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殺しへのライン を読んだ
アンソニー・ホロヴィッツのホーソーンシリーズの第3作目。「メインテーマは殺人」「その裁きは死」に続き作者と同じ名前、というか作者自身を語り手として据え、探偵役のホーソーンと殺人事件の謎に挑むというスタイル。
新本格ミステリとしておもしろいのは当然、過去の話でも徐々に積み上げられているホーソーンその人への謎と不信感もまたひとつ追加さて不穏なエンディング、というのでもう板についたパターンとなっている。ドラマ映えしそうな構成だけどホロヴィッツという人がドラマの脚本も書いていることを考えると当然か。
さてしかし今回は冒頭では作中では書き上げたばかりでまだ出版されていない「メインテーマは殺人」の販売戦略会議というシーンからはじまり、文芸フェスのためにオルダニー島という小さな島にホーソーンと一緒に出掛けることになるという導入で、おおよそ 1/3 くらい頁を繰るまで殺人は発生しない。最初から事件発生というこれまでとはやや違ってじっくり紙幅を使って共に島に向かう作家陣(といっても不健康なレシピ本を出したTV出演シェフや盲目の霊能者、フランスの古語? の詩人などクセの強い面々。ここにポツンと常識人っぽい児童文学作家を混ぜるので目立つ)の観察や島民のいざこざを描いて、さあだれが殺されるのかな、と思ったらやっぱりおまえかというくらい想像通りの嫌われ者が殺されて捜査開始。被害者は右手を除いて両足と左手を椅子にテープで拘束されていて、これが推理のミソだろうとホーソーンも請け合うのだけど、最終的にはこれそんな大したネタではなかったな……。正直ここは今回ハズしてたと思う。今回もあっと驚くどんでん返しがあるわけだけど、紙で読んでて残り頁が少なくなってきてみなかなか納得いく結末になっていかないなーと思ったら最後におまけみたいに真相解明編となっていて、やや消化不良感もある。出てくる人みんなになにかしらの秘密があってその暴露を含むという点はマーダーミステリー感もあり、古典的なレッドヘリングでもあるのだけどややくどかった。パブリックスクールでのいじめみたいなのは、このシリーズやアティカス・ピュントシリーズでももう何度目かわからんくらい出てきたネタだし。なのだけど、まさかこの2人が通じてたのかーという驚きと、いやでも警察が捜査したら関係者に親子がいたことくらいすぐにわかるのでは? さすがに無理がないか、というもやもやも感じた。と、こうして書いてみるとどうも3作目は前2作に比べると自分にとってはいまいちだったのかな。非常におもしろいと思うしこれから2読目をするつもりだけど。
そういえばひとつ気になってたことがあった。被害者は発見時に右手にしていたロレックスをしていなくて、その時にホーソーンとホロヴィッツは彼が右利きだったかどうかということを話題にしていて、その後実際右利きだったという証言があるのだけど、右利きの場合通常は左手に腕時計をするものではないだろうか? これはなんらかの意味があるのか、ただのレッドヘリングなのかと思ってたのだけど、ロレックスの紛失自体は伏線回収されたけどそれがどちらの腕にしていたかという点はまったく関係なかった。調べてみると高級な時計はわざとみせびらかすために利き手にするということもあるという言説もあったので、そういうことなのかもしれない。いささかしっくりこないけど。
このシリーズ既に続きが邦訳されているようなのでまた続きも読むけど、その前に前2作を読んだのが 2021/2022年のことらしく、事件の内容を忘れてしまってるのでまずそっちの再読をしようかなと思う。
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掬えば手には を読んだ
読みはじめたときは、なんのきっかでで読もうと思ったんだっけなぁ、と思い出せなかったけど、Twitter で宣伝マンガをみかけてだったというのをストーリーを追ってて気がついた。
