。まったく、この界隈の野郎どもはNWRの新作を観ずにどこで何をしているというのだ?
///// 上映開始すぐ、「官能的」としか言いよう���ないタイトルシークエンスに悶絶。『オンリー・ゴッド』『ドライヴ』で観られた独特の光彩に妖しいゴージャスさが加わった最新版「NWRカラー」に期待値が跳ね上がる。絶妙な焦らしの硬質シンセベースにキックが重なったその刹那、光のシャワーと共に立ち現れた『THE NEON DEMON』のタイトルにガッツポーズ。これはひょっとすると、ひょっとするぞ。 ・・・・。(鑑賞中) エンドロールが終わり、客電が灯る。後ろを振り返ると、後部座席で鑑賞していたはずの観客が一人残らず居なくなっている。ああ、こんな映画の事は早く忘れて、どうか、素敵な週末を。
***** 過去作がいずれも「男臭い男が出てくる、男臭い映画」だったNWR(ニコラス・ウィンディング・レフン、以下NWR)の新作『ネオン・デーモン』は、打って変わって女性を扱った映画、女同士の世界や美を扱った映画であった。
あらすじは「ファッション業界での成功を夢見てロサンゼルスにやってきた16歳の田舎娘ジェシー。曰く言い難い彼女の美貌に業界はメロメロ、異例の大抜擢を受けて臨んだランウェイデビューの最中に視たヴィジョンにより覚醒。これにより自らのイノセンスと決別し、以前にも増して強い”美”への自覚と野心を獲得する。そうして成功への道を歩み始めた矢先、同業者による羨望や嫉妬の餌食にされてしまう」といったところか。
“女性を扱った映画、女同士の世界や美を扱った”と書いたが、扱いこそすれ、これらが結局「男臭い妄想の延長線上にある」のが困ったところ。登場人物の行動原理が少年ジャンプ的というか、タランティーノの悪いところと一緒、というか。女子トイレの会話劇で飛び出した「所詮女は食とセックスにしか興味がないから」という自虐ユーモアもスベってしまっ��いる(驚くべきことに、このユーモアは終盤までスベり続ける)。やはり、男撮るほうが向いてるのでは。
終盤の(観客を帰す原因になったと思しき)展開は、美しいものとえげつないものの取り合わせ、その唐突さ・間合いといい、中〜後期の『ごっつええ感じ』か野性爆弾のコントだと思えば問題はない(特に、ラスト付近の画作りは完全にギャグの領域)。
***** 死体始まり、プールで冒頭部分が回収される、ロサンゼルスを舞台にした(業界の闇に焦点を当てた)内幕モノ、無防備な主人公、性へのオブセッション...etc。散りばめられたモチーフを観るに『サンセット大通り』発『ワイルド・パーティー』通過『マルホランド・ドライブ』の隣駅に位置する、新世代の「極彩色ネオンノワール」と言えなくもない。
***** 鏡越しに撮影されたシーンが数えていただけで17箇所(実際はもっと多かったはず)もあったのだが、この演出の意図はついにわからず終いだった。きらびやかな世界に翻弄される人々の虚しさを虚像で観せた、という演出なのかと思ったが、もしそうだとするとちょっとダサい(そんな手垢にまみれたクリシェを乱発する監督だったか?)。あれは一体なんだったんだろう。
モーテルのシーンもよくわからなかった。特に無くても困らないエピソードしか起こらないのに、なぜあんなに時間を割いたのだろう。ジェシーの無防備さを示すシーンを見せたかったのだとしても、それは「山猫の闖入」一発で充分事足りたはず(その後の胸糞悪いシーンを挿入した目的がいよいよわからない)。目を瞠るような映像や演出が用意されていたのなら話は別だが、そういう仕掛けも見当たらない。そもそも、あれだけ重宝がってる未成年の所属モデルをいつまでもモーテルに住まわす事務所ってあるか。
***** 説明不足なのは一向に構わないが、『オンリー・ゴッド』のような全てを吹き飛ばす圧倒的なビジュアル・酩酊感に欠けたのが致命的だった(良い所がなかったわけではない)。もう一度観る必要に駆られることがあったら、モーテルのシーンと横移動するシーンは全カット&たっぷりしたシーンは早回しで1H30Mくらいにして観ることにしよう。或いはあの素晴らしいタイトルシークエンスのみで充分かもしれない。
***** 最後に、キアヌ・リーブス。 お前は一体なんだったんだ。
※3/14 追記 引っかかっていた部分に、かなり具体的な回答が得られた良記事。 http://www.gradient.is/features/the-neon-demon/
“We’re not meant to talk about what happened, we’re meant to talk about what it was like to be there while it happened.”
