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nekokaenu · 8 years

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菌を飼う -総集編-

猫が飼いたいけど飼えないから仕方なく猫から採取した雑菌を飼って心を慰めていた時期がある。

その様子を不定期報告していたのがこのブログだ。

もう菌を飼うことはやめてしまったがせっかくなので最後に総集編として今までの内容をまとめてみようと思う。

-準備編-

猫が好きだ。可愛らしいし見ているだけで癒される。

子供の頃から実家では猫を飼っていて、僕の生活は猫と共にあった。

いつか実家を離れても猫を飼おう、そう思っていた。

しかし今僕はペット禁止のアパート暮らしだし、ペットOKの物件に引っ越す稼ぎもない。

でも猫が飼いたい。猫が飼いてえ〜猫〜

猫に付着してる菌でもいい〜

猫に付着してる菌を飼うことにした。

はじめに用意する物は下記のとおりだ。

・滅菌使い捨てシャーレ

　菌の培地に使う。10個入りで６００円ちょいだったと思う。Amazonで買える。

・滅菌綿棒

　菌を培地に塗りたくるのに使う。Amazonで買える。本当はディスポスティックってやつがあるといいけど高いからこれで代用する。

・ゼラチン

　培地を固めるのに使う。スーパーで買える。

・ポカリ

　培地に使う。スーパーで買える。飲める。

・除菌ウェットティッシュ(写真には入ってないぞ)

　使う道具を拭くのに使う。薬局にある。

・あと、なんか食器とか。

これらを使って菌を飼うための培地を作る。

培地というのは要するに菌をとかを育てるときの餌兼お家と思ってください。

手順はこうだ。

・除菌ウェットティッシュでマグカップを拭く。マグカップについてるかもしれない余計な菌を除いておくためだ。

・マグカップにポカリを適量入れてレンジで温める。

・ゼラチンを入れる。別に実験とかじゃないので目分量で入れる。冷やして固まればいいんだよ。

・除菌ウェットティッシュで拭いたスプーンなどでよく混ぜて、固まる前にシャーレに移す。

・固まるまで冷やす。

これで菌をお迎えする準備はできた。

菌はこいつから提供してもらった。

アパートのベランダによく現れる野良猫。ベランダによく現れるので勝手にベラと呼んでいる。

とても人懐っこいヤツだ。菌なんかよりこいつを飼いたい。

ベランダに現れたベラを捕まえてその肉球を培地に押し付ける。

ベラは黙って耐えてくれた。いいヤツだ。こいつを飼いたい。愛しい。

ゼラチンの分量が少なすぎたのか培地が少し崩れてしまった。

しかし菌が取れてさえすればいい。このまま放置すれば菌がモリモリ増えてくれるはずだ。

-培養・分離編-

猫ポカリ(ポカリスエットのゼリーに猫を押し付けること)してから数日後。

白いのがポツポツと見えてきた。嬉しい。

さらに数日後

えらいことになった。

猫の肉球に潜んでいた雑菌だ。みんな猫にひっかかれたら洗えよ。

パッと見て

・白いやつ

・黒いやつ

・黒緑っぽいやつ

・茶色いやつ

・赤いやつ

が見える。黒いやつと黒緑っぽいやつは同じ種類かもしれない。

こいつらを一種類ずつ分離して培養する。黒いのと黒緑っぽいやつは見た目が似てて面白くないので黒緑のだけにする。

培地を新しく４つ作り、元の培地から滅菌綿棒で一種類ずつ取って新しい培地に塗りたくる。

塗りたくったものがこちら。バカだからどれにどれを塗ったか書くのを忘れた。

数日後

赤、黒、白、茶。皆すくすくと育った。

-観察編1-

菌を育て始めてからこいつらの成長を見るのが楽しみの一つになった。

朝起きて菌。仕事から帰って菌。

ああ、コロニー大きくなってるな。とか。なんか色素出しまくってんな。とか。

こいつらのささやかな成長を見ているとなんだか和む。

でも本当は猫が飼いたい。こんな奴らより猫が飼いたい。

猫を飼ったらこいつらの何百倍も和むだろう。

渋い黒。

元気な赤。(分離作業が雑だったので黒が混ざっている)

