jun2020jun
観劇レポ
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吉本新喜劇座長”内場勝則”主演舞台「FILL-IN~娘のバンドに親が出る~」観劇レポートです
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jun2020jun · 7 years ago
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FILL-IN~娘のバンドに親が出る~
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2017年7月13日(木)~7月23日(日)、新宿紀伊國屋ホールで上演された舞台「FILL-IN~娘のバンドに親が出る~」
吉本新喜劇の言わずと知れたスーパー座長・内場勝則が20年断り続けてきた「泣きの芝居」をついに解禁!
���劇公演での主演舞台は自身初。しかも、これまで一度も触れたことのない「ドラム」演奏への挑戦。その魂の舞台を目の当たりにした。
ここからは、ネタバレあり、私の個人的な感想も含む、観劇記録です。
内場さんの迫力のある芝居、憂いのある表情、切なげな視線、かわいい仕草、そしてドキッとするような色気に、何度も心を掴まれ、観劇後に出口で当日券を追加購入するという、まさかのエンドレスリピート現象…
こんなにリピート観劇した舞台は初めてで、内場さんの今まで見たことのない表情に心を揺さぶられ、気付いたら、初日と千穐楽を含む、全7公演を観劇する運びとなりました。
7回も見ると、次にどんなシーンか、どんなセリフでどんな言い回しか、キャストの一人一人がどこから登場して、どこへ去るか、どんなBGMや効果音が入るかまで大体頭に入りました。 舞台転換などの演出もとても良かったので、そういったキャストの出入りも含めて覚えている限りを書き綴ります。
開場中は、キャストそれぞれが葬式に流したい曲のBGMが流れる。アナウンスはキャストの一人で声優としても活躍されている多田野曜平さん。その流れで…
「続いてお送りします曲は7年間働く気のなかった作家をこの会場に迎えるための一曲です。ただ今から客席より本公演の作・演出家が登場します!拍手と声援でお迎えください。山形の奇跡、大阪の星、香川のうどん、岩手の冷麺、大王こと後藤ひろひとの入場です!」
♪華々しい曲が流れて、客席後方扉から、大王(後藤ひろひと)登場!
客席からの割れんばかりの拍手に手を挙げて応えながら舞台上へ。
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大王「受け取った人の3人に1人が涙する感動のLINEスタンプをご存じですか?(←毎回ネタが違いますw)……それはさておき、私がこの舞台の作家です。さて本来であれば、タキシードで登場したかったんですがご覧の通り喪服です。なぜなら今から皆さんにご覧頂く作品は一人の人物が死ぬことによ��てスタートするからです。あまり居心地良いものではありませんが、ここは葬儀場ってわけなんです。」
舞台上手から、カラオケスナック「うたciao」の店長(菊池健一)が泣きながら登場
店長「うぅぅぅ~・・ぶぁ~・・・あぁ~・・・」
店長が大王に何かを話しかけようとするが、涙で言葉にならないまま、舞台下手へ去る
(この店長のキャラの濃いことw)
大王「もとはと言えば、書いた私が殺したことになるのでここに長居はしたくないです。亡くなったのは先日21歳になったばかりの一人の女の子。死んじゃったのでお坊さんがつけた難しい名前になっちゃいましたけど、生きている時の名は、『はな』に『おと』と書いて花音。アルバイトで運転中の運送屋のトラックが3、4回ひっくり返ったそうです。それにしては綺麗な死に顔でした。…いやいや、ちょっと待てよ。彼女、いつもと違いましたね、いつもはあんなメイクじゃなかった。後ろのほうの方には見えないと思いますけど、私のこのクルンと曲がった髭、これ毎日、私がジェルとドライヤーでセットしてるんです。今まで一度も他人にやってもらったことがないんです。だから私が死んだらこれは誰にも出来ないんです。棺桶に入るときには誰かに『こんな感じだったかなぁ~』って言われながら、ドライヤーで適当にやられて、ヨレ~っとした髭になるんでしょう。これは私の人生の大失態でした。もっとたくさんの人に自分の人生を知ってもらえれば良かった。私は死んでからもヨレ~っとした髭でそんなことを思いながら棺桶に入るんでしょう。死んだ花音ちゃんは、今、何を思っているのでしょうか。花音ちゃんの魂はまだその辺をふわふわ彷徨ってます。でも大丈夫。もうじき彼女には天使が現れます」
♪BGM(静かなドラム音)
舞台上手から、スーツ姿で左腕に喪章をつけた真下幸吉(内場勝則)がアイコスを吸いながら登場
大王、舞台下手側のベンチに腰をおろす
幸吉、大王と目が合って軽く会釈
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そこに舞台上手から幸吉の別居中の妻・文音(柿丸美智恵)が喪服姿で登場
幸吉「いいの?��前まで出てきて」
文音「もう落ち着いた」
幸吉「ビールとか足りてる?」
文音「ミカがやってくれてる」
幸吉「ミカちゃんも忙しいのにね」
文音「幸ちゃんも」
幸吉「俺?…俺は親だから」
文音「親が喪章?」
幸吉「あぁ、どうしても職場からまっすぐで」
文音、舞台上手(葬儀場)へ戻ろうとして、
幸吉「文音!」
文音「ん?」
幸吉「・・・」
文音「何?」
幸吉「・・・」
(この内場さんのなんとも言えない表情にまずやられる…)
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幸吉「・・・」
文音「何?なんか言う?言うなら言って!言わないなら帰って!会社に!」
幸吉「…俺、涙がでない。娘が死んだのに涙がでない。俺は壊れてるのか?そうじゃないよな?4年も花音と会ってなかったから実感がないんだよな?」
(まっすぐな瞳で優し気な表情で話していて、表情も声もすごく柔らかい。もうグッとくる…幸吉の戸惑いが伺える)
文音「そう?」
幸吉「そう。『いいよ、お父さん許すから、帰ってこい』って言ったら、あいつすぐにでも帰ってくる気がするんだ」
文音「許すって?」
幸吉「もう十分反省しただろうし。『また戻りたい』って言ったらさ、『もうお父さん怒ってないよ』って言ってやるよ」
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文音「花音が?何を反省するの?」
幸吉「いや、だから音楽やるとか、美大行くとか」
文音「それを謝らなきゃならなかったの?」
幸吉「(優しく)『もう怒ってないよ俺は』」
文音「幸ちゃん…」
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幸吉「いや、これは本当」
文音「幸ちゃん…幸ちゃん壊れてるよ」
幸吉「(優しい表情で文音に面と向かって)壊れてるか?」
文音「涙が出ないのは悲しくないから。悲しくないのはね、幸ちゃんが壊れてるから」
幸吉「どうしたらいいのかな?」
文音「花音はね、もうどれだけ、反省、努力しても、幸ちゃんの理想に近づくことなんかできないんだよ!!だってもう…死んだんだから!…幸ちゃん、一度でいいから花音に近づこうとしてみて」
幸吉「…?」
文音、舞台上手へ去っていく
幸吉、首をかしげながら、振り返るとベンチに座っている大王と目が合い、会話を聞かれていたことに気まずさを感じて…
幸吉「あ、長いこと別居してるかみさんなんです。さっぱり分からないんですよ、女性の言うことは」
大王「真下さん!」
幸吉「はい。…あっ!花音の?…あ、短大の??」
大王「いえいえ、作家です」
幸吉「あっ美大の!?」
大王「美大でもないけど作家です」
幸吉「生前、花音がお世話になりました」
大王「いやいや、むしろこれ��らです」
幸吉「え?」
大王「真下さん、あなたの会社は、え~…」
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幸吉「白松不動産ホールディングス」
大王「はい。よくわかりましたね?」
幸吉「私の勤務先ですから」
大王「あぁ、そうか。その会社、あなた今日から1週間お休みです」
幸吉「え?」
大王「あなたの代わりに吉田君が働いてくれます」
幸吉「吉田君?…誰?…あ!ジャイアントロボ?」
大王「はい」
幸吉「いや、あればラグビーさせる為に入れたんです。国体の強化選手だったんです」
大王「大丈夫」
幸吉「あなた何言ってるんですか?」
大王「『ある時ロボは不動産業に目覚めて驚くべき能力を発揮したのであった!!』これでいいでしょう」
幸吉「はい?」
大王「真下さん、あなたには行っていただきたいところがあるんです」
大王、胸ポケットから一枚の紙きれを幸吉に渡す
幸吉「どこです?ここ」
大王「生前、花音ちゃんがあなたに勘当されて、家を飛び出して、最初に行った場所です」
幸吉「ここに?花音が?」
大王「はい。馬を用意しました」
♪ヒヒ~ンと馬の鳴き声
幸吉「え!?私、馬、乗れません」
大王「いや、乗れるはずです!(パチンと指を鳴らす)」
幸吉「あ、乗れますね」
(笑)
幸吉「ん?乗れるか?いや乗れる!乗れるなぁ」
幸吉、舞台下手へ去っていく
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大王「少々強引でしたが、こうでもしないとこの物語は始まらないんです」
♪ドラム音でテーマ曲の前奏部分が流れ、暗転。舞台の一段高くなった2階部分の壁に「FILL-IN」と映し出される
♪工場の機械音。明転。そこは山田鉄工所
鉄工所社長(多田野曜平)が舞台上手から登場
鉄工所社長「おい、たきちゃ~ん」
たきちゃん(たくませいこ)が舞台下手から登場
たき「な~に?」
鉄工所社長「(舞台上手袖を指して)ほら、あれ見ろよ?」
♪馬の蹄の音
たき「なに~!!うま!馬!!!」
鉄工所社長「(舞台下手袖に向かって)ちょっと、機械とめて~!!」
♪機械音ストップ
幸吉、舞台上手から登場
幸吉「(大王にもらった紙切れを見せながら)この住所はここでしょうか?」
たき「…ここやね」
幸吉「ここ、何ですか?鉄工所ですか?」
たき「(社長に)これ、関わったらあかんやつや」
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幸吉「(思わず関西弁で)いやそんなことない」
たき「ほら!急に関西弁!!」
幸吉「生まれが大阪なんです」
鉄工所社長「なんか発注ですか?」
たき「あかんて!馬やで!この人、馬乗ってきたんやで!」
(笑)
鉄工所社長「いいなぁ~馬」
幸吉「よかったら差し上げます」
鉄工所社長「いいの?」
幸吉「私いりませんし、そもそも私のじゃないですし」
鉄工所社長「やったよぉ~!」
幸吉「私、真下と申します。真下花音の父親です」
たき「うぅ…花音ちゃんの(泣)」
幸吉「生前、花音がお世話になりました」
鉄工所社長「お世話になったのはこっちのほうだよ。毎日一生懸命働いてくれて」
幸吉「え?花音が鉄工所で働いてたんですか?」
鉄工所社長「お父さん、知らないの?」
たき「外の看板見てくれました?亡くなった社長の奥さんが蘭が好きでね。奥さん亡くなって、この工場に『なんか足らん、なんか足らん』と思ったら蘭や!でも蘭は難しくて誰も育てられへん。それを花音ちゃんが看板の回りを余った鉄で…(泣)」
幸吉「あぁ、あれは蘭か」
たき「社長、嬉しくてトイレで泣いてたなぁ!」
鉄工所社長「泣いてないよ!」
たき「いぃ~や!泣いてた!せやから花音ちゃん、トイレ我慢できずに少し出してしもたんや!ほんましょうもない!」
(笑)
鉄工所社長「そりゃ悪いことしたな~」
幸吉「そうですか!もらしましたか。あいつ。まだまだ子供でね、いつになったら大人になるのやら。今度ガツンと言ってやらなきゃ!ハハハハハ………あっそうか…」
そこへガールズバンド「スキッドマークス」のギタリスト&ボーカル 葉月(相楽樹)が作業着姿で舞台下手から登場
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葉月「社長!これ頼まれてたの終わりました」
鉄工所社長「葉月ちゃん、この人!この人!」
葉月、幸吉に気付き会釈
たき「葉月ちゃん、この人な、花音ちゃんのお父さんやて」
幸吉「どうも、花音がお世話になりました」
葉月、幸吉が花音の父親だと分かり、背を向ける
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鉄工所社長「葉月ちゃん、あ、あれだよな、花音ちゃんと一緒にな…」
葉月「言わないでいいんじゃないすか!?」
幸吉「?」
葉月「…休憩いただきます」
葉月、幸吉とは目を合わさず、舞台下手へ去る
たき「ま、まあ、色々あるんちゃうやろか、若い子やし」
幸吉「あの、花音はここからどこへ行きましたか?」
たき「さっきの葉月ちゃんはね、花音ちゃんの紹介やねんけど、うちで二人は雇われへんから、そしたら花音ちゃん『私には次の仕事があるから大丈夫です』言うて」