(依然として山猫闖入以外のモーテルのシーンは要らないと思っているのでそこは飛ばして)もう一度観たい。
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映画と無関係なモノローグ(この世界の片隅の映画事情)/『ラ・ラ・ランド』『ネオン・デーモン』前夜
生活圏に映画館(と呼べるような映画館)がない為に、映画はたいてい自宅で観ている。
「映画は映画館で観ないと意味がない」的な映画原理主義者ではないし、観たい旧作もまだまだあるので困ることは少ないのだが、やはり、いち早く観たい新作のリリース時は毎度頭を抱えてしまう。昨年では『ヘイトフル・エイト』の時と『エブリバディ・ウォンツ・サム』の時に苦悩によって頭が禿げた。
今年も頭を禿げさせるような新作が登場するんだろうな、嫌だな、と悩んでおるうち、その筆頭株であった『ラ・ラ・ランド』、『ネオン・デーモン』はとうとう公開終了のカウントダウンに入ってしまった。「このままでは30歳になるのを待たずして毛髪が無くなってしまう」との危機感から、今回ばかりはいかなるコストを払ってでも観に行くことを決意した。
その前に一応、最寄り(といってもバイクで30分)の映画館のラインナップを確認してみることにする。地方のシネコンチェーンと言えども、『ラ・ラ・ランド』くらいの話題作ならやっているかもしれない。調べた結果、今週の上映作品は以下のようなものだった。
『モアナと伝説の海(2D/吹替版)』
『映画ドラえもん/のび太のカチコチ大冒険』
『アサシンクリード(2D)』
『相棒-劇場版Ⅳ-首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断』
『この世界の片隅に』
『君の名は。』
『土竜の唄 香港狂想曲』
『傷物語<lll 冷血篇>』
8本中アニメが5本、邦画2本、洋画1本。『ラ・ラ・ランド』の上映どころではない過酷な現実を目の当たりにして膝から崩れた&頭がガンガンする。
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県下で『ラ・ラ・ランド』、『ネオン・デーモン』を上映しているのは70km離れた街のシネコンのみらしい。悔しいが、やむなし。
件のシネコンまでの道のりは”自宅から最寄りのK駅までバイクで25分→K駅から映画館最寄のW駅まで2時間半(1.5倍の特急料金を払えば2時間)→W駅から映画館までがバスで15分”という具合。お分かりだろうか?映画を観に行くのに片道三時間半の時間と2,500円の費用を要するのである。つまり、この移動の分だけで映画もう1本(往復では2本)分の時間と費用を要するのだ。さらに、電車とバスの乗り継ぎを考慮すると14:50分上映の『ネオン・デーモン』を観るために、朝9時台に家を出ないと間に合わないという信じられない状況なのである。これが現代の『この世界の片隅』である(観てないから知らないけど)。昨年参加した、当自治体主催による映画祭で市長が飛ばした「ここは映画の街です」という嘘八百を思い出し、頭痛が激しくなる(映画祭の内容自体は素晴らしかった)。
昨年まであった高速バス(時間・費用ともに3割程度軽くなる)は利用者が少な過ぎて廃止されたので、普通免許を持たない僕に残されたのはこの地獄の行程のみ。はやくも決意が揺らぎ始める。「潔く禿げちゃえよ」と囁くもう一人の自分。フラフラになりながら、一縷の望みをかけて日頃よくドライヴに連れ出してくれる友人JにTEL、「ガソリン代及び高速料金を全部持つので、W市まで乗せてくれ」との旨打診、まさかの快諾&多謝、救済。彼には今度、発毛に良さそうなものを贈ろうと思う。
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Jのおかげで問題は片付いた、思う存分映画を楽しもう。と思ったが、ここは「世界の片隅」、そう簡単に映画を観させてはくれない。
『ラ・ラ・ランド』は最終日の最終上映を観る予定にしているので、不測の事態に備えてオンライン予約で座席を確保しておくつもりだった。若干時代遅れのホームページに辿り着き、予約に関する説明を読む。このシネコンでオンライン予約をするには系列グループが発行しているという見たことも聞いたこともないカードの会員になるか、ウェブ会員になる必要があるらしい。そんな得体の知れないカードの発行を待っている暇はないので、ウェブ会員への登録をすることに。
ウェブ会員登録のページに遷移したとたん、強烈な不安に襲われた。ウェブ1.0時代の遺物としか思えないテキストのみで構成された悍ましいインターフェイスは、シネコンのページの時代遅れ感��んて比じゃない仕上がりでヤバい。事実、行末で文字化けが発生していたり、ページのライセンスが「2006年」になっていたりする。極めつけはトップページ上部でぎこちなく横方向に流れ続けているピンク色のアイキャッチ。おいおい、これ昔携帯サイト(主にアダルトサイト)とかでよく見たアレだぞ。マジかよ、大丈夫なのか。
募る不安を押し殺し、なんとか会員登録を済ませ(クリックで勝手にメーラーを起動させられ、空メールを要求されるあの最悪の方法で)、ここまで来ればもう大丈夫だろうと座席予約画面に進んで決済前の注意書きを読んでいると恐るべき文言を見つけてしまった。