人の心がなんとなくわかるという青年が主人公で、悪態をついてばかりで最悪な性格の店長のオムライス屋のバイトにあまり喋らない女性がやってきて、彼女の心がわからないのだけど謎に声がきこえてくる……という話。守護霊? 心霊現象? と思うしまあ結局そうなのだけど、別にオカルティックな話ではなくそれはそういうものとして話は進む。逆に主人公が人の心がわかるというのも実は彼の思い込みというか、なにをしても平凡というコンプレックスを持つ彼がふといわれた特別なちからにしがみついてただけ、というのもしだいにほどかれていく。といってもこれも明確に「特別なちからなんてなかったんだ」と断言する感じじゃなくて、うっすらと気がついていくという感じで、この作品全体を通してなにかをパキっと白黒つけることなく、なんとなくそんな感じ、というあいまいさのまま進んでいく。謎の声がなんなのかは読めばはっきりわかるけど、それを一言で「○○は△△だったんだ」みたいに表現しない。言わなくてもわかるでしょ、というのが随所にあらわれる。主人公にずっと寄りそってる女の子も誰がどうみても好意を持ってるんだけどなにも言わない。まあこれは主人公が人のことはよくみてるけど自分のことはからきしという主人公スキル持ちだからという側面もありそうだが。
と、ふわふわとした作品なのだけど、正直ずっときもちわるいなと思って読んでた。店長は口は悪いが性格も悪い、が根から悪人ではない、という表現になっているが現実的には充分害悪だと思う。まあ改善がみられるので初回限定版についてた「アフターデイ」のエピソード込みで評価は改めてもいいかもしれないが。主人公はつい人のことに首をつっこみがちというふうに言われるがバイト仲間にあれ実際にやったらまあまあヤバい人だ。バイト仲間の女性も、まあいろいろあって大変なんでしょうがもうちょっとこう……。現実味がないよね。なんというか心の機微を描くのにやや大雑把すぎるというか、少女マンガチックな非現実感がただよっていて素直に読めなかった。今ふと思いついたけど「世界の中心で愛をさけぶ」のキモさを10倍希釈したみたいな感じだ。実際にこういう問題をかかえている人に対して非誠実な気がする。
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解剖、幽霊、密室 を読んだ。
「怪獣を解剖する」のサイトウマドさんの短・中編集。「怪獣を解剖する」は先月読んだ「怪獣を解剖する 上・下」のパイロット版という感じ(ストーリーは別物)。
特に冒頭の「複層住戸」が「幽霊」の部分だと思うのだけどこれがすごくよくできた叙述ものだった。漫画で叙述トリックってちょっと難しい面があると思うのだけど、なんか妙に展開が早いな? とか、これ描写が足りてなくない? という違和感はありつつも「あっ、そういうことか!」とアハ体験がちゃんとできた。おもしろい。
「怪獣」はまあ長編のエッセンスの一部が含まれているという感じで先に長編を読んでるので。「天井裏に誰かがいる」がタイトルの「密室」に相当する3話からなる中編で、巡査の主人公がいつも相談を受けてた老人の失踪についてSPECの未詳みたいな特殊事象対策課の刑事に協力して屋根裏に潜むもうひとつの世界に近付く、というある種心霊もの。気がついてなかったけどアーサー・クラークの「2001年宇宙の旅」の原作者や映画から登場人物の名称を発想してるとか影響を受けている。あと最後本棚から帰ってくるところが「インターステラー」かな。過去の事件の影響なのか? 声が出せない(出さない?)女刑事とか、やっぱ SPEC を彷彿とさせる設定がちらほらみられるけどそこに言及はなかった。
どの短編も最後に「解題」と表してアイデアの元ネタが書かれていて、参考文献みたいに書籍や映画などのタイトルが挙げられていて、ちょっとしたこだわりを感じさせる。
「怪獣を解剖する」でも感じたけど特に中編の「天井裏に誰かがいる」は描かれている以上の設定がありそうな深みがあって、逆にそのせいかテーマが絞り切れない感じがあってちょっともどかしい。すごくおもしろいんだが。「複層住戸」はその点短編なのでアイデア勝負の才気走った鬼作という感じで切れ味が良い。
サイトウマドさんは今のところ出版物としてはこの2作3冊しかないみたいで、また作品を読んでみたい。検索してみるとオモコロで Web 漫画もすこし描いているみたいなのでそのへんを読みつつ新作を待とう。
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ひねくれ騎士とふわふわ姫様 2 を読んだ。
そのうち気がむいたらと書いてたがなんとなく読んだ。
ストーリーがすごく動くというわけでもなく、設定がよく練られているというでもなく、ただふわふわしたゆるい雰囲気を深く考えず楽しむという作品。姫様の妖精の家造りというお仕事作品でもあるのだけどあいかわらずそこも特に細かい描写はなく作品のデザインだけが細かく描写される。なんかこうバランスがいいのか悪いのかよくわからないが、不快ではないのでたぶんまた続きも読む。というか一冊が短いんだよなこの作品。