可愛い茶色。

白いのはなんか白くなくなった。ふざけている。

-菌の引越し編-

今日もみんな元気だ。しかしもうなんだかギチギチなので新しい培地に引越しさせてやる。

滅菌綿棒の先にちょっとつけて

新しい培地に塗る。あとは育つのを待つ。

猫と違い世話らしい世話は定期的に新しい培地に移してやるだけなのでとても楽。楽だがこいつらの世話をすることで猫飼いたい欲は全く満たされない。

引越しから3日後

4日後

5日後

凄まじい生命力だ。

-観察編2-

ベランダに猫が来なくなった。近所を歩いても見当たらない。

人懐っこいやつだったので誰かに拾われたのかもしれない。

寂しいが野良猫だったのでこればかりはまあ仕方がない。

でもやっぱりこうなると部屋で猫が飼いたい、部屋に帰った時に猫に出迎えて欲しい。出迎えなくてもいい。部屋の奥でふんぞり返っててくれてもいい。

猫が飼いたい。

それで今の僕が家に帰ると出迎えてくれるのはこいつらだ。

野良猫由来の菌だ。猫と言っても差し支えないだろう。

出迎えるというか、置きっ放しのアマゾンの箱の上にただ乗せてある。

ある日の様子、引越しをサボっていたのでみんな育ちまくってそろそろ限界に見える。この後新しい培地に移してやった。

-菌で遊ぶ編-

さっきも言ったが菌ども、世話が楽だ。

ポカリスエットの寒天作って塗っとけばかってに育つし。

うんこしないし。噛み付いたりしないし。

でもやっぱり猫の方がいいなあ。かわいいし。毛が生えてるし。(こいつらもほっといたらなんかモコモコ毛みたいなのが生えたりするけど)

猫が飼いてえ。

猫が飼いてえよ。

猫……

ネコ……

ネコ！ネコだー！わーい！！！実質ネコ！！！

玄関で出迎えてくれるネコ。

こたつでくつろぐネコ。

パソコンを使っているとキーボードに乗ってきて邪魔な猫たち。

よく気がつくタイプの方はもう気が付いているかもしれないが菌が1種類減っている。

これは引っ越させるときにシャーレを買い忘れていて1枚足りなかったから1種類犠牲になってもらったから。

この頃書いた『菌書道のすすめ』という記事で第1回日本おもしろ記事大賞の佳作をいただいた。嬉しかった。

-干からび編-

干からびた。

原因は僕がこいつらに飽きかけて放置していたからだ。

菌には悪いことをした。

死んでしまったのだろうか。

しかし、菌類には芽胞形成細菌という種類の菌がある。

外の環境がヤバくなっても殻に閉じこもってなんとかなるまで耐え忍ぶモードがある菌だ。

こういう菌は熱や乾燥で殺せないから注意してほしい。

こいつらがその芽胞形成細菌であるかはわからないがまだ生きている可能性はある。

さあ新しい培地に移してみよう。

復活した。菌の生命力侮りがたし。菌にはこういう連中がいるからみんなはしっかり手を洗うように。

復活したこいつらはその後もすくすくと育った。

すくすくとは育ったが、問題が発生した。

完全に飽きた。

何があったのか知らないけど今うっすい黄色と黒だけなんだもん。特に面白い変化もないし。

さあどうしよう。

捨てるのもいい。

猫を飼っていて「飽きた」とか言って捨てたらそれは絶対に許されない。

だがこれは野良猫から採取して培養したただの雑菌だ、猫じゃない。

大して心も痛まない。

いや本当にそうだろうか。心は痛まないのか。

いつの��にか半年以上育てている。いつも生活の片隅にはこいつらがいた。

クソみたいな仕事に出かける時。

イヤになる仕事から帰ってきた時。

視界の隅にいたのはこいつらだった。

でも飽きたもんは飽きたので捨てた。

-終わりに-

以上が2年前の秋〜去年の夏くらいまでやっていた菌飼育の記録のまとめだ。

この記事をもってこのブログはまたしばらく放置することになるだろう。

このブログが菌を飼おうとする人や猫を飼いたいけど飼えない人の何かの参考になったら幸いだ。

また何かの拍子に菌を飼いだしたらその時はまた更新するかもしれない。

最後に、猫と遊んだ後は手をしっかり洗おう。約束だ。

#猫 #菌

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