幸吉「次の仕事?」
たき「社長、会員証見せたり」
鉄工所社長、幸吉にカラオケスナック「うたciao」の会員証を渡す
幸吉「うたちゃお?」
鉄工所社長「うたっチャオ~!っていうフランス語」
幸吉「それはどうかと」
(笑)
幸吉「カラオケボックスですか?」
たき「スナックやな、ボックスちゃう」
鉄工所社長「花音ちゃんに会いたくて通ったけど、���う行かないよ。14ポイント���まってる。あと6ポイントで二階堂のボトル」
幸吉「あぁ、ありがとうございます」
幸吉、舞台上手へ去る
鉄工所社長「俺もとうとう馬持ちかぁ~(嬉しそうに舞台上手へ去る)」
たき「葉月ちゃ~ん…!(舞台下手へ去る)」
♪BGM(ドラム音)&暗転
舞台2階部分をカラオケスナック「うたciao」店長が泣きながら横切る
明転すると、1階舞台上にはソファーが一つ。そこは「うたciao」店内。エプロン姿でモップを持って床掃除をしている ガールズバンド「スキッドマークス」ベース くりこ(松村沙友理)登場
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♪ドアの開く音
店長「(舞台上手袖から声のみ)くりこちゃ~ん、くりこちゃ~ん!」
くりこ「は~い(舞台上手袖へ去る)」
店長「(声のみ)これパラパラ~ってお願い!…あっ!ちょっとぉ~!!」
店長、舞台上手から喪服姿で登場
店長「これ、肩とかにパラパラ~ってするんだよぉ」
くりこ「(舞台上手から再登場し)これ、何のためにやるんですか?」
店長「お清めの塩だよぉ。お葬式行った後に塩をパラパラ~ってするの」
くりこ「そうなんですね。私、ゆでたまごとかにかけて食べてました」
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店長「ダメェ~!そんなの絶対ダメェ~!」
くりこ「でもちょっと余ってるし、ピーナッツにでもかけておきます?」
店長「ダメェ~!なんでそんな恐ろしいこと思い付くの!?ダメェ~!(持ってる紙袋をくりこに渡そうとして)はい、これくりこちゃんの。何て言うんだっけ?」
くりこ「引出物?」
店長「ダメェ~!引出物はお祝いの時のだから」
くりこ「ほな、何て言うんですか?」
店長「ん~、参加賞?」 (←毎回ネタが違いますw)
店長、ソファーに紙袋を置いて座る
店長「今日は泣いた~。くりこちゃんも行くべきだったよ、花音ちゃんの葬儀」
くりこ「店長は泣くだけで済むかもしれないけど、私は泣いたぐらいじゃすまへんと思う。花音の死んだ顔見たら、私もその場で死ぬんちゃうかな」
店長「うわぁ~~~(泣)ダメェ~もう今日休みにしよう」
くりこ「あかんよ」
店長「なんで?」
くりこ「今日は花音のファンやったお客さんがいっぱい来て騒いでくれるんやから」
店長「そうだね♪そうだね♪騒ごう!歌おう!飲もう!」
♪ドアの開く音
店長「(舞台上手袖に向かって)らっしゃいっやせ~!」
くりこ「寿司屋か!(舞台上手袖に向かって)…あのすみません。まだやってないんです」
舞台上手から幸吉がやってくる
幸吉「あの、客じゃないんです(店長の顔を見て)あれ?」
店長「あれ!?お父さん??」
くりこ「えっ?親子?」
幸吉&店長「(二人とも手を振りながら)いやいやいや」
(笑)
幸吉「今日葬儀に」
店長「くりこちゃん、この人、花音ちゃんのお父さん」
幸吉「花音がこちらのお店でお世話になっていたと伺いましたので」
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店長「どうぞ、座ってください」
幸吉「いえいえ」
店長「そういわずに!(ソファーに置いてある、香典返しの紙袋をみて)誰?こんなところにこんなつまんないもの置いたの?」
幸吉「…(店長をじっと見ている)」
(笑)
店長「いや、つまんなくない、つまんなくないですぅ~。すみません。(紙袋を持って舞台中央奥へ去る)」
くりこ「どうぞ」
幸吉、ソファーに座る
くりこ「花音のバイト先、まわってはるんですか?」
幸吉「はい。あ、関西の方ですか?」
くりこ「はい。花音と話すときはいっつも大阪弁でした」
幸吉「え?花音、大阪弁なんか喋られへんでしょ?」
くりこ「いいえ、喋ってましたよ!」
幸吉「えっ…?」
くりこ「鉄工所も行かれました?」
幸吉「はい」
くりこ「あそこの社長、また来てくれはったらいいのに」
幸吉「(ポケットから「うたciao」の会員証を取り出して)これ、そこの社長が」
くりこ「あぁ、預かっときますね」
店長、舞台中央奥から焼酎ボトルとグラスを持って登場
店長「すみませ~ん、お待たせしました。(幸吉の横に並んで座りながら)こちらこの間の焼酎フェアで手に入れた幻のお酒。鹿児島のお酒でなかなか手に入らないやつですよ。その名も『娘失い』!!」
(笑)
幸吉「…(店長をじっと見ている)」
店長「(幸吉の視線に気付き)…こんなものを持ってきた私は今すぐ死にたいです(お盆で自分の頭を叩く)すみません!替えてきます」
店長、舞台中央奥へ去る
くりこ「なかなかアホでしょ」
幸吉「えぇ。…あ、いやいや。あの花音はこちらでどんな感じやったんですか?」
くりこ「むっちゃ人気者でしたよ。といってもここら辺のおっさんばかりやけどね。商店街のおっさんやら、町工場のおっさんやら、ここに来て花音に泣き言を言うたりして」
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幸吉「え?花音、おっさんらの泣き言聞くんですか?」
くりこ「はい、めっちゃ聞き上手でした。みんな『うちの息子と結婚せぇへんか?」って言うてました」
幸吉「へぇ~…」
くりこ「花音、『親には頼られへんから』言うて、朝から晩までどころか朝から朝まで、晩から晩まで働いてました。せやから、トラック運転中にボォ~っとしとったんちゃうかな?…かっこいい子でした。私の憧れでした!」
幸吉「あなたは?」
くりこ「くりこです」
幸吉「くりこさん、花音がお世話になりました」
くりこ「次はどこに行かれます?」
幸吉「…なんかまだ頭がいっぱいで、いま聞いた話もほんとに花音のことなのかなぁ思って…私の中の花音と皆さんから聞く花音が一つになれへんのですよ」
くりこ「ほなら、明日スタジオに来ませんか?」
幸吉「スタジオ?ラジオか何かですか?」
くりこ「いえ、音楽スタジオです。そこに来てくれたら、もっと花音のこと分かると思います」
くりこ、幸吉に音楽スタジオの会員証を渡す
くりこ「これ、会員証。明日絶対持ってきてください」
幸吉「はい」
くりこ「絶対ですよ!」
幸吉「はい!必ず!」
くりこ「じゃ��また明日」
幸吉「じゃあ」
幸吉、舞台上手へ去る
入れ違いに、店長がフルーツの盛り合わせを持って舞台中央奥から登場
店長「すみませ~ん。お待たせしました。(幸吉が帰ったことに気付かずに)これスーパーアルティメットフルーツ盛り!サービスしますからこれで元気になってください(とソファーの方に振り返ると幸吉が居ないことに気付き)あれ?お父さん帰っちゃった?」
くりこ「帰りはったよ!」
店長「僕、お父さんを怒らせた??」
くりこ「『二度と来るか!』言うてた。」
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店長「マジョリティ?」
くりこ「(フルーツ盛りを指さしながら)『そんなもん、くりこに食わせ!』言うてました」
店長「そういった?」
くりこ「はい」
店長、肩を落として帰ろうとするが…
店長「そんなもんって変じゃない?ねぇ、お父さんこれ見た?このフルーツ盛り見た?」
くりこ「(モップで店長を押しながら)ごちそうさまで~す!」
店長「ちょっと、くりこちゃん、おかしくない?くりこちゃ~ん」
店長、くりこ、舞台中央奥へ去る。
♪BGM&暗転
明転すると、舞台上にはベンチが一つ。そこは公園。幸吉の妻・文音が自分のカバンと幸吉のカバンを持って登場し、ベンチに座る
♪「ニャァ~」と猫の声が聞こえて、文音、舞台下手袖に視線を送る
文音「ん~?どこかなぁ?(舞台下手袖に向かって猫に話しかけている)」
♪「ニャァ~」
文音「お腹すいたのかな?」
♪「ニャァ~、ニャァ~」
文音「そっかぁ、なんか買ってきてあげようかなぁ~」
すると、舞台下手から、謎の男カラヤン(池乃めだか)登場
カラヤン「ほんまですか?」
(笑)
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カラヤン「ではサンドイッチとカフェオレをお願いします。それと今月分の日経サイエンスも」
(登場から爆笑を誘うさすがのめだかさん)
文音「いや…」
カラヤン「なんでや?今『なんか買うたろか?』って言うたやろ」
文音「猫かと思ったので」
カラヤン「猫やったら良くて、人やったらあかんのか?ほな、あんた、なにか?無人島で最初に出会うたのが人やったら嬉しくないんか?」
文音「それは…嬉しいと思います」
カラヤン「ほな、それと何が違うんや」
文音「ここが無人島じゃないってとこじゃないですか!?」
カラヤン「あんたカシコやなぁ~」
カラヤン、文音の前から去ろうとする
文音「あ、あの、さっきのは私が悪かったと思います(お財布から千円札を取り出して)これで!」
カラヤン「お嬢さん、何か勘違いをなさっておられる。別に私は人から施しを受けようなんて、そんなことは考えてない」
文音「でも、さっき…」
カラヤン「あれはあなたが『何か買ってやろうか』って言うたからついでや」
文音「はい…(お札を財布にしまおうとする)」
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カラヤン「手を離しなさい」
文音「はい?」
カラヤン「そのお札から、その手を離しなさい」
(笑)
文音、戸惑いながら、お札から手を放して地面に置く
カラヤン「そして、それを私に説明しなさい」
文音「えっと…千円札が、落ちてます」
カラヤン「おぉ!私のだ!(と、千円札を拾いポケットにしまう)」
(笑)
カラヤン「こんな時間に女性の一人歩きは危険だ。ほら、向こうから怪しい男が走ってきた。さぁ、私が護衛しましょう」
文音「あ、あの、あなたは?」
カラヤン「どうも、保安官のロバートです」
(笑)
幸吉が舞台上手から走ってやってくる
幸吉「おい!お前なにやってるんだ」
カラヤン「出たな!妖怪小豆洗い!(文音に向かって)キャサリン!私の事はいい!先にテキサスに帰っていろ!」
文音「あの、この人、私の旦那なんです」
カラヤン「なんてこった!」
(笑)
幸吉「分かった分かった。(財布から千円札を取り出して)これあげるから向こうに行きなさい」
カラヤン「どうして君たちは、何でもお金で解決しようとするんだ」
幸吉「お金が欲しいんやろ?ほら!」
カラヤン「そんなことはない」
幸吉「大体分かんねん、そういうのはな」
カラヤン「私の何がわかるんだ」
幸吉「言わんでも分かんねん。欲しいんやろお金が」
カラヤン「そんなことは言ってない。私の話を聞きなさい」
幸吉「こっちはこっちで(文音と)話があるから」
カラヤン「とにかく…」
幸吉「いいから、持ってったらいいやろ」
カラヤン「だから、欲しくないものはもらえない!」
幸吉「欲しくないことないやろ!」
カラヤン「だから!」
幸吉「あんたが持ってたらそれでしまいや!」
カラヤン「だから、きみは…」
幸吉「早く持ってったらええやろ!」
カラヤン「もういい!!!」
(笑)
カラヤン「もういい!(幸吉の目の前で手を振りながら)もういい!…もうたくさんだ!」
(ここ相当引っ張って爆笑起きてましたねw)
カラヤン「もう結論は出ん!もういい!いつからだ!?いつからこんなくだらん考えの人間になっちまったんだ。昔を思い出せ!お前がまだこんな小さかった頃、近所の嫌われ者だった。盗み、万引き、なんでもやった。そんなお前を引き取って育てたのは誰だ?この私だ。それを忘れてはいけない!我々は仲間だ、ファミリーだ、組織だ。組織の掟を破ったらどうなるか?そう、即刻あの世行きだよ」
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カラヤン「死にたくなかったら、私に逆らうな。1分でも1秒でも美味しい空気を吸っていたいなら、私に逆らうな!!分かったな?ボラギノール」
幸吉「誰がボラギノールやねん」
(笑)
幸吉「痔の薬やないか!」
カラヤン「(お尻を幸吉に突き出しながら)いいから入ってこい!」
幸吉「何言うとんねん」
(笑)
幸吉「さっきからずっと何言うとんねん!」
(この被せのツッコミで会場大爆笑。さすがの内場さん&めだか��ん)
文音「幸ちゃん、その千円札落として」
幸吉「え?」
文音「で、それを説明して『落ちてます』って」
幸吉「(戸惑いながらも千円札を地面に落として)…千円が落ちてます」
カラヤン「あ、私のです(千円札を拾ってポケットにしまう)…じゃあ二人とも末永くお幸せに。(舞台下手へ去ろうとして足を止め)そうそう!アメリカのインディアナにこんな言い伝えがある。『満月の夜は三日月が……』(舞台下手へ去る)」(←ここも毎回ネタ違いますw)
幸吉「なんやねん!」
(笑)
幸吉「それで、そんな日はない!『満月の夜の三日月』なんてない!」
(またも被せツッコミで一段と大きくなる会場の笑い声)