「チケットは鑑賞前に劇場ロビーの端末にて発券してください。尚、チケットの発券にはご本人様名義の○○カードが必要です」
え、ちょっと待ってくれ。ウェブ会員になれば○○カードは不要なんじゃなかったのか?「○○カードをお持ちでない方はこちら」というリンクがあったじゃないか。不安的中。あらゆるヘルプを当たっても「カードが無いと発券できない」 or 文字化け。ググろうにも系列チェーンがローカルすぎて参考になる情報がヒットしない。もし注意書きを読まずに決済していたら「予約したは良いが発券できない」というキャッチ22に陥ってその場で全毛髪が抜け落ちるところだった。「天災や機器のトラブルで上映できない場合を除いて返金は受け付けない」という強気���注意書きも思い出されて。
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随分と長文を書いた気がするが、まだ映画は始まってもいないのだから、やはり『ラ・ラ・ランド』及び『ネオン・デーモン』は恐るべき映画なんだと思う。楽しみだ。
(つづく)
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30 『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』
#29『アンダー・ザ・スキン/種の捕食』(2014/英・米・瑞)
Hからレコメンドを受けた段階では「冗談でしょ、特にこのタイトルは」と思った。予告編を観た段階では「what a fuck」と思った。そして本編。
凄かった。
まずセリフが全然ない(あるにはあるが、スコットランド訛りが凄��ぎて意味を成していない)。その分映像が多くを語るのかと思いきや、映像はあくまで映っているもの以上の意味を提示しない。イメージが一切の状態変化を逃れて直接頭に入り込んでくる。10分おきに自分は一体何を観ているのか見失いそうになるほどの具象、具象、具象。荒れまくる海岸でギャン泣きするキッズとそれをガン無視するスカヨハとライダーのシーンで思わずガッツポーズ&爆笑。あまりのど真ん中直球っぷりに、これを変化球と見紛う人が居ても無理はないだろう。しかし、こんなブツにあのタイトルは頂けない。勧められなければ絶対に見逃していたなと思う。Hに感謝。
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技術的なところでは、以下の三点が特に良かった。
・カットの切り替わるタイミングが異様で、殆どのシーンで間合いを外されるのがとても快感だった(ウェス・アンダーソンなんかはこれとは逆に間合いを嵌めていくタイプで、これはこれで気持ち良い)。
・環境音や生活音などの、通常の映画では遠景でぼかすかカットするはずの音がものすごい近景に配置されていて耳がゾクゾクした。
・目に余るデジタル感が無く、必要なところに必要なだけ投入されたCGがとても上品。タルコフスキーが生きていたら、こういうことをやりたかったんじゃないかと思う。
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前半を観た段階では「スカヨハ、どうなんだろ」などと思っていたが、後半のエレファントマンと出会って以降の虚ろな感じ、自分の内奥の変化に困惑している感じが思いの外良くて驚いた。あんまり喋ると「ただのビッチ感」が出ちゃうタイプの人だと思うので、本作の脚本はそういう意味でも正解だったと思う。そしてあの絶妙にだらしない腰回りは、もしかして役作りなのか。
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この映画を観たいろんな人から感想を訊いてみたいと思ったが、この映画や映画で描かれていることを何かの比喩だと捉えるのは勿体無い気がした。半勃ち状態で黒い液体に吸い込まれていった哀れな男たちのように、止めどないイメージの洪水に溺れ死ぬのが正解だと思う。それは強烈なエクスタシーを伴う甘美な体験に違いない。
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29『JOY』
#28『ジョイ』(2015/アメリカ)
90年代に「手を汚さずに絞れるモップ」を発明&大ヒットさせ、その後も100個以上の特許を取得してアメリカンドリームを叶えたジョイ・マンガーノという女性の半生を映画化。と、一応あらすじを書いたものの、どういう内容の映画なのかということは、自分にとっては全く問題ではなかった。
監督にデヴィッド・O・ラッセル、演者にはジェニファー・ローレンス、デ・ニーロ、ブラッドリー・クーパーら『世界に一つのプレイブック』チーム。おまけにイザベラ・ロッセリーニである。彼らが同じ画面内で動き回っているのを想像するだけでアドレナリンの放出が止まない。「盆と正月が同時に来た状態で寿司に出羽燦燦の無濾過をアテる」くらいの豪勢な布陣。年末に「2月後半にソフト解禁」との情報を得てから首を長くして待っていたのだが、本日Amazonプライムビデオを散策しているとすでに配信が始まっているのを見つけてしまった!ソッコーでレンタル&視聴。晩飯も食わずに。