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便利屋斎藤さん異世界に行く 13 を読んだ。
前回正体をあらわしたイリアンとサイトウの対決。うまく話をころがして副隊長の機転で決勝戦をノーゲームとしてつきそい人2人の最終決戦という体裁をつくって試合として作劇したのはうまい。
イリアンのバックグラウンドについてはまあそうだろうなと思っていたところにおちついて、蛇の魔王の復活と撃退(逃がしたとも言う)へと繋がる。次回からパーティーに新メンバーが入ってフルパに(Wizだと普通6人が最大なんだけどどうやら2人増えるらしい)。次々話を膨らませるのがうまい。最初のネタからここまでくるとは思わなかっただろうなぁ。
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怪獣を解剖する 上・下 を読んだ。
��つて海洋から現れて東京に大きな被害を与えた怪獣「トウキョウ」(年代とか博士の名前とかからこれがゴジラのオマージュであることは明白ではあるが、そのフォルムはあんまりゴジラに似せてはない)が今度は瀬戸内海の大豆島(小豆島のことを暗喩していると思われる。本作ではこのほかにも、四国、香川県、高知県などが微妙にもじった名前で登場していて、東京はそのまま東京なのでなにかこう意思のようなものを感じる)に上陸しそこで死亡。死体を解剖し研究するために恩師の芹沢博士に招聘されてやってきた研究者本多と現地の人たちの交流を描くお仕事マンガ、と紹介するとおよそ30%くらいの内容を表現したことになろうか。
この作品には一言で紹介するのが難しいくらい多くの要素がちりばめられていて、怪獣ものとして読んでも良し、生物学SFとして読んでも良し、気候変動を主とする環境問題を題材にした作品として読んでも良し、ジェンダー問題を描いた作品として読んでも良し、震災や原発事故などの災害に立ち向かう群像劇として読んでも良し、一応ラブコメとして読んでも良し、とまあ今ぱっと思いつくだけでこのくらいの切り口がありそう。普通にこれをやるととっ散らかった印象になってしまうのでテーマを絞りましょう、と編集さんに言われてしまいそうなものだけど、この作品には何というか物語に強度があり、絵柄は素朴なんだけどストーリーテリングでグイグイ先に読み進めさせられる強さがある。それからこれだけのフックが仕込んであると現代の日本に生きている読者でどれも引っかからないという人はほぼいないんじゃなかろうか。
すごい作品ではある。とはいえやっぱりこうして読後振り返るとどこに焦点をあてて消化したらいいのかまようところはあり、あとで記憶しているかという点では印象がぼやけてしまいそうな気はする。
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2025-07-13 異端の奇才 ビアズリー展 に行ってきた
日曜美術館でみて久留米市美術館でやっているというのを知ったので、さっそく行ってきた。日曜美術館で行きたいなと思う展覧会はいくつもあるのだけど、じゃあ行くかとすっと行けるような場所ではないことがほとんどなので、行きやすいところなら行っとけという精神で。
ビアズリーの名前は事前には知らなかったが画風をみてまっさきに思ったのは、かつてSFやファンタジー作品の挿絵を多く手掛けていて、グループSNEの「スペル・コレクション」にもイラストを書いていた三好道夫さんのイラストに雰囲気が似てるなということで、また時代的におととしのミュシャにも近しいものを感じたので、ぜひ実物をみてみたいということ。
実際作品を前にすると、画面でみるよりも小さな作品で、非常に微細な線や点で構成されていて正直ルーペを持っていったほうがよかったかなと思ったくらい。
またペンとインクの作品なのに黒の塗りが均一で強烈なコントラストの作品もあれば、これまた微細なディティールで逆に黒い紙に白いインクで描いたのでは? と思うような作品もあり、「どうやって描いたんだろう?」と思うようなものが多数あった。
また目玉と思われる戯曲「サロメ」の挿絵ではドラマティックで妖艶だったり奇異だったりする雰囲気の作品群のなかで、妙に現代的なデフォルメ感のあるまるっこいフォルムの衣服や頭髪の表現の作品があり(「サロメの化粧」の没バージョンだったかな? と「黒のケープ」という作品)、そのあたり永野護のファッションのデザインの雰囲気も感じた。