幸吉「誰?いまの」
文音「保安官のロバートさん」
幸吉「いや違うやろ!」
(笑)
幸吉「…あ、カバン有難う。それと葬儀と出棺まで…」
文音「うん、大丈夫。火葬場が辛かった。ミカが大泣きしちゃって私が慰めることになっちゃって。誰かと話したかったから、ちょうど良かった」
幸吉「…」
文音「変だね、私たちの子どもなのに幸ちゃんと話すとちょっとだけ忘れられる」
幸吉「…そうか…」
文音「そうだ! (ケータイを取り出し画像を見ながら) 幸ちゃん大丈夫なの?」
幸吉「何が?」
文音「ネットに…(幸吉にケータイ画面を見せる)」
幸吉「うわぁ~!!」
文音「何?幸ちゃん馬乗れるの?」
(笑)
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幸吉「なんか、乗れたなぁ、うん、乗れた」
文音「馬なんか乗って、どこに行ったの?」
幸吉「花音のアルバイト先」
文音「運送屋?」
幸吉「いや、そこは行ってない。鉄工所と飲み屋」
文音「何しに?」
幸吉「何しに?…ん~、なんだろうな、何か行ってみたくなって」
文音「ありがとう」
幸吉「(照れながら)なんで文音が『ありがとう』」
文音「なんかありがとう。じゃあね」
文音、去ろうとする
幸吉「一人で…眠れる?」
(ここの内場さんの声、すっごい甘い声で優しい聞き方するから、毎回キュンとする♪)
文音「ミカが家に泊まってる」
幸吉「そっか」
文音「じゃあ」
幸吉「あぁ。ミカちゃんによろしく」
文音「うん。おやすみ」
幸吉「おやすみ」
文音、舞台下手へ去っていく
夜の公園のベンチで一人物思いにふける幸吉。自分のカバンを枕代わりにして眠りにつく
♪BGM
舞台下手から毛布を持った大王登場。毛布を広げてベンチで寝ている幸吉にかける。客席に向かい「シ~ッ」というポーズを取り、幸吉が寝ているベンチごと押して舞台下手へ去る
舞台奥からドラムセット、キーボードセットなどが舞台中央へせり出してくる。そこは音楽スタジオ。 キーボードを弾きながら悦に入っているガールズバンド「スキッドマークス」キーボード レイ(千菅春香)登場 
そこへ舞台下手からくりこがやってくる。
レイ「やっちゃったかも!」
くりこ「何を?」
レイ「これは傑作っすよ」
くりこ「今の?どうやろか?」
レイ「やつらが全身に酸素を送ってるのを感じなかった?」
くりこ「やつらって?」
レイ「グロビン」
くりこ「グロビン?」
レイ「ヘモグロビン!!おい、足りてねぇのかO2が」
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レイ「よし、分かった!任しときな!(キーボードを弾きながら)酸素だよ~ふわふわ~ふわふわ~最高だろ!ベースはどう弾いてもらおうかな~」
くりこ「え?これ絡まなあかんの?(ケースからベースを取り出そうとして)あっストラップないわ」
くりこ、ストラップを取りに舞台下手へ去る
レイ「(くりこが居なくなったことに気付かずに目を瞑りながらキーボードを弾いている)よし!!」
そこへ音楽スタジオの会員証を持った幸吉が舞台下手からやってくる。
レイ「(幸吉には気付かずに)ヘモグロビ~ン!」
幸吉「…?」
レイ「イエス!!(目を瞑って集中しながら)私が『ヘモ』って言うから、そしたら『グロビン』ね」
幸吉「…?(きょとん顔)」
レイ「(キーボードを弾きながら)ヘモグロビ~ン!ヘモグロビ~ン!セイ!ヘモ!」
幸吉「…」
レイ「セイ、ヘモ!!」
幸吉「…(あたりをキョロキョロ自分しかいないのを確認)」
レイ「ヘモ!!」
幸吉「(恐る恐る)グロビン」
レイ「そう、ヘモ!」
幸吉「グロビン」
レイ「(だんだん声を大きくしながら)いいよ、ヘモ!」
幸吉「グロビン!」
レイ「(大声で)ヘモ!!!」
幸吉「(大声で)グロビ~ン!!!」
レイ「ヘモ!!!」
幸吉「グロビ~ン!!!」
レイ「そう!ヘモ!!!」
幸吉「グロビ~~ン!!!!」
レイ「(幸吉に気付き)誰?」
幸吉「グロビ~~~~ン!!!!!」
レイ「あんた、誰?」
幸吉「僕、誰~~~~!!!!!!」
(ここ毎回爆笑なんだけど、このシーンで内場さん喉痛めたんじゃないかと…自分の喉より笑いを優先してるし(笑)1日2公演の日は声が枯れて辛そうだった…)
レイ、幸吉に近付いてきて
レイ「あんた誰?」
幸吉「私、あの…」
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レイ「まぁ、誰でもいいか、私の音の理解者なんだから」
幸吉「理解はしてません」
(笑)
レイ「私はレイ」
幸吉「レイさん」
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レイ「そう。みんなそう呼ぶ。あんたもレイでいいよ!でも『さん』付けはやめて!人はみんな平等だからね。さぁ呼んでみな!」
幸吉「レイ」
レイ「よくできました」
幸吉「有難うございます」
そこへ、くりこが戻ってくる
くりこ「(幸吉を見て)あ!」
幸吉「(くりこに気付いて)あぁ!」
くりこ「来てくれたんですね」
レイ「知り合い?」
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くりこ「お父さん」
レイ「あぁ、似てるわ!」
幸吉&くりこ「(二人とも手を振りながら)いやいやいや」
(笑)
くりこ「この人、花音のお父さん」
レイ「サワディーカップ」
幸吉「?」
くりこ「昨日、うちの店に来てくれたから、私が誘ったんよ。花音のこと知りたいんやて」
レイ「あぁ…」
くりこ「えぇやろ、どうせもう解散やし」
幸吉「解散?」
レイ「花音の代わりはいないからね~。花音はあの子、天才だったよ」
幸吉「そうだったんですか」
くりこ「あの話してあげ」
レイ「あぁそうだね(幸吉の肩に��を回しながら)私がさ、コウモリを落とす音を探してたでしょ!」
幸吉「いや、知らないです」
(笑)
レイ「1日中コウモリを落とす音を探してたわけ。そしたら花音、一発で見つけちゃったんだよ!花音すごいよ~!!!」
レイ、言いながら幸吉の肩をガンガン揺するもんだから、幸吉、首がグラングランで(笑)
くりこ「その話、今初めて聞いたわ。全然いい話ちゃうし」
レイ「いい話だろうに!」
くりこ「とにかく!『たてばやし』は花音のことめっちゃ信頼してたんやね」
幸吉「(レイが『たてばやし』と呼ばれていることに疑問を感じながらも)…あぁ」
そこに、舞台下手から葉月がやってくる
葉月「『たてばやし~!』」
幸吉、思わずレイを見る
(笑)
葉月「会員証持ってる?」
レイ「いいや」
幸吉「(ポケットから会員証を出して)あぁ、会員証はこれです」
葉月「(幸吉に気付いて)なんで居るんだよ」
くりこ「知りたいんやて、花音のこと」
葉月「なに?何知りたいの?捨てた娘だろ」
幸吉「別に捨てたわけじゃないんですけど、あの子の幸せを思って」
葉月「幸せ?あんたの娘は幸せでしたか?どうなった?幸せになりましたか?死んだだろ!死んだんだろ!あんたに家追い出されて、生活していくためにバイト掛け持ちして、過労でフラフラになって、運送屋の車でひっくり返って死にました!!」
くりこ「葉月、やめとき!」
幸吉「…」
葉月「幸せですか?あんたの娘は幸せでしたか?」
幸吉「…それを知りたくて…」
葉月「死んで幸せなわけねぇだろバ~カ~!!!」
くりこ「葉月!」
幸吉「…」
葉月「もうちょっとでバンドのメジャー契約が決まるって。でも契約してすぐはお金になんないから、いまのうちにバイトしとくって。毎日働いて、働いて、スタジオきたらドラム叩きまくって、で、家でも働いて、それで、あんたの娘は死にました。花音の人生は以上!帰ってください!」
幸吉「…」
葉月「帰ってください!!で、もう二度と花音のことは思い出さないでください。それが一番の供養になるんじゃないっすか?」
幸吉、怒りながらも何も言い返せず、去ろうとするが、立ち止まり、財布から小切手を出しサインをして、差し出す。
葉月「…」
幸吉、くりこに小切手を渡す
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幸吉「申し訳ありませんでした。娘がご迷惑をお掛けしました。どうぞお受け取りください」
葉月「花音は何の迷惑もかけてねぇよ!」
くりこ「(渡された小切手をたたんで幸吉の胸ポケットに入れ)こういうことやないと思います」
レイ「なかなか残念なやつだね~」
幸吉「どうすればいいでしょうか?私には全くわかりません。私はあなた方に何をすればいいでしょうか?」
くりこ「何もいりません!何もしてもらう必要なんかありません!」
葉月「してもらおうよ」
くりこ「え?」
葉月「花音のために何かしたいんだろ?わたしらのために何かしたいんだろう?」
幸吉「はい!出来ることなら何でもさせて頂きます!」
葉月「だったらさ、ドラム叩けよ!あたしら花音いなくなって困ってんだよ~」
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幸吉「でも私は音楽は…」
葉月「なんでもするんだろ!!」
幸吉「…」
葉月「自分の娘がどう生きたか知りたいんだろ?だったら叩けよ!そしたらちょっとは分かるよ、花音のこと!」
葉月、舞台下手へ去る。くりこ、葉月を追って去っていく。
レイ、幸吉へ歩み寄ってきて
レイ「スキッドマークス」
幸吉「え?」
レイ「タイヤがスリップして付いた跡」
幸吉「スキッドマークス」
レイ「花音があんな死に方すると思ってなかったからさ、そんな名前、私たちのバンド。花音のタイヤが付けた跡、追っかけてみたらいいよ!あんた下の名前は?」
幸吉「幸吉」
レイ「幸吉!私はレイ!」
幸吉「レイさん。あっ…レイ。みんな君のことを『たてばやし』って呼んでたけど」
(笑)
レイ「黙ってドラム叩きな~幸吉!」
レイ、舞台下手へ去っていく。
♪BGM
幸吉、胸ポケットに入れられた小切手を取り出してそれをクシャッと握りつぶす。決意の表情。ドラムセットの前へ。そこは練習スタジオ。幸吉、恐る恐るドラムを叩いてみる。幸吉の元部下・薮内(汐崎アイル)が舞台上手から登場し、そんな幸吉を見ている
薮内「真下さん、あんた俺の事バカにしてるんすか?」
幸吉「バカになんかしてないよ、ドラム教えてほしくてさぁ」
幸吉、ドラムをぎこちなく叩く
薮内「やめてください!無理っすよ!」
幸吉「そうかな、先生がいいと出来るんじゃないかな?教えてよ!ちゃんと授業料も払うしさ!」
薮内「真下さん」
幸吉「あ、これ、太鼓によって音が違うんだね」
薮内「真下さん!」
幸吉「え、何?…あ…はい、何ですか、先生!」
薮内「俺、実家なくなったんですよね、借金のせいで実家なくなったんです」
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幸吉「それは、大変だったね」
薮内「大変でした。いまはお袋と月3万の公団住宅に住んでます。廃墟みたいなところです。あのときお金欲しかったんすよね。そしたら親父もまだ生きてたかもしれない。会社、首になった理由が音楽やってたからっておかしくないすか?」
幸吉「いやいや、薮内君、それは違うよ。あの頃会社も不景気でね」
薮内「あんた言いましたよね。『音楽なんかやってるやつに仕事出来るわけない』って。それが今になって『ドラムを教えてくれ』ってふざけてますよね!?」
幸吉「(頭をさげて)悪かった!本気でそう思ってる!」
薮内「…」
幸吉「頼む!これが叩けるようになりたいんだ!どうしても叩きたいんだ!これが叩けるようになって!!…………なってみたいんだ…」
薮内「どいてください」
幸吉「薮内君…」
薮内「ちょっとどいてください」
薮内、ドラムセットに腰を下ろして、ゆっくりとドラムを叩き始める。ドラム音が終わり、幸吉が薮内に近づこうとする…が、また、今度は激しくドラムを叩く。圧倒される幸吉。
幸吉「…」
薮内「どこまでやりたいんすか?ここまでやりたいんすか?」
幸吉「ここまではちょっと」
薮内「『我が社には限界はない』って朝礼で話してましたよね?自分は限界決めてるんですか?」
幸吉「いや、まあ、実は娘が事故にあってね」
薮内「やめてください!俺、事情とか聞か���いんで。座ってください。(スティックを幸吉に渡して)これ持って座ってください」
幸吉、ドラムセットに座る
薮内「ペダル、踏んでください」
幸吉「ペダル?」
薮内「踏むのがあるでしょ」
幸吉、ペダルを踏む。バスドラの音が鳴る
薮内「それが、バスドラ。目の前にあるのはスネア」
幸吉「バスドラ…スネア…バスドラ…スネア…(ポケットから手帳とペンを取り出して書こうとする)」
薮内「いつ見るんすか?それ」
幸吉「家帰って練習するときに」
薮内「やめてください。今日、今、ここで覚えてください」
幸吉「でも……はい(手帳とペンをしまい)…バスドラ、目の前にあるのは…」
薮内「スネア!」
幸吉「スネア」
薮内「(一つ一つの太鼓を指さしながら)タム、フロアタム、ハイハット!」
幸吉「早いから、ちょっ…早いから!え~…バスドラ…スネア…」
薮内「タム、フロアタム、ハイハット、ライド、クラッシュ!」
幸吉「ちょっ、ちょっと、ちょっと、薮内君!」