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ジェニファー・ローレンスって、たぶん、飛び抜けて美人なわけではないんですよ。目は小さいし、顔はぷっくりしてるし。声も低くて掠れてて。なんかデカイし。まあ大好きなんですけど。で、じゃあ彼女の何が良いんだろうかと考えたらあの「強かさ」と「生活感」なんですね。表情とか発声とか身のこなしに、ちょっと他にはないタフさと生活感が漂っている。そこには少しばかりの哀愁もあるかもしれない。云うなれば「オカン的な何か」。
で、この『ジョイ』は、彼女の「オカン的な何か」がプロットと相俟って強烈なドライヴを発生させ、ある人の伝記(=特異なケース)に留まらない普遍性を獲得している、という意味で傑作だと思います。「強い女性の映画」なんていうセコい映画にはなっていないはずだし、その一点が観られただけでも満足。
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今回のデ・ニーロは『プレイブック』以上に情けない毒親っぷりで笑わせてくれた。「でも憎めない」という意図の配役なんだろうけど、今回に関してはいい加減憎まれるべきだぞ、デ・ニーロ。
デ・ニーロといえば、先週行った天満橋の飲み屋でのこと。喜久盛酒造の銘酒「タクシードライバー」が置いてあったのでこれを注文、その際同席していた友人が酒を注いでくれるバイトの女の子に「タクシードライバーって知ってます?」と野暮な質問をしたところ、バイトの女の子はデ・ニーロがプリントされた瓶のラベル確認し、少し考えてこう言った。
「さぁ・・・この(お酒作った)人がタクシーの運転手さんだったんですかねぇ・・・」
もう、なんていうか、100点満点だと思った。胸がギューンッとなって。鷲掴みにされて。これが映画オタクのお兄さんとかだったら「トラヴィスですよね?」とかカーテンレールに仕込んだ銃を出す動作をするとか、ヘタすると「You talkin' to me?」とか飛び出すかもしれない。もうね、そういうのいらない、ほんと。めんどくさい。男のこういうとこってホントにキモい(自分もよくやってしまいます死)。困り顔+半笑いの女の子がこのパンチラインを放った瞬間、ジャック・ラカンの云う「現実界」を垣間見た気すらしましたよ。欲を言えば、同酒蔵が出している「電気菩薩」でも彼女のパンチライン聞きたかったけど。
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(無理やり)『ジョイ』の話に戻すと、まあこういう「どうでも良い情報でキャッキャするアホな男」とか「チンポがついてるという理由だけでマウントしようとしてくる失礼なおっさんども」とかを、パンチライン(時にはパンチでもいいですが)でもってその都度ブチのめしていってくれたらと思いましたね、ホント(誰に向けた誰目線なのか)。
「ブラッドリー・クーパーが何故に心変わりをしたかが全くわからない」とか「イザベラ・ロッセリーニの出資の動機と出資内容が不明」とかいろいろありますが、まあ伝記なんで、その辺は。ジェニファーが最高だからそれでいいんですよ。あ、クライマックスの復讐劇の舞台がテキサスというのはちょっとアガった。相対するおっさんの出で立ちも含め「そうこなくちゃ」と。
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「オカン(ジェニファー)、ぼく、もっとしっかりするよ!」という気持ちで、今年は頑張って行きたいと思います(まあ、「オカン」とか言ってる時点でどうなのよ、とは思う)。
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28『The Monster Of Camp Sunshine』
#28『The Monster Of Camp Sunshine』(1964/アメリカ)
ある医者が、投与すると被験体が狂暴化する薬品を発見。「こんな危険なものは処分しなければ」と、薬品の入った瓶をなぜか近所の海に不法投棄。色々あって、川に流れ込んだその薬品を摂取したヌーディストキャンプの気の良い庭師、知恵おくれのヒューゴが狂暴化。浮かれた全���のスノッブ達を恐怖に陥���る。通報を受けた警察が軍隊の出動を要請、たった一人を退治するためにバズーカやダイナマイト等の大掛かりな銃火器を投入、果たしてヒューゴは木っ端微塵にされる。悲しみに暮れ、一旦は服を着ていたヌーディスト達は、一人、また一人と着ているものを脱ぎ始めるのであった・・・。
と、これまた筋を思い返すだけで頭から煙が出そうになる映画であった。建前は「環境問題」、本音は「裸のギャルを撮りたかっただけ」という読みで間違いないと思う。ヒューゴ撃退のシーンでは、苦肉の策として前大戦の記録フィルムを勝手に流用していると思われる編集が頻出。なんとおおらかな時代か。
最近のAmazonプライムビデオには、こうした「字幕をつけて輸出したりソフト化して流通させるのもアホらしいのでタダ同然で権利を手放した」と思われる(憶測)どうしようもない映画がどしどし追加されてる模様。多くはソフト化すらされていないっぽいので死ぬほど暇なひとはこの機会に是非。
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