あと「3人の音楽家」と題がつけられた作品があるのだけど、どうみても森のなかに2人の人物しかいなくて、これのどこが3人なの? と思ったのだけどどこにも解説がなく、今検索してみてもよくわからなかった。あれなんで「3人の」なんだろう。
そういえば意外なことに久留米駅で降車したのははじめてかも。美術館のまえの公園や噴水がきれいで風情があってとても良いところだった。駅からちょっと歩くけど。
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猫と星屑 を読んだ。
猫オルガンさんの短編集。
収録作はどれも以前どこかで発表されていて読んだことのある作品で書き下ろしはないと思う(たぶん)のだけど、まとめて読むことができるだけでもうれしい。猫オルガンさんは「箱庭組曲」を出した少し後から連載が止まっていて、その後体調を崩されていたというのが実録漫画で報告されていたのでその影響もあってか新作をみることがなかなかなかったのだけど、この短編集の発売に前後してまた活動されているようなので今後も新作を楽しみにしている。
収録作のなかでは「八月の光 Bootleg」「川の流れのように」あたりが好き。だけどシュネ・ブラドベリィ姫様のシリーズや霊媒師さんシリーズ(とわたしが勝手に呼んでいる)などの連作も収録されていてこれらもうれしい。
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邦キチ! 映子さん season 13 を読んだ。
連載でも読んでるので特段感想もなく、書き下ろしのSDガンダムも、なんかそういえばやってたかもなぁという感じであまり接点がなかったので江波先生より高校生側の視点でなんにもわからん……ってなる側だった。まあお布施と思って。
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宙に参る 5 を読んだ。
読んだ。宙二郎とマヤの友情話とロボット(リンジン)の落語家の噺(暮石ハトスの過去回)とリンジンは肝だめしを怖がるのかという話と刑事のア・プルーさんの過去話。
これア・プルーさんは過去の事故のあとからはリンジンに人格が入れかわってるってことだよな。
うーん今回は群像劇的に周辺の登場人物をちょっとずつ深掘りしていく回というかんじ。落語家のはなしがよかった。
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ひねくれ騎士とふわふわ姫様 1 を読んだ。
これ、たぶん広告でみかけてなんか良さそうってポチったんだったかな。しばらく置いていたのできっかけは忘れてしまった。
ファンタジー世界が舞台で妖精が見えるということで排斥されている王女がある騎士を見初めて求婚し、王の命を受けてその騎士が僻地の城で一緒に暮らすことになる、という話でなんというかリアリティがない感じで違和感はある。ファンタジーにリアリティもなんもないといえばそうなのだが、王女が気味悪がられていたという設定はわかるんだけどそれにしては一応大事に育てられてはいたみたいで、それなのに妙に逞しいというか野性味のある生活力があるとか、そのくせ世間知らずではある、となんかキャラがブレている。とか思ってしまうのは荒木先生の漫画術の本を読んだせいかもしれない。まあ野性味あるところはギャグ要素なんだろうけど。ギャグといえばときどき不意に「パン」っていう単語が無駄に���てきて大きな(これまたどこで焼いてもってきたんだよ、と思うとリアリティがない)パンが画面に現れるのが天丼されてじわじわくる。基本的にほのぼの系ではあるのだけどギャク漫画ぽさもある。
で、本筋としては王女は妖精は見えるけど言葉はわからないので意思疎通は難しかったのだけど、騎士は言葉がわかるので元々趣味だったミニチュアの家/家具作りを妖精のために行なって報酬をもらう、という手仕事をする、というお仕事漫画の側面も持っているようで、そのセクションになると王女が突然職人っぽくなる。このへんもキャラブレを感じる所以かもしれない。
なんで読もうと思ったんだっけ? というのは若干思うけど、年齢のせいかこういうストレスのない作品をぼんやり読むというのも良くなってきたので、また気がむいた時に続刊もと思う。
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こころの一番暗い部屋 1 を読んだ。
ゆる民俗学ラジオで紹介されているのをきいてすぐポチって読んだ。さっと読める。