薮内「これ覚えられなきゃドラムなんて叩けませんよ。ハーモニカとかの方がいいんじゃないんすか?ドラム教室なんてどこにでもあるっすよ。素人親父相手のかくし芸教室でも、爺さん連中のボケ防止でもどこにでもあるっすよ。わざわざあんたを嫌ってる俺にドラム習う必要ないじゃないっすか」
幸吉「そんなんじゃない!…そんなんじゃない!!かくし芸でもボケ防止でもない!!!」
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幸吉「俺は…バンドに入るんだ!!」
薮内「ハハハハハ!冗談でしょ?あんたがバンドで叩くんすか?」
幸吉「ああ!」
薮内「マジでいってるんですか?」
幸吉「ああ!マジだ!」
薮内「それって狼が羊と結婚したいって言ってるようなもんすよ」
幸吉「ああ、そうだ」
薮内「結論言います!無理っすね!!」
幸吉「やってみなけりゃ分からないだろ!」
薮内「分かります。俺プロっすから」
幸吉「プロなら教えてくれ!!!」
幸吉、太鼓の名前を確認しながら一つ一つ叩いていく
幸吉「バストラ!スネア!タム!フロアタム!ハイ…ハイハット!…クラッシュ!」
薮内「ライド!」
幸吉「あっ、ライド!クラッシュ!」
薮内、手拍子を打ち始める。
幸吉「ありがとう」
薮内「真下さん、これ拍手じゃないっすよ」
幸吉「あぁ、どれを叩けばいいのかな」
薮内「どれでもいいっすよ」
幸吉、薮内の手拍子に合わせてドラムを叩き始めるが、
薮内「はい、ずれてま~す、真下さん、ずれてま~す、はい、ずれてま~す、真下さん、ずれてま~す」
次第にその声にエコーがかかっていき、薮内、舞台上手へ去る
舞台上の明かりが消え、幸吉だけにスポットライト。薮内の声だけがずっとエコーで鳴り響いている。
幸吉、何かに憑りつかれたかのように舞台上を歩きながら『タン、タン、タン』と口ずさんでいる。明転。そこは幸吉の会社・白松不動産ホールディングス社内。舞台下手から社員・木村(菊池健一)と村木(たくませいこ)登場
木村「あれ常務じゃない?」
村木「ほんとだ!」
幸吉「タン、タン、タン、タン・・・」
木村「常務!」
幸吉「タン、タン・・・」
木村「真下常務!」
村木「お休みじゃなかったんですか?」
幸吉「えっ!?ここ会社?」
村木「この度はご愁傷様です。1週間お休みと聞いてたので奥様とご自宅にいらっしゃるとばっかり思ってました」
幸吉「なんか、心配になってね」
木村「こんなときでも会社のこと心配なさってるんです��」
幸吉「…まあ、常務ともなればね」
村木「すごいです!」
村木、木村、拍手をする
幸吉「(思わず拍手にあわせて)タン、タン、タン、タン」
村木、木村、困惑しながらもなんとか幸吉のリズムに合わせて拍手しようとしている
幸吉「タン、タン、タン、タン、ずれてま~す」
(笑)
幸吉「タン、タン、タン、タ~~ン、タン!どう?」
木村「何がです?」
幸吉「順調?会社」
村木「はい、順調です」
幸吉「ならいいや」
幸吉、舞台下手へ去っていく
村木、木村、様子のおかしい幸吉を見送り
村木「何?何?タン!タン!タン!って」
木村「わかんない。常務、娘さんなくして…(指を頭上でくるくるさせる)」
村木「そうかも~」
木村「娘さん死んだのはかわいそうだけどさ、あの人休んでくれた方が会社の空気は良くなる」
村木「ストレス半減!」
そこへ、舞台上手から村木村(多田野曜平)がやってくる
村木村「おっ!村木さんか、髪切って分らなかった」
村木「切ってないです」
木村「村木村さん、事件です」
村木村「ああ。木村さんも村木さんも見た?」
村木&木村「はい」
村木村「マッシーさ、あれどうしたの?もう帰った?」
村木「たぶん」
村木村「いて欲しいことはいて欲しいんだけどな~」
木村「なんでですか?」
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村木村「ジャイアントロボがさ、組閣始めたらしいの。このままじゃみんな飛ばされるよ!なんでラグビーで入ったやつがあそこまで力持っちゃうんだよ」
木村「でも俺、ラッキーかも。高校の時、ラグビーやってました」
村木「私、ラグビー部のマネージャーやってました!」
村木村「出世コース!君たち出世コース!!」
木村「村木村さん、僕たち」
村木「私たち」
村木&木村「出世します!」
村木村「決まったよ!割り台詞!」
木村「群馬水産高校ラグビー部~ファイ!」
村木「オ~!」
木村「ファイ!」
村木「オ~」
村木、木村、舞台下手へ去っていく
村木村「若松高校ハンドボール部~」
村木村、クルッと振り向くと、そこに社長・ジャイアントロボ吉田(大西ユースケ)と社長秘書(道さわこ)が立っている
村木村「…の村木村です」
社長「?」
秘書「社長、お急ぎください」
社長「ああ」
社長、秘書、舞台下手へ去る
村木村、社長と秘書を見送ってから舞台上手へ去る
暗転&♪BGM
明転すると、舞台上にはベンチが一つ。そこは公園。幸吉がベンチに座り、『タン!タン!タン!』と口ずさみながら、ドラムを叩く練習をしている。幸吉の腕には白いサポーター
幸吉「タン!タン!タン!(腕が痛んで)…っつ!…あぁ」
そこへ舞台下手から、小汚い台車を押したカラヤン登場。台車の上には鍋やゴザやレジャーシートなどが雑然と積んである
カラヤン「そこ座ってええか」
幸吉「いや、向こう空いてるから、向こう座って!」
カラヤン、気にせず幸吉の隣りに座る
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幸吉「もうあげへんからな!」
カラヤン「何が?」
幸吉「この間、千円あげたやろ。もうあげへんからな!」
カラヤン「おっ!」
幸吉「そう、千円あげたやろ、だから向こう行って」
カラヤン「自分��大阪かいな」
幸吉「そうや」
カラヤン「大阪のどこや?」
幸吉「天王寺や」
カラヤン「おぉ~!天王寺!天王寺!(俺は)高槻や!」
幸吉「全然ちゃうやん!ものすごい離れてる」
(笑)
カラヤン「あんたどうしてこの町にやってきたんや」
幸吉「それな(自分を指して)こういう人が、(カラヤンを指して)こういう人に聞くねん!」
(笑)
幸吉「…就職や」
カラヤン「…(じっと幸吉を見る)」
幸吉「なんやねん!」
カラヤン「わしには聞かへんのか?」
幸吉「聞かへんよ、興味ないし。うるさいなごちゃごちゃと~!もう向こう行ってぇや!」
カラヤン「ここ住んでまんねん!どこも行かへん!」
幸吉「ほんならもう喋りかけんといて」
幸吉、カラヤンを無視してドラム練習を続ける
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幸吉「タン、タン、タン、タン…(腕が痛み)っつ!!」
幸吉、ドラムの太鼓の名前を一つ一つ復習しはじめる
幸吉「バスドラ、スネア、タム、フロアタム、えぇ~、ハイ…ハイ…ハイ…」
カラヤン「ハイハット!」
幸吉「ああ。ハイハット!…(カラヤンを見て)えっ?」
カラヤン「ライド」
幸吉「…ライド」
カラヤン「クラッシュ」
幸吉「…クラッシュ」
カラヤン「ドラムの基本や」
幸吉「あんた誰や?」
カラヤン「この辺りではカラヤンて呼ばれてる」
幸吉「ドラム叩けんの?」
カラヤン、おもむろに立ち上がり、台車から1本の木の棒を取り出し、それを折ってスティックがわりにして、ベンチをリズミカルに叩き始める
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幸吉「えっ?えっ?ほんまに?」
カラヤン、ベンチから台車の上の鍋や缶なども使い、軽快にリズムを刻み続ける。タカタカタン♪タカタカタン♪タカタカタン♪
カラヤン「(幸吉に向って)はい」
幸吉「え?」
カラヤン「(リズムを刻みながら、タカタカタン♪タカタカタン♪タカタカタン♪)はい!」
幸吉「いやいや分かんないです」
カラヤン、なおもカッコ良くリズムを刻み、最後は台車の上の鍋蓋をクラッシュがわりにしてフィニッシュを決める
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幸吉「え?なんで?なんで?」
カラヤン「いやいや、まあまあ」
幸吉、カラヤン、ベンチに座る
幸吉「なんで?」
カラヤン「まぁ、10年くらい前かな、そのころ人生について悩んどったんや。公園のベンチに座って『命ってなんだろう』と考えとったら、気が付いたらとっぷり日も暮れたんや。そしたらどこからともなく『ヒュルルルル~』と音がした。わしは驚いて空を見上げた。なんだ?未確認飛行物体か?オレンジ色の光でも見えるのか?しかし、目を凝らしても何も見えなかった。見えんわけだよ、鳴ってたのはわしの腹の虫だったんだから」
(笑)
カラヤン「わしはすぐ近くのお好み焼き屋さんに入って焼きそばを頼んだ。ところが頼んで5分もしないうちに『お待ちどうさまです』と出来上がった焼きそばを持ってきた。わしはねぇ、自分の手で焼いて、自分の味加減で美味しいものが食べたいんや。大阪の人間やからね。それを5分もしないうちに持ってきた。これは前のお客さんが注文して食べずに帰って余ってたのをそのまま出したに違いない。これはまずいに違いない。一口食べて文句を言ってやろうと思って食べた。そしたらこいつが妙に旨かった!あれは間違いなくUFOだよ」
幸吉「なんの話や!」
(笑)
幸吉「焼きそばUFOやないか!空飛ぶUFOやと思って聞いとったら」
カラヤン「店を出たとたんに一平ちゃんに会ったよ」
幸吉「ええねん!焼きそばシリーズいらん」
(笑)
カラヤン「思わず声をだした『ラ王~』」
幸吉「好きやな~インスタントシリーズ」
(笑)
幸吉「違うねん、笑いごとちゃうねん。なんでドラムが叩けるのかっていうのを聞いてんねや!」
カラヤン「なんでドラムが叩けるのか。それを知りたかったら、なんでドラムが叩かれへんのか。それを考えたほうが早い」
幸吉「なんでドラムが叩かれへんのか?…分かれへん」
カラヤン「考えるからや。感じろ!」
幸吉「感じろ?」
カラヤン「テレンス・リーも言うとった」
幸吉「ブルース・リーや!」
(笑)
カラヤン「口で言うてみ」
幸吉「はい?」
カラヤン「口でドラムを言うてみ?」
幸吉「口でドラムを言う?」
カラヤン「これだけは絶対や!口でドラムを言えんやつには叩けへん」
幸吉「口で言えんやつには叩けへん?具体的にどうすればいいんですか?」
カラヤン「バドバドバドドバ~ン!」
幸吉「バドバドバドドバ~ン!」
カラヤン「バ~ン言うんはライドや」
幸吉「あぁ、そういうことか」
カラヤン「次、クラッシュ行くで」
幸吉「はい」
カラヤン「バドバドバドドチィ~ン!(変顔で)」
幸吉「(カラヤンの顔真似をしながら)バドバドバドドチィ~ン!」
カラヤン「ちょっとちゃうな。バドバドバドドキィィィ~~~ン!!」
(笑)
幸吉「キィ~~ンいいます?ちょっと変わってませんか(笑)?」
(思わず笑っちゃう内場さんw)
幸吉「バドバドバドドキィィィ~~~ン!!これ合うてるの?」
カラヤン「合うてるもなにもない。気持ちや!」
幸吉「気持ち」
カラヤン「(さらに変顔をしながら)バドバドバドドキィィィ~~~ン!!」
幸吉「(負けじと) バドバドバドドキィィィ~~~ン!!!!これほんと合うてる?」
(笑)
カラヤン「考えるな、感じんねん」
幸吉「感じる」
カラヤン、立ち上がって、口でリズムを刻み始める。幸吉も立ち上がりそれにコール&レスポンスのように応えて口でリズムを刻む
(ここの内場さんとめだかさんのやりとりは本当に毎回爆笑で、笑いが絶えなかった。初日に観に行った時より、どんどん長くなっていったし(笑)。徐々にめだかさんが猫に変身して『ズンズンタッタッ!ニャァ~!』と内場さんを引っ搔くような仕草をすれば、内場さんもそれに応えて『タカタカタンタン!シャ~!』と猫の仕草♪本当に内場さんが心から楽しんでた。初日から回を重ねるとだんだん長くなりすぎて、めだかさん、息が切れてたし(笑)。やっぱりめだかさんは気の抜け方がすごい。やすえさんもラジオで言ってたけども、登場するだけで会場の空気がすっと和らぐ)
カラヤン「フィニッシュ!!」
カラヤン&幸吉「ダダダダダダダダダダダダダダダダダン!ダン!!」
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カラヤン「えぇ顔しとったがな」
幸吉「そうですか」
カラヤン「でもな、自分テンポずれとったぞ。おれは息がずれとるけど」
幸吉「(笑)…テンポずれてましたか」
カラヤン「それはちゃんとやらなあかん。楽しみながら、テンポや」
幸吉「はい」
(そしてここから先は、初日、二日目あたりはなかった気がするので少しずつ追加されてった部分かな)
カラヤン「あぁ、無駄な時間を過ごしてしまった。どっかに千円でも落ちてへんかな」
(笑)
幸吉、財布から千円札を取り出して地面へ置く
幸吉「カラヤン、これカラヤンのちゃう?」
カラヤン「おぉ、わしのや(ポケットに千円札をしまう)。まあ楽しくな!感じろ!」
幸吉「はい。バドバドバドドバ~ン!」
カラヤン「そうや。(台車を押して下手に去りながら)ズンズンタッタッ!!ズンズンタッタッ!!ズンズンタッ…はぁはぁ(息が切れて立ち止まる)」
幸吉「大丈夫?」
(笑)
幸吉、カラヤンを見送る
幸吉「へぇ~、そっか。バドバドバドドバ~ン!」
♪効果音(ドラム音で)バドバドバドドバ~ン!
幸吉、リズムを口で刻みながら、舞台上手へ去る。暗転&♪BGM
明転。舞台2階部分に妻・文音が立っている。♪エレベーター音。そこは白松不動産ホールディングス、エレベーターホール
村木村、舞台2階部分にやってくる
村木村「文ちゃん?」
文音「村木村~~」
村木村「ごめんね」
文音「どうした?」
村木村「本当ならさ、俺が言うことでもないんだけど、文ちゃんとも同期だし、俺が言わなきゃいけなくなって」
文音「なに?どうした?あの人いまいるの?」
村木村「いないのよ。会社に来てはいるんだけど毎日昼になったら帰っちゃうの。こんなこと別居してる文ちゃんに言ってもしょうがないんだけど…」
文音「言って、何?」
村木村「なんか、マッシー変なのよ、会社に来てもずっとパンパカパンパカ言ってんのよ。社食でも両手に箸持って、こんなこと(ドラム叩く仕草)してんのよ」
舞台1階。中央部分からドラム、キーボードセットなどがせり出してくる。幸吉がジャケットを脱ぎ、腕には黒いサポーターを付けて、スティックを動かしながら、口でリズムを刻み、音は出さずにドラム練習をしている。舞台1階は暗くドラムを叩いている幸吉だけにスポットライトが当たっている
文音「ドラム?」
そう言った文音の視線の先、舞台1階中央にはちょうど幸吉がいる。
村木村「そう。そう簡単に立ち直れることじゃないし、しょうがないけど、こっちも困ってるのよ。このままだとマッシー、首になっちゃうかもしれないよ。もしもさ、もしも連絡することがあったらさ、文ちゃんからも言ってもらえないかな?」
文音「(なんとなく舞台1階の幸吉に視線を向けながら、幸吉がドラムを叩いている姿を想像した感じで)ふふふ(笑)」
村木村「なに?笑ってんの?」
文音「笑ってる」
村木村「なんでかな~(言いながら自分の薄くなった頭を触る)」
(笑)
文音「村木村、ごめん。私連絡しない。」
村木村「え?首になっちゃうかもしれないって話だよ?」
文音「なってもいいじゃん」
村木村「え~?そんな感じ?」
文音「うん、そんな感じ。じゃあね」
文音、舞台2階部分の上手へ去る。
村木村「(文音を追いかけて)ちょっと、ふみちゃ~ん!」
舞台2階が暗転。舞台1階が明転。そこは練習スタジオ。
幸吉「バドバドバドドバ~ン」
そこへ舞台下手から薮内が現れる
薮内「真下さん、叩かないと音は出ないっすよ」
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幸吉「はい。バドバドバドドバ~ン!」
幸吉、口でドラムを言ってから、それと全く同じようにドラムを叩く
♪ドラム(バドバドバドドバ~ン!)
幸吉「タカトント��、タカトントン、タカタカタカトン」
♪ドラム( タカトントン、タカトントン、タカタカタカトン)
幸吉「ツッタカタッター、ツッタカタッター、ツッタカッタッタッタッタッタッタッバーン」
♪ドラム( ツッタカタッター、ツッタカタッター、ツッタカッタッタッタッタッタッタッバーン)
薮内、手拍子をはじめる。
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幸吉それに合わせてドラムを叩く。なかなか様になってきている
薮内、テンポアップの指示。幸吉それに合わせてテンポアップし段々と力強くなるドラム音
そしてフィニッシュまで決める
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薮内「ドラム初めて何日目っすか?」
幸吉「14~5日かな。毎日24時間ドラムのことばっか考えてた。寝てる時も薮内君の手拍子の音が聞こえてきたよ」
薮内「悪夢でしたか?」
幸吉「はい」
薮内「良かった」
(笑)
幸吉「今日は朝から会社にも行かずにずっと公園にいた」
薮内「真下さんが?」
幸吉「うん。ここで君に叱られて、家に帰っても手と足が動いて、寝ているときもリズム刻んで、会社でも気づいたら両手にペンを握ってた。公園では別の方法で練習して」
薮内「別の?」
幸吉「そう別の。薮内君あれかね~?ドラムやる人はみんなこんな感じなのかね~?」
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薮内「重症ですね」
幸吉「だよね~。薮内君には悪いけどさ、音楽なんて人生にとって無駄な事だって思ってた」
薮内「思ってた?」
幸吉「あぁ、思ってた。でも今はそうでもないと思う。ある人にね、毎日公園で会う人なんだけど、同じ話をしたらさ、『おかずなしでご飯は食べられないだろ』って言われたよ。『米さえ食べてりゃ死にはしないけど、無駄だと思うおかずなしでは、ご飯は食べられないだろ。まぁ人生もそんなもんだ』って」
薮内「どいてください」
幸吉「え?なんか気に障るようなこと言ったかな?」
薮内「いいから、どいてください」
薮内、ドラムセットに座り、ドラムを叩く。
薮内「これをノーマルだと思ってください」
幸吉「あぁ」
薮内「もういっぺんいくっすよ。良く聞いて」
薮内、先ほどのノーマルのリズムにアレンジを加えて叩く
幸吉「全然ちがうね~」
薮内「これね、おかずって言うんすよ」
幸吉「ほんとに?」
薮内「『おかずがなきゃご飯が食えない』その人、面白い事いいますね。あぁダメだ、腹減ってきた。おかずって言い方やめましょう」
幸吉「他に言い方あるの?」
薮内「はい、これね・・・『FILL-IN』ってい言います」
♪BGM(ドラム音!!)
幸吉「…フィル、イン!…」
薮内「そう、FILL-IN」
幸吉「薮内君、ちょっとやってみてもいいかな」
幸吉、薮内の方に近付こうとするが、薮内、立ち上がって幸吉の方へ歩いてくる。幸吉、思わず後ずさりして舞台隅に追い詰められる
薮内「真下さん!」
幸吉「…?」
薮内「何か食わしてもらってもいいすか?」
幸吉「(ホッとして)あぁ!いいよ。なんでも」
薮内、舞台下手へ去る。幸吉、ドラムセットの後ろに掛けてあった自分のジャケットをとり、薮内を追いかけて舞台下手へ去る
暗転&♪BGM
明転すると、舞台1階中央に2人組の兄弟バンド「阪急オアシス」(兄:多田野曜平、弟:菊池健一)が立っている。そこは音楽スタジオ
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兄「みんなセントラルパークへようこそ!」
弟「ここセントラルパークは数々のロックの名盤を生んだ場所なので、僕たちミュージシャンにとっては聖地です。今日は天気がいいから、姫路城が見えてます」
(笑)
弟「俺たち、兄弟でバンド初めて、早いもので、じゅう・・・ご?」
兄「16、16」
弟「あぁ、16日」
(笑)
弟「イギリスのオアシスってバンドに憧れて『阪急オアシス』ってバンド名にしたんだけど値段が高いせいか、とっつきにくいみたい」
兄「成城石井より入りやすいぜ!」
弟「夕方になるとパンとかおにぎりが80円ぐらいになってるぜ」
兄「レトルトのカレーが本棚みたいに縦に並んでるぜ」
弟「それでは、聞いてください。『阪急オアシス』解散シングル」
(笑)
弟「No More Friend」
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弟「♪どうしてどうして僕のハードディスクに毎日世界の車窓からが勝手に録画されてるの~」
兄「毎日」
弟「♪どうしてどうして僕の郵便受けに毎月ベネッセから分厚い冊子が届くの~」
兄「毎月」
弟「♪君が僕の家に来たその日から、何かが変わった~。君が僕の家を去るそのたびに」
兄弟「♪ウォシュレットが最強になる~」
(笑)
弟「♪No More Friend,No More Friend~!一緒に!♪No More Friend,No More Friend~!」
兄弟「ありがとう!サンキュー!」
(阪急オアシスは毎回拍手喝采w)
そこへ舞台下手から音楽スタジオの店長(後藤ひろひと)が登場
弟「あ、店長」
(ここからは、初日と千秋楽を除く各回で日替わりゲストが登場)
スタジオ店長「あのさ、君らの前にこのスタジオ使った人が忘れ物取りにきたんだ」
弟「忘れ物?」
スタジオ店長「じゃ入ってもらおうか。俺の古い付き合いのある人なんだけどさ(舞台下手袖に向かって)お~い!」
やすえさん「は~い(と舞台下手から登場)」
(観客拍手&歓声)
弟「あ!未知やすえさんですよね!!」
やすえ「分かりますか?」
弟「何忘れたんですか?」
やすえ「この前の時間にちょっとここでお稽古してて、忘れ物してしまって、(探して、袋を見つけて)あ、ありました!」
スタジオ店長「良かった」
やすえ「私の大好きなお菓子がいっぱい入ってるんです」
(袋の中身は大量のお菓子w)
スタジオ店長「あのさ、最近キレイになったとか言われてるけどさ、 新幹線の中でもたくさん食べて! こういうの油断してたら��ぐ戻るよ。体質的にすぐ戻るんだよ!この白ブタ~!」
(観客拍手)
やすえ「誰が白ブタやねん!お菓子空うたらあかんのか?その分ご飯も我慢しとるやろ!おい、お前も人のこと言えないんちゃうんか!カップヌードルのビッグ食べて、焼きそばの大盛食べて!それにな、最近白髪目立ちすぎや!染めるかなんかせいや!この晴れの舞台で白髪ちょろちょろ情けないのぉ~!コンビニ行ったらマウントレーニア1本だけ買うて!コンビニで1つだけ買うってどないやねん! 何が大王や! 猫も全然なついてへんし、気持ち悪いんじゃ!それからサッカーのユニフォーム買いすぎや!サッカーいっこも出来へんくせに、年間60万て無駄遣いやろ!!いっぺん頭スコーンと割って脳みそストローでチューチューしたろか?…怖かった♡」
スタジオ店長、「阪急オアシス」兄弟、コケる
(観客大拍手♪)
スタジオ店長「あの、もう帰ってもらえますか」
(笑)
やすえ「失礼やな~やってられへんわ!(『阪急オアシス』の二人に向かって)おい!お前らついてこい!」
兄弟「へい!」
やすえさん、「阪急オアシス」の二人を引き連れて、颯爽と舞台下手へ去っていく
スタジオ店長「なんであの人、あんなに俺のこと知ってんだよ」
(笑)
(さすがのやすえさん!終始大爆笑をかっさらって、かわいく、そしてかっこ良く去っていきました。今回の公演で吉本新喜劇の十八番・コケ芸が見れたのはこの回だけ♪やすえさん面白かった~。すっちーの回は飴ちゃん撒いてくれて、それも大盛り上がりだったな)
そこへ舞台下手からレイがやってくる
レイ「店長」
スタジオ店長「おう、『たてばやし』」
(笑)
レイ「グーテンモルゲン」
スタジオ店長「なんでグーテンモルゲン?」
レイ「さっきそこのファミレスで変な男に絡まれちゃってさ」
スタジオ店長「大丈夫だった?」
レイ「決めてやったよ!ジャーマンスープレックス。だからグーテンモルゲン」
スタジオ店長「よし!」
レイ「ダンケ!」
スタジオ店長「そっかこの部屋、次はスキッドマークスか。どうするの?お前ら続けるの?」
レイ「私は流れに身を任せる」
スタジオ店長「もしさ、花音ちゃんの代わりが見つかったらさ、これ、出てみないか?」
スタジオ店長、レイに1枚のチラシを渡す
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レイ「ビートファーム?メジャーデビューの夢をかけて」
スタジオ店長「そう。これ当日は俺が司会するんだけどさ、レーベルのお偉いさんとか見に来るのよ。どう?」
レイ「どうかな、これもらっていい?」
スタジオ店長「お前らここで辞めるのもったいないよ!出てみなよ!」
レイ「じゃあ相談してみる」
スタジオ店長「もし出るなら俺に言って」
スタジオ店長、舞台下手へ去っていく
レイ「(チラシを見ながら)ビートファームかぁ…」
そこへ舞台下手から葉月がやってくる
レイ「おう、葉月」
葉月「おはよう『たてばやし』」
レイ、葉月に「ビートファーム」のチラシを渡す
レイ「解散するとかいいながら、まだ私たちこうやってスタジオに集まって���し、やってみる価値あるんじゃないかな?」
そこへ舞台下手からくりこがやってくる
くりこ「おはよう!なんか大変やで!そこのファミレスの前に救急車。通り魔やて。男の人が運ばれてった」
(笑)
葉月「通り魔が男を襲うのか?」
くりこ「恐いなあ。ねぇ『たてばやし』、何かあったら守ってな」
レイ「無理っすよ、恐いっすよ」
(笑)
葉月、おもむろに楽譜を取り出して、くりことレイに渡す
レイ「なにこれ?新曲?」
くりこ「解散撤回?」
葉月「そういうわけでもないけどさ、何にもしないのにスタジオとってるのもったいないし、なんか書けたから持ってきた」
レイ「実はさ、私もヘモグロビンの働きをテーマに曲書いてみたんだ!やっぱりヘモグロビンがなきゃ生きていけないわけじゃん。私も、あんたたちも、前田吟もみんな!」
葉月「最後、誰?」
レイ「今回は曲をグラフにしてみたんだ。コピー取ってくるね!」
レイ、コピーを取りに舞台下手へ去る
葉月「グラフで曲渡されるのめんどいな。前は影絵だったし」
(笑)
くりこ「葉月、この曲のタイトル、この歌詞」
葉月「うん」
レイ、舞台下手から戻ってくる
くりこ「ヘイヘイヘ~イ!みんなという名のエブリワ~ン!」
幸吉、ドラムスティックを持って舞台下手からやってくる
幸吉「あれからずっと練習してました。まだまだ至らない点はありますが一生懸命やりますので宜しくお願いします」
幸吉、ジャケットを脱いで、ドラムセットに座る
葉月「おい!冗談だよ」
幸吉「はい?」
葉月「冗談に決まってんだろ!」
幸吉「冗談だったんですか?」
葉月「バカじゃねぇの!(レイとくりこに)やるよ」
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レイ「タイトル『月夜のカノン』?道の流れ逆らって走ってたミッドナイト、誰か止めて空に延びた月夜のハイウェイ…葉月ちゃん、こんなのって歌にする必要あるのかな?」
くりこ「私もへんやと思う。こんな歌、誰の心にも届かへんし、届ける必要ないと思う。なにより花音が…」
葉月、二人を無視してギターを鳴らし、そして歌い始める
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♪月夜のカノン(バラードver.)