黒川さんの紹介の語り口は作品の魅力を非常によく捉えているので自分で読む以上に魅力的にきこえるので、つまり自分で読んでみるとちょっとまた印象が異なるのだけど、とある創作者が集うチャットルームで三題噺で即興の創作怪談を語り、それを主人公が構造を分析して指摘することでその語り手/創作主の内省を促しある種のセラピーになっているというのが各話のテンプレートとなっている。これが確かに巧妙で、ちゃんと個々の創作怪談がおもしろかったり怖かったり印象深いのと、そこで解体される語り手の私的経験というのがそんなに大仰なものでないというか重すぎないというのもなんかこう丁度いい。あと最初の数話だけですぐなくなったパターンなのだけど、チャットなので当初は顔が描かれていなかった各話の創作怪談の語り手が、主人公の分析をきいて心がゆるんだタイミングで顔が描かれるというのが象徴的。
で、主人公ともうひとりずっと参加している「ななくん」は自身は語り手をしたことはなく、作中でフードを被って顔のないアイコン/アバターだけで描かれていて正体不明なのだけど、1巻のラストで彼についてのある疑惑が提示されてオムニバス風だった作品にストーリーらしきものが提示されていく。ということで個々のエピソードの体裁や手触りもよいし、ストーリーがどう続くのかもゆるやかに気になるので次巻もぜひ読みたい。のだがこれ1巻が出たばかりみたいなので続きはまだちょっと先だろうか。ジャンププラスで連載が順調に続いているみたいだから年内には出るかなぁ。
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訂正する力 を読んだ
東浩紀さんの新書。ゆる言語学ラジオでちらっと触れられてて読んでみようと思ったのだけど、どういう文脈だったのかはもう忘れてしまった。
タイトルやゆる言語学ラジオでの紹介のされかたとしては「誤ちをみとめて訂正するのが大事」みたいな印象だったけど本書の内容はちょっと違うというか、正直なところ結局なにを言いたいのかわかるようなわからないような……。内容も総論賛成各論反対という感じで、わかるわーというところもあるのだけど具体的な事例を語りはじめると反発心が出てくるという感じでいまいちすんなりと飲み込めない。あとそもそも本書の関心領域がそういうものなのかもしれないけど逐一「日本では」「日本は」と日本の話をしたがるのと、ことあるごとに「文系と理系」「科学と人文」という二項対立で語ろうとしてて、そんなに話はシンプルじゃないよと思うのでひっかかる。筆者には若干文系コンプレックスがありそうだなと思った。
現代の言論空間で二極化が進み硬直しているということ、「この意見を批判すれば安泰」みたいな空気にみなが従っている、というあたりはその通りだなと思うし、その他も根本的な問題意識についてはすごく頷ける。じゃあどうすればいいのかというと簡単な答はないので、まあそりゃそうだなとは思うのだけど。あと「政治」の本質を敵味方を区別することと定義付けて(これが乱暴だとは思うけど)「平和」とは「政治」の欠如だ、という論はこう抜き出すとめちゃくちゃにきこえると思うけど実際にはもうちょっと丁寧にゆるやかな表現をしていて、この表現は憶えておこうと思った。
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岸部露伴は動かない 3 を読んだ。
コミックス版。短編集なのでそれぞれの収録作はどこかで読んだことがあったりするわけですが、今回の収録作「ホットサマー・マーサ」「『ドリッピング画法』」「ブルスケッタ」は漫画として読むのは初かも。
特に印象に残ったドリッピング画法は導入部と後半とで視点がガラッと変わる、作者によると映画「サイコ」の構成と同じに(意図せず)なってるとのこと。おかげで最後の解決の方法もややわかりにくいこともあってちょっと話がとり散らかってたけど、この時期気候変動についての問題意識があったんだろうなというのは分かった。結局どうすりゃいいのかわからんというどうしようもなさがそのまま作品の雰囲気にも表れているという感じだろうか。
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荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方 を読んだ
前作の「漫画術」でこういう秘訣をばらす本を書くのは最初で最後、と書かれていたけど続きがでたという。まあ先生の場合は売れたくてというより書かれている通り前作読者で漫画家になったという人に向けてより深いところを伝えよう、ということなんでしょう。多分要望もあったんじゃないかと思いますが。
前作もですが文章がうまいですね。今回ディオ(DIO)の身上調査書を記憶から掘り起こして書いたもの(実物はもうないらしい)が掲載されていて、父親を憎んでいるというのは当然ながらそれに従ってた母親も軽蔑しているという設定になっていたのはちょいショック。作中ではディオの母親への言及はほぼなくて、それ故に人間のころはまだ母親に対する想いみたいなのはあったんじゃないかと勝手に思っていたので。まあディオは悪役の最たるものなのでそのくらい徹底的に悪でもいいとはおもうけど。
他はおおむね前作で書かれていたことの焼き直しで、もうちょっと具体的に悪役を作る例とか心構えがかかれてたのと、おまけでコマ割りの実践解説編というのがあったくらいかな。ああそうそう、「岸部露伴は動かない」の「悪役」として泉京香があげられていたのが面白いといえば面白い。悪役といっても拳(やスタンド)で戦う相手とは限らないということですね(人や生物であるとも限らない)。
あと最後のほうで「税金はちゃんと払う」「健康に気を付ける」みたいなことが書かれているのがさすがだなと。世間の常識を身に着けようねみたいなややくちはばったいことも書かれていて、先生も老害化かなぁみたいなこともやや思ったけど、非常識な(奇妙な₎キャラを生むには常識(とされていること)を把握してないといけないというのは確かにその通り。まあでも葬儀に黒のフェラーリで乗り付けるのは別に構わないと思うけどな……。
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2025-05-23 岸辺露伴は動かない 懺悔室 を観た
実写ドラマ/映画版の最新作。原作としては最初の作品でこのエピソードは露伴は本当に動かないで懺悔室で彼を神父と勘違いした男が語る異様な話をきくだけというものなので、はたしてどう映画にまでふくらませるのか、というとやはりオリジナル展開がふんだんに盛り込まれていた。前半1時間弱でオリジナルの話を語り終えてあとはオリジナルっていう配分だったかな。
最近よくみる井浦新さんが懺悔する男役で、実にきもちわるい演技過剰な名演でいかにもジョジョだなあという感じを出していた。ちょっとやりすぎ感あるくらい。オリキャラのロレンツォとかちょっとステレオタイプすぎない? と思ったが。
後半呪いに巻き込まれて「幸運が襲いかか」ってくる露伴がめんどうだなーみたいな雰囲気で不機嫌になってるところで、ピンクダークの少年の海外展開が不自然に増版がかかって大ヒット! と泉が喜ぶのをきいて、自分の努力や才能に依らずに漫画が売れたということにブチギレして本格的に対決を決心するところは、まじで岸辺露伴だなと思ってあの性格をあぶり出してるシークエンスだけでこの映画評価できる。
泉は今回も「たぶんこのこは呪いが効かないタイプだろうな」というマイペースでいい狂言回し、というか今回はほぼ脇に収まってたかな。
と、原作およびドラマ版のファンとしては是非みたい映画だったのだけど、ふっと冷静になってみると今作なんとなく手放しで激賞しかねる気持ちが湧いてくる。なんだろうなこれ。なんとなく不完全な感じがする。ルーヴルの時の感動みたいなのが今回湧きあがってこない。細部のこだわりが見えてないのかもしれないなぁ。なにか見逃してるような感じなのでもう一回は観ておきたいかも。
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虚構推理 23 を読んだ。
「まるで昔話のような」ろくろ首の話と、まさかのMKシリーズの続き。
ろくろ首の告白を聞いている時点でまあこれは裏があるなというのは当然予想ができるし、そうなるとおおむね表向きがロマンスものであったので真実はもっとグロテスクなものであろうと思ったのだけど、ろくろ首は良助氏を殺そうとはしてないあたりなんというか一種の情のようなものはあったのかなという気もした。いまいちすっきりしない結末だったが、宇喜多真里奈の六郎への恋慕の結末もあってなんとなくうまく決着したような感じにさせられている。ろくろ首もだけどこのエピソード単に巨乳が描きたかっただけではないか疑惑がある。
「木製だから大丈夫」は22巻で登場した相楽と宇喜多とが登場して前巻からの六郎の同級生シリーズのしめくくりとしつつ、まさかの六花さんのメカ琴子の新作登場。原作者このシリーズ気に���ってるな。
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