あいつは 大人になれない 明日を進めない 夢ならいいけど
あいつは 泣き虫だったり 強がりだったり 不思議な黒猫
くりこ、レイ、途中から葉月に合わせて演奏をはじめる
道の流れ逆らって 走ってたミッドナイト 
誰か止めて 空に延びた月夜のハイウェイ
幸吉、バラードには似つかわしくない力強さでドラムを叩きはじめる。思わずギターをかき鳴らして演奏を止める葉月。幸吉に詰め寄る
葉月「ふざけんな!ふざけんなよ!」
幸吉「どうすればいいか言ってくれたら、その通りにやります」
葉月「じゃあ入ってくんなよ!この曲はドラムいらねぇんだよ」
くりこ「どうやろか。静かめに叩いたら合うんちゃう?」
葉月「いらねぇんだよ」
レイ「いや、いるねぇ。叩き方ダメだったけど入りは合ってた。あそこから���ラム入れたら曲にパワーでるし、ちょっとはマシな曲になる」
葉月「私が書いた曲なんだよ。その私がいらねぇって言ってんだよ!」
くりこ「なんやこんなバンドやったかなぁ」
くりこ、楽譜を3人に配る
幸吉「あ、あの、僕、楽譜は」
くりこ「読まれへんでもええよ。好きなように叩いても怒らへんよ。私が書いた曲やから」
くりこ、静かにベースを弾き始める。途中から葉月がそれに合わせてギターを弾く。幸吉はレイを見てドラムの入りのタイミングを伺っている。そしてくりこ、歌い始める
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♪The Branch Road
同じ服 同じメイク して して して
同じ人 好きになったり して して して
レイ、幸吉にドラム入りの合図。幸吉、先ほどより丁寧に繊細に叩きはじめる
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気取って 着飾って みんな綺麗だった あの頃は
You and Me 次第に 同じじゃ嫌になり すれ違ったね My Friend
You and Me 自然に 思い出す景色はね 同じ夕暮れ Can You See?
もどりたいな Tonight Toniget Toniget
~間奏~ ♪くりこのベース
くりこ「葉月」
葉月、くりこに促されて、2番を歌い始める。くりこのベース、葉月のギター、レイのキーボードが重なり綺麗な音色を奏でている。幸吉のドラムがそれを包み込むように優しくリズムを刻んでいる
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いつからか 喧嘩ばかり して して して
まもれない 約束ばかり して して して
歪んで 散らばって はなればなれだね どこいくの
Why and When どうして いつから私たち 変わったんだろう My Friend
Why and When どうして いつかの私たち 強がったんだろう Can You See?
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同じうた くちずさんで
同じゆめ また見たいよ Tonight Tonight Tonight
Rock and Roll 爆音の中では 私たち 素直になれたね My Friend
Rock and Roll 爆音の中では 私たち わかりあえたね Can You See?
Rock and Roll 爆音の中では 私たち 自由になれたね My Friend
泣きたいなら 泣けるだけ泣けばいいよ
その寝顔に GoodNight
演奏が終わる
ー沈黙ー
葉月、無言でギターをスタンドへ置く。それを感じる幸吉
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葉月、幸吉を睨みつけてスタジオを飛び出す。葉月、舞台下手へ去る。幸吉、急いで葉月を追いかける
レイ「幸吉!」
幸吉、振り返る
レイ「クールだったぜ」
幸吉、一礼して舞台下手へ去る
レイ「くりこ!やろうぜ!」
くりこ「うん」
レイ「ヘモグロビン!」
くりこ、その言葉に首をふり、走って舞台下手へ去る
レイ「おい、くりこ!・・・△✕✕✕△~!!!」
レイ、言葉にならない声をあげらながらくりこを追いかけて走って舞台下手へ去る
舞台2階部分に葉月が飛び出してくる。そのすぐ後に幸吉。
幸吉「葉月さん!!」
その言葉に足を止める葉月
幸吉「言ってください!私が何か間違ったことをしているなら言ってください」
葉月「全部だよ。全部間違ってんだよ」
幸吉「それなら全部変えて見せます」
葉月「もう遅いだろ!」
幸吉「何も知らなかったんです。自分の娘のこと。ランドセル背負ってスクールバスから降りてきて『パパ~!』って手を振ってる。そこで時間は止まってるんです」
葉月「自分で止めたんだろ」
幸吉「はい」
葉月「自分の言いなりにならないから、自分で娘の時間止めたんだろ」
幸吉「はい」
葉月「それで今になってその時計を進めたくなりましたってか?進めろよ!進めて進めて、それで、最後には死ぬぞ!花音」
幸吉「はい」
葉月「はい?」
幸吉「はい。そこまであいつを追っかけてみたいと思ってるんです」
♪BGM
幸吉「どんどん大人になってくあいつがその道の先で私に手を振ってるんです。『パパ~!』って。だからあいつがいるところまで走っていこうと思うんです」
葉月「殺したいよ!!あんたのこと、本気で死んでほしいと思ってるよ!メジャーデビューがポシャッたからとかじゃない!バンドが解散するからとかじゃない!私のこと分かってくれるのは花音だけだったんだ。親が嫌いで家を飛び出してバンドをはじめて、悩んだときはいっつも花音が教えてくれた。何だよあいつ。あいつ、あれじゃ、天使だよ。あんたは私から天使を奪ったんだ!『メジャーデビューなんかしないでいい』って言ったんだ、私。やりたい音楽もできなくなるからこのままでいいって。そしたらさ…」
幸吉「そしたら?」
葉月「そしたらあいつ『葉月、メジャーデビューしたら、いつかテレビやラジオでお父さんもお母さんもあんたの歌を聞いてくれるよ。『おかえり』って言ってくれるよ』って」
幸吉、こぼれそうな涙を我慢して…
葉月「おい、なんで我慢するんだよ!我慢しないで泣いてやれよ!あいつのために泣いてやれよ!あいつはあんたに『おかえり』って言ってほしかったんだよ!それが出来ないなら、花音のために泣いてやれよ!!」
幸吉「いえ」
葉月「なんで!」
幸吉「まだ、泣きません」
葉月「なんでだよ!」
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幸吉「あいつが手を振ってくれるところに辿り着くまで、私は泣きません!」
葉月「(泣きながら空を見上げて)会いたいよ~!花音!!花音に会いたいよ~!」
幸吉、優しく葉月の肩に手を掛ける。そこへ、レイとくりこもやってくる。3人抱きしめあって泣いている
♪しだいに大きくなるBGM
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暗転
(バンド演奏から��ここまでのシーンは毎回号泣で…『 ♪The Branch Road』でドラムを叩く内場さんの表情��今まで見たこともない表情をされていて、穏やかに3人を見ながら丁寧に1音1音に気持ちを込めながらドラムを叩いていて、少し儚げな表情で、それを見ているだけで胸が痛くなって。その流れからの葉月ちゃんとのシーン、幸吉の独白…。涙をこらえる内場さんの表情が本当にヤバくてグッときて…。こんな切ないシーンのすぐ後に4人のワチャワチャとかわいいシーンを入れるもんだから大王の演出にやられる!)
明転&♪テンポの良いBGMが流れる。舞台1階部分。そこは音楽スタジオ。葉月とくりこが楽器のセッティングをしている。幸吉とレイは準備体操をしている。ここからはBGMに合わせてセリフなしで動きだけでの芝居。4人が音楽練習しながらも次第に仲良くなっていく様子を描いている
もも上げやストレッチなどで息が切れる幸吉。幸吉の背中に蹴りを入れる葉月。豪快に転ぶ幸吉。立ち上がってドラムセットへ『1、2、3、4』とスティックを叩く幸吉、全員で演奏をしようとすると、幸吉のケータイが鳴り、幸吉は電話に出る。葉月が怒って幸吉の耳元でギターをかき鳴らす。幸吉、謝りながらも電話を続ける。その間にレイがカバンからフニャフニャの柔らかいスティックを取り出す。葉月、レイ、くりこ、3人のしめしめ顔。幸吉が電話を終えて、演奏を再開しようと『1、2、3、4』とスティックを叩こうとするが、フニャフニャのスティックに差し替えられてることに気付き、3人に詰め寄りながら、ブルースリーのようなポーズで葉月やレイを威嚇している。そこに音楽スタジオの店長登場。みんなを注意する店長。4人は演奏を再開するが、店長が居なくなってから大笑い。4人で集まって『このあとどうする?』といった相談。幸吉が『一杯行く?』というような仕草でみんなを誘い、4人で楽しそうに肩を組みながら舞台下手へ去る
舞台1階部分暗転&舞台2階部分明転。そこは開発中の工事現場が見渡せる空き地。白松不動産ホールディングスの社長、秘書、村木村が立っている
社長「ざっと見渡して何台クレーンが見えますか?」
村木村「あ、え~、5つですか?」
社長「残念。私は6つ見つけました」
秘書「… (遠くの方を指さして) 8つです」
社長「あれはどこです?」
秘書「海浜地区です。さくらグループが大型ショッピング施設とタワーマンションに着工しました」
社長「やるなぁ、さくらさんも。こんなときに真下さんは何をしてるんですか?私は親から会社を引き継いだだけの何も出来ない社長です。ですから真下さんのような有能な方を大切にしてきたつもりなんですが、しかし、真下さんは今日も会社を休んでいる」
村木村「それはですね、娘さんを亡くした悲しみで。でももうすぐ立ち直ると思います」
社長「もうすぐじゃダメなんです!」
秘書「熊本のプロジェクトがストップしています。我が社にとっても重要なプロジェクトです」
社長「私のところに先方からもクレームが入りましてね、下っ端ばかりよこすなと怒鳴られました。明日中に熊本で交渉してきてください。真下さんに全てをまとめて頂きたい。���員の皆さんに給料を支払うための重要案件ですからね。明日すべてをまとめるように。真下さんにお伝えください」
村木村「わかりました。やってみます」
社長&秘書、舞台2階から去っていく。一人になった村木村、ケータイを取り出して電話を掛ける。舞台1階下手から文音が現れる。♪雑踏の音。そこは街中。♪ケータイ音。文音、自分のケータイが鳴っているのに気付く
文音「もしもし」
村木村「文ちゃん、ごめん。またマッシーのことなんだけどさ?」
文音「どうした?」
村木村「会社に全然来ないんだよ。俺、いま、社長に呼び出されちゃってさ」
文音「なんか大事になってるね」
村木村「明日、マッシーに熊本に行ってもらって、明日中にプロジェクトまとめてもらわないとみんなの給料出ないって言われたのよ。だからマッシーに伝えてもらいたいのよ」
文音「ん~、分かった」
村木村「よろしくね!ほんとにほんとによろしくね!」
文音「分かった分かった。村木村ごめん、今から人に会う約束してるから電話切るね」
村木村「そっか、じゃあよろしくね!」
村木村、電話を切って舞台2階部分から去る。文音電話を切ると、そこへ、舞台上手からくりこがやってくる
文音「久しぶり」
くりこ「お久しぶりです」
文音「元気そうね」
くりこ「…」
文音「どうした?」
くりこ「お葬式行けなくてごめんなさい」
文音「いいのいいの。来ないだろうなって思ってたし。気にしないで。それよりどこ行く?近くにフレンチトーストの美味しいお店があるけど?」
くりこ「行きたい!…けど練習あるんです(と背中に背負ってるベースのケースを見せる)」
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文音「花音がいなくなっても続いてるんだ」
くりこ「はい!」
文音「良かった」
くりこ「すごいドラマーが見つかったんです!」
文音「へぇ~。花音、妬きもちやいてるかもね」
くりこ「花音はあのドラマーに妬きもちなんかやきません」
文音「へぇ~」
くりこ「みんなで芸名も付けたんです」
文音「新しいドラマーに?どんな?」
くりこ「マッシー幸吉」
文音「へぇ~・・え?マッシー幸吉!?」
くりこ「はい、なんかいいでしょ?」
文音「うそでしょ?マッシー幸吉(笑)…マッシー幸吉が?」
くりこ「はい」
文音「くりこちゃんたちの中にいるの?マッシー幸吉が?」
くりこ「はい!」
(笑)
文音「そっか~、そういうことか。マッシー幸吉ねぇ」
くりこ、ビートファームのチラシを文音に渡す
くりこ「今日はこれを渡そうと思って」
文音「ビートファーム?これ出るの?」
くりこ「はい。公開オーディションです。マッシー幸吉は自分からは絶対連絡なんかせぇへんやろから私が伝えておこうと思って」
文音「絶対言わないだろうね、マッシー幸吉は」
(笑)
くりこ「来てくれます?」
文音「行きたいな~いつ?」
くりこ「明日です」
文音「明日!?……明日かぁ…」
くりこ「はい!無理やったらいいです。でも来てくれたらめっちゃ嬉しい!ほならこれで」
文音「うん、また」
くりこ、舞台下手へ去っていく。文音、ケータイを取り出し電話をかける。その相手は幸吉
文音「あ、もしもし私」
幸吉、舞台2階部分上手から現れる
幸吉「(元気な声で電話に出て)あぁ!!はい!もしもし!どうした?」
文音「うわぁ~」
幸吉「え?何?うわぁ~って何?」
文音「すぐ出た」
幸吉「そりゃ、かみさんからの電話やしすぐ出るよ」
文音「それに明るい」
幸吉「(声のトーンを落として)あぁ、そっかまだ喪中か」
文音「いや、いい、明るくいて!」
幸吉「(元気に)あ、そう?何、どうした?」
文音「伝えるよ、伝えるだけだからね、どうするかは幸��ゃんが決めてね」
幸吉「(元気に)はい!分かりました。伝えてください!」
(ここの元気な内場さんかわいい♪)
文音「会社からなんだけどさ」
幸吉「あぁ…」
文音「明日、熊本に行ってプロジェクトをまとめてほしいって」
幸吉「明日!?」
文音「そう、明日」
幸吉「…そうか」
幸吉、持っているドラムスティックの入ったケースを見つめている
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文音「幸ちゃん!(ビートファームのチラシを見ながら)どうするかは幸ちゃんが決めればいいんだからね。何が一番大切なのかは幸ちゃんが決めればいいんだからね」
幸吉「何の話?」
文音「あ、いや、もし何か大事なことが他にあるならって思って」
幸吉「あぁ」
文音「…じゃあね」
幸吉「…じゃあ」
幸吉、電話を切って、舞台2階部分から去る。文音、電話を切って、舞台1階下手へ去る
♪様々な楽器の練習音。そこはビートファームの楽屋。赤髪で和装のミュージシャン(たくませいこ)が大声で発声練習をしながら、舞台上手からやってくる
ミュージシャン「マッマッ!マッマッ!あめんぼ赤いなあいうえお!マッマッ!ハッハッ!」
葉月、くりこ、レイ、舞台下手からやってくる
ミュージシャン「はとぽっぽハラハラヒレハレ!はとぽっぽハラハラヒレハレホレ!」
葉月「何?」
レイ「呪文じゃね?」
ミュージシャン「ひれ酒でへべれけ!ほぼホルマリン漬け!風呂いっぱいのヒル!風呂いっぱいのヒル!!」
(たくまさん演じる赤髪のミュージシャンのキャラ大好き♪)
ミュージシャン「(3人に気付き)あら!おはよう!何だっけ、前に一緒のイベント出たよね?」
葉月「スキッドマークスです」
ミュージシャン「あぁ!そうだった!私の事は覚えてないか。あの頃、私、二人組でジャージ姿だったからさ」
レイ「あぁ~!赤い方!」
ミュージシャン「そう!」
レイ「カッコ良かったっすよね~。あれ?ギターの青い方は?解散したんすか?」
ミュージシャン「いや、実はさ、あのスタイル自体が盗作だって訴えられちゃってさ」
(笑) 
ミュージシャン「あんたらも今日出るの?たしか~…あれじゃない?ドラムの子が…ごめん!こんな聞き方して」
レイ「代わり見つかったっすよ」
ミュージシャン「良かった。じゃあそろそろ私、ストリートファイトで体あっためてくるわ!体あっためないと声帯が広がらないからさ」
レイ「はい」
ミュージシャン「マッマッ!ハッハッハッ!荒ぶる荒波!アラスカ産新巻鮭!あろうことかアロンアルファ!マッマッ!ハッハッハッ!(言いながら舞台下手へ去る)」
(笑)
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レイ「うわぁ~かっこいいぜ!」
くりこ「どのへんが?」
葉月「全然わかんねぇ」
くりこ「あの人誰?」
レイ「知らない」
くりこ「知らんのかい!」
レイ「知~らない!」
葉月「さ~て、どうしたマッシー幸吉は」
くりこ「電話繋がらない」
レイ「あんだけ張り切ってたんだし、来ないってことないでしょう」
そこへ舞台下手から音楽スタジオの店長(後��ひろひと)が抽選BOXをかかえてキラキラのジャケット姿で現れる。
スタジオ店長「よう!お前ら出てくれて嬉しいよ。あれ、一人足りなくねぇか?」
くりこ「ちょっと遅れてるんです」
スタジオ店長「そう。じゃあ���くじ引いて」
レイ「なんすか?切手シートでもあたるんすか?」(←『毛ガニでもあたるんすか?』ってパターンもありました)
スタジオ店長「いやいや、今日の順番。『たてばやし』、お前どうせ当てるならもっと上狙えよ」
(笑)
レイ「私、引く」
くりこ「いや、葉月で」
葉月、くじを引く
レイ「やった~私のラッキーナンバー」
くりこ「13ってむっちゃ不吉やん!」
スタジオ店長「13、お前ら最後か」
葉月「最後ですか?」
スタジオ店長「うん、お前らイベントの最後だから思いっきり盛り上げてな!」
スタジオ店長、舞台下手へ去る
葉月「じゃあ、リハまでまだ時間あるし、私たちも行こうかストリートファイト」
レイ「お~!」
くりこ「嘘やろ!?」
葉月「嘘だよ!お茶でもしに行こ~」
レイ「なんだよ~。マッマッマッマッハッハッ!」
くりこ「それやめとき!」
葉月、くりこ、レイ、舞台下手へ去る
舞台2階部分。そこは熊本の取引先オフィスの廊下。幸吉、一人でうろうろしている。そこへ有動課長(菊池健一)がやってくる
有動「真下さんやったかな?地域開発課の有動です」
幸吉「このたびはご多忙の中、時間を頂き有難うございます。早速ですがどちらの方で?」
有動「ここでよか。私まだ会議中なんで廊下で話そう」
幸吉「しかしここは…」
有動「よかよ~。実は別のところが丁寧に相談に乗ってくれとる。だからあんたんところはもうよか」
幸吉「さくらグループですか?」
有動「そげんこと、言えるわけなか」
幸吉「有動課長!今後、我が社は全力で対応させて頂きますからどうか!」
有動「なんね、なんで今後なの?なんで今までは後回しだったの?あんたらね!復興支援だ、オリンピックだなんだ言って、金をもぎ取ろうと思っとるんでしょうが!」
幸吉「いや、そんなことは思っておりません!」
有動「思っておりますよ!大体なんで下っ端ばっかり送り込んで、やる気なかでしょうが、田舎者だと思ってバカにしとるんでしょうが!」
幸吉「有動課長~」
有動「誠意ば見せんね!!!誠意ば!!!」
幸吉、その場に土下座をする
幸吉「申し訳ございませんでした。お許しください!」
有動「いやぁ~、土下座ばされてもねぇ~。真下さん、頭上げてください。さくらさんのとこもね、まぁそげん良か条件じゃなかったですよ。あぁあ言うてしもた。ここからは真下さん次第ですたい。ここからはあんたがどげん誠意ば見せてくれるかです」
♪BGM
幸吉、頭を上げてまっすぐと前を見つめる。顔付きは凛々しい
有動「真下さん?何考えてるんです?」
幸吉「娘のことです」
有動「あぁ、うちにも1人おりましてな~」
幸吉「うちにはいません」
有動「はい?」
幸吉、立ち上がってジャケットのボタンを外しながら
幸吉「ここからの応対言われてもね!僕にはな~んも出来ませんわ!」
有動「真下さん?」
幸吉「アホらし、アホや、こんなん。こんなこと娘にさそう思ってたんか。こんな仕事に就かそうと思って俺は娘を放り出したんか。ハハハハ」
有動「真下さん?」
幸吉「ちゃうな、ちゃうちゃう。ちゃうな花音?」
有動「誰ね」
幸吉「(有動課長に詰め寄り)有動課長!好きにせぇ!!!」
幸吉、舞台2階部分から去る
有動「真下さん?真下さ~ん!」
有動課長、幸吉を追って舞台2階部分から去る
 ♪様々な楽器の練習音。 舞台1階。そこはビートファームの楽屋。
赤髪で和装のミュージシャンが舞台上手から大声で発生練習をしながら、足を引きずってやってくる。腕は包帯が巻かれ三角巾で吊っている。頭にも包帯をまいて、眼帯からは血が滲んでいる
(笑)
ミュージシャン「マッマッ!ハッハッハッ!」
ハワイアンミュージシャン・モアナ斉藤(道さわこ)が舞台上手からやってくる
モアナ「おぇ~、おぇ~、緊張する~」
葉月、くりこ、レイ、舞台下手からステージ用の華やかな衣装でやってくる
葉月「なんで来ないんだよ、あいつは!」
くりこ「絶対来るって」
レイ「来るよ」
葉月「来なかったらドラムなしでくりこのあの曲できないだろ」
レイ「てことは、てことはだよ!やっちゃう?ヘモグロビン!」
葉月&くりこ「NO~!」
レイ「でもドラムなしで出来る曲なんかほかにないよ」
葉月「私が書いたやつあるだろ」
くりこ「それって、『月夜のカノン』?」
レイ「葉月ちゃ~ん、あれやっちゃだめっすよ」
くりこ「あの曲は絶対あかんで」
葉月「分かったよ」
♪「ビートファーム」の会場アナウンスが流れる。「(スタジオ店長の声で)ごきげんなナンバーを聞かせてくれたのはジョニーボーイでした!さあ続いては今日優勝出来なきゃ解散!という二人組『阪急オアシス』! ♪(歌)どうしてどうして僕の~…」
(笑)
舞台上手からジョニーボーイ(大西ユースケ)がやってくる
ジョニー「ふぅ~!最高だぜ!阪急オアシス!ジョニーボーイのバックバンドでやとってやるぜ!」
モアナ「舞台どうでした?」
ジョニー「もう俺のもんって感じだったぜ!お前たちにも聞かせてやるぜ!俺の名曲『エーデルワイス』ふぅ~!!♪エ~デルふぅ~!!(歌いながら舞台下手へ去る)」(←毎回少しずつネタが違いました)
モアナ「あ~緊張する~」
ミュージシャン「緊張するとか言わないで!うつる!!」
モアナ「すみません。おぇ~」
葉月、舞台下手へ去ろうとして
くりこ「葉月?」
葉月「じっと待ってらんねぇよ!」
葉月、舞台下手へ去る。くりこ、レイも葉月を追って去る。
♪(スタッフの声)「モアナ斉藤さ~ん、お願いしま~す」
モアナ「はい、あぁ~だめ、もう~緊張する~、おぇ~」
モアナ、舞台上手へ去る
ミュージシャン「わがままな若乃花!ワコールが分からない若林豪!若大将のわき毛に分けいる和久井映見!!マッマッ!ハッハッハッ!」
赤髪で和装のミュージシャン 、発声練習をしながら舞台下手へ去る
暗転&♪BGM
明転すると「BEAT FARM」の看板。そこはビートファームステージ上。中央マイクスタンドには葉月。下手側マイクスタンドにはくりこ。キーボードにはレイが立っている。ドラムセットに幸吉の姿はない
音楽スタジオの店長、舞台上手からマイクを持ってやってくる
スタジオ店長「ありがとう!ありがとう!今夜のビートファーム、最高に盛り上がってるね~!ありがとう!それでは今夜最後のバンドをご紹介しましょう。ある不幸な事故から復活した奇跡のガールズバンド、スキッドマークス!!」
スタジオ店長、舞台上手に去る
葉月、「月夜のカノン」の前奏を弾きはじめる
くりこ「(葉月のギターのネック部分を掴んで演奏を止め)あかん、この歌はあかん」
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レイ「私、弾かないよ」
葉月「…」
スタジオ店長、なかなか始まらない演奏に困惑しながら舞台上手からやってくる
スタジオ店長「葉月どうした?え~どうしちゃったのかな?」
葉月「…」
スタジオ店長「とりあえずさ、何でもいいからやってよ!分かってんの?お前らトリだぞ?(マイクで)それでは改めてご紹介いたしましょう!スキッド~マ~クス~~~(演奏を始めない3人を見て)~~ぅ、ぅ、ぅ?」
(笑)
スタジオ店長「頼むよ!お前ら失格になるぞ?分かってんだろ?」
葉月&くりこ&レイ「…」
スタジオ店長「いいんだな?(マイクで)これはちょっと予想外ですが失格とさせていただきます!はい、失格です!!」
葉月&くりこ&レイ「…」
スタジオ店長「いいんだな?ほんとにこれでいいんだな?」
葉月&くりこ&レイ「…」
スタジオ店長(マイクで)それではこれにてすべてのバンド演奏が終わりました。これより審査に入ります。メジャーデビューが決まるのは一体どのバンドなのか?そして最後の表彰式にはシークレット審査委員長も登場しますのでお楽しみに…」
幸吉、客席後方扉から息を切らして入ってくる
幸吉「すみません!遅くなりました!!」
レイ「幸吉!!」
くりこ「来た!!」
幸吉「やらせて下さい!お願いします」
葉月「何やってたんだよ、バカヤロー」
幸吉「ごめんな」
葉月「ごめんなじゃねぇ~よ!」
幸吉「ほんまにごめんな!」
葉月「ふざけんなよ!」
幸吉「でもな、あとちょっとやねん!あとちょっとで花音のおる所やねん!花音が手を振ってるところに行ってやることが出来んねん!!それが分かってん!!!」
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葉月「もう終わったんだよ!もう演奏できねぇんだよ」
幸吉「…(呆然と立ち尽くす)」
薮内、舞台上手からやってくる
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薮内「いいんじゃないすか?やらせてみても」
幸吉「薮内君!!」
スタジオ店長「あ、薮内さん、あなたはシークレット審査委員長なので、今、出てきたら…」
(笑)
薮内「俺、このバンドの曲、聞きたいっすよ。審査委員長なんだからちょっとは無理聞いてもらってもいいんじゃないっすか?(客席に向かって)どうですか?みなさん、こいつらの演奏聞いてみたくないですか?」
幸吉「お願いします!お願いします!(客席に向かって頭を下げる)」
(観客拍手!!)
スタジオ店長「分かりました。時間の都合で5分間だけ差し上げます。それではご紹介します!スキッド~マ~クス~~!」
スタジオ店長、舞台上手へ去る
レイ「幸吉~」
幸吉、客席後方から、舞台へ歩み寄る。途中で立ち止まり、ステージ上の3人を見つめる
レイ「早くしろよ~」
幸吉、走ってステージに駆け上がる!くりこが幸吉のステージ衣装を持って待っている。幸吉、自分のジャケットを脱いで、ステージ衣装を羽織る。レイ、幸吉のジャケットとカバンを薮内に勢いよく渡す
レイ「お前持ってろ!」
薮内「きゃぁ!」
(笑)
薮内、舞台上手へ去る
葉月「それじゃあ聞いてください。大切な仲間のために書いた曲です。『月夜のカノン』」
幸吉「えっ?」
くりこ「葉月!?」
葉月「エイトビートで」
幸吉「エイトで?」
くりこ「これをエイトで?」
葉月「いいから、思いっきりロックで!」
レイ「おもしろい!」
葉月「幸吉のフィルから行くよ!いい?」
幸吉「よし!分かった!!」
幸吉、呼吸を整える。何度も何度も練習を重ねた、フィルイン!あのフレ��ズ!幸吉、口でドラムを言いながら、同時にドラムを叩く!
♪バドバドバドドバ~~~ン!!!
幸吉が力強く8ビートを刻む。4人のバンド演奏が始まる。思いっきりロックに!幸吉、葉月、くりこ、レイ、それぞれに最高の笑顔が浮かぶ
♪月夜のカノン(Rock ver.)
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みんな おとなになれない 優しくなれない
あんたもそうだよ
みんな うそつきばっかり 強がりばっかり
あたしもそうだよ
時の流れ逆らって ただ立ち止まって
このままじゃもう おいてけぼり そんなのヤだから
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Try not to cry tonite
今日もすぐに 昨日になるから
Dry up your rainy eyes
なみだのわけ 数えてちゃだめさ
Fly into the starry night
ゆめが飛んで 逃げていくなら
それより早く 走ればいいのさ
舞台2階部分に鉄工所社長、たきさん、カラオケスナック「うたciao」店長がやってくる。上から『SKIDMARKS』とライトアップされた看板が現れる。「山田鉄工所 うたciao 寄贈」と書かれている。鉄工所社長、たきさん、店長がステージ上の4人を応援している
カラヤンが手拍子をしながらステージ上に登場し、音楽スタジオの店長と店員(大西ユースケ)に連れて帰られる
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なんで 素直になれない 可愛くなれない
みんなもそうでしょ
時を巻き戻したって 誰もいないって
振り向いてちゃ おいてけぼり そんなのヤだから
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客席後方扉から文音が入ってくる
文音「マッシ~幸吉~!!」
くりこが気付いて手を挙げる。
幸吉もドラムを叩きながら気付いて微笑む
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Try not to cry tonite
今日もすぐに 昨日になるから
Dry up your rainy eyes
なみだのわけ 数えてちゃだめさ
Fly into the starry night
ゆめが飛んで 逃げていくなら
それより早く 走ればいいのさ
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~間奏~ ♪レイのキーボードソロ
レイ「ヘモグロビ~ン!ヘモグロビ~ン!セイ!ヘモ!ヘモ!」
幸吉&葉月&くりこ「グロビ~ン!」
レイ「セイ!ヘモ!」
幸吉&葉月&くりこ 「グロビ~ン!」
レイ「セイ!ヘモ!」
幸吉&葉月&くりこ 「グロビ~ン!」
レイ「カモン!ヘモ!」
幸吉&葉月&くりこ 「グロビ~ン!」
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時の流れ飛び乗って 髪で風切って
自由になろう あんたもそう 思ってたんでしょ
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Try not to cry tonite
今日もすぐに 昨日になるから
Dry up your rainy eyes
なみだのわけ 数えてちゃだめさ
Try not to cry tonite
今日もすぐに 昨日になるから
Dry up your rainy eyes
なみだのわけ 数えてちゃだめさ
Try not to cry tonite
今日もすぐに 昨日になるから
Fly into the starry night
ゆめが飛んで 逃げていくなら
それより早く 走ればいいの
夜明けは近い 今日がはじまりさ
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♪幸吉のドラム音
♪ダッダッダッダッダッダッダッダッ! ダッダッダッダッダッダッダッダッ!
急に演奏が止まり立ち上がる幸吉。スポットライトが幸吉だけに当たっている。幸吉の目には涙が光っている
幸吉「花音~~!!お前めっちゃ幸せやってんな~!!!」
幸吉、渾身の力でドラムを叩く
♪ギター、ベース、キーボード、ドラムで煽りを入れる
♪ジャ~~~~~ン!!!ダカダン!!!
幸吉のドラム音で演奏が終わる
(観客拍手!!!)
♪BGM
幸吉、立ち上がり、舞台上から客席にいる文音を探す
幸吉「文音~!文音~!」
幸吉、文音が見つからず舞台上から叫び続ける。そんな幸吉に、くりこ、葉月、レイがそれぞれ優しく手をかける
幸吉「文音~!文音~!」
文音「(客席から)幸ちゃ~ん」
幸吉「文音~!文音~~!!文音~~!!!」
幸吉、ようやく客席にいる文音を見つけて立ち止まる。客席を挟んで、幸吉と文音が向かい合っている
幸吉「あかん、あかんわ!涙が止まれへんよぉ~!」
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幸吉「花音のことで…涙が止まれへんよぉ!!」
文音「いいんだよ、それでいいんだよ、幸ちゃん」
幸吉「あか~ん!!俺らの娘が~…花音が死んだぁ~!あぁぁ~…涙が…涙が止まれへんよぉ~…花音が死んだぁ~…あぁ~」
文音、客席から幸吉のもとへ駆け寄っていき、きつくきつく抱きしめる
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幸吉「涙が止まれへんよ~、花音が死んだぁ~、あぁぁ~~~、あぁ~~~~あぁぁぁぁ~~~~!!!」
暗転
(観客拍手!!!)
明転。舞台上には幸吉、葉月、くりこ、レイがいる。くりこの手にはトロフィーが輝いている。拍手と歓声の中、4人でお辞儀
(観客拍手!!!)
暗転。
(鳴り止まない拍手!!!)
突然BGMが止まって明転。舞台上には「阪急オアシス」の二人
(笑)
弟「え~今日はこんな素敵なイベントに出させてもらって、俺たちもスキッドマークスに元気もらいました!俺たち『阪急オアシス』解散やめます!」
兄「解散撤回だぜ~!」
弟「それでは聞いて下さい。『阪急オアシス』再結成シングル『キャビア・フォアグラ・ドリフ』」
兄「勉強しろよ」
弟「1、2、1、2、3、4(ギターを弾き始めようとして)イッテ!!指切っちゃった!」
(笑)
暗転&♪BGM 
明転&大王による場内アナウンス
「本日はFILL-IN~娘のバンドに親が出る~最後までご覧いただきまして本当に有難うございました。それではキャストご紹介させて頂きます!
道さわこ、大西ユースケ、たくませいこ、菊池健一、多田野曜平、汐崎アイル、柿丸美智恵、池乃めだか、千菅春香、 松村沙友理、相楽樹、そしてマッシー幸吉こと内場勝則!」
大王の場内アナウンスでの呼び込みで、一人ずつ舞台上に登場する
相楽「そして��FILL-IN』作・演出、後藤ひろひと!」
大王も登場する
内場「1、2、3、4」ドラム音!フィルイン!
相楽「いくぞ~」
♪月夜のカノン(Rock ver.)サビ部分をみんなで演奏
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Try not to cry tonite
今日もすぐに 昨日になるから
Dry up your rainy eyes
なみだのわけ 数えてちゃだめさ
Try not to cry tonite
今日もすぐに 昨日になるから
Dry up your rainy eyes
なみだのわけ 数えてちゃだめさ
Try not to cry tonite
今日もすぐに 昨日になるから
Fly into the starry night
ゆめが飛んで 逃げていくなら
それより早く 走ればいいの
夜明けは近い 今日がはじまりさ
It’s time to wake up
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(観客拍手!!!)
キャスト全員でお辞儀
(鳴り止まない拍手!!!)
カーテンコール
そしてキャスト全員が舞台を去っていく
♪「阪急オアシス」による退場アナウンス
FIN
本当に素晴らしい舞台でした。このレポを書いていても最後泣けるっ!最後の演奏が終わった後の内場さんの言葉、本当にグッと来ました。毎回毎回、内場さんは大粒の涙をこぼしていたし、全力でステージに立ってたし、内場さんの色々な表情を見れて、熱量のある芝居を間近で感じて、震えるような空気を体感して、夢のような日々でした。
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千穐楽の1日前、最後のドラム叩くところで、スティックを片方落としてしまうハプニングもあったけど動じない内場さん! もう片方の手と足で、止まることなくずっとリズムを刻み続けて一瞬足りともバンド演奏が乱れることがありませんでした! 半年間、練習を重ねていても、とっさの ことで普通はリズムがずれたり少し止まっちゃったりすると思うけど片手でずっと8ビート刻んで足ではずっとバスドラで裏打ちしてて、ほんとに凄い! スーパー座長♪どんだけカッコいいんだ!! そしてすぐにスティックを拾って笑顔! 場数の多さ、貫禄を垣間見ました! 
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なによりキャスト一人一人の魅力が存分に出ていてみんなが個性的で輝いていて素敵でした。誰一人欠けても成立しなかったと思います。緩急のある展開でそれぞれに見せ場を作る後藤さんの演出、好きです!中村中さん作曲の劇中の曲もすごく良くて、あの曲に何度も泣かされました!内場さんをはじめ、キャストの皆さん、スタッフの皆さん、本当に本当にお疲れさまでした!素敵な舞台を有難うございました!!
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